JP2023050916A - 電子供与物可視化キット及び電子供与物の可視化方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】尿成分や微量な蛋白成分などの電子供与物を可視化することができ、しかも電子供与物が付着していない部位の色戻りのない電子供与物可視化キット及び電子供与物の可視化方法を提供する。【解決手段】電子供与性着色剤と溶媒とからなるA液と、電子受容剤と溶媒とからなる漂白成分を含むB液とを組み合わせて電子供与物可視化キットである。B液に、メタ珪酸ナトリウム、セスキ珪酸ナトリウム、オルソ珪酸ナトリウムなどのアルカリ金属のケイ酸塩を含有させる。アルカリ金属のケイ酸塩により、色戻りを防止することができる。【選択図】なし
Description
本発明は、尿成分その他の電子供与物を可視化できる電子供与物可視化キット及びこれを用いた電子供与物の可視化方法に関するものである。
トイレの床面や壁面には尿成分が飛散し易く、放置すると細菌により分解されてアンモニア臭等の悪臭の原因となる。また台所や食卓付近には牛乳のようなタンパク成分や、甘味料、ジュースなどが飛散し易く、放置すると汚れや臭気の原因となる。このため定期的にあるいは随時清掃が行われるが、これらの付着物はほぼ透明であるから乾燥後は目視することが困難である。従って清掃しても完全に除去することができたか否かの確認ができず、その結果として清掃を行っても臭気が消えないと感じる人も多い。
その対策として壁紙を張り替えたり、空気清浄機を設置することも行われているが、かなりのコストを必要とする。そこで多くの場合には単に換気を行ったり、芳香剤や消臭剤を設置するという対策が行われている。しかしこれらの対策は汚れや臭気の発生源を取り除く訳ではないので、その効果は限定的である。
特許文献1には、蛋白質を染色する染料と、汚れを除去する界面活性剤とを含む洗浄用組成物が開示されている。この洗浄用組成物を用いれば、染料によって蛋白質の付着部位を顕在化させ、界面活性剤によって洗浄することができると説明されている。しかし蛋白質が付着していない部位に付着した染料も時間の経過とともに僅かながら発色し、表面全体が薄汚れた外観となるおそれがあった。
本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、尿成分や微量な蛋白成分などの電子供与物を可視化することができ、しかも電子供与物が付着していない部位の色戻りのない電子供与物可視化キット及び電子供与物の可視化方法を提供することである。色戻りとは、無色の部位が時間の経過とともに発色する現象を意味する。
上記の課題を解決するためになされた本発明の電子供与物可視化キットは、電子供与性着色剤と溶媒とからなる着色成分を含むA液と、電子受容剤と溶媒とからなる漂白成分を含むB液とを組み合わせた電子供与物可視化キットであって、A液とB液の一方または双方に、アルカリ金属のケイ酸塩が添加されていることを特徴とするものである。
前記アルカリ金属のケイ酸塩が、メタ珪酸ナトリウム、セスキ珪酸ナトリウム、オルソ珪酸ナトリウムの少なくとも1種であることが好ましい。この電子供与物可視化キットは、尿成分可視化用キットとすることができる。
また上記の課題を解決するためになされた本発明の電子供与物可視化方法は、前記の電子供与物可視化キットを用いた電子供与物質の可視化方法であって、電子供与物質の付着箇所に、前記A液と、前記B液を噴霧し、電子供与物質の付着箇所を顕在化させることを特徴とするものである。この電子供与物可視化方法は尿成分の可視化に用いることができる。
本発明の電子供与物可視化キットは、電子供与性着色剤と溶媒とからなるA液と、電子受容剤と溶媒とからなる漂白成分を含むB液とからなるものであり、尿成分や微量な蛋白成分などの電子供与物を可視化することができる。またA液とB液の一方または双方に添加されたアルカリ金属のケイ酸塩の作用により、電子供与物が付着していない表面に噴霧された電子供与性着色剤の色戻りを防止することができる。
以下に本発明の実施形態を説明する。最初に本発明の電子供与物の可視化原理を説明する。
先ず電子受容剤と溶媒とからなる漂白成分を含むB液を尿成分の付着面に噴霧すると、漂白成分が電子供与物である尿成分と反応して漂白能力が低下するが、電子供与物が付着していない箇所においては漂白能力の低下はない。次に電子供与性着色剤と溶媒とからなるA液をその上に噴霧すると、漂白能力の低下のない箇所では電子供与性着色剤は漂白されて脱色し、無色となる。しかし尿成分と反応して漂白能力が低下した箇所では電子供与性着色剤は脱色されない。このため尿成分の付着箇所だけを着色し、可視化することができる。なおA液をB液よりも先に噴霧してもよく、同時に噴霧しても差し支えない。
先ず電子受容剤と溶媒とからなる漂白成分を含むB液を尿成分の付着面に噴霧すると、漂白成分が電子供与物である尿成分と反応して漂白能力が低下するが、電子供与物が付着していない箇所においては漂白能力の低下はない。次に電子供与性着色剤と溶媒とからなるA液をその上に噴霧すると、漂白能力の低下のない箇所では電子供与性着色剤は漂白されて脱色し、無色となる。しかし尿成分と反応して漂白能力が低下した箇所では電子供与性着色剤は脱色されない。このため尿成分の付着箇所だけを着色し、可視化することができる。なおA液をB液よりも先に噴霧してもよく、同時に噴霧しても差し支えない。
可視化対象物である電子供与物は、例えばアミノ酸からなるタンパク質、グルコース・ブドウ糖などを含む甘味料やジュースである。アミノ酸のアミノ基、グルコース・ブドウ糖などのエーテル基は酸化され易い電子供与物であり、尿成分もタンパク質を含むため可視化可能である。このほか、C=C、C=N、C-N(ペプチド結合を含む)、-NH2、-NH-、-SHなどの電子密度の高い結合部位(δ-)を持つ化合物は酸化され易い。このため尿成分のほか、、タンパク質やアミノ酸、糖などの化合物の可視化も可能である。
A液は電子供与性着色剤と溶媒とからなる。電子供与性着色剤は電子を失って酸化され易い着色剤である。この性質は酸性染料、塩基性染料を含む染料全般に及ぶ。酸性染料としては例えば、ニトロソ系染料、ニトロ系染料、モノアゾ系染料、ジアゾ系染料、トリフェニルメタン系染料、キサンテン系染料、アントラキノン系染料、インジゴイド系染料、アミノケトン系染料などを用いることができる。塩基性染料としては例えば、ジフェニルメタン系染料、アクリジン系染料、メチン系染料、チアゾール系染料、アジン系染料、チアジン系染料などを用いることができる。その他の染料としては例えば、トリアゾ系染料、ポリアゾ系染料、キノリン染料、オキサジン染料、カロテノイド系染料、インドフェノール系染料、ヒドロキシケトン系染料、アントシアニン系染料、アリザリンレッドS、ボロムチモールなどを用いることができる。電子供与性着色剤の含有量は10ppm~10wt%が好ましく、さらには100ppm~1wt%とすることがより好ましい。
溶媒としては、イオン交換水、純水、水道水等の水、または有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ベンジルアルコールなどのアルコール類や、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のジオール類又はトリオール類を単独または併用して用いることができる。添加量は、60~99.99重量%の範囲が望ましい。
B液に含まれる電子受容剤は電子を受け取ることにより相手物を酸化する酸化剤であり、次亜塩素酸ナトリウム等の金属次亜塩素酸塩、金属塩素酸塩、過酸化水素、金属過ホウ酸塩、金属過炭酸塩、金属過酸化物、過酸化アシル、過酸化ベンゾイル、過酢酸、オゾン、重硫酸ナトリウム、二酸化窒素、塩素、二酸化塩素、アゾジカルボンアミド、亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、過炭酸塩、テトラアセチレンエチレンジアミン、金属過酸一硫酸塩、及びそれらの混合物からなる群から選択することができる。電子受容剤の含有量は10ppm~20wt%が好ましく、さらには100ppm~6wt%とすることがより好ましい。
本発明ではA液とB液の一方または双方に、アルカリ金属のケイ酸塩が添加されている。アルカリ金属のケイ酸塩として、メタ珪酸ナトリウム、セスキ珪酸ナトリウム、オルソ珪酸ナトリウムを挙げることができる。これらの含有量は10ppm~20wt%が好ましく、さらには100ppm~10wt%とすることがより好ましい。
A液とB液はそれぞれ別の噴霧容器に充填してキットとして販売することが好ましい。本発明における可視化用キットは、A液及びB液を電子供与物の付着面に噴霧し、尿成分などを可視化させる為に用いる道具を指し、その形態は、例えば、A液及びB液がそれぞれ充填された1又は2以上の噴霧容器、パック、採取管、シリンジなどが考えられるが形態は問わない。また、センサーや電源を用いて電気的に駆動するような構成としても良いし、ガスの圧力で内容物が霧状に噴き出すエアゾールのような構成としても良い。
上記したように、電子供与物可視化キットを用いて電子供与物の可視化を行うには、A液とB液を順次または同時に電子供与物の付着表面に噴霧すればよい。尿成分や蛋白成分などの電子供与物の付着箇所では、B液に含まれる電子受容剤は電子供与物を酸化することにより消費される。このため電子供与性着色剤は酸化されることがなく、電子供与物の付着箇所は発色する。しかし非付着箇所では、B液に含まれる電子受容剤は消費されることがないため、染料分子構造の結合を切断し発色させない。このようにして電子供与物の付着箇所のみを着色して可視化することができる。
しかし噴霧された液体中には、電荷を帯びた界面活性剤や遊離物などの物質が存在するため、結合が切断された染料の一部がこれらから電子を奪い返し、時間の経過とともに再発色(色戻り)が発生することがある。本発明では、A液とB液の一方または双方にメタ珪酸ナトリウム、セスキ珪酸ナトリウム、オルソ珪酸ナトリウムなどのアルカリ金属のケイ酸塩を添加したので、これらが結合が切られた染料に配位して、界面活性剤や遊離物からの電子の受け取りを防止する。その結果、本発明においては従来のような色戻りの発生がなく、電子供与物が付着していない表面は無色の状態が維持される。従って、着色された電子供与物の付着部位のみを集中的に清掃すればよく、清掃が容易となる。次に実施例と比較例を示す。
表1に示す組成のA液と表2に示す組成のB液を調合した。A液の溶媒は蒸留水であり、電子供与性着色剤はアントラキノン系染料であり、pH調整剤としてクエン酸を加えた。また界面活性剤として、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミンを加えた。実施例と比較例の全てについてA液は共通とした。
B液の組成は表2の通りであり、溶媒は水道水、電子受容剤は次亜塩素酸Naである。増粘剤として水膨潤性ケイ酸塩粒子であるスメクタイトを添加した。実施例1-3には、メタ珪酸ナトリウムを添加した。比較例1は溶媒と次亜塩素酸Naとスメクタイトのみからなる。比較例2はメタ珪酸ナトリウムに代えて水酸化ナトリウムを添加し、比較例3は炭酸水素ナトリウムを添加した。これらのA液とB液を対象成分を付着させた壁面に順次噴霧し、噴霧直後における付着箇所への着色、非付着箇所の色戻りの有無を評価し、表2中に記載した。なお、対象成分は尿であるが、実施例3のみ牛乳とした。
各実施例は何れも付着箇所への着色が確認され、非付着箇所の色戻りもなかった。対象成分を牛乳とした実施例3も同様である。これに対して比較例は付着箇所への着色は確認されたものの、非付着箇所の色戻りが観察された。なお色戻りの有無は、噴霧から3時間を経過した後に目視観察した。
以上に説明したように、本発明の電子供与物可視化キット及びこれを用いた電子供与物の可視化方法によれば、尿成分や蛋白成分などの電子供与物を可視化することができ、また電子供与物が付着していない部位の色戻りを防止することができる。
Claims (5)
- 電子供与性着色剤と溶媒とからなる着色成分を含むA液と、電子受容剤と溶媒とからなる漂白成分を含むB液とを組み合わせた電子供与物可視化キットであって、A液とB液の一方または双方に、アルカリ金属のケイ酸塩が添加されていることを特徴とする電子供与物可視化キット。
- 前記アルカリ金属のケイ酸塩が、メタ珪酸ナトリウム、セスキ珪酸ナトリウム、オルソ珪酸ナトリウムの少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の電子供与物可視化キット。
- 尿成分可視化用キットとして用いられるものであることを特徴とする請求項1または2に記載の電子供与物可視化キット。
- 請求項1に記載の電子供与物可視化キットを用いた電子供与物質の可視化方法であって、電子供与物質の付着箇所に、前記A液と、前記B液を噴霧し、電子供与物質の付着箇所を顕在化させることを特徴とする電子供与物質の可視化方法。
- 前記電子供与物が尿成分であることを特徴とする請求項4に記載の電子供与物の可視化方法。
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