JP2023110211A - 反応経路探索プログラム、反応経路探索システム及び反応経路探索方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】化学的な反応経路の探索において、原子数の増加に応じた計算コストの増加を抑制しやすい反応経路探索プログラム、反応経路探索システム及び反応経路探索方法を提供する。【解決手段】反応経路の探索対象となる構造中の原子からなる複数のフラグメントペアのそれぞれについて、当該構造のポテンシャルエネルギー曲面(PES)を示すE(Q)が極小値を取る平衡状態の1つである第1の平衡状態に対応するQ=Q0におけるE(Q)の二階の微分係数b及び三階の微分係数aの少なくともいずれかを算出する。次に、複数のフラグメントペアのうち、a及びbの少なくともいずれかの大きさに基づく優先順位の高いフラグメントペアに関して、それより優先順位の低いその他のフラグメントペアに先行して、第1の平衡状態から他の平衡状態である第2の平衡状態までの遷移における反応経路探索を実行する。【選択図】図1

Description

本発明は、化学的な反応経路を探索する反応経路探索プログラム、反応経路探索システム及び反応経路探索方法に関する。
与えられた構造に対する化学的な反応経路を探索する方法として非特許文献1に記載の人工力誘起反応法(AFIR法)がある。AFIR法は、構造中の複数の原子の組み合わせからなるフラグメントペアに力を加えることで構造の変形を誘起し、別の構造へと遷移させる手法である。このとき、遷移の過程において系が辿る座標変化から、対応する反応経路が得られる。この操作を、構造中の様々なフラグメントペアに対して系統的に適用することにより、様々な別の構造への反応経路が自動探索される。
前田 理,原渕 祐、「分子および周期系における化学変換の経路探索:力を利用したアプローチ(Exploring paths of chemical transformations in molecular and periodic systems: An approach utilizing force)」、Wiley Interdisciplinary Reviews: Computational Molecular Science, 11, e1538
ある構造からなる系において考慮すべきフラグメントペアの数は、系に含まれる原子数Nの二乗に比例して増加する。AFIR法における反応経路の探索はフラグメントペアごとに実施される。このため、探索対象となる構造における原子数が増加すると、計算すべきフラグメントペアの組み合わせが飛躍的に増加し、反応経路を探索するための計算コストが膨大なものとなるおそれがある。
本発明の目的は、原子数の増加に応じた計算コストの増加を抑制しやすい反応経路探索プログラム、反応経路探索システム及び反応経路探索方法を提供することにある。
本発明に係る反応経路探索プログラムは、複数個の原子からなる構造体における反応経路を、前記複数個の原子間の位置関係によって表される構造の変化として算出する反応経路探索システムとして1又は複数のコンピュータを機能させるプログラムであって、前記反応経路探索システムが、前記複数個の原子から抽出されたN個(N:自然数)の原子からなるフラグメントAと前記複数個の原子から抽出された、前記フラグメントAと別のN個(N:自然数)の原子からなるフラグメントBとによって構成されるフラグメントペアに関し、前記複数個の原子の位置を示す幾何学的パラメータQにおけるポテンシャルエネルギーをE(Q)とし、前記フラグメントAに属するs番目(s:s≦Nを満たす自然数)の原子と前記フラグメントBに属するt番目(t:t≦Nを満たす自然数)の原子との距離をrstとし、R及びRをそれぞれ前記s番目の原子及び前記t番目の原子の共有結合半径とし、ρを+1及び-1のいずれかとし、p及びαを定数値としたときに、数式2に基づいて算出される数式1の関数FAFIR(Q)が最小値を取る前記構造の変化を算出する構造変化算出手段と、互いに異なる原子の組み合わせを有する複数の前記フラグメントペアのそれぞれについて、E(Q)が極小値を取る平衡状態の1つである第1の平衡状態に対応する前記複数個の原子の位置におけるE(Q)の二階の微分係数b及び三階の微分係数aの少なくともいずれかを算出する微分係数算出手段と、前記複数のフラグメントペアのうち、前記微分係数算出手段が算出したa及びbの少なくともいずれかの大きさに基づく優先順位の高い前記フラグメントペアに関して、それより優先順位の低いその他の前記フラグメントペアに先行して、前記第1の平衡状態から他の前記平衡状態である第2の平衡状態までの遷移における前記構造の変化を前記構造変化算出手段に算出させる平衡状態間変化算出手段とを備えている。
(数式1)
Figure 2023110211000002
(数式2)
Figure 2023110211000003
また、本発明の別の観点に係る反応経路探索システムは、複数個の原子からなる構造体における反応経路を、前記複数個の原子間の位置関係によって表される構造の変化として算出するシステムであって、前記複数個の原子から抽出されたN個(N:自然数)の原子からなるフラグメントAと前記複数個の原子から抽出された、前記フラグメントAと別のN個(N:自然数)の原子からなるフラグメントBとによって構成されるフラグメントペアに関し、前記複数個の原子の位置を示す幾何学的パラメータQにおけるポテンシャルエネルギーをE(Q)とし、前記フラグメントAに属するs番目(s:s≦Nを満たす自然数)の原子と前記フラグメントBに属するt番目(t:t≦Nを満たす自然数)の原子との距離をrstとし、R及びRをそれぞれ前記s番目の原子及び前記t番目の原子の共有結合半径とし、ρを+1及び-1のいずれかとし、p及びαを定数値としたときに、数式2に基づいて算出される数式1の関数FAFIR(Q)が最小値を取る前記構造の変化を算出する構造変化算出手段と、互いに異なる原子の組み合わせを有する複数の前記フラグメントペアのそれぞれについて、E(Q)が極小値を取る平衡状態の1つである第1の平衡状態に対応する前記複数個の原子の位置におけるE(Q)の二階の微分係数b及び三階の微分係数aの少なくともいずれかを算出する微分係数算出手段と、前記複数のフラグメントペアのうち、前記微分係数算出手段が算出したa及びbの少なくともいずれかの大きさに基づく優先順位の高い前記フラグメントペアに関して、それより優先順位の低いその他の前記フラグメントペアに先行して、前記第1の平衡状態から他の前記平衡状態である第2の平衡状態までの遷移における前記構造の変化を前記構造変化算出手段に算出させる平衡状態間変化算出手段とを備えている。
また、本発明の別の観点に係る反応経路探索方法は、複数個の原子からなる構造体における反応経路を、前記複数個の原子間の位置関係によって表される構造の変化として算出する方法であって、前記複数個の原子から抽出されたN個(N:自然数)の原子からなるフラグメントAと前記複数個の原子から抽出された、前記フラグメントAと別のN個(N:自然数)の原子からなるフラグメントBとによって構成されるフラグメントペアに関し、前記複数個の原子の位置を示す幾何学的パラメータQにおけるポテンシャルエネルギーをE(Q)とし、前記フラグメントAに属するs番目(s:s≦Nを満たす自然数)の原子と前記フラグメントBに属するt番目(t:t≦Nを満たす自然数)の原子との距離をrstとし、R及びRをそれぞれ前記s番目の原子及び前記t番目の原子の共有結合半径とし、ρを+1及び-1のいずれかとし、p及びαを定数値としたときに、数式2に基づいて算出される数式1の関数FAFIR(Q)が最小値を取る前記構造の変化を算出する構造変化算出ステップと、互いに異なる原子の組み合わせを有する複数の前記フラグメントペアのそれぞれについて、E(Q)が極小値を取る平衡状態の1つである第1の平衡状態に対応する前記複数個の原子の位置におけるE(Q)の二階の微分係数b及び三階の微分係数aの少なくともいずれかを算出する微分係数算出ステップと、前記複数のフラグメントペアのうち、前記微分係数算出ステップにおいて算出されたa及びbの少なくともいずれかの大きさに基づく優先順位の高い前記フラグメントペアに関して、それより優先順位の低いその他の前記フラグメントペアに先行して、前記第1の平衡状態から他の前記平衡状態である第2の平衡状態までの遷移における前記構造の変化を前記構造変化算出ステップによって算出させる平衡状態間変化算出ステップとを備えている。
本発明の反応経路探索プログラム、反応経路探索システム及び反応経路探索方法によると、複数個の原子からなる構造体における反応経路を、原子の位置関係によって表される構造の変化として算出する。このとき、第1の平衡状態に対応する原子の位置におけるE(Q)の二階の微係数b及び三階の微係数aの少なくともいずれかの大きさに基づく優先順位の高いフラグメントペアに関して、優先順位の低いフラグメントペアに先行して構造の変化が算出される。例えば、二階の微係数bが小さいことは、局所的なE(Q)の上昇が小さい傾向を示す。このため、例えば、bが小さいフラグメントペアを優先した場合には第1の平衡状態付近におけるE(Q)の上昇が小さい経路を得ることができる。また、三階の微係数aが小さいことは、E(Q)において下に凸から上に凸への変化が起こる傾向を示す。このため、別の例としてaが小さいフラグメントペアを優先した場合には第1の平衡状態付近において遷移状態が見つかりやすいと期待される。したがって、E(Q)の二階の微係数b及び三階の微係数aの少なくともいずれかの大きさに基づいて一部のフラグメントペアに関してその他のフラグメントペアよりも優先的に計算を実行することにより、計算コストをそれほど掛けることなく目的となる反応経路を取得できる可能性が高くなる。このため、原子数の増加に応じた計算コストの増加が抑制されやすい。
また、本発明においては、前記反応経路探索システムが、前記平衡状態間変化算出手段による過去の算出結果に基づいて得られた全ての前記第2の平衡状態と初期状態とからなるN個(N:2以上の自然数)の前記平衡状態からいずれかを前記第1の平衡状態として選択する状態選択手段をさらに備えており、前記状態選択手段が選択した前記第1の平衡状態から前記第2の平衡状態までの遷移における前記フラグメントペアに関する前記構造の変化を前記平衡状態間変化算出手段が前記構造変化算出手段に算出させることを繰り返すことが好ましい。これによると、すでに取得された平衡状態のいずれかを第1の平衡状態とし、第1の平衡状態から第2の平衡状態までの構造の変化の算出、つまり、反応経路の取得を繰り返す。これにより、初期状態及び過去に取得された第2の平衡状態からなる取得済みの平衡状態並びにこれらの平衡状態間を結ぶ反応経路からなるネットワークを取得可能である。
また、本発明においては、前記反応経路探索システムが、前記N個の平衡状態間の遷移に係るN*N個の速度定数からなるN行N列の速度定数行列から、前記N個の平衡状態の加重和で表されるl個(l:l<Nを満たす自然数)の超状態間の遷移に係るl*l個の速度定数からなる速度定数行列を、RCMC法に基づいて速度定数行列を縮約することをm回(m:m=N-lを満たす自然数)繰り返すことで取得する速度定数縮約手段を含んでおり、前記状態選択手段が、m=1,2,…,M(M:M<Nを満たす自然数)のそれぞれについて、縮約された速度定数行列を前記速度定数縮約手段が取得した結果に基づいて、前記N個の平衡状態のそれぞれをEQ(i:N以下の自然数)とし、前記l個の超状態のそれぞれをSS(j:l以下の自然数)とし、m回の縮約後のEQのポピュレーションをp(m)とし、m回の縮約後のSSのポピュレーションをQ(m)とし、m回の縮約後のSSに対するEQの寄与をχji(m)とし、EQの相対ギブズエネルギーをΔGとし、気体定数をRとし、モデル温度パラメータをTとするときに、数式3に基づいて算出されるp(m)及び数式4に基づいて算出されるΛが大きいほど、EQが選択されやすくなるように、前記N個の平衡状態からいずれかを前記第1の平衡状態として選択することが好ましい。これによると、反応経路のトラフィック量を表すΛが大きい平衡状態が反応経路の算出において選択されやすくなる。
(数式3)
Figure 2023110211000004
(数式4)
Figure 2023110211000005
また、本発明においては、前記状態選択手段が、Λが大きいEQほど選択されやすく、且つ、EQを前記第1の平衡状態として前記構造変化算出手段が前記構造の変化を算出した回数nが小さいEQほど選択されやすく、且つ、前記N個の平衡状態について前記構造変化算出手段が前記構造の変化を算出した全体の回数nallが大きいほどΛの違いが前記平衡状態の選択されやすさの違いに表れにくくなるように、前記N個の平衡状態からいずれかを前記第1の平衡状態として選択することが好ましい。これによると、nallが比較的小さい場合には、Λが大きく且つnが小さい平衡状態ほど計算対象として選択されやすくなる。これによって、構造の変化の算出開始からある程度nallが大きくなるまで、Λが大きい(トラフィック量が大きい)平衡状態が適切に選択されやすい。一方、nallが比較的大きくなっていくと、それに応じてΛの違いが平衡状態の選択されやすさの違いに表れにくくなってくる。したがって、トラフィック量が小さい平衡状態も選択されるようになってくる。このように、上記構成によると、計算の進度によって変動する優先度に適切に応じた平衡状態の選択が実施される。
また、本発明においては、前記状態選択手段が、前記N個の平衡状態について前記構造変化算出手段が前記構造の変化を算出した全体の回数をnallとし、EQを前記第1の平衡状態として前記構造変化算出手段が前記構造の変化を算出した回数をnとし、ξを0以上1以下の実数とし、α及びβをそれぞれ0以上1以下の実数とするときに、数式5のνが最も大きいEQを前記第1の平衡状態として選択することが好ましい。数式5によって求められるνは、Λが大きいほど大きく、且つ、nallが比較的小さい場合にはnが小さいほど大きい値を有するが、nallが比較的大きくなるとΛの違いがνの違いに現れにくくなる。したがって、νが最も大きいEQを選択することで、計算の進度によって変動する優先度に適切に応じた平衡状態が選択される。
(数式5)
Figure 2023110211000006
本発明の一実施形態に関して用いられるAFIR法における複数の原子からなるフラグメントペアの概念図である。 本発明の一実施形態に関して用いられるAFIR法に基づいて取得される反応経路のネットワークを示す概念図である。 本発明の一実施形態に係る反応経路探索システムの機能的構成を示すブロック図である。 図1のフラグメントペアにおける第0層原子同士の相対的な位置をこれらの原子を通る直線に沿って変更した場合におけるPESの変化を、平衡状態EQの周辺に関して概念的に示すグラフである。 図3の反応経路探索システムが実行する一連の処理の流れを示すフロー図である。
本発明の一実施形態に係る反応経路探索システム1について図面を参照しつつ説明する。反応経路探索システム1は、複数個の原子からなる分子等の構造体における反応経路を探索するものである。反応経路探索システム1は、人工力誘起反応法(AFIR法)、特に、単一成分AFIR法(SC-AFIR法)に基づいて反応経路を探索する。まず、SC-AFIR法に基づく反応経路の探索方法の概要について説明する。続いて、反応経路探索システム1の構成や機能等の詳細について説明する。
[反応経路探索方法の概要]
AFIR法は、次の数式1及び2に示すAFIR関数FAFIRを使用して、図1に示すようなフラグメントA及びBからなるフラグメントペア間に力を加えることによって構造変換を誘発する方法である。
(数式1)
Figure 2023110211000007
(数式2)
Figure 2023110211000008
ここで、フラグメントAは、上記構造体中のN個(N:自然数)の原子からなる構造体の断片である。フラグメントBは、上記構造体中の別のN個(N:自然数)の原子からなる構造体の断片である。E(Q)は、上記構造体中の原子の位置を示す幾何学的パラメータQにおけるポテンシャルエネルギー曲面(PES)に対応する。rstは、フラグメントAに属するs番目(s:s≦Nを満たす自然数)の原子とフラグメントBに属するt番目(t:t≦Nを満たす自然数)の原子との距離である。R及びRは、それぞれ上記s番目の原子及び上記t番目の原子の共有結合半径である。ρは+1及び-1のいずれかに設定される。pは、4以上且つ8以下の範囲から適宜(例えば、p=6に)設定される。フラグメント間に作用させる力の強さを示すαは次の数式1-1に基づく定数である。数式1-1のRとεとして、Ar-Ar Lennard-Jonesパラメータ、つまり、それぞれ3.8164*10-10mと1.0061kJ/molが採用される。数式1-1が表すαは、Ar-Arペアが互いに衝突エネルギーγで直接衝突する場合において、最小点から転換点まで移動するときに受ける平均力に対応する。したがって、γはモデル衝突エネルギーパラメータと呼ばれ、AFIR法における力が克服できるバリアのおおよその上限に対応する。γはユーザによって適宜設定されればよい。
(数式1-1)
Figure 2023110211000009
反応経路は、標準の準ニュートン法によってAFIR関数を最小化して得られる経路である(非特許文献1参照)。この経路を「AFIR経路」と呼ぶ。AFIR経路に沿って、近似平衡(EQ)構造及び遷移状態(TS)構造が、それぞれAFIR関数が極小値を取る構造及び極大値を取る構造として取得される。これらの構造は、実際のEQ及びTSの初期推定として使用可能である。ただし、これらのエネルギーの最大値が実際のTSから大きく外れている場合がある。この状況は、特にγが大きすぎる場合に発生する可能性がある。このような場合でも、AFIR経路の緩和計算を実行することで、これらのTSの見落としが回避される。この目的のために、パスポイント全体を最適化する任意のダブルエンド方式を使用できる。このための方法として、局所平面更新(LUP)法が採用されている(J.Chem.Phys.1991,94,751)。LUP法を使用した一実装例によると、パスポイントは特定のパスに沿って均等に分散され、パスの接線に垂直な超平面内の低エネルギーポイントに移動する。これによって得られた経路を「LUP経路」と呼ぶ。ここで、2つのエンドポイントとすべての極大値は、それぞれ最小値と最大値に直接最適化される。AFIR経路又はLUP経路上の近似EQ及びTSは、標準の準ニュートン法によって実際のEQ及びTSに最適化される。次に、取得したすべてのTSから開始して、固有反応座標(IRC)の計算が実行される。最後に、取得したすべてのEQ及びTSにおいて基準振動解析が実行される。
SC-AFIR法では、AFIR経路はEQから計算される(J.Comput.Chem.2014,35,166)。EQに対応する構造は、分子、分子複合体、有機金属複合体、クラスター、表面の吸着構造、結晶構造等である。単一のEQから、様々なフラグメントA及びBからなるフラグメントペアのAFIR関数を最小化することにより、様々なAFIR経路が取得される。各EQに対応する構造では、フラグメントペアは、原子ペアに焦点を当てることによって体系的に定義される。つまり、図1に示す通り、フラグメントAとフラグメントBでは、2つの原子が第0層原子として割り当てられている。次に、第0層の原子に接続された第1層の原子と、第1層の原子に接続された第2層の原子が、フラグメントAとBに追加される。各フラグメント中の第1層及び第2層の原子において、他方のフラグメント内の原子との距離が第0層原子間の距離未満の原子は、各フラグメントから削除される。一連のフラグメントペアは、距離が非常に長いものを除く全ての原子ペアにこの手順を適用することによって生成される。次に、各フラグメントペアのAFIR経路が計算される。仮に、全てのフラグメントペアについてAFIR経路が計算される場合、Natomsを原子の数とすると、単一のEQの周りの計算を完了するために必要なコストはNatoms とスケーリングされる。既に取得済みのEQを出発点としてAFIR経路を算出し、もって、新たなEQやEQ間の経路の取得を繰り返すことにより、N個(N:2以上の自然数)のEQで構成される図2に示すような反応経路ネットワークが取得される。以下、N個のEQからなる反応経路ネットワークにおいて、i番目(i:N以下の自然数)のEQをEQと示す場合がある。このうち、EQは初期構造としての反応物を示す。図2は、N=6の場合の反応経路ネットワークの一例を示す。
次に、反応経路の計算コストを低下させるために採用されるキネティックベースのナビゲーションについて説明する。EQの数は、原子の数Natomsに関して指数関数的に増加することが示されている。したがって、Natomsが小さくない限り、上記のSC-AFIR法に基づく上記の計算手順を全てのEQに適用することは困難である。一方、穏やかな実験条件下で動的にアクセスできるEQの数は限られている。そこで、速度論的方法である速度定数行列縮約(RCMC)法を使用し、特定の実験条件下でEQが速度論的にアクセス可能かどうかを判断することにより、速度論的にアクセスできないEQの探索コストを排除する(Chem.Lett.2019,48,47)。
RCMC法では、縮約と呼ばれる操作を繰り返すことにより、N個のEQで構成される反応経路ネットワーク全体を考慮した速度論的分析を可能にする。N個のEQ同士の遷移に関するN*N個の速度定数から、N行N列の速度定数行列が得られる。RCMC法では、M回の縮約によって、より小さなn行n列の速度定数行列(n=N-M)が得られる。M回の縮約後のn行n列の速度定数行列は、n個の超状態(SS)間の遷移における速度定数を表す。SSは、全てのEQの加重和として表される。1回の縮約により速度定数行列のサイズが1つ減少し、準定常状態近似とボルツマン分布保存条件に基づいて、速度定数行列のすべての非対角要素が更新される。縮約によって得た速度定数行列の非対角要素は、あるSSから別のSSへの遷移の速度定数に対応する。縮約は、ユーザが適宜設定可能なしきい値tMAXよりもライフタイムが短いすべての状態に適用される。M回の縮約により、tMAXよりも長いタイムスケールで相互に遷移するn個のSSが取得される。RCMC法のより詳細な説明は後述の通りである。
m回縮約後のEQのポピュレーションをp(m)とする。ポピュレーションとは、ある時刻におけるそのEQの存在確率を示す。キネティックベースのナビゲーションでは、ユーザは実験条件を考慮して初期ポピュレーションを提供する必要がある。たとえば、EQが反応物である場合、EQの初期ポピュレーションは1(p(0)=1)に設定され、他のすべてのEQのポピュレーションは0(pi≠1(0)=0)に設定される。次に、全てのEQについて、数式3及び4に基づき、インデックスΛi、いわゆるトラフィック量が計算される。
(数式3)
Figure 2023110211000010
(数式4)
Figure 2023110211000011
数式3、4において、Q(m) は、n個のSSのそれぞれをSS(j:j≦nを満たす自然数)としたときに、m回の縮約後のSSのポピュレーションを示す。χ(m) jiは、m回の縮約後のSSへのEQの寄与である。ΔGは、量子化学計算に基づく基準振動解析によって得られるEQの相対ギブズエネルギーである。Rは気体定数、Tはモデル温度パラメータである。数式4は、tMAX内で発生するEQへのポピュレーション流入とEQからのポピュレーション流出の合計を表す。例えば、反応物EQ、反応物EQより十分安定な中間体EQ、および中間体EQより十分安定な生成物EQで構成される3状態システムでは、実験条件として反応物EQから生成物EQへの経路が中間体EQを経由する場合にのみ開いている場合には、反応物EQと生成物EQはΛ=1.0であり、中間体EQはΛ=2.0である。一方、実験条件からEQにアクセスできない場合、Λはゼロになる。本実施形態においては、後述の通り、かかるΛ値を使用してN個のEQから1つが選択される。そして、選択されたEQにおいてAFIR経路が算出される。AFIR経路は、まだ処理されていないフラグメントペアから適宜選択されたフラグメントペアに対して計算される。Tは、ゼロ以外のΛを持つEQの中から高エネルギーEQが選択される頻度を決定する。通常は、例えばT=3000Kのような高い値に設定される。
[システムの詳細]
反応経路探索システム1は、1又は複数台のコンピュータを含むハードウェアと、反応経路探索システム1の各種機能を実現するようにハードウェアを機能させるプログラムを含むソフトウェアとを備えている。各コンピュータは、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read-Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等のメモリ装置、並びに、入出力インタフェース等の各種インタフェース等からなる。また、コンピュータには、ユーザ入力を受け付ける入力装置やディスプレイ等の出力装置、ハードディスク等の記録装置等が外部装置として接続されるか、内部装置として搭載されている場合がある。ソフトウェアは、メモリ装置やハードディスク等の記録装置に記録されたプログラムデータ等からなる。そして、コンピュータ等のハードウェアがソフトウェアに従って演算処理、入出力処理等の各種の情報処理を実行する。ソフトウェアに従ったハードウェアの機能により、以下において説明する反応経路探索システム1の各種の機能が実現される。
なお、ハードウェアが複数台のコンピュータを含んでいる場合、複数台のコンピュータが協働して上記各種の機能に係る処理を実行してもよい。かかる協働には様々な態様があり得る。例えば、コンピュータ同士がインターネット等の通信ネットワークを通じて接続され、各コンピュータが必要な情報を互いに通信しつつ必要な演算処理を分担して実行してもよい。また、一のコンピュータはユーザインタフェース機能を担当し、他のコンピュータは、一のコンピュータにおいてユーザ入力され、通信ネットワークを通じて送信された入力情報に基づいて演算処理を実行してもよい。
反応経路探索システム1は、図3に示すように、記憶部10、フラグメントペア導出部20、フラグメントペアランキング取得部30、状態選択部40及び反応経路算出部50を備えている。記憶部10は、取得済みEQのリストを示すデータ、原子の座標を示す構造データ、フラグメントA及びBにおける原子の組み合わせを示すフラグメントデータ、探索回数データ等を記憶している。取得済みEQのリストは、反応物に対応するEQと反応経路探索によって取得されたその他のEQ(EQi≠1)とからなる。構造データは、取得済みEQのリストに含まれる各EQについて原子の座標を示すデータを含んでいる。原子の座標は、構造体を構成する各原子の種類及び位置を表している。原子の位置は、例えば、原子の3次元の位置座標(例えば、デカルト座標系上の座標)によって示される。フラグメントデータは、取得済みEQのリストについて、各EQにおいて設定されたフラグメントペア(フラグメントA及びB)における原子の組み合わせを示すデータである。記憶部10は、EQと関連付けてフラグメントデータを記憶している。フラグメントデータは、フラグメントペアに関してランキング(本発明における優先順位)が取得されている場合には、そのフラグメントペアのランキングを示すデータを含んでいる。ランキングの高さは、反応経路探索が行われる優先順位の高さを示す。探索回数データは、EQを出発点とする反応経路探索が実行された回数nを取得済みのEQリストに含まれる各EQ(i=1,2,…)について示す。さらに、フラグメントデータは、各フラグメントペアに関して反応経路探索が実行済みであるか否かを示すデータを含んでいる。このデータは、デフォルトでは実行済みでないことを示す。また、記憶部10は、反応経路探索システム1の各部が以下の演算を行う際に使用する各種の数値条件を示すデータを記憶している。
フラグメントペア導出部20は、SC-AFIR法に従った上述の方法に基づいて、構造体を構成する全ての原子からフラグメントA及びBのそれぞれを構成する原子の組み合わせを抽出する。この抽出結果を示すフラグメントデータは記憶部10に記憶される。フラグメントペア導出部20は、各EQについてフラグメントペアを構成する原子の組み合わせを生成する。
フラグメントペアランキング取得部30は、記憶部10のフラグメントデータを参照し、取得済みEQのリストから、フラグメントペアのランキングが取得されていないEQ(以下、対象EQとする。)を把握する。そして、対象EQのそれぞれについて以下の通りランキングを取得する。
まず、フラグメントペアランキング取得部30は、対象EQに関してフラグメントペア導出部20が導出したフラグメントペアのそれぞれについて、Q=QにおけるE(Q)の二階微分係数b及び三階微分係数aを導出する。ここで、E(Q)は上述の通りPESを示す。Qは対象EQに対応する構造における原子の位置を示す。二階微分係数b及び三階微分係数aは、例えば、図4に示すQ=Q、Q=Q’における曲線Cの接線の傾きとE(Q)の値とに基づいて算出される。Q’(=Q+ΔQ)は、Q=Qにおけるフラグメントペア中の一対の第0層原子間の距離をD(図1参照)とするとき、かかる距離がDからD+ΔD(例えば、ΔD=0.05オングストローム)に微小に変化するように、一対の第0層原子間を結ぶ直線に沿って、一対の第0層原子における少なくともいずれか一方の位置を他方に対して微小に相対移動させた後の構造における原子の位置を示す。また、曲線Cは、上記直線に沿って上記一対の第0層原子同士の相対位置を変化させた際のE(Q)の変化を示すPESに沿った曲線である。フラグメントペアランキング取得部30は、Q’又はΔQを次のような条件を満たすように最適化する。その条件は、一対の第0層原子間の距離をD+ΔDに固定しつつ、全原子間の距離を要素とする距離行列に関し、Q=Q’における距離行列の第0層原子間に対応する要素以外の行列要素が、Q=Qにおける距離行列の第0層原子間に対応する要素以外の行列要素をできる限りよく再現することである。E(Q)を三次関数f(x)=a*x+a*x+a*x+aで表されるとみなし、4つの数式:f(x(Q))=E(Q)、f(x(Q’))=E(Q’)、f’(x(Q))=0、f’(x(Q’))=(Q=Q’における曲線Cの接線lの傾き)からなる4連立方程式をa、a、a及びaについて解くことでf(x)の各係数を求める。なお、xは一対の第0層原子間を結ぶ直線に沿った座標軸を示し、f’(x)はf(x)の一次導関数(df/dx)であり、f’’(x)はf(x)の二次導関数(df/dx)であるとする。また、f(x(Q))及びf’(x(Q))は、位置Qに対応するxにおけるf(x)及びf’(x)の値を示すものとする。そして、求めたa、a、a及びaを代入したf(x)を用いてb=f’’(Q)及びa=f’’’(Q)としてa及びbを求める。なお、f’’’(x)はf(x)の三次導関数(df/dx)であるとする。なお、フラグメントペアランキング取得部30による二階の微分係数b及び三階の微分係数aを算出する機能及びステップが、本発明における微分係数算出手段の機能及び微分係数算出ステップに対応する。
フラグメントペアランキング取得部30は、上記のように取得した二階微分係数b及び三階微分係数aの少なくともいずれかによって表される数式4―1~4-4のζSecond、ζThird、ζScaled及びζAverageのいずれかに基づき、フラグメントペアのランキングを決定する。ζSecond、ζThird、ζScaled及びζAverageのいずれを使用するかは、入力装置を通じたユーザ入力に従って選択される。ζSecond、ζThird、ζScaled及びζAverageのいずれかのうち、選択されたものをζとする。このとき、フラグメントペアランキング取得部30は、ζが小さいフラグメントペアほどランキングを高く設定する。取得されたランキングは記憶部10に記憶される。
(数式4-1)
Figure 2023110211000012
(数式4-2)
Figure 2023110211000013
(数式4-3)
Figure 2023110211000014
(数式4-4)
Figure 2023110211000015
ζSecondが小さい方向は、E(Q)の局所的な上昇が小さい方向と言える。このため、ζSecondが小さいフラグメントペアについて反応経路探索を実行することで、EQ付近におけるE(Q)の上昇が小さい経路を得ることができると期待される。ζThirdが小さい方向は、E(Q)において下に凸から上に凸への変化が起こり、遷移状態が見つかると期待される。このとき、三次関数上での極大点の高さはaとbのバランスで決まる。ζThirdは、bが大きな方向においてE(Q)が急激に下に凸から上に凸に変化する際に、特に小さくなる。そのため、ζThirdが小さなフラグメントペアについて反応経路探索を実行することにより、化学結合のような硬い結合が低障壁で組み変わる経路を得ることができると期待される。一方、ζScaledが小さいほど、三次関数上の極大点は低くなる。そのため、ζScaledが小さなフラグメントペアについて反応経路探索を実行することにより、内部回転や水素結合組み換えなどの障壁の低い経路を得ることができると期待される。多くの化学反応では、コンフォメーション変化などの低障壁のイベントがナノ秒やマイクロ秒といった短い時間スケールで繰り返され、局所的な熱平衡が達成される。化学結合の組み換えのような高い障壁を経るいわゆるレア・イベントは、数秒や数時間などの長い時間スケールで進行する。多段階反応では、局所的な熱平衡化とレア・イベントが繰り返されることによって反応全体が進行する。このような状況を再現するには、ζThird値が小さなフラグメントペアとζScaled値が小さなフラグメントペアの両方を計算する必要がある。そこで、ζThirdとζScaledの相乗平均を取ったζAverageが導入されている。ζAverageは、ζThird又はζScaledが小さいフラグメントペアにおいて小さくなる。そのため、ζAverageが小さいフラグメントペアについて反応経路探索を実行することにより、内部回転、水素結合組み換え、化学結合組み換えなど、多様な経路を得ることができると期待される。
状態選択部40(本発明における状態選択手段)は、反応経路探索の出発点となるEQを選択する。具体的には、状態選択部40は、上述の数式4に示すΛを算出すると共に、以下の数式5のνを算出する。そして、状態選択部40は、νが最も大きいEQを、次に実行される反応経路探索の出発点として選択する。なお、状態選択部40は、Λを算出する際に、上記の通りRCMC法に基づく速度定数行列の縮約演算を実行する。かかる状態選択部40の機能が、本発明における速度定数縮約手段の機能に対応する。
(数式5)
Figure 2023110211000016
は、記憶部10が記憶している探索回数データによって示される。nallは、その時点までの全てのEQにおけるnの合計である。α及びβは、それぞれ、0以上1以下の実数である。例えば、α=0.5、β=0.5と設定されてもよい。αは、Λが小さいEQであってもそれらのEQが何回かは選択されるようにする役割を担う。βは、αを含んだ項によって選択されようとするEQを選択されにくくする役割を担う。ξは、0以上1以下のランダムな実数である。なお、ξは、数式5に基づくνの算出ごとに設定される。
反応経路算出部50は、状態選択部40が選択したEQを出発点のEQ(本発明における第1の平衡状態)とする反応経路探索を実行する。反応経路算出部50は、このEQに関連付けて記憶部10が記憶しているフラグメントデータが示すフラグメントペアに関して反応経路探索を実行する。この際、反応経路算出部50は、かかるフラグメントペアのうち、ランキングが高いものをランキングが低いものに先行して反応経路探索を実行する。つまり、ランキングが高いフラグメントペアはランキングが低いフラグメントペアより先に反応経路探索が実行される。かかる反応経路探索が実行されたフラグメントペアに関し、反応経路探索が実行済みであることを示すように、記憶部10に記憶されたフラグメントデータが更新される。
反応経路探索においては、上述の通り、AFIR経路及びLUP経路の算出、遷移状態の最適化、並びに、IRCの算出が実行される。これにより、状態選択部40が選択したEQを出発点とする新たな反応経路が取得される。反応経路算出部50は、記憶部10の記憶内容を参照して、取得された反応経路が通る、又は到達するEQ(本発明における第2の平衡状態)において、取得済みEQのリストに含まれない新たなEQがある場合に、記憶部10の記憶内容が示す取得済みEQのリストにその新たなEQを追加する。また、新たなEQに対応する原子の座標を示す構造データが記憶部10の記憶内容に追加される。この新たなEQについては、フラグメントペア導出部20がフラグメントペアを構成する原子の組み合わせを抽出すると共に、これによって導出されたフラグメントペアについてフラグメントペアランキング取得部30がランキングを取得する。なお、反応経路算出部50によるAFIR経路を算出する機能及びステップが、本発明における構造変化算出手段の機能及び構造変化算出ステップに対応する。また、状態選択部40が選択したEQを出発点とするAFIR経路の算出により別のEQまでの遷移に対応する反応経路を算出する反応経路算出部50の機能及びステップが、本発明における平衡状態間変化算出手段の機能及び平衡状態間変化算出ステップに対応する。
以下、反応経路探索システム1が実行する反応経路探索方法の一連の流れを図5に基づいて説明する。まず、ユーザによって与えられた初期状態EQについて、フラグメントペア導出部20及びフラグメントペアランキング取得部30がフラグメントペア及びそのランキングを取得する(ステップS1)。初期状態EQにおける構造データは、例えば、ユーザが生成したデータファイルをシステムに取り込むことによって与えられる。
次に、反応経路算出部50が、ステップS1において取得されたランキングのうち、最も高いランキングに対応するフラグメントペアについて、EQを出発点とする反応経路探索を実行する(ステップS2)。これによって取得された反応経路に基づき、新たなEQであるEQが取得済みEQのリストに追加される。
次に、状態選択部40が、取得済みEQのリストに含まれる各EQ(i=1,2,…)について数式5に示すνを算出する(ステップS3)。次に、フラグメントペアランキング取得部30が、ステップS3で算出したνのうち、最も大きいものに対応するEQについて、フラグメントペアのランキングが取得済みであるか否かを判定する(ステップS4)。この判定は、記憶部10に記憶されたフラグメントデータを参照することで実施される。ランキングが取得済みであるとフラグメントペアランキング取得部30が判定した場合には(ステップS4、Yes)、ステップS6の処理が実行される。ランキングが取得済みでない(つまり、当該EQが上述の対象EQである)と判定した場合には(ステップS4、No)、ステップS3で算出したνのうち、最も大きいものに対応するEQに係るフラグメントペアについて、フラグメントペアランキング取得部30がランキングを取得する(ステップS5)。
次に、反応経路算出部50が、ステップS3で算出したνのうち、最も大きいものに対応するEQについて記憶部10の記憶内容を参照し、反応経路の探索が未だ実行されていないフラグメントペアのうち、最もランキングが高いものに関して反応経路探索を実行する(ステップS6)。そして、かかる反応経路探索によって、取得済みEQのリストにない新たなEQが取得された場合には、その新たなEQに係るデータが記憶部10の記憶内容に追加される。
次に、反応経路探索システム1は、反応経路の探索条件が満たされたか否かを判定する(ステップS7)。探索条件は、例えば、「過去n回のAFIR経路の計算において、トラフィック量Λが大きい方からm個のEQが更新されていないこと」である。この場合、自然数n及びmはそれぞれユーザが設定可能としてもよい。かかる探索条件が満たされていないと判定した場合(ステップS7、No)、ステップS3からの処理が実行される。探索条件が満たされていると判定した場合(ステップS7、Yes)、反応経路探索システム1は一連の処理を終了する。
以上説明した本発明の反応経路探索システム1によると、ある平衡状態EQに対応する原子の位置におけるE(Q)の二階の微係数b及び三階の微係数aの少なくともいずれかの大きさに基づく優先順位の高いフラグメントペアに関して、優先順位の低いフラグメントペアに先行して反応経路探索が実行される。具体的には、上記数式4-1~4-4に示すζSecond、ζThird、ζScaled及びζAverageのいずれかからユーザが選択したζに基づいてフラグメントペアにランキングが設定される。そして、ランキングが高いフラグメントペアから順に反応経路探索が実行される。このようにζSecond、ζThird、ζScaled及びζAverageに基づくランキングが高いフラグメントペアについて優先的に反応経路探索を実行する場合、上記の通り、遷移状態が見つかりやすい、化学結合のような硬い結合が低障壁で組み変わる経路を得やすい、内部回転や水素結合組み換えなどの障壁の低い経路を得やすい、内部回転、水素結合組み換え、化学結合組み換えなど、多様な経路を得やすい等、目的となる反応経路を取得しやすくなる。これにより、計算コストをそれほど掛けることなく目的となる反応経路を取得できる可能性が高くなる。よって、原子数の増加に応じた計算コストの増加が抑制されやすい。
また、本実施形態においては、νが最も大きいEQが選択され、そのEQについて反応経路探索が実行される。νは、上記数式5に示されるように、nallが比較的小さい場合に、数式5におけるα^{n/log(nall)}の値がΛに対して比較的小さくなり、Λの違いが表れやすい。したがって、トラフィック量が大きい平衡状態ほど計算対象として適切に選択されやすくなる。一方、nallが比較的大きくなっていくと、数式5におけるα^{n/log(nall)}の値がΛに対して比較的大きくなってくる。つまり、Λの違いがνの違いに表れにくくなっていく。したがって、nallが比較的大きくなると平衡状態の選択されやすさにΛの違いが表れにくくなってくる。したがって、トラフィック量が小さい平衡状態も選択されるようになってくる。このように、上記構成によると、計算の進度に応じて適切に優先度の高い平衡状態が選択される。
[実施例]
以下、本発明の一実施例について説明する。本実施例は、最も基本的な有機合成反応であるストレッカー反応について、上述の実施形態に係る図5に示す反応経路探索方法を、一部工程を変更しつつ実施した。ストレッカー反応は、ケトン(またはアルデヒド)、アンモニア、および、シアン化水素が反応し、アミノニトリルが生成する反応である。本実施例では、ケトンとしてアセトンを用いた。また、水溶液中でのプロトン移動効率を考慮して、余計な水1分子を系に追加した。SC-AFIR法によって加える力の衝突エネルギーパラメータγは500kJ/molとした。分子同士が離れすぎないよう、全原子ペアに対してγ=100/{N(N-1)/2}kJ/molとの弱い力を付加した(ここでのNは系に含まれる原子数)。計算量を抑えるために、上述の工程変更として、LUP経路の計算後の遷移状態の最適化とIRCの算出は実施せず、LUP経路のエネルギー極大点を近似遷移状態、LUP経路をEQ同士のコネクションを定義する経路として使用した。ギブスエネルギーを算出する際の調和振動解析では、50cm-1以下の振動数を持つモードの振動数は50cm-1とした。電子状態計算は、Gaussian16を用い、RHF/SVレベルで行った。
ν値の計算では、200K、300K及び400Kの3つの温度でRCMC法を実行することで得たΛ値の内、最も大きなものを用いた。なお、3つの温度全てでΛ値がゼロとなった場合には、対応するν値も強制的にゼロとした。また、反応時間は1日、気圧は1atm、Tは3000Kとした。ζSecond、ζThird、ζScaled及びζAverageを用いて付与されたランキングに基づく優先順位で反応経路探索の対象となるフラグメントペアを選択する場合に加え、対象となるフラグメントペアをランダムに選択した場合についても反応経路探索を実行した。探索は、生成物が得られた時点で打ち切り、それまでに要した計算コストを、ζSecond、ζThird、ζScaled及びζAverageを用いた場合の間で比較した。これらの計算では同一の初期構造(反応物の構造)と生成物の構造を用いた。表1はその比較結果である。表2は初期構造における各原子のx座標、y座標及びz座標、表3は生成物の構造における各原子のx座標、y座標及びz座標である。
(表1)
Figure 2023110211000017
(表2)
Figure 2023110211000018
(表3)
Figure 2023110211000019
表1において、Ngradient、NHessian、NEQ、Npathはそれぞれ、生成物の取得までに行った勾配計算の数、Hessian計算(2階微分に係る計算)の数、生成物の取得までに得たEQの数、及び、経路の数に対応する。ここで、すべての計算において、イミニウムイオンへのシアノアニオンの求核付加によってアミノニトリルが生成する反応機構が得られていることを確認した。
表1から分かるように、ランダムにフラグメントペアを選択した場合に最も計算コストが高かった。つまり、本発明が有効であることが確認できた。ζSecond、ζThird、ζScaled及びζAverageの中では、ζAverageが最も良いパフォーマンスを示した。これは、局所的な熱平衡化の経路とレア・イベントに対応する遅い過程の経路の両方が効率よくサンプリングされたためであると考えられる。反応物分子が弱く会合した状態では、10kJ/mol程度以下の非常に低い障壁で分子同士の配向が変化する経路が多数存在する。そういった経路はζScaledを指標とすることで効率よく探索できる。一方、ヘミアミナール中間体から水分子が脱離してイミニウムイオンが生成する経路は100kJ/mol程度と比較的高い障壁を有し、ζScaledを指標とした場合には、その計算は後回しにされてしまう。一方、ζScaledとζThirdの相乗平均であるζAverageを指標とした場合、ζScaledが小さいフラグメントペアとζThirdが小さいフラグメントペアの両方が探索される。そのため、ヘミアミナール中間体からイミニウムイオンへの変換のような、比較的障壁の高い化学結合の組み換え経路についても、優先探索が行われたものと考えられる。
本実施例で反応経路探索の対象としたのは、高々20原子(N=20)からなる系である。一方、フラグメントの数はNの二乗に比例して増加するため、ランダムとζAverageとのコスト比もNと共に急激に増加すると予想される。本実施例では有機合成反応を例に数値検証を行ったが、化学結合の組み換えを伴わない過程、例えば、ポリマーのコンフォメーション変化や凝集構造の相転移などでは、ζScaledを指標として低障壁の経路のみを優先探索する方が良いと予想される。そのため、ユーザが目的に応じてζAverageとζScaledを使い分けることが推奨される。
[RCMC法の詳細]
RCMC法の詳細について説明する。n番目の縮約における状態の集合をN(n)、状態iからjへの速度定数をki→j (n)、状態iのボルツマン分布をP (n)とする。つまり、N(0)は反応経路ネットワークに含まれる全安定構造(EQ)の集合、ki→j (0)は安定構造iからjへの遷移の速度定数、P (n)は安定構造iのボルツマン分布に相当する。これらの量を用いた縮約操作は以下の通りである。
1.速度定数の上限kMAX(=1/tMAX)を与え、n=0にセットする。
2.全ての素過程に対してki→j (0)を計算し、速度定数行列を得る。このとき、安定構造iとjを直接つなぐ素過程が二つ以上ある場合、ki→j (0)はそれらに対する速度定数の和とする。安定構造iとjを直接つなぐ素過程が存在しない場合、ki→j (0)はゼロとする。安定構造iとiをつなぐ素過程に対するki→i (0)もゼロとする。
3.全安定構造のボルツマン分布P (0)を求める。
4.全安定構造の(初期)分布Q (0)を与える。
5.χii (0)=1、χji (0)=0(j≠i)とする。以下の6~14の処理がループとして繰り返し実行される。
6.全てのiとjのペアの中から、ki→j (n)が最大のものを見つける。
7.もし、6で得た最大のki→j (n)についてki→j (n)<kMAXであればループを抜けて終了する。
8.定常状態近似を状態iに適用する。その際、速度定数行列内の全ての速度定数を数式6と数式7を用いて補正する。
(数式6)
Figure 2023110211000020
(数式7)
Figure 2023110211000021
9.状態iが関連する速度定数を全てゼロにする(k´i→m (n+1)=k´m→i (n+1)=0)。
10.数式8の通り、状態iのボルツマン分布をゼロとし(P (n+1)=0)、別の状態k(k≠i)へ速度定数の重みで分配する。
(数式8)
Figure 2023110211000022
11.数式9の通り、状態iの分布をゼロとし(Q (n+1)=0)、別の状態k(k≠i)へ速度定数の重みで分配する。
(数式9)
Figure 2023110211000023
12.状態kへの安定構造jの寄与を数式10を用いて更新する。
(数式10)
Figure 2023110211000024
13.更新されたボルツマン分布を再現するために、k´k→l (n+1)を数式11の通り補正する。
(数式11)
Figure 2023110211000025
14.状態iを消去(重み付きで分配)した残りN(n+1)を状態の集合とし、ステップ6へ戻る。
上記4及び11におけるQ (0)及びQ (n)が数式3のQ(m) として用いられる。また、上記5及び12におけるχii (0)、χji (0)(j≠i)及びχji (n)が数式3のχji (m)として用いられる。
<変形例>
以上は、本発明の好適な実施形態についての説明であるが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、課題を解決するための手段に記載された範囲の限りにおいて様々な変更が可能なものである。
例えば、本実施形態では、ζSecond、ζThird、ζScaled及びζAverageのいずれかからユーザが選択したζが小さいほどランキングが高くなるようにフラグメントペアごとにランキングが設定される。そして、ランキングが高いフラグメントペアから順に反応経路探索が実行される。しかし、ランキングの設定や反応経路探索を実行する順序は、その他の方法が採用されてもよい。例えば、ζが所定の値以下か否かに基づき、各フラグメントペアに2段階でランキングが設定されてもよい。そして、ランキングが高い方のフラグメントペアについてランダムな順に反応経路探索が実行された後に、ランキングが低い方のフラグメントペアについてランダムな順に探索が実行されてもよい。この場合にも、ランキングが高いフラグメントペアについてランキングが低いものに先行して探索が実行されることで、全てのフラグメントペアについてランダムな順で探索が実行される場合と比べて目的の反応経路が先行して取得されやすい。
また、上述の実施形態において、状態選択部40が、上記数式5で表されるνが最も大きいEQを反応経路探索の出発点として選択する。しかし、かかるν以外の基準値に基づいて反応経路探索の出発点が選択されてもよい。この場合、Λが大きい平衡状態ほど選択されやすいと共に、nallが大きいほどΛの違いが平衡状態の選択されやすさの違いに表れにくくなるように反応経路探索の出発点が選択されればよい。
1 反応経路探索システム
10 記憶部
20 フラグメントペア導出部
30 フラグメントペアランキング取得部
40 状態選択部
50 反応経路算出部

Claims (7)

  1. 複数個の原子からなる構造体における反応経路を、前記複数個の原子間の位置関係によって表される構造の変化として算出する反応経路探索システムとして1又は複数のコンピュータを機能させるプログラムであって、
    前記反応経路探索システムが、
    前記複数個の原子から抽出されたN個(N:自然数)の原子からなるフラグメントAと前記複数個の原子から抽出された、前記フラグメントAと別のN個(N:自然数)の原子からなるフラグメントBとによって構成されるフラグメントペアに関し、前記複数個の原子の位置を示す幾何学的パラメータQにおけるポテンシャルエネルギーをE(Q)とし、前記フラグメントAに属するs番目(s:s≦Nを満たす自然数)の原子と前記フラグメントBに属するt番目(t:t≦Nを満たす自然数)の原子との距離をrstとし、R及びRをそれぞれ前記s番目の原子及び前記t番目の原子の共有結合半径とし、ρを+1及び-1のいずれかとし、p及びαを定数値としたときに、数式2に基づいて算出される数式1の関数FAFIR(Q)が最小値を取る前記構造の変化を算出する構造変化算出手段と、
    (数式1)
    Figure 2023110211000026
    (数式2)
    Figure 2023110211000027
    互いに異なる原子の組み合わせを有する複数の前記フラグメントペアのそれぞれについて、E(Q)が極小値を取る平衡状態の1つである第1の平衡状態に対応する前記複数個の原子の位置におけるE(Q)の二階の微分係数b及び三階の微分係数aの少なくともいずれかを算出する微分係数算出手段と、
    前記複数のフラグメントペアのうち、前記微分係数算出手段が算出したa及びbの少なくともいずれかの大きさに基づく優先順位の高い前記フラグメントペアに関して、それより優先順位の低いその他の前記フラグメントペアに先行して、前記第1の平衡状態から他の前記平衡状態である第2の平衡状態までの遷移における前記構造の変化を前記構造変化算出手段に算出させる平衡状態間変化算出手段とを備えていることを特徴とする反応経路探索プログラム。
  2. 前記反応経路探索システムが、
    前記平衡状態間変化算出手段による過去の算出結果に基づいて得られた全ての前記第2の平衡状態と初期状態とからなるN個(N:2以上の自然数)の前記平衡状態からいずれかを前記第1の平衡状態として選択する状態選択手段をさらに備えており、
    前記状態選択手段が選択した前記第1の平衡状態から前記第2の平衡状態までの遷移における前記フラグメントペアに関する前記構造の変化を前記平衡状態間変化算出手段が前記構造変化算出手段に算出させることを繰り返すことを特徴とする請求項1に記載の反応経路探索プログラム。
  3. 前記反応経路探索システムが、
    前記N個の平衡状態間の遷移に係るN*N個の速度定数からなるN行N列の速度定数行列から、前記N個の平衡状態の加重和で表されるl個(l:l<Nを満たす自然数)の超状態間の遷移に係るl*l個の速度定数からなる速度定数行列を、RCMC法に基づいて速度定数行列を縮約することをm回(m:m=N-lを満たす自然数)繰り返すことで取得する速度定数縮約手段を含んでおり、
    前記状態選択手段が、
    m=1,2,…,M(M:M<Nを満たす自然数)のそれぞれについて、縮約された速度定数行列を前記速度定数縮約手段が取得した結果に基づいて、前記N個の平衡状態のそれぞれをEQ(i:N以下の自然数)とし、前記l個の超状態のそれぞれをSS(j:l以下の自然数)とし、m回の縮約後のEQのポピュレーションをp(m)とし、m回の縮約後のSSのポピュレーションをQ(m)とし、m回の縮約後のSSに対するEQの寄与をχji(m)とし、EQの相対ギブズエネルギーをΔGとし、気体定数をRとし、モデル温度パラメータをTとするときに、数式3に基づいて算出されるp(m)及び数式4に基づいて算出されるΛが大きいほど、EQが選択されやすくなるように、前記N個の平衡状態からいずれかを前記第1の平衡状態として選択することを特徴とする請求項2に記載の反応経路探索プログラム。
    (数式3)
    Figure 2023110211000028
    (数式4)
    Figure 2023110211000029
  4. 前記状態選択手段が、
    Λが大きいEQほど選択されやすく、且つ、EQを前記第1の平衡状態として前記構造変化算出手段が前記構造の変化を算出した回数nが小さいEQほど選択されやすく、且つ、前記N個の平衡状態について前記構造変化算出手段が前記構造の変化を算出した全体の回数nallが大きいほどΛの違いが前記平衡状態の選択されやすさの違いに表れにくくなるように、前記N個の平衡状態からいずれかを前記第1の平衡状態として選択することを特徴とする請求項3に記載の反応経路探索プログラム。
  5. 前記状態選択手段が、
    前記N個の平衡状態について前記構造変化算出手段が前記構造の変化を算出した全体の回数をnallとし、EQを前記第1の平衡状態として前記構造変化算出手段が前記構造の変化を算出した回数をnとし、ξを0以上1以下の実数とし、α及びβをそれぞれ0以上1以下の実数とするときに、数式5のνが最も大きいEQを前記第1の平衡状態として選択することを特徴とする請求項3又は4に記載の反応経路探索プログラム。
    (数式5)
    Figure 2023110211000030
  6. 複数個の原子からなる構造体における反応経路を、前記複数個の原子間の位置関係によって表される構造の変化として算出するシステムであって、
    前記複数個の原子から抽出されたN個(N:自然数)の原子からなるフラグメントAと前記複数個の原子から抽出された、前記フラグメントAと別のN個(N:自然数)の原子からなるフラグメントBとによって構成されるフラグメントペアに関し、前記複数個の原子の位置を示す幾何学的パラメータQにおけるポテンシャルエネルギーをE(Q)とし、前記フラグメントAに属するs番目(s:s≦Nを満たす自然数)の原子と前記フラグメントBに属するt番目(t:t≦Nを満たす自然数)の原子との距離をrstとし、R及びRをそれぞれ前記s番目の原子及び前記t番目の原子の共有結合半径とし、ρを+1及び-1のいずれかとし、p及びαを定数値としたときに、数式2に基づいて算出される数式1の関数FAFIR(Q)が最小値を取る前記構造の変化を算出する構造変化算出手段と、
    (数式1)
    Figure 2023110211000031
    (数式2)
    Figure 2023110211000032
    互いに異なる原子の組み合わせを有する複数の前記フラグメントペアのそれぞれについて、E(Q)が極小値を取る平衡状態の1つである第1の平衡状態に対応する前記複数個の原子の位置におけるE(Q)の二階の微分係数b及び三階の微分係数aの少なくともいずれかを算出する微分係数算出手段と、
    前記複数のフラグメントペアのうち、前記微分係数算出手段が算出したa及びbの少なくともいずれかの大きさに基づく優先順位の高い前記フラグメントペアに関して、それより優先順位の低いその他の前記フラグメントペアに先行して、前記第1の平衡状態から他の前記平衡状態である第2の平衡状態までの遷移における前記構造の変化を前記構造変化算出手段に算出させる平衡状態間変化算出手段とを備えていることを特徴とする反応経路探索システム。
  7. 複数個の原子からなる構造体における反応経路を、前記複数個の原子間の位置関係によって表される構造の変化として算出する方法であって、
    前記複数個の原子から抽出されたN個(N:自然数)の原子からなるフラグメントAと前記複数個の原子から抽出された、前記フラグメントAと別のN個(N:自然数)の原子からなるフラグメントBとによって構成されるフラグメントペアに関し、前記複数個の原子の位置を示す幾何学的パラメータQにおけるポテンシャルエネルギーをE(Q)とし、前記フラグメントAに属するs番目(s:s≦Nを満たす自然数)の原子と前記フラグメントBに属するt番目(t:t≦Nを満たす自然数)の原子との距離をrstとし、R及びRをそれぞれ前記s番目の原子及び前記t番目の原子の共有結合半径とし、ρを+1及び-1のいずれかとし、p及びαを定数値としたときに、数式2に基づいて算出される数式1の関数FAFIR(Q)が最小値を取る前記構造の変化を算出する構造変化算出ステップと、
    (数式1)
    Figure 2023110211000033
    (数式2)
    Figure 2023110211000034
    互いに異なる原子の組み合わせを有する複数の前記フラグメントペアのそれぞれについて、E(Q)が極小値を取る平衡状態の1つである第1の平衡状態に対応する前記複数個の原子の位置におけるE(Q)の二階の微分係数b及び三階の微分係数aの少なくともいずれかを算出する微分係数算出ステップと、
    前記複数のフラグメントペアのうち、前記微分係数算出ステップにおいて算出されたa及びbの少なくともいずれかの大きさに基づく優先順位の高い前記フラグメントペアに関して、それより優先順位の低いその他の前記フラグメントペアに先行して、前記第1の平衡状態から他の前記平衡状態である第2の平衡状態までの遷移における前記構造の変化を前記構造変化算出ステップによって算出させる平衡状態間変化算出ステップとを備えていることを特徴とする反応経路探索方法。
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