JP3034684B2 - 推進工法用泥漿材 - Google Patents

推進工法用泥漿材

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は推進工法で使用する泥漿
材に関するもので、更に詳しく述べるとディスクカッタ
ーで切羽を切削しながら、ディスクカッターを取り付け
た先導管を推進する工法において、先導管の先端から切
羽に向けて吐出させて、土砂の切削時切羽の崩壊を防ぎ
先導管を円滑に推進するために加える泥漿材である。
【0002】
【従来の技術】従来から推進工法用の泥漿材として、水
とベントナイトを主要成分とする粘稠な懸濁液が使用さ
れている。しかしこの泥漿材は、軟かいゲル状であるた
め、地山と推進管の間に注入されても、推進作業の際、
地山と推進管とが相対的に移動したとき、地山の土砂が
泥漿材中に混入し易く、このため泥漿材の機能が急速に
低下する場合が多い。または地山が砂層、砂礫層等から
なり、含水率が低い場合には、泥漿材が地山に吸収され
摩擦防止効果が薄れたり、或いは泥漿材を含水率が高い
土砂層や地下水が流れている土砂層に注入した場合に
は、泥漿材がすぐ希釈されたり、または流失してその効
果が失われる欠点があった。
【0003】また、特開昭54-79908号公報及び特開昭55
-75488号公報には、推進工法用の泥漿剤として高吸水性
ヒドロゲルの水分散液と鉱物質、有機質糊料、界面活性
剤および油類の混合物が開示されている。しかし、ここ
に開示されている高吸水性ヒドロゲルは不定形で水を加
えて膨潤させると、圧力に対する抵抗性が低く、前述の
水とベントナイトを主要構成材とする泥漿材と同様な欠
点があって、泥漿材としては尚不充分である。
【0004】更に、特開昭58-27774号公報にはこれらの
欠点を解消するため、球状高吸水性樹脂を泥漿材の一成
分として用いる方法が提案されている。しかし、水を加
えて懸濁液を調製する際、しばしばママコ状になって、
使用不能になる事故が発生することが指摘されていた。
【0005】推進工法の泥漿材として従来、高吸水性樹
脂の水膨潤液が用いられているが、この泥漿材はすでに
吸水しているため帯水砂礫層に遭遇した場合、止水性が
十分でなく切羽の崩壊が起こったり、また粘性が無いた
め塑性流動性を有する掘削土が得られず、切削した土砂
の搬出が困難になる場合があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】下水道工事等に多く使
用される小口径配管の敷設工事においては、建設公害が
比較的少なくまた建設費の低減および工期短縮等の点で
優れている推進工法が多く使われている。推進工法はデ
ィスクカッターを有する先導管を切羽に向けて推進する
工法であるから、切羽を崩壊させずに、スムーズに掘削
推進する必要があり、このため切削した土砂の止水性に
優れ、且つ切削土に高い塑性流動性を付与する機能を有
する泥漿材が要求されていた。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は泥漿材に切削
した土砂の止水性を向上させ、更に高い塑性流動性を与
える機能を付与するため、その組成について種々検討し
た。その結果、塑性流動性付与材としてポリアクリル酸
ソーダ、ポリアクリルアミドおよびカルボキシメチルセ
ルローズなどの水溶性高分子の溶液に、含水量が多い土
砂の止水効果が高いイソブチレン−無水マレイン酸共重
合体とポリエチレンイミンとのイオンコンプレックスか
らなる球状樹脂を、添加することにより高い塑性流動性
及び止水性を付与する機能を兼ね備えた泥漿材が得られ
ることを見出し、これに基づいて本発明に到達した。
【0008】すなわち、ポリアクリル酸ソーダ、ポリア
クリルアミド及びカルボキシメチルセルローズからなる
群より選ばれた、1種または2種以上の化合物の水溶液
に、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体とポリエチ
レンイミンとのイオンコンプレックスからなる球状樹脂
分散せしめてなる推進工法用泥漿材である。
【0009】以下本発明について詳しく説明する。
【0010】本発明の泥漿材にはポリアクリル酸ソー
ダ、ポリアクリルアミド及びカルボキシメチルセルロー
ズの中、少なくとも1種の化合物の水溶液を使用する必
要がある。これらの化合物は何れも水溶性で、水に溶解
した時粘稠な溶液になり、主として増粘剤として作用す
るもので、土砂を切削する際カッターに添加することに
より、土砂の切削を容易にする作用を有する。また増粘
作用により泥漿材に潤滑性を付与してディスクカッター
の推進抵抗を低下させる作用と、泥漿材が粘稠になるた
め地山の土砂中へのに混入を防止する作用があり、また
は地山が水分を殆ど含まない砂層、砂礫層等の場合に
は、泥漿材が地山に吸収されることを防止する作用もあ
る。
【0011】これらの化合物は本発明の泥漿材におい
て、単独で使用出来ることは勿論、2種以上の化合物を
混合使用してもよい。これらの化合物は場合によっては
増量剤として使用され場合がある。
【0012】本発明の泥漿材は更に、イソブチレン−無
水マレイン酸共重合体とポリエチレンイミンとのイオン
コンプレックスからなる球状樹脂をポリアクリル酸ソー
ダ、ポリアクリルアミド及びカルボキシメチルセルロー
ズの中、少なくとも1種の化合物の水溶液に分散・懸濁
させる必要がある。
【0013】本発明に使用するイソブチレン−無水マレ
イン酸共重合体とポリエチレンイミンとのイオンコンプ
レックスからなる球状樹脂は、水と接触させた場合水に
は溶解せず、膨潤してゲル状になって極めて多量の水を
保持する性質を持ち、乾燥状態の 100〜1,000 倍の水を
保持する能力がある樹脂である。従来から典型的な吸水
性物質として知られているスポンジ、パルプ等はその乾
燥重量の数倍〜10数倍程度迄しか吸水せず、且つ絞ると
簡単に水を分離する性質がある。本発明に使用するイソ
ブチレン−無水マレイン酸共重合体とポリエチレンイミ
ンとのイオンコンプレックスからなる球状樹脂は、これ
等の物質に比較して著しく多量の水を吸収し且つ絞って
も極く一部の水を分離するのみである。これはスポンジ
等が毛細管現象により吸水するのに対し、高吸水性樹脂
は水が浸透圧によりゲル内部に浸透し、吸収された水分
が膨潤したゲルの状態で保持されるためと考えられる。
【0014】本発明に使用するイソブチレン−無水マレ
イン酸共重合体とポリエチレンイミンとのイオンコンプ
レックスからなる球状樹脂は、例えば、カセイソーダ水
溶液にイソブチレン−無水マレイン酸共重合体を加えて
加熱攪拌して均一な水溶液を調製した。この水溶液に架
橋剤としポリエチレンイミンを添加して充分混合したも
のを、少量の油溶性界面活性剤を溶解した流動パラフィ
ンに投入し、攪拌しながら 100℃以下に加熱して水分を
充分蒸発させた。次いで固液分離後ヘキサンで洗浄し乾
燥することによって得られた、球状の高吸水性樹脂であ
る。
【0015】また、樹脂の形状は球形である必要があ
、性能的にも取扱い上も球状が好ましい。また吸水倍
率は或る程度以上高いものが好ましいが、高過ぎると生
成したゲルの機械的性質が著しく低下するため、通常の
使用法では200 〜1,000 倍が好ましく、また粒度も広範
囲で使用可能であるが、18〜100 メッシュが実用上好ま
しい。
【0016】本発明の泥漿材を調製するには、水溶性高
分子化合物であるポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリル
アミドおよびカルボキシメチルセルローズの中、少なく
とも1種の成分を水に溶解して粘稠な溶液を調製した
後、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体とポリエチ
レンイミンとのイオンコンプレックスからなる、球状樹
をその溶液中に分散・懸濁させる必要がある。この様
にしてこの球状樹脂をこれらの水溶性高分子化合物の粘
稠な溶液に分散させた場合には、イソブチレン−無水マ
レイン酸共重合体とポリエチレンイミンとのイオンコン
プレックスからなる、球状樹脂の吸水量が大幅に抑制さ
れる。そのため、泥漿材が含水率の高い土砂層や地下水
が流れている砂礫層の切羽に注入され、多量の地下水に
接触した時、尚相当大きな吸水能力を保持している。こ
のため、充分な止水効果を示すものと考えられる。
【0017】一方、ポリアクリル酸ソーダ等の水溶性高
分子と、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体とポリ
エチレンイミンとのイオンコンプレックスからなる球状
樹脂を泥漿材調製槽中に投入して同時に水に溶解した場
合には、この球状樹脂が泥漿材を調製する過程でほぼ飽
和吸水量近くまで吸水する。従って、切羽に注入されて
地下水に接触した時には、吸水能力の余裕が乏しくなっ
ているために、充分な止水効果が得られないと考えられ
る。
【0018】
【実施例】以下実施例を挙げて本発明を更に具体的に説
明する。
【0019】(実施例1) 濃度14%のカセイソーダ水溶液233 部にイソブチレン−
無水マレイン酸共重合体((株)クラレ製イソバン−10)
100 部を加えて加熱攪拌し、中和度0.6 の均一な水溶
液を調製した。次いでこの水溶液に架橋剤として分子量
が300 のポリエチレンイミン(日本触媒化学工業(株)
製エポミンP-003 )0.3 部を添加して充分混合したもの
を、HLB が1.8 の油溶性界面活性剤(花王石鹸(株)製
レオドールSP-030)1部を溶解した流動パラフィン333
部に投入し、攪拌しながら温度95℃に5時間保ち、水を
充分蒸発させた。次いで固液分離後ヘキサンで洗浄し乾
燥することにより、粒度が32〜100 メッシュで吸水量が
350 のイソブチレン−無水マレイン酸共重合体とポリエ
チレンイミンとのイオンコンプレックスからなる球状樹
を得た。次いで水400ml にポリアクリル酸ソーダ0.6
〜1.8gを添加し10分間攪拌して溶解後球状脂脂0.5g
を添加しさらに10分間攪拌混合して、金網で濾別し、そ
の濾別液量を測定し、数式1で吸水量を求めたところ表
1に示した結果が得られた。
【0020】
【数1】
【0021】
【表1】
【0022】(比較例1) 水400ml にポリアクリル酸ソーダ0.6 〜1.8gと実施例1
で得られたイソブチレン−無水マレイン酸共重合体とポ
リエチレンイミンとのイオンコンプレックスからなる球
状樹脂0.5gを同時に添加し10分間攪拌後、実施例1と同
様にして吸水量を求めたところ表1に示す結果が得られ
た。実施例1に比較して吸水量が大きいことがわかる。
このことは余力の吸水能に乏しいことを示している。
【0023】
【発明の効果】本発明の泥漿材は推進工法に使用される
もので、ディスクカッターで切羽を切削しながら、ディ
スクカッターを有する先導管を推進する工法で、切削時
に切羽の崩壊を防ぎ先導管を円滑に推進するために加え
る泥漿材である。この際本発明の泥漿材は切削した土砂
の止水性に優れ、且つ高い塑性流動性を付与する機能を
有するものである。
【0024】特に下水道工事等の小口径配管の敷設工事
に使用した場合に効果がある。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルア
    ミド及びカルボキシメチルセルローズからなる群より選
    ばれた、1種または2種以上の化合物の水溶液に、イソ
    ブチレン−無水マレイン酸共重合体とポリエチレンイミ
    ンとのイオンコンプレックスからなる球状樹脂を分散せ
    しめてなる推進工法用泥漿材。
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