JP2023046254A - 記録装置、その制御方法、記録ヘッド及びその記録システム - Google Patents

記録装置、その制御方法、記録ヘッド及びその記録システム Download PDF

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貴明 島
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【課題】簡易な構成で効果的にインクの吐出不良を抑制すること【解決手段】記録手段は、インク中の色材と反応する成分を含有する反応液を付与するための複数の記録素子が第1方向に配列する反応液素子列と、第1インクを付与するための複数の記録素子が前記第1方向に配列する第1素子列と、前記反応液に対する反応性が前記第1インクよりも低い第2インクを付与するための複数の記録素子が前記第1方向に配列する第2素子列と、を備える。前記第1方向と交差する第2方向に沿って、前記反応液素子列、前記第1素子列、前記第2素子列の順に配列される。操作手段は、前記記録手段を記録媒体に対して前記第2方向に相対的に走査させる。記録制御手段は、記録媒体上の所定領域の画素数に対する前記第2インクの吐出が許容される画素数の割合が閾値を超えないように、前記記録手段による記録動作を制御する。【選択図】図8

Description

本発明は、記録装置、その制御方法、記録ヘッド及びその記録システムに関する。
記録ヘッドから記録媒体にインクを吐出することにより記録媒体上に画像を記録する記録装置が知られている。このような記録装置においては、近年では様々な用途に用いられるようになっており、それに応じて様々な種類の記録媒体にも使用されている。例えば、非浸透媒体や低浸透性媒体に記録可能な記録装置が提案されている。
そのような記録媒体に対して画像を記録する場合、色材を有するインクの他に、インクと反応して増粘などの現象を起こすことでインクの滲みやビーディングを抑制する反応液を用いることが知られている。一方で、反応液を用いると、反応液が吐出口から吐出された際に発生する反応液のミストがヘッドのインク吐出面に付着することで、インクの吐出不良が生じる場合がある。これに対し特許文献1では、空気吸引機構によりヘッド移動領域(プラテン上部)のミストを吸引することでミストがインク吐出面へ付着することを抑制するインクジェット記録装置が提案されている。
特開2010-089425号公報
しかしながら、上記従来技術では、空気吸引による気流により記録媒体裏面に汚れが発生したり、吸引口の無い部分では効果的な吸引が行えなかったりする場合がある。また、空気吸引機構を設けることによる装置の大型化やコストアップ等の憂いもある。
本発明は、簡易な構成で効果的にインクの吐出不良を抑制する技術を提供する。
本発明の一側面によれば、
インク中の色材と反応する成分を含有する反応液を付与するための複数の記録素子が第1方向に配列する反応液素子列と、第1インクを付与するための複数の記録素子が前記第1方向に配列する第1素子列と、前記反応液に対する反応性が前記第1インクよりも低い第2インクを付与するための複数の記録素子が前記第1方向に配列する第2素子列と、を備え、前記第1方向と交差する第2方向に沿って、前記反応液素子列、前記第1素子列、前記第2素子列の順に配列された記録手段と、
前記記録手段を記録媒体に対して前記第2方向に相対的に走査させる走査手段と、
記録媒体上の所定領域の画素数に対する前記第2インクの吐出が許容される画素数の割合が閾値を超えないように、前記記録手段による記録動作を制御する記録制御手段と、
を備えることを特徴とする記録装置が提供される。
本発明によれば、簡易な構成で効果的にインクの吐出不良を抑制することができる。
(A)は一実施形態に係るインクジェット記録装置の外観を示す図、(B)は記録装置の加熱部の模式図。 記録ヘッドユニットの吐出口形成面の模式図。 図2の記録ヘッドユニットの吐出口形成面の断面を示す模式図。 記録装置の制御系の概略構成を示すブロック図。 記録データ生成処理のフローチャート。 マルチパス記録方式におけるマスクパターンを例示する模式図。 マルチパス記録方式の説明図。 (A)~(C)は、色変換処理のテーブル例を示す図。 8パス記録走査におけるマスクパターンを例示する模式図。 (A)及び(B)はCPUの処理例を示すフローチャート CPUの処理例を示すフローチャート
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
なお、この明細書において、「記録」(「プリント」という場合もある)とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わない。また人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、または媒体の加工を行う場合も表すものとする。
また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものも表すものとする。
さらに、「インク」(「液体」と言う場合もある)とは、上記「記録(プリント)」の定義と同様広く解釈されるべきものである。従って、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成または記録媒体の加工、或いはインクの処理(例えば記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)に供され得る液体を表すものとする。
またさらに、「吐出口」とは、特にことわらない限り吐出口ないしこれに連通する液路を総括して言うものとする。また、各吐出口の内部にはインクを滴として吐出するエネルギーを発生させる記録素子が設けられており、この記録素子を含めて「吐出口」と称することもある。
<第1実施形態>
<記録装置の概要>
(全体構成)
図1(A)は一実施形態に係るインクジェット記録装置100(以下、記録装置100とも呼ぶ)の外観を示している。また、図1(B)は記録装置100の加熱部の模式図である。記録装置100はいわゆるシリアル走査型のプリンタであり、記録媒体PのY方向(搬送方向)に対して直交するX方向(走査方向)に記録ヘッドを走査して記録媒体Pに画像を記録するものである。
図1(A)及び図1(B)を用いて記録装置100の概要を説明する。記録装置100は、キャリッジユニット2及びこれに装着可能な記録ヘッドユニット3と、プラテン4と、スプール6と、エンコーダ7と、ガイドシャフト8と、搬送ローラ10と、ピンチローラ11と、巻き取りスプール14と、加熱部20とを含む。記録装置100は、概略的には以下のように記録を行う。
まず、不図示の搬送モータ及びこれに接続するギヤを介して駆動される搬送ローラにより、記録媒体Pを保持しているスプール6から記録媒体PがY方向に搬送される。スプール6から搬送された記録媒体Pは、搬送ローラ10と搬送ローラ10に圧接されるピンチローラ11とによりさらに搬送されて、プラテン4上の記録位置(記録ヘッドユニット3の走査領域)に導かれる。
その後、キャリッジユニット2は、不図示のキャリッジモータにより、X方向に延在するガイドシャフト8に沿って記録ヘッドユニット3を往復走査(往復移動)させる。そして、この走査の過程で、エンコーダ7によって得られる位置信号に基づいたタイミングで記録ヘッドユニット3に吐出動作を行わせることで、記録ヘッドユニット3の吐出口30の配列範囲に対応した一定のバンド幅で記録媒体Pに画像が記録される。ここでは、1走査分のデータがバッファに蓄積されたらキャッリッジモータによりキャリッジユニット2を走査させ、上述のように記録を行う。なお、本実施形態の記録装置100は、記録ヘッドユニット3の複数回(n回)の走査で記録媒体P上の単位領域(1/nバンド)に対して画像を記録する、いわゆるマルチパス記録を行うことができるが、詳しくは後述する。
なお、走査速度は可変であり、例えば10~70インチ毎秒で走査が行われてもよい。また、印字の解像度も可変であり、例えば300~2400dpi(dot per inch:1インチあたりのインクドット数)であってもよい。前述した走査後に記録媒体Pの搬送を行い、さらに次のバンド幅について記録を行うことで、記録媒体の記録範囲に全体に対して記録が可能な構成となっている。
また、キャリッジモータからキャリッジユニット2への駆動力の伝達には、例えばキャリッジベルトを用いることができる。しかし、キャリッジベルトの代わりに、例えばキャリッジモータにより回転駆動され、X方向に延在するリードスクリュと、キャリッジユニット2に設けられ、リードスクリュの溝に係合する係合部とを具えたものなど、他の駆動方式を用いることも可能である。
また、一般的に休止状態では記録ヘッドユニット3のフェイス面にはキャッピングが施されているため、記録媒体Pが記録位置に到達するのに先立ってキャップを開放して記録ヘッドユニット3ないしキャリッジユニット2を走査可能状態にしておくことができる。
記録ヘッドユニット3の記録領域を通過し、インクが付与された記録媒体Pは、加熱部20により加熱乾燥される。加熱部20は、ヒータ25とヒータカバー26とを含む。キャリッジユニット2がX方向(主走査方向)に往復走査する位置よりY方向(副走査方向)で下流側の位置に、図示しないフレームに支えられたヒータ25が配置され、熱により記録媒体P上の液体状のインクを乾燥させる。ヒータ25を覆うヒータカバー26は、ヒータ25の熱を記録媒体P上に効率よく照射する機能と、ヒータ25の保護の機能を担っている。
ヒータ25の具体例としては、シーズヒータやハロゲンヒータなどが挙げられる。なお、加熱部20は、記録ヘッドユニット3よりも鉛直方向上側に設けられ、上方から画像が記録された記録媒体を加熱する構成であっても良い。また、加熱部20は、プラテン4の鉛直方向下側に設けられ、下側から画像が記録された記録媒体を加熱する形態であっても良い。また、図1(B)には不図示だが、加熱部20は、赤外線センサなどの構成を合わせて用いることにより、記録媒体の最大温度を制御してもよい。例えば、記録媒体の温度制御を行う制御部を設け、記録媒体の加熱温度を一定とする制御を行ってもよい。
本実施形態では、加熱部20は、記録媒体P内の水溶性樹脂微粒子を加熱して被膜化させるものとしても機能する。水溶性樹脂微粒子は、記録媒体上に付与された後に加熱されることにより膜を形成し、画像の耐擦過性を向上させるための樹脂である。このときの加熱温度は樹脂微粒子の最低造膜温度以上であることが望ましく、また、加熱中にインク中の水溶性有機溶剤などの液体成分の大半を蒸発させる必要がある。したがって、液体成分の大半の蒸発に必要なエネルギーが供給されるための加熱時間を確保するだけの記録媒体搬送方向の温度分布を持つ構成となっている。
本実施形態では、記録装置100は巻き取りスプール14を含む。記録媒体Pは、記録ヘッドユニット3により記録がなされ、加熱部20を通過した後に、巻き取りスプール14により巻き取られ、ロール状の巻き取り媒体を形作る。
(記録ヘッドの構成)
図2は、記録ヘッドユニット3の吐出口形成面の模式図である。また、図3は、図2の記録ヘッドユニット3の吐出口形成面の断面を示す模式図である。本実施形態の記録ヘッドユニット3は、2つの記録ヘッド31及び記録ヘッド32を含む。記録ヘッド31のチップには、色材を含有するインクとしてブラックインク(K)を吐出する吐出口列35K(素子列35K)、フォトマゼンタインク(m)を吐出する吐出口列35m(素子列35m)、マゼンタインク(M)を吐出する吐出口列35M(素子列35M)、を有している。本実施形態では、ブラックインク、フォトマゼンタインク及びマゼンタインクはそれぞれ色材として顔料を含有している。フォトマゼンタインクは、マゼンタインクと同一色相のインクであり、色材濃度がマゼンタインクよりも低いインクである。ブラックインクの色相は、マゼンタインクとは異なる。以下では、これらのインクを顔料インクとも呼ぶ。また、記録ヘッド32のチップには、例えば色材を含有せず、水溶性樹脂微粒子も含有しない処理液(Tr)を吐出する吐出口列35Tr(反応液素子列)を有している。本実施形態では、これらの吐出口列がX方向左側から右側に吐出口列35Tr、35M、35m、35Kの順で並んで配置されている。詳細には、吐出口列35Trと吐出口列35Mとの距離が、吐出口列35Mと吐出口列35mとの距離よりも大きくなるように配置されている。処理液の吐出口列35Trを相対的に遠ざけることにより、後述する処理液ミストの付着の影響を抑制している。同様に、吐出口列35Trと吐出口列35Mとの距離が、吐出口列35mと吐出口列35Kの距離よりも大きくなるように配置されている。
本実施形態では、吐出口列35M、35m、35Kについては同一の記録ヘッド31に近接して配置される一方、吐出口列35Trは別の記録ヘッド32に配置されて他の吐出口列35M、35m、35Kとは相対的に近接しない構成を採用した。この構成により、同一キャップで処理液とカラーインクを近接させることで処理液ミスト以外の処理液がカラーインクへの混入してしまうこと抑制することができる。一方で、この構成は後述する印字中の処理液ミストの混入を防ぐといった観点では必須ではなく、同一の記録ヘッドに吐出口列35M、35m、35K、35Trが配置されてもよい。
なお、各吐出口列の間の距離はこの限りではない。例えば一般には、処理液の吐出口列35Trとそれ以外のインクの吐出口列は離れて配置する構成が採用される。また、これらの吐出口列35Tr、35M、35m、35Kは例えば、それぞれが処理液或いはインクを吐出する1280個の吐出口30が1インチあたり1200個の密度でY方向(副走査方向)に配列されることで構成されている。
これらの吐出口列35Tr、35M、35m、35Kはそれぞれ対応するインクを貯蔵する不図示のインクタンクに接続され、そこからインクの供給が行われる。なお、各記録ヘッド31、32とインクタンクは一体的に構成されるものでもよいし、それぞれが分離可能な構成のものでもよい。或いは、インクタンクが記録装置100の各記録ヘッド31、32から離間した位置に設けられ、これらがチューブ等で接続されてもよい。その場合、インクタンクから各記録ヘッド31、32へインクを送るためのポンプが設けられてもよい。
なお、ブラックインク、フォトマゼンタインク、マゼンタインク及び処理液の詳細な組成については後述する。
また、記録ヘッドユニット3の各記録ヘッド31、32は、吐出口生成基板上に配された温度センサにより温度を検出する。温度センサは、例えば、ダイオードのアノード‐カソード間電圧の温度依存性を利用するものであってもよい。
次に、図3を参照して、吐出口30の構成について説明する。本実施形態の記録ヘッド31、32は、サーマルインクジェット方式の記録ヘッドである。サーマルインクジェット方式の記録ヘッドは、記録素子として発熱素子を備える。発熱素子上でインクが加熱され、膜沸騰現象を利用して吐出口からインクを吐出させる。
発熱素子形成基板51上には、上板部材55が配置されている。上板部材55が発熱素子形成基板51上に配置されることで、吐出口形成基板33が構成される。発熱素子形成基板51と、上板部材55との間には、液体流路53が形成されている。液体流路53は、上板部材55に形成された吐出口31に連通する。液体流路53における吐出口31の端部には、発泡室が形成されており、発泡室には、吐出口31と対向する位置に発熱素子54が配置されている。記録動作、および、予備吐出動作では、図4に図示した駆動回路307より送られた信号により発熱素子54を駆動させることで、発熱素子54から熱が発生し、液体が局所的に加熱される。これによって発泡室内部の液体内で膜沸騰を生じさせ、その際に生じる圧力によって液滴が吐出口31から吐出される。このように、本実施形態の記録ヘッド31、32は、吐出口30と、吐出口30に連通する流路に設けられた発熱素子54とを有している。なお、各吐出口から吐出される液滴は約4ngである。
(制御構成)
図4は、記録装置100の制御系の概略構成を示すブロック図である。主制御部300は、CPU301と、ROM302と、RAM303と、メモリ313と、入出力ポート304とを含む。CPU301は、演算、選択、判別、制御などの処理動作、記録動作を実行する。ROM302は、CPU301によって実行すべき制御プログラム等を格納する。RAM303は、記録データのバッファ等として用いられる。メモリ313には、後述するマスクパターン等の各種情報が格納されている。入出力ポート304には、搬送モータ(LFモータ)309、キャリッジモータ(CRモータ)310、記録ヘッド31、32、及びヒータ25におけるアクチュエータなどの各駆動回路305、306、307、308が接続されている。また、主制御部300は、インターフェイス回路311を介してホストコンピュータであるPC312に接続されている。
(データ処理過程)
図5は、CPU301が実行する記録データ生成処理のフローチャートである。本フローチャートは、例えば、CPU301がROM302に記憶されているプログラムをRAM301に読み出して実行することにより実現される。
ステップS1(以下、各ステップについて単にS1等と呼ぶ)では、CPU301は、ホストコンピュータであるPC312から記録装置100に入力されたレッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)各色8ビット256値の情報(0~255)によって表される画像データ(輝度データ)を取得する。
S2では、CPU301は、R、G、Bで表される画像データを記録に用いる複数種類のインクで表される多値データに変換する。この色変換処理により、複数の画素からなる画素群それぞれのインクにおける階調を定める8ビット256値の情報(0~255)によって表される多値データが生成される。また、本実施形態では、CPU301は、後述する図8(A)~(C)で示すような色変換テーブルを用いて、生成された階調を定める多値データ(階調)に対する、各色インクの記録Dutyを取得する。ここでは、記録Dutyは、記録媒体の所定領域の画素数に対する、インクの付与が許容される画素数の割合を指すものとする。例えば、記録媒体の所定領域の全画素に対してインクの付与が許容される場合は記録Duty100%であり(所謂ベタ塗り)。また例えば、記録媒体の所定領域の全画素のうち半分の画素に対してインクの付与が許容される場合は記録Duty50%である。
S3では、CPU301は、前述した多値データの量子化を実行し、各画素に対する各インクの吐出または非吐出を定める1ビット2値の情報(0、1)によって表される量子化データ(2値データ)を生成する。ここでは、誤差拡散法やディザ法、インデックス法など、種々の量子化方法にしたがって処理を行うことができる。詳細には、CPU301は、S2で取得した多値データ及びそれに対する各色インクの記録Dutyの値に基づいて、量子化データを生成する。
S4では、CPU301は、量子化データを単位領域に対する記録ヘッドユニット3の複数回の走査に分配する分配処理を行う。この分配処理により、記録媒体の単位領域に対する複数回の走査それぞれにおける各画素に対する各インクの吐出または非吐出を定める1ビット2値の情報(0、1)によって表される記録データが生成される。この分配処理は、複数回の走査に対応し、各画素に対するインクの吐出の許容または非許容を定めるマスクパターンを用いて実行される(図6参照)。
以上のようにして生成された記録データにしたがって記録ヘッドからのインクの吐出が行われる。
なお、ここではS1~S4の処理のすべてを記録装置100内のCPU301が実行する形態について記載したが、他の形態による実施も可能である。例えば、S1~S4の処理のすべてをPC312が実行する形態であっても良い。また、例えば一部をPC312が、残りを記録装置100が実行する形態であっても良い
(マルチパス記録方式)
ここでは、前述した処理液(Tr)、マゼンダインク(M)、フォトマゼンダインク(m)及びブラックインク(K)の各インクを用いた所謂マルチパス記録方式による画像の記録方法について説明する。なお、ここでは説明の便宜のため、S4において各インクに同じマスクパターン(図6参照)を適用して記録を行うものとする。なお、本実施形態では単位領域に対して4回の走査を行って記録を完了させるが、単位領域に対する走査の回数は適宜設定可能である。また、以下の説明において、単位領域に対してn回の記録走査を行うことをnパス記録走査(例:4パス記録走査)と呼ぶ。
図6は、マルチパス記録方式におけるマスクパターンを例示する模式図である。図7は、マルチパス記録方式の説明図である。本実施形態では、各吐出口列35を図6中A方向に分割して構成される4つの吐出口群A1~A4それぞれから、単位領域に対する4回の走査それぞれにおいてインクを吐出する。なお、実際には後述する記録ヘッドユニット3の走査間に記録媒体をA方向下流側に搬送するが、図6では説明の便宜のため、記録ヘッドユニット3の走査間に記録ヘッドユニット3をA方向上流側に移動させるようにして図示する。
まず、1回目の走査(1走査目)では、記録媒体P上の単位領域80と吐出口列35の吐出口群A1が対向する位置関係において記録ヘッドユニット3を走査し、S4で生成された1回目の走査に対応する各種類のインクに対応する記録データにしたがって単位領域80に対して吐出口群A1からインクを吐出する。この1走査目が終了した後、記録媒体をY方向(搬送方向)に吐出口群1つ分に対応する距離だけ搬送する。その後、2回目の走査(2走査目)が行われ、単位領域80に対して吐出口群A2からインクを吐出する。以降、記録媒体Pの搬送と記録ヘッドユニット3の吐出を交互に行い、単位領域80に対する3~4回目の走査における吐出口群A3~A4の吐出を実行する。このようにして、単位領域80に対するマルチパス記録が完了する。
図6に示すマスクパターンのうち、黒く塗りつぶされた画素は、量子化データによってインクの吐出が定められている場合にインクの吐出を許可する画素(以下、記録許容画素とも称する)を示している。白抜きで示された画素は、量子化データによってインクの吐出が定められている場合であってもインクの吐出を許容しない画素(以下、非記録許容画素とも称する)を示している。また、図6の例ではそれぞれ5画素×5画素のサイズを有するマスクパターンが示されており、これらのマスクパターンをA方向及びB方向に繰り返し適用することで各単位領域に対応する量子化データのすべてについて分配処理が行われる。
ここで、図6に示す4つのマスクパターンそれぞれに存在する画素の数は5画素×5画素=25画素である。この4つの5画素×5画素のマスクパターンにおける吐出を許可する画素の割合が記録許容率となる。各インクの2値データの一部(5画素×5画素の大きさ)と各記録走査(各パス)に対応するマスクパターンとの論理積(AND)処理を行うことで、各記録走査でインクを付与するための記録データを生成することができる。
各走査に対応するマスクパターンをみると、1回目の走査(吐出口群A1)に対応するマスクパターンは、3個の記録許容画素が配置されている。したがって、1回目の走査に対応するマスクパターンの記録許容率は約12%(=3/25×100)となる。以下、2回目の走査(吐出口群A2)から4回目の走査(吐出口群A8)に対応するマスクパターンの記録許容率はそれぞれ、36%、32%及び12%となる。また、このマスクパターンを用いると、記録ヘッドユニット3が吐出口列全域に渡ってインクを吐出するように分配が行われる。なお、図6に示すパターンはマスクパターンの一部を簡単のため抜粋して示した図であり、上記記録許容比率と若干異なる場合がある。
<記録媒体及びインク>
次に、記録装置100において使用される記録媒体及びインクの性質について説明する。
(記録媒体の浸透性)
本実施形態では、記録装置100は、水溶性インクが浸透しない記録媒体である非浸透性記録媒体或いは水溶性インクが浸透しにくい記録媒体である低浸透性記録媒体に対して画像を記録可能である。ここでは、以下に述べるブリストー法によるインク転移量が20ml/m2よりも小さい値を示す記録媒体を低浸透性記録媒体と呼ぶこととする。また、前述したインク転移量よりも更に小さい値を示し、一般にはインク転移量の測定が困難な記録媒体を非浸透性記録媒体と呼ぶこととする。
記録媒体に対するインクの浸透性を評価する方法であるブリストー法は、JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.51の『紙及び板紙の液体吸収性試験方法』に記載されている。多くの市販図書に説明があるため詳細な説明は省略するが、概要は次の通りである。
一定量のインクを所定の大きさの開口スリットを有する保持容器に注入し、スリットを介して、短冊状に加工し円盤に巻きつけられた記録媒体と接触させ、保持容器の位置を固定したまま、円盤を回転させ記録媒体に転移するインク帯の面積(長さ)を測定する。
インク帯の面積から単位面積辺りの転移量(ml/m2)を算出することができ、この転移量(ml/m2)は所定時間に記録媒体に浸透したインク容量を示す。ここで所定時間は、転移時間として定義される。転移時間(ミリ秒^1/2)は、スリットと記録媒体の接触時間に相当し、円盤の速度と開口スリットの幅から換算される。
一般的な印刷塗工紙についてブリストー法により水性インクに対する転移量を測定したところ、転移時間1秒における転移量は20ml/m2より小さく、特に、塗工紙のうち、低浸透性記録媒体では10ml/m2よりも小さい値が得られた。本実施形態の処理液は、この印刷塗工紙のような低浸透性記録媒体に対して使用することで、使用しない場合と比較してより好適な画像形成が可能である。但し、インクジェット専用紙のブリストー法による転移量は30ml/m2以上を示すものが多いが、中には転移量の20ml/m2より低いものもあり、このような記録媒体はインクジェット専用紙ではあるものの低浸透性記録媒体であると言える。すなわち、印刷塗工紙に限らず低浸透性記録媒体であれば、一般的な記録媒体に対しても、後述する本実施形態の特徴を適用することで効果が得られる。
非浸透性記録媒体の具体例としては、例えば、ガラス、プラスチック、フィルム等、水性インクジェットインク用の記録媒体として作製されていないものが挙げられる。例えば、非プラスチック・フィルム、紙等の基材上にプラスチックがコーティングされる等、水性インクジェット印刷用に表面処理をしていない、すなわち、水吸収層を形成していないものが挙げられる。プラスチックとしては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。
ここでは、インクジェット専用紙に比べ、水性インクが浸透しない塩ビシートについて説明する。塩ビシートとは、塩化ビニル樹脂を主原料として可塑剤を加え製造された柔らかいシートのことで、グラビア印刷、スクリーン印刷などでの印刷性とエンボス性(型押しによる凹凸模様付け)に優れている。これらの組み合わせにより多様な表現が可能となるため、ターポリン、帆布、壁紙など多くの製品に用いられている。塩化ビニル樹脂が主原料のため、水性インクが浸透せず、用紙表面でインクが溢れて画像弊害と乾燥弊害が顕著に現れてしまうのである。
また、低浸透性記録媒体としては、具体的にはアート紙、コート紙などのオフセット印刷などで用いられる印刷本紙などの記録媒体などが挙げられる。
ここでは、印刷本紙について説明する。印刷本紙とは、オフセット印刷において実際に本刷りに使用して製品(商品)にする際の正式の(本物の)印刷用紙のことである。用紙は、パルプを原料とし、その状態のままで使用するのが非塗工紙、用紙の表面を白色顔料などで滑らかにコーティングしたのが塗工紙で、この塗工紙のほうがインクジェット記録においてはインク溢れによる画像弊害と乾燥弊害が顕著に現れる。塗工層は、パルプ間の隙間の液体吸収性を制限し水性ペンのにじみを防ぐサイズ剤(合成樹脂など)と、不透明度・白色度・平滑度などを向上させる填料(カオリンなど)と、紙力増強剤(デンプンなど)などの混合塗料を数~40g/m2前後塗工したものである。塗工紙の平均毛細管孔の半径は約0.06μmを中心に正規分布しており、多数の毛細管によって水分を浸透させている(毛細管現象)。しかし、塗工紙ではその細孔容積がインクジェット専用紙と比べ非常に小さいために水性インクの浸透性が低く、用紙表面でインクが溢れて画像弊害と乾燥弊害が顕著に現れてしまう。
(インク及び処理液の組成)
次に、本実施形態で使用されるインク及び処理液の組成について説明する。本実施形態では、色材として顔料を含む顔料インクであるカラーインク(M、m、K)、及び顔料を含まずに顔料と反応する成分を含有する処理液(Tr)は、いずれも水溶性有機溶剤を含有している。また、他に、水溶性樹脂微粒子(詳細は後述)、反応剤、界面活性剤などを含み得る。
・水溶性有機溶剤
水溶性有機溶剤は記録ヘッドユニット3の吐出口面の湿潤性、保湿性の理由から、沸点が150℃以上300℃以下のものが好ましい。また、樹脂微粒子に対する造膜助剤の機能の観点から、アセトン、シクロヘキサノンなどのケトン系化合物、テトラエチレングリコールジメチルエーテルなどのプロピレングリコール誘導体、N-メチル-ピロリドン、2-ピロリドンに代表されるラクタム構造を有する複素環化合物などが特に好ましい。吐出性能の観点から、水溶性有機溶剤の含有量は3wt%以上、30wt%以下であることが好ましい。水溶性有機溶剤としては、具体的には、以下のものが挙げられる。メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコールなどの炭素数1乃至4のアルキルアルコール類。ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類。アセトン、ジアセトンアルコールなどのケトン又はケトアルコール類。テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類。ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール類。エチレングリコール。又は、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6-ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコールなどのアルキレン基が2乃至6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類。ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどの低級アルキルエーテルアセテート。グリセリン。エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテルなどの多価アルコールの低級アルキルエーテル類。トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの多価アルコール。N-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン。上記の如き水溶性有機溶剤は、単独でも或いは混合物としても使用することができる。
・水溶性樹脂微粒子
本実施形態では、顔料を含むカラーインク(M、m、K)には、記録媒体Pと色材を密着させ記録画像の耐擦過性(定着性)を向上させるための水溶性樹脂微粒子を含有させている。水溶性樹脂微粒子は熱で溶融するため、ヒータにより樹脂微粒子の造膜とインクに含有する溶剤の乾燥が行われる。本実施形態において「水溶性樹脂微粒子」とは、水中に分散している状態で存在するポリマー微粒子を意味する。具体的には以下のものが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルや(メタ)アクリル酸アルキルアミドなどのモノマーを乳化重合するなどして合成したアクリル樹脂微粒子。(メタ)アクリル酸アルキルエステルや(メタ)アクリル酸アルキルアミドなどとスチレンのモノマーを乳化重合するなどして合成したスチレン-アクリル樹脂微粒子。ポリエチレン樹脂微粒子、ポリプロピレン樹脂微粒子、ポリウレタン樹脂微粒子、スチレン-ブタジエン樹脂微粒子など。また、樹脂微粒子を構成するコア部とシェル部でポリマーの組成が異なるコアシェル型樹脂微粒子や、粒径を制御するために予め合成したアクリル系微粒子をシード粒子とし、その周辺で乳化重合することにより得られる樹脂微粒子などでもよい。更には、アクリル樹脂微粒子とウレタン樹脂微粒子など異なる樹脂微粒子を化学的に結合させたハイブリッド型樹脂微粒子などでもよい。
また、前述した「水中に分散している状態で存在するポリマー微粒子」は、解離性基を有するモノマーを単独重合または複数種を共重合させて得られる樹脂微粒子の形態、いわゆる自己分散型樹脂微粒子分散体でもよい。ここで解離性基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられ、この解離性基を有するモノマーとしてはアクリル酸やメタクリル酸等が挙げられる。さらには、乳化剤により樹脂微粒子を分散させた、いわゆる乳化分散型樹脂微粒子分散体でもよい。乳化剤としては、低分子量、高分量に関わらずアニオン性の電荷を有する材料を用いることができる。
本実施形態のインクに使用する樹脂微粒子のガラス転移温度(Tg)は、40℃以上120℃以下であることが好ましい。更には、50℃以上110℃以下であることがより好ましい。Tgが40℃未満であると、樹脂が軟らかく、得られた画像の耐擦過性の向上効果が十分得られない場合がある。また、Tgが110℃より高いと樹脂エマルションの最低造膜温度も高くなるため、記録媒体に付与された樹脂が軟化しにくく、画像の耐擦過性が十分でない場合がある。これらの観点から、樹脂微粒子のTgが40℃以上120℃以下の範囲となり得る、メチル(メタ)アリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートを用いた樹脂エマルションを用いることが好ましい。このような水溶性樹脂微粒子を用いると、記録画像に爪などの外力が加わっても、滑り性が生じ動摩擦係数を効果的に下げることが可能となる。この水溶性樹脂微粒子インクは、処理液、コートインク、表面コートインク、クリアインク、向上液、樹脂エマルションインクなどと称することもある。Tgについては後に詳述する。
また、水としては脱イオン水が使用されることが望ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、10.0質量%以上90.0質量%以下、更には30.0質量%以上80.0質量%以下であることが好ましい。また、インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下、更には3.0質量%以上40.0質量%以下であることが好ましい。本実施形態で使用するカラーインク及び水溶性樹脂微粒子インクは、必要に応じて所望の物性値を持たせるために、上記の成分のほかに、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤、及びその他の樹脂などを適宜に添加することができる。
・活性剤
本実施形態のインクの表面張力は、界面活性剤により、いずれも20~30dyn/cmである。これは、印刷本紙や塩ビシートのような低浸透性記録媒体/非浸透性記録媒体に表面張力の高いインクを用いると記録媒体の表面でインクが広がり難いため、ビーディング現象がより顕著に発生するからである。界面活性剤としては、フッ素系やシリコーン系の界面活性剤を含有することが好ましい。フッ素系やシリコーン系の界面活性剤は、少量の含有量でもインクの表面張力を低下させることができるため、インクの記録媒体への濡れ性を高めることができる。これにより、非浸透性記録媒体に記録を行う際も、インクが記録媒体上で弾かれる現象が抑制され、画像品質をより向上することができる。フッ素系やシリコーン系の界面活性剤としては、例えば、Zonyl FSO、Zonyl FSO100、Zonyl FSN、Zonyl FSN100(以上、Dupont製)、メガファックF-410、メガファックF-493、メガファックF-443、メガファックF-444、メガファックF-445(以上、DIC製)、Novec FC-4430、Novec FC-4432(以上、3M製)、フタージェント100、フタージェント150、フタージェント150CH、フタージェント250、フタージェント400SW、フタージェント501(以上、ネオス製)、KS508、KP360A、KP360A(以上、信越シリコーン製)、FZ-2191、FZ-2123、8211ADDITIVE(以上、東レダウコーニング製)などが挙げられる。界面活性剤の添加量は、多いほどインクの表面張力を低下させる性質が強くなり、記録媒体に対するインクの濡れ性と浸透性が向上する。したがって、低浸透性記録媒体/非浸透性記録媒体に用いるインクとしては、表面張力が30dyn/cm以下のインクが好ましい。また、記録ヘッドの吐出口からの吐出特性(吐出量や吐出速度など)を複数種類のインクで同じにするため、搭載するインクの表面張力をある範囲に揃えることが好ましい。本実施形態の記録ヘッドユニット3では、±3dyn/cmに揃えるのが好ましい。なお、表面張力の測定は、KRUSS社製のBubblePressureTesiometer型式:BP2等を使用した。なお、インクの表面張力を測定できるのであれば、測定器は上記例示したものに限定されるものではない。
さらに、界面活性剤としてノニオン系を用いことも可能である。ノニオン系界面活性剤は、顔料分散体と反応する成分(多価金属類、酸など)が含まれている場合にも、EO鎖による分散安定性の効果により分散をより安定に保つことができる特徴がある。具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレングリコールエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、グリセリンエステル、ソルビタンエステル、ショ糖エステル、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビトールエステルのポリオキシエチレンエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、アミンオキシド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、アルキル(ポリ)グリコキシド等が挙げられる。
・色材
また、本実施形態における処理液以外のインクはどれもアニオン系の色材を使用しているため、各インクのpHはアルカリ側で安定しており、その値は例えば8.5~9.5となっている。インクと接触する部材からの不純物溶出や部材を構成する材料の劣化、インク内の顔料分散樹脂の溶解性の低下などを防止する観点から、一般的にはインクのpHは7.0以上10.0以下であることが好ましい。pH調整剤としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの有機アミン、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、有機酸や無機酸などが挙げられる。pHの測定は、例えばHORIBA社製のpH METER型式F-52を使用可能であるが、インクのpHを測定できるものであれば、測定器は限定されるものではない。
・処理液
また、本実施形態においては、低浸透、非浸透性記録媒体に対して画像形成の目的で処理液(RCT)を使用している。本実施形態で使用する処理液は、インクに含まれる顔料と反応し、顔料を凝集又はゲル化させる反応性成分を含有する。この反応性成分とは、具体的には、イオン性基の作用によって水性媒体中に安定に分散又は溶解されている顔料を有するインクと記録媒体上などで混合された場合に、該インクの分散安定性を破壊することができる成分である。本実施形態においては、アニオン系の色材を使用しているため、反応剤は大きく酸系反応剤、多価金属系反応剤、カチオン性高分子系反応剤に分類することができる。以下では、処理液のことを反応液と呼ぶ場合もある。
酸系の反応剤としては、大きく無機酸と有機酸に分類することができる。本実施形態では有機酸について説明するが、有機酸に限定されるものではない。水溶性の有機酸の具体例としては、シュウ酸、ポリアクリル酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、レブリン酸、コハク酸、グルタル酸、グルタミン酸、フマール酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、オキシコハク酸、ジオキシコハク酸がある。有機酸の含有量は、処理液に含まれる組成物の全質量を基準として、3.0質量%以上90.0質量%以下であることが好ましく、5.0質量%以上70.0質量%以下であることがより好ましい。
多価金属系の反応剤としては、以下のものが好ましい。例えば、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Zn2+、Sr2+及びBa2+などの二価の金属イオンが挙げられる。さらに、Al3+、Fe3+、Cr3+及びY3+などの三価の金属イオンも挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの多価金属イオンを処理液中に含有させるためには、多価金属の塩を用いるとよい。塩とは、上記に挙げたような多価金属イオンと、これらのイオンに結合する陰イオンとから構成される金属塩のことであるが、水に可溶なものであることを要する。塩を形成するための好ましい陰イオンとしては、例えば、Cl、NO3―、I、Br、ClO 、SO 2―、CO 2―、CHCOO及びHCOOなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
本実施形態においては、反応性や着色性、さらには取り扱いの容易さなどの点から、多価金属イオンとしては、Ca2+、Mg2+、Sr2+、Al3+及びY3+が特に好ましく、中でも、Ca2+が特に好ましい。また、多価金属イオンと塩を形成するための陰イオンとしては、安全性などの点から、メタンスルホン酸が特に好ましい。
カチオン性高分子系の反応剤としては、水に可溶性のものが好ましい。カチオン性高分子の具体例としては、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリアミンスルホン酸塩、ポリビニルアミン塩酸塩、キトサン酢酸塩などを挙げることができる。また、この他に、ノニオン性高分子物質の一部をカチオン化したビニルピロリドンとアミノアルキルアルキレート4級塩との共重合体、アクリルアマイドとアミノメチルアクリルアマイド4級塩との共重合体などを挙げることができる。反応性成分としてカチオン性高分子を含有してなる処理液は、無色であることが好ましいが、必ずしも可視域に吸収を示さないものである必要はない。すなわち、可視域に吸収を示すものであっても、実質上、画像を形成した場合に、画像に影響を与えない範囲であれば、可視域に吸収を示す淡色のものであってもかまわない。
<処理液ミストの吐出口への付着>
ところで、インクジェット記録方法においては、インクの吐出口が小さいことが1つの特徴である。これにより、記録媒体に着弾するインク滴が小さくなるので、精細な画像の記録が可能となる。一方で、吐出口の大きさが小さくなることで、以下で説明するような要因により、インクの吐出不良が生じやすくなると考えられる。
まず、吐出周波数、すなわち記録素子を駆動する周波数、が大きくなることがあげられる。小さい吐出口から吐出されるインクの体積は小さく、さらに吐出周波数が低い場合には、単位時間あたりに記録媒体に付与されるインクの量が少なくなってしまう。一方、吐出周波数を高くすると、一般的にはミストの量が増加してしまう。処理液のミストの量が増加すると、カラーインクの吐出口付近に付着する可能性が高くなる。つまり、吐出周波数を上げることにより、カラーインクの吐出不良が増加する可能性がある。なお、キャリッジの走査速度を下げることによって吐出周波数を下げることができるが、印字物の生産性が低下してしまうという課題がある。
さらに、吐出周波数を高くすることにより、吐出口列間に生じる気流が大きくなることが知られている。カラーインクの吐出口列の吐出周波数を高くすると、カラーインクの吐出口列の周囲に巻き上がる気流が大きくなり、処理液ミストの巻き上げ量が増加する。その結果、カラーインクの吐出不良に繋がる可能性がある。
以上を踏まえると、処理液を用いた場合における処理液ミスト起因のカラーインクの吐出不良は、処理液とカラーインクとの混合粘度に代表されるインクの物性と、ヘッドと記録媒体間に発生する気流との関係を用いて説明することができる。以下、上記2点について詳述する。
(インク物性)
本実施形態では、処理液がインクと接触することによって、記録媒体上でのインク及び/又はインク組成物の一部の流動性を低下せしめて、インクによる画像形成時のブリーディングや、ビーディングを抑制することができる。具体的には、処理液に含まれる反応剤(インク高粘度化成分とも称する)が、インクを構成している組成物の一部である色材や樹脂等と接触することによって化学的に反応し、あるいは物理的に吸着する。これによって、インク全体の粘度の上昇や、色材などインクを構成する成分の一部が凝集することによる局所的な粘度の上昇を生じさせ、インク及び/又はインク組成物の一部の流動性を低下させることができる。
前述したように、処理液は、非浸透性媒体上に対して高生産性を保っての画像を形成する上で必要である。しかし、処理液の微量なミストとカラーインクがカラーインク吐出口で混合すると、カラーインクのノズルが吐出不良となる。これは、処理液とカラーインクが混合したときに、カラーインクに含まれる顔料の分散が破壊され、カラーインク吐出口におけるカラーインクの粘度が上昇するためである。
以上から、インクの物性として、カラーインクと処理液を混合した場合に起こる挙動に着目した。混合時のインクの反応挙動評価方法として混合粘度の測定を用いた。
本実施形態で用いるカラーインクは、処理液と混合前であれば粘度は1~20mPa・sが好適である。インクの粘度が1mPa・sより小さい場合、非浸透性記録媒体へのインク像を形成しにくく、画像劣化が発生する。一方、インクの粘度が20mPa・sより大きい場合、インクの吐出が困難となり、吐出信頼性が低下する。更にはインクの粘度は2~10mPa・sであることがより好ましい。なお、インクの粘度は粘度計(商品名「RE80型粘度計」、東機産業製)により25℃において測定される値である。なお、インクの粘度を測定できるのであれば、測定器は上記例示したものに限定されるものではない。上記粘度計を用いて、処理液とカラーインクとの混合粘度を測定する方法を説明する。本実施形態で用いた粘度計は一般に言うコーンプレート型粘度計である。まず、カップにカラーインクを付与し、カップ全体に濡れ広がるようにする。その後、カップ中心に反応液を付与し、すぐにプレートをかぶせ粘度測定を開始する。このときの測定温度は25℃、回転数は5rpmとし、1分間の測定を行った。この結果から、粘度上昇挙動の評価として、混合後1分経過時及び10分経過時の粘度を測定することで、反応性評価を行った。測定方法の詳細は後に説明する。
(ヘッド及び記録媒体間の気流)
本実施形態で用いたシリアル型のインクジェットプリンタである記録装置100における、記録ヘッドユニット3及び記録媒体間の気流(紙間気流)について説明する。
記録装置100における紙間気流として、記録ヘッドユニット3が移動することにより発生する気流(流入気流)と、各吐出口30からのインク滴の吐出により発生する気流(自己気流)と、が挙げられる。流入気流は、記録ヘッドユニット3及び記録媒体間に発生するX方向(主走査方向)の空気の流れである。また、自己気流は、記録ヘッドユニット3から記録媒体へ向かい、記録媒体とぶつかった後に進行方向を反転して記録ヘッドユニット3へと向かう空気の流れである。また、自己気流の記録媒体とぶつかった後の記録ヘッドへと向かう気流と流入気流の重なりにより巻き上がり渦(渦気流)が発生する。この渦気流に記録装置内に漂う浮遊ミスト(雰囲気中の微小なインク滴、単にミストとも言う)が捕らえられると、浮遊ミストが渦気流の流れに乗って記録ヘッドユニット3の吐出口面に付着してしまうことが一般に知られている。
この自己気流は、インク滴の吐出周波数が大きくなるにつれて大きくなることが知られている。また、自己気流及び流入気流が大きくなると、渦気流も大きくなることが一般に知られている。したがって、フェイス面に付着するミスト量を低減するには、発生するミスト量を低減することと、自己気流及び流入気流を小さくすることとが重要である。
しかし、発生ミスト量の低減は、ヘッド吐出口設計の変更やインクに使用する材料の変更等が必要となり、簡便には実施できない場合がある。また、自己気流を小さくするには、吐出速度を小さくする又は吐出周波数を低下させることが有効と考えられる。しかし、吐出速度を小さくすることは、蒸発したインクの吐出口詰まりが解消しにくくなることにつながる場合がある。また、吐出周波数を低下させることは、前述したように生産性の低下、もしくは発色の低下など製品の品質を損なうことにつながる場合がある。したがって、渦気流の低減と生産性及び画像品質の維持を両立することが必要となる。
(処理液吐出口とカラーインク吐出口の位置関係)
また、処理液ミストが渦気流により巻き上がり、吐出口面に付着して吐出不良が発生するか否かについては、吐出口と付着ミストの相対位置も影響する。ここでは、図2に示した吐出口の位置関係を例に説明する。以下、図2に示した同系色のマゼンタインク(M)を濃インク、フォトマゼンタインク(m)を淡インクとする。
処理液を吐出する吐出口列35Trに最も近い吐出口列35Mから濃インク(マゼンダインク(M))を吐出した場合、渦気流の発生位置を考慮すると、処理液ミストは濃インクの吐出口列35Mと処理液の吐出口列35Trの間に付着する。
なお、濃インクの吐出口列35Mと処理液の吐出口列35Trの間にミストが付着する場合、一般的にはそれぞれの吐出口列近傍に付着する。渦気流の状態にもよるが、例えば、それぞれの吐出口列自体にはミストは付着しにくく、吐出口列と吐出口列から5mm程度離れた場所との間の範囲で渦気流によるミスト付着が発生しやすい。なお、前述した距離は、吐出口列が吐出する液滴のサイズ、吐出口列が吐出する液滴の速度、吐出口列から記録媒体までの距離、又は記録ヘッドの走査速度などに依存する。本実施形態では、濃インクの吐出口列35Mと、処理液の吐出口列35Trとが少なくとも15mm以上離れた状態で評価した。したがって、処理液ミストが付着する位置に吐出口列が設けられていない状態で、かつ、それぞれの吐出口列が各々の吐出のみでは吐出不良とならない程度に互いに離れた状態で評価を行った。
一方、吐出口列35mから淡インク(フォトマゼンダインク(m))を吐出した場合、渦気流の位置を考えると、処理液をカラーインクよりも相対的に先に吐出する走査方向(図2の左方向)においては、処理液ミストは吐出口列35M付近に発生する。これは、濃インクの吐出口列35Mと、淡インクの吐出口列35mとが5mm以下の距離にある場合で評価を行ったためである。この処理液ミストが濃インクの吐出口列35Mの口内に混入し、吐出口内で顔料の分散が破壊されることで、吐出口が詰まり、吐出不良となる。以下では、インクの吐出不良についての評価方法について述べた上で、この吐出口位置関係における濃インクの吐出不良を抑制するための構成例について説明する。
<評価方法>
・吐出不良評価
本実施形態の記録装置100は、カラーインク吐出口列の吐出不良を抑制する構成を含んでいる。ここでは、吐出不良の発生頻度の評価方法について説明する。
最初に、A0サイズのベタ画像(RGB=0,0,0及びRGB=255、0、128)をそれぞれ5枚ずつ印字する。その後、A4サイズのベタ画像(各カラーインク単色100%Duty)を1パス記録方式で印字する。このA4サイズの印字物に対し、吐出不良の吐出口があると、インクが付与されない紙白のスジが入る。このスジの本数及び太さの程度を目視にて評価する。本実施形態における吐出不良の評価基準を以下に示す。
AA(吐出不良なし) ・・・ベタ印字後、線を目視では確認できない。
A(吐出不良が少数) ・・・ベタ印字後、目視にて細い線を数本確認できる。
B(吐出不良が多数) ・・・ベタ印字後、目視にて太い線を多数確認できる。
C(吐出不良が大部分)・・・ベタ印字後、評価パターンのほとんどが印刷できていない。
・階調性評価方法
本実施形態では、濃インクの吐出割合に対して淡インクの吐出割合を相対的に減らす制御を行うが、この制御により、同色相の階調において急激に色が変動する可能性がある。そこで、階調性の変化について以下のように評価した。
同心円状に階調を変化させた画像を印字し、急激な色変動による円状のリングが発生するか否かによる。明確に円状のリングが視認できるかどうかを、以下の基準で評価した。
A(階調性良好) ・・・同心円状のリングを30cmの距離から裸眼で視認できない。
B(階調性許容範囲)・・・同心円状のリングを30cmの距離から視認できる。
C(階調性不良) ・・・濃い同心円状のリングを30cmの距離から明確に視認できる。
・混合粘度評価方法
本実施形態では、カラーインク吐出口孔に処理液ミストが混入した際に、顔料の分散が破壊され、増粘し、吐出口詰まりが起こることを抑制することを目的としている。したがって、カラーインクと処理液の混合粘度を測定することで、インクが混合した際の吐出口詰まりが発生しやすいか否かについて評価を行うことが可能である。例えば、処理液混合前後で粘度が変化しない場合は吐出不良が発生しにくく、処理液混合後、瞬時に粘度が上昇するような場合には吐出口が詰まりやすい。また、混合後瞬時に増粘していなくても、24時間経過した後に粘度を測定すると増粘がわかるような場合もある。これらの場合を比較するために、前述した粘度計を用いて、以下の手順により混合粘度を測定することで吐出不良が抑制可能か否かを評価した。
最初に、カラーインクを0.97mL採取し、粘度計のコーン側に付与する。このとき、コーン全体にカラーインクが濡れるようになじませる。次に、0.13mLの処理液をコーンの中心に付与する。その後すぐに、5rpm、25℃の条件にて粘度を測定する。この測定時間は1分である。混合直後と10分後に測定を行った。
これらの測定結果を比較し、混合後1分及び10分での測定結果から増粘が瞬時に起こったか、緩やかに起こったか、ほとんど反応しないか、などを評価した。
なお、混合粘度の増粘を抑制することにより、処理液との反応性が低下する。ここで、濃インクの反応性を低下させると、非浸透性媒体で高Dutyな記録方法を行った場合に、ビーディングが顕著に発生する。ビーディングを抑制するためには、記録媒体上に付与するインクの量を制限する必要があるが、高発色の画像を記録する目的で用いられる濃インクの付与量を制限することは難しい。従って、本実施形態では、濃インクに対しては混合粘度の増粘抑制を行わず、淡インクもしくは無色のインクを用いて増粘抑制を行う。
<実施例1>
以下、実施例及び比較例を挙げてさらに説明する。
(インク組成)
ここでは、カラーインクに含まれる顔料と反応して、その凝集を促進する処理液を使用する。特に、液体が浸透しない記録媒体(樹脂シートなど)に画像を記録する場合は、記録媒体上で処理液とカラーインクが混ざることによって顔料凝集による増粘を促進し、ビーディングを抑えることができる。以下では、カラーインクとして顔料を含むマゼンタインク及びフォトマゼンタインクについて述べる。
本実施例においてマゼンタインク及びフォトマゼンタインクの吐出口列は、処理液の吐出口列に近い方から順にマゼンタインク、フォトマゼンタインクとする。一般に、高色域の画像形成時には、濃インクの吐出周波数が高くなる傾向がある。このため、渦気流での巻き上げに対して有利な色順となるように、処理液に近い位置に濃インクの吐出口列を配置した。一方、本実施例の構成とは逆に、処理液の吐出口列に近い位置に淡インクの吐出口列を配置した場合、吐出周波数の高い高色域の画像形成時に、多量の処理液のミストが淡インクの吐出口列近傍に付着してしまう。この結果、淡インクの吐出口列において吐出不良が顕著に発生する可能性がある。ここでは、濃インクとしてマゼンタインク、淡インクとしてフォトマゼンタインクを記載しているが、これらは一例であり、インク色等は限定されない。
(マゼンタインク)
(1)顔料分散液の作製
まず、ベンジルアクリレートとメタクリル酸とを原料として、常法により、酸価300、数平均分子量2500のAB型ブロックポリマーを作り、更に、水酸化カリウム水溶液で中和し、イオン交換水で希釈して均質な50質量%ポリマー水溶液を作製した。上記ポリマー溶液を100g、C.I.ピグメントレッド122を100gおよびイオン交換水を300gと混合し、機械的に0.5時間撹拌した。次に、マイクロフリュイダイザーを使用し、この混合物を、液体圧力約70MPa下で相互作用チャンバ内に5回通すことによって処理した。更に、上記で得た分散液を遠心分離処理(12,000rpm、20分間)することによって、粗大粒子を含む非分散物を除去してマゼンタ分散液とした。得られたマゼンタ分散液は、その顔料濃度が10質量%、分散剤濃度が5質量%であった。
(2)水溶性樹脂微粒子分散液の作製
まず、窒素雰囲気下、70℃に加熱した状態で、モータで撹拌しながら下記3つの添加液を少しずつ滴下して加え、5時間重合を行った。各添加液は、メタクリル酸メチル28.5部からならなる疎水性モノマー、p-スチレンスルホン酸ナトリウム4.3部と水30部からなる親水性モノマーを含む混合液、過硫酸カリウム0.05部と水30部からなる重合開始剤を含む混合液である。この混合溶液を、水溶性樹脂微粒子分散液とする。
(3)インクの作製
インクの作製は、上記マゼンダ分散液を使用し、これに以下の成分を加えて所定の濃度にする。顔料濃度は、5質量%の顔料インクを調製した。同様に、得られた水溶性樹脂微粒子がインク中に10質量%になるように、以下の成分を混合し、十分に攪拌して溶解・分散後、ポアサイズ2.5μmのミクロフィルター(富士フイルム株式会社製)にて加圧濾過し、マゼンダインクを調整した。最終的には、主に以下の成分となるように調整した。
(マゼンタインク処方例1)
上記マゼンタ顔料 5部
上記水溶性樹脂微粒子 10部
ゾニールFSO-100(デュポン製フッ素系界面活性剤) 0.05部
2-ピロリドン 20部
アセチレングリコールEO付加物(川研ファインケミカル株式会社製) 0.5部
イオン交換水 残部
(フォトマゼンタインク処方例1)
フォトマゼンタインクは、上記マゼンタ分散液及び水溶性樹脂微粒子分散液を用いて、水溶性樹脂微粒子と、マゼンタ顔料の混合比が、マゼンタインクと等しくなるように調整した。
上記マゼンタ顔料 0.5部
上記水溶性樹脂微粒子 1部
ゾニールFSO-100(デュポン製フッ素系界面活性剤) 0.05部
2-ピロリドン 20部
アセチレングリコールEO付加物(川研ファインケミカル株式会社製) 0.5部
イオン交換水 残部
(処理液処方例1)
処理液の作製は、上記の反応性成分のうち有機酸のグルタル酸を用いて類作製した。最終的には主に以下の成分となるように調整した。
グルタル酸 3部
2-ピロリドン 20部
アセチレングリコールEO付加物 0.5部
ゾニールFSO-100(デュポン製フッ素系界面活性剤) 0.05部
イオン交換水 残部
(データ生成)
本実施例では、データ生成についても特徴を有するため以下に詳述する。ここでは、処理液ミストによる濃インクの吐出不良の発生を抑制するために渦気流の発生を抑制する方法について説明する。
渦気流は、流入気流、又は自己気流が大きいと顕著に発生し、吐出不良を発生させる。したがって、自己気流を低減することが吐出不良の抑制には効果的である。検討の結果、10kHzを超える吐出周波数の際に、自己気流の影響が大きくなる傾向があることがわかった。さらには、8kHzでも自己気流の影響を確認することができた。
つまり、キャリッジ速度が高い場合には、同じ記録Dutyであっても吐出不良が発生しやすい。例えば、キャリッジ速度が60ips(インチ毎秒)、解像度が600dpi、記録Duty100%で走査した場合、で36kHzの吐出周波数である。マルチパス記録方式の場合、複数回の走査により単位領域に画像を記録するため、1走査あたりの記録Dutyが吐出周波数に影響することとなるが、この条件では1走査あたりの記録Dutyが22.2%を超えると渦気流の影響が顕著に発生する。また、キャリッジ速度が30ipsの場合、1走査あたりの記録Dutyが44.4%を超えると渦気流の影響が顕著となるため、1走査あたりに記録できる淡インクの打ち込みDutyと吐出不良の発生の関係を考慮する必要がある。
本実施形態では、淡インクの1走査あたりの最大記録Dutyを20%以下に抑えるために、図5に示した色変換処理工程において、色変換処理テーブルを切り替える処理を行った。具体的には、色変換処理工程において、記録走査回数、キャリッジ移動速度によって、色変換処理のテーブルを切り替えた。
図8(a)~図8(c)は、色変換処理のテーブル例を示している。各テーブルは、横軸が画像データの階調値を表現し、縦軸が階調値に対する各インク色の記録Dutyを表現している。階調値は、0~100、0~255等の刻みで表され得る。なお、縦軸の記録Dutyは、1パス記録走査の場合の記録Dutyを示しており、例えば4パス記録走査の場合において、走査毎にインクの吐出量を均等に振り分ける場合には、1走査あたりの記録Dutyは4分の1となる。なお、以下の説明では、各条件において解像度は600dpiであるとする。
図8(a)に示すテーブル1は比較例としての色変換処理テーブルである。このテーブルでは、中間調のあたりでフォトマゼンタインクの記録Dutyが最大となり、高階調領域側で減少していく。テーブル1におけるフォトマゼンダインクの最大記録Dutyである最大値D1は、キャリッジ速度30ips、4パス記録走査の場合に、1走査あたりの最大記録Dutyが40%を超える値に設定されている。すなわち、この条件でテーブル1を用いた色変換処理を行うと、渦気流が顕著に発生し得る。
一方、図8(b)に示すテーブル2は、テーブル1に対してフォトマゼンタインクの最大記録Dutyを下げている。最大記録Dutyを最大値D2まで下げることで吐出不良の発生頻度の抑制を狙った。テーブル2におけるフォトマゼンダインクの最大記録Dutyである最大値D2は、キャリッジ速度30ips、4パス記録走査の場合に、1走査あたりの最大記録Dutyが40%以下となる値に設定されている。また、最大値D2は、記録走査が60ipsの場合には、1走査あたりの最大記録Dutyが20%以上となる値に設定されている。
また、図8(c)に示すテーブル3では、テーブル2と比較してさらにフォトマゼンタインクの最大記録Dutyを下げている(最大値D3)。また、テーブル3では、その分マゼンタインクをテーブル2の場合(G1)よりもより低い階調値(G2)から使い始めるようにしている。この最大値D3は、キャリッジ速度60ips、4パス記録走査の場合に、1走査あたりの最大記録Dutyが20%以上となるが、8パス記録走査であれば1走査あたりの最大記録Dutyが20%以下となる値に設定されている。
テーブル1とテーブル2とを比較すると、テーブル1は相対的に淡インクの記録Dutyが高く、階調性を優先しているといえる。一方、テーブル2では、渦気流による吐出不良の発生を抑制するために淡インクの最大記録Dutyを相対的に下げている。また、テーブル3は、テーブル2に対してさらに淡インクの記録Dutyを下げているが、より低い階調値から濃インクを使用することで、低階調領域での階調性を担保している。
本実施形態と比較例の評価結果について説明する。比較例1は、キャリッジ速度30ips、4パス記録走査の場合に1走査あたりの最大記録Dutyが40%を超える場合、すなわちテーブル1を使用した場合の例である。一方、本例1は、キャリッジ速度30ips、4パス記録走査の場合に、1走査あたりの最大記録Dutyが40%以下になる場合、すなわちテーブル2を使用した場合の例である。また、比較例2及び本例2は、キャリッジ速度60ips、4パス記録走査の場合において、テーブル2を使用した場合とテーブル3を使用した場合の比較を示した例である。さらに、本例3は、キャリッジ速度60ips、8パス記録走査の場合にテーブル1を用いた場合の例である。なお、このときの記録走査の方法は、図9に合わせて示した。また、これらの記録条件を、以下の表1にまとめた。
Figure 2023046254000002
(評価結果)
ここでは、吐出不良の発生頻度と階調性について評価した。これらの評価については<評価方法>で述べた方法を用いた。最初に、比較例について説明する。比較例1では1走査あたりの最大記録Dutyが高く、グラデーション画像の中間調でフォトマゼンタの吐出周波数が高くなる。このため、吐出不良の発生頻度が高くなり、Cランクとなった。本例1及び2では、フォトマゼンタインクの吐出周波数を下げているため、渦気流の抑制により吐出不良の発生頻度を抑制することができた。なお、比較例2でもフォトマゼンタインクの記録Dutyを下げているため、吐出不良の発生頻度を抑制することができている。一方で、比較例2では階調性が低下している。これは、キャリッジ速度の増加による淡インクの記録Duty制限が強く、濃インクが使用されるまでの階調が離れてしまったためである。これに対し、本例2では、マゼンタインクの打ち始めが階調の低い段階から始まり、階調性についても担保することができた。また、本例3では、記録走査回数が多く、同じテーブルを使用した場合の1走査あたりの記録Dutyを他の例よりも下げることができる。よって、ここでは本例3は、より階調性を優先した色処理変換テーブルであるテーブル1を使用することで吐出不良の発生頻度と階調性を両方とも良好な結果とすることができた。以上の結果を表2にまとめた。
Figure 2023046254000003
また、記録走査回数が多い場合にも色処理変換テーブルの切り替えを行うことで画質向上と信頼性の確保を両立することができる。例えば、全8回の記録走査を行う場合において、前述したテーブル1とテーブル2では、テーブル2の方が吐出不良の発生頻度の抑制には効果的だが、階調性においてはテーブル1の方が優位である。この場合、全8回の記録走査においては吐出不良の発生頻度を優先したテーブル2ではなく、階調性を優先したテーブル1に切り替えることも有益である。例えば、キャリッジ速度30ips、4パス記録走査でテーブル1を使用すると1走査あたりの最大記録Dutyが40%を超えるが、8パス記録走査であれば1走査あたりの最大記録Dutyが40%以下となるような場合には、テーブル1を使用することにより、階調性を良好に保ちつつ吐出不良も抑制することができる。
(色変換処理変換テーブルの選択方法)
前述したように、記録条件に応じて適切な色変換処理テーブルを使用することにより、吐出不良の抑制及び階調性の確保を行うことができる。ここでは、色変換処理テーブルを選択する際の処理について説明する。図10(A)及び(B)は、CPU301の処理例を示すフローチャートである。本フローチャートは、例えば、CPU301がROM302に記憶されているプログラムをRAM301に読み出して実行することにより実現される。本フローチャートは、例えば、記録装置100の設定変更がなされた場合や、印刷指示を受け付けた際に図5をフローチャート行う前などに実行され得る。
S11で、CPU301は、記録条件を取得する。例えば、CPU301は、記録装置100の記憶領域に記憶されている記録条件を読み出す。記録条件としては、例えば、キャリッジ速度、解像度、マルチパス記録における単位領域に対する走査回数(パス回数)等が挙げられる。
S12で、CPU301は、取得した記録条件に応じて、色変換処理テーブルを選択する。例えば、CPU301は、取得した記録条件の元で記録動作を行った場合に、フォトマゼンダインクの吐出口30の吐出周波数が閾値以下となるように色変換処理テーブルを選択する。閾値は、例えば8~10kHzの間の値に設定されてもよい。例えば、キャリッジ速度が比較的遅い、解像度が比較的低い、パス回数が比較的多いといった場合には、フォトマゼンダインクの最大記録Dutyが比較的大きい色変換処理テーブルを選択した場合でも、吐出周波数が閾値以下となり得る。このような場合には例えば前述したテーブル1を選択することで、良好な階調性保って記録を行うことができる。一方で、キャリッジ速度が比較的早い、解像度が比較的高い、パス回数が比較的少ないといった場合には、吐出周波数が大きくなりやすいので、例えば前述したテーブル2又は3を選択することで、吐出不良を抑制することができる。
図10(B)は、S12の具体的な処理例を示すフローチャートである。ここでは、記録条件に基づいて前述したテーブル1~3のいずれかを選択する場合の処理を示している。なお、説明の便宜のため、キャリッジ速度は60ips又は30ipsのいずれかから選択され、パス回数は4回又は8回のいずれかから選択され、解像度は600dpiで一定であるとする。
S120で、CPU301は、記録媒体の種類を確認し、非浸透性又は低浸透性の記録媒体であればS121に進み、そうでなければS125に進みテーブル1を選択する。CPU301は、例えばユーザにより設定された記録媒体の種別に関する情報を取得し、取得した情報に基づいて判別を行う。記録媒体が非浸透性又は低浸透性の記録媒体でない場合、処理液の使用は必要なく、処理液ミストの付着を抑制するための淡インクの吐出周波数の制限を行う必要がないので、階調性を優先したテーブル1が選択される。
S121で、CPU301は、S11で取得した情報に基づき、キャリッジ速度が30ipsであればS122に進み、キャリッジ速度が60ipsであればS124に進む。S122で、CPU301は、S11で取得した情報に基づき、パス回数が4回であればS123に進みテーブル2を選択し、パス回数が8回であればS125に進みテーブル1を選択する。つまり、キャリッジ速度30ips、パス回数4回の場合、前述したようにテーブル1を使用すると1走査あたりの最大記録Dutyが40%を超えるため、最大の吐出周波数が8kHzを超えてしまう。そこで、テーブル2を選択することにより吐出周波数を制限している。一方で、キャリッジ速度30ips、パス回数8回の場合、テーブル1を使用しても最大の吐出周波数が8kHzを超えないので、テーブル1を選択することで階調性を確保している。同様に、S124に進んだ場合、CPU301は、S11で取得した情報に基づき、パス回数が4回であればS126に進みテーブル3を選択し、パス回数が8回数であればS125に進みテーブル1を選択する。
上記処理例に基づいてテーブルを選択することで、記録ヘッドユニット3は、パス回数がより少ない場合にフォトマゼンダインクの最大記録Dutyが小さくなるように制御されており、これによりパス回数が少ない場合の吐出周波数が制限されている。また、上記処理例に基づいてテーブルを選択することで、記録ヘッドユニット3は、キャリッジ速度がより大きい場合にフォトマゼンダインクの最大記録Dutyが小さくなるように制御されており、これによりパス回数が少ない場合の吐出周波数が制限されている。すなわち、本実施形態では、CPU301は、キャリッジ速度、パス回数、又は解像度といった記録条件に応じて、淡インクの最大記録Dutyを変更することで、淡インクの吐出周波数の制限度合いが異なるように記録ヘッドユニット3を制御している。別の観点から見れば、本実施形態では、濃インクに対する淡インクの吐出割合を記録条件に応じて変更することにより、淡インクの吐出周波数を制限している。これにより、淡インクに起因する処理液ミストの付着を抑制することができる。
また、キャリッジ速度60ipsの場合には、パス回数が4回であればテーブル3を選択され、8回であればテーブル1が選択される。テーブル3では、フォトマゼンダインクの最大記録Dutyが相対的に小さいことによりフォトマゼンダインクの付与量が制限される階調領域において、テーブル1が選択される場合よりもマゼンダインクの付与量が多くなるように設定されている。これにより、フォトマゼンダインクの吐出周波数の制限度合いが相対的に大きい場合であっても階調性を確保することができる。
図11は、S12の具体的な処理の他の例を示すフローチャートである。ここでは、記録装置100において、階調性を優先する記録モードである階調性優先モードと、吐出不良の抑制を優先する記録モードである吐出不良抑制優先モードとをユーザが選択可能に構成されている場合における処理例が示されている。
S131で、CPU301は、S11で取得した情報に基づき、テーブル1を選択するとフォトマゼンダインクの吐出周波数が閾値を超えるか否かを確認し、超える場合はS132に進み、そうでない場合はS134に進みテーブル1を選択する。CPU301は、取得したキャリッジ速度、解像度、パス回数に基づいて、フォトマゼンダインクの最大記録Dutyが最大値D1の場合に、最大の吐出周波数が閾値を超えるか否か(例えば10kHzを超えるか10kHz以下であるか)を確認する。詳細には、吐出周波数は、
吐出周波数(kHz)=キャリッジ速度(ips)*解像度(dpi)*最大記録Duty(%)/(パス回数(回)*1000)
で算出できるため、CPU301はこの計算式に基づいて吐出周波数の確認を行う。確認の結果、吐出周波数が閾値を超えないようであれば、テーブル1を使用してもフォトマゼンダインクの吐出不良は発生しにくい状況にあるといえるので、CPU301はテーブル1を選択する。
S132で、CPU301は記録モードを確認し、階調性優先モードであればS134に進みテーブル1を選択し、吐出不良抑制優先モードであればS133に進み、吐出不良抑制優先モードを選択する。以上の処理例によれば、吐出不良の可能性がある場合に、ユーザの意図に基づいて、階調性を優先するか、吐出不良を抑制するかを選択することができる。
なお、本実施形態では、色変換処理テーブルの切り替えにより、淡インクの吐出周波数を制限しているが、他の態様も採用可能である。例えば、階調値に対する記録Dutyの関係を定める演算式を複数用意しておき、記録条件に応じた演算式に基づいて記録Dutyを算出することにより、淡インクの吐出周波数を制限してもよい。
さらに、濃インクの吐出口列と淡インク吐出口列の位置関係は、反応液の吐出口列との関係で、濃インクの吐出口列が淡インクの吐出後列よりも反応液の吐出口列に近い構成となっていればよい。したがって、インク色については、濃インクがマゼンタインクであり、淡インクがフォトマゼンタインクであることに限られない。
淡インクの吐出口列が濃インクの吐出口列よりも反応液の吐出口列に近い構成になっている場合、反応性と吐出不良が発生する頻度の変化の考え方を用いることが必要である。以下、実施例2の中で説明する
<実施例2>
本実施例においては、吐出口列の位置とカラーインクの関係について、前述した処理液に最も近いインクの吐出口列とその隣接する吐出口列に加え、さらに別の吐出口列を考慮した場合について説明する。さらに言えば、実施例1においては、マゼンタインク及びフォトマゼンタインクの吐出口列に関して説明したが、本実施例ではこれに加えてブラックインクの吐出口列も考慮した場合について説明する。なお、本実施例においてブラックインクを考慮した例に説明するが、顔料濃度が相対的に高いインクであればよく、イエローインクやその他の色相のインクを用いてもよい。
(インク組成)
本実施例では、マゼンタインク及び処理液は、実施例1のインクを用いて検討を行った。以下、フォトマゼンタインク及びブラックインクについて説明する。
(ブラックインク)
(1)顔料分散液の作製
まず、アニオン系高分子P-1[スチレン/ブチルアクリレート/アクリル酸共重合体(重合比(重量比)=30/40/30)酸価202、重量平均分子量6500]を準備した。これを、水酸化カリウム水溶液で中和し、イオン交換水で希釈して均質な10質量%ポリマー水溶液を作製した。
上記ポリマー溶液を600g、カーボンブラックを100gおよびイオン交換水を300g、を混合し、機械的に所定時間撹拌した後、遠心分離処理によって、粗大粒子を含む非分散物を除去してブラック分散液とする。得られたブラック分散液は、その顔料濃度が10質量%であった。
(2)インクの作製
インクの作製は、上記ブラック分散液及び水溶性樹脂微粒子分散液を使用し、これに以下の成分を加えて所定の濃度にする。顔料濃度は、5質量%の顔料インクを調製した。同様に、得られた水溶性樹脂微粒子がインク中に10質量%になるように、以下の成分を混合し、十分に攪拌して溶解・分散後、ポアサイズ2.5μmのミクロフィルター(富士フイルム株式会社製)にて加圧濾過し、ブラックインクを調整した。最終的には、主に以下の成分となるように調整した。
(ブラックインク処方例1)
上記ブラック顔料 5部
上記水溶性樹脂微粒子 10部
ゾニールFSO-100(デュポン製フッ素系界面活性剤) 0.05部
2-ピロリドン 20部
アセチレングリコールEO付加物(川研ファインケミカル株式会社製) 0.5部
イオン交換水 残部
(フォトマゼンタインク)
フォトマゼンタインクについて、本実施例では混合粘度を抑制する目的で、ノニオン系活性剤を添加した。これは、隣接するブラックインクの高周波吐出による吐出不良を抑制するためである。ノニオン系活性剤を添加することで、マゼンタ顔料の分散安定性が向上し、分散破壊材料による影響を小さくすることができるためである。検討により、添加量としては以下の処方であれば吐出不良の抑制に効果があることがわかった。また、比較例として、処方例3に高反応性のフォトマゼンタインク処方を示した。これは、水溶性樹脂微粒子を高濃度に添加した例である。
(フォトマゼンタインク処方例2)
上記マゼンタ顔料 0.5部
上記水溶性樹脂微粒子 1部
ゾニールFSO-100(デュポン製フッ素系界面活性剤) 0.05部
2-ピロリドン 20部
アセチレングリコールEO付加物(川研ファインケミカル株式会社製) 0.5部
BO-50(NIKKOL) 0.5部
イオン交換水 残部
(フォトマゼンタインク処方例3)
上記マゼンタ顔料 0.5部
上記水溶性樹脂微粒子 1部
ゾニールFSO-100(デュポン製フッ素系界面活性剤) 0.05部
2-ピロリドン 20部
アセチレングリコールEO付加物(川研ファインケミカル株式会社製) 0.5部
BO-50(NIKKOL) 0.5部
イオン交換水 残部
(インク物性評価)
前述した3種類のインクの混合粘度は、以下の表3の通りであった。なお、表中の混合前とは、フォトマゼンタインクのそれぞれの処方における処理液との混合前の粘度を表している。単位はmPa・sである。
Figure 2023046254000004
表3から、フォトマゼンタインク処方の差により、瞬時に反応が起こる場合、緩やかに起る場合、ほとんど起こらない場合に評価結果を分けることができた。
処方例1は10分後に粘度が大きく上昇していることから増粘が緩やかに起っている。また、処方32は1分後にすでに増粘が顕著であり、瞬時に反応が起こっていた。また、処方例2は、10分後までは増粘がほとんどない。したがって、反応性が非常に低かった。以下、本実施例では上記3種類のフォトマゼンタインクを入れ替えて、反応性と吐出不良の発生頻度の変化について説明する。
(ヘッド構成)
本実施例では、前述したインクを、ヘッドに通して吐出口から吐出動作を行うことで記録媒体に画像を形成する。このとき、処理液と、各カラーインクとの位置関係が吐出不良の発生頻度に大きく影響するが、本実施例では図3に示した位置に処理液及び各カラーインクを配置した。
本実施例では、処理液からみて、最も相対的に近い吐出口列に、相対的に反応性の高いマゼンタインクを用いたことである。一般的には、反応性の高いカラーインクほど反応液から遠ざけた位置に配置することが多い。比較例としても、以下の表4に示した水準で吐出不良の発生頻度の比較を行った。なお、表4において、カラーインク吐出口1は処理液吐出口に近い吐出口であり、次いでカラーインク吐出口2、カラーインク吐出口3と徐々に処理液吐出口から遠ざかるように配置される。
Figure 2023046254000005
(記録方法)
本実施例では、マルチパス記録方式の4パス記録走査によって所定領域毎に画像を形成した。また、キャリッジ速度は30ips、色変換処理などは、実施例1で示したテーブル2を用いた。
(結果)
本実施例におけるそれぞれの吐出口配置と、そのときの吐出不良の発生頻度をまとめると表5の通りであった。
Figure 2023046254000006
表5から、本例の吐出口配置が良好な結果となった。なお、比較例における吐出不良は、カラーインク3を吐出することによるカラーインク吐出口2の位置が顕著であった。それぞれ吐出不良の吐出口との位置関係から、想定したように、渦気流による処理液の巻き上げが吐出不良の要因であった。一方で、本例では、カラーインク2(フォトマゼンダインク)に反応性の低いインクを採用したことで、カラーインク3(ブラックインク)を吐出することによるカラーインク2(フォトマゼンダインク)の吐出不良を抑制することができた。つまり、本実施例での説明に用いたインクは、色相を限定する趣旨ではない。一般的に濃インクであれば反応性は高く、本実施例の意図するところは、カラーインク吐出口1及び3に濃インク、カラーインク吐出口2に淡インクを配置することにある。更には、本実施例の意図するところは、濃インクが隣り合う構成をとらなければよいことにある。本実施例による吐出不良を抑制することが可能な濃インク及び淡インクの配置の構成例を表6に記載した。なお、表6の濃インクは、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク及びブラックインクなどで、通常顔料濃度が1%以上のものである。また、表6の淡インクは、フォトシアンインク、フォトマゼンタインク、グレーインク及びフォトグレーインクなどで、通常顔料濃度が1%未満のものである。なお、下記のその他の実施例において詳細は記載するが、淡インクは顔料を含まないインクも含む。
Figure 2023046254000007
<その他の実施例>
実施例1では、処理液吐出口とカラーインク吐出口の位置関係から、カラーインクの吐出不良の抑制のために淡インクの吐出周波数を制限し、さらに階調性確保のための色処理変換テーブルの選択について説明した。具体的には、処理液吐出口に近いカラーインク吐出口列に濃インクを配置し、遠い位置に淡インクを配置することで、淡インクの吐出周波数制限を行い、濃インクも階調性のために色処理変換を行った。
実施例2では、反応液との反応性と吐出口位置の関係について、カラーインクが増加した場合について説明した。具体的には、カラーインクが3本隣接している場合についての説明を行った。具体的には、3本のうち、中心に配置されるインクの吐出周波数制限及び反応性制御による吐出不良抑制について説明した。
このとき、中心に配置したインクは、フォトマゼンタインクの場合についての説明であったが、フォトマゼンタインクに限る趣旨ではなく、反応性を制限したインクであれば同様な効果を得ることが可能である。そこで、本実施例では、顔料を含まない、または微量にしか含まない透明インクを中心に配置した場合について説明する。処方例では説明の便宜のために、顔料を含まない場合について記載した。
この場合、さらに吐出不良抑制が容易であることと、前述した階調性についての懸念がなく、濃インク及び淡インクの使用について自由度が高い点で優位である。透明インクの処方を以下に示した。
(透明インク処方例1)
上記水溶性樹脂微粒子 1部
ゾニールFSO-100(デュポン製フッ素系界面活性剤) 0.05部
2-ピロリドン 20部
アセチレングリコールEO付加物(川研ファインケミカル株式会社製) 0.5部
BO-50(NIKKOL) 0.5部
イオン交換水 残部
なお、本実施例においてマゼンタインク、ブラックインク及び処理液については、それぞれ処方例1を用いた。また、吐出口列とインク色の関係は、前述した表4のうち、本例のカラーインク2を透明インクに置き換えたものを採用した。さらに、記録方法については、前述した実施例1及び実施例2と同様の記録方法を用いた。
本実施例における吐出不良の発生頻度を評価すると、AAとなり、前述した実施例1及び実施例2の結果と合わせ、透明インクであっても同等以上の効果を得ることができることを確認することができた。また、実施例2においてカラーインク吐出口列が3本近接する場合について説明したが、4本以上隣接する場合についても説明する。
吐出周波数制限に関して、濃インクについてはその制限を設けることが難しい。濃インクは記録Dutyを高くし、発色向上を狙う性格のインクのためである。すなわち、吐出周波数制限を行うためには、濃インクを隣接させることは難しい。これに対しては、濃インク同士の隣接を制限することで、4本以上の吐出口列を近接することが可能である。これにより、キャリッジのサイズを小さくすることが可能である。
以上説明したように、本実施形態において、フォトマゼンダインクの最大記録Dutyがテーブル1よりも小さいテーブル2を選択することは、階調性を優先した場合と比較してフォトマゼンダインクの吐出周波数の制限の度合いが大きいテーブルを選択していることにほかならない。本実施形態では、記録装置100は、記録条件に応じて特定の吐出口であるフォトマゼンダインクの吐出周波数の制限度合いが異なるように記録ヘッドユニット3の記録制御を行っている。したがって、本実施形態によれば、フォトマゼンダインクの吐出周波数が所定の値、例えば自己気流の影響が生じうる8~10kHzの値を超えないようにすることができ、処理液ミストの付着によるインクの吐出不良を抑制することができる。また、本構成によれば、ミストの吸引機構等を必要としないので、簡易な構成でインクの吐出不良を抑制することができる。
また、本実施形態では、相対的に顔料濃度が高いマゼンダインク(濃インク)ではなく、相対的に顔料濃度が低いフォトマゼンダインク(淡インク)の吐出周波数を制限している。これにより、濃インクの発色性は確保しつつ、淡インクの吐出に起因する吐出不良を抑制することができる。さらに、本実施形態では、マゼンダインクの吐出口列35Mが、走査方向において、フォトマゼンダインクの吐出口列35mよりも処理液の吐出口列35Trの近くに配置される。これにより、吐出口列35Mからのインク吐出により発生する自己気流に起因するミストの付着は、吐出口列35Trと吐出口列35Mの間の吐出口列が存在しない領域に生じる。したがって、濃インクの吐出口列の吐出周波数を特段制限しなくても、濃インクの吐出に起因する吐出不良を抑制することができる。
<他の実施形態>
上記実施形態では、インクジェット記録方式を用いた記録装置を例に挙げて説明した。しかしながら、記録装置は、例えば、記録機能のみを有するシングルファンクションプリンタであってもよいし、記録機能、FAX機能、スキャナ機能等の複数の機能を有するマルチファンクションプリンタであってもよい。また、例えば、カラーフィルタ、電子デバイス、光学デバイス、微小構造物等を所定の記録方式で製造するための製造装置であってもよい。
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
<付記>
上記実施形態は、以下の記録装置、その制御方法、記録ヘッド及び記録システムを少なくとも開示する。
(項目1)
インク中の色材と反応する成分を含有する反応液を付与するための複数の記録素子が第1方向に配列する反応液素子列と、第1インクを付与するための複数の記録素子が前記第1方向に配列する第1素子列と、前記反応液に対する反応性が前記第1インクよりも低い第2インクを付与するための複数の記録素子が前記第1方向に配列する第2素子列と、を備え、前記第1方向と交差する第2方向に沿って、前記反応液素子列、前記第1素子列、前記第2素子列の順に配列された記録手段と、
前記記録手段を記録媒体に対して前記第2方向に相対的に走査させる走査手段と、
記録媒体上の所定領域の画素数に対する前記第2インクの吐出が許容される画素数の割合が閾値を超えないように、前記記録手段による記録動作を制御する記録制御手段と、
を備えることを特徴とする記録装置。
(項目2)
項目1に記載の記録装置であって、
前記第2インクは、前記第1インクと同一色相で且つ前記第1インクよりも色材濃度の低いインクであることを特徴とする記録装置。
(項目3)
項目1から2のいずれか1項目に記載の記録装置であって、
入力された画像データに基づき、前記第1インクの付与量及び前記第2インクの付与量を決定する決定手段をさらに備え、
前記記録制御手段は、前記決定手段により決定された付与量に基づいて前記記録動作を制御することを特徴とする記録装置。
(項目4)
項目3に記載の記録装置であって、
前記決定手段は、前記記録動作の記録条件に応じて、前記第1インクの付与量及び前記第2インクの付与量を決定することを特徴とする記録装置。
(項目5)
項目4に記載の記録装置であって、
前記決定手段は、前記記録条件毎に定められた前記閾値を超えないように、前記第2インクの付与量を決定することを特徴とする記録装置。
(項目6)
項目5に記載の記録装置であって、
前記記録手段は、記録媒体上の単位領域に対する複数回の走査で画像の記録を完成させ、
前記記録条件は、前記単位領域に対する走査回数を含み、
前記走査回数が第1の回数である記録条件に対して定められた前記閾値は、前記走査回数が前記第1の回数よりも少ない第2の回数である記録条件に対して定められた前記閾値よりも大きい
ことを特徴とする記録装置。
(項目7)
項目5に記載の記録装置であって、
前記記録条件は、前記記録手段の走査速度を含み、
前記走査速度が第1の走査速度である記録条件に対して定められた前記閾値は、前記走査速度が前記第1の走査速度よりも大きい第2の走査速度である記録条件に対して定められた前記閾値よりも大きいことを特徴とする記録装置。
(項目8)
項目3に記載の記録装置であって、
前記記録制御手段は、前記記録動作の記録条件に応じて、前記閾値が第1の値である第1の制御と、前記閾値が前記第1の値よりも小さい第2の値である第2の制御とを行うことができ、
前記第2の制御において、前記第2インクの付与量が制限される階調領域における前記第1インクの付与量は、前記第1の制御において、前記第2インクの付与量が制限される階調領域における前記第1インクの付与量よりも多いことを特徴とする記録装置。
(項目9)
項目1から8までのいずれか1項目に記載の記録装置であって、
前記記録制御手段は、水性インクの浸透性に関する条件を満たす記録媒体に対して前記記録手段に前記反応液を付与させる、
ことを特徴とする記録装置。
(項目10)
項目9に記載の記録装置であって、
前記水性インクの浸透性に関する条件は、ブリストー法によるインク転移量が20ml/m2よりも小さい値であることである、
ことを特徴とする記録装置。
(項目11)
項目1から10のいずれか1項目に記載の記録装置であって、
前記第2方向における前記第1素子列と前記反応液素子列との距離は、前記第2方向における前記第1素子列と前記第2素子列との距離よりも大きいことを特徴とする記録装置。
(項目12)
項目1から11のいずれか1項目に記載の記録装置であって、
前記記録手段は、前記反応液素子列が設けられた第1の記録ヘッドと、前記第1素子列及び前記第2素子列が設けられた第2の記録ヘッドと、を備えることを特徴とする記録装置。
(項目13)
項目12に記載の記録装置であって、
前記第2の記録ヘッドは、前記第1インク及び前記第2インクとは異なる色相の第3のインクを付与するための複数の記録素子が前記第1方向に配列する第3素子列をさらに含むことを特徴とする記録装置。
(項目14)
項目13に記載の記録装置であって、
前記第2方向において、前記第3素子列と前記反応液素子列との距離は、前記第2素子列と前記反応液素子列との距離よりも大きく、且つ、前記第1素子列と前記反応液素子列との距離は、前記第2素子列と前記第3素子列との距離よりも大きく、
前記第3のインクと前記反応液との反応性は、前記第2インクと前記反応液との反応性よりも高い、
ことを特徴とする記録装置。
(項目15)
項目1から14のいずれか1項目に記載の記録装置であって、
インクと前記反応液との反応性は、前記反応液と混合された後のインクの粘度上昇の度合いである、
ことを特徴とする記録装置。
(項目16)
項目1から15のいずれか1項目に記載の記録装置であって、
前記反応液は、インク中の色材を凝集又はゲル化させる反応性成分を含有することを特徴とする記録装置。
(項目17)
項目1から16のいずれか1項目に記載の記録装置であって、
前記第1インク及び前記第2インクは色材として顔料を含み、
前記第1インクの顔料濃度は、前記第2インクの顔料濃度よりも高い、
ことを特徴とする記録装置。
(項目18)
項目1から17のいずれか1項目に記載の記録装置であって、
前記第1インクは顔料を含み、
前記第2インクは顔料を含まない、
ことを特徴とする記録装置。
(項目19)
項目4に記載の記録装置であって、
前記決定手段は、前記第2インクの階調値に対する前記割合を示すテーブルを切り替えることにより、前記第1インクの付与量及び前記第2インクの付与量を決定することを特徴とする記録装置。
(項目20)
項目1から19のいずれか1項目に記載の記録装置であって、
前記記録制御手段は、前記所定領域に前記第2インクを付与する記録素子の周波数が10kHz以下となるように、前記記録動作を制御することを特徴とする記録装置。
(項目21)
インク中の色材と反応する成分を含有する反応液を付与するための複数の記録素子が第1方向に配列する反応液素子列と、第1インクを付与するための複数の記録素子が前記第1方向に配列する第1素子列と、前記反応液に対する反応性が前記第1インクよりも低い第2インクを付与するための複数の記録素子が前記第1方向に配列する第2素子列と、を備え、前記第1方向と交差する第2方向に沿って、前記反応液素子列、前記第1素子列、前記第2素子列の順に配列された記録手段を備えた記録装置の制御方法であって、
前記記録手段を記録媒体に対して前記第2方向に相対的に走査させることと、
記録媒体上の所定領域の画素数に対する前記第2インクの吐出が許容される画素数の割合が閾値を超えないように、前記記録手段による記録動作を制御することと、を含む、
ことを特徴とする制御方法。
(項目22)
インク中の色材と反応する成分を含有する反応液を付与するための複数の記録素子が第1方向に配列する反応液素子列と、第1インクを付与するための複数の記録素子が前記第1方向に配列する第1素子列と、前記反応液に対する反応性が前記第1インクよりも低い第2インクを付与するための複数の記録素子が前記第1方向に配列する第2素子列と、を備え、前記第1方向と交差する第2方向に沿って、前記反応液素子列、前記第1素子列、前記第2素子列の順に配列された記録ヘッド。
(項目23)
項目22に記載の記録ヘッドにおいて、前記第2インクは前記第1インクと同一色相であり、且つ、前記第2インクの色材濃度は前記第1インクの色材濃度よりも低いことを特徴とする記録ヘッド。
(項目24)
インク中の色材と反応する成分を含有する反応液を付与するための複数の記録素子が第1方向に配列する反応液素子列と、第1インクを付与するための複数の記録素子が前記第1方向に配列する第1素子列と、前記反応液に対する反応性が前記第1インクよりも低い第2インクを付与するための複数の記録素子が前記第1方向に配列する第2素子列と、を備え、前記第1方向と交差する第2方向に沿って、前記反応液素子列、前記第1素子列、前記第2素子列の順に配列された記録手段と、
前記記録手段を記録媒体に対して前記第2方向に相対的に走査させる走査手段と、
前記記録手段による記録動作を制御する記録制御手段と、
を備える記録装置と、
入力画像データに基づき、前記第2インクの単位時間当たりの吐出数が閾値を超えないように前記第2インクの付与量を決定する決定手段を備える情報処理装置と、
からなる記録システムであって、
前記記録制御手段は、前記決定手段により決定された付与量に基づき、前記記録手段による記録を制御することを特徴とする記録システム。
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
2:キャリッジユニット、3:記録ヘッドユニット、100:記録装置、301:CPU

Claims (24)

  1. インク中の色材と反応する成分を含有する反応液を付与するための複数の記録素子が第1方向に配列する反応液素子列と、第1インクを付与するための複数の記録素子が前記第1方向に配列する第1素子列と、前記反応液に対する反応性が前記第1インクよりも低い第2インクを付与するための複数の記録素子が前記第1方向に配列する第2素子列と、を備え、前記第1方向と交差する第2方向に沿って、前記反応液素子列、前記第1素子列、前記第2素子列の順に配列された記録手段と、
    前記記録手段を記録媒体に対して前記第2方向に相対的に走査させる走査手段と、
    記録媒体上の所定領域の画素数に対する前記第2インクの吐出が許容される画素数の割合が閾値を超えないように、前記記録手段による記録動作を制御する記録制御手段と、
    を備えることを特徴とする記録装置。
  2. 請求項1に記載の記録装置であって、
    前記第2インクは、前記第1インクと同一色相で且つ前記第1インクよりも色材濃度の低いインクであることを特徴とする記録装置。
  3. 請求項1に記載の記録装置であって、
    入力された画像データに基づき、前記第1インクの付与量及び前記第2インクの付与量を決定する決定手段をさらに備え、
    前記記録制御手段は、前記決定手段により決定された付与量に基づいて前記記録動作を制御することを特徴とする記録装置。
  4. 請求項3に記載の記録装置であって、
    前記決定手段は、前記記録動作の記録条件に応じて、前記第1インクの付与量及び前記第2インクの付与量を決定することを特徴とする記録装置。
  5. 請求項4に記載の記録装置であって、
    前記決定手段は、前記記録条件毎に定められた前記閾値を超えないように、前記第2インクの付与量を決定することを特徴とする記録装置。
  6. 請求項5に記載の記録装置であって、
    前記記録手段は、記録媒体上の単位領域に対する複数回の走査で画像の記録を完成させ、
    前記記録条件は、前記単位領域に対する走査回数を含み、
    前記走査回数が第1の回数である記録条件に対して定められた前記閾値は、前記走査回数が前記第1の回数よりも少ない第2の回数である記録条件に対して定められた前記閾値よりも大きい
    ことを特徴とする記録装置。
  7. 請求項5に記載の記録装置であって、
    前記記録条件は、前記記録手段の走査速度を含み、
    前記走査速度が第1の走査速度である記録条件に対して定められた前記閾値は、前記走査速度が前記第1の走査速度よりも大きい第2の走査速度である記録条件に対して定められた前記閾値よりも大きいことを特徴とする記録装置。
  8. 請求項3に記載の記録装置であって、
    前記記録制御手段は、前記記録動作の記録条件に応じて、前記閾値が第1の値である第1の制御と、前記閾値が前記第1の値よりも小さい第2の値である第2の制御とを行うことができ、
    前記第2の制御において、前記第2インクの付与量が制限される階調領域における前記第1インクの付与量は、前記第1の制御において、前記第2インクの付与量が制限される階調領域における前記第1インクの付与量よりも多いことを特徴とする記録装置。
  9. 請求項1から8までのいずれか1項に記載の記録装置であって、
    前記記録制御手段は、水性インクの浸透性に関する条件を満たす記録媒体に対して前記記録手段に前記反応液を付与させる、
    ことを特徴とする記録装置。
  10. 請求項9に記載の記録装置であって、
    前記水性インクの浸透性に関する条件は、ブリストー法によるインク転移量が20ml/m2よりも小さい値であることである、
    ことを特徴とする記録装置。
  11. 請求項1に記載の記録装置であって、
    前記第2方向における前記第1素子列と前記反応液素子列との距離は、前記第2方向における前記第1素子列と前記第2素子列との距離よりも大きいことを特徴とする記録装置。
  12. 請求項1に記載の記録装置であって、
    前記記録手段は、前記反応液素子列が設けられた第1の記録ヘッドと、前記第1素子列及び前記第2素子列が設けられた第2の記録ヘッドと、を備えることを特徴とする記録装置。
  13. 請求項12に記載の記録装置であって、
    前記第2の記録ヘッドは、前記第1インク及び前記第2インクとは異なる色相の第3のインクを付与するための複数の記録素子が前記第1方向に配列する第3素子列をさらに含むことを特徴とする記録装置。
  14. 請求項13に記載の記録装置であって、
    前記第2方向において、前記第3素子列と前記反応液素子列との距離は、前記第2素子列と前記反応液素子列との距離よりも大きく、且つ、前記第1素子列と前記反応液素子列との距離は、前記第2素子列と前記第3素子列との距離よりも大きく、
    前記第3のインクと前記反応液との反応性は、前記第2インクと前記反応液との反応性よりも高い、
    ことを特徴とする記録装置。
  15. 請求項1に記載の記録装置であって、
    インクと前記反応液との反応性は、前記反応液と混合された後のインクの粘度上昇の度合いである、
    ことを特徴とする記録装置。
  16. 請求項1に記載の記録装置であって、
    前記反応液は、インク中の色材を凝集又はゲル化させる反応性成分を含有することを特徴とする記録装置。
  17. 請求項1に記載の記録装置であって、
    前記第1インク及び前記第2インクは色材として顔料を含み、
    前記第1インクの顔料濃度は、前記第2インクの顔料濃度よりも高い、
    ことを特徴とする記録装置。
  18. 請求項1に記載の記録装置であって、
    前記第1インクは顔料を含み、
    前記第2インクは顔料を含まない、
    ことを特徴とする記録装置。
  19. 請求項4に記載の記録装置であって、
    前記決定手段は、前記第2インクの階調値に対する前記割合を示すテーブルを切り替えることにより、前記第1インクの付与量及び前記第2インクの付与量を決定することを特徴とする記録装置。
  20. 請求項1に記載の記録装置であって、
    前記記録制御手段は、前記所定領域に前記第2インクを付与する記録素子の周波数が10kHz以下となるように、前記記録動作を制御することを特徴とする記録装置。
  21. インク中の色材と反応する成分を含有する反応液を付与するための複数の記録素子が第1方向に配列する反応液素子列と、第1インクを付与するための複数の記録素子が前記第1方向に配列する第1素子列と、前記反応液に対する反応性が前記第1インクよりも低い第2インクを付与するための複数の記録素子が前記第1方向に配列する第2素子列と、を備え、前記第1方向と交差する第2方向に沿って、前記反応液素子列、前記第1素子列、前記第2素子列の順に配列された記録手段を備えた記録装置の制御方法であって、
    前記記録手段を記録媒体に対して前記第2方向に相対的に走査させることと、
    記録媒体上の所定領域の画素数に対する前記第2インクの吐出が許容される画素数の割合が閾値を超えないように、前記記録手段による記録動作を制御することと、を含む、
    ことを特徴とする制御方法。
  22. インク中の色材と反応する成分を含有する反応液を付与するための複数の記録素子が第1方向に配列する反応液素子列と、第1インクを付与するための複数の記録素子が前記第1方向に配列する第1素子列と、前記反応液に対する反応性が前記第1インクよりも低い第2インクを付与するための複数の記録素子が前記第1方向に配列する第2素子列と、を備え、前記第1方向と交差する第2方向に沿って、前記反応液素子列、前記第1素子列、前記第2素子列の順に配列された記録ヘッド。
  23. 請求項22に記載の記録ヘッドにおいて、前記第2インクは前記第1インクと同一色相であり、且つ、前記第2インクの色材濃度は前記第1インクの色材濃度よりも低いことを特徴とする記録ヘッド。
  24. インク中の色材と反応する成分を含有する反応液を付与するための複数の記録素子が第1方向に配列する反応液素子列と、第1インクを付与するための複数の記録素子が前記第1方向に配列する第1素子列と、前記反応液に対する反応性が前記第1インクよりも低い第2インクを付与するための複数の記録素子が前記第1方向に配列する第2素子列と、を備え、前記第1方向と交差する第2方向に沿って、前記反応液素子列、前記第1素子列、前記第2素子列の順に配列された記録手段と、
    前記記録手段を記録媒体に対して前記第2方向に相対的に走査させる走査手段と、
    前記記録手段による記録動作を制御する記録制御手段と、
    を備える記録装置と、
    入力画像データに基づき、前記第2インクの単位時間当たりの吐出数が閾値を超えないように前記第2インクの付与量を決定する決定手段を備える情報処理装置と、
    からなる記録システムであって、
    前記記録制御手段は、前記決定手段により決定された付与量に基づき、前記記録手段による記録を制御することを特徴とする記録システム。
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