JP2023507585A - イメージングマスサイトメトリー用プラズマおよびサンプリングジオメトリー - Google Patents

イメージングマスサイトメトリー用プラズマおよびサンプリングジオメトリー Download PDF

Info

Publication number
JP2023507585A
JP2023507585A JP2022537564A JP2022537564A JP2023507585A JP 2023507585 A JP2023507585 A JP 2023507585A JP 2022537564 A JP2022537564 A JP 2022537564A JP 2022537564 A JP2022537564 A JP 2022537564A JP 2023507585 A JP2023507585 A JP 2023507585A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
gas
sample
icp
source
injector
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2022537564A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2021127657A5 (ja
Inventor
カルー,アダム
サンドキュール,ダーフ
ロボダ,アレクサンダー
ウィール,マシュー
バンデューラ,ドミトリー
Original Assignee
スタンダード バイオツールズ カナダ インコーポレイテッド
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by スタンダード バイオツールズ カナダ インコーポレイテッド filed Critical スタンダード バイオツールズ カナダ インコーポレイテッド
Publication of JP2023507585A publication Critical patent/JP2023507585A/ja
Publication of JPWO2021127657A5 publication Critical patent/JPWO2021127657A5/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01JELECTRIC DISCHARGE TUBES OR DISCHARGE LAMPS
    • H01J49/00Particle spectrometers or separator tubes
    • H01J49/02Details
    • H01J49/04Arrangements for introducing or extracting samples to be analysed, e.g. vacuum locks; Arrangements for external adjustment of electron- or ion-optical components
    • H01J49/0459Arrangements for introducing or extracting samples to be analysed, e.g. vacuum locks; Arrangements for external adjustment of electron- or ion-optical components for solid samples
    • H01J49/0463Desorption by laser or particle beam, followed by ionisation as a separate step
    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N1/00Sampling; Preparing specimens for investigation
    • G01N1/02Devices for withdrawing samples
    • G01N1/04Devices for withdrawing samples in the solid state, e.g. by cutting
    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N15/00Investigating characteristics of particles; Investigating permeability, pore-volume or surface-area of porous materials
    • G01N15/10Investigating individual particles
    • G01N15/1031Investigating individual particles by measuring electrical or magnetic effects
    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N27/00Investigating or analysing materials by the use of electric, electrochemical, or magnetic means
    • G01N27/62Investigating or analysing materials by the use of electric, electrochemical, or magnetic means by investigating the ionisation of gases, e.g. aerosols; by investigating electric discharges, e.g. emission of cathode
    • G01N27/64Investigating or analysing materials by the use of electric, electrochemical, or magnetic means by investigating the ionisation of gases, e.g. aerosols; by investigating electric discharges, e.g. emission of cathode using wave or particle radiation to ionise a gas, e.g. in an ionisation chamber
    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01JELECTRIC DISCHARGE TUBES OR DISCHARGE LAMPS
    • H01J49/00Particle spectrometers or separator tubes
    • H01J49/0004Imaging particle spectrometry
    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01JELECTRIC DISCHARGE TUBES OR DISCHARGE LAMPS
    • H01J49/00Particle spectrometers or separator tubes
    • H01J49/26Mass spectrometers or separator tubes
    • H01J49/34Dynamic spectrometers
    • H01J49/40Time-of-flight spectrometers
    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N1/00Sampling; Preparing specimens for investigation
    • G01N1/02Devices for withdrawing samples
    • G01N1/04Devices for withdrawing samples in the solid state, e.g. by cutting
    • G01N2001/045Laser ablation; Microwave vaporisation
    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N15/00Investigating characteristics of particles; Investigating permeability, pore-volume or surface-area of porous materials
    • G01N15/10Investigating individual particles
    • G01N2015/1006Investigating individual particles for cytology

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Analytical Chemistry (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • General Physics & Mathematics (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Pathology (AREA)
  • Optics & Photonics (AREA)
  • Dispersion Chemistry (AREA)
  • Toxicology (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Electrochemistry (AREA)
  • Spectroscopy & Molecular Physics (AREA)
  • Other Investigation Or Analysis Of Materials By Electrical Means (AREA)

Abstract

本明細書には、イメージングマスサイトメトリーを含む、イメージング質量分析のためのシステム及び方法が記載されている。対象用途の態様は、試料の捕捉速度、信号感度、及び/又は信号安定性を改善するイメージング質量分析(IMS)のための装置及び方法を含む。本明細書に記載のシステム及び方法は、搬送試料から、試料材料をイオン化し分析するイメージング質量分析計又はマスサイトメータの構成要素まで、除去された試料材料のプルームの搬送時間を最小化し及び/又はその拡散を最小化し得る。【選択図】図1

Description

関連出願の相互参照
本出願は、2020年11月16日出願の、米国仮特許出願第63/114,313号及び2019年12月20日出願の、米国仮特許出願第62/951,556号に対する優先権を主張し、その両出願の記載内容を、すべての目的において本明細書に引用することで組み込む。
発明の背景
イメージングマスサイトメトリー等のイメージング質量分析用途は、異なるアブレーションプルームを迅速に取得することで利点を得る。例えば、レーザーアブレーションICP-MSシステムは、直径1ミクロンのオーダーで、スポットを除去し得、単一の試料内で数百万のスポットの元素又は同位体の組成を別個に検出し得る。アブレーションプルームを最小過渡拡散により速やかに送達すると、多くのアブレーションスポットを迅速に分析可能で、感度が改善し得る。形成中にプルーム搬送の配向が、プルーム膨張の方向と比較して変化することで生じる乱流により、過渡拡散が増加し得る。光学的構成要素等のシステムの構成要素は、プラズマ源へのプルームの急速噴射を阻害し得る。さらに、ガス流の従来の組成を変えることで、信号感度及び/又は安定性が改善し得る。
本発明は、イメージングマスサイトメトリーを含む、レーザーアブレーションに基づくイメージング質量分析用の装置及び方法に関する。
本発明において、発明者は、既存のレーザーアブレーションに基づくイメージングマスサイトメータ及びイメージング質量分析計の多くの開発製品を考案した。特に、これらの開発製品は、搬送試料から、試料材料をイオン化・分析するイメージング質量分析計又はマスサイトメータの構成要素まで、除去された試料材料のプルームの搬送時間を最小化し及び/又はその拡散を最小化する改良品に関する。
イメージング質量分析計又はイメージングマスサイトメータ等の本発明の装置は、典型的に、三つの構成要素を具備する。第一の構成要素は、分析用の、試料から蒸気及び粒子材料のプルームを生成するためのレーザーアブレーションシステムである。除去済み試料材料のプルーム中の原子(以下記載の任意の検出可能な標識原子を含む)が、質量分析計の構成要素(MS構成要素;第三の構成要素)により検出可能である前に、試料は、微粒子化・イオン化しなければならない(試料材料のある程度のイオン化は、アブレーション時に発生し得るが、空間電荷効果により、電荷が検出可能になるよりもかなり前に、電荷中和が生じ、このため、装置は、別個のイオン化構成要素を要する)。したがって、該装置は、元素をイオン化して元素イオンを形成し、質量/電荷比に基づいてMS構成要素により元素イオンの検出を可能にする、イオン化システムである第二の構成要素を具備する。レーザーアブレーションシステムとイオン化システムとの間には、レーザーアブレーションシステムをイオン化システムに結合するように適合された移送導管が設けられ、移送導管は、レーザーアブレーションシステム内に位置決めされた流入部を有し、流入部は、除去されたプルームが生成される際に、除去されたプルームを捕捉し、捕捉・除去されたプルームをイオン化システムに搬送するために構成される(いくつかの事例においては、イオン化システムが誘導結合プラズマ(ICP)等のプラズマであり、移送導管が、試料を直接ICPトーチに、中央インジェクタ配管を介して導入する同一導管であるが、この事例において、移送導管は、インジェクタと称され得る)。このため、試料は、作動中に装置に搬送され、除去されて蒸気/粒子材料を生成し、イオン化システムによりイオン化されて、試料のイオンは、MS構成要素内に通過される。MS構成要素が多くのイオンを検出可能であるものの、これらのほとんどは、試料を自然界で構成する原子のイオンとなる。地質学又は考古学的な用途等におけるミネラルの典型的な分析用のいくつかの用途においては、これで十分であり得る。イメージングマスサイトメトリー等のイメージング質量分析の用途において、MS構成要素は、飛行時間(TOF)又は磁気セクタMSでよい。
したがって、本発明は、
(i)試料材料のプルームを試料から生成するように適合された、レーザーアブレーションシステムと、
(ii)レーザーアブレーションシステムにより試料から除去された材料を受け、該材料をイオン化し元素イオンを形成するように適合された、プラズマ源と、
(iii)元素イオンを該イオン化システムから受け、該元素イオンを分析するための質量分析計と、を具備する、装置を提供し、
レーザーアブレーションシステム及びイオン化システムは、レーザーアブレーションシステムからイオン化システムまで、除去された試料材料のプルームを含むガスの流れを搬送するように適合された、移送導管により共に結合され、
プラズマは、試料ステージと同一の軸に配向されない。
本発明はまた、
試料を少なくとも二つの方向に移動するように構成された試料ステージと、試料ステージ上に取付けられた試料を除去するように構成されたレーザーアブレーション源と、プラズマ源と、レーザーアブレーション源により試料から作成されたアブレーションプルームを、プラズマ源に搬送するように構成されたインジェクタと、を具備する、装置であって、プラズマ源と試料ステージのうち少なくとも一つは、互いに直交して配向される、装置を提供する。例えば、プラズマは、試料ステージの任意の軸(試料ステージ上に取り付けられた平面試料の軸)から、90度等の60度超、70度超、又は80度超離れて配向され得る。
特定の態様において、インジェクタは、硬質及び/又は直線状である。インジェクタの内径は、2mm未満、1mm未満、又は0.5mm未満であり得る。インジェクタの長さは、20cm未満、10cm未満、5cm未満、又は3cm未満である。装置は、インジェクタを通過しない経路上にレーザーを向けるように構成され得る。
装置は、毎秒少なくとも500、1000、5000、10000、又は50000個の異なるアブレーションプルームをICP源に送達するように作動可能であり得る。特定の態様において、プラズマが短ければ(例:長さが5mm未満、3mm未満、2mm未満)、過渡拡散の防止に役立ち、別個のアブレーションプルームからのイオンが、質量分析法の検出によって異なるままであり得る。
装置は、飛行時間又は磁気セクタ質量分析計等のプラズマ源に結合された質量分析計(MS)をさらに具備し得る。MSは、イオンの垂直ビームを受けるように構成される。
特定の態様において、試料ステージは、垂直であり得、垂直位置で移動するよう動作可能である(例:アブレーションスポットの直径の規模でステップをいまだに提供する一方、重力に対抗可能なモータにより調整される)。
特定の態様において、プラズマ源は、垂直に配向され得る。プラズマ源は、真空密閉され得る(例:プラズマ源までのインジェクタ流入部は除外する)。
プラズマ源は、誘導結合プラズマトーチ(ICP源)でよい。例えば、装置は、LA-ICP-MSシステムであり得る。
方法は、本明細書記載の装置を使用して、試料をLA-ICP-MSにより分析することを含み得る。試料は、生体試料であり、標識原子(生体試料の被検体に接着されたSBPの標識原子等)を含み得る。方法は、試料をLA-ICP-MSにより分析する前に、試料を標識原子で標識することをさらに含み得る。
対象用途の態様はまた、例えば、信号強調用に、水素を含む分子を、LA-ICP-MS内のICPトーチに導入するための装置及び方法を含む。水素含有分子は、下記でさらに記載の通り、水素ガス、アンモニア又はメタン等のガスであり得る。これに代えて又は加えて、水又はアルコール(例:エタノール)等の水素含有分子は、下記でさらに記載の通り、蒸気としてガス流に導入され得る。
当業者は、下記記載の図面が、例示目的のみであることを理解するものとする。図面は、出願者の記載事項の範囲を全く限定する意図は有しない。
図1は、プルームをインジェクタに搬送するために構成された開口を通過して、レーザー除去されたプルームのサンプリングを示す、レーザーアブレーションシステムの線図である。 図2は、水平プラズマによるサンプリング構成の図である。 図3は、垂直プラズマによるサンプリング構成の図である。 図4は、当業の典型的なLA-ICP-MSシステムの概略図である。 図5は、アルゴン搬送ガスの湿度(マイクロバール)の関数として、感度(ショット毎のLuイオンの平均カウント数)のグラフである。 図6は、LA-ICP-MSに好適な加湿システムの説明図である。 図7は、アルゴン搬送ガスの湿度が維持される間、長い試料移動(60,000秒)にわたる感度(ショット毎のLuイオンのカウント数)のグラフである。 図8は、水素ガス流(L/分)の関数として、感度(ショット毎のLuイオンの平均カウント数)のグラフである。 図9は、加湿(左)又は捕捉ガスに対し3%水素/ヘリウムの予混合ガス源の使用(右)によるイメージングマスサイトメトリーの画像信号の改良を比較した図である。
様々な要素に関連して現記載事項と併せて使用する不定冠詞「a」又は「an」が、文脈上それ以外であると明白に指摘しなければ、「一つ以上の」又は「少なくとも一つの」を包含することは理解するものとする。
用語「具備する、含む(comprising)」は、「含む(including)」を、「~のみからなる(consisting)」に加えて包含し、例えば、Xを含む(comprising)組成物は、Xのみからなり、又はX+Y等の追加物を含み得る。
数値xに対する用語「約」は、オプションとして使われ、例えば、x±10%を意味する。
用語「略(substantially)」は、「完全に(completely)」を除外せず、例えば、Yを「略含まない」組成物は、Yを完全に含まないことがあり得る。必要に応じて、用語「略(substantially)」は、本発明の定義から省略され得る。
用語「発明」は、本発明のすべての実施形態に言及するのではなく、本発明の特定の態様、実施例、又は実施形態を指す。
上述の発明が明瞭さや理解を目的として、ある程度詳細に記載された一方、当業者が一旦本開示に精通すれば、添付の特許請求の範囲内の本発明の範囲から逸脱することなしに、様式及び詳細の様々な変化が可能であることが、関連技術の当業者により理解されるであろう。したがって、本発明は、上記の手法又は構造の正確な構成要素又は詳細に限定されない。プロセスそれ自体で必要又は固有な程度を除き、図面を含め、本開示に記載の方法又はプロセスのステップ又は段階において、特定の順番を意図又は暗示するものではない。多くの場合において、プロセスステップの順番は、記載方法の目的、効果、又は影響を変更することなく、変更され得る。本明細書で引用するすべての公報及び特許文献は、そのような各公報又は特許文献が、本明細書に引用することで組み込むように、あたかも具体的にかつ個別に指摘されるように、本明細書に引用することで組み込む。公報及び特許文献(特許、公開済み特許出願、及び未公開の特許出願)の引用は、このような任意の文献が関連先行技術であるとの承認として意図するものではなく、同文献の内容又は発行日についていかなる承認も構成するものではない。
本発明は、誘導結合プラズマ質量分析(LA-ICP-MS)と組み合わせたレーザーアブレーションを含む、イメージング質量分析に関する。LA-ICP-MSは、生体材料内の内在性元素の測定用に、より最近では、元素タグが付された抗体の検出によるイメージング用に記載された。例えば、本明細書において参照によって組み込まれる、2012年公開のAntonov,A.及びBandura,D.の米国特許公報第2012/0061561号明細書、2008年発行のSeumaらの「Combination of immunohistochemistry and laser ablation ICP mass spectrometry for imaging of cancer biomarkers」,Proteomics 8:3775-3784、それぞれ参照によって本明細書に組み込まれる、2005年発行の「Analytical biochemistry」の346.2:225-233に掲載されたHutchinsonらによる「Imaging and spatial distribution of β-amyloid peptide and metal ions in Alzheimer’s plaques by laser ablation- inductively coupled plasma-mass spectrometry」、2007年発行の「Journal of Analytical Atomic Spectrometry」の22.7:736-744に掲載されたBeckerらの「Laser ablation inductively coupled plasma mass spectrometry (LA-ICP-MS) in elemental imaging of biological tissues and in proteomics.」、2003年発行の「Analytical Biochemistry」の318:30-38に掲載されたBinetらの「Detection and characterization of zinc- and cadmium-binding proteins in Escherichia coli by gel electrophoresis and laser ablation-inductively coupled plasma-mass spectrometry」、2002年発行の「Journal of Analytical Atomic Spectrometry」の17:892-96に掲載されたQuinnらの「Simultaneous determination of proteins using an element-tagged immunoassay coupled with ICP-MS detection」、2005年発行の「Microchemical Journal 」の81:163-69に掲載されたSharmaらの「Sesbania drummondii cell cultures:ICP-MS determination of the accumulation of Pb and Cu」、2011年発行の「Anal. Chem.」の83:8177-8183に掲載されたGiesenらの「Multiplexed immunohistochemical detection of tumor markers in breast cancer tissue using laser ablation inductively coupled plasma mass spectrometry」を参照。ICP以外のプラズマ源はまた、対象用途の範囲内である。
ナノポジショニングステージ、高NAレンズ用のアクセス要件及び/又はIMC装置内の試料をプラズマに可能な限り近く保持する要請に制約があるため、プラズマにいくつか異なるものや、本明細書で検討され、以下の表に記載されるサンプリング配向が存在する:
Figure 2023507585000002
プラズマを最適配向に回転することで、(90度回転と長い移送長による過渡広がり、大きい粒子を試料表面に戻す重力による二次汚染を生じた)従前の構成の所望でない特性のいくつかを解消できる。注目点として、垂直プラズマは、配向により、(プラズマの円筒対称性が保持されるため)トーチの軸に沿って画像化することがより簡単になるため、ICP-OES機械で利用された。比較として、プラズマがトーチ本体を出る際に、プラズマの対流リフトにより、対称性は水平配向で崩れる。
特定の態様において、トーチは、密閉トーチであり得る。密閉トーチは、気密で、トーチ外部の空気(例:ガス流を供給するガス源以外)と流体的に連通しない。密閉トーチは、真空密閉であり得る。特定の態様において、レーザーアブレーションチャンバは、気密で、器具外部の空気と流体的に連通しない。特定の態様において、レーザーアブレーションICP-MSシステム全体は、密閉で、空気がトーチ内を通過するのを防ぐ。密閉トーチ内のガス流と気体力学は、対流効果よりも優勢であり得る。密閉トーチは、任意の配向にほぼ同一に挙動し得(例:同一のガス流、試料材料及び誘導条件に対し類似のイオン化効果を持つ)、垂直方向に配向し得る(例:重力ベクトルから離れて又は重力方向に向く)。
除去された材料をガス流により搬送するには、弊社の用途においていくつかの課題が提起される。すなわち、プルームを強く回転すると、試料とプラズマとの間のガスチャネルの過度の全長がそうであるように、過渡広がりが生じる。結果として、最適ピクセル取得速度に対し、プラズマを試料基板に対し垂直に配向させ、可能な限り近づけるよう求められる。
配向の選択に制限があるのは、ナノポジショニングステージの仕様に関連する。弊社の用途に要する速度やダイナミック測位精度を所有するステージは、通常、重力に対抗して、試料及び関連ハードウェア(ばね、締め具等)を支持する最大力が不十分である。これは、垂直に配向する試料に関与する構成が、XYZステージ工学の観点から、より課題が多いことを意味する。しかしながら、このような装置は、質量分析器を水平プラズマにより構成することがすでに経験済みなため、プラズマ工学の点で比較的低リスクである。
別の選択肢として、試料を水平に保ち、プラズマを上方又は下方のいずれかに向けることがある。これらの構成の各々は、それ自身で潜在的な利点や欠点を有する。
上方に向けられたプラズマに対し、一つの利点として、プラズマからの熱が、試料から離れて、質量分析器の界面領域内に上昇することがある。すでに界面を液冷するため、これにより、機械の熱収支での少量の(おそらく無視できるほどの)差分が示される。この手法の不具合は、ガス流(すなわち、大きな粒子)が捕捉しない任意の除去された材料が、試料上に再度落下し、クロストークと汚染を生じることである。
下方に向けられたプラズマの場合、重力が粒子を試料から引き離すため、より大きい除去された粒子からの試料汚染のリスクは高くない。しかしながら、プラズマから上昇する熱が、試料に向けて上昇するため、課題を提起し得る可能性がある。これは、試料とプラズマ封じ込めとの間の熱破壊を含めることで解消され得るが、これは、試料とプラズマとの間のガス経路を潜在的に延長しないで行われるため、過渡広がりが生じる。対流力が、このようなプラズマ中に余分な過渡広がりを生じる可能性もある。
アブレーション光は、原則として、試料のいずれかの側から入射し得る。しかしながら、検討すべきトレードオフがいくつか存在する。
アブレーション光が試料搬送/プラズマと同じ側面から入射すれば、アブレーションスポットまでの光アクセスと試料搬送アクセスとの間で整合性をとるよう妥協せざるを得ず、下記のトレードオフの一つ以上が生じ得る。
- 集束光学系は、最小試料搬送距離を大幅に増加する。
- 集束光学系は、作製・組立がより困難である。
- 最大達成可能な処理能力は、低減される。
- 試料領域の任意の光学検査は、視野、分解能、照明均一性等の点で整合性をとるよう妥協が図られる。
- 器具は、モジュール式の度合いが低くなる。
他方、アブレーション光が試料搬送/プラズマの反対の側面から入射することで、下記のトレードオフの一つ以上が生じ得る。
- アブレーション光は、石英の顕微鏡スライドが、UVレーザーアブレーション用に使用されなければならないことを意味する、試料基板又は少なくとも部分的に紫外線を通すシリカ等の別の基板を通過せねばならない。
- 試料領域の光学検査は、試料搬送が直線状に通過すれば、プラズマからの光を受ける場合がある。
- 試料ホルダとステージ組立体は、アブレーション/検査光学系に開口を提供せねばならず、組立体がより高価で/より複雑になる。
特定の態様において、レーザーアブレーションは、非UVレーザーアブレーションであり得る(例:緑色のレーザーアブレーション源等の可視又は赤外線スペクトル内にあり得る)。非UVレーザーは、本明細書記載のUVレーザーアブレーション源に類似の周波数及び/又は出力等の特性を有し得る。これにより、レーザー照射は、(顕微鏡検査に一般的に使用される)スライドガラスを通過でき得る。しかしながら、組織切片、細胞塗抹標本、又は細胞培養等の生体試料は、可視(例:緑色の)又は赤外線スペクトル内よりも紫外線スペクトル内で良好に除去され得る。
特定の態様において、試料は、(例:レーザーアブレーション閾値を低減する)レーザーアブレーションの一助となる化合物で(例:質量タグ付けられたSBPで染色後に)処理され得る。化合物は、非UV波長(例:緑色又は赤外線)等のレーザーアブレーションの波長で吸収する色素であり得る。化合物は、試料を通して、非特異的に分散され得る。
特定の態様において、反対側のアブレーションは、本明細書に引用することで組み込む、米国特許公報第20160194590号により記載される等の試料の部分をスライドから取り除くために、試料下の層を除去するために使用され得る。特定の態様において、運動エネルギーを試料に伝達するための化合物(例:アブレーション下での気体状態への移行)は、試料それ自体に包埋され得る。
本明細書記載の通り、レーザーは、フェムト秒(fs)レーザーであり得る。例えば、近赤外線範囲のfsレーザーは、第二の調波で作動され得、緑色の範囲のレーザー照射を提供し、又は第三の調波で、紫外線範囲のレーザー照射を提供する。緑色又は紫外線等の低波長により、高分解能(例:小さいスポットサイズ)が可能であり得る。レーザー照射が試料に作用するための試料支持体にわたり伝達する場合、試料支持体は、レーザー照射を通す必要がある。ガラスやシリカは、緑色の波長を通す一方、ガラスはUVを通さないがシリカは通す。スライドガラスを使用させる一方で高分解能を可能にするために、赤外線fsレーザーは、第二の調波で作動され得(例:約50%の変換効率)、緑色のレーザー照射を提供する。注目点として、市販の対物レンズは、緑色の範囲で補正が最良であることが多い。緑色又は紫外線fsレーザーで達成する分解能は、1μm以下、800nm、500nm、400nm、300nm、200nm、150nm、又は100nmのスポットサイズであり得る。
例えば、レーザーシステムによるアブレーションの周波数は、200Hz~100MHz、200Hz~10MHz、200Hz~1MHz、200Hz~100kHzの範囲内、500~50kHzの範囲内、又は1kHz~10kHzの範囲内である。レーザーのアブレーション周波数は、上述の通り、レーザー走査システムの走査速度に適合されるべきである。
図2は、プラズマ(例:ICP)が水平である、複数の構成を示す。レーザー照射は、網掛けの三角形で示される。試料は、幅広い試料ステージ上に取り付けられて示される。
図2Aは、従前に行われたように、水平プラズマに噴射する水平ステージを示す。図2Aは、上方からサンプリングする水平試料を示し、試料は、水平に配向されたスライドに保持され(カバーグラス又は基板としても記載)、(上方から、又は下方から基板を通過してのいずれかで)除去され、プルームは、上方に向けられる。プルームは、ガス流中に捕捉され、直交して回転され、水平プラズマに入る。これにより、重力による再堆積が生じ得る。
図2Bは、下方からサンプリングする構成を示し、プルームは、下方からのアブレーション、又は上方から基板を通過してのアブレーションにより、水平基板から下方に向けられる。プルームは、ガス流により捕捉され、直角に回転され、水平プラズマに入る。再堆積(例:重力による)は、この構成では生じ得ない。
図2Cは、垂直試料を示す。アブレーション用の光は、(後方から)基板を通過して又は試料側からのいずれかで、向けられ得る。プルームは、水平に向けられ、捕捉され、回転の必要がなく、ガス流によりプラズマに直接搬送される。
図3は、図2に類似するが、プラズマ(例:ICP)が垂直である、複数の構成を示す。
図3Aは、上方からサンプリングする水平試料を示し、プラズマは、試料上方に位置決めされ、ガス流は上方に向けられる。アブレーション光は、試料の上方又は下方からのいずれかに向けられ、プルームは上方に射出される。プルームは捕捉され、ガス流によりプラズマに搬送される。
図3Bは、下方からサンプリングする水平試料を示し、ここでは、プラズマに向かうガス流は、下方に向けられ、したがって、プラズマは、試料下方に位置決めされる。アブレーション光は、上方又は下方からのいずれかに照射され、除去されたプルームは、下方に射出される試料を出て、ガス流により捕捉され、プラズマに直接搬送される。
図3Cは、側方から(例:試料を通過して)サンプリングする垂直試料を示す。プルームは、基板表面を出て、90度回転されてプラズマに入る前に、ガス流により捕捉され、上方又は下方のいずれかに向けられ得る。
対象用途の装置は、以下に記載の一つ以上の構成要素を具備し得る。
態様は、レーザーアブレーションマスサイトメトリー分析用の方法及びシステムを含み、レーザービームのパルスが、パルスの各々に対して試料のプルームを生成し、パルスの各々に対して明確に各プルームを捕捉し、明確に捕捉されたプルームの各々をイオン化システムに搬送し、明確に捕捉され搬送されたプルームの各々をイオン化システムでイオン化し、質量分析用のイオンと該方法を実施するための装置を生成するための試料に向けられる。様々な実施形態において、該装置は、除去されたプルームを試料から生成するためのレーザーアブレーションシステムと、レーザーアブレーションシステムを装置のイオン化システムに結合するように適合された移送導管と、を有する。いくつかの実施形態において、移送導管は、除去されたプルームが生成される際に、流入部が、除去されたプルームを捕捉するように構成可能であるように、レーザーアブレーションシステム内に位置決めされた流入部を有し得る。ガス流入部は、捕捉され除去されたプルームをイオン化システム内に搬送するために、ガスをその間で通すための移送導管の流入部に結合可能である。イオン化システムがICPである場合、移送導管は、導管の出力が直接、ICPのプラズマ内であれば、インジェクタと称され得る。レーザーアブレーションシステム、イオン化システム、及び質量分析計の構成要素は、以下で個々により詳細に記載される。上述の通り、本発明の焦点は、レーザーアブレーションシステムをイオン化システムに接続する移送導管の改良である。
移送導管
移送導管は、レーザーアブレーションシステムとイオン化システムとの間にリンクを形成し、レーザーアブレーションシステムからイオン化システムまで、レーザーアブレーションシステムにより生成される試料材料のプルームを搬送させる。移送導管の一部(又は全て)は、例えば、プルームの搬送用に管腔(例:円形、長方形又は他の断面を備えた管腔)を作成するために、好適な材料を穿設することで、形成され得る。移送導管は、0.2mm~3mmの範囲の内径を有する場合がある。いくつかの実施形態において、移送導管の内径は、その長さに沿って異なる。例えば、移送導管は、端部でテーパ加工され得る。移送導管は、1センチメートル~100センチメートルの範囲の長さを有する場合がある。いくつかの実施形態において、長さは、わずか10センチメートル(例:1~10センチメートル)、わずか5センチメートル(例:1~5センチメートル)、又はわずか3cm(例:0.1~3センチメートル)である。いくつかの実施形態において、移送導管の管腔は、アブレーションシステムからイオン化システムまで、距離全体に沿って又はほぼ距離全体に沿って、直線状である。いくつかの実施形態において、移送導管の管腔は、距離全体に対し直線状でなく、配向が異なる。例えば、移送導管は、徐々に90度回転し得る。この構成により、レーザーアブレーションシステム内の試料のアブレーションにより生成されたプルームは、移送導管の流入部での軸が直線上方に向く一方で、当初垂直面内を移動し、プルームがイオン化システム(例:対流冷却を利用するために、一般的に水平に配向されるICPトーチ)に近づく際に水平に移動できる。いくつかの実施形態において、移送導管は、プルームが入る又は形成される流入部の開口から少なくとも0.1センチメートル、少なくとも0.5センチメートル又は少なくとも1センチメートルの距離で直線状である。いくつかの実施形態において、移送導管は、材料をレーザーアブレーションシステムからイオン化システムまで搬送するまでに要する時間を最小限にするように適合される。
装置のインジェクタは、本明細書記載の移送導管を含み得る。
試料円錐流入部
移送導管は、レーザーアブレーションシステム内の試料から除去された試料材料を受け、それをイオン化システムに搬送する、レーザーアブレーションシステム内の流入部を具備する。いくつかの事例において、レーザーアブレーションシステムの流入部は、移送導管に沿ってイオン化システムまでのすべてのガス流源である。いくつかの事例において、材料をレーザーアブレーションシステムから受けるレーザーアブレーションシステムの流入部は、別個の搬送流の流入部から、第二の「移送」ガスが流れる導管の壁内の開口である(例えば、WO2014146724及びWO2014147260に開示の通り)。この事例において、搬送ガスは、かなりの比率であって、多くの事例において、イオン化システムまでの大部分のガス流を形成する。搬送流の流入部、レーザーアブレーションシステムの流入部を具備し、除去された試料の材料をイオン化システムに向けて搬送する移送導管の始まりである構成要素はまた、フローセルと称され得る(WO2014146724及びWO2014147260に記載の通り)。
搬送流は、少なくとも三つのタスクを実現するが、それぞれ、イオン化システムの方向に移送導管に入るプルームを流して、プルーム材料が移送導管の側壁に接触しないように防止し、試料表面の上方に「保護領域」を形成して、アブレーションプルームが雰囲気の制御下で確実に遂行され、さらに、移送導管内の流れ速度を増加する。いくつかの実施形態において、捕捉ガスの粘度は、一次搬送ガスの粘度よりも低い。これにより、捕捉ガス内の試料材料のプルームを移送導管の中心にとどめて、レーザーアブレーションシステムの下流で試料材料のプルームの拡散を最小限にする一助となる(これは、流れの中心では、搬送速度がより一定で、ほぼ横ばいであるため)。ガスは、例えば、制限なく、アルゴン、キセノン、ヘリウム、窒素、又はこれらの混合物であり得る。いくつかの実施形態において、搬送ガスは、アルゴンである。アルゴンは、移送導管の壁に到達する前に、プルームの拡散を止めるために特に好適である(さらに、イオン化システムがアルゴンガス系ICPである、装置の計器の感度の改善にも役立つ)。捕捉ガスは、好ましくは、ヘリウムである。しかしながら、捕捉ガスは、例えば、水素、窒素、又は水蒸気の他のガスに置換され又は含み得る。アルゴンの動粘性率(動粘性係数/密度)は、25℃で、約1.3E-5/秒であり、ヘリウムでは、約1.2E-4/秒である。したがって、アルゴンとヘリウムの動粘度の値の差は、少なくとも5倍、又は少なくとも10倍であり得る。いくつかの実施形態において、捕捉ガスはヘリウムで、搬送ガスはヘリウムである。
試料円錐を使用すると、標的とガスの搬送流を含む導管との間の距離が最小限になり得る。捕捉ガスが円錐の点で流れる距離が低減されるため、この使用により、乱流が少ない試料材料の捕捉が改善され、そのため、除去された試料材料のプルームの拡散が低減される。したがって、移送導管の流入部は、試料円錐の先端の開口である。円錐は、アブレーションチャンバに突出する。
さらなる種類の非対称は、共通の高さ(z)と一つのベース直径(x直径)を共有するが、他のベース(y直径)(又は一つの楕円と一つの円形半分)で異なる、楕円の二つの半分から形成された円錐である。
上記の適応のすべては、本発明で使用する単一の非対称試料円錐内に存在し得る。例えば、円錐は、非対称で先端が切り取られ得、異なる楕円円錐の二つの半分から形成され得、円錐は、非対称で先端が切り取られ得、複数のオリフィスの一つ等を含む。
したがって、試料円錐は、レーザーアブレーションシステム内の試料から除去された材料のプルームのすべて又は一部を捕捉するように適合される。試料円錐は、例えば、以下でより詳細に記載の通り、可動試料の搬送用トレー上のレーザーアブレーションシステム内で試料を操作することで、試料に最近で操作可能に位置決めされる。上述の通り、除去された試料材料のプルームは、試料円錐の狭い端の開口を通過して移送導管に入る。いくつかの実施形態において、開口の直径は、a)調整可能で、b)移送導管内に通過する際に、除去されたプルームへの摂動を防止するような大きさで、及び/又はc)除去されたプルームの断面直径にほぼ等しい。いくつかの実施形態において、開口の直径は、約100μm~1mmである。例えば、開口の直径は、300μm~800μm等の約200μm~900μmである。いくつかの実施形態において、開口の直径は、約500μm~700μmである。いくつかの実施形態において、開口の直径は、約500μmである。いくつかの実施形態において、開口の直径は、約700μmである。
テーパ付き導管
内径がより小さい配管において、ガスが同一流量であれば、高速度で移動する。したがって、より小さい内径の配管を使用することで、ガス流中に運搬された、除去された試料材料のプルームは、所定の流量でより迅速に規定の距離にわたって搬送可能である(例:レーザーアブレーションシステムから移送導管内のイオン化システムまで)。個々のプルームがいかに迅速に分析可能であるかの主な要因の一つは、アブレーションによる生成から、その構成要素イオンが装置の質量分析計の構成要素として検出される時間までの時間中(検出器の過渡時間)に、プルームが拡散する量である。したがって、狭い移送導管を使用することで、アブレーションと検出との間の時間は低減され、それによって、拡散が、それが発生可能な時間が短くなるため減少されて、最終的には、検出器での各アブレーションプルームの過渡時間が低減されることを意味する。過渡時間が短ければ、単位時間当たりに生成・分析可能なプルームが増加することを意味し、このため、画像がより高品質及び/又は高速で作製される。
テーパは、移送導管の長さの該部分に沿って移送導管の内径の段階的変化を含み得る(すなわち、それを通過してえられる断面を備えた配管の内径は、部分の端部から流入部に向けて(レーザーアブレーションシステム端部で)流出部まで(イオン化システムの端部で)、部分に沿って減少する)。図3B及び図7Cに示す通り、移送導管のテーパ加工の改良は、本明細書記載の装置のすべての実施形態に、直接インジェクタ流入部、試料円錐、又は移送導管のイオン化システムの流入部の端部での他の任意の構造を含むかどうかに関わらず、適用可能である。テーパ前の導管が大容量であれば、アブレーションにより生成される材料の制限が容易になる。除去された粒子が、除去されたスポットから飛散する場合、高速で移動する。ガス中の摩擦により、これらの粒子は減速するが、プルームは、サブミリメートル~ミリメートル単位で、いまだに拡散し得る。壁まで十分な距離をとることで、プルームを流れの中心近くに封じ込める一助となる。
広い内径部分が(1~2mmのオーダーで)単に短いため、プルームが、より狭い内径を備えた移送導管のより長い部分により長時間とどまれば、該部分は、過渡時間全体に大幅に寄与しない。このため、内径がより大きい部分は、アブレーション製品を捕捉するために使用され、ガス流速度がより均一である中央の流線近くにとどまるように保持し、内径がより小さい導管は、これらの粒子をイオン化システムに迅速に搬送するために使用される。プルームは、粒子サイズや選択されるガスにより少なくとも部分的に決定される、特定の量を膨張する。インジェクタ配管の初期部分は、プルームが放物線流プロファイルの開発の影響により広げられないように、プルームの大部分が、中央の流線近くに落下するような大きさであり得る。インジェクタは、例えば、搬送速度を改良するために、初期部分後にインジェクタ配管の直径を狭めるテーパを具備し得る。
いくつかの実施形態において、テーパは、50mm以内のイオン化システム流入部で開始し、移送導管まで続く。いくつかの実施形態において、テーパは、30mm以内、20mm以内、15mm以内、又は10mm以内のイオン化システム流入部等の40mm以内のイオン化システム流入部で開始する。いくつかの実施形態において、テーパは、5mm以内、4mm以内、3mm以内、2mm以内又は1mm以内のイオン化システム流入部の下流で開始する。いくつかの実施形態において、テーパは、1~2mmのイオン化システム流入部の下流で開始する。
大きい内径部分と小さい内径領域との間のテーパは、乱流の発生を避けるため、十分なだらかに作製可能である。例えば、テーパは、少なくとも5度の角度であり得る。いくつかの実施形態において、テーパ角度は、少なくとも15度、少なくとも20度、少なくとも25度、又は30度以上等、さらには60度等の少なくとも10度であり得る。いくつかの実施形態において、テーパは、30度未満、25度未満、20度未満、15度未満、又は10度未満等の40度未満の角度である。いくつかの実施形態において、テーパは、5度未満、4度未満、3度未満、2度未満、又は1度未満等の8度未満の角度である。いくつかの実施形態において、テーパ角度は、10~30度である。いくつかの実施形態において、テーパ角度は、テーパの長さに沿って増減し得る。
いくつかの実施形態において、テーパの長さは、少なくとも5mmであり、例えば、少なくとも10mm、少なくとも20mm、少なくとも30mm、少なくとも40mm又は少なくとも50mm又は少なくとも100mmである。いくつかの実施形態において、テーパの長さは、10mm未満であり、例えば、5mm未満、4mm未満、3mm未満、2mm未満又は1mm以下である。
移送導管の内径は、導管の入力端でxミリメートル(mm)であり得るが、出力端近くに5倍~x/5mmで先細りさせ得る(例:入力端で4mm及び出力端で800μm)。いくつかの実施形態において、テーパは、4倍以下、3倍以下、又は2倍以下等の5倍未満で、移送導管の内径を低減する。内径は、導管にわたる最長断面の測定値である。例えば、導管が円形であれば、内径は、単純に円の直径であるが、導管が長方形であれば、斜線状である。いくつかの実施形態において、テーパ部後の導管の内径は、2mmより狭く、例えば、1.5mmより狭く、1.25mmより狭く、1mmより狭く、900μmより狭く、800μmより狭く、700μmより狭く、600μmより狭く、又は500μm以下で狭い。いくつかの実施形態において、テーパ部後の導管の内径は、400μm以下で狭く、300μm以下で狭く、200μm以下で狭く又は100μm以下で狭い。
狭い内径部分の直径は、乱流の発生に対応する直径により制限される。レイノルズ数は、円管及び公知の流れに対して計算可能である。一般的に、4000超のレイノルズ数は、乱流を示し、このため、回避されるべきである。2000超のレイノルズ数は、(非乱流と乱流との間の)遷移流を示し、このため、好ましくは、回避され得る。所定のガスの質量流に対して、レイノルズ数は、導管の直径に反比例する。したがって、いくつかの実施形態において、移送導管の狭い内径部分の内径は、2mmより狭く、例えば、1.5mmより狭く、1.25mmより狭く、1mmより狭いが、導管内に毎分4リットルのヘリウムの流れが、4000超のレイノルズ数を有する直径より大きい。
移送導管の直径が一定の部分とテーパとの間の遷移部分に凹凸のある又は平滑な角付きの縁があれば、ガス流中に乱流が生じ得る。したがって、いくつかの実施形態において、テーパへ及びそれからの遷移部分は、乱流の発生を抑制するように適合された円滑な縁を有すべきである。例えば、縁は、丸められ又は面取りされ得る。
テーパ付き導管を具備する装置はまた、試料円錐(オプションとして、非対称形)を具備し得る。テーパ付き導管が、例えば、図2~10に示し、本明細書の以下の節で詳細に記載の通り、代わりとなる移送導管の配設を使用する、本明細書記載の任意の装置で使用可能であることを、当業者は理解するであろう。
犠牲流れ
導管内に生じる乱流のリスクは、高速流になるほど増加する。これは、移送導管が小さい内径(例えば、1mm、又は1mm未満)を有する場合に特に当てはまる。しかしながら、発明者は、ヘリウム又は水素等の軽ガスが、ガスの搬送流として従来使用されるアルゴンに代えて使用されれば、内径が小さい移送導管内で高速度の搬送(300m/秒以上)を達することが可能であることを見出した。特定の実施形態において、ヘリウム又は水素を主に含むガスの混合物を使用する。
高速度の搬送により、除去された試料材料のプルームを、許容レベルのイオン化が生じることなく、イオン化システムを通過させる限り、問題が生じる。イオン化のレベルは、冷却ガスの流量が増加することで、トーチの端部でプラズマ温度が降下するため、下降し得る。試料材料のプルームが好適なレベルにイオン化しなければ、その構成要素(任意の標識原子/元素タグを含む)が質量分析計により検出不能であるため、除去された試料材料からの情報が失われる。例えば、試料は、ICPイオン化システム内のトーチの端部でプラズマを非常に迅速に通過し得るため、プラズマイオンは、それをイオン化するための試料材料に作用する時間が不十分であるr。発明者は、狭い内径の移送導管内の高流量で高速の搬送により生じるこの問題が、移送導管の流出部で流量犠牲システムの導入により解決可能であることを見出した。流量犠牲システムは、ガス流を移送導管から受け、イオン化システムに通じるインジェクタに前方に流れる部分(除去された試料材料の任意のプルームを含む流れの中央部分)のみを通過するように適合される。流量犠牲システム内の移送導管からガスの拡散を容易にするために、移送導管の流出部は、フレア型にされ得る。
流量犠牲システムは、流量犠牲システムからイオン化システムに通じる配管(例:インジェクタ)の長さが短いように(例:長さ1cm;通常、50cm等の数十cmのオーダーの長さの移送導管の長さと比較して)、イオン化システムの近傍に位置決めされる。このため、流量犠牲システムからイオン化システムに通じる配管内のガス速度が低いと、搬送システム全体の比較的遅い部分が非常に短いため、総搬送時間への大幅な影響はない。
したがって、本発明は、
(i)試料材料のプルームを試料から生成するように適合された、レーザーアブレーションシステムと、
(ii)レーザーアブレーションシステムにより試料から除外された材料を受け、該材料をイオン化し元素イオンを形成するように適合されるイオン化システムと、
(iii)元素イオンを該イオン化システムから受け、該元素イオンを分析するための質量分析計と、を具備する、装置を提供し、
レーザーアブレーションシステムとイオン化システムは、移送導管と流量犠牲システムにより共に結合され、
移送導管は、除去された試料材料のプルームを含むガス流を、レーザーアブレーションシステム内の流入部から流量犠牲システム内の流出部まで搬送するように適合され、
流量犠牲システムは、
(a)移送導管の流出部と、
(b)試料材料を移送導管流出部から受け、試料材料をイオン化システムに導入するように位置決めされた、イオン化システムの流入部と、
(c)犠牲流れ流出部と、を具備する、チャンバを具備し、
流量犠牲システムは、犠牲流れ流出部から流量犠牲システムに入るガス流の部分を向けることで、移送導管を通過して流量犠牲システムに入るガス流と比較して、イオン化システムの流入部を通過してイオン化システムに入るガス流を低減するように適合され、
流量犠牲システム内の移送導管の流出部は、オプションとして、フレア型である。
いくつかの実施形態において、イオン化システムの流入部は、流量犠牲システムを通過してイオン化システムの流入部まで、そのため、イオン化システムのインジェクタまで、移送導管からの材料の伝達を最小限にするために、移送導管の流出部に同軸に位置決めされる(導管に沿って搬送される試料材料のプルームが、搬送流の中央内で伴出されるため)。いくつかの実施形態において、移送導管の内径のイオン化システムの流入部の内径に対する比率は、例えば1.5:1又は1:1等の2未満:1である。いくつかの実施形態において、移送導管の内径のイオン化システムのインジェクタの内径に対する比率は、例えば1.5:1又は1:1等の2未満:1である。いくつかの実施形態において、イオン化システムのインジェクタ(又はイオン化システムまでの流入部)の内径は、移送導管よりも大きい内径を有する。例えば、いくつかの実施形態において、移送導管の内径のイオン化システムの流入部の内径に対する比率は、例えば、1:1.5又は1:2等の1未満:1である。いくつかの実施形態において、移送導管の内径のイオン化システムのインジェクタの内径に対する比率は、例えば、1:1.5又は1:2等の1未満:1である。
ほとんどの配設において、体積流量でガス速度を低減する方法として、流量犠牲システムからイオン化システムまで通過する配管(例:インジェクタ)の直径を大幅に増加することは好ましくなく、又はいくつかの場合において、可能ではない。例えば、イオン化システムがICPの場合、流量犠牲システムからの導管は、ICPトーチの中央にインジェクタ配管を形成する。より広い内径のインジェクタを使用する場合、信号品質は低下するが、これは、除去された試料材料のプルームが、(プラズマの最も効率的にイオン化する部分である)プラズマの中央に非常に精密に噴射され得ないからである。1mmの内径、又はさらに狭い(例:600μm以下、500μm以下又は400μm以下等の800μm以下の内径の)インジェクタは、強く好まれる。他のイオン化手法は、三次元空間内の比較的少ない容量内でイオン化される材料に依存し(イオン化に必要なエネルギー密度が、少ない容量でのみ達成可能であるため)、そのため、導管の内径がより広ければ、導管を通過する試料材料の多くが、エネルギー密度が試料材料をイオン化するのに十分である区域の外部にあることを意味する。このため、流量犠牲システムからイオン化システム内へ直径が狭い配管はまた、非ICPイオン化システムを備えた装置で使用される。上述の通り、試料材料のプルームが好適なレベルにイオン化しなければ、その構成要素(任意の標識原子/元素タグを含む)が質量分析計により検出不能であるため、除去された試料材料からの情報が失われる。
移送導管の直径が一定の部分と流出部でのフレア部との間の遷移部分に凹凸のある又は平滑な角付きの縁があれば、ガス流に乱流が生じ得る。したがって、いくつかの実施形態において、フレア拡張部への遷移部分は、乱流の発生を抑制するように適合された円滑な縁を有すべきである。例えば、縁は丸められ得る。
ポンプ搬送を使用すれば、犠牲流れとイオン化システムの流入部へ通過する流れとの間の分割比を確実に所望にする一助となり得る。したがって、いくつかの実施形態において、流量犠牲システムは、犠牲流れ流出部に取り付けられたポンプを具備する。制御制限器は、犠牲流れを制御するために、ポンプに付加され得る。したがって、いくつかの実施形態において、流量犠牲システムのポンプは、犠牲流れ流出部を介して、ガス流を制御するように適合された制限器をさらに具備する。いくつかの実施形態において、流量犠牲システムは、制限器を制御するように適合された、質量流制御装置を具備する。
高価なガスを使用する場合、犠牲流れ流出部からポンプ搬送されたガスは、ガス精製の公知の方法を使用して、浄化され、同一のシステムに戻してリサイクルされ得る。ヘリウムは、上述の通り搬送ガスとして特に好適であるが、高価であり、このため、(すなわち、イオン化システムに通過されイオン化される場合、)システム内でヘリウムの損失を低減することは利点がある。流量犠牲システムは、ヘリウム流を近軸流と犠牲流れに分割する。犠牲流れが、システム内で浄化され、リサイクルされ得る一方、近軸流(同伴粒子を、除去されたプルームから搬送する流れの中央部分)は、イオン化システム(例:ICPトーチのプラズマ)に通過される。近軸流からのヘリウムは、回収用に失われる。したがって、いくつかの実施形態において、ガス精製システムは、流量犠牲システムの犠牲流れ流出部に接続される。いくつかの実施形態において、ガス精製システムは、例えば、流入部を通過してレーザーアブレーションシステムのアブレーションチャンバに及び/又は移送導管内の流入部を通過して、装置に流されるガスの部分を提供する。
前述同様に、搬送流量がより大きいと、移送導管に沿って送られ、この流れの中央部分のみが、ICPトーチのプラズマに入るインジェクタ流の部分になることができる。典型的に、ヘリウムガスは、搬送流れとして使用されるが、これは、上述の通り、その特性が、長い導管にわたって、プルーム材料の高速搬送に好適であるためである(すなわち、同一流の速度に対し、乱流を誘発する可能性が低い(アルゴンと比較して))。犠牲流れと、流量犠牲システムを通過して継続するヘリウムの近軸流から、ヘリウムをリサイクルするガス精製システムを、イオン化システムに組み込む機会ですら、失われる。
したがって、いくつかの実施形態において、流量犠牲システムは、イオン化システムの流入部(例:ICPトーチイオン化システムのインジェクタ)に通過するガス流を、0.5Lpm以下、0.4Lpm以下、0.3Lpm以下、又は0.2Lpm以下等の1Lpm以下に低減するように適合される。いくつかの実施形態において、ICPインジェクタは、ガスがインジェクタ内の流量を補うように流され得る第二の流入部を具備する。いくつかの実施形態において、第二の流入部は、試料含有のガス流の周りのシースフローとしてのメイクアップガスを、流量犠牲システムから導入するイオン化システムの流入部に取り付けられたインジェクタの周りに同心配管を具備する。このメイクアップフローの流入部は、プラズマを支持する中間及び外部同心配管中に同様に提供されるアルゴンガス流とは異なる。このインジェクタはまた、二重の同心インジェクタとも称され得る。
流量犠牲システムを具備する装置はまた、上述の通り、試料円錐(オプションとして、非対称形)又はテーパ付き導管を具備可能である。いくつかの実施形態において、装置は、上述の通り、流量犠牲システムと、試料円錐(オプションとして、非対称形)と、テーパ付き導管と、を具備する。流量犠牲システムが、代わりとなる移送導管の配設を使用する本明細書記載の任意の装置で使用可能であることを、当業者は理解するであろう。
レーザーアブレーションシステム
レーザーアブレーションシステムは、「アブレーションセル」又は「レーザーアブレーション源」とも称され、アブレーション中に試料を収容する。典型的に、アブレーションセルは、レーザーエネルギーを試料に当てさせるためのレーザー透明窓を具備する。オプションとして、アブレーションセルは、分析対象の試料を保持するためのステージを含む。いくつかの実施形態において、ステージは、x-y又はx-y-zの次元で可動である。本明細書記載の図面及び実施例において、レーザーアブレーションシステムは、開装置として示される場合がある。しかしながら、このような構成は、例示のみを目的として、周囲環境から汚染又は浸入を防止するためのある形式の好適なエンクロージャが存在することは理解されるであろう。例えば、ガス流入部及び/又は光学ポートを備えて構成されたチャンバは、質量分析用に除去されたプルームを捕捉・搬送するために好適な閉鎖環境を提供するために、レーザーアブレーションシステムの周りに配列され得る。ガス流入部と光学ポートは、レーザービームの配向、試料、プルーム膨張、及び移送導管が、本明細書開示の方法及び装置に好適なように位置決めされる。アブレーションセルが、一般的に、ガス気密である(設計された出口やポートを除く)ことは理解されるであろう。アブレーションチャンバが、作動前に空気を含む場合ですら、ガス流(例:試料チャンバを通過する捕捉ガス及び/又はアブレーションセルのインジェクタ配管への搬送ガス)が、試料移動中に空気による汚染を低減するために十分であり得るように、アブレーションチャンバは、環境から十分に包囲され得る。しかしながら、初めに空気が存在することで、感度及び/又は信号ドリフトに影響する湿度のレベルが提供され得る。対象用途のレーザーアブレーションシステムは、図2、図3又は図4の一つ以上に示すガス流を有し得る。
本発明に係るレーザーアブレーション用に使用するレーザーは、一般的に、除去された材料中に高吸収用に選ばれた波長を備えた、フェムト秒パルスレーザー、深紫外線パルスレーザー及びパルスレーザーの三種類に分類される(「波長選択的レーザー」)。深紫外線及び波長特異的レーザーは、ナノ秒又はピコ秒パルスで作動する可能性がある。各分類のレーザーは、その不具合や利点を有し、特定の用途に基づいて選択可能である。いくつかの実施形態において、レーザーは、10~10000Hzのパルス速度で作動するように構成されたフェムト秒パルスレーザーである。フェムト秒レーザーは、公知である(例えば、2012年公開のJhanisらの「Rapid bulk analysis using femtosecond laser ablation inductively coupled plasma time-of-flight mass spectrometry」 J. Anal.At.Spectrom.27:1405-1412を参照)。
フェムト秒レーザーにより、十分な出力密度であるレーザーアブレーションの前提条件のみを備えたほぼすべての材料のレーザーアブレーションが可能になる。これは、例えば、1マイクロメートルの直径にビームが強く集束され、持続時間が短い場合(時間内に集束)、比較的低いパルスエネルギーでも達成可能である。深紫外線レーザーはまた、大きな分類の材料を除去可能であるが、これは、一般的に使用する材料のほとんどが、深紫外線の光子を吸収するためである。波長選択的レーザーアブレーションは、基板材料内の吸収を標的にする特異的なレーザー波長を備えたレーザーを利用可能である。波長特異的レーザーの利点は、レーザー及び光学系の費用面と単純な構造であり得るものの、基板材料のスペクトルは、より制限されている。好適なレーザーは、例えば、固体状態(例えば、Nd:YAGレーザー)、エキシマレーザー、ファイバーレーザー、及びOPOレーザー等の異なる作動原理を有し得る。
フェムト秒レーザー照射の有用な特性は、閾値出力密度に到達される場合のみ、レーザー照射が吸収されることである。このため、集束フェムト秒レーザー照射は、吸収され又は何ら損傷を生じることなく、材料のより厚い部分を通過し、さらに、焦点が生じるまさに表面上で同一の材料を除去可能である。その後、焦点は、試料層が除去される際に、徐々に材料内部に移動可能である。ナノ秒レーザーパルスは、基板により部分的に吸収され得るが、焦点でのエネルギー密度が最大であるため(アブレーションに十分である限り)、アブレーションに対していまだに機能できる。
このようにして生成された信号の空間分解能は、(i)信号が除去される全領域にわたって統合される際の、レーザーのスポットサイズと、(ii)上述の通り、連続プルームからの重複を避けるために、プルームが生成される速度に対して、プルームが分析可能な速度との二つの主な因子に依存する。スポットサイズと称される距離は、ビームの最長の内部寸法に対応し、例えば、円形ビームに対しては、直径2μmのビームであり、矩形ビームに対しては、対向する角の間の対角線の長さに対応する。レーザーパルスは、所望のスポットサイズを作製するために、開口を使用した形状で、ビームホモジナイザを使用して均質化され(必要に応じて)、例えば、対物レンズを使用して焦点が合わせられ得る。典型的に、スポットサイズは、50μm以下、25μm以下、20μm以下、15μm以下、又は10μm又は10μm未満等の100μm以下である。典型的なスポットサイズは、0.10~3μm(例:約0.3μm)、1~5μm(例:約3μm)、1~10μm(例:約1、約2、約3、約4又は約5μm)、10μm未満、及び5μm未満の範囲の直径(又は他の形状で相当する大きさのアブレーション領域)を含む。特定の実施形態において、レーザーシステムは、例えば、100nm~1μmの約1μmのオーダーで、試料領域を除去するために、十分に焦点整合されたレーザーパルスで作動するように構成される。
個々の細胞を分析するために、レーザーアブレーションシステム内のレーザーは、これらの細胞程度の大きさであるスポットサイズを有する。このサイズは、試料内の特定の細胞に依存するが、一般的に、レーザースポットは、したがって、例えば、0.1~4μm、0.25~3μm、又は0.4~2μmの範囲内の4μm未満の直径を有する。このため、レーザースポットは、ほぼ400nm以下、ほぼ300nm以下、ほぼ200nm以下、ほぼ100nm以下又は100nm未満等の約3μm以下、約2μm以下、約1μm以下、約0.5μm又は0.5μm未満の直径を有し得る。細胞内分解能で細胞を分析するために、本発明は、これらの細胞程度の大きさであるレーザースポットサイズを使用し、より詳しくは、細胞内分解能により材料を除去可能なレーザースポットサイズを使用する。単一細胞解析は、例えば、細胞を、それぞれの間の間隔をあけて、スライド上で拡散されて、細胞のサイズより大きいスポットサイズを使用して実施可能である場合がある。ここで、スポットサイズがより大きいものを使用可能で、単一細胞特性評価を達成可能であるが、これは、対象細胞の周りの追加の除去された領域が、追加の細胞を含まないためである。使用する特定のスポットサイズは、したがって、分析対象の細胞の大きさによって、適切に選択可能である。生体試料において、細胞内分解能イメージングが所望であれば、細胞がすべて同一サイズであることはまれで、一定のスポットサイズが、アブレーション手順にわたって維持されれば、アブレーションスポットのサイズは、最小細胞よりも小さくあるべきである。スポットサイズは、幅広いレーザービームの縮小と近視野光学を使用することで、小さく達成可能である。1μmのレーザースポット直径は、1μmのレーザー焦点(すなわち、ビームの焦点でのレーザービームの直径)に対応するが、レーザー焦点は、標的(例えば、ガウスビーム形状)上のエネルギーの空間分布とアブレーション閾値エネルギーに関する総レーザーエネルギーの変動により、±20%以上で変動可能である。例えば、25μm直径のレーザービームを使用し、これを組織試料上で25倍に縮小させると、1μm直径を備えたスポットサイズが与えられる。
この小さいスケールでのアブレーションにより、非常に少量のプルーム材料が作製され、次に、プルームのサイズが確実に小さく保持される。より小さいプルームは、アブレーションセルの又は移送導管の壁に接触することなく、捕捉流の中間によりとどまりやすい。また、アブレーションが1マイクロメートルスケールであるのは、除去された表面と、プルーム膨張が減速し、雰囲気ガスが優勢になる領域との間の距離が、非常に短いことを意味する。この距離は、数マイクロメートルから数百マイクロメートルまでの範囲であり得る。本発明のいくつかのバージョンにおいて、プルームが膨張を停止する場合に、捕捉流は存在する。したがって、添付図面のいくつかは、例示であって限定目的とはせずに、除去された表面と、約100マイクロメートルで示す捕捉流を備えた領域との間の距離を示す。
1マイクロメートル(又はそれ以下の)スケールでのアブレーションが、特定の用途(例:イメージング)のために有利であるが、本発明の方法及び器具はまた、例えば、5~15ミクロン、10~20ミクロン、15~25ミクロン、20~30ミクロン及び25~35ミクロンの範囲の、約5~約35ミクロンの直径の範囲のアブレーションスポット等のより大きいアブレーションスポットが作製される場合に有用である。大きいアブレーションスポットが作製されるいくつかの用途において、プルーム材料の部分のみが捕捉される。
いくつかの実施形態において、レーザーは、アブレーションチャンバの外部に設置され、レーザービーム(レーザーエネルギー)は、例えば、光学窓を通過して、アブレーションチャンバに入る。本明細書で使用するレーザービームは、表面(例:レーザーレンズ又はミラー)から発せられるものとして記載され得、その表面は、ビームを特定の位置又は位置パターンに向けるように配向され得る。本発明の記載を容易にするために、有向ビームは、特定の配向を有すると考えられ得、ビームの配向は、ビームにアラインされ、実ビームを越えて延伸する(例えば、ビームが非透過面にあたる場合)仮想線を指し得る。文脈から明らかなように、レーザービームの配向又は位置を言及すると、レーザーを使用すれば、無給電レーザーシステムのビームが生成し得る配向又は位置を指す場合がある。
組織試料の迅速な分析用に、例えば、20Hz超の(すなわち、毎秒20アブレーション超で、毎秒20プルーム超を与える)アブレーションの高周波数が必要である。いくつかの実施形態において、レーザーによるアブレーションの周波数は、少なくとも50Hz、又は少なくとも100Hz等の少なくとも40Hzである。いくつかの実施形態において、レーザーによるアブレーションの周波数は、40~2000Hzの範囲内、40~1500Hzの範囲内、40~500Hzの範囲内、40~200Hzの範囲内、40~150Hzの範囲内、又は75~150Hzの範囲内である。40Hz超のアブレーション周波数により、典型的な組織試料のイメージングが、適正な時間で実現され得る。レーザーパルスが試料上のスポットに向けられ得(該スポットでの材料の完全アブレーションを想定)、いまだに個々に解像され得る周波数は、画像のピクセルがどれほど迅速に取得可能かを決定する。したがって、ある点で材料を除去するために要するレーザーパルスの持続時間が、試料に毎秒5パルス未満のみ向けられ得ることを意味すれば、1μmのスポットサイズでアブレーションにより1mm×1mmの領域の調査に要する時間は、2日を越えるであろう。これは、割合を40Hzとすると、ほぼ6~7時間であり得、パルスの周波数のさらなる増加用に、分析時間がさらに低減される。これらの周波数で、各除去されたプルームを個々に解像することが所望であれば、器具による計測は、連続アブレーション間の相当の信号重複を避けるために十分迅速に、除去された材料を分析できなければならない。好ましくは、連続プルームに起因する信号間の重複が、強度で<10%、より好ましくは、<5%、理想としては、<2%である。プルーム分析に要する時間は、アブレーションチャンバの洗浄時間(以下のアブレーションチャンバの節を参照)、イオン化システムまでのかつそれを通過する試料材料のプルームの過渡時間(イオン化システムまでの搬送の最適化については上述の通り)、及びイオン化された材料の分析に要する時間に依存する。各レーザーパルスは、以下でより詳細に記載の通り、引き続き増強される試料の画像のピクセルに相関し得る。
アブレーションチャンバ
短い洗浄時間(例えば、100ms以下)を有する(試料チャンバとして本明細書で言及され得る)アブレーションチャンバは、本発明の装置及び方法で使用するために有利である。長い洗浄時間を有する細胞は、画像が生成可能な速度を制限するか、又は連続試料スポットに起因する信号間の重複を生じるか、のいずれかである(例えば、10秒を超える信号持続時間を有した、Kindnessらの(2003)Clin Chem 49:1916-23)。したがって、レーザーアブレーションセルからの試料材料のプルームの洗浄時間は、総走査時間を増加することなく、高分解能を達成するための主な制限要因である。洗浄時間が≦100msであるアブレーションチャンバは、当業では公知である。例えば、Gurevich & Hergenroder(2007)J Anal.At.Spectrom.22:1043-1050は、洗浄時間が100ms以下のアブレーションチャンバを開示する。アブレーションチャンバは、30ms以下の洗浄時間を有し、それによって、高アブレーション周波数(例えば、20Hz超)で、このため、迅速な分析が可能な、Wangら(2013)Anal.Chem.85:10107-16(参考文献WO2014/146724も参照)の参考文献に開示された。別のこのようなアブレーションチャンバは、参考文献WO2014/127034に開示される。この文献のアブレーションチャンバは、標的に最近で作動可能に配列されるように構成された試料捕捉細胞(本明細書記載の試料捕捉細胞は、テーパと上述した移送導管の流量犠牲の改善と組み合わせ可能である移送導管の流入部の改善の例である)を含み、試料捕捉細胞は、捕捉細胞の表面に形成された開口部を有する捕捉空洞であって、開口部を通過して、レーザーアブレーション部位から放出又は生成された標的材料を受けるように構成される、捕捉空洞と、捕捉空洞内に受けられた標的材料の少なくとも部分が、流出部に試料として、搬送可能であるように、捕捉空洞内に曝露され、捕捉空洞内のキャリアガス(本明細書では、捕捉ガスとも称される)の流れを流入部から流出部まで向けるように構成されたガイド壁と、を含む。参考文献WO2014/127034のアブレーションチャンバ内の捕捉空洞の容量は、1cm3未満で、0.005cm3以下であり得る。アブレーションチャンバは、20ms又は10ms以下等の25ms以下の洗浄時間を有する場合がある。移送導管の試料円錐流入部は、例えば、非対称形の試料円錐であって、アブレーションチャンバの洗浄時間を低減する一助にもなり、本明細書記載の捕捉細胞に代わるものである。
レーザーアブレーションチャンバを含む既存のLA-ICP-MSシステムを、図4に示す。アブレーションチャンバは、試料を位置決めするための可動の試料ステージを具備し得る。ガス源は、アブレーションチャンバを通過して流れ、アブレーションプルームを、ICPトーチにつながるインジェクタ配管(本明細書では、インジェクタ又は移送導管とも称される)に搬送する捕捉ガスを提供し得る。インジェクタ配管は、アブレーションチャンバとICPトーチとの間に可撓性の配管を有し得、又は硬質及び/又は直線状であり得る。特定の態様において、インジェクタは、試料に直交し、図2又は図3に示すガス流と同一線上にあり得る。LA-ICP-MSシステムは、搬送ガス及び/又は内部及び外部ガス(補助ガス及びプラズマガスとも称される)を供給するための一つ以上の追加のガス源を含み得る。特定の態様において、インジェクタ配管は、インジェクタ配管に導入されるレーザーアブレーションプルームの下流でメイクアップガスを受ける場合がある。一つ以上のガス流は、水素を含み得る。例えば、ガス流は、本明細書でさらに記載の通り、水又はアルコール蒸気を含み得る。これに代えて又は加えて、ガス流は、本明細書でさらに記載の通り、水素(水素ガス、アンモニア又はメタン等)を含む予混合圧縮ガス源からであり得る。
特定の態様において、レーザーアブレーションチャンバは、(チャンバに入り、アブレーションプルームをインジェクタ配管に搬送する)捕捉ガスを含み得、オプションとして、(すなわち、アブレーションプルームの上流でインジェクタに入る)搬送ガスをさらに含み得る。インジェクタは、(すなわち、アブレーションプルームがインジェクタに入る下流のインジェクタ内にガスを補足する)メイクアップガスをさらに含み得る。ICPトーチは、内部ガス(すなわち、ICPトーチの内部配管に流れる補助ガス)と外部ガス(すなわち、ICPトーチの外部配管に流れるプラズマガス)とを含み得る。追加のガス流は、存在し得る。特定の態様において、水素(例:水素ガス又は水蒸気)は、本明細書でさらに記載の通り、上記のガス流の一つ以上に導入され得る。
イオン化システム
試料材料は、プラズマ内等の様々な手法によりイオン化可能である。ICPの使用は、IMS及びIMC分析に好適である。ICPは、エネルギーが電磁誘導により生成される電流により供給される、プラズマ源である。典型的に、プラズマ源は、アルゴンガス系である。例えば、イオン化システムは、ICPトーチを具備し得る。ICPをイオン化システム内で使用するIMCは、例えば、Giesenら(2014)Nature Methods.11:417-422及びWangら(2013)Anal.Chem.85:10107-16に報告がある。
このため、イオン化システムは、試料材料をレーザーサンプリングシステムから受け、それを、質量分析計による検出用に元素イオンに変換する。試料材料が微粒子化されなければ(例えば、試料材料のプルームは、いまだに分子、又は粒子材料のエアロゾルの形状ですらある)、イオン化システムは、材料を、イオン化プロセスの一環として、元素イオンに分解するように作用する。
質量分析計
上述の通り、該装置の第三の構成要素は、質量分析計である。本発明で使用するための質量分析器は、オペレータのニーズ又は特定の用途に基づいて、選択され得る。典型的な種類の質量分析器は、四重極、飛行時間(TOF)、磁気セクタ、高分解能、単一コレクタ又はマルチコレクタに基づいた質量分析計を含む。
イオン化材料の分析に要する時間は、イオンの検出に使用される質量分析器/質量分析計の種類に依存する。例えば、ファラデーカップを使用する器具は、急速信号の分析には非常に遅いかもしれないが、すべての分析が迅速な信号分析を要するわけではなく、そのため、当業者は、質量分析計又は質量分析器を適切に選択できる。全体として、所望の分析速度(このため、アブレーションプルームが照合可能な周波数)及び多重化度(同時/準同時に監視される原子数)は、使用すべき質量分析器の種類を指示する(又は、逆に、選択する質量分析器により、達成可能な速度と多重化が決定される)。
典型的に、飛行時間の質量分析計は、高速レーザーアブレーション設定から予想される過渡時間により、高速過渡事象の記録のために使用される。
TOF検出器は、単一試料内で、複数の質量を準同時に登録可能である。TOF質量分析器が通常、TOF加速器と飛行管内の空間電荷の効果に対応するのに妥協せざるを得ないため、原子分析用には避けられつつも、この手法の有効性は、一部の範囲の検出目的に限り、それを使用することで改善可能である。例えば、マスサイトメトリー及びイメージングマスサイトメトリーにおいて、生体試料内の標的分子に標識付けするために使用する標識原子からのイオンが、検出され、そのため、他の原子(例えば、80未満の原子質量を有する原子)が除去可能になるように限って、範囲が選択され得る。これにより、より効率的に操作・焦点整合が可能な、(例えば)80~210ダルトン領域内の質量で濃縮された、イオンビームの密度が低下し、それにより、TOF検出が容易になり、TOFの高スペクトル走査速度が利用される。このため、迅速な分析は、TOF検出と試料内ではまれな標識原子の選択を組み合わせ、未標識の試料でみられる質量を超える質量を理想として有することで、例えば、高い質量遷移元素を使用することで、達成可能である。マスサイトメトリーに関するさらなる詳細は、Tannerら「Cancer Immunol Immunother」(2013) 62:955-965及び米国特許第7,479,630号で、またGiesenら(2014)Nature Methods.11:417-422では、イメージングマスサイトメトリーに関する記載を見ることができる。
使用される装置及び上述の移送導管の改良が適用可能な本発明の追加の変形例
本発明の装置は、透明基板上にあり得る、生体試料の分析又はイメージング用に使用され得る。イメージングの実施形態において、一般的に、レーザーは、「対象スポット」又は「アブレーションの位置又は領域」と称される、連続するパルスで、又は試料の異なる位置に向けられたパルスのバースト内で、作動され得る。パルスは、二次元イメージング用のラスター等の設定パターンでスポットに向けられ得る。これに代えて、(例えば、個々の細胞に対応する)異なる位置での複数の個々のスポットを除去し得る。いくつかの実施形態において、レーザーは、同一ピクセル(すなわち、標的上の同一位置)由来のプルームを生成するパルスのバーストを発する。バースト内の個々のパルスが生成するアブレーションプルームは、一つのプルーム内で溶解し、該プルームが、別のピクセルから作成されたプルームと異なるように、器具内を走行すると予想される。個々のピクセルを区別するために、バースト間の持続時間(一つのみの又は100個のパルスであり得るピクセル調査)は、個々のピクセルから(検出器での)イオン信号の時間拡散により決定された特定の制限を越えて維持される。
本明細書記載事項にしたがって、各々別個の試料プルームは、質量分析器により明確に分析可能である。一つの態様において、装置は、アブレーションセル(アブレーションシステム)と移送導管内のプルームの拡散が、イオン化システムと質量分析器内で起こる拡散よりも小さいように、構成される。一つの態様において、プルームは、プルームのイオン化システムまでの累積過渡時間内の期間で、各除去されたプルームをイオン化システムまで搬送し、質量分析器によるイオン検出をすることで、明確に分析され得る。これは、搬送期間中の中のプルームの広がり(すなわち、アブレーションの部位からプラズマまでのアブレーションプルームの搬送)とイオン過渡期間中の広がり(すなわち、プラズマから質量分析器までのイオンの搬送)との間の比率が、1以下であるように、各試料プルームを、ガス流を通過し搬送構成により捕捉することで達成可能である。
一般的に、イオン化システム(例えば、ICP)が、分析的検出の目的用に、効果的に蒸発しイオン化できる試料粒子サイズの制限は、約10μm以下のオーダーである。1マイクロメートルのスケールでのレーザーアブレーションにより生成された粒子は、1マイクロメートル以下で、ICPイオン源に好適である。(Fluidigm Canada社製のCyTOF(登録商標)器具による計測を使用して実行される等の)別個の粒子分析用に、これらの粒子がイオン化され、分析的に検出され得る典型的な速度は、粒子が、蒸発されイオン化される間、プラズマ内の試料の過渡時間の累積広がり又は拡散の、及びICPと質量分析器によるその検出との間のイオンの過渡時間の広がり又は拡散の関数であり得る。一般的に、累積時間の広がり又は拡散は、約200μsの持続時間のオーダーであり得る。結果として、空間分離される10μm以下の粒子に対し、各別個の粒子を分析することは、200μsのオーダーの期間で、各粒子をイオン化システム(例えば、ICP)まで搬送することで達成可能である。いくつかの実施形態において、粒子は、200μs未満、又は150μs未満でイオン化システム(例えば、ICP)に搬送される。したがって、生体試料のイメージングがレーザーアブレーションにより実行可能である試料導入システムにおいて、レーザーシステムは、例えば、フェムト秒パルスレーザー照射等、約1μmのオーダーで、試料領域を除去するために、十分に焦点整合されたレーザーパルスで作動するように構成可能である。この構成により、各レーザーパルスで形成される除去されたプルームは、典型的に、約1μm以下の寸法を備えた試料微粒子を含み得る。本明細書に記載される特定の条件下で、これらの微粒子は、必要に応じた搬送期間を満たすよう捕捉・搬送可能で、引き続き、各別個のプルームは、イオン化システムにより、効果的に蒸発・イオン化可能である。
さらに、二次元イメージングのために試料表面にわたってラスタライズする場合等レーザーを連続するパルスで作動する間に、各プルームの弁別性と各後続プルーム間の空間的隔離は、形成されるプルーム領域とイオン化システムイオン源内の蒸発・イオン化の点との間で維持可能である。例えば、プルームが導管を通過して搬送される際に、プルーム内の粒子は、プルームがイオン化システム(例えば、ICPのプラズマ)に入る前に、半径方向外向きに拡散・膨張可能である。プルーム内で生成された粒子の拡散は、それが形成され、イオン化システムまでの過渡中に成長する際に、その拡散係数、キャリア流の速度プロファイル及び粒子密度の分布に依存可能である。例えば、フェムト秒レーザーアブレーションのスポットサイズが1μmであれば、その過渡中にさらに拡散する前に、約100μm以下の初期断面直径を備えたプルームを生成可能である。プルームの拡散の程度はまた、除去された粒子の寸法の関数であり得、より大きな粒子は、拡散広がりは低くなるが、移送導管/インジェクタ配管の内壁に接触することで、潜在的損失を生じる運動量が高くなる傾向がある。このため、プルーム拡散を最小限にして及び/又は拡散の程度が任意の価値ある効果を与える前に、蒸発・イオン化するための十分な時間内で、プルームをイオン化システムに搬送することは、所望である。
したがって、様々な実施形態において、拡散が移送導管/インジェクタ配管の内径内に維持するように、1μmの試料スポットを除去し、プルームを効率的に搬送するためにレーザーを使用することは、本明細書記載で、添付図面中の典型的な配列により達成可能である。
所定のレーザーアブレーションシステムと所定の試料に対して、除去されたプルームは、「サンプリング容量」と称される特性容量に到達するまで、レーザーアブレーション後に膨張する。サンプリング容量を最小限にし、ガス流がプルームをサンプリング容量から離して搬送する速度を増加するために、システムを構成することは所望である。少ないサンプリング容量と高速のガス流を組み合わせると、移送導管/インジェクタへのプルーム搬送の時間拡散を低減する。サンプリング容量は、寸法のいずれかのプルーム膨張の速度が、環境ガス媒体の音速以下に大幅に減少する(約10倍)瞬間で、プルームのエンベロープにより記載可能である。典型的なサンプリング容量は、制限なく、10-6mm3~10mm3の範囲であり得る。サンプリング容量は、0.001mm3~1mm3の範囲であることが多い。捕捉流は、存在する場合、サンプリング容量の少なくとも部分に流れ、プルームの少なくとも部分を移送導管/インジェクタに搬送し、その結果、捕捉流は、搬送流によりイオン化システム(例えば、ICP)に搬送され得る。捕捉流の速度は、それがサンプリング容量に入る場合、相当規模である(例:>1m/秒、>10m/秒、>100m/秒、又は>500m/秒)ことは所望である。いくつかの実施形態において、捕捉流の速度は、それがサンプリング容量に入る場合、(例:移送導管/インジェクタ開口を通過して)移送導管/インジェクタへの捕捉流の速度を測定することで、評価可能である。いくつかの実施形態において、この測定速度は、>1m/秒、>10m/秒、>100m/秒、又は>500m/秒である。本発明と対照的に、プルームが迅速に押し流されなければ、膨張・拡散し続け、所望ではないが、アブレーションセル全体を満たす。
一つの態様において、本発明は、レーザービームが標的に向けられるレーザーアブレーション構成を提供する。一つの実施形態において、標的は、基板と、基板上に設置された試料と、を具備する。一つの実施形態において、基板は、透明で、標的は、透明な標的である。
一つの態様において、本発明は、レーザーアブレーション構成を、「透過式標的」アブレーションに提供する。この構成において、レーザービームのパルスは、透明な標的を通過して向けられ、試料プルーム(「除去されたプルーム」又は「プルーム」)は、移送導管/インジェクタへのビームの下流に形成される。透過式標的照射は、光学素子(窓、対物レンズ等)をプルームの直線経路から取り外すことにより、過渡時間の広がりを最適化するために有利である。一つの態様において、本発明は、(a)レーザー照射を作製可能なレーザーと、(b)透明な標的が導入され得るレーザーアブレーションセル(又はレーザーアブレーションシステム)と、レーザー照射が、透明な標的の1側面から発生し、移送導管/インジェクタの開口部が他の側面上にある、除去されたプルームが入り得る開口部を備えた移送導管/インジェクタと、を具備する、レーザーアブレーションシステムを提供する。システムに含まれ得る他の特徴は、実施例を含め、本開示にわたって記載される。
特定の態様において、より小さいアブレーションスポットサイズ(高分解能)は、油浸レンズ等の高開口数のレンズにより達成可能である。このような油浸レンズは、(例:直径が500nm未満の組織切片等の薄い試料の)透過式標的アブレーション用に構成され得る。
このため、本発明に係る一つの装置の作動時に、試料は、装置に搬送され、レーザー照射が、試料上に油浸レンズを通過して、向けられるレンズを含むレーザーシステムを使用して、イオン化材料を生成するようにサンプリングされ(サンプリングは、引き続き、イオン化システムによりイオン化される蒸気性/特定の材料を生成し得る)、試料材料のイオンは、検出器システムに通過される。
本発明は、浸漬媒体を利用することで、従来のIMC及びIMSの制限を克服する。浸漬媒体は、1.0超の屈折率を有し、対物レンズと試料ステージとの間に設置される。このようにして、本発明の装置は、1.0超の開口数を達成し、そのため、レーザーのスポットサイズは、200nm未満、150nm未満、又は100nm未満である。このため、本発明は、200nm以上、150nm以上、又は100nm以上の空間分解能を備えたイメージングマスサイトメトリー用の装置を提供する。
したがって、試料ステージは、作動中、試料を保持し、典型的に、試料は試料キャリア上にあり、同一のステージは、試料キャリアを保持する。レーザー照射は、その後、装置のレンズを通過して、対物レンズと浸漬媒体を通過して試料まで向けられ、照射により、材料が試料から除去される。
レーザー用の最適焦点整合条件を達成するために、本発明の浸漬媒体は、1.33以上、1.50以上、2.00以上、又は2.50以上等の1.00超の屈折率を有する。
さらに、生体細胞の単層の厚さ(又は厚さ未満)の画像を再構成し、又は本明細書でさらに記載の通り、より厚い標本を層毎に読み取り、3D画像を生成するために、試料は、好ましくは、10マイクロメートル以下、5マイクロメートル以下、2マイクロメートル以下、又は100nm以下、又は50nm以下、又は30nm以下等の100マイクロメートル以下の厚さを有する。本明細書でさらに詳細に記載されるいくつかの実施形態において、対物レンズと浸漬媒体の組み合わせは、油浸レンズと称される。
液体の浸漬媒体を使用する場合、試料は、キャリアガスが、除去された材料を回収可能なように、液状媒体(図3に示す通り)まで、試料キャリアの反対側に位置決めされる必要がある。したがって、透過性試料キャリアアブレーション手法は、本明細書で適用されなければならない。これは、アブレーション材料回収ハードウェア用に達成可能な作動距離が短くなり、試料チャンバと検出器との間で移行導管を曲げる必要がないという追加の利点を有する。これはまた、過渡時間の低減につながり、このため、スポットでの達成可能な毎秒のアブレーション速度が増加する。
したがって、本発明は、固体の浸漬媒体が、半球状の固体の油浸レンズ又はワイエルシュトラスの固体の油浸レンズである、装置を提供する。生体試料は、試料ステージの反対側で、固体の浸漬材料に取り付け可能である。試料が取り付けられるステージは、固体の油浸レンズと同一の屈折率を有する材料で作製可能で、固体の油浸レンズは、焦点位置を維持するために、基板の厚さに等しい量でより薄く作製可能である。
様々な実施形態において、対象試料は、透明な標的と適合性があるように構成された試料を使用して、レーザーアブレーション用に構成可能である。試料は、透明な基板上に設置され、透明な基板に組み込まれ又は透明な標的として形成され得る。好適なレーザー透過性基板は、ガラス、プラスチック、石英及び他の材料を含み得る。一般的に、基板は、略平面又は平坦である。いくつかの実施形態において、基板は湾曲形である。特定の実施形態において、基板は、厚さが0.1mm~3mmである。いくつかの実施形態において、基板は、コード化される(例:Antonov、A.及びBandura、D.,2012、米国特許公報第2012/0061561号を参照、本明細書に引用することで組み込む)。この構成において、レーザービームのパルスは、透明な標的を通過して向けられ、試料プルーム(「除去されたプルーム」又は「プルーム」)は、移送導管/インジェクタへのビームの下流に形成される。
移送導管(すなわち、インジェクタ配管)は、小さい開口部又は開口を有する試料円錐として形成された流入部等の除去されたプルームを捕捉するように構成された流入部を有し得る。この構成において、試料円錐は、プルームが形成される領域の近くに位置決め可能である。例えば、試料円錐の開口部は、透明な標的から約100μm離れる等、透明な標的から10μm~1000μm離れて位置決めされ得る。結果として、除去されたプルームは、円錐の膨張領域内に少なくとも部分的に、生成・形成可能である。いくつかの実施形態において、開口の直径及び/又は間隔(角度を含む)あけの寸法は、様々な条件下で最適化を可能にするよう調整可能である。例えば、プルームが100μmのスケールで断面直径を有する一方、開口の直径は、プルームが通過する際に、プルームへの摂動を防止するための十分な隙間により、100μmのオーダーでサイズを決定可能である。
移送導管は、プルームの動きを促進し、レーザーパルスの関数として、各後続プルームの空間弁別性を維持するような構成で、除去されたプルームを受けるためのサンプリング円錐の下流で継続可能である。したがって、ガス流は、明確に各プルームを捕捉するために(捕捉流)、サンプリング円錐の開口を通過して、プルームを向ける一助となるために導入可能である一方、追加のガス流は、イオン化システムに向けて(搬送流又はシースフロー)各々明確に捕捉されたプルームを搬送するための移送導管/インジェクタに導入可能である。搬送流又はシースフローの別の機能は、プルーム内で生成された粒子が、移送導管/インジェクタの壁に接触するのを防ぐためである。ガスは、例えば、制限なく、アルゴン、キセノン、ヘリウム、窒素、又はこれらの混合物であり得る。いくつかの実施形態において、ガスは、アルゴンである。捕捉流ガスと搬送流ガスは、同一又は異なり得る。
本発明に好適なガス流量を選定又は決定することは、本開示が規定する、この分野での当業者の能力の範囲内である。移送導管を通過する総流量は、典型的に、イオン化源(例えば、ICPイオン化源)の要件により規定される。レーザーアブレーション設定は、これらの要件に適合するであろう流れを提供するために必要である。例えば、移送導管は、オプションとして、毎分約1リットルの累積ガス流量(毎分0.1リットルの捕捉流プラス毎分0.9リットルの搬送流)と併せて、1mm以下の内径を有し得る。大小の直径の移送導管が、それに応じて選定されたガス流量と併せて、類似の予想される結果で提示される様々な外形に適用可能であることは予想されるであろう。各別個の除去されたプルームの弁別性を保持するために、非乱流ガスを移送導管内で動的に維持する条件は、所望である。
本明細書で記載の通り、要素の特定の構成(例:ガス流入部位置の特定の構成、開口、移送導管特性、及び他の要素)を考慮すると、捕捉流量及び搬送流量は、イオン化システムと質量分析器によるその検出との間のプルームの累積過渡時間内である期間で、各除去されたプルームをイオン化システム(例えば、ICP)に搬送させるように選定される。これは、搬送期間中のプルームの広がりとイオン過渡期間中の広がりとの間の比率が、1以下であるように、各試料プルームを、ガス流を通過し搬送構成により捕捉することで達成可能である。すなわち、移行信号の時間広がり(又は時間拡散)が重要である。(Fluidigm Canada社製のCyTOF(登録商標)ICP-TOF器具等の)ICP-MS装置は、信号の固有の広がりにより特徴づけられる。レーザーアブレーションの場合、単一プルームを噴射する動作は、ICP-MSそれ自体での時間拡散と比較して、高速の場合とそうでない場合がある。イオン化の前のプルームの拡散は、レーザーアブレーションシステム、特に、アブレーションチャンバと移送導管の設計に依存する。レーザーアブレーションシステムと移送導管が、残りの器具の固有の広がりを越えて、当初のアブレーションプルームを拡散しないことが所望である。この条件により、アブレーションプルームにより生成される検出信号のピークが、選ばれた器具に対してそうであり得るのと同程度に(時間軸で)確実に、急激である。プルームの拡散がかなり長ければ、例えば、ICP-MSシステムにおける拡散、単一パルスからのレーザーアブレーションの事象は、検出器でより広範に現れる。しかし、レーザーアブレーション部分内の拡散が器具による拡散よりも小さければ、総拡散よりも、器具による拡散が優勢になる。このため、較正ビーズを使用して、器具による拡散を測定し、その後、総拡散を単一のレーザーパルスから測定し、これら二つの数値を比較できる。レーザーアブレーションからの拡散が器具からの拡散よりも小さければ、総拡散は、器具の拡散の2倍未満である。
特性器具による時間広がりは、例えば、標識細胞又は較正ビーズを使用して、実験で測定可能である。単一のビーズがマスサイトメータ(例:CyTOF(登録商標)ICP-TOF器具)に入る時はいつでも、ビーズは、プラズマ中に蒸発及びイオン化され、その後、その信号が検出器に到達するまで、質量分析器にかけられる。過渡事象は、(単一の事象からの時間拡散を表す)過渡信号の幅と、ICP源で開始し、検出器で終了して発生する拡散の値等の特定のビーズに関する情報を記録するために検出・使用される。
いくつかの実施形態において、装置は、試料と質量分析器のイオン検出器との間で規定された経路に対し、10~1000マイクロ秒の時間拡散を可能にするように構成される。
典型的な捕捉流量は、0.1~1Lpmの範囲にある。最適捕捉流量は、実験で決定可能であるが、通常、範囲の下端(例:約0.1Lpm)である。典型的な搬送流量は、0.1~1Lpmの範囲にある。最適搬送流量は、実験で決定可能であるが、通常、範囲の上端(例:約0.9Lpm)である。いくつかの実施形態において、捕捉流量は、搬送流量より低い。搬送流量は、例えば、捕捉流量が約1Lpmであれば、いくつかの場合で0であり得る。搬送流量は、0.4~1Lpmの範囲にあることが多い(例:0.4、0.6、0.8又は1Lpm)。
本明細書の記載事項が、様々な実施形態と併せて記載されているものの、該記載事項は、このような実施形態に限定される意図を有さない。反対に、本明細書の記載事項は、当業者が理解するように、様々な変形例、変更例、及び均等物を包含する。例えば、図面に示す様々な実施例において、移送導管/インジェクタ配管は、一般的に、毎分約1リットル(毎分0.1プラス0.9リットル)の累積ガス流量と併せて、1mmの内径のものとして記載された。大小の直径の移送導管/インジェクタが、それに応じて選定されたガス流量と併せて、類似の予想される結果で提示される様々な外形に適用可能であることは予想されるであろう。しかしながら、各別個の除去されたプルームの弁別性を保持するために、非乱流又はほとんど非乱流ガスをインジェクタ配管内で動的に維持する条件は、所望であり得る。
さらに、レーザーパルス速度が増加するいくつかの事例において、二つ以上の除去されたプルームは、上述の通り、累積過渡時間拡散内で、明確に捕捉され、イオン化システム(例えば、ICP)に搬送され得る。例えば、10kHzの繰り返し率で、パルスレーザーは、イオン化のためにICPに引き続き搬送可能である、二つの除去されたプルームを200μsで生成可能である。二つの別個のプルームから生成されたイオンは、質量分析器により、イオンの単一の別個のパケットとして分析可能である。結果として、レーザーが、同一のアブレーションスポットにとどまる又は微量の連続スポットのトレースにわたるレーザーの運動速度が、繰り返し率未満である一方、除去されたプルーム、及び後続イオンは、それぞれ、同一のアブレーションスポットで累積質量分析を提供又は該トレースに沿って平均質量分布を提供可能である。数MHz程度の高さのレーザー繰り返し率が、多くのレーザーパルスの平均化を表す信号を生じるよう使用可能であることは留意すべきである。レーザーはまた、個々のサンプリング位置(又はピクセル)との間のデータ流れに隙間を提供するために、バーストで放射可能である。
本発明の方法及び装置が、例えば、生体試料の任意の様々な種類の試料で使用され得ることは理解されるであろう。一つの手法において、試料は、組織切片、細胞単層、細胞調製等の細胞物質である。試料は、最大100マイクロメートルの厚さの薄く分割された生体組織、ミリメートル厚さのオーダーの組織試料、又は未分割の組織試料であり得る。一つの実施例において、薄い組織切片(パラフィン包埋部分等)は、使用され得る。例示のために、いくつかの組織切片は、10ナノメートル~10マイクロメートルの厚さを有する。いくつかの場合において、試料は、細胞群、又は細胞群からの一つ以上の選択細胞である。例えば、Antonov、A.及びBandura、D.,2012、米国特許第2012/0061561号を参照し、本明細書に引用することで組み込む。
画像IMS及びIMCを構成すると、信号を、プルーム内の複数の標識原子/元素タグに提供可能である。プルーム内で標識を検出すると、アブレーションの位置(又はそれに応じて、材料のスラグの脱着の位置)で、その同種の標的の存在が明らかになる。試料表面上の公知の空間位置で一連のプルームを生成することで、MS信号により、試料上の標識の位置が明らかになり、そのため、信号は、試料の画像を構成するために使用可能である。多重標的を識別可能な標識で標識化することで、標識原子の位置を同種の標的の位置と関連付けることが可能で、そのため、本発明は、複素画像を構築可能で、既存の手法を使用して達成可能なレベルをはるかに超える多重化のレベルに到達する。例えば、Kylebank Software社製のGRAPHISパッケージソフトが使用され得るが、TERAPLOT、ImageJ及びCellProfiler等の他のパッケージソフトもまた使用可能である。MALDI-MSI等の手法によるMSデータを使用するイメージングは、当業で公知であり、例えば、Robichaudら(2013)J Am Soc Mass Spectrom 24(5):718-21は、MSイメージングファイルをMatlabプラットフォームで閲覧・分析するための「MSiReader」インターフェースを開示し、例えば、「Datacube Explorer」プログラムの完全な空間及びスペクトル分解能における2D及び3D両方のMSIデータセットの迅速なデータ探索及び可視化のための器具も存在する。
試料
本発明は、試料をイメージングする方法を提供する。すべての種類の試料は、合金、地質試料及び考古学試料を含む、方法により分析可能である。生体試料はまた、分析可能である。このような試料は、複数の細胞を含み、これら複数の細胞は、試料内のこれらの細胞の画像を提供するために、IMS及び/又はIMCの処理をされ得る。一般的に、本発明は、現在、IHC手法により検討される組織試料を分析するために、しかし、IMCによる検出に好適である標識を使用することで、使用可能である。
任意の好適な組織試料は、分析可能である。例えば、組織は、上皮組織、筋肉組織、神経組織等、及びこれらの組み合わせであり得る。診断又は予後を目的として、組織は、腫瘍由来であり得る。いくつかの実施形態において、試料は、公知の組織由来であり得るが、試料が腫瘍細胞を含むかは未知であるかもしれない。イメージングにより、腫瘍の存在を示す標的の存在が明らかになり得、このため、診断が容易になる。組織試料は、例えば、ヒト乳がん組織又はヒト乳房上皮細胞(HMLE)の乳がん組織を含み得る。組織試料は、ホルマリン固定、パラフィン包埋(FFPE)組織を含み得、凍結組織であり得、又は好適な樹脂に包埋された組織であり得る。組織は、任意の生きている多細胞生物から取得可能であるが、通常、ヒトである。
組織試料は、通常、例えば、4~6μm等の2~10μmの範囲内の厚さを有する切片である。1μm未満、500nm未満、250nm未満又はさらに100nm以下等の2μm未満の厚さの薄い組織切片はまた、分析可能である。組織試料が薄ければ、後期パルスにより除去された試料の容量の減少により、低信号を生成される信号が低くなるであろうが、切片が薄いほど、組織試料から生成可能な切片は多くなり、複数の切片をイメージングすることで、3Dイメージングの点での利点を提供する。しかしながら、(例えば、レーザーアブレーションの分解能以下である)切片が薄ければ、スライドを通過して、アブレーションが容易に行える(例:レーザーアブレーションスポットでの全深さの組織切片は、除去され得る)。このような切片を調製するための手法は、例えば、包埋等を含む、脱水ステップを含むミクロトームを使用して、IHCの分野から公知である。このため、組織は、化学的に固定され得、その後、切片は、所望の平面で調製可能である。低温切開又はレーザー捕捉顕微解剖はまた、組織試料を調製するために使用可能である。試料は、例えば、試薬に細胞内標的を標識化(上記を参照)するために、透過され得る。
分析対象の組織試料のサイズは、最大サイズが、レーザーアブレーション装置、特に、そのアブレーションチャンバに適合可能である試料のサイズにより規定されるが、現在のIHC方法に類似する。最大5mm×5mmのサイズが典型的であるが、より小さい試料(例えば、1mm×1mm)はまた、有用である(これらの寸法は、切片の厚さではなく、サイズを指す)。
組織試料の標識化
いくつかの実施形態において、上述の通り、本発明の装置及び方法は、(すなわち、通常存在しない)試料に付加された原子を検出する。このような原子は、標識原子と称される(したがって、標識原子は、元素タグを表す)。試料は、典型的に、細胞を含む生体試料であり、標識原子は、標的分子を、細胞内/細胞表面上に標識化するために使用される。いくつかの実施形態において、例えば、少なくとも3、4、5、10、20、30、32、40、50又はさらに100個の異なる標識原子の多重標識化検出を可能にする二つ以上の多くの標識原子を同時検出できる。異なる標的を異なる標識原子で標識化することで、単一細胞に多重標的の存在を決定できる。
本発明で使用可能である標識原子は、MSにより検出可能で、未標識試料に略不在である任意の種類を含む。このため、例えば、12C原子は、標識原子として好適ではなかろうが、それは、自然界に豊富に存在する一方、11Cは、自然界で発生しない人工同位体なため、理論上、使用可能であるためである。しかしながら、好ましい実施形態において、標識原子は、希土類金属等の遷移金属である(15個のランタニドに加えて、スカンジウム及びイットリウム)。これらの17個の元素は、MSにより容易に識別可能である多くの異なる同位体を提供する。これらの様々な元素は、濃縮同位体の形態で入手可能で、例えば、サマリウムは、6個の安定同位体を有し、ネオジムは、7個の安定同位体を有し、これらのすべては、濃縮された形態で入手可能である。15個のランタニド元素は、非重複の固有質量を有する少なくとも37個の同位体を提供する。標識原子として使用に好適な元素の実施例は、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム、(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、スカンジウム(Sc)、及びイットリウム(Y)を含む。希土類金属に加えて、他の金属原子は、MSによる検出に好適で、例えば、金(Au)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)、ビスマス(Bi)等である。放射性同位体は、取扱いで利便性に欠け、不安定なため、使用が好ましくなく、例えば、Pmは、ランタニドの中では好ましい標識原子ではない。
TOF分析を容易にするために(上記を参照)、例えば、80~210の範囲内、又は100~200の範囲内の80~250の範囲内の原子質量を有する標識原子を使用することは有用である。この範囲は、ランタニドのすべてを含むが、Sc及びYは除外する。100~200の範囲は、異なる標識原子を使用することで、理論的な101個の構成単位による分析を可能にする一方、本発明が、TOF MSの高スペクトル走査速度を利用できる。上述の通り、質量が、未標識試料内で観察されるもの(例えば、100~200の範囲内)を越えて、窓にある標識原子を選択することで、TOF検出は、生物学的に有意なレベルで、迅速な分析を提供するために使用可能である。
試料を標識化するには、一般的に、標識原子が、特異的結合対(sbp)の一つのメンバーに接着されることが必要である。この標識化sbpは、存在すれば、sbpの他のメンバー(標的sbpメンバー)と相互作用可能なように、試料に接触され、それによって、標識原子を試料中の標的分子に限局する。本発明の方法は、その後、標識原子がマスサイトメータにより分析される際に、粒子上の標識原子の存在を検出する。希土類金属と他の標識原子は、公知の手法により、sbpメンバーに共役可能であり。例えば、Brucknerら(2013)Anal.Chem.86:585-91は、MS検出用にランタニド原子のオリゴヌクレオチドプローブへの接着を記載し、Gao & Yu(2007)Biosensor Bioelectronics 22:933-40は、オリゴヌクレオチドを標識するためのルテニウムの使用を記載し、Fluidigm Canada社は、30を超える異なる標識原子をタンパク質(抗体を含む)に共役するために使用可能であるMaxPar(商標)金属標識化キットを販売する。
様々な数の標識原子は、単一のsbpメンバーに接着可能で、より多くの標識原子が、任意のsbpメンバーに接着される場合に、達成可能な感度は大きくなる。例えば、10、20、30、40、50、60、70、80、90又は100個超の標識原子は、sbpメンバーに接着可能である。例えば、多重単量体ユニットを含む単分散高分子は、各々DTPA等のキレート剤を含む、元素タグを形成するために使用され得る。DTPAは、例えば、約10~6Mの解離定数を有する3+ランタニドイオンに結合する[Tannerら.Cancer Immunol Immunother(2013)62:955-965]。これらの高分子は、sbpメンバーに接着するために使用可能であるチオール反応性基(例えば、マレイミド)内で終端となり得る。例えば、チオール反応性基は、抗体のFc領域に結合し得る。他の官能基はまた、例えば、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、又はカルボキシル基に対し又は抗体のグリコシル化に対し反応性がある基等のアミン反応性基のこれらの高分子の共役用に使用可能である。任意の数の高分子は、各sbpメンバーに結合する。使用され得る高分子の特定の実施例は、直鎖(「X8」)高分子又は第三世代樹枝状(「DN3」)高分子を含み、両方ともMaxPar(商標)試薬として入手可能である。金属ナノ粒子はまた、標識内の原子数を増加するために使用可能である。
上述の通り、標識原子は、sbpメンバーに接着され、この標識化sbpメンバーは、標的sbpメンバー(存在すれば)を見出せる試料に接触され、それによって、標識化sbpを形成する。標識化sbpメンバーは、標識原子に接着し、その後、本発明に係る検出に好適である任意の化学構造を含み得る。
一般的には、本発明の方法は、試料(例えば、IHC又は蛍光インサイツハイブリダイゼーション法、FISHで使用される)中で標的分子の存在を決定するのに使用又は蛍光ベースのフローサイトメトリーのために既知である任意のsbpに基づき得るが、試料に接触されるsbpメンバーは、MSにより検出可能である標識原子を搬送する。このため、本発明は、例えば、MSにより検出可能である標識を搬送するためのFISHプローブを改善するために、従前使用された標識を改善することのみで、入手可能なフローサイトメトリー試薬を使用して、容易に実施可能である。
sbpは以下、核酸の二本鎖、抗体/抗原複合体、受容体/リガンドの対、又はアプタマー/標的の対のいずれかを含み得る。このため、標識原子は、例えば、DNA/DNA二本鎖、DNA/RNA二本鎖、又はRNA/RNA二本鎖を形成するために、プローブがその中の相補的核酸にハイブリダイズ可能であるように、その後、試料に接触される核酸プローブに接着可能である。同様に、標識原子は、その抗原に結合可能なように、試料にその後接触される抗体に接着可能である。標識原子は、その受容体に結合可能なように、試料にその後接触されるリガンドに接着可能である。標識原子は、その標的に結合可能なように、試料にその後接触されるアプタマーリガンドに接着可能である。このため、標識化sbpメンバーは、DNA配列、RNA配列、タンパク質、糖類、脂質、又は代謝産物を含む、試料内で様々な標的分子を検出するために使用可能である。
ある典型的な実施形態において、標識化sbpメンバーは、抗体である。抗体の標識化は、例えば、上述のMaxPar(商標)共役キットを使用して、分子を抗体に結合する一つ以上の標識原子を共役することにより達成可能である。抗体の標的分子は、その抗原と称され、タンパク質、炭水化物、核酸等であり得る。マスサイトメトリーに有用な細胞タンパク質を認識する抗体は、IHCの使用のためにすでに広く入手可能で、現在の標識化手法(例えば、蛍光)の代わりに、標識原子を使用することで、これらの公知の抗体は、本発明の方法で使用するために容易に適合可能であるが、多重化能力を増強する利点を備える。本発明で使用する抗体は、細胞表面上の標的又は細胞内の標的を認識可能である。抗体は、様々な標的を認識可能で、例えば、個々のタンパク質を特異的に認識可能で、又は共通のエピトープを共有する複数の関連タンパク質を認識可能で、又はタンパク質の特異的翻訳後修飾を認識可能である(例えば、対象タンパク質のチロシンとホスホチロシンとを区別する、リシンとアセチルリシンとを区別する、ユビキチン化を検出する等)。抗体に共役された標識原子は、その標的に結合後、試料中のその標的の存在するのを明らかにするように検出可能である。
標識化sbpメンバーは、通常、試料中に標的sbpメンバーに直接相互作用する。しかしながら、いくつかの実施形態において、標識化sbpメンバーが標的sbpメンバーに間接的に相互作用することが可能で、例えば、一次抗体は、標的sbpメンバーに結合し得、標識化二次抗体は、その後、サンドイッチ分析の方法で、一次抗体に結合可能である。しかしながら、通常、本発明は、直接の相互作用に依存するが、これは、より容易に達成され得、高多重化を可能にするためである。しかしながら、両方の場合において、試料は、試料中の標的sbpメンバーに結合可能であるsbpメンバーに接触され、後期ステージで、標的sbpメンバーに接着された標識は検出される。
本発明の一つの特徴は、例えば、試料中に、複数の異なるタンパク質及び/又は複数の異なる核酸配列を検出する等の、試料中に、複数の(例えば、10以上、さらには最大100以上)の異なる標的sbpメンバーを検出する能力である。三つの標的sbpメンバーの異なる検出を可能にするため、それらのそれぞれのsbpメンバーは、それらの信号が、MSにより識別可能であるように、異なる標識原子を搬送すべきである。例えば、10個の異なるタンパク質が検出される場合、10個の異なる抗体(各々、異なる標的タンパク質に対し特異的である)は、使用可能で、それらの各々は、異なる抗体からの信号が、識別可能であるように、固有の標識を搬送する。いくつかの実施形態において、例えば、同一のタンパク質で異なるエピトープを認識する、単一の標的に対する複数の異なる抗体を使用することは所望である。
二つ以上の標識抗体を使用すれば、MSにより検出された標識原子の量と標的抗原の豊富さとの間の関係が、異なるsbpsにわたり、確実により一貫する(特に、高走査周波数では)一助となるため、抗体が、それらのそれぞれの抗原に対する類似の親和性を有するべきであることは望ましい。
標的sbpメンバー構成要素が細胞内に位置すれば、試料を標識に接触させる前又はその間に、細胞膜を透過することは、典型的に必要である。例えば、標的がDNA配列であるが、標識化sbpメンバーが生細胞の膜を透過できない場合、試料の細胞は、固定・透過可能である。標識化sbpメンバーは、その後、細胞に入り、標的sbpメンバーとsbpを形成する。
通常、本発明の方法は、少なくとも一つの細胞内標的と少なくとも一つの細胞表面標的を検出する。しかしながら、いくつかの実施形態において、本発明は、複数の細胞表面標的を検出する一方で、細胞内標的を無視するために使用可能である。全体として、標的の選択は、該方法から所望である情報により決定される。
試料の標識化は、sbpにすべて依存するわけではない。いくつかの事例において、古典的な色素は、組織上の所望の特徴を強調するために使用可能である。複数の場合において、顕微鏡検査用に使用する色素は、細胞の自然状態で希少な元素を含む。このため、組織を着色するプロセスにおいて、組織は、本明細書記載の装置及び方法により判読可能な特定の元素で濃縮される。
したがって、いくつかの実施形態において、上述の分析方法は、試料を少なくとも一つの標識原子で標識するステップを含む。この原子は、その後、上述の方法を使用して、検出可能である。
信号強調
対象用途の態様は、本明細書でさらに記載の通り、LA-ICP-MSで水素を添加することで、信号強調を含む。LA-ICP-MSシステムは、内部トーチ配管への捕捉ガス流、搬送ガス流、内部(補助)ガス流、及び/又は外部トーチ配管への外部(プラズマ)ガス流等の、図4に示す一つ以上のガス流を有し得る。注目点として、図4に示すガス源は、予混合又は加湿ガスが、捕捉ガス流、搬送ガス流、内部ガス流及び/又は外部ガス流のうちいずれか一つ以上に供給されるように、異なって構成され得る。特定の態様において、LA-ICP-MSシステムは、内部及び外部ガス流と比較して、搬送流用の別個のガス源等の3つのガス源を含み得る。これに代えて又は加えて、レーザーアブレーションシステムは、例えば、図2~3に示す通り、試料に直交するインジェクタを含み得る。特定の態様において、一つのみのガス流(例:捕捉ガス)は、インジェクタを通過して流れ得る。特定の態様において、インジェクタは、レーザーアブレーションプルームの下流でメイクアップガス流を含む。
対象用途の態様は、試料の捕捉速度、信号感度、及び/又は信号安定性を改善するイメージング質量分析(IMS)のための装置及び作業流れを含む。イメージングマスサイトメトリー(IMC)は、細胞又は細胞内空間分解能を備えたイメージング質量分析による、質量タグの検出である。IMCシステム及び方法は、対象用途に記載される態様のいずれかを含み得る。特定の態様において、マスサイトメトリーは、レーザーアブレーション(LA)誘導結合プラズマ(ICP)質量分析(MS)を含み得る。重金属質量タグ等の非内在性元素を使用すると、内在性元素よりも優れた検出が可能である。炭素、酸素、窒素等の内在性元素やカルシウム等の軽金属は、高パス質量フィルタ(例:RF四重極)による等、質量分析計により枯渇され得る。特定の態様において、アルゴン二量体(アルゴン系ICPの副産物)はまた、少なくとも80amuのカットオフを備えた高パス質量フィルタによる等で枯渇され得る。
重金属質量タグは、本明細書でさらに記載の通り、80amu超の重金属を含み得る。特定の態様において、個々の質量タグは、濃縮された重金属同位体の複数の標識原子を含み得る。このような標識原子は、特異的タンパク質標的を結合する抗体等、特異的標的を結合する特異的結合パートナー(SBP)にその後共役される、ペンダント基を高分子にキレートすることで結合される等の高分子にあり得る。例えば、Fluidigm社が提供するMaxparタグは、各々、ランタニド同位体等の単一の同位体の複数の標識原子が装着された高分子を含み、細胞が発現する特異的タンパク質を結合する抗体に共役され得る。ICP-MSにより同位体が検出されると、対応する標的(例:タンパク質)が存在したことが示される。
濃縮同位体を標識原子として使用すると、同位体の天然混合物を含む元素質量タグで検出され得るものにわたって、検出可能な異なる標的の数が増加する。しかしながら、20超、30超、又は40超の同位体質量タグを使用すると、一つの質量タグの酸化物が、16amu超の質量を有する同位体を含む別の質量タグの検出に干渉し得るように、互いに16amuである同位体が含まれることが多い。質量タグとして使用するランタニド等の酸化物は、ICP系微粒子化及びイオン化の副産物である。特定の態様において、感度又は信号安定性の増加用の方法又はシステムは、余分な酸化物の形成を避ける方法で、実施され得る。
したがって、酸化は、他の質量タグから16amuである金属同位体の原子質量検出が、酸化物のスピルオーバーにさらされやすいため、MALDI等の他の形態のIMSと異なり、原子IMCに対する特有の問題があり得る。この検討事項は、各レーザー除去されたスポット(ピクセル)内で感度が高く安定的な検出を望むことでさらに複雑になる。各アブレーションは、少数の所定の質量タグが存在し得る、小さい(例:ミクロン又はサブミクロンサイズの)アブレーションクレーターを生成する。さらに、IMCは、組織切片等の試料にわたって、(例:各々、異なる質量の同位体質量タグに対応する異なる質量チャネル内の信号として測定される)異なる標的の発現を正確に比較する能力に依存する。
特定の態様において、IMCシステムは、システムのICPトーチが、レーザーアブレーション源の代わりに、すべての細胞を導入するためのスプレーチャンバに結合可能である等、懸濁マスサイトメトリー用に使用され得る。したがって、ICPトーチは、すべての細胞の微粒子化及びイオン化が可能であり得る(例:直径が最大で少なくとも15ミクロン、又は最大で少なくとも20ミクロンの細胞)。したがって、ICPトーチにより生成されたプラズマは、レーザーアブレーションプルームの効率的なイオン化及び/又は微粒子化に特異的に設計され得ない(例:レーザーアブレーションプルーム用に必要であろうよりも長い経路長さを有し得る)。これに代えて、短い過渡信号を有するようにLA-ICP-MSシステムを設計することは、プラズマの経路長さを低減することを含み得、非効率なイオン化及び/又は微粒子化が生じ得る(例:本明細書記載の通り、水素を導入することで改善しない場合)。発明者は、湿度レベルがIMCシステムの感度に影響し、システム内の湿度が試料移動にわたり減少傾向にある場合等(例:作動前に、アブレーションチャンバ内の空気により、初期レベルの湿度がある程度みられる場合)、信号ドリフトを生じ得ることを見出した。実際、本明細書でさらに記載の通り、水蒸気又は水素ガスは、両方とも、信号感度を増加することが見いだされ、信号安定性をさらに改善し得る。したがって、イオン化及び/又は微粒子化の効率(例:一つ以上の標識原子用等、一つ以上の質量チャネルの感度の増加により測定される)は、本明細書でさらに記載の通り、一つ以上の水素含有分子をガス流に添加することで、改善され得る。例えば、好適な水素含有分子は、蒸気として水又はアルコール(エタノール等)であり得る。これに代えて又は加えて、好適な水素含有分子は、例えば、ヘリウム又はアルゴンと予混合して提供される、水素ガス、メタン、又はアンモニウムであり得る。
特定の態様において、LA-ICP-MSシステムの部分は、空気が、レーザーアブレーションチャンバ、流体光学、及び/又はICPトーチ内に存在し得るように、大気に開放されている。このような空気は、最終的に、ICP-MSシステムの作動により、除去又は消費され得る。しかしながら、このような空気により湿度及び/又は酸素レベルが変わることで、イオン化効率及び/又は酸化物の形成等のICPプラズマの効率に影響し得る。特定の態様において、湿度は、本明細書で記載の通り、試料移動にわたって、制御され得る(例:質量信号が、増加及び/又は安定化されるが、酸化は最小限となるように)。これに代えて又は加えて、水素は、感度及び/又は信号安定性を増加するために、ガス(ヘリウム又はアルゴン等)と予混合され得る。
発明者は、重金属質量タグのLA-ICP-MS分析中に水又は水素を添加することで、感度が改善さ得、信号安定性が制御可能であることを見出した。特定の態様において、水素ガス、水蒸気、メタン及び/又はアンモニア等の一つ以上の水素含有ガスは、LA-ICP-MS中に導入され得る。特定の態様において、ガス(水素ガス、メタン又はアンモニア等)は、加圧ガス源内のヘリウム又はアルゴン等のICPガスと予混合されて提供され得る。特定の態様において、水蒸気は、アルゴンガス等のガスと混合され得る。
一般的に、水素ガスは、信号強調及び/又は安定性を提供するのに十分な流量で、ICP源に提供され得る。
信号強調は、装置が分析する生体試料を標識するために使用する質量タグの金属同位体チャネル等の一つ以上の質量チャネル用であり得る。特定の態様において、金属同位体は、ランタニド同位体を含む。信号強調は、水素ガスのない信号と比較して、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも80%又は少なくとも100%であり得る。特定の態様において、信号強調は、(例:金属同位体質量タグからの)信号が検出される、質量チャネルの範囲にわたる平均信号強調である。特定の態様において、少なくとも10カウント数により測定されたランタニド同位体に対する平均信号強調は、少なくとも20%、少なくとも30%、又は少なくとも50%である。信号強調は、感度の改善とも称されて、試料の標識原子の分析の場合又は公知の量の検出可能な原子を含む元素標準を分析する場合等、レーザーアブレーションプルーム毎のカウント数の増分(例:平均カウント数)として測定され得る。
特定の態様において、量の20%変化又は50%変化等の水素ガス流の変化に堅固である量でのICP源への水素ガス流の量は、信号の5%未満の変化等の信号の10%未満の変化を有するであろう(例:標準的な、一つの標識原子、いくつかの標識原子に対する、又は10カウント数超で検出されたすべての標識原子に対する)。
本明細書に記載されるのは、信号感度及び/又は安定性を改善するために、(予混合ガス又は蒸気内で等)水素含有分子を導入するための装置及び方法である。特定の態様において、水素の導入は、範囲(例:0~2000マイクロバール又は0~4000マイクロバール)にわたる外部湿度が、信号感度の10%未満又は5%未満の変化を有するように、信号安定性を改善する。
信号強調用の水素ガス
特定の態様において、装置、方法及び/又予混合圧縮ガス源は、信号感度及び/又は信号安定性を改善するため等、水素ガスをICPトーチに導入するために提供され得る。
特定の態様において、装置は、試料を少なくとも二つの方向に移動するように構成された試料ステージ、試料ステージに取り付けられた試料を除去するように構成されたレーザーアブレーション源、誘導結合プラズマ(ICP)トーチ、レーザーアブレーション源により試料から作成されたアブレーションプルームを、ICPトーチまで搬送するように構成されたインジェクタ、及びヘリウム及びアルゴンのうち少なくとも一つと混合した水素ガスを含む圧縮予混合ガス源のうち一つ以上を具備する。
圧縮予混合ガス源中の水素ガスは、1体積%~4体積%等の0.1体積%~5体積%であり得る。
圧縮予混合ガス源は、少なくとも50体積%のヘリウム又は少なくとも50体積%のアルゴンであり得る。圧縮予混合ガス源は、ガスを、試料ステージを含むアブレーションチャンバに供給し得る。予混合ガス源は、アブレーションプルームをインジェクタに搬送する捕捉ガスを提供し得る。これに代えて又は加えて、予混合ガス源は、(すなわち、アブレーションプルームの上流のインジェクタに入る)搬送ガス、(すなわち、アブレーションプルームがインジェクタに入る下流でインジェクタ内のガスを補足する)メイクアップガス、及び/又は(すなわち、補助ガスで、ICPトーチの内部配管に流れる)内部ガスを提供し得る。
追加のガス源は、捕捉ガスが、アブレーションプルームをインジェクタ内の搬送ガスに引き上げる場合等、搬送ガスをインジェクタに提供し得る。搬送ガスは、アルゴン(例:少なくとも50%アルゴン)を含み得る。捕捉ガスは、ヘリウムと水素ガスの混合物(例:少なくとも50%ヘリウム)、又はアルゴン(例:少なくとも50%アルゴン)と水素ガスの混合物を含み得る。
特定の態様において、捕捉ガスのみがインジェクタに入る場合等、別個の捕捉ガス及び搬送ガスは存在し得ない。特定の態様において、インジェクタは、装置が垂直に配向されたICPトーチを具備する場合等、レーザーアブレーションプルームを垂直ICPトーチに向けるように構成される。
装置は、搬送ガス、メイクアップガス、内部(補助)ガス、及び/又は外部(プラズマ)ガスのうち少なくとも一つを提供する追加のガス源をさらに具備し得る。追加のガス源は、圧縮ガス又は液デュワーであり得、少なくとも50体積%アルゴンであり得、予混合ガス源は、少なくとも50体積%ヘリウムを含む。対照的に、予混合ガス源は、異なるガスが、作動中に異なる速度で、蒸発し(したがって、枯渇され)得るため、液デュワー中ではない場合がある。
装置が、レーザーアブレーションプルームがインジェクタに入る下流でインジェクタまでのメイクアップ流を含む場合、メイクアップ流は、オプションとして、犠牲流れのさらに下流であり得る。
特定の態様において、圧縮予混合ガス源は、捕捉ガス、搬送ガス、及び内部トーチガスのうち少なくとも一つを提供する。
装置は、0.001L/分~0.02L/分の水素ガス流等の0.001L/分~0.1L/分の水素ガス流をICPトーチに提供するように構成され得る。これに代えて又は加えて、水素ガスは、ICPトーチへの総ガス流の0.01%~0.1%等のICPトーチへの総ガス流の0.002%~1%であり得る。ICPトーチへの総ガス流は、10~25L/分等の5~30L/分であり得る。例えば、米国特許第8633416号は、引用することで組み込まれ、ほぼ5L/分のガス流の報告がある。特定の態様において、ICPトーチへの水素ガス流は、感度(例:標識原子の一つ、いくつか又はすべてに対して)を5%超低減することなく、50%超等の20%超変更され得る。特定の態様において、試料分析中のICPトーチへの水素ガス流の量は、10%超、20%超、又は50%超変更し得る。
装置は、本明細書でさらに記載の通り、ICPトーチにより生成されたイオン化された原子を検出するように構成された質量分析計をさらに具備し得る。特定の態様において、質量分析計は、少なくとも質量80amu以下のイオンを除去するように構成された高パスフィルタを具備する。
ICPトーチは、ICPトーチがレーザーアブレーション源から分離される細胞懸濁モードで、すべての細胞を微粒子化及びイオン化するように構成される。例えば、ICPトーチは、レーザーアブレーション源から分離され得、ICPの上流で懸濁液中にスプレーチャンバに導入されたすべての細胞を微粒子化及びイオン化するのに十分である。サイズや形状等のICPトーチの特性は、すべての細胞を微粒子化及びイオン化するために好適であり得る。このように設計を検討することにより、ICPトーチは、1ミクロン未満のスポットサイズ等の2ミクロン未満のスポットサイズを備えたレーザーにより生成されたプルーム等のレーザーアブレーションプルーム中の材料を微粒子化及び/又はイオン化する効率が低くなり得る。
上記の実施形態のいずれかの装置は、ガス流を加湿するように構成された加湿システム(例:本明細書でさらに記載の通り)をさらに具備し得る。
対象用途の方法は、上記の態様のいずれかの装置を使用して、試料をLA-ICP-MSにより分析することを含み得る。試料は、組織切片等の、本明細書でさらに記載する生体試料であり得る。試料は、試料中の標的を結合するSBPに関連する標識原子等の、本明細書でさらに記載する標識原子を含み得る。したがって、分析方法は、試料をLA-ICP-MSにより分析する前に、試料を標識原子で標識することをさらに含み得る。特定の態様において、3%超の酸化物スピルオーバーを有する標識原子は存在しない。
特定の態様において、水素ガスは、アブレーションプルーム毎の少なくとも10の平均イオンカウント数を備えた標識原子等の、少なくともいくつかの標識原子に対して、感度の少なくとも20%増加、又は少なくともいくつかの標識原子に対して、感度の少なくとも50%増加を提供する。
特定の態様において、任意の所定の5分の期間での標識原子(又は元素基準)に対する平均感度は、試料を分析する少なくとも1時間にわたって、10%超変化し得ない。
水素ガスが上述される一方、別の水素含有ガスは、上記態様のいずれかで、水素ガスに代えて又はそれに加えて使用され得る。例えば、メタン又はアンモニアは、水素ガスに代えて又はそれに加えて使用され得る。
予混合ガス源及びその使用
対象用途の態様は、誘導結合プラズマ装置用の圧縮予混合ガス源を含む。予混合ガス源は、少なくとも50体積%のヘリウム又はアルゴン(例:少なくとも70体積%、少なくとも90体積%)を含み得、元素水素を含む、少なくとも0.1体積%のガスをさらに含み得る。ガスは、例えば、水素ガス、アンモニア及び/又はメタンであり得る。
特定の態様において、ガスは、水素ガスを含む。予混合ガス源は、1体積%~4体積%等の0.1~5体積%の水素ガスを含み得る。予混合ガス源は、燃焼点以下の(例:ほぼ4%未満)水素ガスを含み得る。予混合ガス源は、LA-ICP-MSで使用するための圧縮ガスボンベであり得る。
態様は、上述の圧縮予混合ガス源を含むLA-ICP-MSシステムを含む。特定の態様において、質量分析計は、代わりとして、発光分光分析装置等の元素分析装置であり得る。
信号強調用のガス加湿
対象用途の態様は、LA-ICP-MS用のガス加湿の装置及び方法を含む。
特定の態様において、装置は、試料を少なくとも二つの方向に移動するように構成された試料ステージ、試料ステージに取り付けられた試料を除去するように構成されたレーザーアブレーション源、誘導結合プラズマ(ICP)源、レーザーアブレーション源により試料から作成されたアブレーションプルームを、ICPトーチまで搬送するように構成されたインジェクタ、及びガス流を加湿するように構成された加湿システムのうち一つ以上を具備する。
ガス流は、搬送ガス流、捕捉ガス流、メイクアップガス流、及び補助ガス流のうち一つ以上を含み得る。特定の態様において、ガス流は、搬送ガス流である。
特定の態様において、ガス流は、ガス流が搬送ガスである場合等、少なくとも50%アルゴン(少なくとも70%又は少なくとも90%アルゴン等)を含む。これに代えて、ガス流は、ガス流が捕捉ガスである場合等、少なくとも50%ヘリウムを含み得る。
特定の態様において、加湿システムは、1000uB~4000uB又は1500uB~3000uB等の少なくとも500μm(マイクロバール)から5000uBまでを包含する調節可能な範囲を有する。これは、20%以上等の20%以上の安定性により、加湿ガスを生成し得る。特定の態様において、湿度は、このような制御が、信号安定性のために不要であり得るため、5%未満等の3%未満の範囲内で制御されない。
加湿システムは、水拡散配管を含み得る。特定の態様において、加湿システムは、拡散配管の温度を制御する。これに代えて又は加えて、加湿システムは、水拡散配管の周りでガス流(例:アルゴンガスの流れ)を方向転換するように調整可能な可変スプリッタを具備する。可変スプリッタは、湿度センサに結合された制御装置により調整され得る。特定の態様において、制御装置及び湿度センサはともに、湿度レベルを維持するため、拡散配管の周りにガス流を方向転換するように構成される。拡散配管に代えて、加湿システムは、水をガス流に直接噴射するように構成された水ポンプを具備し得る。
方法は、上述の態様の一つに記載の加湿システム等の任意の好適な加湿システムを具備する装置を使用して、試料をLA-ICP-MSにより分析することを含み得る。
試料は、組織切片等の、本明細書でさらに記載する生体試料であり得る。試料は、試料中の標的を結合するSBPに関連する標識原子等の、本明細書でさらに記載する標識原子を含み得る。したがって、分析方法は、試料をLA-ICP-MSにより分析する前に、試料を標識原子で標識することをさらに含み得る。特定の態様において、3%超の酸化物スピルオーバーを有する標識原子は存在しない。例えば、湿度が高いと、酸化物スピルオーバーが3%超になり得る。したがって、湿度及び/又はプラズマ温度は、下記に記載の通り、感度の改善が可能なレベルに維持され得るが、任意の標識原子に対する3%超の酸化物スピルオーバー(例:試料移動の任意の5分の期間中の平均酸化物スピルオーバー)を避けるのに十分低い場合がある。例えば、温度は、メイクアップガス流により、プラズマ温度を調整することで制御され得る。湿度がわずかな値でも、温度が適切に制御されなければ、非常に大量の酸化物を生じ得る。
特定の態様において、加湿は、(例:前処理後)アブレーションプルーム毎の少なくとも10の平均イオンカウント数を備えた標識原子等の、少なくともいくつかの標識原子に対して、感度の少なくとも20%増加、又は少なくともいくつかの標識原子に対して、感度の少なくとも50%増加を提供する。特定の態様において、任意の所定の5分の期間での標識原子(又は元素基準)に対する平均感度は、試料を分析する少なくとも1時間にわたって、10%超変化し得ない。特定の態様において、湿度は、感度(例:標識原子の一つ、いくつか又はすべてに対して)を5%超低減することなく、50%超等の20%超変更され得る。
ガス加湿(水蒸気による)が上述される一方、別の水素含有分子は、水に代わるものとして又はこれに加えて、蒸気としてガス流に導入され得る。例えば、エタノール等のアルコールは、水蒸気用に上述の通り、拡散配管等の態様のいずれかにより、ガス流に導入され得る。
典型的なレーザーアブレーション誘導結合プラズマ装置は、アブレーション点からプラズマまで、除去された材料を搬送するために、ガス流の組み合わせを使用する。感度は、ガス流中の水分量に影響される。水を噴霧水ミストによりガス流に添加すると、流れを中断させ、イメージング用途においては、過渡信号とピクセル速度に負の影響が与えられ得る。ガス流を、機器に入る前に加湿すれば、この問題は生じない。通常、安定湿度を確保するには、大幅な温度の安定化を伴うであろう。流出部のガス流の湿度は、湿度を調節するために、加湿器にフィードバックを提供するように測定され得る。加湿器それ自体は、拡散配管を通過するガス流である。配管を通過する流れは、飽和状態で出るため、発明者は、可変式ガススプリッタを使用して、拡散配管を通過する流れを変え、このため、ガス流中の水分を再結合後に変える。ガス流を変えることは、フィードバック機構である。
信号強調用の水素を供給するための装置及び方法
対象用途の態様は、水素含有分子を、LA-ICP-MS内のICPトーチに導入するための装置及び方法を含む。水素含有分子は、水素ガス、アンモニア又はメタン等のガスであり得る。これに代えて又は加えて、水又はアルコール(例:エタノール)等の水素含有分子は、蒸気としてガス流に導入され得る。
態様は、試料を少なくとも二つの方向に移動するように構成された試料ステージ、試料ステージに取り付けられた試料を除去するように構成されたレーザーアブレーション源、誘導結合プラズマ(ICP)トーチ、レーザーアブレーション源により試料から作成されたアブレーションプルームを、ICPトーチまで搬送するように構成されたインジェクタ、及びヘリウム及びアルゴンのうち少なくとも一つと混合した水素含有ガスを含む圧縮予混合ガス源のうち一つ以上を具備する装置を含む。特定の態様において、水素含有ガスは、メタン、アンモニア、又は水素ガスである。
態様は、試料を少なくとも二つの方向に移動するように構成された試料ステージ、試料ステージに取り付けられた試料を除去するように構成されたレーザーアブレーション源、誘導結合プラズマ(ICP)源、レーザーアブレーション源により試料から作成されたアブレーションプルームを、ICPトーチまで搬送するように構成されたインジェクタのうち一つ以上を具備する装置を含む。装置は、水素ガス流を含む蒸気を供給するように構成される。蒸気は、水蒸気又はアルコール蒸気(例:エタノール等)を含み得る。
態様は、試料を少なくとも二つの方向に移動するように構成された試料ステージ、試料ステージに取り付けられた試料を除去するように構成されたレーザーアブレーション源、質量分析計に結合された誘導結合プラズマ(ICP)トーチ、レーザーアブレーション源により試料から作成されたアブレーションプルームを、ICPトーチまで搬送するように構成されたインジェクタのうち一つ以上を具備する装置を含む。装置は、レーザーアブレーションICP質量分析用に作動中であるが、細胞懸濁モード中ではない状態で、水素含有分子を、ICPトーチのプラズマ(例:本明細書中に記載の通り)に供給するように構成され得る。細胞懸濁モードで、ICPトーチは、レーザーアブレーション源から分離され得、ICPの上流で懸濁液中にスプレーチャンバに導入されたすべての細胞を微粒子化及びイオン化するのに十分であり得る。
実験結果
発明者は、生体試料又は無機試料(例:元素標準)内のランタニド及び他の標識原子用の信号安定性及び強調が、少量の水素で達成可能であることを見出した。水素は、水素ガス(可燃限界未満)であり得、この安定性及び強調は、(例:一定のプラズマを維持するために、作動中のガス流の変化により)水素ガスの量の差に堅固であり得る。これに代えて、水素は、水蒸気として導入され得、信号安定性及び強調は、同様に、湿度の範囲に堅固であり得る。
発明者は、作動中に弱化し、停止中に回復する、IMCの感度(Fluidigm Hyperion社製のイメージングシステム)を監視した。発明者は、少量の水分がシステム内に拡散し、停止時間中に累積し、作動中に徐々に乾燥・蒸発することが、この原因であると判断した。これにより、システムへの水分拡散の方法を減らす提言だけでなく、システム内のガス流を加湿する必要性も認識された。発明者は、調査時に、重要な因子が、システム内の水素の量であることを見出した。発明者は、初めは、純粋な水素をインジェクタガスに混合する構想を、余分なガスの取扱いへの配慮や安全措置により、高コストであるとして却下した。発明者は当初、アルゴン流加湿器装置を開発した。該装置は、H2Oを必要なレベルで安定供給できる。しかしながら、生物学の専門家によるイメージ分析により、酸化物形成により汚染される質量チャネル上のイメージについての懸念が明らかになった。この場合の酸素は、アルゴン流れ中の水分子由来であった。発明者は、その後、酸素の添加はないが、燃焼性や安全上の懸念を取り除く構成において、インジェクタ流に混合される純粋な水素の利点を得る方法を模索することを決定した。発明者は、不燃性レベルに希釈された予混合ガスが、既存のガス取扱いの構成要素により管理可能で、感度を高め、信号を安定化させるための十分な水素濃度を提供することを理解した。
発明者は当初、信号が、湿度に高感度であり、(例:LA-ICP-MS器具の空間内の空気の)外部湿度と変動し得ることを見出した。図5に示す通り、搬送ガスの0~4000uB(マイクロバール)の湿度範囲は、湿度の範囲にわたって、アブレーションショット毎の平均ルテチウムカウント数として測定される、ルテチウムを含む元素標準の感度の約30%変化の主な原因となる。しかしながら、発明者はまた、信号が、湿度範囲内(ほぼ2000~3000uB)で安定して高いことに気付いた。使用するシステムは、図4に示すものと類似であった。
発明者はまた、水を添加すると、酸化物レベルが非常に高くなり得るが、搬送ガスの流量が、単に最大感度に調整するのとは対照的に、酸化物を特定のレベルに保持するよう調整され得ることを見出した。以下は、試料調整結果であり、酸化物比率を<3%(<2%又は<1%等の3%以下)に制限する一方、加湿器により、今後の感度の大幅な改善をさらに達成することを示す:
Figure 2023507585000003

一つの追加の注記事項として、Ce140からGd156は、典型的に、酸化物スピルオーバーが、すべての質量チャネル中最低で、そのため、調整中にチャネルで、酸化物スピルオーバーを<3%に制限すると、他のチャネルではずっと小さくなり得る。特定の態様において、酸化物スピルオーバーは、試料移動中の0.5%未満又は0.25%未満等の1%未満(例:試料移動の5分超、10分超、又は30分超の期間中)変化する。
発明者はまた、水素(H)ガス(ヘリウムとの予混合ガス源で、水素ガスが3%)の添加が、信号増加/イオン画像輝度と強い相関がみられることを確認した。両方の手法に対する信号強調を、図9に示す。具体的には、搬送ガス加湿(左図)は、共通のマーカー用の信号の改善を示し、予混合水素-ヘリウム捕捉ガス(右図)はまた、共通のマーカー用の信号の改善を示す。
発明者はまた、非常にかすかなチャネルが、おそらく背景の影響で、より明るいチャネルよりも感度の改善が低いことを見出した。したがって、感度の改善は、主に、アブレーションショット毎の10以上のイオンカウント数の平均で検出されたチャネルに対し、確認され得る。
これら二つの手法に対するトレードオフを比較した結果を、以下に示す。
Figure 2023507585000004

発明者は、図6に示す多重加湿システムを試みて、水ポンプ(図6の上部)による水の直接噴射により、毛細血管の末端での湿潤及び液滴形成に関連するある程度の安定性の問題が起こることを見出した。拡散配管の周りのガス流の方向転換を制御するために、温度及び/又は湿度のフィードバックにより、ガスを拡散配管(図6の下部)を通過して流すことは、より良好な加湿安定性を提供することが判明した。一定速度で、拡散配管を安定化させる温度での終夜運転により、湿度が+/-10%変化するが、かなり安定した信号が得られる(図7に示す通り)。しかしながら、温度安定性を断念して、その代わりに、ガス流にフィードバックを使用すると、湿度制御をより良好に行い得る。湿度は、配管の下流でセンサにより検出された温度に反応して、拡散配管を通過するガス流を変更することで、制御される。拡散配管を通過するガスの流れを制御すると、湿度がより一貫して、変化に対する応答時間が良好になる。
典型的なレーザーアブレーション誘導結合プラズマ装置は、アブレーション点からプラズマまで、除去された材料を搬送するために、ガス流の組み合わせを使用する。感度は、ガス流中の水素に影響される。
発明者は、量が変動する水素ガスを使用して、図4に示すものに類似のLA-ICP-MSシステムに要する水素の適正量を決定した。ヘリウム流の典型的な範囲にわたって水素の適正量を提供する、弊社のヘリウム-水素ガス流に対する混合ガス比を使用した。これにより、純粋なヘリウムの使用を断念して、混合水素-ヘリウムガスに置き換えること以外に、ハードウェア又はソフトウェアに他の変更を加えることなく、水素混合ガスシステムに切替できる。シリンダ/調整器/質量流制御装置の総数は、同じである。加湿器システムと異なり、混合ガスシステムは、酸素を添加せず、MSシステムにより検出された酸化物比率は、影響を受けなかった。
代わりの構成において、水素は、(搬送ガス及び/又は捕捉ガスに特異的なガス源等の)アルゴンに予混合される。いくつかのLA-ICP-MSシステムにおいて、アルゴンは、除去されたプルーム用の捕捉ガスとして使用可能である。LA-ICP-MSに加えて、マスサイトメトリー器具において。ネオンはまた、法外な費用がかかることもあるが、いくつかの用途で検討可能である。さらに別の代わりとなる構成において、アルゴンに予混合される水素は、搬送ガスに添加される。搬送ガスは、総インジェクタ流の部分であり、プルームを搬送するアブレーション捕捉ガスと混合される。H2/アルゴン予混合物を搬送ガス流に添加することで、ユーザは、純粋なアルゴンとH2/Ar予混合物の比率を変えられ、最適アルゴン流を独立して制御する一方、インジェクタへのH2の全体流れを制御できる。言い換えれば、予混合物の流れは、H2の質量流を制御し、予混合物の流れと残りのアルゴン流は、搬送ガスの総アルゴン流を制御する。インジェクタの出力での総アルゴン流は、最適プラズマ温度と最大感度を達成するように、入念に調整される必要がある。H2のレベルは、その後、感度の改善用に第二の寸法を提供する。提案されるH2/アルゴンの予混合物は、低濃度の水素で、可燃限界未満である。この装置は、予混合ガスの追加のシリンダと独立した追加の質量流制御装置が、予混合物の流れに必要であるという不具合がある。しかし、この装置の利点は、所定の器具とプラズマ条件に対し、総流れの水素部分を独立して制御し調整する能力である。例えば、この配列は、H2/ヘリウム予混合物をプランAとすると、Deuterium計画用のプランBとみなされる。H2/ヘリウム混合物は、独立したH2流れ制御の欠如の典型的に重要度の低い制限による、低コストで簡便な解決法である。

Claims (91)

  1. 装置であって、
    試料を少なくとも二つの方向に移動するように構成された試料ステージと、
    前記試料ステージ上に取り付けられた試料を除去するように構成されたレーザーアブレーション源と、
    プラズマ源と、
    前記レーザーアブレーション源により前記試料から作成されたアブレーションプルームを、前記プラズマ源まで搬送するように構成されたインジェクタと、を具備し、
    前記プラズマ源と前記試料ステージのうち少なくとも一つは、互いに直交して配向される、装置。
  2. 前記インジェクタは、硬質である、請求項1に記載の装置。
  3. 前記インジェクタは、直線状である、請求項1または2に記載の装置。
  4. 前記インジェクタの内径は、1mm未満である、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
  5. 前記インジェクタの長さは、10cm未満である、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
  6. 前記インジェクタの長さは、5cm未満である、請求項5に記載の装置。
  7. 前記装置は、前記インジェクタが通過しない経路上にレーザーを向けるように構成される、請求項1~6のいずれか一項に記載の装置。
  8. 前記装置は、毎秒少なくとも1000個の異なるアブレーションプルームをICP源に送達するように作動可能である、請求項1~7のいずれか一項に記載の装置。
  9. 質量分析計をさらに具備する、請求項1~8のいずれか一項に記載の装置。
  10. 前記質量分析計は、飛行時間質量分析計である、請求項9に記載の装置。
  11. 前記質量分析計は、イオンの垂直ビームを受けるように構成される、請求項9または10に記載の装置。
  12. 前記試料ステージは垂直であり、垂直位置に移動するように作動可能である、請求項1~11のいずれか一項に記載の装置。
  13. 前記プラズマ源は、垂直に配向される、請求項1~11のいずれか一項に記載の装置。
  14. 前記プラズマ源は、真空密閉されるが、前記プラズマ源までのインジェクタの流入部は除外される、請求項13に記載の装置。
  15. 前記プラズマ源は、ICP源である、請求項1~14のいずれか一項に記載の装置。
  16. 請求項1~15のいずれか一項に記載の装置を使用して、試料をLA-ICP-MSにより分析することを含む、方法。
  17. 前記試料は、生体試料である、請求項16に記載の方法。
  18. 前記試料は、標識原子を含む、請求項17に記載の方法。
  19. 前記試料をLA-ICP-MSにより分析する前に、前記試料を標識原子で標識することをさらに含む、請求項18に記載の方法。
  20. 毎秒少なくとも1000個の異なるアブレーションプルームが分析される、請求項16~19のいずれか一項に記載の方法。
  21. 装置であって、
    試料を少なくとも二つの方向に移動するように構成された試料ステージと、
    前記試料ステージ上に取り付けられた試料を除去するように構成されたレーザーアブレーション源と、
    誘導結合プラズマ(ICP)トーチと、
    前記レーザーアブレーション源により前記試料から作成されたアブレーションプルームを、前記ICPトーチまで搬送するように構成されたインジェクタと、
    ヘリウムとアルゴンのうち少なくとも一つと混合した水素ガスを含む圧縮予混合ガス源と、を具備する、装置。
  22. 前記圧縮予混合ガス源中の前記水素ガスは、0.1%超で、水素の可燃限界未満である、請求項21に記載の装置。
  23. 水素ガスは、1体積%~4体積%である、請求項21に記載の圧縮予混合ガス源。
  24. 前記圧縮予混合ガス源は、少なくとも50体積%のヘリウムを含む、請求項21、22または23に記載の装置。
  25. 前記圧縮予混合ガス源は、少なくとも50体積%のアルゴンを含む、請求項21、22または23に記載の装置。
  26. 前記圧縮予混合ガス源は、ガスを、前記試料ステージを含むアブレーションチャンバに供給する、請求項21~25のいずれか一項に記載の装置。
  27. 前記予混合ガス源は、前記アブレーションプルームを前記インジェクタ内に搬送する捕捉ガスを提供する、請求項21~26のいずれか一項に記載の装置。
  28. 追加のガス源は、搬送ガスを前記インジェクタに提供し、前記捕捉ガスは、前記アブレーションプルームを前記インジェクタ内の前記搬送ガスに引き上げる、請求項27に記載の装置。
  29. 前記搬送ガスは、アルゴンを含み、前記捕捉ガスは、ヘリウムと水素ガスの混合物を含む、請求項28に記載の装置。
  30. 別個の捕捉ガスおよび搬送ガスは存在しない、請求項27に記載の装置。
  31. 前記インジェクタは、レーザーアブレーションプルームを垂直ICPトーチに向ける、請求項21~30のいずれか一項に記載の装置。
  32. 前記搬送ガスを前記インジェクタに提供する追加のガス源をさらに含む、請求項21~29のいずれか一項に記載の装置。
  33. 前記追加のガス源は、少なくとも50体積%のアルゴンを含み、前記予混合ガス源は、少なくとも50体積%のヘリウムを含む、請求項32に記載の装置。
  34. 前記追加のガス源は、液デュワーである、請求項21~33のいずれか一項に記載の装置。
  35. 前記圧縮予混合ガス源は、メイクアップ流を、前記レーザーアブレーションプルームが前記インジェクタに入る下流で前記インジェクタに導入するように構成される、請求項21~34のいずれか一項に記載の装置。
  36. 前記メイクアップ流は、犠牲流れの下流で導入される、請求項35に記載の装置。
  37. 前記装置は、犠牲流れを含まない、請求項36に記載の装置。
  38. 前記圧縮予混合ガス源は、捕捉ガス、搬送ガス、および内部トーチガスのうち少なくとも一つを提供する、請求項21~34のいずれか一項に記載の装置。
  39. 前記ICPトーチへの水素ガス流を、0.001L/分~0.1L/分で提供するように構成された、請求項21~38のいずれか一項に記載の装置。
  40. 前記ICPトーチへの水素ガス流を、0.001L/分~0.02L/分で提供するように構成された、請求項39に記載の装置。
  41. 水素ガスを、前記ICPトーチへの総ガス流の0.002%~1%で提供するようにさらに構成された、請求項21~40のいずれか一項に記載の装置。
  42. 前記装置は、水素ガスを、前記ICPトーチへの総ガス流の0.01%~0.1%で提供するように構成される、請求項41に記載の装置。
  43. 前記ICPトーチへの総ガス流は、5~30L/分である、請求項41または42に記載の装置。
  44. 前記ICPトーチにより生成されたイオン化された原子を検出するように構成された質量分析計をさらに具備する、請求項21~43のいずれか一項に記載の装置。
  45. 前記質量分析計は、少なくとも質量80amu以下のイオンを除去するように構成された高パスフィルタを具備する、請求項44に記載の装置。
  46. 前記ICPトーチは、前記ICPトーチが前記レーザーアブレーション源から分離される細胞懸濁モードで、すべての細胞を微粒子化およびイオン化するように構成される、請求項21~45のいずれか一項に記載の装置。
  47. ガス流を加湿するように構成された加湿システムをさらに具備する、請求項21~46のいずれか一項に記載の装置。
  48. 加湿された前記ガス流は、搬送ガス流である、請求項47に記載の装置。
  49. 請求項21~48のいずれか一項に記載の装置を使用して、試料をLA-ICP-MSにより分析することを含む、方法。
  50. 前記試料は、生体試料である、請求項49に記載の方法。
  51. 前記試料は、標識原子を含む、請求項50に記載の方法。
  52. 前記試料をLA-ICP-MSにより分析する前に、前記試料を標識原子で標識することをさらに含む、請求項51に記載の方法。
  53. さらに、3%超の平均酸化物スピルオーバーを有する標識原子は存在しない、請求項52に記載の方法。
  54. 前記水素ガスは、感度の少なくとも20%増加を、少なくともいくつかの標識原子に提供する、請求項49~53のいずれか一項に記載の方法。
  55. 前記水素ガスは、感度の少なくとも50%増加を、少なくともいくつかの標識原子に提供する、請求項54に記載の方法。
  56. 任意の所定の5分の期間での標識原子に対する平均感度は、前記試料を分析する少なくとも1時間にわたって10%超変化しない、請求項49~55のいずれか一項に記載の方法。
  57. 誘導結合プラズマ装置のための圧縮予混合ガス源であって、
    少なくとも50体積%のヘリウムまたはアルゴンと、
    0.1体積%~5体積%の水素ガスと、を含む、圧縮予混合ガス源。
  58. 少なくとも50体積%のヘリウムを含む、請求項57に記載の圧縮予混合ガス源。
  59. 少なくとも50体積%のアルゴンを含む、請求項57に記載の圧縮予混合ガス源。
  60. 水素ガスは、1体積%~4体積%である、請求項55、56、または57に記載の圧縮予混合ガス源。
  61. 誘導結合プラズマ装置のための圧縮予混合ガス源であって、
    少なくとも50体積%のヘリウムまたはアルゴンと、
    少なくとも0.1体積%のガスであって、元素水素を含む、ガスと、を含む、圧縮予混合ガス源。
  62. 前記ガスは、メタン、アンモニアまたは水素ガスである、請求項61に記載の圧縮予混合ガス源。
  63. 装置であって、
    試料を少なくとも二つの方向に移動するように構成された試料ステージと、
    前記試料ステージ上に取り付けられた試料を除去するように構成されたレーザーアブレーション源と、
    誘導結合プラズマ(ICP)源と、
    前記レーザーアブレーション源により前記試料から作成されたアブレーションプルームを、ICPトーチまで搬送するように構成されたインジェクタと、
    ガス流を加湿するように構成された加湿システムと、を具備する、装置。
  64. 前記ガス流は、搬送ガス流を含む、請求項63に記載の装置。
  65. 前記ガス流は、捕捉ガス流を含む、請求項63または64に記載の装置。
  66. 前記ガス流は、メイクアップガス流を含む、請求項63~65のいずれか一項に記載の装置。
  67. 前記ガス流は、補助ガス流を含む、請求項63~66のいずれか一項に記載の装置。
  68. 前記ガス流は、少なくとも50%のアルゴンを含む、請求項63~67のいずれか一項に記載の装置。
  69. 前記加湿システムは、水拡散配管を具備する、請求項63~68のいずれか一項に記載の装置。
  70. 前記加湿システムは、前記水拡散配管の温度を制御する、請求項69に記載の装置。
  71. 前記水拡散配管の周りにガス流を方向転換するように調整可能な可変スプリッタをさらに具備する、請求項69または70に記載の装置。
  72. 湿度レベルを維持するため、前記水拡散配管の周りにガス流を方向転換するようにともに構成された制御装置および湿度センサをさらに具備する、請求項69~72のいずれか一項に記載の装置。
  73. 前記加湿システムは、水を前記ガス流に直接噴射するように構成された水ポンプを具備する、請求項63~68のいずれか一項に記載の装置。
  74. 請求項63~73のいずれか一項に記載の装置を使用して、試料をLA-ICP-MSにより分析することを含む、方法。
  75. 前記試料は、生体試料である、請求項74に記載の方法。
  76. 前記試料は、標識原子を含む、請求項75に記載の方法。
  77. 前記試料をLA-ICP-MSにより分析する前に、前記試料を標識原子で標識することをさらに含む、請求項76に記載の方法。
  78. 3%超の平均酸化物スピルオーバーを有する標識原子は存在しない、請求項76または77に記載の方法。
  79. 前記加湿は、感度の少なくとも20%増加を、少なくともいくつかの標識原子に提供する、請求項76、77または78に記載の方法。
  80. 前記加湿は、感度の少なくとも50%増加を、少なくともいくつかの標識原子に提供する、請求項79に記載の方法。
  81. 任意の所定の5分の期間での標識原子に対する平均感度は、前記試料を分析する少なくとも1時間にわたって10%超変化しない、請求項73~80のいずれか一項に記載の方法。
  82. 装置であって、
    試料を少なくとも二つの方向に移動するように構成された試料ステージと、
    前記試料ステージ上に取り付けられた試料を除去するように構成されたレーザーアブレーション源と、
    誘導結合プラズマ(ICP)トーチと、
    前記レーザーアブレーション源により前記試料から作成されたアブレーションプルームを、前記ICPトーチまで搬送するように構成されたインジェクタと、
    ヘリウムとアルゴンのうち少なくとも一つと混合した水素含有ガスを含む圧縮予混合ガス源と、を具備する、装置。
  83. 前記水素含有ガスは、メタン、アンモニア、または水素ガスである、請求項82に記載の装置。
  84. 装置であって、
    試料を少なくとも二つの方向に移動するように構成された試料ステージと、
    前記試料ステージ上に取り付けられた試料を除去するように構成されたレーザーアブレーション源と、
    誘導結合プラズマ(ICP)源と、
    前記レーザーアブレーション源により前記試料から作成されたアブレーションプルームを、ICPトーチまで搬送するように構成されたインジェクタと、を具備し、
    前記装置は、レーザーアブレーションICP質量分析用の作動中に、水素含有分子を、前記ICPトーチのプラズマに供給するように構成される、装置。
  85. 前記装置は、水素ガス流を含む蒸気を供給するように構成される、請求項84に記載の装置。
  86. 前記蒸気は、水蒸気またはアルコール蒸気を含む、請求項84または85に記載の装置。
  87. 前記蒸気は、水蒸気を含む、請求項86に記載の装置。
  88. 前記蒸気は、アルコールを含む、請求項86に記載の装置。
  89. 前記アルコールは、エタノールである、請求項88に記載の装置。
  90. 請求項84~89のいずれか一項に記載の装置を使用して、試料をLA-ICP-MSにより分析することを含む、方法。
  91. 装置であって、
    試料を少なくとも二つの方向に移動するように構成された試料ステージと、
    前記試料ステージ上に取り付けられた試料を除去するように構成されたレーザーアブレーション源と、
    質量分析計に結合された誘導結合プラズマ(ICP)トーチと、
    前記レーザーアブレーション源により前記試料から作成されたアブレーションプルームを、前記ICPトーチまで搬送するように構成されたインジェクタと、を具備し、
    前記ICPトーチは、前記ICPトーチが前記レーザーアブレーション源から分離される細胞懸濁モードで、すべての細胞を微粒子化およびイオン化するように構成され、
    前記装置は、レーザーアブレーションICP質量分析用の作動中であるが、前記細胞懸濁モード中ではない状態で、水素含有分子を、前記ICPトーチのプラズマに供給するように構成される、装置。
JP2022537564A 2019-12-20 2020-12-21 イメージングマスサイトメトリー用プラズマおよびサンプリングジオメトリー Pending JP2023507585A (ja)

Applications Claiming Priority (5)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US201962951556P 2019-12-20 2019-12-20
US62/951,556 2019-12-20
US202063114313P 2020-11-16 2020-11-16
US63/114,313 2020-11-16
PCT/US2020/066488 WO2021127657A1 (en) 2019-12-20 2020-12-21 Plasma and sampling geometries for imaging mass cytometry

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2023507585A true JP2023507585A (ja) 2023-02-24
JPWO2021127657A5 JPWO2021127657A5 (ja) 2024-01-04

Family

ID=76478056

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2022537564A Pending JP2023507585A (ja) 2019-12-20 2020-12-21 イメージングマスサイトメトリー用プラズマおよびサンプリングジオメトリー

Country Status (7)

Country Link
US (1) US20230215714A1 (ja)
EP (1) EP4078140A4 (ja)
JP (1) JP2023507585A (ja)
KR (1) KR20220116543A (ja)
CN (1) CN115004007A (ja)
CA (1) CA3162258A1 (ja)
WO (1) WO2021127657A1 (ja)

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
GB2613060A (en) * 2021-09-20 2023-05-24 Micromass Ltd Ion source assembly
WO2023133311A1 (en) * 2022-01-07 2023-07-13 Standard Biotools Canada Inc. Stretchable coupling tube
WO2024116005A1 (en) * 2022-11-30 2024-06-06 Standard Biotools Canada Inc. Plume arrival time determination in laser ablation
CN117110175A (zh) * 2023-09-02 2023-11-24 上海凯来仪器有限公司 一种飞秒激光剥蚀质谱流式一体机及其使用方法

Family Cites Families (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
GB2255856B (en) * 1988-01-07 1993-01-27 Toshiba Kk Apparatus for introducing samples into an inductively coupled,plasma source mass spectrometer
US7170052B2 (en) * 2003-12-31 2007-01-30 Ionwerks, Inc. MALDI-IM-ortho-TOF mass spectrometry with simultaneous positive and negative mode detection
US7518108B2 (en) * 2005-11-10 2009-04-14 Wisconsin Alumni Research Foundation Electrospray ionization ion source with tunable charge reduction
EP2912433B1 (en) * 2012-10-26 2019-03-20 Fluidigm Canada Inc. Cell analysis by mass cytometry
CA2907483C (en) * 2013-03-22 2020-07-21 Eth Zurich Laser ablation cell
CA2972500C (en) * 2014-12-31 2023-09-12 Fluidigm Canada Inc. Structured biological samples for analysis by mass cytometry
EP3240014A1 (en) * 2016-04-29 2017-11-01 ETH Zurich Laser ablation cell
EP3494591A1 (en) * 2016-08-02 2019-06-12 Fluidigm Canada Inc. Laser ablation system
CA3097002A1 (en) * 2018-04-13 2019-10-17 Fluidigm Canada Inc. Stabilized cell acquisition for elemental analysis
EP3712923A1 (en) * 2019-03-18 2020-09-23 ETH Zurich Ion source for inductively coupled plasma mass spectrometry

Also Published As

Publication number Publication date
CA3162258A1 (en) 2021-06-24
CN115004007A (zh) 2022-09-02
KR20220116543A (ko) 2022-08-23
EP4078140A4 (en) 2024-06-26
US20230215714A1 (en) 2023-07-06
WO2021127657A1 (en) 2021-06-24
EP4078140A1 (en) 2022-10-26

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US11630050B2 (en) Sample analysis for mass cytometry
US10622199B2 (en) Laser ablation system
US10804090B2 (en) Laser ablation cell
JP2023507585A (ja) イメージングマスサイトメトリー用プラズマおよびサンプリングジオメトリー
EP2976779B1 (en) Laser ablation cell

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20231220

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20231220

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20240924