JP2023098675A - ガラス - Google Patents

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Abstract

【課題】 着色層を有するガラスであって、着色層の厚みが小さくても、着色層において所望のODを達成できるガラスを提供すること。【解決手段】 Sbイオン、Asイオン、Snイオン、およびCeイオンからなる群から選択される1以上のガラス成分を0.075カチオン%以上含む、ガラス。【選択図】 図1-1

Description

本発明は、着色層を有するガラスに関する。
ガラスに着色した部分を有するガラスは、日用品、仏具、装飾品、宝飾品、芸術品、小型電子機器の外装等のガラス物品、レンズ、カバーガラス、エンコーダー等の光学素子といった、さまざまな用途に用いることができる。そして、このようなガラスには、着色した部分が所望のOD(optical density)を有しながら、その着色した部分の形状が鮮明であることが求められる。
特許文献1には、着色層を有するガラスが開示されている。しかしながら、特許文献1に開示されたガラスでは、着色層のODを大きくすると、着色層の厚みが大きくなるとともに着色層の形状が鮮明でなくなることがある。
国際公開第2020/230649号
本発明は、着色層を有するガラスであって、着色層の厚みが小さくても、着色層において所望のODを達成できるガラスを提供することを目的とする。
本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)着色層を有し、
Sbイオン、Asイオン、Snイオン、およびCeイオンからなる群から選択される1以上のガラス成分を0.075カチオン%以上含む、ガラス。
(2)ガラス成分としてBiイオンを含む、(1)に記載のガラス。
(3)屈折率が1.70以上である、(1)または(2)に記載のガラス。
(4)着色層の可視光領域における透過率の最小値と、非着色部の可視光領域における透過率の最小値との差が10%以上である、(1)~(3)のいずれかに記載のガラス。
(5)上記(1)~(4)のいずれかに記載のガラスを含むガラス物品。
(6)上記(1)~(4)のいずれかに記載のガラスを含む光学ガラス。
(7)上記(1)~(4)のいずれかに記載のガラスを含む光学素子。
本発明によれば、着色層を有するガラスであって、着色層の厚みが小さくても、着色層において所望のODを達成できるガラスを提供できる。
実施例1-1で得られた組成Iを有するガラスサンプルについて、着色層を有する部分および非着色部の外部透過率を示したグラフである。 実施例1-2で得られた組成Iを有するガラスサンプルについて、着色層を有する部分および非着色部の外部透過率を示したグラフである。 実施例1-3で得られた組成Iを有するガラスサンプルについて、着色層を有する部分および非着色部の外部透過率を示したグラフである。 実施例1-4で得られた組成IIを有するガラスサンプルについて、着色層を有する部分および非着色部の外部透過率を示したグラフである。 実施例1-5で得られた組成IIを有するガラスサンプルについて、着色層を有する部分および非着色部の外部透過率を示したグラフである。 実施例2で得られたガラスサンプルについて、Sbイオンの含有量を横軸としたときの、着色層を形成する前のガラスサンプルについて得られた外部透過率と、着色層を形成した後の非着色部について得られた外部透過率との差を示したグラフである。 実施例3で得られたガラスサンプルについて、Sbイオンの含有量を横軸としたときの、着色層の厚みを示したグラフである。 実施例3で得られたガラスサンプルについて、Sbイオンの含有量を横軸としたときの、ODを示したグラフである。 実施例4で得られたガラスサンプルについて、Sbイオンの含有量を横軸としたときの、成膜したNiペースト膜の外縁部から、形成された着色層の外縁部までの距離を示したグラフである。 実施例5で得られたガラスサンプルについて、イオンの含有量を横軸としたときの、着色層を形成した後の非着色部について得られた外部透過率との差を示したグラフである。 実施例5で得られたガラスサンプルについて、イオンの含有量を横軸としたときの、ODを示したグラフである。。 実施例5で得られたガラスサンプルについて、イオンの含有量を横軸としたときの、成膜したNiペースト膜の外縁部から、形成された着色層の外縁部までの距離を示したグラフである。 実施例5で得られたガラスサンプルについて、イオンの含有量を横軸としたときの、着色層の厚みを示したグラフである。
本実施形態では、カチオン%表示での各成分の含有比率に基づいて本発明に係るガラスを説明する。したがって、以下、各含有量は特記しない限り、「%」は「カチオン%」を意味する。
カチオン%表示とは、全てのカチオン成分の含有量の合計を100%としたときのモル百分率をいう。また、合計含有量とは、複数種のカチオン成分の含有量(含有量が0%である場合も含む)の合計量をいう。また、カチオン比とは、カチオン%表示において、カチオン成分同士の含有量(複数種のカチオン成分の合計含有量も含む)の割合(比)をいう。
ガラス成分の含有量は、公知の方法、例えば、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)等の方法で定量できる。また、本明細書および本発明において、構成成分の含有量が0%とは、この構成成分を実質的に含まないことを意味し、該成分が不可避的不純物レベルで含まれることを許容する。
また、本明細書では、屈折率は、特記しない限り、黄色ヘリウムのd線(波長587.56nm)における屈折率ndをいう。
以下、本発明の実施形態について詳しく説明する。
本実施形態に係るガラスは、着色層を有する。着色層は、ガラスが着色された部分であり、好ましくはガラス表面から内に向かって層状に存在する。
本実施形態に係るガラスにおいて、着色層は、ガラス表面の全てを覆うように(ガラスの全表面に)存在してもよく、ガラス表面の一部を覆うように(ガラス表面の一部に)存在してもよい。
着色層はガラスに入射する光に関し透過率の小さい部分である。したがって、本実施形態に係るガラスにおいて、ガラスに入射する光のうち、着色層に入射する光は一部または全部が吸収され、着色層に入射しない光に比べて透過光の強度が減衰する。すなわち、本実施形態に係るガラスは、透過率が小さい部分と大きい部分を有することができる。
また、本実施形態に係るガラスでは、着色層は、研削または研磨により除去できる。本実施形態に係るガラスでは、着色層を除去した後のガラスの透過率は、着色層を除去する前の透過率よりも大きくなる。
本実施形態に係るガラスは、Sbイオン、Asイオン、Snイオン、およびCeイオンからなる群から選択される1以上のガラス成分を含む。本実施形態に係るガラスは、好ましくはSbイオンおよびAsイオンからなる群から選択される1以上のガラス成分を含み、より好ましくはSbイオンを含む。
本実施形態に係るガラスにおいて、Sbイオン、Asイオン、Snイオン、およびCeイオンからなる群から選択される1以上のガラス成分の含有量の下限は0.075%であり、好ましくは0.10%であり、さらには0.125%、0.15%、0.175%、0.20%、0.22%、0.24%、0.26%、0.28%、0.30%の順により好ましい。また、該含有量の上限は、好ましくは1.00%であり、さらには0.90%、0.80%、0.70%、0.60%、0.50%の順により好ましい。なお、該含有量は、ガラスが上記ガラス成分のうち2以上を含む場合は、その合計含有量である。該含有量を上記範囲とすることで、着色層の厚みが小さくても透過率を低減でき、すなわち、着色層の厚みが小さくても着色層において所望のODを達成できる。また、該含有量を上記範囲とすることで、着色層は濃く着色し、着色層を形成していない部分(以下、非着色部と称することがある。)は着色しにくくなるため、着色層の形状の鮮明さを向上できる。一方、該含有量が少なすぎると、着色層の厚みを小さくしたままでは透過率を十分に低減できず、所望のODが得られないおそれがある。また、非着色部が着色しやすくなり、着色層の形状の鮮明さが低減するおそれがある。さらに、ガラス全体に微細な気泡が残りやすくなる。該含有量が多すぎると、ガラスの熔解時に、熔解炉由来の白金(Pt)がガラスに溶出しやすくなり、ガラス全体が着色しやすくなるおそれがある。
なお、本実施形態において、Sbイオンとは、Sb3+の他、価数の異なる全てのSbイオンを含むものとする。Asイオンとは、As3+、As5+の他、価数の異なる全てのAsイオンを含むものとする。Snイオンとは、Sn4+の他、価数の異なる全てのSnイオンを含むものとする。Ceイオンとは、Ce4+の他、価数の異なる全てのCeイオンを含むものとする。
本実施形態に係るガラスでは、着色層の可視光領域における透過率の最小値と、非着色部の可視光領域における透過率の最小値との差は、好ましくは10%以上であり、さらには20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上の順により好ましい。また、着色層の可視光領域における透過率の最小値と、非着色部の可視光領域における透過率の最小値との差の上限は、特に制限されないが、80%とすることができる。ここで、可視光領域とは440nm~780nmの波長域とする。
着色層の可視光領域における透過率の最小値と、非着色部の可視光領域における透過率の最小値との差が小さすぎると、着色層の形状の鮮明さが低減するおそれがある。また、着色層の厚みを小さくしたままで透過率を十分に低減できず、所望のODが得られないおそれがある。
本実施形態に係るガラスにおいて、非着色部は波長380nm~780nmの範囲において透過率が低減する波長域を有していてもよい。非着色部の透過率が低減する波長域は、特に制限されないが、通常450nm~550nmの範囲であり、好ましくは450nm~520nmの範囲である。
非着色部の透過率が可視光領域において低減する理由は、特に限定されないが、以下のように考えられる。
後述するように、着色層を形成するためにガラスは還元雰囲気において熱処理される。このとき、還元雰囲気に含まれる還元力を有するガス、例えば水素によって、ガラスに含まれる遷移金属の価数の変化が促される。その結果、ガラスは、遷移金属の価数の変化に起因した、特定波長の吸収を有することとなる。このとき、非着色部では、この特定波長の吸収による透過率のわずかな低減を、可視光領域において連続的に透過率を測定することにより検出できる。一方着色層では、可視光領域全体にわたって透過率が十分小さくなるので、このような特定波長における透過率のわずかな低減は検出されにくい。
本実施形態に係るガラスにおいて、着色層の厚みは、特に制限されないが、1μm~150μmとすることが可能である。また、ガラスの上面視において、着色層の幅は、特に制限されないが、1μm~100μmとすることが可能である。着色層の厚みおよび幅を上記範囲とすることで、着色層の形状の鮮明さを向上できる。
(OD)
本実施形態に係るガラスにおいて、380nm~780nmの波長域から赤外域にかけての波長域における着色層の分光透過率は、波長が長くなるにつれて増加傾向を示す。一方、着色層のODは、波長が長くなるにつれて減少傾向を示す。OD(optical density)とは、光学密度または光学濃度であり、下記式で示すように、入射光強度I0と透過光強度Iの比の常用対数に負号(マイナス)を付けた数値として表される。
OD=-log10(I/Io
本実施形態に係るガラスが、着色層と、可視域の透過率の大きい非着色部とからなる場合、着色層のODは大きい一方で、非着色部のODは小さくなる。ODの測定において、測定光が着色層と非着色部との両方を通過する場合、非着色部のODは十分小さいので、着色層のODが支配的となる。
本実施形態に係るガラスにおいて、着色層を有する部分の波長1100nmにおけるODは、好ましくは1.0以上であり、より好ましくは1.5以上である。一方、非着色部の波長1100nmにおけるODは、好ましくは0.15以下であり、より好ましくは0.1以下である。
通常、CCDやC-MOSセンサーなどの光学センサーの感度域は可視域から1100nm付近にまで及ぶ。上記範囲のODを有する着色層を設けることで、光学センサーの感度域全域にわたり遮光できるガラスが得られる。したがって、本実施形態に係るガラスは、可視域から1100nmの波長域の光線に対し、透過率を制御できるものであることが好ましい。
なお、向かい合う2つの面を有するガラスにおいて、着色層をその両面に設ける場合のODは、同じ着色層を片面のみに設ける場合の約2倍となる。
また、本実施形態に係るガラスでは、可視域から近赤外域にかけての波長域において、波長の増加とともにODは減少する。そのため、着色層を有する部分おいて、たとえば波長780nmにおけるODは、波長1100nmにおけるODよりも大きくなる。
したがって、遮光したい波長領域がある場合には、その波長領域における長波長側の波長でのODが高くなるように設計する。可視光のみを遮光するガラスを設計する場合は、可視光領域の長波長側(例えば、780nm)においてODが高くなるように設定すればよい。また、可視域から近赤外域を遮光するガラスを設計する場合には、近赤外域の波長(例えば波長1100nm)においてODが高くなるように設定すればよい。ODは、着色層の厚さや着色の程度を調整することにより制御できる。
(屈折率)
本実施形態に係るガラスにおいて、屈折率ndは、好ましくは1.70以上であり、さらには1.73以上、1.75以上、1.76以上、1.77以上、1.78以上、1.79以上、1.80以上の順により好ましい。屈折率ndの上限は、特に限定されないが、通常2.5であり、好ましくは2.3である。
本実施形態に係るガラスでは、着色層を形成していない部分がスリットとして機能するように、ガラス両面の相対する部分にそれぞれ所定の間隔で複数の厚みの小さい着色層を設けることができる。このとき、ガラスの屈折率を上記範囲とすることで、スリット部分に入射する光線の入射角が大きい(光線が浅い角度で入射する)場合でも、ガラスの裏面に形成された着色層により光線が吸収されて光線が隣のスリットを透過することがないため、着色層をガラスの厚み方向全体に設けた場合と同じ効果を得ることができ、またスリットの間隔を狭くすることができる。一方、ガラスの屈折率が低すぎると、スリット部分に入射する光線の入射角が大きい場合に、光線が隣のスリットを透過して、着色層をガラスの厚み方向全体に設けた場合と同じ効果が得られなくなるおそれがある。
(ガラス組成)
本実施形態に係るガラスにおいて、着色層と非着色部とでは、ガラス組成は同じである。ただし、着色層と非着色部とでは、ガラス成分(カチオン)の価数が異なる場合がある。
着色層の着色は、好ましくはガラス成分に起因する還元色であり、より好ましくは遷移金属に起因する還元色である。遷移金属としては、例えばTi、Nb、WおよびBiが挙げられる。特に、着色層の厚みが小さくても所望のODを達成する観点から、本実施形態に係るガラスは、ガラス成分として、好ましくはBiイオンを含み、より好ましくは、Tiイオン、Nbイオン、およびWイオンからなる群から選択される1以上をさらに含む。ガラスが上記ガラス成分を含まない場合には、着色層の厚みを小さくしたままでは透過率を低減できず、所望のODが得られないおそれがある。また、着色層の形状の鮮明さが低減するおそれがある。
本実施形態に係るガラスの組成について、以下に非制限的な例を示す。
本実施形態に係るガラスは、リン酸塩ガラスであることが好ましい。リン酸塩ガラスとは、ガラスのネットワーク形成成分として主にP5+を含有するガラスをいう。ガラスのネットワーク形成成分として、P5+、B3+、Si4+、Al3+等が知られている。ここで、ガラスのネットワーク形成成分として主にリン酸塩を含むとは、P5+の含有量が、B3+、Si4+、Al3+のいずれの含有量よりも多いことを意味する。リン酸塩ガラスであることで、着色層における着色の程度を高めることができる。
本実施形態に係るガラスにおいて、P5+の含有量の下限は、好ましくは10%であり、さらには13%、15%、17%、20%の順により好ましい。また、P5+の含有量の上限は、好ましくは50%であり、さらには45%、40%、38%、35%、33%、30%の順により好ましい。
5+は、ガラスのネットワーク形成成分である。一方、P5+を過剰に含むと熔融性が悪化する。そのため、P5+の含有量は上記範囲であることが好ましい。
本実施形態に係るガラスにおいて、B3+の含有量の上限は、好ましくは30%であり、さらには25%、20%、15%、13%、10%の順により好ましい。また、B3+の含有量の下限は、好ましくは0.1%であり、さらには0.5%、1%、3%、5%の順により好ましい。B3+の含有量は0%であってもよい。
3+は、ガラスのネットワーク形成成分であり、ガラスの熔融性を改善する働きを有する。一方、B3+の含有量が多すぎると、化学的耐久性が低下する傾向がある。そのため、B3+の含有量は上記範囲であることが好ましい。
本実施形態に係るガラスにおいて、P5+の含有量に対するB3+の含有量のカチオン比[B3+/P5+]の上限は、好ましくは0.70であり、さらには0.60、0.55、0.50の順により好ましい。カチオン比[B3+/P5+]は0であってもよい。
本実施形態に係るガラスにおいて、Si4+の含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには7%、5%、3%、2%、1%の順により好ましい。また、Si4+の含有量の下限は、好ましくは0.1%であり、さらには0.2%、0.3%、0.4%、0.5%の順により好ましい。Si4+の含有量は0%であってもよい。
Si4+は、ガラスのネットワーク形成成分であり、ガラスの熱的安定性、化学的耐久性、耐候性を改善する働きを有する。一方、Si4+の含有量が多すぎると、ガラスの熔融性が低下し、ガラス原料が熔け残る傾向がある。そのため、Si4+の含有量は上記範囲であることが好ましい。
本実施形態に係るガラスにおいて、Al3+の含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには7%、5%、3%、1%の順により好ましい。Al3+の含有量は0%であってもよい。
Al3+は、ガラスの化学的耐久性、耐候性を改善する働きを有する。一方、Al3+の含有量が多すぎると、ガラスの熱的安定性が低下し、ガラス転移温度Tgが上昇して、熔融性が低下しやすい。そのため、Al3+の含有量は上記範囲であることが好ましい。
本実施形態に係るガラスにおいて、P5+、B3+、Si4+およびAl3+の合計含有量[P5++B3++Si4++Al3+]の下限は、好ましくは10%であり、さらには15%、18%、20%、23%、25%の順により好ましい。また、合計含有量[P5++B3++Si4++Al3+]の上限は、好ましくは60%であり、さらには50%、45%、40%、37%、35%の順により好ましい。
本実施形態に係るガラスにおいて、Biイオンの含有量の下限は、好ましくは0.5%であり、さらには1%、2%、2.5%の順により好ましい。また、Biイオンの含有量の上限は、好ましくは40%であり、さらには35%、30%、28%、25%の順により好ましい。Biイオンは、Bi3+の他、価数の異なる全てのBiイオンを含むものとする。
Biイオンは、高屈折率化に寄与し、また、ガラスの着色を増大する働きを有する。そのため、Biイオンの含有量は上記範囲であることが好ましい。
本実施形態に係るガラスにおいて、Tiイオンの含有量の下限は、好ましくは1%であり、さらには2%、3%の順により好ましい。また、Tiイオンの含有量の上限は、好ましくは45%であり、さらには40%、35%、30%、25%、20%、15%、12%の順により好ましい。ここで、Tiイオンは、Ti4+、Ti3+の他、価数の異なる全てのTiイオンを含むものとする。
Tiイオンは、Nbイオン、WイオンおよびBiイオンと同様に、高屈折率化に大きく寄与し、また、ガラスの着色を増大する働きを有する。一方、Tiイオンの含有量が多すぎると、ガラスの熔融性が低下し、ガラス原料が熔け残る傾向がある。そのため、Tiイオンの含有量は上記範囲であることが好ましい。
本実施形態に係るガラスにおいて、Nbイオンの含有量の下限は、好ましくは1%であり、さらには5%、10%、15%の順により好ましい。また、Nbイオンの含有量の上限は、好ましくは45%であり、さらには40%、35%、30%、25%、23%、20%の順により好ましい。Nbイオンは、Nb5+の他、価数の異なる全てのNbイオンを含むものとする。
Nbイオンは、高屈折率化に寄与し、ガラスの着色を増大する成分である。また、ガラスの熱的安定性および化学的耐久性を改善する働きを有する。一方、Nbイオンの含有量が多すぎると、ガラスの熱的安定性が低下する傾向がある。そのため、Nbイオンの含有量は上記範囲であることが好ましい。
本実施形態に係るガラスにおいて、Wイオンの含有量の上限は、好ましくは30%であり、さらには25%、20%、15%、13%の順により好ましい。また、Wイオンの含有量の下限は、好ましくは0.5%であり、さらには1%、2%、3%の順により好ましい。Wイオンは、W6+の他、価数の異なる全てのWイオンを含むものとする。
Wイオンは、高屈折率化に寄与し、また、ガラスの着色を増大する働きを有する。そのため、Wイオンの含有量は上記範囲であることが好ましい。
本実施形態に係るガラスにおいて、Tiイオン、NbイオンおよびWイオンの合計含有量[Ti+Nb+W]の下限は、好ましくは1%であり、さらには5%、10%、15%、20%、23%の順により好ましい。また、合計含有量[Ti+Nb+W]の上限は、好ましくは60%であり、さらには55%、50%、45%、40%、38%、35%の順により好ましい。
本実施形態に係るガラスにおいて、Tiイオン、Nbイオン、WイオンおよびBiイオンの合計含有量[Ti+Nb+W+Bi]の上限は、好ましくは80%であり、さらには75%、70%、68%、65%の順により好ましい。また、合計含有量[Ti+Nb+W+Bi]の下限は、好ましくは1%であり、さらには5%、10%、15%、20%、23%、25%の順により好ましい。
本実施形態に係るガラスにおいて、P5+、B3+およびSi4+の合計含有量に対するTiイオン、Nbイオン、WイオンおよびBiイオンの合計含有量のカチオン比[(Ti+Nb+W+Bi)/(P5++B3++Si4+)]の下限は、好ましくは0.1であり、さらには0.3、0.5、0.6、0.7の順により好ましい。また、カチオン比[(Ti+Nb+W+Bi)/(P5++B3++Si4+)]の上限は、好ましくは4.0であり、さらには3.5、3.0、2.7、2.5の順により好ましい。
本実施形態に係るガラスにおいて、P5+、B3+およびSi4+の合計含有量に対する、Tiイオン、Nbイオン、WイオンおよびBiイオンの合計含有量をSbイオンの含有量で割った商の比[{(Ti+Nb+W+Bi)/Sb}/(P5++B3++Si4+)]の下限は、好ましくは0.3であり、さらには1.0、1.5、2.0の順により好ましい。また、比[{(Ti+Nb+W+Bi)/Sb}/(P5++B3++Si4+)]の上限は、好ましくは33であり、さらには20、12、9、6、5、4.0、3.5、3.0、2.5の順により好ましい。比[{(Ti+Nb+W+Bi)/Sb}/(P5++B3++Si4+)]を上記範囲とすることで、着色層の厚みが小さくても、所望のODを達成できるガラスが得られる。
本実施形態に係るガラスにおいて、Ta5+の含有量の上限は、好ましくは5%であり、さらには3%、2%、1%の順により好ましい。Ta5+の含有量は0%であってもよい。
Ta5+は、ガラスの熱的安定性を改善する働きを有する。一方、Ta5+の含有量が多すぎると、ガラスが低屈折率化し、また熔融性が低下する傾向がある。そのため、Ta5+の含有量は上記範囲であることが好ましい。
本実施形態に係るガラスにおいて、Li+の含有量の上限は、好ましくは35%であり、さらには30%、27%、25%、23%、20%の順により好ましい。また、Li+の含有量の下限は、好ましくは1%であり、さらには2%、3%、5%、8%の順により好ましい。Li+の含有量は0%であってもよい。
本実施形態に係るガラスにおいて、Na+の含有量の上限は、好ましくは40%であり、さらには35%、30%、25%、20%、18%の順により好ましい。また、Na+の含有量の下限は、好ましくは0.5%であり、さらには1%、1.5%、3%、5%の順により好ましい。Na+の含有量は0%であってもよい。
ガラスがLi+またはNa+を含有することで、ガラスに化学強化を施すことが容易となる。一方、Li+またはNa+の含有量が多すぎると、ガラスの熱的安定性が低下するおそれがある。そのため、Li+およびNa+の各含有量はそれぞれ上記範囲であることが好ましい。
本実施形態に係るガラスにおいて、Li+およびNa+の合計含有量[Li++Na+]の上限は、好ましくは45%であり、さらには43%、40%、38%の順により好ましい。また、合計含有量[Li++Na+]の下限は、好ましくは1%であり、さらには5%、10%、15%、20%の順により好ましい。
本実施形態に係るガラスにおいて、K+の含有量の上限は、好ましくは20%であり、さらには15%、13%、10%、8%、5%、3%の順により好ましい。また、K+の含有量の下限は、好ましくは0.1%であり、さらには0.5%、1.0%、1.2%の順により好ましい。K+の含有量は0%であってもよい。
+は、ガラスの熱的安定性を改善する働きを有する。一方、K+の含有量が多すぎると、熱的安定性が低下する傾向がある。したがって、K+の含有量は上記範囲であることが好ましい。
本実施形態に係るガラスにおいて、Rb+の含有量の上限は、好ましくは5%であり、さらには3%、1%、0.5%の順により好ましい。Rb+の含有量は0%であってもよい。
本実施形態に係るガラスにおいて、Cs+の含有量の上限は、好ましくは5%であり、さらには3%、1%、0.5%の順により好ましい。Cs+の含有量は0%であってもよい。
Rb+およびCs+は、ガラスの熔融性を改善する働きを有する。一方、これらの含有量が多すぎると、屈折率ndが低下し、また熔解中にガラス成分の揮発が増加するおそれがある。そのため、Rb+およびCs+の各含有量は、それぞれ上記範囲であることが好ましい。
本実施形態に係るガラスにおいて、Mg2+の含有量の上限は、好ましくは15%であり、さらには10%、5%、3%、1%の順により好ましい。Mg2+の含有量は0%であってもよい。
本実施形態に係るガラスにおいて、Ca2+の含有量の上限は、好ましくは15%であり、さらには10%、5%、3%、1%の順により好ましい。Ca2+の含有量は0%であってもよい。
本実施形態に係るガラスにおいて、Sr2+の含有量の上限は、好ましくは15%であり、さらには10%、5%、3%、1%の順により好ましい。Sr2+の含有量は0%であってもよい。
本実施形態に係るガラスにおいて、Ba2+の含有量の上限は、好ましくは25%であり、さらには20%、18%、15%、10%、5%の順により好ましい。Ba2+の含有量は0%であってもよい。
Mg2+、Ca2+、Sr2+およびBa2+は、いずれもガラスの熱的安定性、熔融性を改善させる働きを有する。一方、これらの含有量が多すぎると、高屈折率性が損なわれ、また、ガラスの熱的安定性が低下するおそれがある。そのため、これらガラス成分の各含有量は、それぞれ上記範囲であることが好ましい。
本実施形態に係るガラスにおいて、Mg2+、Ca2+、Sr2+およびBa2+の合計含有量[Mg2++Ca2++Sr2++Ba2+]の上限は、好ましくは30%であり、さらには25%、20%、18%、15%、10%、5%の順により好ましい。
本実施形態に係るガラスにおいて、Zn2+の含有量の上限は、好ましくは15%であり、さらには10%、8%、5%、3%、1%の順により好ましい。また、Zn2+の含有量の下限は、好ましくは0.1%であり、さらには0.3%、0.5%の順により好ましい。Zn2+の含有量は0%であってもよい。
Zn2+は、ガラスの熱的安定性を改善する働きを有する。一方、Zn2+の含有量が多すぎると、熔融性が悪化するおそれがある。そのため、Zn2+の含有量は上記範囲であることが好ましい。
本実施形態に係るガラスにおいて、Zr4+の含有量の上限は、好ましくは5%であり、さらには3%、2%、1%の順により好ましい。Zr4+の含有量は0%であってもよい。
Zr4+は、ガラスの熱的安定性を改善する働きを有する。一方、Zr4+の含有量が多すぎると、ガラスの熱的安定性および熔融性が低下する傾向がある。そのため、Zr4+の含有量は上記範囲であることが好ましい。
本実施形態に係るガラスにおいて、Ga3+の含有量の上限は、好ましくは3%であり、さらには2%、1%の順により好ましい。また、Ga3+の含有量の下限は、好ましくは0%である。Ga3+の含有量は0%であってもよい。
本実施形態に係るガラスにおいて、In3+の含有量の上限は、好ましくは3%であり、さらには2%、1%の順により好ましい。また、In3+の含有量の下限は、好ましくは0%である。In3+の含有量は0%であってもよい。
本実施形態に係るガラスにおいて、Sc3+の含有量の上限は、好ましくは3%であり、さらには2%、1%の順により好ましい。また、Sc3+の含有量の下限は、好ましくは0%である。Sc3+の含有量は0%であってもよい。
本実施形態に係るガラスにおいて、Hf4+の含有量の上限は、好ましくは3%であり、さらには2%、1%の順により好ましい。また、Hf4+の含有量の下限は、好ましくは0%である。Hf4+の含有量は0%であってもよい。
本実施形態に係るガラスにおいて、Lu3+の含有量の上限は、好ましくは3%であり、さらには2%、1%の順により好ましい。また、Lu3+の含有量の下限は、好ましくは0%である。Lu3+の含有量は0%であってもよい。
本実施形態に係るガラスにおいて、Ge4+の含有量の上限は、好ましくは3%であり、さらには2%、1%の順により好ましい。また、Ge4+の含有量の下限は、好ましくは0%である。Ge4+の含有量は0%であってもよい。
本実施形態に係るガラスにおいて、La3+の含有量の上限は、好ましくは5%であり、さらには4%、3%の順により好ましい。また、La3+の含有量の下限は、好ましくは0%である。La3+の含有量は0%であってもよい。
本実施形態に係るガラスにおいて、Gd3+の含有量の上限は、好ましくは5%であり、さらには4%、3%の順により好ましい。また、Gd3+の含有量の下限は、好ましくは0%である。Gd3+の含有量は0%であってもよい。
本実施形態に係るガラスにおいて、Y3+の含有量の上限は、好ましくは5%であり、さらには4%、3%の順により好ましい。また、Y3+の含有量の下限は、好ましくは0%である。Y3+の含有量は0%であってもよい。
本実施形態に係るガラスにおいて、Yb3+の含有量の上限は、好ましくは3%であり、さらには2%、1%の順により好ましい。また、Yb3+の含有量の下限は、好ましくは0%である。Yb3+の含有量は0%であってもよい。
本実施形態に係るガラスのカチオン成分は、主として上述の成分、すなわち、Sbイオン、Asイオン、Snイオン、Ceイオン、P5+、B3+、Si4+、Al3+、Tiイオン、Nbイオン、Wイオン、Biイオン、Ta5+、Li+、Na+、K+、Rb+、Cs+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Zn2+、Zr4+、Ga3+、In3+、Sc3+、Hf4+、Lu3+、Ge4+、La3+、Gd3+、Y3+およびYb3+で構成されていることが好ましく、上述の成分の合計含有量は、95%よりも多くすることが好ましく、98%よりも多くすることがより好ましく、99%よりも多くすることがさらに好ましく、99.5%よりも多くすることが一層好ましい。
本実施形態に係るガラスは、アニオン成分として、O2-を含み、またF-を含んでもよい。O2-の含有量は、90アニオン%以上であることが好ましく、95アニオン%以上であることが好ましく、98アニオン%以上であることが好ましく、99アニオン%以上であることが好ましい。O2-の含有量が100アニオン%であってもよい。F-の含有量は、10アニオン%以下であることが好ましく、5アニオン%以下であることが好ましく、2アニオン%以下であることが好ましく、1アニオン%以下であることが好ましい。F-の含有量が0アニオン%であってもよい。さらに、O2-およびF-以外の成分を含んでいてもよい。O2-およびF-以外のアニオン成分として、Cl-、Br-、I-を例示できる。しかし、Cl-、Br-、I-は、いずれもガラスの熔融中に揮発しやすい。これらの成分の揮発によって、ガラスの特性が変動する、ガラスの均質性が低下する、熔融設備の消耗が著しくなる等の問題が生じる。したがって、Cl-の含有量は、5アニオン%未満であることが好ましく、より好ましくは3アニオン%未満、さらに好ましくは1アニオン%未満、特に好ましくは0.5アニオン%未満、一層好ましくは0.25アニオン%未満である。また、Br-およびI-の合計含有量は、5アニオン%未満であることが好ましく、より好ましくは3アニオン%未満、さらに好ましくは1アニオン%未満、特に好ましくは0.5アニオン%未満、一層好ましくは0.1アニオン%未満、より一層好ましくは0アニオン%である。
なお、アニオン%とは、全てのアニオン成分の含有量の合計を100%としたときのモル百分率である。
本実施形態に係るガラスは、基本的に上記成分により構成されることが好ましいが、本発明の作用効果を妨げない範囲において、その他の成分を含有させることも可能である。
例えば、本実施形態に係るガラスは、さらに、ガラスに近赤外光吸収特性を付与するために、ガラス成分として適量の銅(Cu)を含有してもよい。その他にも、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Pr,Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ce等を含有してもよい。これらは、ガラスの着色を増大させ、蛍光の発生源となり得る。
また、本発明において、不可避的不純物の含有を排除するものではない。
<その他の成分組成>
Pb、Cd、Tl、Be、Seは、いずれも毒性を有する。そのため、本実施形態のガラスはこれら元素をガラス成分として含有しないことが好ましい。
U、Th、Raはいずれも放射性元素である。そのため、本実施形態のガラスはこれら元素をガラス成分として含有しないことが好ましい。
(ガラスの製造)
本実施形態に係るガラスは、着色の無いガラスを調製し、そこに着色層を形成することで得られる。着色の無いガラスは、公知のガラス製造方法に従って作製すればよい。例えば、複数種の化合物を調合し、十分混合してバッチ原料とし、バッチ原料を熔融容器中に入れて熔融、清澄、均質化した後に熔融ガラスを成形し、徐冷してガラスを得る。あるいは、バッチ原料を熔融容器中に入れて粗熔解(ラフメルト)する。粗熔解によって得られた熔融物を急冷、粉砕してカレットを作製する。さらにカレットを熔融容器中に入れて加熱、再熔融(リメルト)して熔融ガラスとし、さらに清澄、均質化した後に熔融ガラスを成形し、徐冷してガラスを得ることもできる。熔融ガラスの成形、徐冷には、公知の方法を適用すればよい。
さらに、本実施形態に係るガラスの製造工程には、熔融ガラス中の水分量を高める工程が含まれてもよい。熔融ガラス中の水分量を高める工程としては、熔融雰囲気に水蒸気を付加する工程、熔融物内に水蒸気を含むガスをバブリングする工程が挙げられる。その中でも、熔融雰囲気に水蒸気を付加する工程を含むことが好ましい。熔融ガラス中の水分量を高める工程を含むことで、ガラスのβOH値を高めることができる。βOH値を高めることで、非着色部の透明性が高いガラスが得られる。
(着色層の形成)
着色層は、ガラス表面に金属膜を形成し、還元雰囲気において熱処理をすることで形成できる。
金属膜を構成する金属としては、雰囲気中の水素イオンを吸蔵し、さらに水素イオンおよび電子の授受によりガラスに含まれるガラス成分を還元する働きを有する金属が好ましい。ガラス成分の中でも遷移金属を還元する働きを有する金属がより好ましい。具体的には、Ni、Au、Ag、Pt、PdおよびPt-Pd合金等が挙げられる。
ガラス表面に金属膜を形成する方法としては、ガラス表面に金属膜が密着するように貼付できれば特に制限されないが、例えば、蒸着、スパッタリング、メッキ、または金属ペーストやメッキ液の塗布等が挙げられる。微細な形状の金属膜を形成する場合には、フォトリソ技術とPdやPt-Pdの成膜技術とを組み合わせてもよい。
還元雰囲気は、還元力を有するガスを含んでいればよい。還元力を有するガスとしては、例えば水素が挙げられる。よって、還元雰囲気として水素含有ガスを用いることが好ましく、水素を含有するフォーミングガスを用いてもよい。フォーミングガスとは、水素と窒素とからなる混合ガスであり、通常、水素を3~5体積%程度含む。
熱処理では、ガラス転移温度Tgより200℃低い温度(Tg-200)以上、軟化点温度以下で加熱する。熱処理時間は、目的とする着色の程度、着色層の範囲、着色層の厚み等によって適宜調整できる。
熱処理後、金属膜をガラス表面から除去する。除去する方法としては、特に制限されないが、研磨や溶解して除去する方法等が挙げられる。
還元雰囲気における熱処理によって、金属膜と接触しているガラス表面から内部にわたって、着色層が形成される。
上記方法により着色層が形成されるメカニズムは、特に限定されないが、以下にように考えられる。
本実施形態において形成される着色層の着色は、ガラス成分に起因する還元色と考えられ、特に遷移金属に起因する還元色であると考えられる。通常、ガラス成形体を、水素を3~5体積%程度の低濃度で含む雰囲気中で熱処理しても、ガラスはほとんど還元色を呈しない。しかし、上記金属膜は、雰囲気中の水素イオンを吸蔵するため、ガラスの金属膜と接触する部分は、金属膜と接触していない部分と比べて、水素イオンが多く供給され、その結果、還元反応が速く進行する。そのため、ガラスの金属膜と接触する部分は濃く着色する。金属膜による水素イオンの吸蔵量は大きく、金属膜の吸蔵により雰囲気中の水素濃度が低下するほどである。このこともあって、金属膜と接触していない部分は還元反応が進行しにくい。
ここで、着色の要因となるガラス成分の還元反応は、金属膜と接触する部分からあらゆる方向に進行する。すなわち、着色層は、ガラスの断面から観察すると、金属膜と接触するガラス表面から厚さ方向に形成され、ガラスの表面から観察すると、金属膜と接触する部分から放射状に形成される。
本実施形態では、ガラスがSbイオン、Asイオン、Snイオン、およびCeイオンからなる群から選択される1以上のガラス成分を所定量以上含むことで、上記方法によって、より濃く着色された着色層を形成できる。すなわち、本実施形態では、着色層の厚みが小さくても、透過率を十分に低減できる。着色層の厚みが小さい場合、ガラスの表面から観察される、金属膜と接触していた部分から放射状に形成される着色層の範囲も小さくなる。つまり、本実施形態によれば、着色層の形成条件を調整することで、ガラス表面から観察した場合に、金属膜と略同形状の着色層を形成できる。
(光学素子等の製造)
本実施形態に係るガラスは、そのまま光学ガラスとして用いることができる。そして、本実施形態に係る光学素子は、着色の無い光学素子を調製し、そこに着色層を形成することで得られる。着色の無い光学素子は、公知の製造方法に従って作製すればよい。例えば、熔融ガラスを鋳型に流し込んで板状に成形し、ガラス素材を作製する。得られたガラス素材を適宜、切断、研削、研磨し、プレス成形に適した大きさ、形状のカットピースを作製する。カットピースを加熱、軟化して、公知の方法でプレス成形(リヒートプレス)し、光学素子の形状に近似する光学素子ブランクを作製する。光学素子ブランクをアニールし、公知の方法で研削、研磨して光学素子を作製する。
作成した光学素子に、上記方法により着色層を形成できる。また、光学素子を作製する途中の段階で着色層を形成してもよい。
作製した光学素子の光学機能面には使用目的に応じて、反射防止膜、全反射膜などをコーティングしてもよい。
(用途)
本発明の一態様によれば、上記ガラスを含む光学素子を提供することができる。光学素子の種類としては、球面レンズ、非球面レンズ等のレンズ、プリズム等を例示することができる。レンズの形状としては、両凸レンズ、平凸レンズ、両凹レンズ、平凹レンズ、凸メニスカスレンズ、凹メニスカスレンズ、ロッドレンズ等の諸形状を例示することができる。光学素子は、上記ガラスから成形されたガラス成形体を加工する工程を含む方法により製造することができる。加工としては、切断、切削、粗研削、精研削、研磨等を例示することができる。
光学素子の一例として、CCDやC-MOSセンサーのようなイメージセンサーの受光面に斜入射する光を遮光するための光学素子を示すことができる。従来、イメージセンサーの受光面に斜入射光を遮断するために、イメージセンサーのカバーガラス表面の斜入射光を遮断したい部分に黒色インクを塗布し、遮光性を持たせる方法が用いられている。この方法では、黒色インクが塗布されている部分と黒色インクが塗布されていない部分の境界において、黒色インクの表面で光の反射が生じ、迷光となってイメージセンサーの画質が低下するという問題がある。また、インクは温度が上昇すると脱ガスを生じ、カバーガラス表面の曇りの原因となる。これに対し、本実施形態のガラスを用い、斜入射光を遮りたい箇所に着色層を設け、カバーガラスとすることにより、迷光の問題や脱ガスによる曇りの問題を解消することができる。
着色層の形成時において、着色層は、ガラスの表面から観察すると、ガラスの金属膜と接触する部分から内に向かって放射状に広がるように形成される。すなわち、着色層は、ガラスの厚さ方向だけでなく、ガラスの表面に平行な方向にも広がるように形成される。そして、着色層における単位厚さ当たりのODは、ガラスの金属膜と接触していた部分、すなわちガラス表面および表面に近い表面部では大きく、ガラス表面からの距離が大きくなるほど減少する傾向を示す。また、着色層と非着色部との境界では、ODは、着色層から非着色部に移動するにつれて連続的、段階的に減少する。このように着色層と非着色部との境界では、厳密には、ODは連続的、段階的に変化しているが、本実施形態において、着色層と非着色部との境界にある、ODが連続的、段階的に変化する領域は極めて限定的であり、目視でその存在を認めることは容易ではない。しかし、ガラスに入射する光の波長は、着色層と非着色部との境界にある、ODが連続的、段階的に変化する領域よりも十分小さいため、その領域に入射する光は吸収され、減衰する。したがって、例えば非着色部に入射した光が回折して、着色層と非着色部との境界にまで伝播したとしても、光は着色層と非着色部との境界で減衰し、ガラスを透過しにくくなる。
これまで主にカバーガラスへの応用について説明してきたが、カバーガラスに限定されず、本実施形態に係るガラスは、着色層の形状によって光学センサー等の窓としての機能を有することも可能である。その他の光学素子の一例として、レンズの側面に着色層を設けた墨塗りレンズ、ガラス表面に精密な形状の着色層を施したガラス製エンコーダー、部分的透過性を有するスクリーンも挙げられる。ここで、ガラス製エンコーダーとは、光学式ロータリーエンコーダーの回転スリット板に代えて使用可能な円盤状のガラス板であり、回転スリット板のスリットに相当する箇所を非着色部、シャッタに相当する箇所を着色層とすることができる。すなわち、ガラス製エンコーダーでは、スリットに相当する非着色部とシャッタに相当する着色層との境界において、ODが連続的、段階的に変化する領域を有する。そのため、ガラス製エンコーダーに入射した光が、回折してスリットとシャッタとの境界にまで伝播したとしても、光はその境界で減衰される。その結果、回折した光が光学式ロータリーエンコーダーの光センサーに入射することが抑制され、エンコーダーの誤動作を防ぐことができる。なお、上記のような、着色層と非着色部との境界において光が減衰することにより得られる効果は、着色層がガラス表面から内に向かって層状に存在していれば得られる。そのため、このような効果は、着色層がガラス表面から内に向かって層状に存在している限り、Sbイオン含有ガラスにおいても得られるし、Sbイオンを含まないガラスにおいても得られる。
本実施形態において、特に、ガラス製エンコーダーや部分的透過性を有するスクリーンを形成する場合、およびウェハ上に複数のレンズを形成する場合には、前述のように所望の箇所に金属膜を形成すれば、還元雰囲気での熱処理で一括して着色層を形成し、その所望の箇所に遮光性を持たせることができる。
本実施形態に係るガラスは、そのまま光学ガラスとして用いることができるが、本発明は光学ガラスに限定されるものではない。本発明の一態様によれば、着色層の形状を鮮明に形成できることから、着色層による装飾性を活かして、上記ガラスを含むガラス物品を提供することができる。ガラス物品としては、特に限定されないが、食器や文房具等の日用品、仏具、装飾品、宝飾品、芸術品、小型電子機器の外装等が例示できる。本実施形態に係るガラス物品は、着色層により、所望の図、文字、絵柄、および模様を有することができる。ここで、従来の場合、すなわち、物品表面に膜を形成して、所望の形状の絵柄等を施す場合には、物品表面の膜が剥離する、膜の色みが変化するといった問題が生じやすい。一方、本実施形態において、着色層はガラスの表面から内に向かって層状に存在する。そのため、着色層は剥離することはなく、また着色層の色みは変化しにくい。すなわち、本実施形態によれば、絵柄等の剥離や色みの変化といった問題の生じない、ガラス物品を提供することができる。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1に示すガラス組成I~組成IVを有するガラスサンプルを以下の手順で作製し、各種評価を行った。なお、本実施例では、各組成においてSbイオン、Snイオン、およびCeイオン以外のガラス組成の組成を一定にして、組成IではSbイオンの含有量が0~1.0%の範囲で異なるガラスサンプルを作成し、組成IIではSbイオンの含有量が0~0.37%の範囲で異なるガラスサンプルを作成した。さらに、組成IではCeイオンの含有量が0~0.42%の範囲で異なるガラスサンプルを作成し、またSnイオンの含有量が0~0.48%の範囲で異なるガラスサンプルを作成した。組成IIIではSbイオンの含有量が0~0.5%の範囲で異なるガラスサンプルを作成し、組成IVではSbイオンの含有量が0~0.5%の範囲で異なるガラスサンプルを作成した。表1では、各組成においてSbイオン、Snイオン、およびCeイオンの何れか一種を含む。
Figure 2023098675000002
[ガラスの製造]
ガラスの構成成分に対応する酸化物、水酸化物、メタリン酸塩、炭酸塩、および硝酸塩を原材料として準備し、得られるガラスの組成が、表1に示す各組成となるように上記原材料を秤量、調合して、原材料を十分に混合した。得られた調合原料(バッチ原料)を、白金坩堝に投入し、1100~1450℃で2~3時間加熱して熔融ガラスとした。熔融ガラスを攪拌して均質化を図り、清澄してから、熔融ガラスを適当な温度に予熱した金型に鋳込んだ。鋳込んだガラスを、ガラス転移温度Tg付近で1時間程度熱処理し、炉内で室温まで放冷した。長さ40mm、幅10mm、厚さ1.0mmの大きさに加工し、40mm×10mmとなる2つ面を精密研磨(光学研磨)して、ガラスサンプルを得た。
[ガラス成分組成の確認]
得られたガラスサンプルについて、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)で各ガラス成分の含有量を測定し、表1に示す各組成のとおりであることを確認した。また、いずれのガラスサンプルも、アニオン成分として100アニオン%のO2-を含有していた。
[光学特性の測定]
得られたガラスサンプルについて、屈折率nd、アッベ数νd、ガラス転移温度Tg、屈服点Ts、および比重を測定した。結果を表1に示す。なお、ガラスサンプルの屈折率nd、アッベ数νd、ガラス転移温度Tg、屈服点Ts、および比重は、いずれもSbイオン、Ceイオン、およびSnイオンの含有量に関わらず同程度であり、表1に示す有効数字で示される数値の範囲内であった。
(i)屈折率ndおよびアッベ数νd
JIS規格 JIS B 7071-1の屈折率測定法により、屈折率nd、ng、nF、nCを測定し、式(1)に基づきアッベ数νdを算出した。
νd=(nd-1)/(nF-nC) ・・・(1)
(ii)ガラス転移温度Tgおよび屈服点Ts
ガラス転移温度Tgおよび屈伏点Tsは、MACサイエンス社製の熱機械分析装置(TMA4000S)を使用し、昇温速度4℃/分にて測定した。
(iii)比重
比重は、アルキメデス法により測定した。
実施例1:透過率の差
(実施例1-1)
[着色層の形成]
組成Iを有するガラスサンプルのうち、Sbイオンの含有量が0.10%であるサンプルについて、光学研磨面の一方の面の一部に、Niペーストを塗布し、ガラス転移温度Tgより50℃低い温度(Tg-50℃)で4時間焼成して、Niペースト膜を成膜した。
Niペースト膜を形成したガラスサンプルを、還元雰囲気としてフォーミングガス(水素3体積%、窒素97体積%)を0.03L/minの流量で供給しながら410℃で70時間熱処理した。
Niペースト膜を研磨により剥離した。Niペースト膜を剥離した部分に着色層が形成された。着色層および非着色部を有するガラスサンプルを得た。
[透過率の測定]
着色層を有する部分および非着色部について、波長300nm~2500nmの範囲における外部透過率を測定した。外部透過率は、ガラスサンプルの厚み方向に光を入射したときの、入射光強度に対する透過光強度の百分率[透過光強度/入射光強度×100]で定義される。なお、外部透過率には試料表面における光線の反射損失も含まれる。結果を図1-1に示す。
(実施例1-2)
組成Iを有するガラスサンプルのうち、Sbイオンの含有量が0.25%であるサンプルを用いて、430℃で30時間熱処理した以外は、実施例1-1と同様に着色層を形成し、着色層および非着色部を有するガラスサンプルを得た。実施例1-1と同様に、透過率を測定した。結果を図1-2に示す。
(実施例1-3)
組成Iを有するガラスサンプルのうち、Sbイオンの含有量が0.25%であるサンプルを用いて、410℃で70時間熱処理した以外は、実施例1-1と同様に着色層を形成し、着色層および非着色部を有するガラスサンプルを得た。実施例1-1と同様に、透過率を測定した。結果を図1-3に示す。
(実施例1-4)
組成IIを有するガラスサンプルのうち、Sbイオンの含有量が0.2%であるサンプルを用いて、410℃で19時間熱処理した以外は、実施例1-1と同様に着色層を形成し、着色層および非着色部を有するガラスサンプルを得た。実施例1-1と同様に、透過率を測定した。結果を図1-4に示す。
(実施例1-5)
組成IIを有するガラスサンプルのうち、Sbイオンの含有量が0.2%であるサンプルを用いて、430℃で8時間熱処理した以外は、実施例1-1と同様に着色層を形成し、着色層および非着色部を有するガラスサンプルを得た。実施例1-1と同様に、透過率を測定した。結果を図1-5に示す。
図1-1~1-5によれば、Sbイオンの含有量が0.075%以上であるガラスサンプルでは、いずれの熱処理条件でも、着色層の可視光領域(波長440nm~780nm)における透過率の最小値と、非着色部の可視光領域における透過率の最小値との差は10%以上となることが確認された。
実施例2:非着色部の透明性
(実施例2-1)
組成Iを有しSbイオン含有量が異なる複数のガラスサンプルについて、着色層形成時に430℃で9時間熱処理した以外は実施例1-1と同様にして、着色層および非着色部を有するガラスサンプルを得た。以下のとおり、非着色部の透明性を評価した。結果を図2に示す。
[非着色部の透明性の評価]
着色層を形成する前のガラスサンプルと、着色層を形成した後の非着色部について、波長494nmにおける外部透過率を測定した。外部透過率は、ガラスサンプルの厚み方向に光を入射したときの、入射光強度に対する透過光強度の百分率[透過光強度/入射光強度×100]で定義される。なお、外部透過率には試料表面における光線の反射損失も含まれる。着色層を形成する前のガラスサンプルについて得られた外部透過率と、着色層を形成した後の非着色部について得られた外部透過率との差を算出した。
(実施例2-2)
組成Iを有しSbイオン含有量が異なる複数のガラスサンプルについて、着色層形成時に430℃で30時間熱処理した以外は実施例2-1と同様にして、着色層および非着色部を有するガラスサンプルを得た。実施例2-1と同様に、着色層を形成する前のガラスサンプルについて得られた外部透過率と、着色層を形成した後の非着色部について得られた外部透過率との差を算出し、非着色部の透明性を評価した。結果を図2に示す。
(実施例2-3)
組成Iを有しSbイオン含有量が異なる複数のガラスサンプルについて、着色層形成時に410℃で70時間熱処理した以外は実施例2-1と同様にして、着色層および非着色部を有するガラスサンプルを得た。実施例2-1と同様に、着色層を形成する前のガラスサンプルについて得られた外部透過率と、着色層を形成した後の非着色部について得られた外部透過率との差を算出し、非着色部の透明性を評価した。結果を図2に示す。
(実施例2-4)
組成IIを有しSbイオン含有量が異なる複数のガラスサンプルについて、着色層形成時に430℃で7時間熱処理した以外は実施例2-1と同様にして、着色層および非着色部を有するガラスサンプルを得た。実施例2-1と同様に、着色層を形成する前のガラスサンプルについて得られた外部透過率と、着色層を形成した後の非着色部について得られた外部透過率との差を算出し、非着色部の透明性を評価した。結果を図2に示す。
図2によれば、Sbイオンの含有量が0.075%以上であるガラスサンプルでは、いずれの熱処理条件でも、非着色部の透過率は着色層形成前と同程度であり、非着色部の透明性が確保されていることが確認できる。一方、Sbイオンの含有量が0.075%未満のガラスサンプルでは、非着色部の透過率は着色層形成前より低減しており、非着色部の透明性が損なわれていることが確認された。
実施例3:着色層の厚みとOD
(実施例3-1)
組成Iを有しSbイオン含有量が異なる複数のガラスサンプルについて、着色層形成時に430℃で9時間熱処理した以外は実施例1-1と同様にして、着色層および非着色部を有するガラスサンプルを得た。以下のとおり、着色層の厚さおよびODを測定した。
[着色層の厚み]
ガラスサンプルを着色層のない光学研磨面から研磨して、厚みを0.60mmとした。ガラスの着色層を有する部分の断面を顕微鏡で観察する際に、ガラスの厚みが大きいと着色層の厚みが大きく見えてしまうといった問題が生じやすい。そこで、ガラスの厚みを小さくすることで、このような問題が生じないようにした。顕微鏡でガラスサンプルの着色層を有する部分の断面を観察し、着色層の厚みを測定した。顕微鏡の倍率は500倍とした。結果を図3-1に示す。
[ODの測定]
ガラスサンプルの着色層を有する部分について、波長1100nmにおける入射光強度I0および透過光強度Iを測定し、下記式によりOD(光学密度)を算出した。結果を図3-2に示す。
OD=-log10(I/I0
(実施例3-2)
組成Iを有しSbイオン含有量が異なる複数のガラスサンプルについて、着色層形成時に430℃で30時間熱処理した以外は実施例3-1と同様にして、着色層および非着色部を有するガラスサンプルを得た。実施例3-1と同様に、着色層の厚さおよびODを測定した。
(実施例3-3)
組成Iを有しSbイオン含有量が異なる複数のガラスサンプルについて、着色層形成時に410℃で70時間熱処理した以外は実施例3-1と同様にして、着色層および非着色部を有するガラスサンプルを得た。実施例3-1と同様に、着色層の厚さおよびODを測定した。
(実施例3-4)
組成IIを有しSbイオン含有量が異なる複数のガラスサンプルについて、着色層形成時に410℃で19時間熱処理した以外は実施例3-1と同様にして、着色層および非着色部を有するガラスサンプルを得た。実施例3-1と同様に、着色層の厚さおよびODを測定した。
(実施例3-5)
組成IIを有しSbイオン含有量が異なる複数のガラスサンプルについて、着色層形成時に410℃で8時間熱処理した以外は実施例3-1と同様にして、着色層および非着色部を有するガラスサンプルを得た。実施例3-1と同様に、着色層の厚さおよびODを測定した。
実施例3-1~3-5では、ODが一定となるように着色層の厚みを調整している。具体的には、実施例3-1では、図3-2に示すようにODが1.7~2.1の範囲となるように、着色層の厚みを増減させ、その結果が図3-1に示されている。同様に、実施例3-2、3-3、3-4、3-5では、それぞれODが3.7~4.0、3.7~4.0、1.7~1.8、1.5~1.6の範囲となるように、着色層の厚みを増減させ、その結果が図3-1に示されている。図3-1、3-2によれば、Sbイオンの含有量が0.075%以上であるガラスサンプルでは、いずれの熱処理条件でも、着色層の厚みが小さいままで所望のODを達成できることが確認できた。一方、Sbイオンの含有量が0.075%未満のガラスサンプルでは、所望のODを達成するには着色層の厚みを大きくする必要があり、すなわち、着色層の厚みを大きくしなければ所望のODを達成できないことが確認された。
実施例4:着色層の形状の鮮明さ
(実施例4-1)
組成Iを有しSbイオン含有量が異なる複数のガラスサンプルについて、Niペースト膜を縦20mm、横10mmの大きさに成膜し、着色層形成時に430℃で30時間熱処理し、該Niペースト膜を剥離しなかった以外は、実施例1-1と同様に着色層を形成し、着色層および非着色部を有するガラスサンプルを得た。このとき、着色層はNiペースト膜よりもわずかに大きく形成された。そこで、成膜したNiペースト膜の外縁部から形成された着色層の外縁部までの距離を測定した。結果を図4に示す。
(実施例4-2)
組成Iを有しSbイオン含有量が異なる複数のガラスサンプルについて、着色層形成時に410℃で70時間熱処理した以外は実施例4-1と同様にして、着色層および非着色部を有するガラスサンプルを得た。成膜したNiペースト膜の外縁部から形成された着色層の外縁部までの距離を測定した。結果を図4に示す。
(実施例4-3)
組成IIを有しSbイオン含有量が異なる複数のガラスサンプルについて、着色層形成時に430℃で7時間熱処理した以外は実施例4-1と同様にして、着色層および非着色部を有するガラスサンプルを得た。成膜したNiペースト膜の外縁部から形成された着色層の外縁部までの距離を測定した。結果を図4に示す。
図4によれば、Sbイオンの含有量が0.075%以上であるガラスサンプルでは、いずれの熱処理条件でも、成膜したNiペースト膜の外縁部から形成された着色層の外縁部までの距離が低減されている。すなわち、着色層は成膜したNiペースト膜とほぼ同形状であり、着色層の形状の鮮明さが確保されていることが確認された。一方、Sbイオンの含有量が0.075%未満のガラスサンプルでは、Sbイオンの含有量が0.075%以上であるガラスサンプルと比較して、成膜したNiペースト膜の外縁部から形成された着色層の外縁部までの距離が大きく、着色層の形状の鮮明さが損なわれていることが確認された。
(実施例5)
[着色層の形成]
組成Iを有しCeイオン含有量が異なる複数のガラスサンプル(以下「組成I-ce」)、組成Iを有しSnイオン含有量が異なる複数のガラスサンプル(以下「組成I-sn」)、組成IIIを有しSbイオン含有量が異なる複数のガラスサンプル(以下「組成III-sb」)、組成IVを有しSbイオン含有量が異なる複数のガラスサンプル(以下「組成IV-sb」)について、光学研磨面の一方の面の一部に、Niペーストを塗布し、410℃で4時間焼成して、Niペースト膜を成膜した。
Niペースト膜を形成したガラスサンプル(組成I-sn)を、還元雰囲気としてフォーミングガス(水素3体積%、窒素97体積%)を0.03L/minの流量で供給しながら430℃で5時間熱処理した。ガラスサンプル(組成I-ce)については、処理温度430℃、処理時間30時間とし、ガラスサンプル(組成III-sb)については処理温度を464℃、処理時間30時間とし、ガラスサンプル(組成IV-sb)については処理温度を537℃とした以外は上記と同様の処理を行った。
各ガラスサンプルからNiペースト膜を研磨により剥離した。Niペースト膜を剥離した部分に着色層が形成された。着色層および非着色部を有するガラスサンプルを得た。
各ガラスサンプルについて、非着色部の透明性評価(外部透過率差分)、着色部のOD(光学密度)、着色層の形状の鮮明さ(着色幅)および着色層の厚み(着色深さ)を上記と同様に測定した。結果を図5~図8に示す。図中、イオン含有量はSbイオン、SnイオンまたはCeイオンの含有量を示す。

Claims (7)

  1. 着色層を有し、
    Sbイオン、Asイオン、Snイオン、およびCeイオンからなる群から選択される1以上のガラス成分を0.075カチオン%以上含む、ガラス。
  2. ガラス成分としてBiイオンを含む、請求項1に記載のガラス。
  3. 屈折率が1.70以上である、請求項1に記載のガラス。
  4. 着色層の可視光領域における透過率の最小値と、非着色部の可視光領域における透過率の最小値との差が10%以上である、請求項1に記載のガラス。
  5. 請求項1~4のいずれかに記載のガラスを含むガラス物品。
  6. 請求項1~4のいずれかに記載のガラスを含む光学ガラス。
  7. 請求項1~4のいずれかに記載のガラスを含む光学素子。
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