JP2023038833A - 骨髄由来神経保護型ミクログリア様細胞の選択的誘導方法とその利用 - Google Patents
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Abstract
【課題】神経変性疾患等に神経保護型ミクログリアを利用する治療方法を現実化するために、十分量のミクログリアを容易に及び簡便に得る方法、並びにミクログリア様細胞を含む医薬組成物を提供する。【解決手段】下記の工程1及び2により神経保護型ミクログリアを製造する。工程1:骨髄単核球細胞に対して、GM-CSFを作用させる工程工程2:工程1で作用させた後の細胞に対して、GM-CSF及びIL4を作用させる工程【選択図】なし
Description
本発明は、骨髄由来神経保護型ミクログリア様細胞の選択的誘導方法とその利用に関する。
ミクログリアとは、神経系での免疫反応に関与する細胞として知られている。ミクログリアには、M1ミクログリア及びM2ミクログリアが存在し、前者は炎症を惹起し、組織や細胞を破壊することが知られ、後者は、炎症を抑制し、組織や細胞を保護することが知られている。また、M1ミクログリアにIL-10やIL-4を作用させることにより、M2ミクログリアとなることが知られている。
神経変性疾患等に対して、M2ミクログリアのような神経保護型ミクログリア様細胞を用いて治療することが有効であると考えられる。また、ミクログリアは、大脳皮質から得ることができることが知られている。
Kobashi S,Terashima T,Katagi M,Nakae Y,Okano J,Suzuki Y,Urushitani M,Kojima H.Transplantation of M2-Deviated Microglia Promotes Recovery of Motor Function after Spinal Cord Injury in Mice.Mol Ther.2020 Jan8;28(1):254-265.
神経変性疾患等に神経保護型ミクログリアを利用する治療方法を現実するためには、十分量のミクログリアを容易に及び簡便に調製できることが必要となるが、自家移植することを前提に、大脳皮質を原料に所定量のミクログリアを得ることは困難である。
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、骨髄に含有される単核球細胞に所定の濃度の成長因子を作用させ、特定の培養方法に供することによって、神経保護型の自家移植可能なミクログリアを容易に誘導できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下に示す態様の発明を広く包含する。
項1 M2ミクログリア様細胞の製造方法であって、下記の工程1及び2を含む製造方法;
工程1:骨髄単核球細胞に対して、GM-CSFを作用させる工程
工程2:工程1で作用させた後の細胞に対して、GM-CSF及びIL4を作用させる工程。
工程1:骨髄単核球細胞に対して、GM-CSFを作用させる工程
工程2:工程1で作用させた後の細胞に対して、GM-CSF及びIL4を作用させる工程。
項2 前記工程1における作用期間が48~120時間である、上記項1に記載の製造方法。
項3 前記工程2における作用期間が48~120時間である、上記項1又は項2に記載の製造方法。
項4 工程1及び2において作用させるGM-CSF及びIL4の濃度が、20ng/mlより大きく、40ng/ml以下である、上記項1~項3の何れか1項に記載の製造方法。
項5 上記項1~項4の何れか1項に記載の製造方法によって製造された、骨髄単核球由来M2ミクログリア様細胞。
項6 中枢神経疾患の治療及び/又は予防のために使用される、上記項5に記載のM2ミクログリア様細胞を含む医薬組成物。
項7 前記中枢神経疾患が、アルツハイマー病、パーキンソン病、脳梗塞、低酸素脳症、脊髄損傷、神経因性疼痛、又は筋萎縮性側索硬化症(ALS)である、上記項6に記載の医薬組成物。
本発明の製造方法によると、移植に使用する際に十分な量のM2ミクログリア様細胞を容易に誘導することができる。また、本発明の製造方法にて製造されたM2ミクログリア様細胞は、ALSに代表される神経変性疾患の治療及び/又は予防のために有効に使用することができる。
以下、本発明について説明する。なお、以下において、数値範囲を示す「~」の標記は「未満」又は「超過」の意味であることを特に断らない限り「以上以下」を示す。つまり、「A~B」は「A以上B以下」を意味する。
本明細書において、ある成分を「を含む」又は「を含有する」との表現には、当該成分を含み、さらに他の成分を含んでいてもよいとの意味のほか、当該成分のみを含むとの意味の「のみからなる」、及び当該成分を必須として含むとの意味の「から必須としてなる」の概念も包含される。
本明細書において、「神経保護型ミクログリア様細胞」を「M2ミクログリア細胞」と呼ぶことがある。
本発明のM2ミクログリア様細胞の製造方法は、下記の工程1及び2を含む。
工程1:骨髄単核球細胞に対して、GM-CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)を作用させる工程
工程2:工程1で作用させた後の細胞に対して、GM-CSF及びIL4を作用させる工程。
工程1:骨髄単核球細胞に対して、GM-CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)を作用させる工程
工程2:工程1で作用させた後の細胞に対して、GM-CSF及びIL4を作用させる工程。
上記するM2ミクログリア様細胞とは、特に限定されないが、例えば、CD206、Arg1、IRF4、FIZZ等のマーカーを発現する細胞を挙げることができる。
上記工程1における骨髄単核球細胞とは、骨髄に含有される造血幹細胞から誘導される単核系細胞である限り、特に限定されない。例えば、骨髄単核球細胞は、骨髄から赤血球、血小板及び顆粒球系細胞を濃度勾配法等により除去して得られる、リンパ球、単球系である白血球、及びそれらの前駆細胞、間葉系幹細胞等の未分化な細胞集団を含む造血系細胞の集合体を挙げることができる。より具体的には、T細胞/NK細胞、B細胞、単球、樹状細胞、マクロファージ等の免疫担当細胞、およびそれらの前駆細胞や、血管内皮、骨、軟骨等へと分化する能力を持つ間葉系幹細胞を挙げることができる。
上記工程1における「作用させる工程」とは、本発明の効果を発揮する範囲に限り、特に限定されない。例えば、培養に供する培地に、作用させる物質を含有させて所定期間の培養を実施する態様を挙げることができる。
上記工程1における骨髄単核球細胞の由来は、本発明の効果を発揮する限りにおいて、特に限定されない。具体的に、ラット、マウス等のげっ歯類動物、ブタ、サル、ヒト等を挙げることができる。中でも、治療対象(例えば、ヒト)に移植する際に適合する動物とすることが好ましい。
上記工程1における作用時間は、本発明の効果を発揮する限りにおいて、特に限定されない。例えば、48~120時間とすることができる。好ましくは、60~108時間、より好ましくは60~96時間である。工程1における作用時間を48時間以上とすることによって、移植に必要な細胞数を確保できる。工程1における作用時間を120時間以下とすることによって、神経細胞保護作用を発揮しない分画の増殖を避けることができる。
上記工程2における作用時間も、本発明の効果を発揮する限りにおいて、特に限定されない。例えば、48~120時間とすることができる。好ましくは、60~108時間であり、より好ましくは72~96時間である。工程2における作用時間を48時間以上とすることによって、神経細胞保護型ミクログリアへ効率よく誘導でき、工程2における作用時間を120時間以下とすることによって、移植に適した、安定した神経細胞保護型のミクログリアを得ることができる。
上記工程1及び2にて作用させるGM-CSF及びIL4の濃度は、本発明の効果を発揮する限りにおいて、特に限定されない。例えば、20ng/mlを超える濃度で、40ng/ml以下となる濃度とすることができる。好ましくは、30ng/mlを超える(又は以上となる)濃度で、40ng/ml以下となる濃度とすることができる。GM-CSF及びIL4の濃度を20ng/mlを超える濃度とすることによって、培養細胞のほぼ半数以上を神経細胞保護型のミクログリアに分化誘導でき、GM-CSF及びIL4の濃度を40ng/ml以下とすることによって、さらに効率よく神経細胞保護型のミクログリアを得ることができる。なお、GM-CSF及びIL4の濃度は同一であっても異なっていてもよく、GM-CSFの濃度は工程1及び2において同一であっても異なっていてもよい。
上記工程1及び2では、培地中でGM-CSF又はIL4を作用させることができる。具体的な培地は、本発明の効果を発揮する限りにおいて、特に限定されない。例えば、DMEM、MEM、RPMI1640、IMDM、StemSpan(登録商標)等の基礎培地を挙げることができる。これらの中でも、未分化な細胞を効率よく分化させることに鑑みてStemSpanを使用することが好ましい。このStemSpanには、インスリン、トランスフェリン、2-メルカプトエタノール等が含有される。
上記の培地には、FBSやFCS等の細胞培養に使用される公知の血清が含有されていてもよいし、ペニシリン/ストレプトマイシン、カナマイシン、ハイグロマイシン、ゲンタマイシン、G418等の抗生物質が含有されていてもよい。
なお、上記血清は、非動化血清とすることもできるし、血清に変えて、アルブミン、トランスフェリン、脂肪酸、2-メルカプトエタノール、3’チオールグリセロール、StemSure(登録商標)等の血清代替物を使用することもできる。
また、上記の培地には、通常、細胞培養に使用される公知の成分を、本発明の効果を発揮できる範囲において、適宜使用することもできる。例えば、L-グルタミン等のアミノ酸、アスコルビン酸等のビタミン、ビオチン、グルコース、B27サプリメント、N2サプリメント、増殖因子、サイトカイン、無機塩類等の栄養添加物を挙げることができる。
上記工程1及び2における作用は、所定の容器内で上記培地に培養する態様とすることができる。斯かる容器とは、本発明の効果を発揮できる限りにおいて、特に限定されない。例えば、シャーレ、フラスコ、培養プレート、ボトル、バッグ等を挙げることができる。
上記工程1及び2における作用温度は、本発明の効果を発揮する限りにおいて、特に限定されない。例えば、35~39℃とすることができ、より好ましくは36~38℃である。また、上記工程1及び2における作用環境も本発明の効果を発揮する限りにおいて、特に限定されない。例えば大気中とすることもできるし、CO2環境下とすることもできる。好ましくは、5%のCO2環境下とすることである。また、酸素濃度は、特に限定されず、例えば、約20%の酸素濃度とすることができる。
なお、上記の培地は、培養の途中で新しい培地に、適宜交換することができる。このような交換間隔は、本発明の効果を発揮する限りにおいて、特に限定されない。例えば、1日、1.5日、2日、2.5日、3日、3.5日、4日おきとすることができる。なお、このような培地交換は、培地の全てを交換してもよいし、一部の培地の交換としてもよい。
本発明の製造方法にて得られるM2ミクログリア様細胞は、中枢神経疾患の治療及び/又は予防のために使用される医薬組成物とすることができる。すなわち、前記医薬組成物は、本発明の製造方法にて得られるM2ミクログリア様細胞を含有する。なお、上記医薬組成物に含有されるM2ミクログリア様細胞は、これを製造する時に使用した培養培地及び/又はその培養上清と共に含有されることもできる。すなわち、本発明の医薬組成物は、本発明の製造方法にて得られるM2ミクログリア様細胞の培養培地及び/又はその培養上清を有効成分とすることもできる。
上記中枢神経疾患とは、特に限定されない。例えば、脳梗塞、低酸素脳症、脊髄損傷、神経因性疼痛、脳炎、脊髄炎、及び神経変性疾患等を挙げることができる。前記神経変性疾患とは、特に限定されない。例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、多系統萎縮症、脊髄小脳変性症、及び筋萎縮性硬化症等を挙げることができる。
上記医薬組成物に含有される上記M2ミクログリア様細胞の量は、特に限定されない。例えば、100質量部の医薬組成物に対して、0.001~100質量部とすることができる。このような医薬組成物には、上記M2ミクログリア様細胞の他に、緩衝剤、酸化防止剤、防腐剤、界面活性剤、親水性ポリマー、キレート剤等を含有されることができる。また、上記M2ミクログリア様細胞の足場として、細胞外基質や細胞外マトリクスを含有することもできる。
上記医薬組成物の投与経路又は投与経路は、本発明の効果を発揮する範囲に限り、特に限定されない。例えば、組織内直接投与、髄腔内投与、経静脈内投与、腹腔内投与、皮下投与等を挙げることができる。
上記医薬組成物の投与対象は、特に限定されない。例えば、上記する中枢神経疾患に罹患するホ乳類動物、又は罹患する可能性があるホ乳類動物を挙げることができる。このようなホ乳類動物は、特に限定されない。例えば、マウス、ラット、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジサル、ヒト等を挙げることができる。これらの中でも、ヒトであることが好ましい。
上記医薬組成物の投与量は、本発明の効果を所望する投与対象の年齢、所望する効果の程度等によって変化するので、一概に決定することはできない。例えば、投与対象が体重60kgのヒト男性であれば、一回当たりの投与量として、医薬組成物に含有されるM2ミクログリア様細胞が、104~1010細胞となるような量の医薬組成物を投与することができる。
以下に、本発明を更に詳細に説明するための実施例を示す。但し、本発明が、下記に実施例に示す範囲に限定されないのはいうまでもない。
下記の実施例における統計分析は、平均値±SDで表される。複数のデータ間の比較については、一元配置分散分析及びScheffeテストを使用した。また、行動分析では、二元配置分散分析にてデータの分析を行った。カプランマイヤー曲線の統計分析には、ログランク検定を使用した。0.05未満のP値は有意であると解釈する。これらの統計分析は、IBM SPSS Statisticsバージョン25(International Business Machines Corporation)を使用した。
C57BL/6マウス(ジャクソンラボラトリーズ社)から全骨髄細胞を回収した。その後、Ficoll-Paque Plusgradient separation(GEヘルスケアバイオサイエンス社)を使用して、全骨髄細胞から単核細胞を単離した。そして、これらの単離した単核細胞を、GM-CSF又はIL-4と共に、無血清増殖培地であるStemSpan(登録商標)(ステムセルテクノロジーズ社)で、以下に示す3パターンの培養方法により、7日間培養した。
・方法A:終濃度40ng/mlのGM-CSFを含有する培地による7日間の培養
・方法B:終濃度40ng/mlのGM-CSF及び終濃度40ng/mlのIL-4を含有する培地による7日間の培養
・方法C:終濃度40ng/mlのGM-CSFを含有する培地により3日間の培養の後、終濃度40ng/mlのGM-CSF及び終濃度40ng/mlのIL-4を含有する培地による4日間の培養
・方法B:終濃度40ng/mlのGM-CSF及び終濃度40ng/mlのIL-4を含有する培地による7日間の培養
・方法C:終濃度40ng/mlのGM-CSFを含有する培地により3日間の培養の後、終濃度40ng/mlのGM-CSF及び終濃度40ng/mlのIL-4を含有する培地による4日間の培養
これらのすべての方法において、培養培地を培養開始から3日目に新しいものと交換した。そして、培養開始から7日後に培養細胞は光学顕微鏡によって観察した。そして、これらの細胞を、トリプシン-EDTA(ライフテクノロジー社)にて10分間処理して、細胞数を計測した。その結果を図1A及びBに示す。
図1Bに示すように、方法A及びCでは、7日後の細胞数が顕著に増加していたのに対して、方法Bにおける7日後の細胞数の増加の程度は、方法A及びCより少なかった。この結果から、IL-4にて初期から刺激することで、十分な細胞数が得られないことが考察される。
また、培養開始から7日後の細胞にて発現するArg1及びNos2のmRNAの発現量を、定量RT-PCRにて確認した。具体的には、これらの細胞から、RNeasyキット(QIAGEN社)により、全RNAを抽出した。これらの全RNAから、TAKARA PrimeScript RT試薬キット(タカラバイオ社)を用いて逆転写を行った後に、LightCycler 480 SYBR Green I Master(ロシュ・ダイアグノスティックス社)及びLight-Cycler 480(ロシュ・ダイアグノスティックス社)にて、定量RT-PCRを行った。定量RT-PCRにて使用したプライマーの塩基配列は、以下の表1に示す通りである。なお、内部標準として、GAPDHを使用した。その結果を図1Cに示す。
図1Cに示す結果から、方法Aでは、M2ミクログリアマーカーであるArg1の発現も、M1ミクログリアマーカーである、Nos2の発現も共に認められなかった。他方、方法B及びCでは、Arg1の発現もNosの発現も認められ、特にArg1は、方法Bよりも方法Cのほうが、より発現量が高いことが明らかとなり、Nos2は、方法Cよりも方法Bのほうが、より発現量が高いことが明らかとなった。この結果から、M2ミクログリアは、方法Cで最も誘導されており、M1ミクログリアは、方法Bで最も誘導されていることが考察される。
また、培養開始から7日後の細胞におけるCD11b、CD206、及びCD86の発現量を、フローサイトメトリーにて確認した。具体的に、FACS Calibur及び FACS Ariaフローサイトメーター(BDバイオサイエンス社)にて測定し、FITC標識抗CD11b抗体(BDバイオサイエンス社)、PE標識抗CD86抗体(BDバイオサイエンス社)、及びアレクサフローラ647標識抗CD206抗体(バイオレジェンド社)を使用した。この結果を図2に示す。
図2に示す結果から、培養開始から7日後の方法Cの細胞において、CD11b、CD206、及びCD86の発現の増加が認められた。CD11b陽性であることから、ミクログリアが80%以上の割合で誘導されており、その内訳は、M2ミクログリアマーカーであるCD206陽性が半数以上を占めたことが明らかとなった。その一方で、CD86陽性のミクログリアは、20%未満であったことが明らかとなった。
神経細胞の損傷からの回復の程度を確認する実験を行った。先ず、上記方法Cで骨髄由来単核細胞を培養し、その上清を馴化培地として回収した(Conditioned Medium)。また、40ng/mlのGM-CSF及び40ng/mlのIL-4を含有するStemspan培地(細胞を含まない)を、37℃、CO2環境下で4日間インキュベートし、これをCTL Mediumとした。
NSC-34細胞(CELLutions BIOSYSTEMS)を、10%FBSを含有するDMEM高グルコース培地(富士フイルム和光純薬社)に3×104細胞/ウェルで96ウェルプレートに播種して3時間培養した。この上清をConditioned Medium又はCTL Mediumを40%含むように混合したDMEM高グルコース培地に変更した。その後、神経細胞死を誘発するために、400μMのNOC-18(1-ヒドロキシ-2-オキソ-3,3-ビス(2-アミノエチル)-1-トリアゼンを添加し、CO2環境下で37℃、48時間インキュベートした。その後、Cell Counting Kit-8(同仁化学研究所社)により、細胞数を計測した。結果を図3Bに示す。
図3Bに示す結果から、方法CによりM2ミクログリア様細胞の培養培地は、神経細胞死の誘導から回復する作用を発揮する事が明らかとなった。この結果から、誘導したM2ミクログリア様細胞より培養液中に分泌された成分に神経細胞保護効果があることが考察される。
上記方法Cにより骨髄単核細胞から誘導したM2ミクログリア様細胞を、ALSモデルマウスに移植した実験を行った。
具体的には、骨髄単核細胞として、GFP-tgマウス(C57BL/6-Tg(UBC-GFP)30Scha/J:ジャクソンラボラトリーズ社)から、実施例1に示す方法と同様に骨髄単核細胞を回収し、その後、単核細胞を単離した。これを上記Cの方法により、M2ミクログリア様細胞を誘導し、この1.0×105細胞/μlのPBS懸濁液を移植用に準備した。
次いで、10週齢の雄のALSモデルマウス(hSOD1(G93A)1Gur/J:ジャクソンラボラトリーズ社)に、0.3mg/kgのメデトミジン、4mg/kgのミダゾラム、及び5mg/kgのブトルファノールを腹腔内注射により麻酔した。その後、麻酔したマウスのレベル12~13胸椎間の脊髄の片側に、上記に調製した1μlのM2ミクログリア様細胞の懸濁液をゆっくりと注入し、その後、もう片方の脊髄から、これと同量の懸濁液を同様に注入した。コントロールとして、M2ミクログリア様細胞に代えてPBSを注入したALSモデルマウスを準備した。これらのマウスに水及び専用飼料を自由に与え、12時間の明暗サイクルで飼育した。
移植したALSモデルマウスの運動能力を、週に1回、Rota-Rodテスト(Ugo Basile、Comerio-Varese)により分析し、同じ頻度にて体重を測定した。上記するRota-Rodテストは、5~50rpm/分(加速の程度は、9rpm/分2)の範囲で、5分間行い、各マウスの5回の試行の3つの中央値の平均を計算した。
また、生理学的死亡は、Rota-Rodテストの結果が「0秒」を示したこと、又は各マウスが最大から15%を超える体重減少を示したと定義し、これをカプランメイヤー法として分析した。これらの結果を、図4に示す。なお、マウス実験のプロトコルは、滋賀医科大学の施設内動物管理使用委員会(IACUC)によって承認され、そのガイドラインに従って実施した。
図4Aに示す結果から、方法Cにより骨髄単核細胞から誘導したM2ミクログリア様細胞を移植したALSモデルマウス(BM-iMG:黒線)は、コントロール(CTL:灰線)よりも運動能力の低下が有意に抑制されており、図4Bに示す結果から、黒線に示すBM-iMGのほうが、灰線に示すコントロールよりも体重の減少も緩やかとなっていることがわかり、図4Cに示すように、BM-iMGの生存曲線が良好であるとの結果が得られた。
上記移植後3週間又は末期における脊髄の組織染色実験、具体的にβ3チューブリン、GFAP、及びIba-1の組織染色実験を常法に従って行った。具体的に使用した抗体を以下に示す。
・ウサギ抗β3チューブリン抗体(セルシグナリングテクノロジー社)
・ウサギ抗GFAP抗体(セルシグナリングテクノロジー社)
・ウサギ抗Iba-1抗体(富士フイルム和光純薬社)
・ウサギ抗β3チューブリン抗体(セルシグナリングテクノロジー社)
・ウサギ抗GFAP抗体(セルシグナリングテクノロジー社)
・ウサギ抗Iba-1抗体(富士フイルム和光純薬社)
図6Aは、コントロール(Buffer CTL)の脊髄と共に、方法Cにより製造したM2ミクログリア様細胞を移植したALSモデルマウス(BM-iMG cells)の脊髄をDAPI染色と共に、β3チューブリンにて染色した結果を示す。この結果から算出した神経細胞数を図5Bに示す。また、図5Cに、Buffer CTLとBM-iMG cellsとの脊髄を、DAPI染色と共に、GFAPにて染色した結果を示す。この結果から算出したGFAP陽性強度を図5Dに示す。
そして、図6Aに、Buffer CTLとBM-iMG cellsとの脊髄を、DAPI染色と共に、Iba-1にて染色した結果を示す。この結果から算出したIba-1陽性細胞数を図6Bに示す。
これらの結果から、BM-iMG cellsでは、末期における神経細胞数の減少を抑制することができる事が明らかとなった。また、BM-iMG cellsでは、末期におけるGFAP陽性強度が抑制されていることが明らかとなった。そして、BM-iMG cellsでは、末期におけるIba-1陽性細胞数が減少していることが明らかとなった。これらの結果から、上記する細胞移植により、脊髄内での神経細胞保護効果、アストログリオーシスの抑制効果、及びミクログリアの集積抑制効果が認められるとが考察される。
次いで、上記移植後3週間又は末期における脊髄の、Nos2、Arg1、CD86、Mrc1、TNFα、及びIL-6の発現量を測定する実験を行った。具体的に、移植後3週間又は末期における脊髄から、実施例2と同様にして全RNAを回収し、定量RT-PCRにて発現量を確認した。定量RT-PCRにて使用したプライマーの塩基配列は、以下の表2に示す通りである。また、Nos2及びArg1のプライマー配列は、上記表1と同じである。なお、内部標準として、β-actinを使用した。この結果を図7に示す。
図7に示す結果から、方法Cにより骨髄単核細胞から誘導したM2ミクログリア様細胞を脊髄に移植したマウス(BM-iMG)では、末期におけるNos2の発現量がコントロール(CTL)よりも減少していることが明らかとなり、Arg1の発現量が、コントロールよりも上昇していることが明らかとなった。また、Mrc1の発現量も、コントロールよりも上昇していることが明らかとなった。そして、BM-iMGでは、IL-6の発現量も、コントロールよりも減少していることが明らかとなった。CD86とTNFαの発現量は、変化なかった。これらの結果から、BM-iMGでは、炎症マーカーであるNos2とIL-6が減少し、細胞保護マーカーであるArg1とCD206遺伝子であるMrc1との発現量が上昇していることから、脊髄内での炎症を抑制し、移植したことが細胞保護的に働いていることが考察される。
Claims (7)
- M2ミクログリア様細胞の製造方法であって、下記の工程1及び2を含む製造方法;
工程1:骨髄単核球細胞に対して、GM-CSFを作用させる工程
工程2:工程1で作用させた後の細胞に対して、GM-CSF及びIL4を作用させる工程。 - 前記工程1における作用期間が48~120時間である、請求項1に記載の製造方法。
- 前記工程2における作用期間が48~120時間である、請求項1又は2に記載の製造方法。
- 工程1及び2において作用させるGM-CSF及びIL4の濃度が、20ng/mlより大きく、40ng/ml以下である、請求項1~3の何れか1項に記載の製造方法。
- 請求項1~4の何れか1項に記載の製造方法によって製造された、骨髄単核球由来M2ミクログリア様細胞。
- 中枢神経疾患の治療及び/又は予防のために使用される、請求項5に記載のM2ミクログリア様細胞を含む医薬組成物。
- 前記中枢神経疾患が、アルツハイマー病、パーキンソン病、脳梗塞、低酸素脳症、脊髄損傷、神経因性疼痛、又は筋萎縮性側索硬化症(ALS)である、請求項6に記載の医薬組成物。
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