JP3147968B2 - 水素残量検出装置 - Google Patents

水素残量検出装置

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潤 山田
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金属水素化物(メ
タルハイドライド或いは水素吸蔵合金ともいう。以下こ
れをMHと略称する。)を用いた水素貯蔵タンク内の水
素残量を検出する装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、所謂MHタンク内の水素残量を検
出する方法として、例えば、水素を燃料とするエンジン
と、そのための燃料タンクとして、エンジン冷却水を加
熱のための熱媒体として利用するMHタンクを搭載して
いる水素自動車において、MHタンク内の温度を検出
し、それが80℃以上になった時に燃料切れと判定して
警告を出すシステムが知られている(特開昭63−24
6459号公報参照)
【0003】
【発明が解決しようとする課題】この従来技術によれ
、始めからMHタンク内の水素残量が少ない状態で、
しかも冷間始動時のように、タンク内のMHの温度が低
い条件下では、MHの温度が80℃まで上昇する前に燃
料切れになってしまう可能性がある。また、燃料がある
うちは低温で、燃料切れになると急に温度が上昇して8
0℃を越えるため、それまでは、あとどのぐらい水素が
残っているのかわからない状態にあり、走行中に突然燃
料切れになってしまう可能性がある。そこで、本発明の
目的は、水素残量0%から100%までの全域にわたっ
て、リアルタイムに水素残量を検出することができる手
段を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、前記の課題を
解決するための手段として、MHが水素を吸蔵する
、MH合金の結晶格子が膨張することにより、MHの
粉末の体積が増加し、逆に水素を解離すると、結晶格子
が縮少して、MHの粉末の体積が減少するという性質を
利用し、MHの体積変化を静電容量式のレベルセンサに
よって正確に検出すると共に、MHの体積変化からMH
水素貯蔵量を演算して水素残量を表示する水素残量計を
含む水素残量検出装置を提供するものである。より具体
的に、本発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載され
た水素残量検出装置を提供する。
【0005】MHの粉末の体積(嵩)は水素吸蔵量の変
化と共に連続的に変化する性質があるので、本発明にお
いては、MHを収容しているMHタンク内において対向
するように配置された一対の電極部材からなり、MHに
部分的に埋没し得るように配置された静電容量式のレベ
ルセンサを使用して、MHタンク内のMHが水素吸収量
の変化によって体積が変化してその堆積層のレベルが変
化した時に、一対の電極部材のMH内への埋没の程度が
変化することによって電極部材間の静電容量が変化する
のを検出するものである。
【0006】一方、MHは導電性のある物質であるから
電極部材間に直接に電流が流れるこ とを阻止するために
電極部材に絶縁コーティングを施す必要があるが、水素
放出時にMHのレベルが降下してもMHが電極に付着し
て残ると正しい水素残量を検知することができなくなる
恐れがあるので、本発明においては特に電極部材の絶縁
コーティング材をフッ素樹脂のような摩擦係数の小さい
材料にする。それによって、絶縁コーティングが本来の
電気絶縁作用のみならず、電極部材へのMHの付着防止
という作用を同時に果たすことになる。
【0007】上記構成によれば、2値的な変化をするM
Hの温度による残量検出方式と異なり、すべての状態に
おいてMHに含まれる水素量を一対の電極部材間の静電
容量の変化というアナログ的な連続変化量として、リア
ルタイムに且つ正確に検出することができる。それによ
って、例えば水素エンジンとMHタンクを搭載した水素
自動車においては、走り出す前に水素の残量を確認する
ことができるので、走行中不意に燃料切れになって立
往生するというようなことがなくなる。
【0008】また、微粉状のMHがMHタンク内の空間
に飛散することによって電極部材間の静電容量に誤差を
生じる恐れがあるときは、請求項2のように、MH中に
シリコーンオイルのような流体を含浸させて飛散を抑制
することができる。 更に、請求項3の構成をとることに
よって、大量のMHを収容しているMHタンクの他に、
それと通気状態で少量のMHを収容している容器を別に
設けて、その容器にセンサを取り付けるというような複
雑な構造をとる必要がないために、MHタンクの形状及
び構造を簡素なものとすることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】図1に、本発明における第1の実
施例の全体構成を示す。1はMHタンク、2はMHタン
ク1内に充填された粉末状のMHであり、タンク容積の
約80%以下まで充填されている。3はMHタンク1内
に充填されたMHに埋没するように設けられた曲管状の
熱交換器であり、曲管は多数のフィンを有し、水素を充
填する時は冷水、水素を放出する際は、例えば水素エン
ジン車の場合はエンジン冷却水等を熱媒体として、ポン
プ等によりその中へ流通させる。
【0010】4は静電容量式レベルセンサで、2枚の平
行な電極板4a,4bの先端は水素を充填しない状態で
少なくとも10%以上粉末状MHに埋没するように、タ
ンク上部に取り付けられている。なおMHは導電性のあ
る物質であるから、電極板表面に絶縁コーティングを施
こしている。そのための電気的絶縁材料としては、フッ
素樹脂のような摩擦係数の小さいものを用いる。また、
電極板ホルダ4cは気密性を保つように、MHタンクに
PTネジまたはフランジ等の手段を用いて取り付けられ
ている。5は電極板4a,4b間の静電容量を検出する
回路であり、6は回路5で検出した静電容量を水素残量
に換算する演算回路、7は、例えば、自動車のフューエ
ルメータ等の水素残量表示部である。
【0011】第1実施例の水素残量検出装置の作動を次
に説明する。まず水素をMHタンク1に充填する時
熱交換器3に冷水を流してタンク1内のMH2を冷却し
ながら、高圧水素ボンベ10からレギュレータ9aで減
圧された水素をMHタンク1に導入すると、タンク1内
のMH2となるべき金属(合金)は金属水素化物に変化
することによって水素を吸蔵し、その際MHの粒子自体
が膨張するので、粉末のレベルが上昇する。従って、電
極板4a,4b間に存在するMHの体積が増加し、電極
板4a,4b間の静電容量が増加する。静電容量は検出
回路5によって電気信号に変換され、演算回路6におい
て、図2に示すような水素残量と静電容量の関係をもと
に水素残量に換算され、表示部7に表示される。
【0012】また、水素エンジンへ供給する等の目的で
水素を放出する時は、熱交換器3にエンジンで暖められ
た冷却水を流し、MH2が水素を解離して放出すると、
MHの粒子自体が収縮するので、堆積した粉末2のレベ
ルが下降する。従って、電極板4a,4b間に存在する
MHが減少して静電容量が減少する。その際の静電容量
も同様に、検出回路5、演算回路6により水素残量に変
換し、表示部7に表示される。MHの粒子が経年劣化に
より微細化して体積が変化する場合には、例えばMHタ
ンクの定期点検の際等に、MHから水素を脱気した際に
リセットすることができる機能を演算回路6に設けても
よい。
【0013】また、MHの粉末が電極に付着し易い場合
は、水素放出時にMHのレベルが降下してもMHが電極
に付着して残ることがあるので、正しい水素残量を検知
することができなくなる恐れがある。それを予防する
めに前述のように電極板の絶縁コーティング材をフッ
素樹脂のような摩擦係数の小さい材質のものにしてい
る。また、大流量の水素を充填、放出する場合のよう
に、微粉状のMHがMHタンク内の空間内で飛散するこ
とによって、電極間の静電容量に誤差を生じる恐れがあ
るときは、MH中にシリコーンオイル等の流体を含浸
せて、飛散を抑えてもよい。
【0014】図3に本発明の第2の実施例の全体構成図
を示す。本実施例と第1の実施例の違いは、2枚の電極
板4a,4b間の静電容量の変化を検出するかわりに、
1本の電極棒20aと、電極棒のまわりのMHタンク1
の内壁との間の静電容量の変化によって、MH2の体積
変化を検出するところにある。つまり、金属製のMHタ
ンク1自体の内壁面を第2の電極部材として利用して、
第1の電極部材である電極棒20aと対向させている点
に特徴がある。なお、MH2は導電性のある材料である
から、この場合も電極棒20aとMHタンク1の内壁に
フッ素樹脂のような摩擦係数の小さい材質の絶縁コー
ティングを施こして、電極棒20aとMHタンク1の内
壁との間に直接に電流が流れないようにしている。この
構成によっても第1の実施例と略同様な効果が得られ
る。
【0015】図4に本発明の第1の参考例の全体構成を
示す。この参考例は第1及び第2の実施例における静電
容量式レベルセンサのかわりに超音波式レベルセンサ1
1を装着した例である。センサ11よりMHタンク1内
の上部空間に発射される超音波が、充填されたMHの上
面で反射し、同じセンサ11で受信されるまでのエコー
時間を検出回路12で電気信号に変換し、図5に示す水
素残量とエコー時間の関係をもとに演算回路13にて水
素残量を演算し、表示部7に表示する。
【0016】この参考例によれば、超音波式レベルセン
サ11はMH2と非接触状態でそのレベルを検出するこ
とができるので、センサ11へのMHの付着による誤差
が小さいこと、及びMHが膨張した時でも、MHの粉粒
体圧によってセンサが破損するような恐れがないこと、
等の利点がある。
【0017】図6に本発明の第2の参考例の構成図を示
す。14aはMH成形体であって、MHタンク1内に充
填されているMHと同種の金属粉末表面にニッケルメッ
キを施こした上で棒状にプレス成形したものである。M
H成形体14aは筒状のケーシング14b内において、
スプリング14cによって一方に押圧されることによっ
て固定されている。なお、ケーシング14bの、MH成
形体14aが挿入されている部分は、ステンレス鋼の焼
結体等の多孔質のフィルタ構造となっており、水素ガス
のみを透過させてMH成形体14aに自由に導入するこ
とができるようになっている。
【0018】また、ケーシング14bとMHタンク1と
の間はシール材14eを使用して気密を保つようになっ
ている。ギャップ検出コイル14dはケーシング14b
に固定されており、検出回路15により高周波電流が印
加されている。ギャップ検出コイル14dとMH成形体
14aに距離変化が生ずると、検出コイル14dのイン
ダクタンスが変化し、変化したインダクタンスは検出回
路15において直流電圧の信号に変換される。16は演
算回路であり、図7に示す水素残量とインダクタンスの
関係より水素残量を演算し、表示部7に表示させる。
【0019】次に、この参考例の水素残量検出装置の作
動を説明する。MHタンク1内に高圧水素ボンベ10か
ら水素が充填されると、ケーシング14b内部にも水素
が透過して導入され、MH成形体14aが水素を吸蔵す
るため、MH成形体14aが伸張し、ギャップ検出コイ
ル14dとの距離が縮少してコイル14dのインダクタ
ンスが増加する。また、水素エンジン等へMHタンク1
から水素が供給されると、MH成形体14aから水素が
解離するため、MH成形体14aが縮少し、ギャップ検
出コイル14dとの距離が増大してコイル14dのイン
ダクタンスが減少する。この際のインダクタンスを検出
回路15によって電気信号に変換し、演算回路16にて
水素残量を演算し表示部7に表示する。
【0020】
【発明の効果】本発明によれば、静電容量式レベルセン
サによって水素残量を0%〜100%の全域にわたって
リアルタイムに且つ正確に検出することができるため、
例えば水素自動車の燃料タンクとして使用されるMHタ
ンクに適用すれば、常に現在の水素残量を正確に検知す
ることができ、走行中の不意の燃料切れを防ぐことがで
きる。特に、フッ素樹脂のような摩擦係数の小さい材料
によって電極部材をコーティングして絶縁を施すので、
電極部材間に直接に電流が流れるのを阻止することがで
きるだけでなく、電極部材にMHが付着して残ることを
防止するので、水素残量を誤認する恐れがなくなる。
【0021】MH中にシリコーンオイルのような流体を
含浸させると、微粉状のMHがMHタンク内の空間に飛
散することによって電極部材間の静電容量に誤差を生じ
るのを防止することができる。 更に、静電容量式レベル
センサを金属水素化物タンクに対して気密保持部材を介
して直接に取り付けることによって、MHタンクにセン
サを取り付けるための容器を設ける必要がなくなるの
で、MHタンクの形状及び構造を簡素なものとすること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の水素残量検出装置の第1実施例を示す
全体構成図である。
【図2】図1の静電容量式レベルセンサが検出する静電
容量と水素残量との関係を示す特性図である。
【図3】本発明の水素残量検出装置の第2実施例を示す
全体構成図である。
【図4】本発明の水素残量検出装置の第1の参考例を示
す全体構成図である。
【図5】図4の超音波式レベルセンサが検出するエコー
時間と水素残量との関係を示す特性図である。
【図6】本発明の水素残量検出装置の第2の参考例を示
す全体構成図である。
【図7】図6のギャップ検出コイルのインダクタンスと
水素残量との関係を示す特性図である。
【符号の説明】
1…MHタンク 2…粉末状MH 3…熱交換器 4…静電容量式レベルセンサ 4a,4b…電極板 5…検出回路 6…演算回路 7…表示部 8a,8b…ストップ弁 9a,9b…レギュレータ 10…高圧水素ボンベ 11…超音波式レベルセンサ 12…検出回路 13…演算回路 14a…MH成形体 14b…ケーシング 14c…スプリング 14d…ギャップ検出コイル 14e…シール材 14f…リード線 15…検出回路 16…演算回路 20…静電容量式レベルセンサ(単極式) 20a…電極棒
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山田 潤 愛知県西尾市下羽角町岩谷14番地 株式 会社日本自動車部品総合研究所内 (72)発明者 鬼頭 修 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自 動車株式会社内 (56)参考文献 特開 昭57−66357(JP,A) 特開 平1−307636(JP,A) 特開 平2−118417(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F02M 21/02

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 摩擦係数の小さい電気的絶縁材料による
    絶縁コーティング層を表面に形成され、金属水素化物を
    収容している金属水素化物タンク内において対向するよ
    うに配置された一対の電極部材からなり、前記金属水素
    化物タンク内の前記金属水素化物に部分的に埋没し得る
    ように設けられた静電容量式レベルセンサと、 前記 金属水素化物の体積変化に伴う前記レベルセンサの
    前記一対の電極部材間の静電容量を検出し、該静電容量
    から前記金属水素化物に吸蔵されている水素の残量を演
    処理する手段とを備えていることを特徴とする水素残
    量検出装置。
  2. 【請求項2】 前記金属水素化物の飛散を抑制する流体
    が前記金属水素化物に含浸されていることを特徴とする
    請求項1に記載の水素残量検出装置。
  3. 【請求項3】 前記静電容量式レベルセンサが前記金属
    水素化物タンクに対して気密保持部材を介して直接に取
    り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の水
    素残量検出装置。
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