JP2023537039A - 空飛ぶクルマのロータ装置 - Google Patents
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Abstract
第1ロータアセンブリ、第2ロータアセンブリ、および、第2ロータアセンブリを空飛ぶクルマの残りの部分に取り付けるように構成された第2ロータアセンブリのパイロンを備える空飛ぶクルマが開示される。第1ロータアセンブリおよび第2ロータアセンブリは、空飛ぶクルマの長手方向に離間し、空飛ぶクルマの長手軸に位置合わせされた鉛直面に平行な鉛直面上に実質的に位置するように配置される。第1ロータアセンブリは、実質的な垂直飛行推力と実質的な定常飛行推力との間で傾動するように構成されたティルトロータを備える。第2ロータアセンブリは、パイロンの実質的に同じ側になるようにパイロンに取り付けられた、実質的に垂直推力を提供する複数のスタックロータを備える。
Description
本開示は、空飛ぶクルマのロータ装置に関する。一態様は空飛ぶクルマに関する。実施形態は、非限定的であるが、垂直離着陸(VTOL)可能な空中タクシーなどの分散推進システムを備えた航空機に特定の用途を有してもよい。
以下、例示の目的で、VTOL空中タクシーの文脈において背景技術が説明される。ただし、このことは限定を意図するものではない。
最近の技術開発により、新たな分野の航空機の開発が可能になっている。これらの航空機は、分散型電気推進システムを使用することで、高い巡航速度及びVTOLが可能になっている。分散型電気推進システムは、冗長性、低運用コスト、及び低ノイズ署名により、高レベルの安全性を可能にし得る。
しかしながら、機体および推進システムのアーキテクチャ(設計思想)の選択に関しては課題が残されている。主な課題は、すべてのシステムの十分な冗長性を維持しながら、効率的なVTOL飛行と高速での効率的な巡航とが可能になるように航空機を構成することである。
第1の態様により提供される空飛ぶクルマは、第1ロータアセンブリと、第2ロータアセンブリと、空飛ぶクルマにおける残りの部分に前記第2ロータアセンブリを取り付けるように構成された第2ロータアセンブリ用のパイロンとを、それぞれ随意的に備える。第1の態様において、前記第1ロータアセンブリ及び前記第2ロータアセンブリは、前記空飛ぶクルマの長手方向に離間するように、且つ、前記空飛ぶクルマの長手軸に位置合わせされた鉛直面に平行な鉛直面に実質的に位置するように配置される。第1の態様において、前記第1ロータアセンブリは、実質的な垂直飛行推力の供給姿勢と実質的な定常飛行推力の供給姿勢との間で傾動するように構成されたティルトロータを備えてもよい。第1の態様において、前記第2ロータアセンブリは、前記パイロンの実質的に同じ側に取り付けられて実質的に鉛直方向の推力を供給するように互いに積み重ねられた(スタックされた)複数のスタックロータ(垂直推力ロータ)を備えてもよい。
第1ロータアセンブリと第2ロータアセンブリとは、空飛ぶクルマの長手方向に離間するように、且つ、空飛ぶクルマの長手軸に位置合わせされた(一致する)鉛直面に平行な鉛直面上に実質的に位置するように並べて配置される。この配置において、空飛ぶクルマの長手軸に平行な1つの軸が存在してもよく、該軸に沿って、第1ロータアセンブリと第2ロータアセンブリとのうちの一方の他方に向けての投影が当該他方に少なくとも部分的に重なってもよい。このような配置の程度は、第1ロータアセンブリと第2ロータアセンブリとのうち上流側のアセンブリによって生じる潜在的な無視できない乱流が下流側のアセンブリによって遮断されるのに十分な程度であってもよい。
ティルトロータが使用されることで、巡航飛行(定常飛行)の効率を改善することが容易になり得るとともに、垂直飛行形態中および遷移飛行(移行飛行)形態中にティルトロータが垂直推力に寄与し得る。互いに積み重ねられて実質的な垂直推力を供給する複数のスタックロータが使用されることで、より重いティルトロータを設ける必要なく、追加の垂直推力を得ることができる。したがって、ティルトロータとスタックロータの組み合わせにより、性能の向上、および/または、さらなる飛行形態のオプションが提供され得る。第1ロータアセンブリと第2ロータアセンブリとが長手方向において(及び随意的に鉛直方向においても)間隔を空けて配置されつつ、実質的に共通の横軸変位量をもって配置されることは、様々な理由(例えば、動的な考慮事項、重量配分、パッケージング、複雑さの軽減、部材供給、システム共有など)により望ましく、或いは有利である。しかしながら、少なくともいくつかの飛行形態中に、第1ロータアセンブリおよび第2ロータアセンブリのうちの一方が他方の乱流を受ける可能性が高くなる。
複数のスタックロータのブレードが(例えば、パイロンで分断されることなく)パイロンの一方の側に設けられることは、複数のスタックロータ間の間隔が(実質的に離間しない程度まで)低減され得ることを意味し得る。これにより、ロータ間のブレード渦相互作用の可能性が減少し、効率と騒音性能が向上する。また、複数のスタックロータは、より近接することで、(例えば定常飛行中の非使用時における)格納形態と、(スタックロータからの垂直推力が必要なときにおける)展開形態との間で調整可能になることが許容されてもよい。格納形態において、各スタックロータのブレードは、他のスタックロータの対応するブレードに位置合わせされてもよく、複数のスタックロータは、これらが引き起こす抵抗を低減するために、実質的に最小の総正面断面を示すように回転方向に向けられる。このような影響は、(少なくともいくつかの飛行形態において)スタックロータが別のロータ(例えばティルトロータ)の後流の少なくとも一部に衝突したり、該後流の少なくとも一部を吸い込んだりする場合に、より重大になり得る。しかしながら、その代わり、複数のスタックロータ間がより近接することで、複数のスタックロータからなるパッケージ(ユニット)全体の小型化が可能になる。これにより、潜在的な利点をもたらすティルトロータが引き続き存在するにもかかわらず、ティルトロータの後流を大部分または完全に回避するための位置調整(位置決め)が容易になり得る。また、複数のスタックロータ間がより近接することで、スタックロータが潜在的な効率的、動的、および騒音の利点を備えた単一の多要素揚力翼として機能するように間隔を許容し得る。また、複数のスタックロータ間がより近接することで、(例えば)スタックロータを支持したり使用可能にしたりするための部材(部品)の共有を可能にすることがあり、これにより、複雑さおよび/または重量を軽減することができる。
いくつかの実施形態において、第1ロータアセンブリおよび第2ロータアセンブリは、両方が、空飛ぶクルマの長手軸に平行な同一軸上に実質的に位置するように配置される。したがって、例えば、第1ロータアセンブリおよび第2ロータアセンブリの中心線および/または回転軸は、空飛ぶクルマの中心線軸に実質的に平行な同一軸上にあってもよい。第1ロータアセンブリと第2ロータアセンブリとのうちの一方が他方の(定常飛行における)実質的にすぐ下流に配置されることは、様々な理由(例えば、動的な考慮事項、重量配分、パッケージング、複雑さの軽減、部材の共有、システムの共有など)から望ましい場合がある。さらに、複数のスタックロータがこれらを支持するパイロンの片側に配置されることによって、この配置に関連する潜在的な欠点(例えば、乱流の影響)が(上述のように)少なくとも部分的に軽減され得る。
いくつかの実施形態において、第2ロータアセンブリのスタックロータ間の間隔は、スタックロータのブレードの平均空力翼弦の長さの実質的に100%未満である。他の実施形態において、第2ロータアセンブリのスタックロータ間の間隔は、スタックロータのブレードの平均空力翼弦の長さの実質的に80%未満、60%未満、40%未満、30%未満、または20%未満である。これらのような近接性は、上述した本発明の潜在的な利点の少なくともいくつかを強調し得るものであり、スタックロータ間の間隔が小さいほど当該利点がさらに向上する。ただし、スタックロータ間の間隔が小さくなるほどブレードハブの設計自由度が制限され得るという点で、ある程度のトレードオフが生じ得る。
いくつかの実施形態において、少なくとも1対のスタックロータのブレード平面間に画定される環内には、静的構造部が配置されていない。回転するブレード間に静的構造部(例えば、パイロンまたはナセル)を設けることが回避されることによって、複数のスタックロータは互いにより近くに設置可能となり、気流の干渉(ひいては、スタックロータ間の協同的な空力効果の乱れ)が回避され得る。
いくつかの実施形態において、第1ロータアセンブリは、空飛ぶクルマの機体上で第2ロータアセンブリよりもさらに前方に配置されている。この構成は、例えば、遷移中において、前方のロータよりも後方のロータからより多くの垂直推力が必要とされる場合など、さまざまな理由で望ましい場合がある。なぜなら、遷移中、空飛ぶクルマが機首上げ姿勢に向かう傾向があるためである。機首上げ姿勢は、空飛ぶクルマの前部に向かって生成される垂直推力と比較して、空飛ぶクルマの後部に向かって増大される垂直推力によって、対抗され得る。第2ロータアセンブリが垂直推力専用のアセンブリである場合(例えば、垂直スラスト用に固定されているか、又は、例えば安定性のために限定されたロータピッチ調整しか許容されていない場合)、角度調整され得るティルトロータと比較して、遷移中に増大される垂直推力を提供するのにより適している可能性があり、それゆえ、空飛ぶクルマにおいてより後方部に配置されることが有利になり得る。第1ロータアセンブリが空飛ぶクルマの機体上で第2ロータアセンブリよりもさらに前方に配置される構成において、第2ロータアセンブリにおいて、パイロンが介在しないことによって抵抗低減が促進され得ることがより重要になり得る。なぜなら、ティルトロータの下流にある第2ロータアセンブリは、後流によって加速される気流を受け得るためである。(例えば、単一の多要素揚力翼として動作するスタックロータによって促進され得るような)効率的、動的、および/または騒音の性能の改善も、同じ理由でより重要になり得る。代替的に、第2ロータアセンブリのパッケージ(ユニット)全体の緊密化が促進されることで、第2ロータアセンブリがティルトロータの後流をより回避しやすくなる構成が可能になる。
いくつかの実施形態において、第1ロータアセンブリは、ティルトロータの傾動角の全範囲内に所定の傾斜角が存在するように配置される。ここでいう所定の傾斜角は、ティルトロータの中心と第2ロータアセンブリのスタックロータの中心点との間の軸が、推力供給のために回転するティルトロータのブレードによって規定される回転面に対して実質的に垂直になるような角度である。ティルトロータが、推力供給のために回転するティルトロータのブレードによって規定され、スタックロータに実質的に対面する回転面を有する場合、スタックロータがティルトロータの後流を受ける可能性が高くなる。このことは、例えば、定常飛行形態中および/または遷移飛行形態中に発生する可能性がある。
いくつかの実施形態において、第1ロータアセンブリは、ティルトロータの傾動角の全範囲内に所定の傾斜角が存在しないように配置される。ここでいう所定の傾斜角は、ティルトロータの中心と第2ロータアセンブリのスタックロータの中心点との間の軸が、推力供給のために回転するティルトロータのブレードによって規定される回転面に対して実質的に垂直になるような角度である。ティルトロータが、推力供給のために回転するティルトロータのブレードによって規定され、スタックロータに実質的に対面する回転面を有していない場合、スタックロータがティルトロータの後流を受ける可能性が低くなり得る。このことは、本発明によって促進され、本発明がなければ発生し得る乱流効果を防止/軽減することができる。
いくつかの実施形態において、スタックロータ(垂直推力ロータ)は、パイロンの実質的に上に位置するようにパイロンに取り付けられる。例えば パイロンの上に配置されることで容易になり得るような、スタックロータの高さの増大により、上流のティルトロータからの後流の衝突の程度が低減されやすくなり、排出方向(排気方向)が実質的後方と実質的下向きとの間で変化してスタックロータに衝突する。したがって、そのような衝突の悪影響(例えば、スタックロータにおける騒音の増大およびブレード負荷の増大)は、少なくとも部分的に軽減され得る。
いくつかの実施形態において、第2ロータアセンブリは、空飛ぶクルマの機体上で第1ロータアセンブリよりもさらに前方に配置される。上述した多くの利点(例えば、第1ロータアセンブリと第2ロータアセンブリとを対のユニットとすることの性能上の利点)は、スタックロータがティルトロータよりもさらに前方にある場合にも同様に及ぶ。さらに、ティルトロータの後流に関連する利点は当てはまらないか、又は関連性が低くなるかもしれないが、追加の利点が生じ得る。例えば、この構成により、露出時間の短縮、および/または、ブレード離脱軌道の交差とロータカスケードの故障との確率の低減が促進され得る。さらに、この構成は、プロペラフィン効果(プロペラ効果)のバランスまたは緩和に役立つことがある。プロペラフィン効果(プロペラ効果)は、例えば、第1ロータアセンブリが第2ロータアセンブリよりも空飛ぶクルマの機体上でさらに前方に配置される第1の態様における複数対のロータ構成の別の例などにおいて、1つまたは複数の他のロータによって生成され得る。プロペラフィン効果(プロペラ効果)は、プロペラの法線力によって生じるヨーイングモーメントまたはピッチングモーメントである。プロペラが気流に対して傾き、これによって揚力面のように作用するたびにプロペラの法線力が生成され、ティルトロータが使用されている場所では、プロペラの法線力がより生成されやすい。
いくつかの実施形態において、第2ロータアセンブリは、第1ロータアセンブリのティルトロータが実質的な垂直飛行推力の供給姿勢と実質的な定常飛行推力の供給姿勢との間で傾動している空飛ぶクルマの飛行形態中における少なくとも一部の間に、推力を提供するように構成されている。
いくつかの実施形態において、複数のスタックロータ(垂直推力ロータ)は、複数(少なくともいくつか)の構成部に配置され、各構成部において単一の揚力翼として機能する。したがって、例えば、複数のスタックロータが結合されて動作し、これによって、揚力を増大させ、且つ/又は、失速を遅らせることがある。異なるスタックロータ内のブレードの向き、および、スタックロータ間の近接性は、一対のスタックロータ間において、当該対の上流からの乱流が当該対の下流で気流を活性化するようなものであってもよい。このことは、複数のスタックロータが、例えば第2ロータアセンブリによって分断されるのではなく、第2ロータアセンブリの一方側(同じ側)に設けられることによって、少なくとも部分的に容易に実現され得る。
いくつかの実施形態において、複数のスタックロータ(垂直推力ロータ)は、2つのスタックロータ(垂直推力ロータ)で構成される。
いくつかの実施形態において、複数のスタックロータ(垂直推力ロータ)は、同じ推進ユニットによって駆動される。したがって、例えば、複数のスタックロータが単一の電気モータによって動力を供給されてもよい。このことは、重量および/または複雑さを軽減することを可能にするとともに、複数のスタックロータを、例えば、第2ロータアセンブリパイロンによって分断するのではなく、第2ロータアセンブリパイロンの一方の側(同じ側)に設けることによって、少なくとも部分的に容易に実現され得る。
いくつかの実施形態において、複数のスタックロータは、該複数のスタックロータと第2ロータアセンブリの残りの部分との間における共通のベアリングセットおよび/または共通のベアリングレースによって推進回転可能に支持されている。ただし、他の実施形態では、独立したベアリングセットおよび/または独立したベアリングレースが使用されてもよい。
いくつかの実施形態において、複数のスタックロータは、1つまたは複数の他の共通の構成要素(例えば、後述の格納形態のための共通のスラストベアリングおよび/または共通のロータ方向ロック機構)を共有する。
いくつかの実施形態において、複数のスタックロータのそれぞれは、2つのブレードからなる。これにより、より抵抗低減効率の高い態様での格納が簡素化され得る。
いくつかの実施形態において、空飛ぶクルマは、第2ロータアセンブリの展開形態への展開と格納形態への格納とを選択的に制御するように構成された第2ロータアセンブリ制御システムを備え、前記展開により、複数のスタックロータのそれぞれのブレードが他のスタックロータのブレードと角度的にずらされるように、複数のスタックロータがそれぞれの推力発生回転軸を中心に前記展開形態に対して相対的に回転し、前記格納により、複数のスタックロータのそれぞれのブレードが他のスタックロータのブレードと角度的に位置合わせされるように、複数のスタックロータのそれぞれの推力発生回転軸を中心に前記格納形態に対して相対的に回転する。これにより、特にスタックロータのロータごとにブレードが2つしかない場合における、展開時に生成される垂直推力の増大と、スタックロータが推力生成のために使用されていないときにおける格納形態での抵抗低減との両立が実現され得る。
いくつかの実施形態では、展開形態における、複数のスタックロータの全てにわたるブレード(ロータブレード)の組み合わせとして、角度方向において複数のブレード(ロータブレード)が等間隔を空けて連続するように配置される。ただし、代替的に、(少なくとも一部の)ブレード(ロータブレード)が角度方向に等間隔を空けて連続するように配置されない場合もある。例えば、複数のブレード(ロータブレード)が組み合わせにより十字形を形成してもよい。この場合、ブレード間の対向セグメントに関して、第1セットは角度範囲が等しいが、第2セットは角度範囲が異なる。このような構成により、効率的性能およびノイズ性能が改善され得る。
いくつかの実施形態において、複数のスタックロータは、推力を発生させるために駆動されるときに展開形態にある。
いくつかの実施形態では、格納形態において、複数のスタックロータのそれぞれのブレード(ロータブレード)は、空飛ぶクルマの長手軸に平行な軸に実質的に位置合わせされる。このことは、スタックロータのブレード(ロータブレード)が、スタックロータが格納形態にあるときに抵抗を低減し得るような比較的小さな総前面面積を示すことを意味し得る。大きく離間された2つの同様に位置合わせされたロータと比較しても、このようにして総前面面積はさらに低減され得る。具体的には、複数のスタックロータが上記のように位置合わせされ、互いに近接しており、ブレードにねじれがある場合、スタックロータとは別に、別のブレードに隣接する1つのブレードの少なくとも部分的な空気力学的シュラウドがあってもよく、これにより、総前面面積がさらに低減され得る。
いくつかの実施形態において、複数のスタックロータは、推力を発生させるために駆動されていないときに格納形態にある。例えば、空飛ぶクルマは、スタックロータからの寄与が必要とされることなく、定常飛行において十分な揚力を生成可能であり、これにより、第2ロータアセンブリは、電力消費と抵抗を低減するように格納されてもよい。次いで、異なる飛行形態(例えば、遷移飛行または垂直飛行)に入ると、第2ロータアセンブリが展開されて、垂直推力を発生させるための動力が供給されてもよい。
いくつかの実施形態において、第1ロータアセンブリのティルトロータは、実質的な垂直飛行推力と実質的な定常飛行推力とを交互に供給するために、実質的に90度にわたって傾動することによって遷移するように構成される。また、(例えば、減速度の向上および/または後退飛行モードを容易にするために、且つ/又は、1つのティルトロータが後方に傾動し、空飛ぶクルマの他方側における別のティルトロータが前方に傾動するような空飛ぶクルマのヨーイングを容易にするために)90度の範囲を超える傾動機能が提供されてもよい。
いくつかの実施形態において、第1ロータアセンブリのティルトロータは、空飛ぶクルマの垂直推力形態では空飛ぶクルマに対して前方または後方のいずれか一方に並進し、空飛ぶクルマの定常飛行形態では逆方向に並進するように構成されている。したがって、例えば、垂直飛行形態のために上向きに傾動することに加えて、ティルトロータは後方に並進可能であり、このことは、上向きの傾動が発生しているときに行われてもよい。第1ロータアセンブリが空飛ぶクルマの機体上で第2ロータアセンブリよりもさらに前方に位置する場合、垂直推力形態のために後方への並進が利用されてもよい。さらに、第2ロータアセンブリが空飛ぶクルマの機体上で第1ロータアセンブリよりもさらに前方に位置する場合、垂直推力形態のために前方への並進が利用されてもよい。この機能は、定常飛行形態における第1ロータアセンブリのレバーアームを縮小するために使用されてもよく、このことは、プロペラフィン効果(プロペラ効果)を低減するのに役立ち得る。
いくつかの実施形態において、第1ロータアセンブリと第2ロータアセンブリとのうちの少なくとも一方は、空飛ぶクルマの翼に取り付けられる。翼は、空飛ぶクルマの胴体に対して長手方向の実質的に中央に配置されてもよい。翼は、例えば、空飛ぶクルマの重心に近接して配置されてもよい。翼により、定常飛行効率の向上が可能になる。翼は、効率、空飛ぶクルマの重量配分、最低地上高などを含むさまざまな要因の観点から、第1ロータアセンブリおよび/または第2ロータアセンブリのための便利な取り付け場所になり得る。第1ロータアセンブリと第2ロータアセンブリとの両方が翼に取り付けられている場合、このことは、第1ロータアセンブリおよび第2ロータアセンブリが互いに近接していることを示唆する傾向がある。したがって、第1ロータアセンブリおよび第2ロータアセンブリのどちらかがもう一方の下流に位置していても、後流の影響を軽減するという本発明の重要性が潜在的に大きくなり得る。
いくつかの実施形態において、第1ロータアセンブリまたは第2ロータアセンブリは、翼の前縁の実質的に前方に突出するように翼に取り付けられる。
いくつかの実施形態において、第1ロータアセンブリまたは第2ロータアセンブリは、翼の後縁の実質的に後方に突出するように翼に取り付けられる。
いくつかの実施形態において、複数のスタックロータは、翼の翼弦線に位置合わせされる水平面の実質的に同じ側に位置するように取り付けられる。
いくつかの実施形態において、複数のスタックロータは、翼の翼弦線に位置合わせされる水平面の実質的に上側に位置するように取り付けられる。これにより、少なくともいくつかの飛行形態において、スタックロータがティルトロータの後流を受ける程度を減らすことができる。
いくつかの実施形態において、第1ロータアセンブリと第2ロータアセンブリは、1対のロータアセンブリを構成し、空飛ぶクルマは、上述の実施形態(単独、又は、相互に排他的である場合を除く任意の組み合わせ)のいずれかに係る複数対のロータアセンブリを備える。特に、複数対のロータアセンブリが、空飛ぶクルマの翼に設けられ、且つ/又は、空飛ぶクルマの翼全体に分配されてもよい。具体的には、例えば、空飛ぶクルマの各翼に2対ずつ、合わせて4対のロータアセンブリが設けられてもよい。さらに、存在する全対のロータアセンブリが空飛ぶクルマの翼に設けられてもよい。
いくつかの実施形態において、少なくとも2対のロータアセンブリは、横方向に位置ずれされるように取り付けられる。これにより、ブレード離脱事象において、いずれかの対のロータアセンブリからのブレード離脱軌道が、他の対のロータアセンブリのブレードに交差する可能性が低減され得る。
いくつかの実施形において、空飛ぶクルマの全てのロータアセンブリが、前記複数対のロータアセンブリの一部として設けられる。
いくつかの実施形態において、空飛ぶクルマの全てのロータアセンブリが、空飛ぶクルマの翼に設けられる。
いくつかの実施形態において、前記複数対のロータアセンブリは、いずれも、空飛ぶクルマの機体上で第2ロータアセンブリよりもさらに前方に配置された第1ロータアセンブリを有する。特に、このような対のロータアセンブリは、2対または4対存在してもよい。
いくつかの実施形態において、全対のロータアセンブリが、空飛ぶクルマの機体上で第1ロータアセンブリよりもさらに前方に配置された第2ロータアセンブリを有する。特に、このような対のロータアセンブリは、2対または4対存在してもよい。
いくつかの実施形態において、前記複数対のロータアセンブリには、第1ロータアセンブリが空飛ぶクルマの機体上で第2ロータアセンブリよりもさらに前方に位置する1対または複数対と、第2ロータアセンブリが空飛ぶクルマの機体上で第1ロータアセンブリよりもさらに前方に位置する1対または複数対とが混在している。さらに、第1ロータアセンブリが空飛ぶクルマの機体上で第2ロータアセンブリよりもさらに前方に位置するタイプと、第2ロータアセンブリが空飛ぶクルマの機体上で第1ロータアセンブリよりもさらに前方に位置するタイプとは、同数ずつ混在してもよい。さらに、異なるタイプ(前者のタイプと後者のタイプ)は、空飛ぶクルマの長手軸に関して対称に配置されてもよい。このことは、本発明の他の利点を維持しながら、(両タイプが混在しなければ悪化しやすい)プロペラフィン効果(プロペラ効果)を軽減するのに役立ち得る。
いくつかの実施形態において、空飛ぶクルマは、前記複数対のロータアセンブリのうちの1対または複数対と、さらなるロータアセンブリとの組み合わせを備える。前記さらなるロータアセンブリは、1つ又は複数のさらなるティルトロータ、及び/又は、1つ又は複数のさらなるスタックロータ(垂直推力ロータ)を備えてもよい。例えば、次のような2つの例に係るロータアセンブリが設けられてもよい。1例目は、各翼の内側ステーションに取り付けられるものであり、4つのさらなるロータアセンブリは、複数のスタックロータ(垂直推力ロータ)をそれぞれ備える。2例目は、各翼の外側ステーションに取り付けられるものであり、各外側ステーションにおける一方のロータアセンブリは、翼の前縁の実質的に前方に突出するように取り付けられ、各外側ステーションにおける他方のロータアセンブリは、翼の後縁から実質的に後方に突出するように取り付けられる。
いくつかの実施形態において、空飛ぶクルマは航空機である。空飛ぶクルマは、空中タクシーであってもよい。空飛ぶクルマは、VTOLまたは短距離離陸・垂直着陸(STOVL)の飛行体であってもよい。空飛ぶクルマは、コックピットおよび/またはキャビンを備えてもよい。空飛ぶクルマは、搭乗機であってもよい。空飛ぶクルマは、有人機であってもよい。空飛ぶクルマは、操縦されるもの、且つ/又は、操縦士が搭乗するものであってもよい。
本出願の範囲内において、以上の段落、特許請求の範囲、および/または以下の説明、並びに図面に記載されている様々な態様、実施形態、実施例、および代替案、特にこれらの個々の特徴は、 単独で、または任意の組み合わせで理解され得ることが意図されている。すなわち、すべての実施形態および/または任意の実施形態の特徴は、このような特徴が両立しない場合を除き、任意の方法および/または任意の組み合わせで組み合わされ得る。出願人は、最初に提出された請求を変更する権利、またはこれに応じて新しい請求を提出する権利を留保する。この権利には、最初に提出された請求を、他の請求の特徴に従属するように、且つ/又は、他の請求の特徴を組み込むように、最初に請求されていない態様に補正する権利が含まれる。
以下の添付図面を参照して、本発明の1つ以上の実施形態が単に例示的に説明される。
まず、図1及び図2を参照すると、例えばVTOL(垂直離着陸)の空中タクシー航空機である、空飛ぶクルマ(航空機)が参照符号1で全体的に示されている。航空機(空飛ぶクルマ)1は、長手軸(縦軸)、横軸(短手軸)、及び鉛直軸(垂直軸)を有する(参照符号3参照)。航空機1は、機体5と、機体5に取り付けられた例えば4対のロータアセンブリ7とを有する。機体5は、胴体9、一対の翼11、及び尾翼13を有する。航空機1の中心線と、翼11の翼弦とは長手軸に沿っている。翼11のスパン方向(翼幅方向)は横軸に実質的に沿っている。胴体9は、客室(図示せず)及びコックピット(図示せず)を備える。ただし、他の実施形態において、客室が省略されたり、(例えば、格納エリアに)置き換えられたりしてもよく、特に、航空機1が自律制御用に構成されたり、第三者の場所(遠隔地)からの制御のために構成されたりする場合、コックピットが省略されてもよい。
航空機1の翼11は、胴体9上に高く(すなわち、胴体9の上部から延在するように)取り付けられ、航空機1の重心に実質的に一致する長手方向位置から延在する。4対のロータアセンブリ7は、翼11ごとに2対ずつ、翼11を介して機体5に取り付けられている。各翼11上において、1対のロータアセンブリ7は、当該翼のスパンにおける約3分の1の位置で内側ステーション15に取り付けられ、もう1対のロータアセンブリ7は、当該翼のスパンにおける約3分の2の位置で外側ステーション17に取り付けられている。
各対のロータアセンブリ7は、第1ロータアセンブリ19と第2ロータアセンブリ21とを備える。各対において、第1ロータアセンブリ19は、第2ロータアセンブリ21よりも航空機1の機体5上の前方に配置されている。さらに、各対において、第1ロータアセンブリ19は、航空機1の長手方向において、第2ロータアセンブリ21から離間している。第1ロータアセンブリ19と第2ロータアセンブリ21とは、実質的に、航空機1の長手軸に位置合わせされた鉛直面に平行な鉛直面上にある。この鉛直面において、第1ロータアセンブリ19と第2ロータアセンブリ21とは、実質的に、両者とも、航空機1の長手軸に平行な1つの軸上にある。
以下、第1ロータアセンブリ19及びその周辺構造の一例が説明されるが、この説明は、複数対のロータアセンブリ7における全ての第1ロータアセンブリ19に等しく適用されるものとする。
第1ロータアセンブリ19は、ティルトロータ23を備えている。ティルトロータ23は、第1ロータアセンブリ制御システムの影響下で、実質的な垂直飛行推力(鉛直飛行推力)と実質的に定常飛行推力(水平飛行推力)とを交互に供給するために実質的に90度にわたる傾動によって遷移(移行)可能であり、これら2つの飛行推力の供給姿勢(供給形態)の間の遷移ゾーン(移行ゾーン)を有するように構成されている。ティルトロータ23は、第1ロータアセンブリパイロン(第1ロータアセンブリ用のパイロン)25によって、関連するステーション15,17において翼11に取り付けられている。第1ロータアセンブリパイロン25は、翼11の前縁27から前方に突出しており、前縁27に対して実質的に垂直である。ティルトロータ23は、第1ロータアセンブリパイロン25の先端部(遠位端)に近接して取り付けられている。したがって、ティルトロータ23自体も、実質的に前縁27の前方に突出し、引っ張り構成で(片持ち状に)配置されている。ティルトロータ23のティルト機構(傾動機構)は、ティルトロータ23を傾動させるときにティルトロータ23を移動させる。具体的には、ティルトロータ23が垂直推力供給姿勢(垂直推力供給形態)に向かって傾動すると、ティルトロータ23は、ティルトロータ23が取り付けられている翼11に向かって(すなわち、後方に)移動される。さらに、ティルトロータ23は、定常飛行形態(定常推力供給姿勢)に向かって傾動されると、ティルトロータ23が取り付けられている翼11から離れるように(すなわち、前方に)移動される。ティルトロータ23は、例えば電気モータ(図示せず)によって駆動される。
以下、第2ロータアセンブリ21及びその周辺構造の一例が説明されるが、この説明は、複数対のロータアセンブリ7における全ての第2ロータアセンブリ21に等しく適用されるものとする。
第2ロータアセンブリ21は、互いに積み重ねられて(スタックされて)実質的に鉛直方向の推力を供給する複数のスタックロータ(垂直推力ロータ)29を備える。本実施例において、スタックロータ29は、2つのロータが積み重ねられて構成されている。第2ロータアセンブリ21は、第2ロータアセンブリパイロン(第2ロータアセンブリ用のパイロン)31によって、関連するステーション15,17において翼11に取り付けられている。第2ロータアセンブリパイロン31は、翼11の後縁33から後方に突出しており、後縁33に対して実質的に垂直である。スタックロータ29は、第2ロータアセンブリパイロン31の先端部(遠位端)に近接して取り付けられている。したがって、スタックロータ29自体も後縁33の実質的に後方に突出する。複数のスタックロータ29は、第2ロータアセンブリパイロン31の同じ側(本実施例では、第2ロータアセンブリパイロン31の上側)に配置される。また、本実施形態において、スタックロータ29は、スタックロータ29が取り付けられる翼11の翼弦線に位置合わせされる水平面の実質的に上側に取り付けられる。スタックロータ29は、鉛直方向の推力を発生させるように方向づけられている。したがって、それぞれのスタックロータ29は、スタックロータ29が取り付けられる翼11の翼弦線に実質的に平行なそれ自体の平面内に実質的に位置する。
スタックロータ29は、実質的に鉛直方向の推力のみを供給するために設けられており、したがってティルトロータではない。ただし、いくつかの実施形態において、スタックロータ29は、例えば適度な安定度補正を可能にするために、ある程度のギンブリング関節(gimbling articulation)を有してもよい。
複数のスタックロータ29は、同じ構成からなり、推力発生のために共通の軸を中心に回転する。複数のスタックロータ29は、互いに近接して取り付けられる(例えば、複数のスタックロータ29間の間隔は、スタックロータ29のブレード(ロータブレード)35の平均空力翼弦の長さの実質的に100%未満である)。第2ロータアセンブリ21は、推進ユニットとして、推力発生のために同じ回転方向に複数のスタックロータ29を駆動する電気モータ(図示せず)を備える。
それぞれのスタックロータ29は、2つのブレード35からなる。該2つのブレード35は、互いに反対方向に延在し、ブレードのねじれをそれぞれ有する。図1及び図2において、第2ロータアセンブリ21は、格納形態で示されている。格納形態において、各スタックロータ29のブレード35は、他のブレード35に角度的に位置合わせされ、回転せず、したがって、鉛直方向の推力を提供しない。さらに、ブレード35は、航空機1の長手軸に平行な軸に実質的に位置合わせされ、(例えば、適切なストッパ、戻り止め、クラッチなどを使用して)該位置に保持される。第2ロータアセンブリ制御システムは、推力発生回転軸を中心とした2つのスタックロータ29のロータ間の相対回転を、展開形態に至るまで制御可能である。展開形態において、各スタックロータ29のブレード35は、他のブレード35から角度的にずらされている。特に、相対回転は実質的に90度にわたって行われる。そのため、2つのスタックロータ29の組み合わせにより、全て(4つ)のブレード35が角度方向に等間隔を空けて配置される4ブレードシステムが提供される。また、第2ロータアセンブリ制御システムは、スタックロータ29間のさらなる適切な相対回転によって、第2ロータアセンブリ21をスタック形態(格納形態)に戻すことができる。第2ロータアセンブリ制御システムは、格納形態と展開形態との間の調整を果たすための任意の適切なシステムを備えてもよい(例えば、当該システムは、スタックロータ29間の相対回転を解放、固定、および/または作動させるために電力を利用したり、スタックロータ29間の相対回転が受動的になされるように定常(水平方向)の飛行気流を使用したり、スタックロータ29間の相対回転をもたらすように、一方または他方のスタックロータ29に選択的に加えられるブレードの慣性および/または制動力を使用したりしてもよい)。
使用中において、航空機1は、定常飛行(水平飛行)、遷移飛行(移行飛行)、および垂直飛行で動作可能であり、これらの飛行モードのそれぞれについて異なる形態を有する。
定常飛行中は、定常飛行モードに設定されるように、翼11によって必要な揚力が提供され、(フライトコントローラからの指示に基づいて第1ロータアセンブリ制御システムによって制御される)ティルトロータ23によって推力が供給される。なお、定常飛行モードでは、ティルトロータ23のブレード(ロータブレード)の平面が実質的に鉛直方向に位置合わせされる。この形態(状態)において、各対のロータアセンブリ7におけるティルトロータ23からの乱流は、同じ対の第2ロータアセンブリ21のスタックロータ29に作用する。とはいえ、定常飛行中、フライトコントローラは、第2ロータアセンブリ21を格納形態にするように第2ロータアセンブリ制御システムを制御する。結果としてスタックロータ29のブレード35が航空機1の長手軸に平行な軸に位置合わせされることは、定常飛行における気流に対するスタックロータ29の総前面面積と、ティルトロータ23からの乱流とが比較的小さいことを意味する。さらに、2つのスタックロータ29が近接していること、及び、スタックロータ29のブレード35がブレードのねじれを有することにより、一方のスタックロータ29が他方のスタックロータ29によって部分的に塞がれる。これにより、2つのスタックロータ29が上記のように位置合わせされているが、(例えば、これらを支持するパイロンによって)著しく離間しているという理論上のシナリオと比較して、総前面面積を低減できる。その結果、定常飛行中の非使用時に第2ロータアセンブリ21によって生じる抵抗および騒音が低減され得る。
ただし、上記の構成に限定されるものではなく、他の実施形態において、ティルトロータ23が定常飛行形態にあるとき、スタックロータ29は、ティルトロータ23からの乱流を実質的に超えるように配置されてもよい。このような配置は、スタックロータ29を第2ロータアセンブリパイロン31の一方の側に近接させることによって容易になし得る。
垂直飛行に入ることが望まれるとき、フライトコントローラは、航空機1の形態を定常飛行形態から垂直飛行形態に調整し始める。定常飛行形態と垂直飛行形態との間において、航空機1は遷移形態(移行形態)にあり、遷移飛行(移行飛行)を実行する。定常飛行から垂直飛行への遷移(移行)が起こる場合、遷移形態および遷移飛行の特徴として、フライトコントローラがティルトロータ23のピッチを垂直飛行形態(すなわち、ティルトロータ23のブレードの面が実質的に水平に位置合わせされる形態)に調整するように第1ロータアセンブリ制御システムに指示すると、定常飛行推力(すなわち、前方への飛行推力)が着実に減少する。さらに、遷移形態および遷移飛行の特徴として、フライトコントローラの制御に基づいて、第2ロータアセンブリ制御システムが、スタックロータ29を展開形態に動かし、垂直推力を提供するようにスタックロータ29を作動させると、翼11によって提供される揚力が結果的に減少し、傾動されているティルトロータ23とスタックロータ29とによって提供される垂直推力が増大する。ティルトロータ23がその垂直飛行形態に向かって傾動されるとき、ティルトロータ23は、ティルトロータ23が取り付けられている翼11および第1ロータアセンブリパイロン25に向かって後方に移動(平行移動)される。これにより、各ティルトロータ23のためのレバーアームの削減が可能になり、遷移形態中に受けるプロペラフィン効果(プロペラ効果)の力が低減され得る。
遷移の一部の間、スタックロータ29は稼働している(鉛直方向の推力を提供している)が、もはやそれほど後流37が生じないほどに十分にティルトロータ23が傾動されるまでは、依然として、各スタックロータ29は、それぞれの上流のティルトロータ23の後流37の影響を受ける。ただし、スタックロータ29は互いに近接しており、第2ロータアセンブリパイロン31の上方に配置されているため、後流37の影響を受ける状態が継続する時間は、代替構成と比較して短縮され得る。
スタックロータ29が互いに近接していることを考慮すると、スタックロータ29は、展開形態にあるとき、(本実施例では)4枚のブレードからなる単一の揚力翼を効果的に形成する。これにより、仮にスタックロータ29が(例えば、介在するパイロンによって強制されるような)より大きな距離を空けて離間している状況と比較して、効率が向上し、騒音が低減し得る。
垂直飛行モードに達すると、航空機1は、ティルトロータ23とスタックロータ29とによって発生される推力を適切に調整することによって、(例えば垂直離着陸のために)ホバリング、垂直上昇、または垂直下降するように動作され得る。
再び定常飛行に入ることが望まれる場合、前述の遷移プロセス(移行プロセス)が逆の順序で行われ得る。この遷移プロセスには、ティルトロータ23が定常飛行形態に向かって傾動されるにつれて、ティルトロータ23が伸展すること(すなわち、前方へ並進すること)が含まれる。少なくともいくつかの実施形態において、遷移形態は、安定した形態として維持され得ることにさらに留意されたい。例えば、ティルトロータ23は、定常飛行形態の傾動角と垂直飛行形態の傾動角との間における可能な傾動角の中から選択される1つの傾動角に維持され得る。さらに、スタックロータ29は、対気速度およびティルトロータ23の角度など、垂直推力に必要とされる所与のパラメータに従って推力を生成するように、格納されて動作停止されるか、又は、展開されて稼働し得る。
図1及び図2の実施形態は、例えば図3に示される構成よりもいくつかの利点を有し得る。図3の構成は、図1及び図2の構成に実質的に類似しているが、スタックロータ29が第2ロータアセンブリパイロン31の上に配置されているのではなく、図3の構成は、より大幅に離間した2つのスタックロータ(垂直推力ロータまたは垂直ロータ)41を利用しており、2つのスタックロータ41は、これらを支持するパイロン43の一方側および他方側にそれぞれ取り付けられている。このことは、スタックロータ41が、定常飛行モードおよび遷移飛行モードの大部分で上流のティルトロータ47の後流45にさらされ、性能および騒音に悪影響を及ぼす可能性があることを意味し得る。さらに、非使用時のスタックロータ41を格納しても、一方のロータが他方のロータの一部を覆って総前面面積を低減させるという利益を得ることはできず、したがって、達成し得る抵抗低減は限定的である。さらに、スタックロータ41間に間隔が空くことは、これらのスタックロータ41が、潜在的な効率的、動的、および騒音の利点をもたらすような単一の多要素揚力翼として集合的に機能しないことを意味する。また、スタックロータ41間のブレード渦相互作用も起こりやすい。さらに、図3の構成では、構成要素(例えば、駆動モータ、ベアリング、および/またはベアリングレースなど)を共有する機会を得ることがより困難になり、これにより、重量と複雑さが増大し得る。
本発明では、代替の実施形態も可能であり、図4及び図5は、そのような代替実施形態の2つの例を示している。図4の実施形態は、図1及び図2に関して上述されたものと大まかに類似している航空機51を示す。図1及び図2に関する実施形態との相違点として、航空機51は、上述の4対のロータアセンブリ7に代えて、4対のロータアセンブリ53を有する。該ロータアセンブリ53では、上述のロータアセンブリ7と比較して、第1ロータアセンブリと第2ロータアセンブリの位置が逆になっている。したがって、図4では、第2ロータアセンブリ(スタックロータ)が第1ロータアセンブリ(ティルトロータ)の前方に配置されている。この実施形態において、第1ロータアセンブリは、プッシャであり、(上向きではなく)下向きに傾動して垂直推力を提供する。
図5の実施形態は、図1及び図2に関して上述されたものと大まかに類似している航空機61を示している。図1及び図2に関する実施形態との相違点として、航空機61は、上述の4対のロータアセンブリ7ではなく、同様のロータアセンブリ63を内側ステーション65における2対しか有していない。外側ステーションには、第2ロータアセンブリ21の2つの要素(すなわち、翼71の前縁69の前方に設けられたスタックロータ、及び、翼71の後縁73の後方に設けられたスタックロータ)を有する複数対(2対)のロータアセンブリ67が設けられている。図5の実施形態は、ティルトロータが2つしかないことを考えると、過度のプロペラフィン効果(プロペラ効果)の影響を受けにくく、これにより、重量の低減にもつながり得る。また、この実施形態では、ロータアセンブリ67の対に関して、図1及び図2の実施形態に関して上述された利点も依然として得られる。置換された第2ロータアセンブリ21は、必要に応じて、垂直飛行形態に追加の垂直推力を提供し得る。
本明細書(添付の特許請求の範囲、要約書、および図面を含む)に開示されたすべての構成、および/またはそのように開示された任意の方法またはプロセスのすべてのステップは、そのような構成および/またはステップの少なくともいくつかが相互に排他的である組み合わせを除いて、任意に組み合わされてもよい。
本明細書(添付の特許請求の範囲、要約書、および図面を含む)に開示されている各構成は、別段の明示的な記載がない限り、同じ、同等または類似の目的を果たす別の構成に置き換えられてもよい。したがって、別段の明示的な記載がない限り、開示された各構成は、一連の同等または類似の一般的な構成の一例にすぎない。
本発明は、上述の実施形態の詳細に限定されるものでない。本発明は、本明細書(添付の特許請求の範囲、要約書、および図面を含む)に開示された構成の任意の新規の1つまたは組み合わせ、または、開示された任意の方法またはプロセスのステップの任意の新規の1つまたは組み合わせにまで及ぶ。特許請求の範囲は、上述の実施形態のみに及ぶと解釈されるべきではなく、特許請求の範囲内に入る任意の実施形態にも及ぶと解釈されるべきである。
Claims (25)
- 第1ロータアセンブリと、第2ロータアセンブリと、空飛ぶクルマにおける残りの部分に前記第2ロータアセンブリを取り付けるように構成された第2ロータアセンブリ用のパイロンとを備えた空飛ぶクルマであって、
前記第1ロータアセンブリ及び前記第2ロータアセンブリは、前記空飛ぶクルマの長手方向に離間するように、且つ、前記空飛ぶクルマの長手軸に位置合わせされた鉛直面に平行な鉛直面に実質的に位置するように配置され、
前記第1ロータアセンブリは、実質的な垂直飛行推力の供給姿勢と実質的な定常飛行推力の供給姿勢との間で傾動するように構成されたティルトロータを備え、
前記第2ロータアセンブリは、前記パイロンの実質的に同じ側に取り付けられて実質的に鉛直方向の推力を供給するように互いに積み重ねられた複数のスタックロータを備える、空飛ぶクルマ。 - 前記第1ロータアセンブリ及び前記第2ロータアセンブリは、両者が前記長手軸に平行な1つの軸上に実質的に位置するように配置されている、請求項1に記載の空飛ぶクルマ。
- 前記第2ロータアセンブリの前記複数のスタックロータ間の間隔は、該スタックロータのブレードの平均空力翼弦の長さの実質的な100%よりも小さい、請求項1または請求項2に記載の空飛ぶクルマ。
- 前記第1ロータアセンブリは、前記第2ロータアセンブリに比べて、前記空飛ぶクルマの機体上の前方に配置されている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の空飛ぶクルマ。
- 前記第2ロータアセンブリは、前記第1ロータアセンブリに比べて、前記空飛ぶクルマの機体上の前方に配置されている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の空飛ぶクルマ。
- 前記第1ロータアセンブリは、前記ティルトロータの傾動角の全範囲内に所定の傾斜角が存在するように配置され、
前記所定の傾斜角は、
前記ティルトロータの中心と前記第2ロータアセンブリの前記スタックロータの中心点との間の軸が、推力供給のために回転する前記ティルトロータのブレードによって規定される回転面に対して実質的に垂直になるような角度である、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の空飛ぶクルマ。 - 前記第1ロータアセンブリは、前記ティルトロータの傾動角の全範囲内に所定の傾斜角が存在しないように配置され、
前記所定の傾斜角は、
前記ティルトロータの中心と前記第2ロータアセンブリの前記スタックロータの中心点との間の軸が、推力供給のために回転する前記ティルトロータのブレードによって規定される回転面に対して実質的に垂直になるような角度である、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の空飛ぶクルマ。 - 前記スタックロータは、前記パイロンの実質的に上に位置するように前記パイロンに取り付けられている、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の空飛ぶクルマ。
- 前記第2ロータアセンブリは、前記第1ロータアセンブリの前記ティルトロータが実質的な垂直飛行推力の供給姿勢と実質的な定常飛行推力の供給姿勢との間で傾動している前記空飛ぶクルマの飛行形態中における少なくとも一部の間に、推力を提供するように構成されている、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の空飛ぶクルマ。
- 前記スタックロータは、単一の揚力翼としてそれぞれ機能する複数の構成部に配置されている、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の空飛ぶクルマ。
- 前記複数のスタックロータは、同じ推進ユニットによって駆動される、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の空飛ぶクルマ。
- 前記複数のスタックロータは、該複数のスタックロータと前記第2ロータアセンブリの残りの部分との間における共通のベアリングセットおよび/または共通のベアリングレースによって推進回転可能に支持されている、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の空飛ぶクルマ。
- 前記空飛ぶクルマは、前記第2ロータアセンブリの展開形態への展開と格納形態への格納とを選択的に制御するように構成された第2ロータアセンブリ制御システムを備え、
前記展開により、前記複数のスタックロータのそれぞれのブレードが他のスタックロータのブレードと角度的にずらされる前記展開形態に至るまで、前記複数のスタックロータがそれぞれの推力発生回転軸を中心に相対的に回転し、
前記格納により、前記複数のスタックロータのそれぞれのブレードが他のスタックロータのブレードと角度的に位置合わせされる前記格納形態に至るまで、前記複数のスタックロータのそれぞれの推力発生回転軸を中心に相対的に回転する、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の空飛ぶクルマ。 - 前記格納形態において、前記複数のスタックロータのそれぞれの前記ブレードは、前記空飛ぶクルマの長手軸に平行な軸に実質的に位置合わせされている、請求項13に記載の空飛ぶクルマ。
- 前記複数のスタックロータは、推力を発生させるように駆動されていないときに前記格納形態になる、請求項13または請求項14に記載の空飛ぶクルマ。
- 前記第1ロータアセンブリのティルトロータは、前記空飛ぶクルマの垂直推力形態では前記空飛ぶクルマに対して前方または後方のいずれか一方に並進し、前記空飛ぶクルマの定常飛行形態では逆方向に並進するように構成されている、請求項1から請求項15のいずれか1項に記載の空飛ぶクルマ。
- 前記第1ロータアセンブリ及び前記第2ロータアセンブリのうちの少なくとも一方は、前記空飛ぶクルマの翼に取り付けられている、請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の空飛ぶクルマ。
- 前記第1ロータアセンブリ及び前記第2ロータアセンブリのうちのいずれか一方は、前記空飛ぶクルマの翼の前縁から実質的に前方に突出するように前記翼に取り付けられている、請求項1から請求項17のいずれか1項に記載の空飛ぶクルマ。
- 前記第1ロータアセンブリ及び前記第2ロータアセンブリのうちのいずれか一方は、前記空飛ぶクルマの翼の後縁から実質的に後方に突出するように前記翼に取り付けられている、請求項1から請求項18のいずれか1項に記載の空飛ぶクルマ。
- 前記第1ロータアセンブリと前記第2ロータアセンブリとは、ロータアセンブリの対を構成しており、
前記空飛ぶクルマは、前記ロータアセンブリの対を複数備えている、請求項1から請求項19のいずれか1項に記載の空飛ぶクルマ。 - 前記空飛ぶクルマにおける全てのロータアセンブリは、前記ロータアセンブリの対の一部として設けられている、請求項20に記載の空飛ぶクルマ。
- 前記空飛ぶクルマにおける全てのロータアセンブリは、前記空飛ぶクルマの翼に設けられている、請求項20または請求項21に記載の空飛ぶクルマ。
- 前記ロータアセンブリの対のいずれにおいても、前記第1ロータアセンブリが前記第2ロータアセンブリよりも前記空飛ぶクルマの機体上の前方に配置されている、請求項20から請求項22のいずれか1項に記載の空飛ぶクルマ。
- 前記ロータアセンブリの対には、
前記第1ロータアセンブリが前記第2ロータアセンブリよりも前記空飛ぶクルマの機体上の前方に配置されている1つ以上の対と、
前記第2ロータアセンブリが前記第1ロータアセンブリよりも前記空飛ぶクルマの機体上の前方に配置されている1つ以上の対と、が混在している、請求項20から請求項22のいずれか1項に記載の空飛ぶクルマ。 - VTOLまたはSTOVLの航空機からなる、請求項1から請求項24のいずれか1項に記載の空飛ぶクルマ。
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