JP2023019599A - 複合繊維、その製造方法、および繊維製品 - Google Patents

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Abstract

Figure 2023019599000001
【課題】微細セルロースの補強効果を増大させた複合繊維、その製造方法、および前記複合繊維を用いた繊維製品を提供する。
【解決手段】本発明の複合繊維11は、微細セルロース12と、該微細セルロース12を内包し紡糸された疎水性ポリマー13とを含み、前記微細セルロース12が、紡糸された繊維の軸方向に配向している。本発明の複合繊維の製造方法は、微細セルロースとポリマーとを含むエマルションを調製する工程と、高電圧を印加した紡糸ノズルから帯電した前記エマルションを噴射し、コレクター上に紡糸するエレクトロスピニング工程と、を含む。本発明の繊維製品は、上記複合繊維を用いたものである。
【選択図】図1

Description

本発明は、微細セルロースを含む複合繊維、その製造方法、および繊維製品に関する。
従来、微細セルロースを使用して既存の材料(特に高分子材料)の改質を行うことが提案されている。非特許文献1には、セルロースナノクリスタル(以下、CNCという)の水懸濁液とポリ乳酸の塩化メチレン溶液とを混合することで得られたピッカリングエマルションを室温で静置したのち、真空ろ過、圧縮成形をすることでCNC含有ポリ乳酸フィルムを得ることが報告されている。
この方法により、CNCをフィルム内に均一に分散させることが可能となった。また、CNCを含むフィルムは、ポリ乳酸のみのフィルムに比べて弾性率が向上したことが記載されている。
Int. J. Biol. Macromol.,137, 197-204 (2019)
非特許文献1に記載の方法によって得られるCNC含有ポリ乳酸フィルムは、CNCがフィルム内にランダムに存在するため、CNCの補強効果が不十分である。
本発明の課題は、微細セルロースの補強効果を増大させた複合繊維、その製造方法、および前記複合繊維を用いた繊維製品を提供することである。
本発明の複合繊維は、微細セルロースと、該微細セルロースを内包し紡糸された疎水性ポリマーとを含み、前記微細セルロースが、紡糸された繊維の軸方向に配向している。
また、本発明の複合繊維の製造方法は、微細セルロースとポリマーとを含むエマルションを調製する工程と、高電圧を印加した紡糸ノズルから帯電した前記エマルションを噴射し、コレクター上に紡糸するエレクトロスピニング工程と、を含む。
本発明の繊維製品は、上記複合繊維を用いたものである。
本発明によれば、疎水性ポリマーに内包された微細セルロースは、疎水性ポリマーの紡糸時に複合繊維の軸方向に配向しているので、微細セルロースの補強効果が増し、機械的強度の高い複合繊維が得られる。
本発明の繊維製品によれば、機械強度の高い複合繊維を用いているので、機械強度に優れた繊維製品を得ることができ、フィルタ、医療資材、培養資材等の各種繊維製品として利用可能である。
本発明の一実施形態に係る複合繊維を示す模式図である。 本発明の一実施形態におけるエレクトロスピニング工程を示す説明図である。 (a)~(c)はそれぞれ実施例1~3で得られた複合繊維の配向状態を示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。 実施例1~3で得られた各複合繊維の引張試験で測定した応力ひずみ曲線を示すグラフである。 実施例2で得られた複合繊維の透過電子顕微鏡(TEM)画像である。 (a)、(b)は実施例4の洗浄前における複合繊維の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。 (a)、(b)は実施例4の洗浄後における複合繊維の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
本発明の一実施形態に係る複合繊維を、図面を参照して説明する。図1に示すように、本実施形態に係る複合繊維11は、微細セルロース12と、該微細セルロース12を内包し紡糸された疎水性ポリマー13とを含み、前記微細セルロース12が、紡糸された繊維の軸方向に配向している。
ここで、前記微細セルロース12が、紡糸された繊維の軸方向に配向しているとは、例えば、透過電子顕微鏡(TEM)の画像で観察した時に、複合繊維11に含まれる微細セルロース12の繊維方向が、紡糸された複合繊維11の軸方向に対して、平均で±45度の範囲内に入っている状態を示す。
微細セルロース12としては、繊維長の長い(すなわち長繊維の)微細セルロースまたは繊維長の短い(すなわち短繊維の)針状の微細セルロースが挙げられ、これらの長繊維と短繊維とは互いに混ざり合った状態で使用してもよい。
長繊維の微細セルロースとしては、例えば、平均直径が1000nm以下で、好ましくは10~100nm、平均長さが2μm以上、好ましくは5μm以上である高アスペクト比のセルロース繊維が挙げられる。このような長繊維の微細セルロースとしては、例えば、セルロースナノファイバー(以下、CNFという)が好適に使用可能である。このような長繊維の微細セルロースを使用すると、破断に強い高強度の複合繊維が得られるという利点がある。
短繊維の微細セルロースとしては、例えば、平均直径が1000nm以下で、好ましくは10nm~100nmで、平均長さが2μm未満、好ましくは500nm以下である針状セルロース繊維が挙げられる。平均長さの下限値は特に限定するものではないが、短繊維の微細セルロースにおける平均長さは平均直径よりも大きい。このような繊維の微細セルロース繊維としては、例えば、セルロースナノクリスタル(CNC)が好適に使用可能である。このような短繊維の微細セルロースを使用すると、懸濁液の粘度を低くすることができ、高濃度の懸濁液を作りやすくなり、結果としてセルロース含量の多い高強度の複合繊維を得ることができるという利点がある。
微細セルロース12は、例えば、セルロース繊維を微細に解きほぐす開繊工程により得られる。開繊は、機械開繊または化学開繊であるのがよい。CNCを含む短繊維の微細セルロースは、例えば、セルロース繊維を酸加水分解して得ることができる。
また、前記疎水性ポリマー13としては、特に制限はなく、種々な疎水性ポリマー材料が使用可能であり、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂等のポリエステル樹脂、オレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂等が挙げられる。このような疎水性ポリマー13を紡糸した繊維に、微細セルロース12が内包され、該微細セルロース12が、紡糸された繊維の軸方向に配向しているので、疎水性ポリマー13が補強され、得られた複合繊維11の機械的特性を増大させることができる。
本実施形態では、疎水性ポリマー13として、ポリエステル樹脂の一種であるポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(以下、PHBHという)を使用するのが好適である。PHBHとしては、例えばカネカ社より市販のものが使用可能である。PHBHは微生物由来のポリエステルであり、生体中での加水分解や自然界に存在する微生物による酵素分解によって二酸化炭素と水に分解される生分解性を有する。
一方、微細セルロース12は、木材から得られる繊維材料であり、高強度、軽量で、かつ生分解性を有する。そのため、これらから得られる複合繊維も、環境にやさしい材料となり、不織布などの形態で広く利用されることが期待される。
疎水性ポリマー13の100質量部に対する微細セルロース12の割合は、0.5質量部以上60質量部以下であるのがよく、好ましくは1質量部以上10質量部以下である。これにより、微細セルロース12による補強効果が高まり、機械的特性が疎水性ポリマー13単独の場合よりも増大する。また、微細セルロースの割合を上記範囲内で変化させることにより、所望の機械強度をもつ複合繊維を得ることができる。
また、本発明の一実施形態に係る複合繊維11は、繊維形態を有し、その繊維径は、特に限定されないが、平均繊維径が100nm以上1000nm以下であるのがよい。
次に、本発明の一実施形態に係る複合繊維の製造方法を説明する。
機械開繊または化学開繊したセルロースは、親水性官能基を表面に有するため、極性の低い有機溶媒には分散しにくい。そのため、これを疎水性ポリマーに内包させるには、疎水性ポリマーを含む有機溶媒に均一に分散させる必要がある。そのため、微細セルロースの水懸濁液と、疎水性ポリマーの有機溶剤溶液とのエマルションを調製する。疎水性ポリマーを溶解させる有機溶剤としては、例えば、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、N-メチル-2-ピロリドン、DMF、DMAc、THF、デカリン等が使用可能である。
エマルションは、例えば、微細セルロースの水懸濁液と、疎水性ポリマーの有機溶剤溶液とを乳化機で攪拌することにより得ることができる。乳化機としては、例えば、高速撹拌機、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー等が採用可能である。
エマルションは、ピッカリングエマルションであるのが好ましい。ピッカリングエマルションとは、油水界面に吸着した固体粒子によって安定化されたエマルションをいう。ここで、固体粒子とは、本実施形態では、微細セルロースが該当する。
ピッカリングエマルションは、例えば、微細セルロースの水懸濁液と、疎水性ポリマーの有機溶剤溶液とを前記した乳化機で攪拌することにより得ることができる。
このとき、ピッカリングエマルション内に分散した液滴の径は、後述するエレクトロスピニング法における紡糸ノズル3(図2参照)を通過できる大きさであることが必要である。具体的には、液滴の平均粒径が200μm以下であるのがよく、好ましくは20μm以下であるのが好ましい。液滴の径は、攪拌速度や攪拌時間によって調整可能である。
なお、安定なピッカリングエマルションを得るうえで、微細セルロースの水懸濁液の比重と、疎水性ポリマーの有機溶剤溶液の比重とが同一か近似しているのが好ましく、必要なら比重が同一ないし近似するように比重調整を行うのがよい。
最終的に得られるピッカリングエマルションにおける微細セルロースの濃度は、0.1質量%以上20質量%以下、好ましくは0.2質量%以上2質量%以下であるのがよい。また、疎水性ポリマーの濃度は、1質量%以上50質量%以下、好ましくは5質量%以上20質量%以下であるのがよい。これらの濃度範囲内であれば、エレクトロスピニング法により適切な径の複合繊維が得られる。すなわち、複合繊維の繊維径は、微細セルロースおよび疎水性ポリマーの濃度を調整することにより制御可能である。
次に、得られたピッカリングエマルションを用いてエレクトロスピニング法により微細ファイバーを紡糸する。このエレクトロスピニング工程では、図2に示すように、ピッカリングエマルション1はシリンジ2内に収容され、このシリンジ2から一定速度で押し出され、紡糸ノズル3に送られる。
紡糸ノズル3には、高圧電源装置4から高電圧が印加されており、帯電したピッカリングエマルション1が紡糸ノズル3から噴射され、空気抵抗によって螺旋流となり、ピッカリングエマルション1に含まれる溶剤を徐々に揮発しながら微細ファイバー状に紡糸され、コレクター5の表面に複合繊維を形成する。
コレクター5は、例えば、円板または円柱形であり、中心軸6によって回転している。紡糸ノズル3から噴射されたピッカリングエマルション1は、回転するコレクター5の周面上に紡糸され、複合繊維が得られる。
ピッカリングエマルション1をエレクトロスピニングするには、例えば、流速0.05~1mL/時、印加電圧10~40kV、ノズル3からコレクター5までの距離4~20cmの条件から最適な条件を選択すればよい。
コレクター5の回転線速度は1m/秒以上であるのがよく、好ましくは10m/秒以上であるのがよい。これにより、得られる複合繊維の不織布の機械的特性に配向性をつけることができる。配向性とは、繊維が一方向に揃うことをいう。前記したように、回転するコレクター5の周面上に、一方向に延伸しながら複合繊維を巻き取っていくため、複合繊維に配向性を付与することができる。このとき、複合繊維に内包される微細セルロースも複合繊維の軸方向に配向する。なお、配向性を付与する方法は、回転コレクター方式以外にも種々な方式が採用可能である。例えば、2枚の平行金属板(または金属ワイヤ)の間に橋架けするような形で、繊維を並べるようにエレクトロスピニングにより紡糸してもよい。
回転線速度の上限は、特に限定されず、風圧によって繊維が吹き飛ばされない程度の回転線速度であればよい。
疎水性ポリマーに内包された微細セルロースは、複合繊維の紡糸時に複合繊維の軸方向に配向し、かつバンドル化しているのが好ましく、これにより微細セルロースによる補強効果を増大させ、機械的強度を高めることができる。バンドル化とは、1本の複合繊維の内部にある微細セルロースが高密度に多数束ねられていることをいう(図5を参照)。すなわち、バンドル化では、複合繊維の繊維軸方向に沿って、均一な太さの微細セルロースの芯部が形成されている状態をいう。ここで、芯部とは、多数の微細セルロースがそれらの分子レベルでの相互作用によって凝集している状態と推定される。
得られる複合繊維は、例えば、繊維同士を熱融合させたり、接合剤で接合したりして、不織布の形態に加工することができる。不織布状への加工は、エレクトロスピニング時にコレクター上への紡糸と同時に行うことができる。
次に、本発明の別の実施形態に係る複合繊維について説明する。
本発明の別の実施形態に係る複合繊維は、微細セルロースと、該微細セルロースを内包し紡糸された天然ゴムとを含み、前記微細セルロースが、紡糸された繊維の軸方向に配向している。
微細セルロースとしては、繊維長の長い(すなわち長繊維の)微細セルロースまたは繊維長の短い(すなわち短繊維の)針状の微細セルロースが挙げられ、これらの長繊維と短繊維とは互いに混ざり合った状態で使用してもよい。
長繊維の微細セルロースとしては、例えば、平均直径が1000nm以下で、好ましくは10~100nm、平均長さが2μm以上、好ましくは5μm以上である高アスペクト比のセルロース繊維が挙げられる。このような長繊維の微細セルロースとしては、例えば、セルロースナノファイバー(以下、CNFという)が好適に使用可能である。このような長繊維の微細セルロースを使用すると、破断に強い高強度の複合繊維が得られるという利点がある。
短繊維の微細セルロースとしては、例えば、平均直径が1000nm以下で、好ましくは10nm~100nmで、平均長さが2μm未満、好ましくは500nm以下である針状セルロース繊維が挙げられる。このような繊維の微細セルロース繊維としては、例えば、セルロースナノクリスタル(CNC)が好適に使用可能である。このような短繊維の微細セルロースを使用すると、懸濁液の粘度を低くすることができ,高濃度の懸濁液をつくりやすくなり,結果としてセルロース含量の多い高強度の複合繊維を得ることができるという利点がある。
微細セルロースは、例えば、セルロース繊維を微細に解きほぐす開繊工程により得られる。開繊は、機械開繊または化学開繊であるのがよい。CNCを含む短繊維の微細セルロースは、例えば、セルロース繊維を酸加水分解して得ることができる。
前記天然ゴムは、シス1,4-ポリイソプレンの分子構造を有するバイオベースの天然の疎水性ポリマーであり、伸縮性、強靱性などの高い機械的特性を有し、高電気抵抗、疎水性、撥水性などの機能も有する。
本発明の別の実施形態の複合繊維は、天然ゴムの繊維に、微細セルロースが内包され、該微細セルロースが、紡糸された繊維の軸方向に配向しているので、天然ゴムが補強され、得られた複合繊維の機械的特性を増大させることができる。
天然ゴム100質量部に対する微細セルロースの割合は、0.5質量部以上60質量部以下であるのがよく、好ましくは1質量部以上10質量部以下である。これにより、微細セルロースによる補強効果が高まり、機械的特性が天然ゴム単独の場合よりも増大する。また、微細セルロースの割合を上記範囲内で変化させることにより、所望の機械強度をもつ複合繊維を得ることができる。
また、本発明の別の実施形態の複合繊維は、繊維形態を有し、その繊維径は、特に限定されないが、100nm以上1000nm以下であるのがよい。
次に、本発明の別の実施形態の複合繊維の製造方法を説明する。
本発明の別の実施形態の複合繊維の製造には、機械開繊または化学開繊したセルロースと、天然ゴムラテックスとを含む紡糸用ラテックスを用いる。
天然ゴムは天然資源であり、ゴムノキの樹液から天然ゴムラテックスとして採取される。天然ゴムラテックスは、タンパク質、糖、アルカロイドなどを含む水系エマルションである。
天然ゴムラテックスの濃度は、例えば、10~70質量%であってもよい。また、天然ゴムラテックスは、市販品を用いてもよい。市販品の天然ゴムラテックスとしては、例えば、Getahindus社製の「G-TEX HA」などが挙げられる。
紡糸用ラテックスは、例えば、天然ゴムラテックスと、機械開繊または化学開繊したセルロースとを、乳化機で攪拌することにより得ることができる。乳化機としては、例えば、高速撹拌機、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー等が採用可能である。
前記紡糸用ラテックスには、必要に応じ、水溶性ポリマーを含有してもよい。水溶性ポリマーは、天然ゴムラテックスの粘度を高めて、後述するエレクトロスピニング法による紡糸性を向上させる役割を有する。水溶性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)などが用いられる。ポリエチレンオキシドは、それ自体が紡糸しやすいポリマーであり、エレクトロスピニング法による紡糸に適している。なお、ポリエチレンオキシドに代えて、他の水溶性ポリマーを用いてもよい。
水溶性ポリマーは、単独で添加してもよいし、あらかじめ水性溶媒などに溶解して溶液の状態としてから添加してもよい。水性溶媒としては、例えば、水などが挙げられる。水溶性ポリマーを溶液の状態で使用する場合、溶液の濃度は、例えば、1~10質量%であるのがよい。これにより、紡糸に適切な粘度に調整することができる。
紡糸用ラテックス中における水溶性ポリマーの添加量は特定の値には限定されず、紡糸用ラテックスの粘度をエレクトロスピニング法による紡糸に適した粘度に調整するのに必要な量を添加すればよい。
水溶性ポリマーは、固形分換算による質量比で、水溶性ポリマーが天然ゴムラテックスよりも少ない比率となるように添加してもよい。この場合は、天然ゴムラテックスの比率が相対的に多くなることから、生産性が高い。
天然ゴムラテックスと水溶性ポリマーとの比率は、例えば、固形分換算による質量比で、天然ゴムラテックス:水溶性ポリマー=1:0.01~0.5であるのがよい。
最終的に得られる紡糸用ラテックスにおける微細セルロースの濃度は、0.1質量%以上20質量%以下、好ましくは0.2質量%以上2質量%以下であるのがよい。また、天然ゴムラテックスの濃度は、1質量%以上50質量%以下、好ましくは5質量%以上20質量%以下であるのがよい。これらの濃度範囲内であれば、エレクトロスピニング法により適切な径の複合繊維が得られる。すなわち、複合繊維の繊維径は、微細セルロースおよび天然ゴムラテックスの濃度を調整することにより制御可能である。
紡糸用ラテックスの粘度は、例えば、1,000mPa・s以上であるのがよい。これにより、エレクロトスピニング法による紡糸性が向上する。紡糸用ラテックスの粘度の上限は、500,000mPa・s以下であるのがよい。粘度は、回転型レオメーターで測定することができる。
次に、得られた紡糸用ラテックスを用いてエレクトロスピニング法により微細ファイバーを紡糸する。このエレクトロスピニング工程では、図2に示すように、紡糸用ラテックス1´はシリンジ2内に収容され、このシリンジ2から一定速度で押し出され、紡糸ノズル3に送られる。
紡糸ノズル3には、高圧電源装置4から高電圧が印加されており、帯電した紡糸用ラテックス1´が紡糸ノズル3から噴射され、空気抵抗によって螺旋流となり、紡糸用ラテックス1´に含まれる溶媒が徐々に揮発しながら微細ファイバー状に紡糸され、コレクター5の表面に複合繊維を形成する。
コレクター5は、例えば、円板または円柱形であり、中心軸6によって回転している。紡糸ノズル3から噴射された紡糸用ラテックス1´は、回転するコレクター5の周面上に紡糸され、複合繊維が得られる。
紡糸用ラテックスをエレクトロスピニングするには、例えば、流速0.05~1mL/時、印加電圧10~40kV、ノズル3からコレクター5までの距離4~20cmの条件から最適な条件を選択すればよい。
コレクター5の回転線速度は1m/秒以上であるのがよく、好ましくは10m/秒以上であるのがよい。これにより、得られる複合繊維の不織布の機械的特性に配向性をつけることができる。配向性とは、繊維が一方向に揃うことをいう。前記したように、回転するコレクター5の周面上に、一方向に延伸しながら複合繊維を巻き取っていくため、複合繊維に配向性を付与することができる。このとき、複合繊維に内包される微細セルロースも複合繊維の軸方向に配向する。なお、配向性を付与する方法は、回転コレクター方式以外にも種々な方式が採用可能である。例えば、2枚の平行金属板(または金属ワイヤ)の間に橋架けするような形で、繊維を並べるようにエレクトロスピニングにより紡糸してもよい。
回転線速度の上限は、特に限定されず、風圧によって繊維が吹き飛ばされない程度の回転線速度であればよい。
本発明の別の実施形態において、得られた複合繊維を洗浄する工程(洗浄工程)を有してもよい。洗浄工程を設けることにより、天然ゴムラテックスに含有されていたタンパク質や、紡糸用ポリマー作製時に紡糸性向上のために添加した水溶性ポリマーを除去することができる。
洗浄工程に用いられる洗浄液としては、例えば、水などが挙げられる。なお、タンパク質や脂溶性ポリマーを除去可能である限り、洗浄液は特に限定されず、界面活性剤などが含まれていてもよい。
洗浄温度は、例えば、10~40℃であるのがよい。洗浄方法としては、例えば、浸漬などが挙げられる。洗浄時間は、タンパク質や水溶性ポリマーの除去が可能な時間であればよく、例えば、30分以上であるのがよい。洗浄時間の上限は、特に限定されないが、例えば30時間以下であってもよい。タンパク質や水溶性ポリマーが複合繊維から除去されたことの確認は、例えば、ATR-FTIR測定で行うことができる。
天然ゴムラテックスまたは紡糸後の天然ゴムは、架橋処理を行ってもよい。架橋処理は、例えば、加硫や熱処理、UV照射などで行ってもよいが、これに限定されない。
加硫の際に用いる加硫剤としては、例えば、硫黄などが挙げられる。加硫剤の添加量は、例えば、天然ゴム100質量部に対して、0.1~5.0質量部であるのがよい。
加硫後に、熱処理を行ってもよい。熱処理温度は、例えば、120~180℃であってもよい。熱処理時間は、例えば、5分~4時間であってもよい。
天然ゴムに内包された微細セルロースは、複合繊維の紡糸時に複合繊維の軸方向に配向、かつバンドル化しているのが好ましく、これにより微細セルロースによる補強効果を増大させ、機械的強度を高めることができる。バンドル化とは、1本の複合繊維の内部にある微細セルロースが高密度に多数束ねられていることをいう。すなわち、バンドル化では、複合繊維の繊維軸方向に沿って、均一な太さの微細セルロースの芯部が形成されている状態をいう。ここで、芯部とは、多数の微細セルロースがそれらの分子レベルでの相互作用によって凝集している状態と推定される。
得られる複合繊維は、例えば、繊維同士を熱融合させたり、接合剤で接合したりして、不織布の形態に加工することができる。不織布状への加工は、エレクトロスピニング時にコレクター上への紡糸と同時に行うことができる。
本発明の別の実施形態の繊維は、従来の天然ゴムでは実現できなかった新しい材料として新規用途に用いることができる。用途としては、例えば、フィルタ材料、医療材料、培養材料などが挙げられる。
本発明にかかる繊維製品は、本発明の複合繊維を用いることにより、機械強度に優れた繊維製品を得ることができる。繊維製品の形態としては、例えば不織布などが挙げられるが、これに限定されるものではなく、本発明の複合繊維を用いたものであればよい。
本発明にかかる繊維製品は、複合繊維の配向性をコントロールすることにより、例えば、繊維製品の所望の箇所に引張強度の異方性を付与することができる。
このように、複合繊維を含む膜の幾何的構造(例えば、密度、繊維の配向強度、繊維の融合度、多孔度等)、複合繊維膜の表面粗さ、膜の厚さ、張力、繊維径、ビーズ・ファイバー(beaded fiber)などをコントロールすることにより、所望の複合繊維膜特性を得ることができる。
本発明にかかる繊維製品は、シート状の平面構造であってもよく、様々な形状を有する三次元構造体であってもよい。
本発明の複合繊維や、それを用いた繊維製品は、フィルタ、医療資材、培養資材等として利用可能である。
次に実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
微細セルロースとして、平均繊維径が21nm、平均繊維長が300nmのCNCを使用した。そして、CNCの水懸濁液と、クロロホルムCHClを溶媒としたPHBH(カネカ社製)の溶液とを用意した。次に、CNCの水懸濁液とPHBH溶液とを体積比1:3でホモジナイザーにて混合し、CNC濃度が1質量%、PHBH濃度が15質量%であるピッカリングエマルションを作製した。
得られたピッカリングエマルションを用い、図2に示すエレクトロスピニング法により不織布状の複合繊維を作製した。得られた複合繊維は、CNC6.3質量%とPHBH93.7質量%であった。
エレクトロスピニング法の紡糸条件は、ピッカリングエマルション1の紡糸ノズル3への流量0.4mL/時、紡糸に加わる電界2.5kV/cm、コレクター5の回転速度13m/秒、紡糸ノズル3の径21G、紡糸ノズル3の先端からコレクター5までの距離15cm、紡糸時間60分間とした。
得られた複合繊維をSEMを用いて観察した。その結果を図3(a)に示す。SEMから得られた画像より、繊維径を測定したところ、1.2±0.4μmであり、均一な繊維が得られた。また、繊維の二次の配向パラメータSは、0.866であり、繊維は十分に配向していると考えられる。
また、得られた複合繊維は、微細セルロースが、紡糸された複合繊維の軸方向に配向していた。
(実施例2)
微細セルロースとして、平均繊維径が27nmの極長CNF(平均繊維長>1μm)を使用した他は、実施例1と同様にして、不織布状の複合繊維を作製した。得られた複合繊維は、実施例1の複合繊維と同じCNF6.3質量%とPHBH93.7質量%であった。
得られた複合繊維のSEM画像を図3(b)に示す。得られたSEM画像より実施例1と同様にして測定した繊維径は、1.2±0.3μmであり、均一な繊維が得られた。また、繊維の二次の配向パラメータSは、0.888であり、繊維は十分に配向していると考えられる。
また、得られた複合繊維は、微細セルロースが、紡糸された複合繊維の軸方向に配向していた。
(実施例3)
実施例1において、CNC濃度が1質量%であるのを0.5質量%に変更した他は、実施例1と同様にして、不織布状の複合繊維を作製した。得られた複合繊維は、CNC3.2質量%とPHBH96.8質量%であった。
得られた複合繊維のSEM画像を図3(c)に示す。得られたSEM画像より実施例1と同様にして測定した繊維径は、1.2±0.5μmであり、均一な繊維が得られた。また、繊維の二次の配向パラメータSは、0.890であり、繊維は十分に配向していると考えられる。
また、得られた複合繊維は、微細セルロースが、紡糸された複合繊維の軸方向に配向していた。
実施例1~3で得た不織布状の複合繊維を10mm×15mmに切断したものについて、引張試験機を用いて、機械的特性の評価を行なった。
その結果を図4に示す。測定は、1kgロードセルを用いて0.05mm/秒の引張速度で繊維軸方向に行った。また、比較のため、PHBHのみを用いて、エレクトロスピニング法にて作製した繊維についても、同様にして引張試験機を行った。試験結果を図4に示す。
また、実施例1~3で得られた各繊維の靭性を表1に示す。
図4および表1から明らかなように、実施例1~3で得られた各複合繊維は、いずれもPHBHの繊維よりも弾性率、引張強度、最大伸びのいずれも高い値を示した。弾性率は直線の傾きから、引張強度は破断直前の最大応力から、靭性は応力ひずみ曲線の面積から求められる。
Figure 2023019599000002
また、実施例2で作製した複合繊維のTEM画像を図5に示す。図5から、作製した複合繊維において、微細セルロース(CNF)が複合繊維の軸方向に配向した状態で密に凝集してバンドル化していることがわかる。
(実施例4)
微細セルロースとして、平均繊維径が21nm、平均繊維長が300nmのCNFを使用した。また、天然ゴムラテックスとして、濃度が60質量%であるGetahindus社製の「G-TEX HA」を用意した。また、水溶性ポリマーとして、濃度が6質量%のポリエチレンオキシド(PEO)の水溶液を用意した。
次に、天然ゴムラテックスに、微細セルロースと水溶性ポリマーを添加し、ホモジナイザーにて混合して、天然ゴムラテックス濃度が30質量%、CNC濃度が0.8質量%、PEO濃度が3質量%である紡糸用ラテックスを作製した。
得られた紡糸用ラテックスを用い、前記と同様にして、図2に示すエレクトロスピニング法により不織布状の複合繊維を作製した。
エレクトロスピニング法の紡糸条件は、紡糸用ラテックス1´の紡糸ノズル3への流量0.4mL/時、紡糸に加わる電界2.5kV/cm、コレクター5の回転速度13m/秒、紡糸ノズル3の径21G、紡糸ノズル3の先端からコレクター5までの距離15cm、紡糸時間60分間とした。
得られた不織布状の複合繊維を、SEMを用いて観察した。その結果を図6の(a)、(b)に示す。SEMから得られた画像より、繊維径を測定したところ、繊維の平均直径は2.7μmであり、均一な繊維が得られた。また、繊維の二次の配向パラメータSは、0.393であり、繊維は比較的よく配向していると考えられる。
また、得られた複合繊維は、微細セルロースが、紡糸された複合繊維の軸方向に配向していた。
得られた不織布状の複合繊維を、25℃の水に24時間浸漬し、水溶性ポリマーおよびタンパク質を除去した。これにより、実施例4の複合繊維を得た。
得られた洗浄後の不織布状の複合繊維を、SEMを用いて観察した。その結果を図7の(a)、(b)に示す。SEMから得られた画像より、繊維径を測定したところ、繊維の平均直径は13.9μmであり、均一な繊維が得られた。
1 ピッカリングエマルション
1´ 紡糸用ラテックス
2 シリンジ
3 紡糸ノズル
4 高圧電源装置
5 コレクター
6 中心軸
11 複合繊維
12 微細セルロース
13 疎水性ポリマー

Claims (8)

  1. 微細セルロースと、該微細セルロースを内包し紡糸された疎水性ポリマーとを含み、前記微細セルロースが、紡糸された繊維の軸方向に配向している、複合繊維。
  2. 前記微細セルロースが、前記繊維の軸方向に配向し、かつバンドル化している、請求項1に記載の複合繊維。
  3. 前記微細セルロースが、繊維長の長い微細セルロースおよび繊維長の短い針状の微細セルロースの少なくともいずれか一方である、請求項2に記載の複合繊維。
  4. 前記微細セルロースが、セルロースナノファイバーおよびセルロースナノクリスタルの少なくともいずれか一方である、請求項3に記載の複合繊維。
  5. 微細セルロースとポリマーとを含むエマルションを調製する工程と、
    高電圧を印加した紡糸ノズルから帯電した前記エマルションを噴射し、コレクター上に紡糸するエレクトロスピニング工程と、を含む、
    複合繊維の製造方法。
  6. 前記エマルションがピッカリングエマルションである、請求項5に記載の複合繊維の製造方法。
  7. 前記微細セルロースが機械開繊または化学開繊されたものである、請求項5または6に記載の複合繊維の製造方法。
  8. 請求項1~4のいずれかに記載の複合繊維を用いた繊維製品。

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