JP2023535918A - Rna編集用のアンチセンスオリゴヌクレオチド - Google Patents
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Abstract
本発明は、標的RNA中の標的アデノシンのイノシンへの脱アミノ化に使用するための、2つの一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)のセットを含む組成物であって、一方のAONは「編集AON」であり、他方のAONは「ヘルパーAON」であり、編集AONは、標的アデノシンを含む標的RNA中のひと続きのヌクレオチドに相補的であり、ヘルパーAONは、編集AONに相補的なひと続きのヌクレオチドとは別の標的RNA中のひと続きのヌクレオチドに相補的であり、ヘルパーAONは16~22ヌクレオチドの長さを有し、編集AONは16~22ヌクレオチドの長さを有する、組成物に関する。
Description
本発明は、医学の分野、特に、細胞のRNA分子をアンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)により標的化し、標的RNA分子に存在する標的ヌクレオチドを特異的に変化させる、RNA編集の分野に関する。本発明は、デアミナーゼ活性を有する(内因性)酵素を係合することによって、標的RNA分子での疾患を起こし得る突然変異したヌクレオチドなどの特異的なヌクレオチドを補正することを目的とする。
RNA編集は、真核細胞が、多くの場合、部位特異的で正確な方法で、そのRNA分子の配列を改変し、それにより、ゲノムをコードしたRNAのレパートリーを数桁増加させる、自然なプロセスである。RNA編集酵素は、動物界および植物界を通じて真核生物において記述されており、これらプロセスは、単純な生命体(例えば、カエノラブディティス・エレガンス(Caenorhabditis elegans))からヒトに至る後生動物での細胞恒常性を制御する、重要な役割を担っている。RNA編集の例は、アデノシン(A)からイノシン(I)への変換、およびシチジン(C)からウリジン(U)への変換であり、それぞれ、アデノシンデアミナーゼおよびシチジンデアミナーゼと言われる酵素により生じる。最も広く研究されているRNA編集システムは、アデノシンデアミナーゼ酵素を含むシステムである。アデノシンデアミナーゼは、ヒトデアミナーゼhADAR1およびhADAR2、ならびにhADAR3を含む、RNAに作用するアデノシンデアミナーゼ(ADAR)として知られている酵素のファミリーの一部である。しかし、hADAR3に対して、デアミナーゼ活性は、未だに示されていない。
ADARは、目的の酵素に依存して、触媒ドメインを含むマルチドメインタンパク質、および、2~3個の二本鎖RNA認識ドメインである。各認識ドメインは、特異的二本鎖RNA(dsRNA)配列および/または構造を認識する。触媒ドメインの重要な機能は、核酸塩基の脱アミノ化により、標的RNAでの近傍の、およそ予め定義された位置において、AをIに変換することであるが、触媒ドメインはまた、dsRNAらせんの部分を認識および結合する役割を担う。イノシンは、細胞の翻訳機構により、グアノシンとして読み込まれ、編集されたアデノシンが、mRNAまたはプレmRNAのコード領域にある場合、タンパク質配列を再コードすることができる。A>I変換はまた、元の開始点の上流に新規の翻訳開始点を作成する、標的mRNAの5’非コード配列(N末端の拡張されたタンパク質を生じる)で起こるか、または、3’UTRもしくは転写の他の非コード部分(RNAのプロセッシングおよび/もしくは安定性に影響を与えることができる)で起こり得る。加えて、A>I変換は、プレmRNAのイントロンまたはエクソンにおいてスプライスエレメントで起こり、それにより、スプライシングのパターンを改変し得る。その結果として、エクソンは(部分的または完全に)、含まれ得るか、またはスキップし得る。
アデノシンデアミナーゼを応用して標的RNAを編集するためのオリゴヌクレオチドの使用が報告されている(例えば、Montiel-Gonzalez et al. 2013. Proc Natl Acad Sci USA 110(45):18285-18290;Vogel et al. 2014. Angewandte Chemie Int Ed 53:267-271;Woolf et al. 1995. Proc Natl Acad Sci USA 92:8298-8302)。Montiel-Gonzalezら(2013)によって記載された方法の不利な点は、切断された天然ADARタンパク質のアデノシンデアミナーゼドメインに遺伝的に融合した、バクテリオファージλNタンパク質のboxB認識ドメインからなる融合タンパク質が必要なことである。主要な障害である融合タンパク質で形質導入されるか、または、標的細胞が、発現用の操作されたアデノシンデアミナーゼ融合タンパク質をコードする核酸構築物でトランスフェクトされるかのいずれかの標的細胞を必要とする。Vogelら(2014)に記載のシステムは、どのようにして、まずADARを遺伝子改変することなくシステムを適用し、続いて標的RNAを有する細胞をトランスフェクトまたは形質導入して、細胞にこの遺伝子操作されたタンパク質を供給するかが明らかではないという点で、同様の欠点がある。明らかに、このシステムは、(例えば治療環境での)ヒトにおける使用に容易に適用することができない。標的RNA配列に100%相補的である、Woolfら(1995)のオリゴヌクレオチドは、細胞抽出物またはゼノプス類(Xenopus)の卵母細胞において、ミクロ注入により、唯一機能するようであり、特異性の重度の欠如に悩まされ、アンチセンスオリゴヌクレオチドに相補的であった標的RNA鎖におけるほぼ全てのアデノシンを編集した。各ヌクレオチドが、2’-O-メチル(2’-OMe)修飾を有する、オリゴヌクレオチド、34ヌクレオチド長は、Woolfら(1995)が試験し、不活性であることを示した。ヌクレアーゼに対する安定性をもたらすために、5’末端および3’末端の5ヌクレオチドで、2’-OMe修飾させ、ホスホロチオエート(phosphorothioate)(PS)結合で修飾させた、34マーのRNAも試験した。中央の非修飾領域のこのオリゴヌクレオチドが、エキソヌクレアーゼ分解に対する保護を実現する末端修飾で、内因性ADARによる標的RNAの編集を促進することができることが示された。しかし、このシステムは、標的RNA配列における特異的な標的アデノシンの脱アミノ化を示さなかった。上述した通り、アンチセンスオリゴヌクレオチドにおいて非修飾のヌクレオチドに対向するほぼ全てのアデノシンを編集した(したがって、アンチセンスオリゴヌクレオチドの5’末端および3’末端の5ヌクレオチドが修飾された場合での中央の非修飾領域のヌクレオチドに対向するほぼ全てのアデノシン、または、ヌクレオチドが修飾されなかった場合での標的RNA鎖でのほぼ全てのアデノシン)。
ADARは、任意のdsRNAで作用することができることが当該技術分野で知られている。「無作為編集(promiscuous editing)」と時に称されるプロセスによって、酵素は、dsRNAにおいて、多数のAのものを編集する。ゆえに、このような無作為編集を回避し、治療適用可能である標的RNA分子で特定のアデノシンのみを標的化する、方法および手段の必要性が存在する。Vogelら(2014)は、このような標的外編集が、編集すべきではないアデノシンに対向する位置でのオリゴヌクレオチドにおいて、2’-OMe修飾させたヌクレオチドを使用することにより抑制することができ、標的RNAの特異的に標的化されたアデノシンに直接対向する非修飾ヌクレオチドを使用することができることを示した。しかし、標的ヌクレオチドでの特異的な編集効果は、AONと共有結合する組換えADAR酵素を使用せずに、生じるということが示されなかった。
国際公開第2016/097212号パンフレットでは、RNAの標的化編集のためのアンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)であって、標的RNA配列に相補的な配列(以下、「標的化部分」と称す)、および好ましくは標的RNAに相補的ではないステム-ループ構造(以下、「動員部分」と称す)の存在によって特徴付けられるAONが開示される。このようなオリゴヌクレオチドは、「自己ルーピングAON」と称す。動員部分は、細胞に存在する天然のADAR酵素を、標的配列と標的化部分のハイブリダイゼーションにより形成されるdsRNAに動員する働きがある。動員部分があるため、コンジュゲートされる実体も、修飾された組換えADAR酵素の存在も必要としない。動員部分は、天然基質(例えばGluB受容体)またはADAR酵素のdsRNA結合領域により認識されるとして知られているZ-DNA構造のいずれかを模倣するステム-ループ構造であった。ステム-ループ構造は、2つの別々の核酸鎖により形成される分子間ステム-ループ構造、または、単一の核酸鎖内に形成される分子内ステム-ループ構造であり得る。国際公開第2016/097212号パンフレットに記載の動員部分のステム-ループ構造は、分子内であり、AON自体内に形成され、ADARを引き付けることができる。国際公開第2017/220751号パンフレットおよび国際公開第2018/041973号パンフレットでは、動員部分を含まないが、1つまたは複数のミスマッチを除いた標的化された領域、またはいわゆる「揺らぎ」もしくは膨らみに(ほぼ完全に)相補的である、AONが記載されている。唯一のミスマッチは、標的アデノシンに対向するヌクレオチドであり得るが、他の実施形態では、AONは、標的配列領域を結合した場合、多数の膨らみおよび/または揺らぎに関して記載されていた。AONの配列を、ADARを引き付けることができるように注意深く選択した場合、動員部分が欠乏するAON、および内因性ADAR酵素で、インビトロ、エクスビボ、およびインビボでのRNA編集を達成することが可能であったと思われた。「オーファンヌクレオチド」は、標的RNA分子での標的アデノシンに直接対向して位置するAON内のヌクレオチドとして定義されるが、2’-OMe修飾を有さなかった。オーファンヌクレオチドはまた、AONの残りが糖物質(例えば2’-OMe)での2’-O-アルキル修飾を有したDNAヌクレオチド(糖物質が2’修飾を有さない)、またはRNA編集の効率性をさらに改善した、および/もしくはヌクレアーゼに対する耐性を高めた特定の化学修飾を含有する(もしくはDNAであった)いわゆる「セントラルトリプレット(Central Triplet)」(=AON内に2つの直接的な近接ヌクレオチドを有するオーファンヌクレオチド)内の、もしくはセントラルトリプレットを直接囲んでいるヌクレオチドでもあり得た。そのような効果は、分解からAONを「保護する」センスオリゴヌクレオチド(SON)を使用することにより、さらに改善することさえできた。これは、国際公開第2018/134301号パンフレットに記載されていた。
国際公開第2019/158475号パンフレット、国際公開第2019/219581号パンフレット、PCT/欧州特許第2020/053283号明細書(未刊)、およびPCT/欧州特許第2020/059369号明細書(未刊)には、AONの安定性および/またはRNA編集の効率を増加させるために、オリゴヌクレオチド骨格および/または糖部分の非常に特定の位置に特定の化学修飾を有する、RNA編集用AONが記載されており、PCT/欧州特許2020/060291号明細書(未刊)には、例えば(天然で生じる)RNA編集が、ある特定のがんおよびウイルス感染症で見られるような疾患をもたらす場合に、指定の位置におけるRNA編集を阻害するためのAONの使用が記載されている。
上記で概説した様々な取り組みにも関わらず、アンチセンスオリゴヌクレオチドを使用することによるRNA編集は、主に、比較的大型の分子を用いて達成されていたようである。問題は、AONが大型になると共に、それ単独で細胞に進入させることがより困難になることである。さらに、長鎖AONは、短鎖AONよりも分解し易い。ゆえに、(内因性)細胞経路およびデアミナーゼ活性を有する酵素、例えば天然に発現されるADAR酵素を依然として利用して、哺乳動物細胞において、全生物においてでさえ、より特異的におよびより効率的に内因性核酸を編集して疾患を緩和することができる、改善された、およびこの特定の場合ではより短い化合物が依然として必要とされている。
本発明は、標的RNA中の標的アデノシンの脱アミノ化に使用するための、2つの一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)のセットを含む組成物であって、一方のAONは「編集AON」(“Editing AON”)であり、他方のAONは「ヘルパーAON」(“Helper AON”)であり、編集AONは、標的アデノシンを含む標的RNA中のひと続きのヌクレオチド(stretch of nucleotides)に相補的であり、標的アデノシンに直接対向する(directly opposite)編集AON中のヌクレオチドは、2’-OMeまたは2’-MOEで修飾されていないシチジンである「オーファンヌクレオチド」(“orphan nucleotide”)であり、ヘルパーAONは、編集AONに相補的なひと続きのヌクレオチドとは別の(separate from)標的RNA中のひと続きのヌクレオチドに相補的であり、ヘルパーAONは16~22ヌクレオチドの長さを有し、編集AONは16~22ヌクレオチドの長さを有する、組成物に関する。好ましい態様では、ヘルパーAONおよび編集AONは、標的RNAと連続的に二本鎖複合体を形成し、ヘルパーAONは、編集AONに相補的な標的RNA中のひと続きのヌクレオチドの3’側に位置する標的RNA中のひと続きのヌクレオチドに相補的であり、ヘルパーAONおよび編集AONに相補的な配列間にヌクレオチドギャップは存在しない。好ましい態様では、このセットは、標的RNAと二本鎖複合体を形成した後、内因性ADAR酵素を動員して、標的アデノシンのイノシンへの脱アミノ化をもたらすように構成されている。好ましい態様では、編集AONは、19、20、または21ヌクレオチド長であり、ヘルパーAONは、17、18、または19ヌクレオチド長である。本明細書で概説するように、編集AONが21ヌクレオチド長であり、ヘルパーAONが17ヌクレオチド長であり、連続したひと続きの38ヌクレオチドとしての標的RNA分子に対して共に配置され、ヘルパーAONと編集AONとの間にギャップがない場合に、特に良好な結果が得られた。別の好ましい態様では、編集AONにおけるオーファンヌクレオチドは、5’末端から6番目、7番目、または8番目のヌクレオチドである。
別の実施形態では、本発明は、細胞内の標的RNA中の少なくとも1つの標的アデノシンの脱アミノ化のための方法であって、細胞に、本発明による組成物に存在するヘルパーAONおよび編集AONを含むAONのセットを供給するステップ、標的RNAへのAONのアニーリングを可能にして、二本鎖核酸分子を形成するステップ、上記細胞に内因的に存在するADAR酵素が、二本鎖核酸分子と複合体を形成し、標的RNA中の標的アデノシンをイノシンへと脱アミノ化することを可能にするステップ、および任意で、標的RNA中の脱アミノ化したヌクレオチドの存在を同定するステップを含む方法に関する。
本発明はまた、標的RNAに存在する少なくとも1つの標的アデノシンを脱アミノ化するためのインビトロ、インビボ、またはエクスビボ方法であって、本発明による2つのAONのセットを含む組成物を供給するステップ、標的RNAへのAONのアニーリングを可能にして、二本鎖核酸分子を形成するステップ、ADAR酵素が、二本鎖核酸分子と複合体を形成し、標的RNA中の標的アデノシンをイノシンへと脱アミノ化することを可能にするステップ、および標的RNA中の脱アミノ化したアデノシンの存在を同定するステップを含む方法に関する。
本発明はまた、標的RNA中の標的ヌクレオチドの脱アミノ化に使用するための「編集AON」と称される一本鎖AONであって、AONは、細胞内の標的RNAと二本鎖複合体を形成することが可能であり、編集AONは、標的ヌクレオチドを含む標的RNA中のひと続きのヌクレオチドと相補的であり、標的アデノシンに直接対向する編集AON中のヌクレオチドは、2’-OMeまたは2’-MOEで修飾されていない「オーファンヌクレオチド」であり、編集AONは、16~22ヌクレオチド、好ましくは19、20、または21ヌクレオチド、より好ましくは21ヌクレオチドの長さを有することを特徴とする、一本鎖AONに関する。本発明は、好ましくは標的ヌクレオチドとしてのアデノシンの脱アミノ化のために構成された配列を含む16~22ヌクレオチド長の編集AONを提供する。その構造が短いにも関わらず、本発明の編集AONは、本明細書に開示のヘルパーAONの非存在下でさえ、脱アミノ化活性を有する酵素に係合することができ、標的ヌクレオチドは、脱アミノ化酵素によりイノシンへと脱アミノ化されるアデノシンである。好ましい態様では、本発明の編集AONは、2’-OMeまたは2’-MOEリボース修飾を含む少なくとも1つのヌクレオチドを含み、オーファンヌクレオチドは、2’-OMeまたは2’-MOEリボース修飾を有さない。
図面の簡単な説明
本発明の1つまたは複数の実施形態は、ここで、添付の図面を参照しながら単なる例として記載する。
本発明の1つまたは複数の実施形態は、ここで、添付の図面を参照しながら単なる例として記載する。
詳細な説明
全ての前述のRNA編集アンチセンスオリゴヌクレオチド(AON、本明細書および他所では「編集オリゴヌクレオチド」とも称されることが多く、「EON」と略されることが多い)は、標的RNA配列に対して完全に相補的であるかまたは部分的に相補的であるかのいずれかである配列を有する、単一分子中の単一のひと続きのヌクレオチドからなる。長さが比較的短いAONを有することが望ましいが、これまでのところ、最も最適で試験済みのAONは、およそ35~60ヌクレオチドの長さを有する。これは、一般に、エクソンスキッピング、スプライス調節、または転写/翻訳阻害に使用される典型的なAONよりもはるかに長い。そのようなAONは、一般に、16~24ヌクレオチドの最適な長さを有する。AONに基づく療法の一般的な制限要因は、オリゴヌクレオチドが細胞に取り込まれる能力(それ自体で送達された場合、または送達ビヒクルを適用しない「ネイキッド」の場合)、その体内分布、およびヌクレアーゼ媒介性分解に対するその耐性である。当業者は、様々な化学修飾が、そのような制限の克服を支援することができることを承知しており、当該技術分野で詳細に記載されている。そのような現在一般的に使用されている化学修飾の例は、糖の2’-O-メチル(2’-OMe)および2’-O-メトキシエチル(2’-MOE)修飾、ならびにヌクレオシド間のホスホロチオエート化(phosphorothioated)(PS)結合の使用である。PCT/欧州特許2020/059369号明細書(未刊)には、AONのオーファンヌクレオチドを取り囲むある特定の位置での、メチルホスホネート(methylphosphonate)(MP)結合修飾の使用が記載されている。また、AONにおいて、全てではないが、いくつかの位置でホスホノアセテート(phosphonoacetate)結合修飾および/またはアンロックド核酸(unlocked nucleic acid)(UNA)リボース修飾が、ヌクレオチド脱アミノ化活性および続く脱アミノ化を有する酵素の効果的な関与に適合するようであったことが見出された(PCT/欧州特許第2020/053283号明細書、未刊)。ホスホノアセテート(phosphonoacetate)およびUNA修飾の特性が知られていた一方、ヌクレオチド脱アミノ化活性および脱アミノ化反応を有する酵素の関与に対するその適合性は知られていなかった。UNA修飾では、リボース2’および3’炭素原子間で、炭素-炭素結合が存在しない。したがって、UNAリボース修飾は、オリゴヌクレオチドでの局所的な柔軟性を高める。UNAは、分解に対する改善した耐性によって改善した薬物動態特性などの効果をもたらすことができる。UNAはまた、毒性を低減し、標的外効果を低減するのに関係し得る。ヌクレオチドデアミナーゼ活性を有する酵素との結合の妨害が著しいので、UNAリボース修飾は、好ましくは、オーファンヌクレオチドで回避すべきである。UNAリボース修飾は、AONでのリボース修飾のみであり得るが、UNA修飾は、UNA修飾と異なる位置またはUNA修飾と同じ位置のいずれかで、リボース2’基への修飾に加えて存在することができる。AONのリボース2’基は、2’-H(つまり、DNA)、2’-OH(つまり、RNA)、2’-OMe、2’-MOE、2’-F、または2’-4’-結合(例えば、ロックド核酸(LNA))、または他の2’置換から独立して選択することができる。2’-4’結合は、メチレンリンカーまたは拘束エチルリンカー(cEt)などの当該技術分野で知られているリンカーから選択することができる。それにもかかわらず、これまで使用されてきたEONは比較的長いため、体内分布、細胞進入、およびインビボでのRNA編集の効率に懸念が残り、制限を受ける可能性がある。本発明の発明者らは、今ここに、本明細書で概説するように、こうした問題に対する解決策を見出した。本発明者らは、AONのセット(好ましくは、セット中には2つのオリゴヌクレオチドのみを有する)の使用を企図し、その後、単一の短鎖AONのみを使用し、それでも効率的なRNA編集を達成した。
全ての前述のRNA編集アンチセンスオリゴヌクレオチド(AON、本明細書および他所では「編集オリゴヌクレオチド」とも称されることが多く、「EON」と略されることが多い)は、標的RNA配列に対して完全に相補的であるかまたは部分的に相補的であるかのいずれかである配列を有する、単一分子中の単一のひと続きのヌクレオチドからなる。長さが比較的短いAONを有することが望ましいが、これまでのところ、最も最適で試験済みのAONは、およそ35~60ヌクレオチドの長さを有する。これは、一般に、エクソンスキッピング、スプライス調節、または転写/翻訳阻害に使用される典型的なAONよりもはるかに長い。そのようなAONは、一般に、16~24ヌクレオチドの最適な長さを有する。AONに基づく療法の一般的な制限要因は、オリゴヌクレオチドが細胞に取り込まれる能力(それ自体で送達された場合、または送達ビヒクルを適用しない「ネイキッド」の場合)、その体内分布、およびヌクレアーゼ媒介性分解に対するその耐性である。当業者は、様々な化学修飾が、そのような制限の克服を支援することができることを承知しており、当該技術分野で詳細に記載されている。そのような現在一般的に使用されている化学修飾の例は、糖の2’-O-メチル(2’-OMe)および2’-O-メトキシエチル(2’-MOE)修飾、ならびにヌクレオシド間のホスホロチオエート化(phosphorothioated)(PS)結合の使用である。PCT/欧州特許2020/059369号明細書(未刊)には、AONのオーファンヌクレオチドを取り囲むある特定の位置での、メチルホスホネート(methylphosphonate)(MP)結合修飾の使用が記載されている。また、AONにおいて、全てではないが、いくつかの位置でホスホノアセテート(phosphonoacetate)結合修飾および/またはアンロックド核酸(unlocked nucleic acid)(UNA)リボース修飾が、ヌクレオチド脱アミノ化活性および続く脱アミノ化を有する酵素の効果的な関与に適合するようであったことが見出された(PCT/欧州特許第2020/053283号明細書、未刊)。ホスホノアセテート(phosphonoacetate)およびUNA修飾の特性が知られていた一方、ヌクレオチド脱アミノ化活性および脱アミノ化反応を有する酵素の関与に対するその適合性は知られていなかった。UNA修飾では、リボース2’および3’炭素原子間で、炭素-炭素結合が存在しない。したがって、UNAリボース修飾は、オリゴヌクレオチドでの局所的な柔軟性を高める。UNAは、分解に対する改善した耐性によって改善した薬物動態特性などの効果をもたらすことができる。UNAはまた、毒性を低減し、標的外効果を低減するのに関係し得る。ヌクレオチドデアミナーゼ活性を有する酵素との結合の妨害が著しいので、UNAリボース修飾は、好ましくは、オーファンヌクレオチドで回避すべきである。UNAリボース修飾は、AONでのリボース修飾のみであり得るが、UNA修飾は、UNA修飾と異なる位置またはUNA修飾と同じ位置のいずれかで、リボース2’基への修飾に加えて存在することができる。AONのリボース2’基は、2’-H(つまり、DNA)、2’-OH(つまり、RNA)、2’-OMe、2’-MOE、2’-F、または2’-4’-結合(例えば、ロックド核酸(LNA))、または他の2’置換から独立して選択することができる。2’-4’結合は、メチレンリンカーまたは拘束エチルリンカー(cEt)などの当該技術分野で知られているリンカーから選択することができる。それにもかかわらず、これまで使用されてきたEONは比較的長いため、体内分布、細胞進入、およびインビボでのRNA編集の効率に懸念が残り、制限を受ける可能性がある。本発明の発明者らは、今ここに、本明細書で概説するように、こうした問題に対する解決策を見出した。本発明者らは、AONのセット(好ましくは、セット中には2つのオリゴヌクレオチドのみを有する)の使用を企図し、その後、単一の短鎖AONのみを使用し、それでも効率的なRNA編集を達成した。
本発明は、標的RNA中の標的ヌクレオチド(好ましくは、アデノシン)の脱アミノ化に使用するための、2つの一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)のセットを含む組成物であって、一方のAONは「編集AON」であり、他方のAONは「ヘルパーAON」であり、編集AONは、標的アデノシンを含む標的RNA中のひと続きのヌクレオチドに相補的であり、標的ヌクレオチドに直接対向する編集AON中のヌクレオチドは、2’-OMeまたは2’-MOEで修飾されていない「オーファンヌクレオチド」であり(標的ヌクレオチドがアデノシンである場合、オーファンヌクレオチドは好ましくはシチジンである)、ヘルパーAONは、編集AONに相補的なひと続きのヌクレオチドとは別の標的RNA中のひと続きのヌクレオチドに相補的であり、ヘルパーAONは16~22ヌクレオチドの長さを有し、編集AONは16~22ヌクレオチドの長さを有する、組成物に関する。好ましい態様では、ヘルパーAONおよび編集AONは、標的RNAと連続的に二本鎖複合体を形成し、ヘルパーAONは、編集AONに相補的な、標的RNA中のひと続きのヌクレオチドの3’側に位置する、標的RNA中のひと続きのヌクレオチドに相補的であり、ヘルパーAONおよび編集AONに相補的な配列間にヌクレオチドギャップは存在しない。これは、AONが、標的RNA中の同じ配列またはその一部に相補的になるようには重複しないことを意味する。本明細書に示す通り、ヘルパーAONと編集AONとの間に1、2、または3ヌクレオチドのギャップが存在してもRNA編集を達成することができ、最も良好な結果は、ヘルパーAONおよび編集AONが、標的RNA分子にギャップなく連続的にアラインした場合に得られた。好ましくは、ヘルパーAONは、標的RNAに対して100%相補的である。好ましくは、編集AONは、オーファンヌクレオチドと標的ヌクレオチドとの間にミスマッチがある場合を除いて、標的RNAと完全に相補的である。好ましい態様では、このセットは、標的RNAと二本鎖複合体を形成した後、内因性ADAR酵素を動員して、標的ヌクレオチドの脱アミノ化をもたらすことができる。
編集AONのヌクレオチド番号付けは、オーファンヌクレオチドが0であり、オーファンヌクレオチドの5’側のヌクレオチドが+1となる。数え方は、5’末端に向かって正に増分し、3’末端に向かって負(-)に増分し、オーファンヌクレオチドの3’側の最初のヌクレオチドは-1である。
編集AONのヌクレオチド間結合の番号付けは、結合番号0がオーファンヌクレオチドからの5’結合となるようにし、オリゴヌクレオチドでの結合位置は、5’末端に向かって正(+)に増分し、3’末端に向かって負(-)に増分する。
好ましくは、編集AONは、1つまたは複数のホスホロチオエート(phosphorothioate)(PS)結合を含む。好ましくは、PS結合は、編集AONの各末端の最も末端側の4、5、6、7、または8つのヌクレオチドを接続する。より好ましくは、PS結合は、例えば編集AONが21ヌクレオチド長である場合、編集AONの結合位置+6、+5、+4、+3、+2、および+1に存在する。また、好ましくは、PS結合は、例えば編集AONが21ヌクレオチド長である場合、編集AONの結合位置-7、-8、-9、-10、-11、-12、および-13に存在する。
好ましくは、編集AONは、2’-OMe修飾を含む糖部分を有する少なくとも1つのヌクレオチドを含む。本発明による21nt長のAONでは、AONの5’末端の2’-OMe修飾の好ましい位置は、ヌクレオチド位置+2、+3、+3、+4、+5、+6、および/または+7(好ましくは+1位の5’側に位置する全てのヌクレオチド)である。本発明による21nt長のAONでは、AONの3’末端の2’-OMe修飾の好ましい位置は、ヌクレオチド位置-2、-5、-6、-7、-8、-9、-10、-11、-12、および/または-13である。-4位の3’側に位置する全てのヌクレオチドの糖部位が2’-OMe基で修飾されていることが好ましい。
好ましくは、編集AONは、2’-MOE修飾を含む糖部分を有する少なくとも1つのヌクレオチドを含む。2’-MOE修飾を有するヌクレオチドの好ましい位置は、編集AONの位置+1および/または-4である。
好ましくは、オーファンヌクレオチドは、糖部分に2’-Hを有し、したがってDNAヌクレオチドと称される。オーファンヌクレオチドの3’側および/または5’側のヌクレオチドもDNAであり、より好ましくは3’側の(位置-1)のヌクレオチドはDNAである。
好ましくは、編集AONは、以下の構造:
本発明による編集AONにおけるMP結合の好ましい位置は結合位置-1であり、それにより位置-1のヌクレオシドは位置-2のヌクレオシドに接続されるが、MP結合の他の位置が明示的に排除されるわけではない。
好ましくは、編集AONは、2’-フルオロ(2’-F)修飾を含む糖部分を有する少なくとも1つのヌクレオチドを含む。2’-F修飾を有するヌクレオチドの好ましい位置は、編集AONの位置-3である。
好ましくは、編集AONは、少なくとも1つのホスホノアセテート(phosphonoacetate)ヌクレオシド間結合を含む。
好ましくは、本発明による編集AONは、アンロックド核酸(UNA)リボース修飾を含む少なくとも1つのヌクレオチドを含む。
上記で概説した好ましい修飾は、ヘルパーAONにも導入することができるが、そのAONは、オーファンヌクレオチドが2’-OMeまたは2’-MOEなどの2’修飾を有し得ず、適正に機能するためには好ましくはDNAであるべきであるという点で、編集AONで見られる不安定性の問題を被らない。ヘルパーAONは、好ましくは、AONの各末端に4つのPS結合修飾を含み、それにより各末端の5つの末端ヌクレオシドが接続されている。加えて、ヘルパーAONは、好ましくは、2’-OMeおよび/または2’-MOE修飾で完全に修飾されており、2’-OMeまたは2’-MOE修飾を有するヌクレオチドの数は異なっていてもよい。一般に、DNAは、ヘルパーAONには存在しないが、明示的に除外されているわけではない。ヘルパーAONは、標的RNAに対して100%相補的であり得るが、デアミナーゼ酵素を動員する能力を追加することができる1つまたは複数のミスマッチ、揺らぎ、または膨らみも含み得る。
好ましくは、編集AONは19、20、または21ヌクレオチド長であり、オーファンヌクレオチドは、5’末端から6番目、7番目、または8番目のヌクレオチドであり、ヘルパーAONは、17、18、または19ヌクレオチド長である。本発明は、薬学的に許容される担体をさらに含む、本発明に従って使用するための組成物にさらに関する。
本発明は、標的RNA中の標的ヌクレオチドの脱アミノ化に使用するための、「編集AON」と称される一本鎖AONであって、AONは、細胞内の標的RNAと二本鎖複合体を形成することが可能であり、編集AONは、標的ヌクレオチドを含む標的RNA中のひと続きのヌクレオチドと相補的であり、標的アデノシンに直接対向する編集AON中のヌクレオチドは、2’-OMeまたは2’-MOEで修飾されていない「オーファンヌクレオチド」であり、編集AONは、16~22ヌクレオチド、好ましくは19、20、または21ヌクレオチド、より好ましくは21ヌクレオチドの長さを有することを特徴とする、一本鎖AONに関する。本発明は、好ましくは標的ヌクレオチドとしてのアデノシンの脱アミノ化のために構成された配列を含む16~22ヌクレオチド長の編集AONを提供する。その構造が短いにも関わらず、本発明の編集AONは、本明細書に開示のヘルパーAONの非存在下でさえ、脱アミノ化活性を有する酵素に係合することができ、好ましくは、標的ヌクレオチドは、脱アミノ化酵素によりイノシンへと脱アミノ化されるアデノシンである。好ましい態様では、本発明の編集AONは、2’-OMeまたは2’-MOEリボース修飾を含む少なくとも1つのヌクレオチドを含み、オーファンヌクレオチドは、2’-OMeまたは2’-MOEリボース修飾を有さない。
本発明による組成物または本発明による単一の編集AONは、好ましくは、嚢胞性線維症、ハーラー症候群、α-1-アンチトリプシン(A1AT)欠損症、パーキンソン病、アルツハイマー病、白皮症(albinism)、筋萎縮性側索硬化症、喘息、β-サラセミア、CADASIL、シャルコー-マリー-ツース病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、遠位型脊髄性筋萎縮症(DSMA)、デュシェンヌ型/ベッカー型筋ジストロフィー、(栄養障害型)表皮水疱症、ファブリー病、第V因子ライデン関連障害、家族性腺腫性ポリポーシス、ガラクトース血症、ゴーシェ病、グルコース-6-リン酸脱水素酵素、血友病、遺伝性ヘモクロマトーシス(hematochromatosis)、ハンター症候群、ハンチントン病、炎症性腸疾患(IBD)、遺伝性多凝集症候群(Inherited polyagglutination syndrome)、レーバー先天性黒内障(例えば、LCA10)、レッシュ-ナイハン症候群、リンチ症候群、マルファン症候群、ムコ多糖症、筋ジストロフィー、I型およびII型筋強直性ジストロフィー、神経線維腫症、ニーマン-ピック病A型、B型およびC型、NY-eso1関連がん、ポイツ-イェガース症候群、フェニルケトン尿症、ポンペ病、原発性線毛疾患、プロトロンビン突然変異関連障害(例えば、プロトロンビンG20210A突然変異)、肺高血圧症、(常染色体優性)色素性網膜炎、サンドホフ病、重症複合免疫不全症候群(SCID)、鎌状赤血球貧血、脊髄性筋萎縮症、スタルガルト病、テイサックス病、アッシャー症候群(例えば、アッシャー症候群I型、II型、およびIII型)、X連鎖免疫不全、スタージ-ウェーバー症候群、ならびに、がんからなる群から選択される遺伝的障害の処置または予防に使用される。
本発明はまた、細胞内の標的RNA中の少なくとも1つの標的アデノシンの脱アミノ化のための方法であって、細胞に本発明によるヘルパーAONおよび編集AONを含むAONのセットまたは本発明の単一の編集AONを供給するステップ、標的RNAへのAONのアニーリングを可能にして、二本鎖核酸分子を形成するステップ、上記細胞に内因的に存在するADAR酵素が、二本鎖核酸分子と複合体を形成し、標的RNA中の標的ヌクレオチド(好ましくは、アデノシン)を脱アミノ化することを可能にするステップ、および任意で、標的RNA中の脱アミノ化したヌクレオチドの存在を同定するステップを含む方法にも関する。本発明の方法における同定ステップは、標的RNAの領域をシークエンシングすることであって、領域は標的ヌクレオチドの位置を含む、シークエンシングすること、標的ヌクレオチドが、UGAまたはUAG終止コドンのアデノシンであり、脱アミノ化によってUGGコドンに編集される場合、機能性、伸長型、全長および/もしくは野生型タンパク質の存在を評価すること、標的RNAがプレmRNAである場合、プレmRNAのスプライシングが、脱アミノ化により改変したかどうかを評価すること、または機能的な読み出しを使用することであって、脱アミノ化後の標的RNAが、機能性、全長、伸長型および/もしく野生型タンパク質をコードする、使用すること、を含み得る。
本発明はまた、標的RNA中に存在する少なくとも1つの標的アデノシンの脱アミノ化のためのインビボ、エクスビボ、またはインビトロの方法であって、本発明による2つのAONのセットまたは本発明による単一の編集AONを供給するステップ、標的RNAへのAONのアニーリングを可能にして、二本鎖核酸分子を形成するステップ、ADAR酵素が、二本鎖核酸分子と複合体を形成し、標的RNA中の標的アデノシンをイノシンへと脱アミノ化することを可能にするステップ、および標的RNA中の脱アミノ化したアデノシンの存在を同定するステップを含む方法にも関する。
本発明の全ての態様では、ヌクレオチドデアミナーゼ活性を有する酵素は、好ましくはADAR酵素、より好ましくはADAR1またはADAR2である。高度に好ましい態様では、編集AONは、プレmRNAまたはmRNAを標的とするRNA編集一本鎖AONであり、標的ヌクレオチドは、好ましくは、標的RNA中のアデノシンであり、アデノシンはイノシンに脱アミノ化され、イノシンは翻訳機構によりグアノシンとして読み込まれる。さらに好ましい実施形態では、アデノシンは、UGAもしくはUAG終止コドンに位置し、UGGコドンに編集されるか、または2つの標的ヌクレオチドは、UAA終止コドンにおける2つのアデノシンであり、コドンは、両方の標的アデノシンの脱アミノ化によってUGGコドンに編集され、オリゴヌクレオチドにおける2つのヌクレオチドは、標的核酸とミスマッチである。
本発明によるヘルパーAONおよび編集AONは、PSリンカー修飾以外の、またはPSリンカー修飾に加えて、ヌクレオシド間結合修飾を含むことができる。一実施形態では、このような他の1つのヌクレオシド間結合は、ホスホノアセテート(phosphonoacetate)またはメチルホスホネート(methylphosphonate)修飾結合であり得る。別の実施形態では、ヌクレオシド間結合は、ホスホジエステルであり得、ホスホジエステルのOH基は、アルキル、アルコキシ、アリール、アルキルチオ、アシル、-NR1R1、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アルケニルチオ、アルキニルチオ、-S-Z+、-Se-Z+、もしくは-BH3-Z+で置換されており、R1は、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、もしくはアリールであり、Z+は、アンモニウムイオン、アルキルアンモニウムイオン、ヘテロ芳香族イミニウムイオン、もしくはヘテロ環イミニウムイオンであり、そのいずれかも一級、二級、三級、もしくは四級であるか、または、Zは、一価の金属イオンである。PS結合修飾の使用が好ましい。
本発明の編集AONでは、オーファンヌクレオチドは、一般に、2’-H基を有するデオキシリボースを含み、好ましくは、2’-OMeまたは2’-MOE修飾を有するリボースを含まない。さらに、本発明の編集AONは、一般に、AON内の他の位置に2’-MOE修飾をさらに含む。ヘルパーAONについても同じことが真である。本発明のAONは、好ましくは、国際公開第2016/097212号パンフレットに記載の動員部分を含まない。本発明のAONは、分子内ステム-ループ構造を形成することができる部分を含まない。AONは、5’末端O6-ベンジルグアニン修飾を含まない。AONは、5’末端アミノ修飾を含まない。AONは、SNAPタグドメインに共有結合で結合されていない。本発明によるAONにおけるヌクレオチド間結合の番号付けは、結合番号0がオーファンヌクレオチドからの5’結合であり、それ自体が「0」ヌクレオチドとなるようにする。
本発明はまた、(プレ)mRNAに存在する早期停止終止コドン(PTC)を標的化して、終止コドンに存在するアデノシンをイノシン(Gとして読み込まれる)に改変することができ、それによりひいては翻訳中のリードスルーおよび全長機能性タンパク質がもたらされる、AONに関する。本発明の教示は、本明細書に概説した通り、AONで標的化し得、RNA編集によって処置することができる全ての遺伝的疾患に適用可能である。一例は、USH2A遺伝子の突然変異に起因するアッシャー症候群II型である。
一態様では、本発明は、標的RNA分子に存在する疾患関連スプライス突然変異での標的アデノシンの脱アミノ化に使用するための、細胞内の標的RNA分子と二本鎖複合体を形成することができるAON(または2つのAONのセット)であって、編集AONのオーファンヌクレオチドは2’-OMe修飾を有さず、オーファンヌクレオチドからのヌクレオチド直接的5’および/または3’(オーファンヌクレオチドと共に、ヌクレオチドがセントラルトリプレットを形成する)が、RNA編集により安定し、および/または、より効果的にAONをもたらす、糖修飾および/または塩基修飾を有し、好ましくは、AONにある少なくとも1つの結合がPS修飾を含むように改変されている、AONに関する。好ましい一態様では、2つのヌクレオシドを接続する少なくとも1つのヌクレオシド間結合は、MP修飾を有する。編集AON中の2つのヌクレオチドがDNAである場合、他の全てはRNAであり得、2’-OMeまたは2’-MOEで修飾され得る。一態様では、本発明によるAONまたはAONの各々(2つのセットの場合)は、相補的な標的RNA領域との2、3、または4つのミスマッチ、揺らぎ、および/または膨らみを含む。好ましくは、標的アデノシンに対向するヌクレオチドは、シチジン、デオキシシチジン、ウリジン、デオキシウリジンであるか、または脱塩基である。国際出願PCT/US2020/037580号パンフレット(未刊)には、オーファンヌクレオチド位置にシチジンアナログを用いて、AONのRNA編集効率をより高くすることが記載されている。その理由は、そのようなシチジンアナログがADAR酵素とより強固に相互作用するためである。オーファンヌクレオチド位置にシチジンアナログ(シュードイソシチジン(piC)またはBennerの塩基Z(dZ)など)を組み込むことも、本発明の好ましい態様である。標的アデノシンに対向するヌクレオチドが、シチジンまたはデオキシシチジンである場合、AONは、標的RNA分子との少なくとも1つのミスマッチを含む。標的アデノシンに対向するヌクレオチドが、ウリジンまたはデオキシウリジンである場合、AONは、100%相補的であり得、標的RNAに関連して、いかなるミスマッチ、揺らぎ、または膨らみも有さない。しかし、一態様では、1つまたは複数のさらなるミスマッチ、揺らぎ、および/または膨らみは、標的アデノシンに対向するヌクレオチドが、シチジン、デオキシシチジン、シュードイソシチジン、Bennerの塩基Z、ウリジン、またはデオキシウリジンであるかどうかに関わりなく、AONと標的RNAとの間に存在し得る。別の好ましい実施形態では、オーファンヌクレオチドからのヌクレオチド直接的5’および/もしくは3’は、2’-OH基を有するリボース、または2’-H基を有するデオキシリボース、またはこれら2つの混合物を含む。したがって、中央にオーファンヌクレオチドを有するセントラルトリプレットは、DNA-DNA-DNA、DNA-DNA-RNA、DNA-RNA-DNA、DNA-RNA-RNA、RNA-DNA-DNA、RNA-DNA-RNA、RNA-RNA-DNA、またはRNA-RNA-RNAからなり、オーファンヌクレオチドは、2’-OMe修飾を有さず(RNAの場合)、周囲のヌクレオチドのいずれかまたは両方も2’-OMe修飾を有さない。その場合、AONの他の全てのヌクレオチドは、2’-O-アルキル基、好ましくは2’-OMe基、もしくは2’-MOE基、または本明細書に開示される任意の修飾を有することが好ましい。標的配列との本発明のAONの揺らぎ、ミスマッチ、および/または膨らみは、標的RNA配列へのオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションを防げないが、標的アデノシンの位置で細胞に存在するADARによりRNA編集の効率性に加える。当業者は、生理学的条件下でのハイブリダイゼーションが依然として起こるかどうかを決定することができる。本発明のAONは、細胞に存在する哺乳動物のADAR酵素を動員(係合)することができ、ADAR酵素は、野生型酵素で発見されたその天然dsRNA結合ドメインを含む。本発明によるAONは、内因性細胞経路および天然で利用可能なADAR酵素またはADAR活性を有する酵素(まだ同定されていないADAR様酵素であり得る)を利用して、標的RNA配列の標的アデノシンを特異的に編集することができる。本明細書に開示する通り、本発明の一本鎖AONは、RNA編集の分野においてこれまで示されているものよりも著しく短いにも関わらず、標的RNA分子にある、アデノシンなどの特異的な標的を脱アミノ化することが可能である。理想的には、1つのヌクレオチドのみが脱アミノ化される。あるいは、1、2、または3つのさらなるヌクレオチドが脱アミノ化されるが、好ましくは1つのみである。本発明のAONは、様々なヌクレオチドデアミナーゼ酵素、例えばADAR用に設計し、それらと共に使用することができる。ADARは、好ましくは天然で発現されるが、人工的に(例えば、組換え発現またはタンパク質合成によって)産生することもできる。ADARは、野生型であり得るか、または修飾することができる。本発明のAONの特徴と合わせて、修飾された組換えADAR発現を必要としない。本発明のAONは、AONに結合するコンジュゲートされた物質に関して特に限定されない。しかし、AONに結合するコンジュゲートされた物質を必要としない。そのため、AONに結合するコンジュゲートされた物質が欠乏するAONは、好ましい実施形態を形成する。標的RNA配列に相補的ではない長い動員部分の存在を必要としない。その結果、標的RNA配列に相補的ではない長い動員部分が欠乏するAONは、好ましい実施形態を形成する。本発明のAONは、RNA編集のために当該技術分野で使用されるものよりも小型であるが、本明細書に示されるように、依然として内因性ADARを動員し、部位特異的RNA編集をもたらすことができる。本発明の編集AONは(ヘルパーAONの支援を受けてまたは受けずに)、細胞、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒト細胞に好ましくは内因的に存在する、脱アミノ化活性を有する物質、好ましくは酵素と係合して、標的核酸分子中の標的ヌクレオチドの脱アミノ化をもたらすことが可能である。好ましい標的核酸分子は、RNA分子である。二本鎖AON/標的核酸分子複合体は、ワトソン-クリック型塩基対によって相互作用する。本発明の好ましい一態様では、AONは、結合位置0、-2、-4、および/または-6に1つまたは複数のMP結合を含む。特に好ましい実施形態では、AONは、位置0および/または-2にMP結合を含む。好ましい一態様では、AONは、少なくとも1つのPS、少なくとも1つのホスホノアセテート(phosphonoacetate)ヌクレオチド間結合、および/またはアンロックド核酸(UNA)リボース修飾を含む少なくとも1つのヌクレオチドを含む。より好ましい態様では、PS結合は、各末端の最大3、4、または5つのヌクレオシドを接続する、AONの両末端に存在する。本明細書で概説するように、以前のRNA編集用AONは35~40nt長の範囲であったが、本発明は、19、20、および21ヌクレオチドの範囲である単一のAONも、ADARを動員しRNA編集をもたらすことが可能であることを示す。
別の好ましい態様では、本発明のAONは、リボースの2’位での置換を含む1つまたは複数のヌクレオチドをさらに含み、置換は、-OH;-F;置換または未置換、直鎖または分岐鎖の低級(C1~C10)アルキル、アルケニル、アルキニル、アルカリル、アリル、またはアラルキル、1つまたは複数のヘテロ原子により中断され得る;-O-、S-、またはN-アルキル;-O-、S-、またはN-アルケニル;-O-、S-、またはN-アルキニル;-O-、S-、またはN-アリル;-O-アルキル-O-アルキル;-メトキシ;-アミノプロポキシ;-メトキシエトキシ(2’-MOE);-ジメチルアミノオキシエトキシ;および-ジメチルアミノエトキシエトキシからなる群から選択される。本発明による編集AONは、好ましくは、16、17、18、19、20、21、または22ヌクレオチド長であり、好ましくは21ヌクレオチド長である。本発明によるヘルパーAONは、好ましくは、16、17、18、19、20、21、または22ヌクレオチド長であり、好ましくは17ヌクレオチド長である。
別の実施形態では、本発明は、本発明によるAON(または本発明による2つのAONのセット)および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物に関する。薬学的に許容される担体は、当業者に知られている。
別の実施形態では、本発明は、嚢胞性線維症、ハーラー症候群、α-1-アンチトリプシン(A1AT)欠損症、パーキンソン病、アルツハイマー病、白皮症、筋萎縮性側索硬化症、喘息、β-サラセミア、CADASIL、シャルコー-マリー-ツース病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、遠位型脊髄性筋萎縮症(DSMA)、デュシェンヌ型/ベッカー型筋ジストロフィー、(栄養障害型)表皮水疱症、ファブリー病、第V因子ライデン関連障害、家族性腺腫性ポリポーシス、ガラクトース血症、ゴーシェ病、グルコース-6-リン酸脱水素酵素、血友病、遺伝性ヘモクロマトーシス、ハンター症候群、ハンチントン病、炎症性腸疾患(IBD)、遺伝性多凝集症候群、レーバー先天性黒内障(例えば、LCA10)、レッシュ-ナイハン症候群、リンチ症候群、マルファン症候群、ムコ多糖症、筋ジストロフィー、I型およびII型筋強直性ジストロフィー、神経線維腫症、ニーマン-ピック病A型、B型およびC型、NY-eso1関連がん、ポイツ-イェガース症候群、フェニルケトン尿症、ポンペ病、原発性線毛疾患、プロトロンビン突然変異関連障害(例えば、プロトロンビンG20210A突然変異)、肺高血圧症、(常染色体優性)色素性網膜炎、サンドホフ病、重症複合免疫不全症候群(SCID)、鎌状赤血球貧血、脊髄性筋萎縮症、スタルガルト病、テイサックス病、アッシャー症候群(例えば、アッシャー症候群I型、II型、およびIII型)、X連結型免疫不全、スタージ-ウェーバー症候群、ならびにがんからなる群から好ましくは選択される、遺伝的障害の処置のための医薬の製造における、本発明によるAONまたは本発明による2つのAON(編集AONおよびヘルパーAON)のセットの使用に関する。
また別の実施形態では、本発明は、細胞内の標的核酸分子、好ましくはRNA標的分子に存在する少なくとも1つの標的ヌクレオチド、好ましくはアデノシンの脱アミノ化のための方法であって、細胞に、本発明による編集AON、本発明による2つのAON(編集AON+ヘルパーAON)のセット、または本発明による医薬組成物を供給するステップ、標的核酸分子へのAONのアニーリングを可能にするステップ、ヌクレオチドデアミナーゼ活性を有する哺乳動物酵素が、標的核酸分子中の標的ヌクレオチドを脱アミノ化することを可能にするステップ、および任意で、標的核酸分子中の脱アミノ化したヌクレオチドの存在を同定するステップを含む方法に関する。本発明によるAONの使用によって係合されるヌクレオチドデアミナーゼ活性を有する哺乳動物酵素は、好ましくは、アデノシンデアミナーゼ酵素であり、標的核酸分子において標的ヌクレオチドを改変することが可能であり、次いで、標的ヌクレオチドは、好ましくは、イノシンに脱アミノ化されたアデノシンである。脱アミノ化されたヌクレオチドの存在を同定する任意のステップは、好ましくは、標的核酸分子の領域をシークエンシングすることであって、領域が、脱アミノ化された標的ヌクレオチドを含む、シークエンシングすること、標的ヌクレオチドが、UGAもしくはUAG終止コドンに位置するアデノシンであり、脱アミノ化によってUGGコドンに編集される場合、機能性、伸長型、全長および/もしくは野生型タンパク質の存在を評価すること、2つの標的アデノシンが、UAA終止コドンに位置し、両方の標的アデノシンの脱アミノ化によってUGGコドンに編集される場合、機能性、伸長型、全長および/もしくは野生型タンパク質の存在を評価すること、標的RNA分子がプレmRNAである場合、プレmRNAのスプライシングが、脱アミノ化により改変したかどうかを評価すること、または機能的な読み出しを使用することであって、脱アミノ化後の標的核酸分子が、機能性、全長、伸長型および/もしく野生型タンパク質をコードする、使用することにより行われる。
別の実施形態では、本発明は、対象を、好ましくはそれを必要とする対象を処置する方法であって、対象は、アデノシン(例えばPTC)の出現に関与する突然変異に起因する遺伝的障害に罹患しており、そのアデノシンのイノシンへの脱アミノ化は、疾患を緩和、予防、または改善することになり、この方法は、本発明による編集AONまたは本発明による2つのAON(編集AON+ヘルパーAON)のセットまたは本発明による医薬組成物を対象に投与するステップ、対象の細胞において、AONとその特異的で相補的な標的核酸との二本鎖核酸複合体の形成を可能にするステップ、hADAR1またはhADAR2などの、脱アミノ化活性を有する内因的に存在する酵素の係合を可能にするステップ、および酵素が標的核酸分子の標的アデノシンをイノシンに脱アミノ化することを可能にするステップを含み、それにより遺伝的疾患を緩和、予防、または改善する、方法に関する。本方法に従って処置され得る遺伝的疾患は、好ましくは、限定されないが、本明細書に列挙された遺伝的疾患である(上記参照)。
定義
用語「アデニン」、「グアニン」、「シトシン」、「チミン」、「ウラシル」、および「ヒポキサンチン」(イノシンでの核酸塩基)とは、本明細書で使用される場合、それ自体で核酸塩基を指す。用語「アデノシン」、「グアノシン」、「シチジン」、「チミジン」、「ウリジン」、および「イノシン」とは、(デオキシ)リボシル糖に結合する核酸塩基を指す。用語「ヌクレオシド」とは、リン酸基を伴わない、(デオキシ)リボシル糖に結合する核酸塩基を指す。「ヌクレオチド」は、ヌクレオシドおよび1つまたは複数のリン酸基からなる。ゆえに、用語「ヌクレオチド」とは、それぞれの核酸塩基-(デオキシ)リボシル-ホスホリンカー(phospholinker)、ならびにリボース部分またはホスホ基の任意の化学修飾を指す。ゆえに、この用語は、ロックドリボシル部分(メチレン基または任意の他の基を含む2’-4’架橋を含む)を含むヌクレオチド、アンロックド核酸(UNA)、ホスホジエステル、ホスホノアセテート(phosphonoacetate)、ホスホトリエステル、ホスホロチオエート(phosphorothioate)(PS)、ホスホロ(ジ)チオエート(phosphoro(di)thioate)、メチル(メチレン)ホスホネート(methyl(ene)phosphonate)(MP)、およびホスホロアミデート(phosphoramidate)リンカーなどを含むリンカーを含むヌクレオチドを含む。時に、用語、アデノシンおよびアデニン、グアノシンおよびグアニン、シチジンおよびシトシン、ウラシルおよびウリジン、チミンおよびチミジン/ウリジン、イノシンおよびヒポキサンチンは、互換的に使用して、一方で対応する核酸塩基、および、他方でヌクレオシドまたはヌクレオチドを指す。時に、用語、核酸塩基、ヌクレオシド、およびヌクレオチドは、文脈が明らかに異なる必要がない限り、例えば、ヌクレオシドが近接ヌクレオシドに結合され、これらのヌクレオシド間の結合が修飾される場合、互換的に使用される。この場合、ヌクレオシドは、修飾されたリンカーであるか、またはヌクレオチドは、修飾されたヌクレオチドであるとみなすことができる。上述の通り、ヌクレオチドは、ヌクレオシドおよび1つまたは複数のリン酸基である。用語「リボヌクレオシド」および「デオキシリボヌクレオシド」、または「リボース」および「デオキシリボース」は、当該技術分野で使用される通りである。「アンチセンスオリゴヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「EON」、または「AON」を参照する場合はいつも、文脈が別途指示しない限り、オリゴヌクレオチドおよびデオキシオリゴヌクレオチドの両方を意味する。「オリゴヌクレオチド」を参照する場合はいつも、塩基A、G、C、U、またはIを含み得る。「デオキシオリゴヌクレオチド」を参照する場合はいつも、塩基A、G、C、T、またはIを含み得る。
用語「アデニン」、「グアニン」、「シトシン」、「チミン」、「ウラシル」、および「ヒポキサンチン」(イノシンでの核酸塩基)とは、本明細書で使用される場合、それ自体で核酸塩基を指す。用語「アデノシン」、「グアノシン」、「シチジン」、「チミジン」、「ウリジン」、および「イノシン」とは、(デオキシ)リボシル糖に結合する核酸塩基を指す。用語「ヌクレオシド」とは、リン酸基を伴わない、(デオキシ)リボシル糖に結合する核酸塩基を指す。「ヌクレオチド」は、ヌクレオシドおよび1つまたは複数のリン酸基からなる。ゆえに、用語「ヌクレオチド」とは、それぞれの核酸塩基-(デオキシ)リボシル-ホスホリンカー(phospholinker)、ならびにリボース部分またはホスホ基の任意の化学修飾を指す。ゆえに、この用語は、ロックドリボシル部分(メチレン基または任意の他の基を含む2’-4’架橋を含む)を含むヌクレオチド、アンロックド核酸(UNA)、ホスホジエステル、ホスホノアセテート(phosphonoacetate)、ホスホトリエステル、ホスホロチオエート(phosphorothioate)(PS)、ホスホロ(ジ)チオエート(phosphoro(di)thioate)、メチル(メチレン)ホスホネート(methyl(ene)phosphonate)(MP)、およびホスホロアミデート(phosphoramidate)リンカーなどを含むリンカーを含むヌクレオチドを含む。時に、用語、アデノシンおよびアデニン、グアノシンおよびグアニン、シチジンおよびシトシン、ウラシルおよびウリジン、チミンおよびチミジン/ウリジン、イノシンおよびヒポキサンチンは、互換的に使用して、一方で対応する核酸塩基、および、他方でヌクレオシドまたはヌクレオチドを指す。時に、用語、核酸塩基、ヌクレオシド、およびヌクレオチドは、文脈が明らかに異なる必要がない限り、例えば、ヌクレオシドが近接ヌクレオシドに結合され、これらのヌクレオシド間の結合が修飾される場合、互換的に使用される。この場合、ヌクレオシドは、修飾されたリンカーであるか、またはヌクレオチドは、修飾されたヌクレオチドであるとみなすことができる。上述の通り、ヌクレオチドは、ヌクレオシドおよび1つまたは複数のリン酸基である。用語「リボヌクレオシド」および「デオキシリボヌクレオシド」、または「リボース」および「デオキシリボース」は、当該技術分野で使用される通りである。「アンチセンスオリゴヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「EON」、または「AON」を参照する場合はいつも、文脈が別途指示しない限り、オリゴヌクレオチドおよびデオキシオリゴヌクレオチドの両方を意味する。「オリゴヌクレオチド」を参照する場合はいつも、塩基A、G、C、U、またはIを含み得る。「デオキシオリゴヌクレオチド」を参照する場合はいつも、塩基A、G、C、T、またはIを含み得る。
好ましい態様では、本発明のAONは、化学修飾を含み得るオリゴヌクレオチドであり、ある種の特定位置にデオキシヌクレオチド(DNA)を含み得る。オリゴヌクレオチド、オリゴ、ON、オリゴヌクレオチド組成物、アンチセンスオリゴヌクレオチド、AON、(RNA)編集オリゴヌクレオチド、EON、およびRNA(アンチセンス)オリゴヌクレオチドなどの用語は、本明細書で、互換的に使用することができる。シトシンなどのオリゴヌクレオチド構築物中のヌクレオチドを参照する場合はいつも、5-メチルシトシン、5-ヒドロキシメチルシトシン、およびβ-D-グルコシル-5-ヒドロキシ-メチルシトシンを含み、アデニンを参照する場合はいつも、N6-メチルアデニン、および7-メチルアデニンを含み、ウラシルを参照する場合はいつも、ジヒドロウラシル、4-チオウラシル、および5-ヒドロキシメチルウラシルを含み、グアニンを参照する場合はいつも、1-メチルグアニンを含む。ヌクレオシドまたはヌクレオチドを参照する場合はいつも、2’-デソキシ、2’-ヒドロキシなどのリボフラノース誘導体、および2’-O-メチルなどの2’-O-置換バリアント、ならびに、2’-4’架橋バリアントを含む他の修飾を含む。オリゴヌクレオチドを参照する場合はいつも、2つのモノヌクレオチド間の結合は、ホスホジエステル結合、ならびにその修飾であり得、ホスホノアセテート、ホスホジエステル、ホスホトリエステル、PS、ホスホロ(ジ)チオエート(phosphoro(di)thioate)、MP、ホスホロアミデート(phosphor-amidate)のリンカーなどを含む。
用語「含む(comprising)」とは、「含む(including)」、ならびに「なる(consisting)」を包含し、例えば、「Xを含む」組成物は、排他的にXからなり得るか、または、追加の何か、例えばX+Yを含み得る。数値Xに関する用語「約」とは、任意であり、例えば、X±10%を意味する。単語「実質的に」とは、「完全に」を排除せず、例えば、「Yを実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含まない可能性がある。関連して、単語「実質的に」とは、本発明の定義から省略され得る。
用語「相補的」とは、本明細書で使用される場合、AONが、生理学的条件下、標的配列にハイブリダイズするという事実を指す。この用語は、AONの各ヌクレオチドが、標的配列の対向するそのヌクレオチドと完璧な対形成を有することは意味していない。換言すると、AONが、標的配列に相補的であり得ると同時に、生理学的条件下、細胞RNA編集酵素が標的アデノシンを編集することができるように、AONが標的配列に依然としてハイブリダイズしながら、AONと標的配列との間にミスマッチ、揺らぎ、および/または膨らみが存在し得る。したがって、用語「実質的に相補的な」とは、ミスマッチ、揺らぎ、および/または膨らみの存在に関わらず、AONが、生理学的条件下、標的RNAにハイブリダイズするように、AONと標的配列との間に、十分にマッチするヌクレオチドを有することも意味する。本明細書に示す通り、AONは、相補的であり得るが、AONが、生理学的条件下でその標的にハイブリダイズすることができる限り、標的配列との、1つまたは複数のミスマッチ、揺らぎ、および/または膨らみも含み得る。
核酸配列に関する用語「下流」とは、3’方向の配列に沿ってさらに遠いことを意味し、用語「上流」とは、逆を意味する。ゆえに、ポリペプチドをコードする任意の配列において、開始コドンは、センス鎖の終止コドンの上流であるが、アンチセンス鎖の終止コドンの下流である。
「ハイブリダイゼーション」に対する参照は、典型的には、特異的なハイブリダイゼーションを指し、非特異的なハイブリダイゼーションを排除する。特異的なハイブリダイゼーションは、選ばれた実験条件下、当該技術分野に周知の技術を使用して行って、プローブと標的との間の安定した相互作用の多くが、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の配列同一性のプローブおよび標的である状態にあることを確保することができる。用語「ミスマッチ」とは、ワトソン-クリック型塩基対の規則による完璧な塩基対を形成しない二本鎖RNA複合体における、対向するヌクレオチドを指すために、本明細書で使用される。ミスマッチしたヌクレオチドは、G-A、C-A、U-C、A-A、G-G、C-C、U-U対である。いくつかの実施形態では、本発明のAONは、4個未満のミスマッチ、例えば、0、1、または2個のミスマッチを含む。揺らぎの塩基対は、G-U、I-U、I-A、およびI-C塩基対である。
本発明のAON、より詳細には編集AONは、標的RNA分子に存在する標的ヌクレオチドに直接対向するヌクレオチドを含む。標的ヌクレオチドに直接対向するAONでのヌクレオチドは、本明細書で、「オーファンヌクレオチド」として定義される。「セントラルトリプレット」とは、オーファンヌクレオチド、ならびにその3’および5’近接ヌクレオチドからなるAON内の領域として定義される(ゆえに、セントラルトリプレット=中央にオーファンヌクレオチドを伴う3つのヌクレオチド)。
用語「スプライス突然変異」とは、プレmRNAをコードする遺伝子における突然変異に関し、スプライシング機構は、エクソンからのイントロンのスプライシングが分散し、異常なスプライシングにより、続く翻訳が、フレームから外れて、コードされたタンパク質の早期停止をもたらす、センスにおける機能不全である。多くの場合、このようなより短いタンパク質は、迅速に分解され、本明細書に記載するような任意の機能性活性を有さない。正確な突然変異は、RNA編集に対する標的である必要はなく、スプライス突然変異の近接または近傍アデノシンが、標的ヌクレオチドであり、Iへの変換により、正常状態に戻るスプライス突然変異に修正される可能性がある。当業者は、スプライス突然変異の部位または領域内のアデノシンのRNA編集の後、正常なスプライシングが復元されるかどうかを決定する方法を承知している。
本発明によるAONは、例えば、ヌクレオシドに2’-O-メチル化糖部分(2’-OMe)、および/または2’-O-メトキシエチル糖部分(2’-MOE)を供給することにより、ヌクレオシドのほとんどその全体で化学修飾され得る。しかし、オーファンヌクレオチドは、好ましくは、2’-OMe修飾を含まず、またさらに好ましい態様では、少なくとも1つの近接ヌクレオチドが、好ましい態様では、標的アデノシンに対向する各ヌクレオチドを挟む2つの近接ヌクレオチドの両方が、2’-OMe修飾をさらに含まない。AONの全てのヌクレオチドが2’-OMe修飾を有する完全な修飾は、RNA編集(当該技術分野で知られている)を行う限り、非機能性オリゴヌクレオチドをもたらすが、その理由は、おそらく、標的化された位置でADAR活性を妨害するからである。一般に、標的RNAでのアデノシンは、2’-OMe基で対向するヌクレオチドを生成することによるか、または、対向する塩基としてグアニンもしくはアデニンを生成することによる編集から保護することができ、これら2つの核酸塩基もまた、対向するアデノシンの編集を低減することができる。様々な化学的性質および修飾は、本発明に従って容易に使用することができるオリゴヌクレオチドの分野で知られている。ヌクレオチド間の正常なヌクレオシド間結合は、ホスホジエステル結合のモノまたはジチオエート化により改変して、それぞれ、ホスホロチオエートエステル、またはホスホロジチオエート(phosphorodithioate)エステルを得ることができる。アミド化およびペプチドリンカーを含む、ヌクレオシド間結合の他の修飾も可能である。MP結合は、公知の化学的性質を使用して形成することができる。
RNA編集物質(例えば、ヒトADAR酵素)が、いくつかの要因に依存して、特異性を変化させることでdsRNA構造を編集することは、当該技術分野で知られている。1つの重要な要因は、dsRNA配列をもたらす二本鎖の相補性の度合いである。二本鎖の完璧な相補性は、通常、非特徴的な方法でアデノシンを脱アミノ化し、それが遭遇する任意のアデノシンと反応する、hADARの触媒ドメインをもたらす。hADAR1および2の特異性は、化学修飾を導入すること、および/または、dsRNAでのいくつかのミスマッチを確保することにより高めることができ、おそらく、未だに明らかに定義されていない方法で、dsRNA結合ドメインの位置付けを助ける。あるいは、脱アミノ化反応自身は、編集されるアデノシンに対向するミスマッチを含む、AONを生成することにより向上することができる。ミスマッチは、好ましくは、編集されるアデノシンに対向するシチジンを有する、標的化部分を生成することにより作成される。代替として、また、ウリジンは、アデノシンに対向して使用することができるが、これは、当然のことながら、UとAとの対により、「ミスマッチ」は起こらない。標的鎖でアデノシンを脱アミノ化すると、標的鎖は、最も生化学的なプロセスに対して、Gとして細胞の生化学的機構により「読み込まれる」イノシンを得る。ゆえに、AからIへの変換の後、Iは、完璧に、本発明によるオリゴヌクレオチド構築物の標的化部分における対向するCと塩基対形成することができるので、ミスマッチは解消される。編集によりミスマッチが解消された後、基質を放出し、オリゴヌクレオチド構築物-編集物質複合体を標的RNA配列から放出し、次いで、スプライシングおよび翻訳などの、下流の生化学的なプロセスで利用可能となる。また、標的化したオリゴヌクレオチドが、標的RNAに非常に密に結合すべきではないので、オン/オフ比は重要である。標的RNA配列を編集する特異性の所望のレベルは、標的ごとに依存し得る。本特許出願における指示に従って、当業者は、必要性に従ってオリゴヌクレオチドの相補的な部分を設計することが可能であり、いくらかの試行錯誤をして、所望の結果を得ることが可能であろう。
細胞に存在するRNA編集分子は、通常、哺乳動物を含む、後生動物で見られるADAR酵素などの、天然でのタンパク質性である。好ましくは、細胞の編集物質は、酵素であり、より好ましくはアデノシンデアミナーゼまたはシチジンデアミナーゼ、さらにより好ましくはアデノシンデアミナーゼである。これらは、ADAR活性を有する酵素である。最も興味深いものは、ヒトADAR、hADAR1、およびhADAR2であり、任意のそのアイソフォームを含む。当該技術分野に知られているRNA編集酵素は、本発明によるオリゴヌクレオチド構築物が適宜的に設計され得るが、ヒトまたはヒト細胞におけるhADAR1およびhADAR2などの、RNAで作用するアデノシンデアミナーゼ(ADAR)、ならびにシチジンデアミナーゼを含む。hADAR1が、2つのアイソフォーム、長い150kDaの誘導型インターフェロン、およびより短い100kDa型に存在し、通常のプレmRNAから代替的なスプライシングによって生成されることが知られている。その結果、細胞で利用可能な150kDaアイソフォームのレベルは、インターフェロン、特にインターフェロンγ(IFN-γ)の影響を受ける可能性がある。hADAR1は、TNF-αによっても誘導される。これは、併用療法を開発する機会を提供し、それによりIFN-γまたはTNF-α、および本発明によるAONは、組合せ製品、または別々の製品のいずれかとして、同時に、または続いて、任意の順でのいずれかで、患者に投与される。ある種の疾患状態は、既に、患者のある種の組織における高いIFN-γ、またはTNF-αレベルと一致し得、病変組織に対してより特異的な編集を行うさらなる機会を作る。細胞内の編集物質を他の標的部位に再配向する程度は、編集分子の認識ドメインに対する、本発明によるAONの親和性が変化することにより調節され得ることは、当業者なら理解されよう。正確な修飾は、いくらかの試行錯誤を通して、ならびに/または、AONと編集分子の認識ドメインとの間の構造的相互作用に基づく計算方法によって決定することができる。加えて、またはあるいは、細胞に存在する編集物質を動員し、再配向する程度は、AONの投与および投与レジメンにより調節され得る。これは、通常、臨床試験において、(インビトロ)実験者または臨床医により決定されることである。
本発明は、真核細胞、好ましくは後生動物細胞、より好ましくは哺乳動物細胞、最も好ましくはヒト細胞における標的RNA配列の修飾に関係する。本発明は、任意の臓器、例えば、皮膚、肺、心臓、腎臓、肝臓、膵臓、腸、筋肉、腺、眼、脳、血液などに由来する細胞で使用することができる。本発明は、(ヒト)対象の疾患状態に関与する細胞、組織、または臓器の配列を修飾するのに特に適している。細胞は、インビトロ、エクスビボ、またはインビボに位置することができる。本発明の一利点は、生体中のインシチュでの細胞で使用することができるが、培養下の細胞でも使用することができる。いくつかの実施形態では、細胞をエクスビボで処置し、次いで、生体内に導入する(例えば、本来由来する生物内に再導入する)。本発明はまた、いわゆる類器官内の細胞において、標的RNA配列を編集するのに使用することができる。類器官は、3次元のインビトロ由来の組織と考えられるが、個別の単離された組織を生成する特定の条件を使用して駆動される。治療環境では、インビトロで患者の細胞に由来することができるので、類器官は、通常の移植より拒絶されにくい自己由来の物質として患者に再導入することができることから有用である。処置される細胞は、一般に、遺伝子突然変異を有する。突然変異は、ヘテロ接合またはホモ接合であり得る。本発明は、典型的には、NからAへの突然変異(Nは、G、C、U(DNAレベルではT)であり得る)、好ましくはGからAへの突然変異、またはNからCへの突然変異(Nは、A、G、U(DNAレベルではT)であり得る)、好ましくはUからCへの突然変異などの、点突然変異を修飾するのに使用される。
理論を拘束することは望まないが、hADAR1およびhADAR2によるRNA編集は、転写もしくはスプライシングの間の核内、または、例えば、成熟mRNA、miRNA、もしくはncRNAを編集することができる細胞質の一次転写物で起こると考えられている。編集酵素の異なるアイソフォームは、示差的に局在化することが知られており、例えば、hADAR1の100kDaアイソフォームは核内で多く見られ、hADAR1の150kDaアイソフォームは細胞質で多く見られる。シチジンデアミナーゼによるRNA編集は、mRNAレベルで起こると考えられている。
多くの遺伝的疾患は、GからAへの突然変異により起こり、突然変異した標的アデノシンでのアデノシン脱アミノ化が、とりわけPTCに関係する場合、突然変異を、機能性全長および/もしくは野生型タンパク質が発生するコドンに逆行させることから、これらは、好ましい標的疾患である。本発明によるオリゴヌクレオチドで予防および/または処置することができる遺伝的疾患の好ましい例は、標的RNAでの1つまたは複数のアデノシンの修飾が、(潜在的な)有益な変化をもたらす、任意の疾患である。とりわけ好ましいのは、アッシャー症候群、スタルガルト病、および嚢胞性線維症である。
本発明による標的化編集が、突然変異したまたは野生型のヌクレオチドであろうとなかろうと、任意のアデノシン(またはシトシン)に適用することができることは明らかであるべきである。例えば、編集は、異なる特性でのRNA配列を作成するのに使用することができる。このような特性は、コーディング特性(改変させたタンパク質の特性もしくは機能をもたらす、異なる配列もしくは長さを有するタンパク質を生じる)、または結合特性(RNA自身もしくは標的もしくは結合パートナーの阻害もしくは過剰発現を起こす;発現経路全体が、標的RNAでmiRNAもしくはその同族配列を記録することにより改変することができる)であり得る。タンパク質の機能または局在化は、機能性ドメインまたは認識モチーフにより、そのまま変化することができ、限定されないが、シグナル配列、標的化または局所化シグナル、タンパク質分解切断または翻訳に伴うもしくは翻訳後の修飾に対する認識部位、酵素の触媒部位、結合パートナーに対する結合部位、分解または活性化に対するシグナルなどが挙げられる。RNAのこれらおよびその他の形態、ならびにタンパク質「工学」は、疾患を予防、遅延、もしくは処置しようとしまいと、またはいかなる他の目的のために、医学または生物工学において、診断、予防、治療、調査ツールなどとして、本発明により包含される。
投与されるAONの量、投与量、および投与レジメンは、細胞の種類ごと、処置される疾患、標的集団、投与の様式(例えば、全身対局所)、疾患の重症度、および副活性の許容レベルで異なり得るが、これらは、インビトロ研究、前臨床試験、および臨床試験の間、試行錯誤により評価することができ、評価されるべきである。修飾された配列により容易に検出される表現型の変化が生じる場合、試験は、特に単純である。より高用量のAONが、細胞内で核酸編集物質(例えばADAR)に結合するために競合し、それにより、RNA編集を行わない物質の量を消耗する可能性があるが、通常の投与試験により、所与のAONおよび所与の標的に対する任意のこのような効果が明らかになる。
1つの適した試験技術は、AONを細胞株、または試験生物に送達すること、次いで、その後の様々な時点で生検サンプルを採取することを含む。標的RNAの配列は、生検サンプルで評価することができ、修飾を有する細胞の割合は、続いて容易に行うことができる。この試験を一旦行うと、その後、情報を保持することができ、生検サンプルの採取を必要とせずに、今後の送達を行うことができる。ゆえに、本発明の方法は、細胞の標的RNA配列での所望の変化の存在を同定し、それにより、標的RNA配列が修飾されることを検証するステップを含むことができる。このステップは、典型的には、上述の通り、標的RNAの関連する部分、またはそのcDNAコピー(もしくは、標的RNAがプレmRNAである場合、そのスプライシング生成物のcDNAコピー)をシークエンシングすることを含むので、配列変化は、容易に検証することができる。あるいは、変化は、タンパク質のレベル(長さ、グリコシル化、機能など)で、または、標的RNA配列でコードされるタンパク質が、例えば、イオンチャンネルである場合、(誘導)電流などの、いくつかの機能的な読み出しにより、評価することができる。
RNA編集が、細胞内で起こった後、修飾されたRNAは、例えば、細胞分裂、編集されるRNAの半減期の制限などにより、経時的に希釈することができる。ゆえに、実用的な治療の点で、本発明の方法は、十分な標的RNAを修飾して、患者に目に見える利点を提供する、および/または経時的に利点を維持するまで、AONの繰り返す送達を含み得る。
本発明のAONは、特に、治療的使用に適しているので、本発明は、本発明のAONおよび薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。本発明のいくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体は、単純に生理食塩水溶液であり得る。これは、特に肺内送達に対して、有用に等張性または高張性であり得る。本発明はまた、本発明の医薬組成物を含む、送達デバイス(例えば、シリンジ、吸入器、ネブライザー)を提供する。
本発明はまた、本明細書に記載の通り、哺乳動物、好ましくはヒト細胞での標的RNA配列において変化させるための方法での使用のための、本発明のAONを提供する。同様に、本発明は、本明細書に記載の通り、哺乳動物、好ましくはヒト細胞での標的RNA配列において変化させるための医薬の製造における、本発明のAONの使用を提供する。
本発明はまた、細胞内の標的RNA配列に存在する、少なくとも1つの特異的な標的アデノシンの脱アミノ化のための方法であって、細胞に、本発明によるAONを供給するステップ、AONの細胞による取込みを可能にするステップ、標的RNA分子へのAONのアニーリングを可能にするステップ、野生型酵素で発見された天然のdsRNA結合ドメインを含む哺乳動物のADAR酵素が、標的RNA分子中の標的アデノシンをイノシンに脱アミノ化することを可能にするステップ、および、任意で、RNA配列中のイノシンの存在を同定するステップを含む、方法に関する。
好ましい態様では、AからIへの変換の最大脱アミノ化効果に依存して、同定するステップは、標的RNAをシークエンシングすること、機能性、伸長型、全長および/もしくは野生型タンパク質の存在を評価すること、プレmRNAのスプライシングが、脱アミノ化により改変したかどうかを評価すること、または、機能的な読み出しを使用することであって、脱アミノ化後の標的RNAが、機能性、全長、伸長型および/もしく野生型タンパク質をコードする、使用することを含む。アデノシンのイノシンへの脱アミノ化により、標的位置での突然変異したAにもはや悩まされることがないタンパク質をもたらすことができることにより、イノシンへの脱アミノ化の同定はまた、機能的な読み出し、例えば、機能的タンパク質が存在するかどうかの評価、または、さらに、アデノシンの存在により引き起こされる疾患が(部分的に)逆行することの評価であり得る。本明細書に記載の疾患の各々に対する機能的評価は、一般に、当業者に知られている方法に従う。標的アデノシンの脱アミノ化の後のイノシンの存在を同定する非常に適した方法は、もちろん、当業者に周知の方法を使用する、RT-PCRおよびシークエンシングである。
本発明によるAONは、水溶液、例えば、生理食塩水、または、1ng/ml~1g/ml、好ましくは10ng/ml~500mg/ml、より好ましくは100ng/ml~100mg/mlの範囲の濃度で、薬学的な使用に適合する、添加物質、賦形剤、および他の成分を任意で含む、懸濁液で、適切に投与される。投与量は、適切には、約1μg/kg~約100mg/kg、好ましくは約10μg/kg~約10mg/kg、より好ましくは約100μg/kg~約1mg/kgの範囲であり得る。投与は、吸入(例えば、ネブライザーによって)、鼻腔内、経口、注射または注入、静脈内、皮下、皮内、頭蓋内、硝子体内、筋肉内、気管内、腹腔内、直腸内などであり得る。投与は、固体形態、散剤、丸剤、ゲル剤、点眼剤の形態、またはヒトでの薬学的使用に適合する任意の他の形態であり得る。
[実施例1]
AからIへの編集のための分割アンチセンスオリゴヌクレオチドの設計。
本発明の発明者らは、単一の38nt長のRNA編集アンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)が、インビボでのRNA編集の効率だけでなく、製造に関しても問題を生じさせ得ることを認識した。そのような比較的「大型の」AONが、トランスフェクション剤を使用せずにインビボで細胞にどの程度効率的に進入することができるかは不明であると考えられていた。特に、当該技術水準では、これに対する解決策は言及されておらず、したがって本発明者らは、一方がより長いAONの5’部分に対応することになり、他方がこのより長鎖型の3’部分に対応することになる2つの短いAONの使用を調査した。5’部分に対応するAONは「ヘルパーAON」であり、3’部分に対応するAONは、標的RNA分子において編集の標的となるアデノシンに対向する「オーファンヌクレオチド」を含むため、「編集AON」とみなされることになる。モデルとして、マウスアミロイド前駆体タンパク質(mAPP)をコードする(プレ)mRNAを標的として選択した。図1Aは、標的mAPP mRNAの配列、ならびに異なる化学修飾を有するものの全てが陽性対照としての機能を果たす、mAPPEx17-39、-62、および-67と称される3つの38nt長のAONの配列を示す(図1B)。mAPPex17-62は、mAPP野生型(プレ)mRNAのエクソン17にある標的配列中のアデノシン(図1Aでは太字で下線付き)の編集を誘導することができることがまず見出された(データは示さず)。上述した通り、38ヌクレオチドという長さは、RNA編集の分野で使用されるほとんどのRNA編集AONでは、非常に一般的である。本発明者らは、このAONの配列を、以下の通り、まず各AONが19nt長であるAONの4つの異なるセットを生成することにより38ntのAON配列を対称的に分割し、また次いで38ntのAON配列を非対称的に分割することにより、および38ntのAON配列を2つの部分に分割し、より短いAON間に1、2、または3ヌクレオチドのギャップを残すことにより、2つの別々の部分に分割することを決めた。
対称性分割:
mAPPEx17-135A(19nt)およびmAPPEx17-135B(19nt)
mAPPEx17-139A(19nt)およびmAPPEx17-139B(19nt)
mAPPEx17-140A(19nt)およびmAPPEx17-140B(19nt)
mAPPEx17-141A(19nt)およびmAPPEx17-141B(19nt)
非対称性分割:
mAPPEx17-144A(17nt)およびmAPPEx17-144B(21nt)
mAPPEx17-145A(17nt)およびmAPPEx17-145B(21nt)
ギャップ付き分割:
mAPPEx17-136A(18nt)およびmAPPEx17-136B(19nt) - 1ntギャップ
mAPPEx17-137A(18nt)およびmAPPEx17-139B(18nt) - 2ntギャップ
mAPPEx17-138A(17nt)およびmAPPEx17-138B(18nt) - 3ntギャップ
AからIへの編集のための分割アンチセンスオリゴヌクレオチドの設計。
本発明の発明者らは、単一の38nt長のRNA編集アンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)が、インビボでのRNA編集の効率だけでなく、製造に関しても問題を生じさせ得ることを認識した。そのような比較的「大型の」AONが、トランスフェクション剤を使用せずにインビボで細胞にどの程度効率的に進入することができるかは不明であると考えられていた。特に、当該技術水準では、これに対する解決策は言及されておらず、したがって本発明者らは、一方がより長いAONの5’部分に対応することになり、他方がこのより長鎖型の3’部分に対応することになる2つの短いAONの使用を調査した。5’部分に対応するAONは「ヘルパーAON」であり、3’部分に対応するAONは、標的RNA分子において編集の標的となるアデノシンに対向する「オーファンヌクレオチド」を含むため、「編集AON」とみなされることになる。モデルとして、マウスアミロイド前駆体タンパク質(mAPP)をコードする(プレ)mRNAを標的として選択した。図1Aは、標的mAPP mRNAの配列、ならびに異なる化学修飾を有するものの全てが陽性対照としての機能を果たす、mAPPEx17-39、-62、および-67と称される3つの38nt長のAONの配列を示す(図1B)。mAPPex17-62は、mAPP野生型(プレ)mRNAのエクソン17にある標的配列中のアデノシン(図1Aでは太字で下線付き)の編集を誘導することができることがまず見出された(データは示さず)。上述した通り、38ヌクレオチドという長さは、RNA編集の分野で使用されるほとんどのRNA編集AONでは、非常に一般的である。本発明者らは、このAONの配列を、以下の通り、まず各AONが19nt長であるAONの4つの異なるセットを生成することにより38ntのAON配列を対称的に分割し、また次いで38ntのAON配列を非対称的に分割することにより、および38ntのAON配列を2つの部分に分割し、より短いAON間に1、2、または3ヌクレオチドのギャップを残すことにより、2つの別々の部分に分割することを決めた。
対称性分割:
mAPPEx17-135A(19nt)およびmAPPEx17-135B(19nt)
mAPPEx17-139A(19nt)およびmAPPEx17-139B(19nt)
mAPPEx17-140A(19nt)およびmAPPEx17-140B(19nt)
mAPPEx17-141A(19nt)およびmAPPEx17-141B(19nt)
非対称性分割:
mAPPEx17-144A(17nt)およびmAPPEx17-144B(21nt)
mAPPEx17-145A(17nt)およびmAPPEx17-145B(21nt)
ギャップ付き分割:
mAPPEx17-136A(18nt)およびmAPPEx17-136B(19nt) - 1ntギャップ
mAPPEx17-137A(18nt)およびmAPPEx17-139B(18nt) - 2ntギャップ
mAPPEx17-138A(17nt)およびmAPPEx17-138B(18nt) - 3ntギャップ
「A」で示されるAONは「ヘルパーAON」とも称され、「B」で示されるAONは「編集AON」とも称される。AONは、各実験で陽性対照として使用した単一の38nt AONに沿って、様々な化学修飾を有していた。AONは、様々なRNA/DNA、PS結合、2’-OMe、および/または2’-MOE修飾を有していた(詳細については、図1Bを参照)。全てのAONは、編集しようとするAに対向するヌクレオチド(オーファンヌクレオチド)および2つのそれを取り囲むヌクレオチド(5’側に1つおよび3’側に1つ)を除いて(これら3つのヌクレオチドはDNAだった)、糖部分の2’位が、2’-O-メチルまたは2’-O-メトキシエチルのいずれかで完全に修飾されていた(図1Bを参照)。図1Bに見ることができるように、PS結合の数は様々だった。17/21以外の他の非対称性分割も実施可能であることが認識されるべきである(A/B:18/20、20/18、21/17)。
[実施例2]
インビトロ生化学アッセイにおける、AからIへの編集のための分割AONのセットの使用。
上記で参照されている全てのセットの編集効力を、インビトロ生化学編集アッセイで測定し、同様の化学修飾を有する陽性対照38nt AONと比較した。
インビトロ生化学アッセイにおける、AからIへの編集のための分割AONのセットの使用。
上記で参照されている全てのセットの編集効力を、インビトロ生化学編集アッセイで測定し、同様の化学修飾を有する陽性対照38nt AONと比較した。
mAPP標的RNAを得るために、T7プロモーターの配列およびmAPPの配列(の一部)を含んでいたmAPP Gブロック(IDT)をテンプレートとして使用し、フォワードプライマー5’-CTCGACGCAAGCCATAACAC-3’(配列番号10)およびリバースプライマー5’-TGGACCGACTGGAAACGTAG-3’(配列番号11)を使用してPCRを実施した。次いで、PCR生成物を、インビトロ転写のテンプレートとして使用した。この反応には、MEGAscript T7転写キットを使用した。RNAを尿素ゲルで精製し、次いで50mM Tris-Cl pH7.4、10mM EDTA、0.1%SDS、0.3M NaCl緩衝液で抽出し、フェノール-クロロホルムで精製した。精製したRNAを、生化学編集アッセイの標的として使用した。
全ての単一のAONおよび対称性/非対称性/ギャップ付きAONのセットを、緩衝液(5mM Tris-Cl pH7.4、0.5mM EDTA、および10mM NaCl)中、1:3比の標的RNA対AONで(200nM標的RNAおよび600nM AON)、mAPP標的RNAにアニーリングさせた。サンプルを、95℃で3分間加熱し、次いで室温までゆっくりと冷却した。次に、編集反応を実施した。二本鎖核酸複合体を、最終濃度が6nM AONおよび2nM標的RNAになるように、プロテアーゼ阻害剤(cOmplete(商標)、ミニ、EDTAフリープロテアーゼI、Sigma-Aldrich)、RNase阻害剤(RNasin、Promega)、ポリA(Qiagen)、tRNA(Invitrogen)、および編集反応緩衝液(15mM Tris-Cl、pH7.4、1.5mM EDTA、3%グリセロール、60mM KCl、0.003%NP-40、3mM MgCl2、および0.5mM DTT)と混合した。混合物に精製ADAR2(GenScript)を6nMの最終濃度になるように添加することにより、反応を開始させた。インキュベーションを、所定の時間(0秒、30秒、1分、2分、5分、10分、25分、および50分)にわたって37℃で継続した。沸騰した3mM EDTA溶液95μlを添加することにより各反応を停止させた。
次いで、停止させた反応混合物のアリコート6μlを、ランダムヘキサマープライマー(ThermoFisher Scientific)と共にMaxima逆転写酵素キット(Thermo Fisher)を使用したcDNA合成のテンプレートとして使用した。RNAの最初の変性を、95℃で5分間、プライマーおよびdNTPの存在下で行い、続いて、10℃まで穏やかに冷却した後、第一の鎖合成を、62℃の伸長温度を使用して総体積20μlで製造業者の説明書に従って行った。
生成物を、製造業者の説明書に従ってAmplitaq Gold 360 DNAポリメラーゼキット(Applied Biosystems)を使用して、テンプレートとしてcDNA 1μlとのPCRによるパイロシークエンシング解析のために増幅した。以下のプライマーを、濃度10μMで使用した:パイロ配列フォワード mAPP、5’-AACTGGTGTTCTTTGCTGAAGAT-3’(配列番号12)、およびパイロ配列リバース mAPPビオチン、5’-5BiosG/CATGATGGATGGATGTGTACTGT-3’(配列番号13)。後者のプライマーはまた、パイロシークエンシング反応中の自動処理の必要に応じて、その5’末端にコンジュゲートされたビチオンを含有する。PCRを、以下の熱サイクルプロトコルを使用して行った:95℃で5分間の最初の変性、次に95℃で30秒間、58℃で30秒間、および72℃で30秒間の40サイクル、ならびに72℃で7分間の最終伸長。
逆転写反応でのcDNA合成の間のシチジンとのイノシンの塩基対として、PCRの間の編集される位置に組み込まれるヌクレオチドは、グアノシンである。グアノシン(編集済み)対アデノシン(未編集)の百分率は、パイロシークエンシングによって定義された。PCR生成物のパイロシークエンシングおよび以下のデータ解析は、PCR生成物の10μl入力、および4μMの以下のシークエンシングプライマー:mAPP配列、5’-TCGGACTCATGGTGG-3’(配列番号14)を用いて、PyroMark Q48 Autoprep機器(QIAGEN)により製造業者の説明書に従って行った。この標的RNA鎖に特異的に定義される設定は、2セットの配列情報を含んだ。第一のセットは、解析するための機器に対する配列を定義し、プリンの場合、アデノシンまたはグアノシンのいずれかを含有する位置の可能性は「R」で示される:GCGGCGTTGTCATRGCAACCGTGATTGTCATCACCCTGGTGATGTTGAAGAAGAA(配列番号15)。分配順は、以下の通り、この解析に対して定義した:TGCGCGTGTCACTAGCACGTGATGTCATCAC(配列番号16)。機器により行われた解析は、その位置で検出されたアデノシンおよびグアノシンの百分率として選択されたヌクレオチドに対する結果を示し、したがって、選ばれた位置でのAからIへの伸長は、その位置でのグアノシンの百分率により測定される。
第1の実験では、単一の38nt AON mAPPEx17_62を、2つのセット:i)mAPPEx17_139Aおよび-Bを含む対称性セットならびにii)mAPPEx17_144Aおよび-Bを含む非対称性セットと比較した。図2は、この実験の結果を示す。驚くべきことに、2つの短鎖AONの組合せを適正なRNA編集に適用することができ、非対称性セットは陽性対照AONよりも優れていたことが見出された。対称性セットのAONも、長鎖AONおよび非対称性セットよりも速度はやや遅いものの、著しいRNA編集をもたらした。
第2の実験では、単一の38nt AON mAPPEx17_67を、3つのセット:i)mAPPEx17_140Aおよび-Bを含む対称性セット、ii)mAPPEx17_141Aおよび-Bを含む非対称性セット、およびiii)mAPPEx17_145Aおよび-Bを含む非対称性セットと比較した。図3は、この実験の結果を示す。3つのセット全てを適正なRNA編集に適用することができ、全てのセットで良好な結果が得られたが、非対称性セットは2つの対称性セットよりも良好に機能したことが見出された。非対称性分割AONの編集効力がより高いのは、ADAR2/RNA複合体(図示せず)およびADAR2のRBD2領域の構造データに基づく分割の位置決め(が好ましいこと)によるものであり得る。本発明者らの知る限りでは、本発明の発明者らは、16~22ntの比較的短い長さを有する2つのオリゴヌクレオチドを用いてRNA編集を達成することができることを初めて示した。当業者であればもちろん明らかであるが、この場合の「非対称性」は、分割AONの長さが、対照AONの元の長さである38ヌクレオチドに基づいていることを意味し、その基本配列が、例えば34ヌクレオチドである(長鎖AONの3’末端から4ヌクレオチドが切断されている)場合、2つの分割AONの長さは等しくなり(各々17nt長)、「対称性」であるとみなされることになる。同じことが、例えば、36ヌクレオチド長である陽性対照AONでも真である。当然のことながら、陽性対照が、例えば37ntまたは35ntの長さである場合、分割は常に「非対称性」になるだろう。ゆえに、用語「対称性」および「非対称性」は、本明細書で使用される場合、元の陽性対照AONを様々に分割することに基づくものに過ぎず、したがって、こうした用語はある程度随意に適用される。
[実施例3]
インビトロ生化学アッセイにおける、AからIへの編集のための分割AONのセットおよび単一の短鎖編集AONの使用。
次いで、上記に記載のものと同様の実験設定において、ヘルパーAON(分割AONの「A」型)を適用することなく、単一の短鎖編集AON(分割AONの「B」型)のみを使用してもRNA編集が実施可能であるかどうかを調査した。このために、単一の38nt AON mAPPEx17_67を、以下の通り、AONの2つのセットおよび2つの単一の短鎖編集AONと比較した:i)mAPPEx17_139Aおよび-Bを含む対称性セット、ii)単一の編集AON mAPPEx17_139B、iii)mAPPEx17_144Aおよび-Bを含む非対称性セット、およびiv)単一の編集AON mAPPEx17_144B。図4は、この実験の結果を示す。驚くべきことに、単一のmAPPEx17_144B AON(21nt)の使用は、同じAONをそのヘルパーAONと共に用いた場合および陽性対照を用いた場合に得られたレベルにほぼ到達する著しいRNA編集をもたらしたことが見出された。これは、本発明者らが、21ヌクレオチドという短いAONを用いてRNA編集を得ることができたことを示しており、この分野でこれまで理解されていたことを考慮すると非常に注目に値する。この実験では、この単一の短鎖AONは、mAPP139Aおよび-Bをセットで共に使用した場合よりもさらにより高いレベルのRNA編集に到達した。編集AON mAPPEx17_144Bは、そのヘルパーAON mAPPEx17_144Aと共にセットで使用すると、効力がさらに増進された。
インビトロ生化学アッセイにおける、AからIへの編集のための分割AONのセットおよび単一の短鎖編集AONの使用。
次いで、上記に記載のものと同様の実験設定において、ヘルパーAON(分割AONの「A」型)を適用することなく、単一の短鎖編集AON(分割AONの「B」型)のみを使用してもRNA編集が実施可能であるかどうかを調査した。このために、単一の38nt AON mAPPEx17_67を、以下の通り、AONの2つのセットおよび2つの単一の短鎖編集AONと比較した:i)mAPPEx17_139Aおよび-Bを含む対称性セット、ii)単一の編集AON mAPPEx17_139B、iii)mAPPEx17_144Aおよび-Bを含む非対称性セット、およびiv)単一の編集AON mAPPEx17_144B。図4は、この実験の結果を示す。驚くべきことに、単一のmAPPEx17_144B AON(21nt)の使用は、同じAONをそのヘルパーAONと共に用いた場合および陽性対照を用いた場合に得られたレベルにほぼ到達する著しいRNA編集をもたらしたことが見出された。これは、本発明者らが、21ヌクレオチドという短いAONを用いてRNA編集を得ることができたことを示しており、この分野でこれまで理解されていたことを考慮すると非常に注目に値する。この実験では、この単一の短鎖AONは、mAPP139Aおよび-Bをセットで共に使用した場合よりもさらにより高いレベルのRNA編集に到達した。編集AON mAPPEx17_144Bは、そのヘルパーAON mAPPEx17_144Aと共にセットで使用すると、効力がさらに増進された。
またさらなる実験では、単一の38nt mAPPEx17_67を、以下の通り、AONの2つのセットおよび2つの他の単一の短鎖編集AONと比較した:i)mAPPEx17_141Aおよび-Bを含む対称性セット、ii)単一の編集AON mAPPEx17_141B、iii)mAPPEx17_145Aおよび-Bを含む非対称性セット、およびiv)単一の編集AON mAPPEx17_145B。図5は、この実験の結果を示す。mAPPEx17_141Aおよび-Bの対称性セットはうまく機能しなかったが、単一の短鎖mAPPEx17_145Bはより良好に機能し(非常に効果的だったわけではないが)、それはヘルパーAON mAPPEx17_145Aの追加によってさらに増進された。この場合もまた、非対称性セット(陽性対照の観点で生成された)の方が、AONの対称性セットよりも良好に作用することが示された。
こうした実験は、非対称性分割AONおよび21nt編集AONを単独で使用すると、適正なRNA編集結果がもたらされることを明らかにするが、長鎖陽性対照およびヘルパーAONの存在と比較して異なる単一のAON間で観察される変動性は、正確な長さ、5’および/または3’位置におけるAONの開始、ならびにこうした単一のAONの各々に存在する化学修飾によるものである可能性が高い。化学修飾の最良の組合せを提供するにはさらなる最適化が必要である(PS結合の位置、2’-OMeおよび2’-MOE修飾の位置、ある特定の位置における他のまたは追加の(2’)修飾の導入可能性、DNAヌクレオチドの数および/または位置など)。長さおよび化学修飾は、標的とする特定の(プレ)mRNAに応じて調整しなければならず、したがって標的RNAの特定の配列にも依存する可能性があることは排除することができない。いずれにせよ、本発明の発明者らは、発明者らの知る限り、19~21ヌクレオチド長と短いオリゴヌクレオチドを用いてRNA編集を達成することができることを最初に示した。
[実施例4]
内因性ADARを動員することにより細胞内でAからIへの編集を行うための、分割AONのセットおよび単一の短鎖編集AONの使用。
次に、分割AONが(組合せで、および編集AONとして単独で)、細胞内で野生型内因性mAPP RNAを編集することができるかどうかを調査した。そのために、野生型APP遺伝子を有するマウス網膜色素上皮(RPE)細胞を使用した。簡潔に言うと、トランスフェクションの24時間前に、6ウェルプレート1つ当たり2.5×105個の細胞を播種した。トランスフェクションは、製造業者の説明書に従って100nM AONおよびLipofectamine2000(Invitrogen)で行った(1:2の比で、1μg AON対2μl Lipofectamine2000)。未トランスフェクション(NT)、モックトランスフェクション、およびスクランブルオリゴヌクレオチド(scr-mAPP-3、図1Bを参照)を陰性対照として共に使用した。RNAは、製造業者の説明書に従ってDirect-zol RNA MiniPrep(Zymo Research)キットを使用してトランスフェクション48時間後に細胞から抽出し、cDNAは、ランダムヘキサマーおよびオリゴdTプライマーの組合せを用いて、製造業者の説明書に従ってMaxima逆転写酵素キット(Thermo Fisher)を使用して調製した。cDNAを5倍に希釈し、この希釈液1μLを、デジタルドロップレットPCR(ddPCR)に対するテンプレートとして使用した。BioRadのQX-200 Droplet Digital PCRシステムを使用して、核酸標的配列の絶対定量化のためのddPCRアッセイを実施した。RT cDNA合成反応から得られた希釈cDNA 1μlを、dUTPを含まないプローブ用のddPCR Supermix(Bio Rad)を含む、反応混合の21μlの全混合物で使用し、以下のフォワードおよびリバースプライマーを用いたTaqman SNP遺伝子型アッセイを、以下の遺伝子特異的プローブと組み合わせた:
フォワードプライマー:5’-CAACATCACCAGGGTGATGAC-3’(配列番号17)
リバースプライマー:5’-CATCATCGGACTCATGGTGG-3’(配列番号18)
野生型プローブ(HEX NFQ標識):5’-/5HEX/CGT T+GT CAT+A+G+C AAC CGT/3IABkFQ/-3’(配列番号19)
突然変異型プローブ(FAM NFQ標識):5’-/56-FAM/CGT TGT CAT+G+G+C AAC CG/3IABkFQ/-3’(配列番号20)
内因性ADARを動員することにより細胞内でAからIへの編集を行うための、分割AONのセットおよび単一の短鎖編集AONの使用。
次に、分割AONが(組合せで、および編集AONとして単独で)、細胞内で野生型内因性mAPP RNAを編集することができるかどうかを調査した。そのために、野生型APP遺伝子を有するマウス網膜色素上皮(RPE)細胞を使用した。簡潔に言うと、トランスフェクションの24時間前に、6ウェルプレート1つ当たり2.5×105個の細胞を播種した。トランスフェクションは、製造業者の説明書に従って100nM AONおよびLipofectamine2000(Invitrogen)で行った(1:2の比で、1μg AON対2μl Lipofectamine2000)。未トランスフェクション(NT)、モックトランスフェクション、およびスクランブルオリゴヌクレオチド(scr-mAPP-3、図1Bを参照)を陰性対照として共に使用した。RNAは、製造業者の説明書に従ってDirect-zol RNA MiniPrep(Zymo Research)キットを使用してトランスフェクション48時間後に細胞から抽出し、cDNAは、ランダムヘキサマーおよびオリゴdTプライマーの組合せを用いて、製造業者の説明書に従ってMaxima逆転写酵素キット(Thermo Fisher)を使用して調製した。cDNAを5倍に希釈し、この希釈液1μLを、デジタルドロップレットPCR(ddPCR)に対するテンプレートとして使用した。BioRadのQX-200 Droplet Digital PCRシステムを使用して、核酸標的配列の絶対定量化のためのddPCRアッセイを実施した。RT cDNA合成反応から得られた希釈cDNA 1μlを、dUTPを含まないプローブ用のddPCR Supermix(Bio Rad)を含む、反応混合の21μlの全混合物で使用し、以下のフォワードおよびリバースプライマーを用いたTaqman SNP遺伝子型アッセイを、以下の遺伝子特異的プローブと組み合わせた:
フォワードプライマー:5’-CAACATCACCAGGGTGATGAC-3’(配列番号17)
リバースプライマー:5’-CATCATCGGACTCATGGTGG-3’(配列番号18)
野生型プローブ(HEX NFQ標識):5’-/5HEX/CGT T+GT CAT+A+G+C AAC CGT/3IABkFQ/-3’(配列番号19)
突然変異型プローブ(FAM NFQ標識):5’-/56-FAM/CGT TGT CAT+G+G+C AAC CG/3IABkFQ/-3’(配列番号20)
cDNAを含む総体積21μlのPCRミックスを、マルチチャンネルピペットを使用して、ddPCRカートリッジ(BioRad)の中列に充填した。複製を、2つのカートリッジに分割した。下列は、プローブ用のドロップレット生成油(BioRad)70μlで充填した。ラバーガスケットの置換の後、ドロップレットを、QX200ドロップレット生成器で生成した。カートリッジの上列から油状乳化物42μlを、96ウェルPCRプレートに移した。PCRプレートを、PX1プレートシーラーを使用して、170℃で4分間、スズ箔で密封し、その後、以下のPCRプログラムを行った:95℃で10分間の酵素活性化を1サイクル、95℃で30分間の変性および55.8℃で1分間のアニーリング/伸長を40サイクル、98℃で10分間の酵素不活性化と続く8℃での保管を1サイクル。PCRの後、プレートを、QX200ドロップレットリーダーで読み出し、解析した。
図6に示す結果は、単独でまたは対応するヘルパーAONと組み合わせて使用した全ての編集AONが、マウスRPE細胞内でmAPP標的RNAを編集することが可能であり、こうした細胞内で内因性ADARを動員することができたことを明らかにしている。mAPPex17-140A+B、mAPPex17-141A+B、およびmAPPex17-145A+Bは、38nt長のAON mAPPex17-62およびmAPPex17-67による標的RNAの編集と比較すると、効力はより低いものの、mAPPex17-139A+BセットおよびmAPPex17-144A+Bセットよりも高い非常に類似したRNA編集レベルを示した。この実験ではトランスフェクション試薬が使用され、インビボでまたはトランスフェクション試薬を使用しない場合のインビトロで起こること(ギムノシス性取込み(gymnotic uptake))とは異なることに留意されたい。トランスフェクションでは、オリゴヌクレオチドの長さはあまり重要ではないが、トランスフェクション試薬の非存在下では、オリゴヌクレオチドが長いほど細胞に進入しにくくなることが知られている。図6は、単一の編集AON mAPPEx17_139B、-140B、-141B、-144B、および-145Bが全てRNA編集をもたらしたことも明らかにしている。これは、RNA編集オリゴヌクレオチドのそのような短鎖型も、内因性ADARを動員することが可能であり、内因性標的のRNA編集をもたらすことが可能であることを示す。これは驚くべき観察結果だった。
[実施例5]
インビトロ生化学アッセイにおける、AからIへの編集のための分割およびギャップ付きAONのセットの使用。
次いで、本発明者らは、RNA編集をもたらすために分割AONが標的RNA中の連続したひと続きに相補的でなければならないことが必要であるかどうか、または分割AON間に1、2、または3ヌクレオチドの小さなギャップがあっても適正な編集が得られるかどうかを検討した。そのために、実施例2および3で考察したものと同じ生化学アッセイを適用した。単一の38nt mAPPEx17_39を、以下の通り、分割(ギャップ付き)AONの3つのセット、および各々19nt長の2つの連続AONの1つの対称性セットと比較した:i)mAPPEx17_135Aおよび-Bを含む対称性セット、ii)mAPPEx17_136Aおよび-Bを含む1ntギャップセット、iii)mAPPEx17_137Aおよび-Bを含む2ntギャップセット、ならびにiv)mAPPEx17_138Aおよび-Bを含む3ntギャップセット。こうしたAONの特定の化学修飾については、図1Bを参照されたい。図7は、この実験の結果を示す。全てのセットがRNA編集をもたらす能力を示した。これはオリゴヌクレオチドのセット内の2つのAON間にギャップが許容されることを示す。しかし、ギャップが存在する場合、RNA編集の効力が低下したことも観察された。これは2つの分割AONが、標的配列中の連続したひと続きのヌクレオチドに対して完全な100%の相補性を提供する配列を有することが好ましいことを示す。興味深いことに、mAPPEx17_135A+Bの組合せは、陽性対照mAPPEx17_39で観察されたRNA編集のレベルおよび速度と同等のRNA編集のレベルおよび速度を示した。この場合もまた、17~21ヌクレオチドの範囲である2つの別々のオリゴヌクレオチドの使用を使用して、標的(プレ)mRNA分子中の標的アデノシンのイノシンへの脱アミノ化を得ることができることを示す。
インビトロ生化学アッセイにおける、AからIへの編集のための分割およびギャップ付きAONのセットの使用。
次いで、本発明者らは、RNA編集をもたらすために分割AONが標的RNA中の連続したひと続きに相補的でなければならないことが必要であるかどうか、または分割AON間に1、2、または3ヌクレオチドの小さなギャップがあっても適正な編集が得られるかどうかを検討した。そのために、実施例2および3で考察したものと同じ生化学アッセイを適用した。単一の38nt mAPPEx17_39を、以下の通り、分割(ギャップ付き)AONの3つのセット、および各々19nt長の2つの連続AONの1つの対称性セットと比較した:i)mAPPEx17_135Aおよび-Bを含む対称性セット、ii)mAPPEx17_136Aおよび-Bを含む1ntギャップセット、iii)mAPPEx17_137Aおよび-Bを含む2ntギャップセット、ならびにiv)mAPPEx17_138Aおよび-Bを含む3ntギャップセット。こうしたAONの特定の化学修飾については、図1Bを参照されたい。図7は、この実験の結果を示す。全てのセットがRNA編集をもたらす能力を示した。これはオリゴヌクレオチドのセット内の2つのAON間にギャップが許容されることを示す。しかし、ギャップが存在する場合、RNA編集の効力が低下したことも観察された。これは2つの分割AONが、標的配列中の連続したひと続きのヌクレオチドに対して完全な100%の相補性を提供する配列を有することが好ましいことを示す。興味深いことに、mAPPEx17_135A+Bの組合せは、陽性対照mAPPEx17_39で観察されたRNA編集のレベルおよび速度と同等のRNA編集のレベルおよび速度を示した。この場合もまた、17~21ヌクレオチドの範囲である2つの別々のオリゴヌクレオチドの使用を使用して、標的(プレ)mRNA分子中の標的アデノシンのイノシンへの脱アミノ化を得ることができることを示す。
Claims (16)
- 標的RNA中の標的アデノシンの脱アミノ化に使用するための、2つの一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)のセットを含む組成物であって、一方のAONは「編集AON」であり、他方のAONは「ヘルパーAON」であり、前記編集AONは、前記標的アデノシンを含む前記標的RNA中のひと続きのヌクレオチドに相補的であり、前記標的アデノシンに直接対向する前記編集AON中のヌクレオチドは、2’-OMeまたは2’-MOEで修飾されていないシチジンである「オーファンヌクレオチド」であり、前記ヘルパーAONは、前記編集AONに相補的な前記ひと続きのヌクレオチドとは別の前記標的RNA中のひと続きのヌクレオチドに相補的であり、前記ヘルパーAONは16~22ヌクレオチドの長さを有し、前記編集AONは16~22ヌクレオチドの長さを有する、組成物。
- 前記ヘルパーAONおよび編集AONが、前記標的RNAと連続的に二本鎖複合体を形成し、前記ヘルパーAONは、前記編集AONに相補的な前記標的RNA中の前記ひと続きのヌクレオチドの3’側に位置する前記標的RNA中のひと続きのヌクレオチドに相補的であり、前記ヘルパーAONおよび前記編集AONに相補的な配列間にヌクレオチドギャップは存在しない、請求項1に記載の組成物。
- 前記ヘルパーAONが、前記標的RNAと100%相補的である、請求項1または2に記載の組成物。
- 前記編集AONが、前記標的アデノシンに対向するシチジンとのミスマッチを除いて、前記標的RNAと完全に相補的である、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
- 前記セットが、前記標的RNAと前記二本鎖複合体を形成した後、内因性ADAR酵素を動員して、前記標的アデノシンのイノシンへの脱アミノ化をもたらすように構成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
- 前記編集AONが、1つまたは複数のホスホロチオエート(phosphorothioate)(PS)結合を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
- 前記編集AONが、2’-OMe修飾を含む糖部分を有する少なくとも1つのヌクレオチド、および/または2’-MOE修飾を含む糖部分を有する少なくとも1つのヌクレオチドを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
- 前記オーファンヌクレオチドが、前記糖部分に2’-Hを有する(DNA)、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
- 前記オーファンヌクレオチドの5’側のヌクレオチドおよび/または3’側のヌクレオチドがDNAである、請求項8に記載の組成物。
- 前記編集AONが、少なくとも1つのホスホノアセテート(phosphonoacetate)ヌクレオシド間結合、少なくとも1つのメチルホスホネート(methylphosphonate)ヌクレオシド間結合、および/またはアンロックド核酸(UNA)リボース修飾を含む少なくとも1つのヌクレオチドを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
- 前記編集AONが、19、20、または21ヌクレオチド長であり、前記オーファンヌクレオチドが、5’末端から6番目、7番目、または8番目のヌクレオチドであり、前記ヘルパーAONが、17、18、または19ヌクレオチド長である、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物
- 薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
- 嚢胞性線維症、ハーラー症候群、α-1-アンチトリプシン(A1AT)欠損症、パーキンソン病、アルツハイマー病、白皮症、筋萎縮性側索硬化症、喘息、β-サラセミア、CADASIL、シャルコー-マリー-ツース病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、遠位型脊髄性筋萎縮症(DSMA)、デュシェンヌ型/ベッカー型筋ジストロフィー、(栄養障害型)表皮水疱症、ファブリー病、第V因子ライデン関連障害、家族性腺腫性ポリポーシス、ガラクトース血症、ゴーシェ病、グルコース-6-リン酸脱水素酵素、血友病、遺伝性ヘモクロマトーシス、ハンター症候群、ハンチントン病、炎症性腸疾患(IBD)、遺伝性多凝集症候群、レーバー先天性黒内障(例えば、LCA10)、レッシュ-ナイハン症候群、リンチ症候群、マルファン症候群、ムコ多糖症、筋ジストロフィー、I型およびII型筋強直性ジストロフィー、神経線維腫症、ニーマン-ピック病A型、B型およびC型、NY-eso1関連がん、ポイツ-イェガース症候群、フェニルケトン尿症、ポンペ病、原発性線毛疾患、プロトロンビン突然変異関連障害(例えば、プロトロンビンG20210A突然変異)、肺高血圧症、(常染色体優性)色素性網膜炎、サンドホフ病、重症複合免疫不全症候群(SCID)、鎌状赤血球貧血、脊髄性筋萎縮症、スタルガルト病、テイサックス病、アッシャー症候群(例えば、アッシャー症候群I型、II型、およびIII型)、X連鎖免疫不全、スタージ-ウェーバー症候群、ならびに、がんからなる群から好ましくは選択される、遺伝的障害の療法での使用のための、好ましくは処置または予防での使用のための、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
- 細胞内の標的RNA中の少なくとも1つの標的アデノシンの脱アミノ化のための方法であって、
(i)前記細胞に、請求項1から11のいずれか一項に定義されたヘルパーAONおよび編集AONを含むAONのセットを供給するステップ、
(ii)前記標的RNAへの前記AONのアニーリングを可能にして、二本鎖核酸分子を形成するステップ、
(iii)前記細胞に内因的に存在するADAR酵素が、前記二本鎖核酸分子と複合体を形成し、前記標的RNA中の前記標的アデノシンをイノシンへと脱アミノ化することを可能にするステップ、および
(iv)任意で、前記標的RNA中の脱アミノ化した前記ヌクレオチドの存在を同定するステップ
を含む方法。 - ステップ(iv)が、
a)前記標的RNAの領域であって、前記標的アデノシンの位置を含む領域をシークエンシングすること、
b)前記標的アデノシンが、UGAまたはUAG終止コドンに存在し、脱アミノ化によってUGGコドンに編集される場合、機能性、伸長型、全長および/もしくは野生型タンパク質の存在を評価すること、
c)前記標的RNAがプレmRNAである場合、前記プレmRNAのスプライシングが、脱アミノ化により改変したかどうかを評価すること、または
d)機能的な読み出しを使用することであって、脱アミノ化後の前記標的RNAが、機能性、全長、伸長型および/もしく野生型タンパク質をコードする、使用すること
を含む、請求項14に記載の方法。 - 標的RNAに存在する少なくとも1つの標的アデノシンの脱アミノ化のための方法であって、
(i)請求項1から11のいずれか一項に特徴付けられている2つのAONのセットを供給するステップ、
(ii)前記標的RNAへの前記AONのアニーリングを可能にして、二本鎖核酸分子を形成するステップ、
(iii)ADAR酵素が、前記二本鎖核酸分子と複合体を形成し、前記標的RNA中の前記標的アデノシンをイノシンへと脱アミノ化することを可能にするステップ、および
(iv)前記標的RNA中の脱アミノ化した前記アデノシンの存在を同定するステップ
を含む方法。
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