JP2024034185A - 角形鋼管柱補強構造の設計方法、及び角形鋼管柱補強構造 - Google Patents
角形鋼管柱補強構造の設計方法、及び角形鋼管柱補強構造 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】容易な設計方法にて、変形性能を適切に向上させることができる角形鋼管柱補強構造の設計方法、及び角形鋼管柱補強構造を提供する。【解決手段】設定した要求性能に基づいて、巻込型の弾性局部座屈耐力を計算する第2の工程を備える。角形鋼管柱1の変形態様として、効率的に変形性能を向上できる巻込型の変形態様が発生しやすくなるように設計することが可能となる。補強材に関する一部のパラメータを仮設定する第3の工程と、計算した巻込型の弾性局部座屈耐力、及び仮設定した一部のパラメータを用いて、補強材に関する他のパラメータの条件を計算する第4の工程を備える。要求性能を満たすような巻込型の弾性局部座屈耐力となるように、補強材に関する一部パラメータを仮設定し、当該仮設定に基づいて残りのパラメータの条件を計算することで、要求性能を満たすためのパラメータを容易に決定することができる。【選択図】図17
Description
特許法第30条第2項適用申請有り ▲1▼発行日 令和4年7月20日 ▲2▼刊行物(刊行物名、巻数、号数、該当ページ、発行所/発行元等) 日本建築学会2022年度大会(北海道)学術講演梗概集pp.1141-1144 発行所/一般社団法人日本建築学会
本発明は、角形鋼管柱補強構造の設計方法、及び角形鋼管柱補強構造に関する。
建築物の耐震性能は構成部材の耐力と変形性能で評価される。角形鋼管柱では幅厚比(外径/板厚)が大きい場合、外力を受けて該柱端部に局部座屈が発生すると、早期に耐力を喪失してしまい、変形性能に乏しいことが問題となる。これに対し建築設計では角形鋼管柱の幅厚比に応じて設計外力を割り増すことで安全性の検証を行っている。一方で、角形鋼管柱の耐震性能を向上させるため、該柱の耐力あるいは変形性能を向上させる工法が提案されており、耐力向上を目的とした事例が多くを占めている。
ここで、角形鋼管柱の耐力または変形性能を向上させるため、当該柱端部に補強材を配置するような補強構造が採用される場合がある。例えば、角形鋼管柱の耐力向上を意図した補強工法として、リブプレート補強の工法や、カバープレート補強の工法などが採用される場合がある。例えば後者の工法は、『(一財)日本建築センター;2018年版冷間成形角形鋼管設計・施工マニュアル補遺「STKR柱補強設計・施工マニュアル」』に既存建築物の耐震改修手段として設計法がまとめられている。
また、角形鋼管柱の変形性能向上を意図した補強工法として、特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1には、角形鋼管柱端部の外面あるいは内面の少なくとも一方側から間隙を介して補強材を配置し、角形鋼管柱が局部座屈変形した際に補強材が当接して局部座屈変形を規制可能な角形鋼管柱の変形性能を向上させようとする構造が記載されている。あるいは、損傷した角形鋼管柱の耐力回復を意図した補修工法として、『(一財)日本建築防災協会;震災建築物等の被災度区分判定基準および復旧技術指針(2015)』などには、地震によって損傷した角形鋼管柱の局部座屈変形が発生した箇所に外側からカバープレートを当てて溶接することで耐力を元の鋼管と同等まで回復させる工法が記載されている。
ここで、幅厚比の大きな角形鋼管柱は外力を受けた際、早期に耐力を喪失するため、変形性能に乏しいという問題がある。また、従来の角形鋼管柱の補強工法は、主として耐力を向上させることを目的としたものが多く、過度な耐力の向上は周辺部材の設計への影響が懸念される場合がある。従って、容易な設計方法にて、耐力を過度に向上させずに変形性能を適切に向上させることが求められていた。
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、容易な設計方法にて、変形性能を適切に向上させることができる角形鋼管柱補強構造の設計方法、及び角形鋼管柱補強構造を提供することを目的とする。
本発明に係る角形鋼管柱補強構造の設計方法は、角形鋼管柱と、角形鋼管柱の側壁部の外面及び内面の少なくとも一方に対して、角形鋼管柱の長手方向の端面から離間する位置に設けられた板状の補強材と、を備える角形鋼管柱補強構造の設計方法であって、角形鋼管柱補強構造の要求性能を設定する第1の工程と、設定した要求性能に基づいて、巻込型の弾性局部座屈耐力を計算する第2の工程と、補強材に関する一部のパラメータを仮設定する第3の工程と、計算した巻込型の弾性局部座屈耐力、及び仮設定した一部のパラメータを用いて、補強材に関する他のパラメータの条件を計算する第4の工程と、第4の工程で計算した条件を用いて、パラメータを決定する第5の工程と、を備える。
この角形鋼管柱補強構造の設計方法は、設定した要求性能に基づいて、巻込型の弾性局部座屈耐力を計算する第2の工程を備える。これにより、角形鋼管柱の変形態様として、効率的に変形性能を向上できる巻込型の変形態様が発生しやすくなるように設計することが可能となる。また、角形鋼管柱補強構造の設計方法は、補強材に関する一部のパラメータを仮設定する第3の工程と、計算した巻込型の弾性局部座屈耐力、及び仮設定した一部のパラメータを用いて、補強材に関する他のパラメータの条件を計算する第4の工程を備える。このように、要求性能を満たすような巻込型の弾性局部座屈耐力となるように、補強材に関する一部パラメータを仮設定し、当該仮設定に基づいて残りのパラメータの条件を計算することで、要求性能を満たすためのパラメータを容易に決定することができる。以上より、容易な設計方法にて、変形性能を適切に向上させることができる。
第2の工程では、設定した要求性能を満たすような巻込型の基準化幅厚比を計算し、当該基準化幅厚比に対応する巻込型の弾性局部座屈耐力を計算してよい。この場合、基準化幅厚比を用いることで、容易に巻込型の弾性局部座屈耐力を計算することができる。
巻込型の基準化幅厚比は、巻込型の塑性変形倍率と巻込型の基準化幅厚比との関係に基づいて計算されてよい。この場合、予め定められた関係に基づくことで、容易に巻込型の基準化幅厚比を計算することができる。
具体的に、巻込型の塑性変形倍率と巻込型の基準化幅厚比との関係は、巻込型の塑性変形倍率をcη90%とし、巻込型の角形鋼管柱の基準化幅厚比をcSHRとした場合、式(14)で示されてよい。
巻込型の弾性局部座屈耐力は、基準化幅厚比と補強した角形鋼管柱の弾性局部座屈耐力との関係に基づいて計算されてよい。この場合、予め定められた関係に基づくことで、容易に巻込型の弾性局部座屈耐力を計算することができる。
具体的に、基準化幅厚比と補強した角形鋼管柱の弾性局部座屈耐力との関係は、基準化幅厚比をSHRとし、無補強の角形鋼管柱の降伏点をσyとし、無補強の角形鋼管柱の塑性断面係数をZpとし、補強した角形鋼管柱の弾性局部座屈耐力をPcrとし、角形鋼管柱の長さを2Lとした場合、式(12)で示されてよい。
第3の工程では、一部のパラメータとして、補強材の補強材板厚、及び補強材幅の一方の値を仮設定し、巻込型の弾性局部座屈耐力、補強材板厚、及び補強材幅との関係に基づいて、他方の値を計算してよい。この場合、予め定められた関係に基づくことで、容易に巻込型の弾性局部座屈耐力を計算することができる。この場合、予め定められた関係に基づいて、補強材の補強材板厚、及び補強材幅の両方の値を容易に仮設定することができる。
具体的に、巻込型の弾性局部座屈耐力、補強材板厚、及び補強材幅との関係は、巻込型の弾性局部座屈耐力をcPcrとし、角形鋼管柱の径をDとし、角形鋼管柱の長さを2Lとし、角形鋼管柱の板厚をtとし、角形鋼管柱のヤング係数をEとし、角形鋼管柱のポアソン比をνとし、補強材の板厚をtrとし、補強材の幅をbrとし、補強材の断面積を角形鋼管柱の外周に均等に配分したと仮定した角形鋼管柱の増厚分の板厚をtr’とし、当該仮定した角形鋼管柱の断面係数をZ’とした場合、式(11)で示されてよい。
第3の工程では、一部のパラメータとして、補強材の補強材板厚、及び補強材幅の値が仮設定され、第4の工程では、仮設定された補強材板厚、及び補強材幅を用い、巻込型の弾性局部座屈耐力が非巻込型の弾性局部座屈耐力、補強材板厚、補強材幅、及び補強長さとの関係に基づく非巻込型の弾性局部座屈耐力以下となるように、他のパラメータである補強長さの条件を計算してよい。この場合、非巻込型の弾性局部座屈耐力、補強材板厚、補強材幅、及び補強長さとで予め定められた関係、及び巻込型の変形態様が発生することによって効率的に変形性能を向上できるような条件にて、他のパラメータを計算することができる。
具体的に、巻込型の弾性局部座屈耐力、補強材板厚、及び補強材幅との関係は、巻込型の弾性局部座屈耐力をcPcrとし、角形鋼管柱の径をDとし、角形鋼管柱の長さを2Lとし、角形鋼管柱の板厚をtとし、角形鋼管柱のヤング係数をEとし、角形鋼管柱のポアソン比をνとし、補強材の板厚をtrとし、補強材の幅をbrとし、補強材の断面積を角形鋼管柱の外周に均等に配分したと仮定した角形鋼管柱の増厚分の板厚をtr’とし、仮定した角形鋼管柱の断面係数をZ’とした場合、式(11)で示され、非巻込型の弾性局部座屈耐力、補強材板厚、補強材幅、及び補強長さとの関係は、非巻込型の弾性局部座屈耐力をnPcrとし、角形鋼管柱の径をDとし、角形鋼管柱の長さを2Lとし、角形鋼管柱の板厚をtとし、角形鋼管柱のヤング係数をEとし、角形鋼管柱のポアソン比をνとし、角形鋼管柱の断面係数をZとし、補強材の板厚をtrとし、端面から補強材の端部までの補強長さをhrとし、補強材の幅をbrとした場合、式(10)で示され、第4の工程では、仮設定された補強材板厚、及び補強材幅を用い、nPcr≧cPcrとなるように、他のパラメータである補強長さの条件を計算してよい。
本発明に係る角形鋼管柱補強構造は、上述の角形鋼管柱補強構造の設計方法を用いて製造される。この角形鋼管柱補強構造によれば、上述の角形鋼管柱補強構造の設計方法と同様な作用・効果を得ることができる。
本発明によれば、容易な設計方法にて、変形性能を適切に向上させることができる。
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る角形鋼管柱補強構造100が採用された柱梁接合構造50を示す斜視図である。図2は、角形鋼管柱1の全体を示す図である。図1及び図2に示すように、柱梁接合構造50は、角形鋼管柱1と、当該角形鋼管柱1に接合された梁2と、接合コア3と、を備える。なお、図1及び図2は、角形鋼管柱補強構造の適用先の一例を示しているに過ぎず、適用先は適宜変更可能である。
角形鋼管柱1は、四角形断面を有する鋼管によって構成される。上側の角形鋼管柱1と、下側の角形鋼管柱1とは、接合コア3を介して互いに上下方向に接続される。角形鋼管柱1は、四方の側壁部10を有する。角形鋼管柱1は、長手方向(上下方向)の下側の端面1aと、上側の端面1bと、を有する。
四方の梁2は、接合コア3を介して角形鋼管柱1と接合される。梁2は、断面H形の形状を有しており、上下のフランジ2a,2bと、フランジ2a,2b同士を接続するウェブ部2cと、を備える。
接合コア3は、四角形の断面を有する鋼管部3aと、鋼管部3aの上側の端面、及び下側の端面に形成されたダイヤフラム3b,3cと、を備える。上側の角形鋼管柱1の下側の端面1aは、接合コア3のダイヤフラム3bに接合される。下側の角形鋼管柱1の上側の端面1bは、接合コア3のダイヤフラム3cに接続される。また、梁2の上下のフランジ2a,2bも上下のダイヤフラム3b,3cの位置にて接合される。
角形鋼管柱補強構造100は、上述の角形鋼管柱1と、複数の補強材20と、を備える。補強材20は、角形鋼管柱1の側壁部10の外面及び内面の少なくとも一方に対して、角形鋼管柱1の端面1a,1bから離間する位置に設けられた四角形の板状の部材である。本実施形態では、補強材20は、四角形に形成されており、側壁部10の外面に固定されている。補強材20は、角形鋼管柱1の下側の端面1a付近において、四方の側壁部10の全てに対して設けられている。補強材20は、角形鋼管柱1の上側の端面1b付近において、四方の側壁部10の全てに対して設けられている。従って、一本の角形鋼管柱1に対して、合計八つの補強材20が設けられている。
次に、図3を参照して、角形鋼管柱補強構造100の寸法関係について説明する。なお、図3は、角形鋼管柱1の下側の構成を示しているが、上側も同趣旨の構成を有している。図3(a)に示すように、角形鋼管柱1の径をDとする。角形鋼管柱1の板厚をtとする。図3(b)に示すように、角形鋼管柱1の下側の端面1aから補強材20の端面1aから離間する側の端部20aまでの補強長さをhrとする。角形鋼管柱1の下側の端面1aから補強材20の端面1aに近い側の端部20bまでの隙間をSrとする。なお、端部20a,20bは、角形鋼管柱1の端面1aと平行をなす。補強材20の幅をbrとする。補強材20は、幅方向において、側壁部10の中央位置に配置されている。補強材20の幅方向の両端部20c,20dは、側壁部10の両端部10a,10bから幅方向の内側に離間した位置にて、両端部10a,10bと平行をなす。補強材20の板厚をtrとする。また、角形鋼管柱1の長さを2Lとする。具体的には、「角形鋼管柱の径D×板厚t」については、冷間ロール成形角形鋼管で「□200×6~□550×19」の範囲としてよく、冷間プレス成形角形鋼管で「□350×12~□1000×32」としてよい。隙間は「0≦Sr/D≦0.27」としてよい。なお、補強材20の素材は鋼材とし、強度クラスは角形鋼管柱1と同等か上下1ランク以内とする。
次に、角形鋼管柱補強構造100の各部位の好ましい寸法関係の設定について説明を行う。まず、図4~図6を参照して、角形鋼管柱補強構造100の耐力についての試験について説明する。具体的に、角形鋼管柱補強構造100の補強効果の確認のため、補強材20の板厚tr、補強長さhrを変数とした実大3点曲げ試験(単調/繰返し載荷)を実施した。試験体として、図4(a)に示すものを準備した。図中の「A」で示す部分の拡大図を図4(b)に示す。角形鋼管柱1の四方に補強材20を設けた試験体を二つ準備し、各角形鋼管柱1のうち、補強材20が設けられた側の端部を支持部材32で支持した。また、各角形鋼管柱1の反対側の端部をそれぞれ支持部材31で支持した。中央の支持部材32に荷重を与えて、測定を行い、局部座屈の性状を観察した。なお、補強材20を設けない「無補強」に係る試験体も準備した。
試験は、荷重を単調に与える「単調載荷」と、繰り返し与える「繰返し載荷」の条件にて行った。試験諸元及び試験結果の一覧を図5に示す。また、図6(a)に単調載荷における荷重変形関係の試験結果を示す。図6(b)に繰返し載荷における荷重変形関係の試験結果を示す。図5から補強した場合の最大耐力は無補強に対して同等以上であり、耐力が元の角形鋼管柱と同等以上となることを確認した。また、「補強2.3×360」が最も補強効果が高く、変形性能は無補強に対して単調載荷における塑性変形倍率で1.36倍、繰返し載荷における累積塑性変形倍率で1.60倍となった。実施したケースでは補強長さの長い360mmの2体の試験体では巻込型、補強長さの短い240mmの試験体では非巻込型の局部座屈が発生し、巻込型とした方が変形性能向上に有効であることを確認した。なお、巻込型とは、角形鋼管柱の局部座屈変形を補強材が拘束しながら変形が進行するような変形態様のことである(例えば、図8(b)参照)。非巻込型とは、ダイアフラムと接合される角形鋼管柱の端面から補強材の端部までの補強長さhrを超えた無補強部に座屈の頂点が現れる局部座屈が発生し、そのまま変形が進行するような変形態様のことである(例えば、図8(a)参照)。なお、後述の隙間型とは、ダイアフラムと接合される角形鋼管柱の端面から当該端面に近い側の補強材の端部までの隙間Sr内に座屈の頂点が現れる局部座屈が発生し、そのまま変形が進行するような変形態様のことである(例えば、図8(c)参照)。
図2、図3と図7~図9を参照して、非線形解析について説明する。ここで、図2のような複曲率曲げを受ける長さ2Lの角形鋼管柱1の力学的挙動は、図7に示すように、一端を固定端とし、他端を自由端とした長さLの角形鋼管柱1の自由端に横方向の荷重を付与する片持柱モデルで概ね予測できる。よって解析は図7に示す片持柱モデルで検討した。
<解析概要>
(1)角形鋼管柱:幅厚比D/t=33.3、せん断スパン比L/D=5
(2)補強材:矩形板
・補強材板厚比tr/t=0.13、0.26、0.36、0.50、0.67
(例:角形鋼管□300×9、tr/t=0.50の場合、tr=4.5mm)
・補強長さ比hr/D=0.4、0.6、0.8、1.0、1.2、2.2
(例:角形鋼管□300×9、hr/D=0.60の場合、hr=240mm)
・補強材幅比br/D=0.2、0.5、0.8
・隙間比sr/D=0.2は固定
(3)材料物性:構造試験で使用した材料の引張試験結果に基づき設定
<解析概要>
(1)角形鋼管柱:幅厚比D/t=33.3、せん断スパン比L/D=5
(2)補強材:矩形板
・補強材板厚比tr/t=0.13、0.26、0.36、0.50、0.67
(例:角形鋼管□300×9、tr/t=0.50の場合、tr=4.5mm)
・補強長さ比hr/D=0.4、0.6、0.8、1.0、1.2、2.2
(例:角形鋼管□300×9、hr/D=0.60の場合、hr=240mm)
・補強材幅比br/D=0.2、0.5、0.8
・隙間比sr/D=0.2は固定
(3)材料物性:構造試験で使用した材料の引張試験結果に基づき設定
非線形解析の結果、図8に示す3種類の局部座屈性状が見られた。これらの変形態様のタイプは、前述の構造試験で説明したものと同様である。図9は、補強材20の板厚と変形性能(塑性変形倍率)との関係を示すグラフである。変形性能を向上させる効果は補強仕様に応じて大小さまざまであり、局部座屈性状と関連があることが確認できる。また、補強による鋼材量の増加を抑えつつ効率的に変形性能を向上させるためには、角形鋼管柱1の要求性能を満足する補強仕様を、材料の入手性やコスト、施工性等の観点から選択できることが望ましい。ただし、角形鋼管と補強仕様の組み合わせは膨大で相互に影響を及ぼすため、構造実験・非線形解析をして初めてどの局部座屈性状となるか、どの程度の変形性能をもつか整理する必要がある。
次に、補強した角形鋼管柱の弾性座屈モードと構造実験・非線形解析の局部座屈性状の関係について検討する。局部座屈性状の分析のため、補強した角形鋼管柱1そのものの線形座屈解析を次の要領で実施した。材料物性を「ヤング係数:205000N/mm2、ポアソン比:0.3」とした以外は、角形鋼管柱1及び補強材20の条件は上述の図7の非線形解析と同じ条件とした。
本補強構造での線形座屈解析の結果、構造試験・非線形解析で観測された非巻込型/巻込型の局部座屈性状と同様の特徴を持つ弾性座屈モードが観測された。ただし、一つの補強仕様に対して必ずしも一方のみの弾性座屈モードが現れるとは限らず、例えば低次のあるモードは非巻込型の特徴を持ち、別のモードは巻込型の特徴を持つ、といったように、両方が現れる場合もあった。
図10は、図9の補強材20の板厚と変形性能(塑性変形倍率)との関係を示すグラフから隙間型の結果を除いたものである。図10は、最小の弾性局部座屈耐力を与える弾性座屈モードと、構造試験・非線形解析の局部座屈性状の対応を示す。図10において、塗りつぶされたシンボルは線形座屈解析で得られた最小の弾性局部座屈耐力を与える弾性座屈モードと構造試験・非線形解析の局部座屈性状が異なったものを示す。ある補強仕様での非巻込型あるいは巻込型と同様の特徴を持つ弾性座屈モードのうち、最小の弾性局部座屈耐力を与える弾性座屈モードと構造試験・非線形解析の局部座屈性状は概ね対応していることを確認した。
したがって、ある補強仕様における局部座屈性状は、線形座屈解析で得られる最小の弾性局部座屈耐力に対応する弾性座屈モードが非巻込型/巻込型のどちらになるかで確認できる。そこで次は、角形鋼管柱と補強仕様に関わる変数と弾性局部座屈耐力の関係式について検討した。
補強した角形鋼管柱1の弾性局部座屈耐力の関係式と局部座屈の判定について検討する。従来、無補強の角形鋼管柱の荷重条件を考慮した弾性局部座屈耐力を理論的に導出するとともに、その近似式(以下の式(3))が知られている。当該近似式については、例えば、「佐藤公亮, 五十嵐規矩夫:二軸曲げせん断力と軸力を受ける正方形中空断面部材の連成局部座屈耐力算定;日本建築学会構造系論文集,Vol.79,pp.1909-1918,2014.12(非特許文献1)」「佐藤公亮, 五十嵐規矩夫: 曲げせん断力を受ける正方形中空断面部材の局部座屈性状と構造性能評価法; 日本建築学会構造系論文集Vol.82,pp.123-133,2017.1(非特許文献2)」に記載されている。この近似式はあくまで、図11に示すような無補強の角形鋼管柱1にのみ適用できるため、本補強構造にはそのまま適用できない。なお、「Mcr:弾性局部座屈モーメント」、「L:材長」、「Z:断面係数」、「E:ヤング係数」、「ν:ポアソン比」、「D:角形鋼管径」、「t:角形鋼管板厚」である。弾性局部座屈モーメントは、図11の荷重・境界条件における角形鋼管柱1の弾性局部座屈モーメントである。
前述の線形座屈解析の結果から、本補強構造では一つの補強仕様に対して非巻込型/巻込型の両方の弾性座屈モードが得られる可能性があるため、まずはそれぞれの弾性座屈モードに対応する弾性局部座屈耐力と、角形鋼管柱1および補強仕様との関係式を下記の手順で検討した。
(手順1)まず、非巻込型/巻込型それぞれの局部座屈現象を捉えられるように、無補強の角形鋼管柱1に置き換える。図12に当該置き換えの概念図を示す。非巻込型は、固定端からちょうど補強長さhrだけ離れた位置を危険断面と仮定し、元の角形鋼管柱よりhrだけ材長が短い無補強の角形鋼管柱に置き換えると仮定する(図13の「Pcr1」参照)。巻込型は、曲げモーメントが最大となる端部を危険断面と仮定し、補強材20の合計の断面積を角形鋼管柱1の外周に均等に配分することでtr’だけ増厚された無補強の角形鋼管柱に置き換えると仮定する(図13の「Pcr2」参照)。
(手順2)置き換えた上記の無補強の角形鋼管柱それぞれについて式(4)、式(5)を適用し、非巻込型/巻込型の弾性局部座屈耐力の想定解Pcr1、Pcr2を求める。式(4)は式(3)をiを用いて書き直したものである。このとき、計算で用いる各諸量は図13に示すものを用いる。
(手順2)置き換えた上記の無補強の角形鋼管柱それぞれについて式(4)、式(5)を適用し、非巻込型/巻込型の弾性局部座屈耐力の想定解Pcr1、Pcr2を求める。式(4)は式(3)をiを用いて書き直したものである。このとき、計算で用いる各諸量は図13に示すものを用いる。
なお、「Pcri:弾性局部座屈耐力の想定解」、「Mcri:弾性局部座屈モーメント」、「Li:材長」、「Zi:断面係数」、「E:ヤング係数」、「ν:ポアソン比」、「Di:角形鋼管柱の径」、「ti:角形鋼管柱の板厚」、「tr’:補強材の断面積を角形鋼管柱の外周に均等に配分すると仮定したときの増厚分の板厚」である。添字iの付く文字は非巻込型/巻込型の弾性局部座屈耐力の想定解Pcr1、Pcr2にそれぞれ対応し、図13の値を使用する。
なお、増厚分板厚tr’は、もとの角形鋼管柱の径D、補強材板厚tr、補強材幅brから計算することができる。具体的には、角形鋼管に角部曲率半径がある場合、角部外側の曲率半径をRとすると、式(6)を計算することで増厚分板厚tr’を計算することができる。角形鋼管に角部曲率半径がない場合、式(7)を計算することで増厚分板厚tr’を計算することができる。
(手順3)上述の手順で導出した弾性局部座屈耐力の想定解Pcr1(非巻込型)、及び想定解Pcr2(巻込型)と、補強した角形鋼管柱そのものの線形座屈解析により導出した解析解(段落0032~0034で導出した弾性局部座屈耐力)との対応を確認し、当該解析解を(手順2)の想定解を補正値で割増す形で表現する。当該補正値は想定解と解析解の比を回帰分析することにより導出する。
前述の手順により、補強した角形鋼管柱の非巻込型/巻込型の弾性座屈モードに対応する弾性局部座屈耐力の解析解と、弾性局部座屈耐力の想定解Pcr1(非巻込型)、想定解Pcr2(巻込型)の比を、近似式で図14に示す通り評価した。非巻込型の弾性局部座屈耐力の解析解nPcrと想定解Pcr1と近似式との関係は式(8)となる。巻込型の弾性局部座屈耐力の解析解cPcrと想定解Pcr2と近似式との関係は式(9)となる。想定解Pcr1(非巻込型)、想定解Pcr2(巻込型)を具体的に表現すると、式(8),(9)は、それぞれ式(10),(11)となる。「Z’」は、補強材の断面積を角形鋼管柱の外周に均等に配分すると仮定した角形鋼管柱の断面係数である。
次に、変形性能と補強仕様の関係について説明する。非特許文献2に倣い、補強した角形鋼管柱1の変形性能(塑性変形倍率η90%)を、非巻込型/巻込型それぞれの基準化幅厚比SHR(式(12))を用いて式(13)、式(14)で評価した(図15)。ここで、式(13)、式(14)の評価にあたっては、補強仕様で決まる非巻込型(式(10))/巻込型(式(11))の弾性局部座屈耐力nPcr/cPcrのうち小さい方を式(12)のPcrに代入して基準化幅厚比SHR(nPcrが小さければnSHR、cPcrが小さければcSHRと表記)を求め、回帰分析を実施した。
なお、式(12)に関し、「σy:無補強の角形鋼管柱の降伏点」、「Zp:無補強の角形鋼管柱の塑性断面係数」、「Pcr:補強した角形鋼管柱の弾性局部座屈耐力」、「L:材長」である。式(13)(14)に関し、「η90%:塑性変形倍率(単調載荷M-θ関係にて最大曲げモーメントMmax到達後0.9Mmaxに達するまでの吸収エネルギーをMp・θpで基準化した値)」、「Mp:無補強の角形鋼管柱の全塑性モーメント」、「θp:Mpを初期弾性剛性で除した値」、「SHR:補強した角形鋼管柱の基準化幅厚比」である。
以上のような検討から、本補強構造について、(i)(ii)の説明が成り立つ。
(i)径D、板厚t、材長2L、断面係数Z、降伏点σy、ヤング係数E、ポアソン比νの角形鋼管柱1に対して、補強材板厚tr、補強材幅br、補強長さhr、隙間srで補強する場合、「tr>0、0<br≦0.8D、sr<hr≦L、sr<0.27D」を前提条件とし、角形鋼管柱1の要求性能dηを満足するように図16のフローで補強材板厚tr、補強材幅br、補強長さhrを決定できる。
(ii)巻込型を志向する場合は、逆算的に図17のフローで補強材板厚tr、補強材幅br、補強長さhrを決定できる。
(i)径D、板厚t、材長2L、断面係数Z、降伏点σy、ヤング係数E、ポアソン比νの角形鋼管柱1に対して、補強材板厚tr、補強材幅br、補強長さhr、隙間srで補強する場合、「tr>0、0<br≦0.8D、sr<hr≦L、sr<0.27D」を前提条件とし、角形鋼管柱1の要求性能dηを満足するように図16のフローで補強材板厚tr、補強材幅br、補強長さhrを決定できる。
(ii)巻込型を志向する場合は、逆算的に図17のフローで補強材板厚tr、補強材幅br、補強長さhrを決定できる。
(i)に関し、図16のフローの詳細について説明する。図16に示すように、まず、要求性能dηを設定する(ステップS10)。なお、ステップS10を実行するタイミングは特に限定されず、後述のステップS70,S110よりも前段階であれば、どのタイミングで実行されてもよい。次に、補強材板厚tr、補強材幅br、補強長さhrを仮設定する(ステップS20)。このときの補強材20の各パラメータは、設計者が任意に仮設定してよい。次に、ステップS20で仮設定した補強材板厚tr、補強材幅br、補強長さhrを式(10),(11)に代入することによって、非巻込型/巻込型の弾性局部座屈耐力nPcr,cPcrをそれぞれ計算する(ステップS30)。次に、ステップS30で計算した弾性局部座屈耐力nPcrと弾性局部座屈耐力cPcrの大小関係を比較して、一方の変形態様を選択する(ステップS40)。
ステップS40において「nPcr<cPcr」の関係が成り立つとき、変形態様として非巻込型を選択し、非巻込型の弾性局部座屈耐力nPcrを用いて基準化幅厚比nSHRを計算する(ステップS50)。ステップS50では、式(12)の右辺の「Pcr」にステップS30の非巻込型の弾性局部座屈耐力nPcrを代入する。次に、塑性変形倍率nη90%を計算する(ステップS60)。ステップS60では、ステップS50で計算した基準化幅厚比nSHRを式(13)の右辺の「nSHR」に代入する。次に、ステップS60で計算した塑性変形倍率nη90%が、ステップS10で設定された要求性能dη以上という要求を満たしているかを判定する(ステップS70)。ステップS70において、要求を満たしていると判定した場合、ステップS20において仮設定した補強材板厚tr、補強材幅br、補強長さhrにて決定する(ステップS80)。一方、ステップS70において、要求を満たしていないと判定した場合、ステップS20へ戻り、他の値にて補強材板厚tr、補強材幅br、補強長さhrを仮設定する。
ステップS40において「nPcr≧cPcr」の関係が成り立つとき、変形態様として巻込型を選択し、巻込型の弾性局部座屈耐力cPcrを用いて基準化幅厚比cSHRを計算する(ステップS90)。ステップS90では、式(12)の右辺の「Pcr」にステップS30の巻込型の弾性局部座屈耐力cPcrを代入する。次に、塑性変形倍率cη90%を計算する(ステップS100)。ステップS100では、ステップS90で計算した基準化幅厚比cSHRを式(14)の右辺の「SHR」に代入する。次に、ステップS100で計算した塑性変形倍率cη90%が、ステップS10で設定された要求性能dη以上という要求を満たしているかを判定する(ステップS110)。ステップS110において、要求を満たしていると判定した場合、ステップS20において仮設定した補強材板厚tr、補強材幅br、補強長さhrにて決定する(ステップS80)。一方、ステップS110において、要求を満たしていないと判定した場合、ステップS20へ戻り、他の値にて補強材板厚tr、補強材幅br、補強長さhrを仮設定する。
ステップS70,S110において再びステップS20へ戻った場合、新たに仮設定した補強材板厚tr、補強材幅br、補強長さhrにて、ステップS30~S110の処理を繰り返す。このような繰り返しは、補強材板厚tr、補強材幅br、補強長さhrが決定するまで繰り返し行われる。
次に、(ii)に関し、図17のフローの詳細について説明する。図17に示すように、まず、要求性能dηを設定する(ステップS210)。次に、要求性能dηを満足する巻込型の基準化幅厚比cSHRを計算する(ステップS220)。ステップS220では、式(14)の左辺の「cη90%」に要求性能dηを代入する。次に、ステップ220で計算した基準化幅厚比cSHRに対応する巻込型の弾性局部座屈耐力cPcrを計算する(ステップS230)。ステップS230では、式(12)の左辺の「SHR」に基準化幅厚比cSHRを代入することで求まる「Pcr」の値を弾性局部座屈耐力cPcrとする。
次に、補強材板厚tr及び補強材幅brのうち、一方を仮設定する(ステップS240)。次に、ステップS230で計算した弾性局部座屈耐力cPcrと、ステップS240で仮設定した値から、補強材板厚tr及び補強材幅brのうちの他方の値を計算する(ステップS250)。ステップS250では、式(11)の左辺に弾性局部座屈耐力cPcrを代入し、右辺の補強材板厚tr及び補強材幅brの一方に仮設定した値を代入する。
次に、ステップS240,S250で設定した補強材板厚tr及び補強材幅brを用いて、「nPcr≧cPcr」を満たすような補強長さhrの条件を計算する(ステップS260)。ステップS260では、ステップS240,S250で設定した補強材板厚tr及び補強材幅brを式(10)の右辺に代入し、弾性局部座屈耐力cPcrが当該右辺以下となるような補強長さhrの条件を求める。次に、補強材板厚tr、補強材幅br、補強長さhrを決定する(ステップS270)。ステップS270では、ステップS260で求めた条件を満たすような補強長さhrを決定する。また、補強材板厚tr、補強材幅brについては、ステップS240,S250で仮設定した値にて決定する。
次に、本実施形態に係る角形鋼管柱補強構造の設計方法の作用・効果について説明する。なお、請求項における「第1の工程」「第2の工程」「第3の工程」の表現は、便宜的に番号を付したものであり、請求項中で順序を規定する表現がない場合には、順序を特定したものではなく、適宜順序を変更してよい。
図17に示すような角形鋼管柱補強構造100の設計方法は、角形鋼管柱1と、角形鋼管柱1の側壁部10の外面及び内面の少なくとも一方に対して、角形鋼管柱1の長手方向の端面から離間する位置に設けられた板状の補強材20と、を備える角形鋼管柱補強構造100の設計方法であって、角形鋼管柱補強構造100の要求性能を設定するステップS210(第1の工程)と、設定した要求性能に基づいて、巻込型の弾性局部座屈耐力を計算するステップS220,S230(第2の工程)と、補強材20に関する一部のパラメータを仮設定するステップS240,S250(第3の工程)と、計算した巻込型の弾性局部座屈耐力、及び仮設定した一部のパラメータを用いて、補強材20に関する他のパラメータの条件を計算するステップS260(第4の工程)と、ステップS260で計算した条件を用いて、パラメータを決定するステップS270(第5の工程)と、を備える。
この角形鋼管柱補強構造100の設計方法は、設定した要求性能に基づいて、巻込型の弾性局部座屈耐力を計算するステップS220,S230(第2の工程)を備える。これにより、角形鋼管柱1の変形態様として、効率的に変形性能を向上できる巻込型の変形態様が発生しやすくなるように設計することが可能となる。また、角形鋼管柱補強構造100の設計方法は、補強材20に関する一部のパラメータを仮設定するステップS240,S250(第3の工程)と、計算した巻込型の弾性局部座屈耐力、及び仮設定した一部のパラメータを用いて、補強材20に関する他のパラメータの条件を計算するステップS260(第4の工程)を備える。このように、要求性能を満たすような巻込型の弾性局部座屈耐力となるように、補強材20に関する一部パラメータを仮設定し、当該仮設定に基づいて残りのパラメータの条件を計算することで、要求性能を満たすためのパラメータを容易に決定することができる。以上より、容易な設計方法にて、変形性能を適切に向上させることができる。
ステップS220,S230(第2の工程)では、設定した要求性能を満たすような巻込型の基準化幅厚比を計算し(ステップS220)、当該基準化幅厚比に対応する巻込型の弾性局部座屈耐力を計算してよい(ステップS230)。この場合、基準化幅厚比を用いることで、容易に巻込型の弾性局部座屈耐力を計算することができる。
巻込型の基準化幅厚比は、巻込型の塑性変形倍率と巻込型の基準化幅厚比との関係に基づいて計算されてよい。この場合、予め定められた関係に基づくことで、容易に巻込型の基準化幅厚比を計算することができる。
具体的に、巻込型の塑性変形倍率と巻込型の基準化幅厚比との関係は、巻込型の塑性変形倍率をcη90%とし、巻込型の角形鋼管柱の基準化幅厚比をcSHRとした場合、式(14)で示されてよい。
巻込型の弾性局部座屈耐力は、基準化幅厚比と補強した角形鋼管柱の弾性局部座屈耐力との関係に基づいて計算されてよい。この場合、予め定められた関係に基づくことで、容易に巻込型の弾性局部座屈耐力を計算することができる。
具体的に、基準化幅厚比と補強した角形鋼管柱の弾性局部座屈耐力との関係は、基準化幅厚比をSHRとし、無補強の角形鋼管柱の降伏点をσyとし、無補強の角形鋼管柱の塑性断面係数をZpとし、補強した角形鋼管柱の弾性局部座屈耐力をPcrとし、角形鋼管柱の長さを2Lとした場合、式(12)で示されてよい。
ステップS240,S250(第3の工程)では、一部のパラメータとして、補強材の補強材板厚、及び補強材幅の一方の値を仮設定し(ステップS240)、巻込型の弾性局部座屈耐力、補強材板厚、及び補強材幅との関係に基づいて、他方の値を計算してよい(ステップS250)。この場合、予め定められた関係に基づくことで、容易に巻込型の弾性局部座屈耐力を計算することができる。この場合、予め定められた関係に基づいて、補強材20の補強材板厚、及び補強材幅の両方の値を容易に仮設定することができる。
具体的に、巻込型の弾性局部座屈耐力、補強材板厚、及び補強材幅との関係は、巻込型の弾性局部座屈耐力の解析解cPcrとし、角形鋼管柱の径をDとし、角形鋼管柱の長さを2Lとし、角形鋼管柱の板厚をtとし、角形鋼管柱のヤング係数をEとし、角形鋼管柱のポアソン比をνとし、補強材の板厚をtrとし、補強材の幅をbrとし、補強材の断面積を角形鋼管柱の外周に均等に配分したと仮定した角形鋼管柱の増厚分の板厚をtr’とし、当該仮定した角形鋼管柱の断面係数をZ’とした場合、式(11)で示されてよい。
ステップS240,S250(第3の工程)では、一部のパラメータとして、補強材の補強材板厚、及び補強材幅の値が仮設定され、ステップS260(第4の工程)では、仮設定された補強材板厚、及び補強材幅を用い、巻込型の弾性局部座屈耐力が非巻込型の弾性局部座屈耐力、補強材板厚、補強材幅、及び補強長さとの関係に基づく非巻込型の弾性局部座屈耐力以下となるように、他のパラメータである補強長さの条件を計算してよい。この場合、非巻込型の弾性局部座屈耐力、補強材板厚、補強材幅、及び補強長さとで予め定められた関係、及び巻込型の変形態様が発生することによって効率的に変形性能を向上できるような条件にて、他のパラメータを計算することができる。
具体的に、巻込型の弾性局部座屈耐力、補強材板厚、及び補強材幅との関係は、巻込型の弾性局部座屈耐力をcPcrとし、角形鋼管柱の径をDとし、角形鋼管柱の長さを2Lとし、角形鋼管柱の板厚をtとし、角形鋼管柱のヤング係数をEとし、角形鋼管柱のポアソン比をνとし、補強材の板厚をtrとし、補強材の幅をbrとし、補強材の断面積を角形鋼管柱の外周に均等に配分したと仮定した角形鋼管柱の増厚分の板厚をtr’とし、仮定した角形鋼管柱の断面係数をZ’とした場合、式(11)で示され、非巻込型の弾性局部座屈耐力、補強材板厚、補強材幅、及び補強長さとの関係は、非巻込型の弾性局部座屈耐力をnPcrとし、角形鋼管柱の径をDとし、角形鋼管柱の長さを2Lとし、角形鋼管柱の板厚をtとし、角形鋼管柱のヤング係数をEとし、角形鋼管柱のポアソン比をνとし、角形鋼管柱の断面係数をZとし、補強材の板厚をtrとし、端面から補強材の端部までの補強長さをhrとし、補強材の幅をbrとした場合、式(10)で示され、ステップS260(第4の工程)では、仮設定された補強材板厚、及び補強材幅を用い、nPcr≧cPcrとなるように、他のパラメータである補強長さの条件を計算してよい。
図16に示す角形鋼管柱補強構造100の設計方法は、角形鋼管柱1と、角形鋼管柱1の側壁部10の外面及び内面の少なくとも一方に対して、角形鋼管柱1の長手方向の端面から離間する位置に設けられた板状の補強材20と、を備える角形鋼管柱補強構造100の設計方法であって、角形鋼管柱補強構造100の要求性能を設定するステップS10と、補強材20に関するパラメータを仮設定するステップS20と、ステップS20で仮設定したパラメータの値に基づき、巻込型の弾性局部座屈耐力及び非巻込型の弾性局部座屈耐力をそれぞれ計算するステップS30と、巻込型の弾性局部座屈耐力と非巻込型の弾性局部座屈耐力とを比較して、一方の変形態様を選択するステップS40と、一方の変形態様の弾性局部座屈耐力に基づいて、角形鋼管柱補強構造100の性能を計算するステップS50,S60,S70,S90,S100,S110と、計算された性能が要求性能を満たす場合、仮設定した値にて、パラメータを決定するステップS80と、を備える。
この角形鋼管柱補強構造100の設計方法は、ステップS20で仮設定したパラメータの値に基づき、巻込型の弾性局部座屈耐力及び非巻込型の弾性局部座屈耐力をそれぞれ計算するステップS30と、巻込型の弾性局部座屈耐力と非巻込型の弾性局部座屈耐力とを比較して、一方の変形態様を選択するステップS40と、を備える。これにより、巻込型と非巻込型のうち、仮設定したパラメータの値において発生する可能性が高い変形態様を選択することができる。また、角形鋼管柱補強構造100の設計方法は、一方の変形態様の弾性局部座屈耐力に基づいて、角形鋼管柱補強構造の性能を計算するステップS50,S60,S70,S90,S100,S110と、計算された性能が要求性能を満たす場合、仮設定した値にて、パラメータを決定するステップS80と、を備える。この場合、選択した変形態様において、要求されている性能を満たすようなパラメータを容易に決定することができる。以上より、容易な設計方法にて、変形性能を適切に向上させることができる。
S50,S60,S70,S90,S100,S110では、一方の変形態様の弾性局部座屈耐力に基づいて一方の変形態様の基準化幅厚比を計算し(ステップS50,S90)、当該基準化幅厚比に対応する塑性変形倍率を計算してよい(ステップS60,S100)。この場合、基準化幅厚比及び塑性変形倍率を用いることで、容易に角形鋼管柱補強構造100の性能を計算することができる。
一方の変形態様の基準化幅厚比は、基準化幅厚比と弾性局部座屈耐力との関係に基づいて計算されてよい。この場合、予め定められた関係に基づくことで、容易に一方の変形態様の基準化幅厚比を計算することができる。
具体的に、基準化幅厚比と補強した角形鋼管柱の弾性局部座屈耐力との前記関係は、 基準化幅厚比をSHRとし、無補強の角形鋼管柱の降伏点をσyとし、無補強の角形鋼管柱の塑性断面係数をZpとし、補強した角形鋼管柱の弾性局部座屈耐力をPcrとし、角形鋼管柱の長さを2Lとした場合、式(12)で示されてよい。
一方の変形態様の塑性変形倍率は、一方の変形態様の塑性変形倍率と一方の変形態様の基準化幅厚比との関係に基づいて計算されてよい。この場合、予め定められた関係に基づくことで、容易に一方の変形態様の塑性変形倍率を計算することができる。
具体的に、非巻込型の塑性変形倍率と巻込型の基準化幅厚比との関係は、非巻込型の塑性変形倍率をnη90%とし、非巻込型の角形鋼管柱の基準化幅厚比をnSHRとした場合、式(13)で示され、巻込型の塑性変形倍率と巻込型の基準化幅厚比との関係は、巻込型の塑性変形倍率をcη90%とし、巻込型の角形鋼管柱の基準化幅厚比をcSHRとした場合、式(14)で示されてよい。
ステップS20では、パラメータとして、補強材20の補強材板厚、補強材幅、及び補強長さを仮設定してよい。この場合、仮設定したパラメータから、容易に弾性局部座屈耐力を計算することができる。
ステップS30では、パラメータと巻込型の弾性局部座屈耐力との関係に基づいて、巻込型の弾性局部座屈耐力を計算し、パラメータと非巻込型の弾性局部座屈耐力との関係に基づいて、非巻込型の弾性局部座屈耐力を計算してよい。この場合、予め定められた関係に基づくことで、容易に巻込型及び非巻込型の弾性局部座屈耐力を計算することができる。
具体的に、パラメータと非巻込型の弾性局部座屈耐力との関係は、非巻込型の弾性局部座屈耐力の解析解nPcrとし、角形鋼管柱の径をDとし、角形鋼管柱の長さを2Lとし、角形鋼管柱の板厚をtとし、角形鋼管柱のヤング係数をEとし、角形鋼管柱のポアソン比をνとし、角形鋼管柱の断面係数をZとし、補強材の板厚をtrとし、端面から補強材の端部までの補強長さをhrとし、補強材の幅をbrとした場合、式(10)で示され、パラメータと巻込型の弾性局部座屈耐力との関係は、巻込型の弾性局部座屈耐力の解析解cPcrとし、角形鋼管柱の径をDとし、角形鋼管柱の長さを2Lとし、角形鋼管柱の板厚をtとし、角形鋼管柱のヤング係数をEとし、角形鋼管柱のポアソン比をνとし、補強材の板厚をtrとし、補強材の幅をbrとし、補強材の断面積を角形鋼管柱の外周に均等に配分したと仮定した角形鋼管柱の増厚分の板厚をtr’とし、仮定した角形鋼管柱の断面係数をZ’とした場合、式(11)で示されてよい。
ステップS80において、計算された性能が要求性能を満たさない場合、ステップS20へ戻り、他の値でパラメータを仮設定してよい。これにより、要求性能を満たすことができるようなパラメータを再度、仮設定することができる。
本実施形態に係る角形鋼管柱補強構造1は、上述の角形鋼管柱補強構造1の設計方法を用いて製造される。この角形鋼管柱補強構造1によれば、上述の角形鋼管柱補強構造1の設計方法と同様な作用・効果を得ることができる。
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。上述の実施形態で説明した寸法は一例にすぎず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更してよい。
例えば、補強材20の形状は、上述の実施形態に限定されない。例えば、図18に示すものが採用されてよい。図18では、一つの側壁部10に設けられる補強材20が二つに分割されている。なお、分割数や分割方法は特に限定されない。
[形態1]
角形鋼管柱と、
前記角形鋼管柱の側壁部の外面及び内面の少なくとも一方に対して、前記角形鋼管柱の長手方向の端面から離間する位置に設けられた板状の補強材と、を備える角形鋼管柱補強構造の設計方法であって、
前記角形鋼管柱補強構造の要求性能を設定する第1の工程と、
設定した前記要求性能に基づいて、巻込型の弾性局部座屈耐力を計算する第2の工程と、
前記補強材に関する一部のパラメータを仮設定する第3の工程と、
計算した前記巻込型の弾性局部座屈耐力、及び仮設定した前記一部のパラメータを用いて、前記補強材に関する他のパラメータの条件を計算する第4の工程と、
前記第4の工程で計算した前記条件を用いて、前記パラメータを決定する第5の工程と、を備える、角形鋼管柱補強構造の設計方法。
[形態2]
前記第2の工程では、設定した前記要求性能を満たすような巻込型の基準化幅厚比を計算し、当該基準化幅厚比に対応する前記巻込型の弾性局部座屈耐力を計算する、形態1に記載の角形鋼管柱補強構造の設計方法。
[形態3]
前記巻込型の基準化幅厚比は、巻込型の塑性変形倍率と前記巻込型の基準化幅厚比との関係に基づいて計算される、形態2に記載の角形鋼管柱補強構造の設計方法。
[形態4]
巻込型の塑性変形倍率と前記巻込型の基準化幅厚比との関係は、
巻込型の塑性変形倍率をcη90%とし、
巻込型の前記角形鋼管柱の基準化幅厚比をcSHRとした場合、式(14)で示される、形態3に記載の角形鋼管柱補強構造の設計方法。
[形態5]
前記巻込型の弾性局部座屈耐力は、基準化幅厚比と補強した前記角形鋼管柱の弾性局部座屈耐力との関係に基づいて計算される、形態2~4の何れか一項に記載の角形鋼管柱補強構造の設計方法。
[形態6]
基準化幅厚比と補強した前記角形鋼管柱の弾性局部座屈耐力との前記関係は、
基準化幅厚比をSHRとし、
無補強の前記角形鋼管柱の降伏点をσyとし、
無補強の前記角形鋼管柱の塑性断面係数をZpとし、
補強した前記角形鋼管柱の弾性局部座屈耐力をPcrとし、
前記角形鋼管柱の長さを2Lとした場合、式(12)で示される、形態5に記載の角形鋼管柱補強構造の設計方法。
[形態7]
前記第3の工程では、前記一部のパラメータとして、前記補強材の補強材板厚、及び補強材幅の一方の値を仮設定し、前記巻込型の弾性局部座屈耐力、前記補強材板厚、及び前記補強材幅との関係に基づいて、他方の値を計算する、形態1~6の何れか一項に記載の角形鋼管柱補強構造の設計方法。
[形態8]
前記巻込型の弾性局部座屈耐力、前記補強材板厚、及び前記補強材幅との関係は、
巻込型の弾性局部座屈耐力をcPcrとし、
前記角形鋼管柱の径をDとし、
前記角形鋼管柱の長さを2Lとし、
前記角形鋼管柱の板厚をtとし、
前記角形鋼管柱のヤング係数をEとし、
前記角形鋼管柱のポアソン比をνとし、
前記補強材の板厚をtrとし、
前記補強材の幅をbrとし、
前記補強材の断面積を前記角形鋼管柱の外周に均等に配分したと仮定した前記角形鋼管柱の増厚分の板厚をtr’とし、
前記仮定した角形鋼管柱の断面係数をZ’とした場合、式(11)で示される、形態7に記載の角形鋼管柱補強構造の設計方法。
[形態9]
前記第3の工程では、前記一部のパラメータとして、前記補強材の補強材板厚、及び補強材幅の値が仮設定され、
前記第4の工程では、仮設定された前記補強材板厚、及び補強材幅を用い、前記巻込型の弾性局部座屈耐力が非巻込型の弾性局部座屈耐力、補強材板厚、補強材幅、及び補強長さとの関係に基づく前記非巻込型の弾性局部座屈耐力以下となるように、前記他のパラメータである補強長さの条件を計算する、形態1~8の何れか一項に記載の角形鋼管柱補強構造の設計方法。
[形態10]
前記巻込型の弾性局部座屈耐力、前記補強材板厚、及び前記補強材幅との関係は、
巻込型の弾性局部座屈耐力をcPcrとし、
前記角形鋼管柱の径をDとし、
前記角形鋼管柱の長さを2Lとし、
前記角形鋼管柱の板厚をtとし、
前記角形鋼管柱のヤング係数をEとし、
前記角形鋼管柱のポアソン比をνとし、
前記補強材の板厚をtrとし、
前記補強材の幅をbrとし、
前記補強材の断面積を前記角形鋼管柱の外周に均等に配分したと仮定した前記角形鋼管柱の増厚分の板厚をtr’とし、
前記仮定した角形鋼管柱の断面係数をZ’とした場合、式(11)で示され、
前記非巻込型の弾性局部座屈耐力、前記補強材板厚、前記補強材幅、及び前記補強長さとの関係は、
非巻込型の弾性局部座屈耐力をnPcrとし、
前記角形鋼管柱の径をDとし、
前記角形鋼管柱の長さを2Lとし、
前記角形鋼管柱の板厚をtとし、
前記角形鋼管柱のヤング係数をEとし、
前記角形鋼管柱のポアソン比をνとし、
前記角形鋼管柱の断面係数をZとし、
前記補強材の板厚をtrとし、
前記端面から前記補強材の端部までの補強長さをhrとし、
前記補強材の幅をbrとした場合、式(10)で示され、
前記第4の工程では、仮設定された前記補強材板厚、及び補強材幅を用い、nPcr≧cPcrとなるように、前記他のパラメータである補強長さの条件を計算する、請求項9に記載の角形鋼管柱補強構造の設計方法。
[形態11]
形態1~10の何れか一項に記載の角形鋼管柱補強構造の設計方法を用いて製造された角形鋼管柱補強構造。
角形鋼管柱と、
前記角形鋼管柱の側壁部の外面及び内面の少なくとも一方に対して、前記角形鋼管柱の長手方向の端面から離間する位置に設けられた板状の補強材と、を備える角形鋼管柱補強構造の設計方法であって、
前記角形鋼管柱補強構造の要求性能を設定する第1の工程と、
設定した前記要求性能に基づいて、巻込型の弾性局部座屈耐力を計算する第2の工程と、
前記補強材に関する一部のパラメータを仮設定する第3の工程と、
計算した前記巻込型の弾性局部座屈耐力、及び仮設定した前記一部のパラメータを用いて、前記補強材に関する他のパラメータの条件を計算する第4の工程と、
前記第4の工程で計算した前記条件を用いて、前記パラメータを決定する第5の工程と、を備える、角形鋼管柱補強構造の設計方法。
[形態2]
前記第2の工程では、設定した前記要求性能を満たすような巻込型の基準化幅厚比を計算し、当該基準化幅厚比に対応する前記巻込型の弾性局部座屈耐力を計算する、形態1に記載の角形鋼管柱補強構造の設計方法。
[形態3]
前記巻込型の基準化幅厚比は、巻込型の塑性変形倍率と前記巻込型の基準化幅厚比との関係に基づいて計算される、形態2に記載の角形鋼管柱補強構造の設計方法。
[形態4]
巻込型の塑性変形倍率と前記巻込型の基準化幅厚比との関係は、
巻込型の塑性変形倍率をcη90%とし、
巻込型の前記角形鋼管柱の基準化幅厚比をcSHRとした場合、式(14)で示される、形態3に記載の角形鋼管柱補強構造の設計方法。
[形態5]
前記巻込型の弾性局部座屈耐力は、基準化幅厚比と補強した前記角形鋼管柱の弾性局部座屈耐力との関係に基づいて計算される、形態2~4の何れか一項に記載の角形鋼管柱補強構造の設計方法。
[形態6]
基準化幅厚比と補強した前記角形鋼管柱の弾性局部座屈耐力との前記関係は、
基準化幅厚比をSHRとし、
無補強の前記角形鋼管柱の降伏点をσyとし、
無補強の前記角形鋼管柱の塑性断面係数をZpとし、
補強した前記角形鋼管柱の弾性局部座屈耐力をPcrとし、
前記角形鋼管柱の長さを2Lとした場合、式(12)で示される、形態5に記載の角形鋼管柱補強構造の設計方法。
[形態7]
前記第3の工程では、前記一部のパラメータとして、前記補強材の補強材板厚、及び補強材幅の一方の値を仮設定し、前記巻込型の弾性局部座屈耐力、前記補強材板厚、及び前記補強材幅との関係に基づいて、他方の値を計算する、形態1~6の何れか一項に記載の角形鋼管柱補強構造の設計方法。
[形態8]
前記巻込型の弾性局部座屈耐力、前記補強材板厚、及び前記補強材幅との関係は、
巻込型の弾性局部座屈耐力をcPcrとし、
前記角形鋼管柱の径をDとし、
前記角形鋼管柱の長さを2Lとし、
前記角形鋼管柱の板厚をtとし、
前記角形鋼管柱のヤング係数をEとし、
前記角形鋼管柱のポアソン比をνとし、
前記補強材の板厚をtrとし、
前記補強材の幅をbrとし、
前記補強材の断面積を前記角形鋼管柱の外周に均等に配分したと仮定した前記角形鋼管柱の増厚分の板厚をtr’とし、
前記仮定した角形鋼管柱の断面係数をZ’とした場合、式(11)で示される、形態7に記載の角形鋼管柱補強構造の設計方法。
[形態9]
前記第3の工程では、前記一部のパラメータとして、前記補強材の補強材板厚、及び補強材幅の値が仮設定され、
前記第4の工程では、仮設定された前記補強材板厚、及び補強材幅を用い、前記巻込型の弾性局部座屈耐力が非巻込型の弾性局部座屈耐力、補強材板厚、補強材幅、及び補強長さとの関係に基づく前記非巻込型の弾性局部座屈耐力以下となるように、前記他のパラメータである補強長さの条件を計算する、形態1~8の何れか一項に記載の角形鋼管柱補強構造の設計方法。
[形態10]
前記巻込型の弾性局部座屈耐力、前記補強材板厚、及び前記補強材幅との関係は、
巻込型の弾性局部座屈耐力をcPcrとし、
前記角形鋼管柱の径をDとし、
前記角形鋼管柱の長さを2Lとし、
前記角形鋼管柱の板厚をtとし、
前記角形鋼管柱のヤング係数をEとし、
前記角形鋼管柱のポアソン比をνとし、
前記補強材の板厚をtrとし、
前記補強材の幅をbrとし、
前記補強材の断面積を前記角形鋼管柱の外周に均等に配分したと仮定した前記角形鋼管柱の増厚分の板厚をtr’とし、
前記仮定した角形鋼管柱の断面係数をZ’とした場合、式(11)で示され、
前記非巻込型の弾性局部座屈耐力、前記補強材板厚、前記補強材幅、及び前記補強長さとの関係は、
非巻込型の弾性局部座屈耐力をnPcrとし、
前記角形鋼管柱の径をDとし、
前記角形鋼管柱の長さを2Lとし、
前記角形鋼管柱の板厚をtとし、
前記角形鋼管柱のヤング係数をEとし、
前記角形鋼管柱のポアソン比をνとし、
前記角形鋼管柱の断面係数をZとし、
前記補強材の板厚をtrとし、
前記端面から前記補強材の端部までの補強長さをhrとし、
前記補強材の幅をbrとした場合、式(10)で示され、
前記第4の工程では、仮設定された前記補強材板厚、及び補強材幅を用い、nPcr≧cPcrとなるように、前記他のパラメータである補強長さの条件を計算する、請求項9に記載の角形鋼管柱補強構造の設計方法。
[形態11]
形態1~10の何れか一項に記載の角形鋼管柱補強構造の設計方法を用いて製造された角形鋼管柱補強構造。
1…角形鋼管柱、10…側壁部、20…補強材、100…角形鋼管柱補強構造。
Claims (11)
- 角形鋼管柱と、
前記角形鋼管柱の側壁部の外面及び内面の少なくとも一方に対して、前記角形鋼管柱の長手方向の端面から離間する位置に設けられた板状の補強材と、を備える角形鋼管柱補強構造の設計方法であって、
前記角形鋼管柱補強構造の要求性能を設定する第1の工程と、
設定した前記要求性能に基づいて、巻込型の弾性局部座屈耐力を計算する第2の工程と、
前記補強材に関する一部のパラメータを仮設定する第3の工程と、
計算した前記巻込型の弾性局部座屈耐力、及び仮設定した前記一部のパラメータを用いて、前記補強材に関する他のパラメータの条件を計算する第4の工程と、
前記第4の工程で計算した前記条件を用いて、前記パラメータを決定する第5の工程と、を備える、角形鋼管柱補強構造の設計方法。 - 前記第2の工程では、設定した前記要求性能を満たすような巻込型の基準化幅厚比を計算し、当該基準化幅厚比に対応する前記巻込型の弾性局部座屈耐力を計算する、請求項1に記載の角形鋼管柱補強構造の設計方法。
- 前記巻込型の基準化幅厚比は、巻込型の塑性変形倍率と前記巻込型の基準化幅厚比との関係に基づいて計算される、請求項2に記載の角形鋼管柱補強構造の設計方法。
- 巻込型の塑性変形倍率と前記巻込型の基準化幅厚比との関係は、
巻込型の塑性変形倍率をcη90%とし、
巻込型の前記角形鋼管柱の基準化幅厚比をcSHRとした場合、式(14)で示される、請求項3に記載の角形鋼管柱補強構造の設計方法。
- 前記巻込型の弾性局部座屈耐力は、基準化幅厚比と補強した前記角形鋼管柱の弾性局部座屈耐力との関係に基づいて計算される、請求項2に記載の角形鋼管柱補強構造の設計方法。
- 基準化幅厚比と補強した前記角形鋼管柱の弾性局部座屈耐力との前記関係は、
基準化幅厚比をSHRとし、
無補強の前記角形鋼管柱の降伏点をσyとし、
無補強の前記角形鋼管柱の塑性断面係数をZpとし、
補強した前記角形鋼管柱の弾性局部座屈耐力をPcrとし、
前記角形鋼管柱の長さを2Lとした場合、式(12)で示される、請求項5に記載の角形鋼管柱補強構造の設計方法。
- 前記第3の工程では、前記一部のパラメータとして、前記補強材の補強材板厚、及び補強材幅の一方の値を仮設定し、前記巻込型の弾性局部座屈耐力、前記補強材板厚、及び前記補強材幅との関係に基づいて、他方の値を計算する、請求項1に記載の角形鋼管柱補強構造の設計方法。
- 前記巻込型の弾性局部座屈耐力、前記補強材板厚、及び前記補強材幅との関係は、
巻込型の弾性局部座屈耐力をcPcrとし、
前記角形鋼管柱の径をDとし、
前記角形鋼管柱の長さを2Lとし、
前記角形鋼管柱の板厚をtとし、
前記角形鋼管柱のヤング係数をEとし、
前記角形鋼管柱のポアソン比をνとし、
前記補強材の板厚をtrとし、
前記補強材の幅をbrとし、
前記補強材の断面積を前記角形鋼管柱の外周に均等に配分したと仮定した前記角形鋼管柱の増厚分の板厚をtr’とし、
前記仮定した角形鋼管柱の断面係数をZ’とした場合、式(11)で示される、請求項7に記載の角形鋼管柱補強構造の設計方法。
- 前記第3の工程では、前記一部のパラメータとして、前記補強材の補強材板厚、及び補強材幅の値が仮設定され、
前記第4の工程では、仮設定された前記補強材板厚、及び補強材幅を用い、前記巻込型の弾性局部座屈耐力が非巻込型の弾性局部座屈耐力、補強材板厚、補強材幅、及び補強長さとの関係に基づく前記非巻込型の弾性局部座屈以下となるように、前記他のパラメータである補強長さの条件を計算する、請求項1に記載の角形鋼管柱補強構造の設計方法。 - 前記巻込型の弾性局部座屈耐力、前記補強材板厚、及び前記補強材幅との関係は、
巻込型の弾性局部座屈耐力をcPcrとし、
前記角形鋼管柱の径をDとし、
前記角形鋼管柱の長さを2Lとし、
前記角形鋼管柱の板厚をtとし、
前記角形鋼管柱のヤング係数をEとし、
前記角形鋼管柱のポアソン比をνとし、
前記補強材の板厚をtrとし、
前記補強材の幅をbrとし、
前記補強材の断面積を前記角形鋼管柱の外周に均等に配分したと仮定した前記角形鋼管柱の増厚分の板厚をtr’とし、
前記仮定した角形鋼管柱の断面係数をZ’とした場合、式(11)で示され、
前記非巻込型の弾性局部座屈耐力、前記補強材板厚、前記補強材幅、及び前記補強長さとの関係は、
非巻込型の弾性局部座屈耐力をnPcrとし、
前記角形鋼管柱の径をDとし、
前記角形鋼管柱の長さを2Lとし、
前記角形鋼管柱の板厚をtとし、
前記角形鋼管柱のヤング係数をEとし、
前記角形鋼管柱のポアソン比をνとし、
前記角形鋼管柱の断面係数をZとし、
前記補強材の板厚をtrとし、
前記端面から前記補強材の端部までの補強長さをhrとし、
前記補強材の幅をbrとした場合、式(10)で示され、
前記第4の工程では、仮設定された前記補強材板厚、及び補強材幅を用い、nPcr≧cPcrとなるように、前記他のパラメータである補強長さの条件を計算する、請求項9に記載の角形鋼管柱補強構造の設計方法。
- 請求項1~10の何れか一項に記載の角形鋼管柱補強構造の設計方法を用いて製造された角形鋼管柱補強構造。
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