JP3115289B2 - キチナーゼを用いた植物病原菌防除剤 - Google Patents
キチナーゼを用いた植物病原菌防除剤Info
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Description
ヤマイモ由来のキチナーゼを利用した植物病原菌防除剤
に関する。
環芳香族系、有機リン酸エステル系等の有機合成植物病
原菌防除剤が主流であった。これらの薬剤は、病原菌の
みに効果を発揮するだけでなく、人体への悪影響を及ぼ
したり、残留農薬等の問題を引き起こしたりしている。
素であり、節足動物及び甲殻類等の脱皮、植物の生体防
御、微生物の生育等に利用されている。しかし、キチナ
ーゼの抗菌性に関しては知られておらず、キチナーゼは
植物病原菌防除剤としては利用されていなかった。一
方、キチナーゼは生物由来であることから、人体や環境
に対して安全であると考えられる。
化合物を利用した植物病原菌防除剤については様々な問
題点が指摘されている。このため、このようなタイプの
植物病原菌防除剤に代わる安全性の高い新規な植物病原
菌防除剤が望まれていた。本発明は、このような要求に
応えるべく、生物由来の物質を利用した新規な植物病原
菌防除剤を提供することを目的とする。
を達成するために鋭意研究した結果、キチナーゼが抗菌
性を有すること、及びキチナーゼの抗菌効果はβ-1,3-
グルカナーゼにより相乗的に増大することを見いだし、
本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、キチ
ナーゼを有効成分として含有することを特徴とする植物
病原菌防除剤である。また、本発明は、キチナーゼとβ
-1,3-グルカナーゼとを有効成分として含有することを
特徴とする植物病原菌防除剤である。
本発明に使用するキチナーゼは、特に限定されないが、
好ましいキチナーゼとしては、ヤマイモ由来のキチナー
ゼを例示することができ、それらの中でも特に好ましい
キチナーゼとしてYam H1、Yam H2を例示することができ
る。Yam H1は、本発明者らによって単離されたキチナー
ゼであり、その至適pHは4(キチンオリゴ糖に対し
て)、3と9(グリコールキチンに対して)、安定pH域
は3〜12、至適温度は70℃、安定温度域は0〜80℃であ
る。従来既知のキチナーゼ、例えば、ライムギ由来のキ
チナーゼの安定pH域が4〜8、安定温度域が0〜50℃で
あることを考えると、Yam H1は熱及びpH安定性に非常に
すぐれているといえる。また、このキチナーゼは、少な
くとも配列番号1記載のアミノ酸配列を含んでいる。Ya
m H2も本発明者らによって単離されたキチナーゼであ
り、このキチナーゼは少なくとも配列番号2記載のアミ
ノ酸配列を含んでいる。
みを有効成分としてもよいが、キチナーゼとβ-1,3-グ
ルカナーゼを有効成分とすることがより好ましい。本発
明に使用するβ-1,3-グルカナーゼは、植物由来のもの
でも、微生物由来のものでもよく特定の生物由来のもの
に限定されない。
及びβ-1,3-グルカナーゼをそのまま使用してもよい
が、一般には適当な液体担体に溶解するか若しくは分散
させ、又は適当な粉末担体と混合するか若しくはこれに
吸着させ、所要の場合にはさらにこれに乳化剤、分散
剤、懸濁剤、展着剤、浸透剤、湿潤剤、安定剤などを添
加し、乳剤、油剤、水和剤、粉剤等の製剤として使用す
ることができる。
ン酸緩衝液、有機酸類の水溶液、液体肥料、海藻・植物
・木材抽出液、ミネラル類水溶液、アミノ酸類水溶液、
漢方薬類水溶液等が適当であり、これらの1種又は2種
以上を混合して使用することができる。
タルク・クレー・葉ろう石等の粘土鉱物、活性炭、ゼオ
ライト、シリカ、セルロース、カルシウム、キトサン、
デンプン等が適当であり、これらの1種又は2種以上を
混合して使用することができる。
を特徴とする植物病原菌防除剤の場合、有効成分である
キチナーゼの濃度は、一般に乳剤の場合には0.01〜0.05
%、油脂剤の場合には 0.005〜0.025 %、水和剤の場合
には0.01〜0.05%、粉剤の場合には1.0 〜5.0 %が適当
であり、これらの濃度を適宜変更してもよい。
とを有効成分として含有することを特徴とする植物病原
菌防除剤の場合、有効成分であるキチナーゼ及びβ-1,3
-グルカナーゼの濃度は、各々、乳剤の場合には0.01〜
0.05%、0.01〜0.05%、油脂剤の場合には 0.005〜0.02
5 %、 0.005〜0.025 %、水和剤の場合には0.01〜0.05
%、0.01〜0.05%、粉剤の場合には0.01〜0.05%、0.01
〜0.05%が適当であり、これらの濃度を適宜変更しても
よい。
を特徴とする植物病原菌防除剤の使用量は、10a 当たり
0.1〜1.0 kgとすることができるが、10a 当たり 0.1〜
0.5kg とするのが好ましい。また、キチナーゼとβ-1,3
-グルカナーゼとを有効成分として含有することを特徴
とする植物病原菌防除剤の使用量は、10a 当たり 0.1〜
1.0kg とすることができるが、10a 当たり 0.1〜0.5kg
とするのが好ましい。
原菌を防除することができる。例えば、本発明の植物病
原菌防除剤は、フォーマ・ワサビアエ(Phoma wasabia
e)、フザリウム ox.sp. ラファニ(Fusarium ox.sp.raph
ani)、ロゼリニア・ネカトリクス(Rozelinia necatrix)
等の植物病原菌に対して優れた防除効果を発揮する。特
に、キチナーゼとβ-1,3-グルカナーゼとを有効成分と
して含有することを特徴とする植物病原菌防除剤の場合
には、キチナーゼとβ-1,3-グルカナーゼとの相乗効果
により増強された植物病原菌防除効果が発揮される。
導 キトサンを予め液体培養しておいたイネ遊離細胞に終濃
度100 μg/mlになるように添加し、3日間振盪培養し
た。その後、細胞培養液を吸引濾過して細胞を除き粗酵
素液を抽出した。この粗酵素液に基質としてN−アセチ
ルキトサンを加えた後、遠心分離し、上澄み液に遊離し
た還元糖をシャーレス変法によって定量することによ
り、キチナーゼ活性を測定した。無添加で培養したも
の、及びキトサンの溶媒として用いた乳酸のみを添加し
て培養したものを対照とした。その結果、イネ遊離細胞
培養液にキトサンを添加することにより、イネキチナー
ゼ活性が増加した(表1)。これにより、イネ遊離細胞
において、キトサンがキチナーゼを誘導することが示さ
れた。
キトサンの濃度の決定 脱アセチル化度80%キトサンを予め液体培養しておいた
イネ遊離細胞に終濃度50、100 、1000μg/mlになるよう
に添加し、3日間振盪培養した。その後、細胞培養液を
吸引濾過して細胞を除き粗酵素液を抽出した。この粗酵
素液に基質としてN−アセチルキトサンを加えた後、遠
心分離し、上澄み液に遊離した還元糖をシャーレス変法
によって定量することにより、キチナーゼ活性を測定し
た。その結果、100 μg/mlの濃度が最も高いキチナーゼ
活性を示した(図1)。
度及び至適pHの決定 実施例1と同様の方法により抽出したイネキチナーゼを
含む濾液にN−アセチルキトサン加え、温度20、30、4
0、50、60、70、80、90℃で5分間静置した。その後、
各々の濾液を遠心分離し、シャーレス変法により上澄み
液に遊離した還元糖を定量することにより、キチナーゼ
活性を測定した。また、pHについても、濾液がpH2 、4
、6 、8 、10、12となるように1N HCl及びNaOHで調整
し、上記と同様にシャーレス変法を用いてキチナーゼ活
性を測定した。その結果、至適温度は50〜60℃であり、
比較的高温度でも活性が安定していた(図2)。また、
至適pHは6〜7であった(図3)。
いたイネ遊離細胞に終濃度100 μg/mlになるように添加
し、3日間振盪培養した。その後、細胞培養液を吸引濾
過して細胞を取り除き、濾液を透析して粗酵素液とし
た。この粗酵素液10、20、30%を含有するYG寒天培地
(Yeast.抽出物 0.1%, Glucose 0.1%, KH2PO4 0.02%,
K2HPO4 0.03%, MgSO4・7H2O 0.02%, 寒天 1.5%)を調製
し、予め前培養しておいた病原菌(Pyricularia oryzae
及び Phoma wasabiae)を直径5mm のコルクボーラーで抜
き取り接種して培養した。粗酵素液を含まないYG培地
を対照とし、対照YG寒天培地と粗酵素液含有YG寒天
培地とで増殖した病原菌の面積比を計算した。
は、対照YG寒天培地と粗酵素液10%含有YG培地とで
の面積比は100:87であり、対照YG寒天培地と粗酵素液
20%含有YG培地とでの面積比は100:58であり、対照Y
G寒天培地と粗酵素液30%含有YG培地とでの面積比は
100:41であった(図4)。また、 Phoma wasabiae の場
合には、対照YG寒天培地と粗酵素液10%含有YG培地
とでの面積比は100:38であり、対照YG寒天培地と粗酵
素液20%含有YG培地とでの面積比は100:22であり、対
照YG寒天培地と粗酵素液30%含有YG培地とでの面積
比は100:12であった(図5)。
培地で Pyricularia oryzae 及び Phoma wasabiae の増
殖は阻害されており、これによりイネキチナーゼが Pyr
icularia oryzae 及び Phoma wasabiae に対して抗菌効
果を有することが示された。
カナーゼによる溶菌活性 3.9%ポテトデキストロース寒天培地で生育させたフザ
リウム菌(Fusarium oxysporum)の菌糸体を、0.4M MgSO4
を含むMacIlvaine緩衝液(pH4.0) 又は 0.4Mマンニトー
ルを含む5mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH8.0) 中で、植
物キチナーゼ(ヤマイモキチナーゼH)及び3%のβ-
1,3-グルカナーゼ(ザイモリエース(登録商標))と27
℃で反応させると、該病原菌の菌糸体からプロトプラス
トが遊離した(図6)。このことから、植物キチナーゼ
とβ-1,3-グルカナーゼとの併用により、病原菌の細胞
壁が溶解され、抗菌効果が発揮されることが分かった。
酵素活性を測定し、Yam H1のpH安定性を調べた。インキ
ュベートは、4℃で15時間行った。また、酵素活性の測
定は、GlcNAc5 を基質とし、pH4.0 で行った。この結
果を図7に示す。図7に示すように、Yam H1の安定pH域
は3〜12であると考えられる。
後、酵素活性を測定し、Yam H1の温度安定性を調べた。
インキュベートは、pH7.0 で15分行った。また、酵素活
性の測定は、グリコールキチンを基質とし、pH4.0 で行
った。この結果を図8に示す。図8に示すように、Yam
H1の安定温度域は0〜80℃であると考えられる。
菌活性 植物病原菌のFuzarium oxysporum、Fuzarium roseum 、
Pyrenophora gramineaの3種類の菌糸体0.25 mg につい
て、最終濃度17μM のヤマイモキチナーゼ及び最終濃度
3%ザイモリエース(登録商標)を添加し、pH8.0 、27
℃暗所で反応し、14時間後に反応液を顕微鏡で観察し
た。その状態を図9に示す。植物病原菌3種類いずれも
5ミクロン程度のプロトプラストが遊離し、溶菌活性が
認められた。
酸バッファー(pH 7.0)と一緒にホモゲナイズした。そ
れを9000gで20分間遠心分離し上澄液を集めた。その上
澄液にその1/20量の10%CTAB(hexadecyl trimethyl amm
onium bromide)を撹拌しつつ滴下した。混在する酸性
多糖類を沈澱物として除去した。さらに一晩放置後、こ
の溶液を9000gで20分間遠心分離して上澄液を集め、そ
れに60%飽和硫安溶液になるように硫安を加えよく撹拌
した。一晩後、これを9000gで20分間遠心分離して沈澱
物を集め、10mMリン酸バッファー(pH8.0)で透析し
た。この透析液を透析液と同じバッファーで平衡化した
DEAE-CellulofineA-500カラム(2.2x35 cm)にかけた。
同じバッファーでタンパク質がでなくなるまで溶出した
あとで、同じバッファーで0 Mから0.5 Mの塩化ナトリウ
ムのグラジエントによりキチナーゼを溶出した。伝導度
が5-10 mmhoの画分にキチナーゼHが溶出した。これを
さらに、同じDEAE-CellulofineA-500カラム(2.2x35 c
m)でリクロマトグラフィ−を行ったところ、2種類の
キチナーゼが分離したので、これらのキチナーゼをYam
H1及びYam H2と命名した。
−(pH 5.5)で透析し、クロマトフォーカッシング用の
カラムポリバッファ−エクスチェンジカラム(1x20 c
m)かけた。溶出にはポリバッファ−74を8倍希釈し、さ
らにpHを3.0に調製した液で行った。Yam H1はpH3.6に溶
出した(等電点3.6)。このYam H1画分を0.1M塩化ナト
リウムを含む50mMリン酸バファ−で透析後、同じバッフ
ァーで平衡化したCellulofine GC-200カラム(2x120 c
m)でゲルろ過を行った。分子量約50,000の所に溶出し
た。分子量についてはSDS-PAGEで確認したところ、24,5
00のタンパク質が2量体を形成していることが分った。
精製の終了はネイティブPAGEで1本バンドであることに
より確認した。
分アミノ酸配列の決定 ヤマイモの葉0.3gを-80℃で凍らせ、ドライアイスと共
に粉砕した。これに細胞及び細胞内容物を溶解させるた
め、Regent Bを1.7ml加え、よく混合した後、RNaseを40
0ng/mlになるように加え、37℃で30分間インキュベート
した。その後、不要なタンパク質を取り除くため、5M過
塩素酸ナトリウムを500μl加え、室温で20分間、よく攪
拌した。65℃のウォーターバスで数回転倒混和しなが
ら、20分間インキュベートした。インキュベート後、2.
9mlのクロロホルムを加え、室温で20分間攪拌し、その
後、遠心分離(室温、4000rpm、1分)を行った。得られ
た上清にNucleon Silica Suspensionを225μl加えた
後、再度遠心分離(室温、4000rpm、1分)を行った。上
清からDNAを含む水層だけを取りだし、これに冷100%エ
タノールを4.4ml加え、静かに攪拌した。遠心分離(4
℃、7000rpm、5分)を行い、沈殿を採取し、これに冷70
%エタノールを5.0ml加え、静かに攪拌した。沈殿を採取
し、75μlのTEに溶かし、ヤマイモ由来のゲノムDNAを得
た。
を鋳型として、PCRを行った。プライマーとしては、Yam
H1とキチナーゼとしての性質が類似するヤマイモムカ
ゴキチナーゼのN-末端側(WGQNGFE)、C-末端側(NNPPC
H)のアミノ酸配列をコードするオリゴヌクレオチドを
使用した。増幅条件は、94℃1分、(94℃30秒、60℃1
分、72℃2.5分)25サイクル、72℃7分とした。反応の結
果、約1100bpの断片が増幅された。上記断片の塩基配列
の一部を決定し、その配列からアミノ酸配列を推定した
(配列番号1及び配列番号2)。
ぼすことなく、植物病原菌を防除することができる。特
に、キチナーゼとβ-1,3-グルカナーゼとを有効成分と
して含有することを特徴とする植物病原菌防除剤の場合
には、キチナーゼとβ-1,3-グルカナーゼとの相乗効果
により増強された植物病原菌防除効果が発揮される。
度とキチナーゼ活性との関係を表す図である。
る。
真である。
真である。
菌活性を表す図である。
関係を示す図である。
の関係を示す図である。
写真である。
Claims (2)
- 【請求項1】 下記の性質を有するYam H1を有効成分と
して含有することを特徴とする植物病原菌防除剤。 (1)安定pH域が3〜12 (2)安定温度域が0〜80℃ (3)配列番号1記載のアミノ酸配列を含む - 【請求項2】 配列番号2記載のアミノ酸配列を含むYa
m H2を有効成分として含有することを特徴とする植物病
原菌防除剤。
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