JP2023104418A - 非線形光学結晶、その製造方法、それを用いた波長変換素子、および、それを用いた紫外レーザ装置 - Google Patents

非線形光学結晶、その製造方法、それを用いた波長変換素子、および、それを用いた紫外レーザ装置 Download PDF

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【課題】 深紫外域の光を発生可能な非線形光学結晶、その製造方法、それを用いた波長変換素子、および、それを用いた紫外レーザ装置を提供すること。【解決手段】 本発明の非線形光学結晶は、少なくとも、Ln元素、Ga元素、M元素、Q元素および酸素(ただし、Lnは、イットリウム(Y)およびランタノイドからなる群から選択される元素であり、Mは、ゲルマニウム(Ge)および/またはケイ素(Si)であり、Qは、硫黄(S)および/またはセレン(Se)である)を含み、La3Ga3Ge2S3O10と同一の結晶構造を有する結晶からなる。【選択図】 図1

Description

特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年10月8日公開 Angewandte Chemie International Edition,https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/ange.202112692
本発明は、非線形光学結晶、その製造方法、それを用いた波長変換素子、および、それを用いた紫外レーザ装置に関する。
高出力で集光性の高い紫外(UV:ultraviolet)レーザは、高精度な微細加工やアブレィティブ光分解、半導体マスクの検査など、様々な産業・医療の分野で重要な技術である。現在、必要とされている波長300nm以下のレーザ光源は、希ガスのハロゲン化物(XeCl、ArF、KrFなど)を用いたエキシマレーザであるが、これらには様々な欠点がある。例えば、装置の体積が非常に大きい、高電圧でのガス放電、定期的なメンテナンスが必要である。一方、非線形光学(NLO:nonlinear optical)結晶を用いた全固体紫外レーザは小型でメンテナンスフリーのため、エキシマレーザに代わる光源として注目されている。
紫外NLO結晶は、赤外レーザの周波数(Nd:YAGレーザでは1064nm)を非線形光学現象である第二高調波発生(SHG:second harmonic generation)現象により紫外周波数領域のレーザに変換でき、高いレーザビームの品質および出力において重要な役割を果たす。これまでβ-BaB、LiB、CsLiB10に代表されるホウ酸系の紫外NLO結晶が実用化されている(例えば、非特許文献1~3を参照)。
しかしながら、近紫外もしくは深紫外領域において実用化に適した特性をもつ紫外用途のNLO材料を得ることは非常に困難である。紫外用途の非線形光学結晶に要求される条件として、
(i)大きな非線形光学定数(dij>d36(KDP)=0.39pm/V)、
(ii)適度に大きな複屈折(d~0.07-.10@1064nm)、
(iii)幅広い紫外光透過窓または短い吸収端と大きなバンドギャップ、
(iv)化学的・熱的安定性、
(v)大型単結晶育成の容易性
が挙げられる。非特許文献1~3のいずれの結晶も、これらの条件をすべて満足するものではなく、新物質探索が続いている。
C.Chenら,Sci.Sin.B,1985,28,235-243 S.Linら,J.App.Phys.,Vol.67,No.2,1990,634-638 Y.Moriら,Appl.Phys.Lett.,1995,67,1818-1820
以上から、本発明の課題は、深紫外域の光を発生可能な非線形光学結晶、その製造方法、それを用いた波長変換素子、および、それを用いた紫外レーザ装置を提供することである。
本発明による非線形光学結晶は、少なくとも、Ln元素、Ga元素、M元素、Q元素および酸素(ただし、Lnは、イットリウム(Y)およびランタノイドからなる群から選択される元素であり、Mは、ゲルマニウム(Ge)および/またはケイ素(Si)であり、Qは、硫黄(S)および/またはセレン(Se)である)を含み、LaGaGe10と同一の結晶構造を有する結晶からなり、これにより上記課題を解決する。
前記LaGaGe10と同一の結晶構造を有する結晶は、六方晶系に属してもよい。
前記LaGaGe10と同一の結晶構造を有する結晶は、P-62cの対称性を有し、格子定数a、bおよびcは、
a=1.01701±0.05nm
b=1.01701±0.05nm
c=0.75198±0.05nm
を満たしてもよい。
前記結晶は、LnGa(ただし、a+b+c+d+e=1である)で表され、パラメータa、b、c、dおよびeは、
0.1≦a≦0.18、
0.1≦b≦0.18、
0.05≦c≦0.13、
0.1≦d≦0.18、および、
0.43≦e≦0.55
を満たしてもよい。
前記パラメータa、b、c、dおよびeは、
0.14≦a≦0.15、
0.14≦b≦0.15、
0.09≦c≦0.10、
0.14≦d≦0.15、および、
0.47≦e≦0.48
を満たしてもよい。
前記ランタノイドは、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジウム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、および、ルテチウム(Lu)からなる群から少なくとも一種選択されてもよい。
4.6eV以上5.0eV以下の範囲のバンドギャップを有してもよい。
波長1.064μmにおける非線形光学定数d22および-d16は、0.5pm/V以上0.7pm/V以下の範囲を満たしてもよい。
波長1.064μmにおける複屈折は、0.1以上0.15以下の範囲を満たしてもよい。
吸収端は、255nm以下であってもよい。
本発明による上記非線形光学結晶の製造方法は、少なくとも、Ln元素、Ga元素、M元素、Q元素および酸素(ただし、Lnは、イットリウム(Y)およびランタノイドからなる群から選択される元素であり、Mは、ゲルマニウム(Ge)および/またはケイ素(Si)であり、Qは、硫黄(S)および/またはセレン(Se)である)を含有する原料混合物を真空封入し、加熱することを包含し、これにより上記課題を解決する。
前記加熱することは、前記原料混合物をフラックス法により液相成長させることであってもよい。
前記加熱することは、前記原料混合物を800℃以上1000℃以下の温度範囲で加熱してもよい。
本発明による波長変換素子は、上記非線形光学結晶からなり、これにより上記課題を解決する。
本発明による紫外レーザ装置は、基本波光を発するレーザ光出力部と、前記基本波光を、前記基本波光の波長よりも短い波長を有する紫外レーザ光に変換する波長変換部とを備え、前記波長変換部は、少なくとも上記波長変換素子を備え、これにより上記課題を解決する。
本発明による非線形光学結晶は、少なくとも、Ln元素、Ga元素、M元素、Q元素および酸素(ただし、Lnは、イットリウム(Y)およびランタノイドからなる群から選択される元素であり、Mは、ゲルマニウム(Ge)および/またはケイ素(Si)であり、Qは、硫黄(S)および/またはセレン(Se)である)を含み、LaGaGe10と同一の結晶構造を有する結晶からなる。このような結晶は、大きな非線形光学定数、大きな複屈折、短い吸収端、大きなバンドギャップ、ならびに、化学的・熱的安定性に優れており、非線形光学効果を奏し、第二高調波発生するため、波長変換素子に適用できる。さらに、このような波長変換素子を用いた紫外レーザ装置を提供できる。
本発明の非線形光学結晶の製造方法は、上述の非線形光学結晶を構成する元素を含有する原料混合物を真空中で加熱することによって得られる。特別な技術や装置を不要とするため、有利である。
LaGaGe10で表される結晶のモデルを示す図 LaGaGe10で表される結晶の結晶構造から計算したCuKα線を用いた粉末X線回折を示す図 本発明の非線形光学結晶からなる波長変換素子を用いた紫外レーザ装置を示す模式図 本発明の非線形光学結晶からなる波長変換素子を用いた別の紫外レーザ装置を示す模式図 例2~例5の試料のXRDパターンを示す図 例1の試料のTG曲線およびDTA曲線を示す図 例1の試料の拡散・吸収スペクトルを示す図 例1の試料のSHG強度の粒径依存性を示す図 例6の試料の外観を示す図 例6の試料のEDXスペクトルを示す図
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。なお、同様の要素には同様の番号を付し、その説明を省略する。
(実施の形態1)
実施の形態1では、本発明による非線形光学結晶およびその製造方法について説明する。
本発明の非線形光学結晶は、少なくとも、Ln元素、Ga元素、M元素、Q元素および酸素(ただし、Lnは、イットリウム(Y)およびランタノイドからなる群から選択される元素であり、Mは、ゲルマニウム(Ge)および/またはケイ素(Si)であり、Qは、硫黄(S)および/またはセレン(Se)である)を含み、LaGaGe10と同一の結晶構造を有する結晶からなる。このような結晶は、大きな非線形光学定数、大きな複屈折、短い吸収端、大きなバンドギャップ、ならびに、化学的・熱的安定性に優れており、非線形光学効果を示し、波長変換素子に適用できる。
LaGaGe10で示される結晶は、本発明者らが新たに合成し、結晶構造解析により新規結晶であると確認した、本発明より以前において報告されていない結晶である。
図1は、LaGaGe10で表される結晶のモデルを示す図である。
例示的なLaGaGe10で示される結晶として、本発明者らが合成したLaGaGe10結晶について行った単結晶構造解析によれば、LaGaGe10結晶は六方晶系に属し、P-62c空間群(International Tables for Crystallographyの190番の空間群)に属し、表1に示す結晶パラメータおよび原子座標位置を占める。
表1において、格子定数a、b、cは単位格子の軸の長さを示し、α、β、γは単位格子の軸間の角度を示す。原子座標は単位格子中の各原子の位置を、単位格子を単位とした0から1の間の値で示す。この結晶中には、La、Ga、Ge、S、Oの原子が存在し、Laは1種類の席La1に存在し、Gaは2種類の席Ga1およびGa2に存在し、Geは2種類の席Ga1およびGa2に存在する解析結果を得た。また、Sは1種類の席S1に存在し、OはO1からO3の3種類の席に存在する解析結果を得た。
図1には、LaGaGe10結晶の側面図(a)、上面図(b)、局所配位環境(c)を示す。図1(a)に示されるように、LaGaGe10結晶は、三角柱、ならびに、GaOと(Ga/Ge)Sとからなる孤立ダイマーを有する。
詳細には、Ga原子とGe原子とはワイコフ位置4fと6gに3:2の割合でランダムに分布しており、図1(A)、(B)に示すように、ホモレプティックとヘテロレプティックなGa/Ge配位環境が共存する。
ホモレプティックな配位環境は、S原子に対してO原子の濃度比が大きく、酸素アニオンだけを配位子とする。O原子濃度が、S原子濃度よりも多いため、大きなバンドギャップを有し得る。また、ホモレプティックな配位環境を有するため、紫外光透過性を向上し得る。
一方、ヘテロレプティックな配位環境は、酸素アニオンと硫黄アニオンとの両方を配位子とする。このような配位環境では、硫黄アニオン由来の分極率だけでなく、局所的な歪みが増大することにより、非線形光学定数および光学異方性が向上し得る。このように、本発明の結晶は、ホモレプティックとヘテロレプティックなGa/Ge配位環境が共存することにより、上述の(i)~(iii)の要件を満たした非線形光学結晶として機能する。
図1(C)に示すように、ワイコフ位置4fにあるGa原子とGe原子((Ga/Ge)1と称する)は、4つのO原子と四面体配位しており、2つの(Ga/Ge)1O四面体が、孤立ダイマー(Ga/Ge)1を形成する。一方、ワイコフ位置6fにあるGa原子とGe原子((Ga/Ge)2と称する)は、2つのS原子と2つのO原子と四面体配位しており、3つの(Ga/Ge)2S四面体は、2つのO原子と頂点共有し、ab面内に環状構造の(Ga/Ge)2Sを形成する。(Ga/Ge)1O四面体と(Ga/Ge)2S四面体とは、LaS反四角柱によって互いに分離されており、c軸に沿った3つのO原子と面共有している。
LaGaGe10と同一の結晶構造を有する結晶は、X線回折や中性子線回折により同定することができる。本発明で示すLaGaGe10結晶のX線回折結果と同一の回折を示す物質として、LnGa10で示される結晶がある。ここで、Lnは、Yおよびランタノイドからなる群から選択される元素であり、Mは、Geおよび/またはSiであり、Qは、Sおよび/またはSeである。ランタノイド元素は、例示的には、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジウム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、および、ルテチウム(Lu)からなる群から選択される。当然ながら、LaGaGe10と同一の結晶構造を有する結晶は、LaGaGe10結晶そのものも含む。
さらに、LaGaGe10結晶において構成元素が他の元素と置き換わることにより格子定数や原子位置が変化した結晶がある。ここで、構成元素が他の元素で置き換わるものとは、例えば、LaGaGe10結晶中のLaの一部または全てが、La以外のYおよびランタノイドからなる群から選択される元素であり、Geの一部または全てがSiで置換したもの、Sの一部または全てがSeで置換したものがある。これらの置換は結晶中の全体の電荷が中性となるように置換される。これらの元素置換の結果、結晶構造が変わらないものは、LaGaGe10結晶である。元素の置換により、非線形光学結晶の非線形特性、化学的安定性、熱的安定性が変化するので、結晶構造が保たれる範囲に置いて、用途に応じて適時選択すると良い。
LaGaGe10と同一の結晶構造を有する結晶は、その構成成分が他の元素で置き換わることによって格子定数は変化するが、結晶構造と原子が占めるサイトとその座標によって与えられる原子位置は骨格原子間の化学結合が切れるほどには大きく変わることはない。本発明では、X線回折や中性子線回折の結果をP-62cの空間群でリートベルト解析して求めた格子定数および原子座標から計算されたGa-OおよびLa-Oの化学結合の長さ(近接原子間距離)が、表1に示すLaGaGe10結晶の格子定数と原子座標から計算された化学結合の長さと比べて±5%以内の場合は同一の結晶構造と定義してLaGaGe10と同一の結晶構造を有する結晶かどうかの判定を行う。この判定基準は、実験によればLaGaGe10結晶において化学結合の長さが±5%を越えて変化すると化学結合が切れて別の結晶となるためである。
図2は、LaGaGe10で表される結晶の結晶構造から計算したCuKα線を用いた粉末X線回折を示す図である。
LaGaGe10と同一の結晶構造を有する結晶の簡便な判定方法として、新たな物質について測定したX線回折結果から計算した格子定数と表1の結晶構造データを用いて計算した回折のピーク位置(2θ)が主要ピークについて一致したときに当該結晶構造が同じものと特定することができる。
例えば、比較対象となる物質を粉末として得た場合、図2と比較対象となる物質とを比べることにより、LaGaGe10と同一の結晶構造を有する結晶かどうかの簡易的な判定ができる。LaGaGe10と同一の結晶構造を有する結晶の主要ピークとしては、回折強度の強い10本程度で判定すると良い。このような観点から、表1は、LaGaGe10と同一の結晶構造を有する結晶を特定する上において基準となるもので重要である。
LaGaGe10と同一の結晶構造を有する結晶は、好ましくは、六方晶系に属する。これにより、結晶が安定化するため、大きな非線形光学効果を示し得る。
LaGaGe10と同一の結晶構造を有する結晶は、好ましくは、P-62cの対称性を有し、格子定数a、bおよびcは、
a=1.01701±0.05nm
b=1.01701±0.05nm
c=0.75198±0.05nm
を満たす。これにより、結晶が安定化するため、大きな非線形光学定数となり、大きな非線形光学効果を示し得る。
LaGaGe10と同一の結晶構造を有する結晶は、LnGa(ただし、a+b+c+d+e=1であり、M元素およびQ元素は上述したとおりである)で表され、パラメータa、b、c、dおよびeは、好ましくは、
0.1≦a≦0.18、
0.1≦b≦0.18、
0.05≦c≦0.13、
0.1≦d≦0.18、および、
0.43≦e≦0.55
を満たす。このようなパラメータを満たす結晶からなる非線形光学結晶は、上述した結晶が安定化するため、優れた非線形光学効果を示す。
特に、パラメータa、b、c、dおよびeが、
0.14≦a≦0.15、
0.14≦b≦0.15、
0.09≦c≦0.10、
0.14≦d≦0.15、および、
0.47≦e≦0.48
を満たす結晶は、結晶構造が安定化し、高い非線形光学効果を示し、大きな非線形光学定数、大きな複屈折有するため好ましい。
本発明の非線形光学結晶は、上述したように、ホモレプティックな配位環境と、ヘテロレプティックな配位環境とを有するため、大きな非線形光学定数と位相整合とを維持したまま、紫外光透過性に優れる。
本発明の非線形光学結晶は、組成および元素の選択により、より好ましくは、4.6eV以上5.0eV以下の範囲のバンドギャップを有する。これにより、吸収端が255nm以下となるため、幅広い紫外光透過窓を有するため、深紫外域の光を発生に有利である。吸収端は255nm以下であれば特に制限はないが、220nm以上であってよい。
本発明の非線形光学結晶は、より好ましくは、波長1.064μmにおける非線形光学定数d22および-d16は、0.5pm/V以上0.7pm/V以下の範囲を満たす。これらバンドギャップ、吸収端ならびに非線形光学定数を満たす代表的な結晶は、LnがLaであり、MがGeであるLaGaGe10結晶、LnがPrであり、MがGeであるPrGaGe10結晶であり、LnがNdであり、MがGeであるNdGaGe10結晶がある。
本発明の非線形光学結晶は、β-BaB、LiB等と異なり潮解性を有さないため、取り扱いが容易である。また、少なくとも800℃までの高温においても分解することなく安定であり、上述の(iv)の要件を満たした非線形光学結晶として機能する。
本発明の非線形光学結晶は、多結晶粉末であってもよいし、単結晶であってもよい。多結晶粉末であれば、単結晶を製造するための原料粉末として使用できる。また、単結晶であれば、後述するように、波長変換素子として機能する。
このような本発明の非線形光学結晶の製造方法について説明する。
本発明の非線形光学結晶が多結晶粉末である場合、少なくとも、Ln元素、Ga元素、M元素、Q元素および酸素(ただし、Lnは、イットリウム(Y)およびランタノイドからなる群から選択される元素であり、Mは、ゲルマニウム(Ge)および/またはケイ素(Si)であり、Qは、硫黄(S)および/またはセレン(Se)である)を含有する原料混合物を真空封入し、加熱すればよい。
原料混合物の出発原料として、Lnを含有する単体または化合物(Lnは、イットリウム(Y)およびランタノイドからなる群から選択される元素である)、Gaを含有する単体または化合物、Mを含有する単体または化合物(Mは、ゲルマニウム(Ge)および/またはケイ素(Si)である)、Qを含有する単体または化合物(Qは、硫黄(S)および/またはセレン(Se)である)を使用するとよい。
Lnを含有する単体は、Lnの金属であってよい。Lnを含有する化合物は、ケイ化物、酸化物、炭酸塩、窒化物、酸窒化物、塩化物、フッ化物、硫化物、セレン化物、および酸フッ化物から選ばれる単体または2種以上の混合物であってよい。
Gaを含有する単体は、Ga金属であってよい。Gaを含有する化合物は、ケイ化物、酸化物、炭酸塩、窒化物、酸窒化物、塩化物、フッ化物、硫化物、セレン化物、および酸フッ化物から選ばれる単体または2種以上の混合物であってよい。
Mを含有する単体は、M金属であってよい。Mを含有する化合物は、ケイ化物、酸化物、炭酸塩、窒化物、酸窒化物、塩化物、フッ化物、硫化物、セレン化物、および酸フッ化物から選ばれる単体または2種以上の混合物であってよい。
Qを含有する単体は、Q元素単体であってよい。Qを含有する化合物は、Ln、Ga、あるいは、Mの硫化物および/またはセレン化物であってよい。Lnを含有する化合物、Gaを含有する化合物、Mを含有する化合物として、硫化物あるいはセレン化物を選択した場合には、これらを省略することができる。
なお、原料混合物中の酸素は、化合物として酸素を含有する酸化物、酸窒化物または酸フッ化物を用いることにより取り入れてよい。不純物の抑制の観点から、Lnを含有する化合物は、好ましくは、Lnの酸化物であり、Gaを含有する化合物は、好ましくは、Gaの酸化物であり、Mを含有する化合物は、好ましくは、Mの酸化物であり、QについてはQ元素単体、または、Ln、Ga、およびMの硫化物またはセレン化物である。
真空封入は、好ましくは、0.001Pa以上100Pa以下の範囲の真空度となるよう行う。これにより、純度のよい非線形光学結晶が得られる。なお好ましくは、真空封入は、1.0Pa以上10Pa以下の範囲の真空度となるよう行う。
原料混合物の加熱の温度は、原料混合物が溶解し、互いに反応すれば特に制限はないが、例示的には、800℃以上1500℃以下の温度範囲である。この範囲であれば、反応が促進し、本発明の非線形光学結晶が得られる。より好ましくは、加熱の温度は、800℃以上1000℃以下の温度範囲である。
原料混合物の加熱の時間は、特に制限はないが、例示的には、5時間以上48時間以下の時間であってよい。この範囲であれば、反応が進む。好ましくは、18時間以上30時間以下の時間である。
本発明の非線形光学結晶が単結晶である場合、上述の原料混合物を真空封入し、加熱する際に、フラックス法による液相成長を採用すればよい。フラックスとしては、ハロゲン化金属塩を使用できる。このようなハロゲン化金属塩は、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属のハロゲン化物、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属のハロゲン化物がある。ハロゲン化物としては、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物等挙げられるが、塩化物が好ましい。
単結晶を製造する場合も、真空封入の真空度、加熱の温度、加熱時間は、上述した条件を採用できる。また、加熱時の昇温速度は、1℃/分以上10分以下の温度範囲を採用できる。加熱後、450℃以上650℃以下の温度範囲まで0.01℃/分以上5℃/分以下の範囲の降温速度で徐冷することが好ましい。これにより、単結晶の成長が促進し得る。このように、既存のフラックス法を採用することによりブロック状の単結晶を育成できるので、大型化も可能であり、上述の(v)の要件を満たし得る。
(実施の形態2)
実施の形態2では、実施の形態1で説明した非線形光学結晶を用いた紫外レーザ装置について説明する。
本発明の紫外レーザ装置は、基本波光を発するレーザ光出力部と、レーザ光出力部からの基本波光を、基本波光の波長よりも短い波長を有する紫外レーザ光に変換する波長変換部とを備える。この波長変換部は、少なくとも実施の形態1で説明した非線形光学結晶からなる波長変換素子を備える。レーザ光出力部は、可視光から赤外光の波長を有するレーザ光を発するものであれば特に制限はなく、このようなレーザ光出力部は、例えば、半導体レーザ、固体レーザ、ファイバレーザ等周知の光源を使用できる。
図3は、本発明の非線形光学結晶からなる波長変換素子を用いた紫外レーザ装置を示す模式図である。
図3では、波長1064nmのレーザ光から波長266nmの紫外光を発する紫外レーザ装置を説明する。紫外レーザ装置300において、レーザ光出力部310は、波長1064nmを有するレーザ光(基本波光)を出力するNd:YAGレーザ311を備える。
波長変換部320は、実施の形態1で説明した非線形光学結晶からなる波長変換素子321、322を備える。非線形光学結晶は、実施の形態1で説明した非線形光学結晶の単結晶体であるため説明を省略する。ここでは、簡単のため、波長変換素子321、322がいずれも実施の形態1で説明した非線形光学結晶からなる場合を説明するが、いずれか一方に本発明の非線形光学結晶を用い、一方に、例えば、非特許文献1~3に代表されるβ-BaB、LiB、CsLiB10に代表されるホウ酸系の紫外NLO結晶を用いてもよい。
レーザ光出力部310が発するレーザ光(基本波光)は、波長変換部320の波長変換素子321に入射する。図3では、基本波を増幅する光増幅器を介して波長変換部320に入射するように構成される。例えば、このような光増幅器には、この波長帯域で高い利得を有するイッテルビウム(Yb)ドープファイバ光増幅器を使用できる。
波長変換部320は、波長変換素子321および波長変換素子322を備え、波長変換素子321は、基本波の波長λ1=1064nm(角周波数ω)をλ1/2=532nm(角周波数2ω)に波長変換し、第二高調波発生し、波長変換素子322は、λ1/2=532nmをλ1/4=266nm(角周波数4ω)に波長変換し、第四高調波発生する。このようにして、紫外レーザ装置300は、波長266nmの高出力の紫外光(紫外レーザ光)を出力できる。
なお、図3では、波長変換素子321と波長変換素子322との間に波長板を示すが、必須ではない。波長板を用いることにより、波長変換素子321で波長変換された第二高調波光の偏光面と、波長変換素子321で波長変換されず残存する基本波の偏光面とを同一面にできるので、波長変換素子322における変換効率を向上させることができる。
波長変換部320の後段に波長変換素子322で波長変換された第四高調波(すなわち紫外光)と、残存する基本波および第二高調波とを、プリズム、ダイクロイックミラー、ビームスプリッタ等の光学素子(図示せず)を用いて分離してもよい。当然ながら、上述のレーザ光の光路上に必要に応じて集光レンズ等の光学レンズなどを用いた光学的な調整を行ってもよい。
図4は、本発明の非線形光学結晶からなる波長変換素子を用いた別の紫外レーザ装置を示す模式図である。
図4では、1064nmのレーザ光から193nmの深紫外光を発する紫外レーザ装置を説明する。紫外レーザ装置400では、レーザ光出力部410が、波長1064nmを有するレーザ光(基本波光)を出力するNd:YAGレーザ311に加えて、波長704nmを有するレーザ光を出力するTi:サファイアレーザ422を備える。
波長変換部420は、実施の形態1で説明した非線形光学結晶からなる波長変換素子321、322に加えて、β-BaBからなる波長変換素子421を備える。
波長変換部420は、図3と同様に、波長変換素子321は、基本波の波長λ1=1064nm(角周波数ω)をλ1/2=532nm(角周波数2ω)に波長変換し、第二高調波発生し、波長変換素子322は、λ1/2=532nmをλ1/4=266nm(角周波数4ω)に波長変換し、第四高調波発生する。ここで、波長変換素子321からの第二高調波は、ビームスプリッタなどの光学素子によって分割されて、Ti:サファイアレーザ411を励起し、波長704nmのレーザ光を励起する。
Ti:サファイアレーザ411からのレーザ光と、波長変換素子322からの第四高調波(波長266nmを有する光)とは、波長変換素子421に入射する。波長変換素子421は、β-BaBからなるため、704nmのレーザ光と波長266nmの第四高調波とから和周波発生し、波長193nmを有する光に変換される。このようにして、紫外レーザ装置400は、波長193nmの高出力の深紫外光(紫外レーザ光)を出力できる。
なお、図3、図4に示す紫外レーザ装置は例示に過ぎず、レーザ光出力部における波長として1.5μm帯を用いた場合には、本発明の非線形光学結晶を用いた波長変換素子を備える波長変換部を、第二高調波、和周波発生、差周波発生、パラメトリック発振など実現可能な波長変換素子と適宜組み合わせてもよく、このような改変は当業者であれば理解する。
次に具体的な実施例を用いて本発明を詳述するが、本発明がこれら実施例に限定されないことに留意されたい。
[合成に使用した原料]
合成に使用した原料粉末は、硫化ランタン粉末(La、Alfa Aesar製、純度99%)、酸化ランタン粉末(La、株式会社レアメタリック製、純度99.9%)、酸化ガリウム粉末(Ga、株式会社レアメタリック製、純度99.9%)、酸化ゲルマニウム粉末(GeO、株式会社レアメタリック製、純度99.9%)、ゲルマニウム粉末(株式会社高純度化学製、99.99%)、硫黄粉末(株式会社高純度化学製、99.99%)、酸化セリウム粉末(Ce、株式会社レアメタリック製、純度99.9%)、酸化プラセオジウム粉末(Pr11、株式会社レアメタリック製、純度99.9%)、酸化ネオジウム粉末(Nd、株式会社レアメタリック製、純度99.9%)であった。これらの原料粉末は、アルゴン充填したグローブボックス内にて保管された。
フラックスとして、塩化バリウム(BaCl、株式会社レアメタリック製、純度99.9%)および塩化ナトリウム(NaCl、株式会社レアメタリック製、純度99.99%)を用いた。これらの塩化物は、使用前に、ドライオーブンにて260℃で一昼夜加熱された。
[例1~例5:多結晶粉末]
例1~例5では、本発明の非線形光学結晶の多結晶粉末を合成した。表2に示す設計組成となるように原料粉末を秤量した。秤量した原料粉末をめのう乳鉢と乳棒とで十分に混合し、ペレット成型した。これを石英管に配置し、真空度(1Pa)まで真空引きし、石英管を封しした。真空封入した石英管を石英管炉に配置し、表2の条件で焼成した。
得られた例1の試料について、放射光X線回折(SXRD)測定を行った。測定には、SPring-8のNIMS BL15XUビームラインに搭載された一次元検出器を用い、室温(25℃)で測定した。放射光X線を波長0.65298Åに単色化し、ガラスキャピラリ管(内径0.2mm)に試料を装填した。回折データは、2~60°の範囲について0.003°刻みで収集され、RIETAN-FPプログラムを用いたリートベルト法による解析を行った。結果は、図2および表1に示すとおりであった。このことから、例1の試料は、六方晶系に属し、空間群P-62c(International Tables for Crystallographyの190番の空間群)に属するLaGaGe10結晶であることが分かった。
得られた例2~例5の試料について、メノウ乳鉢を用いて粉砕し、CuのKα線を用いた粉末X線回折測定(株式会社リガク製、MiniFlex-600回折系を使用)を行った。結果を図5および表3に示す。
得られた例1~例5の試料の熱的安定性を調べるため、熱分析装置(株式会社リガク製、TG-DTA8122システム)を用い、熱重量分析(TGA)を行った。アルミナるつぼに試料を充填し、酸素フロー(1.0L/分)をしながら、昇温速度10℃/分で1000℃まで試料を加熱し、降温速度10℃/分で室温まで冷却した際の質量変化を調べた。結果を図6に示す。
得られた例1~例5の試料の反射特性を調べるため、積分球を搭載した紫外可視分光高度計(株式会社島津製作所製、UV-2600)を用いて、拡散反射モードにて、波長220nm~1200nmの範囲のUV-vis-NIRスペクトルを測定した。紫外光源には重水素ランプを、可視近赤外光源にはハロゲンランプを使用した。記録された反射率スペクトルは、Kubelka-Munk関数により吸収データに変換された。結果を図7に示す。スペクトルから吸収端およびバンドギャップを求めた。結果を表3に示す。
Kurtz-Perry法により、QスイッチNd:YAGレーザからのレーザ光(λ=1064nm)を用い、例1~例5の試料の第二高調波発生(SHG)を調べた。例1~例5の試料を粉砕し、粒径範囲(38μm~55μm、55μm~88μm、88μm~105μm、105μm~155μm、155μm~200μm)にふるい分けした。ベンチマーク材料としてKHPO(KDP)使用した。結果を図8に示す。
また、非線形光学定数および複屈折を算出した。算出には、まず電子構造をGGA(Generalized Gradient Approximation)-PBE(Perdew―Burke-Emzerhof)法(J.P.Perdewら,Phys.Rev.Lett.1996,77,3865)を用いた第一原理計算で得てから行った。第一原理計算はパッケージプログラムとして、CASTEP(CAmbridge Serial Total Enegy Package)ソフトウェア(S.J.Clarkら,Z.Kristallogr.,2005,220,567)をインストールしたコンピュータで行った。得られた電子構造をもとに、複屈折は誘電関数の実部から算出、非線形光学定数はLength-gauge formalism(C.Aversaら,Phys.Rev.B 1995,52,14636)を用いて算出した。結果を表3に示す。
以上の結果をまとめて説明する。
図5は、例2~例5の試料のXRDパターンを示す図である。
いずれのXRDパターンも、図2に示すXRDパターンに一致することが分かった。このことから、例2の試料は、LaGaGe10結晶であり、例3~例5の試料は、LaGaGe10と同一の結晶構造を有する結晶を主成分とすることが分かった。主成分とする量は、不純物のピークを考慮すると、80質量%以上であった。
図6は、例1の試料のTG曲線およびDTA曲線を示す図である。
例1のTG曲線は、800℃まで変化しなかったが、さらに1200℃まで加熱すると、約880℃の小さなステップを経て950℃で約3.5%の急激な重量増加を示した。これらの挙動は、TG測定後のX線回折分析(図示せず)で確認したところ、酸硫化物相の分解に起因することが分かった。例2~例5のTG曲線も同様の挙動を示したことから、例1~例5の試料は、少なくとも800℃までの高温においても分解することなく熱安定性に優れることが示された。
図7は、例1の試料の拡散・吸収スペクトルを示す図である。
図7によれば、例1の試料の吸収端は250nmであり、バンドギャップは4.7eVであった。表3に示すように、例3~例5の試料の吸収端も330nm以下であり、3.5eVより大きなバンドギャップを有した。特に、組成を調整することにより、本発明の結晶は、4.6eV以上5.0eV以下の大きなバンドギャップを有することを確認した。
図8は、例1の試料のSHG強度の粒径依存性を示す図である。
図8によれば、例1の試料のSHG強度は、粒径の増加とともに増加し、粒径125μm以上の領域でプラトーに達した。図示しないが、例2~例5の試料のSHG強度も同様の挙動を示した。この挙動は、LaGaGe10結晶においてタイプI位相整合条件が満たされていることを示しており、例1~例5の試料は、非線形光学結晶であり、第二高調波発生することが示された。注目すべきは、例1の試料において、150μ~200μmの粒径の範囲のSHG強度は、ベンチマークであるKDPのそれの2.0倍であり、優れた非線形光学結晶であり、波長変換素子として機能することが分かった。
算出された非線形光学定数d22および-d16の値は、SHG強度(2.0×KDP)とよい一致を示した。複屈折の値は、酸硫化物相の位相整合と矛盾しないことを確認した。
[例6~例10:単結晶]
例6~例10では、本発明の非線形光学結晶の単結晶を合成した。表4に示す設計組成となるように原料粉末をアルゴン充填したグローブボックス内で秤量し、アルミナるつぼに充填した。真空度1Paの石英管内にてアルミナるつぼを火炎封入した。アルミナるつぼをマッフル炉に入れ、昇温速度5℃/分にて850℃まで加熱し、850℃で24時間保持し、その後、降温速度0.08℃/分で550℃まで降温した。その後、マッフル炉の電源を切り、室温まで放冷した。生成物を超音波洗浄し、フラックスを除去し、真空ろ過した。
得られた例6~例10の試料の外観を観察した。結果を図9に示す。また、例6~例10の試料について、エネルギー分散型X線分光装置(EDX、Oxford Instruments製、SwiftED3000)を搭載した卓上顕微鏡(株式会社日立ハイテク製、TM3000)を用いて、組成分析を行った。結果を図10に示す。
図9は、例6の試料の外観を示す図である。
図9によれば、例6の試料は、無色透明なブロック結晶であり、その大きさは、0.5×0.5×0.8mmであった。図示しないが、例7~例10の試料も同様に無色透明なブロック結晶であり、同様の大きさを有した。
図10は、例6の試料のEDXスペクトルを示す図である。
図10によれば、例6の試料は、La/Ga/Ge/Sのモル比が3.00/2.91/2.08/3.01であり、単結晶構造解析で得られた化学組成に良好に一致し、表5に示すように、LaGaGe10と同一の結晶構造を有するLaGaGe10単結晶であることが分かった。例7の試料も同様にLaGaGe10単結晶であり、例8の試料は、CeGaGe10単結晶であり、例9の試料は、PrGaGe10単結晶であり、例10の試料は、NdGaGe10単結晶であった。
上述したように、フラックス法を用いブロック状の単結晶が得られることが分かった。このような単結晶もまた非線形光学効果を有するため、第二高調波発振する波長変換素子に適用できる。特に、組成によっては吸収端が255nm以下となるので、深紫外光を発する紫外レーザ装置を提供できる。
本発明の非線形光学結晶は、従来とは異なり、大きな非線形光学定数、大きな複屈折、幅広い紫外光透過窓、短い吸収端と大きなバンドギャップ、化学的・熱的安定性を有し、第二高調波発生を可能にし、波長変換素子として機能する。さらに、このような波長変換素子を用いれば、紫外レーザ装置を提供できる。
300、400 紫外レーザ装置
310、410 レーザ光出力部
311 Nd:YAGレーザ
320、420 波長変換部
321、322、421 波長変換素子
411 Ti:サファイアレーザ

Claims (15)

  1. 少なくとも、Ln元素、Ga元素、M元素、Q元素および酸素(ただし、Lnは、イットリウム(Y)およびランタノイドからなる群から選択される元素であり、Mは、ゲルマニウム(Ge)および/またはケイ素(Si)であり、Qは、硫黄(S)および/またはセレン(Se)である)を含み、LaGaGe10と同一の結晶構造を有する結晶からなる、非線形光学結晶。
  2. 前記LaGaGe10と同一の結晶構造を有する結晶は、六方晶系に属する、請求項1に記載の非線形光学結晶。
  3. 前記LaGaGe10と同一の結晶構造を有する結晶は、P-62cの対称性を有し、格子定数a、bおよびcは、
    a=1.01701±0.05nm
    b=1.01701±0.05nm
    c=0.75198±0.05nm
    を満たす、請求項1または2に記載の非線形光学結晶。
  4. 前記結晶は、LnGa(ただし、a+b+c+d+e=1である)で表され、パラメータa、b、c、dおよびeは、
    0.1≦a≦0.18、
    0.1≦b≦0.18、
    0.05≦c≦0.13、
    0.1≦d≦0.18、および、
    0.43≦e≦0.55
    を満たす、請求項1~3のいずれかに記載の非線形光学結晶。
  5. 前記パラメータa、b、c、dおよびeは、
    0.14≦a≦0.15、
    0.14≦b≦0.15、
    0.09≦c≦0.10、
    0.14≦d≦0.15、および、
    0.47≦e≦0.48
    を満たす、請求項4に記載の非線形光学結晶。
  6. 前記ランタノイドは、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジウム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、および、ルテチウム(Lu)からなる群から少なくとも一種選択される、請求項1~5のいずれかに記載の非線形光学結晶。
  7. 4.6eV以上5.0eV以下の範囲のバンドギャップを有する、請求項1~6のいずれかに記載の非線形光学結晶。
  8. 波長1.064μmにおける非線形光学定数d22および-d16は、0.5pm/V以上0.7pm/V以下の範囲を満たす、請求項1~7のいずれかに記載の非線形光学結晶。
  9. 波長1.064μmにおける複屈折は、0.1以上0.15以下の範囲を満たす、請求項1~8のいずれかに記載の非線形光学結晶。
  10. 吸収端は、255nm以下である、請求項1~9のいずれかに記載の非線形光学結晶。
  11. 少なくとも、Ln元素、Ga元素、M元素、Q元素および酸素(ただし、Lnは、イットリウム(Y)およびランタノイドからなる群から選択される元素であり、Mは、ゲルマニウム(Ge)および/またはケイ素(Si)であり、Qは、硫黄(S)および/またはセレン(Se)である)を含有する原料混合物を真空封入し、加熱することを包含する、請求項1~10のいずれかに記載の非線形光学結晶の製造方法。
  12. 前記加熱することは、前記原料混合物をフラックス法により液相成長させることである、請求項11に記載の製造方法。
  13. 前記加熱することは、前記原料混合物を800℃以上1000℃以下の温度範囲で加熱する、請求項11または12に記載の製造方法。
  14. 請求項1~10のいずれかに記載の非線形光学結晶からなる波長変換素子。
  15. 基本波光を発するレーザ光出力部と、
    前記基本波光を、前記基本波光の波長よりも短い波長を有する紫外レーザ光に変換する波長変換部と
    を備え、
    前記波長変換部は、少なくとも請求項14に記載の波長変換素子を備える、紫外レーザ装置。
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