JP2023034050A - 交流磁場計測装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】信号反射による電力ロスを抑制することにより検出感度を向上させること。【解決手段】共振調整回路50では、同軸ケーブル51から入力側回路52及び受信コイル22側を見たインピーダンスである入力インピーダンスが、所定の周波数において、同軸ケーブル51のインピーダンスと同じになるように、入力側回路52のコンデンサCs1,Cp1の容量が調整されており、同軸ケーブル51から出力側回路55及び出力コイル24側を見たインピーダンスである出力インピーダンスが、所定の周波数において、同軸ケーブル51のインピーダンスと同じになるように、出力側回路55のコンデンサCs2,Cp2の容量が調整されている。【選択図】図1
Description
本発明は交流磁場計測装置に関する。
脳計測装置では、MR(Magnetic Resonance)信号をOPM(optically pumpedmagnetometer)で検出する際、OPMをMRI(Magnetic Resonance Imaging)の静磁場中に設置すると、OPM中のアルカリ金属原子の電子とMRIの計測対象であるプロトンの共鳴周波数とが異なることによって、高い感度でMR信号を検出できない場合がある。これに対して、FT(Flux transformer)と呼ばれる回路を用いて、MR計測領域とOPM設置領域との磁場環境を分離することにより、高い感度でMR信号を検出することができる。
上述したようなFTの共振回路として、FTの入力コイル及び出力コイルに対して直列にコンデンサを挿入した直列共振回路が知られている(例えば特許文献1参照)。
ここで、特許文献1に記載されたような直列共振回路では、周波数が高くなるにつれて信号反射の影響が大きくなり、また、FTの入力コイル及び出力コイル間をツイストペアケーブルで接続すると、信号の減衰量も大きくなり、十分な検出感度を担保できないおそれがある。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、信号反射による電力ロスやケーブルにおける信号減衰を抑制することにより検出感度を向上させることが可能な交流磁場計測装置を提供することを目的とする。
本発明の一態様に係る交流磁場計測装置は、信号を検出して電流に変換するための受信コイルと、受信コイルに対応して設けられ、受信コイルから出力された電流の所定の周波数を出力するための共振調整回路と、共振調整回路から出力された電流を磁気信号に変換するための出力コイルと、出力コイルによって出力された磁気信号を検出する光励起磁気センサと、を備え、共振調整回路は、受信コイルに対して直並列にコンデンサが設けられた入力側回路と、出力コイルに対して直並列にコンデンサが設けられた出力側回路と、入力側回路及び出力側回路を接続する同軸ケーブルと、を有し、同軸ケーブルから入力側回路及び受信コイル側を見たインピーダンスである入力インピーダンスが、所定の周波数において、同軸ケーブルのインピーダンスと同じになるように、入力側回路のコンデンサの容量が調整されており、同軸ケーブルから出力側回路及び出力コイル側を見たインピーダンスである出力インピーダンスが、所定の周波数において、同軸ケーブルのインピーダンスと同じになるように、出力側回路のコンデンサの容量が調整されている。
本発明の一態様に係る交流磁場計測装置では、共振調整回路が、受信コイルに対して直並列にコンデンサが設けられた入力側回路と、出力コイルに対して直並列にコンデンサが設けられた出力側回路と、入力側回路及び出力側回路を接続する同軸ケーブルとを有している。そして、同軸ケーブルから入力側回路及び受信コイル側を見た入力インピーダンス並びに出力側回路及び出力コイル側を見た出力インピーダンスが、いずれも、所定の周波数において同軸ケーブルのインピーダンスと同じになるように、入力側回路及び出力側回路のコンデンサの容量が調整されている。このような構成によれば、所定の周波数において、同軸ケーブルから見た入力インピーダンス及び出力インピーダンスがいずれも同軸ケーブルのインピーダンスと同じになるため、信号における共鳴周波数の成分について信号反射による電力ロスを抑制し、光励起磁気センサにおける検出感度を向上させることができる。以上のように、本発明の一態様に係る交流磁場計測装置によれば、信号反射による電力ロスを抑制することにより、検出感度を向上させることができる。
上記交流磁場計測装置は、所定の周波数の送信パルスを送信するための送信コイルと、光励起磁気センサによって検出された信号に基づきMR画像を生成する制御装置と、を更に備え、受信コイルは、送信パルスの送信によって生じた核磁気共鳴信号を検出して電流に変換してもよい。このような構成によれば、脳計測装置において、上述した検出感度向上の効果を奏することができる。
光励起磁気センサの検出感度が最大となる周波数帯は、共鳴周波数を含んでいてもよい。このような構成によれば、光励起磁気センサにおける検出感度をより向上させることができる。
本発明によれば、信号反射による電力ロスを抑制することにより検出感度を向上させることが可能な交流磁場計測装置を提供することができる。
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
[脳計測装置の基本構成]
図1は、実施形態に係る脳計測装置M1の構成を示す概略図である。脳計測装置M1は、交流磁場計測装置の一例であり、被験者を対象に脳磁場の計測およびMR(Magnetic Resonance)画像の計測を行う装置である。脳計測装置M1は、複数のOPM(optically pumped magnetometer)モジュール1、複数の地磁気補正用磁気センサ2、複数のアクティブシールド用磁気センサ3、非磁性フレーム4、一対の地磁気補正コイル7、一対の地磁気勾配補正コイル8、及び一対の変動磁場補正コイル9、を有する脳磁計モジュールと、送信コイル21、複数の受信コイル22、複数のOPMモジュール23(検出部)、複数の出力コイル24、及び複数の共振調整回路50を有するMRIモジュールとを備える。なお、検出部としてのOPMモジュール23は、アンプ(不図示)によって代替されてもよい。さらに、脳計測装置M1は、制御装置5と、コイル電源6と、ポンプレーザ10と、プローブレーザ11と、アンプ12A,12Bと、ヒータコントローラ13と、電磁シールド14と、送信コイルコントローラ15と、を備える。なお、図1を参照した説明においては、共振調整回路50の説明を省略する(共振調整回路50については後述する)。
図1は、実施形態に係る脳計測装置M1の構成を示す概略図である。脳計測装置M1は、交流磁場計測装置の一例であり、被験者を対象に脳磁場の計測およびMR(Magnetic Resonance)画像の計測を行う装置である。脳計測装置M1は、複数のOPM(optically pumped magnetometer)モジュール1、複数の地磁気補正用磁気センサ2、複数のアクティブシールド用磁気センサ3、非磁性フレーム4、一対の地磁気補正コイル7、一対の地磁気勾配補正コイル8、及び一対の変動磁場補正コイル9、を有する脳磁計モジュールと、送信コイル21、複数の受信コイル22、複数のOPMモジュール23(検出部)、複数の出力コイル24、及び複数の共振調整回路50を有するMRIモジュールとを備える。なお、検出部としてのOPMモジュール23は、アンプ(不図示)によって代替されてもよい。さらに、脳計測装置M1は、制御装置5と、コイル電源6と、ポンプレーザ10と、プローブレーザ11と、アンプ12A,12Bと、ヒータコントローラ13と、電磁シールド14と、送信コイルコントローラ15と、を備える。なお、図1を参照した説明においては、共振調整回路50の説明を省略する(共振調整回路50については後述する)。
以下の説明においては、被験者の頭部の中心軸におおよそ平行な向きをZ軸方向とし、Z軸に垂直な方向であって、互いに垂直な方向をX軸方向及びY軸方向とする。
OPMモジュール1は、光励起磁気センサ1Aと、断熱材1Bと、読み出し回路1Cと、を有する。複数のOPMモジュール1は、例えば頭皮に沿って所定の間隔で配置される。
光励起磁気センサ1Aは、光ポンピングを利用して脳磁場を計測するセンサであり、例えば10fT~10pT程度の感度を有する。断熱材1Bは、光励起磁気センサ1Aの熱移動及び熱伝達を防止する。読み出し回路1Cは、光励起磁気センサ1Aの検出結果を取得する回路である。光励起磁気センサ1Aは、アルカリ金属蒸気を封入したセルにポンプ光を照射することによって、アルカリ金属を励起状態とする。励起状態のアルカリ金属はスピン偏極状態にあり、磁気を受けると、磁気に応じてアルカリ金属原子のスピン偏極軸の傾きが変化する。このスピン偏極軸の傾きは、ポンプ光とは別に照射されるプローブ光によって検出される。なお、光励起磁気センサ1Aは、0~200Hzの範囲に含まれる周波数の磁場に感度を有るようにポンプ光の照射方向に所定のバイアス磁場が印加されるように構成される。読み出し回路1Cは、アルカリ金属蒸気を通過したプローブ光をフォトダイオードによって受光し、検出結果を取得する。読み出し回路1Cは、検出結果をアンプ12Aに出力する。
光励起磁気センサ1Aは、例えば軸型グラジオメータ(Gradiometer)としてもよい。軸型グラジオメータは、被験者の頭皮(計測箇所)に対し垂直な方向且つ同軸上に計測領域及び参照領域を有する。計測領域とは、例えば、軸型グラジオメータが脳磁場を計測する箇所のうち、被験者の頭皮に最も近接する箇所である。参照領域とは、例えば、軸型グラジオメータが脳磁場を計測する箇所のうち、被験者の頭皮から離れた方向に対し、計測領域から所定の距離(例えば3cm)の箇所である。軸型グラジオメータは、計測領域及び参照領域において計測したそれぞれの結果をアンプ12Aに出力する。ここで、コモンモードノイズが含まれる場合には、その影響が計測領域の出力結果及び参照領域の出力結果のそれぞれに示される。コモンモードノイズは、計測領域の出力結果及び参照領域の出力結果の差分を取得することによって除去される。コモンモードノイズを除去することにより、例えば1pTの磁気ノイズ環境下で計測した場合、光励起磁気センサ1Aは10fT/√Hz程度の感度を得ることができる。
地磁気補正用磁気センサ2は、光励起磁気センサ1Aに対応する位置において、地磁気に係る磁場を計測するセンサであり、例えば1nT~100μT程度の感度を有するフラックスゲートセンサにより構成される。光励起磁気センサ1Aに対応する位置とは、光励起磁気センサ1Aが配置された領域の周辺(近傍)の位置である。地磁気補正用磁気センサ2は、光励起磁気センサ1Aに一対一で対応して設けられていてもよいし、一対多(複数の光励起磁気センサ1Aに対して1台の地磁気補正用磁気センサ2)で対応して設けられていてもよい。地磁気補正用磁気センサ2は、地磁気に係る磁場として例えば地磁気及び地磁気の勾配磁場(以下、単に「勾配磁場」という。)を計測し、計測値を制御装置5に出力する。地磁気補正用磁気センサ2の計測値は、向き及び大きさを有するベクトルにより表され得る。地磁気補正用磁気センサ2は、計測及び出力を、所定の時間間隔で継続して行ってもよい。
アクティブシールド用磁気センサ3は、光励起磁気センサ1Aに対応する位置において、変動磁場を計測するセンサであり、例えば100fT~10nT程度の感度を有し、光励起磁気センサ1Aとは異なる光励起磁気センサにより構成される。光励起磁気センサ1Aに対応する位置とは、光励起磁気センサ1Aが配置された領域の周辺(近傍)の位置である。アクティブシールド用磁気センサ3は、光励起磁気センサ1Aに一対一で対応して設けられていてもよいし、一対多(複数の光励起磁気センサ1Aに対して1台のアクティブシールド用磁気センサ3)で対応して設けられていてもよい。アクティブシールド用磁気センサ3は、変動磁場として例えば200Hz以下のノイズ(交流)成分の磁場を計測し、計測値を制御装置5に出力する。アクティブシールド用磁気センサ3の計測値は、向き及び大きさを有するベクトルにより表され得る。アクティブシールド用磁気センサ3は、計測及び出力を、所定の時間間隔で継続して行ってもよい。
非磁性フレーム4は、脳磁場の計測対象である被験者の頭皮の全域を覆うフレームであり、グラファイト等の比透磁率が1に近く磁場分布を乱さない非磁性体材料により構成される。非磁性フレーム4は、例えば被験者の頭皮の全域を囲み、被験者の頭部に装着されるヘルメット型のフレームとすることができる。非磁性フレーム4には、被験者の頭皮に近接するように複数の光励起磁気センサ1Aが固定されている。さらに、非磁性フレーム4には、複数の光励起磁気センサ1Aのそれぞれの位置における地磁気に係る磁場を計測可能なように地磁気補正用磁気センサ2が固定され、複数の光励起磁気センサ1Aのそれぞれの位置における変動磁場を計測可能なようにアクティブシールド用磁気センサ3が固定されている。変動磁場は位置による磁場強度のばらつきが静磁場よりも少ないため、非磁性フレーム4には地磁気補正用磁気センサ2の数よりもアクティブシールド用磁気センサ3の数が少なくなるように固定されていてもよい。加えて、非磁性フレーム4内の複数の光励起磁気センサ1Aの被験者の頭皮側には、MR画像計測のために核磁気共鳴信号を検出するための受信コイル22が固定されている。この受信コイル22は、後述するプロトンの核磁気共鳴信号を検出して電流に変換する。核磁気共鳴信号の検出感度を向上させるためには、受信コイル22は、光励起磁気センサ1Aの被験者の頭部の頭皮に近い側に設けられることが好ましい。
受信コイル22は、静磁場が生成される方向であるX軸方向(詳細は後述)に直交する面における最大面積及び巻き数が一定になるように形成されている。最大面積は、例えば受信コイル22のサイズ、形状(楕円)、位置及び軸の方向等により決まる。このような構成によれば、受信コイル22における感度が均一になる。
送信コイル21は、MR画像計測時に、被験者の頭部に、所定周波数(例えば、約300kHz)のRFパルス(送信パルス)を照射するコイルである。この送信コイル21は、例えば、非磁性フレーム4の外部の被験者の頭部の上方に配置される。
出力コイル24は、受信コイル22の両端にケーブルを介して電気的に接続され、受信コイル22の両端を流れる電流を受けて、その電流を再び磁気信号に変換して出力する。なお、出力コイル24及び受信コイル22は、詳細には共振調整回路50を介して接続されているが、ここでは共振調整回路50の説明を省略する(共振調整回路50については後述する)。
OPMモジュール23は、OPMモジュール1と同様に、光励起磁気センサ23Aと、断熱材23Bと、読み出し回路23Cと、を有する。OPMモジュール23は、例えば、非磁性フレーム4の外部において、出力コイル24と共に、後述する静磁場を遮蔽する磁気シールド25内に収納されて配置される。磁気シールド25は、比透磁率が1より大きな例えばミューメタル等により構成される。
光励起磁気センサ23Aは、光ポンピングを利用して磁気信号を計測するセンサである。なお、光励起磁気センサ23Aは、20kHz~500kHzの範囲に含まれる周波数の磁場に感度を有るようにポンプ光の照射方向に所定のバイアス磁場が印加されるように構成される。例えば、プロトンが発する電磁波の300kHzの周波数に感度を有するように約40μTのバイアス磁場が印加される。読み出し回路23Cは、光励起磁気センサ23Aによる検出結果をアンプ12Bに出力する。
図2には、OPMモジュール23の構成の具体例を示している。光励起磁気センサ23Aは、計測する磁場によって偏極の方向が変化するアルカリ金属を含むガスが封入された長手状のセル26と、セル26の全体を所定温度(例えば、180度)に加熱するヒータ27と、偏光ビームスプリッタ28と、光検出器29とを含む。このセル26には、その内部の長手方向に沿って、外部からポンプ光L1が導入されるとともに、長手方向に垂直な方向に沿って、その長手方向において複数に分割(例えば、四分割)された交差領域26Aのそれぞれに対して、外部からのプローブ光L2が分岐されて照射される。これらの交差領域26Aを透過したプローブ光L2は、それぞれの交差領域26Aに対応して設けられた偏光ビームスプリッタ28及び光検出器29によって、その磁気旋光角度が検出される。すなわち、偏光ビームスプリッタ28は、プローブ光L2を互いに直交する2つの直線偏光成分に分離し、光検出器29は、内蔵する2つのPD(フォトダイオード)を用いて2つの直線偏光成分の強度を検出し、検出した強度の比を基にプローブ光L2の磁気旋光角度を検出する。OPMモジュール23には、回路ボード30がさらに設けられており、この回路ボード30内の読み出し回路23Cを経由して、それぞれの交差領域26Aごとに検出したプローブ光L2の磁気旋光角度を出力する。
出力コイル24は、磁気シールド25内において、上記のような構成のOPMモジュール23のセル26の各交差領域26Aに対向するように固定される。このような構成により、受信コイル22によって検出される電磁場BOUTを基に出力コイル24によって生成される磁気信号BOUTが、アルカリ金属原子のスピン偏極軸の傾きに応じて変化するプローブ光L2の磁気旋光角度を基に検出される。ここで、図2の例では、交差領域26Aの分割数が4つとされているが、任意の数に変更されてよい。また、セル26が並列に複数個設けられて、交差領域26Aが2次元的に配列されて(例えば、4×4=16個で)設けられてもよい。
制御装置5は、脳磁場の計測時には、地磁気補正用磁気センサ2及びアクティブシールド用磁気センサ3から出力された計測値に基づいて、各種コイルに対する電流を決定し、電流を出力するための制御信号をコイル電源6に出力する。制御装置5は、複数の地磁気補正用磁気センサ2の計測値に基づいて、地磁気に係る磁場を打ち消す磁場を発生させるように、地磁気補正コイル7及び地磁気勾配補正コイル8に対する電流を決定する。また、制御装置5は、複数のアクティブシールド用磁気センサ3の計測値に基づいて、変動磁場を打ち消す磁場を発生させるように変動磁場補正コイル9に対する電流を決定する。制御装置5は、決定した電流に応じた制御信号をコイル電源6に出力する。
具体的には、制御装置5は、複数の地磁気補正用磁気センサ2の計測値の平均値がゼロに近似するように(結果として、光励起磁気センサ1Aの位置における地磁気に対し逆向き且つ同程度の大きさの磁場が発生するように)、地磁気補正コイル7に対する電流を決定する。制御装置5は、決定した地磁気補正コイル7の電流に応じた制御信号(静磁場補正用制御信号)をコイル電源6に出力する。
また、制御装置5は、複数の地磁気補正用磁気センサ2の計測値の平均値からの偏差が最小になるように(結果として、光励起磁気センサ1Aの位置における勾配磁場に対し逆向き且つ同程度の大きさの磁場が発生するように)、地磁気勾配補正コイル8に対する電流を決定する。制御装置5は、決定した地磁気勾配補正コイル8の電流に応じた制御信号(静磁場補正用制御信号)をコイル電源6に出力する。
さらに、制御装置5は、複数のアクティブシールド用磁気センサ3の計測値の平均値が0に近似するように(結果として、光励起磁気センサ1Aの位置における変動磁場に対し逆向き且つ同程度の大きさの磁場が発生するように)、変動磁場補正コイル9に対する電流を決定する。制御装置5は、決定した変動磁場補正コイル9の電流に応じた制御信号(変動磁場補正用制御信号)をコイル電源6に出力する。
また、制御装置5は、アンプ12Aから出力された信号を利用して、光励起磁気センサ1Aが検出した磁気に関する情報を得る。光励起磁気センサ1Aが軸型グラジオメータである場合、制御装置5は、計測領域の出力結果及び参照領域の出力結果の差分を取得することによって、コモンモードノイズを除去してもよい。なお、制御装置5は、ポンプレーザ10及びプローブレーザ11の照射タイミング、照射時間等の動作を制御してもよい。
また、制御装置5は、MR画像の計測時には、静磁場及び傾斜磁場の印加用のコイルとしてそれぞれ動作する地磁気補正コイル7及び地磁気勾配補正コイル8に供給する電流を決定し、電流を出力するための制御信号をコイル電源6に出力する。すなわち、制御装置5は、静磁場として、被験者の頭部に所定の強度(例えば、7mT)のX軸方向の磁場を印加するように、地磁気補正コイル7に流す電流を決定する。また、制御装置5は、傾斜磁場として、X軸方向磁場勾配(dBx/dX)、Y軸方向磁場勾配(dBx/dY)、及びZ軸方向磁場勾配(dBx/dZ)を選択的に決定し、地磁気勾配補正コイル8に流す電流を決定する。これによって、MR画像においてスライスする位置を決定し、位相エンコードおよび周波数エンコードによりスライス面内の位置のエンコードをすることができる。なお、制御装置5は、MR画像の計測時には、低周波のノイズを除去する変動磁場補正コイル9には電流を供給しないように、制御信号を出力する。
さらに、制御装置5は、MR画像の計測時には、送信コイルコントローラ15に対して、送信コイル21に供給する電力を制御する制御信号を出力することによって、所定の周波数(例えば、静磁場の強度が7mTの場合は約300kHz)の送信パルスを被験者の頭部に照射するように制御する。その結果、スライス面(静磁場及び傾斜磁場によって選択された面)のプロトンが共鳴してスピンが傾く。その後、制御装置5は、送信コイル21の電力をオフに制御する。これにより、OPMモジュール23の出力を基に、スピンが戻る様子を計測することでMR画像を取得することができる。より具体的には、制御装置5は、公知のスピンエコーシーケンスあるいはグラディエントエコーシーケンスなどを用いて、周波数と位相で位置をエンコードしてプロトンからの核磁気共鳴信号を計測し、その計測結果をFFTを用いてMR画像に変換する。
制御装置5は、物理的には、RAM、ROM等のメモリ、CPU等のプロセッサ(演算回路)、通信インターフェイス、ハードディスク等の格納部を備えて構成されている。かかる制御装置5としては、例えばパーソナルコンピュータ、クラウドサーバ、スマートフォン、タブレット端末などが挙げられる。制御装置5は、メモリに格納されるプログラムをコンピュータシステムのCPUで実行することにより機能する。
コイル電源6は、制御装置5から出力された制御信号に応じて、所定の電流を地磁気補正コイル7、地磁気勾配補正コイル8、及び変動磁場補正コイル9のそれぞれに出力する。具体的には、コイル電源6は、地磁気補正コイル7に係る制御信号に応じて、地磁気補正コイル7に電流を出力する。コイル電源6は、地磁気勾配補正コイル8に係る制御信号に応じて、地磁気勾配補正コイル8に電流を出力する。コイル電源6は、変動磁場補正コイル9に係る制御信号に応じて、変動磁場補正コイル9に電流を出力する。
送信コイルコントローラ15は、送信コイル21に電気的に接続され、制御装置5から出力された制御信号に応じて、所定周波数の送信パルスを照射するように送信コイル21に電力を供給する。
地磁気補正コイル7は、光励起磁気センサ1Aの位置における地磁気に係る磁場のうち、地磁気の磁場を補正するためのコイルである。地磁気補正コイル7は、コイル電源6から供給される電流に応じて磁場を発生させて、地磁気のキャンセリングを行う。地磁気補正コイル7は、例えば、一対の地磁気補正コイル7A及び7Bを有する。一対の地磁気補正コイル7A及び7Bは、光励起磁気センサ1Aを挟むように(例えば被験者の左右に)配置される。一対の地磁気補正コイル7A及び7Bは、コイル電源6から供給される電流に応じて、光励起磁気センサ1Aの位置における地磁気に対し逆向き且つ同程度の大きさの磁場を発生させる。磁場の方向は、例えば、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向である。光励起磁気センサ1Aの位置における地磁気は、地磁気補正コイル7により発生する逆向きで同程度の大きさの磁場によって打ち消される。このようにして、地磁気補正コイル7は、光励起磁気センサ1Aの位置における地磁気を補正する。
また、地磁気補正コイル7は、MR画像計測時にX軸方向の静磁場を発生させるための静磁場コイルとしての役割を有する。地磁気補正コイル7は、コイル電源6から供給される電流に応じて所定の強度の静磁場を発生させる。
地磁気勾配補正コイル8は、光励起磁気センサ1Aの位置における地磁気に係る磁場のうち、勾配磁場を補正するためのコイルである。地磁気勾配補正コイル8は、コイル電源6から供給される電流に応じて磁場を発生させて、勾配磁場のキャンセリングを行う。地磁気勾配補正コイル8は、例えば、一対の地磁気勾配補正コイル8A及び8Bを有する。一対の地磁気勾配補正コイル8A及び8Bは、光励起磁気センサ1Aを挟むように(例えば被験者の左右に)配置される。一対の地磁気勾配補正コイル8A及び8Bは、コイル電源6から供給される電流に応じて、光励起磁気センサ1Aの位置における勾配磁場に対し逆向き且つ同程度の大きさの磁場を発生させる。磁場の方向は、例えば、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向である。光励起磁気センサ1Aの位置における勾配磁場は、地磁気勾配補正コイル8により発生する逆向き且つ同程度の大きさの磁場によって打ち消される。このようにして、地磁気勾配補正コイル8は、光励起磁気センサ1Aの位置における勾配磁場を補正する。
また、地磁気勾配補正コイル8は、MR画像計測時に傾斜磁場を発生させるための傾斜磁場コイルとしての役割を有する。地磁気勾配補正コイル8は、コイル電源6から供給される電流に応じて、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向に選択的な勾配を有する傾斜磁場を発生させる。
変動磁場補正コイル9は、光励起磁気センサ1Aの位置における変動磁場を補正するためのコイルである。変動磁場補正コイル9は、コイル電源6から供給される電流に応じて磁場を発生させて、変動磁場のキャンセリングを行う。変動磁場補正コイル9は、例えば、一対の変動磁場補正コイル9A及び9Bを有する。一対の変動磁場補正コイル9A及び9Bは、光励起磁気センサ1Aを挟むように(例えば被験者の左右に)配置される。一対の変動磁場補正コイル9A及び9Bは、コイル電源6から供給される電流に応じて、光励起磁気センサ1Aの位置における変動磁場に対し逆向き且つ同程度の大きさの磁場を発生させる。磁場の方向は、例えば、例えば、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向である。光励起磁気センサ1Aの位置における変動磁場は、変動磁場補正コイル9により発生する逆向き且つ同程度の大きさの磁場によって打ち消される。このようにして、変動磁場補正コイル9は、光励起磁気センサ1Aの位置における変動磁場を補正する。
ポンプレーザ10は、ポンプ光を生成するレーザ装置である。ポンプレーザ10から出射されたポンプ光は、ファイバ分岐により、複数の光励起磁気センサ1A、及び光励起磁気センサ23Aのそれぞれに入射する。
プローブレーザ11は、プローブ光を生成するレーザ装置である。プローブレーザ11から出射されたプローブ光は、ファイバ分岐により、複数の光励起磁気センサ1A、及び光励起磁気センサ23Aのそれぞれに入射する。
アンプ12Aは、OPMモジュール1(具体的には、読み出し回路1C)からの出力結果の信号を増幅して、制御装置5に出力する機器又は回路である。
アンプ12Bは、OPMモジュール23(具体的には、読み出し回路23C)からの出力結果の信号を増幅して、制御装置5に出力する機器又は回路である。
ヒータコントローラ13は、光励起磁気センサ1Aのセル及び光励起磁気センサ23Aのセルを加熱するためのヒータ、及びそれぞれのセルの温度を計測する熱電対(不図示)と接続される調温装置である。ヒータコントローラ13は、熱電対からセルの温度情報を受信し、当該温度情報に基づいてヒータの加熱を調整することにより、セルの温度を調整する。
電磁シールド14は、高周波数(例えば、10kHz以上)の電磁ノイズを遮蔽するシールド部材であり、例えば金属糸を編み込んだメッシュ、又はアルミニウム等の非磁性金属板等により構成される。電磁シールド14は、OPMモジュール1,23、送信コイル21、受信コイル22、出力コイル24、地磁気補正用磁気センサ2、アクティブシールド用磁気センサ3、非磁性フレーム4、地磁気補正コイル7、地磁気勾配補正コイル8、及び変動磁場補正コイル9を囲むように配置される。この電磁シールド14により、MR画像計測時に、計測周波数である300kHz帯のノイズが受信コイル22に入射しノイズが上昇することを防ぐことができる。また、脳磁場計測時に、高周波ノイズが光励起磁気センサ1Aに入射して動作が不安定になることを防ぐことができる。
[脳計測装置が実施する脳計測方法(脳計測動作)]
次に、図3及び図4を参照しながら、実施形態に係る脳計測装置M1を用いた脳計測方法について説明する。図3及び図4は、脳計測装置M1の動作を示すフローチャートである。
次に、図3及び図4を参照しながら、実施形態に係る脳計測装置M1を用いた脳計測方法について説明する。図3及び図4は、脳計測装置M1の動作を示すフローチャートである。
まず、非磁性フレーム4を被験者に装着させた状態で脳磁場の計測が開始されると、地磁気補正用磁気センサ2は、静磁場である、地磁気に係る磁場を計測する(ステップS11)。地磁気補正用磁気センサ2は、光励起磁気センサ1Aのそれぞれの位置において、地磁気及び勾配磁場を計測し、計測値を制御装置5に出力する。
制御装置5及びコイル電源6は、地磁気補正コイル7に対する電流を制御する(ステップS12)。制御装置5は、地磁気補正用磁気センサ2の計測値に基づいて、光励起磁気センサ1Aの位置における地磁気に対し逆向き且つ同程度の磁場を発生させるように、地磁気補正コイル7に対する電流を決定する。より具体的には、制御装置5は、例えば複数の地磁気補正用磁気センサ2の計測値の平均値がゼロに近似するように、地磁気補正コイル7に対する電流を決定する。制御装置5は、決定した電流に応じた制御信号をコイル電源6に出力する。コイル電源6は、制御装置5により出力された制御信号に応じて、所定の電流を地磁気補正コイル7に出力する。地磁気補正コイル7は、コイル電源6から供給される電流に応じて磁場を発生させる。光励起磁気センサ1Aの位置における地磁気は、地磁気補正コイル7により発生する、逆向き且つ同程度の大きさの磁場によって打ち消される。
制御装置5及びコイル電源6は、地磁気勾配補正コイル8に対する電流を制御する(ステップS13)。制御装置5は、地磁気補正用磁気センサ2の計測値に基づいて、光励起磁気センサ1Aの位置における勾配磁場に対し逆向き且つ同程度の大きさの磁場を発生させるように、地磁気勾配補正コイル8に対する電流を決定する。より具体的には、制御装置5は、例えば複数の地磁気補正用磁気センサ2の計測値の平均値からの偏差が最小になるように、地磁気勾配補正コイル8に対する電流を決定する。制御装置5は、決定した電流に応じた制御信号をコイル電源6に出力する。コイル電源6は、制御装置5により出力された制御信号に応じて、所定の電流を地磁気勾配補正コイル8に出力する。地磁気勾配補正コイル8は、コイル電源6から供給される電流に応じて磁場を発生させる。光励起磁気センサ1Aの位置における勾配磁場は、地磁気勾配補正コイル8により発生する逆向き且つ同程度の大きさの磁場によって打ち消される。
制御装置5は、補正後の静磁場(地磁気に係る磁場)の計測値が基準値以下であるかどうかを判定する(ステップS14)。補正後の静磁場の計測値とは、地磁気補正コイル7及び地磁気勾配補正コイル8によって静磁場が補正された後、地磁気補正用磁気センサ2により計測された値である。基準値は、光励起磁気センサ1Aが正常に動作する磁場の大きさであり、例えば1nTとすることができる。静磁場の計測値が基準値以下ではない場合(ステップS14において「NO」)、ステップS11に戻る。静磁場の計測値が基準値以下である場合(ステップS14において「YES」)、ステップS15に進む。
アクティブシールド用磁気センサ3は、変動磁場を計測する(ステップS15)。アクティブシールド用磁気センサ3は、光励起磁気センサ1Aのそれぞれの位置において、変動磁場を計測し、計測値を制御装置5に出力する。
制御装置5及びコイル電源6は、変動磁場補正コイル9に対する電流を制御する(ステップS16)。制御装置5は、アクティブシールド用磁気センサ3の計測値に基づいて、光励起磁気センサ1Aの位置における変動磁場に対し逆向き且つ同程度の大きさの磁場を発生させるように、変動磁場補正コイル9に対する電流を決定する。より具体的には、制御装置5は、例えば複数のアクティブシールド用磁気センサ3の計測値の平均値がゼロに近似するように、変動磁場補正コイル9に対する電流を決定する。制御装置5は、決定した電流に応じた制御信号をコイル電源6に出力する。コイル電源6は、制御装置5により出力された制御信号に応じて、所定の電流を変動磁場補正コイル9に出力する。変動磁場補正コイル9は、コイル電源6から供給される電流に応じて磁場を発生させる。光励起磁気センサ1Aの位置における変動磁場は、変動磁場補正コイル9により発生する逆向き且つ同程度の大きさの磁場によって打ち消される。
制御装置5は、補正後の変動磁場の計測値が基準値以下であるかどうかを判定する(ステップS17)。補正後の変動磁場の計測値とは、変動磁場補正コイル9によって変動磁場が補正された後、アクティブシールド用磁気センサ3によって計測された値である。基準値は、脳磁場を計測することができるノイズレベルであり、例えば1pTとすることができる。変動磁場の計測値が基準値以下ではない場合(ステップS17において「NO」)、ステップS15に戻る。変動磁場の計測値が基準値以下である場合(ステップS17において「YES」)、ステップS18に進む。
光励起磁気センサ1Aは、脳磁場を計測する(ステップS18)。制御装置5は、取得した計測結果を所定の出力先に出力する。所定の出力先とは、制御装置5のメモリ、ハードディスク等の格納装置、ディスプレイ等の出力装置のほか、通信インターフェイスを介して接続された端末装置等の外部装置であってもよい。ここまでに光励起磁気センサ1Aの位置における静磁場(地磁気に係る磁場)及び変動磁場が所定の基準値以下になるように打ち消されているため、光励起磁気センサ1Aは、静磁場(地磁気に係る磁場)の影響及び変動磁場の影響を避けた状態で脳磁場を計測することができる。
図4に移って、非磁性フレーム4を被験者に装着させたままの状態で引き続きMR画像の計測が開始されると、制御装置5は、静磁場の印加用の地磁気補正コイル7に供給する電流を決定し、制御信号をコイル電源6に出力することにより被験者の頭部におけるX軸方向の静磁場の生成を制御する(ステップS19)。次に、制御装置5は、傾斜磁場の生成用の地磁気勾配補正コイル8に供給する電流を決定し、制御信号をコイル電源6に出力することによりX軸方向磁場勾配(dBx/dX)の生成を制御する(ステップS20)。同時に、制御装置5は、送信コイルコントローラ15に対して送信コイル21に供給する電力を制御する制御信号を出力して、送信パルスを被験者の頭部に照射させるように制御する(ステップS21)。これにより、所定のスライス面のプロトンが励起される。
さらに、制御装置5は、傾斜磁場の生成用の地磁気勾配補正コイル8に供給する電流を決定し、制御信号をコイル電源6に出力することにより、スライス面上におけるY軸方向磁場勾配(dBx/dY)の生成を制御する(ステップS22)。これにより、位相エンコードが行われる。そして、制御装置5は、傾斜磁場の生成用の地磁気勾配補正コイル8に供給する電流を決定し、制御信号をコイル電源6に出力することにより、スライス面上におけるZ軸方向磁場勾配(dBx/dZ)の生成を制御する(ステップS23)。これにより、周波数エンコードが行われる。
それと同時に、OPMモジュール23から、受信コイル22及び出力コイル24を介して、プロトンからの核磁気共鳴信号が出力され、それに伴って、制御装置5は、核磁気共鳴信号のデータを取得する(ステップS24)。その後、制御装置5は、他のスライス面に関する核磁気共鳴信号データを取得するかを判定する(ステップS25)。判定の結果、他のスライス面に関する核磁気共鳴信号データを取得する場合(ステップS25において「YES」)、ステップS20に処理を戻す。一方で、他のスライス面に関する核磁気共鳴信号データを取得しない場合(ステップS25において「NO」)、それまで取得した核磁気共鳴信号データをフーリエ変換することによりMR画像を取得する(ステップS26)。制御装置5は、取得したMR画像を所定の出力先に出力する。所定の出力先とは、制御装置5のメモリ、ハードディスク等の格納装置、ディスプレイ等の出力装置のほか、通信インターフェイスを介して接続された端末装置等の外部装置であってもよい。
[共振調整回路の構成]
上述したように、脳計測装置M1は、MRIモジュールに含まれる構成として、共振調整回路50(図1参照)を備えている。以下では、共振調整回路50の構成の詳細について説明する。最初に、図5及び図6を参照しながら、共振調整回路50を設ける目的について説明する。
上述したように、脳計測装置M1は、MRIモジュールに含まれる構成として、共振調整回路50(図1参照)を備えている。以下では、共振調整回路50の構成の詳細について説明する。最初に、図5及び図6を参照しながら、共振調整回路50を設ける目的について説明する。
図5は、検出帯域に応じた検出感度の一例を示す図である。上述したように、脳計測装置M1は、検出部としてOPMモジュール23を採用してもよいし、OPMモジュール23の代替としてアンプ(不図示)を採用してもよい。図5(a)は、検出部としてアンプ(不図示)を採用した場合の検出帯域に応じた検出感度の一例を示している。図5(b)は、検出部としてOPMモジュール23を採用した場合の検出帯域に応じた検出感度の一例を示している。図5(a)(b)において横軸は周波数(検出帯域)を示しており、縦軸は振幅(検出感度)を示している。図5(a)では振幅を絶対値(mV)で示しており、図5(b)では振幅をa.u.で示している。なお、図5(a)(b)において示したMR信号(核磁気共鳴信号)の周波数範囲は、周波数エンコードによって指定された範囲である。
いま、図5(a)に示される、検出部としてアンプ(不図示)を採用した例では、MR信号の周波数範囲において感度(SNR)が大きく低下する周波数領域が存在している。感度がピーク値の50%となる部分のスペクトル幅であるFWHMは、4.6kHz程度となっている。また、図5(b)に示される、検出部としてOPMモジュール23を採用した例においても、MR信号の周波数範囲において感度(SNR)が大きく低下する周波数領域が存在しており、FWHMが1060Hz程度となっている。このように、検出部において、MR信号の周波数範囲にて十分な感度とならない周波数領域が存在する。
図6は、周波数エンコードされたMR信号について説明する図である。傾斜磁場の生成用の地磁気勾配補正コイル8に電流が供給されることにより、図6に示されるように、Z軸方向磁場勾配(dBx/dZ)が生成され、周波数エンコードが行われる。周波数エンコードが行われると、頭部におけるZ軸方向の位置に応じて、生成されるMR信号の周波数帯が定まる。すなわち、図6に示されるように、例えば頭部の最も下部側がf1付近の周波数を持つMR信号を生成する範囲となり、その範囲よりも上部側がf2(f2>f1)付近の周波数を持つMR信号を生成する範囲となり、その範囲よりも上部側がf3(f3>f2)付近の周波数を持つMR信号を生成する範囲となり、その範囲よりも上部側がf4(f4>f3)付近の周波数を持つMR信号を生成する範囲となる。このように、生成されるZ軸磁場勾配と頭部の位置とが定まれば、生成されるMR信号の周波数帯が特定可能となるため、各位置(領域)毎に特定の周波数帯(共鳴周波数)の信号を取り出す共振調整回路50を設けることによって、MR信号の周波数範囲について漏れなく高感度で検出することが可能となる。以下、図7~図10を参照しながら、共振調整回路50の具体的な構成例について説明する。
図7は、複数の共振調整回路50を含む脳計測装置М1の一部を示す概略図である。複数の共振調整回路50は、複数の受信コイル22それぞれに対応して設けられ、受信コイル22から出力された電流の所定の共鳴周波数の信号を取り出し出力するための回路である。図7においては、複数の共振調整回路50として、共振調整回路50a,50b,50c,50dが例示されている。なお、共振調整回路50は、例えば各受信コイル22に対して1対1で対応して設けられているが、図7では一部の共振調整回路50のみを示しており、4つの共振調整回路50a,50b,50c,50dのみを示している。
複数の共振調整回路50それぞれに係る共鳴周波数は、対応する受信コイル22のZ軸方向における位置、及び、傾斜磁場の制御によって生成されるZ軸方向の磁場勾配に応じて設定されている。上述したように、傾斜磁場の制御によって周波数エンコードが行われると、Z軸方向に沿ってMR信号の周波数帯が変化する(図6参照)。そのため、受信コイル22のZ軸方向の位置と磁場勾配とが考慮されて共振調整回路50の共鳴周波数が設定されることにより、受信コイル22から出力されたMR信号を好適に取り出すことができ、後段のOPMモジュール23においてMR信号を高感度で検出することができる。なお、受信コイル22は、直径30~50mmほどのサイズであり、頭部を囲むように配置されている。Z軸方向において同じ高さに並んだ受信コイル22に関しては、共振調整回路50に共鳴周波数が同じとされている。例えば、頭部の中心位置の受信コイル22に係る共鳴周波数が300kHzとされ、Z方向に30mmずれるごとに共鳴周波数が1.5kHzずらされる。これにより、各受信コイル22に近い脳から発せられるMR信号を効率良く検出することができる。そして、直径30~50mmほどの受信コイル22は、コイル付近で発生したMR信号を捉える感度が高く、一方で、コイルから遠い位置で発生したノイズに対する感度が低い。このため、このような受信コイル22を多数並べることにより、MR画像のSNRを向上させることができる。
図7に示されるように、複数の検出部であるOPMモジュール23は、複数の共振調整回路50(図7中では共振調整回路50a,50b,50c,50d)それぞれに対応して設けられ、共振調整回路50から出力された共鳴周波数の信号を検出する。OPMモジュール23の検出感度が最大となる周波数帯は、対応する共振調整回路50に係る共鳴周波数を含んでいる。出力コイル24は、OPMモジュール23に対向するように固定されている。各OPMモジュール23は、図7に示されるように共振調整回路50に1対1で対応して設けられていてもよい。
或いは、複数のOPMモジュール23には、共振調整回路50に係る共鳴周波数が互いに同じである、2つ以上の受信コイル22に係る信号について、位相を調整することによりいずれも検出する1つのOPMモジュール23が含まれていてもよい。上述したように、各共振調整回路50の共鳴周波数は対応する受信コイル22のZ軸方向における位置を考慮して決定されている。このため、共鳴周波数が互いに同じである2つ以上の共振調整回路50とは、すなわち、対応する受信コイル22のZ軸方向における位置が互いに同じである(又は近似する)2つ以上の共振調整回路50と言い換えることができる。単に、1つのOPMモジュール23により2つ以上の受信コイル22に係る信号を検出した場合には、これらの信号の位相が互いに異なることによって、信号を打ち消し合ってしまうおそれがある。このため、1つのOPMモジュール23により2つ以上の受信コイル22に係る信号を検出する場合には、これらの信号が打ち消し合わないようにこれらの信号の位相が調整されて検出される。
図8及び図9は、共振調整回路50の構成の一例を示す図である。図8は、検出部としてアンプ(不図示)が採用される場合の共振調整回路50の一例を示しており、具体的には、抵抗RinとインダクタLinが直列に接続された受信コイル22に対して、コンデンサCが並列に接続された並列共振回路を示している。このような並列共振回路では、例えば抵抗Rin=0.64Ω、インダクタLin=105μHとされた条件において、C=1/ω2Linの式から、所定の共鳴周波数(例えば300kHz)となるようにコンデンサCの値が設定される。
図9は、検出部としてOPMモジュール23が採用される場合の共振調整回路50の一例を示している。図9に示される共振調整回路50は、受信コイル22に対して直並列にコンデンサCs1,Cp1が設けられた入力側回路52と、出力コイル24に対して直並列にコンデンサCs2,Cp2が設けられた出力側回路55と、入力側回路52及び出力側回路55を接続する同軸ケーブル51と、を有している。図9に示される構成では、受信コイル22及び入力側回路52が同一の電磁シールドによって囲われており、出力側回路55がアルミケースに囲われており、出力コイル24及びOPMモジュール23がOPM用磁気シールドに囲われている。
図10は、図9に示される共振調整回路の詳細な回路構成を示す図である。図10に示されるように、受信コイル22では、抵抗RinとインダクタLinとが直列に接続されている。また、出力コイル24では、抵抗RoutとインダクタLoutとが直列に接続されている。そして、上述したように、共振調整回路50は、受信コイル22に対して直並列にコンデンサCs1,Cp1が設けられた入力側回路52と、出力コイル24に対して直並列にコンデンサCs2,Cp2が設けられた出力側回路55と、入力側回路52及び出力側回路55を接続する同軸ケーブル51と、を有している。
このような共振調整回路50では、同軸ケーブル51から入力側回路52及び受信コイル22側を見たインピーダンスである入力インピーダンスが、共鳴周波数において同軸ケーブル51のインピーダンスと同じになるように、入力側回路52のコンデンサCs1,Cp1の容量が調整されている。また、共振調整回路50では、同軸ケーブル51から出力側回路55及び出力コイル24側を見たインピーダンスである出力インピーダンスが、共鳴周波数において同軸ケーブル51のインピーダンスと同じになるように、出力側回路55のコンデンサCs2,Cp2の容量が調整されている。このように入力側回路52のコンデンサCs1,Cp1の容量及び出力側回路55のコンデンサCs2,Cp2の容量が調整されることにより、共鳴周波数において、同軸ケーブル51から見た入力インピーダンス及び出力インピーダンスがいずれも同軸ケーブル51のインピーダンスと同じになるため、共鳴周波数の信号成分の信号反射を抑制することができる。なお、同軸ケーブル51のインピーダンスは、例えば50Ωである。
図10に示される構成において、具体的には、以下の(1)式及び(2)式を満たすように入力側回路52のコンデンサCs1,Cp1の容量が求められる。(1)式の右辺の50は同軸ケーブル51のインピーダンスを示している。ωは角周波数を示しており、共鳴周波数から求められる。なお、出力側回路55のコンデンサCs2,Cp2の容量についても、同様の式に基づき求められる。
Z+1/jωCs1=50 (1)
Z=(1/jωCp1)//(Rin+jωLin) (2)
Z+1/jωCs1=50 (1)
Z=(1/jωCp1)//(Rin+jωLin) (2)
いま、例えばLin=105.7μH、Rin=0.77Ω、LOUT=3.0μH、ROUT=0.18Ω、共鳴周波数=300kHzとすると、上記(1)式及び(2)式より、Cp1=2.3nF、Cs1=330pF、Cp2=89nF、Cs2=6.6nFと求められる。
次に、本実施形態に係る脳計測装置M1の作用効果について説明する。
本実施形態に係る脳計測装置M1では、受信コイル22から出力された電流の所定の共鳴周波数の信号を取り出す共振調整回路50が設けられている。そして、複数の共振調整回路50それぞれの共鳴周波数は、対応する受信コイル22のZ軸方向の位置及びZ軸方向の磁場勾配に応じて設定されている。このように、対応する受信コイル22の位置及び生成されている磁場勾配を考慮して共振調整回路50の共鳴周波数が設定されることにより、共振調整回路50に対応して設けられているOPMモジュール23において検出される信号の感度を向上させることができる。ここで、共振調整回路50によって感度を向上させた場合には、周波数帯域が数kHz程度に制限されてしまう。この点、本実施形態に係る脳計測装置M1では、共鳴周波数が互いに異なる複数の受信コイル22が磁場勾配に応じて配置されているため、感度を向上させながら、全体として十分な周波数帯域、すなわちFOV(Field of View)を確保することができる。以上のように、本実施形態に係る脳計測装置M1によれば、検出感度を向上させると共に十分なFOVを確保することができる。
複数のOPMモジュール23には、共振調整回路50に係る共鳴周波数が互いに同じである、2つ以上の受信コイル22に係る信号について、位相を調整することによりいずれも検出する1つのOPMモジュール23が含まれていてもよい。このように、共鳴周波数が互いに同じである受信コイル22に係る信号については、位相を調整しながら同一のOPMモジュール23によって検出することにより、検出部であるOPMモジュール23の数を減らしてシンプルな構成で脳計測を行うことができる。
OPMモジュール23の検出感度が最大となる周波数帯は、対応する共振調整回路50に係る共鳴周波数を含んでいてもよい。これにより、検出部における検出感度をより向上させることができる。
受信コイル22は、静磁場が生成される方向であるX軸方向に直交する面における最大面積及び巻き数が一定になるように形成されていてもよい。このような構成によれば、受信コイル22における感度が均一になり、より適切に脳計測を行うことができる。
また、本実施形態に係る脳計測装置M1の共振調整回路50では、同軸ケーブル51から入力側回路52及び受信コイル22側を見たインピーダンスである入力インピーダンスが、共鳴周波数において、同軸ケーブル51のインピーダンスと同じになるように、入力側回路52のコンデンサCs1,Cp1の容量が調整されており、同軸ケーブル51から出力側回路55及び出力コイル24側を見たインピーダンスである出力インピーダンスが、共鳴周波数において、同軸ケーブル51のインピーダンスと同じになるように、出力側回路55のコンデンサCs2,Cp2の容量が調整されていてもよい。このように、同軸ケーブル51から入力側回路52及び受信コイル22側を見た入力インピーダンス並びに出力側回路55及び出力コイル24側を見た出力インピーダンスが、いずれも、共鳴周波数において同軸ケーブル51のインピーダンスと同じになるように、入力側回路52及び出力側回路55のコンデンサCs1,Cp1,Cs2,Cp2の容量が調整されている。このような構成によれば、共鳴周波数において、同軸ケーブル51から見た入力インピーダンス及び出力インピーダンスがいずれも同軸ケーブル51のインピーダンスと同じになるため、信号における共鳴周波数の成分について信号反射による電力ロスを抑制し、OPMモジュール23における検出感度を向上させることができる。
図11は、実施形態に係る脳計測装置M1の作用効果を説明する図である。図11(a)は、受信コイル22及び出力コイル24間に直列にコンデンサを接続した直列共振の構成(比較例に係る構成)におけるノイズレベルを示している。図11(b)は本実施形態に係る共振調整回路50(図9及び図10に示される共振調整回路50)を含む構成におけるノイズレベルを示している。図11(a)(b)において、横軸は周波数、縦軸は磁気ノイズ密度を示している。図11(a)に示されるように、比較例に係る構成では、周波数が300kHzである条件において、ノイズレベルが23fT/Hz1/2となっている。それに対して、図11(b)に示されるように、本実施形態に係る構成では、周波数が300kHzである条件において、ノイズレベルが2.1fT/Hz1/2となっている。このように、本実施形態に係る構成では、比較例に係る構成と比較して、SNRを大きく向上させることができている。すなわち、本実施形態に係る構成では、FT入出力コイル(受信コイル22及び出力コイル24)間の信号反射を抑えると共に、FTのゲインが高くなるため、OPMモジュール23における感度を高くすることができる。また、FT入出力コイル間の同軸ケーブル51を長くしても信号のロスを小さくすることができるため、入出力コイル及びOPMモジュール23の配置自由度が高くなる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、共振調整回路50を含む脳計測装置M1を説明したが、共振調整回路50は、脳計測装置M1以外のその他の交流磁場計測装置に備わっていてもよい。
また、共振調整回路の構成は図10の構成に限定されない。図12は、変形例に係る共振調整回路500の詳細な回路構成を示す図である。図12に示されるように、受信コイル22及び出力コイル240間に設けられる共振調整回路500は、受信コイル22に接続されたインピーダンス整合回路260を有している。インピーダンス整合回路260は、受信コイル22から見て後段側(同軸ケーブル51側)をハイインピーダンスにするものである。このようなインピーダンス整合回路260が設けられることにより、コイルに流れる電流を減少させることができ、コイルアレイを用いた場合にコイル間の誘導結合を低減させることができる。なお、このような構成においても、同軸ケーブル51と出力コイル240とのインピーダンスをマッチングさせることにより、出力コイル240に効率良く電流を流すことができる。
また、受信コイルの構成は、図13に示されるようなフェイズドアレイコイルであってもよい。図13は、変形例に係る受信コイル(フェイズドアレイコイル)の構成を示す図である。図13に示されるフェイズドアレイコイルの構成では、隣り合うコイル601,601の干渉を考慮して、コイル601同士を重ね合わせている。このように、コイル601同士にある特定の重なりを持たせて並べることにより、隣り合うコイル601からの誘導起電力を打ち消し、電気的干渉を最小限に抑えることができる。
5…制御装置、7…地磁気補正コイル(静磁場コイル)、8…地磁気勾配補正コイル(傾斜磁場コイル)、21…送信コイル、22…受信コイル、23…OPMモジュール(検出部)、50…共振調整回路、51…同軸ケーブル、52…入力側回路、55…出力側回路、Cs1,Cp1,Cs2,Cp2…コンデンサ、М1…脳計測装置(交流磁場計測装置)。
Claims (3)
- 信号を検出して電流に変換するための受信コイルと、
前記受信コイルに対応して設けられ、前記受信コイルから出力された電流の所定の周波数を出力するための共振調整回路と、
前記共振調整回路から出力された電流を磁気信号に変換するための出力コイルと、
前記出力コイルによって出力された前記磁気信号を検出する光励起磁気センサと、を備え、
前記共振調整回路は、前記受信コイルに対して直並列にコンデンサが設けられた入力側回路と、前記出力コイルに対して直並列にコンデンサが設けられた出力側回路と、前記入力側回路及び前記出力側回路を接続する同軸ケーブルと、を有し、
前記同軸ケーブルから前記入力側回路及び前記受信コイル側を見たインピーダンスである入力インピーダンスが、前記所定の周波数において、前記同軸ケーブルのインピーダンスと同じになるように、前記入力側回路のコンデンサの容量が調整されており、
前記同軸ケーブルから前記出力側回路及び前記出力コイル側を見たインピーダンスである出力インピーダンスが、前記所定の周波数において、前記同軸ケーブルのインピーダンスと同じになるように、前記出力側回路のコンデンサの容量が調整されている、交流磁場計測装置。 - 所定の周波数の送信パルスを送信するための送信コイルと、
前記光励起磁気センサによって検出された信号に基づきMR画像を生成する制御装置と、を更に備え、
前記受信コイルは、前記送信パルスの送信によって生じた核磁気共鳴信号を検出して電流に変換する、請求項1記載の交流磁場計測装置。 - 前記光励起磁気センサの検出感度が最大となる周波数帯は、共鳴周波数を含んでいる、請求項2記載の交流磁場計測装置。
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