JP2023036032A - バブル含有液体およびバブル含有液体の製造方法 - Google Patents

バブル含有液体およびバブル含有液体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の目的は、対象部位の細菌に対して殺菌性および静菌性を有するガス状伝達物質を効率良く送達することが可能なバブル含有液体を提供することである。また、別の目的は、かかるバブル含有液体を安定かつ容易に製造することができるバブル含有液体の製造方法を提供することである。【解決手段】本発明のバブル含有液体は、水性液体と、水性液体中に分散した、ガスを含むバブルとを有する。かかるバブル含有液体は、ガスが、殺菌性または静菌性を有する、生体内で産生される種類のガス状伝達物質を含み、バブルの平均径が、10~1000nmであることを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、殺菌性または静菌性を有するナノバブルを含むバブル含有液体、およびそのバブル含有液体の製造方法に関する。
人体に病気を引き起こす細菌(病原菌)として、大腸菌、黄色ブドウ球菌、結核菌等が知られている。特に、黄色ブドウ球菌は、創傷感染、皮膚感染症、心内膜炎、骨髄炎のような重症感染症等の様々な感染を引き起こす。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は、院内感染症の重要な原因菌であり、治療困難な症例に進行する。
また、これらの細菌が固体表面に集まって固まり、高次構造体を有するバイオフィルムが形成されることが知られている。バイオフィルムを構成する細菌は、高次構造体を形成することで、様々な外的攻撃から身を守っている。その結果、バイオフィルムの抗生物質に対する耐性は、単独で存在する浮遊細菌の抗生物質に対する耐性に比べて数百倍も高くなり、薬剤治療を難しくしている。バイオフィルムのマトリックスは、多糖、DNA、タンパク質からなり、複雑な要因が関与するため、有効な治療方法が確率されていない。病原菌によるバイオフィルムの形成は治療の妨げとなっており、多剤耐性菌の出現抑制や環境への配慮から抗生物質を使用することなく、バイオフィルムの形成を阻止あるいは制御する技術が望まれている。
近年、生体内で産生される一酸化窒素(NO)、硫化水素(HS)、一酸化炭素(CO)等のガス状伝達物質が、生体内で様々な生理活性を有することが認識され、これらのガス状伝達物質の治療的価値が検討されている。これまでに、ガス状伝達物質が、虚血再灌流障害に対する抑制作用や抗炎症作用等、その生理的作用、薬学的作用を有することが明らかにされてきた。ガス状伝達物質による感染症の治療では、多剤耐性菌を出現させることがないため、抗生物質による治療に変わる新たな治療方法として期待されている。
なお、臨床の場でガス状伝達物質を適用するには、対象部位にガス状伝達物質を送達することが必要とされる。ガス状伝達物質を対象部位に伝達する方法としては、皮膚の感染領域を密閉し、密閉空間に一酸化窒素を送達する装置を用いて、感染領域の病原菌の量を低減し、治療する方法が検討されている(例えば、特許文献1)。しかしながら、この方法は、感染領域を密閉しなければ適用できないという問題点がある。また、感染領域を創傷被覆材で覆い、創傷被覆材内の酵素または生細胞による亜硝酸塩の還元により一酸化窒素を生成して、感染領域の治療を行う方法が検討されている(例えば、特許文献2)。しかしながら、この方法では、感染領域への一酸化窒素の供給量が不十分であり、病原菌を十分に殺菌または静菌すること、また、バイオフィルムの形成を効果的に抑制することが難しい。
特表2004-520882号公報 特表2011-525116号公報
本発明は、上記従来の問題点を鑑みたものであり、その目的は、対象部位の細菌に対して殺菌性および静菌性を有するガス状伝達物質を効率良く送達することが可能なバブル含有液体を提供することである。また、別の目的は、かかるバブル含有液体を安定かつ容易に製造することができるバブル含有液体の製造方法を提供することである。
このような目的は以下の(1)~(10)の本発明により達成される。
(1) 水性液体と、前記水性液体中に分散した、ガスを含むバブルとを含むバブル含有液体であって、
前記ガスが、殺菌性または静菌性を有する、生体内で産生される種類のガス状伝達物質を含み、
前記バブルの平均径が、10~1000nmであることを特徴とするバブル含有液体。
(2) 前記ガス状伝達物質は、一酸化炭素、一酸化窒素、硫化水素のうちの少なくとも1種を含む上記(1)に記載のバブル含有液体。
(3) 前記バブル含有液体中に含まれる前記ガス状伝達物質の量は、10~80vol%である上記(1)または(2)に記載のバブル含有液体。
(4) オイル成分および界面活性剤をさらに含む上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のバブル含有液体。
(5) 前記オイル成分は、オレイン酸を構成成分として含むオイル、流動パラフィン、またはシリコーンオイルのうち少なくとも1種を含む上記(4)に記載のバブル含有液体。
(6) 前記オレイン酸を構成成分として含む前記オイルは、オリーブオイルである上記(5)に記載のバブル含有液体。
(7) 前記バブル含有液体中の前記オイル成分の含有量は、0.001~1.0wt%である上記(4)ないし(6)のいずれかに記載のバブル含有液体。
(8) 前記バブル含有液体中の前記界面活性剤の含有量は、0.001~1.0wt%である上記(4)ないし(7)のいずれかに記載のバブル含有液体。
(9) 水性液体と、前記水性液体中に分散した、ガスを含むバブルとを含むバブル含有液体の製造方法であって、
前記水性液体を容器の所定の高さまで注入する工程と、
前記容器に前記ガスを充填させて、前記容器内に前記水性液体および前記ガスを密閉する工程と、
前記水性液体が前記容器の内面に繰り返し衝突するように、所定の回転数で前記容器を振動させることにより、前記バブル含有液体を得る工程と、を有し、
前記ガスが、殺菌性または静菌性を有する、生体内で産生される種類のガス状伝達物質を含み、
前記バブルの平均径が、10~1000nmであることを特徴とするバブル含有液体の製造方法。
(10) 前記ガス状伝達物質は、一酸化炭素、一酸化窒素、硫化水素のうちの少なくとも1種を含む上記(9)に記載のバブル含有液体の製造方法。
本発明によれば、殺菌性または静菌性を有するガス状伝達物質がバブルに封入されることにより、バブル含有液体を対象部位に適用した際に、バブルが対象部位の細菌に付着して、ガス状伝達物質を細菌に効率良く送達することができる。係るバブル含有液体を用いることにより、対象部位の細菌を効率良く殺菌または静菌することができる。
本発明のバブル含有液体の好適な実施形態を説明するための模式図である。 バブル径が1000nm以下のナノバブルと、バブル径が数十ミクロン~数百ミクロンのマイクロバブルとが混在するバブル含有液体が封入された密閉容器を、製造後数時間放置した状態を示す写真である。 本発明のバブル含有液体の製造方法の好適な実施形態を説明するためのフローチャートである。 図4(a)~(d)は、本発明のバブル含有液体の製造方法の好適な実施形態を説明するための断面図である。 図4(c)に示す容器を振動させる工程において、水性液体と容器の内面(上面)とが激しく衝突した状態を説明するための部分拡大図である。 実施例1および比較例1および2の試料を培地に接種し、35℃で48時間経過後の状態を示す画像である。 実施例1および比較例1および2の試料を培地に接種し、35℃で48時間経過後のコロニー数(平均値)を示すグラフである。 実施例1および実施例2のバブル含有液体中のバブル数を測定した結果を示すグラフである。 実施例3および比較例3-5のバブル含有液体中のバブル数を測定した結果を示すグラフである。 実施例4-6および比較例6-8のバブル含有液体中のバブル数を測定した結果を示すグラフである。 実施例1および比較例1の試料を培地(コンパクトドライTC)に接種し、35℃で48時間経過後の状態を示す画像である。 実施例1および比較例1の試料を培地(コンパクトドライTC)に接種し、35℃で48時間経過後のコロニー数(平均値)を示すグラフである。 「ハンドぺたんチェックII」を用いて35℃で48時間培養した後の各試料の状態を示す画像である。 バイオフィルム(表皮ブドウ球菌)の形成後の殺菌効果を示すグラフである。
以下、本発明のバブル含有液体およびバブル含有液体の製造方法を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて説明する。
1.バブル含有液体
まず、バブル含有液体について説明する。
図1は、本発明のバブル含有液体の好適な実施形態を説明するための模式図である。
図1に示すように、本実施形態のバブル含有液体100は、水性液体と、水性液体中に分散した、ガス3を含むバブル1(気泡)とを有する。
このバブル含有液体100は、医療、歯科医療、化粧品、食品、魚介類の養殖、排水処理等の様々な分野に用いることができる。
水性液体としては、例えば、蒸留水、純水、超純水、イオン交換水、RO水等の水、Saline(塩化ナトリウム濃度が0.9%程度の生理食塩水)、PBS(phosphate buffered saline)、KCl点滴液等の塩水溶液、グルコース、スクロース等の糖水溶液、アミノ酸水溶液、タンパク質水溶液、銅、鉄、金、プラチナ等の金属イオンを含む金属イオン水溶液、ナトリウム、マグネシウム、リン、カリウム、カルシウム、マンガン、クロム、亜鉛等の各種ミネラルを含むミネラル水溶液、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB12、ビタミンC等の水溶性ビタミンおよび/またはビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK等の脂溶性ビタミンを含むビタミン水溶液、炭水化物水溶液、抗体水溶液、RNA、DNAおよびこれらの誘導体等を含む核酸を含む核酸水溶液、各種色素を含む色素水溶液、塩化ガドリニウム、硫化ガドリニウム等のガドリニウム化合物を含むガドリニウム水溶液等が挙げられる。これらは、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
ガス3は、生体内で産生される種類のガス状伝達物質を含む。このガス状伝達物質は、脂溶性であるため、レセプターを介することなく細胞膜を自由に透過することができ、生体内で様々な生理活性を有する。ガス状伝達物質は、この生理活性作用により、細菌(病原菌)に対する殺菌性または静菌性を有する。
生体内で産生される種類のガス状伝達物質としては、一酸化炭素(CO)、一酸化窒素(NO)、硫化水素(HS)、亜酸化窒素(NO)等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのガス状伝達物質の中でも、特に、一酸化炭素(CO)、一酸化窒素(NO)、硫化水素(HS)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。これらのガス状伝達物質は、細菌に対する優れた殺菌性を有し、バブル1中にこれらのガス状伝達物質が封入されることにより、ガス状伝達物質を対象部位の細菌に効率良く送達することができる。
また、同じ製造条件でバブル含有液体100を製造する際に、ガス状伝達物質として、一酸化炭素(CO)を用いることにより、他の各種ガス状伝達物質を用いた場合に比べて、バブル含有液体100中に生成されるバブル1の量をより多くすることができる。これは、一酸化炭素が、他の各種ガス状伝達物質に比べて水性液体中での安定性が高いためであると考えられる。そのため、より安定的に多量のバブル1を含むバブル含有液体100を得る際には、ガス状伝達物質として、一酸化炭素を用いることが効果的である。
また、バブル含有液体100中に含まれるガス状伝達物質の量は、特に限定されないが、10~80vol%程度であることが好ましく、15~65vol%程度であることがより好ましく、20~50vol%程度であることがさらに好ましい。ガス状伝達物質の量が上記範囲内であれば、バブル含有液体100を用いて、対象部位の細菌を効率良く殺菌または静菌することができる。また、ガス状伝達物質の量が上記範囲内であれば、生体に悪影響を与えることなく、安全にバブル含有液体を使用することができる。
また、ガス3は、上述したガス状伝達物質以外のガス状物質を含んでいてもよい。このようなガス状物質としては、特に限定されないが、例えば、空気、亜酸化窒素、酸素、二酸化炭素、水素等のガスや、窒素、ヘリウム、アルゴン、キセノン、クリプトンのような不活性ガス、六フッ化硫黄、十フッ化二硫黄、トリフルオロメチル硫黄ペンタフルオリドのようなフッ化硫黄、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、エチレン、プロピレン、プロパジエン、ブテン、アセチレン、プロピン、パーフルオロプロパン、パーフルオロブタン、パーフルオロペンタンのような低分子量炭化水素類またはこれらのハロゲン化物、ジメチルエーテルのようなエーテル類、ケトン類、エステル類等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、バブル含有液体100中のバブル1は、所定量のガス3が微分散または溶解している水性液体を用いることにより形成される。ここで、水性液体中のガス3の含有量が多いほど、水性液体中に、十分に多量のバブル1を存在させつつ、バブル1同士の衝突による合体や消滅を抑制することができる。これにより、バブル含有液体100中に、バブル1を多量に含ませることができるとともに、バブル1の経時安定性をより向上させることができる。
ところで、水性液体中のバブル1は、その表面(ガス3と水性液体との間の気液界面)に存在する水分子のクラスター構造に起因して、安定化が図られると考えられる。水分子のクラスター構造は、水分子の一部が電離することで生じた若干量の水素イオン(H+)および水酸化物イオン(OH-)を含んでいる。これらのイオン(特に、水酸化物イオン)の影響で、バブル1は帯電している。これにより、バブル1同士は、電気的な反発力により合体(付着)することが抑制されると考えられる。
また、バブル径が1000nm以下のウルトラファインバブル(ナノバブル)は、数十ミクロン~数百ミクロンのマイクロバブルに比べて、バブル1同士の合体(付着)がより抑制され、水性液体中でより安定的に存在することができる。
本発明者は、バブル径が1000nm以下のバブルが水性液体中で安定的に存在することに着目し、生体内で産生される種類のガス状伝達物質を封入したバブルが水性液体中に分散したバブル含有液体を用いて、対象部位の細菌にバブル内のガス状伝達物質が送達され、生理活性作用が発現するか否かについて検討を重ねた。その結果、バブル径が1000nm以下のバブルが、細菌表面(細菌の細胞膜)に付着する現象が確認され、さらに、細菌に対するガス状伝達物質の生理活性作用が発現することが明らかとなった。
すなわち、殺菌性または静菌性を有するガス状伝達物質がバブル1に封入されることにより、バブル含有液体100を対象部位に適用した際に、バブル1が対象部位の細菌に付着して、ガス状伝達物質を細菌に効率良く送達することができる。その結果、対象部位の細菌を効率良く殺菌または静菌することができる。対象部位をバブル含有液体100に晒すだけで、対象部位の細菌にバブル1が付着し、ガス状伝達物質を細菌に送達することができるため、対象部位をガス状伝達物質の雰囲気中に晒す場合に比べて、対象部位の細菌を効率良く殺菌または静菌することができる。また、バブル1が細菌に付着する性質を利用して、細菌の高次構造体であるバイオフィルムを縮小させ、あるいは、除去することができる。すなわち、バブル含有液体100は、バイオフィルムの形成を抑制し、さらにバイオフィルムを除去する効果を有する。
図2は、バブル径が1000nm以下のナノバブルと、バブル径が数十ミクロン~数百ミクロンのマイクロバブルとが混在するバブル含有液体が封入された密閉容器を、製造後数時間放置した状態を示す写真である。図2に示されるように、マイクロバブルは、製造後、時間の経過に伴い、密閉容器の上方に浮遊して、比較的短時間で消失してしまう。一方、ナノバブルは、製造後、十分な時間が経過しても、バブル含有液体中に存在し続けることを確認している。したがって、バブル含有液体100中のバブル1が、1000nm以下のバブル径を有するナノバブルであることにより、上記各種ガス状伝達物質を封入したマイクロバブルを含有するバブル含有液体を用いる場合に比べて、細菌に対して、より優れた殺菌性または静菌性が発現されることは明らかである。
また、バブル含有液体100は、水性液体以外に、オイル成分、界面活性剤、糖類、タンパク質、塩類のうち少なくとも1種以上のその他の成分を含むことができる。
前述したように、バブル1同士は、電気的な反発力により合体(付着)することが抑制されると考えられる。バブル含有液体100中に上記の成分を含ませることにより、バブル1同士の電気的な反発力に加え、上記の成分がバブル1表面付近やバブル1同士の間に存在し、その立体障害作用により、バブル1同士が付着することを長期間にわたって抑制することができる。これにより、水性液体中でのバブル1の経時安定性が向上する。その結果、バブル含有液体100は、長期間保存した場合でも、含まれるバブル1の数およびサイズの変動を抑え、バブル1の経時安定性に優れる。
オイル成分としては、油脂、炭化水素油、シリコーンオイル等が挙げられる。油脂としては、例えば、オリーブオイル、サフラワーオイル、アボガドオイル、ツバキオイル、タートルオイル、マカデミアナッツオイル、トウモロコシオイル、ミンクオイル、ナタネ油、ゴマ油、パーシック油、ヒマシ油、亜麻仁油、ブドウ種子油、シソの実油、ヒマワリ油、エゴマ油、ゴマ油、パーム油、ヤシ油、チアシード油、ココナッツ油、ヘンプ油、魚油、クリルオイル、くるみ油、カシューナッツ油、サチャインチ種子油等が挙げられる。これらの油脂の中でも、オレイン酸を構成成分として含むオイル(油脂)が好ましく、特に、オリーブオイル、サフラワーオイル等のオレイン酸濃度が高いオイルを用いることが好ましい。特に、オリーブオイルを用いた際に、バブル1の経時安定性が特に向上する効果が得られる。また、オイル成分として、オレイン酸を単独で用いることもできる。
また、炭化水素油としては、例えば、流動パラフィン、スクワラン、スクワレン、イソパラフィン、流動イソパラフィン、α-オレフィンオリゴマー等が挙げられる。これらの炭化水素油の中でも、流動パラフィンを用いた際に、バブル1の経時安定性が特に向上する効果が得られる。
また、シリコーンオイルとしては、様々な動粘度(オイル硬度)を有するオイルを用いることができる。
なお、本発明者は、使用するシリコーンオイルの動粘度が、バブル含有液体100中に生成されるバブル1の量に及ぼす影響を検討した。その結果、動粘度がより低いシリコーンオイルを用いることにより、バブル含有液体100中に生成されるバブル1の量をより多くすることができることを見出した。より具体的には、使用するシリコーンオイルの20℃における動粘度は、50~1000cStであることが好ましく、100~900cStであることがより好ましく、150~500cStであることがさらに好ましい。動粘度が上記範囲内のシリコーンオイルを用いることにより、より安定的に多量のバブル1を含むバブル含有液体100を得ることができる。
特に、ガス状伝達物質として一酸化炭素を使用し、オイル成分として動粘度が上記範囲内のシリコーンオイルを用いることにより、極めて多量のバブル1を含むバブル含有液体100を得ることができる。
ガス状伝達物質としての一酸化炭素と、オイル成分としてのシリコーンオイルとを含むバブル含有液体100は、バブル含有液体100中に多量のバブル1が安定的に存在するため、様々な細菌による感染症の治療に特に有効である。また、このようなバブル含有液体100は、バブル1が高濃度で含まれているため、感染症の治療以外の医療、食品、魚介類の養殖、排水処理等の様々な分野においても、少量の液体(バブル含有液体)で効果的に洗浄、殺菌等する場合に利用することができる。
バブル含有液体100がオイル成分を含む場合に、バブル含有液体100中のオイル成分の含有量は、特に限定されないが、使用する水性液体の種類に応じて、適宜変更することが好ましい。例えば、バブル含有液体100中のオイル成分の含有量は、0.001~1.0w/v%程度であることが好ましく、0.005~0.5w/v%程度であることがより好ましく、0.01~0.1w/v%程度であることがさらに好ましい。オイル成分の含有量が上記範囲内であれば、バブル含有液体100は、長期間保存した場合でも、含まれるバブル1の数およびサイズの変動をより確実に抑えることができ、バブル1の経時安定性をより向上させることができる。
なお、バブル含有液体100中のオイル成分の含有量を、0.01~0.1w/v%程度とすることにより、後述するようなバブル含有液体の製造方法を用いて、より容易に平均径が10~1000nm程度のバブル1を含有するバブル含有液体100を得ることができる。また、バブル含有液体100中のオイル成分の含有量を、0.01~0.1w/v%の範囲で変化させることにより、バブル含有液体100中に生成されるバブル1の量を調整することができる。具体的には、オイル成分の含有量を上記範囲内で増やすことにより、バブル含有液体100中に生成されるバブル1の量を増やすことができる。このような特性を利用して、バブル含有液体100の製造条件(例えば、製造容器の振動数、振動時間等)を変えることなく、オイル成分の含有量を調整して、バブル含有液体100中に生成されるバブル1の量を調整することができる。
界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等を用いることができる。また、これらの界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。特に、バブル含有液体100がオイル成分を含む場合には、オイル成分と併せて界面活性剤を用いることにより、水性液体中にバブル1をより安定的に存在させることができる。
バブル含有液体100がオイル成分を含む場合に、バブル含有液体100中の界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、使用する水性液体の種類に応じて、適宜変更することが好ましい。例えば、バブル含有液体100中の界面活性剤の含有量は、0.001~1.0w/v%程度であることが好ましく、0.005~0.5w/v%程度であることがより好ましく、0.01~0.1w/v%程度であることがさらに好ましい。特に、オイル成分および界面活性剤の含有量が上記範囲内であれば、バブル含有液体100は、長期間保存した場合でも、含まれるバブル1の数およびサイズの変動をより確実に抑えることができ、バブル1の経時安定性をより向上させることができる。
糖類(多糖類を含む)としては、例えば、グルコース、スクロース、デキストリン等が挙げられる。また、タンパク質としては、例えば、アルブミン、グロブリン等が挙げられる。塩類としては、例えば、NaCl、KCl、NaHPO、KHPOおよびCNaOや、鉄イオン、金イオン、銅イオン等の各種金属イオンの塩化物等が挙げられる。
このような成分で構成されたバブル1の径は、後述する本発明のバブル含有液体の製造方法の各工程の条件を変更することにより変化する。すなわち、製造されるバブル1は、ナノサイズ(数百ナノメートル~1μm程度)を有することとなる。
具体的に、本実施形態では、バブル1の平均径は、10~1000nm程度であるが、20~700nm程度であるのが好ましく、50~500nm程度であるのがより好ましい。バブル1の平均径が上記範囲内であれば、バブル1が水性液体中でより安定的に存在することができる。また、マイクロバブルに比べて、バブル1の比表面積が大きくなることにより、より多くのバブル1を対象部位の細菌表面に付着させることができ、細菌をより効率良く殺菌または静菌することができる。
なお、図1に示すバブル1の平均径は、例えば、レーザー回折・散乱法、ナノ粒子トラッキング解析法、電気抵抗法、AFM(Atomic Force Microscope)、レーザー顕微鏡による観測等により測定することができる。なお、レーザー回折・散乱法によるバブルの平均径を測定する装置としては、ベックマン・コールター社製のフローサイトメーター(商品名;CytoFlex)を用いることができる。また、ナノ粒子トラッキング解析法によるバブルの平均径を測定する装置としては、Malvern社製のナノ粒子解析システム(商品名:nanosight)を用いることができる。また、AFMを測定する装置としては、Malvern社製の共振式粒子計測システム(商品名:アルキメデス)を用いることができる。
上述したようなバブル含有液体100は、以下に記載する本発明のバブル含有液体の製造方法により製造することができる。以下、本発明のバブル含有液体の製造方法について、詳細に説明する。
2.バブル含有液体の製造方法
<第1実施形態>
次に、本発明のバブル含有液体の製造方法の好適な実施形態について説明する。
図3は、本発明のバブル含有液体の製造方法の好適な実施形態を説明するためのフローチャートである。図4(a)~(d)は、本発明のバブル含有液体の製造方法の好適な実施形態を説明するための断面図である。図5は、図4(c)に示す容器を振動させる工程において、水性液体と容器の内面(上面)とが激しく衝突した状態を説明するための部分拡大図である。
なお、以下の説明では、図4(a)~(d)および図5中の上側を「上」と言い、図4(a)~(d)および図5中の下側を「下」と言う。
本実施形態のバブル含有液体の製造方法は、図3に示すように、工程(S1)~(S5)の5つの工程を有する。工程(S1)は、水性液体とその他の成分とを含む混合液、および混合液が注入されるバブル製造用容器(以下、単に「製造容器」という)を準備する工程である。工程(S2)は、混合液を製造容器の所定の高さまで注入する工程である。工程(S3)は、製造容器内にガスを充填して、製造容器内を加圧した状態で製造容器を密閉する工程である。工程(S4)は、混合液が容器の内面に繰り返し衝突するように、所定の回転数で製造容器を振動させる工程である。工程(S5)は、製造容器を静置する工程である。
本実施形態のバブル含有液体の製造方法では、あらかじめ、水性液体中に上述した任意のその他の成分を分散または溶解させて混合液とし、この混合液中にバブルを生成させることにより、バブル含有液体を得ることができる。以下、これらの工程について順次説明する。
[S1] 準備工程
図1に示すバブル1を含有するバブル含有液体100を製造する際には、まず、水性液体およびその他の成分を調製容器に入れて、その他の成分を水性液体に分散または溶解させる。これにより、混合液10を調製する。すなわち、調製容器内に水性液体およびその他の成分を所定量加えた後、攪拌して、その他の成分を水性液体に分散または溶解させる。
なお、その他の成分、水性液体を調製容器に入れる順番は、特に限定されない。バブル保持剤を水性液体に分散または溶解させる方法としては、例えば、攪拌子による攪拌、超音波処理等を用いることができる。
水性液体およびその他の成分としては、それぞれ、前述した水性液体および各種成分が使用される。
次に、製造容器20を準備する。
製造容器20は、開口部を備え、混合液10を収容する容器本体21と、容器本体21を密閉するための蓋22とを有している。
容器本体21は、特に限定されないが、図4(a)に示すような外形が有底円筒状をなしていることが好ましい。本実施形態では、容器本体21として、容量が0.5~20ml程度のバイアル瓶を用いる。本発明のバブル含有液体の製造方法では、容器本体21として、このような容量の小さなバイアル瓶を用いた場合であっても、容器本体21を蓋22で密閉した際に、容器本体21内の密閉空間で適切な圧力が混合液10に付与されるので、均一なサイズのバブル1を安定的に得ることができる。
このように容量の小さいバイアル瓶(容量:0.5~20ml程度)の寸法は、長手方向の長さXが、35~60mm程度であり、外径Rが、10~40mm程度である。
蓋22は、図4(b)~(d)に示すように、容器本体21の瓶口に密着する円盤状のゴム栓(セプタム)221と、ゴム栓221を容器本体21の瓶口に固定する締付部222とを備えている。
[S2]混合液を製造容器に注入する工程
調製された混合液10を容器本体21(製造容器20)の所定の高さまで注入する。本実施形態では、図4(a)に示すように、Y[mm]まで注入する。したがって、図4(a)に示すように、混合液10が注入された状態の容器本体21は、その上部に空隙部11を有する。
本実施形態では、混合液10が注入された容器本体21(製造容器20)を水平に静置した状態において、容器本体21の高さ(長手方向の長さ)をX[mm]とし、容器本体21における混合液10の液面の高さをY[mm]としたとき、0.2≦Y/X≦0.7の関係を満足するのが好ましい。上記関係を満足することにより、十分な大きさの空隙部11が存在するので、工程(S4)において、混合液10を製造容器20の上下面および側面(特に、上下面)により勢いよく衝突させることができる。この衝突により、混合液10中に衝撃波が生じ、混合液10中にバブル1を容易に形成することができる。
なお、前記関係は、0.3≦Y/X≦0.5の関係を満足するのがより好ましく、0.35≦Y/X≦0.4の関係を満足するのがさらに好ましい。これにより、工程(S4)において、混合液10中にバブル1をより容易に形成することができる。
[S3]製造容器を密閉する工程
次に、容器本体21にガス3を充填させて、製造容器20内を加圧した状態で密閉する(図4(b)参照)。具体的には、混合液10が注入された容器本体21の空隙部11を、ガス3でパージした後、蓋22を容器本体21の開口部(瓶口)に締付ける。これにより、製造容器20内に混合液10とガス3とが密閉される。
容器本体21の空隙部11をガス3でパージする方法としては、例えば、混合液10が注入された容器本体21をチャンバー内に移動させる。次に、チャンバー内の空気をガス3で置換する。その後、蓋22を容器本体21の開口部に締付けることにより、製造容器20内に混合液10とガス3とを密閉することができる。
ガス3としては、前述した各種ガス状伝達物質、または、各種ガス状伝達物質とそれ以外のガス状物質との混合ガスが使用される。
次に、ガス3が充填された注射器を準備する。そして、注射器の注射針をゴム栓221に刺通する。その後、注射器から製造容器20内にさらにガス3を加えることにより、製造容器20内が加圧される。その後、ゴム栓221から注射針を抜去する。これにより、製造容器20内がガス3により加圧された状態で密閉された製造容器20を得ることができる。
本実施形態のバブル含有液体の製造方法では、製造容器20内の圧力(空隙部11に充填されたガス3の圧力)を1.0atmより大きくする。特に、製造容器20内の圧力は、1.5~10atmであるのが好ましく、2~5atmであるのがより好ましい。これにより、ガス3の一部が混合液10に微分散または溶解する。
混合液10にガス3が微分散または溶解することにより、工程(S4)において、混合液10と製造容器20とが衝突して衝撃波が発生する際に、バブル1が発生し易くなる。これにより、工程(S4)において、混合液10中により多くのバブル1を生成させることができる。
また、製造容器20中の圧力を1.0atmよりも大きい任意の値に設定することにより、混合液10中に生成するバブル1の径および含有量をより容易に調整することができる。
なお、本実施形態では、製造容器20内を加圧した状態(製造容器20内の圧力を1.0atmよりも大きくした状態)としているが、製造容器20内を加圧することなく、次工程(S4)を行ってもよい。
[S4]製造容器を振動させる工程
次に、混合液10が、製造容器20の上下面および側面(特に、上下面)に繰り返し衝突するように、製造容器20を振動させる。本実施形態では、図4(c)に示すように、製造容器20が、ほぼその長手方向(図4(c)では、鉛直方向)に往復運動するように、製造容器20を振動させる。
本工程では、工程(S3)で密閉した製造容器20(図4(c)の下図)を上方向に振動させる(図4(c)の真中の図)。これにより、混合液10は、製造容器20の中間付近に移動する。更に製造容器20を上方向に振動させると、混合液10が製造容器20の上部に移動して、蓋22の下面(ゴム栓221)に衝突する(図4(c)の上図)。この際に、図5に示すように、衝撃波が発生する。この衝撃波の圧力により、ガス3が混合液10中に微分散し、バブル1が形成する。このバブル1内には、振動により混合液10に微分散または溶解したガス3が含まれる。
一方、製造容器20(図4(c)の上図)を下方向に振動させる(図4(c)の真中の図)。これにより、混合液10は、製造容器20の中間付近に移動する。更に製造容器20を下方向に振動させると、混合液10が製造容器20の下部に移動して、製造容器20の下面に衝突する(図4(c)の下図)。この時も、図5に示すように、衝撃波が発生する。
また、製造容器20を鉛直方向に振動させる際に、混合液10は、製造容器20の内側の側面とも衝突する。この時も、図5に示すように、衝撃波が発生する。
以上の操作を繰り返し行うことによって、混合液10中に均一なサイズのバブル1を多量に安定的に生成させることができる。
本実施形態のバブル含有液体の製造方法では、十分に微細で、均一なサイズのバブル1を得るために、製造容器20を5000rpm以上で振動させるのが好ましい。これにより、混合液10と製造容器20とが衝突する際に発生する衝撃波の大きさ(圧力)が十分に大きくなり、混合液10中に生じるバブル1が微細化され、そのサイズを均一にすることができる。また、製造容器20の回転数を上記範囲内で低めに設定した場合には、発生する衝撃波の大きさが小さくなるので、比較的径の大きなバブル1を生成することができる。また、回転数を高めに設定した場合には、発生する衝撃波の大きさが大きくなるので、比較的径の小さいバブル1を生成することができる。なお、本明細書において、製造容器20の「回転数」とは、単位時間当たりに、製造容器20がその全振動経路を移動する回数を意味する。例えば、製造容器20が5000rpmで振動するとは、製造容器20が、1分間に全振動経路を5000回移動(振動)することを意味する。
また、製造容器20の回転数は、5500rpm以上であることがより好ましく、6000~20000rpmであることがさらに好ましい。製造容器20の回転数を上記範囲内とすることにより、振動により生成したバブル1同士が、衝突により崩壊したり、合体して粗大化するのをより確実に防止することができる。これにより、バブル1の径を微細化しつつ、より均一なサイズのバブル1を多量に混合液10中に生成させることができる。
上記のような回転数で製造容器20を振動させることができる装置としては、例えば、ビーズ方式の高速細胞破砕システム(ホモジナイザー)を用いることができる。
また、混合液10と製造容器20とが衝突する際に発生する衝撃波の圧力は、40kPa~1GPaとなることが好ましい。混合液10と製造容器20との衝突時に発生する衝撃波の圧力が上記範囲内となることにより、混合液10中に生じるバブル1をより微細化し、そのサイズをより均一にすることができる。特に、混合液10と製造容器20との衝突時に発生する衝撃波の圧力が大きくなるほど、より微細なバブル1を生成することができる。
製造容器20を振動させる際に、製造容器20の長手方向の振動幅は、0.7X~1.5X[mm]程度であるのが好ましく、0.8X~1X[mm]程度であるのがより好ましい。これにより、製造容器20の振動時に、混合液10と製造容器20の下面および蓋22とを確実に衝突させることができ、混合液10と製造容器20の下面および蓋22との衝突回数を十分に多くすることができる。また、このように十分な振動幅で製造容器20を振動させることにより、混合液10が製造容器20内を移動する速度が大きくなる。そのため、混合液10と製造容器20の下面および蓋22との衝突時に発生する衝撃波の大きさが十分に大きくなる。結果として、混合液10中に微細なバブル1を多量に生成させることができる。
また、製造容器20を鉛直方向に往復運動させる際に、製造容器20は、その短手方向(水平方向)にも振動させるのが好ましい。これにより、製造容器20の内側の側面にも混合液10が衝突するので、混合液10に衝撃波をより多く発生させることができる。製造容器20の短手方向への振動幅は、0.3X~0.8X[mm]程度であるのが好ましく、0.5X~0.7X[mm]程度であるのがより好ましい。これにより、上述した効果はより顕著となる。
なお、製造容器20を振動させる方向は、その短手方向のみであってもよい。この場合、製造容器20の短手方向(水平方向)への振動幅は、上述した短手方向への振動幅と同じであることが好ましい。かかる振動幅であれば、製造容器20の内側の側面に混合液10が確実に衝突するので、混合液10に衝撃波をより多く発生させることができる。その結果、混合液10中に微細なバブル1を多量に生成させることができる。
また、本工程では、混合液10を製造容器20の上下面および側面に衝突させる際における製造容器20と製造容器20内の混合液10との瞬間相対速度が40km/h以上となるように製造容器20を振動させることが好ましい。また、かかる瞬間相対速度が50km/h以上となるように製造容器20を振動させることがより好ましい。上記条件を満足することにより、混合液10と製造容器20とが衝突する際に生じる衝撃波の圧力を十分に大きくすることができる。その結果、混合液10中に生じるバブル1をより微細化し、そのサイズをより均一にすることができる。
なお、製造容器20を上記条件で振動させる時間は、10~120秒程度であるのが好ましく、30~60秒程度であるのがより好ましい。製造容器20の振動時間を上記範囲内とすることにより、混合液10が製造容器20と衝突する回数が十分に多くなるため、混合液10中に、多量のバブル1を生成させることができる。なお、製造容器20の振動時間を上記範囲内で長く設定することにより、混合液10中に生成されるバブル1の量をより多くすることができる。
混合液10中に生成されるバブル1の平均径は、製造容器20の回転数を前述した範囲内で変更することにより調整することができる。本実施形態では、おおよそ数十~数百ナノメーターサイズのナノバブルを安定的に生成することができる。
なお、本実施形態では、製造容器20が、ほぼその長手方向に往復運動するように、製造容器20を振動させているが、製造容器20を振動させる方法は、これに限定されない。例えば、製造容器20が、主として、その短手方向および/または長手方向に回転運動するように、製造容器20を振動させてもよい。この場合であっても、製造容器20内の混合液10は、製造容器20の上下面および側面に繰り返し衝突することにより、衝撃波が発生する。このような振動方法を用いても、混合液10中に、均一なサイズのバブル1を多量に安定的に生成することができる。
[S5]製造容器を静置する工程
上記条件で製造容器20を振動させた後、製造容器20を静置する(図4(d)参照)。これにより、製造容器20内に、均一なサイズのバブル1(図1参照)を多量に含有するバブル含有液体100を製造することができる。また、同時に、バブル含有液体100が封入されたバブル含有容器(以下、単に「バブル含有容器」という)を得ることができる。
なお、上述した工程(S2)~(S4)は、一定の温度下で行われるのが好ましい。製造過程における温度条件が一定であれば、各工程(S2)~(S4)において、混合液10(水性液体)の特性(粘性等)が安定するため、混合液10中にバブル1を安定的に生成することができる。各溶液の温度を一定に維持するための方法としては、例えば、上述した各工程(S2)~(S4)をグローブボックスや恒温槽内で行う方法が挙げられる。特に、工程(S4)において、製造容器20を高速で振動させるため、混合液10と製造容器20の内面との衝突により製造容器20が発熱し易い。しかし、恒温槽内で製造容器20を振動させることにより、混合液10の温度が上昇するのを確実に防止することができる。その結果、混合液10中に均一な径のバブル1を安定的に生成することができる。
以上の工程(S1)~(S5)を経て、平均径が10~1000nm程度のバブル1を含有するバブル含有液体100が製造される。
なお、従来のバブルの製造方法では、大掛かりな還流装置や、バブルの製造装置を構成する様々なシステム(チューブ、ノズル、コンプレッサ等)が必要であった。そのため、食品分野や医療分野等に用いられるバブルを製造する際に、清潔で、かつ無菌環境を維持するのが困難であった。これに対して、本発明では、バブル含有液体100の製造に気密性の高い製造容器20を用いるため、混合液10およびガス3を製造容器20内に含有した状態で、例えば、γ線滅菌等による滅菌処理を製造容器20混合液10に施せばよい。これにより、製造容器20内が滅菌されるため、バブル含有液体100を滅菌環境下で製造することができる。
上記のようにして得られたバブル含有液体100中において、バブル1は安定的に存在することができる。そのため、得られたバブル含有液体100は、室温にて長期保存することができる。具体的には、10~36か月間もの期間にわたって保存することができる。また、これだけ長期間保存した後でも、混合液10中でのバブル1の安定性が高いため、再度バブル含有容器を振動させたりする必要なく、使用することが可能である。また、製造容器として、容量が小さい製造容器20を用いることができるので、バブル含有容器の単価を抑えることができる。そのため、上記のようにして得られたバブル含有容器は、医療機関等にとっては、取扱い易いというメリットがある。
[S6]遠心分離処理工程
本実施形態のバブル含有液体の製造方法は、工程(S4)後、工程(S5)前に、または、工程(S5)後に、製造容器20に対して、遠心分離処理を行ってもよい。この処理により、製造容器20内に生成されたバブル1を、所望の径別に分離することができる。
具体的には、バブル含有容器に対して遠心分離処理を行うことにより、径の大きいバブル1が製造容器20の上層へ移動する傾向があり、径の小さいバブル1が製造容器20の下層へ移動する傾向がある。したがって、製造容器20の上層の液体(上澄み液)を吸引手段(注射器、ピペット等)により除去すれば、製造容器20内に残存するバブル含有液中のバブル1の平均径は、工程(S5)後に得られたバブル含有液体100中のバブル1の平均径よりも小さくなる。また、吸引手段により吸引したバブル含有液体(上澄み液)中のバブル1の平均径は、工程(S5)後に得られたバブル含有液体100中のバブル1の平均径よりも大きくなる。このように、遠心分離処理を用いることにより、より単分散なバブル径分布を有するバブル1を得ることができる。
また、混合液10と比重の異なる物質をバブル含有液体100に加えて、遠心分離処理することにより、径の大きいバブル1がより上層へと移動し易くなり、径の小さいバブル1がより下層へと移動し易くなる、その結果、より単分散なバブル径分布を有するバブル1を得ることができる。
工程(S1)~(S4)を経て、例えば、平均径が600nmのバブル1を含有するバブル含有液体100を経た場合、遠心分離の条件を適宜設定することにより、平均径が200~400nmのバブル1を含有するバブル含有液体を得ることができる。このバブル含有液体100を対象部位に適用した場合には、比較的径が大きいバブル1が存在しないため、より多くのバブル1を対象部位の細菌表面に付着させることができ、細菌をより効率良く殺菌または静菌することができる。
遠心分離処理の条件は、分離するバブル1の平均径によって適宜設定され、例えば、バブル含有液体100に1×g~22000×g程度の遠心加速度が30秒~24時間程度かかるようにする。遠心加速度を小さく設定(1×g~100×g程度)する場合には、長時間(12時間~24時間程度)にわたって処理することにより、より単分散なバブル径分布を有するバブル1を得ることができる。また、遠心加速度を大きく設定(100×g~22000×g)する場合には、比較的短時間(30秒~12時間程度)の処理により、より単分散なバブル径分布を有するバブル1を得ることができる。遠心分離処理を上記条件で行うことにより、所望の平均径を有するバブル1を効率良く分離することができる。
上記のような遠心加速度でバブル含有容器に遠心分離処理を行うことができる遠心分離機としては、特に限定されないが、例えば、商品名「TOMY MX-301」(トミー精工社製)等の微量高速冷却遠心機を用いることができる。なお、上記微量高速冷却遠心機を用いる場合には、その回転数が50~2000rpm程度に設定することにより、上記範囲の遠心加速度(遠心力)がバブル含有液体に負荷される。
また、遠心分離処理は、1回でもよいし、複数回にわたって行ってもよい。
上述したように、本実施形態では、工程(S1)~(S5)を行うことにより、均一なサイズのバブル1を多量に安定的に含有するバブル含有液体100を製造することができる。ただし、本実施形態のバブル含有液体の製造方法は、これに限定されない。例えば、前述した工程(S6)を、工程(S4)を行った後に行い、その後、工程(S5)を経て、バブル含有液体100を得てもよい。また、工程(S5)の後に、工程(S4)を少なくとも1回以上繰り返し行うようにしてもよい。
また、水性液体とその他の成分とを含む混合液の代わりに、水性液体のみを用いてバブル含有液体100を製造することもできる。
3.使用方法
上記のようにして得られたバブル含有容器は、患者の感染部位をバブル含有容器内のバブル含有液体100に浸すことにより、様々な細菌による感染症の治療を行うことができる。また、医療器具をバブル含有液体100に浸すことにより、医療器具表面に付着した細菌(およびバイオフィルム)の除去に用いることができる。さらに、バブル含有液体100は、歯垢の除去性能に優れた、歯磨剤やマウスウォッシュ等の口腔用組成物として適用することができる。
また、既存の抗生剤として、点滴等により血管から投与され、感染部位のバイオフィルムを殺菌または静菌する形態が知られているが、このような抗生剤の代わりに、本願発明のバブル含有液体100を用いることもできる。この方法であれば、敗血症、肺炎、脳炎等の治療へ適用することができる。抗生剤を用いるよりも、バブル含有液体100中のバブル1の方が、感染部位により早く到達し、効率的にバイオフィルムを殺菌または静菌することができる可能性がある。さらに、バブル含有液体100を経口摂取したり、肛門から注入する方法も考えられる。この方法であれば、胃、腸管内のバイオフィルムを殺菌または静菌することができる可能性がある。また、同様に、鼻腔の中(副鼻腔炎)、点眼液(角膜炎、結膜炎)、外耳道(鼓膜炎)、膀胱、尿道(膀胱炎、腎孟腎炎)等へ適用できる可能性がある。
また、上記のようにして得られたバブル含有容器は、医療、歯科医療の用途以外にも、様々な分野に適用することができる。例えば、上記のようにして得られたバブル含有容器内のバブル1は、水や食材に対する殺菌効果を有するとともに、食材の鮮度を維持する効果を有する。さらに、バブル1と、水と、油分(疎水性成分)とを含む液体中では、水に対して多量の油分を混合することができる。この効果を利用して、食材中の水分と油分との分離を抑制して調理することも可能である。したがって、得られたバブル含有液体を食品分野に用いることも可能である。
以上、本発明のバブル含有液体およびバブル含有液体の製造方法を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、各工程は、同様の機能を発揮し得る任意の工程と置換することができる。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
(実施例1)
[準備工程]
まず、調整容器としての15mlのバイアル瓶に、生理食塩水(0.9w/v%NaCl水溶液)2mlと、オリーブオイル(日本薬局方 オリブ油)0.01gと、蒸留水8mlとを入れた。その後、生理食塩水、オリーブオイルおよび蒸留水を撹拌することにより、塩化ナトリウム(NaCl)濃度が0.18w/v%の食塩水を準備した。なお、準備した食塩水中のオリーブオイル濃度は0.01w/v%であった。また、製造容器としての2mlのバイアル瓶(高さX:45mm、外径R:13mm)を準備した。なお、このバイアル瓶は、図4に示す製造容器20と同様の形状をなしている。
[混合液を容器に注入する工程]
2mlバイアル瓶内に、準備した食塩水700μlを注入した。なお、食塩水の液面の高さYは、25mmであった。
[容器を密閉する工程]
次に、食塩水が注入されたバイアル瓶内の空隙を一酸化炭素(CO)でパージした後、バイアル瓶の瓶口に図4に示す蓋22と同様の形状の蓋を挿着した。次に、一酸化炭素が充填された注射器を準備した。注射器の注射針で蓋のゴム栓を刺通して、注射器からバイアル瓶内にさらに2mlの一酸化炭素を加えた。これにより、内部の圧力が1.3atmの密閉バイアル瓶を得た。
[容器を振動させる工程]
次に、市販の高速細胞破砕システムを用いて、密閉バイアル瓶を、6500rpmで120秒間振動させた後に20秒間静置させた。本工程において、密閉バイアル瓶は、上下方向および左右方向に往復運動し、食塩水がバイアル瓶の上下面および側面に繰り返し衝突することを確認した。なお、密閉バイアル瓶を振動させる際に、密閉バイアル瓶の長手方向(鉛直方向)の振動幅は、40mmであり、密閉バイアル瓶の短手方向(水平方向)の振動幅は、20mmであった。上記条件に設定することにより、いずれのバイアル瓶についても、バイアル瓶と混合液との瞬間相対速度が40km/h以上となるようにした。
[容器を静置させる工程]
振動後、密閉バイアル瓶を静置させ、バブル含有液体を得た。なお、得られたバブル含有液体中のバブルのバブル径を、ナノ粒子解析システム(商品名:nanosight)を用いて測定したところ、その平均径が164.2nmであった。
(比較例1)
生理食塩水(0.9w/v%NaCl水溶液)を準備した。
(比較例2)
調整容器としての15mlのバイアル瓶に、生理食塩水(0.9w/v%NaCl水溶液)2mlと、蒸留水8mlとを入れた。その後、生理食塩水と蒸留水とを撹拌することにより、塩化ナトリウム(NaCl)濃度が0.18w/v%の食塩水を準備した。
<殺菌性評価>
まず、培養した大腸菌懸濁液をMuller-Hinton broth(MHB)培地で約10CFU/mlとなるように希釈して播種用菌液とし、96-well Plateの各ウェルに180μlずつ播種した。
次に、MHB培地で10000μg/mlのε-Poly-L-lysine(被検物質:PLL)を調製し、フィルター滅菌濾過を行った。その後、10000μg/mlのPLLを約10CFU/mlの大腸菌懸濁液にて5倍希釈し、2000μg/mlのPLL溶液を調製した。この調製したPLL溶液を96-well Plateに添加した。その後、ピペッティングにて混合し、順次倍々希釈を行い、PLL溶液の2倍希釈系列を調製し、37℃で24時間培養した(Biofilm Formation Assay kitおよびBiofilm Viability Assay kitを使用)。
次に、上記のようにして得られた実施例1のバブル含有液体、比較例1の生理食塩水および比較例2の食塩水のそれぞれと、培養された大腸菌とを混ぜ合わせた試料を準備する。その後、各試料をコンパクトドライEC(日水製薬株式会社製)に接種し、35℃で48時間経過後の大腸菌のコロニー数、コロニーの総面積(mm)、コロニーの平均径(mm)、培地(コンパクトドライEC)に対するコロニーの占める面積の割合(%)を評価した。なお、実施例1および各比較例の試料について、上記の評価をそれぞれ3回行い、3回の平均値で評価を行った。
評価結果を、下記表1、図6および図7に示す。
Figure 2023036032000002
図6は、実施例1および比較例1および2の試料を培地に接種し、35℃で48時間経過後の状態を示す画像である。図7は、実施例1および比較例1および2の試料を培地に接種し、35℃で48時間経過後のコロニー数(平均値)を示すグラフである。
表1、図6および図7に示すように、実施例1の試料では、各比較例の試料に比べて、大腸菌のコロニー数が極めて少なかった。また、実施例1の試料では、コロニーの総面積および培地に対するコロニーの占める割合も、各比較例の試料に比べて、低く抑えることができていた。この結果から、実施例1のバブル含有液体が、大腸菌の増殖、および大腸菌のバイオフィルムの形成を抑制していることが分かった。
(実施例2)
食塩水の準備に用いるオリーブオイルの使用量を0.02gに変えて、オリーブオイル濃度が0.02w/v%、塩化ナトリウム(NaCl)濃度が0.18w/v%の食塩水を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、バブル含有液体を得た。
(実施例3)
食塩水の準備に用いるオリーブオイルの使用量を0.03gに変えて、オリーブオイル濃度が0.03w/v%、塩化ナトリウム(NaCl)濃度が0.18w/v%の食塩水を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、バブル含有液体を得た。
(実施例4)
オリーブオイルの代わりに、20℃における動粘度が200cStのシリコーンオイル((株)タミヤ シリコンダンパーオイル#200)0.01gを用いて、シリコーンオイル濃度が0.01w/v%、塩化ナトリウム(NaCl)濃度が0.18w/v%の食塩水を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、バブル含有液体を得た。
(実施例5)
オリーブオイルの代わりに、20℃における動粘度が500cStのシリコーンオイル((株)タミヤ シリコンダンパーオイル#500)0.01gを用いて、シリコーンオイル濃度が0.01w/v%、塩化ナトリウム(NaCl)濃度が0.18w/v%の食塩水を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、バブル含有液体を得た。
(実施例6)
オリーブオイルの代わりに、20℃における動粘度が900cStのシリコーンオイル((株)タミヤ シリコンダンパーオイル#900)0.01gを用いて、シリコーンオイル濃度が0.01w/v%、塩化ナトリウム(NaCl)濃度が0.18w/v%の食塩水を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、バブル含有液体を得た。
(比較例3)
使用するガスとして、一酸化炭素の代わりに窒素(N)を用いた以外は、前記実施例3と同様にして、バブル含有液体を得た。
(比較例4)
使用するガスとして、一酸化炭素の代わりに酸素(O)を用いた以外は、前記実施例3と同様にして、バブル含有液体を得た。
(比較例5)
使用するガスとして、一酸化炭素の代わりにパーフルオロプロパン(C)を用いた以外は、前記実施例3と同様にして、バブル含有液体を得た。
(比較例6)
使用するガスとして、一酸化炭素の代わりにパーフルオロプロパン(C)を用いた以外は、前記実施例4と同様にして、バブル含有液体を得た。
(比較例7)
使用するガスとして、一酸化炭素の代わりにパーフルオロプロパン(C)を用いた以外は、前記実施例5と同様にして、バブル含有液体を得た。
(比較例8)
使用するガスとして、一酸化炭素の代わりにパーフルオロプロパン(C)を用いた以外は、前記実施例6と同様にして、バブル含有液体を得た。
<バブル含有量評価>
実施例1および実施例2のバブル含有液体中のバブル数を、ナノ粒子解析システム(商品名:nanosight)を用いて測定し、バブル含有液体中のオイル成分の濃度の違いによるバブル含有量を比較した。その結果を図8に示す。
図8に示すように、実施例2のバブル含有液体(オリーブオイル濃度:0.02w/v%)では、実施例1のバブル含有液体(オリーブオイル濃度:0.01w/v%)に比べて、極めてバブル含有量が多かった。具体的には、実施例1のバブル含有液体中のバブル含有量が、2.17×10particles/mlであったのに対し、実施例2のバブル含有液体中のバブル含有量が、6.63×1010particles/mlであった。したがって、同じ製造条件でバブル含有液体を製造する際に、オイル濃度を調整することにより、バブル含有液体中のバブル含有量を調整することができることが分かった。
次に、実施例3および比較例3-5のバブル含有液体中のバブル数を、フローサイトメーター(商品名:CytoFlex)を用いて測定し、バブル含有液体中のオイル成分の濃度および使用ガスの種類の違いによるバブル含有量を比較した。その結果を図9に示す。
図9に示すように、上述したガス状伝達物質として用いられる一酸化炭素を用いた実施例3のバブル含有液体では、ガス状伝達物質以外のガスを用いた比較例3-5のバブル含有液体に比べて、極めてバブル含有量が多かった。この結果から、ガスとして一酸化炭素を用いることにより、バブル含有液体中のバブル含有量をより多くすることができることが分かった。
次に、実施例4-6および比較例6-8のバブル含有液体中のバブル数を、フローサイトメーター(商品名:CytoFlex)を用いて測定し、バブル含有液体中のシリコーンオイルの動粘度(オイル硬度)および使用ガスの種類の違いによるバブル含有量を比較した。その結果を図10に示す。
図10(a)および(b)に示すように、使用するシリコーンオイルの動粘度が低くなるにしたがって、バブル含有液体中のバブル含有量をより多くすることができることが分かった。また、同じ種類のシリコーンオイルを使用した、各実施例と各比較例との比較から、ガスとして一酸化炭素を用いることにより、ガスとしてパーフルオロプロパンを用いた場合に比べて、バブル含有量が多くなることが分かった。
<殺菌性評価2>
まず、培養した大腸菌懸濁液をMuller-Hinton broth(MHB)培地で約10CFU/mlとなるように希釈して播種用菌液とし、96-well Plateの各ウェルに180μlずつ播種した。
次に、MHB培地で10000μg/mlのε-Poly-L-lysine(被検物質:PLL)を調製し、フィルター滅菌濾過を行った。その後、10000μg/mlのPLLを約10CFU/mlの大腸菌懸濁液にて5倍希釈し、2000μg/mlのPLL溶液を調製した。この調製したPLL溶液を96-well Plateに添加した。その後、ピペッティングにて混合し、順次倍々希釈を行い、PLL溶液の2倍希釈系列を調製し、37℃で24時間培養した(Biofilm Formation Assay kitおよびBiofilm Viability Assay kit(株式会社同仁化学研究所製)を使用)。
次に、上記のようにして得られた実施例1のバブル含有液体、比較例1の生理食塩水のそれぞれと、培養された大腸菌とを混ぜ合わせた試料を準備する。その後、各試料をコンパクトドライTC(日水製薬株式会社製)に接種し、35℃で48時間経過後の大腸菌のコロニー数、コロニーの総面積(mm)、コロニーの平均径(mm)、培地(コンパクトドライTC)に対するコロニーの占める面積の割合(%)を評価した。なお、実施例1および比較例1の試料について、上記の評価をそれぞれ3回行い、3回の平均値で評価を行った。
評価結果を、下記表2、図11および図12に示す。
Figure 2023036032000003
図11は、実施例1および比較例1の試料を培地(コンパクトドライTC)に接種し、35℃で48時間経過後の状態を示す画像である。図12は、実施例1および比較例1の試料を培地(コンパクトドライTC)に接種し、35℃で48時間経過後のコロニー数(平均値)を示すグラフである。
表2、図11および図12に示すように、培地の種類を変更した場合(コンパクトドライEC→コンパクトドライTC)でも、実施例1の試料では、比較例1の試料に比べて、大腸菌のコロニー数が極めて少なかった。また、実施例1の試料では、コロニーの総面積および培地に対するコロニーの占める割合も、比較例1の試料に比べて、低く抑えることができていた。この結果から、培地の種類を変更した場合であっても、実施例1のバブル含有液体が、大腸菌の増殖、および大腸菌のバイオフィルムの形成を抑制していることが分かった。
<殺菌性評価3>
まず、手のひらの生菌数測定に用いられる「ハンドぺたんチェックII トリプトソイ寒天培地 PT8040」(栄研化学株式会社製)を準備した。
次に、左右の手のひらに常在菌を付着させ、両手をそのままハンドぺたんにのせた。次に、左右の手のひらに、再度常在菌を付着させた後、実施例1のバブル含有液体に両手を浸漬させた。その後、バブル含有液体が付着した状態の両手を、そのままハンドぺたんにのせた。
このようにして得られた4つの試料(ハンドぺたん)を35℃で48時間培養した後、観察を行った。
図13は、「ハンドぺたんチェックII」を用いて35℃で48時間培養した後の各試料の状態を示す画像である。
図13に示すように、バブル含有液体への浸漬を行った手のひらをのせた試料では、バブル含有液体への浸漬を行わなかった手のひらをのせた試料に比べて、常在菌のコロニー数が少なかった。また、バブル含有液体への浸漬を行った手のひらをのせた試料では、コロニーのサイズが小さいことも確認され、実施例1のバブル含有液体が、常在菌の増殖、および常在菌のバイオフィルムの形成を抑制していることが分かった。
(実施例7)
食塩水の準備に用いるオリーブオイルを使用しなかった以外は、前記実施例1と同様にして、バブル含有液体を得た。すなわち、オリーブオイル濃度が0w/v%、塩化ナトリウム(NaCl)濃度が0.18w/v%の食塩水を用いて、前記実施例1と同様にして、バブル含有液体を得た。
(実施例8)
食塩水の準備に用いるオリーブオイルの使用量を0.001gに変えて、オリーブオイル濃度が0.001w/v%、塩化ナトリウム(NaCl)濃度が0.18w/v%の食塩水を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、バブル含有液体を得た。
(比較例9)
使用するガスとして、一酸化炭素の代わりに酸素(O)を用いた以外は、前記実施例7と同様にして、バブル含有液体を得た。
(比較例10)
使用するガスとして、一酸化炭素の代わりに酸素(O)を用いた以外は、前記実施例8と同様にして、バブル含有液体を得た。
<殺菌性評価4>
まず、バイオフィルム薬剤効果測定キット(Biofilm Viability Assay kit,株式会社同仁化学研究所製)を準備した。
係るバイオフィルム薬剤効果測定キットを用いてバイオフィルムが形成された4つの試料を準備した後、実施例7、8および比較例9、10のバブル含有液体を、それぞれ各試料に添加して、2時間放置した。その後、各試料におけるバイオフィルム内の菌(表皮ブドウ球菌)の数を吸光度計で測定し、生存率を算出した(WST法)。その結果を、図14に示す。
図14は、バイオフィルム(表皮ブドウ球菌)の形成後の殺菌効果を示すグラフである。
実施例8のバブル含有液体は、実施例1のバブル含有液体に比べて、そのオリーブオイルの含有率が極めて低い(実施例1:0.01w/v%、実施例8:0.001w/v%)ものの、バイオフィルムの菌(表皮ブドウ球菌)に対して高い殺菌効果を示した(菌の生存率:68%)。一方、使用するガスとして、一酸化炭素の代わりに酸素(O)を用いた比較例10では、殺菌効果が不十分であった(菌の生存率:91%)。
1…バブル
3…ガス
10…混合液
11…空隙部
20…製造容器
21…容器本体
22…蓋
221…ゴム栓
222…締付部
100…バブル含有液体

Claims (10)

  1. 水性液体と、前記水性液体中に分散した、ガスを含むバブルとを含むバブル含有液体であって、
    前記ガスが、殺菌性または静菌性を有する、生体内で産生される種類のガス状伝達物質を含み、
    前記バブルの平均径が、10~1000nmであることを特徴とするバブル含有液体。
  2. 前記ガス状伝達物質は、一酸化炭素、一酸化窒素、硫化水素のうちの少なくとも1種を含む請求項1に記載のバブル含有液体。
  3. 前記バブル含有液体中に含まれる前記ガス状伝達物質の量は、10~80vol%である請求項1または2に記載のバブル含有液体。
  4. オイル成分および界面活性剤をさらに含む請求項1または2に記載のバブル含有液体。
  5. 前記オイル成分は、オレイン酸を構成成分として含むオイル、流動パラフィン、またはシリコーンオイルのうち少なくとも1種を含む請求項4に記載のバブル含有液体。
  6. 前記オレイン酸を構成成分として含む前記オイルは、オリーブオイルである請求項5に記載のバブル含有液体。
  7. 前記バブル含有液体中の前記オイル成分の含有量は、0.001~1.0wt%である請求項4に記載のバブル含有液体。
  8. 前記バブル含有液体中の前記界面活性剤の含有量は、0.001~1.0wt%である請求項4に記載のバブル含有液体。
  9. 水性液体と、前記水性液体中に分散した、ガスを含むバブルとを含むバブル含有液体の製造方法であって、
    前記水性液体を容器の所定の高さまで注入する工程と、
    前記容器に前記ガスを充填させて、前記容器内に前記水性液体および前記ガスを密閉する工程と、
    前記水性液体が前記容器の内面に繰り返し衝突するように、所定の回転数で前記容器を振動させることにより、前記バブル含有液体を得る工程と、を有し、
    前記ガスが、殺菌性または静菌性を有する、生体内で産生される種類のガス状伝達物質を含み、
    前記バブルの平均径が、10~1000nmであることを特徴とするバブル含有液体の製造方法。
  10. 前記ガス状伝達物質は、一酸化炭素、一酸化窒素、硫化水素のうちの少なくとも1種を含む請求項9に記載のバブル含有液体の製造方法。
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