JP2023039578A - 生体試料中のミスフォールディングタンパク質検出方法 - Google Patents

生体試料中のミスフォールディングタンパク質検出方法 Download PDF

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智亮 村上
Tomoaki Murakami
直毅 氏家
Naoki Ujiie
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Abstract

【課題】生体試料においてアミロイドを迅速かつ容易に検出する方法を提供することを課題とする。【解決手段】生体試料中のミスフォールディングタンパク質を検出する方法であって、特定の励起波長を有する励起光を生体試料に照射する工程、及び前記励起光の照射によって前記ミスフォールディングタンパク質から放出される自家蛍光を検出する工程を含む、前記方法を提供する。【選択図】なし

Description

特許法第30条第2項適用申請有り 掲載アドレス:https://confit.atlas.jp/guide/event/jsvetsci163/proceedings/list 掲載日:令和2年9月14日
本発明はミスフォールディングタンパク質検出方法、アミロイドーシスの罹患鑑別を補助する方法、及びミスフォールディングタンパク質検出装置に関する。
アミロイドとは、タンパク質のミスフォールディングによって生じる異常な線維タンパク質である。アミロイドは、そのクロスβシート構造に基づき、コンゴレッド色素と特異的に結合する点や、熱や酵素処理に対して著しい耐性を有する点等、正常な生体タンパク質とは異なる性質を有する。
アミロイドが局所又は全身に蓄積すると、脳等の様々な臓器に障害をきたすアミロイドーシスが生じる。アミロイドーシスは人や動物の進行性の難治性疾患であり、原因となるタンパク質毎にアルツハイマー病やパーキンソン病等の36病型が知られている。近年、アミロイドーシスの患者数は年々増加傾向にあり、早期の診断を可能とする技術が求められている。
アミロイドの検出は、食肉衛生上でも重要な課題である。最近の研究からアミロイドが異種間で伝播し得ることが明らかになっており、アミロイドを含む食肉の摂取はアミロイドーシス発症のリスク要因となり得ることが知られている(非特許文献1)。それ故、食肉中のアミロイドを効率的に検査する方法が求められている。
現在、アミロイドの検出には100年以上に亘って利用されてきた病理組織学的検索法(病理学的検査)が主に用いられている(非特許文献2)。この方法は、生体から生検又は剖検によって摘出した組織をホルマリン固定後、パラフィン包埋し、組織切片を薄切及び染色した後、熟達した病理診断医が光学顕微鏡下で試料を観察することにより行われる。通常の病理診断はヘマトキシリン・エオジン染色によって行われるが、アミロイドの同定には、本染色に加えてコンゴレッド染色による証明が必要となる。病理組織学的検索法では、病理組織学への習熟を必要とする点がその利用において大きな制限となっている。さらに、検査自体に3日~1週間程度を要するため、迅速にアミロイドを検出することができない点も問題となっている。近年ではコンゴレッド以外に様々なアミロイド染色用色素が開発されているものの、アミロイドを標識して検出する点では同じであり、病理組織学への習熟が要求される点やスループット性が低い点は依然として克服されていない。
病理組織学的検索法以外の検査法として、アミロイドを対象とするポジトロン断層法(アミロイドPET)も挙げられる。この方法は、アミロイドに特異的に結合する放射性同位体プローブを用いて、体内におけるアミロイド沈着の分布をイメージングする技術である。アミロイドPETは数時間で検査結果が得られること、また侵襲性が最小限に抑えられるのが利点であるが、評価に十分な習熟が必要である点、大がかりな機器が必要である点、及び検査に必要な費用が高額である点等、実施上の欠点が多い。
したがって、従来技術の上述の問題点を克服し、生体試料においてアミロイドを迅速かつ容易に検出する方法が必要とされている。
Murakami T, Ishiguro N, Higuchi K. Transmission of Systemic AA Amyloidosis in Animals. Veterinary Pathology 51(2): 363-371, 2014. Kadota A, Iwaide S, Miyazaki S, Mitsui I, Machida N, Murakami T. Pathology and proteomics-based diagnosis of localized light-chain amyloidosis in dogs and cats. Veterinary Pathology 57(5): 658-665, 2020.
本発明の目的は、生体試料においてアミロイドを迅速かつ容易に検出する方法を提供することである。
蛍光指紋解析は、物質の任意の励起/蛍光波長域における蛍光強度を総当たりで検出し、励起波長、蛍光波長、及び蛍光強度からなる三次元情報を取得する技術である。蛍光指紋解析は、食品分野では特定の成分を非標識で識別する成分分析技術として利用されている。一方、病態解析では蛍光指紋解析が応用された例はこれまで知られていない。
本発明者らは、上記課題を解決するために、アミロイドが沈着したウシ肝臓からホモジネートを調製し、従来の技術常識に反して非標識条件下で蛍光指紋解析を行った。その結果、アミロイド陽性の肝臓のみに含まれる2つの顕著な自家蛍光ピークを見出し、当該自家蛍光ピークに基づき非標識で迅速かつ容易にアミロイドを検出できることを明らかにした。本発明は上記新たな知見に基づくもので、以下を提供する。
(1)生体試料中のミスフォールディングタンパク質を検出する方法であって、特定の励起波長を有する励起光を生体試料に照射する工程、及び前記励起光の照射によって前記ミスフォールディングタンパク質から放出される自家蛍光を検出する工程を含む、前記方法。
(2)前記ミスフォールディングタンパク質がアミロイドである、(1)に記載の方法。
(3)前記特定の励起波長が320nm~380nm及び/又は420nm~480nmである、(2)に記載の方法。
(4)前記検出工程において検出する自家蛍光の蛍光波長が400nm~510nmである、(3)に記載の方法。
(5)生体試料中のミスフォールディングタンパク質を検出する方法であって、励起光の波長を特定の励起波長範囲で段階的又は連続的に変化させながら、励起光を生体試料に照射する工程、前記励起光の照射によって前記生体試料から放出される自家蛍光の波長及び強度を測定する工程、並びに得られた測定値に基づいて、自家蛍光を放出するミスフォールディングタンパク質の有無を判定する工程を含む、前記方法。
(6)前記特定の励起波長範囲が320nm~380nm及び/又は420nm~480nmを含む、(5)に記載の方法。
(7)前記ミスフォールディングタンパク質がアミロイドである、(5)又は(6)に記載の方法。
(8)前記判定工程において、以下の(a)及び/又は(b)の場合に、前記生体試料がアミロイドを含むと判定する、(7)に記載の方法。
(a)320nm~380nmを含む励起波長範囲の励起光照射によって前記生体試料から放出される自家蛍光のピーク波長が400nm~460nmの範囲に含まれる場合、及び/又は
(b)420nm~480nmを含む励起波長範囲の励起光照射によって前記生体試料から放出される自家蛍光のピーク波長が450nm~510nmの範囲に含まれる場合
(9)前記生体試料が組織又は体液である、(1)~(8)のいずれかに記載の方法。
(10)アミロイドーシスの罹患鑑別を補助する方法であって、被検体及び対照体に由来する生体試料に特定の励起波長を有する励起光を照射する工程、前記励起光の照射によって前記生体試料中のアミロイドから放出される自家蛍光の蛍光強度を測定する工程、得られた蛍光強度を被検体と対照体との間で比較して、被検体の蛍光強度が対照体の蛍光強度より高い場合に、被検体がアミロイドーシスに罹患していると判定する工程を含み、前記特定の励起波長が320nm~380nm及び/又は420nm~480nmであり、前記測定工程において測定する自家蛍光の蛍光波長が400nm~510nmである、前記方法。
(11)アミロイドーシスの罹患鑑別を補助する方法であって、励起光の波長を特定の励起波長範囲で段階的又は連続的に変化させながら、励起光を被検体に由来する生体試料に照射する工程、前記励起光の照射によって前記生体試料から放出される自家蛍光の波長及び強度を測定する工程、並びに得られた測定値に基づいて、以下の(a)及び/又は(b)の場合に、被検体がアミロイドーシスに罹患していると判定する工程を含み、前記特定の励起波長範囲が320nm~380nm及び/又は420nm~480nmを含む、前記方法。
(a)320nm~380nmを含む励起波長範囲の励起光照射によって前記生体試料から放出される自家蛍光のピーク波長が400nm~460nmの範囲に含まれる場合、及び/又は
(b)420nm~480nmを含む励起波長範囲の励起光照射によって前記生体試料から放出される自家蛍光のピーク波長が450nm~510nmの範囲に含まれる場合
(12)前記被検体が家畜動物である、(10)又は(11)に記載の方法。
(13)前記アミロイドーシスがAAアミロイドーシスである、(10)~(12)のいずれかに記載の方法。
(14)生体試料中のミスフォールディングタンパク質を検出するための装置であって、(a)波長320nm~480nmの励起光を放出する光源、(b)波長400nm~510nmの蛍光を分離する光学ユニット、及び(c)前記生体試料から放出される自家蛍光を検出する検出ユニットを備えた、前記装置。
(15)生体試料中のミスフォールディングタンパク質を検出するための装置であって、(a)320nm~480nmを含む励起波長範囲の励起光を放出する光源、(b)400nm~510nmを含む蛍光波長範囲の蛍光を分離する光学ユニット、(c)前記生体試料から放出される自家蛍光を検出する検出ユニット、並びに(d)励起光及び/又は蛍光の波長を段階的又は連続的に変化させる波長変動部を備えた、前記装置。
本発明によれば、生体試料においてアミロイドを迅速かつ容易に検出する方法が提供される。
従来の病理組織学的なアミロイド検出方法、及び本発明の一実施形態を構成する各工程を示す図である。 アミロイド陰性のウシ個体に由来する肝臓ホモジネートに対する蛍光指紋解析の結果を示す図である。図2Aは蛍光指紋解析結果の等高線プロットを示す。図2Bは蛍光指紋解析結果の三次元プロットを示す。 アミロイド陽性のウシ個体に由来する肝臓ホモジネートに対する蛍光指紋解析の結果を示す図である。図3Aは蛍光指紋解析結果の等高線プロットを示す。図3Bは蛍光指紋解析結果の三次元プロットを示す。 アミロイド形態のLPS結合タンパク質に対する蛍光指紋解析の結果を示す図である。図4Aは蛍光指紋解析結果の等高線プロットを示す。図4Bは蛍光指紋解析結果の三次元プロットを示す。 アミロイド形態のAβ42ペプチドに対する蛍光指紋解析の結果を示す図である。図5Aは蛍光指紋解析結果の等高線プロットを示す。図5Bは蛍光指紋解析結果の三次元プロットを示す。 アミロイド形態のα-カゼインタンパク質に対する蛍光指紋解析の結果を示す図である。図6Aは蛍光指紋解析結果の等高線プロットを示す。図6Bは蛍光指紋解析結果の三次元プロットを示す。
1.ミスフォールディングタンパク質検出方法
1-1.概要
本発明の第1の態様は、ミスフォールディングタンパク質検出方法である。
本態様のミスフォールディングタンパク質検出方法は、照射工程及び検出工程を含むか、又は照射工程、測定工程、及び判定工程を含む。本態様のミスフォールディングタンパク質検出方法によれば、生体試料中のミスフォールディングタンパク質を非標識で迅速かつ容易に検出することができる。
1-2.用語の定義
本明細書で頻用する以下の用語について定義する。
本明細書において「ミスフォールディングタンパク質」とは、本来のタンパク質の折り畳みと比較して正しく折り畳まれていないタンパク質をいう。タンパク質は、複数のアミノ酸が一次元的に連結された鎖状分子であるが、アミノ酸残基や水分子間の水素結合、疎水結合、及びイオン結合等によって、αヘリックスやβシート等を含むポリペプチド鎖の折り畳み構造が形成され、一定の立体構造で安定化される。ミスフォールディングタンパク質では、ポリペプチド鎖の折り畳み構造の少なくとも一部が失われており、ポリペプチドの立体構造が本来の立体構造から変化している。ミスフォールディングタンパク質では、しばしばその機能や活性(例えば触媒活性)が低下するか又は失われている。また、ミスフォールディングタンパク質は、異常な折り畳みによりしばしば凝集し、生体機能の障害を引き起こし得る。ミスフォールディングタンパク質の例として、後述するアミロイドの他、嚢胞性線維症において変性し得るCFTR(cystic fibrosis transmembrane conductance regulator)タンパク質、筋萎縮性側索硬化症において変性し得るTDP-43タンパク質等が挙げられる。ポリペプチドの変性若しくは凝集に起因する疾患、又はポリペプチドの変性若しくは凝集を伴う疾患は、「タンパク質変性疾患」と呼ばれる。「タンパク質変性疾患」の例として、後述のアミロイドーシス、タウオパチー、嚢胞性線維症、及び筋萎縮性側索硬化症等が挙げられる。
「アミロイド」とは、タンパク質のミスフォールディングによって生じる、クロスβシート構造を特徴とする繊維状のタンパク質である。クロスβシート構造(又はクロスβ構造とも呼ばれる)とは、β-シート構造が線維軸に対して規則正しく垂直に整列する構造であり、一次構造に依らずアミロイド線維に共通して含まれることが知られている。アミロイドは、全長のアミロイド前駆タンパク質、又はその一部が切断若しくは分解されたアミロイド前駆タンパク質のミスフォールディングによって生じ得る。アミロイドの例として、以下に限定しないが、アミロイドβ前駆体タンパク質に由来するアミロイドβ(「Aβ」と呼ばれる場合もある)、血清アミロイドAタンパク質に由来するアミロイドA(「AA」と呼ばれる場合もある)、α-シヌクレインタンパク質に由来するアミロイド(「AαSyn」と呼ばれる場合もある)、プリオンタンパク質(PrP)に由来するアミロイド(「APrP」と呼ばれる場合もある)、及びハンチンチン(Htt)タンパク質に由来するアミロイドの他、Ig軽鎖(κ、λ)タンパク質に由来するアミロイド(「AL」と呼ばれる場合もある)、ApoAIIタンパク質に由来するアミロイド(「AApoAII」と呼ばれる場合もある)、トランスサイレチンタンパク質に由来するアミロイド(「ATTR」と呼ばれる場合もある)、フィブリノゲンタンパク質に由来するアミロイド(「AFib」と呼ばれる場合もある)、ApoAIタンパク質に由来するアミロイド(「AApoAI」と呼ばれる場合もある)、タウタンパク質に由来するアミロイド(「ATau」と呼ばれる場合もある)、アミリンタンパク質に由来するアミロイド(「AIAPP」と呼ばれる場合もある)、インスリンに由来する(「AIns」と呼ばれる場合もある)、αカゼインタンパク質に由来するアミロイド(「ACas」と呼ばれる場合もある)、カルシトニンタンパク質に由来するアミロイド(「ACal」と呼ばれる場合もある)、Odontogenic ameloblast-associated proteinに由来するアミロイド(「AOAPP」と呼ばれる場合もある)が知られている。
本明細書において「アミロイド前駆タンパク質」とは、上述のアミロイドを形成し得るタンパク質をいう。アミロイド前駆タンパク質の例として、アミロイドβ前駆体タンパク質、血清アミロイドAタンパク質(例えば、後述のSAA1タンパク質、SAA2タンパク質、及びSAA4タンパク質)、α-シヌクレインタンパク質、プリオンタンパク質(PrP)、ハンチンチン(Htt)タンパク質、Ig軽鎖(κ、λ)タンパク質、ApoAIIタンパク質、トランスサイレチンタンパク質、フィブリノゲンタンパク質、ApoAIタンパク質、タウタンパク質、アミリンタンパク質、インスリン、αカゼインタンパク質、カルシトニンタンパク質、Odontogenic ameloblast-associated protein等が挙げられる。
アミロイドβペプチドは、アルツハイマー病患者の脳に見出され得る、アミロイドβ前駆体タンパク質(APP)が切断されて生じるペプチドであり、Aβペプチドとも呼ばれる。アミロイドβペプチドの例として、Aβ40やAβ42等が知られている。
アミロイドAは、アミロイド線維を形成し、全身の諸臓器に沈着し得る分子量約9kDaのタンパク質である。アミロイドAは、分子量約12~14kDaの血清アミロイドAタンパク質(serum amyloid A protein;「SAAタンパク質」とも呼ばれる)が線維化して生じる。SAAタンパク質には、SAA1タンパク質、SAA2タンパク質、及びSAA4タンパク質等のアイソタイプが存在し、これらは主に肝臓で産生されることが知られている。本明細書においてアミロイドAの由来は問わず、アミロイドAは上記いずれのSAAタンパク質に由来していてもよい。
「アミロイドーシス」とは、アミロイドが局所又は全身に蓄積することによって、脳等の様々な臓器に障害をきたす疾患である。アミロイドーシスはヒトや動物の進行性の難治性疾患であり、原因となるタンパク質の種類によって36病型が知られている。アミロイドーシスは、全身の様々な臓器にアミロイドが沈着する全身性アミロイドーシス、及び一部の臓器に限局してアミロイドが沈着する限局性アミロイドーシスに分類することができる。全身性アミロイドーシスの例として、家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)、老人性全身性アミロイドーシス(SSA)、アミロイドAアミロイドーシス(AAアミロイドーシス)、ApoAIIアミロイドーシス、トランスサイレチンアミロイドーシス、フィブリノーゲン型アミロイドーシス、及び透析アミロイドーシス等が挙げられる。限局性アミロイドーシスの例として、アルツハイマー病、脳アミロイドアンギオパチー、ALアミロイドーシス、ApoAIアミロイドーシス、膵島アミロイドーシス、インスリン由来アミロイドーシス、ACasに関連するアミロイドーシス、アミロイド産生性甲状腺C細胞腫瘍、アミロイド産生性歯原性腫瘍、パーキンソン病、ハンチントン病、及びプリオン病等が挙げられる。
アミロイドAアミロイドーシス(AAアミロイドーシス)は、アミロイドAが凝集し、アミロイド線維となって全身諸臓器に沈着することにより引き起こされる疾患である。ウシでは「牛アミロイドーシス」と呼ばれる場合がある。AAアミロイドーシスに罹患したウシでは、病理学的検査により全身諸臓器、特に腎臓及び肝臓に高度のアミロイド沈着が認められる。ヒトでは、AAアミロイドーシスは自己免疫疾患、慢性感染症、慢性炎症性疾患、がん等にしばしば合併する。
本明細書において「生体」とは、細胞(培養細胞を含む)、組織、器官、又は個体をいう。限定はしないが、例えば、ヒト、家畜動物(ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ニワトリ、ダチョウ等)、競走馬、愛玩動物(イヌ、ネコ、ウサギ等)、若しくは実験動物(マウス、ラット、モルモット、サル、マーモセット等)、野生・動物園動物(チンパンジー、ヤマネコ、リス、ワシ、フラミンゴ等)等の個体、又はそれに由来する細胞、組織、器官、若しくは臓器である。
本明細書において「生体試料」とは、生体に由来する任意の試料をいう。例えば、組織、細胞、及び体液が挙げられる。組織の例として、組織ホモジネート、組織切片、又は生検組織等が挙げられる。組織及び細胞は、例えば被検体の疾患に罹患している又は罹患可能性のある組織及び細胞、並びに健常体における対応する組織及び細胞が該当し、例えば脳、肝臓、脾臓、心臓、膵臓(膵島を含む)、肺、食道、腎臓、卵巣、胃、大腸、前立腺、乳房(乳腺を含む)、筋肉、甲状腺、及び歯肉に由来する組織又は細胞であってもよい。体液の例として、髄液、間質液、血液(血清、血漿及び間質液を含む)、リンパ液、各組織もしくは細胞の抽出液、胸水、痰、涙液、鼻汁、唾液、尿等が挙げられる。血液は血液から調整された血清又は血漿であってもよい。
本明細書において「被検体」とは、本発明の検出方法や罹患鑑別補助方法の適用対象となる生体である。例えば、ヒト(この場合、特に「被検者」という)、家畜動物(ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ニワトリ、アヒル、ダチョウ等)、競走馬、愛玩動物(イヌ、ネコ、ウサギ等)、実験動物(マウス、ラット、モルモット、サル、マーモセット等)、野生・動物園動物(チンパンジー、ヤマネコ、リス、ワシ、フラミンゴ等)等が該当する。例えばアミロイドーシスを有する、又はアミロイドーシスを発症する可能性のあるヒトやウシ等の生体が該当する。
本明細書において「健常体」とは、特定の疾患に罹患していない個体、好ましくはいかなる疾患にも罹患していない個体をいう。ただし、本明細書では健常組織も広義の健常体に含むものとする。したがって、個体レベルのみならず、例えば、患者から採取した組織のうちの正常部分のように、組織レベルで健常状態にあれば健常体と称することとする。
本明細書において、「対照体」とは健常体が該当し、特定の疾患(例えばアミロイドーシス)に罹患していない個体、好ましくはいかなる疾患にも罹患していない個体が該当する。対照体は1個体であっても複数個体であってもよい。
本明細書で使用する「検出」という用語は、検査、測定、判定又は、判定支援と言い換えることができる。
本明細書において「蛍光指紋解析」とは、励起光の波長を段階的又は連続的に変化させながら励起光を試料に照射し、かつ測定する蛍光の波長を段階的又は連続的に変化させながら蛍光強度を測定することを含む解析方法である。蛍光指紋解析の結果として、励起波長、蛍光波長、及び蛍光強度からなる三次元情報を得ることができる。蛍光指紋解析では、この三次元情報に基づき、生体試料中に含まれるミスフォールディングタンパク質等の成分を検出することが可能となる。蛍光指紋解析によって得られる三次元情報はしばしば等高線プロットにより三次元的に表現されるが、本明細書において三次元情報の表現方法は特に制限しない。
本明細書において「自家蛍光」とは、人工的に加えられた蛍光物質に依らず試料から放出される蛍光、例えば生体や生体試料中の非標識の内在物質から放出される蛍光をいう。本発明の方法で検出する自家蛍光は、生体試料中のミスフォールディングタンパク質から放出される自家蛍光である。本発明の方法で検出する自家蛍光は、正しく折り畳まれたタンパク質と比較してミスフォールディングタンパク質で増大する自家蛍光であることが好ましく、より好ましくはミスフォールディングタンパク質に特異的な自家蛍光である。アミロイドであれば、アミロイド前駆タンパク質と比較してアミロイドで増大する自家蛍光であることが好ましく、アミロイドに特異的な分子構造、例えばクロスβシート構造に基づく自家蛍光であってもよい。
アミロイドを含む生体試料の蛍光指紋解析では少なくとも2種類の自家蛍光ピークが検出され得ることが本明細書の実施例において見出された。本明細書において、アミロイドを含む生体試料の蛍光指紋解析で見出され得る2種類の自家蛍光ピークのうち、励起波長が400nm未満のピークを「アミロイド第1ピーク」、励起波長が400nm以上のピークを「アミロイド第2ピーク」と称する。アミロイド第1ピーク及びアミロイド第2ピークは、本実施例において最初にAAアミロイド陽性のウシ肝臓において見出されたが、他のアミロイドについても共通するピークが類似波長域において観測された。それ故、本明細書では、アミロイドの種類に依らず、アミロイドを含む生体試料において類似波長域で観測されるピークをアミロイド第1ピーク及びアミロイド第2ピークと称することとする。アミロイドを含む生体試料では、アミロイド第1ピークとアミロイド第2ピークのいずれか一方、又はその両方が観測され得る。
1-3.方法
本態様のミスフォールディングタンパク質検出方法の各工程は、特定の励起波長を有する励起光を生体試料に照射する場合、又は励起光の波長を特定の励起波長範囲で段階的又は連続的に変化させながら、励起光を生体試料に照射する場合で具体的な構成が異なる。したがって、以下では2つの場合に分けて説明する。
1-3-1.特定の励起波長を有する励起光を生体試料に照射する場合
特定の励起波長を有する励起光を生体試料に照射する場合、本態様の検出方法は、必須工程として照射工程及び検出工程を含む。
(照射工程)
本実施形態において照射工程は、特定の励起波長を有する励起光を生体試料に照射する工程である。
本工程において生体試料に照射する励起光の励起波長は、生体試料中でアミロイド等のミスフォールディングタンパク質を励起し得る波長であり、例えばアミロイド第1ピーク及び/又はアミロイド第2ピークに対応する励起波長である。アミロイド第1ピークに対応する励起波長は約350nmであり、例えば300nm~400nm、305nm~395nm、310nm~390nm、315nm~385nm、320nm~380nm、325nm~375nm、330nm~370nm、335nm~365nm、340nm~360nm、又は345nm~355nm、例えば350nmであってもよい。アミロイド第2ピークに対応する励起波長は約450nmであり、例えば400nm~500nm、405nm~495nm、410nm~490nm、415nm~485nm、420nm~480nm、425nm~475nm、430nm~470nm、435nm~465nm、440nm~460nm、又は445nm~455nm、例えば450nmであってもよい。
一実施形態において、励起波長は320nm~380nm及び/又は420nm~480nmであり、例えば、325nm~375nm及び/又は425nm~475nm;330nm~370nm及び/又は430nm~470nm;335nm~365nm及び/又は435nm~465nm;340nm~360nm及び/又は440nm~460nm;又は345nm~355nm及び/又は445nm~455nm、例えば350nm及び/又は450nmであってもよい。
本工程で励起光照射に用いる光源は、上述の波長を有する励起光を放出可能な光源であればその種類は特に限定しない。光源の具体的な構成や、特定の励起波長を選択するために光源と組み合わせて使用してもよいフィルター、反射板、及び/又はダイクロイックミラー等の補助部材については、第3態様で詳述していることから、ここでの説明は省略する。
(検出工程)
検出工程とは、励起光の照射によってミスフォールディングタンパク質から放出される自家蛍光を検出する工程である。
本工程において検出する自家蛍光の蛍光波長は、生体試料中でアミロイド等のミスフォールディングタンパク質から放出される蛍光の蛍光波長であり、例えばアミロイド第1ピーク及び/又はアミロイド第2ピークに対応する蛍光波長である。アミロイド第1ピークに対応する蛍光波長は約430nmであり、例えば380nm~550nm、380nm~540nm、380nm~530nm、380nm~520nm、380nm~510nm、380nm~500nm、380nm~490nm、380nm~480nm、385nm~475nm、390nm~470nm、395nm~465nm、400nm~460nm、405nm~455nm、410nm~450nm、415nm~445nm、420nm~440nm、又は425nm~435nm、例えば430nmであってもよい。アミロイド第2ピークに対応する蛍光波長は約480nmであり、例えば430nm~530nm、440nm~520nm、445nm~515nm、450nm~510nm、455nm~505nm、460nm~500nm、465nm~495nm、470nm~490nm、又は475nm~485nm、例えば480nmであってもよい。
一実施形態において、本工程で検出する自家蛍光の蛍光波長は400nm~510nmであり、例えば、405nm~505nm;410nm~450nm及び/又は460nm~500nm;415nm~445nm及び/又は465nm~495nm;420nm~440nm及び/又は470nm~490nm;又は425nm~435nm及び/又は475nm~485nm、例えば430nm及び/又は480nmであってもよい。
本工程において、自家蛍光を検出する方法は、当該分野で公知の測定方法を用いればよい。自家蛍光の検出は、目的の蛍光波長をフィルター、反射板、及び/又はダイクロイックミラー等により選択した後、可視光であれば肉眼で知覚することができる。例えば、落射蛍光測定法により検出してもよい。この方法は、測定対象試料の上方から励起光を照射し、試料から放出される蛍光を落射式で測定する方法である。また、蛍光励起用のLEDハンディライト等のLED光源を照射した生体試料から放出される蛍光を観察用ゴーグルを通して肉眼で知覚することもできる。或いは、後述の第3態様に記載の検出ユニットや検出器を用いて自家蛍光を検出することもでき、例えば蛍光光度計等の分光光度計を用いて検出することができる。
1-3-2.励起光の波長を特定の励起波長範囲で段階的又は連続的に変化させながら、励起光を生体試料に照射する場合
励起光の波長を特定の励起波長範囲で段階的又は連続的に変化させながら、励起光を生体試料に照射する場合、本態様の検出方法は、必須工程として照射工程、測定工程、及び判定工程を含む。
(照射工程)
本実施形態において照射工程は、励起光の波長を特定の励起波長範囲で段階的又は連続的に変化させながら、励起光を生体試料に照射する工程である。
本明細書において、「励起光の波長を特定の励起波長範囲で段階的又は連続的に変化させながら、励起光を生体試料に照射する」とは、生体試料中のアミロイド等のミスフォールディングタンパク質に対応するピーク(例えばアミロイド第1ピーク及び/又はアミロイド第2ピーク)を十分に識別できるような波長間隔で励起波長を生体試料に照射することをいう。励起波長を変化させる波長間隔は一定であっても一定でなくてもよく、限定しないが、例えば100nm以下、90nm以下、80nm以下、70nm以下、60nm以下、50nm以下、40nm以下、30nm以下、20nm以下、10nm以下、5nm以下、2nm以下、又は1nm以下の波長間隔を用いることができる。
本工程において生体試料に照射する励起光の励起波長範囲は、生体試料中でアミロイド等のミスフォールディングタンパク質を励起することができる波長を含む波長範囲であり、例えばアミロイド第1ピーク及び/又はアミロイド第2ピークに対応する励起波長を含む波長範囲である。アミロイド第1ピークに対応する励起波長を含む波長範囲は350nmを含み、例えば345nm~355nm、340nm~360nm、335nm~365nm、330nm~370nm、325nm~375nm、320nm~380nm、315nm~385nm、310nm~390nm、305nm~395nm、又は300nm~400nmを含んでもよい。アミロイド第2ピークに対応する励起波長を含む波長範囲は450nmを含み、例えば445nm~455nm、440nm~460nm、435nm~465nm、430nm~470nm、425nm~475nm、420nm~480nm、415nm~485nm、410nm~490nm、405nm~495nm、又は400nm~500nmを含んでもよい。
一実施形態において、生体試料に照射する励起光の励起波長範囲は、350nm及び/又は450nmを含み、例えば345nm~355nm及び/又は445nm~455nm;340nm~360nm及び/又は440nm~460nm;335nm~365nm及び/又は435nm~465nm;330nm~370nm及び/又は430nm~470nm;325nm~375nm及び/又は425nm~475nm;320nm~380nm及び/又は420nm~480nm;315nm~385nm及び/又は415nm~485nm;310nm~390nm及び/又は410nm~490nm;305nm~395nm及び/又は405nm~495nm;又は300nm~500nmを含んでもよい。
本工程で使用する光源、及び励起波長を段階的又は連続的に変化させるための分光方法又は分光器は、上述の励起波長範囲で段階的又は連続的に波長を変化させながら励起光を放出可能なものであればその種類は特に限定しない。光源及び分光器の具体的な構成については、第3態様で詳述していることから、ここでの説明は省略する。
(測定工程)
測定工程とは、励起光の照射によって前記生体試料から放出される自家蛍光の波長及び強度を測定する工程である。より具体的には、本工程では、測定対象の蛍光波長を段階的又は連続的に変化させながら蛍光強度を測定することができる。
本明細書において、「測定対象の蛍光波長を段階的又は連続的に変化させながら蛍光強度を測定する」とは、生体試料中のアミロイド等のミスフォールディングタンパク質に対応するピーク(例えばアミロイド第1ピーク及び/又はアミロイド第2ピーク)を十分に識別できるような波長間隔で観測する蛍光波長を変化させながら蛍光強度を測定することをいう。蛍光波長を変化させる波長間隔は一定であっても一定でなくてもよく、限定しないが、例えば100nm以下、90nm以下、80nm以下、70nm以下、60nm以下、50nm以下、40nm以下、30nm以下、20nm以下、10nm以下、5nm以下、2nm以下、又は1nm以下の波長間隔を用いることができる。
本工程において検出する自家蛍光の蛍光波長範囲は、生体試料中でアミロイド等のミスフォールディングタンパク質から放出される蛍光波長を含む波長範囲であり、例えばアミロイド第1ピーク及び/又はアミロイド第2ピークに対応する蛍光波長を含む波長範囲である。アミロイド第1ピークに対応する蛍光波長を含む蛍光波長範囲は430nmを含み、例えば425nm~435nm、420nm~440nm、415nm~445nm、410nm~450nm、405nm~455nm、400nm~460nm、395nm~465nm、390nm~470nm、385nm~475nm、380nm~480nm、380nm~490nm、380nm~500nm、380nm~510nm、380nm~520nm、380nm~530nm、380nm~540nm、又は380nm~550nmを含んでもよい。アミロイド第2ピークに対応する蛍光波長を含む蛍光波長範囲は480nmを含み、例えば475nm~485nm、470nm~490nm、465nm~495nm、460nm~500nm、455nm~505nm、450nm~510nm、445nm~515nm、440nm~520nm、435nm~525nm、又は430nm~530nmを含んでもよい。
一実施形態において、検出する自家蛍光の蛍光波長範囲は430nm及び/又は480nmを含み、例えば425nm~435nm及び/又は475nm~485nm;420nm~440nm及び/又は470nm~490nm;415nm~445nm及び/又は465nm~495nm;410nm~450nm及び/又は460nm~500nm;405nm~515nm;又は400nm~510nmを含んでもよい。
本工程において、測定対象の蛍光波長を段階的又は連続的に変化させながら自家蛍光を測定するための、分光方法又は分光器、及び検出方法又は検出器の構成は、限定しない。分光器や検出器の具体的な構成については、第3態様で詳述していることから、ここでの説明は省略する。例えば蛍光光度計等の分光光度計を用いてもよい。
本工程によって、生体試料から放出される自家蛍光の波長及び強度の測定値が得られる。本工程で得られる測定データには、励起波長、蛍光波長、及び蛍光強度からなる三次元情報が含まれ得る。
(判定工程)
判定工程とは、測定工程で得られた測定値に基づいて、自家蛍光を放出するアミロイド等のミスフォールディングタンパク質の有無を判定する工程である。本工程では、測定工程で得られた測定値において、検出する対象のミスフォールディングタンパク質の自家蛍光のピークが含まれる場合に、生体試料がミスフォールディングタンパク質を含むと判定することができる。
一実施形態において、ミスフォールディングタンパク質はアミロイドであり、以下の(A)及び/又は(B)の場合に、生体試料がアミロイドを含むと判定することができる。
(A)300nm~400nm、305nm~395nm、310nm~390nm、315nm~385nm、又は320nm~380nmを含む励起波長範囲の励起光照射(例えば、325nm~375nm、330nm~370nm、335nm~365nm、340nm~360nm、又は345nm~355nmを含む励起波長範囲の励起光照射)によって生体試料から放出される自家蛍光のピーク波長が380nm~480nm、385nm~475nm、390nm~470nm、又は395nm~465nm、好ましくは400nm~460nm(例えば、405nm~455nm、410nm~450nm、415nm~445nm、420nm~440nm、又は425nm~435nm)の範囲に含まれる場合、及び/又は
(B)400nm~500nm、405nm~495nm、410nm~490nm、415nm~485nm、又は420nm~480nmを含む励起波長範囲の励起光照射(例えば、425nm~475nm、430nm~470nm、435nm~465nm、440nm~460nm、又は445nm~455nmを含む励起波長範囲の励起光照射)によって生体試料から放出される自家蛍光のピーク波長が430nm~530nm、435nm~525nm、440nm~520nm、又は445nm~515nm、好ましくは450nm~510nm(例えば、455nm~505nm、460nm~500nm、465nm~495nm、470nm~490nm、又は475nm~485nm)の範囲に含まれる場合
さらなる実施形態において、ミスフォールディングタンパク質はアミロイドであり、以下の(a)及び/又は(b)の場合に、生体試料がアミロイドを含むと判定することができる。
(a)320nm~380nmを含む励起波長範囲の励起光照射によって生体試料から放出される自家蛍光のピーク波長が400nm~460nmの範囲に含まれる場合、及び/又は
(b)420nm~480nmを含む励起波長範囲の励起光照射によって生体試料から放出される自家蛍光のピーク波長が450nm~510nmの範囲に含まれる場合
1-4.効果
本態様のミスフォールディングタンパク質検出方法によれば、組織(例えばヒトや動物から生検又は剖検によって摘出された組織、又はウシ等の家畜動物から摘出された組織)や体液等の生体試料中でアミロイドβやアミロイドA等のアミロイドやミスフォールディングタンパク質を非標識で迅速かつ容易に検出することができる。また、本発明の方法によれば、非標識で迅速かつ容易に生体試料中のアミロイドを検出できる食肉検査方法も提供される。
本態様のミスフォールディングタンパク質検出方法は、アミロイド検出に従来用いられていた病理組織学的検索法やポジトロン断層法(例えばアミロイドPET)等と比較して、非標識で迅速なアミロイド検出を可能とする。また、本態様の検出方法は極めて容易かつ簡便に実施可能であり、ホモジネートした組織試料を使用することもできるため、その実施には病理組織学への習熟等が要求されないという利点を有する。
2.アミロイドーシスの罹患鑑別を補助する方法
2-1.概要
本発明の第2の態様は、アミロイドーシスの罹患鑑別を補助する方法である。
本態様の罹患鑑別補助方法は、照射工程、測定工程、及び判定工程を含む。本態様の罹患鑑別補助方法によれば、非標識で迅速かつ容易に、被検体においてアミロイドーシスの罹患鑑別を補助することができる。
2-2.方法
本態様のアミロイドーシス罹患鑑別補助方法は、必須工程として照射工程、測定工程、及び判定工程を含む。本態様の方法における各工程は、特定の励起波長を有する励起光を生体試料に照射する場合、又は励起光の波長を特定の励起波長範囲で段階的又は連続的に変化させながら、励起光を生体試料に照射する場合で具体的な構成が異なる。したがって、以下では2つの場合に分けて説明する。
2-2-1.特定の励起波長を有する励起光を生体試料に照射する場合
(照射工程)
特定の励起波長を有する励起光を生体試料に照射する場合、照射工程は、被検体及び対照体に由来する生体試料に特定の波長を有する励起光を照射する工程である。本工程は、被検体及び対照体に由来する少なくとも2つの生体試料を用いる点以外は、「1-3-1.特定の励起波長を有する励起光を生体試料に照射する場合」における照射工程に準じる。
(測定工程)
特定の励起波長を有する励起光を生体試料に照射する場合、測定工程は、励起光の照射によって生体試料中のアミロイドから放出される自家蛍光の蛍光強度を測定する工程である。本工程では、被検体及び対照体に由来する少なくとも2つの生体試料を用いる点以外は、「1-3-1.特定の励起波長を有する励起光を生体試料に照射する場合」における検出工程に準じて、自家蛍光の蛍光強度を測定することができる。
本工程によって、被検体の蛍光強度及び対照体の蛍光強度が得られる。
(判定工程)
特定の励起波長を有する励起光を生体試料に照射する場合、判定工程は、測定工程で得られた蛍光強度を被検体と対照体との間で比較して、被検体の蛍光強度が対照体の蛍光強度より高い場合に、被検体がアミロイドーシスに罹患していると判定する工程である。
本工程において、被検体及び対照体の蛍光強度を比較する方法は限定しない。例えば、対照体の蛍光強度に基づいて、被検体の蛍光強度に対するカットオフ値を定め、そのカットオフ値に基づいて比較する方法が挙げられる。すなわち、所定の値をカットオフ値と定め、測定値がその値以上であれば、被検体の蛍光強度が対照体の蛍光強度より大きいと決定することができる。
カットオフ値は、被検体及び対照体の蛍光強度を比較するための境界値をいう。カットオフ値は、通常、疾患の罹患率とROC曲線(receiver operating characteristic curve)より算出された感度及び特異度に基づき算出することができる。カットオフ値の設定法は特に限定しない。
例えば、アミロイドーシスに罹患していない健常体の蛍光強度、又は健常体群における蛍光強度の平均値をカットオフ値として、被検体の蛍光強度がカットオフ値よりも高いときに、被検体の蛍光強度が対照体の蛍光強度より大きいと決定することができる。
或いは、アミロイドーシスに罹患していない健常体の蛍光強度、又は健常体群における蛍光強度の平均値の1.5倍以上、2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、又は6倍以上をカットオフ値として、被検体の蛍光強度がカットオフ値よりも高いときに、被検体の蛍光強度が対照体の蛍光強度より大きいと決定することもできる。
また、対照体群から得られた測定値をパーセンタイルで分類し、その分類に用いたパーセンタイル値をカットオフ値とすることもできる。例えば、対照体から得られた蛍光強度の95パーセンタイルをカットオフ値とし、被検体の蛍光強度が95パーセンタイル以上であれば、被検体の蛍光強度が対照体の蛍光強度より大きいと決定することができる。
なお、対照とする健常体の蛍光強度は、被検体の蛍光強度と異なり、必ずしもその都度測定する必要はない。例えば、測定に用いる試料の量、測定方法、測定条件を一定にしておけば、以前に測定した対照健常体の蛍光強度を再利用することができる。
2-2-2.励起光の波長を特定の励起波長範囲で段階的又は連続的に変化させながら、励起光を生体試料に照射する場合
(照射工程)
励起光の波長を特定の励起波長範囲で段階的又は連続的に変化させながら、励起光を生体試料に照射する場合、照射工程は、励起光の波長を特定の励起波長範囲で段階的又は連続的に変化させながら、励起光を被検体に由来する生体試料に照射する工程である。本工程は、「1-3-2.励起光の波長を特定の励起波長範囲で段階的又は連続的に変化させながら、励起光を生体試料に照射する場合」における照射工程に準じる。
(測定工程)
励起光の波長を特定の励起波長範囲で段階的又は連続的に変化させながら、励起光を生体試料に照射する場合、測定工程は、励起光の照射によって生体試料から放出される自家蛍光の波長及び強度を測定する工程である。本工程は、「1-3-2.励起光の波長を特定の励起波長範囲で段階的又は連続的に変化させながら、励起光を生体試料に照射する場合」における測定工程に準じる。
本工程によって、生体試料から放出される自家蛍光の波長及び強度の測定値が得られる。本工程で得られる測定データには、励起波長、蛍光波長、及び蛍光強度からなる三次元情報が含まれ得る。例えば、本工程で得られる三次元情報から等高線プロットを作成することもできる。
(判定工程)
励起光の波長を特定の励起波長範囲で段階的又は連続的に変化させながら、励起光を生体試料に照射する場合、判定工程は、測定工程で得られた測定値においてアミロイドの自家蛍光のピークが含まれる場合に、被検体がアミロイドーシスに罹患していると判定する工程である。具体的には、「1-3-2.励起光の波長を特定の励起波長範囲で段階的又は連続的に変化させながら、励起光を生体試料に照射する場合」における判定工程に記載の(A)及び/又は(B)の場合、又は(a)及び/又は(b)の場合に、被検体がアミロイドーシスに罹患していると判定することができる。
2-3.効果
本態様のアミロイドーシス罹患鑑別補助方法によれば、非標識で迅速かつ容易にアミロイドーシスを罹患鑑別することができる。
3.ミスフォールディングタンパク質検出装置
本発明の第3の態様は、ミスフォールディングタンパク質検出装置である。
本態様のミスフォールディングタンパク質検出装置は、必須の構成要素として光源及び光学ユニットを備えており、選択的要素として検出ユニット、波長変動部、観察台、カメラ、ハードウェア、及び/又はソフトフェア等をさらに備えていてもよい。
3-1.構成
一実施形態において、本態様のミスフォールディングタンパク質検出装置は、光源及び光学ユニットを含む。
さらなる実施形態において、本態様のミスフォールディングタンパク質検出装置は、光源、光学ユニット、及び検出ユニットを含み、場合により波長変動部を含む。以下、本態様のミスフォールディングタンパク質検出装置における光源、光学ユニット、検出ユニット、及び波長変動部の各構成要素について具体的に説明をする。
(光源)
光源は、生体試料中でアミロイド等のミスフォールディングタンパク質を励起することができる波長の励起光を放出する光源である。ミスフォールディングタンパク質の自家蛍光を励起することができる励起波長、例えばアミロイド第1ピーク及び/又はアミロイド第2ピークに対応する励起波長の励起光を放出する光源や、アミロイド第1ピーク及び/又はアミロイド第2ピークに対応する励起波長を照射波長範囲に含む光源を使用することができる。
一実施形態において、光源から放出される励起光の具体的な励起波長は、約350nm、例えば300nm~400nm、305nm~395nm、310nm~390nm、315nm~385nm、320nm~380nm、325nm~375nm、330nm~370nm、335nm~365nm、340nm~360nm、又は345nm~355nm;又は約450nm、例えば400nm~500nm、405nm~495nm、410nm~490nm、415nm~485nm、420nm~480nm、425nm~475nm、430nm~470nm、435nm~465nm、440nm~460nm、又は445nm~455nmであってもよい。
さらなる実施形態において、光源から放出される励起光の具体的な励起波長は、320nm~380nm及び/又は420nm~480nmであり、例えば、325nm~375nm及び/又は425nm~475nm;330nm~370nm及び/又は430nm~470nm;335nm~365nm及び/又は435nm~465nm;340nm~360nm及び/又は440nm~460nm;345nm~355nm及び/又は445nm~455nm;又は350nm及び/又は450nmであってもよい。
別の実施形態において、光源から放出される励起光の具体的な励起波長範囲は、約350nm、例えば300nm~400nm、305nm~395nm、310nm~390nm、315nm~385nm、320nm~380nm、325nm~375nm、330nm~370nm、335nm~365nm、340nm~360nm、又は345nm~355nmを含み;かつ/又は約450nm、例えば400nm~500nm、405nm~495nm、410nm~490nm、415nm~485nm、420nm~480nm、425nm~475nm、430nm~470nm、435nm~465nm、440nm~460nm、又は445nm~455nmを含むことができる。
さらなる実施形態において、光源から放出される励起光の具体的な励起波長範囲は、320nm~380nm及び/又は420nm~480nmを含むことができ、例えば、325nm~375nm及び/又は425nm~475nm;330nm~370nm及び/又は430nm~470nm;335nm~365nm及び/又は435nm~465nm;340nm~360nm及び/又は440nm~460nm;345nm~355nm及び/又は445nm~455nm;又は350nm及び/又は450nmを含むことができる。
具体的な光源の種類は、上記の波長域の励起光を照射可能であれば限定しない。例えば、ブラックライト、UV-LED(紫外線発光ダイオード)や可視光LED等のLED光源、重水素ランプ、キセノンランプ、タングステンランプ、水銀灯、メタルハライドランプ、ハロゲンランプ、白熱灯、蛍光灯、又は波長可変レーザー等が挙げられる。ただし、全波長域型の光源を励起用光源として使用する場合、必要な波長域の光のみを選択するためのフィルター(光源から放出される光のうち特定の波長を有する励起光のみを透過する励起フィルター、例えばバンドパスフィルター)や反射板(光の全部又は一部を反射可能な鏡面部を有する部材;例えば、光源から放出された光の方向を変える反射ミラーや特定の波長を有する励起光のみを反射し、他の波長の光は透過するダイクロイックミラー)等の補助部材が必要となり得る。
(光学ユニット)
光学ユニットは、生体試料から放出される蛍光を、波長の違いに基づいて励起光から分離することができる光学ユニットである。具体的には、光学ユニットは、生体試料中でアミロイド等のミスフォールディングタンパク質から放出される蛍光を分離することができる。例えばアミロイド第1ピーク及び/又はアミロイド第2ピークに対応する蛍光波長を分離することができる。
一実施形態において、光学ユニットによって分離される蛍光の蛍光波長は、約430nm、例えば380nm~550nm、380nm~540nm、380nm~530nm、380nm~520nm、380nm~510nm、380nm~500nm、380nm~490nm、380nm~480nm、385nm~475nm、390nm~470nm、395nm~465nm、400nm~460nm、405nm~455nm、410nm~450nm、415nm~445nm、420nm~440nm、425nm~435nm、又は430nm;又は約480nm、例えば430nm~530nm、440nm~520nm、445nm~515nm、450nm~510nm、455nm~505nm、460nm~500nm、465nm~495nm、470nm~490nm、475nm~485nm、又は480nmであってもよい。
さらなる実施形態において、光学ユニットによって分離される蛍光の蛍光波長は、400nm~510nmであり、例えば、405nm~505nm;410nm~450nm及び/又は460nm~500nm;415nm~445nm及び/又は465nm~495nm;420nm~440nm及び/又は470nm~490nm;425nm~435nm及び/又は475nm~485nm;又は430nm及び/又は480nmであってもよい。
別の実施形態において、光学ユニットによって分離される蛍光の蛍光波長範囲は、約430nm、例えば380nm~550nm、380nm~540nm、380nm~530nm、380nm~520nm、380nm~510nm、380nm~500nm、380nm~490nm、380nm~480nm、385nm~475nm、390nm~470nm、395nm~465nm、400nm~460nm、405nm~455nm、410nm~450nm、415nm~445nm、420nm~440nm、425nm~435nm、又は430nmを含み;かつ/又は約480nm、例えば430nm~530nm、440nm~520nm、445nm~515nm、450nm~510nm、455nm~505nm、460nm~500nm、465nm~495nm、470nm~490nm、475nm~485nm、又は480nmを含むことができる。
さらなる実施形態において、光学ユニットによって分離される蛍光の蛍光波長範囲は、400nm~510nmを含んでもよく、例えば、405nm~505nm;410nm~450nm及び/又は460nm~500nm;415nm~445nm及び/又は465nm~495nm;420nm~440nm及び/又は470nm~490nm;425nm~435nm及び/又は475nm~485nm;又は430nm及び/又は480nmを含んでもよい。なお、光学ユニットによって分離される蛍光の蛍光波長範囲は、励起光の励起波長範囲を含まないことが好ましい。
具体的な光学ユニットの種類は、上記の波長域の蛍光を分離可能であれば限定しない。光学ユニットは、必要な波長域の蛍光のみを選択するためのフィルター(蛍光フィルター)、反射板(反射ミラーやダイクロイックミラー)、又はスリット等を必要に応じて含むことができる。
(検出ユニット)
検出ユニットは、生体試料から放出される自家蛍光を検出し、その蛍光強度を計測可能な検出ユニットである。検出ユニットに含まれる検出器の種類は限定せず、例えばCCD、CMOS、有機薄膜撮像素子等の撮像素子、光電子倍増管(PMT)、InGaAs検出器、Siフォトダイオード検出器、又はPbS検出器等を用いることができる。
(波長変動部)
波長変動部は、励起光及び/又は蛍光の波長を段階的又は連続的に変化させる波長変動部である。波長変動部が段階的又は連続的に変化することができる励起光の波長範囲は、上述の光源について記載した励起波長、又はそれを含む範囲とすることができる。例えば、全波長域で励起光の波長を変化させることができる。同様に、波長変動部が段階的又は連続的に変化することができる蛍光の蛍光波長範囲は、上述の光学ユニットについて記載した蛍光波長、又はそれを含む範囲とすることができる。例えば、全波長域で蛍光波長を変化させることができる。
波長変動部は、励起光や蛍光を波長によって分光することができる分光器を含む。分光器の例として、プリズムや回折格子等が挙げられる。
3-2.効果
本態様のミスフォールディングタンパク質検出装置によれば、小規模な検査室内で生体試料中のミスフォールディングタンパク質を迅速かつ容易に検出することができる。本態様の装置を使用すれば、従来の病理組織学的検索法と異なり、病理組織学への習熟を必要とすることなく、ミスフォールディングタンパク質を非標識で容易かつ簡便に検出することができる。
<実施例1:蛍光指紋解析によるウシ肝臓におけるアミロイドの検出>
(目的)
ウシ肝臓中のアミロイドを蛍光指紋解析により検出する。
(方法)
3~8歳齢のウシ4頭(いずれも雌のホルスタイン種)から摘出された肝臓を検査対象とした。病理組織学的検査により、4頭のうち2頭の肝臓がAAアミロイド陰性であり、残りの2頭の肝臓はAAアミロイド陽性であった。
生又は凍結保存された肝臓組織の一部をトリミングして得られた試料(数十mg)をジルコニアビーズ(ニッカトー、YTZ-3)と共にスクリューキャップチューブ中の超純水約2~4mLに入れ、ビーズ破砕機(タイテック、μT-12)において氷冷条件下2500rpmにて120秒間ホモジネートを行った。破砕後の試料を超純水で約100~1000倍に希釈し、超音波破砕機を用いて40kHzにて5分間超音波処理を行うことによって、十分に分散した試料(1~10mg/mL)が得られた。超音波破砕後の非標識の試料1mLをアクリル製4面透過ディスポセル(Fisher scientific、14-955-130)に移し、蛍光分光光度計(日本分光、FP8300)を用いて、測定感度Medium及び励起/蛍光バンド幅5nmの条件下、励起波長帯250~600nm/蛍光波長帯250~600nmにおいて蛍光指紋解析を実施した。
(結果)
アミロイド陰性の肝臓ホモジネートでは、芳香族アミノ酸の吸収ピークに対応する、励起波長帯260~310nm/蛍光波長帯290~360nmにおいて主要なピークが検出された(図2)。他のアミロイド陰性例(1例)についても同様の結果が得られた。
一方、アミロイド陽性の肝臓ホモジネートでは、芳香族アミノ酸の吸収ピーク以外に、320nm~380nmの励起波長範囲/400nm~460nmの蛍光波長範囲、及び420nm~480nmの励起波長範囲/450nm~510nmの蛍光波長範囲に顕著な自家蛍光のピークが検出された(図3)。他のアミロイド陽性例(1例)についても同様の結果が得られた。以下、アミロイド陽性の肝臓ホモジネートにおいて、320nm~380nmの励起波長範囲/400nm~460nmの蛍光波長範囲において観測されたピークを「アミロイド第1ピーク」と呼び、420nm~480nmの励起波長範囲/450nm~510nmの蛍光波長範囲において観測されたピークを「アミロイド第2ピーク」と呼ぶ。
<実施例2:蛍光指紋解析によるマウス脾臓及びネコ肝臓におけるアミロイドの検出>
(目的)
AAアミロイドーシスに罹患したマウス脾臓及びネコ肝臓におけるアミロイドを蛍光指紋解析により検出する。
(方法と結果)
AAアミロイドーシスに罹患したマウス(C57BL/6J系統、雌、8週齢)から摘出された脾臓、及びAAアミロイドーシスに罹患したネコ(雑種、雌、3歳齢)から摘出された肝臓に対して、上記と同様の方法で蛍光指紋解析を適用した。マウス脾臓及びネコ肝臓の冷凍材料から一部をトリミングして得られた試料から、実施例1と同様の方法により組織ホモジネートを調製し、蛍光分光光度計を用いて蛍光指紋解析を実施した。
蛍光指紋解析の結果、AAアミロイドーシスに罹患したマウス脾臓及びネコ肝臓のいずれにおいても、アミロイド陽性のウシ肝臓において見出されたアミロイド第1ピーク及びアミロイド第2ピークに対応する、2つのピークが観測された。
<実施例3:蛍光指紋解析による他のアミロイドの検出>
(目的)
in vitroで調製した他のアミロイドを蛍光指紋解析により検出する。検出対象のアミロイドとして、アミロイド形態の、LPS結合タンパク質(LPS binding protein)、Aβ42ペプチド、及びα-カゼインタンパク質を用いる。
(方法)
過去の文献(Murakami T, et al., Amyloid 27(1): 25-35, 2020.)に記載の方法に従って、LPS結合タンパク質、Aβ42ペプチド、及びα-カゼインタンパク質を中性溶媒中で1週間培養し、各タンパク質からアミロイドを調製した。具体的には、LPS結合タンパク質及びAβ42ペプチドには合成ペプチドを使用し、α-カゼインタンパク質には大腸菌組換えタンパク質を用いた。中性溶媒としてクエン酸緩衝液を使用した。培養は、各々のタンパク質を100μMで含む800μLの溶液に対して、37℃、振盪速度800rpmの条件下で行った。培養後の試料に対して電子顕微鏡観察を行った結果、いずれの試料においても直径約10nmの非分岐フィブリル状の線維が形成されており、アミロイド形態をとっていることが観察された。
上記いずれかのアミロイド形態のタンパク質を約0.5~1mg/mLで含む培養液1mLをアクリル製4面透過ディスポセルに移し、蛍光分光光度計を用いて、実施例1と同様の条件にて励起波長帯250~600nm/蛍光波長帯250~600nmにおいて蛍光指紋解析を実施した。
結果を図4~6に示す。アミロイド形態のLPS結合タンパク質では、320nm~380nmの励起波長範囲/390nm~480nmの蛍光波長範囲に顕著な自家蛍光のピークが検出された(図4)。このピークは、実施例1においてアミロイド陽性のウシ肝臓で見出されたアミロイド第1ピークに類似していた。
アミロイド形態のAβ42ペプチドでは、390nm~480nmの励起波長範囲/450nm~530nmの蛍光波長範囲に顕著な自家蛍光のピークが検出された(図5)。このピークは、実施例1においてアミロイド陽性のウシ肝臓で見出されたアミロイド第2ピークに類似していた。
また、アミロイド形態のα-カゼインタンパク質では、420nm~460nmの励起波長範囲/450nm~550nmの蛍光波長範囲に顕著な自家蛍光のピークが検出された(図6)。このピークは、実施例1においてアミロイド陽性のウシ肝臓で見出されたアミロイド第2ピークに類似していた。

Claims (13)

  1. 生体試料中のミスフォールディングタンパク質を検出する方法であって、
    特定の励起波長を有する励起光を生体試料に照射する工程、及び
    前記励起光の照射によって前記ミスフォールディングタンパク質から放出される自家蛍光を検出する工程
    を含む、前記方法。
  2. 前記ミスフォールディングタンパク質がアミロイドである、請求項1に記載の方法。
  3. 前記特定の励起波長が320nm~380nm及び/又は420nm~480nmである、請求項2に記載の方法。
  4. 前記検出工程において検出する自家蛍光の蛍光波長が400nm~510nmである、請求項3に記載の方法。
  5. 生体試料中のミスフォールディングタンパク質を検出する方法であって、
    励起光の波長を特定の励起波長範囲で段階的又は連続的に変化させながら、励起光を生体試料に照射する工程、
    前記励起光の照射によって前記生体試料から放出される自家蛍光の波長及び強度を測定する工程、並びに
    得られた測定値に基づいて、自家蛍光を放出するミスフォールディングタンパク質の有無を判定する工程
    を含む、前記方法。
  6. 前記特定の励起波長範囲が320nm~380nm及び/又は420nm~480nmを含む、請求項5に記載の方法。
  7. 前記ミスフォールディングタンパク質がアミロイドである、請求項5又は6に記載の方法。
  8. 前記判定工程において、以下の(a)及び/又は(b)の場合に、前記生体試料がアミロイドを含むと判定する、請求項7に記載の方法。
    (a)320nm~380nmを含む励起波長範囲の励起光照射によって前記生体試料から放出される自家蛍光のピーク波長が400nm~460nmの範囲に含まれる場合、及び/又は
    (b)420nm~480nmを含む励起波長範囲の励起光照射によって前記生体試料から放出される自家蛍光のピーク波長が450nm~510nmの範囲に含まれる場合
  9. 前記生体試料が組織又は体液である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
  10. アミロイドーシスの罹患鑑別を補助する方法であって、
    被検体及び対照体に由来する生体試料に特定の励起波長を有する励起光を照射する工程、
    前記励起光の照射によって前記生体試料中のアミロイドから放出される自家蛍光の蛍光強度を測定する工程、
    得られた蛍光強度を被検体と対照体との間で比較して、被検体の蛍光強度が対照体の蛍光強度より高い場合に、被検体がアミロイドーシスに罹患していると判定する工程
    を含み、
    前記特定の励起波長が320nm~380nm及び/又は420nm~480nmであり、
    前記測定工程において測定する自家蛍光の蛍光波長が400nm~510nmである、前記方法。
  11. アミロイドーシスの罹患鑑別を補助する方法であって、
    励起光の波長を特定の励起波長範囲で段階的又は連続的に変化させながら、励起光を被検体に由来する生体試料に照射する工程、
    前記励起光の照射によって前記生体試料から放出される自家蛍光の波長及び強度を測定する工程、並びに
    得られた測定値に基づいて、以下の(a)及び/又は(b)の場合に、被検体がアミロイドーシスに罹患していると判定する工程
    を含み、前記特定の励起波長範囲が320nm~380nm及び/又は420nm~480nmを含む、前記方法。
    (a)320nm~380nmを含む励起波長範囲の励起光照射によって前記生体試料から放出される自家蛍光のピーク波長が400nm~460nmの範囲に含まれる場合、及び/又は
    (b)420nm~480nmを含む励起波長範囲の励起光照射によって前記生体試料から放出される自家蛍光のピーク波長が450nm~510nmの範囲に含まれる場合
  12. 前記被検体が家畜動物である、請求項10又は11に記載の方法。
  13. 前記アミロイドーシスがAAアミロイドーシスである、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
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