JP2023518932A - 安定性、複合体形成能力及びトランスフェリン受容体親和性が向上したフェリチン変異体 - Google Patents

安定性、複合体形成能力及びトランスフェリン受容体親和性が向上したフェリチン変異体 Download PDF

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Abstract

本発明は、フェリチン変異体のトランスフェリン受容体結合ドメイン(TRBD)を含むポリペプチドに関する。TRBDは、グルタミン酸残基に突然変異した1つ以上のグルタミン残基及び/又はアスパラギン酸残基に突然変異した1つ以上のアスパラギン残基を含む。本発明は更に、このポリペプチドと標識又は薬物との複合体、及び本発明のポリペプチド又は複合体を含む単離細胞送達系、並びに予防、治療、診断又は治療診断のための、特に癌又は炎症性疾患の治療のためのそのような系の使用に関する。【選択図】なし

Description

本発明は、新規フェリチン変異体、例えば、トランスフェリン受容体結合ドメイン(TRBD)を含むポリペプチドに関する。TRBDは、グルタミン酸残基に突然変異した1つ以上のグルタミン残基及び/又はアスパラギン酸残基に突然変異した1つ以上のアスパラギン残基を含む。本発明は更に、このポリペプチドと化合物、標識又は薬物との複合体、及び本発明のポリペプチド又は複合体を含む単離送達系(単独又は細胞系として)、並びに予防、治療又は診断のための、特に癌又は炎症性疾患の治療のためのそのような系の使用に関する。
CD71(トランスフェリン受容体1)は、代謝的に活性な細胞の表面に遍在的に発現する膜タンパク質である。蓄積された証拠は、CD71が腫瘍の発症及び進行に関与し、その発現が多くの癌において著しく調節不全であることを証明している。抗腫瘍療法のための種々の戦略は、CD71を標的とするように設計されている。トランスフェリン及びフェリチンはいずれもCD71に結合し、クラスリン媒介エンドサイトーシスを介して内部移行される。トランスフェリンは細胞表面に再循環されるが、フェリチンは細胞内に貯蔵される。フェリチンは、24個のタンパク質サブユニットからなるケージ構造を有する。フェリチンを、その空洞内に薬学的活性物質及び/又は標識を封入するために使用することができる。
CD71が悪性細胞において上方制御されるという発見により、CD71は癌の治療及び診断のための有用な薬学的標的となった。この枠組みにおいて、フェリチンベースのナノケージは、癌治療における薬物又は診断用分子の送達のための有望なデバイスとして浮上してきた。特に、Hフェリチンホモポリマーは、それらの独自のアセンブリ、トランスフェリン受容体認識特性及び高い生体適合性により、優れたナノケージ特性を示す。CD71の自然認識を利用することにより、フェリチンナノケージは便利な薬物送達特性及び放出特性を確実にする可能性がある。フェリチンケージ内の小さな治療用分子の封入は調査されており、前臨床研究において成功裏に実施された。CD45+白血球細胞、特に活性化マクロファージは、in vitroで薬物又は標識をロードしたフェリチンを(CD71によってのみではなく)取り込み、これらの複合体を細胞に又は細胞内に、好ましくは腫瘍細胞に又は腫瘍細胞内にin vivoで送達することが示された(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
これまで、多大な労力にもかかわらず、トランスフェリン又はフェリチン薬物複合体は臨床への到達に成功していない(非特許文献1)。本発明者らは、CD71受容体に対するフェリチンの親和性が、N末端領域に、特にトランスフェリン受容体結合ドメイン(TRBD)に負電荷を有する選択的突然変異によって調節することができることを発見した。突然変異は、担体として、特に、薬物及び/又は標識のナノケージとしてフェリチンの特性を改善することが見出された。本発明のTRBD変異体ポリペプチドは、特に(i)TRBD変異体フェリチンのCD71を発現する細胞への改善された標的化;(ii)TRBD変異体フェリチンのCD71への増強した結合;(iii)TRBD変異体フェリチンナノケージへの薬物又は標識の改善された封入効率;(iv)TRBD変異体フェリチンナノケージ内に封入された、又はTRBD変異体フェリチンに結合した薬物又は標識の、細胞への、好ましくは送達細胞への改善されたロード;(v)TRBD変異体フェリチンナノケージ内に封入された、又はTRBD変異体フェリチンに結合した薬物又は標識の、標的組織への改善された標的化;(vi)TRBD変異体フェリチンナノケージ内に封入された、又はTRBD変異体フェリチンに結合した薬物又は標識の、標的組織への改善された送達;(vii)TRBD変異体フェリチンナノケージ内に封入された、又はTRBD変異体フェリチンに結合した薬物又は標識の、標的組織の部位での改善された放出;(viii)TRBD変異体フェリチンの改善された核酸結合特性;(ix)TRBD変異体フェリチンナノケージの改善された安定性;(x)TRBD変異体フェリチンナノケージにおける薬物封入の改善された安定性;(xi)TRBD変異体フェリチンナノケージのロード後の改善されたタンパク質回収率;(xii)TRBD変異体フェリチンナノケージ内に封入された、又はTRBD変異体フェリチンに結合した薬物による、腫瘍細胞に対する増強した細胞傷害性;(xiii)TRBD変異体フェリチンナノケージの改善された物理化学特性;(xiv)TRBD変異体フェリチンナノケージの減少した二量体形成の傾向;(xv)TRBD変異体フェリチンナノケージの減少した凝集の傾向を提供する。
国際公開第2016/207257号 国際公開第2016/207256号 国際公開第2017/222398号
Truffi Mら, Pharmacol Res. 2016 May; 107:57-65
第1の態様において、本発明は、フェリチン変異体のトランスフェリン受容体結合ドメイン(TRBD)を含むポリペプチドであって、TRBD内に、フェリチン変異体が、その基となる野生型フェリチンと比較して、グルタミン酸残基に突然変異した1つ以上のグルタミン残基及び/又はアスパラギン酸残基に突然変異した1つ以上のアスパラギン残基を含む、ポリペプチドに関する。
第2の態様において、本発明は、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ又は少なくとも4つ、好ましくは4つのリジン残基、好ましくは、配列番号1(ヒト野生型重鎖フェリチン)に関して示される54位、72位、87位及び/又は144位のリジン残基が、欠失又は非塩基性アミノ酸で置換されている、フェリチン変異体ポリペプチドに関する。
第3の態様において、本発明は、1つ以上のシステイン残基、特に、配列番号1に関して示される91位、103位及び/又は131位のシステイン残基が、欠失又は置換、好ましくはセリン残基で置換されている、フェリチン変異体ポリペプチドに関する。
第4の態様において、本発明は、第1、第2又は第3の態様のポリペプチドをコードする核酸に関する。
別の態様において、本発明は、第4の態様の核酸を含むベクターに関する。
第5の態様において、本発明は、第1、第2又は第3の態様のポリペプチドと少なくとも1つの標識及び/又は少なくとも1つの薬物とを含むコンジュゲートに関する。
第6の態様において、本発明は、本発明の、少なくとも1つの第1、第2又は第3の態様のポリペプチド及び/又は少なくとも1つの第5の態様のコンジュゲートを含む複合体に関する。
第7の態様において、本発明は、細胞を含む単離標的化送達系に関し、細胞は、本発明の第1の態様、第2若しくは第3の態様のポリペプチド、第5の態様のコンジュゲート、又は第6の態様の複合体を含む。
第8の態様において、本発明は、第1、第2若しくは第3の態様のポリペプチド、第5の態様のコンジュゲート、第6の態様の複合体又は第7の態様の単離標的化送達系と、薬学的に許容される担体及び/又は好適な賦形剤(複数の場合もある)とを含む薬学的組成物又は診断用組成物に関する。
第9の態様において、本発明は、医薬において使用するための、第1、第2又は第3の態様のポリペプチド、第5の態様のコンジュゲート、第6の態様の複合体、第7の態様の単離標的化送達系に関する。
第10の態様において、本発明は、腫瘍、好ましくは固形腫瘍及び/又はその転移、好ましくは乳癌、膵臓癌、膀胱癌、肺癌、結腸癌、卵巣癌、肝臓癌、神経膠腫/膠芽細胞腫又は低酸素領域を有する腫瘍;炎症性疾患又は虚血領域、特に皮膚の創傷中又は器官梗塞(organ infarctus)(心臓)若しくは虚血性網膜の後の治療、予防若しくは診断において使用するための、又は予防的若しくは治療的ワクチン接種のための、特に感染性疾患又は癌を予防又は治療するための、第1、第2若しくは第3の態様のポリペプチド、第5の態様のコンジュゲート、第6の態様の複合体、第7の態様の単離標的化送達系、又は第8の態様の薬学的組成物又は診断用組成物に関する。
第11の態様において、本発明は、有効量の第1、第2若しくは第3の態様のポリペプチド、第5の態様のコンジュゲート、第6の態様の複合体又は第8の態様の単離標的化送達系を、それらを必要とする対象に投与することにより、腫瘍、好ましくは固形腫瘍及び/又はその転移、好ましくは乳癌、膵臓癌、膀胱癌、肺癌、結腸癌、卵巣癌、肝臓癌、神経膠腫/膠芽細胞腫又は低酸素領域を有する腫瘍;炎症性疾患又は虚血領域、特に皮膚の創傷中又は器官梗塞(心臓)若しくは虚血性網膜の後の治療、予防若しくは診断方法、又は予防的若しくは治療的ワクチン接種、特に感染性疾患又は癌を予防又は治療する方法に関する。
固定化HisタグTFRC受容体とヒトフェリチンとの間の相互作用に対応するセンサーグラムを示す図である。パネルA:突然変異体Q11E、パネルB:野生型。X軸:時間(秒)。同量の受容体がチップ表面上にトラップされた(詳細については方法の項を参照のこと)。5つの異なる被分析物濃度(0.0625 mg/ml、0.125 mg/ml、0.250 mg/ml、0.5 mg/ml及び1 mg/ml)を使用した。測定した全ての被分析物濃度について、結合したフェリチンの量は、野生型フェリチンよりもQ11E突然変異体の方が高かった。単純な1:1結合モードを使用した全体的適合は、より高い親和性及び対応するより低いKD値を示す。 突然変異体のインシリコ分析:ヒトH-フェリチン-TfR1複合体に対しPredHS2を、ヒトH-フェリチン-DNA仮想複合体に対してFoldXを使用したことによるホットスポット予測結果を示す図である。DNA結合及びTfR1結合の両方に共通する真陽性は、CPKとして表される。 野生型フェリチン及び突然変異体の未変性ゲル分析は、野生型フェリチンは主に二重接着フレーム、ケージの凝集体及びより大きな凝集体の形態を形成するが、突然変異はフェリチンの凝集体を形成する能力を低下させ、したがって、突然変異体フェリチン変異体は24量体(均一なケージ)として存在することを示す。レーン1:10 kDa Amiconで濃縮したフェリチン野生型-dox。レーン2:100 kDa Amiconで濃縮したフェリチン野生型-dox。レーン3:10 kDa Amiconで濃縮したQ11E突然変異体-dox。レーン4:100 kDa Amiconで濃縮したQ11E突然変異体-dox。レーン5:10 kDa Amiconで濃縮したQ11E-Q15E突然変異体-dox。レーン6:100 kDa Amiconで濃縮したQ11E-Q15E突然変異体-dox。 野生型フェリチン及び突然変異体の未変性ゲル分析は、保存条件が突然変異体におけるケージの安定性に悪影響を及ぼさず、突然変異体フェリチン変異体が保存後に24量体(均一なケージ)として依然として存在することを示す。レーン1:10 kDa Amiconで濃縮したQ11E突然変異体-dox。レーン2:100 kDa Amiconで濃縮したQ11E突然変異体-dox。レーン3:10 kDa Amiconで濃縮したQ11E-Q15E突然変異体-dox。レーン4:100 kDa Amiconで濃縮したQ11E-Q15E突然変異体-dox。レーン5:10 kDa Amiconで濃縮したフェリチン野生型-dox。レーン6:100 kDa Amiconで濃縮したフェリチン野生型-dox。 Ft野生型及びFt突然変異体に対するドキソルビシンロード効率の計算のグラフ表示を示す図である。中央値とともにケージ当たりの平均粒子数をグラフに表示する。 ドキソルビシン封入後のFt野生型及びQ11E突然変異体のUV‐Visスペクトルを示す図である。両方のタンパク質の初期濃度は同じであり、等しく28.5 mg/mlであった。Ft野生型及びQ11E突然変異体の最終濃度は、10.2 mg/ml及び28.5 mg/mlであった。各濃度及び記録されたスペクトルは、1 mlのタンパク質溶液の体積に対するものである。Ft野生型及びQ11E突然変異体の吸光係数は同じであり、等しく18600 M-1cm-1(λ=278 nm)であった。 マクロファージとの72時間の共培養後の腫瘍細胞生存率のグラフを示す図である。ドキソルビシンで充填したフェリチンケージの濃度は、フェリチンの各変異体について同じであり、1 mg/mlに等しかった。 野生型タンパク質(wt)の場合には観察されないQ11Eフェリチン突然変異体とのRNAの会合を示すゲルの画像を示す図である。 vcMMAEとのコンジュゲーション後のフェリチンのLC-MSスペクトルを示す図である。スペクトルは、大部分が2つの薬物分子が結合したフェリチン画分であることを示す。コンジュゲートのモルの薬物対タンパク質比は1.95に等しい。
好ましい態様の詳細な説明
本発明を下記に詳細に説明する前に、本明細書に記載の特定の方法論、プロトコル及び試薬は変更することができるため、本発明がこれらに限定されないことを理解されたい。本明細書で使用される用語は特定の実施形態を説明することを目的とするものに過ぎず、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図するものではないことも理解されたい。特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての専門用語及び科学用語は、当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
「ペプチド」又は「ポリペプチド」という用語は、ペプチド結合により連結した少なくとも2つのアミノ酸の鎖を指すために本発明の文脈において同じ意味で使用される。したがって、本発明の文脈における「ポリペプチド」という用語は、50超、100超又は150超のアミノ酸を含むアミノ酸鎖を指すためにも使用される。
「アミノ酸」という用語は、天然に存在するアミノ酸と同様にアミノ酸誘導体を包含する。本明細書の文脈において、アミノ酸は、1文字表記又は3文字表記のいずれかを使用して識別される(Hausman RE, Cooper GM (2004) The cell: a molecular approach. Washington, D.C: ASM Press. p. 51. ISBN 978-0-87893-214-6)。文字Xで識別されるアミノ酸は、任意のアミノ酸に対応する。文字Bで識別されるアミノ酸は、D(アスパラギン)又はN(アスパラギン酸)のいずれかに対応する。文字Zで識別されるアミノ酸は、E(グルタミン)又はQ(グルタミン酸)のいずれかに対応する。
「ポリヌクレオチド」及び「核酸」という用語は、本明細書において同じ意味で使用され、ヌクレオチドモノマーから作製されるポリマー又はオリゴマーの巨大分子として理解される。ヌクレオチドモノマーは、核酸塩基、五炭糖(リボース又は2'-デオキシリボース等であるが、これらに限定されない)、及び1つ~3つのリン酸基から構成される。典型的には、ポリヌクレオチドは、個々のヌクレオチドモノマー間のホスホジエステル結合によって形成される。本発明の文脈において、言及される核酸分子としては、リボ核酸(RNA)及びその種々の形態(例えば、ssRNA、LNA等であるが、これらに限定されない)、デオキシリボ核酸(DNA)、並びにそれらの混合物、例えば、RNA-DNAハイブリッド等が挙げられるが、これらに限定されない。核酸は、例えば、化学的に、例えば、ホスホトリエステル法(例えば、Uhlmann, E. &Peyman, A. (1990) Chemical Reviews, 90, 543-584を参照のこと)に従って合成することができる。「アプタマー」は、高い親和性でポリペプチドに結合する核酸である。アプタマーは、SELEmir146-a(例えば、Jayasena (1999) Clin. Chem., 45, 1628-50、Klug及びFamulok (1994) M. Mol. Biol. Rep., 20, 97-107、米国特許第5,582,981号を参照のこと)等の選択法によって、種々の一本鎖RNA分子の大きなプールから単離することができる。アプタマーは、それらの鏡像形態で、例えば、L-リボヌクレオチドとして合成し、選択することもできる(Nolteら(1996) Nat. Biotechnol., 14, 1116-9、Klussmannら(1996) Nat. Biotechnol., 14, 1112-5)。このようにして単離された形態には、天然に存在するリボヌクレアーゼによって分解されず、したがって、より大きな安定性を有するという利点がある。
「同一性」という用語は、ポリペプチド及びヌクレオチド配列比較に関して本明細書全体を通して使用される。2つの配列を比較し、配列同一性パーセンテージを算出するために比較される参照配列が指定されない場合、特に具体的な指示がない限り、配列同一性は比較する2つの配列のうち長い方を参照して算出される。参照配列が指示される場合、配列同一性は、特に具体的な指示がない限り、配列番号によって指示される参照配列の完全長に基づいて決定される。例えば、参照300アミノ酸長ポリペプチド配列と比較して、200アミノ酸からなるポリペプチド配列は、66.6%(200/300)の配列同一性の最大パーセンテージを示し得るが、150アミノ酸の長さを有する配列は、50%(150/300)の配列同一性の最大パーセンテージを示し得る。150アミノ酸のうちの15アミノ酸が300アミノ酸長参照配列のそれぞれのアミノ酸とは異なる場合、配列同一性のレベルは45%に低下する。ヌクレオチド配列及びアミノ酸配列の類似性、すなわち、配列同一性のパーセンテージは、配列アラインメントを介して決定することができる。そのようなアラインメントは、いくつかの当該技術分野で既知のアルゴリズム、好ましくはKarlin及びAltschulの数学的アルゴリズム(Karlin&Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 5873-5877)、hmmalign(HMMERパッケージ、http://hmmer.wustl.edu/)又はCLUSTALアルゴリズム(Thompson, J. D., Higgins, D. G. & Gibson, T. J. (1994) Nucleic Acids Res. 22, 4673-80)を用いて実施することができ、例えば、http://www.ebi.ac.uk/Tools/clustalw/又はhttp://www.ebi.ac.uk/Tools/clustalw2/index.html又はhttp://npsa-pbil.ibcp.fr/cgi-bin/npsa_automat.pl?page=/NPSA/npsa_clustalw.htmlで入手可能である。使用される好ましいパラメータは、http://www.ebi.ac.uk/Tools/clustalw/又はhttp://www.ebi.ac.uk/Tools/clustalw2/index.htmlで設定されるデフォルトパラメータである。配列同一性(配列マッチング)の度合いは、例えば、BLAST、BLAT又はBlastZ(又はBlastX)を使用して算出することができる。BLASTタンパク質検索をBLASTPプログラム、スコア=50、ワード長=3を用いて実施する。比較目的のためのギャップ付きアラインメントを得るために、Altschulら(1997) Nucleic Acids Res. 25: 3389-3402に記載されているようにGapped BLASTを利用する。BLAST及びGapped BLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラムのデフォルトパラメータを使用する。配列マッチング分析は、Shuffle-LAGAN(Brudno M., Bioinformatics 2003b, 19 Suppl1:I54-I62)又はマルコフ確率場のような確立されている相同性マッピング法により補足することができる。配列データベース検索からの情報、3D構造及びユーザー定義の制約を有する利用可能なホモログを使用した複数のタンパク質配列及び/又は構造のための構造ベースアラインメントも使用することもできる(Pei J, Grishin NV: PROMALS: towards accurate multiple sequence alignments of distantly related proteins. Bioinformatics 2007, 23:802-808、3DCoffee@igs: a web server for combining sequences and structures into a multiple sequence alignment. Poirot O, Suhre K, Abergel C, O'Toole E, Notredame C. Nucleic Acids Res. 2004 Jul 1;32:W37-40.)。配列同一性のパーセンテージが本出願において言及される場合、これらのパーセンテージは、特に具体的な指示がない限り、より長い配列の完全長に関して算出される。
いくつかの文献が本明細書の文章全体を通して引用される。本明細書に引用される文献のそれぞれ(特許、特許出願、科学出版物、製造者の仕様書、使用説明書等の全てを含む)は、上記又は下記を問わず、それらの全体が引用することにより本明細書の一部をなす。本明細書中のいずれの記載も、本発明が先行発明のためにかかる開示に先行する権利がないことを認めるものと解釈されるものではない。
本発明を実施するために、特に指示がない限り、当該分野における文献(例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Edition, J. Sambrookら編, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor 1989を参照)で説明されている化学、生化学、及び組換えDNA技術の従来の方法が用いられる。
本明細書及び添付の特許請求の範囲の全体を通して、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、「含む(comprise)」という単語、並びに「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」等の変形は、記載された整数若しくは工程又は整数若しくは工程の群を含むが、任意の他の整数若しくは工程又は整数若しくは工程の群を除外しないことを意味するものと理解される。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上特に明確に指示がない限り、複数の指示対象を含む。
「TRBD」という用語は、CD71に特異的に結合することができる、15~40アミノ酸、特に約20アミノ酸のフェリチンポリペプチドのN末端ポリペプチド断片を指す。好ましくは、TRBDは、完全長のフェリチンポリペプチドとしてCD71に対して少なくとも50%の、好ましくは少なくとも75%の、より好ましくは少なくとも90%の結合親和性を有する。2つのタンパク質間の結合親和性を測定する方法は、当該技術分野において既知である。好ましくは、TRBDとCD71との間、好ましくは同じ種のTRBDとCD71との間の親和性は、室温で表面プラズモン共鳴によって測定される。好ましくは、結合親和性のKDは、100 nM以下、50 nM以下、20 nM以下又は5 nM以下である。
以下、本発明の要素を記載する。これらの要素は特定の実施形態とともに列挙されるが、更なる実施形態を作成するために、それらを任意の方法で及び任意の数で組み合わせることができることを理解されたい。様々に記載された実施例及び好ましい実施形態は、本発明を明示的に記載された実施形態のみに限定するものと解釈されるべきではない。本明細書は、明示的に記載された実施形態を任意の数の開示された及び/又は好ましい要素と組み合わせる実施形態を支持及び包含するものと理解されたい。さらに、文脈上特に指定がない限り、本出願において記載された全ての要素の任意の並べ換え(permutations)及び組み合わせが本出願の明細書により開示されているとみなされるべきである。
第1の態様において、本発明は、フェリチン変異体のトランスフェリン受容体結合ドメイン(TRBD)を含むポリペプチドであって、TRBD内に、フェリチン変異体は、その基となる野生型フェリチンと比較して、グルタミン酸残基(Q)に突然変異した1つ以上のグルタミン残基(E)及び/又はアスパラギン酸残基(N)に突然変異した1つ以上のアスパラギン残基(D)を含む、ポリペプチドに関する。フェリチン変異体、特にフェリチン変異体のTRBDは、少なくとも以下のアミノ酸配列:
MTTASX1SZ1VRZ2BYHZ3DX2EAA(配列番号81)
(X1は、S又はT、好ましくはTであり、
X2は、S又はA、好ましくはSであり、
Z1、Z2、及びZ3は、Q又はEであり、
Bは、N又はDであり、
式中、Z2及びZ3のうちの少なくとも1つはEであり、及び/又はBはDである)を含む。アミノ酸配列は、Z、特にZ2及び/又はZ3、及び/又はBの外に、1つ、2つ又は3つのアミノ酸置換を更に含むことができる。1位のMは、存在しても存在しなくてもよい。配列番号81によるアミノ酸配列は、フェリチン変異体のTRBDを指定する。換言すれば、本発明の第1の態様によるポリペプチドは、配列番号81によるTRBDを含む。本発明の第1の態様のポリペプチドは、フェリチンポリペプチド、すなわち、以下で説明する野生型フェリチンポリペプチドと類似した構造を有するポリペプチド及び/又は以下で説明する野生型フェリチンポリペプチドの配列と相同なアミノ酸配列(例えば、以下で説明する野生型フェリチンポリペプチドに対して少なくとも80%、85%、90%又は95%の配列同一性)であることが好ましい。本発明の第1の態様によるポリペプチド、すなわち、フェリチン変異体のTRBDを含むポリペプチド(TRBD内に、フェリチン変異体は、その基となる野生型フェリチンと比較して、グルタミン酸残基に突然変異した1つ以上のグルタミン残基及び/又はアスパラギン酸残基に突然変異した1つ以上のアスパラギン残基を含む)は、本明細書において「TRBD変異体フェリチンポリペプチド」とも称される。
トランスフェリン受容体のファミリーは、トランスフェリン受容体1(TfR-1)及びトランスフェリン受容体2(TfR-2)を含む。TfR-1は全ての活発に増殖している細胞に発現しているが、TfR-2は主に肝細胞及び赤血球前駆細胞に発現している。トランスフェリン受容体-1は、エンドサイトーシスを介してフェリチンの細胞取り込みを媒介することが示されている。「TfR-1」、「CD71」、及び「TFRC」という名称は同じ意味で使用され、トランスフェリン受容体-1を指す。
フェリチンは、ケージ状の構造に集合した24個のフェリチンモノマーサブユニットからなる中空の球状タンパク質複合体である。フェリチンは、主要な細胞内鉄貯蔵タンパク質である。フェリチンは、ほとんど全ての生存生物によって産生され、あらゆる細胞型に存在する。フェリチン遺伝子は、種間で高度に保存されている。脊椎動物においては、軽(L)鎖及び重(H)鎖の型で、それぞれ19 kDa又は21 kDaの分子量を有する2つのフェリチンモノマーが存在する。脊椎動物のフェリチン24量体は、L鎖又はH鎖の一方からなるホモオリゴマー、又はL鎖及びH鎖の両方からなるヘテロオリゴマーであり得る(Theil EC, 1987, Annual Review of Biochemistry. 56 (1): 289-315)。典型的には、フェリチン複合体は、それぞれ約8 nm及び12 nmの内径及び外径を有する。フェリチンは、CD71に結合すると、エンドサイトーシスによって内部移行されることが示された。フェリチン及びCD71の相互作用は、フェリチンH鎖を介して媒介される(Li Lら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 107 (8) (2010) 3505-3510)。フェリチンは血漿中で豊富ではないが、大腸菌(Escherichia coli)細胞等の一般的なタンパク質発現系において組換えタンパク質として高収率で容易に産生することができる。
本発明の第1の態様によるTRBD変異体フェリチンポリペプチドにおいて、野生型配列の非荷電アミノ酸(グルタミン又はアスパラギン)は、負荷電アミノ酸(グルタミン酸又はアスパラギン酸)で置換されている。本発明者らは、驚くべきことに、これにより、CD71に対する親和性が増大することを見出した。いかなる理論にも束縛されるものではないが、本発明者らは、負に荷電した突然変異体がCD71のトランスフェリン結合部分との更なる相互作用を確立し、その結果、CD71とTRBD変異体フェリチンポリペプチドとの間にエネルギー的により有利な相互作用をもたらす可能性が高いと考えている。
本発明の第1の態様によるTRBD変異体フェリチンポリペプチドは、対応する野生型ポリペプチドと比較して、同一の又は非常に類似した形状を示すため、「アイソステリック突然変異体」として記載することができる。これらの「アイソステリック突然変異体」と比較して、TRBD内に他の突然変異を保有する突然変異体は、野生型の形状とは異なる形状を有する。いかなる理論にも束縛されるものではないが、本発明者らは、結果として生じるCD71との表面相補性の欠如が、CD71に対する結合親和性の低下を引き起こす可能性が高いと考えている。
本発明によるポリペプチドの好ましい実施形態において、野生型フェリチンは哺乳動物フェリチンである。哺乳動物フェリチンは、マウス、ラット、イヌ、類人猿、特にチンパンジー、又はヒトフェリチンであってもよい。好ましい実施形態において、哺乳動物フェリチンは、マウス、ウサギ、ラット又はヒトフェリチンである。
本発明によるポリペプチドの好ましい実施形態において、野生型フェリチンはヒト重鎖フェリチンである。
本発明によるポリペプチドの好ましい実施形態において、野生型フェリチンは、ヒトフェリチン重鎖ポリペプチドに対応する配列番号1及びマウスフェリチン重鎖ポリペプチドに対応する配列番号2からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。本発明によるポリペプチドの好ましい実施形態において、野生型フェリチンは、配列番号1によるアミノ酸配列を有する。
本発明によるポリペプチドの好ましい実施形態において、突然変異は、野生型フェリチンのN末端の20アミノ酸に含まれている。
アミノ酸置換は、好ましくは、TfR-1との表面相補性の欠如がフェリチン変異体のCD71への結合を妨げるので、ポリペプチドの立体構造を過度に変化させない方法で選択される。一例として、「小さなアミノ酸」は、別の小さなアミノ酸で置換されるべきである。本発明の文脈における「小さなアミノ酸」は、好ましくは、125ダルトン未満の分子量を有するアミノ酸である。好ましくは、本発明の文脈における小さなアミノ酸は、アミノ酸のグリシン、アラニン、セリン、システイン、スレオニン、及びバリン、又はそれらの誘導体からなる群から選択される。別の例として、疎水性側鎖を有するアミノ酸は、疎水性側鎖を有する別のアミノ酸で置換されるべきである。
本発明の第1の態様によるポリペプチドの好ましい実施形態において、フェリチン変異体、特にフェリチン変異体のTRBDは、少なくとも配列番号05~18、20~33、35~48及び50~63からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、これは、アミノ酸11位、12位及び/又は15位の外に、1つ、2つ又は3つのアミノ酸置換を更に含むことができる。
本発明の第1の態様によるポリペプチドの好ましい実施形態において、フェリチン変異体、特にフェリチン変異体のTRBDは、少なくとも配列番号05~配列番号18からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、これは、アミノ酸11位、12位及び/又は15位の外に、1つ、2つ又は3つのアミノ酸置換を更に含むことができる。配列番号04~配列番号18は、ヒトフェリチンTRBD配列の単一、二重、三重又は四重突然変異体に対応する。
本発明の第1の態様によるポリペプチドの好ましい実施形態において、フェリチン変異体、特にフェリチン変異体のTRBDは、少なくとも配列番号05、11、12、15、20、26、27、30、35、41、42、45、50、56、57及び60からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、これは、アミノ酸11位、12位及び/又は15位の外に、1つ、2つ又は3つのアミノ酸置換を更に含むことができる。
本発明の第1の態様によるポリペプチドの好ましい実施形態において、フェリチン変異体、特にフェリチン変異体のTRBDは、少なくとも配列番号05、11、20、26、35、41、50及び56からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、これは、アミノ酸11位の外に、1つ、2つ又は3つのアミノ酸置換を更に含むことができる。これらの配列は、突然変異体Q11E及び2ECSE(Q11E Q15E)に対応する。
本発明の第1の態様によるポリペプチドの好ましい実施形態において、フェリチン変異体、特にフェリチン変異体のTRBDは、少なくとも配列番号05、20、35及び50からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、これは、アミノ酸11位の外に、1つ、2つ又は3つのアミノ酸置換を更に含むことができる。配列番号05、20、35及び50は、突然変異体Q11Eに対応する。
本発明の第1の態様によるポリペプチドの好ましい実施形態において、フェリチン変異体、特にフェリチン変異体のTRBDは、少なくとも配列番号11、26、41及び56からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、これは、アミノ酸11位及び12位の外に、1つ、2つ又は3つのアミノ酸置換を更に含むことができる。配列番号11、26、41及び56は、突然変異体EDCSE(Q11E N12D)に対応する。
本発明の第1の態様によるポリペプチドの好ましい実施形態において、フェリチン変異体、特にフェリチン変異体のTRBDは、少なくとも配列番号12、27、42及び57からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、これは、アミノ酸11位及び15位の外に、1つ、2つ又は3つのアミノ酸置換を更に含むことができる。配列番号12、27、42及び57は、突然変異体2ECSE(Q11E Q15E)に対応する。
本発明の第1の態様によるポリペプチドの好ましい実施形態において、フェリチン変異体、特にフェリチン変異体のTRBDは、少なくとも配列番号15、30、45及び60からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、これは、アミノ酸8位、11位及び15位の外に、1つ、2つ又は3つのアミノ酸置換を更に含むことができる。配列番号15、30、45及び60は、突然変異体3ECSE(Q8E Q11E Q15E)に対応する。
本発明の第1の態様によるポリペプチドの好ましい実施形態において、フェリチン変異体、特にフェリチン変異体のTRBDは、少なくとも配列番号05(突然変異体Q11E)を含み、これは、アミノ酸11位の外に、1つ、2つ又は3つのアミノ酸置換を更に含むことができる。
本発明の第1の態様によるポリペプチドの好ましい実施形態において、フェリチン変異体、特にフェリチン変異体のTRBDは、配列番号11を含み、これは、アミノ酸11位及び12位の外に、1つ、2つ又は3つのアミノ酸置換を更に含むことができる。
本発明の第1の態様によるポリペプチドの好ましい実施形態において、フェリチン変異体、特にフェリチン変異体のTRBDは、少なくとも配列番号12を含み、これは、アミノ酸11位及び15位の外に、1つ、2つ又は3つのアミノ酸置換を更に含むことができる。
本発明の第1の態様によるポリペプチドの好ましい実施形態において、フェリチン変異体、特にフェリチン変異体のTRBDは、少なくとも配列番号15を含み、これは、アミノ酸8位、11位及び15位の外に、1つ、2つ又は3つのアミノ酸置換を更に含むことができる。
本発明によるポリペプチドの好ましい実施形態において、TRBDに加えて、ポリペプチドは、配列番号64~配列番号70、配列番号78~配列番号80及び配列番号87からなる群から選択される配列に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、99%又は100%、例えば90%、95%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を更に含む。好ましくは、このアミノ酸配列は、TRBDのC末端に含まれる。
本発明のポリペプチドは、複合体形成(24個のフェリチンモノマーサブユニットからなるケージ状の構造)及び鉄の取り込みに関して、野生型フェリチンポリペプチドの特性を本質的に保持する。「本質的に保持する」という表現は、複合体/24量体形成が野生型と比較して改善される実施形態を含むことを意味する。
配列番号64は、哺乳動物H型フェリチンの配列に基づくN末端欠損(N-terminally truncated)コンセンサス配列である。配列番号64において、1位のXは存在しても存在しなくてもよく、存在する場合、それは任意のアミノ酸、好ましくはIを意味し、2位のXは任意のアミノ酸、好ましくはNを意味し、9位のXは任意のアミノ酸、好ましくはYを意味し、19位のXは任意のアミノ酸、好ましくはC又はY、より好ましくはYを意味し、61位のXは任意のアミノ酸、好ましくはFを意味し、63位のXは任意のアミノ酸、好ましくはQを意味し、70位のXは任意のアミノ酸、好ましくはR又はC、より好ましくはCを意味し、85位のXは任意のアミノ酸、好ましくはHを意味し、89位のXは任意のアミノ酸、好ましくはS又はN、より好ましくはNを意味し、116位のXは存在しても存在しなくてもよく、存在する場合、それは任意のアミノ酸、好ましくはY又はH、より好ましくはHを意味し、119位のXは任意のアミノ酸、好ましくはS又はN、より好ましくはNを意味し、124位のXは任意のアミノ酸、好ましくはS又はA、より好ましくはAを意味し、143位のXは任意のアミノ酸、好ましくはA又はS、より好ましくはAを意味し、145位のXは任意のアミノ酸、好ましくはM又はL、より好ましくはLを意味し、157位のXは任意のアミノ酸、好ましくはH又はD、より好ましくはDを意味し、160位のXは存在しないか、又は任意のアミノ酸、好ましくはNであってもよく、161位のXは任意のアミノ酸、好ましくはEであってもよく、162位のXは任意のアミノ酸、好ましくはSであってもよい。
配列番号65は、哺乳動物H型フェリチンの配列に基づくN末端及びC末端欠損コンセンサス配列である。配列番号65において、1位のXは存在しても存在しなくてもよく、存在する場合、それは任意のアミノ酸、好ましくはIを意味し、2位のXは任意のアミノ酸、好ましくはNを意味し、9位のXは任意のアミノ酸、好ましくはYを意味し、19位のXは任意のアミノ酸、好ましくはC又はY、より好ましくはYを意味し、61位のXは任意のアミノ酸、好ましくはFを意味し、63位のXは任意のアミノ酸、好ましくはQを意味し、70位のXは任意のアミノ酸、好ましくはR又はC、より好ましくはCを意味し、85位のXは任意のアミノ酸、好ましくはHを意味し、89位のXは任意のアミノ酸、好ましくはS又はN、より好ましくはNを意味し、116位のXは存在しても存在しなくてもよく、存在する場合、それは任意のアミノ酸、好ましくはY又はH、より好ましくはHを意味し、119位のXは任意のアミノ酸、好ましくはS又はN、より好ましくはNを意味し、124位のXは任意のアミノ酸、好ましくはS又はA、より好ましくはAを意味する。
配列番号66は、哺乳動物H型フェリチンの配列に基づく代替N末端欠損コンセンサス配列である。配列番号66において、1位のXは任意のアミノ酸、好ましくはNを意味し、8位のXは任意のアミノ酸、好ましくはYを意味し、60位のXは任意のアミノ酸、好ましくはFを意味し、62位のXは任意のアミノ酸、好ましくはQを意味し、84位のXは任意のアミノ酸、好ましくはHを意味し、123位のXは任意のアミノ酸、好ましくはS又はA、より好ましくはAを意味し、159位のXは存在しないか、又は任意のアミノ酸、好ましくはNであってもよく、160位のXは任意のアミノ酸、好ましくはEであってもよく、161位のXは任意のアミノ酸、好ましくはSであってもよい。
本発明によるポリペプチドの好ましい実施形態において、ポリペプチドは、配列番号67~配列番号70からなる群から選択される配列に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、99%又は100%、例えば90%、95%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
本発明によるポリペプチドの好ましい実施形態において、ポリペプチドは、配列番号67、配列番号68、配列番号69又は配列番号70のアミノ酸2~118を含む配列に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
本発明によるポリペプチドの好ましい実施形態において、ポリペプチドは、配列番号67に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。配列番号67において、1位のIは、存在しても存在しなくてもよい。
本発明によるポリペプチドの好ましい実施形態において、ポリペプチドは、配列番号67のアミノ酸2~118を含む配列に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
本発明によるポリペプチドの好ましい実施形態において、ポリペプチドは、配列番号05~配列番号63からなる群から選択される配列であって、アミノ酸11位、12位及び/又は15位の外に、1つ、2つ又は3つのアミノ酸置換を更に含むことができる配列と、配列番号64~配列番号70、配列番号78~配列番号80及び配列番号87からなる群から選択される配列に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、99%若しくは100%の同一性を有する配列、又は配列番号64~配列番号70、配列番号78~配列番号80、若しくは配列番号87、特に配列番号67、配列番号68、配列番号69、配列番号70、配列番号78~配列番号80、若しくは配列番号87、より具体的には配列番号78~配列番号80、若しくは配列番号87、最も具体的には配列番号80のアミノ酸1~118若しくは2~118からなる配列に対して90%、95%、97%、98%、99%若しくは100%の同一性を有する配列とを含むか、本質的にそれらからなるか、又はそれらからなる。
本発明によるポリペプチドの好ましい実施形態において、ポリペプチドは、配列番号05~配列番号18からなる群から選択される配列であって、アミノ酸8位、11位、12位及び/又は15位の外に、1つ、2つ又は3つのアミノ酸置換を更に含むことができる配列と、配列番号67に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有する配列とを含むか、本質的にそれらからなるか、又はそれらからなる。
本発明の第1の態様のポリペプチドは、TRBDの外のアミノ酸配列における野生型フェリチン配列と比較して、更なる突然変異を含むことが好ましい。好ましい実施形態において、1つ、2つ、3つ又は4つ、好ましくは4つのリジン残基、好ましくは、配列番号1(ヒト野生型重鎖フェリチン)に関して示される54位、72位、87位及び/又は144位のリジン残基は、欠失又は非塩基性アミノ酸で置換されている。非塩基性アミノ酸による置換は、欠失よりも好ましい。非塩基性アミノ酸は、D若しくはE等の酸性アミノ酸、S、T、N若しくはQ等の非荷電極性アミノ酸、又は非荷電非極性アミノ酸であってもよい。E又はQによる置換が好ましい。最も好ましくは、K54はEで置換され、K72はEで置換され、K87はQで置換され、K144はEで置換されている。本発明者らは、驚くべきことに、これらの突然変異が、精製効率を高め、汚染、特に核酸、より具体的にはDNA、及びエンドトキシンによる汚染を減少させ、安定性を高め、封入効率を改善することを発見した(実施例3~8)。
本発明の第1の態様のポリペプチドのいくつかの実施形態において、1つ、2つ又は3つ、好ましくは2つ又は3つのシステイン残基、好ましくは、配列番号1(ヒト野生型重鎖フェリチン)に関して示される91位、103位及び/又は131位のシステイン残基は、欠失又は置換、好ましくはセリン残基で置換されている。本発明者らは、驚くべきことに、これらの突然変異が、フェリチンポリペプチドの高分子量複合体への凝集を減少させ、24量体の形成を改善することを発見した(実施例3~4)。本発明の第1の態様のポリペプチドのいくつかの実施形態において、配列番号1に関して示される、54位、72位、87位及び/又は144位の1つ以上のリジン残基、及び91位、103位及び/又は131位の1つ以上のシステイン残基は、上記のように欠失又は置換されている。
他の実施形態において、システイン残基は、本発明の第5の態様において請求されるように、薬物又は標識への共有結合コンジュゲーションに使用することができるので、突然変異又は欠失されていない。
本発明によるポリペプチドの好ましい実施形態において、ポリペプチドは、配列番号71、配列番号72、配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号76、及び配列番号77からなる群から選択されるアミノ酸配列か、又は配列番号71~77の1つに対して少なくとも90%、95%、97%、98%、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、本質的にそれらからなるか、又はそれらからなる。ポリペプチドは、TfR-1に対して少なくとも同じ親和性及び/又は配列番号2による野生型ヒト重鎖フェリチンと少なくとも同じ24量体を形成する能力を有する。
本発明によるポリペプチドの好ましい実施形態において、ポリペプチドは、配列番号71を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなる。本発明によるポリペプチドの好ましい実施形態において、ポリペプチドは、配列番号72を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなる。本発明によるポリペプチドの好ましい実施形態において、ポリペプチドは、配列番号73を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなる。本発明によるポリペプチドの好ましい実施形態において、ポリペプチドは、配列番号74を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなる。
本発明によるポリペプチドの更により好ましい実施形態において、ポリペプチドは、配列番号75、配列番号76、若しくは配列番号77、最も好ましくは配列番号77か、又は配列番号75~77の1つ、好ましくは配列番号77に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、本質的にそれらからなるか、又はそれらからなる。
本発明によるポリペプチドの好ましい実施形態において、TfR-1に対するTRBDの親和性は、TfR-1に対する野生型フェリチンのTRBDと比較して、少なくとも1.5倍(以上)、2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、10倍以上、20倍以上、30倍以上、40倍以上、50倍以上増加するが、60倍未満(以下)、50倍以下、40倍以下、30倍以下、20倍以下、10倍以下、又は5倍以下増加する。この実施形態及び以下の実施形態において、「野生型フェリチンのTRBD」とは、それぞれ配列番号1又は配列番号2によるヒトフェリチン重鎖ポリペプチド又はマウスフェリチン重鎖ポリペプチドのTRBD、特にアミノ酸1~20を指す。好ましい実施形態において、TfR-1に対するTRBDの親和性は、TfR-1に対する野生型フェリチンのTRBDの親和性と比較して、少なくとも1.5倍増加する。好ましい実施形態において、TfR-1に対するTRBDの親和性は、TfR-1に対する野生型フェリチンのTRBDの親和性と比較して、少なくとも2倍増加する。好ましい実施形態において、TfR-1に対するTRBDの親和性は、TfR-1に対する野生型フェリチンのTRBDの親和性と比較して、少なくとも3倍増加する。好ましい実施形態において、TfR-1に対するTRBDの親和性は、TfR-1に対する野生型フェリチンのTRBDの親和性と比較して、少なくとも4倍増加する。好ましい実施形態において、TfR-1に対するTRBDの親和性は、TfR-1に対する野生型フェリチンのTRBDの親和性と比較して、少なくとも5倍増加する。好ましい実施形態において、TfR-1に対するTRBDの親和性は、TfR-1に対する野生型フェリチンのTRBDの親和性と比較して、少なくとも10倍増加する。好ましい実施形態において、TfR-1に対するTRBDの親和性は、TfR-1に対する野生型フェリチンのTRBDの親和性と比較して、少なくとも20倍増加する。好ましい実施形態において、TfR-1に対するTRBDの親和性は、TfR-1に対する野生型フェリチンのTRBDの親和性と比較して、少なくとも30倍増加する。好ましい実施形態において、TfR-1に対するTRBDの親和性は、TfR-1に対する野生型フェリチンのTRBDの親和性と比較して、少なくとも40倍増加する。好ましい実施形態において、TfR-1に対するTRBDの親和性は、TfR-1に対する野生型フェリチンのTRBDの親和性と比較して、少なくとも50倍増加する。好ましい実施形態において、TfR-1に対するTRBDの親和性は、TfR-1に対する野生型フェリチンのTRBDの親和性と比較して、60倍未満増加する。好ましい実施形態において、TfR-1に対するTRBDの親和性は、TfR-1に対する野生型フェリチンのTRBDの親和性と比較して、50倍未満増加する。好ましい実施形態において、TfR-1に対するTRBDの親和性は、TfR-1に対する野生型フェリチンのTRBDの親和性と比較して、40倍未満増加する。好ましい実施形態において、TfR-1に対するTRBDの親和性は、TfR-1に対する野生型フェリチンのTRBDの親和性と比較して、30倍未満増加する。好ましい実施形態において、TfR-1に対するTRBDの親和性は、TfR-1に対する野生型フェリチンのTRBDの親和性と比較して、20倍未満増加する。好ましい実施形態において、TfR-1に対するTRBDの親和性は、TfR-1に対する野生型フェリチンのTRBDの親和性と比較して、10倍未満増加する。好ましい実施形態において、TfR-1に対するTRBDの親和性は、TfR-1に対する野生型フェリチンのTRBDの親和性と比較して、5倍未満増加する。好ましい実施形態において、TfR-1に対するTRBDの親和性は、野生型フェリチンのTRBDと比較して、1.5倍~50倍増加する。好ましい実施形態において、TfR-1に対するTRBDの親和性は、野生型フェリチンのTRBDと比較して、2倍~50倍増加する。好ましい実施形態において、TfR-1に対するTRBDの親和性は、野生型フェリチンのTRBDと比較して、3倍~50倍増加する。好ましい実施形態において、TfR-1に対するTRBDの親和性は、野生型フェリチンのTRBDと比較して、4倍~50倍増加する。好ましい実施形態において、TfR-1に対するTRBDの親和性は、野生型フェリチンのTRBDと比較して、5倍~50倍増加する。好ましい実施形態において、TfR-1に対するTRBDの親和性は、野生型フェリチンのTRBDと比較して、10倍~50倍増加する。好ましい実施形態において、TfR-1に対するTRBDの親和性は、野生型フェリチンのTRBDと比較して、20倍~50倍増加する。好ましい実施形態において、TfR-1に対するTRBDの親和性は、野生型フェリチンのTRBDと比較して、30倍~50倍増加する。好ましい実施形態において、TfR-1に対するTRBDの親和性は、野生型フェリチンのTRBDと比較して、40倍~50倍増加する。好ましい実施形態において、TfR-1に対するTRBDの親和性は、野生型フェリチンのTRBDと比較して、1.5倍~10倍増加する。好ましい実施形態において、TfR-1に対するTRBDの親和性は、野生型フェリチンのTRBDと比較して、2倍~20倍増加する。好ましい実施形態において、TfR-1に対するTRBDの親和性は、野生型フェリチンのTRBDと比較して、5倍~30倍増加する。
TfR-1に対するTRBDの結合親和性の増加は、TfR-1に対するTRBD変異体フェリチンポリペプチドの結合を促進するため有利である。これは、所与の時間及び/又は所与のフェリチンの濃度内で、細胞の表面に発現されるTfR-1に結合するTRBD変異体フェリチンポリペプチドの量を増加させる。有効成分がTRBD変異体フェリチンポリペプチドにコンジュゲートしているか、又はTRBD変異体フェリチンポリペプチドのオリゴマー内に封入されている場合、TRBD変異体フェリチンポリペプチドのTfR-1への結合の増加は、TfR-1を発現する細胞の有効成分によるロードを促進する。
その機能を発揮するためには、TRBD変異体フェリチンポリペプチドにコンジュゲートされた、又はTRBD変異体フェリチンポリペプチドのオリゴマー内に封入された有効成分が、最終的に放出されなければならない。理論に束縛されるものではないが、(後期)エンドソーム区画の酸性pHは、フェリチンオリゴマーの分解、したがってオリゴマー内に封入された有効成分の放出をもたらし得る。本発明者らはまた、TfR-1からのTRBD変異体フェリチンポリペプチドの解離を完全に妨げないために、TfR-1に対するTRBDの結合親和性を過度に増加させてはならないことを見出した。最適であるためには、親和性の増加は2桁に達するべきではない。
第2の態様において、本発明は、フェリチン変異体ポリペプチドであって、少なくとも1つの、少なくとも2つの、少なくとも3つの又は少なくとも4つの、好ましくは4つのリジン残基、好ましくは、配列番号1(ヒト野生型重鎖フェリチン)に関して示される54位、72位、87位及び/又は144位のリジン残基が、欠失又は非塩基性アミノ酸で置換されている、フェリチン変異体ポリペプチドに関する。非塩基性アミノ酸による置換は、欠失よりも好ましい。非塩基性アミノ酸は、D又はE等の酸性アミノ酸、S、T、N又はQ等の非荷電極性アミノ酸、又は非荷電非極性アミノ酸であってもよい。フェリチン変異体ポリペプチドは、上記で定義される野生型フェリチンに対する構造的及び機能的相同性を特徴とする。本発明者らは、驚くべきことに、これらの突然変異が、精製効率を高め、汚染、特に核酸、より具体的にはDNA、及びエンドトキシンによる汚染を減少させ、安定性を高め、封入効率を改善することを発見した(実施例3~8)。いくつかの実施形態において、第2の態様のフェリチン変異体ポリペプチドは、54位及び72位、又は54位及び87位、又は54位及び144位、又は72位及び87位、又は72位及び144位、又は87位及び144位、又は54位、72位及び87位、又は54位、72位及び144位、又は54位、87位及び144位、又は72位、87位及び144位、又は54位、72位、87位及び144位に突然変異(すなわち、欠失又は置換)を含む。フェリチン変異体ポリペプチドは、54位、72位、87位及び/又は144位に突然変異を含むことが好ましい。最も好ましくは、K54はEで置換され、K72はEで置換され、K87はQで置換され、K144はEで置換されている。
本発明の第2の態様のフェリチン変異体ポリペプチドは、配列番号82(哺乳動物コンセンサス)、配列番号1(ヒト重鎖フェリチン)又は配列番号2(マウス重鎖フェリチン)による配列であって、54位、72位、87位及び/又は144位の少なくとも1つの、好ましくは全てのリジン残基は、欠失又は非塩基性アミノ酸、好ましくはE若しくはQで置換されており、好ましくは、54位のKはEで置換され、72位のKはEで置換され、87位のKはQで置換され、及び/又は144位のKはEで置換されている、配列を有することが好ましい。配列番号82、配列番号1及び配列番号2による配列は、54位、72位、87位及び/又は144位の外に、1~5、例えば1、2、3、4若しくは5、1~10、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10、1~15、1~20又は1~25のアミノ酸突然変異を更に含むことができる。
哺乳動物コンセンサス配列である配列番号82において、6位のXは任意の天然に存在するアミノ酸、好ましくはProとすることができ、14位のXは任意の天然に存在するアミノ酸、好ましくはHisとすることができ、16位のXは任意の天然に存在するアミノ酸、好ましくはAspとすることができ、21位のXは存在しても存在しなくてもよく、存在する場合、それは任意のアミノ酸、好ましくはIleを意味し、22位のXは任意のアミノ酸、好ましくはAsnを意味し、30位のXは任意の天然に存在するアミノ酸、好ましくはTyrとすることができ、40位のXは任意の天然に存在するアミノ酸、好ましくはTyr又はCys、より好ましくはTyrとすることができ、82位のXは任意の天然に存在するアミノ酸、好ましくはPheとすることができ、84位のXは任意の天然に存在するアミノ酸、好ましくはGlnとすることができ、91位のXは任意の天然に存在するアミノ酸、好ましくはArg又はCys、より好ましくはCysとすることができ、106位のXは任意の天然に存在するアミノ酸、好ましくはHisとすることができ、110位のXは任意の天然に存在するアミノ酸、好ましくはAsn又はSer、より好ましくはAsnとすることができ、137位のXは任意の天然に存在するアミノ酸、好ましくはHis又はTyr、より好ましくはHisとすることができ、140位のXは任意の天然に存在するアミノ酸、好ましくはAsn又はSer、より好ましくはAsnとすることができ、145位のXは任意の天然に存在するアミノ酸、好ましくはAla又はSer、より好ましくはAlaとすることができ、164位のXは任意の天然に存在するアミノ酸、好ましくはAla又はSer、より好ましくはSerとすることができ、166位のXは任意の天然に存在するアミノ酸、好ましくはMet又はLeu、好ましくはLeuとすることができ、178位のXは任意の天然に存在するアミノ酸、好ましくはAsp又はHis、より好ましくはAspとすることができ、181位のXは存在しないか、又は任意の天然に存在するアミノ酸、好ましくはAsnであり、182位のXは存在しないか、又は任意の天然に存在するアミノ酸、好ましくはGluであり、183位のXは存在しないか、又は任意の天然に存在するアミノ酸、好ましくはSerである。
好ましくは、本発明の第2の態様のフェリチン変異体ポリペプチドは、置換K54E若しくはK72E若しくはK87Q若しくはK144E、又はK54E及びK72E、又はK54E及びK87Q、又はK54E及びK144E、又はK72E及びK87Q、又はK72E及びK144E、又はK87Q及びK144E、又はK54E、K72E及びK87Q、又はK54E、K87Q及びK144E、又はK54E、K72E及びK144E、又はK72E、K87Q及びK144E、又はK54E、K72E、K87Q及びK144E、好ましくはK54E、K72E、K87Q及びK144Eを含む、配列番号82、配列番号1又は配列番号2による配列を有し、配列番号82、配列番号1及び配列番号2による配列は、54位、72位、87位及び/又は144位の外に、1~5、例えば1、2、3、4若しくは5、1~10、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10、1~15、1~20又は1~25のアミノ酸突然変異を更に含むことができる。
好ましい実施形態において、本発明の第2の態様のフェリチン変異体ポリペプチドは、TRBDにおけるアイソステリック突然変異、特に突然変異Q8E、Q11E、N12D及び/又はQ15E、好ましくはQ11E又はQ11E及びQ15Eを更に含む。アイソステリック突然変異は、配列番号1によるヒト野生型フェリチン配列に関して示され、本発明の第1の態様に記載されている。
いくつかの実施形態において、本発明の第2の態様のフェリチン変異体ポリペプチドにおいて、1つ以上のシステイン残基、特に91位、103位及び/又は131位のシステイン残基は、欠失又は突然変異、好ましくはセリン残基に突然変異されている。
最も好ましい実施形態において、本発明の第2の態様のフェリチン変異体ポリペプチドは、配列番号83、配列番号84、配列番号85、配列番号86、配列番号75、配列番号76、若しくは配列番号77による配列、又は54位、72位、87位及び/又は144位の外に、1~5、例えば1、2、3、4若しくは5、又は1~10、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10のアミノ酸突然変異を含む、配列番号83、配列番号84、配列番号85、配列番号86、配列番号75、配列番号76、若しくは配列番号77による配列を有する。特に好ましい実施形態において、本発明の第2の態様のフェリチン変異体ポリペプチドは、配列番号77による配列を有する。
配列番号86は、哺乳動物コンセンサス配列であり、各Xは、配列番号82について上で示したものと同じ意味を有する。
第3の態様において、本発明は、フェリチン変異体ポリペプチドであって、1つ以上のシステイン残基、特に、配列番号1に関して示される91位、103位及び/又は131位のシステイン残基が、欠失又は置換、好ましくはセリン残基で置換されている、フェリチン変異体ポリペプチドに関する。フェリチン変異体ポリペプチドは、上記で定義される野生型フェリチンに対する構造的及び機能的相同性を特徴とする。本発明者らは、驚くべきことに、これらの突然変異が、フェリチンポリペプチドの高分子量複合体への凝集を減少させ、24量体の形成を改善することを発見した(実施例3~4)。
本発明の第3の態様のフェリチン変異体ポリペプチドは、配列番号82、配列番号1又は配列番号2による配列であって、91位、103位及び/又は131位の少なくとも1つの、好ましくは全てのシステイン残基は、突然変異、好ましくはセリン残基に突然変異されている、配列を有することが好ましい。配列番号82、配列番号1及び配列番号2による配列は、91位、103位及び/又は131位の外に、1~5、例えば1、2、3、4若しくは5、1~10、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10、1~15、1~20又は1~25のアミノ酸突然変異を更に含むことができる。
哺乳動物コンセンサス配列である配列番号82において、配列に含まれるXは、上記で概説した意味を有する。
好ましい実施形態において、本発明の第3の態様のフェリチン変異体ポリペプチドは、TRBDにおけるアイソステリック突然変異、特に突然変異Q8E、Q11E、N12D及び/又はQ15E、好ましくはQ11E又はQ11E及びQ15Eを更に含む。アイソステリック突然変異は、配列番号1によるヒト野生型フェリチン配列に関して示され、本発明の第1の態様に記載されている。
好ましい実施形態において、本発明の第3の態様のフェリチン変異体ポリペプチドは、54位、72位、87位及び/又は144位に突然変異を更に含む。好ましくは、突然変異は、置換、特に54位のEへの置換、72位のEへの置換、87位のQへの置換、及び/又は144位のEへの置換である。これらの突然変異は、本発明の第2の態様において更に記載されている。
最も好ましい実施形態において、本発明の第3の態様のフェリチン変異体ポリペプチドは、配列番号75若しくは配列番号76による配列、又は91位、103位及び/又は131位の外に、1~5、例えば1、2、3、4若しくは5、又は1~10、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10のアミノ酸突然変異を含む、配列番号75若しくは配列番号76による配列を有する。
有効成分は、本発明の第1の態様のTRBD変異体フェリチンポリペプチド又は本発明の第2若しくは第3の態様のポリペプチドにコンジュゲートされてもよく、又は本発明の第1の態様のTRBD変異体フェリチンポリペプチド又は本発明の第2若しくは第3の態様のポリペプチドのオリゴマーで封入されてもよい。「有効成分」という用語は、治療的に活性な成分及び/又は診断的に活性な成分を包含する。したがって、「有効成分」という用語は、治療剤(薬物とも称される)及び/又は診断用薬(標識とも称される)を指す。本発明者らは、本発明によるTRBD変異体フェリチンポリペプチドが、有効成分、特に封入された有効成分を、TfR-1を発現する細胞に特異的に送達するための好ましいコンストラクトを表すことに注目した。さらに、本発明者らは、本発明によるフェリチン変異体が、有効成分、特に封入された活性成分を、細胞核に送達することができることに注目した。
本発明によるポリペプチドは、追加のドメインを含むことができる。本発明によるポリペプチドの好ましい実施形態において、ポリペプチドは、抗原結合ドメイン、特に抗体又は抗体断片を更に含む。
本発明の文脈において使用される「抗体」という用語は、免疫グロブリンスーパーファミリーに属する糖タンパク質を指し、抗体及び免疫グロブリンという用語は、多くの場合同じ意味で使用される。抗体は、形質細胞によって産生されるタンパク質分子を指し、細菌及びウイルス等の異物を識別し、中和するために、免疫系によって使用される。抗体は、その抗原である外来標的の独自部分を認識する。
本明細書で使用される「抗体断片」という用語は、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つ以上の断片を指す。「抗体断片」という用語において包含される結合断片の例としては、断片抗原結合(Fab)断片、Fab'断片、F(ab')2断片、重鎖抗体、単一ドメイン抗体(sdAb)、一本鎖可変断片(scFv)、可変断片(Fv)、VHドメイン、VLドメイン、単一ドメイン抗体、ナノボディ、IgNAR(免疫グロブリン新抗原受容体)、di-scFv、二重特異性T細胞エンゲージャー(BITE)、二重親和性再標的化(DART)分子、トリプルボディ、ダイアボディ(diabody)、一本鎖ダイアボディ、代替スキャフォールドタンパク質、及びそれらの融合タンパク質が挙げられる。
本明細書において使用される「ダイアボディ」という用語は、異なる抗原に結合することができる融合タンパク質又は二価抗体を指す。ダイアボディは、抗体の断片、すなわち可変断片を含む2つの単一タンパク質鎖から構成される。ダイアボディは、同じポリペプチド鎖上の軽鎖可変ドメイン(VL)に連結された重鎖可変ドメイン(VH)を含む(VH-VL、又はVL-VH)。2つの可変ドメインを連結する短いペプチドを使用することにより、ドメインを別の鎖の相補的なドメインと強制的に対にすることで、2つの抗原結合部位を作り出す。ダイアボディは、同じ抗原(単一特異性)又は異なる抗原(二重特異性)を標的とすることができる。
「単一ドメイン抗体」は、抗体の単一の単量体可変ドメインからなる抗体断片を指す。簡潔に述べると、単一ドメイン抗体は、ラクダ科動物又は軟骨魚類によって産生される重鎖抗体の単量体重鎖可変領域のみを含む。それらの異なる起源のために、単一ドメイン抗体は、VHH又はVNAR(可変新抗原受容体)断片とも称される。代替的には、単一ドメイン抗体は、遺伝子工学の使用による従来のマウス又はヒト抗体の可変ドメインの単量体化によって得ることができる。単一ドメイン抗体は、約12 kDa~15 kDaの分子量を示し、したがって、抗原認識が可能な最小の抗体断片である。更なる例としては、ナノボディ又はナノ抗体が挙げられる。
本明細書の文脈において使用される「抗体ミメティック」という用語は、抗体と同様に抗原と特異的に結合することができるが、抗体とは構造的に関連しない化合物を指す。通常、抗体ミメティックは、抗原に特異的に結合する1つ、2つ又はそれ以上の露出ドメインを含む、約3 kDa~20 kDaのモル質量を有する人工ペプチド又はタンパク質である。例としては、特にLACI-D1(リポタンパク質関連凝固阻害因子);アフィリン、例えばヒトγBクリスタリン又はヒトユビキチン;シスタチン;スルホロブス・アシドカルダリウス(Sulfolobusacidocaldarius)由来のSac7D;リポカリン及びリポカリンに由来するアンチカリン;DARPin(設計アンキリンリピートドメイン);FynのSH3ドメイン;プロテアーゼ阻害剤のクニッツドメイン;モノボディ、例えばフィブロネクチンの10番目のタイプIIIドメイン;アドネクチン;ノッチン(シスチンノットミニタンパク質);アトリマー;エビボディ(evibodies)、例えばCTLA4ベースの結合剤、アフィボディ(affibodies)、例えばスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)由来のプロテインAのZドメインの3ヘリックスバンドル;トランスボディ(Trans-bodies)、例えばヒトトランスフェリン;テトラネクチン、例えば単量体又は三量体ヒトC型レクチンドメイン;ミクロボディ、例えばトリプシン阻害剤II;アフィリン;アルマジロリピートタンパク質が挙げられる。核酸及び小分子が抗体ミメティック(アプタマー)とみなされることもあるが、人工抗体、抗体断片及びこれらから構成される融合タンパク質ではない。抗体に優る一般的な利点は、より良好な溶解性、組織透過性、熱及び酵素に対する安定性、並びに比較的低い生産コストである。
「抗原」という用語は、少なくとも1つのエピトープ、好ましくはB細胞若しくはT細胞応答又はB細胞及びT細胞応答を誘発するエピトープを含む物質、好ましくは免疫原性ペプチドを指すために使用される。
抗原決定基としても既知の「エピトープ」は、物質の一部、例えば免疫系によって認識される免疫原性ポリペプチドである。好ましくは、この認識は、対象となっているエピトープへの抗体、B細胞、又はT細胞の結合によって媒介される。この文脈において、「結合」という用語は、好ましくは特異的結合に関する。エピトープは、通常、アミノ酸又は糖側鎖等の分子の化学的に活性な表面群からなり、通常、特異的な三次元構造特性、及び特異的な電荷特性を有する。「エピトープ」という用語は、立体構造及び非立体構造エピトープの両方を含む。立体構造及び非立体構造エピトープは、変性溶媒の存在下で、前者への結合は失われるが、後者への結合は失われないという点で区別される。
本発明による免疫原性ポリペプチドは、好ましくは、ウイルス、細菌及び原生動物からなる群から選択される病原体に由来する。しかしながら、本発明の代替的実施形態において、免疫原性ポリペプチドは、腫瘍抗原、すなわち、癌によって特異的に発現されるポリペプチド又はポリペプチドの断片である。
第4の態様において、本発明は、第1、第2又は第3の態様のポリペプチドをコードする核酸に関する。
別の態様において、本発明は、第4の態様の核酸を含むベクターに関する。
第5の態様において、本発明は、本発明の第1、第2又は第3の態様のポリペプチドと少なくとも1つの標識及び/又は少なくとも1つの薬物とを含むコンジュゲートに関する。
本発明の文脈において使用される「ポリペプチドと少なくとも1つの標識及び/又は少なくとも1つの薬物とを含むコンジュゲート」という語句は、1つ以上の有効成分の分子が、本発明の第1、第2又は第3の態様のポリペプチドに共有結合又は非共有結合している組成物を指す。ポリペプチドと有効成分との間の共有結合又は非共有結合は、直接的又は間接的であり得る。後者の場合、有効成分は、リンカー又はスペーサーを介してポリペプチドに連結される。リンカー又はスペーサーは、例えば、ポリアラニン、ポリグリシン、炭水化物、(CH2n基又はポリペプチドリンカー、特にペプチドベースの切断可能なリンカー(例えば、カテプシン感受性バリン-シトルリン配列及びパラ-アミノベンジルカルバメートスペーサー)が当業者に既知である。したがって、当業者は、それぞれの用途に応じて、それぞれの好適なリンカー(複数の場合もある)又はスペーサー(複数の場合もある)を選択することができる。
第6の態様において、本発明は、少なくとも1つの本発明の第1、第2又は第3の態様のポリペプチド及び/又は少なくとも1つの本発明の第5の態様のコンジュゲートを含む複合体に関する。
本発明の文脈において使用される「ポリペプチド及び/又は少なくとも1つのコンジュゲートを含む複合体」という語句は、1つ以上の本発明の第1、第2又は第3の態様のポリペプチドによって、1つ以上の本発明の第5の態様のコンジュゲートによって、又は少なくとも1つの本発明の第1、第2又は第3の態様のポリペプチド及び少なくとも1つの本発明の第5の態様のコンジュゲートによって形成された複合体を指す。複合体は、ポリペプチド(複数の場合もある)及び/又はコンジュゲート(複数の場合もある)間の共有結合又は非共有結合によって形成される。共有結合又は非共有結合は、直接的又は間接的であり得る。好ましい実施形態において、複合体は、ポリペプチド(複数の場合もある)及び/又はコンジュゲート(複数の場合もある)間の非共有結合によって形成されるオリゴマー、特に24量体である。
本発明による複合体の好ましい実施形態において、複合体は、少なくとも1つの標識及び/又は少なくとも1つの薬物を更に含む。
「薬物」又は「治療剤」という用語は、本発明の文脈において同意語として使用され、好ましくは患者の体内において、細胞活性を改変又は調節するために、細胞活性を改変又は調節する任意の化合物、又は活性化されることが可能である任意の化合物、すなわち、プロドラッグを指す。そのような有効成分の例としては、いわゆる「小分子」及びペプチドが挙げられる。「小分子」という用語は、1.500 g/mol未満の分子量を有する炭化水素、又は薬学的に活性な放射性同位体を指すために本発明の文脈において使用される。好ましくは、使用することができる薬物は、抗癌剤、薬学的に活性な放射性同位体又はフェリハイドライトを含む。
本発明の文脈において使用される「プロドラッグ」という用語は、投与後に、少なくとも1つの特性に関して生物学的に活性な又はより活性な成分(又は薬物)に代謝されるか、又は別の方法で変換される任意の有効成分を指す。薬物と比較して、プロドラッグは、薬物と比べて活性が低いか又は不活性になるような方法で化学的に修飾されるが、化学修飾は、プロドラッグが患者に投与された後に代謝又は他の生物学的過程によって対応する薬物が生成されるようなものである。プロドラッグは、例えば、活性薬物と比較して、変化した代謝的安定性若しくは輸送特徴、より少ない副作用若しくはより低い毒性、又は改善された風味を有し得る(例えば、引用することにより本明細書の一部をなす、参照文献Nogrady, 1985, Medicinal Chemistry A Biochemical Approach, Oxford University Press, New York, pages 388-392を参照のこと)。プロドラッグは、対応する薬物以外の反応物を使用して合成することができる。
「標識」又は「診断用薬」という用語は、本明細書において同じ意味で使用され、診断目的に好適である任意の種類の化合物を指す。好ましい化合物は、蛍光色素、放射性同位体及び造影剤から選択される。造影剤は、体内の異常な領域を示すのに役立つ染料又は他の物質である。一実施形態において、標識という用語は、二価又は三価の金属カチオンと錯体を形成するキレート剤を含む化合物を指す。好ましい放射性同位体/蛍光発光同位体は、アルファ線放出同位体、ガンマ線放出同位体、オージェ電子放出同位体、X線放出同位体、蛍光同位体、例えば65Tb、蛍光発光同位体、例えば18F、51Cr、67Ga、68Ga、111In、99mTc、140La、175Yb、153Sm、166Ho、88Y、89Zr、90Y、149Pm、177Lu、47Sc、142Pr、159Gd、212Bi、72As、72Se、97Ru、109Pd、105Rh、101m15Rh、119Sb、128Ba、123I、124I、131I、197Hg、211At、169Eu、203Pb、212Pb、64Cu、67Cu、188Re、186Re、198Au及び199Ag、並びに上記とタンパク質、ペプチド、小分子阻害剤、抗体又は他の化合物とのコンジュゲート及び組み合わせ、例えば、18Fフルオロデオキシグルコース(18F-FDG)又は64Cu-ポルフィリンからなる群から選択される。好ましい蛍光色素は、以下の種類の色素:キサンテン(例えばフルオレセイン)、アクリジン(例えばアクリジンイエロー)、オキサジン(例えばオキサジン1)、シアニン(Cynines)(例えばCy7/Cy3)、スチリル色素(例えば色素-28)、クマリン(例えばAlexa Fluor 350)、ポルフィン(例えばクロロフィルB)、金属-配位子-錯体(例えばPtOEPK)、蛍光タンパク質(例えばAPC、R-フィコエリトリン)、ナノ結晶(例えばQuantumDot 705)、ペリレン(例えばLumogen Red F300)及びフタロシアニン(例えばIRDYE(商標) 700DX)、並びにこれらの種類の色素又は蛍光性の65Tb発光のコンジュゲート及び組み合わせから選択される。好ましい造影剤は、常磁性剤、例えば、Gd、Eu、W及びMn、好ましくはキレート剤と錯体を形成したものから選択される。更なる選択肢は、超常磁性鉄(Fe)錯体及び粒子、原子番号の大きい原子を含有する化合物、すなわち、コンピュータ断層撮影(CT)用のヨウ素、マイクロバブル、並びにこれらの造影剤を含有するリポソーム等の担体である。
少なくとも1つの標識及び/又は少なくとも1つの薬物(すなわち、少なくとも1つの有効成分)は、本発明の第1の態様によるTRBD変異体フェリチンポリペプチド又は本発明の第2若しくは第3の態様によるポリペプチドに共有結合又は非共有結合するか、又は本発明の第6の態様による複合体内に封入される。したがって、「複合体」という用語はまた、タンパク質(複数の場合もある)と有効成分(複数の場合もある)との間の共有結合又は非共有結合がない状態であっても、ケージ内の有効成分の封入を包含する。複合体の形成は、細胞がフェリチンを内部移行するときに、細胞への有効成分の輸送を可能にする。したがって、輸送機構に干渉しない方法で、有効成分を鉄結合タンパク質に結合することが好ましい。当業者はこれを当該技術分野において既知の取り込みアッセイを使用して容易に試験することができ、以下の実施例の項に記載する。有効成分を含む複合体が細胞によって取り込まれ、体内の標的領域に輸送される場合、複合体は、体内の標的領域への細胞内での輸送に耐えるのに十分に安定であることが好ましい。したがって、有効成分単独ではなく複合体を、細胞又は標的領域の細胞へと送達することが好ましい。この特性はまた、有効成分を送達する細胞に対する有効成分の潜在的悪影響、例えば細胞傷害性を低減する。
有効成分は、フェリチン巨大分子自体の会合/解離特性を利用することにより、フェリチンオリゴマーの内部空洞内に封入(物理的な閉じ込め)することができる。有効成分は、空洞内部表面におけるアミノ酸残基との非共有結合的相互作用によって適所に保持される。
有効成分が本発明のTRBD変異体フェリチンポリペプチド又は第2若しくは第3の態様によるポリペプチドに共有結合する場合、そのような結合は、フェリチンのTfR-1への結合に関与しない表面領域に位置することが知られているアミノ酸残基によるものであることが好ましい。本発明の文脈において使用されるTRBD変異体フェリチンポリペプチドは、多種多様な有効成分との安定な非共有結合複合体を形成することができる。有効成分がペプチド、例えば抗原ペプチドである場合、この場合、鉄結合タンパク質からのペプチドの放出は、フェリチンペプチド融合タンパク質全体のエンドソーム処理を必要とするため、抗原ペプチドは鉄結合タンパク質との融合物として発現されないことが好ましい。
コンジュゲーション/吸着/結合方法がどのようなものであっても、本発明のTRBD変異体フェリチンポリペプチド又は第2若しくは第3の態様によるポリペプチド、並びにそれらの記載されたコンジュゲート及び複合体は、腫瘍標的化特性を有する適切な細胞系、例えば活性化マクロファージにロードされることで、薬物及び標識の特権的な担体となることが本発明者らによって示された。本発明のこれらのTRBD変異体フェリチンポリペプチド又は第2若しくは第3の態様によるポリペプチドの精製手順は、容易、迅速、安価及び安全であり、多大な付加価値をもたらす。
以下の好ましい実施形態は、本発明の第5及び第6の態様の両方を更に特定する。
好ましい実施形態において、薬物及び/又は標識は、タンパク質、核酸、1.5 kDa未満、より好ましくは1 kDa未満の分子量を有する化学的非タンパク質非核酸化合物、ウイルス、及び細胞に損傷を与える量のγ線も放出するα線又はβ線放出放射性同位体からなる群から選択される。
薬物が核酸である場合、それは、miRNA、siRNA、化学修飾RNA、LNA、ssRNA、DNAザイム、又は薬学的に活性なタンパク質、例えば、抗体、抗体ミメティック、サイトカイン、プロドラッグ変換酵素、免疫原性ペプチド等をコードする核酸であることが好ましい。
好ましい実施形態において、標識は、蛍光色素、放射性同位体/蛍光発光同位体、検出可能なポリペプチド又は検出可能なポリペプチドをコードする核酸、及び造影剤からなる群から選択される。
好ましい実施形態において、蛍光色素は、以下の種類の蛍光色素:キサンテン、アクリジン、オキサジン、シアニン、スチリル色素、クマリン、ポルフィン、金属-配位子-錯体、蛍光タンパク質、ナノ結晶、ペリレン及びフタロシアニン、並びにこれらの種類の色素のコンジュゲート及び組み合わせからなる群から選択される。
好ましい実施形態において、放射性同位体/蛍光発光同位体は、アルファ線放出同位体、ガンマ線放出同位体、オージェ電子放出同位体、X線放出同位体、蛍光同位体、例えば65Tb、蛍光発光同位体、例えば18F、51Cr、67Ga、68Ga、89Zr、111In、99mTc、140La、175Yb、153Sm、166Ho、88Y、90Y、149Pm、177Lu、47Sc、142Pr、159Gd、212Bi、72As、72Se、97Ru、109Pd、105Rh、101m15Rh、119Sb、128Ba、123I、124I、131I、197Hg、211At、169Eu、203Pb、212Pb、64Cu、67Cu、188Re、186Re、198Au及び199Ag、並びに上記とタンパク質、ペプチド、小分子阻害剤、抗体又は他の化合物とのコンジュゲート及び組み合わせ(例えば、18F-FDG、89Zr-オキシド又は64Cu-ポルフィリン)からなる群から選択される。
好ましい実施形態において、検出可能なポリペプチドは、自家蛍光タンパク質、好ましくは緑色蛍光タンパク質又は変化した吸着及び/又は発光スペクトルを有するその任意の構造変異体である。
好ましい実施形態において、造影剤は、常磁性剤、好ましくはGd、Eu、W及びMnから選択される常磁性剤、又はフェリハイドライドを含む。
好ましい実施形態において、標識は、二価又は三価の金属カチオンとの錯体を形成するキレート剤を含む。
本発明の標的化送達系の好ましい実施形態において、キレート剤は、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N',N,N'-四酢酸(DOTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-三酢酸(NOTA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、イミノ二酢酸、ジエチレントリアミン-N,N,N',N',N''-五酢酸(DTPA)及び6-ヒドラジノピリジン-3-カルボン酸(HYNIC)からなる群から選択される。
好ましい実施形態において、薬物は、抗癌剤、抗動脈硬化薬、及び抗炎症薬又は免疫調節薬(例えば、ウイルス又は細菌感染を模倣するTRLアゴニスト、STINGアゴニスト)からなる群から選択される。
好ましい実施形態において、抗癌剤は、細胞増殖抑制剤、細胞傷害性剤又はそれらのプロドラッグである。
好ましい抗癌剤は、アポトーシス/オートファジー又は壊死誘導剤から選択される。アポトーシス/オートファジー又は壊死誘導剤は、細胞増殖に異常を有する細胞においてもアポトーシス/オートファジー又は壊死を効果的に誘導することができる任意の薬物であり得る。これらの薬物は、1つ以上のフェリチンとの複合体で使用されることが好ましい。
好ましい実施形態において、抗癌剤は、アポトーシス誘導剤、アルキル化物質、代謝拮抗剤、抗生物質、エポチロン、核内受容体アゴニスト及びアンタゴニスト、抗アンドロゲン、抗エストロゲン、白金化合物、ホルモン、抗ホルモン、インターフェロン、細胞周期依存性プロテインキナーゼ(CDK)の阻害剤、シクロオキシゲナーゼ及び/又はリポキシゲナーゼの阻害剤、生体脂肪酸、プロスタノイド及びロイコトリエンを含む生体脂肪酸誘導体、プロテインキナーゼの阻害剤、プロテインホスファターゼの阻害剤、脂質キナーゼの阻害剤、白金配位錯体、エチレンイミン、メチルメラミン、トリアジン、ビンカアルカロイド、ピリミジン類似体、プリン類似体、アルキルスルホネート、葉酸類似体、アントラセンジオン、置換尿素、及びメチルヒドラジン誘導体、エン-ジイン抗生物質、メイタンシノイド又はアウリスタチン誘導体等のチューブリン重合阻害剤、免疫チェックポイント阻害剤、並びに腫瘍特異的タンパク質又はマーカーの阻害剤、好ましくはRho-GDP解離阻害剤、より好ましくはGrp94、又はAXL阻害剤からなる群から選択される。
好ましい実施形態において、抗癌剤は、アセジアスルホン、アクラルビシン、アンバゾン、アミノグルテチミド、アウリスタチン、L-アスパラギナーゼ、アザチオプリン、バノキサントロン、ベンダムスチン、ブレオマイシン、ブスルファン、ホリナートカルシウム、カルボプラチン、カペシタビン、カルムスチン、セレコキシブ、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシンダプソン、ダウノルビシン、ジブロムプロパミジン、ジエチルスチルベストロール、ドセタキセル、ドキソルビシン、エンジイン、エピルビシン、エポチロンB、エポチロンD、エストラムスチンホスフェート、エストロゲン、エチニルエストラジオール、エトポシド、フラボピリドール、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、フルオキシメステロン、フルタミド、ホスフェストロール、フラゾリドン、ゲムシタビン、ゴナドトロピン放出ホルモン類似体、ヘキサメチルメラミン、ヒドロキシカルバミド、ヒドロキシメチルニトロフラントイン、ヒドロキシプロゲステロンカプロエート、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イドクスウリジン、イホスファミド、インターフェロンα、イリノテカン、ロイプロリド、ロムスチン、ルートテカン、マフェニドサルフェートオラミド(mafenidesulfateolamide)、メクロレタミン、酢酸メドロキシプロゲステロン、メゲストロールアセテート、メルファラン、メパクリン、メルカプトプリン、メトトレキサート、メトロニダゾール、マイトマイシンC、ミトポドジド、ミトタン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、ナリジクス酸、ニフラテル、ニフロキサジド、ニフララジン(nifuralazine)、ニフルチモックス、ニムスチン、ニモラゾール、ニトロフラントイン、ナイトロジェンマスタード、オレオムチン(oleomucin)、オキソリン酸、ペンタミジン、ペントスタチン、フェナゾピリジン、フタリルスルファチアゾール、ピポブロマン、プレドニムスチン、プレドニゾン、プロイシン、プロカルバジン、ピリメタミン、ラルチトレキセド、ラパマイシン、ロフェコキシブ、ロシグリタゾン、サラゾスルファピリジン、スクリフラビニウムクロライド(scriflavinium chloride)、セムスチン、ストレプトゾシン、スルファカルバミド、スルファセタミド、スルファクロロピリダジン、スルファジアジン、スルファジクラミド、スルファジメトキシン、スルファエチドール、スルファフラゾール、スルファグアニジン、スルファグアノール、スルファメチゾール、スルファメトキサゾール、コトリモキサゾール、スルファメトキシジアジン、スルファメトキシピリダジン、スルファモキソール、スルファニルアミド、スルファペリン、スルファフェナゾール、スルファチアゾール、スルフイソミジン、スタウロスポリン、タモキシフェン、タキソール、テニポシド、ターチポシド(tertiposide)、テストラクトン、テストステロンプロピオネート、チオグアニン、チオテパ、チニダゾール、トポテカン、トリアジコン、トレオスルファン、トリメトプリム、トロホスファミド、UCN-01、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビンブラスチン、ビノレルビン、及びゾルビシンからなる群から選択され、好ましくは、アウリスタチン、バノキサントロン、ベンダムスチン、クロラムブシル、カリシアマイシン(chaliceamycin)、シクロホスファミドダイネマイシンA(cyclophosphamidedynemycin A)、メイタンシン、メルファラン、メルタンシン、及びネオカルジノスタチンからなる群から選択され、最も好ましくは、バノキサントロン、ベンダムスチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、ピロロベンゾジアゼピン及びメルファランである。
好ましい実施形態において、抗癌剤は、増殖阻害タンパク質、好ましくは細胞周期阻害剤、又は増殖促進タンパク質に特異的に結合する抗体若しくは抗体様結合タンパク質、又は核酸、好ましくは、増殖阻害タンパク質、又は増殖促進タンパク質に特異的に結合する抗体若しくは抗体様結合タンパク質をコードする核酸、又はsiRNA若しくはDNAザイムである。
好ましい実施形態において、免疫調節薬は、免疫細胞の活性を活性化又は阻害する。これらは、抗体を含む天然若しくは合成のリガンド、又はパターン認識受容体、特にToll様受容体、NOD様受容体(NLR)、RIG-I様受容体(RLR)のアンタゴニストであり得る。生理学的には、これらの受容体は、病原体関連分子パターン(PAMP)及び損傷関連分子パターン(DAMP)として知られている種類のシグナルを認識する。
本発明の文脈において使用される抗体の好ましい例は、一本鎖抗体、抗体断片、ナノボディ、軽鎖若しくは重鎖、可変軽鎖若しくは可変重鎖、又はダイアボディである。好ましい抗体断片は、断片抗原結合(Fab)断片、Fab'断片、F(ab')2断片、重鎖抗体、単一ドメイン抗体(sdAb)、一本鎖可変断片(scFv)、可変断片(Fv)、VHドメイン、VLドメイン、単一ドメイン抗体、ナノボディ、IgNAR(免疫グロブリン新抗原受容体)、di-scFv、二重特異性T細胞エンゲージャー(BITE)、二重親和性再標的化(DART)分子、トリプルボディ、ダイアボディ、一本鎖ダイアボディ、及びそれらの融合タンパク質を含む。
好ましい実施形態において、ウイルスは腫瘍溶解性ウイルスである。
好ましい実施形態において、細胞に損傷を与える量のγ線も放出するα線又はβ線放出放射性同位体は、ルテチウム-177、イッテルビウム-90、ヨウ素-131、サマリウム-153、リン-32、セシウム-131、パラジウム-103、ラジウム-233、ヨウ素-125、及びホウ素-10からなる群から選択されるか、又は細胞に損傷を与える量のα線、好ましくは、アクチニウム-225、ビスマス-213、鉛-212及びポロニウム-212からなる群から選択される。ナノ粒子(例えば、金、銀、グラフェン)又はこれらのナノ粒子に結合した上記化合物及び同位体の複合体も好ましい。
好ましい実施形態において、薬物は、低酸素活性化プロドラッグ、好ましくは、ベンゾトリアジンN-オキシド、アパジコン(E09)、チラパザミン(TPN)、SN30000、PR-104A、TH-302、TH-4000、AQ4Nからなる群から選択される。
好ましい実施形態において、薬物は、抗原又は抗原をコードする核酸である。
好ましい実施形態において、本発明のTRBD変異体フェリチンポリペプチド又は第2若しくは第3の態様によるポリペプチドと、コンジュゲート中の有効成分との間の結合(複数の場合もある)は、共有結合及び/又は非共有結合であり、及び/又は複合体に含まれる有効成分は、TRBD変異体フェリチンポリペプチドのオリゴマーによって捕捉/封入される。一実施形態において、共有結合及び/又は非共有結合は、リンカー又はスペーサーによる間接的なものである。共有結合の形成が所望される場合、TRBD変異体フェリチンポリペプチドの関連するチオール基、アミノ基又はカルボキシル基を使用して、チオール基又はアミノ基に対して反応性の特定の活性リンカー部分により修飾された有効成分を、TRBD変異体フェリチンポリペプチドに直接的又は間接的に共有結合させる。
本発明のTRBD変異体フェリチンポリペプチド又は第2若しくは第3の態様によるポリペプチドは、ペプチドベースの切断可能なリンカー(例えば、カテプシン感受性バリン-シトルリン配列及びパラ-アミノベンジルカルバメートスペーサー)を有するシステインチオール反応性有効成分に連結することができる。注目すべき例として、抗有糸分裂剤モノメチルアウリスタチンE(MMAE)が使用されている。ペプチドベースのリンカーは、タンパク質を細胞傷害性化合物に安定した方法で結合させるので、生理学的条件下で薬物がタンパク質から容易に放出されず、健常な細胞に対する毒性を防ぐのに役立ち、投与効率を確実にする。このように生成されたフェリチン有効成分付加物は、選択された受容体タイプ、すなわち、フェリチンに対するTfR-1に結合することができる。結合すると、フェリチン有効成分付加物は、エンドサイトーシスによって内部移行され、したがって標的化細胞によって選択的に取り込まれる。薬物を含有するベシクルはリソソームと融合し、リソソームシステインプロテアーゼ、特にカテプシンBがバリン-シトルリンリンカーを分解し始め、MMAEはもはやフェリチンと結合せず、腫瘍環境へと直接放出される。
代替的には、DM1-SMCCがリジン残基に特異的に結合するリンカーを有する効率的なメルタンシン誘導体であり、抗体について首尾よく説明されている反応においてフェリチンとの共有結合複合体を生成する。特に、フェリチンはDM1-SMCCと反応することができ、したがって細胞内で切断され、活性薬物を時間依存的に放出することができる共有結合タンパク質-薬物付加物を提供する。DM1による微小管動態の抑制は、有糸分裂停止及び細胞死を誘導する。
「完全なロード」という用語は、活性送達系の細胞によって取り込まれることができる有効成分と複合体を形成した最大量のフェリチンを指すために本発明の文脈において使用される。
異なる薬学的活性物質、標識又は薬学的活性物質及び標識が、本発明の第3の態様による複合体において含まれることも想定される。例えば、或るタイプの有効成分は、本発明のTRBD変異体フェリチンポリペプチド又は第2若しくは第3の態様によるポリペプチドに結合され得る(非共有結合)が、別のタイプは複合体に封入される。このアプローチでは、標的化組織及び/又は細胞に送達された場合に複合体からの放出率が異なる有効成分を利用する。例えば、有効成分を、関連するチオール基、アミノ基又はカルボキシル基の反応性を利用することによって、24量体の表面上又は内部空洞内のいずれかでフェリチン分子に共有結合させることができる。そのような有用な反応のタイプは当該技術分野において既知であり、当業者は任意の付加的な作業なしに特定の有効成分に対して採用することができる。そのような反応の例は、Behrens CR, Liu B. Methods for site-specific drug conjugation to antibodies. MAbs. 2014 Jan-Feb;6(1):46-53に記載されている。
治療診断適用において、すなわち、複合体が標識及び薬物の両方を含む場合、標識は鉄結合タンパク質に共有結合され、薬物は鉄結合タンパク質に非共有結合及び/又は本発明のTRBD変異体フェリチンポリペプチド又は第2若しくは第3の態様によるポリペプチドの多量体の会合時に形成される内部空洞に捕捉されることが好ましい。
第6の態様において、本発明は、細胞を含む単離標的化送達系に関し、細胞は、本発明の第1、第2又は第3の態様のポリペプチド、第5の態様のコンジュゲート、又は第6の態様の複合体を含む。
「標的化送達系」という用語は、有効成分を標的化領域に送達することができる、すなわち、好ましくは患者の体内で標的化送達ができる系を指す。
「標的化送達」という用語は、対象、例えば患者、特に患者の体内の細胞への治療剤又は診断用薬(本明細書においてともに「有効成分」とも称される)の送達を指す。標的化送達はまた、「標的化治療診断送達」を含み、治療剤及び診断用薬の両方が、好ましくは罹患領域に同時に送達され、したがって同時の治療及び診断及び/又は治療モニタリングを可能にすることを意味する。
標的化送達は、その患者の身体の他の領域と比較した場合に身体の特定の領域における有効成分の増加した濃度をもたらす。好ましくは、相対濃度は、身体の罹患領域(複数の場合もある)と、同様の血液循環へのアクセスを有する身体の他の領域との間で比較される。好ましい実施形態において、罹患領域由来の所与の数の細胞又は所与の生検量における有効成分の濃度は、本発明の標的化送達系の投与後、好ましくは2時間~24時間後に非罹患領域由来の同一の数の細胞又は生検量と比較した場合、少なくとも10%高い。より好ましくは、患者の身体の罹患領域における有効成分の濃度は、本発明の標的化送達系の投与後、好ましくは2時間~24時間後に身体の非罹患領域よりも、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも350%、少なくとも400%、少なくとも450%、少なくとも500%、より好ましくは少なくとも1000%高い。全身分布に基づいて評価する場合、患者に投与される有効成分の少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%が、身体の罹患領域に送達されることが好ましい。有効成分の標的化送達により、身体の罹患領域に対する有効成分の潜在的悪影響が制限される。
本発明による標的化送達系は、通常は(例えば、溶解性の問題のために)腫瘍に到達することができないであろう薬学的活性物質、標識又は薬学的活性物質及び標識の腫瘍送達を可能にする。これにより、腫瘍部位への(特に低酸素領域への)及び腫瘍塊への有効成分の正確な投与が可能となり、他の器官におけるそれらの蓄積が回避される。
標的化送達は、直接的及び間接的な標的化の両方を包含する。直接的標的化は、罹患細胞、例えば癌細胞による有効成分(本発明の第2の態様によるコンジュゲートとして、又は本発明の第3の態様による複合体における)の直接的な取り込みを指す。間接的標的化は、罹患細胞、例えば癌細胞への、別の細胞、例えば白血球細胞による有効成分(本発明の第2の態様によるコンジュゲートとして、又は本発明の第3の態様による複合体における)の送達を指す。
突然変異体Q11Eは、CD71受容体に対して少なくとも4倍高い結合親和性の能力があり、対応してその複合体からの放出速度が遅いことが示された。したがって、突然変異体は、CD71受容体を過剰発現する癌細胞によって容易に取り込まれる(直接的標的化)。さらに、突然変異体は、フェリチン突然変異体を標的細胞へと移行させることができるCD45+白血球によって容易に取り込まれる(間接的標的化)。
特に、本発明の標的化送達系の細胞が白血球である場合、標的化送達系はリンパ節を標的とし、リンパ節に存在する樹状細胞への抗原の送達に特に好適なものにする。複合体をロードした細胞がマクロファージ、特に活性化マクロファージ、更により好ましくはCCL-2活性化骨髄由来活性化マクロファージ、又はリンパ球、特にB細胞又はT細胞である場合、リンパ節標的化は特に顕著である。したがって、好ましい実施形態において、標的化送達系は、1つ以上の抗原に対する予防的及び/又は治療的免疫応答を誘発するために、1つ以上の抗原を送達するために使用される。好ましい抗原は、病原体、すなわち、細菌若しくはウイルスに由来するか、又は腫瘍特異的抗原である。「腫瘍特異的抗原」という用語は、非腫瘍細胞と比較して腫瘍細胞上でより多く発現されるタンパク質又はエピトープ(変化したグリコシル化パターンを有するペプチドを含む)、好ましくは腫瘍細胞上でのみ発現される抗原又はエピトープを指す。好ましい抗原は、上皮増殖因子受容体(EGFR、ErbB-1、HER1)、ErbB-2(HER2/neu)、ErbB-3/HER3、ErbB-4/HER4、EGFRリガンドファミリー;インスリン様成長因子受容体(IGFR)ファミリー、IGF結合タンパク質(IGFBP)、IGFRリガンドファミリー;血小板由来成長因子受容体(PDGFR)ファミリー、PDGFRリガンドファミリー;線維芽細胞成長因子受容体(FGFR)ファミリー、FGFRリガンドファミリー、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)ファミリー、VEGFファミリー;HGF受容体ファミリー;TRK受容体ファミリー;エフリン(EPH)受容体ファミリー;AXL受容体ファミリー;白血球チロシンキナーゼ(LTK)受容体ファミリー;TIE受容体ファミリー、アンジオポエチン1,2;受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体(ROR)受容体ファミリー;ジスコイジンドメイン受容体(DDR)ファミリー;RET受容体ファミリー;KLG受容体ファミリー;RYK受容体ファミリー;MuSK受容体ファミリー;トランスフォーミング増殖因子α(TGF-α)受容体、TGF-β;サイトカイン受容体、クラスI(ヘマトポエチンファミリー)及びクラスII(インターフェロン/IL-10ファミリー)受容体、腫瘍壊死因子(TNF)受容体スーパーファミリー(TNFRSF)、細胞死受容体ファミリー;癌精巣(CT)抗原、系列特異的抗原、分化抗原、アルファ-アクチニン-4、ARTC1、切断点クラスター領域-エーベルソン(Bcr-abl)融合産物、B-RAF、カスパーゼ-5(CASP-5)、カスパーゼ-8(CASP-8)、β-カテニン(CTNNB1)、細胞分裂周期27(CDC27)、サイクリン依存性キナーゼ4(CDK4)、CDKN2A、COA-1、dek-can融合タンパク質、EFTUD-2、伸長因子2(ELF2)、Ets変異体遺伝子6/急性骨髄性白血病1遺伝子ETS(ETC6-AML1)融合タンパク質、フィブロネクチン(FN)、GPNMB、低密度脂質受容体/GDP-Lフコース:β-Dガラクトース2-α-Lフコシルトランスフェラーゼ(LDLR/FUT)融合タンパク質、HLA-A2.HLA-A2遺伝子のα2-ドメインのα-ヘリックスの残基170におけるアルギニンのイソロイシンへの変換(HLA-A*201-R170I)、HLA-A11、熱ショックタンパク質70-2突然変異(HSP70-2M)、KIAA0205、MART2、メラノーマ偏在性突然変異1、2、3(MUM-1、2、3)、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)、ネオ-PAP、ミオシンクラスI、NFYC、OGT、OS-9、pml-RARアルファ融合タンパク質、PRDX5、PTPRK、K-ras(KRAS2)、N-ras(NRAS)、HRAS、RBAF600、SIRT2、SNRPD1、SYT-SSX1又は-SSX2融合タンパク質、トリオースリン酸イソメラーゼ、BAGE、BAGE-1、BAGE-2、3、4、5、GAGE-1、2、3、4、5、6、7、8、GnT-V(異常性N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼV、MGAT5)、HERV-K-MEL、KK-LC、KM-HN-1、LAGE、LAGE-1、メラノーマに対するCTL認識抗原(CAMEL)、MAGE-A1(MAGE-1)、MAGE-A2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A5、MAGE-A6、MAGE-A8、MAGE-A9、MAGE-A10、MAGE-A11、MAGE-A12、MAGE-3、MAGE-B1、MAGE-B2、MAGE-B5、MAGE-B6、MAGE-C1、MAGE-C2、ムチン1(MUC1)、MART-1/メランA(MLANA)、gp100、gp100/Pmel17(SILV)、チロシナーゼ(TYR)、TRP-1、HAGE、NA-88、NY-ESO-1、NY-ESO-1/LAGE-2、SAGE、Sp17、SSX-1、2、3、4、TRP2-INT2、癌胎児性抗原(CEA)、カリクレイン4、マンマグロビン-A、OA1、前立腺特異的抗原(PSA)、TRP-1/gp75、TRP-2、アディポフィリン、メラノーマ中に存在しないインターフェロン誘導タンパク質2(interferon inducible protein absent in melanoma 2)(AIM-2)、BING-4、CPSF、サイクリンD1、上皮細胞接着分子(Ep-CAM)、EphA3、線維芽細胞成長因子-5(FGF-5)、糖タンパク質250(gp250)、EGFR(ERBB1)、HER-2/neu(ERBB2)、インターロイキン13受容体α2鎖(IL13Rアルファ2)、IL-6受容体、腸管カルボキシルエステラーゼ(iCE)、アルファ-フェトプロテイン(AFP)、M-CSF、mdm-2、MUC1、p53(TP53)、PBF、PRAME、PSMA、RAGE-1、RNF43、RU2AS、SOX10、STEAP1、サバイビン(BIRC5)、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、テロメラーゼ、ウィルムス腫瘍遺伝子(WT1)、SYCP1、BRDT、SPANX、XAGE、ADAM2、PAGE-5、LIP1、CTAGE-1、CSAGE、MMA1、CAGE、BORIS、HOM-TES-85、AF15q14、HCA661、LDHC、MORC、SGY-1、SPO11、TPX1、NY-SAR-35、FTHL17、NXF2、TDRD1、TEX15、FATE、TPTE、免疫グロブリンイディオタイプ、ベンス-ジョーンズタンパク質、エストロゲン受容体(ER)、アンドロゲン受容体(AR)、CD40、CD30、CD20、CD19、CD33、癌抗原72-4(CA 72-4)、癌抗原15-3(CA 15-3)、癌抗原27-29(CA 27-29)、癌抗原125(CA 125)、癌抗原19-9(CA 19-9)、β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン、1-2ミクログロブリン、扁平上皮癌抗原、ニューロン特異的エノラーゼ、熱ショックタンパク質gp96、GM2、サルグラモスチム、CTLA-4、707アラニンプロリン(707-AP)、T細胞によって認識される腺癌抗原4(ART-4)、癌胎児性抗原ペプチド-1(CAP-1)、カルシウム活性化クロライドチャネル-2(CLCA2)、シクロフィリンB(Cyp-B)、ヒト印環腫瘍-2(HST-2)、ヒトパピローマウイルス(HPV)タンパク質(HPV-E6、HPV-E7、メジャー又はマイナーなカプシド抗原、他)、エプスタイン-バーウイルス(EBV)タンパク質(EBV潜伏膜タンパク質-LMP1、LMP2;他)、B型又はC型肝炎ウイルスタンパク質、及びHIVタンパク質からなる群から選択される。
本発明の標的化送達系は、有効成分を低酸素領域に送達するための特定の適合性を有する。低酸素は、癌及び炎症性疾患を含む様々な疾患に特徴的であり、したがってそのような疾患を標的化することを可能にする。
標的化に加えて、低酸素条件下で活性化される有効成分の使用は、標的化に更なる特異性を与え、及び/又は有効成分の有害作用を更に低減する。したがって、特に好ましい実施形態において、有効成分は低酸素活性化プロドラッグである。全ての低酸素活性化プロドラッグの骨格は、組織における低酸素条件下で酵素的に還元される5つの異なる化学部分(ニトロ基、キニーネ、芳香族及び脂肪族N-オキシド並びに遷移金属)のうちの1つの存在である。低酸素活性化プロドラッグは、対応する薬物と比べて活性が低いか又は不活性な任意のプロドラッグであり、薬物及び1つ以上の生体還元性(bioreducible)基を含む。そのような低酸素活性化プロドラッグは、種々の還元剤及び還元酵素によって活性化される全てのプロドラッグを含み、限定されるものではないが、単一電子転移酵素(シトクロムP450レダクターゼ等)及び2つの電子転移(又は水素化物転移)酵素が含まれる。本発明の好ましい実施形態によれば、低酸素活性化プロドラッグはTH-302である。TH-302の合成方法は、PCT出願国際公開第07/002931号及び国際公開第08/083101号に記載されている。好ましくは、そのようなプロドラッグの例は、ベンゾトリアジンN-オキシド、アパジコン(EO9)、チラパザミン(TPN)及びSN30000からなるクラスI群、又はニトロ化合物PR-104A、TH-302、TH-4000、及びAQ4NからなるクラスII群から選択される。
特筆すべき観察は、本発明の標的化送達系の疾患特異的ホーミングであった。特にCD45+白血球細胞は、低酸素領域及び酸化ストレスの領域に対して向性を有するようである。低酸素は、酸化ストレスと同様に様々な疾患の特徴である。したがって、本発明はまた、罹患組織内の低酸素領域によって及び/又は酸化ストレスの領域、特に低酸素腫瘍若しくは腫瘍内の低酸素領域、又は低酸素条件に曝された生物体内の任意の領域、例えば、虚血性インシデントの間に、又は炎症過程を経ている領域によって特徴づけられる疾患の予防、治療又は診断において使用するための、本発明の第4の態様の単離標的化送達系に関する。同様に、本発明は、罹患組織内の低酸素領域によって及び/又は酸化ストレスの領域、特に低酸素腫瘍若しくは腫瘍内の低酸素領域、又は低酸素条件に曝された生物体内の任意の領域、例えば、虚血性インシデントの間に、又は炎症過程を経ている領域によって特徴づけられる疾患を、本発明の第4の態様の単離標的化送達系を有効量、それを必要とする対象に投与することにより、治療、予防又は診断する方法に関する。
フェリチンを内部移行する所与の細胞又はその集団の能力は、この内部移行プロセスに関与する受容体の発現に依存する。フェリチンの内部移行をもたらす受容体は、例えばTfR、CXCR4、スカベンジャー受容体、CD163、及びTIM-2を含む。当業者は、フェリチン取り込みの量を測定する方法を十分に認識しており、取り込みを測定する好ましい方法は、以下の実施例の項に記載されている。
本発明による単離標的化送達系の好ましい実施形態において、細胞は、CD45+白血球、特に、単球、分化単球、単球マクロファージ、リンパ球及び顆粒球からなる群から選択されるCD45+白血球である。
「白血球」(又は「白血球細胞」)という用語は、感染性疾患及び外来侵入物の両方から身体を保護することに関与する免疫系の細胞を指すために本発明の文脈において使用される。全ての白血球は、造血幹細胞として知られる骨髄中の多能性細胞から産生され、それに由来する。白血球は、血液及びリンパ系を含む全身に見られる。全ての白血球は核を有し、他の血液細胞である無核赤血球(RBC)及び血小板と区別される。白血球のタイプは、標準的な方法で分類することができる。2組の最も広いカテゴリーにより、それらは構造(顆粒球又は無顆粒球)によってか、又は細胞分裂系統(骨髄細胞又はリンパ系細胞)によって分類される。これらの最も広いカテゴリーは更に、5つの主要なタイプ:好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球及び単球に分けることができる。これらのタイプは、それらの物理的特徴及び機能的特徴によって区別される。単球及び好中球は食作用を示す。更にサブタイプを分類することができ、例えば、リンパ球にはB細胞、T細胞、及びNK細胞がある。顆粒球は、それらの核形状(分葉対円形、すなわち、多形核対単核)及びそれらの細胞質顆粒(存在若しくは非存在、又はより正確には、光学顕微鏡で見ることができる若しくはそれにより見ることができない)によって無顆粒球と区別される。他の二分法は系統によるものである。骨髄細胞(好中球、単球、好酸球及び好塩基球)は、造血系統(細胞分化系統)によってリンパ系細胞(リンパ球)と区別される。
CD45+発現は、白血球細胞のサブグループ、すなわち、単球、単球マクロファージ、リンパ球、顆粒球、NK細胞の特徴であり、特に、CD45+白血球細胞は、体内の特定の組織及び細胞に引き付けられ、1つ以上の鉄結合タンパク質と1つ以上の薬学的活性物質、標識又は薬学的活性物質及び標識との複合体を、細胞に又は細胞内へと送達することができるため、本発明の標的化送達系との関連において使用するのに好適である。白血球のこのサブグループは、以下「CD45+白血球細胞」又は「CD45+白血球」と称される。好ましくは、単球は、分化が以下の転写因子:IFN調節因子8(IRF8)、核因子インターロイキン(IL)3調節タンパク質(NFIL3)、塩基性ロイシンジッパー転写因子ATF様3(BATF3)又は転写因子RelB(NF-KBサブユニット)-RELB、Spi-1癌原遺伝子(PU/1)、へアレスの組換え結合タンパク質サプレッサー(recombining binding protein suppressor of hairless)(RBPJ)、IFN調節因子4(IRF4)又は転写因子E2-2(TCF4としても知られる)のうちの1つ以上によって制御される樹状細胞ではない。
クローン起源でない限り、上記で定義されるCD45+白血球細胞は、CD45+表面抗原を発現する共通の特性を共有する種々の白血球の混合集団であることが当業者に理解される。したがって、上記で定義されるCD45+白血球細胞の多様な群内の細胞の亜集団は、更なる機能的特徴及び/又は構造的特徴によって、本明細書全体を通して特徴づけられる。「CD45+」という用語は、細胞の集団内の細胞の大部分又は本質的に全ての細胞がCD45+表面抗原を発現することを示す。
この点における「発現」とは、細胞の集団内の細胞の大部分又は本質的に全ての細胞がマーカー(本明細書において表面抗原とも呼ばれる)を発現することを意味する。これに関連して、他の細胞表面抗原に関しても、「発現する」という用語は、表面抗原が細胞内で産生され、細胞の表面上に検出可能に露出されることを示す。発現のレベル、したがって細胞の表面上に検出可能に露出した表面抗原の数は、細胞によって大幅に異なり得る。一般に、少なくとも5個、好ましくは少なくとも10個の表面抗原のコピーが細胞の表面上に検出可能に露出されている場合、細胞は細胞表面抗原について陽性であるとみなされ、すなわち、「+」と示される。当業者は、所与の細胞表面抗原について陽性(又は陰性)である細胞を検出、定量化及び選択する方法を十分に認識している。好ましい方法には、蛍光活性化セルソーティング(FACS)が含まれる。この技術において、蛍光標識抗体を使用して細胞の集団の細胞表面抗原に結合させ、続いて細胞を単一細胞へと単離し、単一細胞について測定された蛍光強度に基づいて、所与の細胞表面抗原について陽性又は陰性であると特徴づける。本発明のいくつかの実施形態において、所与のタンパク質の発現が高い又は低いことが示される。これは、タンパク質が異なるレベルではあるが、どちらの場合においても検出可能に発現され、すなわち、「+」であることを意味する。高発現及び低発現はそれぞれ、異なるタンパク質について細胞当たりの異なる絶対数のタンパク質を意味する。したがって、所与のタンパク質は、細胞当たり500個を超える検出可能なコピーのそのタンパク質が存在する場合に高レベルで発現し、細胞当たり1個~50個の検出可能なコピーのそのタンパク質が存在する場合に低レベルで発現するとみなすことができる。しかしながら、別のタンパク質は、細胞当たり5000個を超える検出可能なコピーが存在する場合に高レベルで発現し、1個~500個の検出可能なコピーが存在する場合に低レベルで発現するとみなすことができる。フローサイトメトリー及びBecton Dickinson Quantibrite(商標)ビーズ法(例えば、Pannu, K.K., 2001, Cytometry. 2001 Dec 1;45(4):250-8を参照のこと)又は質量分析(例えば、Milo, R., 2013, Bioessays, 35(12): 1050-1055を参照のこと)を使用して、細胞において発現又は産生されるタンパク質の数を定量化する方法が当該技術分野において既知である。
本発明の目的のために、所与のタンパク質の「高発現」という用語は、健常な細胞、特にCD45+白血球の集団において見られる最高発現レベル、すなわち、細胞当たりのコピーの数の少なくとも70%である、そのタンパク質の検出可能な発現を指す。所与のタンパク質の「低発現」という用語は、健常な細胞、特にCD45+白血球の集団において見られる最高発現レベル、すなわち、細胞当たりのそのタンパク質のコピー数の30%以下である、そのタンパク質の検出可能な発現を指す。好ましくは、「最高発現レベル」は、種々の対象の健常な細胞、特にCD45+白血球において見られる最高発現レベルの平均として決定される。いくつかの実施形態において、細胞の好ましい亜集団は、所与のタンパク質を「産生すること」として特徴づけられる。これは、タンパク質が必ずしも細胞の表面上で検出可能ではなく、細胞内にのみ存在する可能性があることを意味すると理解される。当業者は、細胞内のタンパク質の産生を検出及び/又は定量化する方法、及び/又はそのようなタンパク質を産生する細胞を選択する方法を十分に認識している。代替的に、細胞集団は、特異的転写因子の発現によって定義することができる。例えば、in vivoでの抗体を用いた標識、FISHアッセイ、in vivoでの単一分子蛍光顕微鏡法(Crawford, R.ら Biophys J. (2013) 105(11): 2439)単独若しくは蛍光活性化セルソーティング(FACS)との組み合わせの使用、又はPrimeFlow技術(e Bioscience)、(Adam S. Venableら,(2015) Methods in Molecular Biology)によって、細胞の集団において、又は単一細胞においてさえも、所与のタンパク質又はそれをコードするmRNAの発現の決定方法は、当該技術分野において既知である。
「分化単球」という用語は、主に骨髄に常在し(しかし脾臓にも存在し得る)、樹状細胞又はマクロファージのいずれかへと分化するマクロファージ-DC前駆体(MDP)と称されるコミットした前駆体から分化した単球を指すために本発明の文脈において使用される。マウスにおいて、それらは2つの主要な亜集団:(i)CX3CR1の高発現、CCR2及びLy6C-の低発現を有するCD11b+細胞、並びに(ii)CX3CR1の低発現、CCR2及びLy6C+の高発現を有するCD11b+細胞からなる。骨髄を離れた後、マウスLy6C+単球は循環中でLy6C-単球へと分化する。同様に、ヒト単球分化において、CD14++古典的単球は骨髄を離れ、末梢血循環中でCD14++CD16+中間単球、順次CD14+CD16++非古典的単球へと分化することが認められている(Yangら 2014; Biomark Res 2(1) doi. 10.1186/2050-7771-2-1)。好ましくは、分化単球は、分化が以下の転写因子:IRF8、NFIL3、BATF3、RELB、PU/1、RBPJ、IIRF4、及び/又はTCF4のうちの1つ以上によって制御される樹状細胞ではなく、より好ましくは樹状細胞ではない。
マクロファージは、循環末梢血単球(PBM)から分化する組織常在性プロフェッショナル食細胞及び抗原提示細胞(APC)である。「活性化マクロファージ」という用語は、分極化された任意のマクロファージを指すために本発明の文脈において使用される。マクロファージ活性化は、一般に、インターロイキン、サイトカイン及び/又は成長因子とのインキュベーションによって達成される。特に、IL-4及びM-CSFを活性化剤として使用することができる。異なる表現型の活性化マクロファージは、M1-マクロファージ、古典的活性化マクロファージ(CAM)及びM2-マクロファージ、代替活性化マクロファージ(AAM)に分類される。古典的活性化M1-マクロファージは、急性炎症表現型を有する免疫エフェクター細胞を含む。これらは細菌に対して非常に攻撃的であり、大量のリンホカインを産生する(Murray, and Wynn, 2011, J LeukocBiol, 89(4):557-63)。代替活性化、抗炎症M2-マクロファージは、少なくとも3つのサブグループに分けることができる。これらのサブタイプは、免疫の調節、寛容の維持及び組織修復/創傷治癒を含む様々な異なる機能を有する。「M1誘導因子」という用語は、M1型のマクロファージへのPBMの分化を方向付ける化合物を指すために本発明の文脈において使用される。「M2誘導因子」という用語は、M2型のマクロファージへのPBMの分化を方向付ける化合物を指すために本発明の文脈において使用される。当業者は、M1又はM2マクロファージのいずれかへの分化を促進する多数の方法を認識している。
「マクロファージによる食作用」という用語は、マクロファージが固体粒子を飲み込んで、ファゴソームとして知られる内部小胞を形成するプロセスである。
好ましくは、CD45+単球は、分化が以下の転写因子:IRF8、NFIL3、BATF3、RELB、PU/1、RBPJ、IIRF4、及び/又はTCF4のうちの1つ以上によって制御される樹状細胞ではなく、より好ましくは樹状細胞ではない。
単離標的化送達系の好ましい実施形態において、CD45+白血球細胞は、CD34+造血前駆細胞から産生可能である。
単離標的化送達系の好ましい実施形態において、
(i)単球は、CD11b+単球であり、好ましくは、CD11b+ CD14+単球、CD11b+ CD16+単球、CD11b+ CD14+ CD16+単球、CD11b+ CD14+ MHCII+単球、CD11b+ CD14+ CD115+単球、CD11b+ CD114+単球、CD11b+ CD116+単球、CD11b+ CCR1+単球、CD11b+ CCR2+単球、CD11b+ CX3CR+単球、CD11b+ CXR4+単球、CD11b+ CXR6+単球及びCD11b+ CD14+ CD33+単球からなる群から選択され、好ましくは、単球は、分化が以下の転写因子:IRF8、NFIL3、BATF3、RELB、PU/1、RBPJ、IIRF4、及び/又はTCF4のうちの1つ以上によって制御される樹状細胞ではなく、より好ましくは樹状細胞ではない;
(ii)分化単球又は単球マクロファージは、M-CSFによって分化され、マクロファージ、活性化マクロファージ、好ましくはCD11b+マクロファージ、より好ましくはCD11b+ CD16+マクロファージ、CD11b+ CD32+マクロファージ、CD11b+ CD64+マクロファージ、CD11b+ CD68+マクロファージ、好ましくはCD11b+ CD86+ M1マクロファージ、好ましくは誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)を産生する及び/又はインターロイキン12(IL-12)を分泌する又は好ましくはCD11b+ CCR2+ M2マクロファージ、CD11b+ CD204+ M2マクロファージ、CD11b+ CD206+ M2マクロファージ、CD11b+ CD204+ CD206+ M2マクロファージ、CD11b+主要組織適合性複合体II+(MHCII+)(低発現又は高発現)M2マクロファージ、CD11b+ CD200R+ M2マクロファージ、CD11b+ CD163+ M2マクロファージ又はアルギナーゼ-1及び/又はインターロイキン10(IL-10)を産生及び/又は分泌する活性化マクロファージからなる群から選択され、好ましくは、分化単球は、レクチン様酸化低密度リポタンパク質受容体-1(Lox1+)、C-X-Cケモカイン受容体タイプ7(CXCR7+)及び核因子(赤血球由来2)様2(NRF2+)を発現する泡沫細胞ではない。泡沫細胞は、血管壁の脂肪性沈着物に局在するマクロファージの一種であり、そこで低密度リポタンパク質を取り込み、脂質がロードされ、泡沫状の外観がもたらされる。これらの細胞はプラーク成長に関与する種々の物質を分泌し、それらの死は炎症を促進し、それによって心血管疾患の一因となる;
(iii)単球マクロファージ又は活性化単球マクロファージは、M-CSFによって分化され、好ましくは、少なくとも1つのケモカイン受容体であって、好ましくはCCR1、CCR2、CXCR4、及びCXCR6からなる群から選択されるケモカイン受容体、又は少なくとも1つの成長因子受容体であって、好ましくはマクロファージコロニー刺激因子受容体(CD115)、顆粒球コロニー刺激因子受容体(CD114)、及び顆粒球マクロファージコロニー刺激因子受容体(CD116及びCD131からなる)からなる群から選択される成長因子受容体を発現し、これらの特徴の単球は、炎症状態及び癌を治療するのに特に好適である;
(iv)リンパ球は、CD3+及びCD4+若しくはCD8+Tリンパ球、又はCD19+、CD20+、CD21+、CD19+ CD20+、CD19+ CD21+、CD20+ CD21+、若しくはCD19+ CD20+ CD21+Bリンパ球、又はナチュラルキラー(NK)細胞からなる群から選択され、好ましくは、NK細胞は、CD56+及びCD3発現なし、又はCD16+CD56+、CD56+CD94+、CD56+CD158a+、CD56+CD158f+、CD56+CD314+、CD56+CD335+細胞からなる群から選択される;又は、
(v)顆粒球は、好中球、好ましくはCD66b+好中球、好酸球及び好塩基球、好ましくはCD193+好酸球からなる群から選択される。
単離標的化送達系の好ましい実施形態において、活性化マクロファージは、
(i)単球若しくはマクロファージ、又はそれらの前駆体と、マクロファージ上の発現マーカーを変化させることが可能な因子との、好ましくは、
(a)少なくとも1つのM1誘導因子との、
(b)少なくとも1つのM2誘導因子との、
(c)又はサイトカイン、好ましくはIL-10及びIL-12、ケモカインを分泌する、及び/又はiNOS、アルギナーゼ若しくは他の免疫調節酵素を産生するマクロファージの能力を変化させることが可能な因子であって、そのような因子の例は、活性化血小板、IL-4、IL-10、IL-13、抗原と抗体との免疫複合体、IgG、熱活性化ガンマグロブリン、糖質コルチコステロイド、腫瘍成長因子-β(TGF-β)、IL-1R、CC-ケモカインリガンド2(CCL-2)、IL-6、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)アゴニスト、白血球阻止因子(LIF)、アデノシン、蠕虫及び真菌感染、リポ多糖(LPS)、インターフェロンγ(INF-γ)、ウイルス及び細菌感染であり、この点に関して、M1誘導因子、特にLPSによる単球の活性化は、細胞にiNOSを発現させ、M1誘導因子、特にLPSによる単球の活性化は、細胞にアルギナーゼ-1を発現させず、M2誘導因子、特にIL-4による単球の活性化は、細胞にアルギナーゼ-1を発現させ、M2誘導因子、特にIL-4による単球の活性化は、細胞にiNOSを発現させないことが観察された、因子との、
in vitroインキュベーションによって産生可能であり、
(ii)以下の抗原:CD64、CD86、CD16、CD32のうちの少なくとも1つの発現、MHCIIの高発現、及び/又はiNOS及び/又はIL-12の産生を特徴とし、
(iii)単球又はマクロファージと、マクロファージの貪食能力を誘導することが可能な因子、例えば、IL-18、オプソニン(例えば、iC3b等の補体由来タンパク質、免疫グロブリンG)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、リポ多糖(LPS)、インターフェロンγ(INF-γ)、ウイルス感染及び/又は細菌感染とのin vitroインキュベーションによって産生可能であり、
(iv)以下の抗原:CD204、CD206、CD200R;CCR2、トランスフェリン受容体(TfR)、CXC-モチーフケモカイン受容体4(CXCR4)、CD163、及び/又はT細胞免疫グロブリンドメイン及びムチンドメイン2(TIM-2)のうちの少なくとも1つの発現を特徴とし、及び/又はMHCIIの低発現を示し、これらの特性を有する活性化マクロファージは、鉄結合タンパク質としてフェリチンを含む複合体に特に好適であり、
(v)貪食能力を有し、及び/又は、
(vi)サイトカイン、好ましくはIL-12若しくはIL-10の分泌、又は誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)(又は他の炎症誘発性化合物)、アルギナーゼ若しくは他の免疫抑制性/抗炎症性化合物の産生が可能である。
単離標的化送達系の好ましい実施形態において、マクロファージをM1マクロファージへと分化させるためのM1誘導因子は、リポ多糖(LPS)、インターフェロンγ(INF-γ)、並びにウイルス及び細菌感染からなる群から選択され、マクロファージをM2マクロファージへと分化させるためのM2誘導因子は、IL-4、IL-10、IL-13、抗原と抗体との免疫複合体、IgG、熱活性化ガンマグロブリン、糖質コルチコステロイド、腫瘍成長因子-β(TGF-β)、IL-1R、CC-ケモカインリガンド2(CCL-2)、IL-6、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)アゴニスト、白血球阻止因子(LIF)、アデノシン、蠕虫及び真菌感染からなる群から選択される。
本発明の標的化送達系の好ましい実施形態において、単球マクロファージは、
(i)CD34+造血前駆細胞から産生可能であり、
(ii)単球と、少なくとも1つの誘導因子、好ましくはM1又はM2誘導因子、より好ましくは少なくとも1つのM2誘導因子とのin vitroインキュベーションによって産生可能であり、
(iii)以下の抗原:TfR、CD163、TIM-2、CD14、CD16、CD33、及び/又はCD115のうちの少なくとも1つの発現を特徴とし、
(iv)以下の抗原:TfR、CD163、TIM-2、CXCR4、CD14、及び/又はCD16のうちの少なくとも1つの発現を特徴とし、及び/又は、
(v)貪食能力を有し、及び/又は、
(vi)分化が以下の転写因子:IRF8、NFIL3、BATF3又はRELB、PU/1、RBPJ、IRF4又はTCF4のうちの1つ以上によって制御される樹状細胞ではない。
本発明の標的化送達系のこの実施形態において、単球マクロファージ細胞を分化させるためのM1誘導因子は、LPS、INF-γ又はウイルス若しくは細菌感染からなる群から選択されるか、又は単球を分化させるためのM2誘導因子は、IL-4、IL-10、IL-13、抗原と抗体との免疫複合体、IgG、熱活性化ガンマグロブリン、糖質コルチコステロイド、TGF-β、IL-1R、CCL-2、IL-6、M-CSF、PPARγアゴニスト、白血球阻止因子(LIF)、癌馴化培地、癌細胞、アデノシン及び蠕虫又は真菌感染からなる群から選択される。
本発明の標的化送達系の好ましい実施形態において、リンパ球は、
(i)血液、脾臓、若しくは骨髄から入手可能であるか、又は当業者に知られているように、及び例えば、Lefort及びKim, 2010, J Vis Exp 40: 2017、Tassone及びFidler, 2012, Methods in Molecular Biology 882: 351-357、Kouroら 2005, Current Protocols in Immunology, 66:F22F.1:22F.1.1-22F.1.9.にも記載されているようにCD34+前駆細胞から産生可能であり、
(ii)免疫適格リンパ球であり、
(iii)抗原特異的T細胞受容体を発現し、及び/又は、
(iv)以下の抗原:(a)CD3及びCD4若しくはCD8、又は(b)CD19、CD20、CD21、CD19 CD20、CD19 CD21、CD20 CD21、若しくはCD19 CD20 CD21抗原のうちの少なくとも1つの発現を特徴とし、好ましくは免疫グロブリンを産生することが可能である。
特に好ましい実施形態において、CD45+リンパ球はNK細胞であり、
(i)血液、脾臓若しくは骨髄から入手可能であるか、又はCD34+前駆細胞から産生可能であり;及び/又は
(ii)CD3発現の欠如及び以下のCD56+及び/又はCD94+、CD158a+ CD158f+ CD314+ CD335+のうちの少なくとも1つの発現を特徴とする。
本発明の標的化送達系の好ましい実施形態において、顆粒球は、
(i)血液、脾臓若しくは骨髄から入手可能であるか、又は例えば、Kuhsら 2015, CurrProtocImmunol 111:7.23-1-7.23.16、Coqueryら 2012, Cytometry A 81(9): 806-814、Swemydas及びLionakis 2013, J Vis Exp 77: 50586.に記載されているようにCD34+前駆細胞から産生可能であり、
(ii)以下のCD66b及び/又はCD193のうちの少なくとも1つの発現を特徴とし、
(iii)その細胞質中の顆粒の存在を特徴とする多形核白血球であり、及び/又は、
(iv)以下のTfR、CD163、TIM-2、及び/又はCXCR4のうちの少なくとも1つの発現を特徴とする。
単離標的化送達系に含まれる細胞はまた、間葉系幹細胞であってもよい。「間葉系幹細胞」又は「MSC」という用語は、骨細胞、脂肪細胞及び軟骨細胞等の中胚葉系統並びに外胚葉(神経細胞)及び内胚葉系統(肝細胞)へと分化する能力を有する、非造血性の複能性幹細胞である成体幹細胞を指すために本発明の文脈において使用される。MSCは、分化のクラスター(CD)73、CD90、及びCD105のような細胞表面マーカーを発現し、CD45、CD34、CD14/CD11b、CD19/CD20/CD79α、及びHLA(ヒト白血球抗原)-DRの発現を欠く。ヒトMSCは骨髄で初めて報告され、現在まで、脂肪組織、胎盤、羊水、子宮内膜、歯の組織、臍帯血及び臍帯組織(ワルトンゼリー)を含む様々な組織から分離されている。MSCはまた、人工多能性幹細胞(iPSC)より由来(すなわち、分化)している。したがって、本発明の好ましい実施形態において、MSCは、臍帯MSC、骨髄MSC、脂肪MSC、胎盤MSC、歯のMSC、羊水MSC、子宮内膜MSC、及びiPSC由来MSCからなる群から選択される。好ましくは、MSCは臍帯血MSC又は臍帯組織(又はワルトンゼリー)MSCである。さらに、MSCはヒトMSCであることが好ましい。本発明者らは、そのようなMSC幹細胞が、本発明による複合体をロードし、それを癌細胞へと送達することができることを観察した。
第7の態様において、本発明は、第1の態様のポリペプチド、第2の態様のコンジュゲート、第3の態様の複合体又は第4の態様の単離標的化送達系と、薬学的に許容される担体及び/又は好適な賦形剤(複数の場合もある)とを含む薬学的組成物又は診断用組成物に関する。
薬学的組成物又は診断用組成物が生細胞を含む場合、担体及び賦形剤は、細胞を生きた状態に保つように選択されることが好ましい。
「薬学的に許容される」とは、動物、より具体的にはヒトにおける使用について、連邦政府若しくは州政府の規制当局によって承認されているか、又は米国薬局方若しくは他の一般に認められている薬局方において記載されていることを意味する。
「担体」という用語は、本明細書で使用される場合、薬学的活性物質とともに投与される希釈剤、賦形剤、界面活性剤、安定剤、生理的緩衝液又はビヒクル等であるがこれらに限定されない薬理学的に不活性な物質を指す。そのような薬学的担体は、液体又は固体であり得る。液体担体としては、生理食塩水溶液、及び石油、動物、植物又は合成起源のもの、例えばピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油等を含むがこれらに限定されない油等の滅菌液体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。生理食塩水並びにデキストロース水溶液及びグリセロール水溶液はまた、液体担体、特に注射用溶液として用いることができる。薬学的組成物を静脈内投与する場合、生理食塩水が好ましい担体である。好適な薬学的担体の例は、E. W. Martinによる「Remington's Pharmaceutical Sciences」に記載されている。
好適な薬学的「賦形剤」としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール等が挙げられる。
「界面活性剤」としては、デオキシコール酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、Triton X-100、並びにポリソルベート、例えばポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65及びポリソルベート80等のアニオン性、カチオン性、及び非イオン性界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。
「安定剤」としては、マンニトール、スクロース、トレハロース、アルブミン、並びにプロテアーゼ及び/又はヌクレアーゼアンタゴニストが挙げられるが、これらに限定されない。
「生理的緩衝液」としては、塩化ナトリウム溶液、脱塩水、及び好適な有機又は無機緩衝液、例えば、これらに限定されるものではないが、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、トリス緩衝液(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、HEPES緩衝液([4(2ヒドロキシエチル)ピペラジノ]エタンスルホン酸)又はMOPS緩衝液(3モルホリノ-1プロパンスルホン酸)が挙げられるが、これらに限定されない。それぞれの緩衝液の選択は、一般に、所望の緩衝液モル濃度に依存する。リン酸緩衝液は、例えば、注射及び注入溶液に好適である。
「アジュバント」という用語は、細胞レベル又は体液レベルのいずれかで、組成物中に含まれる薬学的活性物質に対する免疫応答を増大、刺激、活性化、増強、又は調節する薬剤を指し、例えば免疫アジュバントは、実際の抗原に対する免疫系の応答を刺激するが、それら自体は免疫学的効果を有しない。そのようなアジュバントの例としては、無機アジュバント(例えば、リン酸アルミニウム又は水酸化アルミニウム等の無機金属塩)、有機アジュバント(例えば、サポニン又はスクアレン)、油性アジュバント(例えば、完全フロイントアジュバント及びフロイント不完全アジュバント)、サイトカイン(例えば、IL-1β、IL-2、IL-7、IL-12、IL-18、GM-CFS、及びINF-γ)、粒子アジュバント(例えば、免疫刺激複合体(ISCOMS)、リポソーム、又は生分解性ミクロスフェア)、ビロソーム、細菌アジュバント(例えば、モノホスホリルリピドA、又はムラミルペプチド)、合成アジュバント(例えば、非イオン性ブロックコポリマー、ムラミルペプチド類似体、又は合成リピドA)、又は合成ポリヌクレオチドアジュバント(例えば、ポリアルギニン又はポリリシン)が挙げられるが、これらに限定されない。
上記の通り、「CD45+白血球細胞」という用語は、CD45+単球、CD45+単球マクロファージ、CD45+リンパ球及び/又はCD45+を指すために本明細書全体を通して使用される。好ましくは、単球は、分化が以下の転写因子:IRF8、NFIL3、BATF3、RELB、PU/1、RBPJ、IIRF4、及び/又はTCF4のうちの1つ以上によって制御される樹状細胞ではなく、より好ましくは樹状細胞ではない。これらの一般的なカテゴリーの白血球における好ましい亜集団は、構造パラメータ、例えば所与のタンパク質の存在又は非存在、機能的特性及び/又はそれらの産生/分化方法によって以下で定義される。上記に概説したように、本発明の標的化送達系は、細胞の集団において、その集団内の細胞の大部分がその特性を有する限り、全ての細胞が特定の特性を有していない場合でも、上記に概説した利点を依然として提供する。したがって、以下に、本発明の標的化送達系の或る好ましい細胞の特性を記載する。本発明の薬学的組成物は何百万もの細胞を含み、集団内の全ての細胞が本明細書で概説される機能的及び/又は構造的特性を有するわけではないが、細胞の大部分がそれぞれの機能的及び/又は構造的特性を共有する場合に、それにもかかわらず薬学的組成物を疾患の治療に使用することができることが当業者には理解される。
標的化送達系に含まれる細胞、特にCD45+白血球細胞又はMSCは、治療される患者に由来する。そのような場合、複合体をロードした細胞は、患者に対して自己由来であろう。患者は、本発明の標的化送達系による治療前にMHC型に分類され、所与の患者に使用される細胞型は、患者に適合するMHCであることも想定される。これらの2つの好ましい実施形態において、細胞は、初代細胞であるか、又は初代細胞からの少ない回数の分化段階によって誘導される。代替的に、細胞は不死化されているが、好ましくは形質転換されていない細胞株に由来するものであってもよい。
CD45+白血球細胞、すなわち、CD45+単球、CD45+単球マクロファージ、CD45+顆粒球、又はCD45+リンパ球、特にCD45+NK細胞の単離に使用される血液は、好ましくは、治療される患者からか、又は健常なドナーから得られる。代替的に、血液は、血液バンクから得ることができる。本明細書では、臍帯血の使用も検討される。
第8の態様において、本発明は、医薬において使用するための、第1の態様のポリペプチド、第2の態様のコンジュゲート、第3の態様の複合体又は第5の態様の単離標的化送達系に関する。
第9の態様において、本発明は、腫瘍、好ましくは固形腫瘍及び/又はその転移、好ましくは乳癌、膵臓癌、膀胱癌、肺癌、結腸癌、又は低酸素領域を有する腫瘍;炎症性疾患又は虚血領域、特に皮膚の創傷中又は器官梗塞(心臓)若しくは虚血性網膜の後の治療、予防及び診断において使用するための、又は予防的若しくは治療的ワクチン接種のための、特に感染性疾患又は癌を予防又は治療するための、第1の態様のポリペプチド、第2の態様のコンジュゲート、第3の態様の複合体又は第5の態様の単離標的化送達系に関する。この態様はまた、個体にワクチン接種するため、又は免疫記憶を誘導するための、生理的又は非生理的リンパ節への抗原の標的化送達を含む。
第10の態様において、本発明は、有効量の第1の態様のポリペプチド、第2の態様のコンジュゲート、第3の態様の複合体又は第5の態様の単離標的化送達系を、それらを必要とする対象に投与することにより、腫瘍、好ましくは固形腫瘍及び/又はその転移、好ましくは乳癌、膵臓癌、膀胱癌、肺癌、結腸癌、卵巣癌、肝臓癌、神経膠腫/膠芽細胞腫又は低酸素領域を有する腫瘍;炎症性疾患又は虚血領域、特に皮膚の創傷中又は器官梗塞(心臓)若しくは虚血性網膜の後の治療、予防若しくは診断方法、又は予防的若しくは治療的ワクチン接種、特に感染性疾患又は癌を予防又は治療する方法に関する。この態様はまた、個体にワクチン接種するため、又は免疫記憶を誘導するための、生理的又は非生理的リンパ節への抗原の標的化送達を含む。
本明細書で使用される「治療」という用語には、疾患の進行を遅らせる若しくは止めること、病変を退行若しくは消失させること、発症を予防すること、又は再発を抑制することを含む種々の目的のために、治癒、一時的寛解、予防等の目的を医学的に可能にする全てのタイプの予防的及び/又は治療的介入が含まれる。
実施例1-突然変異体のインシリコ分析
結合自由エネルギーの大部分に寄与するタンパク質間界面の小部分の同定は、相互作用及び認識特性の性質を理解するための非常に重要な情報を提供することができる。これらの部分は、最近の計算化学アプローチにおいて「ホットスポット」と呼ばれている(Hao Wangら, Sci. Rep. 8, 14285 2018)。ここで、本発明者らは、ヒトH鎖フェリチンとトランスフェリン受容体との複合体(PDB ID:6H5I)からホットスポットを予測するために、MD最小化と組み合わせたPredHS2ソフトウエア(http://predhs2.denglab.org)の適用について説明する。本発明者らは、PredHS法(Wei, Lら Comb.chemistry & high throughput screening 19, 144-152 2016)に基づいて、Montemiglioら(Montemiglioら, 2019 Nat Comm 10 1121-1121)によって最近特定されたCD71/H-フェリチン複合体から得られた接触に対応するHフェリチン界面上の14個の界面残基のデータセットを構築した。次に、本発明者らは、最小冗長性最大関連性(mRMR)手順と、折り畳み特性と適合しないと考えられる全ての突然変異(例えば、アルファヘリックス領域内のGly又はPro)を排除する逐次変数増加法とからなる二段階特徴選択法を利用して、冗長及び無関係な配列の除去後に得られた476個の配列(14の位置の単一突然変異体)のセットを作製した。その後、関連構造のエネルギー最小化、溶媒への曝露及び及びエネルギー特徴を、ユークリッド及びボロノイ近傍特性とともに実施した。予測モデルの性能を評価するために、本発明者らは、特異度(SPE)、精度(PRE)、感度(SEN/Recall)、正確性(ACC)、F1スコア(F1)及びマシューズ相関係数(MCC)等の一般的に使用される尺度とともに、10分割交差検証を採用した。最適なエネルギー一致(ZAPP)及び測定値に関連するデータを表1に示す。明らかなように、グルタミン酸残基によるアイソステリックグルタミン置換は、より高い結合自由エネルギー寄与を予測したが、非アイソステリック突然変異は(同じ電荷を有する場合でも)、常に結合自由エネルギー寄与の低下をもたらした(二乗平均平方誤差(RMSE))。明らかに、ボロノイ寄与(多項式二乗距離最小化)は、結合自由エネルギーに寄与するのに重要な役割を果たしており、それは、非アイソステリック突然変異体の欠損原子により発生した空隙、又はより嵩高い残基の場合には更により高いギャップにエネルギー損失を与えるためである。図2に示すように、4つのホットスポット(8、11、12、及び15)を結合界面で実験的に決定した。これらの残基を個々に考慮した。得られた結合自由エネルギーが非現実的に高いと思われるため、これらの計算において複数の突然変異体は考慮されていない。
8位、11位、12位、及び15位における4つの残基(PDB ID:6H5I)が、H-フェリチン/CD71受容体複合体形成の最も重要な寄与因子であることが判明した。ここで、本発明者らは、これらの「ホットスポット」の個々のアイソステリック突然変異が、複合体に対する更なる結合自由エネルギー獲得をもたらすことを示す。
表I-ヒトH鎖フェリチンとトランスフェリン受容体との複合体の「ホットスポット」の予測
Figure 2023518932000001
タンパク質への二本鎖DNA(dsDNA)の結合を予測及びモデル化するために、タンパク質アシストDNAアセンブリ(Protein-assisted DNA assembly)(PADA1)アルゴリズムに基づいて第2のアルゴリズムを適用した。PADA1には、dsDPドッキングを実行するために相乗作用する超高速統計的知識ベース力場と組み合わされた経験的相互作用モデルジェネレーターが含まれる(Blanco JDら, Nucleic Acids Res. 2018 May 4;46(8):3852-3863)。このアルゴリズムは、自然界に見られる経験的で適合性のある主鎖立体構造を示す断片対(短いdsDNAに対合したペプチド)を使用する。DNA認識配列を予測するために、PADA1によってモデル化されたDNA-タンパク質構造が、FoldX(タンパク質設計ソフトウエア)と組み合わされて使用されている。側鎖の精密化及び界面の最適化のためのPADA1とFoldXとの間の協調作用は、フェリチン-DNA相互作用のコアにおける重要な残基を予測するための強力なモデリングツールとしてModelXを変化させる。ヒトHフェリチンの場合、タンパク質断片と対応するdnaX断片との間の原子の「全対全」距離を測定した。次に、原子間距離分布を使用して、相互作用データベースに含まれているタンパク質とdsDNA断片との間の全ての可能性のある接触について統計パラメータ(距離の平均及び標準偏差)を取得した。接触するヌクレオチド-アミノ酸対間の全対全距離は、Blanco JDらによって示唆された制限に従って測定した(側鎖を含むアミノ酸の少なくとも1つの原子がヌクレオチド中の任意の原子から4Å未満である場合、接触とみなされる)。最も興味深いことに、7つの残基が核酸結合特性に関与することが判明し、これは、受容体結合界面に寄与することが既に実証されている4つのグルタミンに加え、リジン86及び87とともにグルタミン83を含む(図2を参照のこと)。
実施例2-フェリチン受容体へのin vitro結合
野生型及びQ11E突然変異体フェリチンのTfR1への結合を表面プラズモン共鳴によって分析した。
実施例3~8
本発明者らは、突然変異K54E、K72E、K87Q、K144E、C91S及びC103Sを加えることにより、Q11E及びQ11E-Q15E突然変異体に基づく更なるフェリチン変異体を作製した。突然変異C131Sを更に突然変異体Q11Eに加えた。これらのフェリチン変異体の特性を、実施例3~8において更に分析した。
実施例3
未変性PAGEゲルは、封入及び精製後のタンパク質のサイズを確認するために実施された。野生型タンパク質は、24量体(均一なケージ)として存在する突然変異タンパク質とは対照的に、ケージに加えて、ケージの凝集体及びより大きな凝集体の形態を含有する形態の不均一性を示すことを明確に示す。凝集の程度が大きいほど、ドキソルビシンをロード後のロード効率及びタンパク質回収率に悪影響を及ぼす(図3)。
実施例4
野生型フェリチンの保存条件は限られている。冷凍庫(-80 ℃)で保存し、解凍すると、ケージの凝集の増加が生じ、未変性電気泳動でのそれらの分離が妨げられる。対照的に、Q11E突然変異体は凝集体の存在を減少させ、ドキソルビシンを含むフェリチンケージの冷凍庫における保存を可能にする(図4)。
実施例5
封入効率の計算は、Ft突然変異体Q11E及びQ11E-Q15Eが、Ft野生型と比較して、それらのケージに平均的により多くのドキソルビシン分子をロードすることができ、それぞれ55分子、63分子、23分子であることを示す(図5)。
実施例6
UV-Visスペクトル分析は、ロード後のタンパク質回収率は、突然変異体Q11Eでは100%、野生型フェリチンでは僅か38%であることを示す(図6)。
実施例7
in vitro実験は、フェリチン突然変異体が腫瘍細胞に対して優れた細胞傷害性を露にすることを示す。ドキソルビシンを充填したタンパク質をマクロファージに挿入し、次に乳癌及び卵巣癌細胞株:MDA-MB 231、Skov3及び4T1と共培養した。共培養後の生細胞の数は、Q11E-Q15E突然変異体で最も少なかった(図7)。
実施例8
DPBS中に2 mgのFt及び4 μgのsiRNAを含有する1 mlの反応物のpHは示される値(それぞれ2.5、3.2、4.4、5.6及び6.8)まで低下させた。試料を室温で15分間インキュベートし、次いでNaOHを添加して、pHを中性(pH 7)に調整した。非会合遊離siRNAは、100 kDaカットオフのAmiconで4段階の遠心分離により除去された。図8に示すように、フェリチンQ11E突然変異体は、pH範囲4.4~6.8(矢印)でインキュベートした場合にsiRNAと会合したが、フェリチンケージが破壊される可能性がある条件である2.4及び3.2では会合しなかった。この観測結果は、Ftナノケージの完全性が観察された会合にとって非常に重要である可能性があることを示唆している。対照的に、野生型フェリチン変異体では、siRNAとのFtインキュベーション中のpH条件とは無関係に、siRNAとの会合は観察されなかった。
実施例9
ヒト重鎖フェリチンは、システイン残基内でホスト疎水性薬物分子と共有結合することができる。チューブリン阻害剤モノメチルアウリスタチン(MMAE)等のマレイミド官能化薬物は、容易及び特異的に結合することができる強力な細胞傷害性の最も注目すべき例の1つである。本発明者らは、以下の手順に従って、この薬物をフェリチンにコンジュゲートした:アウリスタチンE類似体、マレイミドカプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンゾイルオキシカルボニル-モノメチルアウリスタチンE(vcMMAE)は、MedChem Express(ニュージャージー州プリンストン)から入手した。フェリチンvcMMAE付加物は、以下のように調製した:配列番号77によるヒト重鎖フェリチンを使用した。フェリチン溶液を、反応緩衝液(20 mMのHEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)、0.04%のポリソルベート80、pH 7.0)で125 μMの濃度に調整し、室温で4℃で4時間、5倍の過剰モルのvcMMAEでコンジュゲートした。マレイミド基は、pH 6.5~7.5で遊離(還元型)スルフヒドリルと効率的及び特異的に反応して、安定したチオエーテル結合を形成する。最終コンジュゲートを洗浄緩衝液(20 mMのHEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)、0.02%のポリソルベート80、2%のグリセリン、pH 7.0)中で透析して、非結合のvcMMAEを除去し、Amicon(商標)遠心濾過装置で濃縮した。得られたコンジュゲートの薬物対タンパク質のモル比をLC-MS分析によって決定し、それは1.95に等しかった(図9を参照のこと)。Ft-vcMMAEコンジュゲートの濃度を、562 nmでの吸光度に基づくBCA比色アッセイによって決定した。
項目
1. フェリチン変異体ポリペプチドであって、少なくとも1つの、少なくとも2つの、少なくとも3つの又は少なくとも4つの、好ましくは4つのリジン残基、好ましくは、配列番号1(ヒト野生型重鎖フェリチン)に関して示される54位、72位、87位及び/又は144位のリジン残基が、欠失又は非塩基性アミノ酸、好ましくはE若しくはQで置換されている、フェリチン変異体ポリペプチド。
2. K54がEで置換され、K72がEで置換され、K87がQで置換され、K144がEで置換されている、項目1に記載のフェリチン変異体ポリペプチド。
3. フェリチン変異体ポリペプチドが、配列番号82、配列番号1又は配列番号2による配列であって、54位、72位、87位及び/又は144位の少なくとも1つの、好ましくは全てのリジン残基が、欠失又は非塩基性アミノ酸、好ましくはE若しくはQで置換されている、配列を有し、配列番号82、配列番号1及び配列番号2による配列が、54位、72位、87位及び/又は144位の外に、1~5、1~10、1~15、1~20又は1~25のアミノ酸突然変異を更に含むことができる、項目1又は2に記載のフェリチン変異体ポリペプチド。
4. 1つ以上のシステイン残基、特に、配列番号1に関して示される91位、103位及び/又は131位のシステイン残基が、欠失又は置換、好ましくはセリン残基で置換されている、項目1~3のいずれか一項に記載のフェリチン変異体ポリペプチド。
5. フェリチン変異体ポリペプチドが、配列番号83、配列番号84、配列番号85、配列番号86、配列番号75、配列番号76、若しくは配列番号77による配列、又は54位、72位、87位及び/又は144位の外に、1~5、1~10、1~15、1~20又は1~25のアミノ酸突然変異を含む、配列番号83、配列番号84、配列番号85、配列番号86、配列番号75、配列番号76、若しくは配列番号77による配列を有する、項目1~4のいずれか一項に記載のフェリチン変異体ポリペプチド。
6. 1つ以上のシステイン残基、特に、配列番号1に関して示される91位、103位及び/又は131位のシステイン残基が、欠失又は置換、好ましくはセリン残基で置換されている、フェリチン変異体ポリペプチド。
7. フェリチン変異体ポリペプチドが、配列番号82、配列番号1又は配列番号2による配列であって、91位、103位及び/又は131位の少なくとも1つの、好ましくは全てのシステイン残基が、欠失又は置換、好ましくはセリン残基で置換されている、配列を有し、配列番号82、配列番号1及び配列番号2による配列が、91位、103位及び/又は131位の外に、1~5、1~10、1~15、1~20又は1~25のアミノ酸突然変異を更に含むことができる、項目6に記載のフェリチン変異体ポリペプチド。
8. 1つ、2つ、3つ又は4つ、好ましくは4つのリジン残基、好ましくは、配列番号1(ヒト野生型重鎖フェリチン)に関して示される54位、72位、87位及び/又は144位のリジン残基が、欠失又は非塩基性アミノ酸、好ましくはE若しくはQで置換されており、最も好ましくは、K54がEで置換され、K72がEで置換され、K87がQで置換され、K144がEで置換されている、項目6又は7に記載のフェリチン変異体ポリペプチド。
9. フェリチン変異体ポリペプチドが、配列番号75若しくは配列番号76による配列、又は91位、103位及び/又は131位の外に、1~5、例えば1、2、3、4若しくは5、又は1~10、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10のアミノ酸突然変異を含む、配列番号75若しくは配列番号76による配列を有する、項目6~8のいずれか一項に記載のフェリチン変異体ポリペプチド。
10. フェリチン変異体のトランスフェリン受容体結合ドメイン(TRBD)を更に含み、TRBDが、その基となる野生型フェリチンと比較して、グルタミン酸残基に突然変異した1つ以上のグルタミン残基及び/又はアスパラギン酸残基に突然変異した1つ以上のアスパラギン残基を含み、特に少なくとも1つの、好ましくは全ての突然変異が、野生型フェリチンのN末端の20アミノ酸に含まれている、項目1~9のいずれか一項に記載のフェリチン変異体ポリペプチド。
11. TRBDが、少なくとも以下のアミノ酸配列:
MTTASX1SZVRZBYHZDX2EAA(配列番号3)
(X1は、S又はT、好ましくはTであり、
X2は、S又はA、好ましくはSであり、
Zは、Q又はEであり、
Bは、N又はDであり、
式中、少なくとも1つのZ又はBはE又はDであり、
Z及び/又はBの外に、1つ、2つ又は3つのアミノ酸置換を更に含んでもよく、式中、1位のMが、存在しても存在しなくてもよい)を含む、項目10に記載のフェリチン変異体ポリペプチド。
12. TRBDが、少なくとも配列番号04から配列番号63を含む群から、特に配列番号05、11、12、15、20、26、27、30、35、41、42、45、50、56、57及び60からなる群から、より具体的には配列番号05、12、20、27、35、42、50及び57からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、該アミノ酸配列が、アミノ酸8位、11位、12位及び/又は15位の外に、1つ、2つ又は3つのアミノ酸置換を更に含むことができ、1位のMが、存在しても存在しなくてもよい、項目10又は11に記載のフェリチン変異体ポリペプチド。
13. TfR-1に対するTRBDの親和性が、野生型フェリチンのTRBDと比較して、少なくとも1.5倍(以上)、2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、10倍以上、20倍以上、30倍以上、40倍以上、50倍以上増加するが、100倍未満(以下)、75倍以下、50倍以下、40倍以下、30倍以下、20倍以下、10倍以下、又は5倍以下増加し、特にTfR-1に対するTRBDの親和性が、野生型フェリチンのTRBDと比較して、1.5倍~50倍、2倍~50倍、3倍~50倍、4倍~50倍、5倍~50倍、10倍~50倍、20倍~50倍、30倍~50倍、40倍~50倍、1.5倍~10倍、2倍~20倍又は5倍~30倍増加する、項目10~12のいずれかに記載のフェリチン変異体ポリペプチド。
14. 項目1~13のいずれかに記載のポリペプチドをコードする核酸。
15. 項目14に記載の核酸を含むベクター。
16. 項目1~13に記載のポリペプチド及び少なくとも1つの標識及び/又は少なくとも1つの薬物を含むコンジュゲート。
17. 少なくとも1つの項目1~13に記載のポリペプチド及び/又は少なくとも1つの項目16に記載のコンジュゲートを含む複合体。
18. 少なくとも1つの標識及び/又は少なくとも1つの薬物を更に含む、項目17に記載の複合体。
19. 標識が、
a. 蛍光色素、特に、以下の種類の蛍光色素:キサンテン、アクリジン、オキサジン、シアニン、スチリル色素、クマリン、ポルフィン、金属-配位子-錯体、蛍光タンパク質、ナノ結晶、ペリレン及びフタロシアニン、並びにこれらの種類の色素のコンジュゲート及び組み合わせからなる群から選択される蛍光色素と、
b. 放射性同位体/蛍光発光同位体、特に、アルファ線放出同位体、ガンマ線放出同位体、オージェ電子放出同位体、X線放出同位体、蛍光同位体、例えば65Tb、蛍光発光同位体、例えば18F、51Cr、67Ga、68Ga、89Zr、111In、99mTc、140La、175Yb、153Sm、166Ho、88Y、90Y、149Pm、177Lu、47Sc、142Pr、159Gd、212Bi、72As、72Se、97Ru、109Pd、105Rh、101m15Rh、119Sb、128Ba、123I、124I、131I、197Hg、211At、169Eu、203Pb、212Pb、64Cu、67Cu、188Re、186Re、198Au及び199Ag、並びに上記とタンパク質、ペプチド、小分子阻害剤、抗体又は他の化合物とのコンジュゲート及び組み合わせからなる群から選択される放射性同位体/蛍光発光同位体と、
c. 検出可能なポリペプチド、特に自家蛍光タンパク質、好ましくは緑色蛍光タンパク質又は変化した吸着及び/又は発光スペクトルを有するその任意の構造変異体、又は検出可能なポリペプチドをコードする核酸と、
d. 造影剤、特に、常磁性剤、好ましくはGd、Eu、W及びMnから選択される常磁性剤、又はフェリハイドライドを含む造影剤と、
からなる群から選択さる、項目16に記載のコンジュゲート又は項目17若しくは18に記載の複合体。
20. 薬物が、抗癌剤、特に細胞増殖抑制剤、細胞傷害性剤又はそれらのプロドラッグ、抗動脈硬化薬、及び抗炎症薬又は免疫調節薬からなる群から選択される、項目16又は19に記載のコンジュゲート又は項目17及び18に記載の複合体。
21. 薬物を含み、該薬物が、マレイミドカプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンゾイルオキシカルボニルリンカーを介してポリペプチドにコンジュゲートしているアウリスタチン、特にモノメチルアウリスタチン(MMAE)である、項目16、19又は20に記載のコンジュゲート。
22. 細胞を含む単離標的化送達系であって、細胞が、項目1~13に記載のポリペプチド、項目16、19~21に記載のコンジュゲート又は項目17~21に記載の複合体を含み、特に細胞が、CD45+白血球、より具体的には単球、分化単球、リンパ球及び顆粒球からなる群から選択されるCD45+白血球である、単離標的化送達系。
23. 項目1~13に記載のポリペプチド、項目16又は19~21に記載のコンジュゲート又は項目17~21に記載の複合体又は項目22に記載の単離標的化送達系と、薬学的に許容される担体及び/又は好適な賦形剤(複数の場合もある)とを含む薬学的組成物又は診断用組成物。
24. 医薬において使用するための、項目1~13に記載のポリペプチド、項目16又は19~21に記載のコンジュゲート又は項目17~21に記載の複合体又は項目22に記載の単離標的化送達系。
図面訳
図1
Mutant Q11E 突然変異体Q11E
Wildtype Ferritin 野生型フェリチン

図3
Native gel 未変性ゲル

図4
Native gel 未変性ゲル

図5
Number of drug molecules per ferritin cage フェリチンケージ当たりの薬物分子の数
Mutant Q11E - Doxorubicin 突然変異体Q11E-ドキソルビシン
Ft Wild type - Doxorubicin Ft野生型-ドキソルビシン
Mutant Q11E-Q15E - Doxorubicin 突然変異体Q11E-Q15E-ドキソルビシン

図6
Ferritin after Doxorubicin encapsulation ドキソルビシン封入後のフェリチン
Absorbance [a.u.] 吸光度[任意単位]
Recovery 回収率
Doxorubicin encapsulation ドキソルビシン封入
Ft Wild Type - Doxorubicin Ft野生型-ドキソルビシン
Mutant Q11E - Doxorubicin 突然変異体Q11E-ドキソルビシン
molecules 分子

図7
cell number 細胞数
live MDA-MB 231 生存MDA-MB 231
live Skov3 生存Skov3
live 4T1 生存4T1
ctrl 対照
Q11E mutant - Dox Q11E突然変異体-Dox
Q11E-Q15E mutant - Dox Q11E-Q15E突然変異体-Dox
72h 72時間

図8
Ft Q11E mutant Ft Q11E突然変異体

Claims (15)

  1. フェリチン変異体のトランスフェリン受容体結合ドメイン(TRBD)を含むポリペプチドであって、前記TRBD内に、前記フェリチン変異体が、その基となる野生型フェリチンと比較して、グルタミン酸残基に突然変異した1つ以上のグルタミン残基及び/又はアスパラギン酸残基に突然変異した1つ以上のアスパラギン残基を含み、前記フェリチン変異体の前記TRBDが、少なくとも以下のアミノ酸配列:
    MTTASX1SZ1VRZ2BYHZ3DX2EAA(配列番号81)
    (X1は、S又はT、好ましくはTであり、
    X2は、S又はA、好ましくはSであり、
    Z1、Z2、及びZ3は、Q又はEであり、
    Bは、N又はDであり、
    式中、Z2及びZ3のうちの少なくとも1つはEであり、及び/又はBはDであり、
    Z及び/又はBの外に、1つ、2つ又は3つのアミノ酸置換を更に含んでもよく、式中、1位のMが、存在しても存在しなくてもよい)を含む、ポリペプチド。
  2. 前記フェリチン変異体の前記TRBDが、少なくとも配列番号05~18、20~33、35~48及び50~63を含む群から、特に配列番号05、11、12、15、20、26、27、30、35、41、42、45、50、56、57及び60からなる群から、より具体的には配列番号05、12、20、27、35、42、50及び57からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、該アミノ酸配列が、アミノ酸8位、11位、12位及び/又は15位の外に、1つ、2つ又は3つのアミノ酸置換を更に含むことができ、1位のMが、存在しても存在しなくてもよい、請求項1に記載のポリペプチド。
  3. 前記ポリペプチドが、好ましくは前記TRBDのC末端に、配列番号64~配列番号70、配列番号78~配列番号80及び配列番号87を含む群から選択される配列に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を更に含むフェリチン変異体ポリペプチドである、請求項1又は2に記載のポリペプチド。
  4. 1つ、2つ、3つ又は4つ、好ましくは4つのリジン残基、好ましくは、配列番号1(ヒト野生型重鎖フェリチン)に関して示される54位、72位、87位及び/又は144位のリジン残基が、欠失又は非塩基性アミノ酸、好ましくはE若しくはQで置換されており、最も好ましくは、K54がEで置換され、K72がEで置換され、K87がQで置換され、K144がEで置換されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリペプチド、好ましくは請求項3に記載のフェリチン変異体ポリペプチド。
  5. 1つ以上のシステイン残基、特に、配列番号1(ヒト野生型重鎖フェリチン)に関して示される91位、103位及び/又は131位のシステイン残基が、欠失又は置換、好ましくはセリン残基で置換されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリペプチド、好ましくは請求項3又は4に記載のフェリチン変異体ポリペプチド。
  6. 配列番号71~77及び配列番号85からなる群から選択されるアミノ酸配列、好ましくは配列番号77のアミノ酸配列か、又は配列番号71~77若しくは配列番号85の1つに対して、好ましくは配列番号77に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれらからなる、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリペプチド、好ましくは請求項3~5のいずれか一項に記載のフェリチン変異体ポリペプチド。
  7. 請求項1~6のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードする核酸、又は前記核酸を含むベクター。
  8. 請求項1~6のいずれか一項に記載のポリペプチドと少なくとも1つの標識及び/又は少なくとも1つの薬物とを含むコンジュゲート。
  9. 少なくとも1つの請求項1~6のいずれか一項に記載のポリペプチド及び/又は少なくとも1つの請求項8に記載のコンジュゲートを含む複合体。
  10. 少なくとも1つの標識及び/又は少なくとも1つの薬物を更に含む、請求項9に記載の複合体。
  11. 前記標識が、
    蛍光色素、特に、以下の種類の蛍光色素:キサンテン、アクリジン、オキサジン、シアニン、スチリル色素、クマリン、ポルフィン、金属-配位子-錯体、蛍光タンパク質、ナノ結晶、ペリレン及びフタロシアニン、並びにこれらの種類の色素のコンジュゲート及び組み合わせからなる群から選択される蛍光色素と、
    放射性同位体/蛍光発光同位体、特に、アルファ線放出同位体、ガンマ線放出同位体、オージェ電子放出同位体、X線放出同位体、蛍光同位体、例えば65Tb、蛍光発光同位体、例えば18F、51Cr、67Ga、68Ga、89Zr、111In、99mTc、140La、175Yb、153Sm、166Ho、88Y、90Y、149Pm、177Lu、47Sc、142Pr、159Gd、212Bi、72As、72Se、97Ru、109Pd、105Rh、101m15Rh、119Sb、128Ba、123I、124I、131I、197Hg、211At、169Eu、203Pb、212Pb、64Cu、67Cu、188Re、186Re、198Au及び199Ag、並びに上記とタンパク質、ペプチド、小分子阻害剤、抗体又は他の化合物とのコンジュゲート及び組み合わせからなる群から選択される放射性同位体/蛍光発光同位体と、
    検出可能なポリペプチド、特に自家蛍光タンパク質、好ましくは緑色蛍光タンパク質又は変化した吸着及び/又は発光スペクトルを有するその任意の構造変異体、又は検出可能なポリペプチドをコードする核酸と、
    造影剤、特に、常磁性剤、好ましくはGd、Eu、W及びMnから選択される常磁性剤、又はフェリハイドライドを含む造影剤と、
    からなる群から選択され、及び/又は、
    前記薬物が、抗癌剤、特に細胞増殖抑制剤、細胞傷害性剤又はそれらのプロドラッグ、抗動脈硬化薬、及び抗炎症薬又は免疫調節薬からなる群から選択される、請求項8に記載のコンジュゲート又は請求項9若しくは10に記載の複合体。
  12. 薬物を含み、前記薬物が、マレイミドカプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンゾイルオキシカルボニルリンカーを介して前記ポリペプチドにコンジュゲートしているアウリスタチン、特にモノメチルアウリスタチン(MMAE)である、請求項8に記載のコンジュゲート。
  13. 細胞を含む単離標的化送達系であって、前記細胞が、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項8、11若しくは12に記載のコンジュゲート又は請求項9~11のいずれか一項に記載の複合体を含み、特に前記細胞が、CD45+白血球、より具体的には単球、分化単球、リンパ球及び顆粒球からなる群から選択されるCD45+白血球である、単離標的化送達系。
  14. 請求項1~6のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項8、11若しくは12に記載のコンジュゲート又は請求項9~11のいずれか一項に記載の複合体又は請求項13に記載の単離標的化送達系と、薬学的に許容される担体及び/又は好適な賦形剤(複数の場合もある)とを含む薬学的組成物又は診断用組成物。
  15. 医薬において使用するための、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項8、11若しくは12に記載のコンジュゲート又は請求項9~11のいずれか一項に記載の複合体又は請求項13に記載の単離標的化送達系。
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