JP2693325B2 - 自己修復システムを有する画像形成装置 - Google Patents

自己修復システムを有する画像形成装置

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JP2693325B2
JP2693325B2 JP3251073A JP25107391A JP2693325B2 JP 2693325 B2 JP2693325 B2 JP 2693325B2 JP 3251073 A JP3251073 A JP 3251073A JP 25107391 A JP25107391 A JP 25107391A JP 2693325 B2 JP2693325 B2 JP 2693325B2
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芳樹 下村
弘之 ▲吉▼川
哲男 冨山
靖 梅田
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三田工業株式会社
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】目次 1.産業上の利用分野 2.従来の技術 3.発明が解決しようとする課題 4.課題を解決するための手段 5.作用 (5−1)課題を解決するための手段 (5−2)「作業スクリプトの詳細化」の内容と作用 6.実施例 (6−1)システム構成の概要 (6−2)システムの動作の概要 (6−3)具体的な対象機械の構成および状態 (6−4)実体モデルと数学モデル (6−5)故障診断の手法 (6−6)修復作業の実行 (6−7)事例の検索による故障修復処理 (6−8)修復計画の推論 (6−9)副次的影響の推論 (6−10)その他 7.発明の効果
【0002】
【産業上の利用分野】この発明は、自己修復システムを
有する画像形成装置に関するものである。より詳しく
は、近年盛んに研究が行われている人工知能、知識工学
を利用して、装置が(動作状態等を自己診断し、)自己
修復し得るようにした画像形成装置に関するものであ
る。
【0003】
【従来の技術】精密機械や産業機械等の開発分野におい
ては、保全作業の省力化や自動運転の長期化を実現する
ために、最近、人工知能(ArtificialInt
elligence:いわゆるAI)技術を利用したエ
キスパートシステムの研究が盛んに行われている。エキ
スパートシステムの中には、装置に故障が生じたか否か
を自己診断し、また生じた故障を自己修復するものが見
受けられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、従来のエキ
スパートシステム(自動調節システムや故障診断システ
ム)は、基本的には、或るセンサの出力に基づいて対応
するアクチュエータを作動させるようになっていた。つ
まり、予め定めるセンサおよびアクチュエータの組合わ
せにより、一種の自動調節や故障診断がなされていた。
よって、基本的には、或るセンサは特定のアクチュタと
対応しており、両者の関係は固定的であった。それゆ
え、 (1)センサのパラメータとアクチュエータのパラメー
タとの関係は数値的に明示されていなければならないこ
と。
【0005】(2)上記(1)の理由から、センサのパ
ラメータとアクチュエータのパラメータとの関係は対象
に強く依存しており、汎用性に乏しく、様々な対象に対
して利用ができないこと。 (3)各センサ同士のパラメータ間または各アクチュエ
ータ同士のパラメータ間の関係は制御と無関係である。
したがって、対応するセンサのパラメータとアクチュエ
ータのパラメータとの関係のみに基づく単純な制御しか
行えず、対処できる故障が予め限定されていて、未知の
故障は扱えないこと。
【0006】(4)上記(3)の理由から、任意のアク
チュエータを操作したことにより生じ得る他のアクチュ
エータパラメータへの副次的影響を予測できないこと。 等の問題点があった。このように、従来の自動調節シス
テムや故障診断システムでは、予測故障AはセンサAお
よびアクチュエータAの組Aに基づいて行われ、予測故
障BはセンサBおよびアクチュエータBの組Bに基づい
て行われ、予測故障CはセンサCおよびアクチュエータ
Cの組Cに基づいて行われるという具合に、それぞれ独
立したセンサおよびアクチュエータの組に基づく故障診
断が行われ、またそれに基づく故障修復が行われていた
にすぎなかった。
【0007】そこで、本件出願人は、従来システムの欠
点を解消した画像形成装置のための新規な自己診断およ
び自己修復システムについて特許出願を行った(たとえ
ば特願2−252191号(特開平4−130459
号)参照)。この先願にかかる画像形成装置のための自
己診断および自己修復システムは、2つの大きな特徴を
備えている。
【0008】1つは、対象機械をパラメータを用いて定
性的に表わし、その定性データを用いて対象機械の故障
診断を行うこと、つまり、定性モデルベースドシステム
(Qualitative Model Based
System:以下、「QMS」という)による故障診
断を行っていることである。そしてもう1つは、QMS
処理を行うと、故障診断の結果は「故障症状」と「故
障」とによって階層的に分類されるので、それを事例と
して記憶する。また、同じ故障症状および故障に属する
複数の事例に対しては共通的な修復作業を施せることが
多いので、修復に必要な作業を、最小限の単位で、ルー
ル形式で表わす。そして、その作業単位の集合を作業ス
クリプトとして登録し、その故障症状および故障に属す
る複数の事例によって共有させる。そのようにして得ら
れた事例ベースを利用して、事例ベース修復計画システ
ム(Case Based Planing Syst
em:以下「CBS」という)を作っていることであ
る。その結果、故障症状と故障とによって階層的に分類
された事例から今回の故障症状と故障とが当てはまる事
例を選択して、選択した事例およびその事例に対応する
作業スクリプトに基づいて修復作業が行われる。
【0009】ところで、先願発明においては、CBSに
おける事例は、「故障症状」と「故障」とによって分類
されているが、事例はさらに細かく分類することが可能
と思われる。そして、事例をさらに細かく分類すること
により、事例を参照する際に、或る事例の参照に失敗し
た場合、失敗した事例と同じ分類に属する事例を選択す
ることを避け、事例選択に関する成功率を向上させるこ
とができるはずである。
【0010】本願の発明者は、かかる事例分類に関する
詳細化という点に着目し、この発明を完成した。この発
明の目的は、一言で言えば、CBSにおける事例選択に
関する成功率を向上させ、より迅速に自己修復作業が実
行可能なシステムを有する画像形成装置を提供すること
である。
【0011】
【課題を解決するための手段】上述の目的を実現するた
めに、この発明の画像形成装置は、画像形成装置の故障
を修復するための作業を記載した事例を、類に分けて記
憶する事例記憶手段と、各類の故障修復への適用優先度
を記憶する優先度記憶手段と、画像形成装置に故障が生
じたとき、その故障に対応した複数の事例を指定する事
例指定手段と、複数の指定された事例が属する類がある
場合に、その類の代表として適用すべき事例として、対
応度の一番大きい事例を選択する手段と、適用すべき事
例が属する類が複数ある場合に、各類の適用優先順位
を、属する事例の対応度の大小によって決め、対応度の
等しい事例が属する類については、適用優先度の高い類
を優先させる適用順位決定手段と、決定された適用順位
で、各類の適用すべき事例を故障修復に適用する適用制
御手段と、適用した事例が属する類と関連のある類を検
索する検索手段と、事例の適用結果に応じて、優先度記
憶手段に記憶されているその事例が属する類の適用優先
度および検索手段で検索された関連のある類についての
適用優先度を、それぞれ更新する手段と、事例の適用に
よる故障修復がすべて成功しなかったとき、画像形成装
置に関して予め定められた定性データを用いて、故障を
修復するための作業を推論する作業推論手段と、作業推
論手段で推論された作業によって故障修復に成功したと
きに、事例記憶手段に新しい類の枠組を作り、推論され
た作業を新しい類に属する事例として登録する登録手段
と、その新しい類の適用優先度を最も高くし、他の類の
適用優先度をそれに合わせて更新する手段とを有する。
【0012】
【作用】
(5−1)課題を解決するための手段の作用 この発明にかかる画像形成装置においては、故障を修復
するための作業を記載した事例が、類に分けて記憶され
ている。事例が同じ類に属するか否かは、事例が定性的
に到達可能な範囲内か否かに基づいて判断される。
【0013】それゆえ、同じ類に属する事例が複数ある
場合、1つの事例を適用して故障修復を行った結果、修
復作業が成功しなかった場合には、同じ類に属する他の
事例を適用しても、修復作業が失敗する蓋然性が高い。
よってこの発明では、画像形成装置に生じた故障と所定
の対応度を有する事例、たとえば状態パラメータの一致
度が所定の一致度以上である事例を指定したとき、1つ
の類に複数の事例が属する場合には、その類については
最も対応度の大きい事例のみが選択される。
【0014】また、適用すべき事例が属する類が複数あ
る場合には、各類の適用順位が決定される。類の適用順
位の決定は、まず、属する事例の対応度が大きい類が優
先され、対応度の等しい事例が属する類については、適
用優先度の高い類が優先される。このように類の適用順
位を決定することにより、事例適用に関する成功率が向
上する。
【0015】また、事例を故障修復に適用した結果、修
復作業が成功した場合は、適用した事例の属する類の適
用優先度が高くなるように更新される。一方、修復作業
が失敗した場合は、適用した事例の属する類の適用優先
度が低くなるように更新される。さらに、事例を故障修
復に適用した結果、故障修復が成功した場合は、適用し
た事例の属する類と関連のある、たとえば類似した類が
検索され、その関連のある類の適用優先度が高くなるよ
うに更新される。
【0016】事例が同じ類に属するか否かは、上述のよ
うに、事例同士が定性的に到達可能な範囲内か否かに基
づいてなされている。それゆえ、類が異なる場合は、定
性的に到達不可能な状態間の関係であり、故障の根本原
因の相違と考えることもできる。しかしながら、実際の
機械システムでは、故障の根本原因が同じでも、発現す
る故障症状が異なることが多い。それゆえ、故障の根本
原因が除去されていない限り、同一の故障原因により生
じる故障症状(症状が同じか異なるかは無関係)の頻度
が高い。
【0017】この発明では、かかる実際の機械システム
における故障の出現状況を考慮して、或る事例の適用に
成功した場合、その事例が属する類の優先度が高くなる
ように更新されることに加え、その事例が属する類と関
連のある類の優先度も更新し、同一の故障原因により出
現する故障に対して、最適な事例が早く適用されるよう
にする。
【0018】さらにこの発明では、適用すべき事例をす
べて適用したにもかかわらず、それによっては修復作業
を成功しなかった場合に、定性データを用いたいわゆる
定性推論により故障修復作業が推論される。そして推論
された修復作業によって故障修復に成功した場合、事例
記憶手段に新しい類の枠組が作られ、推論された修復作
業は、新しい類に属する事例として新たに登録される。
【0019】定性推論に先立って適用した事例では修復
はすべて失敗したのに対し、定性推論を用いて推論され
た作業によれば、修復が成功したのであるから、先の全
事例と、推論された作業にかかる事例とは、定性的に到
達不可能な関係にあるといえる。それゆえ、推論された
作業にかかる事例は、新たな類に属する事例として登録
される。また、この新たな類は、適用優先度が最も高く
なるようにされ、それに合わせて他の類の適用優先度が
更新される。
【0020】(5−2)「作業スクリプトの詳細化」の
内容と作用 この発明にかかる画像形成装置は、基本的にはCBSを
有している。なお、CBSの基本的な構成については、
本願出願人の先願発明に開示されているが、本願明細書
においても、後述する実例において詳しく説明する。C
BSでは、前述したように、実際の修復作業の最小単位
の操作を表現する方法として、ルール形式で記述された
「作業スクリプト」が定義される。そして、事例を拡大
解釈することを目的として、「作業スクリプトの詳細
化」という操作が導入される。作業スクリプトの詳細化
とは、作業スクリプトに対して仮説推論による論理的な
操作を加えることであり、事例の状況と現在の状況との
差異を発見し、その差異を解消することによって現在の
状況を事例の状況と定性的に等しくするための操作であ
る。
【0021】より具体的に説明する。図1に示すよう
に、たとえばパラメータAおよびパラメータBで表わさ
れる二次元空間において、FSで示す円内が装置が正常
な状態のパラメータ空間であるとする。そして、事例1
の場合は、パラメータAおよびパラメータBで表わされ
る状態位置がCS1であり、故障が生じている。そこ
で、作業スクリプトに記述された修復作業C1Rを施す
ことにより、事例1の状態位置CS1は正常なパラメー
タ空間FS内に移り、修復作業が成功する。
【0022】事例2では、パラメータAおよびパラメー
タBによって表わされる状態位置がCS2であり、この
状態に対して作業スクリプトに記述された修復作業C2
Rを施すことにより、この状態位置を正常なパラメータ
空間FS内に移すことができる。作業スクリプトに記述
された修復作業C1Rは、事例の状況がCS1で示す位
置にある場合に対して有効な修復作業である。同様に、
作業スクリプトに記述された修復作業C2Rは、事例の
状況がCS2の位置にある場合に対して有効な修復作業
である。
【0023】ところで、新たに診断された現在の故障の
状況が、CS3で示す状況の場合には、作業スクリプト
に記述された修復作業C1RもC2Rもそのまま適用す
ることはできない。そこで、現在の状況CS3と、事例
1の状況CS1との差異を発見して、CS3をCS1の
状況まで移すための操作C3R1を作業スクリプトに追
加する。これが作業スクリプトの詳細化である。あるい
は、現在の状況CS3を事例2の状況CS2に移すため
の修復作業C3R2を追加する。これが作業スクリプト
の詳細化である。そして、現在の状況CS3をたとえば
事例1の状況CS1に移すことができれば、その状況に
対しては修復作業C1Rを適用すれば、装置を正常な状
態であるパラメータ空間FS内に移すことができる。
【0024】今、現在の状況CS3を修復作業C3R1
を行うことによって事例1の状況CS1に移すことがで
き、さらに修復作業C1Rを行うことによってパラメー
タ空間FS内に移すことができたとすれば、それは作業
スクリプトの詳細化を行うことによって、事例の参照に
成功したということである。したがってこの場合は、作
業スクリプトの詳細化によって事例参照に成功した状
況、つまり現在の状況CS3と、もともとの事例、つま
り事例1の状況CS1とは、定性的に到達可能な同一範
囲内にあったと考えることができる。このような定性的
に到達可能な同一範囲内にある事例は、同じ類に属する
と定義する。
【0025】一方、現在の状況CS3を事例2の状況C
S2に移そうとしたが、それがうまくいかなかった場合
には、現在の状況CS3と事例2の状況CS2とは、も
ともと、定性的に到達不可能な関係である。それゆえ、
この関係にあるものは、違う類に属すると定義する。ま
た、或る状況において、参照に失敗した事例と参照に成
功した事例とは、定性的に到達不可能であり、違う類に
属すると定義する。また、事例の参照にすべて失敗し、
QMSによって新たに生成された事例は、それまでの事
例からは定性的に到達不可能であり、違う類に属すると
定義する。
【0026】本願出願人の先願発明にかかるCBSで
は、図2に示すように、事例は、「故障症状」と「故
障」とによって階層的に分離されていたのに対し、上述
のような定義の結果、この発明では、図3に示すよう
に、事例は、「故障症状」、「故障」および「類」によ
って、より詳細に、階層的に分類される。次に、具体的
な事例分類の例を示す。
【0027】図4を参照して説明する。一例として、C
S1からCS5までの5つの事例が存在するとする。こ
のうち、CS1、CS3およびCS4は、QMSにより
生成された修復事例であり、CS2はCS1から、CS
5はCS4から、それぞれ、事例推論による詳細化を経
て得られた事例であるとする。この場合、5つの事例は
〔CS1,CS2〕、〔CS3〕、〔CS4,CS5〕
の3つの類に分類される。
【0028】今、任意の状況Sにおいて、これらの事例
を参照する場合、状況Sとこれらの事例の状況との定性
的な距離が近いと思われる順で事例参照に関する順位が
与えられる。その順位付けの結果は、CS2、CS1、
CS4、CS3、CS5の順であったとする。このと
き、まず事例CS2を参照し、その参照に失敗した場合
は、事例CS1は参照しない。これは、事例参照に失敗
した原因は、与えられた状況Sが事例CS2の定性的到
達可能範囲にないものと判断したもので、同じ類に属す
る事例CS1についても同様であると考えることに基づ
いている。したがって、すべての事例参照に失敗する場
合は、その参照は、CS2、CS4、CS3の順で行わ
れることになる。
【0029】このように、事例の分類に「類」の概念を
導入し、事例の分類の詳細化を図ることにより、参照す
べき事例の選択に関する成功率を高めることができる。
また、事例選択のための時間の短縮化を図ることができ
る。ところで、図3に示すように、この発明では、事例
集合は類ごとに分類されている。そして、同一の類に属
する事例は、定性的に到達可能な範囲内にある。よっ
て、たとえば事例CS1と事例CS4とは定性的に到達
不可能な関係である。それゆえ、このように定性的に到
達不可能な関係にある事例(たとえばCS1とCS4)
が同じ作業スクリプト集合を共有するのは不自然であ
る。そこで、この発明においては、異なる類に属する事
例集合には、それぞれ異なる作業スクリプト集合を割り
当てることにする。つまり、図5で示すように、定性的
に到達可能な事例集合ごとに、作業スクリプト集合を共
有するようにされている。
【0030】このことは、別の観点から見ると、定性的
に到達不可能な関係にある事例同士は、故障の根本原因
が異なっていると考えられるので、共通の類に属する事
例ごとに作業スクリプト集合を割り当てる作業スクリプ
ト集合の多重化は、故障の根本原因によって作業スクリ
プト集合を分離する作業であるとみることができる。さ
らに、この発明においては、事例検索効率を向上させる
ために、故障症状および故障が等しく、類が異なる事例
に対して、類の類似性に基づいて、事例適用の優先順位
を繰り上げるという処理を施している。
【0031】各事例は、QMSの故障診断の結果である
「故障症状」と「故障」とによって階層的に分類されて
いる。そして、さらに、事例推論による修復が繰返され
る過程で「類」ごとに分類されていく。それゆえ、結果
として、「類」ごとに事例を分類する作業は、故障診断
における「故障」の分類がさらに細かくされたことにな
る。
【0032】ところで、「類」は、上述のように、定性
的に到達不可能な位置にある状態間の関係であり、故障
の根本原因の相違と考えることができる。しかしなが
ら、実際の機械システムを考察すると、故障の根本原因
が同じでありながら、発現する故障症状が異なることも
多い。たとえば、複写機を例にとると、「メインチャー
ジが上がるとかぶりが発生するが、ドラムにリークして
リセットがかかることがある」場合もあれば、「メイン
チャージが上がるとかぶりが発生するが、ドラムにリー
クし画像が乱れることがある」場合もある、というよう
に、「リセットがかかる」という故障症状が発現するこ
ともあれば、「画像が乱れる」という故障症状が発現す
ることもある。さらに、装置は、故障の根本原因が除去
されていない限り、同一の故障原因により出現する故障
症状の頻度が高い。
【0033】それゆえ、或る故障症状に関して或る類の
事例を適用して修復に成功した結果から、異なる故障症
状に関しても、類似した類に属する事例を適用すれば、
適正な修復作業が得られる可能性が高いと考えられる。
それゆえ、或る故障症状に関して或る類の事例を適用し
て修復を行い、それが成功した場合、異なる故障症状に
属する事例につき、修復を行った事例と類似した類に属
する事例がある場合、その事例の適用に関する優先順位
を繰り上げる処理を行う。
【0034】つまり、「類」による分類は、「故障症
状」および「故障」というQMSに基づく分類の「枠組
を越えている」ので、異なる故障症状に関する事例であ
っても「類」が類似している場合がある。ここに、
「類」の類似とは、各類ごとに、その類に属する事例が
共通の特徴を有していることである。具体的には後述す
る実施例で詳細に説明するが、その類に属する事例の
「修復前の状況」から共通部分を取り出すことによっ
て、類の特徴抽出が行われる。異なる故障症状の類に属
する事例同士を比較し、類に含まれるすべて事例の「修
復前の状況」がその特徴を共通にしているとき、それら
の類は類似すると判断し、事例適用に関する優先順位の
繰り上げ処理を行う。
【0035】たとえば図6に示すように、事例集合Aの
特徴がPであり、事例集合Bの特徴がQである場合にお
いて、PがQに含まれるとき(P∈Q)、事例集合Aは
事例集合Bに類似すると判断される。なお、この場合に
おいて、必ずしも事例集合Bは事例集合Aに類似する
(QはPに含まれるQ∈P)わけではない。かかる類の
類似性によって事例の適用順位を繰り上げることによ
り、事例に基づく修復において、全体的な事例適用の成
功率を向上させることができる。
【0036】
【実施例】
(6−1)システム構成の概要 図7は、この発明の一実施例のシステム構成を示すブロ
ック図である。このシステムには、対象機械である画像
形成装置上に設置された複数のセンサ1a,1b,1c
および対象機械の機能状態等を変化させるための複数の
アクチュエータ6a,6b,6cが含まれている。
【0037】複数のセンサ1a,1b,1cは、それぞ
れ、この対象機械の作動によって生じる対象機械の要素
または該機械要素間の関連状態の変化を検出するための
ものである。複数のセンサ1a,1b,1cからそれぞ
れ取込まれる情報は、増幅回路2で増幅され、A/D変
換回路3でアナログ信号からディジタル信号に変換さ
れ、システム制御回路10へ与えられる。
【0038】システム制御回路10には、ディジタル信
号/シンボル変換部11、故障診断部12、故障シミュ
レーション部13、対象モデル記憶部14、修復計画部
15およびシンボル/ディジタル信号変換部16が含ま
れている。また、修復計画部15には事例ベース記憶部
17および作業スクリプト記憶部18が接続されてい
る。
【0039】ディジタル信号/シンボル変換部11は、
A/D変換回路3から与えられるディジタル信号を、定
性的な情報に変換するためのものである。すなわち、デ
ィジタル信号を、たとえば、ノーマル,ハイおよびロー
の3つのシンボルのいずれかに変換するための変換機能
が備えられている。センサ1a,1b,1cから与えら
れる信号を、シンボル化されたこのような定性的な情報
に変換することにより、故障診断に対するアプローチが
容易になる。なお、シンボルは、この例のようにノーマ
ル,ハイおよびローの3つに限らず、オンおよびオフま
たはA,B,CおよびD等の他の表現であってもよい。
変換部11においてディジタル信号がシンボルに変換さ
れる際には、対象モデル記憶部14に記憶されている対
象機械に特有の特徴データが参照される。この特徴デー
タおよび信号変換の詳細については、後述する。
【0040】故障診断部12および故障シミュレーショ
ン部13は、ディジタル信号/シンボル変換部11で変
換されたシンボルを対象モデル記憶部14に記憶されて
いる故障診断知識と比較することにより、故障の有無を
判別し、かつ故障診断を行い、その結果として、対象機
械の故障状態を、定性的な情報、すなわちシンボルによ
って表現し出力する構成部である。
【0041】修復計画部15、事例ベース記憶部17お
よび作業スクリプト記憶部18は、故障がある場合に、
故障診断の結果である「故障症状」および「故障」に基
づいて、修復計画を推論し、修復作業を導出するための
構成部である。修復計画を推論し、修復作業を導出する
にあたっては、事例ベース記憶部17に記憶された過去
の修復成功に関する事例が検索され、検索された成功事
例を実行するための作業スクリプト(修復作業の最小単
位の操作を表現するもので、ルール形式で記載された修
復操作を行なうための作業単位の連なり;詳しくは後述
する。)が作業スクリプト記憶部18から選択される。
また、対象モデル記憶部14に記憶されている定性デー
タ(後に詳述する)が活用される。
【0042】修復計画部15から出力される修復作業
は、シンボル/ディジタル信号変換部16において、対
象モデル記憶部14の記憶情報が参照されて、ディジタ
ル信号に変換される。そして、ディジタル信号は、D/
A変換回路4でアナログ信号に変換され、アクチュエー
タ制御回路5に与えられる。アクチュエータ制御回路5
は、与えられるアナログ信号、すなわちアクチュエータ
制御命令に基づいて、複数のアクチュエータ6a,6
b,6cを選択的に動作させ、修復作業を実行させる。
【0043】(6−2)システムの動作の概要 図8は、図7におけるシステム制御回路10の処理を表
わすフローチャートである。次に、図8を参照して、図
7のシステム制御回路10の処理の概要について説明を
する。センサ1a,1bまたは1cの検出信号は、増幅
され、かつディジタル信号に変換されて、たとえば所定
の読込みサイクルごとにシステム制御回路10に読込ま
れる(ステップS1)。
【0044】読込まれたディジタル信号は、ディジタル
信号/シンボル変換部11においてシンボル化される
(ステップS2)。このシンボル化は、対象モデル記憶
部14に予め設定されている特徴データ、すなわち対象
機械に特有の基準値データに基づいてなされる。たとえ
ば、対象モデル記憶部14には、対象機械に特有の基準
値データとして、各センサ1a,1b,1cの出力範囲
が、次のように設定されている。
【0045】すなわち、 センサ1a:出力ka1 未満=ロー 出力ka1 〜ka2 =ノーマル 出力ka2 を超過=ハイ センサ1b:出力kb1 未満=ロー 出力kb1 〜kb2 =ノーマル 出力kb2 を超過=ハイ センサ1c:出力kc1 未満=ロー 出力kc1 〜kc2 =ノーマル 出力kc2 を超過=ハイ と設定されている。ディジタル信号/シンボル変換部1
1では、対象モデル記憶部14に設定されている上記対
象機械に特有の基準値データに基づいて、読込まれたデ
ィジタル信号を、それぞれ、「ロー」「ノーマル」また
は「ハイ」というシンボルに変換する。
【0046】次いで、故障診断部12において、変換さ
れたシンボルの評価がされ、故障の有無判別および故障
症状の特定がされる(ステップS3)。シンボルの評価
による故障の有無判別および故障症状の特定には、対象
モデル記憶部14に記憶されている故障診断知識が活用
される。故障診断知識とは、たとえば、特定のパラメー
タは、たとえばノーマルでなければならないという設定
条件である。当該特定のパラメータがノーマルでない場
合、故障あり、と判別され、該特定のパラメータが何か
によって、故障症状が特定される。故障がない場合に
は、ステップS1,S2およびS3のルーチンが繰返さ
れる。
【0047】ステップS3において故障ありと判別され
た場合には、対象機械の状態の推論、すなわち故障診断
および故障状態のシミュレーションがされる(ステップ
S4)。具体的には、対象モデル記憶部14に記憶され
ている、装置を構成する各要素の挙動または属性および
各要素間の結合関係を定性的に表わした定性データに基
づいて、故障診断部12において、故障を引起こしてい
るパラメータが検索され、故障シミュレーション部13
において、検索されたパラメータが故障原因であると仮
定して、故障状態のシミュレーションがされる。さら
に、故障診断部12において、シミュレーション結果と
現在のパラメータ値とが比較され、検索されたパラメー
タが故障原因であるという仮定の正当性が判断される。
以上の処理が、検索される複数のパラメータ全てに対し
て行われる。
【0048】故障の有無判別、故障診断および故障状態
のシミュレーションの結果、対象機械の「故障症状」お
よび「故障」が決定される。ここに、「故障症状」と
は、対象機械の出力状況等(たとえば、複写機を例にと
ると、「コピー画像が薄い」等)の変化であり、「故
障」とは、シンボルの変化原因となる対象機械の機構や
構造の変化(たとえば、複写機を例にとると、「ハロゲ
ンランプの光量低下」等)である。
【0049】次いで、修復計画部15によって、故障診
断および故障状態のシミュレーション結果に基づいて、
事例ベース記憶部17に記憶された多数の事例の検索が
行われる(ステップS5)。そして、現在の対象機械の
状態に近い事例の検出がされ、適用順位が決められる
(ステップS6)。この事例の検出は、故障症状および
故障が一致しているか否かに基づいて行われる。また、
適用順位の決定では、同じ類に属する事例が複数ある場
合、優先度の一番高い事例だけが適用される。
【0050】そして、適用順位付けがされた事例に基づ
く修復作業が実行される(ステップS7)。修復作業に
おいては、必要に応じて、事例の修正や修復作業の修
正、つまり作業スクリプトの詳細化がなされ、修正され
た事例は、同じ類に属する新たな事例として登録され
る。そして事例に基づく修復作業が成功した場合には処
理は終了する(ステップS8でYES)が、事例に基づ
く修復作業が成功しなかった場合(ステップS8でN
O)には、QMSによる修復方法の推論がなされ(ステ
ップS9)、さらに、副次的影響のシミュレーションが
なされ(ステップS10)、修復計画が決定されて、そ
の決定に基づく修復作業が実行される(ステップS1
1)。
【0051】ステップS9〜S11における推論および
作業の実行は、QMSによるものであり、CBSにおけ
る事例を利用したものではないが、このQMSによる推
論に基づく修復作業が成功した場合には、その修復結果
は、別の類に属する新たな事例として、事例ベース記憶
部17に登録される。次に、故障診断および故障修復の
仕方について、具体例を参照しながら詳細に説明をす
る。以下の説明では、一例として、小型普通紙用複写機
における感光体ドラム周辺部を対象機械とした場合の仕
方を説明する。
【0052】(6−3)具体的な対象機械の構成および
状態 図9は、具体的な対象機械を表わす図解図である。図9
において、21は感光体ドラム、22は主帯電チャージ
ャ、23は原稿照明用のハロゲンランプ、24は現像装
置、25は転写チャージャである。この実施例では、た
とえば3つのセンサ1a,1b,1cが設けられてい
る。すなわち、センサ1aは感光体ドラム21を露光す
る光の量を測定するためのAEセンサ、センサ1bは感
光体ドラム21の表面電位を測定する表面電位センサ、
センサ1cは用紙上にコピーされた画像の濃度を測定す
るための濃度計である。
【0053】また、図9に示されていないが3種類のア
クチュエータが設けられている。すなわち、感光体ドラ
ム21の主帯電電圧を変化させるための主帯電ボリュー
ムVR1、ハロゲンランプ23の光量を制御するための
ランプボリュームAVRおよび感光体ドラム21とコピ
ー用紙間の転写電圧(転写チャージャ25の転写電圧)
を制御するための転写ボリュームVR2という3つのボ
リュームが、アクチュエータとして設けられている。
【0054】さらに、図9に示す3つのセンサ1a,1
b,1cおよび3つのアクチュエータには、図7に示す
ものと同じシステム制御回路10が接続されている。 (6−4)実体モデルと対象モデル ところで、図9に示す対象機械を物理的な視点から捕
え、実体レベルでその対象機械を複数個の要素の結合と
して表現し、各要素の挙動および属性ならびに各要素間
の結合関係をパラメータを用いて定性的に表わすと、表
1に示す通りとなる。この表1のような表現形式を「実
体モデル」と呼ぶことにする。
【0055】
【表1】
【0056】また、実体モデルを抽象化して、各パラメ
ータの結合ツリーとして表わした図10に示す表現を
「数学モデル」と呼ぶことにする。そして、「実体モデ
ル」と「数学モデル」とを併せて「対象モデル(定性モ
デル)」と呼ぶことにする。「対象モデル」は、後述す
る故障修復のためにも活用される、画像形成装置に共通
の定性データである。
【0057】定性データとしての実体モデルおよび数学
モデルの各内容は、対象モデル記憶部14(図7参照)
に記憶されている。また、対象モデル記憶部14には、
実体モデルに含まれているパラメータのうちの所定のパ
ラメータに関して、たとえば工場出荷の際に測定された
基準値データが記憶されている。この基準値データは、
この画像形成装置に特有の特徴データである。
【0058】たとえば、この機械では、図11のよう
に、パラメータX、VS 、OS 、Vn について、それぞ
れ、ロー、ノーマル、ハイの範囲を特定する基準値デー
タが記憶されている。なお、この実施例では、上記の基
準値データは、後の故障診断や故障修復過程におけるセ
ンシングデータや機械の動作状態の変化等に応答して、
更新され得るようにされている。
【0059】また、対象モデル記憶部14には、変換さ
れたシンボルに基づいて、対象機械が正常に動作してい
るか否かを判定するための基準となる故障診断知識の一
例としての評価機能知識が記憶されている。なお、評価
機能知識、換言すれば故障診断知識は、対象装置に特有
のものであってもよいし、特有のものでなく、広く画像
形成装置に共通のものであってもよい。
【0060】この実施例の評価機能知識には、以下の知
識が含まれている。 画像濃度OS =ノーマル、 かぶり度OS ’<ノーマル、 分離性能Sp <ノーマル ここに、Os 、OS ’、Sp が上記条件でない場合に
は、対象機械は正常に動作していないことになる。
【0061】さて、通常動作における対象機械のディジ
タル化されたセンサ情報が次の値である場合を考える。 AEセンサ1aの値X=23 表面電位センサ1bの値Vs =380 濃度計1cの値Os =7 また、 光学濃度D=0の白紙原稿を使用したときの濃度計1c
の値Os =かぶり度Os ’、 ハロゲンランプを消した状態での表面電位センサ1bの
値Vs =暗電位Vn 、と定め、それらの値は、それぞ
れ、 かぶり度Os ’=50 暗電位Vn =590 であったとする。
【0062】なお、これらかぶり度Os ’および暗電位
n の測定は、マニュアル操作によって行われてもよい
し、一定条件時、たとえば対象機械の電源がオンされる
都度、またはコピー開始前毎に、センサによって自動的
に測定されるようにプログラミングされていてもよい。
この実施例では、後者が採用されている。AEセンサ1
a、表面電位センサ1bおよび濃度計1cによって得ら
れた各値X、Vs 、Os 、Os ’、Vn は、それぞれ、
ディジタル信号/シンボル変換部11においてシンボル
に変換される。変換は、前述したように、各センサ1
a,1bまたは1cから与えられるディジタル値が、対
象モデル記憶部14に記憶されている特徴データとして
の基準値データと比較されることにより行われ、ノーマ
ル、ハイまたはローの3種類のいずれかのシンボルに変
換される。
【0063】この実施例では、各パラメータは次のよう
にシンボル化される。 X=ノーマル Vs =ロー Os =ロー Vn =ロー 故障診断部12において、これらのシンボル化された各
パラメータが、対象モデル記憶部14に記憶されている
故障診断知識の一例としての機能評価知識と比較され
る。その結果、画像濃度Os がノーマルでないから、故
障ありと判定され、故障症状は「画像濃度が低い(Os
=ロー)」であると判断される。そして続いて、「Os
=ロー」を故障症状として、故障診断、つまり故障の推
論がされる。
【0064】(6−5)故障診断の手法 故障診断は、まず故障シミュレーション部13におい
て、図10の数学モデルを用いて行われ、Os =ローを
引起こす可能性のあるパラメータが探索される。図10
における数学モデルで、Os を低下させる可能性がある
パラメータを指摘すると、図12に示すようになる。図
12において、上向き矢印または下向き矢印が付された
パラメータが、パラメータOs =ローを引起こす可能性
のあるパラメータであり、上向き矢印のものはそのパラ
メータが上昇した場合に、下向き矢印のものはそのパラ
メータが低下した場合に、Os =ローを引起こす。
【0065】次に、数学モデルにおいて探索されたOs
=ローを引起こす可能性のある各パラメータζ,Ds
t ,γ0 ,Vb ,Vs ,Vn ,X,β,HL ,Dにつ
いて、故障診断部12でパラメータの変化を引起こす原
因の検出がされる。この検出は、表1の実体モデルに基
づいて行われ、この実施例では、次のような故障候補が
推論される。すなわち、 Vt =ロー:→転写トランスの不良 ζ =ロー:→用紙の劣化 Vb =ハイ:→現像バイアスの不良 γ0 =ロー:→トナーの劣化 Vn =ロー:→主帯電電圧の不良 HL =ハイ:→ハロゲンランプの設定不良 D =ロー:→原稿が薄い 上記故障候補のうちの「矢印→」の右側に記載された知
識、すなわち、転写トランスの不良、用紙の劣化、現像
バイアスの不良、…等の知識は、故障知識であり、この
知識は、画像形成装置に共通の定性データに含まれてい
る。なお、パラメータのうち、βは感光体の感度であ
り、これが上昇することはないから除外されている。D
s ,Vs およびXは、他のパラメータによって表わされ
るから、これも除外されている。
【0066】そして、故障診断部12においてされた上
記の推論に対して、故障シミュレーション部13におい
て、故障状態のシミュレーションが行われる。故障状態
のシミュレーションとは、上記推論された故障が生じた
ときの対象機械の状態を、それぞれ、推論することであ
る。より具体的には、Os =ローを引起こす原因、つま
り故障が、たとえば転写トランスの不良であると仮定
し、正常状態のモデルに対してVt =ローを設定する。
そして、その状態における各パラメータに与えられる影
響を数学モデル上で検討するのである。
【0067】たとえばVt =ローを設定した場合、Os
=ローおよびSp =ローとなり、他のパラメータはすべ
てノーマルであるから、これは、センサから得られるV
s =ローおよびVn =ローと矛盾する。それゆえ、その
故障の推論が誤っているという結果を得る。同様にし
て、ζ=ローを正常状態の数学モデル上に設定し、その
結果をセンサから得られるシンボルと比較する。この場
合も、数学モデル上ではVs =ノーマル、Vn =ノーマ
ルに対し、センサからのシンボルはVs =ロー、Vn
ローであるから、矛盾があり、その故障の推論は誤りで
あると判定される。
【0068】このようにして、全ての故障候補につい
て、故障状態のシミュレーションが行われ、故障の推論
が正しいか否かが確認される。その結果、本例の場合に
は、故障を「主帯電電圧の不良(Vn =ロー)」とした
場合に、現実の対象機械の状態と一致した結果が得ら
れ、かつそれ以外の故障候補はすべて現実の装置の状態
と矛盾するとの結論を得る。
【0069】よって、この場合の故障は、主帯電電圧の
不良であると断定できる。そのときの対象機械の各パラ
メータの状況を示すと、表2のとおりとなる。
【0070】
【表2】
【0071】表2に表わすパラメータの状況を数学モデ
ル上にトレースすると、図13が得られる。図13にお
いて、各パラメータの右側に付された下向き矢印はロ
ー、上向き矢印はハイ、Nはノーマルを表わしている。 (6−6)修復作業の実行 次に、故障診断部12および故障シミュレーション部1
3で行われた故障診断の結果に基づいて、修復作業が実
行される。
【0072】以下、図14〜図20に示すフローチャー
トの流れに従って、修復作業について、順を追って説明
をする。 (6−7)事例の検索による故障修復処理 修復作業に先立ち、まず、前述した手法に従う故障診断
がされる(ステップS21)。その結果、発生している
故障症状が「画像濃度が低い(Os =ロー)」で、その
故障症状を引き起こす原因である故障は「主帯電電圧の
不良」と診断されたとする。そのときの各パラメータ状
況を表2に示す。
【0073】次いで、上記故障診断の結果に基づいて、
適用すべき事例を決定する処理が行われる(ステップS
22)。このステップS22に示す処理の具体的内容を
図17のフローチャートに示す。図17を参照して、事
例ベース記憶部17(図7参照)に記憶された事例の中
から、故障診断結果に適合する事例が検出される(ステ
ップS221)。事例ベース記憶部17に記憶されてい
る事例は、前述したように、故障症状および故障によっ
て、階層的に分類されているとともに、類分けがされて
いる。この記憶されている事例の一例を、表3に示す。
【0074】
【表3】
【0075】表3に示すように、「画像濃度が低い」と
いう故障症状に対しては、「主帯電電圧の不良」という
故障または「ハロゲンランプ設定不良」という故障のい
ずれかが考えられる。主帯電電圧の不良の場合、類C
1,C2,C3に分類された4つの事例001,00
2、004、003が登録されている。また、3つの類
C1、C2、C3には優先度が付されており、この例で
はC3、C2、C1の順で優先度が付されている。さら
に、複数の事例が属する類C1は、特徴が記憶されてい
る。この類C1の特徴とは、類C1に属する複数の事例
に共通の特徴である。この内容については後に詳述す
る。
【0076】ハロゲンランプの設定不良の場合、類はC
4の1つで、その類C4に属する事例も005の1つだ
けである。なお、事例が1つしか属さない類は特徴を抽
出できないので、特徴はない。同様に、「画像かぶり」
という故障症状の場合は、「主帯電電圧の不良」または
「ハロゲンランプ設定不良」という2つの故障が考えら
れる。そして、「主帯電電圧の不良」の場合は、事例を
2つの類C5またはC6に分類でき、類C5に属する事
例は006,008,009という3つの事例がある。
また、類C6に属する事例は007という事例である。
そして、類C5とC6とでは、類C6の優先度が高くさ
れている。さらに、類C5に属する3つの事例の共通の
特徴が抽出されて記憶されている。
【0077】一方、故障が「ハロゲンランプ設定不良」
の場合は、類C7に属する1つの事例010のみが登録
されている。さて、上記ステップS221では、表3に
示す階層的に分類された事例から、故障診断により得ら
れた故障症状「画像濃度が低い」および故障「主帯電電
圧の不良」に属する事例001、002、004、00
3が検出される。
【0078】これら検出された4つの事例の中身を、表
4、表5、表6および表7に示す。表4〜表7に示すよ
うに、各事例には、事例番号、修復前のパラメータの状
況、修復後のパラメータの状況、故障症状、故障、修復
作業番号、適用成功数および適用失敗数が記憶されてい
る。
【0079】
【表4】
【0080】
【表5】
【0081】
【表6】
【0082】
【表7】
【0083】そこで、現在の装置の状態を表わす表2の
パラメータ状況と、表4〜表7の各修復前の状況に記憶
されたパラメータ状況とが比較される(ステップS22
2)。比較の結果は、事例001ではすべてのパラメー
タ状況が表2のパラメータ状況と一致している。事例0
02ではβが異なっている。事例003ではHL 、X、
βおよびSP が異なっている。事例004ではHL
X、Vn およびSP が異なっている。
【0084】したがって、事例適用に関する優先順位
は、001→002→003,004、と決められる。
次いで、同じ類内でのパラメータ状況の一致度の低い事
例が削除される(ステップS223)。この場合、事例
001および002は、共に類C1に属しており、事例
001に比べて事例002は、パラメータ状況の一致度
が低いので、事例の適用順位に関し、事例002は削除
される。この結果、適用順位は、001→003,00
4となる。
【0085】次いで、パラメータ状況の一致度が同じ事
例の有無が判別される(ステップS224)。上述の場
合、事例003および事例004は、パラメータ状況の
一致度が同じである。そこで、事例003と事例004
とを適用するにあたり、どちらを先に適用するかについ
ては、事例003および004が属する類C3およびC
2の優先度(表3参照)が参酌される(ステップS22
5)。この場合、類C2の優先度は「2」で、類C3の
優先度は「1」であるから、事例004に比べて事例0
03の適用が優先される。
【0086】パラメータ状況の一致度が同じ事例がない
場合は、ステップS225の処理は割愛される。そし
て、最終的に、事例の適用順位として、001→003
→004という順位付けがされる(ステップS22
6)。そして、この適用すべき事例を決定するための処
理はリターンされる。
【0087】以上の図17を参照して説明した適用すべ
き事例の決定処理に代え、図18に示すフローチャート
に従った処理により、適用すべき事例を決定してもよ
い。図18に示すフローチャートにおいて、図17に示
すフローチャートと同じステップ番号の処理、すなわち
ステップS221〜S224およびS225,S226
の処理は、前述の図17における説明と全く同じ内容で
ある。
【0088】図18のフローチャートに示す処理の特徴
は、ステップS224において、修復前のパラメータ状
況と現在の装置のパラメータ状況(表2)との一致度が
同じ事例が複数ある場合における優先順位の決め方とし
て、ステップS2241およびS2242の処理が挿入
されていることである。具体的には、パラメータ状況の
一致度が同じ事例が複数ある場合(ステップS224に
おいてYES)には、各事例に登録されている適用成功
数および/または適用失敗数が参酌される(ステップS
2241)。上述の具体例の場合、事例003および0
04はパラメータ状況の一致度が同じである。そこで、
まず、両事例003、004の適用成功数をみる。事例
003は、表6に示すように、適用成功数が「3」であ
り、事例004は、表7に示すように、適用成功数は
「1」である。それゆえ、適用成功数の多い事例003
が優先される。もし、適用成功数が等しい場合には、適
用失敗数の少ない事例が優先される。
【0089】適用成功数の参酌、または適用成功数およ
び適用失敗数の参酌の結果、複数の事例に対して適用に
関する優先付けが決定できれば(ステップS2242に
おいてYES)、検出された全事例に対し、適用に関す
る優先順位が付される(ステップS226)。もし、ス
テップS2241において、適用成功数および適用失敗
数を参酌しても、それらがいずれも等しくて優先順位が
決定できない場合(ステップS2242においてNO)
には、その事例が属する類の優先度が参酌され、優先順
位が決められる(ステップS225,S226)。
【0090】このように、事例の適用成功数の参酌、ま
たは適用成功数および適用失敗数の参酌に基づいて適用
に関する優先順位を決めるやり方は、特に、過去に数多
くの修復作業が実行されている場合において、その過去
の修復作業における結果を参酌することになり、過去の
修復作業の回数が多いほど有益である。さて、図14に
戻って説明を続ける。
【0091】適用すべき事例が決定された後(ステップ
S22)、決定された事例001およびこの事例001
に対応する作業スクリプトが、作業スクリプト記憶部1
8(図7参照)から読出され、ワークレジスタに設定さ
れる(ステップS23)。先に述べたように、事例は、
類に分けられており、同じ類に属する事例は、同じ作業
スクリプトを共有している。事例001の場合、類C1
に属していて、類C1には下記の表8に示す作業スクリ
プトが対応付けられている。
【0092】
【表8】
【0093】表8に示すように、作業スクリプトには、
インデックスとなる類C1が表記され、複数の作業1,
2,3,…が列挙されている。各作業はルール形式で記
述されており、前件部状況、前件部操作および後件部状
況からなっている。各作業は、前件部状況のときに、前
件部操作を行うと、後件部状況が得られるという意味で
ある。
【0094】具体例を表8を参照して説明すると、たと
えば作業番号1の場合、前件部状況としては、パラメー
タHL =ハイという状況であり、この状況において、ラ
ンプボリュームAVRを低下させるという前件部操作を
行うことにより、パラメータHL =ノーマルというパラ
メータ変化、つまり後件部状況が得られるという内容に
なっている。
【0095】なお、作業スクリプトは、類ごとに設定さ
れ、最小単位の作業が列挙されたものであるから、類の
数だけ作業スクリプトは存在する。図14を参照して、
事例001および表8の作業スクリプトがワークレジス
タに設定されると(ステップS23)、次に、修復計画
部15(図7参照)によって、ワークレジスタに設定さ
れた事例001の修復前のパラメータの状況(表43参
照)と装置の現状を表わすパラメータの状況(表2参
照)とが比較され、両者が完全に一致しているか否かが
確認される(ステップS24)。
【0096】今、事例001の修復前のパラメータ状況
は、装置のパラメータ状況と完全に一致しているから、
処理はステップS25へ進み、表4に示す事例001の
「修復作業」の欄に記載された番号「2」の作業が、表
8に示す作業スクリプトから選ばれて実行される。つま
り、パラメータVn =ローという前件部状況において、
主帯電ボリュームVR1を上昇させるという前件部操作
が行われる(ステップS25)。
【0097】その操作の結果、作業スクリプトに記載さ
れた後件部状況、つまりパラメータVn =ノーマルとい
う状況が得られたか否かによって、作業が成功したか否
かの判別がされる(ステップS26)。作業が成功と判
別された場合には(ステップS26でYES)、さら
に、次の作業があるか否かの判別がされる(ステップS
27)。表4で示す事例001の「修復作業」の欄に
は、上述の作業番号「2」しか記載されていないから、
次の作業はなしと判別される。もし、事例の「修復作
業」の欄に次の作業番号が記載されていれば、処理は、
ステップS25に戻り、その作業番号の作業が作業スク
リプトから選ばれて実行され、その作業が成功したか否
かの判別がされるという処理が繰返される(ステップS
25,S26)。
【0098】ステップS27において、次の作業がなく
なったと判別されると、事例001における「適用成功
数」の欄の数値が「1」増加され、成功数の更新登録が
される(ステップS28)。そして、その後、類の優先
度の操作(その1)が行われる(ステップS29)。ス
テップS29で行われる類の優先度の操作(その1)の
手順を、図19のフローチャートに示す。
【0099】次に、図19を参照して、類の優先度の操
作(その1)の仕方について、具体的に説明する。これ
までの処理によって、故障症状「画像濃度が低い」で、
故障「主帯電電圧の不良」であった装置に対し、事例0
01を適用することによって修復作業を行った結果、そ
れが成功した。それゆえ、この成功事例001が属する
類の優先度が上げられる(ステップS291)。各事例
は、既に説明した表3に示すように、類ごとに分けて登
録されており、かつ、類ごとの優先度が設定されてい
る。この説明にかかる具体例の場合、事例001の属す
る類C1の優先度は、表3に示すように、「3」であっ
た。しかし、今回、事例001に基づく修復作業が成功
したので、表9に示すように、事例001が属する類C
1の優先度は、「3」から「1」に上げられる。つま
り、もっとも優先度が高くされる。また、それに伴い、
故障症状「画像濃度が低い」で故障「主帯電電圧の不
良」に属する他の類C2およびC3の優先度が操作され
る。具体的には、類C3の優先度は「1」から「2」
に、類C2の優先度は「2」から「3」に1つずつシフ
トされる。よって、この故障症状および原因に属する3
つの類C1,C2およびC3の類間の優先度は、C1、
C3およびC2の順序に変更される。
【0100】
【表9】
【0101】次に、成功した事例001が属する類C1
の特徴Pが読出される(ステップS292)。この類C
1の特徴Pとは、次の内容をいう。すなわち、類C1に
属する複数の事例001および002の各修復前の状況
を表わすパラメータ値に関して、たとえば「ノーマルで
ない」ということで共通しているパラメータがこの類の
特徴として抽出される。
【0102】類C1に属する2つの事例001および0
02の中身は、それぞれ、表4および表5に示すとおり
である。表4に示す事例001の修復前の状況に列記さ
れたパラメータのうち、ノーマルでないパラメータは、
n 、Vs 、Ds 、Os およびSP である。一方、表5
に示す事例002の修復前の状況に列記されたパラメー
タのうち、ノーマルでないパラメータは、β、Vn 、V
s 、Ds、Os およびSP である。よって、これら2つ
の事例001および002において共通的にノーマルで
ないパラメータは、パラメータVn 、Vs 、Ds 、Os
およびSP であり、これがその類の特徴Pとして抽出さ
れ、記憶されている。なおこの場合において、抽出され
るパラメータは、ノーマルでなければよく、あるパラメ
ータに関して、事例001ではハイであるが、事例00
2ではローである場合も、そのパラメータは特徴となる
パラメータとして抽出される。
【0103】あるいは、各修復前の状況を表わすパラメ
ータのうち、「ノーマルである」ということで共通して
いるパラメータを抽出し、類の特徴としてもよい。な
お、類の特徴は、その類に属する事例が複数ある場合に
おいて初めて抽出され得るものであり、その類に属する
事例が1つしかない場合には、特徴は抽出不可能であ
る。
【0104】ステップS292では、事例C1の特徴
P、すなわち修復前の状況において、パラメータVn
s 、Ds 、Os およびSP がノーマルでないという内
容が読出され、ワークレジスタへストアされる。次い
で、類C1が属する故障症状と異なる故障症状に属する
類の有無が判別される(ステップS293)。この具体
例の場合、表9に示すように、類C1が属する故障症状
「画像濃度が低い」とは異なる故障症状「画像かぶり」
に属する類としては、類C5、C6およびC7が存在す
る。
【0105】異なる故障症状に属する類がある場合には
(ステップS293でYES)、その類の特徴Qが検出
される(ステップS294)。具体的には、まず類C5
の特徴Qが表9(この表9は、事例ベース記憶部17に
記憶されている。)から検出される。類C5の特徴Q
は、パラメータVn 、Vs 、Ds およびOs がノーマル
でないということである。
【0106】次いで、ステップS292でワークレジス
タに記憶された類C1の特徴Pと、ステップS294で
検出された類C5の特徴Qとが比較され、特徴Pは特徴
Qに類似するか否かの判別がされる(ステップS29
5)。特徴Pが特徴Qに類似するとは、特徴Pを構成す
るすべてのパラメータが特徴Qを構成するすべてのパラ
メータに含まれている場合をいう。この具体例では、特
徴Pを構成するパラメータにはSP が含まれているが、
特徴Qを構成するパラメータには当該パラメータSP
含まれていないので、特徴Pは特徴Qに類似しない。よ
ってこの具体例の場合、ステップS295の処理はNO
である。
【0107】ステップS295において、もし特徴Pが
特徴Qに類似する場合(たとえば、特徴Pを構成するパ
ラメータはVn 、Vs およびDs であり、特徴Qを構成
するパラメータはVn 、Vs およびDs であるかまたは
これに加えてその他のパラメータが含まれている場合)
には、処理はステップS296へ進む。ステップS29
6では、その類C5の優先度にフラグが付けられる。こ
のフラグ付けは、後述するステップS298において、
類の優先度を更新する場合に、優先度を更新すべき類で
あることを表示するために付されるものである。
【0108】次いで、処理をすべき類が他にあるか否か
の判別がされる(ステップS297)。処理をすべき類
は、類C5の他に、類C6およびC7があるから、類C
6およびC7に対して、それぞれ、ステップS294か
らの処理が順に行われる。なお、この具体例では、類C
6にもC7にも、それぞれ、単一の事例しか属していな
いので、これら類C6,C7の特徴は抽出できないか
ら、これら類C6,C7の優先度にフラグが付されるわ
けではない。
【0109】ステップS297において他に類がなくな
った場合には、ステップS298へ進み、フラグ付けさ
れた類の優先度が上がるように、その類が属する故障症
状および故障に含まれる類の優先度が更新される。この
具体例では、類C5の優先度にはフラグが付けられてい
ない(ステップS295でNOへ進んだから。)ので、
表9に示すように、類C5と類C6との優先度は変わら
ない。しかし、もし、ステップS296において類C5
の優先度にフラグ付けがされたとすれば、ステップS2
98においては、類C5の優先度が「1」にされ、それ
に伴って、残りの類C6の優先度は「1」から「2」に
下げられることになる。
【0110】さて、図14のステップS26に戻って、
作業が実行されても、その作業に記載の後件部状況が得
られなかった場合は、作業失敗と判別され(ステップS
26でNO)、その事例の「適用失敗数」の欄(たとえ
ば表4参照)の数値が「1」増加するように失敗数が更
新される(ステップS30)。そして、次の優先順位の
事例の有無が判別され(ステップS31)、次の事例が
ある場合には(ステップS31でYES)、次の事例に
対して、ステップS23からの処理が行われる。
【0111】ステップS31で、次の適用優先順位の事
例がなくなった場合には、QMS処理が行われる(ステ
ップS32)。このQMS処理は、後に詳述する副次的
影響を考慮した処理であることが好ましい。そして、Q
MS処理が成功したか否かの判別がされ(ステップS3
3)、QMS処理が成功したと判別されると(ステップ
S33でYES)、QMS処理によって得られたデータ
に基づいて新たな事例が作成される(ステップS3
4)。この作成された新たな事例に対しては、新たな類
が作られ、事例番号が付けられて登録される(ステップ
S35)。
【0112】表10に新たな事例の登録例を示す。表1
0において、新たな事例030は、それまでの類C1,
C2,C3とは異なる新しい類C10に属するものとし
て登録されている。
【0113】
【表10】
【0114】さらに、新事例030が属する類の優先度
は「1」とされ、最も高い優先度が与えられる。そし
て、それに伴い、故障症状「画像濃度が低い」で故障
「主帯電電圧の不良」に属する他の類の優先度が順次シ
フトされる。つまり、表10に示すように、類C1の優
先度は1から2に、類C2の優先度は3から4に、類C
3の優先度は2から3に変えられる(ステップS3
6)。
【0115】ステップS33において、QMS処理が不
成功に終わった場合は、新事例の作成はされず、処理は
終了する。さて、図14のステップS24において、適
用すべき事例の修復前のパラメータ状況が故障装置のパ
ラメータ状況と完全に一致していない場合には、処理
は、図15のステップS37へ進む。
【0116】図15を参照して、ステップS37では、
適用すべき事例、この適用すべき事例をたとえば事例0
01とすれば、表4で示す事例001の「修復作業」の
欄に記載された番号「2」の作業が、表8に示す類C1
の作業スクリプトから取り出され、指定される。そし
て、作業2の前件部状況Vn =ローと、表2に示す故障
装置のパラメータVn の状況とが比較され、両パラメー
タ状況の一致または不一致が判別される(ステップS3
8)。
【0117】この具体例の場合、故障装置のパラメータ
状況は指定された作業2の前件部状況と一致しているか
ら、作業2が実行される(ステップS39)。ステップ
S39における作業の実行後、作業が成功したか否かが
判別され(ステップS40)、成功した場合には次の作
業の有無が判別される(ステップS41)。ステップS
38において、もし、故障装置のパラメータVn がノー
マルであったとすれば、作業2の前件部状況であるVn
=ローと一致していない。かかる場合、装置のパラメー
タ状況を作業の前件部状況と一致させるために、ステッ
プS42〜S45で述べる追加処理1が実行される。
【0118】すなわち、処理はステップS42へ進み、
表8に示す作業スクリプトにおいて、故障装置のパラメ
ータ状況を作業2の前件部状況に一致させられるような
別の作業があるか否かの検索がされる。つまり、この具
体例の場合、故障装置のパラメータ値Vn =ノーマルを
ローにすることができる作業があるか否かが判別され
る。
【0119】表8を見ると、作業5によって、パラメー
タVn をノーマルからローにできることがわかる。よっ
て、ステップS43ではYESと判断され、表4で示す
事例001の「修復作業」の欄が「2」から「5,2」
に仮訂正され、該仮訂正をしたことを表わすために、フ
ラグAがセットされる(ステップS44)。次いで、仮
訂正により加えられた作業5が実行され(ステップS4
5)、該作業5が成功したか否かの判別がされる(ステ
ップS40)。この作業5の実行に成功した場合には
(ステップS40でYES)、次の作業の有無が判別さ
れる(ステップS41)。この場合、次の作業として作
業2が存在するから、処理は再びステップS37へ進
み、次の作業2が指定され、その前件部状況と故障装置
のパラメータ状況とが比較される。その結果、故障装置
のパラメータ状況は、ステップS45における作業5の
実行によって、Vn =ローとされたので、作業2の前件
部状況と一致している。よって、ステップS38で、Y
ESと判別され、作業2が実行される(ステップS3
9)。
【0120】ところで、ステップS39またはS45に
おいて、前件部操作が実行されてもなお後件部状況が得
られなかった場合には、作業は失敗したと判断される
(ステップS40)。換言すれば、ある作業を行った結
果のパラメータ状況(作業後の故障装置のパラメータ状
況)がその作業において設定されているパラメータ状況
(後件部状況)にならなかった場合、その作業は失敗と
判別される。
【0121】そしてこのときは、以下の図16の流れに
沿って説明するような作業失敗の原因を回避するための
追加処理2が実行される。すなわち、まず、失敗にかか
る適用事例と同じ故障症状および故障に属する全ての事
例が検索されるとともに、それら事例のうち、「修復作
業」の欄に、失敗にかかる作業番号が記載されている全
ての事例が検出される(ステップS51)。
【0122】今、具体例に沿ってわかりやすく説明する
ために、失敗にかかる適用事例が001とすれば、表3
に示すように、その事例と同じ故障症状および故障に属
する事例は、002,003,004であり、いずれの
事例も、「修復作業」の欄に、事例001の失敗にかか
る作業番号2と同じ作業番号2が記載されている(表
4、表5、表6および表7参照)。よって、事例002
〜004が検出される(ステップS51)。
【0123】そして、失敗にかかる適用事例001およ
び検出された事例002,003,004の修復前のパ
ラメータ状況を比較して、パラメータ状況の共通点が抽
出されるとともに、抽出された共通点が表2に示す故障
装置のパラメータ状況と比較される(ステップS5
2)。そしてその結果、各事例における修復前のパラメ
ータ状況の共通点と、故障装置のパラメータ状況との相
違点の有無が判別される(ステップS53)。
【0124】表4〜表7に示す事例001〜004と、
表2に示す故障装置のパラメータ状況とを比較しても、
この具体例の場合そのようなパラメータは見つからな
い。そこで、今仮に、事例001〜004の修復前のパ
ラメータ状況において、共通してVt =ローであると仮
定して、以下の説明をすることにする。そうすると、ス
テップS53において、事例001〜004の修復前の
パラメータ状況における共通点であり、かつ、故障装置
のパラメータ状況との差異として、パラメータV t が取
り上げられる。すなわち、各事例001〜004の修復
前のパラメータ状況においては、共通的にVt =ローで
あるが、故障装置のパラメータ状況では、Vt =ノーマ
ルである。
【0125】それゆえ、ステップS53ではYESと判
別され、パラメータVt =ローが、今回の作業の失敗原
因であると仮説され、このパラメータVt をローからノ
ーマルにすることのできる作業が、表8に示す作業スク
リプトの中から検索され(ステップS54)、その有無
が判別される(ステップS55)。表8の作業スクリプ
トを見ると、作業3によって、パラメータVt をローか
らノーマルに変更できることがわかるから、作業有りと
判別される(ステップS55でYES)。
【0126】そしてこの場合には、失敗にかかる適用事
例001(表4参照)の「修復作業」の欄が仮訂正さ
れ、作業番号「2」に先立ち、作業番号「3」が挿入さ
れる。また、この仮訂正をしたことを表わすため、フラ
グBがセットされる(ステップS56)。次いで、作業
3が実行される(ステップS57)。そして、作業3が
実行された結果、Vt =ノーマルになった場合、作業成
功と判別される(ステップS58でYES)。
【0127】この場合において、Vt =ノーマルは、作
業2の前件部状況として必須の条件である。よって、表
8に示す作業スクリプトの作業2の前件部状況にVt
ノーマルが追加されるよう訂正され、表8の作業スクリ
プトは、下記の表11に示すように書換えられる(ステ
ップS59)。
【0128】
【表11】
【0129】表11に示す作業スクリプトでは、作業2
の前件部状況が「Vn =ロー、(かつ、)Vt =ノーマ
ル」になっている。そして、再び、図15に示すステッ
プS37からの処理が行われる。図16のステップS5
8において、作業が成功しなかったと判別された場合に
は、他にパラメータVt をローからノーマルにすること
のできる作業が表8に示す作業スクリプトの中にあるか
否かが判別され(ステップS60)、作業があればステ
ップS56からの処理が繰返される。
【0130】また、ステップS60で他の作業がないと
判別されたとき、または、ステップS53において異な
るパラメータがないと判別されたとき、または、ステッ
プS55において作業はないと判別されたとき、あるい
はまた図15に示すステップS43において作業がない
と判別されたときには、いずれも、ステップS61へ進
み、フラグAおよびBがリセットされる。また、この場
合、事例適用に失敗したので、事例の「適用失敗数」の
欄の数値が「1」増加される(ステップS62)。そし
て、他の事例、すなわち次の適用優先順位の事例がある
か否かが判別される(ステップS63)。
【0131】そして、次の事例がある場合には(ステッ
プS63でYES)、その事例および対応する作業スク
リプトがワークレジスタに設定され(ステップS6
4)、図15に示すステップS37からの処理が行われ
る。一方、ステップS63において、次の適用優先順位
の事例がないと判別された場合には、処理は図14に示
すステップS32へと進み、QMS処理が行われる。
【0132】さて、図15に戻って、ステップS41で
次の作業がないと判別された後の処理について説明をす
る。この場合、フラグAまたはBの状態が判別される
(ステップS46)。状態判別の結果、フラグAもBも
セットされていないと判別される場合とは、それまでの
処理において、故障装置のパラメータ状況と選択された
作業の前件部状況とが一致しており、その作業を実行し
た結果作業が成功した場合である。それゆえ、この場合
は、ステップS47で、適用した事例、たとえば事例0
01の「適用成功数」の欄の数値が「1」増加される。
そして、類の優先度の操作(その1)が実行される(ス
テップS48)。このステップS48における類の優先
度の操作(その1)は、図14のステップS29におい
て行った操作と全く同じ操作である。それゆえ、ステッ
プS48の操作の具体的な内容については、説明が重複
しないよう、ここでは省略する。
【0133】一方、ステップS46において、フラグA
またはBのいずれかがセットされていると判別された場
合を考える。フラグAがセットされている場合とは、ス
テップS42〜S45の追加処理1が行われた場合であ
る。具体的には、事例の「修復作業」の欄に記載の番号
の作業を、作業スクリプトから選択して、その作業を行
おうとしたけれども、故障装置のパラメータ状況がその
作業の前件部状況と一致していないので、その作業を行
うことができず、その作業を行う前に、故障装置のパラ
メータ状況を上記前件部状況と一致させるための別の作
業を行ってうまくいった場合である。換言すれば、先に
説明した「作業スクリプトの詳細化」という操作を導入
し、その詳細化によって事例参照に成功した場合であ
る。
【0134】一方、フラグBがセットされている場合と
は、ステップS51〜S59の追加処理2が行われた場
合である。具体的には、選択された作業における前件部
状況の特定が不十分であったために作業が成功しなかっ
た場合に、その作業の前件部状況を特定するとともに、
それに合うように故障装置のパラメータ状況を変化させ
る作業があり、それら作業を行うことによって故障装置
のパラメータ状況と選択された事例の前件部状況との差
異がなくなり、作業が成功した場合である。この場合
も、広い意味で、「作業スクリプトの詳細化」という操
作を導入した結果、詳細化によって事例参照に成功した
状況であるといえる。
【0135】それゆえ、フラグAまたはBがセットされ
ている場合とは、「作業スクリプトの詳細化」という操
作が導入され、定性的に到達可能な範囲内において、元
の事例が修正されて新たな事例が生成されたということ
を意味している。そして、この生成された新たな事例
は、元の事例と同じ類に属すると考えるべきである。こ
の点については、この発明の概要のところでも述べたと
おりである。
【0136】そこで、ステップS46においてフラグA
またはBがセットされていると判別された場合には、ス
テップS49へ進み、生成された新たな事例が元の事例
と同じ類に登録され、その後、フラグAおよび/または
Bはリセットされる。表12にこの新たな事例が登録さ
れた後の事例ベース記憶部17(図7参照)の記憶内容
の一例を示す。表12に示すように、類C1に属する事
例として、新たに、事例040が登録されている。
【0137】
【表12】
【0138】また、この新事例040の内容を、表13
に示す。
【0139】
【表13】
【0140】この表13に示す事例040の前件部状況
を事例001の前件部状況(表4参照)と比較すると、
パラメータVt =ローである点が、事例001と異なっ
ている。それゆえ、この事例040を適用するにあたっ
ては、まず、パラメータVt をローからノーマルにする
必要があるので、この事例040の「修復作業」の欄に
は「3,2」という作業番号が記載されている。
【0141】そしてその後、類の優先度の操作(その
2)が実行され(ステップS50)、処理は終わる。次
に、ステップS50における類の優先度の操作(その
2)の具体的処理手順につき、図20ならびに表12お
よび表13を参照して説明する。類の優先度の操作(そ
の2)では、まず、現在参照していた事例、たとえば事
例001が属する類C1の中に、生成された新事例の事
例番号040が登録される(ステップS501)。表1
2に示すとおり、類C1の事例番号の欄に、「001,
002」に加え、「040」が追加される。
【0142】そして、今回の事例適用においては、この
新事例040を適用した結果修復処理が成功したので、
この新事例040を含む類C1の優先度が最も高められ
る。すなわち、類C1の優先度の欄は、それまでの
「2」から「1」に書換えられる(ステップS50
2)。また、類C1の優先度を「1」としたことに伴
い、この類と同じ「故障」に属する残りの類C2,C
3,C10の優先度も、順次シフトされる。その結果、
類C2の優先度は「4」のまま、類C3の優先度は
「3」のまま、類C10の優先度は「1」から「2」に
シフトされる。
【0143】次に、今回新事例が追加登録された類C1
に属する各事例(新事例も含む)、この具体例では事例
001,002,040という3つの事例における各修
復前の状況が照会され、この類C1の特徴P1 が抽出さ
れる(ステップS503)。特徴P1 の抽出の仕方は、
先に説明した特徴の抽出の仕方と同様である。念のため
に、具体例を参照しながら説明する。表4に示す事例0
01、表5に示す事例002および表13に示す事例0
40の各修復前の状況に記憶されたパラメータ状況を比
較する。そして、ノーマルでないパラメータ、すなわち
ローまたはハイのパラメータを抽出し、抽出されたパラ
メータのうち事例001,002および040に共通し
て取り出されたパラメータが、特徴P1 を構成するパラ
メータとして抽出される。具体的には、パラメータ
n 、Vs 、Ds およびOs が特徴P1 を構成するパラ
メータとして抽出される。そしてこの特徴P1 を構成す
るパラメータは、表12の類C1の特徴として登録され
る。
【0144】次いで、今回抽出された特徴P1 は、この
類C1の特徴として既に登録されていた特徴Pと一致す
るか否かの判別がされる。先に登録されていた類C1の
特徴Pは、表3に示すように、Vn 、Vs 、Ds 、Os
およびSP であり、SP を含んでいる点で、今回抽出さ
れた特徴P1 とは一致していない。よってこの具体例の
場合は、ステップS504でNOと判別される。
【0145】そして、この場合は、表12に示すよう
に、類C1の特徴は、今回抽出された特徴P1 に書換え
られる。つまり、今回抽出された特徴P1 が類C1の特
徴として再登録される(ステップS506)。次に、類
C1が属する故障症状「画像濃度が低い」と異なる故障
症状に属する類の有無が判別される(ステップS50
6)。この具体例の場合、表12に示すように、異なる
故障症状に属する類としては、故障症状「画像かぶり」
に属する類C5、C6およびC7が存在する。それゆえ
具体例では、ステップS506においてYESと判別さ
れる。
【0146】そしてその場合、類C5,C6,C7の各
特徴と、上述した類C1の特徴P1 とが順次比較され
る。具体的には、まず、類C5の特徴Qが検出される
(ステップS507)。この特徴Qは、表12に示すと
おり、パラメータVn 、Vs 、Ds およびOs がノーマ
ルでないという内容である。
【0147】次いで、類C1の特徴P1 と類C5の特徴
Qとが比較され、特徴Pは特徴Qに類似するか否かの判
別がされる(ステップS508)。この具体例では、表
12に示すように、特徴P1 はパラメータVn、Vs
s およびOs で構成されており、特徴Qはパラメータ
n 、Vs 、Ds およびOs で構成されている。よっ
て、P1 =Qである。したがって、特徴P1 は特徴Qに
類似する。よって、類C5の優先度にフラグ付けがされ
る(ステップS509)。
【0148】次いで、処理をすべき類が他にあるか否か
の判別がされる(ステップS510)。処理をすべき類
は、類C5の他に、C6,C7があるので、これらが順
次、ステップS507〜S510のステップに従って処
理される。なお、類C6およびC7には、いずれも、1
つの事例しか属していないので、これら類の特徴はない
から、これら類C6,C7の優先度にフラグが付される
わけではない。
【0149】次いで、ステップS511において、フラ
グ付けがされた類C5を含む故障「主帯電電圧の不良」
に属する2つの類C5およびC6の優先度が更新され
る。具体的には、特徴P1 と類似する特徴Qを有する類
C5の優先度が最優先され、類C5の優先度は「2」か
ら「1」へ変更される。また、それに伴い、類C6の優
先度は「1」から「2」へ変更される。
【0150】このように、今回適用に成功した事例が属
する類C1の優先度が上げられると共に、その事例が属
する故障症状とは異なる故障症状に属する類において、
今回適用に成功した事例と類似する特徴を有する類の優
先度が高められる。この結果、「類」の利用による事例
検索効率の向上を図ることができる。なぜならば、
「類」による事例の分類は、「故障症状」および「故
障」による事例の分類、換言すればQMS処理による事
例分類の枠組みを越えているので、その枠組みを越えた
別の分類方法によって類分けされた事例に対し、共通の
特徴を有するものについて事例適用に関する優先順位を
繰り上げる。そうすると、実際の機械システムにおいて
しばしば発生する、根本原因は同じでありながら発現す
る故障症状が異なるという現象に効率よく対処すること
ができるのである。
【0151】また、図17を参照して説明した適用すべ
き事例を決定する処理において、ステップS222で装
置のパラメータと事例の修復前のパラメータとを比較
し、その結果、ステップS223で、同じ類内でのパラ
メータ状況の一致度の低い事例を削除していた。図18
に示す適用すべき事例を決定する処理においても同様で
あった。
【0152】しかし、適用すべき事例を決定する処理
は、これに限らず、ステップS223で行っている同じ
類内でのパラメータ状況の一致度の低い事例を削除する
という処理を省略してもよい。つまり、図17または図
18に示す適用すべき事例を決定する処理において、ス
テップS223の処理を省略してもよい。ステップS2
23の処理を省略した場合、適用すべき事例には、同じ
類に属する複数の事例が含まれている場合がある。それ
ゆえこの場合は、先に適用した事例が失敗する度に、次
に適用する事例が先に適用した失敗にかかる事例と同じ
類に属するか否かを判別すればよい。具体的には、図1
4に示すステップS30から後の処理に少し修正を加え
るとともに、図16に示すステップS62から後の処理
に少し修正を加えればよい。
【0153】図21(A)および(B)に、修正を加え
る処理の具体例を示す。次に、図21を参照して説明す
ると、ステップS30において、失敗数が更新された
後、その失敗にかかる事例の属する類がバッファメモリ
等に記憶される(ステップS100)。そしてその後、
次の優先順位の事例の有無が判別される(ステップS3
1)。そして次の事例がある場合には(ステップS31
でYES)、次の事例が失敗に係る事例と同じ類に属す
るか否かの判別がされる(ステップS101)。次の事
例が失敗にかかる事例と同じ類に属しなければ、処理は
ステップS23(図14)へ進み、次の事例が失敗にか
かる事例と同じ類に属する場合は、ステップS31へ戻
り、その事例のさらに次の優先順位の事例の有無が判別
される。このようにして、事例を適用する直前に、適用
する事例が失敗にかかる事例と同じ類に属するか否かが
判別され、同じ類に属するなら、その事例の適用は省
く。同様に、図21(B)を参照して、ステップS62
において失敗数の増加処理がされた後、その失敗にかか
る事例の属する類がバッファメモリ等に記憶される(ス
テップS102)、そして、他の事例、すなわち次の適
用優先順位の事例の有無が判別され、次の事例がある場
合には(ステップS63でYES)、次の適用優先順位
の事例は、ステップS102で記憶された失敗にかかる
事例が属する類と同じ類に属するか否かの判別がされる
(ステップS103)。次の適用優先順位の事例が失敗
にかかる事例の属する類と同じ類に属しなければ、処理
はステップS64(図16)へ進む。しかし、次の適用
優先順位の事例が、失敗にかかる事例が属する類と同じ
類に属する場合には、処理は、ステップS63へ戻り、
その事例よりもさらに次の適用優先順位の事例があるか
否かの判別がされる。この結果、事例を適用する直前
に、その事例が、失敗にかかる事例が属する類と同じ類
か否かの判別がされ、同じ類であれば、その適用が省略
される。
【0154】修復作業の実行にあたって、以上説明した
事例の検索および事例の適用という手法を採用すること
は、上記具体例で説明したような小形普通複写機等の装
置に対して特に有効である。なぜならば、小形普通複写
機に代表されるような装置は、その構成系中に、制御対
象として不安定な要素(たとえば化学的変化を積極的に
利用すること等)を有している。それゆえ、構成系が置
かれる状態の変化、たとえば環境変化や構造上の劣化等
によって、センサのパラメータおよびアクチュエータの
パラメータ間の関係が変化する可能性がある。上記具体
例の説明における事例の検索は、かかるパラメータ間の
変化を装置がランニング中に収集し、それを使った一種
の学習を行わせ、知識のチューニングをしているという
ことができるから、上記のパラメータ間の変化が生じて
も、それに有効に対処した修復作業を行うことができ
る。つまり、対象機械のパラメータ間の関係が変化した
場合、その変化に基づいて事例が修正されて新しい事例
が作成され、また、作業スクリプトの内容が修正されて
いるのである。
【0155】(6−8)修復計画の推論 次に、14図のステップS32に示すQMS処理の仕方
およびその処理における副次的影響の推論について説明
をする。故障判別の結果、「画像濃度が低い(Os =ロ
ー)」が故障症状として取上げられたから、修復の目標
は、Os を上昇させることである。
【0156】そこで、図10に示す数学モデル上の関係
から、Ds を上昇させるか、Vt を上昇させるか、また
は、ζを上昇させるかによって、修復目標であるOs
上昇させることができると推論される。次に、Ds を上
昇させることを目標に推論を行うと、Vs を上昇させる
か、V b を下降させるか、または、γ0 を上昇させるか
のいずれかの結論を得る。このように、数学モデルに基
づいて、推論が繰返されることにより、修復操作の候補
を数学モデル上で得ることができる。得られた結果は、
表14に示すとおりである。
【0157】
【表14】
【0158】ところで、数学モデルに基づいて得られた
修復候補には、実現できるものと実現できないものとが
ある。たとえば、 D:原稿の光学濃度 は変更できないし、 β:感光体の感度 も変更し難い。
【0159】γ0 :トナーの感度 も変更できないし、 ζ:用紙の感度 も変化不可能である。また、この具体例では、 Vb :バイアス電圧 も、アクチュエータがないから変化不可能である。もち
ろん、アクチュエータを追加することにより、Vb は変
化可能にすることができる。
【0160】さらに、 X:原稿反射光量の対数 Vs :露光後のドラムの表面電位 Ds :ドラム上でのトナー濃度 については、それ自体の変更は不可能で、間接的に他の
パラメータを変化させることで変化させられるだけであ
り、ここでは修復候補から除外する。
【0161】なお、この具体例では直接関係ないが、 Asp:分離用AC電圧の振幅 も、アクチュエータ追加により、変化させることができ
る。以上の次第で、この具体例では、修復候補として、 Vt :転写電圧 Vn :主帯電後の表面電位 HL :ハロゲンランプ出力光量の対数 がとりあげられる。
【0162】一方、対象モデル記憶部14には、修復計
画知識として、次の知識が予め記憶されている。すなわ
ち、 (a)Vt を上昇させる→転写トランスのコントロール
電圧を上げる (b)Vt を下降させる→転写トランスのコントロール
電圧を下げる (c)Vn を上昇させる→主帯電トランスのコントロー
ル電圧を上げる (d)Vn を下降させる→主帯電トランスのコントロー
ル電圧を下げる (e)HL を上昇させる→ハロゲンランプコントロール
信号を高電圧側にシフトする (f)HL を下降させる→ハロゲンランプコントロール
信号を低電圧側にシフトする。 である。この対象モデル記憶部14に記憶された修復計
画知識は、この装置に特有の特徴データである。該修復
計画知識を数学モデルに基づいて得られた修復候補に適
用することにより、Os を上昇させるための修復操作と
して、 (a)Vt を上昇させる→転写トランスのコントロール
電圧を上げる (c)Vn を上昇させる→帯電トランスのコントロール
電圧を上げる (f)HL を下降させる→ハロゲンランプコントロール
信号を低電圧側にシフトする の3方法が得られる。
【0163】画像濃度OS を単に上昇させるだけであれ
ば、これら3方法のうちのいずれの方法を実行しても、
修復が可能である。しかしながら、対象機械は、画像濃
度OS を上昇させることにより、種々の副次的な影響を
受けることが考えられる。そこで、この実施例では、以
下に説明するように、副次的な影響の推論を、数学モデ
ルに基づいて行っている。
【0164】(6−9)副次的影響の推論 修復計画の推論において導かれた3つの修復計画を数学
モデル上に展開すると、図22ないし図27が得られ
る。つまり、(a)Vt を上昇させた場合が図22およ
び図23(図23はD=0とした場合のOs ’が数学モ
デル上で表わされている)、(c)Vn を上昇させた場
合は、図24および図25(図25はD=0とした場合
のOs ’が数学モデル上で表わされている)、(f)H
L を下降させた場合は図26および図27(図27はD
=0とした場合のOs ’が数学モデル上で表わされてい
る)となる。
【0165】そして、数学モデルに基づいて機能評価を
行うと、次の状態が推論される。すなわち、 (1)Vt を上昇させた場合(図22、図23) (a)出力画像濃度が上昇する。 (b)D=0のとき、Os ’>ノーマルの場合がある。
つまり、かぶりが発生する可能性がある。
【0166】(c)Sp >ノーマルとなり、分離不良が
発生する可能性がある。 (2)Vnを上昇させた場合(図24、図25) (a)出力画像濃度が上昇する。 (b)D=0のとき、Os ’>ノーマルとなり、かぶり
が発生する可能性がある。 (3)HLを下降させた場合(図26、図27) (a)出力画像濃度が上昇するだけで、他の副次的な影
響はない。
【0167】よって、修復計画部15では、副次的な影
響の最も少ない修復計画、すなわちHLを下降させると
いう修復計画が選択される。この修復計画は、故障診断
で得られた故障を解消するための操作と一致している。
つまり、見方を変えると、故障診断における故障の推論
は、装置が故障したときの現実の状態を数学モデル上で
トレースし、装置が故障したときの各構成要素の状態を
把握することによって、故障を推定していたのに対し、
修復計画の推定では、装置が故障状態ではなく、装置が
正常であるという前提に立って、数学モデル上で装置の
状態をトレースし、それに基づいて修復計画を推論して
いる。そして、上述の具体例では、故障診断における推
論でも、修復計画における推論でも、結果として同じ故
障および修復計画が得られたわけである。
【0168】しかし、場合によっては、故障診断の推論
が故障状態の装置を前提にしているのに対し、修復計画
の推論は正常状態の装置を前提にしているため、両者に
よって得られる結果が異なることがある。かかる場合
は、故障診断の推論過程で得られる結論と矛盾しないも
のだけを修復計画の推論の際に選択するようにすれば、
修復計画の推論処理をより短時間で行える。
【0169】上述の場合において、もしHLを下降させ
るという修復計画が選択できない場合、たとえばハロゲ
ンランプコントロール信号を低電圧側にシフトするため
のAVRのボリュームが既に下限であった場合には、次
に副次的影響の少ない(2)のVnを上昇させるという
修復計画が選択される。しかしながら、Vnを上昇させ
るという修復計画が選択された場合には、かぶり発生の
可能性という副次的影響が予測されているので、図25
の数学モデルにおいて、Os ’を下降させるためにはい
ずれのパラメータを操作すればよいかが図25の数学モ
デルに基づいて検討され、かつ、修復計画知識に基づい
て操作が選択される。その結果、HL を上昇させるか、
n を下降させるか、Vt を下降させるかが選ばれ、か
ぶり発生を防止することを含めた修復計画が行われる。
【0170】つまり、図28に示すように、副次的影響
を仮定して、修復操作の推論を展開する。図28に示さ
れるような修復操作の推論展開においては、 (a)数学モデル上で以前の修復計画と矛盾する枝は選
択しない (b)最も副次的影響の少ないものを選択する (c)ループを形成したものはその時点で展開を止める という知識に基づいた展開が行われる。
【0171】図28では、結局、(1)Vn↑→HL↑→
n↑のループ、および(2)Vn↑→Vt↓→Vn↑のル
ープ、の2つの修復計画が残る。今、(1)のループが
修復計画として行われた場合において、画像濃度が適正
な濃度、すなわちOsがノーマルになったとする。かか
る場合、VnおよびHL は上昇されているから、画像濃
度Osがノーマルに戻った修復前の状態において、セン
サ1bによって測定される表面電位の値は、最初に測定
される値に比べてかなり高いものに変化しているはずで
ある。しかしながら、修復作業が成功したわけであるか
ら、修復後のパラメータVsの状態はノーマルにシンボ
ル化されなければならない。よって、かかる場合、修復
が終了した時点で、センサ1bによって測定される測定
値に基づき、図11示すパラメータVsのシンボル化の
ための基準データが変更され、たとえば図29に示すデ
ータに書換えられる。このように、基準データの更新
が、修復作業終了後に必要に応じてなされる。
【0172】この実施例において、図28における前述
した(1)のループが行われる場合、具体的には、主帯
電ボリュームVR1が操作されて感光体ドラム21の表
面電位が上昇され、それによって得られるコピーにかぶ
れが発生すると、ランプボリュームAVRが操作されて
ハロゲンランプの光量が増加され、コピーの画像濃度が
薄められる。
【0173】そして、主帯電ボリュームVR1およびラ
ンプボリュームAVRを交互に適宜上昇させながら、画
像濃度が正常になったとき、すなわちパラメータOs
ノーマルになったことがセンサ1cである濃度計の検出
出力から得られたとき、修復処理は終了される。さら
に、上記2つの修復計画が実行不可能な場合は、さら
に、上述した(3)のVtを上昇させるという修復計画
が選択され、その副次的影響であるかぶり発生と、分離
不良の2つを仮定した故障診断が行われ、修復計画が選
択される。
【0174】そして、選択された修復計画が行われ、ル
ープ処理の場合には、ループ上にあるパラメータの操作
が限度に達した時点で失敗と判断される。また、この実
施例の場合は、具体例でも説明したように、Osがノー
マルになった時点で修復終了が判別され、その状態で修
復は停止される。上述した副次的影響の推論において
は、修復計画の推論において導かれた3つの修復計画を
順次数学モデル上に展開し、3つの修復計画のそれぞれ
について、まとめて、副次的影響が推論されている。こ
のような副次的影響の推論の仕方に代え、次のような処
理を行ってもよい。
【0175】すなわち、修復計画の推論において、たと
えば3つの修復計画が導き出されたとする。その場合、
3つの中から1つの修復計画だけをとりあげ、該修復計
画に基づいてアクチュエータ手段を作動された場合に生
じるかもしれない副次的な影響をシミュレートし、シミ
ュレートされた副次的な影響は、修復計画によって選択
されたアクチュエータ手段以外のアクチュエータ手段を
作動させることによって除去できるか否かを判別する。
そして、副次的な影響は除去できると判別されたときに
は、修復計画によって選択されたアクチュエータを実際
に作動させ、修復を実行するとともに、副次的な影響を
他のアクチュエータ手段を作動させることによって除去
するのである。
【0176】この結果、修復計画で導き出された他の2
つの計画に基づく副次的影響のシミュレートはする必要
がなく、全体として、修復操作時間を短縮できる。上述
の場合において、もし、第1番目に選択した修復計画に
ついて、副次的な影響をシミュレートし、シミュレート
された副次的な影響が他のアクチュエータ手段を作動さ
せることによって除去できないと判別された場合、その
第1番目の修復計画は断念して、次に第2番目の修復計
画をとりあげ、該2番目の修復計画に基づいて選択され
たアクチュエータ手段を作動させた場合に生じるかもし
れない副次的な影響をシミュレートし、シミュレートさ
れた副次的な影響は、そのアクチュエータ手段以外のア
クチュエータ手段を作動させることによって除去できる
か否かを判別し、副次的な影響が除去できるときには、
該第2番目の修復計画に基づく修復作業を行う。
【0177】このように、修復計画の推論において導か
れた複数の修復計画のうち、或る1つ目の修復計画を取
出し、その場合の副次的な影響を推論し、副次的な影響
が除去できる場合には、直ちにその1つ目の修復計画に
基づく修復を実行するようにするのである。そして、も
しその修復計画では、副次的な影響が大きすぎる場合に
は、それを断念し、次の修復計画を選び、その場合の副
次的な影響をシミュレートするのである。
【0178】かかる場合、修復計画の推論において導か
れた複数の修復計画のうち、いずれの修復計画をまず選
択するかについては、たとえば、故障診断において得ら
れた故障原因を参酌して選択するのが好ましい。以上の
実施例では、アクチュエータのパラメータ数が少ないた
め、修復自体がかなりの制限を受けているが、アクチュ
エータのパラメータ数を増やすことによってさらに修復
の柔軟性および可能性を向上させることができる。
【0179】以上説明した具体例において、いずれかの
修復作業が成功した場合には、成功した後の装置の状態
が正常な状態であると判定されるわけであるから、各セ
ンサから与えられるディジタルデータ値によって各パラ
メータの基準値データ(図11に示す基準値)が更新さ
れ、新たな基準値データに基づいてパラメータがシンボ
ル化されるようにするのが好ましい。
【0180】(6−10)その他 また、上述の具体例では、各アクチュエータの作動範囲
については特に触れなかったが、対象モデル記憶部14
に記憶されている装置に特有の特徴データの中に、アク
チュエータの作動範囲を設定する作動範囲データを含ま
せておけば、アクチュエータの出力状態が記憶されてい
る作動範囲内のときはアクチュエータ操作可能と判別で
き、アクチュエータの出力状態が記憶されている作動範
囲の上限または下限に達した場合に、アクチュエータ操
作不能と判定して、修復作業の正否判定に利用すること
ができる。
【0181】さらに、上述の具体例では、センサ出力が
変化したことに基づいて、自動的に自己診断を行い、自
己修復を行うシステムをとりあげたが、画像形成装置に
自己診断モードの設定キー等を設け、該自己診断モード
設定キーが操作された場合にのみ、自己診断および/ま
たは自己修復が行われるようにしてもよい。
【0182】
【0183】またこの発明においては、修復計画の推論
をする際に、アクチュエータの調整範囲を考慮して、実
際に調整可能なアクチュエータだけを選択するようにし
てもよい。より具体的に説明すると、アクチュエータが
たとえばAVRの場合、AVRの下限値を「0」、上限
値を「100」とし、AVRの設定状態が0〜100の
いずれかの整数値で検出できるような構成にする。ま
た、対象モデル記憶部14にAVRの下限値「0」およ
び上限値「100」を設定しておく。したがって、AV
Rが調整されて或る状態になったとき、AVRの調整状
態は、その調整状態に対応した0〜100のいずれかの
整数値データとして把握される。
【0184】修復計画部15では、AVRの調整状態に
応じて得られる0〜100のいずれかの整数値データに
より、AVRの調整状態を把握し、AVRを故障修復用
のアクチュエータとして選択できるか否かを判別する。
つまり、対象モデル記憶部14に記憶されたAVRの下
限値および上限値と現在の調整状態値とが比較され、A
VRはさらに下限方向に、または上限方向に作動させる
ことができるか否かが判別されるのである。
【0185】よって、複数個の各アクチュエータに対
し、またはその中の任意のアクチュエータに対し、この
ような構成を採用することにより、修復計画の推論結果
が、実際に作動させることのできるアクチュエータ手段
の組合わせとして出力され、実用的な修復計画の推論が
できるという利点がある。なお、作動範囲の設定の仕方
は、上述の説明は一例であり、他の方法で作動範囲を設
定し、実際のアクチュエータの状態と比較してもよい。
【0186】また、修復計画部15において、設定され
たアクチュエータの調整可能範囲と実際の調整値とを比
較するのみでなく、故障診断部12において、故障診断
を行う際に、設定されたアクチュエータの調整可能範囲
と実際の調整値とを比較し、それを参照するようにして
もよい。さらにまた、この発明の実施例にかかる画像形
成装置においては、自己診断モード設定手段として、た
とえばマニュアル操作される自己診断モード設定キーま
たはスイッチを設けておき、該自己診断モード設定キー
またはスイッチが操作されたときにのみ、上述した自己
診断または自己診断および自己修復を行うようにするこ
とができる。
【0187】自己診断モード設定キーまたはスイッチの
配置位置は、任意の場所でよいが、好ましくは、通常の
画像形成のための操作キー等とは異なる位置、たとえば
画像形成装置に備えられている前面パネルを開いた状態
で操作できる装置内部等に設けるのがよいであろう。
【0188】
【発明の効果】この発明によれば、画像形成装置に故障
が生じたか否かが判別され、故障が生じているときは、
その故障症状、故障原因および装置の状態が推論され
る。そして、推論結果に基づいて、予め記憶されている
複数の事例が検索され、故障修復に最も適した事例が検
出され、事例に基づいた故障修復処理が行われる。
【0189】事例に基づく故障修復処理では、類に分け
て記憶された事例の中から、故障に対応した事例が選択
される。その際、1つの類に複数の事例が属している場
合には、複数の事例のうち1つの事例のみが選択され
る。そして、各類ごとに適用順位が決定され、その順番
で事例が適用される。類分けは、事例が定性的に到達可
能な範囲内か否かに基づいてされるので、同じ類に属す
る事例は、互いに定性的に到達可能な範囲内にある。し
たがって、同じ類に属する或る事例を適用した結果、故
障修復作業が成功しなかった場合、同じ類に属する他の
事例を適用しても、故障修復作業は失敗する蓋然性が高
い。この発明によれば、係る失敗の蓋然の高い事例適用
を避け、事例適用による故障修復作業の成功率が向上す
るので、より迅速な自己修復作業ができる。
【0190】また、事例適用の結果に応じて適用した事
例が属する類の優先度が更新される。実際の機械システ
ムにおいては、前回の故障に関連して次の故障が生じる
ことが多いことが経験的にわかっている。そこで、事例
適用に関する優先度を上述のように更新することによ
り、生じ得る故障に対し、適切な事例を優先的に選択し
続けるようにすることができる。
【0191】また、事例適用により故障修復が成功した
場合、その事例が属する類の適用優先度が更新される
他、その事例が属する類と関連のある類の適用優先度も
高くされる。このようにすると、実際の機械システムに
おいて発現頻度の高い同一の原因に基づく異なる故障症
状に対しても、常に最適な事例を早く選択することがで
き、故障修復を迅速に行える。
【0192】また、もし事例適用によっては故障修復に
成功しなかった場合は、定性データを用いたいわゆる定
性推論により修復作業が推論され、推論された作業に基
づいて故障修復がなされる。そして推論された作業によ
って故障の修復が成功した場合、推論された作業は、そ
れまでの類とは異なる新しい類に属する事例として登録
される。よって、定性推論により新規な事例ができる
と、その事例は新しい類に属する事例として登録され、
類の豊富化を図ることができ、その後に生じる故障に対
して、より適切に対処することができる。
【0193】また、この発明によれば、故障原因は、画
像形成装置に共通の定性データに基づいてなされるの
で、明示的に記述されていない未知の故障をも扱うこと
のできる自己診断修復システムを有する画像形成装置と
することができる。さらに、この発明にかかる自己診断
修復システムは、或る特定の画像形成装置に対してでは
なく、多くの機種の画像形成装置に対して共通的に適用
することができ、結果的に安価な自己診断および自己修
復システムを有する画像形成装置を提供することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明における「作業スクリプトの詳細化」
を説明するための図である。
【図2】先願発明にかかる事例ベース修復計画システム
における事例の分類の仕方を説明するための図解図であ
る。
【図3】この発明にかかる事例ベース修復計画システム
における事例の分類の仕方を説明するための図解図であ
る。
【図4】事例の分類に「類」の概念を導入した場合にお
ける類分けの仕方を説明するための図である。
【図5】類分けされた事例と作業スクリプトの関係を表
わす図解図である。
【図6】互いに異なる故障症状に属する事例集合Aが事
例集合Bに類似するための用件を説明するための図解図
である。
【図7】この発明の一実施例のシステム構成を示すブロ
ック図である。
【図8】図7に示すシステム制御回路の処理動作の概要
を表わすフローチャートである。
【図9】この発明の一実施例にかかる小型の普通紙用の
複写機の概略構成と、その複写機に備えられた3つのセ
ンサを説明するための図である。
【図10】この発明の一実施例にかかる複写機の数学モ
デルを表わす図である。
【図11】この発明の一実施例にかかる複写機におい
て、各パラメータをシンボル化する場合に必要な各パラ
メータの基準値データを表わす図である。
【図12】上述した数学モデル上における故障診断のた
めの展開を表わす図である。
【図13】上述した数学モデル上における故障診断のた
めの展開を表わす図である。
【図14】この発明の一実施例における事例を適用した
修復作業の処理の一部を表わすフローチャートである。
【図15】この発明の一実施例における事例を適用した
修復作業の処理の一部を表わすフローチャートである。
【図16】この発明の一実施例における事例を適用した
修復作業の処理の一部を表わすフローチャートである。
【図17】この発明の一実施例における適用すべき「事
例を決定するための処理」の一例を表わすフローチャー
トである。
【図18】この発明の一実施例における適用すべき「事
例を決定するための処理」の他の例を表わすフローチャ
ートである。
【図19】この発明の一実施例における「類の優先度の
操作(その1)」の処理を表わすフローチャートであ
る。
【図20】この発明の一実施例における「類の優先度の
操作(その2)」の処理を表わすフローチャートであ
る。
【図21】この発明の一実施例において、類ごとに適用
する事例を1つだけにするための他の制御を説明する部
分的なフローチャートである。
【図22】上述の数学モデル上における副次的影響推論
のための展開を表わす図である。
【図23】上述の数学モデル上における副次的影響推論
のための展開を表わす図である。
【図24】上述の数学モデル上における副次的影響推論
のための展開を表わす図である。
【図25】上述の数学モデル上における副次的影響推論
のための展開を表わす図である。
【図26】上述の数学モデル上における副次的影響推論
のための展開を表わす図である。
【図27】上述の数学モデル上における副次的影響推論
のための展開を表わす図である。
【図28】この発明の一実施例において、修復計画を選
択する場合の操作を表わす図である。
【図29】この発明の一実施例において、修復計画を選
択する操作を行った結果、図11に示す基準値データを
更新した場合の更新後の基準値データを表わす図であ
る。
【符号の説明】
1a,1b,1c センサ 6a,6b,6c アクチュエータ 10 システム制御回路 11 ディジタル信号/シンボル変換部 12 故障診断部 13 故障シミュレーション部 14 対象モデル記憶部 15 修復計画部 16 シンボル/ディジタル信号変換部 17 事例ベース記憶部 18 作業スクリプト記憶部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭58−66967(JP,A) 特開 昭58−94012(JP,A) 特開 昭58−221856(JP,A) 特開 昭62−35916(JP,A) 特開 昭63−233655(JP,A) 特開 平3−27058(JP,A) 特開 平3−7963(JP,A) 特開 昭62−52601(JP,A) 特開 平1−219697(JP,A) 特開 平1−169611(JP,A) 特開 昭62−23328(JP,A) 特開 平1−278865(JP,A) 特開 平1−291918(JP,A) 特開 平2−235074(JP,A) 特開 平2−302828(JP,A) 特開 平4−74224(JP,A) 特開 平2−113262(JP,A) 特開 昭63−70268(JP,A) 特開 平4−130330(JP,A)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】画像形成装置の故障を修復するための作業
    を記載した事例を、類に分けて記憶する事例記憶手段
    と、 各類の故障修復への適用優先度を記憶する優先度記憶手
    段と、 画像形成装置に故障が生じたとき、その故障に対応した
    複数の事例を指定する事例指定手段と、 複数の指定された事例が属する類がある場合に、その類
    の代表として適用すべき事例として、対応度の一番大き
    い事例を選択する手段と、 適用すべき事例が属する類が複数ある場合に、各類の適
    用優先順位を、属する事例の対応度の大小によって決
    め、対応度の等しい事例が属する類については、適用優
    先度の高い類を優先させる適用順位決定手段と、 決定された適用順位で、各類の適用すべき事例を故障修
    復に適用する適用制御手段と、 適用した事例が属する類と関連のある類を検索する検索
    手段と、 事例の適用結果に応じて、優先度記憶手段に記憶されて
    いるその事例が属する類の適用優先度および検索手段で
    検索された関連のある類についての適用優先度を、それ
    ぞれ更新する手段と、 事例の適用による故障修復がすべて成功しなかったと
    き、画像形成装置に関して予め定められた定性データを
    用いて、故障を修復するための作業を推論する作業推論
    手段と、 作業推論手段で推論された作業によって故障修復に成功
    したときに、事例記憶手段に新しい類の枠組を作り、推
    論された作業を新しい類に属する事例として登録する登
    録手段と、 その新しい類の適用優先度を最も高くし、他の類の適用
    優先度をそれに合わせて更新する手段と、 を有することを特徴とする画像形成装置。
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