JP2023519699A - スプリットch2ドメイン - Google Patents

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Abstract

本発明は、少なくとも2つのポリペプチド鎖A(PCA)およびB(PCB)を含むタンパク質複合体であって、PCAはヘテロ二量体化ドメインA(HDA)を含み、PCBはヘテロ二量体化ドメインB(HDB)を含み、HDAとHDBとは互いに結合し、一方のヘテロ二量体化ドメインは免疫グロブリン(Ig)ドメインの2つのN末端βストランド(N-β)を含むかまたはそれらからなり、もう一方のヘテロ二量体化ドメインはIgドメインの2つのC末端βストランド(C-β)を含むかまたはそれらからなる、前記タンパク質複合体に関する。本発明は、該タンパク質複合体の1つまたはそれ以上のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドを含む発現ベクター、および該ポリヌクレオチドまたは該発現ベクターを含む細胞にさらに関する。

Description

本発明は、特殊化したヘテロ二量体化ドメインによって媒介されたタンパク質ヘテロ二量体化の分野に関する。詳細には、本発明は、互いに結合するヘテロ二量体化ドメインを有する少なくとも2つのポリペプチド鎖を含むタンパク質複合体に関する。一方のヘテロ二量体化ドメインは、免疫グロブリン(Ig)ドメインのN末端βストランドを含み、もう一方のヘテロ二量体化ドメインは、IgドメインのC末端βストランドを含む。
タンパク質相補性の現象は、50年以上前に、Ullmanらが、ペプチドがβ-ガラクトシダーゼの活性を回復させることができることを発見し、初めて記述された(非特許文献1)。この先駆的研究以降、タンパク質相補性の数多くの例が記述されている。基本原理は、タンパク質を特異な部位で二分割(スプリット)し、この2つの部分は、結合させると、機能性タンパク質へとリフォールディングすることができるというものである。この手法において使用されるタンパク質は、通常、酵素(例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素、グリシンアミドリボヌクレオチドトランスホルミラーゼ、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ、β-ラクタマーゼ、またはルシフェラーゼ)であるが、ユビキチンおよび蛍光タンパク質のような非酵素的タンパク質であることもある。タンパク質相補性技術は、多くの場合、タンパク質-タンパク質相互作用を調べるために使用される。しかしながら、タンパク質相補性の現象は、その他の用途にも使用可能である。
モノクローナル抗体は、特にがんの治療のための、新しい治療選択肢として極めて有望な候補である。二価であるが単一特異性である(すなわち、1つの標的だけを認識する)天然抗体とは対照的に、二重特異性抗体は、同時に2種の異なる標的またはエピトープに結合することができる。多重特異性抗体は、幾つかの種類に分類することができる。一例では、二重特異性抗体は、Fcドメインを欠く抗原結合ドメインだけからなる。これらの二重特異性抗体は低分子であり、微生物系において産生させることができるが、Fcドメインが存在しないため抗体依存性細胞媒介細胞障害(ADCC)または補体依存性細胞傷害(CDC)を誘起しない。Fcドメインは、これらの作用を、それぞれFc受容体および補体C1qタンパク質に結合することによって媒介している。Fcドメインは、さらに、抗体の長い血漿内半減期に寄与している。これは、Fcドメインが受容体FcRnに結合することによって、血液循環での抗体の再生利用を可能とすることによってもたらされる。Fcドメインが存在しなければ、血漿内半減期ははるかに短いものとなる。別の例では、ヘテロ二量体二重特異性抗体は、2つの異なる重鎖および対応する2つの軽鎖を有しうる。これらは、それぞれが重鎖と軽鎖とを含む、2つの発現カセットの共発現によって生成させることができる。しかしながら、この手法は、多数の望まない誤対合副産物を形成する。重鎖は、所望のヘテロ二量体だけでなくホモ二量体も形成する(「重鎖の対合問題」)。いわゆるknob-into-holes変異の導入または静電気的ステアリング(electrostatic steering)変異の導入など、重鎖のヘテロ二量体化を達成する幾つかの方法が開発されている。しかし、重鎖がヘテロ二量体化されていても、依然としてある問題、すなわち「軽鎖の対合問題」が残っており、これは、2つの異なる軽鎖がそれらの対応する重鎖に正確に対合することに関係している。1つの可能性としては、共通の軽鎖を使用することである。しかしながら、この手法は、すべての場合に実行可能なものではない。
Ullmannら;J Mol Biol. 1965年;12:918~923頁
本発明は、誤対合問題に対処するものであり、多重特異性抗体の異なる鎖の所望の対合を、同じ細胞において望ましくない副産物、すなわち所望の鎖以外の鎖の対合が最少限または皆無で得るものである。これは、スプリット免疫グロブリン(Ig)ドメインに由来する新規ヘテロ二量体化ドメインを使用することによって得られる。
第1の態様では、本発明は、少なくとも2つのポリペプチド鎖A(PCA)およびB(PCB)を含むタンパク質複合体であって、PCAはヘテロ二量体化ドメインA(HDA)を含み、PCBはヘテロ二量体化ドメインB(HDB)を含み、HADとHDBとは互いに結合し、一方のヘテロ二量体化ドメインは、免疫グロブリン(Ig)ドメインの2つのN末端βストランド(N-β)を含むかまたはそれらからなり、もう一方のヘテロ二量体化ドメインは、Igドメインの2つのC末端βストランド(C-β)を含むかまたはそれらからなる、前記タンパク質複合体に関する。
第2の態様では、本発明は、本発明の第1の態様によるタンパク質複合体の1つまたはそれ以上のポリペプチドをコードする、1つまたはそれ以上のポリヌクレオチドに関する。
第3の態様では、本発明は、本発明の第2の態様による1つまたはそれ以上のポリヌクレオチドを含む、1つまたはそれ以上の発現ベクターに関する。
第4の態様では、本発明は、本発明の第2の態様による1つまたはそれ以上のポリヌクレオチドまたは本発明の第3の態様による1つまたはそれ以上の発現ベクターを含む、細胞に関する。
第5の態様では、本発明は、薬学的に許容される担体と、本発明の第1の態様によるタンパク質複合体、本発明の第2の態様による1つまたはそれ以上のポリヌクレオチド、または本発明の第3の態様による1つまたはそれ以上の発現ベクターとを含む、薬学的組成物に関する。
本発明を以下に詳述する前に、方法論、プロトコール、および試薬は様々でありうるため、本発明が、本明細書に記載の特定の方法論、プロトコール、および試薬に限定されるものではないことを理解されたい。また、本明細書で使用した専門用語は、実施形態の説明だけを目的としており、本発明の範囲を限定することを意図しておらず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるものであることも理解されたい。別段の定義がないかぎり、本明細書で使用される技術および科学用語はすべて、当業者によって一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。好ましくは、本明細書において使用される用語は、「A multilingual glossary of biotechnological terms:(IUPAC Recommendations)」(Leuenberger,H.G.W、Nagel,B.、およびKolbl,H.編 (1995)、Helvetica Chimica Acta、CH-4010 Basel、スイス)に記載の通り定義されるものとする。
幾つかの文書は、本明細書の本文を通して引用される。本明細書で引用された各文書(すべての特許、特許出願、科学論文、製造業者の仕様書、使用説明書などを含む)は、上記、下記のいずれにせよ、全体として参照によって本明細書に組み入れる。いずれも、本明細書では、先行発明であるという理由によって、本発明がそのような開示に先んじる権利を与えられない承認として解釈されるものではない。
本発明を実施するためには、特段の指示がないかぎり、当技術分野の文献で説明されている、化学、生化学、および組換えDNA技術の従来方法を用いる(例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、J.Sambrookら編、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor 1989年を参照されたい)。
以下の本明細書および特許請求の範囲を通して、特に必要がないかぎり、「を含む(comprise)」という単語、ならびに「を含む(comprises)」および「を含む(comprising)」などの変形は、明記された整数もしくは工程または整数もしくは工程の群の包含を意味するが、その他の整数もしくは工程または整数もしくは工程の群の排除ではないことは理解されよう。本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、「a」、「an」、および「the」という単数形は、内容に特段の明示がないかぎり、複数の指示対象を含む。
以下の説明では、アミノ酸番号は、抗体に関して使用しており、配列番号を指すものではない。これらの番号は、2016年8月26日に開示されたバージョンのUniProtKBデータベース(www.uniprot.org/uniprot)に準じた、抗体中のアミノ酸位置を指す。別段の指定がないかぎり、該番号は、ヒトIgGでの、特にヒトIgG1での位置に一致するものである。ヒトIgG1の抗体ドメインなど、本明細書で言及した抗体ドメインのUniProtKB配列(2016年8月26日に開示されたバージョン)は、本明細書に記載のドメインの実施形態ならびに下記にて定義したようなそれらの変形形態として参照によって組み入れる。
以下に、本発明の要素を説明する。これらの要素は、特定の実施形態と併せて列記されているが、さらなる実施形態を創出するために、これらをいかなる方法およびいかなる数でも組み合わせることができることを理解されたい。様々に説明された実施例および実施形態は、本発明を明記された実施形態だけに限定するものと解釈されるべきものではない。この説明は、実施形態を支持し包含し、明記された実施形態と、任意の数の開示のかつ/または特定の要素とを組み合わせるものと理解されるべきである。さらに、特段の指示がないかぎり、本出願の中で説明された要素すべてのあらゆる順列および組合せが、本出願の説明によって開示されているものとみなされるべきである。
第1の態様では、本発明は、少なくとも2つのポリペプチド鎖A(PCA)およびB(PCB)を含むタンパク質複合体であって、PCAはヘテロ二量体化ドメインA(HDA)を含み、PCBはヘテロ二量体化ドメインB(HDB)を含み、HDAとHDBとは互いに結合し、一方のヘテロ二量体化ドメインは免疫グロブリン(Ig)ドメインの2つのN末端βストランド(N-β)を含むかまたはそれらからなり、もう一方のヘテロ二量体化ドメインはIgドメインの2つのC末端βストランド(C-β)を含むかまたはそれらからなる、前記タンパク質複合体に関する。
本発明の実施形態では、HDAまたはHDBのうちの一方は、2つのN末端βストランドを含んでおり、1つまたはそれ以上のC末端βストランド(C-β)は含んでおらず、もう一方は、2つのC末端のβストランドを含んでおり、1つまたはそれ以上のN末端βストランド(N-β)は含んでいない。言い換えると、HDAおよび/またはHDBは、C末端βストランド(C-β)およびN末端βストランド(N-β)からなる完全なIgGドメインであってはいけない。
本発明の一実施形態では、HDAおよびHDBはそれぞれ、20~80アミノ酸の長さを有し、一実施形態では、HDAおよびHDBはそれぞれ、30~70アミノ酸の長さを有し、ある実施形態では、HDAおよびHDBはそれぞれ、35~65アミノ酸の長さを有する。
本明細書の関連において、「免疫グロブリン(Ig)ドメイン」または「免疫グロブリンフォールド」という用語は、グリークキートポロジーを有する2つのβシート内に配列した7~9本の逆平行βストランドの2層サンドイッチからなるタンパク質ドメインを指すのに互換的に使用される。Igドメインは、おそらく、天然に存在するタンパク質において最も頻繁に使用される「基本構成要素」である。Igドメインを含むタンパク質は、免疫グロブリンスーパーファミリーに含まれる。抗体だけでなく、細胞接着分子、T細胞受容体、Fcγ受容体など多数のタンパク質も、このタンパク質ファミリーに属する。免疫グロブリンフォールディングは、Borkらによる総説論文の中で余すところなく説明されている(「The immunoglobulin fold. Structural classification,sequence patterns and common core.」1994年9月;J.Mol.Biol. 242(4):309~20頁)。本明細書では、Igドメインの各βストランドの呼称(すなわち、βストランドa、b、c、c’、c’’、d、e、f、およびg)は、Borkらが使用した呼称に一致している。Igドメインのアミノ酸配列を特徴とする主鎖は、2つのβシートの間で繰り返し交替している。このように、βストランドaは第1または第2のシートに属し得、βストランドbは第1のシートに属し、βストランドcは第2のシートに属し、βストランドc’およびc’’(存在する場合)もまた第2のシートに属し、βストランドd(存在する場合)は再び第1のシートに属し、βストランドeは第1のシートに属し、βストランドfおよびgは第2のシートに属す。
7~9本のβストランドのうち、ストランドa、b、c、c’およびc’’はN末端とみなし、ストランドd、e、f、およびgはC末端とみなす。
本明細書の関連において、「N-β」は、HDAまたはHDB内に存在する、IgドメインのN末端βストランドを含むかまたはそれらからなるアミノ酸配列を指すのに使用される。HDA(またはHDB)がIgドメインの2つのN末端βストランドだけを含む場合は、N-βはこれらの2つのβストランドを含むアミノ酸配列を指す。HDA(またはHDB)がIgドメインの3つのN末端βストランドを含む場合は、N-βはこれらの3つのβストランドを含むアミノ酸配列を指す。HDA(またはHDB)は、N-βのアミノ酸の他に別のアミノ酸を含んでいてもよい。
本明細書の関連において、「C-β」は、HDAまたはHDB内に存在する、IgドメインのC末端βストランドを含むかまたはそれらからなるアミノ酸配列を指すのに使用される。HDB(またはHDA)がIgドメインの2つのC末端βストランドだけを含む場合は、C-βはこれらの2つのβストランドを含むアミノ酸配列を指す。HDB(またはHDA)がIgドメインの3~5個のC末端βストランドを含む場合は、C-βはこれらの3~5個のβストランドを含むアミノ酸配列を指す。HDB(またはHDA)は、C-βのアミノ酸の他に別のアミノ酸を含んでいてもよい。
ヒトIgG1のCH2ドメインなどのIgドメインは、原核生物の系、例えば大腸菌において、高い量で発現させることができる。
驚くべきことに、発明者らは、IgドメインのN末端部およびC末端部を2つの別々のポリペプチドとして発現させた場合、この2つの部分は完全なIgドメインに再会合することができることを見出した。この特性によって、スプリットIgドメインのN末端部およびC末端部は、このN末端部およびC末端部にそれぞれ融合させた2つのポリペプチドの特異的二量体化を可能にするヘテロ二量体化ドメインとして使用することができる。そのようなヘテロ二量体化ドメインの重要な応用として、タンパク質複合体の、特に多重特異性抗体、抗体誘導体、または抗体様分子の、会合の制御がある。
本明細書で使用される「抗体」という用語は、抗体の全構造を有する分子、例えばIgG抗体を指す。一般的に、IgGに関する場合、別段の定義がないかぎり、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4が含まれる。IgG抗体分子は、4つのポリペプチド鎖、すなわち2つの重鎖および2つの軽鎖を含む、Y字形の分子である。各軽鎖は、可変またはVLドメイン(または領域)として知られているN末端ドメイン、および定常(またはCL)ドメイン(定常カッパ(Cκ)または定常ラムダ(Cλ)ドメイン)として知られているC末端ドメインの、2つのドメインからなる。各重鎖は、4つのドメインからなる。重鎖のN末端ドメインは、可変(またはVH)ドメイン(または領域)として知られており、これに第1の定常ドメイン(CH1)、ヒンジ領域、次いで第2のおよび第3の定常ドメイン(CH2およびCH3)が続く。会合した抗体では、VLドメインおよびVHドメインは、連携して抗原結合部位を形成している。また、CLドメインおよびCH1ドメインは、連携して1つの重鎖と1つの軽鎖との結合を保っている。2つの重鎖-軽鎖ヘテロ二量体は、2つの重鎖のCH2・CH3ドメインの相互作用およびヒンジ領域間の相互作用によって結び付いている。本明細書で使用される「抗体」という用語は、キメラ型のドメイン置換(すなわち、異なる抗体由来のドメインで置換された少なくとも1つのドメイン)を有しうる分子、例えば、IgG3ドメイン(例えば、IgG3のCH3ドメイン)を含むIgG1抗体なども含む。さらに、この用語は、一般的に、多重特異性、例えば、二重特異性または三重特異性抗体を指す。
本明細書で使用される「抗体誘導体」という用語は、IgA、IgD、IgE、IgG、IgM、IgY、またはIgWなどの抗体の、含むように指定されたドメインは少なくとも含むが、それらの抗体の全構造は有しておらず、しかしながらなお標的分子に結合することができる分子を指す。前記誘導体は、機能的な(すなわち、標的に結合する、特に特異的に標的に結合する)抗体フラグメントまたはそれらの組合せであってもよいが、これらに限定されない。前記誘導体はまた、さらなる可変領域などのさらなる抗体ドメインが付加された抗体にも関する。したがって、抗体誘導体という用語には、多重特異性(二重特異性、三重特異性、四重特異性、五重特異性、六重特異性など)かつ多価(二価、三価、四価など)の抗体も含まれる。
二重特異性抗体は、複数のフォーマットで創製されている(BrinkmannおよびKontermann、Mabs 2017年、9巻、2号、182~212頁)。抗原結合ドメインだけからなる二重特異性抗体の例は、二価Fab(bi-Fab)であり、例えば、本明細書に記載のDVD-FabまたはCODV-Fabである。別の例としては、可変領域(Fv)だけを含み、定常ドメインは含まないフォーマットがあり、例えば「ダイアボディ」または本明細書に記載の「spliteダイアボディ」などである。可変領域だけを含むフォーマットは、極めて低い分子量によって優れた腫瘍浸透性がもたらされるという利点を有しており、これは、腫瘍学的適用のためには重要なことである。しかしながら、FcRnへの結合を媒介する定常ドメインを欠くことから、血漿内半減期が短いことが不利な点である。
ホモ二量体二重特異性抗体は、scFvを重鎖または軽鎖に融合させることによって、または追加のFvドメインを重鎖および軽鎖にそれぞれ付加することによって得ることができる。これらの種類のフォーマットの例としては、本明細書に記載したような、「二重可変領域」(DVD)構成(「四価二重特異性タンデム免疫グロブリン(tetravalent bispecific tandem immunoglobulin)」(TBTI)構成とも呼ばれる)および「クロスオーバー二重可変(cross-over dual variable)」(CODV)構成がある(Wuら;Nat Biotechnol. 2007年;25:1290~1297頁、およびSteinmetzら;Mabs 2016年;8:867~87頁)。
本明細書の関連において使用される「抗体様分子」という用語は、抗体誘導体および抗体ミメティックを含む。「抗体ミメティック」という用語は、抗体と同様に抗原と特異的に結合することができるが、構造的に抗体に関連していない化合物を指す。通常、抗体ミメティックは、抗原に特異的に結合する1つ、2つ、またはそれ以上の露出したドメインを含む、約3~20kDaのモル質量の人工ペプチドまたはタンパク質である。典型的には、そのような抗体ミメティックは、両端をタンパク質足場に結合させた少なくとも1つの可変ペプチドループを含む。この二重の構造的束縛によって、抗体様タンパク質の結合親和性は、抗体の結合親和性に匹敵するレベルにまで大きく高められる。可変ペプチドループの長さは、典型的には10~20個のアミノ酸からなる。足場タンパク質は、優れた溶解特性を有する任意のタンパク質でありうる。好ましくは、足場タンパク質は、低分子の球状タンパク質である。例としては、中でも、LACI-D1(リポタンパク質関連凝固インヒビター);アフィリン、例えばヒトγBクリスタリンまたはヒトユビキチン;シスタチン;スルホロブス・アシドカルダリウス由来Sac7D;リポカインおよびリポカインに基づくアンチカリン;DARPins(設計されたアンキリンリピート領域(designed ankyrin repeat domains));FynのSH3ドメイン;プロテアーゼ阻害薬のKunitzドメイン;モノボディ、例えばフィブロネクチンの10番目のIII型ドメイン;アドネクチン:ノッチン(シスチンノットタンパク質);アトリマー;エビボディ、例えばCTLA4ベース結合剤;アフィボディ、例えばスタフィロコッカス・アウレウス由来プロテインAのZ-ドメイン由来の3ヘリックスバンドル;トランスボディ(Trans-body)、例えばヒトトランスフェリン;テトラネクチン、例えば単量体または三量体ヒトC型レクチンドメイン;ミクロボディー、例えばトリプシンインヒビター-II;アフィリン;アルマジロリピートタンパク質が挙げられる。同様に、核酸および低分子も抗体ミメティックとみなさすこともあるが(アプタマー)、人工抗体、抗体フラグメント、およびこれらから構成された融合タンパク質は抗体ミメティックとはみなさない。抗体にまさっている共通の利点は、より良好な溶解性、組織浸透性、熱および酵素に対する安定性、ならびに比較的生産費用が低いことである。
「抗原」という用語は、好ましくは、少なくとも1つのエピトープ、好ましくは、BもしくはT細胞反応またはB細胞およびT細胞反応を誘発するエピトープを含む免疫原性ペプチドである物質を指すのに使用される。
「エピトープ」は、抗原決定基とも呼ばれ、物質の、免疫系によって認識される部分であり、例えば、免疫原性ポリペプチドである。好ましくは、この認識は、抗体、B細胞、またはT細胞が当該エピトープに結合することによって媒介される。本文脈では、「結合」という用語は、好ましくは特異的結合に関する。エピトープは、通常、化学的に活性な、アミノ酸または糖側鎖などの分子の表面群からなり、通常、特異的な三次元構造の特徴、および特異的な電荷の特徴を有する。「エピトープ」という用語には、構造依存性および非構造依存性エピトープの両方が含まれる。構造依存性エピトープと非構造依存性エピトープは、変性溶媒の存在下で、前者への結合は失われるが、後者への結合は失われないという点で区別される。
本発明による免疫原性ポリペプチドは、病原体から得られる。一部の実施形態では、病原体は、ウイルス、細菌、および原生動物からなる群から選択される。しかしながら、本発明の別の実施形態では、免疫原性ポリペプチドは、腫瘍抗原、すなわち、がんによって特異的に発現されるポリペプチドまたはポリペプチドの断片である。
一実施形態では、N-βは、βストランドbおよびcを含むかまたはそれらからなるIgドメインの連続したアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。
一実施形態では、N-βは、βストランドa、b、およびcを含むかまたはそれらからなるIgドメインの連続したアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。
一実施形態では、C-βは、βストランドeおよびfを含むかまたはそれらからなるIgドメインの連続したアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。
一実施形態では、C-βは、βストランドe、f、およびgを含むかまたはそれらからなるIgドメインの連続したアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。
一実施形態では、N-βは、βストランドbおよびcを含むかまたはそれらからなるIgドメインの連続したアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、C-βは、βストランドeおよびfを含むかまたはそれらからなるIgドメインの連続したアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。
一実施形態では、N-βは、βストランドa~cを含むかまたはそれらからなるIgドメインの連続したアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、C-βは、βストランドe~gを含むかまたはそれらからなるIgドメインの連続したアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。
一実施形態では、N-βおよびC-βのIgドメインは、重鎖定常ドメイン2(CH2)または重鎖定常ドメイン3(CH3)から独立して選択される。言い換えると、N-βは、CH2ドメインまたはCH3ドメインのN末端アミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、C-βは、CH2ドメインまたはCH3ドメインのC末端アミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。
一実施形態では、N-βおよびC-βのIgドメインは、同じCH2ドメインまたはCH3ドメインから選択される。言い換えると、N-βは、CH2ドメインまたはCH3ドメインのN末端アミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、C-βは、同じCH2ドメインまたはCH3ドメインのC末端アミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。
一実施形態では、N-βは、βストランドbおよびcを含むかまたはそれらからなるCH2ドメインまたはCH3ドメインの連続したアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。
一実施形態では、N-βは、βストランドa~cを含むかまたはそれらからなるCH2ドメインまたはCH3ドメインの連続したアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。
一実施形態では、C-βは、βストランドeおよびfを含むかまたはそれらからなるCH2ドメインまたはCH3ドメインの連続したアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。
一実施形態では、C-βは、βストランドe~gを含むかまたはそれらからなるCH2ドメインまたはCH3ドメインの連続したアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。
一実施形態では、N-βは、βストランドbおよびcを含むかまたはそれらからなるCH2ドメインまたはCH3ドメインの連続したアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、C-βは、βストランドeおよびfを含むかまたはそれらからなるCH2ドメインまたはCH3ドメインの連続したアミノ酸配列からなる。
一実施形態では、N-βは、βストランドa~cを含むかまたはそれらからなるCH2ドメインまたはCH3ドメインの連続したアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、C-βは、βストランドe~gを含むかまたはそれらからなるCH2ドメインまたはCH3ドメインの連続したアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。
本明細書の関連では、一般的にCH2ドメインに言及する場合、CH2ドメインには、IgA、IgD、IgE、またはIgG抗体の重鎖に存在する2番目の定常ドメインが含まれる。特に、CH2は、IgG、詳細にはIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のCH2ドメインを指す。CH2ドメインは、抗体内でその他のドメインとのタンパク質-タンパク質接触がない。CH2ドメインは、ドメインの三次構造を安定化する分子内ジスルフィド結合を含む。CH2ドメインは、細菌発現系で発現させても、安定な単量体のままであるというさらなる利点を有する。IgMまたはIgE分子では、CH3ドメインがIgG、IgA、またはIgDのCH2ドメインに相当する。
一実施形態では、N-βおよびC-βのIgドメインは、IgA、IgD、IgE、もしくはIgG重鎖定常ドメイン2(CH2)、またはIgMもしくはIgE重鎖定常ドメイン3(IgM CH3、IgE CH3)から独立して選択される。言い換えると、N-βは、CH2ドメインまたはIgMもしくはIgE CH3ドメインのN末端アミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、C-βは、CH2ドメインまたはIgMもしくはIgE CH3ドメインのC末端アミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。
一実施形態では、N-βおよびC-βのIgドメインは、同じCH2ドメインまたはIgMもしくはIgE CH3ドメインから選択される。言い換えると、N-βは、CH2ドメインまたはIgMもしくはIgE CH3ドメインのN末端アミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、C-βは、同じCH2ドメインまたはIgMもしくはIgE CH3ドメインのC末端アミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。
一実施形態では、N-βは、βストランドbおよびcを含むかまたはそれらからなるCH2ドメインまたはIgMもしくはIgE CH3ドメインの連続したアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。
一実施形態では、N-βは、βストランドa~cを含むかまたはそれらからなるCH2ドメインまたはIgMもしくはIgE CH3ドメインの連続したアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。
一実施形態では、C-βは、βストランドeおよびfを含むかまたはそれらからなるCH2ドメインまたはIgMもしくはIgE CH3ドメインの、連続したアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。
一実施形態では、C-βは、βストランドe~gを含むかまたはそれらからなるCH2ドメインまたはIgMもしくはIgE CH3ドメインの連続したアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。
一実施形態では、N-βは、βストランドbおよびcを含むかまたはそれらからなるCH2ドメインまたはIgMもしくはIgE CH3ドメインの連続したアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、C-βは、βストランドeおよびfを含むかまたはそれらからなるCH2ドメインまたはIgMもしくはIgE CH3ドメインの連続したアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。
一実施形態では、N-βは、βストランドa~cを含むかまたはそれらからなるCH2ドメインまたはIgMもしくはIgE CH3ドメインの連続したアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、C-βは、βストランドe~gを含むかまたはそれらからなるCH2ドメインまたはIgMもしくはIgE CH3ドメインの連続したアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。
一実施形態では、N-βおよびC-βのIgドメインは、IgG CH2ドメインである。一実施形態では、N-βおよびC-βのIgドメインは、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4 CH2ドメインから独立して選択される。一実施形態では、N-βおよびC-βのIgドメインは、同じIgG CH2ドメインから選択される。
一実施形態では、N-βは、βストランドbおよびcを含むかまたはそれらからなるIgG CH2ドメインの連続したアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。
一実施形態では、N-βは、βストランドa~cを含むかまたはそれらからなるIgG CH2ドメインの連続したアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。
一実施形態では、C-βは、βストランドeおよびfを含むかまたはそれらからなるIgG CH2ドメインの連続したアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。
一実施形態では、C-βは、βストランドe~gを含むかまたはそれらからなるIgG CH2ドメインの連続したアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。
一実施形態では、N-βは、βストランドbおよびcを含むかまたはそれらからなるIgG CH2ドメインの連続したアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、C-βは、βストランドeおよびfを含むかまたはそれらからなるIgG CH2ドメインの連続したアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。
一実施形態では、N-βは、βストランドa~cを含むかまたはそれらからなるIgG CH2ドメインの連続したアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、C-βは、βストランドe~gを含むかまたはそれらからなるIgG CH2ドメインの連続したアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。
一実施形態では、HDAおよびHDBは、互いに(i)非共有結合するか、または(ii)非共有結合かつ共有結合する。一実施形態では、HDAおよびHDBは、互いに非共有結合かつ共有結合する。
一実施形態では、共有結合は、分子間ジスルフィド結合である。天然型CH2ドメインは、分子内ジスルフィド結合を含む。HDAおよびHDBがCH2ドメイン由来である場合(すなわち、N-βはCH2ドメインのN末端アミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、C-βはCH2ドメインのC末端アミノ酸配列を含むかまたはそれからなる場合)、同じCH2ドメインに基づく一部の実施形態では、HDAおよびHDBを連結する分子間ジスルフィド結合は、「親」CH2ドメインの分子内ジスルフィド結合に一致しうる。該ジスルフィド結合は、共有結合である。このように、ジスルフィド結合は、再会合したIgドメインのN末端部およびC末端部が1つの分子に合体することを確実にするものである。これは、既知のスプリットタンパク質手法(タンパク質相補性手法)と比較した利点である。HDAおよびHDBは、親のかつ/または親のものではない、1つまたはそれ以上の共有結合を介して結合していてもよい。
一実施形態では、C-βは、そのC末端に1つまたはそれ以上のLys残基を含む。一実施形態では、C-βは、C末端から10アミノ酸以内に、1、2、または3個のLys残基を含む。Lys残基は、天然型Igドメインに存在する天然に存在するLys残基であってもよく、または天然型Igドメインに導入された天然には存在しないLys残基であってもよい。C末端のLys残基は、再会合したIgドメインの三次構造を安定化させるという理由で、有利である。
一実施形態では、C-βは、少なくともβストランドeおよびfを含むかまたはそれらからなるCH2ドメインの連続したアミノ酸配列、ならびにC末端の1つまたはそれ以上のLys残基を含むかまたはそれらからなる。一実施形態では、C-βは、少なくともβストランドeおよびfを含むかまたはそれらからなるIgG CH2ドメインの連続したアミノ酸配列、ならびにC末端の1つまたはそれ以上のLys残基を含むかまたはそれらからなる。一実施形態では、C-βは、少なくともβストランドd~gを含むかまたはそれらからなるCH2ドメインの連続したアミノ酸配列、ならびに場合によりC末端の1つまたはそれ以上のLys残基を含むかまたはそれらからなる。一実施形態では、C-βは、少なくともβストランドd~gを含むかまたはそれらからなるIgG CH2ドメインの連続したアミノ酸配列、ならびに場合によりC末端の1つまたはそれ以上のLys残基を含むかまたはそれらからなる。一実施形態では、C-βは、βストランドc’、d、e、f、およびgを含むかまたはそれらからなるCH2ドメインの連続したアミノ酸配列、ならびに場合によりC末端の1つまたはそれ以上のLys残基を含むかまたはそれらからなる。一実施形態では、C-βは、βストランドc’、d、e、f、およびgを含むかまたはそれらからなるIgG CH2ドメインの連続したアミノ酸配列、ならびに場合によりC末端の1つまたはそれ以上のLys残基を含むかまたはそれらからなる。
一実施形態では、N-βおよびC-βはそれぞれ、天然には存在しないCys残基を含み、天然には存在しないCys残基は、フォールディングしたN-βおよびC-βそれぞれにおいて、天然では3~7.5ÅのCα原子間距離を有するアミノ酸に取って代わっている。再会合したIgドメインでは、N-βの天然には存在しないCys残基とC-βの天然には存在しないCys残基とは、ジスルフィド結合の形成を可能にする距離を有することとなる。このように導入されたジスルフィド結合は、再会合したIgドメイン三次構造を安定化させることとなるという理由で、有利である。
本発明の関連において、配列番号1は、アミノ酸配列
PSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSXEDPEVXFXWYVDGVEVHN
に関する。
本発明の関連において、配列番号2は、アミノ酸配列
NSTXRVVSVLTVXHQDWLNGKEYKCKVSNKXLPXIEKTI
に関する。
一実施形態では、HDAは、配列番号1(配列中、XはHまたはQであり、XはKまたはQであり、XはNまたはKである);または配列番号1に対し少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%の同一性を有するアミノ酸配列を含む配列番号1の変異体を含むかまたはそれからなり;かつ/またはHDBは、配列番号2(配列中、XはYまたはFであり;XはLまたはVであり;XはAまたはGであり;XはKまたはQであり;XはNまたはKである);または配列番号2に対し少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%の同一性を有するアミノ酸配列を含む配列番号2の変異体を含むかまたはそれからなり、配列番号1またはその変異体は、配列番号2またはその変異体とヘテロ二量体化することができる。HDAが配列番号1の変異体を含むかまたはそれからなる場合、配列番号1の前記変異体は24位に変異を含まず、一部の実施形態では、前記変異体は、24位での変異を含まず、3、5、22、23、25、26、36、38、および40位に1つまたは2つ以下の変異しか含まず、一部の実施形態では、前記変異体は、3、5、22~26、36、38、および40位に変異を含まない。HDBが配列番号2の変異体を含むかまたはそれからなる場合、配列番号2の前記変異体は、25位に変異を含まず、一部の実施形態では前記変異体は、25位に変異を含まず、4、6~10、17、23、24、26、および27位に1つまたは2つ以下の変異しか含まず、一部の実施形態では、前記変異体は、4、6~10、17、および23~27位に変異を含まない。
一実施形態では、HDAは、配列番号3、または配列番号3に対し少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%の同一性を有するアミノ酸配列を含む配列番号3の変異体を含むかまたはそれからなり;HDBは、配列番号4、または配列番号4に対し少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%の同一性を有するアミノ酸配列を含む配列番号4の変異体を含むかまたはそれからなり、配列番号3またはその変異体は、配列番号4またはその変異体とヘテロ二量体化することができる。
一実施形態では、HDAは、配列番号5、または配列番号5に対し少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%の同一性を有するアミノ酸配列を含む配列番号5の変異体を含むかまたはそれからななり;HDBは、配列番号6、または配列番号6に対し少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%の同一性を有するアミノ酸配列を含む配列番号6の変異体を含むかまたはそれからなり、配列番号5またはその変異体は、配列番号6またはその変異体とヘテロ二量体化することができる。
一実施形態では、HDAは、配列番号7、または配列番号7に対し少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%の同一性を有するアミノ酸配列を含む配列番号7の変異体を含むかまたはそれからなり;HDBは、配列番号8、または配列番号8に対し少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%の同一性を有するアミノ酸配列を含む配列番号8の変異体を含むかまたはそれからなり、配列番号7またはその変異体は、配列番号8またはその変異体とヘテロ二量体化することができる。
一実施形態では、HDAは、配列番号9、または配列番号9に対し少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%の同一性を有するアミノ酸配列を含む配列番号9の変異体を含むかまたはそれからなり;HDBは、配列番号10、または配列番号10に対し少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%の同一性を有するアミノ酸配列を含む配列番号10の変異体を含むかまたはそれからなり、配列番号9またはその変異体は、配列番号10またはその変異体とヘテロ二量体化することができる。
HDAが配列番号3、5、7、または9の変異体を含むかまたはそれからなる場合、配列番号3、5、7、または9の前記変異体は、24位に変異を含まず、一部の実施形態では、前記変異体は、24位に変異を含まず、3、5、22、23、25、26、36、38、および40位に1つまたは2つ以下の変異しか含まず、一部の実施形態では、前記変異体は、3、5、22~26、36、38、および40位に変異を含まない。HDBが配列番号4、6、8、または10の変異体を含むかまたはそれからなる場合、配列番号4、6、8、または10の前記変異体は、25位に変異を含まず、一部の実施形態では、前記変異体は、25位に変異を含まず、4、6~10、17、23、24、26、および27位に1つまたは2つ以下の変異しか含まず、一部の実施形態では、前記変異体は、4、6~10、17、および23~27位に変異を含まない。
2つの配列間のパーセント同一性の決定は、KarlinおよびAltschul、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90、5873~5877頁、1993の数学的アルゴリズムを使用して行った。そのようなアルゴリズムは、Altschulら(1990) J.Mol.Biol. 215、403~410頁のBLASTNおよびBLASTPプログラムに組み込まれている。比較のためのギャップ挿入アラインメントを得るために、Altschulら(1997) Nucleic Acids Res. 25、3389~3402頁に記載されているように、Gapped BLASTを利用した。BLASTおよびGapped BLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラムのデフォルトパラメーターを使用する。別法として、変異体はまた、アミノ酸置換を20、15、10、5、4、3、2、または1個まで有すると定義され、一部の実施形態では、前記アミノ酸置換は、保存的アミノ酸置換である。保存的置換は、当技術分野において公知である(例えば、Creighton (1984) Proteins. W.H.Freeman and Companyを参照されたい)。アミノ酸の物理的および化学的特性の概要を、下記の表1に示す。一実施形態では、保存的置換は、表1に記載の共通の(すなわち、縦列1および/または2の)特性を少なくとも1つ有するアミノ酸により行われた置換である。
Figure 2023519699000001
一実施形態では、配列番号2は、aa付加として、そのC末端に1つまたはそれ以上のLys残基をさらに含む。一実施形態では、配列番号2は、aa付加として、そのC末端にSer残基およびLys残基(すなわち、SK)をさらに含む。一実施形態では、配列番号2は、そのC末端に残基SKTKまたはSKAKをさらに含む。
一実施形態では、配列番号4、6、8、または10は、aa付加として、それらの各C末端に1つまたはそれ以上のLys残基をさらに含む。一実施形態では、配列番号4、6、8、または10は、aa付加として、それらの各C末端にSer残基およびLys残基(すなわち、SK)をさらに含む。一実施形態では、配列番号4、6、8、または10は、それらの各C末端に、残基SKTKまたはSKAKをさらに含む。
一実施形態では、本複合体は、PCAおよび/またはPCB内に1つまたはそれ以上の抗原結合部位を含む。一実施形態では、1つまたはそれ以上の抗原結合部位は各々、一方がPCAに含まれ、もう一方がPCBに含まれる2つの可変領域の対によって形成されている。本明細書の関連では、抗原結合部位は、パラトープと呼ばれることもある。本発明の第1の態様のある特定の実施形態では、タンパク質複合体は、抗体または抗体様分子である。
一実施形態では、抗原結合部位は、1つまたは2つの可変領域を含むかまたはそれらからなる。一実施形態では、抗原結合部位は、2つの可変領域を含むかまたはそれらからなる。
抗原結合部位は、ラクダ科の免疫グロブリンの重鎖の可変領域を含むかまたはそれからなっていてもよい。一実施形態では、抗原結合部位は、軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域を含むかまたはそれらからなる。一実施形態では、抗原結合部位は、アルファ鎖の可変領域およびベータ鎖の可変領域を含むかまたはそれらからなる。抗原結合部位はまた、タンパク質足場、例えば、アドネクチン、アフィリン、アフィマー、アフィチン、アルファボディ、アンチカリン、アルマジロリピートタンパク質ベースの足場、アトリマー、アビマー、フィノマー、Kunitzドメイン、ノッチン、アフィボディ、βヘアピンミメティック、モノボディ、ナノフィチン、またはアンキリンリピートタンパク質(DARPins)によって各々形成された、1つまたは2つの可変領域を含むかまたはそれらからなっていてもよい。
一実施形態では、PCAおよび/またはPCBは、1つまたはそれ以上のさらなるホモおよび/またはヘテロ二量体化ドメインC(HDC)を含む。HDCは、別のポリペプチド鎖に含まれる第2のHDCとのホモまたはヘテロ二量体化を媒介しており、すなわち、2つのHDCは、互いに結合することとなる。
一実施形態では、PCAおよびPCBは各々、さらなるヘテロ二量体化ドメインを含む。PCAおよびPCBの各々が、1つのさらなるヘテロ二量体化ドメインHDCを含む構成の例は、本明細書に記載のDVD-FabスプリットCH2フォーマット(変異体2、図2B)または本明細書に記載のCODV-FabスプリットCH2フォーマット(変異体3、図2C)である。これらのフォーマットの例では、一方のHDCはCH1ドメインであり、もう一方のHDCはCLドメインである。
一実施形態では、PCAかPCBかの一方だけが、さらなるホモ二量体化ドメインを含む。PCAかPCBかの一方だけがホモ二量体化ドメインHDCを含み、もう一方はホモ二量体化ドメインHDCを含まない構成の一例としては、本明細書に記載の対称性の四価二重特異性抗体フォーマットがある(p.22第2段落)。これらの構成では、ホモ二量体化ドメインHDCを含むポリペプチド鎖、例えばPCAは、第1のPCAと同一である第2のPCAに結合する。第2および第1のPCAは各々、ヘテロ二量体化ドメインHDAおよびHDBの相互作用を介してPCBに結合する。このように、四量体が形成される。これらのフォーマットの例では、HDCは、CH2-CH3ドメインである。
PCAかPCBかの一方だけがホモ二量体化ドメインを含み、もう一方はホモ二量体化ドメインを含まず、加えて、PCAおよびPCBの両方が(それぞれ、HDAまたはHDBに加えて)さらなるヘテロ二量体化ドメインを含む構成の一例は、本明細書に記載のDVDおよびCODV構成四価二重特異性抗体である(変異体9および10、図5B、C)。
一実施形態では、PCAかPCBかの一方が、さらなるヘテロ二量体化ドメインを含む。PCAかPCBかの一方だけがさらなるヘテロ二量体化ドメインHDCを含むが、もう一方はさらなるヘテロ二量体化ドメインHDCを含まない構成の一例は、本明細書に記載の非対称性二価二重特異性抗体フォーマットである(変異体4、図2D)。これらのフォーマットの例では、HDCは、knob-into-hole CH2-CH3ドメインである。
一実施形態では、ホモ二量体化ドメインは、CH3ドメイン、CH2-CH3ドメイン、またはホモ二量体化がIg様フォールド、ロスマンまたはロスマン様アルファ-ベータ-アルファサンドイッチフォールド、アルファサンドイッチフォールド、連続ベータシートフォールド、ベータサンドイッチフォールド、混合ベータシートフォールド、2-ヘリックス配向、逆平行アルファヘリックス配向、平行アルファヘリックス配向、4-ヘリックスバンドルモチーフ、ロイシンジッパー、およびコイルドコイルドメインによって媒介されているドメインからなる群から選択される。
一実施形態では、ヘテロ二量体化ドメインは、knob-into-hole CH3ドメイン、knob-into-hole CH2-CH3ドメイン、ヘテロ二量体化を起こすように導入された変異(例えば、荷電変異)を有するFc-ドメイン、相互交換された一対のドメイン(例えば、Fc-ドメイン/カッパヘテロ二量体化ドメイン、CLおよびCHドメインなど)のうちの一方のドメイン、ヘテロ二量体化を起こすように導入された変異を有するIg様フォールド、またはロスマンもしくはロスマン様アルファ-ベータ-アルファサンドイッチフォールド、アルファサンドイッチフォールド、連続ベータシートフォールド、ベータサンドイッチフォールド、混合ベータシートフォールド、2-ヘリックス配向、逆平行アルファヘリックス配向、平行アルファヘリックス配向、4-ヘリックスバンドルモチーフ、ロイシンジッパー、およびコイルドコイルドメインを含むヘテロ二量体化を媒介するドメインからなる群から選択される。
本明細書の関連において、「knob-into-hole CH3ドメイン」とは、「knob-into-hole」変異を含む一対のCH3ドメインのうちの1つを指す。そのようなknob-into-hole変異は、一方のCH3ドメイン上に「ノブ(knob)」を、もう一方のCH3ドメイン上に「穴(hole)」を作出させるためのアミノ酸置換である。ノブはチロシン(Y)によって表され、一方、穴はスレオニン(T)によって表される。特に、knob-into-hole変異は、一方のCH3ドメインではT366Yで、もう一方のCH3ドメインではY407Tであり、この2つのCH3ドメインは、IgG1定常ドメインであり、また、場合により、T366Y変異を含むFc領域(「ノブ」鎖)は変異S354CおよびT166Wをさらに含み、Y407T変異を含むFc領域(「穴」鎖)は、変異Y349C、T366S、L368A、およびY407Vをさらに含む。
本明細書の関連において、「RF変異」という用語は、一対のCH3ドメインのうちの一方での変異H435RおよびY436F(RF変異)を指す。RF変異は、T366Y変異を含むCH3ドメイン(「ノブ」鎖)内、またはY407T変異を含むCH3ドメイン(「穴」鎖)内であってもよい。
本明細書の関連では、「knob-into-hole CH2-CH3ドメイン」とは、CH3ドメインが「knob-into-hole」変異を含むCH2-CH3ドメインである。
一実施形態では、抗原結合部位は、HDAまたはHDBのN末端および/もしくはC末端に位置する。
一実施形態では、抗原結合部位は、HDCのN末端および/またはC末端に位置する。
一実施形態では、PCAおよびPCBは、N末端からC末端に、以下の要素:
(i)PCA:V2-L1-HDA、およびPCB:V2-L2-HDB;
(ii)PCA:V1-L3-HDA-L4-V2、およびPCB:V1-L1-HDB-L2-V2;
(iii)PCA:V1-L1-V2-L2-HDA、およびPCB:V2-L3-V1-L4-HDB;
(iv)PCA:V1-L3-V2-L5-CL-L4-HDA、およびPCB:V1-L1-V2-L6-CH1-L2-HDB
(ここでは、L5、CL、L6、およびCH1は、存在していても存在していなくてもよい);または
(v)PCA:V1-L4-V2-L5-CL-L6-HDA、およびPCB:V2-L1-V1-L2-CH1-L3-HDB
(ここでは、L5、CL、L2、およびCH1は、存在していても存在していなくてもよい)
を含む。
上記段落で言及したPCAおよびPCBの実施形態(i)~(v)すべてにおいて、V1、V2、V3、およびV4の各ペア(すなわち、V1/V1、V2/V2、V3/V3、およびV4/V4)は、重鎖の可変領域および軽鎖の可変領域またはアルファ鎖の可変領域およびベータ鎖の可変領域を含むかまたはそれらからなり、抗原結合部位を形成している。L1~L6は、ペプチドリンカーである。CH1は、重鎖定常ドメイン1である。CLは、軽鎖定常ドメインである。PCAおよび/またはPCBは、HDCをさらに含んでいてもよい。
「ペプチドリンカー」という用語は、一般的に、また別段の指定がないかぎり、2つのドメインの各々とペプチド結合を形成することによって2つのドメインを連結させる部分を指す。本明細書では、ペプチドリンカーは、0~Xアミノ酸(「aa」)の長さを有するリンカーを指す。2つのドメインが0aaの長さを有するリンカーによって連結されるという場合、これは、2つのドメインはその2つのドメインの間のペプチド結合によって直接連結されていることを意味する。これについては、「連結された」の代わりに「融合された」という用語を使用してもよい。ペプチドリンカーは、特に可動性ペプチドリンカーであり、すなわち、ペプチドリンカーは、一体に連結されたドメインの間に可動性を与えるものである。そのような可動性は、アミノ酸が、低分子であり、かつアミノ酸鎖の回転または屈曲を妨害する嵩高い側鎖を有さなければ、一般的には高められる。よって、一部の実施形態では、本発明のペプチドリンカーは、低分子のアミノ酸、例えば、グリシン、アラニン、セリン、スレオニン、ロイシン、およびイソロイシンの含量が高い。一部の実施形態では、ペプチドリンカーのアミノ酸の少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上が、そのような低分子のアミノ酸である。一実施形態では、該リンカーのアミノ酸は、グリシンおよびセリンから選択され、すなわち、前記リンカーは、ポリグリシンまたはポリグリシン/セリンリンカーであり、ここで「ポリ」とは、該リンカーにおける少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、もしくはさらに100%のグリシンおよび/またはセリン残基の割合を意味している。本明細書の関連では、ポリ-グリシン/セリンリンカーという用語はまた、GまたはSから選択された1種類のアミノ酸のみからなるリンカーを指すこともある。
一部の実施形態では、ペプチドリンカーL1~L6は、一般式(I):[G(配列番号34)(式中、wは、0から20の間の整数、一部の実施形態では2から5の間の整数であり、xは、0から10の間の整数、一部の実施形態では0から3の間の整数であり、yは、0から20の間の整数、一部の実施形態では0から5の間の整数であり、zは、0から10の間の整数、一部の実施形態では0から4の間の整数である)のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。20アミノ酸(aa)以下のペプチドリンカー長は、特に有用である。
実施形態(i)では、PCAおよびPCBは、N末端からC末端に、以下の要素:PCA:V2-L1-HDAおよびPCB:V2-L2-HDBを含む。一部の実施形態では、PCAかPCBかの一方は、ヘテロ二量体化ドメインHDCをさらに含む。この構成の例は、本明細書に記載の非対称性二価二重特異性抗体フォーマットに含まれるPCAおよびPCBである(変異体11および12、図5D、E)。一部の実施形態では、L1およびL2は、20aa以下の長さを有し、一部の実施形態では15aa以下、一部の実施形態では10aa以下、一部の実施形態では5aa以下の長さを有する。一部の実施形態では、L1およびL2は、ポリグリシンまたはポリグリシン/セリンリンカーである。非限定的な例では、PCBは、ヘテロ二量体化ドメインHDCをさらに含み、L1はGであり、L2は(GS)(配列番号35)である。
実施形態(ii)では、PCAおよびPCBは、N末端からC末端に、以下の要素:PCA:V1-L3-HDA-L4-V2およびPCB:V1-L1-HDB-L2-V2を含む。この構成の一例は、本明細書に記載の「splite」(「スプリットbite様(split bite-like)」)ダイアボディフォーマットである(変異体4~7、図2D)。「splite」ダイアボディフォーマットでは、HDAおよびHDBは、それぞれPCAおよびPCBの、可変領域V1およびV2の間に挿入されている(図2D)。一部の実施形態では、PCAおよびPCBは、N末端からC末端に、以下の要素:PCA:VL1-L3-HDA-L4-VL2およびPCB:VH1-L1-HDB-L2-VH2を含む。「splite」ダイアボディフォーマットの一部の実施形態では、L1~L4は、20aa以下の長さを有し、一部の実施形態では、15aa以下の長さを有する。一部の実施形態では、L1~L4は、ポリグリシンまたはポリグリシン/セリンリンカーである。一部の実施形態では、L1~L4のうちの2つまたは3つは、0aaである。
「splite」ダイアボディフォーマットの一部の実施形態では、
- L3は、10~20aaの長さを有し、一部の実施形態では13~17aaの長さを、一部の実施形態では約15aaの長さを有し、L4は、0~10aaの長さを有し、一部の実施形態では0~5aaの長さを、一部の実施形態では0aaの長さを有し、L1は、10~20aaの長さを有し、一部の実施形態では13~17aaの長さを、一部の実施形態では約15aaの長さを有し、L2は、0~10aaの長さを有し、一部の実施形態では0~5aaの長さを、一部の実施形態では0aaの長さを有し;
- L3は、0~10aaの長さを有し、一部の実施形態では0~5aaの長さを、一部の実施形態では約3aaの長さを有し、L4、L1、およびL2は、0~10aaの長さを有し、一部の実施形態では0~5aa、一部の実施形態では0aaの長さを有し、;
- L3は、0~10aaの長さを有し、一部の実施形態では0~5aaの長さを、一部の実施形態では約3aaの長さを有し、L1は、10~20aaの長さを有し、一部の実施形態では13~17aaの長さを、一部の実施形態では約15aaの長さを有し、L4およびL2は、0~10aaの長さを有し、一部の実施形態では0~5aaの長さを、一部の実施形態では0aaの長さを有し;または
- L3は、10~20aaの長さを有し、一部の実施形態では13~17aaの長さを、一部の実施形態では約15aaの長さを有し、L4、L1、およびL2は、0~10aaの長さを有し、一部の実施形態では0~5aaの長さを、一部の実施形態では0aaの長さを有する。
非限定的な例として、L1~L4の可能な組合せは:L3が(GS)(配列番号36)であり、L4が0aaであり、L1が(GS)(配列番号36)であり、L2が0aaであり;L3がGであり、L4が0aaであり、L1が0aaであり、L2がaaであり;L3がGであり、L4が0aaであり、L1が(GS)(配列番号36)であり、L2が0aaであり、またはL3が(GS)(配列番号36)であり、L4が0aaであり、L1が0aaであり、L2が0aaである。
実施形態(ii)によるフォーマットもまた、可変領域の追加の対を、例えば、再構成されたスプリットIgドメインの各末端(すなわち、N末端とC末端と)に二対の可変領域を含んでいてもよく、これによって、四価構築物が得られる。
実施形態(iii)では、PCAおよびPCBは、N末端からC末端に、以下の要素:PCA:V1-L1-V2-L2-HDAおよびPCB:V2-L3-V1-L4-HDBを含む。この構成の一例は、本明細書に記載したようなダイアボディスプリットCH2フォーマット(変異体1、図2A)である。ダイアボディスプリットCH2フォーマットでは、PCAおよびPCBの可変領域は交差した向きにあり、すなわち、V1は、PCAではV2に対してN末端側に位置し、PCBではV2に対してC末端側に位置する。よって、ダイアボディスプリットCH2フォーマットでは、リンカーL1~L4は、可変領域を交差構成にフォールディングさせるのに十分な可動性を提供しなければならない。HDAおよびHDBは、それぞれ、PCAおよびPCBの可変領域に対してC末端側に付加されている(図2A)。一部の実施形態では、PCAおよびPCBは、N末端からC末端に、以下の要素:PCA:VL1-L1-VH2-L2-HDAおよびPCB:VL2-L3-VH1-L4-HDBを含む。ダイアボディスプリットCH2フォーマット一部の実施形態では、L1~L4は、20aa以下の長さを有する。一部の実施形態では、L2、L3、およびL4は5~20aaの長さを有し、L2は、0~5aaの長さを有する。一部の実施形態では、L1~L4は、ポリグリシンもしくはポリグリシン/セリンリンカーであるか、または0aaである。一部の実施形態では、L1およびL3は、5~15aaの長さを有し、一部の実施形態では5~10aaの長さを、一部の実施形態では約8aaの長さを有し、L2は、0~10aaの長さを有し、一部の実施形態では0~5aa、一部の実施形態では0aaの長さを有し、L4は、5~20aaの長さを有し、一部の実施形態では8~15aaの長さを、一部の実施形態では約10aaの長さを有する。
ダイアボディスプリットCH2フォーマットの非限定的な例では、L1およびL3は、GSG(配列番号37)であり、L2は、0aaであり、L4は、(GS)(配列番号38)である。
実施形態(iv)では、PCAおよびPCBは、N末端からC末端に、以下の要素:PCA:V1-L3-V2-L5-CL-L4-HDA、およびPCB:V1-L1-V2-L6-CH1-L2-HDBを含み;ここで、L5、CL、L6、およびCH1は、存在していても存在していなくてもよい。この構成の一例は、本明細書に記載のDVD-FabスプリットCH2フォーマットである(変異体2、図2B)。DVD-FabスプリットCH2フォーマットでは、PCAおよびPCBは各々、定常ヘテロ二量体化ドメイン(それぞれ、CH1またはCL)を、それぞれ、可変領域のC末端側、およびHDAまたはHDBのN末端側に含む(図2B)。一部の実施形態では、PCAおよびPCBは、N末端からC末端に、以下の要素:PCA:VL1-L3-VL2-L5-CL-L4-HDAおよびPCB:VH1-L1-VH2-L6-CH1-L2-HDBを含む。DVD-FabスプリットCH2フォーマットの一部の実施形態では、L1~L6は、20aa以下の長さを有する。一部の実施形態では、L1~L6は、一部の実施形態では、L1~L3は、ポリグリシンもしくはポリグリシン/セリンリンカーであるか、または0aaである。一部の実施形態では、L5およびL6は、0aaである。一部の実施形態では、L1は、5~15aaの長さを、一部の実施形態では約10aaの長さを有し、L2は、0~10aaの長さを有し、一部の実施形態では0~5aaの長さを、一部の実施形態では約3aaの長さを有し、L3は、5~15aaの長さを、一部の実施形態では約10aaの長さを有し、L4は、0~10aaの長さを有し、一部の実施形態では0~5aaの長さを、一部の実施形態では0aaの長さを有し、L5およびL6は、0~10aaの長さを有し、一部の実施形態では0~5aaの長さを、一部の実施形態では0aaの長さを有する。
DVD-FabスプリットCH2フォーマットの非限定的な例では、L1は(GS)(配列番号38)であり、L2はGであり、L3は(GS)(配列番号38)であり、L4~L6は0aaである。
実施形態(v)では、PCAおよびPCBは、N末端からC末端に、以下の要素:PCA:V1-L4-V2-L5-CL-L6-HDAおよびPCB:V2-L1-V1-L2-CH1-L3-HDBを含み;ここで、L5、CL、L2、およびCH1は、存在していても存在していなくてもよい。この構成の一例は、本明細書に記載したようなCODV-FabスプリットCH2フォーマットである(変異体3、図2C)。CODV-FabスプリットCH2フォーマットでは、PCAおよびPCBの可変領域は交差した向きにあり、すなわち、V1は、PCAではV2に対してN末端側に位置し、PCBではV2に対してC末端側に位置する。よって、CODV-FabスプリットCH2フォーマットでは、リンカーL1~L6は、可変領域を交差構成にフォールディングさせるのに十分な可動性を提供しなければならない。加えて、PCAおよびPCBは各々、定常ヘテロ二量体化ドメイン(それぞれCH1またはCL)を、それぞれ、可変領域のC末端側、およびHDAまたはHDBのN末端側に含む(図2C)。一部の実施形態では、PCAおよびPCBは、N末端からC末端に、以下の要素:PCA:VL1-L4-VL2-L5-CL-L6-HDAおよびPCB:VH2-L1-VH1-L2-CH1-L3-HDBを含む。CODV-FabスプリットCH2フォーマット一部の実施形態では、L1~L6は、20aa以下の長さを有する。一部の実施形態では、L4およびL5は、5~15aaの長さを有し、L1およびL2は、10aa以下の長さを有する。一部の実施形態では、L1~L6は、ポリグリシン、ポリセリン、ポリグリシン/セリンリンカーである。一部の実施形態では、L3は、ポリグリシン、ポリセリン、ポリグリシン/セリンリンカーである。一部の実施形態では、L4は、5~15aaの長さを有し、一部の実施形態では5~10aaの長さを、一部の実施形態では約8aaの長さを有し、L5は、5~15aaの長さを有し、一部の実施形態では5~10aaの長さを、一部の実施形態では約6aaの長さを有し、L1は、0~10aaの長さを有し、一部の実施形態では0~5aaの長さを、一部の実施形態では約1aaの長さを有し、L2は、0~10aaの長さを有し、一部の実施形態では0~5aaの長さを、一部の実施形態では0aaの長さを有し、L6は、0~10aaの長さを有し、一部の実施形態では0~5aaの長さを、一部の実施形態では0aaの長さを有し、L3は、0~10aaの長さを有し、一部の実施形態では0~5aaの長さを、一部の実施形態では約3aaの長さを有する。
CODV-FabスプリットCH2フォーマットの非限定的な例では、L4は、GQPKAAPS(配列番号39)であり、L5は、TKGPSV(配列番号40)であり、L1はSであり、L2は0aaであり、L6は0aaであり、L3はGである。
実施形態(iii)~(v)によるフォーマットはまた、可変領域の追加の対、例えば合計三対の可変領域を含んでいてもよく、これによって三価構築物が得られる。
一実施形態では、PCAおよび/またはPCBは、第1のHDCを含み、本複合体は、1つまたはそれ以上の抗原結合部位を含む1つまたはそれ以上の追加のポリペプチド、および第1のHDCに共有結合または非共有結合している第2のHDCを含む。一部の実施形態では、追加のポリペプチドは、PCAおよび/もしくはPCBに従った構造または抗体様構造を有する。
追加のポリペプチドがPCAおよびPCBに従った構造を有する構成の例は、本明細書に記載の対称性四価二重特異性抗体フォーマットである(変異体8~10、図5A~C)。これらの対称性フォーマットは、上記の実施形態によるPCAおよびPCB(第1のPCAおよび第1のPCB)を含み、実施形態(iii)~(v)では、第1のPCAと同一である第2のPCAおよび第1のPCBと同一である第2のPCBを含む。第1のPCA-PCB対と第2のPCA-PCB対とのホモ二量体化は、共有結合でまたは非共有結合で、例えば、PCAおよびPCBの第1の対に含まれるホモ二量体化ドメインHDCの、PCAおよびPCBの第2の対に含まれるホモ二量体化ドメインHDCへの非共有結合によって、媒介されている。
ダイアボディスプリットCH2四価二重特異性抗体フォーマット(変異体8)は、ダイアボディフォーマット(変異体1)のための上記のような2つの同一のPCAおよび2つの同一のPCBを含み、該2つのPCAまたは該2つのPCB、一部の実施形態では該2つのPCBは、該2つのPCAまたはPCBの、一部の実施形態では該2つのPCBのホモ二量体化を媒介しているホモ二量体化ドメインHDCを、さらに含む。
DVDスプリットCH2四価二重特異性抗体フォーマット(変異体9)は、DVD-FabスプリットCH2フォーマット(変異体2)のための上記のような2つの同一のPCAおよび2つの同一のPCBを含み、該2つのPCAまたは該2つのPCB、一部の実施形態では該2つのPCBは、該2つのPCAまたはPCBの、一部の実施形態では該2つのPCBのホモ二量体化を媒介しているホモ二量体化ドメインHDCを、さらに含む。
CODVスプリットCH2四価二重特異性抗体フォーマット(変異体10)は、CODV-FabスプリットCH2フォーマット(変異体3)のための上記のような2つの同一のPCAおよび2つの同一のPCBを含み、該2つのPCAまたは該2つのPCB、一部の実施形態では該2つのPCBは、該2つのPCAまたはPCBの、一部の実施形態では該2つのPCBのホモ二量体化を媒介しているホモ二量体化ドメインHDCを、さらに含む。
追加のポリペプチドがPCAおよびPCBに従った構造を有する構成の別の例は、非対称性抗体フォーマットであり、第2のPCAおよび第2のPCBは、第1のPCAおよび第1のPCBと異なっている。
本明細書の関連では、抗体様構造は、抗体誘導体または抗体ミメティックであってもよい。追加のポリペプチドが抗体様構造を有する構成の例は、本明細書に記載の非対称性スプリットCH2二価二重特異性抗体フォーマットである(変異体11~12、図5D~E)。これらのフォーマットは、上記のような実施形態(i)によるPCAおよびPCBならびに互いに共有結合または非共有結合した抗体重鎖および抗体軽鎖を含む。PCA/PCBと抗体重鎖との間の結合は、共有結合または非共有結合によって媒介されており、一実施形態では、PCAまたはPCBに含まれる第1のHDCが抗体重鎖に含まれる第2のHDCに非共有結合することによって媒介されている。この構成では、第1および第2のHDCは、一部の実施形態では重鎖の対形成問題を克服するヘテロ二量体化ドメインである。一実施形態では、第1のHDCおよび第2のHDCは、knob-into-hole CH3ドメインを含む。このフォーマットの一実施形態もまた、Fab/FvスプリットCH2 IgGとして説明され、該IgGの一方のアームは、一価のFabであり、もう一方のアームは、V2-L1-HDAからなるPCAおよびV2-L2-HDBからなるPCBを含む一価のFvスプリットCH2である。
一実施形態では、タンパク質複合体は、一価かつ単一特異性、二価かつ単一もしくは二重特異性、三価かつ単一、二重、もしくは三重特異性、四価かつ単一、二重、三重、もしくは四重特異性、五価かつ単一、二重、三重、四重、もしくは五重特異性、または六価かつ単一、二重、三重、四重、五重、もしくは六重特異性である。
一実施形態では、タンパク質複合体は、四価かつ二重特異性である。
一実施形態では、タンパク質複合体は、二価かつ二重特異性である。
発明者らは、Igドメインの再会合を、二価二重特異性抗体の作製中に生じる軽鎖の対合問題に対処するために用いた。発明者らは、二価二重特異性抗体の一方のアームにおいて、上記のようなHDAおよびHDBが、それぞれ重鎖のCH1ドメインおよび軽鎖のCLドメインの置き換えに使用できることを見出した。その結果、HDAおよびHDBを含む軽鎖および重鎖は、ヘテロ二量体化して第1の抗体アームを形成することとなる。前記二価二重特異性抗体の第2のアームでは、非改変の軽鎖が、CH1ドメインとCLドメインの相互作用を介して非改変の重鎖とヘテロ二量体化することとなる。CH、CLはいずれも、HDAまたはHDBと二量体化することはない。したがって、両アームは、望ましくない軽鎖の対合なく会合する。最終的に、第1のアームと第2のアームのヘテロ二量体化は、重鎖の対形成問題を克服する当技術分野で既知の技術の1つによって、制御することができる。
多重特異性抗体または誘導体は、複数の異なる抗原と結合することができ、二重特異性抗体または誘導体は、2つの異なる抗原と結合することができる。
本明細書に記載のすべての抗体または誘導体の一部の実施形態では、抗体または誘導体は、IL-4および/またはIL-13に結合することができる。一部の実施形態では、抗体または誘導体は、二重特異性であり、IL-4およびIL-13に結合することができる。
本発明の対称性多重特異性抗体の例は、ダイアボディタイプの四価二重特異性抗体(図5A)、DVD構成四価二重特異性抗体(図5B)、またはCODV構成四価二重特異性抗体(図5C)である。
本発明の非対称性多重特異性抗体の一例は、二価二重特異性抗体(図5DおよびE)、またはダイアボディ、DVD-FabスプリットCH2、CODV-FabスプリットCH2、もしくは「splite」ダイアボディ(図2A~D)である。
ある特定の実施形態では、抗体またはそれらの誘導体は、Fcエフェクター機能が低減しているかまたはFcエフェクター機能を有していなくてもよい。Fcエフェクター機能とは、補体タンパク質C1qとの相互作用および/またはFc受容体への結合である。エフェクター機能の低減または欠失は、例えばCH2Aおよび/またはCH2Bドメインにおける二重変異L234AおよびL235A(いわゆる「LALA変異」)によって得られる。それぞれのN-βおよびC-βがCH2ドメインのアミノ酸配列を含んでいれば、対応する変異をHDAおよびHDBに導入することもできる。
以下の本発明の第2、第3、第4、および第5の態様に関して使用したすべての用語は、特段の定義がないかぎり、本発明の第1の態様に関して定義された通りの意味を有する。さらに、第2、第3、第4、および第5の態様に適用可能である、第1の態様のために明記された実施形態もすべて、これらの態様のために想定されるものである。
第2の態様では、本発明は、本発明の第1の態様によるタンパク質複合体の少なくとも2つのポリペプチドをコードする、1つまたはそれ以上のポリヌクレオチドに関する。第2の態様による1つまたはそれ以上のポリヌクレオチドはまた、第1の態様によるタンパク質複合体に含まれている1つまたはそれ以上の追加のポリペプチドをコードしていてもよい。一実施形態では、1つまたはそれ以上のポリヌクレオチドは、抗体または抗体様構造をコードする。このことは、上記のすべての実施形態に、例えば、本明細書に記載の抗体または抗体誘導体構成のいずれにも関することである。一実施形態では、1つまたはそれ以上のポリヌクレオチドが単離される。
第3の態様では、本発明は、本発明の第2の態様による1つまたはそれ以上のポリヌクレオチドを含む、1つまたはそれ以上の発現ベクターに関する。本明細書で使用される「ベクター」という用語は、コード化情報を宿主細胞に移入するために使用されるあらゆる分子(例えば、核酸、プラスミド、またはウイルス)を指す。「ベクター」という用語は、自身に融合された別の核酸を輸送することが可能な核酸分子を含んでいる。ベクターの1つのタイプは「プラスミド」であり、これは、付加するDNAセグメントを挿入することができる環状二本鎖DNA分子を指す。別のタイプのベクターは、付加するDNAセグメントをウイルスゲノムに挿入することができる、ウイルスベクターである。ある特定のベクターは、導入された宿主細胞において自律複製することができる(例えば、細菌の複製開始点を有する細菌ベクターおよびエピソーム哺乳動物ベクター)。その他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞に導入させると宿主細胞のゲノムに組み込まれ、これにより、宿主ゲノムと同調して複製する。また、ある特定のベクターは、ベクターが含む遺伝子の発現を指示することができる。そのようなベクターは、本明細書では「発現ベクター」と呼ぶ。
第4の態様では、本発明は、本発明の第2の態様による1つまたはそれ以上のポリヌクレオチド、または本発明の第3の態様による1つまたはそれ以上の発現ベクターを含む、細胞に関する。細菌細胞(例えば、大腸菌)、酵母細胞、昆虫細胞、または哺乳動物細胞(例えば、マウス細胞、ラット細胞、ヒト細胞など)などの、原核および真核細胞の使用を含む幅広い種類の細胞発現系が、前記ポリヌクレオチドを発現させるために使用することができる。この目的のために、本発明のポリヌクレオチドを、細胞中で発現させ、一実施形態では、細胞が培養されている培地中に分泌させ、該培地から発現産物を回収することができるように、細胞は、前記ポリヌクレオチドまたは発現ベクターで形質転換またはトランスフェストされる。
第5の態様では、本発明は、薬学的に許容される担体と、本発明の第1の態様によるタンパク質複合体、本発明の第2の態様による1つまたはそれ以上のポリヌクレオチド、または本発明の第3の態様による1つまたはそれ以上の発現ベクターとを含む薬学的組成物に関する。一実施形態では、タンパク質複合体は、病原体、罹患細胞、細胞受容体、または細胞シグナル伝達分子に特異的に結合する抗体または抗体様分子である。本発明の医薬組成物は、非経口送達のために選択される。別法として、該組成物は、吸入のためにまたは経口などの消化管を通す送達のために選択される。そのような薬学的に許容される組成物の調製は、当技術分野の技術の範囲に含まれる。
本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」または「生理学的に許容される担体」という用語は、抗体または抗体様分子の送達を成し遂げるかまたは増強するために好適である1つまたはそれ以上の配合物を指す。医薬組成物中の主要な担体は、本質的に水性、非水性のどちらであってもよい。例えば、注射に好適な溶媒または担体は、水、生理的食塩水、または人工脳脊髄液であってもよく、非経口投与には、組成物に一般的なその他の物質がおそらく補足されている。中性緩衝生理食塩水または血清アルブミンを混合した生理食塩水は、さらなる例示的溶媒である。その他の例示的医薬組成物は、約pH7.0~8.5のTris緩衝液または約pH4.0~5.5の酢酸緩衝液を含み、ソルビトールまたは好適な代替物をさらに含んでいてもよい。本発明の一実施形態では、抗体または抗体様分子組成物は、凍結乾燥したケークまたは水溶液の形態で、所望の純度を有する選択された組成物を任意選択の配合剤と混合することによって保存用に調製することができる。さらに、抗体または抗体様分子は、ショ糖などの適切な賦形剤を使用して、凍結乾燥物として製剤化することができる。
医薬組成物は、例えば、該組成物のpH、モル浸透圧濃度、粘度、透明度、着色、等張性、臭い、無菌性、安定性、溶解もしくは放出速度、吸着性、または浸透度を、改変、維持、または保存するための配合材料を含むことができる。好適な配合材料としては、アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、またはリジンなど)、抗生物質、抗酸化物質(例えば、アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウム、または亜硫酸水素ナトリウムなど)、緩衝液(例えば、ホウ酸、炭酸水素、Tris-HCl、クエン酸、リン酸、またはその他の有機酸など)、充填剤(例えば、マンニトールまたはグリシンなど)、キレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)など)、錯化剤(例えば、カフェイン、ポリビニルピロリドン、ベータ-シクロデキストリン、またはヒドロキシプロピルベータ-シクロデキストリンなど)、増量剤、単糖、二糖、およびその他の炭水化物(例えば、グルコース、マンノース、またはデキストリンなど)、タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなどの)、着色料、香味料、および希釈剤、乳化剤、親水性高分子(例えば、ポリビニルピロリドンなど)、低分子量ポリペプチド、造塩対イオン(例えばナトリウムなど)、防腐剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸、または過酸化水素など)、溶媒(例えば、グリセリン、プロピレングリコール、またはポリエチレングリコールなど)、糖アルコール(例えば、マンニトールまたはソルビトールなど)、懸濁化剤、界面活性剤、もしくは湿潤剤(例えば、プルロニック;PEG;ソルビタンエステル;ポリソルベート20もしくはポリソルベート80などのポリソルベート;トリトン;トロメタミン;レシチン;コレステロール、またはチロキサポールなど)、安定性増強剤(例えば、ショ糖またはソルビトールなど)、張性増強剤(ハロゲン化アルカリ金属など、例えば塩化ナトリウムまたは塩化カリウム-マンニトールもしくはソルビトール)、送達担体、希釈剤、賦形剤、および/または医薬補助剤が挙げられるが、これらに限定されない(例えば、REMINGTON’s PHARMACEUTICAL SCIENCES(第18版、A.R. Gennaro編、Mack Publishing Company 1990年)およびその続版を参照されたい)。
本明細書で使用される「特異的に結合する」という用語は、インビトロでの、または例えばヒトの体など生物におけるインビボでの、標的分子の存在に限定的な結合反応を指す。そのように、特異化されたリガンドは、その特定の標的分子に結合し、存在するその他の分子には大部分は結合しない。一般的に、標的分子に「特異的に結合する」抗体またはそれらの誘導体は、該標的分子に対して約105モル/リットルを超える平衡親和性定数(例えば、106、107、108、109、1010、1011、および1012以上)を有する。
「病原体」という用語は、対象において疾患をもたらしうるあらゆる生物を指す。病原体には、これらだけに限定されないが、細菌、原生動物、真菌、線虫、ウイロイド、およびウイルス、またはそれらの任意の組合せが含まれ、各病原体は、単独で、または別の病原体と共同で、これだけに限定されないがヒトを含む、これだけに限定されないが哺乳動物を含む、脊椎動物において疾患を誘発することができる。本明細書で使用される場合、「病原体」という用語はまた、非免疫低下宿主では通常は病原性ではないが免疫低下宿主では病原性でありうる微生物も包含する。
罹患細胞は、腫瘍細胞、慢性的な感染細胞、老化細胞、炎症性表現型を示している細胞、アミロイドタンパク質蓄積細胞、またはミスフォールドタンパク質蓄積細胞であってもよい。
腫瘍細胞の場合、基礎疾患は、腫瘍であり、例えば、ホジキンリンパ腫などのIL4/IL13シグナル伝達と関連した腫瘍である。
老化細胞の場合、基礎疾患は、特発性肺線維症(IPF)および慢性閉塞性肺疾患などの、老化関連疾患である。
炎症性表現型を示している細胞の場合、基礎疾患は、アレルギー、アレルギー性鼻炎、喘息、アトピー性皮膚炎、クローン病(CD)、炎症性腸疾患、全身性エリテマトーデス、全身性硬化症、および潰瘍性大腸炎(UC)などの(自己)炎症性疾患である。
「細胞受容体」という用語は、何らかの特定の受容体に限定されない。例えば、細胞受容体とは、Gタンパク質共役型受容体、イオンチャネル、または膜通過トランスポーターであってもよい。具体的な例としては、CD3、CD4、CD8、CD28、CD16、およびNKp46である。
細胞シグナル伝達分子は、ケモカイン、インターフェロン、インターロイキン、リンホカイン、もしくは腫瘍壊死因子などのサイトカイン、またはホルモンもしくは増殖因子、または細胞内シグナル伝達カスケードの分子であってもよい。
第5の態様の一実施形態では、抗体または抗体様分子は多重特異性であり、一実施形態では二重特異性であり、エフェクター分子に、例えば、細胞傷害性物質または受容体リガンドに、さらに結合する。
例示的フォーマット
一部の例示的な本発明による抗体またはそれらの誘導体は、以下のようなアミノ酸配列によって表される:
変異体1の例:
- 残基1~111が軽鎖可変ドメインV1(VL1)であり、残基120~242が重鎖可変ドメインV2(VH2)である、配列番号11によるPCA、
- 残基1~107が軽鎖可変ドメインV2(VL2)であり、残基116~233が重鎖可変ドメインV1(VH1)である、配列番号12によるPCB
を有するダイアボディスプリットCH2(図2A、図7、表7)。
変異体2の例:
- 残基1~111が軽鎖可変ドメインV1(VL1)であり、残基122~228が軽鎖可変ドメインV2(VL2)である、配列番号13によるPCA、
- 残基1~118が重鎖可変ドメインV1(VH1)であり、残基120-251が重鎖可変ドメインV2(VH2)である、配列番号14によるPCB
を有するDVD-FabスプリットCH2(図2B、図8、表8、9)。
変異体3の例:
- 残基1~111が軽鎖可変ドメインV1(VL1)であり、残基120~226が軽鎖可変ドメインV2(VL2)である、配列番号15によるPCA、
- 残基1~133が重鎖可変ドメインV2(VH2)であり、残基135~242が重鎖可変ドメインV1(VH1)である、配列番号16によるPCB
を有するCODV-FabスプリットCH2(図2C、図9、表10)。
CODVフォーマットでは、PCAおよびPCBの各々は、2つの可変ドメインV1およびV2、定常ドメイン(CLまたはCH1)、ならびにヘテロ二量体化ドメイン(HDAまたはHDB)を含む。N末端からC末端への可変ドメインの順序は、一方のポリペプチド鎖ではV1からV2であり、もう一方のポリペプチド鎖ではV2からV1である。
変異体4の例:
- 残基1~111が軽鎖可変ドメインV1(VL1)であり、残基178~284が軽鎖可変ドメインV2(VL2)である、配列番号17によるPCA、
- 残基1~133が重鎖可変ドメインV1(VH1)であり、残基193~315が重鎖可変ドメインV2(VH2)である、配列番号18によるPCB
を有するspliteダイアボディ(図2D、図10、図19、表11)。
変異体5の例:
- 残基1~111が軽鎖可変ドメインV1(VL1)であり、残基173~289が軽鎖可変ドメインV2(VL2)である、配列番号19によるPCA、
- 残基1~133が重鎖可変ドメインV1(VH1)であり、残基181~303が重鎖可変ドメインV1(VH1)である、配列番号20によるPCB
を有するspliteダイアボディ(図2D、図11、表12)。
変異体6の例:
- 残基1~111が軽鎖可変ドメインV1(VH1)であり、残基178~284が軽鎖可変ドメインV2(VL2)である、配列番号17によるPCA、
- 残基1~133が重鎖可変ドメインV1(VH1)であり、残基181~303が重鎖可変ドメインV1(VH1)である、配列番号20によるPCB
を有するspliteダイアボディ(図2D、図12、表13)。
変異体7の例:
- 残基1~111が軽鎖可変ドメインV1(VL1)であり、残基173~289が軽鎖可変ドメインV2(VL2)である、配列番号19によるPCA、
- 残基1~133が重鎖可変ドメインV1(VH1)であり、残基193~315が重鎖可変ドメインV1(VH1)である、配列番号18によるPCB
を有するspliteダイアボディ(図2D、図13、表14)。
変異体8の例:
- 残基1~111が軽鎖可変ドメインV1(VL1)であり、残基120~242が重鎖可変ドメインV1(VH1)である、配列番号11による2つのPCA、
- 残基1~107が軽鎖可変ドメインV2(VL2)であり、残基116~233が重鎖可変ドメインV1(VH1)である、配列番号21による2つのPCB
を有するダイアボディスプリットCH2四価二重特異性抗体(図5A、図14、表15)。
変異体9の例:
- 残基1~111が軽鎖可変ドメインV1(VL1)であり、残基122~228が軽鎖可変ドメインV2(VL2)である、配列番号13による2つのPCA、
- 残基1~118が重鎖可変ドメインV1(VH1)であり、残基120~251が重鎖可変ドメインV1(VH1)である、配列番号22による2つのPCB
を有するDVDスプリットCH2四価二重特異性抗体(図5B、図15、表16)。
変異体10の例:
- 残基1~111が軽鎖可変ドメインV1(VL1)であり、残基120~226が軽鎖可変ドメインV2(VL2)である、配列番号15による2つのPCA、
- 残基1~133が重鎖可変ドメインV1(VH1)であり、残基135~242が重鎖可変ドメインV1(VH1)である、配列番号23による2つのPCB
を有するCODVスプリットCH2四価二重特異性抗体(図5C、図16、表17)。
変異体11の例:
- 残基1~107が軽鎖可変ドメインV2(VL2)である、配列番号25によるPCA、
- 残基1~133が重鎖可変ドメインV1(VH1)である、配列番号26によるPCB、
- 残基1~111が軽鎖可変ドメインV1(VL1)である、配列番号27による軽鎖、
- 残基1~118が重鎖可変ドメインV1(VH1)である、配列番号24による重鎖
を有するスプリットCH2二価二重特異性抗体(図5D、図17、表18)。
変異体12の例:
- 残基1~133が重鎖可変ドメインV1(VH1)である、配列番号29によるPCA、
- 残基1~107が軽鎖可変ドメインV2(VL2)である、配列番号28によるPCB、
- 残基1~111が軽鎖可変ドメインV1(VL1)である、配列番号27による軽鎖、
- 残基1~118が重鎖可変ドメインV1(VH1)である、配列番号24による重鎖
を有するスプリットCH2二価二重特異性抗体(図5E、図18、表19+20)。
変異体13の例:
- 残基1~111が軽鎖可変ドメインV1(VL1)であり、残基120~242が重鎖可変ドメインV1(VH1)である、配列番号41によるPCA、
- 残基1~107が軽鎖可変ドメインV2(VL2)であり、残基116~233が重鎖可変ドメインV1(VH1)である、配列番号42によるPCB
を有するダイアボディスプリットIgA CH2(図21)。
変異体14の例:
- 残基1~111が軽鎖可変ドメインV1(VL1)であり、残基120~242が重鎖可変ドメインV1(VH1)である、配列番号43によるPCA、
- 残基1~107が軽鎖可変ドメインV2(VL2)であり、残基116~233が重鎖可変ドメインV1(VH1)である、配列番号44によるPCB
を有するダイアボディスプリットIgD CH2(図22)。
変異体15の例:
- 残基1~111が軽鎖可変ドメインV1(VL1)であり、残基120~242が重鎖可変ドメインV1(VH1)である、配列番号45によるPCA、
- 残基1~107が軽鎖可変ドメインV2(VL2)であり、残基116~233が重鎖可変ドメインV1(VH1)である、配列番号46によるPCB
を有するダイアボディスプリットIgE CH3。
変異体16の例:
- 残基1~111が軽鎖可変ドメインV1(VL1)であり、残基120~242が重鎖可変ドメインV1(VH1)である、配列番号47によるPCA、
- 残基1~107が軽鎖可変ドメインV2(VL2)であり、残基116~233が重鎖可変ドメインV1(VH1)である、配列番号48によるPCB
を有するダイアボディスプリットIgE CH2。
上記で明記した例示的フォーマット1~16では、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの各対(VL1/VH1、VL2/VH2)を、例示の対とは異なる特異性を有する可変ドメインの対によって置き換えてもよい。
上記で明記した例示的フォーマット1~16では、6個のC末端ヒスチジン残基(His-タグ)は、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号42、配列番号44、配列番号46、および配列番号48に存在していなくてもよい。
Igドメインが2つの部分に分割することによって、新たなC末端がN末端部分に生成され、新たなN末端がC末端部分に生成される。元々のN末端およびC末端ならびに新たに生成されたN末端およびC末端は、いずれも、異なるタンパク質ドメインをFab、Fv、またはFcなどのIgドメインのN末端およびC末端部に連結するために使用することができる。これによって、多重特異性抗体またはそれらの誘導体の生成が可能となる。例えば、四価抗体は、4つの末端すべてに、各々異なる特異性を有する4種の単鎖Fv(scFv)を融合することによって生成することができる。
利用可能な構造的データに基づくと、基本構成要素としてスプリットIgドメイン、特にCH2ドメインの使用によって、異なる融合パートナーの新規の空間配置が可能になると論じることは理にかなっている。例えば多価ナノボディで使用されているような異なるドメインまたは基本構成要素の連続的な連結とは対照的に、異なるドメインまたは基本構成要素は、スプリットCH2ドメインに連結させる場合、交差した向きにある。これは、例えば、1つの標的上の様々なエピトープを同時にブロックキングするという新たな状況を提供する可能性がある。
一部の実施形態では、ヘテロ二量体化ドメインHDAおよびHDBは、全くアミノ酸改変をしていないIgドメインのN末端部およびC末端部からなる。これらの場合、新たなアミノ酸配列は導入されておらず、したがって、例えばHDAおよびHDBを含む抗体誘導体に対する免疫応答のリスクを最小化する。
N-βおよびC-βが、CH2ドメイン、例えば同じCH2ドメインから選択される場合、HDAおよびHDBのヘテロ二量体化によって完全なCH2ドメインの形成がもたらされ、これは、Fcガンマ受容体(FcγR)、新生児型Fc受容体(FcRn)、および補体成分1q(C1q)への結合を媒介することができる。このことは、タンパク質複合体が、本明細書に記載したようなspliteダイアボディ(変異体4~7)またはダイアボディスプリットCH2(変異体1)などの、それ以外に定常ドメインをいっさい含まない多重特異性抗体、特に二重特異性抗体である場合、特に有利である。CH2ドメインのFcRnへの結合は、血漿内半減期の延長につながるため、医学的適用に重要である。CH2ドメインの、FcγRおよびC1qへの結合は、それぞれ、抗体依存性細胞媒介細胞障害(ADCC)または補体依存性細胞傷害(CDC)の誘起に重要である。
例えば(一方のFabアームについて、重鎖由来のC1ドメインを軽鎖由来のCLドメインと入れ替えている)CrossMabフォーマットのような、2つの完全なIgドメインを使用する場合と比較して、ヘテロ二量体化ドメインHDAおよびHDBのさらなる利点は、小さなサイズ/低分子量であることである。腫瘍学的適用では、このことは、腫瘍浸透度を高めるという重要な利点を有する。
CH2ドメインを二分割するための構造的基盤を示す図である。(A)全長ヒト抗体(pdbエントリ3S7G)の構造模式図。1つのCH2ドメインを、黒色で強調表示している。グリカンは、球として示す。このCH2ドメインは直接的なタンパク質-タンパク質接触を有さないことに留意されたい。(B)CH2ドメインの構造。分割部位は、2つのβシートを連結しているループ内に位置する。N末端側半分は灰色で着色し、C末端部は黒色で着色している。ジスルフィド結合が、この2つのβシートの間で形成されており、スプリットCH2ドメイン構造のN末端とC末端とを共有結合させている。模式図は、pymol(https://sourceforge.net/projects/pymol/)で作成した。 スプリットCH2ドメインを組み込んだFvのみのフォーマットおよびFab様フォーマットの構造を示す概略図である。CH2スプリットが分かれると、C末端に加えて、新たなN末端が生成される。様々なドメインのN末端を示す。精製目的で、His-タグをすべての構築物に付加している。(A)ダイアボディフォーマットに付加されたスプリットCH2ドメイン(ダイアボディスプリットCH2)。(B)DVD-FabスプリットCH2。(C)CODV-FabスプリットCH2。(D)ダイアボディフォーマットに挿入されたスプリットCH2ドメイン(「splite」ダイアボディ)。このフォーマットでは、新たに生成させたN末端とC末端とで異なるリンカー(それぞれL1およびL4)を使用した。本報告に記載している分子は、連続して番号付けしている。 非還元および還元条件下で分析した、タンパク質変異体(1)~(7)のSDS-PAGEを示す図である。すべてのタンパク質を、His-タグを介して精製した。還元条件下では、2つのタンパク質鎖が存在していることから、両方の鎖の連結がジスルフィド架橋を介して起こっていることは明らかである。正しく会合したタンパク質に相当するタンパク質バンドを、矢印で示している。 (1)~(7)およびCH2-ドメイン(wt)の安定性測定を示す図である。すべてのタンパク質について、濃度は0.5mg/mLに調整した。(A)トリプトファン蛍光測定によって、タンパク質の融解をモニタリングすることが可能である。測定された蛍光比F350nm/F330nmによって、タンパク質の融解曲線を表している。算出されたT(表2)は、F350/F330曲線の一次導関数の最大値に一致している。(B)タンパク質の凝集挙動のモニタリングには、光散乱を使用した。算出されたTagg(表2)は、測定された散乱強度の一次導関数の最大値に一致している。CH2-ドメイン(wt)は、タンパク質がフォールディングしていないことにかかわらず、凝集を開始していないことに留意されたい。 スプリットCH2ドメインを組み込んだ、様々な抗体様フォーマットの構造の概略図である。CH2スプリット上に、新たなN末端およびC末端を生成させている。変異体(7)~(9)は、四価二重特異性抗体変異体を生成しているIgG Fc-ドメインに融合されたFvのみのフォーマットおよびFab様フォーマット構築物(1)~(3)に基づいている。変異体(11)および(12)は、二価二重特異性抗体である。抗体の片側で、CH1およびCLドメインがスプリット-CH2ドメインによって置き換えられている。軽鎖を1つしか使用していないため、この構築物デザインによって、軽鎖の誤対合問題が回避される。重鎖のヘテロ二量体化は、knob-into-hole変異を適用することによって成されている。(A)ダイアボディスプリットCH2四価二重特異性抗体。(B)DVDスプリットCH2四価二重特異性抗体。(C)CODVスプリットCH2四価二重特異性抗体。(D、E)スプリットCH2二価二重特異性抗体。 非還元および還元条件下で分析した、タンパク質変異体(8)~(12)のSDS-PAGE。タンパク質はすべて、プロテインAマトリックス上のFc-ドメインを介して精製した。変異体(8)~(10)では2つのタンパク質鎖を必要とするのに対し、変異体(11)および(12)では4つのタンパク質鎖を必要とする。還元型のタンパク質バンドの染色強度から、タンパク質バンドが等モル量で存在することが概ね推定される。(11)および(12)では、2つの重鎖は概ね同じ分子量を有しており、SDS-PAGE上では別々のバンドに分かれていないことに留意されたい。 タンパク質変異体(1)の質量分析を示す図である。(A)脱グリコシル化、非還元条件。(B)脱グリコシル化、還元条件。 タンパク質変異体(2)の質量分析を示す図である。(A)脱グリコシル化、非還元条件。(B)脱グリコシル化、還元条件。 タンパク質変異体(3)の質量分析を示す図である。(A)脱グリコシル化、非還元条件。(B)脱グリコシル化、還元条件。 タンパク質変異体(4)の質量分析を示す図である。(A)脱グリコシル化、非還元条件。(B)脱グリコシル化、還元条件。 タンパク質変異体(5)の質量分析を示す図である。(A)脱グリコシル化、非還元条件。(B)脱グリコシル化、還元条件。 タンパク質変異体(6)の質量分析を示す図である。(A)脱グリコシル化、非還元条件。(B)脱グリコシル化、還元条件。 タンパク質変異体(7)の質量分析を示す図である。(A)脱グリコシル化、非還元条件。(B)脱グリコシル化、還元条件。 タンパク質変異体(8)の質量分析を示す図である。(A)脱グリコシル化、非還元条件。(B)脱グリコシル化、還元条件。 タンパク質変異体(9)の質量分析を示す図である。(A)脱グリコシル化、非還元条件。(B)脱グリコシル化、還元条件。 タンパク質変異体(10)の質量分析を示す図である。(A)脱グリコシル化、非還元条件。(B)脱グリコシル化、還元条件。 タンパク質変異体(11)の質量分析を示す図である。(A)脱グリコシル化、非還元条件。(B)脱グリコシル化、還元条件。 タンパク質変異体(12)の質量分析を示す図である。(A)脱グリコシル化、非還元条件。(B)脱グリコシル化、還元条件。 チップに固定化されたヒトFcRnに対する、タンパク質変異体(4)のBiacore測定を示す図である。 非還元および還元条件下で分析した、タンパク質変異体(13)~(16)のSDS-PAGEを示す図である。変異体(13)~(16)は各々、2つのタンパク質鎖を必要とする。4つの変異体すべてについて、N-グリコシル化が起こりうる部位を含むことに留意されたい(変異体(13):N末端スプリットCH2ドメイン、144位;変異体(14):C末端スプリットCH2ドメイン、255位;変異体(15):N末端およびC末端スプリットCH3ドメイン、それぞれ252および275位;変異体(16):N末端スプリットCH2ドメイン、146位)。これらの修飾が、SDS-PAGEで、特にタンパク質変異体(15)および(16)について、一部のタンパク質バンドがぼやけて見えた原因となった可能性が考えられる。 タンパク質変異体(13)の質量分析を示す図である。(A)脱グリコシル化、非還元条件。(B)脱グリコシル化、還元条件。 タンパク質変異体(14)の質量分析を示す図である。(A)脱グリコシル化、非還元条件。(B)脱グリコシル化、還元条件。 タンパク質変異体(13)~(16)の安定性測定を示す図である。トリプトファン蛍光測定によって、タンパク質の融解をモニタリングすることが可能である。測定された蛍光比F350nm/F330nmによって、タンパク質の融解曲線を表している。算出されたTm(表2)は、F350/F330曲線の一次導関数の最大値に一致している。
材料および方法
タンパク質発現および精製
所望のアミノ酸配列をコードするDNAを合成し(Thermofisher、Geneart)、CMVプロモーターおよび細胞培養培地へのタンパク質の分泌に必要なシグナル配列の下流で、発現ベクターにクローニングした。タンパク質の発現は、FreeStyle HEK293-F細胞(Thermo Fisher Scientific)の一過性トランスフェクションによって行った。細胞は、バッフルなし振盪フラスコ(Corning)中で、110rpm、37℃、8%COで培養した。トランスフェクションは、細胞密度が1.2×10細胞/mLに達した時点で行った。DNAは、オプチメンI-培地(Thermo Fisher Scientific)中でポリエチレンイミンと1:3の比で混合した。室温で20分インキュベーションした後、このトランスフェクションミックスを、細胞培養物に加えた。細胞は、6mMグルタミンを補足したFreeStyle F17培地中で、6日間さらに培養した。遠心分離(4℃、4.500gで、30分)によって、細胞を培養ブロスから取り除き、上清を0.22μm滅菌ろ過によって清澄化した。タンパク質変異体(1)~(7)およびCH2ドメインwtのみの構築物は、一連の6個のヒスチジン残基(His-タグ)を含む。タンパク質精製は、NGC Discover 100 Proシステム(Biorad)上で、完全His-タグ精製カラム(Roche)を備えた固定化金属イオンアフィニティクロマトグラフィー(IMAC)によって行った。カラムは、50mM Tris、500mM NaCl、10mMヒスチジンで平衡化した。1M Tris、pH8.0溶液を、1L当たり50mlを加えることによって、pHを8.0に調整した後、培養上清を投入した。さらに、1L当たり5mlの2Mイミダゾール、pH7.5溶液を加えた。カラムを平衡化緩衝液で洗浄し、50mM Tris、300mM NaCl、500mMイミダゾールまでの勾配で、35CVでタンパク質を溶出した。画分をSDS-PAGEによって分析し、対応する画分をプールし、遠心分離(Vivaspin 20)によって濃縮し、リン緩衝生理食塩水(PBS、Gibco)で平衡化したSuperdex 200 pg 16/60(GE Healthcare)ゲルろ過カラムに投入した。所望のタンパク質を含む画分をプールし、濃縮した(Vivaspin 20)。タンパク質変異体(8)~(12)は、His-タグは有さずFc-ドメインを有する。これらの変異体の捕捉は、HiTrapプロテインAカラム(GE Healthcare)で行った。カラムはPBSで平衡化した。清澄化した上清を投入した後、カラムをPBS(Gibco)および0.1Mクエン酸、pH6.0で洗浄した。タンパク質を、0.1Mクエン酸、pH3.0緩衝液で溶出した。溶出された画分を、10%1M Tris、pH8.5を加えることによって中和した。PBS(Gibco)で平衡化したSuperdex 200 pg 16/69(GE Healthcare)ゲルろ過カラムを使用して、さらなる精製を行った。タンパク質濃度を、NanoDrop NT1000分光光度計(Thermo Fisher Scientific)を使用して、280nmで吸収を測定することによって決定した。SDS-PAGE分析は、ランニングバッファーとしてMES緩衝液(Invitrogen)を含む4~12% BisTrisゲルを使用して行った。還元試料には、0.1M DTTをサンプルバッファー(LDSサンプルバッファー、invitroge)に加え、試料を99℃で5分間インキュベートした。分離は、200Vの定電圧で、45分間行った。BenchMarkタンパク質ラダーをマーカーとして使用した(invitrogen)。泳動後、ゲルをクマシーブルー(InstantBlue、Expedeon)で染色した。
熱安定性分析
熱安定性分析は、ナノDSF技術を使用するPrometheus NT Flex装置(NanoTemper Technologies)を用いて行った。この装置は、蛍光測定と同時に散乱情報を収集することを可能にするAggregation Opticsを備えている。分析は、製造業者の使用説明書に従って、1℃/分の昇温率で20℃から95℃の範囲で行った。すべてのタンパク質試料はPBSに溶解し、タンパク質濃度を0.5mg/mLに調整した。測定は、二度繰り返して行った。データ分析は、ソフトウエアPR ThermControl V.2.1(NanoTemper Technologies)を使用して行った。
MS分析
タンパク質整合性は、LC-MSによって分析した。タンパク質試料は、PNGaseF(グリセロールフリー、New England Biolabs)を含むddH2Oで0.5mg/mlに希釈した12.5μgのタンパク質(1:50v/v)を用いて、37℃で15時間、脱グリコシル化した。LC-MS分析は、デュアルESIインターフェースを備えたAgilent 6540 Ultra High Definition(UHD) Q-TOFおよびAgilent 1290/1260 Infinity LC Systemで行った。逆相(RP)クロマトグラフィーは、ガードカラムPLRP-S 300A 5μm、3×5mM(Agilent)を装着したPLRP-S 1000A 5μm、50×2.1mm(Agilent)を、200μL/分および80℃カラム温度で使用して行った。溶離液は、LC水および0.1%ギ酸を含むバッファーA、ならびに90%アセトニトリル、10%LC水、および0.1%ギ酸を含むバッファーBとした。1μgのタンパク質をカラムに注入し、0分から17分までアセトニトリル濃度を上げていく直線勾配を使用して溶出した。データは、MassHunter Bioconfirm B.06(Agilent)を使用して分析した。分子質量は、GPMAWソフトウエア、バージョン10.32(Lighthouse Data、Denmark)を使用して、タンパク質のアミノ酸配列に基づいて算出した。
親和性決定
抗体構築物への抗原の結合を、HBS-EPバッファー(GE Healthcare)を用いるBIAcore 3000装置(GE Healthcare)での表面プラズモン共鳴(SPR)を使用して測定した。抗原として、ヒトIL4(IL004、Millipore)およびヒトIL13(IL012、Millipore)を使用した。捕捉抗体(ヒト抗体捕捉キット、His捕捉キット、Fab捕捉キット、GE Life Sciences)は、標準手順を使用して、第一級アミン基(11000RU)を介して、研究グレードのCM5チップ(GE Life Sciences)上に固定した。リガンドは、10μl/分の流速、および最大30RUのアナライト結合をもたらすよう調整したRU値で捕捉した。抗原ヒトIL4およびヒトIL13をアナライトとして使用し、30μL/分の流速で、240秒間注入し、解離時間を300秒とした。IL4およびIL13は、それぞれ、0.1nM~3nMおよび0.8nM~25nMの希釈系列で使用した。捕捉キットを提供する再生バッファーを2分注入して、チップ表面を再生させた。センサーグラムは、ブランクのチップ表面およびHBS-EPバッファーブランクをダブルレファレンスとした。組換えヒト新生児型Fc受容体(FcRn)タンパク質を、標準手順を使用して、研究グレードのCM5チップ(GE Life Sciences)のサンプルフローセルコンパートメント内に、第一級アミン基(200RU)を介して固定した。レファレンスフローセルコンパートメントは、FcRnを固定せずに活性化および不活性化してブランクのチップ表面を生成した。分析には、pH6.0のアッセイバッファー(150mM NaCl、20mMリン酸ナトリウム、0.05%界面活性剤P20、pH6.0)を使用した。抗体をアッセイバッファーで800nMに希釈して、アナライトとして使用し、レファレンスおよびサンプルフローセルに、30μL/分の流速で、240秒間注入し、解離時間は300秒とした。チップ表面を、HBS-EPバッファーを30μl/分で2分注入して再生させた。センサーグラムは、ブランクのチップ表面およびHBS-EPバッファーブランクをダブルレファレンスとした。すべてのデータ分析は、BIAevaluationソフトウエアv4.1を使用して行った。
結果
IgG1 CH2ドメインを、スプリットユビキチンシステムについて説明されている方法と同様の方法で概ね同じサイズの2つの部分に分割することを想定した。これは、完全なタンパク質の僅かな部分だけで十分に機能性を回復させるスプリットGFPまたはβ-ガラクトシダーゼ手法とは対照的である。分割部位を推定するための構造的基盤を図1に示す。スプリットCH2ドメインの再会合を評価するための最初の試みとして、発明者らは、CH1およびCLドメインを含むかまたは含まない2つの異なる可変ドメインを加えることで、様々なフォーマットを創出した(図2)。インターロイキンIL4およびIL13に対するこの2つの異なる可変ドメインは、目下臨床開発中の二重特異性抗体のドメインであり、以前に詳述されている(Steinmetzら;Mabs 2016年;8:867~878頁)。本報告で使用したようなスプリットCH2ドメインのN末端部分の配列は、52個のアミノ酸からなり(5.7kDa)、配列番号30を特徴とする。本報告で使用したようなスプリットCH2ドメインのC末端部分の配列は、58個のアミノ酸からなり(6.7kDa)、配列番号31を特徴とする。スプリットCH2ドメインが再会合すると、2つの部分の間でジスルフィド結合が形成することが予想され、ゆえに、この2つのタンパク質鎖は共有結合で連結されるはずである。1つのタンパク質鎖だけが精製のためのタグに融合されているため、ヘテロ二量体分子だけが精製されるはずである。ジスルフィド結合によるこの2つの鎖の連結は、還元条件下で実行するSDS-PAGEを使用して、非還元条件と比較して、容易にモニタリングすることができた(図3)。これらの結果から明らかなように、CH2ドメインは再構築され、2つの半分のスプリットCH2を連結するジスルフィド結合が形成された。タンパク質試料が還元されると、2つのタンパク質鎖を連結しているジスルフィド結合だけが破壊される。このジスルフィド結合は、スプリットCH2ドメイン部分の間で形成される。SDS-PAGEでは、観察された主なタンパク質バンドは、それらの予想されたサイズで移動していた。産生されたタンパク質が再会合したCH2ドメインを含むかどうかをさらに評価するために、発明者らは、示差走査蛍光定量(DSF)技術を使用して、タンパク質の安定性を分析した(図4、表2)。この技術は、タンパク質内のトリプトファン残基の固有の蛍光をモニタリングするものである。トリプトファン蛍光は、その近接の環境に対して高感度である。例えば変性中に、タンパク質のコンフォーメーションが変化すると、蛍光の発光極大は変わる。発明者らは、スプリットCH2ドメインが再会合すれば、そのタンパク質の独特な融解温度(T)が測定できると予想する。蛍光測定と並行して、タンパク質凝集(Tagg)の開始の算出を可能にする光散乱データを記録した。得られたTおよびTaggデータを、表2に示す。測定されたTm値は、約60℃または60℃より若干高い範囲、および、CH2-ドメインwt構築物のTmの範囲である。これらのデータは、スプリットCH2ドメインが再会合していることを示唆している。タンパク質変異体(2)および(3)は、僅かに高いTmを有し、タンパク質変異体(2)は、約12℃高いTaggを有する。高いTおよびTaggは、タンパク質をさらに安定化させるCLおよびCH1ドメインの存在に起因すると考えられる。次に、発明者らは、スプリットCH2ドメインだけを発現させ、再会合させたCH2-ドメインを精製することが可能であるかどうかを評価した。しかしながら、スプリットCH2ドメインの発現は全く検出できなかった。おそらく、スプリットCH2ドメインの適切な発現および再構成には、フォールディングした融合パートナーが必要である。スプリットCH2ドメインの発現は、FvおよびFabのみのフォーマットでは十分に作動していたため、発明者らは次に、これらの構築物をIgG様構造内に組み込んだ場合の発現を評価した(図5A~C)。さらに、発明者らは、二重特異性ヘテロ二量体IgG様フォーマットにおける軽鎖の対合問題に対処するために、スプリットCH2-ドメインを使用した(図5D、E)。すべての変異体が発現でき、精製することができた(図6)。再会合したスプリットCH2ドメインを含むすべてのタンパク質を、酸化条件および還元条件下で質量分析法によって分析した。予想された種および対応するタンパク質鎖の存在を実証することができた(図7~18)。発明者らの焦点は、スプリットCH2ドメインを、原則的にはより大きな分子に組み込み、そのような構造において再会合させることが可能であることを示すことであった。標的分子の正確な会合は、対応する抗原への結合特性を評価することによって実証した。これは、表面プラズモン共鳴(SPR)測定値によって確認した(表3、表7~20)。Fvドメインより下の構造変化がFvドメイン内に微妙な変化をもたらし、その結果として、結合親和性の喪失が生じ得た可能性がある。しかしながら、レファレンス分子である二重特異性抗IL4-抗IL13 CODV-IgG(変異体13)と比較して、検出された種々の構築物間の結合親和性の差異は、極めて軽微なものに過ぎなかった(Steinmetzら;Mabs 2016;8:867~87頁)。さらに、再構成されたCH2ドメインのヒトFcRnへの結合を、Biacore分析によって分析した。FcRnをチップに固定し、変異体(4)をアナライトとして使用した。測定値は、変異体(4)のFcRnへの結合を示している(図19)。
すべてのIgG1スプリットCH2ドメインに基づく変異体(1)~(12)とは対照的に、変異体(13)~(16)はその他の抗体クラスのCHドメインを含む。変異体(13)~(16)は、変異体(1)で使用したようなダイアボディスプリットCH2フォーマットを有するが、IgG1スプリットCH2ドメインが、次のスプリットCHドメインに替わっている:変異体(13):スプリットIgA CH2;変異体(14):スプリットIgD CH2;変異体(15):スプリットIgE CH3;および変異体(16):スプリットIgE CH2。表4は、変異体の配列を示す。
実験手順は、上記で変異体(1)~(12)について記載したように実施した。
変異体(13)~(16)のSDS-PAGE分析(図20)は、すべてのタンパク質が産生され、会合可能であることを実証している。熱安定性測定値は、すべての事例で独特な融点を示している(図23、表2)。得られた融解温度は野生型CH2ドメインに匹敵しており、これは、タンパク質が正しくフォールディングしていることを意味している。変異体(13)および(14)もまた、質量分析法によって分析した(図21および22、表5および6)。まとめると、変異体(13)~(16)の結果は、二分割および再会合は、IgG1 CH2ドメインに限定されないことを実証している。
Figure 2023519699000002
Figure 2023519699000003
Figure 2023519699000004
Figure 2023519699000005
分子量は、GPMAW(バージョン10.32;Lighthouse Data、Denmark)によって算出した(平均質量値、すべてのシステインがジスルフィド架橋を形成していると仮定する)。
Figure 2023519699000006
分子量は、GPMAW(バージョン10.32;Lighthouse Data、Denmark)によって算出した(平均質量値、すべてのシステインが還元されている(SH)と仮定する)
Biacore測定値
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Claims (15)

  1. 少なくとも2つのポリペプチド鎖A(PCA)およびB(PCB)を含むタンパク質複合体であって、該PCAはヘテロ二量体化ドメインA(HDA)を含み、該PCBはヘテロ二量体化ドメインB(HDB)を含み、HDAとHDBとは互いに結合し、該ヘテロ二量体化ドメインの一方は免疫グロブリン(Ig)ドメインの2つのN末端βストランド(N-β)を含むかまたはそれらからなり、該ヘテロ二量体化ドメインのもう一方はIgドメインの2つのC末端βストランド(C-β)を含むかまたはそれらからなる、前記タンパク質複合体。
  2. a.N-βは、少なくともβストランドbおよびcを含むIgドメインの連続したアミノ酸配列を含み、
    b.C-βは、少なくともβストランドeおよびfを含むIgドメインの連続したアミノ酸配列を含む、
    請求項1に記載のタンパク質複合体。
  3. N-βおよびC-βのIgドメインは、IgA、IgD、IgE、IgG、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4重鎖定常ドメイン2(CH2)、およびIgMまたはIgE重鎖定常ドメイン3(CH3)から独立して選択され、場合により、同じCH2またはCH3から選択される、請求項1または2に記載のタンパク質複合体。
  4. HDAおよびHDBは、互いに(i)非共有結合するか、または(ii)非共有結合かつ共有結合する、請求項1~3のいずれか1項に記載のタンパク質複合体。
  5. N-βは、βストランドa~βストランドcを含むかまたはそれらからなるCH2またはCH3ドメインの連続したアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなり、C-βは、βストランドe~βストランドgを含むかまたはそれらからなるCH2またはCH3ドメインの連続したアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなる、請求項3または4に記載のタンパク質複合体。
  6. N-βおよびC-βは各々、天然には存在しないCys残基を含み、該Cys残基は、フォールディングしたN-βおよびC-βそれぞれにおいて、天然では3から7.5Åの間Cα原子間距離を有するアミノ酸に取って代わっている、請求項1~5のいずれか1項に記載のタンパク質複合体。
  7. HADは、
    PSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSXEDPEVXFXWYVDGVEVHN
    (配列番号1)
    (配列中、XはHまたはQであり、XはKまたはQであり、XはNまたはKである);または配列番号1に対し少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%の同一性を有するアミノ酸配列を含む配列番号1の変異体を含むかまたはそれからなり;
    かつ/またはHDBは、
    NSTXRVVSVLTVXHQDWLNGKEYKCKVSNKXLPXIEKTI
    (配列番号2)
    (配列中、XはYまたはFであり;XはLまたはVであり;XはAまたはGであり;XはKまたはQであり;XはNまたはKである);または配列番号2に対し少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%の同一性を有するアミノ酸配列を含む配列番号2の変異体を含むかまたはそれからなり:配列番号1またはその変異体は、配列番号2またはその変異体とヘテロ二量体化することができる、請求項1~6のいずれか1項に記載のタンパク質複合体。
  8. PCAおよび/またはPCB内に1つまたはそれ以上の抗原結合部位を含む複合体であって、該1つまたはそれ以上の抗原結合部位はそれぞれ、2つのドメインの対によって形成されており、一方は該PCA中に含まれ、もう一方は該PCB中に含まれており、該抗原結合部位はHDAまたはHDBのN末端および/もしくはC末端に位置する、請求項1~7のいずれか1項に記載のタンパク質複合体。
  9. PCAおよび/またはPCBは、1つまたはそれ以上のさらなるホモおよび/またはヘテロ二量体化ドメインC(HDC)を含み、該ホモ二量体化ドメインは、CH3ドメイン、CH2-CH3ドメイン、または、ホモ二量体化がIg様フォールド、ロスマンもしくはロスマン様アルファ-ベータ-アルファサンドイッチフォールド、アルファサンドイッチフォールド、連続ベータシートフォールド、ベータサンドイッチフォールド、混合ベータシートフォールド、2-ヘリックス配向、逆平行アルファヘリックス配向、平行アルファヘリックス配向、4-ヘリックスバンドルモチーフ、ロイシンジッパー、およびコイルドコイルドメインによって媒介されるドメインからなる群から選択され、該ヘテロ二量体化ドメインは、knob-into-hole CH3ドメイン、knob-into-hole CH2-CH3ドメイン、ヘテロ二量体化を起こすように導入された変異(例えば、荷電変異)を有するFc-ドメイン、相互交換されたドメイン(例えば、Fc-ドメイン/カッパヘテロ二量体化ドメイン、CLおよびCHドメインなどの)の一対のうちのドメイン、ヘテロ二量体化を起こすように導入された変異を有するIg様フォールド、または、ロスマンもしくはロスマン様アルファ-ベータ-アルファサンドイッチフォールド、アルファサンドイッチフォールド、連続ベータシートフォールド、ベータサンドイッチフォールド、混合ベータシートフォールド、2-ヘリックス配向、逆平行アルファヘリックス配向、平行アルファヘリックス配向、4-ヘリックスバンドルモチーフ、ロイシンジッパー、およびコイルドコイルドメインを含むヘテロ二量体化を媒介するドメインからなる群から選択され;該抗原結合部位は、HDCのN末端および/またはC末端に位置する、請求項1~8のいずれか1項に記載のタンパク質複合体。
  10. PCAおよびPCBは、N末端からC末端へ、以下の要素:
    (i)PCA:V2-L1-HDA、およびPCB:V2-L2-HDB;
    (ii)PCA:V1-L3-HDA-L4-V2、およびPCB:V1-L1-HDB-L2-V2;
    (iii)PCA:V1-L1-V2-L2-HDA、およびPCB:V2-L3-V1-L4-HDB;
    (iv)PCA:V1-L3-V2-L5-CL-L4-HDA、およびPCB:V1-L1-V2-L6-CH1-L2-HDB、
    (ここでは、L5、CL、L6、およびCH1は、存在していてもしていなくてもよい);または
    (v)PCA:V1-L4-V2-L5-CL-L6-HDA、およびPCB:V2-L1-V1-L2-CH1-L3-HDB
    (ここでは、L5、CL、L2、およびCH1は、存在していてもしていなくてもよい);
    を含み、
    V1、V2、V3、およびV4の各対は、重鎖の可変ドメインおよび軽鎖の可変ドメインまたはアルファ鎖の可変ドメインおよびベータ鎖の可変ドメインを含み、抗原結合部位を形成しており、L1~L6は、ペプチドリンカーであり、該PCAおよび/または該PCBは、場合によりHDCをさらに含む、請求項8または9に記載のタンパク質複合体。
  11. PCAおよび/またはPCBは第1のHDCを含み、複合体は、1つまたはそれ以上の抗原結合部位を含む1つまたはそれ以上の追加のポリペプチド、および該第1のHDCに共有結合または非共有結合している第2のHDCを含む、請求項10に記載のタンパク質複合体。
  12. 請求項1~11のいずれか1項に記載のタンパク質複合体の1つまたはそれ以上のポリペプチドをコードする、1つまたはそれ以上のポリヌクレオチド。
  13. 請求項12に記載の1つまたはそれ以上のポリヌクレオチドを含む、1つまたはそれ以上の発現ベクター。
  14. 請求項12に記載の1つまたはそれ以上のポリヌクレオチド、または請求項13に記載の1つまたはそれ以上の発現ベクターを含む、細胞。
  15. 薬学的に許容される担体と、請求項1~11のいずれか1項に記載のタンパク質複合体、請求項12に記載の1つまたはそれ以上のポリヌクレオチド、または請求項13に記載の1つまたはそれ以上の発現ベクターとを含む、薬学的組成物。
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