JP2024035593A - 光検出器及び距離計測装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】消費電力を低減させる。【解決手段】一実施形態の光検出器は、第1乃至第7半導体部、及び半導体層を備える。第1半導体部及び第2半導体部は、第1導電型であり、互いに離れて設けられる。半導体層は、第1導電型又は第2導電型であり、対向する第1面及び第2面を有する。第3半導体部は、第2導電型であり、第1半導体部及び第2半導体部と半導体層との間に設けられる。第1導電型の第4半導体部及び第2導電型の第5半導体部は、第1半導体部に対応し、半導体層内の第1面側において互いに接するように設けられる。第1導電型の第6半導体部及び第2導電型の第7半導体部は、第2半導体部に対応し、半導体層内の第1面側において互いに接するように設けられる。第3半導体部の不純物濃度は、半導体層の不純物濃度より高い。【選択図】図8

Description

実施形態は、光検出器及び距離計測装置に関する。
LIDAR(Light Detection and Ranging)と呼ばれる距離計測装置が知られている。LIDARは、レーザ光を対象物に照射し、対象物から反射された反射光の強度を光検出器によって検出する。そして、LIDARは、光検出器から出力される光強度信号の時間変化に基づいて、LIDARから対象物までの距離を計測する。LIDARで使用される光検出器として、シリコンフォトマルチプライヤを用いたセンサが知られている。
特開2020-153929号公報 特開2019-165181号公報 特開2018-201005号公報
大規模なフォトマルチプライヤでは、一般に、バイアス電圧がブレークダウン電圧に近い場合は、大きな電流が流れる。本発明は、バイアス電圧を制御する手段を実現し、その電流に基づく消費電力を低減させる。
実施形態の光検出器は、互いに離れて設けられる、各々が第1導電型の第1半導体部及び第2半導体部と、互いに対向する第1面及び第2面を有する上記第1導電型又は第2導電型の半導体層と、上記第1半導体部及び上記第2半導体部と上記半導体層との間に設けられる上記第2導電型の第3半導体部と、上記第1半導体部に対応して上記半導体層内の上記第1面側において互いに接するように設けられる上記第1導電型の第4半導体部及び上記第2導電型の第5半導体部と、上記第2半導体部に対応して上記半導体層内の上記第1面側において互いに接するように設けられる上記第1導電型の第6半導体部及び上記第2導電型の第7半導体部と、を備える。上記第3半導体部の不純物濃度は、上記半導体層の不純物濃度より高い。
第1実施形態に係る距離計測装置の構成の一例を示すブロック図。 第1実施形態に係る光検出器の画素の平面レイアウトの一例を示す平面図。 第1実施形態に係る光検出器の画素の構成の一例を示すブロック図。 第1実施形態に係る光検出器の画素の構成の一例を示す回路図。 第1実施形態に係る光検出器に接続される端子の一例を示す図。 第1実施形態に係る光検出器の電源回路の構成の一例を示す回路図。 第1実施形態に係る光検出器のドメインの境界付近における平面レイアウトの一例を示す、図5の領域VIIに対応する平面図。 第1実施形態に係る光検出器のドメインの境界付近における断面構造の一例を示す、図7のVIII-VIII線に沿った断面図。 第1実施形態に係る光検出器のSPADにおける光検出動作の一例を示す図。 第1実施形態に係る光検出器における選択動作でドメインに印加される電圧の一例を示す図。 第1実施形態に係る光検出器における選択動作で画素に印加される電位差の一例を示す図。 第1実施形態に係る光検出器における選択動作で画素に印加される電位差と動作モードとの関係の一例を示す図。 第1実施形態に係る光検出器における選択動作でアバランシェフォトダイオードに形成される電界分布の一例を示すダイアグラム。 第1実施形態に係る光検出器における選択動作でアバランシェフォトダイオードに形成される電子密度分布の一例を示すダイアグラム。 第1実施形態に係る光検出器における選択動作でドメイン間に形成される電流密度分布の一例を示す図。 比較例に係る光検出器における選択動作でドメイン間に形成される電流密度分布の一例を示すダイアグラム。 シミュレーションに用いる不純物濃度のプロファイルの一例を示す図。 第1シミュレーション条件のうちピーク濃度を変化させた場合における、ピーク電界及びリーク電流の最大電流密度についてのシミュレーション結果を示す図。 第1シミュレーション条件のうち深さ方向の幅及び相対位置を変化させた場合における、ピーク電界及びリーク電流の最大電流密度についてのシミュレーション結果を示す図。 第1シミュレーション条件に対応する不純物濃度のプロファイルの一例を示す図。 第2シミュレーション条件のうちピーク濃度を変化させた場合における、ピーク電界及びリーク電流の最大電流密度についてのシミュレーション結果を示す図。 第2シミュレーション条件に対応する不純物濃度のプロファイルの一例を示す図。 第1シミュレーション条件の結果と第2シミュレーション条件の結果との比較を示す図。 第2実施形態に係る光検出器のドメインの境界付近における平面レイアウトの一例を示す平面図。 第2実施形態に係る光検出器のドメインの境界付近における断面構造の一例を示す、図24のXXV-XXV線に沿った断面図。 第2実施形態に係る光検出器における選択動作でアバランシェフォトダイオードに形成される電界分布の一例を示すダイアグラム。 第2実施形態に係る光検出器における選択動作でアバランシェフォトダイオードに形成される電子密度分布の一例を示すダイアグラム。 第2実施形態に係る光検出器における選択動作でドメイン間に形成される電流密度分布の一例を示す図。 第3実施形態に係る光検出器のドメインの境界付近における断面構造の一例を示す断面図。 第4実施形態に係る光検出器のドメインの境界付近における平面レイアウトの一例を示す平面図。 第4実施形態に係る光検出器のドメインの境界付近における断面構造の一例を示す、図30のXXXI-XXXI線に沿った断面図。 第1変形例に係る光検出器のドメインの境界付近における断面構造の一例を示す断面図。 第2変形例に係る光検出器のドメインの境界付近における断面構造の一例を示す断面図。 第3変形例に係る光検出器のドメインの境界付近における断面構造の一例を示す断面図。 第4変形例に係る光検出器のドメインの境界付近における断面構造の一例を示す断面図。
以下に、実施形態について図面を参照して説明する。
なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付す。同様の構成を有する要素同士を特に区別する場合、同一符号の末尾に、互いに異なる文字又は数字を付加する場合がある。
1. 第1実施形態
1.1 構成
第1実施形態に係る光検出器を備える距離計測装置の構成について説明する。
1.1.1 距離計測装置
図1は、第1実施形態に係る距離計測装置の構成の一例を示すブロック図である。距離計測装置1は、LiDAR(Light detection and ranging)である。距離計測装置1は、レーザを使用して対象物TGとの距離を測定する。距離計測装置1は、例えば、図示しない車載システムの一部に相当し得る。対象物TGは、例えば、距離計測装置1が搭載された乗用車の前方、後方又は側方に存在する、他の乗用車、歩行者、及び障害物等の有形の物体である。距離計測装置1は、制御部10、出射部20、受光部30、及び計測部40を備える。
制御部10は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び発振器を含む。ROMは、距離計測装置1の動作に使用されるプログラム等を記憶する。CPUは、ROMに記憶されるプログラムに従って、出射部20、受光部30、及び計測部40を制御する。RAMは、CPUの作業領域として使用される。発振器は、間欠的なパルス信号の生成に使用される。
出射部20は、レーザ光を間欠的に生成及び出射する。出射されたレーザ光は、対象物TGに照射されることにより、距離計測装置1と対象物TGとの間の距離の計測に用いられる。以下では、出射部20から出射されたレーザ光は、“出射光Le”とも呼ぶ。対象物TGによって反射された出射光Leは、“反射光Lr”とも呼ぶ。出射部20は、例えば、駆動回路21及び22、光源23、光学系24、並びにミラー25を含む。
駆動回路21は、制御部10の発振器から入力されたパルス信号に応じて、間欠的な駆動電流を生成する。駆動回路21は、生成された間欠的な駆動電流を光源23に供給する。つまり、駆動回路21は、光源23の電流供給源として機能する。
駆動回路22は、制御部10による制御に応じて駆動電流を生成する。駆動回路22は、生成された駆動電流をミラー25に供給する。つまり、駆動回路22は、ミラー25の電源回路として機能する。
光源23は、レーザダイオード等のレーザ光源である。光源23は、駆動回路21から供給された間欠的な駆動電流に基づいて、レーザ光(出射光Le)を間欠的に出射する。出射光Leは、光学系24に入射する。
光学系24は、複数のレンズ及び光学素子を含む。光学系24は、ビームシェイパ、及びビームスプリッタ等を含んでもよい。光学系24は、光源23からの出射光Leを光路上に配置される。光学系24は、出射光Leをコリメートして、ミラー25に導光する。
ミラー25は、駆動回路22から供給される駆動電流に基づいて、光学系24によって導光される出射光Leを反射する。例えば、ミラー25の反射面は、互いに交差する2つの軸を中心として回転又は揺動するように構成される。ミラー25によって反射された出射光Leが、対象物TGに照射される。
受光部30は、距離計測装置1に入射した光を電気信号に変換する。受光部30は、変換された電気信号を受光結果として計測部40に転送する。受光部30は、距離計測装置1に間欠的に入射する反射光Lrの検出に用いられる。受光部30は、例えば、光学系31、光検出器32、及び出力回路33を含む。
光学系31は、少なくとも1個のレンズを含む。光学系31は、距離計測装置1に入射した反射光Lrを光検出器32に集光する。
光検出器32は、例えば、半導体基板上に集積可能なフォトマルチプライヤ(Semiconductor photon-multiplier、特にSiPM:Silicon photon-multiplier)である。光検出器32は、半導体を用いた光電子増倍素子を含む。光電子増倍素子としては、例えば、単一光子アバランシェダイオード(SPAD:Single-Photon Avalanche Diode)が用いられる。光検出器32は、光電子増倍素子を用いて、光学系31によって集光された反射光Lrを電気信号に変換する。光検出器32によって変換された電気信号は、出力回路33に転送される。
出力回路33は、光検出器32から転送された電気信号をデジタル信号に変換して、受光結果に対応するデジタル信号を計測部40に出力する。
計測部40は、受光部30から転送された受光結果に基づいて、受光部30が反射光Lrを検出した時刻を計測する。計測部40は、出射部20から出射光Leが出射された時刻と、受光部30が反射光Lrを検出した時刻とに基づいて、距離計測装置1と対象物TGとの間の距離を計測する。出射部20から出射光Leが出射された時刻は、例えば、制御部10から通知される。
なお、図1の例では、受光部30の光検出器32の光軸は、出射部20の光源23の光軸と異なっている場合が示されるが、これに限られない。つまり、図1の例では、距離計測装置1は、出射部20及び受光部30の間で非同軸の光学系を有する場合が示されるが、これに限られない。例えば、距離計測装置1は、受光部30で反射光Lrを検出可能な構成であればよい。具体的には、距離計測装置1は、同軸光学系や、分離光学系であってもよい。
1.1.2 画素の平面レイアウト
図2は、第1実施形態に係る光検出器の画素の平面レイアウトの一例を示す平面図である。光検出器32は、複数の画素PXを含む。複数の画素PXは、半導体基板上において、例えば、ロウ方向RA及びカラム方向CAに広がるマトリクス状に配置される。ロウ方向RAは、ロウアドレスの大きくなる方向である。カラム方向CAは、カラムアドレスの大きくなる方向である。複数の画素PXの各々は、複数のSPADを含む。複数のSPADは、画素PX内において、例えば、ロウ方向RA及びカラム方向CAに広がるマトリクス状に配置される。
複数の画素PXは、ロウ方向RAに対応づけられたロウアドレスと、カラム方向CAに対応づけられたカラムアドレスと、によって位置が特定可能に配置される。図2の例では、光検出器32において、ロウアドレス<m>及びカラムアドレス<n>に対応する画素PXが、画素PX<m,n>のように示される(1≦m≦M、1≦n≦N、M及びNは1以上の整数)。
なお、光検出器32に含まれる画素PXとSPADとのそれぞれの個数は、図2に示された個数に限定されず、任意の個数に設計され得る。画素PXとSPADとのそれぞれの平面形状は、正方形でなくても良い。画素PXの形状は、SPADの形状及び配置に応じて変化し得る。例えば、各画素PXにおいて、ロウ方向に並ぶSPADの個数と、カラム方向に並ぶSPADの個数とは異なっていても良い。光検出器32には、異なる形状の画素PXが配置されても良い。SPADの形状は、例えば、長方形であっても良い。
1.1.3 画素の構成
図3は、第1実施形態に係る光検出器の画素の構成の一例を示すブロック図である。図3では、光検出器32内の1個の画素PX<m,n>に対応する構成が示される。光検出器32は、画素PX<m,n>に対応する構成として、ロウ選択線RSL<m>及びカラム選択線<m,n>を含む。また、光検出器32は、端子VSUB、DOUT、及びOUTを含む。光検出器32は、端子VSUB、DOUT、及びOUTを介して電源回路50に接続される。端子OUTと電源回路50との間には、低インピーダンス素子Rが接続される。低インピーダンス素子Rは、例えば、低インピーダンスの抵抗、又はトランジスタである。
電源回路50は、各画素PXを駆動するための電圧を供給する回路である。電源回路50は、例えば、各画素PXに端子VSUB、OUT、及びDOUT等を介してそれぞれ電圧を供給する。各画素PXと端子VSUB、OUT、及びDOUTの各々との接続の詳細については、後述する。なお、電源回路50は、光検出器32に含まれていてもよい。
カラム選択線<m,n>は、画素PX<m,n>に接続される配線である。カラム選択線<m,n>は、画素PX<m,n>に対してカラム選択信号を転送する。光検出器32には、例えば、画素PX毎に、カラム選択線CSLが設けられる。
ロウ選択線RSL<m>は、ロウアドレス<m>を共有する複数の画素PXに接続される配線である。ロウ選択線RSL<m>は、当該複数の画素PXに対して、ロウ選択信号を転送する。光検出器32には、例えば、ロウ方向RAに並ぶ画素PXの数に対応して、複数のロウ選択線RSLが設けられる。
各画素PXは、例えば、k個のSPAD51(51-1、…、及び51-k)、選択回路52、並びにシフト回路53を含む(kは、1以上の整数)。k個のSPAD51の各々は、光の検出に用いられる素子の最小単位である。k個のSPAD51の各々の出力は、選択回路52に入力される。
選択回路52は、カラム選択線CSL<m,n>及びロウ選択線RSL<m>に接続される。選択回路52は、入力されるカラム選択信号及びロウ選択信号に基づいて、画素PX<m,n>を選択状態又は非選択状態にする。選択状態の場合、選択回路52は、画素PX<m,n>における受光結果を、端子OUTを介して出力回路33に出力する。非選択状態の場合、選択回路52は、画素PX<m,n>における受光結果を出力回路33に出力しない。以下では、選択状態の画素PXは、“選択画素PX”とも呼ぶ。非選択状態の画素PXは、“非選択画素PX”とも呼ぶ。
シフト回路53は、制御信号R_Shiftx及びL_Shiftxに基づいて、画素PX<m,n>に入力されるカラム選択信号を、画素PX<m+1,n>に接続されるカラム選択線CSL<m+1,n>、画素PX<m+1,n-1>に接続されるカラム選択線CSL<m+1,n-1>、又は画素PX<m+1,n+1>に接続されるカラム選択線CSL<m+1,n+1>に転送する。
制御信号R_Shiftx及びL_Shiftxの各々は、例えば、制御部10によって生成される。制御信号R_Shiftxは、画素PXが配置される領域のうち、少なくとも1個の選択画素PXによって形成される領域(選択画素領域PSR)の一部を+CA方向にシフトさせるための信号である。制御信号L_Shiftxは、選択画素領域PSRの一部を-CA方向にシフトさせるための信号である。図3の例では、カラム選択線CSLに対してシフト回路53によるシフト機能が適用される場合について示したが、これに限られない。例えば、ロウ選択線RSLに対してシフト回路によるシフト機能が適用されてもよい。また、光検出器32が1個の画素PXに対して2個のシフト回路を備えることによって、カラム選択線CSL及びロウ選択線RSLの両方に、シフト回路によるシフト機能が適用されてもよい。
図4は、第1実施形態に係る光検出器の画素の構成の一例を示す回路図である。図4では、画素PXのうち、k個のSPAD51、及び選択回路52の回路構成が示される。なお、k個のSPAD51はそれぞれ、同等の構成を備えている。このため、図4では、k個のSPAD51のうち、SPAD51-1及び51-kが示される。
SPAD51-1は、アバランシェフォトダイオードAPD1、保護抵抗Rs1、ダイオードDI1、及びクエンチ抵抗Rq1を含む。SPAD51-kは、アバランシェフォトダイオードAPDk、保護抵抗Rsk、ダイオードDIk、及びクエンチ抵抗Rqkを含む。選択回路52は、P型トランジスタPM0及びPM1を含む。
アバランシェフォトダイオードAPD1のアノードAELは、端子VAに接続される。アバランシェフォトダイオードAPD1のカソードCELは、保護抵抗Rs1の第1端に接続される。保護抵抗Rs1の第2端は、ノードN1-1に接続される。ダイオードDI1は、整流ダイオードである。ダイオードDI1のカソードは、ノードN1-1に接続される。ダイオードDI1のアノードは、ノードN2に接続される。クエンチ抵抗Rq1の第1端は、ノードN1-1に接続される。クエンチ抵抗Rq1の第2端は、ノードN3に接続される。
アバランシェフォトダイオードAPDkのアノードAELは、端子VAに接続される。アバランシェフォトダイオードAPDkのカソードCELは、保護抵抗Rskの第1端に接続される。保護抵抗Rskの第2端は、ノードN1-kに接続される。ダイオードDIkは、整流ダイオードである。ダイオードDIkのカソードは、ノードN1-kに接続される。ダイオードDIkのアノードは、ノードN2に接続される。クエンチ抵抗Rqkの第1端は、ノードN1-kに接続される。クエンチ抵抗Rqkの第2端は、ノードN3に接続される。
このように、k個のSPAD51-1~51-kは、ノードN2及びN3の各々に対して、並列に接続される。
ノードN2は、端子DOUTに接続される。端子DOUTに供給される電圧は、定電圧である。端子DOUTに供給される定電圧は、例えば、アバランシェフォトダイオードAPD1においてアバランシェ降伏が停止する電圧及びダイオードDI1の閾値電圧の和と、…、並びにアバランシェフォトダイオードAPDkにおいてアバランシェ降伏が停止する電圧及びダイオードDIkの閾値電圧の和と、のそれぞれよりも低い電圧に設定される。アバランシェ降伏については、後述する。
P型トランジスタPM0のソースは、ノードN3に接続される。P型トランジスタPM0のボディには、電圧VDDが供給される。電圧VDDは、電源電圧である。P型トランジスタPM0のゲートには、カラム選択線CSLからカラム選択信号が入力される。P型トランジスタPM1のソースは、P型トランジスタPM0のドレインに接続される。P型トランジスタPM1のボディには、電圧VDDが供給される。P型トランジスタPM1のゲートには、ロウ選択線RSLからロウ選択信号が入力される。P型トランジスタPM1のドレインは、端子OUTに接続される。
以上のような構成により、選択画素PXにおけるアバランシェフォトダイオードAPD1~APDkの各々には、アノードAELからカソードCELに向けて共通の電位差Vbiasが印加される。電位差Vbiasは、例えば、アノードAELに対してカソードCELが高電位となる逆バイアスである。選択画素PXは、電位差Vbiasに基づいて、P型トランジスタPM1のドレインから、アバランシェフォトダイオードAPD1~APDkの受光結果の和に相当する出力信号を出力する。このため、選択画素PXは、光検出器32における受光結果の最小の出力単位として機能することができる。なお、P型トランジスタPM0及びPM1の接続順番は、逆であってもよい。この場合、選択画素PXは、P型トランジスタPM0のドレインから、出力信号を出力する。また、非選択画素PXは、ダイオードRD1、…、及びRDkを介して端子DOUTにキャリアが放出される。
なお、画素PXは、ノードN3に接続されるN型トランジスタを更に備えていてもよい。非選択画素PXの当該N型トランジスタは、ノードN3に蓄積されたキャリアを図示せぬ電源線VSSに放出するように構成されてもよい。電源線VSSは、例えば、グラウンドに接続される。例えば、2個のN型トランジスタは、ノードN3と電源線VSSとの間に並列に接続される。2個のN型トランジスタのそれぞれのゲートには、カラム選択線CSL及びロウ選択線RSLが接続される。画素PXが非選択状態となる場合、カラム選択線CSL及びロウ選択線RSLのいずれかの電圧が“H”レベルとなる。これにより、ノードN3と電源線VSSとの間に並列に接続された2個のN型トランジスタのいずれかがオン状態となる。これにより、ノードN3に不要に蓄積されたキャリアが、ノードN3に2個のN型トランジスタが接続されない場合よりも、電源線VSSに放出され得る。
1.1.4 画素の接続端子の構成
図5は、第1実施形態に係る光検出器に接続される端子の一例を示す図である。図5には、光検出器32内の複数の画素PXに接続される複数の端子の一例が図示される。1個の端子に共通接続される画素PXの数は、当該画素PXに基づく消費電力がシステムとして許容できる範囲内に設定され、通常、千程度から百万程度である。端子の数は、概ね、全画素数を1個の端子に共通接続される画素PXの数で割った値であり、通常、十程度から百程度である。
光検出器32内の複数の画素PXは、例えば、複数のドメインDMNに分類される。図5の例では、光検出器32内の複数の画素PXが、9個のドメインDMN1~DMN9に分類される場合が示される。ドメインDMN1~DMN9は、例えば、光検出器32内にマトリクス状に配置される。
ドメインDMNiに分類される全ての画素PXのアノードAELは、端子VAiに共通接続される(1≦i≦9)。端子VAiは、図4における端子VAに対応する。すなわち、同じドメインDMNに分類される2個の画素PXのアノードAELには、互いに等しい電圧が供給される。一方、互いに異なるドメインDMNに分類される2個の画素PXのアノードAELにはそれぞれ、互いに独立な電圧が供給可能に構成される。
図6は、第1実施形態に係る光検出器の電源回路の構成の一例を示す回路図である。図6に示されるように、電源回路50は、n個のトランジスタT1sel、T2sel、…、及びTnsel、並びにn個のトランジスタT1usel、T2usel、…、及びTnuselを含む。
端子VA1~VAnは、電源回路50と個別に接続される。具体的には、端子VAkは、トランジスタTkselの第1端及びトランジスタTkuselの第1端に接続される(1≦k≦n)。トランジスタT1selの第2端、トランジスタT2selの第2端、…、及びトランジスタTnselの第2端には、電圧Vd_selが供給される。電圧Vd_selは、例えば、-80Vである。トランジスタT1uselの第2端、トランジスタT2uselの第2端、…、及びトランジスタTnuselの第2端には、電圧Vd_uselが供給される。電圧Vd_uselは、例えば、-20V以上0V以下である。
これらのn個のトランジスタT1sel、T2sel、…、及びTnsel、並びにn個のトランジスタT1usel、T2usel、…、及びTnuselは、数十V以上の高耐圧が必要であるため、図4等に示された他の回路より、酸化膜も厚く、サイズも一桁以上のオーダーで大きい。また、n個のトランジスタT1sel、T2sel、…、及びTnsel、並びにn個のトランジスタT1usel、T2usel、…、及びTnuselは、異なるウェルに設けられるため、図4等に示された他の回路とは、製造プロセスも異なる。
なお、n個のトランジスタT1sel、T2sel、…、及びTnsel、並びにn個のトランジスタT1usel、T2usel、…、及びTnuselの数は、高々2n個(十数個)なので、サイズの観点からは、光検出器32が設けられるチップの端部に設けられ得る。また、電圧Vd_sel及びVd_uselは、外部端子を介して、チップの外部に設けられる電圧生成回路から供給されてもよい。
1.1.5 ドメインの境界付近における平面レイアウト
図7は、第1実施形態に係る光検出器のドメインの境界付近における平面レイアウトの一例を示す、図5の領域VIIに対応する平面図である。図7では、ロウ方向RAに並ぶドメインDMN1及びDMN2の境界付近における光検出器32の受光面を含む平面レイアウトの一例が示される。以下では、図7に示される光検出器32の受光面から光検出器32の外部に向かう方向をZ方向又は上方向とする。また、図7に示される光検出器32の受光面側を、光検出器32の表側とも呼ぶ。また、光検出器32の表側の面と反対側の面を裏側とも呼ぶ。
ドメインDMN1及びDMN2の各々には、複数のセンサ領域SR及び複数の回路領域CRが設けられる。複数の回路領域CRは、例えば、ロウ方向RAに並ぶ。複数の回路領域CRの各々は、例えば、カラム方向CAに延びる。各回路領域CRには、例えば、アバランシェフォトダイオードAPDと、端子OUTとの間を接続する各種回路が設けられる。
複数のセンサ領域SRは、ドメインDMNのうち、回路領域CR以外の領域に設けられる。すなわち、隣り合う2個のセンサ領域SRは、回路領域CRによって分断される。複数のセンサ領域SRの各々には、複数のアバランシェフォトダイオードAPDがマトリクス状に配置される。複数のアバランシェフォトダイオードAPDの各々は、例えば、八角形状の受光面を有する。複数のアバランシェフォトダイオードAPDの各々の周囲には、ディープトレンチDTが設けられる。ディープトレンチDTは、例えば、Z方向に延びる八角筒状の構造体である。ディープトレンチDTは、隣り合うアバランシェフォトダイオードAPD間の光のクロストークを抑制する機能を有する。
1.1.6 ドメインの境界付近における断面構造
図8は、第1実施形態に係る光検出器のドメインの境界付近における断面構造の一例を示す、図7のVIII-VIII線に沿った断面図である。図8では、ドメインDMN1のセンサ領域、ドメインDMN2のセンサ領域、回路領域、及び回路境界CB、並びにドメインDMN1及びDMN2のドメイン境界DBを含む断面図の一例が示される。
図8に示される光検出器32は、例えば、FSI(Front-Side Illumination)型のWCSP(Wafer-level Chip Scale Package)構造を有する。具体的には、光検出器32は、複数のP型半導体部100、複数のN型半導体部101、複数の半導体部102、複数の導電体膜103、N型半導体部104、半導体層105、絶縁体層106、絶縁体層107、及び支持部材108を含む。
複数のP型半導体部100は、薄膜化されたP型半導体基板の部分である。複数のP型半導体部100は、例えば、薄膜化される前のP型半導体基板に対する埋込み工程により、ボロン等のP型不純物が拡散又はドープされることで形成される。複数のP型半導体部100は、同一の層内に設けられる。複数のP型半導体部100の各々は、Z方向に見て、対応するドメインDMNと重複する領域に位置する。異なるドメインDMNに対応するP型半導体部100同士は、互いに離れて設けられる。複数のP型半導体部100の各々は、対応するドメインDMNの端子VAに接続されるアノードAELとして機能する。
隣り合う2個のP型半導体部100の間に、N型半導体部101が設けられる。N型半導体部101は、例えば、薄膜化される前のP型半導体基板に対する埋込み工程により、リン等のN型不純物が拡散又はドープされることで形成される。N型半導体部101に含まれるN型不純物の濃度は、例えば、1E17/cm以上1E20/cm以下である。
型半導体部100とN型半導体部101との間には、半導体部102が更に設けられる。半導体部102は、例えば、薄膜化される前のP型半導体基板に対する埋込み工程により、リン等のN型不純物又はボロン等のP型不純物が拡散又はドープされることで形成される。すなわち、半導体部102の導電型は、N型でもよく、P型でもよい。半導体部102に含まれる不純物の濃度は、N型半導体部101に含まれるN型不純物の濃度より低い。半導体部102に含まれる不純物の濃度は、例えば、1E14/cm以上1E17/cm以下である。
型半導体部101及び半導体部102は、Z方向に見て、ドメイン境界DB及びドメイン境界DBの近傍と重複する領域に位置する。すなわち、N型半導体部101及び半導体部102は、ロウ方向RA又はカラム方向CAに延びる。図8では、カラム方向CAに延びるN型半導体部101及び2個の半導体部102が図示される。
複数のP型半導体部100の各々の下面上には、導電体膜103が設けられる。導電体膜103は、WCSP構造におけるアノードAELのパッド電極(すなわち、端子VA)として機能する。導電体膜103は、例えば、金属材料により形成される。これにより、導電体膜103は、上方から入射してくる光の反射材としても機能することができる。
複数のP型半導体部100、複数のN型半導体部101、及び複数の半導体部102の上面上には、N型半導体部104が設けられる。N型半導体部104は、例えば、薄膜化される前のP型半導体基板に対する埋込み工程により、リン等のN型不純物が更に拡散又はドープされることで形成される。すなわち、N型半導体部104は、複数のP型半導体部100に接する。N型半導体部104は、複数のP型半導体部100の上面を覆うカバー層COVとして機能する。N型半導体部104の膜厚は、例えば、0.2マイクロメートル以下である。N型半導体部104に含まれるN型不純物の濃度は、N型半導体部101に含まれるN型不純物の濃度より低い。N型半導体部104に含まれるN型不純物の濃度は、後述する半導体層105に含まれる不純物の濃度より高い。例えば、N型半導体部104に含まれるN型不純物の濃度の下限は、後述する半導体層105に含まれるN型不純物の濃度の10倍程度である。N型半導体部104に含まれるN型不純物の濃度の上限は、後述する半導体層105に含まれるN型不純物の濃度の1000倍程度である。より具体的には、半導体層105に含まれるN型不純物の濃度が1E14/cmの場合、N型半導体部104に含まれるN型不純物の濃度は、1E15/cm以上1E17/cm以下である。
N型半導体部104の上面上には、半導体層105が設けられる。半導体層105は、例えば、N型半導体部104の上面を起点としてシリコンをエピタキシャル成長させて形成される層である。図8の例では、半導体層105の導電型がN型の場合が示されるが、半導体層105の導電型は、P型であってもよい。半導体層105に含まれる不純物の濃度は、例えば、5E15/cm以下である。
以上のようなP型半導体部100の下面から半導体層105の上面までの厚さは、例えば、10マイクロメートル以上1000マイクロメートル以下であるが、例えば、20マイクロメートル以上50マイクロメートル以下が望ましい。
ここで、シリコンの光吸収係数が300/cmであると仮定し、開口率が100%であり、吸収された光の90%が光電効果を起こすと仮定すれば、感光領域の厚さが20マイクロメートルで、アバランシェ確率Paが100%とした場合の検出効率PDEは、40.6%(=45.1%×0.9)である。実際には、検出効率PDEに寄与するキャリアは、空乏層DLにて受光された場合だけに限らず、空乏層DLの周囲数マイクロメートルの領域にて受光された場合も、寄与し得る。上述したように、空乏層DLの厚さは15マイクロメートル以上である場合、感光領域は、20マイクロメートル程度となる。このため、40%に近い検出効率PDEが期待される。また、P型半導体部100の厚さが0マイクロメートルに近いため、導電体膜103を考慮した場合、感光領域の厚さは、実際には40マイクロメートル程度となる。この場合、アバランシェ確率Paが100%とした場合の検出効率PDEは、63%(=69.9%×0.9)程度である。更に、半導体部102の厚さが30マイクロメートル及び40マイクロメートルの場合、アバランシェ確率Paが100%とした場合の検出効率PDEはそれぞれ、75%(=83.5%×0.9)程度、及び82%(=90.9%×0.9)程度である。
半導体層105の上面上には、絶縁体層106、絶縁体層107、及び支持部材108がこの順に積層される。絶縁体層106及び107、並びに支持部材108は、絶縁性透明材料により形成される。支持部材108は、薄膜化されたP型半導体基板に代わって、光検出器32の構造を支持する機能を有する。
半導体層105の表側には、Z方向に見て1個のセンサ領域SRと重複する領域において、複数組のP型半導体部109及びN型半導体部110が形成される。
複数のP型半導体部109の各々は、例えば、半導体層105の内部のうちアバランシェフォトダイオードAPDに対応する領域に、ボロン等のP型不純物が拡散又はドープされることにより形成される。
複数のN型半導体部110の各々は、例えば、対応するP型半導体部109の上部に、リン等のN型不純物が拡散又はドープされることにより形成される。N型半導体部110の下面は、P型半導体部109の上面に接する。互いに接するP型半導体部109及びN型半導体部110の組は、PN接合を形成する。N型半導体部110の上面は、半導体層105の上面と揃う。
複数のN型半導体部110の各々の上面上には、導電体膜111が設けられる。導電体膜111は、例えば、導電性透明材料により形成される。導電体膜111は、対応するアバランシェフォトダイオードAPDのカソードCELとして機能する。導電体膜111は、絶縁体層106内に形成される図示せぬ配線層を介して、センサ領域SRと回路領域CRとの間を接続する。
また、半導体層105の上部のうち、対応するP型半導体部109及びN型半導体部110の組を囲む領域に、絶縁体膜112が設けられる。複数の絶縁体膜112の各々は、Z方向に見て、対応するP型半導体部109及びN型半導体部110の組の周囲を囲むように設けられる。絶縁体膜112の上面は、半導体層105の上面と揃う。絶縁体膜112の下面は、P型半導体部109の下面と半導体層105の下面との間に位置する。絶縁体膜112のZ方向に沿った長さは、半導体層105の膜厚よりも短い。絶縁体膜112のZ方向に沿った長さは、例えば、12マイクロメートル以下である。複数の絶縁体膜112の各々は、Z方向に延びてディープトレンチDTとして機能する。
以上のような構成のうち、Z方向に見て、1個の絶縁体膜112に囲まれる領域が、1個のアバランシェフォトダイオードAPDとして機能する。
また、絶縁体層107内には、Z方向に見てセンサ領域SRと重複する領域において、複数のレンズ113が設けられる。複数のレンズ113の各々は、Z方向に見て、対応するP型半導体部109及びN型半導体部110の組を覆うように配置される。複数のレンズ113は、光検出器32の表側からの光を集光し、対応するアバランシェフォトダイオードAPDに入射させるように構成される。複数のレンズ113は、マイクロレンズアレイとして機能する。
また、半導体層105の上部には、Z方向に見て回路領域CRと重複する領域において、N型ウェル領域115、P型ウェル領域116、N型ウェル領域117、及びP型ウェル領域118が設けられる。
N型ウェル領域115は、例えば、CA方向に延びる。N型ウェル領域115は、後述するP型ウェル領域116を覆うウェルカバー層WCOVとして機能する。
N型ウェル領域115の上部には、P型ウェル領域116が設けられる。P型ウェル領域116は、例えば、CA方向に延びる。P型ウェル領域116の側面及び下面は、N型ウェル領域115によって覆われる。
なお、上述の通り、図8の例では、半導体層105の導電型がN型の場合が示される。半導体層105の導電型がP型の場合、N型ウェル領域115及びP型ウェル領域116の導電型は、反転する。すなわち、半導体層105の導電型がP型の場合、半導体層105の上部には、ウェルカバー層WCOVとして機能するP型ウェル領域が設けられる。そして、当該ウェルカバー層WCOVとして機能するP型ウェル領域の上部に、N型ウェル領域が設けられる。
P型ウェル領域116の上部には、N型ウェル領域117及びP型ウェル領域118が互いに離れて設けられる。N型ウェル領域117及びP型ウェル領域118の導電型はそれぞれ、N型及びP型である。N型ウェル領域117及びP型ウェル領域118は、例えば、CA方向に延びる。N型ウェル領域117及びP型ウェル領域118の各々の側面及び下面は、P型ウェル領域116によって覆われる。N型ウェル領域117には、P型トランジスタPTrが設けられる。P型ウェル領域118には、N型トランジスタNTrが設けられる。
1.2 動作
次に、第1実施形態に係る光検出器における動作について説明する。
1.2.1 光検出動作
図9は、第1実施形態に係る光検出器における光検出動作の一例を示す図である。図9では、光が検出される際に発生する現象が、1個のアバランシェフォトダイオードAPDに対応する断面図上で模式的に示される。
光検出動作に際して、アバランシェフォトダイオードAPDには、アノードAELに負の高い電圧が印加される。つまり、アバランシェフォトダイオードAPDには、ブレークダウン電圧Vbdより高い逆バイアスの電位差Vbiasが印加される。これにより、PN接合の付近において、Z方向に強い電界が発生する(図9(1))。
すると、PN接合からカバー層COVに向けて、空乏層DLが形成される(図9(2))。空乏層DLの下端は、ディープトレンチDTよりも下方に位置し、カバー層COVに達し得る。これにより、アバランシェフォトダイオードAPDが、光信号を検知可能な状態となる。
そして、アバランシェフォトダイオードAPDに光が照射されると、光のエネルギーの一部が空乏層DLに到達する(図9(3))。空乏層DLに光が照射されると、空乏層DLにおいて電子と正孔の対、すなわちキャリアが発生する場合がある(図9(4))。空乏層DLに発生したキャリアは、アバランシェフォトダイオードAPDに印加された逆バイアスの電位差Vbiasによって発生した電界によってドリフトする(図9(5))。例えば、発生したキャリアのうち正孔は、アノードAEL側(すなわち、裏側)に向かって加速される。一方で、発生したキャリアのうち電子は、PN接合側(表側)に向かって加速される。
表側に向かって加速された電子は、PN接合付近に発生した強い電界の下で、原子と衝突する。すると、原子に衝突した電子が、当該原子をイオン化させて、新たな電気と正孔の対を発生させる。アバランシェフォトダイオードAPDに印加された逆バイアスの電位差Vbiasが、アバランシェフォトダイオードAPDのブレークダウン電圧Vbdを超えている場合、このような電子と正孔の対の発生が繰り返される。このような現象は、アバランシェ降伏とも呼ばれる(図9(6))。
アバランシェ降伏が発生すると、アバランシェフォトダイオードAPDが放電する(図9(7))。このような放電は、ガイガー放電とも呼ばれる。ガイガー放電が発生すると、カソードCELを介して端子OUTに電流が流れる。これにより、ガイガー放電とその後のリカバリに関わる電気信号が、アバランシェフォトダイオードAPD、すなわち1個のSPADから出力される。
また、アバランシェフォトダイオードAPDから出力された電流は、例えば、クエンチ抵抗Rqに流れる。その結果、電圧降下が、端子OUTにおいて発生する(図9(8))。このような電圧降下は、クエンチングとも呼ばれる。クエンチングによって、アバランシェフォトダイオードAPDに印加された逆バイアスの電位差Vbiasがブレークダウン電圧Vbd未満になると、ガイガー放電が停止する。
その後、アバランシェフォトダイオードAPDのPN接合における容量の充電がなされ、リカバリ電流が流れる。ガイガー放電が止まり、更にアバランシェ現象も終わって暫く後に、アバランシェフォトダイオードAPDは、次の光を検知することが可能な状態に戻る。
以上のように動作することにより、アバランシェフォトダイオードAPDは、光の入射に応じてアバランシェ降伏を起こし、受光結果に対応する電気信号を出力する。これにより、光検出器32は、フォトン単位の受光を検知して、電気信号に変換することができる。このようなアバランシェフォトダイオードAPDの動作モードは、“ガイガーモード”とも呼ばれ、増倍率は1E5に達する。
なお、逆バイアスの電位差VbiasがアバランシェフォトダイオードAPDのブレークダウン電圧Vbdを超えない場合、アバランシェ降伏は発生しない。この場合、フォトン単位あたりの受光感度は、ガイガーモードに比べて小さくなる。
逆バイアスの電位差Vbiasがブレークダウン電圧Vbdの近傍の場合、増倍率は数十倍、例えば、30程度となる。このようなアバランシェフォトダイオードAPDの動作モードは、“APDモード”とも呼ばれる。また、逆バイアスの電位差Vbiasがブレークダウン電圧Vbdに対して十分低い場合、増倍率は1程度となる。このようなアバランシェフォトダイオードAPDの動作モードは、“PDモード”とも呼ばれる。
1.2.2 選択動作
図10は、第1実施形態に係る光検出器における選択動作でドメインに印加される電圧の一例を示す図である。図10では、ドメインDMN1~DMN9のうち、ドメインDMN5内の一部の領域(選択画素領域PSR)に含まれる全ての画素PXが選択される場合が示される。以下では、ドメインDMN5は、“選択ドメインDMN”とも呼ぶ。ドメインDMN1~DMN4及びDMN6~DMN9は、“非選択ドメインDMN”とも呼ぶ。
選択ドメインDMNが選択される場合、選択ドメインDMN内の全ての画素PXのアノードAELに接続される端子VA5には、電圧Vd_selが印加される。
一方、非選択ドメインDMN内のいずれかの画素PXのアノードAELに接続される端子VA1~VA4及びVA6~VA9の各々には、電圧Vd_uselが印加される。電圧Vd_uselは、例えば、電圧Vd_selより10V以上高い。
このように、選択ドメインDMNと、非選択ドメインDMNとで、アノードAELに異なる電圧が印加される。
図11は、第1実施形態に係る光検出器における選択動作で画素に印加される電位差の一例を示す図である。図12は、第1実施形態に係る光検出器における選択動作で画素に印加される電位差と動作モードとの関係の一例を示す図である。図11及び図12は、図10に対応する。
選択ドメインDMNのうち選択画素領域PSR内の全ての画素PX(すなわち、選択画素PX)のカソードCELには、電圧Vp_selが印加される。電圧Vp_selは、例えば、5Vである。選択ドメインDMNのうち選択画素領域PSR外の全ての画素PX、及び非選択ドメインDMNの全ての画素PX(すなわち、非選択画素PX)のカソードCELには、電圧Vp_uselが印加される。電圧Vp_uselは、例えば、電圧Vp_selより数V程度低い。電圧Vp_uselは、例えば、0Vである。
電圧Vp_sel及び電圧Vd_selの電位差Vbias1=|Vp_sel-Vd_sel|は、アバランシェフォトダイオードAPDのブレークダウン電圧Vbdより高くなるように設定される。このため、選択ドメインDMN内の選択画素PX内のアバランシェフォトダイオードAPDは、ガイガーモードで動作する。
電圧Vp_usel及び電圧Vd_selの電位差Vbias2=|Vp_usel-Vb_sel|は、アバランシェフォトダイオードAPDのブレークダウン電圧Vbdより僅かに低くなるように設定される。このため、選択ドメインDMN内の非選択画素PX内のアバランシェフォトダイオードAPDは、APDモードで動作する。
電圧Vp_usel及び電圧Vd_uselの電位差Vbias3=|Vp_usel-Vb_usel|は、アバランシェフォトダイオードAPDのブレークダウン電圧Vbdに対して十分低くなるように設定される。このため、非選択ドメインDMN内の非選択画素PX内のアバランシェフォトダイオードAPDは、PDモードで動作する。
1.3 第1実施形態に係る効果
第1実施形態によれば、光検出器32は、選択ドメインDMNのアノードAELには電圧Vd_selを印加し、非選択ドメインDMNのアノードAELには電圧Vd_selより10V以上高い電圧Vd_uselを印加する。これにより、選択ドメインDMNの選択画素PX内のアバランシェフォトダイオードAPDをガイガーモードで動作させつつ、非選択ドメインDMNの非選択画素PX内のアバランシェフォトダイオードAPDをPDモードで動作させることができる。このため、全ての非選択画素PX内のアバランシェフォトダイオードAPDをAPDモードで動作させる従来の場合よりも、消費する電力を著しく、例えば、30分の1程度に低減させることができる。大規模なシリコンフォトマルチプライヤ、特にエリアセンサの場合、約百万程度のアバランシェフォトダイオードAPDが集積され、その殆どは非選択画素PXとなる。このため、従来の通りならば、大きな消費電力となるが、第1実施形態によれば、消費電力を大幅に低減できる。
具体的には、光検出器32は、互いに離れて設けられる2個のP型半導体部100と、互いに対向する第1面及び第2面を有する半導体層105と、2個のP型半導体部100及び半導体層105の間に設けられるN型半導体部104と、2個のP型半導体部100にそれぞれ対応するPN接合と、を備える。N型半導体部104の不純物濃度は、半導体層105の不純物濃度より高い。これにより、選択ドメインDMNのアノードAELと、非選択ドメインDMNのアノードAELとの間のリーク電流を抑制できる。加えて、選択ドメインDMN内のPN接合の境界でガイガーモードを発生させ得る電界を発生させつつ、非選択ドメインDMN内のPN接合の境界で発生させる電界を十分に低減させることができる。このため、上述の選択動作を具体的に実現することができる。
なお、選択ドメインDMNのPN接合の境界に大きな電界を発生させつつ、非選択ドメインDMNのPN接合の境界における電界を低減するためには、これらドメインDMN間を電気的に絶縁することが望ましい。ここで、絶縁体膜112は、12マイクロメートル程度までの深さで設けることが可能である。このため、仮に、半導体層105の厚さが10マイクロメートル程度と第1実施形態より有意に薄い場合では、絶縁体膜112によって半導体層105を物理的かつ電気的に仕切ることができる。しかしながら、後述するように、上述の例では、検出効率は高くならない。これに対して、第1実施形態では、N型半導体部104が、絶縁体膜112によることなく、2個のP型半導体部100を電気的に絶縁する。これにより、2個のP型半導体部100の間に発生するリーク電流を、絶縁体膜112によることなく抑制できる。このため、半導体層105の膜厚を絶縁体膜112の長さよりも長くすることができ、ひいては、半導体層105の膜厚が絶縁体膜112の長さと同等の場合よりも長い空乏層を形成できる。したがって、検出効率の高い光検出器32を実現することができる。
なお、半導体層105の不純物濃度に対してN型半導体部104の不純物濃度が高すぎる場合、PN接合の境界に発生する電界を、ガイガーモードを発生させ得る程度まで上昇させることができない。また、半導体層105の不純物濃度に対してN型半導体部104の不純物濃度が低すぎる場合、選択ドメインDMNのアノードAELと非選択ドメインDMNのアノードAELとの間に大きなリーク電流が発生してしまう。このように、N型半導体部104の不純物濃度は、半導体層105の不純物濃度に対して適切な濃度に設定されることが望まれる。第1実施形態によれば、N型半導体部104の不純物濃度の下限値は、半導体層105の不純物濃度の10倍程度に設定される。N型半導体部104の不純物濃度の上限値は、半導体層105の不純物濃度の1000倍程度に設定される。これにより、PN接合の境界に発生する電界をガイガーモードが発生する程度まで上昇させつつ、リーク電流の発生を抑制することができる。
また、2個のP型半導体部100は、受光面に平行な方向に、N+型半導体部101及び半導体部102によって離隔される。これにより、2個のP型半導体部100の間を結ぶ短い電流経路を完全に遮断することができ、当該電流経路に基づくリーク電流をカットすることができる。
また、P型半導体部100の下面上には、金属材料で形成される導電体膜103が設けられる。これにより、半導体層105に入射する光のうち表側から裏側に通過していく光を反射させて、裏側から再び半導体層105に入射させることができる。このため、アバランシェフォトダイオードAPDがフォトンを検出できる確率を、例えば、70~80%程度まで高めることができる。
1.4 シミュレーション結果
以下に、第1実施形態に係る光検出器における選択動作の様子を示すシミュレーション結果を示す。
図13は、第1実施形態に係る光検出器における選択動作でアバランシェフォトダイオードに形成される電界分布の一例を示すダイアグラムである。図13では、選択ドメインDMN内の選択画素PXのアバランシェフォトダイオードAPDのPN接合付近に形成される電界のZ方向に沿ったプロファイルが実線L1で示される。また、図13では、非選択ドメインDMN内の非選択画素PXのアバランシェフォトダイオードAPDのPN接合付近に形成される電界のZ方向に沿ったプロファイルが点線L2で示される。
実線L1に示されるように、選択ドメインDMN内の選択画素PXでは、PN接合の境界において、閾値TH1を超える電界のピークが形成される。ガイガー放電が発生する電界は、電界の分布形状(広がり幅等)に従って若干変わるが、閾値TH1は、この電界分布形状において、ガイガー放電が発生する電界である。このため、選択ドメインDMNの選択画素PXのアバランシェフォトダイオードAPDは、ガイガーモードで動作し得ることが確認できる。
一方、点線L2に示されるように、非選択ドメインDMN内の非選択画素PXでは、PN接合の境界において、閾値TH1を十分に下回るピークが形成され、単純にバイアス電圧が30V以上低い場合に得られる電界よりも低い。このため、非選択ドメインDMNの非選択画素PXのアバランシェフォトダイオードAPDは、PDモードで動作し得ることが確認できる。
図14は、第1実施形態に係る光検出器における選択動作でアバランシェフォトダイオードに形成される電子密度分布の一例を示すダイアグラムである。図14では、選択ドメインDMN内の選択画素PXのアバランシェフォトダイオードAPDに形成される電子密度のZ方向に沿ったプロファイルが実線L3で示される。また、図14では、非選択ドメインDMN内の非選択画素PXのアバランシェフォトダイオードAPDに形成される電子密度のZ方向に沿ったプロファイルが点線L4で示される。
実線L3に示されるように、選択ドメインDMN内の選択画素PXにおける電子密度は、PN接合からアノードAELにわたって、空乏層が形成される状態であることを示す閾値TH2を十分に下回る。このため、選択ドメインDMNの選択画素PXのアバランシェフォトダイオードAPDでは、PN接合からアノードAELにわたって、空乏層が形成されていることが確認できる。
一方、点線L4に示されるように、非選択ドメインDMN内の非選択画素PXにおける電子密度は、PN接合からアノードAELの間で、閾値TH2を上回る部分が存在する。このため、非選択ドメインDMNの非選択画素PXのアバランシェフォトダイオードAPDでは、PN接合からアノードAELに達するような長い空乏層が形成されないことが確認できる。
図15は、第1実施形態に係る光検出器における選択動作でドメイン間に形成される電流密度分布の一例を示すダイアグラムである。図15では、選択ドメインDMN内のアノードAELと非選択ドメインDMN内のアノードAELとの間において、電流密度が最大となる領域IDmaxが示される。
図15に示されるように、電流密度が最大となる領域IDmaxは、選択ドメインDMNのアノードALE周辺に発生する。しかしながら、領域IDmaxにおける電流密度の値は、3.4E-5A/cm程度であり、無視できる程度に小さい。このため、選択ドメインDMNのアノードALEと非選択ドメインDMNのアノードALEとの間に流れるリーク電流Ileakが抑制されていることが確認できる。
図16は、比較例に係る光検出器における選択動作でドメイン間に形成される電流密度分布の一例を示すダイアグラムである。図16は、図15に対して、半導体部102が設けられない場合における電流密度分布が最大となる領域IDmaxが示される。
図16に示されるように、P型半導体部100とN型半導体部101の間で6E5V/cmを超える電界が発生しており、アバランシェ現象が発生して、大きなリーク電流が流れていることが判る。この場合、高濃度のP型半導体部100と高濃度のN+101が直接接していることが、アバランシェ現象発生の原因である。つまり、リーク電流を抑えるために、より低濃度の半導体部102の有ることが望ましいことが判る。
また、PN接合の境界に電界を印加することと、異なる電位の電極間の電流リークを防ぐという相反的な現象において、N型半導体部104は主体的な役割を果たす。N型半導体部104が主体的な役割を果たすためには、不純物濃度が重要である。具体的には、濃度が低ければ電界が印加され易いが(バイアス電圧を通し易いが)リークが起き易く、濃度が低ければリークは起き難いが電界は印加され難くなる。ただし、濃度以外にも、当該相反的な現象に影響を与え得る因子は存在する。
図17は、シミュレーションに用いる不純物濃度のプロファイルの一例を示す図である。図17(A)は、シリコンの表面からのZ方向の深さに応じた半導体層105、N型半導体部104、及びP型半導体部100の不純物濃度のプロファイルを模式的に表した図である。図17(B)は、シリコンの表面からのZ方向の深さに応じた半導体層105、N型半導体部104、及びP型半導体部100の不純物濃度のプロファイルを近似的な曲線で表した図である。
N型半導体部104に関わる因子(パラメタ)としては、図中に“α”で示したピーク濃度の高さ、“β”で示した深さ(-Z)方向の幅の大きさ、及び“γ”で示した深さ方向のP型半導体部100に対する相対位置がある。
以下に、まず、N型半導体部104とP型半導体部100が重ならない場合(相対位置“γ”が大きい場合)についてのシミュレーション結果を示した後、N型半導体部104とP型半導体部100が重なる場合(相対位置“γ”が小さい場合)についてのシミュレーション結果を示す。なお、実際には製造上の理由により、図17(A)の例のように、N型半導体部104の不純物濃度Dは、完全にステップ状にはならず、緩やかに変化する。そこで、図17(B)の例のように、N型半導体部104の不純物濃度の分布を、下記のガウス関数で近似的に表すことにする。
ここで、AはN型半導体部104のピーク濃度、σは幅、xはピークの深さ、CEpiはエピ濃度を表す。第1シミュレーション条件の初期値として、σとしては0.193マイクロメートルを用いた。xとしてはP型半導体部100(のガウス関数のピーク位置)からの距離1.6マイクロメートルを用いた。CEpiとしては1E10/cmを用いた。なお、P型半導体部100にも同じガウス関数を用いたが、そのピーク濃度は2E18/cmとした。図17(B)は、その濃度分布の例を表しており、N型半導体部104は、P型半導体部100と接しているが、概ね重なっていない位置にある。
図18は、第1シミュレーション条件のうちピーク濃度“α”を変化させた場合における、ピーク電界及びリーク電流の最大電流密度についてのシミュレーション結果を示す図である。
図18に示されるように、ケース(III)、(IV)、及び(VII)にて、ピーク電界とリーク電流の条件が満たされ、それ以外のケースでは条件が満たされないことが判る。また、条件を満たすケース(IV)が、この表の中ではピーク濃度“α”の中央値となっている。そこで、続いて、ケース(IV)におけるピーク濃度“α”で固定しつつ、深さ方向の幅“β”と相対位置“γ”を変化させた場合におけるピーク電界及びリーク電流の最大電流密度についてのシミュレーションを行った。
図19は、第1シミュレーション条件のうち深さ方向の幅“β”及び相対位置“γ”を変化させた場合における、ピーク電界及びリーク電流の最大電流密度についてのシミュレーション結果を示す図である。図20は、第1シミュレーション条件に対応する不純物濃度のプロファイルの一例を示す図である。具体的には、図20(A)、図20(B)、及び図20(C)はそれぞれ、図19のケース(IV)、(V)、及び(VI)に対応する。
ケース(V)には、深さ方向の幅“β”を半分にした場合のシミュレーション結果が示される。ケース(VI)には、相対位置“γ”を1.0マイクロメートル浅くした場合のシミュレーション結果が示される。図19に示されるように、深さ方向の幅“β”及び相対位置“γ”を変えても、ピーク電界とリーク電流の結果は大きく変わらない。このため、深さ方向の幅“β”及び相対位置“γ”がピーク電界とリーク電流に与える影響が少ないことが判り、ピーク濃度“α”が主要な決定因子であることが判る。
以上は、N型半導体部104がP型半導体部100と概ね重なっていない場合の結果であるが、次に、これらが重なっている場合について考える。具体的には、第2シミュレーション条件の初期値として、σとしてはP型半導体部100(のガウス関数のピーク位置)からの距離を0.6マイクロメートルとする。このように、第2シミュレーション条件では、N型半導体部104のピークがP型半導体部100に埋もれず(埋もれれば、その効果は無い)、しかし、十分に重なるようにした。
図21は、第2シミュレーション条件のうちピーク濃度“α”を変化させた場合における、ピーク電界及びリーク電流の最大電流密度についてのシミュレーション結果を示す図である。図22は、第2シミュレーション条件に対応する不純物濃度のプロファイルの一例を示す図である。図23は、第1シミュレーション条件の結果と第2シミュレーション条件の結果との比較を示す図である。
図21に示されるように、ピーク濃度“α”が2.4E16/cmとなるケース(XII)の場合、ピーク電界とリーク電流の条件を満たす。しかしながら、その他のケース(XI)及び(XIII)の場合は、条件を満たさない。ここで注意すべきことは、ピーク濃度“α”に関して、先のN型半導体部104とP型半導体部100が概ね重なっていない場合の、図18と結果が異なることである。その比較を図23に示す。
N型半導体部104とP型半導体部100が重なっている場合は、N型半導体部104とP型半導体部100が重なっていな場合と比べて、N型半導体部104がP型半導体部100に埋もれている分だけ効果が低下する。このため、一桁近く濃度を高くしなければ、効果が得られない。また、重なりを更に深くすれば、更にその効果は減殺され、濃度を高くしなければならないはずである。なお、以上の数値的な結果は、シミュレーション条件により、上述の結論を覆さない程度の多少の変動は生じ得る。
例えばN型半導体部104の形状が図17(A)のような、ステップ関数に近くなれば、N型半導体部104の効果は若干高まり得る。これにより、当然のことながら、少し低いピーク濃度“α”でもN型半導体部104は効果を発揮し得る。また、前述の様に半導体部102の濃度と形状を最適化することによっても、より低い濃度でリークを抑えられることが期待される。一方、上述の通り、重なりが大きくなればその効果は減殺される。図18、図19、及び図21に示されたシミュレーション結果と、以上の定性的な傾向から、N型半導体部104の濃度が1E15/cm程度以上1E17/cm以下程度の場合は、概ね、実用に供し得る妥当な条件が存在すると考えられる。
2. 第2実施形態
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態では、アバランシェフォトダイオードAPDのアノードAELが表側に設けられる点において、第1実施形態と異なる。以下では、第1実施形態と異なる構成及び動作について主に説明する。第1実施形態と同等の構成及び動作については、説明を省略する。
2.1 ドメインの境界付近における平面レイアウト
図24は、第2実施形態に係る光検出器のドメインの境界付近における平面レイアウトの一例を示す断面図である。図24は、第1実施形態における図7に対応する。
複数のディープトレンチDTの各々の周囲には、対応するアバランシェフォトダイオードのアノードAELが設けられる。アノードAELは、例えば、P型半導体により形成される。同一のセンサ領域SRにおいて隣り合う2個のアノードAELは、接していてもよいし、接していなくてもよい。例えば、同一の画素PX内の2個のアバランシェフォトダイオードAPDの各々のアノードAELは、互いに接するように設けられ得る。異なる画素PX内の2個のアバランシェフォトダイオードAPDの各々のアノードAELは、互いに離れて設けられ得る。同一のセンサ領域SRにおいて、アノードAELを覆うように、アノードAELのカバー層COVが設けられる。カバー層COVは、例えば、N型半導体により形成される。
ドメインDMN1及びDMN2の間のドメイン境界DBには、分離部SEP1が設けられる。分離部SEP1は、例えば、カラム方向CAに延びる。分離部SEP1は、例えば、N型半導体により形成される。分離部SEP1は、ドメインDMN1及びDMN2を物理的及び電気的に分離する機能を有する。
センサ領域SRと回路領域CRとの間の回路境界CBには、分離部SEP2が設けられる。分離部SEP2は、例えば、カラム方向CAに延びる。分離部SEP2は、例えば、N型半導体により形成される。分離部SEP2は、センサ領域SR及び回路領域CRを物理的及び電気的に分離する機能を有する。
2.2 ドメインの境界付近における断面構造
図25は、第2実施形態に係る光検出器のドメインの境界付近における断面構造の一例を示す、図24のXXV-XXV線に沿った断面図である。図25は、第1実施形態における図8に対応する。図25に示される光検出器32は、例えば、FSI型の構造を有する。
光検出器32は、基板120、半導体層105、及び絶縁体層106を含む。
基板120は、P型半導体基板である。第1実施形態における複数のP型半導体部100等の形成に用いられるP型半導体基板と異なり、基板120は、薄膜化されない。また、第1実施形態における複数のP型半導体部100と異なり、基板120は、アノードAELとして機能しない。
基板120の上面上には、半導体層105が設けられる。半導体層105は、例えば、基板120の上面を起点としてシリコンをエピタキシャル成長させて形成される層である。半導体層105の導電型はN型でもP型でもよい。半導体層105に含まれる不純物の濃度は、例えば、5E15/cm以下である。
半導体層105の上面上には、絶縁体層106が積層される。絶縁体層106は、絶縁性透明材料により形成される。上述の通り、第2実施形態では、基板120が薄膜化されないため、絶縁体層106の上面上に支持部材は設けられなくてよい。
半導体層105の上部のうち、隣り合うアバランシェフォトダイオードAPDの間の領域には、複数のP型半導体部121、N型半導体部122、複数のP型半導体部123、及び複数の固定電荷膜124が設けられる。
複数のP型半導体部121の各々は、半導体層105の上部のうち、絶縁体膜112に対して、P型半導体部109及びN型半導体部110の組と反対側の領域に設けられる。すなわち、複数のP型半導体部121の各々は、半導体層105の上部のうち、隣り合う絶縁体膜112の間に設けられる。複数のP型半導体部121の各々は、対応するドメインDMNの端子VAに接続されるアノードAELとして機能する。
複数のP+型半導体部121の下面上及び側面上には、N型半導体部122が設けられる。N型半導体部122は、複数のP型半導体部121の下面及び側面を覆うカバー層COVとして機能する。N型半導体部122の膜厚は、例えば、0.2マイクロメートル以下である。N型半導体部122に含まれるN型不純物の濃度の下限は、半導体層105に含まれるN型不純物の濃度の10倍程度である。N型半導体部122に含まれるN型不純物の濃度の上限は、後述する半導体層105に含まれる不純物の濃度の1000倍程度である。より具体的には、例えば、半導体層105に含まれるN型不純物の濃度が1E14/cmの場合、N型半導体部104に含まれるN型不純物の濃度は、1E15/cm以上1E17/cm以下である。
複数の絶縁体膜112の下面上には、P型半導体部123が設けられる。P型半導体部123は、例えば、複数の絶縁体膜112を埋め込むために形成された溝の底部にボロン等のP型不純物をドープすることによって形成される。
複数の絶縁体膜112の側面のうち、P型半導体部121及びN型半導体部122が設けられる側の面上には、固定電荷膜124が設けられる。固定電荷膜124は、例えば、酸化ハフニウム(HfO)を含む。固定電荷膜124の導電型は、P型である。
2.3 第2実施形態に係る効果
第2実施形態によれば、2個のP型半導体部121は、半導体層105の上面側のうち、2個のP型半導体部121にそれぞれ対応する2個の絶縁体膜112の間に設けられる。2個のP型半導体部121と半導体層105との間に、2個のP型半導体部121を覆うようにN型半導体部122が設けられる。これにより、第1実施形態と同等の効果を奏することができる。
また、絶縁体膜112の底面上及び側面上にはそれぞれ、P型半導体部123、及び固定電荷膜124が設けられる。これにより、リーク電流の発生を更に抑制できる。
2.4 シミュレーション結果
以下に、第2実施形態に係る光検出器における選択動作の様子を示すシミュレーション結果を示す。
図26は、第2実施形態に係る光検出器における選択動作でアバランシェフォトダイオードに形成される電界分布の一例を示すダイアグラムである。図26では、選択ドメインDMN内の選択画素PXのアバランシェフォトダイオードAPDのPN接合付近に形成される電界のZ方向に沿ったプロファイルが実線L5で示される。また、図26では、非選択ドメインDMN内の非選択画素PXのアバランシェフォトダイオードAPDのPN接合付近に形成される電界のZ方向に沿ったプロファイルが点線L6で示される。
実線L5に示されるように、選択ドメインDMN内の選択画素PXでは、PN接合の境界において、閾値TH1を超える電界のピークが形成される。このため、選択ドメインDMNの選択画素PXのアバランシェフォトダイオードAPDは、ガイガーモードで動作し得ることが確認できる。
一方、点線L6に示されるように、非選択ドメインDMN内の非選択画素PXでは、PN接合の境界において、閾値TH1を十分に下回るピークが形成される。このため、非選択ドメインDMNの非選択画素PXのアバランシェフォトダイオードAPDは、PDモードで動作し得ることが確認できる。
図27は、第2実施形態に係る光検出器における選択動作でアバランシェフォトダイオードに形成される電子密度分布の一例を示すダイアグラムである。図27では、選択ドメインDMN内の選択画素PXのアバランシェフォトダイオードAPDに形成される電子密度のZ方向に沿ったプロファイルが実線L7で示される。また、図27では、非選択ドメインDMN内の非選択画素PXのアバランシェフォトダイオードAPDに形成される電子密度のZ方向に沿ったプロファイルが点線L8で示される。
実線L7に示されるように、選択ドメインDMN内の選択画素PXにおける電子密度は、絶縁体膜112の下端よりも深い位置まで、閾値TH2を十分に下回る。このため、選択ドメインDMNの選択画素PXのアバランシェフォトダイオードAPDでは、絶縁体膜112の下端よりも深い位置まで、空乏層が形成されていることが確認できる。なお、第1実施形態の図13の場合と比べて、空乏層の厚さが薄い傾向にある。これにより、第1実施形態の方が、半導体層105のより深い部分を効果的に利用でき、より高い検出効率が期待できる。
一方、点線L8に示されるように、非選択ドメインDMN内の非選択画素PXにおける電子密度は、PN接合からアノードAELの間のほとんどの領域で、閾値TH2を上回る。このため、非選択ドメインDMNの非選択画素PXのアバランシェフォトダイオードAPDでは、ほとんど空乏層が形成されないことが確認できる。
図28は、第2実施形態に係る光検出器における選択動作でドメイン間に形成される電流密度分布の一例を示すダイアグラムである。図28では、選択ドメインDMN内のアノードAELと非選択ドメインDMN内のアノードAELとの間において、電流密度が最大となる領域IDmaxが示される。
図28に示されるように、電流密度が最大となる領域IDmaxは、絶縁体膜112のうちアノードALE側の側面の周辺に発生する。しかしながら、領域IDmaxにおける電流密度の値は、4.6E-4A/cm程度であり、無視できる程度に小さい。このため、選択ドメインDMNのアノードALEと非選択ドメインDMNのアノードALEとの間に流れるリーク電流Ileakが抑制されていることが確認できる。
なお、P型半導体部123が省略される場合、P型半導体部123が省略されない場合よりも、選択ドメインDMN内のPN接合の境界におけるピーク電界が有意に(例えば、1.6E5V/cm程度に)低くなり、ガイガー現象が発生しなくなる。このように、ガイガー現象を発生させる観点から、P型半導体部123を設けることが効果的である。
3. 第3実施形態
次に、第3実施形態について説明する。第3実施形態では、アバランシェフォトダイオードAPDのアノードAELが表側及び裏側のいずれにも設けられる点において、第1実施形態及び第2実施形態と異なる。以下では、第1実施形態及び第2実施形態と異なる構成及び動作について主に説明する。第1実施形態及び第2実施形態と同等の構成及び動作については、説明を省略する。
3.1 ドメインの境界付近における断面構造
図29は、第3実施形態に係る光検出器のドメインの境界付近における断面構造の一例を示す断面図である。図29は、第1実施形態における図8、及び第2実施形態における図25に対応する。図29に示される光検出器32は、例えば、FSI型のWCSP構造を有する。
第1実施形態と同様、光検出器32は、複数のP型半導体部100、複数のN型半導体部101、複数の半導体部102、複数の導電体膜103、N型半導体部104、半導体層105、絶縁体層106、絶縁体層107、及び支持部材108を含む。
第2実施形態と同様、光検出器32は、複数のP型半導体部121、N型半導体部122、複数のP型半導体部123、及び複数の固定電荷膜124を含む。
上述の各種構成は、第1実施形態及び第2実施形態の場合と同等の構成を有する。
3.2 第3実施形態に係る効果
第3実施形態によれば、アノードAELとして、裏側にP型半導体部100、表側にP型半導体部121がそれぞれ設けられる。カバー層COVとして、裏側にN型半導体部104、表側にN型半導体部122がそれぞれ設けられる。これにより、第1実施形態におけるアノードAELの構成と、第2実施形態におけるアノードAELの構成と、を同時に実現できる。このため、第1実施形態、及び第2実施形態と同等の効果を奏することができる。
4. 第4実施形態
次に、第4実施形態について説明する。第4実施形態では、アバランシェフォトダイオードAPDの受光面が裏側に設けられる点において、第1実施形態、第2実施形態、及び第3実施形態と異なる。以下では、第1実施形態と異なる構成及び動作について主に説明する。第1実施形態と同等の構成及び動作については、説明を省略する。
4.1 ドメインの境界付近におけるレイアウト
図30は、第4実施形態に係る光検出器のドメインの境界付近における平面レイアウトの一例を示す断面図である。図30は、第1実施形態における図7に対応する。
ドメインDMN1及びDMN2の各々には、複数のセンサ領域SRが設けられる。なお、回路領域CRは、図30に示される面上には設けられない。
複数のセンサ領域SRの各々には、複数のアバランシェフォトダイオードAPDがマトリクス状に配置される。複数のアバランシェフォトダイオードAPDの各々は、例えば、矩形状を有する。複数のアバランシェフォトダイオードAPDの各々の周囲には、ビアTSVが設けられる。ビアTSVは、後述するように、光検出器32の裏側に形成されるアノードALEを表側に引き出すための構造である。複数のビアTSVの各々は、例えば、四角筒形状を有する。複数のビアTSVの各々の周囲には、ディープトレンチDTが設けられる。ディープトレンチDTは、例えば、Z方向に延びる四角筒状の構造体である。ディープトレンチDTは、隣り合うアバランシェフォトダイオードAPD間の光のクロストークを抑制する機能を有する。図30に示されるように、互いに隣り合うディープトレンチDTは、一体化していてもよい。
4.2 ドメインの境界付近における断面構造
図31は、第4実施形態に係る光検出器のドメインの境界付近における断面構造の一例を示す、図30のXXXI-XXXI線に沿った断面図である。図31は、第1実施形態における図8に対応する。図31に示される光検出器32は、例えば、BSI(Back-Side Illumination)型の構造を有する。
第1実施形態と同様、光検出器32は、複数のP型半導体部100、複数のN型半導体部101、複数の半導体部102、N型半導体部104、半導体層105、複数のP型半導体部109、複数のN型半導体部110、複数の導電体膜111、複数の絶縁体膜112、及び複数のN型半導体部114を含む。
型半導体部100の下面上には、Z方向に見てセンサ領域SRと重複する領域において、複数のレンズ131が設けられる。複数のレンズ131の各々は、Z方向に見て、対応するP型半導体部109及びN型半導体部110の組を覆うように配置される。複数のレンズ131は、光検出器32の裏側からの光を集光し、対応するアバランシェフォトダイオードAPDに入射させるように構成される。複数のレンズ131は、マイクロレンズアレイとして機能する。
半導体層105の上面上には、絶縁体層132、及び支持部材133がこの順に積層される。絶縁体層132及び支持部材133は、絶縁材料、金属、あるいはシリコンにより形成される。絶縁材料、金属、あるいはシリコンの絶縁体層132内には、第1実施形態において回路領域CRに形成される各種回路が形成され得る。
半導体層105、N型半導体部104、及びP型半導体部100を貫通するように、複数のビアTSVが設けられる。複数のビアTSVの各々は、導電体膜134及び135、並びに絶縁体膜136を含む。
導電体膜134は、例えば、金属材料により形成される。導電体膜134は、P型半導体部100と同じ層に設けられ、P型半導体部100と接する。
導電体膜134の上面上には、Z方向に延びる導電体膜135が設けられる。導電体膜135は、例えば、金属材料により形成される。導電体膜135の上面は、半導体層105の上面と揃う。
導電体膜135の側面上には、絶縁体膜136が設けられる。絶縁体膜136は、例えば、絶縁材料により形成される。絶縁体膜136は、導電体膜135と半導体層105との間に設けられることにより、導電体膜135と半導体層105とを電気的に絶縁する。
導電体膜135の上面上には、導電体膜137が設けられる。導電体膜137は、図示せぬ配線層を介して、絶縁体層132内の各種回路と電気的に接続される。
4.3 第4実施形態に係る効果
第4実施形態によれば、導電体膜135は、導電体膜134を介してP型半導体部100に接する下端と、半導体層105の上面に達する上端と、を有する。絶縁体膜136は、半導体層105と導電体膜135との間に設けられる。これにより、裏側に設けられたアノードAELを表側に引き出すことができる。このため、表側の絶縁体層132に各種回路が形成されるBSI構造を実現できる。したがって、BSI構造においても、第1実施形態と同等の効果を奏することができる。
5. 変形例等
以上、種々の実施形態について説明したが、上述の第1実施形態乃至第4実施形態は、これに限られず、種々の変形が適宜適用可能である。
5.1 第1変形例
上述の第1実施形態、第3実施形態、及び第4実施形態では、半導体層105のエピタキシャル成長の起点として、導電性を有する半導体基板が用いられる場合について説明したが、これに限られない。例えば、半導体層105のエピタキシャル成長の起点として、絶縁性を有する半導体基板が用いられてもよい。
図32は、第1変形例に係る光検出器のドメインの境界付近における断面構造の一例を示す断面図である。図32は、第1実施形態における図8に対応する。
図32に示される光検出器32は、N型半導体部104と半導体層105との間に、基板140を更に備える。
基板140は、真性の半導体基板である。基板140の下面上には、N型半導体部104が設けられる。N型半導体層の下面上には、P型半導体部100、N型半導体部101、及び半導体部102が設けられる。N型半導体部104、P型半導体部100、N型半導体部101、及び半導体部102は、例えば、基板140にリン等のN型不純物及びボロン等のP型不純物が拡散又はドープされることで形成される。
基板140の上面上には、半導体層105が設けられる。半導体層105は、例えば、基板140の上面を起点としてシリコンをエピタキシャル成長させて形成される層である。半導体層105の導電型はN型でもP型でもよい。半導体層105に含まれる不純物の濃度は、例えば、5E15/cm以下である。
以上により、ドメインDMN毎のアノードAELは、1個の基板140に並列接続される構成となる。上述の通り、基板140は、真性の半導体基板であるため、絶縁性を有するとみなせる。このため、ドメインDMN毎のアノードAELに異なる電圧を印加しても、アノードAEL間にリーク電流Ileakが流れることを抑制できる。したがって、上述の第1実施形態、第3実施形態、及び第4実施形態と同等の効果を奏することができる。
5.2 第2変形例
上述の第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態、及び第4実施形態では、P型半導体部109の上面上にN型半導体部110が設けられることによってPN接合が形成される場合について説明したが、これに限られない。例えば、PN接合を形成するP型半導体部及びN型半導体部の上下関係は、反転してもよい。
図33は、第2変形例に係る光検出器のドメインの境界付近における断面構造の一例を示す断面図である。図33は、第1実施形態における図8に対応する。
図33に示される光検出器32は、第1実施形態におけるP型半導体部100、N型半導体部101、半導体部102、N型半導体部104、P型半導体部109、N型半導体部110、N型ウェル領域115、及びP型ウェル領域116に代えて、N型半導体部100A、P型半導体部101A、P型半導体部104A、N型半導体部109A、P型半導体部110A、P型ウェル領域115A、及びN型ウェル領域116Aを含む。N型半導体部100A、P型半導体部101A、P型半導体部104A、N型半導体部109A、P型半導体部110A、P型ウェル領域115A、及びN型ウェル領域116Aはそれぞれ、第1実施形態におけるP型半導体部100、N型半導体部101、半導体部102、N型半導体部104、P型半導体部109、N型半導体部110、N型ウェル領域115、及びP型ウェル領域116の導電型が反転したものである。
なお、図33では、半導体部102及び半導体層105の導電型は、P型の場合が示されるが、半導体部102及び半導体層105の導電型は、N型でもよい。半導体層105の導電型がN型の場合、P型ウェル領域115A及びN型ウェル領域116Aの導電型は、反転する。
図33に示される例の場合、ドメインDMN1と重複する領域内のN型半導体部100A及び導電体膜111はそれぞれ、ドメインDMN1内のアバランシェフォトダイオードAPDのカソードCEL及びアノードAELとして機能する。また、ドメインDMN2と重複する領域内のN型半導体部100A及び導電体膜111はそれぞれ、ドメインDMN2内のアバランシェフォトダイオードAPDのカソードCEL及びアノードAELとして機能する。
なお、N型不純物の濃度に対するN型半導体の比抵抗と、P型不純物の濃度に対するP型半導体の比抵抗とは、異なる。このため、第1実施形態において示したN型不純物及びP型不純物の濃度は、第2変形例にて代替された構成に対してはそのまま適用されないが、その濃度比率については適用され得る。すなわち、P型半導体部104Aに含まれるP型不純物の濃度の下限は、半導体層105に含まれる不純物の濃度の10倍程度である。P型半導体部104Aに含まれるP型不純物の濃度の上限は、半導体層105に含まれる不純物の濃度の1000倍程度である。
以上のような構成によっても、アバランシェフォトダイオードAPDは、ガイガーモードで動作することができる。このため、上述の第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態、及び第4実施形態と同等の効果を奏することができる。
5.3 第3変形例
上述の第2実施形態及び第3実施形態では、分離部SEP1及びSEP2としてN型半導体部が設けられる場合について説明したが、これに限られない。例えば、分離部SEP1及びSEP2として、ディープトレンチが設けられてもよい。
図34は、第3変形例に係る光検出器のドメインの境界付近における断面構造の一例を示す断面図である。図34は、第2実施形態における図25に対応する。
図34に示されるように、光検出器32には、第2実施形態におけるN型半導体部114及び119に代えて、絶縁体膜114A及び119Aが設けられ得る。絶縁体膜114A及び119Aは、ディープトレンチDTとして機能するとともに、それぞれ分離部SEP1及びSEP2として機能する。これにより、より面積効率を向上させつつ、回路及びドメイン間を分離することができる。
なお、図34では、上述の変形例が第2実施形態に適用される場合について説明したが、同等の変形が、第3実施形態についても適用可能である。基本的にその特徴は、図34について示した特徴と同じであるため、これ以上の説明を省略する。
5.4 第4変形例
上述の第4実施形態では、P型半導体部100間を分離する構成としてN型半導体部が設けられる場合について説明したが、これに限られない。例えば、P型半導体部100間を分離する構成として、ディープトレンチが設けられてもよい。
図35は、第4変形例に係る光検出器のドメインの境界付近における断面構造の一例を示す断面図である。図35は、第4実施形態における図31に対応する。
図35に示されるように、光検出器32には、第4実施形態におけるN型半導体部101及び114に代えて、絶縁体膜101B及び114Bが設けられ得る。絶縁体膜101B及び114Bは、絶縁体膜101Bは、ディープトレンチDTとして機能するとともに、P型半導体部100間を分離する構成、及び分離部SEP1としてそれぞれ機能する。これにより、より面積効率を向上させつつ、回路及びドメイン間を分離することができる。
なお、絶縁体膜101B及び114Bは、Z方向に見て、格子状に設けられる。図30の例では、ドメインDMN間におけるアバランシェフォトダイオードAPD間に2重にディープトレンチDTがあるように図示されているが、図35に示されるように、ドメインDMN間におけるディープトレンチDTは、1重でも構わない。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
1…距離計測装置
10…制御部
20…出射部
21,22…駆動回路
23…光源
24,31…光学系
25…ミラー
30…受光部
32…光検出器
33…出力回路
40…計測部
50…電源回路
51…SPAD
52…選択回路
53…シフト回路
100,109,121,123,101A,110A…P型半導体部
101,110,114,119,100A,109A…N型半導体部
102…半導体部
104,122…N型半導体部
104A…P型半導体部
103,111,134,135,137…導電体膜
105…半導体層
106,107,132…絶縁体層
108,133…支持部材
112,136,114A,119A,101B,114B…絶縁体膜
113,131…レンズ
115,117,116A…N型ウェル領域
116,118,115A…P型ウェル領域
120,140…基板
124…固定電荷膜

Claims (18)

  1. 互いに離れて設けられる、各々が第1導電型の第1半導体部及び第2半導体部と、
    対向する第1面及び第2面を有する、前記第1導電型又は第2導電型の半導体層と、
    前記第1半導体部及び前記第2半導体部と、前記半導体層と、の間に設けられる前記第2導電型の第3半導体部と、
    前記第1半導体部に対応し、前記半導体層内の前記第1面側において互いに接するように設けられる、前記第1導電型の第4半導体部及び前記第2導電型の第5半導体部と、
    前記第2半導体部に対応し、前記半導体層内の前記第1面側において互いに接するように設けられる、前記第1導電型の第6半導体部及び前記第2導電型の第7半導体部と、
    を備え、
    前記第3半導体部の不純物濃度は、前記半導体層の不純物濃度より高い、
    光検出器。
  2. 前記第3半導体部の不純物濃度は、前記半導体層の不純物濃度の10倍以上1000倍以下である、
    請求項1記載の光検出器。
  3. 前記第3半導体部の厚さは、0.2マイクロメートル以下である、
    請求項1記載の光検出器。
  4. 前記第3半導体部は、前記第1半導体部及び前記第2半導体部と接する、
    請求項1記載の光検出器。
  5. 前記半導体層内で、前記第1面から前記第1面と交差する第1方向に延び、前記第1方向に見て前記第4半導体部及び前記第5半導体部を囲む第1絶縁体膜と、
    前記半導体層内で、前記第1面から前記第1方向に延び、前記第1方向に見て前記第6半導体部及び前記第7半導体部を囲む第2絶縁体膜と、
    を更に備え、
    前記半導体層の前記第1面から前記半導体層の前記第2面までの長さは、前記第1絶縁体膜及び前記第2絶縁体膜の前記第1方向に沿った長さより長い、
    請求項1記載の光検出器。
  6. 前記第1半導体部と前記第2半導体部との間に設けられる前記第2導電型の第8半導体部を更に備え、
    前記第3半導体部の不純物濃度は、前記第8半導体部の不純物濃度より低い、
    請求項1記載の光検出器。
  7. 前記第1半導体部及び前記第2半導体部と前記第8半導体部との間に設けられる第9半導体部を更に備え、
    前記第9半導体部の不純物濃度は、前記第8半導体部の不純物濃度より低い、
    請求項6記載の光検出器。
  8. 前記第1半導体部及び前記第2半導体部は、前記半導体層の前記第2面側に設けられる、
    請求項1記載の光検出器。
  9. 前記第1半導体部に対して前記半導体層と反対側において、前記第1半導体部に接する第1金属膜と、
    前記第2半導体部に対して前記半導体層と反対側において、前記第2半導体部に接する第2金属膜と、
    更に備えた、
    請求項8記載の光検出器。
  10. 前記第1半導体部及び前記第2半導体部の下端から前記半導体層の上端までの厚さは、20マイクロメートル以上50マイクロメートル以下である、
    請求項8記載の光検出器。
  11. 前記半導体層と前記第3半導体部との間に設けられた真性の半導体基板を更に備えた、
    請求項8記載の光検出器。
  12. 前記第1面と交差する第1方向に延び、前記第1半導体部に接する下端と、前記半導体層の前記第1面に達する上端と、を有する第3導電体膜と、
    前記半導体層と前記第3導電体膜との間に設けられる第3絶縁体膜と、
    前記第1方向に延び、前記第2半導体部に接する下端と、前記半導体層の前記第1面に達する上端と、を有する第4導電体膜と、
    前記半導体層と前記第4導電体膜との間に設けられる第4絶縁体膜と、
    を更に備えた、
    請求項8記載の光検出器。
  13. 前記第1半導体部及び前記第2半導体部は、前記半導体層の前記第1面側のうち、前記第1絶縁体膜と前記第2絶縁体膜との間に設けられる、
    請求項5記載の光検出器。
  14. 前記第1絶縁体膜の側面のうち、前記第1半導体部及び前記第2半導体部が設けられる側の側面上に設けられる、前記第1導電型の第1固定電荷膜と、
    前記第2絶縁体膜の側面のうち、前記第1半導体部及び前記第2半導体部が設けられる側の側面上に設けられる、前記第1導電型の第2固定電荷膜と、
    を更に備えた、
    請求項13記載の光検出器。
  15. 前記第1絶縁体膜の底面上に設けられる、前記第1導電型の第10半導体部と、
    前記第2絶縁体膜の底面上に設けられる、前記第1導電型の第11半導体部と、
    を更に備えた、
    請求項13記載の光検出器。
  16. 各々が複数の画素を含む第1ドメイン及び第2ドメインを備え、
    前記第1ドメイン内の前記複数の画素の各々は、第1アノード電極を有する第1アバランシェフォトダイオードを含み、
    前記第2ドメイン内の前記複数の画素の各々は、前記第1アノード電極とは独立した電圧が供給されるように構成された第2アノード電極を有する第2アバランシェフォトダイオードを含む、
    光検出器。
  17. 前記第1ドメイン内の画素を選択する場合、前記第2アノード電極には、前記第1アノード電極に印加される電圧よりも10V以上高い電圧が印加されるように構成された、
    請求項16記載の光検出器。
  18. 光源からの出射光を投光するように構成された出射部と、
    前記出射光の反射光を受光するように構成された受光部と、
    前記出射部が前記出射光を投光した時刻と、前記受光部が前記反射光を受光した時刻とに基づいて、距離を計測するように構成された計測部と、
    を備え、
    前記受光部は、請求項1又は請求項16記載の光検出器を含む、
    距離計測装置。
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