JP2023517943A - 腎障害の処置のためのフェチュインa - Google Patents

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Abstract

本発明は、腎障害を処置する方法における使用のためのフェチュインA(AHSG)であって、腎障害を処置するのに効果的なフェチュインAの量が、それを必要とする対象に投与されるフェチュインAに関する。本発明は、腎傷害の処置における使用のための医薬組成物であって、フェチュインAおよび場合により少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む医薬組成物にさらに関する。

Description

本発明は、腎障害を処置する方法における使用のためのフェチュインA(AHSG)であって、腎障害を処置するのに効果的なフェチュインAの量が、それを必要とする対象に投与され、特に腎障害が、虚血性障害である、フェチュインAに関する。本発明はまた、腎障害の処置における使用のための医薬組成物であって、フェチュインAおよび場合により少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む医薬組成物に関する。
現代医学の目的は、特定の患者群の良好な転帰を達成するために新しい標的を含む、新しい処置を提供することである。患者のニーズまたはリスクを考慮するこれらの処置は、例えば細胞または細胞応答機能不全の病理学的シグナル伝達カスケードを標的とする知見に依存し得る。医療用タンパク質化学は広範な分野であり、物理学、化学、生物学、バイオインフォマティクスおよび医療技術が、タンパク質構造および機構を分析および説明し、疾患の根本的な分子遺伝的異常を同定し、これらを修正するための介入を開発するために用いられる。この視点は、患者およびその臓器に対する以前の概念的および観察的焦点より、細胞および/または分子の現象および関与を重視する。タンパク質による処置は、ある特定の治療的手段が有益である患者を同定するために、適切なタンパク質および処置勧告を必要とする。したがって、処置の開発は、新しい分子標的薬および手技の調査に大いに依存する。
虚血再灌流傷害(IRI)は、虚血性脳卒中、心筋梗塞、急性腎臓傷害、心臓血管手術および臓器移植を含む、広範な病理にしばしば関与する。虚血後に血液供給が組織に戻るとき、この再酸素負荷は、組織に損傷を与える。逆説的に、このように必要な再酸素負荷は、以前の虚血性組織への血液の流れを修復した後に、細胞機能障害およびアポトーシスを悪化させる。IRIは、心臓、肺、腎臓、腸、骨格筋および脳を含む広範な臓器で引き起こされ、虚血性臓器自体に関与し得るだけでなく、遠位の臓器への全身性損傷も誘導し得、多系統臓器不全をもたらす可能性がある。再灌流傷害は、広範な組織破壊をもたらす多因子プロセスである。最初に、十分な血流の欠如が、ATPレベルの低下を含む、正常なミトコンドリア代謝に必要とされる酸素供給、グルコースおよび他の物質の不足をもたらす。ATP産生のこの欠如により、細胞ATP依存性イオンポンプ(Na/KおよびCa2+ポンプを含む)が機能せず、膜貫通イオン勾配が失われる。損傷または死細胞は、ミトコンドリアまたはアポトーシス小体各々のカルシウムの蓄積を特徴とするカルシウム過負荷を受ける。付随するATP(ミトコンドリア機能不全)およびピロリン酸レベル(重要な石灰化阻害因子)の低下は、これらのオルガネラの石灰化傾向を高める。同様にIRIによって生じ得る臓器移植の公知の合併症には、グラフト機能遅延(DGF)がある。DGFは、移植を受けたレシピエントが、移植後最初の数週間グラフト機能が不良であり、透析を必要とする事象を説明する。
臓器を虚血および再灌流に起因する損傷に対してより抵抗性にする治療モダリティは、議論の余地がある結果をもたらしたか、または新たに出現したばかりである。IRIに対する臓器の抵抗性を高めるか、または突然の酸素制限後に臓器をレスキューするかのいずれかの治療選択肢は、過去数十年、主な研究努力の対象であった。このような戦略としては、例えば、短時間の非致死性の虚血エピソードへの曝露が、その後のIRI中の組織傷害の減弱をもたらす実験的戦略である虚血プレコンディショニング、虚血耐性を増強するための代謝戦略(転写因子HIF-1αの制御下での糖分解酵素、エリスロポエチンなど)、水素、一酸化窒素、硫化水素および一酸化炭素のような治療用ガス、ならびにまた治療標的としてのマイクロRNA(miRNA)がある。残念ながら、これらのモダリティは、議論の余地がある結果をもたらしたか、または新たに出現したばかりである。したがって、IRIを含むが、これに限定されない腎障害の処置には、重大な未だ満たされていない必要性が残されている。
したがって、腎障害を処置するための薬剤を提供することが必要とされ、本発明は、様々な設定において、虚血再灌流傷害を含む腎障害に対処する直接的な手法を提供する。
アルファ-2-HS-糖タンパク質(AHSG)としても公知の天然に存在するフェチュインAは、AHSG遺伝子によりコードされる、肝臓由来の血漿糖タンパク質である。フェチュインAは、脳の文脈において早期脳虚血性傷害を減弱させることが当技術分野において報告されており、IRI駆動性炎症が、虚血性脳組織を有するラットにおいて減少した(例えば、Wangら、J Cereb Blood Flow Metab.2010;30(3):493~504を参照のこと)。フェチュインAは、脳卒中における脳損傷の予防にさらに関連している(WO 00/60943)。しかし、フェチュインAの血漿レベルの上昇は、心筋梗塞および虚血性脳卒中のリスクを高めることも見出され、予防剤としてのフェチュインAの役割が、虚血性脳損傷については十分に理解されていないことが示された(Weickertら、Circulation.2008;118:2555~2562)。
腎障害のバイオマーカーとしてのフェチュインAの使用に関して、矛盾したデータも提示された。例えば、腎臓移植におけるバイオマーカーとしてのフェチュインAの役割を調査する最近の研究は、患者の臨床転帰についての予測的情報を提供できなかった(例えばRoosら、Kidney Blood Press Res.2011;34(5):328~33;Mersaiら、Urol J.2015;12(3):2182~6;Kocaら、Nephrology Dialysis Transplantation.2017、32(3):iii419~iii420を参照のこと)。前記刊行物において、フェチュインAレベルは全般的に末梢血において測定され、これは組織中のフェチュインAレベルを反映していない。総合すると、これらの刊行物は、血液中のフェチュインAレベルが、腎障害に罹患している患者の長期生存または臨床予後に有用なバイオマーカーでないことを示唆する。
しかし、本発明の文脈において、フェチュインAの投与が、腎臓の低酸素状態により誘導される腎臓組織損傷を減弱させることが驚くべきことに見出された。
したがって、第1の態様において、本発明は、腎障害を処置する方法における使用のためのフェチュインA(AHSG)であって、腎障害を処置するのに効果的なフェチュインAの量がそれを必要とする対象に投与される、フェチュインAに関する。好ましくは、腎障害は、低酸素、例えば移植、心臓血管手術または他の大手術中の低酸素によって生じる。腎障害は、虚血性腎障害であり得る。
任意の理論に拘束されるものではないが、本明細書に提供される実験的証拠に基づき、フェチュインAがそれを必要とする対象、特に虚血性腎障害に罹患している対象に投与されると、フェチュインAが、カルシウムレベルを「除去する」ことにより低酸素腎組織において「ミネラルスカベンジャー」として作用すると考えられる。フェチュインAは、異所石灰化に拮抗して、腎組織の完全性を維持し、コラーゲンのIRI誘導性発現により腎線維化をもたらし得る下流の炎症カスケードを阻止すると考えられる。本明細書で提案される説明は、フェチュインAが、腎障害において「ミネラルシャペロン」として作用し、カルシウム含有粒子を除去することにより腎臓における虚血再灌流傷害から臓器を保護し、有害な炎症応答を緩和することである。
本明細書で使用する「腎障害」は、腎臓に影響を与える1つまたはそれ以上の障害または疾患として定義される。用語は、腎疾患を包含するが、それに限定されない。例えば、疾患に起因しない腎傷害も、腎障害であり得る(例えば大手術中に引き起こされる一部の傷害;しかし、大手術も腎臓疾患の原因となり得る)。好ましくは、腎障害は、虚血性腎障害、すなわち虚血によって生じるおよび/またはそれに関連する腎障害である。腎障害がある特定の障害「である」場合、これは、他の障害の存在を排除せず、複数の他の障害が、前記腎障害と同時に独立してまたは相互依存的に引き起こされる場合があり、例えばIRIとDGFが同時に引き起こされる場合がある。
本発明の好ましい実施形態において、腎障害は、急性腎障害、慢性腎障害、腎臓線維化、慢性腎臓疾患(CKD)、腎不全、腎炎、急性腎臓傷害(AKI)、虚血性腎障害、腎臓の低酸素に関連する障害、腎虚血-再灌流傷害(IRI)、腎臓組織損傷、腎臓移植に関連する障害、心臓血管手術に関連する障害およびこれらの組合せからなる群から選択され、特に腎臓組織損傷は、虚血性腎臓組織損傷である。心臓血管手術に関連する障害は、例えば心臓血管手術に起因する、特に心臓血管手術中の低酸素および/または虚血に起因する腎臓組織損傷であり得る。
本発明の別の実施形態において、虚血性腎障害は、虚血性急性腎障害、虚血性慢性腎障害、虚血によって生じる腎臓線維化、虚血によって生じる腎炎、虚血によって生じる急性腎臓傷害、虚血性腎障害、腎臓の低酸素に関連する障害、腎虚血-再灌流傷害、虚血性腎臓組織損傷、腎臓移植中の虚血に関連した障害(例えばグラフト機能遅延)およびこれらの組合せからなる群から選択される。
本明細書で使用する「急性腎障害」は、腎臓機能の突然の機能喪失または低下に関する。これは、急性偶発性腎臓損傷または急性障害によって誘発される。この原因は多数あり、腎前性、腎後性および内因性の急性腎臓不全が挙げられるが、これらに限定されない。急性腎臓不全はまた、全身性疾患(自己免疫疾患の徴候など)、挫滅傷、造影剤、一部の抗生物質などによって誘発される。
慢性腎臓疾患(CKD)、慢性腎不全または慢性腎盂腎炎のような慢性腎炎のような「慢性腎障害」も、可能性のある処置スペクトルに含まれるが、これらに限定されない。「慢性腎障害」は、解剖学的位置によって誘発され、両側性腎動脈狭窄症のような大血管疾患および虚血性腎症、溶血性尿毒症症候群および血管炎のような小血管疾患を含む血管疾患、糸球体疾患、尿細管間質疾患、閉塞性腎障害、多発性嚢胞腎のような先天性疾患またはメソアメリカ腎症を含むが、これらに限定されない。
「線維化」は、例えば腎臓または腎臓組織における過剰な線維性結合組織の形成に関する。組織炎症は、線維化を誘発し得る。一部の実施形態において、線維化は、間質性線維化に関する。
本明細書で使用する「虚血」または「虚血性」は、臓器または身体の特定の部分への不適切な血液供給である。これは一般に深刻な臨床的問題とみなされる。虚血は、血液供給を減少させ、したがって酸素および栄養素の供給の減少をもたらし、また組織からの老廃物の除去の低下に関与する。これは、不可逆的組織損傷および細胞死をもたらし得る。虚血は、複数の腎障害の文脈において引き起こされる場合があり、これらの原因となり得る。虚血はまた、大手術の文脈において引き起こされる場合があり、例えば虚血は大手術に起因し得る。「再灌流」は、虚血イベント後の血液供給の回復として本明細書で定義される。再灌流は、例えば腎臓において、特にカルシウムの蓄積により、とりわけミネラルバランスを不均衡にすることにより組織損傷を引き起こし得る。再灌流傷害(RI)または再酸素負荷傷害と呼ばれる場合もある「虚血再灌流傷害」(IRI)は、血液供給が、虚血期間後および/または酸素供給の減少(低酸素)期間後に組織に戻る(再灌流)ときに引き起こされる組織損傷である。
本明細書で使用する「心臓血管手術」は、胸部または腹部内の大血管および臓器の外科的処置、例えば心臓、大血管または肺に関与する手術に関する。一部の実施形態において、心臓血管手術は、冠動脈バイパス術または腹部大動脈瘤術であり得る。腹部大動脈瘤術は、腎虚血再灌流傷害を引き起こし得る。心臓血管手術が腎臓に対して直接行われないとしても、腎障害は、それに関連し得る。心臓血管手術中の虚血は、腎臓組織損傷を引き起こし得、この原因となり得る。心臓血管手術後の急性腎臓傷害(AKI)の発生は周知であり、一部の実施形態は、心臓血管手術によって生じる急性腎臓傷害の処置に関する。
本発明の文脈において、「それを必要とする対象」は、腎障害に罹患していることが予想されるか、もしくは腎障害に罹患するリスクがある人間、または腎障害に既に罹患している、特に腎障害、好ましくは虚血性腎障害と既に診断された人間のいずれかを一般に指す。対象はまた、「患者」と称される場合もある。対象は、予防的または治療的処置を必要とし得る。腎障害に罹患するリスクの増加についての予想は、一部の実施形態において、虚血を引き起こすリスクがあるか、またはさらにはそれが予想される予定された大手術によるものであり得、例えば予定された腎臓移植または心臓血管手術を考慮した腎障害のリスクの増加である。一部の実施形態において、それを必要とする対象は、大手術を受けることが予想されるか、または大手術を受けたことがある、好ましくは腎臓移植または心臓血管手術を受けることが予想されるか、またはこれらを受けたことがある。
本明細書で使用する「処置」、「処置する」または「処置している」は、障害の治療的処置および予防的処置(予防)を包含する。「処置」、「処置する」または「処置している」は、本明細書で説明されるタンパク質または化合物を投与して、それにより(i)特定の障害の少なくとも1つの症状を低減もしくは排除するか、または(ii)障害の進行を遅らせるか、または(iii)特定の障害の少なくとも1つの症状の発生を停止もしくは妨げることを含み得る。本明細書で使用する「治療的処置」および「治療的に処置している」は、既存の障害の処置、すなわち前記障害の開始後の処置を指し、その目的は、既存の障害を排除、軽減もしくは減速するか、またはその重症度を低下させることである。対照的に、本明細書で使用する「予防的処置」、「予防」、「予防する」または「予防している」は、リスクを低減することが意図される障害の処置の種類を指し、前記障害を現在有さない対象が、将来、特に、移植のような大手術などのイベント後に前記障害またはその症状および/もしくは徴候を発生させるのを予防するかまたは遅延させる。好ましい実施形態において、治療的処置は、障害の予後を改善することを意味する。一部の実施形態において、予防的処置は、腎臓移植または心臓血管手術のような大手術前、その間および/またはその後に行われて、大手術に関連する、特に腎臓移植または心臓血管手術中の虚血に関連する障害の発症のリスクを低減する。一部のさらなる実施形態において、用語「処置している」または「処置」は、障害の症状が緩和されるだけでなく、障害自体が改善、遅延または予防されること、特に障害の重症度が低下するか、または障害が予防されることを好ましくは意味する。さらに、「処置」および「処置している」は、対象もしくは患者への治療剤の投与もしくは適用、または障害に関連して治療もしくは予防利益を得るための対象での手技もしくはモダリティの実施を含み得る。例えば、処置は、薬学的有効量のフェチュインAの投与を含み得る。一部の実施形態において、上述の障害は腎疾患である。
実施形態において、本発明は、腎障害を処置する、特に腎障害を治療的に処置する方法における使用のためのフェチュインAであって、腎障害を処置するのに効果的なフェチュインAの量が、腎障害に罹患している対象に投与されるフェチュインAに関する。一部の実施形態において、腎障害は虚血性腎障害である。この文脈において、「処置」または「処置している」は、確立された腎障害の処置および/または前記腎障害の発症後の処置を意味する。
代替的な実施形態において、本発明は、腎障害の予防的処置とも呼ばれるその予防のための方法における使用のためのフェチュインAであって、腎障害を予防するのに効果的なフェチュインAの量が、それを必要とする対象、特に将来障害に罹患するリスクがある対象、例えば、腎臓の虚血に関与し得る大手術を予定している対象に投与されるフェチュインAに関する。前記代替的な実施形態において、「処置」または「処置している」は、前記障害の発症前の腎障害の「予防」またはそれを「予防している」ことを意味する。場合によっては、少なくとも1用量のフェチュインAは、虚血を含む手術、特に移植手術前48時間以内に投与される。
本発明の別の実施形態において、腎障害は、腎臓移植に関連し、特にそれに起因する障害であり、特に、前記障害は、グラフト機能遅延(DGF)、腎臓移植片の臓器拒絶反応、腎臓移植によって生じる腎臓組織損傷、腎臓移植によって生じる炎症、腎臓移植によって生じる虚血再灌流傷害(IRI)およびこれらの組合せからなる群から選択される。本発明の一部の実施形態において、腎障害は、腎臓移植に起因する障害であり、前記障害は、グラフト機能遅延、腎臓移植によって生じる腎臓組織損傷、腎臓移植によって生じる虚血再灌流傷害およびこれらの組合せからなる群から選択される。
一部の実施形態において、腎障害は、虚血性腎障害、特に腎臓移植または心臓血管手術によって生じる虚血性腎障害である。
本発明の別の好ましい実施形態において、腎障害、特に虚血性腎障害は、低酸素に関連または起因し、特に、低酸素は、大手術中の虚血、例えば心臓血管手術または腎臓移植中の虚血に起因する。
本明細書で使用する「大手術」は、侵襲手技、特に切除が行われる侵襲手技により定義される。大手術は、体腔に侵入すること、臓器を取り除くこと、臓器を移植することおよび/または通常の解剖学的構造を変更することを含み得る。一部の実施形態において、大手術は、対象の局所または全身麻酔状態を含む。一般に、間葉系バリア(胸膜腔、腹膜、髄膜)を開く場合、手術は「大」手術とみなされる。例えば、腎臓移植および心臓血管手術はいずれも大手術である。用語「手術」が大手術であることを特定せずに用いられる場合、これはまた、本発明に従って「大手術」の実施形態を含む。
本発明の文脈において、「腎臓組織損傷」は、低酸素のすべての症例、特に腎臓移植、心臓血管手術または他の大手術中の低酸素に起因する、偶発的に引き起こされるような組織損傷のすべての形態を含む。
本明細書で使用する「低酸素」は、身体または身体領域で、適切な酸素供給が組織レベルで枯渇した状態を指す。これはしばしば病理学的障害の一部である。低酸素誘導性組織損傷は、酸素供給が失われるかまたは減少し、任意の組織において酸素供給不足を引き起こす、すべての障害を含む。これはまた、一般に大手術または血管損傷による血液供給の減少を含む。用語「低酸素」はまた、極端な形態の低酸素として無酸素、すなわち酸素レベルの完全な枯渇を含む。
本発明の別の好ましい実施形態において、IRIは、手術、特に大手術中の低酸素に起因する。このような手術、特に大手術の過程で引き起こされる低酸素障害は、腎臓において虚血再灌流傷害をもたらし得、それにより組織を損傷させる。虚血再灌流傷害は、少なくとも部分的に石灰化に起因し得る。
本発明のさらなる実施形態において、腎障害は、グラフト機能遅延、腎線維化またはこれらの組合せである。
本明細書で使用する「フェチュインA」は、天然に存在するフェチュインAであるか、または天然に存在しないが、天然に存在するフェチュインAと同じもしくは類似の機能、特に天然に存在するヒトフェチュインAと同じもしくは類似の機能を有するタンパク質またはその断片もしくはその誘導体を指す。好ましくは、これは石灰化阻害因子であるか、および/またはタンパク質配列が、ヒトフェチュインAと少なくとも部分的に同一である。一部の実施形態において、フェチュインAは、血漿由来または組換えヒトフェチュインAである。ヒト血漿由来フェチュインAは、ヒト血漿から得られる。用語フェチュインAはまた、石灰化の阻害のような天然に存在するフェチュインAおよび/またはヒトフェチュインAと同じまたは類似の機能を有する、すべての天然に存在するアレル、スプライスバリアントおよびアイソフォーム、ならびに合成ペプチド、ペプチドミメティックまたはペプチド断片を包含するものとする。
本発明の一部の実施形態において、フェチュインAは、ヒトフェチュインAである。一部の実施形態において、ヒトフェチュインAは、ヒト血漿に由来するか、または代替的には、ヒトフェチュインAは、組換えヒトフェチュインAである。血漿由来ヒトフェチュインAは、ヒト血漿から精製される。組換えヒトフェチュインAは、血漿由来ヒトフェチュインAと異なるグリコシル化パターンを有し得る。一部の実施形態において、フェチュインAは、天然に存在するフェチュインAである。本発明の文脈において言及される「天然に存在するタンパク質」は、任意の種類の生体に天然に見出され、そのようなものとして前記生物の組織、液体から、および/またはあらゆる個々の細胞から単離できるタンパク質を一般に示す。例えば、一部の天然に存在するタンパク質はヒト血漿から得ることができる。組換え産生タンパク質はまた、例えば精製を容易にする場合もまたはしない場合もある遺伝子タグ(FLAG-タグ、His-タグ、Myc-タグ、HA-タグまたはGFP、YFPもしくはRFPのような蛍光標識タンパク質のようなもの)を結合することにより、何らかの形でマークまたは標識される、フェチュインA誘導体を含む。
本明細書の「精製される」は、一般に、当業者に周知であるタンパク質の精製を説明する。一般に、タンパク質は、可溶性、サイズ、電荷および特異的結合親和性のようなその特性に基づき精製される。すなわち、タンパク質はしばしば、その正味の電荷に基づきイオン交換クロマトグラフィーにより分離される。タンパク質精製技術は当業者に周知である。これらの技術は、1つのレベルでの、細胞、組織または臓器のホモジナイゼーション、ならびにポリペプチドおよび非ポリペプチド画分へのこれらの分画を含む。別段特定されない限り、目的のタンパク質またはポリペプチドを、クロマトグラフィーおよび電気泳動技術を用いてさらに精製して、部分的または完全な精製(または均質になるまでの精製)を達成することができる。純粋なペプチドの製造に特に適した方法としては、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル排除クロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、アフィニティクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、免疫親和性クロマトグラフィーおよび等電点がある。ペプチドを精製する方法としては、高速液体クロマトグラフィーがある。別のタンパク質精製方法としては、高速タンパク質液体クロマトグラフィーがある。例えば、血漿タンパク質の精製は、血漿分画および/またはクロマトグラフィー工程により行うことができる。タンパク質精製はまた、工程としてウイルス不活性化を含み得る。用語「精製される」は、一部の不純物の存在を排除しないが、一般に、他の血液成分および/または不純物が主として除去されている。
本発明の別の好ましい実施形態において、ヒトフェチュインAの機能的に活性な誘導体または断片は、以下で定義される配列番号1に少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%または最も好ましくは少なくとも99%同一および/または相同である。「相同体」は、RNA、DNAおよびタンパク質配列レベルでの様々な生物学的配列の配列類似性として本明細書で定義される。「機能的に活性な誘導体」は、天然に存在するフェチュインAと同じまたは類似の活性を有し、特に石灰化を阻害し得る。配列同一性のパーセンテージは、例えば配列アラインメントで決定できる。比較のための配列アラインメントの方法は当技術分野で周知である。NCBI Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)(Altschulら、1990、J.Mol.Biol;215:3、403~410)は、配列分析プログラムblastp、blastn、blastx、tblastnおよびtblastxに関連した使用のため、アメリカ国立生物工学情報センター(NCBI、Bethesda、MD)を含むいくつかの供給元およびインターネット上から入手可能である。
したがって、本発明の別の実施形態において、フェチュインAは、配列番号1によるアミノ酸配列またはその1つの断片もしくはその複数の断片を含むか、またはこれらからなる。本発明の文脈において、用語「その1つの断片」または「その複数の断片」は、フェチュインA活性を有する天然に存在するタンパク質の断片および誘導体について上に定義されたように、フェチュインA活性を示すあらゆる小さな断片または付加アミノ酸を含む任意の断片を含むが、これらに限定されない、配列番号1により定義される任意のアミノ酸配列またはペプチドを指す。一部の実施形態において、前記断片の長さは、配列番号1の長さの少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%であり、長さは、配列番号1の全長に対するアミノ酸の数に関連している。断片は、配列番号1の一部ではない付加アミノ酸を含み得る。本発明のタンパク質の断片は、タンパク質配列変化により(例えば1つまたはそれ以上のアミノ酸欠失、置換および/または付加により)得ることができ、配列が変化したタンパク質は、変化していないタンパク質の機能、すなわち、細胞周期進行中に細胞表層、収縮環および中心体からなる群から選択される細胞内構造体に局在するか、または蛍光レポータータンパク質として機能するその能力を保持する。このような配列変化は、保存的置換、欠失、変異および/または挿入を含み得るが、これらに限定されない。
ヒトフェチュインA配列(タンパク質および核酸配列)は、「アメリカ国立生物工学情報センター」(NCBI)から入手可能である。
配列番号1(ヒトフェチュインAのタンパク質配列)
MKSLVLLLCLAQLWGCHSAPHGPGLIYRQPNCDDPETEEAALVAIDYINQNLPWGYKHTLNQIDEVKVWPQQPSGELFEIEIDTLETTCHVLDPTPVARCSVRQLKEHAVEGDCDFQLLKLDGKFSVVYAKCDSSPADSAEDVRKVCQDCPLLAPLNDTRVVHAAKAALAAFNAQNNGSNFQLEEISRAQLVPLPPSTYVEFTVSGTDCVAKEATEAAKCNLLAEKQYGFCKATLSEKLGGAEVAVTCMVFQTQPVSSQPQPEGANEAVPTPVVDPDAPPSPPLGAPGLPPAGSPPDSHVLLAAPPGHQLHRAHYDLRHTFMGVVSLGSPSGEVSHPRKTRTVVQPSVGAAAGPVVPPCPGRIRHFKV
タンパク質配列:NP_001341500.1(368番目のアミノ酸)
(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/NP_001341500.1)
配列番号2(ヒトフェチュインAの核酸配列)
ATGAAGTCCCTCGTCCTGCTCCTTTGTCTTGCTCAGCTCTGGGGCTGCCACTCAGCCCCACATGGCCCAGGGCTGATTTATAGACAACCGAACTGCGATGATCCAGAAACTGAGGAAGCAGCTCTGGTGGCTATAGACTACATCAATCAAAACCTTCCTTGGGGATACAAACACACCTTGAACCAGATTGATGAAGTAAAGGTGTGGCCTCAGCAGCCCTCCGGAGAGCTGTTTGAGATTGAAATAGACACCCTGGAAACCACCTGCCATGTGCTGGACCCCACCCCTGTGGCAAGATGCAGCGTGAGGCAGCTGAAGGAGCATGCTGTCGAAGGAGACTGTGATTTCCAGCTGTTGAAACTAGATGGCAAGTTTTCCGTGGTATACGCAAAATGTGATTCCAGTCCAGCAGACTCAGCCGAGGACGTGCGCAAGGTGTGCCAAGACTGCCCCCTGCTGGCCCCGCTGAACGACACCAGGGTGGTGCACGCCGCGAAAGCTGCCCTGGCCGCCTTCAACGCTCAGAACAACGGCTCCAATTTTCAGCTGGAGGAAATTTCCCGGGCTCAGCTTGTGCCCCTCCCACCTTCTACCTATGTGGAGTTTACAGTGTCTGGCACTGACTGTGTTGCTAAAGAGGCCACAGAGGCAGCCAAGTGTAACCTGCTGGCAGAAAAGCAATATGGCTTTTGTAAGGCAACACTCAGTGAGAAGCTTGGTGGGGCAGAGGTTGCAGTGACCTGCATGGTGTTCCAAACACAGCCCGTGAGCTCACAGCCCCAACCAGAAGGTGCCAATGAAGCAGTCCCCACACCCGTGGTGGACCCAGATGCACCTCCGTCCCCTCCACTTGGCGCACCTGGACTCCCTCCAGCTGGCTCACCCCCAGACTCCCATGTGTTACTGGCAGCTCCTCCAGGACACCAGTTGCACCGGGCGCACTACGACCTGCGCCACACCTTCATGGGTGTGGTCTCATTGGGGTCACCCTCAGGAGAAGTGTCGCACCCCCGGAAAACACGCACAGTGGTGCAGCCTAGTGTTGGTGCTGCTGCTGGGCCAGTGGTTCCTCCATGTCCGGGGAGGATCAGACACTTCAAGGTCTAG
核酸配列:NM_001354571.2(1107番目のヌクレオチド)
(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/197;NM_001354571.2;コンセンサスコード化配列CCDS87176.1)
別の好ましい実施形態において、天然に存在するタンパク質フェチュインAの機能的に活性な誘導体または断片は、以下で定義される配列番号3(ウシフェチュインA配列)に少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%または最も好ましくは少なくとも99%同一および/または相同である。
配列番号3(ウシフェチュインAのタンパク質配列)
MKSFVLLFCLAQLWGCHSIPLDPVAGYKEPACDDPDTEQAALAAVDYINKHLPRGYKHTLNQIDSVKVWPRRPTGEVYDIEIDTLETTCHVLDPTPLANCSVRQQTQHAVEGDCDIHVLKQDGQFSVLFTKCDSSPDSAEDVRKLCPDCPLLAPLNDSRVVHAVEVALATFNAESNGSYLQLVEISRAQFVPLPVSVSVEFAVAATDCIAKEVVDPTKCNLLAEKQYGFCKGSVIQKALGGEDVRVTCTLFQTQPVIPQPQPDGAEAEAPSAVPDAAGPTPSAAGPPVASVVVGPSVVAVPLPLHRAHYDLRHTFSGVASVESSSGEAFHVGKTPIVGQPSIPGGPVRLCPGRIRYFKI
タンパク質配列:NP_776409.1(359番目のアミノ酸)
(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/NP_776409.1)
配列番号4(ウシフェチュインAの核酸配列)
ATGAAATCCTTCGTTCTGCTCTTTTGCCTGGCTCAGCTCTGGGGCTGCCACTCGATCCCGCTTGACCCGGTTGCAGGTTATAAGGAACCGGCCTGTGATGACCCAGACACAGAGCAAGCAGCCTTGGCTGCCGTGGACTACATCAACAAGCACCTTCCTCGGGGCTACAAGCACACCTTGAACCAGATTGACAGTGTGAAGGTGTGGCCGAGGCGGCCCACGGGAGAGGTGTATGACATTGAAATAGATACCCTGGAAACCACCTGCCACGTACTGGACCCCACGCCCCTGGCGAACTGCAGCGTGAGGCAGCAGACGCAGCACGCGGTGGAAGGAGACTGCGATATCCACGTGCTGAAACAAGATGGCCAGTTTTCCGTGCTGTTTACAAAATGTGATTCCAGTCCAGATTCCGCCGAGGACGTGCGCAAGTTGTGCCCAGACTGCCCCCTGCTGGCGCCACTCAACGACAGCCGGGTGGTGCACGCAGTGGAGGTCGCGCTGGCTACCTTCAATGCCGAGAGCAACGGCTCCTACTTACAGCTGGTGGAAATTTCTCGGGCTCAATTTGTGCCTCTTCCAGTTTCTGTCTCTGTGGAGTTTGCAGTGGCTGCTACTGACTGTATTGCTAAAGAAGTCGTAGATCCAACCAAGTGCAACCTACTGGCAGAAAAGCAATATGGCTTCTGTAAGGGGTCAGTCATTCAGAAAGCTCTTGGTGGGGAGGACGTCAGAGTGACTTGCACGTTGTTCCAAACGCAGCCTGTGATTCCGCAGCCCCAGCCCGACGGCGCCGAGGCTGAGGCCCCAAGCGCTGTGCCGGACGCAGCTGGGCCTACGCCTTCTGCAGCTGGCCCGCCCGTGGCCTCCGTGGTGGTGGGGCCAAGCGTGGTAGCAGTTCCCCTGCCGCTGCACCGAGCACACTACGACTTGCGCCACACTTTCTCCGGGGTGGCCTCAGTGGAGTCATCCTCGGGAGAAGCGTTCCACGTGGGCAAAACACCCATAGTGGGGCAGCCTAGCATTCCTGGAGGTCCAGTCCGCCTTTGCCCAGGGAGAATCAGATACTTCAAGATCTAG
ヌクレオチド配列:NM_173984.3(コード化ヌクレオチド配列(1080番目のnt))
(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/NM_173984.3)
本発明の別の実施形態において、フェチュインAは、翻訳後修飾、より好ましくはグリコシル化を提供する、好ましくは宿主細胞系において組換え的に発現される。
本明細書で使用する用語「発現される」は、遺伝子またはDNA配列中の情報を顕在化することができるまたはそれを顕在化させることを一般に意味する。特に、本発明の文脈において、対応する遺伝子またはDNA配列の転写および翻訳に関与する細胞機能を活性化することによる、本発明の核酸発現構築物によりコードされるタンパク質の細胞内産生を意味する。すなわち、DNA配列は、細胞においてまたはそれにより発現されて、タンパク質のような「発現産物」を形成する。細胞におけるまたはそれによるタンパク質の発現は、目的のタンパク質をコードするDNA配列に操作可能に連結されるプロモーター配列、転写速度を制御するエンハンサーおよび/もしくはサイレンサー配列もしくは他のDNA配列の存在もしくは非存在、細胞を培養するために用いられる培地を含む各DNA配列を有する細胞に適用される細胞培養条件、ならびに/または細胞に導入されたDNA配列のコピー数を含むが、これらに限定されない様々な因子に依存し得る。融合タンパク質の発現の成功は、ウェスタンブロット分析、ノーザンブロット分析、RNaseプロテクションアッセイ、定量RT-PCR、ならびに直接または間接蛍光読出しに関係する方法を含むが、これらに限定されない当業者に公知の標準的な方法により分析および/または可視化することができる。「組換え」および「組換え的に」は人工的に産生されることを意味し、組換えにより形成された生物、細胞、タンパク質または遺伝物質に関連するかまたはこれらを示す。所望のタンパク質の組換え発現は、当技術分野で標準的な方法であり、その後に、以下に記載される標準的なタンパク質精製法が続く。
「翻訳後修飾」は、官能基もしくはタンパク質の共有結合的付加、調節サブユニットのタンパク質分解切断またはタンパク質全体の分解により、プロテオームの機能的多様性を高める。これらの修飾としては、とりわけリン酸化、ユビキチン化、S-ニトロシル化、メチル化、N-アセチル化、脂質化およびグリコシル化が挙げられる。
「翻訳後修飾を提供する宿主細胞」は、必要な修飾モダリティを送達し、哺乳動物タンパク質の正確な翻訳後修飾を可能にする宿主細胞である。これらの要件を提供する系としては、例えば、BTI-Tn5B1-4もしくはSF9細胞株のような昆虫細胞発現系、または例えば、これらに限らないがHEK293(T)、CHOもしくはHELA細胞のような哺乳動物細胞発現系がある。
「グリコシル化」は、糖類を連結して、グリカン(次いでタンパク質、脂質または他の有機分子に結合される)を産生する、酵素により導かれる部位特異的プロセスとして定義される。翻訳後プロセスとしてのタンパク質のグリコシル化は、高い構造的安定性または機能を天然のタンパク質構造に付与するために、糖類が特定のタンパク質残基に選択的に付加される、細胞における天然のプロセスである。それに関して、グリコシル化は、多様なタンパク質の適切な機能性において重要な役割を果たす。グリコシル化としては、C-連結、N-連結、O-連結またはS-連結型グリコシル化および糖化が挙げられるが、これらに限定されない。それに関して、「糖化」は、タンパク質の窒素原子への還元糖の非酵素的結合を指す。
本明細書で使用する「注射」は、経口投与または吸入を包含しない、非経口モードの投与である。本明細書で使用する「注射」は、静脈内(iv)、動脈内、筋肉内(im)、皮下(sc)および皮内(id)、腹腔内、骨内、心臓内、関節内および空洞内投与を包含する。一部の有利な実施形態において、注射は、静脈内(iv)または皮下(sc)投与を指す。注射は、例えば単回用量のフェチュインAと共に針を用いる不連続および/または短時間注射であり得る(および場合によりその後さらなる用量を注射する)。代替的には、注射はまた、点滴、すなわち長時間の連続注射であり得る。一部の実施形態において、注射は15分未満で、特に10分未満でまたは5分未満で投与される。注射による投与はまた、全身投与、例えば体外循環(ECC)による投与を含む。本明細書で使用する「吸入」は、空気、ガス、活性物質およびエアロゾルを肺に運ぶことができる吸入または呼吸方法を説明する。例えば、フェチュインAは、吸入の目的でエアロゾルの一部として提供される。
本発明の一部の実施形態において、フェチュインAは、注射または吸入により患者に投与される。一部の好ましい実施形態において、フェチュインAは、注射により患者に投与される。一部の実施形態において、フェチュインAは、静脈内(iv)、筋肉内(im)または皮下(sc)注射、好ましくは静脈内(iv)注射により患者に投与される。
一部の実施形態において、フェチュインAは、腎障害を処置するのに効果的な量で患者に投与され、特にフェチュインAは、1mg/kg~200mg/kg体重の範囲の濃度で患者に投与され、特に静脈内投与される。一部の実施形態において、フェチュインAは、5mg/kg~約100mg/kg体重の範囲の濃度で患者に投与され、特に静脈内投与される。一部の実施形態において、フェチュインAは、10mg/kg~約50mg/kg体重の範囲の濃度で患者に投与され、特に静脈内投与される。一部の実施形態において、フェチュインAは、10mg/kg~約75mg/kg体重の範囲の濃度で患者に投与され、特に静脈内投与される。一部の実施形態において、フェチュインAは、20または30mg/kg~約200mg/kg体重の範囲の濃度で患者に投与され、特に静脈内投与される。一部の実施形態において、フェチュインAは、20mg/kg~約50mg/kg体重の範囲の濃度で患者に投与され、特に静脈内投与される。一部の実施形態において、フェチュインAは、30mg/kg~約50mg/kg体重の範囲の濃度で患者に投与され、特に静脈内投与される。
さらなる実施形態において、フェチュインAは、大手術中、例えば心臓血管手術中または腎臓移植中にそれを必要とする対象に投与される。さらなる実施形態において、フェチュインAは、大手術後に、例えば心臓血管手術後または腎臓移植後にそれを必要とする対象に投与される。さらなる実施形態において、フェチュインAは、大手術前に、例えば心臓血管手術前または腎臓移植前にそれを必要とする対象に投与される。これらの実施形態は組み合わせることができ、例えば一部の実施形態において、フェチュインAは、大手術前およびその後に投与される。
本発明の文脈において、フェチュインAは、転写因子HIF-1αの標的であり得る。低酸素誘導性因子1-アルファとしても公知のHIF-1αは、ヘテロ二量体転写因子である低酸素誘導性因子1(HIF-1)のサブユニットである。「標的」は、細胞シグナル伝達経路またはカスケードに関連して、「下流」において影響を受けるタンパク質として本明細書で定義される。本発明の文脈において、フェチュインAは、HIF-1αの下流において作用し得る。
本発明の一部の実施形態において、処置は、腎臓組織の石灰化レベル、好ましくは低酸素に関連した石灰化レベルの調節を含む。「石灰化」は、組織の永久的な損傷をもたらし得る、体組織における、特に腎臓におけるカルシウム塩の蓄積として本明細書で定義される。これは、組織における酸素供給の制限の結果として炎症応答および組織損傷をもたらし得る。一実施形態において、処置は、腎臓組織におけるカルシウムミネラル沈着物の除去、特に移植された腎臓組織におけるカルシウムミネラル沈着物の除去を含む。
本発明の別の実施形態において、少なくとも2用量のフェチュインAが投与されるか、または少なくとも3用量のフェチュインAが投与される。一部の実施形態において、少なくとも4用量のフェチュインAが投与される。本発明の別の実施形態において、対象の処置は、好ましくは虚血事故および/または手術、特に大手術の翌週または翌月の少なくとも1用量のフェチュインAの少なくとも毎日または毎週の投与による処置期を含む。
本発明の文脈において、用語「虚血事故」は、虚血を引き起こすおよび/または含む、特に虚血を含む任意のイベントを指す。手術は、組織への血液供給が前記手術中制限される虚血事故である。例えば、腎臓移植手技中、グラフトにしばしば血液が適切に灌流されない場合がある。事故時の突然の失血も虚血事故であり得、その間腎臓に適切に灌流されない。一部の実施形態において、虚血事故は、大手術中の虚血であり、特に、大手術は、腎臓移植または心臓血管手術である。
本発明の別の実施形態において、少なくとも1用量のフェチュインAは、虚血事故および/または手術、特に大手術の前、その間またはその後に投与される。一部の実施形態において、虚血事故および/または手術は、腎臓移植または心臓血管手術である。
本発明のさらに別の実施形態において、少なくとも1用量のフェチュインAは、腎臓移植または心臓血管手術のような虚血事故前またはその後48時間以内、特に24時間以内に投与される。一部の実施形態において、少なくとも1用量のフェチュインAは、虚血事故後48時間以内、特に24時間以内に投与される。さらに別の実施形態において、少なくとも1用量のフェチュインAは、大手術前48時間以内、特に24時間以内に投与される。さらに別の実施形態において、少なくとも1用量のフェチュインAは、大手術後48時間以内、特に24時間以内に投与される。一部のさらなる実施形態において、フェチュインAは、大手術中に投与される。前記大手術は、一部の実施形態において、腎臓移植または心臓血管手術である。
本発明のさらに別の実施形態において、少なくとも1つの第1の用量のフェチュインAは、虚血事故前48時間以内、特に24時間以内に投与され、少なくとも1つの第2の用量のフェチュインAは、虚血事故後48時間以内、特に24時間以内に投与される。一部の実施形態において、少なくとも2用量のフェチュインAは、虚血事故前48時間以内、特に24時間以内に投与される。さらに別の実施形態において、少なくとも2用量のフェチュインAは、大手術前48時間以内、特に24時間以内に投与される。さらに別の実施形態において、2または3用量のフェチュインAは、大手術前48時間以内、特に24時間以内に投与される。一部の実施形態において、少なくとも2用量のフェチュインAは、虚血事故後48時間以内、特に24時間以内に投与される。さらに別の実施形態において、少なくとも2用量のフェチュインAは、大手術後48時間以内、特に24時間以内に投与される。さらに別の実施形態において、2または3用量のフェチュインAは、大手術後48時間以内、特に24時間以内に投与される。
一部の実施形態において、フェチュインAは、患者に少なくとも週1回、特に少なくとも48時間に1回、好ましくは少なくとも24時間に1回投与される。
一部の実施形態において、フェチュインAは、1~100日間の合計持続期間にわたって、特に1~50日間の合計持続期間にわたって分割量で投与される。別の実施形態において、フェチュインAは、1~25日間の合計持続期間にわたって分割量で投与される。別の実施形態において、フェチュインAは、1~10日間の合計持続期間にわたって分割量で投与される。別の実施形態において、フェチュインAは、2~10日間の合計持続期間にわたって分割量で投与される。
本発明の実施形態において、処置は、フェチュインAを医薬組成物の一部としてそれを必要とする対象に投与することを含む。好ましくは、医薬組成物は液体形態である。好ましくは、前記医薬組成物は、本発明の第2の態様において以下に定義される実施形態のうちの1つまたはそれ以上に従ったものである。
第2の態様において、本発明は、腎障害の処置における使用のための医薬組成物であって、フェチュインA(AHSG)および場合により少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む医薬組成物に関する。一部の実施形態において、第2の態様は、腎障害を処置する方法における使用のための医薬組成物であって、腎障害を処置するのに効果的なフェチュインAの量が、それを必要とする対象、好ましくは患者に投与される医薬組成物に関する。
本明細書において言及される「医薬担体」は、薬物投与の選択性、有効性、および/または安全性を改善するのに役立つ、薬物送達方法で用いられる任意の基質であり得る。
第2の態様による医薬組成物は、フェチュインAに関連して上で説明されたのと同じ処置および腎障害のために使用でき、上で説明された任意の処置はまた、このような処置における使用のための医薬組成物の実施形態を説明し得る。この第2の態様の好ましい実施形態において、腎障害は、急性腎障害、慢性腎障害、腎臓線維化、慢性腎臓疾患、腎不全、腎炎、急性腎臓傷害、虚血性腎障害、低酸素に関連する障害、腎虚血-再灌流傷害、腎臓組織損傷、好ましくは虚血性腎臓組織損傷、腎臓移植に関連する障害、心臓血管手術に関連する障害およびこれらの組合せからなる群から選択される。
一部の実施形態において、医薬組成物は液体である。一部の実施形態において、医薬組成物は水を含む。
この第2の態様の別の実施形態において、腎臓移植に関連する障害は、グラフト機能遅延、腎臓移植片の臓器拒絶反応、腎臓移植によって生じる腎臓組織損傷、腎臓移植によって生じる炎症、腎臓移植によって生じる腎IRIおよびこれらの組合せからなる群から選択される。
好ましくは、腎障害は、手術、特に大手術中の低酸素に起因する。例えば、低酸素は、腎臓移植または心臓血管手術中の虚血に起因し得る。
同様に好ましい実施形態において、医薬組成物のフェチュインAは、上で詳細に説明したように定義される。医薬組成物は、フェチュインAの上記実施形態のいずれかを含み得る。
本発明の医薬組成物の文脈において、フェチュインAは、好ましくはヒトフェチュインA、より好ましくはヒト血漿に由来するフェチュインAである。
代替実施形態において、医薬組成物のフェチュインAは、翻訳後修飾、特にグリコシル化を提供する、好ましくは宿主細胞系において組換え的に発現される。
フェチュインAが、配列番号1に少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%同一および/または相同であることが、この文脈において同様に好ましい。また、フェチュインAが、配列番号1またはその断片を含むか、またはこれらからなることが好ましい。
実施形態において、医薬組成物は、上で詳細に説明したように対象に投与される。好ましくは、医薬組成物は、注射または吸入用に製剤化される。
下記の図面および実施例は、本発明の様々な実施形態を例示することが意図される。したがって、そこで考察される特定の改変は、本発明の範囲の限定として理解されるべきではない。様々な同等物、変更および改変が、本発明の範囲から逸脱することなくなされることは、当業者に明らかであり、したがって、このような同等の実施形態が本明細書に含まれるべきであることが理解されるべきである。
慢性胎児低酸素は、マウスにおける子宮内成長制限を誘導する:図1A。分析の実験的設定および時点。図1B。同腹仔あたりの平均仔数。図1C。E18.5胎児の合計の体重分布(実験条件ごとにn=49;No:正常酸素、Hy:低酸素、Cc:カロリー制限)。図1D。E18.5腎臓あたりの平均ネフロン数は、糸球体マーカーネフリンの染色により決定された。ウェルチの補正による独立t検定。 図1-1の続き。 腎臓における低酸素誘導性遺伝子発現:図2A。低酸素、正常酸素カロリー制限群E18.5胎児(実験条件ごとにn=3)の腎遺伝子発現プロファイルを比較するcDNAマイクロアレイデータの階層的クラスタリング。白色領域は誘導、および縦ハッチング領域は抑制を示す(誘導、抑制の程度は図2Aに図示されない)。Ahsgの位置は矢印で記される。両方の正常酸素対照と対比して低酸素の少なくとも1.3倍調節により遺伝子のクラスタリングを行った;1元配置ANOVA;P<0.05。図2B~E。E18.5腎臓(丸)または肝臓サンプル(四角)におけるAhsg(B)、Apoa2(C)、Fgg(D)およびGys2(E)の相対mRNA値。図2F。ELISAにより評価したE18.5胎児のフェチュインA血漿レベル。 図2-1の続き。 図2-2の続き。 図2-3の続き。 近位尿細管における胎児低酸素誘導性フェチュインA発現:図3A~H。正常酸素(A~D)または低酸素(E~H)、野生型(A、C、E、G)またはClcn5 KO(B、D、F、H)胎児のE18.5腎臓切片でのフェチュインA染色。(D、H)の矢頭は、Clcn5 KOマウスのPTにおける低分子量タンパク質のエンドサイトーシス障害によって生じる腔内フェチュインA染色を示す。(I~L)E18.5腎臓切片での示されたネフロンセグメントマーカータンパク質およびフェチュインAの免疫蛍光染色。PT、近位尿細管;TAL、太い上行脚;DCT、遠位曲尿細管;CD、集合管;スケールバー、300μm(概観画像)または50μm。 インビトロでの低酸素活性化フェチュインA発現:図4A。ルシフェラーゼレポーター遺伝子構築物(1~8)を産生するために用いられたマウスAhsgの潜在的なHREの描写。変異HREが示される。図4B。レポーター構築物でトランスフェクトされたNRK細胞中のルシフェラーゼ活性。低酸素と正常酸素培養条件との間でのルシフェラーゼ発光の倍率変化が示される。各条件は、空のベクター対照に正規化される(pGL3)。ダネット多重比較検定。図4C~E。正常酸素または低酸素条件下で培養された、4匹の異なるマウスから単離されたマウス初代近位尿細管細胞(pPTC)(C)における、ラット細胞株NRK(D)におけるおよびヒト細胞株HK-2(E)におけるフェチュインAの発現。 図4-1の続き。 フェチュインA欠損は、低酸素IUGR腎臓においてCKDの進行を悪化させた:図5A~B。タンパク質/クレアチニン比および糸球体濾過率(GFR)により評価された9週齢のマウスの腎臓機能の低下。図5B。最も顕著であるのは、胎児低酸素Ahsg KO動物であり、低酸素およびフェチュインA欠損の相加効果が示される(実験条件ごとにn≧5)。図5C~D。コラーゲンのピクロシリウスレッド染色の代表的な画像は、胎児低酸素wtマウス(C)と比較して、P14胎児低酸素Ahsg KOマウス(D)に由来する腎臓切片でより強くより複雑なパターンを示す。図5E~G。線維化マーカーActa2(E)、Col1a1(F)およびFn1(G)の相対的な発現レベルが、胎児低酸素Ahsg KOマウスの腎臓において著しく増強される(実験条件ごとにn≧5)。フィッシャーのLSD検定(A~B)。スケールバー、50μm。 図5-1の続き。 図5-2の続き。 フェチュインA欠損は、低酸素IUGR腎臓におけるカルシウムミネラル粒子およびマクロファージの蓄積を促進した:図6A~I。正常酸素wt(A、D、G)、低酸素wt(B、E、H)または低酸素Ahsg KO胚(C、F、I)のE18.5腎臓切片でのATTO488蛍光標識フェチュインA(488-FA)染色によるカルシウムバイオミネラルの検出。低酸素Ahsg KOマウスは、正常酸素および低酸素wtマウス(A、B)と比較してPT(C)において最強の染色強度を示し、ミネラル化マトリックスのターンオーバーの上昇が示される。矢頭は顆粒染色パターンの方を向き、低酸素Ahsg KOマウスにのみ存在する乳頭(F)および皮質(I)における488-FAの大量の蓄積が反映される。図6J~M。示された遺伝子型および酸素条件で、E18.5腎臓切片での、マクロファージマーカーF4/80(j’、k’、l’、m’)およびフェチュインA(j’’’、k’’’、l’’’、m’’’)の代表的な免疫蛍光染色、DAPI(j’’’’、k’’’’、l’’’’、m’’’’)および488-FA(j’’、k’’、l’’、m’’)による対比染色。マクロファージの蓄積および拡散、ならびに顆粒488-FA染色は、低酸素Ahsg KOマウス(M)においてのみ検出された。図6N。視野あたりの総F4/80染色面積の定量化。少なくとも3匹のマウスの複数の切片を、実験条件ごとに分析した。スケールバー、100μm。 図6-1の続き。 図6-2の続き。 フェチュインAは、線維化マーカーの低酸素誘導性発現を減弱させた:図7A。wtまたはAhsg KOマウスから単離した初代近位尿細管細胞(pPTC)における低酸素培養条件下でのフィブロネクチンおよびα-平滑筋アクチン(α-SMA)の誘導を示す、代表的なウェスタンブロット。図7B~D。フェチュインA補給は、pPTCにおいて線維化マーカーActa2(B)、Col1a1(C)およびFn1(D)の低酸素誘導性発現を減弱させる(実験条件ごとにn≧5)。図7E~F。フェチュインAだけが、線維化マーカーの発現に対して低減効果があり、BSAは該効果がなかった(実験条件ごとにn≧4)。図7G。フェチュインA補給が、フィブロネクチンおよびI型コラーゲン(Col1a1)タンパク質の発現を減弱させることを示す代表的なウェスタンブロット。図7H。TGF-β1処置および低酸素は、Smad3のリン酸化に対して相加効果がある。代表的なウェスタンブロットが示される。図7I。(H)に示すSmad3活性化の定量化。ウェルチ補正による独立t検定(B~D、正常酸素wtおよび正常酸素Ahsg KOサンプルの比較のみ)。フィッシャーのLSD検定(I)。 図7-1の続き。 図7-2の続き。 図7-3の続き。 図7-4の続き。 低酸素応答IRIは、腎臓においてカルシウム含有微粒子の沈着を誘導した:虚血再灌流(IRP)後の488-FAによるカルシウム含有微粒子の検出。手術の7日後の対照側(I)および虚血再灌流(m)での488FA染色は、IRP腎臓においてのみカルシウムバイオミネラルの存在を示す。 フェチュインA補給は、虚血再灌流傷害後、線維化マーカーの発現を減弱させた:図9A~F。フェチュインA補給は、Col1a1(A)、Col3a1(B)、Col6a1(C)の虚血誘導性発現を減弱させるが、非コラーゲン線維化マーカーActa2(D)、Fn1(E)またはVim(F)の発現に対して効果がない。一元配置ANOVA検定。 図9-1の続き。 図9-2の続き。 図9-3の続き。 虚血再灌流傷害(IRI)を受けるマウスにおけるヒトフェチュインAの予防的投与は、損傷を抑え、線維化リモデリングを減少させた:図10A~D。早期損傷マーカーKim1(A)、Krt18(B)、Krt20(C)およびLcn2(D)の発現レベルは、PBSで前処置したIRI腎臓と比較してフェチュインAで前処置したIRI腎臓において低下する。図10EおよびF。線維化リモデリングマーカーClu(E)およびTgfb1(F)は、IRI中のPBS対照と比較して同様に減少する。図10G。非コラーゲン線維化マーカーVim(G)は、PBS前処置IRI腎臓と比較して、フェチュインA前処置IRI腎臓において減少する。図10H~J。フェチュインA予防的処置時のコラーゲン発現が、Col1a1(H)、Col3a1(I)およびCol6a1(J)について示される。図10K。Arg1(K)発現は、PBS前処置マウスと比較してフェチュインA前処置マウスにおいて抑制され、コラーゲン合成の必要性の減少が示される。図10L~N。フェチュインAによる前処置はまた、虚血条件下で通常増加する損傷シグナル伝達および修復に関与するケモカインCcl2(L)、II-6(M)およびTnf-α(N)の発現を低下させる。図10のレジェンド:白丸:PBS注射、未手術対照腎臓;白三角:PBS注射、IRI腎臓;黒丸:フェチュインA注射、未手術対照腎臓;黒三角:フェチュインA注射、IRI腎臓。図10のP値は、多重比較(通常のフォント)および対t検定(太字フォント)のテューキー補正による通常の一元配置ANOVAについて示される。 図10-1の続き。 図10-2の続き。 図10-3の続き。 図10-4の続き。 図10-5の続き。 図10-6の続き。 図10-7の続き。 静脈内投与時のマウスの腎組織における内因性フェチュインAの存在:図11A。ウェスタンブロット。レーンA~C:フェチュインA注射、未手術対照腎臓;レーンD~F:フェチュインA注射、IRI腎臓;レーンG~I:PBS注射、未手術対照腎臓;レーンJ~L:PBS注射、IRI腎臓;レーンM:空;レーンN:注射に使用したヒトフェチュインAタンパク質。上部パネル:abcamからのab187051抗フェチュインA抗体(マウスフェチュインAに特異的)を用いる内因性マウスフェチュインAについてのウェスタンブロット。中間パネル:Santa Cruzからのsc-133146-HRP抗フェチュインA抗体(ヒトフェチュインAに特異的)を用いるヒトフェチュインAについてのウェスタンブロット。下部パネル:負荷対照として利用したRplp0。ヒトフェチュインAタンパク質を注射したマウスからの腎臓サンプルは、ヒトフェチュインA(レーンA~F)の強いバンドを示した。フェチュインAは、PBS注射対照サンプル(レーンG~L)で検出されなかった。PBS注射IRI腎臓(レーンJ~L)は、すべてのサンプル間でマウスフェチュインAの存在量が最も高いことを示した。ヒトフェチュインAタンパク質(レーンN)がシグナルを送らなかったため、ヒトフェチュインAは、マウス特異的抗フェチュインA抗体ab187051で検出されなかった。図11B。bio-techneからのMFTA00 ELISAキット(マウスフェチュイン-Aに特異的)を用いるマウスフェチュイン-AについてのELISA。内因性マウスフェチュインAは、すべての他のサンプルと比較してPBS注射IRI腎臓においてのみ上昇した。図11C。bio-techneからのDFTA00 ELISAキット(ヒトフェチュイン-Aに特異的)を用いるヒトフェチュイン-AについてのELISA。ヒトフェチュインAは、PBS注射マウスの腎臓サンプルにおいて検出できなかった。フェチュインA注射IRI腎臓は、未手術対側(右)腎臓よりヒトフェチュインAの組織レベルが高い。図11D~F。内因性フェチュインAは、静脈内投与時、マウスの腎組織に存在した。蛍光標識フェチュインA(Alexa-488標識フェチュインA)は、静脈内注射の15、30、および60分後、近位尿細管(PT)に存在した。Alexa-488-標識フェチュインAの注射の15分後、微細な断続的な染色が、近位尿細管で検出された。この染色強度は、注射の30分および60分後に増加した。G、糸球体。図11BおよびCのレジェンド:白丸:PBS注射、未手術の対照腎臓;白三角:PBS注射、IRI腎臓;黒丸:フェチュインA注射、未手術対照腎臓;黒三角:フェチュインA注射、IRI腎臓。図11BおよびCのP値は、多重比較(通常のフォント)および対t検定(太字フォント)のテューキー補正による通常の一元配置ANOVAについて示される。 図11-1の続き。 図11-2の続き。 図11-3の続き。 静脈内投与時のマウス血清中のヒトフェチュインAの経時変化:図12A。レーンAおよびB:注射の1分後;レーンCおよびD:注射の1時間後;レーンEおよびF:注射の1日後;レーンGおよびH:注射の1週間後;レーンIおよびJ:対照PBS注射;レーンK:注射に使用したヒトフェチュインAタンパク質。Santa Cruzからのヒト特異的sc-133146-HRP抗フェチュインA抗体を用いるヒトフェチュインAについてのウェスタンブロット。1日後、血清中のヒトフェチュインAの検出量は、注射の1分または1時間後と比較して減少した。1週間後、ヒトフェチュインAは検出できなかった。PBS注射対照動物がシグナルを送らなかったため、マウスフェチュインAは、sc-133146-HRP抗フェチュインA抗体で検出されなかった。図12B。マウス血清サンプル中の静脈内注射ヒトフェチュインAの低下を示す、bio-techneからのDFTA00 ELISAキット(ヒトフェチュインAに特異的)を用いる正規化ELISAデータ。注射時点(1分)と比較して、循環ヒトフェチュインAの量は、1時間後80%に減少し、1日後8.5%に減少した。1週間後、ヒトフェチュインAは、PBS注射マウス(黒丸)と同様にもはや検出できなかった。図12C。静脈内投与時のマウスの血清中のヒトフェチュインAの経時変化。マウス血清サンプル中の静脈内注射ヒトフェチュインAの低下を示す、正規化ELISAデータ。注射時点(1分)と比較して、循環ヒトフェチュインAの量は、1時間後80%に減少し、1日後8.5%に減少した。1週間後、ヒトフェチュインAは、もはや検出できなかった。 図12-1の続き。
[実施例]
慢性胎児低酸素は、マウスにおいてIUGRを誘導する。慢性胎児低酸素をモデル化するために、適時交配による妊娠マウスをE14.5からE18.5まで10%の酸素に曝露した(図1A)。食物を自由摂取としたにもかかわらず、低酸素雌親(Hy)が小食であることが観察されたため、およびカロリーが制限されること自体がIUGR5の公知の誘導因子であるため、知見が低酸素によるものではなく、摂取カロリーの低下によるものであり得る可能性を排除するために、第2の対照群を分析に含めた。このカロリー制限(Cc)群において、正常酸素雌親には、低酸素マウスが消費した少ない食物量に匹敵する食物量で給餌した。産仔数、胎盤重量または胎児生存率は、3つの群の間で区別できなかったが、母体の体重増加は、低酸素雌親において著しく低減された(図1B)。重要なことに、低酸素雌親からの胎児のみがLBWを示し、IUGR基準を満たしているが(図1C)、正常酸素またはCc群からの胎児は示さなかった。対照と比較して、低酸素胎児の腎臓は小さく、ネフロンも著しく少なかった(図1D)。
低酸素胎児腎臓は、肝臓遺伝子発現パターンを採用する。次に、胎児低酸素腎臓における全ゲノム発現を、遺伝子アレイを用いて調べた。62個の誘導および28個の抑制遺伝子を同定し、両方の対照群と比較した(図2A)。真のHIF標的遺伝子であるトランスフェリン、トレフォイル因子3、ニューリチン、アルファ-1-アンチトリプシン(セルピナ1d)およびアルファ-1-抗キモトリプシン(セルピナ3n)を含む、誘導遺伝子のうちの17個は、低酸素により調節されることが公知である。さらに、誘導遺伝子の20%超が、主要なカルシプロテイン粒子(CPP)成分であるフェチュインA(Ahsg)、アルブミン、Apo-A1およびトロンビン(F2)を含むCPPから高頻度で精製されることが見出された。誘導遺伝子の機能アノテーションクラスタリングでは、専ら肝臓で通常転写される分泌血漿タンパク質の濃縮が低酸素腎臓において明らかになった。選択遺伝子のRT-qPCRによるマイクロアレイデータの検証では、低酸素胎児腎臓においてのみ10倍超の誘導が確認されたが、対照群の腎臓においては確認されなかった(図2B~E)。mRNAレベルの変化は、胎児肝臓サンプルでは見出されなかった。
フェチュインAは、低酸素条件下で近位尿細管において局所的に産生される。興味深いことに、最も高い誘導を有する遺伝子(Ahsg)が、アノテーション群10群のうち7群で見出された。Ahsgは、システインプロテアーゼ阻害剤のシスタチンスーパーファミリーに属し、陰性急性期の糖タンパク質であるフェチュインAをコードし、その主な機能はミネラル化マトリックスの代謝に関係する。低酸素腎臓におけるその強い誘導にもかかわらず、胎児血漿フェチュインAレベルの著しい上昇は検出できず(図2F)、低酸素発生チャレンジ中の特異的、全身性ではなく局在的な機能的関連性が暗示された。胎児低酸素腎臓におけるAhsg発現の機能的関連性にさらに対処するために、その正確な局在化を調べた。図3は、胎児腎臓近位尿細管(図3A、B、E、F)または尿細管腔(図3C、D、G、H)の免疫組織化学を示す。強いフェチュインA染色は、酸素条件にかかわらず近位尿細管(PT)の細胞の境界を画定した(図3A、E)。これは、全身フェチュインAの濾過、およびメガリン依存性エンドサイトーシスによるPTへのその取り込みによるものであり、低酸素胎児腎臓において局在的に産生された任意のフェチュインAを遮蔽する。腎起源のフェチュインAタンパク質を選択的に視覚化するために、His-sRAP(ヒスチジンタグ化可溶性受容体関連タンパク質)を用いるメガリン依存性エンドサイトーシスの7薬理学的阻害に代わる方法である、PTへのエンドサイトーシスをブロックする遺伝的アプローチを採用した。Clcn5ノックアウト(KO)マウスは、デント病を模倣する、PTにおける低分子量タンパク質の重篤なエンドサイトーシス障害を示した。正常酸素Clcn5 KO腎臓では、PT細胞において顕著なフェチュインA染色がなかった(図3B)。その代わりに、野生型(wt)サンプルに存在しない(図3C)、強い腔内シグナルが検出され(図3D)、Clcn5 KOマウスのエンドサイトーシス表現型障害が強調された。しかし、低酸素Clcn5 KO腎臓は、管腔シグナルに加えてPTにおいて強いフェチュインA染色を示し(図3F、H)、観察された細胞フェチュインA染色がPTに純粋に起源を持つという証拠が提供された。フェチュインAおよび様々な腎セグメントマーカーの二重免疫蛍光染色(図3I~L)では、フェチュインAが、低酸素胎児腎臓のPTにおいてのみ発現されたことが確認された。ホールマウントのin situハイブリダイゼーションでは、低酸素胎児腎臓におけるフェチュインAのmRNA合成が実証されたが、正常酸素腎臓においては実証されなかった。
Ahsgは、エンハンサー領域と重複する推定HIF結合部位を内包する。フェチュインAが低酸素胎児腎臓において局在的に産生されることが示されたため、Ahsgの発現が、低酸素により直接活性化されるか否かを評価した。ヒトAHSG遺伝子座における潜在的なHIF結合部位(低酸素応答要素-HRE)を確認するため、低酸素MCF7細胞由来のHIF-1α(HIF-1-アルファ)およびHIF-2α(HIF-2-アルファ)ChIP-seqデータセットを使用した。H3K27AcおよびH3K4Me1(活性エンハンサー要素のクロマチンマーク)ならびにDNase1過敏症と重複するヒトAHSGの第4エクソン付近に潜在的なHREのクラスターが同定された。別の推定HREは、第1イントロンに位置していた。ATGの10kb上流および下流にあるコンセンサスHIF結合部位(RCGTG)の存在についての15種のAhsg遺伝子のスクリーニングでは、1kbウィンドウあたり平均2個のHRE数で、ATGの1~5kb下流にピークが示された。とりわけ、アノテートされたヒトChIP-seq HIF部位だけでなく、4個の潜在的なマウスHREもこのピークに局在した。エンハンサーマークを有する後者のアラインメントは、H3K27Ac、H3K4Me1およびDNase1過敏症との密接な関連を明らかにした。
低酸素は、インビトロでのフェチュインA転写を活性化する。マウスAhsgの5つの推定HREおよびこれらの周辺のDNAを、これらの部位のナンセンス変異と共に、ルシフェラーゼレポータープラスミドにクローン化した(図4A)。推定-2kbのHREのみを含有するレポータープラスミドでトランスフェクトされた正常なラットの腎臓上皮(NRK)細胞は、低酸素条件下でルシフェラーゼ活性の増加を示さなかった(図4B)。反対に、下流のHREを含有するレポータープラスミドを有するNRK細胞は、低酸素においてルミネセンスが著しく増大した。これらのHREを変異させた場合、ルシフェラーゼ活性の増加は検出されなかった。さらに、上流と下流のHREを組み合わせた場合、ルシフェラーゼ活性は増強されなかった。要約すると、ATGの下流に位置するHREは、マウスAhsg遺伝子に低酸素誘導能を与えた。最後に、初代マウスPT細胞(pPTC)、NRK細胞およびヒトHK2細胞中のフェチュインAタンパク質は、低酸素条件下で培養した場合検出された(図4C~E)。総合すると、これらの知見により、フェチュインAが、新規な進化的に保存されたHIF依存性標的遺伝子として同定された。
フェチュインA欠損は、低酸素IUGR腎臓においてCKDの進行を悪化させる。胎児低酸素IUGR腎臓におけるフェチュインAの誘導が、どのように腎機能に長期間影響を与えるのかについて調査するために、成体マウスにおいて尿中タンパク質レベルを測定し、糸球体濾過率(GFR)を決定した(図5A、B)。正常酸素と対比して胎児低酸素に曝露した9週齢のマウスにおいて、GFRは低下し、タンパク尿は増加した。さらに、線維化組織のリモデリングの評価では、低酸素wtおよび正常酸素対照各々と比較して、9匹の胎児低酸素Ahsg KOマウスの腎臓において、より多くのコラーゲン構造が皮質下領域に深く広がり、線維化マーカーの発現レベルが最も高いことが明らかになった(図5C~G)。重要なことに、これらの結果は、腎機能がAhsg KOマウスにおいて系統的に影響を受けやすかったことを明確に示し、低酸素およびフェチュインA欠損の相加効果が示される。
フェチュインA欠損は、低酸素IUGR腎臓においてカルシウムミネラル粒子およびマクロファージの蓄積を促進する。成体フェチュインA KOマウスは、軟組織石灰化しやすいが、フォンコッサ染色により評価されるように、低酸素Ahsg KOマウスの腎臓において明白な石灰化は検出されなかった。胎児低酸素腎臓におけるフェチュインAの発現が、ミネラル化マトリックス処理に影響を与えるか否かをさらに試験するために、カルシウム含有ナノ粒子の存在を、ATTO488蛍光標識フェチュインA(488-FA)と共にE18.5胚の新たに切断した腎臓切片をインキュベートすることによって証明した。リン酸カルシウムへのフェチュインAの高親和性結合により、488-FA染色は、一般的に用いられるミネラル染色プロトコルより、カルシウム含有マトリックスおよび細胞レムナントの検出に対する感受性が高い。したがって、フォンコッサまたはアリザリンレッド染色の非存在下での陽性488-FA染色も、しばしば明らかな石灰化に先行する非晶質リン酸カルシウムの凝集物を含む単にカルシウム強化された構造を強調する。488-FA染色により、正常酸素wt腎臓において、主なカルシウムの再吸収およびしたがって同様にミネラル化マトリックス処理の部位であるPTの強い標識化が明らかになった(図6A)。PT染色の強さは、低酸素wtにおいて低下し、低酸素Ahsg KOにおいて増加し、ミネラル化マトリックスのターンオーバーの上昇および低下が各々示唆された(図6B、C)。また、低酸素Ahsg KO腎臓だけが、乳頭領域においておよびそれほど多くはないが外皮質の腎性領域において粒状染色パターンを示し(図6D~Iの矢頭)、内因性フェチュインAの非存在下での大量のミネラルの沈着が示された。過剰な大量のミネラルまたは細胞デブリは、細胞死が増大した部位でしばしば見出される。実際に、TUNEL染色では、低酸素Ahsg KO腎臓においてアポトーシスが確認されたが、正常酸素または低酸素wt腎臓においては確認されなかった。低酸素Ahsg KO腎臓における切断型カスパーゼ-3免疫染色では、これらの腎臓における細胞死がさらに実証された。最後に、ミネラル化した物質の蓄積は、炎症応答を誘発し、マクロファージの浸潤、組織損傷および線維化もたらした。マクロファージマーカーF4/80の染色では、wt腎臓と対比して低酸素Ahsg KOにおいてのみこれらの細胞の著しい蓄積が明らかになり、フェチュインAの保護効果が示唆された(図6J~N)。総合すると、これらのデータからは、組織の完全性を保護する、腎臓におけるミネラル化マトリックスの結合およびクリアランスにおけるフェチュインAの役割が初めて例示された。
フェチュインAは、TGF-βシグナル伝達をアンタゴナイズすることにより線維化マーカーの低酸素誘導性発現を減弱させる。強力な線維化誘導因子である形質転換成長因子ベータ-1(Tgfb1)の類似のmRNAレベルにもかかわらず、胎児低酸素Ahsg KOマウスの腎臓は、胎児低酸素wt動物と対比して、線維化マーカーの発現レベルが高いことを全般的に示した(図5)。これらの知見を、新鮮に単離されたpPTCを用いてインビトロで解明した。線維化マーカーの発現は、wt細胞と比較してAhsg KO pPTCで全般的に増強され、低酸素培養条件下でより一層増加した(図7A~D、G)。この低酸素誘導性増加は、培養培地へのフェチュインAの補給により鈍化した(図7B~G)。組換えTGF-β1によるpPTCの刺激は、その細胞内シグナルトランスデューサーSmad3のロバストなリン酸化をもたらし、これは、wt細胞と対比してAhsg KO pPTCで3倍超強く(図7H、I)、Ahsg KO細胞が、TGF-β1に対してより活発に応答したことが示された。対照的に、TGF-β1処置前のフェチュインAの添加は、Smad3のリン酸化を減少させた。これらの知見は、TGF-βII型受容体模倣物およびサイトカインアンタゴニストとしてフェチュインAを説明する先の報告と一致する。総合すると、結果は、フェチュインAが、ミネラルシャペロンとしてのその保護的役割に加えて、TGF-β1シグナル伝達を直接アンタゴナイズすることにより低酸素11誘導性腎線維化を減少させることを示唆する。
フェチュインAは、虚血再灌流傷害後の腎臓における線維化マーカーの発現をインビボで著しく低下させる。次に、腎臓傷害の処置でのフェチュインA補給の治療的可能性を実験的に探求した。この目的のために、片側性虚血-再灌流傷害の十分に確立されたマウスモデルを使用した。このIRIモデルは、その名の通り、心臓血管手術、腎臓移植または腎腫瘍の除去後の腎臓における虚血-再灌流病変を最もよく模倣する。これは単純で再現性がある。虚血を、腎血管を30分間クランプすることにより左腎臓において誘導し、右腎臓は対照として利用した。虚血再灌流が実際に、カルシウムミネラルナノ粒子の沈着を手術後の腎臓においては誘導するが、対側対照腎臓では誘導しないことが、低酸素IUGR腎臓におけるカルシウムミネラル粒子およびマクロファージの蓄積により初めて示された(図8)。加えて、NaCl0.9%と対比したフェチュインAによるIRIマウスの処置では、既に5日目に、フェチュインA処置が、NaCl0.9%で処置した動物と比較して、虚血、傷害を受けた腎臓において特異的な線維化マーカー(コラーゲンCol1a1、Col3a1およびCol6a1)を著しく減少させることが示された(図9A、B、C)。対照的に、フェチュインA補給は、非コラーゲン線維化マーカーActa2、Fn1またはVimの発現に対しては効果がない(図9D、E、F)。したがって、フェチュインA補給は、虚血再灌流傷害後、線維化マーカーの発現を減弱させる。要約すると、これらのインビボ実験は、腎臓を低酸素応答IR傷害から保護するミネラルシャペロンとしてのフェチュインAの役割を明確に確立する。
虚血再灌流傷害(IRI)を受けるマウスにおけるヒトフェチュインAの予防的投与は、組織損傷を抑え、線維化リモデリングを減少させた。フェチュインA 900μgを、左腎臓の片側性IRIの24時間前およびさらに3時間前に静脈内注射した(20分の虚血時間)。PBSを対照動物に注射した。腎臓を手術の24時間後に採取し、右腎臓は対照として利用した。早期損傷マーカーKim1(図10A)、Krt18(図10B)、Krt20(図10C)およびLcn2(図10D)の発現レベルは、フェチュインAで前処置したIRI腎臓において減少したことが示された。これは、フェチュインAによる前処置が、再灌流傷害(IRI)の組織損傷を軽減することを既に示している。加えて、Vim発現において観察された低下(図10G)では、上皮間葉転換(EMT)の減少が示された。コラーゲンリモデリングは、線維化リモデリング中の比較的後期のイベントであり、これは、IRIの24時間後重要な役割を果たさず、結果的に、Col1a1(図10H)、Col3a1(図10I)およびCol6a1(図10J)は、予想外の変化を示さなかった。Arg1(図10K)発現は、フェチュインA前処置マウスにおいて抑制され、コラーゲン合成の必要性の減少が示された。Arg1は、コラーゲンの主成分であるL-プロリンの供給に必要とされるため、コラーゲンの合成の増加に重要である。さらに、フェチュインAによる前処置は、損傷シグナル伝達および修復に関与するケモカインCcl2(図10L)、Il-6(図10M)およびTnf-α(図10N)の発現を低下させた。結論として、これらの実験、特に早期損傷マーカーは、虚血再灌流傷害(IRI)を受けるマウスにおけるヒトフェチュインAの予防的投与が、比較的低濃度のフェチュインAでも損傷を抑え、線維化リモデリングを減少させたことを示す。
静脈内(iv)投与後のマウスの腎組織における内因性フェチュインAの存在。ヒトフェチュインAは、PBS注射サンプルで検出されず(図11A、レーンG~L)、マウスフェチュインAではなくヒトフェチュインAに対するsc-133146-HRP抗フェチュインA抗体の特異性が確認された。PBS注射IRI腎臓(図11A、レーンJ~L)では、すべてのサンプル間でマウスフェチュインAの存在量が最も高いことが示され、これらの腎臓におけるバイオミネラル化および組織損傷の程度が高いことが示された。ヒトフェチュインAタンパク質を注射したマウスからの腎臓サンプルは、ヒトフェチュインAの強いバンドを示し(図11A、レーンA~F)、フェチュインAが、静脈内投与後腎組織に存在したことが確認された。内因性マウスフェチュインAは、すべての他のサンプルと比較してPBS注射IRI腎臓においてのみ上昇し、これらの腎臓におけるバイオミネラル化および組織損傷の程度が高いことが示された(図11B)。ヒトフェチュインAは、PBS注射腎臓サンプルにおいて検出されず、R&Dシステム(bio-techne)からのDFTA00 ELISAキットのマウスフェチュインAではなくヒトフェチュインAに対する特異性が確認された(図11C)。フェチュインA注射IRI腎臓は、ヒトフェチュインAの組織レベルが高く、未手術対照腎臓と比較して虚血腎臓におけるバイオミネラル化の程度が高いことが示された(図11C)。内因性フェチュインAは、静脈内投与後マウスの近位尿細管中に存在した(図11D~F)。任意の理論に拘束されるものではないが、フェチュインAが、血液から組織損傷部位に取り込まれ、さらなる組織破壊に拮抗し、血液中のその濃度を低下させることができると仮定できた。結論として、これらの実験は、フェチュインAの静脈内投与が、腎臓組織においてフェチュインAの増加をもたらすことを示す。
静脈内投与時のマウスの血清中のヒトフェチュインAの経時変化。1日後、血清中のヒトフェチュインAの検出量は、注射の1分後または1時間後と比較して減少し(図12A)、1週間後、ヒトフェチュインAは検出できなかった。マウスフェチュインAは、PBS注射動物がシグナルを送らなかったという事実から導き出され得るように、sc-133146-HRP抗ヒトフェチュインA抗体で検出されなかった。ヒトフェチュインA特異的DFTA00 ELISAキットを用いる正規化ELISAデータは、マウス血清サンプル中の静脈内注射ヒトフェチュインAの減少を示した(図12B、C)。注射時点(1分)と比較して、循環ヒトフェチュインAの量は、1時間後80%に、1日後8.5%に減少した。1週間後、ヒトフェチュインAは、PBS注射対照マウス(黒丸)と同様にもはや検出できなかった。結論として、これらの実験は、循環中のヒトフェチュインAの存在を維持するために、注射が毎日繰り返されるべきであることを示す。
方法
動物。繁殖、遺伝子型判定およびすべての動物実験は、動物福祉に関するスイス連邦法に従って行われ、地方自治体により承認された(Canton of Bern BE96/11、BE105/14およびBE105/17)。Ahsgtm1MblマウスおよびClcn5tm1Gugを含むすべてのマウスを、C57BL/6背景で維持し、飼料および水を自由摂取とし、12時間の明暗サイクルでIVCケージに収容した。
妊娠マウスにおける低酸素の誘導。時限交配のために、繁殖期の雌の膣栓を毎朝確認し、存在した場合、その時点を妊娠日(E)0.5に設定した。Ahsg KOマウスを、ヘテロ接合繁殖ペアから得、またヘテロ接合およびwt同腹仔を生じさせ、これらを対照として使用した。E0.5からE18.5までの妊娠中の毎日の食物摂取量(最初に提供された食物と24時間後に残っている食物の重量差)および母体の体重増加を記録した。低酸素の誘導のために、E13.5妊娠マウスを、低酸素グローブボックス(Coy Laboratory Products、Grass Lake、USA)に移した。翌日、酸素含有量を、16%および12.5%で間欠的に休止しながら6~8時間以内に10%に徐々に低下させて、動物を低酸素状態の増加に適応させた。室内の扇風機で適切な空気循環を維持した。COレベルを、空気循環システムに接続された、ソーダ石灰(Sigma、72073)を充填したカートリッジで過剰なCOをキレート化することにより低レベルで維持した。過剰な湿気を、顆粒状シリカゲルオレンジ(Sigma、1.01969)で吸収し、毎日交換した。カロリー制限群のマウスには、低酸素群のマウスが消費した平均食物量に匹敵する食物を給餌した。妊娠低酸素または対照マウスを、E18.5に安楽死させ、胎児および胎盤を、さらなる分析のために採取、秤量および調製した。胎児腎臓を、LeicaM80立体鏡を用いてPBS中で解剖した。初代近位尿細管細胞(pPTC)の調製のために、3~4週齢の正常酸素マウスの腎臓を単離した。腎機能の評価(GFRおよびタンパク尿)を9週齢の胎児低酸素または正常酸素で行った。
治療的処置実験のための虚血の誘導および投与。図8および9の実験のために、マウスをイソフルランで麻酔した。深麻酔した動物において、正中腹部切開を行った。虚血を、腎血管を30分間クランプすることにより左腎臓において誘導し、右腎臓は対照として利用した(図9)。手術直後、マウスは、腹腔内注射による生理NaCl溶液またはウシフェチュインAモノマー(100μg/g体重)のいずれかの初回処置を受けた。注射を4日間毎日繰り返した。腎臓を5日目に単離し分析した。NaCl溶液:塩化ナトリウム≪Bichsel≫0.9%(154mM);(REF100 0 090、Bichsel、Interlaken、CH)。フェチュインA溶液:0.338EU/ml LPS、10mM NaPO、8g/l NaCl(137mM)。
予防的処置(予防)実験のための虚血の誘導および投与。図10の実験のために、マウスにフェチュインAを900μg片側性虚血の24時間および3時間前に静脈内注射した。PBSを、対照動物に静脈内注射した。虚血の誘導のために、マウスをイソフルランで麻酔した。深麻酔した動物において、正中腹部切開を行い、虚血を、腎血管を20分間クランプすることにより左腎臓において誘導した。右腎臓は、未手術対照として利用した。腎臓を、手術の24時間後に採取した。図10の実験のマウスは、平均体重が22gであった。PBS溶液:2.67mM KCl、1.47mM KHPO、137.93mM NaCl、8.06mM NaHPO-7xHO。
糸球体濾過の経皮的評価。糸球体濾過率(GFR)を、Schreiber,A.ら、Transcutaneous measurement of renal function in conscious mice.Am J Physiol Renal Physiol 303、F783~788(2012)に説明されるように意識下の動物において決定した。簡単に言えば、FITC-シニストリン(Fresenius-Kabi、LI9830076)の血漿クリアランスを、470nmにFITCの放出極大を有する発光ダイオード、および525nmに最大感度を有する蛍光を検出するフォトダイオードを用いて皮膚全体で測定した。次いで、経時的な蛍光強度の減少をGFRに変換した。
タンパク尿。尿タンパク含有量を、ブラッドフォードアッセイを用いて決定した。尿3μlおよび1×ブラッドフォード試薬150μlを混合し、RTで5分間インキュベートし、吸光度を595nmで測定した(5×ブラッドフォード試薬を、ブリリアントブルーG-250 50mg(Sigma、B-1131)をエタノール24mlおよび85%リン酸50mlに溶解し、次いで総体積を、超純水で100mlに調整することにより製造した)。尿クレアチニン含有量を、ヤッフェ法を用いて決定した。1:10希釈尿10μlを、クレアチニン試薬100μlと混合し、RTで10分間インキュベートし、吸光度を510nmで測定した(10mMピクリン酸および250mM NaOH、pH13からなるクレアチニン試薬)。最終的に、タンパク質クレアチニン比を、サンプルごとに計算した。
糸球体数。ネフリン(R&D AF3159)について染色したホールマウントE18.5腎臓の100μmZ-スタック画像を、オープンソース画像処理ソフトウェアFiji(ImageJ、バージョン2.0.0-rc69/1.52i、https://imagej.net/Fiji)で分析した。TrackMate v3.8.0プラグインでは、Downsample LoG検出器を、ピクセル閾値16およびダウンサンプリングファクター2で推定ブロブ直径80.0ピクセルに設定した。フレームあたりのスポット数をマウスに追加して、腎臓あたりの糸球体数を計算した。フレーム間100μmの距離を選択して、連続画像における同一の糸球体のダブルカウントを回避し、平均糸球体直径80μmを得た。
マイクロアレイ分析。雄の低酸素、正常酸素およびカロリー制限群のE18.5腎臓からの全RNAをRNeasy Mini Kit(Qiagen、74104)を用いて単離した。高品質のRNA(RIN>8、260/280比>2、260/230比>1.8)のみを、さらなる分析に使用した。全RNAサンプル100ngを、Ambion(登録商標)WT Expression Kit(4411973、life technologies)キットで処理した。cDNA5.5μgを断片化し、GeneChip(登録商標)WT末端標識キット(901525、Affymetrix)で標識した。ビオチン化断片2.3μgを、Affymetrix Mouse Gene 1.0STアレイに45℃で16時間ハイブリダイズさせ、洗浄し、Affymetrix GeneChip(登録商標)発現分析マニュアル(流体プロトコルFS450_0007)に説明されるプロトコルに従って染色した。アレイを、Affymetrix GeneChip(登録商標)Scanner 3000 7Gでスキャンし、原データを、スキャンした画像から抽出し、Affymetrix Power Toolsソフトウェアパッケージで分析した。ハイブリダイゼーションの質を、Affymetrix Expression Consoleソフトウェア(version 1.1.2800.28061)を用いて評価した。正規化発現シグナルを、ロバストマルチアレイ平均アルゴリズム(RMA)によりAffymetrix CELファイルから計算した。差次的にハイブリダイズした特徴を、マイクロアレイデータの線形モデルを実装するR Bioconductorパッケージ「limma」を用いて同定した。P値を、偽発見率(FDR)を制御するためのベンジャミーニとホッホベルグ法で多重試験のために補正した。少なくとも1.3倍の変化およびFDR<0.05を示すプローブ設定を有意とみなした。低酸素、正常酸素およびカロリー制限群のE18.5腎臓間の差次的発現値を、平均連結およびユークリッド距離測定を用いてHeatmapper(http://www.heatmapper.ca)でマッピングした。機能アノテーションのために、GO用語分析を、DAVIDプラットフォーム(https://david.ncifcrf.gov)を用いて行った。
RT-qPCR。全RNAを、製造者プロトコルに従って、TRIzol(登録商標)試薬(Invitrogen 15596026)を用いて単離した。RNA濃度および質を、Nanodrop 1000分光光度計(ThermoFisher Scientific、Switzerland)で決定し、1000ngを、PrimeScript RT試薬キット(Takara、RR037A)を用いてcDNAに転写した。cDNAを2ng/μlに希釈し、qPCRを、TaqMan遺伝子発現アッセイ(ThermoFisher)、またはFAM標識UPLプローブ(Roche)さらに対応する遺伝子特異的プライマーおよびTaqMan FastユニバーサルPCRマスターミックス(Applied Biosystems、4352042)のいずれかを用いて7500 FastリアルタイムPCRシステム(Applied Biosystems)上で行った。データ分析を、Microsoft Excelで行った。2(-ΔCt)法を使用して、RT-qPCRの相対発現レベルを計算した。
HIF結合部位の同定。推定HIF結合部位の同定のために、15の異なる種(ネコ、ニワトリ、チンパンジー、ウシ、イヌ、ギンザメ、ウマ、ヒト、マウス、ブタ、ウサギ、ラット、ヒツジ、ゼノパス、ゼブラフィッシュ)のAhsg遺伝子座と重複する20kbゲノム領域(開始コドンの10kb上流および下流)を、JASPARデータベース(http://jaspar.genereg.net)で分析した。相対プロファイルのスコア閾値を90%に設定した。濃縮分析のために、すべての種の推定部位を、1kbウィンドウにクラスタリングした。相対スコア>0.9、>0.93および>0.97を有するHREが示された。AHSG遺伝子座の活性調節マークを有する低酸素MCF7細胞のChIP-seqにより同定されたヒトHIFアルファ部位のアラインメントのために(Schodel J、Oikonomopoulos S、Ragoussis J、Pugh CWら、Blood 2011年6月9日;117(23):e207~17;Series GSE28352;https://www.ncbi.nlm.nih.gov/geo/query/acc.cgi?acc=GSE28352を参照のこと)、chr3:180,000,000-190,000,000を包含するHIF-1-アルファおよびHIF-2-アルファデータセット(AHSG遺伝子座を含む)を、WebベースのGalaxyプラットフォーム(https://usegalaxy.org)を用いてBAMファイルに変換し、USCSゲノムブラウザ(https://genome.ucsc.edu)上でヒトアセンブリGRCh37/hg19にアップロードした。このアラインメントに、以下のデータセットを加えた:7つの細胞株の活性調節要素付近でしばしば見出される層状クロマチンマーク(H3K27AcおよびH3K4Me1、ENCODE)および低酸素MCF7細胞のオープンクロマチン(DNaseI HS、ENCODE)。マウスAhsg遺伝子座について、JASPARで同定された潜在的なHIF結合部位を、8週齢のマウスの肝臓、心臓および腎臓に由来するデータセット(DNaseI HS、ENCODE/UW;H3K27AcおよびH3K4Me1、ENCODE/LICR)とアラインメントし、平均シグナル強度を示した(棒グラフ、オートスケール、ログ形質転換、スムーズンド(16ピクセル))。
分子クローン化。ルシフェラーゼアッセイのために、マウスAhsg ATGの2.5kbのプロモーター断片上流を、特異的プライマーおよびPrimeSTAR(登録商標)GXL DNAポリメラーゼ(Takara、R050A)を用いて、ゲノムDNA(C57BL/6)から増幅した。500bpのプロモーター断片(wtおよび変異)および500bpのイントロン配列の断片(wtおよび変異)をIDTDNA(https://eu.idtdna.com/pages)により合成した。プロモーター断片を、NcoIおよびSacI制限酵素(いずれもNEB、R3193SおよびR3156S)でpGL3-塩基性-P2P-607プラスミドに挿入した。イントロン断片を、BamHIおよびSall制限酵素(いずれもNEB、R3136SおよびR3138S)を用いて、pGL3-塩基性ベクターまたはプロモーター断片を有するpGL3-塩基性ベクターに挿入した。in-situハイブリダイゼーションのために、マウスAhsgの第2~5エクソンのcDNAを、IDTDNAから得、SpelおよびEcoRI制限酵素(いずれもNEB、R3133SおよびR3101S)を用いてpBluescriptll KS-にクローン化した。
ルシフェラーゼアッセイ。トランスフェクションの24時間後、細胞をPBSで2回洗浄し、氷上で20分間溶解し(250mM KCl、50mMトリス/HPO pH7.8、10%グリセリン、0.1%NP40)、14000rpmで4℃で10分間遠心分離した。上清のうち10μlを反応ごとに使用した。反応溶液(ルシフェラーゼ:25mMトリス/HPO pH7.8、10mM MgSO、2mM ATP pH7.5、50μMルシフェリンからなる100μl;ウミシイタケ:50mMトリス/HCl pH7.6、100mM NaCl、1mM EDTA、0.5μMセレンテラジンからなる100μl)の注射および活性測定を、Fluoroskan Ascent FL(ThermoFisher)で行った。各サンプルを二連で測定し、ルシフェラーゼ活性をウミシイタケ活性に対して正規化した。
ホールマウントin situハイブリダイゼーション。E18.5腎臓を、4%PFAに固定し、脱水し、メタノール中に-20℃で保存した。ジゴキシゲニン標識リボプローブを用いるin situハイブリダイゼーションを、Rudloff,S.およびKemler,R、Differential requirements for beta-catenin during mouse development.Development 139、3711~3721(2012)に説明されているように行った。プローブを、DIG RNA標識ミックス(Roche、11175025910)およびT3またはT7 RNAポリメラーゼ(いずれもRoche、11031163001または10881767001)を用いて生成した。アルカリホスファターゼコンジュゲート抗体を使用して、DIG標識プローブ(Roche、11093274910)を検出した。
TUNEL染色。アポトーシス細胞の断片化DNAを、製造者に従ってPromega DeadEnd Colorimetric TUNEL System(G7360)を用いて検出した。
組織化学。免疫組織化学のために、PFA固定パラフィン包埋組織切片を再水和し、内因性ペルオキシダーゼを、スライドを1.5%H溶液(0.02Mクエン酸、0.06M NaHPO)中でRTで暗所において15分間インキュベートすることによりブロックした。抗原賦活化を、トリス-EDTA緩衝液pH9中で20分間沸騰させ、次いでRTにゆっくり冷却することにより行った。PBS中2%BSAにRTで1時間ブロックした後、切片を、ブロッキング溶液中の一次抗体と共にo/n、4℃でインキュベートした。PBS中での3回の洗浄工程後、切片を、HRPコンジュゲート二次抗体(マウスまたはウサギ:AgilentからのDako EnVision+System(K4001またはK4003)、ヤギ:SCBT、sc-2304)と共にRTで1時間インキュベートした。PBS中での3回の洗浄工程後、シグナルをDAB(Agilent、K3468)で発生させた。切片を、ハリスヘマトキシリン溶液(Sigma、HHS16)で対比染色し、脱水し、Eukitt培地(Sigma、03989)を用いてマウントした。コラーゲンのピクロシリウスレッド染色のために、脱脂し、再水和した組織切片を、染色溶液(ピクリン酸の飽和水溶液中ダイレクトレッド80 0.5g(いずれもSigma、P6744および365548))中でRTで1時間インキュベートした。酸性化水(0.5%氷酢酸)中で2回洗浄した後、切片を脱水し、Eukittを用いてマウントした。
免疫蛍光染色。凍結切片を、4%PFAにRTで10分間固定し、PBS中で2回洗浄し、PBST(PBS中0.1%Triton X-100)中でRTで10分間のインキュベーションにより透過させた。PBS中10%FCS、0.5%Tween-20でRTで1時間ブロックした後、切片をブロッキング溶液中の一次抗体と共にo/n、4℃でインキュベートした。PBS中での3回の洗浄工程後、切片を、ブロッキング溶液中の蛍光コンジュゲート二次抗体と共に暗所でRTで1時間インキュベートした。DNAを、PBS中DAPI 1:5000で染色した。切片をMOWIOL溶液(グリセリン6g中MOWIOL 4-88試薬2.4g(Merck、475904)および0.13MトリスpH8.5 18ml)にマウントした。E18.5腎臓のホールマウント免疫蛍光染色のために、メタノール前処理を含むiDisco染色プロトコル(https://idisco.info/idisco-protocol/)を適用した。インキュベーション時間n=1日および溶液量1.6mlを、関連する工程に使用した。腎臓を8ウェルガラスチャンバスライド(ThermoFisher、154534)にマウントし、直ぐに撮像した。
カルシウムの蛍光検出。厚い凍結切片(30μm)を、ATTO 488蛍光標識フェチュインA 10ng/ml(カルシウム不含PBS中)と共に暗所でRTで60分間インキュベートし、PBSで3回すすぎ、MOWIOL溶液でマウントした。核をDAPIで対比染色した。
撮像。蛍光撮像を、Polychrome V光源を用いるIMICデジタル顕微鏡(FEI、4001型)、HamamatsuからのOrca-Rカメラコントローラ(C10600)およびライブ取得ソフトウェア(FEI、バージョン2.6.0.14)で行った。画像解析を、オフライン解析ソフトウェア(FEI)を用いて行った。明視野撮像を、デジタルサイトDS-UEカメラコントローラおよびDSRi1カメラ(いずれもNikon)を用いる、Nikon対物レンズを備えるNikon E600顕微鏡(Plan Fluor ELWD 20×/0.45、Plan Apo 40×/1.0 Oilおよび60×/1.40 Oil)で行った。画像解析を、NikonソフトウェアNIS Elements4.0を用いて行った。
ELISA。例えば血清または腎組織中のマウスフェチュインAレベルを、製造者bio-techneに従ってマウス特異的フェチュインA/AHSG Quantikine ELISAキット(R&D、MFTA00)を用いて決定した。例えば血清または腎組織中のヒトフェチュインAレベルを、製造者bio-techneに従ってヒト特異的フェチュインA/AHSG Quantikine ELISAキット(R&D、DFTA00)を用いて決定した。
細胞培養。正常なラット腎臓(NRK)細胞株を、DMEM(Gibco、41965-039)および10%胎児ウシ血清(FBS)で培養した。ヒト腎臓(HK-2)細胞株を、ケラチノサイト-SFM培地(Gibco、17005-075)で培養した。ルシフェラーゼアッセイのために、NRK細胞を、jetPrime(登録商標)試薬(Polyplus、114-07)を用いてルシフェラーゼレポータープラスミドおよびpCMV-ウミシイタケ(全トランスフェクトDNAの10%、正規化のために使用)でトランスフェクトし、トランスフェクションの6時間後に1mM DMOG(Echelon Biosciences、F-0010)で刺激し、トランスフェクションの24時間後に収集した。低酸素のために、細胞培養を、0.2%酸素で48時間行った。初代近位尿細管細胞(pPTC)を、3~4週齢の腎臓から単離した(Terryn,S.ら、A primary culture of mouse proximal tubular cells, established on collagen-coated membranes.Am J Physiol Renal Physiol 293、F476~485(2007)を参照のこと)。簡単に言えば、近位尿細管断片を、腎臓皮質組織をコラゲナーゼで消化し、孔径80μmの膜を通して濾過することにより得た。pPTCを、15mM HEPES、0.55mMピルビン酸ナトリウム、1%NEAAを補足したDMEM/F12(Gibco、21041-025)および腎上皮細胞増殖培地(REGM)補充物(Lonza、CC-4127)で培養した。FBSの代わりに、Ahsg KOマウスからの血清を使用した。密集度に応じて、pPTCを分割し、Accutase溶液(Sigma、A6964)を用いて一度再播種した。24低酸素のために、細胞培養を0.2%酸素で48時間行った。フェチュインA(Sigma、F3385)またはウシ血清アルブミン(BSA、Sigma、A3059)100μg/mlを、実験終了の48時間前に培養培地に添加した。rmTGF-β1(R&D、7666-MB)5ng/mlでの5分間の処置前に、細胞を24時間飢餓させた。
ウェスタンブロット分析。全タンパク質可溶化液を、プロテアーゼ阻害剤(Roche、11836153001)を補足したRIPA緩衝液(Sigma、R0278)を用いて得た。タンパク質をSDS-PAGEにより分離し、PVDF膜(ThermoFisher、88518)上にブロットした。TBST中5%乳でブロックしたら、膜を、一次抗体と共に4℃、o/nでインキュベートし、HRPコンジュゲート二次抗体と共にRTで1時間インキュベートした。シグナルを、シグナル強度に応じてECL(GE Healthcare、RPN2106)またはSuperSignal(ThermoFisher、34076)で検出した。濃度測定分析を、オープンソース画像処理ソフトウェアFiji(ImageJ、バージョン2.0.0-rc69/1.52i、https://imagej.net/Fiji)で行った。
マウス中の腹腔内注射ウシフェチュインAの濃度の計算。マウスの基準血液量は、58.5ml/kg(nc3rs.org.uk)、77~80ml/kg(jax.org)であった。これらの値に基づき、68.5ml/kgを計算に使用した。ウシフェチュインA(UniProtKB-P12763(FETUA_BOVIN))の計算された分子量は、38.4kDaである。したがって、注射フェチュインAがすべて血液中に存在した場合、またはフェチュインAの静脈内注射を行った場合、血液中38μmの濃度に達する。さらに、フェチュインAは、翻訳後修飾を受ける。ここで、とりわけグリコシル化は中心的な役割を果たし、分子量は51~67kDaに増加する。したがって、分子量60kDaを計算に使用した(1Da=1g/mol)。注射フェチュインAがすべて血液中に存在した場合、またはフェチュインAの静脈内注射を行い、それが注射量100μg/g体重に基づく場合、注射されたマウスの血液中で24.3μMの濃度になる:
Figure 2023517943000001
しかし、腹腔内注射を行うと、フェチュインAを腹腔から循環中に運ばねばならないため、血中濃度の低下をもたらす。この過程で、腔内での部分的な分解、または中皮細胞による飲作用および代謝により、分子がすべて吸収されるとは限らない。研究(Regoecziら(1989)、Am J Physiol.;256(4 Pt 1):E447-52)において、アルブミンの腹腔内注射は、同じ量のアルブミンの静脈内注射と比較して、2~3時間後、血液中約40%の用量に達することが示された。マウスにおける40%の取り込みに基づき、腹腔内注射後に得られる濃度は:
Figure 2023517943000002
である。したがって、フェチュインA 100mg/kg体重を腹腔内注射する場合、得られる血中濃度は、約9.7μMである。上記のように、このような比較的低用量が、腎虚血損傷を処置するのに十分であることが見出された。
マウス中の静脈内注射ヒトフェチュインAの濃度の計算。マウスの基準血液量は、58.5ml/kg(nc3rs.org.uk)、77~80ml/kg(jax.org)であった。これらの値に基づき、68.5ml/kgを計算に使用した。ヒトフェチュインA(UniProtKB-P12763(FETUA_BOVIN))の計算された分子量は、38.4kDaである。さらに、フェチュインAは、翻訳後修飾を受ける。ここで、とりわけグリコシル化は中心的な役割を果たし、分子量は51~67kDaに増加する。したがって、60kDaの分子量を計算に使用した。予防的処置の実験において、マウスの平均体重は22gであった。体重22gのマウスについて、対応する血液量は約:
Figure 2023517943000003
である。
ヒトフェチュインA 900μgの注射で、これは、
Figure 2023517943000004
の血中濃度になる。
したがって、ヒトフェチュインA 900μgを、平均体重22gのマウスに静脈内注射する場合、得られる血中濃度は、約9.9μMである。上記のように、このような比較的低用量が、腎虚血損傷を予防するのに十分であることが見出された。
ヒトにおけるヒトフェチュインAの濃度および服用量の計算。ヒト成人の基準血液量は、77ml/kg(男性)および65ml/kg(女性)であり、平均量は71ml/kgである。ヒトフェチュインA(UniProtKB-P02765 (FETUA_HUMAN))の分子量は一般に、ウシフェチュインAと同等であり、すなわち同様に約60kDaである(グリコシル化による)。ヒト成人へのフェチュインA 10mg/kg(iv)、25mg/kg(iv)、50mg/kg(iv)の投与に対して、得られるヒト血中濃度は:
Figure 2023517943000005
である。
同様に、9.7μmの上述の濃度に対応する用量を計算できる:
Figure 2023517943000006
同様に、9.9μmの上述の濃度に対応する用量を計算できる:
Figure 2023517943000007
したがって、マウスに腹腔内注射されるフェチュインA 100μg/g体重に対して計算される当量は、成人ヒトに静脈内注射される場合約41.3mg/kgであり、体重22gのマウスに静脈内注射されるフェチュインA 900μgに対して計算される当量は、成人ヒトに静脈内注射される場合約42.2mg/kgである。
データ分析。統計的分析およびグラフを、Prism 7(https://www.graphpad.com)で行った。2つの群をt検定により、複数の群を一元配置ANOVA(別段特定されない限り、テューキーの多重比較検定)により比較した。****、P<0.0001;***、P<0.001;**、P<0.01;、P<0.05;ns、有意でない;エラーバー、標準偏差(SD);ウィスカー、最小から最大。

Claims (22)

  1. 腎障害を処置する方法における使用のためのフェチュインA(AHSG)であって、腎障害を処置するのに効果的なフェチュインAの量が、それを必要とする対象に投与される、フェチュインA。
  2. 腎障害は、急性腎障害、慢性腎障害、腎臓線維化、慢性腎臓疾患、腎不全、腎炎、急性腎臓傷害、虚血性腎障害、腎臓の低酸素に関連する障害、腎虚血-再灌流傷害、腎臓移植に関連する障害、心臓血管手術に関連する障害、腎臓組織損傷およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の方法における使用のためのフェチュインA。
  3. 腎障害は、腎臓移植に関連する障害であり、特に、腎臓移植に関連する障害が、グラフト機能遅延、腎臓移植片の臓器拒絶反応、腎臓移植によって生じる腎臓組織損傷、腎臓移植によって生じる炎症、腎臓移植によって生じる腎虚血-再灌流傷害およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項2に記載の方法における使用のためのフェチュインA。
  4. 腎障害は、手術中の低酸素に起因し、好ましくは、低酸素が、腎臓移植中または心臓血管手術中の虚血に起因する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法における使用のためのフェチュインA。
  5. フェチュインAは、ヒトフェチュインAであり、好ましくはフェチュインAは、ヒト血漿に由来する、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法における使用のためのフェチュインA。
  6. フェチュインAは、配列番号1に少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%同一および/または相同である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法における使用のためのフェチュインA。
  7. フェチュインAは、配列番号1またはその断片を含むか、またはこれらからなる、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法における使用のためのフェチュインA。
  8. フェチュインAは、翻訳後修飾、より好ましくはグリコシル化を提供する、好ましくは宿主細胞系において組換え的に発現される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法における使用のためのフェチュインA。
  9. フェチュインAは、注射または吸入により対象に投与される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法における使用のためのフェチュインA。
  10. フェチュインAは、対象に静脈内注射される、請求項9に記載の方法における使用のためのフェチュインA。
  11. フェチュインAは、1~200mg/kg(体重)、5~100mg/kg(体重)または10~50mg/kg(体重)の濃度で対象に投与される、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法における使用のためのフェチュインA。
  12. 処置は、腎臓組織の石灰化レベル、特に低酸素に関連した石灰化レベルの調節を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法における使用のためのフェチュインA。
  13. 処置が、腎臓組織におけるカルシウムミネラル沈着物の除去、特に移植された腎臓組織におけるカルシウムミネラル沈着物の除去を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法における使用のためのフェチュインA。
  14. 少なくとも2または少なくとも3用量のフェチュインAが投与される、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法における使用のためのフェチュインA。
  15. 少なくとも1用量のフェチュインAは、虚血事故および/または手術の前、その間またはその後に投与され、特に、虚血事故および/または手術は、腎臓移植または心臓血管手術である、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法における使用のためのフェチュインA。
  16. 少なくとも1用量のフェチュインAは、虚血事故および/もしくは手術前48時間以内に投与されるか、または少なくとも1用量のフェチュインAは、虚血事故および/もしくは手術後48時間以内に投与される、請求項15に記載の方法における使用のためのフェチュインA。
  17. フェチュインAは、1~50日間の合計持続期間にわたって、特に1~25日間の合計持続期間にわたってまたは2~10日間の合計持続期間にわたって分割量で投与される、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法における使用のためのフェチュインA。
  18. 腎障害の処置における使用のための医薬組成物であって、フェチュインAおよび場合により少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
  19. 腎障害は、急性腎障害、慢性腎障害、腎臓線維化、慢性腎臓疾患、腎不全、腎炎、急性腎臓傷害、虚血性腎障害、低酸素に関連する障害、腎虚血-再灌流傷害、腎臓移植に関連する障害、心臓血管手術に関連する障害、腎臓組織損傷およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項18に記載の腎障害の処置における使用のための医薬組成物。
  20. 腎臓移植に関連する障害は、グラフト機能遅延、腎臓移植片の臓器拒絶反応、腎臓移植によって生じる腎臓組織損傷、腎臓移植によって生じる炎症、腎臓移植によって生じる腎虚血-再灌流傷害およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項19に記載の腎障害の処置における使用のための医薬組成物。
  21. 腎障害は、手術中の低酸素に起因し、好ましくは、低酸素は、腎臓移植中または心臓血管手術中の虚血に起因する、請求項18~20のいずれか1項に記載の腎障害の処置における使用のための医薬組成物。
  22. フェチュインAは、請求項5~17のいずれか1項と同様に定義される、請求項18~21のいずれか1項に記載の腎障害の処置における使用のための医薬組成物。
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