JP2024058174A - 電波伝送方法、及び、電波伝送システム - Google Patents

電波伝送方法、及び、電波伝送システム Download PDF

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Abstract

【課題】受信端末における電波の受信強度を増大させるために、反射板の反射角度と各反射素子の位相変化量とを簡単に設定可能な電波伝送方法、及び、電波伝送システムを提供する。【解決手段】電波伝送方法は、受信端末の電波の受信強度が大きくなるように反射板の反射角度を調整する角度調整処理と、受信強度が大きくなるように反射板の複数の反射素子の複数の位相変化量の分布を調整する位相調整処理とを行い、複数の位相変化量は、複数の反射素子が電波を反射する際に複数の反射位相を2値化又は多値化して得られる位相の変化量であり、位相調整処理は、複数の第1反射位相を設定して第1受信強度を計測し、複数の第1反射位相に対して共通の所定の反射位相を加算又は減算した複数の第2反射位相を設定して第2受信強度を計測し、第1及び第2受信強度に基づいて調整した複数の位相変化量の分布を取得する。【選択図】図12C

Description

本開示は、電波伝送方法、及び、電波伝送システムに関する。
従来より、波と相互作用する表面であって、前記波が該表面によって反射又は透過されるように該表面のインピーダンスを変化させるための複数の同調可能素子を備える表面(反射面)と、前記複数の同調可能素子の各々を制御するように前記表面に接続された制御装置と、を備える整形デバイスがある。整形デバイスは、前記制御装置に接続され且つパイロット信号を受信する送信モジュールを更に備え、前記制御装置が、前記送信モジュールが受信した前記パイロット信号に応じて前記複数の同調可能素子を制御する。各同調可能素子が二つの状態のみを有し、全ての同調可能素子の状態が、表面のインピーダンスを定める。二つの状態は、位相シフトに対応している。複数の同調可能素子は、電磁的同調可能特性を有する電磁素子である(例えば、特許文献1参照)。
特表2016-536931号公報
ところで、従来の整形デバイス(反射板)に関して、複数の同調可能素子(反射素子)が波(電波)の位相を変化させる量(位相変化量)をどのように設定するかについての具体的な開示はない。
例えば、反射板が反射した電波を受信端末が受信する際の受信強度が大きくなるように各反射素子における位相変化量を少しずつ変化させながら各反射素子における最適な位相変化量を探索すると、計算量が膨大になり、簡単な作業では済まない。
そこで、受信端末における電波の受信強度を増大させるために、反射板の位相変化量を簡単に設定可能な電波伝送方法、及び、電波伝送システムを提供することを目的とする。
本開示の実施形態の電波伝送方法は、複数の反射素子を有し、反射角度を走査可能な反射板を含み、前記反射板の反射角度を走査する、電波伝送システムにおいて、前記受信端末における前記電波の受信強度が大きくなるように、前記反射角度を調整する角度調整処理と、前記受信端末における前記電波の受信強度が大きくなるように、前記複数の反射素子が前記電波を反射する際に前記電波の位相を変化させる複数の位相変化量の分布を調整する位相調整処理とを行い、前記複数の位相変化量は、前記複数の反射素子が前記電波を反射する際に、前記複数の反射素子に設定される複数の反射位相を2値化又は多値化して得られる位相の変化量であり、前記位相調整処理は、複数の第1反射位相を前記複数の反射素子に設定した状態で、前記受信端末における前記電波の第1受信強度を計測する第1計測処理と、前記複数の第1反射位相に対して共通の所定の反射位相を加算又は減算した複数の第2反射位相、又は、前記複数の第1反射位相を2値化又は多値化する際に用いる前記2値又は前記多値の範囲を表す位相範囲を変更して得る複数の第2反射位相を前記複数の反射素子に設定した状態で、前記受信端末における前記電波の第2受信強度を計測する第2計測処理と、前記第1受信強度及び前記第2受信強度に基づいて調整した前記複数の位相変化量の分布を取得する反射位相取得処理とを有する。
受信端末における電波の受信強度を増大させるために、反射板の反射角度と各反射素子の位相変化量とを簡単に設定可能な電波伝送方法、及び、電波伝送システムを提供できる。
本開示の一実施形態における電波伝送システムの動作説明図である。 実施形態の電波伝送システムの構成の一例を示すブロック図である。 実施形態の電波伝送システムを壁に取り付けた状態の一例を示す図である。 実施形態の反射板の複数のセルの配列の一例を示す図である。 実施形態の反射板での反射角度の調整の原理の一例を説明する図である。 実施形態の反射板での反射角度の調整の原理の一例を説明する図である。 実施形態の反射板のセルの構成の一例を示す図である。 共振素子のPINダイオードのオンとオフによるセル内での共振素子の結合状態の一例を示す図である。 共振素子のPINダイオードのオンとオフによるセル内での共振素子の結合状態の一例を示す図である。 共振素子のPINダイオードのオンとオフによるセル内での共振素子の結合状態の一例を示す図である。 共振素子のPINダイオードのオンとオフによるセル内での共振素子の結合状態の一例を示す図である。 極座標系における天頂角θ及び方位角φを示す図である。 反射板の反射面を水平方向に向けて配置した状態における仰角Θ及び方位角Φを示す図である。 無線基地局と受信端末との間における電波の経路の一例を示す図である。 実施形態の電波伝送方法の位相調整処理の一例を説明する図である。 実施形態の電波伝送方法の位相調整処理の一例を説明する図である。 反射板の反射波の指向性の測定結果の一例を示す図である。 反射板の反射波の指向性の測定結果の一例を示す図である。 反射板の反射波の指向性の測定結果の一例を示す図である。 反射板の反射波の指向性の測定結果の一例を示す図である。 実施形態の電波伝送システムの制御部が実行する処理の一例を表すフローチャートである。 実施形態の電波伝送システムの制御部が実行する処理の一例を表すフローチャートである。 実施形態の電波伝送システムの制御部が実行する処理の一例を表すフローチャートである。 実証実験を行った際の実施形態の反射板と比較用の反射板との配置の一例を示す図である。 実験結果の一例を示す図である。 実施形態の変形例の位相調整処理の一例を表すフローチャートである。
以下、本開示の電波伝送方法、及び、電波伝送システムを適用した実施形態について説明する。以下では、同一の要素に同一の符号を付して、重複する説明を省略する場合がある。
以下では、XYZ座標系を定義して説明する。X軸に平行な方向(X方向)、Y軸に平行な方向(Y方向)、Z軸に平行な方向(Z方向)は、互いに直交する。また、以下では、説明の便宜上、-Z方向側を下側又は下、+Z方向側を上側又は上と称す場合がある。また、平面視とはXY面視することをいう。また、以下では構成が分かりやすくなるように各部の長さ、太さ、厚さ等を誇張して示す場合がある。また、平行、直角、直交、水平、垂直、上下等の文言は、実施形態の効果を損なわない程度のずれを許容するものとする。
また、以下の説明で、「電波」とは電磁波の一種であり、一般的に、3THz以下の電磁波は電波と呼ばれている。以下では、屋外の基地局又は中継局から放射された電磁波を「電波」と呼び、電磁波一般について言及するときは「電磁波」と呼ぶ。また、以下では、「ミリ波」又は「ミリ波帯」というときは、30GHz~300GHzの周波数帯域に加えて、24GHz~30GHzの準ミリ波帯も含むものとする。
実施形態の電波伝送システムに含まれる反射板が反射する電波は、第五世代移動通信システム(5G)等のミリ波帯や、Sub-6を含む1GHz~30GHzの周波数帯域の電波であると好適である。また、実施形態の電波伝送システムに含まれる反射板が反射する電波は、LTE(Long Term Evolution)、LTE-A(LTE-Advanced)、又はUMB(Ultra Mobile Broadband)であってもよい。また、実施形態の電波伝送システムに含まれる反射板が反射する電波は、IEEE802.11(Wi-Fi(登録商標))、IEEE802.16(WiMAX(登録商標))、IEEE802.20、UWB(Ultra-Wideband)、Bluetooth(登録商標)、又はLPWA(Low Power Wide Area)等であってもよい。電波の周波数が高くなるにつれて、反射や回折による伝搬損失が大きくなり、不感地帯が発生しやすくなる。このため、実施形態の電波伝送システムに含まれる反射板は、比較的高い周波数を扱う通信に、より好適である。以下では、特に断らない限り、一例としてミリ波帯とSub-6の電波を用いて説明する。
<実施形態>
<電波伝送システム10>
図1は、本開示の一実施形態における電波伝送システム10の動作説明図である。
本開示の電波伝送システム10は、例えば、屋外の建物BDの壁や窓に配置される。電波伝送システム10は、反射板100(図2参照)を有しており、本開示の反射板100は、RIS(Reconfigurable Intelligent Surface:再構成可能なリフレクタ)と呼ばれる、ビームの指向性を調整可能な指向性制御アレイである。
電波伝送システム10が配置される建物BDの種類は、任意であるが、例えば高層な建物が林立するような地域での建物である。高層な建物が林立する地域では、電波が正常に届かない不感地(通信環境が良好でない地域ないし空間、「不感地帯」とも称される)が発生しやすい。本開示の電波伝送システム10は、反射する電波のビームの向きを制御することで、不感地に対して電波を届ける。
ここで、図1では、無線基地局RBから発信された電波、及び電波伝送システム10から反射された電波Rの放射態様が模式的に示されている。図1に示すように、無線通信を行うために無線基地局RBが設けられていることがある。無線基地局RBは、インターネットのようなネットワーク(不図示)からの信号を無線信号にして、電波Rを発信することで、電波Rを受信端末が受信する。また、受信端末が発信した電波Rを無線基地局RBで受信することで、受信端末がインターネットのようなネットワークへのアクセスすることが行われる。無線基地局RBは、電波伝送システム10に対して数10cm~数m程度の近傍に設けられていてもよく、あるいは、電波伝送システム10に対して数10m~数km程度離れて設けられていてもよい。
本開示の電波伝送システム10は、入射された電波Rをビームの向きを変えて特定の方向にビームを向けて反射したり、マルチビームにしたりすることで、建物BDに遮られていた不感地帯へ電波を届ける。以下では、特に断らない限り、電波は平面波であるものとして説明する。
図1に示すように、電波伝送システム10を用いることで屋外の受信端末U1、U2、又はU3を選択してインターネット通信が可能となる。具体的には、例えばある時刻で無線基地局RBから送信される電波Rは、電波伝送システム10で反射されて屋外の受信端末U1へ受信させることで受信端末U1の無線通信を成立させることができる。別の時刻で無線基地局RBから送信される電波Rは、電波伝送システム10で反射されて屋外の受信端末U2へ受信させることで受信端末U2の無線通信を成立させることができる。また、受信端末U3についても受信端末U1及びU2と同様である。なお、ここでは受信端末U1、U2、及びU3が電波Rを受信する場合について説明するが、受信端末U1、U2、及びU3が電波Rを送信する際には、電波伝送システム10で反射された電波Rを無線基地局RBが受信することになる。
なお、図1では、電波伝送システム10に加えて、無線基地局RBを設ける例を示しているが、無線中継局等から飛来した電波を、電波伝送システム10の反射板100で反射してもよい。また、図1では、受信端末U1、U2、及びU3は、ユーザが所持するスマートフォンであるが、建物等に固定されて移動しない固定的な受信端末であってもよい。
図2は、電波伝送システム10の構成の一例を示すブロック図である。図3は、電波伝送システム10を壁1に取り付けた状態の一例を示す図である。図2には、反射板100が無線基地局RBから到来した電波を受信端末U1に向けて直接反射している状態を示す。受信端末U1は、通信用のアンテナ1Aを有する。
電波伝送システム10は、反射板100、通信部4、及び制御部5を有する。本実施形態の電波伝送方法は、電波伝送システム10の制御部5が実行する処理によって実現される。
制御部5は、例えば、MCU(Micro Controller Unit)よって実現され、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、入出力インターフェース、及び内部バス等を含む。
制御部5は、基地局RSの座標を用いて、受信端末U1における電波の受信強度が大きくなるように、反射板100の反射角度を調整する角度調整処理を実行する。また、制御部5は、受信端末U1における電波の受信強度が大きくなるように、反射板100の複数のセルが電波を反射する際に電波の位相を変化させる複数の位相変化量の分布を調整する位相調整処理を実行する。なお、制御部5は、不図示の電源生成部で生成された電源電圧に基づいて動作する。
通信部4は、アンテナ4Aを有し、受信端末U1と通信可能である。通信部4と受信端末U1は、反射板100が反射する電波とは異なる電波を用いて、アンテナ4A及びアンテナ1Aの間で通信可能である。反射板100が反射する電波は、無線基地局RBから到来する電波であり、受信端末U1に向けて反射する電波である。
反射板100が反射する電波が(5G)等のミリ波帯やSub-6を含む1GHz~30GHzの周波数帯域の電波である場合に、アンテナ4A及びアンテナ1Aの間で通信に用いる電波は、一例として、LTE、LTE-A、UMB、IEEE802.11(Wi-Fi(登録商標))、IEEE802.16(WiMAX(登録商標))、IEEE802.20、UWB、Bluetooth(登録商標)、又はLPWA等であればよい。
受信端末U1は、制御部5が角度調整処理及び位相調整処理を実行する際に、アンテナ1Aを介して制御部5からコマンドを受信すると、反射板100で受信端末U1に向けて反射された電波の受信強度を計測し、受信強度を表すデータをアンテナ1Aから送信する。通信部4は、電波の受信強度を表すデータを受信端末U1からアンテナ4Aで受信し、電波の受信強度を表すデータを制御部5に出力する。制御部5は、電波の受信強度を表すデータを用いて角度調整処理及び位相調整処理を実行する。角度調整処理及び位相調整処理については、図12A乃至図12Cを用いて後述する。
また、図3に示すように、電波伝送システム10(反射板100、通信部4、及び制御部5)は、壁1に設けられている。ここで、建物BDの壁1において、電波伝送システム10が設けられる場合の地上からの高さは、電波の効率性の点で、1m~14mが好ましく、2m~10mが特に好ましい。
なお、図3では電波伝送システム10は、壁1上に配置される例を示しているが、電波伝送システム10における反射板100は、窓ガラス上に設けられていてもよい。反射板100が窓ガラスに設けられる場合は、反射板100に含まれる反射板の基板や共振素子は、視感透過率が50%以上である透明部材で構成されると好適である。なお、反射板100が窓ガラスに設けられる場合は、制御部5は、反射板100から離間して、窓ガラスに隣接する壁部や窓ガラスの枠部のような他の箇所に配置されてもよい。
さらに、本開示の電波伝送システム10は、屋内の壁や窓ガラスに設置してもよい。その場合、屋内での不感地帯の低減に寄与する。
電波伝送システム10が屋内に設けられる場合の床面からの高さは、電波の効率性の点で、50cm~2mが好ましい。
<反射板100の構成、原理、及び動作>
次に、制御部5が実行する角度調整処理及び位相調整処理について説明する前に、図4乃至図7Dを用いて、反射板100の構成、原理、及び動作について説明する。
図4は、反射板100の複数のセルの配列の一例を示す図である。図4では、垂直偏波の電波を反射する場合について説明するが、水平偏波についても同様である。
図4に示すように、反射板100は、規則的に配列された複数のセル110を有する。セル110は繰り返し単位となる構成であって、例えば、図4では、一例としてセル110がX方向及びY方向に10個ずつ配列されている。
反射板100は、各セル110で電波を反射する際に位相を変化させる量(位相変化量)を制御することで、反射板100が電波を反射する際の反射角度を鏡面反射以外の角度、又は、鏡面反射の角度に調整可能である。一例として、図4に示すように、セル110をX方向及びY方向に10個ずつ配列することで、反射波の反射角度を調整できる。
反射板100の各セル110の位相変化量は2値的、又は、2値よりも多い多値的に制御することができる。反射板100は、各セル110の位相変化量を制御して反射板100が電波を反射する際の反射角度を調整することにより、所望の反射方向に電波を反射する。なお、ここでは、電波の位相を2値的に制御する場合について説明する。
また、複数のセル110の配列は、図4に示すようなアレイ状に限らず、例えば、規則性を持たせずにランダム(不規則的)に配列してもよい。セル110は、X方向及びY方向に10個以上配列されており、X方向及びY方向における配列数は、130個以下であることが好ましく、100個以下であることがさらに好ましい。
また、各セル110は、共振素子111と、共振素子112H及び112Vとを有する。セル110は、反射素子の一例であり、共振素子111は第1共振素子の一例であり、共振素子112H及び112Vの各々は第2共振素子の一例である。共振素子112Hは、水平偏波の電波に付与する位相変化量を変更する際に用いられ、共振素子112Vは、垂直偏波の電波に付与する位相変化量を変更する際に用いられる。共振素子111は、単独で所定の共振周波数で共振可能な共振素子である。共振素子112H及び112Vは、電気的な制御で水平方向及び垂直方向における共振周波数を第1共振周波数又は第2共振周波数に切替可能な切替素子を有するが、図4では省略する。セル110の詳細については、図6を用いて後述する。
また、ここでは、各セル110が、共振素子111と、共振素子112H及び112Vとを有する形態について説明するが、各セル110は、共振素子111と、共振素子112H及び112Vのうちのいずれか一方とを有する構成であってもよい。
共振素子112Hの切替素子がオフの状態では、水平方向における共振周波数は第1共振周波数であり、共振素子112Hの切替素子がオンの状態では、水平方向における共振周波数は第2共振周波数になる。共振素子112Vの切替素子がオフの状態では、垂直方向における共振周波数は第1共振周波数であり、共振素子112Vの切替素子がオンの状態では、垂直方向における共振周波数は第2共振周波数になる。なお、水平方向及び垂直方向における第1共振周波数は異なっていてもよく、水平方向及び垂直方向における第1共振周波数は異なっていてもよい。
以下では、共振素子112Hの切替素子のオフとオフを切り替えることを、水平方向でセル110をオン又はオフにすると称し、共振素子112Vの切替素子のオフとオフを切り替えることを、垂直方向でセル110をオン又はオフにすると称す。また、水平方向及び垂直方向を特に区別しない場合に、共振素子112H又は112Vのいずれかの切替素子のオフとオフを切り替えることを、セル110をオン又はオフにすると称す。
セル110のオン、オフを制御することで、反射板100は、入射した電波を反射する角度を、水平方向又は垂直方向において所望の方向に設定可能となる。セル110のオン、オフの詳細については図6及び図7A乃至図7Dを用いて後述する。図4では、オンのセル110を白く示し、オフのセルをドットの塗り潰しで示す。セル110は、オン、オフが制御部5によって制御されるアクティブなセルである。
なお、2値よりも多い多値で制御する場合は、電気的に制御する移相器を各セル110に設けることが好ましい。移相器は、位相調整部の一例である。移相器としては、液晶や強誘電体などを用いることが好ましい。移相器は、電波の位相を連続的な値のうちの任意の値に変化させることができるので、多値での制御に好適である。
図5A及び図5Bは、反射板100での反射角度の調整の原理の一例を説明する図である。反射板100は、RIS(Reconfigurable Intelligent Surface:再構成可能なリフレクタ)と呼ばれる、ビームの指向性を調整可能なアレイである。図5A及び図5Bにおいて、dは、隣り合うセル110のX方向におけるピッチである。図5A及び図5Bでは、XZ平面において、隣同士のセル110における水平偏波の電波の入射と反射の様子を分かり易くするために、反射板100の反射面(+Z方向側の表面)に入射する位置と、反射面から出射する位置とをX方向にずらして別々に示す。
反射板100は、アレイ状に並べられた複数のセル110の各々において、電波を反射する際に電波の位相を変更することで、反射波であるビームの伝搬方向を調整する。
具体的には、図5Aに示すように、反射板100の反射面(+Z方向側の表面)に入射する電波に対して、X方向及びY方向におけるセル110同士の間隔を考慮して、電波を反射する際にセル110が位相を変化させる量(位相変化量)をセル110毎に設定することで、1つの反射板100に含まれるすべてのセル110で電波を反射する方向を調整することができる。すべてのセル110で電波を反射する方向は、反射板100の全体としての反射角度と同義である。
例えば、Z軸に沿って入射される電波をXZ平面内で反射する時に、セル110毎に位相を加えることで反射方向を変える。すなわち、反射板100の場所X毎で位相を加えることで電波の反射方向を変えることができる。
図5Aに示すように、座標(Xf,Yf,Zf)の点Fから出射された電波が反射板100の反射面上の座標(X,Y,0)の点に入射して反射され、座標(Xp,Yp,Zp)の点Pに到達する際に、反射板100の反射面で電波に対して加えられる位相Ψ(X,Y)は、次式(1)で表すことができる。なお、定数kは2π/λであり、λは自由空間における電波の波長である。
座標(Xp,Yp,Zp)は電波を受信するために集める点という意味で焦点と称す。
Figure 2024058174000002
式(1)では、反射板100の反射面で電波に対して加えられる位相Ψ(X,Y)の分布は、位置Xに対して非線形である。反射板100の反射面に対して点Fと点Pが十分に遠ければ、式(1)を反射面上の座標X,Yに対して線形な式に近似される。
また、図5Bには、X方向及びY方向においてピッチdで隣り合うセル110に天頂角θin及び方位角φinで入射する電波と、反射板100によって天頂角θout及び方位角φoutの方向に反射される電波をXZ平面で見た様子を示す。天頂角及び方位角は、後述する図8Aにおける天頂角θ及び方位角φで表される。
反射板100の反射面に対して点Fと点Pが十分に遠い場合には、図5Bに示すように、ピッチdで隣り合うセル110に入射する電波は平行であって入射角はともに天頂角θin、方位角φinであり、反射板100の反射面で反射される電波も平行であって反射角はともに天頂角θout、方位角φoutであると考えることができる。この場合に、ピッチdで隣り合うセル110に入射する電波の位相差は例えばX方向についてd×sinθin×cosφinであり、ピッチdで隣り合うセル110で反射される電波の位相差はd×sinθout×cosφoutである。また、図5Bには示さないが、ピッチdで隣り合うセル110に入射する電波の位相差は例えばY方向についてd×sinθin×sinφinであり、ピッチdで隣り合うセル110で反射される電波の位相差はd×sinθout×sinφoutである。入射の天頂角θinと方位角φin及び反射の天頂角θoutと方位角φoutを用いて式(1)を近似し、X、Yに依存しない定数項を無視することで次式(2)を得る。
Figure 2024058174000003
このようにして得られた位相Ψ(X,Y)を実現するように、反射板100内の位相差を近似的に実現するようなセル110の制御を行うことで、反射板100に入射してきた電波を所望の方向に反射させることができる。なお、セル110を制御するときに、すべてのセル110について式(1)で表される位相Ψ(X,Y)に対して同じ値を加算しても、同じ結果を得ることができ、反射板100の全体としての反射角度は変わらない。
例えば、電圧によって連続的に反射時の位相を制御できるセル110を用いることで、誤差を除いて位相Ψ(X,Y)を実現することができ、反射板100において反射方向を変えることができる。
また、電圧のオンとオフによる2値で反射時の位相変化量を制御できるセル110を用いることで、近似的に位相Ψ(X,Y)を実現することができ、反射板100において反射方向を変えることができる。
オン状態とオフ状態を切り替えることができる各セル110で位相Ψ(X,Y)を電波に加えることを実現するためには、オン状態とオフ状態での反射時の位相差を約180度確保できればよい。例えば、位相Ψ(X,Y)が-90°から90°の間であればオフ状態になり、-180°から-90°又は90°から180°の間であればオン状態になることで、位相Ψ(X,Y)をおおよそ実現することができる。この結果、各セル110において反射方向を変えることができる。これは式(1)及び式(2)のいずれの場合でも成立する。
上述の位相Ψ(X,Y)からオン状態とオフ状態を選択することは一例であり、互いに重複しない180°の範囲でオン状態とオフ状態を選択すればよい。例として、20°から180°又は-180°から-160°をオフ状態、-160°から20°をオン状態などとしてもよい。
このようにすることで、電波伝送システム10は、5Gの基地局等から出射された電波を、ビームの向きを変えて色々な方向や好きな方向へビームを向けて出したり、マルチビームにしたりすることもできる。
なお、図5A及び図5Bでは、XZ平面内で反射される電波を示したが、上述のように、反射板100は、YZ平面内で電波が反射させる場合や、Z軸を含みXZ平面及びYZ平面に対して角度を有する平面内で反射される場合も同様に電波を反射可能である。このため、反射板100は、鏡面反射以外の角度に反射角度を設定可能なリフレクタとなる。
図4には、垂直偏波の電波を反射する場合において、一例として、すべてのセル110のオン又はオフの状態が、各行内でX方向において変化し、各列内でY方向に配列される10個のセル110がオン又はオフに統一されている状態を示す。これは式(2)を元にオン状態とオフ状態を決めた場合に相当する。
なお、図4に示す反射板100におけるセル110の配列は一例であって、アレイに設けられるセル110の数は、数十個~数千個程度であってもよい。
<オンとオフによる2値で位相変化量を制御するセル110の構成>
図6は、セル110の構成の一例を示す図である。セル110は、オンとオフによる2値で位相変化量を水平方向又は垂直方向において制御するセルであり、共振素子111と、共振素子111に隣接する共振素子112H及び112Vを有する。また、図6には、基板101を示す。基板101は、反射板100(図4参照)の基板101であり、一例として、1つの反射板100が1つの基板101を含む。基板101の平面視でのサイズは、図4に反射板100として示すサイズである。また、基板101の-Z方向側の表面にはグランド層が設けられている。反射板100は複数のセル110を含む。図6には、基板101の全体のうちの1つのセル110に相当する部分を示す。また、1つの反射板100が1つの基板101を含む形態について説明するが、1つの反射板100が複数の基板101を含む構成であってもよい。すなわち、1つの反射板100の中で、1又は複数のセル110に対して1つの基板101が設けられていてもよい。
基板101は、一例として、平面視で矩形状の基板である。基板101は、例えば、可撓性を有する、樹脂製で薄いフィルム状のフレキシブル基板、又は、可撓性を有しないリジッド基板である。可撓性とは、外観で分かる程度に物体が折れずに曲がる性質である。基板101は、フレキシブル基板である場合は、例えば、フッ素、COP(Cyclo-Olefin Polymer)、PET(Polyethylene terephthalate)、PEN(polyethylene naphthalate)、ポリイミド、Peek(polyether ether ketone)、LCP(Liquid Crystal Polymer)、その他の複合材等の、可撓性を有する樹脂素材で形成可能である。また、基板101は、リジッド基板である場合には、例えば、ガラス布にエポキシ樹脂等を含浸させたプリプレグとコア材とを貼り合わせた基板等を用いることができる。
また、基板101は、屋外の基地局等から放射される電波に対して透明な任意の材料で形成されていてもよい。「透明」とは、視感透過率が少なくとも40%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上であることをいう。一例として、基板101に透明な樹脂基材を用いる。上記の条件を満たす樹脂材料として、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタラート(PET)等を用いることができる。また、基板101は、ガラス板であってもよい。
共振素子111及び112H及び112Vは、金属層で形成される。金属層は、基板101が電波に対して透明な任意の材料で形成されていない場合には、例えば、銅、ニッケル、又は金等の金属薄膜で形成可能である。また、金属層は、基板101が電波に対して透明な任意の材料で形成されている場合には、例えば、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、スズドープ酸化インジウム(ITO)、酸化インジウム・酸化スズ(IZO)等の透明導電膜、窒化チタン(TiN)や窒化クロム(CrN)等の金属窒化物、又はLow-e(low emissivity)ガラス用のLow-e膜で形成されるのが望ましい。また、金属層は、基板101が電波に対して透明な任意の材料で形成されている場合には、例えば、銅、ニッケル、又は金等のメッシュ状の金属薄膜で形成されていてもよい。
共振素子111は、平面視で正方形状の導体である。共振素子111は、+Y方向側においてX方向に沿って延びる端辺111Aを有する。共振素子111には、共振素子112H及び112Vが寄生する。共振素子112H及び112Vは、共振素子111に電磁界結合によって結合して寄生するため、共振素子111が主共振素子であって、共振素子112H及び112Vが寄生共振素子であることとして捉えてもよい。共振素子112Hは、水平偏波用であり、共振素子112Vは、垂直偏波用である。共振素子112H及び112Vは、共振素子111に対する位置が90度異なり、共振素子112Hは、共振素子111の+X方向側に位置し、共振素子112Vは、共振素子111の+Y方向側に位置するが、互いに同一の構成を有する。
共振素子112Vは、線状エレメント112A及び112BとPIN(p-intrinsic-n)ダイオード112Cとを有する。PINダイオード112Cは、切替素子の一例である。線状エレメント112A及び112Bは、X方向に平行に延びている。線状エレメント112Aは、共振素子111の端辺111Aの+Y方向側に配置されており、線状エレメント112Bは、線状エレメント112Aの+Y方向側に配置されている。線状エレメント112A及び112Bの間には、PINダイオード112Cが設けられている。一例として、線状エレメント112AにPINダイオードのカソードが接続され、線状エレメント112BにPINダイオード112Cのアノードが接続されている。
また、線状エレメント112A及び112Bの-X方向側の端部には、RFチョーク113、114が設けられている。RFチョーク113は、基板101の裏面のグランド電位(GND)のグランド層に接続され、RFチョーク114は、制御用端子に接続されて制御用電圧BVが印加される。制御用電圧BVは、制御部5(図2参照)から印加される。
共振素子111と線状エレメント112Aとの電磁界結合を得るために、共振素子111の端辺111Aと、線状エレメント112Aとの間の間隔は、一例として、λe/10以下であると好適であり、λe/30程度であるとさらに好適である。λeは、反射板100が反射する電波の周波数における波長の電気長である。
共振素子112Hは、共振素子112Vと同様に、線状エレメント112A及び112BとPIN(p-intrinsic-n)ダイオード112Cとを有する。共振素子112Hの動作は、共振素子112Vの動作と同様であるため、ここでは詳細は省略する。
なお、1つのセル110内で共振素子111と共振素子112H及び112Vとが設けられる領域の平面視でのX方向及びY方向の長さは、2λ以下である。図6には、正方形状の共振素子111を示すが、例えば、共振素子111が楕円形である場合のようにX方向及びY方向の寸法が一定ではない場合には、1つのセル110内で共振素子111と共振素子112H及び112Vとが設けられる領域の平面視での最大のX方向の長さと、最大のY方向の長さとが、2λ以下であればよい。
図7A乃至図7Dは、共振素子112H及び112VのPINダイオード112Cのオンとオフによるセル110内での共振素子111に対する共振素子112H及び112Vの線状エレメント112A及び112Bの結合状態の一例を示す図である。図7A乃至図7Bでは、共振素子111に対して結合する線状エレメント112A、又は、線状エレメント112A及び112Bを示し、その他の構成を省く。
図7Aには、制御部5(図2参照)から印加される制御用電圧BVによって共振素子112VのPINダイオード112C(図6参照)がオンになるとともに、制御用電圧BVによって共振素子112HのPINダイオード112C(図6参照)がオフになっているときの結合状態を示す。このため、共振素子112Vの線状エレメント112Aには線状エレメント112Bが接続され、共振素子112Hの線状エレメント112Aには線状エレメント112Bが接続されない。この結果、図7Aに示すように、共振素子111には、共振素子112Vの線状エレメント112A及び112Bと、共振素子112Hの線状エレメント112Aとが結合した状態になる。
図7Bには、制御部5(図2参照)から印加される制御用電圧BVによって共振素子112V及び112HのPINダイオード112C(図6参照)がオフになっているときの結合状態を示す。このため、共振素子112Vの線状エレメント112Aには線状エレメント112Bが接続されず、共振素子112Hの線状エレメント112Aには線状エレメント112Bが接続されない。この結果、図7Bに示すように、共振素子111には、共振素子112Vの線状エレメント112Aと、共振素子112Hの線状エレメント112Aとが結合した状態になる。
図7Cには、制御部5(図2参照)から印加される制御用電圧BVによって共振素子112VのPINダイオード112C(図6参照)がオフになるとともに、制御用電圧BVによって共振素子112HのPINダイオード112C(図6参照)がオンになっているときの結合状態を示す。このため、共振素子112Vの線状エレメント112Aには線状エレメント112Bが接続されず、共振素子112Hの線状エレメント112Aには線状エレメント112Bが接続される。この結果、図7Cに示すように、共振素子111には、共振素子112Vの線状エレメント112Aと、共振素子112Hの線状エレメント112A及び112Bとが結合した状態になる。
図7Dには、制御部5(図2参照)から印加される制御用電圧BVによって共振素子112V及び112HのPINダイオード112C(図6参照)がともにオンになっているときの結合状態を示す。このため、共振素子112Vの線状エレメント112Aには線状エレメント112Bが接続され、共振素子112Hの線状エレメント112Aには線状エレメント112Bが接続される。この結果、図7Dに示すように、共振素子111には、共振素子112Vの線状エレメント112A及び112Bと、共振素子112Hの線状エレメント112A及び112Bとが結合した状態になる。
図7A及び図7Bの結合状態を比べると、図7Aでは共振素子112Vの線状エレメント112A及び112Bが共振素子111に結合しているが、図7Bでは共振素子112Vの線状エレメント112Aのみが共振素子111に結合している点が異なる。図7A及び図7Bの結合状態を比べると、図7Aの結合状態の方が、共振素子112Vの長さが長くなり、形状が変化する。このため、図7Aに示す結合状態のように共振素子112VのPINダイオード112C(図6参照)をオンにすると、図7Bに示す結合状態のように共振素子112VのPINダイオード112Cがオフである状態よりも共振素子112Vの共振周波数が低下して第1共振周波数になる。これとは逆に、図7Bに示す結合状態のように共振素子112V及び112HのPINダイオード112C(図6参照)をオフにすると、図7Aに示す結合状態のように共振素子112VのPINダイオード112Cがオンである状態よりも共振素子112Vの共振周波数が上昇して第2共振周波数になる。
2つの略同一の共振周波数を有する共振素子同士が近くに置かれると、相互作用により反射特性が変わることが知られている。共振素子111の共振周波数が、共振素子112Vの共振素子112の第1共振周波数又は第2共振周波数のいずれかと略同一の共振周波数を持つ場合、共振素子112VのPINダイオード112Cのオンとオフを切り換えることにより、共振素子111及び112Vの全体の形状(又は長さ)が変化して、セル110の反射特性が変化する。
共振素子111及び112Vは、共振素子112VのPINダイオード112Cがオフのときとオンのときとで、垂直偏波の入射波としての電波に与える位相変化量の絶対値の差が約180度になるように、共振素子111のサイズ、及び、共振素子112Vの線状エレメント112A及び112Bが設定されている。約180度とは、一例として180度±45度の範囲内の値であることを意味する。共振素子111及び112Vは、導体で作製されるため、製造誤差等によって位相変化量に誤差が生じる場合が有り得る。しかしながら、共振素子112VのPINダイオード112Cのオンとオフを切り換えることによって、垂直偏波の入射波に与える位相変化量を約180度(180度±45度)変化させることができれば、反射板100の全体としての垂直偏波の電波の反射角度を鏡面反射以外の角度に調整可能である。鏡面反射とは、正反射のことであり、通常の金属反射等による反射によって等位相面が生じる方向に反射することをいう。
また、共振素子112H及び112Vは、平面視で角度が90度異なるだけで、同一の線状エレメント112A及び112Bを有し、同様に動作する。すなわち、共振素子111及び112Hは、共振素子112HのPINダイオード112Cがオフのときとオンのときとで、水平偏波の入射波としての電波に与える位相変化量の絶対値の差が約180度になるように、共振素子111のサイズ、及び、共振素子112Hの線状エレメント112A及び112Bが設定されている。共振素子112HのPINダイオード112Cのオンとオフを切り換えることによって、水平偏波の入射波に与える位相変化量を約180度(180度±45度)変化させることができれば、反射板100の全体としての水平偏波の電波の反射角度を鏡面反射以外の角度に調整可能である。
反射板100は、各セル110の共振素子112H又は112VのPINダイオード112Cのオンとオフを切り換えることによって、すべてのセル110の集合としての反射板100での垂直偏波又は垂直偏波の入射波の反射角度(反射方向)を切り換えることができる。すなわち、反射板100は、制御部5が各セル110の共振素子112H又は112VのPINダイオード112Cのオンとオフを切り換えることによって、水平方向又は垂直方向における位相変化量を2値的に制御することができ、反射角度を鏡面反射以外の角度に調整可能である。鏡面反射とは、正反射のことであり、通常の金属反射等による反射によって等位相面が生じる方向に反射することをいう。なお、反射板100は、反射角度を鏡面反射の角度にも調整可能である。
例えば、垂直方向について、共振素子112VのPINダイオード112Cをオフにしたときのセル110の位相変化量が30度であり、PINダイオード112Cをオンにしたときのセル110の位相変化量が210度であるように、位相変化量を2値的に制御することができる。この場合に、位相変化量の30度は第1値の一例であり、位相変化量の210度は第2値の一例である。共振素子112VのPINダイオード112Cがオフのときの位相変化量と、オンのときの位相変化量との差は、絶対値で120度~240度である。すなわち、位相変化量の第1値と第2値との差は、絶対値で180±60度である。位相変化量の第1値と第2値との差をこのような範囲の値に設定することで、製造誤差等によるばらつきを考慮して、位相変化量を2値的に制御することで、反射角度を鏡面反射以外の角度に調整可能である。
このため、垂直方向において、すべてのセル110のPINダイオード112Cをオフにしているときは、すべてのセル110の位相変化量の差は0度である。実際には多少のばらつきがあるため、位相変化量の差は約0度になる。また、これは、垂直方向において、すべてのセル110のPINダイオード112Cをオンにしている場合も同様である。
また、垂直方向において、すべてのセル110について、共振素子112VのPINダイオード112Cがオフのセル110と、PINダイオード112Cがオンのセル110とがある場合には、すべてのセル110の位相変化量(例えば、30度と210度)の差は、180度である。実際には多少のばらつきがあるため、位相変化量の差は約180度になる。
なお、これは、水平方向においても同様である。また、ここでは一例として、共振素子111が正方形状であり、共振素子112H及び112Vが2本の線状エレメント112A及び112Bの間にPINダイオード112Cを有する形態について説明した。しかしながら、共振素子111の形状は正方形状に限られず、電波を反射可能であれば、どのような平面形状であってもよい。また、共振素子112H及び112Vの構成が異なっていてもよい。また、共振素子112H及び112Vは、制御部5によって切り換えられることによって形状や長さを変更可能であれば、どのような構成であってもよい。また、PINダイオード112Cに限らず、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)スイッチ、バラクタ、又は、FET(Field effect transistor)のようなトランジスタであってもよい。
<極座標系>
図8Aは、極座標系における天頂角θ及び方位角φを示す図である。反射板100は、XYZ座標の原点に位置する。天頂角θは、+Z方向に対する角度であり、矢印で示すように+Z方向から下ろした角度を正とする。方位角φは、XY平面内での+X方向に対する方位角であり、矢印で示すように+X方向から+Y方向に向かう角度を正とする。rは動径であり、原点から受信端末U1が位置する受信点Gまでの距離である。反射板100の反射角度は、天頂角θ及び方位角φで表される。
<仰角Θ及び方位角Φ>
図8Bは、反射板100の反射面100Aを水平方向に向けて配置した状態における仰角Θ及び方位角Φを示す図である。図8Bでは、XZ平面が水平面である。反射板100の反射面100Aを水平方向に向けるとは、反射面100Aの法線が水平方向に向くことであり、図3に示すように反射板100が壁1に取り付けられている状態に相当する。反射面100Aの法線が水平方向に向いている状態は、図8Bに示すように、反射面100Aの法線がZ方向に平行であることである。
大文字で表す仰角Θ及び方位角Φは、図8Bに示す通りである。具体的には、仰角Θは、受信点GとXYZ座標系の原点とを含み水平面(XZ平面)に垂直な平面α内における、水平面(XZ平面)に対する受信点Gの仰角である。また、方位角Φは、受信点GとXYZ座標系の原点とを含み水平面(XZ平面)に垂直な平面αがXZ平面視(水平面視)で+Z方向となす角度である。
<角度調整処理及び位相調整処理>
図9は、無線基地局RBと受信端末U1との間における電波の経路の一例を示す図である。図9では、無線基地局RBと受信端末U1との間に、反射板100(RIS)及び壁1が位置している。
このような状況において、受信端末U1における電波の受信強度が大きいことが望ましい。受信端末U1における電波の受信強度を大きくするには、まず、反射板100の反射角度を調整して、受信端末U1における電波の受信強度が大きくなるように、反射角度を最適化すればよい。
ところで、無線基地局RBと受信端末U1との間には、反射板100で反射される電波の経路1と、壁1で反射される電波の経路2とが存在する。実際の無線基地局RBと受信端末U1との間には、壁1以外にも壁1と同様に電波を反射する構造物等が存在し、経路1及び2以外の電波の経路が存在し得るが、ここでは説明を簡略化するために、反射板100で反射される経路1と、壁1で反射される経路2とを用いる。
受信端末U1は、経路1の電波と、経路2の電波とを受信する。このため、経路1の電波と、経路2の電波とが同位相であれば、電波同士が強め合うことで受信端末U1における電波の受信強度は最大になる。しかしながら、経路1の電波と、経路2の電波との位相がずれていれば、受信端末U1における電波の受信強度は低下し、経路1の電波と、経路2の電波とが逆位相であれば、電波同士が弱め合うことで受信端末U1における電波の受信強度は小さくなる。
電波伝送システム10は、反射板100の各セル110における位相変化量を制御可能である。このため、反射板100から受信端末U1に伝送する電波の位相を調整することができる。電波伝送システム10は、受信端末U1が受信する電波の受信強度が大きくなるように、反射板100で反射する電波の位相を調整することができる。
電波伝送システム10は、まず、反射板100が電波を反射する反射角度を最適化する角度調整処理を実行する。そして、電波伝送システム10は、角度調整処理を完了してから、反射板100が電波を反射する電波の位相を最適化する位相調整処理を実行する。
電波伝送システム10が、位相調整処理よりも先に角度調整処理を実行するのは、仮に先に位相を調整しても、その後に反射角度を変化させると、反射板100と受信端末U1との間の経路長が変化し、位相を再調整することになるからである。このような理由から、電波伝送システム10が、位相調整処理よりも先に角度調整処理を実行する。
また、電波伝送システム10は、角度調整処理を完了してから、位相調整処理を実行する。角度調整処理の途中で位相を調整すると、計算処理が煩雑になり、計算量が膨大になるからである。
<角度調整処理の概要>
角度調整処理は、一例として、反射板100に対する無線基地局RBのXYZ座標、反射板100で反射する電波の周波数、及び、反射板100に対する受信端末U1のXYZ座標等のデータに基づいて行われる。これらのデータに基づいて反射板100の反射角度を走査し、受信端末U1における電波の受信強度が最大になる反射角度を求め、求めた反射角度に反射板100の反射角度を調整する。なお、角度調整処理の詳細については、図12Bを用いて後述する。
<位相調整処理の概要>
図10A及び図10Bは、位相調整処理の一例を説明する図である。図10A及び図10Bでは、反射板100を簡略化して、X方向及びY方向に5個ずつのセル110が配列されているものとして説明する。図10A及び図10Bでは、位相変化量の調整を水平方向において行う場合について説明するが、垂直方向においても同様である。
図10A及び図10Bでは、各セル110の共振素子112H及び112Vについては、オン状態のPINダイオード112Cを白く示し、オフ状態のPINダイオード112Cを黒く示す。このため、共振素子112VのPINダイオード112Cは、すべて黒い。
反射板100の反射角度を設定するために各セル110の位相変化量を調整する際に、上述した式(1)で表される位相Ψ(X,Y)に相当する位相を各セル110に設定する。このように各セル110に設定する位相を反射位相と称す。各セル110の反射位相は、反射板100の所望の反射角度を実現するために、各セル110のXY座標に応じて割り当てられる位相であり、より具体的には、各セル110のXY座標に応じて計算処理によって導き出される位相である。各セル110が入射波の位相に反射位相を加えて反射すると、反射板100の全体で所望の反射角度で電波を反射することができることになる。
このような反射位相を2値化する際に、一例として、反射位相γが-90度から+90度(-90度≦γ<90度)の場合にはPINダイオード112Cをオン、反射位相γが+90度から+270度(+90度≦γ<+270度)の場合にはPINダイオード112Cをオフにすることとする。
また、一例として、PINダイオード112Cがオンのセル110の位相変化量が210度であり、PINダイオード112Cがオフのセル110の位相変化量が30度であることとする。
ここで、一例として各セル110に対して、図10Aに示すように反射位相(0deg、120deg、又は240deg)が設定されている場合に、すべてのセル110の反射位相に対して、共通の所定の反射位相として60度を加算すると、各セル110の反射位相は、図10Bに示すように、60deg、180deg、又は300degになる。図10Bでは、図10Aと比べて、すべてのセル110の反射位相の分布が変わるため、セル110のオンとオフの分布が変わる。
図11A乃至図11Dは、すべてのセル110の反射位相に対して共通の所定の反射位相を加算した場合における反射板100の反射波の指向性の測定結果の一例を示す図である。反射板100の反射方向が+Z方向になるように、各セル110の反射位相を調整して測定を行った。
図11Aには、共通の所定の反射位相が0度の場合の指向性を示し、図11Bには、共通の所定の反射位相が90度の場合の指向性を示す。図11Cには、共通の所定の反射位相が180度の場合の指向性を示し、図11Dには、共通の所定の反射位相が270度の場合の指向性を示す。なお、図11A乃至図11Dの指向性チャートにおいて、0度の方向は+Z方向(反射板100の正面方向)に相当し、90度の方向は+X方向に相当し、180度の方向は-Z方向に相当し、270度の方向は-X方向に相当する。
図11A乃至図11Dに示すように、共通の所定の反射位相が0度である場合における電波強度の最大値が0dBになるように規格化して、共通の所定の反射位相を0度、90度、180度、270度と変化させたときの正面方向(指向性チャートの0度方向)の電波強度は、それぞれ0dB、0dB、-0.5dB、-0.3dBであった。この結果より、共通の所定の反射位相を0度、90度、180度、270度と変化させても、同等の電波強度が得られることを確認できた。換言すれば、すべてのセル110の反射位相に対して共通の所定の反射位相を加算しても、反射板100の反射角度は変わらず、共通の所定の反射位相を変化させても、反射板100の反射角度は変わらないことを確認できた。さらに換言すれば、反射板100のある1つの反射角度に対して、すべてのセル110に設定される反射位相は、複数パターン存在することが分かった。
図11A乃至図11Dの測定結果より、すべてのセル110の反射位相に対して共通の所定の反射位相を加算しても、指向性に与える影響は殆どないと考えてよい。このため、すべてのセル110の反射位相に対して加算する共通の所定の反射位相の値を変化させながら、受信端末U1における電波の受信強度が最大になる共通の所定の反射位相を求めれば、各セル110に最適な位相変化量を設定することができる。
<制御部5が実行する処理>
図12A乃至図12Cは、制御部5が実行する処理の一例を表すフローチャートである。図12Aは、制御部5が実行する全体の処理を表し、図12B及び図12Cは、図12AのステップS2及びS3の詳細な処理をそれぞれ表す。ここでは、一例として、受信端末U1の位置は固定されているものとして説明する。
<全体処理(図12A)>
制御部5は、図12Aに示す処理を開始すると、初期パラメータを設定する処理を行う(ステップS1)。初期パラメータは、反射板100に対する無線基地局RBの座標、反射板100の反射角度の初期値、及び、反射板100が反射する電波の周波数等である。反射板100の反射角度の初期値は、反射板100に対する受信端末U1の座標に基づいて算出すればよい。反射角度の初期値を算出すると、各セル110についての反射位相の初期値が決まる。
制御部5は、反射板100が電波を反射する反射角度を最適化する角度調整処理を実行する(ステップS2)。ステップS2の処理は、反射角度が最適化されるまで処理を繰り返すサブルーチン処理である。ステップS2のサブルーチン処理の詳細については、図12Bを用いて説明する。
制御部5は、ステップS2の角度調整処理を完了してから、反射板100が電波を反射する電波の位相を最適化する位相調整処理を実行する(ステップS3)。
制御部5は、位相調整処理を終えると、一連の処理を終了する。電波伝送システム10は、ステップS2で求めた反射角度に設定するとともに、各セルの反射位相をステップS3で求めた反射位相に設定して受信端末U1に電波を反射する。
<角度調整処理のフローチャート(図12B)>
制御部5は、反射板100が電波を反射する反射角度を最適化する角度調整処理を以下のように実行する。反射板100の反射角度は、図8Bに示す仰角Θ及び方位角Φで表される。ここでは、仰角Θについての角度調整処理について説明するが、方位角Φについての角度調整処理も同様である。
仰角Θについての角度調整処理は、水平方向について電波の受信強度が最大になる仰角Θを探索する処理であり、方位角Φを0度に設定して処理を行う。方位角Φについての角度調整処理は、垂直方向について電波の受信強度が最大になる方位角Φを探索する処理であり、仰角Θについての角度調整処理で求めた仰角Θに設定して処理を行う。
仰角Θについての角度調整処理と、方位角Φについての角度調整処理とを行う順番については、受信端末U1と基地局RSの高さが著しく異なる場合は、仰角Θについての角度調整処理を先に行ってから、方位角Φについての角度調整処理を行うことが好ましい。また、受信端末U1と基地局RSの高さが同程度の場合は、方位角Φについての角度調整処理を先に行ってから、仰角Θについての角度調整処理を行う方がよい。
制御部5は、処理を開始すると、受信端末U1にコマンドを送信し、仰角Θを設定して、受信端末U1に向けて反射板100で電波を反射し、受信強度P(Θ)を表すデータを受信する(ステップS21)。なお、仰角Θについての角度調整処理では、方位角Φは0度に設定される。
ステップS21を最初に行う際に用いる仰角Θは、ステップS1で求めた反射角度に含まれる天頂角である。2回目以降のステップS21で用いる仰角Θは、後述するステップS24A又はS24Bで更新された仰角Θになる。受信端末U1は、コマンドを受信すると、電波の受信強度を計測して通信部4(図2参照)に送信する。
制御部5は、受信端末U1にコマンドを送信し、仰角Θ-A及びΘ+Aを設定して受信端末U1に向けて反射板100で電波を反射し、受信強度P(Θ-A)及びP(Θ+A)を表すデータを受信する(ステップS22)。受信端末U1は、コマンドを受信すると、電波の受信強度を計測して通信部4(図2参照)に送信する。
ステップS22において、電波伝送システム10は、仰角Θ-Aを設定して受信強度P(Θ-A)を表すデータを取得する処理と、仰角Θ+Aを設定して受信強度P(Θ+A)を表すデータを取得する処理とを別々に行う。
ステップS22の処理は、ステップS21で受信強度P(Θ)を求めた仰角Θの前後(±A)の仰角Θ±Aにおける受信強度P(Θ-A)及びP(Θ+A)を求める処理である。角度Aは、一例として、15度~30度の範囲内の適切な値に設定すればよい。角度Aは、第1所定角度の一例である。
制御部5は、受信強度P(Θ)、P(Θ-A)、及びP(Θ+A)のうちの最大値がいずれであるかを判定する(ステップS23)。
制御部5は、受信強度P(Θ-A)が最大であると判定すると、ステップS21で用いる仰角Θを仰角Θ-Aに更新する(ステップS24A)。すなわち、Θ=Θ-Aとなる。制御部5は、ステップS24Aの処理を終えると、フローをステップS21にリターンする。
また、制御部5は、ステップS23において、受信強度P(Θ+A)が最大であると判定すると、ステップS21で用いる仰角Θを仰角Θ+Aに更新する(ステップS24B)。すなわち、Θ=Θ+Aとなる。制御部5は、ステップS24Bの処理を終えると、フローをステップS21にリターンする。
また、制御部5は、ステップS23において、受信強度P(Θ)が最大であると判定すると、最適な仰角を仰角Θに決定する(ステップS25)。制御部5は、ステップS25の処理を終えると、角度調整処理を終了する。
角度調整処理では、最適な天頂角が見つかるまで、ステップS24A又はS24BからフローがステップS21にリターンされることによって、仰角Θの受信強度P(Θ)に対する受信強度P(Θ-A)及びP(Θ+A)を求めることで、最適な仰角を探索する。
なお、ここでは仰角Θについての角度調整処理について説明したが、方位角Φについての角度調整処理も同様であり、一例として、最適な仰角Θを決定した後に、最適な方位角Φを探索すればよい。また、これとは逆に、最適な方位角Φを決定した後に、最適な仰角Θを探索してもよい。仰角Θについての角度調整処理と、方位角Φについての角度調整処理とを実行することにより、最適な仰角Θ及び方位角Φで表される最適な反射角度が決定する。
<位相調整処理のフローチャート(図12C)>
制御部5は、反射板100が電波を反射する電波の位相を最適化する位相調整処理を以下のように実行する。
制御部5は、処理を開始すると、受信端末U1にコマンドを送信し、複数のセル110に複数の反射位相γをそれぞれ設定して受信端末U1に向けて反射板100で電波を反射し、受信強度P(γ)を表すデータを受信する(ステップS31)。ステップS31の処理は、第1計測処理の一例である。反射位相γは、第1反射位相の一例である。受信強度P(γ)は、第1受信強度の一例である。
ステップS31の処理を最初に実行する際に用いる複数の反射位相γは、ステップS2で求めた仰角Θ及び方位角Φによって表される反射角度を実現するために、複数のセル110(すべてのセル110)にそれぞれ設定される複数の反射位相である。受信端末U1は、コマンドを受信すると、電波の受信強度を計測して通信部4(図2参照)に送信する。
制御部5は、受信端末U1にコマンドを送信し、複数の反射位相γ-B及びγ+Bを設定して受信端末U1に向けて反射板100で電波を反射し、受信強度P(γ-B)及びP(γ+B)を表すデータを受信する(ステップS32)。ステップS32の処理は、第2計測処理の一例である。反射位相γ±Bは、第2反射位相の一例である。受信強度P(γ±B)は、第2受信強度の一例である。受信端末U1は、コマンドを受信すると、電波の受信強度を計測して通信部4(図2参照)に送信する。
ステップS32において、電波伝送システム10は、複数のセル110に複数の反射位相γ-Bをそれぞれ設定して受信強度P(γ-B)を表すデータを取得する処理と、複数のセル110に複数の反射位相γ+Bをそれぞれ設定して受信強度P(γ+B)を表すデータを取得する処理とを別々に行う。
ステップS32の処理は、ステップS31で受信強度P(γ)を求めた複数の反射位相γの前後(±B)の複数の反射位相γ-B及びγ+Bにおける受信強度P(γ-B)及びP(γ+B)をそれぞれ求める処理である。位相Bは、上述した共通の所定の反射位相の一例であり、一例として、30度~90度の範囲内の適切な値に設定すればよい。
制御部5は、受信強度P(γ)、P(γ-B)、及びP(γ+B)のうちの最大値がいずれであるかを判定する(ステップS33)。ステップS33~S35の処理は、すべてのセル110の複数の位相変化量の分布を調整し、調整した複数の位相変化量を取得する反射位相取得処理の一例である。
制御部5は、受信強度P(γ-B)が最大であると判定すると、ステップS31で用いる複数の反射位相γを複数の反射位相γ-Bにそれぞれ更新する(ステップS34A)。すなわち、γ=γ-Bとなる。制御部5は、ステップS34Aの処理を終えると、フローをステップS31にリターンする。
また、制御部5は、ステップS33において、受信強度P(γ+B)が最大であると判定すると、ステップS31で用いる複数の反射位相γを複数の反射位相γ+Bにそれぞれ更新する(ステップS34B)。すなわち、γ=γ+Bとなる。制御部5は、ステップS34Bの処理を終えると、フローをステップS31にリターンする。
また、制御部5は、ステップS33において、受信強度P(γ)が最大であると判定すると、最適な複数の反射位相を複数の反射位相γに決定する(ステップS35)。このようにして、ステップS35において、最適な反射位相γが取得される。制御部5は、ステップS35の処理を終えると、位相調整処理を終了する。
位相調整処理では、最適な複数の反射位相が見つかるまで、ステップS34A又はS34BからフローがステップS31にリターンされることによって、複数の反射位相γの受信強度P(γ)に対する受信強度P(γ-B)及びP(γ+B)を求めることで、最適な複数の反射位相を探索する。
以上のように、制御部5が図12A乃至図12Cに示す処理を実行することで、最適な反射角度、及び、最適な反射位相を用いて、反射板100は電波を受信端末に向けて反射することができる。なお、受信端末U1の位置は固定されていなくてもよい。受信端末U1が移動する場合は、受信端末U1の位置に応じて、最適な反射角度、及び、最適な反射位相を求めればよい。
なお、図12Cの処理では、ステップS32において、複数の反射位相γ-Bでの受信強度P(γ-B)と、複数の反射位相γ+Bでの受信強度P(γ+B)との両方を求めた。しかしながら、ステップS32では、複数の反射位相γ-Bでの受信強度P(γ-B)と、複数の反射位相γ+Bでの受信強度P(γ+B)とのいずれか一方を求めてもよい。そして、ステップS33において、受信強度P(γ)と、受信強度P(γ-B)及び受信強度P(γ+B)のうちのいずれか一方とを比較してもよい。
この場合に、例えば、ステップS32で受信強度P(γ-B)を求める処理を、角度Bを加算しながら繰り返し行うことで、N個の受信強度P(γ-B)、受信強度P(γ-2B)、・・・、受信強度P(γ-NB)を求めて、ステップS33において、N個の受信強度P(γ-B)~P(γ-NB)と、受信強度P(γ)との中から、最大の受信強度に対応する反射位相を取得してもよい。なお、Nは3以上の整数である。角度NBが360度をカバーするように処理を繰り返せば、角度B刻みで360度の中から最適な反射位相を求めることができる。また、ステップS32で受信強度P(γ+B)を求める処理を、角度Bを加算しながら繰り返し行っても同様である。第1受信強度P(γ)及び第2受信強度P(γ±B)に基づいて調整した複数の位相変化量の分布を取得するとは、このような調整方法を含む意味である。
<実験での検証>
図13は、実証実験を行った際の実施形態の反射板100と比較用の反射板50との配置の一例を示す図である。受信点から離れた位置に、実施形態の反射板100と比較用の反射板50とを隣同士に並べて配置した。比較用の反射板50は、反射板100の複数のセル110のように配置される複数のセルを含むが、位相変化量を調整することはできない。なお、反射板100及び50と受信点の位置は固定されている。
図示しない無線基地局RBから到来した電波を反射板100及び50で受信点に向けて反射し、受信点における電波の受信強度を計測したところ、図14の結果を得た。
図14は、実験結果の一例を示す図である。反射板100について、図14に示す条件1~13まで共通の所定の反射位相を30度刻みで増大させながら、受信点における電波の受信強度を計測した。
共通の所定の反射位相を変化させると、受信点における電波の受信強度が変化することを確認できた。受信強度の最小値は、共通の所定の反射位相が150度のときの-84dBmであり、受信強度の最大値は、共通の所定の反射位相が330度のときの-72dBmであった。このように、共通の所定の反射位相を変化させることで、受信強度を12dB増大させることができることを確認できた。
<効果>
電波伝送方法は、複数のセル110を有し、反射角度(Θ、Φ)を走査可能な反射板100を含み、反射板100の反射角度(Θ、Φ)を走査する、電波伝送システム10における電波伝送方法である。電波伝送方法は、受信端末における電波の受信強度が大きくなるように、反射角度(Θ、Φ)を調整する角度調整処理(S2)と、受信端末における電波の受信強度が大きくなるように、複数のセル110が電波を反射する際に電波の位相を変化させる複数の位相変化量の分布を調整する位相調整処理(S3)とを行う。複数の位相変化量は、複数のセル110が電波を反射する際に、複数のセル110に設定される複数の反射位相を2値化又は多値化して得られる位相の変化量である。位相調整処理(S3)は、複数の第1反射位相γを複数のセル110に設定した状態で、受信端末における電波の第1受信強度P(γ)を計測する第1計測処理(S31)と、複数の第1反射位相γに対して共通の所定の反射位相Bを加算又は減算した複数の第2反射位相γ-B又はγ+Bを複数のセル110に設定した状態で、受信端末における電波の第2受信強度P(γ-B)又はP(γ+B)を計測する第2計測処理(S32)と、第1受信強度P(γ)及び第2受信強度P(γ-B)又はP(γ+B)に基づいて調整した複数の位相変化量の分布を取得する反射位相取得処理(S33~S35)とを有する。
このように、電波伝送方法は、角度調整処理(S2)と位相調整処理(S3)とを行う。位相調整処理(S3)は、第1受信強度P(γ)を計測する第1計測処理(S31)と、第2受信強度P(γ-B)又はP(γ+B)を計測する第2計測処理(S32)と、反射位相取得処理(S33~S35)とを有するので、計算量を少なくでき、各反射素子の位相変化量を簡単に設定可能である。
したがって、受信端末における電波の受信強度を増大させるために、反射板の反射角度と各反射素子の位相変化量とを簡単に設定可能な電波伝送方法を提供できる。
また、反射位相取得処理(S33~S35)は、第1受信強度P(γ)及び第2受信強度P(γ-B)又はP(γ+B)に基づいて、複数のセル110に設定される複数の反射位相として、複数の第1反射位相γ、又は、複数の第2反射位相γ-B又はγ+Bを取得する処理である。第1受信強度P(γ)及び第2受信強度P(γ-B)又はP(γ+B)に基づいて、複数の第1反射位相γ、又は、複数の第2反射位相γ-B又はγ+Bを取得できるので、受信端末における電波の受信強度を増大させるための各反射素子の位相変化量を効率的かつ簡単に設定可能である。
また、角度調整処理(S2)は、反射角度(Θ、Φ)を所定角度Aおきに走査しながら電波の受信強度を計測して、電波の受信強度が最大になる角度に反射角度(Θ、Φ)を調整する処理である。このように、反射角度(Θ、Φ)を所定角度Aおきに走査しながら電波の受信強度が最大になる角度を探索するので、電波の受信強度が最大になる角度に反射角度(Θ、Φ)を効率的かつ簡単に調整可能である。
また、複数のセル110は、水平方向(X方向)及び垂直方向(Y方向)に配列されており、角度調整処理(S2)は、水平方向について反射角度(仰角Θ)を第1所定角度Aおきに走査しながら電波の受信強度を計測して、電波の受信強度が最大になる角度に水平方向における反射角度(仰角Θ)を調整してから、垂直方向について反射角度(方位角Φ)を第2所定角度おきに走査しながら電波の受信強度を計測して、電波の受信強度が最大になる角度に垂直方向における反射角度(方位角Φ)を調整する処理である。水平方向の反射角度(仰角Θ)と、垂直方向の反射角度(方位角Φ)とを別々に調整することで、計算量を少なくすることができる。また、最適な水平方向の反射角度(仰角Θ)を求めてから、最適な垂直方向の反射角度(方位角Φ)を求めるので、最適な仰角Θ及び方位角Φを効率的に求めることができる。
また、第2計測処理(S32)は、複数のセル110の複数の反射位相を、複数の第1反射位相γに共通の所定の反射位相Bを加算して得る複数の第2反射位相γ+Bに設定した状態と、複数の第1反射位相γから共通の所定の反射位相Bを減算して得る複数の第2反射位相γ-Bに設定した状態とで、受信端末における電波の第2受信強度を2回計測する処理であり、受信強度取得処理は、通信部を介して第1受信強度P(γ)と、2回の計測で得られた2つの第2受信強度P(γ-B)及びP(γ±B)とを取得する処理であり、反射位相取得処理(S33~S35)は、第1受信強度P(γ)と、2つの第2受信強度P(γ-B)及びP(γ±B)のうちの最大の受信強度に対応する複数の反射位相を、複数の第1反射位相γと、2回の計測に用いた2種類の複数の第2反射位相γ-B及びγ+Bとの中から求める処理である。すなわち、複数の第1反射位相γの前後の第2反射位相γ-B及びγ+Bについて、第2受信強度P(γ-B)及びP(γ±B)を求め、第1受信強度P(γ)と、第2受信強度P(γ-B)及びP(γ±B)との中で最大の受信強度に対応する反射位相を求める。このように、複数の第1反射位相γの前後の複数の第2反射位相γ-B及びγ+Bについての第2受信強度P(γ-B)及びP(γ±B)を求めることで、複数の第1反射位相γと、前後の複数の第2反射位相γ-B及びγ+Bとの中で探索でき、最適な反射位相を効率的かつ迅速に求めることができる。
また、反射位相取得処理(S33~S35)において複数の第2反射位相(γ-B又はγ+B)を取得すると、取得した複数の第2反射位相(γ-B又はγ+B)を複数の第1反射位相γとして設定した状態で第1計測処理(S31)を行い、取得した複数の第2反射位相(γ-B又はγ+B)を複数の第1反射位相γに設定した状態で第2計測処理(S32)を行う。すなわち、複数の第2反射位相(γ-B又はγ+B)を複数の第1反射位相γに更新した状態で第2計測処理(S32)を行うので、第1反射位相γを位相-B又は+Bだけずらして、複数の第1反射位相γと、前後の複数の第2反射位相γ-B及びγ+Bとの中で探索でき、より広い範囲で最適な反射位相を効率的かつ迅速に求めることができる。
また、セル110は、反射位相に応じて、3値以上の複数の位相変化量を設定可能である。このため、位相変化量を多値的に制御可能である。
また、位相変化量は、第1値又は第2値の2値であり、反射板100は、複数のセル110の位相変化量を第1値又は第2値に設定することで、反射角度(Θ、Φ)を走査する。このため、位相変化量を2値的に制御することで、反射角度を鏡面反射以外の角度に調整可能である。
また、第1値と第2値との差は、120度~240度であるので、製造誤差等によるばらつきを考慮して、位相変化量を2値的に制御することで、反射角度を鏡面反射以外の角度に調整可能である。
電波伝送システム10は、複数のセル110を有し、反射角度(Θ、Φ)を走査可能な反射板100と、反射板100の反射角度(Θ、Φ)を走査する制御部5とを含む。制御部5は、受信端末における電波の受信強度が大きくなるように、反射角度(Θ、Φ)を調整する角度調整処理(S2)と、受信端末における電波の受信強度が大きくなるように、複数のセル110が電波を反射する際に電波の位相を変化させる複数の位相変化量の分布を調整する位相調整処理(S3)とを行う。複数の位相変化量は、複数のセル110が電波を反射する際に、複数のセル110に設定される複数の反射位相を2値化又は多値化して得られる位相の変化量である。位相調整処理(S3)は、複数の第1反射位相γを複数のセル110に設定した状態で、受信端末における電波の第1受信強度P(γ)を計測する第1計測処理(S31)と、複数の第1反射位相γに対して共通の所定の反射位相Bを加算又は減算した複数の第2反射位相γ-B又はγ+Bを複数のセル110に設定した状態で、受信端末における電波の第2受信強度P(γ-B)又はP(γ+B)を計測する第2計測処理(S32)と、第1受信強度P(γ)及び第2受信強度P(γ-B)又はP(γ+B)に基づいて調整した複数の位相変化量の分布を取得する反射位相取得処理(S33~S35)とを有する。
このように、電波伝送システム10は、角度調整処理(S2)と位相調整処理(S3)とを行う。位相調整処理(S3)は、第1受信強度P(γ)を計測する第1計測処理(S31)と、第2受信強度P(γ-B)又はP(γ+B)を計測する第2計測処理(S32)と、反射位相取得処理(S33~S35)とを有するので、計算量を少なくでき、各反射素子の位相変化量を簡単に設定可能である。
したがって、受信端末における電波の受信強度を増大させるために、反射板の反射角度と各反射素子の位相変化量とを簡単に設定可能な電波伝送システム10を提供できる。
<変形例>
以上では、位相調整処理において最大の受信強度が得られる反射位相を探索する際に、複数のセル110の複数の反射位相に、共通の所定の反射位相を加算又は減算する方法について説明した。しかしながら、複数のセル110の複数の反射位相に、共通の所定の反射位相を加算又は減算する代わりに、複数のセル110の複数の反射位相を2値化する際の位相範囲を変更することで、複数のセル110についての複数の位相変化量の分布を調整してもよい。
図10Aに示すように反射位相(0deg、120deg、又は240deg)が設定されている場合に、すべてのセル110の反射位相を2値化する位相範囲をオン用の-90度≦γ<90度の範囲と、オフ用の+90度≦γ<+270度の範囲とに設定していた。図10Bに示す25個の反射位相は、図10Aに示す25個の反射位相に対して、共通の所定の反射位相(一例として60度)を加算して、オン用の-90度≦γ<90度の位相範囲と、オフ用の+90度≦γ<+270度の位相範囲とを用いて2値化して得た反射位相の分布であった。
実施形態の変形例では、位相調整処理の第2計測処理において、オン用の位相範囲を-90度≦γ<90度から、-30度≦γ<150度へと60度シフトさせるとともに、オフ用の位相範囲を+90度≦γ<+270度から+150度≦γ<+330度への60度シフトさせる。このように2値化のための位相範囲を変化させることで、図10Bに示す25個のセルの水平方向におけるオン、オフと同一の分布(位相変化量の分布)を得ることができる。
<実施形態の変形例の位相調整処理のフローチャート(図15)>
図15は、実施形態の変形例の位相調整処理の一例を表すフローチャートである。
制御部5は、反射板100が電波を反射する電波の位相を最適化する位相調整処理を以下のように実行する。
制御部5は、処理を開始すると、受信端末U1にコマンドを送信し、複数のセル110に複数の反射位相γを設定して受信端末U1に向けて反射板100で電波を反射し、受信強度P(ε)を表すデータを受信する(ステップS31M)。ステップS31の処理を実行する際に用いる複数の反射位相γは、ステップS2で求めた仰角Θ及び方位角Φによって表される反射角度を実現するために、複数のセル110(すべてのセル110)にそれぞれ設定される複数の反射位相である。受信端末U1は、コマンドを受信すると、電波の受信強度を計測して通信部4(図2参照)に送信する。
また、受信強度P(ε)は、反射位相を2値化する際のオン用の位相範囲をεに設定し、オフ用の位相範囲をε+πに設定した場合に得られる受信強度である。
制御部5は、受信端末U1にコマンドを送信し、オン用の位相範囲をε±Cに設定し、オフ用の位相範囲をε+π±Cに設定して受信端末U1に向けて反射板100で電波を反射し、受信強度P(ε-C)及びP(ε+C)を表すデータを受信する(ステップS32M)。受信端末U1は、コマンドを受信すると、電波の受信強度を計測して通信部4(図2参照)に送信する。
ステップS32Mにおいて、電波伝送システム10は、オン用の位相範囲をε-Cに設定するとともに、オフ用の位相範囲をε+π-Cに設定して受信強度P(ε-C)を表すデータを取得する処理を行う。また、ステップS32Mにおいて、電波伝送システム10は、オン用の位相範囲をε+Cに設定するとともに、オフ用の位相範囲をε+π+Cに設定して受信強度P(ε+C)を表すデータを取得する処理を行う。ステップS32Mにおいて、電波伝送システム10は、これら2つの処理を別々に行う。
ステップS32Mの処理は、ステップS31Mで受信強度P(ε)を求めた際の位相範囲ε、ε+πの前後(±C)の位相範囲ε±C、ε+π±Cおける受信強度P(ε-C)及びP(ε+C)を求める処理である。位相範囲Cは、位相範囲ε、ε+πを変更するために用いる位相範囲の変更分であり、一例として、30度~90度の範囲内の適切な値に設定すればよい。
制御部5は、受信強度P(ε)、P(ε-C)、及びP(ε+C)のうちの最大値がいずれであるかを判定する(ステップS33M)。
制御部5は、受信強度P(ε-C)が最大であると判定すると、ステップS31Mで用いる位相範囲ε、ε+πを位相範囲ε-C、ε+π-Cに更新する(ステップS34MA)。制御部5は、ステップS34MAの処理を終えると、フローをステップS31Mにリターンする。
また、制御部5は、受信強度P(ε+C)が最大であると判定すると、ステップS31Mで用いる位相範囲ε、ε+πを位相範囲ε+C、ε+π+Cに更新する(ステップS34MB)。制御部5は、ステップS34MBの処理を終えると、フローをステップS31Mにリターンする。
また、制御部5は、ステップS33Mにおいて、受信強度P(ε)が最大であると判定すると、最適な位相範囲をε、ε+πに決定する(ステップS35M)。制御部5は、ステップS35の処理を終えると、位相調整処理を終了する。
位相調整処理では、最適な複数の反射位相が見つかるまで、ステップS34MA又はS34MBからフローがステップS31Mにリターンされることによって、位相範囲εの受信強度P(ε)に対する受信強度P(ε-C)及びP(ε+C)を求めることで、最適な2値化のための位相範囲を探索する。
<効果>
実施形態の変形例の電波伝送方法は、複数のセル110を有し、反射角度(Θ、Φ)を走査可能な反射板100を含み、反射板100の反射角度(Θ、Φ)を走査する、電波伝送システム10における電波伝送方法である。電波伝送方法は、受信端末における電波の受信強度が大きくなるように、反射角度(Θ、Φ)を調整する角度調整処理(S2)と、受信端末における電波の受信強度が大きくなるように、複数のセル110が電波を反射する際に電波の位相を変化させる複数の位相変化量の分布を調整する位相調整処理(S3)とを行う。複数の位相変化量は、複数のセル110が電波を反射する際に、複数のセル110に設定される複数の反射位相を2値化又は多値化して得られる位相の変化量である。位相調整処理(S3)は、複数の第1反射位相γを複数のセル110に設定した状態で、受信端末における電波の第1受信強度P(γ)を計測する第1計測処理(S31)と、複数の第1反射位相γを2値化又は多値化する際に用いる2値又は多値の範囲を表す位相範囲を変更して得る複数の第2反射位相γ-B又はγ+Bを複数のセル110に設定した状態で、受信端末における電波の第2受信強度P(γ-B)又はP(γ+B)を計測する第2計測処理(S32)と、第1受信強度P(γ)及び第2受信強度P(γ-B)又はP(γ+B)に基づいて調整した複数の位相変化量の分布を取得する反射位相取得処理(S33~S35)とを有する。
このように、電波伝送方法は、角度調整処理(S2)と位相調整処理(S3)とを行う。位相調整処理(S3)は、第1受信強度P(γ)を計測する第1計測処理(S31)と、第2受信強度P(γ-B)又はP(γ+B)を計測する第2計測処理(S32)と、反射位相取得処理(S33~S35)とを有するので、計算量を少なくでき、各反射素子の位相変化量を簡単に設定可能である。
したがって、受信端末における電波の受信強度を増大させるために、反射板の反射角度と各反射素子の位相変化量とを簡単に設定可能な電波伝送方法を提供できる。また、同様の電波伝送システム10を提供できる。
以上、本開示の例示的な電波伝送方法、及び、電波伝送システムについて説明したが、本開示は、具体的に開示された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
以上の実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
複数の反射素子を有し、反射角度を走査可能な反射板を含み、
前記反射板の反射角度を走査する、電波伝送システムにおいて、
受信端末における前記電波の受信強度が大きくなるように、前記反射角度を調整する角度調整処理と、
前記受信端末における前記電波の受信強度が大きくなるように、前記複数の反射素子が前記電波を反射する際に前記電波の位相を変化させる複数の位相変化量の分布を調整する位相調整処理と
を行い、
前記複数の位相変化量は、前記複数の反射素子が前記電波を反射する際に、前記複数の反射素子に設定される複数の反射位相を2値化又は多値化して得られる位相の変化量であり、
前記位相調整処理は、
複数の第1反射位相を前記複数の反射素子に設定した状態で、前記受信端末における前記電波の第1受信強度を計測する第1計測処理と、
前記複数の第1反射位相に対して共通の所定の反射位相を加算又は減算した複数の第2反射位相、又は、前記複数の第1反射位相を2値化又は多値化する際に用いる前記2値又は前記多値の範囲を表す位相範囲を変更して得る複数の第2反射位相を前記複数の反射素子に設定した状態で、前記受信端末における前記電波の第2受信強度を計測する第2計測処理と、
前記第1受信強度及び前記第2受信強度に基づいて調整した前記複数の位相変化量の分布を取得する反射位相取得処理と
を有する、電波伝送方法。
(付記2)
前記反射位相取得処理は、前記第1受信強度及び前記第2受信強度に基づいて、前記複数の反射素子に設定される前記複数の反射位相として、前記複数の第1反射位相、又は、前記複数の第2反射位相を取得する処理である、付記1に記載の電波伝送方法。
(付記3)
前記角度調整処理は、前記反射角度を所定角度おきに走査しながら前記電波の受信強度を計測して、前記電波の受信強度が最大になる角度に前記反射角度を調整する処理である、付記1又は2に記載の電波伝送方法。
(付記4)
前記複数の反射素子は、水平方向及び垂直方向に配列されており、
前記角度調整処理は、前記水平方向について前記反射角度を第1所定角度おきに走査しながら前記電波の受信強度を計測して、前記電波の受信強度が最大になる角度に前記水平方向における前記反射角度を調整してから、前記垂直方向について前記反射角度を第2所定角度おきに走査しながら前記電波の受信強度を計測して、前記電波の受信強度が最大になる角度に前記前記垂直方向における前記反射角度を調整する処理である、付記1乃至3のいずれか1項に記載の電波伝送方法。
(付記5)
前記第2計測処理は、前記複数の反射素子の複数の反射位相を、前記複数の第1反射位相に前記共通の所定の反射位相を加算して得る前記複数の第2反射位相に設定した状態と、前記複数の第1反射位相から前記共通の所定の反射位相を減算して得る前記複数の第2反射位相に設定した状態とで、前記受信端末における前記電波の前記第2受信強度を2回計測する処理であり、
前記受信強度取得処理は、前記通信部を介して前記第1受信強度と、前記2回の計測で得られた2つの前記第2受信強度とを取得する処理であり、
前記反射位相取得処理は、前記第1受信強度と、前記2つの第2受信強度のうちの最大の受信強度に対応する複数の反射位相を、前記複数の第1反射位相と、前記2回の計測に用いた2種類の前記複数の第2反射位相との中から求める処理である、付記1乃至4のいずれか1項に記載の電波伝送方法。
(付記6)
前記反射位相取得処理において前記複数の第2反射位相を取得すると、
前記取得した前記複数の第2反射位相を前記複数の第1反射位相として設定した状態で前記第1計測処理を行い、
前記取得した前記複数の第2反射位相を前記複数の第1反射位相に設定した状態で前記第2計測処理を行う、付記2に記載の電波伝送方法。
(付記7)
前記反射素子は、前記反射位相に応じて、3値以上の複数の前記位相変化量を設定可能である、付記1乃至6のいずれか1項に記載の電波伝送方法。
(付記8)
前記位相変化量は、第1値又は第2値の2値であり、
前記反射板は、前記複数の反射素子の前記位相変化量を前記第1値又は前記第2値に設定することで、前記反射角度を走査する、付記1乃至7のいずれか1項に記載の電波伝送方法。
(付記9)
前記第1値と前記第2値との差は、120度~240度である、付記8に記載の電波伝送方法。
(付記10)
複数の反射素子を有し、反射角度を走査可能な反射板と、
前記反射板の反射角度を走査する制御部と
を含み、
前記制御部は、
受信端末における前記電波の受信強度が大きくなるように、前記反射角度を調整する角度調整処理と、
前記受信端末における前記電波の受信強度が大きくなるように、前記複数の反射素子が前記電波を反射する際に前記電波の位相を変化させる複数の位相変化量の分布を調整する位相調整処理と
を行い、
前記複数の位相変化量は、前記複数の反射素子が前記電波を反射する際に、前記複数の反射素子に設定される複数の反射位相を2値化又は多値化して得られる位相の変化量であり、
前記位相調整処理は、
複数の第1反射位相を前記複数の反射素子に設定した状態で、前記受信端末における前記電波の第1受信強度を計測する第1計測処理と、
前記複数の第1反射位相に対して共通の所定の反射位相を加算又は減算した複数の第2反射位相、又は、前記複数の第1反射位相を2値化又は多値化する際の角度範囲を変更して得る複数の第2反射位相を前記複数の反射素子に設定した状態で、前記受信端末における前記電波の第2受信強度を計測する第2計測処理と、
前記第1受信強度及び前記第2受信強度に基づいて調整した前記複数の位相変化量の分布を取得する反射位相取得処理と
を有する、電波伝送システム。
1 壁
1A アンテナ
U1、U2、U3 受信端末
4 通信部
4A アンテナ
5 制御部
10 電波伝送システム
100 反射板
110 セル
111 共振素子
111A 端辺
112、112H、112V 共振素子
112A、112B 線状エレメント
112C PINダイオード

Claims (10)

  1. 複数の反射素子を有し、反射角度を走査可能な反射板を含み、
    前記反射板の反射角度を走査する、電波伝送システムにおいて、
    受信端末における前記電波の受信強度が大きくなるように、前記反射角度を調整する角度調整処理と、
    前記受信端末における前記電波の受信強度が大きくなるように、前記複数の反射素子が前記電波を反射する際に前記電波の位相を変化させる複数の位相変化量の分布を調整する位相調整処理と
    を行い、
    前記複数の位相変化量は、前記複数の反射素子が前記電波を反射する際に、前記複数の反射素子に設定される複数の反射位相を2値化又は多値化して得られる位相の変化量であり、
    前記位相調整処理は、
    複数の第1反射位相を前記複数の反射素子に設定した状態で、前記受信端末における前記電波の第1受信強度を計測する第1計測処理と、
    前記複数の第1反射位相に対して共通の所定の反射位相を加算又は減算した複数の第2反射位相、又は、前記複数の第1反射位相を2値化又は多値化する際に用いる前記2値又は前記多値の範囲を表す位相範囲を変更して得る複数の第2反射位相を前記複数の反射素子に設定した状態で、前記受信端末における前記電波の第2受信強度を計測する第2計測処理と、
    前記第1受信強度及び前記第2受信強度に基づいて調整した前記複数の位相変化量の分布を取得する反射位相取得処理と
    を有する、電波伝送方法。
  2. 前記反射位相取得処理は、前記第1受信強度及び前記第2受信強度に基づいて、前記複数の反射素子に設定される前記複数の反射位相として、前記複数の第1反射位相、又は、前記複数の第2反射位相を取得する処理である、請求項1に記載の電波伝送方法。
  3. 前記角度調整処理は、前記反射角度を所定角度おきに走査しながら前記電波の受信強度を計測して、前記電波の受信強度が最大になる角度に前記反射角度を調整する処理である、請求項1に記載の電波伝送方法。
  4. 前記複数の反射素子は、水平方向及び垂直方向に配列されており、
    前記角度調整処理は、前記水平方向について前記反射角度を第1所定角度おきに走査しながら前記電波の受信強度を計測して、前記電波の受信強度が最大になる角度に前記水平方向における前記反射角度を調整してから、前記垂直方向について前記反射角度を第2所定角度おきに走査しながら前記電波の受信強度を計測して、前記電波の受信強度が最大になる角度に前記前記垂直方向における前記反射角度を調整する処理である、請求項1に記載の電波伝送方法。
  5. 前記第2計測処理は、前記複数の反射素子の複数の反射位相を、前記複数の第1反射位相に前記共通の所定の反射位相を加算して得る前記複数の第2反射位相に設定した状態と、前記複数の第1反射位相から前記共通の所定の反射位相を減算して得る前記複数の第2反射位相に設定した状態とで、前記受信端末における前記電波の前記第2受信強度を2回計測する処理であり、
    前記受信強度取得処理は、前記通信部を介して前記第1受信強度と、前記2回の計測で得られた2つの前記第2受信強度とを取得する処理であり、
    前記反射位相取得処理は、前記第1受信強度と、前記2つの第2受信強度のうちの最大の受信強度に対応する複数の反射位相を、前記複数の第1反射位相と、前記2回の計測に用いた2種類の前記複数の第2反射位相との中から求める処理である、請求項1に記載の電波伝送方法。
  6. 前記反射位相取得処理において前記複数の第2反射位相を取得すると、
    前記取得した前記複数の第2反射位相を前記複数の第1反射位相として設定した状態で前記第1計測処理を行い、
    前記取得した前記複数の第2反射位相を前記複数の第1反射位相に設定した状態で前記第2計測処理を行う、請求項2に記載の電波伝送方法。
  7. 前記反射素子は、前記反射位相に応じて、3値以上の複数の前記位相変化量を設定可能である、請求項1に記載の電波伝送方法。
  8. 前記位相変化量は、第1値又は第2値の2値であり、
    前記反射板は、前記複数の反射素子の前記位相変化量を前記第1値又は前記第2値に設定することで、前記反射角度を走査する、請求項1に記載の電波伝送方法。
  9. 前記第1値と前記第2値との差は、120度~240度である、請求項8に記載の電波伝送方法。
  10. 複数の反射素子を有し、反射角度を走査可能な反射板と、
    前記反射板の反射角度を走査する制御部と
    を含み、
    前記制御部は、
    受信端末における前記電波の受信強度が大きくなるように、前記反射角度を調整する角度調整処理と、
    前記受信端末における前記電波の受信強度が大きくなるように、前記複数の反射素子が前記電波を反射する際に前記電波の位相を変化させる複数の位相変化量の分布を調整する位相調整処理と
    を行い、
    前記複数の位相変化量は、前記複数の反射素子が前記電波を反射する際に、前記複数の反射素子に設定される複数の反射位相を2値化又は多値化して得られる位相の変化量であり、
    前記位相調整処理は、
    複数の第1反射位相を前記複数の反射素子に設定した状態で、前記受信端末における前記電波の第1受信強度を計測する第1計測処理と、
    前記複数の第1反射位相に対して共通の所定の反射位相を加算又は減算した複数の第2反射位相、又は、前記複数の第1反射位相を2値化又は多値化する際の角度範囲を変更して得る複数の第2反射位相を前記複数の反射素子に設定した状態で、前記受信端末における前記電波の第2受信強度を計測する第2計測処理と、
    前記第1受信強度及び前記第2受信強度に基づいて調整した前記複数の位相変化量の分布を取得する反射位相取得処理と
    を有する、電波伝送システム。
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