JP2023085043A - メタン発酵方法、メタン発酵促進剤およびその製造方法 - Google Patents

メタン発酵方法、メタン発酵促進剤およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 グリセリンを活用しつつ、有機性廃棄物から、メタンを含むバイオガスを効率よく製造することのできるメタン発酵方法、およびメタン発酵を促進することのできるメタン発酵促進剤を提供する。【解決手段】 メタン発酵系に有機性廃棄物を投入し、メタンを含むバイオガスを製造するメタン発酵方法において、メタン発酵促進剤を、有機性廃棄物と組み合わせて用い、メタン発酵促進剤は、グリセリンを含有し、n-ヘキサン抽出物質が10,000mg/kg以下であることを特徴とするメタン発酵方法。本発明によれば、メタン発酵促進剤およびその製造方法もさらに提供される。【選択図】図3

Description

本発明は、メタン発酵系に有機性廃棄物を投入し、メタンを含むバイオガスを製造するメタン発酵方法に関するものであり、特に、所定のメタン発酵促進剤を有機性廃棄物と組み合わせて用いる方法に関するものである。また、本発明は、上記メタン発酵方法において用いられるメタン発酵促進剤およびその製造方法にも関する。
従来より、生ごみ、下水処理場等から生じる汚泥、畜糞尿等の有機性廃棄物をバイオマス資源ととらえ、これらからエネルギーを回収することが行われている。メタン発酵は、これら有機性廃棄物からエネルギーを回収するための有力な手段の一つである。
ところで、地球温暖化防止の観点から、二酸化炭素の発生を削減し、資源のリサイクルに繋がるような、従来の化石燃料に替わる燃料の開発が進められており、その一つとして、植物油や廃食油等を原料とするバイオディーゼル燃料が注目されている。バイオディーゼル燃料の合成方法としては、動植物の油脂や廃食用油等の油脂と、1価アルコールとを原料とし、アルカリ性物質を触媒としてエステル交換反応により合成する方法が主流である(例えば、非特許文献1)。この合成反応において、グリセリンを含有する副産物(廃グリセリン)も生成される。
また、油脂から遊離脂肪酸を工業的に製造する方法としては、高温高圧分解法、酵素分解法等が挙げられるが、いずれも動植物等に由来する油脂を加水分解して脂肪酸を遊離するものである。かかる加水分解においても、グリセリンを含有する副産物が生成される。
グリセリンを含有する廃棄物は、触媒や未反応油脂等の不純物を多く含むものである。そのため、グリセリンそのものには、医薬品や化粧品等の原料としての用途があるものの、上述したグリセリン含有廃棄物を医薬品や化粧品等の原料として用いるためには多大なコストをかけて精製しなければならず、実用的ではなかった。そのため、グリセリン含有廃棄物は、産業廃棄物として処分されることが多かった。
このような中、廃グリセリン等のグリセリン含有廃棄物を、生ごみ等と混合し、上述したメタン発酵の原料として利用する方法が提案されている(例えば、特許文献1~2)。
特開2006-348191号公報 特開2005-279411号公報
日本マリンエンジニアリング学会誌,2012年,第47巻,第1号,第45-50頁
しかしながら、上記のグリセリン含有廃棄物はメタン発酵を阻害する効果があることが知られており、メタン発酵の原料として有用とはいえなかった。そのため、メタン発酵の原料としてごく少量しか添加することができず、グリセリン含有廃棄物の有効活用の観点からは十分なものとはいえなかった。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、グリセリンを活用しつつ、有機性廃棄物から、メタンを含むバイオガスを効率よく製造することのできるメタン発酵方法、およびメタン発酵を促進することのできるメタン発酵促進剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、有機性廃棄物を原料とするメタン発酵において、グリセリンを含有する所定の組成物が、メタン発酵を阻害するどころか、むしろ促進することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
具体的には、本発明は以下のとおりである。
〔1〕 メタン発酵系に有機性廃棄物を投入し、メタンを含むバイオガスを製造するメタン発酵方法において、
メタン発酵促進剤を、前記有機性廃棄物と組み合わせて用い、
前記メタン発酵促進剤は、グリセリンを含有し、n-ヘキサン抽出物質が10,000mg/kg以下である
ことを特徴とするメタン発酵方法。
〔2〕 前記メタン発酵促進剤におけるグリセリンの含有量が600,000mg/kg以上であることを特徴とする〔1〕に記載のメタン発酵方法。
〔3〕 前記メタン発酵促進剤のCODCrと前記有機性廃棄物のCODCrとの比が、10:1~1:10となるように前記メタン発酵促進剤を用いることを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載のメタン発酵方法。
〔4〕 有機性廃棄物と組み合わせてメタン発酵系に投入するメタン発酵促進剤を製造する方法であって、
グリセリンおよび脂肪酸グリセリンエステルの少なくとも1種を含有する原料と、無機酸とを混合し、第一の油分と第一のグリセリン含有液とを分離する第一の分離工程と、
前記第一のグリセリン含有液をアルカリ性物質により中和する中和工程と、
中和された前記第一のグリセリン含有液から、第二の油分および析出した無機塩を分離する第二の分離工程と、
を備えることを特徴とするメタン発酵促進剤の製造方法。
〔5〕 前記第二の分離工程の後に1価アルコールを除去するアルコール除去工程をさらに備えることを特徴とする〔4〕に記載のメタン発酵促進剤の製造方法。
〔6〕 前記第一の分離工程において、前記原料と前記無機酸との混合液のpHが3以下であることを特徴とする〔4〕または〔5〕に記載のメタン発酵促進剤の製造方法。
〔7〕 前記中和工程において、前記第一のグリセリン含有液のpHが4~8となるように中和することを特徴とする〔4〕~〔6〕のいずれかに記載のメタン発酵促進剤の製造方法。
〔8〕 メタン発酵系に有機性廃棄物を投入し、メタンを含むバイオガスを製造するメタン発酵方法において、メタン発酵を促進するためのメタン発酵促進剤であって、
グリセリンを含有し、n-ヘキサン抽出物質が10,000mg/kg以下であり、
前記有機性廃棄物と組み合わせて用いられる
ことを特徴とするメタン発酵促進剤。
〔9〕 前記グリセリンの含有量が600,000mg/kg以上であることを特徴とする〔8〕に記載のメタン発酵促進剤。
本発明に係るメタン発酵方法によれば、有機性廃棄物を原料とするメタン発酵において、メタンを含むバイオガスを効率よく製造することができる。また、本発明に係るメタン発酵促進剤は、有機性廃棄物を原料とするメタン発酵を促進することができる。
本発明の一実施形態に係るメタン発酵促進剤の製造方法のフローを表す図である。 本発明の好ましい実施形態が備えるエステル化工程(第二のエステル化工程)のフローを表す図である。 実施例で用いた実験装置を示す模式図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔メタン発酵方法,メタン発酵促進剤〕
本発明の一実施形態に係るメタン発酵方法は、メタン発酵系に有機性廃棄物を投入し、メタンを含むバイオガスを製造するメタン発酵方法であり、グリセリンを含有するメタン発酵促進剤を、有機性廃棄物と組み合わせて用いるものである。
(1)メタン発酵系
本明細書において「メタン発酵系」とは、メタン生成菌を主とする種々の嫌気性微生物(加水分解菌、酸生成菌、メタン生成菌等)が定着した有機性の混合物であり、有機物を分解してメタン発酵を行うことができる混合物である。
メタン発酵系は、下水汚泥や動物糞尿等の有機性廃棄物を嫌気性処理して上記嫌気性微生物を定着させることにより得てもよく、安定的に稼働している他のメタン発酵槽からメタン発酵系の一部を採取して用いてもよい。かかるメタン発酵系は、メタン発酵を行うための必須元素をある程度含んでおり、それのみでもメタン発酵反応が生じ得るものであるが、通常のメタン発酵方法においては、次に述べる有機性廃棄物が原料としてさらに投入される。
(2)有機性廃棄物
本明細書において「有機性廃棄物」とは、し尿処理施設、汚泥再生処理センター、下水処理施設や食品工場施設等から廃棄される、有機性汚泥、畜糞尿、生ごみ、食品残渣、稲わら、刈草等の有機物を含む廃棄物を意味し、従来からメタン発酵における原料として利用されているものである。
本実施形態で用いる有機性廃棄物の性状は、特に限定されないが、例えば、CODCrが10,000mg/kg以上であってよく、さらには100,000mg/kg以上であってよい。
ここで、COD(化学的酸素要求量)とは、組成物中の有機物量を、「酸化剤により分解した時の酸素消費量」として表現する指標であり、使用する酸化剤の種類や反応条件に応じて複数の種類がある。本実施形態では、COD指標として、酸化剤に二クロム酸カリウムを用いる「CODCr」を用いる。CODCrは、例えば、JIS K0102に準拠して測定することができる。
また、本実施形態で用いる有機性廃棄物は、それ単独でメタン発酵に用いるとCODCr分解率が低いものであっても、好適に用いることができる。ここで、CODCr分解率は、分解CODCrを投入原料のCODCrで除して算出される値である。また、分解CODCrは、メタン発生量/分解CODCr=0.35n-m/kg・CODCrとし、メタン発生量から算出される値である。すなわち、CODCr分解率は、メタン発酵における炭素源の利用効率を表す指標ということができる。
単独で用いるとCODCr分解率が低い有機性廃棄物は、メタン発酵の原料として利用価値が低いということができる。また、メタン発酵系がメタン発酵反応を行った後の残渣は消化液と呼ばれ、排水処理が必要となるが、CODCr分解率が低い原料を用いると排水処理への負荷が大きくなり、多くのコストがかかる。
これに対し、本実施形態の好ましい一態様によれば、上記メタン発酵促進剤と組み合わせて用いることにより、例えば、CODCr分解率を向上させることができる。これにより、従来は利用価値が低いと考えられていた有機性廃棄物であっても、メタン発酵に好適に用いることができる。また、消化液の排水処理もより容易となる。
また、本実施形態で用いる有機性廃棄物は、グリセリンの含有量が100,000mg/kg以下であってよく、さらには10,000mg/kg以下であってよく、グリセリンを全く含有しなくてもよい。グリセリンを比較的高濃度に含む有機性廃棄物は、同時に油分も高濃度に含むことが多く、その油分がメタン発酵の効率を低下させる場合があること、また、そのままメタン発酵の炭素源として用いるよりは、後述する方法によりメタン発酵促進剤を製造し、他の有機性廃棄物と組み合わせて用いるほうがメタン発酵の効率が高まるからである。
(3)メタン発酵促進剤
本実施形態で用いるメタン発酵促進剤は、グリセリンを含有する。グリセリンを含有するメタン発酵促進剤は、メタン発酵において上述した有機性廃棄物と組み合わせて用いることにより、メタン発酵反応を促進することができる。
グリセリンは炭素数3の3価アルコールであり、メタン発酵系に定着している嫌気性微生物(例えば、酸生成菌等)により、酢酸やプロピオン酸等に変換され、これらはメタン生成菌等によるメタン発酵反応の原料となる。すなわち、グリセリンはそれ単独でもメタン発酵原料として有用ということができる。しかし、後述する実施例にて示すように、グリセリンを含むメタン発酵促進剤を有機性廃棄物と組み合わせて用いることで、当該有機性廃棄物を単独で原料とした場合だけでなく、メタン発酵促進剤を単独で原料とした場合と比較しても、メタン発酵反応は促進される。
かかる本実施形態の効果は、特定の作用機序に限定されるものではないが、例えば、メタン生成菌のみならず、メタン発酵系に定着している他の嫌気性微生物(例えば、加水分解菌、酸生成菌等)にとっても、グリセリンが利用しやすい炭素源であるため、メタン生成菌だけでなく他の嫌気性微生物も活性化し、メタン発酵系の全体のバランスが好適化されるものと推測される。そして、メタン発酵系のバランスが好適化されることにより、メタン発酵反応において、グリセリン(メタン発酵促進剤)だけでなく、有機性廃棄物も効率的に利用することができ、メタン発酵反応を全体として促進することができるものと推測される。
ただし、本実施形態によるメタン発酵促進効果は、かかる作用機序に基づく促進効果に限定されるものではない。
メタン発酵促進剤におけるグリセリンの含有量は、600,000mg/kg以上であることが好ましく、700,000mg/kg以上であることがさらに好ましく、900,000mg/kg以上であることが特に好ましい。なお、メタン発酵促進剤におけるグリセリンの含有量の上限は特に限定されず、例えば100%(1,000,000mg/kg)であってもよいが、そこまでの高純度は特に必要とされない。
本実施形態で用いるメタン発酵促進剤は、n-ヘキサン抽出物質(n-Hex)が10,000mg/kg以下であることが好ましく、5,000mg/kg以下であることがさらに好ましく、2,000mg/kg以下であることが特に好ましい。ここで、n-Hexは、有機溶剤であるn-ヘキサンによって抽出される不揮発性の物質の総称であり、水中の「油分等」の量を表す指標として用いられているものである。n-Hexは、昭和49年環境省告示64号付表4抽出・重量法により測定することができる。本実施形態のメタン発酵促進剤は、n-Hexが小さい値となっていること、言い換えると油分が除去されていることにより、メタン発酵の効率を向上させることができる。
本実施形態で用いるメタン発酵促進剤は、上記のほか、以下の性状を有するものが例示される。
上記メタン発酵促進剤のCODCrは、730,000mg/kg以上であることが好ましく、さらには850,000mg/kg以上であることがさらに好ましく、1,100,000mg/kg以上であることが特に好ましい。メタン発酵促進剤のCODCrの上限は特に限定されず、例えば、グリセリンが100%である場合のCODCr(1,220,000mg/kg)であってもよいが、そこまでの高いCODCrは特に必要とされない。
本実施形態においては、メタン発酵促進剤を、上述した有機性廃棄物と組み合わせて用いる。
ここで、上記「組み合わせて用いる」とは、メタン発酵促進剤と有機性廃棄物とを混合してメタン発酵系に投入する態様のほか、メタン発酵促進剤と有機性廃棄物とを混合せずに別々にメタン発酵系に投入する態様も包含される。ただし、メタン発酵系に別々に投入する場合は、メタン発酵の促進効果を効果的に発揮させる観点から、メタン発酵促進剤と有機性廃棄物とを同時に投入するか、一方の投入が完了したのち所定時間内(例えば、24時間以内)に他方の投入を開始することが好ましい。
メタン発酵促進剤と有機性廃棄物との組み合わせにおける使用比率は、メタン発酵促進効果が得られる観点において適宜調整することができるが、例えば、メタン発酵促進剤のCODCrと有機性廃棄物のCODCrとの比(メタン発酵促進剤:有機性廃棄物)が、10:1~1:10となるように、上記メタン発酵促進剤を用いると、好ましい。メタン発酵促進剤と有機性廃棄物との使用比率が上記範囲にある場合、メタン発酵促進効果がより効果的に発揮される。
(4)副原料
本実施形態においては、上述した有機性廃棄物、メタン発酵促進剤のほか、副原料として、リンや窒素を含む化学物質、例えば、リン酸、リン酸塩、アンモニア、アンモニウム塩、具体的には、リン酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム等を適宜用いてもよい。これらの副原料は、上述した有機性廃棄物およびメタン発酵促進剤とともにメタン発酵系に投入される。
(5)メタン発酵反応
メタン発酵反応は、通常、反応槽であるメタン発酵槽に、メタン生成菌を主とする種々の嫌気性微生物が定着したメタン発酵系が入れられており、反応条件は嫌気条件に保たれている。そして、上記メタン発酵系に、原料としての有機性廃棄物のほか、副原料、その他メタン発酵を促す有機物・必須元素等が投入され、これらは混合物となっている。メタン発酵槽は、メタン発酵系、原料、メタン生産菌等が均一に分散しメタン発酵反応が進行するように、撹拌機が設置されていることが好ましい。
本実施形態のメタン発酵方法は、従来からメタン発酵の原料として用いられている有機性廃棄物に、上述したメタン発酵促進剤を組み合わせて用いる点に特徴があるが、それ以外は従来のメタン発酵と同様に行うことができるため、既存のメタン発酵設備等をそのまま利用することができる。
メタン発酵槽内では、上述した混合物が嫌気性微生物で分解され、メタン発酵反応の進行に伴って、メタンを含むバイオガスと消化液とが生成される。具体的には、メタン発酵槽内では、メタン発酵によって生成されたメタンガスを主とするバイオガスが発酵槽の最上部の空洞部分に滞留し、下部に消化液が貯留される。
本実施形態においては、発酵槽内を37℃付近に保ちながら行う中温発酵、および55℃付近に保ちながら行う高温発酵のいずれでもよく、嫌気牲の雰囲気下で内容物を攪拌しながらメタン発酵を実行するのが好ましい。
本実施形態で行われるメタン発酵反応は、全ての原料をメタン発酵槽へ投入してから反応を開始し、生成したバイオガスを適宜回収する回分式(バッチ式)であってもよく、原料をメタン発酵槽へ連続的に投入し、生成したバイオガスを連続的に回収する連続式であってもよい。メタン発酵においては、生成したバイオガスが、消化液から容易に分離され、連続的な回収も容易であるため、連続式も好適に採用することができる。
連続式でメタン発酵を実施する場合、メタン発酵槽内のCODCr負荷が2~20kg/m3・dayの範囲内に入るように、有機性廃棄物およびメタン発酵促進剤の投入量等を適宜調節することが好ましい。さらに好ましくは、メタン発酵槽内のCODCr負荷を5~10kg/m3・dayとする。CODCr負荷をかけ過ぎると、メタン発酵が速やかに進行し難くなる。上記のようなCODCr負荷の範囲に発酵槽内を調整することで、メタン発酵の速度を維持することが容易となる。なお、CODCr負荷は、有機性廃棄物およびメタン発酵促進剤等のメタン発酵原料の投入量、希釈量、流量等によって調整することができる。
また、メタン発酵反応を効率的に進行させる観点から、メタン発酵槽内の全窒素(T-N)濃度が100~10,000mg/Lになるよう、さらには500~5,000mg/Lとなるように調整することが好ましい。メタン発酵原料に含まれる窒素成分は菌体の合成に利用される一方、分解物であるアンモニアはメタン発酵の阻害要因となる場合があるため、混合比率や希釈による調整を行うことが好ましい。T-Nが上記範囲になるように調整することで、メタン発酵が好適に進行し、メタンの生成量が増加する。メタン発酵槽内のT-Nの調整は、主原料である有機性廃棄物や副原料等の投入量により調整することができる。
なお、全窒素(T-N)は組成物中に含まれる窒素化合物の総量を示すものであり、下水試験方法 第5編 第1章 第18節1の「ケルダール窒素法」に準拠して測定することができる。
メタン発酵槽内の全リン(T-P)は、100mg/L以上に調整することができる。なお、全リン(T-P)は組成物中に含まれるリン化合物の総量であり、JIS K0102-46.3.2「硝酸-過塩素酸分解法」に準拠して測定することができる。
メタン発酵槽で生成された、メタンを含むバイオガスは、適宜回収され、発電などの燃料として用いるほか、精製後、高純度のメタンガスとして種々の用途に用いられる。
〔メタン発酵促進剤の製造方法〕
上述した実施形態に係るメタン発酵促進剤は、上記要件を満たすものであれば特に限定されることなく用いることができる。ただし、以下に述べる製造方法によれば、上記要件を満たすメタン発酵促進剤を、産業廃棄物等から安価に製造することができるため、特に好適である。
具体的には、本発明の一実施形態に係る、メタン発酵促進剤を製造する方法は:グリセリンおよび脂肪酸グリセリンエステルの少なくとも1種を含有する原料と、無機酸とを混合し、第一の油分と第一のグリセリン含有液とを分離する第一の分離工程と;第一のグリセリン含有液をアルカリ性物質により中和する中和工程と;中和された第一のグリセリン含有液から、第二の油分および析出した無機塩を分離する第二の分離工程と;を備える。
図1は本実施形態に係るメタン発酵促進剤の製造方法の特に好適な実施形態におけるフローを表す図である。図1においては、グリセリン含有廃棄物または脂肪酸グリセリンエステル含有廃棄物を含む原料に無機酸を混合して第一の油分を分離除去する第一の分離工程と、それに続く第一のグリセリン含有液の中和工程と、中和されたグリセリン含有液から第二の油分と無機塩を分離除去する第二の分離工程と、それに続く第二のグリセリン含有液から1価アルコールを分離除去するアルコール除去工程とにより、メタン発酵促進剤を得る方法が図示されている。なお、アルコール除去工程は任意工程であり、第二のグリセリン含有液はアルコール除去工程を介さずにメタン発酵促進剤としてもよい。
(6)メタン発酵促進剤の原料
本実施形態において用いる、メタン発酵促進剤の原料は、グリセリンおよび脂肪酸グリセリンエステルの少なくとも1種を含むものであれば、特に限定されない。
グリセリンを含む原料としては、例えば、グリセリンを含有する廃棄物が例示される。
一方、脂肪酸グリセリンエステルを含む原料は、後述する第一の分離工程において、酸触媒エステル交換反応等によりグリセリンを生成するため、これらも好適に利用することができる。また、後述するエステル化工程(第二のエステル化工程)を行う場合には、メタン発酵促進剤の原料として、脂肪酸グリセリンエステルを含む原料を用いることが好ましい。
なお、本明細書における「脂肪酸グリセリンエステル」とは、脂肪酸とグリセリンのエステルであり、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリドを包含する用語である。
以下、グリセリン含有廃棄物および脂肪酸グリセリンエステル含有廃棄物についてやや詳しく説明する。
(6-1)グリセリン含有廃棄物
本実施形態で用いられるグリセリン含有廃棄物としては、バイオディーゼル燃料の製造過程で副生される廃グリセリン、遊離脂肪酸の製造工程で副生されるグリセリン廃液、甘水、脂肪酸アルキルエステルの洗浄廃水などを用いることができる。
ここで、遊離脂肪酸の製造工程で副生されるグリセリン廃液とは、動植物の油脂を加水分解して遊離脂肪酸を製造する場合に副生される廃棄物である。加水分解による遊離脂肪酸の製造方法としては、高温高圧分解法、酵素分解法等が挙げられる。かかる製造工程で副生されるグリセリン廃液には、グリセリンの他、未反応の油脂、部分的に加水分解された油脂等が含まれる。
また、甘水は、油脂を鹸化(アルカリ加水分解)して脂肪酸塩を生成させる場合(例えば、石鹸の製造過程など)における副生成物であり、グリセリン、水分、アルカリ等を含む。
脂肪酸アルキルエステルの洗浄廃水は、バイオディーゼル燃料をはじめとする脂肪酸アルキルエステルの製造過程において、反応物を洗浄したときに生じる廃水であり、水分の他、脂肪酸アルキルエステルの製造反応において副生されるグリセリンが含まれ、さらに未反応の遊離脂肪酸およびその塩、1価アルコール等が含まれる。
次に、バイオディーゼル燃料の製造過程で副生される廃グリセリンについて、やや詳しく説明する。
バイオディーゼル燃料となる脂肪酸アルキルエステルは、植物油などの原料油脂に、メタノール等の1価アルコールと、水酸化カリウム等のアルカリ触媒とを加え、エステル交換反応を行うことで得られる。
バイオディーゼル燃料の原料油脂としては、菜種油、パーム油、オリーブ油、ひまわり油、大豆油、コメ油、大麻油等の植物油;魚油、豚脂、牛豚等の獣脂;天ぷら油等の廃食油;などを用いることができる。
1価アルコールとしては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、エチルヘキサノール等を用いることができ、メタノールおよびエタノールが好ましく、メタノールが特に好ましい。
アルカリ触媒としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、酸化カルシウム等を用いることができるが、本実施形態で分離回収される塩の析出性や再利用容易性等の観点から、水酸化カリウムが好ましい。
上記エステル交換反応においては、原料油脂に含まれる脂肪酸グリセリンエステルが1価アルコールと反応し、脂肪酸アルキルエステルおよびグリセリンが生成する。得られる反応液は、脂肪酸アルキルエステル相と、廃グリセリン相とに液々分離し、バイオディーゼル燃料の製造においては、得られた脂肪酸アルキルエステル相を回収して洗浄等を行い、バイオディーゼル燃料とする。
一方、廃グリセリン相は、グリセリンを高濃度に含む他、未反応の1価アルコール(特にメタノール)、未反応の油脂(脂肪酸グリセリンエステル)、脂肪酸およびその塩、アルカリ触媒、さらには原料油脂に由来する夾雑物などが含まれる。廃グリセリンとしては、液状の廃グリセリンであっても良いし、また、固体状の廃グリセリンであっても良いが、作業性、取り扱い等の観点から、液状の廃グリセリンであることが好ましい。
廃グリセリンにおけるグリセリン、1価アルコール、油脂並びに脂肪酸およびその塩の含有量は特に限定されないが、通常、廃グリセリン全体に対して、グリセリンは25質量%以上65質量%以下、1価アルコールは2質量%以上20質量%以下、油脂ならびに脂肪酸およびその塩の合計は30質量%以上50質量%以下となる場合が多い。
廃グリセリンはアルカリ触媒を多量に含むため、pHは9以上であることが多く、本実施形態においては、9~13であってよい。
第一の分離工程において、廃グリセリンに含まれる未反応の油脂および1価アルコールによる酸触媒エステル化反応を進行させやすくする観点から、廃グリセリンにおける水分の含有量は、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることが特に好ましい。廃グリセリンにおける水分含有量は、加熱、減圧、乾燥剤等の使用、精製グリセリン中を透過させることなどにより適宜調整することができる。
ここで、グリセリンは医薬品や化粧品等の原料となり得るが、廃グリセリンに含まれるグリセリンをかかる用途に用いるためには高純度に精製する必要があり、多大なコストやエネルギーを要する。そのため廃グリセリンはグリセリンとしての利用価値がかなり低く、従来は処理困難物となっていた。
しかし、本実施形態によれば、廃グリセリンをメタン発酵促進剤の主原料として用いることができ、産業廃棄物である廃グリセリンを有効活用できる観点からも、環境負荷を低減することができる。また、これら廃グリセリンから製造したメタン発酵促進剤は、カーボンニュートラルな天然油脂を原料としているため、メタン発酵により生産されるバイオガス・電気・熱などのエネルギーは再生可能エネルギーに位置づけられる。
本実施形態においては、後述する第一の分離工程における利用のしやすさの観点から、以上述べたグリセリン含有廃棄物の中でも、バイオディーゼル燃料の製造過程で副生される廃グリセリン、および遊離脂肪酸の製造工程で副生されるグリセリン廃液の少なくとも1種を用いることが好ましく、バイオディーゼル燃料の製造過程で副生される廃グリセリンを用いることが特に好ましい。
(6-2)脂肪酸グリセリンエステル含有廃棄物
本実施形態においては、脂肪酸グリセリンエステルを含有する廃棄物もメタン発酵促進剤の原料として用いることができる。本実施形態においては、無機酸を用いた第一の分離工程、中和工程および第二の分離工程にて行うため、脂肪酸グリセリンエステルを含有する原料を用い、第一の分離工程における酸触媒エステル化反応によりグリセリンの収量を高めることもできる。
脂肪酸グリセリンエステルを含有する廃棄物としては、例えば、廃食油や賞味期限切れ油脂含有食品(天ぷら油、マヨネーズ、ドレッシング、バター、クリーム、チーズ等)、動植物油、高酸価油(グリストラップ油、下水油、地溝油、廃液処理再生油等)の脂肪酸グリセリンエステルを主成分とする油脂;油滓、石鹸等の脂肪酸塩を主成分とする組成物;などが挙げられる。
なお、本明細書において「主成分とする」とは、当該組成物において含有量が最も多い成分(ただし最も多い成分が水である場合には2番目に含有量が多い成分)であることを意味し、好ましくは含有量が40質量%以上、より好ましくは50質量%以上である。
ここで、高酸価油は、酸価10mgKOH/g以上の油脂をいい、油脂の主成分である脂肪酸グリセリンエステルの他、遊離脂肪酸等を含む。酸価は20mgKOH/g以上であってよく、さらには50mgKOH/g以上であってもよい。なお、酸価の上限は、通常は200mgKOH/g以下である。
油滓は、植物油脂の精製における脱酸工程において油脂(原油)から分離される副生成物であり、脂肪酸塩、脂肪酸グリセリンエステル、アルカリ、水分等を含む。
なお、脂肪酸グリセリンエステルを含有するものであれば、例示したこれらの組成物以外であっても用いることができる。例えば、グリセリン含有廃棄物として例示した、バイオディーゼル燃料の製造過程で副生される廃グリセリンは、未反応の油脂(すなわち、脂肪酸グリセリンエステル)を含有するため、脂肪酸グリセリンエステル含有廃棄物としても用いることができる。
(7)第一の分離工程
第一の分離工程は、グリセリンおよび脂肪酸グリセリンエステルの少なくとも1種を含む原料と、無機酸とを混合し、第一の油分と第一のグリセリン含有液とを相分離する工程である。
本工程で分離される油分には、脂肪酸アルキルエステルの他、脂肪酸グリセリンエステル、遊離脂肪酸が含まれる。
グリセリンを含む原料を用いる場合、中でも廃グリセリンを用いる場合には、本工程において、廃グリセリン等に含まれる脂肪酸の塩が、無機酸により遊離脂肪酸に変換される。また、脂肪酸およびその塩は、無機酸を酸触媒とし、廃グリセリンに含まれる未反応の1価アルコールとのエステル化反応により、脂肪酸アルキルエステルを生成する。
また、原料として脂肪酸グリセリンエステル含有廃棄物を用いる場合には、1価アルコールとのエステル交換反応により、脂肪酸アルキルエステルとグリセリンとを生成する。この場合の1価アルコールは、別途添加することができ、例えば、後述するアルコール分離工程において回収した1価アルコールを用いることができる。また、脂肪酸グリセリンエステル含有廃棄物と同時に廃グリセリンを処理することにより、廃グリセリンに含まれる未反応の1価アルコールを利用してもよい。
1価アルコールの存在下で第一の分離工程を行う場合、本工程は酸触媒エステル化工程ということもできる。なお、後述する第二のエステル化反応との対比において、第一の分離工程を「第一のエステル化工程」という場合がある。
なお、1価アルコールが含まれない場合であっても、脂肪酸グリセリンエステルは、第一の分離工程において酸の存在下で遊離脂肪酸とグリセリンとを生成する。また、原料に脂肪酸塩が含まれる場合は、酸により脂肪酸塩が遊離脂肪酸に変換され、グリセリンと分離しやすくなる。
そのため、原料に1価アルコールが含まれない場合であっても、本実施形態を好適に適用することができる。
本実施形態においては、無機酸の存在下で第一の分離工程を行うため、多様な原料を同時に処理することができる。また、第一の分離工程を行うことにより、廃グリセリン、廃食油、高酸価油など、グリセリンや脂肪酸グリセリンエステルを含有する廃棄物を有効活用できるため、環境負荷の低減にも寄与することができる。
なかでも高酸価油は、酸価が10mgKOH/g以上と高いことから前述したアルカリ触媒によるエステル交換反応の原料としての利用は困難である。しかし、酸触媒エステル化反応ともいうべき第一の分離工程においては、高酸価油も原料として好適に用いることができる。
廃グリセリンや脂肪酸グリセリンエステル含有廃棄物などをメタン発酵促進剤の原料として用いる場合には、第一の分離工程で生じる脂肪酸アルキルエステルおよび遊離脂肪酸は、第一の油分からなる油相に移行するため、第一のグリセリン含有液と分離することができる。なお、油相を回収した場合、得られた第一の油分(脂肪酸アルキルエステル,遊離脂肪酸等)は、さらなるエステル化反応(後述するエステル化工程)に付し、最終的にはバイオディーゼル燃料等の原料とすることができる。
一方、第一のグリセリン含有液は、無機酸の添加により酸性化されている。また、第一のグリセリン含有液は、無機酸とグリセリン含有廃棄物に含まれるアルカリとから生成した無機塩を含有する場合がある。なお、無機塩の一部は析出していてもよく、すなわち第一のグリセリン含有液は、酸性グリセリン相と析出した無機塩とを含んでいてもよい。
第一の分離工程において使用し得る原料は、水分含有量が10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることが好ましい。水分含有量が低い原料(例えば、水分含有量の少ない廃グリセリン等)を用いることで、後述する反応液の水分含有量を低くすることが容易となる。なお、原料の水分含有量は、加熱、減圧、乾燥剤等の使用、精製グリセリン中を透過させることなどにより適宜調整することができる。
第一の分離工程で用いる無機酸としては、濃硫酸、リン酸、濃硝酸、塩化水素等が挙げられるが、水分含有量の低い濃硫酸およびリン酸が好ましく、濃硫酸が特に好ましい。
第一の分離工程においては、上記原料と上記無機酸との混合液(反応液)のpHを3以下にすることが好ましく、1以下にすることが特に好ましい。反応液のpHは、上記無機酸の添加量により調整することができる。
反応液は、水分含有量を10質量%以下とすることが好ましく、0.5質量%以下とすることが特に好ましい。反応液の水分含有量は、各原料の水分含有量および投入量の調整、反応液への乾燥剤の使用などにより適宜調整することができる。
反応液のpHおよび水分含有量を上記範囲とすることで、酸触媒エステル化反応の効率を高めることができ、また第一の油分と第一のグリセリン含有液(酸性グリセリン相、無機塩を含む)とを良好に分離させることができる。
第一の分離工程における反応液の温度は、30~64℃とすることができ、さらには50~60℃とすることができる。また、反応時間は、0.5時間以上とすることができ、さらには4時間以上とすることができ、さらにまた8時間以上とすることができる。この間は反応液を攪拌することが好ましい。反応時間の上限は特に限定されないが、例えば20時間以内、さらには12時間以内とすることができる。
上記反応(あるいは攪拌)が終了したのち、0.2~12時間静置することで、脂肪酸アルキルエステルや未反応の油脂等を含む第一の油分と、酸性グリセリン相や無機塩を含む第一のグリセリン含有液とが分離する。第一の油分は、さらなる酸触媒エステル化反応に付すことで、脂肪酸アルキルエステルの生成に用いることができる。一方、第一のグリセリン含有液は、続く中和工程に付される。
(8)中和工程
中和工程は、第一の分離工程で得られた第一のグリセリン含有液を、アルカリ性物質により中和する工程である。
かかるアルカリ性物質としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の水酸化物、を用いることができる。
また、上記アルカリ性物質として、グリセリンを含有する物質を用いることができる。かかるグリセリン含有アルカリ性物質としては、例えば、上記廃グリセリン等、油脂のアルカリ触媒エステル交換反応による副生成物;などが挙げられる。これらは、酸性グリセリンを中和できるのみならず、グリセリンの収量を高めることができるため、かかる観点からもグリセリン含有アルカリ性物質の使用は好ましい。かかるグリセリン含有アルカリ性物質は、脂肪酸塩や脂肪酸グリセリンエステルを含有するものでもよい。
上記グリセリン含有アルカリ性物質は、グリセリン含有量が25質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることが特に好ましい。上限は特に限定されないが、例えば99質量%以下であってよく、90質量%以下であってよい。
また、上記グリセリン含有アルカリ性物質は、pHが9以上であることが好ましく、9~13であることが特に好ましい。
さらに、上記アルカリ性物質として、脂肪酸塩を主成分とする組成物を用いてもよい。脂肪酸塩を主成分とするアルカリ性物資としては、例えば、油滓、アルカリ石鹸などが挙げられる。
上記中和工程においては、グリセリン含有液のpHが4~8となるように、さらには4.5~7.5となるように、特に5~7.5となるように中和することが好ましい。グリセリン含有液のpHがかかる範囲となるように中和することで、続く第二の分離工程において、油分が分離しやすくなり、また無機塩も析出しやすくなる。グリセリン含有液のpHは、上記アルカリ性物質の添加量を制御することで適宜調整することが可能である。
中和工程においては、液性が酸性から中性付近に移行するよう、酸性グリセリン含有液を撹拌しながら上記アルカリ性物質を添加することが好ましい。前述したとおり、中和に用いるアルカリ性物質として脂肪酸塩を含有する物質を用いてもよいところ、上記のような添加順序とすることで、脂肪酸塩が酸により遊離脂肪酸に変換される。遊離脂肪酸は、グリセリン含有液から相分離した油相に移行し、グリセリン含有液のpHが高くなってもグリセリン含有液に再溶解し難くなる。これにより、続く第二の分離工程における分離がより一層容易となる。なお、脂肪酸塩は、上述した脂肪酸の塩を主成分とする物質のほか、油脂のアルカリ触媒エステル交換反応やアルカリ加水分解による副生成物にも含まれる。
上記アルカリ性物質により、第一の分離工程で得られた第一のグリセリン含有液は中和される。中和されたグリセリン含有液は、続く第二の分離工程に付される。
(9)第二の分離工程
第二の分離工程は、中和工程にて得られた中和されたグリセリン含有液から、第二の油分および析出した無機塩を分離し、第二のグリセリン含有液を得る工程である。
ここで、分離される第二の油分には、第一の分離工程でも分離されず第一のグリセリン含有液に残った油脂や脂肪酸の他、中和工程において添加されたアルカリ性物質に由来する油脂や遊離脂肪酸などが含まれる。
また、第二の分離工程において分離される無機塩は、第一の分離工程において添加された無機酸(濃硫酸等)と、アルカリ(カリウム、ナトリウム等)との塩であり、好ましくは硫酸カリウムである。上記アルカリは、第一の分離工程に投入される原料(廃グリセリン等)や、中和工程において添加されたアルカリ性物質に含まれるものであり、無機塩は第一の分離工程や中和工程において析出している。
一方、グリセリン含有液には、グリセリンの他、廃グリセリンに由来する1価アルコール、水分等が含まれる。かかるグリセリン含有液に対し、油分や無機塩は溶解度が低いため、グリセリン含有液と分離される。
この第二の分離工程では、中和後の原料を3~12時間ほど静置後、上部液(油分)、下部液(グリセリン含有液)を別々に回収し、下部液となるグリセリン含有液を得ることができるが、遠心分離等により分離速度を高めることが好ましい。かかる遠心分離においては、上部液(すなわち油分)、下部液(すなわちグリセリン含有液)および固形物(すなわち無機塩)を分離することのできる三相分離型の遠心分離機を好適に用いることができる。また、無機塩が多量に析出する場合には、デカンタ型等の固液分離が可能な遠心分離機により一定程度の無機塩をあらかじめ分離した後、液相部分をさらに三相分離型遠心分離機により分離することが好ましい。
第二の分離工程において得られる第二の油分は、例えば、第一の分離工程において分離された第一の油分と合わせ、さらなる酸触媒エステル化反応(後述するエステル化工程)に付すことで、脂肪酸アルキルエステルの生成に用いることができる。具体的には、第二の分離工程において得られる第二の油分は、バイオディーゼル燃料となる脂肪酸メチルエステル(FAME)製造の原料として用いることができる。即ち、この油分にメタノールと触媒とを加えメチルエステル化反応を起こすというものである。
また、無機塩は、例えば、洗浄工程等を経て無機肥料等の原料とすることができる。
一方、以上のようにして得られた第二のグリセリン含有液は、そのままでもメタン発酵促進剤として用いることができるが、原料等に由来する1価アルコールを除去する場合には、さらにアルコール除去工程に付してもよい。
さらにアルコール除去工程に付すことで、メタン発酵の効率性向上の観点、作業性の観点、さらには危険物として取り扱う必要を回避する観点から、好ましい場合がある。一方、アルコール除去に要する運転コストを節減する観点からは、あるいは第二のグリセリン含有液において1価アルコールの存在が問題とならない場合(例えば、原料に1価アルコールが含まれず、第二のグリセリン含有液にも1価アルコールが含まれない場合など)は、アルコール除去工程に付さずに上記第二のグリセリン含有液をそのままメタン発酵促進剤として用いてもよい。
(10)アルコール除去工程
アルコール除去工程は、第二の分離工程で得られた第二のグリセリン含有液から1価アルコール(メタノール等)を除去する工程であって、必要に応じて実施する任意工程である。
上記第二のグリセリン含有液には、廃グリセリンに由来し、第一の分離工程(酸触媒エステル化反応)においても残存した1価アルコールが含まれ得る。かかる1価アルコールが残存したままでもメタン発酵促進剤として用いることができるが、除去することでメタン発酵の促進効率を向上させることができる。
1価アルコールの分離・除去工程においては、減圧蒸留法、気液接触法、膜分離法などを採用することができる。
減圧蒸留法は、グリセリン含有液を加温(例えば、60℃程度)してメタノール等の1価アルコールを蒸発させ、その後減圧することで1価アルコール等を分離する方法である。分離した1価アルコール等は冷却して回収することができる。
気液接触法は、グリセリン含有液を微細な液滴として気相と接触させ、沸点の低い1価アルコールを気相に移行させて分離する方法であり、具体的にはスプレードライ法等を好適に採用することができる。
膜分離法は、1価アルコールを優先的に透過させる膜を用いる方法である。
ちなみに、第二のグリセリン含有液を蒸留して回収されたメタノール等の1価アルコールは、バイオディーゼル燃料の製造に積極的に用いることができる。
なお、第二のグリセリン含有液には水分がさらに含まれている場合がある。かかる水分は、メタン発酵促進効果を妨げるものではなくメタン発酵促進剤に残存していてもよいが、例えば減圧蒸留法や気液接触法等においては、1価アルコールとともに気相に移行するため水分を除去することもできる。
また、上記1価アルコールを分離するアルコール分離工程の前または後に、イオン交換法や、活性白土、珪藻土、炭素、ゼオライト等を用い、さらなる精製処理を行ってもよい。
この工程で分離された1価アルコールは、そのまま、あるいは必要に応じて再蒸留等により精製し、アルカリ触媒エステル交換反応や酸触媒エステル化反応の原料として再利用することができる。また、上記第二の分離工程において分離された無機塩等の洗浄液等として用いてもよい。
本実施形態に係る方法で製造されたグリセリンは純度が高いものであり、上述した実施形態に係るメタン発酵促進剤に好適に適用できる。本製造方法によれば、上述した第一の分離工程、中和工程および第二の分離工程を介することにより、廃グリセリン等の産業廃棄物を原料として使用し得るにも関わらず、また比較的簡便な方法でありながら、メタン発酵促進剤に適用可能な精製グリセリンを得ることができる。
上記方法で得られた第二のグリセリン含有液は、後述するメタン発酵促進剤として用いられるほか、アスファルト含有組成物やセメント含有組成物の剥離剤;生物学的硝化脱窒処理における有機炭素源として用いられる脱窒剤;工業用原料(例えば、脂肪酸グリセリンエステルの原料)など、多様な用途に用いることができる。また、さらに蒸留等の工程に付すことで、さらなる高純度が必要となる用途(例えば、化粧品、飲食品、医薬品等)への適用も可能である。
(11)エステル化工程
上述した第一および第二の分離工程においては、分離した油相より第一および第二の油分がそれぞれ回収される。これらは、アルカリ触媒法による脂肪酸アルキルエステルの製造における原料として循環供給することも考えられるが、純度が必ずしも高くないため、そのままの状態で原料として用いようとすると、脂肪酸アルキルエステルを効率的に製造することが困難な場合がある。また、第一および/または第二の油分には、遊離脂肪酸等の酸価の高い油脂が含まれており、とりわけ第一の油分は、酸触媒を用いたエステル化反応ともいうことができる第一の分離工程(第一のエステル化工程)にて分離されたものであるため、酸性の油分となっている。そのため、第一および第二の油分をそのままアルカリ触媒による脂肪酸アルキルエステルの製造の原料として用いることはより一層困難となる。
しかし、アルカリ触媒法以外の方法であれば、酸価の高い油脂であっても、脂肪酸アルキルエステルを製造することが可能である。そこで、本実施形態においては、アルカリ触媒法以外の方法により脂肪酸アルキルエステルを製造する、エステル化工程を備えることが好ましい。
なお、前述した第一の分離工程(第一のエステル化工程)との対比において、本工程を「第二のエステル化工程」ということがある。
第二のエステル化工程においては、第一の分離工程で分離された第一の油分、および/または上記第二の分離工程で分離された第二の油分を原料として用いることが好ましい。
その他の原料としては、上記酸反応工程(第一のエステル化工程)と同様の原料(高酸価油等)を用いることができる。
これらを原料とすることにより、上述したメタン発酵促進剤の製造において、産業廃棄物をより一層効率的に再資源化することが可能となる。アルカリ触媒法以外の方法であれば、これらの原料であっても好適に用いることができる。
また、第二のエステル化工程においては、上記アルコール分離工程で分離された1価のアルコールを原料として用いることが好ましい。これにより、上述したメタン発酵促進剤の製造において、産業廃棄物をより一層効率的に再資源化することが可能となる。
第二のエステル化工程で採用し得る方法は、アルカリ触媒法以外の方法であり、より具体的には、酸触媒法、酸アルカリ触媒法、生体触媒法、イオン交換樹脂法、超臨界法、亜臨界法および固体触媒法が例示される。これらの方法であれば、酸価の高い廃食油や油脂であっても、さらには未反応の遊離脂肪酸を含む油脂であっても、メタノールなどの1価アルコールとエステル交換反応を行うことができる。
第二のエステル化工程においては、脂肪酸アルキルエステルを含有する油分とともに、グリセリンが副生される。第二のエステル化工程で得られる油分と、グリセリン含有液とは、静置、遠心分離等により、相分離させることができる。分離した油分は、脂肪酸アルキルエステルを回収し、バイオディーゼル燃料等とすることができる。一方、副生されたグリセリンは、例えば、上記第一の分離工程(第一のエステル化工程)で得られた第一のグリセリン含有液とともに中和工程に供給することができる。このように構成すると、第二のエステル化工程で副生されたグリセリンについても、中和工程、第二の分離工程等を経てメタン発酵促進剤の一部とすることができるため、より一層効率的に再資源化することができる。
第二のエステル化工程として、上述したアルカリ触媒法以外の方法の中でも、特に酸触媒法を採用することが好ましい。
図2に示すように、第二のエステル化工程として酸触媒法を採用する場合には、上記第一の油分および/または第二の油分を原料として用いる。その他の原料としては、アルコール除去工程で回収された1価のアルコールを用いることができ、さらには、第一の分離工程(第一のエステル化工程)と同様の原料(高酸価油等)を用いても良い。
第二のエステル化工程で得られた反応液は、脂肪酸アルキルエステルを含む油分と、副生したグリセリンや酸触媒およびその塩等を含むグリセリン含有液とに分離させる。得られる油分およびグリセリン含有液はいずれも酸性となっており、このうち酸性グリセリン含有液は上記中和工程などに供給することができる。
一方、脂肪酸アルキルエステルを含む油分については、中和や脱水等を行うことが好ましい。ここで、中和・脱水の方法としては、バイオディーゼル燃料の製造過程で副生される廃グリセリンを用いる方法が好ましく例示される。具体的には、バイオディーゼル燃料の製造過程で副生される廃グリセリンを脱アルコール化してタンク等に貯留しておき、当該タンクの下部から、中和させる油分を投入して廃グリセリンと接触させる。これにより、酸性の油分は廃グリセリンのアルカリにより中和され、さらに油分に含まれる水および1価アルコールは廃グリセリン液に吸収される。そして、下部から投入された油分は比重差により上部からオーバーフローされるため、容易に回収することができる。このような方法により、中和、脱水および脱アルコールを同時に行うことができ、高品質な油分を簡便に得ることができる。なお、水および1価アルコールを吸収した廃グリセリン液は、上述した中和工程に供給することができ、第二の分離工程等を経てメタン発酵促進剤の一部とすることができる。
なお、第二のエステル化工程において、酸触媒法以外の方法としては、生体触媒法、超臨界法、亜臨界法を好ましく例示することができる。
生体触媒法は、エステル変換反応の触媒活性を備えたリパーゼやホスホリパーゼを用いて、エステル交換反応を促す方法である。生体触媒法は、反応条件が穏やかであるが、酸価値の高い油脂であってもエステル交換反応を促進でき、副生物が少ないという特性がある。
超臨界法や亜臨界法は、温度や圧力を調整して、原材料を超臨界状態または亜臨界状態に変えることで、物質の相状態を気液二相から液液二相、さらに誘電率を下げて一相へと変化させて、本来触媒を用いる必要があった反応系を無触媒系へと変えて、加水分解を促進する方法である。
このような第二のエステル化工程を行うことにより、産業廃棄物をより一層効率的に再資源化することが可能となる。得られた脂肪酸アルキルエステルは、バイオディーゼル燃料、バイオ重油等として出荷できるほか、発電などに付すことでエネルギーを回収することもできる。すなわち、第二のエステル化工程で得られた脂肪酸アルキルエステルを用いて発電する発電工程をさらに備えていてもよい。
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
以下、製造例、試験例等を示すことにより本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例等に何ら限定されるものではない。
〔製造例〕メタン発酵促進剤の製造
(廃グリセリンの準備)
水酸化カリウムを触媒とするアルカリ触媒法により、廃食油とメタノールとをエステル交換させてバイオディーゼル燃料を製造した。このとき生成したグリセリンを含む副生成物を廃グリセリンとして回収した。
この廃グリセリンにゼオライトを廃グリセリン1kgあたり20g添加して水分を除去した。ゼオライトが添加された廃グリセリンは、250メッシュのフィルターを通過させて、ゼオライトおよび固体状の不純物を除去した。
こうして得られた原料としての廃グリセリン(以下、「原料廃グリセリン」という。)の組成および物性は表1に示すとおりであった。
Figure 2023085043000002
(第一の分離工程)
加温冷却機能を有する容量1,000L(リットル)の反応タンクに、原料廃グリセリン500kg、高酸価油(150mgKOH/g)300kgを投入し、攪拌(120rpm)しながら55℃まで加温した。この状態で、濃硫酸32Lを反応容器中に15分かけて添加した。濃硫酸の添加にあたり、反応容器中の混合物の温度が65℃を超えないように留意した。濃硫酸を全量添加した後の反応液のpHは1であった。濃硫酸の添加終了後、240分間攪拌を継続した。その後10時間静置し、油相(第一の油分)と酸性グリセリン相(第一のグリセリン含有液)とに分離させ、第一のグリセリン含有液(酸性グリセリン相,析出した硫酸カリウムを含む)を回収した。以上の操作を繰り返すことにより、第一のグリセリン含有液5,000kgを得た。
(中和工程)
容量15,000Lの反応タンクに、攪拌しながら第一のグリセリン含有液5,000kg、廃グリセリン5,000kgを投入した。pHは7.1であった。その後も4時間攪拌を継続し、その後24時間静置した。
(第二の分離工程)
中和されたグリセリンを、デカンタ型遠心分離機(製品名:Z18H-V,タナベウィルテック社製)にて5,500rpm、180分間処理し、析出した硫酸カリウムを分離回収した。液相について、さらに三相分離型遠心分離機(アルファ・ラバル社製)にて8,000rpm、180分間処理し、第二の油分、第二のグリセリン含有液、硫酸カリウムをそれぞれ分離回収した。
(アルコール除去工程)
上記第二の分離工程で得られた第二のグリセリン含有液を、真空蒸留装置を用いて蒸留温度110℃で10分のバッチ式で蒸留し、メタノールおよび水を分離除去した。得られたグリセリン含有液は、870,000mg/kgのグリセリンを含んでおり、これをメタン発酵促進剤とした。
〔試験例〕メタン発酵試験
製造例で得られたメタン発酵促進剤と、有機性廃棄物とを用い、以下のようにしてメタン発酵試験を行った。有機性廃棄物としては、養豚場から得られた豚ふん尿脱水汚泥、し尿処理施設から得られた余剰脱水汚泥を用い、表1に示す比率にて混合し、メタン発酵の供試原料とした。混合比率および供試原料の性状を表2に示す。
なお、メタン発酵促進剤および有機性廃棄物についてpH、CODCr、T-N、T-P、n-Hex抽出物質、およびグリセリン濃度を測定した。混合した供試原料については混合比から算出した。
COD(化学的酸素要求量)とは、組成物中の有機物量を、「酸化剤により分解した時の酸素消費量」として表現する指標であり、使用する酸化剤の種類や反応条件に応じて複数の種類がある。本実施形態では、COD指標として、酸化剤に二クロム酸カリウムを用いる「CODCr」を好適に用いることができる。酸化剤に過マンガン酸カリウムを使う「CODMn」は実際の有機物量に対する捕捉率が低いためである。CODCrは、JIS K0102-20.2「吸光度法」に準拠して測定した。
次に、T-N(全窒素)は組成物中に含まれる窒素化合物の総量を示すものであり、下水試験方法 第5編 第1章 第18節1の「ケルダール窒素法」に準拠して測定した。T-P(全りん)は組成物中に含まれるりん化合物の総量を示すものであり、JIS K0102-46.3.2「硝酸-過塩素酸分解法」に準拠して測定した。
n-Hex(n-ヘキサン抽出物質)は、昭和49年環境省告示64号付表4抽出・重量法により測定した。n-Hexは、有機溶剤であるn-ヘキサンによって抽出される不揮発性の物質の総称であり、組成物中の「油分等」の量を表す指標として用いられているものである。ここで油分等とは動植物油脂、脂肪酸、脂肪酸エステル、リン脂質などの脂肪酸誘導体、ワックス、グリース、石油系炭化水素等を含む。
グリセリン濃度は液体クロマトグラフ法により測定した。
Figure 2023085043000003
次に、上記の供試原料について、図3に示すメタン発酵装置を用い、以下に示す要領でメタン発酵実験を行い、各試料のバイオガス発生量を測定した。なお、試験は、試験開始(原料投入)から26日間経過した時点で終了とした。
実施例で用いたメタン発酵装置を、図3を用いて説明する。メタン発酵装置1は、発酵槽2と、撹拌子4と、加温(兼)攪拌子回転装置6と、温度計8と、原料投入口10と、ドレイン12と、ガス出口14とを有する。発酵槽2は、容量が3.5LでSUS製の密閉型円筒状タンクである。発酵槽2のガス出口14にはガスチューブ16が装着されており、そのガスチューブ16はガス流量計18(容積式フローメータ)に接続されている。流量計18はデータロギング装置を内蔵しており、これにより24時間連続でのバイオガス発生量をモニターして記録することができる。さらに、流量計18にはもう一つのガスチューブ20を介して、発生したバイオガスを捕集するためのアルミ製のガスバッグ22が接続されている。
まず、発酵槽2に、窒素・リンを含む食品残渣で馴養した汚泥3.5Lを種汚泥として投入した。なお、種汚泥の性状は、TS:3.5%,CODCr:34,000mg/L,T-N:5,100mg/L,T-P:510mg/Lであった。
次に、発酵槽内を37℃に加温しつつ、表3に示す量の供試原料を発酵槽2に投入した。発酵槽2内の雰囲気を窒素でパージし、槽内温度を37℃±0.5℃に保ちながら攪拌子4を常時作動させ、発酵槽2内を攪拌し続けた。流量計18を用いガス発生量の計測と、流量計に連結するガスパック22によりガスの全量捕集を行った。ここで、ガス発生量は流量計18に付随するデータロガーにより連続的に記録した。
また、ガスバッグ22に補修されたバイオガスは、ガスクロマトグラフによりメタン濃度を測定した。
結果を表3に示す。
ここで、表3中のメタン発生量(単位:n-mL)は、発生したバイオガスの体積にメタン濃度を乗じてメタンガス量を求め、基準状態(0℃,1atm,湿度0%)に換算した値である。なお、この時、バイオガス発生量は、ブランク(種汚泥のみ)で測定されたバイオガス発生量(5,500n-mL)を差し引いた値をもとに、メタン発生量に換算し、表3に示している。
また、メタン発生量原単位(n-m/t)は、発生したメタンの体積(単位:m)を基準状態(0℃,1atm,湿度0%)に換算してメタン発生量とし(単位:n-m)、これを原料質量(単位:t)で除した値である。分解CODCr(g)は、メタン発生量/分解CODCr=0.35n-m/kg・CODCrとし、メタン発生量から算出した。CODCr分解率は、投入した原料のCODCr(g)で分解CODCrを除して算出した。
Figure 2023085043000004
表3に示すように、豚糞尿脱水汚泥とメタン発酵促進剤とを混合した試料2は、メタン発生量原単位が268n-m3/tであり、混合比から計算されるメタン発生量の予測値217n-m3/tよりも多かったことから、メタン発酵が顕著に促進されていると認められた。さらに、試料2は、有機性廃棄物単独およびメタン発酵促進剤単独と比較してCODCr分解率が顕著に高かった。なお、CODCr分解率が100%を超えていることから、投入した原料に加えて種汚泥中の炭素源も利用してメタン発酵が行われたものと考えられる。
また、豚糞尿脱水汚泥および余剰脱水汚泥とメタン発酵促進剤とを混合した試料3は、メタン発生量原単位が198n-m3/tであり、混合比から計算されるメタン発生量の予測値173n-m3/tよりも多かったことから、このメタン発酵原料においてもメタン発酵が顕著に促進されていることが確認された。なお、試料3においても、有機性廃棄物単独およびメタン発酵促進剤単独と比較してCODCr分解率が高かった。

Claims (9)

  1. メタン発酵系に有機性廃棄物を投入し、メタンを含むバイオガスを製造するメタン発酵方法において、
    メタン発酵促進剤を、前記有機性廃棄物と組み合わせて用い、
    前記メタン発酵促進剤は、グリセリンを含有し、n-ヘキサン抽出物質が10,000mg/kg以下である
    ことを特徴とするメタン発酵方法。
  2. 前記メタン発酵促進剤におけるグリセリンの含有量が600,000mg/kg以上であることを特徴とする請求項1に記載のメタン発酵方法。
  3. 前記メタン発酵促進剤のCODCrと前記有機性廃棄物のCODCrとの比が、10:1~1:10となるように前記メタン発酵促進剤を用いることを特徴とする請求項1または2に記載のメタン発酵方法。
  4. 有機性廃棄物と組み合わせてメタン発酵系に投入するメタン発酵促進剤を製造する方法であって、
    グリセリンおよび脂肪酸グリセリンエステルの少なくとも1種を含有する原料と、無機酸とを混合し、第一の油分と第一のグリセリン含有液とを分離する第一の分離工程と、
    前記第一のグリセリン含有液をアルカリ性物質により中和する中和工程と、
    中和された前記第一のグリセリン含有液から、第二の油分および析出した無機塩を分離する第二の分離工程と、
    を備えることを特徴とするメタン発酵促進剤の製造方法。
  5. 前記第二の分離工程の後に1価アルコールを除去するアルコール除去工程をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載のメタン発酵促進剤の製造方法。
  6. 前記第一の分離工程において、前記原料と前記無機酸との混合液のpHが3以下であることを特徴とする請求項4または5に記載のメタン発酵促進剤の製造方法。
  7. 前記中和工程において、前記第一のグリセリン含有液のpHが4~8となるように中和することを特徴とする請求項4~6のいずれか一項に記載のメタン発酵促進剤の製造方法。
  8. メタン発酵系に有機性廃棄物を投入し、メタンを含むバイオガスを製造するメタン発酵方法において、メタン発酵を促進するためのメタン発酵促進剤であって、
    グリセリンを含有し、n-ヘキサン抽出物質が10,000mg/kg以下であり、
    前記有機性廃棄物と組み合わせて用いられる
    ことを特徴とするメタン発酵促進剤。
  9. 前記グリセリンの含有量が600,000mg/kg以上であることを特徴とする請求項8に記載のメタン発酵促進剤。
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