以下、本発明の実施形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に記載された内容に限定されるものではなく、本発明の構成を充足する範囲内で、適宜設計変更を行うことが可能である。なお、以下の説明において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して適宜用い、その繰り返しの説明は適宜省略する。本発明の各態様は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜組み合わされてもよい。
(用語の定義)
本明細書中、方位とは、対象となる方向を光学素子の出射側の基板面上に射影したときの方向を意味し、基準となる方位との間のなす角度(方位角)で表現される。ここで、基準となる方位(0°)は、光学素子を出射側から見たときの、液晶パネルの画面の水平右方向に設定される。方位角は、反時計回りを正の角度、時計回りを負の角度とする。反時計回り及び時計回りは、いずれも、光学素子を出射側から見たときの回転方向を表す。また、方位角は、光学素子を出射側から平面視した状態で測定された値を表す。
本明細書中、2つの直線(軸、方向及び方位を含む)が互いに直交するとは、光学素子を出射側から平面視した状態で直交することを意味する。また、2つの直線の一方の直線が他方の直線に対して斜めに設けられるとは、光学素子を出射側から平面視した状態で一方の直線が他方の直線に対して斜めに設けられることを意味する。また、2つの直線のなす角度とは、光学素子を出射側から平面視した状態における一方の直線と他方の直線とのなす角度を意味する。
本明細書中、2つの直線(軸、方向及び方位を含む)が直交するとは、両者のなす角度が90°±5°であることを意味し、好ましくは90°±3°、より好ましくは90°±1°、特に好ましくは90°(完全に直交)であることを意味する。2つの直線が平行であるとは、両者のなす角度が0°±5°であることを意味し、好ましくは0°±3°、より好ましくは0°±1°、特に好ましくは0°(完全に平行)であることを意味する。
本明細書中、面内方向のリタデーション(面内位相差)Rpは、Rp=(ns-nf)dで定義される。また、厚さ方向のリタデーションRthは、Rth=(nz-(nx+ny)/2)dで定義される。nsはnx、nyのうち大きい方を、nfは小さい方を指す。また、nx及びnyは、複屈折層(位相差フィルムと液晶層を含む)の面内方向の主屈折率を示し、nzは、面外方向、すなわち、複屈折層の面に対して垂直方向の主屈折率を示し、dは、複屈折層の厚みを示す。
なお、本明細書中で主屈折率、位相差等の光学パラメータの測定波長は、特に断りのない限り550nmとする。
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に記載された内容に限定されるものではなく、本発明の構成を充足する範囲内で、適宜設計変更を行うことが可能である。
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る光学素子の断面模式図である。図2は、実施形態1に係る光学素子が備える第一の液晶セル及び第二の液晶セルの断面模式図である。図3は、実施形態1に係る光学素子の、第一状態及び第二状態における液晶分子の配向について説明する模式図である。
図1~図3に示すように、本実施形態の光学素子10は、第一の基板100と、第一の液晶分子510を含有する第一の液晶層500と、第二の基板200と、第三の基板300と、第二の液晶分子610を含有する第二の液晶層600と、第四の基板400と、を順に備え、第一の基板100と第一の液晶層500と第二の基板200とは、第一の液晶セル11Aを構成し、第三の基板300と第二の液晶層600と第四の基板400とは、第二の液晶セル11Bを構成する。第一の液晶セル11Aは、第一の基板100及び第二の基板200の少なくとも一方に、第一の液晶層500への電圧印加用の上記第一の電極としての第一のベタ状電極120及び第二のベタ状電極220を有する。第二の液晶セル11Bは、第三の基板300及び第四の基板400の少なくとも一方に、第二の液晶層600への電圧印加用の上記第二の電極としての第三のベタ状電極320及び第四のベタ状電極420を有する。上記第一の電極及び上記第二の電極は、第二の液晶分子610がツイスト配向し、かつ、第一の液晶分子510が垂直配向する第一状態と、第一の液晶分子510がツイスト配向し、かつ、第二の液晶分子610が垂直配向する第二状態と、を切り替え可能に配置されている。上記第一状態における第三の基板300側の第二の液晶分子611の配向方向611Aの方位角及び上記第一状態における第四の基板400側の第二の液晶分子612の配向方向612Aの方位角は、それぞれ、上記第二状態における第一の基板100側の第一の液晶分子511の配向方向511Aの方位角及び上記第二状態における第二の基板200側の第一の液晶分子512の配向方向512Aの方位角を同一方向に1/4回転させた角度である。このような態様とすることにより、第一状態及び第二状態を、系全体を1/4回転させたこと以外は同様に駆動させることが可能となり、広帯域かつ広視野角で、第一状態及び第二状態の一方の状態で偏光変調を実現し、他方の状態で偏光非変調を実現することが可能となる。すなわち、偏光変調及び偏光非変調を広帯域かつ広視野角で切り替えることができる光学素子、より具体的には、可変1/2波長板(sHWP:Switchable Half Wave Plate)素子を実現することができる。
ここで、sHWPを液晶層1層で実現しようとすると、図4に示すような、90°捩れのTN液晶層500R1を備える液晶セル11R1を用いた、比較形態1の光学素子10R1の構成が考えられる。より具体的には、比較形態1の光学素子10R1は、遅相軸の方位角が75°である1/4波長フィルム15Rと、遅相軸の方位角が15°である1/2波長フィルム16Rと、液晶セル11R1と、遅相軸の方位角が-75°である1/2波長フィルム17Rと、遅相軸の方位角が-15°である1/4波長フィルム18Rと、を順に備える。図4は、比較形態1に係る光学素子の断面模式図である。
また、sHWPを液晶層2層で実現しようとすると、図5に示すような、70°捩れのTN液晶層500R2と、-70°捩れのTN液晶層500R3とが積層された比較形態2の光学素子10R2の構成が考えられる。図5は、比較形態2に係る光学素子の断面模式図である。
図6は、実施形態1、比較形態1及び比較形態2に係る光学素子の、変調時のストークスパラメータS3と出射光の波長との関係を示すグラフである。図6は、右円偏光(ストークスパラメータS3=+1)を入射したときの、出射光の偏光状態の波長依存を表す。S3=-1に近いほど左円偏光に変換されたことを示す。広波長にわたって-1に近い方が、変調時が広帯域といえる。
比較形態1の光学素子10R1は、設計は容易であるが、90°捩れのTN液晶層500R1の波長分散等の影響により、図6に示すように広帯域化が困難である。また、比較形態2の光学素子10R2は、70度程度ねじった液晶層を積層することで広帯域化が可能であるが、広視野角化が困難である。一方、本実施形態の光学素子10は、偏光変調及び偏光非変調を広帯域かつ広視野角で切り替えることができる。
上記特許文献1では、偏光変調特性が一切開示されていない。特許文献1には単層のTN液晶層の構成が開示されているが、当該構成では偏光変調時(特許文献1における非アクティブ時、電圧OFF時)において、特定の波長でしか適切に偏光変換されず、広帯域での偏光変換を実現することはできない。
より具体的には、特許文献1で開示されている単層の構成では、偏光変調時において、液晶分子は90°ツイスト配向し、偏光非変調時において、液晶分子は縦電界が印加されて垂直配向する。偏光変調時は液晶分子が90°ツイスト配向するため、波長依存があり、偏光変調を広帯域で実現することができない。仮に、液晶分子のツイスト角度や液晶層のセル厚等を調整して広帯域で偏光変調を実現できたとしても、偏光非変調時には基板付近の液晶分子による残留リタデーションの影響を受けて広帯域で偏光非変調を実現することはできない。すなわち、広帯域での偏光変調と偏光非変調とを両立することはできない。
上記特許文献5では、変調特性が一切開示されていない。また、位相差フィルム等の具体的な物性についても記載されていない。更に、特許文献5において積層された液晶セルのうち一方の液晶セルはバックアップとしての用途であるため、他方の液晶セルと同様のセル設計であると考えられる。
以下、本実施形態について詳細に説明する。
第一の基板側の第一の液晶分子の配向方向とは、第一の基板近傍において水平配向している第一の液晶分子の配向方向である。より具体的には、第一の基板の第一の液晶層側に設けられた配向膜が水平配向膜である場合、第一の基板側の第一の液晶分子の配向方向とは、第一の液晶層の第一の基板側の界面に位置する第一の液晶分子の配向方向をいう。第一の基板の第一の液晶層側に設けられた配向膜が垂直配向膜である場合、第一の液晶層の第一の基板側の界面に位置する液晶分子は垂直配向しているため、第一の基板側の第一の液晶分子の配向方向とは、第一の基板側の界面より第一の液晶層の内側に位置する、水平配向状態にある第一の液晶分子の配向方向をいう。
同様に、第二の基板側の第一の液晶分子の配向方向とは、第二の基板近傍において水平配向している第一の液晶分子の配向方向である。より具体的には、第二の基板の第一の液晶層側に設けられた配向膜が水平配向膜である場合、第二の基板側の第一の液晶分子の配向方向とは、第一の液晶層の第二の基板側の界面に位置する第一の液晶分子の配向方向をいう。第二の基板の第一の液晶層側に設けられた配向膜が垂直配向膜である場合、第一の液晶層の第二の基板側の界面に位置する液晶分子は垂直配向しているため、第二の基板側の第一の液晶分子の配向方向とは、第二の基板側の界面より第一の液晶層の内側に位置する、水平配向状態にある第一の液晶分子の配向方向をいう。
同様に、第三の基板側の第二の液晶分子の配向方向とは、第三の基板近傍において水平配向している第二の液晶分子の配向方向である。より具体的には、第三の基板の第二の液晶層側に設けられた配向膜が水平配向膜である場合、第三の基板側の第二の液晶分子の配向方向とは、第二の液晶層の第三の基板側の界面に位置する第二の液晶分子の配向方向をいう。第三の基板の第二の液晶層側に設けられた配向膜が垂直配向膜である場合、第二の液晶層の第三の基板側の界面に位置する液晶分子は垂直配向しているため、第三の基板側の第二の液晶分子の配向方向とは、第三の基板側の界面より第二の液晶層の内側に位置する、水平配向状態にある第二の液晶分子の配向方向をいう。
同様に、第四の基板側の第二の液晶分子の配向方向とは、第四の基板近傍において水平配向している第二の液晶分子の配向方向である。より具体的には、第四の基板の第二の液晶層側に設けられた配向膜が水平配向膜である場合、第四の基板側の第二の液晶分子の配向方向とは、第二の液晶層の第四の基板側の界面に位置する第二の液晶分子の配向方向をいう。第四の基板の第二の液晶層側に設けられた配向膜が垂直配向膜である場合、第二の液晶層の第四の基板側の界面に位置する液晶分子は垂直配向しているため、第四の基板側の第二の液晶分子の配向方向とは、第四の基板側の界面より第二の液晶層の内側に位置する、水平配向状態にある第二の液晶分子の配向方向をいう。
第一状態における第三の基板側の第二の液晶分子の配向方向の方位角及び第一状態における第四の基板側の前記第二の液晶分子の配向方向の方位角が、それぞれ、第二状態における第一の基板側の第一の液晶分子の配向方向の方位角及び第二状態における第二の基板側の第一の液晶分子の配向方向の方位角を同一方向に1/4回転させた角度であるとは、第一状態における第三の基板側の第二の液晶分子の配向方向の方位角及び第一状態における第四の基板側の前記第二の液晶分子の配向方向の方位角が、それぞれ、第二状態における第一の基板側の第一の液晶分子の配向方向の方位角及び第二状態における第二の基板側の第一の液晶分子の配向方向の方位角を正の方向に1/4回転させた角度である、又は、第一状態における第三の基板側の第二の液晶分子の配向方向の方位角及び第一状態における第四の基板側の第二の液晶分子の配向方向の方位角が、それぞれ、第二状態における第一の基板側の第一の液晶分子の配向方向の方位角及び第二状態における第二の基板側の第一の液晶分子の配向方向の方位角を負の方向に1/4回転させた角度であることをいう。
ここで、1/4回転とは、80°以上、100°以下を意味し、85°以上、95°以下であることが好ましく、87°以上、93°以下であることが更に好ましい。
第一の液晶セル11Aは、入射側から出射側に向かって順に、第一の基板100と、第一の液晶分子510を含有する第一の液晶層500と、第二の基板200と、を備える。第一の基板100は、第一の支持基板110と第一のベタ状電極120とを備え、第二の基板200は、第二の支持基板210と第二のベタ状電極220とを備える。
第二の液晶セル11Bは、入射側から出射側に向かって順に、第三の基板300と、第二の液晶分子610を含有する第二の液晶層600と、第四の基板400と、を備える。第三の基板300は、第三の支持基板310と第三のベタ状電極320とを備え、第四の基板400は、第四の支持基板410と第四のベタ状電極420とを備える。
第一の支持基板110、第二の支持基板210、第三の支持基板310及び第四の支持基板410としては、例えば、ガラス基板、プラスチック基板等の絶縁基板が挙げられる。ガラス基板の材料としては、例えば、フロートガラス、ソーダガラス等のガラスが挙げられる。ブラスチック基板の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリイミド、脂環式ポリオレフィン等のプラスチックが挙げられる。
第一のベタ状電極120、第二のベタ状電極220、第三のベタ状電極320及び第四のベタ状電極420は、例えば、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)等の透明導電材料、又は、それらの合金を、スパッタリング法等により単層又は複数層で成膜して形成した後、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングを行うことで形成することができる。本明細書において、ベタ状電極とは、少なくとも平面視において絵素の光学的開口部と重畳する領域に、スリットや開口が設けられていない電極をいう。
第一のベタ状電極120及び第二のベタ状電極220の一方は画素電極であり、他方は共通電極である。第三のベタ状電極320及び第四のベタ状電極420の一方は画素電極であり、他方は共通電極である。
第一の液晶層500は、液晶材料を含んでおり、第一の液晶層500に対して電圧を印加し、印加した電圧に応じて液晶材料中の第一の液晶分子510の配向状態を変化させることにより、第一の液晶層500を通過する光の偏光状態を変化させることができる。
第二の液晶層600は、液晶材料を含んでおり、第二の液晶層600に対して電圧を印加し、印加した電圧に応じて液晶材料中の第二の液晶分子610の配向状態を変化させることにより、第二の液晶層600を通過する光の偏光状態を変化させることができる。
第一の液晶分子510及び第二の液晶分子610は、下記式(L)で定義される誘電率異方性(Δε)が正の値を有するポジ型の液晶分子であってもよく、負の値を有するネガ型の液晶分子であってもよい。また、第一の液晶分子510及び第二の液晶分子610の一方がポジ型の液晶分子であり、他方がネガ型の液晶分子であってもよい。本実施形態では第一の液晶分子510及び第二の液晶分子610がポジ型の液晶分子である場合を例に挙げて説明する。なお、液晶分子の長軸方向が遅相軸の方向となる。
Δε=(液晶分子の長軸方向の誘電率)-(液晶分子の短軸方向の誘電率) (L)
第一の液晶層500は、第一の基板100と第二の基板200との間でツイスト配向する第一の液晶分子510を含有する。第二状態において、第一の液晶分子510は、第一の基板100側から第二の基板200側にかけて捩れ配向している。
第二の液晶層600は、第三の基板300と第四の基板400との間でツイスト配向する第二の液晶分子610を含有する。第一状態において、第二の液晶分子610は、第三の基板300側から第四の基板400側にかけて捩れ配向している。
第一の液晶分子510及び第二の液晶分子610の捩れ配向は、例えば、液晶材料にカイラル剤を添加することにより実現することができる。カイラル剤としては特に限定されず、従来公知のものを使用することができる。カイラル剤としては、例えば、S-811(メルク社製)等を用いることができる。
本実施形態の第一の液晶分子510及び第二の液晶分子610は、捩れ配向のポジ型の液晶分子である。したがって、第一の液晶層500が電圧印加状態であり、第二の液晶層600が電圧無印加状態である場合に、第一の液晶分子510が垂直配向し、かつ、第二の液晶分子610がツイスト配向する第一状態を実現することができる。また、第一の液晶層500が電圧無印加状態であり、第二の液晶層600が電圧印加状態である場合に、第一の液晶分子510がツイスト配向し、かつ、第二の液晶分子610が垂直配向する第二状態を実現することができる。本実施形態では、第一状態において偏光非変調を実現し、第二状態において偏光変調を実現することができる。
第一の液晶層500の、波長550nmにおける第二状態でのリタデーションは、200nm以上、260nm以下であり、第二の液晶層600の、波長550nmにおける第一状態でのリタデーションは、210nm以上、260nm以下であることが好ましい。このような態様とすることにより、より広帯域で偏光変調及び偏光非変調を切り替えることができる。本明細書では、液晶層に閾値以上の電圧が印加された電圧印加状態を、単に「電圧印加状態」又は「電圧印加時」とも言い、液晶層に閾値未満の電圧が印加された(電圧無印加を含む)電圧無印加状態を、単に「電圧無印加状態」又は「電圧無印加時」ともいう。
第二状態における第一の液晶分子510は、ツイスト角61°以上、75°以下でツイスト配向し、第一状態における第二の液晶分子610は、ツイスト角64°以上、74°以下でツイスト配向することが好ましい。このような態様とすることにより、より広帯域で偏光変調及び偏光非変調を切り替えることができる。なお、液晶分子のツイスト角は、Axoscan(オプトサイエンス社製)を用いて、液晶層を出射した後のミューラーマトリックスを測定することにより求めることができる。
第二状態における第一の液晶分子510のツイスト角は、第二状態における第一の基板100側の第一の液晶分子511の配向方向511Aの方位角と、第二の基板200側の第一の液晶分子512の配向方向512Aの方位角とのなす角度をいう。第一状態における第二の液晶分子610のツイスト角は、第一状態における第三の基板300側の第二の液晶分子611の配向方向611Aの方位角と、第四の基板400側の第二の液晶分子612の配向方向612Aの方位角とのなす角度をいう。
第二状態における第一の基板100側の第一の液晶分子511の配向方向511Aの方位角は、-9°以上、7°以下であり、第一状態における第三の基板300側の第二の液晶分子611の配向方向611Aの方位角は、85°以上、96°以下であることが好ましい。このような態様とすることにより、より広帯域で偏光変調及び偏光非変調を切り替えることができる。例えば、第二状態における第一の基板100側の第一の液晶分子511の配向方向511Aの方位角は0°に、第一状態における第三の基板300側の第二の液晶分子611の配向方向611Aの方位角は90°に設定することができる。
第一の液晶セル11Aは、第一の基板100の第一の液晶層500側に第一の配向膜41を備え、第二の基板200の第一の液晶層500側に第二の配向膜42を備えることが好ましい。第二の液晶セル11Bは、第三の基板300の第二の液晶層600側に第三の配向膜43を備え、第四の基板400の第二の液晶層600側に第四の配向膜44を備えることが好ましい。
第一の配向膜41及び第二の配向膜42は、第一の液晶層500における第一の液晶分子510の配向を制御する機能を有し、第一の液晶層500が電圧無印加状態である場合に、主に第一の配向膜41及び第二の配向膜42の働きによって第一の液晶層500中の第一の液晶分子510の配向が制御される。
第三の配向膜43及び第四の配向膜44は、第二の液晶層600における第二の液晶分子610の配向を制御する機能を有し、第二の液晶層600が電圧無印加状態である場合に、主に第三の配向膜43及び第四の配向膜44の働きによって第二の液晶層600中の第二の液晶分子610の配向が制御される。第一の配向膜41、第二の配向膜42、第三の配向膜43及び第四の配向膜44を、以下では、単に配向膜ともいう。
配向膜の材料としては、ポリイミドを主鎖に有するポリマー、ポリアミック酸を主鎖に有するポリマー、ポリシロキサンを主鎖に有するポリマー等の液晶表示パネルの分野で一般的な材料を用いることができる。配向膜は配向膜材料を塗布することによって形成することができ、上記塗布方法は特に限定されず、例えば、フレキソ印刷、インクジェット塗布等を用いることができる。
配向膜は、液晶分子を膜面に対して略水平に配向させる水平配向膜であってもよいし、液晶分子を膜面に対して略垂直に配向させる垂直配向膜であってもよい。本実施形態では、第一の配向膜41、第二の配向膜42、第三の配向膜43及び第四の配向膜44が、水平配向膜である場合について説明する。
水平配向膜は、液晶層への電圧無印加時に、画素領域において、液晶層中の液晶分子を水平配向膜の表面に対して水平方向に配向させる機能を有する。ここで、液晶分子が水平配向膜の表面に対して水平方向に配向するとは、液晶分子のプレチルト角が、水平配向膜の表面に対して0°~5°であることを意味し、好ましくは0°~2°、より好ましくは0°~1°であることを意味する。液晶分子のプレチルト角は、液晶層への電圧無印加時に、液晶分子の長軸が各基板の主面に対して傾斜する角度を意味する。
垂直配向膜は、液晶層への電圧無印加時に、画素領域において、液晶層中の液晶分子を垂直配向膜の表面に対して垂直方向に配向させる機能を有する。ここで、液晶分子が垂直配向膜の表面に対して垂直方向に配向するとは、液晶分子のプレチルト角が、垂直配向膜の表面に対して86°~90°であることを意味し、好ましくは87°~89°、より好ましくは87.5°~89°であることを意味する。
また、配向膜は、光官能基を有し、かつ配向処理として光配向処理が施された光配向膜であってもよいし、配向処理としてラビング処理が施されたラビング配向膜であってもよい。配向処理を施すことにより、液晶分子にプレチルトを付与することができる。
液晶分子の配向方向は、配向主軸の方向(ネマティック液晶において分子長軸の平均的に揃う方向)であるため、第一の基板100側の第一の液晶分子511の配向方向511Aの方位角は、第一の基板100の第一の液晶層500側に設けられた配向膜(第一の配向膜41)の配向処理方向の方位角と一致する。第二の基板200側の第一の液晶分子512の配向方向512Aの方位角は、第二の基板200の第一の液晶層500側に設けられた配向膜(第二の配向膜42)の配向処理方向の方位角と一致する。第三の基板300側の第二の液晶分子611の配向方向611Aの方位角は、第三の基板300の第二の液晶層600側に設けられた配向膜(第三の配向膜43)の配向処理方向の方位角と一致する。第四の基板400側の第二の液晶分子612の配向方向612Aの方位角は、第四の基板400の第二の液晶層600側に設けられた配向膜(第四の配向膜44)の配向処理方向の方位角と一致する。
図7は、実施形態1に係る光学素子の第一状態について説明する断面模式図である。図8は、実施形態1に係る光学素子の第二状態について説明する断面模式図である。本実施形態の光学素子10は、第一の液晶セル11Aと第二の液晶セル11Bとの間に、ネガティブCプレート12を備えることが好ましい。このような態様とすることにより、図7に示すように、第一状態において、第一の液晶セル11Aの斜め入射時の位相差をネガティブCプレート12でキャンセルすることが可能となる。また、図8に示すように、第二状態において、第二の液晶セル11Bの斜め入射時の位相差をネガティブCプレート12でキャンセルすることが可能となる。その結果、駆動していない液晶層のみを有効にすることが可能となり、偏光変調及び偏光非変調をより広帯域かつより広視野角で切り替えることができる。
ネガティブCプレート12としては、例えば、延伸処理されたシクロオレフィンポリマーフィルムが挙げられる。
ネガティブCプレート12の厚さ方向のリタデーションRthは、-220nm以上、0nm以下であることが好ましい。このような態様とすることにより、より広帯域で偏光変調及び偏光非変調を切り替えることができる。ネガティブCプレート12は、生産の都合上、面内位相差が数ナノ程度生じる場合があるため、ネガティブCプレート12の面内位相差は、例えば、0nm以上、5nm以下である。
図1等に示すように、本実施形態の光学素子10は、第一の液晶セル11Aの第二の液晶セル11Bと反対側、又は、第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に、第一の1/4波長フィルム13を備えることが好ましい。このような態様とすることにより、より広帯域で偏光変調及び偏光非変調を切り替えることができる。
本実施形態の光学素子10は、第一の1/4波長フィルム13の第一の液晶セル11A及び第二の液晶セル11Bとは反対側に第二の1/4波長フィルム14を備えることが好ましい。このような態様とすることにより、更に広帯域で偏光変調及び偏光非変調を切り替えることができる。
1/4波長フィルム(具体的には、第一の1/4波長フィルム13及び第二の1/4波長フィルム14)は、少なくとも波長550nmの光に対して、20nm以上、240nm以下の面内位相差を付与するものであればよい。
1/4波長フィルムの材料としては、例えば、光重合性液晶材料等が挙げられる。光重合性液晶材料の構造としては、例えば、液晶分子の骨格の末端に、アクリレート基、メタクリレート基等の光重合性基を有する構造が挙げられる。
1/4波長フィルムは、例えば、下記の方法によって形成可能である。まず、光重合性液晶材料を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)等の有機溶媒に溶かす。次に、得られた溶液を、基材(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム)の表面上に塗布し、溶液の塗膜を形成する。その後、この溶液の塗膜に対して、仮焼成、光照射(例えば、紫外線照射)、及び、本焼成を順に行うことによって、1/4波長フィルムが形成される。
また、上記光重合性液晶材料にカイラル剤を添加し、70°捩れた状態でポリマー化した液晶ポリマーを1/4波長フィルムとして用いてもよい。
1/4波長フィルムとしては、例えば、延伸処理された高分子フィルムも使用可能である。高分子フィルムの材料としては、例えば、シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ノルボルネン、トリアセチルセルロース、ジアチルセルロース等が挙げられる。
第一の1/4波長フィルム13は、逆波長分散特性を有することが好ましい。このような態様とすることにより、偏光変調及び偏光非変調をより広帯域で切り替えることができる。ここで、本明細書中、「位相差フィルムの波長分散性」とは、位相差フィルムが付与する位相差の絶対値と入射光の波長との相関関係を指す。可視光域において、入射光の波長が変化しても位相差フィルムが付与する位相差の絶対値が変化しない性質を「フラット波長分散特性」という。また、可視光域において、入射光の波長が大きくなるにつれて位相差フィルムが付与する位相差の絶対値が小さくなる性質を「正波長分散特性」といい、可視光域において、入射光の波長が大きくなるにつれて位相差フィルムが付与する位相差の絶対値が大きくなる性質を「逆波長分散特性」という。
第一の1/4波長フィルム13の、波長550nmの面内位相差に対する波長450nmの面内位相差は、0.7倍以上、1倍以下であることが好ましい。このような態様とすることにより、偏光変調及び偏光非変調をより広帯域で切り替えることができる。
第一の1/4波長フィルム13の、波長550nmの面内位相差に対する波長650nmの面内位相差は、1倍以上、1.3倍以下であることが好ましい。このような態様とすることにより、偏光変調及び偏光非変調をより広帯域で切り替えることができる。
図3に示す、第一の1/4波長フィルム13の遅相軸13Aの方位角は、52°以上、60°以下であることが好ましい。このような態様とすることにより、偏光変調及び偏光非変調をより広帯域で切り替えることができる。
第一の1/4波長フィルム13の波長550nmの面内位相差は、90nm以上、170nm以下であることが好ましい。このような態様とすることにより、偏光変調及び偏光非変調をより広帯域で切り替えることができる。
第二の1/4波長フィルム14は、フラット波長分散特性を有することが好ましい。このような態様とすることにより、偏光変調及び偏光非変調をより広帯域で切り替えることができる。
図3に示す、第二の1/4波長フィルム14の遅相軸14Aの方位角は、8°以上、18°以下であることが好ましい。このような態様とすることにより、偏光変調及び偏光非変調をより広帯域で切り替えることができる。
第二の1/4波長フィルム14の波長550nmの面内位相差は、120nm以上、150nm以下であることが好ましい。このような態様とすることにより、偏光変調及び偏光非変調をより広帯域で切り替えることができる。
光学素子10に入射する光は、円偏光であることが好ましい。このような態様とすることにより、円偏光の偏光状態をスイッチング可能な光学素子10を実現することができる。
(実施形態1の変形例1)
本変形例では、上記実施形態1の光学素子10が、更に、第一の液晶セル11Aの第二の液晶セル11Bと反対側に第一のポジティブCプレートを備え、第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に第二のポジティブCプレートを備える態様について説明する。
図9は、実施形態1の変形例1に係る光学素子の断面模式図である。本実施形態の光学素子10は、図9に示すように、更に、第一の液晶セル11Aの第二の液晶セル11Bと反対側に第一のポジティブCプレート19Aを備え、第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に第二のポジティブCプレート19Bを備える。このような態様とすることにより、偏光変調及び偏光非変調をより広帯域で実現することができる。
図9に示すように、第二のポジティブCプレート19Bは、第二の液晶セル11Bと第一の1/4波長フィルム13との間に配置されることが好ましい。このような態様とすることにより、偏光変調及び偏光非変調をより広帯域で実現することができる。
第一のポジティブCプレート19A及び第二のポジティブCプレート19Bとしては、例えば、固有複屈折が負の材料を成分として含むフィルムを縦横二軸延伸加工したもの、ネマティック液晶等の液晶性材料を塗布したもの等を適宜用いることができる。
第一のポジティブCプレート19Aの厚さ方向のリタデーションRthは、0nm以上、190nm以下であることが好ましい。このような態様とすることにより、より広帯域で偏光変調及び偏光非変調を切り替えることができる。
第二のポジティブCプレート19Bの厚さ方向のリタデーションRthは、0nm以上、220nm以下であることが好ましい。このような態様とすることにより、より広帯域で偏光変調及び偏光非変調を切り替えることができる。
第一のポジティブCプレート19A及び第二のポジティブCプレート19Bは、生産の都合上、面内位相差が数ナノ程度生じる場合があるため、第一のポジティブCプレート19A及び第二のポジティブCプレート19Bの面内位相差は、例えば、0nm以上、5nm以下である。なお、第一のポジティブCプレート19A及び第二のポジティブCプレート19Bの厚さ方向のリタデーションRthは、同一であっても互いに異なっていてもよい。また、第一のポジティブCプレート19A及び第二のポジティブCプレート19Bの面内位相差は、同一であっても互いに異なっていてもよい。
(実施形態1の変形例2)
上記実施形態1の変形例1では、光学素子10が、第一の液晶セル11Aの第二の液晶セル11Bと反対側に第一のポジティブCプレート19Aを備え、第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に、第二のポジティブCプレート19B、第一の1/4波長フィルム13及び第二の1/4波長フィルム14を備える態様について説明したが、第一の液晶セル11Aの第二の液晶セル11Bと反対側には、第一のポジティブCプレート19Aは配置されていなくてもよく、第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に配置される位相差層は実施形態1の変形例1の態様に限定されず、以下のような態様であってもよい。
<第一の構成>
図81は、実施形態1の変形例2に係る第一の構成を有する光学素子の断面模式図である。図81に示すように、実施形態1の変形例2に係る第一の構成を有する光学素子10は、第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側において、第一のAプレート51と、第一のAプレート51よりも出射側に配置された第二のAプレート52とを備える。すなわち、光学素子10は、第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側において、第二の液晶セル11Bに近い側から順に、第一のAプレート51及び第二のAプレート52を備える。また、第一の液晶セル11Aの第二の液晶セル11Bと反対側には、第一のポジティブCプレート19Aは配置されていない。
Aプレートは、屈折率(nx、ny、nz)が以下の(式N1)又は(式N2)を満たすものである。(式N1)を満たすAプレートは、ポジティブAプレートともいう。(式N2)を満たすAプレートは、ネガティブAプレートともいう。第一のAプレート51及び第二のAプレート52は、ポジティブAプレートであることが好ましい。上記実施形態1における第一の1/4波長フィルム13及び第二の1/4波長フィルム14は、ポジティブAプレートであり、第一のAプレート51及び第二のAプレート52がポジティブAプレートである場合、上記実施形態1における第一の1/4波長フィルム13は第一のAプレート51に対応し、第二の1/4波長フィルム14は第二のAプレート52に対応している。なお、製造上のバラつきによって、ポジティブAプレートはnx>ny>nzとなってもよく、ネガティブAプレートは、nz>nx>ny、又は、nx>nz>nyとなってもよい。
nx>ny=nz (式N1)
nz=nx>ny (式N2)
ここで、「nx」は、面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は、面内で遅相軸と直交する方向の屈折率であり、「nz」は、厚み方向の屈折率とする。屈折率は、特に断りのない限り、23℃、波長550nmの光に対する値を指す。また、入射側とは、光学素子において光が入射する側をいい、出射側とは、光学素子において光が出射する側をいう。
第一のAプレート51は、逆波長分散特性を有していても、フラット波長分散特性を有していても、正波長分散特性(順波長分散特性)を有していてもよいが、逆波長分散特性を有することが好ましい。第二のAプレート52は、逆波長分散特性を有していても、フラット波長分散特性を有していても、正波長分散特性を有していてもよいが、フラット波長分散特性又は正波長分散特性を有することが好ましい。
図81に示す第一の構成を基準として、以下に示す(条件1)~(条件5)の少なくとも1つを満たすように位相差層を配置することが好ましい。なお、Cプレートは、屈折率(nx、ny、nz)が以下の(式N3)又は(式N4)を満たすものである。(式N3)を満たすCプレートは、ポジティブCプレートともいう。(式N4)を満たすCプレートは、ネガティブCプレートともいう。なお、製造上のバラつきによって、Cプレートは、数nmの面内位相差Reを有していてもよい。
nz>nx=ny (式N3)
nx=ny>nz (式N4)
(条件1)光学素子10は、第一の液晶セル11Aの第二の液晶セル11Bと反対側、及び、第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側の少なくとも一方に、ポジティブCプレートを備える。このような態様とすることにより、視野角を向上させることができる。
(条件2)第一のAプレート51及び第二のAプレート52の少なくとも一方がポジティブAプレートである場合、光学素子10は、当該ポジティブAプレートの入射側及び出射側の少なくとも一方に、ポジティブCプレートを備える。このような態様とすることにより、視野角を向上させることができる。
(条件3)第一のAプレート51及び第二のAプレート52の少なくとも一方がネガティブAプレートである場合、光学素子10は、当該ネガティブAプレートの入射側及び出射側の少なくとも一方に、ネガティブCプレートを備える。このような態様とすることにより、視野角を向上させることができる。
(条件4)第一のAプレート51及び第二のAプレート52の少なくとも一方がネガティブAプレートである場合、光学素子10は、第二の液晶セル11Bと当該ネガティブAプレートとの間に、ポジティブCプレート又はネガティブCプレートを備える。このような態様とすることにより、視野角を向上させることができる。
(条件5)第一のAプレート51及び第二のAプレート52の一方がポジティブAプレートであり、他方がネガティブAプレートである場合、当該ポジティブAプレートと当該ネガティブAプレートとの間に、ポジティブCプレート又はネガティブCプレートを備える。このような態様とすることにより、視野角を向上させることができる。
第一の構成に加えて、上記(条件1)~(条件5)に示した少なくとも1つの条件を満たす構成(第二の構成~第十七の構成)を以下に説明する。
<第二の構成>
図82~図85は、実施形態1の変形例2に係る第二の構成を有する光学素子の断面模式図の一例である。図82~図85に示すように、第二の構成の光学素子10は、上記第一の構成において、第一のAプレート51はポジティブAプレート51PAであり、第二のAプレート52はポジティブAプレート52PAであり、更に、Cプレート61を備え、Cプレート61は、第一の液晶セル11Aの第二の液晶セル11Bと反対側、又は、第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に配置されている。
Cプレート61が第一の液晶セル11Aの第二の液晶セル11Bと反対側に配置される場合、Cプレート61は、ポジティブCプレート61PCであることが好ましい。Cプレート61が第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に配置され、かつ、Cプレート61の入射側に隣接してポジティブAプレート52PAが配置される場合、Cプレート61は、ポジティブCプレート61PCであることが好ましい。
<第三の構成>
図86~図91は、実施形態1の変形例2に係る第三の構成を有する光学素子の断面模式図の一例である。図86~図91に示すように、第三の構成の光学素子10は、上記第一の構成において、第一のAプレート51はポジティブAプレート51PAであり、第二のAプレート52はポジティブAプレート52PAであり、更に、第一のCプレート61、及び、第一のCプレート61よりも出射側に配置された第二のCプレート62を備える。第一のCプレート61は、第一の液晶セル11Aの第二の液晶セル11Bと反対側、又は、第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に配置され、第二のCプレート62は、第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に配置される。
第一のCプレート61が第一の液晶セル11Aの第二の液晶セル11Bと反対側に配置される場合、第一のCプレート61は、ポジティブCプレート61PCであることが好ましい。第二のCプレート62が第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に配置され、かつ、第二のCプレート62の入射側に隣接してポジティブAプレート52PAが配置される場合、第二のCプレート62は、ポジティブCプレート62PCであることが好ましい。なお、図91に示す構成は、上記実施形態1の構成に相当する。
第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に複数のCプレートが配置される場合、当該複数のCプレートは互いに隣接しないことが好ましく、具体的には、当該複数のCプレート間に、少なくとも1つのAプレートが配置されることが好ましい。
<第四の構成>
図92~図95は、実施形態1の変形例2に係る第四の構成を有する光学素子の断面模式図の一例である。図92~図95に示すように、第四の構成の光学素子10は、上記第一の構成において、第一のAプレート51はポジティブAプレート51PAであり、第二のAプレート52はポジティブAプレート52PAであり、更に、第一のCプレート61、第一のCプレート61よりも出射側に配置された第二のCプレート62、及び、第二のCプレート62よりも出射側に配置された第三のCプレート63を備える。第一のCプレート61は、第一の液晶セル11Aの第二の液晶セル11Bと反対側、又は、第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に配置され、第二のCプレート62及び第三のCプレート63は、第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に配置される。
第一のCプレート61が第一の液晶セル11Aの第二の液晶セル11Bと反対側に配置される場合、第一のCプレート61は、ポジティブCプレート61PCであることが好ましい。第三のCプレート63が第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に配置され、かつ、第三のCプレート63の入射側に隣接してポジティブAプレート52PAが配置される場合、第三のCプレート63は、ポジティブCプレート63PCであることが好ましい。
第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に複数のCプレートが配置される場合、当該複数のCプレートは互いに隣接しないことが好ましく、具体的には、当該複数のCプレート間に、少なくとも1つのAプレートが配置されることが好ましい。
<第五の構成>
図96は、実施形態1の変形例2に係る第五の構成を有する光学素子の断面模式図の一例である。図96に示すように、第五の構成の光学素子10は、上記第一の構成において、第一のAプレート51はポジティブAプレート51PAであり、第二のAプレート52はポジティブAプレート52PAであり、更に、第一のCプレート61、第一のCプレート61よりも出射側に配置された第二のCプレート62、第二のCプレート62よりも出射側に配置された第三のCプレート63、及び、第三のCプレート63よりも出射側に配置された第四のCプレート64を備える。第一のCプレート61は、第一の液晶セル11Aの第二の液晶セル11Bと反対側、又は、第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に配置され、第二のCプレート62、第三のCプレート63及び第四のCプレート64は、第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に配置される。
第一のCプレート61が第一の液晶セル11Aの第二の液晶セル11Bと反対側に配置される場合、第一のCプレート61は、ポジティブCプレート61PCであることが好ましい。第四のCプレート64が第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に配置され、かつ、第四のCプレート64の入射側に隣接してポジティブAプレート52PAが配置される場合、第四のCプレート64は、ポジティブCプレート64PCであることが好ましい。
第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に複数のCプレートが配置される場合、当該複数のCプレートは互いに隣接しないことが好ましく、具体的には、当該複数のCプレート間に、少なくとも1つのAプレートが配置されることが好ましい。
<第六の構成>
図97~図101は、実施形態1の変形例2に係る第六の構成を有する光学素子の断面模式図の一例である。図97~図101に示すように、第六の構成の光学素子10は、上記第一の構成において、第一のAプレート51はポジティブAプレート51PAであり、第二のAプレート52はネガティブAプレート52NAであり、更に、Cプレート61を備え、Cプレート61は、第一の液晶セル11Aの第二の液晶セル11Bと反対側、又は、第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に配置されている。
Cプレート61が第一の液晶セル11Aの第二の液晶セル11Bと反対側に配置される場合、Cプレート61は、ポジティブCプレート61PCであることが好ましい。Cプレート61が第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に配置され、かつ、Cプレート61の入射側に隣接してネガティブAプレート52NAが配置される場合、Cプレート61は、ネガティブCプレート61NCであることが好ましい。
<第七の構成>
図102~図110は、実施形態1の変形例2に係る第七の構成を有する光学素子の断面模式図の一例である。図102~図110に示すように、第七の構成の光学素子10は、上記第一の構成において、第一のAプレート51はポジティブAプレート51PAであり、第二のAプレート52はネガティブAプレート52NAであり、更に、第一のCプレート61、及び、第一のCプレート61よりも出射側に配置された第二のCプレート62を備える。第一のCプレート61は、第一の液晶セル11Aの第二の液晶セル11Bと反対側、又は、第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に配置され、第二のCプレート62は、第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に配置される。
第一のCプレート61が第一の液晶セル11Aの第二の液晶セル11Bと反対側に配置される場合、第一のCプレート61は、ポジティブCプレート61PCであることが好ましい。第二のCプレート62が第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に配置され、かつ、第二のCプレート62の入射側に隣接してネガティブAプレート52NAが配置される場合、第二のCプレート62は、ネガティブCプレート62NCであることが好ましい。
第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に複数のCプレートが配置される場合、当該複数のCプレートは互いに隣接しないことが好ましく、具体的には、当該複数のCプレート間に、少なくとも1つのAプレートが配置されることが好ましい。
<第八の構成>
図111~図117は、実施形態1の変形例2に係る第八の構成を有する光学素子の断面模式図の一例である。図111~図117に示すように、第八の構成の光学素子10は、上記第一の構成において、第一のAプレート51はポジティブAプレート51PAであり、第二のAプレート52はネガティブAプレート52NAであり、更に、第一のCプレート61、第一のCプレート61よりも出射側に配置された第二のCプレート62、及び、第二のCプレート62よりも出射側に配置された第三のCプレート63を備える。第一のCプレート61は、第一の液晶セル11Aの第二の液晶セル11Bと反対側、又は、第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に配置され、第二のCプレート62及び第三のCプレート63は、第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に配置される。
第一のCプレート61が第一の液晶セル11Aの第二の液晶セル11Bと反対側に配置される場合、第一のCプレート61は、ポジティブCプレート61PCであることが好ましい。第三のCプレート63が第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に配置され、かつ、第三のCプレート63の入射側に隣接してネガティブAプレート52NAが配置される場合、第三のCプレート63は、ネガティブCプレート63NCであることが好ましい。
第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に複数のCプレートが配置される場合、当該複数のCプレートは互いに隣接しないことが好ましく、具体的には、当該複数のCプレート間に、少なくとも1つのAプレートが配置されることが好ましい。
<第九の構成>
図118~図119は、実施形態1の変形例2に係る第九の構成を有する光学素子の断面模式図の一例である。図118~図119に示すように、第九の構成の光学素子10は、上記第一の構成において、第一のAプレート51はポジティブAプレート51PAであり、第二のAプレート52はネガティブAプレート52NAであり、更に、第一のCプレート61、第一のCプレート61よりも出射側に配置された第二のCプレート62、第二のCプレート62よりも出射側に配置された第三のCプレート63、及び、第三のCプレート63よりも出射側に配置された第四のCプレート64を備える。第一のCプレート61は、第一の液晶セル11Aの第二の液晶セル11Bと反対側、又は、第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に配置され、第二のCプレート62、第三のCプレート63及び第四のCプレート64は、第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に配置される。
第一のCプレート61が第一の液晶セル11Aの第二の液晶セル11Bと反対側に配置される場合、第一のCプレート61は、ポジティブCプレート61PCであることが好ましい。第四のCプレート64が第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に配置され、かつ、第四のCプレート64の入射側に隣接してネガティブAプレート52NAが配置される場合、第四のCプレート64は、ネガティブCプレート64NCであることが好ましい。
第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に複数のCプレートが配置される場合、当該複数のCプレートは互いに隣接しないことが好ましく、具体的には、当該複数のCプレート間に、少なくとも1つのAプレートが配置されることが好ましい。
<第十の構成>
図120~図125は、実施形態1の変形例2に係る第十の構成を有する光学素子の断面模式図の一例である。図120~図125に示すように、第十の構成の光学素子10は、上記第一の構成において、第一のAプレート51はネガティブAプレート51NAであり、第二のAプレート52はポジティブAプレート52PAであり、更に、Cプレート61を備え、Cプレート61は、第一の液晶セル11Aの第二の液晶セル11Bと反対側、又は、第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に配置されている。
Cプレート61が第一の液晶セル11Aの第二の液晶セル11Bと反対側に配置される場合、Cプレート61は、ポジティブCプレート61PCであることが好ましい。Cプレート61が第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に配置され、かつ、Cプレート61の入射側に隣接してポジティブAプレート52PAが配置される場合、Cプレート61は、ポジティブCプレートで61PCあることが好ましい。
<第十一の構成>
図126~図138は、実施形態1の変形例2に係る第十一の構成を有する光学素子の断面模式図の一例である。図126~図138に示すように、第十一の構成の光学素子10は、上記第一の構成において、第一のAプレート51はネガティブAプレート51NAであり、第二のAプレート52はポジティブAプレート52PAであり、更に、第一のCプレート61、及び、第一のCプレート61よりも出射側に配置された第二のCプレート62を備える。第一のCプレート61は、第一の液晶セル11Aの第二の液晶セル11Bと反対側、又は、第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に配置され、第二のCプレート62は、第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に配置される。
第一のCプレート61が第一の液晶セル11Aの第二の液晶セル11Bと反対側に配置される場合、第一のCプレート61は、ポジティブCプレート61PCであることが好ましい。第二のCプレート62が第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に配置され、かつ、第二のCプレート62の入射側に隣接してポジティブAプレート52PAが配置される場合、第二のCプレート62は、ポジティブCプレート62PCであることが好ましい。
第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に複数のCプレートが配置される場合、当該複数のCプレートは互いに隣接しないことが好ましく、具体的には、当該複数のCプレート間に、少なくとも1つのAプレートが配置されることが好ましい。
<第十二の構成>
図139~図150は、実施形態1の変形例2に係る第十二の構成を有する光学素子の断面模式図の一例である。図139~図150に示すように、第十二の構成の光学素子10は、上記第一の構成において、第一のAプレート51はネガティブAプレート51NAであり、第二のAプレート52はポジティブAプレート52PAであり、更に、第一のCプレート61、第一のCプレート61よりも出射側に配置された第二のCプレート62、及び、第二のCプレート62よりも出射側に配置された第三のCプレート63を備える。第一のCプレート61は、第一の液晶セル11Aの第二の液晶セル11Bと反対側、又は、第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に配置され、第二のCプレート62及び第三のCプレート63は、第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に配置される。
第一のCプレート61が第一の液晶セル11Aの第二の液晶セル11Bと反対側に配置される場合、第一のCプレート61は、ポジティブCプレート61PCであることが好ましい。第三のCプレート63が第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に配置され、かつ、第三のCプレート63の入射側に隣接してポジティブAプレート52PAが配置される場合、第三のCプレート63は、ポジティブCプレート63PCであることが好ましい。
第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に複数のCプレートが配置される場合、当該複数のCプレートは互いに隣接しないことが好ましく、具体的には、当該複数のCプレート間に、少なくとも1つのAプレートが配置されることが好ましい。
<第十三の構成>
図151~図154は、実施形態1の変形例2に係る第十三の構成を有する光学素子の断面模式図の一例である。図151~図154に示すように、第十三の構成の光学素子10は、上記第一の構成において、第一のAプレート51はネガティブAプレート51NAであり、第二のAプレート52はポジティブAプレート52PAであり、更に、第一のCプレート61、第一のCプレート61よりも出射側に配置された第二のCプレート62、第二のCプレート62よりも出射側に配置された第三のCプレート63、及び、第三のCプレート63よりも出射側に配置された第四のCプレート64を備える。第一のCプレート61は、第一の液晶セル11Aの第二の液晶セル11Bと反対側、又は、第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に配置され、第二のCプレート62、第三のCプレート63及び第四のCプレート64は、第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に配置される。
第一のCプレート61が第一の液晶セル11Aの第二の液晶セル11Bと反対側に配置される場合、第一のCプレート61は、ポジティブCプレート61PCであることが好ましい。第四のCプレート64が第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に配置され、かつ、第四のCプレート64の入射側に隣接してポジティブAプレート52PAが配置される場合、第四のCプレート64は、ポジティブCプレート64PCであることが好ましい。
第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に複数のCプレートが配置される場合、当該複数のCプレートは互いに隣接しないことが好ましく、具体的には、当該複数のCプレート間に、少なくとも1つのAプレートが配置されることが好ましい。
<第十四の構成>
図155~図159は、実施形態1の変形例2に係る第十四の構成を有する光学素子の断面模式図の一例である。図155~図159に示すように、第十四の構成の光学素子10は、上記第一の構成において、第一のAプレート51はネガティブAプレート51NAであり、第二のAプレート52はネガティブAプレート52NAであり、更に、Cプレート61を備え、Cプレート61は、第一の液晶セル11Aの第二の液晶セル11Bと反対側、又は、第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に配置されている。
Cプレート61が第一の液晶セル11Aの第二の液晶セル11Bと反対側に配置される場合、Cプレート61は、ポジティブCプレート61PCであることが好ましい。Cプレート61が第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に配置され、かつ、Cプレート61の入射側に隣接してネガティブAプレート52NAが配置される場合、Cプレート61は、ネガティブCプレート61NCであることが好ましい。
<第十五の構成>
図160~図168は、実施形態1の変形例2に係る第十五の構成を有する光学素子の断面模式図の一例である。図160~図168に示すように、第十五の構成の光学素子10は、上記第一の構成において、第一のAプレート51はネガティブAプレート51NAであり、第二のAプレート52はネガティブAプレート52NAであり、更に、第一のCプレート61、及び、第一のCプレート61よりも出射側に配置された第二のCプレート62を備える。第一のCプレート61は、第一の液晶セル11Aの第二の液晶セル11Bと反対側、又は、第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に配置され、第二のCプレート62は、第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に配置される。
第一のCプレート61が第一の液晶セル11Aの第二の液晶セル11Bと反対側に配置される場合、第一のCプレート61は、ポジティブCプレート61PCであることが好ましい。第二のCプレート62が第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に配置され、かつ、第二のCプレート62の入射側に隣接してネガティブAプレート52NAが配置される場合、第二のCプレート62は、ネガティブCプレート62NCであることが好ましい。
第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に複数のCプレートが配置される場合、当該複数のCプレートは互いに隣接しないことが好ましく、具体的には、当該複数のCプレート間に、少なくとも1つのAプレートが配置されることが好ましい。
<第十六の構成>
図169~図176は、実施形態1の変形例2に係る第十六の構成を有する光学素子の断面模式図の一例である。図169~図176に示すように、第十六の構成の光学素子10は、上記第一の構成において、第一のAプレート51はネガティブAプレート51NAであり、第二のAプレート52はネガティブAプレート52NAであり、更に、第一のCプレート61、第一のCプレート61よりも出射側に配置された第二のCプレート62、及び、第二のCプレート62よりも出射側に配置された第三のCプレート63を備える。第一のCプレート61は、第一の液晶セル11Aの第二の液晶セル11Bと反対側、又は、第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に配置され、第二のCプレート62及び第三のCプレート63は、第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に配置される。
第一のCプレート61が第一の液晶セル11Aの第二の液晶セル11Bと反対側に配置される場合、第一のCプレート61は、ポジティブCプレート61PCであることが好ましい。第三のCプレート63が第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に配置され、かつ、第三のCプレート63の入射側に隣接してネガティブAプレート52NAが配置される場合、第三のCプレート63は、ネガティブCプレート63NCであることが好ましい。
第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に複数のCプレートが配置される場合、当該複数のCプレートは互いに隣接しないことが好ましく、具体的には、当該複数のCプレート間に、少なくとも1つのAプレートが配置されることが好ましい。
<第十七の構成>。
図176~図177は、実施形態1の変形例2に係る第十七の構成を有する光学素子の断面模式図の一例である。図176~図177に示すように、第十七の構成の光学素子10は、上記第一の構成において、第一のAプレート51はネガティブAプレート51NAであり、第二のAプレート52はネガティブAプレート52NAであり、更に、第一のCプレート61、第一のCプレート61よりも出射側に配置された第二のCプレート62、第二のCプレート62よりも出射側に配置された第三のCプレート63、及び、第三のCプレート63よりも出射側に配置された第四のCプレート64を備える。第一のCプレート61は、第一の液晶セル11Aの第二の液晶セル11Bと反対側、又は、第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に配置され、第二のCプレート62、第三のCプレート63及び第四のCプレート64は、第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に配置される。
第一のCプレート61が第一の液晶セル11Aの第二の液晶セル11Bと反対側に配置される場合、第一のCプレート61は、ポジティブCプレート61PCであることが好ましい。第四のCプレート64が第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に配置され、かつ、第四のCプレート64の入射側に隣接してネガティブAプレート52NAが配置される場合、第四のCプレート64は、ネガティブCプレート64NCであることが好ましい。
第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に複数のCプレートが配置される場合、当該複数のCプレートは互いに隣接しないことが好ましく、具体的には、当該複数のCプレート間に、少なくとも1つのAプレートが配置されることが好ましい。
(実施形態1の変形例3)
本変形例では、上記実施形態1の光学素子10が、更に、第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に、第一の位相差フィルム及び第二の位相差フィルムを備える態様について説明する。
図200は、実施形態1の変形例3に係る光学素子の断面模式図である。図200に示すように、本変形例の光学素子10は、更に、第二の液晶セル11Bの第一の液晶セル11Aと反対側に配置された第一の位相差フィルム71、及び、第一の位相差フィルム71の第二の液晶セル11Bと反対側に配置された第二の位相差フィルム72を備える。このような態様とすることにより、広視野角化を実現することができる。
第一の位相差フィルム71及び第二の位相差フィルム72は、二軸フィルムであることが好ましい。二軸フィルムは、好ましくは、屈折率(nx、ny、nz)が以下の(式N5)及び(式N6)を満たすものである。
nx>ny (式N5)
nz=(nx+ny)/2 (式N6)
第一の位相差フィルム71及び第二の位相差フィルム72の材料は特に限定されず、例えば、ポリマーフィルムを延伸したもの、液晶性材料の配向を固定したもの、無機材料から構成される薄板等を用いることができる。
第一の位相差フィルム71及び第二の位相差フィルム72の形成方法は特に限定されない。ポリマーフィルムから形成される場合、例えば、溶剤キャスト法、溶融押出し法等を用いることができる。所望の位相差が発現しさえすれば、無延伸であってもよいし、延伸が施されてもよい。延伸方法も特に限定されず、ロール間引張り延伸法、ロール間圧縮延伸法、テンター横一軸延伸法、斜め延伸法、縦横二軸延伸法の他、熱収縮性フィルムの収縮力の作用下に延伸を行う特殊延伸法等を用いることができる。また、液晶性材料から形成される場合、例えば、配向処理を施した基材フィルムの上に液晶性材料を塗布し、配向固定する方法等を用いることができる。所望の位相差が発現しさえすれば、基材フィルムに特別な配向処理を行わない方法や、配向固定した後、基材フィルムから剥がして別のフィルムに転写加工する方法等であってもよい
第一の位相差フィルム71の波長550nmの面内位相差Reは、90nm以上、170nm以下であることが好ましい。第一の位相差フィルム71の、波長550nmの面内位相差に対する波長450nmの面内位相差は、1.0倍以上、1.1倍以下であることが好ましい。第一の位相差フィルム71の、波長550nmの面内位相差に対する波長650nmの面内位相差は、0.9倍以上、1.0倍未満であることが好ましい。
第二の位相差フィルム72の波長550nmの面内位相差Reは、40nm以上、210nm以下であること好ましい。第二の位相差フィルム72の、波長550nmの面内位相差に対する波長450nmの面内位相差は、1.0倍以上、1.1倍以下であることが好ましい。第二の位相差フィルム72の、波長550nmの面内位相差に対する波長650nmの面内位相差は、0.9倍以上、1.0倍未満であることが好ましい。
第一の位相差フィルム71の面内位相差Reと第二の位相差フィルム72の面内位相差Reとの差は、0nm以上、10nm以下であることが好ましい。このような態様とすることにより、第一の位相差フィルム71及び第二の位相差フィルム72を同等のフィルムで構成することが可能となり、より簡便に広視野角化を実現することができる。
図201は、実施形態1の変形例3に係る光学素子の、第一状態及び第二状態における液晶分子の配向について説明する模式図である。図201に示す、第一の位相差フィルム71の遅相軸71Aの方位角は50°以上、60°以下であることが好ましい。このような態様とすることにより、偏光変調及び偏光非変調をより広帯域で切り替えることができる。第二の位相差フィルム72の遅相軸72Aの方位角は5°以上、24°以下であることが好ましい。このような態様とすることにより、偏光変調及び偏光非変調をより広帯域で切り替えることができる。
(実施形態2)
本実施形態では、本実施形態に特有の特徴について主に説明し、上記実施形態1及びその変形例と重複する内容については説明を省略する。本実施形態は、ネガティブCプレート12を備えないことを除いて、実施形態1と実質的に同じである。
図10は、実施形態2に係る光学素子の断面模式図である。上記実施形態1では、光学素子10がネガティブCプレート12を備える態様について説明したが、図10に示すように、光学素子10はネガティブCプレート12を備えていなくてもよい。このような態様とすることにより、光学素子10を薄型かつ低コストに製造することができる。
(実施形態3)
本実施形態では、本実施形態に特有の特徴について主に説明し、上記実施形態1及びその変形例、並びに、実施形態2と重複する内容については説明を省略する。本実施形態は、第一の液晶セル11A及び第二の液晶セル11Bの構成が異なることを除いて、実施形態1と実質的に同じである。
図11は、実施形態3に係る光学素子の断面模式図である。図12は、実施形態3に係る光学素子が備える第一の液晶セル及び第二の液晶セルの断面模式図である。図13は、実施形態3に係る光学素子の、第一状態及び第二状態における液晶分子の配向について説明する模式図である。図14は、実施形態3に係る光学素子の第一状態について説明する断面模式図である。図15は、実施形態3に係る光学素子の第二状態について説明する断面模式図である。
図11~図15に示される本実施形態の光学素子10が備える第一の液晶分子510及び第二の液晶分子610は、捩れ配向のネガ型の液晶分子である。したがって、図14に示すように、第一の液晶層500が電圧無印加状態であり、第二の液晶層600が電圧印加状態である場合に、第一の液晶分子510が垂直配向し、かつ、第二の液晶分子610がツイスト配向する第一状態を実現することができる。第一状態において、第一の液晶セル11Aの位相差は、ネガティブCプレート12によりキャンセルすることができる。また、図15に示すように、第一の液晶層500が電圧印加状態であり、第二の液晶層600が電圧無印加状態である場合に、第一の液晶分子510がツイスト配向し、かつ、第二の液晶分子610が垂直配向する第二状態を実現することができる。第二状態において、第二の液晶セル11Bの位相差は、ネガティブCプレート12によりキャンセルすることができる。
第一の配向膜41、第二の配向膜42、第三の配向膜43及び第四の配向膜44は、垂直配向膜であることが好ましい。
(実施形態4)
本実施形態では、本実施形態に特有の特徴について主に説明し、上記実施形態1及びその変形例、並びに、実施形態2~実施形態3と重複する内容については説明を省略する。本実施形態は、第二の液晶セル11Bの構成が異なることを除いて、実施形態1と実質的に同じである。
図16は、実施形態4に係る光学素子の断面模式図である。図17は、実施形態4に係る光学素子が備える第一の液晶セル及び第二の液晶セルの断面模式図である。図18は、実施形態4に係る光学素子の、第一状態及び第二状態における液晶分子の配向について説明する模式図である。図19は、実施形態4に係る光学素子の第一状態について説明する断面模式図である。図20は、実施形態4に係る光学素子の第二状態について説明する断面模式図である。
図16~図20に示される本実施形態の光学素子10が備える第一の液晶分子510は、捩れ配向のポジ型の液晶分子であり、第二の液晶分子610は、捩れ配向のネガ型の液晶分子である。したがって、図19に示すように、第一の液晶層500及び第二の液晶層600が共に電圧印加状態である場合に、第一の液晶分子510が垂直配向し、かつ、第二の液晶分子610がツイスト配向する第一状態を実現することができる。第一状態において、第一の液晶セル11Aの位相差は、ネガティブCプレート12によりキャンセルすることができる。また、図20に示すように、第一の液晶層500及び第二の液晶層600が共に電圧無印加状態である場合に、第一の液晶分子510がツイスト配向し、かつ、第二の液晶分子610が垂直配向する第二状態を実現することができる。第二状態において、第二の液晶セル11Bの位相差は、ネガティブCプレート12によりキャンセルすることができる。
第一の配向膜41及び第二の配向膜42は水平配向膜であり、第三の配向膜43及び第四の配向膜44は垂直配向膜であることが好ましい。
(実施形態5)
本実施形態では、本実施形態に特有の特徴について主に説明し、上記実施形態1及びその変形例、並びに、実施形態2~4と重複する内容については説明を省略する。本実施形態では、上記実施形態1~4の光学素子(sHWP)を備える可変焦点素子について説明する。図21は、実施形態5に係る可変焦点素子の断面模式図である。図21に示す本実施形態の可変焦点素子30は、光学素子10とパンチャラトナムベリー(PB:Pancharatnam Berry)レンズ20とを備える。
上述の通り、実施形態1~4の光学素子10は、円偏光の変調ができる。また、PBレンズ20は、右円偏光と左円偏光とで焦点距離が異なるため、光学素子10とPBレンズ20とを組み合わせることにより、可変焦点素子30を実現することができる。
PBレンズ20は、円偏光を集光及び発散させる機能を有する。PBレンズ20は、例えば、国際公開第2019/189818号に記載の方法で作製することができる。
図22は、実施形態5に係る可変焦点素子が備えるPBレンズの断面模式図の一例である。PBレンズ20は、図22に示すように、光学異方性層700を備える。PBレンズ20は、一例として、円偏光を対象として、入射光を所定の方向に屈折して透過させる。なお、図22では、入射光を左円偏光としている。
図22に示す部分において、光学異方性層700は、図22中左側から3つの領域R0、R1、R2を有し、各領域で1周期の長さΛが異なっている。具体的には、1周期の長さΛは、領域R0、R1、R2の順に短くなっている。また、領域R1及びR2は、光学軸が光学異方性層の厚さ方向で捩れて回転した構造(以下、捩れ構造ともいう)を有している。領域R1の厚さ方向の捩れ角は、領域R2の厚さ方向の捩れ角よりも小さい。なお、領域R0は捩れ構造を有していない領域である(すなわち、捩れ角が0°である)。なお、捩れ角は、厚さ方向全体での捩れ角とする。
光学素子10において、左円偏光LC1が光学異方性層700の面内の領域R1に入射すると、入射方向に対して、矢印X方向に、すなわち、液晶分子710の光学軸の向きが連続的に回転しながら変化している一方向に所定角度、屈折されて透過する。同様に左円偏光LC2が光学異方性層700の面内の領域R2に入射すると、入射方向に対して、矢印X方向に所定角度、屈折されて透過する。同様に左円偏光LC0が光学異方性層700の面内の領域R0に入射すると、入射方向に対して、矢印X方向に所定角度、屈折されて透過する。
ここで、光学異方性層700による屈折の角度は、領域R1の液晶配向パターンの1周期ΛR1よりも、領域R2の液晶配向パターンの1周期ΛR2が短いため、図22に示すように、入射光に対する屈折の角度は、領域R2の透過光の角度θR2の方が領域R1の透過光の角度θR1よりも大きくなる。また、領域R1の液晶配向パターンの1周期ΛR1よりも、領域R0の液晶配向パターンの1周期ΛR0が長いため、図22に示すように、入射光に対する屈折の角度は、領域R0の透過光の角度θR0の方が領域R1の透過光の角度θR1よりも小さくなる。
ここで、面内で液晶分子の光学軸の向きが連続的に回転しながら変化している液晶配向パターンを有する光学異方性層による光の回折では、回折角度が大きくなると回折効率が低下する、すなわち回折光の強度が弱くなるという問題がある。そのため、光学異方性層を、液晶分子の光学軸の向きが面内で180°回転する1周期の長さが異なる領域を有する構成とした場合には、光の入射位置によって回折角度が異なるため、面内の入射位置によって回折光の光量に差が生じる。すなわち、面内の入射位置によって、透過、回折した光が暗くなる領域が生じる。
これに対して、本実施形態のPBレンズ20は、光学異方性層が厚さ方向で捩れて回転する領域を有しており、厚さ方向の捩れ角の大きさが異なる領域を有する。図22に示す例では、光学異方性層700の領域R2の厚さ方向の捩れ角φR2は領域R1の厚さ方向の捩れ角φR1よりも大きい。また、領域R0は厚さ方向の捩れ構造を有していない。これにより、屈折された光の回折効率の低下を抑制することができる。
図22に示す例では、回折角度が領域R0よりも大きい領域R1及びR2に捩れ構造を付与することで、領域R1、R2で屈折された光の光量の低下を抑制することができる。また、領域R1よりも回折角度が大きい領域R2の捩れ構造の捩れ角を、領域R1よりも大きくすることで、領域R2で屈折された光の光量の低下を抑制することができる。これによって、面内の入射位置によって、透過した光の光量が均一になるようにすることができる。
このように、本実施形態のPBレンズ20では、光学異方性層による屈折が大きい面内の領域では、入射光は厚さ方向の捩れ角が大きい層内を透過し、屈折される。これに対して、光学異方性層による屈折が小さい面内の領域は、入射光は厚さ方向の捩れ角が小さい層内を透過して屈折される。すなわち、PBレンズ20では、光学異方性層による屈折の大きさに応じて、面内における厚さ方向の捩れ角を設定することで、入射光に対する透過光を明るくすることができる。そのため、PBレンズ20によれば、面内における透過光量の屈折角度依存性を小さくすることができる。
光学異方性層700の面内における屈折の光の角度は、液晶配向パターンの1周期Λが短いほど大きい。また、光学異方性層700の面内における厚さ方向の捩れ角は、液晶配向パターンにおいて矢印X方向に沿って光軸の向きが180°回転する1周期Λの短い領域の方が1周期Λの大きい領域よりも、大きい領域を有する。PBレンズ20では、一例として、図22にも示すように、光学異方性層700の領域R2における液晶配向パターンの1周期ΛR2が、領域R1における液晶配向パターンの1周期ΛR1よりも短く、厚さ方向に捩れ角φR2は大きい。すなわち、光入射側の光学異方性層700の領域R2方が、大きく光を屈折させる。
したがって、対象とする液晶配向パターンの1周期Λに対して、面内における厚さ方向の捩れ角φを設定することで、好適に、面内の異なる領域において異なる角度に屈折した透過光を明るくすることができる。
PBレンズ20においては、前述のように、液晶配向パターンの1周期Λが短いほど屈折の角度が大きいため、液晶配向パターンの1周期Λが短い領域ほど厚さ方向の捩れ角を大きくすることで透過光を明るくすることを可能にしている。そのため、PBレンズ20においては、液晶配向パターンの1周期の長さが異なる領域において、1周期の長さの順列と厚さ方向の捩れ角の大きさの順列が異なる領域を有することが好ましい。
以上より、PBレンズ20は、液晶分子710を含む液晶組成物を用いて形成された光学異方性層700を備え、光学異方性層700は、上記液晶分子由来の光学軸の向きが面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化している液晶配向パターンを有し、かつ、上記光学軸が光学異方性層700の厚さ方向で捩れて回転する領域を有しており、厚さ方向の捩れ角の大きさが異なる領域を有することが好ましい。
PBレンズ20は、液晶分子710由来の光学軸の向きが面内で180°回転する長さを1周期とした際に、上記液晶配向パターンにおける上記1周期の長さが異なる領域を有することが好ましい。
光学異方性層700は、上記液晶配向パターンにおける上記1周期の長さが異なる複数の領域が、上記1周期の長さの順に配列しており、かつ、上記厚さ方向の捩れ角の大きさが異なる複数の領域が、上記厚さ方向の捩れ角の大きさの順に配列しており、上記1周期の長さの順列の方向と上記厚さ方向の捩れ角の大きさの順列の方向とが異なる領域を有することが好ましい。
光学異方性層700は、上記厚さ方向の捩れ角の大きさが10°~360°である領域を有することが好ましい。
光学異方性層700は、上記液晶配向パターンにおける上記液晶分子710由来の光学軸の向きが連続的に回転しながら変化する上記一方向に向かって、上記液晶配向パターンの上記1周期が、漸次、短くなることが好ましい。
光学異方性層700の上記液晶配向パターンは、上記液晶分子710由来の光学軸の向きが連続的に回転しながら変化する上記一方向を、内側から外側に向かう同心円状のパターンであることが好ましい。
図22に示すPBレンズ20は、捩れ角が面内で変化するPBレンズであり、回折角が大きい場合においても回折効率が高い素子であるが、PBレンズ20は、捩れ角が面内で変化しないPBレンズであってもよい。具体的には、PBレンズ20は、厚み方向の捩れがない、又は、面内で一定の捩れ角であるPBレンズであってもよく、例えば、特表2008-532085号公報に記載の偏光回折格子を用いることができる。
PBレンズ20は、光学異方性層700を、複数層、備えたPBレンズであって、光学異方性層700の厚さ方向で捩れ角の向きが互いに異なる光学異方性層700を有することが好ましい。
PBレンズ20は、光学異方性層700を、複数層、備えたPBレンズであって、光学異方性層700の厚さ方向で捩れ角の大きさが互いに異なる光学異方性層700を有することが好ましい。
PBレンズ20は、光学異方性層700を、複数層、備えたPBレンズであって、光学異方性層700は、上記液晶分子710由来の光学軸の向きが面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転する方向が互いに同一である液晶配向パターンを有することが好ましい。
上記液晶配向パターンにおける上記1周期の長さは、50μm以下であることが好ましい。
可変焦点素子30は、光学素子10とPBレンズ20とからなる積層体を1組備える2値の可変焦点素子30Aであってもよく、光学素子10とPBレンズ20とからなる積層体を2組以上備える多段階の可変焦点素子30Bであってもよい。このように、光学素子10とPBレンズ20とのセットを複数枚組み合わせることにより、多段階のチューナビリティが付与された可変焦点素子30Bを実現することができる。
可変焦点素子30は、例えば、国際公開第2019/189818号に記載の方法で作製したPBレンズ20を、光学素子10に貼り付けることにより作製することができる。
(実施形態5の変形例1)
本変形例では、上記実施形態5におけるPBレンズ20が光学素子10内に配置され、インセル化された可変焦点素子30について説明する。図23は、実施形態5の変形例1に係る可変焦点素子の断面模式図である。図24は、実施形態5の変形例1に係る可変焦点素子の拡大断面模式図である。図25は、実施形態5の変形例1に係る光学素子の、第一状態及び第二状態における液晶分子の配向について説明する模式図である。
本変形例の可変焦点素子30は、図23に示すように、光学素子10とPBレンズ20とからなる積層体を2組以上備える多段階の可変焦点素子30Bである。
本変形例の可変焦点素子30が備えるPBレンズ20は、図24に示すように、光学素子10内に配置される。このようにPBレンズ20をインセル化することにより、PBレンズ20を外付けする必要がないため、製造コストを大きく下げることができる。また、可変焦点素子30の厚みを抑えることが可能になる。なお、図23では、便宜上、光学素子10とPBレンズ20とを別々に図示している。
図24に示すように、本変形例の可変焦点素子30は、より具体的には、入射側から出射側に向かって順に、第二の1/4波長フィルム14と、第一の1/4波長フィルム13と、第一の基板100と、第一の液晶層500と、第二の基板200と、第三の基板300と、第二の液晶層600と、PBレンズ20と、第四の基板400と、を備える。
可変焦点素子30は、第一の基板100と第一の液晶層500との間に第一の配向膜41を備えていてもよい。また、可変焦点素子30は、第二の基板200と第一の液晶層500との間に第二の配向膜42を備えていてもよい。また、可変焦点素子30は、第三の基板300と第二の液晶層600との間に第三の配向膜43を備えていてもよい。また、可変焦点素子30は、PBレンズ20と第二の液晶層600との間に第四の配向膜44を備えていてもよい。
本変形例では、第一の液晶セル11A及び第二の液晶セル11Bが実施形態1と同様の構成を有し、第一の配向膜41、第二の配向膜42、第三の配向膜43及び第四の配向膜44が水平配向膜である。
図25に示すように、本変形例では、第二状態における第二の基板200側の第一の液晶分子512の配向方向512Aの方位角は、-9°以上、7°以下であり、第一状態における第四の基板400側の第二の液晶分子612の配向方向612Aの方位角は、85°以上、96°以下であることが好ましい。このような態様とすることにより、より広帯域で偏光変調及び偏光非変調を切り替えることができる。
本変形例では、第一の液晶セル11Aと第二の液晶セル11Bとの間にネガティブCプレート12を配置していないが、第一の液晶セル11Aと第二の液晶セル11Bとの間にネガティブCプレート12を配置してもよい。
インセル化されたPBレンズ20(PBレンズ層)は、言い換えると、遅相軸方向が面内で回転するようにパターニングされたインセル位相差層である。
PBレンズのインセル化は、例えば、以下のようにして行うことができる。第四の基板400に、下記一般式(PB-1)で表されるポリマーを含むインセルPBレンズ形成用の光感光性材料を塗布し、PBレンズ形成用膜を成膜した後、当該PBレンズ形成用膜に対して配向処理を行うことによりPBレンズ20のインセル化を行うことができる。
(上記式中、Vはスペーサ基を表し、Wは光官能基を有する二価の有機基を表し、R
5は一価の基を表し、pは1以上の整数を表す。)
上記一般式(PB-1)におけるVは、スペーサ基を表す。Vは、-(CH2)n-(ただし、nは2以上の整数)で表される炭素数が2以上のアルキレン基を有することが好ましい。このような態様とすることにより、良好な位相差を発現させることができる。上記アルキレン基は、直鎖状であることが好ましい。
上記一般式(PB-1)におけるWは、光官能基を有する二価の有機基を表す。光官能基を有する二価の有機基としては、光二量化、光異性化、光フリース転位、光分解等の反応が生じる光官能基(光反応部位)を含有する二価の有機基が挙げられる。光二量化及び光異性化が可能な光官能基としては、例えば、シンナメート基、カルコン基、クマリン基、スチルベン基等が挙げられる。光異性化が可能な光官能基としては、例えば、アゾベンゼン基等が挙げられる。光フリース転位が可能な光官能基としては、例えば、フェノールエステル基等が挙げられる。光分解が可能な光官能基としては、例えば、シクロブタン環等が挙げられる。
上記一般式(PB-1)におけるR5は、一価の基を表す。R5は、水素原子又は1価の炭化水素基であることが好ましく、水素原子、メチル基又はエチル基であることがより好ましい。
PBレンズ形成用膜に対する配向処理は、複数の配向処理により行われ、上記複数の配向処理で照射される偏光の方向は、互いに異なる。PBレンズ形成用膜に対する配向処理は、例えば、方位角0°の偏光にてPBレンズ形成用膜に配向処理を行う第一の配向処理と、方位角45°の偏光にてPBレンズ形成用膜に配向処理を行う第二の配向処理と、方位角90°の偏光にてPBレンズ形成用膜に配向処理を行う第三の配向処理と、方位角135°の偏光にてPBレンズ形成用膜に配向処理を行う第四の配向処理と、を備える。
図26は、実施形態5の変形例1に係る可変焦点素子が備えるPBレンズの配向パターンを示した平面模式図である。図26に示すように、PBレンズ20の配向パターンは、例えば、中心部から外周に行くに従い、配向方向が連続的に回転している。また、平面視において、半径Rの位置の液晶分子710の配向方向はすべて同じである。言い換えると、中心からの距離に応じて所定の角度分布を有している。配向パターンの周期P1と回折角度θは、P1=2×λ/sinθで表され、配向パターンの周期が短いほどより大きく光を回折させることができる。したがって焦点を結ぶレンズ効果を得たい場合には、光学素子の中心ほどピッチは広く(回折角度は小さく)、外周に行くほどピッチを短く(回折角度を大きく)することで実現される。
後述する、ディオプトリDの異なるPBレンズ20は、この配向パターン周期の設計をかえることで、作製することができる。また、配向パターンについては、国際公開第2020/186123号、特表2008-532085号等に基づいて設定することもできる。
本実施形態では、配向処理を4回の露光で行う場合について説明したが、露光分割回数が増えるほど回折効率のよい可変焦点素子30を得ることができる。光配向装置を応用したマルチ光配向処理による作製は、既存の液晶工場との相性がよく、高い生産性で製造することができる。本実施形態ではマルチ光配向処理によるPBレンズ20の作製について説明したが、光干渉法やレーザー直接描画など既存の手法によって配向パターンを作製してもよい。
インセル化されたPBレンズ20(PBレンズ層)の位相差は、100nm以上、500nm以下であることが好ましく、200nm以上、350nm以下であることがより好ましく、λ/2(すなわち、275nm)であることが特に好ましい。回折効率は下記(式1)で表されるため、Δnd=λ/2の場合に、最大値をとる。
本変形例の可変焦点素子30、すなわち、光学素子10と、光学素子10にインセル化されたPBレンズ20との積層体を複数組み合わせた多段階の可変焦点素子30は、例えば、以下のような特性を有する。
図27は、実施形態5の変形例1に係る可変焦点素子の詳細な構成を説明する断面模式図である。図27に示すように、可変焦点素子30は、入射側から出射側に向かって順に、光学素子10と、第一のPBレンズ20A1と、光学素子10と、第一のPBレンズ20A1と、光学素子10と、第二のPBレンズ20A2と、光学素子10と、第二のPBレンズ20A2と、光学素子10と、第三のPBレンズ20A3と、光学素子10と、第三のPBレンズ20A3と、を備えている。
第一のPBレンズ20A1は、ディオプトリD=±0.25であり、第二のPBレンズ20A2は、ディオプトリD=±0.5、第三のPBレンズ20A3は、ディオプトリD=±1のレンズ特性を有する。右円偏光が入射した場合は+(集光)し、左円偏光が入射した場合は-(発散)する特性をもつ。
下記表1は、実施形態5の変形例1に係る可変焦点素子30の、各モードにおける光学素子10及びPBレンズ20A1、20A2及び20A3の状態について説明する表である。
上記表1を用いて、F0のモードを説明する。このモードでは、すべての光学素子10が第一状態(非変調)としてある。右円偏光が入射すると、最初の光学素子10で変調されずそのまま最初の第一のPBレンズ20A1に入射する。ここで0.25Dの集光を受ける。その際出射光は左円偏光になる。ここで、PBレンズ20を通過しても円偏光の向きが変わるのは、PBレンズ20の特性である。光学素子10は非変調のため、左円偏光のまま2つ目の光学素子10を通過する。2つの目の第一のPBレンズ20A1では、-0.25Dの発散が生じる。結果として入射側からの最初の4枚(光学素子10、第一のPBレンズ20A1、光学素子10及び第一のPBレンズ20A1)では、入射光がそのまま通過することになる。以降同様に第二のPBレンズ20A2及びPBレンズ20A3も通過し、出射光としても、入射光のまま、0Dでそのまま出射される。
上記表1を用いて、F1のモードを説明する。このモードでは、入射側から4番目の光学素子10だけ、第二状態としてある。この状態では、最初の第二のPBレンズ20A2を通過後は、F0のモードと同様、左円偏光で0.5Dが付与された状態にある。続いて第二状態となった光学素子で右円偏光に変換される。続いて2番目の第二のPBレンズ20A2で、+0.5Dが付与され、合計1Dが付与された左円偏光となって出射する。その後は、そのまま1Dの左円偏光のまま出射する。2番目の第二のPBレンズ20A2通過後に左円偏光となっているため、第三のPBレンズ20A3での符号がF0の時とは逆になる。
上記表1及び図28を用いて、F-2.5のモードを説明する。図28は、実施形態5の変形例1に係る可変焦点素子の、F-2.5のモードにおける偏光状態について説明する図である。表1及び図28に示すように、F-2.5のモードでは、入射側からの最初の4枚(光学素子10、第一のPBレンズ20A1、光学素子10及び第一のPBレンズ20A1)で-0.5Dが付与された右円偏光になり、出射側の最後の4枚(光学素子10、第三のPBレンズ20A3、光学素子10及び第三のPBレンズ20A3)で-2Dが付与され、合計-2.5Dの右円偏光として出射される。
その他、同様の原理で、どの光学素子10を変調状態の第二状態とするかに応じて、多段階の焦点距離を実現できる。本変形例では抜粋して3つの条件だけを示している。
(実施形態5の変形例2)
上記実施形態5及び上記実施形態5の変形例1では、フィルム状(インセルポリマー状)のPBレンズを備えた態様について述べたが、PBレンズは流動性のある液晶層、すなわち、電圧で駆動できる液晶層であってもよい。本変形例では、PBレンズが電圧で駆動できる液晶層である場合について説明する。
上記実施形態5及び上記実施形態5の変形例1のように、ポリマー状になったPBレンズは、それ自体は電圧で可変できないことからパッシブPBレンズと呼ばれる。一方、流動性のある液晶層で形成されたPBレンズは電圧で駆動できることからアクティブPBレンズと呼ばれる。
アクティブPBレンズは、以下の手順で作製することができる。まず、一対の基板のうち、片側の基板の配向膜にPBレンズパターンの配向処理を行う。もう片側の基板の配向膜は、弱アンカリング配向膜(スリッパリー界面)とする。なおどちらの基板にも透明電極が設けられている。この1対の基板を、液晶層を挟持して貼り合わせると、配向処理を施したパターンにそって液晶分子が配向し、液晶層もPBレンズパターンの配向をとる。これによりアクティブPBレンズが実現できる。より好ましくは、その後、PSA(Polymer sustained alignment)処理を施し、液晶分子の界面の配向を安定化させることで、より配向安定性と信頼性の高いアクティブPBレンズとすることができる。
アクティブPBレンズは、電圧OFF状態では、PBレンズパターンを有しているため、入射偏光状態に応じて、集光または発散する。電圧ON状態では、液晶分子が垂直配向となるため、集光も発散もせずそのまま透過する。
上記実施形態5及び上記実施形態5の変形例1のようなsHWPとパッシブPBレンズとを組み合わせた可変焦点素子では、集光・発散の2値切り替えであるのに対し、本変形例のようなsHWPとアクティブPBレンズとを組み合わせた可変焦点素子では、集光・発散・透過と3値の切り替えをすることができる。その結果、より滑らかな焦点制御ができる。あるいは、同じ段階数の焦点距離を実現するための、電圧駆動素子の積層数を少なくすることができる。
(実施形態6)
本実施形態では、本実施形態に特有の特徴について主に説明し、上記実施形態1及びその変形例、並びに、実施形態2~5及びその変形例と重複する内容については説明を省略する。本実施形態では、可変焦点素子30を備えるヘッドマウントディスプレイについて説明する。図29は、実施形態6に係るヘッドマウントディスプレイの断面模式図である。図30は、実施形態6に係るヘッドマウントディスプレイの外観の一例を示す斜視模式図である。
図29及び図30に示すように、本実施形態のヘッドマウントディスプレイ1は、画像を表示する表示パネル1Pと、位相差板40と、可変焦点素子30と、を備える。ヘッドマウントディスプレイ1を用いることにより、液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンス表示装置などの表示パネル1Pから出射された光は、位相差板40を経て円偏光となり、それが可変焦点素子30を通過し、ユーザUに視覚される。
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明の効果を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
(実施例1)
上記実施形態1と同様の構成を有する実施例1の光学素子10を作製した。第一の液晶セル11A及び第二の液晶セル11Bを2層重ねて、その間に、厚さ方向のリタデーションRthが-110nmであるネガティブCプレート12を積層した。第一の液晶分子510及び第二の液晶分子610は、ポジ型の液晶分子であり、屈折率異方性Δn=0.066であった。第一の配向膜41、第二の配向膜42、第三の配向膜43及び第四の配向膜44は、水平配向膜であった。
第二状態における第一の基板100側の第一の液晶分子511の配向方向511Aの方位角は0°であり、第二状態における第二の基板200側の第一の液晶分子512の配向方向512Aの方位角は68°であった。また、第一状態における第三の基板300側の第二の液晶分子611の配向方向611Aの方位角は90°であり、第一状態における第四の基板400側の第二の液晶分子612の配向方向612Aの方位角は158°であった。なお、第二状態における第一の基板100側の第一の液晶分子511の配向方向511A、第二状態における第二の基板200側の第一の液晶分子512の配向方向512A、第一状態における第三の基板300側の第二の液晶分子611の配向方向611A、及び、第一状態における第四の基板400側の第二の液晶分子612の配向方向612Aは、それぞれ、第一の配向膜41、第二の配向膜42、第三の配向膜43及び第四の配向膜44の配向処理方向と一致するため、実施例では、配向方向511A、512A、611A及び612Aを、それぞれ、第一の配向膜41、第二の配向膜42、第三の配向膜43及び第四の配向膜44の配向処理方向から求めた。
第一の1/4波長フィルム13は、逆波長分散特性を有し、第二の1/4波長フィルム14は、フラット波長分散特性を有していた。第一の1/4波長フィルム13の遅相軸13Aは57.2°であり、第二の1/4波長フィルム14の遅相軸14Aは12.2°であった。
第一状態は第一の液晶層500に電圧を印加して駆動させた。第一状態において第一の液晶層500に印加する電圧はできるだけ高電圧が好ましく、本実施例では、20Vを印加した。駆動した液晶層(第一の液晶層500)とネガティブCプレート12とで位相差がキャンセルするようにネガティブCプレート12を設計したため、駆動していない液晶層(第二の液晶層600)のみが有効になった。そのため、視野角が広く、広帯域なsHWPを実現することができた。
第二状態は、第一状態とは逆に、第二の液晶層600に電圧印加して駆動させることで、第一状態の時に有効であった液晶層(第二の液晶層600)とは90度回転した液晶層(第一の液晶層500)が有効になるため、2枚の1/4波長フィルム(第一の1/4波長フィルム13及び第二の1/4波長フィルム14)を通過した後の光は、光学素子10に入射した光とは逆の偏光状態を有する円偏光になった。
(比較例1)
図31は、比較例1に係る光学素子の断面模式図である。図31に示す比較例1の光学素子10R1を作製した。比較例1の光学素子10R1は、上記比較形態1の光学素子に対応する光学素子であった。比較例1の光学素子10R1は、入射側から出射側に向かって順に、遅相軸の方位角が75°である1/4波長フィルム15R、遅相軸の方位角が15°である1/2波長フィルム16R、90°捩れのTN液晶層500R1を備える液晶セル11R1、遅相軸の方位角が-75°である1/2波長フィルム17R、及び、遅相軸の方位角が-15°である1/4波長フィルム18Rを備えていた。
(比較例2)
図32は、比較例2に係る光学素子の断面模式図である。図32に示す比較例2の光学素子10R2を作製した。比較例2の光学素子10R2は、上記比較形態2の光学素子に対応する光学素子であった。比較例2の光学素子10R2は、入射側から出射側に向かって順に、70°捩れのTN液晶層500R2と、-70°捩れのTN液晶層500R3とを積層した構造を有していた。
(実施例1、比較例1及び比較例2の評価)
実施例1、比較例1及び比較例2の光学素子(sHWP)について、右円偏光(S3=+1)を入射したときの、出射された光のストークスパラメータS3を評価した。なお、本明細書の実施例及び比較例では、特に断りのない限り、右円偏光(S3=+1)を入射したときに出射された光のストークスパラメータS3を評価している。図33は、実施例1、比較例1及び比較例2に係る光学素子の、非変調時のストークスパラメータS3と出射光の波長との関係を示すグラフである。図34は、実施例1、比較例1及び比較例2に係る光学素子の、変調時のストークスパラメータS3と出射光の波長との関係を示すグラフである。図33及び図34に示すように、実施例1では、変調時及び非変調時ともに波長450nm~650nmの範囲で|S3|≧0.9を達成することができた。
図35は、入射角を30°に設定した場合の、比較例1に係る光学素子の非変調時のストークスパラメータS3と方位角との関係を示すグラフである。図36は、入射角を30°に設定した場合の、比較例1に係る光学素子の変調時のストークスパラメータS3と方位角との関係を示すグラフである。図37は、入射角を30°に設定した場合の、比較例2に係る光学素子の非変調時のストークスパラメータS3と方位角との関係を示すグラフである。図38は、入射角を30°に設定した場合の、比較例2に係る光学素子の変調時のストークスパラメータS3と方位角との関係を示すグラフである。図39は、入射角を30°に設定した場合の、実施例1に係る光学素子の非変調時のストークスパラメータS3と方位角との関係を示すグラフである。図40は、入射角を30°に設定した場合の、実施例1に係る光学素子の変調時のストークスパラメータS3と方位角との関係を示すグラフである。図35~図40では、波長450nm、550nm及び650nmにおける評価結果を示した。
図35及び図36に示すように、比較例1では変調時及び非変調時共に|S3|≧0.9を達成できなかった。図37及び図38に示すように、比較例2では変調時は概ね|S3|≧0.9を達成したが、非変調時に|S3|≧0.9を達成できなかった。一方で、図39及び図40に示すように、実施例1では、変調時及び非変調時ともに450nm~650nmの範囲で、全方位において|S3|≧0.9を達成することができた。
実施例1、比較例1及び比較例2の光学素子の、非変調時及び変調時の視野角特性をシミュレーションにより評価した。結果を図41に示す。図41は、実施例1、比較例1及び比較例2の光学素子の、非変調時及び変調時の視野角特性のシミュレーション結果を示す図である。
図41の非変調におけるグラフでは濃い領域が広いほど特性が良く、変調におけるグラフでは薄い領域が広いほど特性が良い。図41に示すように、実施例1では、波長450nm~650nmの範囲において、非変調及び変調共に視野角が良いことが分かった。一方、比較例1は、非変調時の視野角が良いが、変調時は波長依存性が大きいことが分かった。比較例2は、変調時の視野角は良いが、非変調時の視野角が悪いことが分かった。
好適な液晶セルの設計を検討するために、実施例1の光学素子10についてシンテック社製LCD-MASTER 1Dを用いて光学計算を行った。以下では、シミュレーションにより得られた結果より、入射角30°、波長450nm~650nmの範囲において、90%以上の変調及び非変調を実現することができる範囲を、好ましい範囲と判断した。また、以下で示すグラフでは、簡略化のため、波長450nm、550nm及び650nmにおける、入射角30°の最も悪い方位についてのデータのみ図示した。
まず、第一の液晶層500の波長550nmにおける第二状態でのリタデーションΔnd、及び、第二の液晶層600の波長550nmにおける第一状態でのリタデーションΔndの好適な範囲を検討するために、実施例1の光学素子10が備える第二の液晶層600の第一状態におけるリタデーションに対する非変調時のストークスパラメータS3、及び、実施例1の光学素子10が備える第一の液晶層500の第二状態におけるリタデーションに対する変調時のストークスパラメータS3をシミュレーションにより求めた。図42は、実施例1の光学素子が備える第二の液晶層の第一状態におけるリタデーションに対する非変調時のストークスパラメータS3を示すグラフである。図43は、実施例1の光学素子が備える第一の液晶層の第二状態におけるリタデーションに対する変調時のストークスパラメータS3を示すグラフである。
図42より、第二の液晶層600の、波長550nmにおける第一状態でのリタデーションは、210nm以上、260nm以下であることが好適であることが分かった。また、図43より、第一の液晶層500の、波長550nmにおける第二状態でのリタデーションは、200nm以上、260nm以下であることが好適であることが分かった。
第一の液晶分子510及び第二の液晶分子610のツイスト角の好適な範囲を検討するために、実施例1の光学素子10が備える第二の液晶分子610のツイスト角に対する非変調時のストークスパラメータS3、及び、実施例1の光学素子10が備える第一の液晶分子510のツイスト角に対する変調時のストークスパラメータS3をシミュレーションにより求めた。図44は、実施例1の光学素子が備える第二の液晶分子のツイスト角に対する非変調時のストークスパラメータS3を示すグラフである。図45は、実施例1の光学素子が備える第一の液晶分子のツイスト角に対する変調時のストークスパラメータS3を示すグラフである。
図44より、第一状態(非変調時)における第二の液晶分子610は、ツイスト角64°以上、74°以下でツイスト配向することが好適であることが分かった。また、図45より、第二状態(変調時)における第一の液晶分子510は、ツイスト角61°以上、75°以下でツイスト配向することが好適であることが分かった。
第一の液晶分子510及び第二の液晶分子610のプレツイスト角の好適な範囲を検討するために、実施例1の光学素子10が備える第二の液晶分子610のプレツイスト角に対する非変調時のストークスパラメータS3、及び、実施例1の光学素子10が備える第一の液晶分子510のプレツイスト角に対する変調時のストークスパラメータS3をシミュレーションにより求めた。図46は、実施例1の光学素子が備える第二の液晶分子のプレツイスト角に対する非変調時のストークスパラメータS3を示すグラフである。図47は、実施例1の光学素子が備える第一の液晶分子のプレツイスト角に対する変調時のストークスパラメータS3を示すグラフである。ここで、プレツイスト角とは、各液晶セルの入射側の基板における液晶分子の配向方向の方位角である。第一の液晶分子510のプレツイスト角とは、具体的には、第二状態における第一の基板100側の第一の液晶分子511の配向方向511Aの方位角である。また、第二の液晶分子610のプレツイスト角とは、具体的には、第一状態における第三の基板300側の第二の液晶分子611の配向方向611Aの方位角である。
図46より、第二の液晶分子610のプレツイスト角、すなわち、第一状態における第三の基板300側の第二の液晶分子611の配向方向611Aの方位角は、85°以上、96°以下であることが好適であることが分かった。また、図47より、第一の液晶分子510のプレツイスト角、すなわち、第二状態における第一の基板100側の第一の液晶分子511の配向方向511Aの方位角は、-9°以上、7°以下であることが好適であることが分かった。
図42~図47より、液晶層のリタデーションΔnd、ツイスト角及びプレツイスト角の最適値は、第一の液晶セル11Aと第二の液晶セル11Bとで異なるため、必ずしも同設計の液晶セルを積層する必要はないことが分かった。すなわち、第一の液晶セル11Aは、第二の液晶セル11Bと同一の構成を有さなくてもよいことが分かった。
逆波長分散の1/4波長フィルム(第一の1/4波長フィルム13)の遅相軸の方位角の好適な範囲を検討するために、実施例1の光学素子10が備える逆波長分散の1/4波長フィルムの遅相軸の方位角に対する、非変調時及び変調時のストークスパラメータS3をシミュレーションにより求めた。図48は、実施例1に係る光学素子が備える逆波長分散の1/4波長フィルムの遅相軸の方位角に対する、非変調時のストークスパラメータS3を示すグラフである。図49は、実施例1に係る光学素子が備える逆波長分散の1/4波長フィルムの遅相軸の方位角に対する、変調時のストークスパラメータS3を示すグラフである。図48及び図49に示すように、第一の1/4波長フィルム13としての逆波長分散の1/4波長フィルムの遅相軸の方位角は、52°以上、60°以下が好適であることが分かった。
逆波長分散の1/4波長フィルムの位相差の好適な範囲を検討するために、実施例1の光学素子10が備える逆波長分散の1/4波長フィルムの位相差に対する、非変調時及び変調時のストークスパラメータS3の波長分散をシミュレーションにより求めた。図50は、実施例1に係る光学素子が備える逆波長分散の1/4波長フィルムの位相差に対する、非変調時のストークスパラメータS3を示すグラフである。図51は、実施例1に係る光学素子が備える逆波長分散の1/4波長フィルムの位相差に対する、変調時のストークスパラメータS3を示すグラフである。図50及び図51に示すように、第一の1/4波長フィルム13としての逆波長分散の1/4波長フィルムの位相差は、90nm以上、170nm以下が好適であることが分かった。
フラット波長分散の1/4波長フィルム(第二の1/4波長フィルム14)の遅相軸の方位角の好適な範囲を検討するために、実施例1の光学素子10が備えるフラット波長分散の1/4波長フィルムの遅相軸の方位角に対する、非変調時及び変調時のストークスパラメータS3の波長分散をシミュレーションにより求めた。図52は、実施例1に係る光学素子が備えるフラット波長分散の1/4波長フィルムの遅相軸の方位角に対する、非変調時のストークスパラメータS3を示すグラフである。図53は、実施例1に係る光学素子が備えるフラット波長分散の1/4波長フィルムの遅相軸の方位角に対する、変調時のストークスパラメータS3を示すグラフである。図52及び図53に示すように、第二の1/4波長フィルム14としてのフラット波長分散の1/4波長フィルムの遅相軸の方位角は、8°以上、18°以下が好適であることが分かった。
フラット波長分散の1/4波長フィルムの位相差の好適な範囲を検討するために、実施例1の光学素子10が備えるフラット波長分散の1/4波長フィルムの位相差に対する、非変調時及び変調時のストークスパラメータS3の波長分散をシミュレーションにより求めた。図54は、実施例1に係る光学素子が備えるフラット波長分散の1/4波長フィルムの位相差に対する、非変調時のストークスパラメータS3を示すグラフである。図55は、実施例1に係る光学素子が備えるフラット波長分散の1/4波長フィルムの位相差に対する、変調時のストークスパラメータS3を示すグラフである。図54及び図55に示すように、第二の1/4波長フィルム14としてのフラット波長分散の1/4波長フィルムの位相差は、120nm以上、150nm以下であることが好適であることが分かった。
(実施例2)
上記実施形態2と同様の構成を有する実施例2の光学素子10を作製した。具体的には、ネガティブCプレート12を配置しなかったことを除いて、実施例1と同様にして実施例2の光学素子10を作製した。
実施例1、実施例2及び比較例1の光学素子の、非変調時及び変調時の視野角特性をシミュレーションにより評価した。結果を図56に示す。図56は、実施例1、実施例2及び比較例1の光学素子の、非変調時及び変調時の視野角特性のシミュレーション結果を示す図である。
図56の非変調におけるグラフでは濃い領域が広いほど特性が良く、変調におけるグラフでは薄い領域が広いほど特性が良い。図56に示すように、実施例2は実施例1ほどではないが、波長450nm~650nmの範囲で非変調及び変調共に視野角が良いことが分かった。実施例2の光学素子10は、ネガティブCプレート12を配置しない分、安価に作製することが可能であり、薄型化を実現することができた。
実施例2の光学素子(sHWP)について、右円偏光(S3=+1)を入射したときの、出射された光のストークスパラメータS3を評価した。図57は、入射角を30°に設定した場合の、実施例2に係る光学素子の非変調時のストークスパラメータS3と方位角との関係を示すグラフである。図58は、入射角を30°に設定した場合の、実施例2に係る光学素子の変調時のストークスパラメータS3と方位角との関係を示すグラフである。図57及び図58では、波長450nm、550nm及び650nmにおける評価結果を示した。図57及び図58に示すように、実施例2では、変調時及び非変調時共に波長450nm~650nmの範囲で、全方位において|S3|≧0.9を達成することができた。
ここで実施例1も含めて、ネガティブCプレート12の厚さ方向のリタデーションRthの好適な範囲を検討した。具体的には、実施例1の光学素子と同様の構成を有する光学素子について、ネガティブCプレート12の厚さ方向のリタデーションRthが-300nm~0nmである場合のストークスパラメータS3をシミュレーションにより求めた。ここで、ネガティブCプレート12の厚さ方向のリタデーションRthが0nmとは、ネガティブCプレート12を積層しない態様、すなわち、実施例2の構成を示す。結果を図59及び図60に示す。
図59は、実施例の光学素子の非変調時のストークスパラメータS3とネガティブCプレートの厚さ方向のリタデーションRthとの関係を示すグラフである。図60は、実施例の光学素子の変調時のストークスパラメータS3とネガティブCプレートの厚さ方向のリタデーションRthとの関係を示すグラフである。図59及び図60では、波長450nm、550nm及び650nmにおける、入射角30°の最も悪い方位についてのデータのみ図示した。図59及び図60より、ネガティブCプレート12の厚さ方向のリタデーションRthは、-220nm以上、0nm以下であることが好適であることが分かった。
(実施例3)
上記実施形態3と同様の構成を有する実施例3の光学素子10を作製した。具体的には、第一の液晶分子510及び第二の液晶分子610をカイラルピッチが15.7μmである捩れ配向のネガ型の液晶分子(屈折率異方性Δn=0.079)とし、第一の配向膜41、第二の配向膜42、第三の配向膜43及び第四の配向膜44を垂直配向膜とし、第一の液晶層500の第一の基板100側には方位角0°のプレチルトを付与し(すなわち、第二状態における第一の基板100側の第一の液晶分子511の配向方向511Aの方位角を90°とし)、第二の液晶層600の第三の基板300側には方位90°のプレチルトを付与し(すなわち、第一状態における第三の基板300側の第二の液晶分子611の配向方向611Aの方位角を90°とし)たこと以外は、実施例1と同様にして実施例3の光学素子10を作製した。
第一状態は第二の液晶層600に電圧を印加して駆動させた。第一状態において第二の液晶層600に印加する電圧はできるだけ高電圧が好ましく、本実施例では、20Vを印加した。駆動していない液晶層(第一の液晶層500)とネガティブCプレート12で位相差がキャンセルするようにネガティブCプレート12を設計したため、駆動している液晶層(第二の液晶層600)のみが有効になった。そのため、視野角が広く、広帯域なsHWPを実現することができた。
第二状態は、第一状態とは逆に、第一の液晶層500に電圧印加して駆動させることで、第一状態の時に有効であった液晶層(第二の液晶層600)とは90度回転した液晶層(第一の液晶層500)が有効になるため、2枚の1/4波長フィルム(第一の1/4波長フィルム13及び第二の1/4波長フィルム14)を通過した後の光は、光学素子10に入射した光とは逆の偏光状態を有する円偏光になった。
実施例3の光学素子(sHWP)について、右円偏光(S3=+1)を入射したときの、出射された光のストークスパラメータS3を評価した。図61は、入射角を0°に設定した場合の、実施例1、実施例3、比較例1及び比較例2に係る光学素子の、非変調時のストークスパラメータS3と出射光の波長との関係を示すグラフである。図62は、入射角を0°に設定した場合の、実施例1、実施例3、比較例1及び比較例2に係る光学素子の、変調時のストークスパラメータS3と出射光の波長との関係を示すグラフである。図61及び図62に、入射角を0°に設定した場合の、可視光領域における変調及び非変調特性を示す。図61及び図62に示すように、実施例3では、変調時及び非変調時共に波長450nm~650nmの範囲で|S3|≧0.9を達成することができた。
図63は、入射角を30°に設定した場合の、実施例3に係る光学素子の非変調時のストークスパラメータS3と方位角との関係を示すグラフである。図64は、入射角を30°に設定した場合の、実施例3に係る光学素子の変調時のストークスパラメータS3と方位角との関係を示すグラフである。図63及び図64に、入射角を30°に設定した場合の、波長450nm、550nm及び650nmにおける変調及び非変調特性を示す。図63及び図64に示すように、実施例3では、変調時及び非変調時共に波長450nm~650nmの範囲で、全方位において|S3|≧0.9を達成することができた。
(実施例4)
上記実施形態4と同様の構成を有する実施例4の光学素子10を作製した。具体的には、第二の液晶セル11Bとして実施例3の第二の液晶セル11Bを用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例4の光学素子10を作製した。
第一状態は第一の液晶層500及び第二の液晶層600の両方に電圧を印加して駆動させた。第一状態において第一の液晶層500及び第二の液晶層600に印加する電圧はできるだけ高電圧が好ましく、本実施例では、20Vを印加した。駆動した第一の液晶層500とネガティブCプレート12で位相差がキャンセルするようにネガティブCプレート12を設計したため、駆動した第二の液晶層600のみが有効になった。そのため、視野角が広く、広帯域なsHWPを実現することができた。
第二状態は、第一状態とは逆に、第一の液晶層500及び第二の液晶層600のいずれにも電圧を印加しないことにより、第一状態の時に有効であった液晶層(第二の液晶層600)とは90度回転した液晶層(第一の液晶層500)が有効になるため、2枚の1/4波長フィルム(第一の1/4波長フィルム13及び第二の1/4波長フィルム14)を通過した後の光は、光学素子10に入射した光とは逆の偏光状態を有する円偏光になった。
実施例4の光学素子(sHWP)について、右円偏光(S3=+1)を入射したときの、出射された光のストークスパラメータS3を評価した。図65は、入射角を0°に設定した場合の、実施例4、比較例1及び比較例2に係る光学素子の、非変調時のストークスパラメータS3と出射光の波長との関係を示すグラフである。図66は、入射角を0°に設定した場合の、実施例4、比較例1及び比較例2に係る光学素子の、変調時のストークスパラメータS3と出射光の波長との関係を示すグラフである。図65及び図66に、入射角を0°に設定した場合の、可視光領域における変調及び非変調特性を示す。図65及び図66に示すように、実施例4では、変調時及び非変調時共に波長450nm~650nmの範囲で|S3|≧0.9を達成することができた。
図67は、入射角を30°に設定した場合の、実施例4に係る光学素子の非変調時のストークスパラメータS3と方位角との関係を示すグラフである。図68は、入射角を30°に設定した場合の、実施例4に係る光学素子の変調時のストークスパラメータS3と方位角との関係を示すグラフである。図67及び図68に、入射角を30°に設定した場合の、波長450nm、550nm及び650nmにおける変調及び非変調特性を示す。図67及び図68に示すように、実施例4では、変調時及び非変調時共に波長450nm~650nmの範囲で、全方位において|S3|≧0.9を達成することができた。
(実施例5)
上記実施形態5の変形例1に対応する実施例5の可変焦点素子30を作製した。第一の液晶分子510及び第二の液晶分子610は、ポジ型の液晶分子であり、屈折率異方性Δn=0.066であった。第一の配向膜41、第二の配向膜42、第三の配向膜43及び第四の配向膜44は、水平配向膜であった。
第二状態における第二の基板200側の第一の液晶分子512の配向方向512Aの方位角は0°であり、第二状態における第一の基板100側の第一の液晶分子511の配向方向511Aの方位角は68°であった。また、第一状態における第四の基板400側の第二の液晶分子612の配向方向612Aの方位角は、90°であり、第一状態における第三の基板300側の第二の液晶分子611の配向方向611Aの方位角は158°であった。
第一の1/4波長フィルム13は、逆波長分散特性を有し、第二の1/4波長フィルム14は、フラット波長分散特性を有していた。第一の1/4波長フィルム13の遅相軸13Aは57.2°であり、第二の1/4波長フィルム14の遅相軸14Aは12.2°であった。
実施例5の可変焦点素子30は、具体的には次のようにして作製した。第二の液晶セル11Bの第四の基板400に、上記一般式(PB-1)で表されるポリマーを含むインセルPBレンズ形成用の光感光性材料を塗布し、PBレンズ形成用膜を成膜した。
図69は、実施例5に係る可変焦点素子の製造工程における第一の配向処理について説明する模式図である。図70は、実施例5に係る可変焦点素子の製造工程における第二の配向処理について説明する模式図である。図71は、実施例5に係る可変焦点素子の製造工程における第三の配向処理について説明する模式図である。図72は、実施例5に係る可変焦点素子の製造工程における第四の配向処理について説明する模式図である。
次に、第四の基板400上に設けられたPBレンズ形成用膜に配向処理を行った。具体的には、図69に示すように、第一のフォトマスク810を用いて方位角0°の偏光にてPBレンズ形成用膜900に配向処理を行った。続いて、図70に示すように、第二のフォトマスク820を用いて、方位角45°の偏光にてPBレンズ形成用膜900に配向処理を行った。続いて、図71に示すように、第三のフォトマスク830を用いて、方位角90°の偏光にてPBレンズ形成用膜900に配向処理を行った。最後に、図72に示すように、第四のフォトマスク840を用いて、方位角135°の偏光にてPBレンズ形成用膜900に配向処理を行った。その後、アニール処理を行い、PBレンズ20を第四の基板400上に形成することができた。
当該第四の基板400及びPBレンズ20の積層体を用いて、実施例2と同様にして第二の液晶セル11Bを作製し、水平配向の第一の液晶セル11A及び水平配向の第二の液晶セル11Bを積層した。その後、第一の1/4波長フィルム13として逆波長分散の1/4波長フィルムを、第一の液晶セル11Aの第二の液晶セル11Bとは反対側に貼付し、第二の1/4波長フィルム14としてフラット波長分散の1/4波長フィルムを、第一の1/4波長フィルム13の第一の液晶セル11Aとは反対側に貼付し、実施例5の可変焦点素子30を得た。
ここで、本実施例では、入射光がPBレンズ20よりも先にsHWPへ入射して右円偏光及び左円偏光をスイッチングし、当該偏光状態に応じてPBレンズ20で集光又は発散を行うため、第二の1/4波長フィルム14及び第一の1/4波長フィルム13は第一の液晶層500及び第二の液晶層600よりも入射側に配置した。そのため、各層の配置や軸方位は、実施例2とは異なっていた。
実施例5の可変焦点素子30は、偏光変調及び偏光非変調を広帯域かつ広視野角で切り替えることができた。
(実施例6)
上記実施形態1の変形例1と同様の構成を有する実施例6の光学素子10を作製した。具体的には、第一の液晶セル11Aの第二の液晶セル11Bと反対側に厚さ方向のリタデーションRthが70nmである第一のポジティブCプレート19Aを配置し、第二の液晶セル11Bと第一の1/4波長フィルム13との間に厚さ方向のリタデーションRthが70nmである第二のポジティブCプレート19Bを配置し、ネガティブCプレート12の厚さ方向のリタデーションRthを-140nmに変更したこと以外は実施例1と同様にして実施例6の光学素子10を作製した。光学素子10の駆動方法についても、実施例1と同様にした。
実施例6の光学素子(sHWP)について、右円偏光(S3=+1)を入射したときの、出射された光のストークスパラメータS3を評価した。図73は、入射角を0°に設定した場合の、実施例6、比較例1及び比較例2に係る光学素子の、非変調時のストークスパラメータS3と出射光の波長との関係を示すグラフである。図74は、入射角を0°に設定した場合の、実施例6、比較例1及び比較例2に係る光学素子の、変調時のストークスパラメータS3と出射光の波長との関係を示すグラフである。図73及び図74に、入射角を0°に設定した場合の、可視光領域における変調及び非変調特性を示す。図73及び図74に示すように、実施例6では、変調時及び非変調時共に波長450nm~650nmの範囲で|S3|≧0.9を達成することができた。
図75は、入射角を30°に設定した場合の、実施例6に係る光学素子の非変調時のストークスパラメータS3と方位角との関係を示すグラフである。図76は、入射角を30°に設定した場合の、実施例6に係る光学素子の変調時のストークスパラメータS3と方位角との関係を示すグラフである。図75及び図76に、入射角を30°に設定した場合の、波長450nm、550nm及び650nmにおける変調及び非変調特性を示す。図75及び図76に示すように、実施例6では、変調時及び非変調時共に波長450nm~650nmの範囲で、全方位において|S3|≧0.9を達成することができた。また、実施例6では、実施例1よりも良い特性が得られた。
第一のポジティブCプレート19A及び第二のポジティブCプレート19Bの厚さ方向のリタデーションRthの好適な範囲を検討するために、実施例6の光学素子10についてシンテック社製LCD-MASTER 1Dを用いて光学計算を行った。以下では、シミュレーションにより得られた結果より、入射角30°、波長450nm~650nmの範囲において、90%以上の変調及び非変調を実現することができる範囲を、好ましい範囲と判断した。また、以下で示すグラフでは、簡略化のため、波長450nm、550nm及び650nmにおける、入射角30°の最も悪い方位についてのデータのみ図示した。
図77は、実施例6の光学素子が備える第一のポジティブCプレートの厚さ方向のリタデーションRthに対する非変調時のストークスパラメータS3を示すグラフである。図78は、実施例6の光学素子が備える第一のポジティブCプレートの厚さ方向のリタデーションRthに対する変調時のストークスパラメータS3を示すグラフである。図77及び図78より、第一のポジティブCプレート19Aの厚さ方向のリタデーションRthは、0nm以上、190nm以下が好適であることが分かった。
図79は、実施例6の光学素子が備える第二のポジティブCプレートの厚さ方向のリタデーションRthに対する非変調時のストークスパラメータS3を示すグラフである。図80は、実施例6の光学素子が備える第二のポジティブCプレートの厚さ方向のリタデーションRthに対する変調時のストークスパラメータS3を示すグラフである。図79及び図80より、第二のポジティブCプレート19Bの厚さ方向のリタデーションRthは、0nm以上、220nm以下が好適であることが分かった。
(実施例7)
図178は、実施例7に係る光学素子の、第一状態及び第二状態における液晶分子の配向について説明する模式図である。上記実施形態1の変形例2に係る第七の構成を有する光学素子10のうち、図104に対応する光学素子10を作製した。本実施例の光学素子において、図178に示す第一のAプレート51(ポジティブAプレート)の遅相軸51Aの方位角は、52.7°であり、第二のAプレート52(ネガティブAプレート)の遅相軸52Aの方位角は10.2°であった。
第一のAプレート51の波長550nmにおけるReは140nmであり、波長550nmのReに対する波長450nmのReは1.01であり、波長550nmのReに対する波長650nmのReは0.99であった。ここで、Reは、面内位相差(Rp)を意味する。
第二のAプレート52の波長550nmにおけるReは120nmであり、波長550nmのReに対する波長450nmのReは1.08であり、波長550nmのReに対する波長650nmのReは0.96であった。
第一のCプレート61(ポジティブCプレート)の波長550nmにおけるRthは75nmであり、波長550nmのReに対する波長450nmのReは1.07であり、波長550nmのReに対する波長650nmのReは0.97であった。
第二のCプレート62(ネガティブCプレート)の波長550nmにおけるRthは-12.5nmであり、波長550nmのReに対する波長450nmのReは1.01であり、波長550nmのReに対する波長650nmのReは0.99であった。
ネガティブCプレート12の波長550nmにおけるRthは160nmであり、波長550nmのReに対する波長450nmのReは1.01であり、波長550nmのReに対する波長650nmのReは0.99であった。
第一の液晶セル11A及び第二の液晶セル11Bは以下のように作製した。第一の基板100、第二の基板200、第三の基板300及び第四の基板400に、それぞれ、第一のベタ状電極120、第二のベタ状電極220、第三のベタ状電極320及び第四のベタ状電極420を形成した。更に、ベタ状電極を形成した第一の基板100、第二の基板200、第三の基板300及び第四の基板400上に、それぞれ、水平配向膜を設けた。なお、これらの水平配向膜にラビング処理等を行ってプレチルトを付与してもよい。
ベタ状電極及び水平配向膜をそれぞれ設けた第一の基板100及び第二の基板200間に第一の液晶層500を設けて第一の液晶セル11Aを作製した。ベタ状電極及び水平配向膜をそれぞれ設けた第三の基板300及び第四の基板400間に第二の液晶層600を設けて第二の液晶セル11Bを作製した。第一の液晶層500に含まれる第一の液晶分子510及び第二の液晶層600に含まれる第二の液晶分子610は、いずれもポジ型の液晶分子であった(Δn=0.070)。第一の液晶層500及び第二の液晶層600の厚みは、いずれも、3.4μmであった。
第二状態における、第一の基板100側の第一の液晶分子511の配向方向511Aの方位角は0°であり、第二の基板200側の第一の液晶分子512の配向方向512Aの方位角は68°であった。第一状態における、第三の基板300側の第二の液晶分子611の配向方向611Aの方位角は90°であり、第四の基板400側の第二の液晶分子612の配向方向612Aは158°であった。
実施例7の光学素子(sHWP)について、右円偏光(S3=+1)を入射したときの、出射された光のストークスパラメータS3を評価した。図179は、実施例1及び実施例7に係る光学素子の、非変調時のストークスパラメータS3と出射光の波長との関係を示すグラフである。図180は、実施例1及び実施例7に係る光学素子の、変調時のストークスパラメータS3と出射光の波長との関係を示すグラフである。図179及び図180に、入射角を0°に設定した場合の、可視光領域における変調及び非変調特性を示す。図179及び図180に示すように、実施例7においても、実施例1と同様に、変調時及び非変調時共に波長450nm~650nmの範囲で|S3|≧0.9を達成することができた。
図181は、入射角を30°に設定した場合の、実施例1に係る光学素子の非変調時のストークスパラメータS3と方位角との関係を示すグラフである。図182は、入射角を30°に設定した場合の、実施例1に係る光学素子の変調時のストークスパラメータS3と方位角との関係を示すグラフである。図183は、入射角を30°に設定した場合の、実施例7に係る光学素子の非変調時のストークスパラメータS3と方位角との関係を示すグラフである。図184は、入射角を30°に設定した場合の、実施例7に係る光学素子の変調時のストークスパラメータS3と方位角との関係を示すグラフである。図181~図184では、波長450nm、550nm及び650nmにおける評価結果を示した。なお、図中のグレーでハッチングした範囲が、|S3|≧0.9となる好適な範囲である。
図181~図184に示すように、実施例7においても、変調時及び非変調時ともに450nm~650nmの範囲で、全方位において|S3|≧0.9を達成することができた。実施例7の特性は、実施例1よりも良化していた。
好適な液晶セルの設計を検討するために、実施例7の光学素子10についてシンテック社製LCD-MASTER 1Dを用いて光学計算を行った。以下では、シミュレーションにより得られた結果より、入射角30°、波長450nm~650nmの範囲において、90%以上の変調及び非変調を実現することができる範囲を、好ましい範囲と判断した。また、以下で示すグラフでは、簡略化のため、波長450nm、550nm及び650nmにおける、入射角30°の最も悪い方位についてのデータのみ図示した。
まず、第二のCプレート62(ネガティブCプレート)の厚さ方向のリタデーションRthの好適な範囲を検討するために、実施例7の光学素子10が備える第二のCプレート62の厚さ方向のリタデーションRthに対する非変調時のストークスパラメータS3、及び、実施例7の光学素子10が備える第二のCプレート62の厚さ方向のリタデーションRthに対する変調時のストークスパラメータS3、をシミュレーションにより求めた。図185は、実施例7の光学素子が備える第二のCプレートの厚さ方向のリタデーションRthに対する非変調時のストークスパラメータS3を示すグラフである。図186は、実施例7の光学素子が備える第二のCプレートの厚さ方向のリタデーションRthに対する変調時のストークスパラメータS3を示すグラフである。図185及び図186に示すように、第二のCプレート62の厚さ方向のリタデーションRthは、-170nm以上、0nm以下が好適であることが分かった。
第一のCプレート61(ポジティブCプレート)の厚さ方向のリタデーションRthの好適な範囲を検討するために、実施例7の光学素子10が備える第一のCプレート61の厚さ方向のリタデーションRthに対する非変調時のストークスパラメータS3、及び、実施例7の光学素子10が備える第一のCプレート61の厚さ方向のリタデーションRthに対する変調時のストークスパラメータS3、をシミュレーションにより求めた。図187は、実施例7の光学素子が備える第一のCプレートの厚さ方向のリタデーションRthに対する非変調時のストークスパラメータS3を示すグラフである。図188は、実施例7の光学素子が備える第一のCプレートの厚さ方向のリタデーションRthに対する変調時のストークスパラメータS3を示すグラフである。図187及び図188に示すように、第一のCプレート61の厚さ方向のリタデーションRthは、0nm以上、230nm以下が好適であることが分かった。
ネガティブCプレート12の厚さ方向のリタデーションRthの好適な範囲を検討するために、実施例7の光学素子10が備えるネガティブCプレート12に対する非変調時のストークスパラメータS3、及び、実施例7の光学素子10が備えるネガティブCプレート12の厚さ方向のリタデーションRthに対する変調時のストークスパラメータS3、をシミュレーションにより求めた。図189は、実施例7の光学素子が備えるネガティブCプレートの厚さ方向のリタデーションRthに対する非変調時のストークスパラメータS3を示すグラフである。図190は、実施例7の光学素子が備えるネガティブCプレートの厚さ方向のリタデーションRthに対する変調時のストークスパラメータS3を示すグラフである。図189及び図190に示すように、ネガティブCプレート12の厚さ方向のリタデーションRthは、-350nm以上、0nm以下が好適であることが分かった。
第二のAプレート52(ネガティブAプレート)の面内位相差Reの好適な範囲を検討するために、実施例7の光学素子10が備える第二のAプレート52の面内位相差Reに対する非変調時のストークスパラメータS3、及び、実施例7の光学素子10が備える第二のAプレート52の面内位相差Reに対する変調時のストークスパラメータS3、をシミュレーションにより求めた。図191は、実施例7の光学素子が備える第二のAプレートの面内位相差Reに対する非変調時のストークスパラメータS3を示すグラフである。図192は、実施例7の光学素子が備える第二のAプレートの面内位相差Reに対する変調時のストークスパラメータS3を示すグラフである。図191及び図192に示すように、第二のAプレート52の面内位相差Reは、92nm以上、140nm以下が好適であることが分かった。
第二のAプレート52の遅相軸52Aの方位角の好適な範囲を検討するために、実施例7の光学素子10が備える第二のAプレート52の遅相軸52Aの方位角に対する非変調時のストークスパラメータS3、及び、実施例7の光学素子10が備える第二のAプレート52の遅相軸52Aの方位角に対する変調時のストークスパラメータS3、をシミュレーションにより求めた。図193は、実施例7の光学素子が備える第二のAプレートの遅相軸の方位角に対する非変調時のストークスパラメータS3を示すグラフである。図194は、実施例7の光学素子が備える第二のAプレートの遅相軸の方位角に対する変調時のストークスパラメータS3を示すグラフである。図193及び図194に示すように、第二のAプレート52の遅相軸52Aの方位角は、4°以上、17°以下が好適であることが分かった。
第一のAプレート51(ポジティブAプレート)の面内位相差Reの好適な範囲を検討するために、実施例7の光学素子10が備える第一のAプレート51の面内位相差Reに対する非変調時のストークスパラメータS3、及び、実施例7の光学素子10が備える第一のAプレート51の面内位相差Reに対する変調時のストークスパラメータS3、をシミュレーションにより求めた。図195は、実施例7の光学素子が備える第一のAプレートの面内位相差Reに対する非変調時のストークスパラメータS3を示すグラフである。図196は、実施例7の光学素子が備える第一のAプレートの面内位相差Reに対する変調時のストークスパラメータS3を示すグラフである。図195及び図196に示すように、第一のAプレート51の面内位相差Reは、70nm以上、220nm以下が好適であることが分かった。
第一のAプレート51の遅相軸51Aの方位角の好適な範囲を検討するために、実施例7の光学素子10が備える第一のAプレート51の遅相軸51Aの方位角に対する非変調時のストークスパラメータS3、及び、実施例7の光学素子10が備える第一のAプレート51の遅相軸51Aの方位角に対する変調時のストークスパラメータS3、をシミュレーションにより求めた。図197は、実施例7の光学素子が備える第一のAプレートの遅相軸の方位角に対する非変調時のストークスパラメータS3を示すグラフである。図198は、実施例7の光学素子が備える第一のAプレートの遅相軸の方位角に対する変調時のストークスパラメータS3を示すグラフである。図197及び図198に示すように、第一のAプレート51の遅相軸51Aの方位角は、47°以上、52°以下が好適であることが分かった。
図199は、偏光状態について説明する図である。図185等のグラフの横軸は位相差や角度を表しており、縦軸は、ストークスパラメータと呼ばれる偏光を表す数値の中の「S3」の値を表している。図199のポアンカレ球に示すように、S3=+1は偏光状態を表すポアンカレ球上の北極にあたり、右円偏光を表す。S3=-1はポアンカレ球上の南極にあたり、左円偏光を表す。すなわち、本明細書においては、S3が±1に近いほど、良好な特性を有することになる。
また、本明細書では右円偏光と左円偏光とを切り替える光学素子10について説明しているため、入射光としてS3=+1の右円偏光が入ってきた時に、当該入射光をS3=+1の右円偏光のまま出射するか、S3=-1の左円偏光に変換して出射するかの2値が存在する。したがって、本明細書では、非変調時及び変調時の二つのグラフを用いて、好適な範囲について検討している。
また、本明細書では広帯域かつ広視野角の光学素子を目標としている。したがって、斜め方向においても、RGB(赤色光、緑色光及び青色光)全ての円偏光(本明細書では右円偏光)に対して変調できるかを検討するために、入射角を30°とし、450nm、550nm及び650nmの波長に対してのS3をプロットした。
(実施例8)
上記実施形態1の変形例3と同様の構成を有する実施例8の光学素子を作製した。第一の位相差フィルム71及び第二の位相差フィルム72は、同様のものを使用した。
本実施例の光学素子において、図201に示す第一の位相差フィルム71(二軸フィルム)の遅相軸71Aの方位角は、57.7度であり、第二の位相差フィルム72(二軸フィルム)の遅相軸72Aの方位角は、15.8度であった。
第一の位相差フィルム71の波長550nmにおける面内位相差Re、及び、第二の位相差フィルム72の波長550nmにおける面内位相差Reは、いずれも、140nmであった。第一の位相差フィルム71の、波長550nmの面内位相差に対する波長450nmの面内位相差、及び、第二の位相差フィルム72の、波長550nmの面内位相差に対する波長450nmの面内位相差は、いずれも、1.01であった。第一の位相差フィルム71の、波長550nmの面内位相差に対する波長650nmの面内位相差、及び、第二の位相差フィルム72の、波長550nmの面内位相差に対する波長650nmの面内位相差は、いずれも、0.99であった。
第一の位相差フィルム71及び第二の位相差フィルム72は、上記(式N5)及び(式N6)を満たしていた。
第一の液晶セル11A及び第二の液晶セル11Bは以下のように作製した。第一の基板100、第二の基板200、第三の基板300及び第四の基板400に、それぞれ、第一のベタ状電極120、第二のベタ状電極220、第三のベタ状電極320及び第四のベタ状電極420を形成した。更に、ベタ状電極を形成した第一の基板100、第二の基板200、第三の基板300及び第四の基板400上に、それぞれ、水平配向膜を設けた。なお、これらの水平配向膜にラビング処理等を行ってプレチルトを付与してもよい。
ベタ状電極及び水平配向膜をそれぞれ設けた第一の基板100及び第二の基板200間に第一の液晶層500を設けて第一の液晶セル11Aを作製した。ベタ状電極及び水平配向膜をそれぞれ設けた第三の基板300及び第四の基板400間に第二の液晶層600を設けて第二の液晶セル11Bを作製した。第一の液晶層500に含まれる第一の液晶分子510及び第二の液晶層600に含まれる第二の液晶分子610は、いずれもポジ型の液晶分子であった(Δn=0.070)。第一の液晶層500及び第二の液晶層600の厚みは、いずれも、3.4μmであった。
第二状態における、第一の基板100側の第一の液晶分子511の配向方向511Aの方位角は0°であり、第二の基板200側の第一の液晶分子512の配向方向512Aの方位角は68°であった。第一状態における、第三の基板300側の第二の液晶分子611の配向方向611Aの方位角は90°であり、第四の基板400側の第二の液晶分子612の配向方向612Aは158°であった。
実施例8の光学素子(sHWP)について、右円偏光(S3=+1)を入射したときの、出射された光のストークスパラメータS3を評価した。図202は、実施例8、比較例1及び比較例2に係る光学素子の、非変調時のストークスパラメータS3と出射光の波長との関係を示すグラフである。図203は、実施例8、比較例1及び比較例2に係る光学素子の、変調時のストークスパラメータS3と出射光の波長との関係を示すグラフである。図202及び図203に、入射角を0°に設定した場合の、可視光領域における変調及び非変調特性を示す。図202及び図203に示すように、実施例8においても、変調時及び非変調時共に波長450nm~650nmの範囲で|S3|≧0.9を達成することができた。
図204は、入射角を30°に設定した場合の、実施例8に係る光学素子の非変調時のストークスパラメータS3と方位角との関係を示すグラフである。図205は、入射角を30°に設定した場合の、実施例8に係る光学素子の変調時のストークスパラメータS3と方位角との関係を示すグラフである。図204及び図205では、波長450nm、550nm及び650nmにおける評価結果を示した。なお、図中のグレーでハッチングした範囲が、|S3|≧0.9となる好適な範囲である。
図204及び図205に示すように、実施例8においても、変調時及び非変調時ともに450nm~650nmの範囲で、全方位において|S3|≧0.9を達成することができた。
実施例8の光学素子10では、第一の位相差フィルム71及び第二の位相差フィルム72に同じ二軸フィルムを用いることにより広視野角化を実現することができた。このような光学素子は低コストで製造可能である。また、フィルムの枚数を減らすことができるため、薄型化にも有利であると考えられる。