JP2023517083A - 幹細胞組成物および組織を修復する方法 - Google Patents

幹細胞組成物および組織を修復する方法 Download PDF

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Abstract

Figure 2023517083000001
損傷を受けた組織の修復もしくは再生の促進もしくは向上、またはウイルス感染症、細菌感染症もしくは真菌感染症からの回復の向上に使用するための組成物を開示する。この組成物は小型運動性幹細胞(small mobile stem(SMS)cells)を含む。さらに、前記組成物の調製方法を開示するとともに、前記組成物を使用して、炎症性疾患(線維症やCOPDなど)および/またはウイルス感染症、細菌感染症もしくは真菌感染症、もしくはこのような病原体によって引き起こされた損傷を治療または緩和する方法を開示する。

Description

関連出願の相互参照
本出願は、2020年3月9日に出願された米国仮出願第62/987,270号の優先権の利益を主張するものであり、この出願は引用によりその全体が本明細書に明示的に援用される。
本開示の態様は、損傷を受けた組織または臓器の修復または再生の促進と実質損傷の軽減のための組成物および方法に関する。いくつかの態様において、本発明の組成物は、単離された小型運動性幹細胞(small mobile stems cells)を含み、本発明の組成物および方法は、ウイルス感染症、細菌感染症もしくは真菌感染症を治療または緩和するために使用されるか、ウイルス感染症、細菌感染症もしくは真菌感染症によって損傷を受けた組織を修復することによって、これらの感染症によって引き起こされた損傷を治療または緩和するために使用されるか、または線維症やCOPDなどの炎症性疾患および/もしくはウイルス感染症、細菌感染症もしくは真菌感染症に関連する炎症性疾患によって引き起こされた有害作用を治療または緩和するために使用される。
炎症プロセスは、病原体の排除に重要であるとともに、様々な臨床的障害に関連している。患者に認められる炎症反応は、元の刺激よりも有害な場合があり、炎症促進性の線維性瘢痕組織を形成して、正常な臓器の機能を脅かすことがある。また、異常な自己炎症や慢性炎症の発生によって、組織変性を伴う一生治ることのない障害や病態が起こることも多い。
ウイルス感染症は、毎年流行が起こることから世界的に大きな健康問題となっている。不活化ウイルスを使用した合理的なワクチン接種プロトコルが実施されているにもかかわらず、罹患率と死亡率が高いことから複雑な状況になることが多い。ワクチンにはいくつかの欠点があり、例えば、ワクチンにより誘導される保護効果が短いことから再投与が必要となること;株特異的な抗体産生応答しか誘導できないこと;ウイルス感染症によって損傷を受けた組織または臓器の回復や修復はできないことが挙げられる。また、ウイルス株は伝染性が高く、ウイルス株間でのRNAセグメントの交換による抗原不連続変異や、点変異による抗原連続変異によって常に変化していることも、ワクチンの欠点を強調するものである。
コロナウイルスは、プラスセンス一本鎖ゲノムを持つエンベロープRNAウイルスファミリーであり、特定の宿主に感染する。中国武漢市で初めて単離された新たなコロナウイルスは、2002年と2003年に蔓延した過去の重症急性呼吸器症候群(SARS)よりも感染性が高く、コロナウイルス感染症2019(COVID-19)の発生に至った。COVID-19感染症の最も重篤な形態は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)であり、急性呼吸障害を発症した後に急性呼吸不全を起こし、集中的な支持療法を行ったとしても、不可逆的な肺組織障害や線維性瘢痕化を発症することから、罹患率と死亡率が比較的高い。重症呼吸器症候群の病態生理は多因子性であり、過剰な免疫反応が起こり、これに付随する炎症性サイトカインストーム(これに伴うその他の終末器官障害)や、肺胞上皮細胞と気管支上皮細胞の溶解が認められ、2次的な日和見肺炎を発症することが多い。SARS-CoV-2の治療用および予防用の特異的な抗ウイルス治療やワクチンは、開発および承認が始まったばかりである。さらに、強い毒性を持つことがあるSARS-CoV-2変異体は、現在の治療法では治療が難しい場合もあることから、懸念が寄せられている。したがって、クリティカルケアがなお重要であり、これには、気管内挿管による機械的人工呼吸、体外式膜型人工肺(ECMO)、ショック状態を治療するための昇圧剤、および発症する可能性のある日和見肺炎を治療するための抗生物質を利用した症状の治療が含まれる。また、糖尿病や心臓病などの共存症を有する患者や、高齢の患者がSARS-CoV-2を発症すると、転帰不良となるリスクが高く、回復したとしても長期的な衰弱を起こしたり、永続的な肺機能障害を起こしたり、あるいは死に至ることが明らかとなっている。このような集団における死亡率は、約10%だと推定されている。したがって、重症コロナウイルス疾患患者のための、安全かつ効果的な治療アプローチの開発が必要とされている。
本開示は、概して、損傷を受けた組織の修復もしくは再生を促進もしくは向上させるための、またはウイルス感染症、真菌感染症もしくは細菌感染症もしくはそれら後遺症からの回復を向上させるための組成物と、該組成物の製造方法および使用方法に関する。この組成物は小型運動性幹細胞(small mobile stem(SMS)cells)を含み、このSMS細胞は、前記組成物を投与する対象と同種の細胞であってもよく、前記組成物を投与する対象から得られた自家細胞であってもよく、末梢血から得られた細胞であってもよい。前記ウイルス感染症、真菌感染症または細菌感染症は、SARS-CoV-2感染症を含んでいてもよい。
したがって、本明細書で提供される実施形態のいくつかは、損傷を受けた組織の修復もしくは再生を促進もしくは向上させるか、またはウイルス感染症、真菌感染症もしくは細菌感染症もしくはそれらの後遺症からの回復を向上させる方法であって、
ウイルス感染症、真菌感染症もしくは細菌感染症またはそれらの後遺症に罹患している対象を選択する工程;および
治療有効量の小型運動性幹細胞(small mobile stem(SMS)cells)を含む組成物を前記対象に投与する工程
を含む方法に関する。
いくつかの実施形態において、ウイルス感染症、真菌感染症、細菌感染症、それらの後遺症のいずれにも罹患していない対象が選択され、ウイルス感染症、真菌感染症もしくは細菌感染症が発症した場合に備えて組織損傷を予防するために、本明細書で提供される組成物が投与される。いくつかの実施形態において、前記SMS細胞は、末梢血から得られた細胞である。いくつかの実施形態において、前記SMS細胞は、前記対象と同種の細胞である。いくつかの実施形態において、前記SMS細胞は、前記対象から得られた自家細胞である。いくつかの実施形態において、前記損傷を受けた組織は肺組織である。いくつかの実施形態において、前記組成物を投与することによって、肺胞細胞障害の減少もしくは抑制、呼吸器内皮細胞障害の減少もしくは抑制、損傷を受けた肺組織の修復の増加もしくは向上、損傷を受けた肺組織の再生の増加もしくは増強、または肺線維症の発症の減少もしくは抑制が達成される。いくつかの実施形態において、前記損傷を受けた組織は、前記ウイルス感染症、真菌感染症もしくは細菌感染症またはそれらの後遺症によって損傷を受けた組織である。いくつかの実施形態において、前記ウイルス感染症は、一本鎖RNAウイルス、二本鎖RNAウイルス、プラスセンス一本鎖RNAウイルス、マイナスセンス一本鎖RNAウイルス、二本鎖DNAウイルスまたは一本鎖DNAウイルスによって引き起こされたものである。いくつかの実施形態において、前記ウイルス感染症、真菌感染症もしくは細菌感染症またはそれらの後遺症は、コロナウイルス、ポックスウイルス、痘瘡ウイルス、マールブルグウイルス、フラビウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、RSウイルス、風疹ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトパピローマウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイルス、JCウイルス、ラブドウイルス、ロタウイルス、ライノウイルス、アデノウイルス、パピローマウイルス、パルボウイルス、ピコルナウイルス、ポリオウイルス、ハンタウイルス、フィロウイルス、コクサッキーウイルス、ウマ脳炎ウイルス、リフトバレー熱ウイルス、アルファウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、肺炎、肺炎連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、インフルエンザ菌、モラクセラ・カタラーリス、嫌気性細菌、グラム陰性細菌、マイコプラズマ・ニューモニエ、クラミジア・ニューモニエ、A群連鎖球菌、肺炎桿菌、レジオネラ・ニューモフィラ、化膿連鎖球菌、ストレプトコッカス・アガラクティエ、ペプトストレプトコッカス属、ジフテリア菌、百日咳菌、ヒト結核菌、緑膿菌、大腸菌、クルブラリア属、ニューモシスチス属、クリプトコッカス属、ヒストプラスマ・カプスラーツム、アスペルギルス属、ムコール目、フザリウム属、スケドスポリウム属、ペニシリウム属、またはこれらの任意の組み合わせによって引き起こされたものである。いくつかの実施形態において、前記コロナウイルスは、MERS-CoV、SARS-CoVまたはSARS-CoV-2である。いくつかの実施形態において、前記コロナウイルスは、SARS-CoV-2である。いくつかの実施形態において、前記組成物は、エアロゾル化されたSMS細胞を含み、このエアロゾル化されたSMS細胞は、例えば、鼻腔や口腔などを介して吸入投与してもよい。いくつかの実施形態において、前記組成物は静脈内投与される。いくつかの実施形態において、前記SMS細胞は、アジスロマイシンなどの抗生物質、ボリコナゾール、アムホテリシンB、イトラコナゾールなどの抗真菌剤、ワクチン、またはレムデシビルなどの抗ウイルス剤と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態において、前記ワクチンは、コロナウイルス、コレラ、デング熱、ジフテリア、ヘモフィルスインフルエンザ菌b型感染症、A型肝炎、B型肝炎、インフルエンザ、日本脳炎、髄膜炎菌性髄膜炎、百日咳、ポリオ、狂犬病、破傷風、結核、腸チフスおよび黄熱病の1種以上に対するワクチンである。いくつかの実施形態において、前記ワクチンは、コロナウイルスCOVID-19ワクチンである。
本明細書に記載の実施形態のいくつかは、炎症性疾患を治療または抑制する方法に関する。いくつかの実施形態において、この方法は、炎症性疾患を有する対象を選択する工程、および治療有効量の小型運動性幹細胞(small mobile stem(SMS)cells)を含む組成物を前記選択された対象に投与する工程を含む。いくつかの実施形態において、前記炎症性疾患は、肺の炎症性疾患である。いくつかの実施形態において、前記炎症性疾患は線維症を含む。いくつかの実施形態において、前記線維症は、肺線維症、肝線維症、腎線維症または心線維症である。いくつかの実施形態において、前記炎症性疾患は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を含む。いくつかの実施形態において、前記炎症性疾患は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を含む。いくつかの実施形態において、前記炎症性疾患は、ウイルス感染症、真菌感染症および/または細菌感染症に関連しているか、ウイルス感染症、真菌感染症および/または細菌感染症によって引き起こされたものである。いくつかの実施形態において、前記ウイルス感染症は、一本鎖RNAウイルス、二本鎖RNAウイルス、プラスセンス一本鎖RNAウイルス、マイナスセンス一本鎖RNAウイルス、二本鎖DNAウイルスまたは一本鎖DNAウイルスによって引き起こされたものである。いくつかの実施形態において、前記ウイルス感染症、真菌感染症または細菌感染症は、コロナウイルス、ポックスウイルス、痘瘡ウイルス、マールブルグウイルス、フラビウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、RSウイルス、風疹ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトパピローマウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイルス、JCウイルス、ラブドウイルス、ロタウイルス、ライノウイルス、アデノウイルス、パピローマウイルス、パルボウイルス、ピコルナウイルス、ポリオウイルス、ハンタウイルス、フィロウイルス、コクサッキーウイルス、ウマ脳炎ウイルス、リフトバレー熱ウイルス、アルファウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、肺炎、肺炎連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、インフルエンザ菌、モラクセラ・カタラーリス、嫌気性細菌、グラム陰性細菌、マイコプラズマ・ニューモニエ、クラミジア・ニューモニエ、A群連鎖球菌、肺炎桿菌、レジオネラ・ニューモフィラ、化膿連鎖球菌、ストレプトコッカス・アガラクティエ、ペプトストレプトコッカス属、ジフテリア菌、百日咳菌、ヒト結核菌、緑膿菌、大腸菌、クルブラリア属、ニューモシスチス属、クリプトコッカス属、ヒストプラスマ・カプスラーツム、アスペルギルス属、ムコール目、フザリウム属、スケドスポリウム属、ペニシリウム属、またはこれらの任意の組み合わせによって引き起こされたものである。いくつかの実施形態において、前記ウイルス感染症は、コロナウイルス感染症である。いくつかの実施形態において、前記ウイルス感染症は、SARS-CoV感染症、MERS-CoV感染症またはSARS-CoV-2感染症である。いくつかの実施形態において、前記SMS細胞は、末梢血から得られた細胞である。いくつかの実施形態において、前記SMS細胞は、前記対象と同種の細胞または前記対象から得られた自家細胞である。いくつかの実施形態において、前記組成物を投与することによって、肺胞細胞障害の減少もしくは軽減、呼吸器内皮細胞障害の減少もしくは軽減、損傷を受けた肺組織の修復の増加もしくは向上、損傷を受けた肺組織の再生の増加もしくは増強、もしくは肺線維症の発症の減少もしくは抑制、またはこれらの任意の組み合わせが達成される。いくつかの実施形態において、前記組成物は、吸入投与用に製剤化されている。いくつかの実施形態において、前記組成物は、静脈内投与用に製剤化されている。いくつかの実施形態において、前記組成物は、前記炎症性疾患の標準治療に併用して投与される。いくつかの実施形態において、前記炎症性疾患は、ウイルス感染症、真菌感染症または細菌感染症に関連しており、前記標準治療は、アジスロマイシンなどの抗生物質;ボリコナゾール、アムホテリシンB、イトラコナゾールなどの抗真菌剤;ワクチン;デキサメタゾン、回復期血清、トシリズマブ、サリルマブ、リバビリン、ファビピラビル、ダルナビル、ガリデシビル、インターフェロンα、インターフェロンβ、ロピナビル、リトナビル、レムデシビル、トリアザビリン、ウミフェノビルなどの抗ウイルス剤;またはこれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態において、前記ワクチンは、コロナウイルス、コレラ、デング熱、ジフテリア、ヘモフィルスインフルエンザ菌b型感染症、A型肝炎、B型肝炎、インフルエンザ、日本脳炎、髄膜炎菌性髄膜炎、百日咳、ポリオ、狂犬病、破傷風、結核、腸チフスおよび黄熱病の1種以上に対するワクチンである。いくつかの実施形態において、前記ワクチンは、コロナウイルスCOVID-19ワクチンである。
本明細書で提供される実施形態のいくつかは、治療有効量の小型運動性幹細胞(small mobile stem(SMS)cells)を含む組成物に関する。いくつかの実施形態において、前記組成物は、損傷を受けた組織の修復もしくは再生、またはウイルス感染症、真菌感染症もしくは細菌感染症(もしくはそれらの後遺症)からの回復の向上に使用するために製剤化されており、前記ウイルス感染症、真菌感染症もしくは細菌感染症は、例えば、コロナウイルス、ポックスウイルス、痘瘡ウイルス、マールブルグウイルス、フラビウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、RSウイルス、風疹ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトパピローマウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイルス、JCウイルス、ラブドウイルス、ロタウイルス、ライノウイルス、アデノウイルス、パピローマウイルス、パルボウイルス、ピコルナウイルス、ポリオウイルス、ハンタウイルス、フィロウイルス、コクサッキーウイルス、ウマ脳炎ウイルス、リフトバレー熱ウイルス、アルファウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、肺炎、肺炎連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、インフルエンザ菌、モラクセラ・カタラーリス、嫌気性細菌、グラム陰性細菌、マイコプラズマ・ニューモニエ、クラミジア・ニューモニエ、A群連鎖球菌、肺炎桿菌、レジオネラ・ニューモフィラ、化膿連鎖球菌、ストレプトコッカス・アガラクティエ、ペプトストレプトコッカス属、ジフテリア菌、百日咳菌、ヒト結核菌、緑膿菌、大腸菌、クルブラリア属、ニューモシスチス属、クリプトコッカス属、ヒストプラスマ・カプスラーツム、アスペルギルス属、ムコール目、フザリウム属、スケドスポリウム属、ペニシリウム属、またはこれらの任意の組み合わせであり、MERS-CoV、SARS-CoVまたはSARS-CoV-2であることが好ましい。いくつかの実施形態において、前記SMS細胞は、末梢血から得られた細胞である。いくつかの実施形態において、前記組成物は、エアロゾル化されたSMS細胞を含み、このエアロゾル化されたSMS細胞は、吸入投与用に製剤化されていてもよい。いくつかの実施形態において、前記組成物は、静脈内投与用に製剤化されている。いくつかの実施形態において、前記損傷を受けた組織は、ウイルス感染症によって損傷を受けた組織である。いくつかの実施形態において、前記ウイルス感染症は、コロナウイルス、ポックスウイルス、痘瘡ウイルス、マールブルグウイルス、フラビウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、RSウイルス、風疹ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトパピローマウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイルス、JCウイルス、ラブドウイルス、ロタウイルス、ライノウイルス、アデノウイルス、パピローマウイルス、パルボウイルス、ピコルナウイルス、ポリオウイルス、ハンタウイルス、フィロウイルス、コクサッキーウイルス、ウマ脳炎ウイルス、リフトバレー熱ウイルス、アルファウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、またはこれらの組み合わせによって引き起こされたものである。いくつかの実施形態において、前記コロナウイルスは、SARS-CoV-2である。いくつかの実施形態において、前記治療有効量は、肺胞細胞障害の減少もしくは抑制、呼吸器内皮細胞障害の減少もしくは抑制、肺線維症の発症の減少もしくは抑制、損傷を受けた肺組織の修復の増加もしくは向上、または損傷を受けた肺組織の再生の増加もしくは増強を誘導するのに十分な量である。いくつかの実施形態において、前記組成物は、治療有効量の抗生物質、抗真菌剤、ワクチンまたは抗ウイルス剤(例えばレムデシビルなど)をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記ワクチンは、コロナウイルスワクチンである。いくつかの実施形態において、前記組成物は、薬学的に許容される担体、保存剤、酸化防止剤、希釈剤もしくは添加剤、またはこれらの任意の組み合わせをさらに含む。
本明細書で提供される実施形態のいくつかは、ウイルス感染症、真菌感染症もしくは細菌感染症(またはそれらの後遺症)の治療または抑制のための、本明細書に記載の組成物のいずれかの使用に関し、前記ウイルス感染症、真菌感染症または細菌感染症は、例えば、コロナウイルス、ポックスウイルス、痘瘡ウイルス、マールブルグウイルス、フラビウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、RSウイルス、風疹ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトパピローマウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイルス、JCウイルス、ラブドウイルス、ロタウイルス、ライノウイルス、アデノウイルス、パピローマウイルス、パルボウイルス、ピコルナウイルス、ポリオウイルス、ハンタウイルス、フィロウイルス、コクサッキーウイルス、ウマ脳炎ウイルス、リフトバレー熱ウイルス、アルファウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、肺炎、肺炎連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、インフルエンザ菌、モラクセラ・カタラーリス、嫌気性細菌、グラム陰性細菌、マイコプラズマ・ニューモニエ、クラミジア・ニューモニエ、A群連鎖球菌、肺炎桿菌、レジオネラ・ニューモフィラ、化膿連鎖球菌、ストレプトコッカス・アガラクティエ、ペプトストレプトコッカス属、ジフテリア菌、百日咳菌、ヒト結核菌、緑膿菌、大腸菌、クルブラリア属、ニューモシスチス属、クリプトコッカス属、ヒストプラスマ・カプスラーツム、アスペルギルス属、ムコール目、フザリウム属、スケドスポリウム属、ペニシリウム属、またはこれらの任意の組み合わせであり、MERS-CoV、SARS-CoVまたはSARS-CoV-2であることが好ましい。本明細書で提供される実施形態のいくつかは、医薬品に使用するための、本明細書に記載の組成物のいずれかに関する。
本明細書で提供される実施形態のいくつかは、炎症性疾患の治療、抑制、緩和または軽減のための、本明細書に開示された組成物のいずれかの使用に関する。いくつかの実施形態において、前記炎症性疾患は、肺の炎症性疾患である。いくつかの実施形態において、前記炎症性疾患は線維症を含む。いくつかの実施形態において、前記線維症は、肺線維症、肝線維症、腎線維症または心線維症である。いくつかの実施形態において、前記炎症性疾患は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を含む。いくつかの実施形態において、前記炎症性疾患は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を含む。いくつかの実施形態において、前記炎症性疾患は、ウイルス感染症、真菌感染症または細菌感染症に関連している。いくつかの実施形態において、前記ウイルス感染症は、コロナウイルス感染症である。いくつかの実施形態において、前記ウイルス感染症は、SARS-CoV感染症、MERS-CoV感染症またはSARS-CoV-2感染症である。
したがって、本明細書に記載の実施形態の態様のいくつかは、付番された以下の実施形態に関する。
1.損傷を受けた組織の修復もしくは再生を促進もしくは向上させるか、またはウイルス感染症、真菌感染症もしくは細菌感染症もしくはそれらの後遺症からの回復を向上させる方法であって、
ウイルス感染症、真菌感染症もしくは細菌感染症もしくはそれらの後遺症に罹患している対象、または過去にウイルス感染症、真菌感染症もしくは細菌感染症もしくはそれらの後遺症に罹患した経験のある対象を選択する工程;および
治療有効量の小型運動性幹細胞(small mobile stem(SMS)cells)を含む組成物を前記選択された対象に投与する工程
を含む方法。
2.前記SMS細胞が、末梢血から得られる細胞である、実施形態1に記載の方法。
3.前記SMS細胞が、前記対象と同種の細胞である、実施形態1または2に記載の方法。
4.前記SMS細胞が、前記対象から得られた自家細胞である、実施形態1または2に記載の方法。
5.前記損傷を受けた組織が肺組織である、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法。
6.前記組成物を投与することによって、肺胞細胞障害の減少もしくは抑制、呼吸器内皮細胞障害の減少もしくは抑制、損傷を受けた肺組織の修復の増加もしくは向上、損傷を受けた肺組織の再生の増加もしくは増強、または肺線維症の発症の減少もしくは抑制が達成される、実施形態5に記載の方法。
7.前記損傷を受けた組織が、ウイルス感染症、細菌感染症または真菌感染症によって損傷を受けた組織である、実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法。
8.前記ウイルス感染症が、一本鎖RNAウイルス、二本鎖RNAウイルス、プラスセンス一本鎖RNAウイルス、マイナスセンス一本鎖RNAウイルス、二本鎖DNAウイルスまたは一本鎖DNAウイルスによって引き起こされたものである、実施形態1~7のいずれか1つに記載の方法。
9.前記ウイルス感染症、真菌感染症もしくは細菌感染症またはそれらの後遺症が、コロナウイルス、ポックスウイルス、痘瘡ウイルス、マールブルグウイルス、フラビウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、RSウイルス、風疹ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトパピローマウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイルス、JCウイルス、ラブドウイルス、ロタウイルス、ライノウイルス、アデノウイルス、パピローマウイルス、パルボウイルス、ピコルナウイルス、ポリオウイルス、ハンタウイルス、フィロウイルス、コクサッキーウイルス、ウマ脳炎ウイルス、リフトバレー熱ウイルス、アルファウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、肺炎、肺炎連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、インフルエンザ菌、モラクセラ・カタラーリス、嫌気性細菌、グラム陰性細菌、マイコプラズマ・ニューモニエ、クラミジア・ニューモニエ、A群連鎖球菌、肺炎桿菌、レジオネラ・ニューモフィラ、化膿連鎖球菌、ストレプトコッカス・アガラクティエ、ペプトストレプトコッカス属、ジフテリア菌、百日咳菌、ヒト結核菌、緑膿菌、大腸菌、クルブラリア属、ニューモシスチス属、クリプトコッカス属、ヒストプラスマ・カプスラーツム、アスペルギルス属、ムコール目、フザリウム属、スケドスポリウム属、ペニシリウム属、またはこれらの任意の組み合わせによって引き起こされたものである、実施形態1~7のいずれか1つに記載の方法。
10.前記コロナウイルスが、MERS-CoV、SARS-CoVまたはSARS-CoV-2である、実施形態9に記載の方法。
11.前記コロナウイルスが、SARS-CoV-2である、実施形態9に記載の方法。
12.前記組成物が、エアロゾル化されたSMS細胞を含むこと、およびこのエアロゾル化されたSMS細胞を吸入により投与してもよいことを特徴とする、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法。
13.前記組成物が静脈内投与される、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法。
14.前記SMS細胞が、アジスロマイシンなどの抗生物質、ボリコナゾール、アムホテリシンB、イトラコナゾールなどの抗真菌剤、ワクチン、またはレムデシビルなどの抗ウイルス剤と組み合わせて投与される、実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法。
15.前記ワクチンが、コロナウイルス、コレラ、デング熱、ジフテリア、ヘモフィルスインフルエンザ菌b型感染症、A型肝炎、B型肝炎、インフルエンザ、日本脳炎、髄膜炎菌性髄膜炎、百日咳、ポリオ、狂犬病、破傷風、結核、腸チフスおよび黄熱病の1種以上に対するワクチンである、実施形態14に記載の方法。
16.前記ワクチンが、コロナウイルスCOVID-19ワクチンである、実施形態14または15に記載の方法。
17.前記選択された対象に前記組成物を投与することによって、Dickkopf関連タンパク質1(DKK1)、N-アシルグルコサミン2-エピメラーゼ(RENBP)、増殖/分化因子15(GDF15)、dermokine(DMKN)、フェリチン軽鎖(FTL)、トリプトファン2,3-ジオキシゲナーゼ(TDO2)、アポリポタンパク質E(APOE)、キチナーゼ3様タンパク質1(CHI3L1)、もしく核受容体サブファミリー4グループAメンバー2(NR4A2)、またはこれらの任意の組み合わせが該対象においてアップレギュレートされる、実施形態1~16のいずれか1つに記載の方法。
18.前記選択された対象に前記組成物を投与することによって、インターロイキン11(IL-11)、SPRYドメイン含有SOCSボックスタンパク質1(SPSB1)、シトクロムP450 26B1(CYP26B1)、もしくはfrizzled-8(FZD8)、またはこれらの任意の組み合わせが該対象においてダウンレギュレートされる、実施形態1~17のいずれか1つに記載の方法。
19.損傷を受けた組織(肺組織など)の修復もしくは再生、またはウイルス感染症、真菌感染症もしくは細菌感染症もしくはそれらの後遺症からの回復の向上を必要とする対象において、損傷を受けた組織の修復もしくは再生、またはウイルス感染症、真菌感染症もしくは細菌感染症もしくはそれらの後遺症からの回復の向上に使用するための、治療有効量の小型運動性幹細胞(small mobile stem(SMS)cells)を含む組成物であって、前記ウイルス感染症、真菌感染症もしくは細菌感染症またはそれらの後遺症が、例えば、コロナウイルス、ポックスウイルス、痘瘡ウイルス、マールブルグウイルス、フラビウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、RSウイルス、風疹ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトパピローマウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイルス、JCウイルス、ラブドウイルス、ロタウイルス、ライノウイルス、アデノウイルス、パピローマウイルス、パルボウイルス、ピコルナウイルス、ポリオウイルス、ハンタウイルス、フィロウイルス、コクサッキーウイルス、ウマ脳炎ウイルス、リフトバレー熱ウイルス、アルファウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、肺炎、肺炎連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、インフルエンザ菌、モラクセラ・カタラーリス、嫌気性細菌、グラム陰性細菌、マイコプラズマ・ニューモニエ、クラミジア・ニューモニエ、A群連鎖球菌、肺炎桿菌、レジオネラ・ニューモフィラ、化膿連鎖球菌、ストレプトコッカス・アガラクティエ、ペプトストレプトコッカス属、ジフテリア菌、百日咳菌、ヒト結核菌、緑膿菌、大腸菌、クルブラリア属、ニューモシスチス属、クリプトコッカス属、ヒストプラスマ・カプスラーツム、アスペルギルス属、ムコール目、フザリウム属、スケドスポリウム属、ペニシリウム属、またはこれらの任意の組み合わせであり、好ましくはMERS-CoV、SARS-CoVまたはSARS-CoV-2である、組成物。
20.前記SMS細胞が、末梢血から得られる細胞である、実施形態19に記載の組成物。
21.前記組成物が、エアロゾル化されたSMS細胞を含むこと、およびこのエアロゾル化されたSMS細胞が吸入投与用に製剤化されていてもよいことを特徴とする、実施形態19または20に記載の組成物。
22.静脈内投与用に製剤化されている、実施形態19~21のいずれか1つに記載の組成物。
23.前記損傷を受けた組織が、ウイルス感染症によって損傷を受けた組織である、実施形態19~22のいずれか1つに記載の組成物。
24.前記ウイルス感染症が、コロナウイルス、ポックスウイルス、痘瘡ウイルス、マールブルグウイルス、フラビウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、RSウイルス、風疹ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトパピローマウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイルス、JCウイルス、ラブドウイルス、ロタウイルス、ライノウイルス、アデノウイルス、パピローマウイルス、パルボウイルス、ピコルナウイルス、ポリオウイルス、ハンタウイルス、フィロウイルス、コクサッキーウイルス、ウマ脳炎ウイルス、リフトバレー熱ウイルス、アルファウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、またはこれらの組み合わせによって引き起こされたものである、実施形態23に記載の組成物。
25.前記コロナウイルスが、SARS-CoV-2である、実施形態24に記載の組成物。
26.前記治療有効量が、肺胞細胞障害の減少、呼吸器内皮細胞障害の減少、肺線維症の発症の減少、損傷を受けた肺組織の修復の増加、または損傷を受けた肺組織の再生の増加を誘導するのに十分な量である、実施形態19~25のいずれか1つに記載の組成物。
27.アジスロマイシンなどの抗生物質、ボリコナゾール、アムホテリシンB、イトラコナゾールなどの抗真菌剤、ワクチン、またはレムデシビルなどの抗ウイルス剤の治療有効量をさらに含む、実施形態19~26のいずれか1つに記載の組成物。
28.前記ワクチンが、コロナウイルスワクチンである、実施形態27に記載の組成物。
29.薬学的に許容される担体、保存剤、酸化防止剤、希釈剤もしくは添加剤またはこれらの任意の組み合わせをさらに含む、実施形態19~28のいずれか1つに記載の組成物。
30.前記組成物によって、Dickkopf関連タンパク質1(DKK1)、N-アシルグルコサミン2-エピメラーゼ(RENBP)、増殖/分化因子15(GDF15)、dermokine(DMKN)、フェリチン軽鎖(FTL)、トリプトファン2,3-ジオキシゲナーゼ(TDO2)、アポリポタンパク質E(APOE)、キチナーゼ3様タンパク質1(CHI3L1)、もしく核受容体サブファミリー4グループAメンバー2(NR4A2)、またはこれらの任意の組み合わせが前記対象においてアップレギュレートされる、実施形態19~29のいずれか1つに記載の組成物。
31.前記組成物によって、インターロイキン11(IL-11)、SPRYドメイン含有SOCSボックスタンパク質1(SPSB1)、シトクロムP450 26B1(CYP26B1)、もしくはfrizzled-8(FZD8)、またはこれらの任意の組み合わせが前記対象においてダウンレギュレートされる、実施形態19~30のいずれか1つに記載の組成物。
32.ウイルス感染症、真菌感染症もしくは細菌感染症、または該感染症によって生じた組織損傷の治療または抑制のための、実施形態19~31のいずれか1つに記載の組成物の使用であって、前記ウイルス感染症、真菌感染症または細菌感染症が、例えば、コロナウイルス、ポックスウイルス、痘瘡ウイルス、マールブルグウイルス、フラビウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、RSウイルス、風疹ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトパピローマウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイルス、JCウイルス、ラブドウイルス、ロタウイルス、ライノウイルス、アデノウイルス、パピローマウイルス、パルボウイルス、ピコルナウイルス、ポリオウイルス、ハンタウイルス、フィロウイルス、コクサッキーウイルス、ウマ脳炎ウイルス、リフトバレー熱ウイルス、アルファウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、肺炎、肺炎連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、インフルエンザ菌、モラクセラ・カタラーリス、嫌気性細菌、グラム陰性細菌、マイコプラズマ・ニューモニエ、クラミジア・ニューモニエ、A群連鎖球菌、肺炎桿菌、レジオネラ・ニューモフィラ、化膿連鎖球菌、ストレプトコッカス・アガラクティエ、ペプトストレプトコッカス属、ジフテリア菌、百日咳菌、ヒト結核菌、緑膿菌、大腸菌、クルブラリア属、ニューモシスチス属、クリプトコッカス属、ヒストプラスマ・カプスラーツム、アスペルギルス属、ムコール目、フザリウム属、スケドスポリウム属、ペニシリウム属、またはこれらの任意の組み合わせであり、好ましくはMERS-CoV、SARS-CoVまたはSARS-CoV-2である、使用。
33.医薬品において使用するための、実施形態19~31のいずれか1つに記載の組成物。
34.炎症性疾患の治療または抑制において使用するための、実施形態19~31のいずれか1つに記載の組成物。
35.前記炎症性疾患が、肺の炎症性疾患である、実施形態34に記載の組成物。
36.前記炎症性疾患が、肺線維症、肝線維症、腎線維症、心線維症などの線維症を含む、実施形態34または35に記載の組成物。
37.前記炎症性疾患が、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を含む、実施形態34~36のいずれか1つに記載の組成物。
38.前記炎症性疾患が、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を含む、実施形態34~37のいずれか1つに記載の組成物。
39.前記炎症性疾患が、ウイルス感染症、真菌感染症もしくは細菌感染症に関連しているか、またはウイルス感染症、真菌感染症もしくは細菌感染症によって引き起こされたものである、実施形態34~38のいずれか1つに記載の組成物。
40.前記ウイルス感染症が、コロナウイルス感染症である、実施形態39に記載の組成物。
41.前記ウイルス感染症が、SARS-CoV感染症、MERS-CoV感染症またはSARS-CoV-2感染症である、実施形態39または40に記載の組成物。
42.炎症性疾患を治療または抑制する方法であって、
炎症性疾患に罹患している対象を選択する工程;および
治療有効量の小型運動性幹細胞(small mobile stem(SMS)cells)を含む組成物を前記選択された対象に投与する工程
を含む方法。
43.前記炎症性疾患が、肺の炎症性疾患である、実施形態42に記載の方法。
44.前記炎症性疾患が、肺線維症、肝線維症、腎線維症、心線維症などの線維症を含む、実施形態42または43に記載の方法。
45.前記炎症性疾患が、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を含む、実施形態42~44のいずれか1つに記載の方法。
46.前記炎症性疾患が、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を含む、実施形態42~45のいずれか1つに記載の方法。
47.前記炎症性疾患が、ウイルス感染症、真菌感染症または細菌感染症に関連している、実施形態42~46のいずれか1つに記載の方法。
48.前記ウイルス感染症が、一本鎖RNAウイルス、二本鎖RNAウイルス、プラスセンス一本鎖RNAウイルス、マイナスセンス一本鎖RNAウイルス、二本鎖DNAウイルスまたは一本鎖DNAウイルスによって引き起こされたものである、実施形態47に記載の方法。
49.前記ウイルス感染症、真菌感染症または細菌感染症が、コロナウイルス、ポックスウイルス、痘瘡ウイルス、マールブルグウイルス、フラビウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、RSウイルス、風疹ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトパピローマウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイルス、JCウイルス、ラブドウイルス、ロタウイルス、ライノウイルス、アデノウイルス、パピローマウイルス、パルボウイルス、ピコルナウイルス、ポリオウイルス、ハンタウイルス、フィロウイルス、コクサッキーウイルス、ウマ脳炎ウイルス、リフトバレー熱ウイルス、アルファウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、肺炎、肺炎連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、インフルエンザ菌、モラクセラ・カタラーリス、嫌気性細菌、グラム陰性細菌、マイコプラズマ・ニューモニエ、クラミジア・ニューモニエ、A群連鎖球菌、肺炎桿菌、レジオネラ・ニューモフィラ、化膿連鎖球菌、ストレプトコッカス・アガラクティエ、ペプトストレプトコッカス属、ジフテリア菌、百日咳菌、ヒト結核菌、緑膿菌、大腸菌、クルブラリア属、ニューモシスチス属、クリプトコッカス属、ヒストプラスマ・カプスラーツム、アスペルギルス属、ムコール目、フザリウム属、スケドスポリウム属、ペニシリウム属、またはこれらの任意の組み合わせによって引き起こされたものである、実施形態47または48に記載の方法。
50.前記ウイルス感染症が、コロナウイルス感染症である、実施形態47~49のいずれか1つに記載の方法。
51.前記ウイルス感染症が、SARS-CoV感染症、MERS-CoV感染症またはSARS-CoV-2感染症である、実施形態47~50のいずれか1つに記載の方法。
52.前記SMS細胞が、末梢血から得られる細胞である、実施形態42~51のいずれか1つに記載の方法。
53.前記SMS細胞が、前記対象と同種の細胞または前記対象から得られた自家細胞である、実施形態42~52のいずれか1つに記載の方法。
54.前記組成物を投与することによって、肺胞細胞障害の減少もしくは抑制、呼吸器内皮細胞障害の減少もしくは抑制、損傷を受けた肺組織の修復の増加もしくは向上、損傷を受けた肺組織の再生の増加もしくは増強、もしくは肺線維症の発症の減少もしくは抑制、またはこれらの任意の組み合わせが達成される、実施形態42~53のいずれか1つに記載の方法。
55.前記組成物が、エアロゾル化されたSMS細胞を含むこと、このエアロゾル化されたSMS細胞を吸入により投与してもよいことを特徴とする、実施形態42~54のいずれか1つに記載の方法。
56.前記組成物が、例えば、鼻腔や口腔などを介した吸入投与用に製剤化されている、実施形態42~55のいずれか1つに記載の方法。
57.前記組成物が、静脈内投与用に製剤化されている、実施形態42~56のいずれか1つに記載の方法。
58.前記組成物が、前記炎症性疾患の標準治療に併用して投与される、実施形態42~57のいずれか1つに記載の方法。
59.前記炎症性疾患が、ウイルス感染症に関連しているか、またはウイルス感染症によって引き起こされたものであり、前記標準治療が、アジスロマイシンなどの抗生物質、ボリコナゾール、アムホテリシンB、イトラコナゾールなどの抗真菌剤、ワクチン、またはレムデシビルなどの抗ウイルス剤である、実施形態58に記載の方法。
60.前記ワクチンが、コロナウイルス、コレラ、デング熱、ジフテリア、ヘモフィルスインフルエンザ菌b型感染症、A型肝炎、B型肝炎、インフルエンザ、日本脳炎、髄膜炎菌性髄膜炎、百日咳、ポリオ、狂犬病、破傷風、結核、腸チフスおよび黄熱病の1種以上に対するワクチンである、実施形態59に記載の方法。
61.前記ワクチンが、コロナウイルスCOVID-19ワクチンである、実施形態59または60に記載の方法。
62.前記組成物を投与することによって、Dickkopf関連タンパク質1(DKK1)、N-アシルグルコサミン2-エピメラーゼ(RENBP)、増殖/分化因子15(GDF15)、dermokine(DMKN)、フェリチン軽鎖(FTL)、トリプトファン2,3-ジオキシゲナーゼ(TDO2)、アポリポタンパク質E(APOE)、キチナーゼ3様タンパク質1(CHI3L1)、もしく核受容体サブファミリー4グループAメンバー2(NR4A2)、またはこれらの任意の組み合わせが前記対象においてアップレギュレートされる、実施形態42~61のいずれか1つに記載の方法。
63.前記組成物を投与することによって、インターロイキン11(IL-11)、SPRYドメイン含有SOCSボックスタンパク質1(SPSB1)、シトクロムP450 26B1(CYP26B1)、もしくはfrizzled-8(FZD8)、またはこれらの任意の組み合わせが前記対象においてダウンレギュレートされる、実施形態42~62のいずれか1つに記載の方法。
前述した特徴以外のさらなる特徴や変形例は、以下の図面の説明および代表的な実施形態から容易に理解できるであろう。以下の図面は代表的な実施形態を示しており、本発明の範囲を限定するものではない。
ヒト脂肪由来間葉系幹細胞へのSMS細胞の接着と、SMS細胞によるヒト脂肪由来間葉系幹細胞の増殖の向上を示す。図1Aは、緑色蛍光色素で染色したSMS細胞とヒト脂肪由来間葉系幹細胞の共培養を示す(100倍で撮影した画像)。図1Bは、蛍光染色したSMS細胞を接着させたヒト脂肪由来間葉系幹細胞における緑色蛍光のフローサイトメトリーによる検出を示す。SMS細胞とともに間葉系幹細胞をインキュベートしたところ、計数された生細胞の割合は89%であったが、対照の間葉系幹細胞において計数された生細胞の割合は76%であった。図1Cは、(SMS細胞で)処理したヒト脂肪由来初代間葉系幹細胞(Ad-MSC)のフラスコと(SMS細胞で)処理しなかったヒト脂肪由来初代間葉系幹細胞(Ad-MSC)のフラスコにおける全細胞数と生細胞数を示す。Ad-MSCのフラスコ(「処理」と表示)にSMS細胞を加え、約50%コンフルエントまで培養した。処理なしのフラスコは、SMS細胞を加えなかったこと以外は同じ条件で培養した。全細胞数には、死細胞と生細胞の両方が含まれる。グラフのスケールバーは、4回の測定で得られた平均細胞数を示す。エラーバーは、各細胞集団における測定の標準偏差を示す。
ヒト皮膚線維芽細胞へのSMS細胞の接着と、SMS細胞によるヒト皮膚線維芽細胞の増殖の抑制を示す。図2Aは、緑色蛍光色素で染色したSMS細胞とヒト線維芽細胞の共培養を示す(100倍で撮影した画像)。図2Bは、蛍光染色したSMS細胞を接着させたヒト線維芽細胞における緑色蛍光のフローサイトメトリーによる検出を示す。SMS細胞とともに線維芽細胞をインキュベートしたところ、計数された生細胞の割合は90%であったが、対照の線維芽細胞において計数された生細胞の割合は89%であった。図2Cは、共培養においてSMS細胞の濃度の関数として示した生きた線維芽細胞の総数を示す。線維芽細胞の生存率は、トリパンブルー色素排除法を用いて測定し、Countess automated cell counter(インビトロジェン)を用いて計算した。大きさのゲートパラメーターは、5μmと20μmに設定した。
ヒト初代2型肺胞上皮細胞へのSMS細胞の接着と、SMS細胞によるヒト初代2型肺胞上皮細胞の増殖の向上を示す。図3Aは、緑色蛍光色素で染色したSMS細胞と接着培養したヒト2型肺胞上皮細胞の共培養を示す(100倍で撮影した画像)。図3Bは、蛍光染色したSMS細胞を接着させたヒト初代2型肺胞上皮細胞における緑色蛍光のフローサイトメトリーによる検出を示す。SMS細胞とともに肺胞上皮細胞をインキュベートしたところ、計数された生細胞の割合は90%であったが、対照の肺胞上皮細胞において計数された生細胞の割合は93%であった。図3Cは、(SMS細胞で)処理した初代2型肺胞上皮細胞と(SMS細胞で)処理しなかった初代2型肺胞上皮細胞における全細胞数を示す。二連で実験を行った。
本明細書で提供される実施形態は、ウイルス感染症、真菌感染症もしくは細菌感染症もしくはこれらの感染症によって生じた損傷(例えば、コロナウイルス感染症や肺炎感染症など)、または炎症性疾患(例えば、ウイルス感染症、真菌感染症もしくは細菌感染症によって生じた炎症性疾患が挙げられるが、これらに限定されない)を治療、緩和、抑制または予防するか、遅延させる方法および組成物に関する。この方法および組成物は、例えば、ウイルス感染症、真菌感染症もしくは細菌感染症もしくはそれらの後遺症、または炎症性疾患などによって損傷を受けた組織または臓器を修復または再生することができ、それによって、ウイルス感染症、真菌感染症もしくは細菌感染症もしくはそれらの後遺症または炎症性疾患の改善された治療または治療法を提供することができる。
いくつかの実施形態において、前記方法は、ウイルス感染症、真菌感染症もしくは細菌感染症(例えば、コロナウイルス感染症)またはそれらの後遺症を有する対象または患者に、小型運動性幹細胞(small mobile stem(SMS)cells)を含む組成物の治療有効量を単独で、または適切な抗生物質、抗真菌剤または抗ウイルス剤(例えば、アジスロマイシン、ワクチンもしくはレムデシビルまたはこれらの任意の組み合わせなど)の治療有効量と組み合わせて投与することを含む。前記対象は、幹細胞療法を行うために選択または特定することができ、このような選択または特定は、ウイルス感染症(例えば、MERS-CoV、SARS-CoVまたはSARS-CoV-2)の有無を確認するための診断評価および/または臨床評価によって行うことができる。
さらに、いくつかの実施形態において、炎症性疾患を治療または抑制する方法であって、炎症性疾患を有する対象を選択する工程;および治療有効量の小型運動性幹細胞(small mobile stem(SMS)cells)を含む組成物を単独で、または治療有効量の適切な標準治療と組み合わせて前記対象に投与する工程を含む方法を開示する。
さらに、治療有効量のSMS細胞を単独で含む組成物、または適切な抗生物質、抗真菌剤、抗ウイルス剤(例えば、アジスロマイシン、またはワクチンもしくはレムデシビルもしくはその両方)などの治療有効量の標準治療と治療有効量のSMS細胞とを含む組成物を提供する。
I.用語の定義
本明細書で引用されたすべての特許、出願、公開出願およびその他の刊行物は、別段の記載がない限り、いずれも引用によりその全体が本明細書に明示的に援用される。本明細書に記載の用語に対して複数の定義がある場合、別段の記載がない限り、この節に記載の定義を優先するものとする。
別段の記載がない限り、本明細書で使用される技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。例えば、Singleton et al., Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 2nd ed., J. Wiley & Sons (New York, NY 1994);Sambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Springs Harbor Press (Cold Springs Harbor, NY 1989)を参照されたい。本発明の開示を目的として、以下の用語を以下のように定義する。
本明細書において、「a」および「an」という冠詞は、これらの冠詞の文法上の目的語となる1つまたは複数の(例えば少なくとも1つの)ものを指すために使用される。例えば、「an element」は、1つの構成要素または複数の構成要素を意味する。
「約」は、特定の数量、レベル、数値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、大きさ、量、重量または長さが、基準となる数量、レベル、数値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、大きさ、量、重量または長さと比較して、30%、25%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%または1%の範囲で変動することを意味する。
本明細書を通して、別段の記載がない限り、「含む」および「含んでいる」という用語は、本明細書に記載の工程もしくは構成要素または工程群もしくは構成要素群を包含することを意味するが、その他の工程もしくは構成要素または工程群もしくは構成要素群を除外するものではない。
「からなる」は、この用語の前に挙げられたもののみを含むことを意味する。したがって、「からなる」という用語は、この用語の前に挙げられた構成要素が必要または必須であることを示し、その他の構成要素は含まれていなくてもよいことを意味する。「実質的に~からなる」は、この用語の前に挙げられた構成要素を含み、これらの構成要素の開示に関連して記載された活性または作用に対して妨害も寄与もしないその他の構成要素も含むことを意味する。したがって、「実質的に~からなる」という用語は、この用語の前に挙げられた構成要素が必要または必須であることを示すが、その他の構成要素は任意であり、この用語の前に挙げられた構成要素の活性または作用に実質的な影響を与えるかどうかに応じて含まれていてもよく、含まれていなくてもよい。
いくつかの実施形態において、組成物中の所定の薬剤(例えば、抗体やポリペプチド結合性薬剤など)の「純度」は具体的に定義されていてもよい。例えば、特定の組成物は、例えば高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)(化合物を分離、同定かつ定量するために生化学分野および分析化学分野において頻繁に使用される公知のカラムクロマトグラフィーの一種)(ただしこれに限定されない)などによって測定した場合に、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の純度(各数値の間の小数値を含む)の薬剤を含んでいてもよい。
本明細書において、「機能」や「機能的」といった用語は、生物学的機能、酵素的機能または治療的機能を指す。
「単離された」は、天然状態において通常付随する成分が実質的または本質的に除去された材料を意味する。例えば、本明細書に記載の「単離された細胞」は、天然状態での周囲環境または生物から精製された細胞、対象または培養物から回収された細胞、例えば、インビボまたはインビトロの物質とは有意に関連していない細胞を包含する。
本開示の実施にあたって、別段の記載がない限り、当技術分野で従来公知の分子生物学的方法および組換えDNA技術が使用され、これらの方法の大半は、説明を目的として後述されている。このような技術は文献に詳述されている。例えば、Sambrook, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (3rd Edition, 2000);DNA Cloning: A Practical Approach, vol. 1 & II (D. Glover, ed.);Oligonucleotide Synthesis (N. Gait, ed., 1984);Oligonucleotide Synthesis: Methods and Applications (P. Herdewijn, ed., 2004);Nucleic Acid Hybridization (B. Hames & S. Higgins, eds., 1985);Nucleic Acid Hybridization: Modern Applications (Buzdin and Lukyanov, eds., 2009);Transcription and Translation (B. Hames & S. Higgins, eds., 1984);Animal Cell Culture (R. Freshney, ed., 1986);Freshney, R.I. (2005) Culture of Animal Cells, a Manual of Basic Technique, 5th Ed. Hoboken NJ, John Wiley & Sons;B. Perbal, A Practical Guide to Molecular Cloning (3rd Edition 2010);Farrell, R., RNA Methodologies: A Laboratory Guide for Isolation and Characterization (3rd Edition 2005)を参照されたい。
本明細書において、「対象」、「個体」または「患者」は、治療、処置、観察または実験の対象となる動物を指す。「動物」には、魚類、甲殻類、爬虫類などの、冷血脊椎動物、温血脊椎動物および無脊椎動物が含まれ、特に哺乳動物が含まれる。「哺乳動物」には、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、イヌ、ネコ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマ、霊長類(サル、チンパンジー、類人猿など)、特にヒトが含まれるが、これらに限定されない。
本明細書において、「治療」、「向上」、「促進」または「治療法」は、損傷を受けた組織またはウイルス感染症の完全な治癒または排除を必ずしも意味しない。ウイルス感染症、真菌感染症または細菌感染症の望ましくない徴候または症状を軽減するものや、損傷を受けた組織の修復、増殖または再生を改善するものであれば、どのような程度のものであっても治療および/または治療法であると見なすことができる。治療は、組織の損傷の治癒または再生の増強、向上、加速、促進または緩和を含んでいてもよい。
本明細書において、「抑制」は、ウイルス感染症(SARS-CoV-2など)、真菌感染症もしくは細菌感染症またはそのような感染症によって引き起こされる損傷の減少または予防を指す。この減少は、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%もしくは100%の減少であってもよく、これらの数値のいずれか2つを上下限とする範囲内の割合の減少であってもよい。本明細書において、「遅延」は、本明細書に照らして理解される一般的な意味を有し、ウイルス感染症などの事象が、予想されるより時期よりも遅い時期へと減速、延期または遅滞されることを指す。この遅延は、0%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%もしくは100%の遅延であってもよく、これらの数値のいずれか2つを上下限とする範囲内の割合の遅延であってもよい。「抑制」または「遅延」は、必ずしも100%の抑制または遅延を示す必要はない。部分的な抑制または遅延が達成されてもよい。
本明細書において、「ウイルス感染症」という用語は、本明細書に照らして理解される一般的な意味を有し、対象におけるウイルスによる感染症を指す。本明細書において、「ウイルス」という用語は、本明細書に照らして理解される一般的な意味を有し、他生物の細胞内でのみ増殖することが可能な偏性細胞内寄生体を指し、DNAまたはRNAとコートタンパク質で構成されているが、細胞のような特性は持たない。ウイルスの直径は約20~約300nmである。第I群ウイルス(ボルティモア分類)は、ゲノムとして二本鎖DNAを有する(アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルスなど)。第II群ウイルスは、ゲノムとして一本鎖DNAを有する(パルボウイルスなど)。第III群ウイルスは、ゲノムとして二本鎖RNAを有する(レオウイルスなど)。第IV群ウイルスは、ゲノムとしてプラス一本鎖RNAを有し、そのゲノム自体がmRNAとして機能する(ピコルナウイルスやトガウイルスなど)。第V群ウイルスは、マイナス一本鎖RNAを有し、そのゲノムは、mRNAの合成の鋳型として使用される(オルソミクソウイルスやラブドウイルスなど)。第VI群ウイルスは、プラス一本鎖RNAゲノムを有し、複製だけでなくmRNAの合成にもDNA中間体が利用される(レトロウイルスなど)。第VII群ウイルスは、二本鎖DNAゲノムを有するが、生活環においてRNA中間体が使用される(ヘパドナウイルスなど)。大部分のウイルスは、植物、動物および原核生物において引き起こされる疾患によって認識される。原核生物のウイルスは、バクテリオファージとして知られている。
いくつかの実施形態において、前記ウイルスはDNAウイルスである。DNAウイルスとして、アデノウイルス科、アストロウイルス科、ヘパドナウイルス科、ヘルペスウイルス科、パポバウイルス科またはポックスウイルス科に属するウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。別の実施形態において、前記ウイルスはRNAウイルスである。RNAウイルスとして、アレナウイルス科、ブニヤウイルス科、カリシウイルス科、コロナウイルス科、フィロウイルス科、フラビウイルス科、オルソミクソウイルス科、パラミクソウイルス科、ピコルナウイルス科、レオウイルス科、レトロウイルス科、ラブドウイルス科またはトガウイルス科に属するウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法および組成物は、非ヒト動物に使用される。いくつかの実施形態において、非ヒト動物ウイルスは、ウシエンテロウイルス、ブタエンテロウイルスB、口蹄疫ウイルス、馬鼻炎Aウイルス、牛鼻炎Bウイルス、ユンガンウイルス、馬鼻炎Bウイルス、アイチウイルス、ウシコブウイルス、ブタテシオウイルス、ブタサペロウイルス、サルサペロウイルス、鳥類サペロウイルス、鶏脳脊髄炎ウイルス、アヒルA型肝炎ウイルス、サルエンテロウイルスAなどのピコルナウイルス;ボーダー病ウイルス、ウシウイルス性下痢ウイルス、ブタコレラウイルスなどのペスチウイルス;ウマ動脈炎ウイルス、ブタ繁殖・呼吸障害症候群ウイルス、乳酸脱水素酵素上昇ウイルス、サル出血熱ウイルスなどのアルテリウイルス;ウシコロナウイルス、ブタコロナウイルス、ネココロナウイルス、イヌコロナウイルスなどのコロナウイルス;ヘンドラウイルス、ニパーウイルス、イヌジステンパーウイルス、牛疫ウイルス、ニューカッスル病ウイルス、ウシRSウイルスなどのパラミクソウイルス;A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、C型インフルエンザウイルスなどのオルソミクソウイルス;ブルータングウイルスなどのレオウイルス;ブタサーコウイルス;仮性狂犬病ウイルスやウシヘルペスウイルス1などのヘルペスウイルス;アフリカ豚コレラウイルスなどのアスファウイルス;サル免疫不全ウイルス、ネコ免疫不全ウイルス、ウシ免疫不全ウイルス、ウシ白血病ウイルス、ネコ白血病ウイルス、ヤーグジーグテヒツジレトロウイルス、ヤギ関節炎・脳脊髄炎ウイルスなどのレトロウイルス;黄熱病ウイルス、西ナイルウイルス、デング熱ウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、ウシウイルス性下痢症ウイルスなどのフラビウイルス;または狂犬病ウイルスなどのラブドウイルスから選択されてもよい。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法および組成物は、ヒト対象に使用される。いくつかの実施形態において、ヒトを感染対象とするウイルスは、コロナウイルス、アデノウイルス、アストロウイルス、ヘパドナウイルス、ヘルペスウイルス、パポバウイルス、ポックスウイルス、アレナウイルス、ブニヤウイルス、カリシウイルス、フィロウイルス、フラビウイルス、オルソミクソウイルス、パラミクソウイルス、ピコルナウイルス、レオウイルス、レトロウイルス、ラブドウイルスまたはトガウイルスから選択されてもよい。
いくつかの実施形態において、コロナウイルスとして、ヒトコロナウイルス(重症急性呼吸器症候群(SARS)の病原体)、例えば、SARS-COV-2(または2019-NCOV)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、アデノウイルスとして、ヒトアデノウイルスが挙げられるが、これに限定されない。いくつかの実施形態において、アストロウイルスとして、マムアストロウイルスが挙げられるが、これに限定されない。いくつかの実施形態において、ヘパドナウイルスとして、B型肝炎ウイルスが挙げられるが、これに限定されない。いくつかの実施形態において、ヘルペスウイルスとして、単純ヘルペスウイルス1型、単純ヘルペスウイルス2型、ヒトサイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイルス、帯状疱疹ウイルス、ロゼオロウイルスまたはカポジ肉腫関連ヘルペスウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、パポバウイルスとして、ヒトパピローマウイルスまたはヒトポリオーマウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、ポックスウイルスとして、天然痘ウイルス、ワクシニアウイルス、牛痘ウイルス、サル痘ウイルス、痘瘡ウイルス、偽牛痘ウイルス、丘疹性口内炎ウイルス、タナポックスウイルス、ヤバサル腫瘍ウイルスまたは伝染性軟属腫ウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、アレナウイルスとして、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、ラッサウイルス、マチュポウイルスまたはフニンウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、ブニヤウイルスとして、ハンタウイルス、ナイロウイルス、オルトブニヤウイルスまたはフレボウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、カリシウイルスとして、ベシウイルス、ノロウイルス(ノーウォークウイルスやサポウイルスなど)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、フィロウイルスとして、エボラウイルスまたはマールブルグウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、フラビウイルスとして、黄熱病ウイルス、西ナイルウイルス、デング熱ウイルス、C型肝炎ウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス、マレー渓谷脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、ロシア春夏脳炎ウイルス、オムスク出血熱ウイルス、ウシウイルス性下痢症ウイルス、キャサヌル森林病ウイルスまたはポワッサン脳炎ウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、オルソミクソウイルスとして、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルスまたはC型インフルエンザウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、パラミクソウイルスとして、パラインフルエンザウイルス、ルブラウイルス(耳下腺炎)、モルビリウイルス(麻疹)、ニューモウイルス(ヒトRSウイルスなど)または亜急性硬化性全脳炎ウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、ピコルナウイルスとして、ポリオウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルスA群、コクサッキーウイルスB群、A型肝炎ウイルス、エコーウイルスまたはエンテロウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、レオウイルスとして、コロラドダニ熱ウイルスまたはロタウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、レトロウイルスとして、レンチウイルス(ヒト免疫不全ウイルスなど)またはヒトTリンパ球向性ウイルス(HTLV)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、ラブドウイルスとして、リッサウイルス(狂犬病ウイルスなど)、水疱性口内炎ウイルスまたは伝染性造血器壊死症ウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、トガウイルスとして、アルファウイルス(ロスリバーウイルス、オニョンニョンウイルス、シンドビスウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス、西部ウマ脳炎ウイルスなど)または風疹ウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。
コロナウイルスは、プラス鎖RNAを持つエンベロープウイルスであり、ニドウイルス目コロナウイルス科に属する。コロナウイルスは、1つ以上のポリプロテインに直接翻訳されるRNAを持ち、このポリプロテインがウイルスプロテアーゼで切断されて、成熟したウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質中間体が生成される。このウイルスプロテアーゼは、ウイルスの複製に不可欠である。コロナウイルスは、通常、呼吸器感染症および腸管感染症を起こし、動物とヒトの両方に感染性である。ヒトに対するコロナウイルスの毒性は比較的低いと考えられている。世界中で頻繁に感染が認められるヒトコロナウイルスとして、4種のヒトコロナウイルス(229E、NL63、OC43およびHKU1)が知られており、一般に、風邪の症状を示す上気道感染症が起こる。しかし、コロナウイルスは、ヒト対象に感染して致命的な疾患を引き起こす株に進化することがある。この例として、SARS-CoVやMERS-CoVがあり、最近ではSARS-CoV-2(または2019-nCoV)が同定されている。
SARS-CoV-2は非常に感染性が高く、世界中でコロナウイルス感染症2019(COVID-19)を引き起こした。COVID-19は、重要な公衆衛生問題であると同時に、潜在的なバイオテロリズムの脅威でもある。これらの問題は、特異的な抗SARS-CoV-2療法やワクチンの数が限られていることから、さらに深刻なものになっている。したがって、現在、SARS-CoV-2感染症の治療用および予防用の抗ウイルス療法や、このウイルスによって引き起こされる組織損傷の緩和用の抗ウイルス療法の開発が緊急に必要とされている。
SARS-CoV-2などのウイルス感染症は、細胞の機能およびその構造を変化させることによって組織の恒常性を破壊する。組織損傷に応答して、臓器系は炎症反応を開始し、血管の変化と細胞性反応を同時に起こして治癒プロセスを開始する。ウイルス感染症によって、急性および/または慢性の炎症反応が誘導され、短期および/または長期の組織損傷が起こる。例えば、SARS-CoV-2による重症呼吸器症候群の病態生理は多因子性であり、過剰な免疫反応が起こり、これに付随する炎症性サイトカインストーム(これによるその他の終末器官障害)や、肺胞上皮細胞および気管支上皮細胞の溶解が認められ、2次的な日和見肺炎を発症することが多い。COVID-19のように、適切な治療法が存在しない場合、組織損傷は慢性の経過をたどる。したがって、根本的な原因であるウイルス感染症が回復した後でも、組織損傷という問題が残る。
幹細胞は、細胞分裂により長期間にわたり自己複製することができる未熟な未分化細胞である。幹細胞は、特定の条件下において、成熟した機能性細胞へと分化することができる。幹細胞は、組織の修復および再生において様々な役割を果たす。幹細胞およびこれから派生した細胞の使用は、現在、医学研究において高い関心を集めており、特に、遺伝子障害、外傷、疾患などの様々な原因によって損傷を受けた組織の治療用の薬剤を提供できるかもしれないという期待が寄せられている。
近年、小型運動性幹細胞(small mobile stem(SMS)cells)が単離され、例えば、WO2014/200940やWO2017/172638などにおいて、その特性が評価されている(これらの文献はいずれも引用によりその全体が本明細書に明示的に援用される)。SMS細胞は、直径4.5~5.5μmの接着細胞であり、臍帯、末梢血、骨髄、固形組織などの細胞源から得られる。いくつかの実施形態において、SMS細胞を使用することにより、ウイルス感染症によって引き起こされた組織損傷の修復または再生が行われる。
SMS細胞は、組織の修復と再生に有用な優れた特徴を示す。SMS細胞は、血漿から容易に単離することができ、非常に小さく、染色して顕微鏡で観察することが難しく、有意な免疫原性がないという点で、間葉系幹細胞(MSC)などの他の種類の幹細胞とは区別される。
ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(MSC)は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)や敗血症性ショックの患者に安全に投与されているが(第I相/第II相試験)、MSCの静脈内投与に関しては、短期間および長期間の安全性にいまだ大きな問題がある。MSCは比較的大きな細胞であることから、MSCを輸注すると、損傷を受けた毛細血管床において凝集(集塊)が生じる可能性があり、局部組織では虚血や梗塞が生じることによって実質損傷が起こることがある。これ以外にも、MSCは免疫原性が高いことから、宿主免疫系の標的となる可能性がある。
このような懸念は、感染症に罹患した対象に、SMS細胞を含む治療法を提供することによって最小限まで抑えることができる。SMS細胞は、膜タンパク質が比較的少ないことから、(MSCとは異なり)互いに付着して集塊を形成する傾向が少ない。したがって、SMS細胞は、MSCよりも安全に治療用の点滴静注として使用することができる。さらに、SMS細胞は、免疫原性を持つ膜タンパク質をほとんど有しておらず、循環系で見出される細胞であることから、循環系内への投与や、移植片拒絶に関する問題は最小限に抑えられている。
SMS細胞は、インビトロおよび細胞培養において、強健な血管新生効果を示したことから、組織の再生に顕著な効果を示す。したがって、本明細書で提供される実施形態は、SMS細胞を含む組成物と、この組成物の使用方法に関する。この方法は、ウイルス感染症、真菌感染症または細菌感染症を有する対象にSMS細胞を投与して、実質損傷を軽減し、かつ/またはSARS-CoV-2などの病原体によって生じた肺障害を修復する工程を含み、ウイルス感染症、真菌感染症または細菌感染症の罹患後に肺の回復を向上させる治療を行う対象(好ましくはヒト)を選択する工程を含んでいてもよい。例えば、前記対象は、SARS-CoV-2感染症に伴う症状の従来の診断方法または臨床評価によって選択または特定することができる。
実験動物を用いた研究では、損傷を受けた皮膚の創傷が、SMS細胞によって治癒できることが示されており、特に血管新生と肉芽形成が促進されたことが認められた。したがって、本明細書において、SMS細胞を使用することによって、SARS-CoV-2に関連するサイトカインストームによる強力な炎症状態によって生じた損傷を軽減もしくは緩和することができ、肺胞内皮細胞障害および/もしくは呼吸器内皮細胞障害を減少もしくは抑制することができ、損傷を受けた肺組織のより迅速な修復を促すことができる。SMS細胞は、線維芽細胞の活性を低下させることが判明しており、線維芽細胞の活性の低下を必要とする対象に投与して、ウイルス感染症、真菌感染症または細菌感染症の罹患後に生じる肺線維症の発症を減少させることができる。以上のことから、本明細書に記載のSMS細胞を使用することによって、ウイルス感染症(例えばCOVID-19、特にSARS-CoV-2など)、真菌感染症または細菌感染症によって生じた重篤な病態を治療、軽減、緩和もしくは抑制したり、その経過を短縮させることができ、このような感染症による全体的な死亡率を引き下げることができ、かつ/または回復した患者の感染後の衰弱を抑制することができる。
本明細書において、「間葉系幹細胞(MSC)」は、骨細胞、軟骨細胞、脂肪細胞などの様々な種類の細胞に分化することができる稀な線維芽細胞様細胞を指す。ヒトMSCの同定には、CD73、CD90およびCD105が陽性、かつCD14、CD19、CD34、CD45およびHLA-DRが陰性という表面マーカーが従来使用されている。間葉系幹細胞は、プロスタグランジンE2、一酸化窒素、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ、IL-6、FasL、PD-L1、PD-L2などの因子を介して、様々な免疫細胞の免疫調節を担っていることが知られている。間葉系幹細胞集団は、脂肪組織、歯髄、末梢血または分娩由来組織(例えば、羊水、臍帯または胎盤)などの細胞源から単離することができる。
本明細書において、「線維芽細胞」は、結合組織を構成する一般的な細胞を指す。線維芽細胞は、生物組織において細胞外マトリックスおよびコラーゲンを合成することができ、それによって間質を形成している。さらに、線維芽細胞は、ケモカインのシグナル伝達を介して、組織損傷における炎症および/または病原体の浸潤にも関与している。線維症は、組織のリモデリングと、正常な実質組織に置き換わる瘢痕組織の形成とからなるプロセスであり、刺激された線維芽細胞によって新たな結合組織が産生されることによって起こる。線維症は、正常な臓器の機能を妨害し、慢性炎症でも急性炎症でも認められる共通の後遺症である。
本明細書において、「肺胞上皮細胞」は、肺の表面の大部分を覆うI型肺胞上皮細胞とII型肺胞上皮細胞で構成される細胞集団を指す。I型肺胞細胞(肺胞上皮細胞集団において95%を超える)は、大型の扁平上皮細胞であり、肺胞と血液の間のガス交換プロセスに関与している。II型肺胞細胞(肺胞上皮細胞集団において2~5%を占める)は、肺サーファクタントを産生する。I型肺胞上皮細胞は、通常、自己複製能を持たないが、II型肺胞上皮細胞は増殖することができ、I型肺胞上皮細胞を含む他の種類の細胞の前駆細胞として機能する。
いくつかの実施形態において、本明細書で提供される組成物および方法は、組織損傷の予防または抑制に使用してもよい。例えば、SMS細胞を含む組成物は、損傷を受けていない組織または細胞を強化または増強する目的で、ウイルス感染症、真菌感染症、細菌感染症のいずれにも罹患していない対象に使用してもよく、このような予防手段によって、ウイルス感染症、真菌感染症または細菌感染症が起こった場合に、組織への損傷を予防したり、組織の損傷を最小限に抑えたり、実質的な損傷がないものとすることができる。
さらに、本明細書において、損傷を受けた組織の修復もしくは再生を促進もしくは向上させるため、またはウイルス感染症、真菌感染症もしくは細菌感染症からの回復を向上させるための組成物および方法が提供される。この組成物は、損傷を受けた組織の修復もしくは再生の促進もしくは向上、またはウイルス感染症、真菌感染症もしくは細菌感染症からの回復の向上を必要とする対象に提供され、治療有効量のSMS細胞を含む。
本明細書に開示されているように、SMS細胞は、ヒト細胞における遺伝子発現を調節できることが判明している。いくつかの実施形態において、SMS細胞を含む組成物またはSMS細胞にヒト細胞を接触させると、このヒト細胞において、Dickkopf関連タンパク質1(DKK1)、N-アシルグルコサミン2-エピメラーゼ(RENBP)、増殖/分化因子15(GDF15)、dermokine(DMKN)、フェリチン軽鎖(FTL)、トリプトファン2,3-ジオキシゲナーゼ(TDO2)、アポリポタンパク質E(APOE)、キチナーゼ3様タンパク質1(CHI3L1)、もしく核受容体サブファミリー4グループAメンバー2(NR4A2)、またはこれらの任意の組み合わせがアップレギュレートされる。いくつかの実施形態では、SMS細胞を含む組成物またはSMS細胞にヒト細胞を接触させると、このヒト細胞において、インターロイキン11(IL-11)、SPRYドメイン含有SOCSボックスタンパク質1(SPSB1)、シトクロムP450 26B1(CYP26B1)、もしくはfrizzled-8(FZD8)、またはこれらの任意の組み合わせがダウンレギュレートされる。いくつかの実施形態において、細胞における遺伝子発現の調節は、細胞のシグナル伝達、血管の直径、細胞の分化、細胞の増殖、もしくは病原体からの保護、またはこれらの任意の組み合わせに対して効果を発揮する。いくつかの実施形態では、これらの実施形態においてSMS細胞に接触させるヒト細胞は、2型肺胞細胞である。
従来知られているように、Dickkopf関連タンパク質1(DKK1)は、急性肺炎の肺胞上皮細胞において、Wnt/β-カテニンシグナル伝達の抑制に寄与する主要なWntアンタゴニストである。Wnt3aまたは抗DKK1抗体を気管内投与すると、損傷を受けた肺の肺胞腔への好中球の流入が抑制されることが示されている。いくつかの実施形態において、SMS細胞に接触させることによって、2型肺胞細胞などの細胞におけるDKK1の発現を活性化または増加させることができる。いくつかの実施形態において、SMS細胞に接触させることによって、2型肺胞細胞などの細胞におけるDKK1の発現を、例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、160%、170%、180%、190%、200%、210%、220%、230%、240%もしくは250%、またはこれらの割合のいずれか2つを上下限とする範囲内の割合だけ活性化または増加させることができる。いくつかの実施形態において、SMS細胞に接触させることによって、2型肺胞細胞などの細胞におけるDKK1の発現を、55%、約55%、少なくとも55%、または少なくとも約55%活性化または増加させることができる。したがって、いくつかの実施形態は、2型肺胞細胞などの細胞をSMS細胞に接触させることによって、2型肺胞細胞などの該細胞におけるDKK1の発現を増加させる方法に関し、この方法は、SMS細胞に接触させた後に2型肺胞細胞などの細胞におけるDKK1の発現量を評価または測定することを含んでいてもよく、かつ/またはDKK1の発現量を増加させる医薬品を投与する対象を選択し、該対象にSMS細胞を投与することを含んでいてもよく、この投与は、2型肺胞細胞などである前記対象の細胞をSMS細胞に接触させることによって行うことが好ましい。
従来知られているように、N-アシルグルコサミン2-エピメラーゼ(RENBP)はレニンを抑制し、血圧を低下させて、血管の直径の拡大(血管の拡張)を引き起こす。いくつかの実施形態において、SMS細胞に接触させることによって、2型肺胞細胞などの細胞におけるRENBPの発現を活性化または増加させることができる。いくつかの実施形態において、SMS細胞に接触させることによって、2型肺胞細胞などの細胞におけるRENBPの発現を、例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、160%、170%、180%、190%、200%、210%、220%、230%、240%もしくは250%、またはこれらの割合のいずれか2つを上下限とする範囲内の割合だけ活性化または増加させることができる。いくつかの実施形態において、SMS細胞に接触させることによって、2型肺胞細胞などの細胞におけるRENBPの発現を、60%、約60%、少なくとも60%、または少なくとも約60%活性化または増加させることができる。したがって、いくつかの実施形態は、2型肺胞細胞などの細胞をSMS細胞に接触させることによって、2型肺胞細胞などの該細胞におけるRENBPの発現を増加させる方法に関し、この方法は、SMS細胞に接触させた後に2型肺胞細胞などの細胞におけるRENBPの発現量を評価または測定することを含んでいてもよく、かつ/またはRENBPの発現量を増加させる医薬品を投与する対象を選択し、該対象にSMS細胞を投与することを含んでいてもよく、この投与は、2型肺胞細胞などである前記対象の細胞をSMS細胞に接触させることによって行うことが好ましい。
従来知られているように、増殖/分化因子15(GDF15)とdermokine(DMKN)はいずれも上皮間葉転換(EMT)を引き起こす。いくつかの実施形態において、SMS細胞に接触させることによって、2型肺胞細胞などの細胞におけるGDF15および/またはDMKNの発現を活性化または増加させることができる。いくつかの実施形態において、SMS細胞に接触させることによって、2型肺胞細胞などの細胞におけるGDF15の発現を、例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、160%、170%、180%、190%、200%、210%、220%、230%、240%もしくは250%、またはこれらの割合のいずれか2つを上下限とする範囲内の割合だけ活性化または増加させることができる。いくつかの実施形態において、SMS細胞に接触させることによって、2型肺胞細胞などの細胞におけるGDF15の発現を、58%、約58%、少なくとも58%、または少なくとも約58%活性化または増加させることができる。いくつかの実施形態において、SMS細胞に接触させることによって、2型肺胞細胞などの細胞におけるDMKNの発現を、例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、160%、170%、180%、190%、200%、210%、220%、230%、240%もしくは250%、またはこれらの割合のいずれか2つを上下限とする範囲内の割合だけ活性化または増加させることができる。いくつかの実施形態において、SMS細胞に接触させることによって、2型肺胞細胞などの細胞におけるDMKNの発現を、130%、約130%、少なくとも130%、または少なくとも約130%活性化または増加させることができる。したがって、いくつかの実施形態は、2型肺胞細胞などの細胞をSMS細胞に接触させることによって、2型肺胞細胞などの該細胞におけるGDF15および/またはDMKNの発現を増加させる方法に関し、この方法は、SMS細胞に接触させた後に2型肺胞細胞などの細胞におけるGDF15および/もしくはDMKNの発現量を評価もしくは測定することを含んでいてもよく、かつ/またはGDF15および/もしくはDMKNの発現量を増加させる医薬品を投与する対象を選択し、該対象にSMS細胞を投与することを含んでいてもよく、この投与は、2型肺胞細胞などである前記対象の細胞をSMS細胞に接触させることによって行うことが好ましい。
従来知られているように、フェリチン軽鎖(FTL)やフェリチン重鎖(FTH)などのフェリチンは、病原体に対する肺の保護と血管新生に関連している。いくつかの実施形態において、SMS細胞に接触させることによって、2型肺胞細胞などの細胞におけるFTLおよび/またはFTHの発現を活性化または増加させることができる。いくつかの実施形態において、SMS細胞に接触させることによって、2型肺胞細胞などの細胞におけるFTLおよび/またはFTHの発現を、例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、160%、170%、180%、190%、200%、210%、220%、230%、240%もしくは250%、またはこれらの割合のいずれか2つを上下限とする範囲内の割合だけ活性化または増加させることができる。いくつかの実施形態において、SMS細胞に接触させることによって、2型肺胞細胞などの細胞におけるFTLおよび/またはFTHの発現を、70%、約70%、少なくとも70%、または少なくとも約70%活性化または増加させることができる。したがって、いくつかの実施形態は、2型肺胞細胞などの細胞をSMS細胞に接触させることによって、2型肺胞細胞などの該細胞におけるFTLおよび/またはFTHの発現を増加させる方法に関し、この方法は、SMS細胞に接触させた後に2型肺胞細胞などの細胞におけるFTLおよび/もしくはFTHの発現量を評価もしくは測定することを含んでいてもよく、かつ/またはFTLおよび/もしくはFTHの発現量を増加させる医薬品を投与する対象を選択し、該対象にSMS細胞を投与することを含んでいてもよく、この投与は、2型肺胞細胞などである前記対象の細胞をSMS細胞に接触させることによって行うことが好ましい。
従来知られているように、トリプトファン2,3-ジオキシゲナーゼ(TDO2)は、病原体に対する肺の保護に関与している。TDO2の活性によって、病原体が必須とするトリプトファンの量が減少する。トリプトファン欠損に感受性を示す病原体として、単純ヘルペスウイルスや麻疹ウイルスなどのウイルスおよび連鎖球菌が挙げられる。いくつかの実施形態において、SMS細胞に接触させることによって、2型肺胞細胞などの細胞におけるTDO2の発現を活性化または増加させることができる。いくつかの実施形態において、SMS細胞に接触させることによって、2型肺胞細胞などの細胞におけるTDO2の発現を、例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、160%、170%、180%、190%、200%、210%、220%、230%、240%もしくは250%、またはこれらの割合のいずれか2つを上下限とする範囲内の割合だけ活性化または増加させることができる。いくつかの実施形態において、SMS細胞に接触させることによって、2型肺胞細胞などの細胞におけるTDO2の発現を、85%、約85%、少なくとも85%、または少なくとも約85%活性化または増加させることができる。したがって、いくつかの実施形態は、2型肺胞細胞などの細胞をSMS細胞に接触させることによって、2型肺胞細胞などの該細胞におけるTDO2の発現を増加させる方法に関し、この方法は、SMS細胞に接触させた後に2型肺胞細胞などの細胞におけるTDO2の発現量を評価または測定することを含んでいてもよく、かつ/またはTDO2の発現量を増加させる医薬品を投与する対象を選択し、該対象にSMS細胞を投与することを含んでいてもよく、この投与は、2型肺胞細胞などである前記対象の細胞をSMS細胞に接触させることによって行うことが好ましい。
従来知られているように、アポリポタンパク質E(APOE)は、病原体に対する肺の保護に関与している。APOEは、マウスモデルにおいて、肺疾患の重症度を低下させる抗炎症作用および抗酸化作用を有することが判明している。いくつかの実施形態において、SMS細胞に接触させることによって、2型肺胞細胞などの細胞におけるAPOEの発現を活性化または増加させることができる。いくつかの実施形態において、SMS細胞に接触させることによって、2型肺胞細胞などの細胞におけるAPOEの発現を、例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、160%、170%、180%、190%、200%、210%、220%、230%、240%もしくは250%、またはこれらの割合のいずれか2つを上下限とする範囲内の割合だけ活性化または増加させることができる。いくつかの実施形態において、SMS細胞に接触させることによって、2型肺胞細胞などの細胞におけるAPOEの発現を、110%、約110%、少なくとも110%、または少なくとも約110%活性化または増加させることができる。したがって、いくつかの実施形態は、2型肺胞細胞などの細胞をSMS細胞に接触させることによって、2型肺胞細胞などの該細胞におけるAPOEの発現を増加させる方法に関し、この方法は、SMS細胞に接触させた後に2型肺胞細胞などの細胞におけるAPOEの発現量を評価または測定することを含んでいてもよく、かつ/またはAPOEの発現量を増加させる医薬品を投与する対象を選択し、該対象にSMS細胞を投与することを含んでいてもよく、この投与は、2型肺胞細胞などである前記対象の細胞をSMS細胞に接触させることによって行うことが好ましい。
従来知られているように、キチナーゼ3様タンパク質1(CHI3L1)は、病原体に対する肺の保護に関与している。CHI3L1の役割はいまだ完全に解明されていないが、病原細菌に対する細胞傷害性、細胞死の調節、炎症、および細胞リモデリングとの関連性が指摘されている。いくつかの実施形態において、SMS細胞に接触させることによって、2型肺胞細胞などの細胞におけるCHI3L1の発現を活性化または増加させることができる。いくつかの実施形態において、SMS細胞に接触させることによって、2型肺胞細胞などの細胞におけるCHI3L1の発現を、例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、160%、170%、180%、190%、200%、210%、220%、230%、240%もしくは250%、またはこれらの割合のいずれか2つを上下限とする範囲内の割合だけ活性化または増加させることができる。いくつかの実施形態において、SMS細胞に接触させることによって、2型肺胞細胞などの細胞におけるCHI3L1の発現を、150%、約150%、少なくとも150%、または少なくとも約150%活性化または増加させることができる。したがって、いくつかの実施形態は、2型肺胞細胞などの細胞をSMS細胞に接触させることによって、2型肺胞細胞などの該細胞におけるCHI3L1の発現を増加させる方法に関し、この方法は、SMS細胞に接触させた後に2型肺胞細胞などの細胞におけるCHI3L1の発現量を評価または測定することを含んでいてもよく、かつ/またはCHI3L1の発現量を増加させる医薬品を投与する対象を選択し、該対象にSMS細胞を投与することを含んでいてもよく、この投与は、2型肺胞細胞などである前記対象の細胞をSMS細胞に接触させることによって行うことが好ましい。
従来知られているように、核受容体サブファミリー4グループAメンバー2(NR4A2)は、炎症の阻害因子として作用し、DNAの修復を向上させる。いくつかの実施形態において、SMS細胞に接触させることによって、2型肺胞細胞などの細胞におけるNR4A2の発現を活性化または増加させることができる。いくつかの実施形態において、SMS細胞に接触させることによって、2型肺胞細胞などの細胞におけるNR4A2の発現を、例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、160%、170%、180%、190%、200%、210%、220%、230%、240%もしくは250%、またはこれらの割合のいずれか2つを上下限とする範囲内の割合だけ活性化または増加させることができる。いくつかの実施形態において、SMS細胞に接触させることによって、2型肺胞細胞などの細胞におけるNR4A2の発現を、55%、約55%、少なくとも55%、または少なくとも約55%活性化または増加させることができる。したがって、いくつかの実施形態は、2型肺胞細胞などの細胞をSMS細胞に接触させることによって、2型肺胞細胞などの該細胞におけるNR4A2の発現を増加させる方法に関し、この方法は、SMS細胞に接触させた後に2型肺胞細胞などの細胞におけるNR4A2の発現量を評価または測定することを含んでいてもよく、かつ/またはNR4A2の発現量を増加させる医薬品を投与する対象を選択し、該対象にSMS細胞を投与することを含んでいてもよく、この投与は、2型肺胞細胞などである前記対象の細胞をSMS細胞に接触させることによって行うことが好ましい。
従来知られているように、インターロイキン11(IL-11)は、線維症、実質組織の機能不全および気道の慢性炎症に関連する主要なサイトカインである。いくつかの実施形態において、SMS細胞に接触させることによって、2型肺胞細胞などの細胞におけるIL-11の発現を抑制または低下させることができる。いくつかの実施形態において、SMS細胞に接触させることによって、2型肺胞細胞などの細胞におけるIL-11の発現を、例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%もしくは100%、またはこれらの割合のいずれか2つを上下限とする範囲内の割合だけ抑制または低下させることができる。いくつかの実施形態において、SMS細胞に接触させることによって、2型肺胞細胞などの細胞におけるIL-11の発現を、40%、約40%、少なくとも40%、または少なくとも約40%抑制または低下させることができる。したがって、いくつかの実施形態は、2型肺胞細胞などの細胞をSMS細胞に接触させることによって、2型肺胞細胞などの該細胞におけるIL-11の発現を抑制または低下させる方法に関し、この方法は、SMS細胞に接触させた後に2型肺胞細胞などの細胞におけるIL-11の発現量を評価または測定することを含んでいてもよく、かつ/またはIL-11の発現量を抑制または低下させる医薬品を投与する対象を選択し、該対象にSMS細胞を投与することを含んでいてもよく、この投与は、2型肺胞細胞などである前記対象の細胞をSMS細胞に接触させることによって行うことが好ましい。
従来知られているように、SPRYドメイン含有SOCSボックスタンパク質1(SPSB1)は、一酸化窒素(NO)の負の調節を担い、血管の直径の縮小(血管の収縮)を引き起こす。いくつかの実施形態において、SMS細胞に接触させることによって、2型肺胞細胞などの細胞におけるSPSB1の発現を抑制または低下させることができる。いくつかの実施形態において、SMS細胞に接触させることによって、2型肺胞細胞などの細胞におけるSPSB1の発現を、例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%もしくは100%、またはこれらの割合のいずれか2つを上下限とする範囲内の割合だけ抑制または低下させることができる。いくつかの実施形態において、SMS細胞に接触させることによって、2型肺胞細胞などの細胞におけるSPSB1の発現を、50%、約50%、少なくとも50%、または少なくとも約50%抑制または低下させることができる。したがって、いくつかの実施形態は、2型肺胞細胞などの細胞をSMS細胞に接触させることによって、2型肺胞細胞などの該細胞におけるSPSB1の発現を抑制または低下させる方法に関し、この方法は、SMS細胞に接触させた後に2型肺胞細胞などの細胞におけるSPSB1の発現量を評価または測定することを含んでいてもよく、かつ/またはSPSB1の発現量を抑制または低下させる医薬品を投与する対象を選択し、該対象にSMS細胞を投与することを含んでいてもよく、この投与は、2型肺胞細胞などである前記対象の細胞をSMS細胞に接触させることによって行うことが好ましい。
従来知られているように、シトクロムP450 26B1(CYP26B1)は、肺細胞の分化に必須のレチノイン酸の異化に関与する。いくつかの実施形態において、SMS細胞に接触させることによって、2型肺胞細胞などの細胞におけるCYP26B1の発現を抑制または低下させることができる。いくつかの実施形態において、SMS細胞に接触させることによって、2型肺胞細胞などの細胞におけるCYP26B1の発現を、例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%もしくは100%、またはこれらの割合のいずれか2つを上下限とする範囲内の割合だけ抑制または低下させることができる。いくつかの実施形態において、SMS細胞に接触させることによって、2型肺胞細胞などの細胞におけるCYP26B1の発現を、50%、約50%、少なくとも50%、または少なくとも約50%抑制または低下させることができる。したがって、いくつかの実施形態は、2型肺胞細胞などの細胞をSMS細胞に接触させることによって、2型肺胞細胞などの該細胞におけるCYP26B1の発現を抑制または低下させる方法に関し、この方法は、SMS細胞に接触させた後に2型肺胞細胞などの細胞におけるCYP26B1の発現量を評価または測定することを含んでいてもよく、かつ/またはCYP26B1の発現量を抑制または低下させる医薬品を投与する対象を選択し、該対象にSMS細胞を投与することを含んでいてもよく、この投与は、2型肺胞細胞などである前記対象の細胞をSMS細胞に接触させることによって行うことが好ましい。
従来知られているように、frizzled-8(FZD8)は、肺の回復過程において、II型肺胞上皮細胞からI型肺胞上皮細胞への肺胞上皮細胞の分化転換を起こす。いくつかの実施形態において、SMS細胞に接触させることによって、2型肺胞細胞などの細胞におけるFZD8の発現を抑制または低下させることができる。いくつかの実施形態において、SMS細胞に接触させることによって、2型肺胞細胞などの細胞におけるFZD8の発現を、例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%もしくは100%、またはこれらの割合のいずれか2つを上下限とする範囲内の割合だけ抑制または低下させることができる。いくつかの実施形態において、SMS細胞に接触させることによって、2型肺胞細胞などの細胞におけるFZD8の発現を、50%、約50%、少なくとも50%、または少なくとも約50%抑制または低下させることができる。したがって、いくつかの実施形態は、2型肺胞細胞などの細胞をSMS細胞に接触させることによって、2型肺胞細胞などの該細胞におけるFZD8の発現を抑制または低下させる方法に関し、この方法は、SMS細胞に接触させた後に2型肺胞細胞などの細胞におけるFZD8の発現量を評価または測定することを含んでいてもよく、かつ/またはFZD8の発現量を抑制または低下させる医薬品を投与する対象を選択し、該対象にSMS細胞を投与することを含んでいてもよく、この投与は、2型肺胞細胞などである前記対象の細胞をSMS細胞に接触させることによって行うことが好ましい。
「治療有効量」という用語は、本明細書に記載の生物学的応答または医学的応答が誘導される活性化合物または医薬品の量を示すために使用される。例えば、ある化合物の治療有効量は、疾患の症状を予防、軽減もしくは緩和するのに必要な量であってもよく、治療を受けている対象の生存率を延長するのに必要な量であってもよい。このような応答は、組織、系、動物またはヒトにおいて認められてもよく、治療中の疾患の徴候または症状の緩和を含む。治療有効量は、本明細書の開示を考慮に入れて当業者により容易に決定することができる。本明細書に開示された化合物の投与に必要な治療有効量は、投与経路、治療を受けている動物の種類(ヒトを含む)、および治療対象である特定の動物の身体的特徴によって決まる。前記投与量は、所望の効果を得るために調節することができるが、体重、食餌、併用薬などの要因や、医学に精通した当業者により認識されるその他の要因にも左右される。
II.SMS細胞の単離方法
本明細書で提供される実施形態のいくつかは、SMS細胞の単離方法および本明細書で提供される組成物の製造方法に関する。SMS細胞の単離方法は、過去に報告されており、例えば、WO2014/200940やWO2017/172638などに記載されている(これらの文献はいずれも引用によりその全体が本明細書に援用される)。
いくつかの実施形態において、前記方法は、治療有効量のSMS細胞を得るのに十分な時間をかけてSMS細胞集団を培養する工程を含む。
本明細書において、「細胞培養」または「培養された細胞」は、インビトロの人工環境において維持、培養または増殖された細胞または組織を指す。これらの用語には、連続継代性細胞株(例えば不死化表現型細胞株)、初代細胞培養物、有限寿命細胞株(例えば非形質転換細胞)、およびインビトロで維持されるその他の細胞集団が含まれる。これに関連して、初代細胞は、培養を経ずに、ヒトなどの動物の組織または臓器から直接得られた細胞である。初代細胞は、例外はあるものの、通常、インビトロにおいて、老化または増殖停止するまで最大10代にわたって継代することができる。
「維持」は、細胞または細胞集団の生存の持続を意味し、時として細胞数の増加を伴うことがある。「増殖」、「繁殖」、「拡大」および「成長」という用語は、同じ意味で使用してもよく、細胞数の増加を指す。一実施形態によれば、「増殖」は、少なくとも6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、16週間、17週間、18週間、19週間、20週間、21週間、22週間、23週間、24週間、25週間、26週間、32週間、48週間、52週間、104週間もしくはそれ以上の期間、またはこれらの期間のいずれか2つを上下限とする範囲内の期間にわたって、細胞の生存が持続することを指す。別の一実施形態では、少なくとも25代、26代、27代、28代、29代、30代もしくはそれ以上の継代数、またはこれらの継代数のいずれか2つを上下限とする範囲内の継代数にわたって、細胞の生存が維持される。
本明細書において、「細胞懸濁液」は、細胞の大部分が培地(通常、培養培地(培養系))に自由に浮遊している状態の細胞培養を指し、この細胞は、単一の細胞、細胞集塊および/または細胞凝集塊として浮遊している。換言すれば、この細胞は、固体の基材または半固体の基材に接着することなく、培地中で生存を維持し増殖する。また、本明細書において、「接着細胞」は、基材または表面に接着している細胞または細胞集団を指す。
本明細書において、「培養系」は、SMS細胞またはこれに由来する体細胞の維持および増殖を支持する培養条件、ならびに未分化のSMS細胞または分化したSMS細胞の分化誘導および増殖を支持する選択された条件を指す。また、「培養系」は、基礎培地(通常、既知成分からなる基礎溶液(塩類、糖類およびアミノ酸を含む)を含む細胞培養培地)と血清代替添加物を含んでいてもよい構成成分の組み合わせを指す。培養系は、細胞外マトリックス(ECM)成分、追加の血清または血清代替物、培養(栄養)培地、およびその他の外部添加因子などのその他の構成成分をさらに含んでいてもよいが、これらの構成成分には限定されず、これらの構成成分が協働することにより、SMS細胞の増殖、細胞培養の維持、細胞の分化または様々な分子の発現を支持する適切な条件が提供される。これに関連して、「培養系」は、培養系で培養された細胞を包含する。
SMS細胞は、増殖培地を入れたT25フラスコ内で(例えば、37℃、5%CO2の条件のインキュベーター内で)培養してもよい。このSMS細胞集団は、未分化のSMS細胞とSMS細胞由来の分化細胞からなる不均一な細胞集団を含みうる。未分化のSMS細胞は浮遊画分および接着画分として存在し、浮遊画分の大部分は未分化のSMS細胞が占める(例えば、未分化のSMS細胞が占める割合は、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上もしくは95%以上、またはこれらの数値のいずれか2つを上下限とする範囲内の量である)。したがって、いくつかの実施形態は、未分化の非接着性SMS細胞の懸濁液に関し、この未分化の非接着性SMS細胞は、細胞の接着が阻害されるような方法で(例えば、ポリプロピレン製の容器またはフラスコを使用して)液体培地中で培養することが好ましい。いくつかの態様において、未分化の浮遊性SMS細胞集団において、未分化のSMS細胞が占める割合は、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上もしくは95%以上、またはこれらの数値のいずれか2つを上下限とする範囲内の量である。
未分化のSMS細胞は、分画遠心法によって単離または精製することができる。まず、低速で遠心分離して細胞集塊または分化細胞を除去し、次いで高速で遠心分離して未分化のSMS細胞を回収する。別の方法として、濾過によって未分化のSMS細胞を単離してもよく、例えば、フィルターの孔径を3~5μmまで徐々に小さくしていく分別濾過によって単離してもよい。別の方法として、未分化のSMS細胞は、免疫結合(例えば、SMS細胞上の幹細胞受容体に特異的な結合パートナー(抗体など)をビーズ(磁気ビーズなど)に結合させたり、FACSセルソーティングにより検出すること)により単離してもよく、フィルターの孔径を3~5μmまで徐々に小さくしていく分別濾過により単離してもよい。未分化のSMS細胞を単離した後、顕微鏡下で均一性を確認する。これらの単離プロトコルのうちの1つ以上を実施する前に、未分化のSMS細胞を少なくとも25代(例えば、25代、26代、27代、28代、29代、30代、31代、32代、33代、34代、35代、36代、37代、38代、39代もしくは40代、またはこれらの継代数のいずれか2つを上下限とする範囲内の継代数)まで継代培養することによって、均一性が向上したSMS細胞集団を得ることができる。
SMS細胞は、分化誘導化合物(例えばインスリン)の存在下または非存在下において、様々な種類の血清含有培地または無血清培地を使用して増殖させることができる。週に1回、4200×gで15分間遠心分離してSMS細胞を沈殿させ、細胞増殖培地を交換する。遠心分離の速度は、3000×g、3500×g、4000×g、4100×g、4200×g、4300×g、4500×gもしくは5000×gであってもよく、またはこれらの速度のいずれか2つを上下限とする範囲内の速度であってもよく、これに応じて遠心時間を調節してもよい。このような条件下では、培地の量(細胞の密集度)に応じてSMS細胞の増殖が制限される。SMS細胞の均一性は顕微鏡下で評価し、SMS細胞の数は、分光光度計による細胞懸濁液の濁度の評価、および/または高速遠心分離後のペレットの大きさの測定により推定する。SMS細胞を懸濁培養すると、増殖培地を入れた新たなチューブにSMS細胞を分取および/または移動させることが容易となり、SMS細胞の移動およびクローニングが容易となる。既存の培養物から新たな培養物へと培養細胞を分取および/または移動させるこの方法は、培養ディッシュまたは基底細胞層から細胞を剥離するための酵素(例えばトリプシン)を使用せずに行われる。SMS細胞の大部分は、細胞集塊を形成することなく個々の細胞として増殖し、SMS細胞の懸濁液は、細胞の移動操作が行われるにもかかわらず、未分化な状態のまま維持可能である。また、懸濁培養はスケールアップすることもでき、培地の量を増加することによって得られる細胞の数を増やすことができる。
いくつかの実施形態において、培養されたSMS細胞を用いて、対象に投与するための組成物を調製する。いくつかの実施形態において、この組成物は、例えば、外用投与、経呼吸器投与、局所投与などの様々な経路による投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、本開示の方法は、全身投与、経腸投与または非経口投与も想定しており、例えば、経呼吸器投与(吸入投与もしくは鼻腔内投与)、皮下投与、腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、動脈内投与、経口投与、腸内投与、真皮下投与、経皮投与、舌下投与、経頬投与、直腸投与または膣内投与なども想定している。
いくつかの実施形態において、培養されたSMS細胞は、別の治療との併用投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、この別の治療は標準治療であってもよく、例えば、当技術分野で公知の、炎症性疾患またはウイルス感染症、真菌感染症もしくは細菌感染症の標準治療などであってもよい。例えば、SMS細胞は、抗生物質治療、抗真菌剤治療または抗ウイルス治療(ワクチンやレムデシビルなど)と組み合わせて使用するために製剤化してもよい。
本明細書において、「抗ウイルス」治療は、ウイルス感染症を治療、抑制、管理または緩和するために使用されるあらゆる方法および薬剤を含む。抗ウイルス治療として、例えば、ワクチンまたは抗ウイルス剤が挙げられ、例えば、デキサメタゾン、回復期血清、トシリズマブ、サリルマブ、リバビリン、ファビピラビル、ダルナビル、ガリデシビル、インターフェロンα、インターフェロンβ、ロピナビル、リトナビル、レムデシビル、トリアザビリン、ウミフェノビル、またはウイルス感染症の治療、抑制もしくは管理に使用される公知のその他の薬剤もしくはワクチン、もしくはウイルス感染症の治療、抑制もしくは管理を目的として開発されたその他の薬剤もしくはワクチンなどが挙げられる。
III.組成物の使用方法
本明細書で提供される実施形態のいくつかは、本明細書に記載の組成物を使用して、損傷を受けた組織の修復もしくは再生を促進もしくは向上させるか、またはウイルス感染症、真菌感染症もしくは細菌感染症もしくはそれらの後遺症からの回復を向上させる方法に関する。いくつかの実施形態において、この方法は、ウイルス感染症、真菌感染症もしくは細菌感染症またはそれらの後遺症に罹患している対象を選択する工程、および治療有効量の小型運動性幹細胞(small mobile stem(SMS)cells)を含む組成物を前記選択された対象に投与する工程を含む。いくつかの実施形態において、前記SMS細胞は、末梢血から得られた細胞である。いくつかの実施形態において、前記SMS細胞は、前記対象と同種の細胞である。いくつかの実施形態において、前記SMS細胞は、前記対象から得られた自家細胞である。いくつかの実施形態において、前記損傷を受けた組織は肺組織である。
いくつかの実施形態において、損傷を受けた組織の修復もしくは再生を促進もしくは向上させることによって、またはウイルス感染症、真菌感染症もしくは細菌感染症もしくはそれらの後遺症からの回復を向上させることによって、肺胞細胞障害の減少、呼吸器内皮細胞障害の減少、損傷を受けた肺組織の修復の増加、損傷を受けた肺組織の再生の増加、もしくは肺線維症の発症の減少、またはこれらの任意の組み合わせが達成される。
いくつかの実施形態において、前記損傷を受けた組織は、前記ウイルス感染症、真菌感染症もしくは細菌感染症またはそれらの後遺症によって損傷を受けた組織である。いくつかの実施形態において、前記ウイルス感染症は、一本鎖RNAウイルス、二本鎖RNAウイルス、プラスセンス一本鎖RNAウイルス、マイナスセンス一本鎖RNAウイルス、二本鎖DNAウイルスまたは一本鎖DNAウイルスによって引き起こされたものである。いくつかの実施形態において、前記ウイルス感染症、真菌感染症または細菌感染症は、コロナウイルス、ポックスウイルス、痘瘡ウイルス、マールブルグウイルス、フラビウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、RSウイルス、風疹ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトパピローマウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイルス、JCウイルス、ラブドウイルス、ロタウイルス、ライノウイルス、アデノウイルス、パピローマウイルス、パルボウイルス、ピコルナウイルス、ポリオウイルス、ハンタウイルス、フィロウイルス、コクサッキーウイルス、ウマ脳炎ウイルス、リフトバレー熱ウイルス、アルファウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、肺炎、肺炎連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、インフルエンザ菌、モラクセラ・カタラーリス、嫌気性細菌、グラム陰性細菌、マイコプラズマ・ニューモニエ、クラミジア・ニューモニエ、A群連鎖球菌、肺炎桿菌、レジオネラ・ニューモフィラ、化膿連鎖球菌、ストレプトコッカス・アガラクティエ、ペプトストレプトコッカス属、ジフテリア菌、百日咳菌、ヒト結核菌、緑膿菌、大腸菌、クルブラリア属、ニューモシスチス属、クリプトコッカス属、ヒストプラスマ・カプスラーツム、アスペルギルス属、ムコール目、フザリウム属、スケドスポリウム属、ペニシリウム属、またはこれらの任意の組み合わせによって引き起こされたものである。いくつかの実施形態において、前記コロナウイルスは、MERS-CoV、SARS-CoVまたはSARS-CoV-2である。いくつかの実施形態において、前記コロナウイルスは、SARS-CoV-2である。いくつかの実施形態において、前記組成物は、エアロゾル化されたSMS細胞を含む。いくつかの実施形態において、前記組成物は吸入投与される。いくつかの実施形態において、前記組成物は、吸入投与用に製剤化されている。いくつかの実施形態において、前記組成物は静脈内投与される。いくつかの実施形態において、前記組成物は、静脈内投与用に製剤化されている。
前記対象として、ウイルス感染症(例えば、SARS-CoV-2感染症)、真菌感染症もしくは細菌感染症に罹患している対象、ウイルス感染症、真菌感染症もしくは細菌感染症に罹患している疑いのある対象、またはウイルス感染症、真菌感染症もしくは細菌感染症から最近回復した対象が挙げられる。前記対象は、損傷を受けた肺組織、肺線維症、もしくは細胞障害、またはこれらの組み合わせなどの組織損傷を有している対象であってもよい。対象は、例えば、リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCT)や、感染症検査に使用されるその他の検査(例えば、抗体検査)を使用して、ウイルス感染症(例えば、SARS-CoV-2感染症)、真菌感染症または細菌感染症の有無を検査してもよく、これらの感染症の診断を行ってもよい。
いくつかの実施形態において、SMS細胞は、抗生物質、抗真菌剤、ワクチンまたは抗ウイルス剤と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態において、前記抗ウイルス剤は、デキサメタゾン、回復期血清、トシリズマブ、サリルマブ、リバビリン、ファビピラビル、ダルナビル、ガリデシビル、インターフェロンα、インターフェロンβ、ロピナビル、リトナビル、レムデシビル、トリアザビリン、ウミフェノビル、またはこれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態において、前記ワクチンは、コロナウイルスワクチンである。
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される組成物のいずれかを対象に投与することによって、Dickkopf関連タンパク質1(DKK1)、N-アシルグルコサミン2-エピメラーゼ(RENBP)、増殖/分化因子15(GDF15)、dermokine(DMKN)、フェリチン軽鎖(FTL)、トリプトファン2,3-ジオキシゲナーゼ(TDO2)、アポリポタンパク質E(APOE)、キチナーゼ3様タンパク質1(CHI3L1)、もしく核受容体サブファミリー4グループAメンバー2(NR4A2)、またはこれらの任意の組み合わせが前記対象においてアップレギュレートされる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物のいずれかを対象に投与することによって、インターロイキン11(IL-11)、SPRYドメイン含有SOCSボックスタンパク質1(SPSB1)、シトクロムP450 26B1(CYP26B1)、もしくはfrizzled-8(FZD8)、またはこれらの任意の組み合わせが前記対象においてダウンレギュレートされる。
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、損傷を受けた組織の修復もしくは再生の促進もしくは向上、またはウイルス感染症、真菌感染症もしくは細菌感染症もしくはそれらの後遺症からの回復の向上に十分な量と期間で対象に投与される。ウイルス感染症、真菌感染症または細菌感染症は、重症度、治癒力または慢性度の点で顕著に異なる場合があることから、本発明の組成物の量または治療期間も様々に異なることは十分に理解できるであろう。一例として、本発明の組成物は、少なくとも1日3回、1日1回、週1回、月1回もしくは年1回、またはこれらの数値のいずれか2つを上下限とする範囲内の頻度で投与してもよい。
さらに、本明細書において、炎症性疾患を治療または抑制する方法が開示される。いくつかの実施形態において、この方法は、炎症性疾患を有する対象を選択する工程、および治療有効量の小型運動性幹細胞(small mobile stem(SMS)cells)を含む組成物を前記対象に投与する工程を含む。いくつかの実施形態において、前記炎症性疾患は、肺の炎症性疾患である。いくつかの実施形態において、前記炎症性疾患は線維症を含む。いくつかの実施形態において、前記線維症は、肺線維症、肝線維症、腎線維症または心線維症である。いくつかの実施形態において、前記炎症性疾患は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を含む。いくつかの実施形態において、前記炎症性疾患は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を含む。いくつかの実施形態において、前記炎症性疾患は、ウイルス感染症、真菌感染症または細菌感染症に関連している。いくつかの実施形態において、前記ウイルス感染症は、一本鎖RNAウイルス、二本鎖RNAウイルス、プラスセンス一本鎖RNAウイルス、マイナスセンス一本鎖RNAウイルス、二本鎖DNAウイルスまたは一本鎖DNAウイルスによって引き起こされたものである。いくつかの実施形態において、前記ウイルス感染症、真菌感染症または細菌感染症は、コロナウイルス、ポックスウイルス、痘瘡ウイルス、マールブルグウイルス、フラビウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、RSウイルス、風疹ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトパピローマウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイルス、JCウイルス、ラブドウイルス、ロタウイルス、ライノウイルス、アデノウイルス、パピローマウイルス、パルボウイルス、ピコルナウイルス、ポリオウイルス、ハンタウイルス、フィロウイルス、コクサッキーウイルス、ウマ脳炎ウイルス、リフトバレー熱ウイルス、アルファウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、肺炎、肺炎連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、インフルエンザ菌、モラクセラ・カタラーリス、嫌気性細菌、グラム陰性細菌、マイコプラズマ・ニューモニエ、クラミジア・ニューモニエ、A群連鎖球菌、肺炎桿菌、レジオネラ・ニューモフィラ、化膿連鎖球菌、ストレプトコッカス・アガラクティエ、ペプトストレプトコッカス属、ジフテリア菌、百日咳菌、ヒト結核菌、緑膿菌、大腸菌、クルブラリア属、ニューモシスチス属、クリプトコッカス属、ヒストプラスマ・カプスラーツム、アスペルギルス属、ムコール目、フザリウム属、スケドスポリウム属、ペニシリウム属、またはこれらの任意の組み合わせによる感染症によって引き起こされたものである。いくつかの実施形態において、前記ウイルス感染症は、コロナウイルス感染症である。いくつかの実施形態において、前記ウイルス感染症は、SARS-CoV感染症、MERS-CoV感染症またはSARS-CoV-2感染症である。いくつかの実施形態において、前記SMS細胞は、末梢血から得られた細胞である。いくつかの実施形態において、前記SMS細胞は、前記対象と同種の細胞または前記対象から得られた自家細胞である。いくつかの実施形態において、前記組成物を投与することによって、肺胞細胞障害の減少もしくは抑制、呼吸器内皮細胞障害の減少もしくは抑制、損傷を受けた肺組織の修復の増加もしくは向上、損傷を受けた肺組織の再生の増加もしくは増強、もしくは肺線維症の発症の減少もしくは抑制、またはこれらの任意の組み合わせが達成される。いくつかの実施形態において、前記組成物は、例えば、鼻腔や口腔などを介した吸入投与用に製剤化されている。いくつかの実施形態において、前記組成物は、静脈内投与用に製剤化されている。いくつかの実施形態において、前記組成物は、前記炎症性疾患の標準治療に併用して投与される。いくつかの実施形態において、前記炎症性疾患は、ウイルス感染症、真菌感染症または細菌感染症に関連しており、前記標準治療は、抗生物質、抗真菌剤、ワクチンまたは抗ウイルス剤であり、例えば、デキサメタゾン、回復期血清、トシリズマブ、サリルマブ、リバビリン、ファビピラビル、ダルナビル、ガリデシビル、インターフェロンα、インターフェロンβ、ロピナビル、リトナビル、レムデシビル、トリアザビリン、ウミフェノビル、またはこれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態において、前記ワクチンは、コロナウイルス、コレラ、デング熱、ジフテリア、ヘモフィルスインフルエンザ菌b型感染症、A型肝炎、B型肝炎、インフルエンザ、日本脳炎、髄膜炎菌性髄膜炎、百日咳、ポリオ、狂犬病、破傷風、結核、腸チフスおよび黄熱病の1種以上に対するワクチンである。いくつかの実施形態において、前記ワクチンは、コロナウイルスCOVID-19ワクチンである。
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される組成物のいずれかを前記対象に投与することによって、Dickkopf関連タンパク質1(DKK1)、N-アシルグルコサミン2-エピメラーゼ(RENBP)、増殖/分化因子15(GDF15)、dermokine(DMKN)、フェリチン軽鎖(FTL)、トリプトファン2,3-ジオキシゲナーゼ(TDO2)、アポリポタンパク質E(APOE)、キチナーゼ3様タンパク質1(CHI3L1)、もしく核受容体サブファミリー4グループAメンバー2(NR4A2)、またはこれらの任意の組み合わせが該対象においてアップレギュレートされる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物のいずれかを前記対象に投与することによって、インターロイキン11(IL-11)、SPRYドメイン含有SOCSボックスタンパク質1(SPSB1)、シトクロムP450 26B1(CYP26B1)、もしくはfrizzled-8(FZD8)、またはこれらの任意の組み合わせが該対象においてダウンレギュレートされる。
IV.組成物
本明細書に開示された実施形態のいくつかは、損傷を受けた組織の修復もしくは再生の促進もしくは向上、またはウイルス感染症からの回復の向上のための、治療有効量のSMS細胞を含む組成物に関する。
本明細書において、「小型運動性幹細胞(small mobile stem(SMS)cells)」は、直径が約5μmの接着細胞であることを特徴とする細胞または細胞集団を指す。SMS細胞は、均一な大きさで、完全な放射対称であり、光学顕微鏡で観察すると、コントラストが異なる球状体を中心に含む球状の核と半透明の細胞質が見られる。また、SMS細胞は、低温や高温、標準的な増殖培地中での凍結解凍、脱水、高pH値、イオン強度の変動などの様々な非生理学的条件に対して極めて高い耐性を示す。さらに、SMS細胞は、最大で約1.5μm/秒という高い運動性を特徴とする。いくつかの実施形態において、SMS細胞は末梢血から得られた細胞である。
「治療有効量」または「有効投与量」は、本明細書に記載の生物学的応答または医学的応答が誘導される活性化合物または医薬品の量を示すために使用される。例えば、ある化合物の有効量は、疾患の症状を軽減もしくは緩和するのに必要な量であってもよく、治療を受けている対象の生存率を延長するのに必要な量であってもよい。このような応答は、組織、系、動物またはヒトにおいて認められてもよく、治療中の疾患の徴候または症状の緩和を含む。有効量は、本明細書の開示を考慮に入れて当業者によって容易に決定することができる。本明細書に開示された化合物の投与に必要な有効量は、投与経路、治療を受けている動物の種類(ヒトを含む)、および治療対象である特定の動物の身体的特徴によって決まる。前記投与量は、所望の効果を得るために調節することができるが、体重、食餌、併用薬などの要因や、医学に精通した当業者により認識されるその他の要因にも左右される。
「薬学的に許容される塩」は、組成物(鎮痛剤、治療剤、その他の成分などが挙げられるが、これらに限定されない)の比較的無毒な無機酸付加塩、有機酸付加塩または塩基付加塩を含む。薬学的に許容される塩の例として、塩酸や硫酸などの無機酸の塩や、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸などの有機酸の塩などが挙げられる。塩の形成に適した無機塩基の例として、アンモニア、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛などの、リン酸塩、水酸化物、炭酸塩および重炭酸塩が挙げられる。適切な有機塩基から塩を形成させてもよく、その例として、このような塩を形成するのに十分に強力な無毒の有機塩基が挙げられる。例えば、そのような種類の有機塩基として、メチルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミンなどの、モノアルキルアミン、ジアルキルアミンまたはトリアルキルアミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの、モノヒドロキシアルキルアミン、ジヒドロキシアルキルアミンまたはトリヒドロキシアルキルアミン;グリシン、アルギニン、リシンなどのアミノ酸;グアニジン;N-メチルグルコサミン;N-メチルグルカミン;L-グルタミン;N-メチルピペラジン;モルホリン;エチレンジアミン;N-ベンジルフェネチルアミン;トリヒドロキシメチルアミノエタンが挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書において同じ意味で使用される「製剤」、「医薬組成物」および「組成物」という用語は、対象に投与される物質の組成物を指す際に使用される用語と同じ意味で使用される。
「薬学的に許容される」とは、対象(特にヒト)の治療に適合することを意味する。
「薬剤」は、生物学的活性を有し、かつ治療に使用してもよい活性薬剤を指す。また、「薬剤」という用語は、「少なくとも1つの薬剤」、「化合物」または「少なくとも1つの化合物」と同じ意味で使用され、どのような形態の薬剤を指してもよく、例えば、薬剤の誘導体、類似体、塩またはプロドラッグを指してもよい。薬剤は、様々な形態であってもよく、分子複合体の構成要素であってもよく、薬学的に許容される塩(例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸、硝酸塩、ホウ酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩およびサリチル酸塩)であってもよい。また、「薬剤」は、医薬品分子もしくは医薬品化合物、治療分子もしくは治療化合物、マトリックス形成分子もしくはマトリックス形成化合物、ポリマー、合成分子もしくは合成化合物、天然分子もしくは天然化合物、またはこれらの任意の組み合わせを指してもよい。
いくつかの実施形態において、前記組成物は、損傷を受けた組織の修復もしくは再生、またはウイルス感染症、真菌感染症もしくは細菌感染症もしくはそれらの後遺症からの回復の向上を必要とする対象において、損傷を受けた組織の修復もしくは再生、またはウイルス感染症、真菌感染症もしくは細菌感染症もしくはそれらの後遺症からの回復の向上に使用するための、治療有効量の小型運動性幹細胞(SMS細胞)を含む。いくつかの実施形態において、前記ウイルス感染症、真菌感染症または細菌感染症は、どのような細菌、真菌またはウイルスによる感染症であってもよく、細菌、真菌またはウイルスのどのような組み合わせによる感染症であってもよく、このような細菌、真菌またはウイルスとして、例えば、コロナウイルス、ポックスウイルス、痘瘡ウイルス、マールブルグウイルス、フラビウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、RSウイルス、風疹ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトパピローマウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイルス、JCウイルス、ラブドウイルス、ロタウイルス、ライノウイルス、アデノウイルス、パピローマウイルス、パルボウイルス、ピコルナウイルス、ポリオウイルス、ハンタウイルス、フィロウイルス、コクサッキーウイルス、ウマ脳炎ウイルス、リフトバレー熱ウイルス、アルファウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、肺炎、肺炎連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、インフルエンザ菌、モラクセラ・カタラーリス、嫌気性細菌、グラム陰性細菌、マイコプラズマ・ニューモニエ、クラミジア・ニューモニエ、A群連鎖球菌、肺炎桿菌、レジオネラ・ニューモフィラ、化膿連鎖球菌、ストレプトコッカス・アガラクティエ、ペプトストレプトコッカス属、ジフテリア菌、百日咳菌、ヒト結核菌、緑膿菌、大腸菌、クルブラリア属、ニューモシスチス属、クリプトコッカス属、ヒストプラスマ・カプスラーツム、アスペルギルス属、ムコール目、フザリウム属、スケドスポリウム属、ペニシリウム属、またはこれらの任意の組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態において、前記ウイルス感染症は、MERS-CoV感染症、SARS-CoV感染症またはSARS-CoV-2感染症である。いくつかの実施形態において、前記SMS細胞は、末梢血から得られた細胞である。いくつかの実施形態において、前記SMS細胞は対象から得られたものであり、この細胞の該対象への投与は自家投与である。いくつかの実施形態において、前記SMS細胞は、対象とは別の個体から得られたものであり、この細胞の該対象への投与は同種投与である。いくつかの実施形態において、前記組成物によって、Dickkopf関連タンパク質1(DKK1)、N-アシルグルコサミン2-エピメラーゼ(RENBP)、増殖/分化因子15(GDF15)、dermokine(DMKN)、フェリチン軽鎖(FTL)、トリプトファン2,3-ジオキシゲナーゼ(TDO2)、アポリポタンパク質E(APOE)、キチナーゼ3様タンパク質1(CHI3L1)、もしく核受容体サブファミリー4グループAメンバー2(NR4A2)、またはこれらの任意の組み合わせが前記対象においてアップレギュレートされる。いくつかの実施形態において、前記組成物によって、インターロイキン11(IL-11)、SPRYドメイン含有SOCSボックスタンパク質1(SPSB1)、シトクロムP450 26B1(CYP26B1)、もしくはfrizzled-8(FZD8)、またはこれらの任意の組み合わせが前記対象においてダウンレギュレートされる。
いくつかの実施形態において、前記組成物は、例えば、外用投与、経呼吸器投与、局所投与などの、対象に適した投与方法に応じて製剤化される。いくつかの実施形態において、本開示の方法は、全身投与、経腸投与または非経口投与も想定しており、例えば、吸入投与、鼻腔内投与、皮下投与、腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、動脈内投与、経口投与、腸内投与、真皮下投与、経皮投与、舌下投与、経頬投与、直腸投与または膣内投与なども想定している。いくつかの実施形態において、前記組成物は、ネブライザーを使用した投与用に製剤化され、この製剤は、肺に吸入されるか、または吸入器に導入され、この吸入器を使用して、鼻腔、副鼻腔または咽頭に前記組成物を導入することができる。
いくつかの実施形態において、前記組成物は、投与方法に応じてエアロゾルとして製剤化され、例えば、吸入器またはネブライザーに適した吸入製剤に製剤化されるか、または鼻腔内用製剤に製剤化される。いくつかの実施形態において、このような製剤は、加圧定量吸入器(pMDI)、乾燥粉末吸入器(DPI)またはソフトミスト吸入器(SMI)に適している。
さらに、いくつかの実施形態において、炎症性疾患の治療または抑制のための、本明細書に開示される組成物のいずれかの使用が開示される。いくつかの実施形態において、前記炎症性疾患は、肺の炎症性疾患である。いくつかの実施形態において、前記炎症性疾患は線維症を含む。いくつかの実施形態において、前記線維症は、肺線維症、肝線維症、腎線維症または心線維症である。いくつかの実施形態において、前記炎症性疾患は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を含む。いくつかの実施形態において、前記炎症性疾患は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を含む。いくつかの実施形態において、前記炎症性疾患は、ウイルス感染症、真菌感染症または細菌感染症に関連している。いくつかの実施形態において、前記ウイルス感染症は、コロナウイルス感染症である。いくつかの実施形態において、前記ウイルス感染症は、SARS-CoV感染症、MERS-CoV感染症またはSARS-CoV-2感染症である。
いくつかの実施形態において、前記組成物は、治療有効量の少なくとも1種の追加の化合物をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記少なくとも1種の追加の化合物は、アジスロマイシンなどの抗生物質;ボリコナゾール、アムホテリシンB、イトラコナゾールなどの抗真菌剤;またはデキサメタゾン、回復期血清、トシリズマブ、サリルマブ、リバビリン、ファビピラビル、ダルナビル、ガリデシビル、インターフェロンα、インターフェロンβ、ロピナビル、リトナビル、レムデシビル、トリアザビリン、ウミフェノビル、もしくはウイルス感染症の治療、抑制もしくは管理に使用される公知のその他の薬剤もしくはワクチン、もしくはウイルス感染症の治療、抑制もしくは管理を目的として開発されたその他の薬剤もしくはワクチンなどのワクチンもしくは抗ウイルス剤である。
いくつかの実施形態において、前記少なくとも1種の追加の化合物は、薬学的に許容される担体、保存剤、酸化防止剤、希釈剤もしくは添加剤、またはこれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態において、前記少なくとも1種の追加の化合物は担体である。本明細書において、「担体」は、細胞または組織への化合物の取り込みを促進する化合物を指す。代表的な担体として、水、生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール、飽和または不飽和の植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、ロウ、ポリエチレンポリオキシプロピレンブロック重合体、トウモロコシデンプンやバレイショデンプンなどのデンプン、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
いくつかの実施形態において、前記少なくとも1種の追加の化合物は希釈剤である。本明細書において、「希釈剤」は、薬理活性を持たないが、薬学的に必要となったり所望されたりすることがある、医薬組成物中の成分を指す。例えば、希釈剤は、効力のある薬剤の量が少なすぎるために製造および/または投与ができない場合に、このような薬剤の体積を増加させるために使用してもよい。さらに、希釈剤は、注射、経口摂取または吸入により投与される薬剤を溶解するための液体であってもよい。当技術分野における希釈剤の一般的な形態は、緩衝水溶液であり、例えば、ヒトの血液の組成を模倣したリン酸緩衝生理食塩水などが挙げられるが、これに限定されない。
いくつかの実施形態において、前記少なくとも1種の追加の化合物は添加剤である。本明細書において、「添加剤」は、体積、粘稠性、安定性、結合力、滑沢性、崩壊力など(ただしこれらに限定されない)を医薬組成物に付与することを目的として医薬組成物に添加される不活性物質を指す。「希釈剤」は添加剤の一種である。所望の特性を有する添加剤としては、保存剤、アジュバント、安定剤、溶媒、緩衝液、希釈剤、可溶化剤、洗浄剤、界面活性剤、キレート剤、酸化防止剤、アルコール、ケトン、アルデヒド、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸、塩、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、塩化カリウム、リン酸カリウム、硫酸マグネシウム、糖類、デキストロース、デキストラン、フルクトース、マンノース、ラクトース、ガラクトース、スクロース、ソルビトール、セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、グリセリン、ポリビニルアルコール、ポビドン、プロピレングリコール、血清、アミノ酸、ポリエチレングリコール、ポリソルベート20、ポリソルベート80、デオキシコール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、オクチルフェノールエトキシレート、塩化ベンゼトニウム、チメロサール、ゼラチン、エステル、エーテル、2-フェノキシエタノール、尿素もしくはビタミン類、またはこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。医薬組成物中における添加剤の含有量は、0%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、100%(w/w)、またはこれらの数値のいずれか2つを上下限とする範囲内の重量%であってもよい。
いくつかの実施形態において、前記少なくとも1つの追加の化合物は、ウイルス感染症(例えばSARS-CoV-2感染症)、真菌感染症もしくは細菌感染症またはそれらの後遺症の治療または抑制に使用してもよい付加療法である。例えば、この付加療法は、抗炎症性化合物、免疫療法、鎮痛剤、またはその他の適切な治療法であってもよい。本明細書において、「抗炎症性化合物」は、炎症の治療用の化合物を指す。抗炎症性化合物として、例えば、非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs;アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、サリチル酸メチル、ジフルニサル、インドメタシン、スリンダク、ジクロフェナク、ケトプロフェン、ケトロラック、カルプロフェン、フェノプロフェン、メフェナム酸、ピロキシカム、メロキシカム、メトトレキサート、セレコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、エトリコキシブ、ニメスリドなど)、副腎皮質ホルモン(プレドニゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、トリアムシノロンまたはフルチカゾン)、ラパマイシン、高密度リポタンパク質(HDL)またはHDLコレステロールを上昇させる化合物(ロシグリタゾン)、Rhoキナーゼ阻害剤、抗マラリア剤(ヒドロキシクロロキンまたはクロロキン)、アセトアミノフェン、グルココルチコイド、ステロイド、βアゴニスト、抗コリン作用薬、メチルキサンチン、金注射剤(金チオリンゴ酸ナトリウム)、スルファサラジン、ペニシラミン、抗血管新生薬、ダプソン、ソラレン、抗ウイルス剤、またはスタチンが挙げられる。
前記少なくとも1種の追加の化合物の有無、量、分量および割合は、本発明の組成物が、外用投与用製剤、経口投与用製剤、静脈内投与用製剤、その他の種類の製剤のいずれであるかという、本発明の組成物の処方に応じて決定してもよい。また、前記少なくとも1種の追加の化合物の有無、量、分量および割合は、創傷の種類、創傷の重症度、疼痛、感染症もしくは炎症の重症度、または意図する治療に応じて決定してもよい。したがって、前記少なくとも1種の追加の化合物の量は、例えば、0.001%~90%の範囲の量であってもよく、例えば、0.001%、0.005%、0.01%、0.05%、0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、60%、70%、80%もしくは90%、またはこれらの数値のいずれか2つを上下限とする範囲内の量であってもよい。
数値範囲が示されている場合、その範囲の上下限値、およびその上下限値の間の数値も、前記実施形態に包含される。
本明細書において、「%w/w」または「%wt/wt」は、本明細書に照らして理解される一般的な意味を有し、本発明の組成物の総重量に対する成分または薬剤の重量の割合に100を掛けたものを指す。本明細書において、「%v/v」または「%vol/vol」は、本明細書に照らして理解される一般的な意味を有し、本発明の組成物の総液体体積に対する化合物、物質、成分または薬剤の液体体積の割合に100を掛けたものを指す。
本発明の様々な実施形態を説明するため、本明細書では概して肯定的な表現により本発明を開示している。本発明は、物質または材料、方法の工程および条件、プロトコルまたは手順などの、本発明の主題のすべてまたはその一部が除外された実施形態も包含する。
以下の実施例において、前述した実施形態の態様のいくつかをさらに詳細に開示するが、以下の実施例は本開示の範囲をなんら限定するものではない。本明細書および請求項で述べるように、その他の多くの実施形態も本発明の範囲内に含まれることを当業者であれば十分に理解できるであろう。
実施例1
組成物の調製用のSMS細胞の単離
本明細書で提供される組成物に使用するためのSMS細胞の単離方法を以下の実施例に示す。
増殖培地を入れたT25フラスコで小型運動性幹細胞(small mobile stem(SMS)cells)を増殖させる(37℃、5%CO2)。このSMS細胞集団は、未分化のSMS細胞とSMS細胞由来の分化細胞からなる不均一な細胞集団を含んでいてもよい。
未分化SMS細胞は浮遊画分と接着画分の両方に存在する。浮遊画分の大部分は未分化SMS細胞が占める。
過去に報告されているように、特徴的な形態を有することから識別可能な浮遊した未分化SMS細胞は、T25フラスコ内で培養したSMS細胞の培地から得られる。
未分化のSMS細胞は分画遠心法によって単離することができる。まず、低速で遠心分離して細胞集塊または分化細胞を除去し、次いで高速で遠心分離して未分化のSMS細胞を回収する。別の方法として、濾過によって未分化細胞を単離してもよく、例えば、フィルターの孔径を3~5μmまで徐々に小さくしていく分別濾過により単離してもよい。単離した未分化のSMS細胞は、顕微鏡下で均一性を確認する。
未分化のSMS細胞は、ポリプロピレン製チューブ(例えばTechno Plastic Products AG(TPP)社によって提供されている15mlのバイオリアクターチューブ)で増殖させる。
増殖培地として、例えば、糖濃度の高い基礎培地(ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、[+]6g/L D-グルコース、[-]ピルビン酸ナトリウム、[-]L-グルタミン、[-]フェノールレッド)に、1%GlutaMAXTM-I(100×)、10%仔ウシ血清および5μg/mLヒトインスリンを添加したものを使用する。別の方法では、仔ウシ血清を含まない培地を使用することもできる。旋回振盪により細胞を時折懸濁させる。
週に1回、4200×gで15分間遠心分離してSMS細胞を沈殿させ、完全培地を交換する。遠心分離の速度は、3000×g、3500×g、4000×g、4100×g、4200×g、4300×g、4500×gもしくは5000×gであってもよく、またはこれらの速度のいずれか2つを上下限とする範囲内の速度であってもよく、これに応じて遠心時間を調節する。
このような条件下では、培地の量(細胞の密集度)に応じてSMS細胞の増殖が制限される。SMS細胞の均一性は顕微鏡下で評価し、SMS細胞の数は、分光光度計による細胞懸濁液の濁度の評価、および/または高速遠心分離後のペレットの大きさの測定により推定する。
SMS細胞の増殖能は、増殖培地を入れた新しいチューブにSMS細胞を接種することによって評価する。SMS細胞の大部分は、細胞集塊を形成することなく個々の細胞として増殖し、この条件下では大部分が未分化のまま増殖する。懸濁培養はスケールアップすることができ、培地の量を増加することによって、得られる細胞の数を増やすことができる。
実施例2
組成物を使用したウイルス感染症の治療
本明細書で提供されるコロナウイルス感染症の治療用組成物の使用を以下の実施例で示す。
実施例1において単離したSMS細胞をエアロゾル化してエアロゾル組成物を調製するか、吸入用の鼻腔内製剤として製剤化するか、あるいは静脈内投与製剤として調製する。COVID-19感染症の検査で陽性を示す患者として(RT-PCR検査または抗体検査で確認)、重篤な状態のSARS-CoV-2患者を選択する。選択した対象を、対照群、試験群および様々な濃度のSMSで処置する群に無作為に分ける。
処置期間は最長で1週間とし、エアロゾル化したSMS細胞または静脈内投与用SMS細胞を7日間、毎日投与することによって対象を治療する。治療を終えた後、60日間にわたり定期的に評価を行う。具体的には、治療後1日目~7日目は毎日評価を行い;治療後8日目~14日目は週2回評価を行い、治療後3週目~4週目は週1回評価を行い、残りの評価期間は2週ごとに評価を行う。
いくつかの帰結に基づいて対象を評価する。対象の評価方法としては、例えば、機械的人工呼吸からウィーニングまでの時間、ICUでのモニタリングを終了するまでの時間、もしくは昇圧剤の投与を終了するまでの時間から測定した臨床的改善までの時間;死亡率;有害事象および重篤な有害事象の頻度およびその特性;忍容性;肺機能検査;リンパ球数;全血球計算値;生化学的日常検査;ならびに/または胸部放射線画像検査が挙げられる。
本明細書に記載の組成物で治療した対象は、生存率が向上し、ウイルス感染症に関連した症状が改善する。
実施例3
SMS細胞療法の動物安全性試験
5%ラット血清を含む乳酸リンゲル溶液に生きたSMS細胞を懸濁して製剤を調製し、この懸濁製剤を静脈内投与により反復投与した場合の急性毒性を評価した。この研究は、以下の研究プロトコルと適切な標準作業手順書に従って行った。
2匹(n=2)の雄性Sprague Dawleyラットを使用した。試験群と対照群に1匹ずつ無作為に割り当てた。試験物質と対照物質を調製し、25G針を用いて尾静脈から約0.1mL/秒の速度で徐々に静脈内投与した。
試験物質:5%ラット血清(シグマ#R9759)を含む乳酸リンゲル溶液(B. Braun#L7500)に懸濁した生きたSMS細胞。
対照物質:5%ラット血清(シグマ#R9759)を含む乳酸リンゲル溶液(B. Braun#L7500)。
1日目、3日目および5日目に試験物質または対照物質を投与した。各投与量は、試験開始時の体重から計算した。
投与を行った当日は少なくとも3回ずつラットを個別に観察し、最後の投与を行った後は、少なくとも1日1回ラットを観察した。投与の当日(1日目)、8日目および14日目にラットの体重を測定し、体重の変化を観察した。試験の最終日(15日目)にラットを安楽死させ、体重を測定し、肉眼解剖を行った。試験の最終日(15日目)に、心臓穿刺により血液試料(1mL)を採取し、得られた血液試料を処理して血漿を得た。使用まで血漿を凍結保存した。
結果:
試験中、いずれのラットも健康に見え、有意な生物学的異常は観察されなかった。投与後、試験ラットでも対照ラットでもわずかに体重が減少したが、8日目と14日目に全体的な体重増加が見られた。肉眼解剖時に異常は認められなかった。
結論:
試験物質と対照物質はいずれも、ラット1匹あたり約0.2mLの用量で1日目、3日目および5日目に静脈内投与した場合、高い忍容性を示した。試験したラットのいずれにおいても、毒性の徴候は観察されず、屠殺前に体重の増加が見られた。肉眼解剖において、主要な臓器はいずれも正常であった。結果をまとめたものを表1~3に示す。
Figure 2023517083000002
Figure 2023517083000003
Figure 2023517083000004
実施例4
SMS細胞と間葉系幹細胞の相互作用
ヒト脂肪由来間葉系幹細胞へのSMS細胞の接着
市販のヒト脂肪由来初代間葉系幹細胞(StemProTMヒト脂肪由来幹細胞、Gibco、#R7788115)は、Thermo Fisher Scientific社から購入した。液体窒素中で凍結保存されたヒト脂肪由来間葉系幹細胞を解凍し、10%のヒト血清と0.2%の抗生物質(ゲンタマイシン/アムホテリシン)を添加したDMEM培地を入れた24ウェル培養プレートにおいて2100個/cm2の密度で5日間培養した。接着培養したヒト脂肪由来間葉系幹細胞に、蛍光染色したSMS細胞を加えた。この共培養物を一晩インキュベートし、各ウェルを増殖培地で洗浄した。倒立型蛍光顕微鏡で撮影を行った。撮影した画像の蛍光から、SMS細胞がヒト脂肪由来間葉系幹細胞に強力に接着することが確認された(図1A)。
接着培養したヒト脂肪由来間葉系幹細胞と、これに接着したSMS細胞を、標準的なトリプシン処理プロトコルによりウェルの表面から剥がして、フローサイトメーター(CytoFLEX)で分析し、FITCの蛍光を検出した。ヒト脂肪由来間葉系幹細胞において蛍光が陽性であったことから、SMS細胞がヒト脂肪由来間葉系幹細胞に強力に接着し、この接着が維持されることが示された(図1B)。これら2種の細胞間の接着は、トリプシン処理によりヒト脂肪由来間葉系幹細胞をウェルから剥がした後でも維持される。
SMS細胞によるヒト脂肪由来間葉系幹細胞の刺激
市販のヒト脂肪由来初代間葉系幹細胞(StemProTMヒト脂肪由来幹細胞、Gibco、#R7788115)は、Thermo Fisher Scientific社から購入した。液体窒素中で凍結保存されたヒト脂肪由来間葉系幹細胞を解凍し、10%のヒト血清と0.2%の抗生物質(ゲンタマイシン/アムホテリシン)を添加したDMEM培地を入れた24ウェル培養プレートにおいて2100個/cm2の密度で5日間培養した。フラスコにヒト脂肪由来間葉系幹細胞を移して2日間(54.5時間)培養した後、「SMSで処理」と表示したフラスコにSMS細胞を加えた。5日後、コンフルエントに達する前に、SMS細胞を加えた(「処理」した)ヒト脂肪由来間葉系幹細胞またはSMS細胞を加えなかった(対照)ヒト脂肪由来間葉系幹細胞を、標準的なトリプシン処理プロトコルにより剥離させて同時に回収した。Countess Automated Cell Counter(インビトロジェン)において適切なゲートパラメーター(8~48μm)を用いて、回収した細胞を計数した。細胞を計数した結果から、最適なインビトロ条件下で培養したヒト脂肪由来間葉系幹細胞にSMS細胞を加えると、ヒト脂肪由来間葉系幹細胞の成長と増殖がさらに刺激されることが示された(図1C)。
実施例5
SMS細胞と線維芽細胞の相互作用
ヒト線維芽細胞へのSMS細胞の接着
市販のヒト皮膚線維芽細胞はLonza Scientific社(CC-2511)から購入した。液体窒素中で凍結保存されたヒト由来線維芽細胞を解凍し、10%のヒト血清と0.2%の抗生物質(ゲンタマイシン/アムホテリシン)を添加したDMEM培地を入れた24ウェル培養プレートにおいて2100個/cm2の密度で培養した。培養した線維芽細胞に、蛍光染色したSMS細胞を加えた。この共培養物を一晩インキュベートし、各ウェルを増殖培地で洗浄した。倒立蛍光顕微鏡で撮影を行った。撮影した画像の蛍光から、SMS細胞がヒト皮膚線維芽細胞に強力に接着することが確認された(図2A)。
接着培養したヒト線維芽細胞と、これに接着したSMS細胞を、標準的なトリプシン処理剥離プロトコルによりウェルの表面から剥がして、フローサイトメーター(CytoFLEX)で分析し、FITCの蛍光を検出した。フローサイトメトリーによる分析の結果、ヒト線維芽細胞において蛍光が陽性であったことから、SMS細胞がヒト線維芽細胞に強力に接着し、この接着が維持されることが示された(図2B)。これら2種の細胞間の接着は、トリプシン処理によりヒト線維芽細胞をウェルから剥がした後でも維持される。
SMS細胞による線維芽細胞の増殖の抑制
10%ウシ胎児血清を添加したDMEM培地を入れた48ウェルプレートに、線維芽細胞(Fb)を1500個/cm2の密度で播種し、標準的な培養条件(37℃、10%CO2)でインキュベートした。24時間後に培地を交換した。表4に示すように、様々な希釈倍率(1、1/3、1/9、1/27、1/81またはSMS細胞を加えない対照)のSMS細胞をそれぞれ三連で各ウェルに加えた。10%ウシ胎児血清を添加したDMEM培地中で、この共培養物を標準的な培養条件(37℃、10%CO2)で4日間インキュベートした。インキュベーション後、細胞を洗浄し、トリプシン処理により剥離し、Countess Automated Cell Counter(インビトロジェン)を用いて計数した。細胞を計数した結果から、SMS細胞への暴露量に比例して線維芽細胞の増殖が有意に抑制されたことが示された(図2C)。
Figure 2023517083000005
実施例6
SMS細胞と肺胞上皮細胞の相互作用
初代2型肺胞上皮細胞の単離および培養
市販のヒト初代1型肺胞上皮細胞とヒト初代2型肺胞上皮細胞は、ScienCell Research Laboratories社(HPAEpiC、#3200)から購入した。液体窒素中で凍結保存されたヒト初代1型肺胞上皮細胞とヒト初代2型肺胞上皮細胞を解凍した。2%ウシ胎児血清、1%上皮細胞増殖サプリメント(ScienCell、EpiCGS、#4152)および1%ペニシリン/ストレプトマイシンを添加した肺胞上皮細胞培地(ScienCell、AEpiCM、#3201)を入れて平衡化させたポリ-L-リジンコートT75培養フラスコにバイアルの内容物を移し、5%CO2インキュベーターにおいて37℃で培養した。播種密度は10,000個/cm2とした。週に3回培地を交換した。連続培養を2週間行うことによって2型肺胞上皮細胞を増殖させ、増殖性のない1型肺胞上皮細胞を排除した。トリプシン処理により、ヒト初代2型肺胞上皮細胞を培養容器から剥離し、凍結保存培地中で凍結した。
単離後に接着培養したヒト初代2型肺胞上皮細胞に、蛍光染色したSMS細胞を加えた。この共培養物を一晩インキュベートし、各ウェルを増殖培地で洗浄した。倒立蛍光顕微鏡を用いて撮影を行った。撮影した画像から、SMS細胞がヒト初代2型肺胞上皮細胞に強力に接着することが確認された(図3A)。
接着培養したヒト初代2型肺胞上皮細胞と、これに接着したSMS細胞を、標準的なトリプシン処理剥離プロトコルによりウェルの表面から剥がして、フローサイトメーター(CytoFLEX)で分析し、FITCの蛍光を検出した。フローサイトメトリーによる分析の結果、ヒト初代2型肺胞上皮細胞において蛍光が陽性であったことから、SMS細胞がヒト初代2型肺胞上皮細胞に強力に接着し、この接着が維持されることが示された(図3B)。これら2種の細胞間の接着は、トリプシン処理により肺胞上皮細胞をウェルから剥がした後でも維持される。
ウシ胎児血清の非存在下でのSMS細胞によるヒト初代2型肺胞上皮細胞の刺激
単離後に凍結保存したヒト初代2型肺胞上皮細胞を、2%ウシ胎児血清の非存在下において、1%上皮細胞増殖サプリメントを添加した肺胞上皮細胞培地中で解凍した。
フラスコに2型肺胞上皮細胞を移して3日間(74.5時間)培養した後、「SMSで処理」と表示した2型肺胞上皮細胞のフラスコにSMS細胞を加えた。8日後、コンフルエントに達する前に、SMS細胞を加えた(「処理」した)細胞またはSMS細胞を加えなかった(対照)細胞を、標準的なトリプシン処理プロトコルにより剥離させることによって同時に回収した。Countess Automated Cell Counter(インビトロジェン)において適切なゲートパラメーター(8~60μm)を用いて、回収した細胞を計数した。細胞を計数した結果から、血清を取り除いたインビトロ条件下で培養したヒト初代2型肺胞上皮細胞にSMS細胞を加えると、ヒト初代2型肺胞上皮細胞の成長と増殖が刺激されることが示された(図3C)。
SMS細胞による刺激の存在下とウシ胎児血清の非存在下におけるヒト2型肺胞上皮細胞の差次的遺伝子発現
SMS細胞を加えて培養したヒト2型肺胞上皮細胞と、SMS細胞を加えずに培養したヒト2型肺胞上皮細胞(前記参照)を使用して、差次的遺伝子発現を検出した。各細胞を遠心分離し、事前に冷却しておいたPBSに再懸濁して、各細胞の密度を100μLあたり300,000個以上に調整した。ペレットが崩れないように上清を除去し、-80℃の冷凍庫に入れて瞬間凍結した。ペレットをドライアイスとともに梱包してActive Motif社に送付し、mRNAの分析を行った。細胞からトータルRNAを単離し、シーケンスを行って個々のRNAを同定し、その相対量を評価した。DESeq2(ワールド・ワイド・ウェブ上のbioconductor.org/packages/release/bioc/html/DESeq2.htmlから利用可能)を用いて、倍率変化と、収縮重心法(shrunken centroid)により求めたlog2倍率変化(logFC)とを算出した。ヒト2型肺胞上皮細胞のRNA解析の結果から、インビトロでのSMS細胞との相互作用によって、764個の遺伝子がアップレギュレートされ、546個の遺伝子がダウンレギュレートされたことが示された(表5)。SMS細胞で処理した群と対照群との間で変化が最も大きかった上位40個の遺伝子のうち、代表的な13個の遺伝子と、それらの発現量を表6に示す。収縮重心法で求めた未処理条件のlogFCと処理条件のlogFCの比が負の値の場合、SMS細胞で処理した後に遺伝子の発現量が増加したことを示し、収縮重心法で求めた未処理条件のlogFCと処理条件のlogFCの比が正の値の場合、SMS細胞で処理した後に遺伝子の発現量が減少したことを示す。DESeq2に関する詳しい情報は、Love et al. “Moderated estimation of fold change and dispersion for RNA-seq data with DESeq2” Genome Biology (2014) 15(12):550を参照されたい(この文献は引用によりその全体が本明細書に援用される)。収縮重心法により求めたlogFCは、カウント数が少ない場合や、ばらつきが大きい場合が考慮に入れられたより正確なlog2倍率変化の推定値であり、差次的遺伝子発現の結果には有意な影響を及ぼさない。
SMS細胞で処理した2型肺胞上皮細胞においてアップレギュレートされた遺伝子の例として、Dickkopf関連タンパク質1(DKK1)、N-アシルグルコサミン2-エピメラーゼ(RENBP)、増殖/分化因子15(GDF15)、dermokine(DMKN)、フェリチン軽鎖(FTL)、トリプトファン2,3-ジオキシゲナーゼ(TDO2)、アポリポタンパク質E(APOE)、キチナーゼ3様タンパク質1(CHI3L1)、および核受容体サブファミリー4グループAメンバー2(NR4A2)が挙げられる。
SMS細胞で処理した2型肺胞上皮細胞においてダウンレギュレートされた遺伝子の例として、インターロイキン11(IL-11)、SPRYドメイン含有SOCSボックスタンパク質1(SPSB1)、シトクロムP450 26B1(CYP26B1)、およびfrizzled-8(FZD8)が挙げられる。
調節された遺伝子の同定結果から、SMS細胞による治療は、炎症抑制効果、血管直径拡大効果、細胞分化抑制効果、細胞増殖増強効果、および病原体に対する保護強化効果を有することが示された。
Figure 2023517083000006
Figure 2023517083000007
実施例7
SMS細胞による炎症性疾患の治療
対象は炎症性疾患を呈する。炎症性疾患の例として、肺線維症などの線維症;慢性閉塞性肺疾患(COPD);またはウイルス感染症(例えばSARS-CoV-2感染症)などの病原体の感染による炎症が挙げられるが、これらに限定されない。
SMS細胞の医薬組成物は、前記対象に腸内投与、経口投与、鼻腔内投与、非経口投与、皮下投与、筋肉内投与、皮内投与または静脈内投与される。この医薬組成物は、103個、104個、105個、106個、107個、108個、109個、1010個もしくは1011個のSMS細胞、またはこれらの数値のいずれか2つを上下限とする範囲内の個数のSMS細胞を含んでいてもよい。前記医薬組成物の投与回数は、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回もしくは10回であってもよく、少なくとも1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9または10回であってもよい。複数回の投与を行う場合、投与間隔は、1日ごと、2日ごと、3日ごと、4日ごと、5日ごと、6日ごと、7日ごと、8日ごと、9日ごと、10日ごと、11日ごと、12日ごと、24日ごと、36日ごと、または48日ごとであってもよく、1週ごと、2週ごと、3週ごと、4週ごと、5週ごと、6週ごと、7週ごと、8週ごと、9週ごと、10週ごと、11週ごと、12週ごと、24週ごと、36週ごと、または48週ごとであってもよく、これらの時間のいずれか2つを上下限とする範囲内の時間であってもよい。
SMS細胞の医薬組成物を投与した後、対象において炎症性疾患またはその症状の改善を観察する。
いくつかの実施形態において、SMS細胞の医薬組成物は、別の標準治療を併用して投与してもよい。例えば、炎症性疾患がウイルス感染症に関連したものである場合、抗ウイルス治療を対象に行ってもよく、この抗ウイルス治療として、例えば、デキサメタゾン、回復期血清、トシリズマブ、サリルマブ、リバビリン、ファビピラビル、ダルナビル、ガリデシビル、インターフェロンα、インターフェロンβ、ロピナビル、リトナビル、レムデシビル、トリアザビリン、ウミフェノビル、またはその他の標準的な抗ウイルス治療などが挙げられる。
前述の実施形態の少なくともいくつかにおいて、これらの実施形態において使用された1つ以上の構成要素は、技術的に不可能な場合を除き、別の実施形態の構成要素と入れ替えて使用することができる。請求項に記載された主題の範囲から逸脱することなく、前記の方法および構造に前述以外の様々な省略、付加および改変を行ってもよいことは、当業者であれば容易に理解できるであろう。このような改変や変更はいずれも、添付の請求項で定義されている本発明の主題の範囲内にあると見なされる。
本明細書で使用されている実質的に複数形および/または単数形の用語は、当業者であれば、本明細書の記載および/または用途に適するように、複数形の用語を単数のものとして、かつ/または単数形の用語を複数のものとして解釈することができる。本発明を明確なものとするために、様々な単数形/複数形の用語が意図的に使い分けられている。
当業者であれば、本明細書に記載の用語、特に添付の請求項(例えば添付の請求項の本体部)に記載の用語は、通常、「オープンエンドな」用語であることを理解できるであろう(例えば、「含んでいる(including)」という用語は、「含んでいるが、これらに限定されない」と解釈されるべきであり、「有する(having)」という用語は、「少なくとも有する」と解釈されるべきであり、「含む(include)」という用語は「含むが、これらに限定されない」と解釈されるべきである)。さらに、特定の数が請求項に記載されている場合、前述のような意図も請求項に明確に記載されており、特定の数が記載されていない場合はそのような意図も存在しないことも、当業者であれば理解できるであろう。具体的に説明をすれば、例えば、後述の特許請求の範囲では、請求項を定義するために、「少なくとも1つ」や「1つ以上」といった前置きが記載されている場合がある。しかしながら、このような前置きが記載されているからといって、不定冠詞「a」または「an」を使用して構成要素が記載された請求項を、1つのみの構成要素を含む実施形態に限定すべきではなく、たとえ同じ請求項内に「1つ以上」または「少なくとも1つ」といった前置きと「a」または「an」といった不定冠詞とが含まれていたとしても、1つのみの構成要素を含む実施形態に限定すべきではない(例えば、「a」および/または「an」は、「少なくとも1つ」または「1つ以上」を意味すると解釈されるべきである)。これは、定冠詞を使用して記載された請求項でも同じである。また、請求項に特定の数が明確に記載されていたとしても、「少なくとも」記載されたその数であるということを当業者であれば理解できるであろう(例えば、修飾語を伴わない「2つ」という記載は、「少なくとも2つ」または「2つ以上」を意味する)。さらに、「A、BおよびCのうちの少なくとも1つ」といった頻用語句が使用されている場合、通常、そのような語句は、当業者がその語句を通常理解する意味で記載されている(例えば、「A、BおよびCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみを有するシステム、Bのみを有するシステム、Cのみを有するシステム、AとBを有するシステム、AとCを有するシステム、BとCを有するシステム、ならびに/またはA、BおよびCを有するシステムなどを包含するが、これらに限定されない)。また、「A、BまたはCのうちの少なくとも1つ」といった頻用語句が使用されている場合、通常、そのような語句は、当業者がその語句を通常理解する意味で記載されている(例えば、「A、BまたはCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみを有するシステム、Bのみを有するシステム、Cのみを有するシステム、AとBを有するシステム、AとCを有するシステム、BとCを有するシステム、ならびに/またはA、BおよびCを有するシステムなどを包含するが、これらに限定されない)。さらに、2つ以上の選択肢を表すための選言的用語および/または選言的語句は、明細書、特許請求の範囲または図面のいずれにおいても、記載された用語のうちの1つ、記載された用語のいずれか、または記載された用語の両方を含む場合があると当業者であれば理解できるであろう。例えば、「AまたはB」という表現は、「Aのみ」または「Bのみ」または「AおよびB」を含む場合がある。
さらに、本開示の特徴または態様がマーカッシュ形式で記載されている場合、当業者であれば、マーカッシュ形式で記載された各メンバーまたはそれらからなるサブグループについても記載されていると理解できるであろう。
詳細な説明の提供などの何らかの目的で本明細書に記載された範囲はいずれも、あらゆる可能な部分範囲およびその組み合わせも包含することを、当業者であれば理解できるであろう。前記範囲はいずれも、同じ範囲を少なくとも等分、3等分、4等分、5等分、10等分などに分割したものも十分に記載されており、このような分割された範囲で本発明を実施可能であることを容易に理解できるであろう。例えば、本明細書に記載の範囲はいずれも、容易に、低域、中域、高域といった三等分などにすることができるが、これに限定されない。また、「以下」、「少なくとも」、「よりも大きい」、「未満」といった用語はいずれも、記載された数値を含むとともに、前述したように、部分範囲に分割可能な範囲も指すことを当業者であれば理解できるであろう。さらに、当業者であれば、本明細書に記載の範囲は各メンバーを含むことを理解できるであろう。したがって、例えば、1~3つのメンバーを有する群は、1つのメンバーを有する群、2つのメンバーを有する群または3つのメンバーを有する群を指す。同様に、1~5つのメンバーを有する群は、1つのメンバーを有する群、2つのメンバーを有する群、3つのメンバーを有する群、4つのメンバーを有する群、または5つのメンバーを有する群などを指す。
本明細書において様々な態様および実施形態を述べてきたが、当業者であればその他の態様および実施形態も容易に理解できるであろう。本明細書において開示された様々な態様および実施形態は本発明を説明することを目的としたものであり、本発明をなんら限定するものではなく、本発明の範囲および要旨は以下の請求項によって示される。

Claims (63)

  1. 損傷を受けた組織の修復もしくは再生を促進もしくは向上させるか、ウイルス感染症、細菌感染症もしくは真菌感染症もしくはそれらの後遺症からの回復を向上させるか、または組織損傷を予防する方法であって、
    ウイルス感染症、細菌感染症もしくは真菌感染症もしくはそれらの後遺症に罹患している対象、または過去にウイルス感染症、細菌感染症もしくは真菌感染症もしくはそれらの後遺症に罹患した経験のある対象を選択する工程;および
    治療有効量の小型運動性幹細胞(small mobile stem(SMS)cells)を含む組成物を前記選択された対象に投与する工程
    を含む方法。
  2. 前記SMS細胞が、末梢血から得られる細胞である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記SMS細胞が、前記対象と同種の細胞である、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記SMS細胞が、前記対象から得られた自家細胞である、請求項1または2に記載の方法。
  5. 前記損傷を受けた組織が肺組織である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記組成物を投与することによって、肺胞細胞障害の減少もしくは抑制、呼吸器内皮細胞障害の減少もしくは抑制、損傷を受けた肺組織の修復の増加もしくは向上、損傷を受けた肺組織の再生の増加もしくは増強、もしくは肺線維症の発症の減少、またはこれらの任意の組み合わせが達成される、請求項5に記載の方法。
  7. 前記損傷を受けた組織が、ウイルス感染症、細菌感染症または真菌感染症によって損傷を受けた組織である、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記ウイルス感染症が、一本鎖RNAウイルス、二本鎖RNAウイルス、プラスセンス一本鎖RNAウイルス、マイナスセンス一本鎖RNAウイルス、二本鎖DNAウイルスまたは一本鎖DNAウイルスによって引き起こされたものである、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 前記ウイルス感染症、細菌感染症もしくは真菌感染症またはそれらの後遺症が、コロナウイルス、ポックスウイルス、痘瘡ウイルス、マールブルグウイルス、フラビウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、RSウイルス、風疹ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトパピローマウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイルス、JCウイルス、ラブドウイルス、ロタウイルス、ライノウイルス、アデノウイルス、パピローマウイルス、パルボウイルス、ピコルナウイルス、ポリオウイルス、ハンタウイルス、フィロウイルス、コクサッキーウイルス、ウマ脳炎ウイルス、リフトバレー熱ウイルス、アルファウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、肺炎、肺炎連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、インフルエンザ菌、モラクセラ・カタラーリス、嫌気性細菌、グラム陰性細菌、マイコプラズマ・ニューモニエ、クラミジア・ニューモニエ、A群連鎖球菌、肺炎桿菌、レジオネラ・ニューモフィラ、化膿連鎖球菌、ストレプトコッカス・アガラクティエ、ペプトストレプトコッカス属、ジフテリア菌、百日咳菌、ヒト結核菌、緑膿菌、大腸菌、クルブラリア属、ニューモシスチス属、クリプトコッカス属、ヒストプラスマ・カプスラーツム、アスペルギルス属、ムコール目、フザリウム属、スケドスポリウム属、ペニシリウム属、またはこれらの任意の組み合わせによる感染症によって引き起こされたものである、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
  10. 前記コロナウイルスが、MERS-CoV、SARS-CoVまたはSARS-CoV-2である、請求項9に記載の方法。
  11. 前記コロナウイルスが、SARS-CoV-2である、請求項9に記載の方法。
  12. 前記組成物が、エアロゾル化されたSMS細胞を含むこと、およびこのエアロゾル化されたSMS細胞を吸入により投与してもよいことを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
  13. 前記組成物が静脈内投与される、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
  14. 前記SMS細胞が、アジスロマイシンなどの抗生物質、ボリコナゾール、アムホテリシンB、イトラコナゾールなどの抗真菌剤、ワクチン、またはレムデシビルなどの抗ウイルス剤と組み合わせて投与される、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
  15. 前記ワクチンが、コロナウイルス、コレラ、デング熱、ジフテリア、ヘモフィルスインフルエンザ菌b型感染症、A型肝炎、B型肝炎、インフルエンザ、日本脳炎、髄膜炎菌性髄膜炎、百日咳、ポリオ、狂犬病、破傷風、結核、腸チフスおよび黄熱病の1種以上に対するワクチンである、請求項14に記載の方法。
  16. 前記ワクチンが、コロナウイルスCOVID-19ワクチンである、請求項14または15に記載の方法。
  17. 前記選択された対象に前記組成物を投与することによって、Dickkopf関連タンパク質1(DKK1)、N-アシルグルコサミン2-エピメラーゼ(RENBP)、増殖/分化因子15(GDF15)、dermokine(DMKN)、フェリチン軽鎖(FTL)、トリプトファン2,3-ジオキシゲナーゼ(TDO2)、アポリポタンパク質E(APOE)、キチナーゼ3様タンパク質1(CHI3L1)、もしく核受容体サブファミリー4グループAメンバー2(NR4A2)、またはこれらの任意の組み合わせが該対象においてアップレギュレートされる、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
  18. 前記選択された対象に前記組成物を投与することによって、インターロイキン11(IL-11)、SPRYドメイン含有SOCSボックスタンパク質1(SPSB1)、シトクロムP450 26B1(CYP26B1)、もしくはfrizzled-8(FZD8)、またはこれらの任意の組み合わせが該対象においてダウンレギュレートされる、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
  19. 損傷を受けた組織(肺組織など)の修復もしくは再生、またはウイルス感染症、細菌感染症もしくは真菌感染症もしくはそれらの後遺症からの回復の向上を必要とする対象において、損傷を受けた組織の修復もしくは再生、またはウイルス感染症、細菌感染症もしくは真菌感染症もしくはそれらの後遺症からの回復の向上に使用するための、治療有効量の小型運動性幹細胞(small mobile stem(SMS)cells)を含む組成物であって、前記ウイルス感染症、細菌感染症もしくは真菌感染症またはそれらの後遺症が、例えば、コロナウイルス、ポックスウイルス、痘瘡ウイルス、マールブルグウイルス、フラビウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、RSウイルス、風疹ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトパピローマウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイルス、JCウイルス、ラブドウイルス、ロタウイルス、ライノウイルス、アデノウイルス、パピローマウイルス、パルボウイルス、ピコルナウイルス、ポリオウイルス、ハンタウイルス、フィロウイルス、コクサッキーウイルス、ウマ脳炎ウイルス、リフトバレー熱ウイルス、アルファウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、肺炎、肺炎連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、インフルエンザ菌、モラクセラ・カタラーリス、嫌気性細菌、グラム陰性細菌、マイコプラズマ・ニューモニエ、クラミジア・ニューモニエ、A群連鎖球菌、肺炎桿菌、レジオネラ・ニューモフィラ、化膿連鎖球菌、ストレプトコッカス・アガラクティエ、ペプトストレプトコッカス属、ジフテリア菌、百日咳菌、ヒト結核菌、緑膿菌、大腸菌、クルブラリア属、ニューモシスチス属、クリプトコッカス属、ヒストプラスマ・カプスラーツム、アスペルギルス属、ムコール目、フザリウム属、スケドスポリウム属、ペニシリウム属、またはこれらの任意の組み合わせであり、好ましくはMERS-CoV、SARS-CoVまたはSARS-CoV-2である、組成物。
  20. 前記SMS細胞が、末梢血から得られる細胞である、請求項19に記載の組成物。
  21. 前記組成物が、エアロゾル化されたSMS細胞を含むこと、およびこのエアロゾル化されたSMS細胞が吸入投与用に製剤化されていてもよいことを特徴とする、請求項19または20に記載の組成物。
  22. 静脈内投与用に製剤化されている、請求項19~21のいずれか1項に記載の組成物。
  23. 前記損傷を受けた組織が、ウイルス感染症によって損傷を受けた組織である、請求項19~22のいずれか1項に記載の組成物。
  24. 前記ウイルス感染症が、コロナウイルス、ポックスウイルス、痘瘡ウイルス、マールブルグウイルス、フラビウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、RSウイルス、風疹ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトパピローマウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイルス、JCウイルス、ラブドウイルス、ロタウイルス、ライノウイルス、アデノウイルス、パピローマウイルス、パルボウイルス、ピコルナウイルス、ポリオウイルス、ハンタウイルス、フィロウイルス、コクサッキーウイルス、ウマ脳炎ウイルス、リフトバレー熱ウイルス、アルファウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、またはこれらの組み合わせによって引き起こされたものである、請求項23に記載の組成物。
  25. 前記コロナウイルスが、SARS-CoV-2である、請求項24に記載の組成物。
  26. 前記治療有効量が、肺胞細胞障害の減少もしくは抑制、呼吸器内皮細胞障害の減少もしくは抑制、肺線維症の発症の減少もしくは抑制、損傷を受けた肺組織の修復の増加もしくは向上、または損傷を受けた肺組織の再生の増加もしくは増強を誘導するのに十分な量である、請求項19~25のいずれか1項に記載の組成物。
  27. アジスロマイシンなどの抗生物質、ボリコナゾール、アムホテリシンB、イトラコナゾールなどの抗真菌剤、ワクチン、またはレムデシビルなどの抗ウイルス剤の治療有効量をさらに含む、請求項19~26のいずれか1項に記載の組成物。
  28. 前記ワクチンが、コロナウイルスワクチンである、請求項27に記載の組成物。
  29. 薬学的に許容される担体、保存剤、酸化防止剤、希釈剤もしくは添加剤またはこれらの任意の組み合わせをさらに含む、請求項19~28のいずれか1項に記載の組成物。
  30. 前記組成物によって、Dickkopf関連タンパク質1(DKK1)、N-アシルグルコサミン2-エピメラーゼ(RENBP)、増殖/分化因子15(GDF15)、dermokine(DMKN)、フェリチン軽鎖(FTL)、トリプトファン2,3-ジオキシゲナーゼ(TDO2)、アポリポタンパク質E(APOE)、キチナーゼ3様タンパク質1(CHI3L1)、もしく核受容体サブファミリー4グループAメンバー2(NR4A2)、またはこれらの任意の組み合わせが前記対象においてアップレギュレートされる、請求項19~29のいずれか1項に記載の組成物。
  31. 前記組成物によって、インターロイキン11(IL-11)、SPRYドメイン含有SOCSボックスタンパク質1(SPSB1)、シトクロムP450 26B1(CYP26B1)、もしくはfrizzled-8(FZD8)、またはこれらの任意の組み合わせが前記対象においてダウンレギュレートされる、請求項19~30のいずれか1項に記載の組成物。
  32. ウイルス感染症、細菌感染症もしくは真菌感染症、または該感染症によって生じた組織損傷の治療または抑制のための、請求項19~31のいずれか1項に記載の組成物の使用であって、前記ウイルス感染症、細菌感染症または真菌感染症が、例えば、コロナウイルス、ポックスウイルス、痘瘡ウイルス、マールブルグウイルス、フラビウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、RSウイルス、風疹ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトパピローマウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイルス、JCウイルス、ラブドウイルス、ロタウイルス、ライノウイルス、アデノウイルス、パピローマウイルス、パルボウイルス、ピコルナウイルス、ポリオウイルス、ハンタウイルス、フィロウイルス、コクサッキーウイルス、ウマ脳炎ウイルス、リフトバレー熱ウイルス、アルファウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、肺炎、肺炎連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、インフルエンザ菌、モラクセラ・カタラーリス、嫌気性細菌、グラム陰性細菌、マイコプラズマ・ニューモニエ、クラミジア・ニューモニエ、A群連鎖球菌、肺炎桿菌、レジオネラ・ニューモフィラ、化膿連鎖球菌、ストレプトコッカス・アガラクティエ、ペプトストレプトコッカス属、ジフテリア菌、百日咳菌、ヒト結核菌、緑膿菌、大腸菌、クルブラリア属、ニューモシスチス属、クリプトコッカス属、ヒストプラスマ・カプスラーツム、アスペルギルス属、ムコール目、フザリウム属、スケドスポリウム属、ペニシリウム属、またはこれらの任意の組み合わせであり、好ましくはMERS-CoV、SARS-CoVまたはSARS-CoV-2である、使用。
  33. 医薬品において使用するための、請求項19~31のいずれか1項に記載の組成物。
  34. 炎症性疾患の治療または抑制において使用するための、請求項19~31のいずれか1項に記載の組成物。
  35. 前記炎症性疾患が、肺の炎症性疾患である、請求項34に記載の組成物。
  36. 前記炎症性疾患が、肺線維症、肝線維症、腎線維症、心線維症などの線維症を含む、請求項34または35に記載の組成物。
  37. 前記炎症性疾患が、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を含む、請求項34~36のいずれか1項に記載の組成物。
  38. 前記炎症性疾患が、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を含む、請求項34~37のいずれか1項に記載の組成物。
  39. 前記炎症性疾患が、ウイルス感染症、細菌感染症または真菌感染症に関連している、請求項34~38のいずれか1項に記載の組成物。
  40. 前記ウイルス感染症が、コロナウイルス感染症である、請求項39に記載の組成物。
  41. 前記ウイルス感染症が、SARS-CoV感染症、MERS-CoV感染症またはSARS-CoV-2感染症である、請求項39または40に記載の組成物。
  42. 炎症性疾患を治療または抑制する方法であって、
    炎症性疾患を有する対象を選択する工程;および
    治療有効量の小型運動性幹細胞(small mobile stem(SMS)cells)を含む組成物を前記対象に投与する工程
    を含む方法。
  43. 前記炎症性疾患が、肺の炎症性疾患である、請求項42に記載の方法。
  44. 前記炎症性疾患が、肺線維症、肝線維症、腎線維症、心線維症などの線維症を含む、請求項42または43に記載の方法。
  45. 前記炎症性疾患が、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を含む、請求項42~44のいずれか1項に記載の方法。
  46. 前記炎症性疾患が、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を含む、請求項42~45のいずれか1項に記載の方法。
  47. 前記炎症性疾患が、ウイルス感染症、細菌感染症または真菌感染症に関連している、請求項42~46のいずれか1項に記載の方法。
  48. 前記ウイルス感染症が、一本鎖RNAウイルス、二本鎖RNAウイルス、プラスセンス一本鎖RNAウイルス、マイナスセンス一本鎖RNAウイルス、二本鎖DNAウイルスまたは一本鎖DNAウイルスによって引き起こされたものである、請求項47に記載の方法。
  49. 前記ウイルス感染症、細菌感染症または真菌感染症が、コロナウイルス、ポックスウイルス、痘瘡ウイルス、マールブルグウイルス、フラビウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、RSウイルス、風疹ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトパピローマウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイルス、JCウイルス、ラブドウイルス、ロタウイルス、ライノウイルス、アデノウイルス、パピローマウイルス、パルボウイルス、ピコルナウイルス、ポリオウイルス、ハンタウイルス、フィロウイルス、コクサッキーウイルス、ウマ脳炎ウイルス、リフトバレー熱ウイルス、アルファウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、肺炎、肺炎連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、インフルエンザ菌、モラクセラ・カタラーリス、嫌気性細菌、グラム陰性細菌、マイコプラズマ・ニューモニエ、クラミジア・ニューモニエ、A群連鎖球菌、肺炎桿菌、レジオネラ・ニューモフィラ、化膿連鎖球菌、ストレプトコッカス・アガラクティエ、ペプトストレプトコッカス属、ジフテリア菌、百日咳菌、ヒト結核菌、緑膿菌、大腸菌、クルブラリア属、ニューモシスチス属、クリプトコッカス属、ヒストプラスマ・カプスラーツム、アスペルギルス属、ムコール目、フザリウム属、スケドスポリウム属、ペニシリウム属、またはこれらの任意の組み合わせによる感染症によって引き起こされたものである、請求項47または48に記載の方法。
  50. 前記ウイルス感染症が、コロナウイルス感染症である、請求項47~49のいずれか1項に記載の方法。
  51. 前記ウイルス感染症が、SARS-CoV感染症、MERS-CoV感染症またはSARS-CoV-2感染症である、請求項47~50のいずれか1項に記載の方法。
  52. 前記SMS細胞が、末梢血から得られる細胞である、請求項42~51のいずれか1項に記載の方法。
  53. 前記SMS細胞が、前記対象と同種の細胞または前記対象から得られた自家細胞である、請求項42~52のいずれか1項に記載の方法。
  54. 前記組成物を投与することによって、肺胞細胞障害の減少、呼吸器内皮細胞障害の減少、損傷を受けた肺組織の修復の増加、損傷を受けた肺組織の再生の増加、もしくは肺線維症の発症の減少、またはこれらの任意の組み合わせが達成される、請求項42~53のいずれか1項に記載の方法。
  55. 前記組成物が、エアロゾル化されたSMS細胞を含むこと、このエアロゾル化されたSMS細胞を吸入により投与してもよいことを特徴とする、請求項42~54のいずれか1項に記載の方法。
  56. 前記組成物が、吸入投与用に製剤化されている、請求項42~55のいずれか1項に記載の方法。
  57. 前記組成物が、静脈内投与用に製剤化されている、請求項42~45のいずれか1項に記載の方法。
  58. 前記組成物が、前記炎症性疾患の標準治療に併用して投与される、請求項42~57のいずれか1項に記載の方法。
  59. 前記炎症性疾患が、ウイルス感染症、細菌感染症または真菌感染症に関連しており、前記標準治療が、アジスロマイシンなどの抗生物質、ボリコナゾール、アムホテリシンB、イトラコナゾールなどの抗真菌剤、ワクチン、またはレムデシビルなどの抗ウイルス剤である、請求項58に記載の方法。
  60. 前記ワクチンが、コロナウイルス、コレラ、デング熱、ジフテリア、ヘモフィルスインフルエンザ菌b型感染症、A型肝炎、B型肝炎、インフルエンザ、日本脳炎、髄膜炎菌性髄膜炎、百日咳、ポリオ、狂犬病、破傷風、結核、腸チフスおよび黄熱病の1種以上に対するワクチンである、請求項59に記載の方法。
  61. 前記ワクチンが、コロナウイルスCOVID-19ワクチンである、請求項59または60に記載の方法。
  62. 前記組成物を投与することによって、Dickkopf関連タンパク質1(DKK1)、N-アシルグルコサミン2-エピメラーゼ(RENBP)、増殖/分化因子15(GDF15)、dermokine(DMKN)、フェリチン軽鎖(FTL)、トリプトファン2,3-ジオキシゲナーゼ(TDO2)、アポリポタンパク質E(APOE)、キチナーゼ3様タンパク質1(CHI3L1)、もしく核受容体サブファミリー4グループAメンバー2(NR4A2)、またはこれらの任意の組み合わせが前記対象においてアップレギュレートされる、請求項42~61のいずれか1項に記載の方法。
  63. 前記組成物を投与することによって、インターロイキン11(IL-11)、SPRYドメイン含有SOCSボックスタンパク質1(SPSB1)、シトクロムP450 26B1(CYP26B1)、もしくはfrizzled-8(FZD8)、またはこれらの任意の組み合わせが前記対象においてダウンレギュレートされる、請求項42~62のいずれか1項に記載の方法。
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