図面等を参照しながら本開示の実施の形態を説明する。ただし、本開示は多くの異なる態様で実施することが可能であり、実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、図面は説明をより明確にするため、実際の形態に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表わされる場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
本明細書において、ある部材の上に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」あるいは「下に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上あるいは下に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含む。ある部材の上方に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上方に」あるいは「下方に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上あるいは下に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合と、ある部材の上方あるいは下方に、空間を介して他の部材を配置する場合とのいずれも含む。また、本明細書において、ある部材の面に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「面に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上あるいは下に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含む。
本開示における周波数選択反射板およびそれを用いた通信中継システムについて説明する。
A.周波数選択反射板
本開示における周波数選択反射板は、特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板であって、複数の領域を有し、反射ビームプロファイルを調整する機能を有する。
本開示の周波数選択反射板は、反射ビームプロファイルを調整する機能を有することにより、周波数選択反射板全体による反射波のビームを広げることも狭めることも可能である。さらに、周波数選択反射板全体で球面波を平面波に変換して反射することも可能である。
本開示の周波数選択反射板は、複数の領域を有しており、特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する。そのため、周波数選択反射板全体による反射ビームプロファイルは、各領域による反射ビームの合成により形成される。例えば、周波数選択反射板上の位置に応じて、各領域での入射角および反射角を制御する。つまり、周波数選択反射板上の位置に応じて、各領域での入射方向ベクトルおよび反射方向ベクトルといった反射特性を制御する。これにより、反射ビームプロファイルを調整できる。また、領域の数を増やし、各領域のサイズを、電磁波の反射位相を設定できる領域、すなわちセル領域のサイズまで小さくする場合、例えば、周波数選択反射板上の位置に応じて、各領域での反射位相を制御する。これにより、反射ビームプロファイルを調整することもできる。
また、入射波が平面波である場合、周波数選択反射板全体で電磁波の入射方向ベクトルは同じになる。一方、入射波が球面波である場合、周波数選択反射板上の位置によって電磁波の入射方向ベクトルは異なる。このように、周波数選択反射板全体で電磁波の入射角、つまり入射方向ベクトルが同じである場合も、周波数選択反射板上の位置によって電磁波の入射角、つまり入射方向ベクトルが異なる場合も、領域毎に、異なる入射角および反射角を設定できる。つまり、領域毎に、異なる入射方向ベクトルおよび反射方向ベクトルといった反射特性を設定できる。また、各領域のサイズをセル領域のサイズまで小さくする場合は、領域毎に異なる反射位相を設定することもできる。そのため、入射波が平面波であっても球面波であっても、反射ビームプロファイルを調整できる。
ここで、「反射ビームプロファイルを調整する機能」における「反射ビームプロファイル」とは、反射ビームプロファイルにおけるメインローブ(メインビーム)の形状をいい、具体的には、メインローブの角度分布および強度分布をいう。
また、反射ビームプロファイルを調整する機能としては、例えば、周波数選択反射板全体で反射ビームを広げる機能、周波数選択反射板全体で反射ビームを狭める機能、周波数選択反射板全体で球面波を平面波に変換する機能が挙げられる。反射ビームを広げる場合および反射ビームを狭める場合、入射波は平面波であってもよく球面波であってもよい。また、反射ビームを広げる場合、反射ビームを水平方向に広げてもよく、反射ビームを垂直方向に広げてもよく、反射ビームを水平方向および垂直方向に広げてもよい。同様に、反射ビームを狭める場合、反射ビームを水平方向に狭めてもよく、反射ビームを垂直方向に狭めてもよく、反射ビームを水平方向および垂直方向に狭めてもよい。また、反射ビームを水平方向に広げ、垂直方向に狭めてもよく、あるいは、反射ビームを水平方向に狭め、垂直方向に広げてもよい。
本開示の周波数選択反射板としては、例えば、周波数選択反射板の全面が複数の分割領域に分割されており、各分割領域での電磁波の反射特性が互いに異なる、周波数選択反射板が挙げられる。周波数選択反射板においては、各分割領域での電磁波の反射特性を互いに異ならせることにより、反射ビームプロファイルを調整できる。なお、反射特性は、入射方向ベクトルおよび反射方向ベクトルの少なくとも一方である。反射特性が異なるとは、入射方向ベクトルが異なる場合と、反射方向ベクトルが異なる場合と、入射方向ベクトルおよび反射方向ベクトルが異なる場合とが含まれる。また、これらの場合、複数の分割領域が、本開示の周波数選択反射板が有する複数の領域に相当する。
入射波が平面波である場合、周波数選択反射板全体で電磁波の入射方向ベクトルは同じになる。例えば、入射する平面波を、平面波として反射する場合であって、周波数選択反射板全体で反射ビームを広げる場合、各分割領域での電磁波の反射方向ベクトルを、ある電磁波の反射方向ベクトルを中心として外側に広がるように設定すればよい。また、例えば、入射する平面波を、平面波として反射する場合であって、周波数選択反射板全体で反射ビームを狭める場合、各分割領域での電磁波の反射方向ベクトルを、ある電磁波の反射方向ベクトルを中心として内側に収束するように設定すればよい。
一方、入射波が球面波である場合、周波数選択反射板上の位置によって電磁波の入射方向ベクトルは異なる。例えば、入射する球面波を、球面波として反射する場合であって、周波数選択反射板全体で反射ビームを広げる場合、各分割領域での入射方向ベクトルの相違を補正しつつ、各分割領域での電磁波の反射方向ベクトルを、ある電磁波の反射方向ベクトルを中心として外側に広がるように設定すればよい。また、例えば、入射する球面波を、球面波として反射する場合であって、周波数選択反射板全体で反射ビームを狭める場合、各分割領域での入射方向ベクトルの相違を補正しつつ、各分割領域での電磁波の反射方向ベクトルを、ある電磁波の反射方向ベクトルを中心として内側に収束するように設定すればよい。
また、例えば、入射する球面波を、平面波として反射する場合、各分割領域での入射方向ベクトルの相違を補正しつつ、各分割領域での電磁波の反射方向ベクトルを同じになるように設定すればよい。
周波数選択反射板の全面が複数の分割領域に分割されており、各分割領域での電磁波の反射特性が互いに異なる周波数選択反射板において、分割領域および周波数選択反射板の構成については、後述の第1実施態様から第4実施態様までの周波数選択反射板における分割領域および構成と同様とする。
また、本開示の周波数選択反射板としては、例えば、領域のサイズをセル領域のサイズまで小さくし、電磁波の反射位相が異なる複数のセル領域が繰り返し配列されている周波数選択反射板が挙げられる。この場合、複数のセル領域が、本開示の周波数選択反射板が有する複数の領域に相当する。
周波数選択反射板においては、例えば、入射する平面波を、平面波として反射する場合であって、周波数選択反射板全体で反射ビームを広げる場合、各セル領域での電磁波の反射位相を、周波数選択反射板全体で反射ビームが広がるように設定すればよい。また、例えば、入射する平面波を、平面波として反射する場合であって、周波数選択反射板全体で反射ビームを狭める場合、各セル領域での電磁波の反射位相を、周波数選択反射板全体で反射ビームが狭まるように設定すればよい。
また、例えば、入射する球面波を、球面波として反射する場合であって、周波数選択反射板全体で反射ビームを広げる場合、各セル領域での入射方向ベクトルの相違を補正しつつ、各セル領域での電磁波の反射位相を、周波数選択反射板全体で反射ビームが広がるように設定すればよい。また、例えば、入射する球面波を、球面波として反射する場合であって、周波数選択反射板全体で反射ビームを狭める場合、各セル領域での入射方向ベクトルの相違を補正しつつ、各セル領域での電磁波の反射位相を、周波数選択反射板全体で反射ビームが狭まるように設定すればよい。
また、例えば、入射する球面波を、平面波として反射する場合、各セル領域での入射方向ベクトルの相違を補正しつつ、各セル領域での電磁波の反射位相を、周波数選択反射板全体で電磁波の反射方向ベクトルを同じになるように設定すればよい。
電磁波の反射位相が異なる複数のセル領域が繰り返し配列されている周波数選択反射板において、セル領域および周波数選択反射板の構成については、後述の第5実施態様の周波数選択反射板におけるセル領域および構成と同様とする。
本開示における周波数選択反射板は、5つの好ましい実施態様を有する。本開示において、周波数選択反射板全体で反射ビームを広げる場合、下記の第1実施態様、第2実施態様および第5実施態様の周波数選択反射板が好ましい。また、本開示において、周波数選択反射板全体で反射ビームを狭める場合、下記の第3実施態様、第4実施態様および第5実施態様の周波数選択反射板が好ましい。また、本開示において、入射波が平面波、略平面波ではない場合、第5実施態様の周波数選択反射板が好ましい。
なお、以下の記述では、周波数選択反射板に対して正面方向から入射する入射波を正反射方向以外の方向に反射する場合を想定して、面内反射位相分布設計や、それによって決まる、分割領域や単位構造における反射方向ベクトル等の説明を行う。ここで、正面方向からの入射以外の場合の反射位相分布設計については、想定入射方向から正面方向への反射を行う反射位相分布と、正面方向から想定反射方向への反射を行う反射位相分布との和を取ればよい。このとき、想定入射方向から正面方向への反射を行う反射位相分布は、正面方向から想定入射方向への反射を行う反射位相分布と原理的に同一である。そのため、実際には、正面方向から想定入射方向への反射位相分布と、正面方向から想定反射方向への反射位相分布との和を考えればよい。いずれの反射位相分布設計も、正面方向から入射する場合の設計手法を適用できる。
以下、各実施態様に分けて説明する。
I.第1実施態様
本実施態様の周波数選択反射板は、特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板であって、上記周波数選択反射板の全面が複数の分割領域に分割されており、上記複数の分割領域は、上記周波数選択反射板の中央に位置する分割領域であるメイン領域と、上記メイン領域以外の分割領域である複数のサブ領域とを有し、上記複数のサブ領域は上記メイン領域の周囲に配置されており、上記各分割領域での上記電磁波の反射方向ベクトルは互いに異なり、上記各サブ領域での上記電磁波の反射方向ベクトルは、上記メイン領域での上記電磁波の反射方向ベクトルを中心として外側に向かって広がるように設定されている。
図1は、本実施態様の周波数選択反射板の一例を示す概略平面図である。図1に示すように、周波数選択反射板1の全面は、複数の分割領域に分割されており、複数の分割領域は、周波数選択反射板1の中央に位置する分割領域であるメイン領域A0と、メイン領域A0以外の分割領域である複数のサブ領域A11~A33とを有し、複数のサブ領域A11~A33は、メイン領域A0の周囲に配置されている。図1に示す例においては、周波数選択反射板1は、9つの分割領域に分割されており、1つのメイン領域A0と8つのサブ領域A11~A33とを有しており、メイン領域A0の周囲を囲むように8つのサブ領域A11~A33が配置されている。
図2~図5に、図1に示す周波数選択反射板におけるメイン領域および各サブ領域の反射特性の一例を示す。ここで、例えば図6に示すように、周波数選択反射板1を地面(XZ面)に垂直に立てた場合の電磁波反射側から見て、左隅を原点、水平方向をx軸、天地方向をy軸、反射側法線方向をz軸とし、電磁波の反射方向ベクトルdrの極角をθ、方位角をφと定義する。
メイン領域A0における電磁波の反射方向ベクトルがメイン領域A0からサブ領域A23側(φ=0°方向)に傾いている場合には、図2に示すように、メイン領域A0での電磁波の反射方向ベクトルの極角をθr、方位角をφrとしたとき、各サブ領域A11~A33での電磁波の反射方向ベクトルの極角、方位角はそれぞれ、サブ領域A11では(θr-α、φr+β)、サブ領域A21では(θr-α、φr)、サブ領域A31では(θr-α、φr-β)、サブ領域A12では(θr、φr+β)、サブ領域A32では(θrφr-β)、サブ領域A13では(θr+α、φr+β)、サブ領域A23では(θr+α、φr)、サブ領域A33では(θr+α、φr-β)となっている。なお、α、βは、正の数である。
これらの各サブ領域における電磁波の反射方向ベクトルの極角、方位角の変位量は、メイン領域における電磁波の反射方向ベクトルが周波数選択反射板の面に対していずれの方向に傾いているかによって変わってくる。図3は、メイン領域A0における電磁波の反射方向ベクトルがメイン領域A0からサブ領域A21側(φ=180°)に傾いている場合の例である。また、図4は、メイン領域A0における電磁波の反射方向ベクトルがメイン領域A0からサブ領域A12側(φ=90°)に傾いている場合の例である。また、図5は、メイン領域A0における電磁波の反射方向ベクトルがメイン領域A0からサブ領域A32側(φ=270°)に傾いている場合の例である。
なお、これらのα、βの値および符号は、あくまで電磁波の反射方向ベクトルを極座標で表現した場合の目安である。α、βの値および符号は、メイン領域における電磁波の反射方向ベクトルや、周波数選択反射板全体での電磁波の反射方向ベクトルの広がりの設定によっても変わってくる。
各サブ領域における電磁波の反射方向ベクトルは、メイン領域における電磁波の反射方向ベクトルを中心として外側に広がるように設定される。後述するように、隣接する分割領域同士での上記電磁波の反射方向ベクトルのなす角θdsが、所定の範囲内になるように設定されることが好ましい。
図7に、図1および図2に示す周波数選択反射板におけるメイン領域および各サブ領域の反射特性の具体例を示す。図7は、図2において、メイン領域A0での電磁波の反射方向ベクトルの極角θrを25°、方位角φrを20°とし、αを4°、βを4°としたときの具体例である。
このように、各サブ領域A11~A33での電磁波の反射方向ベクトルは、メイン領域A0での電磁波の反射方向ベクトルとは微妙に異なり、かつ、互いに異なっている。
図8(a)~(c)に、図1および図2に示す周波数選択反射板におけるメイン領域および各サブ領域の反射特性の例を示す。図8(a)に示すように、周波数選択反射板1は、特定の周波数帯の電磁波(入射波Wi)を正反射(鏡面反射)方向とは異なる方向に反射するものであり、例えばメイン領域A0では入射波Wiの入射角θiと、反射波Wrの反射角θrとは異なる。また、図2、図7、図8(b)に示すように、電磁波の反射方向ベクトルの方位角φについて、サブ領域A32ではメイン領域A0に対して方位角φが小さく、サブ領域A12ではメイン領域A0に対して方位角φが大きく、サブ領域A32、メイン領域A0、サブ領域A12の順に、電磁波の反射方向ベクトルの方位角φが徐々に増加している。同様に、サブ領域A31、A21、A11の順に、電磁波の反射方向ベクトルの方位角φが徐々に増加し、サブ領域A33、A23、A13の順に、電磁波の反射方向ベクトルの方位角φが徐々に増加している。一方、図2、図7、図8(c)に示すように、電磁波の反射方向ベクトルの極角θについて、サブ領域A21ではメイン領域A0に対して極角θが小さく、サブ領域A23ではメイン領域A0に対して極角θが大きく、サブ領域A21、メイン領域A0、サブ領域A23の順に、電磁波の反射方向ベクトルの極角θが徐々に増加している。同様に、サブ領域A11、A12、A13の順に、電磁波の反射方向ベクトルの極角θが徐々に増加し、サブ領域A31、A32、A33の順に、電磁波の反射方向ベクトルの極角θが徐々に増加している。このように、x軸方向に沿って電磁波の反射方向ベクトルの極角θが徐々に増加し、また、y軸方向に沿って電磁波の反射方向ベクトルの方位角φが徐々に増加するように、メイン領域A0および各サブ領域A11~A33での電磁波の反射方向ベクトルが設定されている。これにより、各サブ領域A11~A33での電磁波の反射方向ベクトルを、メイン領域A0での電磁波の反射方向ベクトルを中心として外側に向かって広がるように設定することができる。
このような場合、所定の入射角θiで入射した電磁波(入射波Wi)を、メイン領域A0および各サブ領域A11~A33の反射特性(極角θ、方位角φ)に応じて反射させることで、メイン領域A0での電磁波の反射方向ベクトルを中心として広がりを持って反射させることができる。すなわち、メイン領域A0による反射ビームに、各サブ領域A11~A33による反射ビームが重なり合うことで、周波数選択反射板1全体による反射ビームプロファイルでは1つのメインローブ(メインビーム)が形成され、周波数選択反射板1全体による反射波のビーム幅を広げることができる。これにより、周波数選択反射板による反射ビームが照射されるエリアを広げることが可能である。
なお、従来のように、周波数選択反射板が例えばメイン領域のみを有する場合、周波数選択反射板のサイズを大きくすると、原理的に利得が増加し、周波数選択反射板による反射ビームが鋭くなる。この場合、周波数選択反射板による反射波のビーム幅が狭くなるため、周波数選択反射板による反射ビームが照射されるエリアが狭くなってしまう。
ここで、従来のように、周波数選択反射板が分割領域を有さない場合、すなわち例えばメイン領域のみを有する場合であって、周波数選択反射板の平面視形状が例えば円形である場合、周波数選択反射板による反射ビームプロファイルにおいて、半値幅FWHMは、一般に、下記式(2)で表される。
FWHM[rad]=λ/(0.8×D)~λ/(0.6×D) (2)
上記式(2)中、λは電磁波の波長、Dは周波数選択反射板の直径を示す。すなわち、受信電力を得るのに十分なサイズの周波数選択反射板を作製しようとすると、反射ビームプロファイルの半値幅FWHMが狭くなり、周波数選択反射板による反射ビームが照射されるエリアが狭くなる。
これに対し、本実施態様においては、周波数選択反射板がメイン領域および複数のサブ領域に分割されており、メイン領域および各サブ領域のサイズが小さくなることから、利得が多少低下するものの、メイン領域および各サブ領域による反射波のビーム幅が広くなる。さらに、メイン領域および各サブ領域での電磁波の反射方向ベクトルが互いに異なり、各サブ領域での電磁波の反射方向ベクトルがメイン領域での電磁波の反射方向ベクトルを中心として外側に向かって広がるように設定されていることによって、メイン領域および各サブ領域による反射ビームが重なり合うことで、周波数選択反射板全体による反射波のビーム幅を広げることができる。よって、周波数選択反射板による反射ビームが照射されるエリアを広げることが可能である。これにより、あたかも凸面鏡のような反射ビームプロファイルを実現することができる。
本実施態様の周波数選択反射板の各構成について説明する。
1.分割領域(メイン領域およびサブ領域)
本実施態様の周波数選択反射板の全面は、複数の分割領域に分割されており、複数の分割領域は、周波数選択反射板の中央に位置する分割領域であるメイン領域と、メイン領域以外の分割領域である複数のサブ領域とを有し、複数のサブ領域はメイン領域の周囲に配置されている。
複数のサブ領域は、メイン領域の周囲に配置されている。複数のサブ領域がメイン領域の周囲に配置されているとは、メイン領域の周囲の全部に複数のサブ領域が配置されている場合だけでなく、メイン領域の周囲の一部に複数のサブ領域が配置されている場合も含まれる。
複数のサブ領域は、メイン領域の周囲に配置されていればよい。サブ領域の配置は、目的とする周波数選択反射板全体の反射特性や、メイン領域および各サブ領域の反射特性、メイン領域および各サブ領域の平面視形状等に応じて適宜選択される。
複数のサブ領域は、メイン領域の周囲に、メイン領域に対して対称的に配置されていることが好ましく、メイン領域の周囲の全部に、メイン領域に対して対称的に配置されていることがより好ましい。メイン領域の周囲の全部に、メイン領域に対して対称的に複数のサブ領域を配置することにより、メイン領域とは電磁波の反射方向ベクトルが微妙に異なるサブ領域を多数配置することができる。そのため、設計の自由度が上がり、種々の反射ビームプロファイルへの対応が可能になる。
例えば、図8(b)に示すように、メイン領域A0の周囲の一部に、メイン領域A0に対して対称的に2つのサブ領域A12、A32が配置されている場合であって、サブ領域A32、メイン領域A0、サブ領域A12の順に電磁波の反射方向ベクトルの方位角φが徐々に増加する場合には、周波数選択反射板全体による反射ビームを水平方向に広げることができる。
また、例えば、図8(c)に示すように、メイン領域A0の周囲の一部に、メイン領域A0に対して対称的に2つのサブ領域A21、A23が配置されている場合であって、サブ領域A21、メイン領域A0、サブ領域A23の順に電磁波の反射方向ベクトルの極角θが徐々に増加する場合、周波数選択反射板全体による反射ビームを垂直方向に広げることができる。
また、例えば、図1、図2、図7、図9(a)~(f)においては、メイン領域A0の周囲の全部に、メイン領域A0に対して対称的に複数のサブ領域が配置されている。
各分割領域の平面視形状としては、例えば、矩形状、平行四辺形状、菱形状、台形状、三角形状、六角形状、同心円状等を挙げることができる。これらの平面視形状の場合、各分割領域を隙間なく配置することが可能である。
例えば図1、図2、図7に示すように、各分割領域、すなわちメイン領域A0および各サブ領域A11~A33の平面視形状が矩形状である場合には、メイン領域A0の周囲に、メイン領域A0に対して対称的に複数のサブ領域A11~A33を配置することができる。
また、例えば図9(a)に示すように、各分割領域、すなわちメイン領域A0および各サブ領域A11~A52の平面視形状が六角形状である場合には、メイン領域A0の周囲に、メイン領域A0に対して対称的に複数のサブ領域A12~A52を配置することができる。
また、例えば図9(b)に示すように、各分割領域、すなわちメイン領域A0および各サブ領域A12~A23の平面視形状が三角形状である場合には、メイン領域A0の周囲に、メイン領域A0に対して対称的に複数のサブ領域A12~A23を配置することができる。
また、例えば図9(c)に示すように、各分割領域、すなわちメイン領域A0および各サブ領域A11~A42の平面視形状が同心円状である場合には、メイン領域A0の周囲に、メイン領域A0に対して対称的に複数のサブ領域A11~A42を配置することができる。また、例えば図9(d)に示すように、各分割領域、すなわちメイン領域A0および各サブ領域A11~A22の平面視形状が同心円状である場合には、メイン領域A0の周囲に、メイン領域A0に対して対称的に複数のサブ領域A11~A22を配置することができる。
メイン領域の平面視形状と各サブ領域の平面視形状とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。例えば、図1、図2、図7、図9(a)、図9(b)において、メイン領域A0の平面視形状と各サブ領域の平面視形状とは同じである。一方、例えば、図9(c)~(f)において、メイン領域A0の平面視形状と各サブ領域の平面視形状とは異なっている。
また、各サブ領域の平面視形状は、同じであってもよく、異なっていてもよい。例えば、図1、図2、図7、図9(a)、図9(b)、図9(e)において、各サブ領域の平面視形状は同じである。一方、図9(c)、(d)、(f)において、各サブ領域の平面視形状は異なっている。
メイン領域の数は1つである。メイン領域は、周波数選択反射板の中央に位置する分割領域であり、通常、周波数選択反射板の中央に配置される。
サブ領域の数は複数であり、目的とする周波数選択反射板全体の反射特性や、メイン領域および各サブ領域の反射特性、メイン領域および各サブ領域の配置、メイン領域および各サブ領域の平面視形状、メイン領域および各サブ領域のサイズ等に応じて適宜選択される。周波数選択反射板全体のサイズが一定である場合、サブ領域の数が多いほど、すなわち分割領域の数が多いほど、サブ領域のサイズが小さくなる。サブ領域のサイズが小さくなると、周波数選択反射板全体による反射ビームプロファイルの乱れが抑えられ、反射ビームプロファイルにおいてサイドローブが低くなる傾向がある。この場合、ブロードな反射ビームを安定して得ることができる。
例えば、図10に示すように、メイン領域A0および各サブ領域A11~Amnの平面視形状が矩形状であり、メイン領域A0を中心として、各サブ領域A11~Amnがm行、n列で配置されている場合において、周波数選択反射板1全体のサイズが一定である場合、mおよびnが大きいほど、すなわちサブ領域A11~Amnの数が多いほど、サブ領域のサイズが小さくなり、上述のように、ブロードな反射ビームが安定して得られやすい。具体的には、図7では、メイン領域A0および各サブ領域A11~A33の平面視形状が矩形状であり、メイン領域A0を中心として、各サブ領域A11~A33が3行、3列で配置されている。図11では、メイン領域A0および各サブ領域A11~A99の平面視形状が矩形状であり、メイン領域A0を中心として、各サブ領域A11~A99が9行、9列で配置されている。図7および図11に示す周波数選択反射板1のサイズが同じである場合、図11に示す周波数選択反射板1のほうが、サブ領域の数が多く、サブ領域のサイズが小さくなり、上述のように、ブロードな反射ビームが安定して得られやすくなる。
また、本実施態様において、各分割領域での電磁波の反射方向ベクトルは互いに異なる。具体的には、各分割領域において、電磁波の反射方向ベクトルの極角および方位角の少なくともいずれか一方が異なっていればよい。
また、隣接する分割領域同士において、電磁波の反射方向ベクトルのなす角は比較的小さいことが好ましい。各分割領域において、電磁波の反射方向ベクトルが緩やかに変化することで、周波数選択反射板全体による反射ビームプロファイルの乱れが抑えられ、反射ビームプロファイルにおいてサイドローブが低くなる傾向がある。この場合、ブロードな反射ビームを安定して得ることができる。
隣接する分割領域同士においては、電磁波の反射方向ベクトルの極角および方位角の少なくともいずれか一方が異なっていればよい。
隣接する分割領域同士での電磁波の反射方向ベクトルのなす角θdsは、例えば、15°以内であることが好ましく、5°以内であることがより好ましく、2°以内であることがさらに好ましく、0.5°以内であることが特に好ましい。一方、隣接する分割領域同士での電磁波の反射方向ベクトルのなす角θdsの下限は特に限定されず、周波数選択反射板の加工精度に応じて適宜決定される。
本開示において、周波数選択反射板の反射方向ベクトルの設計は、図6に例示するように、周波数選択反射板1を地面(XZ面)に垂直に立てた場合を想定し、水平方向(x軸)、天地方向(y軸)、および法線方向(z軸)を基準とした極座標系で行うが、図12(a)、(b)に例示するように、隣接する分割領域A1、A2同士での電磁波の反射方向ベクトルr1、r2のなす角θdsは、極座標による反射方向から単純な幾何計算で導出することができる。下記に一般的な幾何的な定義を示す。
v1=(θ1、φ1、r1)、v2=(θ2、φ2、r2)において、二つのベクトルのなす角(v1、v2)は下記式で示される。
(v1、v2)=arccos{(x1×x2+y1×y2+z1×z2)/(r1×r2)}
ただし、
x1=r1×sin(θ1)×cos(φ1)
y1=r1×sin(θ1)×sin(φ1)
z1=r1×cos(θ1)
x2=r2×sin(θ2)×cos(φ2)
y2=r2×sin(θ2)×sin(φ2)
z2=r2×cos(θ2)
である。
また、複数のサブ領域において、隣接するサブ領域同士における電磁波の反射方向ベクトルのなす角は、同じであってもよく、異なっていてもよいが、通常は同じである。
また、本実施態様において、各サブ領域での電磁波の反射方向ベクトルは、メイン領域での電磁波の反射方向ベクトルを中心として外側に向かって広がるように設定されている。各サブ領域での電磁波の反射方向ベクトルがこのように設定されていることにより、周波数選択反射板全体による反射波のビーム幅を広げることができる。
一方、各サブ領域での電磁波の反射方向ベクトルが、メイン領域での電磁波の反射方向ベクトルを中心として外側に向かって広がるように設定されておらず、例えば、ランダムに設定されている場合には、周波数選択反射板全体による反射ビームプロファイルにおいて、メインローブ(メインビーム)幅は広がらず、サイドローブが高くなる傾向がある。
具体的には、周波数選択反射板の面内にある各サブ領域での電磁波の反射方向ベクトルが、周波数選択反射板の中央に位置するメイン領域での電磁波の反射方向ベクトルを中心として外側に向かって広がるように、周辺の各サブ領域の反射方向ベクトルを設定すればよい。各サブ領域での電磁波の反射方向ベクトルは、電磁波の反射方向ベクトルの極角および方位角により設定することができる。すなわち、各サブ領域での電磁波の反射方向ベクトルは、メイン領域での電磁波の反射方向ベクトルを中心として外側に向かって広がるように、各サブ領域での電磁波の反射方向ベクトルの極角および方位角が設定されている。このとき、隣接するサブ領域同士での電磁波の反射方向ベクトルのなす角は、上述の隣接する分割領域同士での電磁波の反射方向ベクトルのなす角の範囲内で、徐々に変化させることが好ましい。
例えば、図2、図7、図11に示す周波数選択反射板1において、x軸方向に沿って電磁波の反射方向ベクトルの極角θが徐々に増加し、また、y軸方向に沿って電磁波の反射方向ベクトルの方位角φが徐々に増加するように、メイン領域および各サブ領域での電磁波の反射方向ベクトルは設定されている。これにより、各サブ領域での電磁波の反射方向ベクトルを、メイン領域での電磁波の反射方向ベクトルを中心として外側に向かって広がるように設定することができる。
なお、上記の図2、図7、図11には、電磁波の反射方向ベクトルの極角や方位角が所定の方向に沿って単調に増加する例を示したが、電磁波の反射方向ベクトルの極角や方位角は所定の方向に沿って単調に増加するとは限らない。各サブ領域での電磁波の反射方向ベクトルが、メイン領域での電磁波の反射方向ベクトルを中心として外側に向かって広がるように、各サブ領域での電磁波の反射方向ベクトルの極角および方位角を設定する際に、例えば、メイン領域および各サブ領域での電磁波の反射方向ベクトルの極角および方位角の範囲が極角θ=0°または方位角φ=0°を含む場合には、電磁波の反射方向ベクトルの極角や方位角が所定の方向に沿って単調に増加するものではない。
また、周波数選択反射板においては、各分割領域の平面視形状にかかわらず、凸面鏡による反射のように、メイン領域での電磁波の反射方向ベクトルに対する各サブ領域での電磁波の反射方向ベクトルを設計することにより、各サブ領域での電磁波の反射方向ベクトルを、メイン領域での電磁波の反射方向ベクトルを中心として外側に向かって広がるように設定することができる。
上述したように、従来のように、周波数選択反射板が分割領域を有さない場合、すなわち例えばメイン領域のみを有する場合であって、周波数選択反射板の平面視形状が例えば円形である場合、周波数選択反射板による反射ビームプロファイルにおいて、半値幅FWHMは、一般に、下記式(2)で表される。
FWHM[rad]=λ/(0.8×D)~λ/(0.6×D) (2)
上記式(2)中、λは電磁波の波長、Dは周波数選択反射板の直径を示す。
本実施態様において、周波数選択反射板による反射ビームプロファイルの半値幅FWHMは、実際の使い勝手を考慮すると広いほうが好ましい。しかし、反射ビームプロファイルの半値幅FWHMが広すぎると、周波数選択反射板の単位面積当たりの照射電力が低下するので、低下した照射電力を補うために周波数選択反射板のサイズを大きくする必要がある。そのため、本実施態様においては、メイン領域での電磁波の反射方向ベクトルからのずれ角を横軸、周波数選択反射板の電磁波の反射強度を縦軸とするグラフにおいて、反射ビームプロファイルの半値幅FWHMは、通常、40°以内であることが好ましい。もちろん、周波数選択反射板の設置場所の制約が少ない場合には、反射ビームプロファイルの半値幅FWHMは、40°より広くてもよい。一方、反射ビームプロファイルの半値幅FWHMの下限は、例えば、0.2°以上とすることができ、2°以上であってもよい。
なお、反射ビームプロファイルの半値幅FWHMとは、例えば図13(a)、(b)に示すように、メイン領域での電磁波の反射方向ベクトルを含む面で切り取ったときの反射ビームプロファイルにおいて、メイン領域での電磁波の反射方向ベクトルの反射強度に対して、電界強度で1/√2、電力で1/2、デシベルで-3dBとなる2点の電磁波の反射方向ベクトルのなす角をいう。図13(a)に示す反射ビームプロファイルは、横軸をメイン領域での電磁波の反射方向ベクトルを含む方位角面で切り取った場合の極角とし、縦軸を電磁波の反射強度とした例である。メイン領域での電磁波の反射方向ベクトルの極角θは27.5°である。反射ビームプロファイルの半値幅FWHMは、メイン領域での電磁波の反射方向ベクトル(極角θ=27.5°)の反射強度に対して、電界強度で1/√2、電力で1/2、デシベルで-3dBとなる2点間の幅の角度であり、4.5°である。なお、図13(b)に示す反射ビームプロファイルは、図13(a)に示す反射ビームプロファイルにおいて、メイン領域での電磁波の反射方向ベクトルの極角(θ=27.5°)からのずれ角を横軸としたグラフである。なお、通常、反射ビームプロファイルは設計上多少の強弱の波が含まれてしまうが、全体を曲線で近似した場合のピーク位置の方向が、メイン領域での電磁波の反射方向ベクトルの向きとなる。
また、各分割領域のサイズは、目的とする周波数選択反射板全体の反射特性や、各分割領域の反射特性、各分割領域の配置、各分割領域の平面視形状、分割領域の数等に応じて適宜選択される。各分割領域のサイズは、例えば、周波数選択反射板のサイズの1/3以下とすることができる。
周波数選択反射板においては、通常、電磁波の反射位相が異なる複数のセル領域が周期的に配列されており、すなわち、電磁波の反射位相が異なる複数のセル領域を有する単位構造が複数配置されている。セル領域は、単位構造において、電磁波の反射位相が同じである領域である。また、単位構造は、1周期分の構造であり、1つの電磁波の反射方向ベクトルを示す領域である。
周波数選択反射板において、分割領域の数を増やしていくと、設計上、各分割領域のサイズは単位構造のサイズではなく、単位構造を構成するセル領域のサイズまで小さくすることができる。各分割領域のサイズがセル領域のサイズである場合、周波数選択反射板が複数の分割領域に分割されているという識別は事実上難しく、周波数選択反射板の全面にわたってなだらかな電磁波の反射方向ベクトルの調整がなされていることになる。このような場合でも、周波数選択反射板の中央に位置するセル領域をメイン領域とみなすことは可能であり、通常、メイン領域での電磁波の反射方向ベクトルが周波数選択反射板全体での電磁波の反射方向ベクトルの中心となるよう設計される。また、このとき、メイン領域に隣接するサブ領域は明確には定義できないが、周波数選択反射板全面を細かい領域に分割したものを仮想のサブ領域とみなすことができ、各分割領域での電磁波の反射方向ベクトルは、上述の隣接する分割領域同士での電磁波の反射方向ベクトルのなす角が所定の範囲内となるように設定されることが好ましい。
よって、各分割領域のサイズは、例えば、セル領域のサイズ以上であってもよく、単位構造のサイズ以上であってもよい。
各分割領域のサイズが上述したようなサイズであれば、反射ビームプロファイルの調整効果は発現するが、分割領域の数を増やしていくに従い、周波数選択反射板全体による反射ビームプロファイルの乱れが抑えられ、反射ビームプロファイルにおいてサイドローブが低くなる傾向がある。この場合、ブロードな反射ビームを安定して得ることができる。
各分割領域のサイズは、同じであってもよく、異なっていてもよい。本実施態様においては、上述したように、各分割領域による反射ビームが重なり合うことで、周波数選択反射板全体による反射ビームプロファイルでは1つのメインローブ(メインビーム)が形成されるが、各分割領域のサイズが異なる場合には、例えば、サイズが大きい分割領域からはより強く狭い立体角範囲に電磁波を反射する。そのため、各分割領域による反射ビームの重ね合わせにより形成される反射ビームプロファイルの半値幅FWHM相当の立体角に隙間を生じさせないように、各分割領域のサイズを設計することが好ましい。
2.周波数選択反射板の構成
本開示の周波数選択反射板は、特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する部材である。
周波数選択反射板としては、特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する部材であれば特に限定されない。例えば、上記電磁波を反射する反射部材を有し、反射部材が、上記電磁波の反射位相を制御する反射位相制御機能を有していてもよく、あるいは、上記電磁波を反射する反射部材と、上記反射部材に対して上記電磁波の入射側に配置され、所定の方向に厚さが増加する厚さ分布を有する単位構造が複数配置された凹凸構造を有し、上記電磁波を透過する誘電体層とを有していてもよい。また、周波数選択反射板は、例えば、電気的な制御または機械的な制御によって電磁波の反射位相を制御することで、電磁波の反射方向を可変にする可変型の周波数選択反射板であってもよい。
周波数選択反射板が、上記電磁波を反射する反射部材を有し、反射部材が、上記電磁波の反射位相を制御する反射位相制御機能を有する第1態様と、上記電磁波を反射する反射部材と、上記反射部材に対して上記電磁波の入射側に配置され、所定の方向に厚さが増加する厚さ分布を有する単位構造が複数配置された凹凸構造を有し、上記電磁波を透過する誘電体層とを有する第2態様とに分けて説明する。
(1)周波数選択反射板の第1態様
本実施態様の周波数選択反射板の第1態様は、上記電磁波を反射する反射部材を有し、この反射部材が、上記電磁波の反射位相を制御する反射位相制御機能を有する。
(a)反射部材
本態様における反射部材は、特定の周波数帯の電磁波を反射し、電磁波の反射位相を制御する反射位相制御機能を有する部材である。
本態様において、反射部材は、通常、特定の周波数帯の電磁波のみを反射する波長選択機能を有する。このような反射部材としては、例えば、周波数選択板を挙げることができる。
周波数選択板は、特定の周波数帯の電磁波に対して反射、透過を制御する周波数選択性表面(FSS;Frequency Selective Surface)を有しており、特定の周波数帯の電磁波に対する反射板として機能する場合は、面内に複数の反射素子(散乱素子)が配列されたものである。周波数選択板としては、例えば、誘電体基板と、誘電体基板の電磁波入射側の面に配列された複数の反射素子とを有するものを挙げることができる。図14(a)、(b)は、本態様の周波数選択反射板の一例を示す概略平面図および断面図であり、図14(b)は図14(a)のA-A線断面図である。図14(a)、(b)に例示する周波数選択反射板1は、反射部材2が周波数選択板である例であり、反射部材2は、誘電体基板4と、誘電体基板4の電磁波入射側の面に配列された複数の反射素子3とを有している。周波数選択板は、公知の周波数選択板の中から適宜選択して用いることができる。
本態様においては、例えば図14(a)に示すように、複数の反射素子3が周期的に配列されている。電磁波の反射位相が同じである反射素子3が配置されている領域をそれぞれセル領域C1~C4とし、1周期分の構造を単位構造Uとすると、本実施態様においては、上記の各分割領域では電磁波の反射方向ベクトルが互いに異なることから、反射部材は、上記の各分割領域の反射特性に応じて、電磁波の反射方向ベクトルが互いに異なる複数種類の単位構造を有することができる。本態様において、上記の各分割領域はそれぞれ、少なくとも1つの単位構造を有することができ、電磁波の反射方向ベクトルが同一である単位構造を複数有していてもよい。また、分割領域の数を増やし、周波数選択反射板全面においてなだらかな反射方向ベクトルの変化を設計する場合は、上記の各分割領域はそれぞれ、少なくとも1つのセル領域を有していてもよい。
ここで、本態様において、電磁波の反射方向ベクトルは、以下により決定できる。例えば、反射部材では、互いに寸法の異なる複数の反射素子が周期的に配列されており、互いに寸法の異なる複数の反射素子を有する単位構造が複数配置されている場合、反射素子の寸法はある方向に増減を繰り返す。この場合、反射方向ベクトルは、単位構造の、反射素子の寸法が増加する方向の長さと、電磁波の波長とにより決定できる。具体的には、まず、図6に例示するような、周波数選択反射板1を地面(xz面)に垂直に立てた場合を想定し、水平方向(x軸)、天地方向(y軸)、および法線方向(z軸)を基準とした3次元直交座標系を想定する。この3次元直交座標系は、周波数選択反射板1の表面をxy面とし、周波数選択反射板1の表面の法線方向をz軸とする3次元直交座標系である。次に、xy面において、反射素子の寸法が増加する方向を求める。例えば図14の場合、xy面において、反射素子3の寸法が増加する方向は方向D11で示される。次に、xy面において、単位構造の、反射素子の寸法が増加する方向の長さを求める。例えば図14の場合、xy面において、単位構造Uの、反射素子3の寸法が増加する方向D11の長さは、長さL11で示される。次に、上記3次元直交座標系において、z軸に平行に電磁波の波長をとる。そして、xy面上の単位構造の反射素子の寸法が増加する方向の始点を直角頂とし、xy面上の単位構造の反射素子の寸法が増加する方向の長さと、z軸に平行な電磁波の波長とを隣辺とする直角三角形を作る。この直角三角形の斜辺の法線方向が、電磁波の入射方向がz軸に平行であるときの、電磁波の反射方向ベクトルである。例えば図15(a)、(b)に示すように、上記3次元直交座標系において、xy面上の単位構造の反射素子の寸法が増加する方向の始点を直角頂Vとし、xy面上の単位構造の反射素子の寸法が増加する方向の長さL11と、z軸に平行な電磁波の波長λとを隣辺Sa、Sbとする直角三角形RTを作る。この直角三角形RTの斜辺Scの法線方向dnが、電磁波の入射方向がz軸に平行であるときの、電磁波の反射方向ベクトルになる。
なお、図14および図15(a)において、反射素子の寸法が増加する方向D11は、x軸と水平になっているが、反射素子の寸法が増加する方向はこれに限定されることなく、xy面における任意の方向となり得る。
よって、本態様においては、周波数選択反射板の全面が複数の分割領域に分割されており、上記複数の分割領域は、上記周波数選択反射板の中央に位置する分割領域であるメイン領域と、上記メイン領域以外の分割領域である複数のサブ領域とを有し、上記複数のサブ領域は上記メイン領域の周囲に配置されており、
上記周波数選択反射板が、上記電磁波を反射する反射部材を有し、上記反射部材が、上記電磁波の反射位相を制御する反射位相制御機能を有し、上記反射部材では、寸法の異なる複数の反射素子を有する単位構造が複数配置されており、上記各分割領域は、少なくとも1つの単位構造を有し、
上記周波数選択反射板の表面をxy面、上記周波数選択反射板の表面の法線方向をz軸とする3次元直交座標系を想定し、上記3次元直交座標系において、xy面上の上記単位構造の上記反射素子の寸法が増加する方向の始点を直角頂とし、xy面上の上記単位構造の上記反射素子の寸法が増加する方向の長さと、z軸に平行な上記電磁波の波長とを隣辺とする直角三角形を想定したとき、
上記各分割領域での上記直角三角形の斜辺の法線方向は互いに異なり、
上記各サブ領域での上記直角三角形の斜辺の法線方向は、上記メイン領域での上記直角三角形の斜辺の法線方向を中心として外側に向かって広がるように設定されていると言い換えることができる。
また、後述するようにn個の単位構造でn波長分(位相差:n×360度)ずれるように、n個の単位構造の各セル領域での電磁波の相対反射位相を設定するような場合には、単位構造の反射素子の寸法が増加する方向が同じであり、単位構造の反射素子の寸法が増加する方向の長さが異なる単位構造が、n個分繰り返し配置されることになる。このような場合は、xy面上の単位構造の反射素子の寸法が増加する方向の始点を直角頂とし、xy面上のn個の単位構造の反射素子の寸法が増加する方向の長さの合計と、z軸に平行な電磁波の波長のn倍とを隣辺とする直角三角形を想定すればよい。
周波数選択性表面を形成する反射素子の形状としては、特に限定されず、例えば、リング、十字、正方形、長方形、円、楕円、棒、近接した複数領域に分割されたパターン等の平面パターン、及びスルーホールビア等による三次元構造等、任意の形状を挙げることができる。
また、反射素子は、単層であってもよく、多層であってもよい。反射素子が単層である場合、周波数選択板としては、例えば、誘電体基板の片面に複数の反射素子が配列されたものを挙げることができる。また、反射素子が多層である場合、周波数選択板としては、例えば、誘電体基板の両面に複数の反射素子が配列されたものや、誘電体基板と複数の反射素子と誘電体基板と複数の反射素子とが順に配置されたものや、電磁波の入射側の面から最も遠い面に一面導体が配置されているものを挙げることができる。
本態様において、反射部材は、電磁波の反射位相を制御する反射位相制御機能を有する。このような反射部材においては、反射素子の寸法や形状を変化させることによって、反射素子毎に共振周波数を変化させ、電磁波の反射位相を制御できる。これにより、所定の方向から入射した電磁波の反射方向を制御できる。
反射位相制御機能を有する反射部材としては、一般的な周波数選択性表面を適用できる。いずれも反射素子の寸法や形状を変化させることで電磁波の反射位相を変化させることが可能である。
反射素子の異なる寸法としては、反射素子の形状に応じて適宜選択される。
(b)他の構成
本態様の周波数選択反射板は、上記の反射部材の他に、必要に応じて他の構成を有していてもよい。
(i)カバー部材
本態様の周波数選択反射板は、上記反射部材の電磁波の入射側の面にカバー部材を有していてもよい。カバー部材によって、反射部材を保護することができる。また、カバー部材によって、意匠性を付与することもできる。
(ii)グラウンド層
本態様の周波数選択反射板は、上記反射部材の電磁波の入射側とは反対側の面にグラウンド層を有していてもよい。グラウンド層によって、周波数選択反射板の裏面に存在する物体との干渉を遮断し、ノイズの発生を抑えることができる。グラウンド層としては、例えば、金属板、金属メッシュ、ITO膜の導電層を用いる。
(iii)平坦化層
本態様の周波数選択反射板は、上記反射部材の電磁波の入射側の面に平坦化層を有していてもよい。反射部材が複数の反射素子が配列された部材である場合には、平坦化層によって、反射素子による凹凸を平坦化することができ、反射素子による凹凸の影響を抑えることができる。平坦化層としては、反射素子を包埋する状態で配置された電離放射線硬化樹脂層を例示することができる。また、平坦化層に反射素子を保護する機能を持たせてもよい。
(iv)固定層
本態様の周波数選択反射板を、例えば壁等に取り付けて使用する場合には、上記反射部材の電磁波の入射側とは反対側の面に、周波数選択反射板を取り付けるための機構を有する固定層を配置してもよい。また、固定層と、反射部材との干渉を抑えるために、固定層と反射部材との間に金属層を配置してもよく、固定層が金属層を兼ねてもよい。また、本態様の周波数選択反射板を壁等に取り付ける場合に、設計した電磁波の入射方向および反射方向と、実際の電磁波の入射方向および反射方向とのずれを補正できるように、固定層は周波数選択反射板の法線方向の角度を可変にする機構を有していてもよい。
(2)周波数選択反射板の第2態様
本実施態様の周波数選択反射板の第2態様は、上記電磁波を反射する反射部材と、上記反射部材に対して上記電磁波の入射側に配置され、所定の方向に厚さが増加する厚さ分布を有する単位構造が複数配置された凹凸構造を有し、上記電磁波を透過する誘電体層と、を有する。本態様の周波数選択反射板において、上記誘電体層の上記単位構造は、厚さの異なる複数のセル領域を有する。上記誘電体層の各単位構造では、上記単位構造の上記所定の方向の長さを横軸とし、上記電磁波が上記誘電体層を透過し上記反射部材で反射され上記誘電体層を再度透過して上記電磁波の入射側に放出される際の相対反射位相を縦軸とし、上記電磁波の相対反射位相の値が-360度超0度以下であるグラフに、各セル領域の上記所定の方向の中心位置および各セル領域での上記電磁波の相対反射位相に対応する点をプロットし、最小厚さを有する最小厚さセル領域に対応する点を通る直線を引いたとき、各点が同一直線上にあり、上記誘電体層が、上記単位構造として、厚さの異なる3つ以上の上記セル領域を有する単位構造を少なくとも有する。上記誘電体層の厚さ分布によって上記電磁波の相対反射位相分布を制御することにより、上記電磁波の反射方向を制御する。
図16(a)、(b)は、本態様の周波数選択反射板の一例を示す概略平面図および断面図であり、図16(b)は図16(a)のA-A線断面図である。図16(a)、(b)に示すように、周波数選択反射板1は、特定の電磁波を反射する反射部材2と、反射部材2に対して電磁波の入射側に配置され、所定の方向D3に厚さt1~t6が増加する厚さ分布を有する単位構造10が複数配置された凹凸構造を有し、特定の電磁波を透過する誘電体層5と、を有する。また、周波数選択反射板1は、反射部材2および誘電体層5の間に接着層6を有する。誘電体層5の単位構造10は、厚さt1~t6の異なる複数のセル領域11a~11fを有する。例えば図16(b)においては、誘電体層5の単位構造10は、所定の方向D3に厚さt1~t6が段階的に増加する階段形状を有しており、階段形状の段数が6段であり、誘電体層5の単位構造10は6個のセル領域11a~11fを有している。誘電体層5の単位構造10の各セル領域11a~11fでは、厚さt1~t6が異なるため、電磁波が誘電体層5を透過し反射部材2で反射され誘電体層5を再度透過して電磁波の入射側に放出される際の往復の光路長が異なることになる。誘電体層での往復光路長の差、つまり光路差が相対反射位相の差を生み出すことになる。
本明細書において、「光路長」という用語を用いたのは、本開示において対象とする周波数帯の波長が従来のLTE以前の周波数帯に比べると光に近づき直進性も高くなることから、光に類似の挙動としたほうが説明しやすいためであり、実際には誘電体層の中を電磁波が通過する際の実効距離を意味する。
そして、誘電体層5の単位構造10では、単位構造10の所定の方向D3の長さLを横軸とし、電磁波が誘電体層5を透過し反射部材2で反射され誘電体層5を再度透過して電磁波の入射側に放出される際の相対反射位相を縦軸とし、電磁波の相対反射位相の値が-360度超0度以下であるグラフに、各セル領域の所定の方向D3の中心位置および各セル領域での電磁波の相対反射位相に対応する点をプロットし、最小厚さを有する最小厚さセル領域に対応する点を通る直線を引いたとき、各点が同一直線上にある。
図16(c)は、誘電体層5の単位構造10の所定の方向D3の長さLを横軸とし、電磁波が誘電体層5を透過し反射部材2で反射され誘電体層5を再度透過して電磁波の入射側に放出される際の相対反射位相を縦軸とし、電磁波の相対反射位相の値が-360度超0度以下であるグラフであり、図16(a)、(b)に示す周波数選択反射板における誘電体層の単位構造の各セル領域での電磁波の相対反射位相の例である。図16(c)に示すように、誘電体層5の単位構造10の各セル領域11a~11fでの電磁波の相対反射位相はそれぞれ、0度、-60度、-120度、-180度、-240度、-300度であり、隣接するセル領域での電磁波の相対反射位相の差の絶対値は60度である。この場合、誘電体層5の単位構造10の6個のセル領域11a~11fの厚さt1~t6は、隣接するセル領域での電磁波の相対反射位相の差の絶対値が360度を6で除した値、つまり60度になるように、設計されている。そして、図16(c)に示すように、誘電体層5の単位構造10の各セル領域11a~11fの所定の方向D3の中心位置および各セル領域11a~11fでの電磁波の相対反射位相に対応する点をプロットし、各セル領域11a~11fのうち最小厚さt1を有する最小厚さセル領域11aに対応する点を通る直線(グラフ中の実線)を引いたとき、各点は同一直線上にある。
「反射位相」とは、ある表面に入射する入射波の位相に対する、反射波の位相の変化量をいう。しかし、本態様の反射部材および誘電体層を有する周波数選択反射板において、「反射位相」とは、入射波の位相に対する、入射波が誘電体層を透過し反射部材で反射され誘電体層を再度透過して放出される際の反射波の位相の変化量をいう。
また、本態様の反射部材および誘電体層を有する周波数選択反射板において、「相対反射位相」とは、誘電体層の一つの単位構造において、反射位相の遅れが最も少ないセル領域での反射位相を基準として、その基準の反射位相に対する、あるセル領域での反射位相の遅れを負号で示すものである。例えば、誘電体層の一つの単位構造において、反射位相の遅れが最も少ないセル領域での反射位相が-10度である場合、反射位相が-40度であるセル領域での相対反射位相は-30度になる。
なお、後述するように、反射部材が反射位相制御機能を有する場合には、セル領域での電磁波の相対反射位相は、反射部材での反射位相も合成した値とする。
また、本態様の反射部材および誘電体層を有する周波数選択反射板において、「セル領域」とは、誘電体層の単位構造において、電磁波の相対反射位相が同じである領域をいう。
なお、本態様の反射部材および誘電体層を有する周波数選択反射板において、反射位相は、特に断りのない限り、-360度超360度未満の範囲内であり、-360度および+360度は0度に戻る。また、本態様の反射部材および誘電体層を有する周波数選択反射板において、相対反射位相は、特に断りのない限り、-360度超0度以下の範囲内であり、-360度は0度に戻る。
従来のような複数の反射素子が配列されたリフレクトアレイでは、例えば、反射素子の寸法や形状を調整することで、反射位相を遅らせることも、反射位相を進めることもできる。一方、本態様の周波数選択反射板においては、誘電体層の単位構造の各セル領域の厚さを調整することによって、基本的に反射位相が遅れることになる。そのため、相対反射位相については、反射位相の遅れが最も少ないセル領域での反射位相を基準としている。
また、通常、誘電体層の一つの単位構造において、反射位相の遅れが最も少ないセル領域は、厚さが増加する所定の方向において最小厚さを有する最小厚さセル領域となる。上記のグラフにおいては、最小厚さを有する最小厚さセル領域に対応する点を通る直線を引くこととしている。
上述のように、誘電体層5の単位構造10の各セル領域11a~11fでは、厚さt1~t6が変化することで、誘電体層5での往復光路長が変化し、電磁波の相対反射位相が変化するため、電磁波を正反射(鏡面反射)方向とは異なる方向に反射させることができる。
したがって、本態様の周波数選択反射板においては、誘電体層の単位構造の各セル領域の厚さを変化させることによって、セル領域毎に誘電体層での往復光路長を変化させ、電磁波の反射位相を制御することができる。これにより、電磁波の所定の入射方向に対する反射方向を任意の方向に制御することができる。
また、本態様における誘電体層の凹凸構造は、切削、レーザー加工、金型を使用した賦型、3Dプリンタ、小片パーツの接合等の種々の手法によって形成される。従来のリフレクトアレイにおける金属層のフォトリソグラフィ加工のように、フォトマスクを必要としない。よって、シチュエーションに合わせて目的の入射角および反射角をもつ反射特性になるように、誘電体層の単位構造の各セル領域の厚さを設計し、誘電体層を形成する場合に、比較的安価、短期に所望の誘電体層を形成することができ、少量多品種のニーズに対応することが容易である。また、反射特性の制御に影響する誘電体層の厚さや誘電体層の単位構造のサイズについては、加工可能範囲が比較的広いことから、例えば電磁波の入射・反射角を大きくすることも可能であり、反射特性の制御域を広くすることができる。さらに、誘電体層の厚さや誘電体層の単位構造のセル領域のピッチについては、所望の反射位相を実現するための寸法加工精度のマージンが比較的広いことから、所望の反射特性を得られやすく、寸法ばらつきの影響も軽減することができる。したがって、周波数選択反射板の反射特性をカスタマイズすることが容易である。
また、本態様の周波数選択反射板において、反射部材は、特定の電磁波のみを反射する周波数選択板とすることができる。例えば図16(a)、(b)においては、反射部材2は、複数のリング状の反射素子3が配列されたものであり、誘電体基板4と、誘電体基板4の誘電体層5側の面に配置された複数の反射素子3とを有している。
さらに、本態様の周波数選択反射板においては、反射部材は、特定の電磁波のみを反射する周波数選択板であり、かつ、電磁波の反射位相を制御する反射位相制御機能を有する部材とすることができる。このような反射部材においては、反射素子の寸法や形状を変化させることによって、反射素子毎に共振周波数を変化させ、対象とする電磁波の反射位相を制御することができる。この場合、誘電体層の厚さだけでなく反射素子の寸法や形状によっても電磁波の反射位相を制御することができ、反射特性の制御についての設計自由度を向上させることができる。
よって、本態様の周波数選択反射板においては、上記のような反射部材を用いる場合には、上記誘電体層と組み合わせることにより、反射特性の制御の自由度を広げることができる。そのため、周波数選択反射板の反射特性のカスタマイズをより容易にすることができる。例えば、天地方向の反射特性は反射部材で複数種類を準備しておき、水平方向の反射特性を調整する誘電体層と組み合わせるといった運用は一つの例である。
また、本開示の発明者らは、本態様の反射部材および誘電体層を有する周波数選択反射板において、反射部材を、特定の電磁波のみを反射する反射素子を有する周波数選択板とした場合に、特定の周波数帯の電磁波の反射特性のシミュレーションを行ったところ、反射部材(周波数選択板)に誘電体層が近接することによる反射素子での反射位相のずれよりも、誘電体層の単位構造のセル領域の厚さを変化させて、セル領域毎に誘電体層での往復光路長を変化させたときの反射位相のずれのほうが大きく、実質的な反射特性の設計は、誘電体層の凹凸構造の設計でほぼ決めることが可能であることを見出した。このとき、反射素子の共振周波数は、近接する誘電体層の有無で変動するが、誘電体層が存在する前提で設計をしておけば、実用上の問題は解消される。さらに、周波数選択反射板における反射位相の面内分布設計を実現する誘電体層の凹凸構造の面内配置は、反射部材の反射素子の面内配置に対して一定の位置関係である必要はなく、誘電体層の凹凸構造を反射素子の面内配置に対してずらして配置しても反射特性に大きな影響を与えないことを見出した。
よって、本態様の周波数選択反射板において、上記誘電体層と、上記のような反射部材とを組み合わせる場合には、誘電体層および反射部材をそれぞれ独立して設計し、組み合わせることが可能である。この場合、使用環境に応じた反射特性を実現する誘電体層をその都度作製してもよく、事前に複数仕様を準備しておいてもよい。そのため、使用環境に応じて変化する周波数選択反射板の反射方向設計をより簡便にカスタマイズすることができ、多様なシチュエーションへの適用が容易となる。なお、上述したように、反射部材および誘電体層のそれぞれの反射位相分布の組み合わせにより周波数選択反射板の全体の反射特性を調整する場合は、要求仕様に応じて反射部材および誘電体層の配置ずれの精度が求められるが、誘電体層の反射位相分布のみにより周波数選択反射板の反射特性を調整する場合は、反射部材および誘電体層の配置ずれの精度はあまり求められない。
本実施態様においては、上記の各分割領域では電磁波の反射方向ベクトルが互いに異なることから、誘電体層は、上記の各分割領域の反射特性に応じて、電磁波の反射方向ベクトルが互いに異なる複数種類の単位構造を有することができる。本態様において、上記の各分割領域はそれぞれ、少なくとも1つの単位構造を有することができ、電磁波の反射方向ベクトルが同一である単位構造を複数有していてもよい。また、分割領域の数を増やし、周波数選択反射板全面においてなだらかな反射方向ベクトルの変化を設計する場合は、上記の各分割領域はそれぞれ、少なくとも1つのセル領域を有していてもよい。
ここで、本態様において、電磁波の反射方向ベクトルは、以下により決定できる。本態様においては、セル領域の厚さはある方向に増減を繰り返す。例えば、反射部材では、複数の反射素子の寸法が等しい場合、反射方向ベクトルは、単位構造の、セル領域の厚さが増加する方向の長さと、電磁波の波長とにより決定できる。具体的には、まず、図6に例示するような、周波数選択反射板1を地面(xz面)に垂直に立てた場合を想定し、水平方向(x軸)、天地方向(y軸)、および法線方向(z軸)を基準とした3次元直交座標系を想定する。この3次元直交座標系は、周波数選択反射板1の表面をxy面とし、周波数選択反射板1の表面の法線方向をz軸とする3次元直交座標系である。次に、xy面において、反射素子の寸法が増加する方向を求める。例えば図16(a)、(b)の場合、xy面において、セル領域11a~11fの厚さt1~t6が増加する方向は方向D12で示される。次に、xy面において、単位構造の、セル領域の厚さが増加する方向の長さを求める。例えば図16(a)、(b)の場合、xy面において、単位構造10の、セル領域11a~11fの厚さt1~t6が増加する方向D12の長さは、長さL12で示される。次に、上記3次元直交座標系において、z軸に平行に電磁波の波長をとる。そして、xy面上の単位構造のセル領域の厚さが増加する方向の始点を直角頂とし、xy面上の単位構造のセル領域の厚さが増加する方向の長さと、z軸に平行な電磁波の波長とを隣辺とする直角三角形を作る。この直角三角形の斜辺の法線方向が、電磁波の入射方向がz軸に平行であるときの、電磁波の反射方向ベクトルである。例えば図17(a)、(b)に示すように、上記3次元直交座標系において、xy面上の単位構造のセル領域の厚さが増加する方向の始点を直角頂Vとし、xy面上の単位構造のセル領域の厚さが増加する方向の長さL12と、z軸に平行な電磁波の波長λとを隣辺Sa、Sbとする直角三角形RTを作る。この直角三角形RTの斜辺Scの法線方向dnが、電磁波の入射方向がz軸に平行であるときの、電磁波の反射方向ベクトルになる。
なお、図16(a)、(b)および図17(a)において、セル領域の厚さが増加する方向D12は、x軸と水平になっているが、セル領域の厚さが増加する方向はこれに限定されることなく、xy面における任意の方向となり得る。
よって、本態様においては、周波数選択反射板の全面が複数の分割領域に分割されており、上記複数の分割領域は、上記周波数選択反射板の中央に位置する分割領域であるメイン領域と、上記メイン領域以外の分割領域である複数のサブ領域とを有し、上記複数のサブ領域は上記メイン領域の周囲に配置されており、
上記周波数選択反射板が、上記電磁波を反射する反射部材と、上記反射部材に対して上記電磁波の入射側に配置され、所定の方向に厚さが増加する厚さ分布を有する単位構造が複数配置された凹凸構造を有し、上記電磁波を透過する誘電体層と、を有し、上記誘電体層の上記単位構造は、厚さの異なる複数のセル領域を有し、上記各分割領域は、少なくとも1つの単位構造を有し、
上記周波数選択反射板の表面をxy面、上記周波数選択反射板の表面の法線方向をz軸とする3次元直交座標系を想定し、上記3次元直交座標系において、xy面上の上記単位構造の上記セル領域の厚さが増加する方向の始点を直角頂とし、xy面上の上記単位構造の上記セル領域の厚さが増加する方向の長さと、z軸に平行な上記電磁波の波長とを隣辺とする直角三角形を想定したとき、
上記各分割領域での上記直角三角形の斜辺の法線方向は互いに異なり、
上記各サブ領域での上記直角三角形の斜辺の法線方向は、上記メイン領域での上記直角三角形の斜辺の法線方向を中心として外側に向かって広がるように設定されていると言い換えることができる。
また、後述するように、n個の単位構造でn波長分(位相差:n×360度)ずれるように、n個の単位構造の各セル領域での電磁波の相対反射位相を設定するような場合には、単位構造のセル領域の厚さが増加する方向が同じであり、単位構造のセル領域の厚さが増加する方向の長さが異なる単位構造が、n個分繰り返し配置されることになる。このような場合は、xy面上の単位構造のセル領域の厚さが増加する方向の始点を直角頂とし、xy面上のn個の単位構造のセル領域の厚さが増加する方向の長さの合計と、z軸に平行な電磁波の波長のn倍とを隣辺とする直角三角形を想定すればよい。
例えば図22においては、2個の単位構造10aおよび10bによって、2波長分(位相差:720度)ずれるように、2個の単位構造の各セル領域での電磁波の相対反射位相が設定されている。このとき、xy面上の単位構造のセル領域の厚さが増加する方向の始点として、単位構造10aの左端を直角頂とし、xy面上の2個の単位構造10aおよび10bのセル領域の厚さが増加する方向の長さの合計をL1+L2とし、z軸に平行な電磁波の波長の2倍を隣辺とする直角三角形を想定すればよい
以下、本態様の周波数選択反射板の各構成について説明する。
(a)誘電体層
本開示における誘電体層は、反射部材に対して電磁波の入射側に配置され、所定の方向に厚さが増加する厚さ分布を有する単位構造が複数配置された凹凸構造を有し、特定の周波数帯の電磁波を透過する部材である。また、誘電体層の単位構造は、厚さの異なる複数のセル領域を有しており、誘電体層の各単位構造では、単位構造の所定の方向の長さを横軸とし、電磁波が誘電体層を透過し反射部材で反射され誘電体層を再度透過して電磁波の入射側に放出される際の相対反射位相を縦軸とし、電磁波の相対反射位相の値が-360度超0度以下であるグラフに、各セル領域の所定の方向の中心位置および各セル領域での電磁波の相対反射位相に対応する点をプロットし、最小厚さを有する最小厚さセル領域に対応する点を通る直線を引いたとき、各点が同一直線上にある。また、誘電体層は、単位構造として、厚さの異なる3つ以上のセル領域を有する単位構造を少なくとも有する。
(i)誘電体層の構造
誘電体層は、所定の方向に厚さが増加する厚さ分布を有する単位構造が複数配置された凹凸構造を有する。
誘電体層の単位構造は、厚さの異なる複数のセル領域を有しており、誘電体層の各単位構造では、単位構造の上記所定の方向の長さを横軸とし、電磁波が誘電体層を透過し反射部材で反射され誘電体層を再度透過して電磁波の入射側に放出される際の相対反射位相を縦軸とし、電磁波の相対反射位相の値が-360度超0度以下であるグラフに、各セル領域の上記所定の方向の中心位置および各セル領域での電磁波の相対反射位相に対応する点をプロットし、最小厚さを有する最小厚さセル領域に対応する点を通る直線を引いたとき、各点が同一直線上にある。
なお、各点が同一直線上にあるとは、その直線に対する各点の縦軸方向の差が±72度以内であることをいう。上記の直線に対する各点の縦軸方向の差は、好ましくは±54度以内であり、より好ましくは±36度以内であり、さらに好ましくは±18度以内である。なお、各点が上記の直線に対して縦軸方向にずれを含む場合であって、各点を通る直線を引きづらい場合には、「最小厚さを有する最小厚さセル領域に対応する点(相対反射位相0度)と、その単位構造に隣接する単位構造での最小厚さを有する最小厚さセル領域に対応する点(相対反射位相-360度とみなす)とを結んだ直線」を考える。
誘電体層の単位構造は、所定の方向に厚さが増加する厚さ分布を有する。誘電体層の単位構造は、例えば、一方向のみに厚さが増加する厚さ分布を有していてもよく、あるいは、第一方向および第一方向に垂直な第二方向の二方向に厚さが増加する厚さ分布を有していてもよい。例えば、図18(a)は、誘電体層の単位構造10が第一方向D3のみに厚さが増加する厚さ分布を有する例であり、図18(c)、(e)、図19(a)は、誘電体層の単位構造10が第一方向D3および第二方向D4に厚さが増加する厚さ分布を有する例である。
誘電体層の単位構造が一方向のみに厚さが増加する厚さ分布を有する場合には、その一方向での単位構造の長さを横軸とする上記グラフに上記点をプロットしたときに、各点が同一直線上にあることになる。また、誘電体層の単位構造が互いに垂直な二方向に厚さが増加する厚さ分布を有する場合には、その二方向での単位構造の長さをそれぞれ横軸とする上記グラフにそれぞれ上記点をプロットしたときに、各グラフにおいて、各点が同一直線上にあることになる。
誘電体層の一つの単位構造において、隣接するセル領域での電磁波の相対反射位相の差の絶対値は、180度未満であり、120度以下であることが好ましく、60度以下であることがより好ましい。隣接するセル領域での電磁波の相対反射位相の差の絶対値が小さいほど、反射波の波面を滑らかにすることができる。また、隣接するセル領域での電磁波の相対反射位相の差の絶対値は、0度超である。
また、隣接する単位構造において、一方の単位構造での最大厚さを有する最大厚さセル領域と、他方の単位構造での最小厚さを有する最小厚さセル領域とが隣接している場合、一方の単位構造での反射位相の遅れが最も少ないセル領域での反射位相を基準として、他方の単位構造での最小厚さを有する最小厚さセル領域での電磁波の相対反射位相を、一周期分ずらした-720度超-360度以下で示すとき、一方の単位構造での最大厚さを有する最大厚さセル領域での電磁波の相対反射位相と、他方の単位構造での最小厚さを有する最小厚さセル領域での電磁波の相対反射位相との差の絶対値は、180度未満であり、120度以下であることが好ましく、60度以下であることがより好ましい。これらの隣接するセル領域での電磁波の相対反射位相の差の絶対値が小さいほど、反射波の波面を滑らかにすることができる。また、これらの隣接するセル領域での電磁波の相対反射位相の差の絶対値は、0度超である。例えば、図16(c)においては、隣接する単位構造10a、10bにおいて、一方の単位構造10aの最大厚さt6を有する最大厚さセル領域11fでの電磁波の相対反射位相は-300度であり、他方の単位構造10bの最小厚さt1を有する最小厚さセル領域11aでの電磁波の相対反射位相は-360度であり、一方の単位構造10aの最大厚さt6を有する最大厚さセル領域11fでの電磁波の相対反射位相と、他方の単位構造10bの最小厚さt1を有する最小厚さセル領域11aでの電磁波の相対反射位相との差の絶対値は、60度である。
また、誘電体層の一つの単位構造において、隣接するセル領域での電磁波の相対反射位相の差は、等しいことが好ましい。例えば、図16(b)に示すように、誘電体層5の単位構造10が6個のセル領域を有する場合、隣接するセル領域11a、11bでの電磁波の相対反射位相の差と、隣接するセル領域11b、11cでの電磁波の相対反射位相の差と、隣接するセル領域11c、11dでの電磁波の相対反射位相の差と、隣接するセル領域11d、11eでの電磁波の相対反射位相の差と、隣接するセル領域11e、11fでの電磁波の相対反射位相の差とは、それぞれ等しいことが好ましい。例えば、図16(c)においては、隣接するセル領域での電磁波の相対反射位相の差の絶対値はいずれも60度であり、等しくなっている。
また、隣接する単位構造において、一方の単位構造での最大厚さを有する最大厚さセル領域と、他方の単位構造での最小厚さを有する最小厚さセル領域とが隣接している場合、一方の単位構造での反射位相の遅れが最も少ないセル領域での反射位相を基準として、他方の単位構造での最小厚さを有する最小厚さセル領域での電磁波の相対反射位相を、一周期分ずらした-720度超-360度以下で示すとき、一方の単位構造での全てのセル領域だけでなく、他方の単位構造での最小厚さを有する最小厚さセル領域も含めて、隣接するセル領域での電磁波の相対反射位相の差が等しいことが好ましい。例えば、図16(c)においては、隣接する単位構造10a、10bにおいて、一方の単位構造10aの各セル領域11a~11fでの電磁波の相対反射位相はそれぞれ、0度、-60度、-120度、-180度、-240度、-300度であり、他方の単位構造10bの最小厚さt1を有する最小厚さセル領域11aでの電磁波の相対反射位相は-360度であり、一方の単位構造10aでの全てのセル領域11a~11f、および、他方の単位構造10bでの最小厚さt1を有する最小厚さセル領域11aを含めて、隣接するセル領域での電磁波の相対反射位相の差の絶対値はいずれも60度であり、等しくなっている。
また、誘電体層の一つの単位構造において、最小厚さを有する最小厚さセル領域での電磁波の相対反射位相と、最大厚さを有する最大厚さセル領域での電磁波の相対反射位相との差の絶対値は、360度未満である。また、誘電体層の一つの単位構造において、最小厚さを有する最小厚さセル領域での電磁波の相対反射位相と、最大厚さを有する最大厚さセル領域での電磁波の相対反射位相との差の絶対値は、180度より大きい必要があり、300度以上360度未満であることがより好ましい。例えば、図16(b)に示すように、誘電体層5の単位構造10が6個のセル領域を有する場合、一つの単位構造10において、最小厚さt1を有する最小厚さセル領域11aでの電磁波の相対反射位相と、最大厚さt6を有する最大厚さセル領域11fでの電磁波の相対反射位相との差の絶対値は、360度未満であることが好ましい。例えば、図16(c)においては、誘電体層5の一つの単位構造10では、最小厚さt1を有する最小厚さセル領域11aでの電磁波の相対反射位相は0度であり、最大厚さt6を有する最大厚さセル領域11fでの電磁波の相対反射位相は-300度であり、最小厚さt1を有する最小厚さセル領域11aでの電磁波の相対反射位相と、最大厚さt6を有する最大厚さセル領域11fでの電磁波の相対反射位相との差の絶対値は、300度である。
誘電体層の単位構造のサイズ、具体的には、厚さが増加する所定の方向における単位構造の長さは、目的の反射特性に応じて適宜設定される。厚さが増加する所定の方向における単位構造の長さによって、1波長分(位相差:360度)ずれることになるため、反射角を調整することができる。例えば、厚さが増加する所定の方向における単位構造の長さを短くすることで、正反射角に対する反射角の差を大きくすることができ、一方、厚さが増加する所定の方向における単位構造の長さを長くすることで、正反射角に対する反射角の差を小さくすることができる。
また、誘電体層の単位構造の断面形状としては、例えば、所定の方向に厚さが段階的に増加する階段形状であってもよく、あるいは、所定の方向に厚さが漸次的に増加するテーパー形状であってもよい。図16(b)は、誘電体層5の単位構造10が階段形状を有する例である。図20は、誘電体層5の単位構造10がテーパー形状を有する例である。
なお、誘電体層の単位構造は厚さの異なる複数のセル領域を有するが、誘電体層の単位構造の断面形状がテーパー形状を有する場合は、単位構造におけるセル領域の数を無限に多くしたものとみなすことができる。この場合でも、単位構造が有する厚さ分布は、各セル領域での電磁波の相対反射位相が上述した設定になるように設計される。
また、誘電体層は、厚さ分布を有する単位構造が複数配置されたものであるため、単位構造の平面視のパターン形状は、隙間なく配列することが可能な形状であればよく、例えば、矩形状、正六角形状等を挙げることができる。図18(a)~(f)、図19(a)は、誘電体層の単位構造10の平面視のパターン形状が矩形状である例である。
誘電体層の単位構造において、隣接するセル領域での往復光路長の差は、各セル領域での電磁波の相対反射位相が上述した設定になるように設計されており、各セル領域の厚さは、隣接するセル領域の厚さの差が、上記の隣接するセル領域での往復光路長の差になるように設定されている。各セル領域の厚さは、電磁波の波長、誘電体層の材料の誘電率、および目的の反射特性に応じて適宜設定される。例えば、誘電体を通過する電磁波の実効波長をλgとし、ベースの厚さをαとした場合、各セル領域の厚さは、α+0λg以上、α+2λg以下程度であることが好ましい。ベースの厚さαは、誘電体層の一つの単位構造において、最小厚さを有する最小厚さセル領域の最小厚さと同一とすることができる。ベースの厚さαは、全体的な強度、形成の容易さ等を考慮して適宜設定されるが、電磁波への影響を考慮すると、通常は0.1λg以下程度であることが好ましい。具体的には、電磁波の空気中の波長λ0が10mmであり、誘電体層の比誘電率が2.57である場合、各セル領域の厚さは、0mm以上8.6mm以下であることが好ましい。なお、セル領域の厚さが0mmである場合とは、反射部材上に位置する当該セル領域には誘電体層が形成されていない形態を意味する。
誘電体層の単位構造において、セル領域のピッチや幅は適宜設定される。
また、反射部材が、複数の反射素子が配列された部材である場合、誘電体層の単位構造のセル領域のピッチは、反射部材の反射素子のピッチと同じであってもよく異なっていてもよい。誘電体層の単位構造のセル領域のピッチが反射部材の反射素子のピッチと同じである場合には、設計が容易となる。また、例えば、誘電体層の単位構造のセル領域のピッチを、隣接するセル領域での電磁波の相対反射位相の差を保ったまま狭くすることにより、反射部材の反射素子のピッチとは関係なく、反射特性の制御域を広げることができる。
また、誘電体層の一つの単位構造において、セル領域のピッチは等しいことが好ましい。
なお、セル領域のピッチとは、1つのセル領域の中心から隣接するセル領域の中心までの距離をいう。
また、誘電体層の一つの単位構造において、厚さが増加する所定の方向におけるセル領域の幅は等しいことが好ましい。
誘電体層の単位構造において、セル領域の平面視のパターン形状としては、例えば、ストライプ状、同心正方形を辺に平行で互いに垂直な直線で四等分したときの一つの形状、マイクロアレイ状、同心円を互いに垂直な直径で四等分したときの一つの形状である同心四分円状、曲線階段状等が挙げられる。例えば、図18(b)はストライプ状の例であり、図18(d)は同心正方形を辺に平行で互いに垂直な直線で四等分したときの一つの形状の例であり、図18(f)、図19(a)はマイクロアレイ状の例であり、図19(b)は同心四分円状の例であり、図19(c)は曲線階段状の例である。なお、図18(b)は図18(a)の上面図、図18(d)は図18(c)の上面図、図18(f)は図18(e)の上面図である。また、これらの例示された単位構造を隙間なく配置する場合、配列の方向には特に制限はなく、例えば矩形の単位構造を平面視で時計回りに30度回転させた状態で全面に配列させることもでき、必要とされる反射特性設計に応じて単位構造を適切な角度、適切な配列方向を選択し配置すればよい。
誘電体層の単位構造は、複数のセル領域を有する。誘電体層の一つの単位構造において、セル領域の数は、例えば、3以上であり、6以上であることが好ましい。誘電体層の一つの単位構造におけるセル領域の数が多いほど、隣接するセル領域での電磁波の相対反射位相の差を小さくすることができ、反射波の波面を滑らかにすることができる。また、誘電体層の一つの単位構造におけるセル領域の数は多いほど好ましく、上限は特に限定されない。なお、単位構造の断面形状が階段形状である場合、セル領域の数は、階段形状の段数に相当する。また、単位構造の断面形状がテーパー形状である場合、上述したように、テーパー形状は、セル領域の数を無限に多くしたものとみなすことができる。
上述したように、誘電体層は、上記のメイン領域および各サブ領域の反射特性に応じて、電磁波の反射方向ベクトルが互いに異なる複数種類の単位構造を有する。また、本態様において、上記のメイン領域および各サブ領域はそれぞれ、少なくとも1つの単位構造を有することができ、電磁波の反射方向ベクトルが同一である単位構造を複数有していてもよい。
単位構造においては、例えば、厚さが増加する方向における単位構造の長さ、厚さ分布、セル領域の数、幅、ピッチ、単位構造の平面視のパターン形状、セル領域の平面視のパターン形状の少なくともいずれかを異ならせることにより、反射特性を異ならせることができる。
例えば、誘電体層において、厚さが増加する方向における単位構造の長さが異なり、セル領域の平面視のパターン形状がストライプ状である態様を挙げることができる。例えば、図21(a)において、誘電体層5は、反射特性が互いに異なる3種類の単位構造10aと10b、10cと10dとを有しており、これらの単位構造10aと10b、10cと10dとでは、所定の方向D3における単位構造の長さL1、L2、L3が互いに異なり、セル領域11a~11g、12a~12f、13a~13eの数が互いに異なっている。これにより、図21(b)に示すように、単位構造10aの各セル領域11a~11gでの電磁波の相対反射位相はそれぞれ、0度、-51.4度、-103度、-154度、-206度、-257度、-309度であり、単位構造10b、10cの各セル領域12a~12fでの電磁波の相対反射位相はそれぞれ、0度、-60度、-120度、-180度、-240度、-300度であり、単位構造10dの各セル領域13a~13eでの電磁波の相対反射位相はそれぞれ、0度、-72度、-144度、-216度、-288度であり、単位構造10aと10b、10cと10dとは、反射特性が互いに異なっている。また、図示しないが、セル領域11a~11g、12a~12f、13a~13eの平面視のパターン形状はストライプ状である。この場合、単位構造10a<10b=10c<10dの順に、電磁波の反射方向の極角θを増加させることができる。上記の場合においては、単位構造10b、10cをメイン領域、単位構造10a、10cをサブ領域とする。
また、誘電体層においては、n個の単位構造によってn波長分(位相差:n×360度)ずれるように、n個の単位構造の各セル領域での電磁波の相対反射位相が設定されていてもよい。なお、nは2以上の整数である。図22(a)~(c)は、誘電体層5は、互いに異なる2種類の単位構造10a、10bを有しており、二つの単位構造10a、10bによって2波長分(位相差:720度)ずれるように、二つの単位構造10a、10bの各セル領域11a~11c、12a~12bでの電磁波の相対反射位相が設定されている例である。なお、図22(b)は、電磁波の相対反射位相のレンジを-360度超0度以下として表記したグラフである。図22(c)は、電磁波の相対反射位相のレンジを-720度超0度以下とし、相対反射位相が360度ずれた実質同位相の点を補完したグラフである。これらの単位構造10a、10bでは、所定の方向D3における単位構造の長さL1、L2が互いに異なり、セル領域11a~11c、12a~12bの数が互いに異なっている。
上記の場合、一方の単位構造10aは、3つのセル領域11a~11cを有しているが、他方の単位構造10bは、2つのセル領域12a、12bを有している。誘電体層は、単位構造として、厚さの異なる3つ以上のセル領域を有する単位構造を少なくとも有するが、上記のように、厚さの異なる2つのセル領域を有する単位構造をさらに有していてもよい。
また、各分割領域においてはそれぞれ、所定の入射角で入射した入射波に対する反射波の同一位相面の法線ベクトルが所望の反射方向ベクトルになるように、誘電体層の厚さ分布を適宜選択し、複数の単位構造を配置することができるが、例えば、入射波を単一の方向に反射する、いわゆる平面波として反射する場合は、各分割領域においてはそれぞれ、反射特性が同一である単位構造のみが複数配置されていることが好ましく、厚さが増加する方向における単位構造の長さが同じであり、セル領域の平面視のパターン形状がストライプ状であることがより好ましい。
なお、図16(a)には、周波数選択反射板の短手方向に対してセル領域のストライプの長手方向が平行である配置が示されているが、これに限定されず、実際の周波数選択反射板においては、セル領域のストライプの長手方向および短手方向は反射特性の設計に応じて設定される。
また、入射波および反射波を平面波とする場合、誘電体層は、単位構造が繰り返し配置されている周期構造を有する。なお、「周期構造」とは、単位構造が周期的に繰り返し配置された構造をいう。周期構造における単位構造において、反射特性が同一である単位構造では、厚さが増加する方向における単位構造の長さ、厚さ分布、セル領域の数、幅、ピッチ、単位構造の平面視のパターン形状、セル領域の平面視のパターン形状等を同じにすることができる。また、誘電体層が周期構造を有する場合においても、上述したように、反射特性の異なる単位構造を組み合わせることができる。その場合、組み合わせる単位構造の反射特性は、目的の反射特性に応じて適宜設計され、具体的には、組み合わせる単位構造における、厚さが増加する方向における単位構造の長さ、厚さ分布、セル領域の数、幅、ピッチ、単位構造の平面視のパターン形状、セル領域の平面視のパターン形状等は、目的の反射特性に応じて適宜設定される。
一般的に、平面波を正反射方向とは異なる方向に平面波として反射させる反射特性設計においては、例えば反射板の面内x方向と面内y方向の入射・反射特性に分解したのち、x方向、y方向の反射位相分布に変換し、それを単位構造の厚さ分布として組み入れることで設計が可能である。図23に示すように、反射位相を個別に調整できる同一サイズのセル領域が10×10(i=10、j=10)配置された周波数選択反射板の一部を例として説明する。このとき、必ずしもセル領域の10×10のサイズは単位構造のサイズでないことに留意する必要がある。入射角(θin、φin)の方向から入射する平面波を、反射角(θout、φout)の方向に平面波で反射する場合の(i、j)位置のセル領域に求められる反射位相δi,jは、次式で与えられる。
δi,j=2π{p×i×(sinθout×cosφout-sinθin×cosφin)+
p×j×(sinθout×sinφout-sinθin×sinφin)}/λ
ここで、上記式において、
δi,j:位相中心(0,0)に対して(i,j)位置にあるセル領域の反射位相
λ:反射波の波長[m]
p:セル領域のサイズ[m]
θin:入射波のθ傾き
φin:入射波のφ傾き
θout:反射波のθ傾き
φout:反射波のφ傾き
を示す。
誘電体層は、単層であってもよく、多層であってもよい。また、誘電体層は、ベースとなる基材部と、基材部上に配置された凹凸部とを有していてもよい。また、誘電体層は、全てのセル領域が一体に形成されている単一部材であってもよく、個々のセル領域が別々に形成されており、ブロック状のセル領域が配列されたものであってもよい。
(ii)誘電体層の特性
誘電体層は、特定の周波数帯の電磁波を透過すればよく、他の周波数帯の電磁波を透過してもよく、しなくてもよい。
誘電体層の誘電正接は、比較的小さいことが好ましい。誘電体層の誘電正接が小さいことにより、誘電損失を小さくすることができ、高周波損失を低減することができる。具体的には、対象周波数の電磁波に対する誘電体層の誘電正接は、0.01以下であることが好ましい。また、誘電体層の誘電正接は小さいほど好ましく、下限値は特に限定されない。
また、誘電体層の誘電率は、比較的高いことが好ましい。誘電体層の誘電率が高いことにより、誘電体層の厚さを薄くできる効果が期待できる。具体的には、対象周波数の電磁波における誘電体層の誘電率は、2以上であることが好ましく、2.5以上であることがより好ましく、正反射角に対する反射角の差を大きくする場合は3以上であることがさらに好ましい。
誘電体層の誘電正接および誘電率は、共振器法により測定される。誘電体層の誘電正接および誘電率は、JIS C 2138:2007に準拠して測定する。
(iii)誘電体層の材料
誘電体層の材料としては、所定の電磁波を透過することができる誘電体であれば特に限定されず、樹脂、ガラス、石英、セラミックス等を用いることができる。中でも、凹凸構造の形成の容易さを考慮すると、樹脂が好適である。
樹脂は、所定の電磁波を透過することができるものであれば特に限定されないが、上記電磁波の吸収が比較的少なく、上記電磁波の透過率が比較的高いものであることが好ましい。また、樹脂は、上述の誘電正接を満たすものであることが好ましく、上述の誘電率を満たすものであることがより好ましい。このような樹脂としては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS樹脂、PLA樹脂、オレフィン系樹脂、あるいはそれらの共重合体等を挙げることができる。中でも、ポリカーボネートは、寸法安定性に優れ、高周波損失も少なく、好適である。
また、誘電体層は、フィラーをさらに含有することができる。誘電体層がフィラーを含有することにより、誘電体層の誘電率や機械的強度を調整することができる。フィラーの誘電率は、樹脂の誘電率よりも高いことが好ましい。これにより、誘電体層の誘電率を高くすることができ、必要な誘電体層の厚さを薄くすることができる。高誘電率フィラーとしては、特に限定されず、ガラスやシリカ、チタン酸バリウム等の無機粒子や微細繊維等を挙げることができる。
フィラーの材質、形状、サイズ、含有量は、目的とする誘電率や機械的強度、分散性の難易度等から適宜選定することができる。フィラーのサイズは、誘電体を通過する電磁波の実効波長よりも十分に小さい必要があり、電磁波の実効波長をλgとした場合、フィラーの球相当の直径は例えば0.01λg以下であることが好ましい。ただし、フィラーのサイズがナノメートルオーダーに近づくと均一な分散が難しくなる傾向があるため、加工プロセスの負荷が増大するおそれがある。また、誘電体層中のフィラーの含有量は、誘電体及びフィラーの材質の組み合わせ、フィラーの形状、フィラーのサイズ等に応じて異なり、適宜調整される。
また、誘電体層の凹凸構造を、金型を用いた賦型等で形成する場合、誘電体層に、例えば離型剤や帯電防止剤等を添加してもよい。これらは、一般的なものを適宜選択して使用可能である。また、誘電体層は、例えばカーボンブラックや金属粒子等の導電性を付与するような添加剤やフィラーを含有しないことが好ましい。
(iv)誘電体層の形成方法
誘電体層の形成方法としては、所定の凹凸構造を形成することが可能な方法であれば特に限定されず、樹脂シートの切削、レーザー加工、金型を用いた賦型や真空注型、3Dプリンタによる造形、小片パーツの接合等が挙げられる。切削、レーザー加工や3Dプリンタ等の、金型を用いない形成方法の場合、目的の反射角に応じたカスタマイズが容易であるため、特殊な設置のシチュエーションや、シミュレーションが困難であるような大規模な周波数選択反射板を設計、開発する場合の設計のチューニングにも好適に用いることができる。金型を用いた賦型の場合には、誘電体からなる基材の上に賦型してもよく、この場合の基材および賦型樹脂は所定の電磁波を透過する材料であれば互いに異なる材料を使用してもよい。また、例えば、反射部材および誘電体層を別々に設計し作製する場合において、所定の入射角および反射角をもつ反射特性を有する誘電体層を予め複数種類準備し、シチュエーションに合わせて誘電体層の種類を選択し、反射部材に対して誘電体層を、法線方向を軸として面内で回転させることで、電磁波の反射方向の微調整を行う場合には、同じ仕様の誘電体層をまとめて作製するほうがコスト的に有利になることがあり、その場合は金型を用いた賦型の手法が好適である。
(b)反射部材
本態様における反射部材は、特定の周波数帯の電磁波を反射する部材である。
反射部材としては、特定の周波数帯の電磁波を反射するものであれば特に限定されず、例えば、特定の周波数帯の電磁波のみを反射するものであってもよく、あるいは、特定の周波数帯の電磁波だけでなく他の周波数帯の電磁波も反射するものであってもよい。中でも、反射部材は、特定の周波数帯の電磁波のみを反射する波長選択機能を有することが好ましい。
特定の周波数帯の電磁波だけでなく他の周波数帯の電磁波も反射する反射部材としては、例えば、周波数選択反射板の全面に配置された反射層が挙げられる。例えば、図24は、反射部材2が反射層7である例である。図24において、反射層7は、周波数選択反射板1の全面に配置されている。
反射層の材料としては、特定の周波数帯の電磁波を反射することができる材料であれば特に限定されず、金属材料やITO等の導電性材料が挙げられる。
反射層の厚さとしては、特定の周波数帯の電磁波を反射することができる厚さであれば特に限定されず、適宜設定される。
また、特定の周波数帯の電磁波のみを反射する反射部材としては、特定の周波数帯の電磁波のみを反射する波長選択機能を有するものであればよく、例えば、周波数選択板が挙げられる。
なお、周波数選択板については、上記第1態様に記載した内容と同様である。例えば、図16(b)は、反射部材2が周波数選択板である例であり、反射部材2は、誘電体基板4と、誘電体基板4の誘電体層5側の面に配列された複数の反射素子3とを有している。
また、反射素子の形状や構成についても、上記第1態様に記載した内容と同様とすることができる。
また、周波数選択板は、すなわち反射部材は、電磁波の反射位相を制御する反射位相制御機能を有することが好ましい。このような反射部材においては、反射素子の寸法や形状を変化させることによって、反射素子毎に共振周波数を変化させ、電磁波の反射位相を制御することができる。そのため、周波数選択板が反射位相制御機能を有する場合には、誘電体層の厚さおよび反射素子の寸法や形状によって電磁波の反射位相分布を制御することにより、電磁波の反射特性を制御することができる。よって、例えば周波数選択反射板の面内の直交する2方向(例えばx軸方向、y軸方向)の反射特性を周波数選択板および誘電体層で個別に設計でき、また誘電体層の厚さを抑えつつ、所望の電磁波の反射特性を得ることができる。
反射位相制御機能を有する周波数選択板としては、一般的な周波数選択性表面を適用できる。いずれも反射素子の寸法や形状を変化させることで電磁波の反射位相を変化させることが可能である。
反射素子の異なる寸法としては、反射素子の形状に応じて適宜選択される。
(c)電磁波の反射方向の制御
本態様の周波数選択反射板においては、誘電体層の単位構造の各セル領域の厚さを変えることで、セル領域毎に誘電体層での往復光路長を変化させ、電磁波の相対反射位相を制御することができる。これにより、誘電体層の単位構造のサイズおよび平面視パターン、ならびに、誘電体層の単位構造のセル領域の数および厚さを調整することで、所定の方向から入射した電磁波の反射方向を制御することができる。
また、反射部材が、周波数選択板であり、かつ、反射位相制御機能を有する部材である場合、誘電体層の単位構造の各セル領域の厚さを変化させることによって、セル領域毎に誘電体層での往復光路長を変化させるだけでなく、反射部材の反射素子の寸法や形状を変化させることによって、反射素子毎の共振周波数を変化させ、電磁波の反射位相を制御することができ、これにより、反射特性制御に関する設計の自由度を拡大することができる。
この場合、反射部材での反射制御方向と誘電体層での反射制御方向とを分け、周波数選択反射板の全体で二次元的な反射方向制御を行うということも可能になる。また、反射部材および誘電体層での反射制御方向をオーバーラップさせる場合は、例えば、ある程度決まった方向に反射させる反射位相分布を反射部材で実現し、さらに誘電体層で微調整することもできる。この場合、誘電体層の厚さを薄くできるという利点がある。
誘電体層の厚さ分布および反射部材の反射素子の寸法分布の配置としては、例えば、図25(a)、(b)に示すように、反射部材2の反射素子3の寸法が大きくなるにつれて、誘電体層5の単位構造10のセル領域11a~11fの厚さが厚くなるように、誘電体層5および反射部材2を配置することができる。このような態様においては、誘電体層の厚さを抑えることができる。これにより、誘電体層が薄くなるため、周波数選択反射板の軽量化や低コスト化を図ることができ、また、反射角が大きくなった場合でも、反射波が誘電体層に当たりにくくなる。
また、誘電体層の厚さ分布および反射部材の反射素子の寸法分布の配置としては、例えば、図26(a)、(b)に示すように、反射部材2の反射素子3の寸法は方向D4に沿って大きくなり、誘電体層5の単位構造10のセル領域11a~11fの厚さは方向D4に垂直な方向D3に沿って厚くなるように、誘電体層5および反射部材2を配置してもよい。
なお、図26においては、一つのセル領域において、反射素子の寸法が異なるため、反射素子の寸法に応じて、一つのセル領域での電磁波の相対反射位相が部分的に異なることになる。このような場合においても、厚さが増加する所定の方向D3に切り取った場合、上述したグラフにおいて、各点が同一直線上にあることになる。
また、反射部材および誘電体層を別々に設計し組み合わせる仕様の場合、反射部材に対して、誘電体層を、法線方向を軸として面内で回転させて、反射部材に対する、誘電体層の単位構造のセル領域の配列方向の向きを調整することにより、電磁波の反射方向を微調整することもできる。
また、誘電体層の単位構造において、厚さが増加する所定の方向における単位構造の長さを調整することにより、反射特性を制御することができる。例えば、厚さが増加する所定の方向における単位構造の長さを短くすることで、電磁波の反射角を大きくすることができる。一方、厚さが増加する所定の方向における単位構造の長さを長くすることで、電磁波の反射角を小さくすることができる。
なお、誘電体層の単位構造において、厚さが増加する所定の方向における単位構造の長さとは、誘電体層の単位構造が、所定の方向に厚さが増加する厚さ分布を有する場合において、その所定の方向における単位構造の長さをいう。例えば図24においては、誘電体層5の単位構造10では、所定の方向D3に厚さが増加しており、この所定の方向D3における単位構造10の長さはLである。
なお、上述したように、周波数選択反射板における反射位相の面内分布設計を実現する誘電体層の凹凸構造の面内配置は、反射部材の反射素子の面内配置に対して一定の位置関係である必要はなく、誘電体層の凹凸構造を反射素子の面内配置に対してずらして配置しても反射特性に大きな影響を与えない。そのため、反射部材が、周波数選択板であり、かつ、反射位相制御機能を有する部材である場合、誘電体層および反射部材をそれぞれ独立して設計することが可能である。
(d)他の構成
本態様の周波数選択反射板は、上記の反射部材および誘電体層の他に、必要に応じて他の構成を有していてもよい。
(i)接着層
本態様の周波数選択反射板は、上記反射部材と上記誘電体層との間に接着層を有していてもよい。接着層によって、反射部材および誘電体層を接着することができる。また、反射部材が複数の反射素子が配列された部材である場合には、接着層によって、反射素子による凹凸を平坦化することができ、反射部材上に誘電体層を積層する際の反射素子による凹凸の影響を抑えることができる。例えば、図16(b)において、反射部材2と誘電体層5との間には接着層6が配置されている。
接着層には、例えば、接着剤や粘着剤を用いることができ、公知の接着剤および粘着剤の中から適宜選択して用いることができる。その場合、接着剤や粘着剤は、不導体である必要がある。また、接着剤や粘着剤が液状である場合は、均一に塗り広げることができ、気泡の噛みこみを除去できる程度の流動性を持つことが好ましい。また、接着剤や粘着剤がシート状である場合は、厚みが均一であることが好ましく、かつ貼合界面の凹凸に追従し、気泡の噛みこみを抑制することが可能な程度の柔軟性を有することが好ましい。
接着層の厚さは、所望の接着力を得ることができる厚さであり、均一であることが好ましい。また、反射部材が複数の反射素子が配列された部材である場合には、接着層の厚さは、平坦化の点から、反射素子の厚さと同等以上であることが好ましい。接着層が反射素子の厚さよりも厚い場合は、反射素子が接着層に埋め込まれた状態となる。また、接着層の厚さは、対象となる電磁波の実効波長よりも十分に小さいことが好ましく、電磁波の実効波長をλgとした場合、具体的には0.01λg以下であることが好ましい。
(ii)空間
本態様の周波数選択反射板は、上記反射部材と上記誘電体層との間に空間を有していてもよい。例えば、図27において、反射部材2と誘電体層5との間には空間8が配置されている。
反射部材と誘電体層との間に空間が配置されている場合、反射部材と誘電体層との距離は一定であることが好ましい。これにより、空間での光路長を揃えることができる。
(iii)カバー部材
本態様の周波数選択反射板は、上記誘電体層の上記反射部材とは反対側の面にカバー部材を有していてもよい。カバー部材によって、誘電体層を保護することができる。また、カバー部材によって、意匠性を付与することもできる。
(iv)グラウンド層
本態様の周波数選択反射板は、上記反射部材の上記誘電体層とは反対側の面にグラウンド層を有していてもよい。グラウンド層によって、周波数選択反射板の裏面に存在する物体との干渉を遮断し、ノイズの発生を抑えることができる。また、グラウンド層は、波長選択性を有しない反射部材の一部にもなり得る。グラウンド層としては、金属板、金属メッシュ、ITO膜の導電層が用いられる。
(v)平坦化層
本態様の周波数選択反射板は、上記反射部材と上記誘電体層との間に平坦化層を有していてもよい。反射部材が複数の反射素子が配列された部材である場合には、平坦化層によって、反射素子による凹凸を平坦化することができ、反射部材上に誘電体層を積層する際の反射素子による凹凸の影響を抑えることができる。なお、ここでいう平坦化層は、接着層とは別に配置するものをいい、反射素子を包埋する状態で配置された電離放射線硬化樹脂層を例示することができる。また、反射部材と誘電体層との間に空間を設ける形態の場合は、平坦化層に反射素子を保護する機能を持たせてもよい。
(vi)固定層
本態様の周波数選択反射板を、例えば壁等に取り付けて使用する場合には、上記反射部材の上記誘電体層とは反対側の面に、周波数選択反射板を取り付けるための機構を有する固定層を配置してもよい。また、固定層と、反射部材および誘電体層との干渉を抑えるために、固定層と反射部材との間に金属層を配置してもよく、固定層が金属層を兼ねてもよい。また、本態様の周波数選択反射板を壁等に取り付ける場合に、設計した電磁波の入射方向および反射方向と、実際の電磁波の入射方向および反射方向とのずれを補正できるように、固定層は周波数選択反射板の法線方向の角度を可変にする機構を有していてもよい。
(vii)反射防止層
高周波の場合には誘電体層界面での反射の影響も考えられるため、本態様の周波数選択反射板においては、必要に応じて、誘電体層と空気との界面に反射防止層を配置してもよい。反射防止層は、例えば、誘電率の異なる多層構造を有していてもよく、電磁波の実効波長よりも小さい凹凸構造を有していてもよい。
(3)周波数選択反射板の他の態様
本実施態様の周波数選択反射板は、上述したように、電気的な制御または機械的な制御によって電磁波の反射位相を制御することで、電磁波の反射方向を可変にする可変型の周波数選択反射板であってもよい。このような可変型の周波数選択反射板の場合でも、本実施態様を実現できる。可変型の周波数選択反射板としては、公知のものを適用できる。
3.周波数選択反射板のその他の点
本実施態様の周波数選択反射板のサイズは、例えば、目的とする周波数選択反射板全体の反射特性や、各分割領域の反射特性、各分割領域の配置、各分割領域の平面視形状、各分割領域のサイズ等に応じて適宜選択される。
具体的には、周波数選択反射板全体のサイズは、下記のように設計することができる。まず、周波数選択反射板が分割領域を有さない、すなわちメイン領域のみを有する場合に、所望の受信域に必要な電磁波を反射することができる周波数選択反射板のレーダー断面積RCSから、周波数選択反射板の物理面積S0、つまり所望の受信域に必要な電磁波を反射することができる面積を下記式(3)により算出する。
上記式(3)中、S0は周波数選択反射板が分割領域を有さない場合の周波数選択反射板の物理面積(m2)、RCSは平板のレーダー断面積(m2)、λは電磁波の波長(m)、kは周波数選択反射板が分割領域を有さない場合の周波数選択反射板の電力反射率(理想的な金属は1である。)を表す。
次に、周波数選択反射板が分割領域を有さない場合に、周波数選択反射板による反射ビームプロファイルの半値幅FWHMを下記式(2)により算出する。
FWHM[rad]=λ/(0.8×D)~λ/(0.6×D) (2)
上記式(2)中、λは電磁波の波長、Dは周波数選択反射板の直径を示す。また、上記式(2)において、周波数選択反射板の直径Dを、周波数選択反射板の物理面積S0で書き直すと、下記式(4)になる。
周波数選択反射板が分割領域を有さない場合、すなわちメイン領域のみを有する場合において、周波数選択反射板による反射ビームプロファイルの半値幅FWHMが所望の受信域を満たさない場合に、周波数選択反射板を複数の分割領域で構成する設計、すなわちメイン領域に複数のサブ領域を追加する設計を行う。
また、反射ビームプロファイルの半値幅FWHMは、反射ビームの立体角Srに相当する。例えば図28(a)に示すように、周波数選択反射板1全体による反射ビームが、メイン領域での電磁波の反射方向ベクトルr0に対して、±θrで円錐状に広がっている場合、メイン領域での電磁波の反射方向ベクトルからの広がりが±θsである円錐の立体角Srは、下記式(5)により求められる。
Sr=2π(1-cosθs) (5)
また、図28(b)に示すように、周波数選択反射板1全体による反射ビームが、メイン領域での電磁波の反射方向ベクトルr0に対して円錐状に広がる場合において、周波数選択反射板1全体による反射ビームのうち、電磁波の反射強度がメイン領域での電磁波の反射方向ベクトルr0の反射強度の半分以上になる電磁波の反射方向ベクトルを含む反射ビームとした場合に、円錐の立体角SrHMは、下記式(6)により求められる。
SrHM=2π(1-cosθHM) (6)
上記式(6)中、θHMは、周波数選択反射板全体による反射ビームにおいて、メイン領域での電磁波の反射方向ベクトルr0と、メイン領域での電磁波の反射方向ベクトルr0の反射強度が半分になる電磁波の反射方向ベクトルとのなす角を表し、下記式(7)で示される。
θHM=FWHM/2 (7)
よって、本実施態様の周波数選択反射板の面積S1は、下記式(1)を満たすことが好ましい。
S1≧S0×Sr1/Sr0 (1)
上記式(1)中、S1は本実施態様の周波数選択反射板の面積(m2)、Sr1は所望の電磁波の受信域を満たす反射ビームの立体角、S0は周波数選択反射板が上記分割領域を有さない場合に、所望の受信域を満たすのに必要な周波数選択反射板の面積(m2)、Sr0は周波数選択反射板が上記分割領域を有さない場合に、面積がS0である周波数選択反射板による反射ビームの立体角を表す。
また、周波数選択反射板が上記分割領域を有さない場合に、面積がS0である周波数選択反射板による反射ビームプロファイルの半値幅FWHMが所望の受信域を満たさない場合、すなわち、周波数選択反射板が上記分割領域を有さない場合に、面積がS0である周波数選択反射板による反射ビームの立体角Sr0が所望の受信域を満たさない場合において、本実施態様の周波数選択反射板の面積S1をS0のn倍になるように設計する場合、下記式(8-1)を満たすことが好ましく、下記式(8-2)を満たすことがより好ましく、下記式(8-3)を満たすことがさらに好ましい。
Sr0×n/Sr1≧1 (8-1)
Sr0×n/Sr1≧1.5 (8-2)
Sr0×n/Sr1≧2 (8-3)
本実施態様の周波数選択反射板は、入射波が平面波および球面波のいずれの場合も適用可能である。本実施態様の周波数選択反射板において、例えば、入射する平面波を、平面波として反射すること;入射する球面波を、球面波として反射すること;入射する球面波を、平面波として反射すること;が可能である。
本実施態様の周波数選択反射板は、特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する。電磁波の周波数帯は、直進性が強いマイクロ波以上の周波数帯であることが好ましい。電磁波の周波数帯は、例えば、2.5GHz以上であることが好ましく、24GHz以上であることがより好ましく、24GHz以上300GHz以下であることがさらに好ましい。電磁波の周波数帯が上記範囲であれば、本実施態様の周波数選択反射板を第5世代移動通信システム、いわゆる5Gに利用することができる。
本実施態様の周波数選択反射板は、例えば、通信用の周波数選択反射板として用いることができ、中でも、移動通信用の周波数選択反射板として好適である。
II.第2実施態様
本実施態様の周波数選択反射板は、特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板であって、上記周波数選択反射板の全面が複数の分割領域に分割されており、上記各分割領域での上記電磁波の反射方向ベクトルは互いに異なり、上記各分割領域での上記電磁波の反射方向ベクトルは、上記各分割領域での上記電磁波の反射方向ベクトルの和から導かれる、電磁波の主反射方向ベクトルを中心として外側に向かって広がるように設定されている。
図29(a)~(d)は、本実施態様の周波数選択反射板の一例を示す概略平面図である。図29(a)~(d)に示すように、周波数選択反射板1の全面は、複数の分割領域に分割されている。図29(a)~(d)に示す例においては、周波数選択反射板1は、2つの分割領域A1~A2を有している。
また、図29(a)~(d)には周波数選択反射板における各分割領域の反射特性の一例を示す。例えば図6に示すように、周波数選択反射板1を地面(XZ面)に垂直に立てた場合の電磁波反射側から見て、左隅を原点、水平方向をx軸、天地方向をy軸、反射側法線方向をz軸とし、電磁波の反射方向ベクトルdrの極角をθ、方位角をφと定義する。
電磁波の主反射方向ベクトルが分割領域A1から分割領域A2側(φ=0°方向)に傾いている場合には、図29(a)に示すように、電磁波の主反射方向ベクトルの極角をθr、方位角をφrとしたとき、分割領域A1では(θr-α、φr)、分割領域A2では(θr+α、φr)となっている。
これらの各分割領域における電磁波の反射方向ベクトルの極角、方位角の変位量は、電磁波の主反射方向ベクトルが周波数選択反射板の面に対していずれの方向に傾いているかによって変わってくる。図29(b)は、電磁波の主反射方向ベクトルが分割領域A2から分割領域A1側(φ=180°)に傾いている場合の例である。図29(c)は、電磁波の主反射方向ベクトルが分割領域A1、A2から紙面上側(φ=90°)に傾いている場合の例である。図29(d)は、電磁波の主反射方向ベクトルが分割領域A1、A2から紙面下側(φ=270°)に傾いている場合の例である。
なお、α、βは、正の数である。これらのα、βの値および符号は、あくまで電磁波の反射方向ベクトルを極座標で表現した場合の目安であり、電磁波の主反射方向ベクトルや、周波数選択反射板全体での電磁波の反射方向ベクトルの広がりの設定によっても変わってくる。
本質的には、各分割領域における電磁波の反射方向ベクトルは、電磁波の主反射方向ベクトルを中心として外側に広がるように設定され、後述するように、隣接する分割領域同士での電磁波の反射方向ベクトルのなす角θdsが所定の範囲内になるように設定されることが好ましい。
図29(a)~(d)においては、各分割領域A1~A2による反射ビームが重なり合うことで、周波数選択反射板1全体による反射ビームプロファイルでは1つのメインローブ(メインビーム)が形成され、周波数選択反射板1全体による反射波のビーム幅を広げることができる。これにより、周波数選択反射板による反射ビームが照射されるエリアを広げることが可能である。
なお、従来のように、周波数選択反射板が分割領域を有さず、例えば上記第1実施態様におけるメイン領域のみを有する場合、周波数選択反射板のサイズを大きくすると、原理的に利得が増加し、周波数選択反射板による反射ビームが鋭くなる。この場合、周波数選択反射板による反射波のビーム幅が狭くなるため、周波数選択反射板による反射ビームが照射されるエリアが狭くなってしまう。
本実施態様においては、周波数選択反射板が複数の分割領域に分割されており、各分割領域のサイズが小さくなることから、利得が多少低下するものの、各分割領域による反射波のビーム幅が広くなる。さらに、各分割領域での電磁波の反射方向ベクトルが互いに微妙に異なり、各分割領域での電磁波の反射方向ベクトルが電磁波の主反射方向ベクトルを中心として外側に向かって広がるように設定されていることによって、各分割領域による反射ビームが重なり合うことで、周波数選択反射板全体による反射波のビーム幅を広げることができる。よって、周波数選択反射板による反射ビームが照射されるエリアを広げることが可能である。
以下、本実施態様の周波数選択反射板の各構成について説明する。
1.分割領域
本実施態様の周波数選択反射板の全面は、複数の分割領域に分割されている。
各分割領域の配置は、目的とする周波数選択反射板全体の反射特性や、各分割領域の反射特性、各分割領域の平面視形状等に応じて適宜選択される。
中でも、各分割領域は、周波数選択反射板の中心に対して点対称に配置されていることが好ましい。これにより、周波数選択反射板全体による反射波のビーム幅を広げやすくすることができる。例えば図29(a)~(b)では、2つの分割領域A1~A2が周波数選択反射板1の中心100に対して点対称に配置されている。また、例えば図30(a)では、4つの分割領域Aが周波数選択反射板1の中心100に対して点対称に配置されている。図30(b)では、16の分割領域Aが周波数選択反射板1の中心100に対して点対称に配置されている。図30(c)では、3つの分割領域Aが周波数選択反射板1の中心100に対して点対称に配置されている。
各分割領域の平面視形状については、上記第1実施態様と同様とすることができる。
分割領域の数は複数であり、目的とする周波数選択反射板全体の反射特性や、各分割領域の反射特性、各分割領域の配置、各分割領域の平面視形状、各分割領域のサイズ等に応じて適宜選択される。周波数選択反射板全体のサイズが一定である場合、分割領域の数が多いほど、分割領域のサイズが小さくなる。分割領域のサイズが小さくなると、周波数選択反射板全体による反射ビームプロファイルの乱れが抑えられ、反射ビームプロファイルにおいてサイドローブが低くなる傾向がある。この場合、ブロードな反射ビームを安定して得ることができる。
また、本実施態様において、各分割領域での電磁波の反射方向ベクトルは互いに異なる。具体的には、各分割領域において、電磁波の反射方向ベクトルの極角および方位角の少なくともいずれか一方が異なっていればよい。
また、隣接する分割領域同士において、電磁波の反射方向ベクトルのなす角は比較的小さいことが好ましい。各分割領域において、電磁波の反射方向ベクトルが緩やかに変化することで、周波数選択反射板全体による反射ビームプロファイルの乱れが抑えられ、反射ビームプロファイルにおいてサイドローブが低くなる傾向がある。この場合、ブロードな反射ビームを安定して得ることができる。
隣接する分割領域同士においては、電磁波の反射方向ベクトルの極角および方位角の少なくともいずれか一方が異なっていればよい。
隣接する分割領域同士での電磁波の反射方向ベクトルのなす角θdsについては、上記第1実施態様と同様とすることができる。
また、複数の分割領域において、隣接する分割領域同士における電磁波の反射方向ベクトルのなす角は、同じであってもよく、異なっていてもよいが、通常は同じである。
また、本実施態様において、各分割領域での電磁波の反射方向ベクトルは、各分割領域での電磁波の反射方向ベクトルの和から導かれる、電磁波の主反射方向ベクトルを中心として外側に向かって広がるように設定されている。各分領域での電磁波の反射方向ベクトルがこのように設定されていることにより、周波数選択反射板全体による反射波のビーム幅を広げることができる。
なお、電磁波の主反射方向ベクトルは、各分割領域での電磁波の反射方向ベクトルの和から導かれるものであり、各分割領域での電磁波の反射方向を表す単位ベクトルの合成ベクトルの向きである。本実施態様においては、周波数選択反射板全体として反射される電磁波の主反射方向ベクトルは、周波数選択反射板の中心から反射されているものとみなすことができる。
周波数選択反射板の面内にある各分割領域での電磁波の反射方向ベクトルが、電磁波の主反射方向ベクトルを中心として外側に向かって広がるように、各分割領域の反射方向ベクトルを設定すればよい。各分割領域での電磁波の反射方向ベクトルは、電磁波の反射方向ベクトルの極角および方位角により設定できる。隣接する分割領域同士での電磁波の反射方向ベクトルのなす角は、上述の隣接する分割領域同士での電磁波の反射方向ベクトルのなす角の範囲内で、徐々に変化させることが好ましい。
また、本実施態様において、電磁波の主反射方向ベクトルからのずれ角を横軸、周波数選択反射板の電磁波の反射強度を縦軸とするグラフにおいて、反射ビームプロファイルの半値幅は、上記第1実施態様と同様とすることができる。
また、各分割領域のサイズは、例えば、目的とする周波数選択反射板全体の反射特性や、各分割領域の反射特性、各分割領域の配置、各分割領域の平面視形状、分割領域の数等に応じて適宜選択される。各分割領域のサイズは、周波数選択反射板のサイズの1/2以下とすることができる。また、各分割領域のサイズのその他の点については、上記第1実施態様と同様とすることができる。
2.周波数選択反射板の構成
本実施態様の周波数選択反射板の構成については、上記第1実施態様と同様とすることができる。
(1)周波数選択反射板の第1態様
本実施態様の周波数選択反射板の第1態様は、上記第1実施態様の周波数選択反射板の第1態様と同様である。
本態様において、電磁波の反射方向ベクトルは、上記第1実施態様の周波数選択反射板の第1態様と同様に、決定される。
よって、本態様においては、周波数選択反射板の全面が複数の分割領域に分割されており、
上記周波数選択反射板が、上記電磁波を反射する反射部材を有し、上記反射部材が、上記電磁波の反射位相を制御する反射位相制御機能を有し、上記反射部材では、寸法の異なる複数の反射素子を有する単位構造が複数配置されており、上記各分割領域は、少なくとも1つの単位構造を有し、
上記周波数選択反射板の表面をxy面、上記周波数選択反射板の表面の法線方向をz軸とする3次元直交座標系を想定し、上記3次元直交座標系において、xy面上の単位構造の反射素子の寸法が増加する方向の始点を直角頂とし、xy面上の上記単位構造の上記反射素子の寸法が増加する方向の長さと、z軸に平行な上記電磁波の波長とを隣辺とする直角三角形を想定したとき、
上記各分割領域での上記直角三角形の斜辺の法線方向は互いに異なり、上記各分割領域での上記直角三角形の斜辺の法線方向は、上記各分割領域での上記直角三角形の斜辺の法線方向のベクトルの和から導かれる、電磁波の主反射方向ベクトルを中心として外側に向かって広がるように設定されていると言い換えることができる。
なお、各分割領域での直角三角形の斜辺の法線方向のベクトルの長さを、単位ベクトルとし、それらの単位ベクトルの和によって、電磁波の主反射方向ベクトルの方向が求められる。)
(2)周波数選択反射板の第2態様
本実施態様の周波数選択反射板の第2態様は、上記第1実施態様の周波数選択反射板の第2態様と同様である。
本態様において、電磁波の反射方向ベクトルは、上記第1実施態様の周波数選択反射板の第1態様と同様に、決定される。
よって、本態様においては、周波数選択反射板の全面が複数の分割領域に分割されており、
上記周波数選択反射板が、上記電磁波を反射する反射部材と、上記反射部材に対して上記電磁波の入射側に配置され、所定の方向に厚さが増加する厚さ分布を有する単位構造が複数配置された凹凸構造を有し、上記電磁波を透過する誘電体層と、を有し、上記誘電体層の上記単位構造は、厚さの異なる複数のセル領域を有し、上記各分割領域は、少なくとも1つの単位構造を有し、
上記周波数選択反射板の表面をxy面、上記周波数選択反射板の表面の法線方向をz軸とする3次元直交座標系を想定し、上記3次元直交座標系において、xy面上の上記単位構造の上記セル領域の厚さが増加する方向の始点を直角頂とし、xy面上の上記単位構造の上記セル領域の厚さが増加する方向の長さと、z軸に平行な上記電磁波の波長とを隣辺とする直角三角形を想定したとき、
上記各分割領域での上記直角三角形の斜辺の法線方向は互いに異なり、上記各分割領域での上記直角三角形の斜辺の法線方向は、上記各分割領域での上記直角三角形の斜辺の法線方向のベクトルの和から導かれる、電磁波の主反射方向ベクトルを中心として外側に向かって広がるように設定されていると言い換えることができる。
なお、各分割領域での直角三角形の斜辺の法線方向のベクトルの長さを、単位ベクトルとし、それらの単位ベクトルの和によって、電磁波の主反射方向ベクトルの方向が求められる。
3.周波数選択反射板のその他の点
本実施態様の周波数選択反射板のその他の点については、上記第1実施態様と同様とすることができる。
III.第3実施態様
本実施態様の周波数選択反射板は、特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板であって、上記周波数選択反射板の全面が複数の分割領域に分割されており、上記複数の分割領域は、上記周波数選択反射板の中央に位置する分割領域であるメイン領域と、上記メイン領域以外の分割領域である複数のサブ領域とを有し、上記複数のサブ領域は上記メイン領域の周囲に配置されており、上記各分割領域での上記電磁波の反射方向ベクトルは互いに異なり、上記各サブ領域での上記電磁波の反射方向ベクトルは、上記メイン領域での上記電磁波の反射方向ベクトルを中心として内側に収束するように設定されている。
本実施態様においては、上記第1実施態様と同様に、メイン領域による反射ビームに、各サブ領域による反射ビームが重なり合うことで、周波数選択反射板全体による反射ビームプロファイルでは1つのメインローブ(メインビーム)が形成される。一方で、本実施態様においては、上記第1実施態様とは逆に、各サブ領域での電磁波の反射方向ベクトルは、メイン領域での電磁波の反射方向ベクトルを中心として内側に収束するように設定されていることから、所定の距離および所定の方向に対して周波数選択反射板全体による反射波を集中させることができる。すなわち、本実施態様においては、上記第1実施態様とは逆に、周波数選択反射板全体による反射波のビーム幅を狭めることができ、これにより、周波数選択反射板による反射ビームが照射されるエリアを絞ることが可能である。このような周波数選択反射板は、例えば、反射させた電磁波をレピータやCPE(Customer Premises Equipment:顧客構内設備)等へ集中させて届ける場合等に適用できる。
本実施態様の周波数選択反射板は、各サブ領域での電磁波の反射方向ベクトルが、メイン領域での電磁波の反射方向ベクトルを中心として内側に収束するように設定されていること以外は、上記第1実施態様と同様とすることができる。
(周波数選択反射板の第1態様)
本実施態様の周波数選択反射板の第1態様は、上記第1実施態様の周波数選択反射板の第1態様と同様である。
本態様において、電磁波の反射方向ベクトルは、上記第1実施態様の周波数選択反射板の第1態様と同様に、決定される。
よって、本態様においては、周波数選択反射板の全面が複数の分割領域に分割されており、上記複数の分割領域は、上記周波数選択反射板の中央に位置する分割領域であるメイン領域と、上記メイン領域以外の分割領域である複数のサブ領域とを有し、上記複数のサブ領域は上記メイン領域の周囲に配置されており、
上記周波数選択反射板が、上記電磁波を反射する反射部材を有し、上記反射部材が、上記電磁波の反射位相を制御する反射位相制御機能を有し、上記反射部材では、寸法の異なる複数の反射素子を有する単位構造が複数配置されており、上記各分割領域は、少なくとも1つの単位構造を有し、
上記周波数選択反射板の表面をxy面、上記周波数選択反射板の表面の法線方向をz軸とする3次元直交座標系を想定し、上記3次元直交座標系において、xy面上の上記単位構造の上記反射素子の寸法が増加する方向の始点を直角頂とし、xy面上の上記単位構造の上記反射素子の寸法が増加する方向の長さと、z軸に平行な上記電磁波の波長とを隣辺とする直角三角形を想定したとき、
上記各分割領域での上記直角三角形の斜辺の法線方向は互いに異なり、上記各サブ領域での上記直角三角形の斜辺の法線方向は、上記メイン領域での上記直角三角形の斜辺の法線方向を中心として内側に収束するように設定されていると言い換えることができる。
(周波数選択反射板の第2態様)
本実施態様の周波数選択反射板の第2態様は、上記第1実施態様の周波数選択反射板の第2態様と同様である。
本態様において、電磁波の反射方向ベクトルは、上記第1実施態様の周波数選択反射板の第1態様と同様に、決定される。
よって、本態様においては、周波数選択反射板の全面が複数の分割領域に分割されており、上記複数の分割領域は、上記周波数選択反射板の中央に位置する分割領域であるメイン領域と、上記メイン領域以外の分割領域である複数のサブ領域とを有し、上記複数のサブ領域は上記メイン領域の周囲に配置されており、
上記周波数選択反射板が、上記電磁波を反射する反射部材と、上記反射部材に対して上記電磁波の入射側に配置され、所定の方向に厚さが増加する厚さ分布を有する単位構造が複数配置された凹凸構造を有し、上記電磁波を透過する誘電体層と、を有し、上記誘電体層の上記単位構造は、厚さの異なる複数のセル領域を有し、上記各分割領域は、少なくとも1つの単位構造を有し、
上記周波数選択反射板の表面をxy面、上記周波数選択反射板の表面の法線方向をz軸とする3次元直交座標系を想定し、上記3次元直交座標系において、xy面上の上記単位構造の上記セル領域の厚さが増加する方向の始点を直角頂とし、xy面上の上記単位構造の上記セル領域の厚さが増加する方向の長さと、z軸に平行な上記電磁波の波長とを隣辺とする直角三角形を想定したとき、
上記各分割領域での上記直角三角形の斜辺の法線方向は互いに異なり、上記各サブ領域での上記直角三角形の斜辺の法線方向は、上記メイン領域での上記直角三角形の斜辺の法線方向を中心として内側に収束するように設定されていると言い換えることができる。
(変形例)
各サブ領域での電磁波の反射方向ベクトルは、水平方向には、メイン領域での電磁波の反射方向ベクトルを中心として外側に向かって広がるように設定されており、垂直方向には、メイン領域での電磁波の反射方向ベクトルを中心として内側に向かって収束するように設定されていてもよい。あるいは、各サブ領域での電磁波の反射方向ベクトルは、垂直方向には、メイン領域での電磁波の反射方向ベクトルを中心として外側に向かって広がるように設定されており、水平方向には、メイン領域での電磁波の反射方向ベクトルを中心として内側に向かって収束するように設定されていてもよい。このように各分割領域での電磁波の反射方向ベクトルを設定することにより、反射ビームが照射されるエリアを任意に制御することが可能である。
IV.第4実施態様
本実施態様の周波数選択反射板は、特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板であって、上記周波数選択反射板の全面が複数の分割領域に分割されており、上記各分割領域での上記電磁波の反射方向ベクトルは互いに異なり、上記各分割領域での上記電磁波の反射方向ベクトルは、上記各分割領域での上記電磁波の反射方向ベクトルの和から導かれる、電磁波の主反射方向ベクトルを中心として内側に収束するように設定されている。
本実施態様においては、上記第2実施態様と同様に、各分割領域による反射ビームが重なり合うことで、周波数選択反射板全体による反射ビームプロファイルでは1つのメインローブ(メインビーム)が形成される。一方で、本実施態様において、上記第2実施態様とは逆に、各分割領域での電磁波の反射方向ベクトルは、電磁波の主反射方向ベクトルを中心として内側に収束するように設定されていることから、所定の距離および所定の方向に対して周波数選択反射板全体による反射波を集中させることができる。すなわち、本実施態様においては、上記第2実施態様とは逆に、周波数選択反射板全体による反射波のビーム幅を狭めることができる。これにより、周波数選択反射板による反射ビームが照射されるエリアを絞ることが可能である。このような周波数選択反射板は、例えば、反射させた電磁波をレピータやCPE(Customer Premises Equipment:顧客構内設備)等へ集中させて届ける場合等に適用できる。
本実施態様の周波数選択反射板は、各分割領域での電磁波の反射方向ベクトルが、電磁波の主反射方向ベクトルを中心として内側に収束するように設定されていること以外は、上記第2実施態様と同様とすることができる。
(周波数選択反射板の第1態様)
本実施態様の周波数選択反射板の第1態様は、上記第1実施態様の周波数選択反射板の第1態様と同様である。
本態様において、電磁波の反射方向ベクトルは、上記第1実施態様の周波数選択反射板の第1態様と同様に、決定される。
よって、本態様においては、周波数選択反射板の全面が複数の分割領域に分割されており、
上記周波数選択反射板が、上記電磁波を反射する反射部材を有し、上記反射部材が、上記電磁波の反射位相を制御する反射位相制御機能を有し、上記反射部材では、寸法の異なる複数の反射素子を有する単位構造が複数配置されており、上記各分割領域は、少なくとも1つの単位構造を有し、
上記周波数選択反射板の表面をxy面、上記周波数選択反射板の表面の法線方向をz軸とする3次元直交座標系を想定し、上記3次元直交座標系において、xy面上の上記単位構造の上記反射素子の寸法が増加する方向の始点を直角頂とし、xy面上の上記単位構造の上記反射素子の寸法が増加する方向の長さと、z軸に平行な上記電磁波の波長とを隣辺とする直角三角形を想定したとき、
上記各分割領域での上記直角三角形の斜辺の法線方向は互いに異なり、上記各分割領域での上記直角三角形の斜辺の法線方向は、上記各分割領域での上記直角三角形の斜辺の法線方向のベクトルの和から導かれる、電磁波の主反射方向ベクトルを中心として内側に収束するように設定されていると言い換えることができる。
なお、各分割領域での直角三角形の斜辺の法線方向のベクトルの長さを、単位ベクトルとし、それらの単位ベクトルの和によって、電磁波の主反射方向ベクトルの方向が求められる。
(周波数選択反射板の第2態様)
本実施態様の周波数選択反射板の第2態様は、上記第1実施態様の周波数選択反射板の第2態様と同様である。
本態様において、電磁波の反射方向ベクトルは、上記第1実施態様の周波数選択反射板の第1態様と同様に、決定される。
よって、本態様においては、周波数選択反射板の全面が複数の分割領域に分割されており、
上記周波数選択反射板が、上記電磁波を反射する反射部材と、上記反射部材に対して上記電磁波の入射側に配置され、所定の方向に厚さが増加する厚さ分布を有する単位構造が複数配置された凹凸構造を有し、上記電磁波を透過する誘電体層と、を有し、上記誘電体層の上記単位構造は、厚さの異なる複数のセル領域を有し、上記各分割領域は、少なくとも1つの単位構造を有し、
上記周波数選択反射板の表面をxy面、上記周波数選択反射板の表面の法線方向をz軸とする3次元直交座標系を想定し、上記3次元直交座標系において、xy面上の上記単位構造の上記セル領域の厚さが増加する方向の始点を直角頂とし、xy面上の上記単位構造の上記セル領域の厚さが増加する方向の長さと、z軸に平行な上記電磁波の波長とを隣辺とする直角三角形を想定したとき、
上記各分割領域での上記直角三角形の斜辺の法線方向は互いに異なり、上記各分割領域での上記直角三角形の斜辺の法線方向は、上記各分割領域での上記直角三角形の斜辺の法線方向のベクトルの和から導かれる、電磁波の主反射方向ベクトルを中心として内側に収束するように設定されていると言い換えることができる。
なお、各分割領域での直角三角形の斜辺の法線方向のベクトルの長さを、単位ベクトルとし、それらの単位ベクトルの和によって、電磁波の主反射方向ベクトルの方向が求められる。
(変形例)
各分割領域での電磁波の反射方向ベクトルは、水平方向には、電磁波の主反射方向ベクトルを中心として外側に向かって広がるように設定されており、垂直方向には、メ電磁波の主反射方向ベクトルを中心として内側に向かって収束するように設定されていてもよい。あるいは、各サブ領域での電磁波の反射方向ベクトルは、垂直方向には、電磁波の主反射方向ベクトルを中心として外側に向かって広がるように設定されており、水平方向には、電磁波の主反射方向ベクトルを中心として内側に向かって収束するように設定されていてもよい。このように各分割領域での電磁波の反射方向ベクトルを設定することにより、反射ビームが照射されるエリアを任意に制御することが可能である。
V.第5実施態様
本実施態様の周波数反射板は、特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板であって、上記電磁波の反射位相が異なる複数のセル領域が繰り返し配列されており、上記電磁波の反射位相の進みが最も大きい上記セル領域での上記電磁波の反射位相を基準として、上記各セル領域での上記電磁波の相対反射位相を、-360度超0度以下としたとき、徐々に小さくなる上記電磁波の相対反射位相が急に大きくなる境界部分が、分岐せず、連続した曲線状である。
図31は、本実施態様の周波数選択反射板におけるセル領域を例示する概略平面図である。図31に示す周波数選択反射板は、電磁波の反射位相が互いに異なる9種類のセル領域を有する。9種類のセル領域において、電磁波の反射位相の進みが最も大きいセル領域での電磁波の反射位相を基準として、各セル領域での電磁波の相対反射位相を、-360度超0度以下とすると、各セル領域での電磁波の相対反射位相は、大きい順から、例えば、0度、-40度、-80度、-120度、-160度、-200度、-240度、-280度、-320度となる。図31では、各セル領域での電磁波の相対反射位相が大きい順から、各セル領域を、0、1、2、3、4、5、6、7、8の数字で示している。
図31において、各セル領域での電磁波の相対反射位相は、所定の方向D3に、増減を繰り返している。図31では、徐々に小さくなる電磁波の相対反射位相が急に大きくなる境界部分は、電磁波の相対反射位相が-320度から0度に大きくなる部分、および、電磁波の相対反射位相が-320度から-40度に大きくなる部分である。つまり、徐々に小さくなる電磁波の相対反射位相が急に大きくなる境界部分は、セル領域(8)とセル領域(0)との境界部分、および、セル領域(8)とセル領域(1)との境界部分である。この境界部分を太線で示す。境界部分は、分岐せず、連続した曲線状になっている。
ここで、上述の第1実施態様から第4実施態様までの周波数選択反射板のように、周波数選択反射板の全面が複数の分割領域に分割されており、各分割領域での電磁波の反射方向ベクトルが互いに異なる場合、例えば、分割領域の反射特性をそれぞれ設計し、全ての分割領域を組み合わせることを考える。このとき、各分割領域内では、電磁波の相対反射位相は増減を繰り返す。一方、隣接する分割領域の境目では、電磁波の相対反射位相が不連続に変化する箇所が存在することがある。この場合、徐々に小さくなる電磁波の相対反射位相が急に大きくなる境界部分が、分岐したり、途切れてしまったりする。そうすると、周波数選択反射板の性能が低下してしまう。
これに対し、本実施態様においては、徐々に小さくなる電磁波の相対反射位相が急に大きくなる境界部分が、分岐せず、連続した曲線状である。そのため、上記のような隣接する分割領域の境目をなくし、周波数選択反射板の性能を高めることができる。
本実施態様においては、分割領域毎に反射特性を設計するのではなく、周波数選択反射板全体で反射特性を設計することにより、上記のような隣接する分割領域の境目をなくし、徐々に小さくなる電磁波の相対反射位相が急に大きくなる境界部分を、分岐せず、連続した曲線状とすることができる。
また、本実施態様において、周波数選択反射板の全面を複数の仮想の分割領域に分割する場合であって、各仮想の分割領域での電磁波の反射方向ベクトルを、上述の第1実施態様から第4実施態様までの周波数選択反射板と同様に設定する場合、徐々に小さくなる電磁波の相対反射位相が急に大きくなる境界部分が、分岐せず、連続した曲線状であることにより、周波数選択反射板の全面にわたって電磁波の反射方向ベクトルの変化をなだらかにすることができる。
なお、仮想の分割領域は、例えば、1つの電磁波の反射方向ベクトルを示す領域である。周波数選択反射板の全面で電磁波の反射方向ベクトルをなだらかに変化させることは、いわゆる球面波や平面波といった、電磁波の広がり方を調整するために好適である。そのためには、仮想の分割領域の数を増やすことが必要である。つまり、仮想の分割領域のサイズを小さくすることが必要である。このとき、仮想の分割領域のサイズを極限まで小さくすると、分割領域のサイズはセル領域のサイズまで小さくすることができる。仮想の分割領域のサイズをセル領域のサイズとした場合、一の仮想の分割領域における電磁波の反射方向ベクトルは、その一の仮想の分割領域の周囲に隣接する他の仮想の分割領域との関係性に基づき決定される。また、周波数選択反射板の全面で電磁波の反射方向ベクトルをなだらかに変化させるということは、電磁波の相対反射位相の面内分布から決定される反射波面をなだらかにすることと同等である。そのためには、徐々に小さくなる電磁波の相対反射位相が急に大きくなる境界部分が、分岐せず、連続した曲線状になるよう設定する必要がある。
以下、本実施態様の周波数選択反射板の各構成について説明する。
1.セル領域
本実施態様の周波数選択反射板において、電磁波の反射位相が異なる複数のセル領域が繰り返し配列されている。
なお、「電磁波の反射位相が異なる複数のセル領域が繰り返し配列されている」とは、各セル領域での電磁波の反射位相が増減を繰り返すように、複数のセル領域が配列されているものの、その増減が必ずしも周期的でないことをいう。例えば図31、図32(a)、(b)に示すように、各セル領域は、概ね周期的に配列されているようにみえるが、厳密には周期的に配列されているわけではなく、目的の反射特性に応じて、繰り返し配列されている。
本実施態様において、電磁波の反射位相の進みが最も大きいセル領域での電磁波の反射位相を基準として、各セル領域での電磁波の相対反射位相を、-360度超0度以下としたとき、徐々に小さくなる電磁波の相対反射位相が急に大きくなる境界部分が、分岐せず、連続した曲線状である。
ここで、上述の第1実施態様の項に記載したように、「反射位相」とは、ある表面に入射する入射波の位相に対する、反射波の位相の変化量をいう。なお、後述の第3態様の反射部材および誘電体層を有する周波数選択反射板において、「反射位相」とは、入射波の位相に対する、入射波が誘電体層を透過し反射部材で反射され誘電体層を再度透過して放出される際の反射波の位相の変化量をいう。
また、本実施態様の周波数選択反射板において、「相対反射位相」とは、反射位相の進みが最も大きいセル領域での反射位相を基準として、その基準の反射位相に対する、あるセル領域での反射位相の遅れを負号で示すものである。例えば、反射位相の進みが最も大きいセル領域での反射位相が-10度である場合、反射位相が-40度であるセル領域での相対反射位相は-30度になる。
なお、「反射位相の進みが最も大きい」とは、全てのセル領域において反射位相が0度以下である場合には、反射位相の遅れが最も小さいことをいう。
なお、後述するように、第3態様の反射部材および誘電体層を有する周波数選択反射板において、反射部材が反射位相制御機能を有するか否かにかかわらず、セル領域での電磁波の相対反射位相は、誘電体層での反射位相に基づく値とする。つまり、セル領域での電磁波の相対反射位相は、誘電体層での反射位相と、反射部材での反射位相とを合成した値に基づくものではない。
また、本実施態様の周波数選択反射板において、「セル領域」とは、電磁波の相対反射位相が同じである領域をいう。
なお、本実施態様の周波数選択反射板において、反射位相は、特に断りのない限り、-360度超+360度未満の範囲内であり、-360度および+360度は0度に戻る。また、本実施態様の周波数選択反射板において、相対反射位相は、特に断りのない限り、-360度超0度以下の範囲内であり、-360度は0度に戻る。
徐々に小さくなる電磁波の相対反射位相が急に大きくなる境界部分は、相対反射位相が0度から-360度に向かって徐々に小さくなった後、0度に向かって急に大きくなる部分である。
また、本実施態様の周波数選択反射板において、「曲線状」とは、曲線はもちろんのこと、直線の連続であっても、全体としてみれば曲線のように見える状態や、一部に直線部分を含むが曲線に近似しているような状態も含む。
また、本実施態様の周波数選択反射板において、「連続した曲線状」とは、途切れのない曲線状をいい、具体的には、上記境界部分が途切れていないことをいう。また、本実施態様の周波数選択反射板において、「分岐しない曲線状」とは、具体的には、上記境界部分が分岐していないことをいう。
また、曲線状は、例えば、開いた曲線状であってもよく、閉じた曲線状であってもよい。
また、曲線状は、例えば、円弧状、ひょうたんのような曲線状、曲率が徐々に変化した曲線状が挙げられる。
図32(a)は、本実施態様の周波数選択反射板におけるセル領域を例示する概略平面図である。図32(a)に示す周波数選択反射板は、図32(b)に示すように、互いに外径が異なる複数のリング状の反射素子3が配列された反射部材を有する。図32(b)は図32(a)の枠線F1の部分に相当し、図32(a)中の数字は、反射素子3のリングの外半径を示す。この周波数選択反射板においては、1つの反射素子3が配置されている素子領域が1つのセル領域であり、反射素子3のリングの外半径が大きくなるにつれて、各セル領域での電磁波の相対反射位相が小さくなる。
図32(a)、(b)において、各セル領域での電磁波の相対反射位相は、ある方向に増減を繰り返している。図32(a)、(b)では、徐々に小さくなる電磁波の相対反射位相が急に大きくなる境界部分は、徐々に大きくなる反射素子のリングの外半径が急に小さくなる部分である。図32(a)において、この境界部分を太線F2で示す。境界部分は、分岐せず、連続した曲線状になっている。一方で、図32(a)において、最右列のセル領域では、それよりも右側の列が存在しないため、上記境界部分は例えば破線F3で示されると考えられるものの、最右列のセル領域とそれよりも右側の列との間に上記境界部分が存在するかは判断できない。そのため、枠線F4の部分では、上記境界部分が途切れているようにみえる。しかし、上記境界部分は例えば破線F3で示されると考えられ、破線F3も含めれば、上記境界部分は途切れのない曲線状、つまり連続した曲線状になる。よって、本実施態様の周波数選択反射板において、最外周のセル領域については、上記境界部分が、分岐せず、連続した曲線状になっていなくてもよいこととする。
なお、図32(a)(b)においては、各セル領域が格子状に配列したマトリックスと考えられる。電磁波の相対反射位相の面内レイアウトを表現する場合の最小分解能は、セル領域のサイズとなる。これは、画素の配置によって情報を表示するディスプレイと同様に考えることができる。例えば図32(a)において、左下を原点Oとして水平方向をx軸、上下方向をy軸とした場合のセル領域の配置マトリックスを模式的に図32(c)に示す。上記境界部分がy=xの右上がりの直線で存在する状況は、実線F11のように、セル領域1つ分のクランク状の曲がりが右上がりに連続することによって表現される。実線F11は、実質的に直線とみなすべきである。同様に、上記境界部分がy=x2の曲線に従って存在する状況は、破線F12のように、セル領域1つ分のクランク状の曲がりを含む右上がりのカーブで表現される。破線F12も、実質的に曲線とみなすべきである。したがって、徐々に小さくなる電磁波の相対反射位相が急に大きくなる境界部分を太線F2で表現する場合、セル領域1つ分のクランク状の曲がりは変曲点としてみなさず、スムーズな変化としてみなすことができる。
また、本実施態様の周波数選択反射板においては、上記境界部分が、分岐せず、連続した曲線状ではない部分があってもよい。なお、以下、上記境界部分が、分岐せず、連続した曲線状ではない部分を、ノイズ部分と称する場合がある。例えば、後述するように、周波数選択反射板が、電磁波を反射する反射部材を有し、反射部材では、サイズの異なる複数の反射素子が繰り返し配列されている場合、ノイズ部分としては、例えば、反射素子のサイズまたは形状のエラー、および、極端な場合は反射素子の欠損が挙げられる。また、例えば、後述するように、周波数選択反射板が、電磁波を反射する反射部材と、反射部材に対して電磁波の入射側に配置され、電磁波を透過する誘電体層と、を有し、誘電体層では、厚さの異なる複数の誘電体セル領域が繰り返し配列されている場合、ノイズ部分としては、例えば、誘電体セル領域の厚さまたは形状のエラー、反射部材の反射素子のサイズまたは形状のエラー、および、極端な場合は反射素子の欠損または誘電体層の欠損が挙げられる。また、ノイズ部分としては、例えば、電磁波の反射位相の制御とは関係のない構造が挙げられる。電磁波の反射位相の制御とは関係のない構造としては、例えば、支持部材、アライメントマークが挙げられる。支持部材は、例えば、カバー部材を配置する場合にカバー部材を支持する部材である。電磁波の反射位相の制御とは関係のない構造は、意図的に配置された構造であってもよく、偶然に形成された構造であってもよい。電磁波の反射位相の制御とは関係のない構造の材料としては、金属材料、導電性材料、非導電性材料が挙げられる。
なお、例えば、周波数選択反射板の外周に支持部材が配置されている場合、支持部材は周波数選択反射板の有効領域の外側に位置しているとみなせる。そのため、この場合、支持部材はノイズ部分でないとする。また、上述したように、最外周のセル領域については、上記境界部分が、分岐せず、連続した曲線状になっていなくてもよいことから、最外周のセル領域もノイズ部分ではないとする。
ノイズ部分は、以下の方法により確認する。
後述するように、例えば、周波数選択反射板が、電磁波を反射する反射部材を有し、反射部材では、サイズの異なる複数の反射素子が繰り返し配列されている場合、徐々に小さくなる電磁波の相対反射位相が急に大きくなる境界部分は、徐々に大きくなる反射素子のサイズが急に小さくなる部分となる。そのため、反射素子のサイズの増減を確認することにより、ノイズ部分を確認できる。徐々に大きくなる反射素子のサイズが急に小さくなる部分が、分岐していたり、途切れていたりする場合、ノイズ部分があると判定する。ノイズ部分の確認は、目視でもよく、拡大鏡を使用してもよい。
また、後述するように、例えば、周波数選択反射板が、電磁波を反射する反射部材と、反射部材に対して電磁波の入射側に配置され、電磁波を透過する誘電体層と、を有し、誘電体層では、厚さの異なる複数の誘電体セル領域が繰り返し配列されている場合、徐々に小さくなる電磁波の相対反射位相が急に大きくなる境界部分は、徐々に厚くなる誘電体セル領域の厚さが急に薄くなる部分となる。つまり、徐々に小さくなる電磁波の相対反射位相が急に大きくなる境界部分は、誘電体層の稜線状部分となる。そのため、誘電体セル領域の厚さの増減を確認することにより、ノイズ部分を確認できる。徐々に厚くなる誘電体セル領域の厚さが急に薄くなる部分が、分岐していたり、途切れていたりする場合、ノイズ部分があると判定する。反射部材について、ノイズ部分の確認は、上述した通りである。誘電体層について、ノイズ部分の確認には、触針式段差計またはレーザー顕微鏡を使用する。
ノイズ部分は、1つであってもよく、複数であってもよい。
ノイズ部分のサイズは、例えば、電磁波の波長をλとしたとき、2λ×2λ以下であることが好ましく、λ×λ以下がより好ましく、λ/2×λ/2以下がさらに好ましい。ノイズ部分のサイズが大きすぎると、周波数選択反射板の性能が低下する。そのため、それを補うために周波数選択反射板のサイズを大きくする必要がある。また、ノイズ部分のサイズがλ/2×λ/2以下であれば、共振が起こりにくく、電磁波の反射強度が急激に低下する。一方、ノイズ部分のサイズの下限は、特に限定されない。
なお、ノイズ部分のサイズとは、1つのノイズ部分のサイズをいう。また、ノイズ部分が、例えば、反射部材の反射素子のサイズまたは形状のエラー、あるいは、誘電体セル領域の厚さまたは形状のエラーである場合、ノイズ部分のサイズは、反射素子のサイズまたは形状がエラーになっているセル領域のサイズ、あるいは、厚さまたは形状がエラーになっている誘電体セル領域のサイズである。また、ノイズ部分が、例えば、支持部材またはアライメントマークである場合、ノイズ部分のサイズは、支持部材のサイズまたはアライメントマークのサイズである。
また、セル領域の総面積に対する、ノイズ部分の総面積の割合は、20%以下が好ましく、10%以下がより好ましく、5%以下がさらに好ましい。上記割合が多すぎると、周波数選択反射板の性能が低下する。そのため、それを補うために周波数選択反射板のサイズを大きくする必要がある。一方、上記割合の下限は、特に限定されない。
ここで、セル領域の総面積に対するノイズ部分の総面積の割合は、以下の方法により測定される。まず、周波数選択反射板全体に対して1/25の大きさの領域を無作為に選択する。この選択領域について、上述したようにノイズ部分を確認する。そして、この選択領域内に含まれるセル領域の総面積に対するノイズ部分の総面積の割合を求める。このとき、上記割合が上記範囲である場合、選択領域における上記割合が、周波数選択反射板全体におけるセル領域の総面積に対するノイズ部分の総面積の割合であるとみなす。一方、上記割合が上記範囲を超える場合、さらに、周波数選択反射板全体について、上述したようにノイズ部分を確認する。そして、セル領域の総面積に対するノイズ部分の総面積の割合を求める。この際、上述したように、周波数選択反射板の外周に支持部材が配置されている場合、支持部材はノイズ部分ではないため、ノイズ部分の総面積に含めないこととする。
中でも、ノイズ部分のサイズが上記範囲であり、かつ、セル領域の総面積に対するノイズ部分の総面積の割合が上記範囲であることが好ましい。
2.周波数選択反射板の構成
周波数選択反射板としては、特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する部材であれば特に限定されない。例えば、周波数選択反射板は、上記電磁波を反射する反射部材を有し、上記反射部材では、サイズの異なる複数の反射素子が繰り返し配列されていてもよい。また、例えば、周波数選択反射板は、上記電磁波を反射する反射部材と、上記反射部材に対して上記電磁波の入射側に配置され、上記電磁波を透過する誘電体層と、を有し、上記誘電体層では、厚さの異なる複数の誘電体セル領域が繰り返し配列されていてもよい。また、例えば、周波数選択反射板は、電気的な制御または機械的な制御によって電磁波の反射位相を制御することで、電磁波の反射方向を可変にする可変型の周波数選択反射板であってもよい。
以下、周波数選択反射板が、上記電磁波を反射する反射部材を有し、上記反射部材では、サイズの異なる複数の反射素子が繰り返し配列されている第3態様と、周波数選択反射板が、上記電磁波を反射する反射部材と、上記反射部材に対して上記電磁波の入射側に配置され、上記電磁波を透過する誘電体層と、を有し、上記誘電体層では、厚さの異なる複数の誘電体セル領域が繰り返し配列されている第4態様とに分けて説明する。
(1)周波数選択反射板の第3態様
本実施態様の周波数選択反射板の第3態様は、上記電磁波を反射する反射部材を有し、上記反射部材では、サイズの異なる複数の反射素子が繰り返し配列されている。本態様における反射部材においては、反射素子のサイズを変化させることによって、反射素子毎に共振周波数を変化させ、電磁波の反射位相を制御することができる。これにより、所定の方向から入射した電磁波の反射方向を制御することができる。よって、本態様の周波数選択反射板において、反射部材では、サイズの異なる複数の反射素子が繰り返し配列されていることにより、反射部材は、電磁波の反射位相を制御する反射位相制御機能を有することができ、さらには、特定の周波数帯の電磁波のみを反射する波長選択機能、つまりFSSを有することができる。
(a)反射部材
本態様における反射部材は、特定の周波数帯の電磁波を反射する部材である。また、反射部材では、サイズの異なる複数の反射素子が繰り返し配列されている。
反射素子の形状としては、特に限定されず、例えば、リング、十字、正方形、長方形、多角形、円、楕円、棒、近接した複数領域に分割されたパターン等の平面パターン、及びスルーホールビア等による三次元構造等、任意の形状を挙げることができる。
反射素子の異なるサイズは、反射素子の形状に応じて適宜選択される。例えば、リングの場合、リングは相似形であり、リングの外側の直径が異なる。十字の場合、十字の2つの線の長さの一方または両方が異なる。正方形の場合、正方形の辺の長さが異なる。長方形の場合、長方形は相似形であり、長方形の長辺の長さまたは短辺の長さの一方または両方が異なる。六角形、八角形等の多角形の場合、多角形は相似形であり、多角形の辺の長さが異なる。円の場合、円の直径が異なる。楕円の場合、楕円は相似形であり、楕円の長軸直径または短軸直径の一方または両方が異なる。棒の場合、棒の長さが異なる。
一般に、反射素子のサイズが大きくなるにつれて、電磁波の相対反射位相が小さくなる。そのため、徐々に小さくなる電磁波の相対反射位相が急に大きくなる境界部分は、徐々に大きくなる反射素子のサイズが急に小さくなる部分となる。具体的には、サイズが異なる複数の反射素子のうち、1つの反射素子が配置されている素子領域をセル領域とすると、徐々に大きくなる反射素子のサイズが急に小さくなる部分において、サイズの大きい反射素子が配置されている素子領域と、サイズの小さい反射素子が配置されている素子領域との境界線が、上記境界部分となる。
よって、反射素子のサイズの変化を確認することによって、電磁波の相対反射位相の変化を確認することができる。さらには、徐々に大きくなる反射素子のサイズが急に小さくなる部分を確認することによって、徐々に小さくなる電磁波の相対反射位相が急に大きくなる境界部分を確認することができる。
本態様において、「セル領域」とは、電磁波の相対反射位相が同じである領域であり、サイズが異なる複数の反射素子のうち、1つの反射素子が配置されている素子領域をいう。
サイズの異なる複数の反射素子において、サイズは、3種類以上であり、6種類以上であることが好ましい。反射素子のサイズの種類の数が多いほど、隣接するセル領域での電磁波の相対反射位相の差を小さくすることができ、反射波の波面を滑らかにすることができる。また、反射素子のサイズの種類の数は多いほど好ましく、上限は特に限定されないが、例えば80種類であれば十分と考えられる。
反射部材は、例えば、誘電体基板と、誘電体基板の一方の面に配置された複数の反射素子とを有することができる。
また、反射素子は、例えば、単層であってもよく、多層であってもよい。反射素子が単層または多層である場合、反射部材の構成については、上述の第1実施態様の第1態様と同様とすることができる。
(b)他の構成
本態様の周波数選択反射板は、上記の反射部材の他に、必要に応じて他の構成を有していてもよい。他の構成については、上述の第1実施態様の第1態様と同様とすることができる。
また、反射部材が、誘電体基板と、誘電体基板の電磁波入射側の面に配置された複数の反射素子とを有する場合、誘電体基板の電磁波入射側とは反対の面には、FSSが配置されていてもよい。
(2)周波数選択反射板の第4態様
本実施態様の周波数選択反射板の第4態様は、上記電磁波を反射する反射部材と、上記反射部材に対して上記電磁波の入射側に配置され、上記電磁波を透過する誘電体層と、を有し、上記誘電体層では、厚さの異なる複数の誘電体セル領域が繰り返し配列されている。本態様の周波数選択反射板においては、誘電体層の各誘電体セル領域の厚さを変化させることによって、誘電体セル領域毎に誘電体層での往復光路長を変化させ、電磁波の反射位相を制御することができる。これにより、電磁波の所定の入射方向に対する反射方向を任意の方向に制御することができる。
(a)誘電体層
本態様における誘電体層は、反射部材に対して電磁波の入射側に配置され、特定の周波数帯の電磁波を透過する部材である。また、誘電体層では、厚さの異なる複数の誘電体セル領域が繰り返し配列されている。
上述の第1実施態様の項に記載したように、誘電体セル領域の厚さが厚くなるにつれて、電磁波の相対反射位相が小さくなる。そのため、徐々に小さくなる電磁波の相対反射位相が急に大きくなる境界部分は、徐々に厚くなる誘電体セル領域の厚さが急に薄くなる部分となる。つまり、徐々に小さくなる電磁波の相対反射位相が急に大きくなる境界部分は、誘電体層の稜線状部分となる。具体的には、誘導体セル領域をセル領域とすると、誘電体層の稜線状部分において、厚さの厚い誘電体セル領域と、厚さの薄い誘電体セル領域との境界線が、上記境界部分となる。
なお、「誘電体層の稜線状部分」とは、上述のように、徐々に厚くなる誘電体セル領域の厚さが急に薄くなる部分をいう。
よって、誘電体層の厚さの変化を確認することによって、電磁波の相対反射位相の変化を確認することができる。さらには、誘電体層の稜線状部分を確認することによって、徐々に小さくなる電磁波の相対反射位相が急に大きくなる境界部分を確認することができる。
本態様において、「セル領域」とは、電磁波の相対反射位相が同じである領域であり、誘電体セル領域をいう。
厚さの異なる複数の誘電体セル領域において、厚さは、3種類以上であり、6種類以上であることが好ましい。誘電体セル領域の厚さの種類の数が多いほど、隣接するセル領域での電磁波の相対反射位相の差を小さくすることができ、反射波の波面を滑らかにすることができる。また、誘電体セル領域の厚さの種類の数は多いほど好ましく、上限は特に限定されない。なお、誘電体層の断面形状が階段形状である場合、誘電体セル領域の厚さの種類の数は、階段形状の段数に相当する。また、誘電体層の断面形状がテーパー形状である場合、上述したように、テーパー形状は、誘電体セル領域の厚さの種類の数を無限に多くしたものとみなすことができる。
各誘電体セル領域での電磁波の相対反射位相については、上述の第1実施態様の第2態様と同様とすることができる。
また、誘電体層の構造、特性、材料、形成方法についても、上述の第1実施態様の第2態様と同様とすることができる。
(b)反射部材
本態様における反射部材については、上述の第1実施態様の第2態様と同様とすることができる。
(c)電磁波の反射方向の制御
本態様の周波数選択反射板において、電磁波の反射方向の制御については、上述の第1実施態様の第2態様と同様とすることができる。
(d)他の構成
本態様の周波数選択反射板は、上記の反射部材および誘電体層の他に、必要に応じて他の構成を有していてもよい。他の構成については、上述の第1実施態様の第2態様と同様とすることができる。
(3)周波数選択反射板の他の態様
本実施態様の周波数選択反射板は、上述したように、電気的な制御または機械的な制御によって電磁波の反射位相を制御することで、電磁波の反射方向を可変にする可変型の周波数選択反射板であってもよい。このような可変型の周波数選択反射板の場合でも、本実施態様を実現できる。可変型の周波数選択反射板としては、公知のものを適用できる。
3.周波数選択反射板のその他の点
本実施態様の周波数選択反射板のその他の点については、上述の第1実施態様と同様とすることができる。
本実施態様において、周波数選択反射板の全面を複数の仮想の分割領域に分割する場合、各仮想の分割領域での電磁波の反射方向ベクトルを、上述の第1実施態様から第4実施態様までの周波数選択反射板と同様に設定することが好ましい。
また、各仮想の分割領域での電磁波の反射方向ベクトルは、中心となる電磁波の反射方向ベクトルに対して、外側に向かって広がるように設定されていてもよく、内側に向かって収束するように設定されていてもよい。また、各仮想の分割領域での電磁波の反射方向ベクトルは、中心となる電磁波の反射方向ベクトルに対して、水平方向については、外側に向かって広がるように設定され、垂直方向については、内側に向かって収束するように設定されていてもよい。あるいは、各仮想の分割領域での電磁波の反射方向ベクトルは、中心となる電磁波の反射方向ベクトルに対して、垂直方向については、外側に向かって広がるように設定され、水平方向については、内側に向かって収束するように設定されていてもよい。このように各仮想の分割領域での電磁波の反射方向ベクトルを設定することにより、反射ビームが照射されるエリアを任意に制御することが可能である。
B.通信中継システム
本開示における通信中継システムは、基地局とユーザー端末との間の通信を中継する通信中継システムであって、特定の周波数帯の電磁波の進行方向を変化させる方向制御デバイスを複数有し、複数の上記方向制御デバイスはそれぞれ、上記基地局からの上記電磁波の伝搬経路上に配置されており、上記方向制御デバイスとして、上述の周波数選択反射板を1つ以上有する。
ここで、カバレッジホールの解消には、電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射可能なリフレクトアレイを用いることが有効である。リフレクトアレイは、基地局や中継局を増設するのに比べ、設置費用およびランニングコストの面で有利である。
リフレクトアレイは、基地局から電磁波を受けることが可能であり、かつ、ユーザー端末に電磁波を反射することが可能である位置に配置する必要がある。すなわち、リフレクトアレイは、基地局およびユーザー端末の両方から見通せる位置に設置する必要がある。しかし、実際の使用環境においては、電磁波障害物の位置によっては、リフレクトアレイを上記のような位置に配置することが困難である場合がある。そのため、リフレクトアレイを用いても、所望の伝搬環境および伝搬エリアの改善効果が得られないという問題があった。例えば、図33(a)に示すように、基地局41とカバレッジホール42と電磁波障害物43とが位置している場合、図33(b)に示すように、リフレクトアレイRA1を位置P1に配置しても、電磁波が電磁波障害物43に遮られてしまい、カバレッジホール42の一部には電磁波が届かない。そのため、図33(b)に示すように、別のリフレクトアレイRA2によって、基地局41から電磁波を受け、電磁波が届かない残りのエリア44に電磁波を反射することが考えられるが、基地局41から電磁波を受けることが可能であり、かつ、電磁波が届かない残りのエリア44に電磁波を反射することが可能な位置は存在しない。
上記の問題は、複数のリフレクトアレイを組み合わせて用いることにより解決できる。例えば、図33(c)に示すように、リフレクトアレイRA1からの電磁波を、別のリフレクトアレイRA2によって、電磁波が届かない残りのエリア44に反射させればよい。
ところで、上述したように、基地局とリフレクトアレイとの距離が十分に離れている場合、基地局からの入射波は平面波とみなすことができる。一方、リフレクトアレイが基地局の近傍に存在する場合、基地局からの入射波は球面波として扱う必要がある。しかし、従来のリフレクトアレイの設計では、入射波が平面波であることを前提としている。そのため、従来のリフレクトアレイでは、球面波が入射した場合、反射ビームが意図せず広がってしまう。そのため、複数のリフレクトアレイを組み合わせて用いても、基地局とリフレクトアレイとが近距離にある場合は、設計通りの反射特性が得られず、所望の伝搬環境および伝搬エリアの改善効果が得られないという問題がある。
これに対し、本開示の通信中継システムにおいては、複数の方向制御デバイスを組み合わせて用いることに加えて、方向制御デバイスとして、上述の反射ビームプロファイルを調整する機能を有する周波数選択反射板を1つ以上有する。上記周波数選択反射板は、上述したように、入射波が平面波および球面波のいずれの場合も適用可能である。そのため、入射波が球面波である場合でも、反射ビームが意図せず広がるのを抑え、設計通りの反射特性が得られる。よって、本開示の通信中継システムにおいては、所望の伝搬環境および伝搬エリアの改善効果を得ることができる。また、本開示の通信中継システムは、様々な使用環境に対応可能である。さらには、周波数選択反射板の利用拡大を図ることができ、5Gをはじめとした次世代移動通信システムの開発および普及を進めることができる。
以下、本開示における通信中継システムについて説明する。
1.方向制御デバイス
本開示における方向制御デバイスは、特定の周波数帯の電磁波の進行方向を変化させる。
方向制御デバイスは、電磁波を反射する反射方向制御デバイスであってもよく、あるいは、電磁波を透過する透過方向制御デバイスであってもよい。
反射方向制御デバイスとしては、電磁波を反射して、電磁波の進行方向を変化させることができれば特に限定されず、例えば、金属板、導電層を有するシート、電磁波を正反射方向に反射する反射板、電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する反射板が挙げられる。電磁波を正反射方向に反射する反射板としては、例えば、FSSが挙げられる。電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する反射板としては、リフレクトアレイ、上述の周波数選択反射板が挙げられる。リフレクトアレイは、メタサーフェス反射板とも称される。反射方向制御デバイスは、使用目的や使用環境に応じて適宜選択される。
透過方向制御デバイスとしては、電磁波を透過して、電磁波の進行方向を変化させることができれば特に限定されず、公知の透過方向制御デバイスを使用できる。例えば、誘電体レンズアンテナ、メタサーフェスレンズ、メタサーフェス屈折板等が挙げられる。透過方向制御デバイスは、使用目的や使用環境に応じて適宜選択される。
本開示の通信中継システムは、方向制御デバイスとして、上述の周波数選択反射板を1つ以上有する。方向制御デバイスとして、上述の周波数選択反射板のみを用いてもよく、上述の周波数選択反射板と他の方向制御デバイスとを組み合わせて用いてもよい。また、上述の周波数選択反射板と他の方向制御デバイスとを組み合わせて用いる場合、周波数選択反射板と他の反射方向制御デバイスとを組み合わせて用いてよく、周波数選択反射板と透過方向制御デバイスとを組み合わせて用いてもよく、周波数選択反射板と他の反射方向制御デバイスと透過方向制御デバイスとを組み合わせて用いてもよい。すべての方向制御デバイスが、上述の周波数選択反射板である場合、伝搬環境および伝搬エリアの改善効果を高めることができる。また、方向制御デバイスとして、他の反射方向制御デバイスが含まれている場合、既存の反射方向制御デバイスを利用できたり、コストを削減できたりする。また、方向制御デバイスとして、透過方向制御デバイスが含まれている場合、使用環境に応じて、電磁波の伝搬経路は適宜設定される。
周波数選択反射板は、いずれの実施態様の周波数選択反射板であってもよい。また、方向制御デバイスとして、複数の周波数選択反射板が含まれている場合、周波数選択反射板は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
中でも、本開示における通信中継システムは、方向制御デバイスとして、上述の周波数選択反射板を1つ以上有し、周波数選択反射板として、第5実施態様の周波数選択反射板を1つ以上有することが好ましい。特に、すべての周波数選択反射板が、第5実施態様の周波数選択反射板であることが好ましい。
また、方向制御デバイスとして、周波数選択反射板以外の方向制御デバイスが複数含まれている場合、周波数選択反射板以外の方向制御デバイスは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
2.方向制御デバイスの配置
本開示の通信中継システムにおいて、複数の方向制御デバイスはそれぞれ、基地局からの電磁波の伝搬経路上に配置されている。具体的には、基地局の下流側に複数の方向制御デバイスが配置されており、最上流側に位置する方向制御デバイスは、基地局からの電磁波の一部または全部を受ける位置に配置されており、下流側に位置する方向制御デバイスは、上流側に位置する方向制御デバイスからの電磁波の一部または全部を受ける位置に配置されている。
なお、「上流」とは、基地局から放射される電磁波の進行方向における上流をいう。また、「下流」とは、基地局から放射される電磁波の進行方向における下流をいう。一方、ユーザー端末から放射される電磁波は、基地局からの電磁波の伝搬経路とは逆の伝搬経路をたどって基地局に到達する。
方向制御デバイスの配置は、使用目的や使用環境に応じて適宜設定される。
例えば、基地局を起点として電磁波の伝搬経路が1つになるように、複数の方向制御デバイスが配置されていてもよい。また、基地局を起点として電磁波の伝搬経路が分岐するように、複数の方向制御デバイスが配置されていてもよい。例えば、図34(a)および図35(a)は、基地局41を起点として電磁波の伝搬経路が1つになるように、2つまたは3つの周波数選択反射板1A、1B、1Cが配置されている例である。また、例えば、図36(a)は、基地局41を起点として電磁波の伝搬経路が1つになるように、3つの周波数選択反射板1A、1B、1Cと1つの透過方向制御デバイス51とが配置されている例である。また、例えば、図36(b)は、基地局41を起点として電磁波の伝搬経路が1つになるように、1つの周波数選択反射板1と1つの透過方向制御デバイス51とが配置されている例である。また、例えば、図35(b)は、基地局41を起点として電磁波の伝搬経路が分岐するように、3つの周波数選択反射板1A、1B、1Cが配置されている例である。例えば、図34(a)、図35(b)、図36(a)、図36(b)に示すように、1つの基地局41に対して、カバレッジホール44が1つである場合には、1つの伝搬経路を形成すればよい。一方、1つの基地局に対して、カバレッジホールが複数ある場合には、図示しないが、基地局から分岐するように、複数の伝搬経路を形成してもよく、例えば図35(b)に示すように、伝搬経路の途中で分岐するように、分岐を有する伝搬経路を形成してもよい。
また、方向制御デバイスの組み合わせは、上述の通りである。
方向制御デバイスの配置において、上述の周波数選択反射板の位置は特に限定されない。周波数選択反射板は、例えば、上流側に配置されていてもよく、下流側に配置されていてもよい。
例えば、最上流側に位置する方向制御デバイスが、上述の周波数選択反射板であってもよい。この場合、基地局からの入射波が球面波である場合であっても、周波数選択反射板によって、下流側の方向制御デバイスに向けて、球面波を平面波に変換して反射できる。
また、例えば、最下流側に位置する方向制御デバイスが、上述の周波数選択反射板であってもよい。この場合、最下流側の周波数選択反射板によって、反射ビームを広げることも狭めることもできる。そのため、対象のカバレッジホールに応じて、反射ビームが照射されるエリアを調整できる。また、電磁波をCPEに集中させることもできる。
中でも、最下流側に位置する方向制御デバイスが、上述の周波数選択反射板であることが好ましく、第5実施態様の周波数選択反射板であることがより好ましい。これにより、基地局からの電磁波を、ユーザー端末に適切に届けることができる。
また、最上流側に位置する方向制御デバイスが反射方向制御デバイスである場合、最上流側の反射方向制御デバイスは、基地局からの電磁波の一部または全部を受ける位置に配置されるが、通常、基地局からの電磁波の全部を反射することはない。
また、下流側に位置する方向制御デバイスは、上流側に位置する方向制御デバイスからの電磁波の一部または全部を受ける位置に配置される。方向制御デバイスが周波数選択反射板である場合、上流側の周波数選択反射板においては、下流側の周波数選択反射板を狙って電磁波を反射するように、反射ビームプロファイルを設計してもよく、下流側の周波数選択反射板を含む領域に向けて電磁波を反射するように、反射ビームプロファイルを設計してもよい。
以下、方向制御デバイスの配置について、具体例を挙げて説明する。
(1)周波数選択反射板のみを用いる場合
方向制御デバイスとして、上述の周波数選択反射板のみを用いる場合、伝搬環境および伝搬エリアの改善効果を高めることができる。
すべての方向制御デバイスが、上述の周波数選択反射板である場合、方向制御デバイスの配置は、上述したように、使用目的や使用環境に応じて適宜設定される。
まず、基地局を起点として電磁波の伝搬経路が1つになるように、複数の周波数選択反射板を配置する例を挙げる。
例えば図34(a)に示すように、使用環境が、電磁波障害物43によって囲まれたL字のスペース45である場合を例示する。この場合において、L字のスペース45の外に位置する基地局41からの電磁波を、L字のスペース45の一方の端から、L字のスペース45の他方の端まで届ける場合を例示する。例えば、2つの周波数選択反射板を用いる場合、L字のスペース45の一方の端に上流側の周波数選択反射板1Aを配置し、L字のスペース45の曲がり角の近傍に下流側の周波数選択反射板1Bを配置する。上流側の周波数選択反射板1Aは、基地局41からの電磁波の全部または一部を受ける位置に配置される。下流側の周波数選択反射板1Bは、上流側の周波数選択反射板1Aからの電磁波の全部または一部を受ける位置に配置される。
この場合、下流側の周波数選択反射板では、反射ビームが広がるように、反射ビームプロファイルが調整されていてもよく、反射ビームが狭まるように、反射ビームプロファイルが調整されていてもよい。前者の場合、例えば図34(a)に示すように、上流側の周波数選択反射板1Aによって、球面波を略平面波に変換して反射し、下流側の周波数選択反射板1Bによって、反射ビームを広げることができる。このとき、L字のスペース45において、カバレッジホール42が広い場合には、下流側の周波数選択反射1Bについて、反射ビームがより広がるように、反射ビームプロファイルを調整すればよい。前者の例は、カバレッジホールを解消する例である。また、後者の場合、上流側の周波数選択反射板によって、球面波を略平面波に変換して反射し、下流側の周波数選択反射板によって、反射ビームを狭めることができる。後者の例は、電磁波をCPEへ集中させる例である。
また、この場合、上流側の周波数選択反射板でも、反射ビームが広がるように、反射ビームプロファイルが調整されていてもよく、反射ビームが狭まるように、反射ビームプロファイルが調整されていてもよい。前者の場合、上流側の周波数選択反射板および下流側の周波数選択反射板の両方で、反射ビームを広げることができる。このとき、下流側の周波数選択反射板が、上流側の周波数選択反射板からの電磁波の一部を受ける位置に配置されている場合、下流側の周波数選択反射板によって、上流側の周波数選択反射板で広げた反射ビームの一部を、カバレッジホールに届けることができる。また、後者の場合、上流側の周波数選択反射板では、反射ビームを狭め、下流側の周波数選択反射板では、反射ビームを広げることができる。この場合、伝搬経路の途中で、反射ビームを狭めることにより、電磁波障害物による不要な反射を抑え、下流側の周波数選択反射板に向けて電磁波を集中させることができる。そのため、伝搬ロスを減らし、電磁波を効率よく届けることができる。
また、例えば図35(a)に示すように、使用環境が、電磁波障害物43によって囲まれたクランクのスペース46である場合を例示する。この場合において、クランクのスペース46の外に位置する基地局41からの電磁波を、クランクのスペース46の一方の端から、クランクのスペース46の他方の端にあるカバレッジホール42まで届ける場合を例示する。例えば、3つの周波数選択反射板を用いる場合、クランクのスペース46の一方の端に上流の周波数選択反射板1Aを配置し、クランクのスペース46の1つ目の曲がり角の近傍に中流の周波数選択反射板1Bを配置し、クランクのスペース46の2つ目の曲がり角の近傍に下流の周波数選択反射板1Cを配置する。上流の周波数選択反射板1Aは、基地局41からの電磁波の全部または一部を受ける位置に配置される。中流の周波数選択反射板1Bは、上流の周波数選択反射板1Aからの電磁波の全部または一部を受ける位置に配置される。下流の周波数選択反射板1Cは、中流の周波数選択反射板1Bからの電磁波の全部または一部を受ける位置に配置される。
この場合、各周波数選択反射板1A、1B、1Cでは、反射ビームが広がるように、反射ビームプロファイルが調整されていてもよく、反射ビームが狭まるように、反射ビームプロファイルが調整されていてもよい。
例えば、上流の周波数選択反射板1Aでは、反射ビームを狭め、中流の周波数選択反射板1Bでは、反射ビームを狭め、下流の周波数選択反射板1Cでは、反射ビームを広げてもよい。この場合、伝搬経路の途中で、反射ビームを狭めることにより、電磁波障害物43による不要な反射を抑え、下流の周波数選択反射板1Cに向けて電磁波を集中させることができる。そのため、伝搬ロスを減らし、電磁波を効率よく届けることができる。
次に、基地局を起点として電磁波の伝搬経路が分岐するように、複数の方向制御デバイスを配置する例を挙げる。
図35(b)に示すように、使用環境が、電磁波障害物43によって囲まれており、互いに方向の異なる2つの曲がり角48、49を有するスペース47である場合を例示する。この場合において、スペース47の外に位置する基地局41からの電磁波を、スペース47の一方の端から、一方の曲がり角48の奥まで、および、他方の曲がり角49の奥まで届ける場合を例示する。例えば、3つの周波数選択反射板を用いる場合、スペース47の一方の端に上流側の周波数選択反射板1Aを配置し、1つ目の曲がり角48の近傍に下流側の周波数選択反射板1Bを配置し、2つ目の曲がり角49の近傍にもう1つの下流側の周波数選択反射板1Cを配置する。上流側の周波数選択反射板1Aは、基地局41からの電磁波の全部または一部を受ける位置に配置される。下流側の周波数選択反射板1Bは、上流側の周波数選択反射板1Aからの電磁波の一部を受ける位置に配置される。もう1つの下流側の周波数選択反射板1Cは、上流側の周波数選択反射板1Aからの電磁波の残りの一部を受ける位置に配置される。
この場合、上流側の周波数選択反射板1Aでは、反射ビームが広がるように、反射ビームプロファイルが調整される。また、下流側の周波数選択反射板1B、1Cでは、反射ビームが広がるように、反射ビームプロファイルが調整されていてもよく、反射ビームが狭まるように、反射ビームプロファイルが調整されていてもよい。
例えば図35(b)に示すように、すべての周波数選択反射板1A、1B、1Cで、反射ビームを広げてもよい。
また、使用環境が、電磁波障害物によって囲まれた2つのスペースである場合を例示する。各スペースは曲がり角を有し、一方のスペースはL字のスペースである。この場合において、2つのスペースの外に位置する1つの基地局からの電磁波を、2つのスペースの奥までそれぞれ届ける場合を例示する。例えば、3つの周波数選択反射板を用いる場合、一方のスペースには2つの周波数選択反射板を配置し、他方のスペースには1つの周波数選択反射板を配置する。
この場合、一方のL字のスペースにおいては、L字のスペースの一方の端に上流側の周波数選択反射板を配置し、L字のスペースの曲がり角の近傍に下流側の周波数選択反射板を配置する。上流側の周波数選択反射板は、基地局からの電磁波の全部または一部を受ける位置に配置される。下流側の周波数選択反射板は、上流側の周波数選択反射板からの電磁波の全部または一部を受ける位置に配置される。この場合、下流側の周波数選択反射板では、反射ビームが広がるように、反射ビームプロファイルが調整されていてもよく、反射ビームが狭まるように、反射ビームプロファイルが調整されていてもよい。例えば、一方のスペースにおいて、上流側の周波数選択反射板では、球面波を平面波に変換して反射し、下流側の周波数選択反射板では、反射ビームを広げてもよい。
また、他方のスペースにおいては、曲がり角の近傍に周波数選択反射板を配置する。周波数選択反射板は、基地局からの電磁波の全部または一部を受ける位置に配置される。この場合、周波数選択反射板では、反射ビームが広がるように、反射ビームプロファイルが調整されていてもよく、反射ビームが狭まるように、反射ビームプロファイルが調整されていてもよい。
上述したように、各周波数選択反射板では、反射ビームが広がるように、反射ビームプロファイルが調整されていてもよく、反射ビームが狭まるように、反射ビームプロファイルが調整されていてもよい。反射ビームを広げる場合は、カバレッジホールを解消できる。反射ビームを狭める場合は、伝搬ロスを減らしたり、電磁波をCPEへ集中させたりすることができる。
最下流側に位置する周波数選択反射板においては、カバレッジホールのサイズや形状に応じて、反射ビームプロファイルを適宜調整すればよい。反射ビームを広げる場合、天井や床は電磁波障害物になり得るため、反射ビームは、垂直方向にはあまり広げずに、水平方向に広げてもよい。また、反射ビームを広げる場合であって、カバレッジホールに、階段のような垂直方向に広がる空間がある場合は、反射ビームは、水平方向にはあまり広げずに、垂直方向に広げてもよい。また、カバレッジホールにCPEがある場合は、反射ビームを狭め、CPEに向けて電磁波を集中させるように、反射ビームプロファイルを調整してもよい。
(2)周波数選択反射板と透過方向制御デバイスとを組み合わせて用いる場合
方向制御デバイスとして、上述の周波数選択反射板と透過方向制御デバイスとを組み合わせて用いる場合、使用環境に応じて、電磁波の伝搬経路は適宜設定される。
方向制御デバイスとして、上述の周波数選択反射板と透過方向制御デバイスとを組み合わせて用いる場合、方向制御デバイスの配置は、上述したように、使用目的や使用環境に応じて適宜設定される。
上述したような方向制御デバイスとして周波数選択反射板のみを用いる場合の方向制御デバイスの配置において、一部の周波数選択反射板を透過方向制御デバイスに置き換えることができる。この場合、透過方向制御デバイスは、電磁波の経路上に配置されていればよい。透過方向制御デバイスは電磁波を透過するため、周波数選択反射板とは異なる位置に配置される。
例えば、透過方向制御デバイスは、窓、壁の開口部に設置できる。この場合、窓や壁の開口部を通して、電磁波の伝搬経路を形成できる。例えば図36(a)において、透過方向制御デバイス51は窓に設置されており、最下流側に位置する方向制御デバイスが、透過方向制御デバイス51である。透過方向制御デバイス51によって、屋内のカバレッジホール42に電磁波を届けることができる。
また、例えば、周波数選択反射板を設置できる位置に制限がある場合、透過方向制御デバイスを用いることにより、電磁波の伝搬経路を確保できる。例えば、上流側に透過方向デバイスを配置し、下流側に周波数選択反射板を配置する例が挙げられる。この場合、上流側の透過方向制御デバイスによって、下流側の周波数選択反射板に向けて、電磁波の進行方向を曲げることができる。
また、例えば、周波数選択反射板を設置できる位置に制限があって、入射角と反射角との差を180°程度にする必要がある場合、反射方向制御デバイスでは、反射効率が大きく低下する懸念がある。そのため、このような場合には、透過方向制御デバイスを用いるとよい。例えば図36(b)に示すように、上流側の周波数選択反射板1では、基地局41からの球面波を平面波として反射させ、下流側の透過方向制御デバイス51では、電磁波の進行方向を曲げることができる。
(3)周波数選択反射板と他の反射方向制御デバイスとを組み合わせて用いる場合
方向制御デバイスとして、上述の周波数選択反射板と他の反射方向制御デバイスとを組み合わせて用いる場合、方向制御デバイスの配置は、上述したように、使用目的や使用環境に応じて適宜設定される。
上述したような方向制御デバイスとして周波数選択反射板のみを用いる場合の方向制御デバイスの配置において、一部の周波数選択反射板を他の反射方向制御デバイスに置き換えることができる。
他の反射方向制御デバイスでは、反射ビームプロファイルを調整する機能を有さないので、球面波が入射した場合、反射ビームが意図せず広がってしまう。そのため、他の反射方向制御デバイスよりも上流側に周波数選択反射板を配置し、上流側に位置する周波数選択反射板によって、基地局からの球面波を平面波に変換しておくのが好ましい。
(4)その他
上流側の方向制御デバイスから下流側の方向制御デバイスに向けて電磁波を放射する場合、効率の観点から、電磁波を、下流側の方向制御デバイスの大きさよりも必要以上に広げないことが好ましい。
また、下流側の方向制御デバイスが、上流側の方向制御デバイスからの電磁波の一部を受け、さらに下流側のエリアあるいはさらに下流側の方向制御デバイスに放射する場合、最下流側で伝搬環境および伝搬エリアの改善効果が得られるように、上流側からの信号強度を確保する必要がある。この場合、例えば、上流の方向制御デバイスのサイズを大きくすることにより、信号強度を確保できる。
3.通信中継システム
本開示における通信中継システムは、基地局とユーザー端末との間の通信を中継する。基地局およびユーザー端末はそれぞれ、一般的な基地局およびユーザー端末が用いられる。
なお、本開示は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態は、例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
以下、実施例を挙げて本開示を具体的に説明する。
なお、実施例1~3、比較例1、参考例1はいずれも、方位角φ=0°、極角θ=0°方向から入射した28GHzの電磁波が、方位角φ=0°、極角θ=27°方向に反射する設計とした。また、図37~図41に示す反射ビームプロファイルは、横軸に方位角φ=0°の面で切り取ったときの極角θ、縦軸に極角方向の電磁波の反射強度をプロットしたものである。
[実施例1]
周波数選択反射板の反射特性のシミュレーションを行った。シミュレーションでは、下記のモデルを用いた。モデルにおいて、一辺の長さが80cmである。複数の反射素子が周期的に配列されている。すなわち、電磁波の反射位相が異なる複数のセル領域を有する単位構造が複数配置されている。各セル領域を分割領域とする。また、上記モデルでは、極角θ=27°を中心に、半値幅FWHM=4.5°の照射エリアを得るべく、各分割領域での電磁波の反射方向ベクトルを設計した。シミュレーション結果を図37に示す。
[実施例2]
周波数選択反射板の反射特性のシミュレーションを行った。シミュレーションでは、下記のモデルを用いた。モデルにおいて、一辺の長さが80cmである。複数の反射素子が周期的に配列されている。すなわち、電磁波の反射位相が異なる複数のセル領域を有する単位構造が複数配置されている。3つの分割領域に分割されており、メイン領域を挟んで対称的に2つのサブ領域が配置されている。また、上記モデルでは、極角θ=27°を中心に、半値幅FWHM=6.5°の照射エリアを得るべく、各分割領域での電磁波の反射方向ベクトルを設計した。シミュレーション結果を図38に示す。
[比較例1]
周波数選択反射板の反射特性のシミュレーションを行った。シミュレーションでは、下記のモデルを用いた。モデルにおいて、一辺の長さが80cmである。複数の反射素子がランダムに配列されている。すなわち、電磁波の反射位相が異なる複数のセル領域がランダムに配置されている。各セル領域を分割領域とする。また、上記モデルでは、極角θ=27°で反射する周波数選択反射板において、各セル領域の反射位相を設計値に対して標準偏差60%の乱数で変化させた。シミュレーション結果を図39に示す。
[実施例3]
周波数選択反射板の反射特性のシミュレーションを行った。シミュレーションでは、下記のモデルを用いた。モデルにおいて、一辺の長さが30cmである。複数の反射素子が周期的に配列されている。すなわち、電磁波の反射位相が異なる複数のセル領域を有する単位構造が複数配置されている。各セル領域を分割領域とする。また、上記モデルでは、極角θ=27°を中心に、半値幅FWHM=6.5°の照射エリアを得るべく、各分割領域での電磁波の反射方向ベクトルを設計した。シミュレーション結果を図40に示す。
[参考例1]
周波数選択反射板の反射特性のシミュレーションを行った。シミュレーションでは、下記のモデルを用いた。モデルにおいて、一辺の長さが30cmである。複数の反射素子が周期的に配列されている。すなわち、電磁波の反射位相が異なる複数のセル領域を有する単位構造が複数配置されている。3つの分割領域に分割されており、メイン領域を挟んで対称的に2つのサブ領域が配置されている。また、上記モデルでは、極角θ=27°を中心に、半値幅FWHM=6.5°の照射エリアを得るべく、各分割領域での電磁波の反射方向ベクトルを設計した。シミュレーション結果を図41に示す。なお、本例は、所望の反射ビームプロファイルが得られなかったため、参考例とした。
[評価1]
実施例1~3により、電磁波の反射方向ベクトルが互いに微妙に異なる複数の分割領域を適切に配置することにより、周波数選択反射板全体による反射波のビーム幅を広げることが可能であることが確認された。
また、実施例2のように各分割領域のサイズが大きい場合には、反射ビームプロファイルが乱れ、サイドローブも大きくなる傾向があるが、実施例1のように各分割領域のサイズを小さくし、かつ、各分割領域での電磁波の反射方向ベクトルの変化を緩やかにすることにより、安定してブロードなメインビームが得られやすいことが判明した。また、実施例3および参考例1のように周波数選択反射板のサイズが小さい場合は、もともとメインビームがブロードになる傾向があるが、実施例1、2のように周波数選択反射板のサイズが大きい場合と同様に、実施例3のように各分割領域のサイズを小さく、かつ、各分割領域での電磁波の反射方向ベクトルの変化を緩やかにすることにより、反射ビームプロファイルが安定しやすいことが分かった。なお、参考例1では、周波数選択反射板のサイズが小さく、分割領域の数が少ないため、干渉が生じており、極角θ=27°の両脇に鋭い落ち込みが生じ、所望の反射ビームプロファイルが得られなかった。これらの結果から、分割領域の数を増やして、分割領域をより細かく分けることが有効であることが示された。
また、比較例1では、各セル領域の反射位相を標準偏差60%の変数で変化させることで、反射ビームを広げようとしたが、反射ビームは広がらなかった。これは、秩序立った波面を形成できなかったためと推定される。
[参考例2]
周波数選択反射板の反射特性のシミュレーションを行った。シミュレーションでは、誘電体層の単位構造は、図42(a)に示すように、一方向に厚さが増加する厚さ分布を有し、厚さの異なる6個のセル領域を有しており、誘電体層は、単位構造が一方向に繰り返し配置された周期構造を有するモデルを用いた。また、シミュレーションでは、反射部材は、リング状の反射素子が規則的に配列されており、入射波の周波数で共振し、その周波数の電磁波を反射するモデルとした。また、シミュレーションでは下記のパラメータを用いた。
入射波の周波数:28GHz
入射波の入射角:0度、-10度
反射波の所望反射角:27度、37度
隣接するセル領域での相対反射位相の差:60度
シミュレーション結果を図42(b)に示す。入射角が0度である場合、つまり正面方向31からの入射に対する反射は符号32で示す実線で示し、また、入射角が-10度である場合、つまり-10度方向33からの入射に対する反射は符号34で示す実線で示した。入射角が0度の場合は正反射方向から+27度方向に反射し、入射角が-10度である場合は正反射方向から+37度方向に反射していることが分かる。
[参考例3]
周波数選択反射板の反射特性のシミュレーションを行った。シミュレーションでは、誘電体層の単位構造は、図43(a)に示すように、一方向に厚さが増加する厚さ分布を有し、厚さの異なる10個のセル領域を有しており、誘電体層は、単位構造が一方向に繰り返し配置された周期構造を有するモデルを用いた。また、シミュレーションでは、反射部材は、リング状の反射素子が規則的に配列されており、入射波の周波数で共振し、その周波数の電磁波を反射するモデルとした。また、シミュレーションでは下記のパラメータを用いた。
入射波の周波数:28GHz
入射波の入射角:0度
反射波の所望反射角:16度
隣接するセル領域での相対反射位相の差:36度
シミュレーション結果を図43(b)に示す。入射角が0度である場合、つまり正面方向35からの入射に対する反射は符号36で示す実線で示した。入射角が0度の場合は正反射方向から+16度方向に反射していることが分かる。また、図43(b)では、図42(b)と比べて、反射方向が正反射方向に近いが、これは誘電体層の単位構造が、図42(a)では6個のセル領域を有するのに対し、図43(a)では10個のセル領域を有しており、厚さが増加する所定の方向における単位構造の長さが長いからである。
[参考例4]
まず、参考例2の反射部材のモデルに合わせて、銅箔付きPETフィルムをエッチングして、リング状の反射素子が規則的に配列された反射部材を作製した。また、参考例2の誘電体層のモデルに合わせて、3Dプリンタで誘電体層を成形した。次に、反射部材上に誘電体層を貼り付けて、周波数選択反射板を作製した。
コンパクトレンジ測定系とネットワークアナライザを用いて、周波数選択反射板の反射特性を測定した。参考例4の周波数選択反射板の反射特性は、参考例2のシミュレーション結果とほぼ一致した。
[参考例5]
リフレクトアレイの解析で、図44に示すような、一般的な伝送線路等価回路を用いて、周波数選択性表面(FSS)を有する反射部材と誘電体層とを有する周波数選択反射板について反射位相を算定した。なお、図44における記号は下記の通りである。
ZVAC:空気の特性インピーダンスを持つ伝送線路を示す。線路長は、誘電体層の最上面より遠くの任意の距離に設定された位相観測面から、誘電体層の厚さを減じた長さである。
ZPC:誘電体層の特性インピーダンスをもつ伝送線路を示す。線路長は誘電体層hの厚さである。
r:FSSのリング状の反射素子の抵抗を示す。
L:FSSのリング状の反射素子のインダクタンスを示す。
C:FSSのリング状の反射素子の容量を示す。
ZPET:FSSのリング状の反射素子を配置する誘電体基板の誘電率を持つ伝送線路を示す。線路長は誘電体基板の厚さである。
ZL:誘電体基板の裏面の空間(空気)の特性インピーダンスを示す。
その結果、反射位相のうち、異なる厚さの誘電体層を重ねたことで生じる共振周波数ずれによる反射位相変化はせいぜい数十度であり、これは最大反射位相360度の25%前後であり、それ以外の反射位相変化は誘電体層内の波長短縮によることが算定された。さらに、周波数選択性表面を有する反射部材と誘電体層との位置がずれたとしても、そのずれは周波数選択反射板全体を通じて均等になるが、反射波を平面波とするには隣接するセル領域との反射位相が均等であればよいことを考えれば、反射方向に対する影響はほとんどないと結論できた。
[実施例4~9]
図31および図45~49に示すように、シミュレーションにより、電磁波の反射位相が互いに異なる9種類のセル領域が繰り返し配列されている周波数選択反射板を設計した。9種類のセル領域において、電磁波の反射位相の進みが最も大きいセル領域での電磁波の反射位相を基準として、各セル領域での電磁波の相対反射位相を、-360度超0度以下とすると、各セル領域での電磁波の相対反射位相は、大きい順から、例えば、0度、-40度、-80度、-120度、-160度、-200度、-240度、-280度、-320度とした。図31および図45~49では、各セル領域での電磁波の相対反射位相が大きい順から、各セル領域を、0、1、2、3、4、5、6、7、8の数字で示した。
図31に示す実施例4では、(θ,φ)≒(28,0)[度]方向の有限距離からの入射波を、(θ,φ)≒(5,170)[度]方向に反射するように設計した。
図45に示す実施例5では、(θ,φ)≒(3,0)[度]方向の有限距離からの入射波を、(θ,φ)≒(7,0)[度]方向を中心に広がりを持って反射するように設計した。
図46に示す実施例6では、(θ,φ)≒(27,5)[度]方向の有限距離からの入射波を、(θ,φ)≒(9,160)[度]方向を中心に広がりを持って反射するように設計した。
図47に示す実施例7では、(θ,φ)≒(27,5)[度]方向の有限距離からの入射波を、(θ,φ)≒(20,170)[度]方向を中心に広がりを持って反射するように設計した。
図48に示す実施例8では、(x,y,z)=(5,0,10)[m]からの入射波を、(x,y,z)=(-2,0,20)[m]に向けビーム幅を絞って反射するように設計した。
図49に示す実施例9では、(θ,φ)≒(3,45)[度]方向の有限距離からの入射波を、(θ,φ)≒(0,0)[度]方向を中心に水平方向に大きな広がりを持って反射するように設計した。
実施例4~9のいずれにおいても、徐々に小さくなる電磁波の相対反射位相が急に大きくなる境界部分は、分岐せず、連続した曲線状であった。
[実施例10]
28GHz帯の電磁波を反射する周波数選択反射板を2種類用意した。図50(a)~(c)に、周波数選択反射板1Aの反射特性を示す。図50(b)に示すように、水平方向については、入射角:59°、反射角:-5±2°とした。図50(c)に示すように、垂直方向については、入射角:0°、反射角:+1±1°とした。このように、周波数選択反射板1Aは、反射ビームがあまり広がらないように設計した。また、図51(a)~(c)に、周波数選択反射板1Bの反射特性を示す。図51(b)に示すように、水平方向については、入射角:46°、反射角:-4±6.5°とした。図51(c)に示すように、垂直方向については、入射角:1°、反射角:-9±1°とした。このように、周波数選択反射板1Bは、反射ビームが水平方向に±6.5°広がるように設計した。いずれの周波数選択反射板も、球面波を考慮した設計とした。また、周波数選択反射板1AはA0用紙サイズ、周波数選択反射板1BのサイズはA2用紙サイズとした。
2つの周波数選択反射板1A、1Bは、図34(a)に示すように配置した。基地局41からの電磁波を2つの周波数選択反射板1A、1Bで順に反射し、カバレッジホール42に電磁波が届くように、2つの周波数選択反射板1A、1Bの設置位置および角度を設定した。図34(b)は、図34(a)の拡大図である。周波数選択反射板1Bからの反射ビームは±6.5°で広がるよう設計されているため、反射ビーム幅方向を横切るように、計測位置A~Fを設定した。なお、図34(b)において、符号60は、反射ビーム幅を示す。
[参考例6]
周波数選択反射板1Bを用いないこと以外は、実施例10と同様とした。
[評価2]
通信環境の確認は、ローカル5G対応スマートデバイス(FCNT社製 FMP181L)を用い、各計測位置A~Fにおいて、スピードチェックアプリでサーバーからのダウンロード速度を計測することで行った。そして、基地局前でのダウンロード速度に対する、各計測位置A~Fでのダウンロード速度の比を求めた。
図52に結果を示す。参考例6では、各計測位置A~Fにおけるダウンロード速度は、基地局前でのダウンロード速度に対して、0.42倍以上0.56倍以下であった。これに対し、実施例10では、参考例6と比べて、計測位置B~Fにおいて、ダウンロード速度が速くなった。これにより、通信環境の改善が確認された。さらに、実施例10では、計測位置Dにおいて、基地局前とほぼ同等のダウンロード速度になった。
また、実施例10において、反射ビーム幅60から外れた位置にある計測位置Aでは、周波数選択反射板1Bの設置による通信環境の改善が認められなかった。また、反射ビーム幅60の端部すれすれの計測位置Fでは、通信環境の改善効果が小さかった。このことから、周波数選択反射板1Bからの反射ビームは、ほぼ設計通りの反射ビームプロファイルで反射されていることを確認した。
本開示は、以下の[1]~[22]を提供する。
[1]特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板であって、
複数の領域を有し、
反射ビームプロファイルを調整する機能を有する、周波数選択反射板。
[2]上記周波数選択反射板の全面が複数の分割領域に分割されており、
上記複数の分割領域は、上記周波数選択反射板の中央に位置する分割領域であるメイン領域と、上記メイン領域以外の分割領域である複数のサブ領域とを有し、
上記複数のサブ領域は上記メイン領域の周囲に配置されており、
上記各分割領域での上記電磁波の反射方向ベクトルは互いに異なり、
上記各サブ領域での上記電磁波の反射方向ベクトルは、上記メイン領域での上記電磁波の反射方向ベクトルを中心として外側に向かって広がるように設定されている、[1]に記載の周波数選択反射板。
[3]上記周波数選択反射板の全面が複数の分割領域に分割されており、
上記各分割領域での上記電磁波の反射方向ベクトルは互いに異なり、
上記各分割領域での上記電磁波の反射方向ベクトルは、上記各分割領域での上記電磁波の反射方向ベクトルの和から導かれる、電磁波の主反射方向ベクトルを中心として外側に向かって広がるように設定されている、[1]に記載の周波数選択反射板。
[4]上記周波数選択反射板の全面が複数の分割領域に分割されており、
上記複数の分割領域は、上記周波数選択反射板の中央に位置する分割領域であるメイン領域と、上記メイン領域以外の分割領域である複数のサブ領域とを有し、
上記複数のサブ領域は上記メイン領域の周囲に配置されており、
上記各分割領域での上記電磁波の反射方向ベクトルは互いに異なり、
上記各サブ領域での上記電磁波の反射方向ベクトルは、上記メイン領域での上記電磁波の反射方向ベクトルを中心として内側に収束するように設定されている、[1]に記載の周波数選択反射板。
[5]上記周波数選択反射板の全面が複数の分割領域に分割されており、
上記各分割領域での上記電磁波の反射方向ベクトルは互いに異なり、
上記各分割領域での上記電磁波の反射方向ベクトルは、上記各分割領域での上記電磁波の反射方向ベクトルの和から導かれる、電磁波の主反射方向ベクトルを中心として内側に収束するように設定されている、[1]に記載の周波数選択反射板。
[6]隣接する上記分割領域同士での上記電磁波の反射方向ベクトルのなす角が、15°以内である、[1]から[5]までのいずれかに記載の周波数選択反射板。
[7]上記メイン領域での上記電磁波の反射方向ベクトルからのずれ角を横軸、上記周波数選択反射板の上記電磁波の反射強度を縦軸とするグラフにおいて、反射ビームプロファイルの半値幅が40°以内である、[2]、[4]または[6]に記載の周波数選択反射板。
[8]上記電磁波の主反射方向ベクトルからのずれ角を横軸、上記周波数選択反射板の上記電磁波の反射強度を縦軸とするグラフにおいて、反射ビームプロファイルの半値幅が40°以内である、[3]、[5]または[6]に記載の周波数選択反射板。
[9]上記周波数選択反射板の面積S1が、下記式(1)を満たす、[2]または[3]に記載の周波数選択反射板。
S1≧S0×Sr1/Sr0 (1)
(式(1)中、S1は上記周波数選択反射板の面積(m2)、Sr1は所望の上記電磁波の受信域を満たす反射ビームの立体角、S0は周波数選択反射板が上記分割領域を有さない場合に、所望の受信域を満たすのに必要な周波数選択反射板の面積(m2)、Sr0は周波数選択反射板が上記分割領域を有さない場合に、面積がS0である周波数選択反射板による反射ビームの立体角を表す。)
[10]上記電磁波の反射位相が異なる複数のセル領域を有する単位構造が複数配置されており、上記各分割領域が少なくとも1つの上記セル領域を有する、[2]から[9]までのいずれかに記載の周波数選択反射板。
[11]上記周波数選択反射板が、
上記電磁波を反射する反射部材と、
上記反射部材に対して上記電磁波の入射側に配置され、所定の方向に厚さが増加する厚さ分布を有する単位構造が複数配置された凹凸構造を有し、上記電磁波を透過する誘電体層と、
を有し、上記誘電体層の上記単位構造は、厚さの異なる複数のセル領域を有し、
上記誘電体層の各単位構造では、上記単位構造の上記所定の方向の長さを横軸とし、上記電磁波が上記誘電体層を透過し上記反射部材で反射され上記誘電体層を再度透過して上記電磁波の入射側に放出される際の相対反射位相を縦軸とし、上記電磁波の相対反射位相の値が-360度超0度以下であるグラフに、各セル領域の上記所定の方向の中心位置および各セル領域での上記電磁波の相対反射位相に対応する点をプロットし、最小厚さを有する最小厚さセル領域に対応する点を通る直線を引いたとき、各点が同一直線上にあり、
上記誘電体層が、上記単位構造として、厚さの異なる3つ以上の上記セル領域を有する第1の単位構造を少なくとも有し、
上記誘電体層の厚さ分布によって上記電磁波の相対反射位相分布を制御することにより、上記電磁波の反射方向を制御する、[2]から[10]までのいずれかに記載の周波数選択反射板。
[12]上記反射部材が、上記電磁波のみを反射する周波数選択板である、[11]に記載の周波数選択反射板。
[13]上記反射部材が、上記電磁波の反射位相を制御する反射位相制御機能を有する、[12]に記載の周波数選択反射板。
[14]上記周波数選択反射板が、上記電磁波を反射する反射部材を有し、
上記反射部材が、上記電磁波の反射位相を制御する反射位相制御機能を有する、[2]から[10]までのいずれかに記載の周波数選択反射板。
[15]特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板であって、
上記電磁波の反射位相が異なる複数のセル領域が繰り返し配列されており、
上記電磁波の反射位相の遅れが最も大きい上記セル領域での上記電磁波の反射位相を基準として、上記各セル領域での上記電磁波の相対反射位相を、-360度超0度以下としたとき、徐々に小さくなる上記電磁波の相対反射位相が急に大きくなる境界部分が、分岐せず、連続した曲線状である、[1]に記載の周波数選択反射板。
[16]上記周波数選択反射板が、上記電磁波を反射する反射部材と、上記反射部材に対して上記電磁波の入射側に配置され、上記電磁波を透過する誘電体層と、を有し、
上記誘電体層では、厚さの異なる複数の誘電体セル領域が繰り返し配列されており、
上記境界部分が、上記誘電体層の稜線状部分である、[15]に記載の周波数選択反射板。
[17]上記周波数選択反射板が、上記電磁波を反射する反射部材を有し、
上記反射部材では、サイズの異なる複数の反射素子が繰り返し配列されており、
上記境界部分が、徐々に大きくなる上記反射素子のサイズが急に小さくなる部分である、[15]に記載の周波数選択反射板。
[18]基地局とユーザー端末との間の通信を中継する通信中継システムであって、
特定の周波数帯の電磁波の進行方向を変化させる方向制御デバイスを複数有し、
複数の上記方向制御デバイスはそれぞれ、上記基地局からの上記電磁波の伝搬経路上に配置されており、
上記方向制御デバイスとして、[1]から[17]までのいずれかに記載の周波数選択反射板を1つ以上有する、通信中継システム。
[19]上記基地局を起点として上記電磁波の伝搬経路が1つになるように、複数の上記方向制御デバイスが配置されている、[18]に記載の通信中継システム。
[20]上記基地局を起点として上記電磁波の伝搬経路が分岐するように、複数の上記方向制御デバイスが配置されている、[18]に記載の通信中継システム。
[21]最下流側に位置する上記方向制御デバイスが、上記周波数選択反射板である、[18]から[20]までのいずれかに記載の通信中継システム。
[22]上記方向制御デバイスとして、上記電磁波を透過する透過方向制御デバイスを有する、[18]から[21]までのいずれかに記載の通信中継システム。