JP2821580B2 - ニューラルネット応用運転支援システム - Google Patents

ニューラルネット応用運転支援システム

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JP2821580B2 JP2256094A JP25609490A JP2821580B2 JP 2821580 B2 JP2821580 B2 JP 2821580B2 JP 2256094 A JP2256094 A JP 2256094A JP 25609490 A JP25609490 A JP 25609490A JP 2821580 B2 JP2821580 B2 JP 2821580B2
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Description

【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕 本発明は、ニューラルネットを応用した運転支援シス
テムに係り、特に、定量的なガイダンスを行い、さらに
そのガイダンスの判断根拠を提示するような支援能力の
高い運転支援システムに関する。 〔従来の技術〕 上水処理プロセス,下水処理プロセス等の運転管理に
は、オペレータの経験的知識を抽出し、推論機構ととも
に用いる知識工学の手法が適用されている(例えば、特
開昭63−240601号,特開昭61−59502号等)。 知識工学による支援システムは、推論過程が論理的に
明確であり、推論によるガイダンスの根拠が提示できる
ので、オペレータに対して説得力を持つ反面、そのよう
な経験的知識の獲得とメンテナンスとが煩雑である。 これらの問題への解決策として、神経回路網(ニュー
ラルネット)モデルによる支援技術が導入されている
(例えば、特開平1−224804号等)。 このモデルでは、運転履歴データ中に埋もれたオペレ
ータの経験や勘に相当する知識を学習し、学習後のモデ
ルでの想起により、定量的なガイダンスのみを提示す
る。これにより、運転履歴データがあれば、煩雑な知識
獲得の工程なしに、運転支援を実現できる。 〔発明が解決しようとする課題〕 このような従来の神経回路網モデルによる支援システ
ムには、次のような課題がある。 第一に、神経回路網モデルによる学習と想起は、運転
履歴データやモデル内のパラメータ群等の多くの数値デ
ータのみを介してブラックボックス的に行われるため、
モデル内の学習された知識や想起の根拠がオペレータか
ら見て分からない。そのため、想起による定量的ガイダ
ンスの説得力が十分でない。 第二に、階層型の神経回路網モデルで用いられている
逆誤差伝搬学習法では、モデルの内部結合状態を示すパ
ラメータ群(重み係数行列)が、運転履歴データに含ま
れていない知識(入出力間の因果関係)や想起上重要で
ない知識を含むような値に収束する場合が存在する。こ
のため、想起の根拠となる知識が正しくなく、想起が十
分な精度で行われない場合がある。 本発明の目的は、想起による定量的なガイダンスだけ
でなく、想起根拠も示して説得力ある運転支援システム
を提供することである。 〔課題を解決するための手段〕 本発明は、上記目的を達成するために、内部結合状態
を解析可能な階層型ニューラルネットであって、プロセ
スを管理するオペレータに対して運転支援を行うニュー
ラルネット応用運転支援システムにおいて、階層型ニュ
ーラルネットモデルの入力層内で着目したニューロンか
ら中間層のニューロンを経て出力層内で着目したニュー
ロンに到る経路の結合強度の積を中間層ニューロンの異
なる全経路について加算した値に基づいて入力層ニュー
ロンと出力層ニューロンとの因果関係を評価する内部結
合解析手段と、ニューラルネットの想起による定量的ガ
イダンスを表示するとともに内部結合解析手段の解析結
果を想起根拠として表示する手段とを備えたニューラル
ネット応用運転支援システムを提案する。 本発明は、また、内部結合状態を解析可能な階層型ニ
ューラルネットであって、プロセスを管理するオペレー
タに対して運転支援を行うニューラルネット応用運転支
援システムにおいて、階層型ニューラルネットモデルの
入力層内で着目したニューロンから中間層のニューロン
を経て出力層内で着目したニューロンに到る経路の結合
強度の積を中間層ニューロンの異なる全経路について加
算した値に基づいて入力層ニューロンと出力層ニューロ
ンとの因果関係を評価する内部結合解析手段と、ニュー
ラルネット内の因果関係のうちで不要な関係を抑制し必
要な因果関係を選択的に残す手段と、ニューラルネット
の想起による定量的ガイダンスを表示するとともに内部
結合解析手段の解析結果を想起根拠として表示する手段
とを備えたニューラルネット応用運転支援システムを提
案する。 本発明は、さらに、内部結合状態を解析可能な階層型
ニューラルネットであって、プロセスを管理するオペレ
ータに対して運転支援を行うニューラルネット応用運転
支援システムにおいて、階層型ニューラルネットモデル
の入力層内で着目したニューロンから中間層のニューロ
ンを経て出力層内で着目したニューロンに到る経路の結
合強度の積を中間層ニューロンの異なる全経路について
加算した値に基づいて入力層ニューロンと出力層ニュー
ロンとの因果関係を評価する内部結合解析手段と、ニュ
ーラルネットの想起誤差が小さくなるように、積和値の
自乗または着目するニューロンが異なるときの積和値の
自乗和を小さくする手段と、ニューラルネットの想起に
よる定量的ガイダンスを表示するとともに内部結合解析
手段の解析結果を想起根拠として表示する手段とを備え
たニューラルネット応用運転支援システムを提案する。 具体的応用例としては、浄水処理プロセスを管理する
オペレータに対して運転支援を行うニューラルネット応
用運転支援システムにおいて、階層型ニューラルネット
モデルの入力層のニューロンに浄水処理プロセスから得
られる水質データおよび/または画像計測データを入力
し、出力層のニューロンに薬品注入率を出力させるモデ
ルを用いることが可能である。 〔作用〕 本発明は、ニューラルネットの内部結合状態を解析し
て、入出力間の因果関係に関する知識を抽出し、それを
想起の根拠として、定量的なガイダンスとともにオペレ
ータに提示するものである。 一方、学習は、ニューラルネットの内部結合状態が必
要最小限の因果関係しか持たないような方法によって、
運転履歴データ内に潜在している因果関係を正確に学習
するものである。この学習方法によるニューラルネット
で、定量的ガイダンスを想起し、内部結合状態の解析を
行う。 したがって、本発明においては、定量的ガイダンスだ
けでなく、そのガイダンスを導くに至った判断根拠を提
示することにより、オペレータに対して説得力のある支
援を実行できる。 また、必要最小限の因果関係となるような学習方法に
より、想起が正確になり、内部結合状態の解析から得ら
れる想起根拠(知識)も正確になるので、信頼性の高い
支援を実行できる。 〔実施例〕 本発明は、オペレータによる判断を必要とするプロセ
スの運転管理を知能的に支援するシステムである。した
がって、本発明は、オペレータが介在する各種のプロセ
ス、例えば、浄水処理プロセス,下水処理プロセス,化
学反応プロセス,バイオプロセス,原子力発電プロセ
ス,株価・為替などの金融プロセスなどに適用できる。 以下、図面を参照して、本発明の実施例を説明する。 第1図は、本発明によるニューラルネット応用運転支
援システムを浄水処理プロセスの運転管理支援システム
に適用した一実施例の全体構成を示すブロック図であ
る。 まず、浄水処理プロセスの手順を簡単に説明する。第
1図において、河川や湖沼からの原水を着水井5に導
く。着水井5の水を導入する急速混和池10においては、
凝集剤タンク11の凝集剤を凝集剤注入ポンプ12により注
入し、撹拌翼13を撹拌機14により駆動して撹拌する。こ
こでは、フロック形成を促進するアルカリ剤を注入する
こともある。フロック形成池15には撹拌パドル16を配置
し緩やかに回転させる。フロックは沈殿池20で沈降さ
せ、その上澄み液をろ過池25でろ過する。 次に、計測系統について説明する。原水の水質を計測
するために、着水井5に計測器5Mを設置する。計測項目
は、水温,濁度,アルカリ度,電気伝導度,pH,残留塩素
濃度,塩素要求量,水量,水位などである。 フロック形成池15には計測器15Mを設置してある。計
測器15Mは、計測器9Mで計測する項目に加えて、水中カ
メラなどの撮像手段60を含む。沈殿池20には、計測器20
Mを設置してある。急速混和池10にも計測器15Mと同様の
計測器10Mを設置し、ろ過池25にも計測器25Mを設置する
こともある。これらの計測項目は、計測器5M,15Mの計測
項目と同様である。 以上の計測データは、支援システム100内の運転履歴
データベース80に取り込まれる。また、撮像手段60で得
られたデータは、画像処理手段70で処理された後、運転
履歴データベース80に取り込まれる。 次に、運転管理支援を行う知能的運転管理支援システ
ム(支援システム)100を説明する。 支援システム100は、以下のサブシステムからなる。 (1)知識ベース応用運転支援システム(知識システ
ム)110 (2)理論モデルシミュレーションシステム120 (3)ニューラルネット応用運転支援システム(ニュー
ロシステム)150 (4)画像処理手段70 (5)運転履歴データベース80 本発明の特徴であるニューロシステム150は、学習手
段160と、内部結合状態解析手段200と、定量的ガイダン
スおよび想起根拠表示手段(ガイダンス表示手段)250
と、ニューラルネットベース300とからなる。このう
ち、学習手段160は、因果選択・抑制手段180を持つこと
を特徴とする。 ニューロシステム150は、まず、過去の履歴データの
うち有用と思われるデータを運転履歴データベース80か
ら教師データとして選択する。この教師データを学習手
段160においてニューラルネットにより学習する。この
学習の際に、不要な因果関係を抑制し、必要な因果関係
を選択的に残すために、因果選択・抑制手段180を用い
る。これについては後述する。 学習後のニューラルネットは、2つの役割を持つ。1
つの役割は、想起によって運転管理に必要な定量的ガイ
ダンスを求め、結果を表示手段250に送ることである。
2つ目の役割は、学習後の重み係数行列を内部結合状態
解析手段200に送り、重み係数行列に内包される知識を
抽出することである。ここで抽出された知識は、表示手
段250に送られるとともに、知識システム110に送られ、
推論用のルールとされる。知識の抽出方法については後
述する。 表示手段250では、定量的ガイダンスと抽出知識とをC
RT90の画面上に表示する。これにより、オペレータはニ
ューラルネットからのガイダンスがいかにして導かれた
かの根拠を知ることができる。 次に、支援システム100への各種データの入出力につ
いて説明する。 まず、入力について説明する。計測器5M,10M,20M,25
M、および撮像手段60では、所定時間間隔でデータをサ
ンプリングする。サンプリングされたデータは、運転履
歴データベース80に送られて保存される。また、計測器
によるオンライン計測ができない手分析データや目視観
察データは、キーボード95から、CRT90の画面上のメッ
セージを参照しながら、対話的に入力される。 次に、出力について説明する。支援システム100は、
入力されたデータに基づいてガイダンスする内容を決定
する。支援システム100内の知識システム110およびニュ
ーロシステム150から得られたガイダンスは、CRT90の画
面を通してオペレータに表示される。なお、このCRT90
は、必要に応じて撮像手段60からの映像を映すモニタも
兼ねることができる。 オペレータはガイダンスを参考に、操作量の必要と認
められる変更などをキーボード95を通して、制御手段50
に入力する。制御手段50は、入力データに従ってプロセ
スの各機器を制御する。なお、支援システム100からの
ガイダンスが直接に制御手段50に入力されることもあ
る。 以上が、本実施例の全体の構成と動作の概要である。 次に、ニューロシステム150内で行われる神経回路網
(ニューラルネット)モデルの学習および知識抽出方法
について順に説明する。 モデルの基本となっているのは、脳を構成する神経細
胞(ニューロン)である。このニューロンの生理学的な
知見を反映したニューロン単体の数理モデルが広く利用
されている。 第2図は、ニューロンの基本動作を示す。図に示すモ
デルは式(1)〜(3)のように多入力一出力系のしき
い値特性を持つ関数で表現される。 y21=f(u2j) …(1) f(u)=1/{1+exp(−u+θ)} …(3) ただし、y21 :ニューロン2jの出力信号 u2j :ニューロン2jへの入力の積和 w2j,1j:ニューロン1j,2j間の重み係数 x1i :ニューロン1jからの入力信号 f :シグモイド関数 θ:しきい値 つまり、他のニューロンから着目したニューロンへの
信号は、両者間の結合強度(重み係数,シプナス強度)
に応じてw2j,1jが乗じられる。これらの重み付き入力
信号w2j,1j・x1iの総和u2jがあるしきい値θを越えた
ときに、そのニューロンは興奮して出力信号y21を出
す。このときのしきい値特性を決定するのが式(3)の
シグモイド関数である。 ニューラルネットモデルは、上述のニューロンを基本
構成要素とするネットワーク型のモデルである。モデル
は複数のものが提案されているが、本発明ではニューロ
ンを階層的に結合させた階層型モデル(別名、Rumelhar
t型モデル)を使用する。このモデルは第3図に示すよ
うに、入力層と中間層と出力層とからなる3層構造であ
る。 ニューラルネットモデルの学習は、想起誤差が減少す
るように重み係数行列を修正することにより行う。学習
アルゴリズムとして最も多用される従来型BP法(アルゴ
リズムの詳細は、Rumel−hart,D.E.,etc(1986)Learni
ng Representations by Backpropagating Errors,Natur
e.vol.323などを参照されたい)は、想起誤差の自乗和
を評価関数と定義し、その評価関数が減少するように重
み係数行列を修正する。ニューロシステム150は、想起
によるガイダンスと想起根拠の提示を目的とするので、
学習に要求される条件は、第一に想起誤差を小さくで
き、第二に入出力データ間の因果関係を正しく抽出でき
るように重み係数行列を決めることである。しかし、従
来型BP法の評価関数は、次のような問題を含んでいる。 重み係数行列の修正は誤差のみが反映されるため、実
際には出力に影響しない不要な因果関係が内部に残って
しまうことがある。特に、独立でないデータ項目が含ま
れている場合には、この可能性が高くなる。 想起誤差の自乗和に対する最急降下法(初期値から、
評価値が減少する方向にのみ修正される方法)であり、
重み係数行列の初期値に依存して収束先が変化する。こ
のため、初期値によって異なる極小値に収束し、十分な
想起精度が得られない場合がある。 本実施例では、上記の従来型BP法の課題を克服するた
めに、次のような仮説に基づいてネット内の因果関係の
総和量を抑制する評価項を加えた学習法を導入した。 つまり次のような発想に基づく学習法である。 入出力データ間の因果関係は、必要最小限の因果関係
で表現する方がより正確に表現できる。しかも、正確な
因果関係を内包するネットは、想起誤差が小さい。 この仮説に基づく学習法により、 ・不要な因果関係を抑制し、必要な因果関係を選択的に
残す学習(課題) ・誤差に対する最急降下法を避け、初期値依存性の小さ
い学習(課題) を行うことができる。この新しい評価項を加えたBP法を
「因果選択型BP法」と呼ぶ。計算のアルゴリズムを以下
に示す。
【出力層と中間層間の重み係数w3k,2j】 Δw3k,2j∝−(∂EEC,3k/∂w3k,2j) …(4) EEC,3k≡EEC,3k+EC,3k …(5) EE,3k=0.5(y3kt−y3k …(6)
【中間層と入力層間の重み係数w2j,1j EEC,3k≡EE,3k+EC,3k …(9) EE,3k=0.5(y3kt−y3k …(10) EC,3k=0.5C3k,2j …(11) ただし、 ・C3k,1j :出力層ニューロン3Kと入力層 ニューロン1iの因果性尺度 ・EC,3k :因果抑制評価関数(出力層) ・EC,3:因果抑制評価関数(中間層) ・EE,3k :誤差評価関数 ・EEC,3k :因果選択型BP法の評価関数 ・EC,3k:因果選択型BP法の評価関数 ・w3k,2j :出力層ニューロン3Kと入力層 ニューロン2j間の重み係数 ・Δw3k,2j :重み係数w3k,2j修正量 ・w2j,1j :中間層ニューロン2jと入力層 ニューロン1i間の重み係数 ・Δw2j,1j :重み係数w2j,1j修正量 ・x1i :入力層ニューロン1jへの入力 ・y2j :中間層ニューロン2jの出力 ・y3k :出力層ニューロン3kの出力 ・y3kt :出力層ニューロン3kに対する教師信号 ・ε :因果抑制係数 式(4)と(8)は重み係数を評価関数に対する最急
降下法で行うことを意味する。式(6)と(10)は従来
型BP法でも用いられている誤差の評価項で、公知のもの
である。 一方、式(7)と(11)は本発明で新たに導入したも
のであり、ニューラルネットに内包される因果関係の総
和を示す評価項である。ここでC3k,1jは入力層ニュー
ロン1iと出力層ニューロン3k間の因果関係の強さを示す
値であり、「因果性尺度」と定義する。つまり、この因
果性尺度の自乗和を因果関係の総和とする。因果性尺度
の詳細については、後の知識抽出方法のところで詳述す
る。 この項の導入により、ネット内の因果関係を減少させ
るように学習が行われる。因果抑制係数εを調整すれ
ば、因果抑制の度合いを変えることが可能である。浄水
プロセスの凝集剤注入データの学習の場合では、ε=1
×10-5〜2×10-5で最も想起精度が良くなる。 次に、この因果選択型BP法を使った学習手段160の構
成を具体的に説明する。第4図は、学習手段160の工程
の構成を示すブロック図である。 まず、学習パターン選択工程165において、学習に用
いる学習パターンを運転履歴データベース80から選択す
る。この工程では、プロセスの運転が良好に行われた時
のデータの中から、そのデータの学習によって以前まで
のデータよりも想起誤差が下がるデータのみを選択す
る。また、この工程においては、オペレータが対話形式
で任意の学習パターンを選択することもできる。 続いて、学習パラメータ設定工程170およびネット構
造設定工程175で必要な条件を設定する。学習パラメー
タとしては、誤差の反映のさせ方を調整する加速係数η
や過去の重み係数修正分をどの程度反映させるかを調整
するスムージング係数α等がある。また、ネット構造と
しては、ニューラルネットモデルの各層のニューロン数
がある。 学習工程185では、先の工程で設定された学習条件に
基づいて因果選択型BP法による学習を行う。因果選択・
抑制手段180は、先に説明した因果抑制係数εを調整す
る機能である。この手段が働かない場合、つまり、ε=
0の場合は因果抑制が全くかからない学習であるので、
従来型BP法に相当する。 学習結果書き出し工程190では、学習後の重み係数行
列を数値ファイルとしてニューラルネットベース300に
書き出して保存する。 学習手段160の最後は、想起工程195であり、ここで想
起された値は定量的ガイダンスとして表示手段250に送
られる。 次に、内部結合状態解析手段200について説明する。
ここでは、学習済のネットの重み係数行列を解析し、ネ
ット内に内包される知識(因果関係)を抽出し、想起の
根拠とする。第5図は、内部結合状態解析手段200の工
程の構成を示すブロック図である。 まず、ネット読み込み工程205により、ニューラルネ
ットベース300から学習済みの重み係数行列を読み込
む。 因果性尺度算出工程210では、読み込まれた重み係数
行列により、ネットの入出力間の因果関係を評価するた
めの「因果性尺度」を算出する。 ここで因果性尺度について説明する。学習済ネットが
入力パターンに対して正しい出力で想起できるのは、ネ
ット内部に入出力間の因果関係と等価な知識を内包して
いるからである。ネット入力層の入力が出力層の出力に
及ぼす影響の度合いは、着目したx1iから着目したy3k
到るネット上の全経路の影響を合成したものである。こ
のうち、X1iから中間層のニューロン2jを通過してy3k
至る経路j(j:1〜中間層ニューロン数)の影響は、X1i
が変化したときのy3kの変化の度合い、つまり式(12)
で示す偏微分で評価する。
【X1iのy3kへの影響の度合い;経路j】∝ (∂y3k/∂X1i …(12) 式(12)の偏微分はW3k,2j、W2j,1iを用いて式(13)
で表される。 (∂y3k/∂X1i= f′(u3k)・f′(u2j)・W3k,2jW2j,1i …(13) 式(13)のW3k,2jおよびW2j,1iは学習ネットでは確定
した値となるが、シグモイド関数の微分値f′
(u3k)、f′(u2j)は、シグモイド関数が非線形であ
るため、出力層と中間層のニューロンの内部状態u3kとu
2jで決まる。u3kとu2jはX1i(i:1〜入力層ニューロン
数)のパターン1iに依存するので、代表的なX1iのパタ
ーンが求められれば、f′(u3k)とf′(u2j)を含め
て評価できるが、実際上そのようなX1iのパターンを求
めるのは困難である。 したがって、ここではf′(u3k)とf′(u2j)は一
定という条件を仮定して評価する。この仮定のもとに、
式(12)を中間層ニューロンを通る全ての路について合
成したものが式(14)である。これをX1iとy3kの因果関
係を評価する「因果性尺度C3k,1i」と定義する。 C3k,1iは上記の仮定により、u3kとu2jの値が0に近
く、シグモイド関数が線形近似できる範囲では正しい評
価がなされる。 知識変換工程215では、算出された因果性尺度によ
り、知識を求める。C3k,1iの絶対値の大小によりX1iとy
3kとの因果関係の強弱を知り、符号の正負により相関の
正負を知ることができる。これを利用して、C3k,1iから
X1iとy3kに関する(15)のような知識に変換する。 もし、データX1iが高ければ、 データy3kは高く(or低く)なる …(15) ここで得られたif−then型の知識は、ネットが行なう
想起の根拠として表示手段250に送られる。また、ここ
で抽出された知識は知識システム110にも送られ、オペ
レータにより正しいと認められた知識については知識シ
ステム110内の知識ベース(図示せず)に保存し、推論
に利用する。 本発明の特徴の一つである内部結合状態解析手段を用
いることにより、知識工学のボトルネックである知識獲
得を支援できる。 本発明のもう一つの特徴である表示手段250では、第
6図に示すように、学習手段160からの定量ガイダンス
を定量的ガイダンス表示工程255で表示し、また内部結
合状態解析手段200からの知識を想起根拠表示手段260で
表示する。 これまでのニューラルネットによる運転支援では、想
起根拠を示す手段がなく、定量的なガイダンスをブラッ
クボックス的に提示するにとどまっていたため、オペレ
ータがそのガイダンスを正しいものとして利用してよい
かどうか判断に窮することがあった。 これに対して、本発明においては、第7図のように、
想起判断根拠を日本語のルール形式で示しており、オペ
レータにとってより使いやすく、説得力を持ったガイダ
ンスが可能である。 次に、本実施例のニューロシステム150を浄水プロセ
スで運用する場合を例に採り、本発明の学習方法につい
て説明する。 浄水プラントでは、流入水質や計測器の特性が経時的
に変化するために、これに応じて凝集剤注入方法も変化
する。この状況変化に対応して、ニューラルネットが臨
機応変に学習していけば、自己成長性を有する運転支援
が行える。このような学習は、第8図に示すように運用
手順により行う。この運用手順の考え方は、 a.処理良好でしかも過去の運転履歴と大きく矛盾しない
データのみをネットに反映させる。 b.過去の運転履歴を尊重しつつ、新たなデータを最も強
く反映させる。 c.メンテナンスフリーで自動学習する。 ことにより、プラントデータ群の構造変化に適応して常
に最適なガイダンスを行うことである。 第8図の自動追加学習の手順に基づき、データを1日
周期で追加学習しながらガイダンスを行う。なお、手順
中の学習判定日数Nとは、ネット更新の条件として履歴
データN日分の平均想起誤差を求めるための日数であ
る。つまり、ネット更新は過去のN日分のデータと矛盾
しない(N日分の平均想起誤差が増加しない)場合にだ
け行う。 浄水処理プロセスの凝集剤注入操作の場合、最適なN
値は晴天時などの流入原水が低濁度時には1日、降雨時
などの高濁度時では7日分以上(高濁度時は平均して月
に2、3度なので、期間にして3か月分程度)であるこ
とを確認している。 本実施例においては、定量的ガイダンスと併せて、想
起根拠を日本語の知識で示すことができ、より知能的な
運転支援が可能になる。また、ニューラルネットの学習
においてネット内の因果関係を適度に抑制する学習を行
うことにより、従来の学習法以上の想起精度を達成で
き、しかも、そこから抽出される知識はより信頼性の高
いものとなる。 本実施例では、浄水処理プロセスを対象としたが、こ
れ以外にもオペレータの判断が重要とされている各種プ
ロセスにおいても、全く同様の効果を得ることができ
る。 〔発明の効果〕 本発明によれば、定量的ガイダンスとともに想起根拠
を日本語で表示する手段により、従来のニューラルネッ
ト応用運転支援システムでは不十分であったオペレータ
へのガイダンスの説得力を高めることができる。 また、ニューラルネット内の因果関係を抑制する新し
い学習法により、想起による定量的ガイダンスの精度お
よび想起根拠として示される知識の信頼性を高めること
ができる。 その結果、オペレータ単独でプロセスの運転管理を行
う場合よりも、信頼性の高い運転を実現でき、オペレー
タの負担が軽減される。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明によるニューラルネット応用運転支援シ
ステムを浄水処理プロセスの運転管理支援に適用した実
施例の全体構成を示すブロック図、第2図はニューラル
ネットの基本構成要素となる神経細胞(ニューロン)の
基本動作を示す図、第3図は本発明で用いた階層型ニュ
ーラルネットモデルの構成の一例を示す図、第4図は学
習手段の動作を示すフローチャート、第5図はニューラ
ルネットの内部結合状態解析手段の動作を示すフローチ
ャート、第6図はガイダンスの表示手段のフローチャー
ト、第7図は表示手段の画面構成例を示す図、第8図は
自動追加学習によるシステム運用を示すフローチャート
である。 5……着水井、10……急速混和池、 11……凝集剤タンク、12……凝集剤注入ポンプ、 13……撹拌翼、14……撹拌機、 15……フロック形成池、16……撹拌パドル、 5M,10M,15M,25M……計測器、 20……沈殿池、25……ろ過池、50……制御手段、 60……撮像手段、70……画像処理手段、 80……運転履歴データベース、90……CRT、 95……キーボード、100……支援システム、 110……知識ベース応用運転支援システム、 120……理論モデルシミュレーションシステム、 150……ニューロシステム、160……学習手段、 180……因果選択・抑制手段、 200……内部結合状態解析手段、 250……定量的ガイダンスおよび想起根拠表示手段、 300……ニューラルネットベース。
フロントページの続き (72)発明者 矢萩 捷夫 茨城県日立市久慈町4026番地 株式会社 日立製作所日立研究所内 (72)発明者 原 直樹 茨城県日立市大みか町5丁目2番1号 株式会社日立製作所大みか工場内 (72)発明者 依田 幹雄 茨城県日立市大みか町5丁目2番1号 株式会社日立製作所大みか工場内 (56)参考文献 水システム自動計測制御国内ワークシ ョップ 3rd.1989 p165−168 環境技術 Vol.19 No.3 1990(平成2年3月30日発行)p198− 201 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G06F 15/18 JICST科学技術文献データベース

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】内部結合状態を解析可能な階層型ニューラ
    ルネットであって、プロセスを管理するオペレータに対
    して運転支援を行うニューラルネット応用運転支援シス
    テムにおいて、 前記階層型ニューラルネットモデルの入力層内で着目し
    たニューロンから中間層のニューロンを経て出力層内で
    着目したニューロンに到る経路の結合強度の積を中間層
    ニューロンの異なる全経路について加算した値に基づい
    て前記入力層ニューロンと前記出力層ニューロンとの因
    果関係を評価する内部結合解析手段と、 前記ニューラルネットの想起による定量的ガイダンスを
    表示するとともに前記内部結合解析手段の解析結果を想
    起根拠として表示する手段とを備えた ことを特徴とするニューラルネット応用運転支援システ
    ム。
  2. 【請求項2】内部結合状態を解析可能な階層型ニューラ
    ルネットであって、プロセスを管理するオペレータに対
    して運転支援を行うニューラルネット応用運転支援シス
    テムにおいて、 前記階層型ニューラルネットモデルの入力層内で着目し
    たニューロンから中間層のニューロンを経て出力層内で
    着目したニューロンに到る経路の結合強度の積を中間層
    ニューロンの異なる全経路について加算した値に基づい
    て前記入力層ニューロンと前記出力層ニューロンとの因
    果関係を評価する内部結合解析手段と、 前記ニューラルネット内の因果関係のうちで不要な関係
    を抑制し必要な因果関係を選択的に残す手段と、 前記ニューラルネットの想起による定量的ガイダンスを
    表示するとともに前記内部結合解析手段の解析結果を想
    起根拠として表示する手段と を備えた ことを特徴とするニューラルネット応用運転支援システ
    ム。
  3. 【請求項3】内部結合状態を解析可能な階層型ニューラ
    ルネットであって、プロセスを管理するオペレータに対
    して運転支援を行うニューラルネット応用運転支援シス
    テムにおいて、 前記階層型ニューラルネットモデルの入力層内で着目し
    たニューロンから中間層のニューロンを経て出力層内で
    着目したニューロンに到る経路の結合強度の積を中間層
    ニューロンの異なる全経路について加算した値に基づい
    て前記入力層ニューロンと前記出力層ニューロンとの因
    果関係を評価する内部結合解析手段と、 前記ニューラルネット想起誤差が小さくなるように、前
    記積和値の自乗または着目するニューロンが異なるとき
    の積和値の自乗和を小さくする手段と、 前記ニューラルネットの想起による定量的ガイダンスを
    表示するとともに前記内部結合解析手段の解析結果を想
    起根拠として表示する手段と を備えた ことを特徴とするニューラルネット応用運転支援システ
    ム。
  4. 【請求項4】浄水処理プロセスを管理するオペレータに
    対して運転支援を行うニューラルネット応用運転支援シ
    ステムにおいて、 階層型ニューラルネットモデルの入力層のニューロンに
    前記浄水処理プロセスから得られる水質データおよび/
    または画像計測データを入力し、出力層のニューロンに
    薬品注入率を出力させるモデルを用いることを特徴とす
    る請求項1ないし3のいずれか一項に記載のニューラル
    ネット応用運転支援システム。
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