本発明は、周知の注射器に関する不都合な点をいくつか扱う。特に、注射器の針部をハウジングに対して装着して支持する方法を扱う。
本発明の1つの観点によれば、様々な注射器が開示される。これらの注射器では、非経口接触部が支持部と針部とを備えている。非経口接触部は、針部が注射部位にあるときに注射器のハウジングに対して移動可能に取り付けられているように、ハウジングの中の空洞内に吊り下げられる。注射器は、皮膚に対して固定されるように構成されている装着型であってもよい。非経口接触部は、皮膚に対して針部を変位させることなくハウジングを移動させるように構成されてもよい。
以下に説明される注射器は、(たとえば非経口接触部の支持部を、変形可能な台、関節のある部品、または回転可能な部品に取り付けることにより)注射部位に対するハウジングの運動を受動的に打ち消すように構成されてもよい。それとは別に、またはそれに加えて、以下に説明される注射器が、ハウジングの運動を能動的に打ち消す要素を含んでもよい。この要素はあるシステムを含んでもよい。このシステムは、ハウジングまたは非経口接触部による皮膚からの変位が感知されたことに応じてハウジングに対する針部の位置を制御するように構成されている。いくつかの実施形態では、針部の位置合わせを能動的に行う制御部が、針部(たとえばカニューレまたは極微針の配列)と注射部位との間の接触力を維持するように構成されてもよい。
少なくともいくつかの実施形態では、ハウジングが注射部位から遠位方向へ離れたときにも、非経口接触部が注射部位との接触を維持するように、非経口接触部が、針部を近位方向へ(注射部位へ)向かわせるように構成されてもよい。これらの実施形態に加えて他の実施形態でも、非経口接触部が、注射部位に対するハウジングの横方向への変位に応じて、針部をハウジングに対して横方向へ移動させるように構成されてもよい。それとは別に、またはそれに加えて、非経口接触部が、空洞内でハウジングに対して傾くように構成されてもよい。したがって、本発明による注射器は、全体としては次の要素を備えていると考えられる。薬剤容器を収容するように構成されているハウジング。ハウジングの空洞内に配置されている針部と支持部。支持部は、非経口接触部が注射部位にある間、ハウジングに対して変位(たとえば、傾斜、回転、並進)可能であるように空洞内に取り付けられている。
本発明の実施形態は、針部が注射部位にある間、針部をハウジングに対して移動させることにより、使用者に対する傷みと刺激とを軽減させ、注射部位からの薬剤の漏れを減らし、注射器の使用期間の全体にわたって針の刺入深度を所望の範囲内に維持するのに役立つ。
第1の観点では注射器が提供される。この注射器はハウジングと非経口接触部とを備えている。ハウジングは、薬剤容器を収容するように構成されている。非経口接触部は、ハウジングの中の空洞内に配置されている支持部を含む。支持部には針部が取り付けられ、針部は、1回分の薬剤を注射部位に投与するように構成されている。柔軟な導管は、薬剤を薬剤容器から針部へ送るように構成されている。支持部は複数のばねに取り付けられており、それらのばねは、ハウジングの中に設けられているばね台に連結されている。各ばねには長軸があり、いずれのばねの長軸も異なる。
ばね台は、ハウジングの一部であっても、ハウジングの中に固定されている部品であっても、針刺し機構であってもよい。針刺し機構は、注射の際に針部をハウジングに対して前進させて注射部位に接触させるように構成されている。
非経口接触部は、複数のばねに取り付けられることにより、注射器が変位する間でさえもハウジングに対して傾き、回転し、または並進して注射部位との接触を維持する(または、その維持を支援する)ように構成可能である。
第2の観点では注射器が提供される。この注射器はハウジングと非経口接触部とを備えている。ハウジングは、薬剤容器を収容するように構成されている。非経口接触部は、ハウジングの中の空洞内に配置されている支持部と、支持部に取り付けられている針部とを含む。針部は、1回分の薬剤を注射部位に投与するように構成されている。柔軟な導管は薬剤を薬剤容器から針部へ送るように構成されている。支持部は空洞内に移動可能に取り付けられている。複数台のモーターが、支持部をハウジングに対して移動させて非経口接触部を注射部位に接触させ続けるように構成されている。
非経口接触部は、複数台のモーター駆動のアクチュエーターに取り付けられることにより、注射器が変位する間でさえもハウジングに対して傾き、回転し、または並進して注射部位との接触を維持する(または、その維持を支援する)ように構成可能である。
第3の観点では注射器が提供される。この注射器はハウジングと非経口接触部とを備えている。ハウジングは、薬剤容器を収容するように構成されている。非経口接触部は、ハウジングの中の空洞内に配置されている支持部と、支持部に取り付けられている針部とを含む。針部は、1回分の薬剤を注射部位に投与するように構成されている。柔軟な導管は薬剤を薬剤容器から針部へ送るように構成されている。支持部はハウジングに対して回転するように取り付けられており、空洞内で回転可能である。
支持部用の回転台は、注射部位の表面に対して実質的に垂直な軸のまわりに少なくとも1回転する(それにより、支持部がハウジングに対してねじられる)ことが可能であるように構成されてもよい。支持部用の回転台はまた、複数の軸のまわりに回転可能であるようにも構成されてもよい。たとえば、その回転台がハウジングに対してねじられても、空洞内で支持部を傾けてもよい。
非経口接触部は、回転台に取り付けられることにより、注射器が変位する間でさえもハウジングに対して傾き、回転し、または並進して注射部位との接触を維持する(または、その維持を支援する)ように構成可能である。
第4の観点では注射器が提供される。この注射器はハウジングと非経口接触部とを備えている。ハウジングは、薬剤容器を収容するように構成されている。非経口接触部は、ハウジングの中の空洞内に配置されている支持部と、支持部に取り付けられている針部とを含む。針部は、1回分の薬剤を注射部位に投与するように構成されている。柔軟な導管は薬剤を薬剤容器から針部へ送るように構成されている。支持部は、ハウジングに連結されている弾性変形可能な台に空洞内で取り付けられている。支持部には外側壁があり、空洞には内側壁があり、支持部の外側壁が空洞の内側壁から、外側壁のまわりに広がっている周方向の空間によって隔たれている。
上記の観点のいずれにおいても、針部が中空の注射針を含んでもよい。それとは別に(または、それに加えて)針部が極微針の配列を含んでもよい。
ハウジングが皮膚接触面を含んでもよい。皮膚接触面は接着部を含み、接着部は、注射器を使用者の皮膚に取り付けるように構成されている。それに加えて、またはそれとは別に、更なる接着部が支持部の皮膚接触面に設けられてもよい。少なくともいくつかの実施形態では注射器が装着型であり、注射器を使用者の身体に固定するための固定手段を備えている。
注射器が更に、支持部に連結されている台を含んでもよい。この台が、上記の観点によるばね基台、変形可能な台、または回転台を形作ってもよい。この台はハウジング内に移動可能に取り付けられ、近位方向へ移動して支持部を、したがって針部を退避位置から、ハウジングから皮膚へ向かって伸び出ている位置まで前進させてもよい。
注射器が更に挿入機構を備えていてもよい。挿入機構は、支持部および/または上記の台をハウジングに対して第1位置と第2位置との間で移動させるように構成されている。第1位置では、針部がハウジングからは伸び出ていない。第2位置では、針部がハウジングから伸び出て注射部位に刺さる。支持部および/または台は、近位方向へ移動して針部を退避位置から、ハウジングから皮膚へ向かって伸び出ている位置まで前進させるようにハウジング内に取り付けられてもよい。
必要に応じ、注射器が更に解除可能なロック機構を備えていてもよい。ロック機構は、(i)動作状態では、支持部および/または台をハウジングに対して第1位置に維持して針部をハウジングからは伸び出させず、(ii)非動作状態では、支持部および/または台をハウジングに対して移動させる。
1つの態様ではロック機構が次のように構成されてもよい。(i)動作状態では、支持部を台に対し、複数のばね(または変形可能な材料)が圧縮される第1位置に維持して針部をハウジングからは伸び出させず、(ii)非動作状態では、複数のばねの力で支持部を台に対して第2位置まで移動させて針部をハウジングから伸び出させる。
いくつかの実施形態では、注射器が更に配置機構を備えてもよい。配置機構は支持部に連結されており、針部がハウジングからは伸び出ていない第1位置と、針部がハウジングから伸び出ている第2位置との間で支持部を移動させるように構成されている。必要に応じ、配置機構がハウジングに取り外し可能に連結されてもよい。
上記の観点と実施形態とのいずれにおいても、注射器が次のような台を1以上備えていてもよい。複数のばね、弾性変形可能な台、回転台、旋回台、モーター駆動の台、またはこれらの組み合わせ。たとえば、旋回するように取り付けられている支持部が複数のばねに取り付けられ、それらのばねが非経口接触部に近位方向の力を加えて針部と注射部位との間の接触を維持する間、支持部がハウジングに対して(抵抗を最小限に抑えた状態で)ねじられるようにしてもよい。他の例では、モーター駆動の支持部が変形可能な台と組み合わされ、使用者を更に楽にして、注射部位に対する圧力を均一に維持するのを支援してもよい。
したがって、複数のばねがコイルばねを少なくとも1本含んでもよい。これらのばねが1つのばね基台に固定されてもよい。ばね基台はハウジングの中に移動可能に取り付けられてもよい。ばね基台がハウジングの中に回転可能に取り付けられてもよい。それとは別に、またはそれに加えて、ばね基台がハウジングに旋回可能に取り付けられてもよい。更に別の実施形態では、回転や旋回をさせるように取り付ける部品との組み合わせで、またはそれらの部品とは別に、ばね基台がハウジング内に移動可能に取り付けられ、近位方向へ移動して針部を退避位置から、ハウジングから皮膚へ向かって伸び出ている位置まで前進させてもよい。いずれの実施形態においても、ばねが支持部を、針部がハウジングの皮膚接触面を越えて伸び出る位置へ向かわせるように、ばねが構成されてもよい。
弾性変形可能な台が発泡体層を備えていてもよい。この発泡体層が基台に固定されてもよい。この基台がハウジングに対して移動可能であり、近位方向へ移動して針部を退避位置から、ハウジングから皮膚へ向かって伸び出ている位置まで前進させてもよい。その他に、発泡体層がハウジング内に固定されてもよい。ばね基台がハウジングの中に回転可能に取り付けられてもよい。それとは別に、またはそれに加えて、ばね基台がハウジングに旋回可能に取り付けられてもよい。
上記の実施形態はいずれも、1台(または複数台)のモーターと少なくとも1台のアクチュエーターとを備えていてもよい。アクチュエーターは、支持部をハウジングに対して移動させて、注射部位における非経口接触部と皮膚との間の接触を維持するように構成されている。モーターがサーボモーターであってもよい。各モーターは少なくとも1台のセンサーと通信してもよい。そのセンサーは、非経口接触部が注射部位から外れたことを感知するように構成されている。必要に応じ、そのセンサーが極微針電極センサーであってもよい。そのセンサーがハウジングの皮膚接触面に設けられてもよい。それに加え、またはそれとは別に、少なくとも1台のセンサーが支持部の皮膚接触面に設けられてもよい。モーターが、ハウジング内に移動可能に取り付けられているモーター基台に取り付けられてもよい。たとえば、モーター基台がハウジングの中に回転可能に、および/または旋回可能に取り付けられてもよい。いくつかの態様では、基台がハウジング内に移動可能に取り付けられ、近位方向へ移動して針部を退避位置から、皮膚へ向かって伸び出ている位置まで前進させてもよい。上記の実施形態のいずれにおいても、複数台のモーターが支持部を、針がハウジングの皮膚接触面を越えて伸び出ている位置に維持するように構成されてもよい。
上記の観点と実施形態とのいずれにおいても、支持部がハウジングに対して回転するように取り付けられてもよい。支持部が、ハウジングまたは台等の固定されている部品に回転するように取り付けられてもよいし、台に固定された上で、その台がハウジングに対して回転するように取り付けられてもよい。
上記の実施形態はいずれも更に、スイベル継手を備えていてもよい。スイベル継手は、ハウジングから皮膚へ向かって近位方向へ伸びている軸のまわりに支持部をハウジング内で回転させるように構成されている。支持部が、旋回点のまわりに旋回するように構成されていてもよい。いくつかの実施形態では、支持部がハウジングに対して玉継手で取り付けられていてもよい。支持部が支持部用の基台に、回転するように取り付けられていてもよい。この基台はハウジング内に移動可能に取り付けられており、近位方向へ移動して針部を退避位置から伸長位置へ前進させる。上記の回転可能な支持部が更に、複数のばね(または他の付勢手段)を備えていてもよい。これらのばねは、針がハウジングの皮膚接触面を越えて伸び出ている位置へ支持部を向かわせるように構成されている。
支持部がハウジングの空洞内に配置され、ハウジングに対する横方向への移動、近位方向への移動、回転、または旋回のうち、少なくとも1つが可能であってもよい。いくつかの態様では空洞が、支持部をハウジングに対して横方向へ変位させるように構成されていてもよい。そのような実施形態では、支持部に外側壁があり、空洞に内側壁があり、支持部の外側壁が空洞の内側壁から、外側壁のまわりに広がっている周方向の空間によって隔たれていてもよい。たとえば、発泡体層が空洞の内側壁から周方向の空間によって隔たれていてもよい。
本発明はまた、上記の観点または実施形態のいずれかによる注射器の針を注射部位に支持する方法と、その注射器の製造方法とをも提供する。
第5の観点では注射器の製造方法が提供される。この方法は、ハウジングを設けるステップを含む。ハウジングは、薬剤容器を収容するように構成されており、皮膚接触面に開口部のある空洞を含む。この方法は、ハウジングの空洞内に非経口接触部を設けるステップを含む。非経口接触部は、ハウジング内の空洞の中に配置されている支持部と、支持部に取り付けられている針部とを含む。針部は、1回分の薬剤を注射部位に投与するように構成されている。この方法は、柔軟な導管を設けるステップを含む。導管は、薬剤を薬剤容器から針部へ送るように構成されている。この方法は、空洞内で支持部を複数台のモーターに取り付けるステップを含む。モーターは、非経口接触部と注射部位との間の接触を維持するように構成されている。
第6の観点では注射器の製造方法が提供される。この方法は、ハウジングを設けるステップを含む。ハウジングは、薬剤容器を収容するように構成されており、皮膚接触面に開口部のある空洞を含む。この方法は、ハウジングの空洞内に非経口接触部を設けるステップを含む。非経口接触部は、ハウジング内の空洞の中に配置されている支持部と、支持部に取り付けられている針部とを含む。針部は、1回分の薬剤を注射部位に投与するように構成されている。この方法は、柔軟な導管を設けるステップを含む。導管は、薬剤を薬剤容器から針部へ送るように構成されている。この方法は、支持部を複数のばねに取り付けるステップを含む。ばねは、ハウジングの中に設けられているばね基台に連結され、それぞれに長軸があり、いずれのばねの長軸も異なる。
第7の観点では注射器の製造方法が提供される。この方法は、ハウジングを設けるステップを含む。ハウジングは、薬剤容器を収容するように構成されており、皮膚接触面に開口部のある空洞を含む。この方法は、ハウジングの空洞内に非経口接触部を設けるステップを含む。非経口接触部は、ハウジング内の空洞の中に配置されている支持部と、支持部に取り付けられている針部とを含む。針部は、1回分の薬剤を注射部位に投与するように構成されている。この方法は、柔軟な導管を設けるステップを含む。導管は、薬剤を薬剤容器から針部へ送るように構成されている。この方法は、支持部を空洞内に取り付けるステップを含む。支持部はハウジングに対して回転するように取り付けられており、少なくとも1本の軸のまわりをハウジングに対して回転可能である。
第8の観点では注射器の製造方法が提供される。この方法は、ハウジングを設けるステップを含む。ハウジングは、薬剤容器を収容するように構成されており、皮膚接触面に開口部のある空洞を含む。この方法は、ハウジングの空洞内に非経口接触部を設けるステップを含む。非経口接触部は、ハウジング内の空洞の中に配置されている支持部と、支持部に取り付けられている針部とを含む。針部は、1回分の薬剤を注射部位に投与するように構成されている。この方法は、柔軟な導管を設けるステップを含む。導管は、薬剤を薬剤容器から針部へ送るように構成されている。この方法は、支持部を空洞内で弾性変形可能な台に取り付けるステップを含む。支持部には外側壁があり、空洞には内側壁があり、支持部の外側壁は空洞の内側壁から、外側壁のまわりに広がっている周方向の空間によって隔たれている。
第5、第6、第7、第8の観点による方法が、第1から第4までの観点による上記の要素のいずれかを設けるステップを更に備えていてもよい。
第9の観点では、薬剤の注射に備えて注射器の針を支持する方法が提供される。この方法は、ある器具を注射部位に装着するステップを含む。この器具は、空洞のあるハウジング、その空洞の中に配置されている非経口接触部、および柔軟な導管を含む。非経口接触部は支持部と針部とを含む。針部は支持部に取り付けられており、1回分の薬剤を注射部位に投与するように構成されている。導管は、薬剤を薬剤容器から針部へ送るように構成されている。支持部は空洞内で複数台のモーターに移動可能に取り付けられている。モーターは、非経口接触部と注射部位との間の接触を維持するように構成されている。この方法は、ハウジングに設けられている接着部を利用して注射器を注射部位に固定するステップと、少なくとも1台のモーターの作動によって非経口接触部と注射部位との間の接触を維持するステップとを含む。必要に応じ、複数台のモーターが少なくとも1つのセンサーと通信する。このセンサーは、非経口接触部が注射部位から離脱するのを検出するように構成されている。モーターは、注射部位からの非経口接触部の離脱が感知されたことに応じて作動するように構成されている。
第10の観点では、薬剤の注射に備えて注射器の針を支持する方法が提供される。この方法は、ある器具を注射部位に装着するステップを含む。この器具は、空洞のあるハウジングと、その空洞の中に配置されている非経口接触部とを含む。非経口接触部は支持部と針部とを含む。針部は支持部に取り付けられており、1回分の薬剤を注射部位に投与するように構成されている。支持部は複数のばねに取り付けられている。ばねはハウジング内のばね基台から伸びており、互いに長軸が異なる。この方法は、ハウジングに設けられている接着部を利用して注射器を注射部位に固定するステップと、支持部とばね基台との間でばねを圧縮するステップとを含む。
第11の観点では、薬剤の注射に備えて注射器の針を支持する方法が提供される。この方法は、ある器具を注射部位に装着するステップを含む。この器具は、空洞のあるハウジング、その空洞の中に配置されている非経口接触部、および柔軟な導管を含む。非経口接触部は支持部と針部とを含む。針部は支持部に取り付けられており、1回分の薬剤を注射部位に投与するように構成されている。導管は薬剤容器と針部との間を連通させている。支持部はハウジングに対して回転するように取り付けられ、空洞内で回転可能である。この方法は、ハウジングに設けられている接着部を利用して注射器を注射部位に固定するステップと、非経口接触部を注射部位に接触させるステップとを含む。
第12の観点では、薬剤の注射に備えて注射器の針を支持する方法が提供される。この方法は、ある器具を注射部位に装着するステップを含む。この器具は、空洞のあるハウジングと、その空洞の中に配置されている非経口接触部とを含む。非経口接触部は支持部と針部とを含む。針部は支持部に取り付けられており、1回分の薬剤を注射部位に投与するように構成されている。支持部は、ハウジングに連結されている弾性変形可能な台に空洞内で取り付けられている。支持部には外側壁があり、空洞には内側壁があり、支持部の外側壁は空洞の内側壁から、外側壁のまわりに広がっている周方向の空間によって隔たれている。この方法は、ハウジングに設けられている接着部を利用して注射器を注射部位に固定するステップと、支持部とハウジングとの間で弾性変形可能な台を圧縮するステップとを含む。
以下の詳細な説明と添付の図面とからは、更なる利点と追加の実施形態とがありうることがすぐに分かるであろう。
本発明は、非経口接触部を注射部位に支持するシステムと方法との全般を対象とする。特に、以下に説明されるシステムと方法とは、注射器のハウジングが変位した場合にも、皮膚の表面における針部の位置と深さとを維持するように構成されている。
図1Aは、注射部位に装着されている装着型注射器の模式的な側面図を示す。この注射器110は皮膚112に装着され、接着部またはその他の取付手段で所定位置に固定されている。針114が注射器のハウジング116から伸び出て皮膚に刺さり、治療薬を患者に送り込む。通常は(ただし、常ではない。)注射器110のハウジング116が、薬剤を貯蔵する容器118も、容器118と針114との間を連通させる導管120も含む。ハウジングの中には通常、薬剤を容器118から導管120を通して針114へ送り出す駆動系統(図示せず。)も収容されている。駆動系統は、薬剤を送るように構成されている機械式駆動部(たとえば、ばねまたはぜんまい機構)および/または電気式駆動部(たとえば、モーター)を含んでもよい。使用者に注射の開始を合図させることのできるアクチュエーター、たとえばボタン122がハウジング116に備えられてもよい。ただし、アクチュエーターが機械式であることは必須ではなく、注射器が、たとえば駆動系統と無線で通信するリモコンを用いた電子制御で作動してもよいことは、当業者には理解されるだろう。
図1Aに示されている注射器では、少なくとも注射期間のほとんどにおいて針114がハウジング116に対して固定されている。これは、ハウジング116が衝撃を受けて皮膚に対して横方向に変位した場合、針114も横方向に変位することを意味する。針114のこの変位は使用者に痛みと刺激とを与えかねない。ハウジング116の横方向(xy平面内)の変位は、針114と導管120との間の接続を損なわせかねず、または針114を注射部位から除去しかねず、薬剤を注射器から漏れさせて投薬制御を失敗させるかも知れない。
図1Aには示されていないが、ハウジング116の軸方向(z軸方向)の変位が針の刺入深度を変えかねないことも理解されるだろう。したがって、この変位は、薬を患者に正しく投与するという注射器の機能に悪影響を与えるかも知れない。
図1Bは、同様な問題が従来の自動注射器にどのように生じ得るかを示す。図1Bは、注射の間、注射部位の皮膚112に装着されている自動注射器180を示す。図1Bに示されているように、自動注射器180はハウジング186と針184とを含む。注射の間はハウジング186に対する針184の位置が固定されているので、注射の間にハウジング186が注射部位に対して移動すると、針184が移動して痛みを生じさせかねず、または薬剤の投与不足を招きかねない。ただし、自動注射器による投薬過程は通常10秒-120秒であり、患者によって制御されるので、投薬がより快適にされるように、および/または、強い衝撃を受けたら針が退避するように、針が自動的に位置合わせされるかも知れない。
図1Cは、図1Aの注射器110と同様な別の装着型注射器190を示す。ただし、薬剤を注射部位へ送る目的に対し、図1Aの注射器110が従来のカニューレを備えているのに対し、図1Cの注射器190は中空の極微針の配列(MNA)194を備えている。極微針の配列194は(図1Aに示されている空洞と同様な)ハウジング116の底面の空洞内に配置されており、導管120によって容器118と連通している。
図1Cの注射器では、極微針の配列194が(注射の間)ハウジング116に対して固定されている。したがって、ハウジング116を注射部位の皮膚に対して回転させる外力がどのようなものであっても、極微針の配列194を皮膚に対してねじることになりかねない。このような回転変位は使用者に痛みと刺激とを与えかねない。そうではなくても、極微針の配列194を正しい深さの注射部位から外しかねないので、薬剤を漏れさせて投薬制御を失敗させるかも知れない。
上記の構成のそれぞれでは、注射部位に対する注射器のハウジングの変位が、注射部位に対する針部の変位にも繋がるので、使用者に痛みと不快感とを与え、更に時間がたつと注射部位に刺激または損傷を与え、投薬不足を招く危険がある。しかし、図2A-図9が参照されると、上記の欠点の少なくともいくつかを本発明の実施形態が補い、すなわち減らすことができることがわかる。後述の実施形態による注射器は総じて、非経口接触部を備えている。非経口接触部は針部と支持部とを含む。針部は、薬剤を注射部位へ送るように構成されている。支持部は、針部を注射準備位置に支持するように構成されている。支持部はハウジングに対して移動可能に取り付けられており、注射の間、非経口接触部をハウジングに対して移動可能にすることにより、ハウジングに対する衝撃から非経口接触部を切り離す(または防護する)。支持部が、変形可能な、または、しなやかな材料に移動可能に取り付けられ、その材料でハウジングに連結されてもよい。または、支持部の位置がアクチュエーターを用いて能動的に制御されてもよい。そのアクチュエーターは、ハウジングが注射部位に対して移動するのが感知され、または検出されるのに応じて、支持部をハウジングに対して移動させるように構成されている。いくつかの実施形態では注射器が、ハウジングまたは針部のずれ(または接触圧の低下)が感知されるのに応じて、ハウジングに対する支持部の位置を能動的に制御するように構成されていてもよい。他の実施形態では、非経口接触部が弾性変形可能な台を含んでもよい。この台は、ハウジングが注射部位に対して変位すると変形して非経口接触部をハウジングの変位から切り離し、その位置を注射部位に維持させるように構成されている。非経口接触部がハウジングに対して移動可能であることにより、注射が行われる間中、(たとえば、装着型注射器が衝撃を受けることにより、または携帯型注射器を持つ手が不安定であることにより)ハウジングが皮膚に対して変位したとしても、針の刺入深度を維持することができる。非経口接触部をハウジングに対して吊し、または浮かせる部品または支持具から非経口接触部を独立させることにより、注射器が身体の皮膚上の元の位置から外れることによって生じる不快感を和らげることができる。
図2A、図2Bは本発明による注射器の第1実施形態を示す。図2Aは、外乱を受けることなく注射部位に装着されている状態の注射器を示す。図2Aに示されているように、注射器210はハウジング216を含む。ハウジング216は、注射部位の皮膚212に装着されるように構成されている。注射器210は針部も含む。針部は、この実施形態では中空の注射針214として形作られており、薬剤を容器(図示せず。)から導管220を通して注射部位まで送るように構成されている。接着層222が注射器210を皮膚212に固定するように設けられている。接着層222はハウジング216の底面(すなわち皮膚接触面)に設けられている。ハウジング216は空洞224を含み、その中に針部が配置されている。針部は非経口接触部の一部を形成している。非経口接触部は、薬剤を薬剤容器(図示せず。)から針214まで送るように構成されている。非経口接触部は、針214の他、針214が取り付けられている支持部226を含む。支持部226はハウジング216に対して弾性変形可能な台228で取り付けられている。図2Aに示されている実施形態では、弾性変形可能な台228が柔軟な発泡体層を含む。
容器(図示せず。)を針214に接続する導管220は、少なくとも長尺部分が柔軟である。導管の柔軟性により、針214がハウジングに対して移動可能である。これについては、以下、図2Bを参照しながら更に詳細に説明する。
図2Bは、ハウジング216を注射部位に対して横方向に変位させる衝撃を受けている最中である図2Aの注射器210を示す。皮膚212に対するハウジング216の変位が矢印Aで示されている。ハウジング216が変位する際、注射器を皮膚212に付けている接着層222が伸びる。皮膚212からのハウジング216の離脱は、ハウジング216が皮膚212から持ち上げられる場合にも(たとえば、矢印Dが示す位置で)起こり得る。
図2Bに示されているように、柔軟な発泡体層228は、ハウジング216が針214を変位させることなく、注射部位に対して移動可能であるように構成されている。柔軟な導管220も、針214と支持部226とをハウジングに対して移動可能にさせている。これにより、導管は、その中を通して薬剤が供給されるのを妨げることなく、ハウジングに対する針214の移動を許容する。
非経口接触部(支持部226と針214とを含む。)がハウジング216に不動には接続されていないので、ハウジング216が注射部位に対して変位しても、針214を変位させない(または、変位させてもわずかでしかない)。それどころか、ハウジング216が(横方向または他の方向に)変位する一方で柔軟な発泡体層228と導管220とが非経口接触部を、注射部位に取り付けられたままに残すことができる。
図2A、図2Bに示されている実施形態では、ハウジング216が皮膚212に、ハウジング216の底面に設けられている接着層222で固定される。非経口接触部は、ハウジング216に対するその位置により、注射の間、皮膚212に接触し続ける。少なくともいくつかの実施形態では、支持部226も接着層を含む(図2A、図2Bには示されていない)。この接着層は、非経口接触部と注射部位との間の接触を維持するように構成されている。このような接着層は非経口接触部の支持部226、特にその皮膚接触面に設けられてもよい。非経口接触部に設けられている接着層が有利な態様もあるが、支持部に設けられる場合も選択可能である。針214は皮膚に刺さると、注射部位に対して横方向に変位させられないように作用する。
図2A、図2Bの矢印では示されていないが、柔軟な発泡体層228は、注射部位内における針の刺入深度の変化を阻むようにも作用する。これは、発泡体層の柔軟性によって可能である。z軸方向(針214の軸に沿った方向)に伸縮するように構成可能だからである。柔軟な発泡体層の伸縮は、針214を注射位置へ向かわせることを支援するようにも構成可能である。たとえば、柔軟な発泡体層228が、支持部226の皮膚接触面がハウジング216の底面を越えて突き出る位置へ支持部226を向かわせるように構成されてもよい。注射器210が、皮膚212に装着されることによって柔軟な発泡体層228を圧縮するように作用してもよい。注射器210が、図2に示されている姿勢において柔軟な発泡体層228をわずかに圧縮するように構成されることにより、その発泡体層は、ハウジング216が注射部位から引き離されると伸びるように構成されてもよい。これにより、針214の刺入深度が維持され、または、少なくとも注射部位から退避する針214の動きが緩衝される。
非経口接触部(支持部226と針214とを含む。)をハウジング216に対して横方向に変位可能にする目的で、(図2Aに示されているように)周方向の空間230が支持部226と空洞224の側壁224aとの間に設けられている。周方向の空間230があるので、堅い支持部226が堅い壁のある空洞224の中で横方向に移動可能である。ただし、実施形態の中には、周方向の空間230が省略されているものがあってもよい。この場合、たとえば、支持部の直径が柔軟な発泡体層の直径よりも狭く、または、支持部も柔軟な材料で形成されている。
図3A、図3Bは本発明による注射器の第2実施形態を示す。図3A、図3Bに示されている注射器310は、図2A、図2Bに示されている注射器210と同様である。図2Aと同様、図3Aは、静止している(変位していない)注射器310を示す。図3Bは、注射部位の皮膚212に対して注射器310を変位させる衝撃を受けている最中の注射器310を示す。
注射器310はハウジング316を含む。ハウジング316は、接着層322すなわち接着パッチを用いて皮膚の所定位置に固定されるように構成されている。ハウジング316には空洞324がある。その中に非経口接触部が収容されている。非経口接触部は、柔軟な発泡体層328(または、他の適当な弾性変形可能な台)に取り付けられている支持部326を含む。空洞には側壁324aがあり、必要に応じ、支持部326から周方向の空間330で隔たれている。注射器310は、図2A、図2Bに示されている注射器210とは針部の形が異なる。図2A、図2Bを参照しながら説明された実施形態では、非経口接触部が含む支持部226に取り付けられている針214が単一である。しかし、図3A、図3Bに示されている実施形態では針部が極微針の配列394を形作っている。この配列は、薬剤を注射部位に送るように構成されている複数の極微針を含む。したがって、柔軟な導管320は、図2A、図2Bに示されているように中空の注射針1本のみに接続されるのではなく、極微針の配列394に薬剤を供給するように構成されている。
図2A、図2Bに示されている実施形態と同様、ハウジング316が注射部位に対して変位すると柔軟な発泡体層が変形し、ハウジング316を注射部位に対して移動させる一方、極微針の配列394を元の位置に留める。
上記の実施形態の支持部が柔軟な発泡体層等の弾性変形可能な台に取り付けられることによってハウジングに対して移動可能であるので、ハウジングに対する衝撃から非経口接触部を切り離すことができることは理解されるだろう。上記の実施形態は柔軟な発泡体層を備えているように描かれているが、他の変形可能な物質も利用可能である。たとえば、ゲルまたはゴムから成る層も利用可能である。さらに、その物質を変形可能な台が単一の層として含むことも、複数の離散的な部分として含むことも考えられる。たとえば、複数の変形可能な部分が変形可能な台を形成しても、互いに隣り合わせにされても(必要に応じ、互いに接触させられても)、間隔を開けて配置されてもよい。組み立てやすさが組み立ての最優先事項である態様の中には、柔軟な発泡体層が特に適しているものもあるかも知れない。たとえば、支持部が柔軟な物質の層の所定位置に接着されてもよい。この層自体もハウジング内の部品に接着されてもよい。
上記の変形可能な台がハウジングに対して静的に取り付けられている必要はないことも理解されるだろう。たとえば、上記の要素群が、移動可能な針ハブを備えている注射器に組み込まれてもよい。針ハブは、針を注射前の退避位置(針がハウジングからは伸び出ていない。)から注射時の前進位置(針がハウジングから伸び出て注射部位に刺さる。)まで前進させるように構成されている。そのような実施形態では、弾性変形可能な台が支持部と針ハブとの間に設置されてもよい。
以下、図4A、図4Bを参照しながら本発明による第3実施形態を説明する。図4A、図4Bに示されている実施形態は大部分が、図2A、図2Bを参照して説明された実施形態と同様である。図2Aと同様、図4Aは、静止している(変位していない)注射器410を示す。図4Bは、注射部位の皮膚212に対して注射器410を変位させる衝撃を受けている最中の注射器410を示す。
図4Aに示されているように、注射器410はハウジング416を含む。ハウジング416は、接着部422で注射部位の皮膚212に固定されるように構成されている。ハウジング416には空洞424がある。この空洞は、非経口接触部を収容するように構成されている。非経口接触部は支持部426と針部とを含む。この実施形態では、針部が皮下注射用の針414を形作っている。針414は、薬剤容器(図示せず。)と柔軟な導管420を通して連通するように構成されている。空洞424には側壁424aがあり、支持部426の外面と空洞の内壁424aとの間に広がる周方向の隙間430がある。周方向の隙間430は、支持部426を空洞424の中で横方向に移動可能にして、針414を注射器410のハウジング416に対して変位可能にする。
注射器210の支持部226が柔軟な発泡体層に取り付けられているのに対し、図4に示されている実施形態では、支持部426が複数のばね432に取り付けられている。これらのばねは、図4Bに示されているように、変形によって支持部426をハウジング416に対して移動させるように構成されている。ばね432は互いに対して非同軸であるように配置されている。ばね432は更に、好ましくは、針414に対して対称的に配置されており、針414のz軸方向に力を注射部位へ向けて確実に加える。この非同軸の配置によって支持部426を、それよりも直径の小さい複数のばねに安定に取り付けることができ、ハウジング416に対して横方向に移動させることができる。
いくつかの実施形態では、支持部426が、対面配置等、針414に対して対称的に配置されている2つのばねに取り付けられてもよい。他の実施形態では、1つ、3つ、または4つ以上のばねが、互いに対して非同軸に配置され、支持部426をハウジングに対して移動可能に支持してもよい。
図5A、図5Bは本発明による注射器の第4実施形態を示す。図5A、図5Bに示されている注射器510は、図4A、図4Bに示されている注射器410と同様である。図4Aと同様、図5Aは、静止している(変位していない)注射器510を示す。図5Bは、注射部位の皮膚212に対して注射器510を変位させる衝撃を受けている最中の注射器510を示す。
注射器510はハウジング516を含む。ハウジング516は、接着層522すなわち接着パッチを用いて皮膚の所定位置に固定されるように構成されている。ハウジング516には、非経口接触部を収容する空洞524がある。非経口接触部は、複数のばね534に取り付けられている支持部526を含む。空洞524には側壁524aがあり、必要に応じ、周方向の空間530によって支持部526から隔たれている。注射器510は、図4A、図4Bに示されている注射器410とは針部の形が異なる。図4A、図4Bを参照して説明された実施形態では、非経口接触部が、支持部426に取り付けられている針414を含む。しかし、図5A、図5Bに示されている実施形態では針部が極微針の配列594を形作っている。この配列は、薬剤を注射部位に送るように構成されている複数本の極微針を含む。したがって、柔軟な導管520は、図4A、図4Bに示されているように中空の注射針1本のみに接続されるのではなく、極微針の配列594に薬剤を供給する。
図4A、図4Bに示されている実施形態と同様、ハウジング516が注射部位に対して変位するとばね534が変形し、ハウジング516を注射部位に対して移動させる一方、極微針の配列594を元の位置に留める。
上記の実施形態の支持部が複数のばねに取り付けられることによってハウジングに対して移動可能であるので、ハウジングに対する衝撃から非経口接触部を切り離すことができることは、理解されるだろう。上記の実施形態は、複数のコイルばねを備えているように描かれているが、他のばねも利用可能である。たとえば、複数の板ばね、円錐ばね、または他のばねも利用可能である。支持部によって針部を皮膚へ向かわせることが望ましい実施形態の中には、支持部とハウジングとの間に挟まれる弾性変形可能な台としてばねを利用することが、特に適しているものもあるかも知れない。たとえば、いくつかの実施形態では、非経口接触部が注射部位に接触しているときにばねがわずかに圧縮されることにより、支持部の皮膚接触面がハウジングの底面を越えて迫り出す位置へ支持部を向かわせるように、ばねが構成されていてもよい。図5Aに示されている注射器の位置ではばねがわずかに圧縮されるように注射器が構成されることにより、ハウジング516が注射部位から引き離される場合には伸びるように、ばねが構成されてもよい。これにより、針部の刺入深度が維持され、または少なくとも注射部位から退避する針部の動きが緩衝される。
上記の変形可能なばね台がハウジングに対して静的に取り付けられている必要はないことも理解されるだろう。たとえば、上記の要素群が、移動可能な針ハブを備えている注射器に組み込まれてもよい。針ハブは、針を注射前の退避位置(針がハウジングからは伸び出ていない。)から注射時の前進位置(針がハウジングから伸び出て注射部位に刺さる。)まで前進させるように構成されている。そのような実施形態では、ばね台が支持部と針ハブとの間に設置されてもよい。
図6A、図6Bは、本発明による注射器の更に別の実施形態を示す。図6A、図6Bに示されている実施形態は注射器610を示す。この注射器は、非経口接触部を皮膚に接触した状態に維持するのに、変位を能動的に打ち消すシステムを利用する。前述の図面と同様、図6Aは、注射部位に対して変位していない注射器610を示し、図6Bは、ハウジングが外部の器具によって変位させられたときの注射器610を示す。
図6Aに示されているように、注射器610は上記の注射器210、310、410、510と同様であり、ハウジング616と接着層すなわち1以上の接着パッチ622とを含む。接着パッチ622は、注射器610を注射部位の皮膚212に固定するように構成されている。
注射器610には更に、非経口接触部を収容する空洞624がある。非経口接触部は針部(この実施形態では皮下注射針614)と支持部626(針部614を支持する。)とを含む。針614は柔軟な導管620に連通している。この導管は、薬剤を薬剤容器から針614へ送るように構成されている。
注射器610は、(上記の弾性変形可能な層またはばね等の)非経口接触部の位置合わせを受動的に行うシステムに代えて、その位置合わせを能動的に行うシステムを備えている。このシステムは、モーターに連結されている1台以上のアクチュエーター636を含み、空洞624の中における支持部626の位置を能動的に制御するように構成されている。たとえば、このシステムが1台以上のサーボモーターを備えていてもよい。サーボモーターは、1台以上の伸縮可能なアクチュエーター636を駆動するように構成されている。アクチュエーター636は、支持部626をハウジング616に対してz軸方向に前進させるように構成されている。サーボモーターが1つ以上のセンサー638と通信状態に置かれていてもよい。センサー638は、ハウジング616および/または非経口接触部が皮膚212から離脱するのを感知するように構成されている。コントローラー(図示せず。)は、皮膚212からの注射器610の離脱が感知されたのに応じてサーボモーターを作動させ、伸縮可能なアクチュエーターを伸ばす制御を行うように構成されている。
センサー638はハウジング616の底面に設置されてもよく、皮膚212からのハウジング616の離脱を感知するように構成されてもよい。皮膚212からのハウジング616の離脱が感知された際のアクチュエーター636による修正の動作が、図6Bに模式的に示されている。
図6A、図6Bに示されている実施形態では2台のアクチュエーター636が示されており、それぞれが、接続されているモーターによって駆動されるように構成されている。2つのセンサー638も示されており、各アクチュエーター636に1つずつ接続されている。この実施形態では、右側のセンサーが離脱を感知し(図6B参照。矢印Dが離脱を示す。)、その結果、アクチュエーター636が作動して注射部位からの支持部626の離脱を防ぐ。ハウジング616の片側の離脱が感知されたことに応じて1台のアクチュエーター636が作動することにより、非経口接触部、特に支持部626がハウジングに対して傾き、皮膚の表面からのハウジング616の非対称な離脱を打ち消すように、非経口接触部が構成されてもよい。必要に応じ、支持部626をアクチュエーター636に機械的に適切に固定することにより、支持部626を伸縮可能なアクチュエーターに対して旋回可能にしてもよい。
図6A、図6Bに示されている実施形態では、センサー638が極微針電極センサーとして構成されてもよい。各センサー638が、注射器610のハウジング616に固定されている極微針の配列として構成されてもよい。その配列が、皮膚に電極を接触させる力に特徴を持たせるように構成されてもよい。その力を極微針電極センサー638と皮膚(たとえば、注射部位の皮膚212)との間で測定する1つの方法が、「乾式(ドライ)電極」として構成されている極微針の配列を利用して感知されたECG(心電図)信号の信号雑音比(皮膚と極微針の配列との間の接触力に依存する。)を解析するものであってもよい。接触力の解析技術の一例は非特許文献1に記載されている。この内容の全体が、参照によってこの明細書に組み込まれている。
注射部位に対する針部の正しい位置を決めるのに、他のセンサーが利用されてもよいことは、当業者には理解されるだろう。たとえば、ECG電極として構成されている極微針電極センサーに加えて(または、それに代えて)容量センサーすなわち「タッチセンサー」が、支持部と注射部位との間の接触の検出に利用されてもよい。変位センサーも、支持部が、注射部位に接触する正しい位置から外れてしまったことを検出するのに利用可能である。皮膚の間質液との接触を検出するように構成されている極微針電極センサーも、利用可能である。他の適当なセンサーが本発明による製品との接続に適しているかも、この明細書の開示内容に照らせば、当業者には明らかであろう。
図6A、図6Bに示されている実施形態は、センサー、モーター、およびアクチュエーターを2台ずつ備えているが、他の組み合わせも可能であることは、理解されるだろう。たとえば、センサー、モーター、およびアクチュエーターが1台ずつであってもよい。その他に、センサー、モーター、およびアクチュエーターが、1台、2台、または3台以上であってもよい。センサー、モーター、およびアクチュエーターの台数比が1:1:1である必要はないことも、当業者には理解されるだろう。そうではなく、1台以上のアクチュエーターを作動させるコントローラーに複数のセンサーがフィードバックを与えてもよいし、単一のモーターによって複数台のアクチュエーターが(選択的に)駆動されてもよい。
さらに、図6A、図6Bに示されている実施形態は支持部626の外周の縁と空洞624の内壁624aとの間に周方向の空間630を含むが、この配置は、上記のとおり、すべての実施形態において必要というわけではない。
ハウジングに設置されているセンサーに代えて(または、それに加えて)センサー638が支持部626に(必要に応じ、投薬用の極微針の配列として)設置されてもよい。そのセンサーは、皮膚212からの支持部626の離脱を検出し、支持部626を前進させて皮膚212からの離脱を防ぎ、これにより、注射部位における針の刺入深度を維持するように構成されている。
図7A、図7Bは本発明による注射器の別の実施形態を示す。図7A、図7Bに示されている注射器710は、図6A、図6Bに示されている注射器610と同様である。図6Aと同様、図7Aは、静止している(変位していない)注射器710を示す。図7Bは、注射部位の皮膚212に対して注射器710を変位させる衝撃を受けている最中の注射器710を示す。
注射器710はハウジング716を含む。ハウジング716は、接着層722すなわち接着パッチを用いて皮膚の所定位置に固定されるように構成されている。ハウジング716には空洞724がある。その中に非経口接触部が収容されている。非経口接触部は、少なくとも1台のアクチュエーター736に取り付けられている支持部726を含む。アクチュエーター736は、センサー738によって皮膚212からのハウジング716の離脱が感知されたことに応じてモーターによって駆動される。
空洞には側壁724aがあり、必要に応じ、支持部326から周方向の空間730で隔たれている。注射器710は、図6A、図6Bに示されている注射器610とは針部の形が異なる。図6A、図6Bを参照しながら説明された実施形態では、非経口接触部が含む支持部626に取り付けられている針614が1本である。しかし、図7A、図7Bに示されている実施形態では、針部が極微針の配列794を形作っている。この配列は、薬剤を注射部位に送るように構成されている複数の極微針を含む。したがって、柔軟な導管720は、図6A、図6Bに示されているように中空の注射針1本のみに接続されているのではなく、極微針の配列794に薬剤を供給するように構成されている。
図6A、図6Bに示されている実施形態と同様、ハウジング716が注射部位に対して変位すると、センサー738によって皮膚212からのハウジング716の離脱が感知されたことに応じて、アクチュエーター736がハウジング316に対する支持部726の位置を能動的に合わせ直すように、アクチュエーター736が構成されている。
図6A-図7Bに示されている実施形態では、センサーがハウジングの底面に配置されており、皮膚に対するハウジングの離脱を感知するように構成されている。これにより、アクチュエーターが、非経口接触部を皮膚に対して前進(または後退)させてハウジングの離脱を打ち消し、針部と注射部位の皮膚との間の接触圧および/または刺入深度を所望値に維持するように構成されている。それに代えて、または、それに加えて、センサーが非経口接触部の支持部に設置されて非経口接触部の皮膚に対する接触圧を直に感知し、上記のアクチュエーターを利用して、感知した離脱を能動的に打ち消してもよい。
上記の実施形態の支持部が、1台以上のモーターを駆動する1台以上のアクチュエーターに取り付けられ、それらのモーターが、注射部位からの注射器の離脱に応じてハウジングに対する非経口接触部の位置を合わせ直すように構成されている。これにより、支持部がハウジングに対して移動可能に取り付けられ、ハウジングに対する衝撃から非経口接触部を切り離す。上記の実施形態は、接続されているサーボモーターによって駆動される伸縮可能なアクチュエーターについて説明されているが、他の構成も利用可能である。実施形態の中には、ハウジングに対する非経口接触部の位置合わせを能動的に行うことのできるシステムの利用が特に適しているもの、たとえば、非経口接触部と注射部位との間の接触圧が一定に維持されることが望ましいものがあり得る。これは、針部が極微針の配列を含む装着型注射器については特に有利であり得る。注射の間中、極微針の刺入深度が理想値の近くに制御され、薬剤の漏れが防止されるからである。ハウジングが注射部位から引き離された場合にも非経口接触部と注射部位との間の接触力が能動的に維持されるように注射器を構成することにより、針部の刺入深度を維持することができる。
非経口接触部の位置合わせを能動的に行う上記のシステムが、ハウジングに対して静的に取り付けられている必要はないことも理解されるだろう。たとえば、上記の要素群が、移動可能な針ハブを備えている注射器に組み込まれてもよい。針ハブは、針を注射前の退避位置(針がハウジングからは伸び出ていない。)から注射時の前進位置(針がハウジングから伸び出て注射部位に刺さる。)まで前進させるように構成されている。そのような実施形態では、アクチュエーター636が支持部と針ハブとの間に設置されてもよい。その他に、アクチュエーター636が、注射前における針部の刺入れも制御するように構成されていてもよい。
以下、図8、図9を参照して、更に別の実施形態を説明する。この実施形態では非経口接触部がハウジングに対して移動可能である。
図8は、上記の注射器210、310、410、510、610、710と同様な注射器810を示す。しかし、図8の実施形態は、注射部位に対する非経口接触部の位置を維持するのに、ばね、変形可能な物質、またはアクチュエーターを利用する代わりに、針部が回転するように取り付けられている支持部を備えていてもよい。
図8に示されているように、注射器810はハウジング816を含む。ハウジング816は、接着部822すなわち接着パッチを用いて皮膚212に固定されるように構成されている。ハウジング816には空洞824がある。この空洞は、非経口接触部を収容するように構成されている。非経口接触部は、ハウジング816に対して回転するように取り付けられている支持部826を含む。回転台としてジンバル840すなわち玉継手が設置されてもよい。他の構造の回転継手も利用可能であり、回転の自由度が玉継手すなわちジンバル継手よりも少ないものであってもよい。たとえば、単なるねじり継手が設置され、支持部826がハウジング816に対し、1本の軸のまわりにのみ回転可能であってもよい。
支持部826が、少なくとも1本の軸、たとえばz軸のまわりに回転するように構成されている。支持部826がハウジング816に対してz軸のまわりに回転するように取り付けられることにより、ハウジング816が皮膚に対してxy平面内を回転しても、針814が注射部位内でねじられることにはならない。少なくともいくつかの実施形態では、支持部826が、3本の軸(x、y、z)のすべてのまわりに回転するように構成され、空洞824の中で旋回することにより、たとえハウジング816が注射部位でねじられても、または注射部位から持ち上げられても、非経口接触部を皮膚に接触させ続けることができる。
図8に示されているように、空洞824には側壁824aがあり、必要に応じ、支持部826から周方向の空間830で隔たれている。この周方向の空間により、非経口接触部が空洞824の中で傾いて旋回し、注射部位の皮膚212と接触し続けることができる
図9は注射器910を示す。この注射器は上記の注射器810と同様である。注射器910は図8の注射器810とは針部の形が異なる。図8を参照しながら説明された実施形態では非経口接触部が、支持部826に取り付けられている針部814を含む。しかし、図9に示されている実施形態では、針部が極微針の配列994を形作っている。この配列は、薬剤を注射部位へ送るように構成されている複数本の極微針を含む。したがって、柔軟な導管920は、図8に示されているように中空の注射針1本のみに接続されているのではなく、極微針の配列994に薬剤を供給するように構成されている。
図8に示されている実施形態と同様、ハウジング916が注射部位に対して変位すると支持部926がハウジングに対して傾き、および/または回転し、支持部926と皮膚212との間の接触を維持するように、支持部926が構成されている。
上記のように、実施形態の支持部が、たとえば旋回点のまわりに回転するように、ジンバルすなわち玉継手に取り付けられていることにより、支持部がハウジングに対して移動可能に取り付けられ、ハウジングに対する衝撃から非経口接触部を切り離すことは、理解されるだろう。
ジンバル(または、上記の針用支持部を支持するための他の回転台)がハウジングに対して静的に取り付けられている必要はないことは、理解されるだろう。たとえば、上記の要素群が、移動可能な針ハブを備えている注射器に組み込まれてもよい。針ハブは、針を注射前の退避位置(針がハウジングからは伸び出ていない。)から注射時の前進位置(針がハウジングから伸び出て注射部位に刺さる。)まで前進させるように構成されている。そのような実施形態では、回転台が支持部と針ハブとの間に設置されてもよい。
以下、図10A、図10Bを参照しながら、更に別の実施形態を説明する。この実施形態は挿入機構を備えている。図10A、図10Bは、上記の注射器210、310、410、510、610、710、810、910と同様な注射器1010を示す。注射器1010は上記の注射器とは挿入機構を含む点で異なる。挿入機構は、針部(この実施形態では極微針の配列1094)を(図10Aに示されている)退避位置(針部が注射器1010のハウジング1016からは伸び出ていない。)から(図10Bに示されている)前進位置(針部がハウジング1016から伸び出て注射部位の皮膚と接触する。)まで前進させるように構成されている。
挿入機構は支持基台1052とアクチュエーター1050とを備えている。支持基台1052はハウジング1016に対して移動可能に取り付けられており、(図10Aに示されている)第1位置と(図10Bに示されている)第2位置との間で移動するように構成されている。アクチュエーター1050は、支持基台1052を第1位置と第2位置との間で移動させるように構成されている。アクチュエーター1050は、針部を注射部位に前進させるのに適した機構であればどのようなものであってもよい。その機構が、アクチュエーターを駆動する機械ばねまたはモーター等の動力源を含み、支持基台1052を第2位置へ移動させるように構成されてもよい。
支持基台1052は非経口接触部1026に、図10A、図10Bに示されているように配置されている複数のばね1032によって連結されている。しかし、図10A、図10Bを参照しながら説明された挿入機構が、図1-図9を参照しながら説明された非経口接触部の支持構造のいずれを含むように構成されてもよいことは、当業者には理解されるだろう。
挿入機構は、ばね1032が圧縮されていないときには(図10Bに示されているように)非経口接触部がハウジングの下面を越えて迫り出す位置まで支持部1026を前進させるように構成されてもよい。この構成では、注射器が注射部位の皮膚に固定されるときに、ばね1032が確実にわずかな量だけ圧縮されるので好ましい。これにより、たとえ注射器が一時的に、または持続的に注射部位から外れそうになっても、ばね1032が非経口接触部を皮膚へ向かわせて、注射部位との接触を維持させる。
図10A、図10Bはまた、必要に応じて追加される要素として、解除可能なロック機構1054も示す。この機構は、挿入機構を(図10Aに示されている)動作位置に維持するように構成されている。この実施形態ではロック機構1054がラッチアームとして示されている。このラッチアームは、支持基台1052に引っ掛かって支持基台1052を第2位置へは前進させないように構成されている。
図10Bに示されているように、ラッチアームはこの実施形態では解除可能なロック機構1054を形成しており、非動作位置(図10B参照。)まで湾曲可能である。その位置では、ラッチアームが支持基台1052にハウジング1016に対する前進を許すことにより、非経口接触部と針部とを注射位置まで伸び出させる。図10A、図10Bには柔軟なラッチアームが示されているが、他の解除可能なロック機構も可能であることは、当業者には理解されるだろう。
以下、図11A、図11Bを参照しながら、本発明の更に別の実施形態を説明する。図11A、図11Bは、上記の注射器210、310、410、510、610、710、810、910と同様な注射器1110を示す。注射器1110は上記の注射器とは配置機構1160を含む点で異なる。この機構は、針部(この実施形態では極微針の配列1194)を注射位置に配置するように構成されている。図11A、図11Bに示されているように、配置機構は、針部を退避位置(針部が注射器1110のハウジング1116からは伸び出ていない(図11A参照)。)から伸長位置(針部がハウジング1116から伸び出て注射部位の皮膚と接触する(図11B参照)。)まで移動させるように構成されている。
この実施形態では配置機構1160が手動の配置用アクチュエーターを形作っている。このアクチュエーターは、使用者が、針部(この実施形態では極微針の配列1194)を含む非経口接触部を注射位置に進入させることができるように構成されている。配置機構1160は、第1端1162で非経口接触部用の支持部1126に嵌まる鍵の形をしている。この鍵はハウジング1116の中の穴を通して第2端まで伸びている。第2端には作動部材1164すなわちハンドルが付いている。配置機構1160はハウジング内を第1位置(図11A参照。)と第2位置(図11B参照。)との間で摺動可能である。鍵の第1端1162が支持部1126に嵌まっているので、作動部材1164が、図11Bに示されている位置まで移動すると、針部(この実施形態では極微針の配列1194)が注射部位に接触する。
図11A、図11Bに示されている状態では、支持部1126がハウジング内で、複数のばね1132によって支持基台1152に取り付けられている。しかし、図11A、図11Bを参照しながら説明される配置機構1160が、上記の実施形態のいずれに組み込まれてもよいことは、当業者には理解されるだろう。
さらに、配置機構1160が、支持部1126と支持基台1152との間で圧縮されているばね1132で支持部1126を、図11Aに示されている退避位置に維持するように構成されていてもよい。図11Bに示されている位置では、ばね1132がまだ圧縮されているが、図11Aに示されている位置よりは圧縮の程度は小さい。これにより、非経口接触部が注射部位の皮膚との接触を維持する。
針部が注射位置に配置された後で予期せずに非経口接触部が注射部位から退避することを避ける目的で、配置機構1160が、注射器1110から取り外し可能であるように構成されてもよい。たとえば、使用者は、非経口接触部を配置した後に、鍵の第1端1162を支持部1126から滑らせるようにして外して、鍵をハウジング1116から引き出すことができる。
図11A、図11Bを参照しながら説明された配置機構は、支持部1126を第1位位置から第2位置まで移動させるように構成されている手動の鍵を形作っているが、他の構成も可能であることは、当業者には理解されるだろう。たとえば、手動の配置機構に代えて自動の配置機構が(機械式または電気式の)動力源を備え、支持部を図11Bに示されている位置に進入させてもよい。上記の実施形態では注射器210、310、410、510、610、710、810、910、1010、1110のそれぞれが、注射器が注射部位に対して移動したことに応じて非経口接触部をハウジングに対して移動させる構成を備えている。しかし、いくつかの実施形態における上記の移動可能な非経口接触部用台が組み合わされてもよいことは、理解されるだろう。たとえば、変位を受動的に打ち消す非経口接触部用の台(変形可能な物質、複数のばね、または旋回台を備えている支持台)が、変位を能動的に打ち消す上記の機構と組み合わされてもよい。たとえば、(少なくともz軸のまわりで)回転するように取り付けられている支持部が、モーターで駆動する上記の非経口接触部の支持部と組み合わされてもよい。伸縮可能なアクチュエーターでは(たとえば、図1Cに示されているように注射器がねじれた結果である)z軸まわりのハウジングの回転を打ち消すことができないので、変位を能動的に打ち消す機構、たとえば図6A-図7Bに示されているものが、図8または図9に示されている種類の、回転するように取り付けられている支持部と組み合わされてもよい。
上記の実施形態のそれぞれでは接着層すなわち接着パッチが、注射器を皮膚に固定する目的でハウジングの底面に設置されると説明されてきた。しかし、装着型注射器が皮膚に違う方法で固定されてもよいことは、理解されるだろう。たとえば、注射器を所定位置に固定するのに、注射器から分離されている接着部が利用されてもよい。接着部はまた、非経口接触部に設置され、非経口接触部を注射部位に対して所定位置に維持してもよい。これにより、装着型注射器のハウジングに設置されている要素群も固定することができる。
上記の実施形態のうち、注射器の変位を検出するように構成されているセンサーを備えているもののいずれにおいても、コントローラーが更に、極微針の場所と位置制御、または注射器による投薬のパターンに関するデータを集めるように構成されていてもよい。
説明を簡単にする目的で上記の実施形態は装着型投薬器具に関して説明されてきた。その器具は、薬剤の容器と、薬剤を容器から導管を通して針部まで送る駆動系統とを備えている自己完結型のユニットとして構成されている。しかし、上記の実施形態で得られる利点は、外部の薬剤容器を利用するように構成されている装着型注射器にも、携帯型自動注射器、特に皮膚に装着されて1回分の薬剤を延長可能な注射時間、たとえば10秒間-120秒間に投与するように設計されているものにも当てはまることは理解されるだろう。
本発明は上記の注射器に加え、方法の例も多数提供する。特にこの明細書は、上記の実施形態のいずれによる注射器の製造方法も、注射器の針を支持する方法の例も提供する。注射器の針部を支持する方法には、注射の準備として針部を注射位置に支持する方法と、各回の薬剤投与の間に注射器の針部を注射位置に支持する方法とが含まれる。後者は特に延長可能な時間間隔で薬剤をボーラス投与するように構成されている装着型注射器に適用可能である。
1つの実施形態では、薬剤の注射の準備として注射器の針部を支持する方法が次のステップを備えている。注射器を注射部位に装着するステップ。この注射器は、空洞のあるハウジングと、その空洞の中に配置されている非経口接触部とを備えている。非経口接触部は支持部と、その支持部に取り付けられている針部とを含む。針部は、1回分の薬剤を注射部位に送るように構成されている。支持部は複数のばねに取り付けられている。ばねはハウジング内で同じばね基台から伸びており、長軸が異なる。この方法は更に、ハウジングに設けられている接着部を利用して注射器を注射部位に固定するステップと、支持部とばね基台との間でばねを圧縮するステップとを備えている。
上記の方法が更に、ばねのうち少なくとも1つを圧縮し、および伸長させることによって非経口接触部をハウジングに対して移動させ、非経口接触部と皮膚との間の接触を維持するステップを備えていてもよい。
別の実施形態では、薬剤の注射の準備として注射器の針部を支持する方法が次のステップを備えている。注射器を注射部位に装着するステップ。この注射器は、空洞のあるハウジングと、その空洞の中に配置されている非経口接触部とを備えている。非経口接触部は支持部と、その支持部に取り付けられている針部とを含む。針部は、1回分の薬剤を注射部位に送るように構成されている。支持部は、ハウジングに連結されている弾性変形可能な台に空洞内で取り付けられている。支持部には外側壁があり、空洞には内側壁があり、支持部の外側壁が空洞の内側壁から、外側壁のまわりに広がっている周方向の空間によって隔たれている。この方法は更に、ハウジングに設けられている接着部を利用して注射器を注射部位に固定するステップと、支持部とハウジングとの間で弾性変形可能な台を圧縮するステップとを備えている。
上記の方法が更に、弾性変形可能な台を圧縮し、および伸長させることによって非経口接触部をハウジングに対して移動させ、非経口接触部と皮膚との間の接触を維持するステップを備えていてもよい。
更に別の実施形態では、薬剤の注射の準備として注射器の針部を支持する方法が次のステップを備えている。注射器を注射部位に装着するステップ。この注射器は、空洞のあるハウジングと、その空洞の中に配置されている非経口接触部とを備えている。非経口接触部は支持部と、その支持部に取り付けられている針部と、柔軟な導管とを含む。針部は、1回分の薬剤を注射部位に送るように構成されている。導管は、薬剤を薬剤容器から針部まで送るように構成されている。支持部は複数台のモーターに取り付けられ、空洞内で移動可能である。モーターは、非経口接触部と注射部位との間の接触を維持するように構成されている。この方法は更に、ハウジングに設けられている接着部を利用して注射器を注射部位に固定するステップと、少なくとも1台のモーターの作動によって非経口接触部と注射部位との間の接触を維持するステップとを備えている。
上記の方法は更に、ハウジングと皮膚との間、および/または非経口接触部と皮膚との間の接触力を感知するステップ、並びに、針の刺入深度が所定値である位置から非経口接触部が離脱したことが感知されたことに応じてアクチュエーターを作動させるステップを備えていてもよい。
更に別の実施形態では、薬剤の注射の準備として注射器の針部を支持する方法が次のステップを備えている。注射器を注射部位に装着するステップ。この注射器は、空洞のあるハウジングと、その空洞の中に配置されている非経口接触部とを備えている。非経口接触部は、支持部と、その支持部に取り付けられている針部とを含む。針部は、1回分の薬剤を注射部位に送るように構成されている。柔軟な導管が、薬剤容器と針部とを連通させている。支持部はハウジングに対して回転するように取り付けられ、空洞内で回転可能である。この方法は更に、ハウジングに設けられている接着部を利用して注射器を注射部位に固定するステップと、非経口接触部を注射部位に接触させるステップとを備えている。
上記の方法が更に、支持部を旋回台のまわりに回転させることによって非経口接触部をハウジングに対して移動させ、非経口接触部と皮膚との間の接触を維持するステップを備えていてもよい。
先の詳細な説明では、非経口接触部を注射位置に支持するシステムと方法とが説明されている。しかし、本発明が、この明細書で説明されている注射器の例の使用に関する場合には限られないことは、当業者には理解されるだろう。むしろ、当業者には先の詳細な説明に照らして明らかなとおり、本発明に関する利点の1以上が他の投薬システムに関しても得られるだろう。
「近位」、「遠位」、「前」、「後」、「側」、「上」、「下」という語が使用されている場合には、図面の解釈に便利なように使用されており、発明を限定するものとして解釈されるべきでないことも理解されるだろう。「備えている」という語は「含むが、それには限定されない」という意味として解釈されるべきである。これにより、挙げられていない要素の存在は除外されない。
上記の実施形態と添付の図面に示されている実施形態とは、発明が効果を発揮しうる方法の例として与えられており、発明の範囲を限定することを目的とはしていない。開示の内容から外れることなく、変更することは可能であり、要素を、機能的にも構造的にも等価な部品に置き換えることもでき、異なる実施形態の間で要素を組み合わせることもできる。