JP2743227B2 - 耐熱不燃性電波吸収体 - Google Patents

耐熱不燃性電波吸収体

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は主として電波暗室の内面
に展着されるカーボンブラックを損失材料とした電波吸
収体に関し、特に高エネルギー電波の吸収に伴って生ず
る発熱昇温によっても電波吸収性能並びに強度を耐久的
に維持する耐熱不燃牲の電波吸収体を得ることを目的と
するものである。
【0002】従来、電波暗室用の電波吸収体としては、
プラスチックフォーム,ガラス繊維マットなどのの有機
又は無機質担体に、損失材料となるカーボンブラック微
粉末を付着せしめて空間的に分布せしめたものが一般に
好ましく用いられているが、試験対象電波が8GHz以
上30GHzにも達するマイクロ波の場合には、その高
エネルギー吸収にともなう発熱昇温によってカーボンブ
ラックの酸化消失による性能低下、さらには火災発生の
危険性があり、その改善が望まれていた。
【0003】前記の要望に応えるものとして、カーボン
ブラック微粉末を保持する担体として耐熱性プラスチッ
クフィルムのハニカム構造体を用いて、強制通風冷却を
行う電波吸収体(例えば米国ランテック社製EHP−3
HP)あるいは連通気孔性の鉱物質多泡体粒子を多数集
積結合した通気性成形体を用いて、自然通気による放冷
を図る不3電波吸収体(例えば特公2−8479号公
報参照)が既に公知である。
【0004】前記のハニカム構造体を担体とした強制通
風冷却式の電波吸収体は、その製造が面倒であり、強制
通風冷却のための設備を要し、しかも、その耐熱温度も
連続試験時で340℃以下であり、また、鉱物質多孔体
粒子を担体とした通気性の電波吸収体は、その担体自体
は不燃性であるが、カーボンブラック微粉末を保持する
ための酢酸ビニル樹脂系接着剤を用いているので耐熱性
が不充分であり、数GHzの高いエネルギー電波の吸収
による急激な発熱昇温を充分に抑制するだけの冷却は不
可能であり、何れも400℃以上の昇温状態で、しかも
通気による内部酸化雰囲気によって、かえってカーボン
ブラック並びに結合剤の酸化劣化が促進されるので、高
エネルギー電波の吸収体としては満足できる耐久性を有
しているものではなかった。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、高いエネルギ
ー電波の吸収によって生ずる昇温を通気冷却によって抑
制する従来の電波吸収体における前記の問題点を解決す
るため、不通気性の鉱物質粒子と耐熱性結合剤とによっ
て通気性を有しない電波吸収体としたものである。すな
わち、本発明は多数の独立気泡性の無機粒子が、カーボ
ンブラック微粉末を分散含有した耐熱性結合剤によって
集積結合された成形体であって、該成形体が不通気性で
あることを特徴とする耐熱不燃性電波吸収体である。
【0006】上記において、独立気泡性の無機粒子とし
ては、ガラスビーズ,シラスバルーン,黒曜石パーライ
トなどの平均粒子径が1.5〜4.5mmのものが用い
られ、特に黒曜石パーライトが入手容易で工業的に有利
である。また、耐熱性結合剤としては水ガラス系又はシ
リカアルミナ系の無機質接着剤、特に水ガラス系無機質
接着剤が好ましく用いられる。
【0007】カーボンブラック微粉末は従来電波吸収用
損失材料として用いられる導電性グラファイト型のもの
が好ましく、前記耐熱結合剤中に通常1〜10wt%程
度に分散含有せしめて、前記無機粒子表面に安定した被
覆膜が維持し得る粘度の処理液として用い、この処理液
によって多数の無機粒子を被覆して所望形状に集積して
その結合剤を硬化することにより、カーボンブラック微
粉末が空間的に分布した電波吸収体が得られるが、この
さいに該電波吸収体の内部の無機粒子間に空隙を残存せ
しめしかも全体として貫通気流を生じ得ない不通気性を
有せしめるように、無機粒子と処理液の使用比率、集積
成形時の圧縮程度などの製造条件の調節が必要である。
【0008】なお、本発明の電波吸収体の不通気性と
は、厚さ1cmの平板材料の両面間に1気圧の圧力差を
与えた場合に、1平方cm当たりの1秒間の透過空気容
量(立方cm)で示される通気率が2以下で、電波暗室
内の使用条件下では実質的に不通気状態を維持し得るも
のを意味し、また耐熱性とは電波吸収体が400℃に昇
温した場合に、材質,形状及び電波吸収能が実質的に変
化しないものを意味し、さらに不燃性とは750℃の炉
内に20分間置いた場合に炉内温度の上昇が50℃以下
であれば、不燃材料と判定する建築材料試験法(建設省
告示第1828号)に合格するものを意味する。
【0009】前述したとおりの構成の本発明製品は、無
機粒子が独立気泡性であるので連通気孔性の無機粒子よ
りも遥かに大なる耐圧強度を有し、耐熱性結合剤は粒子
内部に侵入することなく、すべてが粒子表面を被覆して
粒子相互の結合作用を生じて、実質的に空気貫流を遮断
する程度の連続皮膜が形成されるので、不通気性の無機
粒子と相俟って、電波吸収体自体の強度、並びに不通気
性が向上され、したがって、数10GHzにも達する超
高周波の高エネルギー吸収による昇温によっても、電波
吸収性能、並びに材料強度を耐久的に維持することがで
きるものである。
【0010】
【実施例】以下、本発明の実施例について、その製造条
件によって具体的に説明する。以下、組成条件における
部%は重量基準である。 実施例1 原料組成 イ.独立気泡性パーライト 15部(市販品黒曜石
パーライト、粒径2.2〜3.2mm,容積重量0.1
4kg/リットル) ロ.カーボンブラツク微粉末 1.5部(ライオン社
製、導電性グラファイト) ハ.水ガラス系接着剤 83.5部(日本化学
工業社製“パラボンドA”とその硬化剤、水分率40
%) よりなる撹拌混合物を、成形型に流し込み上面から押板
で20%圧縮した後、160℃.30分の加熱乾燥処理
後、脱型して100×100×50mmの平板ブロック
状不通気性の嵩比重0.42,カーボン含量6.3g/
リットルの製品Aを得た。
【0011】比較例 原料組成 a.連通気孔性パーライト 28部 (フヨーライト社製、真珠岩パーライト、粒径2.5〜
3mm,容積重0.12kg/リットル) b.カーボンブラック水分散液 26部 (ライオン社製cy−311,グラファイト粉末10
%) c.酢酸ビニル樹脂水分散液 46部 よりなる攪拌混合物を、成形型に流し込み、上面から押
板で17%圧縮した後、50℃,8時間の加熱乾燥処理
後、脱型して100×100×50mmの平板ブロック
状、通気性の嵩比重0.24、カーボン含量6.2g/
リットルの製品Bを得た。製品Bは特公平2−8479
号公報に示された公知の電波吸収体に相当するものであ
る。
【0012】製品A,Bについて、電波吸収試験を1〜
30GHz範囲について行ったところ、両者とも3GH
z以上において定在波比が1.2以下、反射係数が−2
5dB〜−45dBで、電波吸収能において殆んど差異
は認められなかった。しかし、耐熱性,不燃性並びに機
械的強度について下記の試験によって、製品Aは製品B
に比べて極めて優れたものであることが確認された。
【0013】不燃性試験を建設省告示第1828号に規
定した材料試験法によって行った。前記の製品A,Bか
ら切取った40×40×50mmの試験片を750℃の
炉内に20分間置いて、炉内の温度上昇を測定したとこ
ろ製品Aは発煙着火なく、20℃の昇温があったのに対
し、製品Bは1分50秒で発煙着火を生じ、210℃の
昇温があった。また、試験後の試験片切断面を観察した
ところ、製品Aは表面から約5mmのカーボンガ失われ
て白化していたが、製品Bは全断面が白化しカーボンは
残存していなかった。
【0014】さらに前記両試験片について、10Tor
rの真空下の2.45Hzのマイクロ波加熱炉によっ
て、その耐電力試験を行ったところ、製品Bは200m
w/平方cm以上の照射エネルギーによって焼損発煙を
生じたのに対し、製品Bは500〜622mw/平方c
mで、試験片内部温度が300℃となったが、7時間の
連続照射によっても全く変質することなく、833mw
/平方cm,20分で内部温度が400℃となったが変
化は認められなかった。
【0015】つぎに、両試験片を島津製作所製オートグ
ラフSD−500の圧縮試験機により、圧縮強度を測定
したところ、製品Bの破壊加重は0.625kfg/平
方cmであったのに対し、製品Aの破壊加重は4.37
5kgf/平方cmであり、従って、電波暗室のみなら
ず電波障害防止作業室などの天井,壁,床の電波吸収材
として充分な実用性を有し得るものであった。
【0016】実施例2 実施例1における原料組成のカーボンブラック粉末量を
0.3部,2部乃至12部に変えた以外は、実施例1と
同じ条件で、カーボン含量1,5,20,30,35g
/リットルの製品を製造して、実施例1と同じ試験を行
ったところ、カーボン含量の増大とともに電波吸収能は
向上したが、30g/リットル以上のカーボン含量の場
合は前記耐熱不燃試験において炉内温度上昇が50℃以
上となり、不燃建築材料として不適であり、また機械的
強度も低下した。
【0017】実施例3 実施例1,2における水ガラス系接着剤に代えてシリカ
アルミナ系耐熱無機質接着剤(坂井化学工業社製ペタッ
ク#970)を用いて実施例1,2と略同様の試験片に
ついて同様の試験を行ったところ、殆んど差異のない性
能を有したものであった。
【0018】
【発明の効果】以上説明したとおり、本発明の電波吸収
体は、独立気泡性の無機粒子と耐熱性結合剤と該耐熱性
結合剤内に分散したカーボンブラック微粉末とよりなる
不通気性成形体であるので空気中での充分な耐熱不燃性
とともに、優れた機械的強度を有し、平板状,角錐状な
どの任意の形状の成形体が容易に製造でき、かつ苛酷な
高エネルギー電波の照射によっても安定した電波吸収能
を耐久的に維持し得るなど、電波実験,電波障害防止な
どの目的に極めて有用な電波吸収体である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山田 進一 名古屋市瑞穂区日向町2−15日向ハイツ 501 (56)参考文献 特開 昭50−126143(JP,A)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 多数の独立気泡性の無機粒子が、カーボ
    ンブラック微粉末を分散含有した耐熱性結合剤によって
    集積結合された不通気性の成形体であって、該成形体中
    のカーボンブラック含有量が成形体1リットル当り1〜
    30gであることを特徴とする耐熱不燃性電波吸収体。
  2. 【請求項2】 独立気泡性の無機粒子が、平均粒子径
    1.5〜4.5mmのガラスビーズ、シラスバルーン、
    黒曜石パーライトの群から選ばれ、耐熱性結合剤が水ガ
    ラス又はシリカ・アルミナ系の無機質接着剤である請求
    項1記載の耐熱不燃性電波吸収体。
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