JP2023107744A - X線吸収分光と蛍光x線分光分析を同時に実施するための方法およびシステム - Google Patents

X線吸収分光と蛍光x線分光分析を同時に実施するための方法およびシステム Download PDF

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【課題】X線吸収分光と蛍光X線分光分析を同時に実施するための方法およびシステムを提供すること。【解決手段】X線光源100と、X線光源からの対象物200から検出される元素の吸収端および吸収端に対応するX線エネルギーよりも高いエネルギー帯域幅を有するX線を放射するように構成された少なくとも1つのX線集光レンズと、検査される対象物200を支持するように構成された支持台とを備え、前記エネルギー帯域幅は、前記吸収端に対応する前記X線エネルギーを含み、前記少なくとも1つのX線集光レンズは、前記X線の一部を、500μm未満の集光サイズを有する前記対象物上の測定スポットに集光させるように構成され、対象物200を透過したX線を検出するように構成された少なくとも1つの空間分解X線検出装置410と、対象物200から散乱したX線を検出するように構成された少なくとも1つの蛍光X線検出装置400と、を含むシステム。【選択図】図1

Description

本発明は、透過配置におけるX線吸収分光分析(XAS)及び蛍光配置における蛍光X線分光分析(XRF)を同時に行うことを可能にするための方法およびシステムに関する。
X線吸収分光は、サンプルの前後にX線強度を測定するための検出器を配置し、X線光路に沿って入射X線と透過X線の強度を測定することによって、吸収スペクトルを得るもので、X線は単色化(波長を揃えること)されている。X線吸収分光法スペクトル(XAS:X-ray Absorption Spectra)あるいはX線吸収微細構造(XAFS:X-ray Absorption Fine Structure)は、X線吸収端近傍構造(XANES:X-ray Absorption Near Edge Structure)と広域X線吸収微細構造(XAFS:X-ray Absorption Fine Structure)に区分される。
X線吸収分光装置において、分光器を用いた波長分散型のX線吸収分光を透過光配置で観測することも、提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、透過X線を用いる場合には、試料の厚みを例えば100μm程度の薄片に加工する必要があり、測定できる試料の形状が限られているという課題があった。
蛍光X線分析法とは、未知の物質にX線を照射し、そこから発生する蛍光X線を測定することで、物質の定性あるいは定量分析を行なう方法をいう(例えば、非特許文献1参照)。
物質にX線を照射すると、物質を構成する元素固有のエネルギー(波長)を持つ蛍光X線(特性X線)が発生する。この蛍光X線のエネルギーを測定すると含有されている元素が分かり(定性分析)、各元素の蛍光X線の強さから濃度を計算する(定量分析)ことができる。蛍光X線分析法の方式には、分光結晶を用いた波長分散型(WDXRF)と半導体検出器(EDS)を用いたエネルギー分散型(EDXRF)がある。
ところで、サンプルの物性分析において、X線吸収分光分析と蛍光X線分析とを別の装置で行ったのでは、サンプルのX線照射位置を厳密に一致させることは困難であり、またサンプルによっては物性が動的に変化するため、動的な変化の過程を観察したいという用途には適していなかった。
そこで、タンパク質の変化や生体の分子レベルでの観測には、高輝度放射光施設など大型施設で、X線吸収分光分析と蛍光X線分析とを同時に行うことで、サンプルのX線照射位置を厳密に一致させて、動的な変化の過程を観察することが行われている。高輝度放射光施設としては、例えば、非特許文献2に記載された設備や日本のSPring-8(登録商標)等がある。
しかし、例えばSPring-8(登録商標)のような高輝度放射光施設では敷地面積が141haと広大であると共に、使用する電力も加速器・実験設備が運転のために18MW程度の電力供給が必要となり、77kV特別高圧受電設備が設置されている。このため、大型で汎用性に乏しく、導入、運転コストが大きな課題である。また、実験計画を当該施設の運営機関に提出し、審査を経て採択を受けた場合にのみ実験時間の配分を受けられるが、当該施設の稼働時間と比較して申請者が非常に多く、個別のユーザーが実際に利用できる時間スロットがかなり限られているという課題もある。
特許第6937380号公報
蛍光XAFS法の原理と応用 高橋嘉夫(2010)http://pfwww.kek.jp/innovationPF/04_EVENT/XAFS_Seminor_1010/fl-xafs.pdf GORIL JAHRSENGENE, et. al.; An EXAFS and XANES Study of V, Ni, and Fe Speciation in Cokes for Anodes Used in Aluminum Production" Metallurgical and Materials Transactions B Volueme 50B December 2019-2971
本発明は、上記の問題点を解決したもので、従来の小型汎用型X線吸収分光装置と同じ程度の設備でありながら、透過配置におけるX線吸収分光分析と蛍光配置における蛍光X線分析とを同時に行うことで、サンプルのX線照射位置を厳密に一致させて、動的な変化の過程を観察することができる方法およびシステムを提供することを目的とする。
〔1〕本発明の透過配置におけるX線吸収分光(XAS)と蛍光配置における蛍光X線分光分析(XRF)を同時に実施するための方法は、
元素の吸収端に対応するエネルギーよりも高く且つ前記エネルギーを含むエネルギー帯域幅を有するX線を対象物に照射することと、
空間分解X線検出装置を用いて、3eVよりも高いエネルギー分解能で、前記吸収端を含むエネルギー帯域幅に亘って、前記対象物からX線吸収スペクトルを取得することと、
蛍光X線検出装置を用いて、前記対象物から散乱したX線を検出して蛍光X線スペクトルを取得することと、
を備える方法である。
〔2〕本発明の方法〔1〕において、好ましくは、前記空間分解X線検出装置を用いて前記対象物から取得されるX線吸収スペクトルは、前記吸収端から高エネルギー側の200eV迄のエネルギー帯域幅に亘るX線吸収端近傍構造(XANES)を得るための第1のエネルギー帯域幅の情報と、前記吸収端から高エネルギー側の2keV以下のエネルギー帯域幅に亘る拡張X線吸収微細構造(EXAFS)を得るための第2のエネルギー帯域幅の情報と、の少なくとも何れか一方を有するとよい。
〔3〕本発明の方法〔1〕において、好ましくは、蛍光X線スペクトルは、前記元素の吸収端を含むエネルギー帯域幅の関心領域のスペクトル強度について、前記関心領域から外れたエネルギー帯域幅であって、前記元素の吸収端を含まないバックグラウンド領域のエネルギー帯域幅の第2の関心領域のスペクトル強度について、前記バックグラウンド領域のエネルギー帯域幅での平均値をノイズスペクトル強度として求め、前記関心領域のスペクトル強度から前記ノイズスペクトル強度を控除して、真の測定した関心領域のスペクトル強度とするとよい。
〔4〕本発明の方法〔3〕において、好ましくは、前記元素の吸収端を含むエネルギー帯域幅の関心領域(ROI)のスペクトル強度は、前記蛍光X線検出装置の検出した前記X線のカウント数から定められるものであり、前記X線のカウント数の真の値は、前記ノイズスペクトル強度を控除処理する前の蛍光X線スペクトルのカウント数から、前記ノイズスペクトル強度を控除処理に用いるノイズスペクトル蛍光X線スペクトルの帯域幅に応じた按分比(BW/BWBG)を控除した値とする数式:
により演算されるとよい。
ここで、True ROI countsはX線のカウント数の真の値、Raw ROI countsはノイズスペクトル強度を控除処理する前の蛍光X線スペクトルのカウント数、ROIBG countsはノイズスペクトル強度、BWは関心領域のエネルギー帯域幅、BWBGはバックグラウンド領域のエネルギー帯域幅である。
〔5〕本発明の透過配置におけるX線吸収分光(XAS)と蛍光配置における蛍光X線分光分析(XRF)を同時に実施するためのシステムは、例えば図1に示すように、X線光源100と、前記X線光源からの、前記対象物に含まれる元素の吸収端に対応する、前記吸収端から高エネルギー側の200eV以下のエネルギー帯域幅に亘るX線吸収端近傍構造(XANES)、又は前記吸収端から高エネルギー側の2keV以下のエネルギー帯域幅に亘る拡張X線吸収微細構造(EXAFS)を得るための測定に適したエネルギー帯域幅を有するX線を放射するように構成された少なくとも1つのX線集光レンズと、
測定される対象物200を支持するように構成された支持台とを備え、
前記エネルギー帯域幅は、前記吸収端に対応する前記X線エネルギーを含み、前記少なくとも1つのX線集光レンズは、前記X線の少なくとも一部を、500μm未満の集光サイズを有する前記対象物上の測定スポットに集光させるように構成され、
対象物200を透過したX線を検出するように構成された少なくとも1つの空間分解X線検出装置410と、
対象物200から散乱したX線を検出するように構成された少なくとも1つの蛍光X線検出装置400と、を含み、
前記X線集光レンズは、X線光源側に設置された第1のX線集光ミラー110a、前記第1のX線集光ミラーで反射されたX線が入射する分光結晶120、前記分光結晶で分光されたX線が入射する第2のX線集光ミラー110b、スリット160及びアパーチャー170で構成される、システム。
〔6〕本発明のシステム〔5〕において、好ましくは、前記空間分解X線検出装置は、ピクセルサイズが25μm以上1000μm以下のダイオードが2次元に配列され、X線領域に検出感度を持ち、フォトンカウンティング機能を有する検出素子であるとよい。
〔7〕本発明のシステム〔5〕において、好ましくは、前記蛍光X線検出装置は、150eVよりも高いエネルギー分解能を有する検出素子であるとよい。
〔8〕本発明のシステム〔5〕において、好ましくは、前記蛍光X線検出装置は、前記対象物に対して放射されるX線に対して、前記対象物の位置や角度を調整できる機能を有するとよい。
〔9〕本発明のシステム〔5〕において、好ましくは、前記システムは、蛍光X線検出装置からの検出信号を処理する演算装置420を有し、
前記演算装置420は、前記蛍光X線スペクトルを求めるのに際して、前記元素の吸収端を含むエネルギー帯域幅の関心領域のスペクトル強度について、前記関心領域から外れたエネルギー帯域幅であって、前記元素の吸収端を含まないバックグラウンド領域のエネルギー帯域幅のスペクトル強度について、前記バックグラウンド領域のエネルギー帯域幅での平均値を求めて、ノイズスペクトル強度とし、
前記関心領域のスペクトル強度から前記ノイズスペクトル強度を控除して、真の測定した関心領域のスペクトル強度とするとよい。
〔10〕本発明のシステム〔9〕において、好ましくは、前記元素の吸収端を含むエネルギー帯域幅の関心領域(ROI)のスペクトル強度は、前記蛍光X線検出装置の検出した前記X線のカウント数から定められるものであり、
前記X線のカウント数の真の値は、前記ノイズスペクトル強度を控除処理する前の蛍光X線スペクトルのカウント数から、前記ノイズスペクトル強度を控除処理に用いるノイズスペクトル蛍光X線スペクトルの帯域幅に応じた按分比(BW/BWBG)を控除した値とする数式:
により演算されるとよい。
ここで、True ROI countsはX線のカウント数の真の値、Raw ROI countsはノイズスペクトル強度を控除処理する前の蛍光X線スペクトルのカウント数、ROIBG countsはノイズスペクトル強度、BWは関心領域のエネルギー帯域幅、BWBGはバックグラウンド領域のエネルギー帯域幅である。
本発明の透過配置におけるX線吸収分光(XAS)と蛍光配置における蛍光X線分光分析(XRF)を同時に実施するための方法およびシステムによれば、従来の小型汎用型X線吸収分光装置と同じ程度の設備でありながら、透過配置におけるX線吸収分光分析と蛍光配置における蛍光X線分析とを同時に行うことでき、サンプルのX線照射位置をX線吸収分光と蛍光X線分光分析とで厳密に一致させて、測定対象物を観察することができる。
また、本発明の透過配置におけるX線吸収分光(XAS)と蛍光配置における蛍光X線分光分析(XRF)を同時に実施するための方法およびシステムによれば、吸収と蛍光両方のXAS観測が可能(どちらかよい結果を選択できる)と共に、蛍光X線分光分析を実施する場合には、「透過型」では扱えない厚いサンプルや低密度の材料でも信号が得られる。
本発明の一実施例を示す、X線分光測定装置の全体構成図である。 図1に示す装置の測定プロセスを説明するフローチャートである。 本発明の一実施例を示す、蛍光X線スペクトルの測定結果を示す図で、励起光を固定した場合を示している。 本発明の一実施例を示す、蛍光X線スペクトルの測定結果を示す3D表示の図で、励起光をスキャンしてNiを測定する場合を示している。 図4における蛍光X線スペクトルの測定結果を示す2D表示の図で、励起光をスキャンしてNiを測定する場合を示してある。 蛍光X線分析における関心領域(ROI)の複数設定と手順の一例を示す図である。 図6Aにおいて、ある蛍光X線ピークに対して、対応するROI幅に合致するBG(バックグラウンド)を差し引く関係を説明する図である。 蛍光X線分析における関心領域(ROI)の複数設定と手順の別の例を示す図である。 BG除去処理前の蛍光X線スペクトルの測定結果を示す図である。 BG除去処理に用いるBG蛍光X線スペクトルの測定結果を示す図である。 BG除去処理後の蛍光X線スペクトルの測定結果を示す図である。 図6A~C、図7A~Cに示す測定プロセスを説明するフローチャートである。 本発明の一実施例を示す、透過XASと蛍光XASの同一測定例を示す図で、Cuを測定する場合を示してある。 従来公知の高輝度放射光施設で用いられる透過および蛍光XASシステムの構成ブロック図である。
まず、本明細書で用いる技術用語に関して定義する。
透過配置とは、測定試料にX線を照射し、入射X線と透過X線の強度の比較により吸収を見積もり、入射X線のエネルギーに対してプロットすることによりX線吸収スペクトルを得る配置をいう。
蛍光配置とは、測定試料にX線を照射し、入射X線とX線の吸収により発生した蛍光X線の強度の比較により疑似的な吸収を見積もり、入射X線のエネルギーに対してプロットすることによりX線吸収スペクトルを得る配置をいう。
透過XASとは、測定試料にX線を照射し、入射X線と透過X線の強度の比較により吸収を見積もり、入射X線のエネルギーに対してプロットすることによりX線吸収スペクトルを得るX線吸収分光分析(XAS)をいう。
蛍光XASとは、測定試料にX線を照射し、入射X線とX線の吸収により発生した蛍光X線の強度の比較により疑似的な吸収を見積もり、入射X線のエネルギーに対してプロットすることによりX線吸収スペクトルを得るX線吸収分光分析(XAS)をいう。
続いて、図面を用いて本発明を説明する。
図1は、本発明の一実施例を示す、X線分光測定装置の全体構成図である。
本発明のX線分光測定装置は、X線光源100、X線集光ミラー110a、110b、分光結晶120、回転テーブル130、モータ140、エンコーダ150、スリット160、アパーチャー170を備えている。モータ140とエンコーダ150は、回転テーブル130の下部に位置している。
また検出器や演算装置として、蛍光分光装置400、空間分解X線検出装置410、PC(パーソナルコンピュータ)420を備えている。空間分解X線検出装置410としてのSi検出器は、Si検出器受光部410aとSi検出器変換部410bを含んで構成されている。また、励起X線300a、300b、蛍光基準ガス210、並びに測定対象物200が存在している。
X線光源100は、数keV~数十keVのX線領域(光換算波長0.12nm-0.6nm)の光を発生するタングステン、ロジウム等をターゲットとする広帯域X線源である。X線光源100は、一般に密閉の真空室または能動的ポンピングによって維持されている真空環境(典型的には10-6Torrより高真空)を備え、真空室外側の高電圧電源と接続される電線を備えている。X線光源100は、電子ビームを生成する電子エミッタと、電子ビームが衝突するターゲットと、電子エミッタによって提供される電子ビームの線量および電圧を調整するための静電レンズシステムを備える。静電レンズシステムは、X線発生構造を備えるターゲットに、電子ビームをスキャン、フォーカスまたはデフォーカスすることができる。
X線光源100からのX線は、検出対象となる元素の吸収端に対応するエネルギーよりも高く且つ前記エネルギーを含むエネルギー帯域幅を有する。このエネルギー帯域幅は、例えば蛍光X線スペクトルやX線吸収スペクトルにおいて検出対象となる元素のLα、Lβ、Kα、Kβ等に相当する特性X線の識別ができるように定める。
X線集光光学系は、X線集光レンズとして作用するもので、X線集光ミラー110a、110b、分光結晶120、スリット160及びアパーチャー170で構成される。
X線集光ミラー110a、110bは、トロイダルミラーや多結晶ミラー、ウォルターミラー(例えば、放物面形状および双曲面形状)などの二次関数の1つ以上の部分に対応する反射面を有するX線キャピラリレンズを含むことができる。X線集光ミラー110a、110bは、外部全反射に基づくX線光学レンズ列を含むがこれに限定されない。角度θで原子番号Zを有する材料の表面に入射するX線の場合、反射率は、かすめ角付近(例えば、θ≒0°)ではほぼ100%であり、材料依存およびX線エネルギー依存の臨界角θcよりも大きい角度の場合減少する。臨界角は、通常2°より小さいため、殆どのX線光学システムの許容角度を制限する。
分光結晶120は、広帯域のX線を一定方向に分散させるもので、例えばGe、Si、高配向熱分解黒鉛(HOPG:(highly orientated pyrolytic graphite))などの結晶光学素子が用いられる。分光すべき波長に対する分光結晶の選び方は、次のブラッグの式に依存するもので、0<λ<2dである。
2d・sinθ=nλ (1)
ここで、dは結晶面間隔、θはX線の入射角、λは入射X線の波長である。nは整数であり、反射の次数を示す。n=1のときは一次の反射を表す。
分光すべき波長λが大きくなるにつれて、分光結晶の2d値も大きくなければならない。X線の入射角を変化させると、入射角が(1)式を満たすとき強い反射が起こる。
回転テーブル130には、分光結晶120が配置されており、角度に応じて分光結晶120に分散角度を与える。モータ140は、回転テーブル130の動力源である。エンコーダ150は、回転テーブル130の回転角を読み取り、指示することで分光結晶120の角度位置決めを行うのに用いられる。
励起X線300aは、測定対象物200に照射される前の、X線光源100から出射されたX線である。励起X線300bは、分光結晶120で分光後のX線である。
スリット160及びアパーチャー170は、X線集光ミラー110a、110b及び分光結晶120で収集されたX線の一部を、500μm未満の集光サイズを有する測定対象物200上の集光スポットに集光させるように構成される。
スリット160は、分光結晶120で分散されたX線300bから、検出対象となる元素の吸収端に対応するエネルギーよりも高く且つ前記エネルギーを含むエネルギー帯域幅を有するX線の単色光を切り出すものであり、その分解能は好ましくは3eVよりも高いエネルギー分解能を有する。
アパーチャー170は、測定対象物200以外にX線が照射されないよう、迷光、散乱光を低減するもので、更に高次光カットのためのフィルターを取り付けてもよい。アパーチャー170は、典型的には、X線光学レンズ列によって生成された集光スポットのサイズに相当する直径を有する小さな穴で、絞りの直径は典型的に5~25μmであってもよい。絞りは、一般的に水平方向(すなわち、矢状面に平行な方向)に配向されたスリットを含むことができる。絞り素子自体は、光学システムの焦点の深度よりも短い厚さ(例えば、約20μmの厚さ)を有する金属片(例えば、モリブデンまたはプラチナ)を含んでもよい。
測定対象物200は、吸収及び/または蛍光X線分光により物質の同定や状態を調査したい対象サンプルである。測定対象物200は、支持台に載置されており、支持台の移動・回転によって、測定対象物200を平行移動および/または回転させることができる。したがって、アパーチャー170を通過したX線は、測定対象物200の異なる部分に照射することができる。これによって、スキャン中に、測定対象物200の様々な位置に照射することができ、またはいくつかの入射角から照射することができる。
この支持台の移動・回転機構は、蛍光分光装置400における、測定対象物200に対して放射されるX線に対して、測定対象物200の位置や角度を調整できる機能として作用する。
蛍光分光装置400は、測定対象物200に照射されて散乱したX線を検出するもので、シリコンドリフト検出器(SDD)や小型分光器などである。蛍光分光装置400は、150eVよりも高いエネルギー分解能を有する検出素子であるとよい。150eVよりも高いエネルギー分解能を有することで、蛍光X線スペクトルにおいて検出対象となる原子元素のKα、Kβ等に相当する特性X線の識別ができる。
空間分解X線検出装置410としてのSi検出器は、測定対象物200を透過したX線を検出するもので、X線領域に検出感度を持つ検出器で、Si検出器受光部410aとSi検出器変換部410bを含んで構成されている。Si検出器受光部410aは、2次元のSi検出器であれば、サンプルアライメントや検出領域選択など利便性が上がるのでより良く、例えば30mm以上の広い面積での画像としてX線が検出できるとよい。更にSi検出器受光部410aは、例えば、ピクセルサイズが25μm以上1000μm以下のダイオードが2次元に配列され、X線領域に検出感度を持ち、フォトンカウンティングが可能で、検出対象となる原子元素の吸収端を含むエネルギー帯域幅に亘って、測定対象物200からX線吸収スペクトルを取得するものであればよい。Si検出器変換部410bは、Si検出器受光部410aの各ピクセルの受光信号を増幅するもので、好ましくは受光信号のエネルギー準位に従ってフォトンカウンティング出来ることが好ましい。
PC(パーソナルコンピュータ)420は、信号処理及び各機器の制御、演算を行うもので、ソフトウエアを含む。PC420は、蛍光分光装置400と空間分解X線検出装置410としてのSi検出器を用いて、X線吸収分光分析と蛍光X線分析とを同時に行うことでき、測定対象物200のX線照射位置をX線吸収分光と蛍光X線分光分析とで厳密に一致させて、測定対象物200を観察することができる。また、PC420は、蛍光分光装置400と空間分解X線検出装置410の何れか一方の信号を用いて測定対象物200を観察することができる。さらに、PC420は、スリット160及びアパーチャー170の調整や測定対象物200を載置している支持台の位置や姿勢の調整を行う機能を有する。この測定対象物200の任意の個所にX線照射を可能とする機能により、X線照射位置と蛍光検出器及び/又はX線吸収分光分析器と測定対象物200のアライメント(位置関係)に自由度が出来、好条件で蛍光X線スペクトル及び/又はX線吸収スペクトルの信号が得られる。
蛍光基準ガス210は、ArやKrなど一定量を雰囲気ガスとして与えることで、真空装置が不要になると共に、蛍光強度の補正が行える。
このように構成された装置においては、測定対象物200に照射されて生じた蛍光X線310が蛍光分光装置400によって検出される。測定対象物200の前にスリット160やアパーチャー170、高次光カットフィルターを用いることで、小型汎用ながら、高いエネルギー分解能で蛍光XASが得られる。また、蛍光XASでは強度の補正が課題になるが、雰囲気ガス(例えばArやKr)の蛍光強度を基準強度として補正することができる。
測定対象物を透過したX線320は、空間分解X線検出装置410により検出され、PC(パーソナルコンピュータ)420によって受光信号のエネルギー準位をもとに解析され、X線吸収分光分析が行われる。X線吸収スペクトル(XAS:X-ray Absorption Spectra)あるいはX線吸収微細構造(XAFS:X-ray Absorption Fine Structure)は、X線吸収端近傍構造(XANES)と広域X線吸収微細構造(EXAFS)の区別がある。X線吸収端近傍構造(XANES)では、X線吸収元素の電子状態・周辺構造などの解析に有効な吸収端から高エネルギー側の200eV以下のエネルギー帯域幅に亘る第1のエネルギー帯域幅の情報が含まれる。広域X線吸収微細構造(EXAFS)では、吸収端から高エネルギー側の2keV以下のエネルギー帯域幅に亘る第2のエネルギー帯域幅の情報が含まれる。
なお、XANESとEXAFSにおいて、どこまでの範囲を測定するかは、測定元素のエネルギーと、どのくらいの精度で解析を行うかの2点で決まる。そこで、XANESにあっては、多くの場合吸収端から高エネルギー側の200eV以下のエネルギー帯域幅まで測定すれば十分な解析ができるが、200eVを超えて測定しても差し支えない。また、EXAFSにあっては、多くの場合、2keV迄測定すれば十分な解析ができるが、2keVを超えて測定しても差し支えない。
また、測定対象物に照射されて発生した蛍光X線310は、蛍光分光装置400で受光されて、蛍光X線スペクトルが得られる。
図2は図1に示す装置の測定プロセスを説明するフローチャートである。
まず、測定対象物200をアパーチャー170の後段であって、蛍光分光装置400による蛍光X線310やSi検出器410による透過X線320の受光ができる所定の載置箇所にセットし、X線光学系の調整をする(S100)。
X線光源100から測定対象物200に対して、所定のX線エネルギーを有するX線を照射する(S110)。モータ140とエンコーダ150を用いて、目的のX線エネルギーに対応する分光結晶角度に回転テーブル130を回転して、分光結晶120の角度位置決めを行う(S120)。
そして、空間分解X線検出装置410としてのSi検出器により透過X線による吸収信号を検出すると共に、蛍光分光装置400により散乱X線による測定対象物200の蛍光検出を行う(S130)。
次の目的のX線エネルギーはあるか判断する(S140)。YESであれば、S120に戻り、次の目的のX線エネルギーに対応する分光結晶角度に回転テーブル130を回転する。NOであれば、S150に進む。
サンプルの測定が透過XASであるか判断する(S150)。YESであれば、S160に進み、NOであれば、S180に進む。
透過XASの場合は、測定対象物200が無い場合の照射X線強度I測定をする(S160)。そして、得られた信号データから、吸収スペクトル演算する(S170)。この演算式は、例えば次の式である。
ここで、質量吸収係数μは文献値“International Tables for X-ray Crystallography, Vol.3”を探したり、次のVictoreenの式から求める。
μ=Cλ-Dλ (2)
このVictoreenの式の係数C、Dは、例えば『XAFSの基礎と応用』講談社(2017)付録Cに掲載されている。
透過XASではなく、蛍光XASを測定する場合、得られた信号データから、蛍光配置における疑似的な吸収スペクトル演算する(S180)。
図3は、本発明の一実施例を示す、蛍光X線スペクトルの測定結果を示す図で、励起光を固定した場合を示している。測定対象物はMnCr鋼で、FeのKαは6.4keV付近にピークがあり、Kβは7.0keV付近にピークがある。CrのKαは5.4keV付近にピークがあり、MnのKαは5.8keV付近にピークがある。雰囲気ガスであるArは3keV付近にピークがある。GeのKαは9.9keV付近にピークがあり、Kβは11.0keV付近にピークがある。
図4は本発明の一実施例を示す、蛍光X線スペクトルの測定結果を示す3D表示の図で、励起光をスキャンしてNiを測定する場合を示している。関心領域(ROI:region of interest)は、NiのKα、Kβに相当する特性X線のエネルギー順位を示す領域である。
蛍光X線スペクトルの測定結果によれば、同一元素であるNiの崩壊ライン(Kα、Kβ)ごとに分解できる。吸収XASのみだとKαとKβを分離できない。
図5は、図4における励起光をスキャンした場合のNiのKα、Kβ、及びバックグラウンド信号を示す2D表示の図である。NiのKαは7.47keV付近にピークがあり、Kβは8.26keV付近にピークがある。NiのK吸収端Kabは8.33keV付近である。なお、各元素の吸収端の値は、例えば大気中微小粒子状物質(PM2.5)測定方法暫定マニュアル 第5章[4] 金属成分の非破壊多元素同時測定法(エネルギー分散型蛍光X線分析法)(https://www.env.go.jp/air/report/h19-03/manual/m05_4.pdf)から入手できる。
例えば、代表的な元素の吸収端は、以下のようになっている。
S(硫黄)のK吸収端Kabとして2.470keV、
Ti(チタン)のK吸収端Kabとして4.964keV、
V(バナジウム)のK吸収端Kabとして5.463keV、
Cr(クロム)のK吸収端Kabとして5.988keV、
Mn(マンガン)のK吸収端Kabとして6.536keV、
Fe(鉄)のK吸収端Kabとして7.110keV、
Co(コバルト)のK吸収端Kabとして7.708keV、
Ni(ニッケル)のK吸収端Kabとして8.330keV、
Cu(銅)のK吸収端Kabとして8.979keV、
Zn(亜鉛)のK吸収端Kabとして9.660keV、
Ga(ガリウム)のK吸収端Kabとして10.336keV、
Ge(ゲルマニウム)のK吸収端Kabとして11.102keV、
Se(セレン)のK吸収端Kabとして12.625keV、
Rb(ルビジウム)のK吸収端Kabとして15.200keV、
Zr(ジルコニウム)のK吸収端Kabとして17.996keV、
Nb(ニオブ)のK吸収端Kabとして18.984keV、
Mo(モリブデン)のK吸収端Kabとして20.001keV。
図6Aは蛍光X線分析における関心領域(ROI)の複数設定と手順の一例を示す図である。関心領域(ROI:region of interest)が7か所ある場合を示しており、CrのKαに相当する5.4keV付近、FeのKαに相当する6.4keV付近、FeのKβに相当する7.0keV付近、NiのKαに相当する7.5keV付近、GeのKαに相当する9.9keV付近、GeのKβに相当する11.0keV付近、並びにバックグラウンド信号として14~17keV付近を示している。
図6Bは、図6Aにおいて、ある蛍光X線ピークに対して、対応するROI幅に合致するバックグラウンドを差し引く関係を説明する図である。所定の関心領域のX線エネルギーの測定値から、単位のX線エネルギー幅当たりのバックグラウンド信号をノイズ信号として控除して、目的とする関心領域のX線エネルギーの信号強度を求める。
図6Cは、蛍光X線分析における関心領域(ROI)の複数設定と手順の別の例を示す図である。X線光源にはW(タングステン)電極を用い、印加電圧は20kV、200Wで、X線ビームのエネルギーhνは9050eVで、照射時間は50秒である。ここで、hはプランク定数、νは光の振動数である。試料は鉄合金である。
図6Cには、例えば検出器の一つとしてマルチチャンネルアナライザーを用いる場合には、関心領域(ROI)として、Lチャンネル、Mチャンネル、Nチャンネルが示されている。LチャンネルはFeのKαを信号成分として含む6.0~6.75keVの領域、MチャンネルはFeのKβを信号成分として含む6.8~7.4keVの領域、Nチャンネルはバックグラウンド信号BGを求めるBGチャンネルで、ここでは12~15.8keVの領域である。この時、Lチャンネルの関心領域(ROI1)の真のカウント数は、BG除去処理前の蛍光X線スペクトルのカウント数から、BG除去処理に用いるBG蛍光X線スペクトルの帯域幅に応じた按分比を控除した値となっている。
また、Mチャンネルの関心領域(ROI2)の真のカウント数は、BG除去処理前の蛍光X線スペクトルのカウント数から、BG除去処理に用いるBG蛍光X線スペクトルの帯域幅に応じた按分比を控除した値となっている。
図7Aは、BG除去処理前の蛍光X線スペクトルの測定結果を示す図で、図6Cに示したものと同じ条件で測定している。
図7Bは、BG除去処理に用いるBG蛍光X線スペクトルの測定結果を示す図である。
図7Cは、BG除去処理後の蛍光X線スペクトルの測定結果を示す図である。図7Aに示すBG除去処理前の蛍光X線スペクトルの測定結果から、図7Bに示すBG除去処理に用いるBG蛍光X線スペクトルの測定結果を控除したものである。例えば、FeのKαのカウント数に着目すると、BG除去処理前は約2100であり、BGでは約500であり、BG除去処理後は約1600となっている。
図8は、図6A~C、図7A~Cに示す測定プロセスを説明するフローチャートである。ここでは、測定対象物として、複数元素が混在するサンプルを想定する。
まず、いくつかの蛍光X線ピークに対して関心領域を設定する(S200)。次に、照射X線のエネルギーをスキャンし、関心領域カウントを保存する(S210)。そして、各々の関心領域幅に合致するバックグラウンドを差し引く(S220)。照射X線エネルギーに対する蛍光X線分析より蛍光XASを取得する(S230)。
図9は、本発明の一実施例を示す、透過XASと蛍光XASの同一測定例を示す図で、Cuを測定する場合を示してある。CuのK吸収端Kabは8.98keV付近であるが、このエネルギー準位から計数値が急増している。
図10は従来公知の高輝度放射光施設で用いられる透過および蛍光XASシステムの構成ブロック図である。シンクロトロンからの単色X線が、X線強度を計測するための電離箱(イオンチャンバー)を介して試料に入射する。試料にX線が照射され、電離箱により透過X線、蛍光検出器により蛍光X線が検出される配置となっている。ここでは、入射光強度Iを測定するイオンチャンバーに加えて、試料の透過X線強度を計測する第1のイオンチャンバーと、この第1のイオンチャンバーを透過してさらに参照金属箔を透過したX線強度を計測するための第2のイオンチャンバーを有する測定システムを示している。
このような従来公知の高輝度放射光施設で用いられる透過および蛍光XASシステムと比較して、本発明の測定システムの利点は、次の事項にある。
(A):本発明の測定システムでは、放射光や真空を利用しないため、可搬できると共に、従来の大強度放射光施設と比較して省電力である。
(B):本発明の測定システムは、従来の大強度放射光施設で用いられていた真空の電離箱(イオンチャンバー)を必要とせず、雰囲気希ガス蛍光強度でノーマライズしている。
(C):本発明の測定システムでは、アパーチャーとスリットの調整やサンプルを載置している支持台の位置や姿勢の調整により、サンプルの任意の個所にX線照射が可能であるため、蛍光X線検出器及び/又は吸収X線検出器とサンプルのX線照射位置とのアライメント(位置関係)に自由度が出来、好条件で信号が得られる。
(D):本発明の測定システムでは、2次元検出器との組み合わせで、照射サンプル像もしくは照射位置を確認しながら調整できる。
(E):本発明の測定システムによれば、図9に示すように透過XASと蛍光XASの比較から、その吸収端をより正確に求めることができ、かつ吸収端より高エネルギー側での振動比較で、自己吸収の有無やサンプルの厚み効果などの情報を得ることができる。
(F):透過XASでは、測定対象元素の量が少ない場合、測定対象元素の濃度が低い場合、およびX線の透過が困難な厚い基板の上に測定試料が担持されている場合に測定が困難であるが、前記透過XASにより測定が困難な場合は、蛍光XASにより測定を行うことができる。
なお、上記の本発明の実施の形態では、X線集光レンズとして、X線光源側に設置された第1のX線集光ミラー110a、前記第1のX線集光ミラーで反射されたX線が入射する分光結晶120、前記分光結晶で分光されたX線が入射する第2のX線集光ミラー110b、スリット160及びアパーチャー170で構成される場合を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、他のX線光学システム、例えば、ウォルターI型光学レンズ、円錐形キャピラリレンズ、ポリキャピラリレンズ、Kirkpatrick-Baezレンズ、Montelレンズを光学レンズ列の構成素子として使用することができる。フィルターおよび追加のビームストップなどを含むシステムを使用することもできる。更に、他のX線光学素子、例えば、フレネルゾーンプレート、円筒形ウォルター型光学レンズ、ウォルターII型またはIII型光学レンズ、シュワルツシルト光学レンズ、回折格子、ブラッグ回折を使用した水晶ミラー、ホールアレイレンズ、マルチプリズムまたは「アリゲーター」レンズ、ロール式X線プリズムレンズ、「ロブスターアイ」光学レンズ、マイクロチャネルプレート光学レンズを用いて、または上述したものと組み合わせることによって、当業者に知られている特定の方法でX線を導く本発明の実施形態の複合光学システムを形成することができる。
また、上記の本発明の実施の形態では、空間分解X線検出装置として、Si検出器受光部410aとSi検出器変換部410bを有するSi検出器の場合を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、CCDアレイ(X線センサ)、CMOSまたはS-CMOS検出装置、フラットパネルセンサ、または1D線形検出装置および2Dアレイ検出装置を含み、当技術分野で知られているX線強度を電子信号に変換する1つ以上の位置感知型X線アレイ検出装置であってもよい。位置感知検出装置の例として、線形検出装置、位置感知アレイ検出装置、PINダイオード、比例計数管、分光計、フォトダイオード検出装置、シンチレータタイプおよびガス充填アレイ検出装置などを含む。いくつかの実施形態において、比例検出装置およびアバランシェ検出装置またはエネルギー分散素子を含む、X線を検出するための任意種類の検出装置を含むことができる。
また、上記の本発明の実施の形態では、対象物のX線吸収分光と蛍光X線分光分析を同時に実施することで、正確な吸収過程を観察することができる場合を示したが、本発明は静的な測定に限定されるものではなく、例えば、その場(in situ)計測やオペランド(Operand)測定を行うことで、動的な変化の過程を観察することができる。
本発明のX線吸収分光と蛍光X線分光分析を同時に実施するための方法およびシステムによれば、様々な物質に対して、従来の透過型単独では見えない情報(例えば、吸収や蛍光のダイナミクス解明)が得られるので、例えばタンパク質の変化や生体の分子レベルでの観測にも対応できる。
また、本発明のX線吸収分光と蛍光X線分光分析を同時に実施するための方法およびシステムによれば、「透過型」では扱えない厚いサンプルや低密度の材料でも信号が得られるので、観測できるサンプル形状が広範に許容される。
100 X線光源
110a、110b X線集光ミラー
120 分光結晶
130 回転テーブル
140 モータ
150 エンコーダ
160 スリット
170 アパーチャー
200 測定対象物
210 蛍光基準ガス
300a 励起X線
300b 励起X線(分光後)
310 蛍光X線
320 透過X線
400 蛍光分光装置
410 空間分解X線検出装置(Si検出器)
410a Si検出器受光部
410b Si検出器変換部
420 PC(演算装置)
EXAFS 拡張X線吸収微細構造
XANES X線吸収端近傍構造
XAS X線吸収分光
XRF 蛍光X線分光分析

Claims (10)

  1. 透過配置におけるX線吸収分光と蛍光配置における蛍光X線分光分析を同時に実施するための方法であって、
    元素の吸収端に対応するエネルギーよりも高く且つ前記エネルギーを含むエネルギー帯域幅を有するX線ビームを対象物に照射することと、
    空間分解X線検出装置を用いて、3eVよりも高いエネルギー分解能で、前記吸収端を含むエネルギー帯域幅に亘って、前記対象物からX線吸収スペクトルを取得することと、
    蛍光X線検出装置を用いて、前記対象物から散乱したX線を検出して蛍光X線スペクトルを取得することと、
    を備える方法。
  2. 前記空間分解X線検出装置を用いて前記対象物から取得されるX線吸収スペクトルは、
    前記吸収端から高エネルギー側の200eV以下のエネルギー帯域幅に亘るX線吸収端近傍構造を得るための第1のエネルギー帯域幅の情報と、
    前記吸収端から高エネルギー側の2keV以下のエネルギー帯域幅に亘る拡張X線吸収微細構造を得るための第2のエネルギー帯域幅の情報と、
    の少なくとも何れか一方を有する請求項1に記載の方法。
  3. 前記蛍光X線スペクトルは、
    前記元素の吸収端を含むエネルギー帯域幅の関心領域のスペクトル強度について、
    前記関心領域から外れたエネルギー帯域幅であって、前記元素の吸収端を含まないバックグラウンド領域のエネルギー帯域幅のスペクトル強度について、前記バックグラウンド領域のエネルギー帯域幅での平均値を求めて、ノイズスペクトル強度とし、
    前記関心領域のスペクトル強度から前記ノイズスペクトル強度を控除して、真の測定した関心領域のスペクトル強度とする、
    請求項1に記載の方法。
  4. 前記元素の吸収端を含むエネルギー帯域幅の関心領域(ROI)のスペクトル強度は、前記蛍光X線検出装置の検出した前記X線のカウント数から定められるものであり、
    前記X線のカウント数の真の値は、前記ノイズスペクトル強度を控除処理する前の蛍光X線スペクトルのカウント数から、前記ノイズスペクトル強度を控除処理に用いるノイズスペクトル蛍光X線スペクトルの帯域幅に応じた按分比(BW/BWBG)を控除した値とする数式:
    により演算される請求項3に記載の方法。
    ここで、True ROI countsはX線のカウント数の真の値、Raw ROI countsはノイズスペクトル強度を控除処理する前の蛍光X線スペクトルのカウント数、ROIBG countsはノイズスペクトル強度、BWは関心領域のエネルギー帯域幅、BWBGはバックグラウンド領域のエネルギー帯域幅である。
  5. 透過配置におけるX線吸収分光と蛍光配置における蛍光X線分光分析を同時に実施するためのシステムであって、
    X線光源と、
    前記X線光源からの、前記対象物に含まれる元素の吸収端に対応する、前記吸収端から高エネルギー側の200eV以下のエネルギー帯域幅に亘るX線吸収端近傍構造、又は前記吸収端から高エネルギー側の2keV以下のエネルギー帯域幅に亘る拡張X線吸収微細構造を得るための測定に適したエネルギー帯域幅を有するX線を放射するように構成された少なくとも1つのX線集光レンズと、
    測定される対象物を支持するように構成された支持台とを備え、
    前記エネルギー帯域幅は、前記吸収端に対応する前記X線エネルギーを含み、前記少なくとも1つのX線集光レンズは、前記X線の少なくとも一部を、500μm未満の集光サイズを有する前記対象物上の測定スポットに集光させるように構成され、
    前記対象物を透過したX線を検出するように構成された少なくとも1つの空間分解X線検出装置と、
    前記対象物から散乱したX線を検出するように構成された少なくとも1つの蛍光X線検出装置と、を含み、
    前記X線集光レンズは、X線光源側に設置された第1のX線集光ミラー、前記第1のX線集光ミラーで反射されたX線が入射する分光結晶、前記分光結晶で分光されたX線が入射する第2のX線集光ミラー、スリット及びアパーチャーで構成される、システム。
  6. 前記空間分解X線検出装置は、ピクセルサイズが25μm以上1000μm以下のダイオードが2次元に配列され、X線領域に検出感度を持ち、フォトンカウンティング機能を有する検出素子である請求項5に記載のシステム。
  7. 前記蛍光X線検出装置は、150eVよりも高いエネルギー分解能を有する検出素子である請求項5に記載のシステム。
  8. 前記蛍光X線検出装置は、前記対象物に対して放射されるX線に対して、前記対象物の位置や角度を調整できる機能を有する請求項5に記載のシステム。
  9. 前記システムは、蛍光X線検出装置からの検出信号を処理する演算装置を有し、
    前記演算装置は、前記蛍光X線スペクトルを求めるのに際して、前記元素の吸収端を含むエネルギー帯域幅の関心領域のスペクトル強度について、前記関心領域から外れたエネルギー帯域幅であって、前記元素の吸収端を含まないバックグラウンド領域のエネルギー帯域幅のスペクトル強度について、前記バックグラウンド領域のエネルギー帯域幅での平均値を求めて、ノイズスペクトル強度とし、
    前記関心領域のスペクトル強度から前記ノイズスペクトル強度を控除して、真の測定した関心領域のスペクトル強度とする、
    請求項5に記載のシステム。
  10. 前記元素の吸収端を含むエネルギー帯域幅の関心領域(ROI)のスペクトル強度は、前記蛍光X線検出装置の検出した前記X線のカウント数から定められるものであり、
    前記X線のカウント数の真の値は、前記ノイズスペクトル強度を控除処理する前の蛍光X線スペクトルのカウント数から、前記ノイズスペクトル強度を控除処理に用いるノイズスペクトル蛍光X線スペクトルの帯域幅に応じた按分比(BW/BWBG)を控除した値とする数式:
    により演算される請求項9に記載のシステム。
    ここで、True ROI countsはX線のカウント数の真の値、Raw ROI countsはノイズスペクトル強度を控除処理する前の蛍光X線スペクトルのカウント数、ROIBG countsはノイズスペクトル強度、BWは関心領域のエネルギー帯域幅、BWBGはバックグラウンド領域のエネルギー帯域幅である。

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