JP3105107B2 - マイクロ波による水分測定装置 - Google Patents

マイクロ波による水分測定装置

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静致 岡村
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、マイクロ波を利用し
た水分測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】マイクロ波エネルギーが測定対象物中の
水分によって減衰され、その程度が水分の多少に応じて
異なることを利用する水分測定装置は種々のものが知ら
れている。このうち、透過型は測定対象物にマイクロ波
を貫通させ、貫通後のマイクロ波エネルギーの減衰を検
出し、これから測定対象物の水分を換算する。このため
には測定対象物を通過したマイクロ波だけを正確に受信
する必要がある。
【0003】しかし、従来の測定装置は、測定対象物の
大きさと発振ホーン、受信ホーンが作るマイクロ波ゾー
ンの大きさに無頓着で、測定対象物が前記のマイクロ波
ゾーンに対して小さいときに、測定対象物を通過してい
ないマイクロ波まで受信したり、測定対象物がある程度
大きくても十分に大きくないために測定対象物の周縁を
回折によって回り込んだマイクロ波をも受信してしま
い、それぞれ、測定結果の精度が低下してしまうことが
あった。
【0004】測定用のマイクロ波として波長の短いもの
を使用すると前記の点は多少解決されるが、測定物の大
きさに応じて使用するマイクロ波の波長を使い分けねば
ならず、面倒であると共に装置としてもコスト高とな
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】この発明は、測定対象
物が比較的小さな場合にも、正確な水分値の測定が可能
な、マイクロ波を利用した測定装置の提供を課題とす
る。
【0006】
【課題を解決するための手段】マイクロ波による水分測
定装置にマイクロ波遮蔽板を設け、これにより測定領域
を測定対象物の投影の周縁より内側の領域に限定する。
限定された領域の周縁は、測定対象物の周縁から少なく
ともマイクロ波の回折による回り込み量以上の距離と
【0007】
【作用】マイクロ波遮蔽体13は、測定領域を限定し、
測定物を貫通したマイクロ波のみの受信を可能とする。
【0008】
【実施例】図1は、マイクロ波を利用した水分測定装置
1の要部を概略で示しており、測定対象物2の移動経路
3を挟んで発振ホーン4と受信ホーン5が対向して配置
されている。発信ホーン4と受信ホーン5の中心軸を結
ぶ線(マイクロ波の発射方向)は、反射波による影響を
極力減少させるために移動経路3に対して傾斜してい
る。
【0009】発信ホーン4には、ガンダイオードを主体
とする9.4GHz の発振器6が取り付けられ、これは
送受信装置7を介して駆動される。受信ホーン5には、
検波器8が取り付けられ、受信したマイクロ波エネルギ
ーを電圧に変換して送受信装置7に伝達する。送受信装
置7は、また、マイクロ波を利用した水分測定装置1の
全体を制御する制御装置9の管理下に置かれている。移
動経路3は、この実施例においてポリエチレンベルトの
コンベア10で形成されており、測定対象物2を載置し
て安定に搬送することができる。
【0010】発振器6が駆動されると発信ホーン4と受
信ホーン5間にマイクロ波ゾーン11が形成され、この
ゾーン11と移動経路3の交差する領域が測定領域12
(75mm×95mm)となる。なお、マイクロ波の発
射方向は、前記のとおり移動経路3に対して傾斜されて
おり、コンベア10の表面から反射したマイクロ波が反
射によって発信ホーン4に到達する率は低い。
【0011】そして、移動経路3の測定領域12の部分
には、コンベア10の裏面にぴったりと接してマイクロ
波遮蔽板13が配置される。マイクロ波遮蔽板13は、
表面にマイクロ波吸収体14を貼着した鋼板15で、窓
16(40mm×40mm)を備える。窓16はその開
口面積の全体が測定対象物2の平面投影の周縁より内側
に位置することができる大きさである。すなわち、マイ
クロ波遮蔽板13は、測定領域12を測定対象物2の平
面投影の周縁より内側の領域に限定することができる
(図2)。マイクロ波吸収体14はゴム系のエコソーブ
(商品名)である。
【0012】マイクロ波を利用した水分測定装置1が駆
動されると、制御装置9の制御下にコンベア10が移動
されて停止されると共に、発振器6で励起されたマイク
ロ波が発信ホーン4から受信ホーン5に向けて連続的に
発射され、マイクロ波ゾーン11が形成される。マイク
ロ波は、ポリエチレンベルトのコンベア10をほとんど
減衰されることなく通過するが、マイクロ波遮蔽板13
の鋼板15をまったく通過することができないので、受
信ホーン5には前記遮蔽板13の窓16の大きさに限定
されたマイクロ波ゾーン11のマイクロ波が到達する。
【0013】マイクロ波ゾーン11は水分測定装置1が
駆動されている間、常時形成されており、送受信器7の
受信側には検波器8からの出力(e)が常時伝達されて
いる。制御装置9は予め入力されているプログラムにし
たがって、前記の出力を適宜に読み出し、ついで、記憶
している換算式にしたがって水分値を算出する。また、
設定された所定の時間間隔で初期化を行う。初期化は、
測定対象物2が測定領域12に存在しない時に受信マイ
クロ波エネルギーを読み出してその大きさを基準値
(E)として設定あるいは再設定する作動である。水分
値はこのようにして確認および修正される基準値(E=
1.6mW程度)をもとに受信マイクロ波エネルギーの
大きさを比較し、その減衰率から算出される。
【0014】すなわち、測定対象物2の水分は、マイク
ロ波遮蔽板13の窓16を通過してきたマイクロ波のみ
に関してそのエネルギー減衰率が検出され、これをもと
に算出される。したがって、この減衰率に測定対象物2
を貫通していないマイクロ波が関与することはなく水分
値の精度が向上する。
【0015】また、マイクロ波遮蔽板13の表面(発信
ホーン側の面)に貼着されたマイクロ波吸収体14は、
遮蔽体13の窓16以外の個所に衝突するマイクロ波を
吸収し、マイクロ波が反射を繰り返して受信ホーン5に
到達するのを防止する。
【0016】図4は、マイクロ波遮蔽体13による効果
を確認するために行った測定実験である。測定対象物2
として半乾燥状態の油揚げを選択し、マイクロ波遮蔽体
13の有無だけで他の条件をまったく同じにして測定
1、測定2を行い、得た結果を示している。測定1は、
マイクロ波遮蔽体13を用いなかった場合、測定2はこ
れを用いた場合である。測定1の直線Aおよび測定2の
直線Bは、プロットで示したデータを最小2乗法で処理
して得たそれぞれの回帰線である。
【0017】測定時の条件は次の通りである。 測定領域の大きさ 75×95 (mm) 窓の大きさ 40×40 (mm) マイクロ波 9.4GHz 油揚げの大きさ 73×93×5〜7 (mm) 測定した枚数 28枚(試料No1〜No28) 測定環境……平均的に湿度65%、室温18C°である
通常の室内環境。 測定手順……(1) 試料No1〜No28について、
マイクロ波遮蔽体13を使用しないでそれぞれの受信マ
イクロ波エネルギーを電力e0 (mW)として検出す
る。 (2) マイクロ波遮蔽体13を使用しないで基準値E
0 (mW)を得る。 (3) マイクロ波電力比E0 /e0 をデシベル(d
B)として得る。 (4) 試料No1〜No28について、マイクロ波遮
蔽体13を使用してそれぞれの受信マイクロ波エネルギ
ーを電力e1 (mW)として検出する。 (5) マイクロ波遮蔽体13を使用して基準値E1 を
得る。 (6) マイクロ波電力比E1 /e1 をデシベル(d
B)として表示。 (7) それぞれの試料の含水率を絶乾法〔100×
(試料重量−乾物重量)/乾物重量〕で得て、これらの
値を前記で得たデータに対応させる。
【0018】図4について考察すると、直線Aが直線B
より低く、かつ、直線の傾斜が緩い。これは、マイクロ
波遮蔽板13(窓16)を使用しないと、試料を貫通し
ていないマイクロ波(外乱波)まで受信され、基準値E
に対し測定対象物2を貫通して受信されるマイクロ波の
比率が小さくなり、このために前記のマイクロ波電力比
が低くされているためと考えられる。したがって、逆
に、直線Bが直線Aの上方に位置し、どの試料に関して
もマイクロ波遮蔽体13を用いた場合の方がマイクロ波
電力比が大きいことは、測定対象物2を貫通した、すな
わち、水分測定に有効なマイクロ波のみが検出されてい
ることを意味するので、この検出値をもとに算出されて
いる水分値の精度が高くなる。結局、測定対象物2が比
較的小さい場合に測定領域12を測定対象物2の平面投
影の周縁より内側の領域(窓16)に限定するマイクロ
波遮蔽体13を用いることは有効であり、水分測定の精
度が高くなる。油揚げは測定対象物2の一例であって、
他の測定対象物2においても同様の結果を得られる。
【0019】なお、マイクロ波は測定対象物2の縁で回
折するので、本来ならばマイクロ波遮蔽板13で阻止さ
れる筈のマイクロ波の一部が図3(イ)のように、窓1
6に入り込むことがある。これを防止するために、窓16
は、これにより限定される測定領域16の周縁が測定対
象物2の周縁から少なくともマイクロ波の回折による周
り込み量a以上の距離となるように設けると測定値の精
度が向上する(図3、ロ この場合、回折に関するマイ
クロ波の振る舞いは複雑で、前記の回り込み量aを算出
したり測定することは困難なので、実際上、9.4GHz
のマイクロ波を使用するとき、測定対象物2の厚さの2
倍程度を前記の量a以上の距離として採用している。
【0020】
【0021】以上は、実施例であり、本発明は図示した
具体的な構成に限定されない。例えば、移動経路3は測
定対象物2を静置する単なる台であっても良い。鋼板
5の下面側にもマイクロ波吸収体を添着して受信ホーン
5への反射を防止することもある。また、測定対象物2
の大きさに応じて前記の窓16の大きさを調整できるよ
うに、マイクロ波遮蔽板13にガイドと送りねじ、ある
いは長孔と固定用ボルト・ナットなどを用いた調整機構
を設けても良い。
【0022】
【発明の効果】測定対象物の大きさが、水分測定装置が
備えた本来の測定領域より小さいなど、測定対象物が比
較的小さい時にも、マイクロ波を利用して精度高く水分
値を測定することができる。測定対象物の大小にかかわ
らず、汎用性の高いマイクロ波(例えば、9.4GHz
)を利用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】測定装置を概略で示す機構図。
【図2】測定領域の平面図(第1実施例)。
【図3】(イ)(ロ)共に、模式的に示した測定領域の
断面図。
【図4】窓の有無を比較するためのグラフ。
【符号の説明】
1 マイクロ波を利用した水分測定装置 2 測定対象物 3 移動経路 4 発信ホーン 5 受信ホーン 6 発信器 7 送受信装置 8 検波器 9 制御装置 10 コンベア 11 マイクロ波ゾーン 12 測定領域 13 マイクロ波遮蔽板 14 マイクロ波吸収体 15 鋼板 16 窓
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 杉山 晃広 静岡県榛原郡金谷町金谷3482−91 (56)参考文献 特公 昭61−61342(JP,B2)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 測定対象物の移動経路を挟んで発信ホー
    ンと受信ホーンを対向して配置し、発信ホーンと受信ホ
    ーンが形成するマイクロ波ゾーンが移動経路と交差する
    領域を測定領域とし、測定領域よりも小さな測定対象物
    に合わせて、測定領域を測定対象物の平面投影の周縁よ
    少なくともマイクロ波の回折による回り込み量以上の
    距離だけ内側の領域に限定するマイクロ波遮蔽板を測定
    領域に備えていることを特徴としたマイクロ波による水
    分測定装置。
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