JP2023042090A - ガスセンサ - Google Patents

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孝佳 平井
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Abstract

【課題】高い検出感度を有しつつ、検出選択性と応答速度に優れたガスセンサを提供すること。【解決手段】基板と、第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極の間に形成された抵抗体と、前記抵抗体と接し、高分子材料と金属酸化物および/または金属硫化物を含有する層と、を有するガスセンサであって、前記抵抗体はナノカーボン材料を含有する、ガスセンサ。【選択図】なし

Description

本発明は、ガスセンサに関する。
試料中に存在する物質を高感度かつ高選択的に検出する技術に関する研究開発が精力的に行われている。そのような技術が実現すれば、空気中の有害ガスのモニタリングによる建物の換気管理や、腐敗ガス量の定量による食品の鮮度管理、呼気中の疾病マーカー検出による疾病の早期発見、ごく微量の毒ガス検出によるテロや化学兵器攻撃の未然防止といった分野で役に立つと考えられる。これらの用途を志向した場合、ppbオーダー、より好ましくはpptオーダーの高感度検出技術が必要であるが、未だ実現できているものは無い。
高感度かつ高選択検出技術として、検出対象物質と選択的に相互作用する形状や静電ポテンシャル分布を有する認識分子をナノカーボン材料表面へ固定化した材料を用いたセンサが検討されている(例えば、特許文献1参照)。ナノ材料、特にナノカーボン材料は大きな比表面積を有することから、極微量のターゲット物質によっても電子物性が大きく変わると考えられ、高感度検出技術に適している。ナノカーボン材料が有する高い検出能力を更に高める技術として、検出部において、カーボンナノチューブと金属酸化物粒子との複合材料を用いる技術が報告されている(例えば、非特許文献1参照)。
ナノカーボン材料を用いたガスセンサは、検出対象物質がナノカーボン材料表面に付着することによる接触抵抗変化やキャリア注入によって起こる抵抗値変化に基づいて検出対象物質を検出する。そのため室温でも使用可能であり、検出に高温を必要とする既存の金属酸化物を用いたガスセンサよりも優れている。
また、検出選択性を付与する技術としては他に、検出対象物質と相互作用する感ガス体としてカチオン性ポリマーを含む層と酸化グラフェン層とを積層させることによって検出選択性を付与する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特開2008-249705号公報 特開2020-134498号公報
"Sensors and Actuators:B",(蘭国),2012年,170巻,p.67-74
しかしながら、特許文献1に記載のような、ターゲット認識分子を固定化したナノカーボンを用いた検出技術では、ナノカーボン材料上の認識分子の機能を安定的に維持することが難しいことや、ナノカーボン材料上へ認識分子を高密度で固定化することが難しいために、対象物質との結合量が増えない。そのために、選択性の代償として感度低下を招いてしまうこと、量産化に不向きであること、などの課題があった。
また、特許文献2に記載のような、感ガス体ポリマーを含む層とナノカーボン材料層とを積層させる技術では、検出対象物質と選択的に相互作用する感ガス体と、抵抗値変化による検出を担うナノカーボン材料との間で直接的な電荷授受が無いために、検出感度、検出選択性いずれに対しても限定的な効果しか得られていなかった。
さらに、非特許文献1に記載のように、ナノカーボン材料を用いたセンサを室温において用いて検出対象物質を検出した場合、検出対象物質の吸脱着反応に時間を要する。そのため、検出対象物質を検出器へ導入してから検出し終わるまでの応答速度や、検出後の復帰速度が遅いという課題も有していた。
本発明は、これらの課題を工業的生産に適した手段によって解決し、高い検出感度を有しつつ、検出選択性と室温検出における応答速度に優れたガスセンサを提供することを目的とする。
すなわち本発明は、基板と、第1電極と、第2電極と、前記第1電極および前記第2電極に接し、ナノカーボン材料を含有する抵抗体と、前記抵抗体と接し、高分子材料と金属酸化物および/または金属硫化物とを含有する層(以下「コート層」と称する)と、を有するガスセンサである。
本発明によれば、単に高感度であるのみでなく、ガス種に対する選択性と応答速度にも優れるガスセンサを、再現性良く作製する手段で提供できる。
本発明の実施形態に係るガスセンサを示した模式断面図 本発明の実施形態に係るガスセンサを示した模式断面図 本発明の実施形態に係るガスセンサを示した模式断面図
以下、本発明に係るガスセンサの好適な実施の形態を詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、目的や用途に応じて種々に変更して実施することができる。
本発明の実施の形態に係るガスセンサは、基板と、第1電極と、第2電極と、第1電極および第2電極に接し、ナノカーボン材料を含有する抵抗体と、抵抗体と接し、高分子材料と金属酸化物および/または金属硫化物とを含有する層(以下、本明細書中では便宜的に「コート層」と呼ぶ)と、を有するガスセンサである。
ガスセンサとは、特定の化学物質の存在を検出する一種の化学センサであり、被検体が気体のもののことを指す。常温・常圧においてその最安定な相が気相でないような物質であっても、通常は一定の蒸気圧を有しており、気体試料中に含まれている。この場合、気体試料中の当該物質の量は微量であることがある。本発明の実施の形態に係るガスセンサは、そのような微量の物質も検出対象とすることができる。
検出対象物質の検出は、第1電極と第2電極の間に一定の電圧を印加し、そこへ検出対象物質を暴露した時に両電極間に流れる電流値の変化によって行ってもよいし、第1電極と第2電極の間に一定の電流を流し続け、そこへ検出対象物質を暴露した時の印加電圧の変化によって行ってもよい。また、これらの電圧-電流の値から抵抗値を算出し、その変化によって対象物質の検出を行ってもよい。
<コート層>
コート層は、金属酸化物および/または金属硫化物を含有することにより、これと接する抵抗体の特性を改質する。このメカニズムについてはまだ不明な点も存在するが、金属酸化物および/または金属硫化物によって抵抗体中のキャリア密度および価電子帯/伝導帯の構造が変調を受けるためであると考えられる。
このような効果をもたらす金属酸化物/金属硫化物の例として、以下のものが挙げられる。
金属酸化物:
酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化イットリウム、酸化インジウム、酸化ガリウム、酸化カルシウム、酸化銀、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化ストロンチウム、酸化セリウム、酸化タングステン、酸化タンタル、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化ハフニウム、酸化マグネシウム。
金属硫化物:
硫化亜鉛、硫化インジウム、硫化カドミウム、硫化銀、硫化タングステン、硫化ビスマス、硫化モリブデン。
これらの中でも、ナノカーボン材料と有効に電子的な相互作用をしやすい、半導体特性を示すものが好ましい。さらにその中でも、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化セリウム、酸化タングステンおよび酸化チタンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、高分子材料との相溶性の観点から、酸化スズおよび酸化チタンが特に好ましい。酸化スズは、SnOでも、SnOでも、これらの混合組成のものでもよいが、SnOの方がより半導体的であるため、より好ましい。
コート層を形成する方法としては、高分子材料と金属酸化物および/または金属硫化物とを含有する溶液または分散液を塗布・乾燥する方法や、高分子材料のモノマーやプレポリマーと金属酸化物および/または金属硫化物とを含有する融液、溶液または分散液を塗布し、モノマーやプレポリマーを重合し高分子材料とする方法などが挙げられる。
抵抗体の特性を効果的に改質するために、コート層中の金属酸化物および/または金属硫化物の少なくとも一部が、抵抗体と接していることが好ましい。金属酸化物および/または金属硫化物によって、抵抗体に含まれるナノカーボン材料の特性が改質されたことは、抵抗体の仕事関数の変化として観測することができる。仕事関数は、ガスセンサ中の抵抗体とコート層が存在する領域を斜めに切断し、その切片に対して大気中光電子分光測定を実施することにより測定することができる。
金属酸化物および/または金属硫化物と抵抗体との接触を安定的かつ効率的に形成させるために、コート層中で金属酸化物および/または金属硫化物は偏って存在しない方が好ましい。このようなコート層中での金属酸化物および/または金属硫化物の偏りを防ぐために、コート層中の高分子材料と金属酸化物および/または金属硫化物との間で結合が形成されていることが好ましい。典型的には高分子材料の比重よりも金属酸化物および/または金属硫化物の比重の方が大きいため、コート層形成段階で金属酸化物および/または金属硫化物が重力の方向へ偏りやすい。両者が結合によって分子レベルで繋ぎ留められていれば、このようなことは起こらない。
十分な選択性および応答速度向上の効果を得る観点から、コート層中における金属酸化物および/または金属硫化物の量は多い方が好ましい。一方で、コート層の耐クラック性を担保するためには、その量は多すぎない方がよい。これらの効果の兼ね合いから、コート層中における金属酸化物および/または金属硫化物の体積分率は、10vol%以上、60vol%以下であることが好ましく、23vol%以上、59vol%以下がより好ましく、30vol%以上、58vol%以下がさらに好ましく、37vol%以上、58vol%以下がさらにより好ましく、45vol%以上、55vol%以下が特に好ましい。
コート層中における金属酸化物および/または金属硫化物の体積分率Xは以下のようにして求めることができる。すなわち、コート層の体積および重量からコート層の密度ρを求め、金属酸化物および/または金属硫化物単独の密度ρと、金属酸化物および/または金属硫化物を含まない高分子材料単独の密度ρから、下記の式より求めることができる。ただし、Xを百分率表示する場合は100×Xvol%となる。
Figure 2023042090000001
コート層中の金属酸化物および/または金属硫化物は、粒子状の形状を有することが好ましい。金属酸化物および/または金属硫化物の電子特性が十分に発揮されるためには、上記粒子の数平均粒子径が大きい方が好ましい。一方、均一なコート層を再現性よく形成し、かつ金属酸化物および/または金属硫化物の比表面積を大きくし、大きな効果を得るためには、上記粒子の数平均粒子径が小さい方が好ましい。これらの効果の兼ね合いから、金属酸化物および/または金属硫化物の数平均粒子径は、1nm以上、500nm以下が好ましく、5nm以上、100nm以下がより好ましく、10nm以上、70nm以下がさらに好ましく、15nm以上、60nm以下が特に好ましい。
次に、抵抗体とコート層の配置について説明する。本発明の実施の形態に係るガスセンサの構造例について、その模式断面図を図1~図3に示す。
図1に示すガスセンサ10では、基板5の上にコート層4を有し、その上に第1電極2aおよび第2電極2bを有する。そして、第1電極2aと第2電極2bの間の領域に、両電極に接するように抵抗体3が存在する。Vは電圧計を表し、第1電極と第2電極との間の電圧を測定する。Aは電流計を表し、第1電極と第2電極との間を流れる電流を測定する。また、第1電極、第2電極を含む回路には電圧を調整可能な電源も接続されている。本発明の実施の形態に係るガスセンサを用いて検出対象物質を検出する方法としては、抵抗体を検出対象物質に暴露した際の、抵抗体の電圧値や電流値の変化によって検出してもよいし、それらの値から抵抗体の抵抗値やインピーダンスを算出し、その変化によって検出してもよい。
図2に示すガスセンサ20では、基板5の上に第1電極2aおよび第2電極2bを有する。そして、第1電極2aと第2電極2bの間の領域に、両電極に接するように抵抗体3が存在する。コート層4は、第1電極2a、第2電極2bおよび抵抗体3を覆うように形成される。すなわち、図1に示すガスセンサ10と比べると、コート層4が存在する場所が異なっている。その他の構成は図1に示すガスセンサ10と同様である。
図3に示すガスセンサ30は、コート層を2層有するものである。すなわち、図1に示すガスセンサ10と同様、基板5の上にコート層4bを有し、その上に第1電極2aおよび第2電極2bを有する。そして、第1電極2aと第2電極2bの間の領域に、両電極に接するように抵抗体3が存在する。さらに、コート層4aが、第1電極2a、第2電極2bおよび抵抗体3を覆うように形成される。その他の構成は図1に示すガスセンサ10と同様である。
本発明の実施の形態に係るガスセンサはいずれの構造をとっても良いが、基板によって予期せず抵抗体の電気的特性が変化してしまうことを避けるため、図1や図3に示したような、コート層が、基板と抵抗体との間に存在することが好ましく、製造の容易さやばらつき要因を減らす観点から、図1に示したような、コート層を1層のみ含有し、該コート層が、基板と抵抗体との間に存在することがより好ましい。図1に示した構造は、コート層が抵抗体へのガス分子の吸着を阻害しないという観点からも好ましい。
また、図2に示した構成は、基板とナノカーボン材料との密着性が良好な場合に好ましい構成である。
抵抗体が複数のナノカーボン材料分子を含有する構成である場合は、特許文献1に開示されたような、個々のナノワイヤが被覆を有する形態よりも、図1~3に示した構成の方が、ナノカーボン材料どうしの直接の接触があり、良好な導電経路形成効率が得られるため、好ましい。
コート層と抵抗体との界面は平滑であってもよいし、どちらかの層に凹凸が存在することでどちらか一方の層がもう一方の層へ貫入したような形態や、相互に貫入した形態であってもよい。
コート層の厚さは、10nm以上、1000nm以下であることが好ましく、25nm以上、750nm以下がより好ましく、50nm以上、500nm以下が特に好ましい。この範囲の厚さにすることにより、均一な薄膜形成が容易になり、コート層に接する抵抗体の製造時のばらつき、すなわち抵抗特性のばらつきが低減する。コート層の厚さは、光干渉式膜厚測定装置により、基板上の面内10点以上を測定し、その算術平均から求めることができる。
<高分子材料>
コート層は、その強度を担保するため高分子材料を含有する。抵抗体以外の部分に電流が流れると検出対象物質の検出結果が正しく得られにくいため、用いる高分子材料は、絶縁性が高いものが好ましい。また、高分子材料は熱硬化性樹脂であってもよいし、熱可塑性樹脂であってもよい。そのような高分子材料としては、以下のようなものが例示できる。
ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル;
ポリイミド;
ポリアミドイミド;
ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド12、ポリアミド11などのポリアミド;
ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレンなどのフッ素樹脂;
ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニルなどのビニル樹脂;
エポキシ樹脂;
キシレン樹脂;
アラミド樹脂;
ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー(環状ポリオレフィン)、それらを変性したポリマーや、ポリ塩化ビニル、ポリスチレンなどをオレフィン変性したポリマー、などのオレフィン樹脂;
ポリイミドシリコーン;
ポリウレタン(ウレタン樹脂);
ポリウレア;
ポリシロキサン;
ポリ(p-キシレン)(パリレン);
メラミン樹脂;
フェノール樹脂;
ポリエーテル;
ポリメチルメタクリレート、ポリアクリル酸などのアクリル樹脂;
及びこれらの共重合体である。
これらの中でも、金属酸化物および/または金属硫化物を保持する能力が高いために本発明の効果を得やすく、かつ層形成が容易で強度も高いという観点から、コート層中の高分子材料は、ポリシロキサン化合物であることが好ましい。
<ナノカーボン材料>
ナノカーボン材料としては、フラーレン、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」と呼ぶ)、グラフェン、カーボンナノホーンなどがあり、それぞれについて以下に述べる。本発明においては、ナノカーボン材料どうしを組み合わせて用いてもよい。組み合わせの例として、CNTの内側にフラーレンが内包された、ピーポッドが挙げられる。
フラーレンは、炭素原子どうしがsp混成軌道間相互作用によって結合している、多面体構造をした化合物である。多面体は、五員環と六員環とから構成される。多面体を構成する炭素数としては、60、70、74、76、78などがある。フラーレンは1分子で用いても良いし、複数のフラーレン分子が集合したフラーレンナノウィスカーや、フラーレンナノウィスカーが中空構造を形成したフラーレンナノファイバーの形態で用いても良い。
グラフェンは、グラフェン・シートとも呼ばれ、理想的には全ての炭素原子どうしがsp混成軌道間相互作用で結合し、六角形格子構造をとっている。グラフェンが多数積層されると、グラファイトとなる。グラフェンは、バンドギャップが存在しない特殊な半導体である。炭素の層を数原子層まで重ねたものも含めてグラフェンと呼ばれる。本発明で用いられるグラフェンは、炭素の層が10原子層以下であることが好ましく、3原子層以下であることがより好ましく、単原子層であることが特に好ましい。
グラフェンの合成方法は、特に限定されないが、例えば機械剥離法、化学剥離法、炭化ケイ素加熱法、または熱化学気相成長法などが挙げられる。
グラフェンが基板上に存在することは、簡易的に光学顕微鏡によって確認することができる。光学顕微鏡による観察は簡便な方法ではあるが、注意深く観察することで、単層、2層、3層のグラフェンを見分けることも可能である。より詳細な分析にはラマン分光法が用いられる。
カーボンナノホーンは、グラフェンを円錐形に丸めた構造をしている。カーボンナノホーンは、室温下、アルゴンガス雰囲気中で、グラファイトに二酸化炭素レーザーを照射することで合成することができる。カーボンナノホーンの直径は、2nm以上5nm以下程度のものが好ましい。カーボンナノホーンは、分離工程を施さない場合は集合体を形成している。本発明では、集合体のまま用いてもよいし、一つ一つを分離して用いてもよい。
CNTとしては、1枚の炭素膜(グラフェン・シート)が円筒状に巻かれた単層CNT、2枚のグラフェン・シートが同心円状に巻かれた2層CNT、複数のグラフェン・シートが同心円状に巻かれた多層CNTなどが挙げられる。CNTは、アーク放電法、化学気相成長法(CVD法)、レーザー・アブレーション法等により得ることができる。
本発明の実施形態によるガスセンサの抵抗体に含まれるナノカーボン材料としては、上記の例が挙げられるが、生産タクトの観点、および物質吸着によって大きな抵抗変化を引き起こす電子構造を有することから、CNTが特に好ましい。CNTの中でも、検出対象物質の吸着による抵抗変化によって検出する原理のため、すべてのCNTに検出対象物質が接近できる方が好ましい。すなわち、単層CNTを用いることが好ましい。
単層CNTの中でも、炭素膜の巻き方により、金属的性質を示すCNTと半導体的性質を示すCNTが存在する。本発明に係るガスセンサの一形態として、検出対象物質の吸着による抵抗体の抵抗変化で検出するものが考えられる。この場合、抵抗体はより半導体的性質を有している方が検出シグナル強度は大きくなり、好ましい。
ガスセンサの生産性を考慮した場合、単一のCNTを電極間に配置または成長させる方法よりも、CNTの分散液や懸濁液を第1電極と第2電極の間の領域に塗布や電気泳動により配置する方法の方が好ましい。この場合は電極間に複数のCNTが存在することになり、半導体型CNTの割合が高い方が好ましい。すなわち、抵抗体が複数の単層CNTを含有し、該複数の単層CNTのうち、80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上のものが半導体型単層CNTであることが好ましい。
半導体型が80%以上のCNTを得る方法としては、既知の方法を用いることができる。例えば、密度勾配剤の共存下で超遠心する方法、特定の化合物を選択的に半導体型もしくは金属型CNTの表面に付着させ、溶解性の差を利用して分離する方法、電気的性質の差を利用し電気泳動等により分離する方法などが挙げられる。本発明における半導体型CNTの含有率は、ラマンスペクトルにおいて、金属型CNTのピーク面積と半導体型CNTのピーク面積との比から算出される値である。
また、複数本からなるCNTを抵抗体に用いる場合には、その密度もガスセンサの検出シグナル強度に影響を与える。抵抗体の抵抗値が測定可能な範囲であれば、どのような密度でも構わない。測定時の機器誤差抑制の観点から、抵抗値は大き過ぎない方がよいため、CNT密度はある程度大きい方が良い。一方で、CNTが密に充填されていると、CNT集合体内部はガス検出に関与しにくくなるため、CNT密度はある程度小さい方が良い。これらの効果の兼ね合いから、CNT密度は、40本/μm以上、500本/μm以下が好ましい。
CNT密度は以下のようにして求める。すなわち、抵抗体中の任意の10μm四方の領域を、原子間力顕微鏡(AFM)によって観察し、得られた画像中に存在するCNTの本数を数えることによって算出する。
本発明において、CNTの長さは、適用されるセンサにおける、第1電極と第2電極との間の距離よりも短いことが好ましい。具体的には、CNTの平均長さは、電極間距離によるが、好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下である。CNTの平均長さとは、ランダムに選択した20本のCNTの長さの平均値を言う。CNT平均長さの測定方法としては、AFM、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡等(TEM)で得た画像の中から、20本のCNTをランダムに選択し、それらの長さの平均値を得る方法が挙げられる。
一般に市販されているCNTは長さに分布があり、電極間距離よりも長いCNTが含まれることがあるため、CNTを電極間距離よりも短くする工程を加えることが好ましい。例えば、硝酸、硫酸などによる酸処理、超音波処理、または凍結粉砕法などにより短繊維状にカットする方法が有効である。またフィルターによる分離を併用することは、純度を向上させる点でさらに好ましい。
また、CNTの直径は特に限定されないが、0.5nm以上100nm以下が好ましく、より好ましくは1nm以上50nm以下である。
<共役系重合体>
本発明の実施形態に係るガスセンサにおいては、抵抗体が、ナノカーボン材料に加えてさらに共役系重合体を含有することが好ましい。これは、共役系重合体によってナノカーボン材料間やナノカーボン材料と電極との電気的接触を補強するためである。例えば、CNTの場合、各CNTは円筒形をしているため、CNT間の接触は極めて小さな領域となる。CNTは高い導電性を有するため、小さな接触領域でもCNT間の電荷キャリアの受け渡しは十分行うことができるが、接触点付近に共役系重合体を配置し、それに電荷キャリアの受け渡しを補助させる方がより好ましい。
共役系重合体とは、モノマーユニット内において、またはモノマーユニット内および隣接するモノマーユニット間において、原子間の多重結合の共役系が連なっている重合体のことである。
共役系重合体としては、ポリチオフェン系重合体、ポリピロール系重合体、ポリアニリン系重合体、ポリアセチレン系重合体、ポリ-p-フェニレン系重合体、ポリ-p-フェニレンビニレン系重合体などが挙げられるが、特に限定されない。上述した重合体は単一のモノマーユニットが並んだものが好ましく用いられるが、異なるモノマーユニットをブロック共重合したもの、ランダム共重合したもの、グラフト共重合したものも用いられる。
上述した重合体の中でも、共役系の電子軌道が大きく、半導体成分との相互作用が大きくなる観点から、繰り返し単位中に硫黄原子を含む複素環が存在する共役系重合体が好ましい。その中でも、半導体成分への付着が強固であり、電子伝導補助効果の高いため、繰り返し単位中にチオフェン環構造を有する共役系重合体が特に好ましい。
共役系重合体の好ましい分子量は、数平均分子量で800以上100000以下である。また、上述した重合体は必ずしも高分子量である必要はなく、直鎖状共役系からなるオリゴマーであってもよい。
本発明で用いられる共役系重合体は、公知の方法により合成することができる。モノマーを合成するには、例えば、チオフェンと、カルボキシ基を末端に有するアルキル基を導入したチオフェン誘導体とをカップリングする方法が挙げられる。その具体例として、ハロゲン化したチオフェン誘導体と、チオフェンボロン酸またはチオフェンボロン酸エステルとを、パラジウム触媒下でカップリングする方法、ハロゲン化したチオフェン誘導体と、チオフェングリニャール試薬とを、ニッケルまたはパラジウム触媒下でカップリングする方法などが挙げられる。このようなモノマーを用いて重合反応を行うことによって、側鎖としてカルボキシ基を末端に有するアルキル鎖を導入したポリチオフェン系重合体が得られる。また、チオフェン以外の共役系ユニットとチオフェンとを同様の方法でカップリングさせたものをモノマーユニットとすることもできる。そのようにして得られたモノマーユニットの末端に重合性置換基を導入し、パラジウム触媒やニッケル触媒下で重合を進行させることで、チオフェン以外の共役系ユニットを含む共役系重合体を得ることができる。
本発明で用いられる共役系重合体からは、合成過程で使用した原料や副生成物などの不純物を除去することが好ましい。その方法として、例えば、シリカゲルカラムグラフィー法、ソックスレー抽出法、濾過法、イオン交換法、キレート法などを用いることができる。これらの方法を2種以上組み合わせてもよい。
電荷キャリアの受け渡しを補助する目的から、共役系重合体はナノカーボン材料の少なくとも一部に付着していることが好ましく、ナノカーボン材料がCNTやカーボンナノホーンの場合、それらの側壁に付着していることがより好ましい。共役系重合体がナノカーボン材料に付着していることを確認する手段としては、反射スペクトルを測定し、ナノカーボン単独のスペクトルから変化していることを確認する方法がある。フラーレン、CNT、カーボンナノホーンといった、細い形状のナノカーボン材料ならば、AFMによって、ナノカーボン材料に共役系重合体が付着している様子を直接観測することもできる。
ここで言う「付着」とは、異種の物質が互いに接触し、分子間相互作用によって容易に離れなくなることを指す。このような分子間相互作用としては、疎水性相互作用、π-π電子相互作用、カチオン-π相互作用、複数の静電相互作用、または複数の水素結合などが挙げられる。
<基板>
基板に用いられる材料としては、特に制限はなく、例えば、シリコンウエハ、ガラス、アルミナ焼結体等の無機材料、脂肪族ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリパラキシレン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリシロキサン、ポリビニルフェノール、ポリアラミド等の有機材料、または無機材料粉末と有機材料の混合物等が挙げられる。これらの材料は単独で用いてもよく、これらのうちの複数の材料を積層または混合して用いてもよい。
本発明の実施の形態に掛かるガスセンサにおいては、繰り返しガス検出をするために、基板にヒーターが備え付けられていることが好ましい。ガス検出後にヒーターによってガスセンサを加熱することで、吸着したガス分子を脱着することができる。すなわち、ガスセンサを再生(クリーニング)し、繰り返し使用することができる。用いるヒーターは、特に限定されないが、小型で低消費電力なMicro Electro Mechanical Systems(MEMS)ヒーターが好ましい。
<電極>
第1電極および第2電極に用いられる材料としては、例えば、酸化錫、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)などの導電性金属酸化物;白金、金、銀、銅、鉄、錫、亜鉛、アルミニウム、インジウム、クロム、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウム、パラジウム、モリブデンなどの金属やこれらの合金;ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質;ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸との錯体などの有機導電性物質;CNT、グラフェンなどのナノカーボン材料;導電性カーボンブラックなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。第1電極および第2電極においては、これらの材料を単独で用いてもよいし、これらのうち複数の材料を積層または混合して用いてもよい。
本発明に係るガスセンサにおける電極として用いる場合、腐食性ガスなどに対する安定性の観点から、金、銀、白金、パラジウム、有機導電性物質、およびナノカーボン材料から選ばれることが好ましい。
第1電極および第2電極の幅、厚み、間隔、および配置は、任意に設計できる。各電極の幅は、1μm以上1mm以下が好ましく、各電極の厚みは、1nm以上1μm以下が好ましい。第1電極と第2電極との間隔は、1μm以上、10mm以下が好ましい。各電極の平面形状は矩形に限定されるものではなく、曲線が含まれていても、櫛形などになっていてもよい。また、各電極の幅、厚みは同一でなくてもよい。
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例になんら限定されるものではない。
用いた化合物のうち略語を使用したものについて、以下に示す。
MeSi:メチルトリメトキシシラン
SucSi:3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物
NapSi:1-ナフチルトリメトキシシラン
DAA:ジアセトンアルコール(別名:4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン)
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート。
実施例1
(1)抵抗体に使用するCNTの分散液の調製
ポリ-3-ヘキシルチオフェン(P3HT、Sigma-Aldrich社製、レジオレギュラー、数平均分子量(Mn):13000)0.10gをクロロホルム5mLの入ったフラスコの中に加え、超音波洗浄機(井内盛栄堂(株)製US-2、出力120W)中で超音波撹拌することによりP3HTのクロロホルム溶液を得た。次いでこの溶液を、メタノール20mLと0.1規定塩酸10mLの混合溶液の中に0.5mLずつ滴下して、再沈殿を行った。固体になったP3HTを0.1μm孔径のメンブレンフィルター(PTFE社製:4フッ化エチレン)によって濾別捕集し、メタノールでよくすすいだ後、真空乾燥により溶媒を除去した。さらにもう一度溶解と再沈殿を行い、90mgの再沈殿P3HTを得た。
次に、CNT-A(Sigma-Aldrich社製、(6,5)カイラリティー単層CNT、純度95%)1.5mgと、上記P3HT1.5mgを15mLのクロロホルム中に加え、氷冷しながら超音波ホモジナイザー(東京理化器械(株)製VCX-500)を用いて出力250Wで30分間超音波撹拌した。超音波照射を30分行った時点で一度照射を停止し、P3HTを1.5mg追加し、さらに1時間超音波照射した。さらに、メンブレンフィルター(孔径10μm、直径25mm、ミリポア社製オムニポアメンブレン)を用いてろ過を行い、長さ10μm以上のCNT複合体および凝集塊を除去した。得られたろ液5mLにジクロロベンゼン45mLを加え、P3HTが付着したCNT-Aを含むCNT分散液A(溶媒に対するCNT複合体濃度0.01g/L)とした。
(2)コート層に使用する高分子材料の合成と塗布液調製
三口フラスコにMeSiを10.90g(0.08mol)、SucSiを5.25g(0.02mol)、NapSiを24.84g(0.10mol)、DAAを51.14g仕込み、室温で撹拌しながら水11.16gにリン酸0.205g(仕込みモノマーに対して0.50質量%)を溶かしたリン酸水溶液を10分間かけて添加した。その後、フラスコを40℃のオイルバスに浸けて60分間撹拌した後、オイルバスを30分間かけて115℃まで昇温した。昇温開始1時間後に溶液の内温が100℃に到達し、そこから2時間加熱撹拌した(内温は100~110℃)。加熱撹拌して得られた樹脂溶液を氷浴にて冷却した後、陰イオン交換樹脂および陽イオン交換樹脂を、それぞれ樹脂溶液に対して2重量%加えて12時間撹拌した。撹拌後、陰イオン交換樹脂および陽イオン交換樹脂をろ過して除去し、ポリシロキサンAの溶液を得た。なお、昇温および加熱撹拌中、窒素を0.05L/分で流した。反応中に副生成物であるメタノール、水が合計19.82g留出した。得られたポリシロキサンA溶液の固形分濃度は33質量%であった。
これとは別に、酸化スズ(IV)(関東化学(株)製)1.0gを、DAA100mLへ入れ、超音波ホモジナイザーを用いて出力250Wで3時間超音波撹拌することにより、酸化スズ懸濁液Aを調製した。
(3)ガスセンサ作製
ポリシロキサンA溶液69.49g、DFX-18(フッ素系界面活性剤、(株)ネオス製)を100ppm、DAA60.77g、PGMEA36.65g、酸化スズ懸濁液A39.29gを混合、撹拌して均一溶液とすることで、ポリシロキサンA塗布液1を得た。得られたポリシロキサンA塗布液1をガラス製基板(厚み0.7mm)上に、スピンコート(800rpm×20秒)し、ホットプレ-トを用いて180℃、60分加熱処理することによって、膜厚400nmのコート層を形成した。この場合、コート層中のSnO体積分率は25vol%となる。
次に、コート層上に、抵抗加熱法により、金を膜厚50nmになるように真空蒸着し、その上にフォトレジスト(商品名「LC140-10cP」、ローム・アンド・ハース(株)製)をスピンコート(1000rpm×20秒)し、100℃で10分加熱乾燥した。作製したフォトレジスト膜をパラレルライトマスクアライナー(キヤノン(株)製PLA-501F)を用いて、フォトマスクを介してパターン露光した後、自動現像装置(滝沢産業(株)製AD-2000)を用いて2.38質量%TMAH水溶液であるELM-D(商品名、三菱ガス化学(株)製)で60秒間シャワー現像し、次いで水で30秒間洗浄した。その後、AURUM-302(商品名、関東化学(株)製)で5分間エッチング処理した後、水で30秒間洗浄した。AZリムーバ100(商品名、メルクパフォーマンスマテリアルズ(株)製)に5分間浸漬してレジストを剥離し、水で30秒間洗浄後、120℃で20分間加熱乾燥することで第1電極および第2電極を形成した。
これら両電極の幅は100μm、両電極の間隔(電極間距離)は10μmとした。電極が形成された基板上に上記(1)で調製したCNT分散液Aをインクジェット装置(クラスターテクノロジー(株)製)を用いて400pL滴下し、ホットプレート上で窒素気流下、150℃で30分の熱処理を行い、抵抗体を形成した。以上の手順によって、図1に示す構造のガスセンサAを作製した。
(4)ガスセンサ評価
作製したガスセンサAを、直径5cmのガラス管内に配置し、キャリアガスとして空気を流速1L/minで流しながら、その気流中に測定対象ガスを混合することによりガスセンサを測定対象ガスに暴露させた。ガスに対する応答は、Keithley DMM6500を用いて抵抗値を測定し、ガスセンサを検出対象のガスに暴露した際の抵抗値変化率を下記式によって算出することで評価した。
(抵抗値変化率[%])=100×|R-R|÷R
ここで、
R:検出対象ガス暴露後の抵抗値
:検出対象ガス暴露前の抵抗値
である。なお、本測定は室温(25℃)にて行った。
また、応答速度の評価は、以下のように行った。ガスセンサを検出対象ガスに十分長い時間暴露すると、抵抗値はある値に収束する。ガス暴露開始から収束値の95%に到達するまでに要した時間をガス応答速度τ(min)とした。
測定対象ガスとしては、1ppmのアンモニア(NH)および二酸化窒素(NO)を用いた。アンモニアは代表的な還元性ガスであり、二酸化窒素は代表的な酸化性ガスである。これらのガスに対する検出選択性の指標として、暴露時の抵抗変化率が大きい方のガスによる抵抗変化率を、抵抗変化率が小さい方のガスによる抵抗変化率で割った値(検出比)を用いた。
ガスセンサAについての評価結果を表1に記す。NH暴露時の方がNO暴露時よりも大きな抵抗変化率を示し、NH検出選択性を有していた。
実施例2
DAA60.77gと酸化スズ懸濁液A39.29gを用いる代わりに、DAA100.03g、DAAを溶媒とした酸化チタン(TiO)懸濁液(日揮触媒化成(株)製、20.9wt%)0.033gを用いて、実施例1(3)と同様の方法で、ポリシロキサンA塗布液2を調製し、ガスセンサBを作製した。この場合、コート層中のTiO体積分率は25vol%となる。
ガスセンサBについての評価結果を表1に記す。NH暴露時の方がNO暴露時よりも大きな抵抗変化率を示し、NH検出選択性を有していた。
実施例3
(1)コート層に使用する高分子材料の合成
三口フラスコにMeSiを10.90g(0.08mol)、SucSiを5.25g(0.02mol)、NapSiを24.84g(0.10mol)、酸化チタン(TiO)懸濁液(20.9wt%)188.74g、DAA90.88gを仕込み、室温で撹拌しながら水11.16gにリン酸0.205g(仕込みモノマーに対して0.50質量%)を溶かしたリン酸水溶液を10分間かけて添加した。その後、フラスコを40℃のオイルバスに浸けて60分間撹拌した後、オイルバスを30分間かけて115℃まで昇温した。昇温開始1時間後に溶液の内温が100℃に到達し、そこから2時間加熱撹拌した(内温は100~110℃)。加熱撹拌して得られた樹脂溶液を氷浴にて冷却した後、陰イオン交換樹脂および陽イオン交換樹脂を、それぞれ樹脂溶液に対して2重量%加えて12時間撹拌した。撹拌後、陰イオン交換樹脂および陽イオン交換樹脂をろ過して除去し、TiO粒子が結合したポリシロキサンの溶液(ポリシロキサンB溶液)を得た。なお、昇温および加熱撹拌中、窒素を0.05L/分で流した。反応中に副生成物であるメタノール、水が合計121.19g留出した。得られたポリシロキサンB溶液の固形分濃度は33質量%であった。
(2)ガスセンサの作製と評価
ポリシロキサンB溶液69.49g、DFX-18を100ppm、DAA54.48g、PGMEA36.65gを混合、撹拌して均一溶液とすることで、ポリシロキサンB塗布液1を得た。ポリシロキサンA塗布液1を用いる代わりにポリシロキサンB塗布液1を用いたこと以外は実施例1(3)と同様の方法でガスセンサCを作製した。この場合、コート層中のTiO体積分率は25vol%となる。次いで、実施例1(4)と同様の方法で評価した。
ガスセンサCについての評価結果を表1に記す。NH暴露時の方がNO暴露時よりも大きな抵抗変化率を示し、NH検出選択性を有していた。
実施例4
酸化チタン(TiO)懸濁液(20.9wt%)188.74gの代わりに264.24gを、DAA90.88gの代わりに15.4gをそれぞれ用いたこと以外は実施例3(1)と同様の方法でTiO粒子が結合したポリシロキサンの溶液(ポリシロキサンC)を得た。得られたポリシロキサンC溶液の固形分濃度は41質量%であった。
ポリシロキサンB溶液の代わりにポリシロキサンC溶液を用いたこと以外は実施例3(2)と同様の方法でポリシロキサンC塗布液1を得た。ポリシロキサンA塗布液1を用いる代わりにポリシロキサンC塗布液1を用いたこと以外は実施例1(3)と同様の方法でガスセンサDを作製した。この場合、コート層中のTiO体積分率は35vol%となる。次いで、実施例1(4)と同様の方法で評価した。
ガスセンサDについての評価結果を表1に記す。ガスセンサCよりもNH暴露時の抵抗変化率、応答速度、さらに、NOと比較してのNHに対する検出選択性について優れていた。
比較例1
DAA60.77gの代わりにDAA100.06gを使用し、酸化スズ懸濁液Aを加えなかったこと以外は実施例1(3)と同様の方法でポリシロキサンA塗布液3を調製し、ガスセンサを作製した。この方法により作製したガスセンサEは、コート層中に金属酸化物も金属硫化物も含まないガスセンサである。
ガスセンサEの評価結果を表1に記す。本発明に係るガスセンサと比較して、金属酸化物および/または金属硫化物による検出強度向上効果が無いだけでなく、応答速度も遅く、ガス検出選択性も発現していないことが分かる。
比較例2
ポリシロキサンA塗布液1の代わりに、TiO懸濁液(20.9wt%)を用いたこと以外は、実施例1(3)と同様の方法でガスセンサを作製した。この方法により作製したガスセンサFは、コート層中に高分子材料を含まないガスセンサである。
ガスセンサFは、検出対象ガス暴露前の抵抗値が検出上限以上であり、測定不可であった。これは、コート層が高分子材料を含有しないために、脆弱であり、電極や抵抗体を安定に保持できなかったためと考えられる。そのため、ガスセンサ評価を行うことができなかった。
Figure 2023042090000002
2a、2b 電極
3 抵抗体
4、4a、4b コート層
5 基板
10、20、30 ガスセンサ

Claims (13)

  1. 基板と、第1電極と、第2電極と、前記第1電極および前記第2電極に接し、ナノカーボン材料を含有する抵抗体と、前記抵抗体と接し、高分子材料と金属酸化物および/または金属硫化物とを含有する層(以下「コート層」と称する)と、を有するガスセンサ。
  2. 前記コート層中における、前記金属酸化物および/または金属硫化物の体積分率が、10vol%以上、60vol%以下である、請求項1に記載のガスセンサ。
  3. 前記コート層が、前記基板と前記抵抗体との間に存在する、請求項1または2に記載のガスセンサ。
  4. 前記コート層の厚みが、10nm以上、1000nm以下である、請求項1~3のいずれかに記載のガスセンサ。
  5. 前記コート層中の前記金属酸化物および/または金属硫化物の少なくとも一部が、前記抵抗体と接している、請求項1~4のいずれかに記載のガスセンサ。
  6. 前記金属酸化物および/または金属硫化物が粒子状の形状を有し、その数平均粒子径が1nm以上、500nm以下である、請求項1~5のいずれかに記載のガスセンサ。
  7. 前記金属酸化物および/または金属硫化物が、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化セリウム、酸化タングステンおよび酸化チタンからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1~6のいずれかに記載のガスセンサ。
  8. 前記高分子材料が、ポリシロキサン化合物である、請求項1~7のいずれかに記載のガスセンサ。
  9. 前記高分子材料と前記金属酸化物および/または金属硫化物との間で結合が形成されている、請求項1~8のいずれかに記載のガスセンサ。
  10. 前記ナノカーボン材料が、カーボンナノチューブである、請求項1~9のいずれかに記載のガスセンサ。
  11. 前記抵抗体が複数の単層カーボンナノチューブを含有し、前記複数の単層カーボンナノチューブのうち、80%以上のものが半導体型単層カーボンナノチューブである、請求項1~10のいずれかに記載のガスセンサ。
  12. 前記抵抗体が、さらに共役系重合体を含有する、請求項1~11のいずれかに記載のガスセンサ。
  13. 前記基板にヒーターが備え付けられた請求項1~12のいずれかに記載のガスセンサ。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2023210265A1 (ja) * 2022-04-27 2023-11-02 日本特殊陶業株式会社 ガスセンサ及びガスセンサの製造方法

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