図1は本発明の第1の実施形態におけるソーラーシェアリングシステムの断面構成を概略的に示しており、図2は本実施形態におけるソーラーシェアリングシステムの平面構成を概略的に示している。なお、図1は図2のA-A断面を表している。
これらの図に示すように、本実施形態のソーラーシェアリングシステムにおいては、作物(栽培物)10が植えられた耕地(又は水耕栽培の場合は栽培槽)11の上方に、支柱12によって支持されたフレーム13が設置されており、このフレーム13に複数の太陽光発電パネル(以下、ソーラーパネル)14と太陽光を透過拡散する複数の波板形状の光拡散部材15とが取付架台16によって設置されている。複数の光拡散部材15は、複数のソーラーパネル14間に設けられている。このようにソーラーパネル14間に光拡散部材15を設けることにより、直射光を拡散させ、一部の作物にだけ直射光が照射されるのを防止し、ソーラーパネル14の真下にも均一な拡散光が届くようにすることができる。即ち、ソーラーパネル14の下の作物に対してあらゆる方角から均一に照射させて作物を安定的に成長させることが可能となる。図1は、春分、秋分の太陽高度55度のときの作物への照射を説明している。上述したように、光拡散部材15が存在しなければ直射光が一部にだけに強く照射されるが、光拡散部材15を設置することにより、直射光は60度から90度に拡散され、ソーラーパネル14の直下まで、隣の光拡散部材15からの拡散光と交差して照射される。なお、光拡散部材15及びソーラーパネル14は同じ形状で同じ寸法であることが望ましく、取付架台16に同じ方法で取付けされるように構成することが望ましい。
各ソーラーパネル14は、本実施形態においては、鋼鉄、ステンレス鋼等の金属基板又は樹脂基板上にシリコン系太陽電池又はペロブスカイト系太陽電池を設けた長方形の平板形状のパネルで構成されており、その寸法は、単なる一例であるが、幅(長辺)が約1800mm、長さ(短辺)が約600mmとなっている。この幅(長辺)は約900mm~約2000mm、長さ(短辺)は約500mm~約1000mmの範囲で適宜選択可能である。変更態様として、幅(短辺)が約600mm、長さ(長辺)が約1800mmとする場合もある。その場合、幅(短辺)は約500mm~約1000mm、長さ(長辺)は約900mm~約2000mmの範囲で適宜選択可能である。
各光拡散部材15は、長方形の波板形状を有している。波板形状の光拡散部材15を使用することにより、その表面積が1.2倍程度から1.5倍程度に増えるため、特に曇りや雨の時の天空光や太陽の高度が低くなった時の太陽光を効率よく拡散させて照射出来るようになる。また、光拡散部材15は、安価で腰が強く、雨仕舞いに優れ、暴風雨に絶えるものでなければならない。さらに、透過率が50%から80%程度、拡散角度が60度から100度程度であるものが望ましく、これによりソーラーパネル14の真下の作物には東西南北から均一な拡散光を照射させることができ、その結果、高さのある作物も安定的な栽培を行うことができる。従って、光拡散部材15としては、屋根材として使用され実績のある材料から、加工が容易であり、波板形状を有しており、光を透過かつ拡散する素材が選ばれる。波板形状としては、山形の折板形状、丸波形状又は角波形状が一般的であり、光を透過かつ拡散する素材としては、ポリカーボネート材料が望ましいが、FRP材料であっても良い。また、安価で雨仕舞いがよく取付けが簡単な丸波形状の市販品を使用するのが望ましい。もちろん、光拡散部材15の透過率、拡散角度については、設置高さ、設置間隔、作物の背丈や必要とする照度を考慮して選択される。本実施形態においては、光拡散部材15は、波板形状のポリカーボネートパネルで構成されており、その寸法は、単なる一例であるが、幅(長辺)が約1800mm、流れ方向の長さ(短辺)が約600mm、山ピッチが約63mm、山高が約18mmとなっている。具体的には、単なる一例であるが、ポリカーボネート波板パネル、ポリカーボネート中空パネル(例えば、ポリカナミ(登録商標)、ポリカツイン(登録商標)、ツインカーボ(登録商標)、ペアカーボ(登録商標))等の光拡散パネルを用いている。フロストタイプ、エンボス仕上げを用いると拡散性がより向上する。その幅(長辺)は約900mm~約2000mm、長さ(短辺)は約500mm~約1000mm、山ピッチは約30mm~約200mmの範囲で適宜選択可能である。変更態様として、幅(短辺)が約600mm、長さ(長辺)が約1800mmとする場合もある。その場合、幅(短辺)は約500mm~約1000mm、長さ(長辺)は約900mm~約2000mmの範囲で適宜選択可能である。
複数のソーラーパネル14及び複数の光拡散部材15は、それらの長さ方向(波板形状の場合は流れ方向)が南北方向となり、かつ、南方向(北半球の場合に南方向、南半球では北方向)に向けて所定の勾配で下方に傾斜するように設置されている。本実施形態では、水平に設置されたフレーム13上に設けられた取付架台16によって、複数のソーラーパネル14及び複数の光拡散部材15が傾斜して設置されている。この場合の所定の勾配は、本実施形態では1/10(10/100)程度であるが、3/100~30/100の勾配であれば良い。
取付架台16は、鉄鋼材料、ステンレス鋼材料、若しくはアルミニウム材料で構成しているが、国内産の間伐材料を用いて構成することも可能である。
作物への照射照度と同様に大事なのが、作物への均一な潅水である。本実施形態においては、上述したように、ソーラーパネル14及び光拡散部材15ともに、幅(長辺)を1800mm、流れ方向の長さ(短辺)を約600mmとし、短辺方向に1/10程度の水勾配をとり、全てのパネルが南方向に下方に傾斜するよう設置している。また、本実施形態では、ソーラーパネル14と光拡散部材15との間、及びソーラーパネル14とソーラーパネル14との南北方向の間に、雨水の落し口である隙間17が設けられており、この隙間17を介して雨水がパネル下の作物に注がれるように構成されている。隙間17の長さは、約20mmである。これにより、ソーラーパネル14及び光拡散部材15が受ける雨水は約600mmの間隔で作物に落下するので、均一な潅水が可能となる。
光拡散部材の表面が平坦であると、受けた雨水を傾斜した先端部から均一に落下させることが難しく、左右どちらかに偏って落下する。設置時に水下先端部が完全な水平状態となるように設置することは難しいため、風の影響や雨水の親水性の理由で、雨水はどちらかに偏って流れ落ちる。しかしながら、本実施形態のように、波板形状の光拡散部材15を用い、その流れ方向を傾斜方向に沿って設置することにより、光拡散部材15に降った雨水及びソーラーパネル14から流れ込んだ雨水を山ピッチで均等に谷底に振り分けることができるので、それぞれのパネルの水下端部から作物への潅水を有効に行うことができる。
図2に示すように、本実施形態においては、複数のソーラーパネル14が、東西方向に沿って配列された列となるように配置されており、これらソーラーパネル14の列の間に、複数の光拡散部材15が1列で配置されている。より詳細には、図2において、東西方向に伸長する第2列、第3列、第5列及び第6列がソーラーパネル14による列となっており、ソーラーパネル14による第2列の手前と、第3列及び第5列間に、光拡散部材15による東西方向の第1列及び第4列がそれぞれ配置されている。なお、上述したソーラーパネル14の列数、光拡散部材15の列数、ソーラーパネル14及び光拡散部材15の相互の配置は単なる一例であり、これに限定されるものではない。要は、ソーラーパネル14の東西方向に沿って配列された列の間に光拡散部材14の列が東西方向に沿って配置されていれば良い。本実施形態においては、複数のソーラーパネル14の占める平面の面積が66%であるのに対し、複数の光拡散部材15の占める平面の面積は33%である。光拡散部材15が25%の平面面積を占めれば、光強度の強い太陽直射光を、この光拡散部材15により、影の出ない拡散光(散乱光、天空光)に変換し、太陽直射光が照射されないソーラーパネル14の真下にまで充分な拡散光を届けることができる。また、光拡散部材15から耕地11の表面までの高さ(距離)を例えば3mと低くすれば、均一でありかつ高い照度を得ることができる。なお、耕地11に照射される拡散光の照度分布、均一度は、光拡散部材15の表面面積、設置間隔及び設置高さによって設定できるため、栽培する作物10によって適宜決定することが望ましい。
本実施形態において重要なポイントは、各光拡散部材15は、ソーラーシェアリングシステムの一端(北半球の場合に南方向、南半球では北方向)に向けて所定の勾配で下がるように傾斜して設置されていること、形状が波板形状でありその流れ方向が傾斜の方向に沿って設置されている点にある。これにより、後述するように、光が下方のみならず側方にも拡散されるため、太陽光が低い入射角で入射した場合にも、光拡散性が大幅に向上する。その結果、1年の季節を通して又は1日の時間帯を通して充分に拡散されより均一な照度分布を有する光が、ソーラーパネル14の下の作物に、より均一な照度分布で照射されることとなる。さらに、一端に向けて下方に傾斜して設置されていると共に、流れ方向がその傾斜の方向に沿っているため、雨水がソーラーパネル下の作物に均一に注がれることとなる。
図3は本実施形態における光拡散部材15の構成を説明しており、図4は図3のB-B断面を示している。
これらの図に示すように、本実施形態の光拡散部材15は、スレート小波形状であるフロストタイプのポリカーボネート波板パネル(幅:1800mm、流れ方向の長さ:600mm、山ピッチ:63mm、山高:18mm)、具体的には、住友ベークライト株式会社のポリカナミ(登録商標)を用いている。このポリカーボネート波板パネルの表面又は裏面に、エンボス加工を行っても良いし、耐熱性、遮熱性及び光拡散性を有するガイナ塗料を塗布しても良い。
図5は本実施形態における光拡散部材15及びソーラーパネル14のフレーム13への設置形態の一例を表している。
図5に示すように、この例では、支柱12によって水平に支持されたフレーム13上に、ソーラーパネル14及び光拡散部材15が取付架台16によってそれぞれ設置されている。その場合、取付架台16の高さを異ならせることにより、ソーラーパネル14及び光拡散部材15は南方向に向けて例えば1/10程度の勾配で下がるように傾斜して設置される。
図6は本実施形態における光拡散部材15及びソーラーパネル14のフレーム13への設置形態の他の例を表している。
図6に示すように、この例では、支柱12′によって南方向に向けて例えば1/10程度の勾配で下がるように傾斜して支持されたフレーム13′上に、ソーラーパネル14及び光拡散部材15が同一高さの取付架台16′によってそれぞれ設置されている。
以上詳細に説明したように、本実施形態によれば、採光部を全て光拡散部材15で構成したことにより、直射光は60度から100度に広がりソーラーパネル14の直下の作物にも均一な拡散光があらゆる方角から照射され、安定的な作物の収穫が期待できる。特に、光拡散部材15が波板形状を有することにより、光が下方のみならず側方にもより広角度で拡散されるため、太陽光が低い入射角で入射した場合にも、光拡散性が大幅に向上する。その結果、1年の季節を通して又は1日の時間帯を通して充分に拡散されより均一な照度分布を有する光が、ソーラーパネル14の下の作物に、より均一な照度分布で照射されることとなる。さらに、ソーラーパネル14及び光拡散部材15が一端の方向に向けて下方に傾斜して設置されていると共に、光拡散部材15の波板形状の流れ方向がその傾斜の方向に沿っており、隙間17が設けられているため、雨水がソーラーパネル14及び光拡散部材15の下の作物に均一に注がれることとなる。このように、採光部をすべて光拡散光部材15で構成することにより拡散光をソーラーパネル14の直下にも取り入れることができると共に均一な潅水が確実に行えることから、営農者の収穫が増え、発電事業者にも設置比率を増やすことができ投資効率を高めることができる。その結果、ソーラーシェアリング事業が見直され、休耕地の付加価値が高まり採用が増えることが期待できる。休耕地が蘇れば、中小河川の堰や堤防、用水路が整備されてゲリラ豪雨の災害防止を図ることができ、人が集まり過疎化問題の解決に貢献することができる。本発明は、カーボンニュートラルの実現と日本が抱えているエネルギーと食料の自給率向上とを目指している。従来の発電事業者のように売電を目指すと、その事業は地域には根付かない。農業従事者や地域の消費を目指すことによって、初めて、利益が地域に還元されることになる。家庭での使用はもちろんのこと、自治体の施設もこの電気を消費し、自動車や農機具の電動化、高騰している温室の暖房にもこの電気を使用する。そのためには大規模な蓄電池、電気ステーションなどのインフラが必要となり、地域での消費構造を構築することが課題となる。これにより、地域の耕地の価値が高まり、人が集まり新たな事業、雇用が生じる。このように、本発明が、地方創生の一つのモデルとして発信され、例えば、送電線のない地域でも、誰一人として落ちこぼれを作らない具体的な手段として活用されることが望まれる。
なお、本実施形態では、ソーラーパネル14及び光拡散部材15が北半球では南方向に向けて下方に傾斜して設置されており、これが最も効率が良い。しかしながら、立地条件によっては、効率は低下するが、東方向又は西方向を向くように設置されることもあり、それぞれの中間方向に向けて設置されることもある。
図7は本発明の第2の実施形態におけるソーラーシェアリングシステムの断面構成を概略的に示しており、図8は本実施形態におけるソーラーシェアリングシステムの平面構成を概略的に示している。なお、図7は図8のC-C断面を表している。
これらの図に示すように、本実施形態のソーラーシェアリングシステムにおいては、作物(栽培物)10が植えられた耕地(又は水耕栽培の場合は栽培槽)11の上方に、支柱12によって支持されたフレーム13が設置されており、このフレーム13に複数のソーラーパネル14′と太陽光を透過拡散する複数の波板形状の光拡散部材15′とが取付架台16によって設置されている。複数の光拡散部材15′は、複数のソーラーパネル14′間に設けられている。このようにソーラーパネル14′間に光拡散部材15′を設けることにより、直射光を拡散させ、一部の作物にだけ直射光が照射されるのを防止し、ソーラーパネル14′の真下にも均一な拡散光が届くようにすることができる。即ち、ソーラーパネル14′の下の作物に対してあらゆる方角から均一に照射させて作物を安定的に成長させることが可能となる。図7に示すように、光拡散部材15′が存在しなければ直射光が一部にだけに強く照射されるが、光拡散部材15′を設置することにより、直射光は60度から90度に拡散され、ソーラーパネル14′の直下まで、隣の光拡散部材15′からの拡散光と交差して照射される。なお、光拡散部材15′及びソーラーパネル14′は同じ形状で同じ寸法であることが望ましく、取付架台16に同じ方法で取付けされるように構成することが望ましい。
第1の実施形態においては、複数のソーラーパネル14が東西方向に沿って配列された列となるように配置されており、これらソーラーパネル14の列の間に、複数の光拡散部材15が東西方向に沿って配列された1列で配置されているに対し、本実施形態(第2実施形態)では、複数のソーラーパネル14′が南北方向に沿って配列された1列となるように配置されており、これらソーラーパネル14′の列の間に、複数の光拡散部材15′が南北方向に沿って配列された1列で配置されている。より詳細には、図8において、南北方向に伸長する第2列及び第4列がソーラーパネル14′による列となっており、ソーラーパネル14′の列間に、光拡散部材15′による南北方向の第1列及び第3列がそれぞれ挟まれて配置されている。なお、本実施形態における光拡散部材15′及びソーラーパネル14′は互いに異なる形状で異なる寸法となっているが、取付架台16に同じ方法で取付けされるように構成されている。
各ソーラーパネル14′は、本実施形態においては、鋼鉄、ステンレス鋼等の金属基板又は樹脂基板上にシリコン系太陽電池又はペロブスカイト系太陽電池を設けた長方形の平板形状のパネルで構成されており、その寸法は、単なる一例であるが、幅(長辺)が約1800mm、長さ(短辺)が約600mmとなっている。この幅(長辺)は約900mm~約2000mm、長さ(短辺)は約500mm~約1000mmの範囲で適宜選択可能である。変更態様として、幅(短辺)が約600mm、長さ(長辺)が約1800mmとする場合もある。その場合、幅(短辺)は約500mm~約1000mm、長さ(長辺)は約900mm~約2000mmの範囲で適宜選択可能である。
各光拡散部材15′は、正方形の波板形状を有している。波板形状の光拡散部材15′を使用することにより、その表面積が1.2倍程度から1.5倍程度に増えるため、特に曇りや雨の時の天空光や太陽の高度が低くなった時の太陽光を効率よく拡散させて照射出来るようになる。また、光拡散部材15′は、安価で腰が強く、雨仕舞いに優れ、暴風雨に絶えるものでなければならない。さらに、透過率が50%から80%程度、拡散角度が60度から100度程度であるものが望ましく、これによりソーラーパネル14′の真下の作物には東西南北から均一な拡散光を照射させることができ、その結果、高さのある作物も安定的な栽培を行うことができる。従って、光拡散部材15′としては、屋根材として使用され実績のある材料から、加工が容易であり、波板形状を有しており、光を透過かつ拡散する素材が選ばれる。波板形状としては、山形の折板形状、丸波形状又は角波形状が一般的であり、光を透過かつ拡散する素材としては、ポリカーボネート材料が望ましいが、FRP材料であっても良い。また、安価で雨仕舞いがよく取付けが簡単な丸波形状の市販品を使用するのが望ましい。もちろん、光拡散部材15′の透過率、拡散角度については、設置高さ、設置間隔、作物の背丈や必要とする照度を考慮して選択される。本実施形態においては、光拡散部材15′は、正方形の波板形状のポリカーボネートパネルで構成されており、その寸法は、単なる一例であるが、幅及び長さが約600mm、山ピッチが約63mm、山高が約18mmとなっている。具体的には、単なる一例であるが、ポリカーボネート波板パネル、ポリカーボネート中空パネル(例えば、ポリカナミ(登録商標)、ポリカツイン(登録商標)、ツインカーボ(登録商標)、ペアカーボ(登録商標))等の光拡散パネルを用いている。フロストタイプ、エンボス仕上げを用いると拡散性がより向上する。その幅及び長さは約500mm~約1000mm、山ピッチは約30mm~約200mmの範囲で適宜選択可能である。
複数のソーラーパネル14′及び複数の光拡散部材15′は、それらの長さ方向(波板形状の場合は流れ方向)が南北方向となり、かつ、南方向(北半球の場合に南方向、南半球では北方向)に向けて所定の勾配で下方に傾斜するように設置されている。本実施形態では、水平に設置されたフレーム13上に設けられた取付架台16によって、複数のソーラーパネル14′及び複数の光拡散部材15′が傾斜して設置されている。この場合の所定の勾配は、本実施形態では1/10(10/100)程度であるが、3/100~30/100の勾配であれば良い。
取付架台16は、鉄鋼材料、ステンレス鋼材料、若しくはアルミニウム材料で構成しているが、国内産の間伐材料を用いて構成することも可能である。
作物への照射照度と同様に大事なのが、作物への均一な潅水である。本実施形態においては、上述したように、光拡散部材15′は正方形状であり、流れ方向の先端辺方向に1/10程度の水勾配をとり、全てのパネルが南方向に下方に傾斜するよう設置している。また、本実施形態では、光拡散部材15′と光拡散部材15′との間、及びソーラーパネル14′とソーラーパネル14′との南北方向の間に、雨水の落し口である隙間17が設けられており、この隙間17を介して雨水がパネル下の作物に注がれるように構成されている。隙間17の長さは、約20mmである。これにより、ソーラーパネル14′及び光拡散部材15′が受ける雨水は約600mmの間隔で作物に落下するので、均一な潅水が可能となる。
光拡散部材の表面が平坦であると、受けた雨水を傾斜した先端部から均一に落下させることが難しく、左右どちらかに偏って落下する。設置時に水下先端部が完全な水平状態となるように設置することは難しいため、風の影響や雨水の親水性の理由で、雨水はどちらかに偏って流れ落ちる。しかしながら、本実施形態のように、波板形状の光拡散部材15′を用い、その流れ方向を傾斜方向に沿って設置することにより、光拡散部材15′に降った雨水及びソーラーパネル14′から流れ込んだ雨水を山ピッチで均等に谷底に振り分けることができるので、それぞれのパネルの水下端部から作物への潅水を有効に行うことができる。
なお、上述したソーラーパネル14′の列数、光拡散部材15′の列数、ソーラーパネル14′及び光拡散部材15′の相互の配置は単なる一例であり、これに限定されるものではない。要は、ソーラーパネル14′の南北方向に沿って配列された列の間に光拡散部材14′の列が南北方向に沿って配置されていれば良い。本実施形態においては、複数のソーラーパネル14′の占める平面の面積が66%であるのに対し、複数の光拡散部材15′の占める平面の面積は33%である。光拡散部材15′が25%の平面面積を占めれば、光強度の強い太陽直射光を、この光拡散部材15′により、影の出ない拡散光(散乱光、天空光)に変換し、太陽直射光が照射されないソーラーパネル14′の真下にまで充分な拡散光を届けることができる。また、光拡散部材15′から耕地11の表面までの高さ(距離)を例えば3mと低くすれば、均一でありかつ高い照度を得ることができる。なお、耕地11に照射される拡散光の照度分布、均一度は、光拡散部材15′の表面面積、設置間隔及び設置高さによって設定できるため、栽培する作物10によって適宜決定することが望ましい。
本実施形態において重要なポイントは、各光拡散部材15′は、ソーラーシェアリングシステムの一端(北半球の場合に南方向、南半球では北方向)に向けて所定の勾配で下がるように傾斜して設置されていること、形状が波板形状でありその流れ方向が傾斜の方向に沿って設置されている点にある。これにより、後述するように、光が下方のみならず側方にも拡散されるため、太陽光が低い入射角で入射した場合にも、光拡散性が大幅に向上する。その結果、1年の季節を通して又は1日の時間帯を通して充分に拡散されより均一な照度分布を有する光が、ソーラーパネル14′の下の作物に、より均一な照度分布で照射されることとなる。さらに、一端に向けて下方に傾斜して設置されていると共に、流れ方向がその傾斜の方向に沿っているため、雨水がソーラーパネル下の作物に均一に注がれることとなる。
本実施形態の光拡散部材15′の構成は第1の実施形態の光拡散部材15と同様であるため、説明は省略する。
本実施形態における光拡散部材15′及びソーラーパネル14′のフレーム13への設置形態は、第1の実施形態の場合と同様であるため、説明は省略する。
以上詳細に説明したように、本実施形態によれば、採光部を全て光拡散部材15′で構成したことにより、直射光は60度から100度に広がりソーラーパネル14′の直下の作物にも均一な拡散光があらゆる方角から照射され、安定的な作物の収穫が期待できる。特に、光拡散部材15′が波板形状を有することにより、光が下方のみならず側方にもより広角度で拡散されるため、太陽光が低い入射角で入射した場合にも、光拡散性が大幅に向上する。その結果、1年の季節を通して又は1日の時間帯を通して充分に拡散されより均一な照度分布を有する光が、ソーラーパネル14′の下の作物に、より均一な照度分布で照射されることとなる。さらに、ソーラーパネル14′及び光拡散部材15′が一端の方向に向けて下方に傾斜して設置されていると共に、光拡散部材15′の波板形状の流れ方向がその傾斜の方向に沿っており、隙間17が設けられているため、雨水がソーラーパネル14′及び光拡散部材15′の下の作物に均一に注がれることとなる。このように、採光部をすべて光拡散光部材15′で構成することにより拡散光をソーラーパネル14′の直下にも取り入れることができると共に均一な潅水が確実に行えることから、営農者の収穫が増え、発電事業者にも設置比率を増やすことができ投資効率を高めることができる。その結果、ソーラーシェアリング事業が見直され、休耕地の付加価値が高まり採用が増えることが期待できる。休耕地が蘇れば、中小河川の堰や堤防、用水路が整備されてゲリラ豪雨の災害防止を図ることができ、人が集まり過疎化問題の解決に貢献することができる。本発明は、カーボンニュートラルの実現と日本が抱えているエネルギーと食料の自給率向上とを目指している。従来の発電事業者のように売電を目指すと、その事業は地域には根付かない。農業従事者や地域の消費を目指すことによって、初めて、利益が地域に還元されることになる。家庭での使用はもちろんのこと、自治体の施設もこの電気を消費し、自動車や農機具の電動化、高騰している温室の暖房にもこの電気を使用する。そのためには大規模な蓄電池、電気ステーションなどのインフラが必要となり、地域での消費構造を構築することが課題となる。これにより、地域の耕地の価値が高まり、人が集まり新たな事業、雇用が生じる。このように、本発明が、地方創生の一つのモデルとして発信され、例えば、送電線のない地域でも、誰一人として落ちこぼれを作らない具体的な手段として活用されることが望まれる。
なお、本実施形態では、ソーラーパネル14′及び光拡散部材15′が北半球では南方向に向けて下方に傾斜して設置されており、これが最も効率が良い。しかしながら、立地条件によっては、効率は低下するが、東方向又は西方向を向くように設置されることもあり、それぞれの中間方向に向けて設置されることもある。
図9は本発明の第3の実施形態におけるソーラーシェアリングシステムの断面構成を概略的に示しており、図10は本実施形態におけるソーラーシェアリングシステムの平面構成を概略的に示している。なお、図9は図10のD-D断面を表している。
これらの図に示すように、本実施形態のソーラーシェアリングシステムにおいては、作物(栽培物)10が植えられた耕地(又は水耕栽培の場合は栽培槽)11の上方に、支柱(図示無し)によって支持されたフレーム(図示無し)が設置されており、このフレーム(図示無し)に複数の波板形状のソーラーパネル14″と太陽光を透過拡散する複数の波板形状の光拡散部材15″とが取付架台(図示無し)によって設置されている。複数の光拡散部材15″は、複数のソーラーパネル14″間に設けられている。このようにソーラーパネル14″間に光拡散部材15″を設けることにより、直射光を拡散させ、一部の作物にだけ直射光が照射されるのを防止し、ソーラーパネル14″の真下にも均一な拡散光が届くようにすることができる。即ち、ソーラーパネル14″の下の作物に対してあらゆる方角から均一に照射させて作物を安定的に成長させることが可能となる。光拡散部材15″が存在しなければ直射光が一部にだけに強く照射されるが、光拡散部材15″を設置することにより、直射光は60度から90度に拡散され、ソーラーパネル14″の直下まで、隣の光拡散部材15″からの拡散光と交差して照射される。なお、光拡散部材15″及びソーラーパネル14″は同じ形状で同じ寸法であることが望ましく、取付架台に同じ方法で取付けされるように構成することが望ましい。
第1の実施形態においては、複数のソーラーパネル14が東西方向に沿って配列された列となるように配置されており、これらソーラーパネル14の列の間に、複数の光拡散部材15が東西方向に沿って配列された1列で配置されているに対し、本実施形態(第3の実施形態)では、複数のソーラーパネル14″が南北方向に沿って配列された2列となるように配置されており、これらソーラーパネル14″の2列と2列との間に、複数の光拡散部材15″が南北方向に沿って配列された1列で配置されている。より詳細には、図10において、南北方向に伸長する第1列、第2列、第4列、第5列、第7列、第8列、第10列、第11列、第13列及び第14列がソーラーパネル14″による列となっており、ソーラーパネル14″の列間に、光拡散部材15″による南北方向の第3列、第6列、第9列及び第12列がそれぞれ挟まれて配置されている。また、本実施形態においては、ソーラーパネル14″も光拡散部材15″と同様に波板形状を有している。なお、本実施形態における光拡散部材15″及びソーラーパネル14″は同じ形状で同じ寸法であることが望ましく、取付架台に同じ方法で取付けされるように構成することが望ましい。
各ソーラーパネル14″は、本実施形態においては、鋼鉄、ステンレス鋼等の金属基板又は樹脂基板上にシリコン系太陽電池又はペロブスカイト系太陽電池を設けた長方形の平板形状のパネルで構成されており、その寸法は、単なる一例であるが、流れ方向の長さ(長辺)が約1800mm、幅(短辺)が約600mm、山ピッチが約63mm、山高が約18mmとなっている。この長さ(長辺)は約900mm~約2000mm、幅(短辺)は約500mm~約1000mmの範囲で適宜選択可能である。変更態様として、流れ方向の長さ(短辺)が約600mm、幅(長辺)が約1800mmとする場合もある。その場合、長さ(短辺)は約500mm~約1000mm、幅(長辺)は約900mm~約2000mmの範囲で適宜選択可能である。
各光拡散部材15″は、長方形の波板形状を有している。波板形状の光拡散部材15″を使用することにより、その表面積が1.2倍程度から1.5倍程度に増えるため、特に曇りや雨の時の天空光や太陽の高度が低くなった時の太陽光を効率よく拡散させて照射出来るようになる。また、光拡散部材15″は、安価で腰が強く、雨仕舞いに優れ、暴風雨に絶えるものでなければならない。さらに、透過率が50%から80%程度、拡散角度が60度から100度程度であるものが望ましく、これによりソーラーパネル14″の真下の作物には東西南北から均一な拡散光を照射させることができ、その結果、高さのある作物も安定的な栽培を行うことができる。従って、光拡散部材15″としては、屋根材として使用され実績のある材料から、加工が容易であり、波板形状を有しており、光を透過かつ拡散する素材が選ばれる。波板形状としては、山形の折板形状、丸波形状又は角波形状が一般的であり、光を透過かつ拡散する素材としては、ポリカーボネート材料が望ましいが、FRP材料であっても良い。また、安価で雨仕舞いがよく取付けが簡単な丸波形状の市販品を使用するのが望ましい。もちろん、光拡散部材15″の透過率、拡散角度については、設置高さ、設置間隔、作物の背丈や必要とする照度を考慮して選択される。本実施形態においては、光拡散部材15″は、長方形の波板形状のポリカーボネートパネルで構成されており、その寸法は、単なる一例であるが、流れ方向の長さ(長辺)が約1800mm、幅(短辺)が約600mm、山ピッチが約63mm、山高が約18mmとなっている。この長さ(長辺)は約900mm~約2000mm、幅(短辺)は約500mm~約1000mm、山ピッチは約30mm~約200mmの範囲で適宜選択可能である。具体的には、単なる一例であるが、ポリカーボネート波板パネル、ポリカーボネート中空パネル(例えば、ポリカナミ(登録商標)、ポリカツイン(登録商標)、ツインカーボ(登録商標)、ペアカーボ(登録商標))等の光拡散パネルを用いている。フロストタイプ、エンボス仕上げを用いると拡散性がより向上する。変更態様として、流れ方向の長さ(短辺)が約600mm、幅(長辺)が約1800mmとする場合もある。その場合、長さ(短辺)は約500mm~約1000mm、幅(長辺)は約900mm~約2000mmの範囲で適宜選択可能である。
複数のソーラーパネル14″及び複数の光拡散部材15″は、それらの流れ方向が南北方向となり、かつ、南方向(北半球の場合に南方向、南半球では北方向)に向けて所定の勾配で下方に傾斜するように設置されている。本実施形態では、水平に設置されたフレーム上に設けられた取付架台によって、複数のソーラーパネル14″及び複数の光拡散部材15″が傾斜して設置されている。この場合の所定の勾配は、本実施形態では1/10(10/100)程度であるが、3/100~30/100の勾配であれば良い。
取付架台は、鉄鋼材料、ステンレス鋼材料、若しくはアルミニウム材料で構成しているが、国内産の間伐材料を用いて構成することも可能である。
作物への照射照度と同様に大事なのが、作物への均一な潅水である。本実施形態においては、ソーラーパネル14″及び光拡散部材15″は、流れ方向の先端辺方向に1/10程度の水勾配をとり、全てのパネルが南方向に下方に傾斜するよう設置している。本実施形態においても、第1及び第2の実施形態の場合と同様に、各ソーラーパネル14″の間及び各光拡散部材15″の間に隙間17が設けられている。さらに、本実施形態では、ソーラーパネル14″及び光拡散部材15″の流れ方向の谷の底部に、雨水の落し口である貫通孔18が流れ方向の所定間隔毎に設けられている。貫通孔18のこの所定間隔は、ソーラーパネル14″又は光拡散部材15″の流れ方向の長さが1000mmを超える場合に約400mm~約1000mmの間隔であることが望ましい。ソーラーパネル14″及び光拡散部材15″が受ける雨水は、隙間17及び貫通孔18を介してパネル下の作物に注がれるように構成されているので、均一な潅水が可能となる。
ソーラーパネルや光拡散部材の表面が平坦であると、受けた雨水を傾斜した先端部から均一に落下させることが難しく、左右どちらかに偏って落下する。設置時に水下先端部が完全な水平状態となるように設置することは難しいため、風の影響や雨水の親水性の理由で、雨水はどちらかに偏って流れ落ちる。しかしながら、本実施形態のように、波板形状のソーラーパネル14″及び光拡散部材15″を用い、その流れ方向を傾斜方向に沿って設置することにより、これらソーラーパネル14″及び光拡散部材15″に降った雨水を山ピッチで均等に谷底に振り分けることができるので、パネルの隙間17及び貫通孔18から作物への潅水を有効に行うことができる。
なお、上述したソーラーパネル14″の列数、光拡散部材15″の列数、ソーラーパネル14″及び光拡散部材15″の相互の配置は単なる一例であり、これに限定されるものではない。要は、ソーラーパネル14″の南北方向に沿って配列された列の間に光拡散部材14″の列が南北方向に沿って配置されていれば良い。本実施形態においては、複数のソーラーパネル14″の占める平面の面積が66%であるのに対し、複数の光拡散部材15″の占める平面の面積は33%である。光拡散部材15″が25%の平面面積を占めれば、光強度の強い太陽直射光を、この光拡散部材15″により、影の出ない拡散光(散乱光、天空光)に変換し、太陽直射光が照射されないソーラーパネル14″の真下にまで充分な拡散光を届けることができる。また、光拡散部材15″から耕地11の表面までの高さ(距離)を例えば3mと低くすれば、均一でありかつ高い照度を得ることができる。なお、耕地11に照射される拡散光の照度分布、均一度は、光拡散部材15″の表面面積、設置間隔及び設置高さによって設定できるため、栽培する作物10によって適宜決定することが望ましい。
本実施形態において重要なポイントは、ソーラーパネル14″及び光拡散部材15″の両方が、ソーラーシェアリングシステムの一端(北半球の場合に南方向、南半球では北方向)に向けて所定の勾配で下がるように傾斜して設置されていること、形状が波板形状でありその流れ方向が傾斜の方向に沿って設置されている点にある。これにより、後述するように、光が下方のみならず側方にも拡散されるため、太陽光が低い入射角で入射した場合にも、光拡散性が大幅に向上する。その結果、1年の季節を通して又は1日の時間帯を通して充分に拡散されより均一な照度分布を有する光が、ソーラーパネル14″の下の作物に、より均一な照度分布で照射されることとなる。さらに、一端に向けて下方に傾斜して設置されていると共に、流れ方向がその傾斜の方向に沿っているため、雨水がソーラーパネル下の作物に均一に注がれることとなる。
本実施形態の光拡散部材15″の構成は第1の実施形態の光拡散部材15と同様であるため、説明は省略する。
図11は本実施形態におけるソーラーパネル14″の構成を断面で表している。
図11に示すように、本実施形態におけるソーラーパネル14″は、スレート小波形状である鋼板パネル又はポリカーボネートパネル(幅:1800mm、流れ方向の長さ:600mm、山ピッチ:63mm、山高:18mm)である基板パネル14a″上に、ペロブスカイト膜14b″を積層して形成されている。ペロブスカイト太陽電池は、高効率及び高耐久化が期待でき、また、印刷法等で成膜して製造できるため、本実施形態のソーラーパネル14″に適用して非常に有用である。
本実施形態における光拡散部材15″及びソーラーパネル14″のフレームへの設置形態は、第1の実施形態の場合と同様であるため、説明は省略する。
以上詳細に説明したように、本実施形態によれば、採光部を全て光拡散部材15″で構成したことにより、直射光は60度から100度に広がりソーラーパネル14″の直下の作物にも均一な拡散光があらゆる方角から照射され、安定的な作物の収穫が期待できる。特に、光拡散部材15″が波板形状を有することにより、光が下方のみならず側方にもより広角度で拡散されるため、太陽光が低い入射角で入射した場合にも、光拡散性が大幅に向上する。その結果、1年の季節を通して又は1日の時間帯を通して充分に拡散されより均一な照度分布を有する光が、ソーラーパネル14″の下の作物に、より均一な照度分布で照射されることとなる。さらに、ソーラーパネル14″及び光拡散部材15″が一端の方向に向けて下方に傾斜して設置されていると共に、波板形状の流れ方向がその傾斜の方向に沿っており、隙間17及び貫通孔18が設けられているため、雨水がソーラーパネル14″及び光拡散部材15″の下の作物に均一に注がれることとなる。このように、採光部をすべて波板形状の光拡散光部材15″で構成することにより拡散光をソーラーパネル14″の直下にも取り入れることができると共に均一な潅水が確実に行えることから、営農者の収穫が増え、発電事業者にも設置比率を増やすことができ投資効率を高めることができる。その結果、ソーラーシェアリング事業が見直され、休耕地の付加価値が高まり採用が増えることが期待できる。休耕地が蘇れば、中小河川の堰や堤防、用水路が整備されてゲリラ豪雨の災害防止を図ることができ、人が集まり過疎化問題の解決に貢献することができる。本発明は、カーボンニュートラルの実現と日本が抱えているエネルギーと食料の自給率向上とを目指している。従来の発電事業者のように売電を目指すと、その事業は地域には根付かない。農業従事者や地域の消費を目指すことによって、初めて、利益が地域に還元されることになる。家庭での使用はもちろんのこと、自治体の施設もこの電気を消費し、自動車や農機具の電動化、高騰している温室の暖房にもこの電気を使用する。そのためには大規模な蓄電池、電気ステーションなどのインフラが必要となり、地域での消費構造を構築することが課題となる。これにより、地域の耕地の価値が高まり、人が集まり新たな事業、雇用が生じる。このように、本発明が、地方創生の一つのモデルとして発信され、例えば、送電線のない地域でも、誰一人として落ちこぼれを作らない具体的な手段として活用されることが望まれる。
なお、本実施形態では、ソーラーパネル14″及び光拡散部材15″が北半球では南方向に向けて下方に傾斜して設置されており、これが最も効率が良い。しかしながら、立地条件によっては、効率は低下するが、東方向又は西方向を向くように設置されることもあり、それぞれの中間方向に向けて設置されることもある。
図12は本発明の第4の実施形態におけるソーラーシェアリングシステムの断面構成を概略的に示している。本実施形態は土耕及び水耕共に栽培できるソーラーシェアリングシアリングシステムの場合である。
同図に示すように、本実施形態のソーラーシェアリングシステムにおいては、作物(栽培物)10が植えられた耕地11の上方及び水耕栽培トレー19用の架台20の上方に、支柱12によって支持されたフレーム13が設置されており、このフレーム13に複数の波板形状のソーラーパネル14″と太陽光を透過拡散する複数の波板形状の光拡散部材15″とが取付架台(図示無し)によって設置されている。複数の光拡散部材15″は、複数のソーラーパネル14″間に設けられている。このようにソーラーパネル14″間に光拡散部材15″を設けることにより、直射光を拡散させ、一部の作物にだけ直射光が照射されるのを防止し、ソーラーパネル14″の真下にも均一な拡散光が届くようにすることができる。即ち、ソーラーパネル14″の下の作物に対してあらゆる方角から均一に照射させて作物を安定的に成長させることが可能となる。光拡散部材15″が存在しなければ直射光が一部にだけに強く照射されるが、光拡散部材15″を設置することにより、直射光は60度から90度に拡散され、ソーラーパネル14″の直下まで、隣の光拡散部材15″からの拡散光と交差して照射される。
本実施形態(第4の実施形態)では、複数のソーラーパネル14″が南北方向に沿って配列された1列となるように配置されており、これらソーラーパネル14″の各列の間に、複数の光拡散部材15″が南北方向に沿って配列された1列が配置されている。本実施形態におけるソーラーパネル14″及び光拡散部材15″のその他の構成、及び作用効果は、第3の実施形態の場合と同じであるため、説明を省略する。
本実施形態においては、水耕栽培トレー19の下方では照度不足となることが考えられるため、水耕栽培トレー19の下側の架台20に単数又は複数のLED発光部21を設けている。これらのLED発光部21は、ソーラーパネル14″で発電した電力又はその電力により蓄電したバッテリ(図示無し)からの電力によって駆動され、外部電力に頼らない補助的な照明源として用いられる。
本実施形態において重要なポイントは、ソーラーパネル14″及び光拡散部材15″の両方が、ソーラーシェアリングシステムの一端(北半球の場合に南方向、南半球では北方向)に向けて所定の勾配で下がるように傾斜して設置されていること、形状が波板形状でありその流れ方向が傾斜の方向に沿って設置されている点にある。これにより、後述するように、光が下方のみならず側方にも拡散されるため、太陽光が低い入射角で入射した場合にも、光拡散性が大幅に向上する。その結果、1年の季節を通して又は1日の時間帯を通して充分に拡散されより均一な照度分布を有する光が、ソーラーパネル14″の下の作物に、より均一な照度分布で照射されることとなる。さらに、一端に向けて下方に傾斜して設置されていると共に、流れ方向がその傾斜の方向に沿っているため、雨水がソーラーパネル下の作物に均一に注がれることとなる。またさらに、本実施形態では、土耕及び水耕共に栽培でき、LED発光部21による補助照明が設けられている。
以上詳細に説明したように、本実施形態によれば、採光部を全て光拡散部材15″で構成したことにより、直射光は60度から100度に広がりソーラーパネル14″の直下の作物にも均一な拡散光があらゆる方角から照射され、安定的な作物の収穫が期待できる。特に、光拡散部材15″が波板形状を有することにより、光が下方のみならず側方にもより広角度で拡散されるため、太陽光が低い入射角で入射した場合にも、光拡散性が大幅に向上する。その結果、1年の季節を通して又は1日の時間帯を通して充分に拡散されより均一な照度分布を有する光が、ソーラーパネル14″の下の作物に、より均一な照度分布で照射されることとなる。さらに、ソーラーパネル14″及び光拡散部材15″が一端の方向に向けて下方に傾斜して設置されていると共に、波板形状の流れ方向がその傾斜の方向に沿っており、隙間及び貫通孔が設けられているため、雨水がソーラーパネル14″及び光拡散部材15″の下の作物に均一に注がれることとなる。このように、採光部をすべて波板形状の光拡散光部材15″で構成することにより拡散光をソーラーパネル14″の直下にも取り入れることができると共に均一な潅水が確実に行えることから、営農者の収穫が増え、発電事業者にも設置比率を増やすことができ投資効率を高めることができる。その結果、ソーラーシェアリング事業が見直され、休耕地の付加価値が高まり採用が増えることが期待できる。休耕地が蘇れば、中小河川の堰や堤防、用水路が整備されてゲリラ豪雨の災害防止を図ることができ、人が集まり過疎化問題の解決に貢献することができる。また、土耕及び水耕共に栽培でき、LED発光部21による補助照明も行うことができるように構成されている。本発明は、カーボンニュートラルの実現と日本が抱えているエネルギーと食料の自給率向上とを目指している。従来の発電事業者のように売電を目指すと、その事業は地域には根付かない。農業従事者や地域の消費を目指すことによって、初めて、利益が地域に還元されることになる。家庭での使用はもちろんのこと、自治体の施設もこの電気を消費し、自動車や農機具の電動化、高騰している温室の暖房にもこの電気を使用する。そのためには大規模な蓄電池、電気ステーションなどのインフラが必要となり、地域での消費構造を構築することが課題となる。これにより、地域の耕地の価値が高まり、人が集まり新たな事業、雇用が生じる。このように、本発明が、地方創生の一つのモデルとして発信され、例えば、送電線のない地域でも、誰一人として落ちこぼれを作らない具体的な手段として活用されることが望まれる。
本発明のごとく、波板形状の光拡散部材から光が拡散される場合について、その光拡散効果を測定した。床面から高さ12.5mの位置にある天窓(1m×15m)に網入型のガラス、このガラスとその上に波板形状のポリカーボネート中空パネルであるポリカツイン(登録商標)、このガラスとその上に波板形状のポリカーボネート中空パネルであるポリカナミ(登録商標)、このガラスとその上にポリカツイン(登録商標)及びポリカナミ(登録商標)を積層した波板形状のパネルをそれぞれ設置した場合の真下(0m)における照度、真下から波板の流れ方向と直交する方向に1m、2m、3m、4m、5m、6m、7m、8m離れた位置における照度を測定した。照度計は、株式会社ティーアンドディー製、TR-74Uiを用いた。照度測定は、4月下旬の晴れ時々薄曇りの天候下で行われたが晴れと薄曇りとの間で変化が激しく、直下の照度がかなり変動した。なお、ガラスの透過率は90%、ガラスとポリカツイン(登録商標)との透過率は55.8%、ガラスとポリカナミ(登録商標)との透過率は72%、ガラスとポリカツイン(登録商標)及びポリカナミ(登録商標)の積層パネルとの透過率は44.6%である。各位置における照度の測定結果が表1に表されている。ポリカツイン(登録商標)及びポリカナミ(登録商標)の測定時の外部の照度は、天候変化が激しく、計測不能であった。
表1から、ポリカツイン(登録商標)とポリカツイン(登録商標)及びポリカナミ(登録商標)の積層パネルとは、ポリカナミ(登録商標)に比して透過率が低く、これに対して、ポリカナミ(登録商標)は透過率がガラスに次いで高いにもかかわらず、真下から大きく離れた位置においても高い照度分布を有しており、ポリカツイン(登録商標)に比して拡散性が非常に優れていることが分かる。従って、ポリカナミ(登録商標)による波板形状の光拡散部材は、高天井や天井付のガラスの真下の光拡散部材に用いて優れた光透過性及び光拡散を提供することが分かる。
以上述べた実施形態は全て本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様及び変更態様で実施することができる。従って本発明の範囲は特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。