JP2023109165A - 鉄鋼材料および被膜の形成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】鉄鋼材料中への水素の拡散侵入を抑制すると共に、鉄鋼材料中の水素を外部に排出することのできる被膜を表層に有する鉄鋼材料を提供する。【解決手段】鉄鋼材料の表面に、結晶構造を有する、厚さ1μm以上のFeS層を形成する。【選択図】図1

Description

本発明は、鉄鋼材料、特に、鉄または鋼製の鉄鋼材料が使用される環境から該鉄鋼材料中に水素が侵入する、環境において、その水素の侵入を抑制すると共に、鉄鋼材料中の水素を鉄鋼材料外に排出することのできる、被膜を有する鉄鋼材料および、該被膜を鉄鋼材料の表面に形成する方法に関する。
ここで、鉄鋼材料とは、母相がFeである純鉄または合金元素を含む鉄合金を素材とする鉄鋼製品や部品のことである。これには母相の結晶構造がBody Centered
Cubicのいわゆるフェライト相からなるものだけではなく、Face Centered Cubicのいわゆるオーステナイト相からなるもの(例えばオーステナイト系ステンレス鋼など)も含まれる。この鉄鋼製品や部品には、板形状のもの、管形状のもの、ネジ形状のもの、歯車形状のものなど、母相がFeである純鉄または合金元素を含む鉄合金を素材とする全ての製品が含まれる。
近年、鉄鋼の製造に供される資源の枯渇などの懸念から、鉄鋼部品を軽量化・薄肉化する活動が活発である。部品を軽量化するためには、その素材である鉄鋼材料を高強度化する必要がある。一方で、鉄鋼材料の高強度化には、遅れ破壊という大きな障壁が存在する。遅れ破壊の原因が、材料の製造中または使用環境から鋼中に侵入する水素が関係する、いわゆる水素脆性の一形態であることは、論を俟たない。しかし、水素原子は原子構造が最もシンプルかつ最小であり、かつ水素ガスや他の元素との化合物として身の回りに溢れている最も身近な元素であるため、その材料中への侵入を抑制することは容易ではない。
これに対し、特許文献1に記載の技術では、表層に樹脂塗膜を有する鋼材を意図的に硫化水素に暴露し塗膜と鋼材の間に硫化鉄層を形成し、その硫化鉄層により硫化水素の鋼に対する腐食反応を抑制し、鋼中に侵入する水素を抑制することで、硫化水素環境下での水素脆化の一形態である、応力腐食割れを防止する水素吸収抑制処理方法が示されている。
特開昭60-89579号公報
上記の特許文献1に記載の技術の本質は、水素発生が不可避的に随伴する鉄と硫化水素の腐食反応を抑制する技術であって、腐食反応に伴って発生する水素の鋼中への拡散侵入そのものを抑制する技術ではない。実際、特許文献1に記載の技術で最も水素吸収の抑制能が認められる実施例7においても、水素侵入抑制処理後の水素引抜き電流調査(第2図)において、何らかの理由で一定期間後には電流値が上昇している。これは、水素が硫化鉄層および鋼の中を拡散し、水素引抜き側の表面に到達していることを意味している。このように、特許文献1に記載の技術では、部品が水素ガスや水分に暴露され部品表面で水素が発生した場合に、その水素の部品中への拡散侵入自体を抑制することは難しい。
本発明は、鉄鋼材料中への水素の拡散侵入自体を抑制すると共に、鉄鋼材料中の水素を外部に排出することのできる被膜を表層に有する鉄鋼材料、および該被膜を鉄鋼材料の表面に形成する方法について提供することを目的とする。
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、以下の知見を得るに至った。
(1)鉄鋼材料の表面に腐食反応などにより形成した硫化鉄(FeS)の被膜は、60℃超の温度に15時間以上保持されると、結晶構造を有するFeSとなる。このような結晶構造を有するFeSには、マッキナワイト(Mackinawite)、トロイライト(Troilite)またはピューロタイト(Pyrrhotite)の3種がある。
(2)上記の結晶構造を有するFeS層を表面に有する鉄鋼材料には、水素が外部から侵入しない。
(3)上記の結晶構造を有するFeS層を表面に有する、鉄鋼材料に元々含有されていた水素原子は、当該FeS層により外部に水素ガスとして排出される。なお、ここでいう排出とは、水素の自由拡散による自然放散のことではなく、結晶構造を有するFeS層の機序による排出である。つまり、結晶構造を有するFeS層は、例えば鉄鋼材料が高圧の水素ガスに晒されるような環境であろうとも、鉄鋼材料に元々含有されていた水素原子を水素ガスとして排出する機能を有する。
(4)鉄鋼材料の表面に存在する結晶構造を有するFeS層が、安定的に水素の拡散侵入を抑制する効果を発揮し続けるためには、FeS層の厚さが1μm以上である必要がある。
(5)結晶構造を有するFeSの中で、水素の拡散侵入を抑制する効果が最も高いのは、上記3種類(マッキナワイト、トロイライト、ピューロタイト)のうち、マッキナワイトである。
ここで、上記の知見が得られた実験結果について詳しく説明する。すなわち、発明者は、まず、61℃の20mass%チオシアン酸アンモニウム溶液に、鉄鋼材料の典型例である鋼材(以下、単に鋼材と示す)として、1400MPaレベルに調質したJIS G3137のD種1号に準拠した鋼棒を用いて、この鋼材(鋼棒)を浸漬したときの、鋼材表面への腐食被膜形成の有無およびその被膜の同定を実施し、腐食被膜除去後の腐食減量の浸漬時間依存性と各浸漬時間における鋼中拡散性水素量の調査を実施した。なお、腐食被膜除去後の腐食減量とは、試験片(鋼材)の浸漬前の重量と、浸漬により形成した腐食被膜を除錆により取り除いた浸漬後の試験片(鋼材)の重量との差である。なお、除錆は、JIS Z2371の腐食減量の測定の項に記載されている、化学的洗浄の方法に準拠して実施した。すなわち、塩酸500mLに水500mLを加えて調整した溶液1Lにつきヘキサメチレンテトラミン(C12)3.5gを加えた23℃±2℃の溶液に10分間浸漬して除錆した。また、鋼中拡散性水素量は、室温から300℃まで加熱速度0.0278℃/sで加熱したときに上記鋼材から放出される水素の累積量(全量)である。
上記の調査結果を図1に示すように、上記(1)に記載した15時間以上浸漬する、条件を満たす場合において、腐食減量は継続するにもかかわらず、浸漬開始直後に鋼中に一旦は拡散侵入した水素が、その後の浸漬継続中の15時間を境に減少することを知見した。なお、水容液の変化に起因する水素量の減少幅は0.5massppm未満であることを別途確認した。
上記の拡散性水素量が増加から減少に転じる浸漬時間15時間の時点における、鋼材表面の被膜を薄膜X線回折法によって同定した結果、マッキナワイト、トロイライト、ピューロタイトなどの結晶構造を有するFeSが生成していることが判明した。この浸漬中に表面に生成した、結晶構造を有するFeS層の厚さを走査電子顕微鏡により測定した結果、おおよそ1μm以上の厚さとなった時点から鋼中水素量の減少が始まることも明らかになった。さらに、浸漬中は、この結晶構造を有するFeS層の厚さは継続して増加していること、すなわち浸漬中は腐食反応が継続し続けていることを、腐食減量結果だけでなく視覚的にも確認した。
一方、上記の拡散性水素量が増加過程にある浸漬時間14時間の時点における、鋼材表面の被膜を薄膜X線回折法によって同定した結果、Feのピークのみが観察され、FeS(マッキナワイト、トロイライト、ピューロタイト)のいずれに対応する回折ピークも見られなかった。これより、15時間未満では、たとえ鉄と硫黄の化合物が得られているとしても、これが結晶構造を有しないアモルファスの状態にとどまっているため、結晶構造を有するFeSが発揮するような機能を有しないと推論した。
以上の結果から、浸漬初期に一旦鋼中に侵入した水素の減少には、腐食反応の生成物である結晶構造を有するFeS層が関与していると推論した。
次に、結晶構造を有するFeS層を有する試験片(鋼材)において、鋼中水素量の減少が始まる15時間以降に減少した鋼中水素量分がどこに行ったかを検証するために、結晶構造を有するFeS層を有する浸漬後の鋼材と、これと同浸漬条件でFeS層を表層から除去した鋼材との水素昇温曲線を比較した。ここで、水素昇温曲線とは、試験片(鋼材)を加熱したときの、その温度で鋼中から鋼外に放出される水素量を、温度を横軸にしてグラフ化して得られる曲線のことである。この水素昇温曲線により、どのような温度で試験片から水素がどのくらい放出されるかを把握することができ、その曲線のピークに対応する温度やそのときの放出量を比較することで、鋼中での水素の存在状態を推し量ることができる。今回は、この水素昇温曲線の形状とピークでの水素放出量とを比較することで、上記の鋼中水素量が結晶構造を有するFeS層中に吸蔵されているか否かを推論した。
上記の比較の結果、FeS層の有無で水素昇温曲線の形状、水素放出ピーク位置に有意差は見られなかったため、減少した鋼中水素はFeS層中に貯蔵されているのではなく、溶液側に放出されたと結論付けた。鋼中水素量の減少中も水素発生を伴う腐食反応は継続しているため、水溶液中に浸漬している鋼材は水素が鋼中に拡散侵入しうる環境に曝され続けているにもかかわらず、鋼中水素が溶液に放出されるということは、結晶構造を有するFeS層は、水素の外部からの侵入を阻害すると共に、鋼中に一旦侵入した水素を外部に排出する機能を有する、と結論するに至った。
さらに、結晶構造を有するFeS層にこのような機能が得られる理由について鋭意検討を重ねた結果、結晶構造を有するFeS層の自由表面では水素過電圧が小さいことが、その要因であると、結論付けるに至った。水素過電圧が小さいということは、結晶構造を有するFeS層の表面で、Volmer反応により吸着水素原子となった水素原子同士が、互いに結合し水素ガス(H)となるエネルギー障壁が小さいということである。一方で、水素過電圧は吸着水素原子の化学エネルギーの平衡状態からのずれに対応しており、水素過電圧が小さい結晶構造を有するFeS層の自由表面は水素の化学ポテンシャルも平衡状態に近づくために低下する。物質の拡散の駆動力は化学ポテンシャルの勾配なので、前記のような化学ポテンシャルの低下した結晶構造を有するFeS層の自由表面へ、その低下に伴い水素の拡散の駆動力が生じ、鋼中水素は結晶構造を有するFeS層の自由表面へ拡散していき、そのまま該自由表面で吸着水素となった後水素ガスとして鋼外に放出される。
以上が、結晶構造を有するFeS層が水素侵入を抑制すると同時に、鋼中水素を外部に排出する機構である。
さらに、結晶構造を有するFeSである、マッキナワイト、ピューロタイト、トロイライトのそれぞれについて、鋼材への水素の拡散侵入を抑制する効果に関する検討を行った。その結果、薄膜X線回折の分析においてマッキナワイトのピークのみが現れるFeS層が得られたときに、最も上記の効果が高いことを知見した。
発明者は、上記した知見に基づいて、本発明を完成するに到った。すなわち、本発明の要旨構成は、次のとおりである。
1.表面に、結晶構造を有する厚さが1μm以上のFeS層を有する鉄鋼材料。
2.比液量が10ml/cm以上かつ60℃超に保たれた、濃度が1mass%以上のチオシアン酸アンモニウム水溶液中に、鉄鋼材料を15時間以上浸漬する、被膜の形成方法。
3.比液量が10ml/cm以上かつ60℃超に保たれた、HSを1massppm以上で含む水溶液中に、鉄鋼材料を15時間以上浸漬する、被膜の形成方法。
4.相対湿度が90%以上かつ60℃超に保たれた、HSを1massppm以上で含む雰囲気中に、鉄鋼材料を15時間以上晒す、被膜の形成方法。
5.比液量が10ml/cm以上かつ60℃超に保たれたイオン交換水に、鉄鋼材料を浸漬し、該鉄鋼材料が浸漬されたイオン交換水中に、純HSガスを連続して15時間以上吹き込む、被膜の形成方法。
本発明によれば、使用環境から侵入しようとする水素の鉄鋼材料中への侵入を抑制すると共に、もともと鉄鋼材料中に存在する水素を鉄鋼材料外に排出することができる。また、本発明の方法によれば、上記の働きをする被膜を、鉄鋼材料の表面に形成することができる。
鋼材を腐食溶液に浸漬したときの、鋼中拡散性水素量の推移と腐食減量の推移とを示すグラフである。 X線スペクトラムからピークが存在する角度を判定する方法について説明する図である。
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明の鉄鋼材料は、厚さ1μm以上の結晶構造を有するFeS層を、表面に有するものである。
[FeS層の厚さ:1μm以上]
FeS層の厚さは、当該層の鉄鋼材断面方向における厚さである。鉄鋼材の表面に形成するFeS層の断面の厚さが1μm以上のときに、FeS層の被膜は、水素の侵入を抑制する機能を発現する。より好ましくは1.5μm以上である。一方、厚みの上限は特に限定する必要はないが、鉄鋼材(母材)とのFeS層の密着性の観点からは500μm以下とすることが好ましい。より好ましくは300μm以下である。
なお、FeS層が結晶構造を有するか否かの判定は、薄膜X線回折法に依る。ちなみに、結晶構造を有するFeSとしては、次の3つに分類される。
<マッキナワイト>
マッキナワイト(Mackinawite)とは、硫黄と鉄が化学量論比1:1よりは若干鉄リッチな比率でイオン結合により結合した鉱物である。結晶構造は正方晶である。この結晶構造はX線回折により同定できる。
<トロイライト>
トロイライト(Toroilite)とは、硫黄と鉄が化学量論比1:1の比率でイオン結合により結合した鉱物である。結晶構造は六方晶である。この結晶構造はX線回折により同定できる。
<ピューロタイト>
ピューロタイト(Pyrrhotite)とは、硫黄と鉄が化学量論比1:1よりは若干硫黄リッチな比率でイオン結合により結合した鉱物である。結晶構造は単斜晶である。この結晶構造はX線回折により同定できる。
次に、上記のような結晶構造を有するFeSが存在するか否かを、X線回折により判定する方法を説明する。
被膜を形成した鉄鋼材料から採取した試験片を市販の薄膜X線回折装置で分析し、ディテクターの角度がX線の試験片への入射角から90°までのX線の回折結果を取得する。X線源はCuKα線とする。このようにして得られた回折X線のディテクターの角度に対するディテクターが検出したX線強度のスペクトラムから、ピークが存在するディテクターの角度を全て判定し、試験片におけるピーク群を取得する。得られたピーク群をICDD(International Center for Diffraction Data)が提供しているマッキナワイト、トロイライト、ピューロタイトのピーク群と突き合わせ、前記の3種類の物質のいずれかと一致するピーク角度が3つ以上ある場合、3種類のいずれかのFeSが存在すると判定する。
ここで、ピーク位置が一致するか否かの判定基準であるが、ICDDが提供するピーク位置に対し±1°以内に測定ピークが存在する場合、ピーク位置が一致すると判断する。
さらに、測定結果のX線スペクトラムからピークが存在する角度を判定する方法について、図2を参照して説明する。まず、X線強度のディテクター角度に対するスペクトラムにおける、ある角度(これを「A°」とする)の±5°(A°±5°)に存在するX線強度の最小値(これを「X線強度Y」とする)を得る。A°におけるX線強度がX線強度Yの2倍以上となるA°を収集すると、1つのピークに対しある程度の幅を持ったA°が得られる。この幅の中央値の角度をピークが存在する角度と判定する。
[被膜]
以上の通り、本発明の鉄鋼材料は、表面に厚さ1μm以上の結晶構造を有するFeS層を有するところに特徴がある。ここで、鉄鋼材の表面に厚さ1μm以上の結晶構造のFeS層を有する、というのは、結晶構造FeS層による厚さ1μm以上の被膜が、鉄鋼材料と外界との間で、外界に向けて露出しているということである。外界とは、鉄鋼材料が接する溶液や気体、個体のこと、いわゆる外部環境のことである。但し、膜全体としては、FeS層と鉄鋼材(母材)との間に<グレイガイト(Greigite)>、<スマイサイト(Smythite)>、<パイライト(Pyrite)>や<マルカサイト(Marcasite)>などの、他の種類のFeとSの化合物層が存在しても差し支えない。ただし、その場合でも、外部環境と接している、つまり膜の最外層で外部環境に露出している層は、上記の水素過電圧の観点から結晶構造を有し、なおかつその厚さが1μm以上のFeS層である必要がある。結晶構造を有するFeS層と鉄鋼材(母材)との間にグレイガイトなどのFeSとは異なる化合物層がある場合の、その化合物層の厚さは特に制限は無い。しかし、この化合物層の厚さが1mmを超えると、地鉄母材との密着性が著しく低下するため、好ましくは1mm以下、より好ましくは500μm以下であることが望ましい。
なお、上記のグレイガイトとは、化学式がFeで表される、イオン結合により結合したFeとSの鉱物であり、結晶構造は立方晶である。上記のスマイサイトとは、化学式がFeで表される、イオン結合により結合したFeとSの鉱物であり、結晶構造は六方晶である。上記のパイライトとは、化学式がFeSで現される、イオン結合により結合したFeとSの鉱物であり、結晶構造は立方晶である。上記のマルカサイトとは化学式がFeSで表される、イオン結合により結合したFeとSの鉱物であり、結晶構造は直方晶である。
次に、本発明の鉄鋼材料を製造するための、被膜の形成方法について説明する。具体的には、以下のa~dの方法が有利に適合する。
形成方法a:比液量が10ml/cm以上かつ60℃超に保たれた、濃度が1mass%以上のチオシアン酸アンモニウム水溶液中に、鉄鋼材料を15時間以上浸漬する。
形成方法b:比液量が10ml/cm以上かつ60℃超に保たれた、HSを1massppm以上で含む水溶液中に、鉄鋼材料を15時間以上浸漬する。
形成方法c:相対湿度が90%以上かつ60℃超に保たれた、HSを1massppm以上で含む雰囲気中に、鉄鋼材料を15時間以上静置する。
形成方法d:比液量が10ml/cm以上かつ60℃超に保たれたイオン交換水中に、鉄鋼材料を浸漬し、該鉄鋼材料が浸漬されたイオン交換水中に、純HSガスを連続して15時間以上吹き込む。
以下、各形成方法について、順に説明する。
形成方法a
[濃度1mass%以上のチオシアン酸アンモニウム水溶液]
チオシアン酸アンモニウム水溶液中の鉄鋼材料のカソード反応において、チオシアン酸(SCN-)が分解して二酸化炭素とアンモニウムとS2-イオンと水素原子を生じる。腐食反応によりS2-を得るためには、1mass%以上のチオシアン酸アンモニウムを含有する水溶液が必要である。より好ましい濃度は、2mass%以上である。
[比液量10ml/cm以上]
鉄鋼材料の表面積に対する水溶液の量、すなわち比液量が10ml/cm以上でなければ、鉄鋼材料を水溶液中に十分な深さまで浸漬できないことが多い。すなわち、これ以下の比液量では、鉄鋼材料の表面のどこかが水溶液表面に近くなる、または水溶液から出てしまう結果、そういった箇所で十分な厚さの被膜が得られなくなり、そのような箇所で水素侵入抑制効果が得られなくなる。これは、溶液に鉄鋼材料を浸漬する他の被膜形成方法bおよびdにおいても同様である。
なお、比液量の分母は浸漬する鉄鋼材料の総表面積であり、分子は溶液量である。水溶液とはイオン交換水程度の純度を有する水を溶媒にし、これに何らかの物質を溶質として溶かし込んだ液体のことである。
[温度60℃超]
上記の水溶液の温度は、60℃以下でも硫化鉄の腐食被膜は得られるが、その硫化鉄は結晶構造を有するFeSとはならない。FeSに結晶構造をとらせるためには、上記の水溶液の温度が60℃超である必要がある。これは、以下に記載のすべての被膜形成方法において同様である。なお、いったんFeS層が得られれば、このFeS層が安定的に存在する限り60℃以下の温度、いわゆる室温付近でも水素侵入抑制と水素放出の機構を発現する。好ましくは、61℃以上であり、より好ましくは65℃以上である。さらにより好ましくは70℃以上である。
[浸漬時間15時間以上]
上記の水溶液に浸漬する時間は、15時間以上必要である。すなわち、浸漬時間が15時間未満では、1μm以上の厚さのFeS層が得られない。より好ましくは20時間以上である。この浸漬時間は、他の被膜の形成方法bにおいても同様である。さらに、形成方法cにおける雰囲気暴露時間および、形成方法dにおける吹込み時間、においても同様に15時間以上である。
形成方法b
[HSを1massppm以上で含む水溶液]
1massppm以上の濃度でHSを含む水溶液中において、鉄または鋼は腐食反応により硫化鉄を生じる。好ましくは、2massppm以上である。
そして、このHSを含む水溶液に、比液量10ml/cm以上かつ温度60℃以上の下で15時間以上浸漬することによって、結晶構造を有する1mm厚以上のFeS層が形成される。
形成方法c
[相対湿度が90%以上でHSを1massppm以上で含む雰囲気]
濃度1massppm以上でHSを含む雰囲気においても、鉄または鋼は腐食反応により硫化鉄を生じ得るが、腐食の進行をある程度速くし、且つ均一な腐食被膜を得るためには、相対湿度が90%以上である必要がある。濃度は、好ましくは2massppm以上である。
[HSを含む雰囲気中に15時間以上静置]
上記の雰囲気に晒す(静置する)時間が15時間未満では、1μm以上の厚さのFeS層が得られない。より好ましくは20時間以上である。
形成方法d
[イオン交換水中に鉄鋼材料を浸漬したままイオン交換水中に純HSガスを連続して吹き込む]
イオン交換水中に鉄鋼材料を浸漬した状態で同イオン交換水中に純HSガスを連続して吹き込むことによって、鉄鋼材料表面に硫化鉄被膜を形成することができる。
ここで、イオン交換水中への純HSガスの吹き込み量は、イオン交換水1L当たり1L/min以上とする必要がある。また、純HSガスとは、HSの濃度が99%以上であるものを言い、吹き込むガスが純HSガスでないと、水素過電圧を低下させるに十分な結晶構造が得られないという不具合が生じる。
[純HSガスを連続して15時間以上吹き込む]
純HSガスのイオン交換水中への吹き込みが15時間未満では、1μm以上の厚さのFeS層が得られない。より好ましくは20時間以上である。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。ただし、これら実施例における発明例はあくまでも例であり、本発明は以下の発明例に限定されるものではない。
表1に示す成分を有する3種類の鋼を真空溶解炉で溶製し、50kg鋼塊を鋳造しインゴットを得た。ここで、鋼No.1はJIS G 3137にD種1号として規定されている、いわゆるPC鋼棒の成分規定範囲の鋼、鋼No.2はJIS G 4053にSCM435として規定の成分範囲の鋼、鋼No.3は所謂ベースメタルと呼ばれる純鉄相当の鋼である。
Figure 2023109165000002
次に、これらインゴットを1200℃以上の温度で熱間加工し、直径が32mmの円柱を得た。この直径32mmの円柱から直径12mmかつ長さが200mmの丸棒を切り出し、鋼No.1および2の鋼についてはこの丸棒に調質処理(焼き入れ:890℃に30分均熱後60℃の油槽中で焼き入れ、焼き戻し:400℃に45分均熱後60℃の油槽中で冷却)を施した。鋼No.3の鋼には焼準処理(950℃に1時間保持後に大気中で室温まで空冷)を施した。調質処理または焼準処理後の各鋼のビッカース硬さ(荷重10kgfで実施)を表1に併記する。このような調質処理を施した各鋼から、直径8mm且つ長さ30mmの丸棒を切り出し、表2、表3、表4および表5に示す被膜形成処理に供した。
まず、表2及び表3に示す被膜形成処理は、チオシアン酸アンモニウム水溶液に浸漬する方法a、HS水溶液に浸漬する方法b、HS雰囲気中に静置する方法c(本方法を表2及び表3では「雰囲気中に静置」と表した)、イオン交換水中に浸漬しHSガスを吹き込む方法d(本方法を表2及び表3では「HSガス吹込み」と表した)の4通りで実施した。各方法における条件は表2及び表3に示すとおりである。
溶液に丸棒を浸漬する方法a、bおよびdでは、溶液中に上記の直径8mmの丸棒を2本ずつ浸漬した。雰囲気中に静置する方法cでも同様に、2本静置した。いずれの方法でも、水溶液に浸漬または雰囲気中に静置後、表2及び表3に示す時間が経過後に2本の試験片(丸棒)を取り出した。
このようにして得られた2本の試験片のうち1本を、まず薄膜X線回折装置により分析し、表層に結晶構造を有するFeSの層が形成されているかを判定した。この判定結果は、表2及び表3において、「FeS存在の有無」および「一致ピーク数」として示した。なお、「一致ピーク数」とは、前記薄膜X線回折法で調査した薄膜X線回折により得られた試験片のピーク群のうち、ICDDが提供しているマッキナワイト、トロイライト、ピューロタイトのピーク群と角度が一致するピークの数である。この数値が3以上であれば、上記3種類のFeSのうちのいずれかの結晶構造を有するFeSが得られていることを意味する。
この判定の終了後の試験片を、被膜厚さ測定に供した。
被膜厚さ測定に供した試験片に関しては、円柱形状の長手方向に対する垂直断面(Cross Sectional断面、いわゆるC断面)を観察できるように、試験片を加工後に、C断面が観察面となるように樹脂埋めし、鏡面研磨を施し、Scanning Electron Microscopy(通称SEM)で表層の被膜厚さを観察した。
残りのもう1本の試験片は、30℃に保持した20mass%チオシアン酸アンモニウム水溶液に48時間浸漬し、水素を侵入させる処理を行った。これを「再浸漬」と呼ぶこととし、被膜形成処理後に30℃に保持した20mass%チオシアン酸アンモニウム水溶液に48時間浸漬した試験片のことを、表2および表3において「再浸漬材」と呼称している。また、この被膜形成処理材の再浸漬開始時に被膜形成処理をしていない未処理の試験片、つまり加工ままの試験片を1本併せて再浸漬材と同じ溶液に、つまり同じビーカーの中に浸漬した。この加工ままの状態から一緒に6時間浸漬した試験片を、表2および表3では「新規浸漬材」と呼称している。なお、この再浸漬時の比液量は10ml/cm、溶液のpHは測定温度30℃±2℃で6.0以上とした。
再浸漬材および新規浸漬材の鋼中水素量は管状炉にガスクロマトグラフィーを接続した水素昇温分析器で測定した。キャリアガスはArガスであり、加熱速度0.0278℃/sで測定した。ガスサンプリング間隔は5分間隔である。この分析に供する前の試験片は、液体窒素温度で保管し、液体窒素から取り出して常温に戻した時点から30分以内に分析を開始するようにした。分析に先立ち試験片表面の被膜は#320の乾式研磨紙を用いて手動でこすり取ることで金属光沢が得られるまで除去し、分析に供した(一部のFeS層有りで分析する場合はこの限りではない)。この水素昇温分析結果をもとに各温度での鋼中水素量を温度に対しプロットし水素昇温曲線を作成した。室温(分析開始)から300℃までに放出された水素の累積量を拡散性水素量とした。
なお、被膜形成処理により得られた被膜が水素侵入を抑制しかつ鉄鋼中水素を外部排出する能力を有する(以下、水素シンク膜ともいう)ことの評価であるが、再浸漬材の拡散性水素量の新規浸漬材の水素量に対する比が0.5未満のものが、得られた被膜が十分水素シンクとして機能した、つまり被膜形成中及び再浸漬時に鋼中水素を放出し、なおかつこれらの処理及び試験のあいだ外部からの水素侵入を抑制した試験片であるとした。
表2及び表3において比較例であるNo.1、2、17、18、39、40、53、61、72の試験片は、被膜形成処理により得られた被膜厚さは1μmを超えていたが、処理温度が60℃を下回っていたため、結晶構造を有するFeS被膜が得られず、十分な水素シンクとしての機能が得られなかった試験片である。これらの被膜に薄膜X線回折試験を実施し、被膜の同定を試みたが、マッキナワイト、トロイライト、ピューロタイトのいずれに対応するピークも得られなかった。SEMに付属の組成分析器では被膜中にSが存在することが確かめられたが、上記のようにFeSの結晶構造に対応するX線回折ピークが得られなかったため、得られた被膜はおそらくアモルファス状のFeSの被膜が得られたと推察される。
さらに、表2及び表3に示す比較例であるNo.3、4、9、10、19、20、25、26、41、42、47、48、54、57、62、65、73、76の試験片は、結晶構造を有するFeSの層は得られたが、被膜形成処理により得られた被膜厚さが1μmを下回っていたため、水素シンクとしての十分な機能を得られなかった試験片である。
表2及び表3中の上記の比較例以外の試験片、すなわちNo.5、6、7、8、11、12、13、14、15、16、21、22、23、24、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、43、44、45、46、49、50、51、52、55、56、58、59、60、63、64、66、67、68、69、70、71、74、75、77、78の試験片は本発明を満たす発明例である。
Figure 2023109165000003
Figure 2023109165000004
また、表4には特許文献1に記載の好ましい処理条件で処理した試験片の結果を示している。なお、表4の被膜形成処理に先立つ塗膜形成樹脂の種類であるが、全条件を再現することが困難だったため、膜厚が5μmのエポキシ樹脂(硬化条件:室温乾燥10日間)の1条件のみで実施した。このような塗膜を有する丸棒を表3に示す条件で処理し、再浸漬材と新規浸漬材の水素量を比較した結果、いずれの試験片においても十分な水素シンクとしての機能を発揮した試験片は存在しなかった。なお、新規浸漬材の水素量が表2の値より著しく小さいが、これは、浸漬に先立って形成したエポキシ塗膜が20mass%チオシアン酸アンモニウム水素溶液中では腐食反応をある程度抑制したためであると、推察される。いずれにしろ、再浸漬材と新規浸漬材の比として評価される水素シンクとしての機能が十分に得られているとは言い難いことは明らかである。
Figure 2023109165000005
さらに、表5には特許文献1の表1に記載の実施例で、雰囲気中に静置とHSガス吹込みの被膜形成処理方法について実施した結果を示している。比較例89、90、91、92、93、94、97、98、99、100は結晶構造を有するFeSは得られたが、処理時間が短く1μmを超す被膜が得られなかったため、水素シンクとして十分機能しなかった。また比較例95、96は処理温度が低温であったため、結晶構造を有するFeSが得られずまた処理時間も短いため十分な厚さの被膜が得られなかったため、水素シンクとして十分機能しなかった。
Figure 2023109165000006
さらにまた、表6ではマッキナワイトのみのFeS層、ピューロタイトのみのFeS層、トロイライトのみのFeS層の場合について、それぞれの種類のFeS層が水素拡散侵入を抑制する効果について比較している。発明例101および102はマッキナワイトのみの層、発明例103および104はトロイライトのみの層、発明例105および106はピューロタイトのみの層の結果を示している。いずれの層でも再浸漬材の拡散性水素量の新規浸漬材のそれに対する比が0.5未満となっている。特に、マッキナワイトのみの層が得られた発明例101および102では、そのほかの層よりも水素量比が著しく小さいことが明らかである。
Figure 2023109165000007

Claims (5)

  1. 表面に、結晶構造を有する厚さが1μm以上のFeS層を有する鉄鋼材料。
  2. 比液量が10ml/cm以上かつ60℃超に保たれた、濃度が1mass%以上のチオシアン酸アンモニウム水溶液中に、鉄鋼材料を15時間以上浸漬する、被膜の形成方法。
  3. 比液量が10ml/cm以上かつ60℃超に保たれた、HSを1massppm以上で含む水溶液中に、鉄鋼材料を15時間以上浸漬する、被膜の形成方法。
  4. 相対湿度が90%以上かつ60℃超に保たれた、HSを1massppm以上で含む雰囲気中に、鉄鋼材料を15時間以上静置する、被膜の形成方法。
  5. 比液量が10ml/cm以上かつ60℃超に保たれたイオン交換水に、鉄鋼材料を浸漬し、該鉄鋼材料が浸漬されたイオン交換水中に、純HSガスを連続して15時間以上吹き込む、被膜の形成方法。
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