JP3181459B2 - 牛の過剰排卵誘起方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、優秀な雌牛の１発情周
期に多数の排卵を誘起し、多数の受精卵を回収して他の
雌牛に移植し、一度に多数の産子を得るための、牛の過
剰排卵誘起方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】牛は単胎動物であり、通常は１発情周期
に１個の卵子を排卵する。受精卵移植技術のより有効な
活用は、遺伝的に優れ、立派な体格と優秀な能力を有す
る雌牛（ドナー、供卵牛）に一度に多数の排卵を誘起さ
せ、多数の受精卵を回収して他の雌牛（レシピアント、
受卵牛）に移植し、一度に多数の産子を得ることにあ
る。このため各種の性腺刺激ホルモンを供卵牛に投与し
て多数の卵子の発育と排卵を誘起する方法が研究されて
いる。

【０００３】現在、主に卵胞刺激ホルモン（ＦＳＨ）、
妊馬血清性性腺刺激ホルモン（ＰＭＳＧ）およびプロス
タグランジン（ＰＧＦ₂α）を併用して一度に多数の排
卵を誘起させる、いわゆる過剰排卵誘起が行われてい
る。これらの誘起方法では、１回の処置で通常５〜１０
個程度の受精卵を取得することができるが、より大量に
取得できる技術の開発が望まれている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、１回の処置
で多数の受精卵を取得することができる牛の過剰排卵誘
起方法を提供するものである。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明者らは、各種ホル
モンを供卵牛に投与する過剰排卵誘起処置の際に、エタ
ノールおよびタウリン（アミノエチルスルホン酸）を一
緒に投与すると、１回の処置で多数の受精卵を取得する
ことができること、しかも得られた受精卵の大部分が正
常卵であり、移植成績も良好であることを見出し、本発
明を完成した。すなわち、本発明は、エタノールおよび
タウリンを含有する組成物を供卵牛に投与する牛の過剰
排卵誘起方法を提供するものである。

【０００６】本発明の過剰排卵誘起方法は、供卵牛の性
周期の約１０日（前回の発情日を０日とする）から採卵
日まで、毎日１頭あたりエタノールを１０〜１００ｍ
ｌ、タウリンを５０〜１０００ｍｇを投与するものであ
る。この１日量を分割して投与することもできるが、１
日１回全量を投与してもその効果に変わりはないので作
業量の少ない投与法を採用するとよい。投与に際して
は、エタノールおよびタウリンを各々個別に投与しても
よいが、一般に５〜３０％程度の濃度のエタノール水溶
液に所定量のタウリンを溶解させたものが使用し易く、
これを経口投与するとよい。

【０００７】使用するエタノールは、発酵法、化学合成
法いずれの方法で製造したものでもよく、適宜水で希釈
するか、あるいは発酵法により製造されたものではその
まま使用することもできる。特にワイン、ビール、清酒
などの醸造酒由来のものは牛の嗜好性が高いため好適で
ある。使用するタウリンは、天然物由来のもの、化学合
成によるものいずれでもよいが、イカなどから採取され
る天然物由来のものを使用することが好ましい。

【０００８】またエタノールおよびタウリンを供卵牛に
投与する際、ビタミンＡ、Ｄ、Ｅなどの脂溶性ビタミン
類およびビタミンＢ群などの水溶性ビタミン類を同時に
投与するとさらに好適である。このような各種成分は個
別に投与してもよいが、これらの成分を全て含んだ液剤
の形で投与するとその作業性が向上するので有利であ
る。本発明に使用できる好適な液剤として、例えば、市
販のビタミン配合アルコール飲料ビタインワイン（登録
商標：メルシャン株式会社製）を挙げることができる。
ビタインワイン１瓶（２００ｍｌ）中には、エタノール
３０ｍｌ、タウリン２５０ｍｇ、さらに各種ビタミン類
が含有されているので、本発明の過剰排卵誘起方法に好
適に使用することができる。

【０００９】なお、本発明の方法が適用できる牛の品種
は特に限定されないが、ホルスタイン種、黒毛和種など
に好適に適用することができる。

【００１０】本発明の方法で得られた受精卵は、供卵牛
と発情が同期している受卵牛がいれば、そのまま直ちに
移植してもよく、適当な受卵牛がいない場合は、グリセ
リンなどの保護剤を用いて凍結保存し、受卵牛の発情を
待ち、適宜解凍して移植すればよい。なお、移植の際に
は受卵牛にもエタノールおよびタウリンを投与しておく
とよい。

【００１１】本発明では、採卵前の一定期間に一定量の
エタノールおよびタウリンを投与するという簡便な方法
により、１回の処置で１５〜３５個という従来法に比べ
ると著しく多数の受精卵を取得することができる。しか
も得られた受精卵の大部分（８５％以上）が正常卵であ
り、移植成績も良好であるので、遺伝的に優れた供卵牛
の形質を受け継ぐ牛を効率よく生産することができる。
そのため本発明の経済的価値は非常に大きい。

【００１２】

【実施例】以下、実施例を示し本発明をさらに詳細に説
明する。

【００１３】実施例１ 供卵牛は、ホルスタイン種の経産牛（４〜５才）７頭を
用いた。そのうち５頭については、性周期の１０日目か
ら採卵日までビタインワイン（１本あたりエタノール３
０ｍｌ、タウリン２５０ｍｇ含有、登録商標：メルシャ
ン株式会社製）を毎日１本づつ投与し、他の２頭につい
てはビタインワインを投与せず受精卵の回収を行った。
その結果を表１に示す。なお、発情誘起、受精卵の回
収、選別は常法に従い、以下のとおり行った。

【００１４】性周期の１０日目から４日間、ＦＳＨを朝
夕２回５．５ｍｇ（１０日目）、４．５ｍｇ（１１日
目）、３．０ｍｇ（１２日目）、２．０ｍｇ（１３日
目）を注射した。ＦＳＨの投与を終了した２日後から３
日間、朝４．０ｍｇ、昼３．０ｍｇ、夕３．０ｍｇのＰ
ＧＦ₂αを注射して発情を誘起させた。発情が誘起され
た２日目の午後と３日目の午前中の２回人工授精し、発
情後７日目に非手術的に受精卵を回収した。左右子宮角
を各々２５０〜３００ｍｌのリン酸緩衝液で潅流して得
た受精卵は、２０％牛血清を含むリン酸緩衝生理食塩水
で２回洗浄し、１００倍の顕微鏡下で観察し、正常卵と
異常卵を選別した。

【００１５】

【表１】

【００１６】実施例２ 実施例１の採卵試験１で採取した２２個の正常卵のうち
７個を子宮頚管経由法により直ちに受卵牛であるホルス
タイン種の経産牛（４〜５才）７頭に移植した。移植し
た７頭のうち３頭が妊娠し出産した。

【００１７】実施例３ 実施例１の採卵試験１で採取した２２個の正常卵のうち
１３個を常法に従いグリセリンを保護剤として凍結し
た。これを解凍した後、子宮頚管経由法により受卵牛で
あるホルスタイン種の経産牛（４〜６才）１３頭に移植
した。移植した１３頭のうち６頭が妊娠し出産した。

【００１８】実施例４ 実施例１の採卵試験２で採取した１２個の正常卵のうち
８個を常法に従いグリセリンを保護剤として凍結した。
これを解凍した後、子宮頚管経由法により受卵牛である
ホルスタイン種の経産牛（４〜６才）８頭に移植した。
受卵牛には、予め受精卵移植前の３日間、ビタインワイ
ン（１本あたりエタノール３０ｍｌ、タウリン２５０ｍ
ｇ含有、登録商標：メルシャン株式会社製）を毎日１本
づつ投与した。移植した８頭のうち５頭が妊娠し出産し
た。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) A01K 67/02 A61D 7/00 ＢＩＯＳＩＳ（ＤＩＡＬＯＧ) ＪＩＣＳＴファイル（ＪＯＩＳ) ＭＥＤＬＩＮＥ（ＳＴＮ) ＷＰＩＤＳ（ＳＴＮ)

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 供卵牛にエタノールおよびタウリンを投
   与することを特徴とする牛の過剰排卵誘起方法。