JP2023031628A - 静穏度評価手法、予測モデル生成方法、静穏度評価装置、およびプログラム - Google Patents
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Abstract
【課題】対象海域の静穏度をより簡単に、かつ詳細に評価できる技術を提供する。【解決手段】本発明の一実施形態に係る静穏度評価手法は、第1の海域の波浪に関する情報を取得する第1ステップ(S531)と、前記第1の海域の波浪に関する情報に基づいて、予め機械学習により構築された予測モデルにより、第2の海域の静穏度に関する情報を出力する第2ステップ(S534,S535)とを情報処理装置が実行する。【選択図】図11
Description
本発明は、静穏度評価手法、予測モデル生成方法、静穏度評価装置、およびプログラムに関する。
港湾における建設作業や港湾の管理において、入出港する作業船舶や商用船舶の稼働率の把握は重要である。稼働率を把握するためには、来襲波浪に対する港内の波高分布を評価する必要があり、通常、物理モデルによる波浪変形解析が必要とされる。
引用文献1には、第一推定値の気象予報値を観測値で修正した大気解析データに含まれる風向及び風速データを基にデータ補間してN時の波浪予報データを推算し、これをN+α時の波浪予測のための初期条件値として波浪推算プログラムに設定し、N+α時の波浪を予測することが開示されている。
また、引用文献2には、観測された有義波高または有義波周期の少なくとも一方の波浪情報の観測値と、全球波浪モデルを用いた所望地点に対応する地点の予報値をGMDHによる機械学習させ、予測モデルを構築することが開示されている。
港湾の稼働率を評価するためには、海上における対象海域の詳細な波高分布の推定を行い、得られた推定値をさらに統計分析し、対象海域の静穏度を推定する必要がある。従来の波浪変形解析では、いわゆる計算そのものにかかる時間のほか、入力データ(初期地形データ、想定波浪条件など)の作成や出力データの処理に時間や手間がかかるとともに、解析でエラーが発生した際の対処などに時間や手間がかかる。このため、詳細な数値解析によらない、簡易な評価手法が求められている。
また、港湾の稼働率は、入出港する船舶の作業の効率性を表す指標としても用いられる。例えば、建設用の作業船舶が作業する際に停泊する港湾内の領域(海域)や、商用船舶が荷物の積み下ろしを行う際に接岸する領域(海域)など、極めて小さい海域の静穏度を正確に推定する必要がある。このため、対象海域内の静穏度をより詳細かつ正確に推定することができる評価手法が求められている。
例えば、特許文献1の技術では、波浪変形解析モデルとして力学計算モデル(swan)を用いるため、所望の地点、時刻における予測値の取得のための、入力データの作成や出力データの処理、解析でエラーが発生した際の対処などに時間や手間がかかる。また、特許文献2の技術は、観測データが存在している地点の予測結果を求めるものなので、観測データが存在しない港湾内の詳細な波高分布の推定には適さない。
本発明の一態様は、上記問題点に鑑みたものである。本発明の一態様は、対象海域の静穏度をより簡単に、かつ詳細に評価することができる技術を提供することを目的とする。
前記の課題を解決するために、本発明の一実施形態に係る静穏度評価手法は、第1の海域の波浪に関する情報を取得する第1ステップと、前記第1の海域の波浪に関する情報に基づいて、予め機械学習により構築された予測モデルにより、第2の海域の静穏度に関する情報を出力する第2ステップとを情報処理装置が実行する。
前記の構成によれば、第1の海域の波浪に関する情報が取得され、第1の海域の波浪に関する情報に基づいて、予め機械学習により構築された予測モデルにより第2の海域の静穏度に関する情報が出力される。これにより、例えば、波浪変形解析を用いて第2の海域の静穏度に関する情報を算出する場合と比較して、静穏度に関する情報を入手するまでに要する時間が大幅に短縮される。
前記第1ステップで取得される波浪に関する情報は、少なくとも波高、周期、および波向を含む波浪条件であり、 前記第2ステップでは、前記予測モデルによって予測された前記第2の海域の波高分布情報である波高コンター図を含む静穏度に関する情報が出力されるようにしてもよい。
前記の構成によれば、第1の海域の波高、周期、および波向に基づいて、第2の海域の波高分布が予測される。これにより、第2の海域内の静穏度を詳細に予測することができる。
前記第2ステップにおいては、前記波高コンター図がさらに、5m乃至100mの格子間隔に区分され、前記波高コンター図から得られる前記格子毎の波高データに変換されるようにしてもよい。
前記の構成によれば、前記波高コンター図がさらに、格子毎の波高データに変換される。これにより、出力された波高コンター図に基づき、第2の海域の任意の場所の波高分布情報だけを確認することが出来る。
前記第1ステップでは複数の波浪条件が取得され、前記第2ステップにおいては、前記複数の波浪条件に対応してそれぞれ予測された複数の波高分布情報に対応する波高データに基づいて、前記第2の海域における予め設定された限界波高以下の波の出現比率が算出され、前記静穏度に関する情報として出力されるようにしてもよい。
前記の構成によれば、複数の波浪条件に対応してそれぞれ予測された複数の波高分布情報に対応する波高データに基づいて、第2の海域における予め設定された限界波高以下の波の出現比率が算出される。これにより、第2の海域における船舶の作業の実施効率をより正確に予測することができる。
前記波浪条件には、風速、風向、および潮流の少なくともいずれかさらに含まれるようにしてもよい。
前記の構成によれば、風速、風向、および潮流の少なくともいずれかがさらに波浪条件に含まれる。これにより、より正確な波高分布の予測が可能となる。
前記第1ステップにおいては、さらに前記第2の海域の地形構造物に関する情報が説明変数として入力され、前記第2のステップでは、前記第1の海域の波浪に関する情報と、前記第2の海域の地形構造物に関する情報に基づいて、予め機械学習により構築された予測モデルにより、第2の海域の静穏度に関する情報が出力されるようにしてもよい。
前記の構成によれば、第2の海域の地形構造物に関する情報が説明変数として入力されることで対象海域における地形構造物による波高への影響を考慮することが出来る。これにより、より正確な波高分布の予測が可能となる。
前記第1の海域の波浪に関する情報と、前記波浪に関する情報に対して波浪変形解析を行って得られた第2の海域の静穏度に関する情報との組を複数含む教師データを取得する第3ステップと、前記第1の海域の波浪に関する情報を入力データとし、前記第2の海域の静穏度に関する情報を出力データとする予測モデルを、前記教師データを参照して学習させる第4ステップとをさらに備えるようにしてもよい。
前記の構成によれば、第1の海域の波浪に関する情報と、波浪に関する情報に対して波浪変形解析を行って得られた第2の海域の静穏度に関する情報との組を複数含む教師データが取得され、第1の海域の波浪に関する情報を入力データとし、第2の海域の静穏度に関する情報を出力データとする予測モデルが、教師データを参照して学習される。この学習により、予測モデルを構築することができる。
前記教師データとして取得される波浪に関する情報は、少なくとも波高、周期、および波向を含む波浪条件であり、前記教師データとして取得される静穏度に関する情報は、前記波浪変形解析を行って得られた前記第2の海域の波高分布である波高コンター図を含むようにしてもよい。
前記の構成によれば、教師データとして取得される波浪に関する情報が、少なくとも波高、周期、および波向を含む波浪条件とされ、教師データとして取得される静穏度に関する情報に、波浪変形解析を行って得られた第2の海域の波高分布である波高コンター図が含まれる。これにより、例えば、第2の海域の静穏度を詳細に評価するのに適した学習を行うことができる。
前記第2の海域が、複数の区分海域に分割され、前記第1の海域の所定の波浪条件に対して波浪変形解析を行って得られた前記第2の海域の波高コンター図である解析波高コンター図と、前記所定の波浪条件と同じ波浪条件で実測された前記第2の海域の波高コンター図である実測波高コンター図に基づいて、前記区分海域毎に解析波高値と実測波高値を取得する第5ステップと、前記解析波高値を前記実測波高値に補正する補正値を、前記区分海域毎に算出する第6ステップとをさらに備え、前記第4ステップでは、前記補正値により補正して得られた波高コンター図である補正後波高コンター図を含む前記静穏度に関する情報を、前記教師データとして再学習させるようにしてもよい。
前記の構成によれば、解析波高値を実測波高値に補正する補正値が、区分海域毎に算出され、補正値により補正して得られた補正後波高コンター図を含む静穏度に関する情報が、教師データとして再学習させられる。これにより、より正確な予測を可能とする予測モデルを構築することができる。
前記波浪変形解析において、前記第2の海域の地形構造物に関する情報がさらに用いられ、前記第3ステップでは、前記第1の海域の波浪に関する情報と、前記波浪に関する情報および前記第2の海域の地形構造物に関する情報に対して波浪変形解析を行って得られた第2の海域の静穏度に関する情報との組を複数含む教師データが取得されるようにしてもよい。
前記の構成によれば、波浪変形解析において、前記第2の海域の地形構造物に関する情報がさらに用いられて教師データが生成される。これにより、学習時に、より適切な教師データを取得することが可能となる。
本発明の一実施形態に係る予測モデル生成方法は、第1の海域の波浪に関する情報と第2の海域の静穏度に関する情報との組を複数含む教師データを取得するステップと、第1の海域の波浪に関する情報を入力データとし第2の海域の静穏度に関する情報を出力データとする予測モデルを、前記教師データを参照して学習させるステップとを情報処理装置が実行する。
前記の構成によれば、第1の海域の波浪に関する情報と第2の海域の静穏度に関する情報との組を複数含む教師データが取得され、第1の海域の波浪に関する情報を入力データとし第2の海域の静穏度に関する情報を出力データとする予測モデルが、教師データを参照して学習される。これにより、例えば、波浪変形解析を用いて第2の海域の静穏度に関する情報を算出する場合と比較して、静穏度に関する情報の出力に要する時間を大幅に短縮できる予測モデルの学習が可能となる。
本発明の一実施形態に係る静穏度評価装置は、第1の海域の波浪に関する情報を取得する情報取得部と、前記第1の海域の波浪に関する情報に基づいて、予め機械学習により構築された予測モデルにより、第2の海域の静穏度に関する情報を出力する情報出力部とを備える。
前記の構成によれば、第1の海域の波浪に関する情報が取得され、前記第1の海域の波浪に関する情報に基づいて、予め機械学習により構築された予測モデルにより、第2の海域の静穏度に関する情報が出力される。これにより、例えば、波浪変形解析を用いて第2の海域の静穏度に関する情報を算出する場合と比較して、静穏度に関する情報の出力に要する時間が大幅に短縮される。
本発明の一実施形態に係るプログラムは、静穏度評価装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、前記情報取得部、および前記情報出力部としてコンピュータを機能させる。
前記の構成によれば、第1の海域の波浪に関する情報が取得され、前記第1の海域の波浪に関する情報に基づいて、予め機械学習により構築された予測モデルにより、第2の海域の静穏度に関する情報が出力される。これにより、例えば、波浪変形解析を用いて第2の海域の静穏度に関する情報を算出する場合と比較して、静穏度に関する情報の出力に要する時間が大幅に短縮される。
本発明の一態様によれば、対象海域の静穏度をより簡単に、かつ詳細に評価することできる。
〔実施形態1〕
以下、本発明の実施形態にについて、図面を参照して説明する。図1は、実施形態1に係る学習装置1の構成例を示すブロック図である。
以下、本発明の実施形態にについて、図面を参照して説明する。図1は、実施形態1に係る学習装置1の構成例を示すブロック図である。
同図に示されるように、学習装置1は、制御部10、記憶部20、通信部30、入力部40、および出力部50を有する。学習装置1は、例えば、汎用のコンピュータによって構成される。
制御部10は、取得部11、教師データ生成部12,および学習部13を有する。
取得部11は、第1の海域としての海域71の波浪に関する情報を取得する。例えば、取得部11は、海域71の波浪に関する情報として、海域71の波浪条件を取得する。波浪条件は、例えば、海域71の波高、周期、および波向である。また、海域71の波浪条件には、風速、風向、および潮流の少なくともいずれかがさらに含まれるようにしてもよい。
取得部11は、また、第2の海域としての海域72の地形構造物に関する情報(例えば、地形構造物条件)を取得する。海域72の地形構造物条件は、例えば、海域72の海底の地形コンター図、海域72の中に建設された地形構造物の位置や配置、大きさ、高さなどを表す情報である。
地形構造物としては、離岸堤や防波堤、海底面の窪地のような凹凸などである。なお、海域72の地形構造物条件は取得されないようにしてもよい。
取得部11は、さらに、海域72の波高分布を取得する。波高分布の一例として、海域72の波高コンター図がある。ここで取得される波高分布は、海域72の静穏度に関する情報である。海域72の波高分布は、例えば、海域71の波浪条件に対して海域72の地形構造物条件を考慮した波浪変形解析を行うことにより得られる。なお、海域72の地形構造物条件が取得されていない場合、海域71の波浪条件に対して波浪変形解析を行うことで、海域72の波高分布を得るようにしてもよい。
波浪変形解析は、与えられた波浪条件の波がどのように伝搬するかを解析する力学モデルであって、運動方程式と連続方程式とを解く演算処理である。例えば、沖の波浪条件に対して波浪変形解析を行うことにより、沖の波が沿岸に伝搬した際の港湾内の波高分布を仮想的に知ることができる。波浪変形解析は、例えば、コンピュータで行われるようにしてもよいし、机上の演算によって行われるようにしてもよい。
図2は、海域71(第1の海域)と海域72(第2の海域)を説明する図である。海域71は、一例として海域72より広い海域であるがこれは本実施形態を限定するものではない。海域72は、静穏度を評価すべき海域であり、例えば、船舶が停泊する海域でもある。海域72は、例えば、港湾内の海域であり、この例では、港(横浜港)湾内の海域が海域72である。また、海域72は、海岸に近い所定の海域であってもよいし、港湾外の沖合泊地の海域であってもよい。海域71は、一例として、海域72の沖に位置する海域であるが、これは本実施形態を限定するものではない。海域71は、例えば、日本列島の沿岸部の全てが含まれる海域であってもよい。なお、海域72は、海域71の一部として、海域71の中に含まれてもよい。
図3は、海域72の波高分布の例を示す図である。この例では、海域72の波高分布が波高コンター図として示されている。波高コンター図は、海域内における波高が、例えば、視覚的に認識されるように表示された図である。この例では、波高0mから波高1.3mまでの波が色分けしてしめされている。なお、同図では、波高コンター図内での色分けが濃淡によって表現されている。
海域72の波高コンター図は、後述するように、さらに波高データに変換されるようにしてもよい。
図4は、波高コンター図から格子毎の波高データへの変換を説明する図である。例えば、波高コンター図に格子メッシュを重ね合わせ、格子の区画におけるコンターの色合いから数値を読み取って数値化することで、波高コンター図が波高データに変換される。海域72の波高コンター図は、所定格子間隔に分けられる(以下、適宜、「メッシュ化する」と称する。)。すなわち、海域72の波高コンター図上で、海域72がメッシュ化されることになる。メッシュ化された各区画は、一辺が5m乃至100mの矩形の領域である。
図4の例では、メッシュ化された海域72の1つの区画(格子)が点線の矩形で示されている。図4には、例示として1つの区画しか示されていないが、同じ大きさの区画が海域72上に多数設定されることになる。ここで、各区画に対応する波高を示すデータが波高データである。図4の例では、区画の代表座標である図中左下の角の座標(X,Y)が(nkm,mKm)で表されるものとした場合、点線の矩形で示された区画の左下の角の座標がX軸方向(図中水平方向)2.400km,Y軸方向(図中垂直方向)1.700Kmで表される。そして、当該区画の波高(H)は、波高コンター図の色から、1.05mと特定される。
なお、区画のサイズが大きく、同一区画内で波高コンター図の色が複数確認できるとき(同一区画内で複数の波高が確認できるとき)には、当該区画の平均的な色合いから、当該区画の波高が特定されることが望ましい。
なお、区画のサイズが大きく、同一区画内で波高コンター図の色が複数確認できるとき(同一区画内で複数の波高が確認できるとき)には、当該区画の平均的な色合いから、当該区画の波高が特定されることが望ましい。
このように、メッシュ化された波高コンター図の各区画の波高を特定することにより、波高データが生成される。図5は、波高データの例を示す図である。波高データは、例えば、図5に示されるように、各区画の代表座標(X,Y)のそれぞれと、それらに対応する波高(H)として生成される。なお、各区画の代表座標は各格子の同じ四隅の1点(左下、左上、右下、または右上の角)を用いてもよいし、区画の中央点に設定してもよい。四隅の1点を用いる場合は、左下の座標(X・Y)とは限らず、右上の座標でも右下の座標としてもよい。
教師データ生成部12は、海域71の波浪条件と海域72の波高コンター図とを紐づけた教師データを生成する。なお、教師データ生成部12は、海域71の波浪条件に加えて海域72の地形構造物条件を、海域72の波高コンター図と紐づけた教師データを生成するようにしてもよい。
学習部13は、教師データを用いて予測モデルを学習させる。すなわち、学習部13は、海域71の波浪に関する情報(例えば、波浪条件)を入力データとし、海域72の静穏度に関する情報(例えば、波高コンター図)を出力データとする予測モデルを学習させる。また、学習部13は、海域71の波浪に関する情報(例えば、波浪条件)および海域72の地形構造物条件を入力データとし、海域72の静穏度に関する情報(例えば、波高コンター図)を出力データとする予測モデルを学習させるようにしてもよい。
記憶部20には、教師データTDが記憶される。教師データTDは、波浪条件WCと、波浪条件に紐づけられた波高コンター図WFの組からなり、複数組の教師データが記憶される。ここでは、複数組の教師データをまとめて教師データTDと称することにする。
なお、学習部13による学習の際に、教師データに含まれる波高コンター図に対応する波高データが補正されるようにしてもよい。波高データの補正の詳細については、後述する。
ここでは、海域71の波浪条件と海域72の波高コンター図の組から成る教師データの例について説明したが、これに限られるものではない。要は、海域71の波浪に関する情報と海域72の静穏度に関する情報とを紐づけた教師データが生成されるようにすればよい。
記憶部20には、さらにモデルパラメータMPが記憶されている。モデルパラメータMPは、例えば、CNN(Convolutional Neural Network、畳み込みニューラルネットワーク)構造を有する予測モデルに含まれる係数であり、機械学習により更新される。ただし、これは本実施形態を限定するものではなく、モデルパラメータMPは、例えば、線形又は非線形の回帰モデルを規定するためのパラメータであってもよい。これらの機械学習は、学習部13により実行される。なお、記憶部20は、学習装置1に内蔵されておらず、例えば、後述の通信部30を介して学習装置1と外部接続される構成であってもよい。
また、上記の説明では、予測モデルとして、CNNなどのニューラルネットワークや回帰モデルを例に挙げたがこれは本実施形態を限定するものではなく、予測モデルとして、RNN(Recurrent Neural Network、再帰的ニューラルネットワーク)などを用いてもよい。また、予測モデルとして、ランダムフォレストやサポートベクターマシンなどの非ニューラルネットワーク型のモデルを用いてもよい。
通信部30は、例えば、ローカルエリアネットワーク、広域ネットワークなどに接続する機能を有する。例えば、通信部30を介して教師データを外部のサーバなどから取得することも可能である。
入力部40は、例えば、キーボード、OCRスキャナなどにより構成される。例えば、教師データ、地形構造物条件などが入力部40を介して入力される。
出力部50は、例えば、ディスプレイ、スピーカ、プリンタなどにより構成され、装置による各種処理結果などを画面上に表示したり、音声や図として出力したりする。
このように、学習装置1は、第1の海域(例えば、海域71)の波浪条件を入力とし、第2の海域(例えば、海域72)の波高分布としての波高コンター図を出力とする予測モデルのモデルパラメータMPを学習するように構成されている。
次に、図6のフローチャートを参照して、学習装置1による教師データ生成処理の例を説明する。
図6の例では、ステップS11において、取得部11が海域71の波浪に関する情報を取得する。この例では、ステップS11において、波浪に関する情報として、海域71の波高、周期、および波向を含む波浪条件が複数取得される。また、波浪条件には、風速、風向、および潮流の少なくともいずれかがさらに含まれるようにしてもよい。
ステップS12において、取得部11は、地形構造物条件を取得する。地形構造物条件は、例えば、海域72の海底の地形コンター図、海域72の中に建設された離岸堤や防波堤などの地形構造物の配置,位置、大きさ、高さなどを表す情報から得られたデータとして取得される。このデータは、例えば、波高データの各区画に対応する海底または構造物の高さであって、海面と海底または海面と構造物との距離が、それぞれの区画の座標に対応付けられたデータとされてもよい。
例えば、海底の地形(海底面の窪地のような凹凸など)は、港湾内の海面に出現する波の高さに影響する。また、港湾内の構造物(防波堤など)も、やはり港湾内の海面に出現する波の高さに影響する。このため、波浪変形解析において、地形構造物条件が考慮されるようにすれば、より正確に港湾内の波高分布を算出することができる。
あるいはまた、港湾内に新たに防波堤を建設することが予定されている場合、建設された防波堤を含んだ地形構造物条件が取得されるようにしてもよい。このようにすることで、実際には未だ存在していない防波堤のある港湾内の波高分布を、波浪変形解析により仮想的に求めることができる。あるいはまた、港湾内の波高分布を所望の波高分布とするために建設すべき地形構造物の条件(配置、位置、大きさ、高さなど)を求めることもできる。
ステップS13において、教師データ生成部12は、ステップS11で取得された海域71の波浪条件と、ステップS12で取得された海域72の地形構造物条件とを用いた波浪変形解析を行う。なお、ステップS12の処理は、実行されないようにしてもよい。すなわち、地形構造物条件を取得することなく、波浪変形解析が行われるようにしてもよい。
ステップS14において、教師データ生成部12は、ステップS13で行った波浪変形解析の結果から導き出される、海域72の静穏度に関する情報を生成する。すなわち、ステップS11で取得した海域71の複数の波浪に関する情報のそれぞれに対して波浪変形解析を行って得られた海域72の複数の静穏度に関する情報が、教師データ生成部12により生成される。この例では、ステップS14において、例えば、図3を参照して説明した波高コンター図が複数生成される。
なお、例えば、公開されている気象情報などにより、海域71の所定の波浪条件に対応する海域72の波高分布を取得することができる場合、ステップS13において波浪変形解析を行う必要はない。この場合、ステップS14では、公開されている気象情報などから得られた海域72の波高分布が取得されるようにすればよい。
ステップS15において、教師データ生成部12は、ステップS11の処理で取得した複数の波浪に関する情報(波浪条件)と、ステップS14の処理で生成した複数の静穏度に関する情報(例えば、波高コンター図)とを紐づけた教師データを生成する。このようにして、海域71の波浪条件WCと、その波浪条件に対応した波高コンター図WFの組を複数含む教師データTDが生成されることになる。また、海域71の波浪条件WCおよび海域72の地形構造物条件に対応した波高コンター図WFの組を複数含む教師データが生成されるようにしてもよい。生成された教師データTDは、記憶部20に記憶される。
なお、教師データとして用いる波浪条件は、公開されているデータなどから、通信部30を介して取得されるようにしてもよい。例えば、気象庁が公開するGPV(Grid Point Value)データから導出される波浪条件が取得されるようにしてもよい。同様に、教師データとして用いる波高コンター図についても、公開されている情報があれば、それを利用するようにしてもよい。
次に、図7のフローチャートを参照して、学習装置1による学習処理の例を説明する。
ステップS31において、学習部13は、海域71の波浪条件WCと、その波浪条件に対応した波高コンター図WFの組を複数含む教師データを取得し、教師データTDに含まれる波高コンター図WFに対応する波高データWDを補正する。このとき、学習部13は、記憶部20から教師データTDを読みだして取得するとともに、例えば、波高コンター図を変換して得られる波高データであって、海域72の中の所定の領域の波高データを補正係数によって補正する。
波浪変形解析は、予め与えられた物理モデルを用いた演算であり、波浪変形解析の解析結果として得られた海域72の波高分布としての波高コンター図(解析波高コンター図)が実際に観測された海域72の波高分布としての波高コンター図(実測波高コンター図)と異なることもある。波高データの補正は、解析結果として得られた解析波高コンター図の波高を、実測結果として得られた実測波高コンター図の波高に近づけるために行われる。このため、海域72の解析結果の波高値(解析波高値)と、実測された波高値(実測波高値)が取得される。
例えば、海域72の中に、波高データの補正に係る1または複数の所定の領域(区分海域)が設定される。所定の領域は、例えば、学習部13によって設定される。図8は、波高データの補正に係る領域を説明する図である。この領域は、例えば、図4を参照して説明した区画を複数個含んで成るものとされ、図8に示される波高コンター図の中で、丸囲みの数値1乃至5により表される各領域1乃至5である。なお、各領域の大きさは、同じでもよいし、異なってもよい。図8の例では、5個の領域が設定されているが、より多くの領域が設定されるようにしてもよい。あるいはまた、1個の領域のみが設定されるようにしてもよい。
次に、解析結果の波高値(解析波高値)と、実測された波高値(実測波高値)が、上述の領域毎に比較される。なお、1つの領域の中に複数の波高値が存在する場合、それらの波高値の平均値が比較されるようにしてもよい。解析波高値と実測波高値との比較は、例えば、学習部13によって行われる。そして、例えば、学習部13により、補正値A=実測波高値/解析波高値が、領域毎に算出される。例えば、領域1乃至5のそれぞれに適用される補正値として補正値A1乃至補正値A5が算出される。
ステップS31では、学習部13によって、教師データの中の波高コンター図WFを変換して得られる波高データに補正値を乗じることによって波高コンター図の補正が行われる。このとき、学習部13によって、波高データの区画の代表座標(X,Y)から、当該波高データが領域1乃至5のいずれかに属するか否かが判定され、領域1乃至5に属する波高データが特定される。そして、学習部13によって、領域1に属する波高データの波高(H)に補正値A1が乗じられ、領域2に属する波高データの波高(H)に補正値A2が乗じられ、領域3に属する波高データの波高(H)に補正値A3が乗じられ、...、領域5に属する波高データの波高(H)に補正値A5が乗じられる。その後、補正値を乗じた波高データから波高コンター図(補正後波高コンター図)を作成する。なお、ステップS31の処理は実行されないようにしてもよい。
ステップS32において、学習部13は、ステップS31の処理で補正された教師データ(波浪条件WCと補正後波高コンター図WFからなる教師データTD)を用いて機械学習を実行する。すなわち、学習部13は、海域71の波浪に関する情報を入力データとし、海域72の静穏度に関する情報を出力データとする予測モデルを学習させる。なお、ステップS31における補正処理が実行されない場合、ステップS32では、記憶部20から読みだされた教師データTDがそのまま用いられて機械学習が実行される。また、一度記憶部20から読みだされた教師データTDがそのまま用いられて機械学習が実行された後、補正された教師データを用いて再学習させるようにしてもよい。このようにして、波浪条件WCと波高コンター図WFとの相関関係が機械学習されることになる。すなわち、予測モデルが出力する海域72の静穏度に関する情報と、教師データに含まれる静穏度に関する情報との相違がより小さくなるように予測モデルのモデルパラメータを更新することによって、当該予測モデルを学習させる。
なお、上述したように、教師データTDは、海域71の波浪条件WCおよび海域72の地形構造物条件に対応した波高コンター図WFの組を複数含むものであってもよい。この場合、波浪条件WCおよび海域72の地形構造物条件と波高コンター図WFとの相関関係が機械学習されることになる。すなわち、教師データTDに海域72の地形構造物条件を含めて、予測モデルが学習されるようにしてもよいし、海域72の地形構造物条件を含めずに、予測モデルが学習されるようにしてもよい。
ステップS33において、学習部13は、モデルパラメータを更新する。このとき、学習部13は、ステップS32の処理で学習されたモデルパラメータを、記憶部20に記憶する。
なお、上述の例では、ステップS31において、領域1乃至領域5に応じた補正値A1乃至補正値A5による波高の補正が行われるようにしたが、より詳細な補正が行われるようにしてもよい。例えば、波浪条件の波高が予め設定された閾値以上であるか否かにより、異なる補正値が適用されるようにしてもよい。
例えば、予め設定された閾値未満である波高の波浪条件に対応する解析波高値と実測波高値とが比較され、領域1の波高データに適用する補正値B01が算出される。同様に、閾値以上である波高の波浪条件に対応する解析波高値と実測波高値とが比較され、領域1の波高データに適用する補正値B11が算出される。このように、領域1乃至領域5において、波浪条件の波高が閾値未満の場合と閾値以上の場合に適用される補正値B01,B11,B02,B12,B03,B13,...,B05,B15が算出される。なお、この例では、波浪条件の波高を1つの閾値によって2つに分けることによって、それぞれの領域について2通りの補正値が算出されるようにしたが、波浪条件の波高を2つの閾値によって3つに分けることによって、それぞれの領域について3通りの補正値が算出されるようにしてもよい。さらに、3つ以上の閾値により波高を分類して補正値が算出されるようにしてもよい。
あるいはまた、波浪条件の周期、または波向を1つまたは複数の閾値と比較することにより、各領域に対して複数の補正値が算出されるようにしてもよい。さらに、波浪条件の波高、周期、および/または波高の組み合わせを1つまたは複数の閾値と比較することにより、各領域に対して複数の補正値が算出されるようにしてもよい。
このようにして学習処理が実行される。波浪条件WCと波高コンター図WFの組を充分に有する教師データTDを用いた学習処理が完了すると、予測モデルを用いた予測が可能となる。例えば、教師データTDには、複数の波浪条件WCが含まれているが、これらの波浪条件WCのいずれにも該当しない波浪条件に対応する海域72の波高分布を予測することができるようになる。
例えば、波高、周期、および波向から成る波浪条件の場合を考える。また、例えば、海域72の静穏度を評価するために、海域71における波高20通り、周期20通り、波向20通りの波浪条件に対応する海域72の波高分布を特定する必要があるものとする。この場合、従来の手法では、8000(=20×20×20)通りの波浪条件を波浪変形解析して波高分布を求める必要がある。これに対して、本発明では、1/5~1/10の解析結果があれば、機械学習の結果得られた予測モデルを用いて波高分布を予測することができる。すなわち、実質的に、海域71における任意の波浪条件に対応して、海域72の波高分布がどのように変化するかを短時間で予測することができるようになる。
〔実施形態2〕
次に、図9を参照して本発明の別の実施形態係る学習・予測装置について説明する。図9は、実施形態2に係る学習・予測装置101の構成例を示すブロック図である。図9の学習・予測装置101は、図1を参照して説明した学習装置1の機能に加えて、予測モデルを用いた波高分布の予測および波高統計解析を実行することができるようにしたものである。
次に、図9を参照して本発明の別の実施形態係る学習・予測装置について説明する。図9は、実施形態2に係る学習・予測装置101の構成例を示すブロック図である。図9の学習・予測装置101は、図1を参照して説明した学習装置1の機能に加えて、予測モデルを用いた波高分布の予測および波高統計解析を実行することができるようにしたものである。
図9に示されるように、学習・予測装置101は、制御部110、記憶部20、通信部30、入力部40、および出力部50を有する。学習・予測装置101は、例えば、汎用のコンピュータによって構成される。なお、以降の説明において図1と同じ機能を有する機能ブロックについては図1と同じ符号を使用し、詳細な説明は省略する。
制御部110において、取得部11、教師データ生成部12,および学習部13は、それぞれ図1の取得部11、教師データ生成部12,および学習部13と同様の機能ブロックである。なお、後述する第2取得部114と区別するため、取得部11のことを、第1取得部11と称してもよい。
制御部110は、さらに第2取得部114、予測部115、および情報出力部116を有している。
第2取得部114は、機械学習の結果得られた予測モデルによる予測に用いる波浪に関する情報を取得する。第2取得部により取得される波浪に関する情報は、例えば、公開されている気象情報から得られた海域71の波浪条件であってもよいし、風速・風向から推定される海域71の波浪条件であってもよい。あるいはまた、海域71で実測された波浪条件であってもよい。
また、図1を参照して上述したように、波浪条件は、例えば、海域71の波高、周期、および波向を含むものとする。また、海域71の波浪条件には、風速、風向、および潮流の少なくともいずれかがさらに含まれるようにしてもよい。
また、第2取得部114は、予測モデルによる予測において用いられる説明変数として、海域72の最新の地形構造物条件を取得する。例えば、海底の地形は潮流により変化し得るので、教師データの生成の際に用いられた地形構造物条件より新しい地形構造物条件を説明変数として用いることにより、より正確な予測が可能となる。
あるいはまた、港湾内に新たに防波堤を建設することが予定されている場合、建設された防波堤を含んだ地形構造物条件が説明変数として取得されるようにしてもよい。このようにすることで、実際には未だ存在していない防波堤のある港湾内の波高分布を、予測モデルを用いて予測することができる。
あるいはまた、地形構造物条件とは異なる条件であって、海域72の波高分布に影響を及ぼし得る他の条件が説明変数として取得されるようにしてもよい。なお、第2取得部114により説明変数が取得されないようにしてもよい。
予測部115は、第2取得部114が取得した波浪条件、または、第2取得部114が取得した波浪条件および地形構造物条件を用いて、海域72の静穏度に関する情報を出力する。例えば、海域72の波高分布が、静穏度に関する情報として予測されて出力される。一例として、予測部115は、予測モデルに従って波浪条件に対する演算処理を行い、海域71の波浪条件に対応する海域72の波高コンター図を予測する。この演算処理において、記憶部20に記憶されたモデルパラメータMPが用いられる。すなわち、予測部115による波高分布の予測では、図7を参照して上述した学習処理によって更新されたモデルパラメータMPによって規定される予測モデルが用いられる。
情報出力部116は、海域71の波浪に関する情報に基づいて、予め機械学習により構築された上記予測モデルにより、海域72の静穏度に関する情報を出力する。すなわち、情報出力部116は、予測部115の予測結果を表す情報を、海域72の静穏度に関する情報として出力する。情報出力部116は、例えば、予測結果として得られた海域72の波高コンター図を出力する。また、図4を参照して上述したように、海域72の波高コンター図を、一辺が5m乃至100mの矩形の領域にメッシュ化した場合の各領域(区画)に対応する代表座標(X,Y)および波高(H)からなる波高データが情報出力部116によって生成される。そして、情報出力部116は、各領域の波高データもあわせて出力する。
また、複数の波浪条件に対応する複数の波高分布の予測が実行された後、情報出力部116は、海域72の波高データを統計分析し、海域72における、所定の波高以下の波高の波の出現度を算出する。例えば、数百通りの波浪条件のそれぞれに対応する波高分布の波高データが統計分析される。情報出力部116は、統計分析の結果として、海域72における各波高の波の出現度を算出する。算出された限界波高以下の波高の波の出現度は、海域72の静穏度に関する情報として用いられる。
例えば、0m~10mの波高値が、50cm毎の範囲に分類され、分類された各範囲に属する波高値の出現度が、情報出力部116によって算出される。さらに、情報出力部116は、所定の波高以下の波高の波の出現度を、海域72の静穏度として出力する。ここで、所定の波高は、例えば、港湾内に停泊中の船舶において、荷物の積み下ろし、建設作業などの実施に支障がない波高の最高値とされ、限界波高と称される。
静穏度は、例えば、限界波高以下の波高の出現度を5段階に分類して表すものとする。限界波高以下の波高の出現度が、95%以上であれば、静穏度5、90%以上95%未満であれば、静穏度4、85%以上90%未満であれば、静穏度3、...のように表される。なお、静穏度は、日単位、半日単位、3時間単位等で出力するようにしてもよい。
このように、学習・予測装置101は、予測モデルのモデルパラメータMPを学習するとともに、学習したモデルパラメータを用いて、海域71の波浪条件から、海域72の波高コンター図を生成し、波高分布を予測するように構成されている。学習・予測装置101は、さらに、予測した波高分布から導出される、海域72の静穏度を出力するように構成されている。
次に、図10のフローチャートを参照して、図9の学習・予測装置101による静穏度評価処理の例を説明する。
ステップS51において、学習・予測装置101は、教師データ生成処理を実行する。これにより、教師データTDが生成され、生成された教師データTDが、記憶部20に記憶される。この処理は、図6を参照して説明した処理と同様の処理なので、詳細な説明は省略する。
ステップS52において、学習・予測装置101は、学習処理を実行する。これにより、記憶部20のモデルパラメータMPが更新される。この処理は、図7を参照して説明した処理と同様の処理なので、詳細な説明は省略する。
ステップS53において、学習・予測装置101は、波高分布予測処理を実行する。これにより、海域72の波高分布が予測される。この処理の詳細は、図11を参照して後述する。
ステップS54において、学習・予測装置101は、波高統計分析処理を実行する。これにより、海域72の波高データの統計分析が実行され、海域72における、限界波高以下の波高の波の出現度を算出されて静穏度として出力される。この処理の詳細は、図12を参照して後述する。
このようにして、静穏度評価処理が実行される。
次に、図11のフローチャートを参照して、図10のステップS53の波高分布予測処理の詳細について説明する。
ステップS531において、第2取得部114は、海域71の波浪に関する情報を取得する。この例では、ステップS531において、海域71の波高、周期、および波向を含む波浪条件が取得される。また、波浪条件には、風速、風向、および潮流の少なくともいずれかがさらに含まれるようにしてもよい。
ステップS532において、第2取得部114は、説明変数を取得する。これにより、例えば、海域72の最新の地形構造物条件が取得される。なお、ステップS532の処理は、ステップS51の教師データ生成処理において、海域71の波浪条件WCおよび海域72の地形構造物条件に対応した波高コンター図WFの組を複数含む教師データが生成される場合、ステップS52の学習処理において、波浪条件WCおよび海域72の地形構造物条件と波高コンター図WFとの相関関係が機械学習されるときに実行される。すなわち、ステップS53の波高分布予測処理で用いる予測モデルが、地形構造物条件を教師データに含めずに学習された予測モデルである場合、地形構造物条件が説明変数として取得される必要はない。
ステップS532において、第2取得部114は、説明変数を取得する。これにより、例えば、海域72の最新の地形構造物条件が取得される。なお、ステップS532の処理は、ステップS51の教師データ生成処理において、海域71の波浪条件WCおよび海域72の地形構造物条件に対応した波高コンター図WFの組を複数含む教師データが生成される場合、ステップS52の学習処理において、波浪条件WCおよび海域72の地形構造物条件と波高コンター図WFとの相関関係が機械学習されるときに実行される。すなわち、ステップS53の波高分布予測処理で用いる予測モデルが、地形構造物条件を教師データに含めずに学習された予測モデルである場合、地形構造物条件が説明変数として取得される必要はない。
ステップS533において、予測部115は、予測モデルによる演算処理を行う。これにより、ステップS531で取得された波浪条件と、ステップS532で取得された説明変数とを用いて、予測モデルに従った演算処理が行われる。この演算処理において、記憶部20に記憶されたモデルパラメータMPであって、ステップS52の学習処理によって更新されたモデルパラメータMPが用いられる。
なお、上述したように、ステップS532の処理は、実行されないようにしてもよい。すなわち、ステップS533では、説明変数を取得することなく、予測モデルによる演算処理が行われるようにしてもよい。この場合、予測部115により、ステップS531で取得された波浪条件に対して予測モデルに従った演算処理が行われることになる。
ステップS534において、予測部115は、ステップS533で行われた、予測モデルによる演算処理の結果から、海域72の静穏度に関する情報を出力する。この例では、ステップS534において、海域72の波高分布情報が出力される。これにより、予測部115によって、海域72の波高分布情報としての波高コンター図が生成されて出力される。
ステップS535において、情報出力部116は、波高コンター図を、5m乃至100mの格子間隔に区分し、波高コンター図から得られる格子毎の波高データに変換する。波高データは、例えば、図5に示されるように、一辺が5m乃至100mの各区画の代表座標(X,Y)のそれぞれと、それらに対応する波高(H)として生成される。
ステップS535において、情報出力部116は、波高コンター図を、5m乃至100mの格子間隔に区分し、波高コンター図から得られる格子毎の波高データに変換する。波高データは、例えば、図5に示されるように、一辺が5m乃至100mの各区画の代表座標(X,Y)のそれぞれと、それらに対応する波高(H)として生成される。
このようにして、波高分布予測処理が実行される。
次に、図12のフローチャートを参照して、図10のステップS54の波高統計分析処理の詳細について説明する。
ステップS541において、情報出力部116は、波高データを統計分析する。このとき、情報出力部116は、例えば、海域71の複数の波浪条件のそれぞれに対応して予測された複数の波高分布を統計分析する。これにより、海域72の波高の出現度が算出される。
図13と図14は、波高の出現度を説明する図である。図13は、海域71の各波高の出現度を説明する表であり、図14は、海域72の各波高の出現度を説明する表である。図13および図14の表において、最も左の列は、波高の範囲を示している。この例では、0m~10mの波高が50cm毎の範囲であって、20通りの範囲に分類されており、10mを超える波高は、1通りの範囲に分類されている。
図13のおよび図14の表において、最も上の行は、波向を示している。N、E、S、Wはそれぞれ北、東、南、西を表し、NEは北東、NNEは北北東、ENEは東北東、・・・のように、各波向が表されている。表中の各波向および各波高に対応するセルには、当該波向で当該波高の波の出現回数が示されている。表中最も下の2行には、波向毎の波の出現回数の合計および割合が示されている。表中最も右の2列には、波高毎の波の出現回数の合計および割合が示されている。
ステップS541の処理では、例えば、図14の最も右の列において割合として示される、各波高の出現度が算出される。なお、波高の出現度を、波高の出現比率と称してもよい。
ステップS542において、情報出力部116は、限界波高以下の波高の出現度を計算する。限界波高は、例えば、港湾内に停泊中の船舶において、荷物の積み下ろし、建設作業などの実施に支障がない波高の最高値とされ、予め決められているものとする。
例えば、限界波高が1mであった場合、図14の表によれば、海域72における限界波高以下の波高の出現度は、88.91+10.92=99.83%となる。
ステップS543において、情報出力部116は、海域72の静穏度を出力する。静穏度は、例えば、上述したように、限界波高以下の波高の出現度を5段階に分類して表すものとする。
このようにして、波高統計分析処理が実行される。
このように、海域72の波高分布を予測して、静穏度を算出することにより、海域72の港湾における船舶の作業がどの程度支障なく実施できるかを予測することができる。例えば、気象予報情報として、海域71における今後1ヶ月の波浪予測が取得できれば、取得された波浪予測から今後1ヶ月の波浪条件を特定し、特定された波浪条件に対応する海域72の波高分布と静穏度を予測することができる。すなわち、今後1ヶ月間、港湾内の船舶の作業がどの程度支障なく実施できるか予測することができる。このような予測に基づいて、船舶の作業を計画することにより、より効率よく作業を実施することが可能となる。
また、例えば今後1か月内の特定の日における特定された波浪条件に対応する海域72の波高分布と静穏度を予測することもできる。
また、例えば今後1か月内の特定の日における特定された波浪条件に対応する海域72の波高分布と静穏度を予測することもできる。
なお、海域71の過去の波浪条件を特定し、特定された波浪条件に対応する海域72の波高分布と静穏度を予測するようにしてもよい。例えば、今年と似た気象条件(水温、海流、台風の発生頻度など)の年の波浪条件を特定し、特定された波浪条件に対応する海域72の波高分布と静穏度を予測することで、今年1年間の静穏度を凡そ予測することも可能となる。
〔実施形態3〕
次に、図15を参照して本発明の別の実施形態である予測装置について説明する。図15は、実施形態3に係る予測装置201(情報処理装置)の構成例を示すブロック図である。図15の予測装置201は、図9に示される学習・予測装置101のうち、図1を参照して説明した学習装置1の機能が除去され、予測モデルを用いた波高分布の予測および波高統計解析を実行することができるようにしたものである。すなわち、図15の予測装置201は、学習処理を実行せず、他の装置(例えば、図1の学習装置1、図9の学習・予測装置)による機械学習によって更新されたモデルパラメータを用いた波高分布の予測(波高分布予測処理)、および静穏度の算出(波高統計分析処理)を行う。
次に、図15を参照して本発明の別の実施形態である予測装置について説明する。図15は、実施形態3に係る予測装置201(情報処理装置)の構成例を示すブロック図である。図15の予測装置201は、図9に示される学習・予測装置101のうち、図1を参照して説明した学習装置1の機能が除去され、予測モデルを用いた波高分布の予測および波高統計解析を実行することができるようにしたものである。すなわち、図15の予測装置201は、学習処理を実行せず、他の装置(例えば、図1の学習装置1、図9の学習・予測装置)による機械学習によって更新されたモデルパラメータを用いた波高分布の予測(波高分布予測処理)、および静穏度の算出(波高統計分析処理)を行う。
図15に示されるように、予測装置201は、制御部210、記憶部220、通信部30、入力部40、および出力部50を有する。予測装置201は、例えば、汎用のコンピュータによって構成される。
図9乃至図14を参照して説明した機能と同様の機能を有する機能ブロックについては同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
記憶部220に記憶されているモデルパラメータMPは、既に機械学習によって更新済のモデルパラメータMPである。記憶部220は、例えば、記憶部20の記憶内容をコピーすることによって実現されてもよい。また、図15において、記憶部220には、教師データTDが記憶されているが、教師データTDは記憶されないようにしてもよい。
〔ソフトウェアによる実現例〕
なお、上述した学習装置1、学習・予測装置101、および予測装置201のそれぞれは、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。すなわち、図1、図9、および図15のそれぞれに示した各機能ブロックを、ハードウェアによって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
なお、上述した学習装置1、学習・予測装置101、および予測装置201のそれぞれは、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。すなわち、図1、図9、および図15のそれぞれに示した各機能ブロックを、ハードウェアによって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
後者の場合、学習装置1、学習・予測装置101、および予測装置201のそれぞれは、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。
そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
1 学習装置
10,110,210 制御部
11 取得部
12 教師データ生成部
13 学習部
20,220 記憶部
30 通信部
40 入力部
50 出力部
101 学習・予測装置
114 第2取得部
115 予測部
116 情報出力部
201 予測装置
10,110,210 制御部
11 取得部
12 教師データ生成部
13 学習部
20,220 記憶部
30 通信部
40 入力部
50 出力部
101 学習・予測装置
114 第2取得部
115 予測部
116 情報出力部
201 予測装置
Claims (13)
- 第1の海域の波浪に関する情報を取得する第1ステップと、
前記第1の海域の波浪に関する情報に基づいて、予め機械学習により構築された予測モデルにより、第2の海域の静穏度に関する情報を出力する第2ステップと、
を情報処理装置が実行する静穏度評価手法。 - 前記第1ステップで取得される波浪に関する情報は、少なくとも波高、周期、および波向を含む波浪条件であり、
前記第2ステップでは、前記予測モデルによって予測された前記第2の海域の波高分布情報である波高コンター図を含む静穏度に関する情報が出力される
請求項1に記載の静穏度評価手法。 - 前記第2ステップにおいては、前記波高コンター図がさらに、5m乃至100mの格子間隔に区分され、前記波高コンター図から得られる前記格子毎の波高データに変換される
請求項2に静穏度評価手法。 - 前記第1ステップでは複数の波浪条件が取得され、前記第2ステップにおいては、前記複数の波浪条件に対応してそれぞれ予測された複数の波高分布情報に対応する波高データに基づいて、前記第2の海域における予め設定された限界波高以下の波の出現比率が算出され、前記静穏度に関する情報として出力される
請求項3に記載の静穏度評価手法。 - 前記波浪条件には、風速、風向、および潮流の少なくともいずれかがさらに含まれる、
請求項2乃至4のいずれか1項に記載の静穏度評価手法。 - 前記第1ステップにおいては、さらに前記第2の海域の地形構造物に関する情報が説明変数として入力され、
前記第2ステップでは、前記第1の海域の波浪に関する情報と、前記第2の海域の地形構造物に関する情報に基づいて、予め機械学習により構築された予測モデルにより、第2の海域の静穏度に関する情報が出力される
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の静穏度評価手法。 - 前記第1の海域の波浪に関する情報と、前記波浪に関する情報に対して波浪変形解析を行って得られた第2の海域の静穏度に関する情報との組を複数含む教師データを取得する第3ステップと、
前記第1の海域の波浪に関する情報を入力データとし、前記第2の海域の静穏度に関する情報を出力データとする予測モデルを、前記教師データを参照して学習させる第4ステップと、
をさらに備える請求項1乃至6のいずれか1項に記載の静穏度評価手法。 - 前記教師データとして取得される波浪に関する情報は、少なくとも波高、周期、および波向を含む波浪条件であり、
前記教師データとして取得される静穏度に関する情報は、前記波浪変形解析を行って得られた前記第2の海域の波高分布である波高コンター図を含む
請求項7に記載の静穏度評価手法。 - 前記第2の海域が、複数の区分海域に分割され、
前記第1の海域の所定の波浪条件に対して波浪変形解析を行って得られた前記第2の海域の波高コンター図である解析波高コンター図と、前記所定の波浪条件と同じ波浪条件で実測された前記第2の海域の波高コンター図である実測波高コンター図に基づいて、前記区分海域毎に解析波高値と実測波高値を取得する第5ステップと、
前記解析波高値を前記実測波高値に補正する補正値を、前記区分海域毎に算出する第6ステップとをさらに備え、
前記第4ステップでは、前記補正値により補正して得られた波高コンター図である補正後波高コンター図を含む前記静穏度に関する情報を、前記教師データとして再学習させる
請求項8に記載の静穏度評価手法。 - 前記第3ステップでは、前記第2の海域の地形構造物に関する情報がさらに、前記教師データとして取得され、
前記第4ステップでは、前記波浪に関する情報および第2の海域の地形構造物に関する情報を入力データとし、前記第2の海域の静穏度に関する情報を出力データとする予測モデルを、前記教師データを参照して学習させる
請求項7乃至9のいずれか一項に記載の静穏度評価手法。 - 第1の海域の波浪に関する情報と第2の海域の静穏度に関する情報との組を複数含む教師データを取得するステップと、
第1の海域の波浪に関する情報を入力データとし第2の海域の静穏度に関する情報を出力データとする予測モデルを、前記教師データを参照して学習させるステップと、
を情報処理装置が実行する予測モデル生成方法。 - 第1の海域の波浪に関する情報を取得する情報取得部と、
前記第1の海域の波浪に関する情報に基づいて、予め機械学習により構築された予測モデルにより、第2の海域の静穏度に関する情報を出力する情報出力部と、
を備えることを特徴とする静穏度評価装置。 - 請求項12に記載の静穏度評価装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、前記情報取得部、および前記情報出力部としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
Priority Applications (1)
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JP2021137241A JP2023031628A (ja) | 2021-08-25 | 2021-08-25 | 静穏度評価手法、予測モデル生成方法、静穏度評価装置、およびプログラム |
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JP2021137241A JP2023031628A (ja) | 2021-08-25 | 2021-08-25 | 静穏度評価手法、予測モデル生成方法、静穏度評価装置、およびプログラム |
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JP (1) | JP2023031628A (ja) |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN116805030A (zh) * | 2023-05-15 | 2023-09-26 | 宁波市气象台 | 一种海浪浪高数值预报订正方法 |
CN117875194A (zh) * | 2024-03-13 | 2024-04-12 | 青岛哈尔滨工程大学创新发展中心 | 基于少量实海观测数据的区域海浪场智能构建方法及系统 |
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2021
- 2021-08-25 JP JP2021137241A patent/JP2023031628A/ja active Pending
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CN117875194B (zh) * | 2024-03-13 | 2024-05-28 | 青岛哈尔滨工程大学创新发展中心 | 基于少量实海观测数据的区域海浪场智能构建方法及系统 |
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