JP2023054583A - 光電変換素子及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

Figure 2023054583000001
【課題】本発明は、光電変換効率に優れ製造コストが低い光電変換素子を提供する。
【解決手段】
本発明の光電変換素子は、電子輸送層と、前記電子輸送層上に設けられた光吸収層と、ホール輸送層とを備え、前記光吸収層は、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の複数の針状結晶が交錯した多孔質構造を有し、前記ホール輸送層は、前記光吸収層上及び前記光吸収層の細孔内に設けられ、前記光吸収層は、前記針状結晶の表面が前記ホール輸送層により覆われている第1領域と、前記針状結晶の表面が前記ホール輸送層により覆われてない第2領域とを有し、第2領域は、第1領域と前記電子輸送層との間に配置されていることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、光電変換素子及びその製造方法に関する。
光電変換素子は、例えば、光センサー、複写機、太陽電池などに用いられている。この中で、太陽電池は、再生可能エネルギーの代表的な利用方法として本格的に普及しつつある。太陽電池としては、無機系光電変換素子を用いた太陽電池(例えば、シリコン系太陽電池、CIGS系太陽電池、及びCdTe系太陽電池)が普及している。
一方、太陽電池としては、有機系光電変換素子を用いた太陽電池(例えば、有機薄膜太陽電池、及び色素増感太陽電池)も検討されている。このような有機系光電変換素子を用いた太陽電池は、塗布処理で製造できるため、製造コストを低減できる可能性がある。そのため、有機系光電変換素子を用いた太陽電池は、次世代の太陽電池として期待されている。
近年では、有機系光電変換素子として、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物(以下、ペロブスカイト化合物と記載することがある)を光吸収層に用いた光電変換素子が検討されている。例えば、特許文献1に記載の光電変換素子においては、ペロブスカイト型結晶構造を持つ感光性材料の薄層と、カーボンナノチューブからなる導電材料の薄層とが積層されている。特許文献2には、ペロブスカイト型結晶構造を持つ感光性材料と結着樹脂とを含有する光電変換素子が示されている。
特開2014-072327号公報 特開2020-167329号公報
しかし、ペロブスカイト化合物の結晶形態(結晶形状)は、その製造環境に存在する水分(湿度)の影響を受け易い。具体的には、ペロブスカイト化合物を用いた光電変換素子を大気雰囲気下(特に、湿度50%RH以上の大気雰囲気下)で形成すると、水分の影響によってペロブスカイト化合物の複数の針状結晶が交錯するように成長し、多孔質構造の光吸収層が形成される。このような多孔質構造の光吸収層上にホール輸送層を塗布により形成した場合、多孔質である光吸収層の細孔(空隙)内にホール輸送材料を含む塗布液が浸透し、ホール輸送層と電子輸送層との短絡により光電変換効率が低下する。特に、特許文献1に示すように、カーボンナノチューブのような導電性に優れる導電材料(より具体的にはホール輸送材料)を用いた場合、上述の短絡による光電変換効率の低下が顕著である。
そのため、ペロブスカイト化合物を用いた光電変換素子は、可能な限り湿度を低くした環境(例えば、グローブボックス内)で製造することが一般的である。このような環境であれば、ペロブスカイト化合物は板状結晶に成長するため、上述の短絡による光電変換効率の低下を抑制できる。しかし、ペロブスカイト化合物を用いた光電変換素子をこのような環境で製造すると、製造コストが増大する。
そこで、発明者らは、ホール輸送層にホール輸送材料と共に結着樹脂を含有させることによりホール輸送層と電子輸送層との絶縁性を担保しつつ、大気雰囲気下で光吸収層を形成することにより製造コストの増大を回避することを提案した(特許文献2参照)。
しかし、ホール輸送層に含まれる結着樹脂は、ホール輸送材料とペロブスカイト化合物との間の電気抵抗及びホール輸送層の電気抵抗を大きくするため、光電変換素子の光電変換効率を高くすることは難しい。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、光電変換効率に優れ、製造コストが低い光電変換素子及びその製造方法を提供する。
本発明は、電子輸送層と、前記電子輸送層上に設けられた光吸収層と、ホール輸送層とを備え、前記光吸収層は、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の複数の針状結晶が交錯した多孔質構造を有し、前記ホール輸送層は、前記光吸収層上及び前記光吸収層の細孔内に設けられ、前記光吸収層は、前記針状結晶の表面が前記ホール輸送層により覆われている第1領域と、前記針状結晶の表面が前記ホール輸送層により覆われてない第2領域とを有し、第2領域は、第1領域と前記電子輸送層との間に配置されていることを特徴とする光電変換素子を提供する。
本発明の光電変換素子に含まれる光吸収層は、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の複数の針状結晶が交錯した多孔質構造を有するため、光電変換素子を大気雰囲気下で作製することが可能となり、製造コストを低減することができる。
本発明の光電変換素子に含まれる光吸収層が有する第2領域が第1領域と前記電子輸送層との間に配置されるため、電子輸送層とホール輸送層とが接触することにより生じる短絡を抑制することができる。このことにより、本発明の光電変換素子が優れた光電変換特性を有することができる。
本発明の一実施形態の光電変換素子の概略断面図である。 (a)~(d)は、それぞれ本発明の一実施形態の光電変換素子の概略断面図である。 ペロブスカイト化合物の結晶構造の基本単位格子を示す図である。 光電変換素子の光吸収層の写真である。
本発明の光電変換素子は、電子輸送層と、前記電子輸送層上に設けられた光吸収層と、ホール輸送層とを備え、前記光吸収層は、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の複数の針状結晶が交錯した多孔質構造を有し、前記ホール輸送層は、前記光吸収層上及び前記光吸収層の細孔内に設けられ、前記光吸収層は、前記針状結晶の表面が前記ホール輸送層により覆われている第1領域と、前記針状結晶の表面が前記ホール輸送層により覆われてない第2領域とを有し、第2領域は、第1領域と前記電子輸送層との間に配置されていることを特徴とする。
前記光吸収層に占める第1領域の割合は、70%以上90%以下であることが好ましく、80%以上85%以下であることがさらに好ましい。このことにより、ホール輸送層に含まれるホール輸送材料と電子輸送層とが接触することを抑制することができると共に、ペロブスカイト化合物の針状結晶とホール輸送層との接触面積を広くすることができ光吸収層で発生したホールを円滑かつ効率的に第2導電層に移動させることができる。
前記ホール輸送層は、ホール輸送材料であるカーボンナノチューブと、バインダーである樹脂とを含むことが好ましく、前記ホール輸送層におけるカーボンナノチューブの割合は、30質量%以上60質量%以下であることが好ましい。このことにより、光吸収層で発生したホールを円滑かつ効率的に第2導電層に移動させることができ、かつ、ホール輸送層用塗布液が適度な粘度を有することができ第1領域と電子輸送層との間に容易に第2領域を形成することができる。
本発明は、溶媒とホール輸送材料とを含む塗布液を、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の複数の針状結晶が交錯した多孔質構造を有する光吸収層上に塗布する塗布工程を含み、前記塗布液の粘度は、3mPa・s以上50mPa・s以下である光電変換素子の製造方法も提供する。この製造方法により、第1領域と電子輸送層との間に容易に第2領域を形成することができる。
前記塗布工程は、光吸収層上に塗布液を供給する工程と、塗布液を光吸収層上に供給した後光吸収層を静置する工程と、静置した後光吸収層を回転させ遠心力により塗布液を広げる工程とを含むことが好ましく、前記光吸収層を静置する時間は、0.1秒間以上10秒間以下であることが好ましい。このことにより、第1領域と電子輸送層との間に容易に第2領域を形成することができる。
前記塗布工程は、回転している光吸収層上に塗布液を供給する工程を含むことが好ましい。このことにより、第1領域と電子輸送層との間に容易に第2領域を形成することができる。
以下、図面を用いて本発明の一実施形態を説明する。図面や以下の記述中で示す構成は、例示であって、本発明の範囲は、図面や以下の記述中で示すものに限定されない。
図1は本実施形態の光電変換素子の概略断面図である。
本実施形態の光電変換素子20は、電子輸送層4と、電子輸送層4上に設けられた光吸収層7と、ホール輸送層8とを備え、光吸収層7は、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の複数の針状結晶12が交錯した多孔質構造を有し、ホール輸送層8は、光吸収層7上及び光吸収層7の細孔13内に設けられ、光吸収層7は、針状結晶12の表面がホール輸送層8により覆われている第1領域9と、針状結晶12の表面がホール輸送層8により覆われてない第2領域10とを有し、第2領域10は、第1領域9と電子輸送層4との間に配置されていることを特徴とする。
本実施形態の光電変換素子20の製造方法は、電子輸送材料を含有する電子輸送層4を形成する電子輸送層形成工程と、電子輸送層4上に、光吸収層7を形成する光吸収層形成工程と、光吸収層7上に、ホール輸送材料を含有するホール輸送層8を形成するホール輸送層形成工程とを含む。光吸収層7は、ペロブスカイト化合物の複数の針状結晶12を含有する。ホール輸送層8は、結着樹脂(例えば、ポリビニルブチラール樹脂)とホール輸送材料(例えば、カーボンナノチューブ)とを含有することができる。
光吸収層7は、ペロブスカイト化合物の針状結晶が交錯した多孔質領域を有する。ホール輸送層形成工程において、ホール輸送層用塗布液が光吸収層7の多孔質領域に浸透し、光吸収層7が有する多孔質領域の細孔(空隙)内(針状結晶の表面上)に、ホール輸送層8が形成された場合、電子輸送層4が含有する電子輸送材料とホール輸送材料とが接近又は接触して、導電層間(即ち、第1導電層3と第2導電層11との間)の電気抵抗が低下し短絡が引き起こされることがある。しかし、発明者らは、ホール輸送層8に、ホール輸送材料だけでなく、バインダー樹脂を含有させ、バインダー樹脂がホール輸送材料間の隙間に充填され、ホール輸送材料に、適度な絶縁性が付与される。光吸収層7が有する多孔質領域の細孔内にホール輸送層8が形成された場合であっても、導電層間の短絡を抑制できることを見出した。しかし、ペロブスカイト化合物の針状結晶12とホール輸送層8との間の導通と、ホール輸送層8と電子輸送層4との間の絶縁という相反する性質を両立させるため、調整が難しく、光電変換素子20の光電変換効率をある程度向上できるものの限界があった。
そこで、発明者らはペロブスカイト化合物の複数の針状結晶12が交錯することにより形成された多孔質領域を有する光吸収層7にホール輸送層用塗布液が浸透する工程に注目し、塗布液が光吸収層7と電子輸送層4との界面に到達する前に塗布液の浸透を途中で止めることにより、多孔質領域に空気層(第2領域10)を形成できることを見出し、この第2領域10で電子輸送層4とホール輸送層8との間の絶縁性を保つことにより、光電変換効率をさらなる向上させることに成功した。
光吸収層7の多孔質領域に浸透したホール輸送層用塗布液を乾燥させると、光吸収層7の細孔内においてペロブスカイト化合物の針状結晶12上にホール輸送層8が形成される。本願発明者等は、光吸収層7内におけるホール輸送層8が形成される第1領域9の割合を、ホール輸送層用塗布液の浸透度合いを調整することにより制御することができることを見出した。従来技術では、ホール輸送層用塗布液を光吸収層7に完全に浸透させていたため、図2(d)のように、光吸収層7の全体が第1領域9となっていた。
スピンコーターの回転などによりホール輸送層用塗布液の光吸収層7への浸透度合いを調整すると、図2(a)~(c)のように、光吸収層7の外側表面に近い領域に配置された、光吸収層7内にホール輸送層8が形成される第1領域9と、電子輸送層4と光吸収層7との界面に近い領域に配置された、光吸収層7内にホール輸送層8が形成されない第2領域10とを形成することができる。このような第2領域10を電子輸送層8と第1領域9との間に配置することにより、ホール輸送層8に含まれるホール輸送材料が電子輸送層8と接触することを抑制することができ、電子輸送層8及びホール輸送層8を介した短絡を抑制することができる。
また、光吸収層7における第1領域9と第2領域10との比率は、ホール輸送用塗布液の浸透度合いを調整することにより、図2(a)~(c)のように制御することができる。塗布液の浸透度合いは、例えば、スピンコーターを用いた場合には、塗布液を光吸収層7上に滴下してから回転開始までの静置時間を調整することによって制御することができる。すなわち、塗布液を滴下してから回転開始までの時間(静置時間)が短い場合、あるいはすでに回転をはじめた状態で塗布液を光吸収層7上に滴下すると、浸透があまり進展していない図2(a)のような状態となり、静置時間が長くなり塗布液の浸透が進むにつれ、図2(b)、図2(c)のように進行し、最終的には図2(d)のように光吸収層7にホール輸送層8が取り込まれたような複合層となる。
<第1実施形態:光電変換素子>
第1実施形態は、光電変換素子20に関する。本実施形態に係る光電変換素子20は、電子輸送層4と、ホール輸送層8と、光吸収層7とを備える。光吸収層7は、電子輸送層4及びホール輸送層8の間に配設される。光吸収層7は、ペロブスカイト化合物の複数の針状結晶12を含有する。ホール輸送層8は、ホール輸送材料(例えばカーボンナノチューブ)と、バインダー樹脂(例えばポリビニルブチラール樹脂)とを含有することができる。ホール輸送層8は、バインダー樹脂を含まなくてもよい。
図1に示す光電変換素子20は、一方の面から順番に、基体2と、第1導電層3と、電子輸送層4と、光吸収層7と、ホール輸送層8と、第2導電層11とを備える。電子輸送層4は、第1導電層3側の緻密質電子輸送層5と、光吸収層7側の多孔質電子輸送層6とを含む2層構造を有することができる。但し、電子輸送層4は、緻密質電子輸送層5のみを含む1層構造であってもよい。光電変換素子20は、使用時に、例えば基体2側の面に光(例えば、太陽光)が照射される。但し、光電変換素子20は、使用時に、第2導電層11側の面に光が照射されてもよい。
光吸収層7は、ペロブスカイト化合物の複数の針状結晶12が交錯した多孔質構造を有する。また、ホール輸送層8は、ホール輸送材料(例えばカーボンナノチューブ)と、バインダー樹脂(例えばポリビニルブチラール樹脂)とを含有することができる。このような構成を有する本実施形態に係る光電変換素子20は、以下の第1、第2、及び第3の利点を有する。
第1の利点を説明する。本発明は 前述したとおり従来は導電性と絶縁性とを両立させることの難しさを解消したものである。すなわち、光吸収層7の多孔質領域に、ホール輸送層8が形成されていない第2領域10を形成して、ホール輸送材料が電子輸送層4に接触することを防止し、絶縁性を保って短絡による光電変換効率の低下を防止する。一方で、ホール輸送材料は、ペロブスカイト化合物の針状結晶12との接触面積を大きく保った状態で良好な電荷の受け渡しを保持することにより、さらに光電変換効率を向上させることができる。
第2の利点を説明する。第1の利点で説明したように、本実施形態に係る光電変換素子20は、光吸収層7がペロブスカイト化合物の複数の針状結晶12が交錯する多孔質構造を有する場合であっても、導電層間の短絡を抑制できる。このため、可能な限り湿度を低くした環境(例えば、グローブボックス内)でペロブスカイト化合物の板状結晶を製造する必要がない。従って、本実施形態に係る光電変換素子20は、大気雰囲気下にて製造できるため、製造コストを低くすることができる。
第3の利点を説明する。光吸収層7が有する多孔質構造の細孔(空隙)に、バインダー樹脂を含むホール輸送層用塗布液が浸透した場合、ペロブスカイト化合物の針状結晶12の間にバインダー樹脂が介在しているので、光電変換素子20はフレキシブル性を有する。このため、光電変換素子20に衝撃を与えてもクラックなどが発生しにくい。また、基体2が例えばフレキシブル基板である場合には、光電変換素子20を湾曲した形状とすることもでき、光電変換素子20の形状の自由度が高くなる。以上、第1、第2、及び第3の利点を説明した。
[基体]
基体2の形状としては、例えば、平板状、フィルム状、及び円筒形状が挙げられる。光電変換素子20の基体2側の面に光を照射する場合、基体2は透明である。この場合、基体2の材質としては、例えば、透明ガラス(より具体的には、ソーダライムガラス、及び無アルカリガラス等)、及び耐熱性を有する透明樹脂が挙げられる。光電変換素子20の第2導電層11側の面に光を照射する場合、基体2は不透明でもよい。この場合、基体2の材質としては、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、マグネシウム、鉄、錫、チタン、金、銀、銅、タングステン、これらの合金(例えば、ステンレス鋼)及びセラミックが挙げられる。
[第1導電層]
第1導電層3は、光電変換素子20の陰極に相当する。第1導電層3を構成する材料としては、例えば、透明導電性材料及び非透明導電性材料が挙げられる。透明導電性材料としては、例えば、ヨウ化銅(CuI)、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化スズ(SnO2)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、及びガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)が挙げられる。非透明導電性材料としては、例えば、ナトリウム、ナトリウム-カリウム合金、リチウム、マグネシウム、アルミニウム、マグネシウム-銀混合物、マグネシウム-インジウム混合物、アルミニウム-リチウム合金、アルミニウム-酸化アルミニウム混合物(Al/Al23)及びアルミニウム-フッ化リチウム混合物(Al/LiF)が挙げられる。第1導電層3の膜厚は、特に限定されず、所望の特性(例えば、電子の輸送性及び透明性)を発揮し得る膜厚であればよい。
[電子輸送層]
電子輸送層4は、光吸収層7において光励起により発生した電子を第1導電層3に輸送する層である。このため、電子輸送層4は、光吸収層7で発生した電子を第1導電層3に移動させ易い材料を含有することが好ましい。電子輸送層4は、電子輸送材料として、例えば、酸化チタンを含有する。電子輸送層4における酸化チタンの含有割合は、高温で焼結させる場合には有機成分がほとんど残存せず、100質量%に近い。電子輸送層4を低温で作製する場合には、電子輸送層4は酸化チタン以外の成分を更に含んでもよい。また、電子輸送層4には、有機電子輸送材料を用いてもよい。
電子輸送層4は、例えば、緻密質酸化チタン層5(緻密質電子輸送層5)と、多孔質層である多孔質酸化チタン層6(多孔質電子輸送層6)とを含んでもよい。また、電子輸送層4は、1層の緻密質酸化チタン層5であってもよい。以下、緻密質酸化チタン層5、及び多孔質酸化チタン層6について説明する。
(緻密質酸化チタン層)
緻密質酸化チタン層5の空隙率は、多孔質酸化チタン層6よりも低い。このため、光電変換素子20の製造時に、光吸収層7の形成に用いる光吸収材料(ペロブスカイト化合物)が、多孔質酸化チタン層6を通過した場合であっても、緻密質酸化チタン層5の層内に浸透し難い。このため、光電変換素子20が緻密質酸化チタン層5を備えることで、光吸収材料と第1導電層3との接触が抑制される。また、光電変換素子20が緻密質酸化チタン層5を備えることで、起電力低下の要因となる第1導電層3及び第2導電層11の接触が抑制される。電子輸送層4が緻密質酸化チタン層5と多孔質酸化チタン層6との2層を含む場合、緻密質酸化チタン層5の膜厚としては、5nm以上200nm以下が好ましく、10nm以上100nm以下がより好ましい。電子輸送層4が1層の緻密質酸化チタン層5である場合、緻密質酸化チタン層5の膜厚としては、2層を含む場合よりも厚く、200nm以上1000nm以下が好ましい。
(多孔質酸化チタン層)
光電変換素子20が多孔質酸化チタン層6を備えることで、次の利点が得られる。多孔質酸化チタン層6の空隙率は、緻密質酸化チタン層5よりも高い。このため、光電変換素子20の製造時に、光吸収層7の形成に用いるペロブスカイト化合物の原料溶液が多孔質酸化チタン層6の細孔に浸透し、光吸収層7と電子輸送層4との接触面積が増大する。これにより、光吸収層7において光励起により発生した電子が、効率よく電子輸送層4に移動する。また、多孔質酸化チタン層6の表面の凹凸は、緻密質酸化チタン層5よりも大きい。表面の凹凸が大きい多孔質酸化チタン層6の上に光吸収層7が形成される場合、ペロブスカイト化合物の針状結晶12は、成長し過ぎず、適度な大きさとなる。適度な大きさの針状結晶12により形成された多孔質領域の空隙は、ホール輸送層用塗布液が浸透し過ぎない適度な大きさとなり、導電層間の短絡が更に抑制される。多孔質酸化チタン層6の膜厚としては、100nm以上2,0000nm以下が好ましく、200nm以上1,500nm以下がより好ましい。
[光吸収層]
光吸収層7は、光電変換素子20に入射された光を吸収して電子及びホールを発生させる層である。詳しくは、光吸収層7に光が入射すると、光吸収材料に含まれる低いエネルギーの電子が光励起され、高いエネルギーの電子とホールとが発生する。発生した電子は、電子輸送層4に移動する。発生したホールは、ホール輸送層8に移動する。このような電子及びホールの移動により、電荷分離が行われる。
光吸収層7は、光吸収材料であるペロブスカイト化合物の複数の針状結晶12が交錯した多孔質構造を有する。また、光吸収層7は、第1領域9と第2領域10とを有する。第1領域9は、光吸収層7の細孔において針状結晶12の表面がホール輸送層8により覆われている領域である。また、第1領域9は、製造工程においてホール輸送層用塗布液が光吸収層7の細孔中に充填されホール輸送層用塗布液が乾燥することにより針状結晶12の表面がホール輸送層8で覆われた領域である。例えば、針状結晶12の表面の10%以上がホール輸送層8で覆われている領域を第1領域9とすることができる。
第2領域10は、光吸収層7の細孔において針状結晶12の表面がホール輸送層8により覆われてない領域である。また、第2領域10は、製造工程においてホール輸送層用塗布液が光吸収層7の細孔中に充填されなかった領域である。例えば、針状結晶12の表面の95%以上がホール輸送層8で覆われていない領域を第2領域10とすることができる。
第1領域9と第2領域10との間に明確な境界がある必要はなく、針状結晶12の表面が部分的にホール輸送層8で覆われている領域(例えば、針状結晶12の表面の5%~10%がホール輸送層8で覆われている領域)が第1領域9と第2領域10との間に形成されていてもよい。また、第1領域9及び第2領域10は、一定の厚さを持った層である必要はない。
第2領域10が形成されているかどうかは、光吸収層7へのホール輸送層用塗布液の充填率により確認することができる。例えば、ホール輸送層用塗布液の充填率が100%である場合、第2領域10は形成されていないと考えられる。例えば、ホール輸送層用塗布液の充填率が99%以下である場合、第2領域10は形成されていると考えられる。
第2領域10は、電子輸送層4と第1領域9との間に配置される。このことにより、ホール輸送層8に含まれるホール輸送材料と電子輸送層4とが接触することを抑制することができ、ホール輸送層8及び電子輸送層4とを介した第1導電層3と第2導電層11との短絡を抑制することができる。
光吸収層7に占める第1領域9の割合は、70%以上90%以下であることが好ましく、80%以上85%以下であることがさらに好ましい。このことにより、ホール輸送層8に含まれるホール輸送材料と電子輸送層4とが接触することを抑制することができると共に、ペロブスカイト化合物の針状結晶12とホール輸送層8との接触面積を広くすることができ光吸収層7で発生したホールを円滑かつ効率的に第2導電層11に移動させることができる。
(ペロブスカイト化合物)
ペロブスカイト化合物は、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物である。光吸収層7は、ペロブスカイト化合物の複数の針状結晶12を含む。本明細書において、針状結晶12とは、ペロブスカイト化合物の短軸長さに対する長軸長さの比(アスペクト比)が5以上の結晶をいう。
ペロブスカイト化合物の針状結晶12の長軸長さとしては、5μm以上50μm以下が好ましく、7μm以上20μm以下がより好ましく、7μm以上15μm以下が更に好ましい。ペロブスカイト化合物の針状結晶12のアスペクト比としては、5以上20以下が好ましく、5以上15以下がより好ましく、5以上12以下が更に好ましい。ペロブスカイト化合物の針状結晶12の長軸長さ及びアスペクト比が上述の範囲であることで、ペロブスカイト化合物の針状結晶12により形成される多孔質領域の空隙に、ホール輸送層用塗布液が適度に浸透する。
なお、本明細書において、ペロブスカイト化合物の針状結晶12の長軸長さ及びアスペクト比は、各々、ペロブスカイト化合物の針状結晶12の長軸長さの算術平均値及びアスペクト比の算術平均値を意味し、これらの算術平均値は、後述する本明細書に記載の方法により測定される。
ペロブスカイト化合物の針状結晶12の形状やサイズは、次の方法で変更できる。例えば、その製造環境の湿度が高くなるほど、ペロブスカイト化合物の針状結晶12のアスペクト比は大きくなる。また、製造に使用される材料の含水率が高くなるほど、ペロブスカイト化合物の針状結晶12のアスペクト比は大きくなる。また、凹凸の少ない面上でペロブスカイト化合物の針状結晶を形成すると、ペロブスカイト化合物の針状結晶12の長軸長さ及び短軸長さが短くなる。
光電変換効率を向上させる観点から、ペロブスカイト化合物としては、一般式:ABX3・・・(1)で表される化合物(以下、ペロブスカイト化合物(1)と記載することがある)が好ましい。一般式(1)中、Aは有機分子であり、Bは金属原子であり、Xはハロゲン原子である。一般式(1)中、3つのXは、互いに同一のハロゲン原子を表してもよく、異なるハロゲン原子を表してもよい。
ペロブスカイト化合物(1)は、有機無機ハイブリッド化合物である。有機無機ハイブリッド化合物とは、無機材料と有機材料とで構成される化合物である。有機無機ハイブリッド化合物であるペロブスカイト化合物(1)を用いた光電変換素子20は、有機無機ハイブリッド光電変換素子とも呼ばれる。図3に、ペロブスカイト化合物(1)が有する結晶構造の立方晶系の基本単位格子を示す。この基本単位格子は、各頂点に配置された有機分子Aと、体心に配置された金属原子Bと、各面心に配置されたハロゲン原子Xとを備えている。
光吸収材料が立方晶系の基本単位格子を有することは、X線回折法を用いて確認できる。詳しくは、ガラス板上に光吸収材料を含有する光吸収層7を作製し、光吸収層7を粉末状で回収し、粉末X線回折装置を用いて回収された粉末状の光吸収層7(光吸収材料)の回折パターンを測定する。或いは、光電変換素子20から光吸収層7を粉末状で回収し、粉末X線回折装置を用いて回収された粉末状の光吸収層7(光吸収材料)の回折パターンを測定する。
一般式(1)中、Aで表される有機分子としては、例えば、アルキルアミン、アルキルアンモニウム、及び含窒素複素環式化合物等が挙げられる。ペロブスカイト化合物(1)において、Aで表される有機分子は、1種の有機分子のみであってもよく、2種以上の有機分子であってもよい。
アルキルアミンとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、エチルメチルアミン、メチルプロピルアミン、ブチルメチルアミン、メチルペンチルアミン、ヘキシルメチルアミン、エチルプロピルアミン、及びエチルブチルアミン等が挙げられる。
アルキルアンモニウムは、上述のアルキルアミンのイオン化物である。アルキルアンモニウムとしては、例えば、メチルアンモニウム(CH3NH3)、エチルアンモニウム、プロピルアンモニウム、ブチルアンモニウム、ペンチルアンモニウム、ヘキシルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、ジプロピルアンモニウム、ジブチルアンモニウム、ジペンチルアンモニウム、ジヘキシルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、トリペンチルアンモニウム、トリヘキシルアンモニウム、エチルメチルアンモニウム、メチルプロピルアンモニウム、ブチルメチルアンモニウム、メチルペンチルアンモニウム、ヘキシルメチルアンモニウム、エチルプロピルアンモニウム、及びエチルブチルアンモニウム等が挙げられる。
含窒素複素環式化合物としては、例えば、イミダゾール、アゾール、ピロール、アジリジン、アジリン、アゼチジン、アゼト、アゾール、イミダゾリン、及びカルバゾール等が挙げられる。含窒素複素環式化合物は、イオン化物であってもよい。イオン化物である含窒素複素環式化合物としては、フェネチルアンモニウムが好ましい。
Aで表される有機分子としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、メチルアンモニウム、エチルアンモニウム、プロピルアンモニウム、ブチルアンモニウム、ペンチルアンモニウム、ヘキシルアンモニウム又はフェネチルアンモニウムが好ましく、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、メチルアンモニウム、エチルアンモニウム、又はプロピルアンモニウムがより好ましく、メチルアンモニウムが更に好ましい。
一般式(1)中、Bで表される金属原子としては、例えば、鉛、スズ、亜鉛、チタン、アンチモン、ビスマス、ニッケル、鉄、コバルト、銀、銅、ガリウム、ゲルマニウム、マグネシウム、カルシウム、インジウム、アルミニウム、マンガン、クロム、モリブデン、及びユーロピウム等が挙げられる。ペロブスカイト化合物(1)において、Bで表される金属原子は、1種の金属原子のみであってもよく、2種以上の金属原子であってもよい。光吸収層7の光吸収特性及び電荷発生特性を向上させる観点から、Bで表される金属原子としては、鉛原子が好ましい。
一般式(1)中、Xで表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子等が挙げられる。ペロブスカイト化合物(1)において、Xで表されるハロゲン原子は、1種のハロゲン原子であってもよく、2種以上のハロゲン原子であってもよい。Xで表されるハロゲン原子としては、ペロブスカイト化合物(1)のエネルギーバンドギャップを狭くする観点から、ヨウ素原子が好ましい。詳しくは、3つのXのうち、少なくとも1つのXがヨウ素原子を表すことが好ましく、3つのXがヨウ素原子を表すことがより好ましい。
ペロブスカイト化合物(1)としては、一般式「CH3NH3PbX3(但し、Xはハロゲン原子を表す)」で表される化合物が好ましく、CH3NH3PbI3がより好ましい。ペロブスカイト化合物(1)として一般式「CH3NH3PbX3」で表される化合物(特に、CH3NH3PbI3)を用いることで、光吸収層7において電子とホールとをより効率良く発生させることができ、その結果、光電変換素子20の光電変換効率をより向上できる。
[ホール輸送層]
ホール輸送層8は、光吸収層7で発生したホールを捉えて、陽極である第2導電層11に輸送する層である。ホール輸送層8は、光吸収層7上に形成され、かつ、光吸収層7の第1領域9の細孔内においてペロブスカイト化合物の針状結晶12上に形成される。
ホール輸送層8の膜厚としては、20nm以上2,000nm以下が好ましく、200nm以上600nm以下がより好ましい。ホール輸送層8の膜厚を20nm以上2,000nm以下とすることで、光吸収層7で発生したホールを円滑かつ効率的に第2導電層11に移動させることができる。
ホール輸送層8は、ホール輸送材料と、バインダー樹脂とを含有することができる。ホール輸送層8は、バインダー樹脂を含まなくてもよい。
ホール輸送材料は、例えば、下記構造を有するspiro-MeOTADなどの有機電荷輸送材料またはカーボンナノチューブなどの無機電荷輸送材料である。
Figure 2023054583000002
(カーボンナノチューブ)
ホール輸送材料として用いられるカーボンナノチューブとしては、例えば、単層カーボンナノチューブ、及び多層カーボンナノチューブが挙げられる。カーボンナノチューブとしては、多層カーボンナノチューブが好ましい。
ホール輸送層8におけるカーボンナノチューブの含有割合としては、30質量%以上60質量%以下が好ましく、40質量%以上50質量%以下がより好ましい。カーボンナノチューブの含有割合が30質量%以下であると、導電性が悪く光電流が取り出しにくくなる。
一方、カーボンナノチューブの含有割合が60質量%を超えると樹脂成分が少なくなり、ホール輸送層用塗布液の粘度が低くなり塗布液に含まれるカーボンナノチューブが急速に光吸収層7に浸透して光吸収層7と電子輸送層4との界面に達して、両導電層間が短絡して光電流が取り出せない状況が起こりやすくなる。比率が上述の範囲内であると、バインダー樹脂によって塗布液の粘度が適度に上昇し、塗布液の光吸収層7への浸透速度を制御でき、第2領域10を設けることが容易になり、導電層間の短絡を抑制できる。
ホール輸送層8がバインダー樹脂を含まない場合、ホール輸送層用塗布液において溶媒に対するカーボンナノチューブの割合を高くすることにより、塗布液の粘度を高くすることができる。また、増粘剤などにより塗布液の粘度を高くしてもよい。
(有機電荷輸送材料)
ホール輸送層8は、ホール輸送材料であるカーボンナノチューブに替えてホール輸送材料である有機電荷輸送材料を含有することができる。この場合、ホール輸送層8は、ホール輸送材料である有機電荷輸送材料と、バインダー樹脂を含有してもよい。
なお、第2導電層11側から光を入射する場合でも、ホール輸送層8が可視光に対してほぼ透明になるのでカーボンナノチューブの場合のような含有量に制限はない。
ホール輸送層8がバインダー樹脂を含まない場合、ホール輸送層用塗布液において溶媒に対する有機電荷輸送材料の割合を高くすることにより、塗布液の粘度を高くすることができる。また、増粘剤などにより塗布液の粘度を高くしてもよい。
バインダー樹脂の質量MRに対する、有機電荷輸送材料の質量MCの比率MC/MRは、好ましくは4以上15以下、より好ましくは5以上10以下である。有機電荷輸送材料はカーボンナノチューブより導電性が低いためより多く含有する必要がある。有機電荷輸送材料は、例えば、化1に示した構造式で表される化合物である。
(バインダー樹脂)
ホール輸送層用塗布液の溶媒に溶解可能な樹脂が望ましい。例えば、ポリビニルブチラール樹脂、セルロース樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。
[第2導電層]
第2導電層11は、光電変換素子20の陽極に相当する。第2導電層11を構成する材料としては、例えば、金属、透明導電性無機材料、導電性微粒子、及び導電性ポリマー(特に、透明導電性ポリマー)が挙げられる。金属としては、例えば、金、銀、及び白金が挙げられる。透明導電性無機材料としては、例えば、ヨウ化銅(CuI)、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化スズ(SnO2)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、及びガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)が挙げられる。導電性微粒子としては、例えば、銀ナノワイヤー及びカーボンナノファイバーが挙げられる。透明導電性ポリマーとしては、例えば、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸とを含むポリマー(PEDOT/PSS)が挙げられる。
光電変換素子20の第2導電層11側から光を入射する場合、入射した光を光吸収層7に到達させるため、第2導電層11は透明又は半透明であることが好ましく、透明であることがより好ましい。透明又は半透明の第2導電層11を構成する材料としては、透明導電性無機材料又は透明導電性ポリマーが好ましい。第2導電層11の膜厚としては、50nm以上1,000nm以下が好ましく、100nm以上300nm以下がより好ましい。
[その他]
以上、図1を参照して、本実施形態に係る光電変換素子の一例である光電変換素子20について説明した。但し、本実施形態に係る光電変換素子は、光電変換素子20に限定されず、例えば以下の点を変更可能である。
本実施形態に係る光電変換素子は、第2導電層上に表面層を更に備えてもよい。表面層は、空気中の水分及び酸素による光電変換素子の内部の劣化を抑制する層である。また、表面層は、光電変換素子の使用時に衝撃及び傷から外面を保護する層である。表面層を構成する材料としては、ガスバリア性の高い材料が好ましい。表面層は、例えば、樹脂組成物、シュリンクフィルム、ラップフィルム、又はクリア塗料を用いて形成できる。一方、密閉容器に収容して使用される光電変換素子は、表面層を備えないことが好ましい。光電変換素子の表面層側から光を入射する場合、表面層は、透明又は半透明であることが好ましく、透明であることがより好ましい。
本実施形態に係る光電変換素子の電子輸送層は、酸化チタンを含有していなくてもよい。例えば、電子輸送層は、酸化チタン以外の材料で構成された緻密質電子輸送層と、酸化チタン以外の材料で構成され多孔質電子輸送層層とを備えていてもよい。また、電子輸送層は、単層であってもよく、3層以上の多層構造であってもよい。
本実施形態に係る光電変換素子は、基体、第1導電層、及び第2導電層を備えなくてもよい。即ち、光電変換素子において、基体、第1導電層、及び第2導電層は、各々、省略されてもよい。また、本実施形態に係る光電変換素子が基体を備える場合、基体は導電性を有していてもよい。この場合、基体は、第1導電層としての機能も果たす。
<第2実施形態:光電変換素子の製造方法>
第2実施形態は、光電変換素子20の製造方法に関する。本実施形態に係る光電変換素子20の製造方法は、電子輸送層形成工程と、光吸収層形成工程と、ホール輸送層形成工程とを含む。電子輸送層形成工程において、電子輸送材料を含有する電子輸送層4を形成する。光吸収層形成工程において、電子輸送層4上に、光吸収層7を形成する。ホール輸送層形成工程において、光吸収層7上に、ホール輸送材料を含有するホール輸送層8を形成する。光吸収層7は、ペロブスカイト化合物の複数の針状結晶12を含有する。ホール輸送層8は、バインダー樹脂と、ホール輸送材料とを含有することができる。本実施形態に係る製造方法により得られる光電変換素子20は、例えば、第1実施形態に係る光電変換素子20である。本実施形態に係る製造方法により得られる光電変換素子20は、第1実施形態で述べた理由と同じ理由により、光電変換効率に優れ、製造コストを低くすることができる。
光電変換素子20の製造方法は、例えば、基体2及び第1導電層3を備える積層体を準備する積層体準備工程と、積層体における第1導電層3上に、電子輸送材料を含有する電子輸送層4を形成する電子輸送層形成工程と、電子輸送層4上に光吸収層7を形成する光吸収層形成工程と、光吸収層7上及び光吸収層7の細孔中に、ホール輸送材料を含有するホール輸送層8を形成するホール輸送層形成工程と、ホール輸送層8上に第2導電層11を形成する第2導電層形成工程とを備える。
[積層体準備工程]
本工程では、基体2及び第1導電層3を備える積層体を準備する。積層体は、例えば、基体2上に第1導電層3を形成することで得られる。基体2上に第1導電層3を形成する方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、及びメッキ法が挙げられる。
[電子輸送層形成工程]
本工程では、積層体における第1導電層3上に、電子輸送材料を含有する電子輸送層4を形成する。詳しくは、図1に示す光電変換素子20を製造する場合、本工程は、緻密質酸化チタン層形成工程と、多孔質酸化チタン層形成工程とを含む。
(緻密質酸化チタン層形成工程)
本工程では、積層体における第1導電層3上に緻密質酸化チタン層5を形成する。第1導電層3上に緻密質酸化チタン層5を形成する方法としては、例えば、チタンキレート化合物を含有する緻密質酸化チタン層用塗布液を第1導電層3上に塗布した後、焼成する方法が挙げられる。緻密質酸化チタン層用塗布液を第1導電層3上に塗布する方法としては、例えば、スピンコート法、スクリーン印刷法、キャスト法、浸漬塗布法、ロールコート法、スロットダイ法、スプレーパイロリシス法、及びエアロゾルデポジション法が挙げられる。焼成後、形成された緻密質酸化チタン層5を四塩化チタン水溶液に浸漬させるとよい。この処理により、緻密質酸化チタン層5の緻密性を増大させることができる。
緻密質酸化チタン層用塗布液の溶媒としては、例えば、アルコール(特に、1-ブタノール)が挙げられる。緻密質酸化チタン層用塗布液が含有するチタンキレート化合物としては、例えば、アセト酢酸エステルキレート基を有する化合物、及びβ-ジケトンキレート基を有する化合物が挙げられる。
アセト酢酸エステルキレート基を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、ジイソプロポキシチタニウムビス(メチルアセトアセテート)、ジイソプロポキシチタニウムビス(エチルアセトアセテート)、ジイソプロポキシチタニウムビス(プロピルアセトアセテート)、ジイソプロポキシチタニウムビス(ブチルアセトアセテート)、ジブトキシチタニウムビス(メチルアセトアセテート)、ジブトキシチタニウムビス(エチルアセトアセテート)、トリイソプロポキシチタニウム(メチルアセトアセテート)、トリイソプロポキシチタニウム(エチルアセトアセテート)、トリブトキシチタニウム(メチルアセトアセテート)、トリブトキシチタニウム(エチルアセトアセテート)、イソプロポキシチタニウムトリ(メチルアセトアセテート)、イソプロポキシチタニウムトリ(エチルアセトアセテート)、イソブトキシチタニウムトリ(メチルアセトアセテート)、及びイソブトキシチタニウムトリ(エチルアセトアセテート)が挙げられる。
β-ジケトンキレート基を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、ジイソプロポキシチタニウムビス(アセチルアセトネート)、ジイソプロポキシチタニウムビス(2,4-ヘプタンジオネート)、ジブトキシチタニウムビス(アセチルアセトネート)、ジブトキシチタニウムビス(2,4-ヘプタンジオネート)、トリイソプロポキシチタニウム(アセチルアセトネート)、トリイソプロポキシチタニウム(2,4-ヘプタンジオネート)、トリブトキシチタニウム(アセチルアセトネート)、トリブトキシチタニウム(2,4-ヘプタンジオネート)、イソプロポキシチタニウムトリ(アセチルアセトネート)、イソプロポキシチタニウムトリ(2,4-ヘプタンジオネート)、イソブトキシチタニウムトリ(アセチルアセトネート)、及びイソブトキシチタニウムトリ(2,4-ヘプタンジオネート)が挙げられる。
チタンキレート化合物としては、アセト酢酸エステルキレート基を有する化合物が好ましく、ジイソプロポキシチタニウムビス(アセチルアセトネート)がより好ましい。チタンキレート化合物としては、デュポン社製「TYZOR(登録商標)AA」シリーズのような市販品を用いてもよい。
(多孔質酸化チタン層形成工程)
本工程では、緻密質酸化チタン層5上に多孔質酸化チタン層6を形成する。多孔質酸化チタン層6を形成する方法としては、例えば、酸化チタンを含有する多孔質酸化チタン層用塗布液を緻密質酸化チタン層5上に塗布した後、焼成する方法が挙げられる。多孔質酸化チタン層用塗布液は、例えば、溶媒及び有機バインダーを更に含有してもよい。多孔質酸化チタン層用塗布液が有機バインダーを含有する場合、有機バインダーは焼成で除去される。多孔質酸化チタン層用塗布液を緻密質酸化チタン層5に塗布する方法としては、例えば、スピンコート法、スクリーン印刷法、キャスト法、浸漬塗布法、ロールコート法、スロットダイ法、スプレーパイロリシス法、及びエアロゾルデポジション法が挙げられる。
多孔質酸化チタン層6の細孔径及び空隙率は、例えば、多孔質酸化チタン層用塗布液が含有する酸化チタン粒子の粒子径、並びに有機バインダーの種類及び含有量によって調整できる。
多孔質酸化チタン層用塗布液が含有する酸化チタンとしては、特に限定されないが、例えば、アナターゼ型の酸化チタンが挙げられる。多孔質酸化チタン層用塗布液は、例えば、酸化チタン粒子(より具体的には、日本アエロジル株式会社製「AEROXIDE(登録商標)TiO2 P25」等)をアルコール(より具体的には、エタノール等)に分散させることで調製できる。多孔質酸化チタン層用塗布液は、例えば、酸化チタンペースト(より具体的には、日揮触媒化成株式会社製「PST-18NR」等)をアルコール(より具体的には、エタノール等)で希釈することでも調製できる。
多孔質酸化チタン層用塗布液が有機バインダーを含有する場合、有機バインダーとしては、エチルセルロース、又はアクリル樹脂が好ましい。アクリル樹脂は、低温分解性に優れ、低温で焼成を行う場合であっても多孔質酸化チタン層6内に有機物が残存し難い。アクリル樹脂としては、300℃程度の温度で分解するものが好ましい。アクリル樹脂としては、例えば、少なくとも1種の(メタ)アクリルモノマーの重合体が挙げられる。(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、n-ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、及びポリオキシアルキレン構造を有する(メタ)アクリルモノマーが挙げられる。
[光吸収層形成工程]
本工程では、電子輸送層4上(二層構造の場合、多孔質酸化チタン層6上、又は一層構造の場合、緻密質酸化チタン層5上)に光吸収層7を形成する。また、光吸収層7は、多孔質酸化チタン層6の細孔中に形成されてもよい。光吸収層7は、ペロブスカイト化合物の複数の針状結晶12が交錯する多孔質構造を有する多孔質層である。ペロブスカイト化合物の針状結晶12は、ペロブスカイト化合物の板状結晶よりも安定的に製造でき、歩留まりに優れる。
ペロブスカイト化合物がペロブスカイト化合物(1)である場合、光吸収層7は、例えば、以下の1段階法又は2段階法により形成できる。
1段階法では、一般式「AX」で表される化合物(以下、化合物(AX)と記載する)を含有する溶液と、一般式「BX2」で表される化合物(以下、化合物(BX2)と記載する)を含有する溶液とを混合して、混合液を得る。一般式「AX」及び一般式「BX2」中のA、B、及びXは、各々、一般式(1)中のA、B、及びXと同義である。この混合液を、電子輸送層4上に塗布して、乾燥させることにより、一般式「ABX3」で表されるペロブスカイト化合物(1)を含有する多孔質層が形成される。混合液を電子輸送層4上に塗布する方法としては、例えば、浸漬塗布法、ロールコート法、スピンコート法、及びスロットダイ法が挙げられる。
2段階法では、化合物(BX2)を含有する溶液を電子輸送層4上に塗布して、塗布膜を形成する。この塗布膜上に、化合物(AX)を含有する溶液を塗布して、塗布膜中で化合物(BX2)と化合物(AX)とを反応させる。次いで、塗布膜を乾燥させることにより、一般式「ABX3」で表されるペロブスカイト化合物(1)を含有する多孔質層が形成される。化合物(BX2)を含有する溶液を電子輸送層4に塗布する方法、及び化合物(AX)を含有する溶液を塗布膜上に塗布する方法としては、例えば、浸漬塗布法、ロールコート法、スピンコート法、及びスロットダイ法が挙げられる。
大気雰囲気化下(通常環境下)で光吸収層7を形成した場合、1段階法及び2段階法の何れであっても、湿気の影響によってペロブスカイト化合物(1)の針状結晶12が形成される。大気雰囲気下での塗布により光吸収層7を形成できるため、本実施形態に係る製造方法によれば、低コストで光電変換素子20を製造できる。
光吸収層形成工程では、上述の方法以外にも、例えば、電子輸送層4上に、ペロブスカイト化合物及び結着樹脂を含有する光吸収層用塗布液を塗布してもよい。
[ホール輸送層形成工程]
本工程では、光吸収層7上及び光吸収層7の第1領域9の細孔中に、ホール輸送材料を含有するホール輸送層8を形成する。詳しくは、光吸収層7上にホール輸送層用塗布液を塗布することにより形成した塗布膜を乾燥させることにより、ホール輸送層8が形成される。このホール輸送層用塗布液は、例えばポリビニルブチラール樹脂と、ホール輸送材料であるカーボンナノチューブと、溶媒とを含有する。
ホール輸送層用塗布液に含有される溶媒としては、有機溶媒が好ましく、光吸収層7に含まれるペロプスカイト化合物が溶解されず且つバインダー樹脂が溶解する有機溶媒であることがより好ましく、イソプロピルアルコール、トルエン、又はクロロベンゼンが更に好ましい。光吸収層7が溶解されない溶媒を用いることで、光吸収層7におけるペロブスカイト化合物の針状結晶12の構造を好適に維持できる。また、バインダー樹脂が溶解する溶媒を用いることで、溶解状態のバインダー樹脂によりカーボンナノチューブが薄く均一に、針状結晶12の表面を被覆し、カーボンナノチューブに適度な絶縁性を付与できる。ホール輸送層用塗布液におけるカーボンナノチューブの含有割合は、例えば、0.5質量%5.0質量%以下である。また、ホール輸送層用塗布液におけるバインダー樹脂の含有割合は、例えば、0.5質量%以上5.0質量%以下である。
ホール輸送層用塗布液がホール輸送材料として有機電荷輸送材料を含む場合、バインダー樹脂の質量MRに対する、有機電荷輸送材料の質量MCの比率MC/MRは、好ましくは4以上15以下、より好ましくは5以上10以下である。有機電荷輸送材料はカーボンナノチューブより導電性が低いため、ホール輸送層8はより高い割合で有機電荷輸送材料を含有する必要がある。
ホール輸送層用塗布液は、カーボンナノチューブとバインダー樹脂とを溶媒に入れ分散することで作製される。分散には、例えば、ホモジナイザー、又は超音波分散装置が用いられる。強いシェアがかかるとカーボンナノチューブが壊れるため、緩やかな分散条件に設定することが好ましい。
有機電荷輸送材料の場合、溶媒に溶解するため、分散装置ではなくマグネットスターラーなどの撹拌装置が用いられる。
ホール輸送層用塗布液の粘度は、3mPa・s以上50mPa・s以下が好ましい。粘度が3mPa・sより小さいと、塗布液の光吸収層7への浸透速度が速く、塗布液は急速に光吸収層7と電子輸送層4との界面まで到達してしまい、第2領域10を設けるための浸透度の制御が難しくなる。一方、粘度が50mPa・sより大きいと、塗布液の光吸収層7への浸透速度が非常に遅く、塗布工程に長時間を要するため生産性が悪くなる。ホール輸送層用塗布液の粘度は、5mPa・s以上10mPa・s以下であることがさらに好ましい。最も短時間で最も好ましい充填率80%から85%を実現できるからである。
ホール輸送層用塗布液の粘度は、例えば、塗布液中のバインダー樹脂の割合の調整、塗布液中のホール輸送層の割合の調整、塗布液への増粘剤の添加などにより制御することができる。
ホール輸送層用塗布液の塗布方法としては、例えば、浸漬塗布法、スプレー塗布法、スライドホッパー塗布法、ロールコート法、及びスピンコート法が挙げられる。ホール輸送層用塗布液は、ペロブスカイト化合物の針状結晶12が交錯した多孔質構造を有する光吸収層4への浸透度を制御する必要があることから、スピンコート法により塗布されることが好ましい。
スピンコート法により光吸収層7上にホール輸送層用塗布液を塗布する場合、例えば次のような工程により塗布することができる。
まず、光吸収層7まで形成した中間品をスピンコーターのステージ上の回転中心付近に固定し、光吸収層7上にホール輸送層用塗布液を滴下する。そして、所定の静置時間だけ中間品を静置し塗布液を光吸収層7中に浸透させ、その後、スピンコーターのステージを回転させる。この回転による遠心力により塗布液は遠心力の向き(回転中心から遠ざかる向き)に広がっていき、余分な塗布液が除去される。このようにして、光吸収層7上及び光吸収層7の第1領域9の細孔中に、ホール輸送層用塗布液の塗布膜を形成することができる。その後、この塗布膜を乾燥させることにより、光吸収層7上及び光吸収層7の第1領域9の細孔中にホール輸送層8を形成することができる。
スピンコーターの回転数は、例えば、1500rpm以上5000rpm以下とすることができる。
ホール輸送層用塗布液の光吸収層7への浸透度は 光吸収層7上にホール輸送層用塗布液を滴下してから、中間品(光吸収層7)の回転開始までの時間(静置時間)を変えることにより制御することができる。ここでは、ホール輸送用塗布液が適度な粘度(例えば、3mPa・s以上50mPa・s以下)を有するものとする。
回転開始時間を遅くする(静置時間を長くする、例えば、30秒間以上)と、塗布液はより深くまで光吸収層7中に浸透し光吸収層7と電子輸送層4との界面まで到達する。
回転開始時間を早くする(静置時間を短くする、例えば、10秒間以下)と、光吸収層7中に塗布液が十分に浸透していない状態で中間品(光吸収層7)が回転し塗布液が遠心力により除去される。このため、浸透はそれ以上進行せず回転開始により光吸収層7への塗布液の浸透を止めることができる。その結果、光吸収層7中に、塗布液が浸透した領域(光吸収層7の上側表面から浸透先端まで)と、塗布液が浸透していない領域(光吸収層7と電子輸送層4との界面から浸透先端まで、空気層)とを形成することができる。その後、塗布液を乾燥させると、光吸収層7の塗布液が浸透した領域(光吸収層7の上側表面から浸透先端まで、第1領域9)では、針状結晶12の表面を覆うようにホール輸送層8が形成される。しかし、塗布液が浸透していない領域(光吸収層7と電子輸送層4との界面から浸透先端まで、第2領域10)では、針状結晶12の表面はホール輸送層8により覆われていない。このような第2領域10を電子輸送層4と第1領域9との間に形成することにより、電子輸送層4とホール輸送層8とが接触することを抑制することができ、短絡を抑制することができる。
光吸収層7とホール輸送層8との合計重量は、例えば、ホール輸送層8の形成後第2導電層11の形成前の第2中間品の重量から電子輸送層4の形成後光吸収層7の形成前の第1中間品の重量を引くことにより算出することができる。各試料の光吸収層7の重量は実質的に同じであるため、各試料の重量差(第2中間品の重量-第1中間品の重量)の違いは、ホール輸送層8の重量の違いを表し、光吸収層7へのホール輸送層用塗布液の浸透度の違いに対応する。
回転開始時間を遅くした場合(静置時間を長くする、例えば、30秒間以上)、ホール輸送層用塗布液が光吸収層7と電子輸送層4との界面まで到達し、それ以上静置時間を長くしても塗布液の光吸収層7への浸透は進まないため、重量差(第2中間品の重量-第1中間品の重量)は大きくならない。この重量差(第2中間品の重量-第1中間品の重量)と、実測膜厚(光吸収層とホール輸送層の合計膜厚)と、試料サイズ(縦×横)とから(光吸収層+ホール輸送層)の密度を算出することができる。この密度が、光吸収層7へのホール輸送層用塗布液の充填率100%に対応する。また、この密度を充填率100%として、他の試料の(光吸収層+ホール輸送層)の密度から充填率を算出することができる。
回転開始時間を早くした場合(静置時間を短くする、例えば、10秒間以下)、光吸収層7にホール輸送層用塗布液が浸透していない領域(光吸収層7と電子輸送層4との界面から浸透先端まで、第2領域10)が形成されるため、(光吸収層+ホール輸送層)の密度は、充填率を100%とした場合に比べ、小さくなり充填率も低くなる。
また、ホール輸送用塗布液が、光吸収層7と電子輸送層4との界面まで到達しているかは、ガラス基板(基体2)側がから試料又は中間品を観察することにより確認できる。すなわち、透明電極(第1導電層3)と電子輸送層4が透明であるためガラス基板側からは黒色に近いペロブスカイト化合物の針状結晶12が観察できる。ホール輸送材料であるカーボンナノチューブを含むホール輸送層用塗布液が光吸収層7と電子輸送層4との界面まで到達しているとさらに濃い黒色が観察できる。ホール輸送材料である有機電荷輸送材料を含むホール輸送層用塗布液が光吸収層7と電子輸送層4との界面まで到達していると、有機電荷輸送材料は黄色であるため黄色味を帯びた黒色が観察できる。
スピンコート法により光吸収層7上にホール輸送層用塗布液を塗布する場合、例えば次のような工程によっても塗布することができる。
まず、光吸収層7まで形成した中間品をスピンコーターのステージ上の回転中心付近に固定し、スピンコーターのステージを回転させる。そして、回転している光吸収層7上にホール輸送層用塗布液を滴下する。滴下した塗布液は、光吸収層7に浸透しながら遠心力の向き(回転中心から遠ざかる向き)に広がっていき、余分な塗布液が除去される。このため、光吸収層7中に、塗布液が浸透した領域(光吸収層7の上側表面から浸透先端まで)と、塗布液が浸透していない領域(光吸収層7と電子輸送層4との界面から浸透先端まで、空気層)とを形成することができる。その後、塗布液を乾燥させると、光吸収層7の塗布液が浸透した領域(光吸収層7の上側表面から浸透先端まで、第1領域9)では、針状結晶12の表面を覆うようにホール輸送層8が形成される。しかし、塗布液が浸透していない領域(光吸収層7と電子輸送層4との界面から浸透先端まで、第2領域10)では、針状結晶12の表面はホール輸送層8により覆われていない。このような第2領域10を電子輸送層4と第1領域9との間に形成することにより、電子輸送層4とホール輸送層8とが接触することを抑制することができ、短絡を抑制することができる。このようにしてホール輸送層8を作製した場合であっても、上述の方法で密度及び充填率を算出することができる。
このような方法で光吸収層7上にホール輸送層用塗布液を塗布する場合、例えば、スピンコーターの回転数、スピンコート時間(塗布液を滴下してからステージの回転を停止するまでの時間)を調整することにより、塗布液の浸透度を制御することができる。
[第2導電層形成工程]
本工程では、ホール輸送層8上に第2導電層11を形成する。ホール輸送層8上に第2導電層11を形成する方法としては、特に限定されず、第1導電層3の形成方法と同じ方法(より具体的には、真空蒸着法、スパッタリング法、及びメッキ法等)を用いることができる。
[その他]
以上、本実施形態に係る光電変換素子20の製造方法の一例として、図1に示す光電変換素子20の製造方法を説明した。但し、本実施形態に係る光電変換素子の製造方法は、上述の製造方法に限定されず、例えば以下の点を変更可能である。
本実施形態に係る光電変換素子20の製造方法は、第2導電層11上に表面層を形成する表面層形成工程を更に備えてもよい。また、本実施形態に係る光電変換素子20の製造方法は、積層体準備工程及び第2導電層形成工程を備えなくてもよい。更に、電子輸送層形成工程では、上述の緻密質酸化チタン層形成工程及び多孔質酸化チタン層形成工程以外の方法で電子輸送層を形成してもよい。
<光電変換素子の製造実験>
以下の方法により、表1に示す試料A-1~A-7、B-1、B-2を製造した。各試料(光電変換素子)の製造環境は、温度25℃且つ湿度60%RHの環境下であった。表1には、各試料の樹脂/ホール輸送材料(重量比)、ホール輸送層用塗布液の粘度、静置時間(秒)又はスピンコート時間(秒)、光吸収層とホール輸送層の合計重量、光吸収層とホール輸送層の合計膜厚、計算膜厚及び充填率を示している。
表1で用いられる用語の意味は、次のとおりである。
「静置時間」は、ホール輸送層用塗布液を光吸収層上に滴下した後、スピンコーターの回転開始までの時間を示す(試料A-1、A-4~A-7、B-1、B-2)。
「スピンコート時間」は、回転している光吸収層にホール輸送層用塗布液を滴下した試料(A-2、A-3)の作製において、ホール輸送層用塗布液を光吸収層上に滴下した後、スピンコーターの回転を停止するまでの時間を示す。
「計算膜厚」は、試料B-1の(光吸収層+ホール輸送層)の密度と、各試料のサイズ(縦2.5cm×横2.5cm)と、各試料の(光吸収層+ホール輸送層)の合計重量とから算出した(光吸収層+ホール輸送層)の膜厚である。なお、試料B-1の製造において、ホール輸送層用塗布液が光吸収層の細孔のすべてに充填されたとみなしている。
「充填率」は、光吸収層のうちホール輸送層用塗布液が充填された領域の割合であり、式:(計算膜厚)/(光吸収層とホール輸送層の合計膜厚)により算出した。(光吸収層とホール輸送層の合計膜厚)は各試料の実測した膜厚である。
その他の用語は、以下の説明において適宜説明する。
Figure 2023054583000003
[試料B-1]
(積層体準備工程)
フッ素ドープ酸化スズが蒸着された透明ガラス板(シグマアルドリッチ社製、板厚:2.2mm)を、横25mm及び縦25mmの大きさに切断した。これにより、基体(透明ガラス板)及び第1導電層(フッ素ドープ酸化スズの蒸着膜)を備える積層体を準備した。この積層体に対して、エタノール中での超音波洗浄処理(10分間)、及びUV洗浄処理(15分間)を行った。
(緻密質酸化チタン層形成工程)
チタンキレート化合物であるジイソプロポキシチタニウムビス(アセチルアセトネート)を75質量%の濃度で含有する1-ブタノール溶液(シグマアルドリッチ社製)を、1-ブタノールで希釈した。これにより、チタンキレート化合物の濃度が0.02mol/Lである緻密質酸化チタン層用塗布液を調製した。スピンコート法により、上述の積層体における第1導電層上に、緻密質酸化チタン層用塗布液を塗布し、450℃で15分間加熱した。これにより、第1導電層上に、膜厚50nmの緻密質酸化チタン層を形成した。
(多孔質酸化チタン層形成工程)
酸化チタン及びエタノールを含有する酸化チタンペースト(日揮触媒化成株式会社製「PST-18NR」)1gをエタノール2.5gで希釈することにより、多孔質酸化チタン層用塗布液を調製した。上述の緻密質酸化チタン層上に、スピンコート法により多孔質酸化チタン層用塗布液を塗布した後、450℃で1時間焼成した。これにより、緻密質酸化チタン層上に、膜厚250nmの多孔質酸化チタン層を形成した。この時点で 酸化チタン層の膜厚とガラス基板を含む第1中間品の重量を測定した。
(光吸収層形成工程)
光吸収層の形成は、大気雰囲気下にて行った。PbI2(東京化成工業株式会社製)922mgと、CH3NH3I(東京化成工業株式会社製)318mgとを、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)1.076mLに加熱溶解させた。PbI2及びCH3NH3Iのモル比は1:1であった。これにより、固形分濃度が55質量%である混合液を調製した。スピンコート法により、多孔質酸化チタン層を形成した後の中間品を5000rpmで30秒間回転させ、多孔質酸化チタン層上にこの混合液を塗布した。塗布後の中間品にトルエンを2滴滴下したところ、塗布液膜が黄色から黒色に変化した。これにより、ペロブスカイト化合物(CH3NH3PbI3)が形成されたことを確認した。その後、塗布液膜を100℃で60分間乾燥させた。これにより、多孔質酸化チタン層上に、ペロブスカイト化合物を含有する膜厚500nmの光吸収層が形成された。この光吸収層は、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の複数の針状結晶が交錯した多孔質構造を有する(後述する「光吸収層の観察」を参照)。
(ホール輸送層形成工程)
超音波分散装置を用いて、カーボンナノチューブ(多層タイプカーボンナノチューブ、東京化成工業株式会社製「多層カーボンナノチューブ」)(ホール輸送材料)0.2gと、ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業株式会社製「エスレックBL-S」(登録商標)、重量平均分子量:2.3×104)0.2gとを、イソプロピルアルコール12.21mLに分散させた(樹脂/ホール輸送材料=1/1)(重量比)。このようにして、ホール輸送層用塗布液を調製した。ホール輸送層用塗布液の粘度を測定したところ、粘度は5mPa・sであった。
その後、スピンコート法を用いて調製したホール輸送層用塗布液を上述の光吸収層上に塗布した。具体的には、光吸収層上にホール輸送層用塗布液を滴下して60秒間(静置時間)中間品を静置した後、中間品を2000rpm20秒間回転させ塗布膜を形成した。静置時間において、ホール輸送層用塗布液は多孔質構造を有する光吸収層の深くまで浸透し、中間品を回転させることにより、遠心力の向き(回転中心から遠ざかる向き)にホール輸送層用塗布液が広がっていき、余分なホール輸送層用塗布液が除去されたと考えられる。このため、光吸収層中の細孔は、充填率100%でホール輸送層用塗布液で充填されたとみなすことができる。
ホール輸送層用塗布液を塗布することにより形成された塗布膜を、100℃で30分間乾燥させることで、有機溶媒(イソプロピルアルコール)を除去した。これにより、上述の光吸収層上及び光吸収層の細孔中にホール輸送層を形成した。
この時点で 第2中間品の重量を測定した。第2中間品の重量と第1中間品の重量との差が光吸収層とホール輸送層との合計重量となる。この合計重量を表1に示す。
また、光吸収層とホール輸送層を合わせた膜厚を測定した。測定した合計膜厚を表1に示す。
また、光吸収層とホール輸送層との合計重量と、測定した合計膜厚と、光吸収層のサイズ(縦25mm×横25mm)とから、(光吸収層+ホール輸送層)の密度を算出した。密度は4.01g/cm3となった。この中間品では、光吸収層中の細孔は、充填率100%でホール輸送層用塗布液で充填されたとみなすことができるため、試料B-1の充填率が100%であるとして、この密度を用いて、他の試料の充填率を算出した。
(第2導電層形成工程)
真空蒸着法により、上述のホール輸送層上に、第2導電層を形成した。第2導電層は、膜厚150nm、横5mm及び縦5mmの金蒸着膜であり、陽極として形成された。これにより、基体と、第1導電層と、電子輸送層(詳しくは、緻密質酸化チタン層及び多孔質酸化チタン層)と、光吸収層と、ホール輸送層と、第2導電層とを備える、試料(光電変換素子)B-1を得た。
[試料B-2]
スピンコート法によるホール輸送層の形成工程において、光吸収層上にホール輸送層用塗布液を滴下した後中間品を30秒間(静置時間)静置した。その後、中間品を2000rpmで20秒間回転させ余分なホール輸送層用塗布液を除去した。このこと以外は、試料B-1の製造と同じ方法により試料B-2を製造した。
試料B-1の(光吸収層+ホール輸送層)の密度を用いて計算膜厚を求めたところ、実測膜厚ほぼと一致した。これより、静置時間30秒間以上では、ホール輸送層用塗布液は電子輸送層にまで達し、ホール輸送層用塗布液の光吸収層への浸透がほぼ完了していると考えられる。
[試料A-1]
スピンコート法によるホール輸送層の形成工程において、光吸収層上にホール輸送層用塗布液を滴下した後中間品を3秒間(静置時間)静置し、その後、中間品を2000rpmで20秒間回転させ余分なホール輸送層用塗布液を除去した。静置時間において、塗布液は多孔質構造を有する光吸収層に浸透し、中間品を回転させることにより、遠心力の向きに塗布液が広がっていき、余分な塗布液が除去されたと考えられる。この試料では、静置時間が3秒間と短いため、電子輸送層に近接した光吸収層の領域にホール輸送層用塗布液が浸透していない領域が形成されていると考えられる。このこと以外は、試料B-1の製造と同じ方法により試料A-1を製造した。
[試料A-2]
スピンコート法によるホール輸送層の形成工程において、ホール輸送層用塗布液を滴下する前の中間品の回転(2000rpm、20秒間)を開始し、回転終了3秒前から2秒間(スピンコート時間:3秒間)で、ホール輸送層用塗布液を光吸収層上に滴下し塗布膜を形成した。この試料では、回転している光吸収層上に塗布液を滴下しているため、多孔質構造を有する光吸収層への塗布液の浸透と、遠心力の向きへの塗布液の広がりとが同時に進行していると考えられる。このため、電子輸送層に近接した光吸収層の領域にホール輸送層用塗布液が浸透していない領域が形成されていると考えられる。このこと以外は、試料B-1の製造と同じ方法により試料A-2を製造した。
[試料A-3]
スピンコート法によるホール輸送層の形成工程において、ホール輸送層用塗布液を滴下する前の中間品の回転(2000rpm、20秒間)を開始し、回転終了10秒前から2秒間(スピンコート時間:10秒間)で、ホール輸送層用塗布液を光吸収層上に滴下し塗布膜を形成した。この試料では、回転している光吸収層上に塗布液を滴下しているため、多孔質構造を有する光吸収層への塗布液の浸透と、遠心力の向きへの塗布液の広がりとが同時に進行していると考えられる。このため、電子輸送層に近接した光吸収層の領域にホール輸送層用塗布液が浸透していない領域が形成されていると考えられる。また、スピンコート時間が試料A-2よりも長いため、塗布液が光吸収層へ浸透する深さは、試料A-2よりも浅くなると考えられる。このこと以外は、試料B-1の製造と同じ方法により試料A-3を製造した。
[試料A-4]
スピンコート法によるホール輸送層の形成工程において、光吸収層上にホール輸送層用塗布液を滴下した後中間品を5秒間(静置時間)静置し、その後、中間品を2000rpmで20秒間回転させ余分なホール輸送層用塗布液を除去した。静置時間において、塗布液は多孔質構造を有する光吸収層に浸透し、中間品を回転させることにより、遠心力の向きに塗布液が広がっていき、余分な塗布液が除去されたと考えられる。この試料では、静置時間が5秒間と短いため、電子輸送層に近接した光吸収層の領域にホール輸送層用塗布液が浸透していない領域が形成されていると考えられる。このこと以外は、試料B-1の製造と同じ方法により試料A-4を製造した。
[試料A-5]
スピンコート法によるホール輸送層の形成工程において、光吸収層上にホール輸送層用塗布液を滴下した後中間品を10秒間(静置時間)静置し、その後、中間品を2000rpmで20秒間回転させ余分なホール輸送層用塗布液を除去した。静置時間において、塗布液は多孔質構造を有する光吸収層に浸透し、中間品を回転させることにより、遠心力の向きに塗布液が広がっていき、余分な塗布液が除去されたと考えられる。この試料では、静置時間が10秒間と短いため、電子輸送層に近接した光吸収層の領域にホール輸送層用塗布液が浸透していない領域が形成されていると考えられる。このこと以外は、試料B-1の製造と同じ方法により試料A-5を製造した。
[試料A-6]
ホール輸送層用塗布液を調製する工程において、超音波分散装置を用いて、カーボンナノチューブ(多層タイプカーボンナノチューブ、東京化成工業株式会社製「多層カーボンナノチューブ」)0.2gと、ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業株式会社製「エスレックBL-S」、重量平均分子量:2.3×104)0.4gとを、イソプロピルアルコール12.21mLに分散させた(樹脂/ホール輸送材料=2/1)(重量比)。このようにしてホール輸送層用塗布液を調製した。ホール輸送層用塗布液の粘度を測定したところ、粘度は60mPa・sであった。
その後、スピンコート法を用いてホール輸送層用塗布液を光吸収層上に塗布した。具体的には、光吸収層上にホール輸送層用塗布液を滴下した後中間品を300秒間(静置時間)静置し、その後、中間品を2000rpmで20秒間回転させ余分なホール輸送層用塗布液を除去した。静置時間において、塗布液は多孔質構造を有する光吸収層に浸透し、中間品を回転させることにより、遠心力の向きに塗布液が広がっていき、余分な塗布液が除去されたと考えられる。この試料では、ホール輸送用塗布液の粘度が高いため、電子輸送層に近接した光吸収層の領域にホール輸送層用塗布液が浸透していない領域が形成されていると考えられる。これら以外は、試料B-1の製造と同じ方法により試料A-6を製造した。
[試料A-7]
ホール輸送層用塗布液を調製する工程において、超音波分散装置を用いて、カーボンナノチューブ(多層タイプカーボンナノチューブ、東京化成工業株式会社製「多層カーボンナノチューブ」)0.2gと、ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業株式会社製「エスレックBL-S」、重量平均分子量:2.3×104)0.1gとを、イソプロピルアルコール18.321mLに分散させた(樹脂/ホール輸送材料=1/2)(重量比)。このようにしてホール輸送層用塗布液を調製した。ホール輸送層用塗布液の粘度を測定したところ、粘度は2mPa・sであった。
その後、スピンコート法を用いてホール輸送層用塗布液を光吸収層上に塗布した。具体的には、光吸収層上にホール輸送層用塗布液を滴下した後中間品を3秒間(静置時間)静置し、その後、中間品を2000rpmで20秒間回転させ余分なホール輸送層用塗布液を除去した。静置時間において、塗布液は多孔質構造を有する光吸収層に浸透し、中間品を回転させることにより、遠心力の向きに塗布液が広がっていき、余分な塗布液が除去されたと考えられる。この試料では、静置時間が3秒間と短いため、電子輸送層に近接した光吸収層の領域にホール輸送層用塗布液が浸透していない領域が形成されていると考えられる。また、この試料では、ホール輸送層用塗布液の粘度が低いため、塗布液が光吸収層へ浸透する深さは、試料A-1よりも深くなると考えられる。これら以外は、試料B-1の製造と同じ方法により試料A-7を製造した。
<光吸収層の観察>
光吸収層形成工程後、ホール輸送層形成工程前に、試料A-1の光吸収層の表面を、光学顕微鏡(株式会社キーエンス製「デジタルマイクロスコープ VHX」)を用いて2000倍の倍率で観察した。図4に、試料A-1の光吸収層の表面の写真を示す。なお、図4の写真中に示されるスケールバーは、10.00μmの長さを示す。図4に示す写真から、試料A-1の光吸収層がペロブスカイト化合物の複数の針状結晶によって構成されていること、及びペロブスカイト化合物の複数の針状結晶が交錯することによって多孔質領域が形成されていることが確認できた。
<ペロブスカイト化合物の針状結晶の長軸長さ及びアスペクト比の測定>
光吸収層形成工程後、ホール輸送層形成工程前に、試料A-1の光吸収層の表面を、光学顕微鏡(株式会社キーエンス製「デジタルマイクロスコープ VHX」)を用いて2000倍の倍率で観察した。光吸収層の表面に確認されたペロブスカイト化合物の針状結晶の任意の20個について、長軸長さ及びアスペクト比を測定し、20個の測定値の合計を測定個数(20個)で徐することにより、その算術平均値を求めた。試料A-1の光吸収層に含有されるペロブスカイト化合物の複数の針状結晶について、長軸長さの算術平均値は7μmであり、アスペクト比の算術平均値は5であった。
<光電変換素子の出力測定>
試料A-1~A-7、B-1、B-2の各々について、短絡電流、開放電圧、曲線因子、及び光電変換効率を、ソーラーシミュレータ(株式会社ワコム電創製)を用いて測定した。電極面積と同じ 横5mm×縦5mmの穴の開いた黒色の金属マスクを重ねて散乱光の影響を除いた上で、光電変換素子(各試料)の表面層側の第2導電層が陽極となり、基体側の第1導電層が陰極となるように、ソーラーシミュレータに光電変換素子を接続した。キセノンランプの光をエアマスフィルター(株式会社ニコン製「AM-1.5」)を通過させることにより得られた100mW/cm2の疑似太陽光を、光電変換素子(各試料)に照射した。照射したときの光電変換素子の電流-電圧特性を測定し、電流-電圧曲線を得た。電流-電圧曲線から、短絡電流(Jsc)、開放電圧(Voc)、曲線因子(FF)、及び光電変換効率(η)を算出した。短絡電流、開放電圧、曲線因子、及び光電変換効率は、何れも、その数値が高いほど光電変換素子として優れていることを示す。結果を表2に示す。
Figure 2023054583000004
表2に示すように、試料A-1~A-7は、試料B-1、B-2と比較し、短絡電流、開放電圧、曲線因子、及び変換効率が良好であった。これは、試料A-1~A-7では、光吸収層の細孔中にホール輸送層が形成されていない領域が電子輸送層に近接した部分に形成されていると考えられるため、優れた光電変換特性を有すると考えられる。
また、試料A-1~A-7のなかでも、試料A-1~A-3の変換効率は、特に良好であった。
また、試料A-6では、ホール輸送層用塗布液に含まれる樹脂成分が多く塗布液の粘度が高いため、塗布液の光吸収層への浸透速度が遅く、光電変換素子の作製に時間を要する。このため総合的な評価が低くなった。
また、試料A-7では、ホール輸送層用塗布液に含まれる樹脂成分が少なく塗布液の粘度が低いため、塗布液の光吸収層への浸透速度が速く光電変換素子の作製に失敗しやすい。このため、総合的な評価が低くなった。
また、試料B-1、B-2は、試料A-1~A-5と比較し、短絡電流、開放電圧、曲線因子、及び光電変換効率が良好でなかった。これは、試料B-1、B-2は、ホール輸送層を形成する際に、ホール輸送材料であるカーボンナノチューブが、光吸収層の多孔質領域の空隙にとどまらず、電子輸送層との界面まで浸透し、その結果、部分的に導電層間の短絡が発生したためであると考えられる。
本発明に係る光電変換素子は、メガソーラーシステムのような太陽光発電システム、太陽電池、及び小型携帯機器用の電源等に利用できる。
2:基体 3:第1導電層 4:電子輸送層 5:緻密質電子輸送層(緻密質酸化チタン層) 6:多孔質電子輸送層(多孔質酸化チタン層) 7:光吸収層 8:ホール輸送層 9:第1領域 10:第2領域 11:第2導電層 12:針状結晶 13:細孔 20:光電変換素子

Claims (7)

  1. 電子輸送層と、前記電子輸送層上に設けられた光吸収層と、ホール輸送層とを備え、
    前記光吸収層は、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の複数の針状結晶が交錯した多孔質構造を有し、
    前記ホール輸送層は、前記光吸収層上及び前記光吸収層の細孔内に設けられ、
    前記光吸収層は、前記針状結晶の表面が前記ホール輸送層により覆われている第1領域と、前記針状結晶の表面が前記ホール輸送層により覆われてない第2領域とを有し、
    第2領域は、第1領域と前記電子輸送層との間に配置されていることを特徴とする光電変換素子。
  2. 前記光吸収層に占める第1領域の割合は、70%以上90%以下である請求項1に記載の光電変換素子。
  3. 前記光吸収層に占める第1領域の割合は、80%以上85%以下である請求項1に記載の光電変換素子。
  4. 前記ホール輸送層は、ホール輸送材料であるカーボンナノチューブと、バインダーである樹脂とを含み、
    前記ホール輸送層における前記カーボンナノチューブの割合は、30質量%以上60質量%以下である請求項1~3のいずれか1つに記載の光電変換素子。
  5. 溶媒とホール輸送材料とを含む塗布液を、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の複数の針状結晶が交錯した多孔質構造を有する光吸収層上に塗布する塗布工程を含み、
    前記塗布液の粘度は、3mPa・s以上50mPa・s以下である光電変換素子の製造方法。
  6. 前記塗布工程は、前記光吸収層上に前記塗布液を供給する工程と、前記塗布液を前記光吸収層上に供給した後前記光吸収層を静置する工程と、静置した後前記光吸収層を回転させ遠心力により前記塗布液を広げる工程とを含み、
    前記光吸収層を静置する時間は、0.1秒間以上10秒間以下である請求項5に記載の製造方法。
  7. 前記塗布工程は、回転している前記光吸収層上に前記塗布液を供給する工程を含む請求項5に記載の製造方法。
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