JP2024516783A - がんのバイオマーカーおよび治療標的としてのシトルリン化タンパク質 - Google Patents

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Abstract

がんを検出し、がんを有する対象を診断し、がんを有する対象を処置し、対象においてがんのリスクを低減するか、もしくはがんを予防する方法が、本明細書において提供される。方法は、部分的には、がんにおける、タンパク質アルギニンデアミナーゼ(deaminase)酵素によるタンパク質シトルリン化の調節不全の発見に基づく。また、対応する正常細胞よりも、がん細胞においてより高レベルで発現されるシトルリン化ペプチドおよびキットが、提供される。これらの方法に関連するキットおよびシステムもまた提供される。

Description

関連出願の相互参照
本出願は、2021年3月30日出願の米国仮特許出願第63/168,164号の優先権および利益を主張し、当該出願の内容は、本明細書に完全に示されているのと同様にこの参照により本明細書に組み込まれる。
分野
本開示は概して、がんの診断および治療の分野に関する。より特に、本開示は、がんの診断および治療におけるシトルリン化タンパク質の使用に関する。
がんの診断および治療の分野における大きな進展にもかかわらず、2020年に約600,000人の米国在住者が、がんにより死亡したと推測された。
シトルリン化は、アミノ酸アルギニンのシトルリンへの翻訳後変換である。タンパク質シトルリン化は、タンパク質アルギニンデイミナーゼ(PADI)ファミリーメンバーの作用によってもたらされる。PADIファミリーメンバーによるタンパク質シトルリン化の調節不全は、自己免疫疾患と関連している。今日までに、タンパク質シトルリン化を逆行させることができる酵素は特定されていない。タンパク質シトルリン化の役割は、リウマチ性関節炎(RA)の関係において調査されており、リウマチ性関節炎ではタンパク質、特にケラチン、フィラグリン、ビメンチン、アクチン、ヒストン、ヌクレオフォスミンおよび核ラミンCのシトルリン化の上昇は、自己免疫応答を誘発することが示されている。RAにおける自己免疫性は、主に、シトルリン化ペプチドのMHCクラスII媒介性提示を通して促進され、これはB細胞応答を誘発すると考えられている。
がんに対するさらなる診断、治療および予防様式を有することが望ましい。
本開示の一部の態様の基本的理解を提供するために本開示の簡略化した要約を以下に示す。本要約は、本開示の網羅的な概略ではない。本要約は、本開示の不可欠なもしくは重要な要素を特定すること、または本開示の範囲を線引きすることを意図しない。本要約の唯一の目的は、後述する、より詳細な説明の前置きとして簡略化した形態において一部の概要を示すことである。
一態様において、対象からの生体試料中に存在する自己抗体の検出のためにシトルリン化ペプチドまたはタンパク質を使用することを含む、がんを検出し、かつ/またはがんを有する対象を診断する方法が提供され、ここで、前記自己抗体はシトルリン化ペプチドまたはタンパク質に特異的に結合するものである。別の態様において、対象からの生体試料においてシトルリン化ペプチドまたはタンパク質を検出することを含む、がんを検出し、かつ/またはがんを有する対象を診断する方法が提供される。別の態様において、抗がん剤を投与することを含む、高レベルのシトルリン化ペプチドもしくはタンパク質を有するか、またはシトルリン化ペプチドもしくはタンパク質に対する自己抗体を有する、がんを有すると診断された対象を処置する方法が提供される。別の態様において、がんと関連する少なくとも1つのシトルリン化ペプチドまたはタンパク質を含む組成物を対象へ投与することを含む、対象においてがんのリスクを低減するか、またはがんを予防する方法が提供される。
一実施形態において、本開示は、がんに罹患しているか、またはがんに罹患していると疑われる患者からの血漿試料を準備すること;血漿試料を、表1に列挙される遺伝子によってコードされるタンパク質、表2に列挙される遺伝子によってコードされるタンパク質、および表10に列挙される遺伝子によってコードされるタンパク質からなる群から選択される少なくとも1つのシトルリン化タンパク質と、血漿試料中に存在し得るシトルリン化タンパク質に対するいずれかの自己抗体がシトルリン化タンパク質に結合するのに十分な条件下で、インキュベートすること;シトルリン化タンパク質およびそれ/それらに対するいずれかの結合した自己抗体を、検出可能な標識と、検出可能な標識が結合した自己抗体に結合し、実質的に他の分子に結合しない条件下で、インキュベートすること;結合した自己抗体に結合した検出可能な標識を検出すること;結合した自己抗体に結合した検出可能な標識の検出された量が閾値と等しいか、またはそれを超えることに応じて、患者をがんに罹患していると分類すること;および、結合した自己抗体に結合した検出可能な標識の検出された量が閾値未満であることに応じて、患者をがんに罹患していないと分類することを含む方法に関する。患者ががんに罹患していると分類される一部の実施形態において、方法は、患者へ少なくとも1つの抗がん剤を投与することをさらに含む。
一実施形態において、本開示は、患者を処置する方法であって、少なくとも1つの抗がん剤を患者へ投与することを含み、患者が、表1に列挙される遺伝子によってコードされるタンパク質、表2に列挙される遺伝子によってコードされるタンパク質、および表10に列挙される遺伝子によってコードされるタンパク質からなる群から選択される少なくとも1つのシトルリン化タンパク質に対する、閾値を超えるか、またはそれと等しい自己抗体のレベルを有する、方法に関する。
一実施形態において、本開示は、基材;表1に列挙される遺伝子によってコードされるタンパク質、表2に列挙される遺伝子によってコードされるタンパク質、および表10に列挙される遺伝子によってコードされるタンパク質からなる群から選択される少なくとも1つのシトルリン化タンパク質;および、上記に説明される方法を行うための指示を含むキットに関する。
一実施形態において、本開示は、がんに罹患しているか、またはがんに罹患していると疑われる患者からの組織試料を準備すること;表1に列挙される遺伝子によってコードされるタンパク質、表2に列挙される遺伝子によってコードされるタンパク質、および表10に列挙される遺伝子によってコードされるタンパク質からなる群から選択される少なくとも1つのシトルリン化タンパク質について組織試料をアッセイすること;組織試料が閾値と等しいか、またはそれを超えるシトルリン化タンパク質の量を含有することに応じて、患者をがんに罹患していると分類すること;および、組織試料が閾値未満のシトルリン化タンパク質の量を含有することに応じて、患者をがんに罹患していないと分類することを含む方法に関する。
一実施形態において、本開示は、細胞溶解剤;および、上記に説明される方法を行うための指示を含むキットに関する。
一実施形態において、本開示は、がんに罹患している患者からの腫瘍試料を準備すること;表2、表9および/または表10に列挙される配列および対応する修飾、ならびに表2、表9および/または表10に列挙される配列と少なくとも70%の同一性を有し、少なくとも1つのアルギニン残基を含む配列からなる群から選択される少なくとも1つのシトルリン化アミノ酸配列について腫瘍試料をアッセイすること;腫瘍試料が閾値と等しいか、またはそれを超えるシトルリン化アミノ酸配列の量を含有することに応じて、患者の免疫系へ少なくとも1つのペプチドを提示すること、ここで、各ペプチドはシトルリン化アミノ酸配列のうちの少なくとも1つを含む、を含む方法に関する。
一実施形態において、本開示は、少なくとも1つのペプチドであって、各ペプチドが、表2、表9および/または表10に列挙される配列および対応する修飾、ならびに表2、表9および/または表10に列挙される配列と少なくとも70%の同一性を有し、少なくとも1つのアルギニン残基を含む配列からなる群から選択される少なくとも1つのシトルリン化アミノ酸配列を含む、ペプチド;および、上記に説明される方法を行うための指示を含むキットに関する。
一実施形態において、本開示は、がんに罹患している患者からの腫瘍試料を準備すること;腫瘍試料を、細胞膜上に配置されたものとしての、表1に列挙される遺伝子からなる群から選択される遺伝子によってコードされるシトルリン化タンパク質についてアッセイすること;および、腫瘍試料が閾値と等しいか、またはそれを超えるシトルリン化タンパク質の量を含有することに応じて、シトルリン化タンパク質を標的化する抗がん剤を患者へ投与することを含む方法に関する。
一実施形態において、本開示は、細胞膜上に配置されたものとしての、表1に列挙される遺伝子からなる群から選択される遺伝子によってコードされるシトルリン化タンパク質を標的化する抗がん剤;および、上記に説明される方法を行うための指示を含むキットに関する。
一実施形態において、本開示は、表2、表9および表10に列挙されるペプチドからなる群から選択されるペプチドと少なくとも70%の配列同一性を含む単離されたペプチドに関する。
実施形態において、本開示は、がんの診断および/または治療を可能にし得る。
以下の図面は、本明細書の部分を構成し、本開示のある特定の態様をさらに実証するために含まれる。本開示は、本明細書に示される特定の実施形態の詳細な説明と共にこれらの図面のうちの1つまたはそれ以上を参照することによってより良く理解することができる。図面は、成文の説明が明白にそうであると示さない限り、組成物および方法の範囲を限定しない。
図1は、本開示の態様による、様々ながんタイプにおけるPADIファミリー遺伝子およびタンパク質発現を示す。ホルモン受容体サブタイプによって階層化した、144個の正常乳房組織および1725個の乳房腫瘍についてのCurtis乳房コホート(参考文献36)におけるPADIファミリーメンバーの遺伝子発現が示される。統計的有意性は、ダンの多重比較検定によって決定し、正常な対照と比較して乳がんにおいてPADI2の有意な上昇が観察された。
図2は、本開示の態様による、乳がん細胞株におけるシトルリノーム(citrullinome)のホルモン受容体特異性を示す。上部パネル:乳がん細胞株におけるシトルリン化質量スペクトルの総数とPADI2 mRNA発現との間の相関[ピアソン相関(95%CI)]を示すスキャッタープロット。下部パネル:ホルモン受容体陽性によって階層化した乳がん細胞株の全細胞溶解物におけるシトルリン化タンパク質の数を示す分布プロット。統計的有意性は、ウィルコクソン順位和検定を使用して決定した。
図3A~3Fは、本開示の態様による、乳がんにおけるシトルリノームと腫瘍免疫応答との間の関連を示す。図3Aは、HCC1187 TNBC細胞株におけるPADI2のsiRNA媒介性ノックダウン後の、PADI2の相対的mRNAおよびタンパク質発現を示す。統計的有意性は、両側スチューデントt検定によって決定した。***p<0.001、****p<0.0001。図3Bは、HCC1187 TNBC細胞株におけるPAD/2のsiRNA媒介性ノックダウン後の、抗ペプチジルシトルリンについてのイムノブロットを示す。右側の棒グラフプロットは、ベータ-アクチンに対して正規化した抗ペプチジルシトルリンの濃度測定分析を示す。図3Cは、HCC1187 TNBC細胞株におけるPADI2のsiRNA媒介性ノックダウン後の、シトルリノームのダウンレギュレーションを示す。スキャッタープロットは、si対照に対してsiRNA-PADI2処理細胞を引いたTMTチャネルのシグナル強度におけるデルタを表し;統計的有意性は、シトルリン化ペプチドTMT比の対応のある両側t検定によって決定した。図3Dは、HCC1954(Her2富化(enriched))およびMDA-MB-468(TNBC)乳がん細胞株において特定された細胞表面MHCペプチドを示す。統計的有意性は、フィッシャーの直接検定によって決定した。Argシトルリン化(citrullinationed)ペプチドを含有する推定MHCクラスII結合ペプチド長(12~34アミノ酸)を非修飾型とみなし、NetMHC-II pan V.4.1(参考文献27および28)について検索し、結合親和性を表2に示した。図3Eは、PADIファミリーメンバーのmRNA発現とTCGA全乳がん(n=974)における免疫遺伝子シグネチャーとの間のスピアマン相関係数を示すヒートマップを示す。破線は、PADIファミリーメンバーのmRNA発現とB細胞遺伝子ベースのシグネチャーとの間の関連を強調する。PADI2は、B細胞遺伝子ベースのシグネチャーと強く正に相関した。図3Fは、非TNBC(ルミナールA/BおよびHer2富化混合;n=859)腫瘍と比較したTNBC(n=115)における、PADI2のレベルの上昇を明らかにするTCGA由来遺伝子発現、およびB細胞の遺伝子シグネチャーを示す。統計的有意性は、両側ウィルコクソン順位和検定を使用して決定した。
図4A~4Eは、本開示の態様による、PADI2媒介性シトルリン化およびB細胞腫瘍浸潤を示す。図4Aは、ホルモン受容体サブタイプによって階層化した乳腺および乳房腫瘍における、PADI2、ペプチジルシトルリン(シトルリン)、B細胞マーカーCD19およびCD20、ならびに腫瘍マーカーPanCKについての代表的なIHC切片を示す(元の倍率×200)。図4Bは、乳がん対象からの血漿中の、質量分析によって特定した免疫沈降IgG結合シトルリノームを示す。新規に診断された乳がんの26個のプールした血漿試料中の、総特有ペプチド(方法を参照されたい)に対して正規化したシトルリン化タンパク質の分布は156人の患者からなり、12個のプールした血漿試料は、113人のがんを有しない対象に対応する(表6を参照されたい)。統計的有意性は、両側スチューデントt検定によって決定した。***<0.001。同じコホートのAUC性能。図4Cは、11人のステージII TNBC症例および31人の健康な対照からの個々の患者の血漿中のシトルリン化VIMに対する自己抗体反応性を示す。11人のステージII TNBC患者の血漿は、免疫ブロッティングアッセイ(図S6)により非修飾VIMおよびシトルリン化VIMに対する自己抗体反応性について使用したものと同じであった。統計的有意性は、両側ウィルコクソン順位和検定によって決定した。図4Dは、TNBC症例(n=11)を健康な対照(n=31)から区別するためのシトルリン化VIMの分類子性能(AUC)を示す。図4Eは、TNBC症例(赤色)および健康な対照(青色)の血漿中のシトルリン化VIMおよび非修飾VIMに対する自己抗体反応性を示す。点および接続する線は、適合する試料を表した。統計的有意性は、対応のある両側t検定によって決定した。
図5は、本開示の態様による、TCGA乳がん腫瘍におけるPADI2 mRNA、突然変異負荷およびB細胞の遺伝子ベースのシグネチャーの相関を示す。TCGA-乳がんデータセットについての遺伝子発現データは、CbioPortal 30からダウンロードした。スキャッタープロットは、PADI2 mRNAと、突然変異負荷と、B細胞の遺伝子ベースのシグネチャーとの間の関連を表す。突然変異負荷は、1症例当たりの突然変異事象の数として定義した。点の色は、乳がん分子サブタイプを示す(青色-基底型;赤色-正常様;緑色-ホルモン受容体(HR)陽性;紫色-HR-/HER2-受容体陽性)。
図6は、本開示の態様による、抗ペプチジルシトルリン抗体の反応性の確認を示す。 図7は、本開示の態様による、健康な組織および腫瘍隣接正常組織(n=6)におけるPADI2およびシトルリン発現を示す。元の倍率:×200。 図8は、本開示の態様による、イムノブロッティングアッセイによる、組換え非修飾ビメンチンおよびシトルリン化ビメンチンに対する血漿IgG反応性を示す。 図9は、本開示の態様による、ヒトENO1からの非修飾ペプチドおよびシトルリン化ペプチドについてのELISpotアッセイの結果を示す。示されるデータは、ELISpot IgGアッセイからのデータであり、シトルリン化ペプチドがB細胞応答を有意に誘発したことを示す。 図10は、本開示の態様による、ヒトENO1からの非修飾ペプチドおよびシトルリン化ペプチドについてのELISpotアッセイの結果を示す。示されるデータは、ELISpot IFNγアッセイからのデータであり、シトルリン化ペプチド1におけるIFNγ応答のより高い量を示す。 図11は、本明細書中の実施形態による、第1の方法のフローチャートを示す。 図12は、本明細書中の実施形態による、第2の方法のフローチャートを示す。 図13は、本明細書中の実施形態による、第3の方法のフローチャートを示す。 図14は、本明細書中の実施形態による、第4の方法のフローチャートを示す。
本明細書において開示される主題は、様々な改変および代替の形態をとることができる一方で、その特定の実施形態は、図面において例によって示され、本明細書において詳細に説明される。しかしながら、特定の実施形態の本明細書中の説明は、本開示を、開示される特定の形態に限定するとは意図せず、反対に、附属の特許請求の範囲によって定義される本開示の趣旨および範囲に入るすべての改変、均等物および代替を包含することを意図すると理解すべきである。さらに、図面において例証される様式化された描写は、任意の絶対尺度で描写されたものではない。
詳細な説明
I.序論
本開示は、部分的には、タンパク質アルギニンデアミナーゼ(deaminase)(PADI)ファミリーメンバーPADI2が、乳がんを含むいくつかのがんタイプにおいて高度に発現されているという、本発明者らによる発見に基づく。本明細書中の実施例において詳述される通り、乳房腫瘍組織の免疫組織化学分析により、腫瘍におけるPADI2の発現の増大、およびPADI2タンパク質発現とペプチジルシトルリン染色との間の正の相関が明らかになった。PADI2発現は、B細胞免疫シグネチャーおよびMHC-II結合シトルリン化ペプチドと強い正の相関を呈した。部分的には、がんにおけるシトルリノーム免疫応答に関与するネオ抗原に基づく、がんを検出し、処置し、かつ/またはがんのリスクを低減するか、もしくはがんを予防するための、診断、治療および予防組成物および方法が、本明細書において提供される。
PADIファミリーメンバーによるタンパク質シトルリン化の調節不全は、自己免疫疾患と関連しており、がんの顕在化としての自己免疫の発生を考慮して、がんへのその関連について近年関心が寄せられている(参考文献1および2)。PADIは、カルシウムイオンの存在下において、アルギニンのシトルリンへの脱アミノ化(deamination)を介してタンパク質の翻訳後修飾を触媒する酵素のファミリーを含む。全体として、5つのPADIファミリーメンバーが公知であり、配列ホモロジーは70%~95%に及ぶ(参考文献2)。今日までに、タンパク質シトルリン化を逆行させることができる酵素は特定されていない。タンパク質シトルリン化の役割は、リウマチ性関節炎(RA)の関係において調査されており、リウマチ性関節炎ではタンパク質、特にケラチン、フィラグリン、ビメンチン、アクチン、ヒストン、ヌクレオフォスミンおよび核ラミンCのシトルリン化の上昇は、自己免疫応答を誘発することが示されている(参考文献3および4)。RAにおける自己免疫性は、主に、シトルリン化ペプチドのMHCクラスII媒介性提示を通して促進され、これはB細胞応答を誘発すると考えられている(参考文献5および6)。また現在、腫瘍免疫性を形作るものとしてMHC-IIネオ抗原への関心が増加している(参考文献7)。
がんにおけるPADIファミリーメンバーの発現の包括的評価は、限定されている。PADI4は、ヒストンH3、ING4、p53およびHDAC2とのその相互作用について多く調査されている(参考文献8~11)。さらに、腫瘍におけるタンパク質シトルリン化が免疫応答を誘発する程度は、ほとんど探索されていない。ビメンチンおよびa-エノラーゼのシトルリン-ペプチドに対する抗腫瘍免疫性を調べることを意図する研究は、これらのペプチドがCD4+T細胞応答を誘発し得ることを実証し(参考文献12および13)、腫瘍におけるタンパク質シトルリン化は免疫原性であり得ることの証拠を提供した。シトルリン化タンパク質の抗原性を考慮すると、がんタイプ間でのPADIファミリーメンバー、ならびにシトルリン化および免疫応答に対するそれらの影響の探索は、シトルリン化抗原による腫瘍ワクチンの開発について、またはがん検出もしくは免疫療法への応答の予測のためのバイオマーカーとしてのシトルリン化抗原の特定についての潜在性を有する(参考文献7および14~18)。
今日までに、PADI4は、がんに関してファミリーメンバーの中で最も調査されている。PADI4は、ヒストンを含む核タンパク質をシトルリン化するために核輸送配列を包含することが知られている唯一のPADIメンバーである(参考文献47)。実施例において実証され、本明細書において説明される通り、32種の異なるがんタイプからなる9,721個のヒト腫瘍についてのCancer Genome Atlas(TCGA)からの、プロテオミクスプロファイリングおよびmRNA発現データセットの解析によって、12種の一般的ながんタイプを反映する196種のがん細胞株において、PADIファミリーメンバーのタンパク質発現を調査した。全体的な発現レベルについて、PADI2は、他のPADIファミリーメンバーと比較して、がんにおいてタンパク質レベルで優先的に発現されることが分かった。乳がん細胞株におけるPADI2の発現は、乳がんTMAにおいて再現された。
質量分析を使用して、PADI2と28種の乳がん細胞株のシトルリノームとの関連をさらに探索し、422個の乳房腫瘍におけるPADI2発現およびシトルリン化の発見を、免疫組織化学(IHC)を使用して確認した。シトルリン化は、PADI発現および細胞内Ca2+レベルに左右される。RAにおいて、細胞質ゾルCa2+レベルは、正常細胞の濃度と比較して増加しており(参考文献48)、腫瘍においては、異常なレベルのCa2+チャネルおよびポンプが発現され(参考文献49)、これは細胞間Ca2+流動をPADIに好ましく変化させ得る。PADI2媒介性シトルリン化は、隣接非腫瘍組織または正常乳腺組織および他の臓器部位と比較して乳房腫瘍組織において上昇していることが分かり、IgG結合シトルリン化タンパク質は、対照と比較して、新規に診断された乳がんを有する患者の血漿中で上昇していることが示された。一部の実施形態において、シトルリン化タンパク質に対する自己抗体をがんバイオマーカーとして使用して、かつ/またはシトルリン化タンパク質および/もしくはペプチドをネオ抗原および/もしくはバイオマーカーとして使用して、がんを検出し、診断し、処置し、がんのリスクを低減するか、またはがんを予防する方法が、本明細書において提供される。
また、TCGA遺伝子発現データセットおよびヒト乳がん腫瘍の免疫組織化学分析を使用して、PADI2媒介性シトルリン化は別個の腫瘍免疫表現型と関連することが分かった。がんにおけるタンパク質シトルリン化および免疫応答に対するそれらの影響についての以前の限定的な研究とは対照的に、B細胞応答によって駆動される、RAにおける抗シトルリン自己抗体の発生は、十分に説明されている(参考文献5)。本明細書において実証される通り、PADI2は、腫瘍浸潤B細胞との統計的に有意な正の相関を呈し、これは自己免疫疾患との類似性を示す。乳がん細胞株におけるシトルリン化ペプチドのMHC分析により、MHC-II結合配列長のペプチドが得られ、B細胞媒介性免疫応答を支持した。核区画に由来するシトルリン化タンパク質の実質的な画分の発生は興味深いものであり、これは乳がんと自己免疫疾患との間の類似性を示し、自己免疫疾患については高レベルの循環抗核抗体が診断マーカーである(参考文献50および51)。また、がんにおけるシトルリン化腫瘍関連タンパク質に対する循環自己抗体についての証拠が、本明細書において実証されている。シトルリン化タンパク質に対する自己抗体は、がんタイプおよびサブタイプ特異的であるようである。ネットワーク解析により、乳がんサブタイプにおいて一般的なサイトケラチン複合体が得られ、一方で、ルミナールAにおいてホルモン受容体を中心とするネットワークの別個の特徴が観察され、TNBCにおいてはMYCを中心とするネットワークが観察された。
がんワクチン開発および免疫療法についての現行の関心を考慮すると、本明細書において説明される発見は、抗原性についてのシトルリン化の重要性を指し示す。興味深いことに、ビメンチンおよびa-エノラーゼを含む、ワクチン開発のために標的化されているいくつかのシトルリン化タンパク質が特定された(参考文献12および13)。抗がん免疫性を誘発することにおけるa-エノラーゼのシトルリン化の重要性は、最近実証されている(参考文献13)。がん免疫性を誘発するためにシトルリン化ペプチドを使用して(例えば、がんワクチン開発において)がんのリスクを低減するか、またはがんを予防するための方法が、本明細書において提供される。
本開示の様々な例示的な実施形態が以下に説明される。明確にするために、実際の実施のすべての特徴が本明細書において説明されるわけではない。任意のそのような実際の実施形態の開発において、実施ごとに変動する、システム関連、規制、およびビジネス関連の制約に応じるなど、開発者の特定の目的を達成するために多くの実施特異的決定がなされなければならないことがもちろん理解される。さらに、そのような開発努力は、複雑で時間のかかるものであろうが、それにもかかわらず、本開示の利益を享受する当業者が行うルーチン事項であり得ることが理解される。本説明は当業者の観点から読むべきであり;それゆえ、当業者に周知の情報は必ずしも含まれない。
本主題は、附属の図面についてここで説明される。様々な構造、システムおよびデバイスは、単に説明の目的のため、さらには当業者に周知である詳細によって本開示を不明確にしないために、図面において模式的に描写される。それにもかかわらず、附属の図面は、本開示の例示的な実施例を記載および説明するために含まれる。
II.用語
本明細書において使用される語および句は、関連分野の当業者によるそれらの語および句の理解と一致する意味を有するように理解および解釈すべきである。用語または句の特別な定義、すなわち、当業者により理解される通常かつ慣例の意味とは異なる定義が、本明細書中の用語または句の一貫した使用により意味されることは意図されない。用語または句が特別な意味、すなわち、当業者によって理解される意味以外の意味を有すると意図される場合、そのような特別な定義は、その用語または句についての特別な定義を直接的かつ明解に提供する定義的な様式において、本明細書において明確に示される。
本明細書において使用される場合、「a」または「an」は、1つまたはそれ以上を意味し得る。特許請求の範囲において使用される場合、「を含む(comprising)」という語と共に使用されるとき、「a」または「an」という語は、1つまたは2つ以上を意味し得る。
「を含む(including)」、「を含む(comprising)」または「を有する」という用語およびそれらの変形の本明細書における使用は、その後に列挙される要素およびそれらの均等物ならびに追加の要素を包含することを意味する。また、ある特定の要素「を含む(including)」、「を含む(comprising)」または「を有する」と列挙される実施形態は、それらのある特定の要素「から本質的になる」および「からなる」ことを企図される。本明細書において使用される場合、「および/または」とは、関連して列挙される項目のうちの1つまたはそれ以上のいずれかおよびすべての可能な組合せを言及および包含し、代替(「or」)において解釈される場合は組合せを欠く。
本明細書において使用される場合、「から本質的になる」という移行句(および文法的変形)は、列挙される材料または工程、および特許請求の範囲の発明の「基本的および新規特徴に実質的に影響を及ぼさない材料および工程」を包含すると解釈すべきである。In re Herz, 537 F.2d 549, 551-52, 190 U.S.P.Q. 461, 463 (CCPA 1976)(原本に重点を置く)を参照されたく;またMPEP §2111.03.を参照されたい。したがって、「から本質的になる」という用語は、本明細書において使用される場合、「を含む」と同等であると解釈すべきでない。
本明細書中の値の範囲の列挙は、本明細書において別のように示さない限り、その範囲内に入る各別々の値を個々に言及することの省略方法としての機能を果たすことを単に意図し、各別々の値は、それが本明細書において個々に列挙されているのと同様に本明細書に組み込まれる。例えば、濃度範囲が1%~50%と示される場合、2%~40%、10%~30%または1%~3%などの値は、本明細書において明らかに挙げられていると意図される。これらは、特に意図されるものの単なる例であり、列挙される最低値および最高値の間およびこれらを含む数値のすべての可能な組合せが、本開示において明らかに示されていると考えるべきである。
「約」および「およそ」という用語は、本明細書において使用される場合、一般的に、測定の性質または正確さを考慮して、測定される量について許容される誤差の程度を意味するものである。例示的な誤差の程度は、所与の値または値の範囲の20%以内(%);好ましくは10%以内;より好ましくは5%以内である。「約X」または「およそX」という任意の言及は、少なくとも値X、0.95X、0.96X、0.97X、0.98X、0.99X、1.01X、1.02X、1.03X、1.04Xおよび1.05Xを特に示す。したがって、「約X」または「およそX」という表現は、例えば「0.98X」の請求限界についての成文の支持を教示および提供すると意図される。あるいは、生物学的系において、「約」および「およそ」という用語は、所与の値のその桁以内、好ましくは5倍以内、より好ましくは2倍以内である値を意味し得る。本明細書において示される数量は、別のように示されない限り、概数であり、これは、「約」または「およそ」という用語は、明らかに示されない場合、暗示され得ることを意味する。「約」が数値範囲の始めに適用される場合、それは範囲の両方の端に適用される。
「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、本明細書において互換的に使用され、アミノ酸残基のポリマーを指す。本明細書において使用される場合、これらの用語は、全長タンパク質を含む任意の長さのアミノ酸鎖を包含し、ここで、アミノ酸残基は、共有ペプチド結合によって連結されている。
本明細書において説明されるポリペプチド中のアミノ酸は、20種の天然に存在するアミノ酸、天然に存在するアミノ酸のD立体異性体、非天然アミノ酸および化学修飾アミノ酸のいずれかであり得る。非天然アミノ酸(すなわち、タンパク質に天然には見出されないアミノ酸)もまた当該技術分野において公知であり、例えば、Zhang et al. “Protein engineering with unnatural amino acids,” Curr. Opin. Struct. Biol. 23(4): 581-587 (2013);Xie et la. “Adding amino acids to the genetic repertoire,” 9(6): 548-54 (2005);およびそれらの中で引用されるすべての参考文献において示されている。ベータおよびガンマアミノ酸は、当該技術分野において公知であり、これもまた非天然アミノ酸として本明細書において企図される。別のように示されない限り、特定のアミノ酸配列は、明らかに示されるその配列に加えて、その保存的に修飾された変異型も暗に包含する。
本明細書において使用される場合、化学修飾アミノ酸とは、その側鎖が化学修飾されているアミノ酸を指す。例えば、側鎖は、信号伝達部分、例えば、フルオロフォアまたは放射性標識を含むように修飾することができる。また、側鎖は、新規官能基、例えば、チオール、カルボン酸またはアミノ基を含むように修飾してもよい。翻訳後に修飾されたアミノ酸もまた、化学修飾アミノ酸の定義に含まれる。
「同一性」または「実質的な同一性」という用語は、本明細書において説明されるポリペプチド配列の関係において使用される場合、参照配列と少なくとも60%の配列同一性を有する配列を指す。あるいは、同一性パーセントは、60%~100%の任意の整数であり得る。例示的な実施形態は、本明細書において説明されるプログラム;好ましくは以下に説明される、標準のパラメーターを使用するBLASTを使用して、参照配列と比較して少なくとも:60%、65%、70%、75%、80%、85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%を含む。当業者は、これらの値は、コドン縮重、アミノ酸類似性、リーディングフレームの位置付けなどを考慮して、2つのヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質の対応する同一性を決定するように適切に調節され得ることを認識する。
配列比較のために、典型的に、1つの配列が参照配列として作用し、これに対して試験配列が比較される。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験および参照配列をコンピューターに入力し、必要に応じて部分配列の協調を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメーターを指定する。デフォルトプログラムパラメーターを使用してもよく、あるいは代替のパラメーターを指定してもよい。その後、配列比較アルゴリズムにより、プログラムパラメーターに基づいて、参照配列と比較した試験配列についての配列同一性パーセントを計算する。
「比較ウィンドウ」とは、本明細書において使用される場合、20~600、通常、約50~約200、より通常には約100~約150からなる群から選択されるいくつかの連続する位置のいずれか1つのセグメントについての言及を含み、その中で、2つの配列を最適に整列させた後、配列は同じ数の連続する位置を有する参照配列と比較することができる。比較のための配列の整列の方法は、当該技術分野において周知である。比較のための配列の最適整列は、Smith and Waterman Add. APL. Math. 2:482 (1981)の局所相同性アルゴリズムによって、Needleman and Wunsch J. Mol. Biol. 48:443 (1970)の相同性整列アルゴリズムによって、Pearson and Lipman Proc. Natl. Acad. Sci. (U.S.A.) 85: 2444 (1988)の類似検索法によって、これらのアルゴリズムのコンピューターによる実施(例えばBLAST)によって、または手動の整列および目視検査によって行ってもよい。
配列同一性パーセントおよび配列類似性パーセントを決定するのに好適なアルゴリズムは、それぞれ、Altschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 215: 403-410およびAltschul et al. (1977) Nucleic Acids Res. 25: 3389-3402において説明されているBLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムである。BLAST解析を行うためのソフトウェアは、米国国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)ウェブサイトを通して公に使用可能である。アルゴリズムは、第1に、クエリー配列中の長さWの短いワードを特定することによって、データベース配列中の同じ長さのワードと整列した場合、一部の正の値の閾値スコアTに適合するか、またはこれを満たす高いスコアの配列対(HSP)を特定することを含む。Tは、近隣のワードのスコア閾値と称される(Altschul et al、上記)。これらの最初の近隣のワードヒットは、それらを含有するより長いHSPを見出すための検索を開始するためのシードとして作用する。その後、ワードヒットを、累積整列スコアが増加し得る限り、各配列に沿って両方向に延長する。累積スコアは、ヌクレオチド配列についてはパラメーターM(1対の適合残基についての得点スコア;常に0超)およびN(不適合残基についての失点スコア;常に0未満)を使用して計算される。アミノ酸配列については、スコア付けマトリックスを使用して、累積スコアを計算する。各方向へのワードヒットの延長は:累積整列スコアがその最大達成値から量X分下がったとき;1つまたはそれ以上の負のスコアの残基整列の蓄積のために、累積スコアが0またはそれ以下になったとき;またはいずれかの配列の末端に達したとき、止まる。BLASTアルゴリズムパラメーターW、TおよびXは、整列の感受性および速さを決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列のための)は、28のワードサイズ(W)、10の予測値(E)、M=1、N=2および両鎖の比較をデフォルトとして使用する。アミノ酸配列について、BLASTPプログラムは、3のワードサイズ(W)、10の予測値(E)およびBLOSUM62スコア付けマトリックスをデフォルトとして使用する[Henikoff & Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915 (1989)を参照されたい]。
また、BLASTアルゴリズムは、2つの配列間の類似性の統計解析を行う[例えば、Karlin & Altschul, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 90:5873-5787 (1993)を参照されたい]。BLASTアルゴリズムにより提供される類似性の1つの測定法は、2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の適合が偶然に起こり得る確率の表示を提供する最小和確率[smallest sum probability:P(N)]である。例えば、参照核酸に対する試験核酸の比較における最小和確率が約0.01未満、より好ましくは約10-5未満、最も好ましくは約10-20未満である場合、核酸は参照配列に類似していると考えられる。
「自己抗体」という用語は、本明細書において使用される場合、前記自己抗体を産生する対象において内因性分子に特異的に結合する抗体を指す。そのような抗体のレベルは、典型的に、そのような内因性分子に特異的に結合する他の任意の抗体の平均値と比較して上昇している。内因性分子は、自己抗原であり得る。自己抗原は、特定の疾患または障害に罹患している対象の免疫系によって(例えば自己抗体を通して)認識されるペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体(およびときにはDNAまたはRNA)として定義される。これらの抗原は、正常な条件下では、免疫系の標的ではないはずであるが、T細胞はそれでも、自己抗原を発現する細胞を攻撃する。
「がん」という用語は、異常な細胞の制御されていない増殖によって特徴付けられる疾患を指す。この用語は、悪性、軟組織または固形として特徴付けられるかどうかにかかわらず、すべての公知のがんおよび新生物性状態を含み、転移前および転移後のがんならびに再発がんを含むすべてのステージおよびグレードのがんを含む。様々な種類のがんの例として、消化性および胃腸性がん、例えば胃がん(gastric cancer)[例えば胃がん(stomach cancer)]、結腸直腸がん、消化管間質腫瘍、消化管カルチノイド、結腸がん、直腸がん、肛門がん、胆管がん、小腸がん、食道がん、乳がん、肺がん(例えば非小細胞肺がん)、胆嚢がん、肝がん、膵がん、虫垂がん、前立腺がん、卵巣がん、子宮頸がん、子宮がん、腎がん、中枢神経系のがん、皮膚がん(例えば黒色腫)、リンパ腫、神経膠腫、絨毛がん、頭頸部がん、骨肉腫および血液がんが挙げられるが、これらに限定されない。
「がんに罹患している」という用語は、対象に関して本明細書において使用される場合、現在公知であるか、または今後発見される任意の診断技術を使用して、がんが対象の身体内において検出可能であることを示す。「罹患している」とは、対象ががんの痛みを伴っていること、または任意の自然に知覚可能ながんの症状を有していることを必要としない。
「がんに罹患していることが疑われる」という用語は、対象に関して本明細書において使用される場合、対象が、医師の判断において、対象ががんに罹患していることを示し得る1つまたはそれ以上の症状を有することを示す。
「生体試料」とは、本明細書において使用される場合、一般的に、ヒト、好ましくは哺乳動物対象から得られた肉体組織または流体を指す。例示的な対象として、ヒト、非ヒト霊長類、例えばサル、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウシ、ウマ、ラクダ、ヤギおよびヒツジが挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態において、対象はヒトである。生体試料の非限定的な例として、血液、血液画分または血液製剤(例えば、血清、血漿、血小板、赤血球、末梢血単核球など)、痰または唾液、便、尿、他の生体流体(例えば、リンパ液、前立腺液、胃液、腸液、腎臓の液、肺の液、脳脊髄液など)が挙げられる。加えて、固形組織、例えば、組織生検(例えば腫瘍組織)を使用してもよい。生体試料は検出アッセイにおける使用の前に加工してもよく、これは、希釈、緩衝液もしくは保存剤の添加、濃縮、精製または部分精製を含む。
III.方法およびキット
一態様において、がんを検出し、がんを有する対象を診断し、がんを有する対象を処置し、かつ/または対象においてがんのリスクを低減するか、もしくはがんを予防する方法が、本明細書において提供される。一部の実施形態において、方法は、シトルリン化ペプチド、またはシトルリン化ペプチドに特異的に結合する自己抗体を検出することを含む。一部の実施形態において、シトルリン化ペプチドに特異的に結合する自己抗体を検出することは、シトルリン化タンパク質またはペプチド(例えば本明細書において説明される)の使用を含む。一部の実施形態において、シトルリン化ペプチドは、がん細胞において発現されることが公知であるタンパク質の一部に対応する配列である。一部の実施形態において、シトルリン化ペプチドは、がん細胞によって高度に発現されるタンパク質の一部に対応する配列である。一部の実施形態において、がん細胞において高度に発現されるタンパク質は、対応する正常(すなわち、非がん性)組織によっては発現されないか、または最小限に発現される。一部の実施形態において、シトルリン化ペプチドは、がん細胞の細胞表面上に発現されることが公知であるタンパク質の一部に対応する配列である。一部の実施形態において、シトルリン化ペプチドは、がん免疫療法において標的化されているタンパク質(例えば、表10に列挙されるペプチドのいずれか)の一部に対応する配列である。一部の実施形態において、シトルリン化ペプチドは、表1に列挙される遺伝子のいずれか、表2に列挙される遺伝子のいずれか、および/または表10に列挙される遺伝子のいずれかによってコードされるタンパク質の一部に対応する配列である。一部の実施形態において、シトルリン化ペプチドは、表2、表9および/または表10に列挙される配列のいずれかと少なくとも70%の同一性を有する。一部の実施形態において、シトルリン化ペプチドは。
本明細書において提供される方法の一部の実施形態において、対象は、がんを有すると疑われるか、またはがんを有する高いリスクを有する。一部の実施形態において、対象は、がんを有する症状を示している。一部の実施形態において、対象は、がんの家族歴を有する。一部の実施形態において、対象は、がんを有するか、または発症する高リスクと関連する1つまたはそれ以上の遺伝的因子(例えば突然変異)を有する。一部の実施形態において、対象は、がんについて以前に処置された。一部の実施形態において、対象は、寛解中である。一部の実施形態において、対象は、高レベルの本明細書において説明されるバイオマーカーのいずれかを有する。
A.自己抗体の検出
本明細書において提供される、がんを検出し、かつ/またはがんを有する対象を診断する方法は、自己抗体(例えば、シトルリン化ペプチドまたはタンパク質に特異的に結合する自己抗体、本明細書においてシトルリン化タンパク質特異的自己抗体とも称される)の検出のためにシトルリン化ペプチドを使用する様々な技術を含み得る。上記に説明され、本明細書の実施例において実証される通り、シトルリン化タンパク質に結合する、対象における自己抗体の存在は、対象ががんを有することを示し得る。本明細書において説明されるシトルリン化ペプチドの各々について、ペプチド全体を、提供される方法において使用してもよく、ペプチドの断片を使用してもよく、ペプチドの変異型を使用してもよく、または本開示において説明される全長ペプチド、その断片もしくは変異型のうちの2つもしくはそれ以上の組合せを使用してもよい。例えば、シトルリン化ペプチドを免疫アッセイにおいて使用して、対象からの生体試料中のシトルリン化タンパク質特異的自己抗体を検出することができる。免疫アッセイにおいて使用されるシトルリン化ペプチドは、細胞溶解物(例えば、全細胞溶解物または細胞画分など)中に存在してもよく、あるいは、シトルリン化タンパク質特異的自己抗体によって認識される少なくとも1つの抗原性部位が結合に使用可能なままであるならば、精製シトルリン化ペプチドまたはその断片を使用してもよい。
一般的に、生体試料は、生体試料をシトルリン化ペプチドまたはその断片もしくは変異型と接触させることによって、シトルリン化タンパク質特異的自己抗体の存在について評価される。一部の実施形態において、シトルリン化ペプチドまたはその断片は、固形組織、例えば組織切片中に存在する。例えば、シトルリン化ペプチドまたは断片を含む組織試料を使用してもよく、それは、担体、例えば顕微鏡分析のためのガラススライド上に固定された組織切片の形態であってもよい。例えば、固形組織は、腫瘍組織、または腫瘍組織および隣接正常組織を含む組織試料であってもよい。一部の実施形態において、シトルリン化ペプチドまたはその断片は、哺乳動物からの試料中に存在する。免疫組織化学において使用される組織切片は、当該技術分野において周知であり、いくつかの会社[例えば、Asterand, Inc.(デトロイト、ミシガン);Euroimmun(モリスプレーンズ、ニュージャージー);およびImgenex(サンディエゴ、カリフォルニア)]から市販されている。他の実施形態において、シトルリン化ペプチドまたはその断片は、細胞溶解物、血液、血清、脳脊髄液(CSF)または尿中に存在する。
一部の実施形態において、対象からのシトルリン化タンパク質特異的自己抗体を含む液体試料を使用して、本明細書において提供される方法を実施することができる。例示的な液体試料として、細胞溶解物、血液、血清、脳脊髄液(CSF)および尿が挙げられる。シトルリン化タンパク質特異的自己抗体を含む液体試料を、シトルリン化ペプチドまたはその断片もしくは変異型と接触させる工程は、前記ペプチドおよび前記シトルリン化タンパク質特異的自己抗体を含む複合体の形成と適合性である条件下で、液体試料の存在下にて、固定化された形態の前記ペプチドをインキュベートすることによって行うことができる。1つまたはそれ以上の洗浄工程を企図してもよい。
一部の実施形態において、シトルリン化ペプチドまたはその断片は、以下に説明される単離された、精製シトルリン化ペプチドまたはその断片である。一部の実施形態において、シトルリン化ペプチドまたはその断片は、ファージディスプレイまたは真核細胞ディスプレイライブラリー中に存在する。一部の実施形態において、シトルリン化ペプチドまたはその断片は、細胞の表面上に異種性に発現される。
一部の実施形態において、生体試料は、シトルリン化ペプチドまたはその断片および二次抗体と接触される。当該技術分野において周知である通り、二次抗体とは、一次抗体が由来する動物種のIgGに対して生じさせた抗体である。二次抗体は、一次抗体に結合して、特異的一次抗体が先に結合する標的抗原の検出、分類および精製を補助する。二次抗体は、抗体種および使用される一次抗体のアイソタイプの両方についての特異性を有しなければならない。シトルリン化タンパク質特異的自己抗体が生体試料中に存在する場合、適切な条件下で、シトルリン化ペプチドまたはその断片と、生体試料中のシトルリン化タンパク質特異的自己抗体と、二次抗体との間で複合体が形成される。
シトルリン化タンパク質特異的自己抗体とシトルリン化ペプチドまたはその断片とを含む複合体は、当業者に公知の様々な方法、例えば、免疫蛍光顕微鏡法または分光法、発光、NMR分光法、免疫拡散法、放射活性、化学架橋、表面プラズモン共鳴、ネイティブゲル電気泳動法または酵素活性を使用して検出することができる。試料の性質によって、免疫アッセイおよび免疫細胞化学染色技術のいずれかまたは両方を使用してもよい。酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウェスタンブロットおよびラジオイムノアッセイは、当該技術分野において使用される方法であり、生体試料中のシトルリン化タンパク質特異的自己抗体の存在を検出するために本明細書において説明される通り使用することができる。これらの方法の一部は、複合体の直接的検出を可能にするが、一部の実施形態においては、例えば、蛍光、放射活性、酵素活性、NMRまたはMRIスペクトルにおける可視性その他などの標識の固有の特性のために、複合体が特異的に検出され得るように、二次抗体は標識化される。一部の実施形態において、検出方法は、ウェスタンブロット、ドットブロット、タンパク質マイクロアレイ、ELISA、ラインブロット放射免疫アッセイ、免疫沈降法、間接的免疫蛍光顕微鏡法、ラジオイムノアッセイ、放射免疫拡散法、オークタロニー免疫拡散法、ロケット免疫電気泳動法、免疫組織染色、補体結合アッセイ、FACSおよびタンパク質チップのいずれかを含み得るが、これらに限定されない。免疫組織化学によって、生体試料中のシトルリン化タンパク質特異的自己抗体の存在を検出するために使用され得る方法および組成物は、本明細書において説明される。免疫組織化学法は、当該技術分野において周知であり、非限定的な例示的方法は、米国特許第5,073,504号;同第5,225,325号;および同第6,855,552号において説明されている。また、Dabbs, Diagnostic Immunohistochemistry, 2nd Ed., 2006, Churchill Livingstone;およびChu & Weiss, Modern Immunohistochemistry, 2009, Cambridge University Press.を参照されたい。免疫組織化学は、結合していない二次抗体を除去するために組織試料を洗浄することや、適切な対照による並行する染色実験などの、本明細書において必ずしも詳細に説明されない工程をルーチンに含むことが当業者によって理解され得る。例示的な検出方法は、本開示の実施例において説明される。特定のプロトコールが以下に説明されるが、これらのアッセイの変形は当該技術分野においてルーチンであり、公知である。
一部の場合、二次抗体は、検出可能な標識にコンジュゲートされる。検出可能な標識は、当該技術分野において周知であり、蛍光標識、酵素標識、放射性標識、発光標識または親和性タグ、例えばビオチンもしくはストレプトアビジンを含むが、これらに限定されない。例示的な蛍光染料として、以下の参考文献:Handbook of Molecular Probes and Research Reagents, 8th ed. (2002), Molecular Probes, Eugene, OR;米国特許第6,191,278号、同第6,372,907号、同第6,096,723号、同第5,945,526号、同第4,997,928号および同第4,318,846号;ならびにLee et al., 1997, Nucleic Acids Research 25:2816-2822において開示される、水溶性ローダミン染料、フルオレセイン、2’,7’-ジクロロフルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、DyLight(商標)488、フィコエリトリン(PE)、ヨウ化プロピジウム(PI)、PerCP、PE-Alexa Fluor(登録商標)700、Cy5、アロフィコシアニン、Cy7、ベンゾキサンテン(benzoxanthene)染料、およびエネルギー移行染料が挙げられる。例示的な酵素標識として、アルカリホスファターゼ(AP)およびホースラディッシュペルオキシダーゼ(HP)が挙げられるが、これらに限定されない。発光標識として、例えば、様々な発光ランタニド(例えばユーロピウムまたはテルビウム)キレート剤のいずれかが挙げられる。例えば、好適なユーロピウムキレート剤には、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)またはテトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラ酢酸(DOTA)のユーロピウムキレート剤が含まれる。好適な放射性標識には、例えば、32P、33P、14C、125I、131I、35SおよびHが含まれる。一部の場合、検出可能な標識は、シトルリン化ペプチドまたはその抗原性断片もしくは変異型を精製することにおける使用のための、異種のポリペプチド、例えば、抗原性タグ、例えば、FLAG、ポリヒスチジン、ヘマグルチニン(HA)、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)またはマルトース結合タンパク質(MBP)であり得る。一部の場合、検出可能な標識は、診断マーカーまたは検出可能なマーカーとして有用である異種のポリペプチド、例えば、ルシフェラーゼ、蛍光タンパク質[例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)]またはクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)であり得る。より大きな感受性をもたらし得る別の標識化技術は、抗体の低分子量ハプテンへのカップリングである。これらのハプテンは、第2の反応の手段によって特異的に変更することができる。例えば、アビジンと反応するビオチン、または特異的抗ハプテン抗体と反応し得るジニトロフェノール、ピリドキサールもしくはフルオレセインなどのハプテンを使用することは一般的である。
一部の実施形態において、方法は、シトルリン化ペプチドまたはその抗原性断片もしくは変異型と、存在するならば生体試料中の対応するシトルリン化タンパク質特異的自己抗体と、二次抗体との間で複合体が形成される条件下で、シトルリン化ペプチドまたはその断片もしくは変異型を、対象からの生体試料、および好適な標識を有する二次抗体と接触させること;および、形成された場合、形成された複合体を、二次抗体の標識を検出することによって検出すること、ここで、二次抗体の存在は生体試料中のシトルリン化タンパク質特異的自己抗体の存在を示し、二次抗体の非存在は生体試料中のシトルリン化タンパク質特異的自己抗体の非存在を示す、を含む。一部の場合、二次抗体は、検出可能に標識化される。シトルリン化ペプチドまたはその抗原性断片もしくは変異型の固体担体(本明細書において基材とも称される)上への固定は、以下に説明されるシトルリン化タンパク質特異的自己抗体検出の方法を促進し得る。
一部の場合、方法は、好適な標識を有するシトルリン化ペプチドまたはその抗原性断片もしくは変異型を、対象からの生体試料と接触させること、シトルリン化ペプチドまたはその抗原性断片もしくは変異型と、生体試料中の対応するシトルリン化タンパク質特異的自己抗体との間に形成された任意の複合体を免疫沈降すること、および、前記複合体のいずれかの上の前記標識についてモニターすること、ここで、前記標識の存在は生体試料中のシトルリン化タンパク質特異的自己抗体の存在を示し、前記標識の非存在は生体試料中のシトルリン化タンパク質特異的自己抗体の非存在を示す、を含む。
一部の場合、方法は、対象からの生体試料中のシトルリン化タンパク質特異的自己抗体の存在を検出するための、免疫沈降法とウェスタンブロット分析との組合せを含む。例えば、方法は、シトルリン化ペプチドまたはその断片もしくは変異型と、存在するならば生体試料中の対応するシトルリン化タンパク質特異的自己抗体との間で複合体が形成される条件下で、シトルリン化ペプチドまたはその断片もしくは変異型を、対象からの生体試料と接触させること;シトルリン化ペプチドまたはその抗原性断片もしくは変異型と、生体試料中の対応するシトルリン化タンパク質特異的自己抗体との間で形成された任意の複合体を免疫沈降して、任意のそのような形成された複合体を含む免疫沈降物を産生すること;免疫沈降物の成分を互いに分離すること(例えば電気泳動法によって)、ここで、前記成分はシトルリン化ペプチドまたはその抗原性断片もしくは変異型と、存在するならば生体試料中の対応するシトルリン化タンパク質特異的自己抗体とを含む;および、免疫沈降物の成分を、存在するならばシトルリン化タンパク質特異的自己抗体の定常領域に特異的に結合する、好適な標識を有する二次抗体と接触させること;および、形成された場合、形成された複合体を、二次抗体の標識を検出することによって検出すること、ここで、二次抗体の存在は生体試料中のシトルリン化タンパク質特異的自己抗体の存在を示し、二次抗体の非存在は生体試料中のシトルリン化タンパク質特異的自己抗体の非存在を示す、を含み得る。例えば、免疫沈降アッセイは、組換えシトルリン化タンパク質を、対象からの生体試料、例えば血清と接触させることによって、対象におけるシトルリン化タンパク質特異的自己抗体の存在を検出するために行うことができる。例示的な標識として、例えば、蛍光染料および放射性標識を含む本開示において説明される検出可能な標識のいずれかが挙げられる。
一部の実施形態において、単離された、精製シトルリン化ペプチドまたはその抗原性断片もしくは変異型は、提供される方法において使用され得る。タンパク質発現および精製方法は、当該技術分野において周知である。しかしながら、本発明の教示は、ペプチド、特に本明細書中の表2、表9および/または表10に列挙されるまさにそのアミノ酸配列および修飾を有する任意のシトルリン化ペプチドを使用して行われ得るのみでなく、そのようなペプチドの断片または変異型を使用しても行われ得る。したがって、1つまたはそれ以上のアミノ酸残基が置換または修飾されている(例えばグルタルアルデヒドにより)ペプチドなどの、修飾されたシトルリン化ペプチドおよびその抗原性断片または変異型もまた企図される。
「単離された」または「精製された」ポリペプチドまたはその部分は、その天然に存在する環境において見出されるそのポリペプチドまたはタンパク質に通常伴うか、またはそれと相互作用する成分を実質的にまたは本質的に含まない。したがって、単離または精製されたポリペプチドまたはタンパク質は、他の細胞物質、もしくは組換え技術によって産生された場合培養培地を実質的に含まないか、または化学合成された場合化学前駆物質もしくは他の化学物質を実質的に含まない。細胞物質を実質的に含まないタンパク質は、約30%、20%、10%、5%または1%(乾燥重量により)未満の夾雑タンパク質を有するタンパク質の調製物を含む。シトルリン化ペプチドまたはその抗原性部分が組換え産生された場合、最適には、培養培地は、約30%、20%、10%、5%または1%(乾燥重量により)未満の化学前駆物質または非目的タンパク質化学物質を示す。
シトルリン化タンパク質またはペプチドについての「断片」という用語は、例えば、1つまたはそれ以上のアミノ酸分、一方の末端または両方の末端において切断されているアミノ酸残基配列を包含する、全長タンパク質またはペプチドの一部のアミノ酸残基配列を指す。シトルリン化ペプチド断片は、その抗原性を保持しているので、それは、適切な結合条件下で対応する全長シトルリン化タンパク質またはペプチドに特異的に結合し得るシトルリン化タンパク質特異的自己抗体によって、適切な結合条件下で特異的に結合される。シトルリン化タンパク質またはペプチドの抗原性部分は、例えば、全長シトルリン化タンパク質またはペプチドの10、25、50、100、150、200、250個またはそれ以上のアミノ酸残基の長さであるポリペプチドであってもよい。あるいはまたは加えて、そのようなペプチド配列は、1つまたはそれ以上のアミノ酸残基の1つまたはそれ以上の内部欠失を含み得る。これによって、断片の残りの長さは、1つまたはそれ以上の連続するまたはコンフォメーションエピトープの長さと等しいか、またはそれを超え、例えば、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、21、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100個またはそれ以上のアミノ酸残基である。
当業者は、十分な免疫原性を有するペプチドを設計するために使用されるガイドライン、例えば、Jackson, D.C., et al., Vaccine 18(3-4): 355-361 (1999)およびBlack, M., et al., Expert Rev. Vaccines, 9(2): 157-173 (2010)において説明されるガイドラインについて精通している。簡潔に説明すると、ペプチドは、可能な限り多くの以下の必要条件:(a)ペプチドは高度の親水性を有すること、(b)ペプチドは、アスパラギン酸、プロリン、チロシンおよびフェニルアラニンを含む群から選択される1つまたはそれ以上の残基を含むこと、(c)ペプチドは、より高い特異性のために、他の公知のペプチドまたはポリペプチドとまったくまたはほとんど相同性を有しないこと、(d)ペプチドは十分に可溶性であること、(e)ペプチドは、特定の理由のために必要とされない限り、グリコシル化部位またはリン酸化部位を含まないこと、および(f)ペプチドは、シトルリン化され得る(例えばPADIファミリー酵素によって)少なくとも1つのアルギニン残基を含有することを満たすことが望ましい。あるいは、例えば、Moreau, V., et al., BMC Bioinformatics 2008, 9:71 (2008)によって説明される手法などの、バイオインフォマティクス手法に従ってもよい。そのような生物学的に活性な部分は、組換え技術によって調製し、殺虫活性について評価してもよい。
シトルリン化タンパク質もしくはペプチドまたはその断片の「変異型」という用語は、シトルリン化タンパク質、ペプチドまたはその断片の正常な配列と少なくとも70、75、80、85、90、92、94、95、96、97、98または99%同一であるアミノ酸残基配列を含むポリペプチドを指す。本開示の関係においては、シトルリン化タンパク質もしくはペプチドまたはその断片の変異型は、その抗原性を保持しているので、それは、適切な条件下で対応する全長シトルリン化タンパク質またはペプチドに特異的に結合し得るシトルリン化タンパク質特異的自己抗体によって、適切な条件下で特異的に結合される。一部の場合、変異型は、生物活性、例えば抗原がシトルリン化タンパク質特異的抗体、例えばシトルリン化タンパク質特異的自己抗体に特異的に結合する能力に本質的なアミノ酸残基以外のアミノ酸残基において修飾されている。一部の場合、1つまたはそれ以上のそのような本質的なアミノ酸残基は、保存的な様式において置換してもよく、あるいは追加のアミノ酸残基を、変異型ポリペプチドの生物活性(すなわち、抗原性)が保存されるように挿入してもよい。
シトルリン化タンパク質またはペプチドおよびその断片のそのような変異型は、例えば、それらをコードする核酸配列中に欠失、挿入もしくは置換を導入することによって、または化学合成もしくは修飾によって調製することができる。さらにまた、シトルリン化タンパク質またはペプチドおよびその断片の変異型は、他の公知のポリペプチドまたはその変異型との融合によって生成してもよく、活性部分またはドメインを包含し、好ましくは参照配列の活性部分と整列した場合少なくとも70、75、80、85、90、92、94、95、96、97、98または99%の配列同一性を有し、ここで、「活性部分」という用語は、本明細書において使用される場合、それぞれ、全長アミノ酸配列未満であるか、または核酸配列の場合全長アミノ酸配列未満の配列をコードするが、生物活性の少なくとも一部を保持するアミノ酸配列を指す。例えば、抗原性ポリペプチドの活性部分は、抗体または自己抗体に結合する能力を保持し、好ましくは哺乳動物へ投与された場合、免疫応答を起こさせる。
1つまたはそれ以上のシトルリン化タンパク質またはペプチドならびにその断片および変異型は、内因型の前記ポリペプチドを含む組織または細胞、例えばポリペプチドを過剰発現する細胞およびそのような細胞の粗溶解物または富化溶解物から、本質的に純粋な精製および/または単離ポリペプチドまで、任意の形態および任意の精製度において提供することができる。実施形態において、1つまたはそれ以上のシトルリン化タンパク質もしくはペプチドまたはその抗原性断片もしくは変異型は、天然の配置を有し、ここで、「天然の配置」という用語は、本明細書において使用される場合、折り畳まれたポリペプチド、例えば哺乳動物細胞もしくは組織などの組織もしくは細胞から、または非組換え組織もしくは細胞から精製された折り畳まれたポリペプチドを指す。別の実施形態において、1つまたはそれ以上のシトルリン化タンパク質もしくはペプチドまたはその抗原性断片もしくは変異型は、組換えタンパク質であり、ここで、「組換え」という用語は、本明細書において使用される場合、産生プロセスの任意の段階において遺伝子操作手法を使用して、例えば、細胞もしくは組織における過剰発現のためにポリペプチドをコードする核酸を強いプロモーターに融合することによって、またはポリペプチドそれ自体の配列を操作することによって産生されるポリペプチドを指す。別の実施形態において、1つまたはそれ以上のシトルリン化タンパク質もしくはペプチドまたはその抗原性断片もしくは変異型は、合成(化学合成)される。そのような技術は、当該技術分野において周知である。
一部の場合、1つまたはそれ以上のシトルリン化ペプチドまたはその抗原性断片もしくは変異型は、加熱、冷凍もしくは紫外線、または界面活性物質もしくは変性剤などの化学的処理などによって変性させることができる。例えば、そのような変性した形態は、それらをドデシル硫酸ナトリウム(SDS)またはジチオトレイトール(DTT)により処理することによって調製することができる。本明細書において説明されるキットまたはパネルに含まれるシトルリン化ペプチドまたはその抗原性断片もしくは変異型は、細胞内において、それらが可溶性である溶液中において提供してもよく、あるいはシトルリン化ペプチドまたはその断片もしくは変異型は、凍結乾燥形態において提供してもよい。
一部の実施形態において、1つまたはそれ以上のシトルリン化ペプチドまたはその抗原性断片もしくは変異型は、例えば、共有結合、静電相互作用、被包もしくは封入を介して、例えばゲル中で球状ポリペプチドを変性させることによって、または疎水性相互作用を介して、例えば1つまたはそれ以上の共有結合を介して、水溶液中において不溶性の固体担体上に固定化してもよい。様々な好適な担体、例えば、紙、金属、シリコンまたはガラス表面、微小流体チャネル、膜、磁気ビーズなどのビーズ、カラムクロマトグラフィー媒体、バイオチップ、ポリアクリルアミドゲルなどが、文献において、例えばKim, D., Herr, A.E. (2013), Protein immobilization techniques for microfluidic assays, Biomicrofluidics 7(4), 041501において説明されている。このようにして、固定化された分子は、不溶性担体と共に、単純な様式において、例えば濾過、遠心分離またはデカントにより、水溶液から分離することができる。固定化される分子は、可逆性または不可逆性の様式において固定化することができる。例えば、分子が、高濃度の塩の添加によって遮蔽され得るイオン性相互作用を介して担体と相互作用する場合、または分子がチオール含有試薬の添加によって切断され得るジスルフィド架橋などの切断可能な共有結合を介して結合される場合、固定化は可逆性である。対照的に、分子が水溶液中で切断することができない共有結合、例えば、リジン側鎖を親和性カラムにカップリングするために頻繁に使用されるエポキシド基およびアミン基の反応によって形成される結合を介して担体に繋がれている場合、固体化は不可逆性である。タンパク質は、例えば、抗体、または分子への親和性を有する他の実体を固定化し、次に分子-抗体複合体が固定化されるように複合体を形成させることによって、間接的に固定化され得る。分子を固定化するための様々な方法が、例えばKim and Herr (2013)などの文献において説明されている。加えて、固定化反応のための様々な試薬およびキットは、例えば、Pierce Biotechnologyなどから市販されている。
一部の実施形態において、シトルリン化ペプチドまたはその断片は、組織切片中に存在し、方法は、組織切片中のシトルリン化ペプチドと、存在するならば生体試料中の対応するシトルリン化タンパク質特異的自己抗体と、検出可能に標識された二次抗体との間で複合体が形成される条件下で、組織切片を、生体試料および検出可能に標識された二次抗体と接触させること;および、(b)検出可能に標識された二次抗体を検出することによって、組織試料中の複合体形成のパターンを特定すること、ここで、複合体形成のパターンの存在は生体試料中のシトルリン化タンパク質特異的自己抗体の存在を示し、複合体形成のパターンの非存在は生体試料中のシトルリン化タンパク質特異的自己抗体の非存在を示す、を含む。
一部の実施形態において、3つの成分-組織切片、生体試料および検出可能に標識された二次抗体-は、組織切片中のシトルリン化ペプチドと、存在するならば生体試料中の対応するシトルリン化タンパク質特異的自己抗体と、検出可能に標識された二次抗体との間で複合体が形成される条件下で混合される。検出可能な標識および適切な検出手段を使用して、組織切片中の複合体形成のパターンが特定される。組織切片中の複合体形成のパターンは、生体試料中の、存在するならば自己抗体が結合した抗原(例えば、抗原性シトルリン化ペプチド)の細胞内の位置に直接的に関連する。本明細書において説明される通り、1つまたはそれ以上の種類の組織における複合体形成の特定のパターンの存在は、生体試料中のシトルリン化タンパク質特異的自己抗体の存在を示す。
B.シトルリン化ペプチドまたはタンパク質の検出
本明細書において提供される、がんを検出し、かつ/またはがんを有する対象を診断する方法は、シトルリン化ペプチドまたはタンパク質の検出のための(すなわち、シトルリン化タンパク質に結合する自己抗体を検出するのではなく)、タンパク質検出および/または定量方法を使用することを含み得る。上記に説明され、本明細書中の実施例において実証される通り、対象における(例えば、対象からの生体試料中の)シトルリン化タンパク質またはペプチドの存在は、対象ががんを有することを示し得る。タンパク質を検出および定量する方法は、当業者に公知であり、非限定的に、質量分析、イムノアッセイ(例えばELISA)、ウェスタンブロット、蛍光顕微鏡法および免疫組織化学を含む。
一部の実施形態において、検出および/または定量されるシトルリン化ペプチドは、がん細胞において発現されることが公知であるタンパク質の一部に対応する配列である。一部の実施形態において、シトルリン化ペプチドは、がん細胞によって高度に発現されるタンパク質の一部に対応する配列である。一部の実施形態において、がん細胞において高度に発現されるタンパク質は、対応する正常(すなわち、非がん性)組織によっては発現されないか、または最小限に発現される。一部の実施形態において、シトルリン化ペプチドは、がん細胞の細胞表面上に発現されることが公知であるタンパク質の一部に対応する配列である。一部の実施形態において、シトルリン化ペプチドは、がん免疫療法において標的化されているタンパク質(例えば、表10に列挙されるペプチドのいずれか)の一部に対応する配列である。一部の実施形態において、シトルリン化ペプチドは、表1に列挙される遺伝子のいずれか、表2に列挙される遺伝子のいずれか、および/または表10に列挙される遺伝子のいずれかによってコードされるタンパク質の一部に対応する配列である。一部の実施形態において、シトルリン化ペプチドは、表2、表9および/または表10に列挙される配列のいずれかと少なくとも70%の同一性を有する。
C.組合せ方法およびアッセイ結果
一部の場合、上記に説明される検出方法の2つ以上を、より信頼性のある結果のための補完的な様式において使用してもよい。一部の実施形態において、他のイムノアッセイを、免疫組織化学法の代替として、またはその前および/もしくは後に行ってもよい。例えば、ウェスタンブロットは、例えば、自己抗体と関連する1パネルの公知の抗原を使用して行ってもよく、このパネルは、シトルリン化ペプチドまたはその抗原性断片もしくは変異型を含み、その結果は、例えば、本明細書において説明される免疫組織化学法を使用するさらなる評価を保証し得る。別の例において、本明細書において説明される免疫組織化学法、および後続のウェスタンブロットは、例えば、生体試料中の自己抗体によって認識される、シトルリン化ペプチドを含む特定の抗原をさらに確認するために行われ得る。
シトルリン化タンパク質特異的自己抗体およびシトルリン化ペプチドまたはその抗原性断片もしくは変異型の存在または非存在を実証する任意のデータは、参照データと相関関係を確認され得る。例えば、シトルリン化タンパク質特異的自己抗体の検出は、分析される試料を提供した対象ががん(例えば、特定のタイプまたはサブタイプのがん)を有することを示し得る。対象が以前に診断されている場合、診断前の時点および現在の検出されたシトルリン化タンパク質特異的自己抗体の量は、疾患の進行および/または処置の成功について理解するために相関関係を確認され得る。例えば、シトルリン化タンパク質特異的自己抗体の量が、増加していることが見出された場合、疾患が進行していることおよび/または試みられた任意の処置が不成功であることが結論付けられ得る。
D.処置
また、がんを処置する方法が、本明細書において提供される。一部の実施形態において、方法は、抗がん剤をシトルリン化タンパク質またはペプチドへ標的化することを含む。一部の実施形態において、シトルリン化タンパク質またはペプチドは、がん細胞によって発現される。本明細書において提供される診断方法の一部の実施形態(例えば、図11~14において描写され、以下に説明される例示的な実施形態)は、対象(例えば、高レベルの本明細書において説明されるバイオマーカーを有するか、またはそれを有することが見出された対象)に1つまたはそれ以上の抗がん剤を投与する工程をさらに含み得る。一部の実施形態において、がんを有する対象を処置する方法であって、対象が高レベルの本明細書において説明される1つまたはそれ以上のバイオマーカーを有する方法が、本明細書において提供される。
一部の実施形態において、使用され得る抗がん剤は、免疫療法剤を含む。全体を通して使用される場合、免疫療法とは、対象においてがんを処置するために対象自身の免疫系を使用する治療である。がん免疫療法の例として、モノクローナル抗体、キメラ抗原受容体、抗体-薬物コンジュゲート、二重特異性抗体(例えば、二重特異性Tエンゲージャー、二重特異性NK細胞エンゲージャーなど)、免疫チェックポイント阻害剤、がんワクチン、サイトカインおよびインターフェロンが挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態において、免疫療法は、対象へ、シトルリン化タンパク質またはペプチド(例えば、本明細書において説明される)に特異的に結合する抗体を投与することを含む。一部の実施形態において、抗体は、ヒト抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、F(ab)’2、Fab、Fv、単一ドメイン抗体、二重特異性抗体、ヘリックス安定化抗体、単鎖抗体分子、ジスルフィド安定化抗体またはドメイン抗体である。
一部の実施形態において、免疫療法は、対象へ、シトルリン化タンパク質またはペプチド(例えば、本明細書において説明される)に特異的に結合するキメラ抗原受容体を含む、T細胞、ナチュラルキラー細胞またはマクロファージを投与することを含む。キメラ抗原受容体(CAR、キメラT細胞受容体としても公知)は、ホストエフェクター細胞、例えば、T細胞、NK細胞またはマクロファージにおいて発現されるように、特定の標的抗原(例えば、本明細書において説明されるシトルリン化ペプチド)およびその抗原を発現する細胞(例えば、本明細書において説明されるシトルリン化タンパク質またはペプチドを発現するがん細胞)に対して免疫応答を誘発するように設計される。患者自身のTリンパ球がCARを発現するように操作される養子T細胞免疫療法は、血液系腫瘍を処置することにおいて非常に有望であることが示されている。CARは、例えば、Sadelain et al., 2013, Cancer Discov. 3:388-398において説明されるように操作および使用され得る。CARは、典型的に、細胞外標的結合モジュールと、膜貫通(TM)ドメインと、細胞内シグナル伝達ドメイン(ICD)とを含む。CARドメインは、フレキシブルなヒンジおよび/またはスペーサー領域を介して接合され得る。細胞外標的結合モジュールは、一般的に、抗体またはその抗原結合性断片(例えば、本明細書において説明されるシトルリン化タンパク質またはペプチドに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片)を含む。
免疫療法は、モノクローナル抗体の投与を含み得る。モノクローナル抗体は、特定の標的に結合するように設計される。肝がんを処置するために使用されるモノクローナル抗体は、腫瘍の、血管新生としても公知の、新しい血管を形成する能力に影響を及ぼす。これらの治療薬は、多くの場合、血管新生阻害剤と称され:免疫療法薬アテゾリズマブ(テセントリク)と共に使用され得るベバシズマブ(アバスチン);ラムシルマブ(サイラムザ)を含む。
本明細書において提供される、がんを有する対象を処置するための方法の一部の実施形態において、追加のがん治療が対象へ与えられる。一部の実施形態において、追加の治療は、がんの外科的処置を含む。例えば、患者は、外科的切除(手術による腫瘍の除去)を受容し得る。また、小腫瘍は、アブレーションまたは照射などの他の種類の処置により処置してもよい。アブレーションは、腫瘍を除去することなく腫瘍を破壊する処置である。これらの技術は、数個の小腫瘍を有する患者において、および手術が良い選択肢ではない場合、使用され得る。それらは、手術よりもがんを治癒させる可能性が低いが、それでもそれらは、一部の人にとっては非常に有益であり得る。アブレーションは、幅が3cm以下の腫瘍に最適に使用される。わずかにより大きな腫瘍(幅が1~2インチ、または3~5cm)については、アブレーションは、塞栓形成と共に使用され得る。アブレーションは多くの場合、腫瘍の周囲の正常組織の一部を破壊するので、主要な血管、横隔膜または主要な胆管近くの腫瘍を処置するにはアブレーションは良い選択肢ではない場合がある。一部の実施形態において、アブレーションは、高周波アブレーション(RFA)である。一部の実施形態において、アブレーションは、マイクロ波アブレーション(MWA)である。一部の実施形態において、アブレーションは、凍結アブレーション(凍結療法)である。一部の実施形態において、アブレーションは、エタノール(アルコール)アブレーション、例えば経皮エタノール注入(PEI)である。
一部の実施形態において、また、がんを有する患者は、放射線療法を使用して処置される。放射線療法は、がん細胞を破壊するために、高エネルギー線または粒子を使用する。放射線は、例えば、手術によって除去することができないがん、アブレーションにより処置することができないか、またはそのような処置にあまり応答しなかったがん、脳または骨などの領域へ広がったがん;大きながんのために重度の痛みを経験している患者;および腫瘍血栓を有する患者を処置することにおいて、有益であり得る。
一部の実施形態において、また、がんを有する患者は、薬物療法、例えば、標的化された薬物療法または化学療法を使用して処置される。標的化された薬物は、標準の化学療法薬とは異なって働き、例えば、キナーゼ阻害剤;ソラフェニブ(ネクサバール)、レンバチニブ(レンビマ)、レゴラフェニブ(スチバーガ)、およびカボザンチニブ(カボメティクス)を含む。がんを処置するための一般的な化学療法薬として、例えば:ゲムシタビン(ジェムザール);オキサリプラチン(エロキサチン);シスプラチン;ドキソルビシン(ペグ化リポソーム封入ドキソルビシン);5-フルオロウラシル(5-FU);カペシタビン(ゼローダ);ミトキサントロン(ノバントロン)またはそれらの組合せが挙げられる。化学療法は、薬物が、腫瘍を有する身体の部分へ繋がる動脈に挿入される場合、局所性である場合があり、これによって、化学療法を身体のその領域のがん細胞に集中させ、身体の残りの部分に達する薬物の量を制限することによって副作用を低減する。例えば、肝動脈内注入(HAI)、または肝動脈へ直接的に与えられる化学物質は、肝がんのために使用され得る局所性化学療法の一例である。
一部の実施形態において、追加の治療は、モノクローナル抗体療法、チェックポイント阻害剤療法、腫瘍溶解性ウイルス療法または温熱療法である。
したがって、一態様において、本明細書において説明されるシトルリン化ペプチドを標的化する有効量の免疫療法剤、および少なくとも1つの追加のがん処置を与えることを含む、対象においてがんを処置するための方法が、本明細書において提供される。
また、対象においてがんのリスクを低減するか、またはがんを予防する方法が、本明細書において提供される。一部の実施形態において、方法は、がんと関連する少なくとも1つのシトルリン化ペプチドまたはタンパク質を含む組成物を対象へ投与することによって、対象において防御免疫応答を誘発することを含む。本明細書において使用される場合、「防御免疫応答」とは、対象へのワクチン組成物の投与後に誘発される免疫応答を指し、この免疫応答においては、ワクチンの抗原性成分源(例えば、シトルリン化ペプチド、または抗原を発現する細胞)への暴露に際して、この成分源によって誘発される臨床症状が減少される。一部の実施形態において、防御免疫応答を誘発することは、ワクチンを対象へ投与することを含み、ここで、ワクチンは、がんと関連する少なくとも1つのシトルリン化ペプチドまたはタンパク質を含む。
一部の実施形態において、ワクチンは、がんネオ抗原を含む。一部の実施形態において、がんネオ抗原は、シトルリン化ペプチドまたはタンパク質を含む。一部の実施形態において、シトルリン化ペプチドまたはタンパク質は、免疫原性である(すなわち、防御免疫応答を誘発することが可能である)。一部の実施形態において、シトルリン化ペプチドは、がん細胞において発現されることが公知であるタンパク質の一部に対応する配列である。一部の実施形態において、シトルリン化ペプチドは、がん細胞によって高度に発現されるタンパク質の一部に対応する配列である。一部の実施形態において、がん細胞において高度に発現されるタンパク質は、対応する正常(すなわち、非がん性)組織によっては発現されないか、または最小限に発現される。一部の実施形態において、シトルリン化ペプチドは、がん細胞の細胞表面上に発現されることが公知であるタンパク質の一部に対応する配列である。一部の実施形態において、シトルリン化ペプチドは、がん免疫療法において標的化されているタンパク質(例えば、表10に列挙されるペプチドのいずれか)の一部に対応する配列である。一部の実施形態において、シトルリン化ペプチドは、表1に列挙される遺伝子のいずれか、表2に列挙される遺伝子のいずれか、および/または表10に列挙される遺伝子のいずれかによってコードされるタンパク質の一部に対応する配列である。一部の実施形態において、シトルリン化ペプチドは、表2、表9および/または表10に列挙される配列のいずれかと少なくとも70%の同一性を有する。一部の実施形態において、シトルリン化ペプチドは、ペプチドワクチン選択および調製のための公知の方法に従ってワクチン接種のために最適化される(例えば、本明細書中の実施例7において説明される)。
がんネオ抗原(例えば、本明細書において説明されるシトルリン化ペプチドまたはタンパク質)は、腫瘍浸潤細胞傷害性CD8T細胞によって認識される場合があり、免疫細胞浸潤の増加および関連する細胞傷害性シグネチャーは、より高いネオ抗原負荷を伴う腫瘍において観察されている。したがって、ネオ抗原提示および負荷は、様々ながんを有する患者における予後と、およびミスマッチ修復欠損を伴う、黒色腫、非小細胞肺がん(NSCLC)または結腸直腸がんを有する患者における免疫チェックポイント阻害剤(ICI)による利益と正に相関している。合わせると、これらの研究は、免疫系を標的ネオ抗原へ特異的に「訓練する」免疫療法を開発することの潜在的な治療的利益を強調する。
ワクチンは、感染性疾患の予防のために伝統的に使用されてきた;しかしながら、そのような薬剤が抗原特異的免疫応答を誘発および増幅する能力は、がんの処置のための潜在的に価値のあるツールとして長く認識されてきた。腫瘍関連抗原(TAA)と名付けられた、腫瘍において異常に発現または過剰発現される自己抗原に焦点を当てていた初期の治療用ワクチン接種策は、臨床的に有効な抗腫瘍免疫応答を生成することにおいて大部分は不成功であり、これはおそらく、TAA特異的T細胞が中枢性および/または末梢性免疫寛容を受けるためである。また、そのようなTAAは、非悪性組織においてある程度発現され得るので、このことからワクチン誘発性自己免疫毒性のリスクが生ずる。したがって、これらの初期研究は、がんワクチンの開発において克服すべき基礎的な問題として、腫瘍特異性の欠落および乏しい免疫原性を強調した。
伝統的に使用されるTAAではなくネオ抗原に基づくワクチンは、いくつかの利点を有する。第1に、ネオ抗原は、腫瘍細胞によって排他的に発現され、それゆえ、真に腫瘍特異的なT細胞応答を誘発し、これによって、非悪性組織への「オフターゲット」損傷を防ぐことができる。第2に、本明細書において説明されるネオ抗原は、がん細胞において発現されるタンパク質のシトルリン化に由来する新規のエピトープであり、これは、自己エピトープのT細胞中枢性免疫寛容を回避する可能性を示し、したがって、腫瘍への免疫応答を誘発する。それゆえ、個別化ネオ抗原ベースのワクチンは、腫瘍特異的免疫応答を促進する機会を与え、免疫療法ツールボックスに追加のツールを付加するものである。さらに、これらのワクチンが促進するネオ抗原特異的T細胞応答が処置後免疫記憶を持続および提供する潜在性は、疾患再発に対する長期防御の可能性を示す。
E.例示的な実施形態
例示的な実施形態を、図11~14を参照して以下に説明する。
図11は、本開示の実施形態による、がんを検出し、かつ/またはがんを有する対象を診断する例示的な方法のフローチャート1100を示す。方法1100は、がんに罹患しているか、またはがんに罹患していると疑われる患者(すなわち、対象)からの血漿試料を準備すること(1110において)を含む。
一部の実施形態において、患者は、ヒトである。実施形態において、本方法は、獣医学関係において行ってもよい。すなわち、患者は、がんに罹患している任意の非ヒト哺乳動物であってもよい。非ヒト哺乳動物は、研究動物、ペット、家畜、使役動物、競争用動物(例えば、ウマ、イヌ、ラクダなど)、繁殖用動物(例えば、雄ウシ、引退した競走馬など)またはがんを処置することが所望される他の任意の非ヒト哺乳動物であってもよい。便利のために、本開示は典型的に、ヒト患者について言及する。しかしながら、本開示の利益を享受する当業者は、本開示の教示を獣医学関係に容易に適合することができる。
がんは、本開示の利益を享受する当業者に公知の任意のがんであってもよい。一般的に、本開示は、タンパク質シトルリン化の増加によって特徴付けられるがんを最も興味深いものと考える。そのようながんの例として、乳がん、肺がん、皮膚がん、子宮内膜がん、卵巣がんおよび結腸直腸がんが挙げられるが、これらに限定されない。
血漿試料は、患者の血流から採取し、本開示の利益を享受する当業者に公知の任意の適切な技術によってインタクトな細胞を精製してもよい。
また、第1の方法1100は、血漿試料中に存在し得る、シトルリン化タンパク質に対するいずれかの自己抗体がシトルリン化タンパク質に結合するのに十分な条件下で、血漿試料を、表1に列挙される遺伝子によってコードされるタンパク質、表2に列挙される遺伝子によってコードされるタンパク質、および表10に列挙される遺伝子によってコードされるタンパク質からなる群から選択される少なくとも1つのシトルリン化タンパク質とインキュベートすること(1120において)を含む。
理論に束縛されるものではないが、本明細書中の実施例において実証される通り、タンパク質シトルリン化の増加によって特徴付けられるがんは、自己抗体を誘発し得る、すなわち、患者の免疫系は、患者のがん細胞において一般的にシトルリン化されるタンパク質に対して抗体を発達させる場合があり、そのような抗体は、患者の血漿中で循環し得る。他方で、患者ががんに罹患していると疑われるが、実際にはがんに罹患していない場合、患者の血漿は、がんにおいて一般的にシトルリン化されるタンパク質のシトルリン化に対する自己抗体を、あるとしてもほとんど有しない。
一実施形態において、シトルリン化タンパク質は、シトルリン化ビメンチンおよびシトルリン化α-エノラーゼからなる群から選択される。
インキュベートすること(1120において)は、任意の適切な技術によって行うことができる。そのような技術は、本開示の利益を享受する当業者によりルーチン事項として行われ得る。血漿試料中の自己抗体が存在するならば、これがシトルリン化タンパク質に結合するのに十分な条件は、ルーチン事項として当業者によって確立され得る。実施形態において、条件は、基材、例えば、数ある中で96ウェルプレートのウェル上にシトルリン化タンパク質を固定化することを含み得る。
また、第1の方法1100は、検出可能な標識が、結合した自己抗体に結合し、他の分子に実質的に結合しない条件下で、シトルリン化タンパク質およびそれ/それらに対するいずれかの結合した自己抗体を、検出可能な標識とインキュベートすること(1130において)を含む。
検出可能な標識は、一般的に、(i)目的の分子、この場合ではシトルリン化タンパク質に結合した自己抗体(存在するならば)に結合する結合部分と、(ii)構成的または誘導性いずれかの検出可能なシグナルを産生する部分とを含む。第1の方法1100の検出可能な標識において使用され得る結合部分の例は、数ある中で、ヒト免疫グロブリンに対する非ヒト抗体を含む。検出可能なシグナルを産生する部分の例として、数ある中で、放射性同位体を含む部分、発色団を含む部分、フルオロフォアを含む部分、分子よりも様々な検出可能なシグナルを有する生成物への分子の変換を触媒する酵素活性部位が挙げられる。検出可能な標識は一般的に、当業者に公知であり、詳細に説明する必要はない。検出可能な標識が、結合した自己抗体に結合し、他の分子に実質的に結合しない条件は、ルーチン事項として実施することができる。
一実施形態において、検出可能な標識は、自己抗体に対する抗体であり、抗体は、蛍光部分を含む。
また、第1の方法1100は、結合した自己抗体に結合した標識を検出すること(1140において)を含む。検出すること(1140において)の正確な実施は、検出可能なシグナルを産生する標識の部分に依存し、当業者にとってルーチン事項である。
一実施形態において、インキュベートすること(1120において)、インキュベートすること(1130において)および検出すること(1140において)は、周知であり旧来のアッセイである酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)の部分として行ってもよい。
検出される(1140において)シグナルの強度は、結合した自己抗体に結合した標識の量を提供するために加工してもよい。その後、標識の検出された量は、決定ブロック(1150)において考慮される。検出された標識の量が閾値を超えるか、またはそれと等しい場合、相対的に多数の自己抗体が存在し、このことから患者が体内に、比較的多量のシトルリン化タンパク質を有することを推測することができ、シトルリン化タンパク質はタンパク質シトルリン化の増加によって特徴付けられるがんのマーカーである。それゆえ、結合した自己抗体に結合した標識の検出された量が閾値と等しいか、またはそれを超えることに応じて、フローは、決定ブロック1150からYES経路に沿って、患者ががんに罹患していると分類する(1160において)方へ進む。
他方で、検出された標識の量が閾値未満である場合、自己抗体は存在するとしてもほとんど存在せず、このことから患者が体内に、比較的低量のシトルリン化タンパク質を有することを推測することができ、これは、患者がタンパク質シトルリン化の増加によって特徴付けられるがんを有しないことを示す。この状況においては、結合した自己抗体に結合した標識の検出された量が閾値未満であることに応じて、フローは、決定ブロック1150から、患者ががんに罹患していないと分類する(1170において)方へ進む。
分類した(1160において)後、患者は、がん処置、例えば数ある中で、外科的切除、化学療法、モノクローナル抗体療法、チェックポイント阻害剤療法、腫瘍溶解性ウイルス療法、温熱療法(例えば、RFA、マイクロ波アブレーションおよび/もしくは凍結療法)、放射線療法ならびにこれらの2つまたはそれ以上を受容し得る。他の状況において、分類した(1170において)後、患者は、不必要ながん処置の損失および不便を免れることができ、かつ/または患者は、タンパク質シトルリン化の増加によって特徴付けられない他のがんを含む他の健康状態について試験され得る。
図12は、本明細書中の実施形態による第2の方法1200のフローチャートを示す。第2の方法1200は、がんに罹患しているか、またはがんに罹患していると疑われる患者からの組織試料を準備すること(1210において)を含む。典型的に、組織試料は、腫瘍または疑わしい腫瘍から採取される。これは、周知の技術によって行うことができ、詳細に説明する必要はない。
がんは、本開示の利益を享受する当業者に公知の任意のがんであってもよい。一般的に、本開示は、タンパク質シトルリン化の増加によって特徴付けられるがんを最も興味深いものと考える。そのようながんの例として、乳がん、肺がん、皮膚がん、子宮内膜がん、卵巣がんおよび結腸直腸がんが挙げられるが、これらに限定されない。
また、第2の方法1200は、組織試料を、表1に列挙される遺伝子によってコードされるタンパク質、表2に列挙される遺伝子によってコードされるタンパク質、および表10に列挙される遺伝子によってコードされるタンパク質からなる群から選択される少なくとも1つのシトルリン化タンパク質についてアッセイすること(1220において)を含む。「アッセイすること」とは、組織試料のシトルリン化タンパク質含有量の任意の定性的、半定性的または定量的評価を含み得る。2つまたはそれ以上のシトルリン化タンパク質がアッセイされる場合、それらは、個々に評価しても、集合体において評価してもよい。
アッセイすること(1220において)は、任意の公知の技術を含み得る。一実施形態において、アッセイすること(1220において)は、組織試料の細胞を溶解して、組織試料細胞溶解物を産出すること、および組織試料細胞溶解物からタンパク質画分を単離することを含む。単離されたタンパク質画分中のシトルリン化タンパク質は、本開示の利益を享受する当業者によってルーチン事項として特定および定量され得る。一実施形態において、アッセイすること(1220において)は、液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS)を含み得る。
一実施形態において、シトルリン化タンパク質は、シトルリン化ビメンチンおよびシトルリン化α-エノラーゼからなる群から選択される。
アッセイすること(1220において)の結果は、決定ブロック1230において考慮される。組織試料が閾値と等しいか、またはそれを超えるシトルリン化タンパク質の量を含有する場合、フローは、患者ががんに罹患していると分類する(1240において)方へ進む。組織試料中のシトルリン化タンパク質の量が、閾値未満である場合、フローは、代わりに、患者ががんに罹患していないと分類する(1250において)方へ進む。
分類した(1240において)後、患者は、がん処置、例えば数ある中で、外科的切除、化学療法、モノクローナル抗体療法、チェックポイント阻害剤療法、腫瘍溶解性ウイルス療法、温熱療法(例えば、RFA、マイクロ波アブレーションおよび/もしくは凍結療法)、放射線療法、シトルリン化タンパク質を含むがんワクチン、シトルリン化タンパク質に対する標的化療法(例えばCAR-T療法)ならびにこれらの2つまたはそれ以上を受容し得る。他の状況において、分類した(1250において)後、患者は、不必要ながん処置の損失および不便を免れることができ、かつ/または患者は、タンパク質シトルリン化の増加によって特徴付けられない他のがんを含む他の健康状態について試験され得る。
図13を見ると、第3の方法1300を描写するフローチャートが示されている。第3の方法1300は、がんに罹患している患者からの腫瘍試料を準備すること(1310において)を含む。
患者、がん、腫瘍試料およびその準備のための技術は、上記に説明されており、かつ/または当該技術分野において周知であり、さらに説明する必要はない。
また、第3の方法1300は、腫瘍試料を、表2、表9および/または表10に列挙される配列および対応する修飾、ならびに表2、表9および/または表10に列挙される配列と少なくとも70%の同一性を有し、少なくとも1つのアルギニン残基を含む配列からなる群から選択される少なくとも1つのシトルリン化アミノ酸配列についてアッセイすること(1320において)を含む。一実施形態において、シトルリン化アミノ酸配列は、GVMVSHRSGETEDTF(配列番号43)、LAQANGWGVMVSHRSGETEDTF(配列番号44)およびAVEKGVPLYRHIADLAGNS(配列番号45)からなる群から選択され、ここで、Rはシトルリンである。
アッセイすること(1320において)は一般的に、図12を参照して上記に説明されるアッセイ行為1220として行われ得る。
アッセイすること(1320において)の結果は、決定ブロック1330において考慮される。腫瘍試料が、閾値と等しいか、またはそれを超えるシトルリン化アミノ酸配列の量を含有する場合、第3の方法1300は、少なくとも1つのペプチドを患者の免疫系へ提示すること(1340において)へ進み、ここでは、各ペプチドは、閾値またはそれ以上の量で存在するシトルリン化アミノ酸配列の少なくとも1つを含む。提示すること(1410において)によって、患者の免疫系は、シトルリン化アミノ酸配列に対する抗体を発達させ得る、すなわち、シトルリン化アミノ酸配列は、がんワクチンと考えられ得る。
提示される(1340において)シトルリン化アミノ酸配列を含むペプチドは、患者の腫瘍試料に由来してもよく、シトルリン化アミノ酸配列を含むように合成してもよく、またはそれらの組合せであってもよい。ペプチドは、そのまま提供してもよく、かつ/または腫瘍溶解性ウイルスによって提示されるか、かつ/もしくは腫瘍溶解性ウイルスによってコードされ得る。
がんワクチン技術は、本開示の利益を享受する当業者が認識する迅速な開発段階にある。
提示すること(1340において)から生ずるがんワクチンは、患者のがんのための十分な処置であり得る。それでもなお、実施形態において、第3の方法1300は、患者に、外科的切除、化学療法、モノクローナル抗体療法、チェックポイント阻害剤療法、腫瘍溶解性ウイルス療法、温熱療法、放射線療法およびこれらの2つまたはそれ以上からなる群から選択される追加のがん治療を与えること(1350において)をさらに含んでもよい。
上記に言及される追加のがん治療は、周知であり、詳細に説明する必要はない。それらは、本開示の利益を享受する当業者によってルーチン事項として実施することができる。
決定ブロック1330に戻って、腫瘍試料が、(a)閾値と等しいか、またはそれを超えるシトルリン化アミノ酸配列の量を含有する場合、フローは、NOの節点から出て、2つの行先のうちの1つへ進む。一実施形態において、フローは、上記に説明される追加の治療を与えること(1350において)へ進む。あるいは、第3の方法1300は、終了し(1399において)得る。
図14を見ると、第4の方法1400のフローチャートが示されている。第4の方法1400は、がんに罹患している患者からの腫瘍試料を準備すること(1410において)を含む。準備すること(1410において)は、以前の方法に関して上記に実質的に示される通りである場合があり、ここでは詳細に説明する必要はない。
また、第4の方法1400は、腫瘍試料を、細胞膜上に配置されたものとしての、表1に列挙される遺伝子からなる群から選択される遺伝子によってコードされるシトルリン化タンパク質についてアッセイすること(1420において)を含む。
アッセイすること(1420において)は、他の方法に関して実質的に上記に説明される通りであり得る。「細胞膜上への配置」は、腫瘍試料中のシトルリン化タンパク質の大半が、がん細胞の細胞表面上に露出していることを意味する。
アッセイすること(1420において)の後、フローは、決定ブロック1430へ進む。シトルリン化タンパク質の量が、閾値量を超えるか、またはそれと等しい場合、シトルリン化タンパク質ががん細胞の細胞表面上に顕著に存在することが合理的に推測され得る。理論に束縛されるものではないが、シトルリン化タンパク質が健康な細胞の細胞表面上に顕著に存在することはあまりない。したがって、シトルリン化タンパク質は、細胞表面上にシトルリン化タンパク質を有するがん細胞へ抗がん剤の的を絞るための標的を提供することができ、抗がん剤による健康な組織に対する攻撃は、あるとしてもほとんどない。
したがって、腫瘍試料が閾値と等しいか、またはそれを超えるシトルリン化タンパク質の量を含有することに応じて、この状況におけるフローは、YES経路に従って、患者へ、シトルリン化タンパク質を標的化する抗がん剤を投与すること(1440において)へ進み得る。
第3の方法1300と類似して、第4の方法1400は、患者へ、以下に説明される通り、シトルリン化タンパク質を標的化しない追加のがん治療を与えること(1450において)をさらに含み得る。与えること(1450において)は、投与すること(1440において)と共に行ってもよい、すなわち、第4の方法1400は、組合せ療法を提供してもよく;かつ/または与えること(1450において)は、アッセイ(1420において)が不十分な量のシトルリン化タンパク質を発見した場合に行ってもよく、これによってフローは決定ブロック1430からNO経路に沿って進む。あるいは、NO経路は、第4の方法1400の終了(1499において)をもたらし得る。
F.患者がん状態の決定
本明細書において提供される検出および診断方法において、対象におけるがんの存在は、生体試料中のバイオマーカー、例えば、シトルリン化タンパク質特異的自己抗体バイオマーカー、またはシトルリン化タンパク質もしくはペプチドバイオマーカーのレベルを検出することによって決定される。本明細書において使用される場合、「バイオマーカー」とは、生体試料、例えば血漿試料などの血液試料中のそのレベルががん(例えば、特定のタイプまたはサブタイプのがん)の存在または非存在と相関する分子を指す。バイオマーカーの各々のレベルは、すべての対象におけるがん状態と相関する必要はない;むしろ、相関は、レベルががんを有する個体の集団全体内で十分に相関するように、集団レベルで存在し、本明細書中の他の箇所において説明される通り、いくつかの方法のいずれかにおいて、そのレベルは他のバイオマーカーのレベルと組み合わせてもよく、がん状態を決定するために使用してもよい。個々のバイオマーカーのレベルの測定に使用した値は、例えば以下に説明される、関連器具もしくはアッセイシステムからの直接的読出しを含む、いくつかの方法のいずれかにおいて、および/または当業者に公知の手段を使用して決定することができる。一部の実施形態において、バイオマーカーの読出し値は、レベルががん状態によって変動せず、レベルがバイオマーカーと同時に測定されるペプチドまたは他の分子である、参照または対照の読出し値と比較される。
「相関している」という用語は一般的に、1つのランダム変数と別のランダム変数との間の関係を決定することに言及する。様々な実施形態において、所与のバイオマーカーレベルを、がんの存在または非存在と相関させることは、同じアウトカムを有する対象における少なくとも1つのバイオマーカーの存在、非存在または量を決定することを含む。特定の実施形態において、1組のバイオマーカーレベル、非存在または存在は、受信者動作特性(ROC)曲線を使用して、特定のアウトカムについて相関関係を確認される。
一部の実施形態において、本明細書中の実施例において実証される通り、AUC値は、バイオマーカーまたはバイオマーカーの組合せの、個体のがん状態を決定する能力の測定値として使用される。「曲線下面積」または「AUC」とは、ROC曲線下面積を指す。ROC曲線下のAUCは、正確さの測定値である。1の面積は、完璧な試験を表し、一方で、0.5の面積は無意味な試験を表す。本明細書において説明される好適なバイオマーカーについて、AUCは、0.700~1の間であり得る。例えば、AUCは、少なくとも約0.700、少なくとも約0.750、少なくとも約0.800、少なくとも約0.810、少なくとも約0.820、少なくとも約0.830、少なくとも約0.840、少なくとも約0.850、少なくとも約0.860、少なくとも約0.870、少なくとも約0.880、少なくとも約0.890、少なくとも約0.900、少なくとも約0.910、少なくとも約0.920、少なくとも約0.930、少なくとも約0.940、少なくとも約0.950、少なくとも約0.960、少なくとも約0.970、少なくとも約0.980、少なくとも約0.990または少なくとも約0.995であり得る。
追加のがんバイオマーカーは、任意の標準の分析法またはメトリックを使用して、例えば、本明細書中の他の箇所においてより詳細に説明され、例えば実施例において例示される通り、がんの診断を有するか、または有しない対象から採った生体試料からのデータを解析することによって、評価および特定され得る。一部の実施形態において、群間(例えば、がん患者からの試料とがんを有しない健康な患者からの試料との間)のデータの差は、2群比較検定、例えば、スチューデントT検定、ウェルチT検定もしくはマン・ホイットニーU検定、または多重比較検定、例えば、クラスカル・ウォリス検定もしくは分散分析(ANOVA)検定を使用して評価することができる。一部の実施形態において、主成分分析(PCA)または部分的最小二乗法判別分析(partial least squares discriminate analysis:PLS-DA)を行ってもよい。受信者動作特性(ROC)曲線は、例えば、RにおいてpROCパッケージを使用して、生成することができ、AUCは、95%信頼区間ならびに感受性および特異性の値を伴って計算される。例えば多数の変数の組合せの解析のために、深層学習、勾配ブースティング機械、自動機械学習、反復ランダムフォレスト、LASSO正則化、および二項ロジスティック回帰(bionomial logistic regression)解析を含む様々な学習アルゴリズムを行ってもよい。
個体(すなわち、対象または患者)においてがんの存在(すなわち、「がん状態」)を決定するために、個体から得られた試料中の測定されたバイオマーカーレベルは一般的に、参照レベル、例えば、がんを有しない健康な個体から採られたレベルと比較される。参照対照レベルは、バイオマーカーレベルと同時に、すなわち、同じ試料を使用して測定してもよく、以前の測定値に基づいて決定されたレベルであってもよい。
多数のバイオマーカーを使用する場合、バイオマーカーのすべてが、がんの決定を生じさせるために、所与の対象からの試料、例えば血漿試料中の対照レベルと比較して上昇または抑制されている必要はない。例えば、所与のバイオマーカーレベルについて、様々な可能性のカテゴリーに入る個体間でいくらかの重複が存在し得る。しかしながら、まとめると、アッセイに含まれるバイオマーカーのすべてを合計したレベルは、例えば、がんの存在の高い可能性を示すAUCスコアを生じさせる。
一部の実施形態において、選択されたバイオマーカーのレベルは、定量され、1つまたはそれ以上の事前に選択されたレベルまたは閾値レベルと比較される。がんの存在または非存在を予測する能力を提供する閾値を選択することができる。そのような閾値は、例えば、がんを有する第1の集団およびがんを有しない第2の集団を使用して受信者動作特性(ROC)曲線を計算することによって確立することができる。
一部の実施形態において、本明細書において説明されるバイオマーカー(例えば、シトルリン化タンパク質特異的自己抗体またはシトルリン化ペプチド)のレベルを測定することは、試料中の選択されたバイオマーカーの検出および定量(例えば半定量)を含む。一部の実施形態において、測定されたバイオマーカーレベルは、1つまたはそれ以上の標準レベルと比較して調節される(「正規化される」)。当該技術分野において公知の通り、正規化は、プラットホームに固有の技術的変動性を除去するために行われ、量または相対量を与える。
一部の実施形態において、生体試料からの特定のバイオマーカーの様々なレベルの測定は、ある範囲の技術、試薬および方法を使用して達成され得る。これらは、本明細書中の他の箇所において説明される測定方法のいずれかを含む。
バイオマーカーレベルは典型的に、当業者によってルーチンに実施される方法を使用して特定のプラットホームに適切なように、検出および定量後に正規化される。
閾値またはカットオフ値は、試験性能、例えば試験感受性および特異性を変化させるように調節してもよい。例えば、がんの閾値は、所望の場合、がんについての試験の感受性を増加させるように意図的に低下させてもよい。
検出および/または診断の正確さを決定することは、正確な測定値、例えば、がんを検出または予測する診断の正確さに対応する感受性、特異性、陽性的中率(PPV)、陰性的中率(NPV)、正確さおよび受信者動作特性(ROC)曲線の曲線下面積(AUC)の使用を含み得る。
任意の特定のバイオマーカーについて、がんを有する対象および有しない対象についてのバイオマーカーレベルの分布は重複する場合があることが理解される。そのような条件下で、試験は、2つの集団(すなわち、がんを有する集団およびがんを有しない集団)を100%の正確さにより絶対的に区別するのではなく、重複領域は、その試験がそれらを区別できない領域を示す。超えていれば試験が「陽性」であると考えられ、下回れば試験が「陰性」であると考えられる閾値が選択される。ROC曲線下面積(AUC)は、知覚された測定が状態の正しい特定を可能にする可能性の測定値であるC統計を提供する[例えば、Hanley et al., Radiology 143: 29-36 (1982)を参照されたい]。
一部の実施形態において、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30種またはそれ以上のバイオマーカーが、少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、95%の正確さにより、または少なくとも約0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.95のC統計を有して、がんを有する対象とがんを有しない対象とを識別するために選択される。
「可能性を評価すること」および「可能性を決定すること」という句は、本明細書において使用される場合、当業者が患者において状態(例えばがん)の存在または非存在を予測し得る方法を指す。当業者は、この句が、状態(例えばがん)が患者において存在するか、または非存在である高い可能性をその範囲内に含むこと;すなわち、状態が対象において存在することまたは非存在であることが多いことを理解する。例えば、特定の状態を有すると特定された個体が実際にその状態を有する可能性は、「陽性的中率」または「PPV」と表すことができる。陽性的中率は、真の陽性の数を、真の陽性と偽陽性との合計で割った値として計算することができる。PPVは、本方法の予測方法の特徴、および分析される集団内の状態の有病率によって決定される。状態有病率を有する集団内の陽性的中率が70%~99%の範囲内であり、例えば、少なくとも70%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%であり得るように、統計的アルゴリズムを選択することができる。
他の実施例において、特定の状態またはアウトカムを有しないと特定された個体が実際にその状態を有しない可能性は、「陰性的中率」または「NPV」と表すことができる。陰性的中率は、真の陰性の数を、真の陰性と偽陰性との合計で割った値として計算することができる。陰性的中率は、診断または予後方法、システムまたはコードの特徴、および分析される集団内の疾患の有病率によって決定される。状態有病率を有する集団内の陰性的中率が約70%~約99%の範囲内であり、例えば、少なくとも約70%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%であり得るように、統計方法およびモデルを選択することができる。
一部の実施形態において、対象は、特定の状態またはアウトカム(例えばがん)を有するか、または有しない有意な可能性を有することを決定される。「有意な可能性」によって、対象が特定の状態またはアウトカムを有するか、または有しない合理的な可能性(0.6、0.7、0.8、0.9またはそれ以上)を有することを意味する。
一部の実施形態において、がんの検出は、バイオマーカーレベルにのみ基づくのではなく、対象についての臨床データおよび/または他のデータ、例えば、対象の現在の医学的状態についての臨床データ(例えば、がん関連症状の存在)、がんに特徴的な任意の症状の存在、対象の病歴、HCCについての1つもしくはそれ以上のリスク因子の存在[例えば、がんの家族歴、がんに関連する変異対立遺伝子(mutant alelles)を含む遺伝的因子]、および/または対象についての個体群統計学データ(年齢、性別など)を考慮してもよい。
がんを検出し、かつ/またはがんを有する対象を診断する、提供される方法を行うために有用なキットおよびデバイスは、以下に説明される。
G.バイオマーカー発現を検出および記録するための測定システムおよびレポート
一態様において、システム、例えば測定システムが提供される。そのようなシステムは、例えば、試料中のバイオマーカーレベル(例えば、シトルリン化タンパク質特異的自己抗体バイオマーカー、またはシトルリン化タンパク質もしくはペプチドバイオマーカー)の検出、および検出から得られるデータの記録を可能にする。その後、保存されたデータを、対象のがん状態を決定するために解析してもよい。そのようなシステムは、例えば、アッセイシステム(例えば、アッセイデバイスおよび検出器を含む)を含んでもよく、アッセイシステムは、データを論理システム(例えば、検出器からのデータを捕獲、変換、解析または別の方法で加工するためのコンピューターまたは他のシステムもしくはデバイス)へ送信してもよい。論理システムは、アッセイシステムなどのシステム全体の要素を制御すること、データもしくは他の情報を記憶デバイスもしくは外部メモリへ送信すること、および/または処理デバイスへ命令を発することを含む、多数の機能の任意の1つまたはそれ以上を有してもよい。
また、1つまたはそれ以上の(例えば2つまたはそれ以上の)シトルリン化タンパク質特異的自己抗体バイオマーカー、またはシトルリン化タンパク質もしくはペプチドバイオマーカー、例えば、本明細書において説明されるシトルリン化タンパク質もしくはペプチド(例えば、表2、表9および表10において列挙されるペプチド)またはそのようなタンパク質もしくはペプチドに特異的に結合する自己抗体のいずれかを検出するために試料を分析するためのステーションを利用することによって[例えば、質量分析(Mass SpecまたはMS)、液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)または免疫組織化学(IHC)によって]、試料中のシトルリン化タンパク質特異的自己抗体バイオマーカー、またはシトルリン化タンパク質もしくはペプチドバイオマーカーを検出するためのシステムが提供され、試料は、対象から得られる体液試料(例えば血液試料、例えば血漿試料)または対象から得られる組織試料である。一部の実施形態において、システムは、バイオマーカーを検出するために使用されるアッセイに好適なステーションを含む。例えば、MSおよび/もしくはLC/MSのための質量分析計および/もしくは液体クロマトグラフィーシステム、ELISAのためのプレートリーダー、ならびに/またはIHCのための顕微鏡がある。分析の結果についての情報を含有するレポートを生成するためのステーションをさらに含めてもよい。
また、試料中の1つまたはそれ以上の(例えば、2つまたはそれ以上の)バイオマーカーを検出すること、および、レポートを生成することを含む、試料中のシトルリン化タンパク質特異的自己抗体バイオマーカー、またはシトルリン化タンパク質もしくはペプチドバイオマーカーの検出の結果についての情報を含有するレポートを生成する方法が提供され、ここで、1つまたはそれ以上(例えば、2つまたはそれ以上)は、本明細書において説明されるシトルリン化タンパク質もしくはペプチド(例えば、表2、表9および表10において列挙されるペプチド)またはそのようなタンパク質もしくはペプチドに特異的に結合する自己抗体のいずれかであり;試料は、対象から得られる体液試料(例えば血液試料、例えば血漿試料)または対象から得られる組織試料であり、レポートは、対象においてがんを診断するために有用である。
H.がん状態を決定するためのコンピューター/診断システム
本明細書において説明される方法のある特定の態様は、全体的にまたは部分的に、工程を行うように構成され得る1つまたはそれ以上のプロセッサーを含むコンピューターシステムにより行ってもよい。したがって、実施形態は、潜在的に各々の工程または各々の工程の群を行う様々な部品を伴う、本明細書において説明される方法の工程を行うように構成されるコンピューターシステムを対象とする。本開示のコンピューターシステムは、上記に説明される測定システムの部分であってもよく、任意の測定システムから独立していてもよい。一部の実施形態において、本開示は、入力されたバイオマーカー発現データ(および他のデータでもよい)を使用し、対象のがん状態を決定するコンピューターシステムを提供する。
コンピューターシステムは、デスクトップおよびラップトップコンピューター、タブレット、携帯電話ならびに他のモバイルデバイスを含み得る。システムは、様々な要素、例えば、プリンター、キーボード、記憶デバイス、モニター(例えば、ディスプレイスクリーン、例えばLED)、周辺装置、コンピューターシステムをインターネットなどの広域ネットワークへ接続するデバイス、マウス入力デバイス、スキャナー、記憶デバイス、コンピューター可読媒体、カメラ、マイクロフォン、加速度計などを含み得る。本明細書において挙げられるデータのいずれかは、1つの部品から別の部品への出力であってもよく、ユーザーへの出力であってもよい。
一態様において、本開示は、患者においてがんの存在または非存在を決定するためのコンピューターで実行される方法を提供する。コンピューターは、例えば:患者からの生体試料中の1つまたはそれ以上のバイオマーカーのレベルについての値を含む入力された患者データを受容すること;1つまたはそれ以上のバイオマーカーのレベルを分析し、適宜それらを各々の参照値と比較し、適宜バイオマーカーレベルを1つまたはそれ以上の閾値と比較してがん状態を決定すること;および、患者におけるがん状態または可能性についての情報を表示することを含む工程を行う。ある特定の実施形態において、入力された患者データは、患者からの生体試料中の複数のバイオマーカー、例えば、本明細書において説明されるシトルリン化タンパク質もしくはペプチド(例えば、表2、表9および表10において列挙されるペプチド)または本明細書において説明されるシトルリン化タンパク質もしくはペプチドに特異的に結合する自己抗体のいずれかを含むバイオマーカーの1つもしくはそれ以上の対または3つ組の組合せを含むバイオマーカーのレベルについての値を含む。
さらなる態様において、診断システムは、説明される通りコンピューターで実行される方法を行うために含まれる。診断システムは、プロセッサー、記憶部品(すなわち、メモリ)、ディスプレイ部品、および一般的な目的のコンピューターに典型的に存在する他の部品を含有するコンピューターを含み得る。記憶部品は、プロセッサーにより実行され得る指示、およびプロセッサーにより検索、操作または保存され得るデータを含む、プロセッサーによりアクセス可能な情報を保存する。
記憶部品は、対象のがん状態を決定するための指示を含む。例えば、記憶部品は、本明細書において説明されるバイオマーカーレベルに基づいてがん状態を決定するための指示を含む。コンピュータープロセッサーは、記憶部品に連結され、記憶部品に保存されている指示を実行するように構成されて、患者データを受信し、1つまたはそれ以上のアルゴリズムに従って患者データを解析する。ディスプレイ部品は、患者の診断についての情報を表示する。記憶部品は、ハードドライブ、メモリーカード、ROM、RAM、DVD、CD-ROM、USBフラッシュドライブ、書き込み可能メモリおよび読み取り専用メモリなどの、プロセッサーによりアクセス可能な情報を保存することが可能ないかなる種類の部品であってもよい。
指示は、プロセッサーにより直接的に(例えば機械コード)または間接的に(例えばスクリプト)実行される任意の組の指示であってもよい。その点において、「指示」、「工程」および「プログラム」という用語は、本明細書において互換的に使用され得る。指示は、プロセッサーによる直接的な加工のためのオブジェクト・コード形式において、またはオンデマンドで解釈されるか、もしくは事前にコンパイルされるスクリプトもしくは独立したソースコードモジュールの集合物を含む他の任意のコンピューター言語において保存され得る。
データは、指示に従ってプロセッサーにより検索、保存または改変され得る。例えば、診断システムは、任意の特定のデータ構造に限定されないが、データは、複数の異なるフィールドおよび記録を有する表、XML文書またはフラットファイルとしての関連データベースにおいて、コンピューターレジスターに保存され得る。また、データは、非限定的に、二進値、ASCIIまたはユニコードなどの任意のコンピューター可読形式にフォーマットされ得る。さらに、データは、数字、説明文、所有者コード、ポインター、他のメモリ(他のネットワーク位置を含む)に保存されているデータについての参照、または関連データを計算するための関数によって使用される情報などの、関連情報を特定するのに十分な任意の情報を含み得る。ある特定の実施形態において、プロセッサーおよび記憶部品は、同じ物理的筐体内に保存されていても、されていなくてもよい多数のプロセッサーおよび記憶部品を含み得る。例えば、指示およびデータの一部は、読み取り専用コンピューターチップ内のリムーバブルCD-ROMおよびその他に保存され得る。指示およびデータの一部またはすべては、プロセッサーから物理的に離れているが、それでもプロセッサーによってアクセス可能な場所に保存され得る。同様に、プロセッサーは実際に、並行して作動しても、しなくてもよいプロセッサーの集合物を含み得る。一態様において、コンピューターは、1つまたはそれ以上のクライアントコンピューターと通信するサーバーである。各クライアントコンピューターは、プロセッサー、記憶部品および指示を伴って、サーバーと同様に構成してもよい。クライアントコンピューターは実物大のパーソナルコンピューターを含み得るが、システムおよび方法の多くの態様は、インターネットなどのネットワークを介してサーバーと、ワイヤレスでデータを交換することが可能なモバイルデバイスと関係して使用される場合、特に有利である。
I.キットおよびパネル
また、本明細書において説明される方法を行うために使用され得るキットおよびパネルが、本明細書において提供される。一部の実施形態において、キットおよびパネルは、シトルリン化タンパク質特異的自己抗体が特異的に結合し得る1つまたはそれ以上のシトルリン化ペプチドまたはその抗原性断片もしくは変異型を含む。本明細書において使用される場合、「キット」とは、列挙される構成品と、臨床の専門家が、指示がその構成品と関連するはずであることを明らかに認識するような様式においてその構成品と関係して提供される、任意の形態の指示とを含有するパッケージを指す。本明細書において使用される場合、「指示」とは典型的に、構成品の包装上の、または包装と関連する、成文の文書または図式を含む。また、指示は、任意の様式において提供される任意の口頭のまたは電子的な指示を含み得る。成文の文書または図式は、ウェブサイトURL、またはウェブサイトURLをコードするQRコードを含んでもよく、そのウェブサイトでは他の指示または補足情報が電子形式において提供され得る。
キットおよびパネルにおいて使用されるペプチドは、好ましくはそれが免疫原性であるように、特にそれが対象からのシトルリン化タンパク質特異的自己抗体に結合するように設計される。一部の場合、キットは、本明細書において提供されるパネル、例えば予後または診断パネルを含む。
ある特定の実施形態において、本明細書において説明されるキットは、ペプチドの可溶性を増加させるための1つまたはそれ以上の可溶化剤、例えば緩衝溶液を含む。キットは、シトルリン化ペプチドまたはその断片もしくは変異型および生体試料と共に使用された場合、検出可能なシグナルを提供する試薬をさらに含み得る。一部の実施形態において、キットは、前記1つまたはそれ以上のシトルリン化ペプチドまたはその断片もしくは変異型に特異的に結合するシトルリン化タンパク質特異的自己抗体に結合することが可能な、検出可能に標識された二次抗体を含む。また、二次抗体標識の検出のための試薬は、キットに含まれ得る。二次抗体は、使用される標識基に依存する方法によって検出される。二次抗体のための例示的な標識は、本開示の上記に説明されている。
加えて、キットは、シトルリン化ペプチドもしくはその断片もしくは変異型を使用するための指示、および/または本明細書において説明される方法を実施する;特に生体試料中のシトルリン化タンパク質特異的自己抗体を検出するための指示を含み得る。生体試料中に含有されるシトルリン化タンパク質特異的自己抗体の濃度または量は、検出可能な標識の量を測定することによって間接的に測定される。得られる測定値は、較正曲線その他を使用して、相対または絶対濃度、量、活性などに変換され得る。
一部の実施形態において、本明細書において提供されるキットまたはパネルは、参照試料、例えば正常対照試料を含む。一部の実施形態において、本明細書において提供されるキットまたはパネルは、生体試料、例えば健康な対象からの生体試料またはがんを有する対象からの生体試料中に存在することが予測される抗原を検出する1つまたはそれ以上の対照抗体を含む。そのような試料が含まれる場合、対象または生体試料中のがんの存在または非存在がより客観的に決定され得るように、そのような試料について得られる測定値は、試験試料の結果と比較される。
1つまたはそれ以上のシトルリン化ペプチド、断片および/または変異型に加えて、パネルは、追加のポリペプチド、例えば、陽性もしくは陰性対照、または予後値および/もしくは診断値の自己抗体、特にがんおよび/もしくは自己免疫疾患に関連する自己抗体に結合することが公知の他の抗原を含み得る。
一態様において、上記に説明される1つまたはそれ以上のシトルリン化ペプチドまたはその抗原性断片もしくは変異型を含むパネルを含む予後デバイスまたは診断デバイスが本明細書において提供される。一部の実施形態において、そのような予後または診断パネルデバイスは、直接的な様式において、1つまたはそれ以上のシトルリン化ペプチド、断片または変異型が水溶液、より好ましくは液体ヒト試料と接触することを可能にする上記に説明されるような形態の、1つまたはそれ以上のシトルリン化ペプチド、断片または変異型を含む。特に、1つまたはそれ以上のシトルリン化ペプチド、断片または変異型は、担体(基材とも称される)の表面上に固定化してもよく、その担体は、ガラスプレートまたはスライド、バイオチップ、マイクロタイタープレート、ビーズ、例えば磁気ビーズ、クロマトグラフィーカラム、膜その他を含むが、これらに限定されない。例示的なデバイスとして、ラインブロット、マイクロタイタープレートおよびバイオチップが挙げられる。一部の実施形態において、デバイスは、追加のポリペプチド、例えば、陽性もしくは陰性対照、または予後値および/もしくは診断値の自己抗体、特に上記に説明されるがんもしくは自己免疫疾患に関連する自己抗体に結合することが公知の他の抗原を含み得る。
一部の実施形態において、本明細書において提供されるキットは、基材;表1に列挙される遺伝子によってコードされるタンパク質、表2に列挙される遺伝子によってコードされるタンパク質、および表10に列挙される遺伝子によってコードされるタンパク質からなる群から選択される少なくとも1つのシトルリン化タンパク質;および、方法を行うための指示を含み、指示は、がんに罹患しているか、またはがんに罹患していると疑われる患者からの血漿試料を準備すること;血漿試料を、シトルリン化タンパク質と、血漿試料中に存在し得るシトルリン化タンパク質に対するいずれかの自己抗体がシトルリン化タンパク質に結合するのに十分な条件下で、インキュベートすること;シトルリン化タンパク質およびそれ/それらに対するいずれかの結合した自己抗体を、検出可能な標識と、検出可能な標識が結合した自己抗体に結合し、他の分子に実質的に結合しない条件下で、インキュベートすること;結合した自己抗体に結合した標識を検出すること;結合した自己抗体に結合した標識の検出された量が閾値と等しいか、またはそれを超えることに応じて、患者をがんに罹患していると分類すること;結合した自己抗体に結合した標識の検出された量が閾値未満であることに応じて、患者をがんに罹患していないと分類することのための指示を含む。
キットは、1つまたはそれ以上の容器を含有してもよく、その各々は、構成品の1つまたはそれ以上を含有し得る。また、キットは、構成品を混合、希釈、使用または投与するための指示を含有し得る。また、キットは、1つまたはそれ以上の溶媒、界面活性剤、保存剤、緩衝液、洗浄液および/または希釈液[例えば、生理食塩水(0.9%NaCl)または5%デキストロース]を含む他の容器、ならびに混合、希釈、インキュベート、洗浄などのための容器を含み得る。
構成品は、任意の好適な形態において、例えば、液体溶液としてまたは乾燥製品として提供され得る。提供される構成品が乾燥製品である場合、構成品は、これもまたキットによって提供され得る溶媒の添加によって再構成され得る。液体形態の構成品が使用される実施形態において、液体形態は、濃縮されていても、使用準備済みであってもよい。
キットは、一実施形態において、バイアル、管などの1つまたはそれ以上の容器を近接するように制限して受容するように仕切られている担体を含み得る。
基材は、本明細書中上記に説明される通りであり得る。また、シトルリン化タンパク質は、本明細書中上記に説明される通りであり得る。
基材およびシトルリン化タンパク質に加えて、実施形態において、また、キットは、検出可能な標識、および標識が検出可能なシグナルを生成することを可能にするために必要とされる任意の構成品を含み得る。
指示が関連する方法は、本明細書中上記に説明される通りであり得る。
一部の実施形態において、本明細書において提供されるキットは、シトルリン化ペプチドおよび/またはタンパク質(例えば、対象からの生体試料中の)を検出することを含む診断方法に有用である。一部の実施形態において、キットは、細胞溶解剤;および、方法を行うための指示を含み、指示は、がんに罹患しているか、またはがんに罹患していると疑われる患者からの組織試料を準備すること;組織試料を細胞溶解剤に暴露することによって、組織試料の細胞を溶解すること;表1に列挙される遺伝子によってコードされるタンパク質、表2に列挙される遺伝子によってコードされるタンパク質、および表10に列挙される遺伝子によってコードされるタンパク質からなる群から選択される少なくとも1つのシトルリン化タンパク質について組織試料をアッセイすること;組織試料が閾値と等しいか、またはそれを超えるシトルリン化タンパク質の量を含有することに応じて、患者をがんに罹患していると分類すること;および、組織試料が閾値未満のシトルリン化タンパク質の量を含有することに応じて、患者をがんに罹患していないと分類することのための指示を含む。
任意の細胞溶解剤は、キットに含まれ得る。一実施形態において、細胞溶解剤は、オクチルグルコシドを含んでもよく、指示は、リン酸緩衝食塩水(PBS)中の1重量/容積%にすることによって、使用のためのオクチルグルコシドを調製するための指示をさらに含んでもよい。
キットは、上記に説明されるか、またはそのようなキットにルーチンに含まれる他の構成品を含み得る。
キットが指示を提供する方法は、上記に説明される通りであり得る。
一部の実施形態において、本明細書において提供されるキットは、少なくとも1つのペプチドであって、各ペプチドが、表2、表9および/または表10に列挙される配列および対応する修飾、ならびに表2、表9および/または表10に列挙される配列と少なくとも70%の同一性を有し、少なくとも1つのアルギニン残基を含む配列からなる群から選択される少なくとも1つのシトルリン化アミノ酸配列を含む、ペプチド;および、方法を行うための指示とを含み、指示は、がんに罹患している患者からの腫瘍試料を準備すること;ペプチドの各々に含有されるシトルリン化アミノ酸配列について腫瘍試料をアッセイすること;腫瘍試料が、閾値と等しいか、またはそれを超える量の、ペプチド中に含有されるシトルリン化アミノ酸配列を含有することに応じて、ペプチドの1つまたはそれ以上を患者の免疫系へ提示することのための指示を含む。
シトルリン化アミノ酸配列およびペプチドは、上記に説明されている。
指示が提供される方法は、上記に説明される通りであり得る。
一部の実施形態において、キットは、細胞溶解剤をさらに含んでもよく、指示は、腫瘍試料の細胞を溶解して腫瘍試料細胞溶解物を産生すること、および腫瘍試料細胞溶解物中のシトルリン化アミノ酸配列の量を定量することによって、腫瘍試料をアッセイするための指示をさらに含み得る。
あるいはまたは加えて、指示は、外科的切除、化学療法、モノクローナル抗体療法、チェックポイント阻害剤療法、腫瘍溶解性ウイルス療法、温熱療法、放射線療法、およびそれらの2つまたはそれ以上からなる群から選択される追加のがん治療を患者へ投与するための指示をさらに含み得る。追加のがん治療が、化学療法、モノクローナル抗体療法、チェックポイント阻害剤療法および腫瘍溶解性ウイルス療法からなる群から選択されるさらなる実施形態において、キットは、化学療法剤、モノクローナル抗体、チェックポイント阻害剤または腫瘍溶解性ウイルスの1つまたはそれ以上をさらに含み得る。
一部の実施形態において、本明細書において提供されるキットは、細胞膜上に配置されたものとしての、表1に列挙される遺伝子からなる群から選択される遺伝子によってコードされるシトルリン化タンパク質を標的化する抗がん剤;および、方法を行うための指示とを含み、指示は、がんに罹患している患者からの腫瘍試料を準備すること;シトルリン化タンパク質について腫瘍試料をアッセイすること;腫瘍試料が、閾値と等しいか、またはそれを超えるシトルリン化タンパク質の量を含有することに応じて、シトルリン化タンパク質を標的化する抗がん剤を患者へ投与することのための指示を含む。
抗がん剤およびシトルリン化タンパク質は、上記に説明されている。
指示が提供される方法は、上記に説明される通りであり得る。
一実施形態において、キットは、細胞溶解剤をさらに含んでもよく、指示は、腫瘍試料の細胞を溶解して腫瘍試料細胞溶解物を産生すること、および腫瘍試料細胞溶解物中のシトルリン化アミノ酸配列の量を定量することによって、腫瘍試料をアッセイするための指示をさらに含み得る。
あるいは、または加えて、指示は、外科的切除、化学療法、モノクローナル抗体療法、チェックポイント阻害剤療法、腫瘍溶解性ウイルス療法、温熱療法、放射線療法、およびそれらの2つまたはそれ以上からなる群から選択される追加のがん治療を患者へ与えるための指示をさらに含み得る。追加のがん治療が、化学療法、モノクローナル抗体療法、チェックポイント阻害剤療法および腫瘍溶解性ウイルス療法からなる群から選択されるさらなる実施形態において、キットは、化学療法剤、モノクローナル抗体、チェックポイント阻害剤または腫瘍溶解性ウイルスの1つまたはそれ以上をさらに含み得る。
IV.ポリペプチド
実施形態において、本開示は、表2、表9および表10に列挙されるペプチドからなる群から選択されるペプチドと少なくとも70%の配列同一性を含む単離されたペプチドに関する。
一部の実施形態において、ペプチドは、表2、表9および/または表10に列挙されるペプチドの少なくとも6個の連続するアミノ酸(例えば、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14または少なくとも15個の連続するアミノ酸)を含む。
一部の実施形態において、ペプチドは、15個のアミノ酸またはそれ以下(例えば、14、13、12、11、10、9、8、7、6個のアミノ酸またはそれ以下)の長さである。
一部の実施形態において、ペプチドは、およそ9個のアミノ酸の長さである。
一部の実施形態において、ペプチドは、およそ15個のアミノ酸の長さである。
一部の実施形態において、ペプチドは、20~25個のアミノ酸の長さである。
一部の実施形態において、ペプチドは、22~24個のアミノ酸の長さである。
一部の実施形態において、ペプチドは、免疫原性である。
一部の実施形態において、ペプチドは修飾されている、すなわち、野生型ペプチドに存在する1つまたはそれ以上の結合は、野生型ペプチドには非存在である原子または分子への結合により置換されている。
一部の実施形態において、修飾は、分子へのコンジュゲーションを含む。例えば、分子は、抗体、脂質、アジュバントまたは検出部分を含み得る。
一部の実施形態において、ペプチドは、表2、表9および/または表10に列挙されるペプチドと少なくとも90%の配列同一性を有する。
一部の実施形態において、ペプチドは、表2、表9および/または表10に列挙されるペプチドと比較して1、2または3個の置換を有する。
一部の実施形態において、ペプチドは、表2、表9および/または表10に列挙されるペプチドと100%の配列同一性を含む。
以下の実施例は、本開示の好ましい実施形態を実証するために含まれる。以下の実施例において開示される技術は、本開示の実施において十分に機能することが本発明者らによって発見された技術を表し、したがって、その実施のための好ましい様式を構成すると考えることができることを当業者は理解すべきである。しかしながら、当業者は、本開示に照らして、多くの変化を、開示されている特定の実施形態において行い、それでも本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、同様または類似する結果を得ることができることを理解すべきである。以下の例の多くは、その全体を参照によりこれにより本明細書に組み込む、Katayama et al., 2021, “Protein citrullination as a source of cancer neoantigens,” Journal for ImmunoTherapy of Cancer 9:e002549においてさらに説明されている。本開示において説明されるある特定の実験データの例示のために、Katayama et al., 2021の出版物について参照がなされる。
実施例1.材料および方法
A.質量分析
乳がん細胞株シトルリノーム解析。プロテオミクス解析を、以前に説明されるように(参考文献19~22)行った。徹底的なシトルリノーム解析のために、28種の乳がん細胞株MCF7、MDA-MB-231、SKBR3、HCC1954、HCC1143、BT474、HCC1500、T47D、ZR75-1、HCC1937、HCC1599、HCC202、HCC1806、MDA-MB-468、HCC2218、HCC70、HCC1187、Hs578T、BT549、MCF10A、MCF12A、MDA-MB-361、HCC1395、CAMA1、HCC38、MDA-MB-436、BT20およびMDA-MB-157を、10%透析済みFBSおよび1%ペニシリン/ストレプトマイシンカクテル(Gibco)を含有するRPMI1640中で13C6 Lys(番号CNLM-2247、Cambridge isotope laboratories)により標識化した。SILAC標識化(Stable Isotope Labeling by Amino acid in Cell culture)(参考文献23)を行って、細胞タンパク質からFBS由来タンパク質を識別した。
全細胞溶解物のプロテオミクス解析のために、約2×10個の細胞を、オクチルグルコシド(1w/v%)およびプロテアーゼ阻害剤(完全プロテアーゼ阻害剤カクテル、Roche Diagnostics)を含有する1mLのリン酸緩衝食塩水(PBS)中において溶解し、続いて超音波処理、および20,000xgにおける遠心分離を行い、上清を収集し、0.22μmのフィルターを通して濾過した。2ミリグラムの全細胞抽出物(WCE)タンパク質を、ジチオトレイトール(DTT)中において還元し、アクリルアミドによりアルキル化し、その後、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)により画分化した。全部で84個の画分を、3画分/分の速度で収集した。移動相Aは、0.1%のトリフルオロ酢酸(TFA)を含む、水(HO):アセトニトリル(ACN)(95:5、v/v)からなった。移動相Bは、0.1%のTFAを含む、ACN:HO(95:5)からなった。HPLCから収集した画分を、凍結乾燥により乾燥させ、続いてトリプシン(質量分析グレード、Thermo Fisher)による溶液中における消化を行った。
クロマトグラムプロファイルに基づいて、84個の画分を、細胞株当たりの液体クロマトグラフィー-タンデム質量(LC-MS/MS)分析のために24個の画分にプールした。全部で2,688個の画分を、ナノフローLC系(EASYnano HPLC系、Thermo Scientific)を使用する逆相LC-MS/MS(RPLC-MS/MS)にかけ、これをLTQ Orbitrap ELITE質量分析計(Thermo Scientific)とオンラインでカップリングさせた。分離は、3μm、100Å孔径C18シリカ結合固定相のスラリーを詰めた、75μmの内径(id)×360μmの外径(od)×25cmの長さの石英ガラスキャピラリーカラム(Column Technology)を使用して行った。C18トラップカラム(Waters、180μm id×20mm)上への約500ngのタンパク質消化物の注入後、1分間当たり0.35%の移動相B(ACN中の0.1ギ酸)の直線勾配を使用して90分間、その後95%Bまでさらなる10分間、すべて300nL/分の定常流速において、ペプチドを溶離した。溶離したペプチドを、データ依存性取得モードにおいてLTQ Orbitrap ELITEによって解析した。各全MSスキャン(m/z 400~1800)に続いて、20MS/MSスキャン[衝突誘発解離(CID)により正規化した衝突エネルギー35%]を行った。各全質量スペクトルの取得に続いて、デューティー・サイクル内の20個の最も強い+2、+3または+4イオンについてMS/MSスペクトルの取得を行い;ダイナミックエクスクルージョン(dynamic exclusion)により、以前にMS/MS解析に選択されたペプチドの重複する選択を最小限にすることができた。MS1についてのパラメーターは、解像度60,000、自動取得制御標的1×10、および最大注入時間150ミリ秒であった。MS/MSは、自動取得制御3×10、最大注入時間10ミリ秒、正規化衝突エネルギー35、単離幅2.0m/z、活性化q値0.25、および活性化時間10ミリ秒のCIDフラグメンテーションにより行った。
MS/MSスペクトルを、Uniprotヒトプロテオームデータベース(2017年1月)について、Proteome Discoverer V.1.4パイプライン内のSequest HTを使用して、検索した。Cysにおけるプロピオンアミドの1つの固定された修飾(71.037114Da)、ならびに3つの可変性の修飾である、Metにおける酸化(15.9949Da)、Argにおける脱アミド化(0.984016Da)およびLysにおけるSILAC 13C6(6.0201Da)を選択した。許容される質量誤差は、親モノアイソトピックイオンについて10ppm(百万分率)、タンデムマス(MS2)フラグメントモノアイソトピックイオンについて0.5Daであった。全トリプシンは、タンパク質切断部位として特定され、2つの切断失敗の可能性が許容された。検索された結果は、偽陽性率(FDR)=0.01によりフィルターにかけ、トリプシン処理ペプチドのC末端において脱アミド化したArgを有するペプチドは、偽りの特定と考えられ、これも除去された。
B.血漿Ig結合シトルリノーム解析
Ig結合解析のための臨床対象。血漿試料を、症例として新たに乳がんと診断された(0~0.8年)156人の女性から収集し、40人の年齢が適合したがんを有しない女性を対照として使用した。症例について、試料収集時に遠隔転移の報告のない患者のみを本研究に含めた。成文のインフォームドコンセントを得、研究は、MD AndersonがんセンターのIRBによって承認された。血液採取のタイミングは、診断生検後、およびネオアジュバント化学療法、またはネオアジュバント設定において化学療法を受容しなかった患者においては最終的な外科手術前であった(参考文献23)(表6および表8)。追加の73人の健康な対照の血漿を、治験審査委員会の承認およびインフォームドコンセント後にMD Andersonがんセンター婦人科組織バンクから得た(表6)。
血漿Ig結合ワークフロー。血漿Ig結合タンパク質を調製し、以前に説明されるように分析した(参考文献24)。新たに乳がんと診断された156人の女性からの26個のプールした血漿試料、および対照としての113人のがんを有しない対象からの12個のプールした血漿試料を分析した(表6)。簡潔に説明すると、各実験条件についての100μLのプールした血漿を、免疫枯渇カラムHu-14 10×100mm(番号5188-6559;Agilent Technologies、サンタクララ、カルフォルニア、米国)によりプロセスして、上位14種の高存在量タンパク質、アルブミン、IgG、IgA、トランスフェリン、ハプトグロビン、フィブリノーゲン、α1-抗トリプシン、α1-酸性糖タンパク質、アポリポタンパク質AI、アポリポタンパク質AII、補体C3、トランスサイレチン、IgMおよびα2-マクログロブリンを除去した。結合した画分を、以前に説明されるように(参考文献24および25)IgG結合タンパク質分析に使用した。
LC-高精細MSE(HDMSE)データを、Waters Masslynx(V.4.1、SCN851)を使用してSYNAPT G2-Sにより分解モードにおいて取得した。キャピラリー電圧を2.80kV、試料採取コーン電圧を30V、ソースオフセットを30V、およびソース温度を100℃に設定した。イオン移動度分光分析(IMS)TriWaveセルにおいて、モビリティは、ドリフト気体として高純度Nを使用した。ヘリウムセル、トラップセル、IMS TriWaveセル、およびトランスファーセル中の圧は、それぞれ、4.50ミリバール、2.47e-2ミリバール、2.90ミリバール、および2.53e-3ミリバールであった。IMS波速は600m/秒であり、ヘリウムセルDCは50Vであり、トラップDCバイアスは45Vであり、IMS TriWave DCバイアスは3Vであり、IMS波遅延は1000マイクロ秒であった。質量分析計を、少なくとも20,000の典型的な解像力によりVモードにおいて作動させた。すべての分析は、NanoLockSprayソースを使用するポジティブモードエレクトロスプレーイオン化(ESI)を使用して行った。ロックマスチャネルについて、60秒毎に試料採取した。質量分析計を、NanoLockSprayソースの参照スプレイヤーを通してデリバリーされる[Glu1]-フィブリノペプチド溶液(300fmol/μL)により較正した。正確な質量LC-HDMSEデータを、低エネルギー(MS)高エネルギー(MSE)交替取得モードにおいて収集し、質量スキャン範囲はm/z50~1800であった。各モードにおけるスペクトル取得時間は1.0秒であり、0.1/秒のスキャン間遅延を伴った。低エネルギーHDMSモードにおいて、トラップセルおよびトランスファーセルの両方にて2eVの定常衝突エネルギーで、データを収集した。高エネルギーHDMSEモードにおいて、衝突エネルギーは、トランスファーセルのみにて25~55eVの勾配であった。m/z300~2000のイオンが効率的に伝達されるように、四重極型質量分析計に適用されるRFを調節して、m/z300未満の、LC-HDMSEデータにおいて観察される任意のイオンがトランスファー衝突セルにおける解離から生ずることが公知であることを確実にした。
取得されたLC-HDMSEデータを、Uniprotヒトプロテオームデータベース(2017年1月)について、ProteinLynx Global Server(PLGS、Waters Company)を通して、偽陽性率4%にて、加工および検索した。修飾検索設定および脱アミド化Arg、C末端切断失敗評価は、細胞株シトルリノームと同じであった。データ取得中に発生したバッチ効果について調節するために、プロット値は、試料当たりの独特のペプチドすべてに対するシトルリン化タンパク質の数として表される。血漿IgG結合のIngenuity Pathway Analysis(IPA)ネットワーク解析を、1.5を超えるか、またはそれと等しい健康な対照と比較した、各BC受容体サブタイプにおけるシトルリノームのスペクトルカウントの比を計算することによって行った。
C.血漿自己抗体ウェスタンブロットアッセイ
組換え非修飾ビメンチン(Cayman Chemical、番号11234)を、100mM NaClおよび1mM CaCl2緩衝液を含有する100mM HEPES(pH7.6)とインキュベートし、室温において1時間保存し、シトルリン化形態を調製した。組換え非修飾ビメンチンおよびシトルリン化ビメンチンの各々を、Criterion XT 12%ゲルへ0.1、0.5、1.0μgロードし、Trans-Blot Turbo Transfer System(BioRad、番号1704150)を使用してPVDF膜へ移した。健康な対照(n=8のプール)および三種陰性乳がん(TNBC)ステージII(n=11のプール)から、2μLの血漿を、0.01%ツイーン20(TBST)を含有するトリス緩衝食塩水中に溶解した0.05%カゼインにより150倍希釈し、それぞれ、組換えタンパク質を移したPVDF膜と2時間インキュベートした。その後、膜をTBSTにより洗浄した後、ECL抗ヒトIgGホースラディッシュペルオキシダーゼ連結全Ab(GE Healthcare 番号NA933)の二次抗体を添加し、室温において1時間保存し、続いて、Clarity Western ECL(BioRad、番号170-5061)検出を行った。バンド強度を、ImageJ V.1.46r(imagej.nih.gov/)により読み取った。
D.血漿自己抗体ELISAアッセイ
血漿ELISAアッセイのための臨床対象。11人の新たに診断されたステージII TNBC患者の血漿および31人の健康な対照を、自己抗体アッセイに使用した。症例血漿は、十分な容量を有するIg結合タンパク質のプロテオミクス解析に使用された乳房コホート中の1サブセットの患者に由来した。健康な対照の血漿の独立した組を、上記に説明されるMD Andersonがんセンター婦人科組織バンクから取得した(表6および表8)。
血漿自己抗体アッセイ法。抗ビメンチン、抗シトルリン化ビメンチン自己抗体の濃度を、MAGPIX器械(Luminex Corporation、オースティン、テキサス)のLuminexビーズベースイムノアッセイを使用して決定した。試料を同じバッチにおいてランダムな順序にて分析した。MagPlexミクロスフェアを、精製組換えビメンチン(Cayman Chemical、番号11234)および組換えシトルリン化ビメンチン(Cayman Chemical、番号21942)と5μg/百万個の濃度においてコンジュゲートした。試料を、1:16,250の最終希釈において試験した。酸解離自己抗体を、0.1M Gly-HCl(pH 3.0)により50倍希釈した血漿5μLにより調製し、室温において30分間保存し、Zebaスピンカラム(ThermoFisher Scientific、番号89890)を使用してReagent Diluent Concentrate2緩衝液(R&D Systems、番号841380)に緩衝液交換した。試料を、MagPlexビーズと共にシェーカー上で室温において2時間インキュベートした。試料をPBSTにより洗浄した後、PEをコンジュゲートした二次抗体を使用して、試料を30分間インキュベートした。各ウェルの蛍光強度の測定(MFI)を、MAGPIX器械を使用して読み取った。表6中のTNBCステージII血漿をアッセイに使用し、匿名の個体対象情報を表8に示す。
E.細胞表面ヒト白血球抗原(HLA)結合ペプチジルシトルリノーム
全部で5×10個のHCC1954およびTNBC MDA-MB-468細胞を、以前に説明される通り(参考文献26)、LTQ Orbitrap ELITEを使用するペプチジルシトルリノーム解析における培養のために使用した。MS/MSスペクトルを、Uniprotヒトプロテオームデータベース(2017年1月)について、Proteome Discoverer V.1.4パイプライン内のSequest HTを使用して、検索した。検索を、8~34個のアミノ酸の長さについて行った。2つの可変性の修飾である、Metにおける酸化(15.9949Da)およびArgにおける脱アミド化(0.984016Da)を選択した。許容される質量誤差は、親モノアイソトピックについて10ppm、MS2フラグメントモノアイソトピックイオンについて0.5Daであった。検索された結果は、FDR=0.01によりフィルターにかけた。推定的に8~11個のアミノ酸の長さを有する特定されたペプチドは、MHC-I結合ペプチドと考えられ、12~34個のアミノ酸の長さを有する特定されたペプチドは、MHC-II結合ペプチドと考えられた。
私たちはさらに、十分に確立された予測ツールであるNetMHC-II pan V.2.3を使用して、ペプチドとMHC-II分子との間のインシリコ結合親和性予測を行った(参考文献27および28)。簡潔に説明すると、特定されたペプチド配列を、予測ツールであるNEetMHC-II pan2.3にロードし、その後、データを結合ペプチドコア親和性予測によって分類し(IC50、nM)、MHC-IIポケットを人工知能ネットワークSSNAligmentにより評価し、パーセンタイル順位を、ペプチドのスコアをSwiss-Protデータベースから選択される100万個のランダム15マーのスコアに対して比較することによって生成した。
F.PADI2 siRNAノックダウン
細胞に、リポフェクタミンRNAiMAX(Thermo Fisher Scientific)中の50nMのsi対照(Silencer Select Negative Control 1番、Thermo Fisher Scientific)、siPADI2 1番(s22187、Thermo Fisher Scientific)およびsiPADI2 2番(s22188、Thermo Fisher Scientific)をトランスフェクトすることによって、PADI2の一過性のノックダウンを行った。トランスフェクションの72時間後、RNeasy Mini Kit(Qiagen、ジャーマンタウン、メリーランド)を使用して、トータルRNAを単離した。High-Capacity cDNA Reverse Transcription Kit(Thermo Fisher Scientific)を使用して1μgのトータルRNAにより逆転写を行い、TaqMan Gene Expression Assays(Hs00247108_m1、PADI2 FAM-MGB、Thermo Fisher Scientific)を使用してリアルタイムPCRを行った。18S(Hs99999901_s1、VIC-MGB、Thermo Fisher Scientific)を内部対照として使用した。すべての試料を三つ組にてアッセイした。
プロテアーゼ阻害剤カクテル(完全プロテアーゼ阻害剤カクテル、Millipore Sigma)を含む8M尿素および50mM重炭酸トリエチルアンモニウム(TEAB)を使用して、タンパク質を抽出した。チャネル当たり全部で100μgのタンパク質を、タンデム質量タグ(TMT)標識化のために使用した。TCEP[トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン]による還元、およびアクリルアミドによるアルキル化後、タンパク質を、Lys-C(WAKO)により37℃において一晩消化した。消化したペプチドを、Monospin C18カラム(GL Sciences、東京、日本)により脱塩し、speedvacにより乾燥させた。トリプシン処理ペプチドを、0.1M TEAB緩衝液/アセトニトリル中に再懸濁し、各TMTチャネルと1時間反応させ(TMTsixplex Isobaric Label Reagent Set、Thermo Fisher)、その後、ヒドロキシルアミンによりクエンチし、一緒に混合し、speedvacにより乾燥させた。トリプシン処理ペプチドを次に、高pH条件下でMonospin L C18カラム(GL Sciences)を使用して0.1%トリメチルアミン/アセトニトリル中において、10画分に分けるアセトニトリルの段階的溶離により、画分化した。
画分化ペプチドを、Q Exactive質量分析計(Thermo Fisher Scientific)とオンライン連結されたEASYnano HPLC系(Thermo Fisher Scientific)に注入した。系を、Waters Symmetry C18 nanoAcquityトラップカラム(180μm x 20mm、5μm)およびC18分析カラム(75μm x 200mm、3μm;Column Technology)で装備した。分離カラム温度は環境温度に設定し、自動サンプラー内のトレイ区画の温度は6℃に設定した。質量分析計パラメーターは、スプレー電圧2.5kV、キャピラリー温度320℃、フーリエ変換(FT)分解能70,000、AGC標的値3×10、30ミリ秒の注入時間で1マイクロスキャンであった。質量スペクトルを、データ依存性モードにおいて、350~1,800のm/z範囲にて取得した。正規化衝突エネルギー(NCE)20、25、35の段階的勾配を適用して、フラグメンテーションを誘発した。各全質量スペクトルの取得に続いて、デューティー・サイクル内の10個の最も強い+2、+3または+4イオンについてMS/MSスペクトルの取得を行った。取得したLC-MS/MSデータを、Proteome Discoverer V.1.4(Thermo Scientific)によって加工した。Sequest HTを検索エンジンとして使用し、パラメーターは、アクリルアミドによりアルキル化したCysの固定された修飾(+71.03714)、TMTを伴うLys(+229.162932、N末端およびLys)、ならびにMet酸化の可変性の修飾(+15.99491)およびArg脱アミド化(+0.984016)を含んだ。親MS1について10ppmの質量誤差が許容され、MS2フラグメントについて0.02Daが許容された。データを、Uniprotヒトデータベース(2017)について検索し、FDR=0.01によりさらにフィルターにかけ、TMT比を定量した。
G.免疫組織化学(IHC)
乳がん組織マイクロアレイ分析のための臨床対象。全部で422個の患者組織からの、127個のルミナールA、99個のルミナールB、57個のHER2富化、および139個のTNBCを含む、乳がん組織マイクロアレイ(TMA;BC081120C、BR20810およびBR20811)を、臨床パラメーターおよびペプチジルシトルリンとの同時発現に関連するPADI2発現の評価に使用した(表3)。
IHCワークフロー。健康な組織のマイクロアレイ(TMA;BN0001a)および乳がん組織切片(HuCAT297、HuCAT298、2017-16604A TNBC、Fmg0105378 Her2+、およびFmg030209B5 ER+)をUS Biomax(ロックビル、メリーランド、米国)から購入し、健康な乳腺組織切片をZyagen(HP-414)から取得した。切片をキシレン中において脱パラフィンし、エタノール連続希釈において再水和し、その後3%過酸化水素により10分間処理した。抗原回復を、加圧クッカーにおいて、クエン酸塩(Bio SB、サンタバーバラ、カリフォルニア、米国)および0.1%ツイーン20を含む1x ImmunoDNA Retriever中にて、121℃で15分間行った。切片を、1:2000倍希釈した抗PADI2モノクローナル抗体(66386-1-1g、Proteintech、ローズモント、イリノイ、米国)、1:1000倍希釈した抗シトルリンモノクローナル抗体(Clone F95、Millipore Sigma、バーリントン、マサチューセッツ、米国)、1:250倍希釈した抗CD20cyモノクローナル抗体(Clone L26、Agilent Technologies)、1:50倍希釈した抗CD19モノクローナル抗体(Clone LE-CD19、Agilent Technologies)および1:1000倍希釈した抗汎サイトケラチンモノクローナル抗体(Clone AE1/AE3+5D3、Abcam、ケンブリッジ、英国)と4℃において16時間ハイブリダイズした。TBSにより5分間で3回洗浄した後、シグナル発生を、Histofine DAB-2Vキット(Nichirei Bioscience、東京、日本)により行った。MD Andersonがんセンター(MDACC)-North Campus Research Histology Core Laboratoryによって画像がスキャンされ、Aperio Imagescope(Leica Biosystems、バッファローグローブ、イリノイ、米国)を使用して解析された。PADI2およびシトルリンについて、3人の操作員が独立してIHC評価を行った。がん細胞の陽性を、低:0~24%、低~中:25~49%、中~高:50~74%、および高:75~100%としてスコア付けし、PADI2染色陽性と各々の比較群との間の傾向について、p値を両側カイ二乗検定によって計算した。BR20810およびBR20811は、1人の患者につき二つ組の組織からなるので、私たちは平均スコアを得た。
抗原吸収ベースのIHCについて、私たちは、以前に開発した方法(参考文献29)をわずかな改変を伴って使用した。抗PADI2抗体は、2,000倍であり、様々な濃度の組換えシトルリン化フィブリノーゲン(18473、Cayman Chemical)および非シトルリン化フィブリノーゲン(16088、Cayman Chemical)と混合し、4℃において一晩インキュベートした。20,000Xgにおいて30分間の遠心分離後、上清をIHCの一次抗体として使用した。抗体の反応性は、浸潤性乳管癌組織切片を使用して確認し、非修飾フィブリノーゲンの存在下において陽性染色が観察され、一方で、シトルリン化フィブリノーゲンの存在下においては染色が抑制された(図6)。
H.遺伝子発現データ
Cancer Genome Atlas(TCGA)遺伝子発現データ、HM450メチル化データ、および臨床データを、cBioPortalからダウンロードした(参考文献30)。Curtisデータセット(参考文献31)についての遺伝子発現を、Oncomineデータベース(参考文献32)から得た。
I.免疫細胞シグネチャー解析
免疫シグネチャーは、以前に説明されるように(参考文献33)得られた。簡潔に説明すると、Bindeaら(参考文献34)に従って、24種の免疫細胞種の1つにおいて過剰発現された遺伝子セットに基づくRNA配列データを使用して、特定の免疫細胞浸潤を計算的に推測した。免疫細胞シグネチャーの各々について、および抗原提示MHCクラスI(APM1)遺伝子(HLA-A/B/C、β2M、TAP1/2、TAPBP)、または抗原提示MHCクラスII(APM2)遺伝子(HLA-DR/DQ/DP/DM)の発現についてのTCGAがん試料のスコア付けは、他の箇所において説明されている(参考文献35)。
J.統計解析
教師なし階層的クラスタリングヒートマップを、R統計ソフトウェアを使用して生成した。図を、R統計ソフトウェアまたはGraphPad Prism V.8を使用して生成した。スピアマンの相関解析を行って、連続変数間の関係を評価した。フィッシャーの直接検定を使用して、カテゴリー変数間の関係を評価した。すべての統計検定は、別に指定しない限り、両側検定であった。
実施例2.PADI2は、様々ながんタイプの中で乳がんにおいて高度に発現される
196個のがん細胞株からの全細胞溶解物中のPADIファミリータンパク質発現のプロテオーム解析を、脳がん、乳がん、結腸がん、胃がん、神経膠腫、白血病、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、黒色腫、卵巣がん、膵がんおよび前立腺がんのがんタイプによって層化した。定量的発現は、PADIファミリーメンバーを識別する一般的な配列および独特な配列におけるペプチドのスペクトルカウントに基づいた。PADI2タンパク質発現は、他のファミリーメンバーの中で最も高く、乳がんにおいて比較的富化されていた(データは示していない)。TCGAからのmRNA発現データセットを使用して、ACC:副腎皮質癌、BLCA:膀胱尿路上皮癌、BRCA:浸潤性乳癌、CESC:子宮頸部扁平上皮癌および子宮頸部腺癌、CHOL:胆管癌、COAD:結腸腺癌、DLBC:リンパ系新生物びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、ESCA:食道癌、GBM:多形性膠芽腫、HNSC:頭頸部扁平上皮癌、KICH:嫌色素性腎細胞癌、KIRC:腎臓の腎明細胞癌、KIRP:腎臓の腎乳頭細胞癌、LAML:急性骨髄性白血病、LGG:脳の低悪性度神経膠腫、LIHC:肝臓の肝細胞癌、LUAD:肺腺癌、LUSC:肺扁平上皮癌、MESO:中皮腫、OV:卵巣の漿液性嚢胞腺癌、PAAD:膵臓腺癌、PCPG:褐色細胞腫および傍神経節腫、PRAD:前立腺腺がん、SARC:肉腫、SKCM:皮膚の皮膚黒色腫、STAD:胃の腺癌、TGCT:精巣胚細胞腫瘍、THCA:甲状腺癌、THYM:胸腺腫、UCEC:子宮体部子宮内膜癌、UCS:子宮の癌肉腫、UVM:ブドウ膜黒色腫(Uveal Melanom)を含む、32種の異なるがんタイプからなる9,721個のヒト腫瘍におけるPADIファミリーメンバーの差次的発現を私たちはさらに調べた。プロテオミクスデータと一致して、他のPADIファミリーメンバーと比較して、PADI2は、がんタイプの中で最も高いmRNA発現レベル(RNA Seq V2 RSEM)を呈した(データは示していない)。私たちは、Curtisコホート(参考文献36)からの1,725個の乳房腫瘍および144個の正常乳房組織において、乳がんサブタイプにおけるPADI2の差次的発現を決定した。乳房腫瘍は、正常乳房組織と比較して統計的に有意に高いPADI2のmRNA発現を呈し、ルミナールA/B、HR-/HER2富化からTNBC腫瘍への増加傾向を伴った(ダンの多重比較検定、両側 p<0.001、図1)。TCGAからのPADI2 mRNA発現とHM450メチル化β値との間のスピアマンの相関解析は、上記に説明される32種のがんタイプの中のほとんどのがんタイプについて統計的に有意な逆相関をさらに示し、PADI2遺伝子発現は、部分的には、DNAメチル化を通して調節されることを示唆した(データは示していない)。
実施例3.プロテオミクスは、乳がんにおけるPADI2媒介性シトルリノームを明らかにした
次に、私たちは、タンパク質シトルリン化の程度が乳がんサブタイプにおいてPADI2の差次的発現を反映しているかどうかを調べた。FDR=0.01の厳格な基準を伴う質量分析による、28種の乳がん細胞株[8種のルミナールA/B、5種のホルモン受容体(HR)-/HER2富化、および15種のTNBC]の全細胞溶解物中のタンパク質シトルリノームの包括的解析は、細胞株中の全数またはシトルリン化スペクトルがPADI2発現レベルと正の相関を有すること(図2、上部パネル、ピアソン相関=0.302)、およびTNBCはルミナールA/Bと比較して優位に高い数のシトルリン化タンパク質を有すること(図2、下部パネル、P=0.0118)を明らかにした。ルミナールA/B、HR-/HER2富化、およびTNBC間で識別された代表的なシトルリノーム(ANOVA 両側 p<0.05)を表1に列挙した。全細胞溶解物中において特定されたシトルリン化タンパク質について、それらの細胞局在化は、Ingenuity Pathway Analysis(ingenuity.com)に基づいて、核(22.8%)、細胞質(59.6%)、細胞膜(10.5%)および細胞外間隙(7.0%)として分類された(参考文献37)(表1)。また、私たちは、自己免疫疾患において生ずることが公知であるシトルリン化ビメンチン(表1)およびシトルリン化a-エノラーゼ(表2)を特定した(参考文献38~40)。
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実施例4.組織マイクロアレイ解析におけるPADI2とシトルリノームとの正の相関
乳房腫瘍組織におけるPADI2発現の、タンパク質シトルリン化との関連を確認するために、私たちは、422個の乳房腫瘍において免疫組織化学(IHC)の手段によってPADI2タンパク質発現およびシトルリノームを評価した(表3)。422個の乳房腫瘍のコホートにおけるPADI2タンパク質発現は、グレードIおよびII腫瘍に対してグレードIII(カイ二乗検定、両側 P<0.0001)、エストロゲン受容体ER+(ルミナールA/B)に対して(ER)-(HR-/HER2富化およびTNBC)(カイ二乗検定、両側 P<0.0001)、および非TNBCに対してTNBC(カイ二乗検定、両側 P<0.0001)において統計的に有意に高かった(表3)。PADI2発現は、統計的に有意な様式において年齢またはステージと関連しなかった(表3)。ペプチジルシトルリンの染色(低+低-中対中-高+高)は、PADI2タンパク質発現と有意に正に相関した(OR:4.45、95%CI:2.48~7.78;カイ二乗検定、両側 P<0.0001)(表3、データは示さず)。PADI2およびペプチジルシトルリンについての染色は、乳腺、結腸、腎臓、肝臓、肺、胃、直腸および食道ならびに腫瘍の隣接正常組織において陰性であった(図7)。
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実施例5.PADI2は腫瘍免疫表現型と関連する
私たちは、TNBC HCC1187細胞株においてPADI2をsiRNAによりノックダウンし、イムノブロットによりおよび質量分析によりタンパク質シトルリン化の包括的評価を行うことによって、PADI2が、タンパク質アルギニン脱アミノ化への主な一因であるかどうかを決定した。PADI2のノックダウンは、PADI2 mRNAおよびタンパク質を低減した(図3A)。イムノブロットは、タンパク質シトルリン化の包括的な低減を実証した(図3B)。質量分析ベースの解析は、シトルリン化消化ペプチドが対照と比較して統計的に有意に低減された(対応のある両側t検定、p<0.0001)ことを同様に実証した(図3C)。次に、私たちは、MHC抗原提示を評価するための手段として(参考文献26)、HR-/HER2富化(HCC1954)およびTNBC(MDA-MB-468)細胞株の細胞表面HLA結合ペプチドーム(peptidome)を評価した。特に、私たちは、クラスI(参考文献26)およびクラスII(参考文献41)を回復し得る弱酸性溶離法により、推定上のMHCクラスII結合ペプチド長(12~34アミノ酸)、またはMHCクラスI結合ペプチド長(6~11アミノ酸)のシトルリン化ペプチドの存在についてスクリーニングした。私たちは、HCC1954において23個の(MHCクラスII)および1個の(MHCクラスI)シトルリン化ペプチド、ならびにMDA-MB-468において126個の(MHCクラスII)および0個の(MHCクラスI)を特定し(図3D、表2)、MHCクラスI結合ペプチド長と比較して、MHCクラスII結合ペプチド長内のシトルリン化ペプチドの優勢を示した(フィッシャーの直接検定、両側 HCC1954についてp=0.022およびMDA-MB-468についてp<0.0001)(図3D)。特定されたシトルリン化ペプチドを、非修飾型とみなして、親和性予測ソフトウェアNetMHC-II pan V.4.1(参考文献27および28)によりさらに検索し、実際のシトルリン化型の免疫原性は、予測された結果と比較しておそらく高かった(表2)。
次に、私たちは、PADI2発現の上昇が別個の腫瘍免疫表現型と関連するかどうかを評価した。974個の乳房腫瘍についてのTCGA由来mRNA発現データセットを使用して、私たちは、最初に、腫瘍PADI2 mRNA発現と、チェックポイント遮断関連遺伝子の遺伝子発現プロファイル、および免疫細胞浸潤物を反映する遺伝子発現シグネチャーとの間でスピアマンの相関解析を行った(参考文献34)。PADI2 mRNAと、事実上すべてのチェックポイント遮断関連遺伝子、および免疫細胞浸潤物を反映する遺伝子発現シグネチャーとの間で、統計的に有意な正の相関が観察された(図3E、表4)。PADI2 mRNA発現は、B細胞浸潤物についての遺伝子シグネチャーと最も正に相関した[p<0.0001、図3E、スピアマンの係数r=0.49(0.44~0.53)、表4]。TNBCは、ゲノム不安定性およびより高い突然変異率のために、非TNBCよりも免疫原性であると考えられる(参考文献42)。私たちは以前に、TNBCが、非TNBC腫瘍と比較して、より多い免疫細胞浸潤物を呈することを報告した(参考文献33)。TNBCにおけるPADI2のより高い発現は、非TNBC(ルミナールA/BおよびHR-/HER2富化の合計)と比較して、より高いB細胞応答(p<0.0001)と関連した(図3F;図5および表5)。注目すべきことに、突然変異負荷(本明細書で1症例当たりの突然変異事象の数と定義される)とPADI2のmRNA発現との間の関連[スピアマンの係数r=0.10(95%CI:-0.05~0.26);p=0.17]またはB細胞遺伝子ベースのシグネチャーとの間の関連[スピアマンの係数r=-0.10(95%CI:-0.25~0.06);p=0.20]は、基底型TNBC腫瘍において有意でなかった(図5および表5)。これらの発見は、PADI2とB細胞遺伝子シグネチャーとの間の関連は、突然変異負荷とは独立していることを示す。
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実施例6.シトルリノームは乳がんにおいてB細胞腫瘍免疫浸潤および自己抗体上昇に寄与する
PADI2タンパク質発現と、腫瘍タンパク質シトルリン化の増大との、およびB細胞の腫瘍浸潤の増加との関連をさらに確認するために、私たちは、PADI2、抗ペプチジルシトルリン、汎サイトケラチン(PanCK)ならびにB細胞マーカーであるCD19およびCD20について、乳がん組織切片スライドにおいてIHCを行った(図4A)。私たちの発見から、PADI2の上昇およびタンパク質シトルリン化の増加は、浸潤性B細胞と関連することが確認された(図4A)。それゆえ、私たちは、PADI2媒介性シトルリン化により促進される腫瘍B細胞応答が、循環血漿自己抗体の上昇において現れ得るかどうかを決定することを目的とした。私たちは、乳がんを有する156人の患者からの26個の血漿プール(10個のER+、8個のHR-/HER2富化、8個のTNBCプール)、および113人のがんを有しない対象からの11個の健康な対照プールについて、質量分析によりIgG結合タンパク質を評価した(表6)。IgG結合シトルリン化タンパク質の数は、対照と比較して、乳がん症例の血漿において統計的に有意に高かった[ウィルコクソン順位和検定 両側、p=0.0012、図4B、上部パネル;曲線下面積(AUC)=0.80、図4B、下部パネル]。乳がんを有する患者において上昇したIgG結合シトルリン化タンパク質を、IPAネットワーク解析によってさらに特徴付けた。ルミナールAにおいて、上位1位および上位2位のネットワークは、サイトケラチン複合体およびエストロゲン-プロゲステロン中心ネットワークであり、一方で、TNBCにおいては、サイトケラチン複合体、およびENO1を含むMYCを中心とするネットワークが観察された(表7、およびKatayama et al. 2021の図S5を参照されたい)。HR-/Her2富化サブタイプは、サイトケラチン複合体およびFN1中心ネットワークを呈した(表7、およびKatayama et al. 2021の図S5を参照されたい)。
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自己抗体反応性が、シトルリンを含有するエピトープに対して方向付けられている程度を決定するために、私たちは最初に、新たに診断されたステージII TNBCを有する患者からの血漿プール(n=11対象/プール)(表8)および健康な対照からの血漿プール(n=8対象/プール)を使用して、ウェスタンブロット手法を使用し、シトルリン化および非シトルリン化ビメンチンに対する差次的自己抗体反応性を評価した。ビメンチンに対する自己抗体反応性は、自己免疫疾患およびがんにおいて以前に報告されている(参考文献43~46)ので、私たちは、私たちの目的の抗原としてビメンチンに焦点を当てることを選択した。健康な対照プールと比較して、TNBCステージII患者血漿プールにおいて、シトルリン化ビメンチンに対する高い自己抗体反応性が観察された(図8)。私たちは、血漿一次自己抗体を使用するイムノブロットは、健康な対照とがんを有する患者との間で共通する自己抗体の反応性のためにかなりのバックグラウンドをもたらし得ることに留意する。それゆえ、私たちはさらに、新たに診断されたステージII TNBCを有する患者(n=11)(表8)および健康な対照(n=31)からの個々の血漿を使用して、シトルリン化および非シトルリン化ビメンチンに対する自己抗体反応性を試験するためにLuminex自己抗体ELISAアッセイを開発した。シトルリン化ビメンチンに対する自己抗体反応性は、対照と比較して症例において統計的に有意に上昇し[ウィルコクソン順位和検定、両側 p=0.01 0.75のAUC(95%CI:0.58~0.92);図4Cおよび4D];症例の中では非シトルリン化ビメンチンと比較して統計的に有意に上昇した(対応のある両側t検定<0.001)(図4E)。
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実施例7.シトルリン化ペプチドはがんワクチン開発に有用であり得る
私たちは、健康な対照と比較してTNBC症例における、細胞サーフェスオーム(surfaceome)、乳がん細胞株のイムノペプチドーム(immunopeptidome)、および循環血漿IgG結合シトルリン化ペプチドにおいて、質量分析により特定したENO1のシトルリン化ペプチド断片の発生を実験的に確認した(参考文献52、53)。イムノペプチドームにおけるすべての特定されたペプチドは、12個を超えるアミノ酸の長さであることが見出され、したがって、シトルリン化ペプチドは排他的にクラスIIペプチドであり、ペプチドワクチン接種に好適であった(参考文献54、55)。
一部の場合、タンパク質およびペプチドを質量分析による検出に適切な長さにするためにプロテアーゼ消化が使用されたので、上記に説明される実験的に特定されたペプチドは、ワクチン接種に最良のアミノ酸長ではない場合がある。ワクチン接種研究の多くにおいて使用される22~24個のアミノ酸長の最良の長さの、ELISpotアッセイのためのペプチドを合成するために、私たちはさらに、十分に確立された予測ツールであるNetMHC-II pan V.2.3.ソフトウェアを使用して、ペプチドとMHC-II分子との間のインシリコ結合親和性予測を行った(参考文献56、57)。簡潔に説明すると、特定されたシトルリン化ペプチド配列を、非修飾型と考え、予測ツールにロードし、その後、結合ペプチドコア親和性予測を分類し(IC50、nM)、MHC-IIポケットを人工知能ネットワークSSNAligmentにより評価し、パーセンタイル順位を、ペプチドのスコアをSwiss-Protデータベースから選択される100万個のランダム15マーのスコアに対して比較することによって生成した。
ELISpotアッセイを使用して、私たちは、高いMHC-II結合親和性を有すると予測される、非修飾型およびシトルリン化型の3対の合成したENO1ペプチドを試験し、B細胞媒介性IgGおよびT細胞媒介性IFNγ分泌を評価した(表9)。3種のシトルリン化ペプチドのうちの2つ(ペプチド1および2)は、強いIgG応答を誘発し;非修飾ペプチドのいずれも媒体と比較して感知できる差を示さなかった(図9)。IFNg分泌における中程度の増加が、シトルリン化ペプチド1において観察された(図10)。
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実施例8.追加のがん細胞特異的シトルリン化タンパク質免疫療法標的の特定
がん細胞の表面上に過剰発現されるタンパク質を標的化するがん免疫療法手法は、非常に大きな臨床的有効性を示している。しかしながら、これらのタンパク質の発現は一般的に、がん細胞(例えば腫瘍)に限定されず、正常組織においても低レベル~中レベルにて発生し得る。これらの場合、免疫療法手法におけるこれらのタンパク質の標的化は多くの場合、負の副作用を引き起こす。上記に説明される通り、PADIファミリー酵素は、様々ながんタイプにおいて高度に過剰発現され、正常組織においては発現されず、このことは、がん細胞の表面上に発現されるシトルリン化タンパク質は免疫療法標的として望ましいものであり得ることを意味する。
表10は、TACSTD2(TROP2)、EGFR、ERBB2および様々な他の標的を含む、がん免疫療法において一般的に標的化される代表的なタンパク質上のシトルリン化部位を示す。がん細胞表面タンパク質をビオチン標識化し、ストレプトアビジンを使用して精製し、トリプシンにより消化し、質量分析により分析した。質量スペクトルを、Uniprotヒトゲノムデータベースについて、アルギニンシトルリン化を可変性の修飾として考慮して検索した。様々ながんタイプにおけるそれらのタンパク質から多数のシトルリン化部位が特定され、それらのタンパク質上のシトルリン化修飾は、他でこれまでに報告されていない。がん細胞(例えば腫瘍)の表面上に発現されるタンパク質のシトルリン化型を標的化することは、がん細胞標的化の特異性(すなわち、副作用を引き起こし得る正常細胞の標的化と比較して)をさらに増加させる独特な手法である。
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以下の米国特許および公開された特許出願:米国特許第6,872,385号;同第7,547,759号;同第9,562,070号;同第9,629,877号;同第10,239,916号;同第11,155,599号;米国特許出願公開第2019/0093085号、米国特許第10,088,479号および同第10,695,438号は、参照によりこれにより本明細書に組み込む。
本明細書において開示され請求される方法のすべては、本開示に照らして過度な実験を伴うことなく、行い、実行することができる。本開示の組成物および方法は、好ましい実施形態に関して説明されているが、本開示の概念、趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書において説明される方法、および方法の工程または一連の工程に変形を適用してもよいことが当業者に明らかである。より特に、化学的および生理学的に関連するある特定の剤は、本明細書において説明される剤について置き換えてもよく、一方で、同じまたは同様の結果が達成され得ることが明らかである。当業者に明らかなすべてのそのような同様の置き換えおよび改変は、附属の特許請求の範囲によって定義される本開示の趣旨、範囲および概念に含まれると考えられる。
開示される実施形態に使用され得る、それと共に使用され得る、またはその調製において使用され得る材料、組成物および方法が、本明細書において開示される。これらおよび他の材料は、本明細書において開示され、これらの材料の組合せ、サブセット、相互作用、群などが開示される場合、これらの組成物の各様々な個々のおよび集合的な組合せおよび順列の特定の言及は、明確に開示されない場合があるが、各々は本明細書において特に企図および説明されることが理解される。例えば、方法が開示および説明される場合、その方法に含まれるいくつかの分子になされ得るいくつかの改変が説明され、方法の各々およびすべての組合せおよび順列、ならびに可能な改変は、特にこれに反することが示されない限り、特に企図される。同様に、また、これらの任意のサブセットまたは組合せは、特に企図され、開示される。この概念は、非限定的に、開示される組成物を使用する方法における工程を含む、本開示のすべての態様に適用される。したがって、行われ得る様々な追加の工程が存在する場合、これらの追加の工程の各々は、開示される方法の任意の特定の方法工程、または方法工程の組合せと共に行うことができること、および各そのような組合せまたは組合せのサブセットは、特に企図され、開示されていると考えるべきであることが理解される。
本明細書において引用される出版物およびそれらが引用される材料は、それらの全体を参照によりこれにより特に本明細書に組み込む。以下の説明は、開示される組成物および方法のさらなる非限定的な例を提供する。

Claims (52)

  1. がんに罹患しているか、またはがんに罹患していると疑われる患者からの血漿試料を準備すること;
    血漿試料を、表1に列挙される遺伝子によってコードされるタンパク質、表2に列挙される遺伝子によってコードされるタンパク質、および表10に列挙される遺伝子によってコードされるタンパク質からなる群から選択される少なくとも1つのシトルリン化タンパク質と、血漿試料中に存在し得るシトルリン化タンパク質に対するいずれかの自己抗体がシトルリン化タンパク質に結合するのに十分な条件下で、インキュベートすること;
    シトルリン化タンパク質およびそれ/それらに対するいずれかの結合した自己抗体を、検出可能な標識と、検出可能な標識が結合した自己抗体に結合し、他の分子に実質的に結合しない条件下で、インキュベートすること;
    結合した自己抗体に結合した検出可能な標識を検出すること;
    結合した自己抗体に結合した検出可能な標識の検出された量が閾値と等しいか、またはそれを超えることに応じて、患者をがんに罹患していると分類すること;および、
    結合した自己抗体に結合した検出可能な標識の検出された量が閾値未満であることに応じて、患者をがんに罹患していないと分類すること、
    を含む方法。
  2. 前記がんが、乳がん、肺がん、皮膚がん、子宮内膜がん、卵巣がんおよび結腸直腸がんからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
  3. シトルリン化タンパク質が、シトルリン化ビメンチンおよびシトルリン化α-エノラーゼからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
  4. 検出可能な標識が自己抗体に対する抗体であり、抗体が蛍光部分を含む、請求項1に記載の方法。
  5. 患者をがんに罹患していると分類することに応じて、外科的切除、化学療法、モノクローナル抗体療法、チェックポイント阻害剤療法、腫瘍溶解性ウイルス療法、温熱療法、放射線療法、シトルリン化タンパク質を含むがんワクチン、シトルリン化タンパク質に対する標的化療法、およびこれらの2つまたはそれ以上からなる群から選択されるがん処置を患者に与えること;および、
    患者をがんに罹患していないと分類することに応じて、患者を少なくとも1つの他の健康状態について試験すること、
    をさらに含む、請求項1に記載の方法。
  6. 基材;
    表1に列挙される遺伝子によってコードされるタンパク質、表2に列挙される遺伝子によってコードされるタンパク質、および表10に列挙される遺伝子によってコードされるタンパク質からなる群から選択される少なくとも1つのシトルリン化タンパク質;および、
    方法を行うための指示、
    を含むキットであって、指示は、
    がんに罹患しているか、またはがんに罹患していると疑われる患者からの血漿試料を準備すること;
    血漿試料を、シトルリン化タンパク質と、血漿試料中に存在し得るシトルリン化タンパク質に対するいずれかの自己抗体がシトルリン化タンパク質に結合するのに十分な条件下で、インキュベートすること;
    シトルリン化タンパク質およびそれ/それらに対するいずれかの結合した自己抗体を、検出可能な標識と、検出可能な標識が結合した自己抗体に結合し、他の分子に実質的に結合しない条件下で、インキュベートすること;
    結合した自己抗体に結合した標識を検出すること;
    結合した自己抗体に結合した標識の検出された量が閾値と等しいか、またはそれを超えることに応じて、患者をがんに罹患していると分類すること;および
    結合した自己抗体に結合した標識の検出された量が閾値未満であることに応じて、患者をがんに罹患していないと分類すること、
    のための指示を含む、キット。
  7. がんが、乳がん、肺がん、皮膚がん、子宮内膜がん、卵巣がんおよび結腸直腸がんからなる群から選択される、請求項6に記載のキット。
  8. シトルリン化タンパク質が、シトルリン化ビメンチンおよびシトルリン化α-エノラーゼからなる群から選択される、請求項7に記載のキット。
  9. 検出可能な標識が自己抗体に対する抗体であり、抗体が蛍光部分を含む、請求項6に記載のキット。
  10. がんに罹患しているか、またはがんに罹患していると疑われる患者からの組織試料を準備すること;
    表1に列挙される遺伝子によってコードされるタンパク質、表2に列挙される遺伝子によってコードされるタンパク質、および表10に列挙される遺伝子によってコードされるタンパク質からなる群から選択される少なくとも1つのシトルリン化タンパク質について組織試料をアッセイすること;
    組織試料が閾値と等しいか、またはそれを超えるシトルリン化タンパク質の量を含有することに応じて、患者を前記がんに罹患していると分類すること;および、
    組織試料が閾値未満のシトルリン化タンパク質の量を含有することに応じて、患者をがんに罹患していないと分類すること、
    を含む方法。
  11. がんが、乳がん、肺がん、皮膚がん、子宮内膜がん、卵巣がんおよび結腸直腸がんからなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
  12. シトルリン化タンパク質が、シトルリン化ビメンチンおよびシトルリン化α-エノラーゼからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
  13. アッセイすることが、組織試料の細胞を溶解して、組織試料細胞溶解物を産生すること、および組織試料細胞溶解物からタンパク質画分を単離することを含む、請求項10に記載の方法。
  14. アッセイすることが、液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS)を含む、請求項10に記載の方法。
  15. 細胞溶解剤;および、
    方法を行うための指示、
    を含むキットであって、指示は、
    がんに罹患しているか、またはがんに罹患していると疑われる患者からの組織試料を準備すること;
    組織試料を細胞溶解剤に暴露することによって、組織試料の細胞を溶解すること;
    表1に列挙される遺伝子によってコードされるタンパク質、表2に列挙される遺伝子によってコードされるタンパク質、および表10に列挙される遺伝子によってコードされるタンパク質からなる群から選択される少なくとも1つのシトルリン化タンパク質について組織試料をアッセイすること;
    組織試料が閾値と等しいか、またはそれを超えるシトルリン化タンパク質の量を含有することに応じて、患者をがんに罹患していると分類すること;および
    組織試料が閾値未満のシトルリン化タンパク質の量を含有することに応じて、患者をがんに罹患していないと分類すること、
    のための指示を含む、キット。
  16. がんが、乳がん、肺がん、皮膚がん、子宮内膜がん、卵巣がんおよび結腸直腸がんからなる群から選択される、請求項15に記載のキット。
  17. シトルリン化タンパク質が、シトルリン化ビメンチンおよびシトルリン化α-エノラーゼからなる群から選択される、請求項16に記載のキット。
  18. アッセイすることが、液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS)を含む、請求項15に記載のキット。
  19. がんに罹患している患者からの腫瘍試料を準備すること;
    表2、表9および/または表10に列挙される配列および対応する修飾、ならびに表2、表9および/または表10に列挙される配列と少なくとも70%の同一性を有し、少なくとも1つのアルギニン残基を含む配列からなる群から選択される少なくとも1つのシトルリン化アミノ酸配列について腫瘍試料をアッセイすること;および、
    腫瘍試料が閾値と等しいか、またはそれを超えるシトルリン化アミノ酸配列の量を含有することに応じて、少なくとも1つのペプチドを患者の免疫系へ提示すること、ここで、各ペプチドはシトルリン化アミノ酸配列のうちの少なくとも1つを含む、
    を含む方法。
  20. がんが、乳がん、肺がん、皮膚がん、子宮内膜がん、卵巣がんおよび結腸直腸がんからなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
  21. シトルリン化アミノ酸配列が、GVMVSHRSGETEDTF(配列番号43)、LAQANGWGVMVSHRSGETEDTF(配列番号44)およびAVEKGVPLYRHIADLAGNS(配列番号45)からなる群から選択され、Rがシトルリンである、請求項20に記載の方法。
  22. アッセイすることが、腫瘍試料の細胞を溶解して腫瘍試料細胞溶解物を産生すること、および腫瘍試料細胞溶解物中のシトルリン化アミノ酸配列の量を定量することを含む、請求項19に記載の方法。
  23. 外科的切除、化学療法、モノクローナル抗体療法、チェックポイント阻害剤療法、腫瘍溶解性ウイルス療法、温熱療法、放射線療法、およびこれらの2つまたはそれ以上からなる群から選択される追加のがん治療を患者に与えることをさらに含む、請求項19に記載の方法。
  24. 少なくとも1つのペプチドであって、各ペプチドが、表2、表9および/または表10に列挙される配列および対応する修飾、ならびに表2、表9および/または表10に列挙される配列と少なくとも70%の同一性を有し、少なくとも1つのアルギニン残基を含む配列からなる群から選択される少なくとも1つのシトルリン化アミノ酸配列を含む、ペプチド;および、
    方法を行うための指示、
    を含むキットであって、指示は、
    がんに罹患している患者からの腫瘍試料を準備すること;
    ペプチドの各々に含有されるシトルリン化アミノ酸配列について腫瘍試料をアッセイすること;および、
    腫瘍試料が、閾値と等しいか、またはそれを超える量の、ペプチド中に含有されるシトルリン化アミノ酸配列を含有することに応じて、ペプチドの1つまたはそれ以上を患者の免疫系へ提示すること、
    のための指示を含む、キット。
  25. がんが、乳がん、肺がん、皮膚がん、子宮内膜がん、卵巣がんおよび結腸直腸がんからなる群から選択される、請求項24に記載のキット。
  26. シトルリン化アミノ酸配列が、GVMVSHRSGETEDTF(配列番号43)、LAQANGWGVMVSHRSGETEDTF(配列番号44)およびAVEKGVPLYRHIADLAGNS(配列番号45)からなる群から選択され、Rがシトルリンである、請求項25に記載のキット。
  27. 細胞溶解剤をさらに含み、指示が、腫瘍試料の細胞を溶解して腫瘍試料細胞溶解物を産生すること、および腫瘍試料細胞溶解物中のシトルリン化アミノ酸配列の量を定量することによって、腫瘍試料をアッセイするための指示を含む、請求項24に記載のキット。
  28. 指示が、外科的切除、化学療法、モノクローナル抗体療法、チェックポイント阻害剤療法、腫瘍溶解性ウイルス療法、温熱療法、放射線療法、およびそれらの2つまたはそれ以上からなる群から選択される追加のがん治療を患者に与えるための指示をさらに含む、請求項24に記載のキット。
  29. 追加のがん治療が、化学療法、モノクローナル抗体療法、チェックポイント阻害剤療法および腫瘍溶解性ウイルス療法からなる群から選択され、キットが、化学療法剤、モノクローナル抗体、チェックポイント阻害剤または腫瘍溶解性ウイルスの1つまたはそれ以上をさらに含む、請求項28に記載のキット。
  30. がんに罹患している患者からの腫瘍試料を準備すること;
    細胞膜上に配置されたものとしての、表1に列挙される遺伝子からなる群から選択される遺伝子によってコードされるシトルリン化タンパク質について腫瘍試料をアッセイすること;および、
    腫瘍試料が閾値と等しいか、またはそれを超えるシトルリン化タンパク質の量を含有することに応じて、シトルリン化タンパク質を標的化する抗がん剤を患者へ投与すること、
    を含む方法。
  31. がんが、乳がん、肺がん、皮膚がん、子宮内膜がん、卵巣がんおよび結腸直腸がんからなる群から選択される、請求項30に記載の方法。
  32. アッセイすることが、腫瘍試料の細胞を溶解して腫瘍試料細胞溶解物を産生すること、および腫瘍試料細胞溶解物中のシトルリン化アミノ酸配列の量を定量することを含む、請求項30に記載の方法。
  33. 外科的切除、化学療法、モノクローナル抗体療法、チェックポイント阻害剤療法、腫瘍溶解性ウイルス療法、温熱療法、放射線療法、およびそれらの2つまたはそれ以上からなる群から選択される、シトルリン化タンパク質を標的化しない追加のがん治療を患者に与えることをさらに含む、請求項30に記載の方法。
  34. 細胞膜上に配置されたものとしての、表1に列挙される遺伝子からなる群から選択される遺伝子によってコードされるシトルリン化タンパク質を標的化する抗がん剤;および、
    方法を行うための指示、
    を含むキットであって、指示は、
    がんに罹患している患者からの腫瘍試料を準備すること;
    シトルリン化タンパク質について腫瘍試料をアッセイすること;および、
    腫瘍試料が閾値と等しいか、またはそれを超えるシトルリン化タンパク質の量を含有することに応じて、シトルリン化タンパク質を標的化する抗がん剤を患者へ投与すること、
    のための指示を含む、キット。
  35. がんが、乳がん、肺がん、皮膚がん、子宮内膜がん、卵巣がんおよび結腸直腸がんからなる群から選択される、請求項34に記載のキット。
  36. 細胞溶解剤をさらに含み、指示が、腫瘍試料の細胞を溶解して腫瘍試料細胞溶解物を産生すること、および腫瘍試料細胞溶解物中のシトルリン化アミノ酸配列の量を定量することによって、腫瘍試料をアッセイするための指示を含む、請求項34に記載のキット。
  37. 指示が、外科的切除、化学療法、モノクローナル抗体療法、チェックポイント阻害剤療法、腫瘍溶解性ウイルス療法、温熱療法、放射線療法、およびそれらの2つまたはそれ以上からなる群から選択される追加のがん治療を患者に与えるための指示をさらに含む、請求項34に記載のキット。
  38. 追加のがん治療が、化学療法、モノクローナル抗体療法、チェックポイント阻害剤療法および腫瘍溶解性ウイルス療法からなる群から選択され、キットが、化学療法剤、モノクローナル抗体、チェックポイント阻害剤または腫瘍溶解性ウイルスの1つまたはそれ以上をさらに含む、請求項37に記載のキット。
  39. 表2、表9および表10に列挙されるペプチドからなる群から選択されるペプチドと少なくとも70%の配列同一性を含む単離されたペプチド。
  40. 表2、表9および表10に列挙されるペプチドからなる群から選択されるペプチドの少なくとも6個の連続するアミノ酸を含む、請求項39に記載のペプチド。
  41. 15個のアミノ酸またはそれ以下の長さである、請求項39に記載のペプチド。
  42. 9個のアミノ酸の長さである、請求項39に記載のペプチド。
  43. 15個のアミノ酸の長さである、請求項39に記載のペプチド。
  44. 20~25個のアミノ酸である、請求項39に記載のペプチド。
  45. 22~24個のアミノ酸である、請求項39に記載のペプチド。
  46. 免疫原性である、請求項39~45のいずれか一項に記載のペプチド。
  47. 改変されている、請求項39~45のいずれか一項に記載のペプチド。
  48. 改変が、分子へのコンジュゲーションを含む、請求項47に記載のペプチド。
  49. 分子が、抗体、脂質、アジュバントまたは検出部分を含む、請求項48に記載のペプチド。
  50. 表2、表9および表10に列挙されるペプチドからなる群から選択されるペプチドと少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項39~45のいずれかに記載のペプチド。
  51. 表2、表9および表10に列挙されるペプチドからなる群から選択されるペプチドと比較して1、2または3個の置換を有する、請求項39~45のいずれかに記載のペプチド。
  52. 表2、表9および表10に列挙されるペプチドからなる群から選択されるペプチドと100%の配列同一性を含む、請求項39~45のいずれか一項に記載のペプチド。
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