JP2023151268A - 車両用ドア装置診断システム、及び、車両用ドア装置診断方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】人手による車両設備の点検作業を省力化する車両用ドア装置診断システムを提供する。【解決手段】車両用ドア装置診断システム100は、記憶部と、動作指標生成部30a,30bと、警告発出部40a,40bと、異常原因推定部70とを備え、記憶部は、車両用ドア装置20a,20bの開閉動作の動作異常毎に、動作異常を示した警告と、車両用ドア装置を構成している部位のうち動作異常の発生源たり得る部位の名称と、想定される故障の故障モードとを表す管理情報を記憶し、動作指標生成部は、車両用ドア装置の開閉動作の滑らかさの動作指標を、車両用ドア装置の開閉の動作毎に生成し、警告発出部は、生成された動作指標に基づいて車両用ドア装置の動作異常の予兆を検知し、検出された動作異常を表す警告を発出し、異常原因推定部は、発出された警告が表す動作異常に対応した部位の名称及び故障モードを管理情報から特定する。【選択図】図1
Description
本発明は、概して、車両用ドア装置の状態を診断するためのコンピュータ技術に関する。
従来、鉄道やモノレール等の軌道交通を十全に稼働させるためには、人手による点検作業を定期的に実施する必要があった。また、点検作業の結果、車両設備に異常が検出された場合には、人手による整備や修理等の保全作業を事後的に実施していた。しかしながら、然様な定期的に行う点検作業や事後的に行う保全作業はいずれも効率性を欠き、作業員の負担が大きかった。
そこで、今日では、軌道交通用の車両設備にIoT(Internet of Things)技術を適用し、車両の各部に配置されたセンサやスイッチ、カメラ、マイク等の装置から取得したデータに基づいて当該車両の異常の予兆を検出することにより、車両設備の状態を自動的に診断する種々の技術が提案されている(例えば、特許文献1)。斯様な技術の活用により、車両設備の保全について、発現した異常に対して事後的に保全作業を行う上述の保全態様を改め、いわゆる状態基準保全(Condition Based Maintenance,CBМ)が実現可能になる。加えて、車両設備の点検についても、人手による点検作業の省力化や点検頻度の削減が期待される。
特許文献1に記載の診断技術は、予兆が検出された異常の原因、すなわち、当該異常を引き起こした部位や、当該部位における具体的な故障や不具合の内容を特定することができない。そのため、車両設備の点検や保全の効率化の目的で特許文献1に記載の診断技術を利用した場合、異常の予兆の検出後に、予兆が検出された異常の原因を特定するために、人手による点検作業を実施する必要があり、人手による点検作業の省力化や点検頻度の削減を十分に実現することが難しい、という課題があった。
車両用ドア装置診断システムは、記憶部と、動作指標生成部と、警告発出部と、異常原因推定部とを備える。記憶部は、車両用ドア装置の開閉動作の異常の類型である動作異常毎に、当該動作異常を示した警告と、車両用ドア装置を構成している複数の部位のうち当該動作異常の発生源たり得る一つ以上の部位の名称と、当該一つ以上の部位の各々について想定される故障の類型である故障モードとを表す管理情報を記憶する。動作指標生成部は、車両用ドア装置の開閉動作の滑らかさの評価指標である動作指標を、車両用ドア装置の開閉いずれか一つの動作毎に生成する。警告発出部は、生成された動作指標に基づいて当該車両用ドア装置の動作異常の予兆を検知し、動作異常の予兆が検出された場合、予兆が検出された動作異常を表す警告を発出する。異常原因推定部は、発出された警告が表す動作異常に対応した部位の名称及び故障モードを管理情報から特定することと、当該特定された部位の名称及び故障モードの全てを予兆が検出された動作異常の推定原因として取得することとを含んだ異常原因推定処理を実行する。
本発明によれば、車両設備の点検について、人手による点検作業を省力化し、点検頻度を削減することができる。
以下の説明では、「インターフェース装置」は、一つ以上のインターフェースデバイスでよい。当該一つ以上のインターフェースデバイスは、下記のうちの少なくとも一つでよい。
・一つ以上のI/O(Input/Output)インターフェースデバイス。I/O(Input/Output)インターフェースデバイスは、I/Oデバイスと遠隔の表示用計算機とのうちの少なくとも一つに対するインターフェースデバイスである。表示用計算機に対するI/Oインターフェースデバイスは、通信インターフェースデバイスでよい。少なくとも一つのI/Oデバイスは、ユーザーインターフェースデバイス、例えば、キーボード及びポインティングデバイスのような入力デバイスと、表示デバイスのような出力デバイスとのうちのいずれでもよい。
・一つ以上の通信インターフェースデバイス。一つ以上の通信インターフェースデバイスは、一つ以上の同種の通信インターフェースデバイス(例えば一つ以上のNIC(Network Interface Card))であってもよいし二つ以上の異種の通信インターフェースデバイス(例えばNICとHBA(Host Bus Adapter))であってもよい。
・一つ以上のI/O(Input/Output)インターフェースデバイス。I/O(Input/Output)インターフェースデバイスは、I/Oデバイスと遠隔の表示用計算機とのうちの少なくとも一つに対するインターフェースデバイスである。表示用計算機に対するI/Oインターフェースデバイスは、通信インターフェースデバイスでよい。少なくとも一つのI/Oデバイスは、ユーザーインターフェースデバイス、例えば、キーボード及びポインティングデバイスのような入力デバイスと、表示デバイスのような出力デバイスとのうちのいずれでもよい。
・一つ以上の通信インターフェースデバイス。一つ以上の通信インターフェースデバイスは、一つ以上の同種の通信インターフェースデバイス(例えば一つ以上のNIC(Network Interface Card))であってもよいし二つ以上の異種の通信インターフェースデバイス(例えばNICとHBA(Host Bus Adapter))であってもよい。
また、以下の説明では、「メモリ」は、一つ以上の記憶デバイスの一例である一つ以上のメモリデバイスであり、典型的には主記憶デバイスでよい。メモリにおける少なくとも一つのメモリデバイスは、揮発性メモリデバイスであってもよいし不揮発性メモリデバイスであってもよい。
また、以下の説明では、「永続記憶装置」は、一つ以上の記憶デバイスの一例である一つ以上の永続記憶デバイスでよい。永続記憶デバイスは、典型的には、不揮発性の記憶デバイス(例えば補助記憶デバイス)でよく、具体的には、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、NVME(Non-Volatile Memory Express)ドライブ、又は、SCM(Storage Class Memory)でよい。
また、以下の説明では、「記憶装置」は、メモリと永続記憶装置の少なくともメモリでよい。
また、以下の説明では、「プロセッサ」は、一つ以上のプロセッサデバイスでよい。少なくとも一つのプロセッサデバイスは、典型的には、CPU(Central Processing Unit)のようなマイクロプロセッサデバイスでよいが、GPU(Graphics Processing Unit)のような他種のプロセッサデバイスでもよい。少なくとも一つのプロセッサデバイスは、シングルコアでもよいしマルチコアでもよい。少なくとも一つのプロセッサデバイスは、プロセッサコアでもよい。少なくとも一つのプロセッサデバイスは、処理の一部又は全部を行うハードウェア記述言語によりゲートアレイの集合体である回路(例えばFPGA(Field-Programmable Gate Array)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit))といった広義のプロセッサデバイスでもよい。
また、以下の説明では、「yyy部」の表現にて機能を説明することがあるが、機能は、一つ以上のコンピュータプログラムがプロセッサによって実行されることで実現されてもよいし、一つ以上のハードウェア回路(例えばFPGA又はASIC)によって実現されてもよいし、それらの組合せによって実現されてもよい。プログラムがプロセッサによって実行されることで機能が実現される場合、定められた処理が、適宜に記憶装置及び/又はインターフェース装等を用いながら行われるため、機能はプロセッサの少なくとも一部とされてもよい。機能を主語として説明された処理は、プロセッサあるいはそのプロセッサを有する装置が行う処理としてもよい。プログラムは、プログラムソースからインストールされてもよい。プログラムソースは、例えば、プログラム配布計算機又は計算機が読み取り可能な記録媒体(例えば非一時的な記録媒体)であってもよい。各機能の説明は一例であり、複数の機能が一つの機能にまとめられたり、一つの機能が複数の機能に分割されたりしてもよい。
また、以下の説明では、「プログラム」を主語として処理を説明する場合があるが、プログラムを主語として説明された処理は、プロセッサあるいはそのプロセッサを有する装置が行う処理としてもよい。また、二つ以上のプログラムが一つのプログラムとして実現されてもよいし、一つのプログラムが二つ以上のプログラムとして実現されてもよい。
また、以下の説明では、「xxxテーブル」といった表現にて、入力に対して出力が得られる情報を説明することがあるが、当該情報は、どのような構造のテーブルでもよいし、入力に対する出力を発生するニューラルネットワーク、遺伝的アルゴリズムやランダムフォレストに代表されるような学習モデルでもよい。従って、「xxxテーブル」を「xxx情報」と言うことができる。また、以下の説明において、各テーブルの構成は一例であり、一つのテーブルは、二つ以上のテーブルに分割されてもよいし、二つ以上のテーブルの全部又は一部が一つのテーブルであってもよい。
また、以下の説明では、「車両用ドア装置診断システム」は、一つ以上の物理的な計算機で構成されたシステムでもよいし、物理的な計算リソース群(例えば、クラウド基盤)上に実現されたシステム(例えば、クラウドコンピューティングシステム)でもよい。車両用ドア装置診断システムが表示用情報を「表示する」ことは、計算機が有する表示デバイスに表示用情報を表示することであってもよいし、計算機が表示用計算機に表示用情報を送信することであってもよい(後者の場合は表示用計算機によって表示用情報が表示される)。
図1は、車両用ドア装置診断システムの構成例を示す。
なお、以下に説明する各ブロックは、ハードウェア単位の構成ではなく、機能単位のブロックを示している。
本実施形態において、車両用ドア装置診断システム100は、鉄道やモノレール、LRT(Light Rail Transit)、BRT(Bus Rapid Transit)等の軌道交通用の車両に搭載されている車載装置によって実現され、旅客の乗降を主目的として各車両の長手方向の側面に設けられている複数の車両用ドア装置20a、20b・・・20n(以下、まとめて言うときや特に区別しないときには「車両用ドア装置20」と総称する。また、単に「ドア装置20」と称することがある)と、当該ドア装置20の開閉動作を制御するためのドア制御器10とが出力する信号に基づいて、当該ドア装置20の開閉動作の状態を診断するシステムである。なお、上記車載装置は、車両毎に搭載されてもいてもよく、また、複数の車両が編成された列車毎に搭載されていてもよい。
ここで、ドア制御器10は、ドア装置の各々(20a、20b)に対して、開動作を指令する開指令信号と、閉動作を指令する閉指令信号とからなる開閉指令信号101を出力する。車両用ドア装置の各々(20a、20b)は、ドア制御器10から開指令信号を受信すると扉の開動作を開始し、ドア制御器10から閉動作信号を受信すると扉の閉動作を開始する。
他方、各ドア装置(20a、20b)には扉の開閉状態を検知する検知機構(詳細後述)がそれぞれ設けられている。この故に、各ドア装置(20a、20b)は、扉の全開状態を検出すると開検知信号(201a、201b)を出力し、扉が全閉状態になると閉検知信号(202a、202b)を出力する。
車両用ドア装置診断システム100は、概略的には、記憶部(不図示)、動作指標生成部30、警告発出部40及び異常原因推定部70を備える。
記憶部は、記憶装置(不図示)により実現され、ドア装置(20a、20b)の開閉動作の異常の類型である動作異常毎に、当該動作異常を示した警告と、上記ドア装置(20a、20b)を構成しているシリンダや電磁弁、滑車等の複数の部位の名称と、上記複数の部位の各々について想定される故障の類型である故障モードとを表す管理情報を記憶する。また、管理情報は、故障モード毎の発生確率である故障確率をさらに含んでいてもよい。記憶部は、これらの情報を、例えば、後述する異常原因データベース7002及び/又は故障確率データベース9002として記憶する。
また、記憶部は、警告履歴保持部50(詳細後述)を含む。
動作指標生成部(30a、30b)は、ドア制御器10が発した開閉指令信号101と、ドア装置(20a、20b)が発した開検知信号(201a、201b)及び閉検知信号(202a、202b)とを受信し、これらの信号に基づいて、ドア装置(20a、20b)の開閉動作の滑らかさの評価指標である動作指標(301a、301b)を、車両用ドア装置(20a、20b)の開閉いずれか一つの動作毎に生成する。
警告発出部(40a、40b)は、上記生成された動作指標(301a、301b)に基づいて、ドア装置20(20a、20b)の動作異常の予兆を検知する。具体的には、警告発出部(40a、40b)は、各動作指標生成部(30a、30b)が生成した動作指標301の各々(301a、301b)をそれぞれ基準値と照らし合わせて、それらの指標が正常値を示しているか否かを判定する。
警告発出部(40a、40b)は、ドア装置(20a、20b)の開閉いずれか一つの動作について生成した動作指標(301a、301b)が正常範囲にない場合、当該ドア装置(20a、20b)の動作異常の予兆を検出する。
警告発出部(40a、40b)は、ドア装置20の各々(20a、20b)について動作異常の予兆を検出した場合、上記予兆が検出された動作異常を表す警告(401a、401b)を発出する。
異常原因推定部70は、上記発出された警告が表す動作異常に対応した部位の名称及び故障モードを管理情報から特定する処理と、当該特定された部位の名称及び故障モードの全てを上記予兆が検出された動作異常の推定原因として取得する処理とを実行する。異常原因推定部70が実行するこれらの処理を異常原因推定処理と称する(詳細後述)。
すなわち、車両用ドア装置診断システム100は、上述の構成を備えることにより、ドア装置20の各々(20a、20b)について、動作異常の予兆を異常の種別と共に検出できる。これにより、ドア装置20について、発現した異常に対して事後的に保全作業を行うのではなく、動作異常の予兆が検出されたドア装置20について、予兆が検出された種類の異常についてのみ人手により詳細に点検し、必要に応じて適宜に保守作業を実施するいわゆる状態基準保全が実現可能になる。その結果、人手による点検作業の省力化や、点検頻度の削減を実現できる。
また、異常原因推定部70は、事後確率とよばれる、想定される全ての故障モードについての故障確率を相対的に評価する評価値を計算する処理を実行する。異常原因推定部70が実行するこの処理を事後確率計算処理と称する(詳細後述)。
さらに、車両用ドア装置診断システム100は、警告履歴保持部50及び外乱除去部60を備える。
警告履歴保持部50は、特に、ドア装置20の各々(20a、20b)の開閉動作の各々について警告発出部(40a、40b)が発出した警告(401a、401b)の履歴を記憶する。警告履歴保持部50は、記憶部に含まれる。
また、外乱除去部60は、異常原因推定部70の異常原因推定処理の実行に先立ち、異常原因推定処理にとって外乱となる要素を除去する処理を実行する。これにより、車両用ドア装置診断システム100は、異常原因推定部70による異常原因推定処理を精度よく実行することができる。なお、異常原因推定処理の実行時に外乱となる要素としては、例えば、旅客のドア装置20へのもたれかかりに起因する、ドア装置20の開閉動作時の摺動抵抗の増大が挙げられる。
図2は、ドア制御器10の構成例を示す。
本実施形態のドア制御器10は、概略的には、二つの機械的接点(2001、2002)及び継電器2003により実現される自己保持回路である。ドア制御器10は、二つの機械的接点(2001、2002)への操作結果により変化する当該回路への印加電圧の有無を開閉指令信号101として出力する。
自己保持解除用の接点であるドア閉スイッチ2002が解放された状態で、自己保持用の接点であるドア開スイッチ2001が入力されると、自己保持回路が印加され、継電器2003が励磁されることによって当該回路の印加状態が保持される。この状態において、さらにドア閉スイッチ2002が入力されると、継電器2003は消磁され、印加された状態を保持していた自己保持回路が開放される。
これにより、ドア制御器10は、上述のドア開スイッチ2001及びドア閉スイッチ2002の操作状態に応じて、自己保持回路が印加された状態を開指令とし、当該回路が印加されていない状態を閉指令とする開閉指令信号101を出力する。開指令の発出は、自己保持回路の印加による開閉指令信号101の立ち上がりにより開始される。また、閉指令の発出は、自己保持回路の解放による開閉指令信号101の立ち下がりにより開始される。すなわち、ドア開スイッチ2001は入力されることでドア装置20に閉動作の開始を促し、ドア閉スイッチ2002は入力されることでドア装置20に閉動作の開始を促す。
図3は、ドア装置20のハードウェア構成例を示す。
本実施形態のドア装置20は、各車両の側面に設けられたスライド式の空気式ドア装置であり、概略的には、レール3002に沿ってそれぞれ左右方向に開閉する二枚の車両用側扉(以下、単に「扉」と称する)3001と、扉3001の移動を規制するレール3002と、ベルト3003、滑車3004、ロッド3005、シリンダ3006、電磁弁3007及び空気溜め3008から構成される駆動機構とを構成要素として含む。
ドア装置20は、ドア制御器10が発出する開閉指令信号101に応じて駆動機構が動作することで、扉3001を開閉させる。
駆動機構の構成要素であるシリンダ3006は、可動式の隔壁部(不図示)により分離された二つの密閉空間を内部に有する。この隔壁部は、空気溜め3008から吐出された圧縮空気がシリンダ3006内のいずれの密閉空間に流入するかにより、その位置をシリンダ3006の円筒軸方向に変化させる。空気溜め3008からシリンダ3006内への圧縮空気の流路は三叉路になっており、その分岐点には、圧縮空気の流入先を二つの密閉空間のいずれか一方に決定するための電磁弁3007が配置されている。
隔壁部の側端面の略中央には、その位置の変化に伴い生じる運動エネルギーをベルト3003に伝達するためにシリンダ3006の円筒軸に沿って配置された、ロッド3005の一端が接続されている。ロッド3005の他端側は、回転軸が並行となるように配置された二つの滑車3004の間に張り渡された環状のベルト3003の一部に接続されている。
ドア装置20は、ドア制御器10が発出した開閉指令信号101に応じて電磁弁3007が圧縮空気の流路を切り替えると、シリンダ3006の隔壁部の円筒軸方向の位置の変化に伴って生じた運動エネルギーがロッド3005及びベルト3003を介して扉3001に伝達され、戸車3009を介して扉3001がレール3002に沿って動くことで開閉する。
また、ドア装置20には、扉3001の開閉状態を検知する前述の検知機構として、当接したロッド3005の先端に押下されることで扉3001の全開状態を検知する開検知スイッチ3010と、当接したロッド3005の先端に押下されることで扉3001の全閉状態を検知する閉検知スイッチ3011とがそれぞれ所定の位置に配置されている。
開検知スイッチ3010は、扉3001の全開状態、すなわちドア装置20の開動作の完了を検知すると、ドア装置20の開動作の完了を表す開検知信号201を出力する。また、閉検知スイッチ3011は、扉3001の全閉状態、すなわちドア装置20の閉動作の完了を検知すると、ドア装置20の閉動作の完了を表す閉検知信号202を出力する。
なお、本実施形態では、ドア装置20が、二枚の扉3001を備える左右両開きのスライド式のドア装置であるとして説明したが、扉の枚数や開閉方向、駆動方式等は適宜に変更してもよい。例えば、ドア装置は、一枚の扉3001を備える片開きのドア装置であってもよい。また、ドア装置は、全開時に扉が車両の内方に折り畳まれる、いわゆる折れ戸式のドア装置であってもよい。さらに、ドア装置は、シリンダ内に圧縮空気を流入させて扉を駆動する空気式のドア装置でなく、モーターの回転により扉を駆動する電気式のドア装置であってもよい。
図4は、動作指標生成部の一例を示す。
動作指標生成部30は、ドア制御器10から受信した開閉指令信号101、開検知スイッチ3010から受信した開検知信号201及び、閉検知スイッチ3011から受信した閉検知信号202に基づいて下記の各処理を順次実行し、ドア装置20の開閉動作の滑らかさの評価指標である動作指標を生成する。この処理を、動作指標生成処理と称する。
動作指標生成部30は、まず、ドア制御器10が発する開閉指令信号101について信号の立ち上がりを検知すると、直近の立ち上がり検知時刻を出力する立ち上げ検知処理4001aを行い、開指令の発出時刻を表す開指令時刻4003を取得する。
他方、動作指標生成部30は、ドア制御器10が発する開閉指令信号101について信号の立ち下がりを検知すると、直近の立ち下がり検知時刻を出力する立ち下げ検知処理4002aを行い、閉指令の発出時刻を表す閉指令時刻4004を取得する。
また、動作指標生成部30は、開検知スイッチ3010から受信した開検知信号201に対して、立ち上げ検知処理4001b及び立ち下げ検知処理4002bを行う。立ち上げ検知処理4001bの結果、ドア装置20の開動作の完了時刻を表す開動作完了時刻4005が取得される。また、立ち下げ検知処理4002bの結果、ドア装置20の閉動作の開始を表す閉動作開始時刻4006を取得する。
同様に、動作指標生成部30は、閉検知スイッチ3011から受信した閉検知信号202に対しても、立ち上げ検知処理4001c及び立ち下げ検知処理4002cを行う。立ち上げ検知処理4001cの結果、ドア装置20の閉動作の完了を表す閉動作完了時刻4007が取得される。また、立ち下げ検知処理4002cの結果、ドア装置20の開動作の開始時刻を表す開動作開始時刻4008を取得する。
次いで、動作指標生成部30は、開動作開始時刻4008と開動作完了時刻4005との差分を求め、ドア装置20が開動作の開始から完了までに要した時間を表す開動作時間4009を算出する。
また、動作指標生成部30は、閉指令時刻4004と閉動作開始時刻4006との差分を求め、ドア装置20の閉動作の開始から完了までに生じたロスタイムを表す閉動作無駄時間4010を算出する。
さらに、動作指標生成部30は、閉動作開始時刻4006と閉動作完了時刻4007との差分を求め、ドア装置20が閉動作の開始から完了までに要した時間を表す閉動作時間4011を算出する。
同様に、動作指標生成部30は、開指令時刻4003と開動作開始時刻4008との差分を求め、ドア装置20の開動作の開始から完了までに生じたロスタイムを表す開動作無駄時間4012を算出する。
その後、動作指標生成部30は、算出した開動作時間4009、閉動作無駄時間4010、閉動作時間4011及び開動作無駄時間4012について、多重化装置4013を用いて多重化処理を行い、動作指標301として出力する。
なお、ドア装置20は、扉3001の開閉動作を手動で行うための機構であるドアコック(不図示)を備えていてもよい。その場合、動作指標生成部30は、ドアコックから受信した信号を使用して動作指標生成処理を実行してもよい。
すなわち、動作指標生成部30は、ドア装置20に閉動作の開始を促す開指令を発出するドア開スイッチと、ドア装置20に閉動作の開始を促す閉指令を発出するドア閉スイッチと、ドア装置20の開動作の完了を検知する開検知スイッチと、ドア装置20の閉動作の完了を検知する閉検知スイッチと、ドア装置20を手動で開閉動作させるための機構であるドアコックとの少なくともいずれか一つから受信した信号に基づいて動作指標301を生成する。これにより、ドア装置20の開動作の開始及び完了と、閉動作の開始及び完了とをいずれも正確に検出できる。その結果、ドア装置20の開閉動作の異常の予兆を見逃さずに確実に検出できるため、人手による点検作業を省力化し、点検頻度を削減することができる。
また、動作指標生成処理により生成される動作指標301は、ドア装置20が開動作の開始から完了までに要した時間を表す開動作時間と、ドア装置20が閉動作の開始から完了までに要した時間を表す閉動作時間と、ドア装置20の開動作の開始から完了までに生じたロスタイムを表す開動作無駄時間と、ドア装置20の閉動作の開始から完了までに生じたロスタイムを表す閉動作無駄時間とのいずれか一つを含む。開動作時間及び閉動作時間は、上述の方法により、各種センサを別途設けることなく正確に算出できる。また、開動作無駄時間及び閉動作無駄時間も上述の方法により正確に算出できる上、ドア装置20の開閉動作時にこれらのロスタイムが生じている場合、ドア装置20の構成部位のいずれかに不調が生じている可能性が高い。そのため、これらの動作指標を用いてドア装置20の開閉動作の円滑さを評価することにより、ドア装置20の開閉動作の異常の予兆を見逃さずに確実に検出できるため、人手による点検作業を省力化し、点検頻度を削減することができる。
図5は、警告発出部の一例を示す。
警告発出部40は、動作指標生成部30から動作指標301を受信して下記の各処理を順次実行し、処理の結果に応じて警告401を生成する。警告発出部40は、警告401を生成した場合、当該警告401を発出する。この処理を、警告発出処理と称する。
警告発出部40は、まず、多重化されている動作指標301に対して、復号装置5001を用いて復号処理を施し、動作指標301に含まれる開動作時間4009、閉動作無駄時間4010、閉動作時間4011及び開動作無駄時間4012の各指標を取得する。
次いで、警告発出部40は、取得した開動作時間4009、閉動作無駄時間4010、閉動作時間4011及び開動作無駄時間4012の各指標をそれぞれ判定器(5002a~5002d)に入力し、これらの各指標(4009~4012)が、予め定義した閾値5003に対して正常値であるか否かを判定する。
これらの各指標(4009~4012)は、閾値5003未満の場合には、正常値であると判定される。この場合、ドア装置20の動作は正常(G)であると推測される。
他方、これらの各指標(4009~4012)は、閾値5003以上の場合には、異常値であると判定される。この場合、ドア装置20の動作について、異常の予兆(Y)が異常値として発現したものと推測される。
そのため、判定器5002aは、入力された開動作時間4009が異常値の場合、開動作遅延警告5004を生成する。
判定器5002bは、入力された閉動作無駄時間4010が異常値の場合、閉無駄時間警告5005を生成する。
判定器5002cは、入力された閉動作時間4011が異常値の場合、閉動作遅延警告5006を生成する。
判定器5002dは、入力された開動作無駄時間4012が異常値の場合、開無駄時間警告5007を生成する。
その後、警告発出部40は、判定器5002が出力した開動作遅延警告5004、閉無駄時間警告5005、閉動作遅延警告5006及び開無駄時間警告5007について、多重化装置5008を用いて多重化処理を行い、一つの警告401として発出する。
なお、本実施形態では、判定器(5002a~5002d)は、開動作時間4009、閉動作無駄時間4010、閉動作時間4011及び開動作無駄時間4012の指標毎に、それぞれ対応する一つの閾値5003を使用して、各指標(4009~4012)がそれぞれ正常値か否かを判定した。しかしながら、判定器が使用する閾値の数や具体的な数値は適宜に変更してもよい。例えば、警告発出部40は、例えば、判定器が異なる二つの閾値をそれぞれ使用して各指標(4009~4012)を判定することにより、ドア装置20の開閉動作について、正常(G)であることや、異常の予兆(Y)がみられることに加えて、実際に異常であることを推定対象としてもよい。
また、本実施形態では、警告発出部40は、ドア装置20が開閉動作を行う毎に警告401を生成して発出するが、警告401発出の契機やタイミングは適宜に変更してもよい。例えば、警告401の内訳が変わるとき、すなわち警告401に含まれる開動作遅延警告5004、閉無駄時間警告5005、閉動作遅延警告5006及び開無駄時間警告5007のいずれかについて値が更新されるときに、警告発出部40が警告401を発出してもよい。
さらに、本実施形態では、動作指標生成部30及び警告発出部40がそれぞれ多重化装置(4013、5008)を備えており、動作指標生成部30が生成する動作指標301及び警告発出部40が発出する警告401は、いずれも多重化処理が施されたものであるとして説明した。しかしながら、動作指標301の構成要素である開動作時間4009、閉動作無駄時間4010、閉動作時間4011及び開動作無駄時間4012や、警告401の構成要素である開動作遅延警告5004、閉無駄時間警告5005、閉動作遅延警告5006及び開無駄時間警告5007に対して多重化処理を施さずに、これらの各指標を個別に出力してもよいことは言うまでもない。
また、本実施形態の車両用ドア装置診断システム100は、警告発出部40が発出した警告401をその都度受信して、警告401の発出履歴を記憶する警告履歴保持部50を備える。
図6は、警告履歴保持部50が格納する警告履歴テーブルの構成例を示す。
警告履歴テーブル600は、警告発出部40が発出した警告401の内容を警告毎に管理するためのテーブルである。警告履歴テーブル600は、警告毎にレコードを有する。レコードは、警告401が発出された日時と、警告401に含まれる開動作遅延警告5004、閉無駄時間警告5005、閉動作遅延警告5006及び開無駄時間警告5007の有無とをそれぞれ表す。
例えば、開動作遅延警告5004に対応する開動作時間4009、閉無駄時間警告5005に対応する閉動作無駄時間4010、閉動作遅延警告5006に対応する閉動作時間4011及び開無駄時間警告5007に対応する開動作無駄時間4012のいずれかの値が正常値である場合、警告発出部40が発出する警告401には、開動作遅延警告5004、閉無駄時間警告5005、閉動作遅延警告5006及び開無駄時間警告5007のうち、対応する指標が正常値を示していた警告は生成されず、含まれないことになる。この場合、開動作遅延警告5004、閉無駄時間警告5005、閉動作遅延警告5006及び開無駄時間警告5007のうち、警告401に含まれていなかったものについては、正常を意味する「G」が警告履歴テーブル600の対応するフィールドに記録される。
他方、開動作遅延警告5004、閉無駄時間警告5005、閉動作遅延警告5006及び開無駄時間警告5007のうち、警告401に含まれていたものについては、対応する指標に動作異常の予兆が発現していることを意味する「Y」が警告履歴テーブル600の対応するフィールドに記録される。
つまり、警告履歴テーブル600は、レコード毎に、警告401の発出日時と、当該警告401の各種構成要素の値とを紐付けて記録することにより、各警告の内容を概略的に表すものである。図6に示す例によれば、警告履歴テーブル600には、「2020年2月2日10時00分01秒」に発出された警告において、開動作遅延警告5004に対応する開動作時間4009の値が異常値(Y)であったことと、閉無駄時間警告5005に対応する閉動作無駄時間4010、閉動作遅延警告5006に対応する閉動作時間4011及び開無駄時間警告5007に対応する開動作無駄時間4012の値がそれぞれ正常値(G)であったこととが記録されている。このことは、当該警告401には、開動作遅延警告5004が含まれている一方で、閉無駄時間警告5005、閉動作遅延警告5006及び開無駄時間警告5007は含まれていないことを意味する。
なお、本実施形態では、警告履歴保持部50は、警告401の発出履歴をその都度記憶するものとして説明したが、警告401の発出履歴の記録要領は適宜に変更してもよい。例えば、警告401に含まれる開動作遅延警告5004、閉無駄時間警告5005、閉動作遅延警告5006及び開無駄時間警告5007のいずれかについて値が更新されたときに、警告履歴保持部が、当該警告401の履歴を時刻と共に記録するとしてもよい。
本実施形態の車両用ドア装置診断システム100は、警告履歴保持部50を備えることにより、警告401の履歴を保持することができる。そのため、車両用ドア装置診断システム100は、警告発出部40が発出した警告401を逐次解析することに加えて、警告発出部40が発出した複数の警告401の履歴を保持しておき、後でまとめて解析することもできる。
これにより、本実施形態の車両用ドア装置診断システム100は、例えば、列車が一つの運行区間の全体を走行中に発出された全ての警告401の履歴を当該列車が終点に到着した後に解析したり、一日分の警告401の履歴の全てを列車が回送された後に解析したりすることにより、警告401を解析する際に外乱の影響を最小限に止めることができる(詳細後述)。
図7は、異常原因推定部70の一例を示す。
異常原因推定部70は、警告履歴保持部50を参照し、警告履歴保持部50に記憶されている警告401のうち、開動作遅延警告5004に対応する開動作時間4009、閉無駄時間警告5005に対応する閉動作無駄時間4010、閉動作遅延警告5006に対応する閉動作時間4011及び開無駄時間警告5007に対応する開動作無駄時間4012のいずれかの値が異常値である警告601を取得して、ドア装置20の動作の異常の予兆を当該警告601が表すこととなった原因(以下、「異常原因」と称する)7003を推定する異常原因推定処理7001を実行する。
以下の説明では、異常原因推定部70が警告履歴保持部50から取得した警告601を、原因推定用警告601と称する。
また、以下の説明では、異常原因7003は、下記の事項を含む。
・ドア装置20の前述の各構成要素のうち、故障部位であると推定される構成要素(以下、「推定故障部位」と称する)。
・当該推定故障部位の故障モード。
・ドア装置20の前述の各構成要素のうち、故障部位であると推定される構成要素(以下、「推定故障部位」と称する)。
・当該推定故障部位の故障モード。
異常原因推定部70は、記憶部(不図示)に格納されている異常原因データベース7002を参照して原因推定用警告601に対して異常原因推定処理7001を実行し、異常原因7003を推定する。その後、異常原因推定部70は、推定した異常原因7003を図7が示す表示例7005のようにインターフェース装置7004に表示させる。
異常原因データベース7002は、原因推定用警告601に含まれる開動作遅延警告5004に対応する開動作時間4009、閉無駄時間警告5005に対応する閉動作無駄時間4010、閉動作遅延警告5006に対応する閉動作時間4011及び開無駄時間警告5007に対応する開動作無駄時間4012の値の各種組合せ(以下、単に「警告の組合せ」と称する)の類型と、主にドア装置20の設計時に使用される故障モード及び影響解析(Failure Mode and Effect Analysis;FMEA)や故障の木解析(Fault Tree Analysis;FTA)等の既知の解析手法における故障と故障の影響との因果関係に基づいて警告の組合せ毎に推定される故障部位(以下、「推定故障部位」と称する)との対応関係を予め定義した定義集である。異常原因データベース7002は、本実施形態では、警告の組合せ毎にレコードを有するテーブル700として記憶されている。レコードは、警告の組合せと、当該警告の組合せの場合の推定故障部位とを表す。すなわち、異常原因データベース7002は、レコード毎に、警告の組合せと、当該警告の組合せと対応関係にある推定故障部位とを紐付けて記録したものである。図7が示す例によれば、閉無駄時間警告5005に対応する閉動作無駄時間4010及び開無駄時間警告5007に対応する開動作無駄時間4012の値がそれぞれ異常値である「A」という警告の組合せにおける推定故障部位は、ベルト3003、滑車3004及びシリンダ3006である。
また、図7が示す表示例7005のように、原因推定用警告601が「A」という警告の組合せを有する場合、インターフェース装置7004には、「ベルト3003」、「滑車3004」及び「シリンダ3006」が当該原因推定用警告601に対応するドア装置20の推定故障部位であることが表示される。
これにより、ドア装置を構成している多数の部位から、推定故障部位を効率よく、かつ、精度よく抽出し、インターフェース装置7004に表示することができる。その結果、ドア装置20に対する人手による点検作業を効率よく確実に行うことにより省力化し、点検頻度を削減することができる。
なお、本実施形態では、異常原因データベース7002はテーブル700として記憶部に記憶されているものとして説明した。しかしながら、記憶部における異常原因データベース7002の記憶態様(形式)は適宜に変更してもよい。例えば、異常原因データベース7002は、図8に示したように、故障部位及び故障モードと動作異常を表す警告との因果関係を木構造で表現した異常原因グラフ800として記憶部に記憶されていてもよい。
図8が例示する異常原因グラフ800は、故障部位を表す「P」、故障モードを表す「М」、影響を表す「E」及び警告の組合せを表す「A」の各属性についてノードを有する。各ノード間は、前述のFMEAやFTA等の解析手法に基づく属性同士の因果関係を表すリンクで予め接続されている。
この場合、異常原因推定部70は、異常原因推定処理7001を実行する際、予め設定された属性同士の因果関係を表すリンクを逆に辿り、警告の組合せAを表すノードから故障部位Pを表すノード及び故障モードМを表すノードを探索することにより、異常原因7003を推定することができる。
また、本実施形態では、異常原因推定部70が警告履歴保持部50から原因推定用警告601を取得して異常原因推定処理7001を実行するとして説明した。しかしながら、警告の取得経路は適宜に変更してもよい。例えば、異常原因推定部70は、警告発出部40が発出した警告401を直接受信して異常原因推定処理7001を実行してもよい。
また、異常原因推定部70は、原因推定用警告601に対して異常原因推定処理7001を実行する際、図9に示したように、記憶部(不図示)に格納されている故障確率データベース9002を参照して異常原因7003を推定することもできる。
故障確率データベース9002は、警告の組合せの類型毎に、推定故障部位と、故障モードと、故障モードの発生確率(以下、「故障確率」とも称する)との対応関係を予め定義した定義集である。故障確率は、前述のFMEAやFTA等の解析手法に基づき予め定義されている。故障確率データベース9002は、本実施形態では、警告の組合せ毎に設けられ、推定故障部位毎にレコードを有するテーブル900として記憶されている。レコードは、推定故障部位と、当該推定故障部位と対応関係にある故障モードと、当該故障モードの発生確率とを表す。すなわち、故障確率データベース9002は、レコード毎に、推定故障部位と、当該推定故障部位に対応する故障モード及び故障確率とを紐付けて記録したものである。図9が示す例によれば、原因推定用警告601が「A」という警告の組合せを有する場合の推定故障部位は、ドア開スイッチ2001、シリンダ3006、電磁弁3007、滑車3004、ベルト3003、開検知スイッチ3010及び閉検知スイッチ3011である。そして、このうち、例えば、「電磁弁3007」については「空気漏れ」及び「固着」の二つの故障モードが想定され、これら二つの故障モードの発生確率はいずれも同率の「0.00×10-8」である。
また、異常原因推定部70は、推定故障部位に想定される全ての故障モードについての故障確率を相対的に評価する、事後確率とよばれる評価値を計算する処理を実行する。異常原因推定部70が実行する当該処理を、事後確率計算処理と称する。図9が示す例によれば、推定故障部位が「電磁弁3007」の上述の場合に想定される二つの故障モードの発生確率はいずれも「0.00×10-8」である。この場合、「空気漏れ」の発生確率を評価する事後確率は50%であり、「固着」の発生確率を評価する事後確率も同様に50%である。すなわち、事後確率は、故障確率データベース9002において推定故障部位と対応関係にある全ての故障モードについての故障確率の総和に対する当該故障モードの故障確率の割合を計算することで求めることができる。
また、異常原因推定部70は、例えば、警告の組合せ毎に想定される全ての故障モードについて事後確率を計算し、事後確率の高低に基づいて、推定される故障モードが実際に異常原因である可能性を相対的に評価することができる。
そのため、図9が示す表示例9005のように、原因推定用警告601が「A」という警告の組合せを有する場合、インターフェース装置7004には、「滑車3004」の「劣化」、「ベルト3003」の「劣化」及び「シリンダ3006」の「空気漏れ」と、異常原因として推定される推定故障部位及び故障モードの組合せが、事後確率の高い順、すなわち実際に異常原因である可能性が高い順に表示される。
これにより、開閉動作について異常の予兆が検出されたドア装置20に対して人手により点検作業を実施する場合に、インターフェース装置に表示された推定故障部位及び故障モードの組合せをその表示順に点検することにより、効率よく点検作業を実施することができる。
なお、本実施形態では、故障確率データベース9002はテーブル900として記憶部に記憶されているものとして説明した。しかしながら、故障確率データベース9002の記憶形式は適宜に変更してもよい。例えば、故障確率データベース9002は、図10に示したように、故障と警告との因果関係を木構造で表現した故障確率グラフ1000として記憶部に記憶されていてもよい。
図10が例示する故障確率グラフ1000はベイジアンネットワーク(Bayesian network)であり、故障部位を表す「P」、故障モードを表す「М」、影響を表す「E」及び警告の組合せを表す「A」の各属性についてノードを有する。各ノード間は、前述のFMEAやFTA等の解析手法に基づく属性同士の因果関係を表すリンクで予め接続されている。さらに、故障部位Pを表すノードと故障モードМを表すノードとを結ぶリンクの各々には、それぞれ対応関係にある故障モードМの故障確率が、前述のFMEAやFTAに基づく評価値として予め付与されている。すなわち、故障確率グラフ1000では、図10に例示したように、属性同士の因果関係が確率連鎖として予め定義されている。
なお、図10の例示では、故障モードМを表すノードと影響Eを表すノードとを結ぶリンク、及び、影響Eを表すノードと警告の組合せAを表すノードとを結ぶリンクの各々には、いずれも100%を表す「1.00」が発生確率の評価値として付与されているが、ノード同士の確率的な依存関係を定義するためにこれらのリンクに予め付与する発生確率の評価値は「1.00」でなくてもよく、適宜に変更可能である。
この場合、異常原因推定部70は、異常原因推定処理7001を実行する際、予め設定された属性同士の因果関係を表すリンクを逆に辿り、警告の組合せAを表すノードから故障部位Pを表すノード及び故障モードМを表すノードを探索することにより、事後確率を算出し、異常原因7003を蓋然性が高い順に推定することができる。
なお、本実施形態では、異常原因推定部70が異常原因データベース7002に格納されている情報又は故障確率データベース9002に格納されている情報に基づいて異常原因推定処理7001を実行するものとして説明した。しかしながら、異常原因推定部70が異常原因推定処理7001を実行する際に参照するデータベースは、異常原因データベース7002及び故障確率データベース9002のいずれか一方でなくてもよい。例えば、異常原因推定部70は、異常原因データベース7002に格納されている情報及び故障確率データベース9002に格納されている情報に基づいて異常原因推定処理7001を実行してもよい。
このように、異常原因推定部70は、異常原因データベース7002に格納されている情報及び/又は故障確率データベース9002に格納されている情報に基づいて異常原因推定処理7001を実行する。そして、異常原因データベース7002に格納されている情報及び故障確率データベース9002に格納されている情報、すなわち、警告の組合せや推定故障部位、故障モード、故障確率等の情報は、前述の通り、主にドア装置20の設計段階において使用されるFMEAやFTA等の解析手法に基づき予め定義されている情報である。仮に、これらの情報をドア装置20の運用開始後に収集して異常原因データベース7002や故障確率データベース9002を構築する場合、複数のドア装置20から取得した実測データを集積したとしても、異常原因推定処理7001を精度よく実行可能なデータベースを構築するまでには長大な期間を必要とする。しかしながら、異常原因推定部70が異常原因推定処理7001を実行する際に参照する異常原因データベース7002及び/又は故障確率データベース9002は、ドア装置20の設計段階、言い換えると、ドア装置20の運用開始前に実際に使用したFMEAやFTA等の既知の解析手法を基に構築された確率過程モデルをデータベースとして実装したものである。そのため、本実施形態の車両用ドア装置診断システム100は、ドア装置20の運用開始直後から異常原因推定処理7001を精度よく実行することができる。
さらに、本実施形態の異常原因データベース7002及び故障確率データベース9002の構築時に利用したFMEAやFTA等の既知の解析手法は、各種ドア装置の設計、製作及び運用に関する過去の膨大な知見に基づく。そのため、異常原因データベース7002及び故障確率データベース9002は、ドア装置20の設計時に想定し得る全ての故障部位及び故障モードをくまなく網羅する。また、故障確率データベース9002に定義されている故障モード毎の故障確率の予測値は、膨大なデータに基づいており、きわめて高精度である。そのため、本実施形態の車両用ドア装置診断システム100は、異常原因推定処理7001の結果、故障部位及び故障モードを、漏れなく、かつ、精度よく推定することができる。その結果、人手による点検作業を省力化し、点検頻度を削減することができる。
前述したように、本実施形態の車両用ドア装置診断システム100は、警告履歴保持部50を備える。そのため、異常原因推定部70は、警告履歴保持部50が記憶する複数の警告を事後にまとめて取得し、異常原因推定処理7001を一度に実行することができる。
また、本実施形態の車両用ドア装置診断システム100は、前述したように、異常原因推定部70の異常原因推定処理7001の実行に先立ち、異常原因推定処理7001にとって外乱となる要素を除去する処理を実行する外乱除去部60を備える。外乱除去部60が実行するこの処理を外乱除去処理と称する。
この場合、外乱除去部60は警告履歴保持部50から警告の履歴を取得して外乱除去処理を実行する。異常原因推定部70は、外乱除去処理により外乱が除去された警告を外乱除去部60から取得して、異常原因推定処理7001を実行する。
これにより、本実施形態の車両用ドア装置診断システム100は、異常原因推定処理7001の実行時に外乱の影響を最小限にすることができるため、異常原因推定処理7001を精度よく実行することができる。
なお、前述の通り、異常原因推定処理の実行時に外乱となる要素としては、例えば、旅客のドア装置20へのもたれかかりに起因する、ドア装置20の開閉動作時の摺動抵抗の増大が挙げられる。そこで、外乱除去処理は、例えば、警告履歴保持部50から取得した警告の履歴のうち、対応する動作指標において開動作時間及び閉動作時間が最も短い警告、すなわち、ドア装置20への旅客のもたれかかりの影響が最小の警告のみを外乱除去部60が選択する処理であるとしてもよい。また、外乱除去処理は、例えば、開動作時間及び閉動作時間が所定の時間よりも長い警告を外乱除去部60が排除する処理であるとしてもよい。
これにより、本実施形態の車両用ドア装置診断システム100は、旅客のドア装置20へのもたれかかれによる外乱の影響を最小限にできるため、異常原因推定処理7001を精度よく実行することができる。
また、外乱除去処理は、警告履歴保持部50から所定の期間についての警告の履歴を取得し、警告毎に外乱除去部60が多数決等の統計的処理により代表値を選択して原因推定用警告601を出力する処理であるとしてもよい。
また、外乱除去部60は、車両用ドア装置診断システム100の外部から各種情報を取得して外乱除去処理を実行するとしてもよい。
図11は、外乱除去部60がシステムの外部から各種情報を取得する場合の車両用ドア装置診断システム1100の構成例を示す。図11に例示した車両用ドア装置診断システム1100では、外乱除去部60は、当該システム1100の外部に設置された車両情報の制御装置である車両情報制御装置110から、列車の運行状況の記録である運行状況記録情報1101を取得して外乱除去処理を行う。
運行状況記録情報1101は、例えば、駅間毎の車両の乗車率を表す情報であってよい。この場合、外乱除去処理は、警告履歴保持部50から取得した警告の履歴から、当該車両が所定の乗車率を上回る駅間において発出された警告を外乱除去部60が排除する処理であってよい。
これにより、車両用ドア装置診断システム1100は、旅客のドア装置20へのもたれかかれによる外乱の影響を最小限にできるため、異常原因推定処理7001を精度よく実行することができる。
また、運行状況記録情報1101は、例えば、旅客がドア装置20に挟まれたことを表す戸挟検知情報であってよい。この場合、外乱除去処理は、警告履歴保持部50から取得した警告の履歴から、車両情報制御装置110から戸挟検知情報を取得した開閉動作と対応関係にある警告を外乱除去部60が排除する処理であってよい。これにより、車両用ドア装置診断システム1100は、旅客がドア装置20に挟まれた際に誤って発出される警告を排除して、旅客がドア装置20に挟まれることで生じる外乱の影響を除去できるため、異常原因推定処理7001を精度よく実行することができる。
なお、本実施形態では、車両用ドア装置診断システム100は、警告履歴保持部50が複数の警告の履歴を保持するものとして説明した。しかしながら、異常原因推定処理7001の実行の前段階における各種信号の具体的な処理フローは、適宜に変更することができる。例えば、図12に例示した車両用ドア装置診断システム1200は、警告履歴保持部50を備えず、その代わりに動作指標1201の履歴を保持する動作指標履歴保持部1250を備える。この場合、警告発出部1240は、動作指標履歴保持部1250から複数の動作指標1201をまとめて取得し、警告401を発出する。
これにより、例えば、警告発出部1240は、判定器5002が使用する閾値5003として、動作指標履歴保持部1250が保持する複数のドア装置20の動作指標1201の履歴の統計値を採用することができる。その結果、警告発出部1240は、閾値5003を予め定義しなくても、列車の運行過程で学習によって付与することが可能となる。
以上、一実施形態を説明したが、これは本発明の説明のための例示であって、本発明の範囲をこの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、他の種々の形態でも実行することが可能である。
100、1100、1200:車両用ドア装置診断システム
Claims (12)
- 車両用ドア装置の開閉動作の異常の類型である動作異常毎に、当該動作異常を示した警告と、前記車両用ドア装置を構成している複数の部位のうち当該動作異常の発生源たり得る一つ以上の部位の名称と、当該一つ以上の部位の各々について想定される故障の類型である故障モードとを表す管理情報を記憶する記憶部と、
車両用ドア装置の開閉動作の滑らかさの評価指標である動作指標を、車両用ドア装置の開閉いずれか一つの動作毎に生成する動作指標生成部と、
前記生成された動作指標に基づいて当該車両用ドア装置の動作異常の予兆を検知し、動作異常の予兆が検出された場合、前記予兆が検出された動作異常を表す警告を発出する警告発出部と、
前記発出された警告が表す動作異常に対応した部位の名称及び故障モードを前記管理情報から特定することと、当該特定された部位の名称及び故障モードの全てを前記予兆が検出された動作異常の推定原因として取得することとを含んだ異常原因推定処理を実行する異常原因推定部と
を備える、車両用ドア装置診断システム。 - 前記管理情報は、故障モード毎の発生確率である故障確率をさらに含み、
前記異常原因推定部は、
前記管理情報において、前記発出された警告が表す動作異常に、当該動作異常の発生原因たり得る複数の故障モードが紐付けられている場合、当該動作異常に紐付けられている全ての部位の名称、当該部位の故障モード及び当該故障モードの故障確率を取得し、故障モード毎に、前記発出された警告が表す動作異常に紐付けられている全ての故障モードの故障確率の総和に対する当該故障モードの故障確率の相対値である事後確率をそれぞれ計算する事後確率計算処理をさらに実行し、
前記算出された事後確率の大小に基づいて、前記事後確率計算処理により取得された全ての部位の名称及び当該部位の故障モードが前記予兆が検出された動作異常の原因である可能性の大小を評価する
請求項1に記載の車両用ドア装置診断システム。 - 前記記憶部は、前記管理情報を、前記故障モードと前記動作異常との因果関係を木構造で表した確率過程モデルとして記憶し、
前記異常原因推定部は、前記確率過程モデルに基づいて事後確率計算処理を実行する
請求項2に記載の車両用ドア装置診断システム。 - 前記管理情報に含まれる故障モード及び故障確率の各々は、前記車両用ドア装置の設計段階において部位毎にリストアップされた故障モード及び当該故障モードの故障確率であり、
前記異常原因推定部は、前記管理情報に含まれる故障モードの故障確率に基づいて事後確率計算処理を実行する
請求項2に記載の車両用ドア装置診断システム。 - 前記異常原因推定部は、取得した全ての部位の名称及び当該部位の故障モードを事後確率の高い順に表示させる
請求項2に記載の車両用ドア装置診断システム。 - 前記記憶部は、前記警告発出部が発出した警告の履歴を記憶する警告履歴保持部を含み、
前記異常原因推定部は、前記警告履歴保持部に履歴が記憶されている警告について異常原因推定処理を実行する
請求項1に記載の車両用ドア装置診断システム。 - 前記警告履歴保持部に記憶されている警告の履歴を取得して、前記異常原因推定処理における外乱を除去する外乱除去処理を実行する外乱除去部をさらに備え、
前記異常原因推定部は、外乱が除去された前記警告を前記外乱除去部から受信して前記異常原因推定処理を実行する
請求項6に記載の車両用ドア装置診断システム。 - 前記動作指標が、
前記車両用ドア装置が開動作の開始から完了までに要した時間を表す開動作時間と、
前記車両用ドア装置が閉動作の開始から完了までに要した時間を表す閉動作時間と、
前記車両用ドア装置の開動作の開始から完了までに生じたロスタイムを表す開動作無駄時間と、
前記車両用ドア装置の閉動作の開始から完了までに生じたロスタイムを表す閉動作無駄時間と
のいずれか一つを含む、請求項1に記載の車両用ドア装置診断システム。 - 前記外乱除去処理は、
前記警告履歴保持部から取得した警告の履歴のうち、対応する動作指標において前記車両用ドア装置が開動作の開始から完了までに要した時間を表す開動作時間と、前記車両用ドア装置が閉動作の開始から完了までに要した時間を表す閉動作時間とが最も短い警告のみを前記外乱除去部が選択する処理である
請求項7に記載の車両用ドア装置診断システム。 - 前記外乱除去部は、車両の乗車率を表す情報を取得し、
前記外乱除去処理は、
前記警告履歴保持部から取得した警告の履歴から、所定の乗車率を上回る状況下で発出された警告を前記外乱除去部が排除する処理である
請求項7に記載の車両用ドア装置診断システム。 - 前記動作指標生成部は、
前記車両用ドア装置に閉動作の開始を促す開指令を発出するドア開スイッチと、
前記車両用ドア装置に閉動作の開始を促す閉指令を発出するドア閉スイッチと、
前記車両用ドア装置の開動作の完了を検知する開検知スイッチと、
前記車両用ドア装置の閉動作の完了を検知する閉検知スイッチと、
前記車両用ドア装置を手動で開閉動作させるための機構であるドアコックと
の少なくともいずれか一つから受信した信号に基づいて前記動作指標を生成する、請求項1に記載の車両用ドア装置診断システム。 - コンピュータにより、車両用ドア装置の開閉動作の異常の類型である動作異常毎に、当該動作異常を示した警告と、前記車両用ドア装置を構成している複数の部位のうち当該動作異常の発生源たり得る一つ以上の部位の名称と、当該一つ以上の部位の各々について想定される故障の類型である故障モードとを表す管理情報を記憶し、
コンピュータにより、車両用ドア装置の開閉動作の滑らかさの評価指標である動作指標を、車両用ドア装置の開閉いずれか一つの動作毎に生成し、
コンピュータにより、前記生成された動作指標に基づいて当該車両用ドア装置の動作異常の予兆を検知し、
動作異常の予兆が検出された場合、
コンピュータにより、前記予兆が検出された動作異常を表す警告を発出し、
コンピュータにより、前記発出された警告が表す動作異常に対応した部位の名称及び故障モードを前記管理情報から特定することと、当該特定された部位の名称及び故障モードの全てを前記予兆が検出された動作異常の推定原因として取得することとを含んだ異常原因推定処理を実行する
車両用ドア装置診断方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2022060787A JP2023151268A (ja) | 2022-03-31 | 2022-03-31 | 車両用ドア装置診断システム、及び、車両用ドア装置診断方法 |
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JP2022060787A JP2023151268A (ja) | 2022-03-31 | 2022-03-31 | 車両用ドア装置診断システム、及び、車両用ドア装置診断方法 |
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JP2023151268A true JP2023151268A (ja) | 2023-10-16 |
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JP (1) | JP2023151268A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR102657282B1 (ko) * | 2023-11-21 | 2024-04-15 | 화인정밀 주식회사 | 철도차량 해치 어셈블리에 마련되는 스위치모듈 |
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2022
- 2022-03-31 JP JP2022060787A patent/JP2023151268A/ja active Pending
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KR102657282B1 (ko) * | 2023-11-21 | 2024-04-15 | 화인정밀 주식회사 | 철도차량 해치 어셈블리에 마련되는 스위치모듈 |
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