JP2023123051A - 熱分解炉の運転再開方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】炭化水素を熱分解処理するための熱分解管をデコーキング後に熱分解炉の運転を再開したときに、熱分解炉の連続運転期間を長くすることが可能な、熱分解炉の運転再開方法を提供する。【解決手段】炭化水素の熱分解処理後の熱分解管を所定の温度A1に加熱しながら予め決めた時間B1以上、デコーキング気流を連続して供給する工程(1)、熱分解管内で実測したデコーキングに関する指標を用いて工程(1)のコークス除去の終了を判断する工程(2)、工程(2)後の熱分解管を所定の温度A2に加熱しながら予め決めた時間B2以下、デコーキング気流2を連続して供給する工程(3)、及び、工程(3)後の熱分解管の単位体積当たりの差圧上昇速度が所定の値以下となる条件で炭化水素の熱分解処理を再開する工程(4)を含み、温度A2及び/又は時間B2を工程(4)の前記差圧上昇速度が所定の値以下となるように予め決める熱分解炉の運転再開方法。【選択図】なし

Description

本発明は、熱分解炉の運転再開方法に関し、詳しくは、炭化水素を熱分解処理するための熱分解管をデコーキングした後に、炭化水素の熱分解炉の運転を再開する方法に関する。
ナフサや液化石油ガス等の炭化水素を熱分解して、エチレン、プロピレン、ブタジエン等のオレフィン(以下、「オレフィン製品」という。)を製造するには、熱分解管を内蔵した熱分解炉を用い、水蒸気の存在下に炭化水素を加熱して熱分解した後、分解ガスから所望のオレフィン製品を分離、回収する方法が採用されている。熱分解方式には、管式加熱法、スチームクラッキング法、移動層法などがある(例えば、非特許文献1)。
スチームクラッキング法を採用するプロセスにおいては、熱分解管の腐食又は損傷を防止するため、通常、熱分解管の内壁表面に酸化クロムや酸化アルミニウム等の不動態性の保護被膜が設けられている。
ところで、炭化水素の熱分解を連続で長期間行うと熱分解管内壁へのコークスの付着が多くなっていく。熱分解管内壁にコークス層が形成(コーキング)されると、浸炭現象により熱分解炉の材料に含まれるクロム等が固くて脆いクロム炭化物となり、熱分解管に割れが生じたり、熱分解管内の圧力損失が上昇したりして、安定した連続運転が困難となる。
又、コーキングにより熱分解管内の原料(炭化水素)に徐々に熱が伝わらなくなる。そこで、熱分解管をさらに加熱すると、熱分解管が熱膨張で曲がったり歪んだりする等の劣化を受ける。
そのため、通常、コークス層の形成による熱分解管内の圧力損失が上限値を超えると、熱分解管への原料の供給を停止して、コークス層の除去(デコーキング)が行われる(例えば、特許文献1及び2)。熱分解炉を連続運転し、デコーキングするまでの期間(以下、「連続運転期間」という。)は、熱分解炉の型式や運転状態にもよるが、通常は30~50日である。
特開平1-063791号公報 特開平7-016552号公報
化学工学 第38巻、第7号(1974)、485~490頁
デコーキングと熱分解炉の運転を繰り返すことで、熱分解管の内壁表面に設けた保護被膜が腐食又は損傷を受ける。このような部位では熱分解炉の運転中にコーキングが誘発され、その結果、運転再開後に熱分解管にコーキングが再発生して、熱分解管の圧力損失の上昇が早まり、連続運転期間がさらに短くなる場合がある。このような場合、熱分解管を交換する必要があった。
また、連続運転期間の短期化によるプロセスの生産量低下とデコーキングに係る費用は製造コストを増加させる一因であり、保護被膜を良好な状態で維持することが課題であった。
本発明は、コーキングにより圧力損失の上昇が観察された熱分解管を、新しい熱分解管に交換すること無く、継続して使用することが可能な、熱分解炉の運転再開方法を提供することを課題とする。換言すれば、本発明は、デコーキング後に熱分解炉の運転を再開したときに、熱分解管のコーキングを抑制し、熱分解炉の連続運転期間を長くすることが可能な、熱分解炉の運転再開方法を提供することを課題とする。
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、炭化水素の熱分解炉の熱分解管をデコーキングした後に、炭化水素の熱分解炉の運転を再開する方法であって、前記熱分解管を構成する母材の内側表面の少なくとも一部に、金属酸化物を含む保護被膜が形成されている場合に、熱分解管を所定の温度に加熱しながら、予め決めた時間以上、デコーキング気流を連続して供給し、熱分解管の表面に付着したコークスを除去する工程(工程(1))、熱分解管内でデコーキングに関する指標を実測し、実測された指標が、予め決められた指標値条件を満たすときに、工程(1)が終了したと判断する工程(工程(2))、工程(2)の後、前記熱分解管を、所定の温度に加熱しながら、予め決めた時間、デコーキング気流を連続して供給する工程(工程(3))、及び、工程(3)の後、前記熱分解管における、単位体積当たりの差圧上昇速度が、0.15[KPa/day/m]以下となる条件で、炭化水素の熱分解処理を再開する工程(工程(4))を有し、前記工程(3)における時間及び/又は温度は、工程(4)における前記差圧上昇速度が0.15[KPa/day/m]以下となるように、予め決められた値である、ことにより、デコーキング後に熱分解炉の運転を再開したときの課題を解決し、熱分解炉の連続運転期間を長くすることが可能な熱分解炉の運転再開方法を提供する。
即ち、本発明の要旨は、以下に存する。
(1)炭化水素の熱分解炉の熱分解管をデコーキングした後に、炭化水素の熱分解炉の運転を再開する方法であって、
前記熱分解管を構成する母材の内側表面の少なくとも一部に、金属酸化物を含む保護被膜が形成されており、且つ、
下記の工程(1)~(4)を含む、熱分解炉の運転再開方法。
工程(1):炭化水素の熱分解処理後の熱分解管を所定の温度A1に加熱しながら、予め決めた時間B1以上、デコーキング気流1を連続して供給し、熱分解管の表面に付着したコークスを除去する。
工程(2):熱分解管内の1つ又は2以上の個所においてデコーキングに関する指標を実測し、実測された指標が、予め決められた指標値条件を満たすときに、工程(1)におけるコークスの除去が終了したと判断する。
工程(3):工程(2)の後、前記熱分解管を、所定の温度A2に加熱しながら、予め決めた時間B2以下の間、デコーキング気流2を連続して供給する。
工程(4):工程(3)の後、前記熱分解管における、単位体積当たりの差圧上昇速度が、0.15[KPa/day/m]以下となる条件で、炭化水素の熱分解処理を再開する。
但し、前記工程(3)において、温度A2及び/又は時間B2は、工程(4)における前記差圧上昇速度が0.15[KPa/day/m]以下となるように、予め決められた値である。
(2)工程(1)における時間B1と、工程(3)における時間B2が、B2<B1を満足する、上記(1)に記載の熱分解炉の運転再開方法。
(3)工程(1)における温度A1と、工程(3)における温度A2が、A2≦A1を満足する、上記(1)又は(2)に記載の熱分解炉の運転再開方法。
(4)前記熱分解管の上流にあり、該熱分解管と直接的又は間接的に接続されている配管又は機器を構成する材料が、鉄元素を、該材料の総質量に対して、90重量%以上含有する、上記(1)~(3)の何れかに記載の熱分解炉の運転再開方法。
(5)前記温度A1と前記温度A2が下記一般式(1)を満たす、上記(1)~(4)のいずれかに記載の熱分解炉の運転再開方法。
780℃≦A2≦A1≦920℃ 式(1)
(6)前記時間B1と前記時間B2が下記一般式(2)を満たす、上記(1)~(5)の何れかに記載の熱分解炉の運転再開方法。
0.50≦ln(B1/B2)≦1.50 式(2)
(7)前記デコーキング気流1及び2が、互いに同一又は相異なり、空気、水蒸気、又は空気及び水蒸気の混合物である、上記(1)~(6)の何れかに記載の熱分解炉の運転再開方法。
(8)前記金属酸化物が、酸化クロム、酸化アルミニウム、酸化鉄類、酸化ニッケル類、及び酸化チタン類から選択される少なくとも1種を含む、上記(1)~(7)の何れかに記載の熱分解炉の運転再開方法。
(9)前記母材が、鉄、クロム、アルミニウム、及びニッケルから選択される少なくとも1種を含む、上記(1)~(8)の何れかに記載の熱分解炉の運転再開方法。
(10)コークスが炭化水素の熱処理にて生成した炭化物を主成分とするものである、上記(1)~(9)の何れかに記載の熱分解炉の運転再開方法。
(11)前記工程(3)において、
前記温度A2が780℃以上920℃以下、
前記時間B2が6時間以上18時間以下、
である、上記(1)~(10)の何れかに記載の熱分解炉の運転再開方法。
(12)前記工程(1)において、
前記温度A1が780℃以上920℃以下、
前記時間B1が20時間以上45時間以下、
である、上記(1)~(11)の何れかに記載の熱分解炉の運転再開方法。
本発明によれば、デコーキング後に熱分解炉の運転を再開したときに、熱分解炉の連続運転期間を長くすることができる。より詳しくは、デコーキングにおける保護被膜の損傷を抑制でき、且つ、熱分解炉の運転を再開したときにコーキングの発生を抑制できるので、熱分解管内の圧力損失の上昇を遅らせることが可能となる。
その結果、高い生産量を維持でき、デコーキングや熱分解管の交換に係る費用を低減できるので、製造コストの増加を抑制できる。
実施例及び比較例、並びに運転例及び比較運転例で使用した、管型熱分解炉の全体概略模式図である。 図1の管型熱分解炉の部分概略模式図である。 実施例及び比較例について、工程(3)における加熱時間と熱分解炉の単位体積当たりの差圧上昇速度との関係をプロットしたグラフである。 実施例及び比較例について、工程(3)における加熱時間と工程(4)における連続運転日数との関係をプロットしたグラフである。
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明は、炭化水素の熱分解炉の熱分解管をデコーキングした後に、炭化水素の熱分解炉の運転を再開する方法である。
本発明の方法で熱分解される炭化水素としては特に限定されないが、ナフサや液化石油ガス等が挙げられる。
<熱分解炉>
炭化水素の熱分解炉は、炭化水素を熱分解処理するための熱分解管を有していればその構造は特に限定されず、従来公知の熱分解炉が使用できる。
熱分解管を構成する母材は、通常、鉄、クロム、アルミニウム、及びニッケル等が挙げられ、これらから選択される少なくとも1種を含むのが好ましい。
また、前記熱分解管の上流にあり、該熱分解管と直接的又は間接的に接続されている配管又は機器を構成する材料は特に限定されず、鉄鋼材等が挙げられるが、通常、炭素鋼やステンレス鋼であり、中でも、コストの点から、鉄元素を、該材料の総質量に対して、90重量%以上含有するのが一般的である。
本発明においては、熱分解管を構成する母材の内側表面の少なくとも一部に、金属酸化物を含む保護被膜が形成されている。金属酸化物を含む保護被膜が形成さていることにより、地金金属を劣化させる成分(酸素、炭素等)を物理的に遮断する効果がある。保護被膜を形成する金属酸化物としては、酸化クロム、酸化アルミニウム、酸化鉄類、酸化ニッケル類、酸化チタン類等が挙げられ、これらから選択される少なくとも1種を含むのが好ましく、中でも酸化物層の緻密性の点から、酸化アルミニウムが好ましい。
保護被膜は、母材の内側表面の少なくとも一部に形成されていればよいが、上記の物理的遮断の点から、内側表面の8割以上、より好ましくは9割以上に保護被膜が形成されているのが好ましい。
前記保護被膜の形成方法は特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。例えば、熱分解管内に、空気、水蒸気、又は空気及び水蒸気の混合物を流しながら、加熱して、母材の内側表面の少なくとも一部に上述した金属酸化物を含む保護被膜を形成する方法が挙げられる。
<運転再開方法>
本発明の熱分解の運転再開方法は、以下の工程(1)~(4)を含む。
工程(1):炭化水素の熱分解炉の熱分解管を所定の温度A1に加熱しながら、予め決めた時間B1以上、デコーキング気流を連続して供給し、熱分解管の表面に付着したコークスを除去する。
工程(2):熱分解管内の1つ又は2以上の個所においてデコーキングに関する指標を実測し、実測された指標が、予め決められた指標値条件を満たすときに、工程(1)におけるコークスの除去が終了したと判断する。
工程(3):工程(2)の後、前記熱分解管を、所定の温度A2に加熱しながら、予め決めた時間B2以下の間、デコーキング気流を連続して供給する。
工程(4):工程(3)の後、前記熱分解管における、単位体積当たりの差圧上昇速度が、0.15[KPa/day/m]以下となる条件で、炭化水素の熱分解処理を再開する。
但し、前記工程(3)において、時間B2及び/又は温度A2は、工程(4)における前記差圧上昇速度が0.15[KPa/day/m]以下となるように、予め決められた値である。
[(A)工程(1)]
工程(1)は、炭化水素の熱分解処理後の熱分解管を所定の温度A1に加熱しながら、予め決めた時間B1以上、デコーキング気流1を連続して供給し、熱分解管の表面に付着したコークスを除去する(デコーキング)。
熱分解管の表面に付着したコークスは、通常、炭化水素の熱処理にて生成した炭化物を主成分とする。より詳細には、石油精製、石油化学、石炭化学工業分野の原油、軽質留分、重質油、残査油、石炭液化油、タール油の加熱、分解等に用いられている加熱管、反応管等の熱分解管の内壁に付着するコーク前駆体を含む炭化物をいい、主成分が炭素であり、他に水素、窒素、硫黄、鉄等の元素ならびに灰分を含む場合がある。工程(1)では、デコーキング気流を連続して供給して、コークスを除去する。
デコーキング気流1としては、通常、空気、水蒸気、又は空気及び水蒸気の混合物が挙げられる。デコーキング気流1の流速は、通常、50~90m/secである。
工程(1)の温度A1及び時間B1は、デコーキングが可能な温度及び時間であればよく、デコーキング処理温度及び時間として公知の範囲で行うことができる。
時間B1の値を決める方法は、特に限定されるものではなく、デコーキング気流1を連続して供給したときに、コークスを必要な程度に除去できることが経験的に把握された時間であってもよいし、或いは又、工程(2)において実測された指標が予め決められた指標値条件を満たし、工程(1)におけるコークスの除去が終了したと判断された時間であってもよい。通常は、時間B1の値として、コークスを必要な程度に除去できることが経験的に把握された時間が用いられる。
温度A1は、通常、780℃以上920℃以下であり、好ましくは800℃以上、更に好ましくは820℃以上であり、一方、好ましくは900℃度以下、更に好ましくは880℃以下である。この範囲であることにより、効率的にコークを除去することができる。尚、温度A1は、一定の温度を維持しても、上記温度範囲の中で、変動してもよい。温度A1の測定方法は、特に限定されるものではなく、例えば、熱分解管の入口付近、内部、出口付近の温度を、公知の温度測定手段を用いて測定することができる。温度制御の観点から熱分解管の出口付近、後述の「SRT-V型」と呼ばれる管型熱分解炉では配管Cの出口又は出口付近におけるデコーキング気流の温度を測定することが好ましい。
一方、時間B1は、通常15時間以上50時間以下であり、好ましくは20時間以上45時間以下であり、より好ましくは25時間以上40時間以下である。
[(B)工程(2)]
工程(2)は、工程(1)におけるコークスの除去が終了したと判断する工程であり、熱分解管内の1つ又は2以上の個所においてデコーキングに関する指標を実測し、実測された指標が、予め決められた指標値条件を満たすときに、工程(1)におけるコークスの除去が終了したと判断する工程である。
ここで、デコーキングに関する指標によりコークス除去終了を判断する方法は、特に限定されるものではないが、熱分解炉及び熱分解管の仕様やサイズ、並びに、前記指標の実測条件等に応じて、この分野の当業者が適宜決めることができる。
デコーキングに関する指標によりコークス除去終了を判断する方法として、具体的には、以下の方法(a)及び(b)が挙げられる。
(a)熱分解管の出口付近のCO濃度を測定して、この値が予め定めた指標である一定値以下、例えば、10000ppm以下、好ましくは5000ppm以下、より好ましくは2000ppm以下になれば、コークス除去が終了したと判断する。CO濃度を測定する「熱分解管の出口付近」の位置は、特に限定されるものではなく、例えば、上記の「SRT-V型」と呼ばれる管型熱分解炉の場合、配管Cの出口又は出口付近、若しくは、配管Dの出口又は出口付近が挙げられる。
(b)熱分解管の入口と出口の間の差圧を測定し、この値が予め定めた指標である一定値以下、例えば、運転開始時の差圧と比較して差異が20%以下、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下になればコークス除去が終了したと判断する。前記差圧を測定する「熱分解管の出口付近」の位置は、特に限定されるものではなく、例えば、上記の「SRT-V型」と呼ばれる管型熱分解炉の場合、配管Cの出口又は出口付近が挙げられる。
[(C)工程(3)]
工程(3)は、工程(2)の後、前記熱分解管を、所定の温度A2に加熱しながら、予め決めた時間B2以下の間、デコーキング気流2を連続して供給する工程である。
即ち、工程(2)においてコークスの除去が終了したことを判断した後も、デコーキング気流の連続供給を、所定の温度で所定の時間継続する。工程(3)を行うことにより、熱分解管の内側表面に保護被膜を形成することが可能となる。
デコーキング気流2は、デコーキング気流1と同様のものが挙げられるが、互いに同一又でも異なっていてもよい。
工程(3)の温度A2及び時間B2は、通常、温度A2≦A1であり、時間B2≦B1、好ましくは、B2<B1である。この範囲を満足することは、後述の工程(4)における前記差圧上昇速度を0.15[KPa/day/m]以下とするのに有効である。
温度A2は、通常780℃以上920℃以下であり、好ましくは、800℃以上、更に好ましくは820℃以上であり、一方、900℃度以下、更に好ましくは880℃以下である。この範囲であることにより、効率的にコークスを除去する事が出来る。尚、温度A2は、一定の温度を維持しても、上記温度範囲の中で、変動してもよい。
また、温度A2と温度A1の温度差は、特に限定されないが、熱分解管の熱劣化を抑制する点から、50℃以下が好ましく、30℃以下がより好ましく、10℃以下がさらに好ましく、同じ温度(0℃)であるのが特に好ましい。ここで、温度A2と温度A1の温度差は温度A2及び温度A1が一定の場合はその温度差であり、それぞれ幅を持った温度の場合、その上限または下限の差が大きい方の値で決定される。
時間B2は、通常、6時間以上18時間以下であり、好ましくは8時間以上、16時間以下、更に好ましくは10時間以上14時間以下である。この範囲であることにより、効果的な保護被膜の再生が可能となる。
上記のことから、前記温度A1と前記温度A2が下記一般式(1)を満たすことが好ましい。
780℃≦A2≦A1≦920℃ 式(1)
また、前記時間B1と前記時間B2が下記一般式(2)を満たすことが好ましい。
0.50≦ln(B1/B2)≦1.50 式(2)
上記式(2)の下限は、好ましくは0.55、より好ましくは0.57、更に好ましくは、0.59であり、一方、上限は好ましくは1.40、より好ましくは1.38、更に好ましくは1.34である。
上記式(2)を満足することにより、運転における差圧上昇の抑制の傾向があり、好ましい。
但し、温度A2及び/又は時間B2は、後述の工程(4)における前記差圧上昇速度が0.15[KPa/day/m]以下となるように、予め決められた値である。前記予め決められた値とは、実用上支障のない範囲にある値であり、例えば、使用する製造装置等を用いて経験的に決められた値であっても良いし、シミュレーション等を用いて理論的に決められた値であってもよい。なお、本発明の実施例においては、使用する製造装置等を用いて、適度な試行回数の結果にもとづいて経験的に決められた値を用いている。
前記差圧上昇速度は、好ましくは0.13[KPa/day/m]以下、更に好ましくは、0.10[KPa/day/m]以下、特に好ましくは、0.09[KPa/day/m]以下である。下限は小さければ小さいほどよいが、通常、0.01[KPa/day/m]以上、好ましくは0.03[KPa/day/m]以上である。上記値に設定することで、再開後の炭化水素の熱分解炉の運転日数を長くすることが可能となる傾向がある。
[(D)工程(4)]
工程(4)は、工程(3)の後、前記熱分解管における、単位体積当たりの差圧上昇速度が、0.15[KPa/day/m]以下となる条件で、炭化水素の熱分解処理を再開する工程である。
ここで、上記差圧上昇速度とは、熱分解管の入口と出口の圧力差の変化を測定して、単位日数毎に示した数値である。また、単位体積当たりの差圧上昇速度は、上記差圧上昇速度を熱分解管の体積で除することにより算出される。
上記差圧上昇速度は、特に限定されるものではなく、熱分解炉及び熱分解管の仕様やサイズ、並びに、前記圧力の測定条件等に応じて、この分野の当業者が適宜決めることができる。例えば、上記の「SRT-V型」と呼ばれる管型熱分解炉の場合、通常は、熱分解管の入口としては熱分解管Aの入口又は入口付近が挙げられ、一方、熱分解管の出口としては配管Cの出口又は出口付近が挙げられる。
また、上記差圧上昇速度を0.15[KPa/day/m]以下とする方法は、特に限定されないが、通常、前記工程(3)において、温度A2及び/又は時間B2として、予め決められた値を採用することにより、上記差圧上昇速度を0.15[KPa/day/m]以下とすることができる。上記の予め決められた値は、上記工程(3)において説明した通り、経験的に決められた値である。
炭化水素の熱分解処理の温度は、通常、750℃以上、好ましくは780℃以上であり、一方、通常900℃以下、好ましくは880℃以下である。この範囲であることにより、目的生成物の収率を高める事が出来る。炭化水素の熱分解管への供給速度は、通常45m/sec以上、好ましくは80m/secである。上限は特に限定されないが、通常、200m/sec以下、好ましくは、150m/sec以下である。
以下に運転例及び比較運転例、並びに、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの態様に限定されるものではない。
[熱分解炉]
図1及び図2に示す「SRT-V型」と呼ばれる管型熱分解炉を用いた。
図1及び図2の管型熱分解炉において、炭化水素の原料ガス1は、水蒸気及び空気と混合され、熱分解炉に入る前の、マニホールド(1)3で、1本の供給配管2から、96本(24本×4基)の熱分解管A 4(管径45mm、加熱温度815℃)に分かれ、熱分解炉の底まで下る。すなわち、熱分解炉に供給された原料(炭化水素)は、96本の熱分解管内で加熱され、熱分解される。熱分解炉の底に設けられたマニホールド(2)5でその12本ずつが合流して1組となり、8本の配管B 6(管径130mm、加熱温度815℃)となる。8本の配管は、またその2本が合流し1組となり、4本の配管C 7(管径190mm、加熱温度815℃)となる。そして、最後に4本の配管が合流して1組となり、1本の配管D 8となり、熱分解ガスは、熱分解炉出口にある分解ガス急冷熱交換器(図示せず)に供給される。
明細書において、熱分解管の体積(単位:m)とは、熱分解炉内で炭化水素の熱分解反応が起こる領域の体積を用いることができる。例えば、上記の「SRT-V型」と呼ばれる管型熱分解炉の場合、熱分解管の体積は、前記熱分解管A、前記マニホールド(2)、前記配管B、及び前記配管Cの体積(単位:m)を合計した値を用いることができ、3.3mであった。
[比較運転例1~4、運転例1~2]
単位体積当たりの差圧上昇速度を確認するための、比較運転例と運転例を下記の条件で実施した。
1本の熱分解管Aにつき、原料の炭化水素として、エタンを主成分とする原料ガス(以下、「エタン」という。)12トン/時と水蒸気5トン/時との混合物を貫流させ、かつ、熱分解管温度を815℃として、エタンの熱分解処理を、30~60日間連続して実施した。
次いで、管型熱分解炉を貫流する炭化水素流を中断し、エタンの熱分解運転を停止した後、工程(1)として、熱分解管の加熱温度(温度A1)及び加熱時間(時間B1)を表1記載のとおりの条件とし、1本の熱分解管Aにつき水蒸気1.75トン/時及び空気1450Nm/時を供給して、デコーキングを実施した。
次いで、熱分解管の加熱温度(温度A2)及び加熱時間(時間B2)を表1記載のとおりの条件とし、熱分解管1本につき水蒸気1.75トン/時及び空気1450Nm/時を供給して、工程(3)を実施した。
次いで、工程(4)として炭化水素の熱分解処理の運転を再開し、運転再開から、あらかじめ決めた運転日数の期間、連続して運転したときに上昇した圧力値を、当該運転日数で除した差圧上昇速度[単位:KPa/day]を求め、これを熱分解管の体積(3.3m)で除した単位体積当たりの差圧上昇速度[単位:KPa/day/m]を算出し、これを表1に掲載した。
この結果から、本発明者らは、単位体積当たりの差圧上昇速度は、工程(3)における熱分解管の加熱温度(温度A2)及び加熱時間(時間B2)に依存すると推察し、単位体積当たりの差圧上昇速度の上限値を0.15[KPa/day/m]と設定した。
[実施例1~6、比較例1~5]
工程(1)における熱分解管の加熱温度(温度A1)及び加熱時間(時間B1)、並びに、工程(3)における熱分解管の加熱温度(温度A2)及び加熱時間(時間B2)を表2記載のとおりとした以外は、運転例1と同様の条件で、熱分解炉の運転を行った。
工程(3)の後、工程(4)において炭化水素の熱分解処理の運転を再開してから、熱分解管内の圧力損失が80[KPa]に到達するまでの日数を測定し、これを連続運転日数とした。結果を表2に示す。尚、本例では、熱分解管の入り口と出口の間の差圧を測定して、この値が運転開始時の差圧と比較して差異が20%以下であることを確認して、コークスの除去が終了したと判断した。
Figure 2023123051000001
Figure 2023123051000002
実施例1~6においては、工程(3)の運転条件として、工程(4)の単位体積当たりの差圧上昇速度が0.15[KPa/day/m]以下となるような条件を採用しているため、連続運転日数が長かった。
比較例1~5においては、工程(3)の運転条件として、工程(4)の単位体積当たりの差圧上昇速度が0.15[KPa/day/m]を超えるような条件を採用しているため、連続運転日数が短かった。
1 水蒸気及び空気と混合された炭化水素の原料ガス
2 供給配管
3 マニホールド(1)
4 熱分解管A
5 マニホールド(2)
6 配管B
7 配管C
8 配管D

Claims (12)

  1. 炭化水素の熱分解炉の熱分解管をデコーキングした後に、炭化水素の熱分解炉の運転を再開する方法であって、
    前記熱分解管を構成する母材の内側表面の少なくとも一部に、金属酸化物を含む保護被膜が形成されており、且つ、
    下記の工程(1)~(4)を含む、熱分解炉の運転再開方法。
    工程(1):炭化水素の熱分解処理後の熱分解管を所定の温度A1に加熱しながら、予め決めた時間B1以上、デコーキング気流1を連続して供給し、熱分解管の表面に付着したコークスを除去する。
    工程(2):熱分解管内の1つ又は2以上の個所においてデコーキングに関する指標を実測し、実測された指標が、予め決められた指標値条件を満たすときに、工程(1)におけるコークスの除去が終了したと判断する。
    工程(3):工程(2)の後、前記熱分解管を、所定の温度A2に加熱しながら、予め決めた時間B2以下の間、デコーキング気流2を連続して供給する。
    工程(4):工程(3)の後、前記熱分解管における、単位体積当たりの差圧上昇速度が、0.15[KPa/day/m]以下となる条件で、炭化水素の熱分解処理を再開する。
    但し、前記工程(3)において、温度A2及び/又は時間B2は、工程(4)における前記差圧上昇速度が0.15[KPa/day/m]以下となるように、予め決められた値である。
  2. 工程(1)における時間B1と、工程(3)における時間B2が、B2<B1を満足する、請求項1に記載の熱分解炉の運転再開方法。
  3. 工程(1)における温度A1と、工程(3)における温度A2が、A2≦A1を満足する、請求項1又は2に記載の熱分解炉の運転再開方法。
  4. 前記熱分解管の上流にあり、該熱分解管と直接的又は間接的に接続されている配管又は機器を構成する材料が、鉄元素を、該材料の総質量に対して、90重量%以上含有する、請求項1~3の何れか1項に記載の熱分解炉の運転再開方法。
  5. 前記温度A1と前記温度A2が下記一般式(1)を満たす、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱分解炉の運転再開方法。
    780℃≦A2≦A1≦920℃ 式(1)
  6. 前記時間B1と前記時間B2が下記一般式(2)を満たす、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱分解炉の運転再開方法。
    0.50≦ln(B1/B2)≦1.50 式(2)
  7. 前記デコーキング気流1及び2が、互いに同一又は相異なり、空気、水蒸気、又は空気及び水蒸気の混合物である、請求項1~6のいずれか一項に記載の熱分解炉の運転再開方法。
  8. 前記金属酸化物が、酸化クロム、酸化アルミニウム、酸化鉄類、酸化ニッケル類、及び酸化チタン類から選択される少なくとも1種を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の熱分解炉の運転再開方法。
  9. 前記母材が、鉄、クロム、アルミニウム、及びニッケルから選択される少なくとも1種を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の熱分解炉の運転再開方法。
  10. コークスが炭化水素の熱処理にて生成した炭化物を主成分とするものである、請求項1~9のいずれか一項に記載の熱分解炉の運転再開方法。
  11. 前記工程(3)において、
    前記温度A2が780℃以上920℃以下、
    前記時間B2が6時間以上18時間以下、
    である、請求項1~10のいずれか一項に記載の熱分解炉の運転再開方法。
  12. 前記工程(1)において、
    前記温度A1が780℃以上920℃以下、
    前記時間B1が20時間以上45時間以下、
    である、請求項1~11のいずれか一項に記載の熱分解炉の運転再開方法。
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