JP2023510708A - 確率分布からの量子サンプリングのためのシステムおよび方法 - Google Patents

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Abstract

Figure 2023510708000001
システムは、量子コンピューター、ならびに確率分布の記述を受信するよう、確率分布をエンコードする基底状態を有する第1のハミルトニアンを決定するよう、第2のハミルトニアンを決定するよう、ここで第2のハミルトニアンは、少なくとも1つの量子相転移を通る経路を介して、第1のハミルトニアンへと連続的に変換可能である、ならびに量子コンピューターに:第2のハミルトニアンの基底状態に従って量子システムを初期化するよう、および少なくとも1つの量子相転移を通る経路に従って、第2のハミルトニアンの基底状態から第1のハミルトニアンの基底状態へと量子システムを進展させるように指示を提供するように構成される、コンピューター計算ノードを含む。該コンピューター計算ノードは、量子コンピューターから量子システム上の測定値を受信して、それにより確率分布からサンプルを得るようにさらに構成される。

Description

関連出願についての他所参照
本願は、その全体において参照により本明細書に援用される2020年1月6日に出願された米国仮出願第62/957,400号の利益を主張する。
連邦政府に支援された研究または開発に関する陳述
本発明は、海軍研究の防衛局の部門により授与されたN00014-15-1-2846;ならびに国立科学基金により授与された1125846および1506284の下の政府支援によりなされた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
背景
確率分布からサンプリングする効率的なアルゴリズムは、統計物理学、最適化および機械学習を含む領域において広く実用的に重要なものである。量子システムは本来、サンプル問題をエンコードするために適合され:ボルンの規則に従って、正規直交基底[|s>]における量子状態|Ψ>の投影測定は、確率分布p(s) = |<s|Ψ>|2からから引き出されるランダムサンプルを生じる。この観察は、量子ゲートシーケンスまたは光学ネットワークに関して画定される確率分布からのサンプリングにより、古典的コンピューターに対する量子の利点を示すことを目的とする最近の仕事を支持する。これらの努力は、印象的で実験的な証明をもたらしたが、これまで、それらは実用的に関連のある問題についての密接な関係を制限した。
そのため、量子情報科学において有用な量子アルゴリズムを構築および実行するためのシステムおよび方法について継続的な必要性がある。
概要
例示的な態様において、本開示は、確率分布からサンプリングする方法を提供し、該方法は、確率分布の記述を受信する工程、確率分布をエンコードする基底状態を有する第1のハミルトニアンを決定する工程、第2のハミルトニアンを決定する工程、ここで第2のハミルトニアンは、少なくとも1つの量子相転移を通る経路を介して、第1のハミルトニアンへと連続的に変換可能である、第2のハミルトニアンの基底状態に従って量子システムを初期化する工程、少なくとも1つの量子相転移を通る経路に従って、量子システムを、第2のハミルトニアンの基底状態から第1のハミルトニアンの基底状態へと進展させる工程、および量子システム上で測定を実行して、それにより確率分布からサンプルを得る工程を含む。
別の例示的な態様において、本開示は、確率分布からサンプリングするための量子コンピューターを構成する方法を提供し、該方法は、確率分布の記述を受信する工程、確率分布をエンコードする基底状態を有する第1のハミルトニアンを決定する工程、第2のハミルトニアンを決定する工程、ここで第2のハミルトニアンは、少なくとも1つの量子相転移を通る経路を介して、第1のハミルトニアンへと連続的に変換可能である、ならびに量子コンピューターに:第2のハミルトニアンの基底状態に従って量子システムを初期化させるよう、および少なくとも1つの量子相転移を通る経路に従って、量子システムを第2のハミルトニアンの基底状態から第1のハミルトニアンの基底状態へと進展させるような指示を提供する工程を含む。該方法はさらに、量子コンピューターから量子システム上の測定値を受信して、それにより確率分布からサンプルを得る工程を含む。
なお別の例示的な態様において、本開示は、確率分布からサンプリングするための量子コンピューターを構成するためのコンピュータープログラム生成物(product)を提供し、該コンピュータープログラム生成物は、それにより実現されるプログラム指示を有するコンピューター読み取り可能記憶媒体を含み、該プログラム指示は、プロセッサーに方法を実行させるようにプロセッサーにより実行可能であり、該方法は:確率分布の記述を受信する工程、確率分布をエンコードする基底状態を有する第1のハミルトニアンを決定する工程、第2のハミルトニアンを決定する工程、ここで第2のハミルトニアンは、少なくとも1つの量子相転移を通る経路を介して、第1のハミルトニアンへと連続的に変換可能である、ならびに量子コンピューターに:第2のハミルトニアンの基底状態に従って量子システムを初期化させるよう、および少なくとも1つの量子相転移を通る経路に従って、量子システムを、第2のハミルトニアンの基底状態から第1のハミルトニアンの基底状態へと進展させるような指示を提供する工程を含む。該方法はさらに、量子コンピューターから、量子システム上の測定値を受信して、それにより確率分布からサンプルを得る工程を含む。
さらに別の例示的な態様において、本開示は、量子コンピューター、ならびに確率分布の記述を受信するよう、確率分布をエンコードする基底状態を有する第1のハミルトニアンを決定するよう、第2のハミルトニアンを決定するよう、ここで第2のハミルトニアンは、少なくとも1つの量子相転移を通る経路を介して、第1のハミルトニアンへと連続的に変換可能である、ならびに量子コンピューターに:第2のハミルトニアンの基底状態に従って量子システムを初期化させるよう、および少なくとも1つの量子相転移を通る経路に従って、量子システムを、第2のハミルトニアンの基底状態から第1のハミルトニアンの基底状態へと進展させるような指示を提供するように構成されるコンピューター計算ノードを含むシステムを提供する。コンピューター計算ノードはさらに、量子コンピューターから、量子システム上の測定値を受信して、それにより確率分布からサンプルを得るように構成される。
種々の態様において、第1のハミルトニアンを決定する工程は、第1のハミルトニアンの基底状態の投影もつれペア状態(projected entangled pair state)(PEPS)表示から第1のハミルトニアンを導くことを含む。
種々の態様において、確率分布の記述は、その定常分布が確率分布であるマルコフ連鎖の記述を含む。種々の態様において、マルコフ連鎖は詳細釣り合いを満足する。種々の態様において、第1のハミルトニアンを決定する工程は、マルコフ連鎖から第1のハミルトニアンを構築することを含む。種々の態様において、マルコフ連鎖の記述は生成行列を含む。種々の態様において、マルコフ連鎖は単一部位更新(single-site update)を含む。
種々の態様において、第2のハミルトニアンの基底状態は積状態である。
種々の態様において、進展は断熱的である。
種々の態様において、量子システムは、複数の閉じ込められた中性原子を含む。種々の態様において、複数の閉じ込められた中性原子のそれぞれは、リュードベリ状態に励起される場合に、複数の閉じ込められた中性原子の少なくとも1つの他のものを封鎖するように構成される。種々の態様において、量子システムを初期化することは、第2のハミルトニアンの基底状態に従って、複数の閉じ込められた中性原子のサブセットのそれぞれを励起することを含む。種々の態様において、進展させることは、コヒーレント電磁放射線の時間変化ビームを、複数の閉じ込められた中性原子のそれぞれに方向づけることを含む。種々の態様において、複数の閉じ込められた中性原子は、光ピンセットにより閉じ込められる。
種々の態様において、確率分布は古典的ギブス分布を含む。種々の態様において、経路は、異なる温度でギブス分布に関連する第1のハミルトニアンの集合(set)に沿った経路とは異なる。種々の態様において、ギブス分布は、グラフの重み付き独立集合のギブス分布である。種々の態様において、グラフは単位円グラフである。種々の態様において、グラフは鎖状(chain)グラフである。種々の態様において、グラフは、1分岐当たり2つの頂点を有するスターグラフ(star graph)である。
種々の態様において、ギブス分布は、イジングモデルのギブス分布である。種々の態様において、ギブス分布はゼロ温度ギブス分布であり、イジングモデルは強磁性1Dイジングモデルである。種々の態様において、ギブス分布は、構造化されない探索問題(search problem)をエンコードする古典的ハミルトニアンのギブス分布である。種々の態様において、ギブス分布はゼロ温度ギブス分布であり、構造化されない探索問題は単一の解を有する。
種々の態様において、測定を実行することは、複数の閉じ込められた中性原子を画像化することを含む。種々の態様において、複数の閉じ込められた中性原子を画像化することは、量子気体顕微鏡検査を含む。
上記のシステムおよび方法は、確率分布からのサンプリングのための量子スピードアップを提供することなどの多くの利点を有する。
図面の簡単な説明
開示された主題の種々の目的、特徴および利点は、以下の図面と関連して考慮された場合、以下の開示された主題の詳細な説明に関してより十分に認識され得、該図面において、同様の参照番号は、同様の要素を同定する。
図1Aは、本明細書に記載されるシステムの例示的な態様において使用される、確率分布からのサンプリングの方法のフローチャートである。 図1Bは、時間の関数としてのマルコフ連鎖における拡散性ランダムウォークの概略的例示である。 図1Cは、本明細書に記載されるシステムの例示的な態様において使用される、量子システムにおけるドメインウォールの弾道的伝播(ballistic propagation)の概略的例示である。 図2Aは、本明細書に記載されるシステムの例示的な態様において使用されるイジング鎖に対応する親ハミルトニアンを表す概略的相図(phase diagram)である。 図2Bは、本明細書に記載されるシステムの例示的な態様において使用されるn = 100スピンの鎖についてのJ1/hの時間依存性を表す概略図である。 図2Cは、本明細書に記載されるシステムの例示的な態様において使用される、図2Aに示される軌道に沿ったスイープ時間の関数としての忠実度のプロットである。 図2Dは、本明細書に記載されるシステムの例示的な態様において使用される、スピンnの数の関数としての0.999を超える忠実度を達成するのに必要とされる時間taのプロットである。 図3Aは、本明細書に記載されるシステムの例示的な態様において使用される、単位円グラフ上の独立集合を表す概略図である。 図3Bは、本明細書に記載されるシステムの例示的な態様において使用される、リュードベリブロッケイドを使用した親ハミルトニアンの物理的実現の概略図である。 図3Cは、本明細書に記載されるシステムの例示的な態様において使用される、図3Aに示される単位円グラフについての長さn=30の鎖についての親ハミルトニアンのパラメーター空間および秩序パラメーターを表す概略図である。 図3Dは、本明細書に記載されるシステムの例示的な態様において使用される、図3Cに示される2つの経路についてのnの関数としての断熱的状態調製時間taのプロットである。 図4Aは、本明細書に記載されるシステムの例示的な態様において使用される、スターグラフからのサンプリングを表す概略図である。 図4Bは、本明細書に記載されるシステムの例示的な態様において使用される、逆温度βの関数としてのギブス分布の1分岐当たりのエントロピーS/bのプロットである。 図5Aは、本明細書に記載されるシステムの例示的な態様において使用される、構造化されない探索問題に関連するハミルトニアンに対応する二次元パラメーター空間のプロットである。 図5Bは、本明細書に記載されるシステムの例示的な態様において使用される、V0の関数としてのハミルトニアンのギャップのプロットである。 図6は、本明細書に記載されるシステムの例示的な態様において使用される、1Dイジングモデルからのサンプリングに関連する親ハミルトニアンの相図を表す概略図である。 図7A~7Dは、本明細書に記載されるシステムの例示的な態様において使用される、n=10からn=1000の異なる長さの鎖についての図2Aに示される4つの経路についてのεの関数としての非忠実度(infidelity)
Figure 2023510708000002
のプロットである。
図8は、本明細書に記載されるシステムの例示的な態様において使用される、図2Aに示される4つの経路についてのnの関数としての断熱的経路長さlのプロットである。 図9A~9Bは、本明細書に記載されるシステムの例示的な態様において使用されるような、常磁性相から近づく場合(図9A)、および常磁性相から近づく場合(図9B)の三重臨界点(tricritical point)からの距離ηの関数としての断熱的メトリック(metric)Gのプロットである。 図10Aは、本明細書に記載されるシステムの例示的な態様において使用される、βの関数としての1パラメーターファミリーハミルトニアンHq(β)に沿った鎖状グラフ上の最大独立集合問題についての親ハミルトニアンのギャップのプロットである。 図10Bは、本明細書に記載されるシステムの例示的な態様において使用される、β=8での頂点nの数の関数としての1パラメーターファミリーハミルトニアンHq(β)に沿った鎖状グラフ上の最大独立集合問題についての親ハミルトニアンのギャップのプロットである。 図11Aは、本明細書に記載されるシステムの例示的な態様において使用される、図3Cに示される経路(i)に沿った0からβまでの断熱的経路長さlのプロットである。 図11Bは、本明細書に記載されるシステムの例示的な態様において使用される、図3Cに示される経路(ii)に沿った0からβまでの断熱的経路長さlのプロットである。 図12は、本明細書に記載されるシステムの例示的な態様において使用される、βの3つの異なる値でのbの関数としての量fのプロットである。 図13Aは、本明細書に記載されるスターグラフについての1パラメーターハミルトニアンHq(β)に沿った断熱的進展についてのbの異なる値についてのεの関数としての非忠実度
Figure 2023510708000003
のプロットである。
図13Bは、本明細書に記載されるスターグラフについての1パラメーターハミルトニアンHq(β)に沿った断熱的進展についてのbの関数としての断熱的経路長さlのプロットである。 図14Aは、本明細書に記載されるシステムの例示的な態様において使用される、スターグラフについてのbの異なる値についてのεの関数としての非忠実度
Figure 2023510708000004
のプロットである。
図14Bは、本明細書に記載されるシステムの例示的な態様において使用される、スターグラフについてのbの関数としての断熱的経路長さlのプロットである。 図15は、本明細書に記載されるシステムの例示的な態様において使用される、bの関数としての非忠実度
Figure 2023510708000005
のプロットである。
図16は、本開示の態様による古典的コンピューター計算ノードを示す。 図17は、本開示の態様による、古典的コンピューター計算ノードおよび量子コンピューターを含む、合わされたシステムを示す。
詳細な説明
有用な量子アルゴリズムを構築および実行することは、量子情報科学における難題の1つである。確率分布からの効率的なサンプリングは、モンテカルロおよび最適亜アルゴリズムに対する統計的物理学から機械学習までの範囲の適用を有する、重要なコンピューター計算問題である。確率分布全体をエンコードする量子状態を調製することにより、確率分布から引き出される偏りのないサンプルを提供する量子アルゴリズムのファミリーが、本明細書において導入される。このアプローチは、一次元イジングモデルのギブス分布からのサンプリングおよび重み付き独立集合のギブス分布からのサンプリングを含むいくつかの具体例により例示される。ランダムグラフ上の最大独立集合のサイズを近似することは、NP(非決定論的多項式(nondeterministic polynomial))困難であるので、後者のケースは、計算機視覚、生化学および社会的ネットワークなどの適用に関連する可能性のある、コンピューター計算的に困難な問題を包含する。いくつかの態様において、このアプローチは、一次元イジングモデルに関連するギブス分布からのサンプリングおよび2つの異なるグラフの重み付き独立集合のギブス分布からのサンプリングなどのいくつかの例について、古典的マルコフ連鎖アルゴリズムに対してスピードアップをもたらすことが示される。いくつかの態様において、リュードベリ原子アレイに基づく独立集合からのサンプリングの現実的な実行も、本明細書に記載される。理論に拘束されることなく、このアプローチは、コンピューター計算複雑性と相転移を連結し、量子スピードアップの物理的解釈を提供し、近々の量子デバイスを使用した潜在的に有用なサンプリングアルゴリズムを探求するためのドアを開く。
いくつかの態様において、確率分布からのサンプリングの方法100についての重要な工程を図1Aに示す。加算の有限の事象空間[s]上に画定される確率分布p(s)の記述を受信する場合110、量子システムは、完全な正規直交基底[|s>]により同定される。いくつかの態様において、p(s)からのサンプリングは、量子状態
Figure 2023510708000006
の調製まで単純化され得、[|s>]基底における投影測定が続く。状態|Ψ>は、確率分布p(s)をエンコードするといわれる。測定は、確率
Figure 2023510708000007
を伴って、|Ψ>を|s>に投影する。この量子状態の定義を考慮すると、第1のハミルトニアンHqは、|Ψ>がHqの基底状態となるように決定される120。第1のハミルトニアンHqは、本明細書において、|Ψ>の親ハミルトニアンと称される。適切な親ハミルトニアンを決定するための可能性のある方法を以下に記載する。次いで、量子システムは、第2のハミルトニアンH0の基底状態である状態|φ>において初期化される130。いくつかの態様において、第2のハミルトニアンH0の基底状態は、積状態であり得る。第2のハミルトニアンH0は、その後本明細書において連続経路と称されるハミルトニアンの連続集合を介して、第1のハミルトニアンHqへと変換可能であるように仮定される。さらに、該経路は、少なくとも1つの量子相転移を通過するように仮定される。状態|Ψ>は、H0からHqまでの経路に続く時間依存的ハミルトニアン下で、量子システムを進展させること140により得られる。いくつかの態様において、該進展は、断熱的進展であり得る。次いで方法100は、量子システム上で測定を実行して150、それにより確率分布からサンプルを得ることを含む。初期化130、進展140および測定150を反復することにより、全体確率分布p(s)が生じる。
理論に拘束されることなく、経路が相転移を横切るという要件は、これが以下に詳述されるマルコフ連鎖に基づいて、古典的アルゴリズムと比較した場合に本明細書に記載される量子アルゴリズムのスピードアップを生じ得るという観察から生じる。理論に拘束されることなく、以下に示される例の2つにおいて、スピードアップの起源は、図1Bに示される古典的熱変動により引き起こされる拡散とは対照的に、量子相転移での量子コヒーレント運動により可能になる図1C中のドメインウォールの弾道的(すなわち時間において線形)伝播から生じるように理解され得る。拡散により探求される領域の幅は、時間の平方根(図1B中の破線の曲線)に比例するので、一般的に二次的スピードアップが期待される。マルコフ連鎖における拡散が、例えば熱障壁により抑制される場合にさらなるスピードアップが可能である。理論に拘束されることなく、量子トンネリング(quantum tunneling)に関連する代替的なスピードアップ機構は、以下にさらに記載されるように、スターグラフ上の独立集合問題においてはカバーされない。
親ハミルトニアン
いくつかの態様において、親ハミルトニアンの2つの異なる構築を以下に続くものに記載する。量子システムのハミルトニアンは、量子システムについての1つまたは複数の相互作用を提示し得る。ハミルトニアンは、量子システム上で働く演算子である。ハミルトニアンの固有値は、量子システムのエネルギースペクトルに対応する。ハミルトニアンの基底状態は、最小エネルギーを有する量子システムの量子状態である。ハミルトニアンの基底状態は、ゼロ温度での量子状態であり得る。
第1のハミルトニアンの決定に使用される親ハミルトニアンの第1の構築は、マルコフ連鎖からの第1のハミルトニアンの構築についてのVerstraete et al.の規定に従う。その全体において参照により本明細書に援用されるVerstraete, F., Wolf, M. M., Perez-Garcia, D., and Cirac, J. I. Criticality, the Area Law, and the Computational Power of Projected Entangled Pair States, Phys. Rev. Lett. 96, 220601 (2006)参照。比p(s)/p(s')が事象空間の要素の全てのペアsおよびs'について公知である所望の確率分布p(s)からサンプリングするマルコフ連鎖が最初に画定される。マルコフ連鎖は、生成行列Mにより特定(すなわち記述)され得、ここで時間tでの確率分布qt(s)は、
Figure 2023510708000008
に従って更新される。マルコフ連鎖は、詳細釣り合い条件p(s) M(s, s') = p(s') M(s', s)を満足するように仮定される。ある態様において、マルコフ連鎖は単一部位更新を含み得る。いくつかの態様において、マルコフ連鎖は、例えばメトロポリス・ヘイスティングアルゴリズムを使用して構築され得る。次いで、構築により、確率分布p(s)は、マルコフ連鎖の定常分布であり、単位元の固有値を有するMの左の固有ベクトルを構成する。詳細釣り合い特性は、マトリックス要素
Figure 2023510708000009
により画定されるマトリックスHqが、実数であり対称であることを示す。ここでnは、コンピューター計算が実行される量子システムのサイズである。nの要素は、任意の物理的ハミルトニアンについて必要とされる場合に親ハミルトニアンのスペクトルが過剰(extensive)であることを確実にする。いくつかの態様において、nは、スピンの数であり得る。マトリックスHqは、状態|Ψ>がそのゼロエネルギー固有状態である量子ハミルトニアンであると見られ得る。Hqのスペクトルは下から0だけ束縛されるので、状態|Ψ>は基底状態である。Hqの全ての固有値n(1-λ)について、Mの固有値λが存在し、ここでMは確率行列であるので、λ≦1である。したがって、Hqは、親ハミルトニアンの妥当な選択である。マルコフ連鎖が既約かつ非周期的である場合、ペロン・フロベニウスの定理は、|Ψ>がHqの特有の基底状態であることをさらに保証する。生成行列Mおよび親ハミルトニアンHqのスペクトルの間の1対1の対応のために、Hqの基底状態と第1の励起状態の間のスペクトルギャップは、Mにより記述されるマルコフ連鎖の混合時間についての境界を示す。量子システムにおける進展の間の自然の並列化を埋め合わせるために、公平な比較のためにマルコフ連鎖の混合時間をnで割り、結果をtmで示す。MのスペクトルおよびHqの間の対応は、境界tm≧1/Δ-1/nを確立し、ここでΔは、親ハミルトニアンの基底状態と第1の励起状態の間のギャップである。
第1のハミルトニアンの決定に使用される親ハミルトニアンの第2の構築は、状態|Ψ>が投影もつれペア状態(PEPS)として公知の表示を有する場合はいつでも適用され得るPerez-Garcia et al.に記載される一般的な構築に基づく。その全体において参照により本明細書に援用されるPerez-Garcia, D., Verstraete, F., Cirac, J. I., and Wolf, M. M. PEPS as unique ground states of local Hamiltonians, Quant. Inf. Comp. 8, 0650 (2008)参照。いくつかの態様において、確率分布p(s)は、1および2体の項(body term)を有する古典的スピンハミルトニアンのギブス分布であり得る。かかる古典的ハミルトニアンは、
Figure 2023510708000010
と記載され得、ここでhiおよびJijは実数パラメーターであり、
Figure 2023510708000011
は古典的スピン変数であり、それぞれの合計は1からnまで進み、nはスピンの数を示す。対応するギブス分布は、
Figure 2023510708000012
により与えられ、ここでsは、全てのスピン変数[s1、s2、...、sn]の省略表現であり、βは、逆温度(β=1/kT、ここでkはボルツマン定数であり、Tは温度である)であり、
Figure 2023510708000013
は、分配関数である。状態|Ψ>は、相応じて
Figure 2023510708000014
により与えられる。Perez-Garcia et al.の規定に従って、この状態についてのPEPS表示が構築され得、それによりその基底状態のPEPS表示から第1のハミルトニアンが誘導され得る。PEPS表示を考慮すると、所定の部位iの周囲の有限領域Riの簡略化密度演算子ρiが直接コンピューター計算され得る。Piによりρiの核に対して射影作用素を示す場合、親ハミルトニアンは、
Figure 2023510708000015
として記載され得る。対照的に、親ハミルトニアンは半正定値であり、Hq|Ψ>=0であり、これは|Ψ>がHqの基底状態であることを示す。
本明細書に記載される態様は、親ハミルトニアンを構築する上記の2つの方法を使用するが、当業者は、本開示に基づいて、本明細書に記載される量子アルゴリズムの設計において親ハミルトニアンの他の構築を使用し得ることを理解する。親ハミルトニアンの物理的な実現は、以下に記載される中性原子のリュードベリ状態の使用に制限されない。一般的に、任意の局所的な親ハミルトニアンは、量子回路として効率的にシミュレートされ得る。当業者は、限定されないが超伝導キュービット、トラップされたイオンキュービットおよび中性原子キュービットを含む所定のプラットフォーム上で、かかる回路をどのように実行するかを理解する。本開示に記載されるものとしての親ハミルトニアンの直接的な物理的実現は、ハミルトニアンシミュレーションに対して、それが最小のオーバーヘッドで実行され得、それを現在利用可能な量子デバイスに対して適切なものにするという利点を有する。当業者は、他のハミルトニアンが所定の物理的プラットフォームにおいて実現され得、それぞれのプラットフォームが特定の組の自然に実現可能なハミルトニアンを支持することを理解する。
ギブス分布
いくつかの態様において、確率分布は、古典的ハミルトニアンのギブス分布であり得る。古典的なシステムの全ての構成sは、古典的エネルギーHc(s)と関連付けられる。対応するギブス分布は、
Figure 2023510708000016
により与えられ、ここでβは、逆温度(β=1/kT、ここでkはボルツマン定数であり、Tは温度である)であり、分配関数
Figure 2023510708000017
は、確率分布の正確な標準化を確実にする。温度を連続パラメーターとして処理することは、自然に、異なる温度でのギブス分布からのサンプリングの問題を考慮することにより、状態|Ψ(β)>の連続集合および親ハミルトニアンHq(β)の連続集合を生じる。以前の仕事とは対照的に、初期状態|φ>は、β=0で|Ψ(β)>と等しくなることを必要とされない。さらに、進展は、任意のβについてのハミルトニアンHq(β)の集合により画定される経路に制限されない。代わりに、以下の態様により例示されるように、より一般的な経路は、ハミルトニアンのこの集合に沿った進展をしのぎ、古典的マルコフ連鎖を超える漸近スピードアップを生じることを可能にする。いくつかの態様において、経路は、異なる温度で、ギブス分布に関連する第1のハミルトニアンの集合に沿った経路とは異なる。
以下に記載される例は、量子コンピューターを使用して古典的確率分布からサンプリングする本明細書に記載される方法が、古典的マルコフ連鎖を超えるスピードアップをもたらし得ることを示す。例が分析的および数的に扱いやすいように十分に簡単であった場合、この改善を厳密に確立することが可能であった。しかしながら、より困難な問題は、より大きな実際の有意さである。いくつかの態様において、かかる問題は、多くのスピンを有するスピングラスのギブス分布からのサンプリングまたは大きな秩序が乱れたグラフ上の独立集合からのサンプリングを含む。かかる例について正確な相図をコンピューター計算することは可能でないことがあるが、それにもかかわらず初期状態|φ>および最終状態|Ψ>が、異なる量子相に属することを確立することは可能であり得る。いくつかの態様において、相図の近似の知識は、|Ψ>を調製するための候補経路を同定するために十分であり得た。いくつかの態様において、経路は、ハイブリッド古典的量子最適化ループを使用してさらに最適化され得、ここでパラメーター化された(parametrized)経路は、量子コンピューター上で実現され、そのパラメーターは、古典的コンピューター上で最適化される。
時間進展
状態|Ψ>を調製するために、初期状態|φ>で量子システムを調製し、これを時間依存的ハミルトニアンH(t)に供する。状態は、シュレディンガー方程式
Figure 2023510708000018
に従って進展し、初期条件|φ(0)>=|φ>である。時間依存的ハミルトニアンは、H(0) = H0からH(ttot) = Hqへの連続経路に従い、ここでttotは、進展の総時間であり、Hqは、|Ψ>の親ハミルトニアンである。連続経路は、|φ(ttot)>が、所望の状態|Ψ>と大きな重複を有するように選択される。いくつかの態様において、重複は、忠実度
Figure 2023510708000019
により定量化され得る。サンプリングの目的で、|φ(ttot)>が正確に|Ψ>と等しくある必要はなく、忠実度が1に近いことで十分である。所望の確率分布p(s)と調製された分布
Figure 2023510708000020
の間の総変動距離d=||p-q||は、
Figure 2023510708000021
により制限される。本開示に示される例において、状態調製時間は、0.999を超える忠実度を達成するために必要とされる時間taを特徴とする。当業者は、他の忠実度閾値も使用され得ることを理解する。
いくつかの態様において、時間進展は断熱的であり得る。理論に拘束されることなく、断熱的定理によると、H(t)のギャップが経路に沿った任意の場所でゼロにならないと仮定すると、これは、無関係なグローバル相αを有して、
Figure 2023510708000022
である。この仮定の下、ttotを十分に大きいと選択することにより、|Ψ>に対して近い近似を調製する(すなわち高い忠実度に到達する)ことは常に可能である。ttotの必要とされる値は、経路H(t)の選択、および特にそれに伴ってハミルトニアンが変化する速度に依存する。いくつかの態様において、変化の速度は、ttotに依存するいくつかの定数εについて
Figure 2023510708000023
であるように選択され得る。ここで、|n(t)>は、固有エネルギーEn(t)を有するH(t)の瞬間の固有状態であり、すなわちH(t)|n(t)> = En(t)|n(t)>である。状態は、n>mの場合にEn(t)≧Em(t)であり、n = 0が基底状態に対応するように秩序づけられる。理論に拘束されることなく、変化の速度のこの特定の選択は、スペクトルギャップ[上述の式(5)の左側の分母]および固有状態の変化の速度[上述の式(5)の左側で二乗されるマトリックス要素]に依存する、非断熱的転移を最小化するという目標により動機づけられる。
本開示の態様は、断熱的時間進展を議論するが、当業者は、時間進展が、時間進展にわたり完全に断熱的であることを必要としないことを理解する。いくつかの態様において、連続経路に沿って基底状態にジャンプして戻る前に、励起した状態への非断熱的転移を有することは、量子状態にとって都合がよい。スターグラフ上の重み付き独立集合の以下の例において、量子状態の時間進展は、非断熱的転移を含む。
1Dイジングモデルからのサンプリング
ここで、開発された量子アルゴリズムを、一次元(1D)でn個のスピンで構成される強磁性イジングモデルを考慮することにより説明する。いくつかの態様において、古典的ハミルトニアンは、
Figure 2023510708000024
により与えられ、周期的境界条件
Figure 2023510708000025
とする。マルコフ連鎖について、それぞれの時間工程でスピンがランダムに選択され、その値が、全ての他のスピンが固定された熱分布から引き出されるGlauberダイナミクスが選択される。定数まで、式(2)を使用して決定された対応する親ハミルトニアンは、形態
Figure 2023510708000026
を採用し、ここで4h(β) = 1+1/cosh(2β), 2J1(β) = tanh(2β)および4J2(β) = 1-1/cosh(2β)である(詳細について以下参照)。無限の温度(β = 0)で、J1 = J2 = 0であり、h = 1/2であり、基底状態は、x方向に沿って整列され、全ての古典的スピン構成の等しい重ね合わせに対応する常磁性体である。温度が低い場合、パラメーターは、図2Aの曲線(ii)220により示される二次元パラメーター空間(J1/h、J2/h)における放物線のセグメントに沿って移動する。
いくつかの態様において、h、J1およびJ2の任意の値についての親ハミルトニアンの量子相図は、式(6)を自由フェルミオンモデル(以下参照)にマッピングするJordan-Wigner変換を実行することにより得られる。異なる量子相を図2Aに示す。該モデルは、J2/h = 0軸上の横方向の場のイジングモデルまで単純化し、ここでJ1/h = 1において常磁性体(PM)から強磁性体(FM)への相転移が起こる。J1/h = 0軸に沿って、基底状態は、J2/h = ±1で、常磁性体からクラスター状態様(CS)の相への対称保護トポロジー相転移(symmetry-protected topological phase transition)を経験する。(J1/h、J2/h) = (2、1)での三重臨界点250は、ゼロ温度(β→∞)に対応する親ハミルトニアンを記載することに注意。
所望の逆温度βについての状態|Ψ(β)>を調製するために、ハミルトニアンをその最終形態Hq(β)にするパラメーター(h、J1、J2)を円滑に変化させる前に、H0 = Hq(0)の基底状態から開始させ得る。βの有限の値に対応する状態は、十分に常磁性体の相にある経路(ii)220により|Ψ(β)>に連結され得る。この場合、断熱状態調製およびマルコフ連鎖の両方は効率的である。実際に、イジング鎖についてのマルコフ混合時間tmに同一である、ギャップを有する(gapped)親ハミルトニアンについて約log nのラン時間を有する一般的な量子アルゴリズムが存在することが以前に示されている。
マルコフ連鎖の混合時間が
Figure 2023510708000027
により制限されるゼロ温度でのサンプリングはより困難である(下記参照)。量子アルゴリズムについて、図2Aに示される4つの異なる経路210、220、230および240を考察した。動力学を定量的に評価するために、経路に沿った全ての点での断熱条件を満足することを意図した上述の式(5)に従って変化の速度を選択し(図2Bおよびn = 100スピンの鎖についてのJ1/hの時間依存性についての方法参照)、シュレディンガー方程式を、初期状態|Ψ(0)>を用いて数的に積分して、総進展時間ttot(普遍性集合の消失なし、h = 1)の後、|φ(ttot)>を得た。図2Cは、n = 100スピンの鎖についての経路210、220、230および240に沿ったスイープ時間ttotの関数として、得られた忠実度
Figure 2023510708000028
を示す。スピンnの数に対する依存性を決定するために、忠実度が0.999を超える時間taを抽出して、図2Dに示した。時間taの3つの異なるスケーリングが見られた:経路(i)210に沿って、それはta~n3と大まかに比例し、(ii)220に沿ってta~n2と比例し、一方で(iii)230および(iv)240は、ta~nに近いスケーリングを示す。図2Dに示される直線は、見やすくするために(guide to the eye)、n上でそれぞれ一次、二次および三次のtaの依存性を示す。
理論に拘束されることなく、これらのスケーリングは、相転移の性質の当然の結果である。三重臨界点250での動力学的臨界指数(dynamical critical exponent)はz = 2であり、Δ~1/n2のようなシステムサイズを伴ってギャップが閉じることを意味し、これは、経路(ii)220に沿って必要とされる時間と一致する。以下に示されるように、三重臨界点250から離れた全ての相転移での動力学的臨界指数はz = 1であり、Δ~1/nの場合にギャップは閉じる。そのため、常磁性から強磁性の相転移は、nに比例する時間において断熱的に交差され得、図1Bに示されるマルコフ連鎖における拡散伝播とは反対に、図1Cに示されるドメインウォールの弾道的伝播のみにより制限される。経路(iii)230および(iv)240が三重臨界点250に近づくにつれて、二次のスローダウンはなく、これは強磁性の相における最終状態と基底状態の大きい重複に起因する。常磁性の相およびクラスター状態様の相の間のギャップは、有限のサイズのシステムにおいてでも特定のパラメーターについて正確にゼロになるので(以下参照)、経路(i)210は、経路(ii)220よりも悪く実行される。スピードアップは量子力学的起源のものであるという供述をさらに支持するために、基底状態の半分鎖もつれエントロピーは、経路(iii)230および(iv)240が常磁性から強磁性の相へと交差する場合に、スピンの数に伴って対数的に発散することに注意する。そのため、局所的な古典的ハミルトニアンHcを有する式(3)の形態における相転移での基底状態についての表示を見出すことは、任意のかかる表示が一定の結合寸法(constant bond dimension)および束縛されたもつれエントロピーを有するマトリックス積状態であるので、不可能である。いくつかの態様において、この例は、量子相転移を通る経路を賢明に選択することにより量子スピードアップが得られることを示す。
この例は、量子スピードアップの機構を説明するが、大きなイジング鎖のギブス分布からのサンプリングは、ゼロ温度のみで困難である。ゼロ温度でのサンプリングは最適化と同等であるので、この問題を解決するためのより適切なアルゴリズムが存在し得る。しかしながら、本明細書に記載されるアプローチは、マルコフ連鎖が有限の温度であってもゆっくりと混合するギブス分布により以下に説明されるように、かかる特殊な場合に限定されない。また、上述の式(2)の親ハミルトニアンは、単純な物理的実現を有さないが、これは局所的な項の合計であり、そのためにハミルトニアンシミュレーションにより量子コンピューター上で効率的に実現され得ることに注意する。しかしながら、小さな量子デバイス上での近々の適用について、親ハミルトニアンが本来の実行を有する問題を同定することが望ましい。単位円グラフの重み付き独立集合問題からのサンプリングに関して、かかる例を以下に提供する。
重み付き独立集合
グラフの独立集合は、2つの頂点が1つのエッジを共有しない、頂点の任意のサブセットである。独立集合の例(黒色の頂点310)を図3Aに示す。頂点iは、それが独立集合内にあり、占有数ni = 1を割り当てられる場合に占有されるといわれる。全ての他の頂点は、ni = 0により占有されない。重み付き独立集合問題において、それぞれの頂点はさらに、重みwiを割り当てられ、独立集合制約(constraint)に供されるエネルギー
Figure 2023510708000029
を最小化することが求められる。対応するギブス分布は確率論およびコンピューター科学および統計物理学において広範に検討されている。
いくつかの態様において、量子アルゴリズムを構築するために、それぞれの頂点は、スピン変数
Figure 2023510708000030
と関連付けられる。式(2)から、メトロポリス・ヘイスティング更新法則による単一スピンフリップは、親ハミルトニアン
Figure 2023510708000031
を生じ、ここで独立集合により張られる(spanned)サブ空間のみが考慮される(下記参照)。式(7)において、
Figure 2023510708000032
は、頂点iの最近傍の隣接体Niが全て占有されない状態を投影する。残りのパラメーターは、
Figure 2023510708000033
により与えられる。
射影作用素Piはd体の項までを含み、ここでdはグラフの次数である。それにもかかわらず、いくつかの態様において、それらは、例えば特定のクラスのグラフについての最小実験オーバーヘッドを有するプログラム可能原子アレイを使用して実行され得る。図3Aに示されるいわゆる単位円グラフの場合、これらの演算子は、複数の閉じ込められた中性原子の高度に励起されたリュードベリ状態を含む量子システムにおいて自然に実現可能である(図3Bおよび以下の方法参照)。単位円グラフは、任意の2つの頂点がある単位距離R未満の距離だけ分離される場合およびかかる場合にのみ連結される、平面のグラフである。単位円グラフの単純な例として、長さnの鎖が考慮され、等しい重みwi = 1が選択される。得られた親ハミルトニアンは、リュードベリ原子を使用して、理論的および実験的の両方で検討されている。その量子相は、互い違いにずれた(staggered)磁性
Figure 2023510708000034
を特徴とし得、kは整数である。図3Cは、n = 30についての|M2| + |M3|の基底状態期待値を示し、3つの異なる相の存在を明確に示す。秩序パラメーター|M2| + |M3|は、秩序が乱れた相を、
Figure 2023510708000035
の秩序がつけられた相と区別する。大きなΩ/Vgまたは大きな正のVe/Vgについて、全体を通してVg > 0と仮定すると、基底状態は、ハミルトニアンの完全な並進対称性(translational symmetry)を尊重し、|Mk|は、全ての整数k > 1についてゼロになる。Ve/Vgが十分に小さい場合、基底状態は、占有された全ての他の部位により秩序をだった
Figure 2023510708000036
であり、|M2| ≠ 0である。ハミルトニアンにおける最近傍の次の隣接する反発する項のために、秩序だった
Figure 2023510708000037
の相がさらに存在し、ここで|M3| ≠ 0であり、基底状態は、3つの格子部位またはその倍数により、並進の下のみで不変である。
ハミルトニアンHq(β)の集合は、図3Cにおける曲線(i)320により示される。|Ψ(0)>は積状態ではないことに注意。しかしながら、ハミルトニアンHq(0)は、Ω/Vg = 0に断熱的に連結され得、Ve/Vg > 3であり、ここで基底状態は、占有されない全ての部位の積状態である。ハミルトニアンがギャップを有する秩序が乱れた相において、かかる経路は完全に位置し得るので、|Ψ(0)>の断熱的状態調製は効率的である。同様に、親ハミルトニアンがギャップを有する場合に無限の温度でのマルコフ連鎖は効率的である。より一般的に、ギャップは、高い温度でe-2βに、および低い温度でe-β/n2に比例することが以下に数的に示される。イジング鎖とは対照的に、有限のサイズのシステムについてさえ、ギャップはβ→∞につれてゼロになる。物理的理由は、
Figure 2023510708000038
の秩序における欠損が、エネルギー障壁を克服して伝播されなければならないということである。マルコフ連鎖はゼロ温度でエルゴード的ではないので、マルコフ連鎖を、低いがゼロではない温度
Figure 2023510708000039
で走らせることにより基底状態から近似的にサンプリングすることのみが可能であり、ここでβc = 2log nは、相関長さがシステムのサイズと同等である温度に対応する。親ハミルトニアンのギャップは、
Figure 2023510708000040
だけ混合時間を制限する。図3Dに示されるように、ハミルトニアンHq(β)の集合により与えられる経路に沿って状態|Ψ(βc)>を断熱的に調製する時間は、同じスケーリングに大まかに従う。
量子スピードアップは、量子相転移を通過する図3Cに示される異なる経路(ii)330を選択することにより得られる。例えば、近似的に線形のスケーリングta~nは、次いで図3Dに示されるように経路(ii)330に沿って観察される。経路(i)320はβc = 2log nで終結し、一方で(ii)330はβ→∞で終了する。スイープ速度は式(5)に従って選択され、断熱的状態調製時間をコンピューター計算するために使用される閾値忠実度は、
Figure 2023510708000041
に設定された。図3Dにおける線は、見やすくするために、スケーリングta~nおよびta~n4を示す。イジング鎖に対する類推において、線形スケーリングは、秩序が乱れた相と
Figure 2023510708000042
の秩序だった相の間の相転移での動力学的臨界指数z = 1に起因する。独立集合問題について、量子スピードアップは、マルコフ連鎖をよりゆっくりと混合するために四次であることに注意。
困難なグラフからのサンプリング
ゼロでない温度でも独立集合からのサンプリングが困難である例として、次にグラフを考慮する。グラフは、図4Aに示されるように、bの分岐および1分岐当たり2つの頂点を有する星形を採る。中心での頂点の重みはbであり、一方で全ての他の重みは1に設定される。古典的モデルは、βc = log φ ≒ 0.48で相転移を示し、ここでφは、黄金比である(以下の方法参照)。相転移温度より高くで、中心が占有されない3b状態からのエントロピー寄与により、自由エネルギーは支配される。転移温度より低くで、独立集合制約が利用可能な状態の数を2bまで制限する場合に、エントロピーを低減することを犠牲にして、中心を占有することによりポテンシャルエネルギーを減少させることがより好ましい。図4Bに示されるように、システムは、βc ≒ 0.48で不連続な相転移405(垂直な破線)を示す。中心の頂点は、β > βcの場合に高い確率で占有され、そうでなければ高い確率で占有されない。曲線410、420および450は、b = 10、20および50の分岐のそれぞれを有する有限のサイズのシステムについて得られたが、一方で曲線460は熱力学的限界を示す(以下の方法参照)。
中心の頂点を占有されないものから占有されるものに変化することは、全ての隣接する頂点を占有させないことを必要とするので、このグラフ上のマルコフ連鎖はいくつかの動力学的制約を有する。それぞれの個々の分岐が熱平衡であると仮定すると、かかる移動を受ける確率は、p01 = [(1 + eβ)/(1 +2eβ)]bにより与えられる。逆プロセスは、p10 = e-bβの受理確率によりエネルギー的に抑制される。したがって中心頂点は、熱力学的に好ましくない構成においてトラップされるようになり得、任意の有限の温度でbにより指数関数的に増大する混合時間を生じる。ランダム構成から開始する場合、初期に占有される中心頂点の確率は指数関数的に小さいので、それにもかかわらずマルコフ連鎖は、高い温度で効率的にサンプリングする。同じ議論により、マルコフ連鎖は、低い温度相では間違った構成でほとんど間違いなく開始し、ギブス分布への収斂は、時間
Figure 2023510708000043
を必要とする。
対応する量子ダイナミクスは、固定された中心頂点がそれぞれ占有されないかまたは占有される逆温度βでギブス分布をエンコードする、|Ψ0(β)>および|Ψ1(β)>により形成される二状態モデルにより捕捉される(図4Aおよび以下の方法参照)。これらの状態の間のトンネリング速度、すなわちマトリックス要素<Ψ0|Hq1>は、
Figure 2023510708000044
により与えられ、ここでΩcenは、中心頂点に関連する、式(7)における係数Ωiを示す。相転移を断熱的に交差するために必要な時間は、
Figure 2023510708000045
により制限され、ここでJは、相転移で評価される。ハミルトニアンHq(β)の集合について、
Figure 2023510708000046
を有する。また、相転移で、
Figure 2023510708000047
となるようにp01 = p10であり、相転移でサンプリングするマルコフ連鎖の混合時間に対してより低い境界と同じ時間複雑性を生じる。しかしながら、p01に対するトンネリング速度の平方根依存性は、二次スピードアップはΩcen = 1により相転移を交差することにより達成可能であり得ることをすぐに示唆する。かかる経路の例は、断熱的状態調製時間を数的に評価することにより得られる二次スピードアップの説明と共に以下に提供される。
構造化されない探索問題
構造化されない探索問題は量子アルゴリズムの開発において重要であった。グローバーのアルゴリズムは、証明可能な量子スピードアップの初期の例を与え、多くの提唱された量子アルゴリズムにおいて本質的なサブルーチンのままである。さらに、構造化されない探索問題は、断熱的量子コンピューター計算の概念において決定的な役割を果たした。構造化されない探索問題に適用される場合、いくつかの態様において、本明細書に記載される形式論は、任意の古典的アルゴリズムを超えるその二次スピードアップと共に、断熱的量子探索アルゴリズム(AQS)を回復することが以下に示される。得られた親ハミルトニアンの非局在性(nonlocality)は、それを実際に実行することを難題にするが、結果は、量子スピードアップを可能にするこのアプローチの能力を強調する。
N要素の全ての空間において単一の印をつけられた構成m(すなわち単一の解)を同定する問題を考慮する。いくつかの態様において、この探索問題をサンプリング問題に連結するために、エネルギー-1を、印をつけられた構成に割り当て、一方で全ての他の状態はエネルギー0を有する。これは、古典的ハミルトニアン
Figure 2023510708000048
により要約される。
ここで、探索問題を解決することは、ゼロ温度でのHcに関連するギブス分布からのサンプリングとして公式化され得る。該問題の構造の欠失を考慮すると、マルコフ連鎖の自然の選択は、等しい確率1/Nを有する任意の構成を提唱することである。メトロポリス・ヘイスティングの法則に従って更新が受け入れられる場合、式(2)による親ハミルトニアンは、形態
Figure 2023510708000049
を採り、ここで
Figure 2023510708000050
である。状態
Figure 2023510708000051
は、印がつけられた状態|m>ありおよび無しで、探索空間における全ての状態の等しい重ね合わせである。簡潔さのために、式(9)がコンピューター計算時間についての対数的補正のみを示す場合、親ハミルトニアンを広範囲にする要素n = log Nは、式(9)から省力されている。
0>は、[|m>, |m⊥>]により張られるサブ空間に含まれるので、ハミルトニアンは、直交するサブ空間に対して些細に働く。実際に、全ての些細でない動力学は、式(9)における最後の2つの項から生じる。図5Aは、式(9)におけるハミルトニアンに対応するパラメーター空間を示す。曲線510は、式(11)および式(12)により与えられるV0(β)およびVq(β)を有するハミルトニアンHq(β)の集合を示す。線530は断熱的量子探索アルゴリズムに対応し、線520は一次量子相転移の位置を示す。挿入図は、起源に近いパラメーター空間の領域の拡大された図を示す。図5Bは、V0の関数として図5Aの曲線510および530に沿った式(6)におけるハミルトニアンのギャップを示す。マルコフ連鎖の性能内の洞察を獲得するために、(V0, Vm)の任意の値が可能になる広げられた二次元パラメーター空間の量子相図を考慮する。|m>および|m⊥>のみに関して式(9)を書き直すことにより、大きさ
Figure 2023510708000052
の非対角マトリックス要素(トンネリング速度)により連結されながら、これらの2つの状態がVm - (1 - 2/N)V0により与えられる相対的エネルギー差を有することが示され得る。熱力学的極限N→∞において、システムは、エネルギー差がゼロになる、すなわちVm = V0の場合に、一次量子相転移520を経験する。Vm > V0の場合、基底状態は、|m>との大きな重複を有し、一方でVm < V0について、これは|m⊥>(または|Ψ0>)に近づく。大きなNについて、基底状態が|m>および|m⊥>の重ね合わせにほぼ等しい臨界領域において、エネルギー差は、トンネリング速度により設定される場合にサイズ
Figure 2023510708000053
のものである。
ハミルトニアンHq(β)の集合により決定される経路は、β = 0の場合、(V0, Vm) = (1, 0)で開始し、β→∞の場合、(0, 1/N)で終了する。ゼロ温度でのギャップは1/Nに等しく、混合時間が
Figure 2023510708000054
だけ(対数補正まで)制限される。任意の古典的アルゴリズムは構造化されない探索問題を解決するための構成の平均の半分を調査しなければならないので、この境界が予想される。Hq(β)により決定された経路に沿った断熱的状態調製は、同じ時間複雑さをもたらすことに注意。β = 0で|Ψ0>により与えられる基底状態は容易に調製され得ると仮定される。断熱的状態調製は、量子相転移に近いボトルネックを経験し、ここでV0およびVmは、図5Aの挿入図により示されるように、
Figure 2023510708000055
である。断熱的状態調製時間は、臨界領域において、およそ
Figure 2023510708000056
であるトンネリング速度の逆数により限定される。
上述の記述は、V0およびVmがNに依存しない点で相転移と交差する経路が選択される場合に、スピードアップを示唆する。(V0, Vm) = (1, 0)を(0, 1)に連結する直線セグメントを表す1つのかかる経路530を図5Aに示す。終点(0, 1)は、β→∞(ゼロ温度)を有する親ハミルトニアンHq(β)に対応する(0, 1/N)まで容易に継続され得る。ハミルトニアンはコンピューター計算基底においてV0 = 0に沿って純粋に対角的であるので、後者のセグメントに沿った非断熱的転移はなく、パラメーターは突然変化し得る。(0, 1)を(1, 0)に接続する前者のセグメントに沿って、ハミルトニアンは実際に、AQSアルゴリズムのハミルトニアンと同一である。AQSアルゴリズムは、関連のあるハミルトニアンパラメーターがV0 = 1 - sおよびVm = sにより微小な時間sに関連付けられるように射影作用素|Ψ0><Ψ0|および|m><m|の間に内挿することにより導かれた。sの変化の割合を注意深く選択することにより、相転移でトンネリング速度により制限される時間
Figure 2023510708000057
において高い忠実度を有する最終基底状態を調製することが実際に可能になることが示された。
方法
断熱的スイープ
上述の例において、ハミルトニアンパラメーターの変化の速度は、所定の経路に沿った全ての点で断熱的条件を最適に満足するという目標を伴って、式(5)を使用して選択された。経路が、パラメーターλμの一般的な集合によりパラメーター化される場合、式(5)は、
Figure 2023510708000058
として記載され得、ここで
Figure 2023510708000059
であり、エネルギー固有状態および対応する固有エネルギーについて式(5)と同じ注意がなされる。式(13)および(14)は、非断熱的プロセスの特定の励起状態|n>に対するカップリング強度を決定するマトリックス要素
Figure 2023510708000060
を同時に考慮しながら、ギャップが小さい場合にパラメーターがゆっくり変化することを確実にする。総進展時間は、εを変化することにより調整され得、
Figure 2023510708000061
により与えられ、ここで目的の経路に沿って積分が行われる。
本明細書において試験される場合について、単位原に近い一定の忠実度は、システムのサイズからほぼ独立するεの小さな値で達成されることが以下に示される。そのため、システムサイズに対する断熱的状態調製時間のパラメーター依存性は、式(15)における積分から続く。実際に1Dイジングモデルについての種々の経路210、220、230および240に沿ったスケーリングは、三重臨界点250でgμνの個別の特性から解析的に確立され得ることが見出される。独立集合問題の両方について、同様の数的分析を以下に提供する。
リュードベリ原子を用いた実行
単位円グラフについて、重み付き独立集合問題である式(7)についての親ハミルトニアンは、例えば光ピンセットにより閉じ込められる複数の中性原子の高度に励起したリュードベリ状態を含む量子システムにおいて効率的に実行され得る。図3Bに示されるように、原子iの基底状態|gi>は、所定の頂点iの占有されない状態をエンコードする。同様に、占有された状態は、リュードベリ状態|ri>においてエンコードされる。式(7)の最初および最後の項は、|gi>から|ri>への転移を駆動することにより実行される。Ve,iの値は、駆動の離調により設定され、一方でΩiは、駆動εiの振幅に比例する。射影作用素Piは、リュードベリブロッケイドのために生じ、ここで複数の閉じ込められた中性原子のそれぞれは、リュードベリ状態に励起される場合に、複数の閉じ込められた中性原子の少なくとも1つの他のものを封鎖するように構成される。原子がリュードベリ状態に励起される場合、強力なファン・デル・ヴァールス相互作用UvdWは、全ての隣接する原子のリュードベリ状態を共鳴以外にシフトさせ、駆動を効率的にオフにし、それにより独立集合制約を実行する。式(7)における残りの第2の項は、リュードベリブロッケイドと、基底状態から補助的なリュードベリ状態|r'i>への非共鳴駆動により誘導されるACスタークシフトを合わせる同様のアプローチを使用して実現され得る。リュードベリ相互作用は、2つの原子間の距離rを有する1/r6として減衰するさらなる項をハミルトニアンに付与する。これらの項は、全体を通して無視されており、それらの役割を弱めるための戦略が関連のある文脈において提唱されることに注意。その全体において参照により本明細書に援用されるPichler, H., Wang, S.-T., Zhou, L., Choi, S., and Lukin, M. D. Computational complexity of the Rydberg blockade in two dimensions, http://arxiv.org/abs/ 1809.04954 (2018)で前刷り参照。ある態様において、量子システムを初期化することは、第2のハミルトニアンの基底状態に従って複数の閉じ込められた中性原子のサブセットのそれぞれを励起することを含み得る。いくつかの態様において、進展させることは、コヒーレント電磁放射線の時間変化ビームを複数の閉じ込められた中性原子のそれぞれに方向づけることを含み得る。ある態様において、測定を実行することは、例えば量子気体顕微鏡検査により複数の閉じ込められた中性原子を画像化することを含み得る。
いくつかの態様において、リュードベリ原子の間の相互作用はまた、より複雑な親ハミルトニアンを実行するために使用され得る。例えば、リュードベリ状態の間のFoerster共鳴は、2つの隣接するスピンの同時のフリップを生じ得る。鎖状グラフにおいて、かかる更新は、2つの隣接する占有されない頂点の欠失を、エネルギー障壁なしで伝播させる。最終的に、スターグラフが単位円グラフでなかったとしても、その親ハミルトニアンは、リュードベリ状態の間の異方性の相互作用を使用して潜在的に実行され得たことに注意。
スターグラフの古典的相転移
理論に拘束されることなく、スターグラフについての独立集合問題に関連する古典的モデルが相転移を経験する温度を、正確にコンピューター計算し得る。分割関数は、
Figure 2023510708000062
により与えられる。2つの項は、中心の頂点の異なる構成に対応する。中心部位が占有される確率は、
Figure 2023510708000063
により与えられる。熱力学的極限β→∞において、式(17)は、階段関数
Figure 2023510708000064
になり、ここでβc = log φであり、
Figure 2023510708000065
は黄金比である。エントロピーS = (U-F)/Tは、ヘルムホルツ自由エネルギー
Figure 2023510708000066
からコンピューター計算され得る。
スターグラフについての2状態モデル
スターグラフは、3種類の頂点:中心の頂点ならびに内部および外部のそれぞれの分岐上の頂点を有する。理論に拘束されることなく、分析を、分岐の順列の下で完全に対称なサブ空間に限定すると、総占有数
Figure 2023510708000067
ならびに占有されない分岐の数n0が導入される。対称なサブ空間は、状態|ncen, nin, nout, n0>により張られ、ここで
Figure 2023510708000068
であり、一方で他の占有数は、nin + nout + n0 = bを満足する負ではない整数である。ncen = 1の場合、独立集合制約はさらに、nin = 0であることを必要とする。状態|ncen, nin, nout, n0>は、
Figure 2023510708000069
独立構成の等しい重ね合わせである。
理論に拘束されることなく、順列対称性は、ボゾン性代数をもたらす。それぞれ占有数nin、noutおよびn0に関連するボゾン消滅演算子bin、boutおよびb0が画定される。ハミルトニアンは、中心頂点が占有されるかまたは占有されないかいずれかのブロック、およびそれらをカップリングする対角でない項に分割され得る。明確に、
Figure 2023510708000070
である。これは式(7)に従い、ボゾン演算子に関して、
Figure 2023510708000071
Figure 2023510708000072
であり、P(nin = 0)は、内部頂点が占有されない状態に投影される。パラメーターは、頂点指数iがその種類の頂点により置き換えられる式(7)の定義に従って標識される。
ハミルトニアンは、P(nin = 0)を摂動的に処理することによりほぼ対角化され得る。
Figure 2023510708000073
の二次部分を対角化する最低エネルギーモードが同定され、それらはボゾン消滅演算子c0およびc1のそれぞれと関連付けられる。両方のモードは、ゼロエネルギーを有するが、他のモードは、βの任意の有限の値についてギャップを有する。したがって、基底状態は、
Figure 2023510708000074
により張られるサブ空間内で十分に近似されることが予想され得、ここで|0>は、ボゾン真空を示し、全てのパラメーターが、自由に調整され得るΩcenおよびVe,cenを除くハミルトニアンHq(β)の集合により画定される経路をたどる状況に焦点が当てられる。この場合、|Ψ0>および|Ψ1>は、保持された中心頂点が固定されたスターグラフ上の重み付き独立集合のギブス分布をコードすることが示され得る。
P(nin = 0)を含む項の効果を含むために、|Ψ0>および|Ψ1>により張られるサブ空間についてシュリーファー-ウルフ変換が実行され、効率的ハミルトニアン
Figure 2023510708000075
に到達し、ここで項
Figure 2023510708000076
は、完全なハミルトニアンを低エネルギーサブ空間に投影することにより得られる。カップリングから二次までのシュリーファー-ウルフ変換により与えられるような励起した状態への補正は、
Figure 2023510708000077
である。ここで、目的の経路に沿って保持される関係
Figure 2023510708000078
が使用された。合計は、
Figure 2023510708000079
の二次部分(|Ψ0>を除く)のエネルギー
Figure 2023510708000080
を有する全ての励起した状態
Figure 2023510708000081
にわたり行われる。項Ve,cenは、式(26)および(27)のエネルギー分母において無視され、これは、Ve,cen
Figure 2023510708000082
と比較して小さい場合に正当化される。シュリーファー-ウルフ変換からの二次補正はその後無視され得るので、事実はそうではなくても、議論は妥当なままである。これらの結果を組み合わせることで、完全な効率的ハミルトニアンは、
Figure 2023510708000083
として記載され得、ここで
Figure 2023510708000084
である。fは、近似値が熱力学的極限において良好に正当化されるように、bにおける逆べき乗法則(inverse power law)として減衰することが数的に見出される(以下参照)。親ハミルトニアンHq(β)の集合について、これは
Figure 2023510708000085
である。そのため、Heffは、大きなbの極限において1になる傾向のある全体的な要素(1-f)を通して、fのみに依存する。下にある古典的モデルの相転移は、それ自体を、|Ψ0>から|Ψ1>への一次量子相転移として示す。2つの状態が共鳴である場合に転移が起こり、ε0 = Ve,cenであり、これは、相転移温度の上記の正確な計算と一致して、βc = log φを与えるように解かれ得る。
イジング鎖
親ハミルトニアン
いくつかの態様において、グローバー動力学は、以下の規定に従ってマルコフ連鎖を画定する:スピンをランダムに選び、全ての他のスピンが固定されたギブス分布からその新しい方向を描く。したがって、構成sから開始すると、イジング鎖におけるスピンiのフリッピングの確率は
Figure 2023510708000086
により与えられる。
スピンsiの値を演算子
Figure 2023510708000087
に昇格することにより、マルコフ連鎖の生成元(generator)を
Figure 2023510708000088
として簡潔に記載し得る。上記式(2)は、即座に
Figure 2023510708000089
を与える。簡単代数(Straightforward algebra)は最終的に
Figure 2023510708000090
を生じる。一定の項((n/2) I)は上記の式(6)から省略した。
自由フェルミオン分解
基底状態
理論に拘束されることなく、上述の式(6)または式(32)のハミルトニアンは、Jordan-Wigner変換を使用して、自由フェルミオンモデル上にマッピングされ得る。フェルミオン消滅および生成演算子
Figure 2023510708000091
を画定し、それらを、
Figure 2023510708000092
に従ってパウリ行列に関連付ける。
上述の式(6)は、
Figure 2023510708000093
となり、ここで
Figure 2023510708000094
はフェルミオンの総数である。フェルミオン数自体は保存されないが、パリティeiπNは、偶および奇のサブ空間を独立して考慮することを可能にする。
運動量空間演算子
Figure 2023510708000095
を画定し、これは適切に選択されたkについてフェルミオン交換関係を満足する。l = 0、1、...、n-1 (mod n)について
Figure 2023510708000096
とする。この定義により、逆フーリエ変換された演算子は、形式上の特性ai+n = -eiπNaiを有し、これは式(34)における境界の項を相殺する。ハミルトニアンは、
Figure 2023510708000097
を単純化する。
上述のハミルトニアンは標準的なボゴリューボフ変換により対角化され得るが、本明細書に記載される目的で、これを相互作用しないスピンにマッピングすることがより都合がよいことが明らかになる。0 < k <πについて、
Figure 2023510708000098
が画定される。
これらの演算子がパウリ行列と同じ交換関係を満足することを調べることが簡単である。さらに、kの異なる値に対応する演算子は、それらが、kのそれぞれの値についてのものである独立スピン-1/2系とみなされ得るように交換される。運動量の範囲は、重複性
Figure 2023510708000099
のために、0 < k < πに限定される。k = 0およびk = πの場合は、
Figure 2023510708000100
の両方がゼロになるような特殊な処理を必要とする。
具体性のために、スピンnの数は偶数であると仮定し得る。次いで、特殊な場合k = 0およびk = πは両方、奇のパリティサブ空間(eiπN = -1)の一部である。偶のパリティサブ空間のハミルトニアンは、
Figure 2023510708000101
として記載され得、ここで
Figure 2023510708000102
である。角度θkは、
Figure 2023510708000103
により特有に画定される。基底状態は、
Figure 2023510708000104
により与えられ、ここで|vac>は、ak演算子に関する真空である。基底状態エネルギーは、
Figure 2023510708000105
である。奇のパリティサブ空間において、
Figure 2023510708000106
を有する。
基底状態の構築は、どちらが低いエネルギーを有するにせよa0フェルミオンまたはaπフェルミオンのいずれかが占有されるというさらなる要件を有する、同等の場合に類似する。得られたエネルギーは、h + J1 + J2およびh - J1 + J2が同じ符号を有する場合に、
Figure 2023510708000107
を超えるギャップを有することが示され得る。反対の符号の場合、偶および奇の区分の基底状態は、熱力学的極限において縮退され、強磁性相の基底状態の対称性の破れに対応する。
上述の断熱的進展は、J1 = J2 = 0で基底状態から開始されると考えられた。上述の議論に従い、この状態は偶のサブ空間の一部である。時間進展はパリティを保存するので、記述を偶のサブ空間に限定し得、全ての関連のある標識を下に落とす。
励起スペクトルおよび相図
励起した状態は、τスピンのいずれかをフリップすることにより構築され得る。任意のスピン回転は、パリティ演算子と交換されるので、単一で励起した状態は、
Figure 2023510708000108
により与えられ、エネルギー4Ekは基底状態より高い。位相境界は、励起ギャップがゼロになる、Ek = 0であるパラメーターを探すことにより同定される。熱力学的極限において、kを、Ekの最小を同定するための連続変数として処理し得る。3つの異なる場合がある:
1. h + J1 + J2 = 0の場合にk = 0でギャップがゼロになる。
2. h - J1 + J2 = 0の場合にk = πでギャップがゼロになる。
3. h - J2 = 0の場合に
Figure 2023510708000109
でギャップがゼロになる。|J1| < 2|h|のみについて解が存在する。
図6に示されるように、ケース1および2は、述の同定に従って常磁性620およびクラスター状態様相630から強磁性相610の輪郭を描く。ケース3は、常磁性相620をクラスター状態様相630から(form)分離する。
h = J2およびh = ±J1を同時に満足する2つの特殊な点を除き、全ての3つの場合において分散は線形である。これらは、ケース3およびケース1または2のいずれかからの分散最小値が二次分散を有する単一の最小値に合流する三重臨界点である。そのため、動力学的臨界指数は、z = 2である三重臨界点を除いて全ての相転移でz = 1である。ギャップは、有限のサイズの系についての分散最小値に最も近いkの値を考慮することにより容易に見られ得るように、~n-zとして近くなる。ケース3において、ギャップは、固定された(h、J1、J2)についてのシステムサイズの関数として、振動挙動を示し、正確にゼロになりさえし得ることに注意。それにもかかわらず、エンベロープは、予想される約1/nスケーリングに従う。
数値の詳細
所定の経路に従う時間依存的ハミルトニアンの下での進展の後に忠実度をコンピューター計算するために、シュレディンガー方程式をそれぞれのスピンτkについて数的に積分して、エネルギー±2Ekを有する
Figure 2023510708000110
の固有状態である瞬間の固有の基底
Figure 2023510708000111
において作動した[式(39)参照]。0から1まで走る微小な時間sによりそれぞれの断熱的経路をパラメーター化することが都合がよい。時間sで状態を
Figure 2023510708000112
と記載すると、係数ckおよびdkは、シュレディンガー方程式
Figure 2023510708000113
により決定され、ここで初期条件ck(0) = 1、dk(0) = 0である。最終的な忠実度は、それぞれのスピンについてこの方程式を解き、個々の忠実度
Figure 2023510708000114
をかけることにより得られる。式(48)における全ての項は、物理的進展時間t(s)を解く必要なく評価され得ることに注意。項Ek(s)およびdθk/dsは、式(40)~(42)から容易にコンピューター計算され、dt/dsは、上述の式(13)から続く:
Figure 2023510708000115
ここで、λ1 = J1、λ2 = J2であり、全体を通してh = 1に設定する。総進展時間ttotを変化させるために、単純にεの値が調整される。sn+1 = sn + Δsnを増加する前に、間隔
Figure 2023510708000116
についての定数s = sn下で進展させることにより良好な収斂が得られた。工程の数は総時間から独立するが、基底状態に残る確率は各工程で小さいので、最終の忠実度は良好に確立される。そのパラメーター化が表1に与えられる上述の4つの経路についてのεの関数としての得られる非忠実度
Figure 2023510708000117
を、n = 10からn = 1000までの異なる長さの鎖について、図7A~7Dに示す。黒色の十字は、非忠実度が10-3に等しくなる場所を示す。忠実度はεに対する普遍的な依存性
Figure 2023510708000118
に従うことが観察される。これは、波動関数に対する一次断熱的補正は、総時間に反比例するという事実から理解され得る。εの関数として表される場合に
Figure 2023510708000119
はnからほぼ独立するので、システムサイズに対する総断熱的時間の依存性は、上述の式(15)の積分により大まかに決定され、これは次のセクションにおいて詳細に分析される。
Figure 2023510708000120
断熱的経路長さ
上述の数的観察は、断熱的状態調製時間が、断熱的経路長さlとして本明細書において称される量
Figure 2023510708000121
に比例することを示唆する。同じ意図で、gμνは、パラメーター空間に断熱的進展に関連のある距離測定値を付与するので、断熱的メトリックと称される。断熱的経路長さlを、上で議論される4つの経路(図2Aに示される210、220、230および240)についてのnの関数として図8にプロットする。線は、スケーリング
Figure 2023510708000122
を示す。予想されるように、プロットは、全スケール要素まで、上述の図2Dとほぼ同一であるように見られる。
三重臨界点に近い断熱的メトリックを考慮することにより、断熱的経路長さの分析的理解を取得し得る。式(43)および(46)から、
Figure 2023510708000123
であることを示すことが簡単である。次いでこれは、上述の式(14)の定義の直後に続き、
Figure 2023510708000124
である。λ1 = J1、λ2 = J2により、この結果は、マトリックス形式で
Figure 2023510708000125
と記載され得る。
熱動力学的極限において、運動量合計は、積分に変わり、解析的に評価され得る。h = 1を設定して、J1 = 2 + ηcosα、J2 = 1 + ηsinαをパラメーター化すると、結果は、三重臨界点(小さいη)に近くで展開されて、
Figure 2023510708000126
が得られる。
第1のケースは強磁性相に対応し、第2のケースは常磁性およびクラスター状態様相に適用される。両方の場合において、断熱的メトリックは、べき乗則、G~nη-ρとして発散し、強磁性相においてρ = 5/2であり、その他においてρ = 5である。
有限のサイズの系について、臨界点で正確にG~nσであることが示され得、ここでJ1軸に平行ではない任意の方向でσ = 6である。有限のサイズのスケーリング議論に基づいて、最終的な値G~nσに飽和するまで三重臨界点に近づくように、メトリックは、無限の系についての表現に従うことが予想される。そのため、
Figure 2023510708000127
により決定される臨界領域η < ηcが画定され、ここでメトリックはほぼ一定である。これらの議論は、経路長さが
Figure 2023510708000128
に従って比例するべきであることを示す。
上述の予想は、図8に示される経路(ii)~(iv)についての数的な結果と良好に一致するが、三次のスケーリングが観察される経路(i)については失敗する。図9Aおよび9Bは、強磁性相610から近づいた場合および常磁性相620から近づいた場合のそれぞれの臨界点からの距離の関数としてGを示す。線910、920および930は、図9Bの説明に示される系サイズに対応する。曲線940は、無限の鎖についての分析的な結果を示す。図9Bは、後者の場合においてはスケーリング仮説が壊れ、Gにおける振動する項が経路長さlに有意に寄与することを示す。振動する項は、三重臨界点が強磁性相から近づかれる場合に分散最小値がk = 0でもk = πでもないという事実に起因し得、それによりスケール不変を破壊する不十分な長さのスケールが生じる。
当業者は、三重臨界点から離れる常磁性および強磁性の相の間の転移で同様の分析が実施され得ることを理解する。断熱的経路長さは常に、系サイズと線形に比例することが見出される。
重み付き独立集合問題
親ハミルトニアン
いくつかの態様において、重み付き独立集合問題について、グローバー動力学の代わりにメトロポリス・ヘイスティングの更新法則が使用される。運動は、確率paccept = min(1, e-βΔE)により受け入れられ、ここでΔEは、エネルギーの変化である。単一部位更新により、頂点iの占有を変化させる確率は、
Figure 2023510708000129
により与えられ、重みwiは負ではないと仮定される。射影作用素
Figure 2023510708000130
は、頂点iの最近傍の隣接体Niが全て占有されずに、マルコフ連鎖が独立集合サブ空間を残さないことを確実にする構成に対して投影する。このサブ空間の外側の状態においてマルコフ連鎖が初期化される可能性は、本明細書において考慮されない。上述されるものと同じ工程に従って、親ハミルトニアンは
Figure 2023510708000131
と誘導される。これは同一性
Figure 2023510708000132
を使用して、上述の式(7)の形態から生じ得る。
鎖状グラフ
鎖上の(重みなし)独立集合問題についての親ハミルトニアンは、異なる文脈において以前に議論されている。一般的なパラメーターについて、ハミルトニアンの量子相図は、有限のサイズの鎖の数的対角化を使用して仮定され得る。問題の複雑さは、独立集合のサブ空間を考慮することのみが必要とされるように単純化される。それ自体は並進下で不変(ゼロ運動量)である状態にさらに制限される。初期状態がこの条件を満足すると仮定すると、ハミルトニアンは並進的に不変であるので、状態は、全ての時間でこのサブ空間内に残る。
βの関数としてのハミルトニアンHq(β)の集合のギャップを図10Aおよび10Bに示す。図10Aは、βの関数としての4つの異なる系サイズについてのギャップを示す。線1050および1060は、一定の前要素(pre-factor)までの関数e-2βおよびe-βをそれぞれ示す。図10Bは、β = 8での頂点nの数に対するギャップの依存性を示す。線1070は、べき乗則1/n2を示す。高温で、ギャップは、以前の分析結果と一致して、e-2βにつれて減衰する。そのため、低温で、ギャップはe-β/n2につれて、温度および系サイズの両方に依存することが観察される。n上の二次依存性は、ドメインウォール、すなわち
Figure 2023510708000133
秩序を破壊する穴のペアの拡散性の伝播の結果である。ドメインウォールが伝播するために、隣接する頂点を下方遷移させることが必要である。これは、さらなる要素e-βをもたらすエネルギー障壁を生じる。
指数関数的にゼロになるギャップのために、上で議論される経路(i)320に沿ったゼロ温度でギブス分布をエンコードする状態を断熱的に達成することは可能でない。そのために、ゼロ温度でギブス分布をエンコードする状態に関するその忠実度がほぼ90%であり、nとはほぼ独立する、βc = 2 log nでギブス分布をエンコードする状態のみが調製される。一定の重複は、βcでの相関長さは、系サイズの固定された比であるという事実を反映する。本明細書において議論されるスケーリング挙動を変化させることなく、βcに定数を付加することにより、重複を増加させることが可能である。状態調製忠実度を決定するために、不連続の時間ステップΔtでハミルトニアンを正確に対角化することによりシュレディンガー方程式を数的に積分する。ステップは、Δt|d|0>/dt| = 10-3となるように選択され、ここで|0>は、瞬間の基底状態を示す。式は、同一性
Figure 2023510708000134
を使用して最も都合よく評価され、ここで合計は、エネルギーEnを有する全ての励起した状態|n>にわたり走る。時間ステップは、上述の式(13)による経路に沿ったパラメーターにおける変化に関連付けられる。イジング鎖に関する限り、忠実度は、頂点nの数とはほぼ独立した様式で、小さなεで1に近づく。経路(ii)330に沿って同じことが真実であり、それについて有限の時間においてゼロ温度でギブス分布をコードする状態を断熱的に達成することが実際に可能である。2つの経路の明確なパラメーター化を表2に提供する。
Figure 2023510708000135
εの固定された値での忠実度はnとはほぼ独立するという事実は再度、式(51)における断熱的経路長さlに関する断熱的状態調製時間taを理解することを可能にする。β = 0からβ = 10までの経路(i)320および(ii)330に沿った断熱的経路長さlを図11Aおよび11Bのそれぞれにプロットする。破線はβ = 10でのlの値への適合を示す。(i)について、関数Aeβ/2n3を使用して、(ii)を線形関数Bn + Cと適合させた。大きなβについて、断熱的経路長さは、図11Aに示されるように経路(i)に沿ってeβ/2n3につれて発散し、これは、β = βc = 2 log nと設定する場合にスケーリングta~n4をもたらす。対照的に、lは、図11Bに示されるように、β→∞につれて、経路(ii)に沿って有限の値に収斂する。値は、ta~nであるようなnに伴って線形に大きくなる。
スターグラフ
fの数的評価
上述の方法のセクションにおいて、量fは、
Figure 2023510708000136
と画定された。bの関数としてのこの量fの数的評価を、βの3つの異なる値について図12に示す。線は、逆べき乗則1/bを示す。大きなbの極限において、fはbに反比例して減衰することが見出される。これは実際に、式(59)におけるエネルギー分母が大きな量である場合に予想される。
断熱的経路
異なる断熱的経路の記載の前に、β = 0を有するギブス分布をエンコードする状態は効率的に調製され得ることに注意。例えば、Ve,i = 1およびVg,i = Ωi = 0で開始し得る。次いで、Vg,iについて同じことを行う前に、全てのΩiは同時に、同じ一定の割合で1まで増加される。ハミルトニアンは、断熱的状態調製が効率的に進行するようにこの経路に沿ってギャップを有するままである。そのため、全ての断熱的経路についての最初の点のように、β = 0を有するギブス分布をエンコードする状態が使用され得る。
次いで、ハミルトニアンHq(β)の集合により画定される経路に沿った断熱的進展を考慮する。図13Aは、β = 0からβ = 2βcまでのハミルトニアンHq(β)の集合により画定される経路に沿ったパラメーターεの関数としての非忠実度
Figure 2023510708000137
を示す。図13Aを得るために行ったシュレディンガー方程式の数的積分は、時間ステップがΔt|d|0>/dt| = 10-4を満足するように選択された鎖状グラフ上の独立集合問題についてと同じステップをたどる。
Figure 2023510708000138
は固定されたεでbとは大きく独立するので、断熱的経路長さlは、分岐bの数に対する断熱的状態調製時間の依存性についての信頼性のある代用である。相転移点でのギャップは、サブリーディング要素(1 - f)を無視して、トンネリング速度J = φ-bと等しい。そのため、断熱的状態調製時間および断熱的経路長さが、φbに比例することが予想され、これは図13Bにおいて数的に確認された。断熱的経路長さ(ドット)についての数的に正確な結果は、φb(線)対する予想される依存性と良好に一致する。相転移でのマルコフ連鎖の混合時間は同じスケーリング
Figure 2023510708000139
を有することに注意。相転移より下のサンプリングについて、混合時間は、量子アルゴリズムがスピードアップを達成すると思われるように増加する。しかしながら、相転移にわたるシミュレーテッドアニーリングを実行することにより、マルコフ連鎖のスローダウンは回避され得る。中心の頂点の占有は、相転移の近位のみで有意に変化するので、その収斂時間は、βの任意の最終の値についてのハミルトニアンHq(β)の集合により与えられた経路に沿った状態を断熱的に調製するような、時間に適合することが予想される。
上述の議論に従って、Ωcenの値を増加することにより、断熱的状態調製時間の向上が予想される。最初の推測として、Ωcenが1で一定に保持され、一方で全ての他のパラメーターが、Hq(β)に従ってβ = 0からβの所望の最終的な値(相転移未満であると仮定される)まで変化する経路が考慮され得る。相転移を交差するのに必要な時間は再度ta約1/Jであり、ここでJは、相転移で評価される。効率的ハミルトニアンにおける項
Figure 2023510708000140
[上述の式(28)]は、ta約(3/2)b/2となるようにβ = 0の近くに相転移を移動させる。しかしながら、Ωcenをその最終の値e-bβ/2までさらに減少させる必要がある場合、これは依然として、ギブス分布をエンコードする所望の量子状態を調製するためのスピードアップを生じない。この工程は、断熱的に実行される場合にスピードアップを無効にすることが分かる。この理由は、大きな値のΩcenは、中心の頂点が占有されない場所で状態を混合し、その熱的予測値から離れた占有確率を歪曲するためである。この混合が小さかったとしても、それを断熱的に除去するための時間は、相転移を最初に交差する時間を超える。この論点を回避するために、原則として突然に、最終的な忠実度が混合により制限されるということを犠牲にして、Ωcenを、その最終的な値に切り替え得る。摂動理論および数的な結果は、これがbの大きな値について1/b2として減衰する非忠実度
Figure 2023510708000141
を生じることを示唆する。
経路のわずかな改変は、bにおいて多項式的(polynomially)だけでなく指数関数的に小さい最終状態の非忠実度を達成し:第1に、Ve,cenは、その最初の値1から-1まで低下され、これは以前のように時間ta約(3/2)b/2において行われ得る。次いで、全ての他のパラメーターは、bにおいて多項式である時間のみが必要とされるハミルトニアンHq(β)の集合に従って変化される。これら2つのステップについての数的な結果を図14Aおよび14Bに示す。図14Aは、Ve,cenが1から-1まで減少される前にHq(0)で開始される経路に沿った非忠実度
Figure 2023510708000142
を示す。続いて全ての他のパラメーターは、β = 0からβ = 2βcまでのハミルトニアンHq(β)の集合に従って変化される。シュレディンガー方程式の数的積分は、時間ステップがΔt|d|0>/dt| = 10-3を満足するように選択された鎖状グラフ上の独立集合問題についてのものと同じステップをたどる。図14Aは、断熱的経路長さが再度、断熱的状態調製時間の仮定として働くことを示す。図14Bは、bの関数としての断熱的経路長さを示す。ドットは数的に正確な結果を示し、線は指数関数(3/2)b/2を示す。最終的に、Ve,cenは、その最終的な値e-bβまで増加される。中心の頂点が占有されない確率は、Ve,cenの大きな負の値のために最初に非常に小さいので、以前のスキームと同様に、この最後の工程の完全に断熱的な進展は、非常に長い時間を必要とする。しかしながら、その最終的な値p0≒e-bβ [1+2eβ)/(1+eβ)]bはbにおいて指数関数的に小さいので、Ve,cenをその最終的な値に突然切り替える場合、忠実度は単位元に指数関数的に近くなり得る。これらの考察は図15において数的に確認された。図14Aおよび14Bに関して上述されるスイープの後、Ve,cenは、β = 2βcでその最終的な値に突然切り替えられる。断熱的経路に沿った完全な忠実度を仮定すると、ドットは、得られた非忠実度を示す。非忠実度は、中心の頂点が占有されない確率と良好に一致する。(その関数形態の線はプロットにおいて示される)。
マルコフ連鎖にわたるこの経路のスピードアップは、二次[
Figure 2023510708000143
と比較してta約(3/2)b/2]よりも大きいように思われるが、およそ(3/2)bの収斂時間は、シミュレーテッドアニーリングを使用して達成され得る可能性が高い。例えば、中心の頂点の重みが最初に増加するアニーリングスケジュールが考慮され得た。これは、相転移をβ = 0に向かって移動させ、(3/2)bで比例する時間における相転移でサンプリングすることを可能にする。アニーリングスケジュールにおいて、次いで温度は、中心の頂点の重みをその最初の値へと逆に増加させる前に、所望の値まで低下され得る。このアニーリングスケジュールは、上述の断熱的経路と同様の多くの方法におけるものである。それにもかかわらず、Ve,cenおよびΩcenを独立して変化させることが可能でない量子の場合とは異なるので、それは二次的によりゆっくりである。
いくつかの態様において、本明細書に記載される量子サンプリングアルゴリズムへのアプローチは、コンピューター計算の複雑さと相転移の間の関係を明らかにし、量子スピードアップの起源に対する物理的洞察を提供する。ギブス分布が局所的な古典的ハミルトニアンに属し、マルコフ連鎖更新が局所的であると仮定すると、構築において見られる量子ハミルトニアンは、局所的であることが保証される。結果的に、これらの量子ハミルトニアンの下の時間進展は、ハミルトニアンシミュレーションを使用して実行され得る。さらに、近々のデバイスにおけるハードウェア効率的実行は、独立集合問題などの特定の場合について可能であり得る。リュードベリブロッケイドを使用する提唱された実現は単位円グラフに限定されるが、例えば異方性相互作用および複数の原子サブレベルを用いた個々のアドレッシングを使用して、より広範囲のクラスのグラフがアクセス可能になり得る。
上で議論される種々の態様において、量子コンピューターは複数の閉じ込められた中性原子を含む。しかしながら、量子コンピューターの種々の物理的態様は、本開示に従った使用に適切である。キュービットは、本明細書において数学的オブジェクトとして特徴付けられるが、それぞれは、トラップされたイオン、光学的空洞、個々の素粒子、分子またはキュービット挙動を示す分子の凝集などのいくつかの異なる物理的実行を使用して実行され得る物理的キュービットに対応する。したがって、いくつかの態様において、量子コンピューターは、非線形の光学媒体を含む。いくつかの態様において、量子コンピューターは空洞量子電磁力学的デバイスを含む。いくつかの態様において、量子コンピューターはイオントラップを含む。いくつかの態様において、量子コンピューターは核磁気共鳴デバイスを含む。いくつかの態様において、量子コンピューターは超伝導デバイスを含む。いくつかの態様において、量子コンピューターは固体状態デバイスを含む。
ここで図16を参照すると、コンピューター計算ノードの例の概略が示される。コンピューター計算ノード10は、適切なコンピューター計算ノードの1つのみの例であり、本明細書に記載される態様の使用または機能の範囲に関する何らかの限定を示唆することは意図されない。それに関わらず、コンピューター計算ノード10は、上述の機能のいずれかを実行および/または実施し得る。
コンピューター計算ノード10において、多くの他の一般的な目的または特定の目的のコンピューター計算システム環境もしくは構成を伴って作動するコンピューターシステム/サーバー12がある。コンピューターシステム/サーバー12を用いた使用に適切であり得る周知のコンピューター計算システム、環境および/または構成の例としては、限定されないが、パーソナルコンピューターシステム、サーバーコンピューターシステム、シンクライアント、シッククライアント、手持ちサイズまたはラップトップ型デバイス、マルチプロセッサーシステム、マイクロプロセッサー系システム、セットトップボックス、プログラム可能家庭用電化製品(consumer electronics)、ネットワークPC、ミニコンピューターシステム、メインフレームコンピューターシステムおよび上述のシステムまたはデバイスのいずれかを含む分散クラウドコンピューター計算環境(distributed cloud computing environment)等が挙げられる。
コンピューターシステム/サーバー12は、コンピューターシステムにより実行されるプログラムモジュールなどのコンピューターシステム実行可能指示の一般的な文脈に記載され得る。一般的に、プログラムモジュールは、特定のタスクを行うまたは特定の抽象データ型を実行する、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、ロジック、データ構造等を含み得る。コンピューターシステム/サーバー12は、タスクが通信ネットワークを通じて連結される遠隔処理デバイスにより行われる分散クラウドコンピューター計算環境中で実施され得る。分散クラウドコンピューター計算環境において、プログラムモジュールは、メモリ記憶デバイスを含むローカルおよび遠隔コンピューターシステム記憶媒体の両方中に配置され得る。
図16に示されるように、コンピューター計算ノード10中のコンピューターシステム/サーバー12は、一般的な目的のコンピューター計算デバイスの形態で示される。コンピューターシステム/サーバー12の構成要素としては、限定されないが、1つ以上のプロセッサーまたは処理ユニット16、システムメモリ28、およびシステムメモリ28などの種々のシステム構成要素をプロセッサー16に連結するバス18が挙げられ得る。
バス18は、メモリバスまたはメモリコントローラ、ペリフェラルバス、アクセラレーテッドグラフィックスポート(accelerated graphics port)および種々のバスアーキテクチャーのいずれかを使用するプロセッサーまたはローカルバスを含むいくつかの種類のバス構造のいずれかの1つ以上を表す。例示により、限定されることなく、かかるアーキテクチャーとしては、インダストリスタンダードアーキテクチャー(ISA)バス、マイクロチャンネルアーキテクチャー(MCA)バス、拡張(Enhanced)ISA(EISA)バス、ビデオエレクトロニクススタンダードアソシエーション(Video Electronics Standards Association) (VESA)ローカルバス、ペリフェラルコンポーネントインターコネクト(Peripheral Component Interconnect) (PCI)バス、ペリフェラルコンポーネントインターコネクトエクスプレス(Peripheral Component Interconnect Express) (PCIe)およびアドバンスドマイクロコントローラバス(Advanced Microcontroller Bus)アーキテクチャー(AMBA)が挙げられる。
コンピューターシステム/サーバー12は典型的に、種々のコンピューターシステム読み取り可能媒体を含む。かかる媒体は、コンピューターシステム/サーバー12によりアクセス可能な任意の利用可能な媒体であり得、揮発性および非揮発性媒体、取り外し可能および非取り外し可能媒体の両方を含む。
システムメモリ28は、ランダムアクセスメモリ(RAM)30および/またはキャッシュメモリ32などの揮発性メモリの形態のコンピューターシステム読み取り可能媒体を含み得る。コンピューターシステム/サーバー12はさらに、他の取り外し可能/非取り外し可能、揮発性/非揮発性コンピューターシステム記憶媒体を含み得る。例示のみとして、記憶システム34は、非取り外し可能、非揮発性磁気媒体(示されず、典型的に「ハードドライブ」と称される)からの読み取りおよびそれへの書き込みのために提供され得る。示されないが、取り外し可能、非揮発性磁気ディスク(例えば「フロッピーディスク」)からの読み取りおよびそれへの書き込みのための磁気ディスクドライブ、ならびに取り外し可能、非揮発性光学ディスク、例えばCD-ROM、DVD-ROMまたは他の光学媒体からの読み取りまたはそれへの書き込みのための光学ディスクドライブが提供され得る。かかる例において、それぞれは、1つ以上のデータ媒体インターフェースによりバス18に連結され得る。以下にさらに示され、記載されるように、メモリ28は、本開示の態様の機能を実行するように構成される、一組(例えば少なくとも1つ)のプログラムモジュールを有する少なくとも1つのプログラム産物を含み得る。
一組(少なくとも1つ)のプログラムモジュール42を有するプログラム/ユーティリティー40ならびに例示として限定されることなくオペレーティングシステム、1つ以上のアプリケーションプログラム、他のプログラムモジュールおよびプログラムデータはメモリ28中に蓄積され得る。オペレーティングシステム、1つ以上のアプリケーションプログラム、他のプログラムモジュールおよびプログラムデータまたはそれらのいくつかの組合せのそれぞれは、ネットワーク環境の実行を含み得る。プログラムモジュール42は一般的に、本明細書に記載される態様の機能および/または方法論を実行する。
コンピューターシステム/サーバー12はまた、例えばキーボード、位置指示装置、ディスプレイ24等の1つ以上の外部デバイス14;ユーザーがコンピューターシステム/サーバー12と情報交換することを可能にする1つ以上のデバイス;および/またはコンピューターシステム/サーバー12が1つ以上の他のコンピューター計算デバイスと通信することを可能にする任意のデバイス(例えばネットワークカード、モデム等)と通信し得る。かかる通信は、入力/出力(I/O)インターフェース22を介して起こり得る。なおさらに、コンピューターシステム/サーバー12は、ネットワークアダプタ20を介してローカルエリアネットワーク(LAN)、一般的な広域ネットワーク(WAN)および/または公共ネットワーク(例えばインターネット)などの1つ以上のネットワークと通信し得る。示されるように、ネットワークアダプタ20は、バス18を介してコンピューターシステム/サーバー12の他の構成要素と通信する。示されないが、他のハードウェアおよび/またはソフトウェア構成要素が、コンピューターシステム/サーバー12と共に使用され得ることが理解されるべきである。例としては、限定されないが:マイクロコード、デバイスドライバ、冗長処理ユニット(redundant processing unit)、外部ディスクドライブアレイ、RAIDシステム、テープドライブおよびデータアーカイバル記憶システム等が挙げられる。
図17を参照すると、本開示の態様による組み合された古典的および量子システムの概略図が提供される。この例において、量子コンピューター1701は、例えばI/Oインターフェース22またはネットワークアダプタ20を介してコンピューター計算ノード10に接続される。量子コンピューターと古典的コンピューター計算ノードの間の接続性のさらなる手段は当該技術分野において公知であることが理解される。この例において、量子コンピューター1701は、複数の閉じ込められた中性原子1702を含む。しかしながら、本明細書においてさらに記載されるように、量子コンピューター1701は代替的量子システムを使用し得る。
種々の態様において、コンピューター計算ノード10は、例えばネットワークアダプタ20を介して遠隔ノードからまたは記憶システム34などの内部もしくは外部記憶から、確率分布の記述を受信する。コンピューター計算ノード10は、確率分布をエンコードする基底状態を有する第1のハミルトニアンを決定し、第2のハミルトニアンを決定し、第2のハミルトニアンは、少なくとも1つの量子相転移を通る経路を介して、第1のハミルトニアンへと連続的に変換可能である。コンピューター計算ノード10は、例えばI/Oインターフェース22またはネットワークアダプタ20を介して、量子コンピューター1701に指示を提供する。指示は、第2のハミルトニアンの基底状態に従って量子システムを初期化することおよび少なくとも1つの量子相転移を通る経路に従って第2のハミルトニアンの基底状態から第1のハミルトニアンの基底状態へと量子システムを進展させることを示す。上に記載されるように、指示は、複数の閉じ込められた中性原子1702のそれぞれに方向づけられるコヒーレント電磁放射線の時間変化ビームのパラメーターを示し得る。しかしながら、量子コンピューター1702の代替的物理的実行は、量子システムを調製および進展させるためのプラットフォーム特異的指示を有することが理解される。コンピューター計算ノード10は、量子コンピューターから、量子システム上の測定値を受信し、それにより確率分布からのサンプルを得る。
本開示は、システム、方法および/またはコンピュータープログラム物として具体化され得る。コンピュータープログラム物は、プロセッサーに本開示の局面を実施させるためのコンピューター読み取り可能記憶媒体上のコンピューター読み取り可能プログラム指示を有するコンピューター読み取り可能記憶媒体(1つまたは複数)を含み得る。
コンピューター読み取り可能記憶媒体は、指示実行デバイスによる使用のための指示を保持および記憶し得る具体的なデバイスであり得る。コンピューター読み取り可能記憶媒体は、例えば限定されないが、電子記憶デバイス、磁気記憶デバイス、光学記憶デバイス、電磁記憶デバイス、半導体記憶デバイス、または前述のものの任意の適切な組合せであり得る。コンピューター読み取り可能記憶媒体のより具体的な例の網羅的でないリストは、以下:持ち運び可能コンピューターディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、消去可能プログラム可能読み取り専用メモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)、持ち運び可能コンパクトディスク読み取り専用メモリ(CD-ROM)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、メモリスティック、フロッピーディスク、パンチカードまたは溝上に記録された指示を有する溝中の持ち上がった構造などの機械的にエンコードされたデバイス、および前述のものの任意の適切な組合せを含む。本明細書で使用する場合、コンピューター読み取り可能記憶媒体は、電波もしくは他の自由に伝播する電磁波、導波管もしくは他の送信媒体を通って伝播する電磁波(例えば光ファイバーケーブルを通る光パルス)、またはワイヤを通って送信される電気信号などの一時的な信号自体であるとは解釈されない。
本明細書に記載されるコンピューター読み取り可能プログラム指示は、コンピューター読み取り可能記憶媒体からそれぞれのコンピューター計算/処理デバイスへと、またはネットワーク、例えばインターネット、ローカルエリアネットワーク、広域ネットワークおよび/またはワイヤレスネットワークを介して外部コンピューターもしくは外部記憶デバイスへとダウンロードされ得る。ネットワークは、銅送信ケーブル、光送信ファイバー、ワイヤレス送信、ルーター、ファイヤーウォール、スイッチ、ゲートウェイコンピューターおよび/またはエッジサーバーを含み得る。それぞれのコンピューター計算/処理デバイス中のネットワークアダプタカードまたはネットワークインターフェースは、ネットワークからコンピューター読み取り可能プログラム指示を受信し、それぞれのコンピューター計算/処理デバイス内のコンピューター読み取り可能記憶媒体における記憶のためのコンピューター読み取り可能プログラム指示を転送する。
本開示の操作を実施するためのコンピューター読み取り可能プログラム指示は、アセンブラ指示、指示セットアーキテクチャー(ISA)指示、機械指示(machine instruction)、機械依存型指示(machine dependent instruction)、マイクロコード、ファームウェア指示、状態設定データ、または1つ以上のプログラミング言語、例えばSmalltalk、C++などのオブジェクト指向プログラミング言語および「C」プログラミング言語もしくは同様のプログラミング言語などの従来の手続き型プログラミング言語などの任意の組合せで記述されるソースコードもしくはオブジェクトコードのいずれかであり得る。コンピューター読み取り可能プログラム指示は、ユーザーのコンピューター上で全体的に、独立型ソフトウェアパッケージとしてユーザーのコンピューター上で部分的に、ユーザーのコンピューターを部分的にかつ遠隔コンピューター上で部分的にまたは遠隔コンピューターもしくはサーバー上で全体的に実行し得る。後者のシナリオにおいて、遠隔コンピューターは、ローカルエリアネットワーク(LAN)もしくは広域ネットワーク(WAN)を含む任意の型のネットワークを通してユーザーのコンピューターと連結され得るか、または該連結は、(例えばインターネットサービスプロバイダを使用してインターネットを通して)外部のコンピューターに対してなされ得る。いくつかの態様において、例えばプログラム可能ロジック回路、フィールドプログラム可能ゲートアレイ(FPGA)またはプログラム可能ロジックアレイ(PLA)を含む電子回路は、本開示の局面を実施するために、電子回路を個人化するためのコンピューター読み取り可能プログラム指示の状態情報を使用して、コンピューター読み取り可能プログラム指示を実行し得る。
本開示の局面は、本開示の態様による、方法、装置(システム)およびコンピュータープログラム物のフローチャート表示および/またはブロック図を参照して本明細書に記載される。フローチャート表示および/またはブロック図のそれぞれのブロック、ならびにフローチャート表示および/またはブロック図内のブロックの組合せは、コンピューター読み取り可能プログラム指示により実行され得ることが理解される。
これらのコンピューター読み取り可能プログラム指示は、機械を製造するための一般的な目的のコンピューター、特殊な目的のコンピューターまたは他のプログラム可能データ処理装置のプロセッサーに提供され得、コンピューターまたは他のプログラム可能データ処理装置のプロセッサーを介して実行する該指示は、フローチャートおよび/またはブロック図ブロックもしくはブロック内で特定される機能/行為を実行するための手段を作成する。これらのコンピューター読み取り可能プログラム指示はまた、コンピューター、プログラム可能データ処理装置および/または他のデバイスを、特定の様式で機能に方向づけ得るコンピューター読み取り可能記憶媒体に記憶され得、コンピューター読み取り可能記憶媒体中に記憶された指示を有するコンピューター読み取り可能記憶媒体は、フローチャートおよび/またはブロック図ブロックもしくはブロックにおいて特定された機能/行為の局面を実行する指示を含む製造物品を含む。
コンピューター読み取り可能プログラム指示はまた、一連の操作工程を、コンピューター、他のプログラム可能装置または他のデバイス上で実行させてコンピューター実行プロセスを作成するために、コンピューター、他のプログラム可能データ処理装置または他のデバイスにロードされ得、コンピューター、他のプログラム可能装置または他のデバイス上で実行する該指示は、フローチャートおよび/またはブロック図ブロックもしくはブロックにおいて特定された機能/行為を実行する。
図中のフローチャートおよびブロック図は、本開示の種々の態様によるシステム、方法およびコンピュータープログラム物のアーキテクチャー、機能および可能な実行の操作を図示する。これに関して、フローチャートまたはブロック図中のそれぞれのブロックは、特定の論理的機能(1つまたは複数)を実行するための1つ以上の実行可能な指示を含む指示のモジュール、セグメントまたは部分を表示し得る。いくつかの代替的な実行において、ブロックに記される機能は、図に記される秩序から外れて起こり得る。例えば、連続して示される2つのブロックは、実際には、実質的に同時に実行され得るか、または該ブロックは、時々含まれる機能に応じて逆の秩序で実行され得る。ブロック図および/またはフローチャート表示のそれぞれのブロックならびにブロック図および/またはフローチャート表示におけるブロックの組合せは、特定の機能もしくは行為を実施するかまたは特殊な目的のハードウェアおよびコンピューター指示の組合せを実施する特殊な目的のハードウェアに基づくシステムにより実行され得ることも注意される。
いくつかの例示的な態様はこのように記載されるが、種々の変形、改変および向上は、当業者に容易であることが理解される。かかる変形、改変および向上は、本開示の一部を形成することが意図され、本開示の精神および範囲内にあることが意図される。本明細書に示されるいくつかの例は、機能または構造的要素の特定の組合せを含むが、これらの機能および要素は、同じまたは異なる目的を達成するために、本開示による他の方法において組み合され得ることが理解されるべきである。特に、一態様に関して議論される行為、要素および特徴は、他の態様における同様または他の役割から排除されることは意図されない。さらに、本明細書に記載される要素および構成要素はさらに、さらなる構成要素に分割されるかまたは一緒に合わされて、同じ機能を行うためのより少ない構成要素を形成し得る。従って、前述の記載および添付の図面は、例示のみのためであり、限定を意図しない。

Claims (104)

  1. 確率分布の記述を受信する工程;
    確率分布をエンコードする基底状態を有する第1のハミルトニアンを決定する工程;
    第2のハミルトニアンを決定する工程、ここで第2のハミルトニアンは、少なくとも1つの量子相転移を通る経路を介して、第1のハミルトニアンへと連続的に変換可能である;
    第2のハミルトニアンの基底状態に従って量子システムを初期化する工程;
    少なくとも1つの量子相転移を通る経路に従って、第2のハミルトニアンの基底状態から第1のハミルトニアンの基底状態へと量子システムを進展させる工程;および
    量子システム上の測定を実行して、それにより確率分布からサンプルを得る工程
    を含む、確率分布からのサンプリングの方法。
  2. 第1のハミルトニアンを決定する工程が、第1のハミルトニアンの基底状態の投影もつれペア状態(PEPS)表示から第1のハミルトニアンを導くことを含む、請求項1記載の方法。
  3. 確率分布の記述が、その定常分布が確率分布であるマルコフ連鎖の記述を含む、請求項1記載の方法。
  4. マルコフ連鎖が詳細釣り合いを満足する、請求項3記載の方法。
  5. 第1のハミルトニアンを決定する工程が、マルコフ連鎖から第1のハミルトニアンを構築することを含む、請求項4記載の方法。
  6. マルコフ連鎖の記述が、生成行列を含む、請求項3記載の方法。
  7. マルコフ連鎖が単一部位更新を含む、請求項3記載の方法。
  8. 第2のハミルトニアンの基底状態が積状態である、請求項1記載の方法。
  9. 進展が断熱的である、請求項1記載の方法。
  10. 量子システムが、複数の閉じ込められた中性原子を含む、請求項1記載の方法。
  11. 複数の閉じ込められた中性原子のそれぞれが、リュードベリ状態に励起された場合に、複数の閉じ込められた中性原子の少なくとも1つの他のものを封鎖するように構成される、請求項10記載の方法。
  12. 量子システムを初期化する工程が、第2のハミルトニアンの基底状態に従って、複数の閉じ込められた中性原子のサブセットのそれぞれを励起することを含む、請求項10記載の方法。
  13. 進展が、コヒーレント電磁放射線の時間変化ビームを、複数の閉じ込められた中性原子のそれぞれに方向づけることを含む、請求項10記載の方法。
  14. 複数の閉じ込められた中性原子が光ピンセットにより閉じ込められる、請求項10記載の方法。
  15. 確率分布が古典的ギブス分布を含む、請求項1記載の方法。
  16. 該経路が、異なる温度でのギブス分布に関連する第1のハミルトニアンの集合に沿った経路とは異なる、請求項15記載の方法。
  17. ギブス分布が、グラフの重み付き独立集合のギブス分布である、請求項16記載の方法。
  18. 該グラフが単位円グラフである、請求項17記載の方法。
  19. 該グラフが鎖状グラフである、請求項18記載の方法。
  20. 該グラフが、1分岐当たり2つの頂点を有するスターグラフである、請求項17記載の方法。
  21. ギブス分布がイジングモデルのギブス分布である、請求項16記載の方法。
  22. ギブス分布がゼロ温度ギブス分布であり、イジングモデルが強磁性1Dイジングモデルである、請求項21記載の方法。
  23. ギブス分布が、構造化されない探索問題をエンコードする古典的ハミルトニアンのギブス分布である、請求項16記載の方法。
  24. ギブス分布がゼロ温度ギブス分布であり、構造化されない探索問題が単一の解を有する、請求項23記載の方法。
  25. 測定を実行する工程が、複数の閉じ込められた中性原子を画像化することを含む、請求項10記載の方法。
  26. 複数の閉じ込められた中性原子を画像化することが、量子気体顕微鏡検査を含む、請求項25記載の方法。
  27. 確率分布の記述を受信する工程;
    確率分布をエンコードする基底状態を有する第1のハミルトニアンを決定する工程;
    第2のハミルトニアンを決定する工程、ここで第2のハミルトニアンは、少なくとも1つの量子相転移を通る経路を介して、第1のハミルトニアンへと連続的に変換可能である;
    量子コンピューターに;
    第2のハミルトニアンの基底状態に従って量子システムを初期化するよう、および
    少なくとも1つの量子相転移を通る経路に従って、第2のハミルトニアンの基底状態から第1のハミルトニアンの基底状態へと量子システムを進展させるように指示を提供する工程;ならびに
    量子コンピューターから量子システム上の測定値を受信して、それにより確率分布からのサンプルを得る工程
    を含む、確率分布からサンプリングするための量子コンピューターを構成する方法。
  28. 第1のハミルトニアンを決定する工程が、第1のハミルトニアンの基底状態の投影もつれペア状態(PEPS)表示から第1のハミルトニアンを導くことを含む、請求項27記載の方法。
  29. 確率分布の記述が、その定常分布が確率分布であるマルコフ連鎖の記述を含む、請求項27記載の方法。
  30. マルコフ連鎖が詳細釣り合いを満足する、請求項29記載の方法。
  31. 第1のハミルトニアンを決定する工程が、マルコフ連鎖から第1のハミルトニアンを構成することを含む、請求項30記載の方法。
  32. マルコフ連鎖の記述が生成行列を含む、請求項29記載の方法。
  33. マルコフ連鎖が単一部位更新を含む、請求項29記載の方法。
  34. 第2のハミルトニアンの基底状態が積状態である、請求項27記載の方法。
  35. 進展が断熱的である、請求項27記載の方法。
  36. 量子システムが複数の閉じ込められた中性原子を含む、請求項27記載の方法。
  37. 複数の閉じ込められた中性原子のそれぞれが、リュードベリ状態に励起される場合に、複数の閉じ込められた中性原子の少なくとも1つの他のものを封鎖するように構成される、請求項36記載の方法。
  38. 量子システムを初期化することが、第2のハミルトニアンの基底状態に従って、複数の閉じ込められた中性原子のサブセットのそれぞれを励起することを含む、請求項36記載の方法。
  39. 進展が、コヒーレント電磁放射線の時間変化ビームを複数の閉じ込められた中性原子のそれぞれに方向づけることを含む、請求項36記載の方法。
  40. 複数の閉じ込められた中性原子が光ピンセットにより閉じ込められる、請求項36記載の方法。
  41. 確率分布が古典的ギブス分布を含む、請求項27記載の方法。
  42. 該経路が、異なる温度でのギブス分布と関連する第1のハミルトニアンの集合に沿った経路とは異なる、請求項41記載の方法。
  43. ギブス分布がグラフの重み付き独立集合のギブス分布である、請求項42記載の方法。
  44. 該グラフが単位円グラフである、請求項43記載の方法。
  45. 該グラフが鎖状グラフである、請求項44記載の方法。
  46. 該グラフが、1分岐当たり2つの頂点を有するスターグラフである、請求項43記載の方法。
  47. ギブス分布がイジングモデルのギブス分布である、請求項42記載の方法。
  48. ギブス分布がゼロ温度ギブス分布であり、イジングモデルが強磁性1Dイジングモデルである、請求項47記載の方法。
  49. ギブス分布が、構造化されない探索問題をエンコードする古典的ハミルトニアンのギブス分布である、請求項42記載の方法。
  50. ギブス分布がゼロ温度ギブス分布であり、構造化されない探索問題が単一の解を有する、請求項49記載の方法。
  51. 測定を実行する工程が、複数の閉じ込められた中性原子を画像化することを含む、請求項36記載の方法。
  52. 複数の閉じ込められた中性原子を画像化することが量子気体顕微鏡検査を含む、請求項51記載の方法。
  53. 確率分布からサンプリングするための量子コンピューターを構成するためのコンピュータープログラム生成物であって、該コンピュータープログラム生成物が、それにより実現されるプログラム指示を有するコンピューター読み取り可能記憶媒体を含み、該プログラム指示が、プロセッサーに方法を実行させるためにプロセッサーにより実行可能であり、該方法が:
    確率分布の記述を受信する工程;
    確率分布をエンコードする基底状態を有する第1のハミルトニアンを決定する工程;
    第2のハミルトニアンを決定する工程、ここで第2のハミルトニアンは、少なくとも1つの量子相転移を通る経路を介して、第1のハミルトニアンへと連続的に変換可能である;
    量子コンピューターに:
    第2のハミルトニアンの基底状態に従って量子システムを初期化するよう、および
    少なくとも1つの量子相転移を通る経路に従って、第2のハミルトニアンの基底状態から第1のハミルトニアンの基底状態へと量子システムを進展させるように指示を提供する工程;ならびに
    量子コンピューターから、量子システム上の測定値を受信して、それにより確率分布からサンプルを得る工程
    を含む、コンピュータープログラム生成物。
  54. 第1のハミルトニアンを決定する工程が、第1のハミルトニアンの基底状態の投影もつれペア状態(PEPS)表示から第1のハミルトニアンを導くことを含む、請求項53記載のコンピュータープログラム生成物。
  55. 確率分布の記述が、その定常分布が確率分布であるマルコフ連鎖の記述を含む、請求項53記載のコンピュータープログラム生成物。
  56. マルコフ連鎖が詳細釣り合いを満足する、請求項55記載のコンピュータープログラム生成物。
  57. 第1のハミルトニアンを決定する工程が、マルコフ連鎖から第1のハミルトニアンを構築することを含む、請求項56記載のコンピュータープログラム生成物。
  58. マルコフ連鎖の記述が生成行列を含む、請求項55記載のコンピュータープログラム生成物。
  59. マルコフ連鎖が単一部位更新を含む、請求項55記載のコンピュータープログラム生成物。
  60. 第2のハミルトニアンの基底状態が積状態である、請求項53記載のコンピュータープログラム生成物。
  61. 進展が断熱的である、請求項53記載のコンピュータープログラム生成物。
  62. 量子システムが複数の閉じ込められた中性原子を含む、請求項53記載のコンピュータープログラム生成物。
  63. 複数の閉じ込められた中性原子のそれぞれが、リュードベリ状態に励起される場合に、複数の閉じ込められた中性原子の少なくとも1つの他のものを封鎖するように構成される、請求項62記載のコンピュータープログラム生成物。
  64. 量子システムを初期化することが、第2のハミルトニアンの基底状態に従って、複数の閉じ込められた中性原子のサブセットのそれぞれを励起することを含む、請求項62記載のコンピュータープログラム生成物。
  65. 進展が、コヒーレント電磁放射線の時間変化ビームを、複数の閉じ込められた中性原子のそれぞれに方向づけることを含む、請求項62記載のコンピュータープログラム生成物。
  66. 複数の閉じ込められた中性原子が光ピンセットにより閉じ込められる、請求項62記載のコンピュータープログラム生成物。
  67. 確率分布が古典的ギブス分布を含む、請求項53記載のコンピュータープログラム生成物。
  68. 該経路が、異なる温度でのギブス分布と関連する第1のハミルトニアンの集合に沿った経路とは異なる、請求項67記載のコンピュータープログラム生成物。
  69. ギブス分布が、グラフの重み付き独立集合のギブス分布である、請求項68記載のコンピュータープログラム生成物。
  70. 該グラフが単位円グラフである、請求項69記載のコンピュータープログラム生成物。
  71. 該グラフが鎖状グラフである、請求項70記載のコンピュータープログラム生成物。
  72. 該グラフが、1分岐当たり2つの頂点を有するスターグラフである、請求項69記載のコンピュータープログラム生成物。
  73. ギブス分布がイジングモデルのギブス分布である、請求項68記載のコンピュータープログラム生成物。
  74. ギブス分布がゼロ温度ギブス分布であり、イジングモデルが強磁性1Dイジングモデルである、請求項63記載のコンピュータープログラム生成物。
  75. ギブス分布が、構造化されない探索問題をエンコードする古典的ハミルトニアンのギブス分布である、請求項68記載のコンピュータープログラム生成物。
  76. ギブス分布がゼロ温度ギブス分布であり、構造化されない探索問題が単一の解を有する、請求項75記載のコンピュータープログラム生成物。
  77. 測定を実行することが、複数の閉じ込められた中性原子を画像化することを含む、請求項62記載のコンピュータープログラム生成物。
  78. 複数の閉じ込められた中性原子を画像化することが量子気体顕微鏡検査を含む、請求項77記載のコンピュータープログラム生成物。
  79. 量子コンピューター;ならびに
    確率分布の記述を受信するよう;
    確率分布をエンコードする基底状態を有する第1のハミルトニアンを決定するよう;
    第2のハミルトニアンを決定するよう、ここで第2のハミルトニアンは、少なくとも1つの量子相転移を通る経路を介して、第1のハミルトニアンへと連続的に変換可能である;
    量子コンピューターに:
    第2のハミルトニアンの基底状態に従って量子システムを初期するよう、および
    少なくとも1つの量子相転移を通る経路に従って、量子システムを、第2のハミルトニアンの基底状態から第1のハミルトニアンの基底状態へと進展させるように指示を提供するよう;ならびに
    量子コンピューターから量子システム上の測定値を受信して、それにより確率分布からサンプルを得るように
    構築されるコンピューター計算ノード
    を含む、システム。
  80. 第1のハミルトニアンを決定することが、第1のハミルトニアンの基底状態の投影もつれペア状態(PEPS)表示から第1のハミルトニアンを導くことを含む、請求項79記載のシステム。
  81. 確率分布の記述が、その定常分布が確率分布であるマルコフ連鎖の記述を含む、請求項79記載のシステム。
  82. マルコフ連鎖が詳細釣り合いを満足する、請求項81記載のシステム。
  83. 第1のハミルトニアンを決定することが、マルコフ連鎖から第1のハミルトニアンを構築することを含む、請求項82記載のシステム。
  84. マルコフ連鎖の記述が生成行列を含む、請求項81記載のシステム。
  85. マルコフ連鎖が単一部位更新を含む、請求項81記載のシステム。
  86. 第2のハミルトニアンの基底状態が積状態である、請求項79記載のシステム。
  87. 進展が断熱的である、請求項79記載のシステム。
  88. 量子システムが複数の閉じ込められた中性原子を含む、請求項79記載のシステム。
  89. 複数の閉じ込められた中性原子のそれぞれが、リュードベリ状態に励起される場合に、複数の閉じ込められた中性原子の少なくとも1つの他のものを封鎖するように構成される、請求項88記載のシステム。
  90. 量子システムを初期化することが、第2のハミルトニアンの基底状態に従って、複数の閉じ込められた中性原子のサブセットのそれぞれを励起することを含む、請求項88記載のシステム。
  91. 進展が、コヒーレント電磁放射線の時間変化(time-varying)ビームを、複数の閉じ込められた中性原子のそれぞれに方向づけることを含む、請求項88記載のシステム。
  92. 複数の閉じ込められた中性原子が光ピンセットにより閉じ込められる、請求項88記載のシステム。
  93. 確率分布が古典的ギブス分布を含む、請求項79記載のシステム。
  94. 該経路が、異なる温度でのギブス分布と関連する第1のハミルトニアンの集合に沿った経路とは異なる、請求項93記載のシステム。
  95. ギブス分布が、グラフの重み付き独立集合のギブス分布である、請求項94記載のシステム。
  96. 該グラフが単位円グラフである、請求項95記載のシステム。
  97. 該グラフが鎖状グラフである、請求項96記載のシステム。
  98. 該グラフが、1分岐当たり2つの頂点を有するスターグラフである、請求項95記載のシステム。
  99. ギブス分布が、イジングモデルのギブス分布である、請求項94記載のシステム。
  100. ギブス分布がゼロ温度ギブス分布であり、イジングモデルが強磁性1Dイジングモデルである、請求項99記載のシステム。
  101. ギブス分布が、構造化されない探索問題をエンコードする古典的ハミルトニアンのギブス分布である、請求項94記載のシステム。
  102. ギブス分布がゼロ温度ギブス分布であり、構造化されない探索問題が単一の解を有する、請求項101記載のシステム。
  103. 測定を実行することが、複数の閉じ込められた中性原子を画像化することを含む、請求項88記載のシステム。
  104. 複数の閉じ込められた中性原子を画像化することが量子気体顕微鏡検査を含む、請求項103記載のシステム。
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