JP2024509875A - アルツハイマー病又は認知症を治療するための医薬組成物 - Google Patents

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Abstract

本発明は、人体の治療に使用する、ムスカリンM1受容体及びM4受容体のアゴニストである化合物、その塩及びそれらを含む医薬組成物に関する。特に、本発明は、ムスカリンM1/M4受容体に媒介される疾患(神経変性障害(すなわち、アルツハイマー病)及び精神神経疾患(統合失調症)など)の治療に有用である化合物に関する。【選択図】 図1

Description

本発明は、化合物、その塩、それらを含む医薬組成物の、人体の治療における使用に関する。特に、本発明は、ムスカリンM1受容体及びM4受容体のアゴニストであり、したがってムスカリンM1/M4受容体により媒介される疾患(神経変性障害(すなわち、アルツハイマー病)及び精神神経系障害(統合失調症)など)の治療に有用である化合物に関する。
ムスカリンアセチルコリン受容体(mAChR)は、中枢神経系と末梢神経系の両方において神経伝達物質アセチルコリンの作用を媒介する、Gタンパク質共役型受容体スーパーファミリーのメンバーである。5種のmAChRサブタイプ、M1~M5がクローニングされている。M1mAChRは、主に大脳皮質、海馬、線条体及び視床においてシナプス後に発現し;M2mAChRは、主に脳幹及び視床に存在するが、大脳皮質、海馬及び線条体にも存在し、M2mAChRは、コリン作動性シナプス終末に存在する(Langmead et al., 2008 Br J Pharmacol)。しかしながら、M2mAChRはまた、心臓組織上(そこで、心臓の迷走神経支配(vagal innervation)を媒介する)並びに平滑筋及び外分泌腺において末梢に発現する。M3mAChRは、CNSにおいて比較的低レベルで発現するが、平滑筋、及び汗腺や唾液腺などの腺組織において広範に発現する(Langmead et al., 2008 Br J Pharmacol)。
中枢神経系におけるムスカリン受容体、特に、M1mAChRは、より高度な認知処理を媒介することにおいて重要な役割を果たす。アルツハイマー病などの認知機能障害と関連する疾患は、前脳基底部におけるコリン作動性ニューロンの喪失を伴うものである(Whitehouse et al., 1982 Science)。認知機能障害を特徴とする統合失調症においても、統合失調症と診断された患者の死後の組織において背外側前頭前皮質、海馬及び尾状核被殻においてmAChR発現が減少している(Dean et al., 2002 Mol Psychiatry)。さらに、動物モデルにおいて、中枢コリン作動性経路の遮断又は損傷は、重度の認知障害を引き起こす。非選択的mAChRアンタゴニストは、健康なボランティアにおいて認知障害及び精神異常作用を誘発し、精神障害と診断された患者において攻撃的行為及び認知症状を誘発することも示されている。コリン作動薬補充療法(cholinergic replacement therapy)は主に、内因性アセチルコリンの分解を防ぐためのアセチルコリンエステラーゼ阻害薬の使用に基づく。これらの化合物は、臨床において、症候性認知機能低下に対する有効性を示しているが、末梢のM2及びM3mAChRの刺激に起因する用量制限的な副作用(胃腸運動障害、徐脈、悪心及び嘔吐など)を引き起こす(http://www.drugs.com/pro/donepezil.html;http://www.drugs.com/pro/rivastigmine.html)。
更に、認知機能を改善するための、直接的なM1mAChRアゴニストの同定を目標に探索が進められてきた。このような努力の結果、様々なアゴニストが同定され、例として、キサノメリン、AF267B、サブコメリン、ミラメリン及びセビメリンなどの化合物が挙げられる。これらの化合物の多くは、齧歯類及び/又は非ヒト霊長類の両方における認知の前臨床モデルで非常に有効であることが示されている。ミラメリンは、齧歯動物のスコポラミン誘発性作業記憶障害及び空間記憶障害の回復の有効性を示し、サブコメリンは、マーモセットの視覚物体識別タスクにおいて有効性を示し、キサノメリンは、受動的回避パラダイムの認知パフォーマンスにおいてmAChRアンタゴニスト誘発性障害を回復させた。
アルツハイマー病(AD)は、高齢者が罹患する最も一般的な神経変性障害であり(2006年には全世界で2,660万人)、重度の認知機能障害をもたらし、実行機能、学習過程及び記憶過程が最も影響を受ける。本疾患の病因は複雑であるが、主にアミロイド-βペプチド(Aβ)から構成されるアミロイドプラークの凝集、及びタウタンパク質の過剰リン酸化により形成される神経原線維変化(neurofibrillary tangles)という2つの特徴的な脳の続発症を特徴とする。Aβの蓄積は、ADの進行の中心的な特徴であると考えられ、したがって、ADの治療のための多くの推定療法は現在、Aβ産生の阻害を標的としている。Aβは、膜結合型アミロイド前駆体タンパク質(APP)のタンパク質分解切断に由来する。APPは、2つの経路、非アミロイド形成経路及びアミロイド形成経路によりプロセシングされる。γ-セクレターゼによるAPPの切断は、両経路に共通しているが、前者において、APPは、α-セクレターゼにより切断され、可溶性APPαを産生する。切断部位はAβ配列内にあり、これによってAβの形成が妨げられる。しかしながら、アミロイド形成経路において、APPは、β-セクレターゼにより切断され、可溶性APPβとAβも産生する。インビトロ研究では、mAChRアゴニストは、可溶性の非アミロイド形成経路へのAPPのプロセシングを促進できることが示されている。インビボ研究では、mAChRアゴニストであるAF267Bが、アルツハイマー病の様々な構成要素のモデルである3×TgADトランスジェニックマウスおいて、疾患様病態を変化させたことが示されている(Caccamo et al., 2006 Neuron)。最後に、mAChRアゴニストであるセビメリンは、アルツハイマー病の患者におけるAβの脳脊髄液レベルをわずかであるが、有意に低減させたことが示されており、したがって潜在的な疾患修飾効果(disease modifying efficacy)を実証している(Nitsch et al., 2000 Neurol)。
さらに、前臨床研究は、mAChRアゴニストが、様々な前臨床パラダイムにおいて非定型抗精神病薬のようなプロファイルを示すことを示唆している。mAChRアゴニストであるキサノメリンは、多くのドーパミン駆動の行動(ラットにおけるアンフェタミン誘発の運動、マウスにおけるアポモルフィン誘発の登攀、片側6-OH-DA病変ラットにおけるドーパミンアゴニスト駆動の回転、及びサルにおけるアンフェタミン誘発の運動不安など)を回復させる(EPS傾向を伴わない)。キサノメリンはまた、A9ではなく、A10のドーパミン細胞の発火及び条件回避を阻害することを示しており、ラットの前頭前皮質及び側坐核においてc-fos発現を誘発するが、他の線条体領域では誘発しない。これらのデータはすべて、非定型抗精神病薬のようなプロファイルを示唆している(Mirza et al., 1999 CNS Drug Rev)。ムスカリン受容体はまた、依存症の神経生物学にも関係がある。コカイン及び他の依存性物質の強化効果は、中脳辺縁系ドーパミン系により媒介され、ここで、行動学的研究及び神経化学的研究では、コリン作動性ムスカリン受容体サブタイプが、ドーパミン作動性神経伝達の調節において重要な役割を果たすことが示されている。例えば、M(4)(-/-)マウスは、コカインへの曝露の結果として、有意に増強された報酬駆動型行動を示した(Schmidt et al Psychopharmacology (2011) Aug;216(3):367-78)。さらに、キサノメリンは、これらのモデルにおいて、コカインの影響を遮断することが実証された。
ムスカリン受容体は、運動の制御にも関与し、パーキンソン病、ADHD、ハンチントン病、トゥレット症候群、及び根本的な病原因子が駆動する疾患として、ドーパミン作動性機能不全と関連する他の症候群などの運動障害に対する新規な治療薬となる可能性がある。
キサノメリン、サブコメリン、ミラメリン及びセビメリンはすべて、アルツハイマー病及び/又は統合失調症の治療のための臨床開発の様々な段階に進んでいる。キサノメリンの第II相臨床研究では、様々な認知症状領域に対するキサノメリンの有効性が実証され、アルツハイマー病と関連する行動障害(妄想観念、激越及び幻覚を含む)に対する改善も示された(Bodick et al., 1997 Arch Neurol)。この化合物は、慢性統合失調症患者を対象とした小規模な第II相研究においても評価され、プラセボ対照と比較して、陽性症状及び陰性症状を有意に低減させ、エピソード記憶スコアを改善した(Shekhar et al., 2008 Am J Psych)。しかしながら、すべての臨床研究において、キサノメリン及び他の関連するmAChRアゴニストは、コリン作動性副作用(悪心、胃腸痛、下痢、発汗(過剰な発汗)、唾液分泌過多(過剰な唾液分泌)、失神及び徐脈など)に関して許容できない安全性の限界を示した。
ムスカリン受容体は、中枢性疼痛及び末梢性疼痛に関与している。疼痛は、3つの異なるタイプ:急性、炎症性、及び神経因性に分けることができる。急性疼痛は、組織損傷を引き起こす可能性のある刺激から生体を安全に守る重要な保護機能を担うが、手術後の疼痛の管理が必要である。炎症性疼痛は、組織損傷、自己免疫応答、及び病原体侵入などの、多くの原因で起こる可能性があり、神経の炎症及び疼痛を引き起こす神経ペプチド及びプロスタグランジンなどの炎症性メディエーターの作用がトリガーとなる。神経因性疼痛は、無痛の刺激に対する異常な痛みの感覚を伴う。神経因性疼痛は、脊髄損傷、多発性硬化症、糖尿病(糖尿病性神経障害)、ウイルス感染症(例えば、HIV又はヘルペス)などの、多くの異なる疾患/外傷と関連する。疾患又は化学療法の副作用の両方の結果として、がんでもよくみられる。ムスカリン受容体の活性化は、脳内の高次痛覚中枢及び脊髄における受容体の活性化を通して、多くの疼痛状態に対して鎮痛作用を有することが示されている。アセチルコリンエステラーゼ阻害薬によるアセチルコリンの内因性レベルの上昇、アゴニスト又はアロステリック修飾因子によるムスカリン受容体の直接的活性化は、鎮痛活性を有することが示されている。これに対して、アンタゴニスト又はノックアウトマウスの使用によってムスカリン受容体を遮断すると、疼痛感受性が高まる。疼痛におけるM1受容体の役割についての証拠は、D. F. Fiorino及びM. Garcia-Guzman, 2012において検討されている。
つい最近、末梢に発現するmAChRサブタイプと比べて、M1mAChRサブタイプに対して改善された選択性を示す少数の化合物が同定された(Bridges et al., 2008 Bioorg Med Chem Lett; Johnson et al., 2010 Bioorg Med Chem Lett; Budzik et al., 2010 ACS Med Chem Lett)。M3mAChRサブタイプに対する選択性のレベルが増加したにもかかわらず、これらの化合物の中には、このサブタイプ及びM2mAChRサブタイプの両方において顕著なアゴニスト活性を保持するものがある。本明細書において、予想外的に、M2及びM3受容体サブタイプと比べて、M1及び/又はM4mAChRに対して高レベルの選択性を示す一連の化合物を説明する。
国際公開第2015/140559号には、ムスカリン受容体のアゴニストとして、スピロ環式化合物が記載されている。
本発明
本発明は、アルツハイマー病又は認知症の治療に使用するための医薬組成物であって、化合物3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチル又はその医薬上許容される塩を含み、化合物又はその医薬上許容される塩の負荷投与量(load dose)が5~25mgである、前記医薬組成物を提供する。
化合物3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチルは、
Figure 2024509875000002
又はその医薬上許容される塩である。
化合物は、
Figure 2024509875000003
又はその医薬上許容される塩であり得る。
化合物は、
Figure 2024509875000004
又はその医薬上許容される塩であり得る。
化合物は、(1R,3s,5S)-3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチル又はその医薬上許容される塩であり得る。
化合物は、(1R,3r,5S)-3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチル又はその医薬上許容される塩であり得る。
本発明の組成物は、上記ジアステレオマーを任意の割合で含み得る。例えば、組成物は、3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチルのラセミ混合物を含み得る。或いは、(1R,3s,5S)-3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチルは、(1R,3r,5S)-3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチルよりも大量に存在し得る。同様に、(1R,3r,5S)-3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチルは、(1R,3s,5S)-3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチルよりも大量に存在し得る。或いは、組成物は、(1R,3s,5S)-3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチル又はその医薬上許容される塩のみを含み得る。組成物は、(1R,3r,5S)-3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチル又はその医薬上許容される塩のみを含み得る。
化合物は、3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチルの医薬上許容される塩であり得る。化合物は、(1R,3s,5S)-3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチルの医薬上許容される塩であり得る。化合物は、(1R,3r,5S)-3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチルの医薬上許容される塩であり得る。
化合物は、
Figure 2024509875000005
であり得、式中、Xは、医薬上許容される塩を表す。
化合物は、
Figure 2024509875000006
であり得、式中、Xは、医薬上許容される塩を表す。
化合物は、
Figure 2024509875000007
;
であり得、式中、Xは、医薬上許容される塩を表す。
Xは、医薬上許容される塩を表す。Xは、酸付加塩を表してもよい。Xは、塩酸塩を表してもよい。Xは、一塩酸塩を表してもよい。Xは、塩酸塩であり得る。Xは、一塩酸塩であり得る。Xは、HClであり得る。Xは、臭化水素酸塩を表してもよい。Xは、一臭化水素酸塩を表してもよい。Xは、マレイン酸塩を表してもよい。Xは、リン酸二水素塩を表してもよい。Xは、コハク酸塩を表してもよい。Xは、酒石酸塩を表してもよい。Xは、臭化水素酸塩であり得る。Xは、一臭化水素酸塩であり得る。Hは、HBrであり得る。Xは、マレイン酸塩であり得る。Xは、リン酸二水素塩であり得る。Xは、H3PO4であり得る。Xは、コハク酸塩であり得る。Xは、酒石酸塩であり得る。
化合物は、
Figure 2024509875000008
であり得る。
化合物は、
Figure 2024509875000009
であり得る。
化合物は、
Figure 2024509875000010
であり得る。
本発明の使用のための組成物において、化合物3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチル又はその医薬上許容される塩の負荷投与量は5~25mgである。
化合物の負荷投与量は、5~20mgであり得る。化合物の負荷投与量は、5~15mgであり得る。化合物の負荷投与量は、5~10mgであり得る。化合物の負荷投与量は、10~25mgであり得る。化合物の負荷投与量は、10~20mgであり得る。化合物の負荷投与量は、10~15mgであり得る。化合物の負荷投与量は、15~25mgであり得る。化合物の負荷投与量は、15~20mgであり得る。化合物の負荷投与量は、20~25mgであり得る。化合物の負荷投与量は、5mgであり得る。化合物の負荷投与量は、10mgであり得る。化合物の負荷投与量は、15mgであり得る。化合物の負荷投与量は、20mgであり得る。化合物の負荷投与量は、25mgであり得る。
本発明の使用のための組成物において、化合物3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチルは、標準治療のコリンエステラーゼ阻害薬(ChEI)と一緒に投与することができる。特に、標準治療のコリンエステラーゼ阻害薬は、ドネペジル(2-[(1-ベンジルピペリジン-4-イル)メチル]-5,6-ジメトキシ-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-オン):
Figure 2024509875000011
又はその医薬上許容される塩であり得る。
本発明の使用のための組成物において、化合物3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチルは、ドネペジルと一緒に投与することができる。化合物3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチルは、5~25mgの負荷投与量で、ドネペジルと一緒に投与することができる。化合物3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチルは、10mgの負荷投与量で、ドネペジルと一緒に投与することができる。
一緒に投与するのに適しているであろう他のコリンエステラーゼ阻害薬(ChEIs)としては、
リバスチグミン(エチル(メチル)カルバミン酸3-[(1S)-1-(ジメチルアミノ)エチル]フェニル):
Figure 2024509875000012

ガランタミン((4aS)-3α-ガランタミン):
Figure 2024509875000013

タクリン(1,2,3,4-テトラヒドロアクリジン-9-アミン):
Figure 2024509875000014

及びそれらの医薬上許容される塩が挙げられるが、上記に限定されない。
本発明の使用のための組成物について、化合物3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチルは、認知症又はアルツハイマー病の治療に有用である他の治療剤(メマンチンなど):
Figure 2024509875000015

及びその医薬上許容される塩と一緒に投与することもできる。
定義
本願において、別段の指示がない限り、以下の定義が適用される。
本明細書に記載の化合物の使用に関する用語「治療」は、問題の疾患若しくは障害を患っているか、又は患うリスクがあるか、又は潜在的に患うリスクがある対象に化合物を投与する、任意の形態の介入を説明するために使用される。したがって、用語「治療」は、予防的な治療、及び疾患又は障害の測定可能又は検出可能な症状を示している治療の両方を包含する。

本明細書に記載の化合物は、塩の形態、例えば、酸付加塩、ある場合には有機及び無機塩基の塩、例えば、カルボン酸塩、スルホン酸塩及びリン酸塩で存在することができる。このような塩はすべて、本発明の範囲にあり、化合物に言及する場合、本明細書において定義される化合物の塩の形態を含む。
塩は、典型的には酸付加塩である。
本発明において使用するための塩は、従来の化学的方法、例えば、Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use, P. Heinrich Stahl (Editor), Camille G. Wermuth (Editor), ISBN: 3-90639-026-8, Hardcover, 388 pages, August 2002に記載の方法により、塩基性部分又は酸性部分を含む親化合物から合成することができる。一般的に、このような塩は、これらの化合物の遊離酸又は遊離塩基の形態を、適切な塩基又は酸と、水若しくは有機溶媒中で、又は両者の混合物中で反応させることにより調製することができ、一般的に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、又はアセトニトリルなどの非水媒体を使用する。
酸付加塩は、多種多様な酸(有機酸及び無機酸の両方)で形成され得る。本発明の範囲に含まれる酸付加塩の例として、酢酸、2,2-ジクロロ酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸(例えば、L-アスコルビン酸)、L-アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、4-アセトアミド安息香酸、ブタン酸、(+)ショウノウ酸、カンファースルホン酸、(+)-(1S)-カンファー-10-スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、桂皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチシン酸、グルコヘプトン酸、D-グルコン酸、グルクロン酸(例えば、D-グルクロン酸)、グルタミン酸(例えば、L-グルタミン酸)、α-オキソグルタル酸、グリコール酸、馬尿酸、ハロゲン化水素酸(例えば、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸)、イセチオン酸、乳酸(例えば、(+)-L-乳酸、(±)-DL-乳酸)、ラクトビオン酸、マレイン酸、リンゴ酸、(-)-L-リンゴ酸、マロン酸、(±)-DL-マンデル酸、メタンスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ニコチン酸、硝酸、オレイン酸、オロト酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモン酸、リン酸、プロピオン酸、ピルビン酸、L-ピログルタミン酸、サリチル酸、4-アミノ-サリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、タンニン酸、(+)-L-酒石酸、チオシアン酸、p-トルエンスルホン酸、ウンデシレン酸及び吉草酸からなる群より選択される酸、並びにアシル化アミノ酸及びカチオン交換樹脂で形成されるモノ塩又はジ塩が挙げられる。
本明細書に記載の化合物におけるアミン官能基は、例えば、当業者によく知られている方法に従い、アルキル化剤との反応によって、四級アンモニウム塩を形成し得る。このような四級アンモニウム化合物は、本発明の範囲内にある。
本発明の化合物は、塩を形成する酸のpKaに応じて、モノ塩又はジ塩として存在し得る。
本発明の化合物の塩の形態は、典型的には、医薬上許容される塩であり、医薬上許容される塩の例は、Berge et al., 1977, " Pharmaceutically Acceptable Salts," J. Pharm. Sci., Vol. 66, pp. 1-19において議論されている。しかしながら、医薬上許容されない塩もまた、中間体形態として調製することができ、次いで医薬上許容される塩に変換することもできる。このような医薬上許容されない塩の形態は、例えば、本発明の化合物の精製又は分離において有用である場合があり、これも本発明の一部を形成する。
光学異性体
化合物に言及する場合、文脈上他に必要がない限り、個々の光学異性体、又は混合物(例えば、ラセミ混合物)若しくは2つ以上の光学異性体として、そのすべての光学異性体の形態(例えば、鏡像異性体、エピマー、及びジアステレオ異性体)を含む。
光学異性体は、その光学活性(すなわち、+異性体及び-異性体、又はd異性体及びl異性体として)により特徴付けて同定することができるか、又はCahn、Ingold及びPrelogによって開発された「RとS」命名法を使用して、それらの絶対立体化学の観点から特徴付けることができる。Advanced Organic Chemistry by Jerry March, 4th Edition, John Wiley & Sons, New York, 1992, pages 109-114、及びCahn, Ingold & Prelog, Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 1966, 5, 385-415を参照されたい。光学異性体は、キラルクロマトグラフィー(キラル担体によるクロマトグラフィー)を含む多くの技術により分離することができ、このような技術は、当業者によく知られている。キラルクロマトグラフィーの代わりとして、光学異性体は、(+)-酒石酸、(-)-ピログルタミン酸、(‐)-ジ-トルオイル-L-酒石酸、(+)-マンデル酸、(-)-リンゴ酸、及び(‐)-カンファースルホン酸などのキラル酸とジアステレオ異性体の塩を形成し、選択的に結晶化させることによりジアステレオ異性体を分離し、続いて塩を解離させ、遊離塩基の個々の鏡像異性体を得ることによって、分離することができる。
化合物が2つ以上の光学異性体の形態として存在する場合、一対の鏡像異性体のうちの一方の鏡像異性体は、例えば、生物学的活性の面で、他方の鏡像異性体よりも優れていることがある。したがって、ある状況では、一対の鏡像異性体のうちの1つのみ又は複数のジアステレオ異性体のうちの1つのみを治療剤として使用することが望ましい場合がある。
したがって、本発明は、1つ以上のキラル中心を有する化合物を含む組成物であって、前記化合物の少なくとも55%(例えば、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%又は95%)が、単一の光学異性体(例えば、鏡像異性体又はジアステレオ異性体)として存在する、前記組成物を含む。
一般的な一実施形態において、化合物の総量の99%以上(例えば、実質的に全部)は、単一の光学異性体として存在する。
例えば、一実施形態において、化合物は、単一のジアステレオ異性体として存在する。
本発明はまた、ラセミ体又は非ラセミ体であってもよい光学異性体の混合物を提供する。したがって、本発明は、
光学異性体のラセミ混合物の形態の化合物、
光学異性体の非ラセミ混合物の形態の化合物、を含む。
同位体
化合物は、1つ以上の同位体置換を含むことができ、特定の元素に言及する場合、その範囲内にその元素のすべての同位体を含む。例えば、水素に言及する場合、その範囲内に1H、2H(D)、及び3H(T)を含む。同様に、炭素及び酸素に言及する場合、それぞれの範囲内に12C、13C及び14C並びに16O及び18Oを含む。
同じように、特定の官能基に言及する場合、文脈上他に示していない限り、その範囲内に同位体のバリエーションも含む。例えば、エチル基などのアルキル基に言及する場合、その基における1つ以上の水素原子が、重水素又は三重水素(トリチウム)同位体の形態のバリエーション、例えば、5つの水素原子がすべて、重水素同位体形態であるエチル基(ペル重水素エチル基)も包含する。
同位体は、放射性又は非放射性であってもよい。化合物は、放射性同位体を含まないこともある。このような化合物は、治療用途に好ましい。しかしながら、化合物は、1種以上の放射性同位体を含み得る。
溶媒和物
化合物は、溶媒和物を形成することができる。好ましい溶媒和物は、無毒性の医薬上許容される溶媒(以下、溶媒和性溶媒(solvating solvent)と称する)の分子を、化合物の固体構造(例えば、結晶構造)に取り込ませることによって形成される溶媒和物である。このような溶媒の例として、水、アルコール(エタノール、イソプロパノール及びブタノール等)、及びジメチルスルホキシドが挙げられる。溶媒和物は、溶媒又は溶媒和性溶媒を含む溶媒の混合物で、本発明の化合物を再結晶することにより調製することができる。いかなる場合においても、溶媒和物を形成したか否かについては、熱重量分析(TGE)、示差走査熱量測定(DSC)及びX線結晶解析などの周知かつ標準的な技術を用いて、化合物の結晶を分析することによって決定することができる。溶媒和物は、化学量論的な又は非化学量論的な溶媒和物であってもよい。特に好ましい溶媒和物は、水和物であり、水和物の例として、半水和物、一水和物及び二水和物が挙げられる。
したがって、本発明は、
溶媒和物の形態の化合物、
溶媒和物が水和物である化合物、を含む。
溶媒和物とその作製及び特性評価に使用する方法のより詳細な議論については、SSCI, Inc of West Lafayette, IN, USA, 1999により出版された、Bryn et al., Solid-State Chemistry of Drugs, Second Edition(ISBN 0-967-06710-3)を参照されたい。
或いは、本発明の化合物は、水和物として存在することよりもむしろ、無水であってもよい。したがって、本発明は、無水形態(例えば、無水結晶形態)の本発明の化合物を提供する。
結晶形態及び非晶質形態
化合物は、結晶又は非結晶(例えば、非晶質)状態で存在してもよい。化合物が結晶状態で存在するか否かについては、X線粉末回折(XRPD)などの標準的な技術により容易に決定することができる。結晶及びその結晶構造は、多くの技術を用いて特性評価することができ、前記技術として、単結晶X線結晶解析、X線粉末回折(XRPD)、示差走査熱量測定(DSC)及び赤外分光法(例えば、フーリエ変換赤外分光法(FTIR))が挙げられる。変動する湿度条件下での結晶の挙動は、蒸気吸着重量の研究(gravimetric vapour sorption studies)によって、XRPDによっても分析することができる。化合物の結晶構造は、従来の方法に従い実施できるX線結晶解析によって決定することができ、従来の方法は、例えば、本明細書、及びFundamentals of Crystallography, C. Giacovazzo, H. L. Monaco, D. Viterbo, F. Scordari, G. Gilli, G. Zanotti and M. Catti, (International Union of Crystallography/Oxford University Press, 1992 ISBN 0-19-855578-4 (p/b), 0-19-85579-2 (h/b))に記載されている。この技術は、単結晶のX線回折の分析及び解釈を含む。非晶質固体において、結晶形態に通常存在する三次元構造は存在せず、非晶質形態における分子の相対的な位置は、本質的にランダムである。例えば、Hancock et al. J. Pharm. Sci. (1997), 86, 1)を参照されたい。
したがって、本発明は、
結晶形態の化合物、
(a)50%~100%結晶、より具体的には、少なくとも50%結晶、又は少なくとも60%結晶、又は少なくとも70%結晶、又は少なくとも80%結晶、又は少なくとも90%結晶、又は少なくとも95%結晶、又は少なくとも98%結晶、又は少なくとも99%結晶、又は少なくとも99.5%結晶、又は少なくとも99.9%結晶、例えば、100%結晶の化合物、
非晶質形態の化合物、を含む。
錯体及びクラスレート
化合物は、錯体(例えば、シクロデキストリンなどの化合物との包接錯体若しくはクラスレート、又は金属との錯体)も包含する。
したがって、本発明は、錯体又はクラスレートの形態の化合物を含む。
コリンエステラーゼ阻害薬(ChEI)
抗コリンエステラーゼとしても知られているコリンエステラーゼ阻害薬(ChEI)は、神経伝達物質であるアセチルコリン又はブチリルコリンの分解を防ぐ化合物である。これにより、シナプス間隙において、ムスカリン受容体、ニコチン受容体及び他の受容体に結合できるアセチルコリン又はブチリルコリンの量が増加する。ChEIは、アルツハイマー病及び認知症などの障害の治療に使用することができる。ChEIは、アルツハイマー病及び認知症の認知障害及び行動障害の標準治療であるが、多くの場合、特に、疾患が進行するにつれて、症状の軽減が不十分となる。本明細書に記載の本発明において、ChEIは、化合物3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチル又はその医薬上許容される塩を含む医薬組成物と一緒に投与するか、又は該医薬組成物による治療過程と並行して使用することができる。このような薬剤の併用は、ChEI化合物又は3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチルの単独投与と比較して、治療成績の大幅な改善をもたらすことができる。
生物学的活性及び治療用途
本明細書に記載の化合物は、ムスカリンM1及びM4受容体アゴニストとしての活性を有する。ムスカリン活性は、以下の実施例Aに記載のリン酸化-ERK1/2アッセイを用いて決定することができる。
本明細書に記載の化合物の大きな利点は、本明細書に記載の化合物は、M2及びM3受容体サブタイプと比べて、M1及び/又はM4受容体に対して高度な選択性を有することである。本明細書の化合物は、M2及びM3受容体サブタイプのアゴニストでも、アンタゴニストでもない。例えば、本明細書に記載のタイプの化合物は、実施例Aに記載の機能アッセイにおけるM1受容体に対して、典型的には少なくとも6のpEC50値及び80超のEmax値を有する一方で、実施例Aの機能アッセイにおけるM2及びM3サブタイプに対して試験した場合、5未満のpEC50値及び20%未満のEmax値を有する。
本明細書に記載の化合物は、そのムスカリンM1及びM4受容体アゴニスト活性により、アルツハイマー病、レビー小体型認知症、統合失調症、及び他の精神障害、認知障害、並びにムスカリンM1及び/又はM4受容体により媒介される他の疾患の治療に使用することができ、様々なタイプの疼痛の治療にも使用することができる。
したがって、以下をさらに提供する:
認知障害又は精神障害の治療に使用するための医薬組成物であって、化合物3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチル又はその医薬上許容される塩を含む、前記医薬組成物、
認知障害又は精神障害の治療に使用するための医薬組成物であって、化合物3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチル又はその医薬上許容される塩を含み、認知障害又は精神障害が、以下から選択される状態を含むか、以下から選択される状態から生じるか、或いは以下から選択される状態と関連する前記医薬組成物:認知機能障害、軽度認知障害(MCI)(健忘性MCI及び非健忘性MCIなど、アルツハイマー病及び/又は前駆期アルツハイマー病に起因する軽度認知機能障害を含む)、前頭側頭葉型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症、初老期認知症、老年認知症、フリードライヒ運動失調症、ダウン症候群、ハンチントン舞踏病、運動亢進症、躁病、トゥレット症候群、アルツハイマー病(前駆期アルツハイマー病、並びにアメリカ食品医薬品局の「Early Alzheimer's disease: Developing Drugs for Treatment」(fda.gov/downloads/Drugs/GuidanceComplianceRegulatoryInformation/Guidances/UCM596728.pdfを利用可能)により定義されるステージ1、2及び3の早期アルツハイマー病など)、進行性核上性麻痺、認知機能の障害(注意力、見当識、学習障害、記憶(すなわち、記憶障害、健忘症、健忘性障害、一過性全健忘症と加齢による記憶障害)、及び言語機能など);脳卒中の結果としての認知機能障害、ハンチントン病、ピック病、AIDS関連認知症又は他の認知症状態、例えば、多発脳梗塞性認知症、アルコール性認知症、甲状腺機能低下症関連の認知症、及び小脳萎縮と筋萎縮性側索硬化症などの他の退化性障害関連の認知症;せん妄若しくはうつ状態(偽認知症状態)などの認知機能低下を引き起こすおそれがある他の急性又は亜急性状況、外傷、頭部外傷、加齢関連の認知機能低下、脳卒中、神経変性、薬物誘発性状態、神経毒性薬剤、加齢関連の認知機能障害、自閉症関連の認知機能障害、ダウン症候群、精神病に関連した認知障害、及び電気けいれん療法後に関連する認知障害;薬物乱用又は薬物禁断に起因する認知障害(ニコチン、大麻、アンフェタミン、コカインなどの薬物)、注意欠陥多動障害(ADHD)及び運動障害(例えば、パーキンソン病、神経遮断薬誘発性パーキンソニズム、及び遅発性ジスキネジア)、統合失調症、統合失調症様疾患、精神病性うつ病、躁病、急性躁病、偏執性障害、幻覚障害及び妄想性障害、パーソナリティ障害、強迫性障害、統合失調型障害、妄想性障害、悪性腫瘍、又は代謝障害、又は内分泌疾患又はナルコレプシーに起因する精神病、薬物乱用又は薬物禁断に起因する精神病、双極性障害及び統合失調感情障害。
アルツハイマー病又は認知症の治療に使用するための医薬組成物であって、化合物3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチル又はその医薬上許容される塩を含む、前記医薬組成物、
アルツハイマー病の治療に使用するための医薬組成物であって、化合物3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチル又はその医薬上許容される塩を含む、前記医薬組成物、
認知症の治療に使用するための医薬組成物であって、化合物3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチル又はその医薬上許容される塩を含む、前記医薬組成物、
レビー小体型認知症の治療に使用するための医薬組成物であって、化合物3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチル又はその医薬上許容される塩を含む、前記医薬組成物、
統合失調症の治療に使用するための医薬組成物であって、化合物3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチル又はその医薬上許容される塩を含む、前記医薬組成物、
アルツハイマー病又は認知症の治療に使用するための医薬組成物であって、化合物3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチル又はその医薬上許容される塩を含み、化合物又はその医薬上許容される塩の負荷投与量が5~25mgである、前記医薬組成物、
アルツハイマー病の治療に使用するための医薬組成物であって、化合物3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチル又はその医薬上許容される塩を含み、化合物又はその医薬上許容される塩の負荷投与量が5~25mgである、前記医薬組成物、
認知症の治療に使用するための医薬組成物であって、化合物3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチル又はその医薬上許容される塩を含み、化合物又はその医薬上許容される塩の負荷投与量が5~25mgである、前記医薬組成物、
レビー小体型認知症の治療に使用するための医薬組成物であって、化合物3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチル又はその医薬上許容される塩を含み、化合物又はその医薬上許容される塩の負荷投与量が5~25mgである、前記医薬組成物、
統合失調症の治療に使用するための医薬組成物であって、化合物3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチル又はその医薬上許容される塩を含み、化合物又はその医薬上許容される塩の負荷投与量が5~25mgである、前記医薬組成物、
対象(例えば、ヒト(例えば、治療を必要とするヒト)などの哺乳類患者)における認知障害の治療方法であって、5~25mgの3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチル又はその医薬上許容される塩を投与することを含む、前記治療方法、
対象(例えば、ヒト(例えば、治療を必要とするヒト)などの哺乳類患者)における認知障害の治療方法であって、5~25mgの3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチル又はその医薬上許容される塩を投与することを含み、認知障害が、上記に定義される状態を含むか、上記に定義される状態から生じるか、又は上記に定義される状態と関連する、前記治療方法、
対象(例えば、ヒト(例えば、治療を必要とするヒト)などの哺乳類患者)における認知障害の治療方法であって、5~25mgの3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチル又はその医薬上許容される塩を投与することを含み、認知障害が、アルツハイマー病から生じるか、又はアルツハイマー病と関連する、前記治療方法、
対象(例えば、ヒト(例えば、治療を必要とするヒト)などの哺乳類患者)における認知障害の治療方法であって、5~25mgの3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチル又はその医薬上許容される塩を投与することを含み、認知症から生じるか、又は認知症と関連する、前記治療方法、
対象(例えば、ヒト(例えば、治療を必要とするヒト)などの哺乳類患者)における認知障害の治療方法であって、5~25mgの3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチル又はその医薬上許容される塩を投与することを含み、認知障害がレビー小体型認知症である、前記治療方法、
対象(例えば、ヒト(例えば、治療を必要とするヒト)などの哺乳類患者)における認知障害の治療方法であって、5~25mgの3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチル又はその医薬上許容される塩を投与することを含み、認知障害が統合失調症である、前記治療方法、
認知障害の治療のための医薬を製造するための、3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチル又はその医薬上許容される塩の使用、
認知障害の治療のための医薬を製造するための、3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチル又はその医薬上許容される塩の使用であって、認知障害が、上記に定義される状態を含むか、上記に定義される状態から生じるか、又は上記に定義される状態と関連する、前記使用、
認知障害の治療のための医薬を製造するための、3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチル又はその医薬上許容される塩の使用であって、認知障害が、アルツハイマー病を含むか、アルツハイマー病から生じるか、又はアルツハイマー病と関連する、前記使用、
認知障害の治療のための医薬を製造するための、3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチル又はその医薬上許容される塩の使用であって、認知障害が、認知症を含むか、認知症から生じるか、又は認知症と関連する、前記使用、
認知障害の治療のための医薬を製造するための、3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチル又はその医薬上許容される塩の使用であって、認知障害が、レビー小体型認知症を含むか、レビー小体型認知症から生じるか、又はレビー小体型認知症と関連する、前記使用、
認知障害の治療のための医薬を製造するための、3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチル又はその医薬上許容される塩の使用であって、認知障害が、統合失調症を含むか、統合失調症から生じるか、又は統合失調症と関連する、前記使用、
化合物3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチル又はその医薬上許容される塩を含む医薬組成物であって、急性、慢性、神経因性、若しくは炎症性疼痛、関節炎、片頭痛、群発頭痛、三叉神経痛、ヘルペス性神経痛、全身性(general)神経痛、内臓痛、変形性関節症疼痛、ヘルペス後神経痛、糖尿病性ニューロパチー、神経根痛、坐骨神経痛、背部痛、頭痛若しくは頸痛、重症若しくは難治性の疼痛、侵害受容性疼痛、突出痛、術後痛、又はがん性疼痛の治療又は重症度の軽減に使用することができる、前記医薬組成物、
急性、慢性、神経因性、若しくは炎症性疼痛、関節炎、片頭痛、群発頭痛、三叉神経痛、ヘルペス性神経痛、全身性神経痛、内臓痛、変形性関節症疼痛、ヘルペス後神経痛、糖尿病性ニューロパチー、神経根痛、坐骨神経痛、背部痛、頭痛若しくは頸痛、重症若しくは難治性の疼痛、侵害受容性疼痛、突出痛、術後痛、又はがん性疼痛の治療又は重症度の軽減の方法であって、5~25mgの3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチル又はその医薬上許容される塩を投与することを含む、前記方法、
化合物3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチル又はその医薬上許容される塩を含む医薬組成物であって、緑内障の眼内圧の低減などの末端障害の治療、及びシェーグレン症候群などのドライアイと口内乾燥の治療に使用することができる、前記医薬組成物、
緑内障の眼内圧の低減などの末端障害、及びシェーグレン症候群などのドライアイと口内乾燥の治療方法であって、5~25mgの3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチル又はその医薬上許容される塩を投与することを含む、前記治療方法、
急性、慢性、神経因性、若しくは炎症性疼痛、関節炎、片頭痛、群発頭痛、三叉神経痛、ヘルペス性神経痛、全身性神経痛、内臓痛、変形性関節症疼痛、ヘルペス後神経痛、糖尿病性ニューロパチー、神経根痛、坐骨神経痛、背部痛、頭痛若しくは頸痛、重症若しくは難治性の疼痛、侵害受容性疼痛、突出痛、術後痛、又はがん性疼痛の治療又は重症度の軽減、或いは緑内障の眼内圧の低減などの末端障害、及びシェーグレン症候群などのドライアイと口内乾燥の治療のための医薬を製造するための、3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチル又はその医薬上許容される塩の使用、
皮膚病変、例えば、尋常性天疱瘡、疱疹状皮膚炎、類天疱瘡及び他の水疱形成の皮膚状態に起因する皮膚病変を治療するための、3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチル又はその医薬上許容される塩の使用、
機能性ディスペプシア、過敏性腸症候群、胃食道酸逆流(GER)及び食道蠕動低下、胃不全麻痺及び慢性下痢の症状などの胃腸機能の変化及び運動性と関連する状態を治療、予防、改善又は回復するための、3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチル又はその医薬上許容される塩の使用、
ボスマ・ヘンキン・クリスティアンセン症候群(Bosma-Henkin-Christiansen syndrome)などの嗅覚機能障害、化学中毒(例えば、セレン及び銀)、下垂体機能低下症、カルマン症候群、頭蓋骨骨折、腫瘍治療、及び甲状腺機能低下を治療するための、3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチル又はその医薬上許容される塩の使用、
依存症を治療するための、3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチル又はその医薬上許容される塩の使用、
運動障害、例えば、パーキンソン病、ADHD、ハンチントン病、トゥレット症候群、及び疾患を駆動する根本的な病原因子としてのドーパミン作動性機能不全と関連する他の症候群を治療するための、3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチル又はその医薬上許容される塩の使用、
認知症の行動と心理症状(BPSD;激越、言語的攻撃、身体的攻撃、うつ状態、不安、異常な運動行動、高揚した気分、易刺激性、感情鈍麻、脱抑制、衝動性、妄想、幻覚、睡眠変化、及び食欲変化を含む)を治療するための、3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチル又はその医薬上許容される塩の使用、
上述した用途及び方法はすべて、3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチル又はその医薬上許容される塩の負荷投与量が5~25mgである医薬組成物に関する。上述した用途及び方法も、ドネペジルなどの標準治療のコリンエステラーゼ阻害薬(10mgの負荷投与量で投与され得る)と一緒に投与される医薬組成物に関する。
医薬組成物
本明細書に記載の用途及び方法において、化合物3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチル又はその医薬上許容される塩は、医薬組成物(例えば、製剤)として投与される。組成物は、1種以上の医薬上許容される担体又は賦形剤を含み得る。
組成物は、経口投与に適していることがある。組成物は、錠剤組成物であり得る。組成物は、カプセル剤組成物であり得る。
1種以上の医薬上許容される賦形剤は、例えば、担体(例えば、固体、液体又は半固体担体)、アジュバント、希釈剤(例えば、充填剤又は増量剤などの固体希釈剤;並びに溶媒及び共溶媒などの液体希釈剤)、造粒剤、結合剤、流動助剤、コーティング剤、放出制御剤(例えば、放出を遅緩又は遅延させるポリマー又はワックス)、結着剤、崩壊剤、緩衝剤、滑沢剤、防腐剤、抗真菌剤及び抗細菌剤、抗酸化剤、緩衝剤、等張化剤(tonicity-adjusting agent)、増粘剤、香味料、甘味料、色素、可塑剤、矯味剤、安定化剤、又は医薬組成物に従来使用される任意の他の賦形剤から選択することができる。
本明細書において使用される用語「医薬上許容される」は、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題若しくは合併症なしに、対象(例えば、ヒト対象)の組織に接触して使用することに適しており、かつ妥当なベネフィット/リスク比に見合う、化合物、材料、組成物、及び/又は剤形を意味する。各賦形剤も、製剤の他の成分に適合するという意味で「許容される」ものでなければならない。
医薬組成物は、既知の技術に従って製剤化することができ、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, PA, USAを参照されたい。
医薬組成物は、経口、非経口、局所、鼻腔内、気管支内、舌下、点眼(ophthalmic)、眼(optic)、直腸、膣内、又は経皮投与に適した任意の形態であってもよい。
経口投与に適した医薬剤形として、錠剤(コーティングされている又はコーティングされていない)、カプセル剤(硬質又は軟質シェル)、カプレット、丸剤、トローチ剤、シロップ剤、液剤、粉末剤、顆粒剤、エリキシル剤及び懸濁剤、舌下錠、ウエハー又は貼付剤(例えば、頬側パッチ)が挙げられる。
錠剤組成物は、単位投与量の活性化合物を、不活性希釈剤又は担体、例えば、糖若しくは糖アルコール(例えば、ラクトース、スクロース、ソルビトール若しくはマンニトール);及び/又は糖由来ではない希釈剤、例えば、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、又はセルロース又はその誘導体、例えば、微結晶セルロース(MCC)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びコーンスターチなどのデンプンと一緒に含むことができる。錠剤はまた、標準的な成分、例えば、結着剤及び造粒剤(例えば、ポリビニルピロリドン)、崩壊剤(例えば、架橋カルボキシメチルセルロースなどの膨潤性の架橋ポリマー)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸塩)、防腐剤(例えば、パラベン)、抗酸化剤(例えば、BHT)、緩衝剤(例えば、リン酸緩衝液又はクエン酸緩衝液)、及び発泡剤(例えば、クエン酸塩/炭酸水素塩混合物)を含んでもよい。このような賦形剤は、よく知られており、本明細書において詳しく議論する必要はない。
錠剤は、胃液に接触すると薬物を放出するように設計されてもよく(即時放出性錠剤)、長期間にわたって又はGI管の特定領域で、制御された方法で放出するように設計されてもよい(放出制御性錠剤)。
医薬組成物は、典型的には、おおよそ1%(w/w)~おおよそ95%(好ましくは%(w/w))の有効成分と、99%(w/w)~5%(w/w)の医薬上許容される賦形剤(例えば、上記に定義されるもの)又は賦形剤の組み合わせとを含む。好ましくは、組成物は、おおよそ20%(w/w)~おおよそ90%(w/w)の有効成分と、80%(w/w)~10%の医薬上の賦形剤又は賦形剤の組み合わせとを含む。医薬組成物は、おおよそ1%~おおよそ95%、好ましくはおおよそ20%~おおよそ90%の有効成分を含む。本発明の医薬組成物は、アンプル、バイアル、坐剤、プレフィルドシリンジ、糖衣錠、粉末剤、錠剤又はカプセル剤の形態などの単位用量の形態であり得る。
錠剤及びカプセル剤は、例えば、0~20%の崩壊剤、0~5%の滑沢剤、0~5%の流動助剤、及び/又は0~99%(w/w)の充填剤/若しくは増量剤(薬物の用量に依存する)を含み得る。錠剤及びカプセル剤はまた、0~10%(w/w)のポリマー結合剤、0~5%(w/w)の抗酸化剤、0~5%(w/w)の色素を含み得る。徐放性錠剤はさらに、典型的には、0~99%(w/w)の放出制御(例えば、遅延)ポリマー(用量に依存する)を含む。錠剤又はカプセル剤のフィルムコートは、典型的には、0~10%(w/w)のポリマー、0~3%(w/w)の色素、及び/又は0~2%(w/w)の可塑剤を含む。
非経口製剤は、典型的には、0~20%(w/w)のバッファー、0~50%(w/w)の共溶媒、及び/又は0~99%(w/w)の注射用水(WFI)を含む(用量及び凍結乾燥されているかによる)。また、筋肉内デポ製剤は、0~99%(w/w)のオイルを含み得る。
医薬製剤は、単一のパッケージ(通常は、ブリスターパック)に全治療コースが含まれる「患者用パック」で患者に提供することができる。
組成物は、一般的には、単位剤形で提供され、したがって、典型的には、所望のレベルの生物学的活性を提供するのに十分な化合物を含む。例えば、組成物は、5~25mgの3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチル又はその医薬上許容される塩を含み得る。
活性化合物は、それを必要とする患者(例えば、ヒト又は動物患者)に、所望の治療効果を達成するのに十分な量(有効量)で投与される。投与される化合物の正確な量は、標準的な手順に従って、担当医師が決定することができる。
投与計画
本明細書に記載の化合物及び組成物は、患者において望ましい効果を奏するのに適した任意の投与計画を使用して投与され得る。例えば、化合物及び組成物は、実施例C又は実施例Dに記載の方法と一致する頻度及び投与量で投与され得る。
化合物及び組成物は、1日1回以上投与され得る。化合物及び組成物は、1日1回投与され得る。化合物及び組成物は、5~25mgの用量で、1日1回投与され得る。化合物及び組成物は、5mgの用量で、1日1回投与され得る。化合物及び組成物は、15mgの用量で、1日1回投与され得る。化合物及び組成物は、25mgの用量で、1日1回投与され得る。化合物及び組成物は、標準治療のコリンエステラーゼ阻害薬、例えば、ドネペジルによる治療過程と同時に投与され得る。化合物及び組成物の投与は、標準治療のコリンエステラーゼ阻害薬、例えば、ドネペジルによる治療過程の前、期間中又はその後に開始し得る。標準治療のコリンエステラーゼ阻害薬、例えば、ドネペジルの投与は、本発明の化合物及び組成物による治療過程の前、期間中又はその後に開始し得る。
治療過程全体にわたって、化合物及び組成物は、最初の1日量で、次に第二の1日量で投与することができ、その後治療は、第三の1日標準量で続けることができる。最初及び第二の1日量の期間は、任意の日数継続することができ、第三の1日標準量は、無期限、又は希望する限り続けることができる。
一般的な手順
市販の試薬を更なる精製なしで利用した。室温(rt)は、おおよそ20~27℃を指す。1H NMRスペクトルは、300又は400MHzでブルカー製又はバリアン製装置のいずれかで記録した。化学シフト値は、百万分率(ppm)(すなわち、(δ)値)で表した。以下の略語を、NMRシグナルの多重度に使用する:s=一重線、br=ブロード、d=二重線、t=三重線、q=四重線、quint=五重線、td=二重線の三重線、tt=三重線の三重線、qd=二重線の四重線、ddd=二重線の二重線の二重線、ddt=三重線の二重線の二重線、m=多重線。結合定数は、Hzで測定したJ値として記録した。NMR及び質量分析の結果は、バックグラウンドピークを考慮して補正した。クロマトグラフィーは、60~120メッシュのシリカゲルを用いて、窒素圧(フラッシュクロマトグラフィー)条件下で行うカラムクロマトグラフィーを指す。
LCMS試験は、エレクトロスプレーを使用して、以下の条件下で行った。
LCMS方法
装置:ウォーターズ製Alliance 2795、ウォーターズ製2996 PDA検出器、Micromass ZQ;カラム:ウォーターズ製X-Bridge C-18、2.5ミクロン、2.1x20mm、又はフェノメネクス製Gemini-NX C-18、3ミクロン、2.0x30mm;勾配[経時(min)/溶媒C中の溶媒D(%)]:0.00/2、0.10/2、8.40/95、9.40/95、9.50/2、10.00/2;溶媒:溶媒C=2.5LのH2O+2.5mLのアンモニア溶液;溶媒D=2.5LのMeCN+135mLのH2O+2.5mLのアンモニア溶液);注入量:3μL;UV検出230~400nm:カラム温度45℃;流量1.5mL/min。
略語
d=日数
DCM=ジクロロメタン
ES=エレクトロスプレーイオン化
h=時間
HCl=塩酸
HPLC=高速液体クロマトグラフィー
LC=液体クロマトグラフィー
MeOH=メタノール
min=分
MS=質量分析
NMR=核磁気共鳴
rt=室温
sat.=飽和
sol.=溶液
TLC=薄層クロマトグラフィー
接頭辞n-、s-、i-、t-及びtert-は、それらの通常の意味:ノルマル、第二級、イソ及び第三級を有する。
3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチル(実施例2-2)の調製
Figure 2024509875000016
2,8-ジアザスピロ[4.5]デカン-3-オン・HCl(中間体1、CAS:945892-88-6)及び3-オキソ-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチル(中間体17、CAS:32499-64-2)は市販品を入手した。2,8-ジアザスピロ[4.5]デカン-3-オン・HCl(中間体1)(0.40g、1.78mmol)をMeOH(3mL)に溶解させ、最小限の水中のK2CO3(0.49g、3.55mmol)で処理して脱塩した。混合物を減圧下で濃縮した。残留物及び3-オキソ-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチル(中間体17)(0.35g、1.78mmol)をMeOH(8mL)に溶解させ、塩化亜鉛(0.73g、5.33mmol)を添加した。反応混合物を50℃で、窒素雰囲気下で、2時間撹拌し、次に室温に冷却し、NaCNBH3(0.23g、3.55mmol)を添加した。反応混合物を50℃で、窒素下で16時間撹拌した。反応混合物を室温に冷却し、飽和NaHCO3溶液で処理した。有機溶媒を減圧下で除去し、水層をDCM(2x10mL)で抽出し、有機層を合わせて塩水(10mL)で洗浄して、バイオタージ製フェーズセパレーターカートリッジを通過させることにより乾燥させた。溶媒を減圧下で除去し、残留物をカラムクロマトグラフィー(順相、[インターチム製カートリッジPuriflashカラム 15シリカ HP-silica 15μ 40G、1分間当たり30mL、勾配0%~10%の、DCM中のMeOH])により精製して、オフホワイト色の固体として3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチル(実施例2-2の異性体1(16mg、2.5%))、及びオフホワイト色の固体として3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチル(実施例2-2の異性体2(10mg、1.7%))を得た。
実施例2-2の異性体1:3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチル
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) : 1.14 (t, J = 7.0 Hz, 3 H), 1.42 - 1.59 (m, 4 H), 1.67 - 1.92 (m, 9 H), 1.96 (s, 2 H), 2.10 - 2.45 (m, 4 H), 2.97 (s, 2 H), 3.90 - 4.09 (m, 4 H), 7.49 (br. s., 1 H);
LCMS m/z 336 (M+H)+ (ES+),2.26mim、UV非活性.
実施例2-2の異性体2:3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチル
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) : 1.15 (t, J = 7.0 Hz, 3 H), 1.31-1.56 (m, 6 H), 1.56 - 1.72 (m, 4 H), 1.72 - 1.91 (m, 2 H), 1.94 (s, 2 H), 2.20 - 2.44 (m, 4 H), 2.70 - 2.75 (m, 1 H), 2.95 (s, 2 H), 4.01 (q, J = 7.0 Hz, 2 H), 4.08 - 4.17 (m, 2 H), 7.44 (s, 1 H);
LCMS m/z 336 (M+H)+ (ES+),2.14mim、UV非活性.
実施例2-2の個々の単離された異性体を、異性体1及び異性体2と称する。異性体1及び2は、個別に単離され、特徴付けられ、試験された実施例2-2の異なるジアステレオマーを表す。存在する異性体の立体化学的同一性は知られているが、立体化学は、2つの個々の単離された種のどちらにも割り当てられていない。
その故、異性体1及び異性体2のうちの1つは、
Figure 2024509875000017
であり、もう1つは、
Figure 2024509875000018
である。
或いは、以下の合成経路を使用して実施例2-2(HTL0018318)及びその塩酸塩を調製することができる。
Figure 2024509875000019
工程1:
N-(エトキシカルボニル)ノルトロピノン(1.0wt、1eq)をメタノール(9.0vol)に溶解させる。別の容器において、ギ酸アンモニウムを水(1.0vol)に溶解させる。ギ酸アンモニウム溶液を出発物質溶液に添加する。反応混合物を減圧/窒素サイクルによって脱気する。窒素下で、10%のPd/C(0.2wt、水を含む)を反応物(reaction)に充填する。急速なガス発生が、反応の初期段階で観察される。反応全体にわたって、15~25℃に維持する。反応の進行を1H NMR2によりモニターする。予想される反応時間は36~48時間である。N-(エトキシカルボニル)ノルトロピノンの残存率3%未満を目標とする。反応混合物をメタノール/水(9:1、5vol)で希釈し、少なくとも20分間混合する。反応混合物をろ過し(ガラス製マイクロ繊維)、ろ過ケークをメタノール/水(9:1、2×5vol)で洗浄する。メタノールがすべて除去され水溶液が残るまで、合わせた濾液を、ロータリーエバポレーターによって(最高45℃で)濃縮する。ジクロロメタン(10vol)及び1M HCl(10vol)を残渣に充填する。pH3以下を確認し、必要に応じて、追加の1M HClを添加する。15~25℃で少なくとも10分間混合し、相を分離する。有機相をフラスコに戻し、1M HCl(5vol)と少なくとも10分間混合することによって抽出し、続いて相を分離する。2つの酸性の水性抽出物を合わせ、ジクロロメタン(10vol)、続いて4M水酸化ナトリウム(4vol)を充填し、その間、温度を15~25℃に維持する。pHが12以上であることを確認し、必要に応じて、追加の4M水酸化ナトリウムを添加する。混合物を少なくとも10分間攪拌し、相を分離する。水相をフラスコに戻し、ジクロロメタン(10vol)を充填する。相を15~25℃で少なくとも10分間混合し、相を分離する。2つの有機抽出物を合わせて水(5vol)を充填する。相を少なくとも10分間混合し、相を分離する。有機相をフラスコに戻して、飽和塩水(5vol)を充填する。15~25℃で少なくとも10分間混合し、相を分離する。硫酸ナトリウム(1wt)を有機相に充填し、15~25℃で少なくとも10分間混合する。スラリーをろ過し、ジクロロメタン(2vol)でろ過ケークを洗浄する。濾液を合わせ、ロータリーエバポレーターによって(最高40℃で)濃縮し、オフホワイト色の固体として生成物(80~95%th)を得る。
工程2:
工程1(1.0wt)、炭酸ナトリウム(0.65wt、1.22eq)、エタノール(26.5vol)及び水(13.5vol)をフラスコに充填し、加熱して還流する(ca.80℃)。1,5-ジクロロペンタノン(0.82wt、アッセイ用に補正)をエタノール(4vol)に溶解させる。1,5-ジクロロペンタノン溶液を少なくとも2時間かけて、一定の速度で、還流している反応混合物に添加し、続いてエタノール(0.5vol)でラインリンスを行う。反応をTLC分析によりモニターする。出発物質が存在しない場合、反応は完了したと考えられる。反応混合物を45℃以下に冷却し、ロータリーエバポレーターに移し、最高45℃で濃縮する。エタノールがすべて除去され生成物の水溶液が残るまで、濃縮を続ける。ジクロロメタン(10vol)及び生成物溶液をフラスコに充填し、15~25℃で混合する。1M塩酸(10vol)を添加する(発泡/ガス発生の可能性に注意されたい)。その間、温度を15~25℃に維持する。pHが3を超える場合、必要に応じて、追加の1M塩酸を添加する。15~25℃で少なくとも10分間混合し、相を分離する。有機相をフラスコに戻し、1M塩酸(5vol)を充填し、15~25℃で少なくとも10分間混合し、続いて相を分離する。酸性の水性抽出物を合わせ、ジクロロメタン(10vol)を添加し、15~25℃で少なくとも10分間混合し、続いて相を分離する。ジクロロメタン(10vol)によって2回目の洗浄を行い、15~25℃で少なくとも10分間混合し、続いて相を分離する。ジクロロメタン(10vol)を充填し、4M水酸化ナトリウム(4vol)を添加する。その間、温度を25℃以下に維持する。pHが12以上であることを確認し、必要に応じて、追加の4M水酸化ナトリウムを添加する。混合物を少なくとも10分間攪拌し、相を分離する。水相をフラスコに戻し、ジクロロメタン(10vol)を充填し、相を15~25℃で少なくとも10分間混合し、相を分離する。有機抽出物を合わせ、水(5vol)を添加し、15~25℃で少なくとも10分間混合し、相を分離する。飽和塩水(5vol)をフラスコに充填し、有機相を15~25℃で少なくとも10分間洗浄し、相を分離する。硫酸ナトリウム(1wt)をフラスコに充填し、少なくとも10分間混合し、ろ過し、ろ過ケークをジクロロメタン(2vol)で洗浄する。濾液をロータリーエバポレーターによって(最高35℃で)濃縮し、80~100%thの収率で、オレンジ色のオイルとして生成物を得る。
工程3:
水素化ナトリウム(鉱油中60%の分散物)(0.15wt)及びテトラヒドロフラン(10vol)を、窒素下で適切な大きさの容器に充填する。懸濁液を0~5℃に冷却する。ホスホノ酢酸トリエチル(0.85vol)及びテトラヒドロフラン(4vol)を別の容器に充填し、15~25℃で混合して溶液を形成する。ホスホノ酢酸トリエチル/THF溶液を、少なくとも1時間かけて水素化ナトリウム懸濁液に充填する。その間、温度を0~5℃に維持する(水素ガスの発生に注意されたい)。テトラヒドロフラン(1vol)でラインリンスを行う。得られた溶液を0~5℃で少なくとも30分間撹拌する。HTL0018318のピペリドン(1.0wt)及びテトラヒドロフラン(4vol)を別の容器に充填し、15~25℃で混合して溶液を形成する。HTL0018318のピペリドン溶液を、少なくとも1時間かけて反応物に充填する。その間、温度を0~5℃に維持する。テトラヒドロフラン(0.5vol)でラインリンスを行う。反応物を0~5℃で少なくとも1時間混合し続けた後に、15~25℃に温める(この攪拌中、ゲルが形成されるため、よく混合する必要があることに留意されたい)。反応物を15~25℃で少なくとも1時間熟成させ、続いて1H NMRによりIPCを行う。反応物が、HTL0018318ピペリドン残存率の合格基準(1.0モル%以下)を満たしたら、精製水(2vol)を反応物に充填し、得られた溶液をロータリーエバポレーターによって(最高45℃で)濃縮する。酢酸イソプロピル(10vol)を残渣に充填し、温度を15~25℃に調整する。1M HCl(10vol)を添加する。その間、温度を15~25℃に維持する。pHが3を超える場合、必要に応じて、追加の1M塩酸を添加し、続いて少なくとも20分間混合し、その後、相を分離する。有機相を15~25℃で1M HCl(5vol)と少なくとも20分間混合し、続いて相を分離する。酸性の水性抽出物を合わせ、酢酸イソプロピル(10vol)を添加し、相を15~25℃で少なくとも15分間混合し、続いて相を分離する。酸性の水相を酢酸イソプロピル(10vol)と混合し、フラスコの内容物を0~10℃に冷却する。20℃以下で、4M水酸化ナトリウム溶液(4vol)を添加し、続いてpHが12以上であることを確認し、必要に応じて、4M水酸化ナトリウム溶液でpHを12~14にさらに調整する。混合物の温度を15~25℃に調整し、少なくとも20分間熟成させ、続いて相を分離する。水相を容器に戻し、酢酸イソプロピル(10vol)を充填する。pHが12を超えることを確認し、必要に応じて、4M水酸化ナトリウム溶液でpHを12~14に調整する。15~25℃で少なくとも20分間混合し、続いて相を分離する。有機抽出物を合わせ、精製水(5vol)を充填し、15~25℃で少なくとも15分間混合し、続いて相を分離する。飽和塩水溶液(5vol)を充填し、15~25℃で少なくとも15分間混合し、続いて相を分離する。有機相を、硫酸ナトリウム(1wt)と15~25℃で少なくとも15分間混合することによって乾燥させる。スラリーをろ過し、ろ過ケークを酢酸イソプロピル(3vol)で洗浄する。残渣が得られるまで、合わせた濾液を、ロータリーエバポレーターによって(最高45℃で)濃縮する。n-ヘプタン(5vol)を充填し、最高45℃で再濃縮する。1H NMR分析により、残渣を分析して酢酸イソプロピルの含有量を測定する。酢酸イソプロピルの含有量が1.0%w/wを超える場合、必要に応じて、追加のn-ヘプタン共沸を行う。生成物は、75~100%th、94~125%w/wの収率で、固体として得られる。
工程4:
HTL0018318の不飽和エステル(1.0wt)及びDMSO(4.5vol)を適切な大きさの容器に充填する。得られた混合物を35~45℃に加熱する。ニトロメタン(0.46vol)を充填した後、DMSO(0.5vol)でラインリンスする。その間、温度を35~45℃に維持する。炭酸カリウム(0.2wt)を反応混合物に充填し、続いてフラスコの内容物を80~90℃に加熱する。反応混合物を80~90℃で撹拌し続け、少なくとも2時間後に、必要に応じて、その後適切な間隔で(完了したと思われるまで)試料を取り除き、1H NMR分析により分析する(予想反応時間は2~4時間;合格基準:転換率99.0%以上)。反応混合物を15~20℃に冷却する。ジクロロメタン(5vol)、続いて13%w/wの塩化ナトリウム溶液(5vol)を充填する。その間、温度を30℃以下に維持する。得られた二相混合物を15~25℃で少なくとも20分間攪拌し、続いて相を分離する。水相をジクロロメタン(3×10vol)で抽出し、15~25℃で各洗浄を少なくとも20分間混合した後、相分離を行う。有機抽出物を合わせ、15~25℃で精製水(10vol)で少なくとも20分間洗浄し、続いて相を分離する。有機相を飽和塩水溶液(10vol)で少なくとも20分間15~25℃で洗浄し、相を分離する。硫酸ナトリウム(1wt)を有機相に充填し、15~25℃で少なくとも20分間混合し、ろ過し、ろ過ケークをジクロロメタン(3vol)で洗浄する。合わせた濾液をロータリーエバポレーターによって(最高35℃で)濃縮する。
精製
シリカゲル(RM0011、6wt)を適切な大きさの焼結漏斗に充填し、酢酸エチル(10vol)で洗浄する。粗生成物を酢酸エチル(1vol)に溶解させ、シリカ上に担持させる。必要に応じて、酢酸エチル(10vol)画分を使用して生成物をシリカから溶出させる。TLC分析により、生成物の内容物の画分を評価する。画分を含むすべての生成物を合わせ、1H NMRにより分析される酢酸エチルの含有量が10%w/wになるまで、ロータリーエバポレーターによって(最高40℃で)濃縮し、80~100%thの収率で、オイルとして生成物を得る。
工程5:
HTL0018318のニトロエステル(1.0wt)及び無水エタノール(10vol)を適切な容器に充填し、15~25℃で混合して溶液を形成する。エタノール中の2Mアンモニア(2vol)を、得られた溶液に添加する。ラネーニッケル2800スラリーの水懸濁液(0.2wt)を適切な圧力容器に充填する。窒素雰囲気下で、エタノール溶液を圧力容器に添加する。無水エタノール(2vol)でラインリンスを行う。窒素/減圧サイクルを使用して容器の内容物を脱気する。水素によって、容器を1~1.5bargに加圧し、容器を3回排気する。水素圧を3bargに上げ、内容物を45~55℃(50℃を目標とする)に加熱する。安定したら、圧力を5bargに上げる。反応物を45~55℃で少なくとも24時間混合し、続いて1H NMRによるIPC分析用の試料を取る。反応物が、工程4の合格基準0.5%以下及び中間体の合格基準0.5%以下を満たしたら、内容物を圧力容器から取り除き、無水エタノール(2×2vol)ですすぐ。窒素下で反応混合物をろ過し、ろ過ケークを無水エタノール(4vol)で洗浄する。濾液を、減圧下でロータリーエバポレーターによって(最高40℃で)濃縮して残渣を得る。ジクロロメタン(10vol)及び1M HCl(10vol)を残渣に充填し、続いてpがH3以下であることを確認し、必要に応じて、追加の1M塩酸で調整する。温度を15~25℃に調整し、少なくとも10分間混合し、相を分離する。有機相を1M HCl(5vol)と混合し、pHが3以下であることを確認し、必要に応じて、追加の1M塩酸で調整する。次に、温度を15~25℃に調整し、少なくとも10分間混合し、続いて15~25℃で少なくとも10分間分離し、その後、相を分離する。酸性の水性抽出物を合わせ、ジクロロメタン(10vol)を添加し、相を15~25℃で少なくとも10分間混合し、続いて相を分離する。酸性の水相をジクロロメタン(10vol)と混合し、25℃以下で4M水酸化ナトリウム溶液(4vol)を添加する。pHが12以上であることを確認し、必要に応じて、4M水酸化ナトリウム溶液でpHを12~14にさらに調整する。混合物の温度を15~25℃に調整し、少なくとも10分間熟成させ、相を分離する。水相を容器に戻し、ジクロロメタン(5vol)を充填し、15~25℃で少なくとも10分間混合し、続いて相を分離する。有機抽出物を合わせ、精製水(5vol)を充填し、15~25℃で少なくとも10分間混合し、続いて相を分離する。飽和塩水溶液(5vol)を充填し、15~25℃で少なくとも10分間混合し、続いて相を分離する。有機相を、硫酸ナトリウム(1wt)と15~25℃で少なくとも15分間混合することによって乾燥させる。スラリーをろ過し、ろ過ケークをジクロロメタン(2vol)で洗浄する。活性炭(RM0192、0.1wt)を、合わせた濾液に充填する。温度を15~25℃に調整し、少なくとも3時間攪拌する。反応混合物をろ過し、ろ過ケークをジクロロメタン(4vol)で洗浄する。1H NMRによりジクロロメタンの含有量が1.0%w/wになるまで、濾液を、ロータリーエバポレーターによって(最高35℃で)濃縮して残渣を得る。生成物は、70~100%th、57~82%w/wの収率で、固体として得られる。
工程6:
塩化水素ガス(0.2wt)を無水エタノール(RM0067、3vol)にバプリングすることにより、エタノール中の1.8M塩化水素溶液を調製し、ろ過して清澄化する。最高40℃で、HTL0018318の遊離塩基(1.0wt)を無水エタノール(10vol)に溶解させ、得られた溶液を清澄化し、無水エタノール(0.5vol)でフィルターを洗浄する。エタノール中の1.8M塩化水素(2vol)をHTL0018318の遊離塩基溶液に添加し、その間、温度を30℃以下に維持する。得られた懸濁液を少なくとも30分熟成させ、続いて0~5℃に冷却する。0~5℃で懸濁液を2~4時間熟成させ、続いて懸濁液をろ過する。0~5℃で、ろ過ケークを清澄化した無水エタノール(2×1 vol)で洗浄する。ろ過ケークを、窒素下、フィルター上で引いて少なくとも4時間乾燥させる。ろ過ケークを清潔なフラスコに戻し、澄ませた無水エタノール(13vol)を充填する。スラリーを加熱して還流し(75~85℃)、最長30分維持して溶液を得る。溶液が得られなかった場合、溶解状態が得られるまで、清澄化した無水エタノール(最大4vol)を少しずつ充填する。得られた溶液を少なくとも12時間かけて15~25℃に冷却する。15~25℃でスラリーを2~4時間熟成させる。窒素下でスラリーをろ過し、15~25℃において、ろ過ケークを清澄化した無水エタノール(2×1 vol)で洗浄する。1H NMR分析によりエタノールの含有量が0.2%w/w未満になるまで、ろ過ケークを、窒素下で、フィルター上で引いて乾燥させる。ろ過ケークをサンプリングし、化学純度試験に供する。1.4mmメッシュの篩によって生成物をふるいにかける。上記と同じ手順に従い、2回目の結晶化(second crystallization)を必要とする場合がある。生成物は、塩の形成及び1回の結晶化(single crystallization)後、70~90%th及び78~100%w/wの収率で、白色からオフホワイト色の固体として得られる。2回目の結晶化を行う場合、生成物は、60~85%th及び67~94%w/wの収率で、白色からオフホワイト色の固体として得られる。
生物学的活性
実施例A:リン酸化-ERK1/2アッセイ
Alphascreen Surefireリン酸化-ERK1/2アッセイ(Crouch & Osmond, Comb. Chem. High Throughput Screen, 2008)を用いて機能アッセイを行った。ERK1/2リン酸化は、Gq/11及びGi/oタンパク質共役型受容体活性化の下流の結果であり、異なる受容体サブタイプに対して異なるアッセイ形式を使用することよりも、M1、M3受容体(Gq/11共役型)及びM2、M4受容体(Gi/o共役型)の評価にはるかに適している。ヒトムスカリンM1、M2、M3又はM4受容体を安定に発現するCHO細胞を、MEM-α+10%透析済みFBS入りの96ウェル組織培養プレート上に蒔いた(25K/ウェル)。細胞を接着させたら、一晩血清飢餓状態にした。5μLアゴニストを細胞に5分間(37℃)添加することにより、アゴニスト刺激を行った。培地を除き、50μLの溶解バッファーを添加した。15分後、4μLの試料を384ウェルプレートに移し、7μLの検出混合物を添加した。プレートを暗所で穏やかに振盪しながら2時間インキュベートし、PHERAstarプレートリーダー上で読み取った。各受容体サブタイプについて得られたデータから、pEC50及びEmaxの数値を算出し、結果を以下の表1に示す。
Figure 2024509875000020
実施例B
受動的回避
研究を、以前Foley et al., (2004) Neuropsychopharmacologyに記載されたとおりに行った。受動的回避タスクにおいて、訓練の6時間後にスコポラミンを投与すること(1mg/kg、i.p.)により、動物をパラダイム健忘にした。訓練の90分前に強制経口投与により、3、10、及び30mg/kg(po)の遊離塩基を投与し、用量を調べた。
実施例2-2の異性体1は、スコポラミン誘発型のパラダイム健忘症を用量依存的に(おおよそED50は約10mg/kg(po))回復させることが分かった。30mg/kgの効果は、陽性対照として利用したコリンエステラーゼ阻害薬ドネペジル(0.1mg/kg、ip)により生じた効果と同様であった(図1)。
人体内の研究
実施例C及びDの研究において、化合物2-2をHTL0018318と称する。
実施例C
試験デサイン及び対象
本試験は、無作為化、固定順序、二重盲検プラセボ対照試験であり、健康な高齢者において、定常状態で、ドネペジルを併用した場合と併用していない場合の、15mg(被験者12名;実薬8名及びプラセボ4名)並びに25mg(被験者24名;実薬16名及びプラセボ8名)のHTL0018318の反復投与を調べる試験であった。5mgのドネペジルを1日1回、5日間連続投与し、続いて10mgのドネペジル(治療用量レベル)を1日1回、15日間連続投与することにより、非盲検のドネペジル(夜に服用)の量を定常状態の血漿中濃度まで漸増した。その後、ドネペジル治療を1日1回、5日間連続、HTL0018318又はプラセボと組み合わせて投与した(朝に服用)。その後、20日間の休薬期間を設け、その後、HTL0018318又はプラセボを単独で、5日間連続毎日、以前に組み合わせて投与したと同じ用量で投与した(図2)。ドネペジル投与期間中のドネペジルの副作用により、一部の被験者が研究への参加から辞退することが予想されたため、この治療順序により、ドネペジル投与期間をまだ完了していない被験者のHTL0018318への不必要な曝露を防止した。HTL0018318又はプラセボを投与した両期間中、安全性及びPKの測定を毎日行った。研究を3つのコホートで実施し、予期せぬ相互作用が起こった場合に、HTL0018318の投与量を研究内で変更できるようにする。
研究に参加した高齢の被験者の年齢は65~80歳(両端を含む)であった。健康状態が良好で、スクリーニング時の最大安静時血圧が最大で150/90mmHgであり、かつ心拍数が45~100bpmである場合、被験者として適格とした。主な除外基準は、研究の目的を妨げる現在又は過去のすべての病歴、降圧薬及びCYP3A4又はCYP2D6に影響を及ぼす製品の使用、並びに24時間ホルター心電図での臨床的に関連する異常であった。
材料
HTL0018318を100mLの水溶液として経口投与した。水をプラセボとして使用した。HTL0018318及びプラセボの間の味の違いを隠すために、ペパーミントストリップ(リステリン)を経口液剤の投与の1分前と1分後間に投与した。ヒトにおいて、観察された血漿中HTL0018318濃度が最大になるまでの時間(tmax)は1~2時間であり、半減期はおおよそ16時間であり、1日1回の投与が可能であった(Bakker C, Tasker T, Liptrot J, Hart EP, Klaassen E.S, Doll R.J, et al. Alzheimer's Research & Therapy. 2020;(投稿済); Bakker C, Tasker T, Liptrot J, Hart EP, Klaassen ES, Prins S, et al. Br J Clin Pharmacol. 2020;(投稿済))。1日2~3回投与後、定常状態に到達した(Bakker C, Tasker T, Liptrot J, Hart EP, Klaassen E.S, Doll R.J, et al. Alzheimer's Research & Therapy. 2020;(投稿済))。ドネペジル(Aliud Pharma GmbH(ライヒンゲン、ドイツ)製)を5mgの錠剤として投与した。ドネペジルは、3~4時間のTmax及びおおよそ70時間の半減期を有する。
安全性と忍容性の評価
すべての測定のタイミングの詳細な全体像を表7に提供する。AEを、治療ごと(すなわち、15mgのHTL0018318、25mgのHTL0018318又はプラセボ)及び研究段階ごと(すなわち、ドネペジル単独、HTL0018318/プラセボとドネペジルの併用、及びHTL0018318/プラセボ単独)にまとめた。ドネペジルを単独投与した場合に報告されたAEを、この段階の後に行われた治療ごと(例えば、研究期間の後半に15mgのHTL0018318を受ける予定だった被験者が、ドネペジルを単独投与した場合に報告したAE)にまとめた。コリン作動性刺激の増加と関連する可能性のあるAEのサブセットを作った(つまり、多汗症、唾液分泌過多、高血圧、頻脈、徐脈、悪心、下痢、嘔吐、便秘、不眠、めまい、筋痙縮、のぼせ及び冷汗)。
収縮期及び拡張期血圧並びに脈拍数はすべて仰臥位と立位で測定し、安全性検査、心電図(ECG)、並びに24時間ホルター心電図を行った。
唾液分泌は、口腔内に3分間入れた3本のサリベット(登録商標)デンタルロールの質量変化を測定することにより評価した。肺機能は、PCベースのオープンスパイロメトリーシステムであるSpirostik(Accuramed)を使用して測定した。主観的感覚は、Bond & Lader(Bond A, Lader M. British Journal of Medical Psychology. 1974;47(3):211-8.)に従うビジュアルアナログスケール(VAS)及び悪心に対するVAS(0~100mm)を使用して評価した。リーズ睡眠評価アンケート(LSEQ)を使用して、入眠のしやすさ、睡眠の質、目覚めのしやすさ、及び目覚めた後の行動の変化をモニターした(Parrott AC, Hindmarch I. Psychopharmacology (Berl). 1980;71(2):173-9)。
薬物動態評価
血漿中ドネペジル濃度を測定するために、図3に示されているように、ドネペジルの5回目投与後に血液試料を採取した。ドネペジル投与の15時間後の時点は、HTL0018318投与直前の時点に相当する。
血漿中HTL0018318濃度を測定するために、ドネペジルと併用した場合及び併用していない場合のHTL0018318の初回投与及び5回目投与を行った日に頻繁に採血した。その間の日々に、投与前のPK試料のみを採取した。HTL0018318の最終投与後の7~14日の間に、最後のPK血液試料を採取した(表7)。
尿中HTL0018318濃度を推定するために、ドネペジルと併用した場合及び併用していない場合のHTL0018318の初回投与後の24時間内、及び最終投与後の72時間内に、すべての尿を採取した。
分析に含まれるPKパラメーターは、観察された最大血漿中濃度(Cmax)、Tmax、投与後24時間までの血漿中濃度(Cmin)、投与後0時間から24時間までの血漿中濃度-時間曲線下面積(AUC0-24)、投与後0時間から投与間隔終了まで(AUC0-tau)、投与後0時間から無限時間まで(AUC0-inf)、見かけの消失半減期(t1/2)、見かけの経口クリアランス(CL/F)、腎クリアランス(CLr)及び未変化体(unchanged drug)としての腎排泄量のパーセンテージ(Ae%)、並びに変動係数(%CV)であった。
統計分析
薬物間相互作用の研究(Dai D, Yang H, Nabhan S, Liu H, Hickman D, Liu G, et al. European journal of clinical pharmacology. 2019;75(8):1099-108; Sun L, McDonnell D, Yu M, Kumar V, von Moltke L. Clinical drug investigation. 2019;39(5):477-84; Maekawa Y, Furuie H, Kato M, Myobatake Y, Kamiyama E, Watanabe A, et al. Clinical drug investigation. 2019;39(10):967-78)に典型的な症例数を選択したが、この研究の統計的な検定力は足りなかった。HTL0018318若しくはプラセボをドネペジルと併用して投与した期間中又はドネペジルと併用せず投与した期間中に測定したバイタルサイン、唾液測定の安全性と忍容性の評価、肺機能試験、Bond&LaderのVAS、悪心に対するVAS、及びLSEQを探索的分析の対象とした。この目的に向かって、固定因子として、治療、期間、時間、期間ごとの治療、時間ごとの期間、時間ごとの治療、及び時間ごとの期間ごとの治療を用いた混合モデル型分散分析を使用した。被験者、期間ごとの被験者、及び時間ごとの被験者はランダム因子であり、期間ごとのHTL0018318投与前のベースライン測定は共変数であった。これらの分析モデルにおいて、すべての平均値を推定した(最小二乗平均値、LSM)。Windows用のSAS9.4(SAS Institute Inc., Cary, NC, USA)を用いて統計分析を行った。以下の対比を計算した:HTL0018318単独対プラセボ単独、HTL0018318+ドネペジル対プラセボ+ドネペジル、HTL0018318+ドネペジル対HTL0018318単独。15mg及び25mgのHTL0018318の投与量レベルのそれぞれに対して分析した。
ドネペジルの投与前、20回目投与の4時間後及び15時間後(すなわち、HTL0018318又はプラセボの投与前)に採取した試料の血漿中ドネペジル濃度を、ドネペジルの21回目投与及び24回目投与後の4時間後及び15時間後の血漿中ドネペジル濃度と比較することにより、ドネペジルのPKに対するHTL0018318の影響を分析した。ドネペジルの21回目投与及び24回目投与はそれぞれ、HTL0018318の初回投与及び4回目投与後に行われた。
HTL0018318とドネペジルの併用の初回投与後のHTL0018318のCmax、Tmax及びAUC0-24を、ドネペジルと併用せずにHTL0018318を投与した場合の同じパラメーターと比較することにより、HTL0018318のPKに対するドネペジルの影響を評価した。また、HTL0018318とドネペジルの併用の最終回投与後のHTL0018318のCmax、AUC0-tau、Tmax及びCminを、ドネペジルと併用せずにHTL0018318を投与した場合の同じパラメーターと比較した。これらの計算について、HTL0018318の15mg及び25mgのデータを一緒にグループ化した。
ドネペジルと一緒に投与した場合及び一緒に投与していない場合の上述した各パラメーターの比率を計算し、幾何平均の90% CIを評価した。
初回投与後のAUC0-tauに対する反復投与後のAUC0-tauの比率を計算することにより、研究期間にわたるHTL0018318への曝露の蓄積の程度を評価した。一緒に投与したドネペジルの、蓄積への影響を評価するために、ドネペジルと一緒に投与した治療期間中及びドネペジルと一緒に投与していない治療期間中に計算したこれらの比率を比較した。
WinNonlin 6.4を使用したPhoenix 64 build 6.4.0.768で、すべてのPK分析を行った。R version 3.3.1 (2016-06-21) Copyright (C) 2016 The R Foundation for Statistical Computing(プラットフォーム:x86_64-w64-mingw32/x64 64-bit)で、統計分析を行った。
結果
被験者
この研究に登録された全42名の被験者において、3名の被験者はドネペジルの副作用により中止し、3名の被験者は適格性の再評価の結果、試験を中止したが、いずれもHTL0018318と一緒に投与する前であった。残りの36名の被験者をプラセボ(n=12)、15mgのHTL0018318(n=8)、又は25mgのHTL0018318(n=16)に無作為化した(表2)。
Figure 2024509875000021
HTL0018318/プラセボとドネペジルとの併用の初回投与後、5名の被験者はウイルス性胃腸炎と推定されるため脱落し(プラセボ:n=2、25mgのHTL0018318:n=3)、1名の被験者はこの推定されたウイルス性胃腸炎が原因で、プラセボの5回目投与を受けなかった。別の2名の被験者は、ドネペジルと併用しないHTL0018318/プラセボの初回投与前の休薬期間後に、試験薬に関連しない異常な検査成績が原因で試験を中止した。合計で28名の被験者が、研究を完了した。
安全性と忍容性
臨床検査、ECG評価及び24時間ホルター心電図のいずれにも、治療に関連した臨床的に有意な変化がないことが分かった。
HTL0018318単独に比べて、HTL0018318とドネペジルの併用後の立位収縮期血圧、仰臥位と立位拡張期血圧、立位-仰臥位血圧又は立位脈拍数には、有意な変化がなかった。仰臥位収縮期血圧、仰臥位脈拍数及び立位-仰臥位脈拍数に対する影響のみが観察された。
仰臥位収縮期血圧は、25mg及び15mgのHTL0018318のそれぞれとドネペジルとの併用に比べて(120mmHg、平均差1.6mmHg、95%CI[-3.1;-0.1]、p=0.0378)、ドネペジルと一緒に投与していない25mgのHTL0018318の投与後には有意に低下したが(118mmHg)、ドネペジルと一緒に投与していない15mgのHTL0018318の投与後に有意に低下しなかった。ドネペジルと一緒に投与していないプラセボ後(118mmHg)に、仰臥位収縮期血圧は、プラセボとドネペジルとの併用に比べて(120mmHg、平均差1.7mmHg、95%CI[-3.2;-0.2]、p=0.0242)、有意に低下した。ドネペジルと併用した場合又は併用していない場合のプラセボに比べて、15mgのHTL0018318の投与も25mgのHTL0018318の投与も、仰臥位収縮期血圧に対する有意な影響を示さなかった。
仰臥位脈拍数は、HTL0018318単独に比べて、15mg及び25mgのHTL0018318とドネペジルとの併用投与後に有意に低下した(15mgのHTL0018318とドネペジルとの併用(64bpm)対ドネペジルと併用していない15mgのHTL0018318(67bpm):平均差3.3bpm、95%CI[1.5;5.1]、p=0.0009;25mgのHTL0018318とドネペジルとの併用(64bpm)対ドネペジルと併用していない25mgのHTL0018318(66bpm):平均差1.5bpm、95%CI[0.2;2.9]、p=0.0302)。ドネペジルと併用した場合又は併用していない場合のプラセボに比べて、15mgのHTL0018318の投与も25mgのHTL0018318の投与も、仰臥位脈拍数に対する有意な影響を示さなかった。
仰臥位の場合の脈拍数から立位の場合の脈拍数の変化(デルタ脈拍数)は、25mgのHTL0018318とドネペジルとの併用後に比べて(12bpmの変化)、ドネペジルと併用していない25mgのHTL0018318を投与した後に有意に低下した(10bpmの変化)(-1.6bpmの平均差、95%CI[-3.0;-0.2]、p=0.0252)。ドネペジルとの併用による治療に比べて、ドネペジルと併用していない15mgのHTL0018318又はプラセボを投与した後のデルタ脈拍数には、有意な変化がなかった。ドネペジルと併用していない25mgのHTL0018318後のデルタ脈拍数(12bpmの変化)及び25mgのHTL0018318とドネペジルとの併用後のデルタ脈拍数(10bpmの変化)は、ドネペジルと併用していないプラセボ(14bpmの変化、平均差-3.7bpm、95%CI[-6.6;-0.8]、p=0.0137)及びプラセボとドネペジルとの併用(15bpm、-3.4bpmの平均差、95%CI[-6.2;-0.6]、p=0.0184)に比べて、有意に低下した。
唾液分泌、肺機能FEV1/FVC、睡眠の質のLSEQドメイン及び睡眠後の覚醒のLSEQにおいて、統計的に有意な変化が観察された(表8)。これらの変化はいずれも小さく、臨床的に関連するとは考えられなかった。
ドネペジルと併用していないHTL0018318に比べて、HTL0018318とドネペジルとの併用後のVASの覚醒度、落ち着き、気分及び悪心に対する統計的に有意な影響はなかった。
すべてのAEは、軽度又は中程度の強度であり、重篤な有害事象はなかった。ドネペジルを単独投与した場合に報告されたAEの数は、15mg及び25mgのHTL0018318と一緒に投与した後でも増加しなかった。AEを報告した被験者のパーセンテージを表2に示す。15mgのHTL0018318単独に比べて、ドネペジルと一緒に投与すると、AEを報告する被験者のパーセンテージが増加した。25mgのHTL0018318を投与した場合、ドネペジルの有無にかかわらず、同様の割合の被験者がAEを報告した。コリン作動性刺激の増加と関連する(可能性のある)AEを報告した被験者のパーセンテージについても、同じパターンが観察された(表4)。最も頻繁に報告されたAEは、のぼせ、多汗症、悪心、嘔吐、頭痛及び傾眠であった。コホート2の被験者において、25mgのHTL0018318とドネペジルとの併用又はプラセボとドネペジルとの併用投与の研究期間中、臨床研究ユニットにおいて胃腸管のウイルス感染症と推定される感染症が大流行した。ウイルス性胃腸炎と関連する胃腸管のAEをこの分析から除外すると、治療群のいずれにおいても嘔吐は報告されず、悪心は、プラセボとドネペジルとを併用投与した被験者1名及び15mgのHTL0018138とドネペジルとを併用投与した被験者1名のみで報告された。加えて、ウイルス性胃腸炎AEを除外すると、HTL0018318とドネペジルとの併用治療は、HTL0018318単独に比べて、胃腸管障害クラスのAEの数がわずかに高かった(プラセボ+ドネペジル:4AE対プラセボ単独:1AE;15mgのHTL0018318+ドネペジル:3AE対15mgのHTL0018318単独:1AE;及び25mgのHTL0018318+ドネペジル:4AE対25mgのHTL0018318単独:3AE)。
Figure 2024509875000022
Figure 2024509875000023
薬物動態
HTL0018318のPKの特徴
PKの特徴を表5及び表6に示す。血漿中HTL0018318濃度は、投与直後に増加し、Tmax(1.74~2.5時間)の後、血漿中濃度は、二相性の様式で減少した。HTL0018318を毎日投与して5回目又はその前に、HTL0018318の薬物動態的な定常状態に到達した。
HTL0018318の蓄積
HTL0018318の初回投与後のAUC0-tauに対するHTL0018318の5回目投与後のAUC0-tauの平均比率は、15mgのHTL0018318については1.27であり、25mgのHTL0018318については1.23であった。これらの比率は、ドネペジルと一緒に投与した場合(15mgのHTL0018318については1.23であり、25mgのHTL0018318については1.21であった)と同程度であった。
HTL0018318の初回投与後のAUC0-infに対するHTL0018318の5回目投与後のAUC0-tauの平均比率は、15mgのHTL0018318の投与後には1.04であり、25mgのHTL0018318の投与後には1.06であった。これらの比率は、ドネペジルと一緒に投与した場合(15mgのHTL0018318については1.04であり、25mgのHTL0018318については1.03であった)と同程度であった。
ドネペジルと併用した場合及び併用していない場合のHTL0018318のPKの特徴の比較
HTL0018318単独に対する、ドネペジルとの併用によるHTL0018318の初回投与後のPKパラメーターの比率は、Cmaxについては1.05(90%CI[0.986~1.11])であり、Tmaxについては1.01(90%CI[0.793~1.28])であり、AUC0-24については1.02(90%CI[0.975~1.07])であった。HTL0018318の5回目投与後の比率は、Cmaxについては1.04(90%CI[0.995~1.09])であり、Tmaxについては0.974(90%CI[0.744~1.28])であり、AUC0-tauについては1.00(90%CI[0.969~1.03])であり、Cminについては0.911(90%CI[0.854~0.972])であった。
Figure 2024509875000024
Figure 2024509875000025
ドネペジル
HTL0018318の初回投与直前(ドネペジルの投与15時間後)の平均血漿中ドネペジル濃度について、15mgの場合は40.5ng/mL(CV:25.0%)であり、25mgのHTL0018318の場合は37.4ng/mL(CV:28.8%)であり、プラセボの場合は36.1ng/mL(CV:29.6%)であった。18回目~24回目投与後の血漿中ドネペジル濃度は、18回目のドネペジル投与時までにドネペジルが薬物動態の定常状態にあったことを示唆した。初回用量15mg又は25mgでHTL0018318と併用した場合の4、15又は24時間後のドネペジル濃度又は定常状態におけるドネペジル濃度と、同時投与(ドネペジル投与18回目)直前のドネペジル血漿濃度との幾何平均比は、0.961~1.06であった(90%CIは、すべての比較について一致していた)。HTL0018318プラセボの投与に伴う、対応するドネペジル濃度は、0.915~1.06の範囲にあり、初日のプラセボの投与24時間後の比率が0.915(90%CI:0.871~0.962)であったことを除いて、90%CIは一致していた。
考察
健康な高齢の被験者42名(36名に投与)を対象として、本無作為化二重盲検プラセボ対照試験により、HTL0018318(15mg若しくは25mg)をドネペジル(10mg)なしで、又はドネペジルと併用して反復投与した場合の定常状態における安全性と忍容性及びPKを調べた。ドネペジル及びHTL0018318の両者がコリン作動性活性を高めるため、忍容性への効果を予測できた。薬物動態学的な薬物間相互作用は、事前に予測されていなかった。
ドネペジル投与期間中に高い割合の被験者によってAEが報告された。ドネペジルと一緒にHTL0018318を複数回投与したところ、概ね忍容性が良かった。15mgのHTL0018318とドネペジルとを併用した場合、及びプラセボとドネペジルとを併用した場合には、HTL0018318単独又はプラセボ単独の場合に比べて、より高い割合の被験者がAEを報告した。この差異は、おそらくドネペジルによって引き起こされた。なぜならドネペジル単独の場合、ドネペジルと併用していないHTL0018318よりも多くのAEを引き起こしたからである。ドネペジルと併用していない25gのHTL0018318は、ドネペジル単独の場合と同様の割合の被験者がAEを経験したので、併用治療の場合は差異がなかった。
この研究で観察された副作用プロフィールは、HTL0018318による単回漸増用量(SAD)及び反復漸増用量(MAD)研究で観察されたものと同程度である((Bakker C, Tasker T, Liptrot J, Hart EP, Klaassen E.S, Doll R.J, et al. Alzheimer's Research & Therapy. 2020;(投稿済); Bakker C, Tasker T, Liptrot J, Hart EP, Klaassen ES, Prins S, et al. Br J Clin Pharmacol. 2020;(投稿済))。悪心及び嘔吐のみが、SAD及びMAD研究よりも頻繁に報告された。コホート2の被験者に、25mgのHTL0018318又はプラセボとドネペジルとを組み合わせて投与した研究期間中、臨床研究ユニットにおいて胃腸管のウイルス感染症と推定される感染症が大流行した。ウイルス性胃腸炎の推定は、症状の臨床像、及び臨床試験組織のスタッフとプラセボの被験者も同様に影響を受けたという事実に基づいた。加えて、各個人の症状が次々と現れ、投与のタイミングとは関係なかった。
25mgのHTL0018318とドネペジルとの併用投与後の仰臥位収縮期血圧の統計的に有意な上昇(1.6mmHg)及びプラセボとドネペジルとの併用投与後の仰臥位収縮期血圧の統計的に有意な上昇(1.7mmHg)は、小規模であり、臨床的問題ではないと考えられる。脈拍数データは、HTL0018318とドネペジルとの併用により、ドネペジルと併用していないHTL0018318に比べて、仰臥位脈拍数が減少する可能性があるが、立位脈拍数は減少しない可能性があることを示唆している。したがって、起立後の生理学的心拍数の増加は、HTL0018318とドネペジルとの併用を受けた者の方が、ドネペジルと併用していないHTL0018318を受けた者よりも大きかった。しかしながら、これらの変化は、同様に小規模であり(最大1.6bpm)、臨床的問題ではないと考えられる。
唾液分泌の増加が予測された。HTL0018318の作用機序に基づいて(Bymaster FP, Carter PA, Yamada M, Gomeza J, Wess J, Hamilton SE, et al. The European journal of neuroscience. 2003;17(7):1403-10)、及び唾液分泌過多がM1mAChRアゴニストを調べた他の研究で報告されているためである(Nathan PJ, Watson J, Lund J, Davies CH, Peters G, Dodds CM, et al. Int J Neuropsychopharmacol. 2013;16(4):721-31; Voss T, Li J, Cummings J, Farlow M, Assaid C, Froman S, et al. Alzheimer's & dementia (New York, N Y). 2018;4:173-81; Sramek JJ, Hurley DJ, Wardle TS, Satterwhite JH, Hourani J, Dies F, et al. J Clin Pharmacol. 1995;35(8):800-6)。一方、唾液分泌の増加は、ドネペジルのよく見られる副作用ではない(Birks JS, Harvey RJ. Donepezil for dementia due to Alzheimer's disease. The Cochrane database of systematic reviews. 2018;6:Cd001190)。本研究において、唾液分泌のわずかな変化は、臨床的に重要であるとは考えられない(表8)。
アセチルコリンは、気道の平滑筋及び粘液腺上のM2及びM3mAChRを活性化させることにより、気管支収縮及び粘液分泌を誘発することができる。M1mAChRは、重要でない役割を果たしている可能性がある。なぜなら節後神経にあるM1mAChRのアゴニズムがシナプス結合におけるアセチルコリン放出を促進するからである。これは、気管支収縮及び粘液分泌に寄与するM3mAChRを刺激する(Buels KS, Fryer AD. Muscarinic receptor antagonists: effects on pulmonary function. Handbook of experimental pharmacology. 2012(208):317-41; Castro JMdA, Resende RR, Mirotti L, Florsheim E, Albuquerque LL, Lino-dos-Santos-Franco A, et al. BioMed Research International. 2013;2013:805627)。したがって、本研究において観察されたFEV1/FVCの増加は、収縮の減少を示唆しているが、薬理学的効果とは考えられず、臨床的に重要な効果ではない。
1及びM3mAChRは、睡眠覚醒サイクル中の急速眼球運動段階で重要な役割を果たす(Niwa Y, Kanda GN, Yamada RG, Shi S, Sunagawa GA, Ukai-Tadenuma M, et al. Cell reports. 2018;24(9):2231-47.e7)。本研究において、臨床的に関連する変化は、HTL0018318の単独投与後又はHTL0018318とドネペジルとの併用投与後のLSEQでは観察されなかった(表8)。
HTL0018318の薬物動態は、血漿及び尿で十分に特徴付けられた。特徴は、以前の研究(Bakker C, Tasker T, Liptrot J, Hart EP, Klaassen E.S, Doll R.J, et al. Alzheimer's Research & Therapy. 2020;(投稿済); Bakker C, Tasker T, Liptrot J, Hart EP, Klaassen ES, Prins S, et al. Br J Clin Pharmacol. 2020;(投稿済))において観察されたPKデータと同程度であった。平均Tmax(1.74~2.5時間)及び5回目投与後の半減期(10.7~13.8時間)は、HTL0018318の投与量レベル及びドネペジルとの併用に関して、変化していないようであった。HTL0018318の投与量レベルの変化又はドネペジルと一緒に投与したことに起因するHTL0018318の腎排出には、明らかな変化はなかった。15mg投与群と25mg投与群の間の、並びにドネペジルと一緒に投与した期間及び一緒に投与していない期間の間の、血漿中HTL0018318のPKのCmax、AUC0-tau及び見かけの排出半減期の変動は同様であった(11.7%~39.9%)。HTL0018318の投与量レベルに関連する蓄積の程度又はドネペジルと一緒に投与したことに関連する蓄積の程度に傾向はないようであった。ドネペジルと一緒に投与した場合及び一緒に投与していない場合のHTL0018318の投与期間中に測定されたHTL0018318のCmax、Tmax、AUC0-24、AUC0-tau及びCminの比の比較は(0.911~1.05)、ドネペジルがHTL0018318のPKに有意な影響を与えないことを表している。
HTL0018318/プラセボの初回投与前の血漿中ドネペジル濃度は、治療効果があると考えられた(Ota T, Shinotoh H, Fukushi K, Kikuchi T, Sato K, Tanaka N, et al. Clinical neuropharmacology. 2010;33(2):74-8; Shiraishi T, Kikuchi T, Fukushi K, Shinotoh H, Nagatsuka S, Tanaka N, et al. Neuropsychopharmacology. 2005;30(12):2154-61)。HTL0018318と一緒に投与した場合及び一緒に投与していない場合に測定された血漿中ドネペジル濃度の比較は(0.915~1.06の平均比)、HTL0018318がドネペジルのPKに影響を与えないことを表している。全体としては、健康な高齢の被験者にドネペジルと組み合わせてHTL0018318を投与すると、一般的には忍容性が良く、臨床的な安全性又はPKへの懸念を引き起こさず、これらの投与量レベルで、アルツハイマー病患者の治療に対して実行可能な併用治療であろう。
Figure 2024509875000026
DPZ=ドネペジル、Con-med=併用薬、Br(eath).Alc=呼気アルコール検査、バイタルサイン=心拍数及び血圧、PK=薬物動態、(S)AE=(重篤な)有害事象、BsHaem=血液試料の血液学、BsChem=血液試料の化学、ECG=心電図、LSEQ=リーズ睡眠評価アンケート、VAS=ビジュアルアナログスケール、AE=有害事象
118日目の夜から25日目の朝まで、臨床研究ユニットに泊まった。
2遺伝薬理学的試料を含む。
3スクリーニング時に血清妊娠検査、他の来院時に尿妊娠検査。
4身長は、スクリーニング時のみ測定した。
5指示書に従う5mgのドネペジル治療(5日間)。毎晩、退出する前に自己投与。
6指示書に従う10mgのドネペジル治療(14日間)。毎晩、退出する前に自己投与。臨床研究ユニットにおける投与:18日目まで。
72回実施した。
818日目(投与前、投与4時間後)、19日目(18日目の投与15時間及び24時間後(=19日目の投与前)並びに19日目の投与4時間後の、ドネペジルPK試料。
9スクリーニング時から投与前0日目までのベースライン条件;0日目からの連続的なモニタリング。
10臨床研究ユニットの医師は、投与前に被験者適格性をレビューする。
Figure 2024509875000027
1119日目及び44日目は宿泊。
12投与前(「投与前」に言及する場合はすべて、HTL0018318に関する)。
1344日目のみ。
14投与前、投与0.5時間、1時間、2時間、3時間及び6時間後。
1510mgのドネペジルを、20日目~23日目の夜に投与。
16朝食前、投与2時間、4時間及び6時間後(食事前)。
1720/45日目、22/47日目及び24/49日目の投与前、投与2時間及び6時間後。
1820/45日目の投与前、投与2時間、4時間及び8時間後;21~24日目及び46~49日目の投与前、投与2時間及び8時間後。
19ドネペジルのPK:20日目-19日目の投与15時間後、20日目の投与前、投与4時間後;21、22、23日目-前日の投与15時間後;23日目の投与前、投与4時間、15時間、27時間、39時間、63時間、87時間、7~14日後(合計で14の試料)。
20HTL0018318のPK:20/45日目の投与前、20/45日目の投与0.25時間、0.5時間、1時間、1.5時間、2時間、3時間、4時間、8時間、9時間(20日目のみ)、12時間、13時間(20日目のみ)後。21、22、23/46、47、48日目の投与前。24/49日目の投与前、投与0.25時間、0.5時間、1時間、1.5時間、2時間、3時間、4時間、8時間、12時間、24時間、48時間、72時間、7~14日後。
2120/45日目の投与前(spot)。20/45及び24/49日目:0~4時間(完了[c])、4~8時間(c)、8~12時間(c)、12~24時間(c)。25/50日目(24~48時間)(c)。26/51日目(48~72時間)(c)。フォローアップ(spot)。
Figure 2024509875000028

Figure 2024509875000029
実施例D
研究デザイン
これは、無作為化、二重盲検、並行群間、プラセボ対照試験であって、軽度から中等度のAD患者に、メマンチンの有無にかかわらず、標準治療のドネペジル(1日当たり10mg)の補助治療として、4週間にわたってHTL0018318の3用量のうちの1つ又はプラセボを受けさせた。研究は、ポーランド、チェコ共和国、スペイン、及びスロバキアにおける18か所のセンターで実施した外来患者の研究であった(NCT03456349、clinicaltrials.govに登録されている)。42日間のスクリーニング期間中に、適格性について患者を評価し、プラセボ又は1日当たり5mg、15mg、又は25mgのHTL0018318の目標用量のいずれかに均等に無作為化した(図5A)。2週間の用量設定期間中、HTL0018318の量を目標用量まで漸増し(図5B)、研究者は、この期間全体にわたって、用量を維持又は低減し、忍容性/安全性の問題を制限することができた。研究は、ヘルシンキ宣言、医薬品規制調和国際会議の医薬品の臨床試験の実施に関する基準(the International Council for Harmonisation good clinical practice guidelines)、及びあらゆる適切な国の規制要件に従って行った。関連する独立倫理委員会が承認し、すべての患者(又はその介護者)は書面によるインフォームドコンセントを提供した。
患者
適格な患者は、年齢55~85歳であり、2011年アメリカ国立老化研究所-アルツハイマー病協会の基準(McKhann GM, Knopman DS, Chertkow H, Hyman BT, Jack CR, Jr., Kawas CH, et al. Alzheimers Dement. 2011;7:263-9)により、ADの可能性が高いと診断された患者で、ミニメンタルステート検査(MMSE)の点数が12~24であったことに基づく軽度から中等度の認知症を有し、スクリーニング前の少なくとも6週間、1日当たり10mgの安定した用量のドネペジルを服用した(メマンチンの有無にかかわらない)。完全な選択規準及び除外基準を、以下に報告する。
研究の選択規準
1.参加年齢の上限が75歳であるチェコ共和国を除いて、年齢は、55~85歳であった。
2.出産の可能性がない女性:外科的手術による不妊(両側の卵管結紮、両卵巣摘出、若しくは子宮摘出)又は閉経後(年齢60歳超であるか、若しくは55~60歳で、閉経後の卵胞刺激ホルモンレベルであるが2年以上無月経である)のいずれかに定義される。
3.外科的手術による不妊の男性、又は性的に活発である場合、(閉経後でなければ)伴侶がスクリーニングから投与後28日以上まで、効果的な避妊法を使用することに同意した男性。
4.スクリーニング時、2011年アメリカ国立老化研究所-アルツハイマー病協会の基準に基づくアルツハイマー病(AD)の可能性の証拠。
5.スクリーニング前、6週間以上、1日1回、10mgのドネペジルによる治療(ポーランド以外には、安定した用量のメマンチンの併用が許可された)。
6.核磁気共鳴画像法(MRI)又はコンピュータ断層撮影法(CT;MRIが実行できなかった場合)によって確認されたADの可能性の診断(過去12か月以内に他の臨床的に重大な併存症状がなかった)。皮質梗塞、戦略的に位置した皮質下灰白質梗塞(例えば、海馬、視床)、多発性白質病変(multiple white matter lacunas)、又は広範な白質異常の証拠がある診断を除外した。MRI若しくはCTスキャンがスクリーニングの12~24か月前に実施した場合、又は最後のMRI若しくはCTスキャンの時点とスクリーニング評価の間に、脳卒中若しくは他の神経疾患の発症の可能性を示唆する証拠があった場合、スクリーニング時にMRI若しくはCTスキャンを繰り返した。
7.スクリーニング時、ミニメンタルステート検査の12~24点を有する、軽度から中等度の認知症。
8.修正Rosenハチンスキー虚血スコア4以上。
9.通院時に常に患者に同行することに同意し、プロトコールによる要求に応じて患者に関する情報を提供し、服薬遵守を毎日監督する、信頼できる介護者又は情報提供者を有する地域又は共同住宅に住んでいること。
10.カプセルの形態の経口薬を飲み込む能力。
11.3か月前に重篤な又は不安定な疾患を有しない、病歴、身体検査、バイタルサイン及び12誘導心電図(ECG)に基づく全体的に良好な健康。軽症、慢性疾患、安定な疾患状態(例えば、制御されている変形性関節症)は、研究者の裁量で許可された。
12.スクリーニング12誘導ECGを使用して研究者によって評価された、臨床的に重大なECG伝導異常を有しない、正常洞調律。
13.食事療法及び/又は経口血糖降下薬(安定用量で3か月)により安定化した2型糖尿病患者は適格であった。ただし、その主治医により医学的に管理され、管理の妥当性を確認するために定期的に監視されている場合に限られた。患者は、スクリーニングのときに、7.7%未満のヘモグロビンA1c及び170mg/dL以下のランダム血清グルコース値を有しなければならない。インスリンの使用は許可されなかった。
14.認知症の前段階の状態において、以前は、母国語で読み書き、かつ他人と効果的にコミュニケーションをすることができた。
15.脳波記録法(EEG;EEG評価を行うために十分な聴力が必要である)を含む研究評価に参加し、完了することができた。
16.書面によるインフォームドコンセントを提供できた(患者(可能であれば)及び介護者)。
研究の除外基準
1.ドネペジル以外のコリンエステラーゼ阻害薬による治療。
2.メマンチンの単剤療法による治療。
3.スクリーニング前の12週間以内の、過活動膀胱治療、抗ヒスタミン薬、抗精神病薬、及び三環系抗うつ薬などの抗コリン作動薬及び/又は抗ムスカリン薬による治療。
4.ベースライン来院前21日以内の、シトクロムP450(CYP)2D6の強力な阻害薬(例えば、キニジン、パロキセチン、フルオキセチン、テルビナフィン、ブプロピオン)、又はCYP3A4若しくはCYP2C9の強力な若しくは中程度の阻害薬/誘導薬(例えば、ケトコナゾール、リファンピシン、フルコナゾール、カルバマゼピン)、又はセント・ジョーンズ・ワート(セイヨウオトギリソウ)を含む生薬製剤の使用。
5.ベースライン来院前21日以内の、CP450の強力な誘導薬(例えば、フェニトイン)又は強力な阻害薬(例えば、シプロフロキサシン、フルボキサミン、バルプロ酸塩、クラリスロマイシン)のいずれかの使用。
6.スクリーニング前の12週間以内の、認知に影響し得る他の薬物(例えば、抗不安薬、催眠鎮静薬として使用する、ベンゾジアゼピン系薬若しくはγ-アミノ酪酸タイプA[GABA-A]受容体アゴニスト)、又は睡眠補助OTC薬の使用。
7.ベースライン来院4週間前の、安定用量でない限り、ホルモン補充療法、甲状腺用サプリメント、ビタミンE、ビタミンB12の使用。
8.スクリーニング時、認知の評価を損なうおそれのある重度の行動障害(例えば、極度激越、物理的攻撃又は暴力)。
9.認知障害の一因となった可能性のある併存疾患:他の神経変性障害(例えば、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、血管性認知症);精神障害、うつ状態、双極性障害、てんかん、又はパーキンソン病についての、精神障害の診断・統計マニュアルの基準を満たす精神障害;アルコール又は薬物乱用の既知の履歴(過去1年以内);後天性免疫不全関連のアルコール性認知症及び認知症症候群(acquired immune deficiency of alcohol and syndrome dementia);第3期梅毒;又はあらゆる非ADの認知症が挙げられるが、これらに限定されない。
10.15項目の老年期うつ病スケールのスコアが6以上である。
11.スクリーニング前6か月以内の、コロンビア自殺重症度評価尺度(C-SSRS)の項目4若しくは項目5に基づく自殺念慮又は積極的な計画によって定義される、臨床的に重大な自殺念慮の証拠。過去に何らかの自殺未遂、又は過去10年以内に深刻な自殺念慮若しくは計画を有した患者は、各研究者の評価により自殺念慮が除外された後に登録された。
12.甲状腺疾患(患者が、スクリーニング前の4週間以上治療で安定している場合、及び甲状腺機能正常である場合を除いた)。患者は、研究全体を通じて、安定した治療を維持する必要があった。
13.先天性QT延長症候群又は突然死の個人歴又は家族歴。スクリーニング時、ベースラインFridericia補正(QTcF)は、男性の場合は450msを超え、女性の場合は470msを超えるべきであること、又はスクリーニング時、ECG上の他の臨床的に重大な異常のいずれか(1回繰り返した可能性がある)。
14.スクリーニング前の6か月以内の、臨床的に重大な心血管疾患。例としては、心筋梗塞;冠動脈バイパス術;経皮経管冠状動脈形成術;重度の狭心症若しくは不安定狭心症;重篤な不整脈;臨床的に重大なECG伝導異常(例えば、洞徐脈、洞房ブロック若しくは房室接合部ブロック、左脚若しくは右脚ブロック);又は中等度から重度の心不全が挙げられる。
15.臨床的に重大な起立性血圧(BP)変化若しくは起立性症状(例えば、めまい、もうろう状態)、低血圧症、又は徐脈の既往歴。軽度かつ良好に制御されている高血圧症患者は適格であった(すなわち、150/90以下(チェコ共和国では、140/90以下)の安静時BPを有し、BP管理のために2種類以下の異なる降圧剤を服用していること)。
16.末梢血管疾患の徴候と症状、例えば、跛行;末梢性浮腫;皮膚異常;痙攣;血栓塞栓症;腸骨動脈、大腿動脈、膝窩動脈及び頸動脈のアテローム硬化性疾患;並びに大腿動脈瘤、腸骨動脈瘤、及び膝窩動脈瘤(しかし、より具体的には、腹部動脈瘤胸部動脈瘤である)。マルファン症候群及び強皮症などの結合組織障害、又は他の原因の末梢血管疾患の患者。スクリーニングの6か月以内に、これらの末梢動脈のいずれかの切除術、修復術又はバイパス術を受けた既往歴を有する患者も除外した。
17.過去6か月以内に、一過性脳虚血発作があった。
18.脳血管障害又は脳卒中のあらゆる既往歴。
19.単一の熱性痙攣以外の発作性疾患のあらゆる既往歴。
20.肺疾患(例えば、間質性肺炎、中等度の、重度の若しくは不安定な喘息、中等度の若しくは重度の慢性閉塞性肺疾患、中等度の若しくは重度の肺気腫若しくは慢性気管支炎、又は慢性若しくは急性間質性肺炎)、或いは臨床的に重大な中等度の又は重度の肺の症状の証拠。1年以上治療を必要としない軽度の喘息は許可された。
21.過去5年以内のがんの既往歴。治療された皮膚の基底細胞がん又は扁平上皮がんは許可され、治療を必要としない安定している限局性前立腺がんは許可された。
22.1型糖尿病の証拠又は既往歴。インスリンによる治療。
23.スクリーニング時、臨床的に重大な検査異常。
24.血清クレアチニン値が正常値の上限(ULN)の1.5倍。
25.肝臓の血液検査の臨床的に重大な増加がULNの2倍。
26.病歴に、ドネペジル治療に典型的な重大な有害事象(AE)(例えば、下痢、悪心、嘔吐)、又は消化性潰瘍の存在。ドネペジルによるAEの発生率が低い患者は、研究者の裁量で許可された。
27.B12欠乏症と診断された患者(サプリメントとしてB12を断続的に摂取している患者は許された)、又は現在のB12が検査の参考基準の正常範囲を下回っており、メチルマロン酸が上昇している患者。
28.重大な感覚困難(聴覚又は視覚障害)又は移動困難による、研究の行動評価又はEEG評価を完了できない。
29.薬物吸収に影響を与える可能性があるあらゆる状態(例えば、胃摘出)。
30.体重40kg未満(チェコ共和国のみ)。
31.研究者の判断により、患者がこの研究に不適当と考えられる、他の医学的又は精神的状態の併発。
32.スクリーニング前3か月又は5半減期(のいずれか長い方)以内の、試験薬による治療。
33.スクリーニング前の2年以内の、有効なADワクチン(active AD vaccine)の使用、又はスクリーニング前の1年以内の、AD治療用モノクローナル抗体の使用。
34.研究中又はスクリーニングの来院前の1か月以内のいずれかで、認知リハビリテーションを含む研究、又はCogstateテスト・バッテリーを使用した他の研究に参加。
35.以前、HTL0018318の何らかの研究に参加したこと。
エンドポイント
この研究のプライマリーエンドポイントは、HTL0018318の安全性と忍容性の評価であった。治療中に発生した有害事象(TEAE)の発生率及び重症度により、並びに試験来院中のバイタルサイン(血圧[BP]及び心拍数[HR]など)、心電図(ECG)測定、身体検査及び神経学的検査、血液学的検査、臨床化学及び尿検査により、安全性と忍容性を評価した。
認知機能の行動試験(Cogstate神経心理学的テスト・バッテリー[NTB])及び電気生理学のバイオマーカー(脳波図[EEG]及び誘発反応電位[ERP])の両方により、HTL0018318の探索的PD効果を調べた。各バイオマーカー/試験及び結果変数の更なる詳細を以下に提供する。12項目の神経精神症状評価(NPI-12)スコアを使用して、精神神経症状を評価した。
PD評価を行った期間中に、HTL0018318に対して選定した血漿中薬物動態(PK)パラメーターを推定した。全エンドポイントの評価時間の詳細を以下に記載する。
評価及び分析
安全性は、プライマリーエンドポイントであり、すべての来院時(スクリーニング、ベースライン、1日目、6日目±1、11日目±1、16日目±1、28日目±1、及び35日目±2[フォローアップ])に評価し、評価は、自発的に報告された治療中に発生した有害事象(TEAE);予定された身体検査及び神経学的検査;バイタルサイン測定(体温、心拍数[HR]、収縮期及び拡張期BP[SBP及びDBP]);12誘導ECGの記録;並びに臨床検査安全性のパネルに基づいて行った。C-SSRSをベースライン時及び28日目±1に投与した。国際医薬用語集(MedDRA)バージョン20を使用してTEAEをコード化した。
探索的な薬物動力学的エンドポイント(Cogstateテスト及びEEG/誘発反応電位[ERP]のバイオマーカー)を、スクリーニング時(プラクティスセッション)、ベースライン来院時、及び28日目±1に評価した。この研究は、小中のESのPD効果を検出できなかった一方で、本研究の試料サイズにより、0.10の有意水準を使用し、おおよそ80%の検定力を提供して、これらのエンドポイントについて0.97という大きなESを検出した。したがって、結果が統計的に有意であり(P<0.10)、かつ0.40超のESを有する場合、当該結果は有意な改善として説明されている。
血漿中HTL0018318濃度を決定するために、血液試料により薬物動態(PK)を評価した。1日目、6日目、11日目、16日目、28日目及び35日目(フォローアップ来院)の来院時、朝の投与前、並びに投与1、2及び4時間後に血液試料を採取した。バイオアナリシスでは、完全に検証された方法を使用し、確定された貯蔵安定期間内にすべての試料を分析した。検証済のPhoenix(登録商標)WinNonlin(登録商標)バージョン6.4を使用してPKパラメーターを導き出した。
すべての安全性分析には、安全性解析集団(SAF;無作為化された用量)を使用した。SAF(無作為化された用量)は、少なくとも1回、試験薬を投与された無作為化された全患者を含む。処置群の割り当ては、初回の無作為化された用量に基づいて行われた。すべての有効性分析は、探索的であると考えられ、最大の解析対象集団(FAS)を使用した。FASは、ベースライン後の有効性の測定を少なくとも1回受けた無作為化された全患者を含む。処置群の割り当ては、初回の無作為化された用量に基づいて行われた。PKデータの要約及び分析はすべて、薬物動態解析対象集団(PKS)を使用した。PKSは、有効なPK評価をされた無作為化された全患者を含む。処置群の割り当ては、受けた実際用量に基づいて行われた。
血圧及び心拍数の測定
研究全体を通じて、同じ腕で、仰臥位及び立位の両方でBP及びHRを3回測定した。起立した3分後に立位のBP及びHRを測定し、横臥5分後に仰臥位のBP及びHRを測定した。臨床的に重大な誤差又は機械/装置のエラーが生じた場合、測定を繰り返した。研究者の裁量で、範囲外のBP又はHRの測定を繰り返した。確認された臨床的に重大なバイタルサインの測定はすべてAEとして記録した。以下の測定を得た場合、追加のモニタリング又は投与中止の指示に従った:
・SBP>170mmHg;DBP>110mmHg
・1日目の投与前レベルより、SBP又はDBPが30%増加
Cogstate神経心理学的テスト・バッテリー
コンピューター化さらたテストとして、Cogstate神経心理学的テスト・バッテリー(NTB;http://www.Cogstate.com/)を行った。バッテリーには以下の認知タスクが含まれた。バッテリーの総時間は、おおよそ30~40分間であった:
・識別(IDN)-反応時間(注意力)
・インターナショナルショッピングリストの即時想起(ISL)とインターナショナルショッピングリストの遅延想起(ISRL)-思い出した単語数(エピソード記憶/言語学習)
・ワンバックテスト(ONB)-正確さ及び反応時間(ワーキングメモリー/実行機能)
・グロトン迷路学習(GML;順方向と逆方向の迷路学習)-正確さ(実行機能)
Cogstate NTBバッテリー内の行動試験を選んだ理由は、該試験のAD患者における認知障害を検出する能力(Lim YY, Harrington K, Ames D, Ellis KA, Lachovitzki R, Snyder PJ, et al. J Clin Exp Neuropsychol. 2012;34(8):853-863; Lim YY, Maruff P, Pietrzak RH, Ames D, Ellis KA, Harrington K, et al. Brain. 2014;137(Pt 1):221-231)、並びに該試験の、(1)コリン作動性ムスカリン受容体の調節に対する実証された感受性(Nathan PJ, Watson J, Lund J, Davies CH, Peters G, Dodds CM, et al. Int J Neuropsychopharmacol. 2013;16(4):721-731; Fredrickson A, Snyder PJ, Cromer J, Thomas E, Lewis M, Maruff P. The use of effect sizes to characterize the nature of cognitive change in psychopharmacological studies: an example with scopolamine. Hum Psychopharmacol. 2008;23(5):425-436)、及び(2)ADの第1相及び第2相試験におけるヒスタミンH3受容体アンタゴニストなどの他の認知促進薬に対する実証された感受性(Grove RA, Harrington CM, Mahler A, Beresford I, Maruff P, Lowy MT, et al. Curr Alzheimer Res. 2014;11(1):47-58; Nathan PJ, Boardley R, Scott N, Berges A, Maruff P, Sivananthan T, et al. Curr Alzheimer Res. 2013;10(3):240-251)であった。
識別タスク
IDNは、選択反応時間の尺度である。このタスクにおいて、コンピューターの画面の中央においてイベント(すなわち、カードが表向きになる)が発生したら、患者は、このイベントが、予め決められた不変の判断基準(カードの色は赤であるか)を満たすか否かについて、「はい」又は「いいえ」を決めなければならない。この試験に関して、研究の主な依存尺度(primary dependent measure)は、正解に対するlog10変換した反応時間の平均であった。
インターナショナルショッピングリスト
ISLとISRLは、コンピューターで制御される言語学習/エピソード記憶の試験である。この試験において、患者に12単語のリストを読ませる。各単語は、具体的な名詞であり、試験が行われている文化/社会において一般的に見られる食物品を説明するものである。試験官は、患者に「これから、スーパーマーケット/商店/市場/専門店で買って欲しい品物のリストを読み上げる」と言う。12単語が読み上げられた後、患者は、できるだけ多くの単語をすぐに思い出そうとする(すなわち、ISL即時想起)。患者がこれ以上の単語を思い出すことができなくなったら、同じ指示の後に、同じ単語順で同じリストを再度読み上げる。リストを読み上げ、応答を待つプロセスを3回繰り返す。コンピューターで制御されたバッテリーが完了したとき(最低20分の遅延を伴う)、患者は、ショッピングリストからできるだけ多くの品物を思い出すことが求められる(ISL遅延想起;すなわち、ISRL)。ISL及びISRLの両試験について、主な依存尺度は、思い出した単語の数であった。
ワンバックテスト
ONBメモリータスクは、ワーキングメモリーの有効な測定法である。このタスクにおいて、患者に、コンピューターの画面の中央1回の刺激(すなわち、カードが表向きになる)を示す。患者は、現在のカードが直前のテストで見たカードと一致するか否かについて、「はい」又は「いいえ」を決めなければならない。ソフトウェアにより、各回答の速度及び正確さを測定する。この試験について、研究の主な依存尺度は、正答率(すなわち、正確さ)の逆正弦変換であった。
グロトン迷路学習テスト
改変GMLは、短期記憶を評価する。試験は、追跡タスクから開始し、患者がタスク内容に慣れることを可能にする。患者に、コンピュータータッチスクリーン上の10×10の格子状に並んだタイルを見せる。患者に、格子の周りを動いているタイルを追いかけるよう指示する。患者がルールを理解したら、患者は、時限追跡試験に進むことができる。該試験において、患者は、目標を30秒間フォローアップする必要がある。GMLについて、患者に、コンピュータータッチスクリーン上の10×10の格子状に同様に並んだタイルを見せる。これらの100の可能な位置の中に、28ステップの経路が隠されている。スタート地点は、左上の青色のタイルによって示され、ゴール地点は、格子の右下の赤色の丸のタイルである。患者に、タイルの下に隠されている経路を見つけ出すよう指示する。患者は、1回に1つのタイルを選ぶことにより、これを行う。選択するたびに、コンピューターは、緑色のチェックマークを表示すること(すなわち、このタイルは経路の1ステップである)により、正しいか否かを示す。選択を間違えた場合、赤色のバツが示される(すなわち、これは経路のステップではない)。選択が正しかった場合、緑色のチェックマークが付けられた場所は表示されたままになる。次の選択をすると、間違えた位置を示す赤色のバツはすぐに非表示になる。経路の場所を確認する間、患者はいかなるルールも遵守する必要がなく、むしろ患者は、できるだけ経路を効率的に見つければよい。患者が28ステップの経路のすべてのステップを見つけたら、経路のステップを示す緑色のチェックマークが消され、試験終了を示す。患者は、スタート地点に戻り、同じ経路を再度見つけ出すことが求められる。この過程を4回繰り返し、5つの学習試験を行う。患者はまた、逆方向で試験を繰り返す必要があり、この場合、前と同じ指示に従って隠されている経路を見つけ出すが、逆方向で経路を見つけ出す。このタスクには、よく一致している20の代替形態があり、20すべて終了するまで、患者が同じ隠された経路を学習する必要がないように、擬似ランダムの順で選択される。。この試験に関して(順行部分及び逆行部分の両方に関して)、主な依存尺度は、5回試験の全体で合計した、隠されている経路を見つけ出すために犯した誤りの数(すなわち、正確さ)であった。
脳波記録法及び誘発反応電位
安静時にEEGを用いて、及び聴覚刺激の提示期間中にERPを用いて、脳活動を測定した。以下のEEG及びERPパラメーターを調べた。なぜなら当該パラメーターは、AD患者の安静時及び認知処理の期間中の脳活動異常の検出に対して感受性があるからである(Dierks T, Ihl R, Frolich L, Maurer K. Psychiatry Res. 1993;50(3):151-162; Hedges D, Janis R, Mickelson S, Keith C, Bennett D, Brown BL. Clin EEG Neurosci. 2016;47(1):48-55; Pekkonen E. Audiol Neurootol. 2000;5(3-4):216-224):
・開眼状態及び閉眼状態の期間(各3分間)中のEEG活動により測定されるデルタ波、シータ波、アルファ波、ベータ波及びガンマ波の周波数帯域における安静状態パワー値
・ERPマーカー(おおよそ45分間)
-ミスマッチ陰性電位(MMN;感覚ゲーティング/変化の検出)-振幅及び潜時
-P300-P3a及びP3b(更新時のワーキングメモリー及び注意力)-振幅及び潜時
-40Hzの聴覚の定常状態の反応(ASSR;ガンマ振動及び同調性)-ガンマ帯域の誘発パワー値及び位相同期
以下のパラダイムを用いて、EEG及びERPのマーカーを定量化した:
・安静状態のパラダイム(6分間):デルタ波、シータ波、アルファ波、ベータ波及びガンマ波の周波数帯域の周波数帯域パワー値の分析のために、患者が開眼(3分間)及び閉眼(3分間)して座っているときにEEGを記録した。主な依存尺度は、開眼及び閉眼状態で、Cz電極での正規化された平均パワー値である。
・受動的な聴覚オドボールパラダイム(23分間):患者に、無声映画を見ている間、聴覚刺激を無視するよう指示した。患者に、85dBトーンの疑似ランダム系列(5msecの立上がり/立下り時間、500msecの刺激開始非同調性)を聞かせた。85%は標準刺激であり(50msec、1kHz)、15%は長さも高さも異なる逸脱刺激であった(125msec、1.5kHz)。事象関連電位は、標準刺激に対する波形及び逸脱刺激に対する波形に反応して発生した。逸脱刺激から標準刺激を引いた差の波形が発生した。主な依存尺度は、Fz電極及びFCComp電極でのMMN振幅及び潜時(前頭部電極の平均値)であった。
・40HzのASSRパラダイム(8分間):周波数40Hz、トレイン間の間隔1秒の500msトレインで提示される1msの85dBのホワイトノイズクリックに応答して、ガンマ波の定常状態応答を評価した。全部で500クリックのトレインを提示した。主な依存尺度は、Fz電極及びFCComp電極でのガンマ帯域の誘発パワー値及びガンマ位相同期であった。
・能動的な聴覚オドボールパラダイム(11分間):患者に、85dBトーンの疑似ランダム系列(5msec立上がり/立下り時間、1500msecの刺激開始非同調性)を聞かせた。80%は標準刺激であり(50msec、1kHz)、20%は目標刺激であった(500msec、0.5kHz)。患者に、目標刺激を聞いたら、ボタンを押すよう指示した。ERPは、目標トン(P3b)に反応して発生した。主な依存尺度は、CPComp電極でのP3b振幅及び潜時(中心部電極及び頭頂部電極の平均値)であった。
患者のデータは、本研究のために特別に訓練され認定を受けた現場担当者により操作された、資格のある検証済みの研究システム上に64-電極キャップから収集された。各患者の来院時に取得したEEGは、用量の割り当てについて知らされていなかった本研究のEEG専門家により定性的にレビューされ、また、フィードバックは、評価の2日以内に、継続的に、関連施設の現場担当者に直接提供された。これにより、施設間の変動による問題を最小限に抑え、EEG手順に関して可能な限り最高レベルの一貫性と再現性を確保した。すべての患者がEEGを完了し、データが収集されたら、EEG専門家と研究チームは、事前に定義した基準を使用して、盲検法ですべてのデータをレビューし、どのEEGトレーサーが分析可能であるか、どのEEGトレーサーを統計分析から除外する必要があるかを特定した。
統計分析
Statistical analysis software(SAS(登録商標), SAS Institute, Cary, NC)を使用して統計学的評価を行った。ベースライン、治療、時点、及び時点相互作用による治療に対する固定効果を伴う反復測定についての混合モデルを使用して、バイタルサインのベースラインからの変化を分析した。ベースラインからの変化を従属変数として、ベースライン及び治療を共変数として、共分散の分析を使用して、探索的PDエンドポイントを分析した。各用量(及びプラセボからの差)の最小二乗平均値(LSM)を90%CI、P値及びESで示す。プラセボとのLSMの差をプールされた標準偏差で割って、ESを計算した。PDデータは、P値が0.10未満であり、かつESが0.4を超えた場合に(すなわち、中~大ES)、臨床的に有意であると考えられた。
EEG-ERPにおけるベースラインから聴覚刺激までの平均変化において、各治療群対プラセボの真の標準化ESが少なくとも0.97であると仮定した場合、患者60名のサンプルサイズ(治療群ごとに15名、最大10%の中止率)が80%以上の検定力を提供できると推定された。試験は、0.10の両側有意水準を有し、多重比較法に対する調整は行わないと仮定した。
結果
患者
87名の患者をスクリーニングし、60名を無作為化して少なくとも1用量の試験薬を投与した(プラセボ、n=15;HTL0018318:5mg、n=15;15mg、n=14;25mg,n=16;安全性解析集団[SAF、無作為化された用量]、PK解析対象集団[PKS];図4)。最大の解析対象集団(FAS)は、59名の患者で構成され、5mg群から1名の患者が除外された。すべての患者にプラセボを投与し、93.5%の患者(43/45)にHTL0018318を投与したら、試験を完了した。治療遵守の中央値は、すべての治療群において100%とした。ベースライン人口動態及び臨床的特徴は、治療群間で概ね同程度であった(表9)。
安全性と忍容性
表10には、プラセボ又はHTL0018318を投与した2名以上の患者がTEAEを報告したことが示されており、頭痛は、全治療群にわたって最も一般的に報告されたTEAEであった。大半のTEAEの重症度は軽度であり、漸増用量段階中に発生した(用量維持段階中は、TEAEの発生率は約30%低かった)。重篤なTEAE又は死亡はなかった。2名の患者がTEAEが原因で治療を中止した(投与1日目に、5mgに無作為に割り当てられた1名の患者でBPがに増加した;投与24日目に、15mgに無作為化に割り当てられた1名の患者で悪心)。TEAEの発生率(治療に関連したTEAEの発生率ではない)は、HTL0018318の用量増加とともに増加した。コリン作動性TEAEとしては、腹痛、下痢、疲労、及び悪心が挙げられ、HTL0018318の最も高い2つの用量(15及び25mg)での発生率は、0~13%であった。
収縮期BP(SBP)及び拡張期BP(DBP)の投与後の上昇は、HTL0018318を投与した患者(全用量、用量との関連性なし)において観察され、一般的に、数時間後に投与前のレベルに戻った(図12~15)。投与前のBPは、投与を持続しても漸増しなかった。SBP及びDBPの投与後の低下は、プラセボを投与した患者において観察された。混合モデル型統計分析では、HTL0018318を投与した患者のSBP及びDBPにおける最大上昇平均値は、プラセボを投与した患者における平均値を5~10mmHg上回り、最大濃度の時点で発生した(Tmax;投与後1~2時間;図6~9)ことが示された。HTL0018318の全用量にわたって薬の効果が同じ様であり、1日目、6日目及び11日目にしか観察されなかった一方で、16日目及び28日目では、プラセボを投与した患者とHTL0018318を投与した患者との間に差異がなかった。HTL0018318(全用量)又はプラセボによる起立性BP又はHRでは、有意な変化はなかった(図6~9、12~15)。
治療群又は試験日の間で、ECGプロファイル又は他のバイタルサインの変化における有意な又は一貫したパターンはなかった。臨床的に重大な身体検査若しくは神経学的検査の所見、又は肝機能及び血液学などの臨床検査の異常はなく、自殺のリスク上昇もなかった。
探索的な薬物動力学的エンドポイント:Cogstateテスト・バッテリー
注意力パフォーマンス(反応時間;IDN)の有意な改善は、15mg用量のHTL0018318で観察された(LSM差0.11;90%CI:0.02、0.21;P=0.0455;ES:0.62)(図10)。5mg及び25mg用量では、有意な改善は観察されなかった。
学習及び記憶力の臨床的に重要な改善は、25mg用量のHTL0018318で観察された(ISL-即時想起:LSM差1.11個単語;90%CI:-1.04、3.25;P=0.39;ES=0.34;ISL-遅延想起:LSM差0.65;90%CI:-0.25、1.56;P=0.2330;ES=0.49;複合型[ISL-即時及び遅延想起]:LSM差0.21、90%CI:-0.09、0.51;P=0.2421;ES:0.48)(図10)。しかしながら、これらの利点の規模は小さすぎて、統計的有意性をもたらさなかった。
HTL0018318のいずれの用量においても、ONB反応時間若しくは正確さ、又はGMLタスク(順行又は逆行)のパフォーマンスに、統計的に有意は差がなかった(図10)。
探索的な薬物動力学的エンドポイント:EEG及びERP
安静状態のパラダイム
開眼状態の中心部(Cz)電極でのデルタパワー値の著しい増加が、5mg及び15mg用量のHTL0018318で観察され、25mgの場合では同じ傾向の小さな効果が観察された。最も大きなESは、15mg用量で観察された(LSM差3.8;90%CI:0.6、7.0;P=0.053;ES:0.75)。開眼及び閉眼の状態において、いずれの用量においても、異なる周波数帯域にわたるEEGパワー値に対する他の重大な影響がなかった。
受動的な聴覚オドボールパラダイム
前頭部(Fz)電極でのMMN振幅の重大な改善(すなわち、より負の値)は、5mg及び15mg用量のHTL0018318で観察され、25mgの場合では同じ傾向の小さな効果が観察された(図4A)。5mg用量によるESが最も大きく(LSM差-0.82uV;90%CI:-1.43、-0.20);P=0.030;ES:-0.84)、15mg用量によるESが中等度であった(LSM差-0.63uV;P=0.105;ES:-0.64)。前頭部中心部複合型(FCComp)電極を使用したMMN振幅及びピークMMN振幅の改善は、Fz電極で観察されたものと一致していた。ピークMMN潜時では、統計的に有意な改善が観察されなかった。
HTL0018318の3用量で、Fz電極又はFCCompでのP3a振幅又は潜時に、一貫した統計的に有意な効果が観察されなかった。しかしながら、Fz電極でのP3a振幅における著しい減少が、15mg用量で観察された(LSM差-0.84uV;90%CI:-1.59、-0.09;P=0.065;ES:-0.73)。5mg及び25mgの効果は、15mgの効果と一致しなかった。
能動的な聴覚オドボールパラダイム
HTL0018318のどの用量によっても、中心部頭頂部複合型(CPComp)電極でのP3b平均振幅に、統計的に有意な効果に観察されなかった。しかしながら、P3b平均振幅では、3用量全体で一貫した増加が観察された(ES:0.22~0.44;図4B)。
CPComp電極での振幅のピークP3b潜時は、5mg及び25mg用量のHTL0018318で中程度から大幅に統計的に有意な減少があった(図4B)。最も大きな影響は5mgによる場合であった(LSM差-38ms;90%CI:-70、-6.1;P=0.052;ES:-0.81)。15mg用量では、有意な減少はなかった。
Hz聴覚の定常状態の反応パラダイム
全時間帯/ウィンドウ(すなわち、1~500ms)において、HTL0018318のどの用量でも、Fz電極でのガンマ帯域の誘発パワー値又は位相同期の振幅に有意な影響はなかった。
探索的な薬物動力学的エンドポイント:神経精神症状評価
NPI-12症状(全スコア)は、プラセボに比べて、5mg用量のHTL0018318で統計的に有意な減少があり(LSM差-1.79;90%CI:-3.31、-0.26;P=0.055;ES-0.73)、15mg及び25mgでも一貫した傾向が観察された(それぞれのES:-0.54及び-0.53)。全体として、患者全体で、症状の発生率は低かった(平均スコア2~2.5[範囲:0~26])。
探索的な薬物動力学的エンドポイント:薬物動態学
HTL0018318の血漿中PKを用いて、患者が漸増用量スキームを進んでいく際の用量-曝露の関係を確立した(表11)。所定の用量レベルのいずれかを確立したら、その後のPK試料の採取日にPKは変化せず、定常状態が5日間の毎日の投与で達成されたことを示した。定常状態でのトラフ濃度を反映する投与前濃度は、投与間隔を通じてHTL0018318が維持される濃度を超える平均最小濃度を示した。用量と曝露との比例関係は、28日目に確認された。28日目のHTL0018318の平均最大濃度(Cmax)について、5mgを投与された患者では51.8ng/mLであり、10mgを投与された患者では89.0ng/mLであり、15mgを投与された患者では123ng/mLであり、25mgを投与された患者では224ng/mLであった。同様に、28日目の投与後0時間から4時間までの平均曲線下面積(AUC0-4h)について、5mgでは144h.ng/mLであり、10mgでは222h.ng/mLであり、15mgでは368h.ng/mLであり、25mgでは668h.ng/mLであった。すべての用量のTmax中央値は1~2時間であった。
考察
この第1b/2a相の研究は、軽度から中等度ADの患者において、選択的ムスカリンM1受容体のオルソステリックなアゴニストであるHTL0018318の安全性、忍容性、PK及び探索的PD効果(認知及び精神神経系症状)に対する初めての調査であった。
4週間の研究期間中に、安定用量のドネペジルと併用して、HTL0018318の用量を2週間かけて漸増した。
HTL0018318は、健康な若い及び高齢の参加者における以前の研究と一致する、再現性のあるPKを示した(Bakker C, Tasker T, Liptrot J, Hart E, Klaassen E, Doll RJ, Brown GA, Brown AJH, Congreve M, Weir M, Marshall FH, Cross DM, Groeneveld G, Nathan PJ. Alzheimers Res Ther. 2020;(投稿済); Bakker C, Tasker T, Liptrot J, Hart EP, Klaassen ES, Prins S, et al. Br J Clin Pharmacol. 2020)。HTL0018318への全身曝露(Cmax及びAUC0-4hを指標とする)は、5~25mgの用量で比例的に増加したが、反復投与では変わらなかった。HTL0018318は、概ね忍容性が良く、治療中止の患者は2名のみであり、大半のTEAEは軽度かつ頻度も少なかった。安全性プロファイルは、概ね以前の研究と一致していた(Bakker C, Tasker T, Liptrot J, Hart E, Klaassen E, Doll RJ, Brown GA, Brown AJH, Congreve M, Weir M, Marshall FH, Cross DM, Groeneveld G, Nathan PJ. Alzheimers Res Ther. 2020;(投稿済); Bakker C, Tasker T, Liptrot J, Hart EP, Klaassen ES, Prins S, et al. Br J Clin Pharmacol. 2020)。最も一般的なTEAEは用量関連であり、腹痛、下痢、疲労、頭痛、多汗症及び悪心が挙げられ、頭痛のみが、HTL0018318を服用した2名超の患者に発生した。最も高い2用量(15及び25mg)でのコリン作動性TEAEの発生率は、最大7%又は13%であったことに注目されたい。M1PAMは、M1受容体アゴニストよりも優れたコリン作動性TEAEプロファイルを有する可能性があることが以前に示唆されている(Bradley SJ, Molloy C, Bundgaard C, Mogg AJ, Thompson KJ, Dwomoh L, et al. Mol Pharmacol. 2018;93:645-56)。しかしながら、軽度から中等度ADの患者を対象とした、M1PAM MK-7622の最近の臨床研究では、コリン作動性有害事象の発生率が21%であり(Voss T, Li J, Cummings J, Farlow M, Assaid C, Froman S, et al. Alzheimer's & dementia (New York, N Y). 2018;4:173-81)、本研究におけるHTL0018318の最も高い2用量で報告された7~13%の発生率よりも高かった。興味深いことに、TEAEの発生率は、漸増用量期間(1~15日目)に比べて、用量維持期間中(16~28日目)におおよそ30%減少したようである。以前の臨床試験では、TEAEを管理するために漸増用量の投与計画が必要であることが示されていなかったが、このアプローチは、本研究では許容された低いTEAE発生率及び軽度のTEAEプロファイル(特に、全体的なTEAE及びコリン作動性TEAE)に寄与する可能性がある。
HTL0018318は、BPの一時的な上昇に関連しており、全身の薬物曝露が最も高いと推定された時間付近に観察されたSBP及びDBPの最大平均上昇が5~10mmHgであり、明らかな用量-反応の関係はなく、持続投与による忍容性の証拠はいくつかあった。BPの一時的な上昇に関連する正確な機序は不明であるが、M1受容体の中枢部活性化を介して媒介される可能性が高い(Brezenoff HE, Giuliano R. Annu Rev Pharmacol Toxicol. 1982;22:341-81; Brezenoff HE, Xiao YF. Life Sci. 1989;45:1163-70; Scheucher A, Pirola CJ, Balda MS, Dabsys SM, Alvarez AL, Finkielman S, et al. Neuropharmacol. 1987;26:181-5; Medina A, Bodick N, Goldberger AL, Mac Mahon M, Lipsitz LA. 1997;29:828-34)。著しい治療効果は、他の心血管エンドポイント(起立性BP、HR及びECGなど)又は臨床検査の安全性パラメーターでは観察されなかった。起立性BP又はHRに重大な影響を及ばさずにBPが上昇したことは、キサノメリンであるM1/M4アゴニストなどの他のムスカリンアゴニスト(BP及びHRにおける著しい上昇を引き起こしたことのみならず、起立性BPも減少したこと)とは対照的である(Scheucher A, Pirola CJ, Balda MS, Dabsys SM, Alvarez AL, Finkielman S, et al. Neuropharmacol. 1987;26:181-5)。本研究のデータは、ADにおけるムスカリンアゴニストの心血管に対する影響が、部分アゴニストを使用し、及び本明細書において試験した用量範囲内の漸増用量の投与計画を用いて投与したときに、あまり顕著ではない場合があることを示唆している。
認知機能の行動学的及び電気生理学的バイオマーカーの両方を用いて、探索的PD効果を測定した。Cogstate NTBに含まれる行動試験は、コリン作動性調節に対して敏感であり(Fredrickson A, Snyder PJ, Cromer J, Thomas E, Lewis M, Maruff P. Human psychopharmacology. 2008;23:425-36)、AD患者の認知障害を検出することができる(Lim YY, Harrington K, Ames D, Ellis KA, Lachovitzki R, Snyder PJ, et al. J Clin Exp Neuropsychol. 2012;34:853-63; Lim YY, Maruff P, Pietrzak RH, Ames D, Ellis KA, Harrington K, et al. Brain. 2014;137:221-31)。さらに、Cogstate NTBは、アルツハイマー病評価尺度-認知(ADAS-Cog)などの他の尺度よりも、短期間の治療後の認知促進シグナルの検出感度が高いことを示している(Grove RA, Harrington CM, Mahler A, Beresford I, Maruff P, Lowy MT, et al. Current Alzheimer research. 2014;11:47-58)。EEG及びERPタスクにより、安静状態の脳活動(様々な周波数帯域のEEGパワー値)、注意力及び記憶力(MMN)、ガンマ周波数範囲のネットワーク活動及び同調性(40Hz ASSR)、注意力(P3a)、並びに注意力/ワーキングメモリー(P3b)に関する非常に初期の感覚処理を評価した。これらのバイオマーカーは、AD患者の認知障害を検出することを示している(Dierks T, Ihl R, Frolich L, Maurer K. Psychiatry Res. 1993;50:151-62; Hedges D, Janis R, Mickelson S, Keith C, Bennett D, Brown BL. Clin EEG Neurosci. 2016;47:48-55; Audiol Neurootol. 2000;5:216-24)。
HTL0018318は、多くの認知バイオマーカーに対して正のPD効果を示し、認知機能に対する臨床的に関連した影響、及び中心的なターゲットエンゲージメントの証拠を提供した。Cogstate NTBでは、エピソード記憶について有望なデータとともに、注意力に対する有意な改善が観察された(25mgのHTL0018318:ISL-遅延想起、ES:0.49;ISL複合型、ES:0.48)。エピソード記憶の改善は、複数のムスカリンM1受容体アゴニストにわたる前臨床証拠のみならず、M1アゴニストであるGSK1034702による同じ試験を使用したヒトにおける以前の知見とも一致している(Nathan PJ, Watson J, Lund J, Davies CH, Peters G, Dodds CM, et al. The international journal of neuropsychopharmacology. 2013;16:721-31)。軽度認知障害(MCI)及びAD(ES:0.5~2.5)で観察された注意力及びエピソード記憶の機能障害という観点から、HTL0018318による認知改善は臨床的に関連している(Lim YY, Harrington K, Ames D, Ellis KA, Lachovitzki R, Snyder PJ, et al. J Clin Exp Neuropsychol. 2012;34:853-63; Lim YY, Maruff P, Pietrzak RH, Ames D, Ellis KA, Harrington K, et al. Brain. 2014;137:221-31)。さらに、ESが0.4の認知的介入(すなわち、認知矯正療法)は、臨床的有用性を示している(McGurk SR, Twamley EW, Sitzer DI, McHugo GJ, Mueser KT. The American journal of psychiatry. 2007;164:1791-802)。
電気生理学のバイオマーカーにおいても、HTL0018318の認知パフォーマンスへの効果と一致しており、有意で臨床的に関連した効果が観察された。MMN及び開眼時のデルタパワーに対する効果が観察され、平均ES(HTL0018318のすべての用量)は中等度(それぞれ0.6及び0.52)であった。MMNは、初期の感覚的注意力及び記憶力、並びに変化検出のバイオマーカーである。MMNの機能障害(振幅及び潜時の両方)は、MCIとADで報告されており(Pekkonen E, Jousmaki V, Kononen M, Reinikainen K, Partanen J. Neuroreport. 1994;5:2537-40; Lindin M, Correa K, Zurron M, Diaz F. Frontiers in aging neuroscience. 2013;5:79)、障害は、エピソード記憶と関連している(Laptinskaya D, Thurm F, Kuster OC, Fissler P, Schlee W, Kolassa S, et al. Frontiers in aging neuroscience. 2018;10:5)。コリンエステラーゼ阻害薬(例えば、ドネペジル)のMMNに対する効果が不明であるが、本研究で、ADにおいて観察された効果の大きさは、様々な臨床集団において報告された向知性薬であるメマンチンによる効果の大きさと同等以上である(Korostenskaja M, Nikulin VV, Kicic D, Nikulina AV, Kahkonen S. Brain Res Bull. 2007;72:275-83; Swerdlow NR, Bhakta S, Chou HH, Talledo JA, Balvaneda B, Light GA. Neuropsychopharmacol. 2016;41:419-30)。P3bは、注意力及び記憶力のマーカーであり、P3bの変化は、ワーキングメモリーが更新されている場合に割り当てられる注意リソースの量(及び速度)を反映する(Polich J, Criado JR. International journal of psychophysiology : official journal of the International Organization of Psychophysiology. 2006;60:172-85)。MCI及びADにおいて、振幅及び潜時の両方について中程度から高度のP3bの一貫した機能障害が報告されており、P3bの潜時変化と様々な認知過程との間に正の関連性を有することが見いだされている(Howe AS, Bani-Fatemi A, De Luca V. Brain Cogn. 2014;86:64-74; Thomas A, Iacono D, Bonanni L, D'Andreamatteo G, Onofrj M. Clinical neuropharmacology. 2001;24:31-42)。本研究において観察されたP3bの振幅及び潜時の中等度改善(ES:0.33及び0.42)は、ドネペジル及びリバスチグミンなどのコリンエステラーゼ阻害薬について報告されたもの(ES:0.08~0.21)よりも大きい(Thomas A, Iacono D, Bonanni L, D'Andreamatteo G, Onofrj M. Clinical neuropharmacology. 2001;24:31-42)。デルタパワー変化の意義は不明であるが、デルタ帯域とシータ帯域における低速振動が、記憶力を含む認知機能と関連する長距離のネットワーク状態を活性化させる効果があると考えられる(Rac-Lubashevsky R, Kessler Y. Journal of cognitive neuroscience. 2018;30:1870-82)。本明細書において、デルタパワーで観察された増加は、MMN及びP3bで観察された効果、並びに注意力及びエピソード記憶を測定した行動タスクと一致している。
認知のバイオマーカーに対するHTL0018318のPD効果は、治療用量のドネペジルを維持しているAD患者に対する中心的なターゲットエンゲージメントに関する予備的な裏付けの有力な証拠を提供する。中程度から高度の臨床的に有意な認知促進効果は、初期の感覚的注意力及び記憶力の処理(MMN)、注意力(P3bとIDN)、並びにエピソード記憶(ISL)で観察されたが、実行機能(ONBとGML)では観察されなかった。より複雑で努力を要する認知リソースを必要とする実行機能を改善するには、より高用量が必要になる可能性がある。全体として、これらの知見は、多くの理由から有望である。第一に、単語認識/想起がADAS-Cogの合計スコアのほぼ45%を占めるため、ISLパフォーマンスで観察された改善は、今後の第2/3相の研究におけるADAS-Cogパフォーマンスの改善につながる可能性がある。第二に、治療期間はわずか4週間であった。通常の認知機能低下への対症効果がより明らかになれば、より大きな効果がより長い治療期間にわたって観察される可能性がある。最後に、認知性バイオマーカーの全体にわたって観察された中程度から高度のESは、治療用量のドネペジルに上乗せされたベネフィットを反映しており、このことは、知見を更に重要にしている。興味深いことに、HTL0018318は、NPI-12により測定される精神神経系症状へ中程度の正の効果もいくらか示した。これらのデータは、励みになり、ADにおけるM1/M4受容体アゴニストであるキサノメリンについて以前に報告された知見を裏付ける(Bodick NC, Offen WW, Shannon HE, Satterwhite J, Lucas R, van Lier R, et al. Alzheimer disease and associated disorders. 1997;11(suppl. 4):S16-22)。
血圧の同様の上昇は、HTL0018318のすべての用量において同様に観察されたが、PD効果には、用量間の明らかな差はなかった。エンドポイント間で用量反応の関係は異なったが、MMN、P3b及びCogstate識別に対する効果の証拠は、HTL0018318のすべての用量において認められた。プラセボを用いた用量の対比較における第一種過誤と第二種過誤は、これらの差異のいくつかを説明し得る。AD及び他の適応症に対する最適用量は、今後の研究において検討されるであろう。HTL0018318が最大用量で忍容性が良かったことを考慮すると、5~25mgより広い用量範囲を使用して、安全性とPD効果を評価することは実現可能であり、情報的にも有益であろう。本研究の限界は、メマンチンとの併用を受けた患者の数が少なかった(n=4)ため、HTL0018318とメマンチンとの併用による忍容性又はPD効果についての結論を出すことができなかったことである。
要約すると、この4週間の第1b/2a相の研究では、M1受容体のオルソステリックなアゴニストであるHTL0018318が、2週間の漸増用量の投与計画を用いて安定用量のドネペジルに対する補助治療として投与された場合、軽度から中等度のAD患者における忍容性が良かったことが実証された。HTL0018318はまた、認知機能のバイオマーカーへの正の効果及び臨床的に有意な効果を示した。これらの知見は、ADを含む認知症の対症療法としてのHTL0018318の更なる開発を支持する。
Figure 2024509875000030
Figure 2024509875000031
Figure 2024509875000032
Figure 2024509875000033
実施例Bの受動的回避試験。 実施例Cの研究デザイン(CRU=臨床研究ユニット;Dpz=ドネペジル;ss=定常状態)。 実施例CにおけるドネペジルPK試料のタイミング。 実施例Dの患者配置のフロー(AE=有害事象)。 図5A.実施例Dの研究デザイン;図5B.実施例Dの漸増用量スケジュール(*減少=5mg用量の減少)。 実施例D-HTL0018318の無作為化された患者とプラセボの無作為化された患者との間のバイタルサインの差異-A.仰臥位収縮期血圧。 実施例D-HTL0018318の無作為化された患者とプラセボの無作為化された患者との間のバイタルサインの差異-B.仰臥位拡張期血圧。 実施例D-HTL0018318の無作為化された患者とプラセボの無作為化された患者との間のバイタルサインの差異-C.起立性の収縮期血圧の差異。 実施例D-HTL0018318の無作為化された患者とプラセボの無作為化された患者との間のバイタルサインの差異-D.仰臥位心拍数(SAF、無作為化)。 実施例D-プラセボを服用した患者と比較した、HTL0018318を服用した患者におけるCogstate NTBのES(FAS)(*5mgのHTL0018318群の効果は、一人の患者による。該患者はベースライン評価に非常に多くの間違いを犯し、28日目に大幅に減少した。ES:効果量;NTB:神経心理学的テスト・バッテリー)。 実施例D-受動的及び能動的な聴覚オドボールパラダイム中にHTL0018318を服用した患者とプラセボを服用した患者との間のEEG及びERPの差異。A.受動的な聴覚オドボールパラダイム:頭部のマップは、MMN振幅における薬物-プラセボの差異を示している。色が薄いほど、MMN振幅において、薬物に関連した増加が大きいことを示している。チャートは、Fz電極における、HTL0018318を服用した患者におけるMMN振幅の変化の効果量をプラセボを服用した患者と比較して示している。B.能動的な聴覚オドボールパラダイム:チャートは、CPComp電極における、HTL0018318を服用した患者におけるP3b平均振幅及びピーク潜時の変化*に対する効果量をプラセボを服用した患者と比較して示している(*ピーク潜時の短縮は、正の治療効果を表しており、したがってチャートにおいて正の効果量として示されている。CPComp:中心部頭頂部複合型電極;EEG:脳波;ERP:誘発反応電位;Fz:前頭部(電極);MMN:ミスマッチ陰性電位)。 実施例D-仰臥位収縮期血圧(SE、標準誤差)。 実施例D-仰臥位拡張期血圧(SE、標準誤差)。 実施例D-起立性の収縮期血圧の差異(SE、標準誤差)。 実施例D-仰臥位心拍数(SAF、無作為化)(SE、標準誤差;bpm、1分当たりの心拍数)。

Claims (17)

  1. アルツハイマー病又は認知症の治療に使用するための医薬組成物であって、化合物3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチル又はその医薬上許容される塩を含み、化合物又はその医薬上許容される塩の負荷投与量が、5~25mgである、前記医薬組成物。
  2. 化合物3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチルが
    Figure 2024509875000034
    又はその医薬上許容される塩である、請求項1に記載の使用のための医薬組成物。
  3. 化合物3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチルが
    Figure 2024509875000035
    又はその医薬上許容される塩である、請求項1に記載の使用のための医薬組成物。
  4. 化合物3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチルが、塩酸塩として存在する、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
  5. 化合物3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチル又はその医薬上許容される塩の負荷投与量が5mgである、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
  6. 化合物3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチル又はその医薬上許容される塩の負荷投与量が15mgである、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
  7. 化合物3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチル又はその医薬上許容される塩の負荷投与量が25mgである、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
  8. 標準治療のコリンエステラーゼ阻害薬と一緒に投与される、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
  9. 標準治療のコリンエステラーゼ阻害薬がドネペジルであり、ドネペジルの負荷投与量が10mgである、請求項8に記載の使用のための医薬組成物。
  10. 1種以上の医薬上許容される担体又は賦形剤を更に含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
  11. 錠剤の形である、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
  12. 経口投与に適している、請求項1~11のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
  13. 化合物3-(3-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカ-8-イル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボン酸エチル又はその医薬上許容される塩が、5~25mgの1日量で投与される、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
  14. 1日量が15mgである、請求項13に記載の使用のための医薬組成物。
  15. アルツハイマー病の治療に使用する、請求項1~14のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
  16. 認知症の治療に使用する、請求項1~15のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
  17. 認知症が、レビー小体型認知症である、請求項16に記載の使用のための医薬組成物。
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