JP2024505134A - 抗体の特徴付けのための手段 - Google Patents

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Abstract

本開示は、超希薄溶液中において自己会合特性(粘度および乳白光)に関して標的タンパク質をスクリーニングするための手段(例えば、使用、ナノ粒子、溶液、方法、キット、およびシステム)を提供する。この手段は、最終用途の製剤と比べて桁違いに低い濃度で多数の標的タンパク質をスクリーニングするための手段を提供する。

Description

本開示は、超希薄溶液測定値を使用してタンパク質(例えば、治療用抗体)の自己会合特性を検出するのに有用な手段(例えば、使用、ナノ粒子、溶液、方法、キット、およびシステム)を提供する。
モノクローナル抗体(mAb)は、最も成功した医療治療法の一つであり、多様な疾患を処置するのに使用される。この成功にもかかわらず、mAbは、製造、安定性、および送達での大きな課題をもたらす開発上での問題点を抱えやすい。具体的には、皮下投与が意図されたmAbの開発は、高濃度製剤の必要性により妨げられる可能性があり、この高濃度製剤は、高粘度、乳白光、相分離、および凝集の形での溶液挙動の不良により限定的になることが多い。病院環境におけるmAbの静脈内投与は日常的であるが、皮下投与は低侵襲性であり、患者のコンプライアンスがより保証され、かつ医療インフラが不十分な環境においても容易に適応可能である。開発可能な治療用mAb候補の迅速な選択が常に望まれているが、感染症パンデミックと戦う場合には、この緊急性はさらに深刻となる。開発可能性に問題が生じた場合には、資源集約的な緩和戦略を講じなければならず、このことは、遅延を必ず引き起こし、かつ成功を保証するものではない。従って、発見の初期段階で薬剤のような特性を有するバリアントを同定することをかなり重視しつつ、有利な溶液特性を有するmAbを早期に選択することが、はるかに効率的である。
本明細書で開示されているのは、第1の態様では、正荷電ポリマーの使用であって、表面上に捕捉剤を含むナノ粒子を安定化させるための使用である。
本明細書で開示されているのは、第2の態様では、表面上に、捕捉剤と、正荷電ポリマーとを含むナノ粒子である。
本明細書で開示されているのは、第3の態様では、溶液であって、第2の態様の複数のナノ粒子を含む溶液である。
本明細書で開示されているのは、第4の態様では、キットであって、ナノ粒子と、正荷電ポリマーとを含むキットである。
本明細書で開示されているのは、第5の態様では、標的タンパク質の自己会合傾向を決定する方法であって、
(i)第3の態様で定義された溶液中で標的タンパク質を捕捉する工程、
(ii)この溶液の色を決定する工程
を含み、
標的タンパク質を含まない、第3の態様で定義されたコントロール溶液と比較したこの溶液の色の変化は、標的タンパク質の自己会合傾向を示す、
方法である。
本明細書で開示されているのは、第6の態様では、自己会合特性に関して希薄濃度で標的タンパク質をスクリーニングする方法であって、捕捉剤と正荷電ポリマーとを表面(例えばナノ粒子(例えば金属ナノ粒子))上に吸着させて、捕捉剤コンジュゲートを形成すること;この捕捉剤コンジュゲートを、溶液(例えば緩衝液)中で標的タンパク質と共にインキュベートして、標的タンパク質コンジュゲートを形成すること;450nm~約750nmの範囲の複数の波長で、標的タンパク質コンジュゲートの吸光度を測定すること;および標的タンパク質コンジュゲートによる吸光度が最大となる波長としてプラズモン波長を特定することを含む方法である。
本明細書で開示されているのは、第7の態様では、捕捉剤、正荷電ポリマー、捕捉表面(例えば金属ナノ粒子)、溶液(例えば緩衝液)、標的タンパク質;少なくとも1種の較正タンパク質;および分光光度計の内のそれぞれの1つまたはそれ以上を含むシステムまたはキットである。
本開示の他の態様および実施形態は、下記の詳細な説明および添付の図面を考慮して明らかであるだろう。
モノクローナル抗体の例示的な研究開発プロセスの概略である。抗体発見キャンペーンは、標的生体分子を認識する数千もの候補抗体の特定および検証で始まる。大きなプールは、最適化段階中に数百のオーダーに凝縮され、候補は、親和性成熟およびヒト化を受ける。これらの初期段階中では、入手可能な材料は微量(ng~μg範囲)であり、そのため、粘度、乳白光、および凝集等の開発可能性の品質属性の評価は実行不可能となる。このため、開発可能性属性が低い分子が臨床開発に進むことは珍しいことではなく、実行可能な医薬品の生成に費やされる時間およびリソースの量が大幅に増加する。本明細書で説明されているCS-SINSアプローチ等の超低消費で高スループットのアッセイを使用するリード最適化中の主要な開発可能性属性の評価は、開発の後期段階における製造および製剤化中の合併症のリスクが低下した抗体候補の前進を促進し、タイムラインを早め、関連するリソースの消費も削減することになる。 図2A~2Dは、ポリリシンを使用する抗体-金コンジュゲートの安定化の評価を示す。標準的なAC-SINS実行からの免疫金コンジュゲート(図2A、左側)を、一般的な製剤およびプロセス条件(10mMの酢酸およびヒスチジン緩衝液、pH4.04~6.5)下で安定性に関して評価した。動的光散乱測定により、pH5.0で始まるコンジュゲートの急速の凝集を観察し、関連条件全体を通してpH6.5まで続いた(図2B、左側)。凝集したコンジュゲートのプラズモン波長の同時のシフトも観察され、吸光度分光法で測定した(図2C、左側)。pH範囲にわたってゼータ電位を測定し、pHが4.0から上昇するにつれて電位の一貫した低下を観察し、pH5.75付近でゼロに交差し、その後はマイナスに転じた(図2D、左側)。製剤空間中における免疫金コンジュゲートの安定性を達成するために、高荷電生体高分子である少量(3質量%)のポリリシンを組み込んだ(図2、中央)。粒径のDLS測定値(図2B、中央)およびプラズモン波長の光学測定値(図2C、中央)の両方を使用して、粒子の安定化をpH6.0まで観察した。コンジュゲートのデータ電位は、アッセイしたpH範囲にわたり正のままであった(図2D、中央)。しかしながら、pH6.0付近での電位の絶対値はゼロに近く、これは、不安定なコンジュゲートによる類似の実験での凝集と関連している。高度に安定化された15%ポリリシン条件により実証されたように(図2A、右側)、ポリリシンが3%~15%の範囲内で増加するにつれて安定化が増加した。このコンジュゲートは、DLSサイズ測定値(図2B、右側)およびプラズモン波長(図2C、右側)により示されるように、関連するpH範囲にわたり安定であった。高度に安定化された粒子のゼータ電位は、測定範囲にわたりプラスであった(図2D、右側)。図2Eは、ナノ粒子のプラズモン波長を決定するために使用される波長の関数としての吸光度の例示的なグラフである。 図2-1の続き。 図2-2の続き。 図3A~Hは、弱いタンパク質間相互作用の評価のための電荷安定化免疫金コンジュゲートの応用を示す。56種のモノクローナル抗体の多様なパネルを利用して、抗体自己相互作用の特定での電荷安定化免疫金コンジュゲートの有用性を評価した。このパネルは、治療用抗体データベース(TABS)から抽出された500種の分子のデータセットとの生物物理的特性の類似により明らかなように、臨床抗体の状況の正確な再現を表した(図3A~3D)。ポリリシンの様々な濃度(3%対10%)で実施した実験の結果を比較することにより、較正アプローチ(方法で説明されている)の頑健性が実証された。2つの条件間で優れた相関関係を観察し、このアッセイが試薬調製のばらつきに起因して起こり得るポリリシン濃度の小さい変化からの影響に対する耐性を示すことが実証された(図3E)。CS-SINSスコアを、重要な開発可能性特性の直接測定と比較し(全体が参照によって本明細書に組み入れられる、Kingsbury,J.S.他.Sci Adv 6、eabb0372、doi:10.1126/sciadv.abb0372(2020)を参照されたい)、これは、実験的に、粘度>30cPまたは乳白光>12NTUのmAbは、臨床開発中の製造および製剤化における問題を示唆することが立証された。これらのベンチマークを適用すると、CS-SINS閾値0.35を使用すると、良好な挙動(粘度<30cP、および乳白光<12NTU)、粘度(>30cP)、または乳白光(>12NTU)、またはmAbパネルの>85%での問題のある溶液挙動を示すことが分かった(図3F~3H)。 図3-1の続き。 図3-2の続き。 図3-3の続き。 図3-4の続き。 図3-5の続き。 CS-SINS較正プロセスの方法論を示す。CS-SINS測定値を、2つの試験を使用して較正して評価する。両方の試験に合格したCS-SINS測定値のみを許容すべきである。 図5A~Cは、CS-SINS測定値の例示的な較正を示す。ヤギ抗ヒトFc抗体と金粒子との緩やか混合(図5B)、または標的mAb濃度の50%の添加(図5C)に起因して、較正プロセスが合格した(図5A)および不合格した(図5B~5C)実験の例。試験番号1に合格するために、抗体-金コンジュゲートは、534nm(ヒトポリクローナル抗体)および533nm(NIST mAb)未満のプラズモン波長を示す。試験番号2に合格するために、コンジュゲートは、理論値(傾きに関して1、切片に関して0、およびRに関して1)の10%以内であるmAbの参照パネルに対する較正パネルの線形フィットパラメータを示す。CS-SINSスコアを、本明細書で説明されているように算出する。 図5-1の続き。 較正されたCS-SINS結果は、様々なポリリシン濃度を使用して調製されたコンジュゲートに関して強く相関していることを示す。様々な量のポリリシンによる実験からの結果を正規化するために、頑強な較正プロコルを開発した。0.03(97%IgG)および0.10(90%IgG)のポリリシン/IgGの質量分率にてポリリシンにより安定化されたヤギ抗ヒトFc抗体コンジュゲートを使用したmAbのパネルに関するプラズモンシフト測定値(図6A)。図6Bは、図4および5で詳述した較正を使用して、図6Aで報告したプラズモン測定値に関して2つのポリリシン/IgG質量分率で測定されたmAbのパネルに関するCS-SINSスコア間の較正のグラフである。 較正されたCS-SINS結果は、様々なポリリシン濃度を使用して調製されたコンジュゲートに関して強く相関していることを示す。様々な量のポリリシンによる実験からの結果を正規化するために、頑強な較正プロコルを開発した。0.03(97%IgG)および0.10(90%IgG)のポリリシン/IgGの質量分率にてポリリシンにより安定化されたヤギ抗ヒトFc抗体コンジュゲートを使用したmAbのパネルに関するプラズモンシフト測定値(図6A)。図6Bは、図4および5で詳述した較正を使用して、図6Aで報告したプラズモン測定値に関して2つのポリリシン/IgG質量分率で測定されたmAbのパネルに関するCS-SINSスコア間の較正のグラフである。 図7A~Cは、CS-SINS測定値が、IgGサブクラス特異的挙動において拡散相互作用パラメータと強く相関していることを示す。CS-SINSスコア(0.01mg/mL)は、kD測定値(1~10mg/mL)と十分に相関している(図7A、上)。CS-SINSスコアは、IgG1/IgG2抗体のサブセットに関してさらに十分に相関したkD測定値であり(図7A、中央)、IgG4抗体のサブセットに関しては相関が低い(図7A、下)。サブクラスとの関連における溶液挙動は、CS-SINS測定に関して提案された0.35閾値が、IgG1/IgG2サブクラスグループ化の不良な挙動の分子の全てを効果的に特定することを明らかにする(図7B)。IgG4に関する溶液挙動は、大部分が高い乳白光の傾向があるがCS-SINSアッセイでは常に反応するわけではないことから、予測することがより困難である(図7C)。 図7-1の続き。 図8A~Cは、ヒスチジン製剤(pH6)中におけるmAb自己会合を測定するためのポリシン安定化金コンジュゲートの使用の評価のグラフである。金粒子を、最初に、ヤギ抗ヒトFc IgGおよびポリリシン(≧70kDa)(図8A)、ヤギ非特異的IgGおよびポリリシン(図8B)、またはポリリシンのみ(図8C)でコーティングし、次いで、このコンジュゲートを、自己会合が様々なレベルのmAbのパネルと共にインキュベートした。吸着したmAbの量へのプラズモンシフトの依存性を評価するために、コンジュゲート(第1段階のコンジュゲート工程後)を、ヒトポリクローナル抗体のみ(0%mAb)、ヒトmAbのみ(100%mAb)、またはこれらの組み合わせで構成された一定濃度のヒト抗体(0.01mg/mL)と共にインキュベートした。報告するプラズモンシフトは、ヒトポリクローナル抗体に関連する。図8Aおよび8Bでは、ポリリシンとIgGとの質量比は0.03であり、コンジュゲート中に使用したポリリシンおよびIgGの濃度は、それぞれ0.012および0.388mg/mLであった。図8Cでは、コンジュゲーション中に使用したポリリシンの濃度は、0.4mg/mLであった。 図8-1の続き。 ヒスチジン製剤(pH6)中におけるプラズモンシフトのCS-SINS測定値へのポリリシンサイズの影響を示すグラフである。ヤギ抗ヒトFc抗体と様々なサイズのポリリシンポリマーとを共吸着させることによりコンジュゲートを調製し、このコンジュゲートを使用して、ヒトmAbのパネルのプラズモンシフトを測定した。図9Aは、30~70kDaのポリリシン(0.03ポリリシン/IgG質量比)および≧70kDのポリリシン(0.03ポリリシン/IgG質量比)を使用して測定したプラズモンシフト間の相関関係を示す。図9Bは、15~30kDaのポリリシンポリマー(0.10ポリリシン/IgG質量比)および#70kDaのポリリシンポリマー(0.03ポリリシン/IgG質量比)を使用して測定したプラズモンシフト間の相関関係を示す。
本開示は、超希薄溶液中で少量のタンパク質を使用して、タンパク質製剤の問題となる特性(例えば自己会合)を予測する方法を提供する。
自己会合が低レベルである抗体は、高濃度での製造、製剤化、および送達中に、好ましくない溶液挙動を示すリスクが低い。希薄溶液相互作用は、抗体の溶液挙動の予測に有効なアプローチを示すが、発見初期中に多数の抗体に関して適切なスクリーニング方法を採用することは困難である(図1)。従来の技術は、そのような測定を行なうために、比較的濃縮されたタンパク質溶液(>1mg/mL)を必要とする。抗体濃度に関連するこのたった1つの課題により、抗体リード最適化(antibody lead optimization)中での抗体の自己会合の大規模で体系的な分析が妨げられている(図1)。高濃度溶液挙動(例えば、150mg/mLでの粘度)の予測様式では、はるかに低濃度(1~10μg/mL)で抗体相互作用をアッセイすることにより、発見初期において、はるかに多い候補のプールからの良好な挙動のmAbの選択が可能となるだろう。
既に使用されているアプローチ(親和性捕捉ナノ粒子分光法、AC-SINS)は、抗ヒト捕捉抗体を金ナノ粒子(20nm)に吸着させること、およびこのコンジュゲートを使用して目的のヒトmAbを捕捉することを含んだ。近接して複数のmAbを捕捉することにより、コロイド相互作用が増幅され、金ナノ粒子に固有の光学特性の測定可能な変化を介して抗体の自己相互作用が高感度に検出された。しかしながら、AC-SINSの主な限界は、抗体開発中に一般に利用されるpH4.5~7の範囲および低イオン強度でのプロセス流および製剤化条件に適合しないことであった。捕捉(抗ヒト)抗体でコーティングされた金ナノ粒子は、そのような条件下では不安定であり、容易に凝集する。
本明細書で説明されているのは、正荷電ポリマーを使用して抗体-金コンジュゲート安定化させることによりAC-SINSの限界を克服する、電荷安定化自己相互作用ナノ粒子分光法(CS-SINS)と称されるシステムおよび方法の開発である。さらに、CS-SINSは、4桁高い濃度(150mg/ml)では問題となる高濃度および乳白光の抗体を予測する超希薄濃度(10μg/mL)でのmAbの弱い自己相互作用を確実に評価し得た。
本セクションおよび本開示全体で使用されるセクションの見出しは、単に整理を目的とするものであり、限定することは意図されていない。
1.定義
「含む(comprise(s))」、「含む(include(s))」、「有する(having)」、「有する(has)」、「し得る(can)」、「含む(contain(s))」という用語、およびこれらの変形は、本明細書で使用される場合、付加的な行為または構造の可能性を排除しないオープンエンドの暫定的な語句、用語、または単語であることが意図されている。「a」、「an」、および「the」という単数形は、別途文脈が明確に示さない限り、複数の言及を含む。本開示はまた、明記されているか否かにかかわらず、本明細書で提示された実施形態または要素「を含む」、「からなる」、および「から本質的になる」他の実施形態も企図する。
本明細書での数値範囲の列挙では、同程度の精度でその間に介在する各数字が明示的に企図されている。例えば、6~9の範囲では、6および9に加えて数字7および8が企図されており、6.0~7.0の範囲では、数字6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、および7.0が明示的に企図されている。
本明細書で別途定義されない限り、本開示に関連して使用される科学用語および技術用語は、当業者により一般に理解される意味を有するものとする。例えば、本明細書で説明されている細胞および組織の培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝子およびタンパク質および核酸の化学およびハイブリダイゼーションに関連して使用される任意の命名法および技術は、当該技術分野で公知であり一般に使用されているものである。用語の意味および範囲は明確であるべきであるが、曖昧さが潜んでいる場合には、本明細書に記載されている定義は、いかなる辞書または外部の定義よりも優先される。さらに、別途文脈により必要とされない限り、単数形の用語は、複数形を含むものとし、複数形の用語は単数形を含むものとする。
「抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、細菌およびウイルス等の外来物を同定して中和するために免疫系により内在的に使用されるタンパク質を指す。典型的には、抗体は、少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含むタンパク質である。CDRは、抗体の「超可変領域」を形成し、この超可変領域は、抗原結合に関与する(さらに下記で論じる)。全抗体は、典型的には、下記の4つのポリペプチドからなる:重(H)鎖ポリペプチドの2つの同一コピー、および軽(L)鎖ポリペプチドの2つの同一コピー。それぞれの重鎖は、1つのN末端可変(V)領域と、3つのC末端定常(CH1、CH2、およびCH3)領域とを含み、それぞれの軽鎖は、1つのN末端可変(V)領域と、1つのC末端定常(C)領域とを含む。抗体の軽鎖を、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)またはラムダ(λ)のいずれかの2つの異なるタイプの内の1つに割り当て得る。典型的な抗体では、それぞれの軽鎖は、ジスルフィド結合により重鎖に連結されており、2本の重鎖は、ジスルフィド結合により互いに連結されている。軽鎖可変領域は、重鎖の可変領域と整列されており、軽鎖定常領域は、重鎖の第1の定常領域と整列されている。重鎖の残余の定常領域は、互いに整列されている。軽鎖および重鎖のそれぞれの対の可変領域は、抗体の抗原結合部位を形成する。V領域およびV領域は全体構造が同一であり、それぞれの領域は、4つのフレームワーク(FWまたはFR)領域を含む。「フレームワーク領域」という用語は、本明細書で使用される場合、CDR間に位置する可変領域内の比較的保存されたアミノ酸配列を指す。それぞれの可変ドメイン中には、4つのフレームワーク領域が存在しており、それぞれ、FR1、FR2、FR3、およびFR4と呼ばれている。フレームワーク領域は、可変領域の構造フレームワークを提供するβシートを形成する(例えば、C.A.Janeway他(編)、Immunobiology、第5版、Garland Publishing、New York、N.Y.(2001)を参照されたい)。フレームワーク領域は、3つのCDRで連結されている。上記で論じたように、3つのCDR(CDR1、CDR2、およびCDR3として既知である)は、抗原結合に関与する、抗体の「超可変領域」を形成する。CDRは、フレームワーク領域により形成されているベータ-シート構造を連結し、場合によってはその一部を構成するループを形成する。軽鎖および重鎖の定常領域は、抗原への抗体の結合に直接関与しないが、定常領域は、可変領域の配向に影響を及ぼし得る。定常領域はまた、エフェクター分子および細胞との相互作用を介して、抗体依存性の補体媒介性溶解または抗体依存性の細胞毒性への関与等の様々なエフェクター機能も示す。
「抗体のフラグメント」、「抗体フラグメント」、および抗体の「抗原結合フラグメント」という用語は、本明細書では、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つまたはそれ以上のフラグメントを指すために互換的に使用される(一般にHolliger他、Nat.Biotech.、23(9):1126~1129頁(2005)を参照されたい)。本明細書で説明されている抗体の抗原結合フラグメントはいずれも、本発明の範囲内である。抗体フラグメントは、望ましくは、例えば、1つもしくはそれ以上のCDR、可変領域(もしくはその一部)、定常領域(もしくはその一部)、またはこれらの組み合わせを含む。抗体フラグメントの例として下記が挙げられるが、これらに限定されない:(i)Vドメイン、Vドメイン、Cドメイン、およびCH1ドメインからなる一価フラグメントであるFabフラグメント、(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結された2つのFabフラグメントを含む二価フラグメントであるF(ab’)フラグメント、(iii)抗体の単一アームのVドメインおよびVドメインからなるFvフラグメント、(iv)穏やかな還元条件を使用してF(ab’)フラグメントのジスルフィド架橋を切断することにより生じるFab’フラグメント、(v)ジスルフィド安定化Fvフラグメント(dsFv)、ならびに(vi)抗原に特異的に結合する抗体単一可変領域ドメイン(VまたはV)ポリペプチドであるドメイン抗体(dAb)。
「分光光度計」は、様々な波長で光の吸収および/または透過を測定するあらゆる種類の装置である。分光光度計は、紫外放射線(185~400nm)、可視放射線(400~700nm)、および赤外放射線(700~15000nm)に最も一般的に適用されるが、一部の分光光度計は、X線、紫外、可視、赤外、および/またはマイクロ波の波長を含む電磁スペクトルの広い帯を調べ得る。分光光度計は、光源、分光器、波長選択機、試料ホルダー、および検出器を有する。溶液ベースの試料を処理可能な任意の分光光度計(例えば、キュベットサンプルホルダー、プレーターリーダー、および同類のものを備えたもの)を使用し得る。
「ポリペプチド」、「タンパク質」、または「ペプチド」は、ペプチド結合により連結された2つ以上のアミノ酸の連結配列である。ポリペプチドは、天然、合成、または天然および合成の改変もしくは組み合わせであり得る。ペプチドおよびポリペプチドには、結合タンパク質、受容体、および抗体等のタンパク質が含まれる。タンパク質は、糖、脂質、またはアミノ酸鎖に含まれない他の部分の付加により改変することができる。「ポリペプチド」、「タンパク質」、および「ペプチド」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
正荷電ポリマーは、正味の正電荷を有する様々な化合物の内のいずれかであり得る。本発明で有用な正荷電ポリマーとして、正荷電ペプチドおよびタンパク質(両方とも、天然および合成)、ならびにポリアミン、炭水化物、または合成ポリカチオンポリマーが挙げられる。正荷電ポリマーは、直鎖ポリマーまたは分枝ポリマーであり得、かつ主鎖連結に加えて繰り返し単位間に相互連結を有し得る。正荷電ポリマー組成物は、実質的に単分散から実質的に多分散までの任意のレベルの多分散性を有し得る。実質的に単分散の組成物は、実質的に全てが同一の鎖長を有するポリマー分子を含む。実質的に多分散の組成物は、様々な鎖長(従って分子量)のポリマー分子を含む。
正荷電ポリマーの濃度は様々であり得るが、標的タンパク質の非存在下での捕捉剤コンジュゲートの自己凝集を防ぐ濃度を対象とする。捕捉剤コンジュゲートの凝集を、当該技術分野で既知の多くの方法(例えば、本明細書で示されている動的光散乱)により、様々な溶液条件(pH、コンジュゲート濃度、温度、イオン強度)下で測定し得る。
正荷電ポリマーの濃度は、正荷電ポリマーおよび捕捉剤の約0.1質量%より大きくてもよいし(即ち、0.1%の正荷電ポリマー、および99.9%の捕捉剤)、正荷電ポリマーおよび捕捉剤の約1質量%より大きくてもよいし、正荷電ポリマーおよび捕捉剤の約3質量%より大きくてもよいし、正荷電ポリマーおよび捕捉剤の約5質量%より大きくてもよいし、正荷電ポリマーおよび捕捉剤の約10質量%より大きくてもよいし、正荷電ポリマーおよび捕捉剤の約15質量%より大きくてもよいし、正荷電ポリマーおよび捕捉剤の約20質量%より大きくてもよいし、正荷電ポリマーおよび捕捉剤の約30質量%より大きくてもよいし、正荷電ポリマーおよび捕捉剤の約40質量%より大きくてもよい。いくつかの実施形態では、正荷電ポリマーは、正荷電ポリマーおよび捕捉剤の3%質量%を超える濃度で添加される。
正荷電ポリマーの濃度は、正荷電ポリマーおよび捕捉剤の約0.1質量%~約50質量%であり得る。正荷電ポリマーの濃度は、正荷電ポリマーおよび捕捉剤の約0.1質量%~約50質量%、約1質量%~約50質量%、約3質量%~約50質量%、約5質量%~約50質量%、約10質量%~約50質量%、約20質量%~約50質量%、約30質量%~約50質量%、約0.1質量%~約40質量%、約1質量%~約40質量%、約3質量%~約40質量%、約5質量%~約50質量%、約10質量%~約50質量%、約20質量%~約50質量%、約30質量%~約50質量%、約0.1質量%~約30質量%、約1質量%~約30質量%、約3質量%~約30質量%、約5質量%~約30質量%、約10質量%~約30質量%、約20質量%~約30質量%、約0.1質量%~約20質量%、約1質量%~約20質量%、約3質量%~約20質量%、約5質量%~約20質量%、約10質量%~約20質量%、約0.1質量%~約15質量%、約1質量%~約15質量%、約3質量%~約15質量%、約5質量%~約15質量%、約10質量%~約15質量%、約0.1質量%~約10質量%、約1質量%~約10質量%、約3質量%~約10質量%、約5質量%~約10%質量、約0.1質量%~約5質量%、約1質量%~約5%質量、約3質量%~約5質量%、約0.1質量%~約3質量%、約1質量%~約3質量%、または約0.1質量%~約1質量%であり得る。いくつかの実施形態では、正荷電ポリマーは、正荷電ポリマーおよび捕捉剤の3質量%を超える濃度で添加される。いくつかの実施形態では、正荷電ポリマーは、正荷電ポリマーおよび捕捉剤の約3質量%~約15質量%の濃度で添加される。
正荷電ポリマーは、広範囲の分子量を有し得る。いくつかの実施形態では、正荷電ポリマーは、約10kD超の、約15kD超の、約20kD超の、約25kD超の、約30kD超の、約40kD超の、約50kD超の、約60kD超の、約70kD超の、約80kD超の、約90kD超の、約100kD超の、約150kD超の、約200kD超の、またはより大きい分子量を有し得る。他の実施形態では、正荷電ポリマーは、10~500kDa、10~250kDa、10~200kDa、15~70kDa、30~70kDa、または15~30kDaの分子量を有し得る。しかしながら、捕捉剤コンジュゲートの自己凝集を防ぐ他のサイズも使用し得る。分子量は、サイズ排除クロマトグラフィーおよび/または多角度レーザー光散乱技術等の方法により、当業者によって決定される。
本発明のある特定の実施形態では、正荷電ポリマーは、ポリアミノ酸としても既知である合成ポリペプチドのクラスに入る場合がある。合成ポリペプチドは、正荷電(即ち塩基性)アミノ酸(例えば、リシン、アルギニン、またはヒスチジン)の内の1つのホモポリマーであってもよいし、2種以上の正荷電アミノ酸のヘテロポリマーであってもよい。いくつかの実施形態では、ポリカチオンは、ポリリシン(例えば、ポリ-D-リシン、ポリ-L-リシン、およびポリ-DL-リシン)、ポリアルギニン、ならびにポリヒスチジンであり得、特にポリリシンであり得る。加えて、ポリマーは、1つまたはそれ以上の正荷電非標準アミノ酸(例えば、オルニチン、5-ヒドロキシリシン、および同類のもの)を含み得る。または、ポリペプチドは、ポリ(γ-ベンジル-L-グルタミン酸)等の他の基で官能化することができる。いずれの組み合わせのアミノ酸も、直鎖、分枝、または架橋鎖に重合される。そのようなポリカチオンポリペプチドは、少なくとも50個のアミノ酸残基、少なくとも100個のアミノ酸残基、少なくとも200個のアミノ酸残基、少なくとも300個のアミノ酸残基、少なくとも500個のアミノ酸残基、少なくとも750個のアミノ酸、少なくとも1000個のアミノ酸、少なくとも2000個のアミノ酸、少なくとも3000個のアミノ酸、少なくとも4000個のアミノ酸以上(例えば、約50~約500個のアミノ酸残基、約50~約1000個のアミノ酸残基、または約100~約1000個のアミノ酸残基)を含み得る。合成ポリペプチドを、当業者に既知の方法(例えば、化学合成法または組換え法)により製造し得る。選択的実施形態では、正荷電ポリマーは、約70kDa以上のポリリシンである。選択的実施形態では、正荷電ポリマーは、体積に対して3~15重量%の濃度で添加されたポリリシンである。
いくつかの実施形態では、正荷電ポリマーは、合成ポリカチオンポリマー(例えば、限定されないが、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリアミドアミン(PAMAM)、および同類のもの)を含む。
ナノ粒子に関する「安定化」という用語は、特に、ナノ粒子の凝集の防止または少なくとも低減を指す。「凝集」は、懸濁液中での集合体の形成を指しており、コロイド系の機能的不安定化につながるメカニズムを表す。このプロセス中に、液相中に分散した粒子は互いにくっつき、不規則な粒子集合体、フロック、または凝集体を自然に形成する。この現象はまた、凝固または凝結とも称され、そのような懸濁液はまた、不安定とも呼ばれる。
本明細書で使用される場合、「ナノ粒子」という用語は、0.001μm~1μmのスケールのサイズ(例えば直径)を有する小さい粒子を指す。ナノ粒子は、球、棒、鎖、星、花、岩礁、ひげ、繊維、箱、および同類のものの形状であり得る。サイズは、ナノ粒子のある点から別の点までの最大距離(例えば、球の場合には直径)を指す。ナノ粒子は、任意の材料(例えば、金属、半導体材料、磁性材料、および材料の組み合わせ)を含み得る。本開示に関して具体的に想定されているのは、本明細書で言及される場合は常に、金属ナノ粒子である。金属ナノ粒子(例えば、金または銀ナノ粒子)は、表面プラズモン共鳴ベースのアッセイに本質的に適しており、なぜならば、金属球は、入射光からの電場と相互作用し得る、その表面上の自由電子を有しており、その結果、強い吸光度スペクトルが得られるからである。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、金表面を有するかまたは金からなる金ナノ粒子を含む。ナノ粒子のサイズは、最大吸光度の強度および波長に影響を及ぼし得る。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、1nm~1000nm(例えば1nm~200nm)の直径を有する。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、5nm~50nmのサイズ(例えば直径)であり、例えば約20nmである。例示的な実施形態では、ナノ粒子は、20nmの金ナノ粒子を含むか、または20nmの金ナノ粒子である。アッセイ中のナノ粒子の全体量は、シグナル対ノイズ測定に影響を及ぼす場合がある。いくつかの実施形態では、20nmの金ナノ粒子は、少なくとも粒子7.0×10個/mLの濃度で使用される。いくつかの実施形態では、20nmの金ナノ粒子は、粒子7.0×10~1.5×10個/mL(例えば、粒子1.0×1010~1.5×10個/mL)の濃度で使用される。
捕捉剤は、標的タンパク質に結合可能な(具体的には、第3の態様で定義される溶液中において「標的タンパク質を捕捉する」)あらゆる薬剤である。そのため、捕捉剤の性質は、標的タンパク質の種類に依存するだろう。例えば、捕捉剤は、天然または合成の標的タンパク質の結合パートナー(例えば、タンパク質、核酸、炭水化物、低分子、または標的タンパク質により特異的に認識される別の結合部分)を含み得る。いくつかの実施形態では、捕捉剤は、抗体、または標的タンパク質に結合可能な、その誘導体もしくはフラグメントを含む。捕捉剤は、ナノ粒子に直接吸着されるか、あるいは、ナノ粒子は、捕捉剤をこのナノ粒子に繋ぎ止めるリンカーを含んでもよい。いくつかの実施形態では、捕捉剤は、タンパク質またはタンパク質リガンドである。具体的な実施形態では、捕捉剤は、抗体、または抗体の抗原結合フラグメントを含むタンパク質である(またはそれを含む)。抗体は、特に、Fc特異的抗体(即ち、別の抗体のFc部分に結合する抗体)であり得、例えば、IgG-Fc特異的抗体、具体的には、IgG1、IgG2、またはIgG4特異的抗体、より具体的には、IgG1またはIgG4-Fc特異的抗体であり得る。いくつかの実施形態では、抗体は、抗ヒト抗体である。標的タンパク質は、希薄溶液中において少量のタンパク質を使用して自己会合特性または自己凝集特性を決定したい任意のタンパク質であり得る。いくつかの実施形態では、標的タンパク質は、治療用タンパク質を含む。治療用タンパク質は、対象における疾患および障害の処置に有用な精製済タンパク質および合成タンパク質の両方を含む。治療用タンパク質として、抗体ベースの薬剤、Fc融合タンパク質、抗凝固薬、血液因子、骨形成タンパク質、改変タンパク質足場、酵素、成長因子、ホルモン、インターフェロン、インターロイキン、および血栓溶解薬を挙げることができるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、標的タンパク質は、抗体またはそのフラグメントもしくは誘導体を含む。選択的実施形態では、標的タンパク質は、抗体を含み、具体的にはモノクローナル抗体を含み、より具体的にはヒトモノクローナル抗体を含む。一実施形態では、抗体は、IgG抗体であり、例えば、IgG1、IgG2、またはIgG4抗体である。選択的実施形態では、抗体は、IgG1またはIgG2抗体である。標的タンパク質は、任意の濃度であり得る。治療用タンパク質の場合には、濃度は、治療用製剤の濃度と比べてはるかに薄い可能性がある。いくつかの実施形態では、標的タンパク質は、1mg/mL未満(例えば、500μg/mL未満、100μg/mL未満、50μg/mL未満、または10μg/mL未満)の濃度である。標的タンパク質は、1~1000μg/mL、1~100μg/mL、1~50μg/mL、1~20μg/mL、または1~10μg/mLの濃度であり得る。いくつかの実施形態では、標的タンパク質は、1~10μg/mLの濃度であり得る。いくつかの実施形態では、標的タンパク質は、pHが3.5~7(例えば4.5~7)、具体的には4~6.5または4~6である溶液(例えば緩衝液)中に存在している。いくつかの実施形態では、溶液(緩衝液)は、低イオン強度を有する。
イオン強度は、溶液中のイオンの濃度の尺度である。「低イオン強度溶液」という用語は、全緩衝剤濃度が約50mM未満である緩衝液のような溶液を指しており、高イオン強度緩衝液は、濃度が約100mM超である緩衝液である。緩衝剤は、当該技術分野で公知であり、弱酸と弱塩基との塩であり得る。例は、炭酸塩、重炭酸塩、およびリン酸水素塩である。本開示の具体的な実施形態では、緩衝液は、ヒスチジンおよび/もしくは酢酸緩衝液であるか、またはヒスチジンおよび/もしくは酢酸緩衝液と実質的に同一のイオン強度を有する緩衝液である。ヒスチジンおよび/または酢酸緩衝液は、50mM未満のヒスチジンおよび/または50mM未満の酢酸の濃度を有して得、例えば、25mM未満のヒスチジンおよび/または25mM未満の酢酸の濃度を有しており、具体的には、約10mMのヒスチジンおよび/または10mMの酢酸の濃度を有している。「実質的に同一」は、±50%、±40%、±30%、±20%、±10%、または±5%を意味する。
「コンジュゲーション」または「コンジュゲートすること」という用語は、化学的な、物理的な、または生物学的な手段によるナノ粒子への分子の結合を指す。分子へのナノ粒子のコンジュゲーションは、通常、表面上に分子を含むナノ粒子を指す場合に意味される。この用語の具体的な意味は、「吸着」または「吸着すること」であり、物理吸着(ファンデルワールス力)、化学吸着(共有結合)、および静電気引力を含む。選択的実施形態では、この用語の具体的な意味は、物理吸着である。
「自己会合」という用語は、同種のタンパク質(または抗体)間の相互作用、および多量体形成を指す。そのような多量体形成は、希釈等の操作により単量体に戻る場合がある。自己会合の「傾向」は、特に、タンパク質の濃度を、例えば、50mg/ml、100mg/ml、または150mg/ml(本明細書では、「高」または「より高い」濃度と称される)を超えて増加させることによる、自己会合のし易さを指す。自己会合を示すパラメータの例は、拡散相互作用パラメータである。拡散相互作用パラメータは、実験的方法により得られた拡散係数の濃度依存性を使用して算出される自己会合の指標である。この値が、-12.4g/mL以上である場合には、分子間の反発力が優性となる。この値がそれ未満である場合には、引力(自己会合)相互作用であると報告されている(Saito他、Pharm.Res.、2013.第30巻 1263頁)。拡散係数は、溶液中での分子の拡散のし易さの指標であり、動的光散乱法または同様のものにより測定される。より一般的には、タンパク質の自己会合により、高粘度、乳白光、相分離、および/または凝集等の溶液挙動が不良となる場合がある。
「プラズモン波長」という用語は、最大吸光度の波長を指す。
好ましい方法および材料を下記で説明するが、本明細書で説明されているものと類似のまたは同等の方法および材料を、本開示の実施または試験で使用し得る。本明細書で言及されている全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、その全体が参照によって組み入れられる。本明細書で開示されている材料、方法、および例は、例示にすぎず、限定することは意図されていない。
2.安定化ナノ粒子の使用
第1の態様では、本開示は、表面上に捕捉剤を含むナノ粒子を安定化させるための正荷電ポリマーの使用に関する。
捕捉剤は、通常は、ナノ粒子にコンジュゲートしている。具体的な実施形態では、このナノ粒子は、溶液に含まれている。従って、この使用は、ナノ粒子(特にその複数)を溶液中で安定化させるため(即ち、ナノ粒子懸濁液を安定化させるため)であり得る。この溶液は、下記の第3の態様で定義されるものであり得る。
この使用は、通常、ナノ粒子に捕捉剤をコンジュゲートさせる前に、同時に、または後に(具体的な一実施形態では、同時に)、このナノ粒子に正荷電ポリマーをコンジュゲートさせることを含む。正荷電ポリマーの(正荷電ポリマーおよび捕捉剤の質量による)濃度は、上記で説明された通りであり得る。いくつかの実施形態では、この使用は、ヒトポリクローナル抗体(例えば、ヒトポリクローナル抗体ChromPure Human IgG)を捕捉している間に溶液中のナノ粒子のプラズモン波長を534nm以下に決定すること、および/またはNISTモノクローナル抗体(参照物質RM8671)mAbを捕捉している間に溶液中のナノ粒子のプラズモン波長を533nm以下に決定することにより、ナノ粒子の安定化を決定することを含む。
3.ナノ粒子
第2の態様では、本開示は、表面上に捕捉剤と正荷電ポリマーとを含むナノ粒子に関する。
いくつかの実施形態では、このナノ粒子は、金属ナノ粒子であり、特に金ナノ粒子である。
いくつかの実施形態では、捕捉剤および/または正荷電ポリマーは、ナノ粒子にコンジュゲートしている。正荷電ポリマーの量(正荷電ポリマーおよび捕捉剤の質量による)は、上記で説明されている通りであり得る。具体的な実施形態では、ナノ粒子は、安定したナノ粒子であり、即ち、例えば、第1の態様の使用に従って安定化されている。具体的には、ヒトポリクローナル抗体(例えば、ヒトポリクローナル抗体ChromPure Human IgG)を捕捉する間での溶液中のナノ粒子のプラズモン波長は、534nm以下であり、および/またはNISTモノクローナル抗体(参照物質RM8671)mAbを捕捉している間での溶液中のナノ粒子のプラズモン波長は、533nm以下である。
4.ナノ粒子を含む溶液
第3の態様では、本開示は、第2の態様の複数のナノ粒子を含む溶液に関する。従って、この溶液はまた、ナノ粒子懸濁液とも呼ばれる。
いくつかの実施形態では、この溶液は、緩衝液であり、特に低イオン強度の緩衝液である。この溶液/緩衝液のpHは、3.5~7(例えば4.5~7)であり得、具体的には4~6.5または4~6であり得る。複数は、少なくとも2、少なくとも10、少なくとも100、または少なくとも1000を意味する。
本開示が第2の態様のナノ粒子の使用を指す場合は常に、代わりに第3の態様の溶液の使用を指すことも意図されていることを理解しなければならない。
5.ナノ粒子を含むキット
第4の態様では、本開示は、ナノ粒子(特に複数のナノ粒子)と、正荷電ポリマーとを含むキットに関する。
このキットは、緩衝液のような溶液をさらに含み得、特に、低イオン強度溶液/緩衝液を含み得る。この溶液/緩衝液のpHは、3.5~7(例えば4.5~7)であり得、具体的には、4~6.5または4~6であり得る。さらなる実施形態では、このキットはまた、(i)捕捉剤(場合により、ナノ粒子にコンジュゲートしている)、および/または(ii)少なくとも2種(例えば、少なくとも3、4、5、もしくは6種)の較正タンパク質のパネルも含み得る。このキットは、加えて、較正タンパク質のパネルの較正タンパク質のプラズモン波長を提供する使用説明書を含み得る。このプラズモン波長は、較正タンパク質の既知のまたは「過去の」プラズモン波長である。
6.標的タンパク質の自己会合を決定する方法
第5の態様では、本開示は、標的タンパク質の自己会合傾向を決定する方法であって、
(i)第3の態様で定義された溶液中で標的タンパク質を捕捉する工程、
(ii)この溶液の色を決定する工程
を含み、
標的タンパク質を含まない、第3の態様で定義されたコントロール溶液と比較した溶液の色の変化は、標的タンパク質の自己会合傾向を示す、
方法に関する。
コントロール溶液は、工程(i)の前および標的タンパク質が添加される前の溶液であってもよいし、別個の溶液であってもよい(例えば、工程(i)を除いて同一方法を経たもの)。
標的タンパク質の濃度は、標的タンパク質分析に関して上記で説明した通りであり得る。捕捉する工程は、(例えば、第6の態様に関して下記で説明するように)溶液を混合することおよび/またはインキュベートすることを含み得る。
色の変化は、通常、より高い吸収波長に向かって起こる。いくつかの実施形態では、色を決定することは、光吸収を決定することを含み、コントロール溶液と比較した光吸収の変化は、標的タンパク質の自己会合傾向を示す。具体的な実施形態では、工程(ii)は、プラズモン波長を決定することを含み、コントロール溶液と比較したプラズモン波長の変化は、標的タンパク質の自己会合傾向を示す。この決定は、プラズモン波長を決定するために、450nm~約750nmの範囲の複数の波長で吸光度を測定することを含み得る。最大吸光度に対応する波長(プラズモン波長)は、ナノ粒間の分離距離が短くなるほど、大きな値にシフトする。そのため、標的タンパク質が自己会合すると、ナノ粒子の吸光度スペクトルが変化し、プラズモン波長が長くなる。例えば、ナノ粒子が金ナノ粒子である場合には、赤色への色の変化(例えば、プラズモン波長での赤色シフト)は、標的タンパク質の自己会合傾向を示す。通常、色、光吸収、またはプラズモン波長それぞれの変化の程度は、標的タンパク質の自己会合傾向の強さを示す。しかしながら、いくつかの実施形態では、この変化を、標的タンパク質の捕捉に起因してプラズモン波長が変化するかどうかに基づいて、自己会合ありおよび自己会合なしの2値表示として使用し得る。
この溶液は、通常、第3の態様で定義された溶液である。溶液中のナノ粒子(または溶液)は、選択的実施形態では、534nm以下のヒトポリクローナル抗体(例えば、ヒトポリクローナル抗体ChromPure Human IgG)を捕捉する間のプラズモン波長、および/または533nm以下のNISTモノクローナル抗体(参照物質RM8671)mAbを捕捉する間のプラズモン波長を有する。この目的のために、この方法は、工程(i)の前に、工程(i)での捕捉のためにナノ粒子(または溶液)を選択する工程を含み得、ヒトポリクローナル抗体(例えば、ヒトポリクローナル抗体ChromPure Human IgG)を捕捉する間の溶液中のナノ粒子のプラズモン波長は、534nm以下であり、および/またはNISTモノクローナル抗体(参照物質RM8671)mAbを捕捉する間の溶液中のナノ粒子のプラズモン波長は、534nm以下である。
いくつかの実施形態では、この方法は、自己会合する傾向が異なる少なくとも2種(好ましくは、少なくとも3、4、5、または6種)の較正タンパク質(例えば抗体、具体的にはモノクローナル抗体)のパネルを使用して較正する工程を含む。この傾向は、既知である。この較正することは、
(i)このパネルの各較正タンパク質のプラズモン波長を測定する工程、
(ii)下記式:CS-SINSスコア=(cP-パラメータ1)/(パラメータ2-パラメータ1)(式中、パラメータ1は、パネルの自己会合傾向が最も低い較正タンパク質のプラズモン波長であり、パラメータ2は、パネルの自己会合傾向が最も高い較正タンパク質のプラズモン波長である)に従って、各較正タンパク質(cP)の過去CS-SINSスコアを算出する工程、
(iii)下記式:CS-SINSスコア=(cP-パラメータ1)/(パラメータ2-パラメータ1)(式中、パラメータ1は、パネルの自己会合傾向が最も低い較正タンパク質のプラズモン波長であり、パラメータ2は、パネルの自己会合傾向が最も高い較正タンパク質のプラズモン波長である)に従って、各較正タンパク質の新たなCS-SINSスコアを算出すること、および下記の項:((1-傾き)+(切片)))を最小化させることにより、過去のパラメータと新たなパラメータとの間の線形フィットの一致を最大化するようにパラメータをフィットさせること、
(iv)新規データと過去データとの間の線形フィットに関して、較正が下記基準a)~c)を満たすかどうかを決定すること
a)線形フィットの傾きが、0.9~1.1である、
b)線形フィットの切片が、-0.1~0.1である、
c)線形フィットのRが、0.9超である;
ならびに
(v)工程(iv)の全ての基準が満たされる場合には、工程(iii)で特定されたフィットパラメータを使用して、標的タンパク質のCS-SINSスコアを較正すること
を含み得る。工程(ii)を、工程(i)の前、後、または同時に実行し得る。具体的な実施形態では、約0.35以下の標的タンパク質CS-SINSスコアは、標的タンパク質は自己会合傾向が低い(即ち、高濃度の標的タンパク質(例えば、100mg/mL以上の標的タンパク質)を含む製剤および組成物に対して有利な自己会合特性を有する)ことを示す。
7.標的タンパク質をスクリーニングする方法
本開示は、自己会合特性(例えば、乳白光、および粘弾性特性)に関して、希薄濃度の標的タンパク質をスクリーニングする方法を提供する。一般に、第5の態様の方法の使用は、自己会合の傾向に関して標的タンパク質をスクリーニングするために提供される。より具体的には、第6の態様では、本開示は、捕捉剤と正荷電ポリマーとをナノ粒子(例えば金属ナノ粒子)上に吸着させて、捕捉剤コンジュゲートを形成すること;この捕捉剤コンジュゲートを、溶液(例えば緩衝液)中で標的タンパク質と共にインキュベートして、標的タンパク質コンジュゲートを形成すること;450nm~約750nmの範囲の複数の波長で、この標的タンパク質コンジュゲートの吸光度を測定すること;およびこの標的タンパク質コンジュゲートによる吸光度が最大となる波長としてプラズモン波長を特定することを含み得る方法に関する。
正荷電ポリマーは、捕捉剤と共に表面(例えばナノ粒子)上に共吸着される。
この方法は、溶液(例えば緩衝液)中で捕捉抗体コンジュゲートと標的タンパク質とをインキュベートして、標的タンパク質コンジュゲートを形成することを含み得る。このインキュベーションは、標的タンパク質を捕捉剤に結合させて標的タンパク質コンジュゲートを形成するのに必要な任意の長さの時間であり得る。例えば、このインキュベーションは、少なくとも30分、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも8時間、少なくとも10時間、またはより長い時間であり得る。
インキュベーションに使用される緩衝液は、任意の所望の特性(pH、イオン強度等)を有し得るが、通常は、標的タンパク質の最終的な下流での使用に望ましい緩衝液条件を模倣する。いくつかの実施形態では、緩衝液条件は、治療において生理学的に許容されるものである。いくつかの実施形態では、緩衝液のpH、ひいてはインキュベーションのpHは、4.5~7である。緩衝液のpHは、約4.5、約5、約5.5、約6、約6.5、または約7であり得る。いくつかの実施形態では、緩衝液は、低イオン強度を有する。
この方法は、450nm~約750nmの範囲の複数の波長で標的タンパク質コンジュゲートの吸光度を測定すること、および標的タンパク質コンジュゲートによる吸光度が最大となる波長としてプラズモン波長を特定することを含み得る。プラズモン波長(λ)、即ち最大吸光度に対応する波長は、ナノ粒子間の分離距離が短くなるほど、大きな値にシフトする。そのため、標的タンパク質が自己会合すると、ナノ粒子の吸光度スペクトルが変化し、このことは、プラズモン波長の特定に反映される。いくつかの実施形態では、この変化を、捕捉剤コンジュゲートに対する標的タンパク質コンジュゲートの吸光度測定時にプラズモン波長が変化するかどうかに基づいて、自己会合ありおよび自己会合なしの2値表示として使用し得る。
抗体-金コンジュゲート間の粒子間距離の変化に対するプラズモン波長の感度を、標的タンパク質の自己会合の程度または度合いの尺度として使用し得る。いくつかの実施形態では、この方法は、電荷安定化自己相互作用ナノ粒子分光法(CS-SINS)スコアを算出することをさらに含む。SC-SINSスコアは、図4(試験番号2)で説明されており、かつ方程式(1):
Figure 2024505134000001
(式中、パラメータ1は、低自己会合抗体のプラズモン波長であり、パラメータ2は、高自己会合抗体のプラズモン波長である)
で示されているように、高自己会合コントロールタンパク質コンジュゲートと、低自己会合コントロールタンパク質コンジュゲートとのプラズモン波長の差違に対する、低自己会合コントロールタンパク質コンジュゲートからのプラズモン波長の減算による、標的タンパク質コンジュゲートのプラズモン波長の比である。
いくつかの実施形態では、約0.35以下のCS-SINSスコアは、標的タンパク質が、高濃度の標的タンパク質(例えば、100mg/mL以上の標的タンパク質)を含む製剤および組成物に有利な自己会合特性を有することを示す。
いくつかの実施形態では、この方法は、捕捉剤コンジュゲートにより複数の較正タンパク質を捕捉して、複数の較正タンパク質コンジュゲートを形成すること、450nm~約750nmの範囲の複数の波長で、複数の較正タンパク質コンジュゲートのそれぞれの吸光度を測定すること、およびプラズモン波長を特定することを含む較正方法をさらに含む。
較正方法は、複数の較正タンパク質コンジュゲートのそれぞれのCS-SINSスコアを算出すること;および線形フィットのために、複数の較正タンパク質コンジュゲートのそれぞれのCS-SINSスコアと、過去の較正タンパク質コンジュゲートのSC-SINSスコアとを比較することをさらに含み得る。例えば、複数の較正タンパク質コンジュゲートのそれぞれのCS-SINSを、下記の項:((1-傾き)+(切片)))を最小化させることにより、新規のデータと過去のCS-SINSスコアとの間の線形フィットの一致を最大化するようにフィットさせる。この較正は、
・ 線形フィットの傾き=0.9<x<1.1;
・ 線形フィットの切片=-0.1<x<0.1;および
・ 線形フィットのR≧0.9
の場合には、新規のデータと過去のデータとの間の線形フィットの基準を満たしており、そのため適切な較正である。
複数の較正タンパク質は、様々な自己会合特性(例えば、乳白光、および粘弾性特性)を有するタンパク質を含む。較正タンパク質は、標的タンパク質と同種のタンパク質であり得る。例えば、標的タンパク質が抗体である場合には、較正タンパク質は、自己会合特性が異なる様々な抗体から選択される。いくつかの実施形態では、複数の較正タンパク質のそれぞれは、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、およびこれらのフラグメントまたは誘導体からなる群からそれぞれ独立して選択される。
いくつかの実施形態では、較正タンパク質として、低自己会合コントロールタンパク質、および高自己会合コントロールタンパク質が挙げられ、本明細書の他の箇所で説明されているように、これらのコンジュゲートのプラズモン波長を使用してCS-SINSを算出する。
いくつかの実施形態では、複数の較正タンパク質は、NIST Reference Antibody RM 8671、およびヒトポリクローナル抗体ChromPure Human IgG(全分子)を含む。いくつかの実施形態では、較正により、NIST Reference Antibody RM 8671、およびヒトポリクローナル抗体ChromPure Human IgG(全分子)のプラズモン波長が特定される。適切な較正は、533nm未満のNIST Reference Antibody RM 8671のプラズモン波長、および534nm未満のヒトポリクローナル抗体ChromPure Human IgG(全分子)のプラズモン波長を含むことになる。
8.標的タンパク質をスクリーニングするためのシステムまたはキット
第7の態様では、本開示は、好ましい自己会合特性(例えば、乳白光、および粘弾性特性)に関して希薄濃度の標的タンパク質をスクリーニングするためのシステムまたはキット(例えば、試薬、コンピュータソフトウェア、機器等)に関する。いくつかの実施形態では、このシステムは、捕捉剤、正荷電ポリマー、表面(例えば金属ナノ粒子)、溶液(例えば緩衝液)、標的タンパク質、少なくとも1種の較正タンパク質、および分光光度計の内の1つもしくはそれ以上またはそれぞれを含む。本明細書の他の箇所で提供される捕捉剤、正荷電ポリマー、表面(例えば金属ナノ粒子)、溶液(例えば緩衝液)、および標的タンパク質に関して上記に記載されている説明は、本開示のシステムにも適用可能である。分光光度計は、様々な光の波長での光の吸収および/または透過を測定するあらゆる機器を含み得る。このシステムまたはキットの個々のメンバー構成要素は、物理的に、一緒に、または別々に梱包される。
このシステムはまた、このシステムの構成要素を使用するための説明書も含み得る。この説明書は、このシステムに関する関連資料または方法論である。この資料として、下記の任意の組み合わせが挙げられる:背景情報、構成要素のリストおよびその入手可能性情報(購入情報等)、システムの使用に関する簡潔なまたは詳細なプロトコール、トラブルシューティング、参考文献、テクニカルサポート、および任意の他の関連文書。説明書は、紙の形態、またはコンピュータ読み取り可能なメモリデバイスで供給されるかもしくはインターネットウェブサイトからダウンロードされる電子形態、または記録された発表のいずれかとして、システムと共に提供されるか、または別個のメンバー構成要素として提供される。
本開示のシステムおよびキットは、本開示の方法に関連して利用されることが理解される。
9.実施例
材料および方法
PBS中でのAC-SINS用の免疫金コンジュゲート調製 ヤギ抗ヒトFcγ特異的抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories、109-005-008)を、Zeba脱塩カラム(Thermo Fisher Scientific、PI-89882)を使用して、20mMの酢酸(pH4.3)に2回緩衝液交換した。濃度を、280nmでのUV吸光度と1.26mL/mg×cmの質量減衰係数とを使用して決定した。抗体を、20mMの酢酸(pH4.3)で0.4mg/mLまで希釈した。20nmの金ナノ粒子(粒子7.0×1011個/mL;Ted Pella Inc.、15705)1ミリリットルを、6分にわたる21130rcfで、1.5mLの微小遠心管(1615-5500、USA Scientific)中で沈降させた。次に、上清950μLを除去し、milliQ水950μLに置き換えた。再懸濁させた粒子を、milliQ水500μLの添加でさらに希釈した(最終濃度粒子4.67×1011個/mL)。調製した捕捉抗体100μLに、金ナノ粒子900μLを添加した。この混合物を、一晩室温でインキュベートした。使用前に、免疫金コンジュゲートを、6分にわたり21130rcfで沈降させた。上清950マイクロリットルを取り出して保存し、粒子を残余の上清に再懸濁させた。体積を、50μLに注意深く再調整した。
CS-SINS用のポリリシン安定化免疫金コンジュゲートの調製 ヤギ抗ヒトFcγ特異的抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories、109-005-008)を、上記で説明したように緩衝液交換し、20mMの酢酸(pH4.3)で0.8mg/mLの最終濃度まで希釈した。最初に5mg/mLでmilliQ水に溶解させたポリリシン(Fisher Scientific、ICN19454405)を、20mMの酢酸(pH4.3)で、0.8mg/mL(0.03ポリリシン/IgG分率)、2.67mg/mL(0.10ポリリシン/IgG分率)、または4.0mg/mL(0.15ポリリシン/IgG分率)のいずれかまで希釈した。コンジュゲート100μLの調製では、捕捉IgG 48.5μLを、ポリリシン1.5μLと混合して保存した。20nmの金ナノ粒子(Ted Pella、15705)1200マイクロリットルを、6分にわたり21130rcfで沈降させ、その後、上清1150μLを除去した。ナノ粒子を、残余の上清に再懸濁させ、体積を、50μLに注意深く調整した。次いで、このナノ粒子を、IgG/ポリリシン混合物に添加し、20回上下にピペッティングすることにより急速に混合した。このコンジュゲートを、一晩室温でインキュベートした。説明した調製は、コンジュゲート100μLに関するが、必要に応じて、より大きい体積を調製するために調節可能である。非捕捉抗体を使用した実験では、ヤギ抗ヒトIgGをヤギポリクローナルIgG(Jackson ImmunoResearch Laboratories、005-000-003)に交換した。
免疫金コンジュゲートの動的光散乱およびゼータ電位測定 動的光散乱(DLS)実験を、Zetasizer Nano ZSP(Malvern Panalytical、Worcestershire、UK)を使用して実施した。所与の緩衝液中の免疫金コンジュゲートのサイズを評価するために、緩衝液950μLを、コンジュゲート50μLに添加し、折り畳まれたキャピラリゼータセル(DTS1070、Malvern Panalytical)に直ちに移した。キュベットをZetasizer機器に移し、173°後方散乱測定値によるDLSを使用して、25℃でサイズを測定した。サイズ測定値は、少なくとも30回の10秒測定値の平均であった。試料が単分散(標準的なAC-SINS実行のために調製された免疫金コンジュゲート)であった場合には、キュムラント分析を使用して算出したz平均直径を報告した。試料が多分散(ポリリシン安定化免疫金コンジュゲート)であった場合には、非負最小二乗分析により決定されたサイズ分布の主要ピークを報告した。粒子径測定の直後に、同一機器でレーザードップラー速度計測を使用して、粒子のゼータ電位を測定した。データを収集し、Zetasizer 7.11 Software(Malvern Panalytical)を使用して分析した。
ヒスチジン中でのCS-SINSアッセイ 目的の抗体を、Zeba脱塩カラム(Thermo Fisher Scientific、PI89882)を使用して、10mMのヒスチジン(pH6.0)に2回緩衝液交換した。濃度を、280nmでのUV吸光度、および各モノクローナル抗体に関して独自に算出した質量減衰係数[ヒトポリクローナル抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories、009-000-003)の場合には、1.40mL/mg×cmを使用した]を使用して決定した。抗体を、CS-SINSでの使用前に、ヒスチジン(pH6.0)で11.1μg/mLまで希釈した。透明で底が平らな384ウェルポリスチレンプレート(Thermo Fisher Scientific、12565506)に、アッセイした各mAbおよびヒトポリクローナル抗体に関して、免疫金コンジュゲート5μLを3回添加した。次に、この免疫金コンジュゲートに、各抗体45μLを添加し、10回上下にピペッティングすることにより混合した(最終抗体濃度10μg/mL)。この混合物を覆い、4時間にわたり室温でインキュベートし、その後、BioTek Synergy Neoプレートリーダー(BioTek、Winooski、VT)を使用して、1nm刻み(通常の走査速度、1ウェル当たり8回の読み取り)で、450~650nmでの吸光度を測定した。観察した最大吸光度付近の40データ点に二次多項式を当てはめ、一次導関数を0に設定することにより、プラズモン波長を決定した。CS-SINSスコアを、下記で説明するように算出した。
CS-SINSアッセイの較正 CS-SINS測定値を、下記の方法で較正して評価した。最初に、金抗Fcコンジュゲートの各新規バッチを、2種のコントロール抗体(即ち、ヒトポリクローナル抗体(ChromPure Human IgG、全分子、Jackson ImmunoReasearch Laboratories 009-000-003)、およびNIST mAb RM 8671(NIST mAb))を使用して評価した(全体が参照によって本明細書に組み入れられるKarageorgos,I.他、Biologicals 2017、50、27~34頁を参照されたい)。ヒト抗体を吸着させたこれらのコンジュゲートのプラズモン波長が534nm(ヒトポリクローナル抗体)または533nm(NIST mAb)を超えた場合には、実験を終了し、この試験(試験番号1)に合格するまで、このコンジュゲートを再度調製した。次に、試験番号1に合格した金抗Fcコンジュゲートを、低いおよび高い自己会合挙動の両方に及ぶ6種のコントロールmAb(この試験では、mAb A、C、D、E、F、およびK)のパネルを使用して評価し、これらのプラズモン波長(CS-SINSスコアの形)を、同一抗体の参照データと比較した。参照データに関して、CS-SINSスコアを、(所与のmAbのプラズモン波長-最低自己会合mAb(例えば、この試験ではmAb A)のプラズモン波長)/(最高自己会合mAb(例えば、この試験ではmAb K)のプラズモン波長-最低自己会合mAb(例えば、この試験ではmAb A)のプラズモン波長)として算出した。各新規実験でのmAbのパネルの測定値(即ち、較正測定値)では、CS-SINSスコアを、(所与のmAbのプラズモン波長-パラメータ1)/(パラメータ2-パラメータ1)として算出した。これら2つのパラメータを、((1-傾き)+(切片))の合計が最小化するようにフィットさせ、これら傾きおよび切片の項は、較正と参照CS-SINSスコアとの線形回帰から得られる。この線形フィットの傾き、切片、またはR値の3つの値の内のいずれかが、理想値(傾きの場合は1、切片の場合は0、およびRの場合は1)の10%以内でなかった場合には、実験を終了し、試験番号1に加えてこの試験(試験番号2)に合格するまで、コンジュゲートを再度調製した。測定値が両方の試験に合格した場合には、CS-SINS測定を、抗体のフルパネルで実施し、CS-SINSスコアを、試験番号2でのパラメータフィット(即ち、パラメータ1および2)を使用して算出した。較正抗体は、下記を含む:A、トシリズマブ;C、セツキシマブ;D、エボロクマブ;E、デノスマブ;F、ペムブロリズマブ;およびK、オマリズマブ。
粘度および乳白光の測定 実験mAbデータセットの粘度および乳白光の値を、Kingsbury他(全体が参照によって本明細書に組み入れられるSci Adv 6、eabb0372、doi:10.1126/sciadv.abb0372(2020))から得た。
電荷安定化により、抗体-金コンジュゲートの凝集が防止される
AC-SINSを使用する過去の試みで経験した問題の原因を理解するために(図2A、左側)、金-抗体(抗ヒトIgG)コンジュゲートの凝集を、pH値の範囲(pH4.0~6.5;図2B、左側)にわたり希釈緩衝液(10mMの酢酸および/またはヒスチジン)中で測定した。5.0~6.5の範囲のpH値では、PBS中の安定なコンジュゲートの典型的な値(530~535nm)とは著しく異なる約590nmと高いプラズモン波長を観察した(図2E)。動的光散乱により検出されたコンジュゲートの大きな見かけ上の直径から明らかなように、pH5.0~6.5の範囲で、実質的な粒子凝集を観察した。この結果と一致して、PBS中の安定なコンジュゲートの典型的な値(530~535nm)とは著しく異なる約590nmと高いプラズモン波長を観察した(図2C、左側)。抗体-金コンジュゲートのゼータ電位を測定することにより、粒子凝集のメカニズムを調べ(図2D、左側)、pH4.0での最大値+16mVから着実な減少を観察し、pH5.7付近でゼロと交差し、pH6.5で最小値-5mVであった。pH増加を伴うゼータ電位の傾向は、固定された捕捉抗体固有の荷電アミノ酸の滴定とも一致した。これらの発見から、pH5.6~6付近のコンジュゲートの低い正味の電荷は、pH5~7範囲での凝集に関連していることが示唆された。
コンジュゲーション調製中に、大きな正荷電ポリマー(ポリリシン、≧70kDa)を、捕捉抗体と共吸着させた。たとえ少量のポリリシンの添加(例えば3%、図2A、中央)であっても、4~6の広いpH範囲にわたりコンジュゲートの凝集を妨げるのに十分であった(図2B、中央)。ポリリシンを15%まで増加させると(図2A、右側)、pH6.5までさらに安定化した(図2B、右側)。ポリリシンで安定化されたコンジュゲートのプラズモン波長は、コンジュゲートの見かけ上のサイズで観察された場合と同様のpH依存的な傾向を示した(図2C、中央、および図2C、右側)。この同一pH範囲わたり、正の値(+2~+6mV)までのコンジュゲートのゼータ電位の同時の増加も観察した(図2D、中央、および図2D、右側)。低量のポリリシン(3%)により、ポリリシンの非存在下でのコンジュゲートの凝集と関連するであろうpH6でのゼータ電位(+2.3mB)が得られたという事実から、観察された安定化に対するさらなる立体要素が示唆された。
安定化されたコンジュゲートを使用して、ヒスチジン製剤中のCS-SINSによりmAbの自己相互作用を測定した(図8)。ヒスチジン製剤中のmAbコロイド相互作用の光散乱分析に基づいて幅広い自己会合挙動を示す7種のmAbを選択した。CS-SINS分析により、小さいが検出可能なmAb依存性プラズモンシフトが明らかとなった(PBS中の従来のAC-SINSを使用した同一の抗体に関して観察された30nm超と比較して1nm未満のプラズモンシフト)。捕捉抗体を、非特異的抗体に置き換え、7種のmAbに関して7つのより小さいプラズモンシフトを観察した。mAbの添加前にポリリシンのみで調製されたコンジュゲートも、mAbに依存しない極めて小さいプラズモンシフトを示した。プラズモンシフトへのポリリシンサイズ(公称サイズ30~70kDaおよび15~30kDa)の影響を検証し、様々なサイズのポリリシンで調製されたコンジュゲートに関して同様の傾向を観察した(図9)。これらの結果から、CS-SINSアッセイが、抗体媒介性の固定化を必要としておりかつポリリシンサイズに弱く依存するmAb特異的コロイド相互作用を検出することが示された。
頑強な較正法は、正確な実験プロトコールに従わない場合に起こり得る結果のばらつきを制御する。CS-SINS測定値の較正および評価のための2種の試験を開発した(図4および5)。1)2種の較正抗体(ヒトポリクローナル抗体およびNIST mAb)に関する抗Fc金コンジュゲートは、成功裏の実験に関して図5Aに示すように、ヒロポリクローナル抗体に関する534nm未満およびNIST mABに関する533nm未満のプラズモン波長が得られるはずである。2)6種の較正mAbのパネルを使用してアッセイを較正し、これらの測定値を、複数の独立したアッセイで得られた参照(過去)測定値と比較した。方法セクションおよび図4で説明したように、較正データと参照データとの間での線形フィットを最大化するように2つのパラメータをフィットさせて、プラズモン波長を較正されたCS-SINSスコアに変換した。傾き、切片、およびR2の値が理想値の10%以内であった場合には、このアッセイは試験番号2に合格しており、抗体の完全パネルを評価した。図5での成功裏の実験の場合には、アッセイは試験番号2に合格しており、抗体のより大きなパネル(較正抗体を含まない)の評価データは、参照データと比較して良好な性能を示した。較正プロトコールを、25種の市販のmAbのパネルに関して3%または10%のポリリシンにより得られたCS-SINS測定値に適用した(図6A)。プラズモン波長シフトとして分析した場合には、2つのポリリシン条件間で測定値に明らかな差違があった。しかしながら、較正プロトコールを適用した場合には、2つのデータセット間に優れた一致が見られた(図6B)。この較正プロセスの価値を説明すべく、欠陥のあるプロトコールによる実験をどのように容易に特定し得るかを説明するために、さらなる実験を実施した(図5B~5C)。
溶液挙動の予測としてのmAb自己相互作用
mAb自己相互作用の測定、およびその結果としての抗体溶液挙動の予測での電荷安定化免疫金コンジュゲートの有用性を評価するために、43種の市販の製品を含む56種のmAbの多様なセットを利用した。アミノ酸配列に関連する様々な特性(pI、電荷、電荷非対称、および疎水性)を、治療用抗体データベース(TABS)を使用して、データセット内のmAbに関して、より広範な臨床現場から集めた500種の固有の抗体配列と比較した(図3A~D)。静電的性質および疎水的性質の配列由来の測定基準の評価に重点が置かれており、これらは両方とも、mAb自己相互作用の原動力であることが既に示されている。この分析に基づいて、mAbセットは、等電点、正味の電荷(pH6)、およびFv電荷非対称パラメータ(Fv-CSP、pH6)等のより広い臨床抗体の状況からのmAbの重要な特性を正確に表していることが実証された。さらに、この抗体のパネルはまた、Eisenberg Hydrophobicity Index(EHI)に関して評価した場合の疎水性特性も、臨床段階の抗体の大きいパネルと類似していた。この発見により、mAbデータセットは、抗体溶液挙動を評価するためのCS-SINSアッセイの一般的な適用性の評価に十分に適していることが示された。
臨床段階のmAbの30%超、およびおそらく初期の前臨床段階でのより高い割合は、高い溶液粘度および乳白光(これらは、より高い濃度(>100mg/mL)でのみ現れる)等の不良な溶液挙動を示すことが予想される。高いmAb溶液粘度は、自動注射器による皮下送達、および限外/透析ろ過精製ユニット操作中に特に問題となる。高い乳白光は、相の分離および凝集の素因を示し得る。近年、拡散相互作用パラメータ(k)による弱いコロイド自己相互作用の測定は、分子記述子の大きなセットと比較して高い粘度または乳白光の傾向を示すmAbの予測で最も有効であることが示された。しかしながら、そのような測定値の材料要件により、小数(約10個)の候補のみの発見プロセス(図1)の後の候補選択段階でのみ実行可能となる。一方、弱いコロイドコロイド相互作用も測定するCS-SINSアッセイは、数百~数千のバリアントのスクリーニングの候補最適化中の実行に適している(図1)。
CS-SINSを超希薄溶液(10μg/ml)で実行して、4桁高い抗体濃度(>100mg/ml)で現れる問題の挙動を検出し得るかどうかを決定した。粘性(>30cP)の抗体は、低粘度の良好な挙動のmAbと比べてCS-SINSスコアが一貫して高く、極度の乳白光プロファイル(>20NTU)を有するこのmAbは、CS-SINSを使用して容易に同定された(図3F)。閾値0.35により、CS-SINSは、>85%の精度で、良好な挙動のmAb(<30cP、<12NTU)を同定した(図3G~3H)。このCS-SINSスコア閾値を設定することにより、10種全て(100%)の粘性抗体、および7種の内の3種(43%)の乳白光抗体の特定が容易となった。加えて、この閾値は、残り39種の良好な挙動の抗体の内の4種(10%)のみで誤って特徴付けされた。56種のmAbの内、39種の内の35種は、良好な挙動と正確に特定され、17種の内の13種は、不良な溶液特性を有すると特定され、kによる分類と同等であった。CS-SINSアッセイはまた、再現性に関しても頑強であり、詳細な較正およびシステム適合性基準により裏付けられた(図3、4、および5)。
抗体の同様のパネルを使用する過去の研究から、拡散相互作用パラメータ(k)と不良な溶液特性との間の強い関係が明らかとなった。さらに、本明細書で特定されているように、不良な溶液特性(特に、乳白光に関するもの)の予測でのkの有用性に関するIgGサブクラス特異的挙動。kと本明細書で測定されたCS-SINSスコアとの間の関係を調べた(図7)。サブクラスによるmAbの分離を行なわないと、kとCS-SINSスコアとの間に適度に強い順位相関が観察された(スピアマンのρ -0.80;図7A、上)。しかしながら、mAbをIgG1/IgG2対IgG4サブクラスに分けると、サブクラス特異的挙動が現れた。IgG1/IgG2グループ化の順位相関が顕著に増加し(スピアマンのρ -0.89;図7A、中央)、IgG4サブクラスでは減少した(スピアマンのρ -0.76;図7A、下)。この分析を不良な溶液挙動の予測まで拡張することにより、0.35のCS-SINS閾値を使用することによって、IgG1/IgG2サブクラスグループ化における全ての不良な挙動の分子の検出が容易となることが観察された(図7B)。同一の基準をIgG4グループ化に適用することにより、低CS-SINSスコアを有する乳白光分子の全てがこのサブクラスに属していることが明らかとなり(図7C)、このことから、乳白光挙動につながるIgG4自己会合の様式がIgG1/2抗体と比べて独特であり得ることが示唆される。より一般的には、これらの結果から、自己会合の超希薄(10μg/mL)溶液測定値を使用して、特にIgG1およびIgG2 mAbに関して、高レベルの粘度および乳白光を有する抗体を特定するCS-SINSの能力が総合的に実証された。このアッセイは、頑強であり、多数(約100~1000)のmAb候補の同時のハイスループットスクリーニングに容易に実行可能である。CS-SINSアッセイは、早期発見における薬物のような特性を有する開発可能な抗体の特定に向けた大きな進歩を表す。
前述の詳細な説明および添付の実施例は、単なる例示であり、添付の特許請求の範囲およびその均等物によってのみ定義される本開示の範囲に対する限定と見なされないことが理解される。
本開示の実施形態に対する様々な変更および改変は、当業者に明らかであり、その趣旨および範囲から逸脱することなく行なわれる。

Claims (15)

  1. 正荷電ポリマーの使用であって、表面上に捕捉剤を含むナノ粒子を安定化させるための使用。
  2. 前記ナノ粒子は、溶液中で安定化される、請求項1に記載の使用。
  3. ナノ粒子であって、表面上に、捕捉剤と、正荷電ポリマーとを含むナノ粒子。
  4. 前記ナノ粒子は、溶液に含まれている、請求項3に記載のナノ粒子。
  5. 溶液であって、請求項3または4のいずれか1項に記載の複数のナノ粒子を含む溶液。
  6. キットであって、ナノ粒子と、正荷電ポリマーとを含むキット。
  7. 溶液および/または捕捉剤をさらに含む、請求項6に記載のキット。
  8. 標的タンパク質の自己会合傾向を決定する方法であって、
    (i)請求項5で定義された溶液中で標的タンパク質を捕捉する工程、
    (ii)溶液の色を決定する工程
    を含み、
    標的タンパク質を含まない、請求項5で定義されたコントロール溶液と比較した前記溶液の色の変化は、標的タンパク質の自己会合傾向を示す、方法。
  9. 自己会合特性に関して希薄濃度で標的タンパク質をスクリーニングする方法であって、
    捕捉剤と正荷電ポリマーとをナノ粒子上に吸着させて、捕捉剤コンジュゲートを形成すること;
    捕捉剤コンジュゲートを、溶液中で標的タンパク質と共にインキュベートして、標的タンパク質コンジュゲートを形成すること;
    450nm~約750nmの範囲の複数の波長で、標的タンパク質コンジュゲートの吸光度を測定すること;および
    標的タンパク質コンジュゲートによる吸光度が最大となる波長としてプラズモン波長を特定すること
    を含む方法。
  10. 自己会合特性に関して希薄濃度で標的タンパク質をスクリーニングするためのシステムであって、
    捕捉剤;
    正荷電ポリマー;
    ナノ粒子;
    溶液;
    標的タンパク質;
    少なくとも1種の較正タンパク質;および
    分光光度計
    の内の1つもしくはそれ以上またはそれぞれを含むシステム。
  11. ナノ粒子は、金属ナノ粒子であり、好ましくは金ナノ粒子である、請求項1~10のいずれか1項に記載の使用、ナノ粒子、溶液、キット、方法、またはシステム。
  12. 正荷電ポリマーは、ポリリシンである、請求項1~11のいずれか1項に記載の使用、ナノ粒子、キット、方法、またはシステム。
  13. 捕捉剤は、抗体である、請求項1~12のいずれか1項に記載の使用、ナノ粒子、キット、方法、またはシステム。
  14. 標的タンパク質は、抗体である、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法またはシステム。
  15. 溶液は、低イオン強度および/または3.5~7のpHを有する、請求項1~14のいずれか1項に記載の使用、ナノ粒子、溶液、キット、方法、またはシステム。
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