JP2599893C - - Google Patents

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JP2599893C
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suture needle
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Iken Kougyo KK
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Iken Kougyo KK
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【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、手術用縫合針の製造方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】 手術用縫合針には、先端に切刃を備える角針と、断面形状が先端まで円形の丸
針とがある。 【0003】 前記角針型の手術用縫合針1は、図1示のように、基部2と切刃3が形成され
た針先部4とからなり、縫合の便のために特定のカーブが付与されている。針先
部4は、上面は両側に形成された切刃3,3を結ぶ平面となっており、下面には
中央に稜線4bが形成され、その断面形状は図3(b)示のように逆三角形とな
っている。そして、手術用縫合針1は、基部2の後端部に縫合糸5が取着される
が、縫合糸5は製造時に予め基部2に取着されるか、または基部2に孔部を設け
、使用時に該孔部に取着するようになっている。 【0004】 従来、手術用縫合針1は、次のようにして製造されている。 【0005】 まず、鋼材を線引き加工してコイル状の鋼線材を得たのち、この鋼線材を所定
の長さに直線加工し、切断して手術用縫合針1の原材料を切り出す。 【0006】 次に、前記原材料を基部2と針先部4とからなる手術用縫合針1の形状にプレ
ス成形する。手術用縫合針1は前記特定のカーブを付与するために、後述の曲げ
加工を必要とする。 【0007】 次に、前記プレス成形された手術用縫合針1の針先部4をグラインダ等で研削
して刃立てを行い切刃3を形成する。次いで切刃3が形成された手術用縫合針1
を曲げ加工して、前記特定のカーブを付与する。 【0008】 手術用縫合針1は、人体の各種組織を縫合するものであり、人体の組織に刺通
する際の抵抗(以下、刺通抵抗と略記することがある)を低減するために、針先
部4の先端部及び切刃3が鋭利であるとともに針先部4の表面4aが平滑である
ことが望ましい。ところが、前記針先部表面4aには、グラインダ等の研削によ
り角張った凹凸及びバリ等が形成されており、そのままでは該凹凸により刺通抵
抗が大きくなる。そこで、前記曲げ加工された手術用縫合針1の針先部4を研磨
し、前記凹凸を小さくして針先部表面4aを平滑にすることにより、最終的に手
術用縫合針1が得られる。 【0009】 前記針先部4を研磨するとき、例えば、バフ研磨によるときには、角針に適用
すると切刃3が丸くなり鋭利さが失われ、手術用縫合針として使用できないほど
刺通抵抗が大きなくなり実用的ではない。また、砥石研磨によれば、切刃3の鋭
利さを維持したまま針先部表面4aの凹凸を平滑化することができるが、研磨に
際してバリが生じ、刺通抵抗が大きくなることがある。前記バリができないよう
に、或いはバリを取るようにすれば、刺通抵抗を小さくすることができるが、そ
のために加工時間が長くなるとの不都合がある。 【0010】 そこで、前記針先部4の研磨方法として、電解または化学研磨方法が行われて
いる。前記電解または化学研磨方法によれば、角張った部分から化学反応が進ん
で溶解されるので、針先部表面4aの凸部が次第に小さくなり、遂には該凸部が
凹部と同レベルまで小さくなって鏡面が形成される。前記電解または化学研磨方
法は、前記のように凸部を溶解させるのでバリを生じる虞れがなく、短時間で大
量に処理することができる点で有利である。 【0011】 しかしながら、前記電解または化学研磨方法は、前記のように角張った部分か
ら化学反応が進むので、前記針先部表面4aは平滑化できるものの前記研削によ
り刃立てされて鋭くなっている切刃3自体も溶解され、鋭利さが低減されて刺通
抵抗が大きくなるとの不都合がある。 【0012】 【発明が解決しようとする課題】 本発明は、手術用縫合針の改良された製造方法を提供することを目的とする。 【0013】 さらに詳しくは、本発明の目的は、刺通抵抗の小さい手術用縫合針の製造方法
を提供することにある。 【0014】 また、本発明の目的は、微細砥粒を有する砥石により研削する方法によりバリ
ができないように、或いはバリ取りをして針先部表面の研磨を行ったものと同等
の刺通抵抗を有する手術用縫合針を短時間で製造することができる手術用縫合針
の製造方法を提供することにある。 【0015】 【課題を解決するための手段】 かかる目的を達成するために、本発明の手術用縫合針の製造方法は、鋼材の線
引き加工により得られる鋼線材を所定の長さに切断して手術用縫合針の原材料を
切り出し、基部と針先部とからなる手術用縫合針の形状にプレス成形するプレス
成形工程と、前記プレス成形された手術用縫合針の針先部を研削して切刃を形成 する切刃形成工程と、前記切刃が形成された手術用縫合針の針先部の表面を研磨
する表面研磨工程とからなる手術用縫合針の製造方法において、前記針先部の表
面が研磨された手術用縫合針をさらに酸洗することを特徴とする。 【0016】 前記切刃形成工程では、針先部をグラインダ等により研削して切刃を形成する
が、この様にすると針先部表面に角張った凹凸が形成される。そこで、本発明の
製造方法では、前記切刃形成工程の後、前記手術用縫合針の針先部の表面を研磨
することにより、前記凹凸を小さくするとともにその角を取り、手術用縫合針の
刺通抵抗を低減する加工を行う。 【0017】 前記表面研磨工程は、化学研磨により行うことが代表的であり、前記化学研磨
は、塩酸、硝酸及び光沢剤を含む研磨液により、該研磨剤を90〜110℃程度
の範囲の温度に加熱して、2〜5分間行う。前記光沢剤としては、通常の化学研
磨用研磨液に使用されるST−803B剤(デップソール株式会社)又は、K−
0307B剤(日本表面化学株式会社)等が用いられる。 【0018】 前記表面研磨を化学研磨により行うと、針先部の表面の凹凸が小さくなり、角
が取られて丸くなって鏡面が得られる一方、切刃の先端も丸められ、鋭利さが失
われる。そこで、本発明の手術用縫合針の製造方法では、次いで酸洗することに
より前記針先部の表面を均一に浸食し、鋭利な切刃を再生する。 【0019】 前記酸洗は、硝酸、フッ化物及び酸化抑制剤を含む第1の酸溶液により常温で
行う。前記フッ化物としては、例えば、フッ化アンモニウムが用いられる。また
、前記酸化抑制剤、及び酸洗用酸溶液は、通常ST−805(ディップソール株
式会社)と硝酸、水の混合液等が用いられる。 【0020】 前記第1の酸溶液によれば、前記フッ化物により酸化力が強められるので、針
先部表面を浸食する効果は大きくなるものの、該浸食により前記のように鏡面化
された針先部表面が粗くなる傾向がある。そこで、さらに刺通抵抗を低減するた めに、酸洗後、前記針先部にシリコーンコーティングすることが好ましい。 【0021】 また、前記酸洗後の針先部表面の粗面化を低減するためには、抑制された酸化
力を有する酸溶液を用いることが好ましく、このような酸溶液として硝酸、塩酸
及び酸化抑制剤を含む第2の酸溶液が用いられる。第2の酸溶液による酸洗は該
第2の酸溶液を60〜80℃の範囲の温度に加熱して行う。前記第2の酸溶液は
さらに酸化力を抑制するために、前記組成に加えて硫酸を含むことが好ましい。 【0022】 前記第2の酸溶液によれば、前記第1の酸溶液よりも酸化力が抑制されるので
酸洗後に前記針先部表面に残る粗さが低減されるが、さらに刺通抵抗を低減する
ためには、酸洗後、前記針先部にシリコーンコーティングすることが好ましい。 【0023】 また、本発明の製造方法では、前記表面研磨をアラカンサス等の微細砥粒を有
する砥石により研削する砥石研磨、またはバフ研磨により行ってもよい。 【0024】 【作用】 本発明の手術用縫合針の製造方法によれば、鋼材の線引き加工により得られる
鋼線材から所定の長さに切り出された手術用縫合針の原材料を、基部と針先部と
からなる手術用縫合針の形状にプレス成形し、前記針先部を研削して刃立てを行
ない切刃を形成する。前記研削では、切刃が形成された針先部表面に角張った凹
凸及びバリ等が形成されているので、前記切刃が形成された手術用縫合針の針先
部の表面を研磨して凹凸を小さくする。 【0025】 本発明の製造方法では、前記針先部の表面研磨は、先ず化学研磨により行われ
る。前記化学研磨は、塩酸、硝酸及び光沢剤を含む研磨液により、該研磨剤を加
熱して行うことにより、前記針先部の表面の凹凸が角張った部分から順に溶解さ
れて小さくなると共に角が取れ、鏡面が得られる。しかし、前記化学研磨によれ
ば、前記のように角張った部分から順に溶解が進むので、前記切刃の先端もまた
溶解されて丸められ、鋭利さが失われる。 【0026】 そこで、本発明の製造方法では、前記化学研磨に次いで酸洗を行う。酸洗は化
学研磨と異なり、研磨される面がその形状に係わりなく均一な厚さで浸食される
。従って、前記のように丸められた切刃の両側が均一な厚さで研削され、鋭利な
切刃が再生される。 【0027】 前記酸洗を前記第1の酸溶液により行うときには、前記第1の酸溶液は含有す
るフッ化物により酸化力が強められているので、前記浸食作用が激しく、容易に
鋭利な切刃が再生される。前記激しい浸食作用により、前記化学研磨により鏡面
化された針先部の表面が粗面化されるときには、前記針先部にシリコーンコーテ
ィングすることにより前記針先部表面が平滑になる。また、前記シリコーンコー
ティングにより、刺通する際にはシリコーンによる潤滑作用が得られる。 【0028】 前記酸洗を前記第2の酸溶液により行うときには、前記第2の酸溶液は硝酸、
塩酸及び酸化抑制剤を含むので該第2の酸溶液を加熱して酸洗を行っても、その
酸化力は十分抑制されたものになる。従って、浸食作用が穏やかになり、酸洗後
にも切刃の鋭利さが再生されるとともに、針先部表面が粗面化されにくくなる。
前記第2の酸溶液は、前記組成に加えて硫酸を含むことによりさらに酸化力が抑
制される。 【0029】 前記のように、第2の酸溶液によれば、酸洗後の針先部表面が、障害になるほ
どは粗面化されにくく、酸洗後に前記針先部をシリコーンコーティングすること
により、前記切刃表面がさらに平滑になる。また、前記第1の酸溶液の場合と同
様に、刺通する際にはシリコーンによる潤滑作用が得られる。 【0030】 さらに、本発明の製造方法によれば、前記表面研磨を砥石研磨により行う場合
には、該砥石研磨により針先部表面が切刃の鋭利さを維持したまま平滑化される
。前記砥石研磨では、研磨に伴ってバリを生じ刺通抵抗が大きくなることがある
が、このバリは前記砥石研磨に次いで酸洗されることにより溶解され、しかも酸 洗によれば前記切刃の鋭利さが維持されるので、さらに刺通抵抗が低減される。
また、本発明の製造方法によれば、前記表面研磨をバフ研磨により行う場合には
、バフ研磨により切刃が丸められて鋭利さが失われるが、前記砥石研磨に次いで
酸洗されることにより、鋭利な切刃が再生される。 【0031】 【実施例】 次に、添付の図面を参照しながら本発明の手術用縫合針の製造方法についてさ
らに詳しく説明する。図1は本発明の製造方法により得られる手術用縫合針の斜
視図であり、図2は化学研磨後の手術用縫合針の切刃の状態を示す顕微鏡写真で
あり、図3は図1のIII−III線断面図であり、図4は切刃の化学研磨及び
酸洗の状況を示す説明的断面図である。図5及び図6は化学研磨後さらに酸洗し
た手術用縫合針の切刃の状態を示す顕微鏡写真である。図7は砥石研磨後の手術
用縫合針の切刃の状態を示す顕微鏡写真であり、図8は砥石研磨後さらに酸洗し
た手術用縫合針の切刃の状態を示す顕微鏡写真である。図9はバフ研磨後の手術
用縫合針の切刃の状態を示す顕微鏡写真であり、図10はバフ研磨後さらに酸洗
した手術用縫合針の切刃の状態を示す顕微鏡写真である。 【0032】 本実施例では、図1示の角針型の手術用縫合針1を製造した。手術用縫合針1
は、基部2と切刃3が形成された針先部4とからなり、縫合の便のために特定の
カーブが付与されている。針先部4は、上面は両側に形成された切刃3,3を結
ぶ平面となっており、下面には中央に稜線4bが形成され、その断面形状は図3
(b)示のように逆三角形となっている。そして、手術用縫合針1は、製造時に
、基部2の後端部に縫合糸5が取着される。 【0033】 次に、第1の実施例の製造方法について説明する。 【0034】 本実施例では、まず、鋼材を線引き加工して得られたコイル状の鋼線材を所定
の長さに切断して手術用縫合針1の原材料を直線状にし、切断して基部2と針先
部4とからなる手術用縫合針1の形状にプレス成形した。 【0035】 次に、前記プレス成形された手術用縫合針1の針先部5をグラインダ等で研削
して刃立てを行い切刃3を形成し、次いで曲げ加工して、前記特定のカーブを付
与した。前記切刃3が形成された手術用縫合針1の針先部表面4aには、グライ
ンダ等の研削により角張った凹凸が形成されている。 【0036】 そこで、次に手術用縫合針1を化学研磨し、前記凹凸を小さくして針先部表面
4aを平滑化した。前記化学研磨は、塩酸6cc、硝酸3cc、光沢剤2cc、
水89ccからなる研磨液を用い、95℃以上に加熱された該研磨液に前記手術
用縫合針1を2〜5分間浸漬することにより行った。 【0037】 前記化学研磨の結果、針先部表面4aは凹凸がなくなり鏡面化されるとともに
光沢が付与された。前記化学研磨後の切刃3の状態を撮影した顕微鏡写真(10
0倍)を図2(a)に示す。 【0038】 しかし、切刃3の状態を5000倍に拡大すると、図2(b)示の顕微鏡写真
のように、切刃3(写真中央の明暗の境界部)が不明瞭になっていることが観察
される。これは、切刃3の先端部が前記化学研磨により鋭利さが失われたもので
あり、図3(a)に模式的に示すように、切刃3には直径2μm程度の丸みが付
けられた切刃3aが形成されている。 【0039】 化学研磨によれば、被研磨物の角部から化学反応が始まり、凸部が主として溶
解されるので、図4(a)に仮想線示するグラインダ研削により刃立てされた鋭
利な切刃3aは針先部表面4aの鏡面化と同時に溶解され、その先端の角が取れ
て、図3(a)示のように丸められた切刃3aが形成されるものと考えられる。 【0040】 そこで、本実施例の製造方法では、次に前記化学研磨後の手術用縫合針1を酸
洗することにより、鋭利な切刃3を再生した。前記酸洗は、硝酸25cc、フッ
化アンモニウム11g、酸化抑制剤3cc、水72ccからなる酸溶液Aを用い 、常温で前記手術用縫合針1を10分間浸漬することにより行った。 【0041】 前記酸溶液Aによる酸洗後の切刃3の状態を撮影した顕微鏡写真(100倍)
を図5(a)に示す。酸洗後の切刃3は、5000倍に拡大しても、図5(b)
示の顕微鏡写真の中央に明暗の境界部が明確に観察され、鋭利な切刃3が再生さ
れていることが明らかである。尚、図3(b)は図5(b)を模式的に示したも
のである。 【0042】 酸洗によれば、被研磨物の表面が形状に係わらず同じように浸食されるので、
図4(b)に仮想線示する化学研磨後の丸められた切刃3bの上下両面が約5μ
m程度ずつ溶解され、その先端に図3(b)及び図5(b)示のような鋭利な切
刃3が再生されるものと考えられる。 【0043】 次に、化学研磨後の図2示の手術用縫合針1と、化学研磨後さらに前記酸溶液
Bで酸洗した図5示の手術用縫合針1とを用いて刺通試験を行い、刺通抵抗を測
定した。手術用縫合針の刺通試験は、通常は各種樹脂フィルムまたはJIS T
3102に規定されたアルミ箔等が用いられるが、これらの供試物質に対する刺
通抵抗は、人体の表皮に対する刺通抵抗とは全く異なり、比較対象とすることが
できない。そこで、本実施例では、人体の表皮に対する刺通抵抗に近い値が得ら
れる牛のなめし皮を、組織の均一な部分の表皮を残して0.3mmの厚さに研磨
したものを用い、前記手術用縫合針1を3mm間隔で刺通することにより行った
。結果を表1に示す。 【0044】 尚、酸溶液Aで酸洗した手術用縫合針1の針先部表面4aは図5(a)示のよ
うに平滑化されているが、5000倍に拡大すると図5(b)示のように、研磨
された針先部表面4aが筋状に粗面化されていることが観察される。そこで、前
記酸洗後シリコーンコーティングを施す。このようにすることにより、シリコー
ンが前記粗面化された針先部表面4aの凹部に埋め込まれ、針先部表面4aがさ
らに平滑化されるとともに、手術用縫合針1を刺通する際にはシリコーンによる 潤滑作用が得られるので、刺通抵抗がさらに低減される。 【0045】 また、針先部表面4aは、前記のように化学研磨により平滑化されているので
、前記酸洗による浸食を受けてもその平滑さは略維持されるが、酸溶液Aによる
浸食作用により光沢が失われる。しかし、前記光沢は手術時に光線を反射して術
者のミスの誘因となることがあるので好ましくなく、前記のように酸洗により艶
消しされると、手術用縫合針による反射光が柔らかくなり、手術が容易になると
の効果が得られる。 【0046】 次に、第2の実施例の製造方法について説明する。 【0047】 本実施例では、前記第1の実施例の化学研磨後の手術用縫合針1を、塩酸6c
c、硝酸6cc、硫酸6cc、酸化抑制剤2cc、水80ccからなる酸溶液B
を用い、該酸溶液Bを70℃に加熱して、前記手術用縫合針1を7分間浸漬する
ことにより酸洗し、鋭利な切刃3を再生した。前記酸溶液Bによる酸洗後の切刃
3の状態を撮影した顕微鏡写真(100倍)を図6(a)に示す。酸洗後の切刃
3は、5000倍に拡大しても、図6(b)示の顕微鏡写真の中央に明暗の境界
部が明確に観察され、鋭利な切刃3が再生されていることが明らかである。また
、図6(b)示の顕微鏡写真で筋状に観察される針先部4aの粗さは、図5(b
)示の顕微鏡写真の場合より低減されていることが明らかである。 【0048】 次に、化学研磨後さらに前記酸溶液Bで酸洗した図6(a)示の手術用縫合針
1を用いて前記と同様にして刺通試験を行い、刺通抵抗を測定した。結果を表1
に示す。 【0049】 尚、酸溶液Bは硫酸を含まない組成としても良いが、硫酸を含むことにより酸
化力が抑制され、酸洗後の針先部表面4aに残される粗さが低減される。また、
酸洗液Bによる酸洗後における針先部表面4aの粗さは前記のように酸溶液Aに
よる酸洗の場合よりも低減されているので、前記酸洗後シリコーンコーティング を施すことにより、刺通抵抗がさらに低減される。 【0050】 次に、第3の実施例の製造方法について説明する。 【0051】 本実施例では、第1及び第2の実施例の化学研磨を行わず、前記曲げ加工後の
針先部表面4aの研磨をアラカンサス等の微細砥粒を有する砥石により研削する
砥石研磨により行った。前記砥石研磨後の切刃3の状態を撮影した顕微鏡写真(
100倍)を図7(a)に示す。砥石研磨後の切刃3は、5000倍に拡大して
も、図7(b)示の顕微鏡写真の中央に明暗の境界部が明確に観察され、鋭利な
切刃3が備えられていることが明らかである。針先部表面4aには大きな凹凸が
形成されているが、目立つほどのバリはない。 【0052】 本実施例では、前記砥石研磨後の手術用縫合針1を、さらに前記酸溶液Bを用
い、該酸溶液Bを70℃に加熱して、前記手術用縫合針1を7分間浸漬すること
により酸洗した。前記酸溶液Bによる酸洗後の切刃3の状態を撮影した顕微鏡写
真(5000倍)を図8に示す。酸洗後の切刃3は、図8示の顕微鏡写真の中央
に明暗の境界部が明確に観察されるように鋭利な切刃3が備えられていることが
明らかであり、図7(b)示の顕微鏡写真で観察される砥石研磨による大きな凹
凸が、筋状に観察される細かい凹凸になっており、微小なバリもなくなっている
。 【0053】 次に、砥石研磨後の図7示の手術用縫合針1と、砥石研磨後さらに前記酸溶液
Bで酸洗した図8示の手術用縫合針1とを用い、前記第1の実施例と同様にして
刺通試験を行い、刺通抵抗を測定した。結果を表1に示す。 【0054】 次に、第4の実施例の製造方法について説明する。 【0055】 本実施例では、第1及び第2の実施例の化学研磨を行わず、前記曲げ加工後の
針先部表面4aの研磨をバフ研磨により行った。前記バフ研磨後の切刃3の状態 を撮影した顕微鏡写真(100倍)を図9(a)に示す。切刃3の状態を500
0倍に拡大すると、図9(b)示の顕微鏡写真のように、切刃3(写真中央の明
暗の境界部)が不明瞭になっていることが観察される。これは、切刃3の先端部
が前記バフ研磨により鋭利さが失われたものであり、このような切刃3では刺通
抵抗が大きくなり、手術用縫合針には到底使用することができない。 【0056】 そこで、本実施例では、前記バフ研磨後の手術用縫合針1を、さらに前記酸溶
液Bを用い、該酸溶液Bを70℃に加熱して、前記手術用縫合針1を7分間浸漬
することにより酸洗し、鋭利な切刃3を再生した。前記酸溶液Bによる酸洗後の
切刃3の状態を撮影した顕微鏡写真(5000倍)を図10に示す。酸洗後の切
刃3は、図10示の顕微鏡写真の中央に明暗の境界部が明確に観察され、鋭利な
切刃3が再生されていることが明らかである。 【0057】 次に、バフ研磨後さらに前記酸溶液Bで酸洗した図10示の手術用縫合針1を
用い、前記第1の実施例と同様にして刺通試験を行い、刺通抵抗を測定した。結
果を表1に示す。 【0058】 【表1】【0059】 表1から、化学研磨後の手術用縫合針1は刺通抵抗が大きいが、前記化学研磨
に続いて酸洗することにより、刺通抵抗が低減されることが明らかである。また
、化学研磨後さらに酸洗した手術用縫合針1は、前記酸洗を酸溶液Aにより行う
ことにより、砥石研磨により目立つバリがないように研磨した手術用縫合針1と
同等の刺通抵抗が得られ、前記酸洗を酸溶液Bにより行うことにより砥石研磨後
の手術用縫合針1より小さな刺通抵抗が得られることが明らかである。 【0060】 また、前記砥石研磨後に酸洗を行うことにより、砥石研磨しただけの手術用縫
合針1に比べ、さらに刺通抵抗が低減されることが明らかである。 【0061】 さらに、バフ研磨後に酸洗を行うことにより、砥石研磨により目立つバリがな
いように研磨した手術用縫合針1と同等の刺通抵抗が得られることが明らかであ
る。 【0062】 尚、前記各実施例では、何れも角針に本発明の製造方法を適用した例を示して
いるが、本発明の製造方法は、台形などの各種の角針、及び丸針にも適用するこ
とができる。 【0063】 【発明の効果】 以上のことから明らかなように、本発明の手術用縫合針の製造方法によれば、
切刃が形成された手術用縫合針の針先部の表面を化学研磨した後、さらに酸洗に
より研磨することにより、刺通抵抗の小さな手術用縫合針を、短時間で製造する
ことができる。前記化学研磨は、塩酸、硝酸及び光沢剤を含む研磨液により、該
研磨剤を加熱して行うことにより、前記針先部表面に優れた平滑性を得ることが
できる。 【0064】 また、本発明の手術用縫合針の製造方法によれば、前記酸洗は、硝酸、フッ化
物及び酸化抑制剤を含む第1の酸溶液により、常温で行うことにより、前記切刃
の鋭利さを低減することなく刺通抵抗の小さな手術用縫合針を製造することがで
きる。 【0065】 また、本発明の手術用縫合針の製造方法によれば、前記酸洗は、硝酸、塩酸及
び酸化抑制剤を含む第2の酸溶液により、該第2の酸溶液を加熱して行うことに
より、前記切刃の鋭利さを低減することがないと共に、化学研磨により得られた
平滑な針先部表面の粗面化を低減することができ、さらに刺通抵抗の小さな手術
用縫合針を製造することができる。前記第2の酸溶液は、前記組成に加えて硫酸
を含むことにより、前記針先部表面の粗面化をさらに低減することができる。 【0066】 さらに、本発明の製造方法によれば、前記手術用縫合針の針先部の表面を砥石
研磨したのち酸洗する場合には、該砥石研磨により切刃の鋭利さを維持したまま
平滑化された針先部表面を次いで酸洗することにより、砥石研磨により生じるこ
とのあるバリがなくなり、さらに刺通抵抗が低減された手術用縫合針を製造する ことができる。 【0067】 また、本発明の製造方法によれば、前記手術用縫合針の針先部の表面をバフ研
磨したのち酸洗する場合には、バフ研磨により丸められて鋭利さが失われた切刃
から、鋭利な切刃を再生することができ、刺通抵抗の小さな手術用縫合針を製造
することができる。 【0068】 さらに、本発明の手術用縫合針の製造方法によれば、前記酸洗後の針先部にシ
リコーンコーティングを行うことにより、針先部表面をさらに平滑化することが
できるとともに、手術用縫合針を刺通する際にシリコーンによる潤滑作用が得ら
れるので、刺通抵抗をさらに低減することができる。
【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明の製造方法により得られる手術用縫合針の斜視図。 【図2】 化学研磨後の手術用縫合針の切刃の状態を示す顕微鏡写真。 【図3】 図1のIII−III線断面図。 【図4】 切刃の化学研磨及び酸洗の状況を示す説明的断面図。 【図5】 化学研磨後、さらに酸洗した手術用縫合針の切刃の状態を示す顕微鏡写真。 【図6】 化学研磨後、さらに酸洗した手術用縫合針の切刃の状態を示す顕微鏡写真。 【図7】 砥石研磨後の手術用縫合針の切刃の状態を示す顕微鏡写真。 【図8】 砥石研磨後、さらに酸洗した手術用縫合針の切刃の状態を示す顕微鏡写真。 【図9】 バフ研磨後の手術用縫合針の切刃の状態を示す顕微鏡写真。 【図10】 バフ研磨後、さらに酸洗した手術用縫合針の切刃の状態を示す顕微鏡写真。 【符号の説明】 1…手術用縫合針、 2…基部、 3…切刃、 4…針先部。

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 【請求項1】 鋼材の線引き加工により得られる鋼線材を所定の長さに切断して手術用縫合針
    の原材料を切り出し、基部と針先部とからなる手術用縫合針の形状にプレス成形
    するプレス成形工程と、 前記プレス成形された手術用縫合針の針先部を研削して切刃を形成する切刃形
    成工程と、 前記切刃が形成された手術用縫合針の針先部の表面を研磨する表面研磨工程と
    からなる手術用縫合針の製造方法において、 前記針先部の表面が研磨された手術用縫合針を鋭利な切刃を得るようにさらに
    酸洗することを特徴とする手術用縫合針の製造方法。 【請求項2】 前記表面研磨工程において、前記針先部の表面を化学研磨により研磨すること
    を特徴とする請求項1記載の手術用縫合針の製造方法。 【請求項3】 前記化学研磨は、塩酸、硝酸及び光沢剤を含む研磨液により、該研磨剤を加熱
    して行うことを特徴とする請求項2記載の手術用縫合針の製造方法。 【請求項4】 前記表面研磨工程において、前記針先部の表面を微細砥粒を有する砥石により
    研削する砥石研磨により研磨することを特徴とする請求項1記載の手術用縫合針
    の製造方法。 【請求項5】 前記表面研磨工程において、前記針先部の表面をバフ研磨により研磨すること
    を特徴とする請求項1記載の手術用縫合針の製造方法。 【請求項6】 前記酸洗は、前記手術用縫合針を硝酸、フッ化物及び酸化抑制剤を含む第1の 酸溶液により、常温で行うことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかの
    項記載の手術用縫合針の製造方法。 【請求項7】 前記酸洗は、前記手術用縫合針を、硝酸、塩酸及び酸化抑制剤を含む第2の酸
    溶液により、該第2の酸溶液を加熱して行うことを特徴とする請求項1乃至請求
    項5のいずれかの項記載の手術用縫合針の製造方法。 【請求項8】 前記第2の酸溶液が、更に硫酸を含むことを特徴とする請求項7記載の手術用
    縫合針の製造方法。 【請求項9】 前記酸洗された前記針先部をシリコーンコーティングすることを特徴とする請
    求項1乃至請求項8のいずれかの項記載の手術用縫合針の製造方法。

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