JP2023109030A - 水中無線通信装置および方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】マルチパス波による通信品質の低下を抑制できるようにした水中無線通信装置および方法を提供すること。【解決手段】水上または水中を移動可能な移動体2に設けられ、音響信号により水中無線通信する水中無線通信装置10であって、音響信号を相手方の水中無線通信装置へ送信する送波部30と、相手方の水中無線通信装置からの音響信号を受信する受波部40と、送波部および受波部を制御する音響通信制御部20とを備え、音響通信制御部は、送波部から送信される信号の送信時間と送信間隔とを制御する送信タイミング制御部21を含んでおり、送信タイミング制御部は、相手方の水中無線通信装置の受波部におけるマルチパス波による通信品質劣化の影響が所定値以下になるように、送信時間および送信間隔を制御する。【選択図】図1

Description

本発明は、水中無線通信装置および方法に関する。
近年、海洋資源調査の高効率化を目的として、AUV(Autonomous Underwater Vehicle:自律型無人潜水機)を複数運用する技術の開発が盛んであり、母船とAUVとの間に用いられる水中無線通信技術が注目されている。水中における無線通信技術としては、音響技術や光技術を利用した方式が提案されている。
音響無線通信は、伝搬損失が少ないため、水中での長距離通信に適している。しかし、水中無線通信では、音速が秒速1500メートルと遅いため、電波を使用する通信システムと比較すると、マルチパス波の到達時間が遅い。したがって、直接波の受信中にマルチパス波が混信する可能性があり、混信が発生すると長時間にわたって通信品質が低下してしまう。このため、特許文献1に示す技術が提案されている。
特開2020-88575号公報
水中無線通信におけるマルチパス波には、さらに以下の特徴がある。第1に、マルチパス波の受信レベルは、海面、海底、構造物等の反射率や伝搬経路差の影響を受けるため、マルチパス波の到達順に受信レベルが強いのではなく、受信レベルの強弱が到達順にならないこともある。第2に、水中では、様々な反射波が複数の方位から異なる到達遅延時間で受信される。第3に、屋外のフィールドで水中無線通信を実施する場合、天候による波浪の変化や、水面下の地形および地質などの影響を受けるため、通信環境が一様ではなく、通信品質が劣化する。第4に、母船とAUVの相対位置は変動するため、送信点および受信点が移動すると通信環境が動的に変化し、通信品質が劣化する。第5に、マルチパス波除去技術として知られている判定帰還型等価器では、遅延時間の大きいマルチパスに対応するのが難しい。判定帰還型等価器で遅延時間の大きいマルチパス波を除去するためには、ハードウェア回路の規模や消費電力が大きくなるためである。第6に、ビームフォーミングを用いた空間分離技術によりマルチパス波を除去することも知られているが(特許文献1)、この場合は、直接波と同一方向から受波部に到来するマルチパス波を除去するのが難しい。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、マルチパス波による通信品質の低下を抑制できるようにした水中無線通信装置および方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決すべく、本発明の一つの観点に従う水中無線通信装置は、水上または水中を移動可能な移動体に設けられ、音響信号により水中無線通信する水中無線通信装置であって、音響信号を相手方の水中無線通信装置へ送信する送波部と、相手方の水中無線通信装置からの音響信号を受信する受波部と、送波部および受波部を制御する音響通信制御部とを備え、音響通信制御部は、送波部から送信される信号の送信時間と送信間隔とを制御する送信タイミング制御部を含んでおり、送信タイミング制御部は、相手方の水中無線通信装置の受波部におけるマルチパス波による通信品質劣化の影響が所定値以下になるように、送信時間および送信間隔を制御する。
本発明によれば、相手方の水中無線通信装置の受波部におけるマルチパス波による通信品質劣化の影響が所定値以下になるように、送信時間および送信間隔を制御することができ、水中無線通信の品質劣化を抑制することができる。
複数の移動体の間で音響信号を用いた水中無線通信を実施する水中無線通信システムの全体概要図。 水中無線通信装置のブロック図。 複数の音響通信制御部間で水中無線通信を行う様子を示す説明図。 直接波とマルチパス波の例を示す説明図。 ビームフォーミングによる空間分離によりマルチパス波を除去する様子を示す説明図。 ユーザの要求する送信間隔および送信データ量を管理するテーブルの例。 送信タイミングの決定条件を管理するテーブルの例。 能動的にマルチパス波の影響を計測する場合(能動タイプ)の設定値を管理するテーブルの例。 音響信号を生成するためのパラメータを管理するテーブルの例。 所要の入力SNR(signal-noise ratio) を管理するテーブルの例。 マルチパス波の推定に使用するパラメータを管理するテーブルの例。 音響信号を送信するタイミングを管理するテーブルの例。 音響信号を周波数分割して送信する場合の周波数分割に使用するパラメータを管理するテーブルの例。 送信タイミングを更新するための条件を管理するテーブルの例。 能動タイプによるマルチパス波の計測結果を管理するテーブルの例。 音響信号のパケット(音響パケットとも呼ぶ。)の送信時間と送信間隔を示す説明図。 マルチパス計測信号を音響パケットに付加する場合の説明図。 周波数分割により音響パケットを送信する場合の説明図。 送信タイミングを制御する処理のフローチャート。 送信タイミングを受動タイプで決定する処理のフローチャート。 直接波とマルチパス波のレベル差から通信品質を劣化させるマルチパス波の遅延を判定し、最大送信時間および送信待機時間(送信間隔)を決定する説明図。 送信待機時間を決定する様子を示す別の説明図。 送信タイミングを決定する処理のフローチャート。 図23に続くフローチャート。 送信タイミングを能動タイプで決定する処理のフローチャート。 送信タイミングを決定するための各パラメータの更新時期を判定する処理のフローチャート。
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。本実施形態に係る水中無線通信装置10は、受信側での直接波100に対するマルチパス波101の影響が所定値以下となるように送信タイミングを制御することにより、複数の水中無線通信装置間での通信に必要な通信品質(SNR:Signal to Noise Ratio)を確保する。
詳細は後述するが、本実施形態に係る水中無線通信装置10では、送信側の水中無線通信装置の座標と受信側の水中無線通信装置の座標と通信フィールドの情報(水深および底質)とから、受信側でのマルチパス波の受信レベルと到達時間とを推定する。
送信側水中無線通信装置から受信側水中無線通信装置(相手方の水中無線通信装置)へ正確にデータを送るためには、所定値以上の通信品質が必要となる。そこで、送信側の水中無線通信装置では、通信品質の劣化要因となるマルチパス波があると推定した場合、通信品質の劣化要因となるマルチパス波の遅延時間および受信レベルを取得する。
送信側の水中無線通信装置は、通信品質に影響を及ぼす、最初のマルチパスの到達時間およびこれに続く他のマルチパスによる通信品質の影響持続時間を判定し、送信タイミングを決定する。決定される送信タイミングには、送信時間と送信待機時間という複数のパラメータが含まれる。送信側の水中無線通信装置は、決定された送信タイミングに従って、データを送信する。これにより、マルチパス波による通信品質への影響を軽減することができる。
決定された送信タイミングにしたがってデータを送信するだけでは、ユーザの要求を満たさない場合も考えられる。例えば、決定された送信タイミングでデータを送信する場合、ユーザの要求する送信間隔とユーザの要求する送信間隔内に送信するデータ量とを満たさないことが考えられる。この場合、送信側の水中無線通信装置は、送信信号の周波数帯域幅を分割し、送信信号の周波数帯域を順次切り替えることにより、ユーザ要求値(送信間隔およびデータ量)を満たす送信タイミングを決定する。
さらに、本実施形態の水中無線通信装置では、推定されたマルチパス波の影響を、マルチパス波計測信号を送信することにより、能動的に補正する。マルチパス波計測信号とは、受信側でのマルチパス波の影響を計測するために、送信側の水中無線通信装置から受信側の水中無線通信装置へ送信される音響信号である。マルチパス波計測信号を送信側水中無線通信装置から受信側水中無線通信装置へ送信し、受信側水中無線通信装置は、複数のマルチパス波の受信レベルとそれぞれの到達時間を計測する。受信側水中無線通信装置は、計測結果(マルチパス波情報)を送信側水中無線通信装置へ送信する。これにより、送信側水中無線通信装置で決定された送信タイミングの精度を高めることができ、送信タイミングを最適化することができる。
さらに、受信側の水中無線通信装置では、判定帰還型等価器を使用することにより、遅延時間の短いマルチパス波の影響を低減させることができる。したがって、本実施形態による適切な送信タイミングの決定と判定帰還型等価器とを併用することにより、遅延時間の長いマルチパス波と遅延時間の短いマルチパス波の両方を低減することができ、水中無線通信の品質を高めることができる。
このように本実施形態に係る水中無線通信装置では、直接波に対するマルチパス波の遅延時間に制限されることなく、小型かつ低消費電力のハードウェア構成で、マルチパス波によるSNR劣化を抑制することができ、通信品質を保持することができる。
さらに、本実施形態の水中無線通信装置では、直接波とマルチパス波とが同一方向から受波部に到来する場合であっても、マルチパス波の影響を抑制して通信品質を維持することができる。
図1~図26を用いて第1実施例を説明する。図1は、水中無線通信システム1の全体構成を示す。水中無線通信システム1は、第1移動体2Mに搭載された水中無線通信装置10Mと、第2移動体2Sに搭載された水中無線通信装置10Sとを含む。
第1移動体2Mおよび第2移動体2Sは、「水上または水中を移動可能な移動体」の一例である。第1移動体2Mは、例えば有人または無人の船舶である。第1移動体2Mは、ASV(小型無人ボート)やブイであってもよい。第2移動体2Sは、例えば無人または有人の潜水艇である。以下、移動体2,3を「水中機器」と呼ぶことがある。この場合の「水中機器」とは、常に水中に存在する機器を意味するものではなく、その本体の少なくとも一部が水中に位置する機器である。
本実施例では、第1移動体としての母船2Mに搭載された水中無線通信装置10Mから、第2移動体としてのAUV2Sに搭載された水中無線通信装置10Sへ音響信号を送信する場合を主に説明する。母船2Mに搭載された水中無線通信装置10Mは、送信側水中無線通信装置である。AUV2Sに搭載された水中無線通信装置10Sは、受信側水中無線通信装置(相手方の水中無線通信装置)である。
水中無線通信装置10Mは、例えば、音響通信制御部20Mと、送波部30Mと、受波部40Mとを備えており、センサ50Mおよび上位システム60Mと電気的に接続されている。音響通信制御部20Mの詳細は図2で後述する。上位システム60Mは、音響信号を用いた水中無線通信を利用するシステムであり、例えば、海洋調査システム、海底探査システム、リモート制御システムなどである。上位システム60に代えて、各種観測機器であってもよい。
音響通信制御部20Mは、ユーザの要求を満たすように、相手方の水中無線通信装置10Sへ音響信号を送信するタイミングを決定し、音響通信を制御する。音響通信制御部20Mは、送信タイミング制御部21Mを備える。図1では省略しているが、AUV2Aの音響通信制御部20Sも送信タイミング制御部21(図2参照)を備える。
送波部30Mは、音響信号のパケット(音響パケットとも呼ぶ。)を相手側の水中無線通信装置10Sの受波部40Sへ向けて送信する。受波部40Mは、相手方の水中無線通信装置10Sの送波部30Sから送信された音響信号を受信する。
センサ50Mは、水中の環境を計測して信号を出力する。センサ50Mは、実際には複数種類のセンサを含む。センサ50Mは、例えば、位置センサ、水温センサ、塩分濃度センサ、音速センサなどである。母船2Mのエンジンまたは電動モータ(不図示)に取り付けられたセンサの一部または全部をセンサ50Mとして利用してもよい。
以下では、水中無線装置10M,10Sを特に区別しない場合、水中無線通信装置10と呼ぶ。同様に、音響通信制御部20M,20Sを特に区別しない場合、音響通信制御部20と呼ぶ。送波部30M,30S、受波部40M,40S、センサ50M,50S、上位システム60M,60Sについても特に区別しない場合、送波部30、受波部40、センサ50、上位システム60と呼ぶ。
送波部30Mから受波部40Sへ音響信号を送信する場合、直接波100Mと複数のマルチパス波101Mとが生じる。図1では、マルチパス波を一つだけ示す。直接波100Mを受信中にマルチパス波101Mが重なって受信されるとSNRが低下する。送波部30Sから受波部40Mへ音響信号を送信する場合も同様に、直接波100Sと複数のマルチパス波101Sが発生し、通信品質に影響を与える。
図2は、音響通信制御部20の機能構成を示すブロック図である。音響通信制御部20は、例えば、送信タイミング制御部21、送信データ変調部22、信号結合部23、マルチパス計測信号生成部24、受信部25といった回路を有する。
送信タイミング制御部21は、少なくとも一つの音響パケットを含む信号を送信する際の送信パラメータを決定する。送信パラメータには、例えば送信時間と送信間隔とが含まれる。送信タイミング制御部21は、受動タイプと能動タイプの2種類の方法を用いて、受信側水中無線通信装置で生じるマルチパス波を計算し、必要な通信ができるだけ行われるような送信時間と送信間隔を決定する。
受動的にマルチパス波を推定する方法では、送信タイミング制御部21は、センサ50からの各種計測信号に基づいて、受信側水中無線通信装置に発生するマルチパス波を推定する(受動タイプ)。送信タイミング制御部21は、受信側水中無線通信装置におけるマルチパス波を能動的に計測する場合、送信信号にマルチパス計測信号を加えて、送波部30から送信させ、そのマルチパス計測信号により実測されたマルチパス波の情報を受信側水中無線通信装置から取得する(能動タイプ)。
送信データ変調部22は、上位システム60から受領した送信データを変調して送信信号を生成する。能動的にマルチパス波を計測する場合を除き、生成された送信信号はそのままで、送波部30から相手方の水中無線通信装置へ向けて送信される。
信号結合部23では、送信データ変調部22により生成された送信信号に、マルチパス計測信号生成部24で生成されたマルチパス計測信号が加えられる。受動タイプの場合、送信信号にマルチパス計測信号は加えられない。音響信号を受信する側でのマルチパス波の影響を送信側から能動的に調べる場合の詳細は、図3以降でさらに説明する。
受波部40は、相手方の水中無線通信装置(送波部30からの送信信号を受け取った水中無線通信装置)からの送信信号(応答信号)を受信する。受波部40には、相手方の水中無線通信装置から直接届く直接波100だけでなく、海面近くや海底などで様々に反射して届くマルチパス波101も受信される。相手方の水中無線通信装置においても、適切な送信タイミングで音響信号を送信していれば、受波部40でのマルチパス波による通信品質の劣化を抑制できる。
受信部25は、受波部40で受信された音響信号を復調部251により復調する。受信部25は、判定帰還型等価器252により、直接波100との到着時間差の小さいマルチパス波を除去する。受信部25は、通信品質を高めて復調したデータを上位システム60へ送る。
送信側の水中無線通信装置から受信側水中無線通信装置へ音響信号が伝搬する経路を推定する際には、以下の情報が使用される。
「搬送波周波数」と「信号帯域幅」とから周波数範囲が求められ、この周波数範囲が伝搬経路の推定に使用される。周波数を分割する場合、分割数分の「搬送波周波数」および「信号帯域幅」が音響通信制御部20へ入力される。
「送信側装置(送信側の水中無線通信)の座標情報」と「受信側装置(受信側の水中無線通信装置の座標情報)との2つの座標を、海面および海底のマルチパス経路の推定に使用することができる。座標情報は、3軸(X,Y,Z)とする。座標情報は、緯度、経度、送波部の深度および受波部の深度で表してもよい。座標情報は、絶対座標または2点間の相対座標でもよい。能動タイプで計測する際に、受信側装置から位置情報を得られる場合は、受信側装置が送信側装置へ提供する座標情報を使用する。
「海域深度情報」は、水中無線通信を行う海域(通信海域)における海面から海底までの深度情報であり、海底までのマルチパス経路を推定するために用いる。能動タイプで計測する際に、伝搬経路モデルのパラメータを調整した結果がある場合は、その調整結果値を用いる。
「海底の底質(反射係数)」は、マルチパス波が海底で反射する音圧レベルの推定に用いる。能動タイプで計測する際に、伝搬経路モデルのパラメータを調整した結果がある場合は、その調整結果値を用いる。
「音速または海水温、塩分濃度」は、マルチパスの伝搬経路推定に用いる、音波伝搬パラメータである。能動タイプで計測する際に、伝搬経路モデルのパラメータを調整した結果がある場合、その調整結果値を用いる。
「送波部指向性(送波器指向性)」は、マルチパスの伝搬経路推定に用いる、各伝搬経路に対する送波指向性による送信レベルの偏差を示すパラメータである。「受波部指向性(受波器指向性)は、マルチパスの伝搬経路推定に用いる、各伝搬経路に対する受波指向性による受信レベルの偏差を示すパラメータである。
「マルチパス遅延量」は、直接波の到達時刻を基準時刻とする、マルチパス波の相対遅延時間である。
「マルチパス受信レベル」は、直接波を基準受信レベルとする、マルチパス波の相対受信レベルである。
図3に示すように、送信側の水中無線通信装置と受信側の水中無線通信装置との関係は逆にすることもできる。図3は、水中無線通信装置間での通信の様子を簡略化して示す説明図である。
音響通信制御部20Mの送信タイミング制御部は、音響通信制御部20Sへ向けて送信する送信信号の送信タイミングを制御する。
送信タイミングを制御するはアルゴリズムには、上述の通り、受動タイプと能動タイプの2種類がある。受動タイプの場合、送信タイミング制御部は、音響通信制御部20Mの上位システム60Mから入力される情報およびセンサ50から入力される各種情報に基づいて、送信側の水中無線通信装置と受信側水中無線通信装置との通信に起因するマルチパスの、遅延時間および受信レベルを推定する。送信タイミング制御部は、マルチパス波の遅延時間と受信レベルとを推定すると、必要な通信品質(所要SNR)を確保するために、通信品質を劣化させる要因となるマルチパスを避けるべく、送信タイミングと信号長(換言すれば送信間隔)を決定する。
能動タイプの場合、音響通信制御部20Mは、送信信号として、広帯域信号(例えばパルス圧縮)を送信する。送信信号は、伝搬路MSを伝搬し、音響通信制御部20Sで受信される。音響通信制御部20Sは、受信した広帯域信号より、伝搬路MSのマルチパス状況を計測する。音響通信制御部20Sは、計測したマルチパス状況を、通信環境を示す情報として送信信号に含めて、音響通信制御部20Mへ送信する。音響通信制御部20Mは、音響通信制御部20Sからの送信信号を受信することにより、伝搬路MSのマルチパスを把握し、適切な送信タイミングを選択できる。
上述の受動タイプおよび能動タイプの送信タイミング制御は、音響通信制御部20Mおよび20Sでそれぞれ個別(双方向)に実施可能である。音響通信制御部20Sを主体として述べる場合、伝搬路SMのマルチパスの状況が問題とされる。
伝搬路MSおよび伝搬路SMには、送波部30の指向性特性および受波部40の指向性特性も含まれる。このため、音響通信制御部20M,20Sの両方において、同一製品または同程度の指向特性を持つ送波部30および受波部40を使用し、かつ同一周波数帯域を用いて通信する場合、伝搬路MSおよび伝搬路SMを同一の伝搬路とみなすことができる。したがって、この場合、音響通信制御部20M,20Sのうちいずれか一方の音響通信制御部からマルチパス計測信号を送信して能動的に計測すればよい。その測定結果は、他方の音響通信制御部の送信タイミング制御部にも適用することができる。
図4は、直接波100とマルチパス波101の例を示す説明図である。送信側の送波部30から受信側の受波部40へ送信された音響信号には、送波部30から受波部40へ直接届く直接波100以外に、海面または海底、あるいは図示しない沈殿物、障害物、浮遊物などで様々に反射して受波部40へ届くマルチパス波101がある。マルチパス波101が受波部40に受信される時刻と直接波100が受波部40に受信される時刻との差、すなわち遅延時間は長短様々である。直接波100を受波部40が受信している最中に、マルチパス波101が次々に受波部40に到着すると、通信品質が劣化する。そこで、本実施例では、マルチパス波による通信品質の劣化ができるだけ少なくなるように、送信側の水中無線通信装置から受信側の水中無線通信装置へ音響信号を送信するときの、送信タイミングおよび送信間隔を適切に決定する。
図5は、ビームフォーミングによる空間分離によりマルチパス波を除去する様子を模式的に示す。音響通信制御部20は、3方向のビームパターンBPから到来する音響信号のみを受信する。ビームパターンBP以外から受波部40に到達するマルチパス波101Aは受信されない。
ビームパターンBPは直接波100の到来方向に合わせて設定されるため、音響通信制御部20は直接波100を受信することができる。ただし、直接波100の到来方向に近い方向から到来するマルチパス波101も、受波部40に受信されてしまう。ビームパターンBPに一致する方向から到来するマルチパス波101を除去することはできないため、ビームパターンBPだけでマルチパス波による影響を排除することは難しい。そこで、本実施例では、上述のように、音響通信制御部20は、送信タイミング(送信時間および送信間隔)を適切に決定して、相手方の水中無線通信装置へ送信する。
図6~図15を用いて、音響通信制御部20で使用するテーブルの例を説明する。図6は、ユーザ要求値を管理するテーブルT1である。ユーザ要求値管理テーブルT1は、項目と、その項目に対応する要求値とを含む。ユーザ要求値とは、水中無線通信に対してユーザの要求する性能である。ユーザ要求値には、例えば、要求送信間隔と、送信データ量とがある。
図7は、送信タイミングの決定条件を管理するテーブルT2である。送信タイミング決定条件管理テーブルT2は、例えば、送信可能最大周波数範囲、環境ノイズ(音圧換算値)、送波レベル、近距離マルチパス反射除去範囲、近距離マルチパス除去残存補正を管理する。これら条件の値は、ユーザまたは上位システム60から音響通信制御部20へ入力される。
以下に、送信タイミングを決定する際に使用される情報を説明する。「使用可能最大周波数範囲」は、送信信号に使用可能な、最大周波数範囲情報である。周波数を分割して送信する場合は、最大周波数範囲内で周波数を分割する。
「所要入力SNR」は、受信処理に必要な、直接波の受信レベルと干渉レベルとの比を示す。
「ユーザ要求送信間隔」は、ユーザの使用するアプリケーション(動画、テレメトリング等)にしたがってユーザの決定する、送信間隔および送信間隔当たりの送信データ量である。
「マルチパス遅延量」と「マルチパス受信レベル」は、入力SNRを算出するための情報である。マルチパス遅延量とマルチパス受信レベルには、伝搬経路の推定結果(受動タイプ)またはマルチパス計測結果(能動タイプ)が用いられる。
「環境ノイズ」は、受信点における、移動体に搭載された各種機器の発する機械音および電気ノイズ等の、マルチパス以外のノイズレベルである。
「近距離マルチパス反射除去範囲」は、近距離マルチパスの除去範囲をフィルタタップ数と信号帯域幅とから算出し、本実施例で述べる方式による検出対象のマルチパス遅延の最小値を決定する。
「近距離マルチパス除去残存補正」は、近距離マルチパス除去機能により除去された後の残存レベルであり、入力SNRを算出するときの補正に使用される。
「送信間隔」は、搬送波周波数毎の送信間隔である。「送信時間」は搬送波周波数毎の送信間隔内に占める送信時間である。「周波数分割数」は、使用可能な最大周波数範囲を分割する数であり、これにより搬送波周波数および信号帯域幅が定まる。
図8は、能動的にマルチパス波の影響を計測する場合(能動タイプ)の設定値を管理するテーブルT3の例である。このテーブルT3は、項目とその項目に対する入力値(設定値)とを管理する。テーブルT3は、例えば、マルチパス計測信号の種別と、マルチパス計測信号から音響パケットまでの時間間隔とを管理する。マルチパス計測信号の種別については、図17で後述する。
図9は、音響信号を生成するためのパラメータを管理するテーブルT4を示す。音響信号生成パラメータ管理テーブルT4は、項目とその項目への入力値を管理する。項目には、例えば、ユーザデータの符号化率、1シンボルあたりのビット数、誤り判定情報のビット数、オーバーヘッド情報の合計シンボル数がある。オーバーヘッド情報には、例えば、同期信号、トレーニング信号、制御信号が含まれる。
ここで、制御信号とは、受信データを復元するために、送信側水中無線通信装置から受信側水中無線通信装置へ送信される情報である。制御信号には、上述のユーザデータの符号化率および1シンボルあたりのビット数が含まれる。
図9のテーブルT4に基づいて生成される音響信号は、複数の音響パケットして受信側水中無線通信装置へ送信される。図16,図17で後述する音響パケットは、同期信号、トレーニング信号、制御信号およびユーザデータから構成される。これらのうちユーザデータ以外の情報、すなわち同期信号、トレーニング信号および制御信号は、オーバーヘッド情報である。
図10は、所要の入力SNRを管理するテーブルT5を示す。1シンボルあたりのビット数に応じて、必要となる入力SNRの値は増加する。入力SNRの値は、初期値として定まっていてもよいし、ユーザが変更可能であってもよい。
図11は、マルチパスを推定するためのパラメータを管理するテーブルT6を示す。マルチパス推定パラメータ管理テーブルT6は、項目とその項目への入力値を管理する。項目には、例えば、伝搬路モデル、送波部の座標(緯度、経度、深度)、受波部の座標(緯度、経度、深度)、海底深度、送波指向性データ(方位、偏差)、受波指向性データ(方位、偏差)、海底反射係数(1以下)、海域の音速データがある。
図12は、送信タイミングを管理するテーブルT7である。水中無線通信装置20は、送信タイミング管理テーブルT7に記録されたパラメータにしたがって、相手方の水中無線通信装置(受信側水中無線通信装置)へ音響パケットを送信する。テーブルT7は、例えば、送信時間、送信間隔、周波数の分割数、変調信号帯域幅を、送信タイミングを制御するパラメータとして管理する。
図13は、音響信号を周波数分割して送信する場合の周波数分割に使用するパラメータを管理するテーブルT8を示す。周波数分割パラメータ管理テーブルT8は、例えば、ガードバンドと、その値(入力値)とを管理する。
図14は、送信タイミングを更新するための条件を管理するテーブルT9を示す。送信タイミング更新判定条件管理テーブルT9は、受動タイプと能動タイプのそれぞれについて、更新時期を判定するための条件を管理する。
受動タイプの場合、すなわち受動的にマルチパス波が通信品質に与える影響を推測するタイミングは、例えば、更新されるタイマの値、スラントレンジの偏差、送信装置の座標と受信側装置の座標との偏差から決定される。更新されるタイマの値とは、受動タイプの推定値を更新する時間周期である。スラントレンジの偏差とは、送信側装置と受信側装置との直距離の変化である。
能動タイプの場合、すなわち能動的に受信側水中無線通信装置でのマルチパス波が通信品質に与える影響を計測するタイミングも、更新されるタイマの値、スラントレンジの偏差、送信側水中無線通信装置の座標と受信側水中無線通信装置の座標との偏差から決定される。
ここで、能動タイプの更新頻度を受動タイプの更新頻度よりも少なくするために、上述の判定値(タイマ値、スラントレンジの偏差、送信側装置の座標と受信側装置の座標の偏差)はいずれも、能動タイプの方が受動タイプよりも大きく設定されている。受動タイプでマルチパス波の影響を推定するよりも能動タイプでマルチパス波の影響を計測する方が時間がかかるためである。能動タイプは、必要最低限に実施するのが好ましい。しかし、本明細書において「好ましい」との表現は、一つの観点から効果があることを述べただけであり、本開示の範囲を何ら限定しない。
図15は、能動タイプによるマルチパス波の計測結果を管理するテーブルT10を示している。計測結果管理テーブルT10は、項目とその項目への入力値とを管理する。項目には、例えば、受信装置位置情報、マルチパス遅延時間、直接波受信レベル、マルチパス受信レベル、受信入力SNRがある。
「受信装置位置情報」は、受信装置に搭載しているINU(Inertial Navigation Unit:慣性航法装置)による情報(緯度、経度、受波部深度、海底からの高度)である。受波部の深度と海底からの高度とから、海面から海底までの深度(距離)を算出できる。
「マルチパス遅延時間」は、マルチパス計測結果から算出される情報であり、直接波を基準時刻とする、マルチパス波の相対遅延時間である。
「直接波受信レベル」は、直接波の受信レベルであり、その単位は[dB]である(0dB = 1V/μPa)。「マルチパス受信レベル」は、マルチパス計測結果から得られる情報であり、直接波受信レベルを基準とする、マルチパス波の相対受信レベルである。「受信入力SNR」は、音響パケットを受信する直前のノイズレベル(N)と同期信号の信号レベル(S)の比を示す。
図16は、音響信号のパケット(音響パケット)の送信時間と送信間隔を示す。一つの音響パケットの時間長は、送信時間PT1である。隣接する音響パケット間の時間間隔は、送信間隔PT2である。
図17は、マルチパス計測信号を音響パケットに付加する場合の説明図である。最初にマルチパス計測信号が送信され、それに続いて一つ以上の音響パケットが送られる。マルチパス計測信号と最初の音響パケットとの時間間隔PT3は、ユーザの要求送信間隔PT2の2倍以上に設定される。
マルチパス計測信号には、例えばチャープ信号と、PCW(Pulse Continuous Wave)の周波数断続信号がある。ここでのチャープ信号は、時間の経過につれて周波数が連続的に増大する信号である。ここでのPCWの周波数断続信号は、時間の経過につれて段階的に周波数が増大する信号である。これら以外の信号をマルチパス計測信号として使用してもよい。
図18は、周波数分割により音響パケットを送信する例を示す。図18では、最大周波数範囲に第1搬送波周波数f1と第2搬送波周波数f2との2つの搬送波周波数を設定し、それぞれで音響パケットを送信する。各搬送波周波数f1,f2の間には、混信を防止するためのガードバンドが設けられる。ガードバンドを設けなくとも通信品質を確保可能な場合は、ガードバンドを設ける必要はない。
図19~図26を用いて送信タイミングを制御する処理を説明する。図19は、送信タイミング制御の全体処理を示すフローチャートである。音響通信制御部20は、受動タイプの送信タイミング決定処理(S10)と、能動タイプの送信タイミング決定処理(S20)と、更新判定処理(S30)とを実行する。
図20は、送信タイミングを受動タイプで決定する処理のフローチャートである。受動タイプによる送信タイミング決定処理(S10)では、例えば、伝搬経路を推定する処理(S11)と、通信品質に影響を及ぼすマルチパスの遅延を判定する処理(S12)と、最大送信時間を決定する処理(S13)と、送信タイミングを決定する処理(S14)とを実行する。
伝搬経路推定処理(S11)では、例えば、音線理論またはノーマルモード理論等の音波伝搬モデルに基づいて、送信側装置と受信側装置との間の、直接波およびマルチパス波の遅延時間と受信レベルとを推定する。
伝搬経路推定処理(S11)では、伝搬経路毎の海底と海面の音波入射角から、送波部の送波指向性および受波部の受波指向性による信号受信レベルの変化を考慮して、マルチパス受信レベルを求める。
伝搬経路推定処理(S11)では、センサ50または外部システム60あるいはユーザインターフェース装置から、送信側装置の座標、受信側装置の座標、海域試験度、塩分濃度、温度の深度分布、または音速プロファイル、送波指向性、受波指向性などが音響通信制御部20へ入力される。
伝搬経路推定処理(S11)は、直接波に対するマルチパス波の遅延時間と、直接波に対するマルチパス波の受信レベルとを推定結果として出力する。
図21は、通信品質に影響を及ぼすマルチパスの遅延を判定する処理(S12)と最大送信時間および送信待機時間を決定する処理(S13)の説明図である。以下では、通信品質に影響を及ぼすを判定する処理(S12)を、マルチパス遅延判定処理(S12)とも呼ぶ。
マルチパス遅延判定処理(S12)では、判定帰還型等価器のマルチパス波除去範囲外をマルチパス波の検索対象とし、マルチパス波の合成エネルギからなる干渉レベルと直接波受信レベルとの比として、入力SNRを求める。そして、マルチパス遅延判定処理(S12)では、所要入力SNR(各種通信方式に対する復号可能な最小入力SNR)を満たす、入力SNRに対応するマルチパス遅延時間(τ)を求める。
続いて、最大送信時間および送信待機時間を決定する処理(S13)を説明する。最大送信時間および送信待機時間を決定する処理(S13)では、図21中に示す(式1)および(式2)に基づいて、受信入力SNRを算出し、最大送信時間および送信待機時間を決定する。
最大送信時間(Tmax)について説明する。送信時間(音響パケット時間)は、最初に受信性能に影響を及ぼすマルチパス遅延時間以下でなければならない。したがって、最大送信時間は、受信入力SNR>所要入力SNRを満たす最初のマルチパス(N)の遅延時間とする。
送信待機時間(Tpause)について説明する。受信性能に影響を及ぼすマルチパスは、最大送信時間のマルチパス以降も発生する可能性がある。そこで、送信待機時間は、これら影響を及ぼす最後のマルチパスまでの遅延時間だけ、送信信号の末尾から時間間隔を空けて送信する。最大送信時間のマルチパス(N)以降のマルチパス成分について、受信入力SNR<所要入力SNRを満たすマルチパスを検索する。
図21では、直接波の近くに(時間軸上での近くに)近距離マルチパスが存在するが、それらは判定帰還型等価器により除去可能である。遠距離マルチパスは、直接波の受信から遅延時間DT1,DT2,DT3で到達するが、遅延時間DT1のマルチパスと遅延時間DT2のマルチパスとが重なると、通信品質が所定値未満に劣化する(入力SNR<所要入力SNR)。したがって、入力SNR<所要入力SNRを満たす最も遅い遅延時間DT2を回避する時間が、最大送信時間となる。
図22は、送信待機時間を決定する様子を示す別の説明図である。図21に続いて、送信待機時間(Tpause)を決定する方法を説明する。図21では、DT2の遅延波(マルチパス)により、受信入力SNRが所要SNRを満たせなかった。ここで、DT2以降のマルチパスについて、受信入力SNRをもとめ、所要SNRへの影響を判定する。
図22は、DT3以降のマルチパスについて、受信入力SNRを計算した結果、DT4のマルチパスで所要SNRを満たさくなった。さらに、DT4を除き、DT5以降の受信入力SNRを計算した結果、所要SNRを満たす結果となった。本結果より、DT4のマルチパスまで受信特性への影響があることがわかる。そこで、図22の例では、送信待機時をDT4以上に設定する。
図23は、送信タイミングを決定する処理のフローチャートである。最大送信時間(Tmax)に対して、ユーザの要求する送信間隔(Tcount)および送信データ量から求まる送信間隔(Tu)を満たす場合、音響通信制御部20は、使用可能な最大帯域幅に基づいて、データを送信する。
ユーザの要求する送信間隔と送信データ量により定まる送信時間と送信間隔とは、図23中の(式3)により算出される。音響通信制御部20は、予め設定された以下の条件1,2,3について判定し(S141)、該当する条件に応じて(S142)、送信時間および送信間隔を決定する(S143~S145)。
(条件1)要求送信時間(Tcount)が最大送信時間(Tmax)未満で、かつ送信間隔(Tcont+Tpause)が送信間隔Tu未満であれば、送信時間をTcontとし、送信間隔をTcont+ Tpauseとする(S143)。
(条件2)要求送信時間(Tcount)が最大送信時間(Tmax)未満で、かつ送信間隔(Tcont+Tpause )が送信間隔Tu以上であれば、周波数分割による送信間隔の調整を実施する(S144)。
(条件3)要求送信時間(Tcount)が最大送信時間(Tmax)以上の場合は、送信時間をTmax、送信間隔をTmax+ Tpauseとする(S145)。
図24は、図23に続くフローチャートである。図24では、周波数帯域を分割する場合の処理を示す。
使用可能な最大周波数帯域(Bw)をN分割することにより、異なる周波数帯域を巡回送信することで、周波数帯域間の干渉が無視できることから、送信間隔を短くすることが可能となる。
音響通信制御部20は、ステップS146に示す(式4)を満たす場合、周波数分割による送信を実施する。満たさない場合は、条件3による送信または、本結果により送信してもよい。
そして、周波数分割された搬送波周波数毎に、上述した通信品質に影響を及ぼすマルチパス遅延判定処理(S12)を実施するとともに(S147)、最大送信時間および送信待機時間の決定処理(S13)を実施する(S148)。各搬送波の周波数についての最大送信時間から、最小値を選択する(S149)。
このように、図24に示す本処理では、各搬送波周波数の最大送信時間TmaxBwnと送信待機時間を求める。さらに、音響通信制御部20は、分割後の信号帯域幅における要求送信時間Tcontを求める。周波数分割後の搬送波周波数の送信間隔は、Ts(n) = Tcont + Tpause(n)とする。音響通信制御部20は、各搬送波周波数の送信間隔から最大値を最大送信間隔とする。
平均送信間隔は、(式5)に示すように、最大送信間隔/周波数分割数とする。
TsAve = max(Ts(n))/Div・・・(式5)
音響通信制御部20は、全搬送波周波数の最大送信時間が要求送信時間(Tcont)以上で、かつ、平均送信間隔(TsAve)が要求送信間隔以下であるか判定する(S150)。ステップS150で「YES」と判定された場合、周波数分割でデータを送信することによりユーザ要求値を満たすことができる(S151)。
これに対し、ステップS150で「NO」と判定された場合、音響通信制御部20は、ユーザによる周波数分割を行うか否かの選択を求める(S152)。ユーザが周波数分割によるデータ送信を選択すると(S152:YES)、ステップS151へ移り、周波数分割によりデータを送信する。これに対し、ユーザが周波数分割を選択しない場合(S152:NO)、図23のステップS145に示す条件3にしたがうデータ送信を実施する(S153)。
上述の式4,式5で使用される変数の意味は以下の通りである。
Tu:ユーザ要求送信間隔
2Tmax:最大送信時間の2倍
Div:波数分割数
Bw:使用可能最大周波数帯域幅
Bwn:周波数分割後の変調信号帯域幅
GB:隣接干渉抑止のガードバンド帯域幅
Tcount:送信時間(送信間隔と同じ)
Ds:送信間隔内に送信可能なシンボル数
Du:ユーザ要求の送信間隔内の伝送シンボル数
Ts(n):各キャリア周波数nの送信間隔
TsAve:平均送信間隔
図26は、送信タイミングを能動タイプで決定する処理のフローチャートである。送信側装置の音響通信制御部20は、マルチパス計測信号を送信する(S21)。音響通信制御部20は、送信対象のデータを音響パケットで送信する前に、マルチパスの伝搬時間および受信レベルを受信側装置で計測させるべく、マルチパス計測信号を送信する。マルチパス計測信号は、使用可能最大周波数帯域内で周波数分割送信に対応するため、パルス圧縮または周波数の異なる複数の単純パルス波を使用する。
受信側装置の音響通信制御部20は、マルチパス計測信号を受信すると、受信側装置におけるマルチパスを計測し、その計測結果を送信側装置の音響通信制御部20へ返す(S22)。受信側装置の音響通信制御部20は、マルチパスの伝搬時間および受信レベルを計測する。受信側装置の音響通信制御部20は、マルチパス計測信号の送信元に対して、直接波に対するマルチパス波の伝搬遅延量と直接波に対するマルチパス波の受信レベルとを含む応答信号を送信する。
マルチパス計測信号を送信した音響通信制御部20は、受信側装置からの応答信号(マルチパス計測結果)を受信すると(S23)、受動タイプでの処理と同様の方法で伝搬経路を推定する(S24)。
送信側装置の音響通信制御部20は、ステップ24で算出された伝搬経路推定結果とステップS23で受信されたマルチパス計測結果との差異から、伝搬経路推定モデルに用いるパラメータを調整する(S25)。
音響通信制御部20は、伝搬経路の推定誤差を補正することで、受動タイプの動作期間中の送信画装置および受信側装置の移動に伴う環境変化に対応した水中無線通信を実行することができる。すなわち、環境変化によるマルチパス推定の追従性を改善させることで、マルチパス計測信号の送信頻度を軽減することができ、マルチパス計測信号を用いた能動タイプの処理の実行頻度を低下させて、音響通信のリソース消費を軽減できる。
そして、送信側装置の音響通信制御部20は、受動タイプでの処理で述べたと同様に、通信品質に影響を及ぼすマルチパス遅延を判定し(S26)、最大送信時間および最小送信間隔を決定し(S27)、送信タイミングを決定する(S28)。
図27は、送信タイミングを決定するための各パラメータの更新時期を判定する処理(S30)のフローチャートである。受動タイプの送信タイミング更新契機の条件または能動タイプの送信タイミング更新契機の条件を満たした場合、各タイプ別の処理フローより、処理を再開する。
音響通信制御部20は、受動タイプの更新時期であるか判定する(S131)。受動タイプの更新契機は、例えば、以下の通りである。前回の更新から一定時間(Tpass)が経過した場合、送信側装置と受信側装置との間のスラントレンジ(直距離)が一定値(SRpass)以上変化した場合、送信側装置の座標または受信側装置の座標が深度、緯度経度方向に一定値(Xpass,Ypass,Zpass)以上変化した場合、のいずれかの場合である。
音響通信制御部20は、受動タイプの更新時期であると判定すると(S131:YES)、受動タイプによる送信タイミングの更新を実施する(S132)。
音響通信制御部20は、受動タイプの更新時期ではない場合(S131:NO)、能動タイプの更新時期であるか判定する(S133)。能動タイプの更新契機は、例えば、以下の通りである。前回の更新から一定時間(Tact)が経過した場合、送信側装置と受信側装置との間のスラントレンジ(直距離)が一定値(SRact)以上変化した場合、送信側装置の座標または受信側装置の座標が深度、緯度経度方向に一定値(Xact,Yact,Zact)以上変化した場合、のいずれかの場合である。能動タイプでの送信タイミングの更新頻度を受動タイプでの送信タイミングの更新頻度より少なくさせるため、能動タイプの更新契機の条件値は、受動タイプの更新契機の条件値よりも大きく設定される。これにより、マルチパス計測信号の送信、マルチパスの計測、計測結果の返信といった一連の処理が実行される機会をできるだけ低減して、コンピュータリソース、電源リソース、通信リソースが消耗するのを防止できる。特に、母船2MおよびAUV2Sがバッテリの電源で駆動する場合、バッテリの消耗を抑えることにより、より長時間活動することができる。さらに、マルチパス計測信号とその計測結果のやり取りをする間は、母船2MとAUV2Sの間での通常のデータ通信を行うことができないため、マルチパス計測信号を用いた能動タイプの更新頻度を少なくすることにより、通常のデータ送信の頻度や量を確保できる。
このように構成される本実施例によれば、相手方の水中無線通信装置におけるマルチパス波による通信品質劣化の影響が所定値以下になるように、送信時間および送信間隔を制御することができ、水中無線通信の品質劣化を抑制することができる。
本実施例によれば、直接波に対するマルチパス波の遅延時間に制限されることなく、小型かつ低消費電力のハードウェア構成で、マルチパス波によるSNR劣化を抑制することができ、通信品質を保持することができる。
さらに、本実施例によれば、直接波とマルチパス波とが同一方向から受波部に到来する場合であっても、マルチパス波の影響を抑制して通信品質を維持することができる。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されない。当業者であれば、本発明の範囲内で、種々の追加や変更等を行うことができる。上述の実施形態において、添付図面に図示した構成例に限定されない。本発明の目的を達成する範囲内で、実施形態の構成や処理方法は適宜変更することが可能である。
また、本発明の各構成要素は、任意に取捨選択することができ、取捨選択した構成を具備する発明も本発明に含まれる。さらに特許請求の範囲に記載された構成は、特許請求の範囲で明示している組合せ以外にも組合せることができる。
1:水中無線通信システム、2M:母船、2S:AUV、10M,10S:水中無線通信装置、20M,20S:音響通信制御部、30M,30S:送波部、40M,40S:受波部、50M,50S:センサ

Claims (8)

  1. 水上または水中を移動可能な移動体に設けられ、音響信号により水中無線通信する水中無線通信装置であって、
    音響信号を相手方の水中無線通信装置へ送信する送波部と、
    前記相手方の水中無線通信装置からの音響信号を受信する受波部と、
    前記送波部および前記受波部を制御する音響通信制御部とを備え、
    前記音響通信制御部は、前記送波部から送信される信号の送信時間と送信間隔とを制御する送信タイミング制御部を含んでおり、
    前記送信タイミング制御部は、前記相手方の水中無線通信装置の受波部におけるマルチパス波による通信品質劣化の影響が所定値以下になるように、前記送信時間および前記送信間隔を制御する
    水中無線通信装置。
  2. 前記送信タイミング制御部は、前記移動体の位置と前記相手方の水中無線通信装置を有する他の移動体の位置とから前記相手方の水中無線通信装置の他の受波部におけるマルチパス波を推定するための所定のパラメータを算出し、前記算出された所定のパラメータから推定されたマルチパス波に基づいて前記送信時間および前記送信間隔を制御する
    請求項1に記載の水中無線通信装置。
  3. 前記送信タイミング制御部は、前記推定されたマルチパス波に基づいて、前記他の受波部における受信レベルが所定の閾値を下回る音響信号が前記他の受波部に到達するまでの時間を算出し、前記算出された時間から最大送信時間および送信待機時間を決定し、前記決定された最大送信時間および送信待機時間と、ユーザの要求する送信間隔と、前記ユーザの要求する送信データ量とから、前記送信時間および前記送信間隔を決定する
    請求項2に記載の水中無線通信装置。
  4. 前記送信タイミング制御部は、前記他の受波部で受信されるマルチパス波を前記相手方の水中無線通信装置が計測するためのマルチパス波計測信号を前記相手方の水中無線通信装置へ送信し、前記他の受波部で受信されたマルチパス波の計測結果を前記相手方の水中無線通信装置から受信し、前記受信されたマルチパス波の計測結果に基づいて前記所定のパラメータを補正する
    請求項2に記載の水中無線通信装置。
  5. 前記所定のパラメータを補正する頻度は、前記移動体の位置と前記他の移動体の位置とから前記所定のパラメータを算出する頻度よりも少なくなるように設定される
    請求項4に記載の水中無線通信装置。
  6. 前記音響通信制御部は、さらに、通信帯域を分割する帯域分割部を備えており、
    前記送信タイミング制御部は、前記帯域分割部により分割された複数の通信帯域毎の最大送信時間に基づいて、前記送信時間および前記送信間隔を決定する
    請求項2に記載の水中無線通信装置。
  7. 前記帯域分割部は、外部から要求される送信間隔および送信データ量に基づいて、通信帯域を分割する
    請求項6に記載の水中無線通信装置。
  8. 水上または水中を移動可能な移動体に設けられ、音響信号により水中無線通信する方法であって、
    音響信号を相手方の水中無線通信装置へ送信する送波部と、前記相手方の水中無線通信装置からの音響信号を受信する受波部と、前記送波部および前記受波部を制御する音響通信制御部とを備え、
    前記音響通信制御部は、前記送波部から送信される信号の送信時間と送信間隔とを制御する送信タイミング制御部を含んでおり、
    前記送信タイミング制御部は、前記相手方の水中無線通信装置の受波部におけるマルチパス波による通信品質劣化の影響が所定値以下になるように、前記送信時間および前記送信間隔を制御する
    水中無線通信方法。
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