JP2601917B2 - 塔架設時の空力的制振方法 - Google Patents

塔架設時の空力的制振方法

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JP2601917B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、吊橋の塔架設時における空力的制振方法に
関するもので、斜張橋の塔架設時及び箱桁形式の橋梁の
桁架設時にも適用可能である。
〔従来の技術〕
従来より行われている塔架設時の渦励振制振法を第3
図〜第5図について説明する。
(1)塔5の先端から地面6に向ってロープ7を斜めに
張り、その先端に重錘8とダンパー9を取り付ける方法
(第3図)。
(2)第5図の先端にダイナミツクダンパー10を取り付
ける方法(第4図)。
(3)従来の塔断面1(第5図(a))を塔架設時の振
動特性に対して、制振条件が満足できるような空力特性
の良い塔断面11(第5図(b))に変更する方法。
上記の(1)〜(3)の方法は塔架設時の渦励振制振
法としてどれも有効であるが、通常、振動が問題となる
のは吊橋におけるケーブル工事が行なわれるまでの短い
期間であるから、吊橋完成時の設計条件から決定された
経済的な第5図(a)の塔断面1を塔架設時の渦励振制
振の目的のみのために、第5図(b)の塔断面11に変更
する上記(3)の方法は一般におこなわれず、構造減衰
を大きくする上記(1),(2)の方法が一般に採用さ
れている。
〔発明が解決しようとする課題〕
吊橋の塔は、架設時と吊橋完成時とでは振動性状が大
幅に異なる。
即ち、塔架設時は第6図に示す如く、自立状態とな
る。従って、塔5は片持梁の振動性状13を示し、振動数
が低下して(吊橋完成時に比べ約1/3〜1/4倍となる)、
低風速において渦励振振動が発生する可能性がある。
一方、吊橋完成時には、第7図に示す如く、塔頂はケ
ーブル12で支持されるため、塔頂部がピン支持された状
態に近くなり、塔は腹ふくらみの振動性状14を示す。
よって、吊橋完成時の塔の振動数は自立状態の振動数
に比べ、数倍高く、渦励振振動発生風速も同様に高くな
る。
上記より、吊橋完成後は振動が発生しなくても、塔架
設時においては、風による振動が発生し、制振対策を必
要とする場合が多い。
吊橋設計時には、吊橋完成時及び塔架設時における塔
の耐風安定性を改善するため、風洞試験等で空力特性の
良い塔断面形状を選定している。しかし、塔架設時は吊
橋完成時に比べ、たわみやすい構造であるため、低風速
でしかも大振巾の渦励振振動が発生する可能性が高く、
塔架設時の制振条件を満たす塔断面形状は非常に限定さ
れる。従って、この限定された断面を吊橋完成時の断面
として採用し設計すると、不経済となったり、美観が損
なわれたりする等の問題点がある。
本発明は、このような問題点を排除するため、吊橋完
成時に適合した塔断面を原形とし、塔架設時には塔断面
形状を変更して空力特性を改善する制振方法を提供する
ことを目的とするものである。
〔課題を解決するための手段〕
(1)塔架設の一時期のみ、塔断面のコーナ部あるいは
全てに空力的な流れを改善する付加物を密着して取り付
ける。
(2)付加物としてFRP,ゴム等の殻及び発泡スチロール
等の固まりなどの軽量でしかも成形しやすい材料を用い
る。
〔作用〕
上記の手段を講じることにより、一時的な塔架設時に
おいて、空力的にすぐれた断面形状を形成できるため、
塔架設時に問題となる渦励振振動の振動が可能となる。
〔実施例〕
本発明による塔架設時の空力的制振方法の実施例を第
1図,第2図について説明する。
第1図(a)に吊橋完成時の塔断面1を示す。第1図
(b)に塔架設時の耐風安定性を改善させるために、吊
橋完成時の塔断面1に一時的に付加物(FRP製)2を取
り付けた断面を示す。
出願人会社の風洞試験結果によれば、第1図(a)に
示す吊橋完成時の断面1と第1図(b)に示す一時的に
付加物2を取り付けた断面とを比較すると、第1図
(b)の構造により流れ4のパクーンを改善できる。
すなわち、第1図(a)に示す吊橋完成時の断面1で
は点Aから剥離した流れが再付着し、新たにB点より大
きな剥離が発生するため、断面背後に大きな渦ができる
が、第1図(b)に示すような付加物2を取り付けた断
面では、C点から剥離した流れがD点と接し、側面に沿
って流れるため、断面後流での巻き込みが減少してい
る。
第2図(a),(b),(c)は本発明の他の実施例
であり、2′,2″,2はそれぞれ付加物を示す。特に第
2図(a)の場合には、後流側の隅切りを閉塞している
ため、側面の距離が増加するために、断面後流での巻き
込みが更に減少している。
以上の付加物2取付けによる空力改善による効果は、
塔架設時の曲げ振動試験における振幅の低減として評価
できる。本試験によれば、第1図(a)に示す吊橋完成
時の断面1による振幅と比べて、第1図(b)及び第2
図(a)に示す付加物2及び2,2′を取り付けた断面に
よる振幅は、それぞれ0.5倍及び0.4倍程度に低減される
という結果が得られた。
この結果は、塔架設時に一時的に塔1のコーナ部に付
加物2を取り付け空力的な流れを改善することが空力的
制振装置として有効であることを意味している。
ところで付加物2の材料としては、以下の条件を満た
すものが望まれる。
(1)塔架設前後の取付け・取りはずしの便を考えて、
軽量である事、 (2)空力的に最適な形状が添加できるよう加工性が良
好な事、 以上の面から、FRP,ゴム及び発泡スチロール等が付加
物2の材料として適当である。
尚、第2図(b),(c)は、第1図(b)及び第2
図(a)と同様に、空力特性の改善が期待できる付加物
2の取付け例を示す。
〔発明の効果〕
上述したように本発明によるときは塔断面のコーナ部
の一部あるいは全てに、FRP,ゴムあるいは発泡スチロー
ル等の軽量にして成形の容易な材料で作られ、空力的な
流れを改善する形状を有する付加物を密着して取り付
け、塔架設時の一時期塔の断面形状を変更し、塔架設時
の耐風安定性を改善するようにしたものであるから、吊
橋完成時に適合した塔断面を原形としてこれに塔架設時
には付加物の密着により塔断面形状を変更して空力特性
を改善して塔架設時に低風速で発生する可能性のある大
振巾の渦励振動を制振することができ、而もその変更の
ための付加物はFRP,ゴムあるいは発泡スチロール等の軽
量にして成形の容易な材料としたから塔架設前後の塔断
面への取り付け、取り外しが容易となり、建設段階に合
わせた盛替、移設及び振動数調整等の作業を一切必要と
しない等の効果を有する。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の実施例における塔断面を示すもので、
第1図(a)は吊橋完成時の塔の地上断面図、第1図
(b)は塔架設時に付加物を取り付けた塔の地上断面図
を示す。第2図(a),(b)及び(c)は、それぞれ
塔断面に付加物を取り付けた状態における他の実施例を
示し、それぞれ地上断面図である。第3図乃至第5図は
従来技術を示すもので、第3図は重錘・ダンパー式制振
装置、第4図はダイナミツクダンパー式制振装置、第5
図(a),(b)は塔断面を変更することによって空力
的な改善をし、塔架設時の制振をおこなう場合の説明図
である。第6図は、塔架設時の振動性状を示し、(a)
は塔の正面図、(b)は振動の説明図、(c)は地上断
面図である。第7図は吊橋完成時の振動性状を示し、
(a)は塔の正面図、(b)は振動の説明図、(c)は
地上断面図である。 1……塔断面、2……付加物 3……風の向き、4……風の流れ

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】塔断面のコーナ部の一部あるいは全てに、
    FRP,ゴムあるいは発泡スチロール等の軽量にして成形の
    容易な材料で作られ空力的な流れを改善する形状を有す
    る付加物を密着して取り付け、塔架設時の一時期、塔の
    断面形状を変更し、塔架設時の耐風安定性を改善するこ
    とを特徴とする塔架設時の空力的制振方法。
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