JP2023098671A - ポリマー及びそれを用いた強誘電材料 - Google Patents

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Abstract

【課題】 1,2-ジフルオロエチレンに由来する構造を有する新規な共重合ポリマーを提供する。圧電性を有し、高温雰囲気下での耐久性に優れた強誘電材料を提供する。【解決手段】 1,2-ジフルオロエチレンに由来する構造単位(A)及びフッ化ビニリデン(VDF)に由来する構成単位(B)を含むポリマー。上記ポリマーから形成された強誘電材料。【選択図】 なし

Description

本開示は、ポリマー及びそれを用いた強誘電材料に関する。
含フッ素重合体は極めて多くの分野において使用されている重合体である。このような重合体を製造するための単量体としては、テトラフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、ヘキサフロロプロピレン等が周知である。
1,2-ジフルオロエチレンは、その製造方法が特許文献1に開示されている。更に、非特許文献1に、当該化合物及びこれを使用した重合体が開示されている。
特許文献2には、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を用いて、高分子圧電体フィルムを製造する方法が開示されている。
特許文献3には、圧電材料に使用するポリマーとして、フッ化ビニリデンとトリフルオロエチレンとの共重合体が開示されている。
国際公開第2019/216239号 特開2008-171935号公報 米国特許第4778867号公報
Poly(vinylene fluoride)、 Synthesis and Properties W.S. Durrell et. al. Journal of Polymer Scienece: Part A Vol.3,P2975-2982 (1965)
本開示は、1,2-ジフルオロエチレンに由来する構造を有する新規な共重合ポリマーを提供することを目的とするものである。
また、本開示は、圧電性を有し、高温雰囲気下での耐久性に優れた強誘電材料を提供することを目的とするものである。
本開示は、1,2-ジフルオロエチレンに由来する構造単位(A)及びフッ化ビニリデン(VDF)に由来する構成単位(B)を含むポリマーである。
上記ポリマーは、1,2-ジフルオロエチレンに由来する構成単位(A)を10~70モル%含むことが好ましい。
上記ポリマーは、重量平均分子量が5万以上200万以下であることが好ましい。
上記ポリマーは、重量平均分子量が30万以上200万以下であることが好ましい。
上記ポリマーは、融点が140℃以上であることが好ましい。
本開示は、上記ポリマーを汎用溶媒に溶解させたものであることを特徴とする樹脂溶液でもある。
上記汎用溶媒は、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、及びアミド系溶媒からなる群から選択される単体、又は2種以上を組み合わせたものであることが好ましい。
本開示は、上記ポリマーから形成された強誘電材料でもある。
上記強誘電材料は、センサ、アクチュエータ、タッチパネル、ハプティックデバイス、振動発電装置、スピーカー、及びマイクからなる群より選択される1種以上に使用するためのものであることが好ましい。
上記強誘電材料は、フィルム、被覆物又は積層物であることが好ましい。
本開示は、積層体であり、上記強誘電材料からなる圧電膜、及び前記圧電膜の少なくとも一方の面上に設けられた電極を備える圧電体でもある。
本開示は、1,2-ジフルオロエチレンに由来する構造を有する新規な共重合ポリマーを提供し得るものである。また、このポリマーは、強誘電材料に好適に使用できる。
また、本開示は、圧電性を有し、高温雰囲気下での耐久性に優れた強誘電材料を提供することを可能とするものである。
以下、本開示を詳細に説明する。
本開示は、1,2-ジフルオロエチレンに由来する構造単位(A)及びフッ化ビニリデン(VDF)に由来する構成単位(B)を含むポリマーである。
上記1,2-ジフルオロエチレンに由来する構造単位(A)及びフッ化ビニリデン(VDF)に由来する構成単位(B)を含むポリマーは、優れた強誘電性を示し得るポリマーであり、圧電フィルム等の強誘電材料に好適に使用できるものである。
ここで、「強誘電性」とは、外部に電場がなくても分極を維持できる性質を意味する。
以下、1,2-ジフルオロエチレンとフッ化ビニリデンとを共重合させたポリマーについて説明する。
(構成単位(A))
1,2-ジフルオロエチレンは、公知化合物であるが、従来、主に冷媒としての使用について検討されており、重合単量体としての検討はほとんど行われていない。
上記1,2-ジフルオロエチレンは、下記のように、トランス体(E体)とシス体(Z体)とが存在する。
Figure 2023098671000001
よって、トランス体のみを原料として使用した場合、シス体のみを原料として使用した場合、これらの混合物を原料として使用した場合とで、その立体配置に相違を生じる。本開示のポリマーは、これらのいずれであってもよい。また、これらの任意の割合の混合物であってもよい。
上記1,2-ジフルオロエチレンは、その他の単量体と一般的な方法で共重合体を得ることができる。さらに、その共重合割合も容易に変化させることができる。したがって、本開示において、所望の単量体割合であるポリマーを容易に得ることができる。
なお、上述した非特許文献1においては、下記一般式(10)で表される単量体又はこれを含有する単量体組成物を原料として使用した重合反応によってポリマーを得ることが開示されている。しかし、当該非特許文献1中においては、構成単位(B)を有するポリマーについては開示されていない。
また、非特許文献1では、純度が高い単量体を得ることができない。したがって、本開示と同様のポリマーを得ることができない。本発明者らの検討によると、非特許文献1における合成方法によって、1,2-ジフルオロエチレンを合成すると、フッ化ビニリデン等の各種不純物が発生する。更に、非特許文献1においては、前駆体の純度が90%であることから、このような前駆体中の不純物に由来する成分も発生する。非特許文献1においては、ドライアイストラップ(-78℃)で不純物を除去する旨の記載が存在する。しかし、このような方法では、高沸点化合物は除去することができない。また、非特許文献1においては、ポリマーのガラス転移温度が50℃程度である旨の記載が存在していることも考慮すれば、非特許文献1においては、高純度のモノマーを得ることができていない。
本開示のポリマーは、特定の樹脂組成に由来する各種効果が期待されるものであることから、本開示においては、単量体として純度が99.5質量%以上(より好ましくは、99.8質量%以上、最も好ましくは、99.9質量%以上)である1,2-ジフルオロエチレンで表される化合物を原料として使用して得られたものであることが好ましい。
(構成単位(B))
上記ポリマーは、更に、フッ化ビニリデンに由来する構成単位(B)を有するものである。このような構成単位を有することで、本開示の特定の効果を奏する重合体とすることができる。
上記ポリマーにおける、(1,2-ジフルオロエチレンに由来する繰り返し単位)/(フッ化ビニリデンに由来する繰り返し単位)のモル比は、好ましくは5/95~90/10の範囲内、より好ましくは10/90~85/15の範囲内、更に好ましくは10/90~80/20の範囲内、及びより更に好ましくは15/85~75/25の範囲内である。
フッ化ビニリデンが多い共重合体は、溶剤溶解性に優れ、及びその強誘電材料の加工性に優れる点で好ましい。
上記ポリマーにおける、(1,2-ジフルオロエチレンに由来する繰り返し単位)/(フッ化ビニリデンに由来する繰り返し単位)のモル比は、好ましくは5/95~65/35の範囲内、より好ましくは10/90~50/50の範囲内、より好ましくは10/90~40/60の範囲内、及び更に好ましくは15/85~35/65の範囲内である。
1,2-ジフルオロエチレンがより多い共重合体は、そのフィルムの耐熱性が優れる点で好ましい。
上記ポリマーにおける、(1,2-ジフルオロエチレンに由来する繰り返し単位)/(フッ化ビニリデンに由来する繰り返し単位)のモル比は、好ましくは90/10~10/90の範囲内、より好ましくは85/15~45/55の範囲内、及び更に好ましくは70/30~50/50の範囲内である。
上記ポリマーは、1,2-ジフルオロエチレンに由来する構成単位(A)を、5~90モル%含むことが好ましく、10~70モル%含むことがより好ましい。1,2-ジフルオロエチレンに由来する構成単位(A)がこの範囲であれば、溶剤溶解性に優れ、及び耐熱性に優れたポリマーが得られる。
1,2-ジフルオロエチレンに由来する構成単位(A)の含有量の下限は、より好ましくは5モル%であり、更に好ましくは10モル%であり、最も好ましくは15モル%である。1,2-ジフルオロエチレンに由来する構成単位(A)の含有量の上限は、より好ましくは90モル%であり、更に好ましくは80モル%であり、最も好ましくは70モル%である。
上記ポリマーは、1,2-ジフルオロエチレン及びフッ化ビニリデン(VDF)のみを重合成分とする共重合体であってもよく、1,2-ジフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、及び1種以上のその他のモノマーを重合成分とする共重合体(例:三元共重合体、四元共重合体)であってもよい。当該1種以上のその他のモノマーは、1種以上のハロゲン含有モノマーであってもよく、1種以上のハロゲン非含有モノマーであってもよく、これらの組合せであってもよい。
ハロゲン含有モノマーとしては、例えば、ビニルフルオリド(VF)、トリフルオロエチレン(TrFE)、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、1-クロロ-1-フルオロエチレン(1,1-CFE)、1-クロロ-2-フルオロエチレン(1,2-CFE)、1-クロロ-2,2-ジフルオロエチレン(CDFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、トリフルオロビニルモノマー、1,1,2-トリフルオロブテン-4-ブロモ-1-ブテン、1,1,2-トリフルオロブテン-4-シラン-1-ブテン、ペルフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)、ペルフルオロアクリラート、2,2,2-トリフルオロエチルアクリラート、2-(ペルフルオロヘキシル)エチルアクリラート)等のフッ素含有モノマーが挙げられる。
ハロゲン非含有モノマーとしては、例えば、α-オレフィン(例:エチレン、プロピレン);不飽和ジカルボン酸又はその誘導体(例:マレイン酸、無水マレイン酸);ビニルエーテル(例:エチルビニルエーテル);アリルエーテル(例:アリルグリシジルエーテル);ビニルエステル(例:酢酸ビニル);アクリル酸又はそのエステル;メタクリル酸又はそのエステル等が挙げられる。
上記1種以上のその他のモノマーの含有量としては、全共重合単位に対して0~50モル%であってよく、0~40モル%であってよく、0~30モル%であってよく、0~15モル%であってよく、0~10モル%であってよく、0~5モル%であってよい。
上記ポリマーは、重量平均分子量が5万以上200万以下であることが好ましい。上記範囲内とすることで、加工性に優れ、耐熱性に優れるという点で好ましい。
特に、重量平均分子量が10万以上200万以下であることが好ましく、30万以上200万以下であることがより好ましい。
また、上記下限は、20万以上であることがより好ましく、30万以上であることが更に好ましく、60万以上であることが最も好ましい。上記上限は、190万以下であることがより好ましく、180万以下であることが更に好ましく、170万以下であることが最も好ましい。
なお、本明細書において、重量平均分子量は、実施例に示した条件におけるゲル浸透クロマトグラフ(GPC)によって測定した値である。
本開示のポリマーは、融点が140℃以上であることが好ましい。より好ましくは145℃以上であり、更に好ましくは150℃以上である。
融点が上記範囲であれば、耐熱性に優れる点で好適である。
なお、本明細書において、融点は、実施例に示した条件における、示差走査熱量分析(DSC)によって測定した値である。
本開示のポリマーは、例えば、強誘電材料の形成に好適に使用されるものである。
(重合方法)
上記ポリマーは、上記構成単位(A)、(B)の由来となる単量体、及び必要に応じてその他のモノマーを共重合することで得ることができる。
構成単位(A)は、
Figure 2023098671000002
で表される単量体に基づくものである。上記一般式(10)で表される化合物は公知化合物であり、例えば、特許文献1に記載した方法によって製造することができる。
上記一般式(10)で表される化合物は、純度が99.5質量%以上であるものを使用して重合を行うことが好ましい。純度が99.8質量%以上であるものがより好ましく、純度が99.9質量%以上であるものが更に好ましい。純度が99.9質量%以上である一般式(10)で表される化合物は、その製造方法を特に限定されるものではなく、例えば、分取ガスクロマトグラフィ、多段階式の精留によって行う方法等を挙げることができる。
このような単量体を使用することで、意図しない構成単位を含むことによって、所定の樹脂が得られないこと、安定して均一な物性を有する樹脂が得られなくなる等の問題を防ぐことができる。
不純物を多く含有する一般式(10)で表される単量体を使用すると、共重合成分が共重合体に取り込まれにくくなり、これによって所望の樹脂が得られなくなる場合がある。すなわち、仕込み量以下の低い割合でしか、単量体が重合体中に含まれなくなる場合がある。
具体的には、例えば、ヘキサフロロプロピレンとの共重合を行う場合、非特許文献1においては、ほとんどヘキサフロロプロピレン単位は重合体中に取り込まれないとされている。しかし、本発明者らが行った実験によると、純度が高い単量体を原料として使用すると、ヘキサフロロプロピレンと一般式(10)で表される単量体の共重合体を得ることができる。
このように、純度が高い単量体を使用することで、純度が低い単量体を使用した場合と比較して共重合の傾向が相違することが明らかとなった。これによって、非特許文献1とは相違する新たな組成の重合体を得ることができる。
本開示のポリマーは、重合開始剤の存在下に、1,2-ジフルオロエチレン、フッ化ビニリデン及び必要に応じて他のモノマーを、各単量体単位が上述した含有量の範囲内となるように、共重合することにより製造することができる。
共重合は、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合等であってよいが、工業的に実施が容易である点で、溶液重合、乳化重合または懸濁重合が好ましく、溶液重合または懸濁重合がより好ましい。
重合開始剤としては、油溶性ラジカル重合開始剤、または水溶性ラジカル重合開始剤を使用できるが、油溶性ラジカル重合開始剤が好ましい。
油溶性ラジカル重合開始剤としては、公知の油溶性の過酸化物であってよく、たとえば、
ジノルマルプロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジsec-ブチルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エトキシエチルパーオキシジカーボネートなどのジアルキルパーオキシカーボネート類;
t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシピバレートなどのパーオキシエステル類;
ジt-ブチルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド類;
ジ[フルオロ(またはフルオロクロロ)アシル]パーオキサイド類;
などが代表的なものとしてあげられる。
ジ[フルオロ(またはフルオロクロロ)アシル]パーオキサイド類としては、[(RfCOO)-](Rfは、パーフルオロアルキル基、ω-ハイドロパーフルオロアルキル基またはフルオロクロロアルキル基)で表されるジアシルパーオキサイドなどが挙げられる。
ジ[フルオロ(またはフルオロクロロ)アシル]パーオキサイド類としては、たとえば、ジ(ω-ハイドロ-ドデカフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(ω-ハイドロ-テトラデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(ω-ハイドロ-ヘキサデカフルオロノナノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロプロピオニル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロブチリル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロパレリル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロノナノイル)パーオキサイド、ジ(ω-クロロ-ヘキサフルオロブチリル)パーオキサイド、ジ(ω-クロロ-デカフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(ω-クロロ-テトラデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ω-ハイドロ-ドデカフルオロヘプタノイル-ω-ハイドロヘキサデカフルオロノナノイル-パーオキサイド、ω-クロロ-ヘキサフルオロブチリル-ω-クロロ-デカフルオロヘキサノイル-パーオキサイド、ω-ハイドロドデカフルオロヘプタノイル-パーフルオロブチリル-パーオキサイド、ジ(ジクロロペンタフルオロブタノイル)パーオキサイド、ジ(トリクロロオクタフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(テトラクロロウンデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(ペンタクロロテトラデカフルオロデカノイル)パーオキサイド、ジ(ウンデカクロロトリアコンタフルオロドコサノイル)パーオキサイドなどが挙げられる。
水溶性ラジカル重合開始剤としては、公知の水溶性過酸化物であってよく、たとえば、過硫酸、過ホウ酸、過塩素酸、過リン酸、過炭酸などのアンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、ジコハク酸パーオキサイド、ジグルタル酸パーオキサイドなどの有機過酸化物、t-ブチルパーマレート、t-ブチルハイドロパーオキサイドなどが挙げられる。サルファイト類、亜硫酸塩類のような還元剤を過酸化物に組み合わせて使用してもよく、その使用量は過酸化物に対して0.1~20倍であってよい。
ラジカル重合開始剤の添加量は、特に限定はないが、重合速度が著しく低下しない程度の量(たとえば、数ppm対水濃度)以上を重合の初期に一括して、または逐次的に、または連続して添加すればよい。上限は、装置面から重合反応熱を除熱出来る範囲である。
上記の共重合においては、界面活性剤、親水性化合物、連鎖移動剤、および溶媒を使用することができ、それぞれ従来公知のものを使用することができる。
界面活性剤としては、公知の界面活性剤が使用でき、たとえば、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤などが使用できる。添加量(対重合水)は、好ましくは10ppm~20質量%であり、より好ましくは10~5000ppmであり、さらに好ましくは50~5000ppmである。
また、界面活性剤として反応性乳化剤を使用することができる。反応性乳化剤は、不飽和結合と親水基とをそれぞれ1つ以上有する化合物であれば特に限定されない。
親水性化合物としては、公知の不飽和親水性化合物及び公知の不飽和親水性化合物を重合することによって得られた親水性ポリマーが使用できる。添加量(対重合水)は、好ましくは10~5000ppmである。より好ましくは、50~5000ppmである。
連鎖移動剤としては、たとえば、エタン、イソペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサンなどの炭化水素類;トルエン、キシレンなどの芳香族類;アセトンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、コハク酸ジメチルなどのエステル類;メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類;メチルメルカプタンなどのメルカプタン類;四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、塩化メチル、モノヨードメタン、1-ヨードエタン、1-ヨード-n-プロパン、1-ヨードパーフルオロプロパン、2-ヨードパーフルオロプロパン、1-ヨード-パーフルオロブタン、1-ヨード-パーフルオロペンタン、1-ヨード-パーフルオロヘキサン、1,3-ジヨードパーフルオロプロパン、1,3-ジヨード-2-クロロパーフルオロプロパン、1,4-ジヨードパーフルオロブタン、1,5-ジヨード-2,4-ジクロロパーフルオロペンタン、1,6-ジヨードパーフルオロヘキサン、1,8-ジヨードパーフルオロオクタン、1,12-ジヨードパーフルオロドデカン、1,16-ジヨードパーフルオロヘキサデカン、ジヨードメタン、1,2-ジヨードエタン、1,3-ジヨード-n-プロパン、CFBr、BrCFCFBr、CFCFBrCFBr、CFClBr、BrCFCFClBr、CFBrClCFClBr、BrCFCFCFBr、BrCFCFBrOCF、1-ブロモ-2-ヨードパーフルオロエタン、1-ブロモ-3-ヨードパーフルオロプロパン、1-ブロモ-4-ヨードパーフルオロブタン、2-ブロモ-3-ヨードパーフルオロブタン、3-ブロモ-4-ヨードパーフルオロブテン-1、2-ブロモ-4-ヨードパーフルオロブテン-1、ベンゼンのモノヨードモノブロモ置換体、ジヨードモノブロモ置換体、ならびに(2-ヨードエチル)および(2-ブロモエチル)置換体等のハロゲン化炭化水素などが挙げられる。これらの化合物は、単独で使用してもよく、相互に組み合わせて使用することもできる。連鎖移動剤の添加量は、用いる化合物の連鎖移動定数の大きさにより変わりうるが、通常重合溶媒に対して0.01~20質量%の範囲で使用される。
溶媒としては、水や、水とアルコールとの混合溶媒等が挙げられる。
溶液重合では、フッ素系溶媒、懸濁重合では、水に加えて、フッ素系溶媒を使用してもよい。フッ素系溶媒としては、CHCClF、CHCClF、CFCFCClH、CFClCFCFHCl等のハイドロクロロフルオロアルカン類;CFClCFClCFCF、CFCFClCFClCF等のクロロフルオロアルカン類;CFCFHCFHCFCFCF、CFHCFCFCFCFH、CFCFCFCFCFCFCFH等のハイドロフルオロアルカン類;CHOC、CHOCCFCFCHOCHF、CFCHFCFOCH、CHFCFOCHF、(CFCHCFOCH、CFCFCHOCHCHF、CFCHFCFOCHCF等のハイドロフルオロエーテル類;パーフルオロシクロブタン、CFCFCFCF、CFCFCFCFCF、CFCFCFCFCFCF等のパーフルオロアルカン類等が挙げられ、なかでも、パーフルオロアルカン類、ハイドロフルオロエーテル類が好ましい。フッ素系溶媒の使用量は、懸濁性および経済性の面から、水性媒体に対して10~100質量%が好ましい。
重合温度、重合圧力は、用いる溶媒の種類、量および蒸気圧や重合開始剤の種類によって異なるが、-15~150℃、0~9.8MPa、1~24時間であってよい。特に、溶液重合において重合開始剤としてフッ素原子を含有する油溶性ラジカル重合開始剤を使用する場合、重合温度が-15~70℃であることが好ましく、10~65℃であることがより好ましい。乳化重合および懸濁重合においてフッ素原子を含有する油溶性ラジカル重合開始剤を使用する場合、重合温度が10~95℃であることが好ましい。重合開始剤として水溶性ラジカル重合開始剤を使用する場合、重合温度が10~95℃であることが好ましい。
重合後の処理も任意の一般的な方法によって行うことができ、必要に応じて、得られた重合体を汎用溶媒に溶解して、樹脂溶液とすることができる。
本開示は、本開示のポリマーを汎用溶媒に溶解させた樹脂溶液でもある。
本開示のポリマーは、汎用溶媒に溶解させることができるという利点を有する。本開示において使用する汎用溶媒としては、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、及びアミド系溶媒からなる群から選択される単体、又は2種以上を組み合わせたものが挙げられる。
本開示のポリマーは、汎用の有機溶媒に溶解させることができるため、コスト等の観点でも好適である。
前記汎用溶媒の好適な例は、ケトン系溶媒(例:メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、アセトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、シクロヘキサノン)、エステル系溶媒(例:酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、乳酸エチル)、エーテル系溶媒(例:テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン)、及びアミド系溶媒(例:N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド)を包含する。これらの溶媒は、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられ得る。なお、前記溶媒中のアミド系溶媒の含有率は50質量%以下であることが望ましい。
本開示のポリマーを汎用溶媒に溶解させた樹脂溶液とする場合、樹脂濃度を1.0~10.0質量%とすることが好ましい。上記樹脂濃度の下限は、2.0質量%であることがより好ましく、2.5質量%であることが更に好ましい。上記樹脂濃度の上限は、9.0質量%であることがより好ましく、8.0質量%であることが更に好ましい。
本開示の樹脂溶液は、後述するフィルム製造や積層体における強誘電体層の形成等に使用することができる。
本開示は、上記ポリマーから形成された強誘電材料でもある。強誘電材料としては、上記ポリマーから形成されるものであれば、その形態は特に限定されず、例えば、シート、フィルム、糸、ワイヤー、不織布、成型品等の各種成形品が挙げられる。
従来、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)やフッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体が、強誘電性を示し得るポリマーとして知られており、圧電フィルム等として使用されている。
圧電フィルムは、圧電性(加えられた力を電圧に変換する性質、又は加えられた電圧を力に変換する性質)を有するフィルムである。圧電フィルムは、圧電性を利用する様々な用途[例:センサ、アクチュエータ、タッチパネル、ハプティックデバイス(ユーザに触覚をフィードバックする機能を有するデバイス)、振動発電装置、スピーカー、マイク]に利用されるものである。
しかし、ポリフッ化ビニリデンは、ロール圧延あるいはキャスティング等によりフィルム成形した後、延伸させることで圧電物性を高める必要がある。また、フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体は融点が低いため、高温雰囲気下での使用時に問題を生じることがある。
本開示の1,2-ジフルオロエチレンとフッ化ビニリデンとを共重合させたポリマーは、延伸工程を必要とせずに、圧電性を持つフィルム等の強誘電材料とすることができる。また、上記ポリマーは、比較的高い融点、例えば、140℃以上の融点を有するものであるから、高温雰囲気下でも、フィルム等の形状を担保できる。
本開示の強誘電材料における上記ポリマー(以下、強誘電性ポリマーということがある。)の含有量の下限は、例えば、10質量%、20質量%、30質量%、40質量%、50質量%、60質量%、又は70質量%であり、好ましくは80質量%、より好ましくは85質量%、さらに好ましくは90質量%である。当該含有量の上限は、特に制限されず、例えば、100質量%、又は99質量%である。
本開示の強誘電材料は、さらに、強誘電性ポリマー以外のポリマーを含有することができる。強誘電性ポリマー以外のポリマーとしては、例えば、ポリカーボネート、ポリエステル(例:ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、ポリアミド、シリコーン樹脂、ポリエーテル、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、及びポリオレフィン(例:ポリエチレン、ポリプロピレン)等が挙げられる。強誘電性ポリマー以外のポリマーの含有量は、特に制限されないが、強誘電性ポリマー100質量部に対して、例えば100質量部以下、80質量部以下、60質量部以下、40質量部以下、20質量部以下、10質量部以下、5質量部以下、又は1質量部以下である。
本開示の強誘電材料は、強誘電性ポリマー(又は、強誘電性ポリマー及び強誘電性ポリマー以外のポリマー)からなるものであってもよく、強誘電性ポリマーと添加剤とを含有するものであってもよい。例えば、後者におけるフィルム等の具体例は、当該強誘電性ポリマー中に無機物が分散されているフィルム等を包含する。
添加剤の具体例は、充填剤(例:無機酸化物粒子)、親和性向上剤、熱安定化剤、紫外線吸収剤、顔料、これら1種又は2種以上の組合せを包含し、その好適な例は、無機酸化物粒子、並びに、無機酸化物粒子及び親和性向上剤の組合せを包含する。
無機酸化物粒子の好適な例は、以下の無機酸化物粒子(B1)~(B3)からなる群より選択される少なくとも1種を包含する。
[無機酸化物粒子(B1)]
(B1)は、周期表の2族、3族、4族、12族又は13族の金属元素の酸化物の粒子、又はこれらの無機酸化物複合粒子である。前記金属元素の例は、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、Ti、Zr、Zn、及びAlを包含する。
(B1)の好適な例は、Be、Al、Mg、Y、及びZrの酸化物の粒子を包含する。前記粒子は、汎用で安価であり、また体積抵抗率が高い点から好ましい。
(B1)の更に好適な例は、Al、MgO、ZrO、Y、BeO、及びMgO・Alからなる群より選ばれる少なくとも1種の無機酸化物の粒子を包含する。前記粒子は、体積抵抗率が高い点から好ましい。
(B1)の更に好適な例は、結晶構造がγ型のAlを包含する。前記粒子は、比表面積が大きく、強誘電性ポリマーへの分散性が良好な点から好ましい。
[無機酸化物粒子(B2)]
(B2)は、式:
a1 b1c1
(式中、Mは2族金属元素;Mは4族金属元素であり;a1は0.9~1.1の範囲内であり;b1は0.9~1.1の範囲内であり;c1は2.8~3.2の範囲内である;M及びMはそれぞれ1種又は2種以上の金属元素であることができる)
で表される無機複合酸化物の粒子である。
前記2族金属元素の好適な例は、Mg、Ca、Sr、及びBaを包含する。
前記4族金属元素の好適な例は、Ti、及びZrを包含する。
(B2)の好適な例は、BaTiO、SrTiO、CaTiO、MgTiO、BaZrO、SrZrO、CaZrO、及びMgZrOからなる群より選ばれる少なくとも1種の無機酸化物の粒子を包含する。前記粒子は、体積抵抗率が高い点から好ましい。
[無機酸化物粒子(B3)]
(B3)は、周期表の2族、3族、4族、12族、又は13族の金属元素の酸化物、及び酸化ケイ素の無機酸化物複合粒子である。前記金属元素の例は、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、Ti、Zr、Zn、及びAlを包含する。
(B3)の具体例は、3A1・2SiO、2MgO・SiO、ZrO・SiO、及びMgO・SiOからなる群より選ばれる少なくとも1種の無機酸化物の粒子を包含する。
無機酸化物粒子は、必ずしも高誘電性である必要はなく、有機強誘電体の用途により適宜選択できる。例えば、汎用で安価な無機酸化物粒子[例:(B1)、特に、Alの粒子、及びMgOの粒子]を使用すると、体積抵抗率の向上を図ることができる。これら1種類の無機酸化物粒子(B1)の比誘電率(1kHz、25℃)は、通常100未満、好ましくは10以下の範囲内である。
無機酸化物粒子として、誘電率を向上させる目的で、強誘電性[例:比誘電率(1kHz、25℃)が100以上]の無機酸化物粒子[例:(B2)及び(B3)]を用いてもよい。強誘電性の無機酸化物粒子を構成する無機材料は、複合金属酸化物、その複合体、固溶体、及びゾルゲル体を包含し、これらのみに限定されるものではない。
無機酸化物粒子の比誘電率(25℃、1kHz)は、好ましくは10以上の範囲内である。有機強誘電体の誘電率を高くする観点から、前記比誘電率は、好ましくは100以上、より好ましくは300以上の範囲内である。前記比誘電率の上限は特に制限されないが、通常3000程度である。
無機酸化物粒子の比誘電率(ε)(25℃、1kHz)は、LCRメーターを用いて容量(C)を測定し、容量、電極面積(S)、焼結体の厚さ(d)から、式C=εε×S/d(ε:真空の誘電率)で算出した値である。
無機酸化物粒子の平均一次粒子径は小さい方が好ましく、特に平均一次粒子径1μm以下のいわゆるナノ粒子が好ましい。このような無機酸化物ナノ粒子が均一分散することにより、少量の配合で有機強誘電体の電気絶縁性を大幅に向上させることができる。前記平均一次粒子径は、好ましくは800nm以下、より好ましくは500nm以下、更に好ましくは300nm以下の範囲内である。前記平均一次粒子径は、製造の困難性、均一分散の困難性、及び価格の面から、好ましくは10nm以上、より好ましくは20nm以上、更に好ましくは50nm以上の範囲内である。
無機酸化物粒子の平均一次粒子径は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置 LA-920(商品名)(堀場製作所社)又はその同等品を用いて算出される。
強誘電材料は、強誘電性ポリマー100質量部に対し、無機酸化物粒子を、好ましくは0.01~300質量部、より好ましくは0.1~100質量部の範囲内で含有することができる。
前記含有量の下限は、電気絶縁性を向上する点から、好ましくは0.1質量部、より好ましくは0.5質量部、更に好ましくは1質量部である。
前記含有量の上限は、無機酸化物粒子を強誘電性ポリマー中に均一に分散させ、電気絶縁性(耐電圧)の低下、及び引張強度の低下を防止する点から、好ましくは200質量、より好ましくは150質量部、更に好ましくは100質量部である。
強誘電材料は、無機酸化物粒子を含有する場合、更に親和性向上剤を含有することができる。
親和性向上剤は、無機酸化物粒子と強誘電性ポリマーとの間の親和性を高め、無機酸化物粒子を強誘電性ポリマー中に均一に分散させ、無機酸化物粒子と強誘電性ポリマーをしっかり結合させ、ボイドの発生を抑制し、及び比誘電率を高めることができる。
親和性向上剤の具体例は、カップリング剤、界面活性剤、及びエポキシ基含有化合物を包含する。
カップリング剤の例は、有機チタン化合物、有機シラン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機アルミニウム化合物、及び有機リン化合物を包含する。
有機チタン化合物の例は、有機チタンカップリング剤(例:アルコキシチタニウム、チタニウムキレート、チタニウムアシレート)を包含し、及びその具体例は、テトライソプロピルチタネート、チタニウムイソプロポキシオクチレングリコレート、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタン、ジイソプロポキシチタンジイソステアレート、テトライソプロピルビス(ジオクチルフォスファイト)チタネート、及びイソプロピルトリ(n-アミノエチル-アミノエチル)チタネート、テトラ(2,2-ジアリルオキシメチル-1-ブチル)ビス(ジ-トリデシル)ホスファイトチタネートを包含する。
有機チタン化合物の好適な例は、無機酸化物粒子との親和性が良好な点から、アルコキシチタニウム、及びチタニウムキレートを包含する。
有機シラン化合物は、高分子型であっても、低分子型であってもよく、その例は、アルコキシシラン(例:モノアルコキシシラン、ジアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、テトラアルコキシシラン)、ビニルシラン、エポキシシラン、アミノシラン、メタクロキシシラン、及びメルカプトシランを包含する。アルコキシシランを用いる場合、加水分解により、表面処理の効果である体積抵抗率のより一層の向上(電気絶縁性の向上)を図ることができる。
有機ジルコニウム化合物の例は、アルコキシジルコニウム、及びジルコニウムキレートを包含する。
有機アルミニウム化合物の例は、アルコキシアルミニウム、及びアルミニウムキレートを包含する。
有機リン化合物の例は、亜リン酸エステル、リン酸エステル、及びリン酸キレートを包含する。
親和性向上剤としての界面活性剤は、高分子型であっても、低分子型であってもよいが、熱安定性の点から、高分子型が好ましい。界面活性剤の例は、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、及びカチオン性界面活性剤を包含する。
非イオン性界面活性剤の例は、ポリエーテル誘導体、ポリビニルピロリドン誘導体、及びアルコール誘導体を包含し、及びその好適な例は、無機酸化物粒子との親和性が良好な点から、ポリエーテル誘導体を包含する。
アニオン性界面活性剤の例は、スルホン酸、及びカルボン酸、及びそれらの塩を含有するポリマーを包含し、及びその好適な例は、強誘電性ポリマーとの親和性が良好な点から、アクリル酸誘導体系ポリマー、及びメタクリル酸誘導体系ポリマーを包含する。
カチオン性界面活性剤の例は、アミン化合物、含窒素系複合環(例:イミダゾリン)を有する化合物、及びそのハロゲン化塩を包含する。
親和性向上剤としてのエポキシ基含有化合物は、低分子量化合物であっても、高分子量化合物であってもよく、その具体例は、エポキシ化合物、及びグリシジル化合物を包含し、及びその好適な例は、強誘電性ポリマーとの親和性の点から、エポキシ基を1個有する低分子量の化合物を包含する。
エポキシ基含有化合物の更に好適な例は、次式:
Figure 2023098671000003
(式中、Rは、水素原子、メチル基、酸素原子若しくは窒素原子を介在してもよい炭素数2~10の炭化水素基、又は置換されていてもよい芳香環基を表す。lは0又は1を表し、mは0又は1を表し、nは0~10の整数を表す。)
で表される化合物を包含する。
前記式で表される化合物の例は、ケトン基、又はエステル基を有する化合物を包含し、より具体的には、次式で表される化合物を包含する:
Figure 2023098671000004
親和性向上剤の含有量は、均一な分散、及び得られる強誘電材料の比誘電率の高さの点から、無機酸化物粒子100質量部に対して、好ましくは0.01~30質量部、より好ましくは0.1~25質量部、更に好ましくは1~20質量部の範囲内であることができる。
物性
本開示の強誘電材料は、上述したように、その形状を特に限定するものではないが、フィルム形状であることが好ましい。フィルム形状であると、ロールトゥロール方式が適用可能であり工業生産性が優れるという点で好ましい。
本開示の強誘電材料がフィルム形状である場合は、下記の物性を有することが好ましい。
なお、本明細書において、各物性は、特に断りのない限り、測定前の前処理として加熱することなく測定した物性を意味し、「110℃で10分加熱した後の」という記載を付加した場合は、前処理として110℃で10分加熱し、その後に測定した物性を意味する。また、110℃で10分加熱する対象は、製造後の強誘電材料であることができ、例えば、後述の工程A~工程Cを含む方法により強誘電材料を製造する場合、工程Cの後の強誘電材料を対象とする。
本開示の強誘電材料は、下記全光線透過率、下記膜厚、下記圧電定数d33及びその変動係数、下記結晶化度、及び下記残留分極量からなる群より選択される少なくとも一種の物性を有することが好ましい。
全光線透過率
<全光線透過率の決定方法>
本明細書において、「全光線透過率」は、JIS K-7361に準拠し、ヘイズメーターNDH-7000SP(製品名、日本電色工業社)又はその同等品を使用して測定することができる。
全光線透過率の下限は、透明性の点から、好ましくは90%、より好ましくは91%、さらに好ましくは92%、特に好ましくは93%である。110℃で10分加熱した後の全光線透過率の下限も、同様の値に設定することができる。
全光線透過率の上限は、特に限定されないが、例えば、99.99%、99.9%、又は99%であることができる。110℃で10分加熱した後の全光線透過率の上限も、同様の値に設定することができる。
全光線透過率は、好ましくは90%以上(例:90~99.99%の範囲内)、より好ましくは91%以上(例:91~99.99%の範囲内)、さらに好ましくは92%以上(例:92~99.99%の範囲内)である。110℃で10分加熱した後の全光線透過率の範囲も、同様の範囲に設定することができる。
膜厚
<膜厚の決定方法>
本明細書中、フィルムの平面方向の全体に渡って1cm四方毎に10箇所において、光電式デジタル測長システム(デジマイクロMH-15M、Nikon社製)又はその同等品を用いて厚さを測定し、その平均値を膜厚とする。
膜厚の下限は特に限定されないが、好ましくは10nm、さらに好ましくは100nm、さらに好ましくは500nmである。これによりピンホールなどの欠陥ができにくい。また、フィルム等の自立膜として使用し得る点では、好ましくは1μm、より好ましくは5μm、さらに好ましくは10μm、さらにより好ましくは15μm、特に好ましくは20μmである。これによりハンドリング性の優れたフィルムとすることができる。
膜厚の上限は、特に限定されないが、例えば、1000μm、900μm、又は800μmであることができる。
膜厚は、好ましくは10nm以上(例:10nm~1000μmの範囲内)、より好ましくは1μm以上(例:1~1000μmの範囲内)、さらに好ましくは10μm以上(例:10~1000μmの範囲内)である。
圧電定数d 33
<圧電定数d33の決定方法>
本明細書において、「圧電定数d33」は、PIEZOTEST社のピエゾメーターシステムPM300又はその同等品を用いて、1.0N、110Hzの力を加えることにより測定される。恣意性を排除して選択したフィルム上の10点において圧電定数d33を測定し、その算術平均値を圧電定数d33とすることができる。フィルム上で恣意性を排除して10点を選択することは、例えば、直線上で50mm間隔に10点を選択することにより行うことができる。ここで、恣意性とは、後記する変動係数が小さくなるように意図することを意味する。
圧電定数d33の実測値は、測定されるフィルムの表裏によって、プラスの値、又はマイナスの値となるが、本明細書中においては、圧電定数d33の値として、その絶対値を記載する。
圧電定数d33の下限は、好ましくは13pC/N、より好ましくは14pC/N、さらに好ましくは15pC/N、さらにより好ましくは16pC/Nである。圧電定数d33の下限は、さらに高い値に設定することができ、例えば、17pC/Nであることができる。
110℃で10分加熱した後の圧電定数d33の下限は、好ましくは10pC/N、より好ましくは11pC/N、さらに好ましくは12pC/N、さらにより好ましくは13pC/Nである。
圧電定数d33の上限は、特に限定されないが、例えば、35pC/N、又は30pC/Nであることができる。110℃で10分加熱した後の圧電定数d33の上限も、同様の値に設定することができる。
圧電定数d33は、好ましくは13pC/N以上(例:13~35pC/Nの範囲内)、より好ましくは14pC/N以上(例:14~35pC/Nの範囲内)、さらに好ましくは15pC/N以上(例:15~35pC/Nの範囲内)である。
110℃で10分加熱した後の圧電定数d33は、好ましくは10pC/N以上(例:10~35pC/Nの範囲内)、より好ましくは11pC/N以上(例:11~35pC/Nの範囲内)、さらに好ましくは12pC/N以上(例:12~35pC/Nの範囲内)である。
「圧電定数d33」の変動係数は、当該「圧電定数d33」の、算術平均に対する標準偏差の比である。
圧電定数d33の変動係数は、2.0以下であることが好ましい。これにより、本開示の強誘電材料は圧電性の面内ばらつきが小さく、具体的には、これにより、例えば、以下の利点を有する。本開示の強誘電材料は、例えば、タッチ圧検出可能なタッチパネルに用いた場合(特に、大面積のタッチ圧検出可能なタッチパネルに用いた場合でも)、誤作動が生じ難い。
また、本開示の強誘電材料は、例えば、圧力センサに用いた場合(特に、大面積の圧力センサに用いた場合でも)、安定なセンシングが実現できる。
また、本開示の強誘電材料は、例えば、ハプティックデバイスに用いた場合、操作ミス、及びデバイスの誤作動が生じ難い。また、本開示の強誘電材料の1つである圧電フィルムは、例えば、振動発電装置に用いた場合、一定した安定な発電量が得られる。また、上記圧電フィルムは、例えば、平面スピーカーに用いた場合(特に、大面積の平面スピーカーに用いた場合でも)、高い音質が得られるという点で優れている。
圧電定数d33の変動係数は、このような観点では、より小さいことが好ましく、従って、当該変動係数の上限は、好ましくは1.0、より好ましくは0.6、更に好ましくは0.4、より更に好ましくは0.3、及び特に好ましくは0.15であることができる。
一方、用途又は使用態様等においては、非常に変動係数が小さいことまでは必要とされない場合がある。この場合、当該変動係数がより大きいほうが、製造コストの点などで有利であり得る。従って、本開示の強誘電材料の圧電定数d33の変動係数の下限は、例えば、0.0001、0.001、0.01、又は0.02であることができる。
強誘電材料の圧電定数d33の変動係数は、例えば、0.01~1.0の範囲内、0.01~0.6の範囲内、0.01~0.5の範囲内、0.01~0.4の範囲内、又は0.01~0.3の範囲内であることができる。
圧電定数d33を、上記範囲内のものとするためには、分極処理を行うことが好ましい。
結晶化度
<結晶化度の決定方法>
開口部が設けられたサンプルホルダにフィルム試料を直接載置し、回折角2θが10~40°である範囲にわたってX線回折測定を行ったときに得られるX線回折パターンにおいて、
10°の回折角2θにおける回折強度と、25°の回折角2θにおける回折強度とを結ぶ直線をベースラインとして設定し、及び
当該ベースラインと回折強度曲線とで囲まれる領域を、プロファイルフィッティングにより2つの対称性ピークに分離し、
このうち、回折角2θの大きい方を結晶性ピークと認定し、且つ回折角2θの小さい方を非晶性ハローピークと認定した場合に、
100×(結晶性ピークの面積)/(結晶性ピークの面積と非晶性ハローピークの面積との和)で表される値を結晶化度とする。
結晶化度の下限は、強誘電性の点から、好ましくは40%、より好ましくは45%、さらに好ましくは50%、さらにより好ましくは55%、特に好ましくは60%、特により好ましくは65%であることができる。110℃で10分加熱した後の結晶化度の下限も、同様の値に設定することができる。
結晶化度の上限は、例えば、99%、95%、又は90%であることができる。110℃で10分加熱した後の結晶化度の上限も、同様の値に設定することができる。
結晶化度は、好ましくは40%以上(例:40~99%の範囲内)、より好ましくは50%以上(例:50~99%の範囲内)、さらに好ましくは60%以上(例:60~99%の範囲内)である。110℃で10分加熱した後の結晶化度の範囲も、同様の範囲に設定することができる。
残留分極量[mC/m
<残留分極量の決定方法>
試料フィルムは、20mm×20mmに切り出したフィルムの中央部5mm×5mmに、アルミニウム電極(平面電極)を真空加工蒸着によりパターニングし、この平面電極に、絶縁テープを貼り付けて補強したアルミニウム箔製の2本のリード(3mm×80mm)の電極を導電性両面テープで接着することにより得られる。この試料フィルム、ファンクションジェネレーター、高圧アンプ、及びオシロスコープをソーヤータワー回路に組み込み、三角波を試料フィルムに印加(最大±10kV)し、試料フィルムの応答を、オシロスコープを用いて測定することにより、印加電界80MV/mにおける残留分極量が得られる。
残留分極量の下限は、好ましくは30mC/m、35mC/m、40mC/m、45mC/m、又は50mC/mである。
残留分極量の上限は、特に限定されないが、例えば、100mC/m、90mC/m、80mC/m、又は70mC/mである。
残留分極量は、好ましくは30mC/m以上(例:30~100mC/mの範囲内)、より好ましくは40mC/m以上(例:40~90mC/mの範囲内)、さらに好ましくは50mC/m以上(例:50~80mC/mの範囲内)である。
残留分極量を上記範囲内のものとするには、分極処理を行うことが好ましい。
用途
本開示の強誘電材料は、各種用途に適用することができる。正圧電効果を利用してセンサとして利用可能である。例えば、タッチセンサ、振動センサ、超音波センサ、生体センサ(睡眠、呼吸、脈拍、心音、脈拍、心拍、触覚、血圧等のうちいずれか一つ以上を検知するセンサ)、タイヤセンサ(タイヤ内面に設置するセンサ))、ウェアラブルセンサ、車両用衝突センサ(車体部品に対する物体の衝突を検知するセンサ)、車両用着座センサ(車両乗者の着座の有無や生体信号(呼吸/脈拍)を検知するセンサ)、車両用エア流量センサ、気象検知センサ(雨/雪)、水中音響センサ、ロボット用触覚センサ、医療機器用触覚センサなどの種々の用途に利用することができる。
上記に代えてまたは加えて、逆圧電効果を利用してアクチュエータとして利用可能である。圧電素子に対して駆動電圧を加えた際に、振動を励振するアクチュエータとして利用され得、また更に、その振動をセンサとして利用したアクチュエータ駆動センサとしても利用され得る。例えば超音波モーター、圧電モーター、マイク、スピーカ、ハプティックデバイス(ユーザに触覚をフィードバックする機能を有するデバイス)、ロボット関節駆動アクチュエータ、人工筋肉アクチュエータ、医療機器操作ワイヤー用駆動アクチュエータ、ファイバースコープ用駆動アクチュエータなどの種々の用途に利用することができる。
上記に代えてまたは加えて、焦電性を利用して温度変化を検出する焦電センサとして利用可能である。例えば赤外線センサ、火災検知センサ、防犯センサ、ヒートスキャナー、光反射率センサ、サーモグラフィーなどの種々の用途に利用することができる。
そのほかにも、環境発電装置、太陽電池、ガスセンサ、バイオセンサ、バッテリ、コンデンサ、燃料電池、化学触媒および抗菌フィルターに有用な電子装置に利用することができる。
上記に挙げた強誘電材料、圧電材料の一般的な用途に適用できるのはもちろん高温環境にさらされる車載用関連部材など様々な用途に利用することができる。
本開示の強誘電材料を有するタッチセンサは、入力装置に用いることができる。当該タッチセンサを有する入力装置は、タッチ位置、タッチ圧、又はその両方に基づく入力が可能である。当該タッチセンサを有する入力装置は、位置検出部及び圧力検出部を有することが出来る。
当該入力装置は、電子機器(例、携帯電話(例、スマートフォン)、携帯情報端末(PDA)、タブレットPC、キーボード、ATM、自動券売機、及びカーナビゲーションシステム)に用いることができる。当該入力装置を有する電子機器は、タッチ位置、タッチ圧又はその両方に基づく操作及び動作が可能である。
本開示の強誘電材料は、特に、センサ、アクチュエータ、タッチパネル、ハプティックデバイス、振動発電装置、スピーカー、及びマイクからなる群より選択される1種以上に使用するためのものであることが好ましい。
強誘電材料の形状は、上記のように、シート、フィルム、糸、ワイヤー、不織布、成型品等とできるがこれらに限定されない。強誘電材料を加工する方法としては、溶融押し出し、カレンダー、ヒートプレス、射出成型メルトブロー、溶融紡糸、押出延伸、一軸延伸、二軸延伸、ロール延伸、または有機溶剤等に溶融させた樹脂を流延し乾燥させるスピンコート法、キャスト法、印刷法などが挙げられるがこれらに限定されない。
また、本開示においては、上記ポリマーを含む、被覆物又は積層物等も強誘電材料に含むものである。
被覆物としては、例えば、導電性ワイヤー等に上記ポリマーを被覆した圧電ワイヤーなどが挙げられる。上記導電性ワイヤーの種類は、導電性を有していれば特に限定されず、例えば、金属ワイヤー、樹脂ワイヤーの表面を導電層で被覆した導電性被覆ワイヤー、導電性高分子ワイヤー等を用いることができる。中でも、引っ張り強度が大きい金属ワイヤーが好ましい。上記導電性ワイヤーに金属ワイヤーを用いる場合、用いる金属の種類は特に限定されず、例えば、銅、ニッケル、アルミニウム、ステンレス鋼等を使用できる。
また、積層物としては、上記ポリマーから形成されたシート、フィルム、不織布等を、必要に応じて他のポリマーからなるシートや金属箔等と共に積層した積層物等が挙げられる。または、他のポリマーからなるシートや金属箔等に、上記ポリマーを用いて強誘電体層を形成した積層物等が挙げられる。
これらの被覆物や積層物とするにあたり、上記したように、強誘電性ポリマーと共に、他のポリマーや添加剤を用いるようにしてもよい。
本開示の強誘電材料は、上記フィルム、被覆物、積層物として好適に使用される。
強誘電材料は、例えば、無延伸のキャストフィルムであることが好ましい。強誘電材料をキャストフィルムで構成することにより、厚さの均一性を高くすることができる。
製造方法
本開示の強誘電材料の中で、例えば、無延伸のフィルムは、
例えば、以下の工程を含む製造方法によって製造できる。すなわち、
強誘電性ポリマーを含有する非分極フィルム(例:無延伸かつ非分極フィルム)を調製する工程A;
非分極フィルム(例:無延伸かつ非分極フィルム)を分極処理する工程B;及び
必要に応じて、工程Bに対して任意の時点で、フィルムを熱処理する工程C
の少なくとも1つの工程を含む製造方法、好ましくは、工程A~Cを含む製造方法によって製造できる。
上記工程Aのフィルムの調製は、キャスティング法、溶融押し出し法、ヒートプレス法、印刷法、押し出し延伸法等により行えばよい。
工程A(フィルム調製工程)
例えば、キャスティング法による非分極フィルムの製造方法は、例えば、
(A1)強誘電性ポリマー、並びに前記所望による成分(例:無機酸化物粒子、及び親和性向上剤)を溶媒中に溶解又は分散させて液状組成物を溶解させて、液状組成物を調製する工程;
(A2)前記液状組成物を基材上に適用(流延又は塗布)する工程;
(A3)前記液状組成物を適用した基材を第1の温度で加熱して乾燥する工程;及び
(A4)前記第1の温度で加熱した基材を第1の温度よりも高い第2の温度で加熱する工程
を含む製造方法である。これらの工程は、工業生産性の点から、ロール・トゥ・ロール方式で実施するのが好ましい。工程(A3)及び工程(A4)は、第1の温度に曝露するゾーン、及び第1の温度よりも高い第2の温度に曝露するゾーンに順次移送することによって実施してもよい。
工程(A1)において、液状組成物の調製における溶解温度は使用する溶媒の種類によって適宜選択することができ、特に限定されないが、溶解促進及びフィルムの着色防止の点から、好ましくは室温以上であり、溶媒の気化温度又は80℃以下である。
前記溶媒の好適な例は、着色を防止する意味から、ケトン系溶媒(例:メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、アセトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、シクロヘキサノン)、エステル系溶媒(例:酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、乳酸エチル)、エーテル系溶媒(例:テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン)、及びアミド系溶媒(例:ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド)を包含する。これらの溶媒は、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられ得る。なお、前記溶媒中のアミド系溶媒の含有率は50質量%以下であることが望ましい。
このような液状組成物として、本開示の樹脂溶液を使用することができる。
工程(A2)において、液状組成物の基材上への流延(又は塗布)は、慣用の方法(例:ナイフコーティング方式、キャストコーティング方式、ロールコーティング方式、グラビアコーティング方式、ブレードコーティング方式、ロッドコーティング方式、エアドクタコーティング方式、又はスロットダイ方式)に基づき行えばよい。なかでも、操作性が容易な点、得られるフィルム厚さのバラツキが少ない点、生産性に優れる点から、グラビアコーティング方式、又はスロットダイ方式が好ましい。
前記基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、アクリル系樹脂、シクロオレフィン系ポリマー、ポリイミド(PI)等のプラスチックフィルム、又はアルミニウム(Al)、ステンレス(SUS)、銅(Cu)等の金属フィルムを使用することができる。特に限定はされないが、汎用的でありコスト、生産性に優れる点からポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましい。また、表面が平滑な品位のものが好ましい。これによりキャストコーティングしたフィルムの剥離性を高めるだけでなく、得られるフィルムの表面を平滑にすることができる。
工程(A3)において、液状組成物を適用した基材の加熱乾燥は、通常のフィルム形成のための加熱乾燥の方法に準じて行えばよい。当該加熱乾燥は、好ましくは、例えば、ロール・トゥ・ロール方式で、前記基材上に前記液状組成物を適用したものを高温炉(又は乾燥炉)に通すことで実施してもよい。または、バッチ式で加熱乾燥を行ってフィルムを形成してもよい。
第1の温度(加熱乾燥温度)の下限は使用する溶媒の種類(又は気化温度)によって適宜選択することができ、例えば20℃、好ましくは30℃、より好ましくは40℃、さらに好ましくは50℃、さらにより好ましくは60℃、特に好ましくは70℃、特により好ましくは80℃である。加熱乾燥温度の上限は、例えば220℃、210℃、200℃、190℃、180℃、170℃、160℃、150℃、140℃、130℃、又は120℃である。
加熱乾燥温度は、例えば、50~210℃の範囲内、60~200℃の範囲内、又は70~190℃の範囲内である。
第1の温度で加熱する時間(加熱乾燥時間)の下限は、例えば1秒、好ましくは10秒、さらに好ましくは30秒である。加熱乾燥時間の上限は特に限定されないが、例えば6時間、3時間、60分、好ましくは30分、さらに好ましくは10分である。加熱乾燥時間は、例えば、10秒~60分の範囲内、好ましくは30秒~10分の範囲内、さらに好ましくは30秒~5分の範囲内である。生産性の観点から加熱時間は短いほど処理時間を短縮できるため好ましい。
工程(A4)において、
第2の温度は、好ましくは融点以上又はその近傍の温度である。
第2の温度は、強誘電性ポリマーの種類によっても異なるが、好ましくは110℃以上、より好ましくは130℃以上、さらに好ましくは150℃以上、さらにより好ましくは170℃以上である。また、第2の温度は、好ましくは220℃以下、より好ましくは210℃以下、さらに好ましくは200℃以下、さらにより好ましくは190℃以下である。第2の温度は、好ましくは110~220℃の範囲内、より好ましくは130~210℃の範囲内、さらに好ましくは150~200℃の範囲内である。
第2の温度で加熱する時間は、例えば1分以上、好ましくは5分以上、さらに好ましくは10分以上である。また、第2の温度で加熱する時間は、例えば60分以下、好ましくは30分以下である。第2の温度で加熱する時間は、例えば1~60分の範囲内、好ましくは5~60分の範囲内、さらに好ましくは10~60分の範囲内である。
前記非分極フィルムの製造方法は、さらに
(A5)前記第2の温度で加熱した基材を第3の温度で加熱する工程
を含んでいてもよい。
第3の温度は、好ましくは(結晶化温度-10℃)~(結晶化温度+10℃)の範囲内、より好ましくは(結晶化温度-5℃)~(結晶化温度+5℃)の範囲内、さらに好ましくは(結晶化温度-3℃)~(結晶化温度+3℃)の範囲内である。第3の温度は、強誘電性ポリマーの組成や分子量によっても異なるが、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上、さらに好ましくは120℃以上、特に好ましくは130℃以上である。また、第3の温度は、好ましくは180℃以下、より好ましくは170℃以下、さらに好ましくは160℃以下、特に好ましくは150℃以下である。第3の温度は、好ましくは100~180℃の範囲内、より好ましくは120~170℃の範囲内、さらに好ましくは130~160℃の範囲内である。
第3の温度で加熱する時間は、例えば1分以上、好ましくは3分以上、さらに好ましくは5分以上である。また、第3の温度で加熱する時間は、例えば10分以下である。第3の温度で加熱する時間は、例えば1~10分の範囲内、好ましくは3~10分の範囲内である。
第3の温度で加熱することは結晶成長を促進し、加熱による特性変化の抑制、圧電定数の高いフィルムを得る点で好ましい。
一方、第3の温度で加熱することは、得ようとするフィルムに応じて工業生産性の観点を優先し省略してもよい。
工程Aで調製される、非分極フィルムの厚さは、得ようとするフィルムに応じて設定すればよい。
工程B(分極処理工程)
分極処理は、慣用の方法によって行うことができ、好ましくはコロナ放電処理によって行われる。
コロナ放電処理の条件は、当該技術分野の常識に基づいて、適宜設定すればよい。コロナ放電には、負コロナ及び正コロナのいずれを用いてもよいが、非分極フィルムの分極しやすさの観点から負コロナを用いることが望ましい。
コロナ放電処理は、特に限定されないが、例えば、特開2011-181748号公報に記載のように非分極フィルムに対して線状電極を用いて印加を実施すること;非分極フィルムに対して針状電極を用いて印加を実施すること;又は非分極フィルムに対してグリッド電極を用いて印加を実施すること等、によって実施できる。
ここで、得られる分極フィルムの圧電定数d33の面内ばらつきを抑制するためには、各針状電極及び/又は線状電極とフィルムとの距離が一定であること、すなわち電極とフィルムとの間の距離にフィルム面内ばらつきが無いこと(又は極めて小さいこと)(具体的には、最長距離と最短距離の差が、好ましくは15mm以内、より好ましくは10mm以内であること)が望ましい。
また、例えば、ロール・トゥ・ロールで連続印加を実施する場合は、フィルムに一定の張力がかかるようにして、フィルムを適度且つ均一にロールに密着させることが、望ましい。
例えば、線状電極を用いてロール・トゥ・ロールで連続印加を実施する場合は、線状電極と非分極フィルムの間の距離、フィルム膜厚等によって異なるが、直流電界は、例えば、-10~-25kVの範囲内である。処理速度は、例えば、10~1200cm/分の範囲内である。
別法として、分極処理は、コロナ放電の他に、例えば非分極フィルムの両面から平板電極で挟み込んで印加することにより実施してもよい。具体的には、例えば、非分極フィルムの両面から平板電極で挟み込んで印加を実施する場合、0~400MV/m(好ましくは50~400MV/m)の範囲内の直流電界、及び0.1秒~60分間の範囲内の印加時間の条件を採用できる。
工程C(熱処理工程)
工程Cは、工程Bに対して任意の時点で、必要に応じて行われることが好ましい。すなわち、工程Cは、工程Bの前、工程Bと同時、又は工程Bの後に実施してもよい。工程Cを工程Bの後に行う場合、工程Cの熱処理は、工程Bで得られた分極化フィルム又は工程Bにおいて分極を完了した部分に対して行うことができる。すなわち、工程Bの分極処理を実施しながら、当該分極処理を終えた部分に対して工程Cの熱処理を実施してもよい。
熱処理は、特に限定されないが、例えば、前記フィルムを2枚の金属板で挟み、当該金属板を加熱すること;前記フィルムのロールを恒温槽中で加熱すること;又はロール・トゥ・ロール方式での前記フィルムの生産において、金属ロールを加熱し、前記フィルムを、当該加熱した金属ロールに接触させること;又は前記フィルムを加熱した炉の中にロール・トゥ・ロールで通していくことを含むことが好ましい。ここで、工程Cを工程Bの後に行う場合、分極化フィルムは単体で熱処理してもよいし、或いは別種のフィルム又は金属箔上に重ねて積層フィルムを作製し、これを熱処理してもよい。とりわけ、高温で熱処理する場合には後者の方法のほうが、分極化フィルムにしわが入りにくいので好ましい。
熱処理の温度は、熱処理される分極化フィルムの種類によって異なる場合があり、好ましくは(熱処理される分極化フィルムの融点-100)℃~(熱処理される分極化フィルムの融点+40)℃の範囲内である。
熱処理の温度は、具体的には、好ましくは80℃以上、より好ましくは85℃以上、更に好ましくは90℃以上である。
また、熱処理の温度は、好ましくは170℃以下、より好ましくは160℃以下、更に好ましくは140℃以下である。
熱処理の時間は、通常、10秒間以上、好ましくは0.5分間以上、より好ましくは1分間以上、更に好ましくは2分間以上である。
また、熱処理の時間の上限は限定されないが、通常、熱処理の時間は60分間以下である。
熱処理を行うことで、熱処理温度未満の高温にさらされた際の圧電性等の特性の変化を抑制することができる。よって、工程(B)の前に熱処理しておくことが好適である。
熱処理の条件は、好ましくは90℃以上で1分間以上である。
強誘電材料のロール
強誘電材料は、好ましくは、ロールとして保管及び出荷され得る。
本開示の一実施態様のロールは、前記フィルムのみからなってもよく、前記フィルムに保護フィルムなどを積層させて巻いた形態でもよく、紙管等の芯、及び当該芯に巻き付けられた前記フィルムを備えてもよい。
前記フィルムのロールは、好ましくは、幅50mm以上、かつ長さ20m以上である。また、前記フィルムのロールは、幅3000mm以下であることが好ましい。前記フィルムのロールは、長さ3000m以下であることが好ましい。
前記フィルムのロールは、例えば、前記フィルムを、巻き出しローラーと巻き取りローラーを用いて巻き取ることにより、調製できる。
ここで、フィルムのたわみを抑制する観点で、通常行われるように、巻き出しローラーと巻き取りローラーを平行にすることが好ましい。
ローラーとしては、フィルムの滑り性を良くするため、滑り性のよいローラー、具体的にはフッ素樹脂で被覆されたローラー、メッキされたローラー、又は離型剤を塗布したローラーを用いることが好ましい。
ここで、フィルムの厚さが不均一である場合は、いわゆるロールの耳立ち(ハイエッジ;ロールの軸方向の中心部に比べて、端部が太くなること;両端部が中心部より膜厚が低い場合に両端部が中心部に比べて凹むこと;又は一方の端部からもう一方の端部に傾斜的に厚さが変化していく場合に膜厚が薄い側の端部が凹むこと)等のロールの太さの不均一さが発生し、これはシワの発生の原因になり得る。また、これは、フィルムの捲き出しの際に、フィルムのたわみ(重力による張力以外の張力がかけられていない状態での湾曲)が発生する原因となり得る。
一般に、ロールの耳立ちを防止する目的で、ロールの端となるフィルム端をスリッター耳おとし(スリット)することが行われるが、フィルムの厚さの不均一がフィルム端から広い範囲にわたる場合、耳おとしのみでは、ロールの耳立ち及び凹みの防止が困難である。
また、一般に、フィルムの幅が広い(例:幅100mm以上)ほど、及びフィルムの長さが長い(例:50m以上)ほど、前記耳立ち、前記凹み及び前記たわみが生じやすい。
しかし、前記圧電フィルムは、厚さの均一性が高いので、そのまま、又はロールの端となるフィルム端をスリッター耳おとし(スリット)することのみで、フィルムの幅が広く(例:幅100mm以上)、かつフィルムの長さが長い(例:50m以上)場合でも、前記耳立ち、前記凹み及び前記たわみが抑制されたロールにすることができる。
スリットで除去された耳(フィルム端)は、回収して、前記フィルムの原料として、リサイクルできる。
前記フィルムのロールは、太さの均一性が高く、好ましくは、ロールの軸方向の中心部の太さに対する、より太いほうの端部の太さの比が70~130%の範囲内である。これにより、前記フィルムのロールは、これから巻き出されたフィルムのたわみが抑制されている。
また、前記フィルム及びそのロールの製造に用いられるローラーは、少なくともその表面の材質が、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、クロムメッキ、又はステンレス鋼(SUS)であることが好ましい。
これらを使用することにより、フィルムのシワを抑制できる。
圧電体
本開示の一実施態様の圧電体は、例えば、積層体であり、上記強誘電材料からなる圧電膜、及び、圧電膜の少なくとも一方の面上に設けられた電極を備えるものが挙げられる。本開示は、積層体であり、上記強誘電材料からなる圧電膜、及び、圧電膜の少なくとも一方の面上に設けられた電極を備える圧電体でもある。
本開示の強誘電材料を使用する圧電体の構造は、これに限定されるものではなく、所望の構造を有する圧電体であってよい。
前記電極の具体例は、ITO(酸化インジウム・スズ)電極、酸化スズ電極、アルミニウム電極、金属ナノワイヤー、金属ナノ粒子(例:銀ナノ粒子)、及び有機導電樹脂を含む。
前記圧電体は、圧電膜、圧電膜の一方の面上に設けられた正電極層(又は上部電極層)、及び圧電膜の他方の面に設けられた負電極層(又は下部電極層)を備えた積層体であってもよい。
前記圧電体は、電極層の圧電膜が積層されていない面に、絶縁層を有していてもよい。また、前記圧電体は、電極層の圧電膜が積層されていない面(又は最表面)にカバー(例:電磁シールド層)を有していてもよい。
圧電体の製造方法は、例えば、
前記圧電膜を準備する工程;及び
前記圧電膜の少なくとも一方の面上に電極を設ける工程
を含んでいる。
前記電極を設ける工程において、電極を形成する方法は、通常、熱処理を含んでおり、及びその具体例は、電極材料を物理的気相成長法(例:真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング)又は化学的気相成長法(例:プラズマCVD)により成膜する方法、及び電極材料を基板に塗布する方法を包含する。
前記熱処理の温度の下限は、例えば25℃、好ましくは40℃、より好ましくは50℃である。
前記熱処理の温度の上限は、(熱処理される分極化フィルムの融点-3℃)、例えば220℃、好ましくは180℃、より好ましくは150℃、更に好ましくは130℃である。
前記熱処理の温度は、例えば25~220℃の範囲内、好ましくは40~130℃の範囲内であることができる。
前記熱処理の時間は、通常、10秒間以上、好ましくは1分間以上、より好ましくは10分間以上、更に好ましくは15分間以上の範囲内である。また、前記熱処理の時間は、通常、180分間以下、好ましくは60分間以下、より好ましくは30分間以下である。
以下、本開示を実施例に基づいて具体的に説明する。以下の実施例においては特に言及しない場合は、「部」「%」はそれぞれ「質量部」「質量%」を表す。
(一般式(10)で表される単量体)
以下の各実施例において使用する際の1,2-ジフルオロエチレンE体は、純度99.9質量%以上のものであった。なお、純度は、GC/MSによって不純物のピークが現れないことを確認し、99.9質量%とした。なお、特許文献1の実施例に従って製造を行い、分取ガスクロマトグラフィによって分離を行うことで、高純度の単量体を得た。
(重合方法)
以下の各合成例に沿った重合方法によってポリマーを重合した。
得られた重合体について、以下の評価基準に基づいて評価を行った。
これらの結果を、表1,2に示す。
(組成分析)
共重合体組成は、溶液NMR法、もしくは溶融NMR法により測定した。
<溶液NMR法>
測定装置:バリアン社製 VNMRS400
共鳴周波数:376.04(Sfrq)
パルス幅:30°
<溶融NMR法>
測定装置:ブルカージャパン社製 AVANCE300
共鳴周波数:282.40[MHz]
パルス幅:45°
(融点)
示差走査熱量計を用い、ASTM D4591に準拠して測定することができる。具体的には、示差走査熱量計RDC220(Seiko Instruments社製)を用い、昇温速度10℃/分にて共重合体の熱測定を行い、得られた融解熱曲線における極大値を融点とした。
(重量平均分子量(Mw)
GPC法により測定した結果に基づき、標準ポリスチレンを基準として分子量を計算した。下記方法にて測定した。
GPC装置:TOSOH AS-8010、CO-8020およびSIMADZURID-10A
カラム:GMHHR-H 3本
展開溶媒:ジメチルホルムアミド〔DMF〕
試料濃度:0.05質量%
測定温度:40℃
(弾性率)
弾性率は、動的粘弾性測定により25℃及び110℃で測定する値であり、アイティー計測制御社製 動的粘弾性装置DVA220で、長さ30mm、幅5mm、厚さ50~300μmの試験片を、引張モード、つかみ幅20mm、測定温度―50℃から140℃、昇温速度2℃/min、周波数10Hzの条件で測定した。
測定に用いる試験片は、220℃、3.0MPaの条件で、共重合体をプレスして成形し、厚さ50~300μmのフィルムを作製した。得られた厚さ50~300μmのフィルムを、長さ30mm、幅5mmにカットすることで作製した。
(熱膨張率)
熱膨張率は、-30℃での測定時のつかみ幅距離と110℃での測定時のつかみ幅距離とから求めることができ、以下の式により算出した。
熱膨張率(%)=[(110℃でのつかみ幅距離)-(-30℃でのつかみ幅距離)]/(-30℃でのつかみ幅距離)×100
測定条件及び測定に用いる試験片は、上記記載の弾性率を求める測定方法と同様の方法で測定した。
(成形性簡易評価)
弾性率及び熱膨張率測定に用いた際の試験片を下記評価基準で目視にて評価した。
〇・・・問題なく外観の良好なシートが作成できた。
△・・・シートは作成できたが、外観が劣っていた。
×・・・シートは作成できたが、一部割れていた。
ポリマー合成例1
内容積1.8Lのステンレス製オートクレーブ内を十分に真空窒素置換した。その後、オートクレーブ内を真空脱気し、真空状態となったオートクレーブ内に、1000gのHFE-347pc-f、197gの1,2-ジフルオロエチレン、128gのフッ化ビニリデン(VdF)を導入した後、オートクレーブを25℃に加温した。次に、8%のジ(ω-ハイドロドデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイド(以下「DHP」と略す)パーフルオロヘキサン溶液を10.5g、オートクレーブ内に投入して重合を開始した。開始時の圧力は1.04MPaGであった。重合圧力を保持するため、1,2-ジフルオロエチレン/VdF=86.0/14.0(mоl%)の混合ガスを流し、オートクレーブ内の温度を25℃に6.3時間維持した後、放圧して大気圧に戻し、反応生成物を水洗、乾燥してフッ素樹脂の粉末を86g得た。得られた樹脂は1,2-ジフルオロエチレンとVdFをモル%比で86.1/13.9の割合で含んでいた。融点は197.9℃であった。
ポリマー合成例2
内容積1.8Lのステンレス製オートクレーブ内を十分に真空窒素置換した。その後、オートクレーブ内を真空脱気し、真空状態となったオートクレーブ内に、1000gのHFE-347pc-f、102gの1,2-ジフルオロエチレン、218gのVdFを導入した後、オートクレーブを25℃に加温した。次に、8%のDHPパーフルオロヘキサン溶液を7.0g、オートクレーブ内に投入して重合を開始した。開始時の圧力は1.30MPaGであった。重合圧力を保持するため、1,2-ジフルオロエチレン/VdF=66.0/34.0(mоl%)の混合ガスを流し、オートクレーブ内の温度を25℃に4.3時間維持した後、放圧して大気圧に戻し、反応生成物を水洗、乾燥してフッ素樹脂の粉末を61g得た。得られた樹脂は1,2-ジフルオロエチレンとVdFをモル%比で65.9/34.1の割合で含んでいた。融点は188.1℃であった。
ポリマー合成例3
内容積1.8Lのステンレス製オートクレーブ内を十分に真空窒素置換した。その後、オートクレーブ内を真空脱気し、真空状態となったオートクレーブ内に、1000gのHFE-347pc-f、70gの1,2-ジフルオロエチレン、250gのVdFを導入した後、オートクレーブを25℃に加温した。次に、8%のDHPパーフルオロヘキサン溶液を7.0g、オートクレーブ内に投入して重合を開始した。開始時の圧力は1.40MPaGであった。重合圧力を保持するため、1,2-ジフルオロエチレン/VdF=54.0/46.0(mоl%)の混合ガスを流し、オートクレーブ内の温度を25℃に6.2時間維持した後、放圧して大気圧に戻し、反応生成物を水洗、乾燥してフッ素樹脂の粉末を91g得た。得られた樹脂は1,2-ジフルオロエチレンとVdFをモル%比で53.3/46.7の割合で含んでいた。融点は180.0℃であった。
ポリマー合成例4
内容積1.8Lのステンレス製オートクレーブ内を十分に真空窒素置換した。その後、オートクレーブ内を真空脱気し、真空状態となったオートクレーブ内に、1000gのHFE-347pc-f、31gの1,2-ジフルオロエチレン、270gのVdFを導入した後、オートクレーブを25℃に加温した。次に、8%のDHPパーフルオロヘキサン溶液を7.0g、オートクレーブ内に投入して重合を開始した。開始時の圧力は1.40MPaGであった。重合圧力を保持するため、1,2-ジフルオロエチレン/VdF=32.0/68.0(mоl%)の混合ガスを流し、オートクレーブ内の温度を25℃に5.8時間維持した後、放圧して大気圧に戻し、反応生成物を水洗、乾燥してフッ素樹脂の粉末を111g得た。得られた樹脂は1,2-ジフルオロエチレンとVdFをモル%比で31.7/68.3の割合で含んでいた。融点は165.4℃であった。
ポリマー合成例5
内容積1.8Lのステンレス製オートクレーブに脱イオン水555gを投入し、オートクレーブ内を十分に真空窒素置換した。その後、オートクレーブ内を真空脱気し、真空状態となったオートクレーブ内にオクタフルオロシクロブタン380gを投入し、オートクレーブを35℃に加温した。オートクレーブ内が35℃に達した後、1,2-ジフルオロエチレン/VdFが9/91(mol%)の混合ガスをオートクレーブ内の圧力が1.80MPaGになるように投入した。その後に、ジノルマルプロピルパーオキシカーボネートを50質量%含むメタノール溶液を3.5g、オートクレーブ内に投入して重合を開始した。重合圧力を保持するため、1,2-ジフルオロエチレン/VdF=32.0/68.0(mоl%)の混合ガスを流し、オートクレーブ内の温度を35℃に8時間維持した後、放圧して大気圧に戻し、反応生成物を水洗、乾燥してフッ素樹脂の粉末を9.0g得た。得られた樹脂は1,2-ジフルオロエチレンとVdFをモル%比で31.3/68.7の割合で含んでいた。融点は162.3℃であった。
ポリマー合成例6
内容積4.1Lのガラスライニングされたステンレス製オートクレーブ内を十分に真空窒素置換した。その後、オートクレーブ内を真空脱気し、真空状態となったオートクレーブ内に、2300gのHFE-347pc-f、52gの1,2-ジフルオロエチレン、453gのVdFを導入した後、オートクレーブを25℃に加温した。次に、8%のDHPパーフルオロヘキサン溶液を12.0g、オートクレーブ内に投入して重合を開始した。開始時の圧力は1.12MPaGであった。重合圧力を保持するため、1,2-ジフルオロエチレン/VdF=30.0/70.0(mоl%)の混合ガスを流し、オートクレーブ内の温度を25℃に4時間維持した後、放圧して大気圧に戻し、反応生成物を水洗、乾燥してフッ素樹脂の粉末を109g得た。得られた樹脂は1,2-ジフルオロエチレンとVdFをモル%比で29.9/70.1の割合で含んでいた。融点は164.8℃であった。
ポリマー合成例7
100mLのステンレス(SUS)製オートクレーブに、40gのHFE-347pc-f、0.86gの8%のDHPパーフルオロヘキサン溶液を仕込み、これをドライアイス温度に冷却し、窒素置換した後、12.5gのVdF、1.1gの1,2-ジフルオロエチレンを仕込み、振とう機を用いて25℃で2時間35分振とうした。生成物を乾燥することで2.2gのフッ素樹脂の粉末を得た。得られた樹脂は1,2-ジフルオロエチレンとVdFをモル%比で29.2/70.8の割合で含んでいた。融点は163.6℃であった。
ポリマー合成例8
内容積4.1Lのガラスライニングされたステンレス製オートクレーブ内を十分に真空窒素置換した。その後、オートクレーブ内を真空脱気し、真空状態となったオートクレーブ内に、2300gのHFE-347pc-f、41gの1,2-ジフルオロエチレン、436gのVdFを導入した後、オートクレーブを25℃に加温した。次に、8%のDHPパーフルオロヘキサン溶液を14.0g、オートクレーブ内に投入して重合を開始した。開始時の圧力は1.11MPaGであった。重合圧力を保持するため、1,2-ジフルオロエチレン/VdF=25.0/75.0(mоl%)の混合ガスを流し、オートクレーブ内の温度を25℃に3.3時間維持した後、放圧して大気圧に戻し、反応生成物を水洗、乾燥してフッ素樹脂の粉末を104g得た。得られた樹脂は1,2-ジフルオロエチレンとVdFをモル%比で24.2/75.8の割合で含んでいた。融点は161.7℃であった。
ポリマー合成例9
内容積4.1Lのガラスライニングされたステンレス製オートクレーブ内を十分に真空窒素置換した。その後、オートクレーブ内を真空脱気し、真空状態となったオートクレーブ内に、2300gのHFE-347pc-f、20gの1,2-ジフルオロエチレン、218gのVdFを導入した後、オートクレーブを25℃に加温した。次に、8%のDHPパーフルオロヘキサン溶液を17.5g、オートクレーブ内に投入して重合を開始した。開始時の圧力は0.5MPaGであった。重合圧力を保持するため、1,2-ジフルオロエチレン/VdF=24.0/76.0(mоl%)の混合ガスを流し、オートクレーブ内の温度を25℃に5.9時間維持した後、放圧して大気圧に戻し、反応生成物を水洗、乾燥してフッ素樹脂の粉末を92g得た。得られた樹脂は1,2-ジフルオロエチレンとVdFをモル%比で23.8/76.2の割合で含んでいた。融点は160.3℃であった。
ポリマー合成例10
内容積4.1Lのガラスライニングされたステンレス製オートクレーブ内を十分に真空窒素置換した。その後、オートクレーブ内を真空脱気し、真空状態となったオートクレーブ内に、2300gのHFE-347pc-f、36gの1,2-ジフルオロエチレン、480gのVdFを導入した後、オートクレーブを25℃に加温した。次に、8%のDHPパーフルオロヘキサン溶液を12.0g、オートクレーブ内に投入して重合を開始した。開始時の圧力は1.17MPaGであった。重合圧力を保持するため、1,2-ジフルオロエチレン/VdF=20.0/80.0(mоl%)の混合ガスを流し、オートクレーブ内の温度を25℃に4時間維持した後、放圧して大気圧に戻し、反応生成物を水洗、乾燥してフッ素樹脂の粉末を116g得た。得られた樹脂は1,2-ジフルオロエチレンとVdFをモル%比で20.8/79.2の割合で含んでいた。融点は157.4℃であった。
ポリマー合成例11
内容積4.1Lのガラスライニングされたステンレス製オートクレーブ内を十分に真空窒素置換した。その後、オートクレーブ内を真空脱気し、真空状態となったオートクレーブ内に、2300gのHFE-347pc-f、27gの1,2-ジフルオロエチレン、423gのVdFを導入した後、オートクレーブを25℃に加温した。次に、8%のDHPパーフルオロヘキサン溶液を14.0g、オートクレーブ内に投入して重合を開始した。開始時の圧力は1.06MPaGであった。重合圧力を保持するため、1,2-ジフルオロエチレン/VdF=16.0/84.0(mоl%)の混合ガスを流し、オートクレーブ内の温度を25℃に3.4時間維持した後、放圧して大気圧に戻し、反応生成物を水洗、乾燥してフッ素樹脂の粉末を125g得た。得られた樹脂は1,2-ジフルオロエチレンとVdFをモル%比で16.5/83.5の割合で含んでいた。融点は162.4℃であった。
ポリマー合成例12
内容積4.1Lのガラスライニングされたステンレス製オートクレーブ内を十分に真空窒素置換した。その後、オートクレーブ内を真空脱気し、真空状態となったオートクレーブ内に、2300gのHFE-347pc-f、37gの1,2-ジフルオロエチレン、580gのVdFを導入した後、オートクレーブを25℃に加温した。次に、8%のDHPパーフルオロヘキサン溶液を9.5g、オートクレーブ内に投入して重合を開始した。開始時の圧力は1.34MPaGであった。重合圧力を保持するため、1,2-ジフルオロエチレン/VdF=15.0/85.0(mоl%)の混合ガスを流し、オートクレーブ内の温度を25℃に3.8時間維持した後、放圧して大気圧に戻し、反応生成物を水洗、乾燥してフッ素樹脂の粉末を121g得た。得られた樹脂は1,2-ジフルオロエチレンとVdFをモル%比で15.2/84.8の割合で含んでいた。融点は164.1℃であった。
比較例1
内容積1.8Lのステンレス製オートクレーブに、脱イオン水1330g、メチルセルロース0.67gを導入した後、オートクレーブ内を十分に真空窒素置換した。その後、オートクレーブ内を真空脱気し、真空状態となったオートクレーブ内に、1,2-ジフルオロエチレン250g、メタノール1ml及びジノルマルプロピルパーオキシカーボネートを50質量%含むメタノール溶液2gをオートクレーブ内に投入し、1.5時間かけて45℃まで昇温した後、45℃で3時間維持した後、ジノルマルプロピルパーオキシカーボネートを50質量%含むメタノール溶液を更に4g導入した。その後、45℃を4時間維持した。この間の最高到達圧力は2,7MPaGであった。その後、放圧して大気圧に戻し、反応生成物を水洗し、乾燥してフッ素樹脂の粉末を198g得た。融点は196.3℃であった。
上記合成により得られた各ポリマーの物性を、表1、2に併せて示す。なお、比較例2は、PVDF(クレハ製のKF#1100)の物性を示す。
Figure 2023098671000005
Figure 2023098671000006
後記の実施例においては、次の電極を使用した。
<使用電極>
(1)20mm幅(10mm厚、500mm長)の真鍮棒の中心線上に10mm間隔で電極用針(針状電極)(R=0.06mm)を1列に並べた針状電極棒
(2)(1)と同様に、15mm間隔で電極用針(R=0.06mm)を1列に並べた針状電極棒
(3)直径0.1mmの金鍍金したタングステン製の線状電極(500mm長)
後記の強誘電材料においては、次の方法で、膜厚、圧電定数d33、残留分極量、比誘電率、及び耐熱圧電定数d33を測定した。
<膜厚>
フィルムの平面方向の全体に渡って1cm四方毎に10箇所において膜厚を光電式デジタル測長システム(デジマイクロMH-15M、Nikon社製)を用いて測定し、平均値からフィルムの膜厚を算出した。
<圧電性d33
PIEZOTEST社のピエゾメーターシステムPM300を用いて測定した。当該測定では、1Nでサンプルをクリップし、0.25N、110Hzの力を加えた際の発生電荷を読み取った。
<残留分極量>
20mm×20mmに切り出した試料フィルムの中央部5mm×5mmにアルミニウム電極(平面電極)を真空加工蒸着によりパターニングした。この平面電極に、絶縁テープを貼り付けて補強したアルミニウム箔製の2本のリード(3mm×80mm)の電極を、導電性両面テープで平面電極に接着した。この試料フィルム、ファンクションジェネレーター、高圧アンプ、およびオシロスコープをソーヤータワー回路に組み込み、三角波を試料フィルムに印加(最大±10kV)した。試料フィルムの応答を、オシロスコープを用いて測定することにより、印加電界80MV/mにおける残留分極量を求めた。
<比誘電率>
試料フィルムの両面にアルミニウム電極(平面電極)を真空加工蒸着により形成した後、25mmΦに切り出した。比誘電率(ε)(25℃、1kHz)はLCRメーターを用いてこの試料フィルムの容量(C)を測定し、容量、電極面積(S)、フィルムの厚さ(d)から、式C=εε×S/d(ε:真空の誘電率)で算出した。
<耐熱圧電d33>
試料フィルムを110℃に昇温した乾燥炉に投入し10分間加熱した後、冷却するため室温で30分以上放置した。それ以外は圧電性d33と同様の測定であり、PIEZOTEST社のピエゾメーターシステムPM300を用いて測定した。当該測定では、1Nでサンプルをクリップし、0.25N、110Hzの力を加えた際の発生電荷を読み取った。
[実施例1~11]
上記合成例2~12で得た、1,2-ジフルオロエチレン/フッ化ビニリデン(VDF)共重合ポリマーを、メチルエチルケトン(MEK)に溶解させ固形分15wt%の塗料を調製した。その後、バーコーターを用いてPETフィルム上に前記塗料を流延(キャスティング)し、及び80℃で10分加熱乾燥を行って共重合体フィルムを形成し、表3に示す融点以上の第2の温度で、0.5時間処理した。
PETフィルムから共重合体フィルムを剥がしたところ、表2に示す膜厚であった。当該共重合体フィルムについて下記の分極処理を実施した。
分極処理
ISOクラス7のクリーンルーム(湿度20~30%)の中で、アースされたステージ1(長さ320mm、幅220mm)であるSUS製のグランド電極を25℃に保ち、このグランド電極上に50mm×50mmに切り出した非分極共重合体フィルム2を設置した。その上に340×240mmのPETフィルム3を、その中央部分が非分極共重合体フィルム2の中央部分を覆うように設置した。上部電極として、共重合体フィルムから10mm上空に離れた位置に10mm間隔で配置された針状電極(第1電極E1)と、1本のタングステンワイヤー(r=0.1mm)からなるワイヤ電極(第2電極E2)をグランド電極の上面に平行になるように渡し、この針状電極、ワイヤ電極に加える直流電圧を0kVから印加電圧である11kV、15kV(トレック社製610Dの高圧電源)にそれぞれ設定した。
ステージ1に配置した非分極共重合体フィルム2を、ステージ1の移動速度3000mm/minで、針状電極E1及びワイヤ電極E2を通過させ分極処理を実施した。得られた分極共重合体フィルムを80℃に保持した乾燥炉に静置し熱処理を行い、強誘電材料を得た。
得られた強誘電材料の評価結果を、以下の表3、4に示す。
[比較例1]
上記比較例1で得た、1,2-ジフルオロエチレン/フッ化ビニリデン(VDF)ポリマーを使用した他は、実施例1と同様の手順で実施した。
[比較例2]
PVDFはクレハ製のKF#1100ポリマーを使用した。PVDFをジメチルアセトアミドに溶解させ、固形分15wt%の塗料を調製した。メチルエチルケトン(MEK)には溶解しなかった。その他作成手順については実施例1と同様の手順で実施した。
Figure 2023098671000007
Figure 2023098671000008
表3の結果から、合成例2~12のポリマーを用いた圧電フィルムは、圧電フィルムに好適な物性を有するものであることが明らかである。なお、合成例5のポリマーは、成形したシートに割れが生じていたが、圧電フィルムに求められる物性は満たしており、本開示の目的とする用途に使用することは可能なものである。よって、成形したシートに高い物理的強度が求められないような用途においては、使用することができると推測される。さらに、その他の手法で強度を高めることによって、圧電フィルムとして使用することができる。
本開示の強誘電材料は、圧電性を利用する各種用途において好適に使用することができる。
本開示は、1,2-ジフルオロエチレンに由来する構単位(A)及びフッ化ビニリデン(VDF)に由来する構成単位(B)を含むポリマーであって、
前記1,2-ジフルオロエチレンに由来する繰り返し単位/フッ化ビニリデンに由来する繰り返し単位のモル比が、90/10~10/90であり、前記1,2-ジフルオロエチレンに由来する構成単位(A)を10~90モル%、1,2-ジフルオロエチレン、フッ化ビニリデン以外のその他のモノマーを0~5モル%含み、重量平均分子量が5万以上200万以下であるポリマーである。
上記ポリマーは、1,2-ジフルオロエチレンに由来する構成単位(A)を10~70モル%含むことが好ましい
記ポリマーは、重量平均分子量が30万以上200万以下であることが好ましい。
上記ポリマーは、融点が140℃以上であることが好ましい。

Claims (11)

  1. 1,2-ジフルオロエチレンに由来する構造単位(A)及びフッ化ビニリデン(VDF)に由来する構成単位(B)を含むポリマー。
  2. 1,2-ジフルオロエチレンに由来する構成単位(A)を10~70モル%含む請求項1に記載のポリマー。
  3. 重量平均分子量が5万以上200万以下である請求項1又は2に記載のポリマー。
  4. 重量平均分子量が30万以上200万以下である請求項1又は2に記載のポリマー。
  5. 融点が140℃以上である、請求項1又は2に記載のポリマー。
  6. 請求項1又は2に記載のポリマーを汎用溶媒に溶解させたものであることを特徴とする樹脂溶液。
  7. 汎用溶媒が、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、アミド系溶媒からなる群から選択される単体、又は2種以上を組み合わせたものであることを特徴とする請求項6記載の樹脂溶液。
  8. 請求項1又は2に記載のポリマーから形成された強誘電材料。
  9. センサ、アクチュエータ、タッチパネル、ハプティックデバイス、振動発電装置、スピーカー、及びマイクからなる群より選択される1種以上に使用するための、請求項8に記載の強誘電材料。
  10. フィルム、被覆物又は積層物である、請求項8に記載の強誘電材料。
  11. 積層体であり、請求項8に記載の強誘電材料からなる圧電膜、及び前記圧電膜の少なくとも一方の面上に設けられた電極を備える圧電体。

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