JP2770012B2 - 鱗翅目昆虫の人工採卵法およびその人工採卵装置 - Google Patents

鱗翅目昆虫の人工採卵法およびその人工採卵装置

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JP2770012B2
JP2770012B2 JP20361696A JP20361696A JP2770012B2 JP 2770012 B2 JP2770012 B2 JP 2770012B2 JP 20361696 A JP20361696 A JP 20361696A JP 20361696 A JP20361696 A JP 20361696A JP 2770012 B2 JP2770012 B2 JP 2770012B2
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準 齊藤
信 木内
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農林水産省蚕糸・昆虫農業技術研究所長
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は鱗翅目昆虫の人工採
卵法およびその人工採卵装置に関し、更に詳しくは、鱗
翅目昆虫が摂食や産卵行動をとる際に寄生する特定の植
物、所謂寄主植物の生葉抽出原液から得られた採卵液を
用いて屋内外で鱗翅目昆虫の採卵を行なう人工採卵法、
およびその人工採卵法に用いる人工採卵装置に関する。
【0002】
【従来の技術】蝶・蛾等の鱗翅目昆虫は重大な農業害虫
である。年間の害虫の発生数を調べると、越冬世代、第
一世代、第二世代と世代を繰り返す毎に急激に発生数は
増加する。これは雌一頭が一回当たり数百個も産卵する
ためであり、親世代では少数であっても子世代では爆発
的な害虫発生が起こることがしばしばある。従って、鱗
翅目昆虫の交尾・産卵行動を妨害することや、成虫を捕
獲することは有効な害虫駆除法である。
【0003】これまで、蝶・蛾等の鱗翅目昆虫採卵に
は、鱗翅目昆虫の寄主植物を野外から採集したり、或い
は寄主植物を温室などで大量に栽培し、鉢植え寄主植物
を採卵室内に設置し、寄主植物の葉の裏面に産卵させ、
これを採卵する方法が一般的であった。
【0004】そこで鱗翅目昆虫の寄主植物の生葉を用い
て採卵を行なう場合に用いる採卵室の1例について述べ
る。図9に示すように前面に開閉自在の扉付き木製の箱
(73×85×115cm)から成る採卵室aの内部を艶消しの黒
い紙で覆い、上部に15ワットの蛍光灯bを取り付け、オ
ートタイマーcで16L-8Dの長日条件に設定した。温度は
25〜27℃、湿度は65〜80%RHを目標とした。乾燥条件
下では産卵数が極度に減少するため、採卵室aの底面側
の孔あき仕切板dの下方にに水を入れた容器eを設置
し、更に冬期間はタイムスイッチを接続した加湿器を用
いて間欠的に補湿して目標湿度を維持するようにした。
成虫の吸蜜源としてプラスチック製容器f(例えば200m
l)内に20%蔗糖液を入れ、6〜7個の孔のあいた蓋をし、
その中央に造花gを一輪さした。
【0005】また、完全な暗条件では産卵しないことか
ら、蜜源のプラスチック製容器f近傍に照明器hを配置
して低照度(3〜5lux)で常時照らすようにした。産卵場
所として採卵室aの中央に鉢植えの鱗翅目昆虫の寄主植
物i、例えばサツマイモ苗を配置すると共に、寄主植物
iの前方に羽化前のサナギを入れる籠jを配置した。
【0006】また、採卵を行なう鱗翅目昆虫、例えばエ
ビガラスズメの蛹は幼虫期の飼育条件により休眠・非休
眠化するので、採卵に供する成虫を得るためには、幼虫
期の日長条件を制御して非休眠蛹を誘導するか、もしく
は休眠蛹を低温で保護して休眠を覚醒する必要がある。
通常、幼虫期を27±1℃、16L-8Dの高温・日長条件で飼
育することによって非休眠蛹を誘導するようにしてい
る。採卵は一日一回明期に行い、その際、死亡あるいは
衰弱した蛾は取り除き、採卵室(飼育箱)内を出来るだ
け清浄に保つように努める。
【0007】尚、前記採卵室の構造およびエビガラスズ
メの採卵については「エビガラスズメの通年飼育体系」
蚕糸・昆虫農業技術研究所 研究報告 第10号(第38頁な
いし第39頁)平成6年3月より引用した。
【0008】そこで、鱗翅目昆虫を駆除するにあたっ
て、蝶・蛾等の鱗翅目昆虫の寄主特異性、産卵刺激物
質、産卵行動、鱗翅目昆虫の採卵法について説明する。
【0009】 寄主特異性 一般に、蝶・蛾等の鱗翅目昆虫は特定の植物である所謂
寄主植物に対してのみ摂食や産卵行動をとる。例えば、
蛾の一種であるエビガラスズメの幼虫はサツマイモの葉
だけを食べ、成虫はサツマイモの葉だけに産卵するとい
う習性を有している。鱗翅目昆虫は昆虫自体の寄主植物
に含まれている微量な二次代謝産物(化学物質)を感知
する能力があり、その刺激を受けて初めて摂食や産卵行
動が誘発されると考えられている。
【0010】 産卵刺激物質 現在のところ、交尾した雌に産卵行動を誘発する物質、
例えばアゲハチョウ科の蝶では数種の産卵刺激物質(フ
ラボノイド、アルカノイド類)が同定されているが、そ
の他の蝶・蛾等の鱗翅目昆虫では全く分かっていない。
【0011】 産卵行動 ジャコウアゲハでは葉の表面側を前脚でたたき(ドラミ
ング行動という)、前脚先端部にある感覚毛で産卵刺激
物質を感知して、葉の裏面側に産卵する。エビガラスズ
メではドラミング行動はとらないが、静止飛行(ホバリ
ング行動という)しながら葉の表面側に前脚を接触さ
せ、やはり葉の裏面側に産卵する。
【0012】 採卵法 現在のところ蝶・蛾等鱗翅目昆虫の採卵法としては、野
外から採集した寄主植物、或いは温室などで大量に栽培
した寄主植物の生葉に産卵させて、生葉から卵を1粒ず
つ取り外して採卵する方法が一般的である。
【0013】蝶類では、ジャコウアゲハ等の一部の種
で、寄主植物の生葉のメタノール抽出液に浸したフィル
ターペーパーに雌が産卵することが僅かに確認されてい
る程度であり、継続的に使用することが出来る採卵法は
存在していない現状である。
【0014】蛾類では、イラクサギンウワバ等の寄主植
物を初から必要としない(つまり採卵装置も必要としな
い)性質を持った一部の種を除くと、エビガラスズメの
採卵法にみられるように寄主植物の生葉は必要である。
【0015】また、蛾類についても蝶類と同様に、寄主
植物の生葉のメタノール抽出液をフィルターペーパー等
に染み込ませたものを用いて採卵を行なう方法が試みら
れたが、実用にはほど遠いものであった。
【0016】人工採卵法の試みとしては、唯一タバコス
ズメガの例がある。これは、円形状のウレタンフォーム
にタバコ葉の80%エタノール抽出液を浸し、これをポリ
エチレンフィルターまたはコルク板に載置し、ポリエチ
レンフィルターまたはコルク板に産卵させて採卵する方
法がある。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これま
で鱗翅目昆虫の寄主植物の誘引、産卵刺激物質はほとん
ど同定されておらず、特に蛾類は夜行性であることか
ら、これら蛾類の寄主植物の誘引、産卵刺激物質の検索
が困難であった。
【0018】前述のように、蝶・蛾等の鱗翅目昆虫の実
用的な人工採卵法はこれまでに開発されておらず、多く
の場合、寄主植物の生葉、または鉢植え寄主植物を用
い、これに鱗翅目昆虫に産卵させて、これを採卵する方
法であった。
【0019】従って、寄主植物を野外から採集してきた
り、または温室等で大量に栽培するする必要があった。
本発明者らの種々の実験結果では例えばエビガラスズメ
の場合、一年間に鉢植えのサツマイモを100個必要とし
た。更に、産み付けられた卵は寄主植物の葉から一粒ず
つ取り外して採卵する必要があった。
【0020】また、前述のように蝶類のジャコウアゲハ
の一部で寄主植物の生葉のメタノール抽出液に浸したフ
ィルターペーパーに雌が産卵することが確認されていて
も、これを継続的に産卵させ、採卵を行なう手段は今だ
に開発されていない。
【0021】また、前述の唯一のタバコスズメガ(蛾
類)の人工採卵方法の場合は、 タバコの生葉を乾燥状態で保存するために、そのメ
タノール抽出液を調製する際には大型のソクスレー抽出
器を用いて1〜2時間抽出操作を行なわねばならず、手
間がかかり、煩雑となりやすい。 採卵を行なう際に用いる抽出液は高濃度の抽出液
(生葉濃度375mg/ml=375g/l)が必要なため、高濃度
の抽出液1l(1000cc)を得るのに生葉は375g必要であり、
しかも抽出液のメタノール濃度も80%と高いため蒸発量
が大きく、常に抽出液の補給が必要となって大量のタバ
コ生葉を必要とする。 メタノール濃度が80%と高く、かつ蒸発量が大きい
ために抽出液を連続補給することが出来ないので、毎日
採卵箱の消灯時間の2時間前にウレタンフォームへの抽
出液の入れ換えおよび採卵装置の設置し直し作業が必要
となる。 等の問題があるために、この採卵法はタバコスズメガの
屋内飼育現場には現実的には普及していない。
【0022】このように、現在のところ、蝶・蛾等の鱗
翅目昆虫の人工採卵法で実用化に至ったものはない。
【0023】本発明の目的は、屋外内において鉢植えの
鱗翅目昆虫の寄主植物の生葉を用い、この生葉に産卵さ
せ、これを採卵する場合と比較して全く遜色がなく、同
等の高収率で、かつ継続的に採卵を行なえる鱗翅目昆虫
の人工採卵法およびその人工採卵装置を提供することに
ある。
【0024】
【課題を解決するための手段】本発明の人工採卵法は、
板状本体の表面側に鱗翅目昆虫の寄主植物の生葉抽出原
液から得られた採卵液を保持する板状本体の少なくとも
裏面側で鱗翅目昆虫に産卵させた後、これを採卵するこ
とを特徴とする。
【0025】前記採卵液は板状本体の表面側に装着した
液保持部材に保持し、また、前記産卵および採卵は板状
本体の裏面側に装着した採卵部材で行なうようにしても
よい。
【0026】また、前記採卵液の生葉濃度は5mg/mlな
いし50mg/mlの範囲で行なうようにしてもよい。
【0027】本発明の人工採卵装置は、支柱の上端部に
着脱自在に装着した板状本体と、板状本体の上面側に着
脱自在に装着した鱗翅目昆虫の寄主植物の生葉抽出原液
から得られた採卵液を保持する液保持部材と、板状本体
の下面側に着脱自在に装着した鱗翅目昆虫の採卵を行な
う採卵部材とを有することを特徴とする。
【0028】前記支柱はその下方に着脱自在の台座を有
し、その上方に採卵液を貯蔵する液貯蔵部を有し、該液
貯蔵部は前記液保持部材に採卵液を補給する液補給部材
を備えるようにしてもよい。
【0029】また、前記液保持部材はその上方に液保持
部材より小径であって着脱自在の上蓋を備えるようにし
てもよい。
【0030】[作用]板状本体には鱗翅目昆虫の寄主植
物の生葉抽出原液から得られた採卵液を保持しているか
ら、板状本体から発散する採卵液に誘い出されて鱗翅目
昆虫が板状本体に飛来し、ドラミング行動またはホバリ
ング行動をとりながら産卵行動を誘発し、板状本体に産
卵する。そして、産み付けられた鱗翅目昆虫の卵は従来
の生葉に産卵させた卵のように1粒ずつ取り外すことな
く板状本体と共に回収が可能となり、卵に直接人手が触
れることがなく、採卵が容易に行なえる。
【0031】また、板状本体に装着した産卵部材に産卵
させるときは、産み付けられた鱗翅目昆虫の卵は採卵部
材と共に回収することが出来て、採卵をより効果的に行
なえる。この場合、採卵部材の上で直接孵化させること
が出来る。
【0032】採卵液は鱗翅目昆虫の寄主植物の生葉抽出
原液から得られた液を用いるようにしたので、寄主植物
の生葉を栽培する必要がなく、また、採卵液の生葉抽出
原液は低温で長期間に亘って保存が可能である。
【0033】
【発明の実施の形態】鱗翅目昆虫の寄主植物の生葉の抽
出は、次の3通りの方法のうち採卵する鱗翅目昆虫の種
類に対応させて行なえばよい。
【0034】 寄主植物の生葉1kgに水を加えながらミ
キサーで摩砕しながら計3,200mlの水を加えて、均一に
なるように1〜2分間摩砕し、ガーゼと濾紙で濾過後、
濾過液を生葉抽出原液として温度−20℃で保存する。
【0035】 寄主植物の生葉1kgを幅1cm程度の短冊
状に切断し、これに抽出溶媒としてエタノール、または
メタノール3,200mlを加えて、密封出来る容器に入れ、
温度4℃で、5日間抽出し、ガーゼと濾紙で濾過後、濾過
液を生葉抽出原液として温度−20℃で保存する。ただ
し、生葉が抽出溶媒の上に浮上しやすいので、抽出中は
重りを乗せる必要がある。また、生葉からの均一な抽出
を図るために適宜に攪拌を行なう必要がある。
【0036】 寄主植物の生葉1kgに抽出溶媒としてエ
タノールまたはメタノールを加えながらミキサーで摩砕
しながら計3,200mlのエタノールまたはメタノールを加
えて、均一になるように1〜2分間摩砕し、ガーゼと濾
紙で濾過後、濾過液を生葉抽出原液として温度−20℃で
保存する。
【0037】前記、、のいずれの抽出方法でも、
採卵結果はほとんど変わらない。
【0038】前記の抽出方法の場合は、生葉抽出原液
が保存時に−20℃で凍結してしまうので、使用に先立っ
て凍結融解処理、即ち解凍処理が必要である。
【0039】前記、の抽出方法の場合は不凍液の状
態で長期間保存することが出来るため簡便である。前記
、の抽出の場合は生葉の水分量を80%とすると、生
葉抽出原液の組成はエタノールまたはメタノールが約80
%、生葉濃度が約250mg/mlである。
【0040】そして、採卵液の作成は前記、、の
いずれの方法で得られた生葉抽出原液を次のように希釈
して調製する。生葉濃度の調製の際に用いる希釈液は水
でもよいが、採卵液の変質や腐敗を防止するために、エ
タノールまたはメタノールの最終濃度15%溶液に調製す
ると採卵液は室温(25℃)で10日間失活しない。
【0041】また、採卵液の生葉濃度範囲は、採卵する
鱗翅目昆虫の種類によるが、その下限は生葉濃度5mg/m
lで、また、上限は生葉濃度50mg/mlで鉢植えの寄主植
物の生葉とほぼ同程度の効果が得られる。
【0042】前述のように生葉抽出原液は低温で半永久
的に保存が可能であり、また、例えば生葉濃度が約250m
g/mlの生葉抽出原液の場合は生葉抽出原液を5〜50倍に
希釈したものを採卵液として用いるようにしたから、最
低で生葉を数十g程度準備すれば一年間の採卵が可能で
ある。また、採卵液は変質・腐敗に対して強く、採卵時
には1週間以上交換する必要がない。
【0043】本発明では極めて微量の採卵液で産卵行動
を誘発することが出来るため、産卵刺激物質の化学構造
を決定する過程での高感度バイオアッセイ系として有用
である。
【0044】
【実施例】先ず、本発明の鱗翅目昆虫の人工採卵装置に
ついて説明する。
【0045】実施例1 図1ないし図3は本発明の鱗翅目昆虫の人工採卵法を実
施するための鱗翅目昆虫の人工採卵装置の1例を示すも
のであり、図中、1は人工採卵装置を示す。
【0046】人工採卵装置1は、外径48mm、内径40mm、
高さ370mmの塩化ビニール樹脂製の筒状の支柱2と、上
面外径125mm、下面外径120mm、厚さ15mmの発泡スチロー
ル製の板状本体3と、産卵液を保持する径125mmのフィ
ルターペーパー(東洋ろ紙株式会社製)の液保持部材4
と、外径120mm、内径15mm、厚さ1.5mmのプラスチック製
のドウナツ状の採卵部材5とで構成されている。
【0047】尚、板状本体3は図3(A、B)示すよう
にその上面に幅15mm、深さ5mmの溝6を凹設し、また、
その中心に径15mmの孔7を穿設し、その孔7に塩化ビニ
ール樹脂製の外径15mm、内径9mm、長さ30mmの固定具8
を嵌挿した構成とした。
【0048】そして、図1に示す人工採卵装置1は次の
ように組み立てた。
【0049】先ず、支柱2の下方を底面外径125mm、厚
さ40mmの鉄合金製の台座9に、外径40mm、高さ30mmの鉄
合金製の取付け具10を介して着脱自在に装着した。ま
た、支柱2の上方内に外径40mm、内径36mm、長さ130mm
のガラス製の採卵液を貯蔵する液貯蔵部11を挿入し
た。
【0050】また、板状本体3の下面側に固定具8に採
卵部材5を外径35mm、内径15mm、厚さ15mmの発泡スチロ
ール製の止め具13を介して着脱自在に装着した。
【0051】続いて、支柱2の上端部に採卵部材5を装
着した板状本体3をその下面に取り付けた固定具8を介
して着脱自在に装着した。
【0052】また、太さ7mm、長さ300mmのガーゼ製でロ
ープ状の液補給部材12の一端側を板状本体3の上面に
凹設した溝6内に挿入すると共に、液補給部材12の他
端側を液貯蔵部11内の採卵液内に浸漬し、これに採卵
液を浸透させ、これを灯芯のように吸い上げるようにし
た。
【0053】次に、板状本体3の上面側に液保持部材4
を2枚重ね合わせて着脱自在に装着して、液補給部材1
2の他端側を液保持部材4に当接させて、液貯蔵部内1
1に貯蔵されている採卵液を液補給部材12に吸い上げ
させ、これを介して液保持部材4に補給するようにし
た。
【0054】また、液保持部材4の上面に自動車用のカ
ーペット製の直径100mm、厚さ5mmの上蓋14を載置し
た。
【0055】尚、前記実施例装置では支柱2、板状本体
3、液保持部材4、採卵部材5、上蓋14を夫々の形状
を円形としたが、本発明はこれに限定されるものではな
く、採卵する鱗翅目昆虫の種類、その性質に合わせてそ
の形状を設定すればよく、例えば六角形、八角形、楕円
形が挙げられる。
【0056】支柱2の高さは採卵する鱗翅目昆虫の種
類、その性質に合わせて設定すればよく、台座9を含め
て100〜500mm程度とする。
【0057】また、板状本体3の厚さを15mmとしたが、
本発明はこれに限定されるものではなく、採卵する鱗翅
目昆虫の種類、その性質に合わせてその厚さを設定すれ
ばよい。
【0058】また、液保持部材4にフィルターペーパー
を用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、
採卵液を浸透し得て、徐々に滲出・発散させ得る材質で
あればよく、例えばウレタンフォーム、スポンジ、布地
が挙げられる。
【0059】また、採卵部材5にプラスチックを用いた
が、本発明はこれに限定されるものではなく、鱗翅目昆
虫が産卵しやすく、かつ産卵後は容易に離脱し得ない材
質であればよく、例えば硬質紙板、鉄板、木板が挙げら
れる。採卵部材5はプラスチック材を用いれば強度的に
は半永久的であり、反復して使用することが出来るた
め、採卵部材5は7枚程度あれば1年間毎日連続して産
卵および採卵が出来る。
【0060】前述のように、一般に蝶、蛾等の鱗翅目昆
虫は寄主植物の葉の表面側、即ち上面側で自己の寄主植
物であるかを認識し、葉の裏面側、即ち下面側に産卵す
る性質を持っている。このことから、本発明の鱗翅目昆
虫の人工採卵装置の構造は板状本体の上面側に装着した
液保持部材より寄主植物の生葉抽出原液から得られた採
卵液を滲出・発散させ、その採卵液に誘いだされた鱗翅
目昆虫は板状本体にドラミング行動またはホバリング行
動をしながら、その下面側に設置した採卵部材に産卵さ
せ、これを採卵するようにしている。
【0061】また、採卵液は経時と共に徐々に発散して
失われていくので、液貯蔵部11内に採卵液、例えば約
150mlを貯蔵しておき、液補給部材12を介して板状本
体3の上面に装着された液保持部材4に補給されるよう
になっている。
【0062】また、液保持部材4より小径の上蓋14を
液保持部材4の上面に載置することにより、採卵液は液
保持部材4の縁周部のみから滲出・発散するようにな
る。また、採卵液の蒸発による損失を低減することが出
来る。また、産卵の際はホバリングしている鱗翅目昆虫
が掴まりやすくなる。
【0063】そして、図4に示すように蝶・蛾等の鱗翅
目昆虫G、例えばエビガラスズメの場合は板状本体3の
縁周部をホバリング行動しながら、主に板状本体3の下
面側に装着した採卵部材5に卵Eを産卵する。
【0064】板状本体3の下面側に装着した採卵部材5
には図5、図6に示すように卵Eが大量に産み付けられ
る。そして、産み付けられた卵Eは採卵部材5毎そのま
ま、板状本体3より取り外して回収し、必要に応じてホ
ルマリン等で消毒・殺菌処理を施した後、孵化・飼育さ
せることが出来るから、産み付けられた卵を、従来の寄
主植物の生葉に産卵させた卵のように1粒ずつ取り外す
必要性は全くない。また、採卵部材5毎シャーレに入れ
てシャーレ内での孵化・飼育が可能であり、鱗翅目昆虫
に人手が触れずに済む。また、採卵部材5毎シャーレに
入れて他部署へ搬送する際に卵の微生物汚染、変質を防
ぐことが出来る。
【0065】次に図1ないし図3に示す鱗翅目昆虫の人
工採卵装置1を用いて本発明の人工採卵法の具体的実施
例を対比例および比較例と共に説明する。尚、本発明の
具体的実施例および比較例は図7に示す採卵室内で産卵
および採卵を行い、また、対比例は図9に示す採卵室内
で産卵および採卵を行なった。
【0066】本発明の具体的実施例および比較例に用い
る図7に示す採卵室の構成について説明する。図中、2
1は前面に開閉自在の扉を備える木製の箱(横幅73×奥
行85×高さ115cm)から成る採卵室を示す。
【0067】採卵室21の内部を艶消しの黒い紙で覆
い、タイマー22で日長を16時間明、8時間暗(16L-8D)
のサイクルに制御した蛍光灯(15W)23を設置し、ま
た、壁の上部にセンサー付き照明器具(5Wの電球)24
を取り付け、夜間のみ採卵室の内部を微光照明した。ま
た、採卵室21内の底部側の孔あき仕切板25の下方に
水を入れた容器26を設置し、更に室内全体の温度湿度
を制御する装置(図示せず)を設置して、室内温度を24
〜26℃、湿度を70〜80%RHに維持するようにした。ま
た、採卵室21の上部にフィルター付き換気扇27を配
置し、採卵室21内で採卵および成虫の交尾による鱗粉
の舞い上がることを防止するようにした。また、採卵室
21の前方側に羽化前の蛹を入れる籠28を配置した。
【0068】尚、本発明の人工採卵装置の構造は図7に
示す採卵室を含めた構造ではない。また、採卵室は採卵
を行なう鱗翅目昆虫の生態に合わせて照明、温度、湿度
等の基本的条件を満たす構造であればよく、図示例のよ
うな構成である必要は全くなく、例えば、単に段ボール
箱内に豆電球と本発明の採卵装置を設置しただけでも鱗
翅目昆虫の産卵と採卵は可能である。
【0069】実施例2 本実施例はエビガラスズメ(蛾)の人工採卵法である。
【0070】また、本実施例では採卵部材5に市販の直
径120mmのコンパクトディスク、また液貯蔵部11に外
径40mm、内径36mm、長さ130mmのショウジョウバエ飼育
用ガラス管を利用した。また、板状本体3の側面全面に
亘って産卵された卵を取り外ししやすいように幅25mmの
ビニールテープ(住友スリーエム株式会社製)を貼着し
た。
【0071】先ず、エビガラスズメの寄主植物の生葉と
してサツマイモ生葉を1kg用意した。この生葉にエタノ
ールを加えながらミキサーで摩砕しながら、合計3,200m
lのエタノールを加えて、2分間摩砕した後、4℃で5日間
自然放置して、生葉成分を抽出した後、ガーゼと濾紙で
濾過し、濾過液を生葉濃度250mg/mlの生葉抽出原液と
し、これを温度−20℃で保存した。
【0072】そして、実験開始前に保存された生葉濃度
250mg/mlの生葉抽出原液25mlに水100mlを加えて生葉濃
度50mg/mlの採卵液(5倍希釈)を作成した。
【0073】また、液保持部材4を2枚板状本体3の上
面側に装着すると共に、生葉濃度50mg/mlの採卵液150m
lを液貯蔵部11内に充填し、これを液補給部材12に
浸透させ、液補給部材12の毛細管現象で上方に吸い上
げて液保持部材4に補給するようにした。
【0074】また、採卵部材5を板状本体3の下面側に
装着した。
【0075】次に、板状本体3に液保持部材4と採卵部
材5とを装着した鱗翅目昆虫の人工採卵装置1を前記図
7に示すように採卵室21内に設置した。
【0076】そして、採卵室21内に同一日に羽化した
エビガラスズメの雄5頭、雌5頭を放ち、全個体が死亡
するまで飼育、採卵を行なうと共に、交尾率、交尾雌1
頭の産卵数、産卵の集中度を調べ、その結果を図8に示
す。交尾率、交尾雌1頭の産卵数、産卵の集中度の結果
は全個体が死亡するまでの期間の合計とした。
【0077】尚、交尾率、交尾雌1頭の産卵数、産卵の
集中度は次のようにして求めた。 交尾率(%)は飼育した雌に占める既交尾雌の割合
を表わす。 交尾雌1頭の産卵数(粒)は全採卵数を交尾雌の頭
数で割った値を表わす。 産卵の集中度(%)は全産卵数のうち、採卵装置の
板状本体の側面および採卵部材または寄主植物の生葉に
産下された卵の割合を表わす。
【0078】実施例3 採卵液として前記実施例2で作成された生葉濃度250mg
/mlの生葉抽出原液25mlに水207.5mlと、エタノール17.
5mlを加えて生葉濃度25mg/mlとした採卵液(10倍希
釈)を用いた以外は、前記実施例2と同様の方法で交尾
率、交尾雌1頭の産卵数、産卵の集中度を調べ、その結
果を図8に示す。
【0079】実施例4 採卵液として前記実施例2で作成された生葉濃度250mg
/mlの生葉抽出原液2.5mlに水105.8mlと、エタノール1
6.8mlを加えて生葉濃度5mg/mlとした採卵液(50倍希
釈)を用いた以外は、前記実施例2と同様の方法で交尾
率、交尾雌1頭の産卵数、産卵の集中度を調べ、その結
果を図8に示す。
【0080】対比例1 採卵室として図9に示す従来法の生葉による採卵室を用
い、また、採卵液の代わりに鉢植えのサツマイモ(生葉
15〜20葉)を用いた以外は、前記実施例2と同様の方法
で交尾率、交尾雌1頭の産卵数、産卵の集中度を調べ、
その結果を図8に示す。
【0081】比較例1 採卵液として前記実施例2で作成された生葉濃度250mg
/mlの生葉抽出原液1mlに水212.3mlと、エタノール36.7
mlを加えて生葉濃度1mg/mlとした採卵液(250倍希釈)
を用いた以外は、前記実施例2と同様の方法で交尾率、
交尾雌1頭の産卵数、産卵の集中度を調べ、その結果を
図8に示す。
【0082】比較例2 採卵液の代わりに15%エタノール液(生葉濃度は0mg
/mlである)を用いた以外は、前記実施例2と同様の方
法で交尾率、交尾雌1頭の産卵数、産卵の集中度を調
べ、その結果を図8に示す。
【0083】比較例3 人工採卵装置1の代わりに図7に示す採卵室21内にサ
ツマイモと同じ形状の造花葉を設置し、また、採卵室2
1内の造花葉近傍にに径125mmのフィルターペーパー
(東洋ろ紙株式会社製)を設置し、毎日消灯前に前記実
施例2で作成された生葉濃度250mg/mlの生葉抽出原液
を造花葉に10ml、フィルターペーパーに10mlを夫々吹き
かけた以外は、前記実施例2と同様の方法で交尾率、交
尾雌1頭の産卵数、産卵の集中度を調べ、その結果を図
8に示す。
【0084】図8から明らかなように、本発明の各実施
例の交尾率、交尾雌1当たりの産卵数および産卵の集中
度は、従来の鉢植えの寄主植物の生葉に産卵させて、こ
れを採卵する方法(対比例1)の交尾率、交尾雌1当た
りの産卵数および産卵の集中度と同等の効果が得られる
ことが確認された。
【0085】また、採卵液を用いてもその生葉濃度が1m
g/ml(比較例1)の場合は本発明の各実施例のような
効果は得られない。
【0086】また、採卵液を用いない(比較例2)場
合、造花葉に寄主植物の生葉抽出原液を吹きかけた(比
較例3)場合は、いずれも本発明の各実施例のような効
果は得られない。
【0087】従って、採卵液の生葉濃度は5mg/mlない
し50mg/mlの範囲内であれば十分に従来の鉢植えの寄主
植物の生葉を用いた場合と同等の効果が得られることが
確認された。
【0088】また、産卵刺激が不足すると、採卵装置の
板状本体の側面および採卵部材または寄主植物の生葉に
産卵せずに、採卵室の壁面、蛍光灯等に産卵してしま
い、卵が回収困難となる。
【0089】実施例5 本実施例はジャコウアゲハ(蝶)の人工採卵法である。
【0090】先ず、ジャコウアゲハの寄主植物の生葉と
してウマノスズクサ生葉を1kg用意した。この生葉にエ
タノールを加えながらミキサーで摩砕しながら、合計3,
200mlのエタノールを加えて、2分間摩砕した後、4℃で5
日間自然放置し、生葉成分を抽出した後、ガーゼと濾紙
で濾過し、濾過液を生葉濃度250mg/mlの生葉抽出原液
とし、これを温度−20℃で保存した。
【0091】そして、実験開始前に保存された生葉濃度
250mg/mlの生葉抽出原液25mlに水100mlを加えて生葉濃
度50mg/mlの採卵液(5倍希釈)を作成した。
【0092】また、液保持部材4を2枚板状本体3の上
面側に装着すると共に、生葉濃度50mg/mlの採卵液150m
lを液貯蔵部11内に充填し、これを液補給部材12に
浸透させ、液補給部材12の毛細管現象で上方に吸い上
げて液保持部材4に補給するようにした。
【0093】また、採卵部材5を板状本体3の下面側に
装着した。
【0094】次に、板状本体3に液保持部材4と採卵部
材5とを装着した鱗翅目昆虫の人工採卵装置1を前記図
7に示すように採卵室21内に設置した。
【0095】そして、採卵室21内に同一日に羽化した
ジャコウアゲハの雄2頭、雌2頭を放ち、全個体が死亡
するまで飼育、採卵を行なった。
【0096】実施例6 採卵液として前記実施例5で作成された生葉濃度250mg
/mlの生葉抽出原液25mlに水207.5mlと、エタノール17.
5mlを加えて生葉濃度25mg/mlとした採卵液(10倍希
釈)を用いた以外は、前記実施例5と同様の方法で全個
体が死亡するまで飼育、採卵を行なった。
【0097】対比例2 採卵室として図9に示す従来法の生葉による採卵室を用
い、また、採卵液の代わりに鉢植えのウマノスズクサ
(生葉20〜30葉)を用いた以外は、前記実施例5と同様
の方法で全個体が死亡するまで飼育、採卵を行なった。
【0098】比較例4 採卵液の代わりに15%エタノール液(生葉濃度は0mg
/mlである)を用いた以外は、前記実施例5と同様の方
法で全個体が死亡するまで飼育、採卵を行なった。
【0099】実施例7 生葉抽出原液としてサツマイモの生葉1kgに水を加えな
がらミキサーで摩砕しながら合計3,200mlの水を加え
て、2分間摩砕して生葉成分を抽出した後、ガーゼと濾
紙で濾過し、濾過液を温度−20℃で保存した生葉濃度25
0mg/mlの生葉抽出原液を用い、実験開始前に生葉抽出
原液に解凍処理を施した以外は、前記実施例2と同様の
方法でエビガラスズメ(蛾)の交尾率、交尾雌1頭の産
卵数、産卵の集中度を調べたところ、いずれも前記実施
例2と同じ結果が得られた。
【0100】実施例8 生葉抽出原液としてサツマイモの生葉1kgを幅1cmの短
冊状に切断し、これにエタノール3,200mlを加えて、密
封容器に入れ、温度4℃で、5日間静置して生葉成分を抽
出した後、ガーゼと濾紙で濾過し、濾過液を温度−20℃
で保存した生葉濃度250mg/mlの生葉抽出原液を用いた
以外は、前記実施例2と同様の方法でエビガラスズメ
(蛾)の交尾率、交尾雌1頭の産卵数、産卵の集中度を
調べたところ、いずれも前記実施例2と同じ結果が得ら
れた。
【0101】前述のように、本発明の鱗翅目昆虫の人工
採卵法は、年間を通じた寄主植物の栽培およびその管理
が必要なく、予め低温保存しておいた生葉抽出原液で作
成した採卵液で随時、採卵が行なえる。また、採卵装置
の設置とメンテナンスの操作も容易で、採卵装置の液保
持部材への採卵液の補充は1週間ないし10日に一度位の
頻度で行なえば十分である。
【0102】また、鱗翅目昆虫の採卵液に対する感度が
非常に高く、寄主植物の生葉が数十グラムあれば、一年
間連続して採卵が出来るシステムである。
【0103】また、近年の蝶・蛾等の鱗翅目昆虫の遺伝
子組み換え技術が発達し、近い将来、遺伝子を組み換え
た鱗翅目昆虫を屋内で合理的に飼育する技術が必要にな
ると考えられる。
【0104】本発明の寄主植物の大量栽培、維持管理を
必要としない鱗翅目昆虫の人工採卵法および人工採卵装
置は、蝶、蛾等の鱗翅目昆虫の大量増殖と安定した飼育
維持を図る上で欠かせない手段であり、経済的な利点も
大きいものと考えられる。
【0105】即ち、本発明の鱗翅目昆虫の人工採卵法の
意義は、第一に鱗翅目昆虫の寄主植物の生葉を用いずに
採卵出来ることにある。従来は、鱗翅目昆虫を飼育、採
卵するためには、寄主植物(アゲハチョウの場合は蜜柑
の木)を畑で栽培したり、鉢植えとして温室等で大量に
栽培する必要がある。特に、冬期間の飼育、採卵は大変
であり、照明装置が設置された温室等で寄主植物を管理
栽培する必要があった。本発明は1年に数十グラム程度
の寄主植物の生葉を採取すればよく、少量の採卵液を準
備することで一年中、簡単に鱗翅目昆虫の産卵および採
卵を行なうことが出来る点に有効性がある。
【0106】第二として、人工採卵装置の形態が重要で
あり、本発明の鱗翅目昆虫人工採卵装置は鱗翅目昆虫の
産卵行動に合致した設計がなされていることにある。ア
ゲハチョウ類では前脚で寄主植物の生葉の上面を叩き、
産卵刺激物質を感受し、葉の下面に卵を産み付ける。蛾
類でも蝶類と同じ行動機構を持っているものと考えら
れ、種々の実験の結果、前記実施例のように液保持部材
から発散した採卵液に誘発され、産卵行動を起こし採卵
部材に産卵し、卵を採卵部材毎、そのまま回収すること
が可能となった。
【0107】第三として、生葉抽出原液から得られた生
葉濃度(5mg/ml〜50mg/ml)の採卵液で産卵行動を誘
発出来る点にあることから、産卵刺激物質を精製、同定
する上でも有効であると言える。性フェロモン等と同様
に鱗翅目昆虫の寄主植物の活性成分についても害虫捕獲
法(防除)に利用することも可能性がある。更に本発明
の鱗翅目昆虫の人工採卵法および人工採卵装置は産卵刺
激物質と言ったような物質のバイオアッセイ系としても
利用することが出来るものと考えられる。
【0108】
【発明の効果】本発明の鱗翅目昆虫の人工採卵法による
ときは、板状本体には鱗翅目昆虫の寄主植物の生葉抽出
原液から得られた採卵液を有しているから、板状本体か
ら発散する採卵液に誘い出された鱗翅目昆虫が板状本体
に飛来し、ドラミング行動またはホバリング行動しなが
ら産卵行動を誘発し、板状本体に産卵し、これを採卵す
るようにしたので、産み付けられた鱗翅目昆虫の卵は従
来の生葉に産卵させた卵のように1粒ずつ取り外すこと
なく板状本体と共に回収が可能となり、採卵が容易に行
なえるので、極めて能率よく採卵出来る等の効果があ
る。
【0109】また、板状本体の表面側の液保持部材に寄
主植物の生葉抽出原液から得られた採卵液を保持させる
ときは、採卵液の保持が容易であり、かつ、採卵液の補
充が容易となり、産卵および採卵が継続的に行なえる。
【0110】また、鱗翅目昆虫の卵を板状本体の裏面側
の採卵部材に産み付けさせるときは、産み付けられた鱗
翅目昆虫の卵は従来の生葉に産卵させた卵のように1粒
ずつ取り外すことなく採卵部材と共に回収することが出
来るから、卵に直接人手が触れることなく採卵が容易に
行なえるので、卵は汚染されることがなく極めて能率よ
く採卵出来、また、卵は採卵部材と共に消毒が行なえ、
かつ採卵部材の上で孵化させることが可能となる。更
に、採卵部材の交換のみで産卵および採卵を継続的に行
なえる。
【0111】また、採卵液は鱗翅目昆虫の寄主植物の生
葉抽出原液から得られた液を用いるようにしたので、生
葉抽出原液は低温で長期間に亘って保存が可能となり、
かつ採卵液は必要に応じて生葉抽出原液から作成すれば
よいので、変質・腐敗に対して強い。
【0112】また、採卵液の生葉濃度は5mg/mlないし5
0mg/mlの範囲で、鱗翅目昆虫の寄主植物の生葉に直接
卵を産卵させ、これを採卵する従来法と同等の効果が得
られる。
【0113】本発明の鱗翅目昆虫の人工採卵装置による
ときは、産卵された卵は採卵部材と共に回収が可能とな
り、卵に直接人手が触れることなく採卵が容易に行なえ
るので、卵は汚染されることがなく極めて能率よく採卵
出来る人工採卵装置を提供することが出来る。
【0114】また、支柱の上方に採卵液を貯蔵する液貯
蔵部を備え、液貯蔵部と液保持部材との間に液補給部材
を備えるときは、液保持部材の採卵液が低減した時点で
採卵液は液貯蔵部より液補給部材を介して液保持部材に
補給することが出来る。
【0115】液保持部材の上方に液保持部材より小径の
上蓋を備えるときは、採卵液は液保持部材の周縁部のみ
から発散するので、採卵液の発散を効果的に出来ると共
に、採卵液の消費を低減することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の鱗翅目昆虫の人工採卵装置の1実施
例の斜視図、
【図2】 図1の人工採卵装置の各部品の説明図、
【図3】 人工採卵装置に用いる板状本体の1例であ
り、(A)はその平面図、(B)は(A)のB−B線截
断面図、
【図4】 本発明の鱗翅目昆虫の人工採卵装置を用いた
蛾の産卵中の1例を表わす斜視図、
【図5】 採卵部材に産下された卵の状態を示す図、
【図6】 図5の要部の拡大図、
【図7】 図1の人工採卵装置を採卵室内に設置した状
態を示す概略図、
【図8】 本発明の実施例、対比例および比較例の実験
結果を示すグラフ図、
【図9】 従来法の鱗翅目昆虫の採卵室の概略図。
【図面の符号】
1 人工採卵装置、 2 支柱、 3 板状
本体、4 液保持部材、 5 採卵部材、 6
溝、9 台座、 11 液貯蔵部、 12
液補給部材、14 上蓋、 E 卵、 G
鱗翅目昆虫。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 井上 尚 茨城県つくば市吾妻2−3−2 708− 509 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) A01M 1/02

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 板状本体の表面側に鱗翅目昆虫の寄主植
    物の生葉抽出原液から得られた採卵液を保持する板状本
    体の少なくとも裏面側で鱗翅目昆虫に産卵させた後、こ
    れを採卵することを特徴とする鱗翅目昆虫の人工採卵
    法。
  2. 【請求項2】 前記採卵液は板状本体の表面側に装着し
    た液保持部材に保持し、また、前記産卵および採卵は板
    状本体の裏面側に装着した採卵部材で行なうことを特徴
    とする請求項第1項に記載の鱗翅目昆虫の人工採卵法。
  3. 【請求項3】 前記採卵液の生葉濃度は5mg/mlないし5
    0mg/mlであることを特徴とする請求項第1項または第
    2項に記載の鱗翅目昆虫の人工採卵法。
  4. 【請求項4】 支柱の上端部に着脱自在に装着した板状
    本体と、板状本体の上面側に着脱自在に装着した鱗翅目
    昆虫の寄主植物の生葉抽出原液から得られた採卵液を保
    持する液保持部材と、板状本体の下面側に着脱自在に装
    着した鱗翅目昆虫の採卵を行なう採卵部材とを有するこ
    とを特徴とする鱗翅目昆虫の人工採卵装置。
  5. 【請求項5】 前記支柱はその下方に着脱自在の台座を
    有し、その上方に採卵液を貯蔵する液貯蔵部を有し、該
    液貯蔵部は前記液保持部材に採卵液を補給する液補給部
    材を有していることを特徴とする請求項第4項に記載の
    鱗翅目昆虫の人工採卵装置。
  6. 【請求項6】 前記液保持部材はその上方に液保持部材
    より小径であって着脱自在の上蓋を有していることを特
    徴とする請求項第4項または第5項に記載の鱗翅目昆虫
    の人工採卵装置。
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