JP2023088977A - 樹状細胞療法においてex vivoでの抗原のプロセシングと提示を亢進させるための合成ベクターとしての脂質 - Google Patents

樹状細胞療法においてex vivoでの抗原のプロセシングと提示を亢進させるための合成ベクターとしての脂質 Download PDF

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Abstract

【課題】癌を治療するための組成物を提供する。【解決手段】養子移入されたT細胞のin vivoでの増殖を引き起こすことによって癌を治療するための組成物であって、カチオン性脂質、および養子移入されるT細胞を含む、組成物である。前記カチオン性脂質はR-DOTAPを含むことが好ましく、前記T細胞はCD4+T細胞またはCD8+T細胞であることが好ましい。【選択図】なし

Description

関連出願へのクロスリファレンス
本国際出願は、2015年11月13日に出願された米国特許仮出願第62/254,794号および2016年10月5日に出願された米国特許仮出願第62/404,504号の優先権の利益を主張するものであり、その内容全体を本明細書に援用する。
本発明は、癌における樹状細胞療法に関する。10年以上にわたって、ex vivoで自家培養された造血前駆細胞または単球由来樹状細胞(DC)の養子移入が癌ワクチンとして試験されている。これらの研究は、樹状細胞ワクチンが安全であり、腫瘍抗原に特異的で体内を循環するCD4T細胞およびCD8T細胞の増殖を誘導できることを示唆している。客観的な臨床応答が観察された患者もいた。臨床応答が成立するには時間を要するものの、非常に長期間にわたって寛解が続く可能性があることが確立されている。前臨床抗腫瘍研究では、動物から単離し、ex vivoで腫瘍抗原を負荷した上で細胞療法として投与されたDCが、予防効果と治療効果の両方を誘導することが示されている。
DCの抗原提示特性の研究によって、近年、効果的な癌免疫療法の開発において有望であることが示され、近時における複数の臨床試験で有望な結果が得られている。転移性前立腺癌をsipuleucel-Tで治療したところ、第III相治験で生存期間の中央値が約4ヶ月間長くなった。sipuleucel-T(Provenge(登録商標))は、患者から採取し、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)とGM-CSFの融合タンパク質を用いて培養した、濃縮血液から得られた樹状細胞をベースにした細胞の製品である。樹状細胞は、それから静脈への注入(静注)によって患者に戻す。このプロセスをさらに2回、2週間おきに繰り返し、患者に3用量の細胞が投与されるようにする。sipuleucel-Tは、転移性前立腺癌の治療用で米国食品医薬品局(FDA)の認可を受けたことで、次世代の細胞免疫療法製品の臨床開発および規制への道を切り開いた。腫瘍抗原ペプチドを負荷した活性化DCのワクチンを受けた転移性黒色腫患者に、抗原特異的CD4T細胞応答およびCD8T細胞応答を示した患者がいた。このように有望視されていたにもかかわらず、臨床応答は思ったほどではなく、昔からの客観的な抗腫瘍応答率もかろうじて15%を超えるくらいであった。
樹状細胞療法は、癌をはじめとする様々な衰弱性疾患を治療するための有望な手法である。この手法によって、患者に合わせてカスタマイズされ、パーソナライズされた治療法の開発が可能になる。たとえば、特定の癌に対する特異的なタンパク質抗原を使用するのではなく、治療のために患者の腫瘍から抗原を得て患者自身の樹状細胞に負荷することができる。ex vivoで樹状細胞療法を用いる手法は、治療後2年目の患者において持続的な免疫応答を示した承認済製品で、有意な前途を示すことがわかっている。しかしながら、治療結果は最良には至らず、これらの治療法を改善するための手法がいくつか研究されている。
重要な問題のひとつに、DCを負荷するための腫瘍抗原の選択がある。候補となる抗原には、特異的な(変異)抗原と、非特異的な非変異自己抗原が含まれる。広く適用可能な治療法を生み出すには、ネガティブセレクションによって高親和性のクローンの集団が除去されるとしても、非変異自己抗原が最も好ましい。変異抗原を使用すると、この欠点を回避することができるだろう。RNAシークエンシング技術が開発されたことは、全範囲の原発腫瘍由来の変異抗原および転移腫瘍由来の変異抗原を決定する一助となっており、これによって治療を特定の患者に合わせることができるようになっている。
ペプチドまたはタンパク質抗原、および腫瘍由来の自己抗原では、DCワクチンの適用を成功させる上で制約となる重要な要因は、利用できる抗原の量であることが非常に多い。克服すべき技術的な障壁のひとつは、樹状細胞に対してこれらの抗原を効果的に提示し、MHCクラスI(CD8+T細胞)およびMHCクラスII(CD4+T細胞)による一層効果的な提示を可能にすることである。これも依然として最良には至らない、得られるT細胞応答の効力と安定性に直接的に影響する。
DCは、抗原を交差提示することもできる。交差提示とは、外来性の可溶性タンパク質またはペプチドが抗原提示細胞に取り込まれる経路のことであり、タンパク質が分解されMHCクラスIIとともに提示される経路に入るのではなく、ペプチドまたはタンパク質がMHCクラスIのプロセシング経路に入る経路をいう。これは、細胞質内の経路またはエンドソーム内の経路の2つの方法で起こり得る。どちらの経路でも、タンパク質はまず、エンドソーム/ファゴソームに取り込まれる。細胞質内の経路では、部分的に分解されたエンドソームのタンパク質の一部が最終的に細胞質に入る。そのメカニズムはほとんど理解されていないが、エンドソームのタンパク質がプロテアソームでプロセシングされ、これによって生じるペプチドがTAPによって輸送されて、MHCクラスIと結合するための小胞体または他のエンドソームのいずれかに入る。あるいは、タンパク質がエンドソームで分解されて、ペプチドがエンドソームに存在するMHCクラスIに結合することもある。この後者の経路は、プロテアソーム非依存的で、エンドソームのプロテアーゼによる正しいペプチドの偶然の産生に依るため、非効率である。タンパク質分解活性が限られている初期エンドソームへのタンパク質の侵入は交差提示に有利であるのに対し、タンパク質分解活性のレベルが高い後期エンドソームは、交差提示を阻害する場合がある。
上記の考察から、エンドソーム経路、特に初期エンドソーム経路に入るタンパク質がMHCクラスI上で交差提示され得ることは明らかである。また、交差提示の程度は、初期エンドソームに取り込まれるタンパク質/ペプチドの量、およびその後に細胞質に運ばれる抗原断片の量に依存することになる。DCスカベンジャー受容体に結合する可溶性タンパク質は、交差提示することができる。古典的な例は、マンノース受容体に結合するオボアルブミンである。しかしながら、タンパク質/ペプチドにすでに導入されている標的受容体への手法は様々であって、全てがDCスカベンジャー受容体に結合するわけではない。これらの経路には、Fc受容体、CD205などの様々なC型レクチン受容体、CD207、CLEC9a、インテグリンまたは糖脂質を標的とすることが含まれる。これらの手法には、いくつかの欠点がある。抗原を特定の受容体結合タンパク質、通常はモノクローナル抗体に結合する必要があり、非常に面倒な手法になる。タンパク質の取り込み量は、起こり得る受容体の細胞内への取り込みの量に限定され、いったん取り込まれると、限定的ではあるが細胞質へ放出される。DC受容体の中には後期エンドソームを標的とするものがあり、そのため結果的に、交差提示が非効率的になってしまう。最後に、ヒトDCサブセット上での交差提示型DC受容体の分布は、ほとんど理解されておらず、このことは、そのような技術の設計を困難にしている上、マウスでの研究をヒトにうまく置き換えられない理由の説明となり得る。もう少し特異性の低い別の手法として、可溶性抗原をナノ粒子に付着させて微粒子の形に変換する手法がある。この手法は、十分な抗原を運ぶのが困難であること、DCが成熟しリンパ節に運ばれるにつれて貪食能力を失うという事実に悩まされている。
本出願によって、ペプチド系DCワクチン、および抗原が腫瘍に由来する自家DCワクチンの開発において、樹状細胞による抗原の取り込みが抗原量に大きく依存することを証明する。この樹状細胞による取り込みを促進し、重要な抗原の交差提示を促進するために、カチオン性脂質を安全に使用することができる。
したがって、本出願は、DNA/RNAによらない樹状細胞ワクチンの開発に焦点を当て、DCに対する毒性を限定的なものにしながら、DCによる抗原の取り込みとプロセシングを向上させるようなワクチンの開発を容易にする手段を示す。
免疫療法を成功させる上でのさらに別の重大な障害が、抗腫瘍細胞溶解性T細胞応答を妨げる様々な免疫抑制機構を進める主役である、腫瘍の抑制的微小環境である。この作用は、「免疫回避」または「免疫寛容化」と呼ばれてきた。末期の腫瘍に存在する阻害効果を避けるために、最小限の残存病変と高い再発リスクを有し、アジュバントを投与された患者で臨床試験が行われた[Sears AK, Perez SA, Clifton GT, et al., AE37: a novel T-cell-eliciting vaccine for breast cancer. Expert Opin Biol Ther. 2011; 11(11): 1543-1550]。
この臨床的な設定におけるワクチン接種を支える合理的な点は、腫瘍負荷が最小限の患者に、確実な抗腫瘍応答をすることができる十分な能力のある免疫系を依然として持たせることにある。さらに、初期の癌またはアジュバント投与におけるワクチン接種には、T細胞が不活性化され得る免疫抑制性腫瘍環境内でのT細胞の蓄積を最小限に抑えるという利点がある。
本発明のある例示的な態様を以下に示す。これらの態様は、本発明がとりうる形態の簡単な概要を読者に提供するためだけに提示され、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。実際、本発明は、以下に明示的に記載されていない多種多様な態様を包含することができる。
本明細書に記載の一実施形態では、ex vivoでの樹状細胞活性化のための組成物が提供される。この組成物は、少なくとも1つのカチオン性脂質と少なくとも1つの抗原とを有する1つ以上の脂質を含む。この組成物は、他の脂質ならびに、樹状細胞の生存率および増殖を亢進させるための成長因子を含んでもよい。
ex vivoでのDC活性化のための組成物は、少なくとも1つのカチオン性脂質と少なくとも1つの抗原とを有する1つ以上の脂質を含み、抗原は、腫瘍または癌において見られるタンパク質またはポリペプチドである。あるカチオン性脂質は、受容体に依存しない形で樹状細胞に速やかに結合する能力において独特であり、速やかに初期エンドソームに取り込まれる。重要なことに、一旦初期エンドソームに入ると、カチオン性脂質は、クラスIのプロセシング経路に入るためのエンドソームの不安定化と内容物の細胞質への放出を助長する。これによって、標的となる受容体の取り込みで生じるであろうよりもかなり多くのエンドソーム内容物を細胞質に放出できるようになる。また、適切なカチオン性脂質は、T細胞を活性化および増殖させ、T細胞のリンパ節への移動を引き起こす、あるサイトカインおよびケモカインの産生を誘導する免疫学的危険信号(Danger Signal)を提供することもできる。また、適切なカチオン性脂質は、好ましくは腫瘍抗原との併用時に、腫瘍微小環境内のTreg細胞の集団を減少させることができる。
別の実施形態では、対象が哺乳動物である、ex vivoで対象の樹状細胞を処理する方法が提供される。この方法は、有効量の少なくとも1つのカチオン性脂質と少なくとも1つの抗原とを含む1つ以上の脂質で樹状細胞を処理する工程を含む。また、この組成物は、in vitroでの細胞の維持と増殖を助長するためのGM-CSFおよびサイトカインなどの成長因子も含む。少なくとも1つの抗原は癌抗原である。
癌DCワクチンの製造方法が提供される。この方法は、有効量の少なくとも1つのカチオン性脂質と少なくとも1つの抗原とを含む1つ以上の脂質で樹状細胞を処理する工程を含む。また、この組成物は、in vitroでの細胞の維持と増殖を助長するためのGM-CSFおよびサイトカインなどの成長因子も含む。
腫瘍微小環境内のTreg集団の大幅な減少を誘導しながら、高レベルの腫瘍浸潤T細胞を誘導することができる癌DCワクチンの製造方法が提供される。この方法は、有効量の少なくとも1つのカチオン性脂質と少なくとも1つの抗原とを含む1つ以上の脂質で樹状細胞を活性化する工程を含む。また、この方法は、in vitroでの細胞の維持と増殖を助長するためのGM-CSFおよびサイトカインなどの成長因子でDCをさらに活性化することを含む。カチオン性脂質を腫瘍抗原と組み合わせてin vitroでのDCの活性化に使用し、その後、癌を有する対象にDCを注入すると、DCは、腫瘍微少環境内の腫瘍特異的CD8+Tの量を増加させることにより、腫瘍微小環境を変化させるとともに、Treg集団を大幅に減少させることができる。その結果、CD8+T細胞に対するTregの比が大幅に小さくなる。
有効量の少なくとも1つのカチオン性脂質と少なくとも1つの抗原とを含む1つ以上の脂質で前処理されたDCを患者に投与する工程を含み、抗原が癌抗原である、DCワクチンで対象を免疫する方法が提供される。この方法は、対象を2回以上免疫することを含む。この方法は、免疫後の対象における癌特異的CD8+T細胞のレベルおよびTreg細胞のレベルを確認することを含む。
さらに別の実施形態では、哺乳動物において予防用または治療用の免疫応答を高める方法が提供される。この方法は、場合によってはGM-CSFおよびサイトカインなどの成長因子とともに有効量の少なくとも1つのカチオン性脂質と抗原とを含む1つ以上の脂質で樹状細胞を活性化する工程と、活性化した樹状細胞を哺乳動物に投与する工程とを含む。様々な実施形態において、哺乳動物はヒトである。
本発明の一実施形態は、ex vivoで樹状細胞と組み合わせて投与される場合、腫瘍由来抗原ならびにタンパク質抗原およびペプチド抗原の取り込みおよび提示を促進するためのカチオン性脂質の使用に関する。この実施の、樹状細胞に対する毒性は限定的であって、樹状細胞の生存率と成長を維持し、その増殖を促進することが意図されている増殖因子およびサイトカインの存在下で使用することができる。
カチオン性リポソームは、遺伝子治療で使用するためのRNAおよびDNAのトランスフェクションおよび送達ならびに、DNA系樹状細胞ワクチンにおいて、in vivoで広く使用されている。最近、カチオン性脂質は、MAPキナーゼの活性化を通じて強い免疫応答を刺激することができる強力なアジュバントであることも報告されている。
カチオン性脂質は、受容体に依存しない形で樹状細胞に速やかに結合する能力において独特であり、速やかに初期エンドソームに取り込まれる。重要なことに、一旦初期エンドソームに入ると、カチオン性脂質は、クラスIのプロセシング経路に入るためのエンドソームの不安定化と内容物の細胞質への放出を助長するようである。これにより、エンドソーム含有量のより多くが、標的受容体取り込みで生じるよりも、細胞質に放出されることが可能になる。これによって、標的になる受容体の取り込みで生じるであろうよりもかなり多くのエンドソーム内容物を細胞質に放出できるようになる。
本発明の一実施形態では、本開示は、カチオン性脂質が、樹状細胞の成熟を誘導するのにアジュバントを使用するといった現行の手法よりも数桁多くのタンパク質がMHCクラスIおよびMHCクラスII経路に入るのを助長することができることを示す。
一実施形態では、本発明は、ex vivoで腫瘍に対するDCワクチンを調製するために必要な、カチオン性脂質と特定の腫瘍抗原とを含む組成物を提供する。
一実施形態では、腫瘍に対するDCワクチンを調製するために必要な組成物は、非核酸抗原、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、リポタンパク質またはリポペプチドを含む。
一実施形態では、抗原は腫瘍抗原または変異腫瘍抗原である。抗原は、患者の遺伝子のタンパク質産物であり、遺伝子は、癌遺伝子、腫瘍抑制遺伝子、変異を有する遺伝子、腫瘍細胞に特有の再構成を有する遺伝子、再活性化胚遺伝子産物、癌胎児性抗原、組織特異的分化遺伝子、成長因子受容体、および細胞表面タンパク質遺伝子からなる群から選択される。
一実施形態では、抗原は、微生物抗原、ウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原または微生物抗原の天然単離物、断片およびその誘導体である。
一実施形態では、抗原はウイルス抗原である。
一実施形態では、DCワクチンを製造するための、DCを刺激または活性化する組成物は、複数のペプチド抗原を含む。
一実施形態では、DCワクチンを製造するための、DCを刺激または活性化する組成物は、自己会合複合体であるペプチド抗原を含む。
一実施形態では、カチオン性脂質と抗原とは、化学結合によって構造的に結合していない。
一実施形態では、カチオン性脂質と抗原とは、化学結合によって結合している。
一実施形態では、カチオン性脂質と抗原とはリンカーによって結合している。
一実施形態では、カチオン性脂質は抗原をカプセル封入する。
一実施形態では、カチオン性脂質はリポソームを形成する。
一実施形態では、カチオン性脂質および抗原はエマルジョンを形成する。
一実施形態では、カチオン性脂質はタンパク質またはペプチド抗原の取り込みを促進する。
一実施形態では、DCワクチンの開発過程においてDCを取り込んで刺激するための、組成物のペプチドまたはタンパク質抗原をさらに修飾して、抗原の疎水性を低下させる。
抗原の疎水性は、たとえば、カチオン性脂質の疎水性アシル鎖における抗原の溶解性を改善するために、脂質鎖または疎水性アミノ酸に結合させることによって、分子の抗原特性を維持しながら高めることができる。
修飾された抗原は、アミノ酸配列の疎水性が高められた、修飾されたリポタンパク質、リポペプチド、タンパク質またはペプチド、それらの組み合わせであってもよい。
修飾された抗原は、脂質と抗原との間にリンカーを結合させることができ、たとえば、セリン-セリンのジペプチドリンカーを介してN末端αまたはε-パルミトイルリジンを抗原に結合することができる。
一実施形態では、カチオン性脂質は、R-DOTAP、S-DOTAP、DOEPC、DDA、およびDOTMAを含む。カチオン性脂質は無毒であり、抗原の内在化とDC成熟を促進することができる。より具体的には、カチオン性脂質は、樹状細胞による抗原の内在化のみならず、そのプロセシング、細胞質への侵入、その後のin vivoでのMHCクラスIおよびII経路による提示の亢進を促進することができる。これによって、抗原特異的免疫応答が改善される。
別の実施形態では、カチオン性脂質はDOTAPである。
さらに別の実施形態では、カチオン性脂質はDOTMAである。
別の実施形態では、カチオン性脂質はDOEPCである。
いくつかの実施形態では、カチオン性脂質は精製されている。
いくつかの実施形態では、カチオン性脂質はエナンチオマーである。
いくつかの実施形態では、エナンチオマーは精製されている。
いくつかの実施形態では、カチオン性脂質とタンパク質抗原とを含む組成物は、DC癌ワクチンの製造におけるDC取り込みのための粒子状組成物を形成する。
いくつかの実施形態では、カチオン性脂質とタンパク質抗原とを含む組成物は、DC癌ワクチンの製造におけるDC取り込みのためのナノ粒子組成物を形成する。
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、直径が約10,000nm未満である。
いくつかの実施形態では、本発明は、単離された樹状細胞を、有効量の少なくとも1つのカチオン性脂質と少なくとも1つの癌抗原とを含む1つ以上の脂質でex vivoにて処理することを含む、癌樹状細胞ワクチンを製造する方法を提供する。抗原。
よって、本開示は、単離された樹状細胞を得て、(a)有効量の少なくとも1つのカチオン性脂質と、(b)少なくとも1つの癌抗原と、(c)少なくとも成長因子または少なくともサイトカインまたはそれらの組み合わせと、を含む組成物で、単離された樹状細胞を活性化することによって、活性化された樹状細胞を作製し、適切な数の活性化された樹状細胞を患者に投与することを含み、適切な数の活性化された樹状細胞を投与することによって、癌患者を治療する、癌患者を治療するための方法を提供する。
また、本開示は、組成物中の少なくとも1つの抗原に特異的なCD8+T細胞のレベルを周期的に確認することを含む、上記の方法による癌患者の治療の成功を評価する方法であって、評価工程は、組成物中の少なくとも1つの抗原に特異的なCD8+T細胞のレベルを周期的に確認し、樹状細胞を患者に投与した後に患者におけるTreg細胞のレベルを確認することを含み、抗原特異的CD8+T細胞のレベルが高く、Treg細胞のレベルが低いことが、患者に対して癌を効果的に治療していることを示す、方法を提供する。
蛍光オボアルブミンを取り込んでいる細胞によって放射される幾何平均蛍光強度。2元ANOVAを用いて統計的有意性を評価したところ、*値は処理間で有意に異なっていた。 DCによって取り込まれ、プロセシングされたDQ-OVAの量を表す、ゲートされたCD11c陽性細胞の緑色蛍光の平均蛍光強度。 表記の濃度でのDOTAPの存在下におけるDCおよびTC1細胞によるDQ-OVAの取り込みを示す平均蛍光強度。 マウスDCによるDQ-OVAの取り込みおよびプロセシングを示す緑色対赤色蛍光のフローサイトメトリー分析。 DOTAPまたはMPLの存在下におけるマウスDCによるDQ-OVAの取り込みおよびプロセシングを示す緑色対赤色蛍光。 DQ-OVAの取り込みとプロセシングを示す、レーザー走査共焦点顕微鏡法およびフローサイトメトリー。 相対吸光度(570nm)の測定値(任意の単位)を示すベータガラクトシダーゼアッセイ。2元ANOVAを用いて統計的有意性を評価したところ、*値は処理間で有意に異なっていた。 DOTAPを含むまたは含まない場合で、OVA刺激BDMCの存在下でのOT1細胞によるH-チミジン取り込みの平均CPM。 DO11.10脾細胞およびOVAp323-339によるH-チミジン取り込みの平均CPM。 OVAのみまたはOVAとDOTAPを注射したマウスの流入領域リンパ節からのT細胞のCFSE希釈プロフィールのフローサイトメトリー分析。 OVAおよび3種類のカチオン性脂質で「パルス」したBMDCの存在下でのOT1 T細胞増殖。培養の最後の18時間におけるH-チミジン取り込みの平均CPM。 カチオン性脂質(RDOTAP、DOTMA)または中性脂質(DOPC)と混合したパルミトイル化-KSSSIINFEKLペプチドまたは等張性スクロース(280mM)でパルスしたBMDCでワクチン接種したマウスからのT細胞のIFN- ELISPOTアッセイ。 カチオン性脂質(RDOTAP、DOTMA)または中性脂質(DOPC)と混合した腫瘍関連ペプチド(a)、HPV関連抗原および(b)ムチン1または等張性スクロース(280mM)でパルスしたBMDCでワクチン接種したマウスからのT細胞のIFN- ELISPOTアッセイ。 A:ELISpotによる、HPV16特異的CD8+T細胞誘導に対する、HPV16-E7、R-DOTAP/HPV16-E7、S-DOTAP/HPV16-E7およびAlum/MPL/HPV16-E7ワクチン接種による作用。B.確立されたHPV16陽性TC-1腫瘍の退縮に対する、R-DOTAP、R-DOTAP/HPV16-E7、S-DOTAP/HPV16-E7ワクチン接種の作用。 フローサイトメトリーを用いて分析した、RF9特異的デキストラマーによる腫瘍浸潤HPV16特異的CD8+Tの定量。データは、各群4~5匹のマウスの平均+SEMを表す。 腫瘍のあるマウスを様々なワクチンで治療した後の腫瘍内の調節性T細胞の定量。データは、各群4~5匹のマウスの平均+SEMを表す。*他のすべての群(R-DOTAPのみを除く)と比較した、統計的に有意なR-DOTAP+抗原。P<0.01。 CD45+細胞中のHPV16 E7特異的CD8+T細胞に対するT調節性細胞(Treg)の比である。データは、各群4~5匹のマウスの平均+SEMを表す。 確立されたTC-1腫瘍の退縮に対するワクチン接種の作用。*他のすべての群と比較した、統計的に有意なR-DOTAP+抗原腫瘍退縮。P<0.01。 IFN-γELISPOTによる、CD8+T細胞誘導の定量。データは、各群4~5匹のマウスの平均+SEMを表す。*他のすべての群と比較した、統計的に有意なR-DOTAP+抗原。P<0.01。ダネットの多重比較試験。 R-DOTAPカチオン性脂質系ワクチン接種後の流入領域リンパ節におけるTリンパ球および全リンパ球の定量。 ワクチン接種に応答するMCP-1およびIP-10レベルの定量。図は、ワクチン接種後12時間、24時間および48時間目のMCP-1およびIP-10のレベルを示す。
カチオン性脂質は、特にin vitroで細胞に対する毒性が報告されていることから、遺伝子トランスフェクション剤として想定される医薬品にはほとんど使用されていない。一方、樹状細胞を含む細胞にDNAおよびRNAを複合化して送達するためのトランスフェクション剤としてカチオン性脂質を使用することには成功している。また、この手法は、DCワクチンにおいてRNA/DNA剤を抗原として用いる場合にこれらを送達するのに使用されている。そのような場合には、正電荷が中和され、毒性が最小限に抑えられる。
本明細書に記載の方法によって、タンパク質およびペプチド系樹状細胞療法を改善することが可能である。ex vivoで処理する場合、R-DOATP、S-DOTAP、DOEPC、DDA、DOTMAを含むクラスのカチオン性脂質は、毒性を限定的にする条件下で樹状細胞に投与することができ、樹状細胞による抗原の内在化のみならず、そのプロセシング、サイトゾルへの侵入、その後のin vivoでのMHCクラスIおよびII経路による提示を促進することができる。これによって、抗原特異的免疫応答が改善される。この効果は他の脂質に共通ではなく、むしろカチオン性脂質に特有のものであった。
また、この効果は、最近報告された免疫アジュバントとしてのカチオン性脂質の効果とは無関係である。なぜなら、強い(R-DOTAP、DOTMA)カチオン性脂質アジュバントと弱い(S-DOTAP、DDA)カチオン性脂質アジュバントの両方ならびに、in vivoで免疫アジュバントとしての作用がないことが示されている中性脂質で同様の効果がもたらされたためである。また、S-DOTAPとDDAのいずれも、過去に報告された研究ではin vivoで効果的な抗原特異的免疫応答を誘導しなかったが、現在ではex vivoで抗原プロセシングと抗原の提示を促進することが示されている。抗原の取り込み、プロセシングおよび提示を容易にすることにおけるこの効果は、in vitro/ex vivoの条件設定する際、樹状細胞とカチオン性脂質を近接させることによって容易になることもあるが、in vivoでは必ずしも起こらない。この重要な発見によって、一層効果的なex vivoでの樹状細胞療法の開発におけるカチオン性脂質の新たな用途につながっている。今日まで、カチオン性脂質のこの能力は知られていなかったため、ex vivoでの樹状細胞療法でカチオン性脂質を用いてタンパク質およびペプチドの取り込みと提示を促進することは報告されていない。
以下、本発明の様々な実施形態を記載する。本明細書に記載の一実施形態では、ex vivoの樹状細胞治療組成物が提供される。この組成物は、少なくとも1つのカチオン性脂質と少なくとも1つの抗原とを有する1つ以上の脂質を含む。この組成物は、他の脂質ならびに、樹状細胞の生存率および増殖を亢進させるための成長因子を含んでもよい。
対象が哺乳動物である場合には、ex vivoで対象の樹状細胞を治療する方法が提供される。この方法は、有効量の少なくとも1つのカチオン性脂質および抗原を、in vitroでの細胞の維持と成長を容易にするために場合によってはGM-CSFおよびサイトカインなどの成長因子と一緒に含む1つ以上の脂質で樹状細胞を処理する工程を含む。
哺乳類において予防用または治療用の免疫応答を増強する方法が提供される。この方法は、有効量の少なくとも1つのカチオン性脂質および抗原を、場合によってはGM-CSFおよびサイトカインなどの成長因子と一緒に含む1つ以上の脂質で樹状細胞を処理する工程と、成熟した樹状細胞を対象に投与する工程と、を含む。様々な実施形態において、組成物は、少なくとも1つのカチオン性脂質および少なくとも1つの抗原を有する1つ以上の脂質を含む。
この発見によって、極めて限られた量で抗原を提示できる自己の腫瘍由来の抗原をベースにした樹状細胞ワクチンの開発と、タンパク質では極めて低用量の抗原の投与を可能にするためのペプチド系の樹状細胞ワクチンにおいて、大きな利点を提供し得る。樹状細胞ワクチンの手法は重要な将来性を示しているが、しっかりしたT細胞応答が欠けていることから、実施可能な癌療法としてのその有効性と用途は限られてしまっている。本開示は、カチオン性脂質の使用を限定的な毒性で使用して、自己の腫瘍由来の抗原またはタンパク質およびペプチド系抗原を利用するこのような樹状細胞ワクチンの効力を増強し得ることを証明する。
以下、本発明の様々な実施形態を次のとおり記載する。本明細書に記載の一実施形態では、ex vivoでの樹状細胞治療組成物が提供される。この組成物は、少なくとも1つのカチオン性脂質と少なくとも1つの抗原とを有する1つ以上の脂質を含む。この組成物は、他の脂質ならびに、樹状細胞の生存率および増殖を向上させるための成長因子を含んでもよい。
本発明は、MHCクラスIおよびクラスIIの文脈にて、樹状細胞への抗原提示ならびにCD4+およびCD8+T細胞への提示を安全に促進するワクチン剤としてカチオン性脂質を使用できることを示す。カチオン性脂質は、高レベルの腫瘍に浸潤するT細胞の誘導を促進する一方、腫瘍微小環境内のTreg集団の有意な減少も誘導するのに有効である。これらの効果は、腫瘍細胞の非常に効果的な死滅につがるTreg対CD8+T細胞比を低減することによって、腫瘍微小環境を大幅に変化させる。Therapeutic Cancer Vaccines J Clin Invest.2015;125(9):3401-3412の最近のレビューにおいて、Meliefらは、次のように述べている。「最適には至らないワクチン設計と免疫抑制性の癌微小環境は、癌の撲滅に至らない根本的な原因である。薬剤や物理的な治療は、免疫抑制性の癌微小環境を和らげることができ、化学療法、放射線、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害剤、T細胞チェックポイントの阻害剤、選択されたTNF受容体ファミリーメンバーのアゴニスト、望ましくないサイトカインの阻害剤が含まれる。そのような免疫調節と組み合わせた治療用ワクチン接種の特異性は、将来の癌療法の開発に向けて魅力的な手段を提供する。
抗原
一実施形態では、カチオン性脂質は、患者自身の腫瘍由来の抗原などの自己抗原とともに投与される。別の実施形態では、カチオン性脂質は、合成ペプチド、組換えタンパク質またはDNAなどの非自己抗原と組み合わせて投与される。それぞれの場合において、目的は、抗原に特異的な免疫応答を惹起することであり、その抗原とともに樹状細胞がカチオン性脂質と一緒に処理される。ex vivoで処理された樹状細胞の注入時に生じるin vivoでの応答は、特定の細胞傷害性T細胞、メモリーT細胞またはB細胞の産生を含むことがあり、これらの抗原に関連する特定の疾患の予防または当該疾患に対する治療応答につながる。抗原は、どのような腫瘍関連抗原または微生物抗原であってもよく、当業者に知られた他のどのような抗原であってもよい。
本明細書で使用する場合、「腫瘍関連抗原」は、腫瘍または癌細胞に関連し、MHC分子の文脈において抗原提示細胞の表面で発現されると免疫応答(体液性および/または細胞性)を引き起こすことが可能な分子または化合物(たとえば、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、リポタンパク質、リポペプチド、糖タンパク質、糖ペプチド、脂質、糖脂質、炭水化物、RNAおよび/またはDNA)である。腫瘍関連抗原には、自己抗原ならびに、癌に特異的に関連しないかもしれないが、それにもかかわらず動物に投与した場合に腫瘍または癌細胞の免疫応答を増強および/または低下させる他の抗原が含まれる。より具体的な実施形態を本明細書で提供する。
本明細書で使用する場合、「微生物抗原」は、微生物の抗原であり、感染性ウイルス、感染性細菌、感染性寄生虫および感染性真菌を含むがこれらに限定されるものではない。
微生物抗原は、無傷の微生物、天然の単離物、断片またはそれらの誘導体、天然に存在する微生物抗原と同一または類似の合成化合物であり、好ましくは(天然に存在する微生物抗原が得られた起源である)対応する微生物に特異的な免疫応答を誘導する。好ましい実施形態では、化合物は、天然に存在する微生物の抗原と同様の免疫応答(体液性および/または細胞性)を誘導するのであれば、天然に存在する微生物の抗原と同等である。天然に存在する微生物の抗原と同等である化合物または抗原は、たとえば、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、リポタンパク質、リポペプチド、糖タンパク質、糖ペプチド、脂質、糖脂質、炭水化物、RNA、および/またはDNAなど、などの当業者に周知である。
天然に存在する微生物の抗原と類似である化合物の別の非限定的な例は、多糖抗原のペプチド模倣物である。
「抗原」という用語は、本明細書に記載されているものなどの既知の抗原または野生型抗原のペプチドまたはタンパク質類似体を包含することをさらに意図する。類似体は、野生型抗原よりも可溶性または安定性が高く、抗原を免疫学的に一層活性化する変異または修飾も含み得る。抗原は、脂質または糖部分の付加、ペプチドまたはタンパク質アミノ酸配列の変異、DNAまたはRNA配列の変異または当業者に知られた他の何らかの修飾など、どのような方法でも修飾することができる。抗原は、当業者に知られた標準的な方法を用いて修飾することができる。
同じく本発明の組成物および方法において有用なのが、所望の抗原のアミノ酸配列と相同なアミノ酸配列を有するペプチドまたはタンパク質であり、この場合、その相同性を有する抗原がそれぞれの腫瘍、微生物または感染細胞に対する免疫応答を誘導する。
一実施形態では、カチオン性脂質複合体の抗原は、腫瘍を予防または治療するためのワクチンを製造するための、腫瘍または癌に関連する抗原、すなわち腫瘍関連抗原を含む。
このように、一実施形態では、本発明の腫瘍ワクチンまたは癌ワクチンは、少なくとも1つの腫瘍関連抗原の少なくとも1つのエピトープをさらに含む。別の好ましい実施形態では、本発明の腫瘍ワクチンまたは癌ワクチンは、1つ以上の腫瘍関連抗原由来の複数のエピトープをさらに含む。本発明のカチオン性脂質複合体および方法において使用される腫瘍関連抗原は、本質的に免疫原性または非免疫原性、あるいはわずかに免疫原性であり得る。本明細書に証明されるように、腫瘍関連自己抗原ですら、治療効果を得るべく本ワクチンに有利に使用することができる。これは、本組成物がこのような抗原に対する免疫寛容を破壊することができるためである。例示的な抗原としては、合成抗原、組換え抗原、外来抗原または相同性を有する抗原があげられるが、これらに限定されるものではなく、抗原の材料としては、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、リポタンパク質、リポペプチド、脂質、糖脂質、炭水化物、RNA、DNAがあげられるが、これらに限定されるものではない。このような治療法の例として、乳癌、頭頸部癌、黒色腫、子宮頸癌、肺癌、前立腺癌、腸癌、あるいは免疫療法に感受性である従来技術において知られた他の癌の治療または予防があげられるが、これらに限定されるものではない。そのようなex vivoでの治療法では、カプセル封入せずに抗原をカチオン性脂質と組み合わせることも可能である。
本発明で使用するのに適した腫瘍関連抗原としては、単一の腫瘍型の指標となり得る、いくつかのタイプの腫瘍で共有される、および/または腫瘍細胞において排他的に発現されるか正常な細胞と比較して過剰に発現される、天然に存在する分子と修飾された分子の両方があげられる。タンパク質、糖タンパク質、リポタンパク質、ペプチド、リポペプチドに加えて、炭水化物、ガングリオシド、糖脂質、ムチンの発現の腫瘍特異的なパターンも示されている。癌ワクチンに使用される例示的な腫瘍関連抗原としては、腫瘍遺伝子、腫瘍抑制遺伝子、腫瘍細胞に特有の変異または再構成を有する他の遺伝子のタンパク質産物、再活性化胚遺伝子産物、癌胎児性抗原、組織特異的(ただし腫瘍特異的ではない)分化抗原、成長因子受容体、細胞表面の炭水化物残基、外来性ウイルスタンパク質、多数の他の自己タンパク質があげられる。
腫瘍関連抗原の特定の実施形態としては、たとえば、Ras p21癌原遺伝子、腫瘍抑制因子p53、HER-2/neuおよびBCR-abl癌遺伝子のタンパク質産物などの変異抗原または改変抗原、ならびにCDK4、MUM1、カスパーゼ8、ベータカテニン;ガレクチン4、ガレクチン9、炭酸脱水酵素、アルドラーゼA、PRAME、Her2/neu、ErbB-2およびKSAなどの過剰発現抗原;アルファフェトプロテイン(AFP)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)などの癌胎児性抗原;癌胚性抗原(CEA)などの自己抗原およびMart1 / MelanA、gp100、gp75、チロシナーゼ、TRP1およびTRP2などのメラノサイト分化抗原;PSA、PAP、PSMA、PSM-P1およびPSM-P2などの前立腺関連抗原;MAGE1、MAGE3、MAGE4、GAGE1、GAGE2、BAGE、RAGE、さらにはNY-ESO1、SSX2およびSCP1といった他の癌精巣抗原などの再活性化胚遺伝子産物; Muc-1およびMuc-2などのムチン;GM2、GD2、GD3などのガングリオシド、Lewis(y)およびglobo-Hなどの中性糖脂質および糖タンパク質;Tn、Thompson-Freidenreich抗原(TF)およびsTnなどの糖タンパク質があげられる。また、本明細書における腫瘍関連抗原としては、全細胞および腫瘍細胞溶解物ならびにその免疫原性部分、さらにはB細胞リンパ腫に対して用いられるBリンパ球のモノクローナル増殖で発現される免疫グロブリンイディオタイプがあげられる。
腫瘍関連抗原およびそのそれぞれの腫瘍細胞標的としては、たとえば、悪性癌に対する抗原として、サイトケラチン、特にサイトケラチン8、18、19があげられる。上皮膜抗原(EMA)、ヒト胚抗原(HEA-125)、ヒト乳脂肪球、MBr1、MBr8、Ber-EP4,17-1A、C26、T16も既知の癌腫抗原である。デスミンおよび筋肉特異的アクチンは、筋原性の肉腫の抗原である。胎盤アルカリ性ホスファターゼ、β-ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン、α-フェトプロテインは、栄養膜および胚細胞腫瘍の抗原である。前立腺特異的抗原は、前立腺癌の抗原、結腸腺癌の癌胎児性抗原である。HMB-45は、黒色腫の抗原である。子宮頸癌では、有用な抗原がヒトパピローマウイルスによってコードされている可能性がある。クロマグラニン-Aおよびシナプトフィジンは、神経内分泌腫瘍および神経外胚葉性腫瘍の抗原である。特に興味深いのは、壊死領域を有する固形腫瘍塊を形成する攻撃的な腫瘍である。そのような壊死細胞の溶解は、抗原提示細胞のための抗原の豊富な供給源であり、したがって、本治療法には、従来の化学療法および/または放射線療法と組み合わせて有利な用途を見いだすことができる。
腫瘍関連抗原は、従来技術において周知の方法で調製することができる。たとえば、これらの抗原は、(たとえばCohen et al.,Cancer Res.,54:1055(1994)に記載されているように)癌細胞の粗抽出物を調製する、抗原を部分的に精製する、組換え技術による、あるいは既知の抗原のde novo合成によるなどの方法で、癌細胞から調製することができる。また、抗原は、対象における発現および免疫される対象の免疫系への提示に適した形態の抗原ペプチドをコードする核酸の形態であってもよい。さらに、抗原は完全抗原であってもよいし、少なくとも1つのエピトープを含む完全抗原の断片であってもよい。
ある種の癌の素因となることが知られている病原体由来の抗原も、本発明の癌ワクチンに有利に含むことができる。全世界での癌発生率の16%近くが感染性病原体に起因すると推定でき、いくつかの一般的な悪性疾患は、特定のウイルス遺伝子産物が発現することで特徴付けられる。よって、癌の発生に関与する病原体由来の1つ以上の抗原を含むことで、宿主の免疫応答を拡大し、癌ワクチンの予防効果または治療効果を増す一助となり得る。本明細書で提供する癌ワクチンで使用される特に興味深い病原体として、B型肝炎ウイルス(肝細胞癌)、C型肝炎ウイルス(肝腫)、エプスタインバーウイルス(EBV)(バーキットリンパ腫、鼻咽頭癌、免疫抑制個体におけるPTLD)、HTLVL(成人T細胞白血病)、発がん性ヒトパピローマウイルス16、18、33、45型(成人子宮頸癌)、ヘリコバクターピロリ菌(B細胞胃リンパ腫)があげられる。哺乳動物、特にヒトにおいて抗原として働くことができる他の医学的に関連する微生物は、C.G.A Thomas,Medical Microbiology,Bailliere Tindall,Great Britain 1983などの文献に記載されており、その内容全体を本明細書に援用する。
別の実施形態では、抗原は、病原体に由来する抗原または病原体に関連する抗原、すなわち微生物抗原を含む。このように、一実施形態では、本発明の病原体ワクチンは、少なくとも1つの微生物抗原の少なくとも1つのエピトープをさらに含む。本ワクチンの標的になり得る病原体としては、ウイルス、細菌、寄生虫および真菌があげられるが、これらに限定されるものではない。別の実施形態では、本発明の病原体ワクチンは、1つ以上の微生物抗原由来の複数のエピトープをさらに含む。
カチオン性脂質複合体および方法において有用な微生物抗原は、固有の免疫原性を有してもよく、または非免疫原性であってもよく、あるいはわずかに免疫原性であってもよい。例示的な抗原としては、合成抗原、組換え抗原、外来抗原または相同性を有する抗原があげられるが、これらに限定されるものではなく、抗原の材料としては、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、リポタンパク質、リポペプチド、脂質、糖脂質、炭水化物、RNA、DNAがあげられるが、これらに限定されるものではない。
例示的なウイルス病原体としては、哺乳動物、特にヒトに感染するウイルスがあげられるが、これらに限定されるものではない。ウイルスの例としては、レトロウイルス科(たとえば、HIV-1などのヒト免疫不全ウイルス(HTLV-III、LAVまたはHTLV-III/LAVまたはHIV-IIIとも呼ばれる;ならびにHIV-LPなどの他の分離株など)、ピコルナウイルス科(たとえば、ポリオウイルス、A型肝炎ウイルス;エンテロウイルス、ヒトコクサッキーウイルス、ライノウイルス、エコーウイルスなど)、カリシウイルス科(たとえば、胃腸炎を引き起こす菌株など)、トガウイルス科(たとえば、ウマ脳炎ウイルス、風疹ウイルスなど)、フラビウイルス科(たとえば、デングウイルス、脳炎ウイルス、黄熱病ウイルスなど)、コロナウイルス科(たとえば、コロナウイルスなど)、ラブドウイルス科(たとえば、水疱性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルスなど)、フィロウイルス科(たとえば、エボラウイルスなど)、パラミクソウイルス科(たとえば、パラインフルエンザウイルス、流行性耳下腺炎、麻疹ウイルス、呼吸器合胞体ウイルスなど)、オルソミクソウイルス科(たとえば、インフルエンザウイルスなど)、ブンガウイルス科(たとえば、ハンタンウイルス、ブンガウイルス、プラボウイルス、ナイロウイルスなど)、アレナウイルス科(出血熱ウイルス)、レオウイルス科(たとえば、レオウイルス、アルボウイルス、ロタウイルスなど)、ビルナウイルス科、ヘパドナウイルス科(B型肝炎ウイルス)、パルボウイルス科(パルボウイルス)、パポバウイルス科(パピローマウイルス、ポリオーマウイルス)、アデノウイルス科(大半のアデノウイルス)、ヘルペスウイルス科(単純ヘルペスウイルス(HSV)1および2、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、ヘルペスウイルス)、ポックスウイルス科(Poxyiridae)(痘瘡ウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス)、イリドウイルス科(たとえば、アフリカ豚コレラウイルスなど)、未分類のウイルス(たとえば、海綿状脳症の病原因子、デルタ肝炎の因子(B型肝炎ウイルスの欠損サテライトであると考えられている)、非A非B型肝炎の因子(クラス1=内因的に伝染、クラス2=非経口的に伝染(すなわち、C型肝炎)、ノーウォークウイルスおよび関連ウイルス、アストロウイルス)があげられるが、これらに限定されるものではない。
また、脊椎動物では、グラム陰性菌およびグラム陽性菌を本組成物および方法の標的とすることができる。このようなグラム陽性菌としては、パスツレラ種、ブドウ球菌種、ストレプトコッカス種があげられるが、これらに限定されるものではない。グラム陰性菌としては、大腸菌、シュードモナス種、サルモネラ種があげられるが、これらに限定されるものではない。感染性細菌の具体例として、Helicobacter pylori、Borella burgdorferiLegionella pneumophiliaii、Mycobacteria sps(たとえば、M.tuberculosis、M.avium、M.intracellulare、M.kansaii、M.gordonaeなど)、Staphylococcus aureus、Neisseria gonorrhoeae、Neisseria meningitidis、Listeria monocytogenes、Streptococcus pyogenes(A群Streptococcus)、Streptococcus agalactiae(B群Streptococcus)、Streptococcus(ビリダンス群)、Streptococcus faecalis、Streptococcus bovis、Streptococcus(anaerobic sps.)、Streptococcus pneumoniae、病原性Campylobacter sps.、Enterococcus sp.、Haemophilus infuenzae、Bacillus antracis、corynebacterium diphtheriae、corynebacterium sp.、Erysipelothrix rhusiopathiae、Clostridium perfringers、Clostridium tetani、Enterobacter aerogenes、Klebsiella pneumoniae、Pasturella multocida、Bacteroides sp.、Fusobacterium nucleatumii、Streptobacillus moniliformis、Treponema pallidium、Treponema pertenue、Leptospira、Rickettsia、Actinomyces israeliiがあげられるが、これらに限定されるものではない。
本組成物中の微生物抗原の供給源として有用でありうる細菌病原体のポリペプチドとしては、鉄調節外膜タンパク質(「IROMP」)、外膜タンパク質(「OMP」)、フルネグリシスを引き起こすAeromonis salmonicidaのAタンパク質、細菌性腎疾患(「BKD」)を引き起こすRenibacterium salmoninarumのp57タンパク質、主要表面関連抗原(「msa」)、表面発現細胞毒(「mpr」)、表面発現溶血素(「ish」)、Yersiniosisの鞭毛抗原、細胞外タンパク質(「ECP」)、鉄調節外膜タンパク質(「IROMP」)、パスツレラ症の構造タンパク質、OMPおよびVibrosis anguillarumおよびV.ordaliiの鞭毛タンパク質、Edwardsiellosis ictaluriおよびE.tardaの鞭毛タンパク質、OMPタンパク質、aroA、purA、Ichthyophthiriusの表面抗原、Cytophaga columnariの構造タンパク質および調節タンパク質、Rickettsiaの構造タンパク質および調節タンパク質があげられるが、これらに限定されるものではない。このような抗原は、組換えまたは従来技術において知られた他の手段によって単離または調製することができる。
病原体の例としては、哺乳動物、特にヒトに感染する真菌がさらにあげられるが、これらに限定されるものではない。真菌の例としては、Cryptococcus neoformansi、Histoplasma capsulatum、Coccidioides immitis、Blastomyces dermatitidis、Chlamydia trachomatis、Candida albicansがあげられるが、これらに限定されるものではない。感染性寄生虫の例としては、Plasmodium falciparum、Plasmodium malariae、Plasmodium ovale、Plasmodium vivaxなどのマラリア原虫があげられる。他の感染性生物(すなわち原生生物)として、Toxoplasma gondiiがあげられる。寄生虫病原体のポリペプチドには、Ichthyophthiriusの表面抗原があげられるが、これに限定されるものではない。
哺乳動物、特にヒトにおいて抗原として作用する、医学的に関連のある他の微生物については、文献に広く記載されている。たとえば、C.G.A Thomas,Medical Microbiology,Bailliere Tindall,Great Britain 1983(その内容全体を本明細書に援用する)を参照のこと。感染性ヒト疾患およびヒト病原体の治療に加えて、本発明の組成物および方法は、非ヒト哺乳動物の感染を治療するにも有用である。非ヒト哺乳動物を治療するための多くのワクチンが、Bennett,K. Compendium of Veterinary Products,3rd ed. North American Compendiums,Inc.,1995に開示されており、WO02/069369号も併せて参照のこと(その開示内容を明示的に本明細書に援用する)。
例示的な非ヒト病原体としては、マウス乳房腫瘍ウイルス(「MMTV」)、ラウス肉腫ウイルス(「RSV」)、トリ白血病ウイルス(「ALV」)、トリ骨髄芽球症ウイルス(「AMV」)、マウス白血病ウイルス(「MLV」)、ネコ白血病ウイルス(「FeLV」)、マウス肉腫ウイルス(「MSV」)、テナガザル白血病ウイルス(「GALV」)、脾臓壊死ウイルス(「SNV」)、細網内皮症ウイルス(「RSV」)、サル肉腫ウイルス(「SSV」)、マソン・ファイザーサルウイルス(「MPMV」)、サルレトロウイルス1型(「SRV-1」)、さらにはHIV-1、HIV-2、SIV、Visnaウイルス、ネコ免疫不全ウイルス(「FIV」)などのレンチウイルス、ウマ伝染性貧血ウイルス(「EIAV」)、HTLV-1、HTLV-II、サルT細胞白血病ウイルス(「STLV」)、ウシ白血病ウイルス(「BLV」)などのT細胞白血病ウイルス、ヒト泡沫ウイルス(「HFV」)、サル泡沫ウイルス(「SFV」)、ウシ泡沫ウイルス(「BFV」)などの泡沫ウイルスがあげられるが、これらに限定されるものではない。
いくつかの実施形態では、感染性病原体に関して本明細書で使用する場合、「治療」、「治療する」、「治療している」は、病原体による感染に対する対象の耐性を高めるか、対象が病原体に感染することになる尤度を下げる予防的治療および/または対象が感染した後に、たとえば感染を低減または排除するか、感染が悪化するのを防ぐなど、感染と戦うための治療をいう。
微生物抗原は、従来技術において周知の方法で調製することができる。たとえば、これらの抗原は、粗抽出物を調製する、抗原を部分的に精製する、組換え技術による、あるいは既知の抗原のde novo合成によって、ウイルスおよび細菌細胞から直接調製することができる。また、抗原は、対象における発現および免疫される対象の免疫系への提示に適した形態の抗原ペプチドをコードする核酸の形態であってもよい。さらに、抗原は完全抗原であってもよいし、少なくとも1つのエピトープを含む完全抗原の断片であってもよい。
脂質
カチオン性脂質ベシクルへの抗原の取り込みを改善し、また免疫系の細胞への送達を改善するために、抗原を修飾してその疎水性または抗原表面の負電荷を高めてもよい。たとえば、分子の抗原特性を維持しながらカチオン性脂質の疎水性アシル鎖における抗原の溶解性を改善するために、脂質鎖または疎水性アミノ酸に結合させることで抗原の疎水性を高めてもよい。修飾された抗原は、アミノ酸配列の疎水性が高められた、修飾されたリポタンパク質、リポペプチド、タンパク質またはペプチド、それらの組み合わせとすることができる。修飾された抗原は、脂質と抗原との間に結合されたリンカーを有するものであってもよく、たとえば、N末端αまたはε-パルミトイルリジンをセリン-セリンのジペプチドリンカーを介して抗原に結合させてもよい。以下でより詳細に考察するように、DOTAP/E7-リポペプチド複合体は、DOTAP/E7調製物と比較して、in vivoで機能的な抗原特異的CD8 Tリンパ球応答が増強していた。さらに、抗原がカチオン性脂質の複合体に封入されている調製物のバッファーを変えることによって、あるいは、たとえばアニオン性アミノ酸などのアニオン性部分を抗原に共有結合させることによって、負電荷が高まるように抗原を操作してもよい。
本明細書に記載した実施例1に示されるように、E7抗原の免疫原性は、抗原を共有結合で修飾することによって増大した。得られる抗原アミノ酸配列が、もともと抗原を得た親タンパク質には見られないようなものになるアミノ酸配列を抗原に共有結合させることが可能であった。修飾された抗原のほうがネイティブな抗原よりもMHCクラスI結合親和性が優れていることを示すために、研究を行った。この研究で証明されたような優れた結合親和性のために、HPV陽性TC-1腫瘍に対するin vivoでの優れた抗腫瘍免疫応答が生じることとなった。本発明は、以下の実施例に照らしてさらに理解されるであろう。
本明細書に記載のいくつかの実施形態において、カチオン性脂質は、ナノ粒子アセンブリーの形態であってもよい。本明細書で使用する場合、「ナノ粒子」という用語は、測定されるサイズがナノメートル台である粒子をいう。たとえば、「ナノ粒子」とは、サイズが約10,000ナノメートル未満の構造を有する粒子をいうことができる。いくつかの実施形態では、ナノ粒子はリポソームである。
本明細書で使用する場合、「カチオン性脂質」という用語は、生理学的pHで正味の正電荷を保持するか、プロトン化可能な基を有し、pKaより低いpHで正に荷電される多数の脂質種のすべてをいう。本開示による好適なカチオン性脂質としては、3-β[N-(N,ジグアニジノスペルミジン)-カルバモイル]コレステロール(BGSC)、3-β[N,N-ジグアニジノエチル-アミノエタン)-カルバモイルコレステロール(BGTC)、N,N,N,N テトラメチルテトラミルスペルミン(セルフェクチン)、N-t-ブチル-N’-テトラデシル-3-テトラデシルアミノプロピオンアミジン(CLONfectin)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロマイド(DDAB)、1,2-ジミリスチルオキシプロピル-3-ジメチル-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、2,3-ジオレオイルオキシ-N-[2(スペルミン-カルボキサミド)エチル]-N,N-ジメチル-1-プロパンアミニウムトリフルオロセテート)(DOSPA)、1,3-ジオレイルオキシ-2-(6-カルボキシスペルミル)-プロピルアミド(DOSPER)、4-(2,3-ビス-パルミトイルオキシ-プロピル)-1-メチル-1H-イミダゾール(DPIM)Ν,Ν,Ν’,Ν’-テトラメチル-N,N’-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2,3-ジオレオイルオキシ-1,
4-ブタン-ジアンモニウムヨージド)(Tfx-50)、N-1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル-Ν,Ν,Ν-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)または他のN-(N,N-1-ジアルコオキシ)-アルキル-N,N,N-三置換アンモニウム界面活性剤、1,2ジオレオイル-3-(4’-トリメチルアンモニオ)ブタノール-sn-グリセロール(DOBT)またはコレステリル(4’トリメチルアンモニア)ブタノエート(ChOTB)(ここで、トリメチル-アンモニウム基は、ブタノールスペーサーアームを介して二本鎖(DOTBの場合)またはコレステリル基(ChOTBの場合)に接続されている)、DORI(DL-1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアミノプロピル-β-ヒドロキシエチルアンモニウム)またはDORIE(DL-1,2-O-ジオレオイル-3-ジメチルアミノプロピル-β-ヒドロキシエチルアンモニウム)(DORIE)またはそれらの類似体(WO93/03709に開示されているものなど)、1,2-ジオレオイル-3-スクシニル-sn-グリセロールコリンエステル(DOSC)、コレステリルヘミスクシネートエステル(ChOSC)、ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン(DOGS)およびジパルミトイルホスファチジルエタノールアミルスペルミン(DPPES)などのリポポリアミン、コレステリル-3β-カルボキシル-アミド-エチレントリメチルアンモニウムヨージド、1-ジメチルアミノ-3-トリメチルアンモニオ-DL-2-プロピル-コレステリルカルボキシレートヨージド、コレステリル-3-O-カルボキシアミドエチレンアミン、コレステリル-3-β-オキシスクシンアミド-エチレントリメチルアンモニウムヨージド、1-ジメチルアミノ-3-トリメチルアンモニオ-DL-2-プロピル-コレステリル-3-β-オキシスクシネートヨージド、2-(2-トリメチルアンモニオ)-エチルメチルアミノエチル-コレステリル-3-β-オキシスクシネートヨージド、3-β-N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)カルバモイルコレステロール(DC-chol)、3-β-N-(ポリエチレンイミン)-
カルバモイルコレステロール、Ο,Ο’-ジミリスチル-N-リシルアスパルテート(DMKE)、Ο,Ο’-ジミリスチル-N-リシル-グルタメート(DMKD)、1,2-ジミリスチルオキシプロピル-3-ジメチル-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、1,2-じらウロイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(DLEPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(DMEPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(DOEPC)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(DPEPC)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(DSEPC)、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)、ジオレオイルジメチルアミノプロパン(DODAP)、1,2-パルミトイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DPTAP)、1,2-ジステアロイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DSTAP)、1,2-ミリストイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DMTAP)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)があげられるが、これらに限定されるものではない。さらに、記載されたカチオン性脂質のいずれの構造的変異体および誘導体も、企図される。
ある実施形態では、カチオン性脂質は、DOTAP、DOTMA、DOEPC、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。他の実施形態では、カチオン性脂質はDOTAPである。さらに他の実施形態では、カチオン性脂質はDOTMAである。他の実施形態では、カチオン性脂質はDOEPCである。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質が精製される。
いくつかの実施形態では、カチオン性脂質は、カチオン性脂質のエナンチオマーである。「エナンチオマー」という用語は、その対になる立体異性体、たとえばRエナンチオマーおよびSエナンチオマーのように、互いに重ね合わせることのできない鏡像であるカチオン性脂質の立体異性体をいう。様々な例において、エナンチオマーはR-DOTAPまたはS-DOTAPである。一例では、エナンチオマーはR-DOTAPである。別の例では、エナンチオマーはS-DOTAPである。いくつかの実施形態では、そのエナンチオマーは精製される。様々な例において、エナンチオマーはR-DOTMAまたはS-DOTMAである。一例では、エナンチオマーはR-DOTMAである。別の例では、エナンチオマーはS-DOTMAである。いくつかの実施形態では、そのエナンチオマーは精製される。様々な例において、エナンチオマーは、R-DOPECまたはS-DOPECである。一例では、エナンチオマーはR-DOPECである。別の例では、エナンチオマーはS-DOPECである。いくつかの実施形態では、そのエナンチオマーは精製される。
例示の目的で、実施例はいずれも、十分に研究され、二重蛍光標識と一緒に利用可能なモデルタンパク質であるオボアルブミンを用いて実施されることに注意されたい。モデルタンパク質を用いることで、カチオン性脂質がどのようにして抗原の取り込みプロセシングと提示を亢進するかを示す優れた例が提供される。また、クラスIおよびクラスII拘束性OVAペプチドに特異的なTCRトランスジェニックT細胞を利用可能であることから、両方の経路を介した詳細な研究と抗原提示の確認が可能になる。
実施例で報告されたin vitroでの研究はいずれも、代表的な抗原としてモデルタンパク質であるオボアルブミンを用いて実施した。抗原提示細胞による抗原の取り込みとプロセシングに対するカチオン性脂質の作用を評価するために、フローサイトメーターを用いて容易に追跡できる蛍光OVAコンジュゲート(DQ-OVAコンジュゲート、Alexa Fluor(登録商標)647 OVAコンジュゲート)を使用した。さらに、抗原としてオボアルブミンタンパク質を使用することで、オボアルブミン特異的CD4およびCD8 T細胞受容体を有するオボアルブミン特異的T細胞ハイブリドーマ細胞およびTCRトランスジェニックマウス(OT-1およびDO11.10)を用いるMHC IおよびMHC IIによる抗原提示の確認が容易になった。この研究で示された結果は、一般にあらゆるタンパク質およびペプチド抗原に適用可能である。
<実施例1:樹状細胞による抗原取り込みに対するカチオン性脂質の作用>
タンパク質抗原の取り込みに対するカチオン性脂質の作用を決定するために、マウス骨髄由来樹状細胞(BMDC)をAlexa Fluor(登録商標)647-OVAコンジュゲートでパルスし、フローサイトメトリーを用いてBMDCによるオボアルブミン取り込みを定量した。簡単に説明すると、20μg/mlのオボアルブミン(Ovalbumin AlexaFluor(登録商標)647コンジュゲート;ライフテクノロジーズ、カタログ番号034784)と50μMのカチオン性脂質(RDOTAP)または280mMのスクロース希釈剤を含む無血清RPMI 1640細胞培養培地において、2×10個/mlのBMDCを37℃で10~60分間インキュベートした。細胞をパルス後に洗浄して細胞に結合していないオボアルブミンを除去し、フローサイトメーターでの分析用に1%ホルムアルデヒドで固定した。BD LSR IIフローサイトメーターを用いてオボアルブミンの取り込みを定量した。図1に示すように、カチオン性脂質は、測定したすべての時点でBMDCによるタンパク質の取り込みを有意に増加した。さらに、タンパク質の取り込みはカチオン性ナノ粒子の存在下で非常に急速に起こったことから、カチオン性脂質が、樹状細胞ワクチンの調製時に抗原パルスの時間を大幅に短縮する上で有益であることを示唆している。
<実施例2:樹状細胞および上皮細胞による抗原プロセシングに対するカチオン性脂質の作用>
樹状細胞によるex vivoでの抗原の取り込みとプロセシングに対するカチオン性脂質の作用を決定するために、DQ-OVAと呼ばれる蛍光オボアルブミンタンパク質を使用した。DQ-OVAは、インタクトな状態では蛍光性ではないが、タンパク質が分解されると赤色と緑色の両方の蛍光を発する。BMDCを、DQ-OVAのみまたは濃度の異なるカチオン性脂質DOTAPと混合したDQ-OVAと一緒に、37℃または4℃で1時間インキュベートした。その後、細胞を洗浄し、固定し、樹状細胞のマーカーであるCD11cに対する蛍光抗体で染色した。次に、赤色および緑色蛍光チャネルの両方で、LSRIIフローサイトメーターで細胞を分析した。
図2の結果は、培地のみで蛍光DQ-OVAと一緒にインキュベートしたBMDCが37℃で蛍光を増大させ、取り込みとプロセッシングがなされたことを示している。これは、DCによる、OVAのよく知られたマンノース受容体が介在する取り込みを表す。DOTAPは、DCによる抗原の取り込みとプロセシングを亢進する。フローサイトメトリーで測定したBMDCへのDQ-OVAの蛍光取り込みのグラフ表示。プロットは、DCによって取り込まれ、プロセシングされたDQ-OVAの量を表す、ゲートされたCD11c陽性細胞の緑色蛍光の平均蛍光強度を示す。
この取り込みとプロセシングは4℃で阻害され、このタイプの取り込みにはアクティブな細胞骨格の再構成が必要であることが確認された。DOTAPの純粋なR-エナンチオマー(R-DOTAP)の存在下でDQ-OVAと一緒にインキュベートされたBMDCでは蛍光の倍増が認められ、カチオン性脂質であるR-DOTAPがDCでのタンパク質の取り込みとプロセシングを大幅に亢進することが示された。4℃でになってもなお有意な取り込みが認められ、アクティブな細胞代謝がなくてもR-DOTAPがタンパク質の取り込みを助長し得ることが示された。R-DOTAPによる作用は濃度依存的であり、50μMで最大の作用が認められた。R-DOTAPによるタンパク質取り込みの亢進が細胞依存であるか否かを決定するために、マウス上皮細胞株をBMDCと同一条件下でDQ-OVAと一緒にインキュベートした。図3の結果は、このOVAの取り込みとプロセシングがDCでのみ観察され、TC1上皮細胞では観察されないことを示している。これらのデータから、DOTAPが、ex vivoで完全タンパク質の樹状細胞への取り込みとプロセシングを大幅に亢進できることがわかる。さらに、この亢進が樹状細胞に対して選択的であり、他の非抗原提示細胞型に対して選択的ではないこともわかる。
<実施例3:抗原のプロセシングおよびエンドソーム侵入に対する、カチオン性脂質と既知のアジュバントによる作用の比較>
脂質アジュバントがR-DOTAPと同じ作用に介在し得るか否かを決定するために、図1で説明したように、培地のみまたはR-DOTAPを用いて、BMDCをDQ-OVAと一緒にインキュベートした。また、強力な脂質アジュバントであるリポ多糖(LPS)を用いる同一の条件下で、BMDCをインキュベートした。25μMのDOTAPナノ粒子、10μg/mlのLPSまたは培地のみの存在下、37℃または4℃/アジドのいずれかで、蛍光DQ-OVAの存在下でマウス骨髄DCを1時間インキュベートし、フローサイトメトリーで分析した。図1に示すように、DQ-OVAは、R-DOTAPの非存在下でDCによってアクティブに取り込まれ、プロセシングされたが、R-DOTAPの存在下では、赤色蛍光が強く増したことから明らかなように、取り込みが大幅に亢進された。対照的に、図4に示すように、このような増大はLPSでの処理では観察されなかった。モノホスホリルリピドA(MPL)は、毒性が低いLPSの誘導体であり、現在、いくつかのワクチンでFDAの承認済みのアジュバントである。図5におけるLPSでの結果と同様に、MPLはBMDCにおけるタンパク質の取り込みを亢進する能力を示さなかった。
<実施例4:ヒト単球細胞株における抗原プロセシングに対するカチオン性脂質の作用>
ヒトの細胞に対するカチオン性脂質の作用を決定するために、ヒト単球細胞株であるTHP-1を用いてex vivoでのDQ-OVAの取り込みを評価した。THP-1は、ヒト血液由来の単球細胞の代表であり、ex vivoでのDC療法の手法で患者からDCを作製するのに用いられるものと同じ細胞である。R-DOTAP(25μg/ml)の存在下(A、B)または非存在下(C、D)で、37℃にて1時間、DQ-OVA(10μg/ml)と一緒にTHP-1細胞をインキュベートした。レーザー走査共焦点顕微鏡を用いて同じ細胞を画像化し、フローサイトメトリーで緑色対赤色蛍光を測定することによって定量した。図6の結果は、R-DOTAPがTHP-1細胞におけるDQ-OVAの取り込みを劇的に増したことを示している。マウスBMDCとは異なり、R-DOTAPが存在しない場合、DQ-OVAの取り込みは観察されなかった。これは、血液由来の単球は樹状細胞の前駆体であるが、タンパク質の取り込みに必要な受容体をまだ持たないためであると考えられる。この結果は、重要である。なぜなら、R-DOTAPが、通常であれば受容体による取り込みが不可能な細胞で取り込みとプロセシングを亢進できることを示しているからである。もうひとつ、図6Aおよび図Bから顕著に観察できるのが、エンドサイトーシスのベシクルにおけるプロセシングされたOVAの蓄積である。エンドサイトーシスのベシクルのタンパク質は、CD4 T細胞を刺激するためにMHCクラスII分子に効率的に取り込まれるか、MHCクラスIからCD8 T細胞への提示のための交差提示経路を行き来することは良く知られている。したがって、カチオン性脂質は、MHCクラスI分子およびクラスII分子の両方への抗原の提示を最大限に最適化する形でタンパク質の取り込みを助長し、CD8およびCD4 T細胞のそれぞれを最大限刺激する。
<実施例5:MHCクラスI拘束性T細胞に対する抗原のプロセシングと交差提示に対するDOTAPおよびDOTMAの作用>
カチオン性脂質が抗原の取り込みを助長することが、MHCクラスI(交差提示)での抗原提示の亢進に実際につながることを検証するために、カチオン性脂質の存在下で交差提示を評価するための2つの異なる方法を利用した。第1の方法では、T細胞ハイブリドーマ細胞株(B3Z細胞)を用いた。この細胞株は、β-ガラクトシダーゼ酵素を誘導することによって、MHC Iを介してSIINFEKLペプチドを交差提示する抗原提示細胞に応答することができ、これはβ-galアッセイを用いて定量化することが可能である。50μMのRDOTAPと混合したオボアルブミンペプチドを有するBMDC(OVA241-270;SMLVLLPDEVSGLEQLESIINFEKLTEWTS)または等張性スクロース(280mM)(Suc)のみ。ペプチドでパルスしたBMDCを洗浄し、MHCI(H2Kb)を介して抗原提示細胞によって提示されるSIINEKLエピトープを認識できる抗原特異的T細胞ハイブリドーマ細胞株(B3Z細胞)と37℃で一晩共培養した。B3Z細胞は、β-ガラクトシダーゼ酵素を産生することによってSIINFEKLエピトープに応答し、これを樹状細胞によるペプチド交差提示の指標に比色β-ガラクトシダーゼアッセイを用いて定量した。データは、試験ウェル(任意の単位)における相対吸光度(570nm)を表す。2元ANOVAを用いて統計的有意性を評価し、*値は処理ごとに有意に異なっていた(図7に示す)。
図7に示すように、カチオン性ナノ粒子によるペプチドパルスは、効率的なパルスに必要なペプチドの濃度を有意に減少させることが観察された。カチオン性脂質を利用するこの方法は、特に、利用できるペプチド抗原の量またはペプチドの濃度がゆえに樹状細胞の交差提示が制限される条件下(たとえば、エピトープが限られる自己腫瘍ワクチンの場合など)でのペプチドローディングで重要な利点を提供する。
2つ目の方法では、すべてのT細胞がOVAの内部ペプチドに特異的であるTCRトランスジェニックマウス(OT-1)由来のT細胞を使用した。これらのT細胞は、OVAを処理し、MHCクラスI分子にOVAペプチドを提示したDCで提示された場合にのみ増殖する。
したがって、これは、交差提示に対する厳密なアッセイとなる。BMDCを、2種類のカチオン性脂質であるDOTAPまたはDOTMAのいずれかの存在下または非存在下で、異なる濃度のOVA完全タンパク質と一緒に37℃で1時間インキュベートした。その後、DCを洗浄し、固定し、OVAペプチド特異的T細胞に添加した。図8の結果は、DOTAPまたはDOTMAの存在下でOVAと一緒にインキュベートしたDCが、カチオン性脂質なしでOVAと一緒にインキュベートしたDCよりもはるかに強くCD8+T細胞に抗原を交差提示したことを示している。この応答は、OVA濃度に関して用量依存的であり、DCを4℃でOVAと一緒にインキュベートした場合にも明らかであった。
これらの結果は、カチオン性脂質によって抗原の取り込みが亢進されることで、CD8 T細胞の効果的な活性化の絶対的前提条件である、効率的な抗原のプロセシングとMHCクラスI経路へのペプチドの取り込みに実際につながることを示している。
<実施例6:MHCクラスII拘束性T細胞に対する抗原のプロセシングと交差提示に対するDOTMAおよびDOTAPの作用>
カチオン性脂質が実際にCD4 T細胞への抗原提示を増すか否かを確認するために、MHCクラスII分子に提示されるOVAペプチドに特異的なT細胞を有するDO11.10トランスジェニックマウス由来の細胞を使用した。図9の結果は、クラスII提示にも図8のクラスI提示で観察されたものと同じ傾向が観察されたことを示している。カチオン性脂質の存在下でOVAが取り込まれることで、CD4 T細胞に対する抗原提示が亢進された。
これらの結果は、カチオン性脂質によって抗原の取り込みが亢進されることで、CD4 T細胞の効果的な活性化の絶対的前提条件である、効率的な抗原のプロセシングとMHCクラスII経路へのペプチドの取り込みに実際につながることを示している。
<実施例7:in vivoでの実際のワクチン設定における抗原提示に対するDOTAPによる作用>
実際のワクチン設定におけるDOTAPの作用をモデル化するために、T細胞受容体養子移入系を使用した。この系では、図8および図9で説明したのと同じTCRトランスジェニックマウス由来のT細胞を用いているが、これらの細胞がワクチン接種後にin vivoでどのように応答するかを分析する。最初に、OT-1(OVA特異的CD8+)またはDO11.10(OVA特異的CD4+)T細胞を追跡用の蛍光色素CFSEで標識した。24時間後、マウスに、OVAのみまたはDOTAPの存在下のOVAを注射した。これらのT細胞が、免疫化後に流入領域リンパ節でDCによって提示される抗原を認識すれば、T細胞は増殖し、全ての娘細胞でCFSE色素が希釈される。次に、DOTAPを用いる場合と用いない場合でマウスにOVAを注射した。3日後、ワクチン接種部位の流入領域リンパ節を取り出し、T細胞を抗CD8抗体および抗CD4抗体で染色し、CFSEのレベルをフローサイトメトリーで可視化した。図10の結果は、完全OVAまたはDOTAPと混合した完全OVAのいずれかをさらに注射(免疫化)した場合のCFSE標識OT1(CD8 T細胞)またはDO11.10(CD4 T細胞)を示している。マウスにOVA+DOTAPをワクチン接種した場合のみ、T細胞の有意な分裂が生じた。これらの結果は、DOTAPの抗原送達特性が、ワクチン接種後の流入領域リンパ節におけるT細胞応答の増大につながることを示している。
<実施例8:MHCクラスI拘束性T細胞に対する抗原のプロセシングと交差提示に対する様々な脂質の作用>
抗原の取り込みと交差提示に対する他のカチオン性脂質および中性脂質の作用を確認するために、完全OVAタンパク質と様々な濃度のDOTAP、DOTMA、DOPC、DOEPCまたはDDAの存在下、BMDCを37℃または4℃で30分間インキュベートした。その後、DCを洗浄し、マイクロタイタープレートでOT1脾細胞(クラスI拘束性OVAペプチドSIINFEKLに特異的なTCRトランスジェニックT細胞)に添加し、37℃で3日間培養した。プロットは、培養の最後の18時間におけるHチミジン取り込みの平均CPMを示している。対照培養には、OT1脾細胞とSIINFEKLだけを含有し、これは抗原プロセシングの必要性を回避する。
図11の結果は、カチオン性脂質であるDOTAP、DOTMA、DOEPC、DDAがいずれも、BMDCによるOVAの取り込みと交差提示の亢進を助長することを示している。また、カチオン性脂質S-DOTAPも取り込みと提示を助長した。中性脂質DOPCも、取り込みと提示を助長した。これらの結果は、ひとつのクラスとしてのカチオン性脂質が、抗原の効果的な取り込みと樹状細胞によるタンパク質抗原の送達を介在するのに有効であることを示している。
<実施例9:カチオン性脂質は、樹状細胞ワクチンの有効性を改善する>
カチオン性脂質がin vivoで樹状細胞系ワクチンの有効性を改善するという概念の証拠として示すために、樹状細胞ワクチンによるCTL誘導に対するカチオン性脂質の作用を評価した。ペプチド単独(パルミトイル化-KSSSIINFEKL)またはカチオン性(50μMR-DOTAP、DOTMA)ナノ粒子または中性脂質ナノ粒子(DOPC)と混合したペプチドでパルスしたBMDCまたは等張性スクロースのみで、B6マウスを免疫した。0日目と7日目に、ペプチドでパルスしたBMDCを用いてC57BL6/Jマウスの群(n=5)を皮下免疫し、14日目にELISPOTアッセイを用いて抗原特異的IFN-γ応答を測定することで、ワクチン応答を評価した。データは、代表的な研究における各マウスのスポット形成細胞を表す。
図12に示すように、ペプチドを負荷したカチオン性ナノ粒子で樹状細胞をパルスすると、ワクチンによって誘導される抗原特異的T細胞応答が有意に増加するため、in vitroでのアッセイで見られるカチオン性ナノ粒子の有益な作用が樹状細胞系ワクチンの有効性に影響し得るということが直接的に示される。以下の研究では、CTL誘導におけるカチオン性ナノ粒子の有効性を、HPV関連腫瘍およびムチン1関連腫瘍に由来する腫瘍関連抗原を用いて検討した。予想通り、腫瘍関連抗原を負荷したカチオン性ナノ粒子は、ワクチン接種したマウスにマウントされた抗原特異的T細胞免疫応答を改善した(図13)。この実験では、50μMのカチオン性脂質(RDOTAP)と混合した腫瘍関連抗原(HPV腫瘍関連(a)またはムチン1関連(b))を含有するペプチド混合物または等張性スクロース(280nM)で、マウスBMDCを10分間パルスした。0日目および7日目に、ペプチドでパルスしたBMDCまたはパルスなしのBMDCでC57BL6/Jマウス(n=5)の群を皮下免疫し、14日目にELISPOTアッセイを用いて抗原特異的IFN-γ応答を測定することで、ワクチン応答を評価した。データは、代表的な研究における各マウスのスポット形成細胞を表す。DOTAP、DOTMA、DOPCでは、いくらか亢進が認められたのに対し、DOEPCとDDAでは、抗原提示が大幅に亢進された。注:DDAは、OVAで希釈すると沈殿を形成した。カチオン性脂質ではいずれも亢進がみとめられるが、全体の大きさは実験によって変わる。また、中性脂質であるDOPCも、この実験ではいくらか亢進が認められた。
これらの結果は、ひとつのクラスとしてのカチオン性脂質が、抗原の効果的な取り込みと樹状細胞によるタンパク質抗原の送達を介在するのに有効であることを示している。さらに、抗原を負荷したカチオン性脂質でパルスした樹状細胞は、樹状細胞ワクチンの有効性を大幅に改善することができる。
<実施例10:腫瘍微小環境内のT細胞および調節性T細胞の集団に対するR-DOTAPの作用>
R-DOTAPおよびS-DOTAPによって、抗原特異的CD8+T細胞を誘導した。
C57BLマウスに、様々な調製物をワクチン接種した。
群1:KF18 HPVペプチド(GQAEPDRAHYNIVTF)
群2:KF18 HPVペプチド+R-DOTAPリポソーム
群3:KF18 HPVペプチド+S-DOTAPリポソーム
群4:KF18ペプチド+MPL/Alumアジュバント
1群あたり5匹のマウスに、様々な調製物を注射した。0日目および7日目に、マウスにワクチン接種し、14日目に屠殺した。脾細胞を取り出し、ELISPOT研究を行った。ペプチドRAHYNIVTF(RF9)で脾細胞を刺激し、C57マウスによって認識されるHPV16 CD8+T細胞エピトープペプチドをC57マウスによって認識した。この研究は、R-DOTAPが強いHPV特異的CD8+T細胞応答を誘導するのに有効であることを示している。しかしながら、抗原の取り込み、内在化、プロセシングならびに、樹状細胞の成熟を促進する同一の能力を示したS-DOTAPは、ペプチドだけのときに見られたほどはCD8+T細胞応答の増大につながらなかった(図14A)。MPLは、R-DOTAPとS-DOTAPのどちらと比較しても抗原の取り込みを促進する上で有効ではなかったため、CD8+T細胞応答がR-DOTAPよりも有意に低くなると想定されていた。この作用の別の例が、カチオン性脂質であるDDAでも観察される。図14Bは、DDAが抗原の取り込みと提示を助長する能力を示している。しかしながら、強い抗原特異的T細胞応答を誘導するために、DDAを強力なアジュバントと組み合わせて使用することが報告されている(Brandt L.et al,ESAT-6 Subunit Vaccination against Mycobacterium tuberculosis,Infect Immun.2000 Feb;68(2):791-795)。
R-DOTAPによる抗原取り込みの亢進と提示ならびに、in vivoでの優れたCD8+T細胞誘導が観察されることから、腫瘍抗原を用いるR-DOTAPおよびGM-CSFを基にした免疫療法を使用して直接比較(head-to-head)の研究を実施し、この2種のワクチンが腫瘍微小環境へのT細胞の浸潤や、免疫抑制性腫瘍微小環境をダウンレギュレートする能力に及ぼす影響を研究した。
C57マウスを、1群あたり8匹として、R-DOTAP+HPV16 E7ペプチドKF18(GQAEPDRAHYNIVTF)、GM-CSF+HPV16 E7ペプチドKF18、R-DOTAP、GM-CSF、HPV16 E7ペプチドKF18、未処理群の各群にわけた。1日目に、1×10個のTC-1腫瘍細胞をマウスの脇腹に注射した。腫瘍移植後12日目と19日目に様々な調製物を投与した。19日目に、1群あたり4~5匹のマウスを屠殺し、複数の評価を行って腫瘍微小環境の免疫学を評価した。
RF9特異的デキストラマー染色とフローサイトメトリーを使用して、腫瘍微小環境に浸潤したHPV特異的CD8+T細胞の数を定量した。この研究では、マウスエピトープRF9に特異的なCD8+T細胞の数を定量した。これらのCD8+T細胞を、腫瘍中に存在する全ての免疫細胞(CD45、CD3、CD8)の割合として測定した。腫瘍に浸潤する抗原特異的T細胞を、フローサイトメトリーによってRF9特異的デキストラマーを用いて測定した。図15は、研究の結果を示し、他のすべての群と比較して、R-DOTAP/HPVと比べてHPV特異的T細胞の統計的に有意な増加を示している。データは、各群の4~5匹のマウスの平均+SEMを表す。
19日目に、免疫抑制性腫瘍微小環境、特に調節性T細胞の集団を研究するためにフローサイトメトリーを使用した。14日目と19日目に、T細胞(CD45+CD3+CD4+CD25+Foxp3+)細胞が腫瘍に浸潤した。結果を図16に示す。この研究は、腫瘍内のTreg集団の約40%という統計的に有意な減少がワクチン接種後1週間以内にR-DOTAP+抗原のみで観察されることを示している(P<0.01)。この群では統計的有意性が達成されなかったが、R-DOTAP群以外の群では、いずれもTregの集団を減らす能力が示されなかった。
どの免疫療法でも臨床的な有効性に非常に重要なのは、腫瘍微小環境でCD8+T細胞を標的とする腫瘍に対する免疫抑制細胞の比である。CD8+T細胞に対する免疫抑制細胞の比率が低いほど、抗腫瘍効果に向けて予後の改善が促進される。この研究は、GM-CSF+抗原の場合や抗原だけの場合に比が約1であるのと比較して、R-DOTAP+抗原では、Treg/CD8+T細胞比が劇的に低下して0.13未満となることを示している。腫瘍抗原のない群では比が約32であった(図17に示す)。カチオン性脂質は、TregsよりもエフェクターT細胞の正しい表現型の優先的な拡大を促進するようである。これは、攻撃者が免疫抑制性Tregs「擁護者」よりもCD8+T細胞に有利な「力のシフト」を生むため免疫療法が非常に効果的になる、腫瘍微小環境の大幅な改変につながる。
同じ研究で、確立されたTC-1腫瘍に対する様々な調製物の影響を評価した。図18は、R-DOTAP+抗原で処理した動物(Treg/CD8+比<0.13)ではいずれも、26日目までに腫瘍が完全に消失したことを示している。腫瘍体積は、キャリパーを用いて測定した。ナイーブマウス群は、未処理のままで腫瘍のあるマウスである。ワクチンで使用したHPV16 E7ペプチドは、KF18である。GM-CSF+抗原および抗原のみ(Treg/CD8+比は約1.0)ではどちらも、腫瘍の退縮が誘導されなかったが、腫瘍の成長が阻害され、26日目に腫瘍体積が約200mmとなった。R-DOTAPまたはGM-CSFで抗原なしで処理した動物または未処理の動物からなる3つ目の群(Treg/CD8+比>30)では、腫瘍体積が300~700mmであった。
この研究では、IFN-γ ELISPOT研究を行い、生成する腫瘍特異的T細胞の「質」を定量化して理解した。この研究では26日目に動物を屠殺し、脾細胞を使用した。結果を図19に示す。この研究は、細胞をHPV16 CD8+マウスエピトープRF9で刺激すると、R-DOTAP+抗原調製物のほうがGM-CSF+抗原よりもIFN-γの生成量が約4~5倍多かったことを示している。これは、図11において、腫瘍微小環境に浸潤しているCD8+ 細胞の量がGM-CSFでの結果の2倍未満であるという事実がゆえ、カチオン性脂質がGM-CSFよりも「高品質」のT細胞を生成することができることを示唆している。T細胞のプライミングが優れているのかという理由については、別の研究で評価された。
<実施例11:リンパ節へのT細胞およびB細胞の浸潤に対するR-DOTAPワクチン接種の評価>
12mMのR-DOTAPまたは対照としてのスクロースを、それぞれマウスの右足と左足の肉趾に注射し、流入領域リンパ節へのT細胞と全リンパ球の流入をフローサイトメトリーで定量した。この実験では、ワクチン接種の15時間後に膝窩のリンパ節を取り出して、分析した。図17は、R-DOTAPがリンパ節へのT細胞の有意な浸潤を誘導したことを示している。第2の実験では、5時間、16時間、3日目、4日目の時点で分析を行い、リンパ節へのリンパ球の浸潤が4日間にわたって増加することがわかった(図20)。1つの研究でマウス5匹を使用した。
実施例12:リンパ節へのリンパ球浸潤に対するケモカインの役割の評価
現在の実験の主目的は、5匹のマウスを用いて実施例7に記載の研究を行い、養子移入されたCFSE標識細胞のホーミングを可視化することであった。この研究には、in vitroにて百日咳毒素で処理してケモカイン受容体を不活化した細胞集団が含まれていた。百日咳毒素と未処理の細胞とをフローサイトメトリーで区別することができるように、これらの細胞を2通りの濃度のCFSEで標識した。リンパ球は、リンパ節に帰るように誘導されるべきである。しかしながら、DOTAPで亢進されるホーミングがケモカインによるものである場合、DLNに百日咳毒素集団は存在しないはずであるか、大幅に低減されたレベルで存在するだけのはずである。
脾臓細胞を1匹のB6マウスから調製し、半分に分けた。細胞のうち半分を100ng/mlの百日咳毒素で37℃にて1時間処理し、洗浄した。次に、2つの細胞集団をフローサイトメトリーで区別することができるように、これらの細胞集団を2通りの濃度のCFSEで標識し、一緒に混合した。混合物(細胞10個)を5匹のB6マウスの尾静脈に静脈注射した。次にマウスを麻酔し、スクロース(右足肉趾)とR-DOTAP(左足肉趾、50μl、600ナノモル)のいずれかを肉趾に注射した。
16時間後、マウスを屠殺し、膝窩のLNと脾臓を採取した。各マウスの左右の節から回収した総細胞数をカウントした。移動したCFSE標識リンパ球も、R-DOTAPワクチン接種時にリンパ節に浸潤した。しかしながら、これは百日咳で処理した細胞では起こらなかったことから、リンパ節へのリンパ球の流入をカチオン性脂質が誘導し、この現象にはおそらくケモカインが介在していることを示している。
過去の研究(Yanら)では、カチオン性脂質がケモカインCCL2、3、4を誘導することが示唆された。しかしながら、これらのケモカインは、リンパ節のホーミングに関与していない。したがって、この研究は、R-DOTAPなどのカチオン性脂質も、CCL21またはCXCL12などの他のリンパ節ホーミングケモカインを誘導することを示唆している。
<実施例13:リンパ節内でのサイトカインおよびケモカインの誘導>
アジュバントの重要な副作用の1つは、サイトカインを誘導し、循環する血液にそのようなサイトカインを増やしてしまうことである。サイトカインが血中に存在すると、重大な炎症反応が起こることが多く、結果的に、これは発熱、悪心、嘔吐、頭痛、さらには極端な症例になると毒によるショックや死にすらつながる毒性が生じる。様々なアジュバントの投与にサイトカインストームが関連していることも多い。
したがって、この研究では、カチオン性脂質ワクチンを皮下投与した後に全身におけるサイトカインの存在の評価に焦点を当てた。ヒトHPV抗原を認識することができるヒトHLA-A2マウスに、高用量および低用量のR-DOTAP+抗原を投与した。
群1:
高用量R-DOTAP(3.4mg/mL)とスクロース溶液の1:1混合物100μLをマウスにワクチン接種
群2:
サイトカイン誘導の陽性対照として50μgのLPSをワクチン接種
群3:
高用量のR-DOTAP+HPV抗原(RDOTAPが3.4mg/mLとHPVMixが0.14mg/mLの1:1混合物)100μLをマウスにワクチン接種
群4:
低用量のR-DOTAP+HPV抗原(RDOTAPが3.4mg/mLとHPVMixが0.14mg/mLの1:1混合物)100μLをマウスにワクチン接種
1回のワクチン接種の後、全てのマウスから以下のように採血した。
1.採血前(ワクチン接種前)
2.12時間
3.24時間
4.48時間
約200μLの血液を上記の時点で各マウスから採取した。
サイトカイン分析は、製造業者の指示に従って、Luminexアッセイで行った。
陽性対照として、十分に研究されたトール様受容体(TLR)アゴニストリポ多糖(LPS)をマウスにワクチン接種した。
研究結果:Luminex Mouse cytokine 20-plexパネル(サイトカインについては以下に列挙する)を使用して、マウスの血清を分析した。Luminexソフトウェアを使用して、同じプレートで実行したサイトカイン標準と比較することで、サイトカインの強度レベルを定量した。陽性対照群(LPS)は、ワクチン接種時のIL-12、IP-10、KC、MCP-1、MIGの全身レベルが増加することを示していた。図21に示すように、研究したサイトカインとケモカインのいずれの全身誘導も、高用量と低用量のPDS0101でワクチン接種前のベースラインを超えて誘導されることはなかった。
マウスサイトカイン20-plexパネル:
FGF、IL-1b、IL-10、IL-13、IL-6、IL-12(P40/P70)、IL-17、MIP-1a、GM-CSF、MCP-1、IL-5、VEGF、IL-1a、IFN-γ、TNFa、IL-2、IP-10、MIG、KC、IL-4。
試験したすべてのサイトカインで見られる結果に典型的なMCP-1(CCL2)およびIP-10についての研究結果を図20に示す。この研究は、カチオン性脂質の場合、サイトカインおよびケモカイン誘導が主にリンパ節に限定されるようであることを示している。典型的なTLRアゴニストであるLPSの場合、サイトカイン誘導はリンパ節に限定されず、ワクチン接種から12時間以内にサイトカインレベルの全身スパイクが観察される。血液循環にサイトカインが存在しないと、カチオン性脂質が、腫瘍微小環境を変化させるための免疫療法の独特で安全な手段を提供することを示唆している。
等価物
当業者であれば、慣用的な実験にすぎないものを用いて、本明細書に記載した本発明の具体的な実施形態に対する多くの等価物を認識するか、確認することができるであろう。
そのような等価物は、添付の特許請求の範囲に包含されることが意図される。

Claims (41)

  1. 単離された樹状細胞の集団と、
    少なくとも1つのカチオン性脂質と、
    少なくとも1つのペプチド抗原と、を含む、ワクチンを製造するための組成物。
  2. 前記少なくとも1つのペプチド抗原は、自己会合複合体である、請求項1に記載の組成物。
  3. 前記少なくとも1つの抗原は、疎水性が高められたアミノ酸を有する、修飾されたタンパク質、リポタンパク質、リポペプチド、ペプチドまたはそれらの組み合わせである、請求項1に記載の組成物。
  4. 前記少なくとも1つの抗原は、癌または腫瘍関連抗原を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
  5. 前記少なくとも1つの抗原は、患者における遺伝子のタンパク質産物を含み、前記遺伝子は、癌遺伝子、腫瘍抑制遺伝子、変異を有する遺伝子、腫瘍細胞に特有の再構成を有する遺伝子、再活性化胚遺伝子産物、癌胎児性抗原、組織特異的分化遺伝子、成長因子受容体、および細胞表面タンパク質遺伝子からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
  6. 前記少なくとも1つの抗原は、微生物抗原を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
  7. 前記微生物抗原は、ウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原、および微生物抗原の天然単離物、断片、およびその誘導体からなる群から選択される、請求項6に記載の組成物。
  8. 複数の抗原を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
  9. 前記少なくとも1つの抗原は、非免疫原性のペプチドまたは免疫原性が乏しいペプチドを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
  10. 前記少なくとも1つのカチオン性脂質は、リンカーによって前記少なくとも1つの抗原と構造的に結合している、請求項1に記載の組成物。
  11. 前記リンカーは、セリン-セリンのジペプチドリンカーである、請求項10に記載の組成物。
  12. 前記カチオン性脂質は、前記抗原をカプセル封入する、請求項1に記載の組成物。
  13. 前記カチオン性脂質は、リポソームを含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物。
  14. 前記カチオン性脂質および前記抗原は、エマルジョンである、請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物。
  15. 前記少なくとも1つのカチオン性脂質は、R-DOTAP、S-DOTAP、DOEPC、DDA、およびDOTMAからなる群から選択される、請求項1~14に記載の組成物。
  16. 前記カチオン性脂質は精製されている、請求項1~15に記載の組成物。
  17. 前記カチオン性脂質はエナンチオマーである、請求項1~16に記載の組成物。
  18. 前記カチオン性脂質はナノ粒子を形成する、請求項1~17に記載の組成物。
  19. 前記ナノ粒子は直径が約10,000nm未満である、請求項18に記載の組成物。
  20. 樹状細胞をex vivoで活性化する方法であって、
    単離された樹状細胞を得る工程と、
    単離された樹状細胞を、有効量の少なくとも1つのカチオン性脂質と少なくとも1つの
    抗原とを含む組成物で処理する工程と、
    を含み、
    前記単離された樹状細胞を処理するによって、前記単離された樹状細胞が活性化される
    、方法。
  21. 前記少なくとも1つのカチオン性脂質は、R-DOTAP、S-DOTAP、DOEP
    C、DDA、およびDOTMAからなる群から選択され、
    前記少なくとも1つの抗原は癌抗原である、請求項20に記載の方法。
  22. 前記樹状細胞を、少なくとも成長因子または少なくともサイトカインまたはそれらの組
    み合わせで処理する工程をさらに含む、請求項20に記載の方法。
  23. 前記単離された樹状細胞はヒトである、請求項20~22のいずれか1項に記載の方法
  24. 前記少なくとも1つのサイトカインはGMCSFである、請求項20~23のいずれか
    1項に記載の方法。
  25. 癌ワクチンの製造に使用するために樹状細胞をex vivoで活性化する方法であっ
    て、
    単離された樹状細胞を得る工程と、
    前記単離された樹状細胞を、
    有効量の少なくとも1つのカチオン性脂質と、
    少なくとも1つの癌抗原と、
    少なくとも成長因子または少なくともサイトカインまたはそれらの組み合わせと、
    を含む組成物で処理する工程と、
    を含み、
    前記樹状細胞を処理することによって、前記樹状細胞が活性化される、方法。
  26. 前記樹状細胞は、ヒト樹状細胞である、請求項25に記載の方法。
  27. 前記少なくとも1つのサイトカインはGMCSFである、請求項25または26に記載
    の方法。
  28. 癌樹状細胞ワクチンを製造するための方法であって、
    単離された樹状細胞を得る工程と、
    前記単離された樹状細胞を、
    有効量の少なくとも1つのカチオン性脂質と、
    少なくとも1つの癌抗原と、
    少なくとも成長因子または少なくともサイトカインまたはそれらの組み合わせと、
    を含む組成物で処理する工程と、
    を含み、
    前記樹状細胞を処理することによって、前記樹状細胞が活性化される、方法。
  29. 前記樹状細胞を成長因子およびGM-CSFで処理することをさらに含む、請求項28に記載の方法。
  30. 癌患者において治療免疫応答を高めるための方法であって、
    単離された樹状細胞を得る工程と、
    前記単離された樹状細胞を、
    有効量の少なくとも1つのカチオン性脂質と、
    少なくとも1つの癌抗原と、
    少なくとも成長因子または少なくともサイトカインまたはそれらの組み合わせと、
    を含む組成物で処理する工程と、
    を含み、
    前記樹状細胞を処理することによって、前記樹状細胞が活性化される、方法。
  31. 癌患者を治療するための方法であって、
    単離された樹状細胞を得る工程と、
    前記単離された樹状細胞を、
    有効量の少なくとも1つのカチオン性脂質と、
    少なくとも1つの癌抗原と、
    少なくとも成長因子または少なくともサイトカインまたはそれらの組み合わせと、
    を含む組成物で活性化する工程と、
    それによって活性化された樹状細胞を作製する工程と、
    適切な数の活性化された樹状細胞を前記患者に投与する工程と、
    を含み、
    前記適切な数の活性化された樹状細胞を投与することによって、前記癌の前記患者が治療される、方法。
  32. 前記組成物中の前記少なくとも1つの抗原に特異的なCD8+T細胞のレベルを周期的に確認する工程と、
    前記樹状細胞を前記患者に投与した後に続いて、前記患者におけるTreg細胞のレベルを確認する工程と、
    をさらに含み、
    抗原特異的CD8+T細胞のレベルが高く、Treg細胞のレベルが低いことが、前記患者に対し、前記癌を効果的に治療していることを示す、請求項31に記載の方法。
  33. 前記カチオン性脂質は、R-DOTAP、S-DOTAP、DOEPC、DDA、およびDOTMAからなる群から選択される、請求項28、30、31または32のいずれか1項に記載の方法。
  34. 腫瘍微小環境を変化させるための、腫瘍抗原と組み合わせた、カチオン性脂質の使用。
  35. 前記腫瘍微小環境を変えることとは、免疫抑制性調節性T細胞の集団を減少させることである、請求項34に記載の使用。
  36. 前記腫瘍内の免疫抑制性調節性T細胞の集団が減少し、腫瘍特異的CD8+T細胞またはCD4+T細胞または両方の集団が増加する、請求項34に記載の方法。
  37. 効果的な免疫療法に対して重要な3つの機能である、i)前記抗原の、MHCクラスI
    によるCD8+T細胞と、MHCクラスIIによるCD4+T細胞と、に対する提示、i
    i)T細胞の増殖とT細胞の活性化を促進する前記サイトカインおよびケモカインの誘導
    、iii)腫瘍に浸潤するT細胞の誘導、iv)前記腫瘍微小環境内における前記免疫抑
    制性細胞集団の低減、の各々を行うための、カチオン性脂質系ワクチンの使用。
  38. 前記免疫抑制性細胞集団は前記Treg集団である、請求項37に記載の使用。
  39. in vivoでの抗原特異的T細胞応答を亢進させるための、タンパク質およびペプ
    チド系樹状細胞ワクチンにおけるカチオン性脂質の使用。
  40. 前記カチオン性脂質は、R-DOTAP、S-DOTAP、DOEPC、DDA、およ
    びDOTMAからなる群から選択される、請求項34~39に記載の使用。
  41. 前記カチオン性脂質は、少なくとも1つの癌ペプチド抗原との組み合わせである、請求
    項34~39に記載の使用。

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